約 163,946 件
https://w.atwiki.jp/sangamaki/pages/48.html
. 第1話 泉を励ます主夫京太郎 第2話 報われない努力家泉、容赦ない畜生京太郎 第2.5話 泉の結婚生活、京太郎の結婚性活 第3話 交わす泉、躱す京太郎 第4話 臍フェチ京太郎と泉 第5話 俺の恋人と愛人が修羅場すぎる 第6話 愛しき人との愛しき日々 最終話 結婚式
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3368.html
5・ 牌の世界 京太郎「今日、本藤先輩との再戦だ」 牌「……へえ」 京太郎「俺、強くなったかな」 牌「さあ、なってないんじゃないの」 牌「もうこれ以上強くなりようがないもん」 牌「考えうるパラメーターはもう限界まで伸びてるんだよ?」 京太郎「あとは配牌と、ツモ運」 牌「なに? 上げて欲しいの、ツモ運」 京太郎「その言い方だと……やっぱりダメか」 牌「やだね、やだやだ。めんどくさい」 京太郎「そこをなんとかさー、俺が頑張ってるとこ見ただろ?」 牌「……うん、見てたよ、全部」 京太郎「ちょっとは感化されたんじゃないか」 牌「ないない、全くもって。男には感化しないよー」 京太郎「そっか……なら、しょうがないな」 牌「……どうするつもり」 京太郎「このまま打つしかないだろ」 牌「認められんの?」 京太郎「しばらく麻雀にブランクがあったうえで、このまえ本藤先輩と打ったんだ」 京太郎「この一週間でだいぶ勘は取り戻した。それを成長ということにしてもらおうと思ってる」 牌「………………」 京太郎「じゃ、また明日」 牌「………………見とく」 部室に意識が戻る。 八坂「よう」 京太郎「やっさん! どうしてここに」 八坂「本藤先輩と打つんだろ? それの観戦に来た」 まこ「入るか?」 八坂「ありがとうございます、遠慮なく」 京太郎「麻雀部に入ってくれるのか」 八坂「京ちゃんが本藤先輩に認められればな」 京太郎「そりゃまた難しい条件」 八坂「それぐらいできないと、あいつは倒せない」 京太郎「あいつって……?」 八坂「来たみたいだぜ」 扉がゆっくりと開く。 巨体が京太郎の前に立ちふさがった。 本藤「見せてもらうぞ、お前の変化を」 対面に座る。 八坂「京ちゃん、本藤先輩の強さの秘密はもうわかったのか」 京太郎「前に気づいたよ。防ぎようねーけど」 本藤先輩の使う技術は「神逆」という手法だ。 理論はさほど難しくない。 筋力で雀卓を変形させるだけだ。 上手く変形させれば数枚ほどの牌なら任意の場所に持ってこれる。 プロならば笹塚プロ、掛橋プロあたりが使い手として有名だ。 大沼プロも若いときは使っていたらしいけど。 京太郎(操れるのは多くても4枚ほど……この前打ったときは赤ドラを2枚と両隣の牌を集めてた……) 京太郎(和了り形を見たら毎回入ってたしそれは一目瞭然。高火力なのもうなずけるってものだ) 配牌を見る。 8シャンテンの形。 本藤「会話はできたか」 京太郎「…………?」 本藤「わからないか、牌とのだよ」 京太郎「なっ……」 本藤「その様子だと出来たみたいだな」 京太郎「まさか本藤先輩……あなたも」 本藤「んなわけないだろ、俺にはできないよそんなこと」 京太郎「じゃあなんで」 本藤「お前はそれができるやつだと思ったからだ」 京太郎「………………」 本藤「出来るやつなんてほとんどいねーよ。というか、それが出来るやつはあと一人しか知らない」 八坂「本藤先輩、それってもしかして、上崎って人ですか」 本藤「なんだ、知ってるのか?」 八坂「俺が麻雀から離れた原因ですから」 六巡目。 京太郎「……ツモ。七対子ドラ1。1600」 河がまだ一列のときに和了れたのは何年ぶりだろうか。 本藤「ムダヅモなしか? 牌に愛されてるな」 京太郎「いや……さっき協力しないって言われたんですけど」 協力してくれる気になったのか、牌。 しかし東ニ局。 本藤「ツモ。3900オール」 京太郎「うわ、マジか……協力するのはさっきの一回だけってことかよ」 捨て牌に並ぶ裏目った牌たち。 八坂「つーかツモ運悪くなってね?」 京太郎「さっき運よくした分、代価を払えって感じなのか? もっと純粋に協力してくれてもいいのに……」 その後も捨てた牌を次にツモるということが続き、オーラス。 跳満直撃で本藤先輩をまくれるところまできた。 本藤「次、チャンスをやる。それで俺に勝ってみろ」 本藤先輩は「神逆」を、京太郎の配牌に発動させる。 京太郎の配牌が4シャンテンになった。 京太郎「本藤先輩、これって……」 本藤「神が決めたことに逆らうから、『神逆』と言うんだ。一度くらいならこれぐらいは出来る」 本藤「さあ、打ってみろ。その配牌ならばお前の力を発揮できるだろ」 京太郎「……はいっ!」 その日、京太郎は八年ぶりの三倍満を達成し、本藤先輩に勝利を収めたのだった。 次の日。牌の世界。 京太郎「勝ったぜ」 牌「ふーん、興味はないけど、おめでとう」 京太郎「東一局目、ありがとな」 牌「なんのことやらさっぱり」 知らんぷりをする牌。せっかくお礼を言っているのに。 まあ、いいけど。 京太郎「今日は、聞きたいことがあってさ」 牌「……なに?」 京太郎「俺とお前、昔、会ったことがないか?」 牌「……さあ、よくわかんないけど、いつの話?」 京太郎「9年前」 記憶のほとんどない9年前。 蓋をした9年前。 そこから漏れだした記憶の断面に、確かに牌はいた。 牌「どうだろう」 上を見上げて退屈そうに、牌は言った。 牌「私、付喪神なんだけど」 京太郎「付喪神……」 長く使った道具に宿る神、だったか。 牌「私が神になったのは8,9年前くらいなのだ。だけど、神になってから誰か人間に会ったことはないよ」 京太郎「って、ことは」 牌「勘違いじゃない?」 京太郎「勘違い……?」 本当にそうなのか? だってこんなにも記憶の中の少女と牌はそっくりなのに。 なのに別人? 他人の空似? 京太郎「わかった、変なこと聞いて悪かったな」 疑問は残るがこれ以上追求しても埒があかない。 それに、このことはこれ以上追求しないほうがいいような気もするし。 牌「ま、待って!」 京太郎「ん?」 牌「あ、あの」 京太郎「なんか思い出したか!?」 牌「そうじゃなくて、あの……あ……がとう」 京太郎「えと……」 牌「ぁ……ありがとう、これ」 そう言って牌が指をさしたのは、PCとコミスタ(パッケージ版)。 京太郎「あ、ああ……素直にお礼を言うとは……大人になったな」 牌「大人も何も神だ!」 京太郎「はいはい、わかってるよ」 頭を撫でる。 牌「く……気持ち悪い……屈辱……! でも、今はお礼のため、我慢……」 京太郎「別に俺、髪フェチじゃないから」 牌「じゃあ無駄に触るな!」 京太郎「はいはい……」 せっかくセットした髪型が崩れるので、気安く他人の髪を触るのはやめましょう。 5・終 6・ 京太郎「咲……」 咲「京ちゃん……」 手が重なりあう。 暗闇の中では視覚が役に立たない。 それにともなって他の感覚が鋭くなってくる。 衣服の擦れる音が聞こえる。 時計の針が動く音が聞こえる。 心臓の鼓動が聞こえる。 触覚が、敏感になっていく。 京太郎「本当にいいのか、咲……」 咲「うん……」 咲の肩に手を置いて、そして――。 「おっきろーーーーーーーーー!」 ――ようやく目が覚める。 さて、牌の世界へ飛ばされるとかいうファンタジーな展開に、京太郎がたいして動じなかったのには理由があった。 それはすでに京太郎があるファンタジーを飼い慣らしていたからだ。 京太郎「……おはよう、カピ」 カピ「あ、ようやく起きた! ご主人さま、起きた!」 喋るカピバラというファンタジーだ。 京太郎「いい夢だったのに……! 正直、これ夢だなってわかってたけど……! あとちょっとだったのに!」 カピ「なになに? いい夢? 知りたい!」 京太郎「教えない」 カピ「さきちゃんの夢でしょ!」 京太郎「へ? なんのことだ?」 カピ「寝言でさきさき言ってた! ごまかせない!」 京太郎「ひどい」 カピ「フラレたのに健気!」 京太郎「うぅ……」 カピ「ストーカー野郎!」 京太郎「今日のお前ひどくね?」 カピ「それにしてももう高校生だっていうのに女の子の一人も部屋に連れてこないとは……人間の寿命は長いって言うても心配やわ」 京太郎「やめてください」 カピ「いないの? 仲いい女の子?」 京太郎「いや、そんなこと言われてもさあ……。あ」 カピ「どしたの」 京太郎「そういえば今日、和が来るんだよ」 カピ「へ~! その人、仲いいの?」 京太郎「う~ん、向こうはまだ俺のことを信用してない感じはあるんだけど」 カピ「じゃあ、何で来るの」 京太郎「こんなことがあってさ……」 昨日のこと。 見事、ニ人の男子部員を集めた京太郎。あと二人の男子部員と、一人の女子部員を求め、和に相談した。 京太郎「和。お前に憧れてここに来た麻雀の強いやつっていねーの?」 和「いえ……別に私は憧れられるような存在じゃありませんし」 そんなわけない。 京太郎「後輩とかは?」 和「あ……二人いるんですけど……確かにあの子たちは慕ってくれますね。嬉しいです」 京太郎「二人? 中学も強豪校ではないのか」 和「高遠原です」 京太郎「へえ、優希と一緒か。二人は幼馴染だったり?」 和「私は中学2年生のときにこっちに引っ越してきたんです。親友ですけど、幼馴染というわけではないんですよ」 京太郎「引っ越しか。前の中学は麻雀部強かったのか?」 和「そんな有名じゃない……いえ、麻雀部はありませんでした」 京太郎「なんてとこ?」 和「阿知賀女子学院中等部、です。知らないと思いますけど……」 京太郎「……奈良県の?」 和「知ってるんですか!?」 京太郎「小2のころから小4までの間、奈良県の小学校に行ってたんだよ」 和「私は小6からなので……ちょっと時期が違いますね」 京太郎「阿知女かぁ……じゃあ、もしかしてだけど、高鴨穏乃って人、知ってるか?」 和「え!? 知ってます! 須賀君も穏乃の友達だったんですか?」 京太郎「う~ん……どっちかというと、穏乃のおばあちゃん――雪乃さんと仲が良かったんだけどな」 和「えっと、たしかお土産屋でしたっけ?」 京太郎「和菓子屋でもあるけどな。和菓子を買うため、その店によく行ったんだ」 京太郎「最初は親と一緒に、だけどな。……雪乃さん、優しくって。いろいろよくしてくれたよ」 京太郎「学校帰りとかしょっちゅう雪乃さんのところに遊びに行ったっけ……いい思い出だ」 雪乃さんには大切なことをいろいろ教わった。京太郎の人生観の一部は、彼女によって形作られたと言っても過言ではないくらいだ。 京太郎にとっての初恋は咲であることに間違いはないが、雪乃さんにもほんのり淡い恋心を抱いていた。 年齢差は大変なことになるけど、それはまあ……。 和「穏乃とは、そのときに?」 京太郎「ああ。小学校は違ったけどな。雪乃さんを通して紹介された。遊んだのは数回だけど……まあ穏乃はあんな性格だ」 京太郎「人見知りだった俺とも、仲良くしてくれたよ。いいやつというか……すごいやつって印象だった」 和「……そうですね、私もそう思います」 奈良で過ごした三年間、それは幸せな時間だった。 奈良に来る前はあんなに心が苦しかったのに……。 ――苦しかった? あれ? 何で苦しかったんだっけ? 何で俺、引っ越したんだっけ? 和「そのころ穏乃はどんな感じでした?」 京太郎「見るか? アルバムにそのころの写真があるし」 和「お願いします」 京太郎「あ、そうだ。小6の穏乃も見たいな。どんな風に成長したのやら」 和「じゃあ、私もアルバムを持っていきますね」 持っていく? 持ってくるじゃなくて? 和「須賀君の家へ」 カピ「のどかちゃんのこと好きなの?」 京太郎「ん? おもちが大きいから好きだぜ。咲と絡ませたら最高の百合ップルだろうな……」 胸の大きさに差がある百合ップルは最高。京太郎が辿り着いた、一つの真理だった。 カピ「そうじゃなくて、恋愛感情的に」 京太郎「ははは、まだ出会って一ヶ月も経ってないんだぜ? どうやって惚れるんだよ」 カピ「そういえば気になる! どうしてご主人さま、咲ちゃんのこと好きになったの?」 京太郎「え~? うふふふ///」 カピ「なんか気持ち悪い」 京太郎「いろいろ咲のことが気になるイベントはあったんだけど……決定的だったのは修学旅行のときだな」 カピ「お、何だかまともそう」 京太郎「修学旅行の一日目、夕食の時の話だ。その夕食はいくつかのコースから好きなメニューを選べた」 京太郎「まあ若者の集団なわけだからみんな肉料理とかを選んでた。その中で咲は秋刀魚の塩焼きを頼んでたんだ」 京太郎「いや、秋刀魚の塩焼きも、もちろん美味しいよ? でも、それを選ぶ人は少なかったからさ、思わず注目しちゃったんだ」 京太郎「それでな、すごいんだぜ、咲。すっげー綺麗に魚を食うの」 京太郎「骨と身を綺麗に分けて、食べれるところは全部食べて、最後に残るのは綺麗な骨」 京太郎「俺、魚食うの苦手でさ、親に厳しくしつけられたからそこそこ綺麗には食えるんだけど」 京太郎「咲のは今までに見たことがないくらいに綺麗だった。あのときは、もう、マジで惚れたね。結婚したくなった」 カピ「目の付けどころが、シュールです」 京太郎「そうかな、惚れ惚れするぜ?」 カピ「まあ、それはいいんだけど……のどかちゃんが来る前に本棚の百合本は隠してね」 京太郎「……忘れてた」 本棚上部から下部までそびえ立つ百合! 百合! 百合! こんなの見られたらドン引き間違いなし! 京太郎「片付け完了! あとは和が来るまでゆるゆりの最新刊を読んで待ってよう」 カピ「片付け完了してない!」 京太郎「………………」 京太郎「……ふへっ」 京太郎「…………ふぬっ」 京太郎「……ふぅ。ゆるゆりは百合じゃないよなー。ほんのり百合っぽい、友情日常漫画って感じ」 カピ「そうなの?」 京太郎「ひまさくは百合だけど」 カピ「あれ」 京太郎「結京も百合だけど」 カピ「おい」 京太郎「あれ? やっぱり百合漫画じゃね?」 京太郎「っていうか、この世の漫画は全部百合漫画じゃね?」 京太郎母「京太郎ー! お友達が来たわよー!」 京太郎「うおおっ! 思ったより来るの早い! ゆるゆりは……ベッドの中にでも入れとくか」 カピ「ガンバッ!」 京太郎「いらっしゃい、和」 和「お邪魔します、須賀君」 部屋に和を招き入れる。 普段部室でしか会わない人が自分の部屋にいるのは何だか不思議だった。 和「……何だかいろいろと驚きました。須賀君ってお金持ちだったんですね」 京太郎「違う違う、お金持ちなのは俺の親」 京太郎「尊敬はしてるけどな、親のこと」 京太郎「ま、そこに座ってくれ」 小さいテーブルの前に置かれた座布団の一つを指さす。 和が座ったのを確認し、その反対側に京太郎も座る。 和「須賀君、結構本を読むんですね」 本棚を見上げながら和は言った。 ちなみに百合本棚はクローゼットに入れ、普段はクローゼットに入れている麻雀関連の本棚を外に置いてある。 カモフラージュのためだ。 和「麻雀関連の本がいっぱい……これ、一年やそこらで集められる量じゃない気が……」 京太郎「ん? ああ、5,6年分くらいだけど」 和「須賀君って麻雀を始めたの、最近じゃなかったですっけ」 ……そういうことにしてるんだった。 自分の昔話は秘密にしておくようにやっさんに頼んだのだ。 本当は強いんだぜー! とか恥ずかしいし。 つーか今の俺じゃ、誰にも勝てないから、バレるわけないんだけどな! 京太郎「えーと、打ち始めたのは最近だけど、本とか見て研究は昔からしてたんだ」 京太郎「さ、そんなことより、アルバム見ようぜ」 カピ「キュー!」 京太郎「ん? お前も見たいか?」 カピ「うっす!」 和「いま喋りませんでした!?」 京太郎「珍しいな、和がそんな変なことを言うなんて」 カピ「キュー」 和「き、気のせいですか」 京太郎「そうそう。カピバラが喋るとか非科学的。せーの、はいっ……『そんなオカルト』?」 和「それ、持ちネタじゃないです!」 1ページ目。 手をつないでる写真。 和「仲良かったんですね」 京太郎「懐かしいなあ……」 家族同士で写っている写真。 和「家族ぐるみの付き合いだったんですね」 京太郎「むしろそっちが中心だったかな。よくいろんなところに行ったなぁ」 京太郎「山とか、キャンプ場とか、山とか、なっらーけんこーらーんどとか、山とか」 山での写真が何枚か出てくる。 和「このときから穏乃、山が好きだったんですね……」 京太郎「へえ、その言い方だと今も好きなのか? うん、確かにあいつ、山には並々ならぬ執念があったし」 京太郎「一回だけ、だけどな。俺と穏乃の二人で山に登ったんだよ。近くの小さな山」 京太郎「まだあのときは幼かったし、遭難――ってほどじゃないけど迷子になって――」 心細くて、不安で、怖くて、泣きそうだった。 でも穏乃は違った。 楽しそうだったんだ。 京太郎「怖くないの?」 あのとき、俺は聞いた。 その質問に、うん、と答えるだろうと期待して。 穏乃「そんなことないよ。山は怖いものなんだよ」 穏乃「天気だって、動物だって、地形だって、山は人間に牙をむくことがあるんだ」 穏乃「それでも、そういうことをちゃんと理解したとき」 穏乃「山は私たちにいろんなものを与えてくれるんだ」 穏乃「私は、楽しさをもらった」 穏乃「山は怖いけど、楽しいんだ!」 そのときの穏乃の顔を見ているうちに、心が落ち着いたんだ。 落ち着いた心で周りを見回したら、帰り道が何となく見えたよ。 ……あ、この話にオチはないんだけど、印象に残ってる、大切な思い出だ。 和「私も、穏乃と登ったことがあります」 京太郎「お、そうなのか」 和「1つだけ穏乃に言いたいことは、山登りに適した格好をすべきということです」 京太郎「その辺はなあなあで済ませよう」 和「いいんでしょうか……山登りが好きなある人が」 和「『こんな格好で山登んな!小さい山だろうが慣れた山だろうが関係ねえ! 山なめんな!』って激怒してましたけど」 京太郎「どんなものでもマニアというのは面倒くさいものだからな」 百合男子もそうだけど。 京太郎「さてと、次のページ……」 一緒にお風呂に入ってる写真。 京太郎「……は、また今度にして、和の持ってきたアルバムを見せてくれ!」 和「何ですか、今の写真」 京太郎「恥ずかしかったのでナシ」 和「お風呂ですか」 京太郎「まだお互い幼かったからな――実に微笑ましいよな!」 和「はぁ……まあ、普通ならそうなんでしょうけど……穏乃の場合はそうはいかないような」 京太郎「へ? なんで」 和「穏乃が小6のときの写真です」 京太郎「変わってない」 和「こっちが中1のときの写真です」 京太郎「難易度の高い間違い探しか」 和「最後、引っ越すときに撮った写真です」 京太郎「女の子らしくなった……ということはなかった」 和「つまりその写真は幼かったころの微笑ましい1ページというわけにはいかないんです。今現在の写真と言っても過言じゃないんです」 京太郎「いや、その理屈はおかしい」 本当におかしい。 和「というわけでこの写真はお預かりするということで」 京太郎「いやいや、なんでそうなる……ハッ」 もしかしてもしかすると。 百合名場面図鑑収録「あの子の写真を持ってるのは私だけじゃないとイヤ」なのか!? そういえば和のカバン。誰かから貰ったんじゃないかと妄想したが、あれは現実!? あのカバン、穏乃のイメージとマッチングしてるし! 間違いない! 穏和は現実だったんだ! 百合はファンタジーじゃなかったんだ! 百合は現実だったんだ! 京太郎(いや、落ち着け俺、素数を数えるんだ。2,3,5、7、11、13……あ、間違えて奇数を数えるの忘れてた) 和「どうしたんですか?」 京太郎「なんでもない、とにかくその写真を元の場所へ」 手を伸ばす。少し届かなかったので体を乗り出した。 和「そんなに必死に取り戻そうとするとは……やはり」 京太郎「ないない、ありえな、うわっ!」 バランスを崩す。 和を押し倒す。 ベッドにダイブ。 京太郎「………………」 和「………………」 今朝見た、夢のことを思い出した。 目の前の少女が咲だったらな、と思った。 京太郎「和……」 和「す、須賀君」 カピ「キーッス!」ヘイッ! カピ「キーッス!」ソレ! 和「あれ、なにか言いました?」 京太郎「……ちょっと待っててくれ」 和「なにをするんですか?」 京太郎「カピを可愛がってくる」 和「それ今する必要あるんでしょうか……」 京太郎「クッ……まさかこのことを教えなければならないとは」 和「な、なんですか」 京太郎「誰にも言うなよ?」 和「は、はい」 京太郎「俺と和、二人だけの秘密だからな?」 和「わかりました」 京太郎「実は俺……一時間に一度はカピをモフモフしないと手が震えたりするんだ」 和「モフモフ中毒ってやつですか? 大変ですね。もしモフモフしなかったら、いったい……」 京太郎「俺自身がカピバラになる」 和「予想通りです」 京太郎「と、いうわけで、さあ! こっちの部屋でモフモフだ! カピ!」 カピ「堪忍してくれー!」 バタンッ! ―――――――――――― 京太郎「と、いうわけで、さあ! こっちの部屋でモフモフだ! カピ!」 須賀君はニコニコとした表情でカピさんを抱きかかえた。 カピ「堪忍してくれー!」 気のせいだろうか。喋った気がするのだが。 いや、そんなオカルト――いや、やめよう。持ちネタ扱いされる。 バタンッ! 扉が閉まる。 和「そういえば、さっき……」 ベッドに倒れたとき、背中にゴツっとしたものが当たった気がする。 和「何でしょう、四角い感触でしたけど……」 布団の中に手を入れると、中から本が出てきた。 和「漫画……でしょうか?」 タイトルは「ゆるゆり」。聞いたことはない。 しかし、その本が放つ魔力に、和は冒されていた。 読んでみたいという、恐ろしい魔力に。 和「……須賀君が来るまでの間、読んでみましょうか」 カピをモフり終えた京太郎は、自分の部屋に戻ってきた。(※モフる=人前で喋らないように指導すること) 京太郎「わるい、和。遅くなった」 和「い、いえ。だ、大丈夫です」 ……何故だろう。 心なしか和の顔が赤い気がする。 そしてそれ以上に。 和から百合のにおいがする気がする。 和「ま……まさかあんな世界があっただなんて」 京太郎「和?」 和「は、はい!」 京太郎「もしかして、体調が悪いのか?」 和「い、いえ! そういうわけでは」 京太郎「ならいいんだけど」 和「そ、そうです、須賀君! カピさんは?」 京太郎「今は眠ってる」 和「そうなんですか」 京太郎「物理的に」 和「どういうことですか!?」 京太郎「俺のモフりテクが気持ちよかったんじゃないか?」 和「妙な造語を創らないでください」 京太郎「さて、それじゃ本格的に和が持ってきた写真を見ますか!」 和の写真。和と穏乃と知らない女の子ふたりの写真。 和「この子――憧というんですけど、誰かに似てると思いません?」 京太郎「えー? うーん……俺の知ってる人?」 和「もちろん」 京太郎「むむむむ……」 普段は女の子を百合妄想のために使っているので、あんまり顔を覚えていないのだ。 大事なのは関係性だし。 顔の良し悪しなんておまけなのだ。 でも、今回は違った。 答えの少女が唯一、京太郎が百合妄想を出来なかった人物だからだ。 京太郎「ゆうき……そうか、優希か!」 ちゃんと顔を覚えている三人のうちの一人だった。 和「そうです。あれ……思ったより時間がかかりましたね……即答すると思ってたんですが」 京太郎「はは……いや、こういうの苦手でさ」 そのとき京太郎の脳裏にあるひらめきが宿った。 まだ京太郎は疑問に思っていたのだ。 なぜ優希で百合妄想をすることが出来ないのかと。 もしその原因が容姿なら。 優希と似た憧という少女でも百合妄想は出来ないかもしれない。 そうなると疑問が解消される。 京太郎「……行こう」 和「行くって、どこへ……」 京太郎「奈良」 和「え」 京太郎「吉野へ行こう!」 和「今からですか!? 五時間はかかりますよ!?」 京太郎「時山さん」 時山「はい、ここに」 京太郎「ヘリ、出してもらえますか」 時山「かしこまりました」 和「え? え? え? 執事さん?」 時山「ちなみに私、萩原さんの旧友です」 和「なんかこの人、めちゃくちゃ下手な伏線を張りましたよ」 京太郎「そういうのは伏線とは言わない」 6・終 7・ 空。 それは無限に広がる自由のキャンパス。 この空間を支配することは人類の夢。 また、ポエムってしまった。 ……とにかく、上空1000メートル。 京太郎と和は空中散歩を楽しんでいた。 和「自家用ヘリって……須賀君、どれだけお金持ちなんですか……」 京太郎「金持ってるのも稼いだのも親だって。俺はすねをかじってるだけー」 褒められたことじゃないのかもしれないが、「親のお金には頼らない!」と言ったことがない。 親の支援なしに生きていくことなんてまだ出来ないし。誰だって親に守られて生きていくんだし。 精神だけ独立しても、それはただの反抗期だ。 本当に親に反抗したいなら経済的にも自立しなければだめだ。 反抗したいと思ったことはないけど。 将来、どうやって生きていくかも決めていないのに。 京太郎(そういえば染谷先輩は、もう将来のことを考えてるんだっけ) 京太郎(すごいよな……染谷先輩) 京太郎(俺も、考えてかなきゃ……ならないよな) 父親の神社を継ぐにしても。祖母の会社を継ぐにしても。 百合愛を活かせる仕事ができればいいのかもしれないけど、お金が得られるようになった趣味は楽しくないとも言うし。 麻雀のプロは……一度潰えた夢だし。 飛行機にはもう何度も乗ったことがあるが、ヘリコプターに乗ったのは初めてだ。 しかもそのヘリコプターは部活の友人のもの。 そしてその友人、須賀君は遠くを見る目で、考え事をしているようだった。 和「あの、大丈夫ですか?」 京太郎「………………」 呼びかけても返事がない。私の声が耳に届いていないようだった。 和「須賀君!」 京太郎「ぅおっと、すまん、考えごとしてた」 和「穏乃のことですか」 京太郎「いや、将来のこと」 和「唐突ですね」 京太郎「そうか? 俺の頭の中じゃ、論理的なプロセスがあったんだけどな……なぁ、和」 和「何ですか?」 京太郎「和は、将来の夢、あるか」 真剣な顔だった。 彼は、ときどきこういう顔をする。 出会ってからまだ少ししか経っていないけれど、もう数回ほどこんな顔を見た。 その真剣な顔を見ると、わたしはギクリとする。 怖いのだ。 何かを抱えてそうな瞳。モヤモヤとしたものがお腹の底で渦巻いているような嫌悪感。 和「……小学校の先生とか、お嫁さんとか、色々なってはみたいものはあります」 京太郎「いいな、それ」 和「だけど、だからといって、なれるわけじゃないですけどね」 京太郎「と、いうと?」 和「いえ、別に……そう思っただけです」 京太郎「親、か?」 和「……その何でも見透かしてるような態度、好きじゃないです」 京太郎「堪えるなぁ。いろんな人にときどき同じこと言われるけど」 和「……すみません」 京太郎「俺は親からの支配とか、そういうの感じたことないから、和の気持ち……わからないよ」 京太郎「だから俺がいくら良いことを言ったところで、それは上辺だけの台詞だ。誰かの借り物の台詞だ」 京太郎「何か悩みがあったとしても、それを解決できるのは俺じゃない。……きっとそのうち、それを解決してくれる誰かに出会えるよ」 和「……はい」 京太郎「でもさ、話したら少し楽になることもあるし、聞かせてくれないか。解決はできないだろうけど、聞くことは出来る」 和「そういう須賀君にもあるんじゃないですか?」 京太郎「なにが」 和「悩み事、です」 京太郎「……う~ん、特に……思い当たることはないな。いくつか疑問とかはあるけど、悩み事ってほどのものじゃないし」 京太郎「基本俺、お気楽に生きてるからなー」 和「本当に、そうですか?」 須賀君の目を見ていると湧いてくるこの感情。 須賀君の過去に、何かあったのではないかという疑惑。 それはまだ消えていない。 和の目は真剣だった。 言い逃れできなさそうな空気。 しかし、京太郎にとっての悩み事は、他人に話せることではない。 京太郎(『どうして百合アンソロジー「つぼみ」が休刊になったのか悩んでる』なんて、とてもじゃないけど言えねえ……) この真実を知ったときは悲しくて悲しくて、どうしてこの世界はこんなにも残酷なんだろうと嘆いたものだ。 京太郎「……やっぱり、悩んでることなんて、思いつかないな」 和「そうですか……そうなんですね」 納得いかないようではあったものの、それ以上の追求はなかった。 和「私も将来のことをいろいろ考えたりしますけど」 京太郎「おう」 和「でも今は目の前に大きな課題があるんです。まずはそれをどうにかしないといけないと思ってます」 京太郎「課題? それって……」 和は言うべきか言わざるべきか少し悩んでいるようだったけど、観念したかのように息をついた。 和「今年のインハイ、優勝できなかったら麻雀をやめさせられるんです」 京太郎「……そっか」 和「………………」 京太郎「残りの部員、見つけなきゃな」 和「……見つかるんでしょうか」 京太郎「そりゃ、きっとどこかに」 和「でも、三年生も二年生も一人ずつしかいなかったんですよ? もう私たちの学年は二人いるのに、あと一人見つけるなんて……」 京太郎「大丈夫だって、必ず見つかる」 そのとき京太郎の脳裏に横切ったのは咲の姿だった。 あいつなら、麻雀をやってくれるかもしれない。 誘ってみよう、そしたらきっと何かが起こるはずだから。 時山「あと五分で到着です」 京太郎「ありがとう、時山さん。例のもの、用意は出来てますか?」 時山「こちらです」 和「須賀君、そのかばん、なんですか?」 京太郎「見たいか? ほら」 カバンの中に入っていたのは、女性用の服、一式。 和「わぁ、かわいい……ブランドは……D.A.SUTUARTですか。私、ここの服、好きなんです」 和「NAGANO STYLEとコラボしたシリーズは大流行でしたよね」 京太郎「NAGANO STYLEの服もあるぜ」 和「これ、今春の新商品ですね! NAGANO STYLE、好きなんですか?」 京太郎「おう、メンズ商品も充実してるからな。少ない布面積に盛り込むふんだんな装飾は海外でも高評価されてるらしいぜ」 京太郎「デザイナーの長野雫さんが、海外の賞を取りまくってたみたいだし」 和「でも、どうしてこんな服を?」 京太郎「和、言ってただろ? 穏乃は今、阿知賀女子に進学してるかもしれないって」 和「実際のところはわからないですけど……」 京太郎「穏乃の家に電話して確かめたんだ。どうやら本当に阿知女みたいだぜ」 時山「そのようにお聞きしました」 和「そうなんですか」 京太郎「で、穏乃は今どこにいるか聞いたんだ。どうやら穏乃は、麻雀部の活動で学校にいるそうだ」 和「麻雀、ですか!?」 京太郎「驚くようなことなのか?」 和「いえ……。穏乃、小学校卒業と同時に麻雀をやめていたので……」 京太郎「……そうだったのか」 和「そうですか……よかった」 京太郎「また穏乃と打ちたかったのか」 和「え……いや…ふふ、そうですね。打ちたかったんだと思います」 京太郎「……よかったな、和」 和「……はい」 きっと和にとって、奈良で過ごした数年は大切なモノだったのだろう。 彼女はそういうことをはっきりというタイプではないのでわかりにくいけれど。 和「で、結局その洋服はなんのために……?」 京太郎「と、言い忘れてた。女装のためだよ」 和「えっと……よくわかりません」 京太郎「阿知賀女子学院は女子校だぜ? 女子校は百合の聖地!」 京太郎「男っぽいものは取り除かねばならない!男の俺も本来なら立ち入るべきではないが……今回は事情が事情だ」 京太郎「極力百合の園を汚さないように女の子になる配慮ぐらいはするべきかと思ってな!」 