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けいちつ【啓▼蟄】二十四節気の一。太陽の黄経が三四五度になったときをいい、現行の太陽暦で三月六日頃。二月節気。また、このころ冬ごもりをしていた虫が穴から出てくることをいう。[季]春。《—の土くれ躍り掃かれけり/吉岡禅寺洞》 goo辞書より 啓蟄 859 ◆93FwBoL6s.様 季節は移ろいつつある。 一気に暖かくなり、寒さがぶり返し、を繰り返していくうちに気候が安定し、強張った冬の空気に身を縮めていた草花が息吹を取り戻していく。春一番が吹き抜けると、二番、三番、と続き、南風によって撒き散らされる花粉と埃には辟易するが、 水と土の温む匂いも同時に運ばれてくる。道端に咲く菜の花や、堅いつぼみを膨らませかけている桜の木を見ると、訳もなく心が弾んでくる。そして、気温の上昇に伴って体液の温度も上がり、循環も良くなり、触角や外骨格を舐める刺激も増え、 凍えていた地中から這い出せと言わんばかりに脳が活性化し、余計なものも活性化してくる。 「あー…」 体液の過度な循環によって脳が茹だった気分になり、人型オニヤンマの青年、鬼塚ヤンマは頭を抱えて呻いた。 「ほづみん襲いてぇ」 ヤンマの隣でヤンキー座りをする人型シオカラトンボの少年、水沢シオカラは呆れるほど実直に欲望を吐き出した。 「言うな、情けなくなる」 ヤンマが黒く鋭い爪の生えた上右足でエメラルドグリーンの複眼を覆うと、シオカラはびいいんと羽を震わせた。 「でも、兄貴もそうじゃないっすか。だーからアパートに居づらくなって、俺っちと逃避行なんつーマジダッセェことを」 「それも言うな。もっと情けなくなる」 ヤンマは短い触角をぐにゃりと下げ、複眼を伏せた。二人が座っている場所は、どこともつかない山中に張り巡らされた鉄塔だった。周囲には芽吹き始めた木々が生い茂っていて、都市部にアレルゲンを撒き散らす元凶である植林された杉が風を受けるたびに雄しべから無数の花粉を飛ばしていた。 昔々に天文学の粋を集めて作られた単位、暦は感嘆するほど正しい。だから、啓蟄も正しすぎだ。三月に入ったばかりの頃はなんともなかったのだが、啓蟄を過ぎた途端に気候に応じて色々なものが活性化し、冬の間はそれなりに大人しくなっていた性欲やら何やらに歯止めが利かなくなってきた。体が気候に慣れてしまえば、体液もホルモンも落ち着いてきてそちらの方も落ち着くのだが、春になりかけた頃はそうもいかない。そんな時に限って茜は高校の春休みに入り、アルバイトと友達付き合いと買い物以外はアパートもえぎのの自室に入り浸り、ここぞとばかりにヤンマに甘えてくる。それが我慢出来るわけがない。 「基本的に絶倫っすからねー、俺っち達みたいなのって」 シオカラが欲望が突き抜けすぎて不自然なほど冷静な口調で言うと、ヤンマはぎちぎちと顎を擦った。 「下手に出ない分、終わりってものがねぇしなぁー…」 「ほづみん喰いたい」 「俺だって茜を喰いたい。そりゃあもうどこまでも喰いたい」 「でも、やりすぎたら怒られちまうっす。かなり嫌われるっす、それマジヤベェっす、マジ切ないっす」 「それなんだよ。かといって、他で発散するわけにもいかねぇしなぁ」 「最終手段は木の股とかっすかね。でなきゃなんすか、そこら辺に穴でも掘ってズッポズッポと」 「それはどこの世界の拷問だ」 「サーセン」 「俺、自己嫌悪で死ねそうだ」 ヤンマは上両足をだらりと下げ、長い腹部を丸めた。シオカラは藍色の複眼に春の空を映していたが、がっくりと項垂れた。 性欲自体はある程度は備えておくべきで、悪いものではないのだが、限度がある。これが単なる昆虫なら問題はないのだが、 人型に進化して文明と知性に染まった昆虫人間だから、大いに問題なのだ。人間でないにせよ、世間一般では人間とほぼ同等に扱われている以上は節度を守らなければ暮らしていけない。それは、二人の恋人である人間の女性に対しても同じことが言えるわけで、本能に任せて襲い狂ったら、それはもうひどい結末が。 恋人が好きすぎるのも、時には困り者だ。 何がいけなかったのだろう。 稲田ほづみは仕事用の髪型に整えた自分を睨み付けながら、化粧を施していた。気が逸れているものだから、普段よりも雑になりがちだった。それもこれも、近頃、シオカラと会っていないからだ。ケンカをした覚えもなければ、彼の機嫌を損ねるような言動を取った覚えは今のところはない。性格が違いすぎるので噛み合わなかったことは多いが、仲違いをするほどではなかったはずだ。バレンタインデーだって、かなり苦労した上に物凄く恥ずかしかったが、アビゲイルに教えてもらって手作りチョコを渡した。ホワイトデーには、シオカラがバイト代を工面して、ほづみが欲しいと思っていた香水を買ってくれた。 もちろん嬉しかったし、恐ろしく照れ臭かったが御礼も言ったつもりだ。それなのに、シオカラは電話はおろかメールすら寄越さなくなってしまった。シオカラと交際する以前の経験を踏まえても、良くない兆候だ。こうなってしまったら、大抵はもう他の女がいる。或いは、ほづみから興味を失っている。そう思ってしまったら、化粧をしたばかりなのに泣きたくなった。 「なんて女々しい」 ほづみは自分自身に毒突いてから、ストッキングを履いた太股を叩いた。 「好きだ好きだって言ってくるのはシオの方じゃない」 畳の六畳間には馴染まない洒落たデザインのドレッサーの前から立ち上がったほづみは、タイトスカートを整えた。 「それなのに、なんでこんなことするのよ。訳解らない」 出勤用のバッグを肩に掛けたほづみは、悪態を吐きながら窓の鍵を閉めてカーテンを閉ざした。 「私の気を引きたいっての?」 だが、シオカラは駆け引きをするタイプではない。シオカラはほづみに心酔しているし、ほづみもシオカラに浸り切っている。 年下だから、というのもあるのだが、いちいち危なっかしくて放っておけないのだ。そのくせ、ほづみを甘えさせてくれるような余裕もあり、兄貴分のヤンマの影響なのだろうが筋の通った男らしい面もある。それらを思い出してしまうと、ほづみはカーテンを握り締めて赤面し、内心で悶えた。会いたくて会いたくてたまらなくなってしまったからだ。 思い出してみれば、ホワイトデーに会った時もシオカラは素っ気なかった。バレンタインデーの時はその場でほづみを抱き締めて空に飛び出しそうなほど喜んでくれたのに、落差が激しすぎる。三月に入ったことで、進級試験や何やらで忙しいのだろうと自分に言い聞かせたが、その時から不自然だった。もしかしたら、シオカラはほづみと別れるつもりでは。 今まで付き合ってきた男に別れを告げられた時は、ひたすら腹立たしいだけだったが、シオカラが相手となると別だった。 目眩がするほど、寂しくなった。 気もそぞろだったせいで、仕事に身が入らなかった。 おかげで、普段なら絶対にしないような凡ミスを繰り返してしまった。人間関係にうんざりして前の会社を辞め、以前から興味のあった業界の会社に再就職し、ようやく仕事にも慣れてきたのに、この体たらくでは。情けないほど、シオカラに依存している。恋愛に不慣れな中高生でもあるまいに、とほづみは自嘲するが、帰宅する電車の中でも意味もなく携帯電話を開いてはメールが届いていないかを確かめた。だが、やはり、シオカラからのメールは届いていなかった。フリップを閉じてバッグに突っ込んでから、ほづみは歩調を速めた。こうなったら、夕飯の材料と一緒に酒でも買って気を紛らわすしかない。 「……あ」 人間と人外が入り乱れている駅前商店街の雑踏の先に、忘れもしない水色の外骨格の主が立っていた。彼もほづみに気付いたようだったが、藍色の複眼はすぐに逸らされた。ほづみは嬉しいやら腹が立つやらやるせないやらで、雑踏を掻き分けてヒールを鳴らしながら大股に歩き、シオカラに追い付いた。 「ちょっとあんた!」 「うおっ!」 ほづみに上左足を引っ張られ、シオカラはよろけた。 「何するんすか、もう」 「それは私が言うべき言葉よ、とにかく来てもらうわよ!」 ほづみはシオカラを強く引っ張り、ヒールを折らんばかりの強さでアスファルトを踏み締めながら突き進んだ。背後のシオカラは抵抗らしき言葉を漏らすものの、ほづみの手を振り払おうとしなかった。その態度の曖昧さが、訳もなく苛立ちを煽ってきて、ほづみは唇を噛んだ。言いたいことが次から次へと出てくるのだが、いざ口から出したら恨み言になりそうな気がしたので懸命に堪えた。とにかく今はアパートに帰り、自室に戻り、その上でシオカラを問い詰めてやる。 寄り道もせずに真っ直ぐ帰路を辿ったほづみは、アパートもえぎのの自室にシオカラを放り込み、ドアを閉めて施錠し、 退路を塞ぐために立ちはだかった。重たい荷物が詰まったバッグを靴箱に置いてからシオカラに向き直り、藍色の複眼を見据えたはいいが、言いたいことが喉の奥で詰まってしまった。怒りたいのも山々だったのだが、それ以上に会えたことが嬉しくて感極まってしまった。ほづみはシオカラに飛び掛かるように抱き付き、固く閉ざされた顎に思い切り唇を押し付けた。 「…香水」 胸郭を震わせて発声したシオカラは、短い触角を上げ下げし、ほづみの首筋から立ち上る匂いの粒子を絡め取った。 「そうよ、あんたが買ってくれたやつよ」 ようやく唇を離したほづみが照れ臭くなって目を逸らすと、シオカラはいきなりほづみを抱き竦めた。勢い余ってドアにぶつかり、 安普請の薄い壁までもが揺れた気がした。一回りも年下ではあるが昆虫人間故に大柄なシオカラの胸にすっぽりと収められ、 ほづみは年甲斐もなくどきどきした。シオカラは上中両足でほづみを押さえ付けると、派手に口紅が塗り付けられた顎を開いて細長い舌を伸ばしてきたので、ほづみも口を開いた。冷ややかな舌がほづみの舌に絡められていたが、引き抜かれて首筋を這い回った。香水を落とした箇所を探しているかのようだったが、そのまま舌先はブラウスの襟元に滑り込み、カーラーと肌の隙間をぬるりと動いて、早足で歩いたせいで少しばかり滲んだ汗も舐め取られた。 「ふ…うぁっ」 それだけのことなのに、ほづみは身震いした。興奮していたせいだろうか、触られた部分が少ないのにやたらと感じてしまう。 シオカラはほづみを抱き寄せてドアから離すと身を反転し、狭い廊下にほづみを押し付けた。スーツが埃で汚れる、とほづみは頭の隅で考えたが、それを口に出来る余裕はなかった。シオカラの頭を抱えて向き直り、乾いた唇を一度舐めてから、夜明けの空に似た藍色の複眼を見つめた。光沢のある表面には、僅かな愛撫ですっかり頬を上気させた化粧の乱れた女が映っていた。 「ひゃっ」 前触れもなくタイトスカートの中に差し込まれた腹部に気付き、ほづみは息を飲んだ。尻尾のように長く、器用に折れ曲がる腹部の先がほづみの股間に触れ、既に露出している生殖器が抉ってきた。ストッキングとショーツ越しとはいえ、刺激は充分すぎるほどだった。