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荒公日記とは、荒公三万が、毎日かかさずまぜまぜのべるで書いている日記の事。 概要 荒公三万が、毎日まぜまぜのべるで書いている日記の事である。 荒公三万は、必ず毎日書くよう、心がけている。 略歴 2009年 2月28日 - 荒公三万が、日記デビューする。 デスノート探しの旅、スタート。 3月7日 - 人気コーナー「おもしろ画像」「今日は何の日」が始まる。 3月14日 - 「おもしろ画像」「今日は何の日」を、土曜日は二連発にする。 3月23日 - あなたが好きな 桜ソングを募集。 3月31日 - 3月の日記コンプリート。 4月6日 - 「おもしろ画像」を、とりあえず終了する。理由は、単なるネタ切れ。 4月16日 - なんとなく、妄想日記をやる。 4月19日 - 週刊 マイ・ペースを創刊。だが、2日後に終了。 4月23日 - 「おもしろ画像」が、復活。新タイトルは「おもしろ画像・デラックス」。 4月28日 - 「今日の言葉」コーナースタート。 4月30日 - 4月の日記コンプリート。 5月1日 - 毎月1日は、感謝デーに決定した。 5月3日 - 「おもしろ画像」コーナー、公式キャラクター完成。名前は、重城賀三。 5月4日 - 「おもしろ画像」コーナー、公式キャラクター2完成。名前は、重城トメ。 5月9日 - デスノート探しの旅、完結。 5月13日 - リクエストにより、一ヶ月間・妄想日記開始。 5月31日 - 5月の日記コンプリート。 妄想日記 新シリーズ決定。6月14日から。 外部リンク 荒公日記の おもしろ画像アルバム - 「おもしろ画像」をまとめてみました。
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前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日? 琴は鈴のように 上条当麻と御坂美琴の半同棲半夫婦ライフ4年目。 上条大学2年生、美琴は高校3年生になっていた。 季節は孟夏を抜け、木々は紅く染まり、何とも過ごしやすい季節に、高校3年生の美琴は来年に迫った大学受験への勉強に励んでいた。 「ふーふふん、ふーふふん、ふんふんふーん♪」 …ワケではなく、上条の寮にて夕飯を鼻歌交じりで準備している。 高校3年のこの時期ともなると、世間では勉強漬けか、もしくは全てを諦めて遊び呆けているかどちらかだが、美琴は特に勉強するわけでもなく、だからと言って遊び呆けているわけでもない(彼氏の部屋にいるので遊んでいると言えば遊んでいるのだが)。 上条も大学2年という事で次の誕生日が来れば20歳の成人になり、いよいよ2人とも大人の階段を上り始めているというわけだ。 大学生の上条は魔の一年目を抜け、ややだらけ気味になっているが妻(予定)の美琴はそれを許さない。 美琴も人の事は言えないんじゃないのかと思うかもしれないが、ここでようやく美琴のこの余裕っぷりを紹介しよう。 御坂美琴の進路。 それは進学ではない。 美琴は高校を卒業と同時に就職する予定なのだ。 予定、と言っても既に内定が決まっている。 高校の出席日数も単位も完璧に近い程に取っているので、汗を流しながら頑張る受験生には、まぁ一応は羨ましい限りである。 上で紹介したように、ほぼ完璧の成績で高校を卒業出来るのだから普通に考えれば就職ではなく進学だが、その事について美琴は、 「大学はいつでも行けるでしょ? うちの母も高卒で就職したしさ」 と。 美琴の母、御坂美鈴は30代半ばにして14歳の美琴がいたので、美琴は美鈴が20代前半で産んだ事になる。 子は親のようになるのか、美琴も美鈴のように大学へは行かず、高卒して就職するに至ったようだ。 18歳で就職。ここで上条の部屋に完璧に住み込んで通勤(内緒)。賃貸などの家賃も節約し、上条美琴ライフへの資金にする&貯める算段。 上条が大学を卒業するのは2年後なので20歳。ここで挙式を挙げる予定。正真正銘の上条美琴の誕生予定である。 そこから1年くらい2人で新婚生活を送った後に、新たな生命誕生へ向け退職。 さらにそこから子供が中学生になるくらいまで専業主婦として夫と子(何故か分からないけど上条も美琴も産まれるなら娘のような気がすると言っている)に貢献し、そこから大学へ進学、卒業して再就職…というプランらしい。 このプランは美鈴が正にその通りやったので、やってやれない事はないのだ(美鈴も現在は大学を卒業し、再就職済)。 「学生の頃はラブラブだったみたいよ? うちの父と母は」 「はぁー。あの旅掛さんと美鈴さんがねぇ。まぁ、美琴たんの母さんの美鈴さんなんだから、学生の頃はお前みたいに旅掛さん追い回してたのかもな」 「そ、その辺りは詳しくは話してくれないけど…」 「……でもそうしたら俺と旅掛さんの間に何とも言えない何かが芽生え、力量の差を見せ付けられる気がするな」 「え?」 「だって…旅掛さん、世界飛び回ってるだろー? 俺なんか目指してるのは体育教師だぜ」 「べ、別にいいじゃん。あまり家に帰れないから寂しいってよく言ってるみたいだしさ。その点地元なら家に帰れるのよ?」 「まぁ…、それはそうか」 美鈴が上条や美琴に対し基本的に何も言わないのも、昔の自分と合わせているからなのかも、と美琴は言う。 確かに自分達がまだ高校生、中学生の頃に年末年始に同棲させたりプロポーズさせたりとやりたい放題だったけど、そういう過去があったのならそれも何とか頷ける。美琴の祖父、つまりは美鈴の父や旅掛の父がこのプランを何て言ったのかは分からないが、美琴のプランを止めない辺り、美琴の性格からして何と言おうと勝手にやってしまうのだろうけどそれ程猛反対されたって訳でもないのかもしれない。 「当麻の所は?」 「父さんと母さんの時? あー…、どうなんだろうな。言われたかもしれないけど覚えてねぇや」 「あ。そ、そっか。ごめん…」 「いや、いいよ。最近小ネタばっかりやってたから記憶喪失の事さえ忘れてたし」 「何の事?」 いや、マジで忘れてた。 そういえばこの原作、バトル物じゃん。血とか程よく出るじゃん。今結構シリアスな展開じゃん。 最近はほのぼの小ネタしか書いてないからすっかり忘れてたぜ。と言ってもこの僕にバトル物やシリアス物なんか書けませんがね。安心しながら読めるSSに限りますよ、やっぱりね。あ、いや。シリアス物も好きですよ? でもギャグやほのぼのの方が好きって事でね。 「母さんは苦労したみたいだな。父さんが…、その辺りの女の子に手当たり次第言い寄られてたみたいでさ」 「…やっぱ父子ね」 「え?」 「言っておくけど」 そう言うと美琴は包丁を持った。 最近は切れ味が多少落ちてきたが、いちゃいちゃ年末年始時に詩菜直伝の研磨術で切れ味は最大の真っ白だ。これなら弾かれる事はなくざっくりいける。 「浮気は」 振り落す。 その先はまな板だったが、その上で寝そべっていたお魚さんの頭と胴体が切断された。 流石は切れ味白。 一撃で部位破壊である。 スキル『破壊王』も付いているかもしれない。 「だから」 そして美琴は「えへ」と笑った。 怖ぇー。笑顔が逆に怖ぇー。 美琴のキャラがツンデレ→デレデレ→ヤンデレとか冗談にも程があった。 上条はその笑顔にかけて、もう一度確固たる意志も持ち浮気は一生しないと誓ったらしい。 だってあれだもんね。 腕とかならくっ付くけど、流石に頭はまずいもんね。 流石の冥土返しさんも頭悩ませるよね。 つか自分が嫌だ。 腕でさえ驚かれるだろうが、頭とかだと「俺、首から上吹っ飛んだ事あるんだぜ」とか酒の場でさえ言えないジョークだ。 「はい、出来たわよー」 上条がガタガタと震えていると、美琴がおぼんにご飯を乗せて運んできた。 半同棲4年目になるというのに美琴の甘えは納まる事を知らず、相変わらず上条の隣に座り「あーん」やら「おいし?」やらやってくる。 これはとても嬉しいのだが、さっきの事もあったので正直怖かった。 でも言わない。機嫌を損ねると駄目だ。それはここ4年で学んだ事である。 しかしこのままだと尻に敷かれるのがオチだ! 何とか夫(予定)としての威厳を保たなければならない! よーし言うぞ。言ってやる。俺ぁ男だ。 「いいか美琴。よく聞くんだ」 「なによ」 「上条さんは行く行くは一家の大黒柱になりたい」 「うん」 「つまりはあれだ。上条さんとしては―――」 「あーん」 「あー…むっ。んむんむ」 「おいし?」 「うん」 駄目でした。 くそぉ。この笑顔から繰り出されるあーんは反則だぜ。 旅掛さんも美鈴さんにこんな感じにやられて涙を呑んだのだろう。今度話してみよう。20歳になるし、酒でも飲みながら。凄い意気投合しそうだ。 そしてその上自分の母である詩菜の隠れヤンデレも垣間見さしてるもんだからこっちとしては手の打ちようがねぇ。 もう完璧に上条家の頂点は美琴だ。分かっちまった。尻に敷かれるの分かっちまった。 「そういえばさ」 「ん?」 上条は美琴のご飯を食べながらふと思った。 「最近御坂妹見てないんだけど、何か知ってる?」 「へ? あ、あぁ…んっと」 むっ。 この反応。何か知ってるな。 「あ、あーん」 「んな事で誤魔化されるかぁー!」 上条必殺ちゃぶ台返し。 初めての出来事である。 でも折角美琴が作ってくれた料理が勿体ないので、心の中でひっそりとやる「マインドちゃぶ台返し」だが。 「今は言えないけど、アンタが大学卒業したら教えてあげる」 「何だよ。また随分先だな」 「そういう約束だから。あの子と」 「御坂妹?」 「うん」 「ふぅん」 つまりは自分が会ってないだけで、美琴と御坂妹は会っているという事か。 そんな事を思っていると、美琴は「この前会った時は『ミサカは超元気です』って言ってたわよ」と言った。 『あとあの方にもよろしくとお伝えください』とも。 元気ならいっか。 しかし、いきなりこんな話始めるとか伏線にも程があるだろ。 そう! ぶっちゃけよう! つまりは次でこの物語は終わるのだ。 いや、2人からして言えば始まるのだが、客観的に見れるのは次で最後だろう。 さて。 物語は、いきなりクライマックスのラストスパートである。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日?