和「何を言ってるのやらさっぱり……」 京太郎「阿知賀は共学化しやすい学校だが……この世界線は共学化しなかったんだ」 京太郎「いや、共学化なんてしたら百合の花が枯れるから勘弁願いたいんだが……」 和「えっと……結論は」 京太郎「女装したいから、女装する」 和「なるほど、須賀君の声って、女装しそうなタイプの声ですもんね」 ……そこまで思い切ったことは言ってない。 京太郎「和は少しぶっちゃけすぎるところがあるよなー」 和「そんなつもりはないんですけど……せっかくだし、もう少しぶっちゃけてみましょうか」 京太郎「和に『ぶっちゃけ』という言葉は似合わないというぶっちゃけをしたいところだけど、どうぞ」 和「どうして須賀君、急に奈良に来ようと思ったんですか?」 京太郎「えっと……それは」 優希への思いが何なのか確かめるため。 ……そんなこと言えない。 京太郎「穏乃に久々に会いたかったから」 和「それ、本当ですか」 京太郎「和……お前まさか本当の理由を知って……!」 和「本当は最近の阿知賀スレブームに便乗しようとしてるんじゃないですか」 京太郎「ぶっちゃけた!」 ちげーよ! 和「もしくはシリアス展開ばかりが続くのが辛くてギャグ展開で済みそうな場所に緊急避難してるという可能性も」 京太郎「到着だぜ……! 阿知賀……!」 素早く服を着替え、京太郎はヘリから飛び出した。 新子憧は、刺激的なことが好きだった。 しずは、刺激的な少女だ。 私がしずのそばにいたいと思ったのは、そんな刺激的なところに惹かれているのだろう。 しずのそばにいたら、刺激的で、楽しい日々が続くのだ。 部活の休憩時間、憧は屋上へ風に当たりに来ていた。 屋上は四方が高いフェンスに囲まれていて多少開放感は損なわれているものの、校舎の周りの森林を一望できて気持ちがいい。 頭をつかう麻雀を得意とする憧にとって、頭の休憩のために屋上は最高の休憩場所だった。 ……ところで。 刺激的なことが好きとは言ったが。 ヘリコプターが私をめがけて飛んでくる。 エンジンの音なのかプロペラの音なのかはわからないが爆音が耳をつんざく。 そのヘリから一人の少女が飛び出してくる。 息を呑むほど美しい少女だった。 パラシュートが開く。 美しい少女は優雅に体を動かし、巧みに軌道を修正しながら。 ゆったりと、憧のいる屋上へ着地した。 空から降ってきた美しい少女。 屋上を吹き抜ける風で長い髪がうねる。 その少女は輝いているかのようだった。 少女は空を見上げ、自慢気な声で言った。 京子「なるほどSUNDAYじゃねーの」 SATURDAYだ。 ほどなく、ヘリも着陸し、中から出てきたのは、憧もよく知る少女だった。 和「須賀君なんでわざわざパラシュートなんて使ったんですか」 京子「特に意味は無いよ。そして今は京子と呼んで!」 和「跡部人気に便乗するためですか」 京子「和、ぶっちゃけキャラになる気か」 憧「の…………」 和・京太郎「ん?」 憧「和ぁ!?」 和「お久しぶりです、憧」 ……ここまで刺激的なことは求めていない。 京太郎が初めて女装をしたのは中学1年生。 百合を汚さないために始めた女装。 でも今は百合とは別の独立した趣味になっている。 どうしてこの趣味は理解者が少ないのだろうか? こんなに可愛い服を着られるのに。 そもそも男の服にはキュートさが足りない。もっと男の服にもフリフリなやつがほしいです。 最近スカートがメンズファッションとして取り入れられたときは「俺の生まれる時代は間違ってなんかいなかった!」 と思ったものだが、実際のところ、まだ一般化してないし、そもそもスカートと言ったってミニは許されていない。 丈が長くてゆるふわ系フリフリスカートも大好きではあるのだが、短いやつも履きたいのだ。てなわけで今、俺はミニスカート姿だ。 いや、「俺」という無粋な一人称はやめよう。 私、須賀京子は阿知賀女子学院に降り立っていた。 女子校である。 女子校である! 百合の聖地である! 少子化の影響で共学化なんてしてないのである! 阿知賀に来た途端、そこらかしこから百合の香りが漂ってきた! 憧「………………」 阿知賀に来て一番最初に目についた少女もまた、ほのかな百合の香りに包まれていた。 京子「はじめまして!」 憧「あ……はい、はじめまして」 握手をする。 憧「えっと、和、この子は……?」 和「須賀京太郎、男です」 憧「え」 京子「はい?」 憧「え」 和「須賀君、こちらが先ほど写真でお見せした新子憧さんです」 京子「へえ……『女の子は一年もあれば見違えるぐらい変わるものだ』と本藤先輩が言ってたけど、本当なんだね! 私、感心!」 和「案外あっさりなリアクションですね」 京子「女の子はいつでもかわいくなれるんだよ? 私、知ってる」 和「カプ総合スレや阿知賀スレで『憧の急成長に驚く』シチュエーションの話がたくさんあるから」 和「競合を避けるためにあっさりなリアクションしたのかと。ぶっちゃけそう思いました」 京子「ぶっちゃけキャラはやめよう、和」 しかしこんなに姿が変わってしまうと、本来の目的である「優希への思いが何であるか確かめる」が達成できなくなる。 わざわざ奈良まで来て得られるものがなにもないのでは、悲しくなってしまう。 そこで、新たな目的を思いついた。 百合の種探しである。 百合の種探しとは。 もうすぐ百合ップルになりそうな女の子を探して事前に仲良くなり、女の子たちがゆりゆりしているさまを観察させてもらうことだ。 憧「えっと、あの」 京子「あなた、恋、してる?」 憧「はい?」 京子「好きな女の子、いる?」 憧「え、ちょっ、まっ」 京子「いるんだね! 私、応援してるから!」 憧「え? う、うん」 京子「LINEのID交換しよう! それで逐一、好きな女の子とやったイベントを報告してね!」 憧(え? あれ? どうなってんのこれ!?) 京子「ID!」 憧「あ、はい……」 百合の可能性をひとつゲット。幸先のいいスタートだ。 京子「じゃ、他の百合の香りを追ってくるから、このへんで……」 憧「ちょっと待って!」 京子「どうしたの?」 憧「和。この人とどんな関係!?」 いきなり旧友が謎の女装男とともにヘリで現れたら、そりゃ二人がどんな関係なのか気になるだろう。 和「須賀さんとの関係ですか」 京子「和ちゃんとの関係、かぁ……」 部活仲間? 友だち? 何だろう……、私と和の関係って。 ……そういえば。 ヘリの中で話し合った。 将来のこと。将来、なにになりたいか。 私たちは、将来のことを話しあった関係なのだ。 和・京子「将来のことを話しあった関係」 京子「だよ」 和「です」 憧「え」 憧「えええええええええええええええええ!?」 阿知賀麻雀部室にて。 京子は京太郎に戻っていた。 京太郎「ひどい……ひどい……この世界は俺の敵だ……」 玄「ど、どうしたの京太郎くん」 京太郎「玄さん……ここって女子校ですよね」 玄「うん」 京太郎「百合の園ですよね」 宥「ユリの花が咲くのは5月からだけど……」 京太郎「なのに男性教師がいるんですよ!?」 玄「え!? 普通だと思うけど」 京太郎「俺の知ってる女子校は男なんて一人もいないんです!」 玄「どういうこと!?」 京太郎「くそっ……これだから現実は……! もっと百合漫画を見習えよ……!」 京太郎「こんな思いをするぐらいだったらカプ総合スレでいろんな女の子とインスタントにイチャイチャしてるほうがマシだ!」 穏乃「ねーねーきょーたろー。さっきの女の子の姿、もう一回見せてよー」 京太郎「よし、じゃ、着替えてくるぜ!」 灼「ハルちゃんはもうすぐ来るとおも……」 和「そうですか……それじゃ赤土さんが来るまでここで待っていていいですか?」 穏乃「赤土先生は今、職員会議中だから、30分もしないうちに来ると思うよ」 京子「手うがは大切だよ 手うがしようね!」 和「としのーきょーこー?」 京子「 !? 」 和「なんでもありません」 穏乃「わーすっごい! かわいい!」 憧「なじみすぎ!!」 なじんでいた。 憧「っていうかしず! こいつと知り合いなの!?」 穏乃「きょーたろはうちのお得意さんだったんだよ」 憧「玄と宥姉は!?」 玄・宥「初対面」 憧「なじみすぎ!」 京子「すみません……憧さん……。私、邪魔でしたよね……」 京子「みんなと話すのが楽しくて、つい騒いじゃいました……。本当にごめんなさい……」 憧「え……いや……別に怒ってるわけじゃ」 京子「心配して損した!」 憧「譲歩して損したんだけど!?」 元の姿に着替える。 あまりに長い時間京子でいると、自らのパーソナリティを喪失しかねないからだ。 玄「和ちゃんと京太郎くんは将来のことを話しあった関係なんだよね?」 和「はい、そうですね」 玄「いいなあ~……憧れるなあ……」 京太郎「そんなに憧れることですか?」 玄「そりゃ当然! 女の子なら当然なのです!」 京太郎「じゃあ玄さんも俺達と将来のことを考えませんか?」 玄「えぇっ!? だ、だめだよ、そんな! 和ちゃんが怒るよ」 和「構いませんよ」 玄「寛容!? 長野ってそんなに爛れた場所なの!?」 京太郎「何故長野の悪口を……。温泉とかいっぱいあっていいところですよ?」 玄「うちにもいい温泉があるのです」 京太郎「へえ、いいですね! 温泉旅館か何かですか?」 玄「うん。あ、良かったら温泉、どうですか?」 京太郎「あ、それじゃあ、入ります。和も入るよな?」 和「いいですね、温泉。お願いします」 玄「ま、まさか一緒に?」 京太郎「なんでそうなるんですか」 玄「あはは、さすがにまだ早いよね! よかった!」 和「早い遅いの問題なのでしょうか……」 玄「とすると、お二人はどこまで……?」 京太郎「どこまで、とは?」 玄「二人で今までにやったことは?」 二人でやったこと? う~ん、特に思いつかない。 和「そうですね……さっき須賀君の部屋でベッドに押し倒されました」 玄「すごく進んでる!?」 京太郎「あーあれかー。そういえばそんなこともあったな」 玄「そんなどうでもよさそうに……」 京太郎「まあ(バランスを崩して押し倒すなんて)よくあることですし」 玄「長野怖いのです」 京太郎「なぜさっきから長野へバッシングが……? いいところなんですよ長野。交通マナーが少しばかり悪いですけど」 玄「それって良い所だと言えるの……?」 京太郎「奈良も鹿さんの交通マナー悪いんですよね? それと一緒です」 玄「結構違う気が」 玄「でも羨ましいな……。和ちゃんのおもちを自由に扱えるなんて」 京太郎「え、扱えませんよ?」 玄「そこはまだ許してないんだ」 和「『まだ』ってなんですか『まだ』って。一生許しませんよ」 玄「そこはプラトニックなんだ……長野って訳がわからないのです。おもちを触れないとか……長野には行きたくないのです」 京太郎「長野に何か恨みでも……?」 玄「おもち帝国岐阜の隣に位置しながら、長野のおもちは平均以下の大きさしかないんだよ!?」 京太郎「ならば恨むのも致し方無いですね」 玄「そうなのです……ってあれ? 京太郎くん、おもちという言葉をなぜ……?」 京太郎「そういえば玄さん、なぜ俺が作った隠語を……?」 玄「…………」 京太郎「…………」 この世に、奇跡は存在した。 300km以上離れた奈良と長野で、同じ言語文化がまったく別の人間によって誕生していたのだ。 京太郎「奇跡ってあるもんですね……」 玄「うん……私、感動しちゃったよ」 そこで京太郎はあることを思い出した。 京太郎「おもちスレって知ってますか」 玄「うん。私、あのスレの住人だもん」 京太郎「こんな形でオフ会をすることになるとは思ってませんでした」 玄「うん、仲間に会えて、私……嬉しい」 京太郎「俺もです。でもせっかくだったら他の住人さん……」 京太郎「もち吉さんとか、†妖魔†さんとか、黒の騎士さんとか、チャチャさんにも会いたかったですね」 玄「京太郎くん……。ここで重大発表があるんだ」 京太郎「……なんですか?」 玄「その人達、全部、私の自演なんだ……」 京太郎「…………え」 玄「そう、それはあの日のこと――」 おもちのことを語りたかった。 おもちのことで夜を明かしたかった。 でもそんな話を出来る人はいなかった。 日に日に募るおもちへの思い。 それは発散されることはなく。 ――私は、私と語ることにしたのだ。 掲示板を作り。 自分のパソコンと、おねーちゃんのパソコンと、自分のケータイと、おねーちゃんのケータイと 旅館のパソコンを使い分け5つの人格を作り出し。 たった一人でおもち談義をしていた。 楽しい時間だったけれど、虚しさは募り続けた。 だからその日現れたその人は、私にとってかけがえのない人だ。 あなたが初めておもちスレを見たとき、私は人生であれほど嬉しかったことはなかった。 時には心苦しいながらもあなたのおもち観を叩いたりもした。 それでも私は、あなたに感謝している。 玄「ごめんね……自演なんかして……」 京太郎「玄さん……」 痛いほど、彼女の気持ちが理解できた。 京太郎にも似たような経験があったのだ。 百合が好きになって。 誰かと語り合いたいほど好きになって。 でもそれを語れる人はいなかった。 今でもあの頃のことを思い出すと心が寒くなる。 大切な何かが欠けていたあの日々。 それはちょうど紅生姜のない牛丼のようで。 決して戻りたくない過去だ。 京太郎「いいんですよ玄さん……! いいんです……! そんなことはもう……!」 玄「でも、ずっと騙してたんだよ? 大切な京太郎くんを……ずっとずっと騙してたんだよ?」 京太郎「気にしてないです……! 玄さんの気持ち、とても良くわかりますから……!」 玄「京太郎くん……!」 和「そうですよ、玄さん。須賀君は玄さんの気持ちを良く理解してますよ」 玄「和ちゃん……!」 和「須賀君もよくSSスレで自演しまくって自分のスレを人気があるように見せかけてますし」 京太郎「これでぶっちゃけるのは最後にしよう、なっ?」 しばらくすると、阿知賀麻雀部の顧問であるという赤土さんがやってきて、和と話していた。 赤土さんが来た瞬間、灼さんの百合指数が十倍に底上げされ、歓喜したのは言うまでもない。 京太郎はそっと部室を出ると、廊下にある自動販売機でビックルを買い、ベンチに座って瞑想した。 阿知賀女子麻雀部は百合の土壌であるとともに、片思いしかない、悲恋の世界だ。 灼さんの思いは一方通行だし、憧の思いも一方通行だ。 百合の物語は悲しい最後を迎えることも多い。 だからこそ現実ではハッピーエンドを迎えてもいいと思うのだ。 憧と灼さんに、何とかしてハッピーエンドを与えられないだろうか。そう思った。 京太郎「……ん?」 憧「あ……」 そこに、憧がやって来た。 京太郎「何か飲みに?」 憧「……やっぱ戻る」 京太郎「俺のことなんか気にすんなよ」 憧「……別に」 京太郎は立ち上がり、自動販売機の目で財布を出した。 京太郎「何飲む?」 憧「ちょっ……自分で払うから」 京太郎「そうか、つぶつぶドリアンジュースか」 憧「カルピスソーダ!」 京太郎「はい、購入っと」 憧「あ……しま……」 京太郎「隙を見せたな」 憧「くっ……。それ、いらないから」 京太郎「俺、炭酸苦手なんだけど」 憧「……子どもみたい」 京太郎「よく言われる」 憧「……あーもう、貰うわよ! ありがとねっ!」 京太郎「助かるよ」 近づこうと一歩踏み出した瞬間、憧は一歩、後ずさった。 京太郎「…………」スタ 憧「…………」スタ 京太郎一歩前進。 憧一歩後退。 京太郎「…………」スタスタ 憧「…………」スタスタ 京太郎ニ歩前進。 憧ニ歩後退。 これはもしかして、俺、避けられてね? 何故だろう。 嫌われるようなことをしたか? したけども。 京太郎「俺のことは嫌いでも、LINEで百合話をする約束はやめないでください!」 憧「……別にあんたのことが嫌いなわけじゃないわよ」 京太郎「好きというわけでもないのか」 憧「好きになる要素ないでしょ」 京太郎「たしかにな」 否定はできない。 京太郎「じゃあなんで近づこうとすると離れるんだ」 憧「あ……えと……それは」 京太郎「それは?」 憧「……苦手だから」 京太郎「なにが」 憧「お、男の子が……」 京太郎「はは、なるほどな」 憧「……ダメだよね、やっぱり、異性が怖いなんて」 京太郎「……そんなことねーよ」 憧「そんなわけない! 治すべきなんでしょ!?」 京太郎「いいじゃねーか、異性が苦手なくらい。無理して慣れようとする必要はないよ」 憧「でも……」 京太郎「治したいならゆっくり治していけばいい。慌てなくたっていいだろ」 というか。 治してほしくない! 男嫌いとか最高じゃんか! それってもう百合に生きろっていう神様からのメッセージだぜ、きっと。 憧がここまで育てた百合の芽を枯れないように守るのは、「男が苦手」というステータスなのだ。 変な男に捕まったらせっかくの百合の芽が花を咲かせる前に枯れてしまう。 そんなのは許せない。 京太郎「憧、俺は気にしないから」 憧「そっか……ゆっくりでいいんだ」 京太郎「ああ」 憧「……ありがとね、京太郎」 京太郎「?」 憧「うらやましいな……和」 京太郎「へ……? 憧、お前、なに言って……」 穏乃「大変だよ、きょーたろー!!」 そんな憧との会話中、穏乃が慌てた様子で駆け込んできた。 京太郎「どうした!?」 穏乃「和が、和が、熱を出して倒れて……!」 京太郎「え……あっ!」 そうだ。確かに今日の和の様子は変だった。 普段はあんなにぶっちゃける性格じゃないのに、今日はやたらとぶっちゃけていた。 あれは体調が悪くて調子がおかしかったんだ! 松美館。 看病しやすいよう、板場に一番近い部屋を貸してもらった。 板場に氷があるからだ。 晴絵「疲れが溜まってたみたいね。この時期は生活の変化も多いし、体調を崩しやすいからね」 和「……そうですね」 穏乃「おかゆ持ってきたよ! 食べられる?」 和「ありがとう穏乃。いただきます」 京太郎「ごめんな、和……。俺が無理に連れ回したせいで」 和「いえ……私も気づかなかったですから……」 ……そうじゃないんだよ、和。 奈良に来たのは俺の勝手な用事で。 それに巻き込んだのがいけなかったんだ。 京太郎は立ち上がり和のそばを離れ、部屋の入口にいる時山さんのそばへゆっくりと後ずさった。 時山「原村様のご両親への連絡、完了しました」 京太郎「ありがとう、時山さん」 場所が奈良だったのは不幸中の幸いか。 もともと和が住んでいた場所なので、親同士の繋がりもあったため、奈良にいることで大きなトラブルにはならなかった。 時山「この部屋と隣の部屋を使わせていただくよう、手続きも致しました」 京太郎「……いつもすみません」 時山「いえ、お役に立てるのならば」 京太郎「……天江家でのことを思い出してるんですか」 時山「…………違いますよ。それに今の衣様は龍門渕家にいらっしゃるのでしょう?」 時山「龍門渕家にはあの荻原さんがついています。何の心配もいりません」 京太郎「……わかりました」 夜。 京太郎「それじゃ和、何かあったら遠慮なく呼んでくれ。おやすみ」 和「はい、おやすみなさい」 和のいる部屋を出た京太郎は自分の部屋に戻ろうとしたが、思い直してロビーに行った。 ロビーの端にある自動販売機の前に立つ。 京太郎「……昼に一本ジュース飲んじゃったからな。一日二本は飲み過ぎ……」 水を買う。 出てきたペットボトルを目に近づけて、水の向こう側を見通す。 水を通すとゆらゆらと世界が揺れる。 それは牌の世界に似ていた。 京太郎「今日は牌に会えなかったな……」 なぜだろうか。最近、牌のことを考える時間が増えた。 今ごろ牌は何をしてるだろうとか、どんなことを考えてるのだろうとか、過去にどんなことがあったのだろうとか。 考えるだけ無駄なのに、気づけばそんなことばかり考えていた。 ゆらゆら揺れる空間に、揺れる人影が映った。 京太郎「……こんな時間に外出して親に怒られないのか」 穏乃「……和のことが心配で」 憧「ちゃんと許可は取ったわよ」 灼「部長としての責任もある……」 京太郎「大丈夫だ、今は安定してる。ゆっくり休めば元気になるはずだ」 穏乃「そっか……よかった」 安堵したように三人はソファーに腰を下ろした。 京太郎「早く戻ったほうがいいぜ。許可を取ったとはいえ親も心配だろ」 穏乃「許可っていうのは松美館にお泊りする許可だよ」 京太郎「あ、そういうこと……よく親の許可取れたな」 憧「あんたの親はどうなのよ。いきなり外泊なんてして」 京太郎「ふ……俺の親か……?」 視線をそらし、天井を見上げる。電灯が眩しかった。 穏乃「まさか……親」 京太郎「ああ……」 視線を戻す。 京太郎「超怒ると思うぜ!」 穏乃「予想と違った!」 京太郎「はぁ……明日がこえーよ……。何時間説教されるのやら……下手したら説教だけで2ページは消費する可能性も……」 穏乃「のび太のパパか」 憧「和のこと……心配?」 京太郎「そりゃそうだろ」 憧「そうよね、将来のことを話しあった関係だもんね」 京太郎「? 確かに、そうだけど」 穏乃「どうやって二人は知り合ったの?」 京太郎「部活が一緒だった」 穏乃「ほほー……定番だね。で、告白はどっちから」 憧「ちょっと、しず!」 穏乃「ヘヘ……いいじゃんか」 京太郎「告白って何のことだ?」 憧「してないの!?」 京太郎「ただの友だちに告白なんてするわけないだろ」 穏乃「え? ……将来のことを話しあった関係なんじゃ」 京太郎「おう。将来、何になりたいかについて語り合った関係だぜ」 憧・穏乃「………………」 灼「知ってた」 京太郎「え? え? なにこの空気」 灼「アラタ」 その後、旅館の雀卓で三人にボロボロにされた京太郎だった。 麻雀終了後。 京太郎は穏乃を外へ呼び出した。 明かりの近くには虫が沢山いたため、少し暗がりになっていた池のそばへ。 松美館の池は宴会所の窓から一望できる場所にあった。 月明かりが池の表面で反射してきれいだ。 穏乃「どうしたの、きょーたろー」 京太郎「なんだかんだでゆっくり話せなかったからさ。思い出でも語ろうかと」 穏乃「思い出かー。実はそんなにないよね」 京太郎「まーな。期間的には短かったし」 小学校が同じだったわけでも、一緒の麻雀教室に通っていたわけでもない。そんな都合の良い過去はないのだ。 京太郎「あのさ、穏乃は覚えてるか」 穏乃「なにを」 京太郎「俺がここに引っ越してきたときのこと」 穏乃「うーん……半分くらい」 京太郎「俺、何か言ってなかったか」 穏乃「……………………………………」 穏乃は目を閉じて、顔を傾けた。 忘れかけたことを思い出そうとしているのだろう。 穏乃「そういえば、ときどき言ってた気がする」 京太郎「なんて?」 穏乃「『あのとき、俺は足が動かなかった』って」 穏乃「『そんな情けない俺の隣を、あいつは駆け出した』」 穏乃「『あのとき俺がその役目を負っていたら、サキも、テル姉も、あいつも――あんなことには』」 京太郎「……その先は!? まだ他に何か言ってなかったか!?」 穏乃「ん……えっと……何か言ってたっけ」 穏乃の肩を掴む。 京太郎「何でもいいんだ! どんな些細な事でもいいから、頼む!」 穏乃「い……痛いよ、きょーたろー」 京太郎「あ……わるい」 肩から手を離す。 手が痺れていた。どうやら知らないうちに強く握っていたようだ。 穏乃「なにか、あったの」 京太郎「…………」 穏乃「すごく、必死だった」 見抜かれている。 和は俺のことを「何でも見透かしてるよう」と表現したが、穏乃ほどではないと思う。 京太郎「今日、和とアルバムを見たんだ。俺が奈良にいたときの――つまり穏乃との写真。そのアルバムを見て気づいたことがある」 京太郎「そのアルバムに、空白期間があるんだ。二年間分の写真がすっぽり抜けていたんだよ」 それは、記憶に蓋をした時間。 京太郎「俺がそのころの写真を捨てたのか、親が隠したのか分かんねーけど……思い出さなきゃならない」 穏乃「……わかった。あのときのこと、もっと思い出してみる」 穏乃は黙って空を見上げた。 穏乃「ひとつだけ、思い出した」 京太郎「…………」 穏乃「『好きだったのに』」 京太郎「え?」 穏乃「『好きだったのに』って言ってた」 次の日。 阿知賀女子学院屋上。 ヘリに乗り込んだ京太郎たちは阿知賀女子麻雀部の六人に見送られていた。 プロペラの音が轟いている。 穏乃「和! そこからなら、みんなを見れる!?」 和「見えますよ!」 大きな声で和は返事をした。 穏乃「これが、私たちのチーム!」 穏乃が両腕を大きく広げる。 和「はい!」 穏乃「全国で和と遊ぶために、作ったんだよ!」 和「……!」 穏乃「全国、絶対来いよ、和!」 和「そんな約束は……いえ」 和は京太郎の顔を横目で見て、覚悟を決めたように言った。 和「必ず、行きます!」 奈良が離れていく。 京太郎と和にとっての思い出の場所が。 京太郎「そんな約束はできない、っていうのかと思った」 和「そう言うつもりでした」 京太郎「じゃ、なんで」 和「ふふ、どうしてでしょうね」 京太郎「答えは?」 和「答えは教えませんよ」 こうして、二人の奈良の旅は終わった。 旅に意味を求めてはいけないとは言うけれど。 大切なものを手に入れた気がした。 7・終 8・ 京太郎「さあ、今日も牌ちゃんと戯れに、牌の世界に行こう」 部室に一番乗りした京太郎は、卓の上に整理された牌に触れる。 触れた瞬間に感じる、頭から血が抜けるような感覚にも随分と慣れた。 京太郎「到着っと……」 辺りを見まわす。 京太郎「あ、いた。おーい、牌……」 声をかけようとしたところで、あることに気づく。 京太郎「え……牌のそばにいるやつ、誰だ?」 牌のそばにいたのは、遠目にもわかるイケメン高身長な男だった。 京太郎「は……? ちょ……どういうことだよ」 頭が働かない。どうしてこんなことになっているのか。 牌は、楽しそうな表情でその男と会話していた。 京太郎「……いや、別に……あいつが誰と話してようが俺には関係ないし」 そうだ。牌と京太郎の関係はただのライバル関係なのだ。 牌が誰と仲良かろうが、それはどうでもよいことなのだ。 ――だけど。 京太郎「……帰ろう」 話しかけることは出来なかった。 京太郎「咲……俺の白でお前の萬子の混一色に放銃してもいいか?」 京太郎「う゛ん゛、い゛い゛よ゛(裏声)」 友人「……何やってんのお前」 誰もいない教室。 そこでの一人小芝居を見られていた。 京太郎「ゆーと! 見て分かんないのか? 咲を麻雀に誘う練習だ!」 友人「へー、別のことを誘ってるようにしか見えなかったわ」 京太郎「真剣にやってたのに」 友人「はぁ……まったくお前は。もっと普通に誘えばいいだろ」 京太郎「うっ……そうなんだけど、恥ずかしくってさ」 友人「普通に話すみたいに誘えばいいだけだっつーの」 京太郎「あ、そうだ、ゆーと。麻雀部に入ってくれ」 友人「いいぜ」 京太郎「優しい」 友人「今の感じで咲ちゃんを誘えよ」 京太郎「難易度高い」 友人「ヘタレめ」 京太郎「言い訳できねえ」 友人「じゃ、ちょっと練習してみるか。俺を咲ちゃんだと思え」 京太郎「咲はもっとかわいい」 友人「うるせえ、さっさとやれ」 京太郎「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! 入部しろ!」 友人「自由意志を尊重しろ」 京太郎「安心しろ! ――俺、須賀京太郎は不可能の力と共にここにいるぜ!」 京太郎「俺が咲の入部を受け止めてやる! だからお前は入部届を持っていけ!」 友人「壮大過ぎる」 京太郎「一緒の部に入部して、友達に噂とかされると恥ずかしいし……」 友人「もはや誘ってねえ」 京太郎「な゛ん゛で゛入゛部゛し゛な゛い゛ん゛だ゛よ゛! ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 友人「文字数稼げて便利!」 いよいよ咲を誘う時がやってきた。 特別なセリフも気障な口説き文句もいらない。 ただ普通に言えばいいだけだ。 外で本を読んでいる咲を見つけた。 友人「さあ、行け!」 京太郎「あ、明日にしないか?」 友人「行け!」 どんと押された。 京太郎(ええい、ままよ!) 京太郎「咲~!」 咲「京ちゃん」 京太郎「まーじゃ……」 咲「まーじゃ?」 京太郎「まあ、じゃあ、学食へ行こうぜ!」 咲「その間投詞いる?」 食堂。 咲にレディースランチを注文してもらってる間に友人に首を絞められた。 友人「何やってんだお前は」 京太郎「く……苦しい。だ、だってさ」 友人「だってじゃねえ」ギュウウウウ 京太郎「しまってるしまってる! ここで決める! ここで決めるから!」ゴキゴキゴキ 咲「はい、レディースランチ、持ってきたよ」 京太郎「おーう……サンキュー……」ギュウウウ 咲「仲いいね、二人!」 京太郎「これが、仲良くしてるように……見えるのか」ゴキゴキギュウ 咲「じゃれてるだけでしょ?」 それはひどい。 友人は一旦その場を離れ、遠くから俺達を見守ることにしたようだ。 正直友人にはこの場にいてアシストをして欲しかったのだか、この件は俺一人で片付けるべき問題らしい。 京太郎「咲……あのさ」 咲「おいしい?」 京太郎「あ、美味いぜ」 咲「それはよかった」 京太郎「…………ういっす」 タイミングが見つからない。 あれ、勧誘ってこんなに難しいことだっただろうか? ……いや、これは俺のせいだ。 俺が咲に特別な感情を抱いているから、こんなふうになってしまったのだ。 今は咲への感情は切り離そう。 大切な友人を部活に誘う。それだけのことだ。 京太郎「咲、麻雀部に入らないか」 溜めもせず、情緒もなく、京太郎はそう言った。 咲「……ごめん京ちゃん、麻雀キライだから」 京太郎「キライってことは、麻雀、出来るんだ?」 咲「まあ、そうなるけど」 京太郎「なら、大丈夫だ」 咲「大丈夫って……」 京太郎「どんな理由で麻雀が嫌いになったのかは知らねーけど、うちの麻雀部なら大丈夫」 京太郎「あそこなら、あのメンバーなら、たとえ嫌いでも――楽しく麻雀を打てる」 咲「……よくわかんないよ」 京太郎「えっと、つまりだな……あの、その」 咲「でも、京ちゃんがそう言うなら、そうなのかもね」 京太郎「咲……」 咲「いいよ、わかった。行ってみる」 部室。 新メンバー友人と見学の咲を連れてやって来た。 京太郎「みなさんいますかー!!」 本藤「しっ、須賀! 静かにしろ」 京太郎「ど、どうしたんです?」 本藤「部長が眠っていらっしゃる」 京太郎「はあ」 本藤「怖いから起こしてはならない」 本藤先輩、トラウマ克服できてねえ。 本藤「っと、客か?」 でかい図体、威嚇するような面で本藤先輩は言った。 咲のやつ、怖がらねえよな……? 咲「宮永咲です。よろしくお願いします」 なんの緊張もない様子で、咲はお辞儀をした。 そういえば咲は他人に物怖じしないタイプなんだっけか。 友人「こここここんにちは! うううううう梅原友人です」 ……よっぽどこっちのほうが怖がってた。 和「お茶入れますね」 咲「あっ……さっきの――」 京太郎「お前和のこと知ってんの?」 和「先ほど橋のところで――」 八坂「悪いね、ちょっとこいつに用事があるから先に打っといて!」 京太郎「やっさん?」 和の言葉を全部聞く前に、やっさんに腕を引っ張られ、部室の外に出た。 京太郎「どしたよ」 八坂「……あいつはなんだ」 京太郎「どっちのことだ」 八坂「宮永さん」 京太郎「咲か……友だちだけど」 フラれた相手だとは言えない。 京太郎「……どうしたやっさん、顔色、悪いぞ」 八坂「分かんないのか、お前には」 京太郎「え?」 八坂「……化け物だぜ、あいつ」 京太郎「なっ……」 八坂「いや、魔王か……?」 麻雀の強い人間が発する何か。 それは悪魔だとか魔物だとか、にも例えられる。 京太郎「いやいやいや、ちょっと待てよ。俺もそういうのを感知する力があるんだぜ? でも咲からは特に何も」 八坂「隠してるんだ」 京太郎「…………」 八坂「いや、隠れているのかもしれないな。