約 2,471,389 件
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/66.html
・原作とアニメでのモデル路線の違い ・原作とアニメでのモデル路線の違い アニメ12話(GOODEND)のエピローグでは、原作と違い加奈子が コスプレアイドル路線ではなく、あやせや桐乃と同じ路線のモデル活動をしている のが確認出来る、たまたま同じ撮影をやっていただけの可能性もあるが、それは除外しておく。 では何故、原作とアニメでは加奈子のモデル路線が変わっているのだろうか? 考えられるのは、やはり桐乃が留学に行かなかった影響であると考えられる。 ①桐乃とあやせが社長に読モ路線にしてくれとお願いした ②桐乃が在住だったので、加奈子が読モ路線を希望した ③桐乃が在住だったため、コスプレアイドル部門を事務所が開拓しなかった? 以上の3点であろうか。 ③の場合、原作だと桐乃がいなくなってしまうので、人気モデルが欠けた穴を埋めるためにコスプレアイドル部門を開拓した可能性である。 ただし、③の場合でも桐乃が留学した後もその読モモデルの穴に加奈子を加えれば良いのでは?と考えられるので、可能性は低いと言える。 もしくは、補導理由が変更された影響かもしれない。 原作では喫煙のせいで、あやせに対する立場も弱く、あやせにシバかれて「ごめんさい、私はとても反省しています」と言わされ 「よくまあ喫煙で補導されたあとだったのに雇ってもらえたもんだ」という、いくら加奈子がスペック的に「高めの女子」であろうと 事務所が一定期間は普通のモデル活動をするのは厳しいと判断しかねない自業自得が招いた不利な状況である。 それに対してアニメ版ではあやせが放置したせいであり、連絡が来なかった事務所の着替えの車が帰ってこなかったのが原因であるため 加奈子がコスプレを拒否すれば普通のモデルの仕事を請けることができたとも考えられる。 原作の加奈子自身は事務所の口車にうまく乗せられてコスプレの仕事を請けただけという様子なので いずれ世界線が収束して、GOODEND以降の世界でも口車にうまく乗せられて普通にコスプレアイドル路線に移行するかもしれないが。 そうならなければ、ブリジットちゃんはずっとソロ活動ということになる… 意見・批判等 アニメで黒猫の妹が出てきました -- (名無しさん) 2010-11-29 22 13 59 この項目はもう消しちゃっていいと思うけど、消すとこのページが空になっちゃうので、とりあえず残しときます。 -- (名無しさん) 2010-11-30 00 26 06 「妙な既視感」っていうのはメルルに似ているってことでしょ? -- (名無しさん) 2010-12-08 07 03 42 ↑ それはそうなのだが、当時はそれがミスリーディングなんじゃないかという見方もあった -- (名無しさん) 2010-12-09 03 21 54 黒猫妹説を消して、12話での疑問を追加してみました -- (名無しさん) 2010-12-20 15 45 22 そもそも桐乃は事務所に属していないんじゃなかったっけ? ①のあやせと一緒に社長にお願いしたというのはどうかと。 -- (名無しさん) 2011-03-16 20 59 15 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/133.html
特典小説は誰との未来なのか? 桐乃の小さい頃の麻奈実への呼び方 桐乃が麻奈実を嫌いな理由? 沙織の口調について 初出となる素顔沙織のカラーイラストについて目の色 制服の色 あやせの京介に対する真意 黒猫の妹についての所載 アニメ版/PSP版の黒猫の身長 PSP版のキャラ考察全般に関してはこちらに記載をお願いします、IFルート含む 以下の記述には、ウソ・大げさ・紛らわしい表現や、エロゲに脳を汚染された人間の妄想が含まれている可能性があります。 こちらのページは無印の考察です。続編の考察はこちら 特典小説は誰との未来なのか? 加奈子END後の加奈子だと思われる。 娘が「うひっ」と笑った際の「笑った顔がそっくり」発言 課長昇進の話で京介が「君の言ったとおりになったな」と言っている 嫁の最後の台詞 と言う辺りから、推察可能かと。あと、数行昔の発言に戻っていると言うのも。 ただ「彼女」からしてみれば「課長とかやってそう」という発言は京介が聞いていたと知らないはずなので、 よくもまあ「君の言うとおり~」で、すぐに思い至ったなあと思ったりも。 ちなみに、知り合いの中で黒猫だけ名称が出ていなかったり、嫁に似た黒髪など、 わざとらしく黒猫が嫁みたいな描写をしつこく入れているのは、そう錯覚させるためのフェイクだと思われる。 しかし、この小説を見る限り、とても幸せそうな家庭で何よりである。 桐乃の小さい頃の麻奈実への呼び方 「まなちゃん」と読んでいたことが判明した。 桐乃が麻奈実を嫌いな理由? 桐乃はあやせと京介が付き合っているのを麻奈実が許していると知ると 「いつもいつも邪魔ばっかして!」と怒鳴っている。 また、同ルートにて「兄貴はもう二度と誰にも渡さない」と叫ぶシーンがある このセリフから、桐乃は過去に誰かに京介をとられたと思っているところがあり 上記の事からそれは麻奈実の事だと推測できる これらは桐乃が麻奈実を嫌う理由、高坂兄妹の仲が悪くなった理由を暗示しているのではないだろうか? 沙織の口調について 沙織のEDを見る限り、眼鏡を外した状態でもいつもの「ござる」口調で喋っていたので、 眼鏡を外したら口調も完全に変化するということはないようである。 ただ、沙織ルートは原作者が監修していない?ルートなのでそうなっているだけなのかもしれない。 初出となる素顔沙織のカラーイラストについて 目の色 黒っぽい緑系。Mrカラーだと「C17ダークグリーン」が近いか 制服の色 真っ黒(「こんぷりーと」CGより) あやせの京介に対する真意 「エロゲーは桐乃と俺(京介)を結ぶ絆だ!」の件を嘘だと見抜いていたと判明。 京介が泥を被って桐乃を守るために行った演技だと、「仲直りして家に帰宅した時には気づいていた」ようだ。 あやせ曰く「なのにわたしは…お兄さんの厚意に甘えて…お兄さんのを悪者にして…自分の心を騙して」 ↑のことを含めてあのメールを出したとあやせの口から語られた。 2巻でのあやせのメールの真意が、原作者からようやく回答が出たと思ってよいだろう 黒猫の妹についての所載 黒猫の妹が登場するイベントは原作者が担当している場面であると公言されているのでここに記載する。 姉→黒猫への呼び方は「ルリ姉」、担当声優が黒猫と同じ花澤氏なので声はそっくりである、物真似はどうみても本人です。 かなりマセており、京介と黒猫の関係を非常に気にしていたり、黒猫をおちょくっていたりと意外にもやんちゃな性格の模様。 桐乃のことは「ビッチさん」と認識している模様、京介への呼び名は「ビッチお兄さん」「高坂君」 京介の観方では小学高学年、「馴れ馴れしいガキ」 アニメ9話で登場した時よりも髪が伸びており、後ろを結んでいる。 今のところ、音声付で登場したのはこのゲームと俺妹ラジオ8回目のアバンで登場した際だけである。 妹→ゲームでは相手が京介だったので、ですます口調を使っていない。 京介の観方では幼稚園年長組、呼び名は「おにぃちゃん」、京介もドキドキさせる破壊力である。 京介曰く「ここへ桐乃を連れてきたら大変なことになる」 アニメ版/PSP版の黒猫の身長 「こんぷりーと」CGを見ると麻奈実(160cm)と加奈子(148cm)の中間くらいであることが判る。 DVDで11話のOPを見たところ、キャラ選択画面の黒猫の身長が155cmとなっていました。
https://w.atwiki.jp/zakuaku/pages/2455.html
スキップアウェイ レベルスキップ技を使った時のスキップ確率が 大幅に上がります。というか必ずスキップが発動します。
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/145.html
俺の名前は、高坂 京介。近所の高校に通う17歳。 自分で言うのもなんだが、ごく平凡な男子高校生である。 ってどこかで聞いたことのある出だしだが、まぁ聞いてくれ。 こ ん な こ と が あ っ た ん だ ドタバタ続きの毎日も一旦落ち着きを見せてきたらしい。 電気を消した自室のベッドの上でボーっと光る携帯を眺めている。 知人との他愛もないメールのやり取りが 平凡な明日を迎える為の眠気を誘ってきやがった。 携帯の充電でもしとくかな・・・ ・・・動くのめんどくせーな ・・・あ、返信してねーけど・・・朝でいっか・・・な・・・ まだ・・・23時・・・ね・・・み 心地よいまどろみの中、俺は眠りに落ちた。 夢ってのはどうしてこうも現実的なものばっかりなのだろう。 俺は身支度を終えて玄関で靴を履く。 家の中はお袋と桐乃が朝特有の忙しない音を立ててあちこち動き回る。 そんないつもの平日の朝って雰囲気のなか 誰に言うでもなくいつものように俺は家を出ようとした。 「・・・んじゃ いってきまーー」 玄関のドアに手を伸ばした。 「ガチャ」 勝手に開いたドアの向こうには麻奈実が立っていた。 疑問は無い。それが夢ってもんだろ? まぁもともと幼馴染が俺の家のドアを勝手に開けたところで 大した問題にもならないがね。 学校に向かう過程は夢の中では割愛されてたな。 俺と麻奈実は学校の屋上に繋がる階段の踊り場にいた。 なぜこんなところにいるかなんて絶対疑問になんて思わないぜ? ・・・だから夢の中の話だからな? 俺は階段に腰掛けて、麻奈実は・・・そうだな 俺より一段下に腰掛けてたかな。 ちっとも窓拭きをしない曇った天窓から差し込む淡い明かりが 俺たちふたりを射していた。 麻奈実は俺の顔を下から覗き込んでにっこり笑った。 メガネの脇から見える麻奈実の裸眼は、くっきりした二重を覗かせていて 素直にかわいいと俺は思っちまった。 アイツの二重がくっきりしてるのを知ってる人間は多分、麻奈実の家族か 俺くらいだろうな。 麻奈実の頭がゆっくりと俺の下半身へと近づいてくる。 俺はもうズボンなんて履いちゃいなかった。 いつ脱いだかなんてどうでもいい。 ここは学校だとかなんて知ったこっちゃない。 たまたま見ちまった夢にいちいち突っ込みいれてもしょうがないだろ。 まぁそっからは想像にお任せするが 幼馴染にとんでもないことをさせちまった夢であることは間違いない。 だけど結論から言わせてもらうと 「めちゃくちゃ気持ちよかった」 この一言に尽きる。 至極平和で平凡な学生生活を送っている俺に そんな「夢」のような経験なんてもちろんない。 とにかく17年間生きてきて、1度も感じたことが無い感覚を 夢の中で経験をした。 え?夢の話だけかって? 落ち着けって、これからなんだよこの話は。 まだこれが「夢」だって認識するのに 薄暗い天井を暫く見つめる時間が必要だったらしい。 そうかそうか・・・昨日は携帯いじってる間に 寝落ちしちまったんだな・・・と まどろみから覚醒をはじめた脳ミソに 昨日の記憶が再び蘇ってきた。 夢・・・?そういえばすごくエキサイティングな夢を見たような気がする。 夢ってのは実は眠りから覚醒する直前のものしか覚えていないらしい。 そのクセ、その夢の内容を思い出すのに時間が掛かる。 俺の体には不思議にもその「夢」で得た感覚が生々しく残っている。 その残った感覚からどんな「夢」であったかを思い出してみる。 温かい。 自分以外の他人のぬくもり。 シャンプーの香り。 異性の汗の香り。 息遣い。 あぁ・・・すっげぇ夢みちったぜ。 我ながら小っ恥ずかしい夢だ。 下半身に残っている夢の名残が妙にそんな気持ちにさせた。 まさか高校生にして初めて「アレ」をしちまったのか?! 一瞬ヒヤっとした思いで 未だに重みすら感じる下半身に疑問を抱きながら 俺は布団をめくった。 「・・・?」 その時の心境を語るなら俺は何百文字にでもして綴れるだろうが あえて割愛しよう。 そこにはほぼ裸の状態の桐乃がいた。 「・・・」 俺はとりあえず言葉が出なかった。 布団をめくられ、俺が起きたことを知った桐乃は しばらく俺をみつめていたが、 こう言った 「兄貴、ゴメン やっぱアタシ、 頭オカシクなっちゃったよ」 沈黙の後 俺は桐乃にこう言った 「肘・・・ももの上で立てんなよ ・・・いてぇよ」 後日、桐乃にあの日のことを聞いたら こう思ってたらしい。 「今まで寝てたくせに何で起きてんのよ」 俺の妹はこんなにテクニシャンなわけがない
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/65.html
メールは何を語るか 上記のメールの件についての回答 京介の異常な愛情 ~または彼は如何にして畏怖することを歓びに変え天使を愛するようになったか~ 桐乃2Pカラー あやせのお兄さんラブ行動一覧(原作小説版) メールは何を語るか ―大ウソ吐きのお兄さんへ。おかげさまで、桐乃と仲直りすることができました。例の趣味を認めたわけではありませんし、先日お話しした意見を撤回するつもりもまだありませんが―しばらくは折り合いを付けないまま、納得しないままで、やっていくことにしました。仕方がありません。でも、諦めませんからね、わたし! あなたの魔の手から、いつか必ず桐乃を救い出してみせます!あなたなんかには絶対負けません!PS.もしも桐乃にいかがわしいことをしたら、ブチころします これは2巻の最後にあやせが京介に対して送ったメールの文面である。 このメールに関しては、内容に矛盾があると言いうるため、その趣旨をいかに解すべきかに関し議論がある。 すなわち、一行目の「ウソ」は「妹が大好きだ」の絶叫に代表される京介の発言を指すと思われるところ、4行目の「でも」以下の内容がその発言が真実であることを前提としたものであるため、メール全体は矛盾しているというのである。 これを踏まえた上、以下ではメールの内容をいかに解釈可能であるかについて考察する。 まず、メールの内容に矛盾は存在しないとする考えがある(Ⅰ説)。 この考えの中には、「ウソ」が京介と桐乃が愛し合っているという事実(以下近親相姦事実とする)に関する京介の発言を指すものではないとする考え(ⅠA説)と、「でも」以下の内容は近親相姦事実を前提としたものではないとする考え(ⅠB説)、及び「ウソ」を近親相姦事実に関する京介の発言とし、「でも」以下の内容も近親相姦事実を前提としているがメール全体に矛盾はないとする考え(ⅠC説)が存する。 ⅠA説は「ウソ」が何を指すのかに関していくつか立場に分かれ得るが、特に有力に主張されているのが、「ウソ」は京介の発言ではなく桐乃の発言を指しているとする説である。即ち、「大ウソ吐き」は京介ではなく桐乃のことを指しているとするのである。 しかし、この説に対しては第一に、もし京介が嘘をついていると考えていないのであれば、メールの最初で彼に礼を述べるのは不自然であるとの批判がある。すなわち、メール冒頭の文章は京介があやせと桐乃の仲直りのために何らかの行為をしたことが前提となっているところ、もし京介の発言がウソでないとしたらあやせは京介のことを彼の言動通りの行きすぎたシスコンであると考えていることになり、あやせから見て京介に感謝するような行為は存在しないこととなりるはずだというのである。 また第二に、いくらまだ折り合いが付けられていないとはいえ、ウソに対して異常な嫌悪感を持つあやせが、桐乃のことを「大ウソ吐き」呼ばわりするというのは不自然だとの批判がある。 ⅠB説は「でも」以下の内容をいかにとらえるかによっていくつか立場に分かれ得る。一つの説として、「でも」以下の記述は桐乃のオタク趣味を指しているといったものがある。 すなわち、あやせは近親相姦事実の存在について京介が嘘をついていると考えていてその点がメールの前段で述べられているとした上で、桐乃のオタク趣味が京介の影響であることを前提とし、それを自分が除去するという決意を述べたのが「でも」以下のメール後段だとするのである。 この説においては、メールは 「貴方の嘘のおかげで桐乃と仲直り出来ました。それはそれとして、桐乃の気持ち悪いオタク趣味は私が矯正しますからね!」 と意訳できることになる。 この説に対しては、メールのPS以下の文章は近親相姦事実を前提としたものであるため、この点とメール前段の解釈と齟齬が生じるという反論や、メール後段の解釈もその後あやせが桐乃の趣味を理解しようとしている(4巻p22~3)ことと矛盾するという反論がある。 これに対しⅠC説は、個々の部分に関する解釈を変更せずに、メール全体を矛盾無く説明することを指向するものといえる。 すなわち、同説は、あやせは、京介の発言が「ウソ」であること、つまり京介の認識においては近親相姦事実が存在しないということを認めた上で、京介は認識していないが桐乃又は桐乃と京介の両者が相手に恋愛感情を持っており、事実として近親相姦事実ないしそれに近似する事実が存在していると考えていると解するのである。 この説においては、メールは 「貴方の嘘のおかげで桐乃と仲直り出来ました。でも、貴方が嘘だと思ってることって、ほとんどホントなんですよ? 本当にホントにしたら殺しますからね?」 と意訳できることになる。 この説に対しては、あやせが桐乃又は桐乃と京介の両者が相手に恋愛感情を持っていると認識していたとするのであれば、京介の叫びにあれほどショックを受けることは無かったはずだとの批判がある。 もっともこの批判に対しては、京介の叫びを聞いてからメールを送るまでの間に、桐乃の様子などを観察してそのような結論に至ったのだとすれば矛盾はないとの反論がなされている。 次に、メールの内容に矛盾があることを認める考えがある(Ⅱ説)。 この考えの中には、メールの一行目があやせの真意に出たものではないと解する考え(ⅡA説)と、「でも」以下があやせの真意に出たものではない解する考え(ⅡB説)が存する。 