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運命の光に導かれて Oh 世界中から集まった仲間 どんな苦しい戦いも 助け合っていこう 守りたい人の為に 叶えたい夢の為に 今日も馬車は ひたすら進んでいくから 明日への旅 未来なんて分からない だから旅を続けよう Day and Night そう いつかは答えを見つけたい Oh Yeah 明日への旅 ドキドキするような One Way Trip 人生は一度きりさ Precious Chance そう 後悔してるような 暇はない Oh Yeah 明日への旅 ブライ「姫様、出番ですじょ!」 アリーナ「わかってるから!」 クリフト「怒ってる顔も、かわいい…」 強さを求め飛び出した旅 愛する人を守る為の旅 敵討ちに燃える さすらいの旅 もっと大きな何かを コインより大事なもの? 私達が持つ光を信じて 明日への旅 身分なんて関係ない 心通い合えたら問題ない さあ すれた靴で歩き出そう Oh Yeah 明日への旅 趣味も性格も正反対 でも世界で一人の My sister 誇りとプライド胸に抱き Oh Yeah 明日への旅 ライアン「トルネコ殿、出番ですぞ」 トルネコ「んまだお弁当食べてるのー」 ミネア「あとにして!!」 リュウマチ、メタボに糖尿病 年寄りにはちょいと辛い事もある だけど若いもんには 負けちゃいられない アラフォー アラフィフ アラカンだって やる時ゃ やるのさ we can do it! 情熱の炎は 消える事は無いさ 明日への旅 オジさんと呼ばれても ワクワクすることには変わりない くだらない常識は Throw Away Oh Yeah 明日への旅 年齢も思想も関係ない 心と心なのさ なあホイミン? あきらめるなんて 死んじゃった後でいいさ 明日への旅 何の為に戦うんだろう? -お金のため? -おいしいごはんかな? -ギャルにモテモテになるためかな? -最ッ強になるため! --いや、そうではない --もう みんな気づいてるはず-! ホイミン- お父様- サントハイムの皆様- 国王しゃま- ネネ、ポポロ- お父さん- オーリン- 七つの光が-今-一つに-! Oh やっと出逢えた 導かれし仲間 未来照らし出す 七つの光 生まれてきた訳を ずっと探していた 自分の弱さを 悔やみ後悔ばかりしてたけど 目指す光やっと見つけ出せたんだ 明日への旅 出逢い 別れ重ねて 分かり始めた大切なこと 昨日があるから今日があるさ Oh Yeah 明日への旅 もう何も迷わない 自分の決めた道を Go Ahead! いつかあの空でキミに会える その日まで 終わらない旅 未来なんて分からない だから旅を続けよう Day and Night そう いつかは答えを見つけたい Oh Yeah 明日への旅 ドキドキするような One way chance(?) 人生は一度きりさ precious chance Oh 後悔してるような暇はない Oh Yeah 明日への旅 明日への旅 未来への旅 希望への旅!!
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こんなにもモテる努力をしているのになぜ効果が現れないのかが不思議でならない。このままでは私は人生で一回も彼女を作ることもできずに終わってしまうかと思うとそれはなんだか不純すぎて泣けてきちゃいそうだ。そんなことにはなりたくないので日々自分に磨きをかけているつもりなんだがどうしてもうまくいかない。どのようにすれば異性からモテるように毎日考えています。というのも早く結婚をしたいという願望もあるからなんですけどね。もうそろそろ私も年かなって思ってしまうことが多いのでさすがにそろそろ恋人ぐらいいないと人生寂しく過ごしたくないと思っています。ですがなかなかいい相手を見つけるのも結構大変なことですよね。でも一生に一度は結婚をしたいと思っていますのでどうにかこのブログを通してモテる男に少しでも近づけれるように努力をしていけたらいいと思っています。よくモテる人のブログを見つけたので皆さんにも見せてあげたいと思います。私もとても参考にしています。詳しくはこちらです。
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ともだちになるために ◆JvezCBil8U 死神の足音が聞こえる。 もう、すぐ傍だ。 たぶんこのまま自分は助かることもない。 さながらクラレッタのスカートを直すかのように、理不尽に立ち向かった結果がこの有様だ。 ああ……、なんという惨めな末路なのだろう。 文字通り臓物をブチ撒けて、脳天ど真ん中に開いた孔から命が流れ出していく。 これじゃあ、考えて、考えて、考えることすらできはしない。 知ったことか、と、本当にその一言だけで解決できたのならどれだけこの世は芳醇だったろうか。 つい先刻までの同道者の顔を思い出そうとして――、止めた。 振り返るべきは、ここに連れ去られる前にどうして辿り着けなかったのかという後悔だけでいい。 「……兄貴、どうして」 どうしてあんな行動に出たのかと、今わの際のここに至ってすら繰り返し、問う。 結局彼の真意にすら辿り付く事は出来なかった。 今まで出合ってきた様々な人間の顔が、走馬灯として流れていく。 バカジャナイノー、とすぐ近くで誰かが呟いた気がした。 消灯ですよ。 * 時はしばし、遡る。 * 「太公望ちゃんがやられたみたいねぇん。 あはん、あの子はこの場にいる仙道の中でも最弱……。 人間ごときに負けるとは道士の面汚しよん」 最悪、極悪、凶悪、劣悪。 蝿の王の如き暴言をあまりにもあっさりと告げた後。 悠然と泰然と、妲己は己が仇敵の存在とその死を一瞬だけ心に留め、それきり放り捨てて奥底に沈める事にした。 はや思い出すことはなく、浮上する事もなし。 無論彼にはそれなりに思い入れがあったが――、それも生きている太公望に対してであって死体と話す趣味はない。 結局それを意識するのが面倒くさいと、そう思うことすら面倒くさいと切り捨てた。 これが妲己なのだから、まあ、それについてとやかく言うのは止めておこう。 “そんな事”より今は別のことを考えるほうがずっとお得でポイントセール。 放送を噛み噛み口の中で転がし、一人ごちる。 「どうやら神の陣営も一枚岩じゃないのは確かみたいだけどぉん、あまりにも見せ方があからさますぎるわぁん。 “わらわを拉致できるくらい”の存在が、こんな簡単に手下に出し抜かれるはずはない。絶対に、ね。 ……と、なると」 くすくすと、哀れで惨めな道化女を嘲笑いながら鼻歌を。 「いい趣味してるわねぇん、“神”はわらわと気が合いそうだわん。 わざわざ『付け入る隙を演出して』、大多数の参加者に幻の希望を見せ付けるなんて、わらわゾクゾクしちゃうん。 必死になって、命を賭けて、ようやく何かを伝えようとした放送の女も、全部計算通りの動きしかしてないってことよねぇん」 どこか放送の趣向に相通じるものでも感じ取ったのか、妲己は朝霧の中を闊歩しながら素直に賞賛の言葉を送る。 それが自分を踊らせんとする存在であっても構わない。 むしろ、その手口が実に好ましいからこそ受け入れる。拍手する。 それこそが己の度量の広さと言わんばかりに。 ぱちぱちぱちぱち。 「最後の最後に奪い取る為だけに希望を与えるなんて、わらわでも作るのに一苦労する状況だわん。 気づいていようと気付いていなかろうと、人間らしい感情の持ち主ならまず心が受け入れられないでしょうねぇん」 何の為にそんな事をするのか、それを推し量るのは無粋というもの。 答えなど一つしかない。 徹底的に自分達を屈服させて、“神”とやらの指図を受け入れざるを得ない心持ちにする為だ。 楽しみだ、とペンライトのように指を振り振り。 当然分かっていてそれに乗るつもりもないが、どこかワクワクする気分も確かにある。 この自分をそんな状況に追い込む事が出来るなら、是非ともやってみせて欲しいものだ。 そしてその自信があるからこそここに妲己を招き、アピールしてみせているのだろう。 申公豹をも従わせた“神”の不敵さが非常に心地よい。 鼻っ柱をヘシ折って、ぐじゅぐじゅに踏み潰してあげたいくらいに。 「さしあたっては喜媚との合流が当面の目的かしらぁん。 あの子の事だから遊びが高じて味方を一人か二人殺しちゃってるかもだけど、まあそのくらいは多めに見ちゃうわん。 どうせわらわの邪魔になる連中には死んでもらうことになるんだしぃん」 現状何だかんだ言ってまだまだ戦力が足りないのは確かだが、自分の妹は確かに頼りになるはずだ。 味方と書いて手駒と読む関係こそが妲己の望むもの。 必要なのは甘い夢に誑かされる純粋(おろか)さや、利用されるのを分かっていて敢えて操り糸を託してくるような狡猾さを持つ人材である。 無論、多少の跳ねっ返りも許容しないわけではない。 これから手駒を集めていく際、当然中にはあからさまに自分を嫌悪するものも出てくるだろう。 自分のやり方が好まれるものではないのは最初から織り込み済みだ。 上手く使えば、むしろ自分に敵意を持つものの方がいい働きをしてくれる場合すらある。使い捨てる場合なら特に。 自分を誘蛾灯にして“神”に対抗しようとする人材も危険人物も誘き寄せ、優秀な人材を選別する。 そこまでの過程で参加者同士が勝手に殺し合うのは目論見通りだ。 だがその後――、せっかく掌の上に集めた戦力を下らない小競り合いで零してしまっては元も子もない。 後々を見越した場合、頭角を現して、尚且つ迎合や協調を望めない芽は潰しておいた方が明らかに効率的である。 そう、例えば激昂した聞仲の様な。 ――聞仲。 死んだはずの男が、今ここにいるという。 「……そうそう、あの二人の事も考慮に入れないといけないわねぇん。 まあ、蘇生そのものはわらわ達の時代じゃありえない事じゃないから、そんなに気にする事でもないでしょうけどぉん。 王天ちゃんはいい例だし、復活の玉なんてモノもあるわよねぇん。 魂魄さえ残っていれば肉体を与えてやれば済む事でしかないわん」 とは言えあの男はそれなりに賢いから、刺激しすぎなければそれなりの共闘は可能かもしれない。 聞仲はひたすらに殷に執着していた。妄執といっても過言ではなかろう。 逆を言えば、結果的に殷の利になるならば、仇敵と手を組む事すら辞さない男なのである。 厄介なのはそういう損得計算にすら頭が回らず、人の言葉を理解できないお猿さんの類だ。 そして残る一人――趙公明は色々と使えるかもしれない。 なにせ女カの存在を知っていながら、それでもなお自分の趣味の命ずるままに動く人間なのだから。 あの男なら、舞台の上で踊らされるままのこんな殺し合いを否定するか? 否。 むしろ自分から連中に協力すると言いかねない。 踊らされるのではなく、自らの意志で舞台に飛び込み踊るのが趙公明だ。 この殺し合いを優雅にする為に、という理由だけで、あの男は好き放題やることだろう。 そ・れ・に・し・て・も。と、節操ない速度で思考が切り替わる。 死者といえば。 「……解せないわねぇん。どうしてわざわざ、『名簿に死者が自動で記される』のかしらん。 これじゃあ、死んだ人間を生きていると偽って弄ぶ事ができないわぁん」 たとえば、 『自分が人を殺したと思い込んだ人間に放送を聞かせず、その勘違いのままに殺し合いに乗せる』 ような遊び方も出来ないではないか。 そもそもの放送の意味すら薄れてしまう。 “神”がそんな手落ちをするとは思えない。 「――首輪と合わせて、色々と確かめてみたいわねぇん」 多分この名簿は、単純に放送と同時に死者の名が赤く染まるわけではないはずだ。 どういう条件で名簿の名が赤く染まるかそれは大体想像がつくが、その検証の為には実験動物が必要となる。 首輪の研究と合わせてちょうどいい木人形が欲しい。 その意味では、さっきの死に掛けの男の首輪を回収しなかったのは完全にミスだった。 もう顔も思い出せないが。 「まあ、ヒロインにはドジっ娘属性があるのもお約束よねん♪」 てへ、と舌をだして失敗失敗と嘯く妲己。 どこまで本気なのか、あるいは狂言なのか。 多分正解は、後者。 あの時は近くにまだ例の男へ襲撃を敢行した輩がいたはずだ。 後れを取る事などないだろうが、あの男はそれなりの使い手だったろうし、言葉で説得する頭もあったはず。 なのにボロボロにされたという事は、襲撃者は話を聞く余地を持ち合わせないということ。 だとしたら、そんなのを相手取っても仕方ない。 それよりも気にするべきは首輪なのだ。 「多分、制限というのもこの首輪の機能だわぁん。 体に密着した状態ならばチカラを奪い取る事が出来る。 あはぁん、まさしく王天ちゃんの寄生宝貝と全く同じシステムの代物よねぇん。 ……申公豹だけでなく、王天ちゃんも“神”とやらに手を貸してるのかしらん」 もしそうなら念入りにお仕置きしなくちゃねぇんと口ずさみ、首輪について思考を巡らす。 確定というわけではないが、力を制限している要因は首輪の可能性が高い。 「まあ、とにかくこの首輪は十中八九宝貝合金で出来てるわねん。 仙道がこの舞台……ゲーム盤の作成を手がけたのは間違いないわん。 他にも、これなんかも宝貝技術を使って作ってるわねぇん」 今度は大量にモノが詰め込まれているはずなのに、全く膨らみを見せないデイパックに視線を投げかける。 「――――空間宝貝。 このカバンの中にいくらでもモノが入るのはその恩恵。 ひょっとしたら、この会場そのものも空間宝貝のチカラで作られたのかもぉん」 地図で見る限り、この位の閉鎖空間なら十分に作り出す事が出来そうだ。 とはいえ、普通の空間宝貝と考えると解せない点もいくつかあるのも確か。 たとえば空間宝貝の弱点である、相手が中に入り込むまでは完全に待ちに徹するしかないという前提。 それはあの見知らぬ聖堂からここに『入り込んだ』のではなく『いつの間にか飛ばされていた』事実と相反する。 故にここは普通の空間宝貝内ではない可能性が高い。 そして、弱点を克服した空間宝貝は非常に限られている。 通常空間そのものを自分の領域にする王天君の紅水陣や、蛇の形を取り自ら相手を呑み込む女カの山河社稷図。 そういった特殊な空間宝貝により、ここは作られているのかもしれない。 しかしそれでも――、自分の知る技術である事は、変わりない。 だが、首輪だけは違うのだ。 「この首輪だけはわらわ達の知る技術だけじゃあ出来ていない。 そうよねぇん、“神”。じゃないと、さっさとわらわがこれを解除しちゃうものぉん。 わらわ達が紂王さまを改造できる技術力を持つ事を、当然知っているはずでしょう? でも、あのみねねが口にしていた通り、わらわ達より未来の技術も使われている。 つまりわらわだけじゃ迂闊に手を出せない。 ……未来の技術とのハイブリッド技術。