シオカラの頭を抱えたまま、ほづみは息を荒げ始めた。 「ね、ねぇ、もういいでしょ? 上がってからの方がやりやすいってぇ、あぅっ!」 外骨格で出来た硬い生殖器の先端でクロッチに染みるほど濡れた陰部をなぞられ、ほづみは声を上擦らせた。 「よくないっすよ、なんにもよくないっす」 シオカラは脱力したほづみを俯せにさせると、タイトスカートの裾をずり上げて丸い尻を露わにさせた。 「いや、恥ずかしいぃ…」 ほづみはパンプスが脱げかけた足を閉ざそうとするが、シオカラの下右足がすかさず阻んできた。それらしい雰囲気になり、 それらしい流れであれば羞恥心など感じないのだが、ここは玄関だ。扉一枚隔てれば外界で、住宅街なのでそれなりに人通りもある。増して、安普請なのだ。下手に声など上げようものなら。頬が押し当てられた廊下の板が冷たかったが、体は隅々まで熱していた。羞恥心と戦う一方で、早く事を収めなくては、とも思っていた。ほづみはストッキングとショーツに手を掛けると、 太股の付け根まで下げたが、陰部に貼り付いていた布が剥がれていく際に小さな水音が聞こえ、ますます恥ずかしくなった。 ダークグレーの透けた薄布とそれよりも濃い黒のレース地のショーツが取り除かれると、丸く形の良い尻とその中心で熱く濡れている陰部が冬の冷たさを残す外気に触れた。ほづみは精一杯の意地を張り、ストッキングから手を離した。 「するなら、早くしなさいよ」 間を置かずして太い針に似た生殖器が突き立てられ、ほづみの内に責め入ってきた。 「あ、あぁっ、あうん!」 一息に奥まで至り、ほづみはぞくぞくした。シオカラはほづみを後ろから抱き締めると、言葉もなく律動を始めた。その冷淡さもまたシオカラらしくなかったが、充足感が疑念を誤魔化した。上両足でジャケットをはだけられ、ブラウスの上から乳房を握り締められ、 中両足に腰を支えられていたが、ほづみの足は玄関に出たままだった。パンプスだって脱いでいないし、バッグも下駄箱の上に置いたままだ。それなのに、こんなにも荒々しく貫かれている。ほづみは訳もなく背徳感に駆られたが、今となっては劣情を煽る材料にしかならなかった。 「もう、もうダメぇっ、イッちゃいそぉっ!」 上り詰めてきた快感にほづみが切なく喘ぐと、シオカラは上中両足でほづみをきつく抱いた。 「そんなにいいんすか?」 「だ、だってぇ、どんだけ寂しかったと思ってんのよぉ」 快感に煽られるあまりに自制心も緩んだほづみは、涙混じりに本心を吐露した。 「バレンタインの時にはあんなに喜んでくれたのに、ホワイトデーになったら素っ気ないし、メールもちっとも返してくれないし、電話もしてくれないし、会いに来ないし…。私、何か悪いことした? 怒らせるようなことした? ねえ?」 いつになく気弱なほづみは、振り返り、今にも泣き出しそうな顔でシオカラを見上げた。 「ぐわあ可愛いっ!」 シオカラは途端にテンションが上がり、生殖器の根本までほづみの奥に押し込んできた。 「くぁああっ!」 ほづみは一気に訪れた強い快感に震えると、シオカラはぼやきながらも責め続けた。 「なんすかもー、そんなん言われたらマジヤバいじゃないっすか、俺っちの頑張りとか全部無駄じゃないっすかー、あーもう」 「な、何言ってんのよぉ」 「もういいっす、我慢出来るわけねぇっす、こうなったらもう徹底的に!」 シオカラの鋭い一撃に、高ぶりに高ぶったほづみの体が跳ねた。背筋から手足の先まで走った甘い電流に、ほづみは弛緩したが、それでも尚、シオカラは生殖器を抜こうとしなかった。律動が繰り返されるたびに、粘り気のあるほづみの体液がシオカラの生殖器を伝ってストッキングや床に散らばった。シオカラの宣言通り、それからほづみはかなり時間を掛けて蹂躙された。体位を変えることはあったが、場所だけは変わらず、最初から最後まで狭苦しく埃っぽい玄関で事が行われた。 お互い、夢中になりすぎたからだ。 腰だけでなく、腕や足もだるかった。 硬い床に俯せになったり、変な姿勢になったりしたからだろう。ほづみは濡れた髪を首に掛けたバスタオルで拭いながら、 夕食である宅配ピザを囓った。だが、受け取った場所は玄関ではなくアパートの前で、シャワーを浴びているほづみの代わりにシオカラが受け取ってくれた。さすがに、あんなことをした直後の空間に他人を招き入れられるほど剛胆ではないからだ。 ビールでも飲みたい気分だったが、生憎冷蔵庫には缶チューハイしか入っていなかったので、ほづみはピザを食べながらライム味の薄い酒を流し込んだ。シオカラはといえば、テーブルの向かい側で黙々とピザを囓っていた。 「やりすぎたわね」 「そうっすね…」 冷静になると後悔が襲ってきたのか、シオカラは項垂れた。 「スーツはスペアがあるからいいけど、玄関がねぇ…」 一応消臭剤吹いておいたけど、と、ほづみは玄関を見やると、シオカラも複眼の端を向けた。 「せめて換気出来ればいいんすけど、時間も時間っすからねぇ…」 「で、なんだっけ? あんたが発情した原因は」 ピザの耳まで食べ終えたほづみが問うと、シオカラはトマトソースがべったり付いた顎を紙ナプキンで拭いながら答えた。 「春になったからっす」 「裸にコート羽織って下半身露出しに来る変態みたいなこと言うんじゃないわよ」 「でもマジなんすから、いやホント! マジリアルな話なんすから!」 「解りやすいと言えば解りやすいんだろうけど、短絡的すぎて逆に面白味がないわね」 「面白がられても困るんすけど」 「で、その春の陽気に誘われた変態じみた発情と、私に素っ気なくした理由には何か関係があるわけ?」 「言うまでもないと思うっすけど、いやホント。てか、変態からマジ離れてくれないっすか?」 「つまり、あんたは私に無闇に襲い掛からないために離れていたってこと?」 「そうっすそうっす」 「だったら、事前に説明しなさいよ。おかげでこっちは」 言いたくもないことを、とほづみが口の中で呟くと、シオカラは顎を開いてにやにやした。 「毎度毎度思うんすけど、ほづみんってヤられてないとデレられないんすか?」 「そういうわけじゃないわよ。ただ、タイミングってものがあって」 「だったら、俺っちが襲う前に言ってくれりゃ、俺っちとしてもやりようがあったんすけど。なのに、いきなりがばーって来られちゃ、誰だってヤりたくなっちまうっすよ、マジでマジで」 「私だってそのつもりじゃなかったわよ、でも、なんかこう、堪えられなくなって」 ほづみは語気の弱まりを紛らわすために缶チューハイを傾けるが、シオカラはにやけたままだった。 「ああもう可愛いなぁー、そんなに俺っちが好きっすかー?」 「それはシオの方でしょうが、私は引き摺られてるみたいなもんよ!」 「可愛い可愛い可愛い!」 「うるさいうるさいうるさいっ! とにかく、もう黙れ!」 ほづみはシオカラに言い返してから、背を向けた。可愛いと言われれば言われるほどに嬉しいのだが、嬉しすぎるせいで恥ずかしくてどうしようもなくなる。シオカラもそれを知っていて、可愛いと連呼してくる。居たたまれなくなったほづみは台所に向かい、冷蔵庫を開けて二本目の缶チューハイを出して呷った。アルコールによる高揚で気恥ずかしさをいくらか打ち消してから、 ほづみはシオカラに振り返った。 「で、ヤンマ君の方はどうなってるわけ? あっちもシオと同じ状態なんでしょ? あれじゃ茜ちゃんの身が持たないわ」 「ああ、兄貴の方はっすね、変なところで真面目なもんだから律儀に山籠もっちゃってるっすよ。せっかくだからってことで、その山の麓で出稼ぎもしてくるらしいっすけど」 「あんた達も苦労するわね」 「どれだけガタイが立派になったって、俺っち達はどこまでも虫っすからね」 シオカラがしみじみと頷いたので、ほづみは冷蔵庫に寄り掛かって足を組んだ。 「まあ、そればっかりはどうしようもないわよね」 「てぇことでほづみん、次回の玄関プレイは!」 シオカラが腰を浮かせたので、ほづみは一缶目である空き缶を投げ付けた。 「二度とあるかぁっ!」 軽快な音を立て、シオカラの頭頂部に空き缶が命中した。ほづみはバスタオルで生乾きの髪を掻き乱し、なんでこんなのが好きなんだ、と思ってしまったが、好きなのだから仕方ない。シオカラは外界と扉一枚隔てただけの痴態に味を占めたらしく、 いかに今回の蛮行が良かったかを説いてきたが、ほづみはそれらを全て聞き流して酒に没頭した。そうでもしないと、気が紛れなかったからだ。確かに気持ち良かったのだが、それはそれだ。玄関は所詮玄関であって、性欲を満たす場所ではない。 まかり間違ってアブノーマルな性癖に目覚めてしまったら、それこそ取り返しが付かなくなってしまうだろう。 己の過ちを春のせいにしては、春に対して失礼だ。 ↑ 名前 コメント すべてのコメントを見る タグ … 人間♀ 和姦 昆虫類 !859◆93FwBoL6s. *人外アパート
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新婚さん 3-470様 ごくりと生唾を呑み込むと、薄く開いた唇からは熱く湿った息が漏れた。 己の腕の中では、先程から顔を赤くした少女が精一杯腕を伸ばして、それでも巡り会わない両掌で背中を抱き寄せている。 早春とは言え、今年は比較的温かい。 先に流してきた筈の汗が、毛皮に包まれた熱に誘発されて滲み始めていた。おかげで、まだ抱き合っているだけだと言うのに、二人の身体は酷く熱い。 「ねえ、ルフ。暑い」 「お前のせいだ」 まだ十六になったばかりの少女は、なんでよう、と呻く様に言って、そのくせ更に腹に顔を埋め込む。縦も横も二倍程体格の違う二人は、抱き合うと、少女の頭は硬い腹の上部に埋まってしまうのだ。 見た目と色に反して、存外柔らかい毛並みに頬を擦り寄せつつ、ルフールの熱の心地よさに、これから先への期待に、溜息を漏らした。 「お前のせいで、俺も暑い」 狼の様な犬の様な、人間とは随分と形状の違うその顔では、キスをするには随分身体を話さなければならない。 前倒しにしていた上半身の姿勢を正して、大きく太い指で少女の顔をぎりぎりまで上向けると、背中を丸めて顔を向き合わせた。 「覚悟してろよ、美奈」 大きく平べったい舌で、遠慮も為しに首筋から顎をなぞった。 ぷると小さく震えた美奈の顎を、小さく開けた口であま噛みする。小さく開かれた小さな唇の奥に、舌を無理に押し込むと、舌の先端だけですっかり埋まってしまった。 「っう、ふ……!」 苦しそうな非難の息を聞き流して、小さな舌を絡めて嬲る。 美奈はそれに答えたかと思うと、舌先を絡めてもう少しルフールの舌を引き入れ、舌の裏側を舐めつつ、徐々にあま噛みしていく。息を詰まらせながら、懸命に愛撫しようとする美奈の姿に、それだけで快楽が生まれる気がする。 ヤバい、と息を止めたルフールは、突然に胸を摘むと、柔らかいそれをゆっくりと撫でる様に揉み始めた。 