約 2,471,407 件
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/805.html
リクエストコーナーにございました、ネタポケまとめWikiのラティアスのページの内容の再編をしました。 管理人はあまり作品の中身に詳しくないので、もし執筆者様の意図と異なる部分等ございましたら、 更に皆様の修正・加筆などお待ちしております。 -- (管理人) 2010-12-04 00 55 50 五更瑠璃にムウマはどうでしょうか? -- (名無しさん) 2010-12-24 17 55 09 ↓服装的な意味ではゴチミルorゴチルゼルもありだと思う。 -- (名無しさん) 2010-12-24 18 33 34 麻奈実の弟、いわおはズガイドスはどうだろう。坊主頭だし、岩タイプ(ロック)だし。 -- (名無しさん) 2010-12-29 00 07 13 新垣あやせにエーフィ じこあんじ(思い込みが激しい)必須 来栖加奈子にメタモン ピンク色、へんしん(コスプレ) はどうでしょう? -- (名無しさん) 2011-12-21 23 13 56 高坂大介にルンパッパorニョロボン 前者は声優ネタ、後者は警察官なので。性格はまじめorいじっぱり推奨、きあいパンチ必須 高坂佳乃にダーテングorニョロトノ 大介に合わせて。 -- (名無しさん) 2012-02-07 09 43 45 黒猫(マニューラ)の技候補を考えてみました。 NN くろねこorるり 性格 れいせい、いじっぱり、さみしがり等 個性 まきずぎらい、ちょっぴりごうじょう等 持ち物 こうかくレンズorピントレンズ(カラーコンタクト) 技 ちょうはつ(桐乃に)、メロメロ(京介に)、じこあんじ(キャラになりきる) あくのはどう(厨二的発言)、どくどく(毒舌)、ひみつのちから(ゲームの腕前) ふぶき(雰囲気的に)等 -- (名無しさん) 2012-03-02 23 37 18 ↓~↓×3 追加しました。 -- (名無しさん) 2012-03-22 07 29 36 あやせは雰囲気的にヨノワールもいいと思う。 性格 まじめ、さみしがり等 個性 ちょっとおこりっぽい、ちょっぴりごうじょう等 技 にらみつけるorくろいまなざし(ヤンデレ顔)、じこあんじ(思い込みが激しい) シャドーパンチorきあいパンチ(ブチ殺されたいんですか!?この変態!) やつあたり(桐乃と絶交)、さしおさえ(京介の着信拒否)等 -- (名無しさん) 2012-03-23 00 36 37 京介(ラティオス)の技構成を考えてみました NN 「きょうすけ」「アニキ」「おにいさん」等 性格 ゆうかん、まじめ、いじっぱり等 個性 のんびりするのがすき、しんぼうづよい等 技 てだすけ(人生相談)、パワーシェア(あやせを説得)、めいそう(ゲームプレイ) ほえる(俺は妹が大好きだ!)、メロメロ(あやせに)、みがわり(桐乃の代わりに非難される) げきりん(親父に反抗)等 -- (名無しさん) 2012-04-19 23 38 28 五更日向にニューラ 黒猫の妹なので 五更珠希にゴチム 同じく 赤城瀬菜にロズレイド BL好きなので 赤城浩平にフシギバナorウツボットorモロバレル 妹と同タイプ メルルにチルタリス りゅうせいぐん(メテオインパクト)必須 タナトスにハブネーク はどうでしょう? -- (名無しさん) 2012-05-19 23 20 43 ゲーム版に登場する黒猫の娘達は 悠璃 レシラム 聖天使神猫ルートから生まれたので。性格はおだやかorひかえめ推奨 璃乃 ゼクロム 闇猫ルートから生まれたので。性格はなまいきorいじっぱり推奨 が良いと思う。 -- (名無しさん) 2012-06-27 23 23 44 沙織にチェリム ネガフォルム(お嬢様)、ポジフォルム(バジーナ)の使い分けが可能なので。 NN さおりorバジーナ 性格 ようき、ひかえめ等 持ち物 こだわりメガネ(ぐるぐる眼鏡) 技 にほんばれ(秋葉来訪=特性発動)、アロマセラピー(桐乃と黒猫の仲裁) てだすけ(京介に助言)、ギガインパクト(初登場時のインパクト、京介「沙織さんってお前かよ!」)等 -- (名無しさん) 2012-08-12 23 28 52 京介にルカリオ 主人公という事で。特性はどれも似合うので好みで(夢特性含む) 桐乃にリオルorスリーパー 後者は妹好き(ロリコン)なので。 -- (名無しさん) 2012-08-18 23 33 47 京介にニョロゾorコノハナ 両親に合わせて 桐乃にニョロモorタネボーorレシラム 前者2体は両親に、後者は黒猫(キュレム)に合わせて タネボーはだいばくはつ(オタバレ)必須 沙織にゼクロム 桐乃、黒猫(オタク友達)に合わせて。 -- (名無しさん) 2012-08-22 23 21 01 桐乃は兄妹という設定を無視してミミロップでいいと思う。(モデルだし) 京介に「ダブルアタック・なげつける・はたく・でんこうせっか・メロメロ・あまえる・やつあたり・ローキック」 -- (名無しさん) 2012-09-08 17 05 24 加奈子にズルッグ 京介から「クソガキ」と呼ばれているので。 NN 「かなこ」「かなかな」(ちゃんは入らないのが残念) 性格 なまいき、やんちゃ等 特性 じしんかじょう 技 いばるorちょうはつorいちゃもん(生意気な態度)、りゅうのまい(メルルのコスプレで歌う) しねんのずつき(ハメたなこんにゃろー!)、ふるいたてる(あやせ曰く、「実は凄い」)等 備考 ゾロア(特性イリュージョン(コスプレ))でも良いかも。 -- (名無しさん) 2012-09-16 23 42 20 600族で統一するなら 京介 ガブリアス 麻奈美と幼馴染(対になる)なので。 桐乃 色違いガブリアス 京介より素早さは高くしよう。 黒猫 ボーマンダ 別作品のゴスロリ少女と声優繋がりで。夢特性「じしんかじょう」(中二病)推奨 沙織 メタグロス あやせ バンギラス 夢特性「きんちょうかん」(ヤンデレ状態)推奨 加奈子 カイリュー りゅうのまい(ライブ)必須 -- (名無しさん) 2013-03-31 23 26 10 ブイズで統一するなら 京介 色違いのサンダース 桐乃 サンダース 黒猫 ブラッキー くろいまなざし(邪気眼)必須 沙織 グレイシア 麻奈実 シャワーズ 加奈子 イーブイorブースター 前者は特性「てきおうりょく」推奨 -- (名無しさん) 2013-04-17 23 15 35 桐乃はランクルスでも良いかも。黒猫(ゴチルゼル)と対になるので いたみわけ(人生相談・・・あるんだけど)必須 -- (名無しさん) 2013-06-02 23 20 49 京介にケッキング 進化過程が彼の人生を表しているような気がするので。 後やる時はやる所も似てる。 なまける(人生平凡が1番だ・・・・)必須。 -- (名無しさん) 2013-07-30 23 10 21 黒猫はアブソルでも良いかも。メガシンカで「聖天使神猫」を再現できるので。 -- (名無しさん) 2013-11-05 23 09 30 あやせはメがゲンガーでも良いかも。 特性「かげふみ」で「お兄さんに手錠」を再現できるので。 -- (名無しさん) 2013-12-01 23 16 26 訂正メが→メガでした。 -- (名無しさん) 2013-12-01 23 17 30 ウインディ:高坂大介 -- (名無しさん) 2016-04-03 16 02 26 バルジーナ 槇島沙織 -- (mimitan) 2023-08-17 18 22 06
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/155.html
受験戦争から解放され、早めの春休みが幕を開けた二月の下旬。 緩みきった気分を締め直そうと部屋の模様替えをしていた折に、それは見つかった。 「うわっ、懐かしいなオイ」 タンスの奥の方で眠っていたそれ――派手な柄の玩具箱――を引きずり出す。 ガキの頃は、これに玩具やカードを詰め込んで持ち歩いたもんだ。 とっくの昔に処分されたとばかり思っていたが、運良くこいつだけ、お袋の目から逃れたらしい。 31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/14(日) 07 31 59.84:shp1AWvn0 さてと、作業は一時中断して、追憶に耽るとしますかね。 ついつい脇道に逸れちまうのは、模様替えのお約束だよな……と箱の留め具に手をかけたそのとき、 「朝からゴソゴソ何してんの?」 桐乃がひょこっと顔を出した。 起き抜けなのか、長い髪はくしゃくしゃで、眠そうに目を擦っている。 「わり、起こしちまったか?」 「ううん、ちょうど目が覚めたトコ……」 桐乃は覚束ない足取りで部屋を横断し、ぽすっと俺のベッドに腰掛けた。 そしてグルリと辺りを見渡し、 「ふぅん……部屋の片付けなんかしてたんだ」 微かに不機嫌オーラを漂わせて、そう言った。 さっきの言葉は嘘で、本当は物音がうるさくて目を覚ましたのかもしれねえな。 それか、単純に寝起きで機嫌が悪いだけか。 なぜか居座る様子の桐乃に、俺は発掘品を見せてやることにした。 「そういや、タンスの中を整理してる最中に、珍しいモンが見つかったんだ」 玩具箱を手渡す。 が、色好い反応は梨の礫、桐乃は眉をひそめて、 「何これ?」 「俺がガキの頃に、いつも持ち歩いてた玩具箱だよ。見覚えねえか?」 「忘れた」 と桐乃はあっさり否定し、 「てゆーか、あんたって、そういうのいつまでも捨てられない性格だったんだ?」 見下すような半眼でこっちを見てくる。 べ、別にいいじゃねーか!たまに童心に還れるアイテム残しといてもさぁ! もっとも、当時の俺が何を思って、この玩具箱を残しておいたのかは、俺自身、よく分かんねーんだけどな……。 小馬鹿にして部屋を去って行くかと思いきや、桐乃は俺のベッドにうつぶせになり、 「さっさと開ければ?」 なんだかんだ言って興味はあるのな、お前。 俺は溜息を一つ、改めて玩具箱の留め具に手をかけた。 錆びた金属同士が擦れる音が響き、上蓋が持ち上がる。 果たして箱の中に保存されていたのは、 十年近く前に流行ったカードや玩具でもなく――色取り取りの紙束だった。 「なんだこりゃ……」 俺は何気なくそのうちの一片を取り上げ、 「ダ、ダメッ!絶対読んじゃダメッ!」 猫のような敏捷さで飛びかかってきた桐乃に、紙片を奪い取られてしまった。 こいつのこの慌てようは何だ?尋常じゃねえぞ。 「読んじゃダメってことは、その紙には、何か書いてあるのか?」 「ど、どーでもいいじゃん!とにかく、この箱もあたしが預かるからっ……!」 おっと、そうはいかねえ。 玩具箱に伸びた手を払いのけ、がっちりと脇に抱え込む。 「こいつは俺の物だ。お前にどうこうする権利はねえよ」 その一枚はくれてやる。 が、この箱の中には、少なく見積もっても数十枚の紙片が残されている。 後で一枚一枚ゆっくりと検めてやるさ。 「………じゃない」 ん、今なんて言った? 桐乃は右手の紙片を握りつぶし、肩を戦慄かせながら叫んだ。 「その中に入ってるのは、兄貴の物じゃないっ!全部……全部あたしの物なのっ!」 間髪入れず、桐乃の手が箱に伸び、もの凄い力で引っ張ってくる。 おいおい、陸上部で鍛えてるのは脚力だけじゃなかったのかよ。 それかアレか、火事場の馬鹿力的な何かが発動してるのか? が、年下の妹に綱引きで負けるほど、俺はひ弱な兄貴でもねえ。 「ワケわかんねーこと言ってんじゃねえ! なんでお前のモンが、俺の玩具箱の中に入って、しかも俺のタンスの奥に仕舞われてんだよ!」 「うるさいっ!離せ、このバカ兄貴っ!」 突き出された右足を、同じく右足で辛くもガードする。 躊躇なく股間を狙ってくるあたりに、桐乃の本気度がうかがえる。 罵倒と足蹴りを浴びながらの引っ張り合いがしばらく続き、 果たして先に折れたのは、俺でも、ましてや桐乃でもなく――箱の掛け金だった。 バキン、と嫌な音が鳴り、上蓋がはじけ飛ぶ。 「あっ」 と俺と桐乃の声が重なり、次の瞬間には、箱の中に入っていた大量の紙片が、ひらひらと部屋中に舞っていた。 必死の形相で舞い散る紙を追う桐乃を余所に、 俺は妙に醒めた頭を働かせ、箱の底に残っていた紙片を手に取った。 どれどれ……。 『だいすきなおにいちゃんへ』 一瞬、脳裏を過ぎったのは『おにいちゃん』って誰のことだ、というなんとも間抜けた思考だった。 理解が追いついて、目眩がしたね。 お兄ちゃんって、俺のことじゃねーか! しかも俺のことを兄貴呼ばわりできるヤツは、世界中で一人だけ、 今まさに目の前で、烈火のごとく怒り狂っている俺の妹、桐乃だけだ。 「……見た?」 「お、おう」 「……………」 「……なあ、これ全部……その……お前から俺に……」 スン、と洟を啜る音が、俺の言葉を遮った。 ちょ、なんでお前が泣きそうになってんの!? オロオロする俺に向かって、桐乃は集めた紙束を投げつけてきた。 どう足掻いても無駄だと観念したのだろうか。 確かめるまでもなく……これらは幼い桐乃がしたためた、俺宛の手紙に違いない。 「箱の中身はあたしの物!」という意味不明だった理屈も、今なら合点がいく。 「ハァ……」 俺は散らばった手紙を集めて、上蓋の無くなった玩具箱に詰め直し、 今やすっかり威勢を失った桐乃の目の前に置いてやった。 「持ってけよ」 「…………なんで?」 「ガキの頃の手紙をネタにして、お前をいびる趣味はねえよ」 こいつはお前が預かるなり、焼いて捨てるなり、好きにしろ。 それに正直な話、俺としちゃあ『だいすきなおにいちゃんへ』の一文だけでお腹いっぱいなんだよな。 あれ以上の甘味は、きっと毒になる。 全部に目を通した暁には、今の桐乃にも、あの頃のような可愛げを求めてしまいかねん。 桐乃は箱を小脇に抱え、脱兎のごとく部屋を飛び出す――かと思いきや、上目遣いに俺を見つめ、 「………気にならないんだ?」 「あん?」 そりゃ手紙の内容が気になるかならないか、と尋ねられたら、 「気になるに決まってるだろーが」 「あ、兄貴がどうしても読みたいって言うなら……読ませてあげないこともない……ケド?」 やれやれ、こちらが押せば全力で引き、こちらが引けばおずおずと押してくる。 天の邪鬼と呼ぶべきか? にわかに現れた選択肢に、俺は混乱していた。 去年の春、桐乃がアメリカにスポーツ留学する前夜にも、似たような状況があった。 桐乃のアルバムを、見るか、見ないか。 あのときの俺は後者を選択し、果たしてそれが正解だったかどうかは、未だもって分からない。 が、しかし、あの日以来、後悔というほど強くもなく、未練というほど弱くもない、 妙な不完全燃焼感が胸中に渦巻いていたのは確かで、轍を踏むのは躊躇われた。 俺は……。 1.嫌な予感がする。やめておこう。 2.手紙を読もう。忘れていた思い出が蘇るかもしれない。 手紙を読もう。忘れていた思い出が蘇るかもしれない。 「本当にいいんだな?」 と念を押すと、 「うん……ただし、読めるの一回限りだから。読み終わった手紙は没収だかんね」 「後で何度も読み返したりしねーよ」 親父じゃあるまいし。 桐乃は丸顔をぷくっと膨らませて言った。 「ほら、さっさと読む!」 なんでぇ、さっきまではあんなに読まれるのを嫌がってた癖によ。 俺はついさっき読みかけた手紙を手に取り、チラと桐乃の様子をうかがった。 うっすらと顔を赤らめ、そわそわと身じろぎしている。 やはり手紙を読まれることへの、抵抗や羞恥心がなくなった、というワケではないらしい。 まあ、桐乃の真意なんざ、俺の知っちゃこっちゃねえけどさ。 俺は「コホン」と空咳を一つ、 「えー、だいすきなおにいちゃんへ。きょうはいっしょにあそんでくれてありが――ぶはっ」 「何勝手に口に出して読んでんの!?殴るよ!?」 もう殴ってるよ! いい右ストレートもらっちゃったよ! 「あ、ごめ……じゃなくて!読むのは心の中で!あとニヤニヤするのも禁止!分かった?」 「分かりました」 さすがに音読はNGだったか。 俺は気を取り直し、左頬をさすりさすり、一枚目に目を通す。 ひらがなだらけの文章をそのまま再現しても分かりにくいだけなので、適度に変換すると、以下のようになる。 『大好きなおにいちゃんへ。 今日はいっしょにあそんでくれてありがとう。 はじめてブランコにのれてうれしかった。またせなかをおしてね。キリノ』 ――― ―― ― 『あっ、お兄ちゃん、どこ行くの?』 『公園』 『お家の外にでるときはねぇ、お母さんかお父さんと一緒じゃなきゃダメなんだよぉ』 『俺もう小学生だぜ。母さんも一人で行ってきていいってさ』 『………ずるい。お兄ちゃんだけなんて、ずるい。桐乃も行くっ!』 『しかたねーなー。母さん、桐乃も連れてっていい?』 リビングの方から、若かりし頃のお袋の声が聞こえた。 『目を離さないようにしなさいよー。桐乃まだ小さいんだから』 『分かってるって。じゃあ、行くか』 『うんっ』 俺は桐乃の手を引いて歩き出す。 寂れた公園に人影はなく、蝉の合唱が逆に虚しかった。 『お兄ちゃん、桐乃ねぇ、ブランコで遊びたい!』 言うや否や、桐乃は風に揺れる台座を捕まえ、腰掛ける。 『こうやるんだよ。見てな』 俺は隣の台座に腰掛け、お手本を見せてやった。 『わ……すごいっ!上手いねえ、お兄ちゃん』 『さ、桐乃もやってみ』 『うん……』 よいしょ、よいしょと足を交互にぶらつかせるが、 桐乃の体は小刻みに前後に揺れるばかりで、悲しいほどに加速がつかない。 『下手だなあ』 『……ふぇ……』 泣き出しそうな気配を察知して、俺はブランコを降り、桐乃の背後に回った。 『押してやるから、じっとしてな』 『うんっ』 一回、二回と背中を押すごとに、桐乃の体の振れは大きく、桐乃の表情は笑顔に変わっていった。 『お兄ちゃん、桐乃ねえ、空を飛んでるみたい』 その言葉を聞いて、俺は疲れて腕が動かなくなるまで、桐乃の背中を押してやろうと思った。 ――― ―― 「お前も昔は素直でいい子だったんだよな……」 ポツリと漏らした一言に、"現在"の桐乃が敏感に反応する。 「どういう意味?今は捻くれてて憎たらしい子だって言いたいワケ?」 「誰もそこまでは言ってねえよ!」 でもお前も自覚はあるんだろ? 今のお前と昔のお前の性格には、天と地ほどの差があるってことには。 まったく、何がどう間違って、こんな風になっちまったんだか……。 「ハイ、その手紙は没収ね」 ピッと桐乃が俺の手元から、一枚目の手紙をかすめ取る。 『ごめんなさい、お兄ちゃん。 お兄ちゃんが学校にいっているあいだに、 キリノはお兄ちゃんのぶんのプリンをたべてしまいました。 そのかわりに、つぎのおやつはキリノのぶんをお兄ちゃんにあげます。ゆるしてね』 ――― ―― ― 小学校から帰ってくると、桐乃の様子がおかしかった。 『おっ、おかえりなさい、お兄ちゃん』 『ただいま。あれ、母さんは?』 『お母さんは、お家のうらで、隣のひととお話してる』 『ふぅん。あー、お腹すいた。 そういや、今日のおやつ何だった?』 『…………』 『どうして黙るんだよ?桐乃はもう食べたんだろ?』 『……あ、あのね……キリノ……キリノ、お兄ちゃんのぶん……』 『はぁ?ハッキリ喋れよ』 『………ふぇ……ひくっ……ごめ……っ……ごめんなさい……』 そのとき、タイミングよく裏口のドアが開き、お袋が帰ってきた。 『ちょっと京介!あんたまた桐乃のこと泣かせたの!?』 『ち、違うって、俺にも何がなんだか……』 『うわあぁぁあぁぁん!!』 ――― ―― ― 「あの時は参ったな。 