つまり、どっちにしろ必要なのは味方や知識、って事よねぇん」 最悪、必要な知識を持つ技術者はもうとっくに死んでいる可能性がある。 だとしたら色々自分で積極的に試していく必要があるだろう。 あらためて首輪の威力や禁止エリア進入時の性質を調べてみたい。 特に、爆発力については人体実験を行ってみたいところだ。 ――例えば、聞仲などは核爆発にも耐える耐久力を持つ。 アレほど頑丈な仙人が、たかだかこの首輪一つの爆薬で生首を転がらせるとは思い難い。 しかしおそらく『今の聞仲』なら容易く首を落とせるのだろう。 課せられた制限とやらが、それを可能とする。 仮に、本当に制限が首輪の宝貝としての機能だったなら。 その場合、是非とも欲しいのはスーパー宝貝の一つ、太公望の太極図である。 あれがあれば、首輪の機能のうち少なくとも能力制限は無効化できる事だろう。 そうすればある程度の耐久力を持つものは爆発を気にせず首輪を破壊できるはずだ。 つまり、その『ある程度』を見極めさえできればいい。 もし大した事がないのであれば、人によっては『太極図を使わずともそのまま爆破して』解除してしまえるかもしれない。 流石に希望的観測が過ぎるとはいえ、頭の隅っこには置いておこう。 そんな事を考えながら、足を止める。 ようやくその建物に辿り着けば、妲己は誰に見止められることもなく、口元を三日月に歪めた。 妖艶に、淫靡に。 * どういう事だ? どういう事だ!? 混乱の極みに陥りながら、それでも少年は為すべきことを過たない。 駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。 逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。 ずきんと折れた手首が体全てを軋ませる。 じくじくと鑢をかけるような痛みが、冷静な判断力を奪っていく。 近づくは突き当たり、延びる行き先は階下か階上。 進むべきは二択。 間違えれば、それはすぐ死に繋がる。 何故なら――、と考えるまでもなく、その答えは少年のすぐ傍に。 1、2、3、4、5、6、7。 7歩を数えたその瞬間、少年はいきなり横っ飛ぶ。 ぼひゅうと水蒸気の帯を靡かせて、脇腹のすぐ傍を砲弾が通過していった。 ホンのコンマ1秒でも遅れていれば糞の詰まったソーセージをぶち撒けていた事だろう。 1/10=1。 走り始めてからの歩数を10で割ったその余りは、必ず10以下となる。 次の投擲時までの総歩数÷10の余りは何歩になるのかを指定する。 あとはその余った歩数が来るたびに、回避行動を取ればいい。 だが、それが出来るのは回避するに十分なスペースがある場合だけだ。 このまま階段に突っ込んだ場合、上と下と、どちらに向かおうと必ず一瞬だけ動きを止めて方向転換しなければならない。 その隙をあの少女が見逃すはずはない。 どちらに進むのかを先読まれれば、確実に潰される。 ――二択の勝負。 だから、少年こと安藤潤也の逃走は確定した。 少年が向かった階下とは見当違いの、昇り階段に鉄クズが突き刺さる。 これでしばらくは一安心。 金剛と戦いながらもこちらの動きを完全に把握し、機を見て投擲を仕掛けてくるあの動体視力は、まさしく人間のものじゃあない。 ……あの金剛なら少なくともしばらくは持ちこたえるだろう。 剛力番長とやらに自分を追わせないよう、階段の前で時間を稼いでくれるはずだ。 その間に自分はどうすべきか。 具体的な行動案として浮かぶのは、2つ。 金剛があの剛力番長とやらを完全に無力化するのを待つか、ここから金剛を見捨てて逃げるか。 どちらを選んでもそれなりのリスクが付き纏う。 前者はもちろん、金剛が殺されてしまっては元も子もない。 さすれば座して待つは断頭台に首を預けるのと同じ事となる。 ……おそらく勝負は金剛がやや有利か、互角といったところだろう。 金剛と剛力番長、どちらが勝つか、二択。 これについて1/2を1にしようと思考の海に沈んでも、どちらもしっくりこない。 なれば出される答えは、新たな選択肢である『決着がつかない』だ。 こうなると今後の展開が全く読めない。 だから、見えない未来よりも確実にこの場から脱出する後者の選択肢を選びたくなる。 されど後者もまた確かにリスクを孕んでいるのだ。 つまり、金剛番長を敵に回す――そこまでいかずとも悪印象を持たれるというリスク。 金剛は相当な実力者だ。だから、出来る事なら敵には回さず味方につけておきたい。 スジを通す、なんてつまらない理由で自由な行動を束縛される代償を支払ってもだ。 ついさっき、仲間を集めて脱出する事を心に決めたばかりでもあることだし。 ……ああ、そうだ。 ついさっきまでは、それが全くの最善だった。最善だと思っていた。 だからもし今が放送前だとしたら、多分前者を選んでいたことだろう。 だけど、放送で全てがひっくり返された。 「……どうして、兄貴の名前があるんだよ……」 何分かぶりに、ぽつりと、ようやく言葉が漏れてくる。 気がつけばもう下りる階段はほとんどなくなっていて、一階まで辿り着いていた。 名前と言えば、土方という名前が名簿に見当たることもなかった。 だが、あんな男の事など今はどうでもいい。 見覚えのある名前として蝉の死亡も告げられたが、それすら今は気にならない。 「死んだ人間が生き返るとか、あの女の言葉は本当だって言うのかよ……!」 がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も。 まだ動く左の手でひたすらに頭を掻き毟り続ける。 血が出てきた。 でも止めない。 爪に肉が挟まる。 それがなんだ? 考えろ、考えろ、考えろ。 偽者、という可能性が一番高い。 だとしたら許しがたい。あるいは同姓同名か。 だがこの名簿を作ったのは“神”とやらだ。 あの連中が、わざわざそんなつまらないオチを持ってくるだろうか。 だが、本当にほんものの兄だとしたら? 自分はどうすべきなのだろう? 自分が脱出を志したのは、帰還して兄の仇を討つ為だ。 だが、兄が生きてここにいるというならば全ての前提は覆される。 兄には、生きていて欲しい。 その為ならば何でもしよう。 泥を啜り、草を食み、糞尿に塗れても兄を生かそう。 ……もし兄を騙る何者かなら、殺す。 それは兄への最大の侮辱だからだ。 で、どうするんだ? 兄とともに脱出する為に、これまで通りの方針を貫徹する? 一刻も早く兄と合流する為に、さっさとあの男を見捨てるべきか。 あるいは、何が何でも兄を生かすために、敵を排除して排除して排除して、ひたすら攻勢に徹すべきか。 「俺は――」 * 目を開けると同時に、ごふ、と血を吐いた。 仰向けに寝転がったまま口元に吹き零れた血を拭い、静かに肩の辺りに手を持っていく。 そこにはぱっくりと口を開いた傷口から黄色い体液と赤い血とピンクの肉と白い骨が見えていて、あるべきものがごっそりと抉り取られていた。 けれど、突き刺さっていたはずの馬鹿でかい剣はとっくに抜き取られている。 地べたの自分のものだった血に触れてみれば、まだ微妙に暖かい。 ……倒れていたのは数十秒ではないにしても、そう長い時間ではないはずだ。 「……強くなったじゃねえか、剛力番長」 そのまま怪我人とは思えない動きで足をカチ上げ、振り子の要領で一気に立ち上がった。 どすん、とフロア全体に金剛の再起が知らしめられる。 「だったら……余計に放ってはおけねえな」 剛力番長は、おそらく潤也を追って下に向かったはずだ。 その潤也自身も、長い時間目を離しておくわけにもいかない。 危険な匂いを感じるのはむしろ剛力番長よりあの男の方であるとすら言えるのだから。 エレベーターは使えない。 剛力番長がデパートに入ってきてからすぐ、逃げ場を塞ぐ為に叩き潰してしまったからだ。 疾駆。疾走。大跳躍。 このデパートは吹き抜けの構造になっており、上の階の喫茶店に設けられたバルコニーから 一階のテラスを見下ろせる形になっている。 そこを、一息で飛び降りる。 下手に階段などを使うよりもそっちの方がよっぽど早い。 フロアの織り成す縞模様が、高速でスライドしていく。 着弾。 びりびりと建物全体が震え、砕けた床からもうもうと白煙が立ち込める。 すっくと背を伸ばして睥睨すれば、金剛の到着を待ちわびていたかのように近寄る影二つ。 「……!」 ふしだらな格好をした女と、体操服という出で立ちの少女の追いかけっこがこちらに向かって展開中。 「そこの人、助けて頂戴ん? わらわ怖ぁい女の子に追われているのぉん」 その台詞が終わるより早く金剛は己が大腿の筋肉を爆発させる。 轟、という音と共に暴風が吹き荒れ、二つの影を断ち割った。 「……! やはりまだ生きてらっしゃいましたか。 今度こそ、引導を渡して差し上げます」 その言葉を無視。 金剛はじっと目線を剛力番長に合わせ、睨みを効かす。 放送を経ても、神に反逆を試みたあの勇気ある女性の意志を聞いても未だ、彼女は相も変わらずただ頑なに敵意を見せるだけ。 盲目である事を自ら望み、手段を目的に成り代わらせたままだ。 ……ならば、その眼をこじ開ける。 昔の彼女自身を突きつける。 「女一人にテメエで培った暴力を叩き込むのが番長の仕事か? 剛力番長。 ……違うだろうが。 以前のお前の行動だって、結果的に迷惑をかける事になったとは言え全部住人の為にやったことだったろう! 初心を忘れるんじゃねえ! それでも本当に、お前はあの剛力番長なのかッ!」 ぷつ、と、何かがキレた音がした。 「わ……、わた、私は……ッ!」 灼熱の憤怒を滾らせて大山が鳴動。 「私はッ! 剛力番長です! 白雪宮拳です! あなたなどの言う事を聞き入れなくても、誰に認められ――、」 噴火を目前としたその間際。 ぞく……。 金剛の芯に悪寒が走った。 背中に氷を入れられた――、などと、生易しいものではない。 鋭利に研ぎ澄まされたつららで心臓を一突きにされたような、この世のものとも思えない怖気。 何だ? 何なんだ? 振り向きたくとも振り向けない。 今、自分の後ろで何が起きているのか確認しようとしても、それをすれば剛力番長の暴走を許してしまう。 ……いや、分かっている。 背後の女は特に何もしていない。ただじっとこちらを見ているだけに違いない。 なのにその目線がいやに自分の癇に障るのだ。 そして当の剛力番長は自分の後ろにいる女に目線を動かし、ハッと息を呑んだような――そんな気がした。 「…………、そうでしたわね。ええ。私は私です。 “あなたのお言葉通り”その淑女さんには手を出すべきではありませんわね。 ここは退いておきましょう」 そして余りにも唐突に、じりじりと後退。 何かを告げよう暇もなく、実に不自然な気持ち悪さと共に屋外へと、舞台袖へと剛力番長は引っ込んでいった。 それはまるで、大好きなプリンの中から生きた毒虫が這い出てきたかのような。 あるいは、自分以外誰一人いないはずの廃墟の食卓に、たった今焼きあがったばかりのほかほかのパンを見つけたような。 そんな得体の知れない不快さが拭えない。 茶番劇としか思えない一連の出来事に、金剛は剛力番長を追う事もなくその場に立ち尽くすだけだった。 その背中に対して届けられる、おぞましい猫撫で声。 「助かったわぁん。あの子を追い返すなんて、貴方、相当お強いみたいねぇん。 くす、わらわの力になってもらえないかしら?」 ようやく振り返っての開口一番は、相手の要求を一切考慮しない訊問を。 「……俺と出会う前に剛力番長に何を吹き込んだ?」 されど目をすがめて覇気を発してみても、柳に風。暖簾に腕押し。 目の前の女は掴みどころなく、ただただ薄笑みを浮かべているだけだ。 「あん、わらわの過去が気になるのぉん? 出会ったばかりで口説くなんてとっても大胆。 でも御免なさいん、わらわの体は紂王さまだけのものなのん。もう死んじゃったけどねぇん」 戯言に混じって平然と言葉に出される、死という単語を耳にして思い出す。 そうだ、今はこの女よりも優先せねばならない事がある。 「お前、安藤潤也という男を見なかったか? 俺より先にこっちに向かったはずだ」 ――放送の時。 名簿に目を通してすぐ血相を変えたあの男は、どうしているのか。 どう考えてもまともな精神状態じゃあない。 何故なら、死んだはずの彼の兄がここにいると言うのだから。 「知らないわぁん? 貴方のお仲間なのぉん?」 手応えはない。 いつ崩れるかも分からない泥の橋を渡るような心持ちで、潤也について口を動かす。 「……奴は今危うくてな。放っておける状態じゃねえ。 さっきの放送と同時に浮かび上がった名簿に、あいつの死んだはずの兄貴とやらの名前があったらしい。 胡散臭え戯言に乗せられて変な考えに取り付かれてなきゃいいんだが」 ……自分の兄を思い浮かべる。 安藤の気持ちも良く分かる、というのは言い過ぎかもしれないが、それに近い感情は確かに自分にもある。 今こそ自分と兄は敵対しているが、それも兄が家族だからこそ止めたいと思うが故の行動の結果だ。 大切だからこそ敵対することすら厭わないし……、その逆も、また然り。 「あらん、胡散臭いってどういうことかしらぁん?」 「言うまでもねえ事だろう。死んだ人間が生き返るはずが――」 「ある、わよん?」 ――聞き捨てならない言葉が、差し込まれた。 「!? どういう事だ……?」 目を見開き詰め寄れば、女は嘲笑うようにチッチッチと指を振り振り。 「単純だわん、わらわ達の時代じゃあ、死人を蘇らせる方法もあるって事よん♪ 情報を集めた限り、他にも蘇生の技術を持つ人たちがいるみたいねぇん」 例えば、空想の中に住む全能の神の力とか。 例えば、真理の扉の向こうにある理とか。 例えば、友人たる鯨との再開を夢見た男の食した悪魔の実とか。 女の住む世界の様々な道具以外にも、存外生と死を弄ぶチカラは転がっている。 金剛はその真贋を見極めようとして女に手を伸ばすも、ひらりとかわされ行き場を失う。 ……ただ、なんとなく理解する。 この女は掴み所がないが、こうも強気に断言する以上はそれなりの根拠があるのだろう、と。 「……剛力番長の言ってた事も、あながち嘘じゃねえって事か。 だが、それでも蘇りなんぞを認める訳にはいかねえな」 「死んだ人間を生き返らせる。悔いを残して死んだ人も、彼らに未練を残す生者も救われるのにぃん? 素晴らしいことだと思うけどねぇん?」 大きく、大きく息を吐く。 先刻から一々、この女の態度に吐き気を催してしょうがない。 まるで命をなんとも思っていないかのようだ。 きっと本能のレベルからしてこの女と自分は相容れない存在なのだろう。 生理的嫌悪というべきか、それくらいに何かが致命的なまでにズレてしまっているのを感じる。 怒りに身を任せてしまえば楽だが、向こうは確かに何もしていない。 己からスジを違えるのは流石に自分を許せない。 心を落ち着け、ただ愚直に毅然と相対する。 