そうして無理矢理に舌を引き抜き、二人を繋ぐ唾液を巻き取る様にして、口の中にしまい込む。首筋に牙を押しあてて痕を付けると、満足そうに顔を歪めた。 「なんだか、ずるいなあ。私、ルフールにキスマークとか残せないんだよ?」 やわやわと触れる五本指に右手を重ねて、その動きを感じる。 するともう片方の胸の頂を摘まれた。 「にゃぅっ!」 「うるせえんだよ。ったく、恥ずかしいことぬかしてんな」 そのまま空いている片手を移動させ、既に潤んでいた陰部をするりと撫でてやった。 「ん、だって、ずる、い」 前後に動かしてやると、自分の指に重ねられていた掌と、ルフールの死角でベッドのシーツを掴んでいた掌とが、彼女の下半身を弄る大きな掌を掴んだ。 しかし、その動きを止めることは出来ない。ルフールはむしろ楽し気に指を前後させ、指先を僅かに沈めさせてみたり、一番上の出っ張りを撫でてみたりする。 「や、ちょ、っん、やぁ」 焦らす様な動きに、美奈の掌は、今度はルフールの掌を自分のそこに押し付けようと、引き寄せようとする。 「おいおい、我が侭なお姫さんだなあ?」 荒い息をなるべく静かに吐き出しつつ、ルフールはにやりと目を細めた。わざとそのまま続けて、柔らかに触っていた筈の掌で、胸を強く揉みしだく。 物足りない身体が、快楽を求めて感度を増す。 女唇が涎を垂らして、早く貪らせろと疼く。 心境の変化に対する羞恥と、それでも欲しい快楽に困惑した美奈が、ルフールに倒れ込む様にすると、ルフールはどうしたのかと手を止める。 「 て。もっと、ちゃんとして。気持ち良くして!」 目を見開いたルフールは、ああ、と愛おしさに目を細めて、直ぐににやりと笑う。肩を押さえ込む様に抱き寄せると、表面をくすぐっていた指を、ゆっくりと突き入れた。 途端に大声を上げそうになる美奈を抱き寄せて、身体で口を塞ぐ。 暫くそのまま遊んでいたルフールは、徐々に気になり始めた、手の動かしずらさを解決する為に、体位を替えることにした。とはいえ、二人はこれでも新婚でその上初夜である。ルフールは、なるべく妻の顔を見ていたかった。 一先ずに手を止めたルフールは、大きな両掌の人差し指と中指で、細く柔らかいわきを挟んで抱き上げた。 わざわざ余しておいた親指で、胸の頂を捏ねつつ、胡座を組んでいた脚を広げる。 その上に美奈を座らせた。 「な、っん……何?」 硬くなったそこを執念に責め立てられながら、わざわざ膝の上に乗せられた疑問を口にする。すると、自分を固定していた掌は、す、と下に降りて行った。 左手は腰を支え、右手は陰部に潜り込んで行く。 丁度良く脚を開かされた体勢だと気付いたのは、中に指が入ってきたからだった。 「んんっ」 大きな声が出そうな気がして、口を噤む。案の定であった声は、くぐもって口内に押しとどめられた。 「やっぱり、新婚さんはおアツイねえ」 ボロいとまではいかなくとも、このアパートは木で出来ている為、かなり古い建物であることは、一目にも明らかである。 その床から滲み出してきた、液体の様な生命体スライムは、顔の上部だけを形成した姿で、二人の濡れ場をじいと見つめていた。己の彼女を思い浮かべると、体中の気泡が口の辺りから溢れ出していくのが分かる。 「ツンツンもかわいいけど、たまには甘くヤってみたいもんだ」 本人に聞かれてしまえば、バカ!と顔を真っ赤にして叩かれそうだ。 一人想像して、そのかわいさに体温を上げたスライムは、ちらりと目前の二人に目を向ける。どうにかして雰囲気を作ってみよう、そう決意して、すうと床に染み込んでいった。 おわり ↑ 名前 コメント すべてのコメントを見る タグ … 人間♀ 和姦 犬科 狼 獣 獣人 !3-470 *人外アパート
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S令嬢×M人外男 1-201様 音もなく雨の降る夜更け、古いがよく手入れをされた洋館。その裏手にある小さな扉が細心の注意を払って開かれ……入ってきたのは、人の形をしているが、体毛はなく、代わりにところどころを甲殻が覆っている、そんな生き物だった。 彼は開かれた扉からするりと身体を滑り込ませ、注意深く辺りを見回し――正面にある階段の上に仁王立ちして、彼を見つめる少女に気付いた。 「――ジェシカお嬢様」 彼は頭を下げる。その動きに合わせてシャラリと首に巻かれた鎖が鳴った。鎖の留具にはこの屋敷のいたるところに刻まれている紋章が、同じように入れてあり――それは即ち、彼がこの家に「モノ」として属していることを示していた。 「こんな時間に、どこへ行っていたのかしら?シルヴァ」 純白の夜着の上から、刺繍の細かさで高価な事が見て取れる若草色のストールを羽織った少女は、あからさまに不機嫌な声音で尋問の言葉をつむぎ、カツカツと足音を立てながら階段を下りた。 シルヴァは頭を下げたまま視線を動かし、ジェシカの足をちらりと盗み見る。彼女は柔らかな室内履きでなく、艶やかな黒革のピンヒールを履いていた。 その禍々しい艶にゴクリ――と思わず唾を飲む。 「まぁ、だんまりなの、シルヴァ――顔をお上げなさい」 「……」 カッ、と足音を一際高く立ててジェシカはシルヴァの前に立ち、自分より頭二つ分くらいは長身のシルヴァを見上げ、彼の金の瞳を睨みつける。シルヴァは黙ったまま、ただジェシカの紺碧の瞳を見返していた。 「お前が黙りこくったところで、意味がないわ。だってわたくし、知っているのですもの――『あの女』のところに、行っていたのでしょう?」 「――ッ!!」 ピンヒールの尖った踵が、シルヴァの足の甲を覆う甲殻の隙間に刺し込まれた。 甲殻の下の柔らかな皮膚が彼の弱点である事を知り抜いた的確な攻撃に、思わず叫び声をあげそうになる。 「ほらシルヴァ、何とか言ったらどうなの?」 ぐりぐりと弱点を抉られながらでは、叫び声をあげないでいるのがやっとだ。 「ッ――ぉ、」 それでも懸命に言葉を搾り出す。だんまりのままでいられるのは、彼女の最も嫌うことだと知っているから。 「なぁに?シルヴァ」 「ぉ、母上を、そのよ、うにッお呼びになっては――ガぁッ」 ぶちり、とシルヴァ足の甲がたてた音は、彼の漏らした呻き声にかき消された。 忌々しそうな顔で少女が足を引くと、鮮やかな緑色の血が漆黒のヒールに滴った。 それを見てシルヴァは跪き――当然といわんばかりにジェシカは折られた膝の上に汚れたヒールを載せた。 「お前のせいで汚れてしまったわ……綺麗になさい」 シルヴァは首と舌をあらん限り伸ばし、ヒールに付着した己の血液を舐め取る。 雨に濡れた彼の身体に触れぬよう抓んで持ち上げられたスカートの中からは、興奮したジェシカの匂いが薄く香り、シルヴァは内心安堵する。 これはいつもの戯れで、自分は本当に嫌われているわけではない。 それさえ分かれば彼にとってはどんな仕打ちも無上の喜びだ。 一方ピチャピチャと靴を舐めるシルヴァの様子を眺めたジェシカは、彼の痩せてはいるが広い背に目を向ける。 昼間に彼女がつけた傷痕が刻まれている筈のその場所に、今はガーゼが丁寧に貼られていた。『あの女』の、仕業だ。 生れてすぐに母と死に別れたジェシカに、多忙ゆえに共にいられない日の多い父親が、ペット兼下働き兼ボディガードとして与えたのがシルヴァだった。 彼は主の言いつけを守り、いつもジェシカの傍に仕え、彼女の言うどんな我侭にも従ってくれた。 それなのに…… (あんな女、母ではないわ。決して許さない……お父様だけでなく、シルヴァまでわたくしから取り上げようとするだなんて) 「もういいわ。身体を拭いたら、わたくしの部屋にいらっしゃい。勿論背中の、汚らしい膏薬も取ってね……おまえにはまだ、躾が足りないようだから」 「――畏まりました」 翌日。 元気一杯スッキリした様子の少女と、対照的に青い顔をした男が逃げるように宿を後にし、後には半分溶解した部屋と掃除に来たままノブを握りしめ硬直した宿の主人が残された。 ↑ 名前 コメント すべてのコメントを見る タグ … SM 主従 女性上位 鬼畜
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サイボーグ×豹合成獣 機械×少女 の外伝 人間♂+サイボーグ×豹合成獣 1-318様 透明な液体を滴らせながら屹立するペニス。異臭を放つそれに顔を寄せ、舐め始めた。ぴちゃぴちゃと水音が響く。不快な臭いと味に、途中一度二度吐き気がこみ上げたものの、我慢して舐め続け、そして、口に含んだ。 牙を立てないように、相手の不興を買わぬように、おそるおそる行う口唇愛撫。客はそれに満足できなかったのか、わたしの頭部をその節くれだった手で押さえつけ、喉の奥までを犯しぬくように前後させ始めた。 「ん、ぐっ・・・ぐぶっ、かはあっ・・・!」 恐怖と嫌悪に体毛が激しく逆立った。もがいて逃れようにも、がっちりと固定された手は離れない。わたしは知っている、これはしばらく我慢していればすぐに終わること。下手に抵抗すれば、後で「飼育係」にどんな事をされるか分からない。 あきらめて、身を任せていればいい。抗う事は寿命を縮める。その認識を肯定するように、男の性器がびくびくと痙攣し、口内に熱く臭い体液を放出した。 簡単な体調チェックの後、わたしの檻に戻ることが許された。帰還すると部屋にざわめきが生じたが、それはすぐに収まり、しばらくして仲間のひとりが声をかけてきた。 「大丈夫だったかい?酷い事はされなかった?」 「ありがとう、大丈夫です。痛めつけられたりはしなかったもの」 疲労して口も利きたくないが、心配してくれている相手に冷たい返事をするわけにもいかない。酷い事はされていない。 少なくとも、肉体的には。生き物を切り刻みたがる、変態的なサディストはいくらでもいるのだ。 「そう、それならいいんだけどね・・・」 今わたしに話しかけている女は、もちろん人間ではない。彼女は人間の頭と猛禽の体を与えられたキメラだ。ギリシア神話に現れる、セイレンという魔物を模して作られたもの、と誰かが言っていた気がする。人面獣体である点では、豹のキメラであるわたしに似ていると言えない事もない。 この部屋を見渡せば、そのような人外のものたちがいくらでも目に入る。しなやかな体をくねらせる人魚、蝶の翅を持つ妖精、蛇体のラミア、天使、ケンタウルス・・・。それらはもちろん自然に生じたものではない。我々は、人間の性欲を満たす為にのみ造られた、生まれながらの娼婦だ。性行為と客を喜ばせる為の僅かなパフォーマンス以外は何も教えられず、客をとっていない時は、この狭い部屋でうずくまって時を過ごす運命にある。 人魚が哀しげな声で歌い始め、わたしはそれを子守唄に眠りにつく。生は苦痛、眠りは死。せめて痛みのない死を望みたい。 ある日、セイレンが脆い体を傷つけられ、包帯だらけで戻ってきた。翼は骨を折られたのか痛々しく垂れ下がり、羽毛は逆立って何箇所か禿ができていた。慰めようにも、鉄の檻に阻まれて触れる事さえかなわない。 