お前は大泣きして訳を話さねーし、お袋は端からお前の味方だったし」 落ち着いた頃に、桐乃が俺にこの手紙を渡してきて、 やっと桐乃が泣いていた理由が分かった覚えがある。 「なんで初めから正直に話さなかったんだ?」 そりゃ俺も小言の一つや二つは言っただろうが……。 「そんなにあの頃の俺は怖かったのか?」 桐乃はジト目で俺を睨み付け、 「"怖かった"のは間違ってないケド……あたしは別に、あんたに怒られるのが怖かったワケじゃないしィ」 「じゃあ、何が怖かったんだよ?」 「じ、自分で考えれば?」 プイ、とそっぽを向く桐乃。少し自信を無くすぜ。 あの頃の俺は桐乃にとって、必ずしも『優しくて頼れるお兄ちゃん』じゃなかったということか? 手紙は抜け目なく没収され、俺は考えるのを諦めて、三枚目を手に取った。 三枚目は手紙……というよりは絵日記の体裁で、 拙い文字の羅列の下に、色鉛筆で酷く抽象的な絵が描かれていた。 緑一色の大自然(?)を背景に、肌色で描かれているのは俺と桐乃……だろうか? とにかく、文章を読んでみないことには始まらない。 『今日はお兄ちゃんといっしょに虫をとりにいきました。 お兄ちゃんは虫をつかまえるのがとても上手です。 でも、遊ぶのにむちゅうになっていると、帰りみちがわからなくなりました。 キリノはこわくなって、ころんでしまいました。 お兄ちゃんはキリノをおんぶしてくれました。 『だいじょうぶ、だいじょうぶ』とお兄ちゃんはなんどもキリノに言ってくれました。 夜になるまえに、お兄ちゃんとキリノはお家に帰ることができました。 こわかったけど、たのしかったです』 ――― ―― ― 親父に急な仕事が入るのは、昔から珍しいことじゃなかった。 その日も早朝から親父は仕事場に呼び出されていたらしく、 虫取りを楽しみにしていた俺と桐乃は、朝起きて初めて、お袋からそのことを聞かされた。 『俺たちだけで行ってくる』 『ダメに決まってるでしょ、あんたたちだけで行くなんて』 『じゃあ母さんがついてきてよ』 『あたしは家事仕事があるから無理よ。それに虫は苦手なの』 『やだぁ、桐乃、虫取り行きたいー!』 『わがまま言わないの、二人とも。 また今度、お父さんが休みの日に連れて行ってもらいなさい』 俺たちは渋々引き下がるそぶりを見せ、しかし腹心では一計を案じていた。 公園に行ってくる、と昼過ぎに家を出て、向かった先は未開発の雑木林だった。 一歩踏み入れば、そこは虫の宝庫だった。 『あっ、カブトムシ!大っきいねぇ!』 『こっちにはクワガタがいるぜ』 『ねぇお兄ちゃん、このクワガタはなんていう名前なのぉ?』 『ノコギリクワガタだよ。ほら、ここがノコギリみたいにギザギザになってるだろ?』 俺たちは虫取りに夢中になるあまり、日の届きにくい、鬱蒼とした奥地にまで迷い込んでいた。 しかも間の悪いことに、桐乃が転び、膝をすりむいた。 俺は桐乃を負ぶってやらなければならなかった。 『お兄ちゃん、ここ……どこ?』 『知っている場所だ』と嘘も言えず、『迷った』と打ち明けて不安がらせることもできず、 俺はただただ『大丈夫だ』と、自分と桐乃に言い聞かせていた。 そうして、当て所なく歩き続けること十数分、 奇跡的に方角は元来た道に向いていたようで、俺たちは再び、夕暮れの町並みを拝むことができた。 ちょっとした冒険の記憶だ。 ――― ―― 「結局、黙って虫取りに行ったことは、親父やお袋にはバレたんだっけ」 「ううん。あんたが言ったんじゃん、このことは二人の秘密にしようって。 虫は全部逃がして、あたしの膝の擦り傷も、公園で転んだことにしてさ」 さっきから思ってたが、やけに物覚えいいな、こいつ。 俺なんか手紙を見てやっと思い出してるくらいなのに……単純に年の差が原因か? 「あの雑木林、今も残ってんのかな」 「なワケないじゃん。今はすっかり住宅地になってるよ」 「そっか。じゃあもうお前と虫取りに行けねーな」 「残ってても行かないし!虫を手づかみするとか、死んでもゴメンだから!」 言うと思ったよ。 でも、不思議だよな、なんであの頃は大好きだった虫が、今見ると気持ち悪く見えたりするのかね? 「あたしに聞かれても分かるワケないでしょ。ヤなものはヤなの」 桐乃は唇を尖らせてそう言い、手紙を奪い取る。 次の手紙を読もうとしたところで、ぐきゅるる、と情けない音が鳴った。 断っておくが、音の出所は俺じゃない。 「小休止にして、昼飯食べに行こうぜ。お前、朝も何も食ってねえんだろ?」 桐乃は顔を赤くして頷くと、次に自分がパジャマ姿で、 しかも顔も洗っていないことに気づいたのか、大慌てで部屋を出て行った。 昼飯を終え、ぼんやりワイドショーを眺めてから自室に戻ると、 シャワーを浴びて衣装替えし、淡いメイクを決めた妹が、またしても俺のベッドを席巻していた。 勝手に読み始めたら怒られるだろうから、部屋に呼びに行こうと思ってたのに。 「遅いっ!」 「おめーの準備が良すぎるんだよ」 そんなにガキの頃の手紙を俺に読んで欲しいのか?あん? 「キモ。あたしはただ単に、早く終わらせたいだけだし」 さいですか。 俺は妹の刺すような視線をを頬に感じながら、四枚目の手紙を手に取った。 どーでもいいが、今の部屋の惨状をお袋に見られたら、説明するのが面倒だな……閑話休題。 『大好きなまなちゃんへ。 きのうはあそんでくれてありがとう。 おかし、とってもおいしかったです。 まなちゃんはキリノのお姉ちゃんみたい。 これからもなかよくしてね』 ――― ―― ― 夜、寝ようと思っていたところに、ノックの音がした。 ドアを開けてやると、眠そうな桐乃が立っていた。 『これ、この手紙ね……』 『俺にか?』 『ううん……明日ね、学校でねぇ、まなちゃんにわたしてほしいの』 『どんな手紙なんだ?』 桐乃は手紙を挟んだ両手を、もじもじと体の前で擦り合わせつつ、 『今日、お兄ちゃんとキリノ、まなちゃんのお家に遊びに行ったでしょ?』 『ああ』 『でもねえ、キリノ、まなちゃんにちゃんとお礼言えなかったから……』 小さい頃の桐乃は人見知りが激しく、 田村家の一家総出の歓待に目を回していた。 麻奈実の部屋で、俺、麻奈実、桐乃の三人で話す時は普段通りなのだが、 帰りがけ、田村一家の面子を前にすると、俺の背中に隠れて、 小さな声で『あっ……ありがとう、ございました』と言うのがやっとだった。 真奈美に直接礼を言えなかったことを、桐乃は心のどこかで、悔やんでいたに違いない。 『桐乃の気持ちは分かったよ。手紙、麻奈実に渡しとく』 俺は手紙を預かり、桐乃の頭をなでてやった。 『ありがとう、お兄ちゃん。おやすみなさい』 『おやすみ、桐乃』 俺は階段を下りる小さな妹の背中を見送り、手紙をランドセルの中に仕舞った。 ――― ―― ― 「懐かしいなー。 確かあの頃、桐乃はまだ親父やお袋と一緒に寝てたんだよな」 さりげなく話題を反らそうとしてみたものの、 「なに誤魔化そうとしてるわけ?」 あっさり軌道修正される。桐乃は冷えた声音で訊いてきた。 「ね、なんでこの手紙が、今もあんたの手元にあんの?」 「これには深いワケがだな……」 「へぇー?聞かせてもらおうじゃん。 言っとくケド、あたしが納得できるような理由じゃなきゃ、怒るよ?」 既に怒ってるじゃねーか!怖ぇよ顔が! 「小学生っつったら、アレだ……くっだらねーことで、誰かのことをからかったりするもんだろ?」 心当たりがないでもないのか、「それは言えてるカモ」と桐乃は頷く。 「お前から手紙の配達を安請け合いしたはいいが、 学校で麻奈実に手紙を渡すとなると、周りの視線が気になってよ」 小学生の狭い世界である。 高坂が田村にラブレターを送った!と上から下への大騒ぎが数日続くことは目に見えていた。 今でこそ「俺と麻奈実は幼なじみだ、色眼鏡で見るんじゃねえ」と淡泊にあしらえる自信があるが、 当時の俺は、そういった噂を立てられることが気恥ずかしかったのさ。 「分かってくれたか?」 「はぁ?全然分かんない! 学校で渡すのが恥ずかしいなら、帰り道とか、誰も見てないところで渡してくれれば良かったじゃん!」 正直に言おう。 「帰る頃には忘れてた」 「バカじゃん!?」 ベシ、と頭頂部を叩かれた。 いやマジで悪いことしたと思ってるって。 あの頃の俺も深く反省しながら、ランドセルの奥の方でぐしゃぐしゃになった手紙を、この玩具箱に仕舞ったんだ……と思う。 「にしても、あの頃のお前って、麻奈美にホントよく懐いてたよな。まなちゃん、まなちゃん、ってさ」 「昔の話でしょ」 「麻奈美のことが嫌いになったのはいつからだ?」 「憶えてない……ってゆーか、別にあたしは地味子のこと、嫌ってるワケじゃないし! あんたと地味子がいつまで経っても小学生のノリで、 ベタベタくっついてるのがキモくて、見てたらイライラさせられるってだけ」 それを世間では嫌ってるって言うんじゃねえの?俺とセットで。 が、これ以上追求しても喧嘩の種になるだけだと思った俺は、手紙を桐乃に渡し、五枚目の手紙を手に取った。 そのときだった。 ピンポーン。 「誰か来たみたいだな」 俺たちは無言で顔を見合わせ、いったん右手を背後に隠してから、つきだした。 こっちはチョキで、桐乃はグー。 しかたねーなー。俺は重い腰を上げて、一階に下りていった。 今更だが、現在、親父とお袋は連休を利用し、一泊二日の小旅行に出かけている。 玄関を開けると、そこにいたのは――。 あやせだった。 天使と形容すべき美貌がほんのり朱に染まっているのは、 道中、俺への想いが募ってきたせいで、あとはほんの少し、木枯らしにも理由があるかもしれない。 「こんにちは、お兄さん」 「おう、いらっしゃい、あやせ」 勝手知ったる、という風にあやせは門を開け、ととと、と俺の目の前に歩み寄る。 挨拶代わりのキスをしてくれるのかと思いきや、 そのまま隣を素通りし、玄関の扉を開けて親父やお袋の気配がないことを確認すると、 「今日と明日、お家にお兄さんと桐乃が二人きり、というのは本当だったんですね」 と背を向けたまま聞いてきた。 よく知ってるじゃねーか。桐乃が言ったのか? あやせは無言でハンドバッグをあさり、振り返りざまに素早く手を動かした。 カシャシャン、と小気味よい金属音が鳴り響き、気づけば、俺の手には罪人の証がはめられていた。 「なんて不用心な……お兄さんのような変態を、桐乃と一つ屋根の下に置いておくだなんて」 慨嘆に堪えません、と親父やお袋に苦言を呈すあやせ。 俺はお前の施錠スピードの速さに驚嘆だよ。 家に上がり、階段を駆け上るあやせの後を、拘束具の取り付けられた手でやっとこさ靴を脱ぎ、追いかける。 案の定桐乃の姿を見つけたあやせは、 「大丈夫?お兄さんに何も変なことされてない?」 と桐乃の安否を確かめていた。 あやせと知り合って早二年、一度失った信頼の回復は難しいことを思い知らされる光景だ。 「もうっ、大丈夫だってば。わざわざ家に押しかけてくるなんて、大げさすぎィ」 「だってわたし、桐乃のことが心配で……」 もはや説明不要だろうが、あやせの中での俺の認識は、 近親相姦上等の変態鬼畜兄貴である(自分で言ってて泣きたくなってきた)。 俺が部屋に入ると、あやせは敵愾心剥き出しの視線を俺に向け、 「出て行ってください」 いやここ俺の部屋だからな? 出て行くのはむしろお前と桐乃の方だっつーの。 「お兄さんの部屋に桐乃を監禁して、何をしていたんですか? ご両親がいないのをいいことに、い、いかがわしいことを強要していたんじゃないですか?」 「脳内妄想はそこまでにしとけよ。あと桐乃、おめーも少しは否定しろ」 すると桐乃はにわかに愉快げな表情を作り、しかし声音は恥ずかしげに、 「だってさァ……さっきまであんたが、あたしにしてたことって……一種の羞恥プレイと言えなくもないじゃん」 「詳しく聞かせてもらいましょうか?」 あやせは撮影用の華やかな笑みを顔に貼り付け、 「返答の如何によっては――しますよ?」 桐乃からは見えない角度で、ライターの炎をちらつかせた。 手錠炙りの刑を一度体験している身としては、なんとしても誤解を晴らさなければならないところである。 「――というワケで、俺たちは桐乃が書いた手紙をきっかけに、昔のことを思い出してたんだよ。分かったか?」 「それは分かりましたけど……ねぇ桐乃、読まれたくない手紙まで、見せなくてもいいんだよ? 中には……ううん、手紙のほとんどが、お兄さんに送ったことを、深く後悔している手紙でしょ?」 「それは……まぁ……そうだけど……」 言葉を濁す桐乃に、あやせは苛立ちを露わにするかと思いきや、 「そうだよね。 ここでお預けにする方が、先のことを考えると危ないよね」 ハイハイ、全手紙強制焼却ルートを想像した俺がバカでした。 つーか妹からの手紙を読み返してガス抜きするシスコンて何だよ! 娘の結婚後に何年も経ってからアルバム見返す父親よりキモいわ! 「それがお兄さんでしょう?」 「…………」 否定する気力も失せたね。 俺は不自由な両手を使い、五枚目の手紙を開いた。 『こんやくしょ。 キリノとお兄ちゃんはしょうらい、けっこんします。 なぜなら、キリノはお兄ちゃんのことがだいすきで、 お兄ちゃんもキリノのことがだいすきだからです。 キリノ キョウスケ』 ――― ―― ― 暑い夏の昼下がり。 リビングで二人してアイスを頬張っていると、不意に桐乃が言った。 『ねぇねぇ』 『どうした、桐乃?』 『キリノねぇ、お兄ちゃんとけっこんしたい』 俺はむせながら、 『どうしてお兄ちゃんと結婚したいんだ?』 『だってねぇ、お母さんが言ってたんだもん。 けっこんは、本当にだいすきな人どうしがするものだって』 『へ、へぇ~』 『それでねぇ……キリノがせかいでいちばんすきな人はねぇ、お兄ちゃんなの』 『…………』 そのとき、俺はガキなりに、どうやったら「異性の好き」と「兄妹の好き」の違いを教えられるか、必死に考えていた。 アイスが溶けて、冷たい感触が手のひらを伝った。桐乃は続けて言った。 『お兄ちゃんが、せかいでいちばんすきな人はだれ?』 『か、考えたことないから、分かんないな』 『じゃあ、今かんがえて』 俺が黙っていると、桐乃は消え入りそうな声で言った。 『…………まなちゃん?』 『なっ、なんで麻奈美の名前が出てくるんだよ?』 『だって、まなちゃんとあそんでるときのお兄ちゃん、すっごく楽しそうだもん。 キリノとあそんでるときよりも、楽しそうにしてるもんっ』 桐乃の大きく円らな瞳を、うっすらと涙の膜が覆う。 兄貴は、妹の涙に弱い。その法則に、年齢は無関係だ。 俺はアイスで汚れていない方の手で、桐乃の頭を撫でてやりながら、 『お兄ちゃんが世界で一番好きなのは、桐乃だよ』 『……ほんと?』 『ああ、ほんとだ』 『じゃあ、しょうらいキリノとけっこんしてくれるの?』 『ああ、してやるよ』 『じゃあね、じゃあね……ちょっとまってて!』 キリノはぱぁっと顔を輝かせると、リビングを飛び出して行った。 戻ってきた桐乃の手には、鉛筆と、折り紙があった。 そうして桐乃は時間をかけて、「こんやくしょ」を作り始めたのだった……。 ――― ―― こ、これはまずい。 あやせに見せたらシャレになんねーことになる。 無反応の俺を逆に不審に思ったらしい桐乃が言った。 「何書いてたの?あたし」 「ん、ただの落書きだよ。こいつは後で捨てとくから、次行こうぜ、次」 紙を折り曲げてポケットに仕舞おうとしたところを、 「待ってください。その玩具箱に入っていたものは、全て桐乃のもの、という約束でしたよね?」 とあやせ保安官に差し止められる。 手枷をはめられた俺に抵抗できるワケがなく、あっさりと「こんやくしょ」を没収された。 終わった。 俺のプロファイリングが正しければ、あやせはほぼ確実に、 「お兄さん幼少期から桐乃を洗脳していた」という妄想を肥大させ、俺に一心不乱の打擲を加えてくることだろう。 俺はじっと目をつむり、刑罰執行の時を待った……のだが、しかし。 「……………」 あやせは無表情で視線を紙上に滑らせると、 凝視していなければ分からないほど微かに頬をひくつかせて、「こんやくしょ」を玩具箱の奥底にしまった。 「あやせ、今の、本当に落書きだったの?」 「うん。お兄さんの言うとおりだった」 何事もなかったかのように桐乃に言い、あやせはこちらに顔を向けて、唇の動きだけでこう言った。 ……"あんなもの、絶対に認めませんから"と。 や、あんなのに法的拘束力があるなんて、これっぽっちも思っちゃいねーって。 それに第一、桐乃が全力で婚約取り消しを求めてくるだろうよ。 とにもかくにも、窮地は脱したようである。 「考えたら、落書き、結構混じってるかもね。 じゃあ、次、読んで」 水面下の攻防を知らぬ妹は、無邪気に七通目の開封を促してきた。 今度の手紙も三通目と同じく、日記風味の体裁で書かれていた。 『キリノはきのうのよる、とってもこわいユメをみました。 よなかにおきて、でも、お父さんもお母さんもおきてくれませんでした。 キリノはお兄ちゃんのへやにいきました。 お兄ちゃんは「いっしょにねるか」といって、キリノは「いっしょにねる」といいました。 でも、キリノはユメをみるのが怖かったので、なかなかねむれませんでした。 お兄ちゃんはキリノをぎゅーっとしてくれました。 そうしたら、キリノはあんしんして、ねむることができました』 そこで終わっていれば、いい話だった。 しかし、ああ、なんであやせが来てからというもの、スリリングな内容が連続するんだろうな、 手紙には続きがあった。 『きょうのあさ、おれいに、お兄ちゃんにちゅーをしました』 ――― ―― ― 深夜、ドアの向こうから物音が聞こえて、最初に想像したのは幽霊だった。 一人で二階で寝るようになってからというもの、 誰もいない廊下に幽霊が徘徊しているという想像は、常に頭の隅にあって、 しかもちょうど昨日の夜、怖い夢を見たばかりだった。 『誰だ?』 『…………』 誰何に答える声はなくとも、気配は依然としてそこにある。 俺が勇気を振り絞ってドアを開けたのと、桐乃が飛び込んできたのは同時だった。 『お兄ちゃんっ』 『なんだ、桐乃かぁ……どうしたんだ、こんな時間に?』 『あのね、キリノねぇ、とってもこわいユメを見てねぇ……ねむれないの』 普段なら『怖がりだなぁ、桐乃は』と馬鹿にしているところだが、 前日、怖い夢を見て、ついさっきまで寝付けなかった手前もあり、 『じゃあ、お兄ちゃんと一緒に寝るか』 『うんっ、キリノ、お兄ちゃんといっしょにねる!』 布団に入り、電気を消す。 たとえ俺が隣にいても、眠ってしまうことに抵抗があるのか、なかなか桐乃は目を瞑ろうとしなかった。 俺は桐乃を抱きすくめながら、 『お兄ちゃんがぎゅーってしといてやるから、桐乃は安心して眠りな』 『うん。お兄ちゃんの体、あったかいねぇ……』 桐乃が寝息を立て始めた頃、俺にも眠気が訪れた。 俺は桐乃の髪を撫でてやりながら、昨日見た悪夢のことなどすっかり忘れて、深い眠りについたのだった。 ――― ―― ― ここまでは思い出せる。ここまでは。 が、どう記憶の糸を辿っても、俺が桐乃にちゅーされた場面を思い出せない。 何かの間違いなんじゃねえか、と手紙を見直すと、 「何かの間違いですよね」 と背面から手紙を覗き見ていたあやせが、震えた声で言った。 死の冷たい指先が首筋に纏わり付く錯覚がしたね。 俺は純粋な好奇心と、保身のために桐乃に尋ねた。 「なあ……この『おれいに、お兄ちゃんにちゅーをしました』ってのは……マジなのか?」 「ホントだけど?」 しれっとなんて爆弾発言しやがる!? 桐乃、お前分かってんのか?文字通り俺の生死がかかってんだぞ! ここはマジでも冗談で書いたことにしといてくれよ! 「あんたが憶えてないのは、あたしが……寝てるあんたにキスしたから」 おい待て、それ以上の語りはやめろ。 さっきから「嘘、嘘嘘ウソウソウソウソ」という呪詛にも似た響きが聞こえてきて、現在進行形で俺の寿命が縮んでるんだが。 