意図的にか偶発的にかはわからないけど、強さが隠れている」 京太郎「なんでお前はそんなことがわかるんだ」 八坂「同種の物を見たことがあるからだ」 京太郎「同種の……もの?」 八坂「あの日――俺が麻雀をやめた日――見たんだ。あれに似た、なにかを」 部室に戻り咲の打ち方を確認する。 京太郎「(……まじかよ)」 八坂「(わざと手を安くしたな。何のためだと思う)」 京太郎「(一位にならないため……とかか)」 咲が麻雀を嫌った理由はわからない。だが人が麻雀を嫌いになる理由は限られている。 その定番といえば、自分が勝つと他の人の機嫌が悪くなる、とかか。 八坂「(一位にならないため、か。それもあるが……それだけじゃない気がする)」 京太郎「(えっ!?)」 八坂「(もう一局見よう)」 ――そこから始まる物語は、咲と和の物語。 その日、咲は3連続プラマイゼロを達成したのだった。 その日の放課後。 一太「部員、九人揃ったのかい」 京太郎「えっと、副会長さん。お久しぶりです」 一太「君ならやると思っていたよ。麻雀部再建」 京太郎「……あと一人、男子が足りてませんよ」 一太「僕を、入れてくれないか?」 京太郎「え?」 一太「君がいれば、会長はもう悲しまなくて済む」 京太郎「よくわからないですけど……入部なら大歓迎ですよ」 ――こうして、男子も女子も団体戦に出られることになった。 一週間後。 通学路の途中、京太郎は草むらに隠れて観察していた。 友人「……何してんの、お前」 京太郎「指」 友人「……は?」 京太郎「いま、和が小指にキスしたんだ」 友人「おう」 京太郎「昨日、咲と和は指切りをしてたんだ。隠れて見てた」 友人「本格的に気持ち悪いなお前は」 京太郎「あれは百合名場面名鑑収録『あなたの触れた場所がじんじんするの……』だ!」 友人「もしかしてこれから先、原作にそって百合百合してる様子を観察するだけの話になるのか!?」 京太郎「いいな、それ!」 友人「よくねーよ。あと2週間しかないんだぞ。盛大に何も始まらないにもほどがあるわ」 学校。 咲「じゃあお昼一緒に食べようねー」 和「はい、ではまた」 京太郎「咲……おまえ……和と仲良くなったのか」 百合ップル誕生への歓喜で、京太郎はそう言った。 咲「うんっ」 京太郎「お……俺もお昼ご一緒してよろしいですか」 もちろん、百合の観察のためである。 合宿をしよう。 そういうことになった。 そして合宿の前日。 京太郎はある場所にやって来ていた。 百合オンリーイベントである。 合宿の日程と重ならないか心配であったが、ギリギリ一日ずれていたのだ。 京太郎「買うぞー! 超買うぞー!」 pixivで追ってる好きな絵描きさんの新刊を素早く買う。 しかし、京太郎にとっての本番はこれからだ。 それは新人の発掘である。 この業界は常に新しい人が入ってくる。 そこにある金の卵を探す。やりがいのあることだった。 京太郎「とりあえず、まずは好きなカップリングの同人誌から見ていくか」 絵柄も好みな「はるちは本」を発見。 京太郎「あの、読んでみてもいいですか」 女性「どうぞ!」 ……うん、やっぱり好みの絵柄だ。 ??「すみません、俺も読んでみていいですか」 女性「はい!」 他に客が来たようだ。 京太郎「あ、俺、邪魔ですか? すみません」 本藤「いえいえ、そんなことは」 紙袋を両腕にいっぱい抱えた、いかつい顔の男が、そこにいた。 まさしく本藤先輩であった。 京太郎「…………」 本藤「…………」 京太郎「き、奇遇ですね」 本藤「お、おう、そうだな須賀」 ??「ちょっとあんたら、そんなとこで立ち話してるんじゃねえよ」 京太郎・本藤「あ、すみませ」 八坂「…………」 つんつん頭の、小柄でツリ目な少年が、そこにはいた。 疑う余地なく、やっさんだった。 京太郎・本藤「……」 八坂「や、やあ!」 京太郎・本藤「……あ、この本、一部ください」 女性「ありがとうございます! やった、完売だよイッチー!」 一太「本当ですか!? やりましたねササヒナ先生」 京太郎・本藤・八坂「おっす」 一太「 」 京太郎「……」 本藤「……」 八坂「……」 一太「……」 あのあと、四人は互いに連携し合い、目当ての同人誌を買い漁った。 ほとんど無言でである。 会場の出口で、その空気に耐え切れなくなった本藤先輩がようやく口を開いた。 本藤「……お前ら明日の合宿の買い物は終わったか」 八坂「あ、まだっす」 京太郎「じゃ、今からみんなで買いに行きますか!」 一太「いいですね、梅原くんも誘いましょう!」 三十分後。 友人「みんなで集まって買い物って……。女子じゃねーんだから」 ぶつくさ言いながらも集合場所にやって来た友人。 友人「お、いたいた。もうみんな集まってんのか」 四人は、何か会話をしているようだった。 タッタッタッと小走り気味に四人に近づき、耳を傾ける。 八坂「女にも性欲はあるんだよ勝手な童貞の妄想を押し付けんな !!」 京太郎「プラトニックラブをバカにしてんのかボケ! 距離感を楽しむものだろうが!」 一太「ひたすらにイチャイチャラブラブしてりゃいいんですよ!」 一太「現実感やら修羅場やらシリアス展開やら、そういうのは作者の自己満足ですよ!」 本藤「笑わせるな! 葛藤や修羅場を乗り越えてこそ真実の愛に辿り着けるのだ!」 本藤「そこに至っていない百合なぞ見せかけ! お前の意見こそ本当の自己満足なのだ!」 八坂「そう、肉体関係まで描かなくても良いみたいな風潮が広まったせいだ!」 八坂「それでアリバイ百合とかいうただの金儲け作品が量産されたんだ!」 友人「よし、帰ろう!」 こんなやつらと同じ場所にいられるか! 俺は一人で買い物するぞ! 京太郎「来たか、ゆーと!」 見つかった。 友人「帰ります!」 本藤「今からカラオケ店で朝まで『百合ソング大会&百合談義』をするのだ。貴様には審査員になってもらうぞ」 友人「いやだああああああああああああ」 一太「僕が一番正しいことを証明してみせましょう」 八坂「はっ、笑わせるぜ先輩。今から宗旨変えの準備をしといたほうがいいですよ」 京太郎「つーか――……」 ――梅原友人はこの日、未来永劫絶対に百合作品を読まないことを心に誓ったのだった。 ――ただし、ゆるゆりは除く。 次の日。合宿の日。 合宿棟に向かう前に、京太郎は牌の世界に来ていた。 京太郎「……よう」 牌「京太郎!」 牌の笑顔。 それを見た瞬間、心がチクリとした。 牌が見知らぬ男と会話をしていた場面を思い出したのだ。 京太郎「……すまん! 今から合宿なんだ。今日はもう帰る!」 牌「ちょっと待ってよ!」 牌に腕を掴まれた。 京太郎「……どうした」 牌「最近、なんか変だよ」 京太郎「……気のせいじゃないか?」 牌「ち、違うもん」 牌が握っている場所がじんじんする。 京太郎「ごめんっ!」 手を振りほどき、元の世界に戻る。 京太郎「はあ、はあ、はあ……」 部室で卓に掴まりながら、呼吸を整える。 咲「大丈夫、京ちゃん?」 京太郎「咲!? 合宿棟に行ったんじゃ……今の、見てたのか」 咲「道に迷っちゃって……いま来たばかりだよ。大きな音が聞こえたからびっくりして」 京太郎「そ、そうか」 咲「京ちゃん……辛そうな顔してるよ?」 京太郎「……んなことねーよ」 誤魔化すしかなかった。本当のことを言うわけにもいかないし。 咲「……信じてあげて、京ちゃん」 京太郎「咲……?」 事情がわからないはずなのに、咲はそう言った。 もしかしたら何となくバレているのかもしれない。 まさか俺が牌の世界に行ってるとまでは思わないだろうが。 ……そうだ。ちゃんと聞こう。誰と話していたのか。その人とどんな関係なのか。 勝手に勘違いするのはやめよう。 次の日。合宿中。 早朝に合宿棟を抜けだした京太郎は部室に向かった。 牌に会いに行くためだ。 旧校舎にはまだ誰もおらず、静かな空気が薄気味悪かった。 卓の上に並べられた牌に触れようとして、手が止まった。 京太郎「まだ怖がってるのか、俺は」 真実を知るのが怖い。 出来るのならば真実を知らないままで生きていたかった。 京太郎「なんたるヘタレ具合だよ、俺は……!」 目を瞑って、勢い良く牌を握りしめる。 牌の世界。 最近はどんどんと明るくなっていった牌の世界も、最近また少し暗くなった気がする。 京太郎「牌……」 牌「……来てくれたんだ」 視線が合う。 どうしようもなく逸らしたくなったけど、我慢した。 目を逸らしてはいけない。 逸らした瞬間にまた勇気を失ってしまいそうだった。 京太郎「牌、聞きたいことがある」 牌「……なに?」 京太郎「10日ほど前、お前が会話してた男、あいつ誰だ?」 聞いてしまった。 怖い。 どうしてなのかわからないけど怖い。 牌は、ゆっくりと口を動かした。 牌「お兄ちゃんだけど?」 京太郎「………………」 牌「?」 京太郎「……お兄ちゃん?」 牌「うん」 京太郎「あ……は……はははは!」 牌「え!? 笑うとこ!?」 なんだ、なんだ、そういうオチか! うじうじ悩んでいたのがアホらしい。 さっさと聞いてしまえば楽だったのに。 京太郎「……よかった」 牌「京太郎……」 京太郎「牌……」 自然と、二人は体を近づけあった。 そして――お互いの身体が触れ――。 卓「妹を貴様には渡さーーーーーーーーーーーーん!!」 触れる前に突き飛ばされた。 卓「この獣め! 我が妹に気安く触れるとは!」 牌「あ、卓兄! おはよ」 卓「うへへへへ、おはよ我が妹よ」 京太郎「何だお前は!」 卓「我か? 我は《麻雀 卓》! 配牌を操る神なり!」 京太郎「配牌を操る、神?」 卓「敬い給えよ!」 京太郎「なーるほど……なぁ……」 卓「なんだ!?」 京太郎「お前かあああああ! 俺の配牌を8シャンテンとかいう糞配牌にしたのは!!」 卓「そのとおりだが?」 京太郎「だが? じゃねえ! さっさと治せ! ろくに麻雀できねーよ!」 卓「我から妹を奪おうとする蛮族にはピッタリの誅罰だ」 京太郎「悪魔あああああああああ!」 卓「野蛮人がああああああああ!」 牌「二人とも元気だねー」 牌はニコニコしていた。 牌「卓兄、京太郎の配牌を良くして、とまでは言わないけど、普通に戻してあげてよ」 卓「な、なぜだ我が妹よ! どうしてこんなやつの味方をする!?」 京太郎「へっ」ドヤッ 卓「ええい、うっとおしい!」 牌「お願いだよ」 卓「く……」 牌「お・に・い・ちゃ・ん?」 卓「任せ給え!!」 あれが兄という種族か……。なんと業の深い……。 卓「我が妹の頼みだから仕方なく貴様の配牌を普通にしてやったが……よく覚えとけ! これは貴様を認めたわけではない!」 京太郎「わかってるよ」 卓「貴様に妹はやらん!!」 京太郎「わかりましたってば、お義兄」 卓「おいいまてめえなんつった」 京太郎「つーかマジモンの兄妹なのか」 牌「んーとね、神様になってから兄妹になったんだよ。牌と卓は兄妹関係になる決まりなのだ」 卓「我は本物の妹と思っておるぞ!」 京太郎「オーケーオーケー」 卓「ええい、聞けいっ!」 ……さてと。 ここらで一つ、片をつけよう。 今あるピースで思い出せることは全て思い出した。 京太郎「さて……そろそろ覚悟を決めるか」 牌「覚悟?」 京太郎「逃げていたことに立ち向かう」 合宿の起床時間は7時半。 現在は6時半。あと1時間ある。 京太郎は自分の家に向かった。 京太郎「母さん」 母「どうしたの、京太郎。合宿中でしょ」 京太郎「俺が小学校1年生だった頃のことを、教えてよ」 母「……そっか。もう、いいのね」 京太郎「もう子どもでいられる年齢でもないしな」 母「ちょっと待ってて」 京太郎の母は薄いアルバムを持ってきた。 母「これが、その時の写真よ」 アルバムを受け取る。 薄くて小さいアルバムなのに、ずしりと重く感じた。 ゆっくりアルバムを開く。 京太郎「……ああ、そうか……やっぱり、そうなのか」 そこに写っていたのは四人の子ども。咲、照、京太郎、そして――牌ちゃん。 京太郎「いや――牌ちゃんじゃない――みなも――宮永みなも」 あの日、8年前。飛行機事故で命を落とした少女。 咲の従姉妹である少女。 俺が――。 初めて好きになった少女。 8・終 9・ その写真は、宮永みなもの最後の写真となった。 それ以来、咲は写真が嫌いになった。 わざわざアルバム委員になって、自分の写真が卒業アルバムにできるだけ載らないようにするくらい。 写真はその当時の記憶を蘇らせるからである。 咲は、カメラのレンズを避けるように生きている。 たまたま映ってしまったときにはその写真を抹消するために全力を尽くす。 昔は別に写真に映ることは嫌いじゃなく、むしろ好きだったのに。 みなもの死は、咲を写真嫌いにした。 みなもは、泳ぐことが好きであった。 いや、正確には――水、海、川、魚、貝。そういう物ならなんでも好きだった。 泳いでる魚をただ見てるだけでも楽しんでいたし、魚を食べるのも好きだった。 魚は綺麗に食べた。みなもはよく、咲に対して魚のきれいな食べ方を伝授した。 今でも咲はきれいに魚を食べる。 そんな咲の姿をみなもと重ねて、京太郎は咲のことが好きになった。 みなもの代用品として好きになったとも言えるけど。 牌の世界は海に似ていた。 みなもは自分の好きな海の世界を、牌の世界で再現したのだ。 そこまでするぐらい、海のことが好きだったのだ。 京太郎「きっかけは事故、だったけ」 咲はあの頃からよくこける子どもだった。 道路の真ん中で、咲がこけたのだ。 運悪く、そこにトラックが迫っていた。 京太郎「穏乃が言ってたのはこれか……」 京太郎「『あのとき、俺は足が動かなかった』」 京太郎「『そんな情けない俺の隣を、あいつは駆け出した』」 京太郎「みなもが、駆け出した」 京太郎「みなもは、咲を救ったんだ」 京太郎「自分の足を犠牲にして」 みなもは泳ぐことができなくなった。 泳ぐことは、みなもが好きなことの一つだ。 それを奪われたことはそうとう悲しいことであったはずなのに。 みなもは笑顔だった。 京太郎「そして、飛行機事故か」 バイトでの、染谷先輩との会話を思い出す。 親戚同士での海外旅行。 宮永照、その妹のみなも。そして二人の従姉妹の宮永咲。その家族たち。 楽しい旅行になるはずだった。 整備不良による事故。 それ以来、整備のことを学び、整備好きになった京太郎はここでは置いておく。 ビルに突っ込んだ飛行機は、燃料を漏らし、ビルを燃焼させた。 燃え盛るビルの中で、みなもは動けなかった。 体を焦がす炎の中で、みなもは動けなかった。 京太郎は蓋をした。 好きだった少女、みなもの死を。咲との日々を。照との思い出を。 蓋をして、無かったことにした。 咲も、京太郎と一緒だったのだろう。 ただ、咲は強くなろうとした。 また誰かを傷つけてしまわないように。 体育の内申点が10あるのは、強くあろうとしたからだ。 ……結局、こける癖は治らなかったけど。 だけど、照は違った。 記憶に蓋を出来るほど、幼くはなかったのだ。 そのときの記憶を保っていられるほどに強く、耐えられないほどに弱かった。 照に、もう妹はいない。 彼女は、咲を許していない。 家を出た京太郎は、湖に来ていた。 合宿の起床時間まであと20分。そろそろ戻らないとまずいけれど、どうしても来たくなったのだ。 四人でよく遊んだ、思い出の場所だった。 京太郎「……もう、誤魔化す必要はないよな」 認めたくなくて、心の中で否定したけれど。 いいかげん、嘘をつくのにも無理が出てきた。 だから、叫ぶ。湖にむかって。自分にむかって。過去にむかって。 京太郎「みなものことが好きだ! 牌のことが好きだ! 愛したい! 愛されてえ! そばにいたい! そばにいてほしい! 京太郎「ずっと見ていたい! ずっと見ていてほしい!」 ああ、なんだ。 認めてしまえばこんなに簡単。 牌への気持ちを。 ようやく、肯定できた。 ――合宿終了。 今日も牌の世界にやって来た。 京太郎「県予選まであと6日だぜ!」 牌「ついでにあと4日で、あの日だ!」 京太郎「あの日?」 今日から4日後というと、7月7日だ。 京太郎「あ、七夕か」 牌「それで、おしまいかぁ……」 京太郎「おしまい?」 何が終わるのだろう? 牌「秘密!」 京太郎「気になるだろ」 牌「知ったところで京太郎じゃどうにもならないし!」 京太郎「久しぶりにヒドイな」 最近は牌ちゃんが優しかったから、この俺に対するヒドさ、なんだか懐かしい感じだ。 京太郎「さてと、そろそろ部室に誰かが来る頃だろうし、帰るわ」 牌「あ……うん」 寂しそう声で牌は言った。 京太郎「どうした?」 牌「……もうちょっと、一緒にいてよ」 京太郎「……わかった」 二人は、手と手を重ね合わせた。 それが、今できる限界だった。 京太郎「今日の牌、少し変じゃないか?」 牌「……どこが?」 京太郎「どこって言われると困るんだけど」 牌「なら、気のせいだよ」 京太郎「…………そっか」 どこか、おかしい感じがするのは確かだが、それが何であるかはわからない。 もしかしたら本当に気のせいなのかもしれない。 次の日。 京太郎「あと5日で県予選かぁ」 牌「緊張してる?」 京太郎「してる、してる、超してる。もともと俺、緊張しやすいタイプだし」 牌「高校入試の日も緊張しまくったんだっけ?」 京太郎「うわっ、懐かし……。あの日はひどい目にあった」 牌「かわいそう」 京太郎「……たしかお前、俺が試験の日にトラブルがいくつも重なってギリギリ合格になるように祈ってなかったっけ」 牌「オボエテナイヨ」 京太郎「覚えてる人の言い方だ!」 次の日。 京太郎「この世界、また明るくなったな」 牌「そうだねー! あと2日でおしまいだもん」 京太郎「おしまい? 前も言ってたよな、『おしまい』って」 牌「そう、おっしまーい!」 京太郎「教えてくれよ、何がおしまいなのか」 牌「だから秘密だって!」 京太郎「乙女の秘密的な何かか?」 牌「はっずれー」 京太郎「むむむ」 次の日。 京太郎「あと3日」 牌「うん」 京太郎「『おしまい』は明日だっけ?」 牌「そうだよー!」 京太郎「あのさ」 牌「うん!」 京太郎「……いや、なんでもない」 牌「へんなの」 牌は、アハハと笑った。 それにつられて京太郎も笑った。 次の日。 久「新しい雀卓が来たわよー!」 旧校舎の入り口で部長は言った。 京太郎「えーっと、この箱を部室に運べばいいんですか?」 久「ごめんね、昼休みなのに手伝ってもらっちゃって」 京太郎「いやいや、いいですよ。少しは雑用をしないと心がざわつくんで」 久「そ、そうなの」 部費を溜め続けること10ヶ月。ついに新しい雀卓を買う資金が溜まったのだった。 京太郎「ようやく、ですね」 久「この雀卓はすごいわよ。洗牌はもちろん闘牌までやってくれるのよ」 京太郎「闘牌はやる必要ないですよね!?」 久「人間がやることは一つもない! これが本当の全自動麻雀卓よ」 京太郎「雀卓業界も迷走してますね……」 久「でも、これで――」 おしまいの合図。 久「あの雀卓の出番も、おしまい――ね」 京太郎「――おしまい」 世界のおしまい。 京太郎「……すみません、部長! ちょっと行ってきます!」 久「須賀君!?」 京太郎は部室に向かって走りだした。 階段を駆け上り、扉を壊す勢いで開き、牌を握りしめた。 京太郎「!? 牌の世界に行けない!?」 いつも通りにやっているのに景色が変わらない。 牌を手のひらに置いたまま、何度か手を握ったり開いたりしたが変わらない。 京太郎「……っ! 手遅れなのかよ!?」 嫌だ。 京太郎「もう逢えないのかよ!」 嫌だ嫌だ嫌だ! これでおしまいだなんて。 これで最後だなんて、そんなのは絶対に嫌だ。 京太郎「頼む、少しでいいから、牌に会わせろおおおおおおおおおおっ!!」 強い衝撃が脳に直撃した。 それは今までに味わったことがないほど強烈な痛みだった。 京太郎「ぐっ……」 世界が反転した。 視界がぼやける。 吐き気もこみ上げてきた。 それでも京太郎は目を大きく開き、世界を確認した。 牌「……来ちゃったんだ」 京太郎「牌……」 牌の世界は崩壊しつつあった。 空間にヒビが入り、砂のように細かく分解され、空間に溶けていく。 世界の終わりとはこういうものなのだろうか。 牌「……もともと、終わるはずの世界だったんだ」 牌「今よりももっと早いタイミングで、この夢は醒めるはずだった」 牌「付喪神の一生って、そういうものなんだよ」 牌「取り憑いた道具が、壊れてしまったら、それでおしまい」 牌「そんな、脆い世界だったんだ」 牌「この世界も、あの日――消えるはずだった」 京太郎「あの日……」 牌は京太郎の顔を見た。 泣いてはいなかった。 牌「そこに、誰かさんが現れた」 牌「その誰かさんは、この世界の寿命を伸ばしたんだ」 牌「ほんと、余計なことをしてくれたよね」 京太郎「よけいな、こと?」 牌「あのときこの世界が終わっていたら、こんな気持ちにはならなかったのに」 牌「京太郎のせいで、すごく、イヤだよ」 世界が崩れていく。 音はなかった。 世界の終わりって、こんなに静かでいいのだろうか。 京太郎「聞いても、いいか」 牌「なんでも」 京太郎「俺の世界には、牌に愛された子と呼ばれる存在がいる。咲とか、照姉とか」 牌「……うん、そうだね」 京太郎「ということはさ、愛してるんだよな、咲のこと」 牌――みなもは、咲を守ったことが間接的な原因となり、命を落とした。 みなもは、咲を恨んでいないのだろうか――ずっと気になっていたことだ。 牌「好き、大好きだよ、二人とも」 京太郎「どうして、好きなんだ?」 牌「……なんでだろう、私が神様になったときにはもう好きになってたんだ」 なるほど、そういうシステムなのか。 人間だったときの記憶は引き継がれず。 けれど、感情は残っている。 思いは、つながっている。 京太郎「……教えてやるよ、牌。お前の感情の理由」 牌「――え?」 世界が、消えた。 崩壊は完了したのだ。 でも、あと一言だけ。一言だけでいいから伝えさせてほしい。 京太郎「お前の名前は、宮永みなも――だ」 牌「――!」 みなも「――ありがとう」 ――ああ。 世界の崩壊って、こんなに――綺麗なんだ。 みなも「だいすきだよ、きょーにぃ!」 気づくと、京太郎は部室で一人、牌を握りしめていた。 京太郎「……こんなにお前は近くにいるのに」 どうしてこんなにも遠くなってしまったのだろう。 牌のことが好きなのに、愛せない、愛されない、そばにいれない、そばにいてくれない、ずっと見れない、ずっと見ていてくれない。 もう、いいよな。 終わらせちゃってもいいよな。 誰も見ていないし、誰も気にかけないだろうし。 なんてことはない、ここで一つの小さな思いが消えてしまっただけなのだから。 京太郎「そういや今日、七夕だっけ」 ――七夕? 京太郎「あ」 そこに見えたのは、一つの希望。 京太郎「紅生姜のない牛丼って、そういうことなのか?」 京太郎「そういう意味なのか?」 大切なモノが抜けているとか、そういう単純なものじゃなくて。 もう一つの意味があるじゃないか。 京太郎「……つーことは、――はあいつで、――は俺?」 京太郎「は」 京太郎「あはははははっ!」 こじつけにも程があるだろ。 でも、今日という日に世界が崩壊したのなら。 とても偶然とは思えない。 京太郎「信じてみるか」 京太郎「紅生姜のない牛丼屋を」 京太郎「俺は」 京太郎「全国優勝してみせる」 止まっていたと思っていた時間は、止まってなんかいなかった。 ずっと、流れ続けていたんだ。 それに気づかないふりをして、両手から大切なモノをたくさんこぼしていたんだ。 ――それを取り戻すための大会が、始まろうとしていた。 9・終 10・ 京太郎「さあ、一回戦だ!」 先鋒、八坂。次鋒、友人。終了。 一太「さて、僕の番ですね」 京太郎「頑張ってください!」 オーラス。 一太「あの日のことを思い出すな……」 次々に麻雀部をやめていく部員たち。 部員が減るたびに、久の寂しい顔を見なければならなかった。 それが、つらかった。 そして、やってはいけないことをした。 自分も部活をやめたのだ。 近くで久の顔を見ているのが辛くなったから。 怖かったから。 あのとき、やめるべきではなかった。 一太「ツモ!」 一二三①②③112233西西 京太郎「出たー! 一太先輩必殺、3以下の数牌を集める『ロリロリハンターズ』??」 一回戦突破。 京太郎「さあ、決勝だ!」 八坂「気をつけろ……ここの大将はマジでヤバい」 大将戦。 京太郎「はあ……はあ……はあ……、くそっ」 近江「麻雀ってよぉ、クソみてえな競技だよなぁ」 京太郎「……運ゲーだからか?」 近江「違う違う、そういうことじゃねえよ」 近江「言い方が悪かったな……人間を悪に染める競技、ってことだ」 近江「普段は温厚な奴が、麻雀やってると怒りっぽくなったり」 近江「他人のためにいろいろやれる人間が、麻雀をやるとマナー悪く他者を貶し始めたり」 近江「虫も殺せない奴が、他人を低く見て侮ったり。負けてりゃ不機嫌。勝ったら聞きたくもねえ自分の麻雀理論を語り始めたり」 近江「初心者がいると勝てねえとか言うやつもいるな……自分よりも圧倒的に強いやつがいても勝てねえくせにな」 近江「そういう奴が欲しいのは自分よりも少し弱いやつなんだ。勝ちてえから、そんなクズみてえになる」 近江「俺は麻雀が嫌いだぜ? だから麻雀やってる奴を潰して、競技人口を減らし、この世から麻雀を消してやろうと思ってる」 すでに、京太郎と近江以外の2人は精神を壊されている。 近江「だから、負けてくれや。俺は全国へ行ってたくさんの選手を潰す必要がある」 京太郎「……いい夢だな。応援してえよ」 京太郎「色んな俺が、みんな口を揃えて同じことを言うんだ」 京太郎「『たとえ負けても、俺は麻雀が好きだ』『才能はねーかもしれねーけど、麻雀を打つのが好きなんだ』 京太郎「『嫌いって言ったけど、やっぱり俺……麻雀のことを忘れられない。俺、こんなにも麻雀が好きだったんだ』 京太郎「『麻雀が好きなんだ』『麻雀が好きだ』『麻雀が好き』『麻雀が好き』『麻雀が好き』」 京太郎「いろんな世界の俺――みんな『麻雀が好き』としか言わない」 京太郎「気持ち悪かった」 京太郎「麻雀が嫌いだとは言えない空気」 京太郎「たとえ嫌いになっても、最後には好きになるという収束感」 京太郎「麻雀が好きじゃないといけない、みたいな強制感」 京太郎「たとえどんな理不尽なことが起こっても麻雀を好きと言わないといけないという押しつけ感」 京太郎「『麻雀が好き』というセリフで誰かを惚れされないといけないという展開の束縛感」 京太郎「麻雀を嫌っちゃいけないのか?」 京太郎「永遠に一生、嫌いなままで麻雀を続けたらいけないのか?」 京太郎「麻雀が嫌いな俺には生きる価値がないのか?」 京太郎「ずっと、そうやって生きてきた」 京太郎「だからお前の行為を否定しない」 京太郎「だからといって、理解もしない」 京太郎「お前を更生される言葉なんて俺には思いつかない」 京太郎「お前を更生されるような劇的な過去、俺にはない」 京太郎「ただ俺は、全国に行きたいからお前を倒す」 ……… …… … 京太郎「ツモ! 字一色!」 近江「この俺がああああああ??」 京太郎「ついに来た……! 全国の舞台、東京!」 千歳「へえ……君が長野代表かい?」 京太郎「誰だ??」 本藤「て、てめえは……インハイチャンピオン千歳真!」 京太郎「インハイ……チャンピオン」 千歳「ねえ、一局打とうよ」 京太郎「出場校どうしは打てない決まりじゃ……」 千歳「いいんだよあんなルール。あんなのはただのオカルト持ちが勝ちやすくなるようにするためにできたルールだ。従う必要はない」 京太郎「だけど」 本藤「いや、やっておけ、須賀。一度体験しておいた方がいい」 本藤「インハイ史上、『最弱』のチャンピオンと呼ばれたやつの打ち方を」 京太郎「最……弱?」 京太郎vs千歳 京太郎「勝ってしまった……!」 千歳「ふー強いね須賀君。……悔しいな。でも」 千歳「麻雀って楽しいな!」 京太郎「……負けたのに楽しいのかよ」 千歳「そりゃ、勝ったり負けたりするのが麻雀じゃないか」 千歳「勝ってるときだけ『楽しい!』って言って、負けてるときだけ『麻雀はクソゲー』とか言うやつもいるけど」 千歳「そういうやつは麻雀を楽しんでるんじゃない」 京太郎「……じゃあ、何を楽しんでるんだ」 千歳「そういうやつらが楽しんでるのはね、勝つことだよ。勝つことを楽しんでるんだ」 京太郎「いったいこの世に、お前が言う意味で麻雀を楽しんでる奴は何人いるんだろうな」 千歳「さあね。ま、君との再戦、楽しみにしてるよ」 そう言うと千歳は去っていった。 本藤「千歳真……。やつの全対局の連対率は三割を切る」 京太郎「それなのにどうやってインハイチャンピオンに……?」 本藤「やつには、ここぞというときに必ず勝つ魔力がある」 本藤「……逆に負けてもいい場面は必ずと言っていいほど負ける。手を抜いているわけではなく、そういう風になってるんだ」 京太郎「だから……『最弱のインハイチャンピオン』」 全国一回戦。先鋒。 八坂「よろしく」 霊山「よろしく」 八坂「(アイドル雀士、霊山祥哉……。あいつの力は……)」 オーラス。 モブ 140000 八坂 130000 モブ 130000 霊山 0 八坂「(宮永顔負けの得点調整力……!)」 咲のプラマイゼロは29600~30500点という幅がある。もちろんこれを狙ってやるのは十分化け物じみているが……。 八坂「(こいつは、本当の意味で0点……。幅はない、少しでも間違えたらトビ終了だ)」 霊山「さーて、0点完成。反撃といきますか」 彼がアイドル雀士と呼ばれる理由は顔の良さだけではない。 0点からの逆転という華やかさ。 これが観客を惹きつけるのだ。 霊山「親は俺だ。まずは天和」 八坂「くっ」 それが霊山の力。一度0点になると最強の力を発揮する。 霊山「リーチ」 霊山「ツモ。12000オール」 八坂「(……強い! この状態になった霊山は上崎にも匹敵する!)」 あの日、麻雀をやめることを決めた日を思い出す。 憧れであり、自分の目標だった小鍛治さんが始めて負けた日のこと。 決勝は9番勝負だった。 そのとき卓にいたのは、永世七冠「小鍛治健夜」。 世界ランキング一位「ライアン・グリーン」。役満率一割越え、役満のクイーン「雪蘭」。 そうそうたるメンバーの中に異彩を放つ存在がいた。 当時、六歳の少年「上崎永楽」だった。 その9番勝負は、たった5戦目で終わってしまったけど、対局時間は過去最長だった。 親である上崎がテンパイし続け、それ以外の三人がノーテン罰符を払い続けることを25回×5局し続けたのだ。 上崎「牌の神様を殺したから」 インタビューでそう答えた上崎を見て、八坂は麻雀をやめた。 八坂「……だけど、決めた」 八坂「上崎を、倒すことを」 八坂「だから、こんなところで立ち止まれねえ!」 ……… …… … 八坂「ロン! 12000!」 霊山「ぐはあああああ」 決勝、オーラス。 千歳「こ、このボクがこんな大切な場面で負けるなんて」 京太郎「悪いな……俺にはこいつがいる」 首から下げたチェーンの先に、一萬がつけられていた。 京太郎「もう一度、会うと決めたんだ」 ――おめでと、きょーにぃ。 京太郎「!」 「紅」べに色の花。あでやかな花。転じて、花のような女性。 「姜」美しい娘。美女。 「生」生きていること。 「紅生姜」とは、生きている美しい少女のこと。 つまり、「紅生姜のない」は、美しい少女が死んだことを表す。 つまり、みなもの死。 「牛」で思い出すのは、牽牛――つまり、彦星だ。 「丼」の「真ん中の点」は清い水の溜まった様子。 牽牛が俺で、清い水が天の川。紅生姜がみなも。 この物語は、七夕伝説と同じだ。 天の川の向こうにいるみなもには、会えない。 京太郎「でも、やっぱりいたんだ」 直接触れ合えなくても、俺のことを見ている。 天の川の向こうで、確かに。 京太郎とみなもの物語は、一言で言うと。 京太郎「紅生姜のない牛丼屋――か」 カン!
