約 2,471,389 件
https://w.atwiki.jp/psp_oreimop2/pages/30.html
フローチャートもO.R.Eリストも全部埋めたのにアルバム最後のCGが出てこないです。ちなみに麻奈実はメガネ有無両方コンプ済。何が足りないのでしょうか? - 名無しさん 2012-05-20 01 48 28 ただ単にアルバムの差分が足りません。 - 名無しさん 2012-05-20 07 23 31 このページのアルバムのリストを見ながらチェックしていると、37 京介、最大の試練に挑む に6枚あるということですが、5枚しか登録されていないようです。 あと1枚の差分がわからない・・・ - 名無しさん 2012-05-20 19 50 29 不正解時かと不回答じゃなくて - 名無しさん 2013-08-11 19 55 15 自己解決しました。クイズの選択に間違えた際のCGが抜けていたようです。 - 名無しさん 2012-05-20 20 01 36 2SHOTの失敗って書いてあるものと一つ違うようにすればいいんでしょうか、それともすべて逆にしないと失敗にならないのでしょうか - 名無しさん 2012-05-24 17 50 41 まぁ、全問間違えるのが簡単でしょう。一応直後に判定がある場合、2SHOT終了間際のセリフが全問正解の時と変われば失敗しています。全く変わらない2SHOTもありますが…… - 名無しさん 2012-05-25 12 52 15 CG回収も全部したんですがコンプが99%止まりです。どうしてでしょうか・・・?アルバム最後も手に入れました - 名無しさん 2012-05-25 15 42 18 経路が全部解放されていない可能性があります。瀬名ルートとか。 - 名無しさん 2012-05-26 04 32 38 桐乃ver.「この物語はry~関係ありません。」の後に「そのとーり!」って言うけど、これ何のパロだっけ??思い出せない。攻略と関係なくてすんません。 - 名無しさん 2012-06-13 01 23 57 ダブルキャストというゲームのBADエンド時にそれっぽいのがでてきます - 名無しさん 2012-06-23 02 26 17 リファイン版のCGの電波ソングの差分が2枚しかとれません。3枚目の取り方を教えていただけないでしょうか? - 名無しさん 2012-09-02 14 03 54 俺の妹に最後の手段を使うしかないにて電波ソングを選択して下さい - psp_oreimop2 2012-09-06 19 10 23 あやせルートで「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」をセットするのがわかりません - 名無しさん 2012-12-09 18 32 08 あやせルートで赤文字になってる選択肢を全て選択した上で、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」を所持していれば左上に自動的にセットを促す表示が出ます - 名無しさん 2013-08-15 03 46 00 フローチャート、O.R.Eリスト、アルバム全部集めたのに99%のままどうしたらいい - ゼレフ 2013-02-11 18 21 12 超序盤で沙織ボイスでないんだけど使用?バグ? - こうへい 2013-07-31 00 54 06 ↑「おお!さすが京介氏!きりりん氏の誤解が一つ解けたようですぞ!」とか - こうへい 2013-07-31 00 55 18 話の時にオートモードにする方法が分かりません。教えて下さい。 - トトロ 2013-08-16 22 27 28 麻奈実ルートの「その後の二人」に沁み渡る不安の2SHOTを成功させてもいけないんですが・・・? - りんてつ 2013-10-28 19 47 45 リファイン版麻奈実ルートのお風呂あそびがどうしても出ません。書いてある方法をいくら試してもダメでした。どうしたらいいんでしょうか? - 名無しさん 2014-05-04 00 24 19 他に条件あるけど、もう検証するの面倒。【131 公園での思い出】「モテモテ選択」【133 仕切り直しの関係】 「俺の彼女スルー」&「ギャルゲースルー」【136 黒猫は見た】 「ギャルゲースルー」たしかこれで行けたはず。 - psp_oreimop2 2014-05-12 21 27 50
https://w.atwiki.jp/sonicy_memo/pages/2638.html
SAKURAスキップ fourfolium BASIC Level 3 BPM 165 Notes 170 1 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 2 口口口口 |①---| 口口口口 |----| ①口口口 |----| 口口口口 |----| 3 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 4 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口①口 口口口口 口口口口 口口口口 口口②② |----| 口口口口 |--②-| 5 ③③②② |--①-| 口口①① |--②-| 口口口口 |--③-| 口口口口 |----| 6 口口口口 |①---| 口口①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 7 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 8 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口①口 |----| 9 口口口口 |①---| 口口口② |----| 口口口① |②---| 口口口口 |----| 10 口口②① |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 11 ②①口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 12 口①口口 |①---| 口②口口 |②---| 口③口口 |③---| 口④口口 |④---| 13 口口④④ |①---| 口口③口 |②---| 口口②口 |③---| 口口①口 |④---| 14 口口口口 |①---| ①②口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 15 口口口口 |①---| 口口①② |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 16 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口②①口 |②---| 口口口口 |----| 17 口②②口 |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 18 ①口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 19 口口口口 |①---| ①口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 20 口口口口 |①---| 口口口口 |----| ①口口口 |----| 口口口口 |----| 21 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| ①口口口 |----| 22 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 23 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 24 口口口口 |①---| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 25 口①①口 |①---| 口②②口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 26 口口口口 |①---| 口口②① |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 27 口口口口 |①---| 口口口口 |----| ②①口口 |②---| 口口口口 |----| 28 口④口口 |①---| 口③口口 |②---| 口②口口 |③---| 口①口口 |④---| 29 口口①口 |①---| 口口②口 |②---| 口口③口 |③---| 口口④口 |④---| 30 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口②① |②---| 口口口口 |----| 31 口口口口 |①---| ②①口口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 32 口①口口 |①---| 口②口口 |②---| 口③口口 |③---| 口④口口 |④---| 33 口④④口 |①---| 口口③口 |②---| 口口②口 |③---| 口口①口 |④---| 34 口口口① |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 35 口口口口 |①---| 口口①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 36 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①口口 |----| 口口口口 |----| 37 口口口口 |①---| ③口口口 |②---| ②口口口 |③---| ①口口口 |----| 38 口①①口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 39 口口口口 |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 40 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 |----| 口口口口 |----| 41 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口①①口 |----| 42 ④④④④ |①---| ③③③口 |②---| ②②口口 |③---| ①口口口 |④---| 43 口②②口 |--①-| 口口口口 |----| 口口①口 |②---| 口口口口 |----| 44 口口口口 |①---| ④③②① |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 45 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| ①②③口 |③---| 口口口口 |----| 46 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口③④口 |③---| 口①②口 |④---| 47 口③④④ |①---| 口①②口 |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 48 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| ③②①口 |③---| ④口口口 |④---| 49 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口口口口 |③---| 口①②③ |----| 50 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口②①口 |②---| 口口口口 |----| 51 口②②口 |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 52 口口口口 |①---| ①②③④ |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 53 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口③②① |③---| 口口口口 |----| 54 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口④③口 |③---| 口②①口 |④---| 55 ④④③口 |①---| 口②①口 |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 56 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口①②③ |③---| 口口口④ |④---| 57 口口口口 |①---| 口口口口 |②---| 口口口口 |③---| ③②①口 |----| 58 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①②口 |②---| 口口口口 |----| 59 ②②②② |①---| 口①①口 |----| 口口口口 |②---| 口口口口 |----| 60 口口口口 |①---| ①②③④ |②---| 口口口口 |③---| 口口口口 |④---| 61 口②②口 |--①-| 口口口口 |----| 口①①口 |②---| 口口口口 |----|
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/20.html
人生相談、最後だから。 あいつがそういってから一週間。 俺達の関係は今までと変わらないままだった。 相互不干渉。 休日の図書館の勉強会、麻奈美と別れて帰宅したが、相変わらず妹様はリビングのソファを占有していらっしゃる。 どうやら話し方から察するに電話の相手は「表の友人」の様だ。 形式程度にただいま、と呟くと、親父譲りの鋭い眼光で俺を睨み返しやがる。 俺の声が電話の向こうに伝わるのも嫌そうに眉をひそめる。 なんだよ。 最後、なんだから、一刻も早く俺を解放してくんねーかな。 ちっ。 こういう時に限って、両親とも久し振りの夫婦水入らずの温泉旅行だそうだ。しかも、桐乃からのプレゼントだとか。 出立前のお袋の嫌味を思い出し、げんなりした俺はさっさと自室に引き下がる。 やることも無いので、桐乃が無理矢理貸したままのパソコンで、シスカリのオンライン対戦に挑む。 なんで妹物のエロゲーなんかやらなくちゃならないんだ?と呟きながら、次々とオンライン対戦者に挑んでは……負け続けた。 まったく、ゲームでも俺は妹様に勝てないのかよ? そうこうしているうちに、夕食時になる。 我が家の親父様は7時には帰って来て、一家で食卓を囲むのが習わしとなっている。遅れると、夕食抜きだ。 ヤバい。 つい、階段を駆け降り、テーブルについたが、 ……考えてみたら両親とも出掛けてるじゃん。 軽く脱力した俺は微妙な違和感に包まれたが、その時はあまり気にしないでいた。 テーブルには、二人分の食事、のようなもの、が並んでいた。 のようなもの、 ってなんだよ、って感じだが、他に表現しようがない。 少しゆるい感じのご飯に、味噌汁、軽くコゲた……これはアジの干物、だったものか? それと、お袋が作り置きしていったのだろう、きんぴらごぼうと、菜物のおひたし。 それと水切りの甘い冷や奴。 おそらく、この製作者とおぼしき唯一の人物の姿が、そこには見受けられない。 なにやってるんだ、桐乃は? 風呂場の洗面台の辺りで、なにやら水の流れる音がする。 ん? なにやってんだよ?夕飯だろ? 呼び掛けるが、 返事がしない。 慌ててドアを開けると、水の流れ続ける洗面台の前にに桐乃が、居た。 顔面蒼白で、へたりこみながら。 妹の手首から先は水面に浸かっていた。 鮮やかな緋色の中に。 おい!桐乃! 冷静さを失った俺は桐乃に駆け寄る。 青息吐息とはこういうことか、と、言わんばかりの妹の体温は少し、低い。 ますます落ち着きを失った俺は、桐乃!桐乃!と、妹の名を叫ぶ。 ふっ と、桐乃が薄目を開いて、 兄貴… と、呟いた。 ほっ とした俺はまず、妹の手を水の流れから現世に引き戻す。 リストカット ではない。 単なる包丁傷だ。 なんだよ。 思わず口をつく、安堵と怒りとない交ぜになった言葉。 見ると、桐乃は薄いキャミ一枚。 さっきまで袖を通していたブラウスと、丈の短いスカートが血塗れで脱ぎ捨てられている。 抱き抱えた妹の身体は、濡れそぼり、少し甘い匂いと、 それから血の臭いがした。 げし!げし! 衝撃音と共に、みぞおちと股間にに痛みが走る。 いってえええ! なに?なんなんだ? ……どうやら妹様が意識を取り戻した様だ。 開口一番、俺に罵声にならない罵声を浴びせた桐乃は、もう一度自分の姿を鏡の中に認めると、実にあられもない姿を晒していた事に漸く気付いたのか、 早く出ていけバカ兄貴! と、何時もの元気?を取戻し、俺を洗面所から叩き出す。 まったく、なんだっていうんだ、いったい。 かぶりを振りながら、桐乃が、おそらくは、食卓に並んだ料理と呼んで良いのか少し悩む物を作りながら、包丁の扱いを誤って怪我をしてしまったのであろう事に思い至る。 まったく どうやら、我が家のスーパー妹様にも、苦手なものがあるらしい。 翌朝、いつものように麻奈美と登校するために、田村家に向かう。 「おはよう、きょうちゃん!」 ほんと、こいつはいくつになっても変わらないよな。 あいかわらずゆるい笑顔で俺を迎えた麻奈美が、 すこし技とらしくふふん、と言って、ちょっと得意げにしている。 「ん、なにかあったのか?」 おそらく、なにか俺に話したいことがあるのだろう。 多分、何の変哲も無い、本当に普通のことなんだろう。 だけど、それが俺には心地良いのだ。 特に昨日のようにドタバタした日のあとは。 「えへへ、きょうちゃん、昨日、桐乃ちゃんの手作りのお夕飯だったでしょ?」 え? なに? なんでお前、俺の昨日の夕飯のこと知ってるの!? 軽くぱにくりつつ、麻奈美から事情聴取をする。 なんでも、昨日、麻奈美の自宅に置きっぱなしの携帯に桐乃から電話があったそうだ。 もちろん、 人生相談、 ではない。 いわく、桐乃は料理、というか、家庭科全般が比較的苦手らしい。 もっとも、「なんでもできる」と、周囲から期待されている桐乃は、 それなりにコンプレックスのようなものを感じていたらしい。 もっとも、我が家では専業主婦のお袋が家事全般を取り仕切っている。 そんなわけで桐乃の出番も無く、また、学業や読モの仕事で忙しい桐乃は、 ついぞ料理などをする機会に恵まれず、今に至ったわけだ。 とはいえ、両親不在の中、宅配ピザや店屋物というわけにもいかず、 仕方なく、家事全般が得意そうな麻奈美を頼ってきた、というわけだ。 確かに、麻奈美の家は和菓子屋で麻奈美も良く家業を手伝っている。 もちろん、両親が忙しいときは祖母と一緒に料理を作ることも多く、 自然、料理の腕も磨かれてくるというもの。 この間田村家に泊まった時には麻奈美手作りのささみのカツを振舞われたが、 実際、美味かった。 まあ、確かに昨日の夕飯はやたら和風の料理?だったものな。 味は散々たるものだったが。 「ねえ、きょうちゃん。桐乃ちゃんって忙しいんでしょ? もし良かったら、お夕飯、私が作りにいこうか?」 ちょっと下のほうから俺を見上げるようにして、麻奈美が提案をする。 ほんと、こいつは俺に懐いてる、なんていうか、こう。 「あ?うーん、それは助かるんだが。。。」 事実、昨日の一件で俺は桐乃の後始末をさせられて、ずいぶん大変な思いをした。 絆創膏に着替え、それも妹の部屋には入るな、ということで、 俺のTシャツを奪われ、さらには料理が美味く食べられないからと。 実に、大変だったのだ。 「そうだな、そうしてくれると助かるな。あいつ、料理ぜんぜんダメだし。 今朝の朝飯は俺が作ったんだが、桐乃の奴、美味くないからって食べようともしねーし」 どうやら妹様には俺の作った目玉焼きとトーストにはご興味を示していただけないようで、 また、今日は具合が悪いので、と、少し遅れて出て行くといっていた。 本当は包丁傷を他人に見せたくないからだろう。 「それでね、この間、きょうちゃんと約束、したでしょ? 今度、きょうちゃん家に泊まりに行くって? 丁度ご両親も居なくて、いろいろ大変でしょ? だから・・・だからね、えへへ。」 ……どうやら麻奈美はそのままお泊りしていきたいらしい。 「いや、まずい、それは、すっごーく、まずい」 さすがに妹が居るとはいえ、若い男女が同じ屋根の下、枕を並べるというのは、ひっじょーにまずい。 「えー、 だって、この間きょうちゃんと一緒に寝たじゃない。」 うわあああああ、何を言い出すんだ。 そりゃま、確かに、俺、お前の家に泊まって行ったよ? だけど、あれ、おまえの爺さんの死ぬ死ぬ詐欺や、 ばあさんの要らぬ気づかいのせいだよ? 俺、そんなにやましいことしてないよ? 「わ、ちょ、っちょ、まて、麻奈美」 思わずあわてる俺の背中に、なにやらプレッシャーを感じる。 そこには、桐乃が、居た。 一瞬俺を蔑む様な眼で見た後、麻奈美に気づかれてはならないと、 すこしつんと澄ました様相をつくっていた。 さすがに陸上部の朝錬は休みをもらったが、 いくら怪我をしたとはいえ、桐乃は優等生で居なければいけない。 無遅刻無欠席程度は親父と桐乃の間の当然の取り決めだ。 両親不在の間とはいえ、それを破ることは桐乃にはできないのだ。 本当に、こういうところは親父譲りなんだよな、こいつは。 「おはよう、桐乃ちゃん」 そんな桐乃に物怖じせず、というか、気づかないのか、麻奈美は桐乃に声を掛けた。 「ねえ、お魚、美味く焼けた?あれはね・・・」 と、おばあちゃんの料理教室の時間が始まる。 笑顔で麻奈美に答える桐乃。 でもこいつ、ほんとは麻奈美のこと、嫌いじゃなかったのかな。 いつも俺が麻奈美と一緒にいる様子を見ては、キモいだの何だの文句をいうんだが。 その後、急ぐからと、桐乃は俺達を残して、さっさと学校に向かっていった。 俺と麻奈美も、遅刻するわけにも行かないので、学校へ向かった。 いつもの教室、いつもの風景、普通の生活、普通の俺。 何事も波風たたず、平穏であることが一番だ。 考えてみれば、桐乃の人生相談。 あれは俺の人生に立った波風そのものだった。 わざわざ、その最後の人生相談に、こっちから踏み込んで、 嵐に流されることはない、そうだろう? そして放課後、いつものように図書館で麻奈美に勉強を教わった帰り道、 俺と麻奈美は珍しく独りで帰る桐乃の姿を見ることになった。 