そのときの俺は、よほど深刻な顔つきだったのだろうか、 髪を指先で弄っていた桐乃は、ふと俺の方を見て、表情を硬くすると、 「ま、まさかあんたってば、あたしが唇にキスした……とか思ってないよね?」 「え?違うの?」 「あーキモいキモい。いくら小さな頃のあたしが……その……あんたに気を許してたからって、 唇にキスするワケないじゃん。あたしはほっぺにキスしたの。勘違いすんなっ」 なんだ、本当に俺の考えすぎだったのか。 まあ、ほっぺのちゅーくらいなら、ぎりぎり、兄妹のスキンシップの範疇に入るよな、きっと……。 「だから、あやせも安心して」 と桐乃が言い、 「そうだったんだぁ」 とあやせが答える。 が、あやせの笑顔に、安堵感から来るものとは違う、作り物めいたぎこちなさが見て取れたのは、 ラブリーマイエンジェルの信奉者たる俺だけだろうか? 一瞬、桐乃は嘘をついていて、あやせはそれに気づいているんじゃないか――という憶測が脳裏を掠め、すぐに消えていった。 『お兄ちゃんへ。 キリノはお兄ちゃんとあらいっこするのが大好きです。 でも、さいきん、お兄ちゃんはいっしょにおふろに入ってくれません。 どうしてまなちゃんとキリノがいっしょに入るのはよくて、 お兄ちゃんとキリノがいっしょに入るのはダメなの? 今日はゆぶねに、ゆずをうかべるとお母さんが言っていました。 ひさしぶりに、お兄ちゃんといっしょに入りたいです』 ――― ―― ― 浴室に入ってからしばらくして、脱衣所の扉が開いた。 『ねえ、お兄ちゃん、どうしてお風呂に行くとき、キリノに何も言ってくれなかったの?』 『……忘れてたんだよ。ごめんな』 『いい』 いいって何が、と聞くと、衣擦れの音が返ってきた。 『おい、ちょっと待てって。俺、もう少ししたら出るから……』 『ダメ。キリノはお兄ちゃんのせなか、流してあげるんだもん』 当時、俺は小学五年生、桐乃は小学二年生で、俺は朧気ながらに、性の知識を持ち始めていた。 だから桐乃と一緒に風呂に入ることを避けるようになったのだが……。 脱衣所と浴室を隔てる仕切りが開き、起伏のかけらもない桐乃の裸身が露わになる。 『えへへ』 と桐乃は無垢な笑顔を浮かべて、俺が浸かっている湯船に、体を滑り込ませてきた。 子供二人といえど、一緒に入れば湯船は手狭で、 楽な体勢を追求すると、俺が桐乃を後ろから抱きかかえる格好になる。 『いい匂いだねぇ、お兄ちゃん』 ツンツン、と湯に浮かんだ柚子をつついて遊ぶ桐乃。 『ああ、そうだな』 と適当に相づちを打ちながら、俺は可能な限り、妹の裸体から意識を反らしていたように思う。 体が温まった頃、俺たちは湯船から出て、バスチェアに腰掛けた。 『じっとしててね、お兄ちゃん』 桐乃はボディタオルにソープを染みこませ、よく泡立ててから、俺の背中を擦ってくれた。 『気持ちいい?』 『ああ。すげー気持ちいいよ』 『えへへ、桐乃、上手でしょ』 あまりの心地よさに目を瞑る。 ……まだ、もう少し一緒に入ってもいいんじゃないか? 甘い誘惑が、思考に靄をかける。俺はかぶりを振って、 『交代しようぜ。桐乃、後ろ向け』 少し経ってから振り向くと、そこには白くすべやかな妹の背中があった。 タオルを受け取り、柔肌を傷つけないよう、優しく擦ってやる。 『んっ、お兄ちゃん、もっと強くしてもいいよ……?』 『どうだ、これくらいか』 『うん……すごく気持ちいい……』 別に妹の体に、性的な魅力を感じているワケじゃない。 そんなのは、これから先もありえねー……と思う。 でも、そう断言できる今だからこそ、きっぱりと線引きしておく必要があるんじゃないか。 それが、ガキの俺が出した結論だった。 『桐乃、一緒にお風呂に入るのは、これっきりにしよう』 『えっ?なんで?』 『お兄ちゃんは男で、桐乃は女だ。男と女は、一緒にお風呂に入っちゃダメなんだ』 『嘘っ。だって、今までずっと、お兄ちゃんと入ってても、だれにもおこられなかったのに……』 『体が小さいうちは良くても、大きくなってきたらダメなんだよ』 『キリノはまだ子供だもんっ!キリノの体、まだ小っちゃいもんっ!』 『キリノの体がそうでも、俺の体が――』 最後まで言い終わらないうちに、桐乃が体ごとこちらに振り向く。 俺は咄嗟に目をそらし、きっとそれが、桐乃の目には拒絶のポーズとして映ったのだろう。 『やだ……お兄ちゃんのバカぁ……キリノに……いじわるしないでよぉ……』 泡のついた指で目を擦る桐乃をあやしながら、 『ごめんな。でもお兄ちゃん、桐乃に意地悪してるワケじゃないんだ』 『じゃあ、なんでそんなこと言うの……?』 『いつか桐乃にも、俺の言ってることが分かる日が来るから』 『分からない。分からなくていいっ』 『桐乃……』 それから俺は、お袋が長風呂を心配して様子を見に来るまで、桐乃を宥め続けた。 ――― ―― ― 今回ばかりは、あやせに責められる謂われはないはずだ。 なんてったって、どんなに国語能力が欠けているヤツが見ても、 この手紙は、『桐乃』が俺と一緒に風呂に入りたがっていることを示しているんだからな。 あやせは目頭を押さえつつ、 「刷り込み教育の成果ですね。桐乃はこんな時から洗脳を……」 文盲がここにいた! 「桐乃、お兄さんとお風呂に入っているときに、悪戯されたりしなかった?」 「するわけねーだろ!小学生の頃の話だぞ!」 「こ、子供だからこそ犯してしまう過ちもあるじゃないですか!」 「たとえば?」 「お医者さんごっこで、桐乃の体に触診とか……って、何言わせてるんですか変態ッ!」 即そういう発想に至ったお前が変態だよ! くそう、やはり何を言ったところで、あやせの心証を悪くするだけだ。 「こんやくしょ」、「ちゅー」、「いっしょにおふろ」の怒濤の三連撃で、いよいよ俺のライフは残りわずかである。 「聞いて、あやせ」 と、突然桐乃が、よく通る声で言った。 あやせはオイルライターと俺宛の殺意をいったん仕舞い、 「どうしたの?」 「手紙、見てもらったら分かると思うんだケド……。 小さい頃のあたしらって、結構……ううん、かなり、仲良かったんだよね。 だから、あたしが兄貴と一緒にお風呂入りたがってた、っていうのも本当だし」 そこで桐乃はチラ、と俺の方を盗み見て、 「お風呂は別々に入ろう、って言い出したのも、兄貴の方なんだ。 あたしはそれが嫌で、お風呂で大泣きしちゃってさぁ」 俺はあやせへの身の潔白の証明と、思い出話を兼ねて言った。 「あ、あの時はあの時で、またお袋の誤解を解くのが大変だったよな」 風呂場で子供が泣いていたら、転んで怪我をしたのでは、と疑うのがフツーだが、 お袋はまず第一に、桐乃が俺に悪戯されたことを疑った。 まあ、予め一緒に入ることをお袋に伝えていなかったことも、原因の一つだが……今から考えると酷い誤解だよな。 「しかもその後、あたしが怒って、しばらく兄貴と口聞かなかったんだよね」 「どれくらいだっけ。三日くらいか?」 「一週間くらいじゃなかった?」 「いや、そんなに長くなかっただろ」 割とすぐに、お前の方から話しかけてきてくれた覚えがあるぞ。 控えめに俺の部屋のドアをノックして、『お兄ちゃん、学校のしゅくだい、おしえて?』ってさ。 あの頃、お前は体育が苦手でも、勉強の方は余裕で、 だからあれはきっと、俺と仲直りするためのきっかけ作りだったんだろうな。 「あはっ、バレてたんだ」 「あのときの俺はすっかり騙されてたよ。 お前が口聞いてくれたことが嬉しくて、バカ丁寧に算数を教えてやってた気がする」 俺は笑った。桐乃も笑った。 アレ、なに俺たちフツーに談笑してんだ?と冷静になったそのときだった。 「帰ります」 すっくとあやせが立ち上がった。 「え、もう帰っちゃうの?」 「お前、泊まってくつもりじゃなかったのか?」 てっきり「俺と桐乃を一晩二人きりにできない」とかなんとか理由をつけて、 親父とお袋が帰ってくる明日まで居座るとばかり思っていたんだが。 「両親と外食する予定があるので。……お邪魔しました」 「待って。家の外まで送るから」 「外、すっごく寒いからここでいいよ。じゃあね、桐乃」 それからあやせは、俺に複雑な感情を宿した一瞥を投げかけ、静かに部屋を出て行った。 やがて玄関の扉が開き、閉まる音が聞こえた。 いやいや待て待て。 なんで急に帰っちまったんだろうな、とか。 最後にくれた一瞥の意味はなんだったんだろうな、とか。 んなことがどうでもいいと思えるくらいに、あいつは重大な忘れ物をしていきやがった! 呆気にとられる妹を部屋に残し、俺は全速力であやせを追いかける。 玄関を飛び出し、自転車は……ダメだ、ハンドルをまともに握れねえ。 道に出ると、遠くの方に白い人影が見えた。 「あやせ!」 近所迷惑も顧みずに叫ぶ。 声は届いたようで、あやせは立ち止まった。が、何を思ったか再び家路を歩き出す。 「待てよっ……はぁ……はぁ……」 あやせの背中に追いつく頃には、不自然な体勢で走ったことも祟って、ヘロヘロになっていた。 「どうしたんですか、お兄さん?」 と、恐らくは心当たりがあるくせに、澄まし顔で宣うあやせ。 「手錠だよ、手錠!外すの忘れて帰っただろ」 「別に、忘れて帰ったつもりはないんですけど」 おま……手錠つけさせたまま俺に日常生活送らせるつもりだったの? どんな罰ゲームだよ畜生。 「外して欲しいですか?」 「ああ、さっさと外してくれ」 「…………」 「外してくださいお願いします」 カシャカシャン。 施錠したときと同様、目にも留まらぬ早業で、あやせは解錠を済ませ、手枷をバッグにしまった。 両手を解放されて調子に乗った俺は、余計なことを言った。 「お前さ、桐乃と俺を二人きりにするのが嫌だからって理由で家に来たのに、 こんなに早く帰っちまって良かったのか?」 「わたしが帰る理由は……さっき言ったとおりです」 というと、マジであやせの親父さんとお袋さんと、外食に行くからか? あやせは俺の言葉には応えずに、 「お兄さんは、今日は部屋のお片付けをされていたんですよね」 「ああ。あと二ヶ月もすりゃあ俺も大学生だし、気分を一新しようと思ってさ」 「やっぱり……」 あやせは物憂げに目を伏せ、 「だから桐乃は……それならわたしも……」 などとブツブツ呟いていたが、不意に、一投足で距離を詰めてくると、 「お兄さん。 こんなこと、わたしが言うまでもなく、分かっていることだと思いますけど。 ――桐乃と過ごす時間を、大切にしてあげてください」 そして俺が何か言う前に、 「さよなら!」 踵を返して、たたた、と走っていってしまった。 俺は小さくなるあやせの背中に語りかけた。 なあ、率直な感想を言ってもいいか?……ワケが分からん。 お前、ついさっきまで、俺と桐乃が過ごす時間を思いっきり危険視してたよな? いったい全体、どんな心境の変化だよ。 家に帰ると、玄関に立った時点でイヤ~な予感がした。 回れ右をして田村さん家に緊急避難した方がいい、と第六感が訴えかけてくる。 杞憂だと信じて扉を開けると、 「あ、おかえり兄貴。 先に夕ご飯作り始めてるケド、兄貴も手伝ってくんない?」 ホント、イヤな予感に限ってよく当たるよなあ。 居間に赴くと、台所は惨状の一歩手前の様相を呈していて、 桐乃の料理の腕が、まるで上達していないことを思い知らされる。 「ちょっと色々失敗しちゃってさぁ、でも、まだまだ修正きくと思うんだよねー」 『ちょっと』と『色々』が矛盾していることに気づけバカ。 あと、修正するのはお前じゃなくて俺だからな……。 三十分後。 「おいしい?」 「さも自分が作ったみたいに言うな」 「ハァ?あたしとあんたの合作でしょ?で、味は?」 「ん……、うまいよ」 桐乃の作りかけていた料理が、カレーだったから、まだ味付けの修正が効いた。 付け合わせのサラダも酷い切り方だったが、こちらも見た目を気にしなければ、普通に食える。 「兄貴ってさ、なにげに料理できるよね」 「なんだよ、いきなり」 「だって、子供の頃からそうだったじゃん。 特に練習してたワケでもないのにさぁ」 「お袋によく手伝わされてたからな。 でも、最近は自分なりに、レパートリー増やそうと頑張ってんだぜ」 「ふぅん、なんで」 料理ができる男はモテるぞ、と赤城に触発されたからだとは言えず、 「いや、まあ、なんとなくな」 「…………」 桐乃は煮込み足りない具材でも噛んだような顔になり、それからは黙ってカレーをかき込み始めた。 夕飯を食い終わると、自然と俺が食器洗い、桐乃が風呂の準備と役割分担が決まった。 食器をすすぎながら考えるのは、別れ際の、あやせの一言だ。 ――『桐乃と過ごす時間を、大切にしてあげてください』―― 別に桐乃となんざ、普通に生活してるだけでイヤというほど顔を合わせるってのに。 まるで、桐乃と俺が離ればなれになってしまうみたいじゃないか……ほら、桐乃がアメリカに行っちまったときみたいに。 「あ」 ごとん、と食器が手から滑り落ち、音を立てた。 これってもしかしなくても、もしかするんじゃないか? 実は桐乃は俺に隠れて、スポーツ留学に再挑戦しようと考えていて、 それをあやせは知っているから、遠回しに俺に忠告してきたのでは……。 んなワケねーだろ、と一笑に付したい自分と、 ここ最近、様子がおかしい桐乃を顧みて、真剣に疑い始めている自分が、俺の中に同居していた。 時間が経つにつれて肥大してくのは、やはり、後者の思考だった。 だって、冷静に考えてみろよ。おかしいだろ。 あの気位が高くて、自分の恥部を晒すことを何より厭う俺の妹が、 常日頃から『嫌い』と公言している兄貴に向けた手紙を、当の本人に読ませてるんだぜ? 賭けてもいい。これには絶対裏がある……。 「兄貴、お風呂入れといたから」 「あ、ああ。ありがとな。こっちも今終わったところだ」 手の水気をタオルで拭き取り、桐乃と向き合う。 湯船がいっぱいになるまで、20分。 普段なら銘々の部屋にいき、別々の時間を過ごすところだが――指先に髪を巻き付けながら、桐乃が言った。 「あんたの部屋行こ。……手紙、まだたくさん残ってるでしょ?」 階段を上がり、俺の部屋の前に来ると、 桐乃はこちらに向き直り、 「兄貴はしばらくここで待ってて。 良いって言うまで、入ってきちゃダメ。分かった?」 「別に構わねーけどさ……」 これ言うの二回目だが、ここ、俺の部屋だからな? なんで部屋主の俺が閉め出し食らってんの? 寒い廊下で待たされること数分、 「いいよ」 部屋に入ると、散らばった手紙の片付けでもしてくれているのかと思いきや、 惨状はそのまま、別段何か変わったというところも発見できなかった。 「何やってたんだ?」 「な、何だっていいじゃん。さ、次の手紙選んで」 と言われて、素直に従えるほど俺は単純でもなかった。 怪しい。桐乃が俺を閉め出している間に、何か細工をしたことは間違いない。 エロ本チェック……はねえか。お袋じゃあるまいし、そもそも桐乃はエロ本を見るのも嫌がるからな。 俺の部屋から何か持っていった……というのも考えがたい。 ここに桐乃が欲しがりそうな物はねえし、桐乃の性格を鑑みれば、 「これ貸して(=ちょうだい)」と正々堂々申し出てくるはずである。 となれば、残る可能性はひとつ。……桐乃は何かを仕込んだのだ。 俺は改めて、辺りを見渡した。 机の上、コンポの上、棚の中、ベッドの下と、一通り何か隠せそうなところを見てみたが、やはり、何かが増えた様子はない。 が、そのとき、頭の中に閃くものがあった。 昔の人は言いました。――木の葉を隠すなら森の中、と。 俺は立ち上がり、"森"を見下ろした。 すると、折り重なった手紙の合間に、ひとつ、真新しい色合いの便箋が混じっているのが分かった。 「なあ、この手紙って……」 「……………」 うつむき、前髪で表情を隠す桐乃。 覗いた耳が、見る間に赤く染まっていく。 俺は黙って便箋を拾った。 それはこれまで読んできたものと同じように、桐乃から俺に宛てられた手紙だった。 ただ、それを書いたのは小さなキリノではなく、現在の、目の前にいる桐乃だった。 『兄貴へ。 今まで、たくさん優しくしてくれて、ありがとう。 ワガママで、可愛くない妹で、ごめんなさい。 もう、一緒に過ごす時間が残りわずかなので、この手紙を書きました。 兄貴はあたしと喧嘩したキッカケを憶えてる? たぶん、忘れてると思うから言うね。 六年前、あたしと公園に出かけた兄貴は、あたしをひとりぼっちにして、男の友達とどこかに行ってしまいました。 あたしはそのとき、あたしが女の子だから、仲間はずれにされたと思ったの。 でも、兄貴はまなちゃんとは、それまでどおりに遊んでた。 どうして兄貴があたしを避けるのか、あたしには分からなかった。 兄貴に構ってもらえなくなったのが悲しくて、いつも公園に置いてきぼりにされることが悔しかった。 それで、あたしは、兄貴に嫌われるくらいなら、あたしの方から嫌いになってやろう、って思ったんだ。 きっと、あれが兄貴とした、初めての喧嘩だったよね。 それから、仲直りできないまま何年も過ぎて、 あたしは本気で兄貴から嫌われちゃったんだと思ってた。 だから、二年前、兄貴があたしの趣味を守ってくれたときは、本当に嬉しかったよ。 でも、あたしは素直になれなかった。 友達を作ってくれたり、アメリカに迎えに来てくれたり、 兄貴があたしのことを思ってくれてるのは、痛いほど分かるのに、あの頃のあたしに戻れなかった。 あの頃みたいな自分に戻れば、また兄貴に避けられちゃうんじゃないかって、怖かった。 結局、あたしは今でも、兄離れできていないんだと思う。 兄貴が妹離れした年になっても、それから三年経った今でも、 あたしの兄貴への気持ちは、小さいときから全然変わってないんだ。 兄貴のことを困らせたくないから、もう、あの頃のあたしには戻らないけど、 最後にひとつだけ、ワガママを聞いてください。 あたしと仲直りして。 桐乃より』 ――― ―― ― 『お前、妹つれてくんの?』 『ありえねー』 『ジャマになるからおいていこうぜー』 小学六年の夏休み。 公園に妹の手を引いて現れた俺を、友達は口を揃えて非難した。 俺は桐乃の手を離して言った。 『桐乃はここで待ってろ』 『どうしてぇ?キリノも、お兄ちゃんたちといっしょにあそぶ』 『ダメだ。後で迎えに来てやるから、良い子にしてな』 『やだ……キリノもいっしょにいくっ!キリノをひとりにしないでよぉ!』 友達は『泣いた、泣いた』と囃し立て、公園の出口に駆けだした。 俺はTシャツの裾をつまむ桐乃を振り払い、友達の後を追った。 『お兄ちゃんっ!』――桐乃の悲痛な泣き声に、必死で耳をふさぎながら。 その出来事以来、俺は妹を避けるようになった。 きっと、どうして俺がお守りをしなくちゃならないんだ、という苛立ちと、 妹に愛情を注ぐ姿を家族以外の誰かに見られることへの気恥ずかしさが、俺にそうさせていたんだろう。 『ねえ、どうしてお兄ちゃんは、キリノとあそんでくれないの?』 『キリノが女の子だからダメなの?』 『どうしてまなちゃんとはあそぶの?』 『お兄ちゃんは、せかいでいちばん、キリノのことがだいすきなんでしょ……?』 ――もういい。お兄ちゃんのことなんて、嫌い。 ある日、桐乃がポツリと漏らした一言は、深く俺の胸を抉った。 桐乃を公園にひとりぼっちにしてから、俺は散々、桐乃に嫌われるようなことをしてきた。 桐乃の心境の変化は、当たり前だ。 なのに、俺は心のどこかで、桐乃はいつまでも無条件で自分を慕ってくれると信じていた。 もしそのときに、『ごめんな、桐乃。もうお前のことを邪険に扱ったりしないから』と抱きしめていたら、 俺と桐乃の関係は、元の温かなものに戻っていたのかもしれない。 しかし俺は素直になれなかった。桐乃が言った『嫌い』の一言が、二の足に釘を刺していた。 一番言いたい言葉はいつしか、絶対に言えない言葉に変わっていった。 ――― ―― ― 自然に、唇が動いていた。 