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日? いちゃいちゃ年末年始! 「美琴ー、そろそろ行くぞー」 夫婦生活2日目は御坂家に顔を出すことになっている。 上条が起きたのが遅かったこととその後にいちゃついてた事もあり、時計の短針はまもなく真上を指そうとしていた。 上条は玄関で黒のコートと緑の上琴マフラーを装備し美琴待ち。美琴が言うには近所なのでそんなに急がなくてもいいみたいだが、遅くなればなるほど帰りがおそくなるぞと言ったら速攻で支度をし始めた。 「美琴たーん、まだー?」 「もうちょっとー」 「何やってんのー?」 「乾燥機ー」 「…なんで?」 美琴は支度を始めるや否や洋服を持って脱衣所に駆けて行った。そこで何やら洗濯機をかけているのだが、それが終わると今度は乾燥機にかけているらしい。 もうかれこれ20分くらい美琴&乾燥機待ちなのだが、しばらくすると終了のアラームがなり、それと同時に「きたっ!」という声と共に美琴が駆けて来た。 「当麻ー、お待たせー」 「何を乾燥機にかけてたんだ? そんなに急いで乾かさなくても―――」 「これ…」 「ん?」 美琴が持ってきたのは先程まで美琴が着ていた上条のワイシャツ。触ってみるととても温かく乾燥機にかけられていた事が分かる。 「これ…、着てって」 「え? だってこれ美琴のパジャマになるんだよな?」 「う、うん。だから…、着てって」 「…?」 上条は疑問に思いながらも、美琴が何やらモジモジしてるし着て欲しそうだったのでコートとセーターを脱ぎ捨てワイシャツを着込んだ。下着、ワイシャツ、セーター、コート、マフラー…暑い。ワイシャツが特に。 美琴の狙い。それは上条のワイシャツをパジャマにする事。しかし自分が一晩着たために上条の匂いが薄れてしまったので、洗濯しておニューのワイシャツを上条に着て貰わなければ。もう美琴は『上条のワイシャツ』という事だけではダメになっていた。 そして上条がワイシャツに袖を通すのを確認すると美琴は顔を真っ赤にした。一度覚えたワイシャツのあの心地よさをまた味わう事が出来ると思うだけでふにゃーとなりそうだ。 「…お前それで寒くないの?」 美琴は茶色のコートを着てはいるが、スカート姿。上条は…というか男なら多分一度は思う事だろうが、女の子は冬でスカートというのは寒くないのだろうか。慣れとか? 「寒いけど、家近いから」 上条と美琴は部屋を出ると美琴の実家へ向かって歩き出した。鍵を閉める際に、美琴は『上条 当麻 美琴』の表札に再度頬を染めエレベーターの中ではずっとあうあうしていた。 一階に着きエレベーターホールを抜けると、レンガが引かれた敷地を歩き一般道に出る。 「そういえば美琴ん家までどれくらいなの?」 「ここ」 「近っ!」 そこには確かに「御坂」と表札がかけらている一軒家があった。上条家より徒歩5分。マンションを出てからは徒歩2分もかかってないだろう。なるほど、これなら美鈴さんは寂しくないはずだ。すぐにでも上条家に遊びにいける。…つかマンションに来る前に通ったような。 「…」 「…当麻? ど、どうしたの?」 「……いえね。なんつーかもっとこう、どんな家なのかとか想像して行きたかったっつか」 「そ、そうなの? 普通だって言ったじゃない」 「普通…ねぇ」 お嬢様でもある美琴の実家としては普通だったが、それでも結構な大きさだった。家は洋風な作り、美しいガーデニング、…ってあれ? でも美鈴さんが一人で住んでるんだよな? もしかしてガーデニングが趣味とか? 乙女の美琴の母親ならもしかしたら……。 「おや、おー! 当麻くん! 来たかー!」 そう言って話しかけてきたのは美琴の父親の旅掛。旅掛は玄関の前の石段で腰かけて缶コーヒーを灰皿に(一番安い)タバコを吸っており、首と頭にタオルを巻いていた。 スーツでない旅掛を見るのは初めてで大掃除中なのかジャージ姿だった。こうしてみるといいお父さんでスキルアウトなんかじゃない。…いやスーツでも違いますけどね? 「旅掛さんこんにちは。お久しぶりです」 「久しぶり。いやー、うちの美琴が迷惑かけてるみたいですまんな」 「い、いえ…って、大掃除終わってなかったんですか?」 「いやいや、昨日で家の中は終わったんだけどね。今日は庭の手入れしてたんだ。今終わったところ」 「呼んでくれれば手伝ったのに…」 「わっはっはっ。ありがとう、でもそんな事したら怒られそうだ」 「え?」 「ふぇ? な、何で私を見るのよ」 「おかえり美琴たーん」 「た、たん言うなっ!」 「何か当麻くんよりキツイんじゃない?」 「…………あぅ」 「はは」 旅掛はあうった美琴に笑うともう一度タバコを吸って缶コーヒーの中に入れた。短いと濃くなるので結構くるようだ。 「ささっ、寒いだろ? 家の中にどうぞ」 「あ、はい。お邪魔しますー」 「ほら、行くぞ美琴ちゃん。何あうあうしてんの」 「あうあうあう…」 「はぁー…」 上条は御坂家の玄関で声を漏らした。その原因は内装にあり、広々とした玄関に2階まで筒抜けな天井は開放感溢れる。廊下も広く、伸びてる方に垂直に寝そべっても余りありそうだ。 「何なのこの木みたいの。こんなの置いてあるのドラマだけかと思ってたんですけど」 「去年帰った時はこんなの置いてなかったわね」 「まぁ自分の家だと思ってゆっくりしてってくれ。半分はもう当麻くんの家だからね」 「ちょっ、旅掛さん!」 「あぅ…」 「そ、そう言えば父さんはどこですか?」 「上条さんならリビングにいるよ。そこ左ね。俺トイレ行って来るからさ」 「わかりましたー」 旅掛はそういうと何やらドアを開けて入って行った。なるほど、あそこがトイレか。 上条も先程言われた通りに行こうとしたら美琴が我に返りスリッパを慌てて用意した。脱いだ靴も綺麗に揃えて出来る女をアピールしなきゃ! こういう所からしっかりしないといけない。…と、学校で習ったような習ってないような。 「こ、コートはここ」 「うぉ。何この上着掛け。何かどんどん美琴と俺がつり合わない感じが出てきてるんですが」 「ふぇ? なっ、なななな何言ってんのよ! こ、これはその…、あの…」 「あー、冗談です冗談です。そんな泣きそうな顔すんなよ」 「うぅ…」 上条はそう言って美琴の頭を優しく撫でると「お邪魔します」と言って上がった。美琴は「ただいまでもいいのに…」と小声で言ったが、上条は聞こえないフリをした。 広い廊下を歩いていくと突き当たり、そこを左に曲がる。そうするとトントントンという音と共に何かいい匂いがしてきた。そこはキッチンのようで、エプロン姿の詩菜が何やら調理をしているところだった。既に何品かは出来上がっており、テーブルの上に並べられている。 「あら、当麻さん。美琴さん。こんにちわ」 「よ、母さん。いい匂いだなー」 「今お昼を作ってる所なんですよ。当麻さん達の分もありますから待ってて下さいね」 「マジですか。楽しみだなー……ん?」 「…」 「……美琴、たん?」 美琴はそんな詩菜の料理を見てプルプルとしている。一体どうしたのだろうか。もちろん理由は見た目で既に負けを認めているからなのだが。 そして美琴がプルプルしていると、リビングの方から美鈴が入ってきた。 「おー、新婚さんいらっしゃい。