https://w.atwiki.jp/sangamaki/pages/30.html
. 咏「うーっす」 憩「あれ、京太郎くんは?」 咏「なんかクラス委員の仕事で先生に呼ばれてたぜぃ」 霞「今日は部活休むって」 憩「そうなんや……」 【照の場合】 照(今日は京いないのか……) 照(な、なんというくだらないギャグを思いついてしまったんだ) 照(私は天才なのか?) 照(……なんだかつまらないな) 照「ロン、32000」 【エイスリンの場合】 エイスリン(キョウタロークンガイナイ……) エイスリン(オイツクchance!ガンバル!) エイスリン(キョウタロークン、オドロク!) エイスリン(エイ!エイ!オー!)トン 照「ロン、32000」 【郁乃の場合】 郁乃「ちょっと失礼するわ~」 郁乃(気になるから京太郎くんツケよ~) 郁乃(あれ、でもどこにおるんやったっけ~?) 郁乃(…………) 郁乃(飽きたし、おトイレ行こ~) 【憩の場合】 憩(京太郎くんいないんか……) 憩(あれ、そういえば京太郎くんの担任の先生って女の人やなかったっけ) 憩(ひょっとして……) 京太郎『先生、用事って何ですか?』 先生『来たな、須賀、いや京太郎きゅん!』 先生『私を満足させてー!』バサッ 憩(い、いやや!そんなん絶対嫌や!) 憩(京太郎くんが誰かに取られるなんて……) 憩(興奮するわ……)ジュッ 照「次、憩の番」 【咏の場合】 咏(ったく、なんなんだよアイツは~!) 咏(せっかく帰りにあの喫茶店に誘おうと思ったのによ) 咏(ほんっと、いっつも真面目だよな、アイツ) 咏(はぁ……憧にまた相談してみるかねぃ) 【霞の場合】 先生「オラ須賀ァ!とっとと運びやがれ!」 先生「このウスノロ!」 京太郎「は、はいっ!」 霞(あらあら、大変そうね) 霞(京太郎くん、意外と体力あるのね……今度、雑用任せてみようかしら)
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2291.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357370912/ 私は暗い部屋に呼び出され一つの御遣いを賜った。 今神代家は危機に瀕している。 その解決策として私が出向く事となった。 ですが、それはあまりにも人道に悖ること。 一筋縄では済まない、罪の意識を背負って人生を歩む事を強いられる。 その中の一人として私が使者として呼ばれたのです…… 「失礼致します。」 「来たか……」 「それでご用件は……」 「姫様のことについてだが……」 「上の協議の結果、ある結論に到った。」 「五年前の時と同じ方法で祓う。」 「! ですが、既に出来る者が……」 「そうだ、今ここに出来る人物はいない、だが飽くまで『ここには』だ。」 「……あの男の息子も15になった、もう十分に大人だ。」 「本家を守る為にもあの少年の力を貸りる。」 「指し当たってお前にはあやつの説得をしてもらうぞ。」 「……何故、私なのですか。」 「六女仙の中であの少年と仲が良かったのはお前だろう。」 「姫様は動けるわけが無い上に、姫様自体この方法に反対するはずだ。」 「……あとはわかるな、霞。」 「……はい、わかりました、御爺様。」 今更どの面さげてあの子に会いに行けば良いのでしょう。 確かに私達が仲が良かったとは言え、それは飽くまで5年前迄の話。 5年前起きた出来事と私達がしてきた仕打ちのことを知れば溜息も出る。 あの子達親子が私達に抱くものを考慮して説得するのがどれだけ無理難題な事なのか。 御歴々には分からない事なのでしょう。 私とて小蒔ちゃんには死んでほしくない。 だがそのためにあの子に「小蒔ちゃんの身代わりになってくれ」とどうして言えようか。 私はやり切れない感情を捨て切れないまま、長野へ飛んだ。 ――清澄―― 京太郎「何か久し振りの部活って感じだー。」 咲「インターハイ終わってやっと帰ってきたって気分だよ。」 京太郎「部室の扉を開けてあげましょう。」 咲「うむ、苦しゅうない。」 京太郎「ようこそお姫様……あっ」 咲「誰がお姫様か、あと「あっ」てなにさ。」 京太郎「ハハハ、わりーわりー、気にすんな。」 京太郎(何か、昔の癖が出ちまったな……) ――長野―― インターホンを鳴らして家人が出てくるのを待つ。 久しぶりに会う人だが疎遠になってしまっていたので緊張する。 緊張する理由はそれだけではないのだけれど…… やがて訪問宅の扉が開き、懐かしい顔と対面する。 「はい。」 「お久しぶりです、おば様。」 「……なにしに来たの?」 おば様が私の顔を見るなり纏った空気が強張った。 明らかな怪訝な顔付きに、緊張した空気がより一層張り詰める。 「……本日はお願いにやって参りました、主におば様のご子息にですが。」 「帰って。」 おば様の表情が途端に変わり、憎悪の視線が私に刺さる。 覚悟はしていた、罵られるのも蔑まれるのも。 それでもここで引き下がるわけには行かない。 「お願いです、話だけでも……」 「帰って! 私から旦那を奪ってその上一人息子まで奪うつもり!?」 「その件に関しては申し訳ありませんでした……ですが今は事態が事態なのです。」 「ですから、何卒お力添えを……」 「帰って……帰って頂戴、これ以上私から大切なものを奪おうとしないで……」 最後にそう言ったあと、おば様は扉を閉めた。 こうなったら直接あの子の元に行くしかない。 確か清澄高校に通っているはず…… 清澄といえば私達がインターハイで対局した相手校よね。 麻雀部に顔を出して少し手を貸してもらおうかしら…… 説得に成功する可能性を考えると藁にも縋る気持ちだった。 ――清澄高校・麻雀部―― まこ「さーて、心機一転部活始めとするかのう。」 優希「うー、だるだるだじぇー……おい犬ー、ダコスーダコスをくれー……」 京太郎「お婆ちゃん、タコスはさっき食べたばかりでしょう?」 優希「はて、そうだったかのう、爺さんや。」 そんな下らないやりとりをしていると 突如部室内にノックの音が響き渡る。 扉が開き、見覚えのある一人の女性が入ってきた。 霞「こんにちは、失礼するわね。」 まこ「あんた、確か鹿児島の……」 霞「はい、永水女子の石戸霞です、今日はお願いにやってきました。」 京太郎「…………!」 咲「ひっ……」 和「? どうかしましたか? 咲さん。」 咲「……ううん、なんでもないよ、和ちゃん。」 京太郎「あ、お茶葉切れてるみたいなんで、ちょっと俺買出しに行って来ます。」 まこ「……おう、行ってきんさい。」 優希「いぬー! ついでにタコスも買って来ーい!」 咲(京ちゃん……行っちゃった……) 咲(さっき、一瞬……ほんの一瞬だけど……京ちゃんが、今まで見たことないくらい恐い顔をしてた……) まこ「で、遠路はるばる鹿児島からやってきた理由はなんじゃい?」 霞「ええ、実は人を捜しているのよ。」 石戸さんが懐から一枚の写真を出した。 そこには複数人の女の子と1人の男の子が写っている。 どこか見覚えがある面々の中で一人だけ浮いた男の子は、黒髪ではあるが、正しく京ちゃんだった。 霞「この男の子を捜しているんだけど、誰か心当たりはないかしら?」 まこ「うーん、さぁのう?」 咲「あの、石戸さん?」 霞「何かしら? もしかしてこの子に心当たりがあるのかしら?」 咲「……いえ、その……この男の子を捜し出してどうするつもりなんですか?」 霞「……御家の関係もあって詳しくは言えないけど、鹿児島に一緒に来てもらうわ。」 優希「そういや名前はなんていうんだじぇ?」 霞「名前は須賀、須賀京太郎よ。」 優希・和「「え!?」」 久「あら、うちの須賀君と同じ名前ね。」 咲「部長……どうして……」 久「今、学生議会の仕事を終えてきたばかりなのよー。」 霞「それじゃさっきの男子が京太郎君ってことなのかしら?」 まこ「……まぁ、そういうことになるのう。」 霞「……京太郎君を借りてもいいかしら? こちらとしてもそれなりに便宜は図るわ。」 久「別に構わないわよ。」 咲「部長!?」 まこ「久、お前、京太郎にも聞かずに勝手に決めおって……」 久「あら別にいいじゃない、須賀君をちょっと貸すだけなんだし。」 霞「…………」 咲「でも京ちゃんが首を縦に振らなかったら……」 久「行かせるわ、恩を売っておくことは部にとってプラスになることだしね。」 咲「でも……」 久「これは部長としての最後の仕事よ、あなた達にはこれからがあるんですもの。」 霞「……では私はこれから本人に聞いてくるわ。」 優希「……行っちゃったじょ。」 まこ「…………」 優希「染谷先輩、戸棚なんて開けてどうしたんだじぇ?」 まこ「うん? いやちょっと確認をのう。」 まこ「……なんじゃ、やっぱりお茶葉は切れておらんかったか。」 京太郎「…………」 霞「捜したわよ、久しぶりね、京太郎君。」 京太郎「……お久しぶりです、霞さん。」 霞「金髪にしたのね、最初は京太郎君だと気付けなかったわ。」 京太郎「……それで、今更俺に何のようですか?」 霞「……単刀直入に言わせてもらうわ、私と一緒に鹿児島へ来て。」 京太郎「……俺らはもうそっちとは関係ないはずでしょう?」 霞「……そうも言ってられないくらいこちらは危機的状況なの。」 霞「このままだと、神代本家……いえ、霧島全体が危ういわ。」 霞「だから貴方に、助けて欲しいの。」 京太郎「……んな……」 霞「お願い、貴方の力が必要なの。」 京太郎「ふざけんな!! そっちがしてきたこと忘れたとは言わせねぇぞ!?」 霞「…………」 京太郎「あんたらが俺の親父見殺しにして! 恐くなって俺ら一家を追出したくせに今度は助けてくれだぁ!?」 京太郎「ざけんな! 虫が良すぎんだろうが!!」 霞「そう、そうよね……今更、虫の良すぎる話よね……」 霞「でも、その狙われてるのが小蒔ちゃんだと聞いたら貴方はどうする……?」 京太郎「!……どうもしませんよ……俺は、聖人君子でも何でもないんです。」 京太郎「追出された俺たちが今更あなた方を助ける義務も義理も無い……」 霞「それともう一つ、姫様を狙っているのはおじ様を喰い殺した、あの化け物よ。」 京太郎「っ!……むかつくぜ……!」 霞「恨んでくれても、殴られても構わないわ……私たちはそれほどのことをしたもの。」 霞「それを承知の上で小蒔ちゃんを助けて欲しいの。」 霞「神職に携わる人間としてでも、分家の人間としてでもなく、小蒔ちゃんの友人として……」 京太郎「……少し時間をください。」 霞「……わかったわ、あまりに急なことだし、今後の事も含めて考える時間は必要よね……」 霞「……ちなみに部長さんには既に了承を貰っているわ。」 京太郎「……搦め手ですか、貴女らしくもない。」 霞「それほど切羽詰ってるの……」 京太郎「……あまり良い返答は期待しないで下さいよ。」 霞「……でも、それでも私は待ち続けるわ。」 霞「貴方が来るまで……小蒔ちゃんのために……」 京太郎「…………」 ――須賀家―― 京太郎「ただいま。」 京太郎母「……おかえり。」 京太郎「もしかして、霞さん、家にも来たのか?」 京太郎母「そうよ、あんたどうするつもり?」 京太郎「……わからねぇよ。」 京太郎母「私は鹿児島に戻るのは反対だからね……」 京太郎「……そんなの分かってるよ。」 京太郎母「……ごはん出来てるわよ。」 京太郎「ああ、わかった、食ったら寝るよ。」 京太郎母「……そう、それがいいわね、このことはさっさと寝て忘れちゃいなさい。」 飯を食い終わったあとベッドに横たわり、身の回りのことについて整理した。 鹿児島から昔馴染みの霞さんがやってきて、姫様が危険だからと俺を呼び戻しにきた。 部長には既に話は通っていて了承済み。 姫様を狙っている相手は俺の親父の仇。 親父は糞爺共の命令で一人で行った。 その結果、相手に手傷を負わせ、何とか一時的に祓う事は出来たが、親父はそのときに死んでいる。 お袋は先代の時の元六女仙の一人だが、祟りや須賀の力を 危険視した爺共が下したあまりの仕打ちに、俺を連れて長野に越した。 まだ中学に上がる前の俺は、何の事情も聞かされずに長野に移り住んだ事に不思議だった事を今でも覚えている。 そのあとお袋にことの成り行きを聞かされ、本家とか因習というものはあまり好きではない単語になった。 頭の中で整理してもどうすれば良いか分からず、思考はぐるぐると迷い回る。 そのうちいつの間にか俺は、目蓋の重さによって眠りに落ちていた。 『京太郎くん、遊びましょう!』 『あ、姫様、いいけどどこで遊ぶ?』 『京太郎くんのお部屋がいいです。』 『わかったよ、ちょっと散らかってるけど文句は言わないでよ。』 『文句なんて言いません!』 『それでは……』 『俺の部屋へようこそ、"お姫様"』 はっとして起きる。 幼少の頃の思い出だ。 忘れたいと思っていた過去が、思い出が追いかけてきた。 そんな錯覚すら覚える夢の内容。 "くだらない"と、"切り捨てたものだ"と、そう思っていた。 それでも過去はやってきた、過去から逃げる事は出来ず、今も「まだかまだか」と俺を執拗に付回す。 どうやっても自分が生きてきた道程は、無かった事には出来ない。 「因縁ってものは、切っても切れないものなんだな……」 「"大切な仲間や家族を護るのが使命"か……それが俺達一族なんだもんな……なぁ親父……」 多分、鹿児島に行ったら長野にはもう戻って来れない。 今の内に身の回りの整理をしておこうと思った。 京太郎「よし、これでいいか。」 京太郎母「何がいいの?」 京太郎「ああ、お袋……俺行くよ、鹿児島に。」 京太郎母「あんた最大の親不孝者だね、いやこれからなるのか。」 京太郎「悪いとは思ってるよ。」 京太郎母「思っているなら鹿児島には行くな。」 京太郎「……鹿児島に戻るのは俺個人の感情だよ、決して分家とか本家とかじゃない。」 京太郎「それに、親父の仇討ちでもあるんだ。」 京太郎母「わかったよ……あんた頑固になったね、まったく誰に似たんだか……」 京太郎「ごめん、お袋。」 京太郎母「さっさとご飯食って学校行きなさい、荷物は私が纏めといてあげるから。」 京太郎「ああ、わかったよ。」 京太郎「その前に電話掛けとく。」 京太郎「もしもし、霞さん?」 霞『はい、京太郎君ね。』 京太郎「鹿児島行きの話、受けます。」 霞『そう、受けてくれるのね。』 京太郎「ええ、学校に顔出したら直ぐに支度しますんで。」 霞『では飛行機のチケット手配しておくわ。』 京太郎「お願いします。」 霞『京太郎君……ありがとう、そしてごめんなさい。』 京太郎「俺は自分の都合で鹿児島に行くだけです、霞さんに言われたからじゃありません。」 京太郎「それでは。」 学校まで行き、職員室で担任と少しばかり話して書類に少しばかり署名をした。 放課後になり、部室に顔を出す。 部室には既に染谷先輩と部長がいた。 京太郎「こんちわー」 久「あら、こんにちは須賀君。」 京太郎「部長、鹿児島の話なんですが。」 久「ええ、石戸さんから聞いたのね、もう聞いているとは思うけど須賀君には鹿児島に出向いてもらうわ。」 京太郎「そうですか、ではこれを。」 懐から退部届けを出した。 先程書いていた書類はこれである。 まこ「なんのつもりじゃ、京太郎?」 久「……須賀君、これ、どういうことなの?」 京太郎「鹿児島に行くという事は、俺が清澄から『転校』する可能性があるってことです。」 久「ちょっと……そんな事聞いてないわよ!?」 京太郎「でしょうね、霞さんが素直に言うわけが無い。」 京太郎「霞さんなんて言ってましたか?」 久「ただ須賀君を借りたいとしか言ってないわ。」 京太郎「あの人が一言でも『返す』なんていいましたか?」 久「っ!……石戸さん……とんだ食わせ者ね……」 京太郎「まぁ、飽くまで『転校』する可能性があるだけです。」 京太郎「だから退部届けだけ部長に渡しておきます。」 久「そう、わかったわ、でも『預かる』だけよ?」 京太郎「ご自由に、それでは俺は鹿児島に向かいますんで。」 まこ「京太郎。」 京太郎「はい、なんですか?」 まこ「咲達にはもう言ったのか?」 京太郎「……大丈夫ですよ『転校』するときはちゃんと咲達には言いますから。」 京太郎「……短い間ですが今までお世話になりました。」 京太郎「さようなら。」 まこ「…………」 久「…………」 まこ「……のう、久。」 久「私のせいかしら……」 まこ「さてのう、そんなことわからんよ。」 久「はぁ……」 俺は迎えに来た母親の車に乗って空港まで向かい、霞さんと合流したあと鹿児島行きの飛行機に乗った。 霞「こんな事に巻き込んでごめんなさい。」 京太郎「いいですよ、最終的には俺が決めたことですし、それに部長達には挨拶は済ませましたから。」 霞「許されたくて言うわけじゃないけど……事が終わったら、貴方の言う事なら何だってしてあげるわ。」 京太郎「"事が終わったら"ですか、そのとき俺はどうなっているんでしょうね……」 霞「あ……ごめんなさい、無神経な発言だったわ。」 京太郎「いえ、気にしないで下さい。」 霞「…………」 それから鹿児島に着くまでは重たい沈黙の中、一切話すこともせず、本家へと歩を進める。 神代家の敷居を跨ぐなんていつ振りだろうか。 もうこの門を潜るの事なんてないと思っていたのに。 妙な郷愁感を抱きつつ敷居を跨ごうとしたら掛け声と共に俺の体へと何かが衝突してきた。 「お久しぶりです! 京太郎君!」 「うおっ!? ……お久しぶりです、姫様。」 姫様、おもちがあたってます、今まで冷静でシリアスモードの 京太郎君の京太郎君がおかしな方向に向かっちゃうので離れてください。 絶対俺のおもち好きは霞さんとお姫様のせいだ、うん、そうに違いない。 そんな誰に言ってるかもわからない言い訳をしてる最中に矢継ぎ早に声を掛けられる。 「お久しぶりなのですよー」 「久しぶり、京太郎。」 「お久しぶりです初美さん、巴さん。」 小柄な体躯でだらしなく巫女服を着ているのは薄墨初美さん。 眼鏡を掛けた赤髪の人は狩宿巴さん。 信じられない事に(主に初美さんの方だが)二人とも俺より二つ年上である。 最後の一人に黒糖を齧りながら現れる女がいた。 「ん、久しぶり。」 「おう、久しぶりだな、春。」 こいつは少し離れた親戚(と言ってもここにいる全員は漏れなく親戚なのだが)の滝見春。 一番血筋と歳が近いはずなのに何考えてるか一番分からん奴だ。 「すまないな、京太郎君……」 「おじさん……」 中年の男性が出て来て申し訳なさそうな顔をしながら俺に声を掛けてきた。 お姫様の父親だ。 京太郎「祓う側の尻拭いは任せてください。」 自分では冗談っぽく言ったつもりだが、姫様以外には苦笑い物だったらしい。 と言うより姫様以外は全員顔に暗い影を落としていた。 知らぬは当事者の姫様のみ、ってところか…… おじさんに中に入るよう促がされ、大きな屋敷の一室に通される。 二人きりになりおじさんは少し間が空いたあと、苦々しい顔をしながら口を開いた。 小蒔父「すまないね、こんな事に巻き込んでしまって。」 京太郎「……須賀家の宿命みたいなものですから。」 京太郎「逃げられるものでもないですよ。」 小蒔父「君たちがされた仕打ちを考えたらこんな事頼める立場ではないが……」 小蒔父「君に小蒔を護って貰いたい……」 京太郎「……ええ、分かっています。」 小蒔父「……私は、我が子可愛さに君に犠牲に成ってもらおうとしている。」 小蒔父「君のお父さんの件についても……」 小蒔父「私は……最低な大人だ……」 京太郎「…………」 小蒔父「それでも私は……一人の父親として小蒔には生きていて欲しい……」 京太郎「別におじさんたちに想う事が無いとは言いませんが、親父はみんなを守るために動いた。」 京太郎「それに本家とか分家とかは好きではないですけど、おじさんがやらせたわけじゃないし、姫様も関係ない。」 小蒔父「でも、それでは君の気持ちは晴れないんじゃないのかね?」 京太郎「……もし怒りをぶつけるとしたら爺共と親父の仇に対してですよ。」 京太郎「どうせ今回、俺を呼ぶように考えたのも、奥に引篭もって偉そうに踏ん反り返ってる糞爺共でしょう?」 小蒔父「気持ちはわかるが、あまりそういう言い方は感心出来ないな……」 京太郎「っと、失礼しました。」 京太郎「とりあえず、化け物退治の方法でも考えますよ。」 小蒔父「そうか、こういう知識は君たちの方があるだろうから、そこは君たちに任せるよ、必要なものがあるなら言ってくれ。」 そう言っておじさんは部屋を出て行った。 多分、俺は生きては帰って来れないかもしれない。 少なくとも、俺自身ただではすまない。 親父が手傷を負わせたとはいえ、相手はとてつもない化け物なのだ。 ものの数分も経つと、巴さんと春がおじさんに連れられてやってきた。 この狩宿家と滝見家の二人と須賀家の俺は、所謂祓う側の人間だ。 と言っても各々の家は役割が違うし、何より須賀家は代々、祓う側の中でも少々特殊なのだが…… 巴「早速だけど、京太郎君、どうやるか決まってる?」 春「やりかたによっては必要なものが変わる……」 京太郎「八つ門で奴を祓おうと考えています。」 小蒔父「八位門、あそこか……」 京太郎「内容を簡単に言うと。」 京太郎「八つ門の一つを開けておいて俺と奴が入ったら門を閉めてください。」 京太郎「そのあと、各門の周りにお酒を撒いて札を貼ってください、そこからあとは俺がやります。」 春「そんなことしたら京太郎も一緒に閉じ込められる……」 京太郎「ああ、そうだよ。」 京太郎「そのあとは内側からもお札を貼って二重に結界を張る。」 京太郎「それが須賀のやり方だ。」 それだけ言うと周りが意味を察したのか、空気が少し変わった。 小蒔父「…………」 巴「……京太郎君、何か入用な物ってある?」 春「私たちはサポートしか出来ないけど……」 京太郎「サポートだけで十分。」 京太郎「巴さん、清めの酒とお札をお願いします。」 巴「直ぐ用意するね。」 京太郎「春には仕事用の剣を頼めるか?」 春「わかった。」 小蒔父「私に出来る事はないかね?」 京太郎「……では、女物の服……白無垢がいいか、それと玉串とかを用意してもらえますか。」 小蒔父「何に使うかは知らないが揃えておこう。」 これでいいのか、これでいいんだ。 これからやる事に、皆に少しは巻き込まれて貰おう。 どうせ貧乏くじ引かされたのは俺なんだ、少しわがまま言って皆に動いてもらっても罰は当たらないだろう。 春と巴さんが戻ってきた。 どうやら明日までには用意できるらしい。 小蒔「何をしてるんですか?」 初美「あ、姫様、今の隣の部屋の会話を聞いているんですよー。」 霞「初美ちゃん……なんでそんなことしてるの……」 初美「えー、だって気になりませんかー?」 初美「私たち"降ろす側"は"祓う側"のやってる事を知らないんですよー?」 霞(そうだったわ、初美ちゃんや小蒔ちゃんは知らないのね。) 霞(私は事前に聞かされていて知っていたけれど、この二人には聞かせない方がいいんじゃないかしら……) 霞「ちょっと、盗み聞きなんて行儀が良くないわよ。」 初美「ちょっとだけですよー。」 初美「ほら、姫様も。」 小蒔「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ、ちょっとだけですよ……」 霞「小蒔ちゃんまで……んもう!」 小蒔父「言われた物は粗方揃ったみたいだね。」 小蒔父「それで他になにかあるかい?」 京太郎「……では、準備が整ったら姫様との婚礼の儀を執り行わさせてください。」 小蒔「え!? えー!?」 霞「しっ、小蒔ちゃん、静かに。」 初美「バレちゃうですよー。」 小蒔「ごめんなさい……」 小蒔父「それで玉串や白無垢を用意させたのかね……」 小蒔父「……だが、君の年では結婚は出来ないだろうに。」 京太郎「ええ、ですから形だけで良いんです。」 京太郎「少しでも作戦を成功する確率を上げるためにも。」 初美「どういうことですかー?」ボソボソ 霞「……多分、神様の前で縁を取り持ってもらい、お酒を飲むことによって神様のお力添えをしてもらうつもりなのね。」 霞「婚礼で使う玉串も神様の依代とされているのよ。」 霞「お酒は神様との交流の手段でもあるわ、特にお神酒とかは神様の霊力が宿っているから。」 初美「あー、そういうことですかー。」 京太郎「そのあと姫様が着た白無垢を頂いてもいいですか?」 小蒔父「白無垢なんて使って何をするつもりだね?」 京太郎「相手を油断させやすくするためですよ。」 おじさんとの話が終わったところで、一度向き直り、やや大きい声を出す。 京太郎「と、言う事で良いですか? 姫様。」 小蒔「ひゃい!?」 初美「……どうやらバレてたみたいですよー。」 霞「久しぶりだったから忘れてたわ……須賀家の人はこういうのには妙に鋭いのよね……」 3人がおずおずと部屋に入って来た。 姫様が俺の顔とおじさんの顔を交互に見やり、口を開く。 小蒔「あの、あの……本当にやるんですか……?」 京太郎「形だけでいいので、付き合ってもらえませんか?」 京太郎「俺が嫌なら仕方ないですけど。」 小蒔「い、いえ、そういうことではないんですが……」 小蒔父「小蒔、精々白無垢を着て三献の儀(三々九度のお酒)をするだけだ、付き合ってあげなさい。」 小蒔「あ、は、はい、わかりました。」 おじさんが何かを思い出したように俺の傍にやってくると、軽く耳打ちした。 小蒔父「……そうだ、もし、御歴々に復讐したいと思っても意味のないことだと思うよ。」 京太郎「?……どういうことですか?」 小蒔父「人が許されざる道を選んだときは勝手に自滅の道を選ぶものなのさ。」 小蒔父「まぁその前に老い先短いのだからお迎えが来るだろうがね。」 何となくおじさんも爺共の姿勢が嫌いなのはわかった。 こっち側の人間という事がわかって少し嬉しい。 そしていよいよ、神前で婚礼の儀をしたのだが、緊張していて、あまり覚えていない。 それは小蒔ちゃんや斎主をやったおじさんも同じだったようだ。 小蒔ちゃんは巫女だし、おじさんは神主だからこういうことは慣れているはずだろうに…… 俺の記憶にあるのは三々九度のお酒を飲んだくらいか…… もうやる事はやった、これから根の国へ向かうカウントダウンが始まるだろう。 逃げられないし、逃げる気もない。 独り、昔懐かしい場所で気持ちを固めていたら、横から声を掛けられた。 霞「京太郎君、少し良いかしら。」 京太郎「構いませんよ。」 霞「……いつ、出るの?」 刺さる視線と共に、短く、そう聞かれた。 京太郎「お酒が抜けたら、着替えて八つ門へ向かいます。」 霞「そう……」 短く返され沈黙が続く。 ふとお酒を飲んでいた小蒔ちゃんが気になった。 京太郎「霞さん、お姫様はどうしていますか?」 霞「小蒔ちゃんはお酒を飲んだせいか寝ているわ。」 京太郎「そうですか。」 京太郎「……それでは霞さん、さようなら。」 霞「ええ、さようなら……」 霞「……さようなら、か。」 彼は覚悟していたのだろう、これが今生の別れになるかもしれないと。 それが自分の、延いては須賀家の歴史が終わるとわかりながら、宿命を受け入れたのだ。 霞「京太郎君はおじ様と同じ道を辿るのよね……」 小蒔「え……」 霞「!?……小蒔ちゃん……?」 小蒔「どういう……ことですか……?」 小蒔「京太郎君が須賀のおじ様と同じ道を辿るって、どういうことですか……!?」 霞「そ、それは……」 小蒔「須賀のおじ様は数年前に川の氾濫に巻き込まれて亡くなったって……」 小蒔「それでどうして……京太郎君も同じ道を……辿るんですか?」 霞「…………」 迂闊だった、聞かれてしまった。 姫様にこのことが知れたらこうなる事がわかっていたのに…… 霞「わかったわ、簡単にだけど話すから聞いてね……」 小蒔「はい……!」 もうそろそろ、支度をするとしよう。 家から持ってきた鞄から、親父の仕事着を取り出す。 下には純白の括り袴を穿き、上半身には白小袖を。 更にその上から、動きやすいように多少作り変えられた浄衣を着る。 そのあと朱色の指貫のグローブを着けて、用意してもらっていた数枚の御札と剣を携える。 あとは白無垢を被れば準備完了だ。 当の白無垢を取りに行く為、小蒔ちゃんの部屋を訪ねる事にした。 部屋の前で声を掛ける。 少しの間のあと、小蒔ちゃんの声が返ってきた。 何処か暗い声色。 戸を開けると、何故か不機嫌な顔をした小蒔ちゃんと霞さんがいた。 霞さんは俺の顔を見て立ち上がると、近くまで寄ってきて耳打ちした。 霞「ごめんなさい、成り行きとはいえ、少し、小蒔ちゃんに貴方の事を話してしまったわ。」 京太郎「……わかりました。」 そう言ったあと霞さんは部屋を出て行った。 小蒔「霞ちゃんから聞きました、京太郎君、これから危険な所へ行くんですよね……」 どうやら霞さんは小蒔ちゃんに全てを話した訳ではない様だ。 単純に妖魔退治の類だと思ってくれているのだろう。 小蒔ちゃんに咎められない事をほっとしていると小蒔ちゃんが続ける。 小蒔「白無垢がいるんですよね?」 京太郎「ええ、出来れば頂きたいのですが……」 小蒔「そこで待っていてください。」 小蒔「……はい。」 小蒔ちゃんが俺に白無垢を着せてくれた。 そして片手に何か持っていて、それを目の前に差し出してきた。 小蒔「これを、私だと思って持っていってください……」 京太郎「これは、簪?」 小蒔「これが京太郎君を護ってくれることを祈ってます。」 京太郎「櫛の原型、髪に挿すことによって魔を払う、ですか。」 京太郎「有り難く頂いていきます。」 小蒔「必ず……生きて帰ってきてください……」 京太郎「それは……」 小蒔「約束です!」 そういって小蒔ちゃんは、俺の右手を無理矢理取って、小指を絡ませた。 小蒔「ゆーびきーりげーんまーん、嘘吐いたーら針せんぼーん飲ーます、ゆびきった。」 京太郎「死人には、針は飲めませんよ……」 小蒔「京太郎君は死にません!」 京太郎「でも、もし死んだら?」 小蒔「そうしたら私が飲みます。」 京太郎「そんなことしたら姫様が死んじゃいますよ。」 小蒔「……そういう意味です。」 京太郎「俄然、死ねなくなってきましたね……」 小蒔「はい、だから生きて帰ってきてくださいね。」 きっと小蒔ちゃんは察したんだろう、今回のがどれだけ危険なのかを。 もし、祓い切れなかった時は須賀の人間がどうするか、そしてどうなるかを。 最低で道連れ。 最善で生還。 これが目標になる。 京太郎「それでは行って来ます。」 小蒔「いってらっしゃい……」 軽い別れを告げ、決戦場まで足を向ける。 八つ門に辿り着くとそこには既に春と巴さんが待機をしていた。 巴さんも春も何も言わない。 これから起こることが、これから何をするのか大体想像が付いているからだ。 声を掛けないでいるのは信頼の証と思って受け取った。 八つ門の内、一門開いているところから入る。 あとは待つだけだ。 暫くするとなにやら音が聞こえてきた。 川が流れてくるような地を這う音。 傷を負ってか隻眼ではあるが、牛など軽く一飲みしそうな巨躯の大蛇が一門から入ってきた。 その大蛇が語り掛けて来る。 《白無垢を着て花嫁の真似事か?》 《我に嫁入りとは殊勝な心掛けだな……》 大蛇がそうせせら笑う様に言うと一門が閉められた。 蛇は門のことなど意にも介さず続ける。 《だがな、臭う……臭うぞ……》 《どんなにその白装束で誤魔化しても臭う……》 《忌まわしいあの男と同じ血の臭いが!》 「なんだ、バレてたのか、小細工って案外通用しないものだな。」 白無垢を脱ぎ捨てて剣を構える。 門に貼るお札の準備も大丈夫だ。 《この眼の代償は貴様ら一族の血で償ってもらうぞ!》 この世の物とは思えないほどの巨体がうねりながら、その隻眼を以って俺へと照準を定める。 金切り声を発したと思った次の瞬間、その巨大な顎が俺を飲み込もうと大口を開け、禍々しい牙を突き立てようとしていた。 攻撃を寸での所で右へ左へ身を躱しながら門にお札を貼る。 これで第一目標はクリアだ。 大蛇はその巨大な尾を以って叩きつけようとしてくる。 なんとかフェイントを入れながら横っ飛びに転がって回避する。 当たったら堪ったものじゃないだろう、その証拠に叩きつけられた石畳の床が捲れている。 尾や噛み付きに因る攻撃を躱しながらも剣で一太刀、二太刀と切り込んでいく。 その内傷だらけになった蛇が怒号を飛ばす。 《ええい! ちょこまかと煩わしい!》 その声と共に顎と尾の同時攻撃が始まる。 同時となると躱し切れなくなって来る。 このままではいずれ手詰まりになるので、跳躍して落下する勢いで尻尾を切断した――が…… 切断したと同時に剣が折れてしまった。 どうやら硬い何かに刃が当たってしまったようだ。 「やべぇ……!」 剣が折れたことに戸惑っていると蛇の巨体が鞭のように撓り、俺の身体を叩きつける。 とっさに左手で庇ったものの、体が玩具のように吹き飛ばされてしまい、 壁に叩きつけられ、糸の切れた操り人形のように床に落ちる。 どうやら先の攻撃で身体を庇った左手が原型がわからないくらい拉げ、肋骨も何本か折れたようだ。 痛みで動けないでいると大蛇の顎が俺の身体を捕らえる。 《かかかか……どうした? 我の尻尾を切断したくらいで勝利を確信したか?》 この世の不吉全てが籠もっているような瞳で俺をニヤニヤと嘲笑するように覗いている。 《忌々しい血族の生き残りだ……このままじわじわと絞め殺してやろう!》 「ぐあああぁぁ!?」 折れた骨が顎で締め付けられる。 体が軋み、悲鳴を上げる。 《良い鳴き声だ……もっと聞かせて貰いたいな……》 「余裕かましていると……足元掬われるぜ……これでも食らいな!」 勝利を確信し、俺を嬲り殺そうとする蛇の残った片目に髪に挿していた簪を突き刺した。 《ぐおおおぉぉぉ!?》 京太郎「へへっ、目刺しになった気分はどうだ、姫様の櫛は特別効くだろう?」 