「ごめんな、桐乃」 「あたしの方こそ、ゴメン。 あの頃のあたしってさぁ、今から思い返してもちょっと引いちゃうくらい、お兄ちゃん子だったよね。 兄貴に依存しすぎてて、自分が兄貴の負担になってることにも、気づいてなかった」 「妹が兄貴に迷惑かけて、何が悪いんだよ」 悪かったのは俺の方だ。 友達に笑われるのが恥ずかしいから、 お守りをするのが面倒だから、妹をひとり置いてきぼりにした? 挙げ句、幼い桐乃に『嫌い』と言われていじけてたとくれば、当時の俺は百点満点の大バカ野郎だ。 助走をつけてぶん殴ってやりたいね。 俺はおそるおそる聞いてみた。 「お前は、あのとき俺がしたことを、もう、許してくれてるのか?」 桐乃はこくん、と頷いて、 「あのときの兄貴と同じ年になって、分かったんだ。 仲の良い友達ができて、やりたいことができて、 そんなときに妹に付きまとわれたら、鬱陶しいだろうな、って……」 「じゃあ、お前に人生相談されるまでの、冷戦期間は?」 俺が意地を張りつづけたばかりに、俺とお前の関係は、長いこと冷え切っていたんだぜ。 「アレは別に、兄貴だけのせいじゃなくない? 兄貴はあたしとの喧嘩が長引いた原因が、自分にあると思ってるのかもしれないケド……。 それを言うなら、あたしが素直になれなかったのも、喧嘩が長引いちゃった原因でしょ? あたしはさ……こうやって、兄貴と仲直りできて……それだけで良かったの」 嘘だ。こんな仲直りの儀式ひとつで、桐乃を苦しめた罪が、購えるワケがない。 小学三年生の夏から、中学二年の春まで。 俺と桐乃が初めて喧嘩した日から、俺が桐乃から人生相談を受けた日まで。 約五年間ものあいだ、俺は兄貴の仕事をほっぽり出して、妹と向き合うことを避けていた。 「どうすれば、埋め合わせができる?」 滑稽だ、という自覚はある。 とっくに自分を許している相手に、贖罪の方法を尋ねるなんてな。 桐乃はしばし黙考し、ふと口を開きかけ、喉元まで来ていた言葉を飲み込んだ。 「なんだ?」 「う、ううん……やっぱり、やめとく」 「遠慮すんな。できる限りのことはするつもりだぞ」 「ほ、ホントに何もしなくていいから。 あたしも、兄貴と喧嘩してたときは、兄貴に何もしてあげられなかったワケだし……」 「兄貴と妹じゃ、責任の重みが違うんだよ。ほら、言ってみ」 「…………」 それから、長い沈黙があり。 やがて、桐乃は窓外の木枯らしにも負けそうなほど小さな声で言った。 「今日一日だけ……あの頃みたいに甘えてもいい?」 妹萌えは二次の話だけ、三次で妹萌えとかありえねー。 ……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。 俺はしどろもどろになりながら言った。 「あ、甘えてもいいかって……俺は何をすりゃあ……」 「兄貴は何もしなくていいから」 桐乃は四つん這いで距離を詰め、ちょこんと俺の隣に座った。 「そのままじっとしてて」 と言いつつ、頭を俺の肩に乗せてくる。 ああ、そういや昔はこうしてよく、二人でテレビを見ていたっけ。 映画を観ながら眠ってしまった桐乃を、何度寝室に運んでやったことか……。 「ねえ、兄貴……あたしが今、兄貴のコトとどう思ってるかは、手紙に書いたとおりだケド……。 兄貴はあたしのこと、どう思ってるの?」 「俺も、お前と同じだよ。 お前は手紙に、俺が妹離れしたって書いてたけど、あれは間違ってる。 俺はまだまだお前のことが心配で、ほっとけなくて……その……アレだ」 「アレ?」 ここで、俺は皆さんに深いお詫びをしなければならない。 今まで散々、妹のことが大ッキレーだの、ムカツクだの言ってきたが、ありゃ嘘だ。 俺は言った。 「……大好きだぞ、桐乃」 ああ、近場に鏡がなくて助かった。 今の俺の顔面は、直視に堪えないレベルに成りはてていただろうからな。 そして、昨日までの桐乃なら 「自分からシスコン宣言するとか超キモいんですケドぉ~。 真顔で妹に『大好き』とかマジ通報レベルだしィ。死んだ方がいいよ?」 と容赦なく罵声を浴びせかけてくるところが、今日に限っては、嬉しそうにクスッと笑い、 「……あたしも」 と囁きかけてくるデレっぷりである。 それから他愛もない会話を続けること数分、 階下から、湯船がいっぱいになったことを知らせる音が聞こえてきた。 身を離し、「桐乃から先に入れよ」と言いかけたところで、何かを期待するような碧眼に射貫かれる。 脳裏を過ぎるは、桐乃に背中を流してもらった思い出の数々。 いや、さすがにそれはマズくね? いくら兄妹でも、立派に成長した女の裸見て、冷静でいられる自信はねえ。 俺は咄嗟に、階下からの音が聞こえなかったフリをして尋ねた。 「手紙に書いてあった、『一緒に過ごす時間が残りわずか』ってのは、どういう意味なんだ?」 俺は続けて訊いた。 「スポーツ留学に再挑戦するのか? それとも、エタナーの専属モデルの話を受けることにしたのか?」 「えっ……誰から聞いたの、そんな話?」 呆気にとられた様子の桐乃。 どうやら両方とも違うらしく、俺に、その二つ以外の心当たりはない。 「じゃあ、何のために家を出るんだよ?」 と言うと、桐乃は目をぱちくりさせて、 「ちょ、ちょっと待って。なんであたしが家を出るって勝手に決めつけてるワケ? てゆうか、家を出るのは兄貴でしょ? 大学入ったら、家を出て一人暮らしするって、この前お母さんと話してたじゃん」 「お前、盗み聞きしてたのか?」 「リビングに入ろうとしたら、聞こえてきたのっ」 そこでドアに聞き耳を立てるのが、世間では盗み聞きという。 俺は勘違いしているらしい妹に、事の顛末を聞かせてやった。 「結論から言うと、俺が一人暮らしする話はナシになったんだよ。 親父に、そんな贅沢をさせる金はない、ってバッサリ切り捨てられちまってさ」 「じゃあ……」 「春からも、俺は家から大学に通う」 ぽかんと口を開けたままフリーズした桐乃を余所に、俺はあやせの ――『桐乃と過ごす時間を、大切にしてあげてください』―― という言葉を思い出していた。 あやせはきっと、麻奈実から『俺が一人暮らしするかもしれない』という話を聞かされて、それを鵜呑みにしたんだろう。 一人暮らしの話が御破算になったのはつい昨日のことだ。 食い違いは避けようがなかった。 掠れた声で、桐乃は訊いてきた。 「じゃあ、朝、部屋を片付けてたのは……?」 「ただの模様替えだ」 「最近、料理を練習してたのは……?」 「友達に、料理が上手い男はモテるって言われてな」 俺は朝、桐乃が俺の部屋に入ってきた場面と、夕食の場面を思い出す。 そういえば、部屋の模様替えに奮闘している俺を見て、 料理のレパートリーを増やそうとしている、という俺の話を聞いて、桐乃は機嫌を損ねていっけな。 あのときは何が不愉快なのか、見当もつかなかったが……。 「もしかしてお前、模様替えを引っ越す準備と、料理の練習を自炊の訓練と勘違いしてたのか?」 桐乃は首筋まで肌を赤く染めて、コクリと頷く。 「でも、結果的には、勘違いしてよかったのカモ」 「なんでだ?」 「こんな風に追い込まれなきゃ、あたし、兄貴に昔の手紙を見せようなんて思わなかった。 手紙を読み返しているうちに、小さい頃のこと……喧嘩の理由を兄貴が思い出して、 自然に仲直りできたらいいなって……それが、兄貴に手紙を見せた理由」 「そうだったのか……でも結局、俺が思い出せたのは、今のお前が手紙を書いてくれたお陰だよな」 「あ、あれは、兄貴が全然肝心なコト思い出してくれなかったから、仕方なく!」 桐乃が俺の腕に抱きつき、こちらを見上げて八重歯を剥く。 その仕草がぴったりと、幼少の桐乃と重なり、 俺もつい、あの頃と同じように、ふっくらした頬を親指の腹で撫でてやる。 いつまでも、こんな時間が続けばいいと思った。 が、階下から響く二度目のコールサインが、兄妹団欒の空気を破った。 「あっ、お風呂わいたみたい」 「お、おう、そうみたいだな……」 なあ、桐乃。 さっき、今日一日限りであの頃の俺たちに戻る、とは言ったが、 さすがにこの年で、風呂に一緒に入るのは……。 「ねえ、久しぶりに、背中流してあげよっか?」 ああ、この純真無垢な問いかけに、どうして邪念を言い訳にして首を横に振れようか? 結局――その夜、俺は実に六年ぶりに妹と同じ湯を浴び、同じ布団で眠った。 その間、どんなやりとりがあったかは想像にお任せするが、 断じて妹に手を出すような真似はしなかった、と言っておく。 散々妹のことが嫌いだと断っておきながら、ついさっき妹に「大好きだ」と宣言した俺が言っても、信憑性は皆無だろうけどさ。 さて、一応この話にはオチがある。 翌朝、俺たちは派手に寝坊した。 理由は単純、桐乃は久々に俺と一緒に寝たことで熟睡し、 俺は隣に桐乃がいることで深夜まで寝付けなかったからであり、 結果として俺たちの同衾風景は、午前中に帰宅したお袋と親父に、バッチリ目撃されることになった。 そして今、俺がどんな状況に立たされているかというと……。 「京介」 親父はハンカチで目元を拭うお袋を横目に据えつつ、悲しみに暮れた調子で言った。 「俺は真剣に、お前の一人暮らしを考えることにした」 おしまい!
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/624.html
あれから一日が過ぎて、俺の前にはいつもの日常が戻ってきた。 リビングで雑誌を読んでれば、特に挨拶も無くいつもの自分の席に座る桐乃。 お互い、特に会話も無く、ただ各々自分の時間を満喫する。 そう、いつもの日常だ。 だがそれは本当にそうか。 こうやって桐乃に視線を向ければ、嫌でも思い出してしまう。 あの時、病院で見た裸体。 幽霊の件も相成って、実は幻だったんじゃないかと思える。 全て真夏の蜃気楼だったんじゃないだろうか。 しかし、桐乃の片手は未だに包帯が巻かれていて。 あれは、幻じゃなかったんだとどうにか信じる事が出来る。 因みに、俺が来るまでの間、あの病室で一体何を話してたのかと聞いたんだが、桐乃は応えてくれなかった。 あんたには話したくない、と言われてしまえば、それ以上追求することも出来ない。 俺としては何で桐乃が泣いてたのかが、凄い気になるのだが。 場合によっては、お経を唱えにあの病室に行くのも吝かではない。 人の妹を泣かしてくれやがった奴に、兄妹を語る資格などないのだから。 そんな訳で。 俺は表面的にはいつもの日常を満喫していたが、内面的にはいつもの日常とは言えなかった。 それに……こいつは、追求するって言っていた。 俺が言いかけた台詞を。 ――仕方ねえだろ、妹は妹でもな…… 俺は一体、何を言いかけたのだろう。 そして何故、言葉を止めてしまったのだろう。 俺が俺の事を分かる前に、俺の知らない俺は、それを隠した。 てっきり帰ってきたら即効で問い詰められるのかとも覚悟していたが、予想に反して桐乃はその話題に触れてこなかった。 もしかすると、忘れてしまっているのかもしれない。 あれだけ色々、異常な事が起きてしまえばな……。 異常の割には、俺も桐乃もそこまで取り乱したりはしなかったが。 なんて言うか、当たり前のように連中が居て、正直余りに実感が無かった。 俺の手の中から消えて、始めて実感したというか……。 沙織を始めて見た時のような衝動や、黒猫に掛けられた呪いよりも動揺を誘うものでもなかったし。 あやせのハイキックのような恐怖を感じさせる事も無かった。 生者の方が余程、俺に刺激を与えてくれる。 今だって、あの騒動よりも……桐乃の方が、俺の中では印象に残ってるぐらいだ。 なあ、桐乃。 なんであの時、おまえはあんなに必死だったんだ。 そう目で語りかけていると、桐乃が振り向いた。 まさか心の声でも聞かれたのかと思ったが、そうじゃなかった。 「……何、さっきから見てるワケ? ウザいんですけど」 …………。 いつもの桐乃だった。 こうイラっと来る感覚もこうなってしまえば感慨深い。 「うるせえな。別に見てねえよ、おまえの自意識過剰だっての」 ふん、と鼻を鳴らして、目を逸らしてやる。 そしてその言い分で納得するような妹では桐乃は無かった。 「嘘。あたしには分かるの。あんたがこう嫌らしい視線をあたしに向けてきてんの」 …………。 確かに裸を想像してたんだが……。 こ、怖え、女って怖ええ! 「な、何いってんだが。妹を嫌らしい視線で見る訳がねえだろ」 自分で言ってて何だが、自分にダメージが来るな、この台詞。 妹を嫌らしい視線で見る変態兄貴はこちらです。 「へー、そういう事言うんだ?」 ……何か凄い嫌な予感がする。 「あたしの手の中で――」 「悪かった、俺が悪かったからそれ以上は言うな! つか、忘れろ!」 な、なんて底意地の悪い奴だ。 くそ、俺はこうやってこれから先、ずっと言われ続けるのか。 「大体、少し触っただけで、その、出しちゃうなんて、あんた大丈夫なワケ?」 …………。 いや、あれはだな、こう我慢に我慢を重ねていた訳で、つか、童貞なんてそんなもんだって! そ、そんなもんだよな……? 「……へっ。いいんだよ、未来の彼女に鍛えて貰うから」 内心、激しく動揺している俺は、格好良く返そうとして寧ろ格好悪い発言を返してしまった。 鍛えてもらうってなんだよ。これは闘いなのか? 「…………」 そんな俺の発言に、何故か俺を睨みつけるようにする桐乃。 一気に不機嫌になりやがった。 さっきまで意地悪そうな顔でニヤニヤ笑ってやがった癖に。 何か不味い事言ったか? 鍛えてもらうって発言がこう男としてアウトだったか? ……普通に考えてアウトだな。 つか、肯定してんじゃん。大丈夫じゃない事、肯定してんじゃん俺。 「…………」 「…………」 嫌な沈黙。 なに、俺が早漏かもしれない事で俺、妹に睨まれてんの? 何そのよく分からんフラグ。 「……早い男に彼女なんて出来るワケないっしょ」 グサッ! い、今の台詞は繊細な俺の心に深く刺さったぞ。 大体、なんで妹にそんな事を言われなくちゃならねえんだ。 くそ、ムカツイてきたぞ。これはもうガツンと言ってやるしかねえな。 「や、やっぱ女の子ってそういうの気にすんすかね?」 …………。 だってなあ? 気になるじゃん。 俺の怒りよりも、自分の将来のが重要だっての。 「……気にする子は気にするんじゃん? だってこう、格好悪いし?」 グサグサッ! お、俺の心がもうズタボロなんだが、こう、もう少しオブラートに包んでくんねえかな。 まあ、妹にそんな配慮が出来る訳ねえんだが。 「お、おまえはどうなんだよ。気にすんのか?」 「は?」 妹に凄い剣幕で睨まれた。 妹に対して、早漏な兄がおまえは早漏な男をどう思うと聞く光景。 はい、キモいですね。 いや、俺も別にそんなキモい事を本気で聞いてる訳じゃないぜ? こうズタボロの精神状態で、少しでも会話を変える為の努力の結果なんだぜ? ……いや、格好悪いとか言ってる奴にそんな質問をぶつけるなんて我ながらドMとしか思えん訳だが。 当然っしょ、とか返ってくるに決まってんじゃねえかよな。 格好悪いって意見はどう考えても桐乃の意見だしな。 「あたしは……」 く、来るぞ、最大級の罵倒が。よし、一番言われたくない事を想像しろ。そしてその遥かに上をいくダメージを想定するんだ……! いや、死ぬよね、精神崩壊するよね。 「あたしは……そんな気にしないカナ」 耐えろ、耐えるんだ……!! …………え? 「それよりも……、ちゃんと大事にしてくれた方が、嬉しい、かも」 …………。 大事に? 早漏と大事がどこに関わってくるんだ? 早漏を大事にした奴が良いの? 「で、でもこう、大事にしすぎて、頑なに手を出されないのも、い、嫌っていうか」 …………。 早漏を大事にしすぎて、早漏である事を守る為に、女に手を出さない、というのも駄目って事か? ちゃんと早漏である事を大事しながらも経験値をあげる事は拒むな、みたいな? 分からねえ。 女の思考って全然分からねえ。 なに、早漏を守るって。 絶滅危惧種か何かなんですか。 「……そ、そうか。分かった」 しかし答えてくれた訳だし、完全に意味不明だが、納得はしておこう。 女心は複雑って言うしな。 そうか、早漏を大事にする男ってのが桐乃の好みなんだな。 「……あんた、なんかとてつもない勘違いしてない?」 桐乃が訝しげにこちらを見てくる。 心なしか頬が赤い。 「いや、大丈夫だ。わかってるさ。大事にするのも大切だけど、大事にしすぎて手を出さないのは嫌なんだろ」 まんま桐乃が言ったことを繰り返してみせる俺。 「そ、そう」 それに対して納得したように頷いてみせる桐乃。 「……でも、ひとつだけ聞いていいか?」 「な、なに?」 「なんで大事にするんだ?」 早漏を。まるでメリットが無いと思うんだが。 「そ、それをあたしに聞く、フツー!?」 何故か慌てたようにする桐乃。 顔がさっきよりも赤い。 なんか凄い恥ずかしい事なんだろうか。 ……そう言えば、余り遅漏過ぎても駄目だってなんかの雑誌に書いてあったな。 それこそエロゲじゃないが、早くても数をこなせればいいのかも知れない。 つかもう自身が早漏という事で話が進んでるな、俺の脳内……。 「……す、好きだからじゃん?」 そ、早漏が……!? そ、早漏が好きって言ったのか……!? え、何、克服したら駄目なの? 早いままでいろって?! おいおい、将来の桐乃の彼氏、おまえの彼女は変だよ!! 俺が色んな意味で愕然としていると、桐乃が恥ずかしそうにこちらを見据えて。 「……ち、違うの?」 ……いや、俺に聞かれても。 違うとか、あってるとか、そういう問題なのか? いや待てよ。何か、会話がズレてる気がするな。 流石に桐乃とはいえ、ここまで変態な訳がないだろう。 ここらで確認しておくか。 下手すりゃ殴られるが、仕方ない。 勘違いは早めに正しておく必要がある。 「……お、おまえはその、早漏な奴でも……い、良いのか?」 早漏な奴が、とは言えない。 「? ソーローって?」 純粋に疑問をぶつけられてしまった。 そうか、こいつ意味を知らないのか。 「さ、さっきおまえが言ってた、早い男、ってことだよ」 「え? あ、ああ、そ、そーいうコト」 桐乃は意味を察して、視線を少し宙を漂わせ。 「……早くても、それでも……、ううん、それが、良いの」 真っ直ぐと俺を見つめて、そう言ってくる桐乃。 顔が真っ赤で、瞳が潤んでいて。 表情だけを見たら、まるで愛の告白をしているような感じだが。 そ、そんな性癖をカミングアウトされても……! お、俺なんて言えばいいの!? 「……まあ、おまえが、それで良いって言うなら……俺も、それで良いよ」 出来る限り桐乃を傷つけないように、俺はそう答える。 分かった、桐乃がそういうのであれば、俺は何も言うまい。 「……ま、マジ?」 顔を真赤にして、桐乃がそう言う。 余程恥ずかしいカミングアウトだったんだろう。 まあ、俺も眼鏡っ娘が好きです、なんて告白する羽目になったら恥ずかしいもん。 気持ちは分かるぜ。 「ああ、マジだ」 心の底からそうやって同意してやる。 そうすると桐乃がふぅ、と息を吐いて。 「そか。良かった……」 心底安堵したように、桐乃が微笑む。 それはそれで魅力的な微笑みだった。 「そ、それじゃこれから、その、どうしよっか?」 「……どうするとは?」 「だ、だから、ほら、想いを伝え合ったワケだし? その、あれ、恋人になった、というか」 …………。 恋人? 誰が? 俺と桐乃が? あれ、俺が早漏だから? 早漏が好きな桐乃としては、こう俺と付き合う事になってんの? え、早漏が目当て? 「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ったああああ!!」 慌てて俺は、制止に掛かる。 「え、な、何よ」 俺の剣幕に、桐乃は少したじろぐ。 「いいか、俺は確かに早漏かも知れない。