「大丈夫ですか?ひどくやられましたね」 「なに、よくある事さね。逆らってどうにかなるもんじゃないしさ、仕方がないよ」 確かに、こういった事はよくあるとは言えないものの、決して稀な出来事ではない。我々は「高価な品物」ではあるが、「取替え不能な誰か」ではないからだ。それなりの代金を払えば、どんな行為も許される。 「大丈夫、アタシはこんな事でへこたれやしないさ。元気になってみせるよ」 彼女は無事なほうの翼を広げて、だからそんな顔をするのはおやめ、と笑う。翼端が狭い檻の格子を掠め、風を送って寄越した。 翌朝、檻の中には襤褸の塊のようになって横たわる彼女の屍があった。「飼育係」が義務的にそれを回収し、我々は彼女が運び去られていくのを黙して見送らねばならなかった。 「うらやましいわ・・・」 人魚がぽつりと零す。 「やっとここから出て行けるのだもの。あのひとは自由になったんだわ」 いくたりかが同意の言葉を返し、部屋はそれきり静かになった。 我々は死ぬまで自由にはなれない。それが当然だと思っていた。 「おい、ちゃんとご奉仕してくれよ。お前達はそのためにいるんだろ?」 セイレンの死に様が強く記憶に残り、どうしても行為に力が入らない。昨日の今日で客を取らせる、「飼育係」達の配慮のなさに問題があると思う。 「あー、もういいや。股開け」 わたしは大人しく言われるままの姿勢を取り、男が唾液まみれの男根を挿入しようとする様を冷静に眺めた。行為自体は不快であるが、わたしの意志を介在させずに済むという点ではありがたい。準備の出来ていない体にむりやり侵入される痛みには、もう慣れている。 ピストン運動が体をゆすぶり、結合部分が激痛を訴えてもわたしは声を上げずに耐えた。この程度の苦痛など、セイレンの受けたものに比べれば何ほどの事もない。 「もっと反応して見せろや。喘ぐなり泣き叫ぶなりしてもらわにゃ張り合いがねぇだろうが!」 ああ、そういう嗜好の人なのか。ならばそれなりの演技をせねばならないかと、わたしは頭の隅で考えた。 ぎしぎしと騒音が起こり、埃が天井の通風孔から降り注ぐ。数秒の後、がたりとカバーが外れ落ちて、何事かと律動を止めた客と、わたしの目の前にひとりの男が降ってきた。 「うわっ!!な、なんだっお前ぇ」 わたしの中でたちまちの内に性器が萎え、客は声を裏返らせながら無様にわめく。侵入者は冷ややかにそれを見据え、一言囁いた。 「黙れ」 客は瞬時に口をつぐむ。男はわたしをちらりと一瞥した。片手に握られた銃。ゴムの焦げたような臭い。 「騒ぐなよ」 向こうで起きている喧騒が、次第にこちらへと近づいてきている。 「騒げば、殺す」 「・・・殺してくださるのですか?」 男は一瞬虚を突かれたような表情になったが、すぐにかっと目を見開き、わたしを睨みつけた。わたしも彼を見返す。奇妙な沈黙の中で気付いた。このひとは呼吸をしていない。 「殺して欲しいのか?」 扉の前で足音が止まり、ドアが勢いよく開かれた。 「いいえ、誰も来ませんでしたけれど」 性交が行われていたのが奥の部屋だったのが幸いだった。わたしは嘘をついてのけ、不審そうな表情の「飼育係」を追い返す。彼らもまさか合成獣如きに騙されるとは思わなかったのだろう、大人しく引き下がってくれた。 「多分もう大丈夫でしょう」 奥からのそりと侵入者が現れた。 「妙な奴だな」 無表情だった顔を、微かに笑みの影がよぎる。 「何処に行かれるのかは知りませんけれど、気をつけてくださいね」 あの「飼育係」達に嘘をついたのだ、わたしはただでは済まないに違いない。しかし気分がいい。あのいやらしい連中を騙しおおせたのだ! これはわたしなりの仇討ちとも言えなくもなかろう、切っ掛けを与えてくれた彼に感謝したい気分だ。 「本当に、妙な奴だ・・・名を聞いても?」 一瞬考え込む。「飼育係」たちに個体名を付けられた記憶はないし、個体が頻繁に入れ替わるキメラ同士では、名を付ける習慣はなかった。 「わたしに名はありません。どうか、気をつけて。本当に」 覚悟はしていたのだが、何故だかわたしにお咎めはなかった。「飼育係」達が慌しく働いている雰囲気のみがあり、誰にも客が来ない日が 数日間続いた後に、わたしだけが連れ出された。 「久しぶりと言うべきか。元気そうだな」 いよいよ廃棄の日が来たかと、身を硬くしていたわたしを待っていたのは、あの侵入者だった。 「あの方がお前を引き取りたいそうだ。命拾いしたな」 奇妙にかすれた声で、「飼育係」がそう言った。 「おい、どうした、起きろペルラ」 主がわたしを呼んでいる。意識が覚醒し、自分の現状を把握しようと働きだす・・・嫌な夢を見た。 「わたし、魘されていましたか?」 無言で頷き、背をさすってくれる主。わたしは微笑んでみせようとしたが、うまく行かなかった。あの施設に閉じ込められていた同胞たち。彼女らは今どうしているのだろうか。セイレンのようにひそやかに息絶えたか、わたしのように誰かに買い取られたか。あるいは あの冷たい牢獄の裡に、今なお囚われているのか。 「ご主人様、わたしを何故買い取ったのです?」 前脚の付け根辺りで手の動きが止まり、主は微かに目を細める。 「・・・おまえはあの時、殺して欲しいと言ったな」 体温を持たない掌が移動し、猫にするように喉元を撫で上げる。 「キメラのおまえが。死にたがる獣はいないものだが」 ほんの僅かに、指先に力が篭められた。 「おまえは今でも死を望んでいるか?」 喉に食い込んだ指が顎を押し上げ、強引に視線を固定される。貫くようなまなざし。咄嗟に言葉が出ず口ごもるわたしを見て、主は口元だけで笑うとあっさり手を離した。 「合成獣とサイボーグ。つくりもの同士似合いだと思わないか?」 わたしの身体を冷たい手が蜘蛛のように這い回る。黄褐色の獣毛を散らしながら爪が皮膚を掻き、血がにじむ傷を残した。主はわたしの髪に顔を埋め、手負いの獣のように唸る。 「おれを憎むがいい、ペルラ」 冷たい腕が豹の胴に回され、低い声が囁く。 「おまえにはその資格がある」 背中側から抱かれている為、表情はわからない。 「あなたを、憎む・・・?」 頷く気配。 「な、ぜっ」 言葉が途切れる。指が2本秘所に挿入され、体液を溢れさせるそこをかき混ぜ始めた。 「あぁあっ・・・ん、はうっ」 鉤爪を布団に食い込ませ悶える。布団がやすやすと引き裂かれ、白っぽい詰め物が飛び散り、そこに体液が滴り落ちて染みを作った。 全てが済んだ後も、主はわたしの身体に腕を回したままじっとしている。そんなにわたしを求めるくせに、あなたは憎んで欲しいのか。なぜか突然悲しくなって、腕を外さないようにそっと向きを変えると、抱き返すような形で彼の肩に前足をかけた。 「ご主人様、あなたは憎まれていたいのですか?」 今度はわたしが見つめる番だ。彼は逃げるように顔を背け、喉の奥から言葉を搾り出した。 「失言だ。忘れろ」 いや、忘れはしまい。横を向いている主の頬を舐めた。冷たいゴムの感触。 「わたしはあなたを憎みはしない」 あなたはわたしに様々な物をくれた。知識、快楽、ひとを愛する心、そして名前。名前のない合成獣を「ペルラ」にしたのはあなただ。二度とわたしは死を望みはしないだろう。一分一秒でも長く生きてあなたの傍に居たい、例えあなたが望まぬとしても。 「あなたを、愛しています」 一瞬、ほんの一瞬だけ、主の顔がひどく悲しげに歪んだ気がした。 「おれにそんな資格はない」 小さく低い声でそう言った主の姿は、これまでにないほど弱々しく見えた。 ↑ 名前 コメント すべてのコメントを見る タグ … 人外×人外 人造 人間♂ 合成獣 娼婦 獣 鬼畜 !1-318
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関連 → ヤンマとアカネ リビングメイルと苦学生 2 859 ◆93FwBoL6s.様 夕暮れに染まる街を越え、古びたトタン屋根に足を下ろした。 下両足の黒い爪でトタンを掴むと、砂っぽい感触が伝わった。透き通った四枚の羽を下げてから、街並みを見渡した。駅前に立ち並ぶビルは半身を朱色に染め、周辺の民家は濃い影に埋まり、家路を急ぐ子供達の姿が複眼に映る。今日も特に異変が起きなかったことを安堵する傍ら、少々不満に思いつつ、ヤンマはアパートの屋根に腰を下ろした。 茜と共にこの街に来たばかりの頃は、排気ガスと人いきれで息が詰まりそうだったが、今ではそれにも慣れてしまった。ヤンマは茜と同じ地方都市の出身だ。中途半端に発展した中心部から離れれば、すぐに田んぼや山が現れる場所だ。人間や昆虫人間の密度が低いので飛ぶのはかなり楽だったが、この街は違う。どこもかしこも、物や人が詰まっている。当然ながら昆虫人間の数もかなり多く、本能的に縄張りを決めてしまうオニヤンマにとっては、それは許し難いことだった。 茜には荒事を起こすなと言われているが、DNAに刻まれた本能だけはどうにもならず、ついつい昆虫人間と戦ってしまう。害のない性格の相手だったら一言脅して見逃すが、自分のように血の気の多い相手だったら、戦わなければ気が済まない。勝った回数も多いが、同時に返り討ちにされたことも少なくない。けれど、戦わずにいると、体の奥底がむず痒くなってくる。それを我慢出来ればいいのだが、何をどうやっても堪えきれない。その結果、傷だらけになって茜にこっぴどく怒られてしまう。 言ってしまえば、戦わなければ落ち着かないのだ。昆虫人間は人間と共生しているが、人間のようには生きられない種族だ。だから、茜と一緒に暮らしていても訳もなく不安になる。そういった鬱屈した感情を晴らすためにも、暴れずにはいられない。 「お帰りなさい、ヤンマさん」 下から声を掛けられたので、ヤンマは身を乗り出し、アパートの正面を見下ろした。 「よう、アビー」 声の主、リビングメイルのアビゲイルは、白いエプロン姿で両手鍋を抱えていた。 「街の様子、どうだった?」 「大して変わりゃしねぇよ。だが、これから気温が上がると、変な連中が沸いて出てくるだろうな」 よっ、とヤンマはアパートの屋根から飛び降りると、アビゲイルの目の前に着地した。 「そういえば、昨日の夜、祐介さんのお部屋にもゴキブリが出たわ。そういう季節になったのねぇ」 アビゲイルが苦笑すると、ヤンマはがちがちと顎を鳴らした。 「ああいうのは喰っちまうしかないな。あいつらも役に立たないわけじゃねぇが、多すぎて鬱陶しいんだよ」 「だったら、今度出たら捕まえておくわね。殺虫剤は使わないように気を付けるわ」 「あ、おう…」 アビゲイルの言葉に、ヤンマは曖昧に答えた。肉食であるヤンマはゴキブリも捕食出来るが、大して好きではない虫だ。生臭く、べとべとして味が悪い。そして、そういった害虫を喰っていると、茜は思い切り嫌な顔をしてヤンマから離れてしまう。それが嫌だから、ゴキブリはあまり食べたくない。だが、隣室でむやみに殺虫剤を使われないためには仕方ないことなのだ。 