…もぐっ」 「こんにちわ美鈴さん…って、つまい食いですか」 「ふぇ? …んぐっ、まぁまぁ、お二人もどうぞ」 美鈴はそう言うとつまみ食いしたかぼちゃの煮物が入った皿を差し出した。かぼちゃの匂いと砂糖の甘い匂いが食欲をそそる。 「うまっ!」 「おいしいでしょー? ほら美琴ちゃんも」 「……あむっ」 「どう?」 「…………、おいじぃ…」 「ふふん。これは私作の料理ですよん」 「ぶぇぇ…」 美琴の自信は完膚なきまでに打ち砕かれた。常盤台で習ってるといっても、専業主婦の料理と夫娘がいる主婦の料理には天と地の差を感じたようだ。何といっても家庭的で何か温かい料理なのだ。 一体何が違うっていうの? 愛なの? 愛なら誰にも負けないというかごにょごにょ…。 「やっぱり美琴さんは手際いいですね。そうそう、そこに切れ目入れてね」 「は、はい」 「包丁の切れ味が落ちてきたらお茶碗かなんかの底の裏を砥石代わりに使うの。そうすると大分違いますよ」 「は、はい」 「ふふ」 美琴は早速詩菜に弟子入りしていた。美鈴が着けていたシンプルな黒い無地のエプロンをかっさらい詩菜の隣で料理を作っている。 詩菜が何か言うたびにいつの間に入れたのかポケットの中からメモ帳を取り出しは書き込んでいる。チラッと見えたがタイトルは「マスター主婦への道」らしい。 「何か頑張ってんなー、美琴」 「ふっふっふっ。よっぽど私の料理に敗北感を覚えたのね」 「確かに美鈴さんの料理はうまかったですよー」 カッ――――! 「み、美琴さん。それはぶつ切りではなくて…!」 「ふぇ? あ、す、すみません! あわわ…」 ……。 「と、当麻くん。あ、あっちにお父さんいるから行ってましょうか」 「そ、そうですね。と、父さんに会いたいなー」 上条と美鈴は美琴から発する何かに恐怖し、犠牲になった何かに合掌するといそいそとキッチンを後にした。このままここにいて会話を進めていったら恐ろしい事になりそうだ。 「…って、あれ? 父…さん?」 「あ。当麻か、久しぶりだな」 「久しぶり…って、どうしたの?」 「…」 キッチンの隣はリビングで、そこにあるソファーに上条の父刀夜はうつ伏せに寝ていた。腰には湿布。 「上条さん、ぎっくり腰になっちゃってね」 「…マジか」 「……恥ずかしい」 「だ、大丈夫なの?」 「もう痛みは引いてきたよ。御坂さんのご好意で昼まで休んでるんだ」 「そ、そうなんですか。まぁ…、ゆっくり休んでください」 「うぅ…掃除の手伝いに来てるのにぎっくり腰とは。情けない…」 「あー…」 上条と美鈴は何とも言えない空気に気まずくなったが、しばらくするとキッチンから「お昼出来ましたよー」と詩菜の声が聞こえてきたので何とかその場を繋ぐことが出来た。 刀夜は後で食うよと言うが、上条が皆で食った方がうまいだろと刀夜を支えキッチンに向かっていった。 「じゃあ、皆揃った事だし。いただきまーす」 旅掛は合掌しいただきますコールをした。御坂家は3人家族のハズだが全てにおいて大きいので、テーブルも上条家入れての6人を余裕で配置出来ている。 テーブルの上には様々なおかずが揃っており、とても昼ごはんだとは思えない。…が、とりあえず涎の止まらない上条はがっつく事にした。 「いただきまーす。…んむっ、うまっ!」 「ほぉ。これはうまい。昨日も頂いたが上条さんの奥さんの料理は素晴らしいですな」 「あなた。それ、私が作ったんだけど」 「…」 「ん。こっちは母さんの味付けだな」 「あらあら。分かりますか刀夜さん」 「そりゃあいつも食べてるからね」 「あらあら。うふふ」 「…」 「…? 美琴ちゃん? 食べないの?」 「え? あ、う。た、べる…」 美琴はそう言って箸を持つが、モジモジしてるだけで料理に手をつけない。何やらおかずの中の玉子焼きをじっと見ているような。 「…?」 上条はそんな美琴に疑問を抱きながらも箸が止まらない。ここ最近自分で食ってない上条は「がっつく」という言葉を思い出したようにまさにガッツガツいっていた。 そして美琴の視線の先の玉子焼きにも手を付け――― 「あ…」 「あむっ。もぐもぐ…」 「…」 「うまっ!」 「……………えへ」 上条のうまいに機嫌と言うか笑顔が戻った美琴は、先程上条が取った隣の玉子焼きを摘むと半分頬張った。一応はうまく出来てるけど…、詩菜さんには敵わないな(美鈴にも負けてるがくやしいのでカウントしない)。で、でもいつか―――! 「美琴ちゃん。ご飯食べ終わったら詩菜さんと一緒にお節作るんだけど一緒に作る?」 「…!」 美琴は「お節」というワードに超反応した。確かクリスマスイブの時に上条が楽しみにしてたような。そしてその時に頑張って作ってみるって言ったような。 「つ、作る!」 「うふふ。一緒に頑張りましょうね、美琴さん」 「は、はい!」 「何か美琴やる気になってんなぁー」 上条はいいところでいつも鈍感だった。美琴はアンタの為よ! と大声で言いたかったが、言ったら言ったでまた美鈴と旅掛にからかわれるので言わない事にした。 「当麻くんに食べさせたいんだよねー?」 しかし美鈴にはバレていたらしい。あうあう…。 「かまぼこは切って紅白で並べると見栄えが良くなりますよ」 「は、はい」 「ちょうろぎうまっ」 「伊達巻も丁度いい太さにね」 「は、はい」 「数の子うまっ」 昼ご飯を食べ終わり女性陣(主に詩菜と美琴が。美鈴は試食と言う名のつまみ食い)が料理をしている中、男性陣はリビングで食休みしていた。 「母さーん。お茶くれー」 「俺も頼むー」 「美琴たーん。俺も熱々のをお願いしますー」 この3人は似た物同士のようだ。きっと上条が刀夜旅掛と面識が無くても絶対に息が合い、親しくなっていただろう。 「刀夜さん。ここは御坂さんのお家なんですよ? あまり行儀の悪い事はしちゃいけません」 「はい…」 「あなたも。上条さんが見てんのよ?」 「す、すみませんでした…」 「あ、アンタも! えっと…、その……とにかくぐーたらしない!」 「わ、わかりました…」 その似た物同士に説教するこちらも似た物同士の3人。当麻、刀夜、旅掛は各々の妻(一部予定含む)の美琴、詩菜、美鈴の前で正座させられていた。11月22日の時にチラッとだけ聞いたが、頭が上がらないのは本当のようだ。 …俺はそんな事なかったハズなのに、この場の空気が。母さんと美鈴さんが発するオーラに美琴たんが…。 しかし何と言うか上条さんと美琴のいちゃいちゃと言うよりも、上条家と御坂家のいちゃいちゃである。もう仲が良すぎなのである。 そんな中美琴はここにいる全員左手の薬指に指輪がはめられている事に気付き、俯いてあうあうしだした。詩菜の事は詩菜さんと呼んでいるが、刀夜の事は何て呼ぼうか? お、おおお…お義父さん、とか? ふ、ふにゃー…などと考えてもいた。 「美琴ちゃん。その調子よ。デレデレするだけが妻の務めじゃないの。やっぱり旦那をちゃんと調教しないとね」 「ふんふん」 妻たちは旦那に説教するとキッチンに戻り料理の続きを始めた。そこで料理だけでなく妻としての心得も美琴に伝授する。 「そうですね。美琴さん? たまにはお預けにする精神も持ってないといけませんよ」 「は、はい」 美琴は美鈴と詩菜の助言をしっかりとレポートに書き込んだ。これなら突然電池切れになっても大丈夫だ。 「…じゃあそろそろ聞いちゃいますか」 「あらあら。美鈴さんったら」 美鈴は突然(つまみ食いの)手を止めると、詩菜に向かって笑みを見せ何かしらの合図を送った後美琴の方を向いた。 