だがな、俺にだってプライドってのがあんだよ! 早漏? そんな身体だけを目当てな奴と付き合えるかってんだ! ちゃんと俺は俺自身を愛してくれる奴と付き合うに決まってんだろ!」 「…………」 「おまえが、俺の事を好きだってなら分かるよ? でもそうじゃないんだろ? 幾ら俺を許してくれてもよ、肝心なのは気持ちだろ! 早漏だからとかそんなんじゃなくてよ! どうなんだよ、ええ? おまえは俺を好きだって言えんのか!?」 俺の必死の訴えに、桐乃は衝撃が走ったように言葉を失う。 まあ、そうだろう。俺は間違えた事は言ってない筈だ。 一気に捲し立てたせいで少し息が切れたが、俺の想いは通じた筈だ。 「……言える、よ」 そして、そう桐乃は答えた。 「え?」 「あたしは……、兄貴が好き。嫌いで、ずっと嫌いだったけど、でも好きだから。 ううん、嫌いってのもきっと、好きの裏返しだった。 兄貴の事が、……京介の事が、ずっと気になってて。頭から離れなくて。 でも好きなわけがないからって、嫌いに変換してて……。 けど、それが矛盾だって、あたしは気づいたの」 「ちょ、ちょっと待て」 「ごめん。もう待たない。というか、待てない。だって、好きなんだもん。 あんたが、好きだから。好きで好きで、好きだから。 ごめん、もう待てない。 あたしは……あんたが好き」 それは、疑いようのない愛の告白だった。 しかし、まるで現状が追いつかない。 なんだ、何を言ってんだ? 桐乃が、俺を好きだって? ……頭の中で何かが切り替わる。 麻奈実が前に言っていた。桐乃ちゃんは、お兄ちゃんが好きだと思うよーとか。 ありえない話だと、俺は思っていた。 桐乃がお兄ちゃんを、俺を、好きな筈がないって。 しかし、それは本当にそうか? 今の告白が、それを否定してないか? 今まではその思い込みが、お互いの意思疎通を阻害してたんじゃないか? 今回も……意図的に俺はそういう方向性に解釈しなかったと言えないか? ……だとしたら、今回の俺は最悪だ。 決して、こういう心境で、この告白を聞いてしまってはいけなかった。 やり直せるのであれば、今直ぐやり直したい。 だが、現実は既に起きてしまった。 こんなムードもへったくれもない思考の侭、妹の告白を聞いてしまった。 もう、やり直せない。 俺の人生、最大の禍根となるだろう。 「俺は……」 「…………」 考えろ、高坂京介。 これはピンチなんかじゃない、危機という訳でも無い。 ただ、ここで選択肢を間違えたら俺は一生、自分を許せない。 何を言う? 何を言える? 俺は、妹を、桐乃をどう思っているんだ? 今こそ、あの時の心境を思い出せ。 ――仕方ねえだろ、妹は妹でもな……、……ッ! 桐乃が言っていた、恐らく大事な会話の分岐点。 ――それよりも……、ちゃんと大事にしてくれた方が、嬉しい、かな。 そう、ここが分岐だった。ここで、主題が変わってる。 早漏という話が終わって、桐乃の彼氏に求める条件に切り替わっている。 そして、ここだ。 ――で、でもこう、大事にしすぎて、頑なに手を出されないのも、い、嫌っていうか。 これは、俺の話だ。 あの夏の病院で、俺が陥った心の葛藤だ。 俺は、妹が大事だ。妹を傷つける奴なんて、絶対に許さねえ。 それが、兄として当たり前で、そして兄としての主張だった。 だから、兄が、妹に手をだすなんて未来があっちゃいけねえと、俺はそう思っていた。 そう、それが例え……男としての気持ちを殺す結果になっても。 でも、それが……妹にとって最良の選択肢じゃなかったら? 妹が、兄に対して求めている対応でなかったとしたら? 妹の為に、何が出来る? いや、違う。 桐乃という、一人の女性に対して、俺はどう答えるべきだ? 俺は、俺は……どうしたい? 「俺は……さ、桐乃」 「……うん」 ぐっ、拳を握り締める。 「……おまえが……大事なんだよ」 「……うん」 それが、俺の答えだ。 「おまえが、大事で、大事だから……幸せに、なってほしいんだよ」 「…………うん」 それが……、俺の答えなんだ。 「だから……、俺は……」 「…………うん」 例え……、それが妹を悲しませる結果になったとしても。 「俺は……おまえの気持ちに……答えられない」 「………………うん」 それが、俺の……。 その手を取れば、きっと、幸せは得られるだろう。 夢の様な日が始まるかも知れない。 だけど、それは永久的に続くものではない。 俺は……、桐乃の結婚式が見たかった。 幸せな家庭を築くその姿を見届けてやりたかった。 ずっと、ずっとそう夢見ていた。 ……そして、今もそう夢見ている。 兄妹は……結婚が出来ない。 決して祝福される関係ではない。 その先にあるのは非難に彩られた道だ。 そんな先を、俺が望める筈がない。 愛おしく、心の底から想える人であったとしても。 俺には、そんな未来は望めない。 「……仕方が、ねえだろ、妹は妹でもな……」 「…………」 涙が、止まらない。 生まれ変われればと、思うか? 死して尚、兄妹を続けたあの二人を見ても? 「……俺にとっては、幸せを願う……とても大切な、女の子なんだからさ」 男としての想いで見た時。 何かが変わるのか? ……そんな事は無かった。 だって、好きな人に幸せになって欲しいと願うのは、変わらないことだからだ。 だから、自分の好きな女の子が、兄を好きだと言い出したら、俺は止めなくてはいけない。 その先に、幸せな未来はないから。 ははっ、くそ……。他人だったら、兄を慕うこの女の子を、俺の人生を掛けて、俺が口説き倒すのに。 兄に靡かないように、必死になって。 それが現実は……俺が最大の……敵だった。 「…………うん、分かった」 桐乃は顔を伏せたまま、そう答える。 少し、声が震えていたが、どうやら泣いてはいないようだ。 兄はこうやって馬鹿みたいに泣いちまってるってのにな。 そして、桐乃は立ち上がる。 俺に背を向けて。 その姿に、喪失感を感じたのは決して気のせいなんかじゃない。 手を伸ばしたくなったのも、決して嘘じゃない。 だが、それでも俺は、ただ見送る。 「ねえ、あんたは……」 「…………?」 「あたしに告白されて……嬉しかった?」 ……考えるまでもない、質問だった。 「当たり前だろ……。すげえ、……嬉しかったよ」 「……そっか」 桐乃は、そう答える。とても優しい声色で。 そして、歩き出す。俺から距離を離す道を。 その背を見て、俺は目を瞑る。 これで、良かったんだ。 俺は、俺自身を褒め称える。 誰もが褒めてくれる訳じゃないだろうけど。 けど、俺は、俺の選択肢に後悔は無いと、虚勢であっても言ってやるつもりだ。 「……京介?」 リビングの扉に手を掛けて、桐乃は俺に声を掛けてきた。 てっきりそのまま黙って出ていくものだと思ってた俺は、不意を付かれたように顔を上げる。 桐乃は、こっちを真っ直ぐと見ていた。普段は決して見せない、慈愛に満ちた様な表情。 女神のようだと思えてしまうぐらいに、大人びた表情。 「あたしはね、あんたが好きだから」 それは、最後の告白だろうか。 続く言葉は、さよなら、とかそういう言葉なんだろうか。 確かにエロゲーとかではそういう展開はよくある事だ。 俺は、目を閉じる。 「……だから、あんたじゃないと、幸せになれないから」 俺は、目を開く。 「き、桐乃、おまえ……」 「ごめん、まだあたしは子どもだから。まださ、ちゃんと言えないんだけどさ」 桐乃は、真剣な表情で俺を射すくめるように言う。 「待ってて、欲しいから」 …………。 「別に、誰かと付き合ってもいいから。エッチしたりしてもいいから。 でも、子どもは作らないで。結婚したりしないで。 待ってて……欲しい」 こいつは……。 こいつは……なんなんだろうな。 「……約束は、出来ない」 俺は、顔を背けてそう返す。 そうとしか返せない。 「うん。それで、いい」 けどすっきりした顔で、桐乃はそう言った。 そして、桐乃はリビングから出ていく。 あれから。あれから。 どれだけの月日が流れたというのだろう。 あの時から、俺と桐乃は再び敬遠となった。 といっても冷戦状態という訳じゃない。 なんて言うか、少し冷めた兄妹になったというか。 一緒にエロゲしたりとか、そういう事がなくなった。 無論、沙織たちと一緒に遊んだりとかした。 けど、必要以上には仲良くしなかったし、喧嘩も起きなかった。 なんだろうな、こういうと今までは違ったのかと言われそうだけど。 普通の、兄妹だった。 あれから、麻奈実と付き合ったり、あやせといい感じになったりして。 そんな俺を桐乃はごく普通に見守って、時にアドバイスさえくれて。 数年の月日が流れた。 俺は今、うだつのあがらないサラリーマンをやっている。 社会の荒波に揉まれながらも、どうにか部下も出来て、何とかやってる感じだ。 社会人になると同時に、俺は家を出て一人暮らしを始めた。 そしてそのタイミングで、桐乃もまた、モデルの仕事かで海外へと行った。 その時から、桐乃とは殆ど連絡が取れてない。 因みに黒猫とか、沙織とは今でもちょくちょくあって、一緒につるんだりしている。 他にも大学の友だちとかが出来て、昔よりは遊んでないけど。 こう真夏の熱い中、外でファーストフードを口に運びながら、考える。 俺の人生を思い返してみると、色々あった。 激動のような日々があったり、ぬるま湯のような時間があったり。 どれも確かに大切で、輝かしい未来だった。 今にしたって言える。俺は、自分の人生に何の文句もないと。 はむ、とファーストフードを咥えていると辺りが騒がしくなってる事に気付いた。 「なんだってんだ……、こう暑いのによ」 こう俺みたいに静かに飯ぐらい食えねえのかと思う。 ただでさえスーツ姿ってのは暑いのだ。なんで真夏に長ズボンを履かないとならねえのか。 まあ、野郎とナマ脚なんか晒されてもキモいだけだけどさ。 「……相変わらず、冴えない顔してんのね、あんた」 どこからかそんな声を掛けられる。 「はん、うっせえよ。冴えねえ顔してても、それなりに満足した人生は送れんだよ」 もぐもぐとしながら、俺はそう答えてやる。 「そう。それなりに満足してるワケ? あたしが居なかったってのに?」 それだけで声の主は少し機嫌が悪くなったようだ。 相変わらず、短気な奴。 「そりゃな、おまえが居なくても俺の人生は幸せになれるルートが残されてんだよ」 ごくんと飲み込み、コーラで喉を潤わす。 「ふーん、そう」 そう言いながら、声の主は俺の前の席に座った。 そして勝手に俺の唐揚げフライを掴んで口に運んだ。 「あ、てめえ! 俺が大事に残していたフライを! おま、月に一度の楽しみなんだぞ!?」 「え? ……マジで? こ、これで?」 イラッ。この感覚はまだ健在だ。くそ、悪かったな、安月給だとそんな豪勢な暮らしは出来ねえんだよ。 「へん、どこかのモデル様には分かんねえだろうよ」 「確かに分かんないわ。……てか、モデルやめたし」 「……はあっ!?」 馬鹿な! そんな情報、何処にも書いてなかったぞあの雑誌!? なに、なんかやらかした訳?! 「……ていうか。あのさ、なんていうか想定してた展開と違うんですケド」 ジト目で俺を見やる声の主。そう、言うまでもない。俺の妹、桐乃だった。 「しかも今、あっさりとあたしの正体をばらしたっしょ!」 「人のモノローグに突っ込むんじゃねえ!」 おまえが海外で学んだのは読心術か何かかよっ! 「むぐぐ……。ここは、こう、ホラ、ヒロインが数年ぶりにあんたの前に現れて、こう、感動的なシーンになるところでしょ?」 「おまえは何年前のセオリーを踏んでんだよ。つかエロゲーやり過ぎて若者の発想じゃねえ事に気付け」 エロゲー作ってんのおっさんだしな。 「大体、ヒロインってなんだよ。誰がヒロインだって?」 「あたしがあんたのヒロイン」 …………。 頭を抱えて、息を吐く。本当に数年ぶりだ、この感覚。 暫く大人しくしてた桐乃が嘘のようだ。 そんな俺の行動なんて我関せず、桐乃は何かを思いついた様にテーブルをダンと叩く。 「ちょ、待って。ていうか、セオリー通りじゃないって事は、も、もしかしてあんた、結婚してたり?」 「……いや、してねえけど」 「じゃあ、子どもは!?」 「……いねえよ」 …………。 言えねえよな、薄々こういう展開になるんじゃねえかと思ってさ。 ずっと、その……そういう事すらしてきてねえって。 「因みにあたしは結婚したよ」 「……はぁ!? いや、そりゃねえだろ! おまえがセオリー壊してんじゃねえかよ!」 思わずテーブルを叩いて、桐乃へと詰め寄ってしまう。 その様子にぷっ、と笑って、桐乃は意地悪そうな笑みを浮かべて言う。 「あははっ! 嘘に決まってんじゃん。そりゃ二次元では何度も結婚してるけどさ」 真っ直ぐに俺を見つめて、桐乃は言う。 「あたしは、あんたと結婚するって決めてんだから」 …………。 「どこの国で、兄妹との結婚を認めてんだよ」 「日本」 「認めてねえよっ!? おまえは六法全書を良く読めっ!」 あはは、と軽く笑って桐乃は頬を掻いて。 「いやあ……、流石のあたしでも法律を変える事は出来なかったわ」 ……数年前に、近親婚を許可すべきだとかいう意見が国会で出てきたのはおまえのせいじゃねえよな。 主にオタク方面からあがってきた意見だったらしいが。 「まあ、それはいいとして」 桐乃は俺の訝しげな視線に少し冷や汗を垂らしながら話題を変える。 「結婚しよ、京介」 「……全然、話題変わってねえな」 「あたしと同じ名字になってよ」 「もう既になってるわっ!」 つか初めからそうだっての! 俺の突っ込みを笑って受け流す桐乃。 こいつ、こんな笑う奴だったっけ? なんか、嬉しくて嬉しくて仕方がないという感じだ。 コホン、と咳払いをして桐乃は姿勢を正す。 「愛しています。結婚して下さい」 ……本当に、やれやれだ。 何も法律は変わってねえ。兄妹での結婚は国は認めてない。 だってのに、こいつはそれを物ともしねえってんだな。 幸せな先がねえって分かってんだろうに。 親にはもう反対されるだろうし、友人らには引かれるだろうよ。 「へへ、実は既に結婚式場に目星をつけてんだ」 「はやっ!? っていや、だから」 「あと黒猫とか沙織も既に知ってるよ。あやせも説得に時間が掛かったけどどうにか納得してくれたし」 「ええええええ!?」 あのあやせが?! いや、そうじゃない、そうじゃない筈だ、クールになれ高坂京介。 「結婚が出来ないって、法律上の話でしょ? 別に結婚式を挙げられないワケじゃなくない?」 いや、そこじゃなくてさ、なんで既に知ってるって……。 え、何を、何を知ってんの? なんか最近、黒猫たちが俺を見て含み笑いをすんのはそういうオチ? 「あああああもうっ! いちいちうっさいな! いいからあんたはあたしと結婚すんの! あたしと幸せになって、あたしと家庭を持つの! それがあたしの幸せなの! あんたが勝手にあたしの幸せを決めんなっ!」 桐乃はだんと立ち上がり、俺を睨みつけながらそう宣言する。 「いい? あんたに拒否権はないからね。だってあんた、この歳になるまで結婚しなかった訳だし? 既に逃げるの失敗してるワケ。あたしが猶予を与えてあげたってのに、あんたが選ばなかったワケ。 もう既にあんたは強制ハッピーエンドのルートに入ってるワケ。なんか文句ある?」 そ、それはおまえが待ってて、と言ったからであって……。 ああ、でも約束は……してなかったか。 俺は約束じゃなく……こうして待ってた訳だ。 他ならぬ俺の意思で。 ふう、と息を吐く。 気付けば周囲には観衆ができており、桐乃の宣言に拍手すら起きている。 やれやれ。既に群衆は既にこいつの味方か。 どうやら、俺の平穏なそれなりに幸せな日々ってのはここまでのようだ。 これ以上の悪足掻きはみっともないか。 まあ、もっとも? 本当の馬鹿は、俺なんだけどな。 コホン、と咳払いをして、俺は立ち上がる。 桐乃は最後に見た時と身長は変わってない。 だから見下ろすような形となる。 「……その結婚式場、幾らだ? 言っておくが、貯金はそんな残ってねえぞ」 そりゃ桐乃はいっぱい金持っているだろうよ。だが結婚式代ぐらい俺が出したい。 だからこうやって食費を切り詰めて暮らしてんだから。 俺の言葉の意味を把握できてないのか、桐乃が少しぽかんとしている。 その表情にくくと、笑みが漏れてしまう。 俺はずっとその表情が見たかったんだよ、桐乃。 ごそごそとポケットを漁り、取り出したのは一つの指輪。 誓いを具現化した現代の結晶。 同時、周囲の観衆が沸き立つ。 その真中で、まだ現状を上手く把握しきれてない桐乃へと、俺はそれを差し出す。 「愛してるぜ、桐乃。次はもう待たせないからよ」 くたびれたスーツの男が、女神の様な美女へと愛の告白をするその姿が、その後雑誌で取り上げられ。 挙句の果てにドラマ化されて、世論を巻き起こし。 その数年後、日本で初めての近親婚を果たしたりする訳だが。 まあ、その話は置いておこう。 そんなのは実際、どうだって良いことだった。 だってそうだろう? 俺の、俺の妹が……。 俺の妹がこんなに可愛いのなら、他は何も要らないのだから。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/226.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1286349444/50-55 黒猫を脱がそうと服を掴んでいる桐乃はそれに抗う黒猫の両手で顔が色々残念なことになっている。 「ふへ、ふへへへ。大丈夫だってば、優しくするから」 顔が残念な桐乃は言動も残念だ。間違ってもティーンズ雑誌のモデルやってたなんてことは誰も信じちゃくれないだろう。 なんて考えている場合じゃねえな、残念な妹ではあるが、それでも俺の妹であることに変わりはない。 そして俺は兄貴だ。こいつの世話を焼いてやらないことには仕方ねえだろ? 世界の外から「ダメだこの兄妹」と盛大に突っ込まれているような気がするが、きっと空耳だな。 「というわけで、黒猫。俺もおまえのおっぱいが見たい」 「何が『というわけで』よ、このインキュバスッ」 「よく分からんが、お世辞ではない褒め言葉として受け止めておくぜ。ありがとな、黒猫」 「お世辞でも無いし褒め言葉でも無い! 本気で殴るわよ!?」 黒猫は語気を強めて今日三回目の――数えててもしょうがないか、これから桐乃がどうするか知らねえけど、「!」を使いまくる羽目になると思うしね。 黒猫の腕を桐乃の顔からひっぺがして「まぁまぁ」と宥めすかす。 「宥めながら、どうして私の腕を放さないのよ。へ、変態」 「はーい、脱ぎ脱ぎしようネ?」 黒猫の手が離れると、桐乃は気色の悪い、もとい学校の友達連中に言うような口調でスルッと黒猫のカットソーを脱ぎ捨て、ブラジャーも手際よく外した。 さすがに女だけあって見事な手際。もちろん俺のサポートあってこそだよね! 「み、見ないで、見ないで頂戴!」 上半身が顕になって、白磁のように透明で綺麗なからだが視界に飛び込んできた。 桐乃もモデルをしていてスレンダーな体系だが、黒猫もそれに近い。均整の取れた一個の創作物のような造形。 「き、綺麗な肌だな黒猫?」 「くぅぅ~! あんたヒッキーだからって色白過ぎなんですケド! は、 鼻血出てきそう、はふっ」 最後の『はふっ』は鼻息ね。 そのまま桐乃は黒猫に抱きついて、「うへへぇ」とキモい笑いをしながら自分の顔を黒猫の顔に擦りつけ始めた。 普段のこいつらからすれば到底見ることが叶わない光景。 まるで仲が良い姉妹みてえだ、沙織に写メでも送ってみたらびっくりするかな? 「うーん、すりすり。スベスベしてんねアンタの肌。気持ち良いぃぃ! シャンプーとボディタオル何使ってんの?」 「ひゃぁ。ん……はぁ。ちょっと、どこ触っているのよ? う、迂闊だったわ、あなたやっぱりそっちの趣味があったのね」 「っそ、そんなこと無いわよ。