残った片目を簪で潰された蛇が悲鳴を上げながらのたうつ。 折れた剣を捨て、とある神様を降ろすために目を瞑り、所謂トランス状態になるよう意識をシフトする。 祈るように神降ろしの成功を願う。 その内、どこからともなく頭の中に直接、声が聞こえてきた。 『俺を呼ぶのはお主か? 童(わっぱ)、名はなんと言う……』 「須賀京太郎と申します。」 『して、何のためにこの大蛇と戦う?』 「……可愛い女の子を助ける為というのは駄目でしょうか?」 『くくくく、そうか女子(おなご)のためか……』 『豊穣の稲田を彷彿とさせる頭髪も中々に良い……』 『何より須賀という姓……』 『……気に入った、童に力を貸してやる。』 『そこにある剣を取れ、俺が力を貸すのはこれだけだ。』 『あの蛇を屠れるかどうかはあとは童次第だ、くたばらんようにな。』 「ご助力感謝致します。」 切断した蛇の尾から覗く剣を引き抜き確かめてみる。 錆びてはいるもののやはり親父が持っていた剣だった。 俺が錆びた剣を手に取り、翳(かざ)した途端、剣が様変わりしていく。 今まで実際には見たことの無い剣だったが、どういうものかはわかっている。 京太郎「やっぱり大蛇と言えばこの剣だな……」 京太郎「拾い食いしたら腹壊すってこと、良く覚えておけ!」 京太郎「親父の剣でてめぇに引導渡してやんぜ!」 剣を逆手に取り、巨大な大蛇の脳天に刺す。 今度は剣を順手に持ち替え、引き抜き、そのまま蛇の首を落とし、致命傷を負わせた。 切り落としたあと、蛇の断末魔と恨み言が木霊する。 《ぎゃああぁぁぁぁ!!》 《おのれ……おのれぇ……忌まわしい須賀の血を絶やせなかったのが口惜しや……口惜しや……》 それだけ言って大蛇は毒々しい紫の血の泡となって消えていった…… 役目を終えた親父の剣は、元の錆びた剣に戻り、ぼろぼろに朽ち壊れてしまった。 まずい、意識が朦朧とする…… 蛇から食らった攻撃で満身創痍になっていた身体をなんとか這いずって門の外へと出る。 簪を片手に俺の意識はそこで途切れた。 春ちゃんと巴ちゃんがぼろぼろの京太郎君を担いで戻ってきた。 小蒔ちゃんは酷く狼狽している。 とにかく彼の手当てをして、床に就かせることにした。 今は小蒔ちゃんが彼の傍に付いている。 だけどそろそろ小蒔ちゃんも限界だ。 怪我を負った京太郎君よりも…… 京太郎君の看病をする小蒔ちゃんの様子が痛々しかった。 小蒔ちゃんの手は何度も身体を拭くために水に付けたせいで赤くなり、目の下には濃い隈が出来ている。 もう何日も小蒔ちゃんは寝ていない。 私が小蒔ちゃんに休むように言っても、首を頑として縦に振らない。 京太郎君から離れようとしない。 京太郎君は生きているだけでも奇跡であるくらいの傷を負っていた。 逆を言えば今は小康状態を保っているとはいえ、いつ容体が急変してもおかしくはなかった。 未だに意識を取り戻さない彼に対して、小蒔ちゃんはいつも語りかけている。 「知っていましたか? 京太郎君。」 「私、実は『姫様』って呼ばれるのは好きじゃないんです。」 「周りが私に期待してそれが重圧に感じて……」 「でも、不思議とあなたの『お姫様』は嫌いじゃありませんでした……」 「あなたの呼び方は揶揄う様で、どこか優しくて。」 「でも、どうせなら『小蒔ちゃん』って呼んでくれた方が私は嬉しいです……」 「だから早く元気になってください……」 それを聞いて胸が苦しくなる。 罪悪感が私の胸に圧し掛かる。 これが彼を巻き込んだ私への罰なのかしら…… 「小さい頃はよく皆で遊びましたね……」 「京太郎君は稽古を抜け出していたから怒られていましたけど……」 「川に行って水遊びしたときも楽しかったです……」 「うふふ、あのときは水に流されかけてびっくりしました。」 「今となっては良い思い出ですね……」 「あと、小さい頃といえば……」 そこまで言って小蒔ちゃんの言葉が詰まった。 目には滲む何かがある。 彼と話すことは子供の頃ばかり…… 「なんで……でしょう、今……あなたはここにいるのに……」 「小さい頃のことばかり思い出すのは……」 涙がぽろぽろと零れ落ちている。 やはり小蒔ちゃんも限界だったのね。 女の子を泣かせるなんて、京太郎君も酷い男だわ…… 小蒔ちゃんは涙声で彼に言葉を投げかける。 「急に遠くへ行ってしまって……」 「いきなり戻ってきて……」 「かと思ったら今度は大怪我をして戻ってきて……」 「京太郎君は勝手過ぎます……」 「もう……勝手なことしたらだめですよ……」 「勝手に逝ってしまったら、許しません……」 「絶対に許しませんから……」 小蒔ちゃんが言い終わったとき、微かに彼の眉が動いた。 「うっ……」 「!?」 「……あの神様、やる事が荒っぽいぜ……」 「京太郎君……? 京太郎君!? 京太郎君!」 「へ? 姫様?」 「良かった……意識を取り戻してくれました……」 「本当に良かったです!」 小蒔ちゃんが思わず京太郎君に抱きついていた。 これで一先ず安心できる。 「ぬわぁ!? いっだだだ!? 姫様離れて!? 俺、骨折ってるから!」 「あ、すみません、私ったら……」 「……あーその、姫様にはお世話かけましたみたいで。」 「そんなことありません……私が掛けた迷惑に比べれば……」 「姫様のおかげで、俺は帰って来れたんですよ。」 右手にずっと持っていた簪を差し出し、笑顔で応える。 「多分これがなかったら俺は帰って来れなかった。」 「簪、汚れちゃいましたし、他のを用意しないとですね……」 「怪我が治ったら新しい簪を買いに行きましょう。」 「はい! 一緒に行きましょう!」 「あ、その時はちゃんと私を守ってくださいね?」 「ええ、いいですよ。」 「なんたって俺は……」 「神代の……いや、小蒔ちゃんの守人ですから。」 【京太郎「神代の守人」~蛇殺し編~】 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6179.html
特別編 京太郎は今 「ふー、やれやれ。鶴賀の近くまで来たと思ったら龍門渕に行けとか、竹井先輩も人使い荒いな」 「……しかし和の写真か……どんな格好なんだろうな……また玄さんに送って」ピリリリ 「電話?照さんか。はい、もしもし」 「ええ、はい。じゃあ年末年始はこっちで過ごせるんですね」 「咲も喜んでるでしょう。え?麻雀?いやだなー、せっかくの家族水入らずなんですから、ゆっくりとやってくださいよ」 「あはは。いや、本当勘弁してください。おじさんとどっちが先に飛ぶかということはしたくないんです」 「ああ、そういえばこの前思い出したんですけど、昔結婚するーとか約束してましたよね?」 「ああ、覚えてました?まぁ今となっては俺なんか照さんと釣り合いませんし、無理な話ですよねー。アレ?どうしたんですか?」 「え?なんか涙声っぽいですけど……ああ、そういえばこの前言ってたシュークリームとケーキ、なんとか作れるようになりましたよ」 「ええ、楽しみにしててください。それじゃ」ピッ 「途中で泣いたり、どうしたんだろ」ピローン 「メール?愛宕洋榎さん、新ネタ考えました?」 「…………うわっ、つまんねぇ。面白さとおもちが足りない、っと」 「えっと、後こないだ小蒔さんに送ってもらった鹿児島の地鶏の刺身の写真を付けて、送信っと」 「新ネタってか古いネタじゃねーか。ん?他にもいくつかメール?」 「豊音さんから『シロが炬燵から全く動かないよー』……こたつむり状態の白望さんの写メ……」 「こたつの電源切りましょう、っと」 「阿知賀から穏乃か。『みんなで憧の神社の手伝い!』……巫女服っていいなぁ……でも宥さんはそれでも厚着するのか」 「みんな似合ってるぞ、っと」 「他にメールは」ピリリリ 「また電話?今度は怜さんか」 「もしもし。え?今ですか?今1人ですけど…」 「未来が見えた?俺の見られたくないものが見られてる未来?」 「なんだろ……副会長から押し付けられたロリ物のエロ本か?最近買った参考書表紙ダミーの巨乳巫女物か?」 「それとも友達から借りた先輩物エロゲか……ちょっと和に似た女優の巨乳物DVDか……こっそり撮ってたインハイおもちブロマイドか」 「ああ、はい。ええ、ありがとうございます。気を付けます」 「え?声に出てた?あー……忘れてください」 「へ?病弱娘物?確かハギヨシさんのコレクションから借りたことはありましたけど」 「あの、なんでいきなり『よっしゃ!』とか言ってるんですか?」 「いやまぁ大丈夫ですけど……分かりました。それでは」ピッ 「怜さん大丈夫なのか?それにしても見られたくないものか」 「ま、怜さんが昼寝しながら変な夢でも見たんだろ」 「お、電車来た。さて、早いとこ行ってしまうか」 カンッ!!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5845.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430494916/ 桃子(どうも、東横桃子っす……突然の告白ってどう思うっすか?私は……) 桃子「ウチの高校は駅から遠くて嫌になるっすねー」 桃子(バスは混んでるからむぎゅ……押し潰されるし、こんなときも影の薄さが嫌に、むぐっ) 京太郎「あの、よかったら座りますか?」 桃子(?……ご老人も妊婦さんもいないみたいですけど) 桃子「……もももも、もしかして私に言ってるっすか!?」 京太郎「?ああ、女子でこの混雑は大変でしょ?」 桃子「あ、ありがとうっす!」 桃子(この人、清澄の人っすよね!?私が普通に見えるっすか!?) 桃子「……清澄の麻雀部員さんっすよね?」 京太郎「そうですよ、鶴賀の東横桃子さんでしすよね。須賀京太郎です」 桃子(普通に会話できる!?しかも覚えられてるなんて……) 桃子「た、タメ口でいいっすよ!どうしてこっちに?」 京太郎「実は買い出しで……」 桃子(普通に会話……それに男子となんて、もしかして久しぶりどころか初めてじゃないっすか?) 桃子「あはは、面白いっすね……あ、着いたみたいっす」 京太郎「いつの間にか、なんだか時間が経つのが早く感じるな」 桃子「なんっすかそれ、おじいちゃんの台詞っすよ。本当に京太郎は面白いっすね、それじゃあ」 桃子(本当……こんなに楽しい『普通』、時間が経つの早すぎるっすよ。あーあ、メアドとか聞ければよかったっすねー……もう会えないかも、とか、思っちゃ……) 京太郎「桃子!」 桃子「え、京太郎!?ど、どうしたっすかバス降りるのここじゃ」 桃子(も、もしかして同じようにまた、話したいから連絡先とか思ってくれたり) 京太郎「好きだ!一目惚れした!俺と」 京太郎「付き合ってくれ!」 桃子「え」 桃子「……ええええええええっ!?」 3 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/05/02(土) 01 02 10.11 ID HVcox0U2O [3/11] 桃子「……ッハ!?いつの間にか自分の部屋に」 桃子(そ、そうだ少し考えさせて欲しいっすって言って連絡先だけ、交換して……) 桃子「突然の告白なんてどうしたらいいか分からないっすよー!もー!」 桃子「こういう時、どうすればいいっすか?……そもそも京太郎とは会ったばかりで」 京太郎(美化30パーセント増)『あっはっはっは、おもちおもち』 桃子「そりゃかっこいいし、話してて楽しいし……あれ?断る理由ないっすね?」 桃子「……いやいやいや!そもそも一目惚れって、私のどこが……そうだ!こんな時は友達に相談っす!」 桃子「友達いなかったっす……いや!麻雀部のみんなが私にはいるっす!」 桃子「えーと、ケータイ取りだしポパピプペっと、『私のいいところってどこっすか?』」 桃子「三通しか返ってこなかったっす……」 桃子「妹尾先輩は多分メールに気づいてないっすね……」 睦月『悩みがあるなら相談してほしい』 桃子「違うっすよ津山先輩……そうじゃな、いや、でも悩みではあるっすね」 智美『モモは麻雀が強いなー』 桃子「智美先輩、そうじゃなくてこう外見とか特徴とか……」 加治木『モモは特徴がなくとも、それを逆手にとり武器にする……言うなれば特徴のないことこそが特徴に……』 桃子「それはその通りですけど!うう、どうすれば……余計こんがらがっただけっす、いや、これは悩むだけ無駄ってこと。そもそもそんなこと京太郎にしか分からない、なら私は当たって砕けていくだけっす!いや、砕けたくはないっすね」 桃子「兎に角京太郎にメール、そうだ!デートに誘ってそこで答えを出すっす!ポパピプペっと」 桃子『今度の土曜日、駅前で待ち合わせっす!』 桃子「……よし、送ったっす。あれ?妹尾先輩から返信が」 妹尾『桃子ちゃんはふくよかで可愛いよ』 桃子「……」ふにっ 桃子「ど、土曜日まで後三日!とりあえずダイエットっす!」 桃子「グロスを塗って……アヒル口ってどうやるんっすかね?い、いや別にキスを期待してるわけじゃないっすけどね……一応!一応!あ、いいものが 」 アヒルちゃんプロペラ「」 桃子「……むー?こ、こうひゅかね?」 智美「なんでモモはアヒルとにらめっこしてるんだー?」 桃子「わっひょい!?」 桃子「ね、ネイルって……今時の女子高生ってそんなことまでやるっすか?」 ゆみ「むしろ私は今までやってなかったことに驚きだよ」 佳織「駄目だよーちゃんとしないと」 桃子「うひっ、くすぐったいっすよ!」 睦月「カラコンとマスカラ、とりあえず色々揃えてみたけど……」 桃子「ありがとうございます!」 睦月「こういうのはやり過ぎても……って行っちゃった」 桃子「よし!装備は完璧っす!あとら明日に備えて寝るだけっす」 桃子「ぜ、全然眠れない」ドキドキ 桃子(だ、大丈夫っす目覚ましも三個セットしてあるし安心して寝れる……会うだけ、会うだけでそんな緊張する意味なんて) 桃子(……可愛いって言ってくれるっすかね、みんなと相談して、多分人生で一番のオシャレっす) 桃子(だ、か、ら!寝ないといけないっす!クマだらけの顔で京太郎に会うわけには……) 桃子(もしかしたら、明日から彼氏が……できるかもしれない、本当に今までだったら考えられないこと……) 桃子(あ、あはは……もう外が明るいっす……こうなったらこのまま起きてハイテンションのまま乗りきるしか……よく、考えればその方がいいっす、素面のままあったら恥ずかしくて顔みれな) 桃子「ぐう」 桃子「……んが」 桃子「……」 桃子「……」 桃子「……」 時計『待ち合わせ十分前やな』 桃子「ね」 桃子「寝坊したぁあああああああ!?」 桃子「あ、ど、どうしよう、と、とりえず顔洗って、着替え、着替え、あ、化粧……諦めるしかないっすね……と、にかく早くしなきゃ、京太郎が……」 桃子「はぁ、はぁ……急げばバスに間に合うっすね、ちょっとマナー悪いっすけど、バスの中で髪は整えるしか……」 桃子「痛っ……あ、ああ……ヒール折れたっす……これじゃあ間に合わない……こうなったらもう片方も折るっす!えい!」 桃子「ああ、もう時間が……とりあえずバスに乗って、って、なんでこんなに混んで、むぎゅ……押さないで欲しいっす、服が、今日のために用意した綺麗な服……」 14 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/05/02(土) 02 16 35.75 ID HVcox0U2O [8/11] 京太郎「……どうしたんだろ、桃子。電話も出ねーし、なんかあったのか?」 京太郎「振られた?……いやいや!探そう、行き違いになってるかもしれないし」 京太郎「……ああ、いたいた。どうしたんだ桃子?」 京太郎(街路樹の下で、隠れるようにうずくまる桃子がそこにいた) 桃子「……今日ほど、消えたいと願った日はないっす」 京太郎「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」 桃子「なんで怒らないっすか?遅刻したっすよ、私……遅刻して、髪もぐしゃぐしゃで、化粧もしてないし、部活のみんなで選んだ服もぐちゃぐちゃになって、背伸びして履いたヒールも折れて……」 桃子「こんな、こんなんじゃ、京太郎に会わせる顔なんて、ないっす」 桃子「私が、目立とうとしたのが間違いだったんっす、恋人なんて、誰かに、好かれるなんて、夢みたのが……」 京太郎「えーと、さ、それってつまり、いつもの桃子ってことだろ?」 桃子「……そうっすよ、いつもの、地味で、影の薄い」 京太郎「そんなことねえよ」 桃子(頭、撫でて……) 京太郎「俺は、その、なんだ、いつもの、普段の、バスで隣通し喋った桃子がとっても魅力的で、ぴかぴかして惚れたんだ。地味でもないし、影なんて薄くない、めちゃくちゃかわいい女の子だよ」 桃子(涙を流す私の顔を見て、京太郎はそう言ってくれたっす……そのとき、私が京太郎を気になっていたのは顔でも性格でもなくて……その) 京太郎「あ、また告白しちまったな……これで恥ずかしさおあいこってことでさ」 桃子(その、まっすぐに私を見てくれる眼が……) 桃子「京太郎」 京太郎「元気でたか?それじゃむぐっ!!???」 桃子「……っぷは、あ、アヒル口忘れてたっす」 京太郎「も、桃子今の……」 桃子「モモって呼ぶっすよ、だって」 桃子「恋人っすから」 京太郎「……へーへー、じゃあ買い物にでもいくか、モモ」 桃子「ってうわぁ!?お姫様だっこって……恥ずかしいっすよ……」 京太郎「お返しだ」 桃子「買い物って、どこに……」 京太郎「そうだな、服屋に化粧品……とりあえずは」 京太郎「靴屋だな」 桃子(その日、私は彼氏に買ってもらった靴を履いて帰ったっす) 桃子「と、言うわけでこれが私の告白作戦っす!同じようにすればきっとその好きな人と恋人になれるっすよ!」 咲「あーうん、もういいや、っていうか目的がなくなったというか、試合になってなかったっていうか……うぅ」 桃子「どうしたっすか?加治木先輩から恋愛相談されたときはビックリしたっすけど、大丈夫っす!他にも色々話すことはあるっすよ!」 咲「うう、部長に相談したら恋愛経験ある人紹介してくれるって言ったけどこれじゃああんまりだよ……」 桃子「代わりにと言ってはあれっすけど、ちょっと京太郎のことで聞きたいことがあって……宮永さんは幼馴染みっすから色々……」 咲「うわぁあああああん!」 カンッ!
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/102.html
1/10 684 京太郎とシロの出会い 石戸霞です。 あれは高校を卒業して、京太郎さんのために修行を積んでいた時代になるわ。 平行世界を垣間見た私は、この世界の京太郎さんのために巫女修行をしていたの。 書物を読み漁り、ひたすらに自分を高めていたの。 修行のしすぎで、時には手首を痛めてしまうこともあったわ。 それでも京太郎さんのためを思い、私は日々鍛錬を続けていたの。 ...-―――-... / \ / / ト \ \ / / / l l |l l i‘ ヽ ト、 . l l l l l リ ハ リ-‘ | |l |i| | l l从/i // } /__ l | リ |i| | l |,斗≠ト 厶イ,斗=ミル |i| l 八 l〈 V炒 V炒 〉|l リ | | 个ト、 ,, 、 ,,, ,小 / ! 「京霞本を二回出した程度で手首が痛くなるなんて. ‘ i ∧ __ // / ノ ‘ i 分、 ` ' ... i/ /i 巫女修行が足りない証拠だわ」 ‘ ∨ i〕i=- -≦ / / | ‘ i l |∧ l ∨ / | /‘ l | ∧_// ∨ / | / /‘卅li ∨/ Ⅳ ト 、 ∠ i | i l|\ / |‘ | \. ∧ `ヽ l _| l リ_ヽ./ / ‘ |\ i‘. そう、その時の私は未熟だった。 時には滝に打たれ、時には瞑想し、時には一晩中書き続け、時には他のサークルの方と仲良くする。 他の巫女を含めて、平行世界を見ることが出来たのは私だけだった。 誰にも相談できない内容に、精神的にも体力的にも追い詰められていたわ。 そんな憂鬱な、同人即売会での出来事だった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2/10 _ \ー- 、 ∠二 _  ̄\ヽ ! -=_,,ニ二_ ヽ )} } / _,, -‐ ゝ ノ、 / / ヽ / / } .ノ / ヽ`ヽ、 /. / / l ! l ヽ / / / / / .} l .l }ヽl⌒ ) ./ / / /}∠!_ ./l__l__ l l l / ./ / { /7____| /´j_∠!_/! リ } (/{ { / \{/(。 厂`;ノ ´(。厂)トノ\人 乂 .八ハ / l ,,,`¨ ¨,,, ∧ ,ゝ ` )/从 l、 ` / } .l 「あなたは……」 _,,,../l \{ \ , 、 ./、ノヽ/)ノ ,, -<//////∧ \ >..._ ,,..イ∧ ヽ / \ ヽ/////∧ \ / .}///l } ./ .、.}/////∧ 〉∧ .|///l l / }.l//////∧ ,.ヘV∧ .l.//∧ .l / ////////∧/ } } Y////∧ノ.〈 , イ/////////∧ノ ハ ヽl.//////\./\ / }////////////∧イ Vl.////////ハ , ' . . . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ ..ヽ /. . . . . . . . . . . . . . . .;、 . . . . . . ヽ .. .ヽ // . ./.. /. ; / ';. . . . . . . . . . '; ....; /,' . ;'. /. l! ;' .'; l l . . ..i /.i | lL -亠 l  ̄丁T! ‐! l l . . |. i ! 、 l l!、 _」L l l --+HL_ l .;リノ . . ...| ! .l トゝ !´__ _ヽ 川 ,,z=-zy/j;イ .| | .l . lv'筰 卞 ヽ. ´ b jヽ .!l .| l l! .辷.ノ ー.― ll .| l l. ,,, ' ''' 'l . .| 「あら、宮守の……、お久しぶりです」 l l /l .|. l .l. ャー‐ッ / l / .l l ... イ / l. l >.....___ < | l / .. ' l . / l / . /. l .. /{ | / . / l . . / ゝ´ll /,' ./> 、 l . /// ! / / イ./ ヽ. l . / ,' / / ;.' / | .i. l=;/ l / ,; ,' / ! l ,' l ./ i / / / l! .l / 丿, ' /! ;' / / !ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 3/10 ___/ / / \ \ ⌒フ / , / l 〈 \\ \ / / / / /| \ ∨ \ \ / / / /-~/-| { \~ー 、' \ ) 〈 / | |八Ν__八{ | _\ ∨ l|′ / l| l ァ┼ ┬ \N┬‐┬ | | リ 〃 / l|\_从 乂゚_ノ 乂゚ノノ}∧l/} 八/ / ,八 入 、 ,,, ,′ ト、ノ. { / }\__ ′ | 「とりあえず京霞本を三冊」. 从 八{ 込、 ∠ . イ^| }八 ∨ \从_}> . __ イ 八jノ ) / \__ Κj/ _/ //〉_∧ ‘, / .∨ ,/// ∨ } .. . . ´ ∨//\__//∨ `ト、 /∨ ∨\ i i i/ { . . | \ { ∨ \/ i∧\{ . . | ∧. ′ ′ ′ | / ' . \ | l | | ′ ' . | l | | /| ′ ' | | | | l | l l i-l l‐ | | ---| |l | | | l | l l |八 | l | |__, | |l | | | l |l |\从 l __}八{ l ノ 从 リ 八 j | l 八 | ,,xぅ斧笄ミ\ |斗ぅ斧x )/ / / ノ | l \ | 《 h __j刈 `ー┘ h__j_| 》厶イ イ | | 个゙ 乂廴ソ 乂_ソ ,′ | | | | , ,′ | | ┃ | `` `` ,′ | 「ありがとうございますー」 | ‘ |\ r‐ ┐ 人 | | ‘ | | ` ´ イ _ _ __ 八 | ‘ 「 | ` .... | l / / /^Yヽ | ‘ |八 T7^\ | / / / /Y^, | ‘ |\\ // `丶/ / / / | ! | -‐ ‘ | \\ .//. / / / / .八 | -‐'^´ ‘ | \\ // / / / / / ト、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 4/10 そう、私とシロさんはそこで出会ったの。 その場では話もそこそこに、帰り道を一緒にしたわ。 「小瀬川さん、よろしければご飯でも食べに行きませんか?」 「わかった……」 「それにしても意外ね。小瀬川さんがここまで来るなんて」 「今回は特別……。私だってやりたいことにはやる気を出す」 それと、シロでいい」 「それじゃあ私も霞でいいですよ」 誰にも言えなかった趣味を共有出来る人ができたと思った私は興奮していたの。 「シロさんに本を買ってもらえるなんて光栄だわ」 「別に……京の本を売っている人なんて珍しいから」 「あら? シロさんも京太郎さんと知り合いなの?」 「うん」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 5/10 \ー―――‐` } \ --- 、 __ノ_⌒ヽ /⌒ / / Y^ , ー=≠ / | ',. / / / / \_ / / / / / / Y´. / / / / _/_/イ_/, 、__/ ∧ | /./ / /´/|/´-l/ // /`^ヘ | | l| 八{ / j/ ll ∧ |芹苧豕 /l/苧豕, ∧| | l| / イ / Ν/-、| | 乂_ソ}/ ヒソノ∧八 リノ. { | \、_jノ 、 , ∨ 「私と京は前世で結ばれた関係だから」 \八 厂〕ト _ 人 i|\) )/(\ノ/}> ´ イi i ト、)ノ / (\\\ 爪 i i i i i |∧ ⊂ニ=---、__〉\ i i i | \ / i i⊂ニニヽ \{\ | i i i| } ̄ |. / i i i i i iノ { \_,| i i i \ | / ̄て二...__......_ `゙< i i\ ノ | ∨ i i i i i > .  ̄ ̄ `ヽ | ∨ i i i i i i i i i > . ',. /| ∨ i i i i i i i i i i i i i> .. } / / i i i i i i i i i i i i i i i i/i |  ̄ ̄ { } i i i i i i i i i i/ i i i i0└┐___. \ ∨ i i -=彡 i i i i i i i i i/ i | i i i i i . `ト――┬く i i i i i i i i i i i i i i i i /i i i | i i i i i . | | \ i i i i i i i i i i i i i i i i i/| i i i i i -―――- .... ´ ` ..、 / \ \ \ / / | ト、 \ \ \ \ / / l | | \ \ | \ . / / Ν | |´  ̄\八 | . | i l-\ l八 斧苧干 | | | | | \l __\{ 乂hソ | | | | |l l |斥汽 | | | | 八 l∧乂ソ , ″ | | | | Y . ″ | | | |. | l 从 __ _ | | 八 「ふんふむ」 八 \ l┌ヘ)` /| | / / \ Y 二二〉‐=≦ | | / / ∨ ┬_]┘ | 从 | / / / 八 /l_/⌒∨ | ∧ / / ノ/ // /∨ |⌒ 、. _ノ / // / ∨| \ _// / // / ゙ | \ \ / // /'"´ / / ゙ . } ,. / / , '" / / ゙o.j / / {/ / / ゙ \ / . / / / / | l \/ / / / / | |\ \ ト. { ./ / / . . . . . .. ノ´| ∧ | || { { / / . . . . l / | | || { 八 { { 八 | | || { l\ { { _ _ / /| | || { | \ \ -=ニ二ニ=- 、 / / | | || { | / ̄ ̄[二二フ二フ二二二二二二[ / .ノ ノ |人ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 6/10 …… … 私と京は、前世で従姉妹だった。 『シロ姉、疲れたよー』 『運動で疲れたのはわかるけれど、洗濯物は出して。 それに、ご飯も食べるでしょ?』 『やった! シロ姉の料理は美味しいからなァ」 なんやかんやあって身寄りのなくなった私たちは、二人で暮らしていた。 私は面倒くさがりで、京と二人で暮らすまでは自分で家事なんてしたことなかった。 けど、そんな面倒なことも京の嬉しそうな顔を見られるというだけで、頑張れるようになった。 『面倒くさがりのシロ姉がこんなに家事をするなんて思わなかったよ』 『京、そんなことを言うならご飯抜き……』 『わっ、シロ姉ごめんって!』 嘘。京にはいっぱいご飯を食べてもらって、元気に育って欲しい。 私は京の【[[お姉ちゃん]]】だから、京のために頑張るのは当然。 『シロ姉聞いてよ! 寺子屋でさー、女の子が弁当作ってきてくれたんだよ!』 ピクリ、と自分の体が反応したのがわかった。 『でも、俺にはシロ姉が作ってきてくれた弁当があるからさ』 『……恋人が出来て、お弁当がいらなくなったら言えばいい』 『えー! 俺はシロ姉の弁当が一番力が出るんだよね』 『京はお姉ちゃん離れしないとダメでしょ』 『俺、家族離れなんてしたくないよ』 自分が嘘をついているのがわかった。 京に恋人なんで出来て欲しくない。 京にお姉ちゃん離れして欲しくない。 京に他人なんていらない。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 7/10 / / `ヽー、 ー、 `ー /´ _ -‐ァ'/ ´⌒ヽ 、 ヽ、_ 彡 ´ /⌒ィ'´ / ', \ ヽ /´ア´ / / / ! ', ヽ ({ / ノ / / ! l \ 、 \ `Y ィ´ / / i l '. 、 ヽ. ',_ `ー- / / /イ/i{ j{ j 、 \ ヾ  ̄´ , ィア,' イ /`7~ヽ ハ 八 (ヽ ト、 } ー、 j/ / { { イzx、_エ、 j |~~、 ヽ Y`ヽ }! ソ \}⌒j ´ { ヽハ、{i 佞i「ヽ. ハ{\{zュ.jYハ } 〉ハ ヽ. ∨ ハ `  ̄ \{ ヽ `芒!リイ ノ /イ ハ ヽ { j! ! 、 } ヽ! 〈 /フ j! / リ 「京には私がいればいい」 `ヘハ ト j /´j} ハ ノ ` \ ゚ ` / / ノ j_ノ ´ _ -=ニ7⌒ヽ __ .. イ / `7=ュ。_ イ 「ニニニ7 人j ハ 〈 /ニニニ´⌒ヽ ´ i ニニニ{ /l] `Y ', V /ニニ/ '. l ニニニ、/! [! ( '. Vニニ7 } / ハ ニニニニニ| マ、 ィハ Vニ7 ′ / ', ニニニニニ| マ、ィ´ 。 V /ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 8/10 自分の考えが狂っていることは自覚していた。 どうしても京が欲しかった。 ……それでも、脳裏に浮かんだのは無邪気に笑う京の姿。 私が狂うことによって京が悲しむのなら、不幸になるのなら耐えよう。 家族として、京の幸せを祈れるのならばそれでいい。 物分かりのいい自分と、浅ましい自分が対立する。 気づけば、寝ている京をじっと見つめていた。 ーーーせめて、最後に一つ、思い出だけでも。 想いをを断ち切るつもりで、寝ている京にキスをした。 すると、布団の中に引きずり込まれて抱きしめられた。 何が起こったのかわからず、混乱する。 『シロ姉、俺も我慢できないよ』 『京……』 『弁当は、好きな人がいるって断ったんだ。 シロ姉のことが、ずっと好きだったから』 『いいよ。京の好きにして』 『シロ姉……っ!』 … ……ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 9/10 …… … ... ----- ... .. ´ ` .. / . \ / . / / / l | l . ′ / / / l l | |\ l . | l l | l__l l | | __} ト l | | l |八{__\从ノ __j ノ| l | | | 抖ぅ竿 ´竿冬、 l / | | l从乂ツ 乂ツ'仏イ ; ‘ ∧{ 、、 ' 、、 }∧ / 「まぁ! すごくロマンチックな話ですね!」 ∨ 八 ┌‐┐ 八 /. ∨ ... ` ´ . イ / ∨ | 〕iト -- i〔| | / _|=ミl/´ | ll | / / / / /| | /l | { ̄ ̄`丶 / /∠..._ | |\_,// | |\ }∧ {/´ `ヽnm/´| | ̄`丶{ ∧ / r|| l〈 | | \ |. / /l || | ∨八 \ ‘,|. ,′ / ノ|l | \ \ !. | / / ! ', \ \ |. 从 / _/ | ',__ \ \| {/∧ { .// .人 \\ \ }八 /} \__/ / /_\ } \__,/| \ / /´ ̄ / {/{三三三≧=ヘ \ | \ 「……信じてくれるの?」 「ええ! 実は私も、[[平行世界]]で京太郎さんと連れあった仲ですから! 同じ人を好きになったんですから、その気持ちが本物だってわかりますよ!」 柄にもなく興奮してしまったわ。 自分と同じような境遇の人に出会って、とても嬉しかったの。 「そう、あなたも雰囲気が普通ではないと思っていたけれども」 「うふふ、興奮してごめんなさいね」 「一つ聞かせて、あなたは何故、京と出会おうとしないの?」 「それはあなたも同じでしょう?」 / \ \ / . / \ . ′ . . . /. . . ./ /. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ト、. . . . . . . . . . .. i | | l / / | ‘ | |. | | | l /l / | | ‘ | | | | | l l´l l` | | /--、| 八 | l | |/\ |-\{- | /l/ -、 И/ | ! | | ,,xぅ气芹ミ,ノ / 斗ぅ冬,, ノ |. ! /! |〈 lh__,j刈  ̄ |h_j | 》/ | 「今の京太郎さんが誰のことを好きなのか、わかっていますから」. ! 八 ‘ | 乂辷ソ 乂_ソ ; ;. ‘ \} | 、、、 , 、、 , ; ‘ | | ′ ; ‘ | |\ 、 _, .イ / ‘ | | l` . . イ | /. ‘ | | r| ` ┬=≦l | | / \ 八 | ∧\ l| |\ノ | | | _\ |' ∧、\ l| | ⌒i| | | / \ ∧\\ l| | 八 | ト、 / \ ∧ \ソ' | \ | \ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 10/10 それから意気投合した私たちは、現在に至るまでずっと親友になったの。 シロさんは欲望を抑えるためのものとして私の本を買ってくれるし、私がネタに迷った時にはシロさんに進む方向を決めてもらえる。 時々、京白本を作って差し入れした時には、本当に喜んでくれたわ。うふふ。 //ア / / イ ト、 \ \ \ \. // / / / | | \ \ \ \ \. /′i / /i | │ \ `ヽ `ー- 、 Y⌒ヽ} { | , イ ハ`¨´`T´ | 、 \ト、 ヽ `ー- 、 \_ } | | | ト、ハ≫=zzz、 ! `¨´`¨´`¨´`¨´ | |\ ヽ`ヽノ\. 人 | | | 代 { __} \| ィ=- ..,,__\ト、 j │ \ } \ \! 〉、 ! . 乂_フ ´下¨¨“_卞ゝ jイ ノ ヽ ノ i / ヽ ハ 弋 `フ ノ j/`ヽ j/ | 「霞、笑ってないで次のページ渡して。. / / / . , `¨¨´ ノ ト、 ト、 i | i 从 / ト、 | ヽ. ; } / 早く校正しないと間に合わない」 l 人 ト、 ト、 _ rー-イ イ ! \ ! } / j/ ∨ \! ∨V .> ` イ {ス人jヽノ jノ jノ j/ , ´∠ニニ>、 _ ... イ / \ / /ニニニニニ7 λ / /入 / {ニニニニニ7/「八. / //二\ --- ... ´ ` ...、 / \. / / \ / / / / / | .. ′ / / /| / / / ∧ | | l . | | | l |-| l / / / / l | | |l | | | l | |八 !从{ / / /--.l | | |l | | 八从斧苧ミxl厶厶イ- 、从 | |l | | | |l^乂_ツ 斧ミv' 厶イ 八| | 人|l 、、 Vツ }/ / ノ 「はーい」 | 从 ' 、、 / / | l\ `ー ..イ /. 八 l ┬‐=≦ | / -\ |\ h\| | ′. ´ 〈 |∧ | \ ノl l゙` | { /l l | }=| \/ | | |\. / ll l | l |\ 〉 | .\! / l l Lノ l | \ ./ | .\ | さて、私たちは京白霞本の続きを執筆しなきゃいけないからね。 今回の話はここまでよ。カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5037.html