こ、この笑み…絶対何か企んでいる顔だ。ど、どうしよう…多分って言うか絶対当麻関係の事よ。わ、私の顔が…真っ赤に……プスプス。 「そうねー、まずはその大事そうに首からかけてある指輪について聞いちゃおうかな」 「あぅ…」 やっぱりーーっ! 当麻助けてー! …と思いリビングの方をチラッと見るが、愛しの上条は暇だったのか刀夜、旅掛と一緒にトランプしていた。ババ抜きのようで(誰がババだって?)一位刀夜、二位旅掛、負けはやっぱり上条だった。 ところで昨日会った時に言われたが、美琴は結局料理する時は指輪を外しネックレス状にしている。汚れないにしたってちょっとは違うハズだし…。 ちなみにここだけの話だが、美琴はシャワーと言うか風呂に入る時間が前に比べると大幅に減った。それでも結構な時間入っているのだが、理由はもちろん指輪。美琴は風呂の時も指輪を外し浴室に持って行かないため、その時間はとてもウズウズしている。 今は夫婦生活の為同居しパジャマに上条のワイシャツを使っているが、着るとふにゃーってなるためにその隙に指輪がどこかに行きかねない。…が、ワイシャツよりも指輪の方を優先しているので大丈夫のようだ。 「いつプレゼントされたの?」 「………クリスマス」 「どこで?」 「と…あ、アイツの部屋で…」 「他には何か貰ったんですか?」 「ふぇ? そ、それは…」 「もしかしてぇー、チュウ?」 「っ!」 「あらあら、美琴さんから煙が…」 「ふんふん。当麻くんも意外と手が早いわね…」 「あうあうあう…」 「あとさ、当麻くんセーターの下にワイシャツ着てるじゃない? あれは?」 「ふぇ!? あ、あれは…その、そう! アイツが寒いって言うから厚着を―――」 「美琴ちゃん? 嘘だって顔に書いてあるわよ」 「あぅ…」 「あまり当麻くんのワイシャツに慣れちゃうと常盤台に戻ったときに寝れなくなっちゃうわよ?」 「あぅ…」 「じゃあ私からは…、そうですね。昨日の夜は何したんですか?」 「―――――!」 「ちょっ、詩菜さんストレートすぎよ! み、美琴ちゃんが―――」 「あら? 献立の事なんですけど…」 「ふ…」 「きゃーーっ! 当麻くーーーんっ! ちょっと来てすぐ来て早く来てぇーーーーーーーーーーーっ!!!」 「ふにゃー」 「はいはいはーい…って、みっ、美琴たーーーーーーーんっ!!!!!!」 美鈴の声に超反応した上条はグラビトン事件並の速さで美鈴と詩菜の前に割ってはいると、美琴からの漏電を掻き消した。その後は頭に手を置きトドメを刺した。 え? 昨日の夜? それはその…、あう…。 「当麻ー、大根おろしすってー」 「うーい」 上条と美琴は現在住まいであるマンションの部屋に帰ってきていた。ふにゃーから帰ってきたら既にお節が作り終わっており、年越し蕎麦にも取りかかろうとしたが茹でるだけだし添える大根も切るだけなので今日はここまでにしたのだ。あまり長居すると夕食の準備が疎かになるし、いちゃいちゃ出来ないっていうかごにょごにょ…。 帰りに近くのスーパーで食材を買うと料理を作り始める。妻としての心得その1。地域の食材の相場を把握せよ。美琴はレベル5であるが故にお金には困らないためか何でも買っていたが、将来のために生活費もちゃんとしなければならない。将来のことって? そ、それはその…、本当に結婚した後とか? こっ、子供の養育費とかあうあう…。 「お。魚いい感じですね。で、大根は?」 「はい。皮ちょっと剥いてね」 「はいはい」 「ハイは一回でしょ」 「はい」 妻としての心得その2。料理は妻だけやるものだと思わせない。一緒に作った方がその後も楽しく食事できる。 「出来たー」 「お疲れ様。じゃあ食べよ」 「おー、ってあれ? 今日は向かいに座るのな」 「な、何よ。普通でしょ?」 「まぁ…、俺はいいけど」 「うっ」 妻としての心得その3。たまにはお預け。たまにはお預け…って、私がお預けされてるような! ふにゃーーーっ!!! 「うまうま」 「うぅ…」 「どしたの美琴たん。食わないの?」 「ふぇ? た、食べるわよ! もぐもぐ…」 「…」 そこで上条は思った。これは久しぶりの素直になれないツンツンモードの美琴なのだ、と。そして美琴マスター上条当麻は少しばかしいじわるをしてやろうと思ったのだ。 「はい美琴たん。あーん」 「ふぇ? あー…って、んんっ! じ、自分で食べる!」 「………あ、そういえば今日はいっぱい汗かいたからワイシャツは洗濯しなきゃなー」 「ふぇ!?」 「今日は冷えるみたいだから温かくして寝たいなー。そうだ、湯たんぽ! 湯たんぽでも使おう」 「あ、ああああの…!」 「まだ早いけど今日はご飯食べ終わったら早く寝るかな。明日は大晦日で遅くまで起きてるしね」 「ふにゃーーーーーーーーーーーーーっ!!???」 ツンツン妻モード美琴陥落。その後は瞬時にしてデレデレになり上条の隣にやってきては箸を奪い取りあーんしまくった。流石はレベル5。状況に応じて柔軟に対応する脳を持っている。…ただ我慢できなくなっただけだが。 そしてワイシャツを上目使いで脱がせると昨日と同じくまた脱衣所で着た瞬間倒れ、上条に担がれてリビングまで運ばれる。だって気持ちいいんだもん。 「ほら、美琴。もう遅いから寝るぞー」 「もうちょっと…」 「…俺先寝る―――」 「行く」 上条はふにゃふにゃな美琴とじゃれ合うと、和室に入っていった。年末という事もあり特番が組まれていたテレビ番組を一通り見終わると結構な時間になってしまった。まぁ明日は夜までに御坂家に行けばいい約束をしたので寝坊するには全然問題ないのだが、正月といえど正しい生活を送らなくてはならない!(意識が薄れてくると何かしでかしそうなのが本意)。 「今日は一段と寒いなーって美琴たん。お前ホントに大丈夫か? ワイシャツ一枚で」 「寒い」 「そりゃ寒いだろうがよ。何か着てきた方がいいんじゃないの? 風邪でもひいたら厄介ですよ?」 「布団の外はもっと寒い」 「…ったく、ほら」 「ふぇ?」 そう言うと上条は自分の布団を開け、美琴に「おいで」のサインを出す。本当に風邪なんかひかれたら厄介だし、さっきちょっといじわるしてしまったのでそのお詫びも兼ねてるのだ。流石美琴マスター上条当麻。ツンデレの扱いに抜かりはない。 「…いいの?」 「寒くて寝れないんじゃ困るでしょ」 「……えへ」 美琴はモゾモゾと上条にくっつくと優しく抱きしめた。そうすると先程までの寒さが嘘のように全身を温かくなり心地よい睡魔に襲われる。上条は何か別なのに襲われる。…が懸命に表には出さない。 今日も幸せの時間が終わっちゃう。でもいいんだ。夢でもいつも一緒だし…。また明日も明後日も、この先ずっとずっと一緒だし。えへへ。 「おやすみ、美琴」 「おやすみ、とう…ま」 そして二人は夢の世界に入っていった。現実でも夢の中でもバッチリいちゃついてる上条と美琴は、もう他の人から何もいえない。言っても無駄なくらい熱いのだ。冬の寒さ、仮にふぶきが吹こうとも心地よいそよ風になるだろう。 上条当麻と上条(仮)美琴の同棲生活、いちゃいちゃ年末年始2日目終了。明日は大晦日でいよいよ新年を迎える。いい年で、ありますように…ふにゃー…。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日?