つーか、あんたこそ女の子同士のエッチな絵ばっか描いてるじゃん」 「そ、それは男の人との絡みは余り想像出来ないから……」 前に俺がエロゲー作ろうと提案したとき、今桐乃に言ったようなことを口にしていた覚えがあるな。 そうか、黒猫。桐乃の持っているエロゲーとかを貸し借りしてたみたいだが、まだその辺は苦労しているんだ。 ……ふっ、いっちょここは先輩として一肌脱いでやるとするか。 というか、二人の姿態がもう俺の股間を直撃して限界だっつの! 「黒猫、俺に任せろ!」 言うや俺は桐乃と同じく黒猫へと抱きついた。 「……ッな、え、せんぱ……ひぅん、あっ……やめ……胸を……」 形の良い膨らみの先を口に含んでちゅぅと吸いつく。 桐乃よりは小ぶりだが、逆に黒猫の可愛らしさを表しているようで興奮が高まる。 「ちょ! この変態なんってことすんのよ!?」 「んぐっ。いやだって、黒猫のおっぱいを目にして普通にしてろってのは不可能だぞ。それに、おまえだって抱きついてるじゃねえか」 「あたしは友達なんだから良いの!」 「俺だって黒猫の友達だっつの。おまえだけ良いってのは卑怯だ」 「ど、どっちも駄目に決まっているでしょ! ひぁ、はん……早く離れなさい……んぁ、この変態兄妹。ふぁっ。す、吸わないでっ」 そうは言われても収まりそうもないっす俺。 舌の先で感じる、徐々に固くなってきている小さな乳首も、離れがたい思いに拍車をかけている。 「それに……黒猫のおっぱい。甘い?」 なんか、ミルクのような味が舌に染みてくる。おっぱいに味があるわけ無いが、俺はそう感じ取った。 「あ、甘いの?」 俺の言葉に反応した桐乃が聞き返してきた。 「甘い」と俺。(←おっぱいは放さない) 「ふ~ん…………ゴクリ。――あ、あたしも!」 ツバを飲み込むと桐乃はもう一つの黒猫のおっぱいへ口づけると、母乳を吸う赤ちゃんのようにチュウチュウ音を立てだした。 「んちゅ……んむ……ん、ん。ほんとだ、なんかちょっと甘いかも」 「あっあっあぁぁ――ッ! 駄目、吸わな…いで頂戴。こんなの……ひぅ、はぁ、ふんん」 「すまん、黒猫。おまえのおっぱい気持ち良いし美味しいし、もうちょっとダケ」 「んんぁ、ひぁ、んっ、あっ、いっ……はぁ……く……後で覚えて……なさ…い」 「ちゅる、ぴちゅ。はぁはぁ、おっぱい甘~い。可愛いし甘いし、あんたのからだ最高ね」 桐乃はとろんとした瞳で黒猫の柔らかく甘いおっぱいにむしゃぶりついている。 俺が言い過ぎて伝染したのか、『おっぱい』って言いだしちゃってるよ、ダメだこの妹…… 「アンタのせいで言葉伝染っちゃったじゃん、スケベ。んく……ちゅっ、ちゅりぉ……」 仕方ないだろ、おっぱいが目の前にあれば男はみんなそう言うもんさ。 と、俺も桐乃なんかに負けてられん。 「黒猫、超可愛いぞ。これが萌えってやつなのか? はむっ」 「く、はぁ……ふはっ、あっああ、噛まないで。ひっくぅ、いっ……ああ」 黒猫の口から緩やかに漏れ出ている喘ぎ声が、俺の耳朶に届くたびに熱くなりそうだ。 というか熱い。もう下も脱いじまえ! パンツも一緒に掴んで俺はズボンをズリ下ろした。ずっと押し込められていた俺のリヴァイアサンが空気を吸ってヒクヒクと勝手に動く。 桐乃も、もう全部脱ぎ捨ててしまっているようで、黒猫の足に自分の足を絡み付けて股間からクチュクチュとした音が出ていた。 ちゅーか、黒猫も下半身を露出させられてんじゃねえか!? いつの間に脱がしたんだよ? 早業過ぎて分からなかったぞ、おい!? 「ん、ペロペロ。おっぱいの先っちょ、固くなってきたんジャン?」 美味しそうに黒猫のおっぱいを舐めていた桐乃が、黒猫の反応を口にした。 言う通り、黒猫の乳房の先端は俺と桐乃の舌や指の愛撫によって果肉がたっぷりとつまった熟れた果物のよう。 「黒猫。乳首が勃ってるみてえだけど、気持ち良いか?」 「莫迦、変態ッ。こんなのが気持ち……ふゃっひ、ひっ、あん。気持ち良いわけ……ないでしょう?」 「そっか。ふぅむ、じゃあもっと気持ち良くしてやるからな」 ビクンとからだが跳ねるのを桐乃に倣って足を絡みつかせて抑えながら、俺は黒猫の乳首を指で摘みながら先っちょを舌先でチロチロ嘗め回す。 感じているんだろうけど、素直じゃない黒猫にはもっとサービスしてやらんとな! 「やっやめて、くひゅ……ぅああ……ひあっ、あふ」 俺の髪をくしゃりと掴んで引き離そうとしてるみてえだが、力が入らない様子だ。 白い肌にも虹色がさしてきて、汗の匂いが鼻をくすぐる。やっぱ感じてんだな、黒猫のやつ。チョー可愛いじゃねえかよ。 嬉しくなって更に舌を動かしながら黒猫の反応を満喫していると、 「ぺろ、ちゅるる。ん……そっちのも寄越しなさいよ」 桐乃が俺の方へ顔を近づけてきて、おっぱいをぺろぺろと舐め始めた。さっきまで自分が吸っていた方は手で揉みしだいて遊んでいる。 「……ん。ちゅろ、れろ……あむ。ん、ふぅ……ちゅむ。こっちも可愛い乳首♪」 「お、おい……」 うぉ。桐乃のやつ、なんてエロい舐め方をしてんだよ。 桐乃の唇が至近距離で黒猫の乳首に触れている淫靡な絵は俺の心を鷲づかみにした。 エロ過ぎるっつの。そんな近くまで口を寄せられたんじゃ、おかしくなんだろうが。 「桐乃」と呼びかけて顎を浮かせると俺は、「ちゅれろ、ん? ん、んむぅ!?」桐乃の唇に自分の唇を合わせた。 「んぁ……ば、ばか兄貴、なんてことすんのよ!」 唇が離れると桐乃は俺がキスしたことに怒っているが。でもオマエ、言葉と表情が一致していないぞ。 俺は桐乃の表情に後押しされるようにもう一度唇に近づく。 最初のキスは唇を軽く触れ合わせるだけだったが、今度は黒猫の乳首を間に挟んで互いの舌を絡ませながらのキス。 「黒猫のおっぱいとオマエの舌、すげえエロくて気持ちイイ」 「んれぇあ、ちゅ……あむ。キ、キモいっつの……スケベ」 「ひゃっひィ、この……莫迦兄妹。そ、そんな二人で私のぉ……。あんっ、ちょっとソコは――ッ?」 黒猫の喘ぎ声が大きくなった。 「あむ……んっんむぅ、んぇろ、んっ……。あんたのココ、濡れてるじゃん」 桐乃のやつはさっきまで触っていたおっぱいから、黒猫の下半身へと手を移動させていた。なんてうらやまけしからんことをしてんだおまえは!? 「ひっぅ。こ、こんなことをされれば当然でしょう? あなただって……んっあふぅっ……さ、さっきから私に淫猥な粘液を擦り付けてぇ……」 「淫猥ってヒド!? じゃあアンタのもエッチだよねぇ!」 そう言うと桐乃はコアラのように抱きつくと、黒猫の腰骨辺りへ股を密着させて腰を揺らすと同時に、手を黒猫の股へ沈めて携帯を高速で打鍵するように指を小刻みに動かす。 「や、やめっ。ほんっ……んぁ、とにもう私、これ以上は! はっクゥ、ぁあっ……あっ、ぃっく」 「イキそうなんだな黒猫? 遠慮しないでいいぞ」 透き通った丘のような黒猫のお腹を俺は手で優しく撫ぜ、黒猫が絶頂に達するのを手伝う。勿論おっぱいの愛撫も忘れない。 「だ、誰が。ふざけ、きゃひィ……はっはぉっ、くぅぅん……あっあっあン。だ、駄目っ。私……わた、しィ……ぃぃッ…!」 黒猫のからだがビクンと大きくのけぞった。 「あ……あぁ……はぁはぁ。ん、ぁあ……はぁ。この私がぁ……人間如きに……」 魔王の断末魔みたいなことを言う黒猫だが、おっぱいから顔をあげて見ると、くやしそうに眉を逆八字にはしているけども上気した火照りと口から漏れている吐息に俺はつい笑みを浮かべてしまう。 黒猫が照れている姿は無性に可愛いが、今日はそれ以上だ。 そう思ったのは俺だけじゃないらしく。 「くっはァァッ! あ、あんたの顔萌えぇぇぇえぇ! チュウしたいよぉぉおぉお!」 黒猫の唇をロックオンした桐乃は、タコみたいな口で突進。 「嫌っ」 間一髪、黒猫が顔をそむけてしまったので、かわされた桐乃はそのまま「んぶぶっ」とベッドへ口付けをした。 しかし、甘いぞ黒猫よ。おまえの顔を向けた先には何がある? そう、俺の顔があるのさ! 「黒猫ぉおぉぉおぉおお――ッ!」 待ち構えていた伏兵が猛然と敵に踊りかかるように俺は顔を黒猫の唇に向かって急接近 だが、「グヘッ!?」あと少しというところで腕を使いガードされ、そのまま方向転換させられてしまい俺もベッドへと不時着した。 「わ、私にキスしようなんて。こ、この人間風情が、――というよりも、いい加減目を覚ましたらどうなの、あなたたち?」 「一回イッて気持ち良かったからって賢者タイム入らなくてもいいじゃ~ん。ん~~~っ」 「誰が賢者タイムよ? こ、こら。マル顔を寄せないで頂戴」 桐乃が失敗にもめげずに黒猫の唇を奪おうと再び顔を近づけている。 いかん! 黒猫の唇は俺が貰う! 「黒猫、こっちだ、さぁ! ん~~~ッ」 「……い、いい加減に……なさいッ!」 ガン、ゴン! ゴス、ドコッ! 「イッターーい!」 「うう、何すんだよ黒猫」 千葉の堕天聖様から頭突きと鉄拳の鉄槌が下され、俺と桐乃の頭の上に二つのたんこぶが仲良く出来上がった。 「はぁはぁ……。何じゃないでしょう。あ、あなたたち自分の行動を理解出来てるの?」 「え? キスしようとしたケド?」 「当然みたいに口にしないで……。 全く、どうして私が先輩のようなこと言わなきゃいけないのかしら。頭が痛くなってくるわ……」 「大丈夫か黒猫? 悪いな、うちの妹が迷惑かけて」 「…………あなたもでしょう」 「……すいません」 ピクピクこめかみに血管が浮かび上がっていたので即陳謝。うーむ、黒猫さん、怒ってらっしゃる。 「でもさ、黒猫。俺は萌えってやつが分かってきたぜ。今のおまえは非情に萌えってやつだ! これなら次の作品は良いのが出来るんじゃねえか?」 「どうしてそこで萌えなのよ? どちらかと言えばエロスじゃないの?」 「んなこと無いって、あんたチョー萌え萌えしてるし。イくときとか可愛かったよ」 「ああ、表情変えねえオマエもらしいけどさ、そうじゃねえオマエを見るの楽しくって」 「か、かっ、からかわないで……」 俺と桐乃が口々に褒め称える(?)と黒猫はからだを縮こまらせて俯いてしまった。 ちなみにまだネコミミカチューシャは黒猫の頭の上で動いている。なので桐乃は興奮覚めやらぬようで、 「クゥゥゥ―――ッ、アンタあたしのハート、ピンポイントで狙ってんじゃないの? たまんないィィ! ね、良いでしょ、ちょっとチューだけ。ねえねえ?」 「あ、桐乃ズリぃぞ! 俺の方が黒猫を可愛いと思うもんね、なわけで俺としよう」 負けじと俺は黒猫に言い寄る。黒猫のキスがかかっているんだ、ここは男として断然引けん! 「ハァ? あたしの方がコイツのこと最初に可愛いって言ったんだからアタシがするに決まってんじゃん、バーカ」 「そんな子供みてえな言い訳通用するか!」 俺と桐乃がギャースカ噛み合っている横で、黒猫は呆れたように息を吐きつつ「ほんと、よく似た兄妹よ。どうして私……」と一人でなにやらごちている。 「じゃあ、どっちよ?」俺の頭を小突きつつ桐乃は黒猫へ聞いた。 「ど、どっちって?」 「だからぁ~~、あたしとこのバカ、どっちとキスしたいの? あんたが決めてよ」 「ど、どうして私が決めないと……どっちも――」 「イヤって言ったら即襲うから」 「こ、この変態女……」 「黒猫、俺だよな~?」 「あたしに決まってるっしょ! ほらどっちよ?」 「はぁ……。こうなったら腹を括るわ。淫魔の調伏くらい堕天聖の私には容易いことだしね」 黒猫は一端言葉を区切って、俺と桐乃どちらとキスをするか答えた。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/385.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1294505746/366-375 現在、時刻は夜中の二時過ぎ。 俺は自分の部屋で、桐乃と並んでパソコンに向かっていた。 なんで深夜にこんな事をやっているのかというと……。 『願いを叶えてくれる心霊サイトが見たいから、ちょっと手伝って』 との事だ。 いやもうどこから突っ込めば良いんだ。 「心霊サイトと願い事に何の関係があんだよ」 出てくるのは幽霊とかそういうのじゃないのか。どこをどうやったら願い事と繋がるんだ。 「そんなの知んない。ネットで見つけたんだけど、そーいう都市伝説があんのよ」 そのガセネタを流した奴のおかげで、俺は今寝不足覚悟で妹に付き合わされてるわけね。 「噂によると、丑三つ時にアクセスする必要があるんだって。もう何人か願いを叶えてもらった子がいるって言うし」 何が嬉しいのか桐乃は上機嫌で解説している。 こういうの好きな女って居るよなあ……俺は全く興味ないんだが。 まぁコイツも本気で信じてるわけでもないんだろう。こんなのはただの遊びだ。 それは良い。それは良いんだが―― 「なんで666回もクリックしなきゃいけないんだよ」 カチカチカチカチカチカチ そう。さっきから妹の言いつけでひたすらマウスと格闘中なのだ。 もう指がガタガタだ……。 「それが条件だからに決まってんじゃん。最初に言ったでしょ?」 「なら自分でやりゃ良いだろ」 「それが面倒だからアンタを呼んだに決まってるでしょ? ほらさっさとする!」 こ、こいつは……兄をなんだと思ってんだ。 「なに? その反抗的な目は。可愛い妹の頼みが聞けないっての?」 不機嫌そうに睨み付けてくる桐乃。 何が悲しくてこんな深夜に、指がつりそうな勢いでクリック連打せにゃいかんのだ。 兄貴だからか? 兄貴だからなのか? もういっそのこと一人っ子に生まれたかったぜ……。 そんな事を考えたちょうどその時、 『お前の望みを叶えてやろう――』 突然、聞いた事もないような声が響いた。 「はっ?」 「え? 嘘――」 モニターから突然強い光が溢れ出す。とても目を開けていられない。 「うわっ!」 「きゃっ!」 まるで爆発したかのような閃光が視界を白く染め上げ、一瞬意識が飛ぶ。 ……どのくらい時間が経ったろうか。おそるおそる目を開けると―― すぐそばに居たはずの妹の姿が、忽然と消えていた。 慌てて周囲を見回すが、どこにも居ない。 自分の部屋に戻ったんだろうか? 全然気付かなかったが……。 それにしてもさっきの光は何だったんだろうな。モニターの故障か何かだろうか。 妙な幻聴も聞こえた気がするし、眠気が限界で疲れてるのかもしれない。 桐乃が勝手に部屋に帰った事は腹が立つが、まぁ良い。もういい加減眠かったし、今日はこのまま寝ちまおう。 この時の俺はまだ、事態を軽く考えていた。 翌朝の食卓、何故か桐乃の姿が見えなかった。 それどころか食器も並べられていない。 「なあ、桐乃は朝練かなんか?」 何気なく聞いてみただけなのだが、 「え? あんた何言ってるの?」 心底呆れたようなお袋の声が返ってきた。 なんで妹の事を聞いただけで呆れられなきゃならんのだ。 「いや、何って……妹の事聞くのがそんなにおかしいのかよ」 するとお袋は、ますます呆れたような顔をして、 「なに寝ぼけてるの。あんたは一人っ子でしょ」 ……は? いやいや、何を言ってんだよこの母親は。 ふと見ると、親父までが怪訝な顔を俺に向けていた。 「京介、朝から妙な事を言うな」 とても、嘘や冗談を言っているような様子じゃなかった。 二人はそのまま何事もなかったかのように食事を進めていく。 どういう、事だ? ガタン! 慌てて席を立つ。 「どうした?」 「いや、ちょっとトイレ」 そう言い繕って、真っ直ぐ桐乃の部屋へ向かう。 一体何の冗談だよ。両親揃って息子をからかって……。 桐乃の部屋のドアノブに手をかける。幸い鍵は掛かっていなかった。 ノックもせず、そのまま一気にドアを開ける。 いつもの甘ったるい匂いのする、妹の部屋があるのを期待して。 だが、そこは、 「……どうなってんだ?」 埃の臭いのする、薄暗い空き部屋だった。 それからの数日は、まるで悪夢の中に居るようだった。 誰も妹の事を覚えていないのだ。 桐乃の部屋は今や完全に物置になってしまっているし、靴も、食器も、洗面用具も何もない。 親に聞いても友人に聞いても、俺は一人っ子だという事になってしまっていた。 まるで、桐乃の存在がこの世から消えてしまったかのように。 俺は自分でも驚くほどの喪失感を味わっていた。 あいつはもう居ないのだと考えるだけで、心がギュッと引き絞られるようだ。 つい数日前まで、この部屋で二人で並んで遊んでいたっていうのに。 くそ、夢なら早く醒めてくれ……。 と、その時、 「京介~、従妹の桐乃ちゃんが遊びにきたわよ~」 桐乃!? バン! 部屋のドアを蹴破る勢いで開け、階段を転がるように駆け下りる。 玄関には、見慣れたライトブラウンの髪の少女。 その瞳がちょうど俺の方を向く。 「桐乃!!」 自分でも驚くほど大きな声が出た。 だがそんなの今はどうだって良い。俺は必死に目の前の存在を目に焼き付ける。 そんな俺の剣幕に驚いたのか、少女はしばらく硬直していたが、 「……うん、久しぶり」 どこか安心したような声音で呟く、俺の妹がそこに居た。 とりあえず桐乃を部屋に通して、今は向かい合って話をしている。 俺はどうしても聞いておきたい、いや確かめておきたい事があった。 「なあ、お前は桐乃……だよな?」 「はあ? 他の誰に見えるっての?」 いつもの桐乃だ。特に違和感は感じない。 「その……俺の従妹の?」 「……そうだけど?」 無表情で答えが返ってきた。 「そうか……」 やっぱりここでは、桐乃は従妹という事になっているようだ。 なんだろうな、この感覚。胸がモヤモヤとするような……。 「なに? 従妹じゃなんかマズイわけ?」 「いや、なんでもないんだ」 色々と思うところはあるが、少なくとも消えて居なくなったわけではない。 それだけでも随分とマシだ。やっぱ居なくなると寂しいもんだしな。 俺は自分でも不思議に思うほどの安堵感に包まれていた。 「ね、そんな事よりシスカリやろうよ。ノーパソ持ってきたからさ」 「おう、良いぞ」 どうやら趣味も変わってないみたいだな。 その後もいくつか質問してみたが、全て淀みなく答える。 俺の知ってる桐乃と何も変わらないようだ。 せいぜい違うところがあるとすれば、 「そろそろ帰るね」 「あ……それもそうか」 住んでる家が違うんだもんな、当たり前か。 桐乃を玄関まで見送る。なんか妙な気分だな。 なんだか妹が遠くへ行ってしまうような気がして……。 「その、なんだ。また来るんだよな?」 自分でも分かるくらい情けない声が出た。 「なぁにぃ~? あたしが居ないと寂しいんだ?」 ニヤニヤしながら俺をコケにする桐乃。くそっ、言わなきゃ良かった。 「別にそんなんじゃねぇっての」 「またまた、無理しちゃって」 こんな風に俺をおちょくるところも、本当に変わらない。俺の知ってる桐乃だ。 「それじゃ、また明日ね」 そう言って、上機嫌で帰っていった。 言葉通り、それから桐乃はほとんど毎日遊びに来た。どうやら家が近所のようだ。 やってる事も、エロゲーしたり対戦ゲームしたり、買い物に付き合わされたり。 つまりは、以前と一緒って事だ。 考えてみれば従妹なんて、半分妹みたいなもんだよな。 だったら俺は桐乃の兄貴分だ。これまでと変わらない。 少なくとも俺はそう思っていた。 その日も桐乃は遊びに来ていて、今はリビングで雑誌片手にくつろいでいる。 まるで自宅に居るかのようにリラックスしているが、この方が俺にとっては見慣れた光景だ。 「ねえ、おと……叔父さんと叔母さんは?」 「法事で明日まで帰ってこないぞ。今夜は俺一人で留守番ってわけだ」 「ふぅん……そっか」 そのまま何か考え込むような様子の桐乃。まぁそれよりもだ。 「もうそろそろ夜だろ? 時間大丈夫か?」 「ん、まだ大丈夫」 「なら飯食ってくか」 「そだね。もうすぐ7時だし」 向こうの家でも食事の時間は同じなのかね。 適当に買ってきた惣菜の夕食を終え、時刻は8時をとうに過ぎている。 さすがにそろそろマズイだろう。 