これらの説は、文章の表面上の矛盾を認めた上、その矛盾に意味を見出そうとすことを指向するものといえる。 ⅡA説は、あやせが京介の発言が嘘では無いと思っている、つまり京介が近親相姦事実を認識しているとするものである。 これを前提とすると、あやせは、京介の発言を桐乃とあやせとの仲を取り持つため「嘘を装って」したものであると考えた上で、京介に対する感謝と敬意からか、近親相姦事実に関する京介の発言に騙されたふりをしつつ、それが京介の嘘であることに気づいたふりをしていることになる。 この説においては、メールは 「桐乃は貴方には渡しません! …でも、桐乃が好きっていうのは私たちのためについた嘘なんですよね? (とかいいつつ実は本気で桐乃の事好きなんだろ? 殺すぞ?)。」 と意訳できる。 この説は、ⅠC説と非常に近い考えであるといえるが、同説に比べると説明が複雑である分解釈に無理が多いといえようか。 ⅡB説は、あやせが近親相姦事実が存在しないと認識しているとする。 この説においては、あやせは、京介の発言が嘘であることを認識した上で、あえてその嘘に騙されることによって、折り合いが付けられない納得できないままでも桐乃との関係を保持することができ、メールはそのことを京介に告白するものであると解される。 この説においては、メールは 「貴方の嘘のおかげで、桐乃と仲直り出来ました。 でも、もうしばらく、貴方のついた嘘に助けて貰おうと思います。」 と意訳できる。 この説には、一行目及び「でも」以下以外の部分も含めてメール全体を調和的に解釈できるという利点がある。 もっとも、その後あやせが京介と桐乃の関係を強く警戒している事実があり、この説ではそれらの事実と矛盾するとの批判がある。 しかしこの批判に対しては、その後の桐乃と京介の様子から警戒心が生まれたとすれば矛盾は生じないし、そもそもあやせであれば何時でも誰であろうとも桐乃に近づく人間に警戒心を抱くことに不思議はないのだから、そのような矛盾は大した問題ではないとの再反論もなされている。 上記のメールの件についての回答 議論されていた上記2巻メールでの真意だが、PSP版あやせルート(原作者シナリオ)であやせの口から真意が判明した。 ただしあくまでゲームなので、原作小説も同じなのかは分からない。 しかし原作者書き下ろしのルートであるので、信頼性は高いのは言うまでもない。 詳しくは妄想/ゲーム(PSP)にて 京介の異常な愛情 ~または彼は如何にして畏怖することを歓びに変え天使を愛するようになったか~ [京介のあやせへ向けた感情の軌跡] 快活でお人好しな女の子 (2巻p85 初めて話をして) ↓ なにこの女恐ッえぇえええええぇぇぇぇぇぇええぇぇ!! (2巻p282 桐乃に詰め寄るあやせに睨まれて) ↓ あの女とは、もう二度と顔を合わせたくないもんだ。 (2巻p365 あやせから「ブチ殺します」というメールをもらって) ↓ とにかく顔を合わせたくない。 快活な笑顔の裏には『答えによってはブチ殺しますよ』という意図が隠されているに違いない。 (3巻p192~3 正月に偶然あやせと出会って) ↓ 出来る限り顔を合わせたくない相手だった。 (4巻p21 あやせから呼出しを受けて) ↓ *注 その嬉しそうな笑顔は、初めて会ったときと同じ、見惚れるほどかわいらしいものだった。 この笑顔のためなら、妹から欲しいものを聞き出すくらいお安いご用ってもんだ。 (4巻p24 桐乃へのプレゼントの相談を受けて) ↓ (あやせがメルルのコスプレをしたら)それはそれで凄く見たいし、魅力的ではあるのだろうがあやせがEXタナトスのコスプレをしたら、さぞかしエロくて人気が出るだろう (4巻p41~44 あやせにエロいコスプレをするよう必死こいて説得しながら) ↓ こんなに他人を信頼できる純粋な娘は、やっぱ珍しい。 (4巻p75 加奈子のことを嬉しそうに自慢するあやせを見て) ↓ 待ってろよラブリーマイエンジェルあやせたん。 (5巻p250 桐乃のことであやせに電話をかける名目を得て) ↓ 俺は泣いた。真っ白に力尽き、さめざめと泣いた。 世界の絶望を一身に引き受けたかのように、その場でがっくりと膝をつく。 (5巻p250 あやせから着信拒否されていたのを知って) ↓ 「結婚してくれ」 (6巻p30 あやせから相談を受ける見返りとして) ↓ 輝くような笑顔を向けてくるあやせ。マジ天使。 怖えー。あやせさん怖えー。 (6巻p36 あやせからの相談を引き受けて) ↓ 「まあ、俺っておまえのこと大好きだしな」 (6巻p69 あやせに心のたけをぶちまけて) 京介のあやせに対する感情の経過は以上のようなものであり、まとめると かわいい→怖い→天使(怖い) と簡略化できる。 また、一度恐怖心に支配された後に再度好意的な感情を抱くに至った転換点は、上記*注部分の、あやせから相談を受けた時点であるといえる。 では、何故そのような転換が起こったのか。 まずその理由の一つには、相談の内容が桐乃に関するものであったことが挙げられよう。 京介はシスコンであるので、妹を大切にしてくれる娘が憎かろうはずはないのである。 しかし、あやせがどのような形であるにせよ桐乃に対し好意を持っていることは、既に京介も十分知っているはずであるので、単に桐乃に対する好意のみをもってあやせへの感情が変化したとは考えづらい。 思うに、京介のあやせに対する感情の変化は、相談内容ではなく相談をされたことそのものをその大きな理由とするのではあるまいか。 すなわち、京介は、頼られるとその相手に惚れてしまうタイプの男なのではあるまいか。 京介は黒猫との関係においても、色々と世話を焼いてやっているうちに相手を意識しだすといった状態にあるともいえ、基本的に世話焼きタイプの男であるとは言えるであろう。 また、桐乃との繋がりがほぼ相手に世話を焼いてやるという関係にあるため、それと似たような関係に立った相手に対し、桐乃に対する感情がアンカリングされて好意を抱いてしまうという現症も起こっているのかも知れない。 このようなことから、田村麻奈実さんには、見た目を美しくするよりも甘えて世話を焼かせた方が効果的ですよ、との意見を進言したい。 桐乃2Pカラー あやせの髪型は桐乃を左右反転させたものになっており、10巻でヘアピンまで模倣したためより顕著になった。 2期13話で桐乃と初対面のときすでに現在の髪型だったことから、似せているとするとサイコレズ臭が…… 一説には、異常なセクハラは桐乃に対する欲求を外見的類似点のあるあやせで解消していたのではないか、とも言われている。 なお、電撃FCでは桐乃の色変えであやせっぽいカラーにできる。 また、京介の前髪は桐乃の左右反転になっているので、結果的に京介とあやせの前髪は同じになっている。 あやせのお兄さんラブ行動一覧(原作小説版) 京介にはじめて出会ったその日に自分から携帯番号を交換 京介を電話で呼び出して自分の部屋に招き入れ鍵を閉める(8巻p120-121) 京介に手錠をかけライターでソフトSMプレイを楽しむ(8巻p122-123) 京介に彼女ができたと聞くと「嘘つき、結婚してくれとか言ったくせに!」と発狂(8巻p127) 加奈子がマネージャーをした京介に逢いたいというと「あの女ったらしめ」と嫉妬(9巻p213) 京介の彼女を泥棒猫呼ばわりする(9巻p216) 夜電話してもなかなか繋がらない京介の入浴シーンを思わず妄想(9巻p217) いつの間にか、京介にセクハラされないと物足りなく感じるように(9巻p218-) 京介が彼女と別れたと聞いて自分のせいだと思い込む(9巻p219-220) 加奈子からのお願いをぶち切れながら京介に伝える(9巻p220-221) 冗談で「結婚してくれ」とか言われたのを分かっているのに「冗談だ」と言われるとむかっとする(9巻p223) 京介と二人っきりになるためにわざわざ朝の6時に京介のアパートに来襲(10巻P118,146) 京介のアパートのチャイムを連打、どこかから入手した合い鍵で京介のアパートへ侵入(10巻p119) 加奈子のライブ前控え室でワザと京介に顔を近づけ胸をチラ見せ(10巻p122) 京介に引越祝いの包丁を突きつけSMプレイを楽しむ(10巻p123) 黒猫を京介の元・彼女と煽り立てる(10巻p135) 京介にお弁当を持ってきた加奈子を見て激怒(10巻p188) 京介にべたべたする加奈子のスネに蹴りを入れる(10巻p191) 京介のアパートで新婚ルックでノリノリクッキング(10巻p217) 京介に共同生活と言われて同棲している恋人同士と妄想する(10巻p223) モデルの仕事で忙しいのに京介の面倒を見るためにわざわざ予定を開ける(10巻p225) 京介に「大事な話があるんだ」と言われて愛の告白と勘違して赤面(10巻p279) るんるんスキップで京介のアパートへ(10巻p301) 京介についに「好きです」と告白(10巻p347) 桐乃に「わたし、あなたのお兄さんに、告白しようと思うの」と高らかに宣言(11巻p334) 意見・批判等 ↑これ216だよな -- (名無しさん) 2012-04-11 03 34 21 胸をチラ見せは本人は顔を近づけたつもりだったはず -- (名無しさん) 2012-04-12 08 02 10 あやせのメールについては原作でも回答でたから確定だね -- (名無しさん) 2012-04-12 15 22 47 着拒されたのを大分あとで京介が知ったことに大し「今更気付いたんですか」って言ってた時は拗ねてるようにも見えたがwというかあやせは嫌いなものは本気でゴミを見るような感じになるから絶対こいつ京介のこと好きだろ、とか思ってたら本当に告白してて更にワロタ -- (名無しさん) 2012-04-18 23 21 43 桐乃から入手した合い鍵 -- (名無しさん) 2012-05-25 13 53 38 ミスった。桐乃から入手した合鍵のところ、麻奈実からを削除して差し替えたみたいだけど、正確なところがはっきりしないから「どこかから入手した合鍵」にした方がよくないかな? -- (名無しさん) 2012-05-25 13 55 37 カギの入手先は桐乃か麻奈実しかないんだけど,いくらあやせでも桐乃にカギくださいとは言えないだろう.麻奈実以外にはないんじゃないの? -- (名無しさん) 2012-05-26 00 00 18 あやせ噛ませにされるのー? -- (名無しさん) 2012-06-29 22 46 09 京介部屋の鍵はおそらく佳乃さん→麻奈実→あやせの流れ -- (名無しさん) 2013-02-02 22 57 09 それだと鍵の入手先を口ごもる理由が分からないんだよな。まなみから入手したんなら「お姉さんからお借りしました」でいいわけだし -- (名無しさん) 2013-02-18 17 33 16 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/365.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293190574/612-627 ある日、いつものように俺が学校から帰ると家の前から救急車が 走り去って行くところだった。 急いで家にはいると、お袋が玄関で呆然として座り込んでいた。 「お袋!何があった!しっかりしろ!」 俺はお袋の肩をつかみ聞くが 「…桐乃が…桐乃が…」 と呟くだけで埒があかない。 とにかく桐乃に何かあったことだけは確かなので、 親父に電話してお袋にどこの病院に行ったのかを無理矢理聞き出し 家を飛び出した。 病院に着くとそこはさながら戦場のような有り様だった。 次々と運ばれてくる患者に医者と看護士が応対しているが、 患者の数が多く対応仕切れてない。 呆然として病院のロビーを眺めていた俺の横を一台のストレッチャーが走り抜ける。 そのストレッチャーの上の患者を見て、驚きの余りに俺は目を見開いた。麻奈実だ。 「おいっ!麻奈実!しっかりしろ!どうしたっ!何があった!」 そう言って麻奈実に近付こうとするが看護士に遮られて近づくことができない。 「離せっ!なんで麻奈実が!いったい何が起きてるんだ!!」 「落ち着いてください!今患者に近づくのは危険ですっ!!」 そう言って看護士が俺を羽交い締めにしてくる。 「アイツは俺の幼馴染みなんだ!それに危険ってのはどういうこった!?」 俺はとにかく麻奈実に近付こうと足掻くが近付くことは出来なかった。 「アナタ今の患者さんと幼馴染みなんですね!?本当に!?」 看護士が突然顔色を変えて聞いてくる。 その豹変ぶりに驚きながらも俺は答えた。 「ああ、今運ばれていった奴とは幼馴染みだし、此処に俺の妹が運ばれてきている筈なんだ。 なあ、いったい何が起きているか教えてくれないか?」 看護士は俺の話を聞くと押し黙って何か考え始めた。 そして俺の腕をとり何処かに連れて行こうとする。 「すみませんが、これから一緒について来てもらえますか? そこで今回の事の説明もしますから」 そう言って看護士さんが俺を引っ張って行く。 とりあえず今起きていることを説明してもらえるらしいので 俺も大人しくついて行くことにした。 並んでいる診察室の一つに入れられ 「今先生を呼んできますからちょっと此処で待ってて下さい」 そう言って看護士さんが診察室から出て行く。 俺は不安な心を押し殺してとにかく先生が来るのを待った。 どのくらい待っただろう、1分が1時間にも感じられる中ようやく先生がやってきた。 「先生!いったい何が起きているんですか!?なんで家の妹や麻奈実が 運ばれてきてるんですか!?今すぐ説明してください!」 俺は先生の顔を見たとたんにそう叫んだ。叫ばずにはいられなかった。 「取りあえず落ち着いてください。これからその説明をしますから」 そう言って先生が俺を宥める。 「落ち着いてなんかいられませんよ!妹が救急車で運ばれたと思ったら、 幼馴染みまで運ばれてきてるんですから!とにかく何が起きているんですか!?」 先生に詰め寄って言うが押し留められる。 「いいから落ち着いてください。その説明をするために貴方にも 協力してもらわなくてはなりません」 「協力?」 説明をしてもらうのに何故俺の協力が必要なんだ? 俺は訝しげな表情で先生を見た。 「はい。協力です。これからアナタの血液と汗を採集します。 それから今貴方の着ている服を貸してください。 これは今起きていることを説明するのに必要なんです」 そう言って先生は俺を真剣な眼差しで見てきた。 とにかく今の状況を説明する為には俺の血や汗が必要らしい、後なぜか服も。 俺は疑問を覚えながらも協力する事にした。変に拘っている場合ではないのだ。 「服は取りあえずこれに着替えてくれたまえ。あ、下着も用意するから換えくれたまえ」 そう言って先生はサイズを聞いて看護士さんに用意するように伝える。 用意された下着と服(と言っても入院着だが)に着替え、 血と汗を採集された後、同じ診察室で待っていた。 暫くしてから先生が戻ってきた。俺は今度こそ今回の事を説明してもらえる と思い居住まいを正す。 「待たせてすまないね。結果が出たんで今回のことを説明しようと 思うが良いかな?」 椅子に掛けながら先生が俺を見ながら言う。 「はい。お願いします」 俺も緊張した面持ちで答える。 「先ず今回の事だが、あるウィルスによるものでね… このウィルスが市内で爆発的に増殖感染しこの騒ぎになったんだ」 「ウィルス?」 「そう、ウィルスだ。しかも今現在も感染者は増殖中だ」 厳しい顔で先生が言う。 「いったい何のウィルスなんですか? それに…そのウィルスに桐乃や麻奈実も感染してるんですか?」 なんてこった!!桐乃や麻奈実がそんなウィルスに感染してるなんて… そして俺もそのウィルスに感染してるんだろうか? 「先生…そのウィルスに俺も感染してるんでしょうか?」 不安になり思わず聞いてしまう。 「イヤ、君は感染はしてないよ。このウィルスは思春期の女性にしか 感染しないウィルスでね…だから男である君は大丈夫何だが…」 そこで先生が言い淀む。 「とりあえず、患者を見てもらおう。その方が説明し易い。コッチに来てもらえるかな」 そう言って先生は俺を隔離病棟へと案内した。 病棟内の病室は一部がガラス張りで内部がよく見えた。 その中の一室の前で先生が立ち止まり、俺も立ち止まって病室の中を見る。 「このガラスはマジックミラーになっていてね、 向こうからは見えないようになっているんだ」 先生の説明を聞きながら俺は病室の中を凝視していた。 病室の中には桐乃がいた。桐乃は起きていてベットの上で座っていた。 「桐乃…」 俺は病室の中の桐乃を痛ましげに見やりながら呟いた。 桐乃は不安げ様子で病室内を見回している。 すると病室の壁の一部に設えられた小窓らしき所から何かが病室に入れられた。 それは布のような物でなんか見覚えのある物だった。 その布切れに桐乃はフラフラとよっていき手に取る。 「あれは…なんで!?」 それは…その布切れは…さっきまで履いていた俺のパンツだった。 「なんで!?なんで俺のパンツが桐乃の所に!?先生!どうゆう事なんですか!?」 「まあとにかく見ていたまえ。見ていれば解るから」 驚いて詰め寄る俺を押し止めて病室の方を見るように促してくる。 訝しく思いながらも俺は病室を、桐乃を見た。 するとそれまで普通にしていた桐乃の様子があきらかに変わっていた。 『……スンスン…スンスン…ハアー…』 ガラス窓の横に付けられたらスピーカーから病室内の音が聞こえてくる。 桐乃は顔を近付けて俺のパンツの臭いを嗅いでいる。 『こっ…これは…間違いない。兄貴のパンツ…』 桐乃の口から呟きが漏れる。俺はそんな様子をただ眺めていた。 「そろそろ症状が現れ始める筈だ。よく見ていたまえ」 先生が俺を横目で見やりながら言う。 「最初はちょっとショックを受けるかもしれないが…しっかりと受け止めてほしい」 先生は俺を気遣ってそう言ってくれたが俺はもう先生の事を 気にしてなんていられなかった。 