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日? 愛する幻想殺しへ超電磁砲が色々頑張るおはなし 「へ? 当麻ってまだ15歳だったの?」 「おうともよ。上条さんの誕生日はまだ来てないのでありますのよことよ」 「ふ、ふーん。…ち、ちなみにいつなの? 誕生日」 雪が残る学園都市。今日は2月12日で街中はバレンタイン一色となっていた。11月22日の「いい夫婦になる日」で目出度く恋人になったカップルも、これから新たに想いを打ち明けようとしている女の子にもドキドキのイベントデーだ。 上条当麻と御坂美琴は、いつものように学校が終わったら合流し公園の自販機前まで来ていた。上条たちは公園に来るまで誕生日の話になり、美琴は上条がまだ15歳である事を知る。 そういえば付き合って誕生日について聞いてなかった。…が、運がよかったのか彼氏である上条の誕生日はまだ来てないらしい。美琴はホッと慎ましい胸を撫で下ろすも、上条から返って来た返事は予想の斜め上をいく返事だったのだ。 「2月14日だけど」 「え」 恐るべし、上条当麻。まさかまさかのバレンタイン当日に誕生日とは。ここでも尚、フラグ体質を予感させるとは。 もはや頭の中は上条一色になっている電撃姫は、イベントデーにはプレゼントしてあげたいと思う。つまりは2月14日のバレンタインと上条の誕生日、同時に2個もしくは究極の1個をプレゼントしなくてはと演算を開始した。 バレンタインのチョコレートは明日にでも材料を買って作ればいいとしても誕生日プレゼントはどうしよう……。チョコ作って「これ誕生日プレゼントと兼用だから!」って言っちゃう? いいやダメだ。そんなんじゃ手抜きって思われちゃう。で、でも今日入れてあと2日で何をしろと…? 編み物は無理だし…、うぅ…。 まったくもう当麻はっ! あげる私の身になって生まれてきて欲しいわねっ! ……と、心の中で激しく思う美琴であったのだが、もちろん上条からして言えば「そんな事言われても」状態である。 「美琴? どした?」 「…ふぇ? あ、ご、ごめん。考え事してた」 「そっか。で? 今日はこれからどっか行くか? それとも帰る?」 「そ、そうね…。凄く行きたいんだけど、今日はどうしても外せない用事が出来たみたい」 「そうなの? じゃあ、そこまで送っていこうか?」 「だ、大丈夫。ありがと」 「おぉ。じゃあまた明日な」 「う、うん。遅刻しないでよねっ!」 「はいはい」 「ハイは一回って言ったでしょ!」 「はい」 そう言って上条は手を一回だけ軽く挙げると帰っていった。美琴はその背中を見送り、見えなくなると一瞬にして携帯を取り出し某検索サイトで『彼氏 プレゼント 誕生日』と入力。調べにかかった。…が、美琴がいいと思うようなプレゼントが見つからず、携帯な事もあってか検索しづらい。 「うぅ…、どうしよう。もう明後日なの―――」 「話は聞かせてもらいましたっ!」 「に?」 美琴が携帯を見ながら涙目になっていると、自販機の後ろから初春飾利と佐天涙子が出てきた。一体いつからそこに? と、美琴はフリーズし頭からボボボボと煙を噴出している。 「す、すみません御坂さん。盗み聞きしようとしたわけじゃないんです。ただお二人の邪魔したくなくて…、隠れてたら出るタイミング失って」 「そ、そうだったんだ。別によかったのに」 「いいなぁ御坂さんは。彼氏とラブラブでさぁ。ねー初春?」 「はいっ。羨ましいです。御坂さん」 「あぅ…」 美琴は上条絡みではすぐに真っ赤になるのが癖というか体質みたいで、それを見た初春と佐天も顔をニヤケさせずにはいられない。だってあのカッコよくて頼りになる御坂さんがこんな…、ねぇ? 真っ赤に…ねぇ? にやにや。 「……っと、そこで悩める御坂さんに朗報があるのでした!」 「…ふぇ?」 佐天はそう言うと両手を上げると、隣にいた初春はマウスパーカッションでドラムロールをし始める。…うまい。初春さん、何者? そして暫くすると「じゃんっ!」と初春が鞄の中から白井のテレポート並みの速さでパソコンを取り出すと、その画面を美琴に見せた。佐天は片膝だけ地面に着けて、初春のパソコンに向かって両手をポンポンの様にフリフリしている。美琴は一瞬の出来事にちょっとだけ後ずさりするが、パソコンの画面も気になったのでとりあえず見ることにする。何かのサイトのホームページらしいけど…、なになに―――? 「『今年のバレンタインはこれっ! ○○社がプレゼンする愛を深めるチョコレート』って…、なにこれ」 「今女の子の間で大ブームなんですよ? 何でもニュースで紹介された時にレポーターの人があまりの美味しさに気絶したとか」 「そ、それは凄いわね…。でもチョコは…その、自分で作りたいって言うか…その…」 「チョコのように甘いですね! 御坂さんはっ!」 「なっ、なによ? 何が甘いって―――」 「例えば…そうですね。クッキーと御坂さんが好きなゲコ太のキーホルダー、彼氏さんから貰ったら嬉しいのはどっちですか?」 「そ、そんなの…両方嬉しい、けど」 「でもクッキーは食べ物ですからなくなってしまうんですよ? でもキーホルダーは形として残ります。なら―――!」 「…!」 「チョコは買って誕生日プレゼントを手作りするべきですっ! 形残る思い出の一品をっ!」 「!!!」 「(初春…今日はなんか熱いね。能力が暴走してるのかな?)」 美琴は初春の言葉を受けて完璧に固まっていた。そうよ、そう。チョコはなくなっちゃうけどマフラーとか指輪みたいに形残る物なら、その後もずっと見る事が出来てふにゃふにゃになれるじゃない! 「でもこのチョコ今学園都市じゃ売り切れみたいなんですよ。14日に再入荷って言ってましたけど」 「なっ…! 超ギリギリじゃない。学校が始まる前はお店開いてないみたいだし…、終わったら速攻で買いに行かないといけないわね」 「私達も一応その日に探し回ってみますよ! 暇ですし、初春も非番なんだよね?」 「はい! 私もどんなチョコか気になりますし…御坂さんも2箱余ってたら確保してくださいね」 「分かったわ! …となると、あとは誕生日プレゼントだけど……うん。これは自分で考えるわ。ありがとね初春さん、佐天さん」 「「いいえー、私達は恋する乙女の味方ですからー」」 「お礼は後でするからっ。それじゃあ、またねっ!」 「「頑張ってくださーい!」」 そしてその夜の常盤台女子寮208号室。御坂美琴は首をコキコキと鳴らしながらドアを開いた。 「うぅ…、何よ。たった1秒遅れただけじゃない」 「お姉さまお帰りなさいませ…って、どうしましたの?」 部屋には白井黒子が机で何やらパソコンをいじっていた。振り返る時に見えた風紀委員の腕章から、それ関係の事でレポートなり調べ物をしていたのだろう。仕事上がりなんだろうが、終わったら外せばいいのに…。 美琴はベッドの上に鞄を放ると、ブレザーと靴下を脱いでベッドに倒れ込んだ。 「寮監に門限破りだって技かけられたのよ。たった1秒オーバーだけだったのに」 「あぁ。わたくしも以前その屈辱を味わいましたわ。寮監の腕時計は超最新式の電波時計ですので正確みたいですし」 「電波時計…、ふふっ。電波時計ね……」 「それにしても随分ギリギリで帰ってこられたのですわね」 「う、うん。色々探しててさ…、結局いいの見つからなくて気付いた時には門限10分前で」 「そうですの。何をお求めになられてたんですの?」 「ふぇ? そ、それは…」 「あら…、まさかお姉さま!」 白井は確信した。美琴が口ごもる時は100%類人猿、若造、ボンクラ…もとい上条当麻に関する事なのだ。そういえば今日は2月12日。2日後には美琴が食いつきそうなイベントがある。ならば、今日門限破りまでして探してた物というのはっ……! 「お姉さまっ! 黒子にも愛のこもったチョコレートを下さいましぃ~!」 しかし上条に関する事で邪魔したりすると雷神になる事を白井は知っている。それはクリスマスの翌日に体験済みだ。あの恐怖は忘れない。レベル4で風紀委員の自分が顔ドラムで謝るしか道は残されていなかったのだから。 なので白井はもう上条×美琴カップルの仲を引き裂く事はしないが、美琴LOVEなのに変わらないらしくその後もベタベタしてきてるのだ。 