「桐乃、もう遅いし家まで送るよ」 声をかけるも、いまいち反応が鈍い。 「桐乃? どうした?」 「……帰りたくない」 「なに子供みたいな事言ってんだ。ほら上着を――」 「今日ここに泊まるから」 急になんて事を言い出すんだ。 「さっき家にも電話した。友達の家に泊まるって言っといたから大丈夫」 「いや大丈夫じゃねえって。さすがにマズイだろ?」 「……どうして?」 「さっきも言ったが、今夜は親父達も居ないんだよ。俺たちだけになっちまうんだから――」 「別に良いじゃん」 良くないっての。なんで今日に限って、こんな物分かりが悪いんだ。 「あのな。年頃の娘なんだから、男一人のところに泊まるのはマズイだろうが」 言っていて少し妙な感覚になる。 元々俺たちはこの家で寝食を共にしていたのだ。 いまさらマズイ事なんてないはずなのだが……なんだろうな、この感覚。 「ふ~ん。女の子扱いしてくれてるんだ?」 なんだかニヤニヤしながら、近寄ってくる。 甘い匂いが漂ってきて、少しだけドキリとした。 「と、とにかく。間違いがあったら困るだろ? ほら送るからさ」 「別に困らない」 少しずつ桐乃が距離を詰めてくる。 「お前な、からかうのもいい加減に――」 「からかってなんかない。あたしは構わないから」 「……俺だって一応男なんだぞ。あまり勘違いさせるような事を言うなよ」 「女のあたしが良いって言ってるの。言ってる意味、分かるよね?」 いつの間にか桐乃の顔が目の前にあった。少し潤んだような瞳と視線が絡み合う。 「バカ、お前は妹みたいなもんだっての」 たまらず目をそらした。さっきから心臓がバクバクいってやがる。 「……今は従妹でしょ?」 そりゃそうだけどな。でも妹だと思っていないと俺は……。 俺は……? そのあとに続く言葉が、すぐには出てこなかった。 「まだあたしを妹扱いするの?」 見ると、桐乃は唇をきゅっと引き結び、何かを堪えるような顔をしている。 「そりゃ、前は兄妹みたいな関係だったかもしれない。あんたがあたしを妹としか見てなかったのも知ってる」 そうだ。お前は俺の妹だ。……そのはずだ。 「でも、今は違う」 桐乃は顔を上げ、きっぱりと言い切った。 「ちゃんとあたしを見て。今のあたしを見て」 訴えかけるような視線と声。思わずその目に吸い寄せられる。 なんだか胸がモヤモヤとする。ずっと以前からあった感覚だ。 兄貴として妹が心配だから? 以前ならそう考えていただろう。 だが、はたして本当にそうなのだろうか。 「従妹のあたしなら、あんたの……京介の恋人にもなれる。結婚だって出来る」 確かに今の俺たちなら、そういった関係にもなれる。 一拍置いて息を整える桐乃。そして、 「ずっとあたしのそばに居て欲しい。あたしだけの京介でいて欲しい」 これって……。 「あたしと、付き合って」 俺を真っ直ぐ見据えて、確かにそう言った。 あまりの事に、少しくらりとする。 桐乃が、俺に? 見ると桐乃は、じっと黙って答えを待っている。 そうだ、俺は答えなくちゃいけない。 俺はどうしたら……いや、どうしたいんだろうな。 それに対する答えなんて前から決まってる。 俺は今まで通りにずっと桐乃と一緒に居たい。大事にしたい。 でも妹だから。 いつかは俺の元から離れていってしまうからと、その先を考えてこなかった。 じゃあ、今は? さっきから胸のモヤモヤがどんどん大きくなっている。口から飛び出ていきそうだ。 俺はずっとこの気持ちに、妹だからと蓋をしてきたのかもしれない。 だが今は、その蓋はない。 だったらもう、口から出してしまえば良い。 今の俺が言いたい言葉を言うだけだ。 「いいよ」 「……ほんとに?」 「ああ、本当だ」 驚いたような顔の桐乃。 本当に受け入れられるとは思っていなかった、そんな顔だ。 そんなに自信が無かったのに踏み切るあたりは大したものだと思う。 俺ももう一歩踏み込むべきかもしれない。 桐乃が居なくなってしまったと思い込み、喪失感に苛まれていた数日を思い出す。 もうあんな思いは二度とごめんだ。 ずっと桐乃のそばに居たい。二度と手放したくない。 俺はきっと、ずっと前から―― 「好きだ、桐乃」 目を見開いた桐乃が、ひゅっと息を呑むのが分かる。 「好きだ」 桐乃の震えている両肩にそっと手を置き、もう一度力を込めて言った。 「あ、あたしも、あたしもっ……!」 目に涙を浮かべて、何度も繰り返す桐乃。 上手く言葉に出来ずにもどかしそうにしている頬を、涙が一筋こぼれ落ちる。 嗚咽を漏らすその背中に手を回して抱き締めた。 「ぐすっ……夢じゃない、よね。夢じゃないよねこれ……」 「ああ」 安心させてやりたくて、ゆっくりと頭を撫でる。 俺の胸に顔を埋めたままの桐乃がそっと呟いた。 「……ずっと、ずっと、好きだったよ」 俺たちが正式に付き合う事になって、数ヶ月が経過した。 従妹と交際するというので最初は周囲も驚いたようだったが、特に大きな反対はなかった。 正直言って俺は、まだ桐乃を妹として見ている部分もある。そこだけはどうしても拭い切れていない。 桐乃はそんな俺の様子にも気付いているようだったが、別に構わないようだ。 きちんと恋人としても見てくれているならそれで良い。そう言っていた。 その代わり時々妹みたいに甘えるから、というオマケつきで。 「京介っ、早く早く!」 今日は前から約束だったデートの日。 桐乃は嬉しそうに俺の腕を引っ張ってくる。 「おいおい、そんな慌てるなって」 何の問題もない平穏な日々。 だが俺はずっと前から、ある疑問を抱くようになっていた。 いや、本当は最初から心のどこかで気付いていたのかもしれない。 全ての発端となった、あの言葉だ。 『お前の望みを叶えてやろう――』 ……望みを叶えてもらったのは、本当に俺だったのだろうか? あの場には俺の他に、もう一人居た。 「どしたの? 京介」 ひょいっと桐乃が覗き込んでくる。 「あぁ……いや、なんでもねえよ」 だがそんなのは、どうでも良い事かもしれない。 桐乃はいつも幸せそうな顔を見せてくれて、そんな顔を間近で見られる俺にも不満なんてない。 俺は桐乃に幸せでいて欲しい。俺の目の届くところで幸せでいて欲しい。 たとえ真実がどうであれ、俺はずっと桐乃のそばに居ると決めたのだ。 「ほら、早くしないと映画の時間に遅れちゃうでしょ?」 「んじゃ少し急ぐか」 「うんっ」 そう言って俺を見上げてくる桐乃の顔は、本当に眩しくて―― ――まるで、夢が叶ったかのような笑顔だった。
https://w.atwiki.jp/killrace/pages/214.html
解説 コメント タグ 解説 ゲーム中のダイアログメッセージ等はキーボードのEscキーでスキップできます。 以下、スキップができることを覚えておくと便利なモノ。 研究支援で研究支援を受託したときの「研究時間が15分短縮されました」 たくさんの人から受託するとき、Escキーを併用することで、「研究時間が15分短縮されました」の「確認」を押す必要がなくなる。その結果一番上の支援受託ボタンのところからマウスポインタを移動しなくて済む。 支援受託をマウスでクリック→Esc押下→支援受託をマウスでクリック→Esc押下→…… 各種ガチャのカプセルベンダーの部分 アイテムカプセルマシンの獲得機体表示 ただしICM等の獲得機体表示はスキップできない。 コメント 名前 コメント タグ ICM UI カプセルマシン 研究支援
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/86.html
田村麻奈実(地味子)の京介ラブ行動一覧(原作小説版)1巻開始時点以前 1巻 2巻 以下の記述には、ウソ・大げさ・紛らわしい表現や、エロゲに脳を汚染された人間の妄想が含まれている可能性があります。 田村麻奈実(地味子)の京介ラブ行動一覧(原作小説版) 1巻開始時点以前 実の妹が嫉妬、トラウマになるほど仲良し。 半ば家族公認でお泊まり、むしろ自宅より居心地が良い。 夏休みはほとんど入り浸り。 毎日田村家か図書館で一緒に勉強会(中学からずっと)。 京介の携帯の登録番号1番(アニメ版9話では2番に変更されている) 昨年のクリスマスにデパートとケンタッキーでデート。 その後は田村家で手作りのケーキ。 毎年、クリスマスと誕生日にはプレゼント交換をしている。 1巻 顔のことを褒めてくれた(P80) 眼鏡を取ったり憎まれ口で照れ隠し(P84) 京介の大学進学理由「こいつと同じ大学に行きたいから」(P85) モナカ食べに来てくれた。(P85) 悩み事の相談×2回 私の悪口に怒ってくれた。(P122) 疲れてるのに、遊びに誘ってくれた。(P188) お茶奢ってくれた。(P189) 一緒にいるとき他の女の子を褒めたりせず、気を使ってくれた。(P193) 「色々」で何も言わなくても通じ合えた。(P264) 2巻 何気なくぼーっとしてるだけで、私のことを思い出してくれた。(P49) ぐーぐるさんに「眼鏡っ娘萌え」を指摘される。(P52) 下敷きぱたぱた。(P93) くずきり食べに来てくれた。(P103) 私に彼氏が出来るのは「絶対嫌だ、ぶっ飛ばす」って言ってくれた(P96) 「誰かが言い寄ってきたら構う、ぶっとばす」 アイコンタクトで意思疎通可能。(P97) いつものように隣に座って図書館で一緒に勉強。 眼鏡を取られてからかわれ鼻と鼻が当たるくらい急接近。(P109) 「そのままでいい、今の子(あやせ)より、お前の方がずっと良いよ……好きだよ」って言ってくれた。(P115)※京介は「あー好きだね、好き好き、今の子よりもおまえの方がずっといいや」と言っている。 私にちょっと避けられただけで辛そう。(P119) 2日会えないときが重くなり、三日間会えないとおかしくなる。泣きが入る。(P308) 仲の悪い妹に相談するほど追い詰められる。(P135) 「幼馴染み よりを戻すには 台詞例」(P191) カリビアンコムで「眼鏡 かけたまま ○○」(P191)※○○は「顔○」の可能性が高いと推測されている。 クラスメート女子、弟に探りを入れるくらい気になる。(P125) 真夏の日差しの中、2時間も私が帰るのを待ってくれてた。(P160) 私が好きなモノを憶えててくれて、誕生日でもないのにプレゼント(枕)をくれた。 きょうちゃんに褒められた前髪を切りすぎて、申し訳なくて泣いてしまうわ遅刻するわetc 「たまには一緒に寝てくれ」と、もらったぬいぐるみ抱き枕は「きょうちゃん(はあと)」って読んで一緒に寝る。 「夏休みに入ったらまた遊びに来てね」 あやせたんヤンデレモードの中、私の顔を思い浮かべてくれた。 「おまえが何を悩んでいるのかは知らないし……俺には話したくないんだろうってのはなんとなく分かるんだ。でも、それで納得してやるわけにゃいかない。いくらカンケーねえって突っぱねられても、見て見ぬ振りはできねぇよ」って言ってくれた。(P162、P296) いぐさの匂いがした。 別れがたくて、一緒にいられなくなるなんて考えたくない。(P308) 夏休みには、公園や図書館へ「さんざん」と言うほど一緒にお出かけ(P295) 「超かわいい。肌もつやつやしてるし綺麗になった」って言ってくれた。(363P) 意見・批判等 これって、ほとんど京介の麻奈実ラブ行動じゃね? -- (名無しさん) 2010-12-07 23 45 43 確かに。京介×麻奈実フラグ集とでもしたほうがまだ適切か -- (名無しさん) 2010-12-09 03 34 00 これ見ると京介→麻奈実の行動・心理って京介→桐乃の行動・心理と結構被ってるな。ふと思っただけだけど。 -- (名無しさん) 2010-12-14 10 23 17 京介⇒麻奈美はラブ行動と確定してないから別にこのままでいい -- (あんどん) 2010-12-16 00 07 14 じゃあ、京介→麻奈実異常行動だな。麻奈実からのアクションはほとんどないし。しかし、ここまでしておいてラブじゃないってのが、もめる元なんだよなぁ。 -- (名無しさん) 2010-12-18 16 57 23 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/522.html
第4話「俺の妹がこんなにズレた金銭感覚なわけがない」 ーーー桐乃の部屋ーーー コンコン ガチャ 桐乃「入って」 京介「話ってなんだ?また人生相談か?」 桐乃「そうだけど?悪い?」 京介「悪かねーけどよ、前に最後の人生相談って言ってたからな」 桐乃「チッ!今度こそ最後だから!」 京介「はいはい。それで相談っていうのはなんだ?」 桐乃「ちょっとこれ見て」 京介「パソコンか?またエロゲじゃないだろうな・・・」 桐乃「ち、違うわよ!」 京介「まあいいけど。それでパソコンがどうしたんだ?」 桐乃「画面見て」 京介「ん?」 桐乃「ちょちょっと!そんなに近づかないでよ!キモイ!」 京介「近づかないと画面見えねーじゃねーか」 京介「それで?ヤフオクの画面がどうしたんだ?この商品が欲しいのか?」 桐乃「なんでアンタがヤフオク知ってるのよ?」 京介「そりゃー常識っつうか、詳しくは知らねーけどな」 桐乃「チッ!そんな事よりこの商品は私が出品してるんだけど、誰も入札してくれないのよね」 京介「ふーん。それで俺にどうしろと?」 桐乃「あーもう!察しが悪いわね!どうすれば入札してくれるか、一緒に考えてほしいって言ってんのよっ!」 京介「なら最初からそう言えよ」 桐乃「言ってるし・・・はぁ」 京介「まあいい。それよりこのアクセってこんなに高い物なのか?」 桐乃「当たり前でしょ!何言ってんの?」 京介「けど10万円じゃ、入札し辛いと思うぞ?」 桐乃「だからアンタに相談してるんでしょ!」 京介「じゃあ値段を下げてみたらどうだ?」 桐乃「そんなの無理に決まってるでしょっ!」 京介「だけど売れないまま放置してても意味ないんじゃねーの?」 桐乃「そんな事アンタに言われなくても分かってるわよっ!」 京介「値段が駄目なら・・・他の奴のを見てみたみるのもいいかもしれねーな。入札されている奴」 桐乃「ふんっ!アンタにしては良い事言うじゃない」カチカチ 京介「ありがとよ・・・」 桐乃「なんか私のとあんまり変わらないんだけど?」 京介「いやいやいや、全く違うじゃねーか!」 桐乃「ど、どこが違うってのよ」 京介「じゃあ言わせてもらうけどな、まずお前の商品説明が雑過ぎ」 京介「アクセの名前しか書いてねーじゃん」 桐乃「そ、れは、写真を見たら普通分かると思うけど?」 京介「じゃあ聞くがよ、なんでお前のアクセは写真1枚しか貼り付けてないの?」 桐乃「た、たくさん出品してたから時間が無かったのよ」ショボーン 京介「とりあえずお前のは商品説明をしっかりして、写真も3枚貼り付ける事だな」 桐乃「・・・あとは?」 京介「そのぐらいじゃねーの?じゃあ後は頑張ってくれよな」 桐乃「は?どこ行こうとしてんの?」 京介「どこって俺の部屋だけど?」 桐乃「手伝ってくれないんだ、ふぅーん」チラッ 京介「わーったよ。風呂あがったら手伝うよ」 桐乃「逃げたら殺すから」 ーーー再び桐乃の部屋ーーー 京介「おーい、お待たせー」ガチャ 桐乃「遅いっ!とりあえず商品説明は書いた」 京介「どれどれ」 桐乃「っ!近づくなってっ!」 京介「・・・じゃあとりあえずお前は風呂行って来いよ」 桐乃「私を追い出して、部屋で何する気?」 京介「何もしねーよっ!」 桐乃「ふんっ!じゃあ私がお風呂言ってる間に写真を3枚ずつ撮っといて」 京介「わーったよ」 桐乃「あと変な事したら殺すから」 京介「だからしねーってっ!早く風呂行けや」 桐乃「ふんっ!」バンッ 京介「さっ、とっとと撮って寝よう」 ーーー1時間後ーーー 桐乃「終わった?」ガチャ 京介「終わったよ」 京介「貼り付け方法とかわかんねーから、そのへんは任せるわー」 京介「じゃあ俺はそろそろ寝るわ」ふぁーあ 桐乃「・・・おやすみ」ボソッ 京介「・・・おやすみ」ガチャ 桐乃「ありがと・・・」 つづく
https://w.atwiki.jp/girlgame/pages/2691.html
スキップ・ビート! の主人公。 ME芸能プロダクション「ラブミー部」所属。京都出身。 かなりのメルヘン思考を持ち、妖精を本気で信じている。 幼馴染みである尚に家政婦扱いされていた事を知り、尚への復讐のため芸能界へ。 はじめは復讐心のみに燃えていたが、ラブミー部として仕事をこなすうちに純粋に芝居を楽しめるようになる。 名前 最上 キョーコ 年齢 16歳? 身長 体重 誕生日 12月25日 血液型 声優 なし (ドラマCD:長沢美樹 /アニメ: 井上麻里奈) 一人称 私 家族構成 外見 ショートカット、茶髪 露出度 タイプ 元気系、しっかり者 介入度 備考 社会人、元彼あり
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/40.html