なにか、すこし、思いつめた様子で、すこし、肩を落として。 指先の絆創膏が、 痛々しかった。 「きょうちゃん、桐乃ちゃん、元気、無いみたい」 それは、俺にだってわかる。 あいつ、指の怪我で料理ができないことがばれたか何かで、落ち込んでたりするのか? 誰からも、何でもできると、思われている、妹。 両親からも、殆どの友人からも。 確かに、そうだ。 あいつは、何だってできるし、そのための努力も欠かさない。 ただ、あいつの特殊な趣味と同様に、数少ない、どうにもならないこともあるのだろう。 それを、 俺だけが、 知っている。 俺はまた、いつの間にか下唇をかんでいた。 「なあ、麻奈美。」 「なぁに、きょうちゃん」 「悪い。お泊りは無しだ。また今度、お前ん家に行くよ」 いつかと同じ「ん、わかった」という麻奈美の声に送り出されて、俺は桐乃を追いかけた。 いつかと同じ「がんばってね、お兄ちゃん」という、麻奈美の声を背に。 「桐乃!」 元気がないとはいえ、あの桐乃だ。 意外に追いつくのに時間がかかり、気がつけば家の前に居た。 俺の声に一瞬びくついた桐乃が、ふ、と、振り返る。 一瞬、 本当に一瞬、 桐乃の頬に、喜びとも哀かしさとも取れない表情が浮かんで、 そして消えた。 「は?」 「なに?どうかしたの?」 あ、あっれー? 「え、お前、料理ができなくて、落ち込んでたんじゃないの?」 つい、思ったままを言ってしまった俺に、切り返す桐乃。 「は? 誰が? なんで、このあたしがほんの些細なとるに足りない失敗をしただけで落ち込むっていうの? たかが料理じゃない?それくらい、 それくらい、 ちょっと 練習すれば、 練習すればできるようになるんだから。 なによ! そんなに女の手料理が食べたいなら、あの地味子にでも作ってもらえばいいじゃないの! そんで、 そんで、 そのままお泊りとかして、 そのまま、 せ、せ、セックスでも何でもしちゃえばいいじゃないの!!!!!」 おおおおおおおい!! 俺の心の声を余所に、もはやとどまることを知らない桐乃は、言葉を続ける。 「なによ、大体、朝から盛りのついたカップルみたいにいちゃいちゃしていやらしい! 今朝だって、あの地味子がお泊りにくる相談していたんでしょう? そうでしょう? そうなんでしょ! あたしが居るのにぃ! あたしだって、料理くらい、できるんだから。 そりゃ、ちょっと下手だし、ちょっとお魚だって焦がしちゃったり、そりゃ・・・」 「おいちょっと、落ち着けよ、桐乃。ご近所さんの手前・・・」 もはや収集がつかない状態に陥りつつある俺、じゃない、桐乃、じゃない、俺。 「な、桐乃、ちょっと落ち着けって」 ご近所さんが出てきている。 もっとも、どうやら俺達を見て、というわけではないらしい。 春雷と共に、やってくるかもしれない、にわか雨から、洗濯物を取り込むためのようだ。 空は、どうやら、桐乃の心を写して雨を落とすつもりなのだ。 ぽつ、 ぽつ、と、落ちる、雨。 そんな中、妹の手を引き、なんとか家まで引っ張っていこうとする俺。 だが、全力で抗おうとする桐乃。 少しずつ、空は雨を落とす。 「いや!汚らわしい! さわんな、バカ! あの女とつないだ手であたしに触れんな! あの女の髪に触れた手であたしに触れんな! あの女を抱いた手であたしに触れんな!!!」 桐乃の心を表すように、雨は落ち、そして桐乃の涙を覆い隠す。 雨なのか、涙なのか、 もう わからない。 だけど、俺にはわかるんだ。 俺の妹が、今、泣いてるってことが。 雨は全てを流し去る。雨は全てを覆い隠す。 「……くちゅっ!」 まだ、春先、雨が桐乃の体温を奪ったのか。 聞き覚えのある、小さなくしゃみをする。 「雨で・・・・・・・ 雨でずぶ濡れになったアタシを、 あんたは、どうする ……くちゅ!」 デジャブに似た感覚。 もう、わかっている。 寒さからか座り込んだ桐乃を、俺は抱き起こす。 「シャワーで、温める、だろう?」 さすがにラブホ、というわけにはいかない。 ここは住宅街だし、 大体において、我が家の前だ。 「一緒にお風呂、入ろう、な」 「……うん」 言葉すくなになる二人 さて。 我が家のお風呂は、24時間風呂になっている。 元来は親父が一番湯につかる、というのが、我が家の風習だったが、 桐乃が陸上を始めて、良く汗をかいて帰ってくることが多く、 お袋が娘のためと、意外に経済的と近所の奥様方に聞いて、 親父を説得して導入したものだ。 せっかくなのでと、機能の多いものを買ったため、 ジャグジーのように使うこともできる。 そんなわけで、お風呂、といったら、すぐに入ることもできるのだが、 ひとつだけ、問題がある。 桐乃が手に怪我をしていることだ。 お湯がしみるらしく、やっぱり痛い、とこぼすのだ。 「そうだよなあ。ぬれないようにするのがいいんだけど。」 そこで、桐乃から提案されたのが、家庭用のサランラップで防水する、というもの。 桐乃はあまり縁が無いのだが、陸上競技で擦り傷をつくってしまうことがある。 そういうときに、簡単な防水対策として結構活用されているというのだ。 確かに、これは便利だ。 ただ、一点だけ問題があって、 つまりこれ、桐乃は自分の身体を自分で洗えないんだよね。 「あんたがさっさとつれてかえってくれなかったから、アタシが濡れる羽目になったんじゃない。責任取りなさいよね?」 ……俺の妹はずいぶんと過酷な要求をしてくださる。 「わーったよ、ちょっと待ってろ」 仕方が無いので、キッチンからサランラップを持ってくる。 「くちゅ!」 ちょっと真剣に震えている桐乃。 まだ絆創膏に血がにじんできている。 痛々しい。 まず、妹の着ている服を脱がさないことには、どんどん体温が奪われていくことになる。 「……脱がすぞ」 妹様は、こく、っと、頷くだけで、 俺を受け入れているのか、 それとも、 下男を見る高貴な女性なのか、 判別つけ難い目で俺を見る。 俺にとっては、ただのかわいい「妹」に違いない。 だから、彼女の服を一枚一枚、剥ぎ取る。 スカートが、ブラウスが、俺の手で一枚ずつ取り除かれる度に、 俺の手の中の冷たさが、妹の身体からはぎ落とされる。 「んっ……」 恥じらいとも、くしゃみを我慢するとも判別つかない音が妹からする。 寒さから開放されてほてっているのか、上気しているのかわからない熱で妹の耳が赤くなる。 「寒いか?」 ちょっと間の抜けた言葉を掛けないと、やっていられない。 俺は、こいつの、兄貴なのだ。 「ちょっと……寒……い……くちゅ!」 ゆっくりしていると、風邪を引きそうだな、と、 ちょっとピントのずれたことを考えて、いそいそと妹の服を脱がす。 ブラを、ショーツを。 全てを剥ぎ取った妹の肢体に思わず見ほれてしまう。 だって、仕方ないだろう? こいつは、丸顔ってことを除けば、昨今女子人気No.1の読モ様だ。 おまけに、学業優秀、スポーツ万能、品行方正。 そんな女の露わな姿を見て、感じない男は居ないだろう? いつか妹が恋をして、いざ相手がこいつのことを見て、何も感じないなら、 そいつは聖人君子であると言いたいね!ここに居るけどね! だってそうだ、俺はこいつの兄で、つい最近まで、俺の妹がこんなにかわいいわけが無い、って信じていたくらいなんだから。 桐乃の服を脱がせた後、やらなければいけないことがある。 まず、彼女の身体から、雨をぬぐってやることと、 雨で濡れて汚れた手指を洗ってあげることだ。 服を脱がせたとはいえ、身体が濡れていれば濡れているだけ、雨は体温を奪い続ける。 また、絆創膏で覆っているとはいえ、指先に染みた雨のせいで傷口にばい菌が入るかもしれない。 ちょっと、かわいそうだな。 「桐乃、ちょっと身体拭くぞ。くすぐったかったら言うんだぞ」 と、つい、アホなことを言ってしまったが、桐乃の目が、なにか懐かしいものを見るような目で、俺を見ている。 「うん、お願い、兄貴」 「……ん?」 ふかふかのバスタオルで、桐乃の身体をふいてやる。 まず、いまどきの女の子を演じるために染めた長い明るい茶色の髪。 濡れそぼって、少し重い色になった彼女の髪。 「なあ、桐乃。」 「なに?」 「俺が女の髪を触るのって、お前が初めてなんだぜ」 「……そう?」 「ああ」 彼女の湿り気を移したバスタオルで、続いて、顔と、肩と、背中と、拭いてやる。 ちょっとくすぐったそうにしている妹に、なぜかノスタルジックなものを感じる。 むかし、こんなことがあったっけ。 彼女の足を拭いてあげる。 ちょっとくすぐったそうにしている。 かわいい。 いやいや、まてまて、こいつは、そんなかわいいもんじゃない。 案の定、俺をこづくようにする。 何だよおまえ。。。 「ね……ちょっと、お願い」 「……な、何だよ?」 「ふ、拭けてない、じゃないっ!」 「あ?」 「お尻とか、ま、前とかぁ!」 そうですね、確かにそうですね。 でもね、兄としてちょっと自重してしまったんですよ。 お風呂に入れば一緒じゃない、って。 「あ、ああ」 大分妹の水気を吸ったバスタオルを変えて、 新しいタオルで桐乃の繊細な部分を拭く。 もちろん、繊細な部分だから、優しく拭いてあげないといけない。 「ぅ…」 フェイスタオルで胸元を拭いたときに、あまったるい匂いと、あまったるい声を上げる。 ヤバイ。 おれは、 桐乃の お兄ちゃんだ。 OK,OK.落ち着いたぞ。 しかし、こいつ、結構綺麗な身体してるんだな。 陸上部で読モってなれば、多少控えめとはいえ、 やっぱちょっといいおっぱいしてるんだな。 年間通して、軽い小麦色の肌も、外での活動のため。 乳首もピンクから薄いピーナツバターっぽい色で、 ちょっと見ほれてしまう。 つい、丁寧に拭いていたら、妹様からクレームが来た。 「ちょっと、いつまで人のおっぱい触ってるの?」 「うわああああ」 つい、後ずさった後、今度は動揺しないように、 お尻と、あとその、 前のほうを、なるべく見ないように拭いてあげる。 どうしても見ないようにすると、桐乃の肌に触れてしまう。 やわらかくて、すべすべしてる肌に。 そのつど、小さく声を漏らすのは、俺の精神衛生上よくない。 続いて、手指の処置だ。 まず、こういう傷は、清潔にしておかなければならない。 雨で濡れてそのままってなったら、やっぱり、よくない。 特に桐乃はモデル業もやっている。 傷になったらかわいそうだ。 なるべく綺麗に直すために、まずは、絆創膏をはがして、綺麗に洗ってあげないとならない。 ちょっと痛いかもしれないのがかわいそうだが、そうすることを告げると、こく、とうなづいた。 ただ、面と向かってというのが恥ずかしいらしいのと、 少し寒いのとで、後ろからやってくれ、という注文だ。 それと、自分だけ脱ぐのはフェアじゃないので、 お前も脱げ、とのことで。 数秒間悩んだ挙句、自分の理性を信じて、半裸になった。 手指を洗うために、洗面台の前に立つ。 桐乃の背中側から手を伸ばし、彼女の手元を洗う。 ただ、この姿勢をとるためには、どうしても密着しなければならない。 妹になにを言われるかわかったものじゃないが、せめて後ろからということで納得してもらっている。 ふと、触れ合う妹の背中と、俺の胸。 俺の鼓動と、妹の鼓動。少し妹のほうが早い。 俺の胸も同調するように鳴りそうだが勤めて平静を装い、 「痛くないか?」と、声をかける。 ちょっと痛いのか、一瞬表情を厳しくするが、どうも身体が触れている安心感から、 痛くても大丈夫と思ってくれているのだろう。 傷口を洗い、また清潔な絆創膏をはって、こんどはラップでくるであげないと。 そう考えていた矢先、妹が「きゃ・・・」と、女の子のような声を上げる。 どうやら、鏡に映った俺達の姿が、ちょうど、その、後ろからやってるように見えてしまったらしく、 みるみる顔が真っ赤になっていくとともに、少しだけ、女の匂いを立ち上らせていた。 なんとも言えず淫靡な愛液の匂い。 桐乃はそれも恥ずかしいらしいのだが、もはや言い訳も利かず、なされるがままだった。 彼女の傷口は両手だ。ラップで覆ってあげる。多分これで防水はばっちり。 ただ、問題は、風呂で妹が手が使えないんだよね。 「……じゃあ、ちゃんとお風呂に入れてよ。 あ、でも、前からはやだから。 前からだと見えちゃうからやなの。」 へいへい、もう、仰せのままに。 ここまでくればもう覚悟は決まっている。 それに、少し冷えたようなので、後ろから抱きかかえるように、浴室に連れて行く。 終始上気した表情をした桐乃だったが、一緒にお風呂に入る、というところで、 ちょっとだけ、そう、ほんのちょっとだけ、幼さを取り戻したようにも見えた。 「ねえ、お兄ちゃん、桐乃のこと、ちゃんと洗ってちょうだい」 「ああ」 一瞬と惑いつつも、なぜか、思い出の中にある言葉。ノスタルジーなのかもしれない。 もしかしたら、昔仲が良かったころ、一緒にお風呂に入ったりしたのかな、俺達。 いつもより幼い表情で、前からは禁止だからね!という桐乃 なので、後ろからまずシャワーを浴びせるのだが、どうしてもくっつかなければならない。 まず、長い髪、肩、背中と洗い、見えないように前のほうを洗わなくちゃならない。 「ちょっと前から洗うぞ?」 「ん」 後ろから桐乃を抱きかかえながら、 シャワーで彼女の繊細な肌をたたく。 乳首を、足を、内股を、陰部を。 「……んーっ、ん」 「おい、変な声だすなよ?」 「だって、仕方ないじゃない。」 こんなところでも(多少)強気なのは、妹様のいいところなのだろうか。 一通り、体中を洗った後、上気した桐乃を抱えるようにして、湯船につかろうとする。 こけても大丈夫なように、俺が後ろについて、妹の体重を支えるように、ゆっくり湯船につかる。 妹のやわらかさで、どうしても俺の男性の部分が軽く反応してしまっているが、 そこにあえて触れないのは、桐乃の優しさなんだろうな。 まあ、手先を保護するために、ちょっとだけ万歳ポーズをしなければならなかった桐乃がちょっとだけかわいそうだったが。 二人とも、湯船につかる。 ちょうど妹を後ろから抱くように、湯船につかる。 あ、なんかこれ、懐かしい。 そうだ、桐乃とこうするのって、いったい何年ぶりだろう。 そういえば、昔はおにいちゃんっ子で、なにをするにも一緒だった。 遊びに行くにも、なにするにも。 でも、俺も家だけじゃなくて、そのうち、幼馴染ができた。 麻奈美だ。 もしかしたらそれ以来、少しずつ桐乃との壁ができてしまったのかもしれない。 俺がよく麻奈美のことを話すから、やがて桐乃はもっと目だって、 話題の中心になりたかったのかもしれない。 確かに、桐乃は我が家でも、どこでも、話題の中心になった。 優れた娘だと、誰からも賞賛された。 だけど だけど、俺は、そんな妹を、まるで違う生き物のように扱い、 ずっと逃げるようにして、放って置いたのかもしれない。 たまらなく 堪らなく妹がいとおしくなった。 桐乃がいとおしくなった。 お互いの表情が見えないから不安になった。 だから、俺は妹を抱きしめた。 そして、こころから、言った。 ごめんな、俺、お前を見てなかった。見ようとしてなかった。 お前はできすぎた妹、おれは平凡なやつ。 だから、別物だ。兄妹でも別物だ。そう言い聞かせていた。 でも、そんなのは、間違いだった。 桐乃を抱きしめる腕に力が篭る。 い、痛いよ、と、言う声も、心なしか、艶っぽく、そして、拒む声ではなくなっていた。 桐乃、好きだよ。 振り向いた妹が、やおら俺の顔を見つめる。 やっと、言ってくれた。 湯あたりのためか、それとも。 少し上気した身体が俺に覆いかぶさる。 でも、手が使えないので、必死で桐乃を抱きとめ、抱き寄せる。 そしてキスをする。 いままでできなかっただけ、それだけ、たっぷりと、熱く、キスをする。 キスをしたまま立ち上がり、俺は桐乃を抱きしめる。 強く強く抱きしめる。 女の子を抱くのも、お前が初めてなんだ。 そうして、おれは、見たんだ。 頬を伝う、桐乃の涙を。 大好きだよ、おにいちゃん、と言う言葉と共に。 もう、否定しない。 桐乃は、可愛い俺の妹なんだと。
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/159.html
(「あやせの相談事・恥辱編」加筆・改題) 「お兄さん、桐乃のことでご相談があります。」 下校ルート途中の公園で俺を待ち構えていたのは、制服姿の新垣あやせ。 目の前に立つ長い黒髪の美少女は、俺の妹、桐乃のクラスメイトであり モデル仲間でもあり、そう、とにかく桐乃の一番の親友だ。 桐乃と、このあやせの間には、以前にちょっとしたトラブルがあって、 それを俺が泥を被る形でちょっとだけ解決の手助けをした事があった。 それ以来、俺の事を『近親相姦上等の変態兄貴』だと信じ込んでいる、 事になっていたはずなのだが・・・。 なぜか度々、今日のように、妹の事で俺に相談を持ちかけてくる。 「しかしなぁ、お前も俺を信用してるんだか、してねぇんだか・・・。 よくわからんが、何度目だ、もう?」 あやせが今までしてきた相談事では、毎回、俺的には、真面目に考えて 最適なアドバイスをしてやってるんだが、それは、常にあやせの考えの はるか斜め下を行っているようで、期待していた答えには程遠いらしい。 決まって最後には、「もういいです、この変態。死んじゃえ」といった、 この可愛い顔と声に全く似合わない捨て台詞を残して去ってしまうのが 毎回お決まりのパターンだった。 にもかかわらず、少し経つと、またこうやって普通に相談に現れるのだ。 「―で、今度は何?」 俺がそう問いかけると、あやせは俺の前では珍しく照れた表情になって、 少し俯き加減に、 「・・・プレゼントを選んで欲しいんですけど。」 「いや、俺、あやせがくれるモンなら何でm と言い終わらない内、 「だ、誰がお兄さんへのプレゼントと言いました? 桐乃です、桐乃」 と、会って早々から声を荒げるあやせ。 って言うか、俺も解ってボケてる訳で、まぁ期待通りのツッコミだわな。 でもな、一度くらいは、そういうパターンがあっても、良さそうなもん じゃねぇか。 なんて拗ねているのも情けねぇし、俺は気を取り直して少し考えてみる。 「で、今回は何の? 桐乃の誕生日はまだだし、クリスマスでもねえし、 バレンタインの友チョコって訳でもなさそ・・って、ちょっと嫌なモン 思い出しちまったけどよ、」 これには、あやせも苦笑した。 そう、俺達は「特製桐乃チョコレート被害者同盟」という超絶強い絆で 結ばれていたのだ。 「仲直り記念の、今年の分ですよ、お兄さん。」 そうあやせが答えた、その「仲直り」っていうのは、例の、何年か前の 夏コミから始まったアレの事だろうか? さっき言った、俺が近親相姦兄貴に成り切るというしょんぼりな方法で、 逆説的に、あやせと桐乃の親友の絆を結び直させた・・・。 仲直り記念日。 そか、もうあれから一年・・・二年・・・。 まぁ、こいつらみたい年頃で、こいつらみたいな間柄なら、仲直り記念 プレゼントの交換も、解らなくもねぇんだが、 「今年分、って、毎年やってんのか? 5年後、10年後もやるんか?」 そう聞くと、あやせは、いかにも当然なように、 「当たり前じゃないですか」 と来たもんだ。 まぁそういう事なら、ちょうどいいタイミングで、桐乃が狂喜しそうな スペシャルなブツに心当たりがある。 俺はあやせを自宅に誘ってみる事にした。 案の定、桐乃の事になると、冷静な判断がつかなくなるのか、予想通り いろんな事が俺にお任せになる、ちょっとばかり危なっかしいあやせ。 いや、俺もさすがに、あやせを騙すとか、そんな事は考えてないんだが、 俺以外の野郎にマイエンジェルあやせが騙されるのは絶対俺が許さねぇ。 そんな矛盾した事を考えながら、長い黒髪の美少女をすぐ後ろに従えて、 俺は何だかいい気分で、わが家の玄関をくぐった。 桐乃は、外出しているようだった。 「失礼しま・・・す」 俺に続いて階段を上り、しずしずと行儀良く部屋に入ってくるあやせ。 だが、入って来るなり、あやせはいきなり部屋の一点に視線を奪われ、 アワアワと取り乱した。 「な、な、な、何ですか! そ、それは!?」 あやせの視線の先には俺のベッドがあり、そのベッドの上にはつい最近 購入したばかりの俺の秘密兵器が置かれていた。 あやせにそっくりな笑顔で微笑むそれは、俺が密かにあやせたん2号と 名付け、毎朝毎晩可愛がる予定の商品番号484「ヤンデレな妹の親友 抱き枕」であった。 「・・・これ、明らかに、わたしに似てますよね? 着ている制服も、 ウチの学校のにすごく似てますし。」 ジト目で俺を睨んでくるあやせ。 もちろんよ、だから買ったんだけどな。 「お兄さんが、これを一体何に使うつもりだった・・・のかは、あえて 聞きません、恐いから。 ・・・それで、今の流れからすると、これと同じものを桐乃に贈れ、と、 そういう事ですよね?」 頷く俺。 おうよ! おまえの事が大好きな桐乃なら、絶ってー喜ぶんじゃね? いつかのおまえ似ゲームキャラの「あやか」みたく、毎日一緒に寝たり、 会話したり。 だから、 「いつも桐乃の部屋にあって、毎朝、毎晩、おまえの事に想いを馳せる きっかけにして貰えるなら、おまえも嬉しいんじゃねぇか?」 ・・・今のセリフは、我ながらいい線を突いたと思うぞ。 「・・・それは、そうですけど。 でも、それって、現在、お兄さんが、このクッション? 枕?に、毎日 わたしを投影してるって事になりますよね? 気持ち悪い!」 あやせは「またこの男は」と言わんばかりに、フン、と一瞥して続けた。 「って言うか、こんなの一体、どこから見つけてくるんですか!」 ・・・まぁ、その、何だ。 世の中にはいろんなサイトがあって、だな。 同人サークル・・・って言って、一般人のあやせに通じるだろうか? 俺が答えに詰まっていると、あやせは、急に真面目な顔で振り向いて、 全く予想外の事を喋り始めた。 「お兄さん、『これ』は、ちゃんとした正規の商品なんですか? ウチの事務所がそういうものを認めたとは、聞いてないんですが。」 何か胸に秘めているように思えたあやせの問いかけに、俺はいい加減に 「・・・いや、どうだろう。俺には解らな」 と答えかけて、あやせの話にさえぎられる。 「昔・・・」 どう繋がっているのか、すぐには解りかねる話をあやせは話し始めた。 「昔、桐乃が、わたしがお母さんに貰ったバッグをすごく気に入って、」 「うん。」 真面目なあやせが話す事だ、俺は相槌を打ち神妙に聞き入る。 「だからわたしも、同じものが手に入らないか、それとなく探してて、 ・・・ある日、とても安く売っていたお店を発見したんです。」 優しいあやせは、常に我が妹様の事を気にかけ、自分が買えるものなら プレゼントしてくれる気だったんだろう・・・。 だが、この話の行く末には一抹の不安を感じるな。 「桐乃の喜ぶ顔が見たくて急いで買って帰ったソレは、並べてみると、 わたしのバッグとはいろんなところが少しずつ違ってたんです。」 ・・・あぁ、やっぱり地雷でしたか。 「・・・コヒ○ー商品でした! せっかく桐乃と・・・お揃いだ、って、 すごく喜んだのに!」 訴えかけてくるような、あやせの真剣で悲しげな表情に、俺の心が強く 揺さぶられる。 そうだよな。期待が大きければ大きいほど、裏切られた時のショックも また大きいだろうからな。 