京太郎×3 京太郎「朝起きたら残機が増えていた……どうしよう」 京太郎「残機がある……つまり残機がなくらない限り何度でも繰り返せるってことだ!」 京太郎「そうと決まれば和をレイプするしかない」グフフ 京太郎「やっぱりやめよう……もしかしたらオートセーブでコンテニューがここからという確証もない 再開が刑務所なんて辛すぎる」 京太郎「そうだ北海道に行こう」 京太郎「うーん、無事に残機を減らすことなく北海道についた 熊と闘った時は流石に一機持ってかれるのを覚悟したね」 熊「……」ノシノシ 熊「……」ノシノシ 熊「……」ノシノシ 京太郎「そんな!こんな街中に熊が出るなんて……だがこの街の平和は俺が守る!!」 京太郎「弱い弱すぎる……森へかえって鍛え直してくるんだな」 熊「」熊「」熊「」ブクブク 京太郎は10の経験値を得た 成香「あの、助けてくれてありがとうございます」 京太郎「いえいえ当然のことをしたまでですから気にしないでください」キリッ 京太郎(この臭い……この娘今日は排卵日か) 成香「うぅ……腰から力が抜けて立てないです」 京太郎「熊は怖いですからね、しょうがないですよ」 京太郎(腰から力が抜けて立てない女の子+排卵日=チャンス!?) 京太郎「お嬢さん手を貸しますよ」ニッコリ 成香「あ、ありがとうございます///」ギュッ 京太郎「うっ……」ドサッ 成香「え?」 京太郎「」 成香「……え?」 テテッテテテッテテ 京太郎×2 京太郎「家か……残機が減っちまったな まさか手を握られただけで死ぬなんて コンテニューがここからだとわかったのが唯一の収穫だな」 京太郎「また北海道にきた……今度こそは排卵日の成香さんに!」 熊「……」ノシノシ 熊「……」ノシノシ 熊「……」ノシノシ 熊「……」ノシノシ 熊「……」ノシノシ 京太郎「くっ……またか!何度来たって……何体で来たって俺が勝つ!!」グッ 京太郎「まだまだだな……圧倒的に経験が足りなすぎる 出直してきな」 熊「」熊「」熊「」熊「」熊「」ブクブク 京太郎は20の経験値を得た 成香「あの、助けてくれてありがとうございます」 京太郎「いえいえ当然のことをしたまでですから」ニコッ 成香「あっ……立てない……」 京太郎「手をお貸ししますよ」ニコニコ 成香「お願いします///」 京太郎「おっと……石が」コケッ 京太郎「」 成香「え?」 テテッテテテッテテ 京太郎「家……くそ!残機が一つになってしまった! 石につまずいて死ぬってなんだよ!?」 わかめいきいきムチムチ「うじゅるうじゅる……」 京太郎「なんだコイツは!?」ゴスッ わかめいきいきムチムチ「うじゅるうじゅる……」 わかめいきいきムチムチ「うじゅるうじゅる……」 わかめいきいきムチムチ「うじゅるうじゅる……」 京太郎「固すぎる!俺のレベルじゃ倒せない……クッソー!!」 わかめいきいきムチムチ「くぱぁ」 京太郎「……あ」 わかめいきいきムチムチ「ばくり」 太郎「」ドサッ ゴリゴリガリガリバキバキゴクン テテッテテテッテテ 京太郎「ついにゼロ……これが最後か……」 京太郎「そうだ、残機がないなら誰かから奪えば良いんだ……」 京太郎「自信はないがこれしか思い浮かばない……」 京太郎「クマだ……クマを倒すと経験値が貰える…… もしかしたらだが可能性は」 プルルル 咲『もしもし?』 京太郎「咲!今日は熊鍋だ!鍋の用意をしといてくれ!!」 咲『え!?』 ガチャッ 京太郎「熊狩りの時間じゃあぁぁぁーーーっ!」 京太郎「恨むなら俺に出会ったお前らの運命を恨むんだな……」キリッ 熊「」熊「」熊「」熊「」熊「」熊「」熊「」ブクブク 京太郎は50の経験値を得た テレテテッテテッテー 京太郎はレベルが1上がった 残機が1増えた 京太郎「お!80に達したらレベルが上がって残機が増えた!ゲームのノリだと次は90位必要か? 熊肉も食べてみたかったけど必要ないみたいだしいっか」 由暉子「あの助けてくれてありがとうございます!」 京太郎「いえいえ当然のことをしたまでですから」 京太郎(結果が変わった?ルートを変えたからなのか? それにしても咲より背が低いのに立派なおもちだ……) 京太郎「……」ドキドキ 京太郎(女の子の部屋……咲以外だと初めてだな) 由暉子「消毒しますから腕を出してください」 京太郎「あっはいっ!」スッ ムニッ 京太郎「あ……すすすすすみみません!」 由暉子「よくあることなんで気にしないで下さい/// じゃあ、少ししみますよ」 京太郎「……っ」 由暉子「我慢してくださいな」ムニィ 京太郎「……」ニヘラ 由暉子「包帯巻きますね」ムニィ 京太郎「……」ハァハァ 由暉子「……」ムニィ 京太郎「……もう辛抱ならん!」ガバッ 由暉子「!?」ドサッ 京太郎「由暉子さん」 由暉子「……京太郎君」 ピンポーン 京太郎「」ビクゥッ 由暉子「そういえば今日は私の部屋を使って皆で練習する約束をしてました」 プルルル 京太郎「あっ少し失礼します」 京太郎「もしもし?」 咲『京ちゃん熊鍋の用意できたよ 後は熊肉だけ足りないけど』 京太郎「あーそういえばそうだったな ちょっとサクッと熊倒して帰るよ」 咲『え!?熊倒すってどうい』 プッ 京太郎「すみません用事思い出したんで帰ります」 由暉子「そうですか……今度会ったときはしっかりとしたお礼をしますね」 爽「今すれ違った男ダレだー?」 由暉子「恩人です」 成香(……?……?) 京太郎「咲ただいまー」 咲「おかえり京ちゃん……って熊!?」 京太郎「おう!鍋にして食べようぜ!!」 咲「」 京太郎「うめぇ!うめぇ!熊の旨味が鍋の全てに溶け込んで染み込んでいる」ガツガツ 咲「脂はスッキリとしてて食べやすいね」フーフー 京太郎「咲おかわり!」 咲「はいはい」 京太郎「今日は色々あったな!おやすみ!!」 京太郎「……」スヤスヤ セーブ中です 京太郎×1 京太郎「ふわーよく寝た 今日はどうしようかな」 京太郎「今日は奈良だななんとか攻略のヒントを探さないと」 京太郎「無事に奈良についな野生の鹿ってのもなかなか強いもんだな」 京太郎「新子さんをレイプするか」 京太郎「コンテニューする場所もわかったしな」グヘヘ 憧「今日もいい天気ねー」テクテク 京太郎「新子さん!」 憧「な、なに!?」 京太郎「俺とクッキング勝負だーーーっ!!」コック姿 憧「なにこの大きなセットは!?キッチン!?」 京太郎「提供は龍門渕さんだー!お題は自由!負けた方が買った方の言うことをなんでも聞くこと!」 ハギヨシ「それでは須賀京太郎vs新子憧!クッキングバトルーーーー……ファイ!」 ッカーーーン 憧「私は肉じゃが」 京太郎「俺は里芋の煮っころがし」 ハギヨシ「それでは審査員の皆さん 美味しかった方の札を上げてください!」 透華「凄く美味しかったですわ!」京太郎 煌「ホクホクとした里芋からあふれでる甘味……すばら!」京太郎 咲「京ちゃーん」フリフリ京太郎 憧「そんなぁ」ガクッ 京太郎「新子さんも食べてください」 憧「……」モグモグ 憧「……悔しいけど凄く美味しい……私の負けだわ」 ハギヨシ「勝者!須賀京太郎!!!」 ワーワーパチパチ 京太郎「あっしたー先に上がりまーす」 オツカレサマデシター 憧「で?お願いってなに?」 京太郎「あーそういえばそんなのあったね忘れてた……」 憧「はぁ?なら何のために闘ったのよ!」 京太郎「なら今から山に登って新子さんの女子力を鍛えようか」 憧「え?」 山の中 憧「女子力を鍛えるなら家でも良かったんじゃ……」 京太郎「山を舐めるな……光と闇、生と死を身近に感じるのことで女子力は何倍にも膨れ上がる」 憧「えー……」 京太郎「まずは山小屋でラブラブセッ」 憧「なななななにいってんよー!///」ドンッ 京太郎「あ……」ドサッ ズザザー ゴンッ ガンッ ゴンッ ズザザー ヒューン ボチャン プカプカ 京太郎「」 テテッテテテッテテ 京太郎「ピタゴラスイッチかよ……レベルは2で残機は無し 厳しいな」 京太郎「ハギえもーん不思議な薬ちょうだいよー」 ハギヨシ「しゃうがないなー須賀太くんはー」 テテテテッテテー ハギヨシ「残機が増える薬らしいですよ」 京太郎「うぉぉぉおおおお!」ゴクゴクゴクゴク ハギヨシ「全部飲んでしまいましたがもう残ってないので気をつけてくださいね」 京太郎×3 京太郎「増えたーーー!!」 ハギヨシ「よくわかりませんが良かったですね」 京太郎「寝るにはまだ早いし、時間があまったなーどうしよ」 京太郎「雀荘に行くかー」 roof-top まこ「おう、いらっしゃい おんしがここにくるとは珍しいのう」 京太郎「ちょっと色々とありまして」 京太郎「麻雀か俺の強さを見せてやる!」 成香「あっ私がトップですね」 優希「私が二位かー」 やえ「にわかは相手にならんよ」←三位 京太郎「」 成香「そういえばトップがビリになんでもお願いできるってことでしたよね?」 京太郎(そうだっけ?) 成香「熊狩りの仕方を教えて欲しいです」 京太郎「それぐらいならお安いご用です 早速北海道に行きましょうか」 成香「はい」 京太郎「優希!明日は熊タコスだ!!」 優希「え……遠慮しとくじぇ」 京太郎「コツを掴めば簡単です まずは俺の動きを見ていてください」 成香「はい」 赤カブト「……」グルル 京太郎「随分と図体が大きいな、右目の潰れた熊か……おもしれぇ!」 成香「あ……あ……」チョロチョロチョロ 熊「……」×19ノシノシ 京太郎「成香さん見ていてください これが熊狩りを極めた者のみが使える技……熊返しです」 京太郎は130の経験値を得た テレテテッテテッテー 京太郎はレベルが1上がった 残機が1増えた 京太郎「いたた、一匹だけ強い熊が混じってたな一撃貰ってしまった」 成香「いま消毒しますね」アタフタ 京太郎「かすり傷だからきにしないでください」 成香「で、でも……」 京太郎「本当に気にしなくていいですって傷ももう塞がりましたし」 成香「!?」 京太郎「それより成香さんこそ」フキフキ 成香「きょ、京太郎くん!?」 京太郎「しっかり臭いをとっておかないと熊が寄ってきちゃいますよ」フキフキ 成香「うん……ふっ……///」 京太郎「もう少し足広げて下さい」 成香「駄目……恥ずかしい」 京太郎「そう言われましても」グイッフキフキ 成香「んんーっ///」ビクッビクッ 京太郎「何故だか全然拭き終わらなかった」 成香「///」 プルルル 京太郎「はい、もしもし」 咲『京ちゃんもう遅いから早く帰ってきなよ 麻婆豆腐冷えちゃうよ』 京太郎「冷えた麻婆豆腐も美味しいけどなー わかったすぐ帰るよ」 咲『うん』 プッ 京太郎「もう遅いんで送っていきますよ成香さん」 成香「お願い……腰が抜けて立てなくて……///」 京太郎「ただいまー」 咲「おかえりーって今日はマグロ!?」 京太郎「おう本マグロだ泳いでる時にたまたま見つけたから捕まえて来た 冷凍庫で冷やしとくか」 京太郎「咲の麻婆豆腐は美味いなー」ガツガツ 咲「いっぱい油入れてるんだ こうすると本場の味に近づくんだよ あんまり健康には良くないかもしれないけど京ちゃんなら運動してるから大丈夫たよね」フーフー 京太郎「咲!おかわり!!」 咲「はいはい」 京太郎「いやー今日も頑張った!おやすみ」 京太郎「……」スヤスヤ セーブ中です 京太郎×4 京太郎「うーんよく寝た!レベルが3になったお陰か力もみなぎってくる!!」 京太郎「麻雀の能力取得か……まぁ麻雀部員だし本分は麻雀の練習だよなー」 京太郎「あ、今日はわざわざありがとうございます」 灼「いい……」 京太郎(シャツ……ダサッ)ガクッ 京太郎「」 灼「……!?」 京太郎×3 京太郎「うーん、死んだかあれはしょうがない それにしても残機が沢山あると心に余裕が生まれるね」 京太郎「今度は岩手かな……よっと」ピョーン 京太郎「……」シュタ 京太郎「」ガクッ 京太郎「」ドサッ 京太郎×2 京太郎「まさかベッドから飛び降りただけで死ぬとは…… 慢心ダメ絶対」 京太郎「ここはいっちょ神頼みでもしてみるかー」 奈良 京太郎「山の神よー!何卒何卒御慈悲をーーー!」 穏乃「朝からうるさいって!!」ガサガサ 京太郎「ひぃ!でた山神さまじゃーーー!山神さまがお怒りじゃぁぁぁ!!」 穏乃「だからうるさいって!!」プンプン 京太郎「まぁご利益ありそうだし拝んどくか」ナムナム 京太郎「御加護をー御加護をー」 穏乃「もう勝手にすれば」プンプン 京太郎「あっ……帰っちゃった」 京太郎「しゃあない俺も帰るか」トボトボ 京太郎「お供えものにと思ってきたおもち無駄になっちゃったな」 京太郎「……」モグモグ 京太郎「うっ……息が」 京太郎「」 京太郎×1 京太郎「なんてこった……これは非常に不味い ちょっと前までは残機が多くて受かれてたのに」 京太郎「咲にプロポーズするかな」 京太郎「咲!結婚しよう!」 咲「もう京ちゃんたらまたそんな冗談言って!ほら今日の夕飯の買い物付き合って!!」 京太郎「おぉ……おう」 咲(京ちゃん///)モジモジ 京太郎「咲とはもはや家族みたいなもんだし親しすぎて中々上手くいかないなー」 京太郎「まだ時間があるな……どうしよう」 roof-top 京太郎「染谷先輩遊びましょーう」 まこ「すまん、いま忙しくて手が離せん」 京太郎「折角だし麻雀をしていこう!今日こそは見せてやる俺の本気!!」 リチャードソン「俺が一位で」 優希「私が二位」 美穂子「私が三位で」 京太郎「」サラサラ リチャードソン「この雀荘ではトップがビリになんでも命令できるらしいね」 京太郎(そうなの?) リチャードソン「君に幼馴染みはいるかい?」 京太郎「一応……いますが?」 リチャードソン「ならその女の子を一生大事にしてあげてくれ」 京太郎「それってつまり……」ゴクリ リチャードソン「結婚だ」 京太郎「でも前にプロポーズしたけど流されちゃいましたし」 リチャードソン「君も男だろ、何度でもぶつかれる限りぶつかればいい その子もきっと待っている」 京太郎「そうですかね」 リチャードソン「そうだ」 京太郎「なぁ……咲」 咲「今日の夕飯はニラ玉と焼き鮭だよ京ちゃん」トントン 京太郎「一緒に買いにいったし知ってるよ!」 咲「そうだったね」トントン 京太郎「本気で俺と結婚してくんね」 咲「またまたご冗談を」 京太郎「包丁止まってるぞ」 咲「……」 京太郎「いつまでも一緒にいてくれよ咲」 咲「私ね自分に自信がないんだ」トントン 咲「京ちゃんは麻雀以外なら何だって自分で出来る 料理だって私が意地はって作ってるだけで 京ちゃんがやった方が美味しいもん」トントン 京太郎「俺は咲の料理好きだぜ」 咲「ありがとうね京ちゃん」コトコト 咲「でも、何でもできる京ちゃんに私は釣り合わないよ」コトコト 京太郎「俺は何にもできないよ」 咲「嘘」コトコト 京太郎「嘘じゃない」 咲「絶対に嘘」コトコト 京太郎「本当、俺は咲がいるから頑張れる 咲がいなかったら何もできない」 咲「……ばか」 京太郎「馬鹿で結構」 京太郎「俺はなお前が好きなんだ咲、料理が上手じゃなくてもいい、ドジだっていい、寂しがり屋でもいい、 そんなお前を支えたい そんなお前に支えられたい」 咲「そのセリフ凄くクサイよ」カチャカチャ 京太郎「だから俺と結婚してくれ咲」 咲「……とりあえず冷める前にご飯食べちゃおう」 京太郎「おう」 京太郎「このニラ玉美味いなー」 咲「加熱しすぎないでしっかり蒸らすのが卵をふんわりさせるコツなんだよ」 京太郎「咲」 咲「はいはい」 咲「まだ帰んないの?」 京太郎「今日は泊まってく」 咲「なら、布団しいとくね」 京太郎「おやすみ咲」 咲「おやすみ京ちゃん」 咲「京ちゃんまだ起きてる?」 京太郎「ん……あぁ」 咲「こんな私で良かったらお嫁さんにして下さい」 京太郎「……このタイミングで言うかね普通?」 咲「ごめんね、これでも勇気振り絞ったんだよ」 京太郎「咲、ほらおれの布団入ってこい」チョイチョイ 咲「うん」モゾモゾ 京太郎「まぁ俺達ならこんなもんか 変に肩肘張らずいつも通りに、 それが俺達らしいよ何も変わらない」ギュー 咲「ありがとう京ちゃん」ギュー 咲「でもね、一つだけ変わったことがあるよ」ギュー 京太郎「なに?」 咲「前よりもっと京ちゃんが好きになった」ギュー 京太郎「……」 咲「……照れてるの?」 京太郎「うっせー、さっさと寝ろ」プイッ 咲「うん」ギュー 京太郎「明日は指輪を見に行くからな」 咲「うん」ウトウト 京太郎「結婚式場も見に行って」 咲「それは流石に高校生には早すぎるよ……」ウトウト 京太郎「皆にも挨拶しないとな」 咲「うん」ウトウト 京太郎「それからさ……」 咲「……」スースー 京太郎「……寝たか?」 咲「……」スースー 京太郎「愛してるぞ咲」ギュー 咲「……私もだよ京ちゃん」ギュー 京太郎「……聞いてた?」 咲「ばっちし」 京太郎「……もう寝る!」 咲「おやすみ」 京太郎「おやすみ」 これからも変わらずいつまでも二人一緒に 咲エンド 咲エンドボーナス残機+3 京太郎×4 京太郎「んうぉ!あれ!?俺咲と結婚して子供育ててそれからそれから…… あぁ、あの日に帰ってきちゃったのか…… レベルは3てことは3日目からか」 京太郎「幸せだったぞ咲」 京太郎「そうだ福岡に行こう そこにならこのゲームを終わらせる何かがあるかもしれない」 京太郎「きたぜ福岡 熊本に近いだけあってクマモンをよく目にするが体が疼く」 京太郎「どうせなら姫子さんを惚れさせようそうしよう」 京太郎「男なら真っ正面から体当たり!正々堂々口説き落とす!」 姫子「あつかーなしてこがんにあつかとねー」 京太郎「もしかして鶴田さんですか?」 姫子「何か用でもあっと?」 京太郎「ファンなんですサインください!」 姫子「ごめん、そういうんやってなかとよ」 京太郎「お願いします!お願いします!」 姫子「なら秘密にしてなー」カキカキ 京太郎「ありがとうございます!!」 京太郎「本当に大ファンなんですよ!」 姫子「ふーん」 京太郎「もう、姫子さん全てが好きなんですが! 特にしたまつげが可愛い!!」 姫子「……」ピクッ 姫子(なかなかわかっとぉなコイツ) 京太郎「それに萌え袖もかわいいです!」 姫子「そんなに好きなら、触ってみんね?」 京太郎「いいんですか!?」 姫子「まぁ……」スッ 京太郎「萌え袖の中に隠れてる手可愛い!」フニフニ 姫子「こしょぐったか」 京太郎「姫子さん可愛い」フニフニ 姫子「ちょっやりすぎ」 京太郎「可愛い!」フニフニ 姫子「っふ……っふ……」 京太郎「姫子」フニフニ 姫子「……っ!」ゾクゾク 京太郎「姫子、姫子」フニフニ 姫子「駄目名前呼ばれたら」ゾクゾクゾクゾク 京太郎「姫子!」フニフニ 姫子「ひぅ……」ビクンッ 姫子「あっ……」 姫子「駄目……言うたろ?」ハァハァ 京太郎「あぁ!すみません」 京太郎(これは流石にやりすぎた) 京太郎「すみません!すみません!」 姫子「まぁ、済んだことやしもうよかとよ」 京太郎「そんなわけには行きませんお詫びとして行きたいところがあったら何処にでも連れていきます!」 姫子「それってつまりデートしろって言っとっと?」 京太郎「そういうわけじゃ……でも姫子さんみたいな綺麗な女性とデートできるなら嬉しいです」 姫子「そんな綺麗かなんて恥ずかしいけん///」 京太郎「ごほん、良かったら今度俺とデートしてくださいお姫様」 姫子「よ、喜んで///」 京太郎「連絡先を交換して別れた 明日以降からデートに誘えるかな」 キャー 京太郎「今の悲鳴は!?」 姫子「うぅ」ビクビク 熊「……」 熊「……」 熊「……」 熊「……」 熊「……」 京太郎「熊が5匹か、それにしてもあの十字の陣形はインペリアルクロス!」 京太郎「俺の熊返し受けきれるか!!うぉぉぉおおお!!」シュバツ 姫子「早い!?早すぎて目で追えなか!!」 京太郎「あっめんたいこ踏んだ」 ズリッ ガンッ 京太郎「」 姫子「え?」 熊「え?」 テテッテテテッテテ 京太郎×3 京太郎「流石は福岡そこら中にめんたいこが生えてやがる うぁぁぁー交換した連絡先が消えてる」 京太郎「咲とラブラブセックスだな」 咲「おはよう京ちゃん」 京太郎「おはよう咲」 京太郎「ラブラブセックスしようぜ!」 咲「……っ~~~///」ポコポコ 京太郎「いたいいたい」 咲「ふんっ!」プイッ 京太郎「なぁ咲頼むよ」 咲「絶対に駄目!結婚してからって決めてるもん!!」 京太郎「なら問題ないじゃん」 咲「……?」 京太郎(あ……セーブポイントからやり直してるから前週の記憶が無くなってるのか) 咲「……でも、キスだけならいいよ」 京太郎「本当?」 咲「うん」 京太郎「咲!中で出すぞ!!」パンパン 咲「ちょうだい!京ちゃんの全部を中にちゃうだい!」ギュー 京太郎「でる!」ドビュルルル 咲「んっーーーー!!」ビクンッ 京太郎「キスなんかしちゃったら我慢できるわけがない」ツヤツヤ 京太郎「阿知賀を攻略しよう」 奈良 京太郎「へへ、奈良についたが恐怖のあまり足の震えが止まんねぇ」ガクガク 鹿王「……」 京太郎「でかい!こんな街中でコイツが暴れたら…… そんなことはさせん!!」 京太郎「鹿の王よ……見事な実力であった」 鹿王「」 京太郎は50の経験値を得た 憧「あの、助けてくれてありがとう……」 京太郎「当然のことをしたまでですから気にしないでください」ニコッ 憧「……っ、足くじいちゃった」 京太郎「大丈夫ですか?」 京太郎「よっと」 憧「きゃあ!」 京太郎「それじゃえ歩けないだろうし送ってくよ」 憧「あ……ありがとう///」ギュッ 京太郎「ここですか」 憧「うん、ありがとう……おっと」 京太郎「家の中まで送りますよ」 憧「いいよそこまでしてもらうのは悪いし」 京太郎「頼ってください男は頼られると嬉しいんですよ」 憧「それなら……」 京太郎「足痛いですよね夕飯は俺が作るんで座っててください 何か食べたいものありますか?」 憧「煮っころがしがいい」 憧「美味しい……」モグモグ 京太郎「ありがとう」モグモグ 京太郎「皿は洗っとくんでお風呂入ってきてください」 憧「うん」 憧「……」チャポン 憧「///」ブンブン 憧「上がった」 京太郎「まだちょっと髪濡れてるじゃないですか こっち来てください」 京太郎「髪綺麗なんですからしっかり手入れしないと」トカシトカシ 憧「んー……乾かすの上手いね」 京太郎「慣れてますから」ゴー 憧「……彼女とか?」 京太郎「どうなんですかねよくわかんないです」ゴー 憧「そっ……」 京太郎「ドライヤーは遠くから当てて頭皮を乾かすようにやるのがコツです」 憧「そういうのいいよ これからも君にやってもらうし」 京太郎「え?」 憧「あ……べ別にそういう意味じゃ!そう意味ってその……あの///」 プルルルル 京太郎「はいもしもし」 咲『京ちゃん?今日の夕飯はポトフだよ 早く帰ってきて』 京太郎「そっか、すぐ帰るよ」 プッ 京太郎「時間も時間なんでもう帰りますね」 憧「今日は……色々とありがとう」 京太郎「困ったときはお互い様です 冷蔵庫にプリン冷やしてるんで良かったら食べてください」スタコラサッサ 憧「名前は……っていっちゃった」 憧「プリンなんていつの間に買ってきたんだろう……ってこれ手作りじゃん」 憧「おいしい」ニコニコ 京太郎「ただいまー」 咲「おかえり、今日は鹿なんだ大きいね」 京太郎「おう、二人じゃ食いきれないから近所にお裾分けしよう」 京太郎「やっぱ美味いな!」ハフハフ 咲「実は豚肉を使ったからポトフじゃなくてポテって言うんだけどね」フーフー 京太郎「おかわり!」 咲「はいはい」 京太郎「今日も疲れたーもう寝よう」 京太郎「……」スヤスヤ セーブ中です 京太郎×3 京太郎「今日も一日頑張ろう!」 京太郎「和!稽古してくれ!!」 和「いいですよ、須賀くんも来年は男子麻雀部の部長になるんですから もっと上手くならないといけませんからね」 京太郎「エッチの!」 和「しゅっ!」ブンッ 京太郎「」キーン 和「須賀くん見損ないました」スタスタ 京太郎「……あ、頭の中ひ胡桃割り人形がリピートひてる」ガクガク 京太郎「よく死ななかったな俺 てか俺が見切れないスピードの蹴りって和のやつ何者だ」 京太郎「透華さん俺と結婚してくださ……ウワラバッ!」 透華「はい喜んで」ポロポロ 京太郎「」 透華「京太郎?」 京太郎「」 透華「え?」 テテッテテテッテテ 京太郎×2 京太郎「まさか股間が破裂して死ぬなんて 恐るべしのどっち」 京太郎「咲と旅行にでもいくか」 京太郎「どこがいいかなーやっぱり行ったことない沖縄とかかな」 京太郎「咲の水着姿たのし」 タンスに小指ガンッ 京太郎「」 テテッテテテッテテ 京太郎×1 京太郎「あれで死ぬか、いや確かに死ぬほど痛いけど本当に死ぬなんて」 京太郎「大阪とか言ってみるかー なんだかんだ関西にはまだ行ってないし」 京太郎「大阪に無事についた 都会なだけあって動物たちと戯れることもなかったな」 ハギヨシ「須賀くん掘らせていただきますよ」ゴゴゴ 内木「須賀くん」ゴゴゴ 京太郎「くっなんてオーラだ赤カブトや鹿王以上だ!だが俺のケツは俺が守る!!」 京太郎「俺のケツを掘っていいのは掘られる覚悟があるやつだけだ」 ハギヨシ「」 内木「」 京太郎は110の経験値を得た テテテテッテテッテー 京太郎のレベルが1上がった 残機が1増えた 京太郎「よかった守りきれて」 竜華「大丈夫か?凄い闘いやったなー」 京太郎「男には守りきらないといけないものがあるんですよ」 竜華「そうなんかー」 京太郎「よかったら大阪案内してくれませんか?」 竜華「ええでー、面白いもんみしてもらったし アイツらはほったらかしでええんか?」 京太郎「大丈夫ですよ あの二人なら手負いでもシャチぐらいなら水中で倒せますから」 竜華「アンタらホンマに人間か!?」 京太郎「人間ですよ多分」 竜華「大阪といったらやっぱり道頓堀やなー 他にもええところは一杯あるけど初心者には 此処がオススメやな」 京太郎「人が多いですねー」 竜華「コナモンミュージアムでもいこか ロウのサンプル作れるんやでー」 京太郎「へー」 竜華「次はHEP FIVEや!色んな店が集まってるから長時間楽しめる!」 京太郎「すげー長野にこんなのねー」 竜華「オススメは真っ赤な観覧車やな」 京太郎「高い!」 竜華「うち観覧車めっちゃ好きやねん きっとここで告白されたらOKしてまうわ」 京太郎「好きです!付き合ってください!!」 竜華「ごめんなー」ヒラヒラ 京太郎「えー……」 京太郎「いやー楽しかったです!ありがとうございました!!」 竜華「ええでーうちも楽しかったし、また何かあったら誘ってや これ連絡先」 京太郎「まだ夕飯まで時間があるな どうしようか」 京太郎「長野の皆におみやげを買っていくか」 京太郎「タコスせんべいかこれとか優希が喜びそうだな 試食してみよう」バリバリ 京太郎「うっ……煎餅が喉に刺さって」ピクピク 京太郎「」ガクッ テテッテテテッテテ 京太郎×1 京太郎「連絡先がなかなか手に入らない……」 京太郎「熊狩りだな 北海道と九州どっちにしよう」 京太郎「くそっ!流石に多すぎる!!」 熊「……」×121 熊「」×545 京太郎「だがまだやれる!!」 ハギヨシ「んっふそれはどうですかね!」 内木「ふふふ」 赤カブト「ぐるる」 鹿の王「……」 京太郎「くそっ!ボスラッシュステージか!」 ハギヨシ「いますよ須賀くん!」 京太郎「うぉぉおおおおお!」ベチャ 京太郎「うわ、なんか降ってきた鳥の糞だバッチぃ」 京太郎「」 ハギヨシ「え?」 テテッテテテッテテ 京太郎「また残機がゼロか……今度こそ駄目かもな」 京太郎「鷹狩りって鷹で獲物を狩ることだよな 俺鷹とか持ってないけどカピバラでいいかな」 京太郎「いけカピー!狩ってこい!!」 カピ「きゅー」トテトテ 京太郎「凄いぞカピー!アルパカを1300頭も狩るなんて」 カピ「きゅー」 アルパカ「」×1300 カピーは10000の経験値を得た テテテテッテテッテー カピーレベルが70上がった 残機が70増えた 京太郎は学習装置で100の経験値を得た テテテテッテテッテー 京太郎はレベルが1上がった 残機が1増えた 京太郎「残機も増えたしどうすっかな」 京太郎「はっ!?夢か……」 京太郎×0 京太郎「マジで夢か……」 咲「京ちゃん布団干すからどいて」 京太郎「やだ」ダラダラ 咲「どいて」 京太郎「やだ」ゴロゴロ 咲「……」ムッ 京太郎「咲も来いって」グイッ 咲「あぅ……」ドサッ 京太郎「咲ー」ギュー 咲「もーしょうがないな京ちゃんはー」ニコニコ 京太郎「さぁ……どうすっかなー」 京太郎「新子さんを焦らすか」 京太郎「ほれほれ」 憧「……」ジーッ 京太郎「ほれほれ」 憧「……」ジーッ 京太郎「こっちだよー」 憧「早くちょうだいよプリン」 京太郎「はいどうぞ」 憧「美味しい」ニコニコ 京太郎「新子さん」 憧「なに?」 京太郎「……」チュッ 憧「!?」 