あ か さ た な は ま や ら わ あ AAAALaLaLaLaie!!! 画面にEXメルルフィギュアが大写しにされるや、 br() オタクたちがマケドニア兵のごときかけ声を張り上げた。(4巻p62-3) | 出典:漫画 『ヒストリエ』 岩明均著 読みは「アララララーイ」、「軍神アレスのご加護あらん事を」という意味で、本来は突撃時に用いられる鬨の声。 作中ではマケドニア軍が都市を攻囲中に、ファランクス隊形のまま城壁の外をぐるぐる回りながら、このかけ声を発していた。 _,_, _,_,_ ,_,_,_ _,_,_, _,_,_ ,_, _,_ _ )ァッラララ-ィ !!/ ) ァラララララ-ィ !!/ ^^^^^V^^^^ ^V^^V^^V^ ^^ \\ | | | | | | ---0競'. =3 0競'競'競' =3 「俺が選んだプレゼント『HG1/144 スサノオ』」(高坂京介、6巻p151) | 出典:アニメ『機動戦士ガンダム00』 創通・サンライズ・毎日放送 スサノオは、主人公をライバル視する仮面パイロット「ミスター・ブシドー」ことグラハム・エーカーの専用機。 この時点で発売済みであった『俺の妹』のドラマCDでは、京介役を『00』でグラハム役を担当した中村悠一が演じており、第6巻の発売と同時に発表された『俺の妹』のアニメ版でも同様のキャスティングとなっている。つまり中の人ネタ。 いえにかえるんだな。おまえにも、おにぃちゃんがいるのだろう (真妹大殲シスカリプス、2巻p13) | 出典:ゲーム「ストリートファイター2」 カプコン 登場キャラクターの1人ガイルが勝利時に発するセリフ「国へ帰るんだな。お前にも家族がいるだろう…」から。 全てひらがなであるのは、当時は漢字表記がされていなかっためその再現。 因みにガイルは初期のストリートファイター2においては最強キャラとされ、とりわけ自分から攻撃せずカウンターのみに徹する「待ちガイル」戦法は大変嫌がられた。 か 「-貴様にひとつ、重大な任務を託したいっ」 まるで軍隊の上官のように胸を張り、腰に片手を添え、びしっと俺を指さして、 「美姫を守って単機敵中翔破、三十二キロ。やれるかね?」 (高坂桐乃、4巻p215) |出典:小説 『とある飛空士への追憶』 犬村小六著 小学館ガガガ文庫 主人公に下命する際の大佐と中佐の言葉 「貴様にひとつ、重大な任務を託したい」(p62) 「美姫を守って単機敵中翔破、一万二千キロ。やれるかね?」(p67) 『俺の妹』のアニメ版で桐乃役を演じた竹達彩奈は、後にこの作品の続編『とある飛空士への恋歌』のテレビアニメ版で主要登場人物の役を演じていたりするが、たぶん関係ない。 「狂気の沙汰ほど面白い…」(赤城浩平、6巻p95) |出典:漫画 『アカギ ~闇に降り立った天才~』 福本伸行著 竹書房 主人公アカギが、ロシアンルーレットで銃口を口の中に入れられながら放ったセリフ。 「女王(クイーン)はそんなこと言わない!」(黒猫、6巻p181) |出典:アダルトビデオ 『欲情列島宅配便 私の処女を破りに来てっ』 飛田淳監督 株式会社アテナ映像 詳細を知りたければ「飛影はそんなこと言わない」で検索すること。 賢者のような気持ち(1巻p204) |出典:ニコニコ動画のコメント等 何かから解放された、何かを突き抜けたないし放出した後に訪れる精神状態。 「こちらスカルリーダー、こちらスカルリーダー、各機状況を報告せよオーヴァ。――A28新刊確保了解。A87新刊確保了解。A69交戦中了解。――スカル2および3に告げる、プランBでいく、そのまま壁サークルの攻略を続行、索敵班の警告を聞き漏らすな。スカル5は島中に向かえ。俺もすぐ合流する。――聞こえるかピクシー小隊。企業ブースの状況はどうか」(三浦絃之介、2巻pp211-212) |出典:『超時空要塞マクロス』シリーズ、ビックウエスト 「スカルリーダー」「スカル2」といった呼称は『超時空要塞マクロス』『マクロス ゼロ』『マクロスF』などに登場する、主人公らが所属する部隊で用いられるコールサイン。「ピクシー小隊」は『マクロスF』に登場する部隊なので出典は同作だと同定できるが、同作にはスカル5が登場しないので微妙かも知れない。ちなみに『マクロスF』の場合だと、スカルリーダーがオズマ機、スカル2がミハエル機、スカル3がルカ機で、ピクシー小隊はクランが率いる女性部隊。台詞に登場しなかったスカル4は、アニメ版京介の中の人こと中村悠一が演じる主人公・アルト機。 『俺妹』原作第2巻では名無しのオタクの台詞となっているが、アニメ版ではこのオタクが三浦部長であったことが明かされており、原作第7巻にもそのことを匂わせる言及がある。 「こやつめっ! ハハハ!」 (沙織 2巻p256) |出典:漫画 『三国志』 園田光慶著 講談社 ( _,, -''" ', __.__ ____ ハ ( l ',____,、 ( } l l l ,} / \ ハ ( .', ト───‐' l l ̄ ̄l l │ ハ ( .', | l |二二l | ハ こ | ( /ィ h , '´ ̄ ̄ ̄`ヽ | ハ や │ ⌒⌒⌒ヽ(⌒ヽ/ ', l.l ,' r──―‐tl. | ハ つ │  ̄ ', fllJ. { r' ー-、ノ ,r‐l | ! め │ ヾ ル'ノ |ll ,-l l ´~~ ‐ l~`ト,. l | 〉vw'レハノ l.lll ヽl l ', ,_ ! ,'ノ ヽ ____/ l_,,, =====、_ !'lll .ハ. l r'"__゙,,`l| )ノ _,,ノ※※※※※`ー,,, / lヽノ ´'ー'´ハ -‐'"´ ヽ※※※※※_,, -''"`''ー-、 _,へ,_', ヽ,,二,,/ .l  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `''ー-、 l ト、へ さ 「邪気眼とか電波とか、そんなチャチなもんじゃねえ…もっと恐ろしい愛の片鱗を垣間見たぜ…」(高坂桐乃 9巻p75) |出典:漫画 『ジョジョの奇妙な冒険』 荒木飛呂彦著 やつを追う前に言っておくッ! おれは今やつのスタンドをほんのちょっぴりだが体験した い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが…… ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ (.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! |i i| }! | } //| |l、{ j} /,,ィ//| 『おれは奴の前で階段を登っていたと i| !ヾ、_ノ/ u { }//ヘ 思ったらいつのまにか降りていた』 |リ u' } ,ノ _,!V,ハ | /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが /' ヾ|宀| {´,)⌒`/ | ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった… ,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉 |/_/ ハ !ニ⊇ '/ } V ヽ 頭がどうにかなりそうだった… // 二二二7'T'' /u' __ / /`ヽ /'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ / /-‐ \ 催眠術だとか超スピードだとか / // 广¨´ /' / /´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ ノ ' / ノ `ー-、___/ // ヽ }_/`丶 /  ̄`ー-{ ... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… 「ジャスト一分、悪夢(ユメ)は見れたかしら?」(黒猫、4巻p180) |出典:漫画『GetBackers -奪還屋-』青樹佑夜原作、綾峰欄人作画 講談社 主人公・美堂蛮が邪眼の力を使って相手を幻覚に陥れ、その幻覚が解けた際に発せられる決め台詞。 「ジャスト一分だ、いい悪夢(ユメ)は見れたかよ?」 「正気度が下がるからね」(五更日向、9巻p37) |出典:TRPG「クトゥルフの呼び声」 クトゥルフ神話を題材にしたゲーム内で使われているパロメーター。 プレイヤーがどれだけ理性を保っているかを示す値で、ショッキングな出来事に遭遇するなどで下がる。 正気度は「SAN値」という単位であらわされており、その為ネット上で怪異なものやシュールでカオスなものを見た際には よく「SAN値が下がる」という表現が使われることがある。 「スタァーップ」(高坂京介、3巻p281) |出典:ゲーム「The Elder Scrolls IV OBLIVION(通称:オブリビオン)」 ゲーム世界の秩序を守る衛兵が、何らかの罪を犯したプレイヤーを捕える際に発する言葉。 「Stop」の米国式発音。(「ストップ」は英国式) 因みに作者はインタビューでこのゲームについて語っている。 _______ / ..| | \ /____| |__ \ / ___ ___ .\ スターップ | / (●)|_|(●) \ | お前は法を犯した | | .(__人__) .| | 科料を支払うか服役するかのどちらかだ | | | | .| | .\.| l;;;;;;l | / / `ー´ \ / ヽ 牢屋に行く 金を支払う →逮捕に抵抗する 「そのキレイなマル顔をフッ飛ばしてやる!」(香織、6巻p140) |出典:漫画 『覇王・愛人』 新條まゆ著 「世界一腕の立つ殺し屋」が、狙撃の際にアサルトライフルを肩に担ぎつつ、ありもしないスコープを覗きながら放った言葉。 「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!」 なお、通行人が邪魔だったため狙撃は出来なかった。 「その発想はなかったわ!」(三浦絃之介、5巻p175) |出典:バラエティ『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』 番組内で板尾の嫁を称する外国人女性が発したセリフ。 なお「板尾の嫁」というのはあくまで番組のキャラクターにすぎず 実際の板尾創路の嫁は日本人である。 た 「だ、駄目だ…笑うな…耐えろあたし…」(五更日向 9巻p41) |出典:漫画 『DEATH NOTE』大場つぐみ原作 小畑健作画 主人公の夜神月が、宿敵を前に必勝の確信を得て、溢れ出す笑いをこらえている場面から。 「…ふふふ、駄目だ、まだ笑うな…しかし…」 なお、その後夜神月は、ジェバンニが一晩でやってくれていたため無様に敗北する。 デコガ●ダム(高坂桐乃、6巻p155) |出典:ガンダムの女の子仕様ピンクモデル「デコかわガンダム」 - カラパイア 「どうしてこうなった!」(高坂桐乃 9巻p210) |出典:Peercastのゲーム実況 ゲームの実況放送をしている際に、違法に流通したゲームの画面を誤って表示させてしまった実況者のつぶやきから。 転じて、思いもよらない事態の悪化を前に呟くセリフとしてネット界で使われるようになった。 ___ / || ̄ ̄|| ∧_∧ |.....||__|| ( ) どうしてこうなった・・・ | ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/ | | ( ./ / ___ / || ̄ ̄|| ∧_∧ |.....||__|| ( ^ω^ ) どうしてこうなった!? | ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/ | | ( ./ / ___ ♪ ∧__,∧.∩ / || ̄ ̄|| r( ^ω^ )ノ どうしてこうなった! |.....||__|| └‐、 レ´`ヽ どうしてこうなった! | ̄ ̄\三 / ̄ ̄ ̄/ノ´` ♪ | | ( ./ / ___ ♪ ∩∧__,∧ / || ̄ ̄|| _ ヽ( ^ω^ )7 どうしてこうなった! |.....||__|| /`ヽJ ,‐┘ どうしてこうなった!| ̄ ̄\三 / ̄ ̄ ̄/ ´`ヽ、_ ノ | | ( ./ / `) ) ♪ な 「何…だと…」(京介) |出典:漫画『BLEACH』久保帯人原作 集英社 別にこの作品だけで使われているわけではないが、あまりにも多用されたためこの漫画の代名詞といえるセリフとなっている。 京介はジャンプ信者であるのかこのセリフを多用する。 「にょろーん」 (沙織 4巻p136) |出典:「にょろーん☆ちゅるやさん」 - うつらうららか -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、 / /" `ヽ ヽ \ //, '/ ヽハ 、 ヽ 〃 {_{ リ| l.│ i| に レ!小lノ `ヽ 从 |、i| ょ ヽ|l ● ● | .|ノ│ ろ |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j | , |. l | /⌒l,、 __, イァト |/ | ん. | / / |三/ // ヽ | | | l ヾ∨ / ヒ 彡, | 「ねぇ、いまどんな気持ち? ねぇねぇ、あとから小説書き始めたあたしに先にデビューされて、いまどんな気持ち?」 (高坂桐乃、3巻p311) |出典:2ちゃんねる発祥のAA ∩___∩ ∩___∩ ♪ | ノ ⌒ ⌒ヽハッ __ _,, -ー ,, ハッ / ⌒ ⌒ 丶| / (●) (●) ハッ (/ "つ`..,: ハッ (●) (●) 丶 今、どんな気持ち? | ( _●_) ミ :/ i:. ミ (_●_ ) | ねぇ、どんな気持ち? ___ 彡 |∪| ミ :i ─ !,, ミ、 |∪| 、彡____ ヽ___ ヽノ、`\ ヽ..... ij(_ ● / ヽノ ___/ / /ヽ r " .r ミノ~. 〉 /\ 丶 / /  ̄ :| | | i ゚。  ̄♪ \ 丶 / / ♪ :| | | |: \ 丶 (_ ⌒丶... :` | | |_: /⌒_) | /ヽ }. :.,' ( } } ヘ / し )). : i `.-‐" J´(( ソ トントン ソ は 「放して兄さん、その女を殺せないわ」(黒猫、3巻p281) |出典:『ラグナロクオンライン』発祥の成句 詳細は「S県月宮」または「お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!」で検索すること。 返事がない、ただの黒猫のようだ。 (3巻p233) |出典 ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズ 死体に話しかけた時のメッセージ「へんじがない、ただのしかばねのようだ」から。 「変態!!変態!!変態!!」 (赤城瀬菜、5巻p176) |出典:漫画 「スケッチ」(『夏色ショウジョ』所収) 綾瀬さとみ著 ワニマガジン社 Y^´ ∨// /,∠ ,. ' /l/// /, ' , '/ ! | l }´ 〈 〉 変 〈/ , ' // ̄` /// /// _,.=‐|'"´l l〈 変 / 〈 態. ∨, '/l| ,.'-‐、`//`7/ /''"´__ | ハ l丿 態 { 人) ! ! (/! |ヽ〈_ ・.ノ〃 〃 / '/⌒ヾ.! ,' !く ! ! (_ ト、__/ ヽ、_,.イ /l l | ```/ /...´.. //´。ヽ }! ,' !! ) /ト' 亦 ,イ⌒ヽ/ !l l ! l し J ``‐- / / ,'、`Y´Τ`Yl 夂 (ハ ヽ l i ! l ', ! , -―-、_ ′ //! Λ ヽ、ヽlヽ 〉,\ ! i ',.l `、'、/_,. ―- 、_``ヽ、 ι 〃,'/! ヽ、\ ヽ、 ! 能 // ,' lヽ! ii ',l ∨\'⌒ヽー-、 `ヽ、! / ハ ノヽ._人_从_,. \ | 心 { / ,' ' ,! ll l`、 { ヽ' \ ヽ ' '´ Λ ',} ( \.丿 ∨ // ,',! l l l ヽ`、 \ \ ∨ し /! ∨ 変 ,ゝ、∧ / / ヾノ //l l l l、_ヽ\ \ ヽ , ' ,.イ |ノ 態 (ヽ/ノ__ ゚ ゚ (⌒`〃'j | l l l `ヽ `ヽ、.ヽ _,.}'′ ,.イl { | ヽ ! ! ,ゝ\/ /`Y⌒ヽ/⌒ 〃 ノ | l l l } ヽ、._ } ノ,.イ l | ! ! | )_ 「褒美に麻奈美と一緒に風呂に入る権利をやる!」 (田村祖父、3巻p94) |出典:2ちゃんねる発祥のAA / ̄\ | | \_/ | /  ̄  ̄ \ / \ / \ / ⌒ ⌒ \ よくぞこのスレを開いてくれた | (__人__) | 褒美としてオプーナを買う権利をやる \ ` ⌒´ / ☆ /ヽ、--ー、__,-‐´ \─/ / ヽ▼●▼ \ ||ー、. / ヽ、 \ i |。| |/ ヽ (ニ、`ヽ. .l ヽ l |。| | r-、y `ニ ノ \ l | |ー─ |  ̄ l `~ヽ_ノ____ / ̄ ̄ ̄ ̄ヽ-'ヽ--' / オプーナ /| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| ______/ ̄オプーナ/|  ̄|__」/_オープナ /| ̄|__,」___ /|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/オプーナ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄|/ オープナ /| / .|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/l ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 「本当かー!? 本当にあんちゃんかー!?」(ロック、2巻p126) |出典:コントバラエティ番組「ドリフ大爆笑」 ドリフ大爆笑後期のコント「バカ兄弟」の冒頭におけるお約束的なやり取り。 また漫画『ヘルシング』の巻末おまけコーナー「ルークとヤンの人情紙芝居」という 同コントのパロディも有名。 ま 「マヌケは見つかったようね?」(黒猫、5巻p131) |出典:漫画『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦著 第三部の主人公、空条承太郎が一般人に紛れた敵スタンド使いを カマかけで見事にあぶり出した際に放ったセリフ。 や やべえぇぇえ! 沙織ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。 まず美人、超美人! しかも見るからに、お嬢様とか、もう、そういうレベルじゃない! 深窓の令嬢みたいなオーラ出てる! スゲェ! 髪の毛サラサラでスーパーモデルみたいな尻乳太もも! 普通は眼鏡外したくらいでこんなにガラッと変身したりしないでしょ! エロゲーじゃあるまいし。 だからどんなにイメチェンしようとも、言われれば本人だよねって分かる。 けど沙織ヤバイ。 元の面影とか全然ない。声まで違う。ヤバすぎ。 とにかくおまえら、俺の目の前に突然現れた超絶美貌のお嬢様のヤバさをもっと知るべきだと思います。(高坂京介、6巻p186) |出典:2ちゃんねる哲学板発祥のコピペテンプレート ヤバイ。宇宙ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。 宇宙ヤバイ。 まず広い。もう広いなんてもんじゃない。超広い。 広いとかっても 「東京ドーム20個ぶんくらい?」 とか、もう、そういうレベルじゃない。 何しろ無限。スゲェ!なんか単位とか無いの。何坪とか何ヘクタールとかを超越してる。無限だし超広い。 しかも膨張してるらしい。ヤバイよ、膨張だよ。 だって普通は地球とか膨張しないじゃん。だって自分の部屋の廊下がだんだん伸びてったら困るじゃん。トイレとか超遠いとか困るっしょ。 通学路が伸びて、一年のときは徒歩10分だったのに、三年のときは自転車で二時間とか泣くっしょ。 だから地球とか膨張しない。話のわかるヤツだ。 けど宇宙はヤバイ。そんなの気にしない。膨張しまくり。最も遠くから到達する光とか観測してもよくわかんないくらい遠い。ヤバすぎ。 無限っていたけど、もしかしたら有限かもしんない。でも有限って事にすると 「じゃあ、宇宙の端の外側ってナニよ?」 って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。 あと超寒い。約1ケルビン。摂氏で言うと-272℃。ヤバイ。寒すぎ。バナナで釘打つ暇もなく死ぬ。怖い。 それに超何も無い。超ガラガラ。それに超のんびり。億年とか平気で出てくる。億年て。小学生でも言わねぇよ、最近。 なんつっても宇宙は馬力が凄い。無限とか平気だし。 うちらなんて無限とかたかだか積分計算で出てきただけで上手く扱えないから有限にしたり、fと置いてみたり、演算子使ったりするのに、 宇宙は全然平気。無限を無限のまま扱ってる。凄い。ヤバイ。 とにかく貴様ら、宇宙のヤバさをもっと知るべきだと思います。 そんなヤバイ宇宙に出て行ったハッブルとか超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。 「友情は見返りを―」「―求めない!」(高坂京介、赤城浩平、4巻p224) |出典:アダルトゲーム 「CROSS†CHANNEL」 FlyingShine シナリオ担当は田中ロミオ氏。 ら わ 「私の年収は五三万です」(伊織・フェイト・刹那、5巻p167) |出典:「ドラゴンボール」 フリーザの台詞「私の戦闘力は530000です」。この後の展開で変身して更に戦闘力が上がったフリーザが 「先に切望感を与えてやろう」と後2回変身できることを明かして登場キャラや読者を絶望させた。 京介も「絶望するしかねぇ!」と反応している。