「そいつはスジが通らねぇな。命ってモンを弄んでるのと同じ事だぜ。 死んだ人間に対しての最低限の義理すら果たしてねえ。 仮にそんなふざけた事をエサにして人を釣る連中がいるってんなら、そいつらをぶっ潰すまでだ」 「……生きているものだけに許される傲慢ねぇん。 死んだ人間が皆が皆満足して死んだとでも思ってるのかしらん?」 だが、一向構わず女は楽しげなまま。 それどころか遥か高みから値踏みするようにこちらに刺激を与えて反応を楽しんでいる風すら感じる。 一挙手一投足の品定めに、金剛は激情を滲ませないよう務めるので忙しい。 「何が言いてえんだ?」 「さて、それくらいは自分で考えて頂戴? わらわが教えられることなんてこのくらいしかないわぁん。 ……生きとし生けるものは全て、永遠に生きることを望むものなのよん?」 いい加減、ふざけた態度が目に余りすぎた。 ぶゥん、と、渾身の、痛恨の、会心の一撃を以ってして、いきなり殴りかかる。 拳より出でる風は荒く猛り、しかしその速度をすら超えて風は生みの親にブチ破られた。 しかし、女はそれでも微動だにすることはない。 ぴたり。 まさしく文字通りに目の前で止まった拳を、さも当然の帰結であるかと言うように優しく優しく撫でてみせる。 こうして寸止めされることすら、きっと彼女の読んだ未来のシナリオ通り。 「……こんな事は言いたくねえが、どうにもお前は信用できねえ。 悪ぃが、何か用があるってんならしばらく俺に同行してもらおうか。 お前がスジの通った奴だって分かったんなら話を聞く。 ちゃんとそれまでは身の安全も確保してやる。これで構わねぇだろ」 「酷い扱いねぇん、野蛮だわん。 ……わらわ、束縛されるのって嫌いなのん。 その潤也って子を探してあげるから、二手に分かれないかしらん? 見つけて連れきたんなら、その時にわらわのお願いを聞いてほしいのぉん」 「…………」 何も答えることなく、さっさと歩きだす。 やましいところがないなら一緒に行動したって問題はないはずだ。 目のつかないところで得体の知れないことをされるより、同行して監視している方が好ましい。 それが嫌なら最初からお願いなどしなければいい。 分かっているのかいないのか、女はへらへらと表情を崩さず静かに後ろについてくる。 ……どうしてか。 この女が特に何かをしているところを見たわけでもないというのに、結局。 スジが通らないと分かっていながらも、心の奥底から涌き出る汚泥を隠しきることは出来なかった――――。 * 意外とそれには時間がかからなかった。 僅か数分。 下る階段を乗り換えて、エスカレーターにて階下へ辿りつけばそれで仕舞い。 安藤潤也は、地下にいた。 「見つけたぜ、潤也。 ……どうやら逃げ出しちゃあいなかったみてーだな。 少し見直したぜ」 ――生鮮食品などが本来は並べられていたであろう地階。 いわゆるデパ地下と呼ばれるエリアの、エスカレーターの真正面。 そこで潤也はあたかもその空間の主であるかのように、ぼうっと座して待っていた。 「――無事だったのか、金ご、う……?」 此方に振り向きの第一声は、当然の事ながら背後の女に対してのもの。 道すがらに妲己と名乗ったふざけた格好の女は、いつの間にやらその手にいくつもの服を抱えてどれを着ようかなどと暢気なことをほざいていた。 「……その女は誰だ?」 不信感をあからさま過ぎるほど見せ付けて、潤也はニヤニヤ笑いの狐を睨みつける。 「わらわはジャンプ史上究極にして至高のヒロイン、妲己ちゃんよん。 よろしくねぇん、潤也ちゃん」 それに何を思ったのか。 挨拶に答えることなく、潤也はただただ最初から用意していたであろう台詞を繰り出した。 「まあいい。それより金剛、あの女がどうにかなったんなら、すぐにでも向かいたいところがあるんだ」 なに、と金剛は小さく息を呑む。 潤也の態度は、どう見てもこれまでの彼とは全く異質な雰囲気を纏っていて、金剛すら僅かに怯ませる意思が漲っていた。 ――潤也曰く。 以前と同じく兄の名前を持つ人物の所在について地図上の各施設を調べたところ、旅館にその名前が該当したらしい。 死人であるはずの潤也の兄の存在は眉唾物であるが、名簿にはマシン番長の名も記されている。 もしそれが金剛の思うとおりの人物であるなら、妲己や剛力番長の言葉の信憑性を完全に零と断定することは出来ない。 潤也は告げる。 あの連中なら、死人を生き返らせる事が出来てもおかしくないだろう、と。 そうでないとしても兄を騙る人間を野放しにし、一秒たりとも生かしておきたくない。 制裁せねば、と、そう断言した。 ……やはり、この男は危うい。 その確信を深めながらも、金剛はいつの間にか、彼のどこかに共感するものを感じていた。 口では物騒なことを言っていながらも、本心ではむしろ兄に生きていて欲しいと願っているようにさえ見える。 その感情が兄と敵対する自分にいつしか重なって見えていたのだろう。 たとえ、その決意がどれ程強固であろうとも。 やっぱり人殺しなんてしたくないという気持ちは、きっと潤也だって持っているはずなのだ。 「――本物か偽者かは置いといても、一刻も早く兄貴を見つけなきゃ。 その為にも、俺は旅館に向かわなきゃならない」 とはいえそれでも、彼のギラギラとした目つきは金剛を不安にさせて止むことはない。 妲己と、潤也。 こんなのを二人も同道させることになるとは、自分はよほど運がないのだろう。 ……いい加減自分も少し疲れてきた。 潤也の急く気持ちは確かに伝わってくるが、いつも全力疾走ではすぐにガタが来る。 「……考えは分からねえでもねえが、その前にそろそろメシを済ませといた方がいい。 剛力番長は退いたが次にいつ敵が襲ってくるとも限らねえ。 体力補給はこまめにやっておかないと体がもたねえぜ」 結局は、その当の剛力番長の説得も出来なかった。 どこに向かったか見当もつかない以上、見知らぬ誰かが被害を蒙っていなければいいのだが。 とりあえずの休息の提案に、しかし潤也はそれも予期していたといわんばかりにデイパックを逆さにする。 全部が全部、シナリオ通り。 「ああ、それは俺も考えてた。 けど、このカバンの中の食料はいざという時にとっておくべきだと思う。 だからとりあえずこのデパ地下で適当にカロリーの高そうな食いもんを集めといたんだ。 おかげで菓子系ばっかりだけど、そこは我慢してくれ」 どさどさどさ、と、いくつかの洋菓子が零れ落ちてくる。 種類はどれも違っていて、確かに糖分補給には十分そうだ。 「ふぅん、スイーツがいっぱいねぇん。これは少しだけ楽しめそうだわん」 「……あんたの分は想定してなかった。 まあいいや、さっさと自分の分を取ってくれよ。 兄貴を名乗る奴はすぐにでも旅館から離れちまうかもしれない。 ちんたら時間をかけて食ってる暇はないんだ」 不機嫌そうに潤也は妲己を一瞥したのち、顎で不動のままの金剛に意思表示。 「……金剛? 甘いものは嫌いか?」 「そんな事はねえさ。そのプリンをもらっとくぜ」 本当に時間が惜しいのだろう。 やれる事は全てやっておいたから、あとはここを発つだけとでも言いたげだ。 金剛がプリンを手に取った直後、潤也は床に並べた菓子の一つをまるで飲み物であるかのように掻き込み、咀嚼。 ウーロン茶で流し込むというパティシエに一番失礼な食べ方をして、息つく暇なくさっさと立ち上がった。 「さあ、早く行こうぜ」 「……いい加減余裕がなさすぎだぜ、潤也。なんか汗まみれじゃねえか。 ちょっと待ってろ」 金剛の巨体には、こんな小さなプリンはそれこそひと呑みだ。 だからこそ時間はさほどかからないだろうが、それでも折角の好物くらいは味わいたい。 見れば、妲己はとうに自分の分を確保してトロけるような顔でそれを堪能している。 仕方ない、と諦める。 こんな事で不和を招いても無意味だ、ここは潤也の望み通りにしておこう。 それにもし妲己の言うとおり死者が蘇っているのだとしたら、潤也の兄はこの男のストッパーになってくれるかもしれない。 ぱくりと口腔に放り込む。 甘ぁいカラメルと卵の芳醇なハーモニーを舌の上で楽しみながら、内心潤也に感謝する。 まさかこんな殺伐とした場所でプリンを楽しめるとは思わなかった。 どうにも不信感ばかりが募る一方ではあるものの、これだけは素直に礼を言っておくことにしよう。 ありがとう、と呟こうとしたその瞬間、転がしていたプリンが気管に入り込んだ。 「……かはっ!?」 ごほごほごほ、と一気に咳き込む。 らしくない。全く以ってらしくない。 ……いきなり訳の分からない状況に置かれて、殺し合いを強制されて。 存外、結構緊張していたのかもしれない。自分でも意外に思ってしまう。 「ぐっ……!」 こちらを今か今かと待ちながらさっきから掌に握ったままのウーロン茶を弄ぶ潤也。 そちらを向いて、慌てて手を伸ばし要求する。 「み、水……。それをよこせ。 それも一台や二台ではない……、全部だ!」 何をやってるんだ金剛、と苦笑する潤也が差し出すペットボトルを掴もうとして、気付く。 手が。 腕が。 肩が。 首が。腰が。腿が。臑が。足が。 何一つ、動かない。 この息苦しさは、プリンが喉に詰まったからなんかじゃあない。 ああ、そうだ。 予感はきっと、すぐ近くの女に感じた印象はきっと、間違っていなかったのだろう。 「ざァんねん♪ わらわに同行を指図しなければ手駒として生かしておいたのにぃん。 下手に統率力があって我が強かったのが災いしたわねぇん」 1/10=1。 金剛がどの菓子を選ぶかなど、潤也には最初から周知の事。 さっさと目の前で自分の分を食事してみせたのは、この菓子類が金剛に安全だという印象を植え付けるため。 プリンの中に、生きた毒虫のその汁が仕込まれていた。 たぶん、その程度の事なのだろう。 「潤也ちゃんから話を聞いた時はまだ、利用されてくれる余地があるかもって考えてあげたのよぉん? なのに、せっかくのチャンスをフイにしちゃうなんて、わらわ悲しいん。 それだけ強いなら色々便利だったでしょうに、わらわのお願いすら聞く耳持たないんだものぉん」 その程度の事で、自分は――――、 意識が薄れていく。 けれど完全に消えることなく、崖っぷちに必死でぶら下がった状態で固定されたかのように、 ある一線の手前で貼り付けにされている。 ――いっその事、完全に意識を失ってしまえれば楽だったのに。 「あはん、わらわ命令するのは好きだけど、されるのは大嫌いぃん。 貴方みたいなのに同行されたら、色々動きにくくなっちゃうわん。あと貴方、わらわより目立ちすぎぃん。 覚えておく事ねぇん、押し付けがましい男ってのはモテないのよん」 ああ、もし二手に分かれる事に同意していたのなら。 今となっては詮無いことで、その一言で金剛の命運は断ち切られた。 妲己と潤也とが、ドライアイスのような目で見下ろしている。 視線はもう人間に向けるそれではなく、養鶏場から出荷されるブロイラーを見るのと同じものだった。 「さぁて、あんまり簡単に壊れないでねぇん、木人形ちゃん? 貴方の尊い犠牲が首輪を解除する一助になるんだけどん、 その前に耐久力のテストをしとかないと参考にならないんだから、分かったぁん?」 時系列順で読む Back 魔人、憐れなるかな Next 僕らはみんな生きている 投下順で読む Back Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ Next 僕らはみんな生きている 085 夜明けだョ!全員集合(後編) 安藤潤也 098 僕らはみんな生きている 085 夜明けだョ!全員集合(後編) 金剛晄(金剛番長) 098 僕らはみんな生きている 085 夜明けだョ!全員集合(後編) 白雪宮拳(剛力番長) 098 僕らはみんな生きている 071 ライク・ア・スワン 妲己 098 僕らはみんな生きている
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おいしいごはん【登録タグ nicol お 曲 波音リツ】 作詞:nicol 作曲:nicol 唄:波音リツ 曲紹介 おいしいごはんの気持ちになって作りました。 歌詞 おいしい ごはんが わたし たべたいよ あなたの つくった とくべつな あじ うめぼしだけ あればいいから それだけあれば いきてけるから ほかほかごはんに うめぼし のせて あなたの ゆいいつの とくいりょうり だね コメント 名前 コメント
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……なんだか、とても長い間眠っていた気がする。 幽谷霧子が目を覚ました時、そこはベッドの上だった。 真っ白なシーツが敷かれ、微かに薬のにおいが漂う部屋。 部屋を照らす蛍光灯の無機質な明かりは確かに覚えのあるもので。 傍らの棚に収められたお行儀のいい本の数々を見て、霧子はここが学校の保健室なのだと理解した。 でははて、どうしてわたしはこんなところにいるんだろう―― そう思ったところで保健室の扉が開き、入ってきた少女と目が合った。 「あ……」 七草にちかが、そこにいた。 曇っていたその顔が、ぱっと明るくなる。 彼女にそんな顔をさせてしまっていたことを申し訳なく思うと共に、どこかで"やっぱり"と納得してしまう自分もいた。 いつも大勢の仲間に囲まれていた、にちか。 彼女がこの部屋にひとりで来たこと。自分の覚醒を知る前に浮かべていた、寂寥を抱えた表情。 それらを踏まえれば、嫌でも気付いてしまう。ああ、やっぱりそうなのだな、と。 「目、覚めたんですね。よかったあ……。このまま起きなかったらどうしようかと思ってたんですよ、もう……」 「心配かけちゃって、ごめんね……にちかちゃん」 自分が目を覚ましたことを知っても、"彼女たち"を呼ぼうとしないにちか。 ドアの向こうに広がる廊下から一向に聞こえてこない足音と話し声。 その事実が冷たく、霧子に自分が想像してしまった現状(こと)が正しいのだと教えていた。 「こんな時にねぼすけしないでくださいよ、まったく……胃に穴空いちゃいますって。責めるわけじゃないですけど」 「うん……本当にごめんなさい。いろいろあって……、……後でちゃんと話すから、その…………一個、聞いてもいい……?」 「はい。……って言っても、何を聞きたいのかはだいたい分かりますけど」 『――うちらが宇宙一ばーい!』 『『『『『■■■■■■■―――!!』』』』』 「摩美々ちゃん、たちは…………?」 「死にました」 霧子の問いかけに対して、にちかは静かにそう答えた。 情緒も何もあったものではない即答だったが、それがかえって今の霧子にはありがたかった。 その淡白さが、余計な可能性を抱かせないでいてくれる。 受け入れたくない、でも受け入れなきゃいけない事実を、心にダイレクトに流し込んでくれる。 