「それでね、ヤンマさん」 アビゲイルは抱えていた両手鍋を差し出し、ヤンマに持たせた。 「ちょっと作り過ぎちゃったから、またお裾分けするわね」 「そりゃどうも。んで、今日は何なんだ?」 「おでんよ。鍋は後で洗って返してくれればいいから」 茜ちゃんによろしくね、と手を振ってから、アビゲイルはがちゃがちゃと金属製の足を鳴らしながら階段を昇っていった。その背を見送ってから、ヤンマは重たい鍋を見下ろした。まだ温もりが残っていて、蓋の隙間からは良い匂いが零れていた。 「あ、ヤンマ! 帰ってたの?」 弾んだ声に振り向くと、食料品の詰まったスーパーの袋を下げた茜が駆け寄ってきた。 「お帰り、茜。アビーからまたもらったぜ」 ほれ、とヤンマが鍋を茜に見せると、茜はスーパーの袋をヤンマの中左足に引っ掛けてから、鍋の蓋を取った。 「わあ、おでんだね! でも、なんか…妙じゃない?」 「何が?」 「だって、ほら」 茜は湯気による水滴が滴る鍋の蓋で、鍋の中を示した。醤油色の透き通った煮汁には、大根や卵や練り物が浸っている。中でも、圧倒的に多いのがこんにゃくだった。白と黒が同じ比率で詰め込まれていて、どれもこれも妙な切り方をされている。料理上手なアビゲイルらしくない、いびつなものばかりだ。茜の手を引いて蓋を閉めさせたヤンマは、隣室の扉を見上げた。 「今夜は騒がしくなるかもしれねぇな」 「なんで?」 茜はきょとんとしたが、スーパーの袋を中左足にぶら下げて鍋を抱えたヤンマは、足早に階段を昇った。 「今に解る」 「えー、何ー、教えてよぉー」 茜の声を背に受けながら、ヤンマは合い鍵で鍵を開け、先に部屋に入った。靴を履かないので、まずは下両足を拭いた。茜から押し付けられた買い物袋を冷蔵庫の前に置いてから、アビゲイルから受け取ったおでんの鍋をガスコンロに載せた。ただいまー、と明るく言いながら部屋に入ってきた茜を複眼の端で捉えつつ、ヤンマは隣室に面した日焼けした壁を見やった。 安普請の中の安普請であるこのアパートは、防音性が皆無だ。部屋を仕切っている壁は薄く、拳一つで簡単に破れそうだ。だが、他の行くところがないので、それを承知の上で住むしかない。立地条件も悪くないし、何より家賃が格段に安いのだ。しかし、それ故の弊害も大きい。どうなることやら、と思いつつ、ヤンマはセーラー服から私服に着替える茜から目を逸らした。 どうせ、後で存分に見ることになるのだから。 勉強に一区切りを付けた祐介は、風呂に向かおうとした。 ジャージの上下と下着とタオルを抱え、勉強部屋を兼ねた寝室と居間を繋ぐふすまを開けたが、祐介はその手を止めた。食卓用のテーブルが壁際に立てかけられていて、寝室と同じく畳敷きの六畳間の中心では、アビゲイルが正座していた。それだけならまだいいのだが、三つ指を付いている。そして、どこで手に入れたのかよく解らない短いスリップを着ていた。エプロン同様新婚臭い、フリルたっぷりのスケスケだ。淡いピンクの薄い布地越しに見えるのは、肌ではなく銀色の甲冑だ。 アビゲイルは恥ずかしげに祐介を見上げたが、可愛らしく小首を傾げた。途端に、祐介は半開きのふすまを全力で閉めた。だが、締まり切る前にアビゲイルのガントレットが挟まれ、祐介の力に勝るほどの力でアビゲイルはふすまを開けようとした。 「せめてリアクションしてぇ、祐介さぁん!」 「出来るかっ!」 ふすまを閉めることを諦めた祐介は、ふすまを全開にし、アビゲイルを罵倒した。 「いい加減に自分の外見を自覚しろ! でもって自重しろ!」 「祐介さんったら、つれない人ね」 「変な格好の甲冑につれる方がどうかしている。俺は風呂に入りたいだけだ」 「ああん、待ってぇ、せっかく準備したのにぃ」 祐介はアビゲイルを押し退けて風呂に向かおうとするが、アビゲイルは祐介の足に縋り付いた。 「何をだよ!」 「そりゃもちろん、アレよ、ア・レ」 「具体的に言え」 「いやぁん、女の子の口から言わせる気?」 アビゲイルは祐介の足を離さないまま、スリップの裾を持ち上げて金属製の太股を見せた。 「頑張って作ったんだから、祐介さんが楽しんでくれないと困るのよ」 太股の内側からは粘り気を持った水滴が垂れ、畳の上に落ちていた。 「まさか」 次第に状況を理解してきた祐介は、アビゲイルの腕の中から足を抜き、呆れた。 「お前、股間にこんにゃくを仕込んだのか?」 「うふふ、素敵でしょ?」 「道理でこんにゃくだらけの夕飯だと思った…」 となると、先程食べたものは失敗作の成れの果てだったのか。祐介は今夜の献立を思い出し、げんなりしてしまった。こんにゃくだらけのおでんを始め、炒め物や和え物が並んでいた。その時は、特売だったのだろう、としか思わなかった。だが、そうではなかった。確かに、世間にはこんにゃくに逸物を突っ込んで快感を得る輩がいるとは聞いたことがある。けれど、祐介にはそこまで快楽を求める嗜好はなく、間違っても中身が空っぽの甲冑にそれを仕込もうなどとは思わない。 「風呂に入る!」 こうなったら、風呂に逃げる他はない。祐介は意地で足を進めようとするが、アビゲイルも意地になっていた。 「お願い、祐介さん。こんにゃくだって人肌に暖めてあるんだから、冷めちゃったら気持ち良くなくなっちゃうわ」 「いい加減にしろ! 生身の女ならともかく、こんにゃくに突っ込んだって面白くもなんともない!」 「私だって、祐介さんに楽しんでもらいたいのよ? ただ吸収するだけじゃ面白くないんだもの」 「そういう問題か!」 「一緒に気持ち良くなりましょう、祐介さん? ね?」 「突っ込んだところで、お前は何も感じないだろうが!」 「それは気持ちの問題よ。感じたいって思えば、感じたことになるんだから」 祐介のジーンズのベルトを握ったアビゲイルは、身を乗り出し、艶っぽく囁いた。 「私達が始めれば、茜ちゃんだって始めちゃうかもしれないわよ?」 「…おいおい」 祐介は顔を歪めたが、本心は違った。ヤンマと茜が一線を越えている関係であることは、隣人の特権で知っている。どうやって異種族の昆虫人間と事を致すのかは解らないが、時折、茜の可愛らしい喘ぎ声や悩ましい呻きが漏れてくる。アビゲイルが迫ってこない時は、それで処理していたほどだ。悪くないかもな、と思っているとアビゲイルが抱き付いてきた。 「ね、祐介さん?」 「今回だけだからな」 アビゲイルの言う通りになる保証はないが、なったら嬉しい。そう思った祐介は、着替え一式を風呂場に置いてきた。居間に戻ると、アビゲイルは祐介を座らせた。膝を崩して銀色の指先を入れると、溢れるほど潤っている股間に触れた。 「大丈夫ね、まだ冷めてないわ」 アビゲイルは股間からちゅぷんと指先を抜くと、背を伸ばして身を乗り出してきた。キスをしろ、ということなのだろう。キスでも生命力を吸収出来るが、射精の方が効率が良いので回数は少ない。祐介は少々躊躇ったが、兜を掴んだ。手に広がる感触はやはり金属で、ヘルムの隙間から見えるのは薄暗い闇だ。どこに魂があるのか、未だによく解らない。彼女の顔の下半分を形作るマスクに顔を寄せ、唇と思しき部分に唇を当てるが、鉄臭さと冷たさしか感じられなかった。だが、アビゲイルは別らしく、床に付いた両手を握っている。祐介が顔を離すと、彼女はため息を吐くように肩を落とした。 「なんだか、どきどきしちゃうわ」 アビゲイルは祐介の唇が触れていたマスクを押さえていたが、スリップの肩紐を片方だけ外した。 「ねえ、祐介さん。一杯触って、一杯感じさせて」 「その代わり、隣に聞こえるぐらい声出せよな」 「うふふ、言われなくても出ちゃうわよ。だって、祐介さんが触ってくれるんだもの」 照れ臭そうに微笑んだアビゲイルの言葉に、祐介は少しぐらついたが、目に映る彼女の姿は相変わらずの甲冑だ。一瞬で素に戻ってしまったが、続けなければ意味がない。祐介はアビゲイルを横たわらせ、その上に覆い被さった。女性型の甲冑とはいえ、身長は祐介とそれほど変わらず、体の厚みは女性的な曲線を抜きにしても祐介よりもある。両肩も装甲が付いているために大きく、上腕も太い。抱き締めたところで、手応えもなければ温もりも得られない体だ。 薄い生地の下から現れた硬いだけの乳房に触れてやると、アビゲイルはぎちっと関節を軋ませ、身を強張らせた。普段は攻めるばかりだから、攻められるのに慣れていないらしい。揉むことは出来ないので、撫で回すことに専念した。生身なら先端があるであろう部分に触れると、アビゲイルの反応は一気に増し、祐介の腕を掴む手に力が込められた。 「あん、そこはぁ」 「だったらもっと触るまでだ」 彼女が反応するのが楽しくなってきた祐介は、スリップのもう一方の肩紐も外させて、上半分をずり下げてやった。薄っぺらい布でも剥がされてしまうと羞恥心を感じるのか、アビゲイルは顔を背け、肩を縮めて悩ましげな声を漏らした。 本物の胸とは違って柔らかさは欠片もないが、胸は胸だ。そう思った祐介は、アビゲイルの銀色の乳房に唇を付けた。ありもしない乳首を含むようにしてやると、アビゲイルはびくっと小さく震え、金気臭い肌を舐めてやると喘ぎが高まった。 「ふあぁんっ、あ、あぁ、ああっ」 思いの外色気のある喘ぎ声を聞かされたことで、祐介の下半身は素直に反応し、茜の痴態を想像するまでもなかった。自分の若さを痛感しながら、祐介はアビゲイルの乳房を舐める傍ら、生温い雫が伝い落ちる太股の間にも手を差し込んだ。躊躇うように閉じていた太股を開かせ、彼女自身が備えたものから零れた潤いを使ってなぞると、アビゲイルは喉を逸らした。 「ひあんっ!」 「なんだ、そっちの方が弱いのか」 祐介が顔を上げると、アビゲイルは肩を縮めた。 「それもそうなんだけど、恥ずかしいから…」 「自分でここまでやっといて、今更何を言ってんだよ」 「でも、やっぱり恥ずかしいわ。祐介さんに全部見られちゃうんだもの」 「どうせこんにゃくしか入ってないんだ、見られたところでどうってことないだろ。でもって、お前は常に全裸だろうが」 「それを言わないでちょうだい」 それなりに気にしていたらしく、アビゲイルは畳にヘルムを埋めた。表情が出ていれば、頬を張って膨れていたのだろう。妙な状況だが、微笑ましいと思った。祐介は段々調子に乗ってきたこともあり、体を下げてアビゲイルの両足を開かせた。いやあんっ、と拒絶とは言い難い甘ったるい声が上がったが、奥に仕込まれたものを直視しては興醒めするのは間違いない。物凄く気になるが出来るだけ目を向けないように気を付けて、祐介はアビゲイルの太股に唇を当て、わざとらしく音を立てた。 「あ、あぁ、あぁあっ」 アビゲイルは思わずマスクを押さえるが、声は押さえらない。それどころか、自分の発する声が兜に反響し、尚更高ぶる。祐介はアビゲイルの太股から顔を外すと、内側を緩やかに撫で上げた。本当に弱いらしく、胸を上げて仰け反ってしまった。 「あひゃあんっ!」 一際高い声を放ったアビゲイルは、力を抜くように細く息を吐いた。 