「チョコ? あぁ…チョコね。そうね、黒子にはお世話になってるから手作りチョコをあげる」 「お姉さまっ! 黒子はっ…黒子は感無量ですわ! …って、『には』? 上条さんへの手作りチョコの材料を探してたんじゃありませんの?」 「ふぇ? ち、違うわよ。材料探しならここまで遅くならないでしょ」 「それもそうですわね。では…何を?」 「えっと…、うん。そう。黒子は私からプレゼントさせるんなら何が欲しい?」 「お、オネエサマ!? そ、そそそそそれでしたら! わたくしはお姉さまの熱いヴェーゼをっ―――」 と、白井は自身の服をテレポートさせ下着姿で美琴に飛び掛か――― 「やめんかっ!」 「あああぁぁっ!!!!」 ―――ることはなく、電撃で鎮められた。真っ黒子とまではいかずとも、茶子くらいのミディアムに仕上げられる。美琴はそんな白井をベッドに寝せ、布団をかけてあげると着替えを持って脱衣所へと入っていった。 ……え? プレゼントはキス? で、でもでも形に残らないし……、あうあう…。 「うがーーーーーーーーーーーっ!!!」 翌日の金曜日ではない13日。美琴は常盤台の寮にて頭を掻き毟っていた。上条へのプレゼントを決める&作るのは今日しか出来ない。明日は放課後に気絶チョコを買いに走り回る予定だし、その後に上条を呼び出しそのチョコとプレゼントを渡さないといけないからだ。 なので美琴はどうにも焦っていた。今日も学校が終わり上条と途中まで下校して寮まで帰ってきたのだが、パソコンで調べようにも昨日の白井が言った「熱いヴェーゼ」が頭から離れないのだ。 聞くんじゃなかった…、聞くんじゃなかった…。まさかキスのプレゼントが他のどんなプレゼントよりもいいって思ってしまうとは…、あうあう…。 ※美琴がただ単にキスしたいだけという願望もありますが、本人は気付いてないようです。 「うぅ…、とりあえず黒子との約束もあるしチョコの材料買って来よう」 白井は昨日の夜仕上げたと思われる風紀委員のレポートを支部に届けている最中だ。すぐに帰るってメールが入っていたが、一緒に来てべたべたされては選びに集中出来ないし、プレゼントなんだから中身が知られない方がいい。 美琴はそう思うと、白井の机に置手紙を書いた。『アンタのチョコの材料買いに行って来るから大人しく待っててね』っと、これなら完璧絶対待ってる。荷物が多くなっても寮監の腕時計は電波時計だし? くくくっ。などと考えていると門の前に寮監が立っていた。まだ門限ではないだろうけど寮生の出迎えでもあるのだろう。 「おい御坂。今から出掛けるのか? 門限まであと1時間だぞ」 「す、すぐに戻りますから大丈夫です」 「そうか。1秒でも遅れたらまた―――」 「いっ、行って来まーすっ!!!」 「あっ! こらっ! 話はまだ……ったく、しかしあの顔本当に時間内に帰ってくるか今日は何か秘策があるのか」 美琴はとてもお嬢様には感じさせない逃げっぷりで難関をクリアした。ここで時間をくうわけにはいかないし、少々の誤差で帰ってこないと後々気付かれて部屋まで押しかけてくるかもしれない。 「(とりあえずセブンスミストなら全部揃いそうね)」 走れ美琴。風のように。でも上条さんとの待ち合わせに遅れた時のような磁力で街灯をつたって行くのは他の学生が危ないのでやめましょうね。 「こっちは90gで…、ふんふん…」 美琴は女子寮からセブンスミストまでの移動時間を更新するとバレンタインの特設コーナーで買い物をしていた。上条との夫婦生活を経て磨かれた買い物術はここでもいかんなく発揮されている。もう選び方が完璧に主婦なのだ。14歳でもなければお嬢様でもない。するとそこへ――― 「ここも売り切れなんですかぁー…」 「ん?」 何やら聞いた事のある声。しかも頻繁に。それも嬉しくなる。さらにドキドキする。 「明日入荷!? しかも予約出来ないで先着300名様っ!? わ、わかりました。なるべく早く来ます…」 「(や、やっぱり当麻だーーーっ! な、ななな何でこんな所にっ!!!!)」 その声の主は美琴の彼氏である上条当麻で、何やらレジ員の女の人と(楽しそうに ※美琴ビジョンです)会話していた。売り場には女の子しかいないのでそこに男がいるってだけで場違いなのに、よりにもよって何だって自分の彼氏がそこにいるのか。 美琴は売り場全員の視線が上条に向けられているのを知ると、反射的に隠れてしまった。ここで話かけられると絶対あうあうするし。うぅ…、ごめんね当麻。 「はぁ…明日が勝負かー」 上条はそんな事を言って帰っていった。チラッと見たが買い物袋(エコバック)を持ってるところからすると買い物の帰りのようだけど…。美琴は上条の姿が見えなくなるのを待つとヒョイヒョイヒョイと近場にあったチョコの材料をカゴに入れてレジへと向かった。 「あ、あのっ…! 今の男の人は何て…?」 そして美琴はレジ員に確認を取った。バレンタインのコーナーで探し物なんて怪しすぎる。まさかまた浮気っ!?(またって言うか美琴が勘違いしているだけなのだが) 「あぁ、ニュースでも取り上げている気絶するほど美味しいチョコを探してたみたいで。それで明日入荷しますよって」 「きっ、気絶チョコ…! 何でアイツが…や、やややや、やっぱり…!」 「あの…、お客様?」 「…ふぇ?」 美琴はレジ員の返事にガクガクしていたが、再度呼びかけられて我に帰った。レジ員は目をパチクリさせているし、周りの買い物客もこっちを見てるし、後ろにはレジ待ちの女の子もたくさんいた。 それを見た美琴はボンッという爆発音と共に真っ赤になり、 「こ、これ下さい…」 と言ってカゴを差し出すといそいそとその場を後にした。猛ダッシュで。しかも適当に選んでしまったのか美琴が最安価だと思っていた額よりも2倍は高い値段だ。 あは、あはははは……、うわーーーーんっ!!! 「はい、御坂おめでとう。二日連続で門限破りだな」 「うっ」 美琴は上条を追いたかったが、気付いた時には常盤台の前まで帰ってきていてしかも寮監が眼鏡を光らせていた。 「じ、時間ギリギリのはずですけど…」 「いいや、2秒遅れだ。残念だったな」 「(に、2秒!? これなら…、えいっ!)」 美琴はその時間を確認すると電磁波で寮監の腕時計を狙う。気付かれない程の弱い電磁波だが、時計が受けている電波を演算し20秒ほど遅らせた。時間が経てばまた新しい電波を受けて元通りになるし、罰も受けないで済む! 一石二鳥だ! 「よ、よく見てくださいよー。ホラ、まだあと15秒も余裕あるじゃないですかー」 「おや本当だ。これは失礼した」 「あははー、いいですって。じゃあ私はこれで―――」 「でもな。こっちの時計は既に時間オーバーしてるんだよ」 「…」 美琴は固まった。寮監は罠を張っていたのだ。美琴が何やら余裕な感じで寮を出て行ったもんだから自分の時計が電波時計だという事に気付き、電撃使いのレベル5である美琴は何かしらの能力で時間を戻すだろう、と。 なので寮監は隠していたアナログの可愛らしい猫の目覚まし時計を差し出した。時間もぴったり! これなら寝坊しないよ! 「さて御坂。門限破り+寮内での能力使用の件なんだが…」 「ひっ!」 「最近編み出した新技の実験に付き合ってもらえないか?」 「あ、あの…そ、それは危険だと……」 「安心しろ。朝には起こす。何か言い残す事はあるか?」 「当麻ぁ…私、信じてるから―――」 そして寮監は美琴に手を伸ばした。寮監さん、出来ることなら優しくしてあげてください。美琴にはまだやる事が沢山残っているんです。 …という誰からかの願いが通じたのか、寮監が美琴を捉える事はなかった。それは――― 「白井…、どういうつもりだ」 「…ふぇ? く、黒子!?」 「お姉さまの罪はわたくしの罪ですわ。今の能力使用も追加し、わたくしが変わりにその罰を受けるんですの」 「ほぅ…」 寮監の前には白井が立っており、美琴は階段の上までテレポートさせられていた。 「黒子…アンタ」 「お姉さま…、チョコ、楽しみにしてますわ」 「はっ! あの置手紙!」 「えへへ、ですの」 そういうと白井は小さく笑った。それを見た美琴は走りだす。白井の決意を無駄にしないためにも。最高のチョコレートを作ってあげようじゃないか。 