京太郎「すみませんつい……」 憧「うぅ……///」モジモジ 京太郎×1 憧「ばか……京太郎」 京太郎「すみません」 憧「責任とってよね」 京太郎(はて?責任とは?) 憧「キスまでしたんだからけ、結婚を」 プルルルル 京太郎「ごめんちょっと電話が」 プッ 京太郎「もういいですよ話の続きを」 憧「その……キスしたんだから責任とって結婚しなさいよ///」 京太郎「け、結婚ですか!?」 憧「……いや?」ウルウル 京太郎「でも結婚しても俺はいつか」 憧「いつか?」 京太郎「結婚した全てを無かったことにしてしまいます」 俺は残機が有る限り何度も世界を繰り返してしまうことを憧に話した 最初は信じられなかったみたいだが必死に話していたら信じてくれた 京太郎「だから、新子さんと結婚は……」 憧「別に結婚してもいいんじゃない」シレッ 京太郎「え!?」 憧「無くなるんだったら何も気にすることないじゃん」 京太郎「いや、それは人間としてどうかと」 憧「私はそれでも京太郎といたい」 京太郎「でも……でも……」 憧「京太郎」ギュッ 京太郎「……憧」 憧「何回繰り返したって私は京太郎と出会ったら絶対に好きになる もし、これから先辛いことがあったら私の所に来てねきっと抱き締めてあけわられるから」ニコッ 京太郎「……憧」ポロポロ 憧「だから、今回だけでもいいから……」 憧「私を幸せにして」 憧「あなた……具合はどうですか?」 京太郎「……」 憧「そうですか……あなたと過ごした毎日が輝いていましたよ お婆ちゃんになってもあなたは私を愛してくれました」 京太郎「……」 憧「充分すぎらくらい幸せでした」 京太郎「……」 憧「今度は私が約束を守る番ですね」ナデナデ 京太郎「……」 憧「きっと貴方が辛いときは過去の私が抱き締めてくれるはずです」ギュッ だから 安心しておやすみ、京太郎 ピーーーーーー 憧エンド 憧エンドボーナス残機+3 京太郎×4 京太郎「憧……ありがとうな レベルが4ということは四日目か」 京太郎「鶴賀に行くか 」 京太郎「やっぱ近いしずくについたな」 京太郎「東横さんを探すか」 京太郎「心の目だ心の目を使えばきっと見つけられる」コフー 京太郎「……」 京太郎「駄目か……」ガックシ 京太郎「佳織さんを口説くか」 京太郎「男なら正々堂々とだな」 佳織「どうしたんですか?」 京太郎「佳織さん可愛い」 佳織「え?」 京太郎「おっとりしてて可愛い」 佳織「えー///」 京太郎「眼鏡っ子可愛い」 佳織「うぅ///」 京太郎「おもちでかい可愛い」 玄「同意ですのだ」 佳織「恥ずかしいです///」 京太郎「顔を真っ赤にして俯いちゃった可愛い」 佳織「……もう、やめてくださいよぉ」 京太郎「精一杯声を絞り出して可愛い」 佳織「///」 京太郎「やっぱりおもちでかい可愛い」 玄「同意ですのだ」 佳織「……///」 京太郎「……ちょっと来てください」ズルズルズルズル 玄「おもちー!」バタバタバタバタ 佳織「なんだったんだろう……?」 路地裏 京太郎「邪魔しないでくださいよ」 玄「そこにすばらなおもちがあったら盛り上がらずにはいられないよ!」フンスー 京太郎「……確かにそうですね」 玄「うん!」 京太郎「だったらこれも仕方ないですよね」モミモミ 玄「んっ!ちょっと駄目だよこんなことしちゃ!」 京太郎「すばらなおもちがあるんですから盛り上がらずにはいられませんよ」モミモミ 玄「私のおもちは出来損ないだよ……」シュン 京太郎「そんなことありませんよ大きくて弾力もあって」モミモミ 玄「んぅ……あっ!」 京太郎「感度も良い」クリクリ 玄「もうやめて……」プルプル 京太郎「嫌です満足するまでやります」 プルルルル 京太郎「おっ、咲か?もう夕飯の時間?」 咲『うん、今日はロールキャベツだよ』 京太郎「すぐに帰るよ」 プッ 京太郎「すばらなおもちでしたよ玄さん」 玄「……」ハァハァ 京太郎「それじゃあ」 玄「……」ゴクリッ 京太郎「ただいまー」 咲「おかえり今日は何も捕まえてこなかったんだね」 京太郎「たまにはな」 京太郎「キャベツから溢れだす肉汁の旨味がトマトの酸味と合わさって最高!!」ガツガツ 咲「鍋いっぱいにしきつめて煮込むのが型崩れしないコツだよ こうすると肉汁が外に逃げないから美味しくなるんだ」 京太郎「おかわり!」 咲「はいはい」 京太郎「東横さんを見つけられなかったのは悔やまれるがおもちを堪能できたから良しとしよう」ウンウン 京太郎「……」スヤスヤ セーブ中です 京太郎×4 京太郎「朝だーーー!」 京太郎「岩手かーあそこってオカルト関係に強そうだから何かわかるかも」 京太郎「それにしても岩手は猪が多いなもう10体も気絶させたぜ」 猪神「ふごふご」 京太郎「ハイエースよりでけぇ!お前がこの森の守り神か…… 神狩りの名をいただくぜぇ!」 京太郎「ふっ……命はとらんお前はこれからもこの山を守り続ける義務があるからな」 猪神「……」ノシノシ 京太郎は100の経験値を得た テテテテッテテッテー 京太郎はレベルが1上がった 残機が1増えた これ以上レベルは上がらない 京太郎「おっ……5でMAXか」 塞「あの!ありがとうございました!!」 京太郎「気にしないでください 慣れてますから」ニッコリ 塞「……」キュンッ 京太郎「腰の辺りが汚れてますね払ってあげますよ」パンパン 塞「ひゃん!あ、ありがとう///」 京太郎「」ドサッ 塞「え?」 テテッテテテッテテ 京太郎×4 京太郎「あの人の腰……正に殺人級だったな」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3351.html
http //yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1254535905/ 俺「SOGAの麻雀ゲーイベントの咲カップで優勝してしまった」 俺「なんか...優勝したはいいが貰えたのは"称号"というデータカード内でしか意味のないモノ...」 俺「はあ、時間と資金を費やした割りに見返りが少ないなあ」 俺「……」チラ 女子高生「キャッキャッ」 俺「何年もゲーセンに通っているから彼女も出来ず、ましてや就職にも着けていない...」 男「咲カップ優勝者の○○様ですね」 俺「?はあ、どちら様ですか?」 男「いやいやSOGAの咲カップ優勝商品の副賞を届けるのが遅れてしまいました」 俺「副賞?なにかくれるんですか?」 男「では、お楽しみになってください。それと注意事項が一つ、向こうで寿命以外の理由で死んでしまっ...」 俺「ん?はあはいはいなんですかその夢物がたr」ギュイイイイイイインッッッ 俺「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 ???『大丈夫?京ちゃん』 京太郎「うっ...」 ???『急に倒れてどうしようかと思っちゃったけど...どう?頭痛くない?』 京太郎「は...?」 京太郎「ここは...」 咲『七久保駅...だけど、本当に大丈夫?京ちゃん』 京太郎「長野?なんで俺が長野に...ていうか」チラ 咲「京ちゃんもしかして記憶喪s」 京太郎「うおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!」 咲「!」ビクッ 京太郎「咲!超咲!魔王様!!!!!」 咲「京ちゃん、やっぱり...」グス 京太郎「はあはぁ」 咲「具合...大丈夫?」 京太郎(なるほど俺の目の前に咲がいていつの間にか長野県にいた) 京太郎(それがあの男が言っていた副賞ってやつでじゃあその副賞はどこまでが副賞なんだ?咲と会うだけか?) 京太郎(それとも一定時間咲の世界を体験出来るだけいやしかし寿命云々言っていたわけだからそれに) 咲「京ちゃん!」 京太郎「っ!あ、ああ。大丈夫だよ咲。俺は至って正常だよ」ニコ 京太郎「……で、俺は京太郎なわけだな?」 咲「当たり前だよ...本当に平気なの?」 京太郎「平気平気!……で、時期はいつ?一話?県予選前?それともアニメ最終回後?もちろん合宿のとこな」 咲「いち...?京ちゃん、今は県予選の団体戦後だけど...やっぱりどこか変だよぅ」 京太郎「咲!」 咲「?」 京太郎「好きだ!」 咲「!」ボッ 京太郎「よしまずは清澄高校だな、じゃあ咲!先に戻ってるから!」 咲「う、うんばいばい」テレ 【清澄高校】 京太郎「来た...来てしまった」 京太郎「土地勘が無いから交番で場所を聞いたけど、考えたら自分の通ってる高校の場所がわからないとか白恥もいいとこ」 京太郎「まずは...というか真っ先に行くべきは麻雀部!」 京太郎「のどっちに部長...タコスとワカメはまあどうでもいい」 京太郎「いざっ麻雀b」 ???「どっせぇーい!」 ドガーン!! 京太郎「痛ぁ!つぅかいきなり人の背中を蹴る人物なんて作中に一人しかいねえ!!!」 京太郎「くぉらタコス!」 優希「おはようだじぇー京太郎!」 京太郎「この野郎悪びれもせず...いや、これは明らかにリア充。京太郎、不憫だがやっぱ明らかに勝ち組だなお前」 優希「よーっし!部室までひとっとびだじぇー!」 京太郎「ちょっ肩に乗るな肩に!」 京太郎「あぁ首の圧迫感が最高だじぇ...」 優希「んー?どうした京太郎?」 京太郎「太ももの肉感が気持ちいいって言ってるんだ」 優希「なっ!...そうか!ようやくワタシの魅力に気付いたのか京太郎!」 京太郎「はいっ!太ももがやーかいですっ!」 優希「うーんなんか調子が狂うじぇー」 京太郎「ようやく部室に着いたな...」ゼェ 優希「これくらいでへたるなんてだらしない男だな京太郎!」 京太郎「うるせえよ...」 優希「うー、太ももが京太郎の手汗でベトベトだじぇ」 京太郎「ハァ、うるせえから、すこし黙って...」ゼェハァ 優希「よーし、皆おはようだじぇー!」 バンッ ???「こら優希、部室に入る時は静かにって言ってるでしょ」 優希「うっ...次からは気をつけるじぇ...」 ???「まったく、ソレを聞くのも何回目かしら」 京太郎「おぉ...」 久「アラ、おはよう須賀くん」 京太郎「うぉぉぉぉぉぉ!」バッ 京太郎「俺の女になれ!」キュイイイイン 久「んー?」 京太郎「ハッ」 京太郎「くそっアニメを間違えてしまった!」 京太郎「おはよざーっす部長!」 部長「おはよう今日も元気ね」 京太郎(時間制限があるならもたもたしてられんな) 京太郎「フラグの立て方を普段から確認してれば良かった...」 咲「おはようございます」 久「おはよう咲、じゃあ面子も揃ったみたいだし早速始めましょうか」ニコ 【結果】 久+12 優+7 咲+6 京-25 京太郎「俺は全国優勝者だぞ...」 久「負けてるのに終盤ベタオリってどういうことかしら」 京太郎(安パイだと思っても部長がアガるし、前半タコス強ぇし勝てねえ...) 咲「でも、京ちゃん強くなりましたよね」 京太郎「そうか?」 優希「少し驚いたくらいだじぇ」 久「まあ、いつもより考えれていたわね」 京太郎「ありがとうございます!須賀京太郎一生の幸せもんです!!!」 京太郎「いやー誉められるって嬉しいもんだな」ニコニコ 久「それじゃあ約束通り買い出しお願いね」ニコ 京太郎「負けたら買い出しでしたね...」 久「そうそう、買い出しついでに龍門渕に寄ってほしいの」 京太郎「どうしてですか」 久「個人戦後に他校が集まって合宿をしようって話になってね」 京太郎「合宿すか」 京太郎(たしかアニメでは龍門渕から一人も個人戦入賞者が出なかったんだよな) 京太郎(まあ知らねえやどうせ俺もいけねえし適当に済ませるか) 【ショッピングモール】 京太郎「買い出し買い出し...って、なんで普通に京太郎やってるんだ」 京太郎「元の世界には未練ないが、もし戻れるなら色々やって戻りたいし、そもそも戻れないならちょっとした恐怖じゃないだろうか」 京太郎「戻れないなら一生、須賀京太郎として生きるわけなんだから大人しく楽しんだ方が間違いはないし」ブツブツ ドンッ 京太郎「痛っ」 ???「すまない、話に集中してしまい不注意だった」 京太郎「いや...てかこの人一人じゃねえか、一体誰と話...」 京太郎「あっ」 京太郎「おいおい加治木ユミさんじゃないっすかー!」 加治木「なんだ、どこかで会っ...いや、なに?そうだ初対面だ。...本当に知らないんだ誤解しないでほしい」 京太郎「おいおい独り言ってレベルじゃねえぞ...」 京太郎(ここは離れるが吉、だな) 京太郎「それじゃあ僕はこの辺で」ペコ 加治木「ん?ああそれじゃあ...だから違うと言ってi」 京太郎「やべえガチだアレ」 ――……10分後 京太郎「桃ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 京太郎「オワタ...」 京太郎「なにが"離れるが吉、だな"だよ俺のアホ!」 京太郎「しかしステルスをこの身で体感出来たんだ、それだけで十分じゃないか」 京太郎「俺の咲ラン上位に会えただけでもOKとしようよ」 京太郎「落ち込んだ勢いで縞パンスクミズ白ニーソも買ったけどあいつら着てくれるかな」 京太郎「それは置いておくとして次は龍門渕か...痩せキャラはそんなに好きじゃないんだが顔見せくらいしておこうかな」 【龍門渕高校】 京太郎「でかい...」 京太郎「土曜だってのに結構生徒がいるなあ」 京太郎「龍門渕もウチみたいに部活で集まってくれてると良いんだが」 京太郎「しかしいきなり他校の生徒が入れるのだろうか、清澄の制服を着てるし...」 京太郎「変に怪しまれないよう龍門渕のメンバーが通るのを待つか」キョロキョロ 警備員『えー校門付近不審者発見』 透華「……で、どうして私が警備室に?」 警備員「この男が"龍門渕透華の知り合いである"と申したためお呼びした次第です」 透華「はぁ...」チラ 京太郎「 」ニコッ 透華「知りませんわ、警察にでも付き出しておやりなさい」 京太郎「ちょっ!待ってくれ透華!」 警備員「おい動くな!」 京太郎「俺は原村和から伝言を預かって来てるんだ!」 透華「原村和から?」ピク 京太郎「そうだ。伝言を伝えに来た俺にこんな仕打ちひでえよ!!!」 透華「……警備員、その男を離しなさい」 透華「いいでしょう、話は麻雀部部室で聞きますわ」 透華「なるほど、原村和が"私と"是非合宿を行いたいと」 京太郎「その通りです」 透華「分かりましたわ、合宿の件お引き受けしますと伝えてくださいまし」 京太郎「はいっ!」 透華「……」 京太郎「……」 透華「……いつまでいらっしゃるおつもり?」 京太郎「いやー...もう少しお話がしたいなぁと」 透華「もう貴方と話す事なんてありませんでしてよ」 京太郎「そう言わず...」 純「良いじゃねえか、丁度ハジメ達がいなくて暇なんだ」 透華「……私、少し席を外させてもらいますわ」 バタン 京太郎(実際龍門渕透華は咲ランでも下位のキャラ、帰っても問題はない) ガチャ 一「あれ、透華は?」 純「ああ、ついさっき出ていった」 一「ふーん...そこの人は?」 純「変質者」 京太郎「おいおいノッポさんお願いしますよ」 純「なにがだよ」 一「透華が帰ってこないと卓も囲めないし...」 純「ハジメ、そこの兄さんがお話をしたいんだとさ」 一「はあ...なにをお話します?」 京太郎「そうだなあじゃあ鹿児島の神代について」 一「鹿児島の神代ですか...」 京太郎「全国にいった時の参考にしたいんで」 一「なるほど、さすがマネージャーさん熱心ですね」 京太郎「いや一応選手なんだけど」 一「神代は...字一色をアガります。それも一局に何度もね」 京太郎「ふむふむ」 一「――…とまあこれくらいかな」 京太郎「なるほど参考になりました!」 京太郎(戻ったら暴露で神扱いだなwww) 一「じゃあ京太郎さんは麻雀を始めて間もないんですね」 京太郎「そうなんですよ...」 純「なに仲良くなってんだよ」 京太郎(あぁ女の子と話すのがこんなに楽しいなんて) 京太郎(でもこいつ百合属性持ちだよな) 京太郎(なに話しても楽しそうに聞いてくれるし) 京太郎(だけどフラグ立たないとか) 一「それでですね」 京太郎「もういいや」 一「?」 京太郎「チェンジで」 智紀(チェンジとかwwwwwバロスwwwww) 智紀「おはよう」 一「あっともきーおはよう」 純「うっす」 京太郎(眼鏡属性の無い俺がワカメの次に下位なキャラキター) 京太郎「はじめまして『変質者』です」 純「ハッハッハ」ゲラゲラ 京太郎(なにくだらないことしてんだよ) 智紀(リア充乙) 純「おっ面子揃ったんじゃないか」 一「そうみたいだね」 智紀「それじゃあはじめる」 京太郎「俺も入ってるんですね」 京太郎(ともきー想像通り大人しくてワロタ) 智紀(こいつら強えんだよwww初心者っぽいやついるし俺負け試合確定ワロチwwwwwもはや消化試合の様相wwwwww) 【結果】 純+22 一+ 6 智- 8 京-20 純「弱えなマネージャー」 京太郎「マネージャーじゃねえよ」 一「京太郎さんやっぱりマネージャーなんじゃ」 京太郎「ほっとけ」 智紀(この弱さww横浜乙wwww) 京太郎「もう帰るわ」ガタ 純「もうそんな時間か」 京太郎「楽しかったわ衣によろしくな」 純「じゃあアド交換しようぜホラ赤外線でちゃっちゃとな」 京太郎「……」 純「ちゃんと三人の入れといたから暇な時にでもメール寄越せ」 一「じゃあ、またね」 智紀「……また」 智紀(リア充の行動力パネェww) 京太郎「ああ、またな」ガチャ 京太郎「……」ジーン 京太郎「あ、涙出てきた...」 京太郎「いやー彼女いたためしも無いし、イジメ受けてたくらいの俺がこんな楽しい暮らしをおくれるとは」 京太郎「……なんか死にたくなってきたな」 京太郎「……」ブンブン 京太郎「いよーっし!頑張るぜ俺は!!!目標は女の子と...どうしよう」 京太郎「セクースはチョモランマレベルで高レベルすぎるし」 京太郎「中学生から女の子と話してないからよくわかんねーや!」 京太郎「この町にはイジメっ子もいないしいいトコだなあ」 京太郎「……俺って本当駄目な人生だったな...」 京太郎「なんで咲の世界にいるのにこんな辛い事思いだしてるんだろ」 京太郎「ダメなやつはなにやってもダメなんだよ」 男「お目覚めになられましたか?」 俺「ハッ?」 男「記録は...半年と2週間でしたね」 俺「俺は...」 男「死因は自殺です」 男「いや、中々頑張ったと思います。現にSEXまでいったじゃないですか」 男「機会があればまたお呼びいたしますよ」 男「ちなみに今までチャレンジした人数は貴方を含めて55人です」 男「ここまで進めたのは貴方だけですよ?貴方以外のチャレンジャーは20人は咲-saki-のキャラと関係ない人物と結婚をし、寿命を全う」 男「他の33人は貴方同様自殺です」 男「ですが先ほども申した通り咲-saki-のキャラとSEXまでいったのは貴方だけです」 男「貧乳は嫌いだと申されていたはずですが...フフフ」 男「自殺の理由はs」 俺「SEXSEXうるせえんだよ!!!!!!」 男「……では、またSOGAの咲-saki-カップへの参加お待ちしています...」 俺「そうか...やっぱり死んだのか俺は...」 俺「やっぱりダメなやつはなにやってもダ...いや、ロリひんぬー最高ぉぉぉぉぉ!!!」 俺「よし、第二回の開催に向けてMJをやりまくるぞ!」 男『S○GA、MJ咲-saki-カップ上位陣には副賞が与えられます。皆々様奮ってご参加お願いします。 10月3日現在、第二回開催の日取りは未発表』 了 ???「あいつ...死んだのかな」 ???「失踪してから2週間、ホームに飛び込むのを見たって人もいるけど死体は見つかってない」 ???「……」グス 加治木「おや...」 ???「……」 加治木「君も献花を?...そうか、まだ忘れるなんて無理な話だよな」 ???「放っておいて」 加治木「おや、いつもとは話し方が違うじゃないか。もっと明るいほうが」 スッ 桃『先輩』 加治木「桃」 桃「そうっとしておいた方が良いっすよ」 加治木「……では、私はこの辺で帰るよ。……こう言っては残酷かもしれないが――生きているといいな」 ???「……ぁりが、とぅ」グスッ アイツは今、どこにいるんだろう。天国にいるのだろうか――生きているのだろうか。 俺「……」ジャラジャラ 俺「ゲーセンも飽きてきたなぁ」 俺「……クリアしてないせいかわからないが、向こうの世界の事をよく覚えていない」 俺「咲カップも今は開催してないし...どうやって戻ろうか」 男『こんにちわ』ヌッ 俺「ひっ!」 俺「ってお前...貴方は」 男「突然すみません、こっちで貴方に再びチャンスを与える話が上がっていまして」 俺「ま...本当か!?」 男「ぬか喜びにならないように、決まってから報告に来ようと思ってましたが」 俺「で、……いつ行けるんですか?」 男「早ければ明日です」 俺「そうか...そうか」 男「早い方が良いんですよ」 男「貴方がいた世界は、貴方が戻ってきた時点でリアルタイムで時間が進んでいます」 俺「ということは...」 男「まあ向こうでは2週間立っているという事です。相手の子も心変わりして他の男性と付き合っているかもしれませんね」 俺「そんな」 俺「待てよ」 俺「俺はどの子と仲良くなったんだ」 俺「この前の話を聞くにひんぬーキャラである事は推測できるんだが」 男「時間もありませんしその話は」 俺「早くても明日なんだろう!教えてくれよ!今咲ラントップは衣たんなんだが?」 男「……ひどい男ですよ貴方は」 俺「oh...違うのか?おい違うのか??」 男「……」 俺「遠くを見るなぁぁぁぁぁぁ」 男「冗談はこの辺にして、私も忙しい身なので失礼させてもらいます」サッ 俺「速っ...リアルハギヨシかよ」 客A『おいなんか咲-saki-の世界に行ったとかいうやつが来てるみたいだぜ!』 客B『はいはい結局関係ない他のキャラと結婚したってやつなww』 俺「……」 ピザ『だからよーマジで無理ゲーwww』 客A「そんなに無理なのか?」 ピザ「いや存在自体は京ちゃん(笑)なんだけど相手は普通の女の子なわけだからもう無理でしたww」 ピザ「俺がまともに話せるわけないしwww少し触っただけで変態扱いだしwwww」 客B「でも80の大往生だったんだろ?」 ピザ「話によると上位者は大体行けたらしいから他のやつらに聞けww」 ピザ「まあこれも聞いた話だけど俺を含めて26人が挑戦して咲-saki-のキャラを落としたやつゼロwwwwwはい無理ゲー」 ピザ「しかも向こうで自殺するやつもいたって話だしww」 ピザ「はじめにキャプテンの胸触って変態扱い→総スカンとかヒドスwwwww」 客A「向こうの奥さんとの記憶はあるんだ?」 ピザ「寿命エンドはクリアだから一応覚えてるが、咲-saki-キャラとのトゥルーエンドの場合は行ったり来たり出来るようになるってよ」 客B「早く第二回開催しろよSOGAw」 俺「あの野郎、俺にはなにも話してねえんじゃねえか」 【当日】 俺「で、結局あれから2週間で結果1ヶ月離れた件について」 男「まあ、これでも十分早くした方なので」 俺「そうか...」 俺「で、向こうに戻ったら記憶も元に?」 男「今のまま、記憶は戻りません」 俺「じゃあ他のキャラを好きになったら」 男「それはそれで特に問題のある事とも思えませんし」 男「相手から言ってくるんじゃないでしょうか?」 俺「そうか、向こうから近寄ってきてくれるよな」 俺「お願いします...」 ギュイイイイイイイイイインッッッ 京太郎「うーん...」 ???『……』タラ 京太郎「ここは...」 ???『……だしっ』 京太郎「うわぁっお前は...」 池田「須賀だしっ!」 池田「コーチ...いやキャプテン呼んでくるしっ!」ダダッ 京太郎「コーチよりキャプテンが先とか...」 女子A「須賀くん!」 女子B「なんで須賀さんが!?」 京太郎「えっと...どちら様で?」 女子A B「!」 女子A B「まさか記憶喪失」 福路「京太郎さん!」 京太郎「美穂子ちゃ」 女子A「キャプテン!須賀くん記憶喪失で...」グス 京太郎「いやいや」 福路「そう...でも生きて戻ってくれて嬉しいわ」グス 池田「キャプテンが泣くからアタシまで...うえーん」 京太郎「ついていけねえ...」 【風越学園】 京太郎(まあ記憶もないわけだし...) 福路「よかった、本当によかった」 京太郎(今はこの状況よりも個人戦、果ては全国大会の結果が気になるんだ) 京太郎「あのー...福路さん?」 福路「本当に記憶を失ってしまわれたんですね」シク 池田「でも名前は覚えているみたいですよ」 ツンツン 京太郎「つつくな池田ァァァ!」 池田「ひっ」ビクッ 福路「京太郎さんっ」 京太郎「すみません...」 京太郎(一度でいいからやってみたかったんだよな"池田ァァァ!") 福路「ソレ、やめてくださいって言ったはずで...でも記憶を失くされたんですから怒っても京太郎に悪いですよね」シクシク 京太郎(俺、やっぱりやってたのかコレ...) ピーポーピーポー…… 京太郎「んっ?」 福路「救急車です。本当は発見した場所からも動かしてはいけなかったんですが」 京太郎(そうだよな、1ヶ月行方不明だったら心配もされるよな) 【病院・病室】 京太郎「とりあえず絶対安静、と」 バタンッ! 久「須賀くん!」 京太郎「部長...それに清澄の皆」 バッ 咲「京ちゃんっ!」 優希「京太郎!!!」 まこ「二人とも、嬉しいのはわかるか、相手は病人じゃけえ抱きつくのはよしぃ」 部長「お医者様の話だと健康そのものらしいけどね」 京太郎「皆...こんなに心配してくれてありがとう」 京太郎(はじめて会ったのにはじめてな気がしないなあ) 京太郎「……で、いきなりで悪いんですけど」 一同「?」 京太郎「俺の彼女って誰ですか?」 まこ「ぶっ」 久「フフフ、あーおかしいわ。さすが須賀くんね」 和「はじめての会話がそれですか」フフ 京太郎「あれー...どういう意味でしょうかその反応は」 優希「京太郎に彼女なんてありえないじぇ~」 咲「久しぶりなのに京ちゃんったら」 京太郎(この中にはいないのか...まあウケてるみたいだし今はこれでいいか) 京太郎「悪いないきなりこんな事聞いて」 入院生活は3日で終わったがその後も警察やらの事情聴取でしばらくはまともに家を出る事が出来なかった。 そして俺は家の中、自室のベッドの上で携帯とにらめっこをしていた。 京太郎「うーむ、番号リストを見るに大分他校の生徒とも繋がりがあったらしい」 京太郎「龍門渕メンバーのアドなんてどうやって手に入れたんだ俺...きっと何ヶ月もかかったに違いない」 京太郎「履歴は...おわっ」 京太郎「咲とタコスはわかるとして龍門渕のハジメにみはるん、文堂さんまで」 京太郎「おいおいどんだけだよ...」 京太郎「あれだな、なにが恐いって失踪前にやり取りしたメールが全部消されてるところだよな...」 京太郎「とりあえず明日から外を歩いて色々情報を入れていくか」 【ショッピングモール】 京太郎「なんとなくこっちから連絡もしづらいし、足で情報を確保するのは昔からの常識だろう」 ドンッ 京太郎「痛っ」 加治木「すまない、話に夢中‥お前は」 京太郎「おおー!加治木さんじゃないですか!」 加治木「清澄の須賀...そうか、もう出歩いて大丈夫だったんだな」 京太郎「いやーお騒がせしてすみません...そういえば加治木さんとはアドレス交換してませんでしたね」 加治木「あ、ああ」 京太郎「交換しましょうよ!」 加治木「……問題はないが...まて、他意はない。アドレスの交換くらい...それはお前の推測...」 京太郎「加治木さん?」 加治木「ちょっと待ってくれ...だからな、なんで須賀と会うとお前はいつも...」 京太郎(あぁ可哀想な人なんですね加治木先輩...) 京太郎「いやいいです、またの機会にでも」 加治木「そ...そうか」 京太郎「じゃあ僕はこれで」 加治木「またな京太郎」 ――…10病後 京太郎「おおっと桃桃ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 桃「!」ビクッ 京太郎「いやーなんかビビッときたよ今!」 桃「……っス」 京太郎「おぉまだ見えねぇ声は聞こえるのに!不思議!」 加治木「……なんだ桃、お前は名前で呼ばれるくらい仲が良いみたいじゃないか」 桃「ちがうっス先輩!この人とはなにも」 加治木「……なあ京太郎、記憶を無くしているみたいだから言っておくが君は私をユミと呼んでいたぞ」 京太郎「マジっすか!やるな俺」 ???『ワッハッハ珍しいやつがいるなー』 京太郎「ワハハさん!」 蒲原「おっなんだいつも通りじゃないかー」 加治木「いや、一応これでも記憶を無くしているらしい」 京太郎「ワハハさん!」 蒲原「ワッハッハなんだ京太郎」 京太郎「俺って誰かと付き合ってたりしました?」 蒲原「ブッ」 蒲原「ワッハッハ面白い事言うなーお前は」 京太郎「またその反応ですか...」 加治木「京太郎」 京太郎「はい?」 加治木「誰も名乗り出なかったのか?」 京太郎「彼女...ですか?いえ」 加治木「……」 桃「先輩?」 加治木「ふむ、蒲原。私達も早くカラオケに行こう」 蒲原「おいおい待てよユミちん~」 京太郎「?」 京太郎「今日は土曜だったな」 京太郎「……誰かに電話してみるか...」 京太郎「こうしてみると見事に女友達のアドレス数が男友達と同じくらいあるって考えると凄いな...」 京太郎「じゃあどうしようか...衣たんのアドレスがない以上...」 ピッ プルルルルルプルルルルル ピッ 一「は、はい国広です」 京太郎「ええ...と国広さん?」 一「……はい」 京太郎「あの...携帯に結構履歴が残っていたのでそれなりに交友があったのかと思って電話したんですけど」 一「……はい、間違っていません」 京太郎「よかった!」 一「あの、電話先で話すのもなんなのでお合いしませんか?」 京太郎「!はっはい」 京太郎「では...はい、11時に駅前の...はい」 京太郎「失礼しまーす」 ピッ 京太郎「完璧営業先相手のトークだったぞ今の会話」 京太郎「会って衣の番号を聞くか!」 プルルルルルプルルルルル 京太郎「おっ」 ピッ 京太郎「もしもし?」 京太郎「ああお前か」 京太郎「んっ?なにがだよ」 京太郎「はあ」 京太郎「11時から予定があるな」 京太郎「お前も来るか?」 京太郎「ええと龍門渕の国h」 ブツ 京太郎「あっ」 京太郎「切りやがった...」 京太郎「まあいいか今度あった時にでも謝るなりすれば」 京太郎「出掛ける服装は……まあ別に意識するような相手でもないし普通でいいだろ普通で」 京太郎「おはようっ」 一「ふふ、時間的にはこんにちわ、だね」 一「ねえ須賀くん」 京太郎「んっ?」 一「記憶ってどこから無くしてるの?」 京太郎「ええ...と、君とアドレスを交換した記憶は忘れているかな」 一「初めて会った日の事を忘れているのか...」 京太郎「初めて会ったその日にアド交換したのか?すげえな」 一「まあ純のおかげだったりするんだけどね」 一「じゃあ改めて、」コホン 一「はじめまして須賀くん」 京太郎「はじめまして」 一「アタシは京太郎って呼ぶし君もハジメって呼んでほしいな」 京太郎「わかったよ...ハジメ」 一「うんっ」 京太郎(百合キャラと仲良くなってもあまり意味ない気がするなぁ) 一「じゃあどこにいく?」 京太郎「そうだな...って、透華は一緒じゃなくていいのか?」 一「……透華がいた方がいい?」 京太郎「いや意外だなぁと思ってさ、ハジメって透華好きだろ?ガチで」 一「!」 京太郎(初めて会った時の記憶もないのにこれだけの事を言って大丈夫なのか) 京太郎「ハジメとは仲が良い友達だって思って聞くけど、男と女どっちが好き?」 一「う...ぁ」 京太郎「"どっちも"は困るな」 一「……オト...」 京太郎「いいや無理しなくても!」 一「京太郎...」 京太郎「俺達は親友だろ?友達がレズビアンだろうが関係ないぜ!」グッ ガッシャーンガラガラ... 京太郎「さあ遊びに行くか!」 京太郎「ん?おいハジメ!はやく来いよ!」ニコッ 一「なんでこの場面で過去最高の笑顔作れるかな...」 京太郎「カラオケでもボーリングでもどんときなさいだぜ!」 一「あー...うん、やっぱりいいな」 一「今いくよ!」 京太郎「来いよ親友!後で天江の番号教えてくれよな!」 ガッシャーンガラガラ... 京太郎「さっきからなにかが折れる音が聞こえるなあ...」 京太郎「いやー楽しかったー!」 一「もうこんな時間...」 京太郎「そうだな、少し名残惜しいな...どうだ?家に泊まっていくか!」 一「えっ?それって...」 京太郎「ダメか?」 一「……」ブンブン 京太郎「良いのか?」 一「……」コクッ 京太郎「いぃよっし!今日はスマブラ大会だー!!!」 京太郎「そうと決まれば人数集めないと...あーそうかお互い知り合いが良いよな!」 京太郎清澄鶴賀風越は俺に任せてくれっ龍門渕はそっちに任せた!」 一「……」ハァ 一「そんなに人数集めるなら京太郎の部屋じゃ少し狭いと思うよ、透華に頼んでウチでやろうよ」 京太郎「おぅ!よく気が利くな!じゃあそっちの手筈も頼んだぜ!」 京太郎「また後でな~」ダダッ 一「……ふー」 一「かわいいなまったく」 【鶴賀】 津山「合宿とは久しぶりですね」 妹尾「半年ぶりです~」 桃「どうしたっスか先輩?」 加治木「いや...麻雀ならOBとしても喜んで参加するのだが、些か私はゲームというものに疎くてな」 蒲原「ワハハーユミちんはゲームなんてやった事ないだろう」 加治木「いや...」 蒲原「んっ?もしかしてあるのかー」 加治木「そうだな...