「で、結局、どうしたの?」 どんな顔で、何と声をかけれてやればいいか解らず、それでもなるべく 優しい声を選ぶように、恐る恐る聞くと、 「お母さんと相談して・・・、そのお店は次の日に無くなりました。」 恐ぇえよ! てか、「通報」は冗談じゃなかったんかい! 「私たちには、肖像権というものがあります。ですから、『これ』は、 認められません。」 少し寂しげにも見える表情でそう結論付けるように言ったあやせの事を、 俺は、「頭が堅い奴だ」「話が解らない奴だ」とは思わない。 だってそれは、『モデル』という立場で大人に交じって仕事をしている あやせのプロ意識の現れであり、俺なんかがどうこう言える物じゃない からだ。 それにあやせの、曲がった事を嫌い、信じた道をバカ正直に進んで行く 真っ直ぐな様子は、いつも適当な所で妥協を繰り返してばかりの俺には どこか眩しく映る。 同い年の妹を持つ俺からすれば、こいつも俺が守ってやらなければ、と そんなふうに思わせられる時がある。 いや・・・いつの間にか、熱血兄ちゃんが板に付いちまったようだな。 ホント、俺らしくもねぇ。 俺は、今ここにはいない、俺が「兄貴」である事を思い出させてくれる 手のかかるヤツの「んべっ」と舌を出した丸顔を思い出した。 そして、その妹の「代わりにしないで頂戴」と言って、俺に色んな事を 考え直すきっかけを与えてくれた桐乃のオタク友達で、あやせが表側の 一番なら裏側の一番に当たる「黒猫」の、寡黙な口以上に意思を語る瞳。 さらに、同じオタク仲間で、俺と桐乃に、黒猫を引き合わせてくれて、 そして、その他にも感謝しきれないほど世話になっている「沙織」の、 日ごろ見せる事のない、キャラを作っていない時の可憐なまなざし。 それに、付き合いの古さ、長さから言えば、むしろ最初に思い出すべき 大事な幼馴染「麻奈実」の、眼鏡を通し安らぎを与えてくるような笑顔。 どれ一つ欠ける事を良しと思えず、どれが一番など順位を付けられない、 今の俺の大切なものたち、だった。 目の前で、少しだけ寂しげな表情を見せていたあやせの事も、もちろん 俺が大事に思う存在に変わりない。 あくまでも「妹の友達」であり、まだ「直接の友達」と言えるまでには まだ幾つかイベントが必要な、―そんな感じの間柄だけどさ。 『あんた、あやせに執着しすぎ! キモッ』 妹様には、何度かそう言われたように思う。 ・・・そう見えるんなら、それは全くの見当違いではないんだろう。 俺の想いは断じてキモいモノじゃないがな! ・・・俺の・・・想い? そう言えば何だったっけ。俺があやせに轢かれる、いや違う、引かれる、 これも全然違うぞ、惹かれる、か。そう、そのきっかけになったのは。 桐乃の友達の一人として、初めてウチに遊びに来て。 その時に、初めて会ったあやせの、美人っ振り、好みのタイプっ振りに 惹かれたんだったか? ・・・いいや、それだけじゃねぇ。あやせの、礼儀正しく人を思いやる 優しい人柄も、その時に見せて貰って・・・、それでだった気がする。 そのあと、思いがけなくケータイ番号とメルアドの交換を申し込まれて。 あやせがどんなつもりでそんな事を言い出したのかは、わかんねぇけど、 俺も、考えてみれば、何の共通の話題も無いのが解ってただろうにOK しちゃってた訳で。 ・・・実際、半年ばかり電話する機会が無くて、しかも気付いた時には 着信拒否にされてて泣きそうになったけどな。 その時は、何かこう、ビビッと来た、と言えばいいのか。 こういうの、何て言うんだ? ささにしき? あきたこまち? 「・・・お兄さん!」 あやせの声で急に現実に帰った俺。 「お兄さん。ちょっと止めて下さい!」 現実に引き戻された俺は、遠い目をしながら、盛んにあやせたん2号の あちこちを撫で回していたらしく、あやせ1号はぶち切れ寸前だった。 「なんで、お兄さんは、世の中の考えられるありとあらゆるセクハラを わたしに仕掛けてくるんですか。」 いや、そんな事を言われても、理由は俺にも解らん。 「だいたい、それ、絵ですよ!? 何で髪を梳くように触ってんですか。 ダメです、耳もくすぐらないで! ・・・だから、セーラー服の上衣や スカートが捲くれた所を指でなぞるな! この変態!!」 切れかけるあやせ。 いかん。このパターンは、毎度のバッドエンド一直線だ。 ここで。俺は、送料無料条件のために一つ余分に買っておいた、新品の マイエンジェル未開封を、あやせの前に差し出す事にした。 抱き枕が入った大きな段ボール箱の表面に貼られた紙には、商品番号と 中身を示すサンプル画像が大きく印刷されている。 「で、これが、こんな事もあろうかと思って俺が密かに用意しておいた、 あやせたん3号だ。美人だろ。」 「何でお兄さんが自慢するんですか。それにわたし、何て答えたらいい んですか。」 面倒くさそうにしながらも、律義に俺にツッコミを返すあやせ。 「いや、でも可愛いだろ? 俺な、インターネットのカタログ画面の中でおまえそっくりに笑ってる こいつの拡大写真を見た瞬間、息が止まるかと思ったんだよ。 ・・・本能が危険を感じたんだろうな。」 もう付き合いきれない、といった感じのあやせは、 「あーもう。本当に、ろくでもない時間の過ごし方してるんですね。 ・・・いいですよ? いつでも、わたしの魅力で、お兄さんの息の根を 完璧に止めてあげますから!」 「・・・おまえ、それ、魅力とは言わんだろ?」 むしろ『わたしの威力で』と言い直した方がしっくりくるぞ。 そんなやり取りをしながら、馬鹿でかい段ボール箱を部屋の隅っこから 真ん中に移動させ、できるだけ丁寧に梱包を解いていく。 扉を左右に開くように開いた段ボールから、もう一人のあやせが目覚め、 透明なセロファン越しに、少し照れ気味に微笑んだ。 「なぁ、あやせ。あやせ的には、やっぱり『これ』は、ナシなのか? ・・・こんなに可愛いんだぞ。桐乃もイチコロだぞ。」 あやせに、せめてもの再考を促すよう尋ねる俺。 まぁ、むしろイチコロになったのは俺なんだけどな。 反論とか、はっきりした反応をまだ見せないあやせに、俺は続けた。 「あやせはさ、『これ』が、その、・・・以前にあやせを悲しませた、 コピー商品みたいな、悪意で描かれたものに見えるか?」 「・・・そんなことは。可愛く、描いて頂いてること、は、解ります。 ・・・解ってますよ。わたしも最近、ちょっと考えるようになりました から。」 少し拗ねたように、そんな事を言ってくるあやせ。 それはちょっと、何か初耳だ。 「へぇ、それは一体どういう風の吹き回しなんだよ?」 あやせは、言い訳をするみたいに、小声で淡々と喋り出す。 「どういう、って。例えば、 あの。わたし、極端に『嘘』を嫌ってて。 ・・・それは、『嘘は必ず人を不幸にする』っていう、小さな頃から 厳格な両親に受けた教育のせいもあると思いますけど。」 あやせの両親って、確か代議士とPTAの会長だったっけ? 「解るよ。ウチも親父が警察官で、結構厳しい人だからな。」 そこであやせは、少し調子を変えて、 「でもね、お兄さん。少し前にですけど、わたしに、『人を幸せにする 優しい嘘』がある、っていう事を教えてくれた人がいたんですよ。」 そう言った、あやせの表情は、雲の晴れ間から光がさした瞬間みたいで、 あやせ大好きな俺としては、ちょっと目を奪われる。 抽象的過ぎて、何の事か、誰の事だったのかは、解らなかったんだが、 それは何となく、あやせにとっていい変化のように思えた。 「・・・解りました。こ・ん・か・い・は、お兄さんを信用します。 桐乃にプレゼントしたいので、この子を譲って下さい、お兄さん。」 ・・・何気にひでぇ言い回しだったように思うが、まぁ、桐乃や黒猫 クラスと比べれば、まだあやせの真意は掴みやすいような気がする。 そこからは、話はスムーズに進み、プレゼントとしての体裁を整える話 になっていく。 中身の確認のために開封はしたが、やはり贈り物の箱はちゃんと閉じて おくべきだし、リボンの一本も欲しくなる。 メッセージなんかも添えておくほうがいいだろう。 「あ、そういや、梱包もするんだったら、ガムテープか何かが要るな。 おまえ、今、ガムテープ持ってねぇか?」 そんな形やサイズのものが入っているようには見えない、床に置かれた あやせのカバンに視線を動かしながら、俺が冗談で言う。 「は? どうしてわたしがそんなモノ持って通学してると思うんですか?」 何か不審に感じたのか、手を伸ばして自分の通学カバンを俺の視線から 遮るように少し動かすあやせ。 「冗談だ、怒るなよ、あ・や・せ。」 と言った俺だったが、カバンを動かす拍子に聞こえた「ジャラ」という 金属同士が擦れ合うような不穏な音を俺は聞き逃しはしなかった。 「ちょっと下行ってテープ取ってくるわ」 立ち上がって部屋から出た俺。 だが、階段を半分まで降りたところで、一つ思い当たる事があった俺は、 一旦、部屋に引き返そうとする。 いやな、一階には、おふくろが、もらい物から取っていた、包装紙だの、 リボンだのの、いわゆるラッピング用品があったはずだから、それらも 一緒に持って行ってやった方がいいか、確認しよう、と思ったのだ。 そしたらな。なんと、あやせが! 恋人ではない女の子を部屋に招いている男のマナーとして、というか、 露骨にあやせへの点数稼ぎとして、今日の俺は、あやせが来てからは、 ずっと部屋のドアを完全には閉めず、ちょっとだけ隙間を空けるように していた。 今も開いている、その隙間から、一旦部屋に戻ろうとした俺が見たもの。 それは、何とも言えない耽美な雰囲気を持った光景だった。 俺の部屋の中で、あやせが。 桐乃に贈ろうとしている箱入りの抱き枕にある、自分と瓜二つの顔を、 まるで白雪姫に出てくる王子様のように、ずっと見つめて続けていて。 やがて思い切ったように、自分の唇を、自分と同じ顔をした眠り姫の 同じ形をした唇に、ゆっくりとした動作で、そっと押し当てた・・・。 あやせと、あやせのキス。 俺の気持ちの中で、何かが立った。何かが振り切れた。 こういうのって、確か。 「ナルシシズム」 その光景は、俺の頭から出て来たそんなタイトルの付いた、美しい芸術 作品のような奇麗な光景だった。 自分と同じ姿形をしたものに魂を分け与える。そういう、神話の世界に ありそうな神秘的な儀式のワンシーンのようにも見えた。 うまく言えねぇが・・・、黒猫あたりだと、もっと適切な表現で文字に 出来るんだろうな。 俺は、何だか、見てはいけないものを見てしまった気がして、抜き足、 差し足、忍び足で、急いで一階に降りて、適当にブツを見繕った上で、 不必要に大きな足音をさせながら階段を上り始める。 自分の部屋の前まで帰って来て、少し考え、ノックをしてから入る俺。 ちょうどあやせは、プレゼントに添えるメッセージをしたため終わった ところで、なぜか手に口紅?を握っていた。 なぜ?、という疑問は、あやせが書いていたメッセージカードを見れば 得心がいった。 『桐乃へ いつもありがとう。 いつも桐乃と一緒にいたい、二度と離れたくないわたしの気持ちを込めて、 ちょっと恥ずかしいけど、これを贈ります。 大好きだよ。 あやせ はぁと』 サインペンで丁寧に書かれた文字の署名の横には、あやせの手にあった リップと同色の、チェリーピンクの大きなハートマークが描かれていた。 ・・・お前は幸せモンだぜ、桐乃。 それと、あやせも本心から提案に乗ってくれたようで、俺も嬉しいぞ。 「じゃ、これは、明日の朝イチで、俺が責任をもって桐乃の部屋の前に 置いておくからよ、」 メッセージが添えられ、奇麗にラッピングもされた大きくて細長い箱を、 俺は自分の部屋のドアの横に一旦立てかける。 「お願いします。お兄さん。」 そう言って、あやせは、少し恥ずかしげで、ちょっと頬が赤く見える、 あの抱き枕と良く似た、とてもいい表情を残して帰っていく。 何かちょっと、いつものパターンとは違った、いいエンディングだった。 翌日は休日。二度寝もできるが、早くも気温が上昇を始める午前中。 階段の下から母親が呼ぶ声がする。 「京介~、洗濯機回すから、あんたの「あやせちゃん」、汚したんなら 出しときなさいよ~」 ・・・ぐはっ。 とんでもねぇっ! 母上! 色々と言いたい事があるぞ! 話し合いの結果によっちゃ、今晩この家を出て行くからな! こういうモノまで親バレしてて、それでも平然と声を掛けてくるなんて、 デリカシー無さ過ぎだろ! 全く。 って言うか、理解が深過ぎて驚愕するわ! ふと、窓から快晴の外の景色を見て思う。 そう言えば、あやせは、もう起きて、どこかへ出かけただろうか? そんな事を思いながら、俺は、自分のベッドの上で微笑む『あやせたん 2号』の今日の御機嫌を伺う。 ん? いや、昨日とちょっと印象が違って、何か少しだけ色っぽい感じがする。 まぁ、あやせ本人も、昨日は少し頬が赤かったように見えたけど・・・ でもそういったもんが伝染するはずもねぇし、うん。気のせいだよな。 伸縮する素材なんだから、表情が多少変わって見える事だってあるさ。 しかし、それにしても。 やっぱりあやせ。おまえって、可愛いんだな。 流暢なカーブで流れるように描かれた、あやせ本人と同じ美しい黒髪、 その前髪辺りに手を添えて、手で何度かなぞってみる。 さすがに髪の感触はしないが、さらさらの高級素材の感触が心地よい。 そして、心地よいものが、もう一つ。 あやせと同じ色の澄んだ二つの瞳が、至近距離から柔らかい微笑で俺を 見上げている。 よく見るとその口元には、ひょっとして今、あやせたん2号が色っぽく 見える原因のように思えた、何かを押し付けたようなピンク色系の跡。 同時に、確かに感じる、昨日あやせ本人からも感じた、フルーティーな 香水みたいな、微かな香り。 って、・・・もしかして。 そうだとしたら絶対汚せねぇよ、これは。 勝手に洗濯なんぞしやがったら、ぶっ飛ばすからな。 今、俺はあやせたん2号を通して、あやせが昨日、確かにここにいた、 その微かな痕跡を感じ取っているような気がする。 その可愛らしい制服姿の少女の、色づいた口元に視線を奪われながらも、 俺はその少し上、前髪を分けたおでこの部分に、自分の口元をゆっくり 近付けた。 ・・・本物にこんな事をしたら、あいつ、どんな顔をするんだろうな。 それが凄く楽しみに思える俺は、やっぱりセクハラ野郎なのだろう。 隣の部屋からは、「うっひょー!」「これはw!」「くうぅ~っ!」 といった訳の解らない嬌声と、何度も寝返りを打つような大きな物音が 途切れず繰り返し聞こえていた。 数日後。 だらだらと休日を楽しんでいた俺の家のドアホンが、突然鳴った。 「ピンポーン!」 今日は親父と桐乃は留守だと聞いていたが、お袋は家にいるはずなので、 俺は2階の自分の部屋の床の上で、引き続き、ごろんと寝転がったまま、 起き上がろうともせず、だらけた体勢でいた。 宅配便か何かの配達・・・ってとこか? 桐乃のヤツは、ちょくちょく通信販売を利用しているみたいだったが、 俺は少し前に例のあやせ抱き枕を買ってみた時ぐらいのもので、あまり 利用はしていない。 だから、宅配便だとしたら俺はほぼ無関係だし、もちろん学校の友達や その他の友達と今日の約束をした覚えもない。 なので、これは多分、俺には関係のない来客だ。 ・・・と俺は安心していた。 ややあって、一階からお袋が俺を呼ぶ声がする。 「京介~。あんたのアイドルが来たから、上がって貰うわよ~!」 え? ・・・アイドル? 何の事だ、ちょっとマテ! 俺が来客に関係あるはずがない、とタカをくくって寝転んでいのだが、 突然のご指名を頂いて、やにわ起き上がる俺。 というか、『アイドル』って何だ? 全く心当たり無いぜ。 多少焦って考えを巡らせているうち、もう既に誰かが階段を上ってくる 軽やかな足音が聞こえる。 トントントントントン・・・。 コンコン、ガチャ。 「こんにちは、お兄さん。」 そう言いながら鍵のかからない俺の部屋のドアを開け顔を覗かせたのは、 ラブリーマイエンジェルあやせたん(本人)だった。 いや、本人、と特に断る必要もないだろう。 いくら俺が、毎日色々なところを丹念に可愛がってやっているとは言え、 さすがに抱き枕のあやせたん2号がドアをノックして挨拶をする、とは 思ってない。 俺のあやせたん2号はちゃんと撫でたり抱きしめたりできる存在だから、 キメェオタクじゃあるまいし、俺はきちんと2次元と分けて考えている、 安心して欲しい。 俺の部屋の前に立ってるあやせは、今日は制服じゃなくて、白あやせ。 純白のワンピースが涼しげで、例の、麦わら帽子を持たせればいつでも ヒロインデビューできそうな、いかにも、いいところのお嬢様といった 着こなしだ。 「・・・アイドル、っつーから誰のことかと思ったよ。」 何だ、脅かすな、と、俺は多少リラックスしてあやせを迎えた。 「わたしも、アイドルだなんて、急に何がなんだか、で。」 そりゃぁ、そうだよな。 ・・・ったくも~、お袋は、よ! 俺はお袋の間違いを訂正するために、階下に大きめの声をかける。 「おーい。お袋。聞いてるか~っ? あやせは、アイドル、じゃなくて、 俺のエンジェルなんだぞ~!」 「な、何を大声で言ってるんですか、恥ずかしい!」 俺の母親がすぐ下にいる手前、いつものような暴力的行為には及ばずに、 くいくいっと俺の服の袖の辺りを引っ張るあやせ。 こういう女の子っぽい仕草って、なんかいいよな。 袖と一緒に摘ままれたままの所が痛くて、いい加減、泣きそうになって きたけど。 下からは「難儀な子ね~」という、諦めにも似た声が聞こえてきた。 それと「お母さん買い物に行ってくるから、エンジェルちゃんにおいた しちゃだめよ~」 などと言う。 母上。オイタって何ですか。 息子を信用してないにせよ、そういう表現はいかがなものか。 今だってそうだが、イタい目にあってるのは常に俺の方なんだぞ。 憤慨していると、外出の用意を簡単に済ませた母親が、玄関の扉を開け、 出ていったらしい物音がした。 「ところで、桐乃なら留守だぞ」 あやせの方に向き直った俺は、まずその事をマイエンジェルに確認した のだが、 「はい、解ってます。わたし桐乃のスケジュールもほぼ頭の中に入って いますから。今日は街中での撮影で、ほら、よくお兄さんに来てもらう 公園とかその近所だと思いますよ。」 と、妙な返事を返す。 それじゃあやせは、桐乃が留守なのを知っててウチに来たのか? なら多分、これはまた「桐乃の事でご相談が」というヤツなんだろうな。 「じゃ、まぁ座れよ。」 そう言って、俺は部屋の中で一番いいクッションを見繕って薦め、俺も 自分のベッドの端、寝ていれば足元が来る辺りに腰をおろす。 あやせは、ベッドそばの床に置かれたクッションの上にペタンと座ると、 そのまますぐ、ポン、と手に持った小さな何かを自分の座ったすぐ横に 置いた。 あやせの妙な動きに面食らいつつ、その「何か」に視線を向ける俺。 それは、小さな防犯カメラのような形をしていた。 しかし、ちょっと見ただけでその造りがとても安っぽい事が丸解りで、 要は五百円くらいで売ってるダミーカメラのようだった。 「何、それ?」 「はい、下でお母さまに渡されました。こんなモノでも一応、犯罪抑止 効果はあるそうです。」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 しかし、・・・息子の女友達にこんな物を持たせるって。お袋さんよ。 あんたどんだけ息子を信用してないんだ? 正確に俺を射貫く方向にレンズが向けられている「それ」を見て、俺は、 「なぁ、あやせ。せめて電池を抜いて、あの赤ランプを消してくれ。 気になって話し辛れーんだよ。」 と頼む。 すると、あやせは、 「もう・・・仕方ないですね。じゃぁ、いつものアレでいいですよね? 手錠はアイスになさいますか? ホットになさいますか?」 「ホットの手錠て何!?」 爽やかな夏の服装のどこに隠していやがったのか、あやせの左手に手錠、 右手にはライター。 「ご一緒に電流はいかがですか?」 「全部いらんわ!」 こいつスタンガンまで持ってやがるのかよ。 でもな。あやせに限って間違いはないと思うが、ライターとか未成年が 持ってるのが見つかったら、何かと面倒な事になるんじゃないの? その右手の妙に派手なライター、どこで買ったんだろう、と思いながら、 あやせの掌の中でキラキラ光を反射するライターをよく見ると。 そいつは、ラメ入りのデコレーションで『かなかな』と書かれていて、 ご丁寧に本人のプリクラが貼り付けられていた。 アイツはやっぱりアホだ。 「それで・・・あやせさん? 何か話があったんじゃないですか?」 監視カメラに灯る赤ランプを横目でちらちら見ながら、妙に固い口調で 切り出していた俺。 これ、確かに。なんか音声も記録されてて後に残るような錯覚があって、 迂闊な事が言えなくなる効果があるな。 困ったぞ。これじゃあやせに十分セクハラしてやれんじゃないか。 ―母親の思うつぼだった。 「今日は桐乃の事で、少しお兄さんにお聞きしたい事があって来ました。」 そんなこんなで始まった、今日のあやせの相談ごと。 「桐乃の事、つってもなー。俺よりもおまえの方がよっぽど詳しそうに 思えるんだが、とりあえず言ってみ?」 「はい。あ、その前に、先日はありがとうございました。桐乃、とても 喜んでくれて。」 律義にお礼を言ってから本題に入ろうとするあやせ。 今言ったのは、あのプレゼントした、あやせたん抱き枕の件だよな。 受け取った桐乃のリアクションは俺が一番良く知ってる。 その日、部屋から出てきた桐乃と廊下ではち合わせをした時があった。 そん時の桐乃の表情は、俺が知るどのエロゲの妹をクリアした時よりも 明らかに壊れていた。 とても幸せそうではあったが、例えばモデルの仕事中にうっかりあんな 目尻やよだれを見せていたら、契約解除は間違いないだろう。 別の仕事は来るかもしれんが、それは兄として断固許す訳にいかない。 エロ本買ったらモデルが妹似で微妙な買い物になる―程度ならまだしも、 本人だったりした日には、俺の明日がどっちへ行くか俺にも責任持てん! 少々脱線してしまったが、そんな前置きがあった後に、 「多分・・・、わたしの気のせいだけじゃ、ないように思うんですけど、」 と遠慮がちに切り出すあやせ。 「どうも、最近、桐乃からの、ある種のスキンシップが急に強くなった ように思えて・・・。 あと、着替えの時に、気付けば桐乃の視線を感じる、みたいな事も結構 多かったり。」 そこまで話したあやせは、あ、そうそう、誤解のないように、と、 「当たり前の事ですけど、それが嫌って訳じゃ、全然ないんですよ?」 と付け加える事を忘れない。 さらにそのあと、 「ただ、何か原因のようなものがあるのかな、って思って・・・。 だって、桐乃がもし何か足りないものを感じて寂しがってるんだったら、 親友のわたしとしては、まず、それに気付いてあげて。 それから、それが何だか突き止めて、できれば満たしてあげたいなって、 そう思うからなんです。」 と、真剣かつ、とてもいい表情で続けた。 おまえは桐乃の婚約者か。 もうね、妬けちゃうよ、お兄さんは。どんだけ愛してるんだよ。 「で、具体的に、あやせは、桐乃のどういう行動に引っ掛ってるんだ?」 と聞くと、 「あの。何と言いますか。」 