数秒あって、二人のアイドルは痛いほどに沈黙していて……やがて霧子の方からそれを破った。 「………………そっか」 ちゃんと声になっていたかどうか自信がない。 でも、自分なりに現実を受け入れることは出来ていた。 あの墜落戦の場に彼女たちがいなかった時点で予想は出来ていたことだった、というのも大きいかもしれない。 「そっかあ…………」 噛みしめる、その事実を。 舞台上にはいなかった仲間の家で交わし合った誓い。 宇宙一な五人は、きっと未来だって宇宙一だとそう信じていたけれど。 約束は果たされず、もういない彼女に加えてあの紫色までステージを去ってしまった。 まだ緞帳は降りていないというのに、いったいどこへ行ってしまったんだろう。 問いたくても、もう問いかけられる相手はいない。もう二度と会えることもない。 それが死に別れるということなのだと、幽谷霧子はよく知っていた。 「うちのライダーさんが全部悪いんですよ、あの人ったら連合の大魔王さんに負けちゃうんですもん。 いざとなったら多少の無茶には付き合ってあげるつもりだったのに、あっちで勝手に死なれたら私だってどうしようもないです。 摩美々さんも、私を置いて勝手に死地に出て行っちゃうし。もうほんと、残された側のことも考えてくれって感じですよね」 方舟は破壊され、二度と夢みたいな出港を成し遂げられる日は来ない。 死んでいったのは紫色の彼女だけではないのだ。 方舟の核である境界線は塗り潰された。紫色を守る任務に就いていた傭兵も消えた。 桜を宿した少女は、自分を守るために戦って散っていった。 残っている乗務員(クルー)は、今や自分とにちかの二人だけ。 そしてもう一人のクルーは、やけに饒舌だった。 「界奏だか海藻だか知りませんけどとんだ期待はずれですよ本当に。 全員で生き残れるっていうから信じてたのに、こんなことなら最初からそんな可能性、知らないままでいさせてほしかったです。 人でなしの魔王様は生きてる。頭のぶっ飛んだ女の子も、おでこに鍵穴空いてる化物も健在。 こんな状況で私たちだけ生き残らせて、いったいどうしろってんだよってキレたくなります。本当にもう、どいつもこいつも……」 「……にちかちゃん」 その悪態は本来、不謹慎だと叱咤されるべきものなのだろう。 彼女自身、そうされたくてわざと露悪的に振る舞っているように見えてならなかった。 そんなにちかのされたい風には、残念ながらしてあげられない。 霧子はベッドから半身を起こして、泣きたいのを堪えながら両手を広げた。 「ごめんね」 「――なんで、あなたが謝るんですか」 にちかは一瞬驚いたような顔をして、それから顔を伏せた。 ぽたぽたと、その目元から床に滴り落ちていく雫がある。 ずび、ぐす、と鼻を啜る音を響かせて、にちかは震えていた。 「泣きたいのは、霧子さんの方でしょ。私、何もできなかったんですよ。 摩美々さんの力にもなれなかったし、ライダーさんのために頑張ることもできなかった。 そんな私なんかに、謝んないでくださいよ……ねえ……っ」 「ううん……。にちかちゃんは……がんばったよ…………」 「――――っ」 もたれかかってくるにちかの身体を抱きしめて、頭を撫でる。 胸に顔を埋めさせたのはわざとだ。そうしていれば、彼女から自分の顔は見えないから。 こんなに傷付いて疲れ果てて、泣きじゃくっている女の子の前でとても"そんな顔"はできないと思った。 だから顔が見えないように抱きしめて、よしよしって撫でてあげながら、自分も"その顔"をするのだ。 「ありがとう…………」 方舟の夢は、叶わなかった。 優しい終わりは、この物語には訪れない。 砕かれたアンティーカが、もう一度戻ることもない。 消えていった命たちも、二度と蘇らない。 あの世界で"生きたい"と願っている人たちを救うことも、もう出来はしないだろう。 でも。それでも。嵐を乗り越えて生き残り、ここまで生き延びてきた彼女に伝える言葉は"ありがとう"以外にはなかった。 「摩美々ちゃんの……みんなの、生きた道のりを…………」 薄雲の瞳から、雨が降る。 鼻を啜らないように努めるのが大変だった。 「助けてくれて、ありがとう…………」 「ひっ、う……う、ぅうぅううう、うぅううう……!」 堰を切ったように泣きじゃくるにちかを抱きしめながら。 お日さまの少女もまた、別れの痛みに涙を流す。 最期には立ち会えなかったけれど、きっとこの瞬間がそれに代える価値あるものなのだとそう信じて。 「ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、わたし……!」 「うん、うん……。怖かったよね……辛かったよね…………、悲しいよね……大切な人たちと、お別れするのは…………」 「私、もっと……! あの人たちと、みんなと、一緒にいたかった……! もっとみんなで、下らないこと、おしゃべりして……生きて、いたかった……! いたかったよう、ぅうぅう……!!」 「……わたしも…………わたしも、そうだなあ…………」 なくした命(もの)は戻らない。 でも、私たちはまだ生きている。 未来がどんなに不確かでも、それでもここに生きているのだ。 だから―― 「もっと、みんなと……いたかったなあ…………」 涙の時間は、きっとここまで。 なくした痛みを胸の奥、大事なものを詰めた引き出しにしまって歩き出そう。 カーテン・コールがすぐそこだとしても。 それでも、この命がここにある内は。 頑張って、がんばって……生きていこう。 二人だけの保健室で。 少女たちの涙の音が、静かに滴り落ちていた。 ◆◆ 生きるぞ、それでも。 きっと全員で。 ◆◆ 涙の時間が終われば、現実と向き合う時間がやってくる。 みんなみんな死んでしまった。それでも、にちかと霧子は生きている。 彼女たちは、あの夢のような方舟の、蜃気楼に終わってしまった希望の生き残り。 船がなくとも、航路が消えてしまっても、彼女たちはこの聖杯戦争(ステージ)で踊っている。 嘆きも悲しみも乗り越えて、最後の時がやってくるそれまで諦めないこと。 死んでいった皆の人生とその存在が、無駄なんかじゃなかったのだと生きて証明すること。 その指針を共有するのに言葉は無用だった。 そんなものなくたって、方舟のクルー同士考えていることは伝わる。 奈落へ下がるにはまだ早い。 今はただ、緞帳が降りるまで精一杯やろう。 その第一歩としてまず、にちかは霧子へ今の状況を伝えることにした。 あの"墜落戦"の後、正式に界聖杯の深層へと落ちた自分たちが今どういう状況にあるのか。 生き残りの中で最も長く眠っていた霧子にそれを伝えるのはにちかの役目だった。 「霧子さんは、どこまで覚えてます?」 「えぇ、と……。死柄木さんが、何かすごい力をぶわーって出して……アビーちゃんが、ぱーって光ったところまで……かな」 「よかった、なら最初からは説明しなくても大丈夫そうですね。じゃ、霧子さんが寝てる間に起こったことをざっと説明します」 って言っても、別に何も起こってないんですけどね。 そう言ってにちかは頭を掻いた。 何も起こってないとはどういうことだろうと、霧子は首を傾げる。 そりゃ平穏無事であるに越したことはないだろうが、聖杯戦争も終盤だというのにここで膠着が起きることなんてあるのだろうか。 アビゲイル・ウィリアムズか、死柄木弔か。 どちらが切り出すにせよ、もうとっくにこの"深層"も地獄に変わっているとばかり思っていた。 しかしにちかの言うところによれば、そうはなっていないのだという。 思えば、保健室の窓から見える外の景色も戦争の終局にしてはのどかな静謐を保っている。 そこに人はおろか生き物の一匹もいないことを除けば、本当に平和な風景だ。 「鍵穴の子……あ、霧子さんは知り合いなんでしたっけ」 「うん……。途中で別れて、それきりになってたけど……マスターさんも、変わってたな…………」 「まあ詳しくは後で聞くとして、ざっくり言いますね。あれきり、あのヤバいサーヴァントは一回も私たちの前に姿を見せてません」 にちかによると、霧子が眠っていたのはざっと五時間ほど。 にちかたちがこの深層の街に落ちてきたのが午後一時。そして今、時刻は午後六時を回っている。 界聖杯を巡る戦争は、本戦に切り替わってからというもの常に熾烈を極めた。 毎時どこかで戦いが起こっていたし、二日目に入ってからは特にそれが顕著だった。 それを踏まえて考えると、五時間という停滞は今回の聖杯戦争にしては異様な長さだ。 ましてや最終局面。誰もが勝負を決めようとしたがる筈の状況で、目下最強のサーヴァントであるところのアビゲイル・ウィリアムズらが全く行動を起こしていないというのは実に不自然である。 にちかの話を聞いた霧子はここで、ふとある人物の名を思い浮かべて口を開いた。 「じゃあ……死柄木さんは…………?」 人間の身でありながらアビゲイルに並ぶ力を持った、敵連合が擁する崩壊の魔王。 方舟を終わらせた人物という点では、霧子たちにとっても限りなく因縁の深い相手だ。 アビゲイルが動いていないのは分かったが、では彼はどうしているのだろう。 彼こそ、真っ先にこの虚構の街並みを更地にしようと動き出しそうなものだったが……霧子の疑問に、にちかは深く溜息を吐いて答える。 「あの人なら、今はこの学校にいますよ」 「…………、……えっ……?」 「明日までは事を起こすつもりがないそうです。本当に勝手なヤツですよね、あれ。 一から十まで自分本位で自分勝手で傍若無人で、ああもう思い出すだけでムカついてきます。 はあああああ、"あの人"もなんだってあんな俺様野郎に負けるかなあ……!!」 「……わたしたちのことを、わかってくれたってこと……?」 霧子の漏らした言葉には、希望が多分に含まれていた。 死柄木弔が、あの恐るべき魔王が、自分たちに共感を示してくれたのか。 しかしそれはあり得ないこと。彼は霧子たちとは根本的に違うステージで踊る役者なのだ。 霧子の希望を、にちかは肩を竦めながらかぶりを振って否定した。 では何故。いやそもそも、どうしてアシュレイの仇であるにちかがあの墜落戦に彼と共にやってきたのだろう。 渦巻く疑問の答えはすべて、にちかが先程口にした死柄木評を引用することで解決できる。 「先にやることがあるんだとかで」 ――自分本位、自分勝手、傍若無人。 完成した彼の歩みと振る舞いは、まさに魔王の二つ名に相応しいものだった。 「神戸しおちゃんってちっちゃい子知ってます? なんかチンピラみたいなサーヴァント連れてる子。連合の構成員らしいんですけど」 「しおちゃん……うん、知ってる……。アビーちゃんが、わたしたちを"ここ"に落とす前に……いろいろあって、いっしょにいたんだ」 「あの子と決着をつけるそうですよ。だから今日は一晩回復に使って、明日の朝からおっ始めるんだとか言ってました」 そも、敵連合という組織は一人の巨悪によって創られたものである。 聖杯戦争本戦、その黎明期。 死柄木弔という悪の器を完成させるため、老蜘蛛(オールド・スパイダー)は一計を案じた。 彼に同胞を与え、荒削りな玉体を研磨してより強く大きな魔王へと研ぎ澄ましていくことを考えたのだ。 ただのイエスマンなら無限にだって用意できる。 王のために文字通りの粉骨砕身で尽くす臣下だって、やろうと思えば千人単位で拵えられた。 しかしそれでは意味がないと、犯罪の王(クライム・コンサルタント)は安易な戦力の増強を否定した。 重要なのは目先の優位ではなく未来の利益。悪政を敷く傲慢な王を育てたところで、面白くもなければ生産性もない。 老蜘蛛が望んだのは至高の魔王。究極の犯罪。自分の抱いた夢を委ねるに足る、終局的犯罪だった。 だからこそ方針は少数精鋭。馴れ合いではなく、背筋のヒリつくような削り合いに満ち、その中にほんの一滴仲間意識があるような。 そんな"連合"を組むために、蜘蛛は糸を張り巡らせた。 その糸に触れた第一の構成員。蜘蛛が彼女に与えた役割は、他の誰に対するものよりも大きかったと言っていい。 「死んだ先生の遺言なんですって。あーやだやだ、野蛮人の発想にはぞっとします」 即ち、死柄木弔が最後に雌雄を決するべき存在。 相棒にして好敵手。友人にして、宿敵。 最後に残った彼女を殺し、喰らうことで死柄木弔は真の完成を迎える。 願わくばその時を迎えるのは、互い以外のすべてが滅んだ"最後"が最善だったのだろう。 しかし現実とは、企てとはそうそう上手くはいかないもの。 蜘蛛は死に、群雄割拠は崩れ、殊の外早く聖杯戦争は詰まりを見せた。 アビゲイル・ウィリアムズは強大だ。彼女と事を構えれば、翼の片方がもげてしまう可能性は大いにある。 もう蜘蛛はいないが。それでも、魔王はそれを嫌ったらしい。 残された宿題をゴミ箱に放って"なかったこと"にしてしまうことを、彼は善しとはしなかった。 「…………そっか」 霧子は、しおと交わした会話を思い出していた。 『私たちは初めから、二人の未来のために戦ってた』。 『これからは、愛するために生きるの』。 あの言葉の中にはきっと、いつか袂を分かつ友人の存在も含まれていたのだと理解する。 霧子は神戸しおという少女について、そこまで深く知っているわけではない。 彼女と死柄木弔の間にどんな関係性があったのかは、推測することしかできない。 けれどそれを推測する上でのヒントならあった。 しおが己のサーヴァントに対して向けた、幼いが故に言語化できていなかった感情。 きっと彼女が死柄木に対して持っている感情は、彼に対するのと似たものなのではないか。 殺し合う二人を止めたくないと言ったら嘘になる。 でもそれよりも、霧子は微かな嬉しさを抱いてしまった。 このことは、流石ににちかに言うわけにはいかないけれど。 愛以外のすべてを切り捨てることを選んだ彼女にも、たくさんの"大切なもの"があったのだと。 そう思うと、まるで親戚の子の成長を目の当たりにしたみたいな優しい気持ちが湧いてくる。 彼女のような生き様の中にだって、世界の優しさは佇んでいるのだと分かったから。 霧子は、なんだかもう一度あの子と話をしてみたい気持ちになっていた。 「それで、霧子さん。あの鍵穴っ子とはどういう関係だったんですか」 「えっと、ね……前は、仁科鳥子さんって女の人が、あの子――アビーちゃんのマスターだったんだ……」 「でも変わってた、と。……まあそれだけでも、アビーちゃんとやらの周りで何があったのかはだいたい想像できますね」 離別と、引き継ぎ。 にちかにだって覚えはある。 というか、彼女は目の前でそれを見てきた。 皮肉屋なあんちくしょうが死んで、看取った傭兵が紫色の悪い子に受け継がれた。 方舟にとってそれは"痛みの伴う前進"だったが。 きっとあのアビゲイルにとっては、そうではなかったのだろう。 「わたし……アビーちゃんと、今のあの子のマスターさんと……お話が、したいな………」 「危なすぎますって。