「私ばっかりじゃ、いけないものね」 身を起こしたアビゲイルは祐介のベルトを外し、脱がせてしまうと、股間から滴る潤いをマスクになすり付けた。 「うふふふ、もうこんなにしちゃって…」 硬く張り詰めた性器を掴んだアビゲイルは、マスクを押し当てて下から上に向けて擦り上げ、先端にマスクを押し付けた。双方の水分が混じり合い、僅かばかりの異音を作る。口に含めないまでも、舐めるような気持ちで何度も何度も擦り上げる。しどけなく体を伏せて両足を投げ出しているアビゲイルは、夢中になって祐介の性器を弄び、陶酔し切った声を漏らしていた。それがまた、欲情を煽ってくる。欲情させた相手に欲情されるというのは悪くない。それどころか、征服感すら感じてしまいそうだ。 「もう、いいだろ」 自身の強張りを確かめた祐介がアビゲイルの顔を離させると、アビゲイルはシワの寄ったスリップを脱ぎ、横たわった。 「早く入れて、祐介さん。祐介さんが欲しいの」 「どこでそんなの覚えるんだよ、お前は」 「うふふふふ、秘密」 「だろうと思ったよ」 祐介はアビゲイルの作った生温い陰部にあてがい、腰を前に進めた。生身のそれよりは冷たいが、感触は近いものがある。 「どうだ、感じるか?」 「ええ…凄く…」 アビゲイルは祐介の背に両手を回し、服を掴んだ。背筋を這い上がる独特の感覚に、おのずと声が上擦った。 「出来るだけ意識を向けて、鎧だけじゃなくてアレにも感覚が生まれるようにしてみたけど、やれば出来るものなのねぇ」 「だったら、もっと感じろ、アビー。その方が面白いからな」 「言われなくても、もう感じちゃってるわよっ…」 祐介にしがみつくアビゲイルの手には、最早余裕はない。そのおかげで、中身が何であるか知っていても冷めずに済んだ。生身のそれよりも若干狭い作り物の陰部は、腰を動かすに連れてぐちゅぐちゅと生々しい音を発し、潤滑液が溢れてきた。どうやら、アビゲイルが仕込んでおいたものらしい。これまたどこで手に入れてきたのかは解らないが、凝りすぎている気もする。 「祐介さあんっ、もっと、もっとぉ!」 祐介の腰にも足を巻き付けたアビゲイルは、堪えきれずに首を左右に振った。 「アビー、お前、どこまで淫乱なんだよ!」 「だってぇ、祐介さんが欲しいんだものぉっ、祐介さんじゃなきゃダメなのよぉっ!」 「ああ、そうかい! だったら、いくらでもくれてやるよ!」 普通の女性ではまず言ってくれないであろう言葉の数々に、祐介はとてつもない優越感が生じ、思い切り彼女を突いた。 「あ、ああ、あぁ、あ、あぁああっ!」 祐介の精液が放たれると、アビゲイルは喘ぎと言うよりも悲鳴に近い声を上げて、上体を反らした。 「好きよぉ…祐介さぁん…」 熱い吐息混じりの弛緩した声で名を呼ばれ、祐介は多少心が動きかけたが、彼女から自分のものを引き抜いて我に返った。熱中している間は忘れていたが、やはり、こんにゃくはこんにゃくだ。どうやって固定しているかと思ったら、瓶詰めになっている。精液とローションと思しきものが混ざった液体が糸を引き、とろりと流れ落ちている。畳に染みたら困るので、早々に拭き取った。 「人として大事なものを失った気がする…」 こんにゃくを装備した鎧を犯すとは、変態にも程がある。祐介は猛烈な自己嫌悪に陥り、項垂れずにはいられなかった。 「あらぁ、とっても良かったわよ。またしましょうね、祐介さん」 アビゲイルは祐介の背にしなだれかかってきたので、祐介は乱暴に彼女を振り払い、浴室に向かった。 「二度目はない。今度こそ風呂に入る」 「背中、流してあげてもいいわよ?」 「余計なお世話だ!」 強く言い切った祐介は、脱衣所に入って扉を閉めた。アビゲイルの残念そうな声が聞こえてきたが、無視することにした。服を脱ぎながら盛大にため息を吐いた祐介は、結果としてアビゲイルで達してしまった自分に気付き、ますます落ち込んだ。感じやすさは普通の女性以上だったし、反応も素晴らしかった。増して、あそこまで自分を求めてくれるような女性は初めてだ。 高校時代に付き合った最初の彼女は至って普通の女の子で、最後まで行ったものの、自然消滅する形で別れてしまった。若さと好奇心に任せて体を重ねたが、どちらも至らなさが目立ち、相手を満足させれば自分が満足出来ず、逆も然りだった。だから、セックスとはそういうものなのだろうと変な諦観をしていたが、あそこまで感じてもらえると鎧が相手でも嬉しくなる。けれど、やはり我に返ってしまう。我に返るべきか否かを本気で悩みながら、祐介は冷め気味の湯船に熱の残る体を浸した。 隣室からは、耳に馴染んだ声が漏れていた。 どうやら、あちらは一段落したらしい。 だが、こちらはまだそうもいかない。ナツメ球が放つ弱いオレンジ色だけが光源の寝室で、ヤンマは茜に縋られていた。普段は茜しか使わない布団の上にヤンマも座っているが、茜はヤンマの胡座を掻いた屈強な下両足の上に跨っていた。長い腹部の先端から伸ばした生殖器で、茜の暖かな体内を深く抉ってやると、茜はヤンマの黒い外骨格に爪を立ててきた。 案の定、こういう展開になった。薄暗い中でも解るほど頬を紅潮させた茜は、ヤンマの胸にしがみつき、懸命に声を殺していた。声を出させるのも良いが、声を殺している様を見るのも楽しい。上右足を伸ばして爪を横たえ、控えめな乳房を握ってやる。 「ふ、くぁっ」 殺しきれなかった声を漏らし、茜は涙の滲む目をきつく閉じた。下半身は全て脱がされているが、上半身は着たままだ。前のボタンは全て外されて肌着もめくられているので、着ているとは言い難い状態なので、脱がされていないだけとも言える。 「あっちは終わったみたいだぜ。何、遠慮することはねぇよ」 細長い舌を伸ばして茜の目元を舐めたヤンマは、低く囁いた。茜は眉を下げ、俯く。 「でも…」 「それとも何か、お返しにこっちの一部始終も聞かせてやるか?」 「だ、ダメぇっ、そんなのダメぇ!」 茜は慌てるが、ヤンマの生殖器がぐいっと奥を突き、それ以上は続けられなかった。 「あうぅっ!」 「よく言うぜ。どうにもならなくなって、自分から俺を呼んだくせに」 「や、ヤンマだって、充分その気だったくせにぃ」 むくれた茜が睨んできたが、目が潤んでいるのと声が上擦っているので迫力は欠片もなく、むしろ可愛らしかった。たまらなくなったヤンマは茜を抱き締め、茜が最も良く反応する部分に生殖器の先端を抉り込ませ、声を上げさせてやった。後で怒られるかもしれないが、それはそれで楽しい。太い針のような生殖器を伝い落ちた熱い体液が、シーツに染み込む。ヤンマの肩に力一杯爪を立てた茜は、掠れた声でヤンマの名を呼びながら達してしまい、脱力して体を預けてきた。息を荒げる少女を支えてやりながら、ヤンマはなんともいえない嬉しさを噛み締めるように、ぎちぎちぎちと顎を鳴らした。自分から茜に迫るのも良いが、茜から迫られるのは格別だ。茜をその気にさせてくれたアビゲイルには、感謝しなくては。 今ばかりは、安普請が素晴らしく思えた。 ←・→ タグ … !859◆93FwBoL6s. *人外アパート
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高潔の先導者 赤白 クリーチャー ─ しぃ・兵士 1/2 あなたがコントロールする襲来を持つ呪文をプレイするコストは1減る。(通常のコストと襲来コストの両方が減る。) いずれかの発生源があなたがコントロールする釣りを持つクリーチャーにダメージを与える場合、そのダメージを1点軽減する。 償い?更正?くだらない。汚い前科者一匹がまともになったところでそれが何なのですか。さっさと死んで、私たちの心にひと時の癒しを下さいよ。 [部分編集] 36版の93のカード。 サイクル 第36版に投稿された、ペンタグラムエキスパンションの各勢力に対応する対抗色2マナのクリーチャーによるサイクル。 高潔の先導者 凶眼の煽動者 大鎌の戦闘者 無貌の僭称者 冷徹の占有者 イラスト ―─────━━━━━━ _____ ━━━────  ̄ ̄ ̄ __________───━━━  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ____━━━────── ̄ ̄ ̄ ̄ ̄━━─── _(__ く∧∧ /^)]二二二二> (。。*) ) L /ー' し ∧∧ /l/l <二二(ー゚ *)^) (* ゚ー) ヽ / G]二二二二> ∧_∧ ( フ~ ~/ ) (; ゚Д゚ ) (_/ (_/ー' と つ ノ ハ ヽ |\ (_ノ L_) \ \ ∧、 ∧∧ ( フ ( * )^)、 <二二二二[G と[ ノヽ ノ ~ ( ~ (_/ー' (_/ ―─────━━━━━━ _____ ━━━────  ̄ ̄ ̄ __________───━━━  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ____━━━────── ̄ ̄ ̄ ̄ ̄━━───
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先導者 アイリス コスト 26 レベル 10 MAX 進化元 - 進 化 素 材 緋色のドライアド (樹A) - ランク A HP 337 571 進化先 先陣に立つ女傑 アイリス (A) フレイフラウ (フラウC+) - MAX Lv 50 攻撃 971 1,643 進化費用 260,000 ヒノキノ・ルーキー (キノコC+) - No.1017 Aスキル 導く者の戦い 敵単体を2回連続攻撃 売却価格 12,000 火石のロシェ (ロシェC+) - 編集 Sスキル ヘスティアーの燈火 (7) 敵単体へ火属性の中ダメージ 入手方法 クリスタルガチャ 個別データ 備考
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______ __/\r──=ニ二二ノリh _____ 厂 ̄\\二ニ==ー-{h}ソ _厂\______/⌒ ⌒\)_____/ \}ニ=--/三)}l{ _ノ⌒\ { \____________\_____}\___ノ\___h}/∧_/⌒ }\_}\ \__/ ̄ ̄ ̄ ̄\⌒\______/⌒ \こ}{⌒\/⌒\/-= /∨(モx(\ '⌒\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ _______/こ}ニニ=-- く {\[ ̄\〉 人___ _/ ̄ ̄ ̄/} /⌒}\__/∨∧}/|ーn}_}ノ \ \/ ∧ ⌒\ //⌒//=ニ}/__}_}(___/ ̄}()| \____/ニニ{八__,〕  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}//二二二二∧ ニ{_)//ニ=/(_)ニ=- ___ノ  ̄ ̄  ̄ ̄ ̄\ /∧-{_)/ニ/-{ 人二ニニ=-} \ }_{_{\/>{ \ \___(}___ /\ }_\_{_{____} (_} {--- // {____} {\_}_ノ} }__}__/⌒}ニ=┬┐ \\/⌒\ /ニ{ {____ノー=ニノ 〕-\/⌒\ {___/⌒ } \ \__}\{⌒\ 人 ⌒} {=ニニ〉 {ニニ\  ̄ ̄  ̄ ̄ Outrider of Jhess / ジェスの先導 (3)(青) クリーチャー — 人間(Human) 騎士(Knight) 賛美(あなたがコントロールするいずれかのクリーチャーが単独で攻撃するたび、そのクリーチャーはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。) 2/2 名前 コメント