言いにくそうにしているあやせではあったが、それを言わなければ多分 今日ここに来た意味がなくなってしまう。 それはあやせも解っているのか、 「学校の体育の前後とか、あとモデルのお仕事で衣装を着替える時とか、 気が付いたら、桐乃のガン見するような視線を背中の方から感じる事が 最近よくあって。 それも、なんだか、視線が、その、下の方、って言いますか・・・その お、お、お、おしりに」 あやせの、おしり。 自分で反芻してみて、ちょっと取り乱しながら、それでも俺は、何とか 自分の視線を目の前の美少女の下半身に向けるのを抑制し続けていた。 こちらを向いてクッションの上にぺたんと座っているあやせのおしりを、 今の体勢で見るのは、どうやっても無理なのだが、それでも視線が少し 下向きに動けば、こちらを向いているあやせにまる解りになる。 そうなるとあやせは決して見逃してはくれないはずだ。 折しも、俺の心は安っぽい監視カメラの光る赤ランプで威嚇されていて、 わざとらしく流し目のようにあらぬ方向へ視線をそらしてる俺の人相は、 ただでさえ悪いと言われるいつもの5割増しの目つきの悪さだろう。 俺が必死に本人から意識を逸らしていると、あやせが多少興奮しながら その続きを喋る。 「そ、そんな桐乃の視線を背中に感じてドキドキしていると」 ドキドキすんなよ! 「桐乃ったら、すーっと後ろに寄って来て、『ここがええのんか』とか 『いいではないか、いいではないか』とか言いながら、おしりにタッチ してくるんですよ。」 ・・・完全にオヤジと化しとるな、桐乃。 俺はよく知らんが、桐乃や同類の好きなエロゲの中にはオヤジが主人公 という作品もあるらしく、もともと親和性はいいのだろう。知らんけど。 「そのあと必ず、『いやーん、まいっちんぐ』って言わされるんです。」 って、どんなプレイなんだ、それは。つうか、何を見てたんだ桐乃。 あー。何となく解ってきたぞ。 って言うか、 「ああ・・・すまん。それ、多分俺だわ」 「え? それはどういう事なんですか、お兄さん? ・・・まさか桐乃をそういう性癖に調教したのは、お兄さんだとか? そんなの許さない!」 くわっと目を見開くあやせ。マジ恐くて、ちびりそうなんだけど! 俺は、あやせの気迫に、慌てて訂正を入れる。 「違う! 妹を調教とか、俺には色んな意味でハードル高過ぎだろ!」 理由はそれなりに情けないが、事実そうだから仕方ない。 「それもそうですね。」 おまえもすぐ納得すんなよ! 「いやな、あやせ。実はすっかり言いそびれていたんだが、世の中には 光あるところに影があるように、表あるところに裏があるんだ。」 「面倒な言い方をせず、さっさと言って下さい!」 「それはな・・・。こういう事だっ。」 じゃじゃーん。 俺は、自分が腰かけてる俺のベッドの上のあやせたん2号を、ぐるんと ひっくり返した。 どちらが表でどちらが裏とはどこにも書かれていないが、この種の物は、 確かに片面の奴も多少あるものの、大抵は両方の面に絵が描かれていて、 それも表と裏で、同じ人物のちょっと違った姿が描かれている。 少なくとも、俺がチェックしたサイトでは、全部そうだったし、実際に この、あやせたん2号もそうだ。 両方の面を見比べてみると、明らかに「表と裏」という位置付けになる。 つまり、人様にお見せしてもギリギリ大丈夫な面と、アウトの面があり、 普段は当然セーフの方を見えるように置いてある訳だ。 だが、先日の一件からして、あやせはその辺の事情は知らんだろう。 うん。ヤバいかもしいれんな、これは。 あやせたん抱き枕の「表」の方は、簡単に言えば、中学の制服を着てる あやせが仰向けに寝転んで、こちらを向いて微笑んでいる絵柄だ。 少しセーラー服やスカートの端が捲くれて、白い肌や小さな布が覗いて いるところがあり、そこは当然俺が重点的に可愛がるポイントなんだが、 当の本人は、そんな事には少しも気付いていない様子に描かれている。 全体を通して見ても、少し恥ずかしげに頬を染め、にこやかにおすまし している柔らかい表情とポーズや仕草が、俺にはたまらない一品だ。 中でも、真っ直ぐにこちらを見て、にこやかに笑いかけてくれるあやせ、 というのは、知り合って俺のセクハラ対象になって以降は、俺の前じゃ 滅多には見られない絶滅種みたいなもんだし、何度見てもこの笑顔には 俺の思考に干渉する何かが含まれているとしか思えない。 この絵柄は、あやせ本人も一応、目にして桐乃に贈ったはずで、だから、 本人も嫌だとか悪いものだとは思っていないと思う。 それで、な。 次に「裏」の方なんだが、これははっきり言ってアウトだろう。 少なくとも俺にはこっちを上にして人に見せる勇気はない。 「表」では仰向けだったあやせを、ごろんと俯せにして背中を向かせ、 下を大きく、上も少しはだけさせた。字にするとそんな絵柄だ。 でもまぁ、一言で言うならば、「おしり」だろうw 絵の中であやせが抵抗するように後ろ手で辛うじて手をかけ守っている 純白のショーツは、下げられる限界まで下ろされて、もはや布ではなく 帯か紐、同然の状態だ。 大事なところはショーツを持つ手で隠せているものの、その左右には、 優しいカーブと弾力性、滑らかさなどを秘めた白い奇麗な二つの球面が、 ほぼ全部剥き出しの丸出しになっているという格好だ。 膝のあたりまで落ちたように描かれた制服のスカートは、何の防御にも なっていないばかりか、むしろ拘束具チックになってしまっている。 上半身も背中の辺りが大きくはだけて、そこから片方の肩と腕、それに 胸もちょっと、ズレたり捲くれたりした白いブラからのぞいている。 そういう、かなりエッチなポーズに描かれているんだが、実のところ、 俺には「いやらしい」とは全然思えなくて、むしろそれより、やっぱり あやせは奇麗だ、可愛いと、そっちを思ってしまう。 しどけない姿に描かれたあやせの表情は、背中越しに、大きくこちらを 振り向いた困り顔で、かなり不安の色も混じっているように見える。 だけど、表情を荒げたり、取り乱している感じではなく、やはり奇麗で ちょっぴり色っぽい、可愛い俺のエンジェルそのものだ。 俺はもしかしたら、本当はこんな顔をするあやせが見たくてセクハラを しているのかもな。 もっとも、俺が実際に、こういう状態に持ち込む機会があったとしても、 あやせの反撃というか先制攻撃をお見舞いされ藻屑と消えるのが関の山 だろうがな。 まぁ、これは多分、あやせに似せて、想像を交えて、絵に描かれたもの だから、本物のあやせがこんな恥ずかしがり方をするとは限らない。 でも、本人を知ってる俺が気になってしまうんだから、本人がこういう 表情を見せる事もあり得るんだとは思う。 と、長々と考えてしまったが、我に返ると、目の前では、先日のように、 あやせが俺のすぐ横に横たわる抱き枕を見て取り乱していた。 「い・・・いゃああぁぁ!」 枕の裏側の絵柄を確認するなり、あやせは、座っていたクッションから 飛び上がると、そのまま、ベッドに腰かけている俺のすぐ横をすり抜け、 あられもない姿を見せるベッドの上の分身に抱きつくように飛び付いて、 自分の全身を使ってそれを覆い隠そうとした。 ところが、問題はその結果だ。 あやせの反射的な動きにより、お尻丸出しだったあやせたん2号の姿は 確かに隠されていた。隠されて、いたのだが。 俺のすぐ横のベッド上にダイブする格好になっちまったあやせ本人の、 真っ白なワンピースのスカートの部分は大きく捲くれ上がり、さながら 白い花が咲いたような様相を呈していた。 その花びらの中心にあたる部分には、これも真っ白の小さなショーツと、 それだけの面積では隠し切れないお尻の半分以上が、咲き乱れていた。 おしり隠して尻隠さず― 皮肉な事に、あやせは、自分が被い隠そうとした絵柄とほぼ同じ場面を 自ら演じてしまっていたわけだ。 っていうか、これ、大丈夫か、俺? あろう事か、今、俺のベッドの上にいるのは、マイラブリーエンジェル あやせたん、本人だ。 いるだけじゃねぇ。手を伸ばせば触れられる距離に、寝転んでいる、だ。 しかも、相手は夏らしい薄着で、エロゲ顔負けのとんでもないサービス シーン、パンチラ満開を演じている。 さっきまで話していた間じゅう、ベッドの端にずっと腰かけていた俺と、 結果的にだが、その真横に飛び込んで来たあやせ。 その間の距離は、本当に触れるか触れないかだ。 今の体勢のまま、俺がほんの少し手を動かせば、足の裏をこちょこちょ くすぐってやる事もできるし、もう少し腕を伸ばして太股をマッサージ してやることも出来るだろう。 少し身体を伸ばせば上半身にも手が届くから、頭の上に軽く手を載せ、 撫で撫でしてやろうと思えば出来るし、長い黒髪の先の方をくるくる、 分け目や頬にかかる所をわしゃわしゃしてやる事も出来るはずだ。 あやせがくすぐったがっても、俺のベッドは壁際にあるから、壁と俺に 挟まれたあやせが自力で抜け出すのは難しい。 俺の横でうつ伏せになり抱き枕を守っているあやせは、不思議とずっと 動かないままの状態でいるから、本当に今、俺が少し手を動かすだけで さっき考えたような事を簡単に現実にする事が出来る・・・。 などと言っても、実際俺がそんなコミュニケーションを女の子に対して 取った経験があるかと言えば、一度もない。 思い返せば、エロゲの中ではちょっとあったような気がしたが、あれは 俺であって俺ではない。 エロゲと言えば、あやせの今の状況・・・、俺の前でパンチラ花ざかり、 も、かなりのエロゲ的シチュエーションだ。 でも、「だから今、実際にどうこうしよう」とは、リセットの効かない 今の現実の状況では考えられない。 だからこそ、ぜひともセーブしておきたい状況ではあるが。 ・・・・・・・・・・・ さっきから続いてる静寂をいいことに、少し落ち着いて考えてみる。 今のこの現状は、例のごとく、俺が直接はたらいた悪事ではないのだが、 状況から見るに、いつもなら蹴りか殴打、少なくとも罵倒の嵐にはなる シチュエーションだろう。 しかし、今日のあやせは、どうも違う。 ただ、あやせたん2号の上に折り重なって倒れ込んだ、その状態のまま、 一言も発さない。 そんな有り得ない状況に、俺は何だか拍子抜けを通り越して不安になり、 「おい、どうした?」 と、顔を伏せたまま動かない、あやせの背中に声をかける。 ・・・背中だぞ、尻にじゃないぞ。 「貧血か何かか? 大丈夫か? お兄さんが血行を良くするマッサージ 「結構です」 「せめて最後まで喋らせろよ」 いつものような即答ではあったが、やはりあやせは身体自体は動かさず、 顔もうつ伏せのままだ。 「なぁ、どうしたんだよ。気になるじゃねぇか。」 一応、紳士の端くれでもある俺は、なるべく、あやせの腰から下の方を 視界に入れないようにしながら、傍らに伏せる美少女に声をかけた。 「動いたら良からぬ物が見えちゃうからに決まってるじゃないですか。 ・・・それに」 いや、動かなくても、もっといいものが見えちゃってるんだけどな。 と言うか、・・・「それに」? 「わたし今、思わずこんなふうに野獣の檻に飛び込んでしまいましたが」 オイ、えらい言われようだな! 「今日のわたしは、何をされても、何も抵抗できません。」 どういう意味だよ、それ。 「わたしが今、着ているのは、桐乃が見立てて、贈ってくれた、世界に たった一着のドレスなんです。これを少しでも、汚したり、破いたり、 いえ、僅かでもほつれさせたりするような事は、わたしにはできません。」 女の服の事はよく解らんが、確かに、あやせのワンピースは、部分的に すげー細かそうなレース?みたいな凝った飾りが何ヶ所も施されていた。 あやせキックや幻の右が繰り出せない理由はそこだったのか。 しかし、黒猫といい、あやせといい、何で俺のまわりの女は、わざわざ 桐乃セレクションの一張羅で俺の前に現れやがるんだ? 制服か普段着で来りゃ、楽でいいのによ? 「つまり、この服は、今日のお前にかけられた手錠、ってとこか。」 「・・・そうですね。そうかもしれません。」 「そして、今の俺は手錠に縛られず自由だ。」 「お兄さんに破かれるくらいなら、わたし自分で脱ぎます。」 「待てよ! 破かねえよ! どんな野蛮人だよ!」 そりゃ、健全な男子としては、そういう行為にはそそられるものがある かも知れんし、実際したら、興奮だってするだろうよ。 けど、あやせをマジ泣きさせるような罪悪感のでかい事が俺に出来る訳 ねーじゃんか。 「なんですか。今はちょっとそんな冷静なつもりでいても、いざ実際に 揉み合いになったらどうせ力任せにビリッと・・・」 「しねぇよ! そんなこと! だいたい、揉み合いになんてならねぇ! 俺は揉むかもしれんが、おまえは揉まんだろ?」 「女の子に向かってそんな事を言う人の、何を信じろって言うんですか。 変態。穢らわしい!」 俺は、自分の背中側にいるあやせに。 あやせは、顔を伏せたまま。 視線が合う事なく、ただ言葉だけがピンポンのように反射的に行き交う 応酬が続く。 「女の子に、じゃぁねょ。おまえにしか言わん。」 「だから、いちいち、何でそんな最っ低ーな言い方になるんですか。」 「おまえが俺にとって特別な存在だからだろ。」 「な!!」 俺も今、流れに任せて、ちょっと変な事を口走ったような気がしたが、 不意にあやせに動きがあったように思って顔を向けると、あやせも少し 顔を上げて、こちらを振り返るようにしていた。 何分か振りに接触する、お互いの視線。 「た、他意はねぇよ。実際、そうじゃなけりゃ説明が付かんだろ。」 俺はまた視線を外し、あさっての方角を向く。 ちょっと前から、自分でも不思議に思っていたことがあった。 俺は、何で「あやせに」セクハラをするのか。 いや、黒猫や瀬菜たちにも「セクハラ先輩」呼ばわりされた事はあった。 けど、それは、俺が直接意図したものではなく、あやせに対するのとは 違う種類のものだと思う。 俺は、何を見るでもなく、部屋の天井を見上げ、 「・・・さっきお袋が、おまえの事を『アイドル』って言ったけどな、 それ、割と近いと思う。おまえは・・・すげぇ奇麗だし、大人っぽくて、 ・・・多分、これからもっと奇麗になっていって、本物のアイドルとか、 そういう、手の届かない所に行ってしまう気がする。」 妹と共に、書店に並ぶ本を何ヶ月も飾り続ける、モデルのあやせ。 こいつらのルックスのレベルの高さは、確かに、身内びいきもあるかも しれんが、俺が保証する。 なんちゃら48とか、そういうのに混じっていても、違和感ないだろう。 まぁ俺にはよくわかんねぇ世界だし、世界に通じる、とまでは言わんが、 あやせに目を留める業界の人は、今の事務所の人を含めて、これからも、 何人も出て来るはずだ。 「・・・そんな先の事なんて解らないじゃないですか。」 当のあやせがそう言うのはもっともだが、 「俺にはそう思えるんだよ。」 「じゃぁ、お兄さんは、わたしが『手の届かない存在』とか、今もそう 思ってるんですか?」 「・・・その傾向はあるんじゃねぇか? 何つっても、『エンジェル』 だからな、俺ん中じゃ。少なくとも、そう思うような俺のエンジェルは 他にいない。」 俺の周りには、麻奈実とか、沙織とか、いい奴、いい娘が何人もいるが、 考えてみると、あやせのような惹かれ方をした相手はいないと思う。 その意味で、やっぱりこいつはなぜか特殊な存在だ。 「手が届かないのに、セクハラはするんですね?」 「手が届かねぇから、するんじゃねぇの?」 ・・・あやせの一言に対して「売り言葉に買い言葉」のように反射的に 出て来てしまった、俺の一言。 それは、俺自身にも意外で、できれば認めたくない、真実、だった。 ・・・ああ、そうだったのか。 俺がこの奇麗な妹の友達と恋人同士になりたがったとしても、それには 障害が多すぎる。 第一に、あやせ本人にその気がなく、むしろ喧嘩友達みたいなノリだし、 こいつは俺に無いものを幾つも持っていて、妹と共に光り輝いている、 俺には釣り合いそうにも無い存在だ。 高嶺に静かに咲く一輪の白い百合、俺の中にはそんなイメージもある。 (ちなみに、隣に咲いてる向日葵が桐乃な。丸いから。) 家柄だって、気難しいように感じられるお偉い両親の一人娘らしいし、 仮に付き合っても、事務所の目を盗んで密会、とか、それ何てエロゲ? ホワイトエンジェル、ってか。 そんな、こんなで、あやせが俺の彼女になってくれる可能性は、著しく 低いわけだが、今のところ、このアイドルは、俺の所にこうして相談に 来たりする。 『会いに来るアイドル』って貴重だよな。 で、俺は、あやせに「付き合って下さい」と言えずに、「結婚してくれ」 か・・・。ガキか、俺。 「どうしたんですか、お兄さん。いつも考えない事を、ちょっとは考え ましたか?」 ちょっと咎めるような、嫌み混じりのような、妹と同じ3つ下の娘の声。 そんな言葉も、ごく自然に受け入れられるのは、やはり、俺があやせに 人として好意を持っているからだろう。 「わたしに対する数々のセクハラについて、何か結論は出ましたか?」 「結論とかは出ねぇけどさ、どうやら俺は、おまえと何でもいいから、 ずっと接点を持っていたい、と、そう思ってるんだと思う。」 そう、努めて抽象的に、しかし嘘にはならないように遠慮がちに言うと、 あやせは多少語気を強めて、 「何でもいいって。結婚したいんじゃなかったんですか? お兄さん、 そう言いましたよね?」 「・・・言った」 その時に、そういう形の言葉にしたのは、はっきり言えば冗談だ。 だって、その時の俺は、(今もそうだが)、年齢的にも、人間的にも、 まだまだ具体的に結婚なんてできる状態ではなかったんだから。 「そう思った事は嘘じゃないんですよね?」 ・・・口にした言葉の表面は、確かに冗談でしかなかったが、 「うそじゃ、ない。はずだ。と思う。」 「嘘なんですか? お兄さんは結婚詐欺をしたんですか?」 矢継ぎ早に問い詰められ、防戦一方になる俺。 「・・・いや、その、俺もおまえもまだ学生だし・・・今すぐどうこう ってことじゃないんだが・・・大体おまえ、OKしたか?」 「するはずないじゃないですか。」 「だろ?」 「違います! わたしは、まだ、返事をしてないだけで、断ってなんか いません!」 なんじゃ、そりゃ。意味わかんねぇよ。 「いや、『生理的に無理』とか、言われた気がするぞ?」 結構傷付いたのだよ、俺は、その時。 「それは、後になってから、心底気持ち悪い顔と声で妙に至近距離から 『あれはセクハラなんかじゃなく愛のこもったプロポーズだった』とか 言ってきたからでしょう?」 「いや、でも『あり得ない』とも言われたぞ、確か。」 「『彼女には』でしたよね? しかも『現状のお兄さんとは』ですよ!」 間髪を入れずに返したあやせ。 確かにそうだったような気はするが、おまえはそういう遣り取りを一々 記憶してるのか? 「という事は、もしかして、俺があやせをゲット出来る可能性も決して ゼロじゃない、という事なのか?」 「もう・・・。本人に向かって、なに情けない事を聞いてるんですか。 先の事は解らない、と、そう言ってるんです! ・・・いまのところ、 わたしに、その、プロポーズとかしたのは、お兄さんが唯一の例ですし、 それに、初恋が実るのって、何だか素敵ですし。」 どこへ行こうとしてるんだ、この話? 「は? 初恋? おまえの? 誰に?」 「ち、ち、ち、違いますよ! お、お兄さん、そう! お兄さんの事に、 ききき決まってるじゃないですか!」 「・・・いや、そんなに慌てられても、何の事やら全く解らんのだが、 おまえは俺の何を知ってるんだ?」 「そ、そう!麻奈実お姉さんが言ってたんですよ。『”きょうちゃん” が、特定の女の子に興味を示したのは、多分、初めてのこと』だって。 『幼稚園や小学校でも見たことない』って。」 あいつ・・・。 っつうか、俺ってそうだったのか。 「お姉さん、お兄さんとずっと仲いいじゃないですか。なのに昨日今日 会ったようなわたしに、『わたしは、ずっと何年も”きょうちゃん”に 優しくしてもらったから、あやせちゃんも優しくしてもらうといいよ』 とか、『わたしは”きょうちゃん”の恋が叶うといいなって思ってるよ』 なんて言うんですよ。」 あンのバカ。・・・ここまで来ると涙が出るわ! 「そんなのじゃないです、って言っても、『それじゃぁ、そういう事に しておくね』って、ずっと笑ってるんですよ。」 そう言えば、唐突に思い出した。 あいつ―麻奈実が、何かの時に、「結婚して幸せになるんなら、あやせ ちゃんみたいな相手でないと」とか何とか、俺に言っていた事を。 あいつは、俺自身も知らない俺を、どこまで知ってるんだろう。 ・・・・・・ 「わたしも、女の子で、モデルですから、奇麗だとか、可愛いと言って 貰えるのは、素直に嬉しいし、お仕事を頑張ろうって思います。」 また話の方向がちょっと飛んだように思ったが、あやせは続ける。 「カメラマンの先生で、撮影中わたしたちの表情を上手く引き出す為に、 『じゃぁ、彼氏のことを考えてみようか! 残念ながら彼のいない人は、 優しいお兄さんの事を考えてみて』とかおっしゃる人がいるんですけど、」 もしかして俺の出番か? それ。 「桐乃は呼吸困難になるまで盛大に咽せて仕事になりませんでしたし、 わたしは目つきが悪くなったって注意されました。」 おめぇらは! 「でも、お兄さんとは、全部が全部、悪い思い出という訳でもないので」 なんちゅう言い草だ! 「一枚か二枚、誉めて貰えるようないい写真が出来たことについては、 とても感謝しています。」 微妙だが、ここは喜んでいい所なのか? 「だからその。・・・わたしはしばらくモデルを続けるつもりですから、 例えば、もしも、もしもですよ? お兄さんが言ったように、わたしが 大きな仕事をするようになった時は、付き人にしてあげてもいいです。」 「付き人、って? おまえのかばん持ちみたいな?」 「お兄さん、『どんな形でもわたしと接点を持ち続けたい』って言った じゃないですか。それだったら、別に仕事のパートナーでもいいんじゃ ないかと。」 うーん。 就職先があやせの下僕か。俺的には幸せかもしれんが、ちょっと人には 言えんな。 「付き人っていのうが嫌だったら・・・。そうだ、お兄さんも、桐乃も うちの事務所に入って、それでわたし達のマネージャになって下さいよ! それならいいでしょう? ・・・あぁ、何なら、ご家族で『高坂モデル プロダクション』とか経営して引き抜いてくれたら、わたし喜んで移籍 しますよ?」 確かに、マネージャの真似事なら何度かしたよ。他ならぬあやせの頼み でな。 でも高坂プロて。そりゃまぁ、何故か俺の周りには、おまえらを筆頭に、 強烈な個性のあるフォトジェニックなやつらが、ごろごろしてるけどな。 「もし、カメラを勉強する気があったら、カメラマンなんていうのも、 いいかもしれませんね。」 そんな事もさらっと言う、あやせ。 桐乃やあやせのスケジュールや体調を管理したり、ファインダーの中の 妹たちの一瞬の表情を撮る俺。 今まで考えもしなかった世界が、そこにあった。 俺や桐乃がいい歳になって、それぞれ一人立ちしても、接点を失わずに 繋がりを持っていられる。 妹たちから目を離さず、見守り続けて世話を焼くのが当たり前の仕事。 ・・・ちょっと頑張ってみてもいいかもしれんな。 