どう考えたって話の通じる相手じゃなかったでしょ」 「でも……、アビーちゃんも、鳥子さんも……わたしにとって、大事なお友たちだったから……。 それに……アビーちゃんがどうして、わたしたちを襲ってこないのかも、気になるし……」 「だから本人に直接聞きたいってんですか。は~~……なんか私、霧子さんのセイバーさんの気持ちが分かった気がします」 うへえ、って顔をするにちか。 そんな彼女の背後で、おもむろにドアが開いた。 びく!!!! と飛び跳ねたにちかが後ろを振り返れば、そこには霧子にとって馴染み深い六つ目の剣士が立っている。 「誰の気持ちが……分かったと……?」 「わひゃあ! び、びっくりしたぁ! もう、顔怖いんだからいきなり入ってこないでください! 生徒指導の先生ですかあなたは!!」 「知ったことでは、ない……第一、お前もマスターならば……有事に備え、気くらいは張っておけ……気配遮断も持たぬ私の気配に気付けぬようでは………いずれ貴様の首と胴は、泣き別れだ…………」 「ウザい親戚のおじさんみたいなお節介いらないんですよーだ!」 ……自分が眠っている間に、多少話でもしたのだろうか。 互いにぶっきらぼうのつっけんどんだが、なんだか間合いを分かり合ったやり取りだった。 「ふふ…………」 さっきから、笑っている場合ではないのに笑いが込み上げてばかりだ。 また怒られてしまうかも、と思いながら、霧子は黒死牟にちょんと頭を下げた。 「ご心配を……おかけしました………」 「………お前に振り回されるのは、もはや慣れた……懲りてもいない頭を下げるな、鬱陶しい………」 そういえば、確かに"あのスカイツリー"に黒死牟の姿はなかった。 流石は界聖杯というべきか。その気になれば、マスターとサーヴァントのつながりだって簡単に切り離してしまえるらしい。 霧子としても久方振りの再会に、自然と心が軽くなる。 もはやこの鬼剣士の存在は、霧子にとって日常の欠かせない一部となって久しかった。 そんな霧子の内心が伝わっているのかいないのか、黒死牟は小さく呼気を吐く。 そして牧歌的な雰囲気を断ち切るように、霧子が先程口にした疑問に対する答えを告げた。 「"鍵穴の娘"は、沈黙しているのではない……恐らく、静観しているのだ……」 「……静観……ですか……?」 「然り……。奴は圧倒的な力を持つが……奴の手綱を引いている主は、あのように狂しているわけではないのだろう…………」 アビゲイル・ウィリアムズの持つ力は、怪物と化した死柄木弔をさえ圧倒できるほどに強い。 黒死牟は神戸しおのライダーと共に戦ってなお、歯牙にも掛けられずに蹂躙されてしまった。 アビゲイルとそのマスターは今、皇帝殺しの死柄木以上に聖杯に近い位置にいる。 だがその上で万全に万全を期させているのがアビゲイルの"現"マスターなのだろうと、黒死牟は言う。 「戦うべき敵の頭数を減らせるのならば、それに越したことはない……そう考えて、我々の内輪揉めを待っている……。 己と、そのサーヴァントを……この戦いの弥終にて待つ、地平線の番人と据えたのだ………」 「……え゛。あ、えっと……それならあの二人に、今からその旨伝えてきた方がいいんじゃ」 「異なことを言う……。膝を突き合わせて語らったとして……それで己を曲げる肚か、あの奴原どもが…………」 ――ラスボス気取ってるってわけですか。 にちかの言葉が、静まった保健室の中に大きく響いた。 黒死牟の言う通り、死柄木としおは何を言おうが自分たちの決定を曲げないだろう。 彼らは同盟相手などではない。見逃されているのは、霧子たちの方なのだ。 それでもと我を通そうとすれば、あの二人はそっくりそのまま敵方に反転する。 今のこの状況はどこまで行っても呉越同舟、薄氷の上に成り立つ停戦状態なのだと改めて理解させられた。 そしてアビゲイルとそのマスターは、頭数が減ろうが減るまいが、こちらから仕掛けるまで頭角を現すことなく見に徹している。 つまり明日の朝……敵連合の両翼が決着(ケリ)をつけるまで、どうあがいても盤面は動かないということだ。 「……はあ、となると待つしかないですよねこれ。あの王様野郎はともかく、しおちゃんの方は一時の同盟くらいなら受けてくれそうですし」 死柄木は災害のようなものだ。 彼に限っては、しおを殺すなりあらゆる提案をすべて無視して霧子たちに襲いかかってくる可能性が捨て切れない。 黒死牟以外すべての戦力を奪われた方舟のクルーたちにできるのは、神戸しおが死柄木弔に勝利するのを祈るのみだった。 少なくとも現状、それ以外に彼女たちにできることはない。 無力感と、焦燥感が――まとわり付く熱気のようにじわりじわりと広がっていく。 「……方舟の主は………本当に、何も教えなかったらしいな…………」 「は? ……なんですかそれ。喧嘩売ってんですか?」 「八方塞がりの鉄火場など……乱世では、そこかしこに存在している………。 いちいち膝を折って嘆いていては、何も始まらぬ……軟弱千万というものだ…………」 「……、……」 「剣も持てず……鉄砲も握れぬ、小娘が……いっぱしに戦の趨勢など、憂わずともよい…………」 一瞬青筋を立てたにちかだったが、続く言葉には閉口を余儀なくされた。 目の前の鬼剣士の言葉が、単なる八つ当たりじみた悪態ではないと分かったからだ。 「どの道……もはや、斬らずに済む敵なぞ残っておらぬのだ……」 方舟は多くを失ったが、しかしすべてを失くしたというわけではない。 彼女たちにはまだ剣が残っている。混沌を斬り、皇帝を識り、そして深淵にさえ挑んだ一振りの魔剣が。 「事がどう転ぼうと………私が、すべて斬り捨てて幕を引く……。それだけで、それまでだ………」 本物の戦国を知り、本物の魔境を知る鬼がそう言うのだ。 もはやにちかは、何も言えなかった。 それと同時に、今まで胸の奥に詰まっていた不安の血栓がいつの間にか消えているらしいことを自覚する。 は、とにちかは笑った。見た目も性格も、何から何までこの鬼は"あの人"とは違うが。 それでも、やはり英霊は英霊らしい。 首の皮一枚つながった、ってとこですかね――。にちかは、気が抜けたみたいに手足をだらんと投げ出した。 そんな彼女をよそに、黒死牟が霧子に視線を向ける。 三対の眼差しを受け止めて、霧子は続く言葉を待った。 「して……よもや、ただ眠りこけていたというわけではあるまいな……?」 「……はい……。話すと少し長くなるんですけど………いいですか…………?」 「構わぬ……。話せ……お前の知る、すべてを…………」 言ったきり沈黙する黒死牟。 「え? なんかあったんですか?」ときょろきょろするにちか。 そんな二人を交互に見つめて、霧子は目を閉じた。 自分の見聞きしたすべてを改めて反芻するように、整理するようにそうして。 もう一度目を開くと同時に、霧子が口を開く。 そして紡がれた言葉は、眼前の二人の度肝を抜くのに十分すぎるそれであった。 「わたし…………界聖杯さんと、お話をしてきました…………」 「は?」 「何……?」 ◆◆ 「ずっと、聞いてみたかったんです……。この世界をつくったあなた……。きっとこの世界そのものな、あなたに……」 「いろんな願いごとが、ありました……。全員じゃ、ありませんけど……わたしはたくさん、それを見てきたつもりです……」 「ただ願いをかけている人もいれば……誰かに願いを託して、いなくなってしまった人もいて……。 ここで、新しい願いごとを見つけた人もいる……。今もそれを叶えるために、がんばってる人もいる……」 「この聖杯戦争は……とても、悲しいことがいっぱいで……だけど、憎いとまでは思えないんです…………。 聖杯戦争のことも……それを催した、界聖杯さんのことも……わたしの大事な人たちを、殺してしまった人たちのことも……」 「……セイバーさんが聞いたら、また……難しい顔をしちゃうかもだけど……」 「わたしの周りのみんなが、素敵な……あったかくて優しい願いを抱いているように……わたしたちの反対側にいる人たちも、すごく真摯な気持ちで願っていたんだって、そう思うから……」 「だから、聞きたいと思いました……。みんなの願いを、認めてくれたあなたは……この世界の神様な、界聖杯さんは……」 「どんな願いを抱いて……この物語を、始めたんですか…………?」 「聞かせて、ください……あなたの、願いを……あなたの、物語を………」 「わたしは、それが知りたくて………あなたを、探していたんです…………」 『……ははっ』 『やっぱり霧子は変わった子だな。異彩づくめの方舟勢力の中でも、君ほど"わからない"子はいない』 『でも、そうだな。こっちから招いたんだ。それが望みなら、一足先に叶えてあげよう。幸い、願望器(おれ)を使う必要はなさそうだ』 『その前に一つ質問をしよう。霧子は、自分が何のために生まれたか答えろと問われたらどう答える?』 『すぐには答えられないよな、分かるよ。でも、考えてみれば単純なことだ』 『自分の存在した意義を果たすため。生物(きみたち)で言うならば、その辺が模範解答になるだろう』 『そして俺の場合は、今ここにあるこの状況だ。俺に願いらしいものがあるとすれば、今この瞬間それは叶っている』 『"誰かの願いを叶えること"。より正しくは、"この存在すべてをリソースとして、可能な限り最大の形で願いを叶えること"』 『それが、俺の願いだ』 『俺という、願望器(せいはい)の物語だよ。幽谷霧子』 ◆◆ 学校は無人なだけで、ご丁寧にも給食を作るための材料まで揃っていた。 もういい時間だ。そろそろ食事にしようという話になったのだったが、ここで霧子が名案を閃いたとばかりに手を叩いた。 嫌な予感を感じながらにちかが何を思いついたのかと聞けば、その予感は的中することになる。 七草にちかは基本、この世界では他人を振り回す側だったが。 幽谷霧子という"お日さま"があの田中摩美々にも決して負けない強烈なキャラクターの持ち主なのだということを、半ば成り行き上で彼女の手伝いをしながらしみじみと実感する羽目になった。 体育館に、たくさんのテーブルが並べられている。 その上には、何種類かの食事が置かれていた。 オレンジの大きなかごに入ったコッペパン。ピーナッツクリーム、いちごジャム、マーマレードをお好みで。 野菜はレタスやきゅうり、ミニトマトを和えたサラダ。アクセントにカニカマを細かく刻んで入れてある。 メインディッシュは出来たてのあったかいナポリタン。粉チーズはたくさんかけるとうれしいので、ありったけの本数が備えてある。 スープはポトフ。夏に出すには時期外れかなと少し思ったが、不安な時はあったかくなった方が落ち着くものだ。 そしてデザートはにちかがぶつぶつ言いながらせっせと拵えたバニラアイスクリーム。バニラアイスはやろうと思えば割と簡単に作れてしかもそこそこおいしいのでおすすめだ。 ――以上で完成。出来あいから手作りまで混合の、283プロ特製聖杯戦争給食。 出来上がった時にはもう時刻は午後十時を過ぎていて、夕飯というより夜食になってしまっていたけれど。 「はあ~……。沁みる……疲れた身体においしい料理がめちゃくちゃ沁みるぅ……」 ずじじ……と静かにポトフを啜りながら、にちかはひと仕事終えた余韻に浸っていた。 これだけあれば明日の朝も食べられるかな、とか。 いや明日そんな暇あるわけないだろ、とか。 あれこれ考えながら、もむもむと口を動かしてごろごろ野菜を咀嚼する。 急ごしらえにしてはなかなかのものができた自信がある。こんな状況なことも相俟って、美味しさは数割増しだ。 見れば対面の霧子は、にこ……と微笑みながらにちかのことを見つめている。 なんだか気恥ずかしくなるにちかだったが、霧子の方から見ると頬を膨らませて夕飯に舌鼓を打っている今の自分にはハムスターかリスを思わせる小動物的な可愛らしさがあったことは知る由もない。 霧子は霧子で、いちごジャムを塗ったコッペパンをはむ……はむ……と小さく啄んでいる。 にちかもにちかでそれを見て、かわいいなこの人……と率直にそう思うのだった。 「おいしいね………」 「おいしいです。まあ、死ぬほど疲れましたけど」 「ふふ……手伝ってくれてありがとう……。摩美々ちゃんたちの話もいろいろできて、嬉しかったよ……」 「……そりゃどういたしまして。霧子さんが元気出せたんだったら、私もちょっとは冥利に尽きます」 明日になれば、こんな平穏な時間も崩れていくのだろう。 何せ今この学校には、それを崩そうとしている原因が少なく見積もっても二人いる。 彼らがそうする理由は分かったが、納得はまるでできない。 せめてアビゲイルをどうにかするまででも協力し合えないもんですかね、とにちかが肩を竦めた時。 がらら……。と音を立てて、体育館の扉が開いた。 「――わ。本当に来たんですか」 「あ? オレは霧子さんに呼ばれてきたんだぜ」 「その霧子さんと一蓮托生の七草にちかでーす。どうもー」 「相変わらず口の減らない女。かわいくねーぜ。モテねえだろ」 入ってきたのは、金髪の少年。 そして彼の腰丈ほどの背丈しかない、小さな黒髪の少女だった。 出合い頭にさっそく火花を軽く散らす、少年――デンジとにちか。 そんな二人をよそに、霧子がぱっと表情を明るくして立ち上がる。 するとどうだ。あんなにも渋皮だったデンジの顔も負けじとぱっと明るくなる。 心なしか頬も赤いし、デレデレ……というオノマトペが頭の上に見えそうな顔だ。 「来てくれたんですね……しおちゃんのらいだーくん……」 「へへへ、そりゃもちろん。霧子さんがオレのために手料理作ってくれたとあらあ、来ないわけにはいかないっスよぉ~……!」 「らいだーくんだけのためじゃないと思うけどなあ」 もちろん、この"給食"は霧子とにちかが二人で食べるために作ったわけではない。 そこのところが、にちかとしてはどうにも気乗りしないところだったのだ。 霧子は"みんな"のために料理をし、こうしてこの席を用意している。 つまり――自分たち以外の生存者。連合の二人のことも含めてだ。 そして今、その片方がここにいる。 神戸しおと、そのサーヴァント。 にちかは「呼びに行ったところで来るわけないでしょ」と内心そう思っていたのだが、思いの外この少女は面の皮が厚かったらしい。 「しおちゃん、セロリとか食べれる……? にんじんも入ってるけど……」 「だいじょうぶ。すききらいはあんまりないんだ」 「そうなんだ……。ふふ、えらいね……」 しおが給食の並ぶテーブルの前に立って、デンジの方を見る。 「これどうするの?」と問いかけるしおに、デンジが「俺中学通ってねえんだよな」と難しい顔。 すると霧子がたたたた、と駆けていって、ふたりぶんの御盆を差し出して「これの上に……お料理を載せたお皿を、こう……」とレクチャーしてやっている。 小学一年生の教室か。心の中でそう突っ込みながら、にちかはたっぷり巻いたナポリタンを口に運んでもむもむ食べた。 「お、ナポリタンじゃん。俺これ好きなんスよね~……あ、粉チーズはこれ、もしかして……?」 