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有権人外種 様々な理由で、人の道を外れた、あるいは外れたまま生まれてきた存在でかつ、社会的な活動が可能であると政府に認められ、本来の人間と同じ様な権利が保証された存在の総称。旧時代より人工知能技術や身体、遺伝子改変など、人を辞める機会はごまんとあったが、バベル建設の時代からはさらなる技術躍進に加え、恐らく天罰・オカルト由来の不条理な原因も加わり。有権人外の増加は加速している。 以下さらに細かな定義など 有人権亜人:意思疎通が可能であり、概ね人の形をしていると認められているもの。完全に人間と同じ権利が保障されている。定義は曖昧。 有人権種:意思疎通が可能であり、人の形からは大きく外れているもの。上述と同様、人間と同等の権利が保障されている。定義は瞹昧。 有権種(有権亜人):人の形は保たれているが、自然には到底生まれ得ないと判断され、かつ意思疎通が困難なレベルで知能が低い種族。要するに上記の二つに当てはまらないが「何となく人ないし知的生命体っぽいの」。原則何らかの権利が制限され、訓練を積み上記のいずれかに再分類されることが多い。定義は曖昧。 また、これらの中でも、似通った特徴を持つものたちは”種族”として分類されることもある。
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関連 → ヤンマとアカネ リビングメイルと苦学生 4 859 ◆93FwBoL6s.様 洗濯物の詰まったカゴを抱え、狭いベランダに出た。 アビゲイルは力強い暖かさを含んだ日光を甲冑に浴びて、目を細めるような気持ちで、ヘルムの上に手を翳した。春めいてきたと思ったら、急に気温が増してきて日中は暑いくらいだ。ついこの間までは、あんなに寒かったのに。風に乗って舞い込んできた桜の花びらが、年季の入った木製のベランダに散らばり、淡い模様を造り上げていた。 祐介一人分しかない洗濯物が入ったカゴを下ろしたアビゲイルは、一枚ずつ丁寧にシワを伸ばしながら干した。普段着のシャツやジーンズ、下着類、バイト先の制服、タオルなどを干していると、隣室のベランダで物音がした。ベランダを遮っているのは薄いベニヤ板なので、プライバシーはあるようでない。少し身を乗り出せば、様子も窺える。 「キューンキューン、キューンキューン、わったーしのかーれはおにやーんまー」 やたらと可愛らしいメロディーと歌詞の歌を口ずさんでいる声は、紛うことなきヤンマだった。 「キラリ光って急降下ぁー、ブーンと羽ばたいて急上昇ぉー、長く尾を引く特攻服でぇー。大きなー、ハートが重ねてふーたつ、青ーい大空ー、らーぶさーいんー、あいらっびゅー、ゆーらーぶみぃー、だーけど彼ったら私よりぃー、なわばぁーりあらっそーいにお熱なのぉー」 歌い終えた頃を見計らい、アビゲイルは身を乗り出してヤンマに声を掛けてみた。 「おはよう、ヤンマさん」 「へぐおっ!?」 隣室のベランダで、ヤンマは奇声を発して仰け反った。足元には、アビゲイルと同じように洗濯カゴが置かれていた。ハンガーには茜のブラウスやシャツが掛けられていて、どうやら洗濯物を干しながら無意識に歌っていたようだった。 「なあに、さっきの歌。すっごく可愛かったわ」 アビゲイルがにやにやすると、ヤンマは後退っていった。 「いや…別に」 「何の歌なんですか?」 「茜が歌ってたんだよ。たぶん、なんかの替え歌だと思うんだがな…」 ヤンマはひどくばつが悪そうに、爪で複眼を押さえた。 「歌詞はアレだけどなんか頭に残っちまったもんだから、つい口に出ちまって。速攻で忘れてくれ」 「そうね、祐介さんには黙っておいてあげるわ」 「つーことは、茜には喋るんだな?」 「うふふふふっ」 「アビィイイイイイッ!」 「いやぁね、冗談よ。それで、その歌の主の茜ちゃんは? ヤンマさんが洗濯物を干しているってことは、いないのよね?」 「あ、ああ、まぁな」 平静を取り戻したヤンマは、洗濯カゴから茜の下着を取り出し、物干しハンガーに下げた。 「学期明けのテストがあるから、クラスメイトとうちで勉強会するんだとさ。んで、さっき茜の携帯に電話があったから、茜はそのクラスメイトを駅前まで迎えに行ったんだよ。確か、転校生もいるとか言っていたな」 「じゃ、お昼ご飯でも差し入れしようかしら。ヤンマさんはどうするの?」 「邪魔になると何だから、適当にその辺を飛び回ってるさ」 洗濯物を干し終えたヤンマは、隣室の居間に戻った。アビゲイルは乗り出していた身を戻し、空のカゴを持ち上げた。すると、玄関のチャイムが鳴らされたので、アビゲイルは洗濯カゴを脱衣所に置いてから玄関に向かって声を上げた。 「はーい、今出まーす」 アビゲイルがドアを開けると、そこには、当の茜と黒衣の少女、そして水色のトンボ人間が立っていた。 「おはよう、アビーさん!」 茜が挨拶すると、後ろの二人も一礼した。クラスメイトと思しき少女は茜よりも頭一つ背が高く、黒髪を長く伸ばしていた。春先にはあまり似付かわしくない黒いワンピースを着ていて、首からは六芒星が印された金貨のペンダントを下げていた。顔付きも高校生にしては大人びていて、涼やかな目元と華奢な首筋が印象的な、落ち着いた雰囲気を纏った少女だった。 そして、もう一人、というか、もう一匹である水色のトンボ人間はヤンマよりも小柄だが、それでも人間に比べれば大きい。水色と藍色の外骨格、透き通った四枚の羽、深青の複眼。アビゲイルが二人に名乗ろうとすると、隣室のドアが開かれた。 「あっ、兄貴! マジ久し振りっす、つかマジ元気してたっすか?」 水色のトンボ人間が軽薄な口調で挨拶すると、ヤンマが大股に歩み出てきて、トンボ人間の頭を掴んだ。 「転校生って何かと思ったら、お前かシオカラぁああああっ!」 「あっ、兄貴ー、サーセンサーセンマジサーセーン! てか親の転勤なんすよー、マジ不可抗力っすー!」 唐突にヤンマの上右足の爪で頭を掴まれたトンボ人間、シオカラはヤンマの力に押されて前のめりになっていった。 「お前は俺より二つ年下だろうが、なんで二度目の二年生やってんだよ!」 「ダブったんすー、てかマジそれだけっすー!」 「なんで寄りによって茜の学校に転校してきやがんだ、ああぁ!?」 シオカラの頭部を上両足で挟んで持ち上げたヤンマが凄むと、シオカラはばたばたと羽を揺らして暴れた。 「それもマジ不可抗力っすー、親が勝手に決めたんすー! つかマジ痛っ!」 「あの、ヤンマさん…?」 事の次第に付いていけないアビゲイルが恐る恐る声を掛けると、ヤンマはシオカラを投げ捨てた。 「こいつも有り体に言えば俺の幼馴染みだが、茜と違って腐れ縁だ。こいつのせいで、俺はどれだけ迷惑を被ったことか」 「具体的にはどういうことなの、茜?」 黒衣の少女が茜に尋ねると、茜は苦笑した。 「しーちゃんってね、いい加減なんだぁ。勝てもしないのに昆虫人間にケンカ吹っ掛けて、全部ヤンマに押し付けちゃうの。おかげでヤンマはケンカ慣れして馬鹿みたいに強くなっちゃったけど…。あ、でも、しーちゃんは悪い子じゃないよ。本当だよ」 「悪意がねぇから尚更腹立つんだろうが!」 身を屈めたヤンマが俯せに倒れているシオカラの首を掴むと、シオカラはへらっと笑った。 「サーセン。つか、兄貴もマジ変わらないっすねー。つか、仕事はどうしたんすか? 今日、祝日っすけど平日っすよ?」 「うるせぇダブリ野郎! 黙って勉強しとけ!」 ヤンマはシオカラを乱暴に放ると、立ち上がり、二階廊下の手すりに下右足を掛けた。 「どこ行くの、ヤンマ?」 茜に問われ、ヤンマは爪先で空を示した。 「これ以上そいつの傍にいたら、本気で頭を叩き割っちまいそうだからな。夕方までには帰る」 「うん、いってらっしゃーい」 茜が手を振ると、ヤンマは空中に身を投じ、落下した瞬間に四枚の羽を羽ばたかせて大柄な体を浮かび上がらせた。乾いた空気が叩かれ、砂が舞い上がってきた。茜はヤンマの背を見送ってから、頭を押さえているシオカラを見下ろした。 「大丈夫、しーちゃん? ヤンマのアイアンクローって、いつ見ても痛そうだもんねぇ」 「なんとか平気っすー、つか兄貴マジパネェー…。マジ頭割れるかと思ったー…」 シオカラは起き上がり、がちがちと顎を鳴らしていた。そして、突っ立っているアビゲイルに気付き、上右足を上げた。 「兄貴のせいで名乗り遅れたっすけど、俺っち、茜ちゃんのダチのシオカラっす!」 「真夜です」 黒衣の少女も、再び一礼して名乗った。アビゲイルは気を取り直してから、名乗り返した。 「私はアビゲイル。この部屋に居候させてもらっているのよ」 「じゃ、アビーさん、そういうわけだからよろしくね!」 「お勉強、頑張ってね」 笑顔の茜にアビゲイルが頷き返すと、茜は一人と一匹のクラスメイトを伴って自室に入り、弾んだ会話が聞こえてきた。アビゲイルがその様子を微笑ましく思っていると、背後で寝室兼勉強部屋のふすまが開き、身支度を終えた祐介が現れた。 「えらく騒がしかったが、何があったんだ、アビー?」 「茜ちゃんが勉強会をするってお友達を二人連れてきたんだけど、男の子の方がヤンマさんの幼馴染みだったのよ」 アビゲイルが説明すると、祐介は勉強道具の詰まったショルダーバッグを肩に掛け、玄関にやってきた。 「んで、ヤンマはそいつに絡んで荒れたってわけか。相変わらずだな。もう一人の方は普通の人間か?」 「ええ。茜ちゃんより大人っぽい女の子で、綺麗な子だったわ」 「そりゃいいことだ」 スニーカーを履き終えた祐介は立ち上がり、ドアに手を掛けたが、ドアスコープに目を留めた。 「アビー。ドアスコープ、いつの間に直したんだ? 確か、お前がすっ転んでヘッドバッドして割っちまったはずだよな?」 「あれは雨で床が濡れていたのと、お買い物の荷物で両手が塞がっていたから転んじゃったのよ」 アビゲイルは少しむっとしたが、真新しいレンズの填ったドアスコープを指した。 