そして白井は美琴の姿を見送ると、寮監を見上げた。その目には恐怖は無い。本望だけだ。 「どうぞですの」 「では白井、何か言い残す事は?」 「I love forever お姉さま…、ですわ」 そして鈍い音が常盤台女子寮のエントランスに響いた。黒子…、無茶しやがって…。みんなも10秒間くらい黙祷をお願いします。…死んでないけど。 翌日2月14日。バレンタイン&上条当麻の誕生日当日。御坂美琴は常盤台の教室にて真っ白になっていた。 昨日の事件の後、美琴は材料を持って調理室に行き、白井のためにチョコレートを仕上げたまでは良かったのだが、ある事を思い出し時間が停止していたのだ。そう。上条の誕生日プレゼント。手作りの予定だったからチョコは買って済まそうと思ったのに…。 白井はあの後すぐに部屋に運ばれベッドで寝かされていたらしい。無事ではないけど無事だ。白井のお陰でチョコも完璧な仕上がりだ。よかった。…って、あれ? でもよくよく考えてみたら白井のチョコに時間を費やし上条へのプレゼントにまで手が回らなかったような…。そう思った美琴は白井をチラッと見るが、冷や汗をかいているだけだ。うん。まぁ勘違いだったら悪いし、そっとしておこう。 「終わった…、終わったわ。私の彼女としての幸せライフが…。誕生日プレゼントも用意出来ない女なんて……、うぅ…」 などと考えていると、ゲコ太携帯が鳴り出した。今日は朝から真っ白になっていたので上条との登校にも間に合わず先に行ってもらって、後から白井と一緒に登校したのだが、この着信音を聞くとどうやら上条からのメールらしい。 いつもはハイテンションで携帯を開く美琴だが、今日だけは違った。だって…、バレンタインと誕生日の当日に一緒に登校しない彼女ってどうなのよ? ま、まままままさか別れようメールなんじゃ…! Time 2011/02/14 08 57 From 当麻 Sub ―――――――――――――――― よぉ美琴たん。大丈夫か? 今日の放課後なんだけどさ、俺用事 あるから一緒に帰れないんだ。悪い。 でもちょっと話があるから6時くら いに公園の自販機前まで来てくれな い? 「…ふぁ」 美琴気絶。それを見たクラスメイトはオロオロとしだす。どうしたのでしょう御坂様。何か悲しい事でもあったのでしょうか。オロオロ。 美琴が気絶した原因は上条と一緒に帰れない&話があるから来てくれというメール内容。一緒に帰れないのは自分も一緒で、今日は初春や佐天に教えてもらった気絶チョコを探し回らなければいけないのでいいのだが、その後の話ってなに? 今の今までネガティブ思考だった美琴は、最悪の結末を予想し机に額から倒れ込んだ。音からして結構痛いと思う。 「(うぅ…、当麻ぁ…わだじぃー…)」 その後の授業中も美琴から発せられている負のオーラに教員達は皆、美琴の事を指せなかった。 キーンコーンカーンコーンというチャイム音と共に御坂美琴は光速を超えた。あまりの速さにまだ教室に残像が残っているほどだ。すみません嘘です。比喩です。 学生鞄と大きめの紙袋を持ち懸命に走る。先生に注意される。謝る。走る。見つかる。謝る。見つかる。逃げる。 昼間の状態からして美琴にチョコを渡すのはなかなか勇気が必要だったのだろうが、それでも憧れの御坂美琴へプレゼントということで渡してくれた。真っ白になっていた美琴もプレゼントは嬉しい。ありがとう。お礼はホワイトデーにするからね。 美琴の持つ紙袋にはその常盤台の生徒達から貰ったチョコやらが大量に入っており、なかなかの重さを誇るが美琴は平気なようだ。それくらい切羽詰っている。 せめてチョコだけでもゲットしなければ終わりだ。あうあうだ。 「申し訳ありません。先程完売したばかりでして…」 「うちは再入荷してないんですよ」 「ごめんなさいね。私もこれ欲しくって」 美琴は公園のベンチで再び真っ白になっていた。大本命のセブンスミストもその姉妹店も売り切れで、やっと見つけたと思った某デパートでは前の女の人で売り切れになった。…不幸だ。 ちなみに初春達のメールも、 Time 2011/02/14 17 33 From 初春さん Sub ごめんなさい。 ――――――――――――――――― 一応4店舗くらい回ったんですけど見 つかりませんでした……。 すみません偉そうな事言っておいて… …。 …という事らしい。美琴は「こっちも同じだから気にしないでいいよ」と送り、再度走り出した。チョコも無い、誕生日プレゼントも無い、これから来るであろう上条からの呼び出しにもチョコを探し回って行けないじゃもう好感度ガタ落ちだ。終わってはないのだが、美琴は何故か走馬灯を見始める。 あぁ…、11月22日の美味しかった中華料理。12月25日の嬉しすぎる指輪のプレゼント。12月29日からの幸せだった夫婦生活。冬休み最後の日に貰った合鍵でちょくちょく遊びに行った日々。……ぶぇぇぇぇぇぇぇん。 ―――とそこへ希望の光が差し込んだ。真っ暗&涙で曇っていた視界も一瞬にして晴れるくらいの希望。探してた気絶チョコが売れ残っている! しかも周りに買い物客無し! 美琴は走った。夏休み常盤台女子寮の前で上条当麻に見せた「ごめーーん、待ったーーー?」に似た虹色でキラキラな背景も見える。 「「こっ、このチョコくださいっ!」」 「「え…」」 しかしそのチョコを目当てにしていたのは美琴だけではなかったようだ。完全なる死角から現われたその買い物客は美琴と同じ物を指差している。 普段の美琴なら引き下がるかもしれないが今回だけは絶対に下がらない。上条への最後の希望だし、何よりその買い物客が――― 「と、当麻っ! なっ、なななんでアンタがここにいんのよっ!」 「あれ美琴たん。どしたこんな所で」 私の彼氏、上条当麻その人でした。あうあう。 「私のよ」 「いいや、俺の指の方が1間接分近いから俺のだ」 「なっ! そんならこうよ!」 「あ! お前っ! じゃあ俺はこうだ!」 「ちょっアンタ! それはずるいんじゃない!? 大体アンタ今日はバレンタインなの知ってる? 女の子優勢! レディーファーストでしょうが!」 「はて。欲しい物は欲しいんです」 「まさかアンタ。そのチョコで他の女の子口説こうとしてるんじゃないでしょうね! 私という彼女がいるのに! うぅ…」 「はい? あ、あの…美琴、たん?」 「彼女がいるのにぃぃぃ…、ふぇぇぇ…」 「あー…」 「あのー…、お取り込み中悪いのですが、どちらのお客様がお買い求めになりますか?」 「あ、俺買います」 「無視すんなや、コラーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 「ぶふっ…!」 美琴は頭から上条の腹にタックルをかました。飛んでくる電撃は打ち消せても、こういう物理攻撃にはまるで対策がないのです。 「アンタね! 目の前で彼女が泣いてるのに無視しますか普通!」 「み、美琴たん……周り…」 「ふぇ?」 チョコ売り場の前で何やら騒ぎを起こす&上条を押し倒す行為に他の買い物客が何事かと人だかりを見せている。美琴は昨日もこの状況になったのを思い出し、しかし今度はポンという可愛らしい爆発音で真っ赤になった。恋する乙女は彼氏の前ではこういうところも万全なのだ。 そして上条は真っ赤になってモジモジあうあうしている美琴をなだめると、気絶チョコを購入し美琴を連れてその場をそそくさと後にした。うぅ…、恥ずかしい。 上条と美琴は公園まで戻ってくると、ベンチに座り、息を整える。2月という事もあり、辺りは真っ暗で街灯の光だけが2人とベンチを照らしていた。 「はぁ…、ったく当麻のせいで恥かいちゃったじゃない!」 「ほぅ美琴たん。お前さんがそれを言いますか、ほう」 「大体アンタ、そのチョコ誰にあげるつもりよ!? もし他の女の子だったりしたら…!」 「はぁ? 違いますよ」 「じゃあ何よ。まさか自分で食べるわけじゃないでしょ?」 「うん。その…、お前にあげようと思って」 「…………………………ふぇ?」 「まぁあれですよ。逆チョコってやつですよ」 「…」 「あ、あれ? 美琴、たん?」 美琴は完全に停止していた。それは昨日からずっと上条が自分ではない他の誰かにチョコレートを渡すものだと思っていたから。それがどうだ。