いや、今、急にそんな事を言われて、すっかりその気に乗せられてるん じゃねぇよ。 ただ、俺一人の凝り固まった考えだけじゃなく、世の中は考え方次第で いろんな可能性を秘めている、そういう事に気付かせてくれたあやせに、 俺は素直に感謝したいと思ったぜ。 「あやせ、ありがとな。俺、もっと頑張らないとな。」 「わたし、お礼を言われるような事は、何も言ってませんけど。それに モデル云々だけじゃなく、わたしは一生、桐乃の親友をやめる気はない ですから、嫌でも自然とお兄さんとの縁は続くと思いますよ。」 「嫌でも、か。・・・けど、おまえの結婚式に呼ばれるのとかだけは、 勘弁な。俺、ぜってー泣くから。」 今、あやせが着ている服より、もっと豪華な純白のドレス。その瞬間の あやせは、本当に奇麗だろうし、ぜひ見てみたいというのは正直あるが、 それでも俺は、ここまで知り合ったあやせが、誰か他の男のものになる その瞬間だけは見たくねぇ。 誓いの口づけの瞬間、俺は頑に目を閉じるだろう。 「・・・何でわたしの結婚式に出てくれないんですか。」 あからさまに不満げなあやせの口調。 「俺はな、これでも寝取られ属性だけはねーんだよ。」 「? 属性?」 「いいじゃねぇか。どうせ親父さん達の知り合いが何百人とやって来て、 おまえの結婚式は相当豪華になるんだろ。それだけで十分じゃねぇか。」 「はぁ? 何言ってんですか。絶対来てもらいますよ。例え牧師さんと わたしとお兄さんだけになっても!」 意味わかんねーよ。それだと新郎はいったいどこにいるんだっつうの! 「なぁ、あやせ。今日はおまえと、いっぱい話が出来て俺的には嬉しい んだが、おまえ、いつまでそうしてるつもりだ?」 実は、たくさん話をした、とは言っても、俺とあやせは、ほとんど目を 合わせていない。いつか、黒猫が俺の部屋に入り浸っていた時のように、 あやせはずっとベッドの上に寝転んでいるからだ。 「だから動けないって言いました。変に動いたり、力をかけたりして、 大事な服がほつれたり、糸引きすると大変ですから。」 「いや、そういう訳にはいかんだろ。おまえも俺の抱き枕になるんじゃ なけりゃな。」 こういう一言が余計なんだろうな、と思っていたら、あやせは、案の定 喰い付いてきた。 「なんでわたしまでお兄さんの性奴隷にならなけりゃならないんですか。」 「おい。俺がいつ、あやせたん2号と性的な関係になったよ?」 そりゃ、俺も、健康な男子であるから、あやせたん2号をどうにかして しまいたい、と思ってしまう瞬間は正直ある。しかし俺はこいつを一切 汚す事ができない。 こいつは、あやせ本人が俺の為に自らのフレグランスとラブを注入した (違うかもしれんが)世界に一つの貴重なお兄さん専用抱き枕だから、 他の成分を注入するのはご法度だ。 「それは、モデルであるわたしに、魅力が無い、ってことですか?」 俺の態度にどこか引っ掛かったのか、少しぶっきらぼうに、そんな事を 言うあやせ。 この辺の反応は、桐乃と似ていると思う。 直接、性的な対象にされるのは認められなくても、魅力がないと言われ るのは、それはそれで我慢ならないんだ。 ましてや、あやせも桐乃もモデルをしている位だから、「見られる自分」 というものを、ある程度意識してるんだろうな。 とは言え、男の側にも男子の事情はある。 例え本当でも、「毎日お世話になってます」とは、さすがに言えんだろ。 いや、毎日、あやせを抱きしめて眠りに落ちられる、その幸せの事を、 「世話になってないか」と言えば、そりゃ、なってる内に入るんだろう けどな。 仕事上で認められているほど、これだけ奇麗なのに、俺の一言くらいで 心を揺らしてしまうあやせ。 まぁ、そういうところも、年下らしくて可愛いところだ。 「おまえやあやせたん2号に魅力が無い―なんて、そんな事はねぇよ。 俺にあやせたん2号の魅力を語らせるとちょっとうるさいぞ、覚悟しろ? まず俺は、おまえが見るなり隠しちまった、そっちの絵柄が大好きだ。」 「・・・何をはっきり『エロが好き』とか言ってるんですか。」 「いや、むしろエロじゃなくてな、おまえの、髪が長くてすらっとした 大人っぽく見える体つきの中のあちこちに、可愛らしいところが幾つも ちりばめられてる―、みたいな。そういう、奇跡のバランス?みたいな お前の魅力が凄く良く出てると思うから、見てて飽きんし、大好きだ。」 「な・・・何を奇麗にまとめてるんですか?」 全然表情は見えんが、これは絶ってー、照れて恥ずかしがってるよな。 ちょっとうまい事言えた俺は、持論の展開をやめない。 「おまえはな、お尻が出てるとすぐに『いやらしい』と思うんだろうが、 ほらこの滑らかな曲面とか柔らかそうなカーブとか・・・もう神の奇跡 っつうか、すっごく奇麗なもんだと思うぞ。」 「・・・『この』?」 ・・・やべ。 「さっきから、桐乃に見られてる時とは明らかに違う、気色悪い視線を 背中に感じるとは思ってましたが、えいっ!」 「ぐ、ぐはっ・・・。何をしやがる、このアマ! いきなり足を振って かかとで人の顔を蹴っ飛ばしやがるなんてよ!」 「情けない・・・。語るに落ちた事ぐらい気づいて下さいよ、お兄さん。 ちょっと振り上げた足のかかとが顔に当たるなんて、あなたはいったい、 どんな至近距離で、何を見てたんですか。」 蹴られた頬を抑えながら、俺は 「すいません、あやせさんの奇麗なお尻です。」 しかし、こんな事になっても、今日は暴力沙汰にならねぇなんてな。 桐乃GJ。あやせの心の手錠、恐るべし。 「・・・そう言えばお兄さん、今『滑らかな』とか言いやがりましたね? ・・・わたし、腰の辺りが少しスースーすると思ってたんですが・・・ まさか」 ゴゴゴゴゴ・・・とおっかない擬音を伴って怒りに打ち震えるあやせの イメージが、次第に現実のものになりつつあった。 「お兄さん。あなたは今日抵抗出来ないわたしのスカートを捲くった、 というんですか!? これはもう立派な性犯罪ですよ!? この強姦魔!」 「ち、違う! 初めから捲くれてたんだ!」 俺の叫びは、しかし、自分でも正当性を見い出せないものだった。 気づいた時に言ってやらない、直してやらない時点で、同罪だろう。 俺の言い訳を聞いたあやせを取り巻く擬音の音量が、一気に倍になった。 遅まきながら、俺は、慌てて、あやせのお尻のスカートを直してやる。 しかし、それがいけなかった。 あやせの背中にかけて跳ね上がっていたスカート部分の端を摘まんで、 さっと下に引き降ろそうとした俺の右手は、まるで吸い込まれるように するりと、あやせのぱんつとお尻の間に入り込んでいった。 今度こそダメだ。 ひんやりしてる。 俺の人生は終わった。 柔らかい。 殺される・・・ しっとりスベスベだ。 「ひっ!」 小さく呻いてから、俺から辛うじて見える頬を真っ赤な色に染め上げ、 両方の拳を固く握り締めて、部屋中に聞こえるような大きさでスーハー、 スーハー、と、深呼吸を繰り返しながら、あやせは懸命に羞恥と怒りに 耐えていた。 その耐える姿がいじらしくて、また萌えるのなんのって。 「きいいぃぃっ! お、に、い、さ、ん!」 全ての字に濁点が付けたような発音で、身動きの取れないあやせが憤慨 する。 「い! つ! ま! で! 触ってんですかぁっ!」 「す、すまん」 俺は、あやせの声に吹き飛ばされるように、そそくさと手を引っ込めた。 「信じられない。いきなりBだなんて。」 ちげーよ! と言いたかったが、考えてみれば、不幸な間違いがあった おかげで、俺がいい思いをした、その分だけ、うら若き乙女のあやせは かなり嫌な思いをしたはずだ。 ここは気を使ってやるのが、年上の余裕というか威厳っつうもんだろう。 「あのぉ、あやせさん? 何か食べたいものとかない? 新しい服とか アクセサリとかは?」 「わたしの欲しいものですか? お兄さんの、命・・・ですかね?」 たいそうお怒りのようだが、何でおまえのセリフは時々、地獄の使者が 透けて見えるんだ。 首狩り鎌と、体全体をぐるぐる巻きにできそうな超長げぇロープみたい なの持ってたぞ、今見えた悪魔。 「いのち以外でお願いします。」 「じゃぁ、お兄さんの人生」 「お・・・おまえは」 俺の人生を取り上げる、とか、俺を社会的に抹殺するのが望みなのか、 おまえは。 「おまえに人生を預けろっつうんなら、最期くらいはちゃんと看取って くれるんだろうな?」 俺は、また変な方にジャンプし始めた話を、構わず勢いで続ける。 何だかんだ言って、しょーもないヨタ話でも、あやせと話すというのは、 結構楽しい事だしな。 しかも、今の一言って、ちょっとプロポーズっぽいし、へへ。 「看取るって、今すぐですか?」 恐えーよ! また悪魔が見えたよ! おまえは何を言ってるんだ! 「ちげーよ、老後の話だ! っつか、やっぱり、そんなに怒ってたのか。 ・・・いや。そりゃ、ま、当然なんだろうけど、さ。」 なんつっても、この超絶ラブリー美少女の「なま」の、すべすべお尻に タッチしちまったんだからな。 俺GJ。あれはキシリア様に献上できるぐらい良いものだった。 いかん、思い出したら興奮してきた。 「お、兄、さ、ん! 『ぐふぐふ』とか、何を気色悪い笑いを漏らして るんですか! 想像しているものによっちゃ、ぶち殺しますよ!」 「ぐふとは違うのだよ! グフとは!」 「いーえ! お兄さんは結婚したら絶対に愚夫になるタイプです。」 「なんでおまえ、今日はそんな結婚にこだわるの?」 「こ、こだわってませんよ、別に。そ、そんな事より、いま、いったい 何を想像してたのか、言えるもんなら言ってみて下さいよ!」 「おまえのお尻、あやせたん2号と同じくらい魅力的だった。」 「く・・・。気が狂いそうです、今!」 「いや、おまえが言えってゆーから」 「くわぁーっ! もうもうもうっ! おしり・・・! おしりだけは! 結婚しても絶対に許さないんですからね!!!」 いや、おまえのポリシーは良く解ったし、俺も一応、覚えてはおくが、 そういうことは旦那になる人に言えよ。 「てか、いつのまにか、また結婚の話になってるし、おまえ、やっぱり、 早く結婚したい願望とかあるのか? 俺、セクハラっつー特定分野なら、 今すぐにでもおまえを満足させてやる自信あるぞ。」 「・・・この!・・・くぉのぉ!、・・・くぉんのぉっー!!」 あやせの腕が、首が、全身が痙攣に似た震えを見せ始めている。 いつもなら早い段階で安全弁のように切れていたのが、今日に限っては 「心の手錠」のおかげで切れる事ができず、限界まで内圧が上昇した、 そういう事かもしれない。 いかん、これはやりすぎた! 「あやせ、すまんかった。落ち着け。」 俺は切れる寸前のあやせを、抱き枕ごと背中から抱きかかえる。 でも、力任せに抱きすくめるのじゃなく、そうだな、地震なんかで物が 倒れたり落ちて来るのから守ってやるような、そういう微妙な力加減と 僅かな間隔を保持して。 何故かと言えば、そういう行為が、あやせの大事にしている服に被害を 与えかねないからだ。 そして。どこだ、どこにある、おまえの緊急冷却装置。 「あああ、あやせ。旅行に行こうか。温泉とかどうだ? 地獄巡りとか 熱海とか、新大陸とか?」 「全部キャラが違います!!」 ・・・不発だったらしい。 しかし、時間がない。もうこうなったら、 「あやせ! 愛してる!」 すんでの所で解除コードを受け付けた映画か何かの自爆装置のように、 あやせは一瞬、大きく息を呑み、そして徐々に身体の力が抜けていった。 相変わらず良く解らんシステムだな、おまえ。・・・助かったけど。 はぁはぁはぁ、と、エキサイトしたあとの息を調整するあやせ。 「きょ、今日のセクハラはまた格別に凄かったです。・・・無抵抗だと 言ってるわたしに、何もあそこまで。」 聞きようによっては、何か凄い事をした、その事後みたいな物言いだが、 うん、おまえは良く頑張ったよ。・・・いや、頑張らせたのは他ならぬ 俺なんだけどな。 俺は思わず、愛用の抱き枕や、(何か特別な理由で)妹に時々してやる ように、ねぎらってやるべき目の前の存在の長い髪をたたえた後頭部に 手を置き、ぽんぽん、と軽く叩く。 考えてみれば、あやせにこんなふうに触れるのは、今までなかった事で、 そもそも、「うつ伏せの」とは言え、あやせの背中に覆い被さるような 体勢になっている事自体、全くの想定外の事態だ。 言うまでもなく、顔が見えているあやせの一睨みは、全ての物質を石に しかねない威力があるし、今日のような枷のかかってない素のあやせに くっつきに行くのも無謀が過ぎると言わざるを得ない。 「抵抗できないから、って、『舌を噛み切って死ぬ』とか言うなよ?」 じっとして頭を撫でられていたあやせだが、今の俺のセリフに反応して 少しこちらに向けた横顔の目元には、僅かに透明な水滴が残るのが見え、 それが、あの脱ぎかけのあやせたん2号の困り顔にオーバーラップし、 一瞬俺の視線を奪う。 「は?舌を噛み切るくらいなら、お兄さんの舌を噛み切ってやりますよ!」 おいおい。 しかしえらい事言うな、おまえ。 「勢いで喋るなって。大体おまえ、俺の舌を噛み切ろうとしたら、まず、 その前段階として、俺とちゅーしなきゃならないんだぞ。それも濃厚な べろちゅーだ。おまえに出来る訳ないだろ」 「できますよ、それぐらい。馬鹿にしないで下さい! あれも、これも、 それも、全部お兄さんのリード次第じゃないですか! 自分の下手さを わたしのせいにしないで下さいよ!」 だから勢いと対抗心だけで喋るなよ。おまえ、自分が何を言ってるのか 把握できてるか? 「はい、はい、っと。・・・じゃ、補助してやっからさ、もういい加減 起き上がれよ? お気に入りの服も皺だらけになっちまうんじゃね?」 現在の、この「親亀の背に子亀」的な体勢、つまり抱き枕を抱くあやせ、 さらにそれを抱えた俺の図は、やっぱりどう見ても自然な体勢ではなく、 万が一にも、帰って来たお袋や桐乃に見つかっていい体勢ではない。 「そうですね、・・・って。・・・もしかして、さっきわたしがキレて 喚き出しそうになったのを止めたの、この服の事を心配してくれたから なんですか?」 意外そうなあやせのセリフ。 そりゃさ、さっきは必死だったけど、もちろん頭の中にあったよ。 「すげぇ大切なもんなんだろ? それ。」 「ふ、ふーん。ちょっとは、わたしの事を大事には思うんですね?」 「ちょっと、じゃねーよ。『愛してる』って言ったろ?」 「・・・ふん。もういいです! もうお兄さんの嘘は聞き飽きました! わたし、もう、解ってるんですからね? お兄さんがわたしに冗談とか セクハラの形でちょっかいかけて来るのは、わたしに真面目に断られて へこみたくないから、ですよね? 嫌がらせなら、嫌がられるのが当然 ですもんね?」 また新たな事実が発覚したよ。俺、最低じゃね? 「い、いたいとこ突いてくるな? とにかく、起こすからな。」 「へんなところ触らないで下さいよ?」 俺は、壊れ物を扱うように、細心の注意を払って、ゆっくりとあやせを、 へばり付いてる抱き枕ごと抱えて、持ち上げる。 仰向けだったら「お姫様だっこ」になって、いい雰囲気も出ただろうに、 あやせはずっと俯せだったから、どう見ても、フォークリフトが荷物を パレットから引き出す作業にしか見えないだろうがな。 まぁ、ともかく俺は、ベッド上からあやせを慎重に引き剥がして浮かせ、 そのまま部屋の中心の方にくるりと向きを変えると、今度は、立たせる ようにしながら床に下ろそうと、足を下にしてあやせの身体を少しずつ 傾けていく。 あやせの足が床に届くかどうかの、その瞬間、 「あっ、」 足に力を入れようとして靴下が滑ったのか、バランスを崩したあやせが とっさに俺を頼るようにしがみ付き、ほぼ同時に、俺の腕も、あやせを 支えようと反射的に動いた。 「おっと。」 あやせと一緒に持ち上げ、一緒に立たせようとしていた抱き枕だけが、 俺達の身体の間からするりと抜け落ちた。 「・・・お兄さん?」 「何?」 さっきまでのベッドの上とはまた違う形での、言葉と言葉だけの応対。 それは、現在俺達が置かれている状況―、まるで抱き合って、身を寄せ 合っているかのようで、顔を見合うのに必要な距離も取れないくらいに 極端に近い位置関係―のせいだ。 お互いの口から、すぐそばにある相手の耳へと、短い言葉が行き来する。 「・・・どこを触ってます?」 「いや、背中・・・かな。」 「柔らかいですか、わたしの背中?」 「うん。ぷりん、と柔らかいな、背中。」 「もう一度聞きますが、どこを触ってます?」 「あ、あやせさんの奇麗なおし・・・」 イタタタタ! あやせは、自分の片足を俺の右足の上に載せると、そのまま思いっきり 体重をかけてきやがった。 いや、でも、おまえがまず、腕を廻して、すがって来たんじゃないか。 俺の腕はそれに制限されるから、必然的に、それより下で、小さくしか 動かないんだぜ。それで、反射的におまえを抱き留め支えようとしたら、 どうやってもこういう体勢になるじゃねぇかよ。 けど・・・けど・・・これはよ? お尻からはすぐ手を放したが、なんだか惜しい気もして、そのまま腰の あたりまで添えた手を移動させ、ダンスでも始まるかのようなポーズで あやせとくっついたままの俺。 踏まれてる足は痛ぇが、補って余りある甘美な感覚が俺を包んでいる。 あやせは着ている服の縛りからか、派手なアクションでの反撃や、俺を 振りほどいたりとかは、まだできないっぽく、今の、足だけの攻撃も、 いつもと比べれば全然可愛らしい部類のものだ。 しばらくは、その「飴と鞭」のハーモニーに身を委ねていた俺だったが、 すぐにあやせはとんでもない事を言い出しやがった。 「お兄さん。舌を出して下さい。」 「は?」 「舌を出しなさい! 何度言っても解らない人には、お仕置きです!」 顔を上げ、俺を下から見上げてくるあやせ。 今日はずっと側にいたけど、久し振りに見た、やっぱり奇麗な顔だ。 でも言ってる言葉にゃ全然似合ってねぇ。 まぁ、今日の俺は、主にあやせのお尻に繰り返し直接攻撃をしちまった。 誓って、狙ってやったもんじゃねぇけどよ、あやせ本人からすりゃぁ、 そりゃ、割り切れるもんじゃねぇよなぁ。 いつもの反撃が出来ない今日、ちょっと指で舌をつねられるぐらいは、 我慢してやるか。 やれやれ、優しいお兄さんも楽じゃねぇぜ、と、俺はあやせの罰を渋々 受け入れる事にした。 「じゃ、お手柔らかに頼む。」 うっ! くっ・・・。 おい! お、おまえ! 何してんだ!! 嫌々出した俺の舌は、あやせの指ではなく、もっと違う、湿り気のある 不思議な感触のものに挟まれていた。 いや、挟まれるその前に、少しだけ何か暖かくて柔らかいものと当たり、 そのあと時間をかけて、何度も何度も、少しずつ強弱を付けられながら 固い何かにあま噛みみたいな事をされている俺の舌。 軽く目を閉じ、想像した痛みに静かに耐えようとしていた俺だったが、 そこに襲って来た全く違う種類の感覚。 それに、見えないが、自分の顔のすぐ前に感じる、自分はでない体温と 息遣い。 これは!? これは!? 数分前のあやせの言葉が急に蘇ってくる。 『お兄さんの舌を噛み切ってやります!』 ・・・マジかよ! 可哀想に、俺の身体は、この天使だか悪魔だか解らん年下の女の子に、 悲鳴と歓喜の声を同時に上げさせられていた。 『もう貴方無しでは生きられない』、一瞬だが、そんなセリフの意味が 理解できたような気までした。 ふ・・・、ふ・・・、ふぅっ~。 息をする事も出来ない、無限に続くかと思った懺悔の時間が終わり、 「す・・・すげぇっす」 俺のセリフには、もはや年上の、男の威厳など微塵もなかった。 俺があやせを支えているのか、俺の方がもたれ掛かっているのか、もう 俺には判断できなかった。 「・・・何事も、いきなりうまくは行きませんから、今日のは練習です。 でも、わたしがどれくらい本気なのかは、解ってもらえましたよね? わたし、やる時はやる女ですよ?」 事もなげに言い放ったあやせに、ただ、カクカクと頷くしかない俺。 殺る時は殺る女・・・、あやせ。 ・・・今度は、人間を標本にでもできそうな、でかい瓶を持った悪魔が 背中に見える。いつか俺はあの瓶に閉じ込められ、地獄へ直送されるの だろう、第一級セクハラ罪で。 「でも、わたし、安心しました。お兄さん、絶対舌が二枚あると思って いたんですが、一枚だけ、でしたね。」 そんな事を急に真っ赤になって言うあやせ。 「俺は妖怪じゃねぇ! っつうか、おまえそれ、俺へのセクハラなのか? は、恥ずかしい事いうなよ!」 「ふぅん。『セクハラ』って楽しそうなんですね。勉強になりました。」 ちくしょう。 いくらかは仕返し出来た、とか思っているかもしれないあやせに対して、 「いいや、おまえはセクハラの何たるかを全然わかってねぇ! セクハラはな、こうやってやるんだよ!」 悔し紛れ、だったのかも知れんが、俺は、 「あやせ、今すぐ結婚しよう。今から式場の予約に行くぞ!」 そう宣言して、あやせをひょいと「お姫さまだっこ」に抱き抱えると、 階段をドタバタと降り、見えない足元にある靴を適当に足に引っかけて、 そのまま玄関から外へと飛び出した。 いやな。本当に結婚式場に行く気は無くて、単に恥ずかしいスタイルで あやせを家まで送ってやろう、と、そういう事を考えてたんだが。 「ちょ、ちょっと! お兄さん!」 俺の大暴走ぶりにあっけにとられている俺のお姫様は、それでも落ちて 怪我をする訳にはいかなくて、俺に手を回して身の安全は確保する。 「悪いなあやせ。もし大事なワンピに傷でも付けちまったら、俺が責任 持って桐乃に頭下げて、代わりになるようなの調達するからよ!」 「それはいいですから! もう降ろして! 恥ずかし過ぎます!」 街中を走り抜ける俺達に集まる周囲の目。 その中には俺の知り合いの目もあったが、テンションがMAXの俺には なぜか全部が俺を後押ししているように感じられた。 「先輩・・・。とても悔しいのだけれど、今日は男前だわ。」 「きょうちゃん・・・。きょうちゃん、頑張れ!」 「おうよ!」 公園の角を、遠心力に打ち勝つように身体を傾けつつ曲がると、 「あ! 桐乃ぉー、桐乃ぉー、助けて! この際、加奈子でも~!」 お姫さまが手を振る方角には、何度か見た事のあるワンボックス車と、 その関係者と思われる人だかり、撮影現場が見えて、どんどん近付いて 来る。 「な、なにやってんの、あんたら?」 「説明はあとだ、ちょっくら行って来るぜ、桐乃!」 「次は加奈子も載っけろよ?」 「おう加奈子、また今度な。」 俺はスピードを緩めず桐乃たちの撮影現場のまん中を突っ切ろうとして、 よく見えなかった足元の何かに躓きかけ、それでも何とか持ち直す。 躓きかけた俺が蹴り飛ばした箱か篭?の中身の小物?が降って来たが、 構わずその中を、あやせの家へ向かって一気にラストスパートをかけた。 「ふぅん・・・。結構、サマになってんじゃん。」 そんな事があった翌月。 今度は制服で俺の部屋へ来たあやせは、 「こんな写真が本に載って、わたし、もうお嫁に行けません!」 と、俺の目の前に一冊の雑誌を、バン!と置いた。 それには、俺にお姫さまだっこされるあやせが、雑誌のカラーページの 見開きのまん中に配置され、その周りに桐乃や加奈子がお洒落した姿で それぞれデートに出かける、そういう写真と関連記事で埋まっていた。 