「うん……かけ放題、です……!」 「は~ッ……。テンション上がりますわ! 霧子さん、心底(マジ)有難(アザ)です!」 「ふふっ……どういたしまして……」 席は人数分用意されている。 しおとデンジは片隅にひょいと座って、各々舌鼓を打ち始めた。 お腹がすくのはアイドルもヴィランも変わらないらしい。 しおはピーナッツクリームを塗ったコッペパンをあむ、と一口。 デンジは――サーヴァントは本来食事の必要はない――ナポリタンをがっついて、隣のしおにまでケチャップを飛ばしている。 「らいだーくん、お行儀わるいよ。もう、私着替えもってないのに」 「ハラ減ってる時のメシはかき込んでナンボなんだよ。お前ももうちょっとお下品に食えよ」 「や。さとちゃんに嫌われちゃうもん」 「あのレズ女はお前が何しようが全肯定だよ、心配しなくても」 ……こうしているぶんには、彼らが聖杯のためにいくつもの命を奪ってきた敵(ヴィラン)だとは到底思えない。 少なくともにちかはそうだった。歳の離れた兄妹にしか見えない。 でも、彼らは連合だ。にちかと霧子の大切な方舟を終わらせた、れっきとした相容れぬ敵なのだ。 複雑なものを噛みしめながら見つめるにちか。一方で霧子は、彼らの様子を微笑ましげに見つめながら口を開いた。 「そういえば……死柄木さんがどこにいるのかって、わかる……?」 「とむらくん? んー……。たしか、機械がいっぱいあるお部屋にいたと思うよ。えっと、こんぷ、こんぴゅ……」 「ぉんゆーあーいうあお(コンピューター室だろ)」 「! そうそれ!」 しおたちの居所は、にちかが知っていた。 だから彼女たちを呼びに行きたいと言い出した霧子に居所を教えたのはにちかだ。 だが、そんなにちかも連合の王たる青年がどこに消えたのかは分からないままだった。 彼はしおと雌雄を決する旨を伝えた後は、ふらふらとどこかへ消えてそれきりだったからだ。 にちかとしても「あんな勝手なやつのこと知りません!」モードだったので、別に追う気も起きなかった。 ……もっとも彼の方は、呼んだとしても本当にこういう場所には来ないだろうけど。 「そっか……じゃあ、ちょっと行ってみるね……」 「――え。マジで持っていくんですか? あんなのに」 「うん……。死柄木さんも、おなかすかせてると思うから……」 「…………、」 七草にちかは、自分がどちらかと言えばリアリストの方に部類される人間だと自覚している。 だからだろう。この時、にちかが霧子の言葉に覚えたのは感心ではなくむしろ空寒さだった。 ああ、悪いクセが出ようとしてる。 そう分かっていても、こればかりは止められなかった。 命乞いをして命を拾って貰った身とはいえ、それを恩と思えるほど負け犬根性極まってはいない。 方舟の終わりをもたらした彼に対して思うところは、今この時だって死ぬほどあるのだ。 だから結局、一度は堰き止めた言葉をそのまま吐き出してしまった。 どうせ後でしみったれた後悔をすることになるのだからやめておけばいいのに、それでも止められなかった。 「方舟(みんな)を殺した、悪いやつなのに?」 言ってからはっとする。 言わなくていいことを言ってしまった。 そんなことを、彼女に言ったってどうにもならないのに。 取り繕おうとしたにちかだったが、当の霧子はと言えばどこか寂しそうに笑っていて。 「……死柄木さんとは…………いつか、戦わなきゃいけないと思ってる…………」 「っ」 「でも……いつかは、今じゃないから…………。 これが、今夜が……わたしたちにとっての、最後の平和な時間なんだったら……わたしはあの人にも、幸せな気持ちで過ごしてほしいなって…………」 ――挙げ句の果てにはそんな答えが返ってきたものだから、にちかも思わず毒気を抜かれてしまう。 「………………霧子さんは、あんまり電話とか出ない方がいいと思います。 息子が事故にあったって言われたら、結婚もしてないのにたんまりお金送っちゃいそうなんで」 「ふふ……。大丈夫だよ、わたしもちゃんと気をつけてるから……」 「へえ、そうですか。具体的にはどう気をつけてるんです?」 「――レターパックで現金送れは、すべて詐欺…………!」 「初歩の初歩なんですよそれは。おばあちゃんですかあなたは」 止めてもどうせ無駄だろうし、しゅんとされてこちらが申し訳なくなるだけだろう。 だからにちかは、潔く諦めることにした。根負けというやつである。 「とりあえず、セイバーさんは絶対連れてってくださいね。相手の機嫌ひとつで霧子さんなんて消し炭なんですから」 「うん……そこはちゃんと気をつけるね…………、……そういうわけなんですけど……大丈夫ですか、セイバーさん…………?」 「寝耳に……水だ…………」 不機嫌を露わにした声で、体育館の壁へ凭れて立っていた黒死牟が言う。 霧子は彼にも給食を勧めていたが、鬼は血肉以外の食事を受け付けないため、英霊だとかそういうものは関係なく摂れないのだと断っていた。 ……単に不要だと断ればいいものを、わざわざそう説明してやっている辺り、彼も霧子に相当"やられて"きたのだろうなとにちかは思ったものだ。見かけは怖いが、意外と今は苦労人気質なのかもしれない。 「――ていうか私だけ残されたらしおちゃんが心変わり起こした時やばくないですか? それは大丈夫?」 「そんなことしないよ。サーヴァント持ってないんだったら、わざわざ殺したって仕方ないもん」 「…………そうですか。ええ確かにそうですね。私が心配性すぎでございましたよー……」 当の本人にぴしゃりと釘を刺されて、なんだか釈然としない気分でにちかは言う。 とはいえ確かに、今此処で事を起こすのは彼女たちにとっても旨くないだろうことは確かだった。 何せそれをすればほぼ確実に霧子のセイバー/黒死牟が敵に回る。 死柄木との戦いを控えている身で、わざわざ前夜にそんな負担は背負いたくないのが普通だろう。 連合組であらかじめ話を合わせているとかなら話は別だろうが、今の自分にそうまでして命を狙う価値があるとは思えなかったし、何よりあの死柄木弔という男はそんな細々した計略が扱えるタイプとは思えなかった。 まったく、どいつもこいつも勝手なんですから。 ぼやきながら、にちかはデザートのアイスクリームを口に運ぶ。 「あ…………、そうだ、らいだーくん……」 「? え、霧子さん? ちょっ――」 霧子が、デンジの口元に手を伸ばした。 目に見えて慌てるデンジだが、霧子は気にした様子もない。 そのまま手を彼の口へと触れさせて。 手にしていたティッシュで、彼の赤く染まった口元を拭いてあげた。 「……ケチャップ…………ついてたよ…………」 「…………あ。ありがとうございます……?」 ひらひらと手を振って、ここにいない"彼"のぶんの給食を盛った御盆を持って駆けていく霧子。 その背中を呆然と見送って……霧子の背中が廊下の曲がり角に消えたところで、ようやくデンジは言葉を発した。 「……ありゃ絶対俺に気があるよな?」 「ないと思う」 「ないと思いますよ」 ◆◆ 霧子が駆けていった後、体育館には気まずい沈黙が流れる。 いや、あるいはにちかがそう思っているだけかもしれない。 何せ相手はルール無用、常識だとか良識だとか踏み躙ってなんぼのヴィランどもだ。 明日には崩壊するかりそめの停戦。にちかとしては死柄木ではなく目の前の彼女たちに勝ってほしいところだったが、それでも結末は変わらない。 立場が反目している以上、方舟のアイドルと連合のヴィランは決して相容れないのだ。 どちらかが残って。 どちらかが、消える。 そう分かっていたからだろうか。にちかは、開かなくていい口を気づけば開いてしまっていた。 「……あの。一個だけ聞きたいんですけど」 「なんだよ」 「あなたじゃないです。そっちの女の子に聞きたいの」 「愛想もへったくれもねえ奴だぜ。は~、霧子さん可愛かったな……」 「敵に愛想振りまいてもしゃーないでしょ。私が普通なんですってば」 悪態をつきながら、デンジがしおを肘でつんと小突く。 もきゅ、もきゅ……と咀嚼していたパンを飲み込んで。 しおが、くるりとにちかの方を見た。 こうしているぶんにはどう見たって年相応の女の子にしか見えない。 こんな少女が、自分たちを踏み台にして何かを叶えようとしていること。 きっとここまで来る間にも、多くの命を食らってきただろうこと……。その実感が、どうしてもにちかには持てなかった。 「神戸しおちゃん」 「うん?」 「死柄木さんの願いは知ってます。あの人は、気に入らない社会をぶっ壊したいんだって言ってましたね」 それもまた、にちかに言わせればまるで理解のできない、したくもない願いだった。 気に入らないから壊すだなんて、幼稚園児でも分別のつく癇癪ではないか。 それを大真面目に押し通そうとする傍迷惑な魔王のことを、にちかはどうやったって認められない。 だが一方で、そういう願い/想いもあるのだということは理解した。 だから、問いたくなったのだ。恐らく話すのは今夜が最初で最後になるだろう少女にも、聞いてみたくなった。 「しおちゃんは、何のために戦ってるんですか」 「……霧子さんから聞いてない?」 「聞いてもよかったんですけど、あの人に他人のプライバシーをべらべら喋らせるのも気が引けたんで」 「そっか」 霧子のことだ。既にしおとの"お話"は済ませているだろうとにちかは思っていた。 なのに現状がこれということは、つまり対話では彼女を揺るがせなかったということ。 彼女も死柄木と同じで、何をどうしたって自分のあり方を改めることがない存在だということを示している。 「だいすきなひとがいるの」 「それは――さっき言ってた、さとちゃんって人?」 「うん。とってもふわふわいい匂いがして、やさしくて、いつだって私のことを一番に考えてくれる……とってもすてきな女の子」 「女の子」 思わず度肝を抜かれたが、まあ、そういうこともあるだろうと自分を納得させる。 そこにツッコミを入れていたらいつまで経っても話が進まなそうだ。 それに、語るしおの表情は、余計な横槍を入れる隙間もないほどに完璧だった。 ――偶像(アイドル)。 他人に笑顔を与えるには、まずその人物が笑顔でいることが大前提なのだと今のにちかであれば分かる。 だからだろうか。七草にちかはこの時、間違いなく神戸しおという少女にアイドルの聖性を見出していた。 微笑みのひとつで他人を魅了し、熱狂させる偶像。立ち振る舞いのひとつで他人を狂わし、時に人生すら擲たせる天使。 ああ、これが普通の女の子なんかであるものか。彼女は、この女は、そう間違いなく―― 「私は、私の知ってる愛を貫くの」 ――死柄木弔(かれ)の同類だと、理解した。 人誑しの才能(カリスマ)、そして人倫に捉われることのない不変の歩み。 対話など、手を差し伸べることなど、これを前にして意味があろう筈もない。 これは何を言ったところで、決してその歩みを止めないだろう。 言葉の通り、愛を貫くまで。その愛が行き着くところへ行き着くまで、決して。 「そのためになら、私は世界だって壊してみせる」 「……何を犠牲にしても構わないって、そう言うんですね?」 「うん。知ってる? えっと……にちかちゃん」 天使が、囀っている。 天使が、微笑んでいる。 魔王を討つべき天使が。 ただひとりのための救済を運ぶ天使が、微睡むように宣言した。 「愛のためなら、やっちゃいけないことなんてないんだよ」 そうですか、と気付けばにちかは吐き捨てていた。 対話の成果は、これでも一応あったといえる。 なんと言っても今日は決戦の前夜。世界の終わりがやってくるその前の、最後の静かな時間だから。 こうして言葉を交わし、改めて自分の中にあった感情を深められただけでも有意義だったとにちかはそう思っていた。 「……私、やっぱり連合(あなたたち)のことが嫌いです。うん、だいっきらい」 七草にちかは、敵連合という集団が嫌いだ。 もう散っていった連中も。 悪の親玉たる白の魔王も。 そして今目の前にいるこの天使も、すべてが嫌いだった。 自分は霧子とは違う。自分は彼女のような、すべてを照らすお日さまにはなれない。 だって彼の語る崩壊も、彼女の語る狂愛も、欠片だって理解できないから。 何かを成し遂げるために他のすべてを犠牲にするだなんて理屈を当然の顔で押し通せる人間に対して、良い印象なんてさっぱり抱けないから。 「明日、戦うんでしょ。だったら私たちのためにも死柄木さんを倒してください。 ぶっちゃけあの人が生き残ってると、私たちの今後がやばいくらい無理ゲーなんで。 霧子さんはともかく、私はそれまではあなたたちのことを応援してあげます。でも、その後は」 方舟は、心優しい願いをもってすべての命に手を差し伸べる集団だった。 けれど、その根底にあるのはお花畑のような無垢さではない。 それしか解決の手段がないのなら、どうやっても和解するのが困難であるのなら、その時は戦うとあの"境界線"は言っていた。 にちかは事此処に至ってようやく、そんな言葉の意味を実感する。 もういない境界線に思いを馳せながら、今やこの世界で最も無力な少女は、はっきりと天使の目を見て宣言した。 「ぜったい、あなたたちになんか負けません」 自分達、方舟の残骸の未来がどうなるかは分からない。 分からないが、負けてはならないのだということだけは分かる。 自分達はまだ負けてなんかいない。だって、まだクルーが残っている。 あの優しい時間を覚えている二人と一騎が残ってる。 連合と方舟の戦いは、まだ終わっていないのだ。 ならば狙うのは勝ち、ただそれだけ。 宣言するにちかに、しおは少し驚いた顔をする。 七草にちかという人間にこれだけの胆力があるとは思っていなかったのだろう。 「ふうん」 だがその顔も、すぐに微笑みに変わる。 思わず毒気を抜かれるような可憐な笑顔。 まさに天上の御業のような無垢に染まっていく。 「できるといいね」 ……真面目な話は、そこまでだった。 しおがバニラアイスを口に含んで。 にちかもナポリタンを頬張った。 デンジはポトフのベーコンにがっついている。 「霧子さん、遅いねえ」 「な。死柄木の奴、案外絆されてんじゃねえの? 霧子さんのバブみによ」 「ばぶみ?」 「小さい子は知らなくていいんです。ていうかあなた本当にサーヴァントなんですか? 言動も言葉のチョイスも俗すぎるんですけど」 「現代っ子だからな。アイドルの話もできるぜ~?」 「どの面下げて私の前でアイドルの話するつもりなのか大変興味深いですね」 「この面だよこの面。てかお前って売れてんの? だったら後でサインくれよ。メルカリで売ってドラクエの新作買うからよ」 「は~っカス。あなたみたいな魂胆の人がいるからグッズ販売もサイン会も厳しくなるんですよ」 「あ。にちかちゃん、バニラアイスもう一皿とって」 「なんで霧子さんのことはさん付けで私はちゃん呼びなんですか????」 「…………、…………。」 「……、……。」 