実は上条は自分のためにチョコを探し回ってくれていたらしい。そう思うと恥ずかしくなる。上条がプレゼントしてくれるのもそうだが、そんな彼を信じれなかった自分に。うぅ…、ごめんね当麻。信じてあげれなくて。 なので美琴は途端にツンツンモードのスイッチを切ってデレデレモードへと移行するのであった。 「えへ」 美琴は上条の腕を抱くと、甘えるように頭を預けた。周りに人もいないので大丈夫。 「あ、でも私もそれ買って当麻にバレンタインチョコ渡そうと思ってたんだった」 「じゃあ…、これ6個入りみたいなんで半分づつにしますか」 「う、うん…」 「…? どした美琴」 「実は―――」 「―――って事があって」 「ふんふん。じゃあその友達2人分を抜いた4個で半分づつにしようぜ」 「…いいの?」 「いいよ」 「えへ」 そして上条は袋からチョコの箱を取り出すと封を切った。蓋を開けると、チョコレートの甘い香りが広がり鼻をくすぐる。 先程売り場のショーウィンドウで箱の中身を見たが、6個入りの可愛らしい一口サイズのチョコレート。美琴は「私からあげる」と言って一つ摘むと、 「ん」 「え?」 「ん!」 「えっと…?」 そのチョコを半分咥えて上条に差し出した。 待て待て。待つんだ美琴たん。半分づつってそっちですか? 2個づつじゃなくて2分の1×4個づつですか? 上条焦る。これは予想外だ。想定外だ。せめていってもあーんぐらいだと思っていたので。すると差し出してから目を閉じていた美琴が何かを訴えかけるように上条の学ランを握った。上条はそれを受けると意を決し――― 「あ、あー……、むっ」 「んっ…」 美琴のチョコを半分受け取った。受け取る瞬間に美琴がビクっとなって頬が染まる。上条はここが外でよかったと思った。もしも家の中で人目が完全につかなかったら内なる狼が牙をむいたぜ。 美琴は真っ赤になってモゴモゴとチョコを食べているが、上条も負けず劣らずに顔は赤い。もうやめてこれ以上は。こっちの身(誰?)が持たないっす。 「ハッピーバレンタイン、当麻…」 「お、おう…」 「味…わかんなかった」 「そ、そうか」 「ねぇ、もう1個」 「も、もう1個って…」 つまりアレをもう一回、しかもこちらからしろと? 死ねる…、色々と。壊れる…、色々と。 しかし美琴が何か物欲しげだったので、上条はチョコを咥えて差し出すことにした。 「ん、んー…」 「んむっ」 「は、ハッピーバレンタイン、美琴」 「ふぇへ。んっ…、どう? おいしい?」 「……た、確かに味がわかんないな」 「じゃあもう1個あげるね」 「(ぐぉぉぉぉっ…、り、理性! わたくめの理性がチョコレートのようにトロトロに溶けてっ…!)」 「ん」 「……い、いただきます」 「っ…、は、ハッピーバースデー。当麻」 「…ふぇ? あ、あぁ…。そういや今日俺誕生日だったな」 「ごめんね。何かプレゼント用意したかったんだけど…、いいプレゼント思いつかなくて」 「いいよ。美琴たんにはいつもお世話になってますし」 「……えへ。ねぇ? もう1個ちょうだい」 「………わかりました」 「えへ」 「んー…」 「?」 しかし上条はチョコを持つ事なく何かを考え始めた。美琴もどうしたのだろうとモジモジしながら待っている。 上条の考えは添える言葉だ。美琴はバレンタインとバースデーを祝ってくれた。上条もバレンタインは祝ったが、あと1個は何にしようか。何か美琴にとって記念になるものは…と考えていると、答えはすぐに出てきた。そういえば付き合って今の今までこの言葉を言った事がないような。 そう思った上条は最後の1個(2個残して)を摘むと口に運び、半分だけ美琴に差し出す。美琴もモジモジしていたが、上条の行為に待ってましたとばかりにそのチョコを食べにいくのであった。 「んぁ…、美琴」 「ふふぇ?」 上条は美琴がチョコを受け取ったのを確認すると、 「好きだぞ」 愛の言葉をプレゼントした。…までは良かったのだが、もちろんチョコちゅー4回目&そんな言葉を受け取ろうものなら最大級の爆発音と共に顔を赤くした。だって抑えられなかったんだもん。 「ふ…」 「え。うわっ、ちょっ! 待っ―――!」 上条は慌てて右手を差し出そうとするが、美琴に腕を抱かれているので幻想殺しが出せない。触ってればもしかしたらと思ったが、そんな美琴に触れる前に――― 「ふにゃー」 「みっ、みごどだばばばばばばばばばばばばばばばばばばっ!!!」 美琴はふにゃーとなりながら漏電したのだった。 上条と美琴が食べた気絶チョコ。それは食べた人があまりのおいしさに気絶すると言われていたが、このカップルに関してはまた違った理由で気絶したらしい。 雪が残る学園都市、日も沈みきっている公園のベンチの上で気絶なんてしようものなら翌日は風邪確定だが、お互いが高温だったのか風邪をひくことなく翌日も2人揃って仲良く登校したそうだ。 そしてその登校途中――― 「言い忘れてたけど」 「ん?」 美琴は上条の前に回り、 「私も大好き、当麻っ」 背伸びで上条にキスをした。たまたまその光景を見た学生は逆行再現レベル4の餌食になった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日?
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今日は何の日|
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42通常の名無しさんの3倍2019/06/05(水) 18 29 29.36ID feWleCva0 今日は老後の日だそうで キオ「とんとんお肩を叩きましょ~」 ジジット「うんうん、やはり肩叩きはキオにやってもらうに限るのお…ほれ、お駄賃じゃ」 キオ「やったあ」 ガロード「Q,上記の光景には一つ間違っているところがあります。どこでしょうか」 ジュドー「A,二人は祖父と孫ではなく、兄と弟である。一歳差の」 ガロード「正解」 ウッソ「フリット兄さん、僕のことはあんな風に甘やかしてくれないのに…」 キラ「単純に可愛いげがないんじゃない?」 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ
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京太郎「――あっおはようございます」 恭子「ん?あぁおはようさん、今日も冷えるなぁ」 京太郎「そうですね、まぁ長野よりましですよ」 恭子「あぁあっちは寒いってよくきくかんな~」 京太郎「恭子先輩、恭子先輩」 恭子「ん?」 京太郎「今日は何の日ふっふ~♪」 恭子「なんやそれ?」 京太郎「今日と京をかけてみました」ドヤ 恭子「あっそ」 京太郎「なんか冷たい・・・」 恭子「つまらんギャグ聞かされたこっちの方が冷たいわ」 京太郎「グスン」 恭子「まぁ誕生部おめっとさん」ポンポン 京太郎「あっなんだわかってたんすね?」 恭子「まぁ大事な後輩やしなぁ」 京太郎「その前に一番弟子っす」 恭子「あぁそうやったな、まぁどうでもええけど」 京太郎「同じきょうちゃん同士で同志!! あぁどうs」 恭子「――どうしよう! なんて言ったらもう口きかんで」 京太郎「すんません」 恭子「わかればよろしい」 京太郎「言い訳してしまいますけど誕生日ってわけもなく浮かれたりするでしょ?そんな気分の朝でして」 恭子「そうやなぁ、まぁその浮かれついでに朗報や」 京太郎「?」 恭子「放課後に弟子の誕生日祝ってどっか遊びにいくで!」 京太郎「おぉマジっすか?」 恭子「マジやマジ、こういうの主将やゆーこも好きやからな絶対くるで」 京太郎「楽しみですねぇ」 恭子「まぁそんかわり部活はしっかりな、気抜かんように」 京太郎「うっす!」 京太郎「今日は何の日ふっふ~♪」 京太郎「今日と京と恭でかけてみました!!」ドヤッ!! 恭子「もぉええわ!!」 カンッ
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(2006年04月01日) ♪今日は何の日~♪
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