これだけ見ると、あやせと俺が毎週こんなデートをしている事になるが、 もちろんそれは編集マジックであり、そんな事実はどこにもない。 というか、その写真は、写メなんかのようにどこかボケた写真ではなく、 ちゃんとしたプロ用器材で撮影されたように見える本格的な仕上がりで、 本職が撮影したものに相違なかった。 俺があやせをお姫さまだっこする、それは百も承知のシチュエーション だったが、もともとウェディングドレスと似たシルエットの白いドレス、 それを着たあやせの頭にふわりと舞い降りたように写っているヴェール、 そのバックにちらほらと舞っているコサージュや花束など、何かを表現 するのにタイムリー過ぎる小道具までが偶然写り込む写真になっていた。 恐らく、その小道具は、あの日、俺が蹴り飛ばした箱の中身に違いなく、 その証拠に、俺が箱に躓きかけ、ちょっと体勢を崩しかけていたために、 写真のあやせは、俺を気遣う視線を送りながら、俺にしがみ付きかける、 かなり親密な様子を見せている。 どう見てもこの二人は、再来月には引き出物を選び、子供の名前も考え 始めているような、そういう二人にしか見えなかった。 「お兄さんは、責任をとって一緒に来て下さいね!」 と急転直下で連れていかれたのは、あやせたちの所属する事務所の入る 建物だ。 けどな、大体、あの日、あそこで撮影していた一行に、うちへ来ていた あやせは関係ねぇはずだし、俺だって寝耳の水の話だ。 俺の肖像権はどこへ行った。 と憤慨する用意をしていたら、事務所の人は、とんでもねぇ話を持って 来た。 あの写真の掲載に関しては、桐乃主導で、俺以外の高坂家の人間全員が 一致団結して掲載許可を出したからだという。 一方、あやせの方は、家までお姫様だっこで送りにきた不審な男の事を、 両親に「撮影の為の準備」とか何とか言い訳したもんだから、その証明 のために、本人が渋々掲載をOKする事になったと弁明した。 写真そのものについては、 「ふだん見ることのない新垣さんの自然な表情と、周囲の偶然の一瞬を 奇跡的に捉えた、カメラマンの、たっての希望によるもの」、 そして、 「その見本誌を目にしたクライアントが、写真と同じようなイメージで ポスターやCMを制作したい、と打診が来ている」 ・・・んだそうで、何にしても、生まれて初めてづくしの経験だった。 後日、俺は、今度は本物のウェディングドレスをまとった、超キレーな マイエンジェルを、またお姫さまだっこして、そのクライアントさん― 結婚式場部門を内部に持つ地元の老舗ホテル―での撮影に臨んだ。 のちの高坂京介デビュー、である。 あやせはともかく、俺など実際はほとんど顔が出ない(トリミングされ、 画角の外に追い出される)訳だから、ちゃんとプロが代役をすればいい ようなもんだが、なぜか俺か呼ばれていた。 ちゃんと「あやせの彼氏」なんかではなく、むしろ「桐乃の兄貴」だと 説明したのに、だ。 まぁ、あやせも、相手が俺なら、変にかしこまったりしないだろうし、 どこか触ったりしても、後で罵倒や仕返しが来るだけだから、ある意味 やりやすいと言えるのかもな。 その日の撮影が無事に済んで、俺は、あやせに握手を求められた。 つまり、今日は友達関係じゃなく、仕事のパートナーとして、だ。 「お兄さん、お手を」 「おう」 もちろん俺は、ありがたくそれに応え、手を前に出す。 「・・・片手だけでいいです。なんで両手を卑屈に揃えて出すんですか、 もう。」 せっかくのいいシーンを茶化されて、少し拗ねるあやせ。 無論それは、花びらや宝石の飾りを従えてキラキラと輝いている今日の あやせを直視できない俺の照れ隠しだ。 そんな今日の役柄で言うと俺の花嫁(照れるぜ)、ラブリーマイワイフ (言っちまったよ!)あやせから、何かくすぐったく聞こえる一言。 「ふふ。もう年貢を納める心境なんですか? お兄さん?」 あやせは悪戯っぽく笑ったまま、やや遅れてもう一方の手も差し出すと、 沙汰を待つ下手人の手を純白のグローブ越しの両手でそっと包み込み、 そうして俺達は、少しの間、何も言わずに両方の手を重ねていた。 その後、エキシビションとして、桐乃や加奈子、それになぜか、見学と 称して付いて来ていた黒猫や、沙織、麻奈実まで、一人ずつだっこして 一枚撮られてやる羽目になったのは、おまけの話である。 そして、さらにその次の日。 「これ、どうしましょうか?」 あやせが、今、「これ」と言ったのは、昨日、撮影に行ったホテルから ホテル内のティールームのスイーツセットなどと一緒に、とりあえずの 謝礼として俺達に進呈された、封筒の中身だ。 『ペアご宿泊券』 スィートルーム一泊ご招待。但しご利用はご本人様に限らせて頂きます。 まだ現金や物なら、半分こするなり、話は単純なのだが、これは・・・。 いや、この際、それも良しとしよう。真の問題はもっと大きいのだから。 『披露宴優待パスポート』 本ホテルで挙式される際、ご希望の人数様の披露宴を無料で催し・・・ つまり、これは、使わなければ一銭の価値も無い紙キレだが、あやせと 俺が結婚する場合に限り、この券は5万円にもなれば、500万円にも なる。 いや、そりゃ、イメージキャラクターが実際に利用すれば、宣伝効果は 大きいんだろうけどな。 だが俺達が500万円をドブに捨てるのに何の抵抗も無いか、と言えば、 もちろんそんな事はない。 顔を見合わせる俺達。 「・・・あやせ・・・結婚、する?」 「・・・そ、そうで・・・・・・いえいえいえ! い、いま、ちょっと 考えた事はありましたけど、わ、わたし何も口に出していませんからね! あまり心にもない事ばかり言ってると、本当にその舌を噛み切りますよ!」 嘘が大嫌いで、嘘をつけば舌を抜くという。それが俺のエンジェル。 俺の天使はあくまでこんなに可愛い fin
https://w.atwiki.jp/ikiru/pages/86.html
答えを出したいなら頭で考えるなお前のやりたい事をやってみろ自分には向いていないとか無理だとか八方手をつくした人間だけが言う事だ(「だるまや」の大将) 俺が知ってる君は一度の挫折なんかで諦めない(椹武憲)
https://w.atwiki.jp/cosmos_memo/pages/2768.html
SAKURAスキップ fourfolium EXTREME Level 8 BPM 165 Notes 450 1 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 2 ③口②① |①---| ④口口口 |②---| ⑤口口口 |③-④-| 口⑥口口 |⑤-⑥-| 3 口口口④ |--①-| 口口口③ |--②-| 口口口口 |--③-| 口口①② |④---| 4 ②①口口 |①---| 口口口口 |②---| 口口口口 口口口口 口⑥口⑥ 口口口口 ③口⑥口 |③-④-| ④⑤口口 |⑤-⑥-| 5 ②口①口 |--①-| 口口②口 |--②-| ②①口① |--③-| ③③③③ |----| 6 ③②①口 |①---| 口④口口 |②---| 口口⑤口 |③-④-| 口口口⑥ |⑤-⑥-| 7 口口口③ |--①-| 口口口② |②-③-| 口口口① |----| 口口口口 |----| 8 口口口口 |①---| ①口①口 |②---| ③④⑤⑥ |③-④-| ②口②口 |⑤-⑥-| 9 ③口口④ |----| ②口③口 |①---| ①口②口 |②---| ④口①口 |③-④-| 10 口①口口 |--①-| 口⑥⑤④ |②-③-| ②⑤⑥口 |④---| 口口③口 |⑤-⑥-| 11 口⑤③口 |--①-| ②口口口 |②-③-| 口口口④ |④---| 口①口口 |--⑤-| 12 口口口① |--①-| 口口②④ |②-③-| ⑦③⑤口 |④-⑤-| 口⑥口口 |⑥-⑦-| 13 ⑥口口⑤ |--①-| 口口口⑤ |②-③-| 口③口① |④---| ④口②⑥ |⑤-⑥-| 14 口口①⑥ |--①-| ④⑤口口 |②-③-| 口口⑤② |④---| ⑥③口口 |⑤-⑥-| 15 口④⑤口 |--①-| 口口口③ |②-③-| ①口口口 |④---| 口口②口 |--⑤-| 16 ①口口口 |--①-| ④②口口 |②-③-| 口⑤③⑦ |④-⑤-| 口口⑥口 |⑥-⑦-| 17 ①①口口 |--①-| ③③③③ |--②-| 口②②口 |③---| 口口口口 |----| 18 口口口口 |①-②-| 口口口口 |③-④-| ⑧⑦⑥⑤ |⑤-⑥-| ①②③④ |⑦-⑧-| 19 ④①②③ |--①-| ⑧口⑤口 |②-③-| 口⑥口口 |④-⑤⑥| 口口⑦口 |⑦-⑧-| 20 ⑦口口① |--①-| 口⑥口② |②-③-| 口口⑤③ |④-⑤-| 口口口④ |⑥-⑦-| 21 口口口口 |--①-| ④口②口 |②-③-| 口③⑥① |④---| 口⑤口口 |--⑤⑥| 22 口口口② |①-②-| 口①③口 |③-④-| 口④口口 |⑤-⑥-| ⑤⑥⑦⑧ |⑦-⑧-| 23 ③②①④ |--①-| 口⑤⑧⑧ |②-③-| 口口⑥口 |④-⑤⑥| 口⑦口口 |⑦-⑧-| 24 口②④⑥ |--①-| ①③⑤⑦ |②-③-| 口口口口 |④-⑤-| 口口口口 |⑥-⑦-| 25 口③③③ |--①-| ②②②口 |--②-| 口口口口 |③---| 口①①口 |----| 26 口③口⑧ |①-②-| 口口④⑧ |③-④-| ⑤口口② |⑤-⑥-| ①⑦⑥口 |⑦-⑧-| 27 ①口口口 |--①-| ②口口口 |②-③-| ③口口口 |④---| ④口口口 |----| 28 口口口口 |①-②-| ④③②① |③-④-| 口口口⑥ |--⑤-| ⑤口口口 |--⑥-| 29 ①口①口 |----| ②口②口 |①---| ③口③口 |②---| 口口口口 |③---| 30 ④口口③ |①-②-| ⑧口⑤① |③-④-| ⑧②口口 |⑤-⑥-| 口⑥⑦口 |⑦-⑧-| 31 口口口① |--①-| 口口口② |②-③-| 口口口③ |④---| 口口口④ |----| 32 ⑤口口④ |①-②-| 口③口口 |③-④-| ⑦口⑥② |--⑤-| ⑦①口口 |⑥-⑦-| 33 ④③③④ |--①-| 口口口① |--②-| 口口口① |③---| 口②②口 |④---| 34 口口口口 |①---| ⑤①口④ |②-③-| 口口③② |--④-| 口④⑤口 |--⑤-| 35 ②③口口 |----| ①口口口 |----| 口口口口 |--①-| 口口口口 |②-③-| 36 口④①口 |①---| 口口口口 |②-③-| 口③②口 |--④-| 口⑤口口 |--⑤-| 37 ③③③口 |--①-| ②口①口 |②---| ①口②口 |③---| 口口口口 |----| 38 ②口口口 |①---| ③口口口 |----| ④①①口 |--②-| 口口口口 |③-④-| 39 口口①① |①---| 口口②② |②---| 口口③③ |③---| 口口④④ |④---| 40 ①口口① |①---| 口②③口 |----| 口口④口 |--②-| 口口口口 |③-④-| 41 ③口口② |①---| 口口口口 |②---| 口①口口 |③---| 口口口④ |④---| 42 ④④④④ |①---| ③③③口 |②---| ②②口口 |③---| ①口口口 |④---| 43 口口口④ |--①-| ③③③③ |--②-| ①口口① |③---| ④②②口 |--④-| 44 口①口口 |--①-| 口⑥⑤④ |②-③-| ②⑤⑥口 |④---| 口口③口 |⑤-⑥-| 45 ⑤口③口 |--①-| ②口口口 |②-③-| 口口口④ |④---| 口①口口 |--⑤-| 46 口④⑤⑤ |--①-| 口口①① |②-③-| ②口③③ |④-⑤-| ⑥口⑦⑦ |⑥-⑦-| 47 ①口③口 |--①-| 口口口② |②-③-| ②口①口 口③口口 ⑥口口⑤ ④口口口 口口口④ |④---| ⑤口口⑥ |⑤-⑥-| 48 ⑦口口口 |--①-| 口④③⑥ |②-③-| 口①②口 |④-⑤-| 口⑤口⑦ |⑥-⑦-| 49 口口①⑤ |--①-| ④口口口 |②-③-| 口口口② |④---| ⑤③口口 |--⑤-| 50 口⑦①⑦ |--①-| ②口④口 |②-③-| ⑥口口口 |④-⑤-| 口⑤③口 |⑥-⑦-| 51 ④口口口 |--①-| ②③②③ |--②-| ③②③② |③---| ①口①④ |--④-| 52 ⑦④⑤口 |--①-| ③口口⑥ |②-③-| ②口口口 |④-⑤-| 口①口⑦ |⑥-⑦-| 53 口口口⑤ |--①-| ②口①口 |②-③-| 口口④口 |④---| ③口④口 |--⑤-| 54 ⑤⑤④口 |--①-| ①①口口 |②-③-| ③③口② |④-⑤-| ⑦⑦口⑥ |⑥-⑦-| 55 口③口① |--①-| ②口口口 |②-③-| 口①口② 口口③口 ⑤口口⑥ 口口口④ ④口口口 |④---| ⑥口口⑤ |⑤-⑥-| 56 ⑥口③⑥ |--①-| ②⑤⑤口 |②-③-| 口口口① |④---| 口④④口 |⑤-⑥-| 57 ⑤口口口 |--①-| ②④④② |②-③-| ③①①③ |④---| 口口口⑤ |--⑤-| 58 ⑦口⑦① |--①-| 口④口③ |②-③-| ②口口⑥ |④-⑤-| 口口⑤口 |⑥-⑦-| 59 口口口口 |--①-| ③②③② |--②-| ②③②③ |③---| 口①口① |----| 60 ③口口⑥ |①-②-| 口⑦④口 |③-④-| ⑤口口口 |⑤-⑥-| 口①⑧② |⑦-⑧-| 61 ①口口口 |--①-| ②④④③ |②-③-| ③④④② |④---| 口口口① |----| 不確定度 0
https://w.atwiki.jp/orenoimoutoga/pages/114.html
麻奈美「ちょっと、きょうちゃん…だめだよ…」 京介「…」 麻奈美「べ、勉強しにきょうちゃんの部屋来たんだから…あっ…だめだってぇ…」 京介「…」 麻奈美「きょ、きょうちゃん…だめえぇ」 ドンっ!! 麻奈美「!」 麻奈美「ほ、ほら、隣の部屋の桐乃ちゃんに聞こえちゃうから…って、聞いてる?きょうちゃん?」 京介「…」 麻奈美「ねぇ、きょうちゃん?あっ!だめだよそこは…」 ドン!ドン!ドン! 麻奈美「ふわっ!きょうちゃん!だめ…あっあっ!」 京介「…」 ドンドンドンドンドン!! 麻奈美「こ、声出ちゃ…う…む、むちゅ!?」 京介「…」ちゅぱちゅぱ ドンドンドンドンドンドン!! 麻奈美「ちゅぱっ…ぷはっ…きょうちゃん…」 京介「…」 ドンドンドンドンドンドン!! 麻奈美「きょうちゃん…だいすき…あっ…ん…」 京介「…」 ドン、ドンドン…ぐす…ぐす… ――― ― 麻奈美「じゃあきょうちゃん、今日はもう帰るね」 京介「あぁ」 麻奈美「またねぇ、きょうちゃん」 ガチャ 麻奈美「あっ」 桐乃「…」 京介「…」 麻奈美「桐乃ちゃん…お、お邪魔しました…」 桐乃「…」 麻奈美「じゃあ、わたしはこれで…」 京介「あぁまたな」 桐乃「…」 京介「…」 桐乃「チッ、まったく、家の壁薄いんだから少しは自重してよね」 京介「…」スタスタ 桐乃「ちょ、聞いてんの!?」 京介「…」 ガチャバタン! 桐乃「な、なんなのよ!もう!」 ――― ― 京介「ん?黒猫じゃねぇか何してんだリビングで」 黒猫「別に、あなたの妹がメルルとやらのDVDを見せてやるってしつこかったから来てあげただけよ」 京介「ふ~ん、でいつものように喧嘩になって桐乃は部屋にこもってると…そんなところか」 黒猫「喧嘩したつもりじゃないのだけれど…まぁそんなところね」 京介「まったく…あいつは客呼んどいて…黒猫、とりあえず俺の部屋くるか?」 黒猫「ここに居ても仕方ないし、かまわないわ」 京介「じゃあ部屋行くか」 ガチャ 黒猫「ゲーム作りしてた時以来かしらこの部屋に来るの」 京介「…」 ガバッ 黒猫「ちょ、ちょっと何するの!?」 京介「…」 黒猫「や、やめなさい!そんなつもりで部屋に来た…あっ!」 ドン! 黒猫「あ、あなたの妹が隣にいるのよ!いい加減にして…あむっ」 京介「…」むちゅちゅぱっ 黒猫「んっんっ~ぷはっ…」 ドンドンドンドンドン!! 黒猫「なにこれ…凄い…大きくなってる…」 麻奈美「きょうちゃん、私、何か……嫌われるようなこと……しちゃったかなあ…………」 京介「…」 麻奈美「私が何か酷い事言ったりしてきょうちゃん傷つけたなら…」 京介「…」 麻奈美「なんでもするから…きょうちゃん…許して…」ジィー 京介「!」 麻奈美「わっ!きょうちゃんのおちんちんおっきいねぇ」なでなで 麻奈美「私きょうちゃんの為にえーぶいっていうの見て勉強したんだよ?」はむっ 京介「…」ぷるぷる 麻奈美「あむっじゅるっじゅるっ…ぷはっ」 ドンドンドンドンドンドン! 京介「ん?沙織のやつからメールか」 沙織『京介氏、最近きりりん氏と黒猫氏の仲がうまくいってないのでごさるが、なにか良い仲直り法はないでござるか?』 京介「…」ポチポチ 『その件に関して沙織に相談したい事があるのだが、今度の休みに家に来れないか?』 ぴっ 京介「…」 ぶるぶる、ぴっ 沙織『了解したでござる、次の休みに京介氏の家に伺わせてもらうでござるよ』 京介「…」 沙織「やぁやぁ!京介氏久しぶりでござる!」 京介「おぅ」 沙織「きりりん氏は自分の部屋でござるか?」 京介「あぁ」 沙織「ではこっそりと京介氏の部屋で作戦会議でござるな」 京介「あぁ」 沙織「ふふっしかし若い男女二人っきりで密室なんて何か身の危険を感じるでござるww」 京介「…」 沙織「今日は突っ込み無しでござるか…」しょぼん 沙織「では今日の本題の話を…って京介…氏?」 京介「…」 ガバッ 沙織「なっ!京介氏気を確かに!拙者なんて…」 沙織「はっ!メガネが…!」 沙織「や、やめてください京介…あっ…さん!」 京介「…」 沙織「だめですっ!はっ、恥ずかしい!み、見ないでっ!あんっ!!」 京介「…」 むちゅちゅぱっ 沙織「はうっ!そ、そんなところ…舐めたら…声が…桐乃ちゃんに…聞かれちゃう…んっ!」 ドンドンドンドンドンドン!! 京介「あ~もしもし、なんだお前かぁ~…」 京介「あぁそう、そうかぁ~」 京介「ははっ、なんだよ、お前も結構可愛いとこあるじゃねぇか。照れんなって」 桐乃「チッ、リビングでイチャイチャ電話してんじゃねぇっつーの」 京介「…」チラッ 桐乃「な、なによ!なんか文句あんの!」 京介「…」フィッ 桐乃「な!なにその態度!感じ悪るっ!!」 京介「でさ、いつ家来る?待ってるぜ」 桐乃「今度は誰を連れ込む気なのよ…」 ピポピポピンポーン! 桐乃「なにこのうざいチャイム!」 京介「おっ、来たかな」 タタタ 桐乃「チッ!チッ!あいつが呼んだ奴かよ!マジうざい!」 桐乃「チャイム連打なんてうざい事するから地味子じゃなさそうね…」 桐乃「誰なのよ…一体」 京介「おー待ってたぞ」 加奈子「ちぃーす、おじましまーす」 桐乃「えっ!加奈子!?」 桐乃「ちょ、加奈子!なんであんたが兄貴と!」 加奈子「あれ?私のマネージャーだって言ってなかったっけ?」 京介「…」 桐乃「え…そうなの?」 加奈子「とりあえず今後の活動についての話があるから来たんだよ」 加奈子「ま、たりー面倒な話はチャチャッと済ますから桐乃、後で遊びいこーぜ」 京介「…」 桐乃「う、うん…(まぁ加奈子なら大丈夫そう…かな?」 加奈子「んじゃ後でね~」 ガチャ、バタン 加奈子「あ~だりぃ、最近キモオタ相手の仕事多くてストレス溜まるんだよね~」 京介「…」 加奈子「またストレス発散手伝ってねぇ、ってもうギンギンじゃんww」 京介「…」もみゅもみゅ 加奈子「うっはww相変わらず触り方エロいwwんっ!あっ!」 ドンドン! 加奈子「あちゃー、やっぱ隣聞こえるかぁ。って、それも興奮するからまぁいっか、桐乃ごめんww」 京介「…」もみゅもみゅちゅぱっ 加奈子「んあっ!やべーマジ気持ちいいww」 ドンドンドンドンドンドン!! 桐乃「な、なんなのよ…毎回…毎回…」ドン… 『~ヤダヨ、マジデ?』 『タノムヨ』 『ショウガナイナァ』 桐乃「なんかボソボソ言って…る?」ベタっ(壁張り付き) 『だめだよ!おにいちゃん!』 桐乃「え!?」 『そんなロッドで攻撃されたらメルル壊れちゃうよ!!』 桐乃「えっ!?なに!?メルル!!」 『んあっ!おにいちゃんのメテオインパクトより凄いよぉ!!』 桐乃「やめてっ!メルルが!メルルがあああ!!!」 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!! 『メルルおかしくなっちゃうよおおお!!!』 桐乃「あああああ!!!!」 桐乃「ひっぐす…メルル…メルル…ぐす」 『エッツギハブリジットモ?』 『タノムヨ』 『キチクスギワロタ』 『レンラクシヨウゼ』 『アイツシャテイダカラスグクルゼ』 『ウハオケ』 桐乃「ぐす…メルル…メルルが…」 ピンポーン 桐乃「ぐす…メルル…メルル…」 『コンニチハ』 『オーヨクキタナ』 『ジャ、ヤルカ』 『?』 桐乃『ぐす…ん?」 『星くず☆うぃっちメルルっ!れいぷ祭りはっじまるよぉーーーっ♪』 桐乃「えっ!な、な、な、なんだってえええ!!!」 『きゃあああ!!な、なにするの!!』 『悪いアルファはやっつけちゃうぞ!』 『ひゃっはー!!』 『だめだめ!やだあっ!!』 桐乃「いやああああ!!アルファあああ!!!」 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!! 『やべーマジ犯罪だってwww』 『んんん!!いやあ!!やだあああ!!』 『…』 桐乃「ああああああああああ!!!!」 ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン!!!!!!! ―――― ―― あやせ「お兄さん、桐乃が何も反応しなくなってもう一年たつわね」 京介「あぁ」 あやせ「もう、私…」ぐす 京介「あやせ…」抱きっ あやせ「お、お兄さん…」 京介「桐乃は必ず闇から戻ってくる、その時はそばにいてやってくれ」 あやせ「でも私みたいな部外者じゃいつまで桐乃の面倒見られるか…」 京介「あやせ……俺と結婚しよう」 あやせ「!」 京介「そうすれば俺達は家族だ!家族ならいつまでもそばに居られるし…俺はお前も守りたい!!」 あやせ「お兄さん…ありがとう」ぎゅっ 京介「…」ニヤリ 桐乃を無視し続けたらどうなるか 完 【おまけ】 桐乃「ん?あっ!リアからエアメールだ!」 『キリノ、おにいちゃん元気してる?リアはこっちでもすっごい元気だよ!』 桐乃「ははっリアらしいや」 『で、おにいちゃんが言ってたとおり、おにいちゃんの事大好きになったらすっごい早くはしれるようになったんだ!』 桐乃「ん?」 『おにいちゃんいっぱい、いっぱいリアのお腹の中に速く走れるエキス注入してくれてありがとねっ!』 『またそのうち会いに行くからまたいっぱいリアにエッチなエキス注入してね!Bye-bye♪』 桐乃「ああああああああああ!!!」 ドンドンドンドンドンドン!!!