ガラス窓の向こうで桐乃は俺のパンツに顔を埋めて肩を震わせている。 『……!……っ!?』 そのうちにスピーカーが桐乃の小さな呟きを拾って流し始める。 『…パ…パンツ…アニキノパンツ…』 それまで小さすぎて聞き取れなかった桐乃の呟きが聞こえ始めた。 何だか嫌な予感が俺の頭をよぎる…。そしてその嫌な予感はスピーカーから流れてきた。 『…ンフ…ンフフフフ…兄パンゲットォォオォォオォォオォォオ!! なんで!?なんで此処に兄貴のパンツがあんの!? でもこの臭いは間違いなく兄貴のだよね!? キモッ!キモッ!こんなとこまで来てアタシにパンツの臭いを嗅がすなんて 変態っ!!鬼畜っ!!マジ病気っしょ!?』 そんなことを叫びながら桐乃は病室の中を右へ左へと転げ回っている。 『ンハアァァァ……兄貴の臭いがアタシを犯してるぅぅぅ… 妹犯すなんてマジ変態っ!!マジ鬼畜っ!!そんなに妹にちんぽしゃぶらせたいの!? そんでザーメン飲ませたいの!?キモォォォ!妹にザーメン飲ませたいなんて マジ病気っ!!死んでいいからっ!!あっ!でも駄目っ!!兄貴死んだら駄目っ!! 兄貴死んだらアタシが生きていけなからぁぁ…好きぃ…兄貴大好きぃぃ』 あまりのことに俺は呆然として桐乃を見ていた。 シャッとカーテンが引き下ろされる。俺は呆然としたまま先生を見た。 「驚いたかね?まあ無理もないか。妹さんのあんな姿を見てしまったんだからね…」 先生はそう言いながら隣のガラス窓に近付いていく。 俺はフラフラと先生の後をついて隣のガラス窓に近付いた。 「実はね、この患者も君の関係者だと思うんだがね。ちょっと見てくれるかい?」 そう言って先生はガラス窓に掛かっていたカーテンを上げていく、 その先には桐乃の親友のあやせが俺のシャツを自身の身体にまとわりつかせていた。 『変態っ!!変態っ!!やっぱりお兄さんは変態ですっ! わたしに抱きついて何しようとしてるんですかっ!通報しますよ!? こんな臭いを嗅がせて…おかしくなっちゃうじゃないですか!?』 「彼女が此処に来たときには意識が有ってね、君の妹さんを見て 自分の友人だと言ってたし、症状も同じ感じだったんで 君のシャツを渡したらこうなってしまったんだ」 スピーカーのスイッチを入れながら先生がそう言ってくるが 俺はそんな先生の話を聞いちゃいなかった。 『全く、お兄さんはわたしにこんな事をしてどうするつもりなんですか!? こんなセクハラしてっ!ぶち殺し…』 ただ呆然と見ていた俺の前にカーテンが下ろされ、 スピーカーから流れていたあやせの声が聞こえなくなる。 それでも俺はまだガラス窓の方を見ていた。 「クンカウィルスだよ」 先生やるせなさげに言ってくる。 「クンカ…ウィルス?」 「そう。クンカウィルスだ。君の妹さんと今見た新垣あやせさん。 それから幼馴染みの…田村麻奈実さんだったかな? はクンカウィルスに感染してるんだよ」 先生が桐乃達が感染したというウィルスの事を俺に話し始める。 「このウィルスが発見されたのはごく最近でね。まだそれ程詳しい事は 解っていないんだ。」 「感染した人間が執着している人、物、動物とにかくその感染者が 拘っているモノの臭いを嗅いで廻るんだ」 「このウィルスは致死性は低いものの、興奮作用が強くてね。 それに一定時間を過ぎ、その間に自身の執着物の臭いを与えられないと 頭痛、吐き気、目眩、幻視、幻聴とまるで麻薬患者のような 症状を診せるんだ」 先生が淡々と症状を語ってくる。 「ワクチンは…有るんですか?」 俺は一縷の望みを賭けて聞いてみるが、先生は黙って首を横に振った。 「さっきも言ったようにこのウィルスはごく最近…3年前に発見されたばかりでね、 症例も少なく、研究も遅々として進んでいないんだよ」 先生の言葉に俺は身体の力が一気に抜け、 その場にへたり込んでしまう。 「…じゃあ…じゃあ、桐乃達はずっとこのままなんですか…?」 俺は全てが終わったような絶望感に満ちた声で呟いた。 「君がそんな事でどうする!?君がそんな風に諦めていたら 治るものも治らないじゃないか!」 先生が俺を叱り飛ばす。 「でもワクチンは無いんですよね?それなのにどうやって治すって言うんですか?」 「この感染症はさっきも言ったように致死性は低い。 それに研究が進んでいないと言っても全く進んでいない訳じゃない。 米疾病予防管理センター(CDC)や世界中で研究もされている。 そして、自然治癒した例もある。絶望するにはまだ早い」 先生が俺の目を見て真剣に言ってくる。 …へっ、俺が感染してるワケじゃないのに諦めてどうすんだってな。 「わかりました先生。俺が出来る事なら何でも協力しますからあいつ等の事 よろしくお願いします」 「うむ、全力を尽くそう」 それが俺と…イヤ、俺達とクンカウィルスとの闘いの幕開けだった。 [完]
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/157.html
その日、学校に着いた俺は、異様な光景を目にすることになった―― 教室、廊下、階段……校舎の至るところでカップルがいちゃついていたのだ。 ある者は頬を寄せ抱き合い、ある者はパートナーを膝に乗せ語らい、またある者は―― いや、具体的に文字にするのは憚られる……まぁ、そんな具合だ。 一緒に登校した麻奈実も、目をぱちくりさせている。 「なんだか……みんなすごく仲良しになっちゃってるね……」 「ど、どうなってるんだ……これはまるで――」 キラッの呪いじゃないか、と、俺は麻奈実に聞こえないぐらいの小声で呟いた。 教室に入って自席に着くと、ちょうど教室の出入り口に黒猫の姿が見えた。 駆け寄る俺を見て、黒猫は安心したようにほっと息をつく。 「どうやら先輩は無事のようね」 一年生の黒猫が俺の教室までわざわざ来るのは珍しい。 今はそれほどの異常事態ってことだ。 「こりゃ、一体どうなっているんだ?」 「一年生のクラスでもカップルが急増していて、ここに来る途中に覗いた二年生の階も似たような感じだったわ」 「なぁ、これってやはり……」 「ええ、どう考えてもキラッの仕業よ。ついに再開したようね」 黒猫は廊下の窓から外を眺めながら言った。 俺がそれに倣って外の様子に目をやると、そこには何組かのカップルが仲睦まじく寄り添っている様子が見てとれた。 クッ……あいつら屋外でまで…… 「それにしても……これは酷い……」 以前にも、うちの学校にはキラッの呪いを受けたと思われる何組かのカップルがいた。 だが今日の状況は、あまりにも規模が大きく、なによりそのカップルの“性質”がまるっきり違っていた。 「あの莫迦女、まさか新しいジャンルのエロゲに手を出したのかしら」 「まさかな……。しかし酷い光景だ」 「ええ、凄まじいわね……」 「なぜ男同士で――」 そう、学校内で繰り広げられているカップル達の睦み合い――それはいずれも男同士のものだったのだ。 「とりあえず教室に戻るわ。また昼休みに」 そう言い残し、黒猫は自分のクラスへと戻って行った。 それと入れ替わるように、ちょうど登校してきたクラスメイトの赤城浩平が俺に話しかけてきた。 「おいおい高坂、なんか学校の雰囲気がおかしくねえか?急にホモっぽくなってるぞあいつ等」 念のため、俺は赤城をまじまじと観察する。 うむ、どうやらこいつは呪いに掛かっていないようだ。 「ああ、俺が来たときにはもうこの状態だった」 「な、なんておぞましい光景だ……」 赤城は辺りを見回して青ざめている。 家庭の事情で、俺なんかよりよっぽどホモに耐性のあるこいつがこの反応なのだから、 今の状況がどれだけ異様かってことは、“推して知るべし”だろう…… その日の昼休み―― 俺は教室を飛び出すと、一目散に部室へと向かう。 部室の戸を開けると、すでに中では黒猫がパソコンに向かっていた。 俺は黒猫の隣に腰掛ける。 「なぁ、今日のこの状況、キラッだとしても何かおかしいと思わねぇか?」 「――先輩、その前にちょっとこれを見て」 黒猫は俺の問いには答えず、パソコンのモニタを指差す。 そこにはいつもの“呪いの掲示板”のスレッドが映し出されていた。 299 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 08 47 37 県立千葉弁展高だけど、今朝から校内がホモカップルだらけになってる! キラッがやったのか・・・? 300 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 09 07 11 同じく やばいこわい 301 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 09 31 39 アッー! 302 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10 01 00 俺も千葉弁展高校 何が何だかわからない…… 303 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10 03 56 すまないがホモ以外は(AA略 304 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10 19 22 俺のダチがなぜかホモになってしまった@千葉弁展 ここの奴のせいか?答えろよ!! 303 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10 24 04 俺もホモにされたらどうしよう(((;゚д゚))) 「これは……うちの学校の奴らが書き込んだのか?」 「ええ、おそらく学校から、携帯で書き込んだのでしょうね。 ただ気になるのは、うち以外の学校からの報告が今のところない点……」 「そういえばそうだな……」 いままでも呪いの影響範囲の偏りはあったが、それはキラッ――つまり桐乃が 身近な対象に呪いを掛けていた当初のことだ。 そのときは桐乃の中学校を中心にカップルが量産されていたのだが…… 「それと、以前のように掲示板でカップル化の依頼を受けるやり方ではないわね。 今日起きているカップル化は、キラッ自らの判断で行っているみたい」 「そうだな、キラッを名乗る書き込みは相変わらず無いようだし……」 あの自己顕示欲の強い奴が、ホームグラウンドとも言うべきこの掲示板をシカトして 黙々とカップル化を進めるだろうか? それになんといっても、新たに呪いを掛けられた連中は、ことごとく男同士でカップルになっている。 あいつにそんな趣味があったとは思えないのだが……一体どうしちまったんだ? 「逆に女同士のカップルがいるわけではないし、どうやら意図して男同士のカップルを作っているようね」 ハァ…… あいつ、マジでホモゲーとかに手を出したんじゃないだろうな? 絶対にありえないと言い切れないところが、兄として情けないぜ…… 俺は独り言のように、ぼそっと呟いた。 「……これ、本当にあいつの仕業なのかな」 そういう言い方をしたのは、桐乃=キラッ説を未だに受け入れられない往生際の悪い兄、という風に 受け取られたくなかったからだ。 まぁもちろん、俺の呟きに対する黒猫の反応を待っていたのだけど。 「そうね、私も疑問に思ってるわ。手口があまりにも違うから……まるで別人になったような……」 そこまで言って、黒猫は口をつぐみ、考え込んでしまった。 どうやら黒猫も俺と同じことを考えているようだ。 少なくともこの無差別なホモカップル化を、桐乃がやってるとは思えない。 もし本当にうちの高校だけで起きている現象なのだとしたら、いつものような名前や顔写真のタレコミも無しで、 桐乃の奴がうちの生徒達を把握できるはずが無いからだ。 今、カップル化を行っているのは桐乃ではない。それが今回の推理の大前提になる。 じゃあ、誰がやっているのか? こんなことできる奴が、桐乃以外にもいるのだろうか? 桐乃のように、ある日突然能力を身に付けたのか? それは誰から、どうやって? ……そう考えると、どうしてもそこで推理が行き詰ってしまう。 なぜなら、俺達は“呪い”のシステムについて、あまりにも無知だからだ。 どんな方法で呪いを掛けているのか、どのような条件が必要なのか、どうやってそれを会得するのか……等々。 しばらく黙り込んでいた黒猫も、同じ結論に辿り着いたようだ。 「やはり魅了<チャーム>の呪いについて知らなければ、どんなに推理を巡らせても結論は出ないわね」 「そうだな、同感だ」 だが、どうやって…… 目の前で呪いを掛けてもらえれば話は早いが、そんなことは不可能だろう。 そうだな、ここは黒猫の妙案に期待したいところだ。 「そうね、先輩。 こうなったら――」 黒猫は俺の瞳をまっすぐに見つめ、不敵な笑みを浮かべた。 こういう時のこいつは、俺には思いつかないような素晴らしいアイデアを練り出してくれる。 俺も一緒に不敵な笑みを浮かべ、黒猫の次の言葉を待った。 「――あの女の部屋に忍び込んで、なにか呪いの痕跡を見付けてきて頂戴」 うおおおおおおい!! 俺は思わず椅子からずり落ちてしまった。 「期待したのにっ! 何だよその大雑把な作戦はよ!」 ずっと慎重にコトを運んでいたというのに、いまさら家捜しとか……それって思いっきり本末転倒じゃないか!? 「しょ、しょうがないでしょ。もう他に手が無いのだから」 「そうだけどさぁ……俺に妹の部屋に忍び込めってのかよ……」 「いままでは悠長に構えていたけれど、キラッの無差別攻撃が始まったからにはやむを得ないわ。 先輩だっていつターゲットになるかも知れないのよ?」 「ターゲットって?」 「つまり……その……貴方もホモカップルの片割れに……」 クッ、なんて嫌なことを言いやがる…… 俺は渋々、この高難度かつ不名誉なミッションを拝領することになってしまった。 ◇ ◇ ◇ 「……桐乃、なんだか元気ないね?」 学校の帰り道、あたしの腕に両手を絡めて歩くあやせが、心配そうに顔を覗き込んできた。 ちなみに反対の腕には加奈子がひっついている。 二人がデレ状態になってからというもの、すっかりおなじみの下校スタイルだ。 「ううん、別にそんなことないよ」 そう答えつつも、あたしは自然とため息をついていた。 はぁ……、デレノートのことを考えると、どうしても憂鬱な気持ちになってしまう。 あんな危険なノートをあたし以外の人間が使うだなんて…… マジやばすぎるでしょ…… 一応、ノートを渡す条件として、あたしやあたしの家族には手を出さないよう約束をさせたけど、 そんな約束が気休めにすぎないのは分かってる。 とにかく、なんとかしてノートを取り返さないと…… 「桐乃っ、悩み事があるなら加奈子に相談しろよな」 「あっ、ずるい加奈子!桐乃、わたしに相談してっ!」 そういうと、あやせも加奈子も争うように強くしがみついてきた。 二人は相変わらずだ。 帰宅してカバンを放り投げると、あたしは着替えもせずベッドに横になった。 はぁ、ホントどうしたらいいのかな…… ごろんと寝返りを打つと、帰るなりそそくさとノーパソを立ち上げるリュークが目に入った。 「ねぇ、あたしどうしたらいいと思う……?」 『ん?すっかりお手上げ状態か?ククク……』 そう言うと、リュークは頬まで裂けた口を吊り上げ、嫌らしい笑みを浮かべた。 どうやらこいつは、デレノートがどこに行こうとあまり気にしてないみたい。 「……ってか、あんたはノートの持ち主のところに行かなくていいの?」 『そうは言っても、俺にだってノートがどこの誰の元にあるのか分からないしな』 あの日、あたしはノートを郵送で送ったけど、指定された宛先は局留めだったので、相手の住所は分からなかった。 おそらく宛名も偽名なのだろう。 『それに、デレノートの所有権はまだお前にある。だから俺がここに居るんだ』 「なによ?所有権って」 『ノートの持ち主はお前だってことだ。つまり、いまは他人に預けているような状態だな』 「じゃあ、たとえばさ、所有者の権限でノートを呼び戻したりできないの?念じたら瞬間移動してくるとかさ」 『そんな便利なシステムはない。……お前はアニメの見過ぎだな』 それじゃ所有権なんて何のメリットもないじゃん。 やっぱりこいつは頼りにならないなぁ…… ノーパソが起動したらしく、リュークはもう画面に釘付けになっている。 しばらくすると、携帯の着信音が鳴り響いた。 携帯のディスプレイには、いつものように“非通知通話”の文字。ああ、またか…… あたしは着信ボタンを押し、気だるそうな声で応えた。 「もしもし、またアンタぁ?」 『ちょっとちょっと、桐乃ちゃん聞いてよー!またカップル作ったんだけどさぁ――』 聞こえてくるのは相変わらず不愉快なボイスチェンジャーの声。 そう、電話の相手はあたしからデレノートを奪った張本人だ。 妙なことに、こいつはあれから毎日電話を掛けてきている。 『――なんか皆おとなし過ぎて物足りないのよ。なんていうか、ナヨナヨしたカップルばかりで。 あたしはもっとガツガツした男と男の熱いぶつかり合いを期待してたのに!』 「……デレにするノートなんだから、ガツガツってのはちょっと違うんじゃない?」 『えーっ?デレってそういうものだったっけ?』 こいつ、最初の電話のときから随分キャラが変わってきたような…… 「ってか、なんで電話してくるのよ。あたしを脅迫してノート奪ったって自覚はないの?」 『えーっ、だってこんな話ができるのは桐乃ちゃんしか居ないし』 “桐乃ちゃん”って……馴れ馴れしい…… 完全に舐められてるわね…… しかもこいつは、よりによって男同士でカップルを作っているらしい。 クッ……、あたしはとんでもない変態にデレノートを渡してしまった……胸が痛むわ。 『ねぇ、これって“攻め”とか“受け”とか指定できないの?』 「……そんな使い方したことないから分かんないよ」 リュークに聞いたら何か教えてくれるかもしれないけど、面倒だし、敢えてそれはしなかった。 こいつにはまだデレ神の存在は伝えていない。 別に隠そうとしたわけじゃなくて、特にノート入手の経緯を聞かれたことがなかったからなんだけど。 『なんだか期待したほど便利なノートじゃなかったなぁ~』 人から無理やりノートを奪っておいてこの言い草、大したタマだわこの女。 