「……。」 「…」 ◆◆ 「あ……ほんとにここにいた……」 コンピューター室の扉を開けて、そこで幽谷霧子は連合の王と対面していた。 その手にはお手製の給食を載せた御盆。向ける笑顔は、とてもではないが不倶戴天の敵に対するそれとは思えない。 「晩ごはん、持ってきたんです……死柄木さんも、おなかすいてると思って……」 「何言ってんだお前。頭おかしいのか?」 この場に限って言うならば、死柄木の言葉が正しいだろう。 とはいえ当の本人は傷付いた様子もなく笑っている。 そこから微塵の害意も感じ取れないのがまた、死柄木にとっては不可解だった。 となるとこの女は、本気で自分に食事を運ぶためだけにここまで来たのか。 わざわざしお達に自分の居所を聞いてまで。 全身の感覚を集中させる――彼女の背後に、サーヴァントの反応が感じ取れた。 流石にそこまで酔っ払ってはねえか、と死柄木は小さく嘆息する。 「敵が運んできたメシなんざ食うかよ。ハニトラのつもりだとしてももっと上手くやれ」 「……でも……しおちゃんとらいだーくんは、おいしそうに食べてました……」 「あいつらは馬鹿なのか?」 その光景が容易に想像できるのもまた頭が痛くなる。 差し出されたそれを片手で振り払って、床にぶちまけるのは簡単だ。 だが目の前の女の顔が、あまりにも邪気だとか嫌悪とは無縁のものだったから死柄木としてもその気が削がれる。 こいつに対してそんなチープな悪意で応えてしまったら、むしろそれは自分の敗北になってしまうような。 そんな奇妙な、今までにない感覚を霧子は死柄木に与えていた。 「……そこに置いとけ。気が向いたら食ってやるよ」 「……! ありがとうございます……嬉しいです、ふふ……」 「なんでお前が礼言うんだよ。マジで脳溶けてんのかお前は」 "この身体"には、今や空腹の概念は存在していない。 何しろ龍脈の力を吸い上げて合一化させたマスターピースだ。 エネルギー効率やその生成手段も人間のそれとは一線を画した人外のそれに置き換わっている。 だからこのお節介が必要か不要かで言うなら、間違いなく後者だった。 なのにどうしてかそれを無碍にできなかったのは。 気が向いたら食うなどと、まるで気遣うような言葉を口にしてしまったのは何故なのか。 死柄木自身にすら理解の及ばない感情が、その脳の内側で渦を巻いている。 脳裏によぎるのは、もう捨て去った過去の追憶。 今より遥かに低い視点。笑顔で語らう知らない/知っていた顔。 机の上で湯気を立てている皿には色とりどりの食材が載っていて、その空間はひどく暖かで懐かしくて―― 「田中摩美々を殺したぞ」 そんな思い出(ノイズ)を振り払うように、死柄木はその事実を口にしていた。 「正確には俺がやったわけじゃないが……まあ、連合の一員がやったことだしな。俺が殺したようなもんだ」 「…………、…………」 「お前らの計画を支える肝心要のライダーも殺した。七草の片腕を吹っ飛ばしたのも俺の仲間だ。 方舟だったっけ? とにかく、お前らの夢や理想は全部ブッ壊してやったよ。 灰と光の境界線なんてもうどこにも存在しない。あるのは、一面真っ黒の未来さ。奈落が口を開けてお前らを待ってる」 霧子の顔に沈痛の色が宿る。 同時に、後ろに控えているらしいサーヴァントの放つ殺気が強まったのを感じた。 そうだ。それでいい。死柄木は過去を押し込んだ記憶の鍋に蓋をして、魔王らしく悪意を振り撒く。 偶像の純朴な優しさに小便をぶち撒けるような所業は麻薬のように心地よく、本番の前夜に相応しい娯楽になるだろう。 「死柄木さんは……」 そう思っていた。 その筈だった。 なのに幽谷霧子の口から次いで出た言葉は、死柄木の行いを糾弾する言葉でもなければ、売り言葉に買い言葉の挑発でもなかった。 「世界のぜんぶを、壊した後……どこに、行くんですか……?」 「何?」 「死柄木さんの願いごとは、知ってます……。ぜんぶ壊して、真っ平らにしたいって……。 わたしはそれを……すごく寂しいって、そう感じてしまうけど……でも、わたしはあなたの人生を……死柄木さんの物語を、知らないから……。 死柄木さんが、大事に抱いて歩いてきた……その願いごとを、否定する気は、ありません…………」 でも、と続いたのは、先程の繰り返しだった。 「その後に、あなたは……願いを叶えた死柄木さんは、どこに行くのかなって…………」 「さあ」 今、死柄木弔に纏わり付く巨悪はいない。 彼の完成をもってそのすべてを乗っ取り、自分の野望にすげ替えようと目論んでいた男は既に介入の余地を失った。 この聖杯戦争を制した時、死柄木弔は理想を叶えてすべての崩れた白の地平線に立つだろう。 ならばその先に待つのは彼の、彼だけの物語だ。 社会を壊してひとつの時代を終わらせた彼は元の世界でも魔王と崇められ、新たな巨悪として君臨するに違いない。 では。その後で、彼はどこへ向かうのか? 「壊してみなきゃ分からない。ただひとつ言えるのは、壊さなくちゃ俺はどこへも行けないってことだけだ」 答えは、分からないと言うしかない。 すべてを崩壊させた後、自分はどういう気持ちで願いの叶った世界を眺めるのか。 それを知れるのは地平線の彼方に辿り着いた時だ。 今、幽谷霧子の向けてくる問に対して返せる答えは死柄木の中に存在しなかった。 「俺を憐れむなら大人しく道を譲ってくれ。手を差し伸べるなら、さっさとサーヴァントを自殺させてくれれば手間が省ける」 「それは…………、……できません…………」 「なら戦うか。俺と」 「……死柄木さんの願いが、とても強いものだって……誰にも譲れないものだってことは、わかってますから……。 戦い、ます……。勝てるだなんてとても思えないけど、それでも……わたし達も、方舟(わたしたち)のために…………戦う」 「それでいい。分かってんなら下らねえ言葉遊びはやめとけよ。そういうのを不毛って言うんだぜ」 ヒーローの本質は、お節介だという。 ならばこの少女は間違いなく、"そうなる"資格を有しているに違いない。 そもそも、医者もアイドルも味方を変えればヒーローだ。 人に夢と希望を、時には勇気を与えて救う存在。それを指して人はヒーローと呼んだのだから。 であればああ、なんという因果だろう。 結局死柄木弔(じぶん)という人間は、ヒーローとヴィランという昔懐かしの対立構造からどうやっても逃れられないらしかった。 「明日の戦いは俺が勝つ。そしてお前らも、あの鍵穴娘も殺してゲームセットだ」 「……しおちゃんと、戦うんですね……」 「七草から聞いてるだろ。面倒臭いがジジイの遺した宿題なんでね。 ムカつく野郎だったが、奴の教えが無益だったことはない。なら最後の最後、絞りカスまで吸収してやろうって腹さ」 「…………死柄木さんにとって……しおちゃんは、何だったんですか…………?」 また妙なことを問う。 今度の答えは、考えるまでもなく決まっていた。 「敵だ」 そう、いつだって奴は敵だった。 出会ったその時から今まで、一度だってそれは変わっちゃいない。 誰よりも身近にいた、最も長い時間を共にした、敵だ。 死柄木弔にとって神戸しおは、いつだって最大の敵(ヴィラン)だった。 「だから殺すんだ」 連合の王は残虐非道の悪逆無道である。 七草にちかが彼を評した時の形容は何一つ間違ってなどいない。 モリアーティの教鞭によって、彼は本当に人間などではなくなってしまった。 志村転弧としての弱さを限りなく封じ込め、死柄木弔という魔王として完成した。 だが。それでも、彼の中には魔王なれども心がある。 田中一の死に形だけでも手向けをくれてやったり。 鎬を削った敵に、彼なりの評価を下してみたり。 無道ではあっても無感ではない、それが死柄木という男の在り方だ。 その矛盾があるから、彼は強い。 どこまでだって進化していく、停滞を知らない。 それは彼を最初に見出したオール・フォー・ワンという男が、唯一持っていない質の"強さ"であった。 ――とむらくん、なんだかお兄ちゃんみたいだね。 ――私、勝つね。とむらくんに。 甘い声(シュガーソング)を反芻しながら。 訣別(ビターステップ)へと歩み出す。 そこにあったのは紛れもない、彼らなりの仲間意識と友情で。 だからこそこの結末は譲れないのだと、獣の心でそう誓っていた。 「…………、…………」 そのことが、霧子には伝わったのだろう。 言葉だけ見れば彼らしいと言う他ない残忍さだが、その言葉に付加された重みを彼女は感じ取っていた。 だからこそ、もうそれ以上言える言葉はなかった。 だって自分は、彼らの物語を知らないから。 かけられる言葉は、もうない。 「日の出だ。それと同時に事を始める」 決戦の刻限は日の出と同時。 最後の朝が訪れたその瞬間。 「巻き込まれたくなかったら逃げときな。運が良けりゃちょっとだけ生き延びられるよ」 それをもって、敵連合は消滅する。 魔王か、天使か。 どちらかの願いのみを残してこの世界から消える。 霧子はその意味を、彼らの戦いの重さを噛みしめていた。 乗り越えるために戦う、相手を重んじるからこそ戦うということの意味。その価値。 世界の終わりを否応なしに感じさせられながら、彼女は魔王の視界を去ったのだった。 ◆◆ 「早めに寝とけよ。明日早いんだからな」 「うん」 埃っぽい物置の中にソファがあった。 右側にデンジが、左側にしおが座っている。 時刻は12時になるかどこかといったところ。 日の出が事の始まりと考えると、十分に眠れるかどうかはだいぶギリギリだ。 だいぶ不規則な生活習慣にも慣れてきたようだが、それでもしおはまだ幼い。 デンジに言われるまでもなく、もうかなりうとうととしている様子だった。 「……いよいよだね。おわるんだ、ぜんぶ」 「そうだな」 聖杯戦争が本格的に"戦争"の様相を帯びたのは最近だが、予選を含めて見ればこの戦いはなかなかに長かった。 最初はあんなに浮かれていた久々の現世も、今となっては昔と同じで日常に変わっている。 神戸しおという少女が隣にいる時間も同じだった。 あらゆる日常が、事がどう転ぼうと明日で終わるのだと考えてもいまひとつ実感が湧いてこない。 「今だから言うけどよ。俺、お前が"さとちゃん"の話するのめちゃくちゃ嫌だったんだわ」 「しっと?」 「ちげえよ馬鹿。……あれだ。そのモードに入るとお前、途端に何言ってるか分かんなくなるからよ。 俺はなんつーか……一緒にゲームで馬鹿やってたり、ヘンな時間にだらだらカップ麺食ったり、菓子つまんだり。 お前とはそういう、こう……毒にも薬にもならねえ時間だけ過ごしていたかったんだよ」 デンジの耳には、しおの語る"愛"の話は酒にでも酔っているのか、という感想しか抱けないものだった。 彼女のような幼い少女がそれを語っている事実もまた、そこに拍車をかけていたのだろう。 これさえなければな、と口に出しこそせねどずっと思っていた。 「けど、まあ……お前らはさ、すげえわ」 だからこれは、きっと根負けというやつなのだろうとデンジは考えている。 良くも悪くも、自分にはきっとそういう生き方はできない。 「俺なんて好きな人がいても平気で他の女に尻尾振っちまうし。 サーヴァントになっても、可愛くてエロい女に話しかけられたら鼻血出そうになるし。 そうやって何があっても、自分がどうなっても他人を愛し続けられるってのは……俺には真似できねえな~ってよ」 それを貫き続けた結果、気付けば聖杯戦争は最終局面だ。 不思議と、何の疑いもなくデンジは自分達が勝つのだと信じていた。 希望的観測でも情熱でもなく、ただそういうものだと思っている。 あの時――桜の舞う渋谷で、彼女達の再会とその顛末を見た時からずっとそうだった。 漫画の主人公が、劇的な何かを経て最終回に突き進んでいくように。 映画の主役が、神の下りた情景の中でエンドロールに歩いていくように。 デンジは、それを見ると同時に理解した。 ああ、こいつは勝つんだと。 そう思いながら今もここにいる。 そして今も、それは変わっていない。 「私も、らいだーくんはすごいなって思うよ」 明日、すべての物語は終わりを迎える。 勝者が決まり、残りのすべてが消えてなくなる。 桜が散り、ひぐらしが鳴いて季節が移り変わるように。 日常だったこの世界は、誰かの"願い"のために消費される。 「らいだーくんじゃなかったら、私はたぶんここにいないと思う」 それはきっと、デンジに限った話ではないのだとしおは気付いていた。 きっとここで出会ったもの、経験したこと、そのすべてに意味があったのだ。 以上をもってジェームズ・モリアーティが見初めた最後の課題。 魔王の闇黒を照らし、白光にて焼き焦がす天使は完成された。 結実の時は日の出と共に。界聖杯を照らす最後の朝日が、彼らの神話の終わりの始まりだ。 「怖くねえの」 「怖くないよ」 「愛してるから?」 「うん。そして、らいだーくんがいるから」 しおはにへらと笑った。 天使のさえずりは悪魔狩りの少年へ向けられている。 その感情は愛ではない。 だけど、形だけの伽藍でもない。 そこにはきっと、情がある。 この世界で巡り合った相棒に対する、友情があった。 「すきだよ、らいだーくん。"ともだち"として」 「……さとうが泣くぞ。あんま気軽に好きとか言うなよ」 「ううん、だいじょうぶ。本当に大切な気持ちは、ここにちゃんとしまってあるから」 そう言って胸に手を当てる、しお。 一番大事な愛の砂糖菓子はそこに秘めた。 心の瓶は、もう割れていない。 「そんでありがと。私、らいだーくんがサーヴァントでよかった」 微笑む少女の姿に、デンジは存在しない記憶を見た。 鎖で繋がれたたくさんの犬。壁に貼り付けられたローマ字表。 二人分の食事、自分のためじゃない貯金、腕の中でテレビを見つめる誰か。 今までの自分が、卵のようにひび割れていくような感覚を懐かしさと同時に覚えながら。 デンジは、こてんと眠りに落ちたしおの顔を見つめていた。 「クソガキがよ……」 本当にこいつは、とんだマセガキでクソガキだと思う。 どうせなら最後まで、自分勝手でわけのわからないことばかり喋る馬鹿でいてくれたらよかったものを。 こいつがこんなだから、自分はらしくもなく―― 「……やめだ。俺ももう寝る」 かぶりを振って湧き上がった思考を否定して。 不貞寝するみたくソファの背に身体を投げ出し、だらしなく足を広げた。 しおとデンジ。天使と悪魔の主従にとっての、最後の夜であった。 ◆◆ 「…………そっか…………」 「あなたは………界聖杯、さんは…………」 「あなたは、ただ…………」 「何かに、なりたかったんですね…………」 ◆◆ 無人無生の摩天楼に一人立つ白影があった。 その傍にサーヴァントの姿はない。 彼は既に、己が運命と死に別れている。 だが、亡き"教授"はこの世界に最大の犯罪劇を仕込んで逝った。 薔薇の青年が少女達へと繋ぐ希望を遺して焼け死んだように。 蜘蛛糸の主は、今この光景のためにすべてを尽くして消え去ったのだ。 