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/288.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289713269/501-504 寒風吹きすさむ趣のある露天風呂、熱い湯気と共に檜の良い香りが漂ってくる 俺たちはある東北の旅館に居た… 「まさか赤城がこんな良い旅館知っているとはな」 「ただ親戚が営んでるだけだよ…、この不景気で昔みたいに客足が減ったみたいでさ 遊びがてらに宣伝してくれとさ、帰ったらよろしく頼むわw」 そいう言うと赤城は自分の顔にお湯をかける。確かに良いとこだわ、都会暮らしの俺でも なんか哀愁にひたるというか…、懐かしい気持ちにさえなってくる、これは帰ったら思いっきり 宣伝しとかないと流石に悪いな、黒猫や沙織にでも紹介してみようか 「なぁ…、京介」 「ん?」 「このお湯ってさ…、さっきまで瀬菜ちゃんが浸かっていたお湯なんだよな…」 なんか、その~…、飲んでみたい気もするよなw」 まぁ、近頃大抵のことでは驚かない俺でも引くね…、このど変態シスコン野郎には 「あのな…、このお湯は俺たちが最後らへんに入っているだから、さっき見た太ったおっさんも 廊下ですれ違った今にも召されそうな婆さんとかのエキスもたっぷり入っているんだからな!」 「そうだな…飲んだのが少しだから良かったぜ!」 「飲んだの!」 変な病気になっても知らんぞ!俺は。 「冗談だよ、でもさ…、お前の妹だって入っていたんだぜ…、なんか感じるものはないの?」 「何にもねえよ!お前じゃあるまいし、そんな発想自体浮かばないっての!」 赤城の下らない質問に俺は顔にまたお湯を掛ける、…そっか、さっきまで桐乃がこの風呂場に 居たんだよな…って馬鹿!この馬鹿のせいで俺まで変な思考になってきているぜ。 「どうした?」 「なんでもねえよ!」 プルプル顔を振る俺に赤城は「?」みたいな顔をする。でも、まぁ、こういうのんびりするのも 悪くねぇよな、俺も受験の英気も養えるし、桐乃も卒業前の部活で結構ばてていたしな 「なんだかんだで呼んでくれてありがとよ、赤城」 「なんだよ、急に…、気持ち悪いなw、別にかまわねえよ」 こういう気取らない所が赤城の良いとこだな 「お前達がなんか一番良いかなと思ったしさ…」 「俺と桐乃って事か?」 赤城がざばっとお湯を掻き分け立ち上がる 「ちょっと俺の相談事に乗ってくれないか!京介」 「乗るからその前に俺の目の前にある『モノ』を今すぐにどけろ…」 そいういう赤城は我に返ったように再び腰を降ろす、本当に直線的な野郎だな 「赤城、気持ち悪いから顔を赤らめないでくれ…」 「あのな…」 ちょっと赤城の今までと違う雰囲気に俺は思わずつばを飲む 「瀬菜ちゃんがな…」 「おう」 やっぱり瀬菜の事か、こいつが頭抱えるって言ったらそれぐらいだしな 「時々何だけど…、瀬菜ちゃんがさ、俺の目の前を下着で通るんだけど誘ってんのかな?」 その質問聞いた瞬間に俺は事故をする戦闘機から脱出するぐらいに逃げたかったね この自意識過剰男はもう本当に死ぬぐらいしか救いようがもないぞ… さっき言った赤城の良いとこってのは無しだ… 「えっ!せなちーって下着でお兄さんの前出れちゃうの?!」 「そんなにいつもってわけではないですけどね、時々」 私たちはお風呂から上がってきてせなちーの部屋でガールズトークを楽しんでいた まさかせなちーがそこまでやっているとは… 「その時のうちのバカ兄ったら笑っちゃうんですよw『全然俺は見てませんよ!』 みたいな感じなんですけど!完全にあたしにしか気が向いてないのwwwマジ笑えません?」 「でもさ…、せなちー恥ずかしくないの?」 「う~ん、最初は別になんとも思っていなかったんですけどね、さっき話したみたいに あっちが意識しすようになってからちょっと私も恥ずかしいかなとは思うようにはなったんだけど まぁ…、別にいいか!って感じになっちゃていますよねw せなちーって結構大胆ね…、でも良く考えたらあたしも渋谷でラブホに兄貴と入った時に バスローブ一枚だったな、あの時のあのバカも挙動不審たらありもしかったしね いつ襲われるか気がきじゃなかった気もする… 「桐乃ちゃんもそういう時ないですか?なんか廊下出たらばったりとか!」 「う…、家は結構親が躾が厳しくて人前出るときはちゃんと服を着ろ!って言われているから あんまりないんだよね~」 今度、あのバカの前で出てみようかな~、くししwwwあいつどんな顔するのかな?どうせわたわたして 見れたもんじゃないと思うけどなんだかんだであたしから視線外せません!みたいな~ 「桐乃ちゃん?」 「あっ!はい!」 いけないいけない、つい妄想族入っちゃった、せなちーの方を改めて向く 「で…、でもせなちーさ、襲われる~!なんて思わないの……」 いけない、つい咄嗟にへんな事言っちゃった 「そうですね…、まぁ、それはそれで仕方がないかなと…」 「軽っ!」 軽いよ!せなちー!そんな「お弁当忘れちゃった」みたいなのりでいいの、というか腐女子の脳内構造から さらに180度回転しちゃっているような発想だよ 「私も…、そのなんかそんな誘っているようなカッコしちゃっているわけですし…、でも私は腐女子の 端くれです、そんな漫画みたいな展開にはならないようにはしますよ~」 「そ!そうだよね~、兄妹同士だもんね~」 「ちゃんと避妊はしなくちゃいけませんよね!」 「そこなの!?」 すごいよ…、すごすぎるよ!せなちー薬も無しで何処までもぶっ飛べるんのが羨ましいよ。 某漫画で「交渉は如何に冷静でイカレてるかを相手に理解させるのがコツ」って言っていたのが 今、あたしにはわかる気がするよ 「あたしって腐女子じゃないですか~!つい興味が出ちゃて古代の事とか調べまくったんですよ! そしたらソク○テスとかプ○トンとか、もう、昔のヨーロッパとかってガチホモなんて当たり前なんです! そりゃ腐女子なんで言葉あるわけないですよね!知りませんでしたか?」 ごめん、せなちー…、多分、その情報はあたしは死ぬまでの間一回かそこいらぐらい必要になるかならないか ぐらいの知識だと思うよ…、そんな事は死んでも言えないけど 「そしたらなんかよく調べてみると近親相姦ってのもかなりの頻度であったみたいなんですよ! よく貴族の間なんかでは「父×娘」とか「兄×妹」とかブームってわけではないですけ」 「ふ~ん…」 そこはちょっと知っている、この前、あたしのあやせが喧嘩した時にあのバカ兄貴が私を助ける為に そんな事言っていたっけ…本当にそういうのってあったんだ…、知らなかった 「日本の法律でも禁止されているわけでもないし、あくまでもモラルの問題ですけどね… だからと言って簡単には兄妹でHなんてならないとは思いませんけど…」 あたしとせなちーは今ちょっとお酒が入っている、甘いカクテルのようなものしか飲んでいないけど かなりいい具合になってしまっている、ちなみにあたしは初めてだからね! 「もし…、今日、バカ兄に迫られたら……、もしかしたら拒めないかもしれない…」 「せなちー…」 あたし達はそれぞれ兄妹同士の部屋を取ってもらっている、それがその状況を生み出す最大の原因でもある あたしはどうなのだろうか…、あの兄貴に迫られたらなんて言うのかな?… その前にあたしの気持ち自身良くわからないよ…、兄貴の事なんて…好きなんかじゃないんだから。 「桐乃ちゃん!」 「あっ、え!何・・・」 かるくグッドトリップしていたあたし 「今のは2人の内緒ですからね!」 「うん…、2人の秘密だよ!」 正直、何処からが内緒なのかは判らないけど… お互い兄妹っていう秘密…、それが甘くて切ないモノなのか、それとも現実の厳しさを知るモノなのかはお互い判らない 「いい風呂だった~!」 がらっと音を立てて2人が戻ってきた、怖い意味ではなくびっくりしてしまうあたし 「ちょっと女の子の部屋に入るときぐらいノックしなさいよ、バカ兄!」 「悪い、悪いw」 「瀬菜…、こいつもう本名改名してもいいくらいの本物のバカだぞ…」 「今度二人で仲良く市役所でも行って来て下さいよ」 何楽しそうに話してんのよ…、まともに顔を見れないあたしがバカみたいじゃない。 まぁ、いいわ、本当の夜はこれからなんだからね!あたしは指で銃の真似をして兄貴に向けた 俺の妹がこんなに可愛いわけがない
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/661.html
「ちょっと違った未来30」 ※原作IF 京介×桐乃 黒髪桐乃の過去編 ――12月、クリスマス前―― 「はやくはやく!京介君!こっち~!」 「はは、そう急ぐなよ桐乃」 12月クリスマス前。恋人達の為の季節。 東京でも粉のような淡い雪が降り恋人達の思いを美しく彩っていた。 あたし達はあの日約束した「最後の時間」を今日一日共に過ごすため今ある所にいる。 彼の部屋で彼にずっと抱きしめていてほしいという事も考えたが、やはり最後は「本当の恋人」らしいことをしたかった。 何でもない日々を共に歩き、共に笑い、共に喜び、共に愛する…。 彼と結婚し妻として彼の身の回りのお世話をし、彼との赤ちゃんを産んで…。 彼との、京介君との赤ちゃんが出来たら一体どんな子になるのだろうか?男の子かな?女の子かな?彼似かな?それともあたし似かな?一人かな?それとも双子だったりして?それから六人も七人も、それこそ野球が家族で出来るくらいたくさん産んで…。 「ふふ…」 京介君は子煩悩になりそうだ。この人は外ではクールな人だけど、あたしの事になるといつもデレデレしてくれるから。…生まれたばかりのあたし達の赤ちゃんの子育てに苦戦してほっぺたをぷにぷにされている京介君が容易に想像できた…。 「うふふ」 「?なんだよ。どうした桐乃、一人で笑って」 京介君は穏やかにあたしに聞いてくる。まるであたしの一挙手一投足すべてが愛おしいというばかりに。そしてあたしも…。 「今日は…楽しくなるといいね…」 「…ああ…」 京介君の左手の指にあたしの右手の指を絡める。…もう二度とお互い離れ離れにならないように…。 そうしてあたし達の「最後の恋人の時間」が始まった。 ~~~ 「え~と…。あ!あった!京介君!あっちあっち!」 「え~と…どこだ桐乃?」 「あ、あれだと思う!うん!きっとそう!」 今あたし達はある所に来ている。その場所を京介君に言った時彼は「?」という疑問符をその顔に貼り付けていた。…まあ彼にはあまり縁がない場所なのかもしれない。 かくゆうあたしもここに来るのは今日初めてだ。以前から雑誌や実家のテレビでどんなところなのか街の状況が流れているのをよく見ていた。そしてその中でも興味が尽きないものがあったのだ。 「おい桐乃。…そっちはこの地図とは反対じゃないか?」 「え?…あ!」 道案内はあたしがしている。ここに来たいと誘ったのはあたしだし誘われたのは彼だ。エスコートは男の子がするもの、なんて古い考えのような気がする。女の子だってこうして大好きな男の子を楽しませてあげたいのだ。 そしてあたしの手にあるはスマートフォンにある場所検索機能。 現代機器の恩恵で今日のデートは完璧よ!などと思っていたが…道具はやはり道具であり、使用者によってその能力が十全に発揮出来るか出来ないかが決まるものらしい。それはアナログでも最新デジタル機器でも同じだった。 「全く…ほら、貸してみろ」 「うん…」 京介君はあたしのスマホを手に取り器用に検索していく。初めて使うはずのあたしのスマホなのに、ものの数秒でその機能を頭で飲み込み綺麗に指先をタッチパネルに滑らせていく。 「やっぱり反対だったな…」 「うう…ご、ごめんなさい…」 「はは。別に構わないさ」 ポン、とあたしの頭に京介君は手のひらを乗せる。 「ぁ…」 「…」 なでなでなで…。彼に頭を撫でられる。 一本一本の毛を優しく柔らかく傷つけないように…その大くて堅い、けれど柔らかい手のひらであたしの頭を撫で回す。 「…」 「はう~」 なでなでなで…。ああ…気持ちいい…。まるで天国にいるみたいだよぅ…。 優しい笑顔で微笑む京介君と彼にされるがままのあたし…。10分が経った。そうしていると…。 じ~。 「…」 「…あ」 忘れていた。ここは往来の真ん中だった。そしてここは「そういうこと」にはあまり縁がないといわれる人達が集まる街でもある。 その証拠に小さな聞こえるか聞こえないかの声で「リア充爆発しろ!」とか「喧嘩ですね?喧嘩を売ってるんですね?」とか「よろしい、ならばクリークだ!」とかが聞こえてくる。…リア充ってどういう意味だろう? あと「ふひひひひ。くんかくんかしたいお」なんて言葉を飛んできて、ゾッとした。悪寒が走ったその瞬間、京介君があたしを抱きしめながら言葉がした方向へその鋭い視線を飛ばして黙らせてくれたけど…えへへ。 「い、行くぞ桐乃」 「…うん!」 そうしてあたし達はぎゅっとお互いの手を絡め合い、「そこ」に向かって歩き出した。 ~~~ 「星くずういっち!!はぁ~じま~るよぉ~!!」 「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」 ステージの上では小学生のようなコスプレをした小さな女の子が流れる曲に合わせて歌いながら踊っている。 それに合わせるように周りの「オタク」といわれる人達も皆が皆絶叫。会場はとてつもない熱気に包まれ、どの人も恐ろしいくらいフィーバーしていた。 ここは東京・秋葉原にあるステージ会場。そしてこの「星くずういっち☆メルル」のイベントは今日だけ無料で誰にでも来場を開放していた。なんでも副題は「帰ってきたかなかなちゃん~」だった。そういえばこの子どこかで見たような…?まあいいか。 酷い頭痛を耐えるようにこめかみを指先で揉みほぐす京介君を尻目にあたしも、 「きぃゃあああああああ!!!!かなかなちゃあ~~~~ん!!!!」 周りの人達に負けじと声を張り上げていた。その瞬間…。 「…ぅぁぁ…」 ステージ上のメルルことステージコスプレイヤーのかなかなちゃんが一瞬だけ曲に合わせる音程を外し、こちらを凝視していた。それは何か知り合いの信じられない姿を見た、と言わんばかりの顔だった。?一体どうしたのかな? もっともすぐさま歌と振り付けに戻ったが。 「め~るめるめるめるめるめるめ!め~るめるめるめるめるめるめ!!」 「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」 巨大な熱気の渦が巻き込むように流れている気がした。その流れに負けないようにあたしも、 「め・る・る!め・る・る!はいはいはいはい!!」 その日ステージ上のかなかなちゃんはあたしの方を見ようともせず(何故かあたしの声が聞こえるたびに冷や汗が流れていた。何故だろう?)そのステージを歌いきった。 そして京介君はずっとこめかみを指で揉みほぐしつつ顔をしかめていた…。 ~~~ 「あ~!面白かった!」 「…」 会場でのステージ帰り。あたしと京介君は次なる場所へと向かっていた。 「おまえ…あんなのが好きだったのか…」 「え?」 げっそりとどこか痩せこけた京介君がそこにいた。心なしか生気を全て吸われた感さえする。気のせいだろうか。 「…いや。何でもない」 「んん~、ん~とね…」 どう説明したものかな…。 「い、いつもよく本とかで見てて…。か、可愛いな、って…」 「…」 京介君は無言だ。 「あ、あれ?か、可愛くなかった?」 「…俺にそんなこと聞くなよ」 京介君はそっぽを向いている。うう~。 「つ、次はどこ行こっか!」 「どこに行きたい?」 メイド喫茶にラジオ館にアニメ屋さんに行きたいところはいくらでもある!電子器具の店もたくさんあるみたいだし理系の京介君も楽しめるはずだ。 今日はいくらでも歩けるように動きやすいスキニージーンズを履いてきている。それにおろしたての黒のコンバースのキャンパスシューズ。今年の3月の大学入学前に買って12月に入ってやっと日の目を見ることができた。 「ふふ…」 「?どうした桐乃?」 こうしてると…。 「なんだか…本物の「恋人」みたいだね…」 「…」 そっと、彼の手を握る。 「ねえ?京介君」 「うん?」 そして…そしてここ秋葉原に来てからずっと感じていたこの気持ち。 「あたし達って…ここに何度も何度も来た事があるような気がするね…」 「…」 ずっと違和感を感じていた。 ここ秋葉原はあたしにとって初めて来た街だ。京介君もそうだと来る前にそう言っていた。 でも着いてからなんとなく何度も来た事があるような気がするのだ。 何故だろう? 「…」 京介君はあたしに何も答えない。じっと何かを考え、しかし優しい目であたしを見つめる。 そうしていると…。 ――そんな~優しくしないで~♪ いいメロディ…。こころが落ち着くもののどこか切ない感じがするメロディ…。なんだろう?この曲どこから…。 そこには秋葉原にある店の街頭パネルで昔のアニメ、準懐古作品集~と題して映像と音楽が流れていた。説明によると、素直になれない中学生の妹に対してお兄ちゃんが奮闘するという物語だった。 タイトルは…。 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない、か」 隣で京介君がタイトルを呟く。こういったジャパニーズカルチャーに対して全く興味を示さない京介君にしては珍しく、パネルに注視していた。 「…」 「…」 一緒に作品の概要を並んで見る。お題は「10分でわかる!俺妹!」だった。 「これ…」 「ああ…」 この作品って…。 「主人公の男の子、京介君にそっくりだね」 「妹の女の子、桐乃にそっくりだな」 「え?」 「え?」 あたし達は自分が思っていることとお互いに「反対のこと」を同時に言い合った。 「ちょっと待て。俺があの主人公の兄貴とどこがそっくりなんだ?」 「そ、それはこっちが聞きたいよぅ。あの妹の女の子とあたしのどこがそっくりなの?」 「そ、そっくりのヘアピンつけてるし…」 「それはたまたまでしょう?」 「か、顔だって…」 「あ、あたしあんなに目がきりっとしてないよぅ。そ、それともなに?!ま、丸顔だって言いたいの?!」 「い、いや。そうじゃなくてだな…」 ぷんぷん!少し気にしてるのに! 「か、髪だって…」 「髪型だけでしょう?あの女の子は綺麗なライトブラウン、あたしは黒髪!」 「そ、そうだな…」 あれ…もしかして人生で初めて京介君のことを言い負かした? うふふ…やったぁ~!!あの、あのおにいちゃんを言い負かすことが出来た!あたしだって、あたしだってやれば出来るんだ!もしかして将来は弁護士?!アナウンサー?! …言っててそれだけの頭がないことに気づく。がっくし。 そうしていると今度は京介君が、 「じゃあ俺があの兄貴とどこが一緒なんだよ。言ってみろよ」 「え?」 どこが一緒…?う~んとね…。 「せ、背格好とか…?」 「あれくらいの背丈の男はどこにでもいる」 「か、身体の体型…」 「俺はあそこまでなよなよしていない」 「あ、あの目とか…」 「なんだ?