「アンタさぁ、ノートに飽きたならもう返してよ」 『そうはいかないわよ。これはもうあたしのノートなんだし、これからもカップルを作るんだから』 「……と、とにかく、あの約束はちゃんと守りなさいよね?」 『はいはい、分かってるわよ』 あたし達は、いつも最後にこんなやり取りを交わしてから電話を切る。 約束ってのは、“あたしやあたしの家族に手を出すな”ってコトなんだけど、向こうすれば律儀に約束を守る意味などない。 むしろ、ノートの秘密を知る邪魔者として、いつあたしが口封じにデレさせられるか分かったもんじゃないし。 はぁ、ホントなんとかしなくちゃ…… このままじゃマズいよね…… ◇ ◇ ◇ 黒猫から指令を受けた俺は、不本意ながら桐乃の部屋に忍び込むハメになってしまった。 はっきり言って、こんなやり方は俺のポリシーに反している。 かつて親父による桐乃部屋の家捜しを、身体を張って阻止したこともあるってのに…… まぁ、いま起きてるカップル騒動――しかもホモカップル騒動――は確かにシャレにならないから、 やむを得ないこと……それは理解している。 重要なのは、桐乃に絶対気付かれないようにしないといけないってことだ。 万一バレたら、俺まで呪いを掛けられる恐れがあるからだ……信じたくないことだけど。 夜、俺はいつもより少し早めにベッドに入って横になった。 俺の作戦はこうだ。 桐乃の奴は、いつも俺よりも30分~1時間ぐらい早く登校をする。 俺は普段よりちょっと早めに起きておいて、桐乃が家を出るのを待って部屋に忍び込み、ガサ入れを遂行する。 うむ、実にシンプルな作戦である。 桐乃が確実に家を出たのを確認するってのと、部屋に入った痕跡を残さないようにする、 その点を気をつければきっと大丈夫だろう。 許せ妹よ、俺には大義があるのだ―― そんなことを考えながら、俺はいつの間にか眠りについていた。 そしてその日の深夜―― バチン! すっかり熟睡していた俺は、突然の頬の痛みで目を覚ました。 な、何だ!?どうやら平手打ちを食らったらしいが…… 俺は寝起きの鈍い頭で状況を把握しようと努める。 「……っ!?」 起き上がろうとするが、腹部に重みを感じて起き上がれない。 と、そこで俺は目を見張った。 いま俺の上では、パジャマ姿の桐乃が四つん這いの状態で、顔を接近させて覆いかぶさっていたのだ。 「って、おまえ……またかよ!?」 「……静かにしてってば。いま何時だと思ってんの?」 このシチュエーションは、以前にも覚えがある。 そう、こいつが初めて俺に人生相談を持ちかけたときのこと。 同じように深夜に襲撃を受けて、半ば強制的に部屋に連行の上、とんでもないカミングアウトを受けたんだ。 「アンタに、また……人生相談があるからさ」 桐乃はベッドを降り、音を立てないよう静かに部屋のドアを開けると、犬でも呼ぶように指で手招きをした。 どうやらまた、俺に拒否権はないようだ。 桐乃は俺を自室に連行すると、床にクッションを無造作に放り投げ、そこに座るよう促した。 ここ最近は兄妹でゲームすることもなかったので、桐乃の部屋に入るのは本当に久しぶりだ。 しかし、朝になったら忍び込むつもりだったので、いまここに居るのは妙な気がするけど。 俺はベッドの上に腰掛ける桐乃に問い掛ける。 「んで、なんだよ……人生相談って?」 「あ、うん……ええっと……」 桐乃は口篭っていて、なかなか今回の人生相談の中身を話そうとしない。 その間、俺は脳内フル回転でこの後の展開を予想していた。 桐乃の相談――またアニメやエロゲのことだろうか? いや、最近はこいつゲーム自体してなさそうだったし、それに今更改まって相談するようなことでもないだろう。 となると、学校関係?はたまた友人関係とか? それともまさか…… 「あ、あのさ。前にアンタと話した……キラッの話って覚えてる――?」 その言葉を聞いて、俺は戦慄した。 やべえ、嫌な予感がジャストミートでクリーンヒットしてしまったかもしれない。 桐乃部屋への侵入作戦の前夜、就寝中にまさかの逆侵入を許してしまい、 機先を制された俺に待っていたのは、これまでになくヘビーな予感のする人生相談だった。 なんなんだよ、この展開はよ…… とりあえず、下手なことだけは言わないよう気を付けねぇと…… 「ねぇ、キラッって覚えてるかって聞いてるんだけど――?」 「あ、ああ。例の掲示板の――キラッだよな?」 「うん、そう……。実はあたし、ずっと秘密にしてたことがあるんだ……」 さっきまでの横柄な態度はどこへやらで、桐乃の表情は神妙な面持ちに変わっていた。 それにしても、まさかこいつの方からこの話題を振ってくるとは…… だけど兄貴としては……この先を聞きたいような、聞きたくないような、とても複雑な心境だ。 「えっと、驚かないで聞いてよね――」 ゴクリ、と俺は生唾を飲んだ。 それから10分ほどが経過したが―― 俺は次の言葉を身構えて待っていたのに、桐乃はなかなか口を開こうとせず、部屋は沈黙に包まれていた。 この間、桐乃はずっとひとりで身悶えている。 おそらくこいつの中では、葛藤との戦いが繰り広げられているのだろう。 でも、俺はこいつがキラッだという事実をとっくに知ってるわけで、 いまさら何を言われても驚かない自信があるんだけど…… 逆に、自然な驚きのリアクションを取れるよう、さっきから繰り返しイメトレしてるぐらいだ。 そんな状況にたまりかねた俺は、先に口を開いた。 「なァ桐乃、そろそろ話してくれないか……?」 そう言ってもなお、桐乃はウンウン唸っていたが、 しばらくすると何か諦めたように首を横に振り、ハァとため息をついた。 「やっぱりやめとくわ。……ごめん、部屋に戻って」 って、おい!なんだよそりゃ!? 「待て待て!夜中に叩き起こしておいて、それはねぇだろ!」 「だ~か~ら、ごめんって言ったじゃん。ホラっ」 桐乃は立ち上がり、部屋のドアを開くと、俺に出て行くよう促した。 クッ、なんて身勝手な妹だ……知ってたけどよ。 だけどキラッに関する話で、「秘密がある」「驚かないで聞いて」とまで言われて、 ここでおめおめと引き下がるわけにはいかないだろ? 「お前さァ――また何か人に言えない悩みを抱えてるんだろ?だから俺に相談持ち掛けたんだろ?」 負けじと俺も立ち上がり、桐乃の正面に立って対峙する。 「ずっと秘密にしてたことって何だよ? 言ってみろよ」 「もういいってば!あたしがもういいって言ってんだから、それでいいでしょ?」 「よかねぇよ!お前、悩み事があるんだろっ!?」 「アンタしつこい!ウザい!あたしに悩みなんかないっ!」 ああ、こりゃ完全に押し問答だ。 こんな状態じゃ、もうまともな話が出来るはずがない。 ……だけど、キラッ事件の自供までもう少しだったかもしれない、という思いに、 深夜特有の余計なテンションも手伝って―― 俺はうっかり口を滑らせてしまった。 「――嘘つけ!それなら、なんであの掲示板に書くのをやめたんだよ!?」 部屋には再び沈黙が訪れた―― 覆水盆に返らず、後悔先に立たず、口は禍の元…… このとき俺の頭の中では、そんなことわざがピンボールのように激しく飛び交っていた。 桐乃はぽかんとした表情のまま、フリーズ状態になっていたが、 しばらくして瞳に光彩を取り戻すと、再び怒気を含んだ表情に変わった。 「……掲示板って……何のことを言ってるの?」 「えっ? いや、それは……その……」 考えろ俺!とにかく何かごまかせるよう考えろっ! 『キラッの正体を掴んでることを本人に知られたら、口封じに呪いを掛けられる』 ――俺はそんな黒猫の台詞を思い出していた。 ヤバい、このシチュエーションはヤバすぎる……っていうか最悪の展開だ! ……だが残念ながら、俺のスペック不足気味の脳内コンピューターでは、 この場を凌ぐ気の利いた言い訳など、唯のひとつも浮かばなかった。 「キラッの掲示板のことよね?……アンタ、あたしがあそこに書き込んでたって言いたいの?」 \(^o^)/オワタ そうだよな、話の流れ的にそうなるわな…… うん、もう観念したよ。煮るなり焼くなり呪いを掛けるなり好きにしろってな。 俺は覚悟を決め、その場にどしりと座り込んだ。 「ああ、そうだ――桐乃、お前がキラッとしてあの掲示板に書き込んでたことは知ってんだよ。 こんな形でバラしちまったのは俺の大ポカだけどな」 証拠を掴むどころか、逆に桐乃にあっさりバラしてしまったなんて、 もし黒猫に知られたらどれだけの叱責を受けるか分からねぇけど、俺にはもう開き直るしかなかった。 桐乃はというと、驚きのあまり金魚のように口をパクパクさせている。 「……なっ、なんでアンタがそんなことを!?」 「ちょっと思うところがあってな。ここ最近、俺なりに調べてたんだよ」 さすがに黒猫と一緒に調べてたなんて言えやしない。 あいつまで巻き添えにするわけにはいかないからな…… 「さぁ、覚悟は出来てるからよ。好きにしろよ」 俺は床に大の字になり、呆然と立ち尽くす桐乃を睨んでそう言い放った。 「はぁぁ?アンタ何言ってんのよ?」 「だから、口封じのために呪いを掛けるんだろ?……俺はお前にデレることになんのか?」 「ちょ、ちょっと!!アンタなにキモいこと言ってんのよ!?」 あれ……? なんか予想してた反応と違うな?とりあえず俺は助かったのだろうか。 桐乃は呆れたように首を左右に振ると、再びベッドに腰掛けた。 「――っていうか、アタシにはもうそんな力は無いんだからさ」 弱々しく呟く桐乃に、俺は聞き返す。 「力がないって……どういうことだ?」 「……いいわ、アンタには全部話してあげる。元々そのつもりだったし」 そう言うと、桐乃はこれまでの出来事を少しずつ、ぽつりぽつりと話し始めた。 そして俺は、デレノートという信じがたいノートの存在を知ることとなった。 名前を書くだけで他人をデレさせるノート―― この数か月の間に起きた、そんな嘘みたいなノートを巡る経緯を、桐乃はマジ顔で俺に語った。 にわかには信じられない話だが、邪鬼眼電波上等の黒猫ならともかく、 こいつがこんなことを嘘や妄想で話す奴じゃないってことは、俺が一番知っているわけだし、 そんなノートの存在でもない限り、この奇怪な事件の説明はできないだろう。 不本意ながら俺は、完全にオカルトの世界に飛び込んでしまったようだ…… すべてを話した桐乃は、力なくうなだれた。 「――ま、そんなワケで、いまカップルを作ってるのはあたしからノートを奪った奴なの」 なるほど、状況はよく分かった。 よく分かったんだが……それはそれとして、俺にはどうしてもこいつに確認しなければならないことがある。 「桐乃、お前さぁ――なんでキラッなんかやってたんだよ?」 そう尋ねると、桐乃はびくっと小さく身体を震わせた。 「な、なんでって言われても……」 「カップルを作るってのが、不思議なノートの力だったのは分かったよ。 だけど、呪いの掲示板で依頼を受けるとか、俺には正直意味が分かんねぇんだけど……」 「ちょ、ちょっと!あれは呪いじゃないってば!あたしはただ……」 俯いていた桐乃は顔を上げて、一瞬、俺に視線を合わせたが、またすぐに目を逸らせてしまった。 「……ただ単に、カップルをたくさん作れば、みんなが幸せになれるんじゃないかなって思ってたの」 なぁおい、信じられるか? 世間を震え上がらせたキラッ事件の動機が、中三女子にありがちなお花畑な発想によるものだなんてよ。 こいつ、まさか恋のキューピッドにでもなり切っていたのだろうか。 「じゃあ、お前に悪意はなかったのかよ?世間を混乱させてやろうとか、さ」 「はぁ?あるわけないじゃん。何でそんなこと――」 桐乃は抗議のため再び顔を上げたが、俺の送るジト目の視線に気づいて、うっ、とたじろいだ。 「そ、そりゃあ、……途中からはちょっと調子にのっちゃってたかもしんないケド」 「ちょっとねぇ……」 「掲示板で叩かれたり荒らされたりして、ムキになっちゃったっていうか、 そいつらにあたしの力を認めさせてやる、みたいなノリになっちゃって……」 桐乃の話は概ね理解しがたい事ばかりだが、掲示板で叩かれたこいつが顔を真っ赤にして 癇癪起こす様子だけは、悲しくなるぐらい容易に想像することができちまった。 まぁ、ある日突然、人知を超えた能力を手に入れるなんていう、 現実離れしたファンタジー体験をしたことがない俺には分からない話なんだろうけど、 過ぎた力は人を狂わせるってことなのかもしれない。 俺がため息をひとつ吐くと、桐乃はおずおずと顔を上げ、上目遣いで訴えてきた。 「――だけど、いまノートを使ってる奴は少し違うみたいなの。なんて言うか…… 最初っから自分の欲望フルスロットルっていうか……もう誰でもいいって感じで……」 「ああ、確かにそんな感じを受けるな」 「アイツから何とかしてノートを取り返さなきゃ……」 経緯はどうあれ、最終的にいま何が起こっているのかといえば、 桐乃をきっかけとして、とんでもなく危険なノートが、とんでもないイカレ野郎の元に渡っちまったってことだ。 思えば、桐乃がキラッだと判明したとき、なんとかして止めさせなければという気持ちがあったのは確かだが、 それと同時に、俺の妹だから何とかなるだろうという油断が俺にはあったのかもしれない。 もし俺がもっと早くに桐乃を問い詰めていれば、こんな危機的状況にはなってなかったかも……? と、このとき俺はそんなことを思ったのだが、直後にその考えを打ち消した。 ……いやいや、それは結果論だよな。 桐乃だって、そのノートを奪われて、初めて自分の行いを客観視できたみたいだし、 キラッとして現役バリバリだったときのこいつに干渉するのは、黒猫の言うようにリスクが大きすぎただろう。 俺はふと、机の上に置いてある、桐乃のノートパソコンに視線を送った。 ノーパソはつけっぱなしになっていて、さっきまで桐乃がプレイしていたのか、 モニタには妹系対戦獲得ゲーム『妹・真妹大殲シスカリプス』のデモ画面が映されていた。 二体の妹キャラが、様々な技を繰り出して闘っているところだったのだが、 俺はその画面にかすかな違和感を覚えた。 デモ画面にしちゃあ、一方のキャラクターの動きがCPUっぽくない……ていうか普通にプレイ中のような…… よく耳をすませて聞くと、キーボードをカタカタと打つ音もしている。 すると、俺の視線の先に気付いた桐乃が、誰もいない机に向かって言葉を投げかけた。 「ちょっとぉ、夜中はゲーム禁止って言ったでしょ!」 その言葉に反応するように、キーボードを叩く音が止み、画面内には「PAUSE」の文字が表示されている。 「桐乃、もしかして…… そこに……?」 「あ、うん。さっき話したデレ神のリューク。ノートに触れた人間にしか見えないらしいけど」 改めて机の方を向いたが、やはりそこには誰もいない。 俺は幽霊とかの類が怖いと思ったことは無いのだが、この時ばかりは寒気を感じた。 桐乃が見えない何かと会話をする様子は、傍から見りゃあ猛烈に気味の悪いもんだぜ……? 「お、お前、いつもそいつと一緒にいたのか?」 「まぁね。デレ神ってのはそういうシステムらしからさ……もちろんお風呂場とかには近寄らせなかったけど。 慣れれば別に気にならないけどね」 「そうかのか……」 「あ、リュークが兄貴に、『よろしくな』だってさ」 なんだか超常現象がぐっと身近になっちまったな…… 俺はデレ神のことはひとまず置いといて、ここで話を元に戻すことにした。 「なぁ、桐乃。色々聞かされて俺もまだ整理ができてないんだけどよ」 「あ、うん。そうだよね……」 「結局のところ、今回のお前の人生相談ってのは、この状況をどうにかしたいって事でいいのか?」 「……」 桐乃は何も言わなかったが、代わりにこくりと頷いた。 そうなると、やっぱりあいつにも事情を話して、力を貸してもらうしかねぇよな。 「よし分かった――じゃあさ、いま聞いた話を共有しておきたい奴が居るんだけどさ――」 そして翌日の土曜日―― 俺からの連絡を受けた黒猫は、“三者面談”をすべく高坂家にやってきた。 「……こんにちは」 「よう、待ってたぜ」 俺は玄関に行き、ゴスロリファッションの黒猫を出迎えた。 桐乃がキラッとしての活動にハマってたこの数か月、自然とオタクっ娘コミュニティの集まりも 無くなっていたので、学校以外の場所で黒猫に会うのは本当に久しぶりだ。 見慣れてたはずのゴスロリファッションも、今日はなんだか新鮮に映ってしまう。 俺は黒猫を連れて妹の部屋へと向かう。 ドアを開けると、桐乃はベッドの上に腰掛けていた。 「随分久しぶりね」 「あっ――うん、久しぶり……」 桐乃はちょっとバツが悪そうにして、黒猫から視線を逸らしている。 そんな桐乃を気にすることなく、黒猫は単刀直入にキラッの話題を切り出した。 「聞いたわよ。貴女、随分楽しそうな遊びをしていたそうじゃない」 「……」 棘のある黒猫の言い方に、桐乃は何も答えず黙っている。黒猫は続けた。 「思いがけず特殊な能力を身に付けた者が、考えなしにその能力を振るい、そして溺れる――よくあるシナリオね」 「……なによ……アンタ何が言いたいの?」 「ふふ、別に…… 異界の能力<ちから>に浮かれて自滅した莫迦女を哂っているだけよ」 「ふんっ、知ったようなこと言っちゃって――あっ、そっかぁ、アンタって“自称”闇世界の住人だもんね~。相変わらずの邪鬼眼乙!」 「に、人間風情が調子に乗って――!」 「おいおい、二人とも――」 二人の間に険悪な空気が渦巻いていることを察した俺は、醜い言い争いが始まる前に割って入った。 「とりあえず、今は奪われたノートの話をしようぜ。電話でも話したけど、厄介なことになっちまってんだよ」 二人は互いにそっぽを向いている。 ハァ、こんなので本当に大丈夫なのかよ…… 今朝の電話で、黒猫にはおおまかな事情を話したけれど、俺は改めて桐乃の口から一通りの経緯を説明させた。 こういうのは、相談する本人から話をするものだからな。 桐乃から、他人をデレさせる力を持ったノートや、そのノートに触れることで姿を現すデレ神という 現実離れした話を聞かされても、黒猫があからさまに驚くことはなかった。 この辺の順応性は、さすがに邪鬼眼かつ厨二な電波系少女として、一日の長があるようだ。 