「アパートの前を通りかかった人が直してくれたのよ。人間、っていうにはちょっと不思議な感じの人だったわ。顔に填っていた部品は機械なんだけど、外見はどことなく生身っぽいっていうか、上手く説明出来ないんだけど。修理の御礼に、その日の夕ご飯に作ったロールキャベツをお裾分けしたわ。多田さん、って言ったかしら」 「そりゃ、たぶんバイオノイドだな」 「バイオノイド? それって人間とは違うの、祐介さん?」 「ロボットと人間の中間、というか、生体部品に極めて酷似した機械部品で構成されているから機械と言えば機械なんだが、人間といえば人間なんだ。俺は機械工学科じゃないから細かいことまでは説明出来ないが、言っちまえば即戦力の労働力だな」 スニーカーのつま先を床に叩き付けてから、祐介はドアを開けた。 「宇宙開発、戦争、ゴミ処理、建設現場、原子力関連、と、生身の人間じゃ出来ないこと、したくないことをさせるための存在だ。バイオノイドを人間扱いしない連中もいるみたいだけど、俺はそうは思わないな。頭ごなしに否定するのは好きじゃないんだ」 「そうよね。普通の人が出来ないことをするんだから、立派よね」 祐介は玄関を出ると、一旦振り返った。 「じゃ、俺も勉強しに図書館に行ってくる」 「いってらっしゃい、祐介さん。レポート、頑張ってね」 アビゲイルは彼に手を振りながら、見送った。祐介は少しだけ躊躇ったが、軽く手を振り返し、年季の入ったドアを閉めた。階段を下りる足音が下がり、遠のいていくのを聞きながら、アビゲイルは隣室で勉学に励む高校生達の昼食を考え始めた。茜はアビゲイルの作る料理は大抵喜んでくれるが、真夜は初対面でシオカラは昆虫人間なので、注文を聞いた方が無難だ。うっかり嫌いなものを作ってしまっては、彼女らもだがアビゲイルも切ない。だから、頃合いを見計らって、隣室を訪問しよう。駅前のスーパーへ買い出しに出るのも、その後がいいだろう。注文によっては、昼食の材料を買い揃える必要があるからだ。 とりあえず、今は掃除をしなければ。掃除機を使わずに水拭きしよう、とアビゲイルは玄関から室内に戻りかけ、足を止めた。傘立てに突っ込んである西洋剣が、うっすらと埃を被っていた。アビゲイルはそれに触れかけたが手を下げ、脱衣所に入った。 あれには触らない方が良い。バケツに水を張って雑巾を濡らしながら、アビゲイルは西洋剣のことを頭から振り払おうとした。自分の持ち物であるはずなのに、いつもあの剣が怖い。気にしないようにしているのに、視界に入ると思考を奪われそうになる。触れたりすると、抜いてみたい衝動に駆られることもある。だが、あの剣を抜いてはいけない。取り返しの付かないことになる。根拠はなかったが、そう思えて仕方なかった。だが、抜かなければいけない、という衝動もまたアビゲイルの奥底に宿っていた。 その衝動から目を逸らすため、アビゲイルは掃除に没頭した。 勉強会の余韻に浸りながら、真夜は帰路を辿った。 茜。シオカラ。そして、隣人のアビゲイル。一年生の頃から仲の良かった茜から誘われた時は、正直言って戸惑っていた。昆虫人間と接したことは少ないし、何より転校してきたばかりだったので、シオカラとは仲良くなれるとは思っていなかった。言動も軽薄で好きなタイプではなかったが、話し込むうちにシオカラの良さが解ってきて、これからも付き合えそうだと思った。アビゲイルも年上のお姉さんを絵に描いたような女性で、昼食に出されたサンドイッチは野菜がたっぷり入っておいしかった。味付けも丁度良く、マヨネーズは辛味が効いているが強すぎず、一緒に出されたマカロニスープもコンソメの優しい味がした。 家に帰るのが惜しかったが、ヤンマも隣室の主の祐介も帰ってきたので、真夜とシオカラは帰らざるを得なくなってしまった。シオカラとは途中まで一緒だったが、自宅の方向が違うので別れてしまった。夜道には慣れているが、今ばかりは寂しい。 自宅に到着した真夜は、玄関の明かりを付けてから廊下の明かりを付け、ヒールの付いたローファーを脱ぎながら言った。 「ただいまぁ」 だが、声は返ってこない。当然だ。真夜は勉強疲れで筋肉が強張ってしまった肩を回しつつ、リビングに入って明かりを付けた。八畳の洋間のリビングには、六芒星の壁掛けが掛けられていて、天井に届くほど大きな棚には魔法道具がずらりと並んでいた。水晶玉、ドラゴンの彫刻、鈍い光を放つ短剣、古びた魔導書など、両親がヨーロッパ方面で買い集めてきた中世時代の品々だ。リビングテーブルの下に敷いてあるラグも六芒星で、六芒星を囲む円の回りには、魔法文字がびっしりと縫い付けられている。棚の脇には、剣を携えた金色の全身鎧が直立している。だが、両親が調べた結果、これはリビングメイルではないようだった。 真夜の両親は、どちらも秀でた才を持つ魔術師だ。そして、真夜自身も高い魔力を有しているが、魔術師を名乗るには未熟だ。そして、二人はその優秀さ故にどちらも極めて忙しく、自宅に帰ってくるのは年に数回で、実質的に真夜は独り暮らしをしている。どれほど科学が発達しても、どうにも出来ないことがある。そういったことを処理するためには、魔術師の存在は不可欠なのだ。 「夕ご飯、作らないとなぁ」 真夜は独り言を零しながらリビングに入り、黒革のソファーに勉強道具の入ったバッグを投げ、座り込んだ。 「でも、アビーさんほどおいしくは作れないだろうなぁ」 真夜は薄いグレーのタイツに包まれた足を投げ出し、首に掛けていた魔力制御のペンダントを外してテーブルに置いた。ワンピースのファスナーを外して下ろし、脱いだ。魔力抑制作用のある染料で染めたワンピースは、機能は高いが可愛くない。今の季節には暑苦しいので着たくないのだが、着なければ制御力が緩い魔力が外に出てしまい、困ったことになってしまう。 「先にお風呂に入ろうかな。汗掻いちゃったし」 スリップ姿になった真夜は汗ばんだ首筋を拭ってから、金色の全身鎧に近付いた。 「あなたが動いてくれたら、少しは寂しくないんだけどね」 真夜は冷たいマスクに触れて、つるりと撫で下ろした。ヘルムの奥には何も見えず、浅い闇が満たされているだけだった。彼がリビングメイルでないことは承知しているが、また一人になってしまった寂しさが堪えきれず、真夜はかかとを挙げた。金色の滑らかなマスクに、柔らかく唇を当てた。かかとを下ろして身を引くが、やはり何も起きず、真夜は解っていたが落胆した。とりあえず、お風呂に入ってさっぱりしよう。それから在り合わせの夕食を作って食べて、明日の準備をして早く寝てしまおう。 真夜がリビングと廊下を繋ぐドアを開けると、金属音が聞こえた。ドアノブを回した音とも異なる、涼やかな硬質な音だった。まさか、でも、そんな。戸惑いながら真夜が振り返ると、金色の全身鎧は首関節を軋ませながら、ヘルムに真夜を映し込んだ。 「ここは…」 「なんで、動くの? あなたはリビングメイルじゃないはずなのに」 真夜が恐る恐る近付くと、金色の全身鎧は首を振り、呟いた。 「私は、死んだのか? ならば、ここはヴァルハラか?」 「二十一世紀の日本よ」 「は?」 金色の全身鎧が面食らったので、真夜は彼の胸部装甲に触れてみた。 「んー…」 気合いを入れて魔力を流し、感じてみると、金色の全身鎧にはリビングメイルと化すための魔法が施されていた気配はない。だが、残留思念が強烈にこびり付いている。魂の古さからして、金色の全身鎧と同じ年代に死亡した人間の魂のようだった。安直に考えて、魂の主は全身鎧の使用者だろう。戦死した人間の残留思念が武具にこびり付いているなど、よくある話だ。けれど、なぜ、両親の魔力では目覚めずに真夜の魔力で目覚めたのだろうか。ただ単に、相性が良かったのかもしれない。 「あなた、名前は?」 真夜が問うと、金色の全身鎧は少し間を置いてから答えた。 「アーサーだ」 「アーサー。良い名前ね。私は真夜」 真夜が笑むと、アーサーは少しやりづらそうに顔を背けた。 「だが、なぜ、君はそのような薄着なんだ? うら若き婦人が肌を曝すのは、あまり良くないと思うが」 「え、あ、ああ、気にしないで!」 真夜はスリップ姿であることを思い出し、動揺した。慌ててワンピースで体の前を隠すが、肩や足は隠れなかった。 「無事だったか、聖剣エクスカリバーよ!」 真夜の姿を見まいとするのか、アーサーは手にしていた剣を掲げた。 「え、でも、それも普通の剣…」 真夜が訝ると、アーサーは鞘から剣を引き抜き、滑らかな艶を纏った幅広の刀身を横たえた。 「聖者とは賢者、賢者とは隠者だ。エクスカリバーが真の姿を現すのは、魔剣ストームブリンガーと相見えた時のみだ」 「含蓄深いわね」 そうは言ったが、真夜はアーサーの話を信用していなかった。エクスカリバーもストームブリンガーも、伝説の剣だからだ。伝説と名の付く品は、知名度の高さ故に贋作も作られやすい。実際、これまでにも数十本のエクスカリバーが発見されている。だが、そのどれもが中途半端な力しか持たない魔法剣で、聖剣エクスカリバーと称されるには足りないものばかりだった。それはストームブリンガーも同様で、本物にも等しい偽物が出回りすぎて、魔術師達も本物を探し出すことを半ば諦めている。 「真夜と申したな」 剣を鞘に収めたアーサーは、片膝を付いて真夜の左手を取った。 「君の口付けは、私の魂を現世に誘ってくれた。魔術の心得があるとお見受けするが、魔女と言うべきではない。君は聖女だ」 「あれは、ただの偶然っていうか」 真夜が照れて俯くと、アーサーは真夜を見上げてきた。 「それは神の思し召しと言うべきだ、真夜。私には、魔剣ストームブリンガーとその操り手を断罪する使命が与えられている。だが、それは魔剣もまた同じこと。ストームブリンガーは、エクスカリバーを葬り去るために私に戦いを挑んでくるに違いない。私を目覚めさせてくれた君にも危険が及ぶかもしれないが、聖騎士の誇りに掛けて君を守ることを誓おう」 アーサーは真夜の左手の甲に、マスクを当てた。その仕草と感触に、真夜は意味もなく赤面した挙げ句に固まってしまった。アーサーは真夜の左手を解放して立ち上がり、剣を抜いた。聖騎士の誓いと思しき勇ましい文句を並べ、雄々しく胸を張っている。 アーサーの立ち振る舞いは、真夜が幼い頃から憧れていた騎士そのものだった。生憎、王子様には魅力は全く感じない。どうせなら、華奢な白馬よりも黒い毛並みの筋骨隆々の馬の方が良い。振り翳す剣も、突き刺すだけのレイピアでは物足りない。誰もが目を奪われる美しさと気品を持ち合わせた美少年よりも、甲冑に身を包んで雄々しく戦う猛者の方が魅力的だと思うのだ。 聖剣エクスカリバーに選ばれし、聖騎士アーサー。それがどこまで本当かは解らないが、嘘じゃなかったらいいな、と思った。魔法の心得がある者として、聖剣にも魔剣にも興味がある。真夜は胸の高鳴りを感じ、金属の感触が残る唇にそっと触れた。 ファーストキスだった。 ←・→ タグ … !859◆93FwBoL6s. *人外アパート