俺はあんなにやる気がなくて隙だらけのように見えるのか?」 うう~! 今度はあたしが逆にコテンパンに言い負かされた。悔しい~! あたしのそんな姿を見てにやりとドヤ顔を決める京介君。む、むきぃーーー!! 「もう!京介君なんて!京介君なんて…!」 「…京介君なんて…?それから何だ?」 京介君はじっとあたしの顔を見つめる。愛おしいそんな彼に向けて…。 「…大好きなんだから」 顔が真っ赤。悔しい。あたしの心はすでに目の前の人にがっちりと掴まれている。彼のすべてにあたしというあたしのすべてが惚れ込んでいる。 「…」 京介君はそんな焼きリンゴみたいに真っ赤に顔を染めるあたしを見て愛おしそうに微笑んでいる。 街頭の電子パネルから「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のお兄ちゃんの男の子と可愛いけれど素直じゃない妹の女の子が楽しそうにしている。 楽しそうとはいっても妹の女の子がお兄ちゃんの男の子に対して我がままを言ったり拗ねたり時にはビンタをしたり…。うう~。やっぱりあたしになんか全然似てないよう~。 でも、この妹の女の子が何故こんなにまでお兄ちゃんである男の子に対してツンツンしているのか…わかる気がした。 この子はおそらくお兄ちゃんのことが好きなのだ。大好きなのだ。愛しているといってもいいのかもしれない。 だからこそ素直になれない。 「…」 本当に嫌いならこんなにまで感情を剥き出しにしたりなんかしない。本当に嫌いならこんなにまで悪態をついたりなんかしない。この子はただお兄ちゃんに構って欲しいだけなのだ。 「ふふ…」 「?なんだよ」 京介君が怪訝そうな顔であたしを見る。やっぱり…。 「やっぱりおにいちゃんの言うとおりだなぁって!」 「?」 やっぱりこれはさっき京介君が、おにいちゃんが言ったとおりだ。そしてあたしの言った事も…。 「おにいちゃんとあたしってお似合いだね、って」 ~~~ カランカランカラン♪ 「いらっしゃいませ!ご主人様、お嬢様~!」 次にあたし達が入ったのは喫茶店。それも…。 「ご主人様とお嬢様は本日初めてですかぁ~?それでしたらこちらにご案内致します~!」 そう。ここは秋葉原名物といわれる喫茶店、メイド喫茶だった。 「…」 「えへへ~♪」 周りは可愛いふりふりのフリルがついたメイドさん達がたくさんいた。 「いいなぁ~」 「…何がだ?」 あたしはメイドさんのふりふりを見て、 「あたしも、ああいう服を着てみたいな…」 「…」 そういうと何故か京介君は鼻を指で軽く押さえて赤面した。? 「?どうしたの?」 「…いや。何でもない」 気にしないでくれ、と言う京介君の後ろに、 「…」にやにやにや さっき出迎えてくれたメイドさんが立っていた。あたし達を見てにやにやしている。 「ご注文はお決まりでしょうかぁ~?ご主人さま。お嬢様」 京介君は憮然とした顔をする。 「ご主人様とお嬢様は恋人さんですか~?」 「ふぇ?!」 「…」 や、やだぁ~!あ、あたし達って、や、やっぱりそう見えるのぉ~!? ぶんぶんぶん、と顔をにやけながら振り回すあたしを京介君が止める。目の前のメイドさんも顔をひくひくさせていたがすぐに仕事での完璧な営業笑顔(スマイル)になった。 「こ、恋人様ですとカップルでのメニューがあります~。こちらのパフェなど如何ですか~?」 うわあ~!これ美味しそう~! 「いや…俺は甘いものが、」 「これにしますっっ!!」 あたしは即答していた。 「お、おい桐乃…」 何かを言おうとしている京介君を置いて、 「かしこまりましたぁ~!それでは少々お待ち下さいご主人様、お嬢様!」 そう言ってるんるんとしたステップを踏んで調理場のほうへ去っていった。 ~~~ 「うう~~ん!!美味しい~~!!」 「…」 運ばれてきたパフェはカップル専用の大きなグラスに入っていた。 スライスしたイチゴにバナナ、バニラとチョコのアイスに生クリームがふんだんに詰め込まれ、上からチョコレートソースがたくさんふりかけられている。そして…。 「はい♪あ~ん♪」 「…ぅぁ」 あたしは京介君にパフェのアイスを載せたスプーンを口に運ぶ。京介君はそれをじっと見つめる。 「はい、あ~ん♪」 「…」 「あ~ん♪」 「…」 「ああ~ん♪」 「…あ、あ~ん…」 パクッ。もぐもぐと口にパフェのアイスを含み喉に嚥下した。 「ふふ♪美味しい?」 「…ああ」 京介君の顔は物凄く真っ赤だった。見れば汗が少し浮いている。…可愛い♪ 「ふふ。あたしも食べちゃおうっと!」 「…なんでこのパフェはスプーンが一つだけなんだ…」 あたしがパフェのイチゴを食べる目の前で京介君は頭を抱える。すると、 「カップル専用ですから~♪」 にやにやとしながらさっきのメイドさんが声をかけて去っていく。 「ほ~らぁ」 「ん?」 あたしはもじもじさせながら、 「つ、次は…おにいちゃんに食べさせて欲しいな…」 「…」 今度こそ彼の顔は沸騰しそうなくらい真っ赤になっていた。どうしよう。凄く可愛いんだけど。 「ほ、ほら!カップル専用だし!こうしないとル、ルール違反なんだから」 「…まじかよ」 そういっておにいちゃんはあたしとさっき食べた彼の唾液がついたスプーンにバナナを載せてあたしの口元に運んできた。 「…」 顔を真っ赤にさせて手がこころなしか少し震えている。…年上の男性のこういう姿ってどうしてこんなに可愛いんだろう。京介君は普段が普段だからそのギャップは凄かった。 こういうのって世間じゃツンデレ(?)って言うんだって。 ぱく。 「…」 「…美味しい」 あたしの口から彼との唾液がついたスプーンが離れていく。スプーンとの間に小さな橋が出来ていた。 「…うまいか桐乃」 「…うん。お、おにいちゃんに食べさせてもらってると思うとね、思うと、」 心の中がとろとろになっちゃうの。 …そう言おうとした瞬間、 「ふふ…見てられないわね。人間共の堕落した姿は」 「え?」 「…」 声のほうへ振り返るとそこには。 「く、黒猫さん。し、新規のお客様ですから。大目に…」 「何よ。出しゃばらないでくれるかしら、きららさん」 さっきのメイドさんがあたふたとしつつ、そして諦めたように奥の調理場に戻る。 「…」 「えっと…」 声の主は凄いふりふりのレースばかりがついた漆黒の衣装を身にまとっていた。あたしより背が少し低くて綺麗な髪と透き通るような白い肌が印象的だった。冷めた瞳であたし達を見つめるその姿はまさしく氷の美女、といった言葉がすぐに連想された。 「…あ、あの~。ど、どちら様で…」 尋ねるあたしを見てふんっ、と一瞥した後。 「我が名は黒猫。千葉の堕天聖と人は呼ぶわ」 バッバッバッバッバッ! 優雅に座っていた椅子から立って何か虚空に「印」を結びつつ、片足を上げたポーズでそう告げた。 「…」 「え、え~っと…」 京介君が何か得体のしれない生き物と遭遇したかのように顔をひくひくとひくつかせている。周りの男性客が「黒猫たんの異次元第一障壁解放キターー!!」とかよく意味がわからないことを言っている。 えっと…。 「…桐乃、目を合わせるな。ああいう手合いは関わらないことが一番なんだ」 「きょ、京介君、」 「き、聞こえたわよッ!そこの貴方!」 黒猫(?)といわれた人が席を立ってこちらに向かってくる。 「人間の雄の分際で随分と虚仮にしてくれるじゃないの。一体どうい…う…」 「?なんだよ」 「…ぁ…」 京介君に猛然と近づいてきたものの、京介君のその顔を間近で見たとたん、何か言いかけてそのまま黙り込んでしまった。何故かその白いほっぺが綺麗な朱に染まっている。 「なんだ?言いたいことがあるのだろう?一応聞いてやるが」 「…け、結構よッ!」 黒猫といわれた女の人はプイッと顔を背ける。 「?おかしなやつだな」 「あはは…」 それから黒猫さんは言いにくそうに小声で…。 「…貴方達…実の兄妹なの?」 「…」 「え?」 ど、どうしてわかるの?!そんなこと?! 動揺するあたしの顔を見てにやりとドヤ顔を決める目の前の女の人は、 「ふん。さっきの会話を聞いていたら論理的に解を導けるわ。所詮は人間。天界の戦士達をも余さず追い詰めるこの異能の「眼」からは何人たりとも逃れることなど出来はしない」 「…どこにどういう論理が入ってるんだ。反証材料がありまくりじゃないか…」 やっかいなのに捕まってしまった、と頭をかかえる京介君を尻目に、 「…」 「…」 「…」 何故か沈黙する黒猫という女の人。そして、 「あまり感心しないわね」 ぽつり、とそう呟いた。 「え?」 「…兄妹での交わりは禁忌中の禁忌。それは私達「血の純度」を保持しなければならない異能の種族も同じ事。ましてや、人間如きが…」 「…」 「でも…」 黒猫さんはその綺麗な髪を翻し、背中をこちらに向け顔だけこちらに振り返りながら、 「それも一つの道なのかも知れないわね。すべてを捨ててもなお、突き進むしかない獣道…。その暗くて狭い唯一人しか連れて行けない道をどこまで行くことが出来るのか…。せいぜい見物だわ」 「…」 「黒猫さん…」 「ふん…。きららさん!お代はここに置いておくわよ!」 「あ、ありがとうございましたぁ~!」 カランカランカラン♪ どこか恥ずかしそうに頬を染め、しかし何か羨ましいような顔をした黒猫と名乗る女の人はそう言ってこの喫茶店を出て行った。 「…」 「…」 そしてあたし達は彼女が出て行ったその後を少しの間黙って見ていた。 ~~~ 「こんな所があったんだね…」 「…ああ」 教会。秋葉原を冬の寒空の中歩いたあたし達は夕日が傾くこの時間、この場所に辿りついた。 「…」 「…」 この教会の礼拝堂は一般開放してくれているのか何かと物騒な昨今にしては珍しく、中には誰もいなかった。 「…」 目の前で十字架にかけられたイエス・キリストの像。聖書によると彼は人類のその罪を一身に背負って迫り来る官憲から逃げもせずその刑に処せられたという。 「…」 彼は一体どれほどの人間達の業を背負ってあの世へ旅立ったのだろうか。何故彼一人がその罪を背負わなければならなかったのだろうか。そして彼が人間達の中に見た「罪」とは一体何だったのだろうか? 「…」 古来よりタブーとされる近親相姦禁忌。血の繋がりが特に濃いとされる親子、兄妹姉妹間での交わり。 …目の前の「彼」もその業を清めるべく甘んじてその刑を受け入れてくれたのだろうか。 「桐乃」 教会のステンドガラスから差し込む夕日の光に照らされて、京介君は静かな、しかし固い何かの決意を告げるようにあたしの顔を見た。 「聞いて欲しい事があるんだ」 緋い日の光に照らされた彼の横顔は真剣な瞳をしてあたしの目を見つめていた。 「…」 あたしは思わず、こく、っと首を縦に振り返事をする。 「俺は今の今までおまえのことだけを考えて生きてきた」 「…」 「母さんが俺が幼いころに死んで一人息子だった俺を育ててくれた父さん…そしていつも俺のことを気にかけてくれていた大介お父さんに佳乃お母さん。そして…」 「…」 「桐乃…おまえがいつも俺の傍にいてくれたから…。いつもどれだけ泣いても泣かされても俺の傍だけは決して離れようとしなかった幼い頃のお前…。俺はいつも思ってた。お前だけは何があっても絶対に守る、って」 「おにいちゃん…」 「だけど父さんが死んで、身寄りが誰もいなくなって。知り合いが誰一人いない孤児院に入れられて。俺はどうしたらいいのかわからなかった。これから俺の人生は一体どうなるのか、そもそも生きていけるのだろうか…。幼心ながらそんな暗いことばかり考えたよ。どうしようもないほど怖くて怖くて仕方がなかった」 「…」 「それでも…」 「…?」 「それでも、今俺がこうしていられるのは桐乃…お前がいたからなんだ。例え離れ離れになっていてもこの同じ空の下でお前が生きて笑っていてくれる…それだけで俺はどんなことでも頑張れた。どこまでも頑張れたんだ」 「…おにいちゃん」 「…俺はお前と離れ離れになる前も離れ離れになった後も…お前の幸せだけを考えていたよ…」 「おにいちゃん…」 ぎゅ、と彼に両肩を握り締められる。 「だから桐乃…。俺はもう…おまえとは一緒にいられない…」 「え…?」 彼は酷く思いつめた、しかし引き返せない覚悟をその目にたたえながら。 「これ以上俺達は共に歩むことを許されない存在だ。俺達がこの関係を続けることは俺達のお父さんやお母さん、そして周りの人達を傷つけることになる。なにより…」 じっとあたしの目を見つめて、 「おまえが…幸せをいつも願ってやまなかった大事な妹が…なによりも不幸になる。そんなこと俺は兄として許すことが出来ない。出来そうにない…」 「おにいちゃん…」 「俺達は咎人だ。共犯者だ。この罪は二度と消えることはない。そして俺達はこれ以上共に歩むことが絶対に許されない。俺達が結ばれることを世界が絶対に許さない。こんなにまで穢れた魂は世界に必ず拒絶される。だから…」 「…」 「もとの兄妹に戻ろう。今日を最後に俺達は普通のどこにでもいる、何でもないことで笑いあえる兄妹に戻ろう」 「…」 「あるはずだった、確かに存在したはずの…普通の兄妹に戻ろう…」 「…」 「もちろんこのまま一緒にいたら俺はお前への想いを抑えることが出来そうにない…。それはお前だって同じはずだ。こうしている今だって俺は…。だから…」 「…わかった」 「え?」 少しばかり困惑する彼の…おにいちゃんの目をあたしは見つめながら 「お別れ、だね」 そう、あたしから、その別れの言葉を切り出した。 「きり、の…」 「少しの間…だけどね」 あたしは彼の手から逃れてくるっと祭壇の前に立った。 「ふふ。あたしのおにいちゃんっ子もとうとう卒業かぁ…」 「…」 あたしはおにいちゃんの顔を、大好きな下からのアングルで覗きながら、 「今まで、お勤めご苦労様でしたぁ~」 そう、笑顔で彼に言った。 「桐乃…」 「あ~あ。あたしもとうとう失恋かぁ…。初恋は決して実らないって言うけれど本当だったんだね~」 「…」 「でもでも!あたしってあたしのどこがいいのか知らないけど、昔からすっごくもてるんだよ?今までたっくさんの男の子に告白されたりお手紙を貰ったりしてきたの!」 「…」 「皆断っちゃったけどいい人達だったなあ~。あ、そうそう!この前私立の医学部の人達に校門で待ち伏せされて声を掛けられてね?一緒にドライブ行こうって誘ってくれたんだぁ。どうしよっかなぁ~」 「…」 「ふふ…。あたしもおにいちゃんっ子をこれで晴れて卒業出来るんだからしっかり将来の旦那様候補を見つけとかないとね。いまからでも婚活を気を抜かずに頑張らないと!見てて?おにいちゃんがあっと驚くようなすっごいいいお嫁さんに変身しちゃうんだから!」 「桐乃…俺は…」 何かを言いたそうに震える彼の唇に、あたしはそっと人差し指を当てて…。 「だめ、だよ」 「…」 「それ以上は…言わないで…」 あたしは彼の切なそうな顔を見つめながら、 「ふふ…。おにいちゃんの甘えん坊さんも筋金入りだよね~」 「…」 「いつまでも妹の相手ばっかりしてると、おにいちゃんのこと想ってくれてる女の子のこと…見逃しちゃうよ?」 「…」 あたしは真摯なまじめな顔で、 「あやせとのこと…もう一度真剣に考えてあげて…」 「…」 「あんなことになっちゃったけど…あやせは今でもあたしの大事な友達だから…」 「桐乃…」 だって…だってあの子はあんなにまで、あんなになるまでおにいちゃんのことが大好きだから。彼へのあれだけの激情を胸に秘めて愛しているのだから。 …あたしがいなくてもあやせがいればおにいちゃんは大丈夫だ…。 「ね?はい!おしまい!この話はこれまで~!」 「…」 おにいちゃんは肩を震わせ…泣きそうな目であたしを見つめていた。 「そんな顔しないでよ「京介君」。いい男の子が台無しだよ?」 「…」 「これからは普通の兄と妹に戻るんだから…。それにしても…」 「…」 「やっぱり京介君も男の子だよねぇ~。いつもはあんなに冷静沈着ですっごく頼りになるのに肝心の時になるとこれなんだもん。やっぱりここぞという時は女の子の方が強いってことなのかな?」 「…」 「でもあたしも人の事言えないよね…。しっかりと独り立ちしないと、ね」 「…」 あたしは一呼吸置いてから、 「京介君。あたし、小説書こうと思ってるんだ」 「え?」 「だから、小説。前に京介君あたしの原稿見てくれたじゃない。これからね、たっくさん書こうと思うんだ!香織さん達にもエールを送ってもらってるし…皆の期待に応えないとね!」 「…」 「あたしって今まで何にもなかったから…。でも…」 あたしは京介君の、泣きそうな顔を笑顔で見て、 「これからは何か一つでもやり遂げて、皆に恩返ししなくちゃ」 「桐乃…」 彼もあたしの顔を見る。夕日に照らされたその目はらんらんと溜まった涙で輝いていた。 「もう!泣き虫なんだから!お兄ちゃんでしょ?!しっかりしてよ!」 「ッ!…すまん」 彼は目頭を袖で人拭いする。 「いくらシスコンでも限度ってものがあるよ?そんなにあたしが離れていくのが辛い?」 「あ…たりまえ…だろが…」 「ふふ…」 「…まああたしのブラコンっぷりも相当だよね…。」 目頭が熱くなる。涙が止まらない。あたしは彼の顔をこれ以上見ていられなくて彼から顔を背けた。 「桐乃…」 「…ぅ…ひぇっ…。ご、ごめんね…。す…すこ…すこしだけ…あたしの顔…見ないで…」 降りしきる沈黙。静寂につつまれた教会の礼拝堂はあたしの涙を堪える声だけが響いていた。すると…。 「桐乃」 おにいちゃんがあたしから一歩離れた遠くから、 「お前の小説の読者第1号は、俺な」 「…え?」 彼にはもう、目にためた涙はない。彼は晴れやかな顔で、 「可愛い俺の妹が書いた栄えある作品第1号なんだ。その役目を他の奴にみすみす渡せるか。まず最初に見るのは俺だ」 「…おにいちゃん…」 「楽しみだな…。おまえの書いた作品ってどんなものなんだろう。この前のやつか?だったら続きが気になってたんだ」 「…」 「桐乃」 彼はあたしを、あの頃から少しも変わらない優しいおにいちゃんの眼差しで見つめながら…。 「…<約束>…な」 旅立っていく妹を、去っていく妹を祝福するお兄ちゃんとして役割。 いつもいつもどんな時でも決して離れようとしなかった妹の旅立ち。 「…うん…<約束>…」 夕日の光が差し込む教会の聖なるステンドガラス。「恋人としての最後の時間」から「兄妹」へ戻るまであと少しの時間をその光が告げていた。
https://w.atwiki.jp/chibifantasy2/pages/777.html
スキップモーモ ペット説明 陽気にスキップをしているモーモ、スキップをするたびに凄い振動が付近を襲う! 初期ステータス HP SP 攻撃力 防御力 27 4 6 1 魔力 魅力 運 素早さ 1 2 2 4 火 水 風 土 6 8 0 21 技・魔法スキル スキル名 使用SP 第1スキル名 - 第2スキル名 - 第3スキル名 - 適正装備 装備箇所 装備適正 武器 不明 左手 不明 頭 不明 上 不明 下 不明