と俺は妙な感心の仕方をしていた。 「デレノート……デレ神……」 黒猫は腕組みをして、その単語を噛み締めるように呟いている。 「――ということは、あのときの“ノート”という言葉はそういう意味だったのね」 「えっ、あのときのって……」 「あなたが掲示板に最後に書き込んだ言葉よ。“ノートを持っているか”と」 そう、それは黒猫がキラッ――つまり桐乃をおびき出すため、自作自演をしたときの書き込みのことだ。 それを聞いて、桐乃も思い出したらしい。 「あっ、そういえばそんなことを…… アンタ、あの書き込みを読んでたんだ?」 「ええ、読んでいたわ。というよりも、あなたが私にレスを返したきたからだけど」 「ん?レスを返した……?」 今度は桐乃が腕組みをして考え込むことになった。 そして一拍置いて、その言葉の意味を理解した桐乃は勢いよく立ち上がり、黒猫を指差して叫んだ。 「に、偽キラッ!? アンタが……!」 「そうよ、あの時キラッに成りすまして書き込んだのは私」 「あ、あ、あのレスで……あたしがどんだけ悩んだと思ってんのよ……っ!」 わなわなと肩を震わす桐乃に対し、黒猫は涼しい顔で返した。 「知らないわよ、そんなこと。むしろあのレスであなたのキラッ活動にブレーキを掛けることができたのなら、 あなたは私に感謝するべきじゃなくて?」 「ぐぎぎ……」 桐乃は悔しそうに歯軋りをしている。 おいおい、あんまり露骨に悔しがられると、こっちが不安になっちまうじゃねーか。 「オイ桐乃、お前まさか、まだキラッに未練があるんじゃねぇだろうな?」 「無いってば!ただ、やり込められてたのがムカついただけ」 そう言うと桐乃は、プイッとそっぽを向いた。 そんなやり取りには付き合ってられないとばかりに、黒猫は話題を戻す。 「それよりも――デレ神とやらは……本当にここに居るの?」 俺にはなんとなく黒猫が言わんとすることが分かった。 現在、デレノートは桐乃の手元にない。となると、この非現実的な一連の話の証拠になり得るのは、 いまこの部屋に居るという“デレ神”の存在だけ。 まずはそれを確認しないと、桐乃の相談には乗れないということだろう。 だが、桐乃はこともなげに答えた。 「あ、うん。いるよ。ホラ、あんたのすぐ後ろに立っ――」 そう桐乃が言い終わる前に、「ひぃっ!?」という小さな叫び声が発せられた。 今の声の発信源は…………黒猫? 桐乃は一瞬ぽかんとしていたが、すぐさま他人の弱みを握ったような、嫌らしい笑みを浮かべた。 「あれぇ~?もしやアンタ、リュークが怖いの? 普段は闇の世界がどうのこうの言ってんのに~?」 「莫迦にしないで頂戴。こ、怖くなんてないわ……」 そう言う黒猫の声はかすかに震えて聞こえた。 桐乃はというと、口に手を当てながら人を小馬鹿にするようにニヤニヤしている。 ハァ、お前らってホントそういうやり取り飽きないよな…… 「冗談よ、冗談。いまリュークはそこの机の椅子に座ってるよ」 俺と黒猫は同時に机へ視線を向けた。だが、もちろんなにも見えない。 「そ、そう……。疑うわけではないけれど、なにか証拠を見せてもらえないかしら?」 「うーん、証拠って言っても……」 桐乃は少し考えた後に、ポンと手を打った。 「あ、そうだ。ちょっとリューク、アンタそのノーパソでメモ帳を開いて、何か文字打ってみなさいよ」 そう言うと、ノートパソコンのモニタには、すぐさまメモ帳の白い画面が表示され、 文字が少しずつ入力されていく―― 《リュークだ これでいいか?》 モニタに表示されたテキストを見て、再び俺はぞくりとした寒気を感じた。 昨夜も俺は、見えない何者かがエロゲをプレイしているところを実際にこの目で見たのだが、 そのときはまだ現実味がなく、俺とは関わりのないところでの超常現象だと受け止めていた。 だけど、こうやってコミュニケーションを取ってこられると、否が応にもその存在を認めざるを得なくなり、 自分が怪しげな世界に巻き込まれていることを無理矢理に実感させられてしまう。 俺が黒猫に視線を移すと、黒猫も強張った表情でモニタに釘付けになっていた。 だけど、そうやすやすとデレ神の存在を認めるつもりはないようだ。 「まだ……まだ証拠とはいえないわ。リモートデスクトップ機能を使ったトリックの可能性も……」 いつも闇世界だとか天使だとか悪魔だとか、現実離れした妄想の世界に生きている黒猫の反応としては意外だけど、 現実世界の理<ことわり>の下に留まろうとする努力を、まだ諦めてはいないようだ。 こいつは案外リアリストなのかもしれない、と俺は思った。 ……まぁ、そんな黒猫の抵抗も、その後すぐに潰えることになっちまったけど。 「ああ、もう面倒くさい。リューク、ちょっとそれ持ち上げて見せてやってよ」 そう桐乃が言うや否や、室内で起こった超常現象に、俺は思わず声を出して驚いた。 おい、信じられるか? ――机の上のノートパソコンが空中にふわりと浮かんだんだぜ。 そんな俺の反応を見て、桐乃は得意げに胸を張っている。 「これで信じたでしょ?もういいよ、リューク」 桐乃の言葉に応じるように、ノートパソコンは静かに机の上に着地した。 それを見ていた黒猫は、青ざめた表情のままでしばらく固まっていたのだが、 その硬直が解けると同時に勢いよく立ち上がった。 そして―― 「鬱欖檳檻樞歿汪搓槃榜棆棕椈楾楷欖棗梭樸檢殀……!」 「待て、落ち着け!ストーーップ!!」 突如怪しげな呪文を大声で唱え始めた黒猫を、俺は羽交い締めにして制止する。 こいつ、どんだけパニックになってんだよ…… 我に返った黒猫は、さっきまでより机から少し離れて座っている。やっぱりビビってやがったのか。 「ちょっとぉ~、悪霊祓いみたいな呪文唱えないでよ」 《ああ、失礼しちゃうぜ》 ……面倒くさいからお前らは黙っててくれ。 まだ青ざめてはいたが、黒猫はなんとか平静を取り戻すと、観念してこの状況を受け入れたようだ。 「分かったわ…… デレ神がそこに居るのは認めるわ……」 まぁ、目の前でポルターガイスト現象が起これば誰だってパニックになるわけで、 実際俺も十分ビビってたんだけどさ。 黒猫はコホンと小さく咳払いをすると、桐乃に尋ねた。 「そのデレ神にいくつか聞きたいことがあるのだけど、……いいかしら?」 「ん?いいんじゃない? じゃあ、リュークはタイピングでね」 桐乃がノートパソコンの方に向かってそう言うと、また画面には少しずつ文字が表示されていった。 《ああ、わかった》 黒猫はいつものポーカーフェイスに戻り、デレ神へ質問を投げ掛ける。 ここからしばらく、黒猫とデレ神リュークとの間での質疑応答の時間となった。 「いま、デレノートがどこにあるのか、あなたには分かるのかしら?」 少し間をおいて、タイピングが始まる。 《いいや、俺にもわからない》 「じゃあ、いまデレノートを使ってる人間については何か分かるかしら?」 《それも俺にはわからないな》 「もしノートを取り返したとして、そのノートをどう処分したらいいのか教えて頂戴」 《所有者が所有権を失えば、俺がノートを回収して人間界を去る。ただそれだけだ》 この所有権というのが俺にはよく分からないのだけど、昨日桐乃から聞いた話によると、 奪われはしたもののデレノートの所有権とやらはまだ桐乃にあるらしい。 デレ神が桐乃の元から離れないのはそういう理由なんだとか。 「……あなたは今回の件以外にも、過去に人間界にデレノートを持ち込んだことがあるのかしら?」 《ああ、いままでにも何度か、人間にノートを与えたことがあるな》 「ふうん……」 黒猫はそこで一旦やり取りを停めて考え込んだ。 俺と桐乃は、そんな黒猫の様子を静かに見守っている。 「……その割に、今回のようなデレ騒動は、これまで噂レベルでさえ聞いたことがないわ。おかしな話よね? 他のケースでの顛末はどうだったのか、聞かせてもらえるかしら?」 《それは》 デレ神はそこまで入力したところでタイピングを止めていたが、すぐに別の文を打ち直した。 《なかなか痛いところを突いてきたな。お前のような聞き方をしてきた奴は初めてだ》 「フッ、お褒めに与り光栄よ」 黒猫は髪をかき上げ得意顔を見せる。 傍からやり取りを見てる俺には、質問の意図も、何が痛いところなのかも分からないのだけど…… デレ神はまたゆっくりとタイピングした。 《シラけるから言わないでいたが、ノートの所有権を失うと、それまでに書いたノートの内容はすべて無効になる》 《さらに、デレノートによってデレていた者達の、デレに基づく行動の記憶はすべて消去される》 《過去のデレノートのことが人間界で知られていなかったのはそういう訳だ》 すると、そこで桐乃が割って入った。 「ちょっと、ちょっとリューク!!なによその後付け感たっぷりの設定はっ!? 前にあたしが聞いたとき、デレを取り消す方法はないって言ってたじゃん!」 《あれは個別に取り消すことはできないという意味だ。嘘は言ってない》 どうやらこのデレ神、かなりの食わせ物のようだ…… まだ文句を言いたそうな桐乃を制して、黒猫は言った。 「とにかく、ノートを取り返しさえすれば、丸く収まるって訳ね」 確かにその通りだ。 特に、すでにデレ状態に陥った人達が正気に戻れる可能性があるっていう光明が見つかったのはデカい。 後はいかにして取り返すか……だよなぁ…… 「だけど、どこの誰が持っているのかも分からないノートを、どうやって取り返すんだよ」 「私に考えがあるわ」 「……また俺に忍び込めって言うんじゃねえだろうな?」 妹の部屋への侵入ならバレても半殺しぐらいで済みそうだが、よその家に不法侵入するのはシャレになんねーぞ? ってなことを考えていると、俺の言葉に桐乃が反応した。 「ん? “また”忍び込む……って?」 「どああああ! な、なんでもないっ!気にすんな!」 あ、あぶねぇ……バレるところだった! いや、実際は未遂なんだから、俺が後ろめたさを感じる必要はないんだけどさ…… 「大丈夫よ。今度は先輩の手を借りることはないわ。私が一人でノート奪還の段取りをつけるから」 「おいおい、一人でって……」 「私に任せて頂戴――明日で、すべてのケリをつけてみせるわ」 って、明日だと!? ずいぶん急な……いや、もちろん悠長に構えている暇はないんだけど…… 「ってことは、お前にはもう犯人が誰なのか判ってるんだな?」 「ええ、それは今日話を聞いて確信したわ。……そして、ノートを奪う作戦も」 いつの間にやら、黒猫の瞳は紅く染まっていた。 「アンタ、犯人が分かってるなら教えなさいよ。あたしだって捕まえてとっちめてやりたいんだからさ」 そういう桐乃に対し、黒猫はハァとため息をついた。 「あなたに教えたらぶち壊しにされそうだから言えないわ。 それに、犯人のことやノートを奪う手段を今バラしてしまうと、抜け駆けされる恐れもあるから……」 「……抜け駆けってどういう意味よ?」 「あなたが抜け駆けしてノートを取り返して、私や先輩を排除した上でキラッに返り咲く可能性もあるということ。 私はまだあなたのことを信用していないのだから」 黒猫は冷たく言い放つと、今度は俺をじっと見据えた。 「……悪いけど、先輩にもまだ話せないわ。結果オーライだったとはいえ、 先の作戦を豪快にしくじった先輩に、今の時点でネタ晴らしするのは色々と危険だから」 クッ……その点を責められると、俺にはグウの音も出せない。 俺が口篭っていると、桐乃が反論した。 「そんなこと言ったら、アンタだってノートを独り占めして、第三のキラッになるかもしれないじゃん!」 桐乃にしてはなかなか鋭い指摘だったが、 黒猫は、引っ込んでなさい、とばかりに、「ふん」と鼻を鳴らした。 「何を言い出すのかと思えば……もしそうだとしたら、今あなた達にこんなことをわざわざ話す訳ないでしょう? 私がキラッになろうとしているのなら、一人で密かにノートを手に入れるわ」 あっさりと論破され、桐乃も俺と同じく何も言い返せない状態に。 そんな俺たち兄妹を見て、黒猫は言った。 「……勘違いさせたかもしれないけど、私一人でやるのはあくまで下準備だけ。 明日、犯人と会うときには、あなたたち兄妹にも来てもらうわ。 犯人を含め、私やあなたたち兄妹、――デレノートの秘密を知ってしまった全員の目の前で ノートをデレ神に突き返して、この事件を終わらせるのよ」 そう宣言する黒猫の気迫に圧され、俺も桐乃も無言で何度も頷くしかなかった。 ふとパソコンのモニタに視線をやると、デレ神がなにやらタイピングをしている。 《ククク、面白くなってきたじゃないか》 翌日、俺は桐乃と二人で秋葉原を訪れていた―― 別に兄妹で仲良くアニメショップ巡りとか、そういうことじゃない。 昨晩、黒猫からのメールで“決戦の場所”として指定されたのがアキバだったんだ。 俺達は目的の建物へと入り、エレベーターで三階へ。 入り口で受付を済ませると、細長い通路の奥の部屋へと案内された。 そう、ここは以前に沙織主催のパーティで借りたあのレンタルルームだ。 あの時、散々な目に遭わされた上に、仕舞いにカッコ悪く泣いちまった俺にとっちゃあ、ここは忌々しい場所だ…… ドアを開けると、中にはゴスロリ姿の黒猫が足を組み、頬杖をついてソファに座っていた。 「よう、来たぜ」 「……待っていたわ、二人とも」 黒猫は相変わらずの不遜な態度で俺たちを迎えた。 部屋に入り、中を見渡すが、まだ黒猫の他には誰も居ないようだ。 「なぁ、……桐乃からノートを奪った奴も、今日ここに来るんだよな?」 「そうよ、昨夜私が話をつけたから。もうすぐその人物が、ここにデレノートを持ってやってくるわ」 デレノートを持ってやってくるって……昨日の今日で、そんな簡単に事が進むものか? そもそも話をつけるっつっても、相手がホイホイと応じるわけがないと思うんだが…… 俺と同じく怪訝な表情をしていた桐乃が口を開いた。 「アンタさぁ、話をつけたって……一体どうやったのよ?」 そんな桐乃の言葉に、黒猫はこともなげに答えた。 「簡単なことよ。だってノートを奪う方法は昨日教えてもらったじゃない」 「ノートを奪う方法?……昨日?」 そこまで聞いて、俺はようやくピンときた。どうやら桐乃も気づいたようだ。 「あっ……もしかして……」 「そう、あなたがノートを奪われたときのやり方を、私が同じようにやっただけよ」 桐乃がノートを奪われたときのやり方……つまり、ボイスチェンジャーを使って電話を掛けて、 例の掲示板に名前をバラすぞと脅迫したってことかよ。 そう言われりゃ、その方法はすでに実績もあるわけだし、確実といえば確実かもしれない。 やられたことをただやり返すだけ―― 黒猫のノート奪還プランは、呆れるほどシンプルなものだった。 だけど、その方法はノートの持ち主が誰なのかが分かっていないと使えない。 痺れを切らした俺は黒猫に問い掛けた。 「なぁ、そろそろ誰なのか教えてくれてもいいだろ?」 だが、黒猫はこちらに視線を向けず、真正面を睨むように見つめていた。 聞こえなかったのか?と、もう一度問い掛けようとした俺だったが、黒猫がそれを制す。 「待って、先輩――どうやらおいでなすったようよ」 黒猫はじっと部屋の出入り口のドアを凝視していた。 俺と桐乃も、黒猫の視線を追って、出入り口へと視線をやる。 すると、ドアは半開きの状態で止まっていた。 俺達の今の位置からはドアの向こうは見えないが、正面に座っている黒猫には見えているようだ。 「どうぞ、中に入って」 黒猫はドアの向こうの人物に呼び掛けたが、ドアは半開きのまま動かない。 「……言っておくけど、電話を掛けたのが私だと判ったからといって、今から逃げ出したとしても無駄よ。 このままあなたがドアを閉めたら、私は即座に掲示板にあなたの名前を書き込むわ」 そう言う黒猫の右手には、携帯が握られていた。 「――それに、こちらには海外留学経験もある中学陸上の選手が居るから、 どんなに頑張って逃げても、まず逃げ切れないでしょうね」 その言葉に、半開きのドアが一瞬ビクッと動いた。 そして、黒猫の言葉に退路を断たれ観念したのか、ゆっくりとドアが開く。 いよいよお出ましか――ごくり、と、俺と桐乃は同時に生唾を飲んだ。 その人物は、うつむき加減に部屋に入り、後ろ手にドアを閉めた。 「あの電話は……五更さんだったんですね……」 恨めしそうに呟いたその人物は、 黒猫のクラスメイトで、俺にとってゲー研の後輩でもある――赤城瀬菜だった。 「あ、赤城!?」 「せなちー!?」 俺も桐乃も驚いた。驚いたのだけど―― 冷静になって考えてみると、これは「ああ、なるほど」と、実に喉越し爽やかに腑に落ちる結果だった。 うちの学校でホモカップルを大量生産する女……ううむ、嫌になるぐらい合点がいくぜ…… 「それにしても、何でお前がノートのことを……?」 そう尋ねたが、瀬菜はうつむいたまま何も話さない。 代わりに横から黒猫が答えた。 「どうやら私と先輩が部室で話していたのを盗み聞きしたようね。 昨日いきさつを聞いたとき、電話の主の話した内容があまりにも私達の会話の内容と同じだったから、 そのことから、ゲー研の部室に来そうな人物――赤城さんだと気づくことができたの」 あの日、部室の扉越しに見えた人影は、俺の気のせいじゃなかったってことか…… ということは、俺があのとき黒猫にそのことを話していれば、もしかすると少しは展開が変わってたのかもしれない。 ……そう思ったけど、今更掘り起こして黒猫に責められるのは御免なので、余計なことは言わないでおこう。 部屋の隅にいた桐乃は、瀬菜に近づいて声をかけた。 「せなちー……どうしてあたしからノートを奪ったの……?」 「桐乃ちゃん、それは……って、えええええええ!?な、何それ!!??」 突如大声をあげた瀬菜は、桐乃の方に指差したままガクガクと身を震わせ、恐怖に慄いている。 ――いや、正確には桐乃の隣、誰も居ない空間を指差している。 「あ、そっか。せなちーにはリュークの姿が見ているんだ」 「リューク……?」 「そう、最初にデレノートをあたしに与えたデレ神。ノートに触れた人間にしか見えないの」 「いやあああああ!怪物!!近寄らないでえええ!!」 瀬菜は床にへたり込んだ体勢で、桐乃から後ずさりをしている。 