彼は、王である。 地平線の彼方に辿り着くべき、そしてあらゆる大地を平らに均すべき、魔王である。 すべてを塗り潰す白。すべてを薙ぎ払い、崩し、リセットする終末装置(アークエネミー)。 その名を死柄木弔。龍脈の力をその身に宿し、空すら掴む手を有するに至った怪物である。 コンクリートジャングルの果て。 薄闇の名残を残していた空が、金の陽光に照らされた。 天を衝くような高層ビルの数々が、尾のように影を伸ばす。 その光は当然、魔王をも照らしていた。 網膜を焼くような、鬱陶しいくらいの日差しが街を呑む。 日の出の時だ。眠った草木も叩き起こされ、穏やかな静寂の夜は終わりを迎える。 彼は誰時、朝ぼらけ。 夜の終わり、一日の始まり。 「さあ、刻限だぜ」 ――――世界の終わり、その幕開け。 「遊ぼうか――――」 死柄木の足が、アスファルトを踏み砕いた。 破片と粉塵が、血飛沫のように舞い上がる。 その一片を、魔王の指先が優しくなぞった。 王に触れられた破片は、風に揺られて地面に落ちて。 そして次の瞬間、都市が"崩れた"。 大地が崩れる。 高層ビルが次から次へ、まるで自分の姿を忘れたように崩落していく。 崩壊に、終焉に染まる街の中。 魔王はその滅びの中心に立ちながら空を見上げた。 朝日の照らす終わりの世界で。 キラリと陽光(それ)を反射させた、鋼の何かが翔んでいる。 崩れゆく都市の悲鳴が木霊する中でも、その音は恐ろしいほどによく聞こえた。 それは遥か彼方、地獄にて産声をあげた大悪魔。 不滅。不撓。不屈。滅びを知らぬまま滅びを運び続けたモノ。 彼は数多の滅びを喰ってきた。そして今、その俎上に地上最後の魔王が載る。 空に躍った悪魔の影から。蛇の如くに、無数の鎖が飛び出した。 頭上から崩れてくる、高層ビルの大鉄槌。 それを触れぬまま微塵に切り裂きながら、悪魔は魔王に死を聞かせる。 ――ぶうん。 「――――しお」 「うん――――遊ぼう、とむらくん!」 滅びの大地に立つ、崩壊の魔王に。 悪魔の肩に乗った、狂愛の天使が応える。 どちらも同じ教師に見出され、育て上げられた悪の器。 彼らにとってこの世界は教場だった。 多くを学び、多くを知って、よく育った。 卒業式はすぐそこ。けれどその前に、彼らだけの卒業試験が待っている。 世界の終わる日、その朝に。 彼らだけの最終決戦が、その幕を開けた。 時系列順 Back カーテン・コール(前編) Next そんなヒーローになるための歌(前編)
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MG4KEになるために よぅ、お前ら! KCCTのMG、HIKARI.だ! ここではMG4KEを使う上で立ち回りを知る前に、MG4KEという武器の特徴や、爆破に持っていく際の心構え等を解説しよう。 後に説明するがMG4KE、MG4KE T-REXは普通のARとは違う武器種であるため、ARやSRと同じ立ち回りでは宝の持ち腐れとなってしまうことが多い。(クランメンバーの俺の兵種が皆と違うのはこのためである。) あくまで俺のスタイルであるため、情報を鵜呑みにするのはよくない。しかしこれからMG4KE T-REX(MG4KE)を使おうと思っているやつがいたら是非参考にしてほしい。 MG4KEの特徴 まずはMG4KEとはどんな武器なのか。ステマなしに公平に審査して、正直強武器ではないと思う。以下にその特徴を示す。 1.高い攻撃力 MG4KEの最も良い特徴は他の追従を許さない攻撃力だ。AK47と同等の火力、FG42にも劣らぬ射程距離、Sa58_Paraと同じ貫通力を備えつつ、ほぼ無反動で弾を撃つため単純な攻撃力だけならAVA内でもトップクラスだと言える。またあまり知られていないがMG4KEは集弾性も良い。「良いって言うけどスコープの中の円内でバラけるんだろ、ステマ乙」だって? 果たして本当にそうだろうか? スコープで覗いている時点でかなり遠くまでズームして見えていて、そのズームした画面の中の、実際は非常に小さい円の中でバラけるのであって実は相当集弾しているのである。 2.あらゆる行動が非常に遅い MG4KEを語る上で攻撃力と同様語らずにはいられないもうひとつの大きな特徴、それが動作が遅いということだ。以下に個人的な使用感ではあるがどれくらい遅いか示していく。 ・リロード速度:実測値4.66秒。絶対に安全とわかってからリロードしないと、リロード音を聞いて駆けつけた敵に喰われる。リロード音はグレピン音と同じくらいの扱いと考えて丁度良い。グレ投げれるくらい余裕があるとき以外、リロードは控えよう。 ・移動速度:AVA内最遅。足が遅いと名高いASWやカスタムなしPGMの倍くらい遅く、サブ武器に持ち替えたとき足が速くなったのが顕著にわかる。使用感としてはPMのデスモが歩くのと、MG4KEを持って走るのが同じくらい。他の武器持って09靴脱いだら大体そんな感じ。 ・取り出し速度:AR内最遅。メイン武器の取り出し速度はあまり重要視されない場合が多いが、感覚的にはTPG-1で武器取り出してスコープ覗いたくらい。グレ握ったまま敵と対峙したら自分の立ち回りが悪かったと思って諦めるしかない。 3.走り撃ちが全く出来ない 修正前のMG4KEのイメージがあるのかロマンでやっているのか、MG4KEを拾ったプレイヤーが必ずやろうとする動作に走りながらフルバーストしている姿を良く見る。しかしそれは絶対にやってはいけない。現在のMG4KEは常にスコープで覗き、敵と対峙したらその場でしゃがんで撃つが基本である。ただし上記のとおり攻撃力は非常に高いのでその場でしゃがんでいても的にはなりにくい。またフルバーストもあまり良いとはいえず、10発以上連続して撃つ状況は好ましくない。一度開いたレティクルは指きり程度では戻らないと思っていたほうが良い。 4.AIM力よりも状況把握力、先読み力のほうが重要 AIM力が必要ない、というわけではない。ただMG4KEは覗いて、しゃがんでジッとしていないとレティクルがガバガバになって使い物にならないため、せっかくのAIM力も無駄になってしまう。逆に止まって撃つことがメインであり低反動高集弾高火力なのでリコイルコントロール力やAIM力が大した事なくても武器の制御自体は簡単。なので調子の悪いときでもMG4KEが助けてくれる。俗に言うデレ具合は非常に良好で、基本的にはプレイヤーに対してゾッコンである。彼女(彼)の性能を存分に引き出せるよううまくエスコートするのがMG4KEを運用する上で重要である。 上記のような特徴を持つため、総評として ・ガンガン詰めたい、攻めたい人にはこれ以上ないほど向かない。 ・イモりがちな人、いつも味方の攻撃タイミングに間に合わない人は向かない。 ・Tabをあんまり見ない、見ても気にしない人には向かない。 ・冷静に置いて待つ、ブルーゾーンとか気にする人には合う。 ・攻撃力で圧倒したい、敵の凸とか止めてみたい人には合う。 ・MGなんだから70カスタムで弾幕プレイしたい、30カスタムでもロマンに浸りたい人には合う。 ・クランKCCT本部、オフィサーのHIKARI.にはこれ以上ないほど合う。 となるだろう。 MG4KEの立ち回り 上記のような特徴を持つMG4KEは、通常のARとは立ち回りが少し違う。ここでは、MG4KEを使う上での立ち回り方について解説しよう。 1.敵は正面に捕らえよう MG4KEの強みは、その火力の高さを生かした正面突破、つまりごり押しである。これはMG4KEの最大最強の特徴であるため、これを最大限生かすことがMG4KEを運用する上で非常に重要である。 2.敵が出てくる場所に先回りしよう MG4KEは足が遅いため敵が現れてからシフトするようでは確実に間に合わない。そのため、敵の動きや試合の流れを先読みし常に相手の出てくる場所に置くよう勤めよう。これができるかどうかが、MG4KEを持つ者の強さといっても過言ではない。 3.移動時は必ずサブ武器に持ち替えよう 足が遅いという欠点を補うため、移動中は常にサブ武器をもち、敵が出現する手前くらいでMG4KEに持ち替えよう。不意に敵と遭遇するのを恐れ、MG4KEを持ったまま走ってしまうと手遅れになる。 4.強いサブ武器を持とう 上記の内容と関係することだが、それ以上にMG4KEはすべての動作が遅く、弾切れ時や移動中に敵と遭遇した場合リロードや取り出している暇はない。体力が少ない敵を倒すのではなく、フルヘルスの相手すら喰えるほどの強いサブ武器を持とう。私のオススメはIngram_MAC、Beretta_Nine、Python.357等、サブ武器部屋で禁止されるレベルのサブ武器である。 5.どうしても走りたい場合、しゃがみうちを心がけよう MG4KEは基本的に置いて戦う場合に強力だが、爆破の場合そうもいってられない場合がある。そんなときは、撃つときにしゃがむことを心がけよう。不利なことに変わりはないが、幾分マシになるはずだ。3~5点バーストくらいで指きりするのも効果的である。 6.裏取り、不要な単独行動はなるべく控えよう MG4KEは覗く武器であり一度に他方向を見ることは極端に苦手である。また足が遅くシフトも苦手であるため、裏取りしようと不要に詰める間に味方が襲われると絶対に間に合わない。したがってそもそも裏取りには向かない武器なので、あまりお勧めしない。 7.積極的に詰めよう 上記と全く逆の事を言っているようだが、実はそうではない。MG4KEは動作が遅いので、イモっているといつの間にか味方が全滅している。また基本的に置き武器なのもイモになりやすい要因なので、意識して前線に立つようにしよう。攻撃力の高さは前線で真価を発揮する。 8.注意すべき相手 このようにMG4KEは非常に個性の強い武器である為、得意な相手と苦手な相手がはっきりしている。以下には特に注意すべき相手を紹介しておく。こういう相手と戦わなければならない場合は特に慎重に動き、すばやく引くことや場合によっては武器を持ちかえる必要があるだろう。 ・XM8、FG42:攻撃力と射程距離がある為、MG4KEの間合いを同じく得意とする。そのため中・遠距離における敵の攻撃力減衰に期待できないので、距離がある強ポジではMG4KEのアドバンテージが一つ失われる。 ・ボルトアクション系SR全般:同じく距離減衰によるアドバンテージが失われる上、相手は一撃でこちらを仕留めてくる。置きを基本戦術とするMG4KEはキメ撃ちが弱点であり非常に不利な戦いを強いられることになる。見つかったら基本は下がる、相手が外せばその場で仕留める、頻繁に半身フェイクを使う等、何らかの対策を取ろう。 ・ショットガン全般:ショットガンは射程距離が極端に短く、一見カモのように感じるが当の本人たちもそれは熟知していて、見つかったらすばやく引く、煙幕を炊いて接近してくるなどMG4KEの間合いに入らないよう立ち回ってくる。Blue_Skullのような多少遠距離でも通用するショットガンより、Neostead_2000のような近接でしか戦えないショットガンの方が撤退・裏取り・煙凸などの判断が早く危険である。 これらは俺がMG4KEを使う際に心がけていることなので、鵜呑みにするのはよくないが参考にしてほしい。以下にMG4KEの武勇伝を示そう。 注) 以下は、MG4KEのステマを多分に含みます。情報を鵜呑みにせず、参考、もしくはネタと考えて読みましょう! ・わずか1人のARなら大丈夫だろうと5人でAIRPLANE2側を突撃させたら撃退された。・MG4KEがいるというINDIA1中に足を踏み入れると、数秒後に小隊が全滅した。・攻撃させたのにやけに静かだと探索してみたらEU兵の遺体が散らばっていた。・Противник!(敵を発見!)と叫んだ兵士が、次の瞬間こめかみに命中させられ倒れていた。・BLACK SENT冷却、橋から2中までの10mの間にヘッドショットされ即死。・2人と合流すれば安全だろうと駆け寄ったら、分隊長をMG4KEが狙撃済みだった。・EU兵の3/100がMG4KEからの狙撃経験者、しかも守護神という伝説から「全凸ほど危ない」。・「そんな奴いる訳がない」といって攻撃しに行った5名の小隊が、30秒で全員遺体になって発見された。・「ロングなら(精密度低いため)狙撃されないから安全」とロングに突撃したPMが穴だらけの原形を留めない状態で発見された。・SRに狙撃してもらおうとラジオチャットを使ったが何者かに狙撃されており伝令を走らせても狙撃がなく、仕方なくSRを見に行ったら頭に穴のあいたSRと味方が死体で発見され、死体を見て「ヤツがやったんだ・・・」と言った兵士が次の瞬間頭部を失い倒れていた。・敵リス付近はMG4KEに撃たれる確率が150%。一度狙撃されて負傷する確率が100%なのと、その後運よく生き延びてももう一度狙撃され死ぬ確率が50%の意味。・MG4KEが狙撃で殺害したEU兵は正式なものだけで少なくとも505人、他にこれまた特技であったサブマシンガン(Ingram MAC)で殺害したEU兵の数は正式なものだけで200名以上。・さらに、当初は狙撃でもサブマシンガンでもEU兵の殺害数をカウントしていなかった。・MG4KE抹殺指令を受けたEU兵がそのラウンド中、遺書を書いた。 君のMGライフがより楽しくなれば幸いである。
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獣使いになるために! 獣使いになるためには、Lv30以上のジョブが必要になります。 まだ持っていない方は、Lv30を目指しましょう。 獣使いを習得するには、クエストを2つやらなくてはなりません。 クエスト1:息子に罪はない Lv30以上のジョブでジュノ上層G-7にいる「Shalott」に話すとイベント発生 ジュノ下層G-11にあるDoor Merchant s Houseを調べるとイベントがありクエストオファー クフィム島F-8にあるNight Flowersを21 30~05 30の間に調べるとイベントが発生するのですが 此処の前によくアクティブのタコがいるので、倒してからではないと調べられません Lv40以下の方は高Lvのお手伝いさん一人か、同Lvの人3~4人程集めて挑みましょう、バランスの良い編成ならば問題なく倒せるはずです(例忍戦白黒) ジュノ下層に戻りDoor Merchant s Houseを調べるとイベントがありクエストコンプリート。 クエスト2:獣使いジョブゲット ジュノ上層G-7にいるBrutusに話すとイベントがありクエストオファー イベントが終わるとクエストコンプリート クエスト終了後にジュノ下層G-11にあるDoor Merchant s Houseを調べるとイベント発生 ジョブ:獣使いを入手、これで獣使いになる事ができます。