なるほど、デレノートに触れた瀬菜にはデレ神の姿が見えているってことか。 デレ神が見えない俺や黒猫からすれば、まるっきりコントのようなやり取りなんだけど…… でも、これはつまり、瀬菜がデレノートを奪ったというダメ押しの証拠になるわけだ。 桐乃からデレ神について聞き、実際にデレ神と一言二言話した瀬菜は少し落ち着きを取り戻したようで、 ソファーに座ってぜえぜえと呼吸を整えている。 「まったく、お前って奴は……やたらめったら手当たり次第にホモカップル作って……何考えてんだよ」 ため息混じりに俺がボヤくと、その言葉に瀬菜が反応した。 「手当たり次第なんかじゃありませんッ!!」 うおっ!!いきなりデカい声出すなよ! 俺の何気ない一言がこいつの癇に障ったのか、瀬菜は肩をいからせて反論し始めた。 「一応言っときますけど、あたしなりの緻密な考察の元にカップルを作らせていただきましたからっ!そこは譲れません」 「……緻密な考察って何だよ?」 「攻め・受けの二極化をベースに、文科系の男子と体育会系の男子や、クラス内で内向的な男子、社交的な男子 という具合にリストアップし、属性の異なる同士を、通学ルートや学内行事などでなるべく接点のある組み合わせを チョイスしてカプ化を――」 「……わ、分かった、もういいぞ」 うむ、こいつの脳が腐ってることが改めてよ~く分かった。 黒猫が今日決着をつけると言ったときは、性急過ぎるんじゃないかと思ったものだけど、 こんな危険なBL職人を放置するなんてとんでもないことだったな……。 「ちなみに高坂先輩は“受け属性”として分類していました」 「うおおおい!!おっかねぇことをシレっと言うんじゃねぇ!」 「でも、せっかく攻め×受けで組ませてカップルを作っても、みんな健全にいちゃつく程度で、 押し倒したりとかそういう展開になかなか進まないんですよねぇ……」 駄目だこの腐女子……早くなんとかしないと…… 話が迷走しそうになってきたところで、あきれ顔の黒猫が口を開いた。 「とにかく――ここに来たって事は、デレノートを返す意思があるということよね、赤城さん?」 「うっ……それは……」 瀬菜は手提げカバンを持つ手にギュッと力を込めた。 あのカバンの中にデレノートが入っているのか……? 「……し、仕方ないですね」 瀬菜は立ち上がると、フーっと大きく息を吐き、黒猫をじっと見据えて言った。 「ノートは返しますよ――“五更瑠璃”さん」 そう言い放つ瀬菜の姿は、不思議と強気に見えた。 それに、今なにか違和感が…… 「“高坂京介”先輩と、“高坂桐乃”ちゃんにもご迷惑をおかけしました」 そう言うと、瀬菜はぺこりと頭を下げた。 その時、俺は違和感の理由に気づいた。瀬菜はなぜ俺達をわざわざフルネームで呼ぶのか……? 黒猫も何か感づいたようで、俺の方に目配せを送ってきた。 と、その時、出入り口のドアに視線を移すと、閉じていたはずのドアが僅かに開いていて、 そこから何者かが室内を覗き込んでいた―― 「先輩、まずいわ!外に仲間を潜ませていたのよ!名前を書かれてしまう!」 ニヤリと笑う瀬菜―― 俺は慌ててソファーから立ち上がり、ドアへ向かって駆けた。 何者かが俺達の名前をノートに書こうとしている―― 俺は慌てて部屋の出入り口へと駆け寄った。 せっかくこの騒動が解決間近になったというのに、ここで俺達がデレさせられたら また振り出しに戻っちまう。 っていうか、事件なんて関係なしに、デレさせられること自体まっぴら御免だっての! 瀬菜が名前を読み上げてから数秒が経過している。間に合うか!? 俺はドアノブを掴むと、思いっきり手前に引く。 すると―― 「うおっ!!」 ドアの向こうに潜んでいた人物は、ドアを開けられた拍子に、ドテッと床に転がった。 「お前か……赤城……」 「よ、よう……高坂……」 その人物は、俺のクラスメイトで瀬菜の兄、“残念なイケメン”こと赤城浩平だった。 地べたに突っ伏した赤城の横には、真っ黒な表紙のノートが落ちている。 桐乃がそれを拾い上げ、パラパラとページをめくると、安堵のため息をついた。 「どうやら大丈夫だったみたいよ」 横からノートを覗き込むと、そこには乱雑に書き殴られたいくつかの名前の羅列があった。 後高 ルリ 御高 るり 後光 るり 五高 留理 五光 留理 五光 流里 なるほど……、黒猫の本名が書けなかったってわけか。 確かに、“ごこうるり”で“五更瑠璃”なんて、そうそう書けるもんじゃない。 ついでに言えば、書けない黒猫を後回しにして俺や桐乃の名前を先に書く、というような 融通が利かない奴で命拾いしたようだ。 テストで難しい問題があると、そこで詰まって時間がなくなっちまうタイプだな。 「お兄ちゃん!ちゃんとやってくれないとだめじゃない!」 「すまん、瀬菜ちゃん!……俺の漢字力では無理だった……」 瀬菜の叱責を受けて、赤城は土下座して謝っている。 これがシスコン兄貴のなれの果てか……身につまされるぜ…… 赤城家での兄の威厳は、すっかり地に堕ちているようだ。 まぁ、うちだって威厳があるかと言われれば微妙なところではあるんだけど。 「……このノート、あたしのデレノートで間違いないよ。 以前に書いたページを確認できたから」 ノートの内容を精査していた桐乃がそう言うと、瀬菜は観念したように肩を落とした。 「今度こそ回収できたようね」 黒猫は満足そうに呟いた。 そして今、俺達はテーブルの上のデレノートを囲むようにして座っている。 「じゃあ、このノートをデレ神とやらに返して、お引き取りいただこうかしら」 「ようやくこれで一件落着ってわけだな」 この数か月の間、俺達が振り回されてきた原因であるデレノート―― 桐乃や瀬菜のせいで起こった混乱は決して小さくはなかったけど、ノートを返すことで掛かっていた呪いがチャラになるなら、 これはもうハッピーエンドに相当するんじゃねえか。 満足そうにひとりで何度も頷いていた俺だったが、そんな俺に黒猫は、実にありがたくない提案をしてきた。 「……先輩、ちょっとノートに触ってみる気はない?」 「な、なんで今更ノートに触る必要があるんだよ! 触ったら……見えちまうんだろ?デレ神が……」 「妹さんとデレ神との会話を聞くためには必要でしょう? ノートを返すにしても、私かあなたのどちらかが第三者として やり取りの内容を聞いていないと不安じゃない」 「不安って、何がだ?」 「私達に分からないように何か取引をされるかもしれないでしょう。デレ神の声が聞こえるのは他に赤城さん兄妹だけなのだから」 それを聞いた桐乃がキッと目をむく。 「アンタねぇ、少しは信用しなさいよ!あたしはもうデレノートなんかに未練は無いってば」 「それなら別に会話を聞かれても構わないはずよね」 黒猫は桐乃の抗議などどこ吹く風で続けた。 「……ということで、先輩、どうぞ」 「ちょっと待て待て!なんで俺なんだよ!? こういうのに慣れてるお前こそ適任じゃないか」 「だらしないわね…… デレ神が怖いなんて……」 「お前にゃ言われたくねーよ!」 そんなやり取りをしていると、ふいに桐乃が俺と黒猫の手を取った。 「あーっ!もう面倒くさいからさ、触るんなら二人ともノートに触ればいいじゃん」 そう言って、桐乃は俺達の手を机の上のデレノートへと導く。 虚を突かれた俺と黒猫は、抵抗する間もなくノートに触れてしまった。 「「あ……」」 ノートに触った瞬間、俺は思わず肩をすくめて身構えたが、ノートが光を発するとか、 身体に電気のような衝撃が走るとか、そんなファンタジーでありがちな特殊効果は何も起きなかった。 だけど、部屋の隅に視線を移すと、そこには壁に寄りかかって立っているそいつが見えたんだ―― 長身の赤城よりもさらにデカい図体で全身黒ずくめ、逆立った髪の毛がさらにその身体を大きく見せている。 そして青味のかかった真っ白な顔面に頬まで裂けた口に、なにより特徴的なギョロリとした焦点の合わなさそうな瞳。 ……まぁ、それらを総合すると、要するに化け物だってことだ。 「うおおおおおおおおおおお!!」 あまりにも不気味な姿形に、俺は思わず叫び声を上げちまった。 こ、こんなのが何か月もうちに住み着いてたのかよ……! 「うおおおおおおおおおおお!!」 そんな俺に呼応するように、赤城も同じような叫び声を上げていた。 「うぉい!いまさらかよ!? お前はずっと見えてたはずだろ!」 「……いや、なんかさっきから驚くタイミングが見つからなくってよ」 そう言うと、このイケメンはサムアップして白い歯をきらりと光らせた。 ああ、前から知ってはいたけど、やっぱりお前はアホだよ。 黒猫はというと、デレ神の方向を見つめたまま、微動だにしていない。 微動だにしていなかったが……、しばらくしてスッと立ち上がると、両手で印を組んだ。 そして―― 「鬱欖檳檻樞歿汪搓槃榜棆棕椈楾楷欖棗梭樸檢殀……!」 「待て、落ち着け!ストーーップ!!」 またもや怪しげな呪文を大声で唱え始めた黒猫を、俺は必死に制止する。 こいつのブレのなさは尊敬に値するぜ…… とにかく、ビビったときに呪文を唱える癖は直そうな! 俺達が一通り驚きのリアクションを済ませたところで、デレ神は口を開いた。 『まぁ、そんなに怖がることはない。俺はこれでも神の端くれだからな』 嘘付け! 神っていうか、そのビジュアルはどう見ても悪魔寄りじゃねえか! 俺は心の中で思いっきり突っ込んだ。……口に出す勇気は無かったけど。 デレ神リュークは、頬まで裂けた口をさらに吊り上げてニヤついている。 顔面蒼白で震えていた黒猫は、どうにか落ち着いたようで、コホンとひとつ咳払いをした。 「……それじゃ、気を取り直して、今度こそノートをデレ神に返してもらおうかしら」 その言葉を受けて、桐乃がこくりと頷く。 桐乃はノートを手に取り、両手で胸の前に持つと、立ち上がってデレ神と向き合った。 「リューク、そういうことだから、あたしはデレノートの所有権を放棄するね」 そう言うと、桐乃はデレ神に優しく微笑みかけた。 「この数か月、なんだかんだでアンタと一緒にエロゲしたりして楽しかったよ。……元気でね」 俺や黒猫、赤城兄妹の見守る中で、デレノートを返し、デレ神が去り、すべてが終わる。 これでようやく元の日常に戻れるんだ。 ――そう思っていたけれど、事はそんな簡単に終わらなかった。 『ククク……所有権を放棄? 何を言っている』 デレ神リュークは小馬鹿にしたように嘲笑っている。 部屋の中に不穏な空気が漂い始めているのを俺は感じた。 デレ神の意図のみえない言葉に、桐乃は食って掛かった。 「えっ、アンタこそ何言ってんのよ。昨日そう言ったじゃん。 所有権を放棄したらノートを回収して人間界を去って、これまでのデレも無効になるって」 『俺は、所有者が所有権を“失ったら”と言ったんだ』 「だから失って良いって言ってるじゃん。何が違うのよ?」 するとデレ神は呆れたように言い放った。 『そんな放棄宣言なんかで、俺がすんなりデレ神界に帰ると思ったのか? デレノートの表紙裏に書かれたルールに従わなければ、所有権の喪失はありえないし、 俺がデレ神界に帰ることもない』 「表紙裏のルールって――」 桐乃が机の上でデレノートを開き、表紙裏を確認する。 俺達もノートを覗き込む。 そこに書かれていたルールとは―― 《デレノートを持っている限り、自分が誰かにデレるまで元持ち主であるデレ神が憑いてまわる》 デレノートを手放し、デレ神と縁を切るための条件 ――それは、デレノートの持ち主自らが、デレの呪いに掛かることだった。 予想外の展開に、俺達はノートの表紙裏を見つめたまま、声も出せずにいた。 桐乃とデレ神の別れを皆で見守っていた数分前とは一転、室内は重苦しい空気に包まれている。 『別に、無理にノートを手放す必要はないぞ。今まで通りでも構わない。俺も人間界は嫌いじゃないからよ』 ククク……と独特の笑い声を漏らしながらデレ神は言う。 『その場合はもちろん、デレノートでデレた者共は元に戻らず、ずっとそのままだけどな』 これまでのデレの呪いをすべてリセットできる――そんな旨い話には、しっかり代償が必要だったって訳だ。 こいつはやっぱり神なんかじゃなく、見た目通りの悪魔だったらしい。 重苦しい雰囲気の中、最初に口を開いたのは黒猫だった。 「……あなた、どうするつもり?」 さすがの黒猫も、この状況に戸惑い気味の様子だ。 キラッの正体を暴き、今日のこの場をセッティングした張本人だが、まさかこんな展開になるなんて 思ってもみなかっただろう。 当の桐乃も、大いにショックを受け、ずっと押し黙っている…… ――かと思いきや、意外にも妙に晴れ晴れとした表情をしてやがった。 「え? そんなの、決まってるじゃん」 桐乃はそう言うとソファーから立ち、デレ神と向き合った。 そして、俺達の視線を一身に受けながら、その決意を表明した。 「あたしが撒いた種なんだから、あたしがちゃんと責任を取るってば」 桐乃はこの数か月、他人の心を操るという不気味なノートを使って、世間を混乱に陥れていた。 それは、法に照らして罰することなんてできない、超常現象の類ではあるけれど、 それが人のモラルに反する行為だということは、俺を含め、誰もが感覚的に解っている。 そして、キラッだった以前ならいざ知らず、今の桐乃だってそのことを認識しているだろう。 だからこそ、桐乃はその責任から逃げるようなことはしない。 どうしてかって? ――俺の妹はそういう奴だからだ。 自分の過ちに気付いたら、そのことを誤魔化したり、言い逃れするようなことをせず、バカ正直に潔く受け入れる。 親父譲りの芯の強さを持ち、自分自身に対して人一倍厳しい――そんな奴なんだ。 「桐乃ちゃん……その……ごめんね。あたしの責任でもあるのに……」 瀬菜はおずおずと桐乃を見上げ、今にも泣き出しそうな顔を見せた。 「ううん、せなちーは気にしないでいいって」 「でも……」 「そりゃあ、ノート奪わて好き勝手されたのはムカついたけど、結果的にそのおかげであたしの目が覚めたんだしさ」 桐乃は瀬菜に微笑んでみせた後、再びデレ神と対峙した。 「んじゃ、デレノートにあたしの名前を書けばいいのね?」 傍から見れば、単に桐乃の自業自得、因果応報かもしれない。 そして、道理に従えば、これまでの悪戯の“責任”を取らせるべきなのかもしれない。 だけど――だけどさ、 だからといって、桐乃を誰かにデレさせるだと? そんなの、兄貴として到底認められるわけがねぇだろうよ。 「……桐乃、バカな真似はよせ」 俺が発したその言葉に、バッグの中のペンを探していた桐乃が顔を上げる。 「はぁ~?今更なに言ってんのよ」 「あのな、デレるってことは……つまり、お前がデレデレになっちまうってことだぞ? 他の誰でもなく、お前がだ。 そんなのダメだろ?」 まさに“何を今更”な当然のことをまくし立てている俺を、桐乃はぽかんと見つめている。 クソっ、俺は何を言ってんだよ…… 頭の整理ができていないので、自分でも何を言いたいのか分からねぇ。 ――分からねぇけど、いまは桐乃を思い留まらせないといけない。 誰かにデレてる桐乃なんて我慢できるかよ! そんな俺の中の秘められたシスコン魂が、俺を喋らせていた。 「お前がデレちまうなんて……そんなの、お前がお前じゃなくなっちまうじゃねえか」 「でもあたしがデレないと、終わりにできないじゃん!」 そんなことは承知の上だ。 だけど、俺はお前のように、潔くこの状況を受け入れることなんてできやしない。 「そんな結末あり得ないだろ! お前がデレる? なんでそんなことになっちまうんだ」 「あ、あたしだって望んでデレるわけじゃないって!でもしょうがないでしょ!」 「ふざけんなよ!まだ中学生のお前が、なんでそこまで背負う必要があるんだよ」 「だって、あたしが責任とってデレないと、デレノートでデレさせられた大勢の人達が元に戻れない。 ……それでいいワケがないじゃない」 俺は一瞬ひるんだ。 確かに桐乃の言う通りだ。その通りなんだけど……でも―― 「そんなの……お前が変わっちまうぐらいなら、そいつらなんか――」 そう言いかけたところで、「兄貴!」と桐乃が妨げた。 「あたしを想ってくれるのは嬉しいけど、その先を言っちゃったら兄貴はサイテーだよ」 その言葉は俺の胸を突いた。 俺は何も言い返せず、舌を打ち、ソファーにどさっと腰掛ける。 自分の無力さが恨めしい――俺は心底そう思い、大きく息を吐いた。 そんなやり取りを黙って聞いていたデレ神が口を開いた。 『――どうやら決まりのようだな』 桐乃は無言でこくりと頷く。 『言っておくが、自分を自分にデレさせることはできないぞ。 自分の名前を書くのなら、デレる対象を指定しなければならない。もしくはデレ対象の人物に書かせるか、だ』 「わ、分かってるってば!」 桐乃はデレノートをパラパラとめくり、まっ白なページを開く。 そして一度大きく深呼吸をすると、そのノートとペンを差し出した。 ――俺の目の前に。 「さすがに自分で書くのは抵抗があるからさ……アンタがあたしの名前書いてよ」 は?? 俺が、お前の名前を、デレノートに書く? それってつまり…… 俺が尋ねるよりも先に、桐乃は慌て気味の弁明を始めた。 「しょ、しょうがないでしょ! 事情知らない人にいきなりデレるわけにいかないし――」 桐乃はチラッと横目で黒猫に視線を送る。 「この黒いのにデレたっていいんだけど、こいつひ弱だからさ。 デレたあたしが力尽くで何かしちゃいそうになったときに、抵抗できなさそうだし」 「なっ!? あなた……お、恐ろしいことを言わないで頂戴……」 何かしちゃうって……なにをだよ…… 黒猫は額に縦線を浮かべて思いっきり引いている。 そんな黒猫のことは気にすることもなく、桐乃は俺を指差して話を続けた。 「――そんなわけで、あたしのデレ対象候補はあんたぐらいしか居ないのよ! 一応……あんたならちゃんと、兄妹の節度を守ってくれるかなって……、信じてるし……」 待て待て待て! 節度って!お前はどういう状況を想定してんの!? 「よその男にデレて、世間で変なウワサたっちゃうよりは、 不本意だけど……ブラコン娘だと思われる方が少しはマシだし……すっごく不本意だけど!」 そこで依然引き気味の黒猫がぼそっと呟く。 「私に言わせれば、本質は今とあまり変わらない気がするのだけど……」 桐乃がジロッと睨むと、黒猫はわざとらしく口を押さえて顔をそむけた。 「というわけだから、はいっ」 桐乃は俺にペンを押し付け、俺はやむなくそれを受け取る。 な、なんてこった…… 俺が、自分の手で妹をデレさせるのかよ……しかも俺に。 「なぁ、桐乃…… ノートも返ってきたんだし、急いで結論出すこともないんじゃないか? もう一度じっくり考えてから決めても……」 そんな諦めの悪い俺の提案を、桐乃は一蹴する。 「くどい!……っていうかアンタさ、そんなにあたしにデレられるのが嫌なの!?」 「い、いや、そういうわけじゃねえけどよ……」 腕組みをして、さっさと書けと言わんばかりに俺を見下ろしている桐乃の迫力に圧され、 俺は仕方なくペンを握り、ノートの白いページの左上に構える。 なんで俺が追い込まれる立場になってるんだよ…… そんなボヤキを呟きつつ、皆が注目する中、俺はゆっくりと桐乃のフルネームを書き始めた。 俺は一画ずつ、普段よりもずっと丁寧に文字を書く―― いつでも中断できるようにという、そんな考えで時間を稼いでいたのだけど、 結局、桐乃からストップの声が掛かることはなかった。 そして最後の一字、「乃」の字を書き終えてしまう最後のハネに差し掛かり、 そこで顔を上げると、俺のペン先を見つめていた桐乃と視線が合った。 「デレたあたしのことも、よろしくね――兄貴」 そう言い残し、桐乃は俺に デレた。 あれから数日が経ち―― 今日も、なんら変哲も無い、いつもの朝を迎えた。 いつものように、部屋に鳴り響く目覚まし時計。そのけたたましいベルの金属音に、俺の眠りは妨げられる。 しばらくすると、ガチャっと部屋のドアが開く音が聞こえ、目覚まし時計のベルが鳴り止んだ。 「お兄ちゃ~ん?――いつまで寝てるの? もう朝だよ」 まるで世話女房のように振る舞う桐乃がカーテンを開くと、薄暗かった部屋に眩しい朝の光が差し込んできた。 「早く起きないと、朝ごはん冷めちゃうでしょ。せっかく作ったのに~」 そう言って俺の身体を揺さぶる桐乃に、俺は背中を向けて狸寝入りを決め込み、 ささやかな抵抗を試みるが、 「ふ~ん、起きないなら……」 そんな声が聞こえ、ゴソゴソとベッドシーツをまさぐられている感じがしたかと思えば―― 「抱きつき攻撃ぃぃぃ~!」 ぬおおおおお!! 寝ている後ろから抱き締められ、背中に感じた柔らかく温かな感触に、俺は今度こそ完全に目を覚ました。 そして慌てて上体を起こし、桐乃を引き離す。 「お、お前! ベッドに潜り込むのはよせって言ったろう!」 「えへへ~、おはよっ、お兄ちゃん」 あの日以来、俺の妹はずっとこんな調子だ。 以前の桐乃からは到底想像できない、妹萌えのキャラを地で行くようなこの変わりよう。 四六時中ツンツンして、俺を「クソ兄貴」呼ばわりしてたこいつが、今では「お兄ちゃ~ん」だぜ? 俺にはどうしてもこの甘ったるい呼称が受け入れられず、呼ばれる度にムズ痒さと気恥ずかしさの ハイブリッドな感覚に襲われてしまう…… ガシガシと頭を掻く俺に、ベッドから降りた桐乃は手を差し出して言った。 「ほら、服も脱いで。洗濯するから」 俺は黙ってシャツを脱ぎ、桐乃に手渡す。 朝からこうやって兄貴に甲斐甲斐しく世話を焼く妹だなんて、まさに兄妹の理想像だろう。 赤城のようなエリート級のシスコン兄貴だったら、喜んでこの状況に順応するんだろうけど、 俺の場合、どうしても以前とのギャップがさ……俺を素直にさせてくれないんだ。 「じゃ、先に下に降りてるからね」 そう言ってそそくさと部屋を出る桐乃を、俺は「ちょっと待て」と呼び止める。 「なあに、お兄ちゃん?」 「……念のため言っとくけど、シャツの匂いは嗅ぐなよ」 「ぎくっ!」 ぎくっ、じゃねえっての。 なぁ、こういうのもデレの内なのか……? 「――きょうちゃん、最近、桐乃ちゃんと仲良しになったんだってね」 いつものように麻奈実と並んで登校していると、この幼馴染はふいにそんなことを言ってきた。 「な、なぜお前がそんなこと知ってんだ!?」 別に隠していたわけではないけど、デレノートの件を知らない麻奈実には、どうにも事情を説明しづらい。 そんなわけで、わざわざ我が家の兄妹仲の変化を報告するようなことはしなかったのだが、 どこかから漏れ伝わってしまったようだ。 「ふふふっ、わたしは意外と情報通なんだよ」 「なんだそりゃ……。 一応言っとくけどよ、前が仲悪すぎたから、せいぜい普通レベルになった程度だぜ」 勘違いしてもらっては困るが、俺が、今朝のようなやり取りを“普通レベル”の兄妹仲だと 歪んだ認識をしてるわけではない。 俺の中のフィルター機能が働いて、ちょっと控えめに……いや、相当控えめに表現したんだ。 ……妹が俺にデレですウヘヘ、なんて言えるかっての。 「まぁ、兄妹仲が良いのはいいことだよね~」 俺の微妙な反応を察したのか、麻奈実はこの件を深く追求してくることはなかった。 そういや、麻奈実はあやせと仲良かったんだよな。 おそらくネタの出どころはその辺りだろう。 っていうかさ、桐乃が俺にデレてることをあやせが気付いているとしたら……色んな意味で俺やばくね? 近親相姦上等の兄貴への憎しみで悪鬼と化すあやせを想像し、俺は思わず身震いした。 学校に到着し、麻奈実と教室に入ると、なんの変哲もない普段のクラス風景が目に入ってきた。 かつてこの学校を恐怖に陥れた、ホモカップル達による睦み合いの地獄絵図は、 あの日を境に綺麗サッパリ消え失せていた。 あの秋葉原での出来事の後―― 俺がデレノートに名前を書いたことで、桐乃はノートの所有権を失った。 そして、ノートを回収したデレ神リュークは、あっけなく人間界を去り、デレ神の言葉通り、 デレの呪いに掛かっていた奴等は、みんな一斉にデレ状態から元に戻ったようだ。 かつて桐乃が根城にしていた例の掲示板も、“一斉デレ解除”を契機に、多くの書き込みで賑わっていた。 と言っても、ほとんどの書き込みが、デレ解除に対するクレームだったり、キラッに対して説明を求めるもの だったりするんだけど……ホント勝手な奴等だよ。 それでも、キラッはもう現れることはないのだし、時間が経てば皆忘れていくだろう。 ちなみに、俺の学校でも、影響がまったく無かったわけではない。 当人たちはデレてた時の行動を憶えてないからまだ良かったんだけど、周りの人間は衝撃のホモ化事件を バッチリ覚えているわけで、そういう訳で、ホモの呪縛から解き放たれた者たちへの微妙な空気は残ってしまった。 まぁ、この件の後ろめたさは赤城兄妹に背負ってもらおう。 とにかく、やっと平穏な日々がようやく戻ってきたんだ。 その日の放課後、俺は久しぶりに部活に顔を出し、帰りは黒猫と一緒に下校した。 「――妹さんは相変わらず?」 俺と並んで歩きながら、黒猫は微かな笑みを浮かべながら、そう尋ねてきた。 いつも無愛想なこいつが微笑むときは、大抵が俺をからかう予兆なのだ。 「まぁ、相変わらずデレてるよ。こればっかりはしょうがねぇからな」 「そう言いながら、満更でもないと思っているのでしょう? シスコンとブラコンで相思相愛じゃない」 ぐっ…… 何を言ってやがる…… 黒猫は手を口に当て、くすくすと笑っている。ほらな、やっぱり予兆通りだろ? 俺は気を取り直して反論する。 「お前はそう言うけどな……、一応桐乃は自分の行いの代償としてああなったんだからな。 あんな事をしてた奴だけど、ケジメのつけ方については、俺は褒めてやりたいと思ってんだよ」 黒猫の軽口に対し、俺が割とシリアスな調子で返したので、黒猫はちょっとバツが悪そうにそっぽを向いた。 その後、コホンとひとつ咳払いをすると、黒猫はいつもの無表情に戻って言った。 「……これは先輩に話そうか話すまいか迷ったんだけど、やっぱり伝えておくわ」 あん?いきなり何の話だ? 「私は……その件については、少し異なる考えを持ってるの」 「異なる考え?」 道端で立ち止まった黒猫に合わせて、俺も一緒に立ち止まる。 「そう、あのデレノートのルールについて、どうしても腑に落ちない事があるのよ。 ――それは、所有者がノートに名前を書かれると所有権を失い、ノートの効果もすべて無効になる、という点」 「腑に落ちないって言っても、元々常識外れのノートなんだから、どのルールだってそうじゃねえか? 逆に“腑に落ちる”ルールなんて無いだろ」 「そうでもないのよ。あの表紙裏に書かれていたルールは、どれも突飛なものではあったけど、 それぞれが矛盾しないようになっていたわ。でも――」 そこで黒猫は顔を上げ、俺の目をまっすぐ見つめた。俺は思わず視線を逸らす。 端正な顔立ちのこいつに正面からまじまじと見つめられると、どうも照れてしまう。 「――でも、デレノートを手放す条件がデレることで、手放したらすべてのデレ効果がリセット。 これって矛盾しているでしょう?」 そう説明されても、どうにも得心がいかない俺の反応を見て、黒猫はさらに丁寧な説明を始めた。 「つまり、あなたの妹はデレノートに名前を書かれて、その結果ノートの所有権を失ったわよね」 「ああ、そうだな」 「でもノートの所有者が居なくなると、それまでにそのノートに書かれたデレはすべてリセットされる。 その時リセットされる対象に、デレたばかりの元所有者は含まれるのかしら?含まれないのかしら?」 あっ、と思わず声を出し、俺はようやく気づいた。 「普通に考えれば、あの女もノートによってデレた一人なのだから、リセットされるでしょうね。 だけど、あの時のデレ神とのやり取りを見た限りでは、リセット対象外のような雰囲気だったわ」 「……デレ神がそういう反応を示してたなら、そういうものなんじゃねぇのか……?」 「そうかもしれないわね。でも、数あるルールの中で、曖昧になっていたのはその部分だけだった。 だからわたしは腑に落ちないのよ」 「もし私の考えが正しいのだとすると、『デレによってノートの所有権を失う』というのは 意味のない“死にルール”になってしまうけど、おそらくそれは複数のデレノートが存在する状況下で はじめて意味を成すものなのではないかと思うの」 「他のノートの所有者の名前を書いて、所有権を失わせるってことか……」 改めて指摘されると、確かに黒猫の言うようにルールが矛盾しているし、 そう言われてみると俺も、あの時、何かすっきりしないものを感じていた。 感じていたのだけど、あの場の雰囲気で、なんとなく“そういうものだ”と納得してしまっていた…… 例えばさ、漫画や小説でこういう些細な設定ミスっぽいものに気づいても、物語として都合のいい方に 解釈してやるっていうか……そこはお約束としてスルーするじゃねえか?そんな感じだよ。 俺には、ドラゴンボールの神龍に「願い事の回数を増やしてくれ」と願い事するような無粋さは 持ち合わせていないのだ。 自論を説き終わり、再び歩き始めた黒猫に、今度は俺から問い掛けた。 「でもよ……実際のところ、桐乃は今でもデレてるんだぜ? お前の言う通り無意味な“死にルール”だったしたら、 名前を書かれた所有者は、デレた直後にすぐデレ解除されているはずだろう?」 「もちろん、もしかすると本当に『デレノート所有者は解除の対象外』なんて例外ルールがあるのかもしれない。 それはあのデレ神にしか分からないことよ。だけど――」 黒猫は視線をこちらに向けないまま、ぼそっと小声で言った。 「――デレノートの呪いがなくても、デレることは可能でしょ」 「それは……つまり…… 桐乃がデレを装っているかもしれないと言いたいのか?」 俺の言葉に黒猫は答えず、すました顔で正面を向いて歩いている。 「意味わかんねーし…… 第一そんなことをする理由が無いだろ?」 黒猫はピタリと立ち止まる。 気づくとそこは、俺の黒猫の帰宅路の分かれ道だった。 「たとえば、無意味な“死にルール”のことを知ったあの女が、この機会に乗じるために、 デレ神と一芝居打ったのかもしれないわね。 ――鈍感な先輩には理解できないことでしょうけど」 機会に乗じる……? 「まぁ、先輩に任せるわ。追求するもしないも自由よ。 それじゃ、また明日」 そう言い残し、黒猫はさっさと去っていった。 丁字路に残された俺は、しばらくその場に立ち尽くしていた。 何なんだよあいつは。意味深な言い方しやがって…… ただ、実は俺にもちょっと気になっていたことがある。 デレの呪いに掛かった桐乃は、今朝のようにブラコン丸出しのお兄ちゃんっ娘に変貌を遂げ、 猫なで声の「お兄ちゃ~ん」呼びや、俺への過度の世話焼き、すぐにくっついて甘えてくるところなんか、 一見デレデレのようだけど、俺がこれまで見聞きしてきたデレノートによる“デレ状態”に比べると なんか違うっていうか、まるでアニメに出てくる仲良し兄妹のテンプレートに沿って行動してるような、 そんな感じを受けるんだよな。 ブリジットの話だと、デレてたときの加奈子は、デレの副作用で無気力になってることが しばしばあったというけど、桐乃の場合はそんなことも無いようだし…… それに、当初のあいつは、デレてくる動作が妙にぎこちなかったんだ……すぐ顔真っ赤にしてたし。 もしかして、本当に黒猫の言うように―― そんなことを考えながら家に着き、俺は玄関の扉を開く。 すると間髪入れずリビングの扉が開き、駆け寄ってきた桐乃が俺に飛び掛るようにして抱きついてきた。 「おっかえり~!お兄ちゃん!」 「お、お前……いちいちくっつくなよ!」 「ええ~っ、 せっかくカワイイ妹が出迎えてあげてんのに~」 抱きついたまま、俺の胸元で一瞬むくれた後にすぐ笑顔を見せる桐乃。 俺は、そんな桐乃の頭を撫でてやりながら思う。 まぁ、いいじゃねえか―― 桐乃のこのデレが、デレノートの力だろうと自発的なものだろうと 俺の妹が可愛いことに違いはねえんだからさ。 おわり
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/646.html
「ちょっと違った未来15」 ※原作IF 京介×桐乃 「ここは…」 ぼやけた視界が鮮明になっていく…。確か俺達はあの時非常階段を転げ落ちて、って。 「桐乃?!桐乃?!」 桐乃はどこだ?!無事なのか?!あたりを見回すと桐乃が仰向けになっていた。黒髪がバサッと地面に花のように拡がっている。 「桐乃?!おい、桐乃?!」 妹の頬をぱちぱちと叩く。そうすると、 「う、う~ん」 桐乃は瞼を眉をしかめて苦しそうに顔をしかめた。 「お、お兄ちゃん?」 「桐乃?!大丈夫か?怪我はないか?!」 「は、はい…。痛いところはないです…」 「よかった…」 病院の非常階段から落ちたんだ。大怪我をしてもおかしくはなかった。俺は桐乃が、妹がとりあえず無事でほっと胸をなでおろした。そういえば、 (俺も全く痛まないな) 桐乃を庇うようにして俺も階段を転げ落ちたはずだ。なのに目立った怪我どころか痛む箇所すら全くない。これはどういうことなのか。たまたま運よく二人とも無傷だったのだろうか。…そこで俺は周囲の異変に気づいた。 「なんだよ、ここ…」 さっきまでいた瑠璃が運び込まれた病院ではない。辺りは一面夜の暗闇のようでその中を砂のような「映像」がさらさらと舞っている。そして俺達は白い砂場のような場所に座っていた。この「映像」って…。 「あれは…桐乃?」 今となってはなつかしい?髪をライトブラウンに染めた桐乃の姿だ。髪をサイドに結びながら麻奈実にお菓子作りを教わる姿。沙織や瑠璃と皆で一緒にテニスコートで遊ぶ姿。カメラのフラッシュライトを浴びながらモデルの仕事をこなす姿。秋葉原で沙織にガンダムのフィギュアを懇切丁寧に説明され俺や瑠璃に助けを求める姿。そして…本を見ている俺に後ろから首に腕をまわし幸せそうに抱きつく姿。この四年間の俺達の恋人としての半同棲生活、そして兄妹としての暮らしが流れている。どれも欠くことの出来ない大切な思い出だ。 「お兄ちゃん…」 桐乃は俺の背中の服の生地を指で掴み不安そうな顔で俺を見る。その姿を見て俺は、 「大丈夫だ。何も心配はないよ」 桐乃の頭の髪をくしゃっと撫でた。 「それにしても…。ここは一体どこなんだ?まるで見覚えがないな。確かさっきまで俺達は病院にいてそれから…」 「…」 桐乃は唇をきゅっとかみ締めている。その顔は何かを知っているようだった。 「桐乃?」 「あ、あの。お兄ちゃん」 周りを見渡せば向こう側へと続く道が出来ていた。「記憶の砂」はそちら側に舞っていっているようにも見える。 「桐乃」 「は、はい」 「あっちに何かあるかもしれない。一緒に行ってみよう」 「で、でもあっちには…」 「動かないことにはどうしようもねえよ。一回行くだけ行ってみようぜ。どこかへ出られるかもしれない」 「ぁ…」 そう言って俺は桐乃の手を決して離れないように強く握り締めて向こう側へと続くその道を歩いた。歩けば歩くほど「俺達の記憶」が流れ込んでゆく。あの記憶は…はは、懐かしいな。中学時代の桐乃だ。あの時はいつもキモいキモい言われていたんだっけ?嫉妬と怒りに狂った桐乃に御鏡が持ってきたケーキを顔面に投げつけられるところもある。今考えるとあの頃の桐乃は本当に直情的で素直じゃなくて可愛いな~。 道を進むとその先には大きな鉄製の扉が俺達の行く手を阻んでいた。取っ手にはいかにも頑丈な鋼鉄製の南京錠ががっちりかけられている。 「こいつは…難儀な…」 力いっぱい引いてもとてもじゃないけれど無理だ。こんな頑丈な南京錠、人間の素手の力じゃとても外せないし壊せない。どこかに鍵は…。 「お兄ちゃん…その鍵は…」 「うん?」 「あの…。え…。ッ!」 桐乃はビクッと体をすくめ俺の後ろ側を見た。そこには… 「え…、き、桐乃?!」 「…」 ありえない。信じられない。あろうことか桐乃が「もう一人」とても静かな覚めた目をこちらに向けてそこに佇んでいた。これだけ目の前にいるのに気配が全く感じられないのが少し不気味だった。 「え?え?!なんで?!」 わけがわからない。こっちに桐乃がいてもう一人目の前に桐乃がいる。すると目の前の「桐乃」は全く生命を感じさせない所作で、 「その扉の向こうに、貴方の妹がいるわ」 と声を発した。 「え?」 「だから、その鍵をはずした扉の先に貴方の妹がいるって言っているのよ」 あくまでも、そう強い口調ではっきりと言った。 「何を言って…」 「だから、貴方は貴方の妹の桐乃を取り戻したいんでしょう?この世界で私に嘘はつけない。桐乃ならその先にいるわ。貴方達のことは一部始終全て見ている」 「…」 抑揚のない声。冷たい声。こいつは…一体誰なんだ?こいつは…、 「おまえ…誰なんだ?」 「誰って…「桐乃」よ。貴方の妹になるわね。とはいっても貴方が知っている桐乃ではないけれど…。魂の座、とでも言えばいいのかしらね。面倒ね、本来ならこんなこと、予定になかったし、そもそも規則違反だから」 「違う…おまえは桐乃じゃない。俺の妹はここに…」 「それを言うなら、そこにいる女も貴方の妹じゃないわ」 「え…」 なにを言ってるんだ?こいつ? 「何を、言って、」 「二度言わせる気?だから、そこにいる女も貴方が知る「高坂桐乃」じゃないわ」 「…え」 「…」 嘘だ。嘘だ嘘だ。じゃあここにいる「俺の妹」は一体どこの誰で…。 「ああ、ごめんなさい。混乱を招く発言だったわね。正確には…この世界における高坂桐乃ではないのよ」 「な?!そ、そんな…!?」 それまで怯えるように服をつまんで俺の後ろにいた桐乃が声を上げる。 「あ、あたしはあたしです!高坂桐乃です!これまでだってずっとそうでしたしこれからも…!」 「…」 「そ、それに、皆、皆あたしのこと認めてくれて…ここにいていいんだって、ずっとそばにいてもいいんだって!こ、ここにいるお兄ちゃんだって!!」 「…」 桐乃の抗議の声を受けながら目の前の「桐乃」は、はあと一つため息をついた。 「貴女がどう思おうと勝手だけどね…もう時間がないのよ。これは貴女の為に言ってるのよ?いつまで我侭を続ける気なの」 「な、なんの時間…!」 「…ああ。納得したわ。貴女、記憶を抜け落ちているのね。それもここ何年か分の記憶が。まあ確かに貴女は「あの時」そう願ったものね。ふふ、それじゃあ願い通りというやつね」 納得したように「桐乃」は小さく笑む。 「な、なにを、」 「だから、貴女があの時「そう」願ったんでしょう?このままじゃ終わりたくない、もう一度やり直したいって」 そう言いつつ「桐乃」は近づいてくる。 「ッ!?」 「安心しなさい。少し乱暴なやり方だけどこうするのが貴女のためだから。一番手っ取り早いしね」 桐乃は身動きが固まったみたいに動けない。俺も金縛りにでもあっているようだ。目の前の「桐乃」を名乗る女は俺達の額に手を当てた。 「別に体に支障はないから。まあこの世界はもともと精神しか存在しないけれど。こうすると「兄貴」にも面倒な説明が要らないしね。我慢しなさいな」 そういった直後、俺達に電流のように誰かの記憶が流れる――。 ああああああああああ!!!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!! 記憶が蘇る。あたしの「本当の」記憶が。何にもなかった空っぽの部分を侵食するように記憶という名の「異物」が脳漿に無理矢理流し込まれる。 お父さんがいてお母さんがいて…。何もなかった平凡な中学生活。近くの公立高校に桜の舞い散る道を歩いた入学式の日。大変だった初めての大学受験。あの事件で不自由になったお父さんの体。それなのに、あたしの学費のために一生懸命働いてくれたお父さんとお母さん。そして離れ離れになってしまった、あの少年。 それからというもの誰かとの関わりを拒んだ、閉ざされたあたしの世界。誰も入ってこない、優しい世界。 その中でもひと際鮮明に映し出される、「思い出すべき」記憶 ――もしかしたら桐乃ちゃん誰よりも凄い作家になれるかも ――あの時すぐにわかったよ。××がいつも言っていた…あの女の子のことだ、って ――どうして桐乃なんですか?!ほんの少し、ほんの少し出会うのが先だっただけじゃないですかっ?! ――やっぱりおまえはいつまでたっても俺の妹だよ そして「最期」になってしまった彼と終ぞ果たせなかったあの約束。 「あああああああああああああ!!!!」 痛みの灼熱の中、あたしは自分の失っていたはずの記憶の海の中へと落ちた。 <一部・了>
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1708.html
722 :Monolith兵:2013/06/02(日) 05 31 04 ※この作品にはTS表現があります。ご注意ください。 ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない!」 没ネタ2 「俺の後輩がこんなに可愛・・・」 黒猫の告白から暫くの月日が流れ、京介は黒猫と初のデートに挑んでいた。前日に桐乃に服をコーディネートしてもらい、デートコースを必死に考え、日向にアドバイスをもらい挑んだデートであった。待ち合わせ場所であった黒猫が神猫になっていたり、初デートで彼女の家に上がる事になったりとイレギュラーが起こったが、概ね初デートとしては平均点を取れたのではないかと彼は思っていた。そう、彼女の家に上がるまでは。 「じゃ、じゃあ、今はこの家に俺たち二人きりってわけなのか?」 「え、ええ。・・・ちょっと待っててくれる?シャワー浴びてくるわ。」 京介は自分のうかつな発言を呪った。どう考えても誘っているようにしか取れない言葉だった。黒猫はそれを理解したのか、シャワーを浴びると言って部屋を出て行ったのだ。先日の桐乃の衝撃的な発言を思い出しながら、京介は焦っていた。 (何てことだ!初デートでエッチフラグだと!コンドームの準備なんてしてないぞ!) もし当たってしまったら富永が生まれてくるかもしれないのだ!それを考えると、京介の身体はがくがくと震えてしまっていた。 だが、そうこうしている内に黒猫は風呂から上がり、京介を迎えに来ていた。 「私の部屋に行きましょう。・・・これからw足した地で神聖な儀式を行うのよ。」 覚悟を決めた彼女に京介に抗うすべはなかった。 それから数時間、二人とも初めてを散らした後二人は裸で布団の中で抱き合っていた。 「大丈夫か?」 京介は黒猫を労わり今日何回目かの質問をしたが、答えはこれまでと同じく「大丈夫よ。」だった。彼女は京介の胸に顔を押し付けて何かをこらえている様子だったが、決心がついたのか顔を上げて京介の顔を覗き込んだ。 「私ね、貴方に言わなくちゃいけないことがあるの。」 そう言ってから黒猫が語った内容を京介は無言で聞いていった。 「私の中には二つの私の心があるの。貴方を愛している私と、それを引き止めようとする私。でも、どちらの私も貴方のことが好きなの。だけど、好きになったら危険だ、引き返せってもう一人の私が言うのよ。」 「大丈夫だ。俺はその二人とも愛せるよ。」 京介の言葉を聞いて安心したのか、黒猫は大きなため息を吐いた後、京介の耳元に唇をもって行きささやいた。 「私ね、もう一つ貴方に黙っていた事があるの。ううん、貴方だけじゃなくて誰にもね。それを聞いてほしいのよ。」 京介は頷いて、黒猫に先を促した。彼女は一度瞳を閉じて、暫くして開いた。そして、強い意志をともした顔で京介に最上級の爆弾を言った。 「今世で貴方と一緒になれなくても、来世まで待つって言ったわよね?アレは嘘よ。」 えっ、と京介は半開きの口から言葉を出した。 「私は前世から貴方を見てきたわ。そして、今世で貴方と恋仲になれてうれしい限り。」 京介はそれ以上のことを聞きたくなかった。だが、黒猫はそれに気づかないのか、更に続けた。 「私はあなたの事を見てきた。そう、前世で富永恭次と言われていたその時からね。嶋田元帥、我は貴方のことを愛しているのですよ。」 京介はあまりな事態に呻き声を上げることしか出来なかった。ひゅーひゅーという彼が息をする音だけが部屋に響いていた。 黒猫はようやく京介の様子がおかしいことに気づいた。 「もしかしてショックによる酸欠?待っていて、今人工呼吸してあげるから!」 そういって黒猫は京介に口付けをして息を吹き込んだ。しかし、ショックによる”過呼吸”を起こしていた京介にと手はそれは致命的な応急処置だった。薄れ行く意識の中、日向こと前世の妻トヨと玄孫のあやせ、今世の妹桐乃のことを思い出しながら彼の意識は闇に閉ざされた。 黒猫√BADEND
https://w.atwiki.jp/cosmos_memo/pages/2770.html
SAKURAスキップ fourfolium BASIC Level 3 BPM 165 Notes 170 1 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 2 口口口口 |①---| 口口口口 |----| ①口口口 |----| 口口口口 |----| 3 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 4 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口①口 口口口口 口口口口 口口口口 口口②② |----| 口口口口 |--②-| 5 ③③②② |--①-| 口口①① |--②-| 口口口口 |--③-| 口口口口 |----| 6 口口口口 |①---| 口口①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 7 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 8 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口①口 |----| 9 口口口口 |①---| 口口口② |----| 口口口① |②---| 口口口口 |----| 10 口口②① |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 11 ②①口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 12 口①口口 |①---| 口②口口 |②---| 口③口口 |③---| 口④口口 |④---| 13 口口④④ |①---| 口口③口 |②---| 口口②口 |③---| 口口①口 |④---| 14 口口口口 |①---| ①②口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 15 口口口口 |①---| 口口①② |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 16 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口②①口 |②---| 口口口口 |----| 17 口②②口 |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 18 ①口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 19 口口口口 |①---| ①口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 20 口口口口 |①---| 口口口口 |----| ①口口口 |----| 口口口口 |----| 21 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| ①口口口 |----| 22 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 23 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 24 口口口口 |①---| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 25 口①①口 |①---| 口②②口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 26 口口口口 |①---| 口口②① |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 27 口口口口 |①---| 口口口口 |----| ②①口口 |②---| 口口口口 |----| 28 口④口口 |①---| 口③口口 |②---| 口②口口 |③---| 口①口口 |④---| 29 口口①口 |①---| 口口②口 |②---| 口口③口 |③---| 口口④口 |④---| 30 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口②① |②---| 口口口口 |----| 31 口口口口 |①---| ②①口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 32 口①口口 |①---| 口②口口 |②---| 口③口口 |③---| 口④口口 |④---| 33 口④④口 |①---| 口口③口 |②---| 口口②口 |③---| 口口①口 |④---| 34 口口口① |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 35 口口口口 |①---| 口口①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 36 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 37 口口口口 |①---| ③口口口 |②---| ②口口口 |③---| ①口口口 |----| 38 口①①口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 39 口口口口 |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 40 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 |----| 口口口口 |----| 41 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口①①口 |----| 42 ④④④④ |①---| ③③③口 |②---| ②②口口 |③---| ①口口口 |④---| 43 口②②口 |--①-| 口口口口 |----| 口口①口 |②---| 口口口口 |----| 44 口口口口 |①---| ④③②① |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 45 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| ①②③口 |③---| 口口口口 |----| 46 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口③④口 |③---| 口①②口 |④---| 47 口③④④ |①---| 口①②口 |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 48 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| ③②①口 |③---| ④口口口 |④---| 49 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口口口口 |③---| 口①②③ |----| 50 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口②①口 |②---| 口口口口 |----| 51 口②②口 |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 52 口口口口 |①---| ①②③④ |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 53 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口③②① |③---| 口口口口 |----| 54 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口④③口 |③---| 口②①口 |④---| 55 ④④③口 |①---| 口②①口 |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 56 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口①②③ |③---| 口口口④ |④---| 57 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口口口口 |③---| ③②①口 |----| 58 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①②口 |②---| 口口口口 |----| 59 ②②②② |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 60 口口口口 |①---| ①②③④ |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 61 口②②口 |--①-| 口口口口 |----| 口①①口 |②---| 口口口口 |----| 不確定度 0