上からスライムが落ちてくるゲームなら」 桃「今日集まってやるのはなんのゲームでしたっけ」 妹尾「たしかスマブラという格闘ゲームです」 蒲原「どうだユミちん?」 加治木「……」フルフル 妹尾「ダメですかぁ~」 桃「辞退しますか?」 加治木「ダメだ、引き受ける」 桃「どうしてっすか?」 加治木「津山を見ろ...」 津山「~♪」ホワ~ 桃「部長のあんな浮かれた顔初めて見るっす」 蒲原「むっきー...」 加治木「鶴賀は参加だ」 【風越】 福路「ゲーム大会...」 池田「麻雀じゃあキャプテンに勝てないからって...これが清澄のやり方だしっ」 深堀「私は指をカチャカチャやるのは苦手で...」 池田「関取の太い指じゃAもBも同時押しだしっ」 文堂「あたしもちょっと...」 美春「あ、あたしも...」 池田「じゃあ風越は...」 福路「……ええ、今回はすみませんが辞退、ということで」 【龍門渕】 透華「ウチでゲーム大会ですって?」 一「うん...駄目かな?」 透華「皆さんの寝室の確保には困りません、しかしお泊まり会というのは初めてですし...」 純「なにが"お泊まり会"だよ、ガキかお前は~」 透華「透華以外は全員参加のつもり、後は透華の意志次第」 衣「ゲーム!ゲーム♪」 透華「皆していじわるですわ」 透華「……わかりました。龍門渕透華はこの提案お引き受けいたしましてよ」 一「透華!」パァ 一「ありがとう!」 ダキッ 透華「あ、当たり前でしてよこるくらい」アセ 純「照れてる照れてる」 智紀「当たり前でしてよこ"る"くらい」 透華「ともきー!」 【――清澄】 久「ゲーム大会...」 まこ「キューブのじゃな」 和「私はやった事ないのですが...」 久「大丈夫よ和。鶴賀の大将も初心者らしいし現地で覚えればいいじゃない」 和「はぁ...」 咲「あたしもよくわからないし一緒に覚えようよ原村さんっ」 和「――ッ!は、ハイ」ニコ 優希「全国の高校生...いや、日本には私の敵はいないっ!」 京太郎「お前ゲームならなんでも得意そうだなぁ」 優希「京太郎がスマブラやるっていう事は64か?」 京太郎「よくわかったなそうです64スマブラです」 まこ「スマブラはキューブかXじゃろう、のう久?」 久「いや、スマブラは――64よね!」ビシッ まこ「誰に向かって言っとるんじゃ...」 【龍門渕邸】 透華「えー皆様、今夜はようこそ我が龍門渕邸にいらっしゃいました」 加治木「明日は休日だからといって就寝時間をあまり遅らせないようにな」 久「じゃあっ皆4チームに別れたわね?」 桃「現部長には悪いっすが鶴賀の代表は加治木先輩っスね」 蒲原「ワッハッハ別に気にしてないみたいだぞー」 津山「黒ファルコン黒ファルコン...」 久「それじゃあっ第一回龍門渕邸スマブラ大会はじめるわよー!」 一同「おー!」 ~ライフ3~ Aブロック 1.優希2.純3.津山4.智紀 Bブロック 1.まこ2.妹尾3.蒲原4.久 Cブロック 1.一2.和3.透華4.桃 Dブロック 1.咲2.加治木3.衣4.京太郎 【Aブロック】 1.優希2.純3.津山4.智紀 優希【リンク】「負けても吠え面かくんじゃないじぇー!」 純【ファルコン白】「まあ龍門渕メンバーはやりまくってるからな、正直俺かともきだろ」 智紀【ドンキー】「勝つ」 智紀(ファルコン変態スーツ乙ww) 【結果】 1.津山【黒ファルコン―撃墜数8―】 Bブロック 1.まこ2.妹尾3.蒲原4.久 まこ【ネス】「県大会の借り、ここで晴らしちゃる」 妹尾【サムス】「練習はしましたけど...」 蒲原【フォックス】「こいつ強いと思ったのアタシだけかー」ワッハッハ 久【ピカチュウ】「うーん、まあなんとかなるでしょう」 【結果】 1.久【撃墜数―6―】 Cブロック 1.一2.和3.透華4.桃 一【青カービィ】(練習を見る限り透華以外は素人だな) 和【ファルコン】「理論じゃスピードがある方が有利です」 透華【黄ネス】「目立ってなんぼですわっ」 桃【ピンクカービィ】「はー使い安いのはこの子っす」 【結果】 1.透華「途中でカービィが消えましたわ...」【撃墜数―5―】 Dブロック 1.咲2.加治木3.衣4.京太郎 咲【プリン】「皆上手いなあ」 加治木【赤プリン】「このモンスターの目はやる目だ」 衣【ピカチュウ】「ころものピカチュウが最強だ!」 京太郎【青カービィ】「ピカチュウ以外は初心者のプリンか...先にピカチュウだな」 【結果】 京太郎【撃墜数―6―】 1.津山【黒ファルコン】 2.久【ピカチュウ】 3.透華【黄ネス】 4.京太郎【青カービィ】 桃「麻雀の上手さなんて関係ないってわかるっスね」 蒲原「ワハハむっきーの試合は画面よりもコントローラー見てる方が面白いゾ」 加治木「――で、出来るやつらからするとこの中で勝ちそうなのは誰なんだ?」 一「ピカチュウとネスの当たり判定は鬼だけど...」チラ 純「ファルコンって上手いやつが使うと更に強いんだな...」 智紀「第二回開催の時はアイツを外すべき」 加治木「……はあ」 【実況省略――結果】 1.津山【黒ファルコン―撃墜数8―】 久「いやー...強いわね」 透華「ぜんっぜん目立ちませんでしたわ」 京太郎「井の中の蛙ですね、わかります」 蒲原「じゃあ優勝者には京太郎からの熱いキッスが...」 津山「ええぇぇぇ!」 衣「なにっ!?接吻か!」 透華「衣は見ちゃいけませんわっ」 津山「――」グルグル 蒲原「ちなみに譲渡可能です」 津山「!」ハッ 津山「はいっ!」 ポス 加治木「いや...肩に手を当てられても...」チラ 京太郎「初耳もいいとこだぞ」 加治木「いやー困るな」ニヘ 加治木「じ、じゃあこの権利はポケットに...」 桃「駄目ッス!」タッチ 桃「はいっ!」 ポス 透華「ええぇ嫌ですわっ」 透華「誰か!誰か...アラっ」 一「……?」 透華「タッt......いや、出来ませんわ」 ポス 純「おい俺かよぉぉ!」 ワーワーキャーキャー 京太郎「あー学生の頃も似たような目にあったなぁ...その時はウイルス源だったけど」 まこ「ほいっ」 ポス 優希「あっ」 京太郎「おっ優希か!もう観念するんだな」 優希「旦那の欲望を受け止めるのが妻としての役目だじぇー!」 ダッ 京太郎「うわっ!?」 ドスン ちゅー 久「アラ...」 まこ「悪ふざけも大概にしぃ」笑 加治木「おっと...」 加治木「……おっと...」 桃「はい二度見しても現実は変わりませんよ先輩」ニコ 透華「あっ...」 純「バカだなアイツら」笑 智紀(リア充ノキワミアッーwww) 一「……」 京太郎「おまっちょっ」 優希「若い性を堪能したか京太郎!」 京太郎「なに笑ってんだよ俺のファーストキスかえせ!」 久「えっ」 咲「京ちゃん...」 透華「だれかー衣の耳もふさいでくださいましっ!」 加治木「おやおや...」 シーン…… 京太郎「悪かったな童貞でぇェェェうわぁあぁぁぁん!」ダダッ 桃「逃げちゃったス」 まこ「皆露骨に引きすぎじゃあ」 津山「いや、貞操観念の緩い時代に見事な男です」 純「あーもうワタシお嫁にいけないってか」 一「じゃー誰かが貰ってあげないとね」 京太郎「なんだよSEXしてる方が偉いなら誰か漢にしてくれよ...」 『京太郎』 京太郎「……」チラ 京太郎「お前か、今は放っておいてくれ。俺はあそこの大きい池に入水じさ...いや、それだけは冗談でも言っちゃいけないな」 優希「京太郎!」 京太郎「……どうしたんだやけな真剣な顔しt」 バッ 京太郎「重い重いー...んっ」 京太郎「……なに泣いてんだよ」 優希「……」ヒック 優希「泣いてなんかない、じぇ」 京太郎「なにを強がってるんだよ、泣きたいのはこっちだよ大事なファーストキスを」 優希「はじめてなんかじゃないじぇ」 京太郎「?」 優希「さっきのは京太郎のファーストキスじゃないの」 一『……』 京太郎「なんだよソレ」 京太郎「だって実際さっきのが初め...」 京太郎「……」 優希「気付いた?」 京太郎「お前はそれを知ってるんだな」 優希「……」 京太郎「そうか、付き合ってたんだもんな」 京太郎「キス以上もしたわけで...」 スッ 優希「!」 京太郎「全然ダメだな俺は、あまりにも遅すぎだ」 ギュ 京太郎「わるいな優希...」 優希「……」ヒック 京太郎「泣くなよ、悪かったってこれから思い出していけばいい」 『そんな結末こそ全然ダメだね』 ガラッ 久「あらおかえり京太郎K...」プッ まこ「いやー災難じゃったn...ダメじゃ...」プッ 久「アッハッハ京太郎さっきのは気にしないで先に進みましょうよ!」 まこ「ガハハじゃけえ童t...いやなんでもないわ」ブブッ アッハッハ!ゲラゲラ! 京太郎「最悪じゃねえか清澄...先輩達だけだぞ爆笑してんの」チラ 純「うっ」サッ 京太郎「……」チラ 鶴賀一同「……」クッ 京太郎「んだよー!笑えよ笑いたきゃ笑えばいいだろー!!!」 アーハッハゲラワラwwwww 京太郎「なんか笑い屋につられて笑う客の気分がわかるくらい見事な爆笑っぷりだ」 京太郎「んっ」チラ 一「……」 京太郎「ハジメは笑わないのか?」 一「どうして?」 一「好きな人が綺麗な身体だってわかって嬉しいくらいだよ」 ―― 今のは、聞こえたぞ この場にいる全員に。 京太郎「んっ?ああそうだな」 一「うんっ」ニコ 久「さぁておトイレはどこかしら」 まこ「連れションじゃわしもいくわ」 純「じゃあ俺が案内する」 純「ホラ透華もだ」 純「皆いくぞー」 ゾロゾロ バタン キャーキャー ――さすがに年頃の女の子なだけあって恋愛話には弱いらしい、 きっと今も何人かはドアに耳を当てて聞き耳を立てているんだろう。 京太郎「あのぅハジメさん」 一「ボクはハジメって呼んで。そう言ったはずだよ」 京太郎「ああ、ハジメ――今のは」 一「好きだよ、京太郎」 京太郎「――」 一「愛している」 京太郎「――まあ、」チラ 優希「……」 一「あれ?どうして片岡さんは残っているのかな」 京太郎「……ええと」 一「返事を聞きたいな」ニコ 京太郎「正直、さっきまでだったら嬉しかったと思う」 一「本当?」パァ 京太郎「だから――さっきm」 一「記憶を失う前の事なんて関係あるの?」 京太郎「!」 一「ただ記憶を失う前は片岡さんの方が先に出会っていた分アドバンテージがあった」 一「で、記憶を失ってからはボクとこうして遊んでくれて――事実ボクに好意を持ってくれてる」 一「今の気持ちよりも過去の方が優先なんだ」 一「さっきまでなにも思ってなかった子と、繋がりがあったと分かったら一番になっちゃう。それでハッピーエンド。そうなんだ」 京太郎(――事実すぎる) 優希「……」 一「ボクは、悲しいよ?すごく、泣きたくなる」 加治木「ちょっと待ったー!」 バタン 桃(*1) 久(*2) 透華(*3) 加治木「ここは第三者の意見が必要だと思う」 加治木「当事者達は頭に血が上って冷静な判断が出来ないと見た」 加治木「私はそう――だな、どっちもダメだ!」 純「すげえなあの女」 智紀「のぼせる皆の目を醒ました彼女がある意味一番冷静なのかもしれない」カタカタ 京太郎「今日は……」 一「一旦中止にするよ。また二人で遊びにいこうね」 京太郎「はは、」チラ 優希「……」ムー 加治木「女に脅されてるから手を出せないという理由が一番不安定でダサい」 純「はい一2.0タコス2.5~」 透華「そこっ賭けないっ!」バンッ 桃「先輩~」ヒック まこ「誰じゃ酒を持ってきたのわー!」 久「いや~良い気分ね!」ヒック 和「これはひどいですね...」 咲「みんな楽しそうだし、良いと思うな」 和「宮永さんがそう言うなら...」 智紀「就寝時間に下着写メして2ちゃんにうpしよう」カタカタ 京太郎「あーどうしようか」 加治木「決着はキチンとつけろよ」ニッ 京太郎「一人部屋は寂しいなー!」 京太郎「旅館の部屋よりも広いところで布団を敷いてねるなんて寂しいなー!」 久「隣から声が聞こえてくるんだけど...」 透華「我が家の壁を通り抜けるなんてどんな大声で愚痴ってますの?」チィッ ウッフキャハハ 久「こっちはこっちで恋バナに花が咲いてるしね」 透華「みんなお子さまですわっ」 京太郎(真剣に考えると大変な事だよな、嬉しい悩みではあるけど) 京太郎(それに、俺が命を絶った理由ってのも謎だし...恐ぇななんか) 京太郎(部屋もバカ広いし余計恐い...) 京太郎(無理言って向こうに入れてもらおうかな) 京太郎「失礼しまーす」 ガチャ 京太郎「こっちで寝させてもらえないでしょうか」 シーン イイヨ 京太郎(なんでシーンとしてるんだ、そしてなぜOKだしたヤツは声色を変えて返事をする?) 京太郎「了承を得たので入りますね...後で怒らないでくださいよ」 オコラナイヨー 京太郎(だから誰だよさっきから) 京太郎「じゃあドア側の布団に入りますよー」 ダメー 京太郎(おぅふ、今度は以外と近くから聞こえてきた...暗闇でよく見えんがコイツからは拒絶されてるのだろう) 京太郎「じゃあドコなら良いんですかー」 マドガワー マンナカー ドアマエヒダリハジー 京太郎(腹立ってきた...) 京太郎「じゃあドア前の左側に入りますよー」 京太郎「失礼しまーす」ボソ 京太郎「んしょっと」ゴソ 京太郎「少し詰めてくださいねー」 グッ 京太郎(くそ...全然動く気無いなコイツ) グッ 京太郎「ちょっと、誰かわからないですけど少し向こうに寄ってください」ボソ ???「うーん」ムニャ 京太郎(寝とるー!?) 京太郎(どうしよう、考えるんだ...そうだ少し押そう) グッ、スポ 京太郎(あぁっ手が浴衣の中に...) 京太郎(相手によってはラッキースケベで済むんだが...) ムニュ 京太郎(この弾力はあの二人のどちらでもねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!) ムニュ...ムニュ 京太郎(こっこれはー!) 京太郎(経験があるとはいえ実質童貞の俺には刺激が強すぎる!) モニュ ???「ぁん...」 ザワザワ 京太郎(うぉーい!声を出さないでくれえー!) 京太郎(だが気持ちよすぎて俺の左手が止まらない) ???「……んっ...ぁ」 ザワザワザワザワ 京太郎(駄目だ俺!抜くんだ左手を!!!) スッ ???「……スゥ」 京太郎「ふぅ……」 ???「ん……ふわ~あ」 京太郎(起きたー!) ???「むにゃ...どうして須賀がここにいるんスか?」 桃「ふにゅ...というかアタシは...たしか先輩に胸を揉まれていて...」 京太郎(寝ぼけて全部口に出してる!) クスクス コラッ、モモー 京太郎(注意してるやつはなんとなく誰かわかるな...) 京太郎(ここは危険だな...どこかに入らないと寒い) 京太郎(後は真ん中と窓側だな) 京太郎(ここは入りやすい窓側に決めた) 京太郎(桃。一応お礼は言っておく、本当ごち...ありがとうございました) 京太郎(窓側...なんか変則的な配列だな) 京太郎「失礼しまーす」 スッ 京太郎(おっ誰もいない) 京太郎(一人分開けてくれたのか...優しいなあ。明日起きたら誰誰か確認しよう) 京太郎(これで大人しく寝r) サワ... 京太郎(んっ?) サワ ツー 京太郎(誰だふくらはぎから徐々に上へ触るやつは!?) サワ... 京太郎(いやっ声が出ちゃうっ) 京太郎(……じゃねえよ、痴漢にあった女性の気持ちがわかるな、おっかねえ) モミ... 京太郎(マジで誰だコイツ尻を触るなよ) 京太郎(左側だな...) 京太郎(悪ふざけだろうし少し無反応でいたら飽きてやめるだろう) サワ サワサワ ツー... ギュッ 京太郎「ぁっ」 ザワザワ 京太郎(チィィィ!声が出てしまった...つうかモロに触りやがったぞ) 京太郎(この野郎...いや女か) スッ 京太郎(浴衣の下側に手を...直接触る気か?大胆すぎるだろコイツ...!) 京太郎(いまだっ!) ガシッ ???(あっ...) 京太郎(捕まえたぞ...引っ張って誰か確かめてやる) ズッ... 京太郎(髪の毛が見えてきた...) ズッ... 京太郎(……) ???「……スマナイ」ボソ 京太郎(なにやってるんすか加治木さん...) 加治木「いや、その、な?これくらいの事をしていれば更に仲良くなれるとだな...」ボソ 京太郎(どんな超理論だよ...) 京太郎「じゃあ、逆にこっちが触っても良いってわけですね」ボソ 京太郎(まあこれで大人しく引き下g) 加治木「……」コクン 京太郎(なぜ斜め下を向いて頬を赤らめるー!!!) 京太郎(駄目だ...結構美人だから襲ってしまいそうだ) 京太郎(ここは大人しくこちらから引き下がろう) 京太郎「もうやめにしてくださいよ...」ボソ 加治木「……いやだっ」 京太郎(くっ、この女...) 京太郎(もうキレた) 京太郎(じゃあ触りますよ...) モミッ 加治木(んっ...)ピク モミモミッ 加治木(……んっ)ピク 京太郎(声を圧し殺して我慢とはなんて嗜虐心を煽るんだ) 京太郎(ひひ...じゃあ生で) スッ 京太郎(んっ?それにしてもやけにハッキリ見えるなあ) 京太郎(!) 京太郎「あっ...」 久「電気が付いてると良く見えるでしょう?須賀くん」 京太郎「これは...誤解...」 久「……ハァ、その浴衣に突っ込んで今にも揉みしだこうとしている手はなに?」 透華「龍門渕の屋敷内でこのような下劣極まりない行為...万死に値しますわ」ワナワナ 京太郎「加治木さん!貴女からも理由を説明してくれ!事実を!」 加治木「"いいのか...?"と聞かれたので"……コクン"と応えた」 京太郎(確かに事実だけどもー!その前らへんを詳しく!) 優希「ありえないじぇ……」 一「さっきの今でこれですか、言ってくれたらボクが応えてあげるのに」 京太郎(……ハッ!この二人よりも大きな殺気が後ろに...!) 桃「……」 京太郎「いやっこれは...ちがっ」 桃「いつまで入れてるんスかー!!!早くその手を抜くっス~!!!」 京太郎「ぬわーーーーーー!!!」 こうして、俺は朝日が昇っても起きる事が出来ないほど痛めつけられた。 京太郎「……もう昼か」 京太郎「まだ満足に体が動かない...」 一「もう起きても大丈夫みたい?」 京太郎「ああ...みんなは?」 一「大浴場、そこから上がったら帰るらしいよ」 京太郎「そうか...」 一「ねえ」 京太郎「?」 一「今なら誰もいないよ」 京太郎「……駄目なヤツだ俺は」 一「?」 スッ 京太郎「やっぱりかわいい」 一「あっ当たり前だし」アタフタ 一「……ありがとう」 京太郎「今はハジメの方が好きだよ」 一「……っ」グス 優希『……』 京太郎「よいしょっ...と」 ハジメ「ボク、なーなーの関係って嫌なんだ」 京太郎「はあ」 カチ 『今はハジメの方が好きだよ』 一「録音しちゃったよ」 一「ボク的には二股でも良かったんだけどー...」 一「心変わりしてさ。こうでもしないと納得出来る状況にならないんだよね」 京太郎「……」 京太郎(まあどちらかを選ばないといけないわけだし) 一「ボクを選んだから悪役。彼女を選んだからピュアな心の持ち主――そういうわけじゃないと思うな」 一「……好き?」 京太郎(……駄目だ大好きだ) 京太郎「言う、ちゃんと告白する」 久「ふー良いお湯だったわぁ」 和「本当、旅館の温泉に引けをとらないくらいでした」 優希「……」 和「優希?」 咲「そういえば、優希ちゃんお風呂で見なかったよね」 優希「……」ダッ 優希「き、京太郎」 京太郎「引っ付くなタコス」 京太郎(なんて言えねえよ) 京太郎「お、どうした優希」 優希「あの、さっきの話...」 京太郎「聞いていたのか」 優希「……好き?」 京太郎「あ、……好き、だ」 京太郎「……けど1番じゃ、ない」 京太郎「どっちかに決めるって決めたんだ優希、お前が嫌いになったわけじゃない...」 優希「……ぁぅ」 加治木「悪者を見つける必要はない、彼女には悪いが決断をした側にも傷は残る」 和「……」 京太郎(和が泣きそうな顔で睨み付けてくる) 京太郎(それはそうだよな他人事だったら俺も男を責めると思う) 京太郎(いっそ嫌ってくれ、なんてのは優希に悪い) 優希「じゃあアタシ頑張るよ!」 京太郎「!」 優希「頑張って京太郎から手を出すような女になってやるんだから!」 優希「その時は優しく迎えてあげるから感謝するんだじぇ!」 京太郎「優希...」 この子は俺が思っているより、ずっと強かった。 京太郎「優希」 優希「駄目!もっと後!もっと魅力的になってからだ!わかったか京太郎!」 京太郎「……ああ!」 優希「いよーっし!そうと決まればのどちゃん!」 和「はい?」 優希「のどちゃんの乳を飲んでアタシもおっぱい 京太郎「はあ」 大きくするじぇー!」 和「やめてよ優希~!」 久しぶりに清澄の笑顔が戻ってきたようだった。 京太郎「おーいハジメ!」 一「あっコッチだよ京太郎!」 京太郎「いやー少し電車が遅れて...」 一「もうっ...まあ今日は記念日だから特別に許してあげるよ」 京太郎「今日?――あぁ」 あれから俺は一と付き合い出し、一年の月日がたとうとしていた。 一「もう...忘れてたの?まあ、そこがキミらしくもあるんだけどねっ」 今でも一番は一だ。そしておそらくこれからも一番なのだ、 京太郎「よし!今日は俺がキチンとエスコートしますよお姫様」 一「うんっ」 京太郎「好きだよハジメ」 一「ボクも――大好きだよ京太郎」ニコ 二人の人生はこれからも続いていく。 おわり
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3393.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1346308252/ 己のカルマと戦う京太郎の前に現れたステルスモモ 彼女から持ちかけられた悪魔の契約に対して、決意を固めたはずの京太郎の心は揺らぐ 彼は自らの生き方を切り開くことができるのか!? 京太郎(師匠……すみません……) 京太郎(俺はやっぱり、自分の身がかわいい臆病者みたいです……) 京太郎「分かった、そちらの要求を飲もう」 桃子「あなたならそう言ってくれると思ってたっす」 桃子「合宿中は無理に行動を起こさなくて良いっす」 桃子「実際に行動に移すのは、清澄に帰ってからということで」 京太郎「分かった。しかし今は情報が足りない」 京太郎「うちの部長とそっちの先輩ってのは、一体どれくらい親密なんだ?」 桃子「……名前」 京太郎「ん?」 桃子「あの女、私の先輩を下の名前で呼びやがったんす!」 桃子「私でさえまだ苗字に先輩って付けただけなのに……」ギリッ 京太郎(こ、これは……) 京太郎(百合場面名鑑収録「下の名前で呼んで」の亜種か!) 京太郎(いやいや、喜んでる場合じゃないだろ) 京太郎(落ち着け、冷静になるんだ) 京太郎(たかが下の名前で呼ぶようになっただけで、そこまで危険な段階に入っていると言えるか?) 京太郎(下の名前で呼び合うくらいまでなら別に……) 京太郎(…………) 京太郎(かじゅ久、いや、久かじゅ……か) 京太郎(アリだな) 京太郎(部長という職務の重責……そこから生じるストレスを抱えながら部活を発展させようとしてきた二人) 京太郎(奇しくもそれぞれが在籍する麻雀部は歴史がゼロと言っても過言ではない状態の新生部) 京太郎(同じような境遇にある者同士がある日交錯したとき、物語は始まる) 京太郎(ん?鶴賀の部長はカマボコみたいな口の人だっけか) 京太郎(まあいいか、立場的には似たようなものみたいだし、やはりそこから生じる共感g) 桃子「不愉快な妄想をしているようなら、あんたにはもう用はないっす」ニコッ 京太郎「!? ち、違うんだ! 待ってくれ!」 桃子「次はないっすよ?」 桃子「とにかく、くり返すっすが方法は問わないので、可及的速やかに処理をしてくださいっす」 桃子「こうしている間にも、あの女の毒牙が先輩に迫ってるんっすから」ギリッ 京太郎(これは……マジだな)ゴクリ 桃子「最終的にあの二人の接触を断つことができれば良いことにするっす」 桃子「だけど、もしも間に合わなかったら、その時は……」ゴゴゴ 京太郎「分かってる! 分かってるからそれだけは……それだけは許してくれ…」 桃子「じゃあ、今日のところはこれくらいにしておくっす」 桃子「期待してるっすよ、須賀京太郎君?」 桃子「あ、それと、万が一先輩の着替えを覗くとか、そういうことをした場合もその場で処刑確定なので注意してくださいっす」 桃子「では」スゥ… 京太郎「ふぅ……」ドサ 京太郎(なんてことだ……まさかこんなことになるなんて……) 京太郎(どうすれば……師匠に助けを) 京太郎(いや、それだけは絶対にできない) 京太郎(俺の尻拭いを師匠にさせるなんてことは、絶対にあってはならない……) 京太郎(しかし、師匠の思いを踏みにじることも避けたい) 京太郎(くそっ……八方塞がりか…) 京太郎(……いや、待てよ) 京太郎(今のこの状況、一見すると男である俺が百合の園を土足で踏み荒らそうとしているように見える) 京太郎(しかし、今俺がそんな行動に出ようとしているのは、紛れもない百合娘・東横桃子からのアクションがあったからだ) 京太郎(実際のところこれは、百合娘が自らの願望を成就させるための手段だと考えられないだろうか?) 京太郎(ならば今の俺は、百合の舞台の上にある一つの小道具……) 京太郎(百合の花を咲かせるためだけに存在する、ひとつの背景に過ぎない) 京太郎(それならば……俺は飽くまで流れの中で求められ、使われているに過ぎない!) 京太郎(そう、主人が執事に……透華さんや衣ちゃんが師匠に命じて、師匠がそれに応えるという関係のように) 京太郎(俺が桃子さんの要求に応じるのは、何の違和感もない行動だと言えるんじゃないか!?) 京太郎「く、くくく」 京太郎(これは、むしろ僥倖かもしれん) 京太郎(行動の理由を自らの外に置きつつも、それでいて自らのためになる行動ができる) 京太郎(しかもそれは、俺自身の規範に逆らうものではない) 京太郎(いいねぇ、望むところだ) 京太郎(やってやろうじゃないか!) 京太郎(俺は舞台の上で、俺の役を演じきってやる!) 京太郎(アトモスフィア京を舐めるなよ!!) ――久主催部屋―― 久「その手を鳴かずに進められるのね…」 ゆみ「これを鳴いて和了れる相手とは思っていない」 久「あら、随分と評価してもらってるみたいね」 ゆみ「当然だ、聞くところによるとインターミドル時代も猛威を振るっていたそうじゃないか」 ゆみ「高校に入ってから麻雀を始めた私から見れば、大先輩だよ」 久「いやねぇ、そんなことまで調べてあるの? ちょっと怖くなっちゃうわ」 ゆみ「敵情視察は戦略の基本だ」フッ 久「怖いわね、滅多なことができなくなっちゃう」 京太郎(ふむ、思った以上に親密になっているようだな) 京太郎(桃子さんの杞憂というわけではなさそうだな) 京太郎(部長が加治木さんを誘った時に下の名前で呼んでるのを見て、大慌てで俺に話を持ちかけてきたわけか) 京太郎(凄まじい行動力……いや、執念と呼ぶべきか) 京太郎(しかし……) 美穂子「うえ……竹井さん」 久「うーん、ねぇ美穂子」 美穂子「す、すみません! 失礼なことを……」 久「いや、別に上埜って呼ばれるのを気にしてるわけじゃないのよ?」 久「ただ、ゆみも私のことを名前で呼んでるし、美穂子も私のことを名前で呼んでくれないかしら」 久「ほら、私も“美穂子”って呼んでるわけだしね」 美穂子「え、でも……」 久「よし、決めた」 美穂子「え?」 久「“久”って呼んでくれないなら、なんにも反応してあげないことにするわ」 美穂子「え、そ……そんな、冗談ですよね?」 久「……」 美穂子「た……竹井、さん?」 久「……」 美穂子(うぅ……) 美穂子「ひ、久さん」 久「うーん、“さ”が続くと響きが悪いわねぇ」チラッ 美穂子「そ、そんな……」 久「あーあ、さみしいなぁ」チラッチラッ 美穂子「……」 美穂子「……久」ボソッ 久「……」スッ トトト 美穂子「え?」 久「……」ギュウ 美穂子「えっ!? ひ、ひゃ」 久「なぁに、み・ほ・こ♪」フゥ 美穂子「あ、わあうああうああ」カアァァァ 美穂子(息が、息が耳に……!) 衣「おい久、対戦相手の手牌を盗み見る気か?」 久「あら、ごめんなさい。そんなつもりはちっとも無かったんだけど」 久「あんまりにも美穂子が可愛いもんだから、自分を抑えきれなくなっちゃってね?」 美穂子「うぅぅ……」 ゆみ「まったく」ニガワライ 京太郎(…………) 京太郎(たまらん) 京太郎(なんだなんなんだこの最高の桃色空間は!?) 京太郎(ってか部長! あんた最高だよ!!) 京太郎(女の子を手玉に取るすべを身につけすぎてて、逆に怖い!) 京太郎(これは間違いなく歴戦の百合娘!) 京太郎(今までも相当な数の生娘をその毒牙にかけてきたに違いない!) 京太郎(はっ!?)ピキュイィィン 京太郎(そ、そういえば、うちの部室ってやたら恵まれた環境にあるよな……) 京太郎(部員数ギリギリ団体戦に出場可能なくらいしかいない弱小中の弱小部なのに) 京太郎(しかも、中古で買っても決して安くない自動卓まである) 京太郎(ここから導き出される結論、それはすなわち……) 京太郎(百合売春!!) 京太郎(いや、実際には売春というより、何かしらの備品をかけての麻雀勝負だったのではないだろうか) 京太郎(「部員がいないからちょっとだけ付き合ってくれない?」と誘われ、軽い気持ちで部室に足を踏み入れた彼女たちだったが) 京太郎(そこで会話をしていくうちに、次第に久という存在に惹かれるようになる) 京太郎(そしてある日、部室に置く備品をかけての勝負を持ちかけられる) 京太郎(賭けられるものがないように見えることを久に伝えると、彼女は自分の躰を賭けると言い出す) 京太郎(はじめは驚いて勝負を拒否するが、あっさりと久は引き下がる) 京太郎(拍子抜けした状態で帰宅するも、ベッドの中でそのことを反芻し、勝負を受けなかったことを後悔する) 京太郎(そして翌日、放課後になると真っ先に麻雀部の部室に向かい、そこの主に「賭けをしよう」と持ちかけるのだ) 京太郎(そしてギリギリの勝負の末、見事勝利を掴み取る。高鳴る胸の鼓動) 京太郎(なんとか平静を保とうとしていると、久がゆっくりと立ち上がり、部屋の隅のカーテンをそっと開く) 京太郎(そこには真っ白なシーツがかかったベッドが。ベッドの上に腰掛け、制服を徐々に崩しながら、誘うような目つきで見てくる久) 京太郎(そして耐えられなくなった欲望がり性を粉々に打ち砕き、久の体躯を、息を荒げながら乱暴に組みしだく……) 京太郎(一度味を知ってしまったらもう後には戻れない) 京太郎(自らの私物やポケットマネーを賭けてまで戦いに挑み、徐々に泥沼にはまってゆく) 京太郎(絶妙なバランスで勝敗を調整しながら、久は彼女たちの心を弄んでいく……) 京太郎(こう考えれば、不自然なほど揃っている備品の数々、そしてあのベッドの説明がつく) 京太郎(そして和は、かつて部長が甘い声を上げながら) 京太郎(時には上げさせながらシーツを濡らしていたなどということに微塵も気づかず、そのベッドで無防備に睡眠をとっているのだ) 京太郎(…………) 京太郎(い、いかん、これは危険だ) 京太郎(平常心が保てなくなりそうだ……落ち着け俺)フゥ ゆみ「ん?」 京太郎(っ! まずい!) 京太郎(アトモスフィアモードを……冷静に……)スゥ ゆみ(…………気のせいか) 京太郎(……危なかった) 京太郎(しかし、さすがと言わざるを得ないな) 京太郎(あの桃子さんの気配を、完全に隠蔽していない状態とは言え察知できるだけ……) 京太郎(しまった、本来の目的を忘れるところだった……!) 京太郎(今は百合妄想に浸っている場合ではない。何とかして現状を打開しないと……) 京太郎(しかし、俺のSPY-Lレーダーの情報が正しければ、キャプテンはもう既に陥落しているが、肝心の部長が問題だ) 京太郎(今回のオーダーは部長を加治木さんから引き離すこと) 京太郎(最終的に部長そのものをどうにかしなければ意味がない……) 京太郎(しかし、ここに来てからの部長の姿を見る限り、彼女を特定の誰かと結びつけることはかなり難しい) 京太郎(おまけに今回は時間が限られている) 京太郎(一度この合宿が終わってしまえば、これだけのメンバーが一堂に会することは殆どなくなるだろう) 京太郎(解散してしまえば部長と加治木さんの接触自体は減るだろうが) 京太郎(もし個人的に合うといった状況になった場合、それを事前に察知するためには部長のプライベートに張り付く必要が出てくる) 京太郎(そして周囲にフレアとして使えそうな人材がいるとも限らない) 京太郎(合宿終了まであと何時間だ?) 京太郎(なにか……何かないのか……) 京太郎(師匠……俺に力を……) 京太郎(……ん? 待てよ?) 京太郎(このSPY-Lの反応……) 京太郎(はっ!?) 京太郎(そうか! この手があったか!) 京太郎(…………しかし、これは成功する確率が高いとは言えない……) 京太郎(どうする、別の手を考えるか……?) 京太郎(いや、迷っている時間はない) 京太郎(失敗すればジ・エンドだが、何もせずにいて失敗しても結果は同じだ) 京太郎(ならば、俺は全力を尽くして死ぬ方を選ぶ) 京太郎(それに、これは紛れもない百合娘からの願いでもある) 京太郎(指をくわえて見ているだけなどというのは、百合男子道に背く行い!) 京太郎(よし! 『オペレーションNH』始動だ!!) ――清澄部屋―― 和「はぁ、流石に疲れましたね」 咲「朝から晩まで打ちっぱなしだったもんね……」 咲「優希ちゃんなんか爆睡してるよ」 優希「ZZZzzz……」ホボゼンラ 和「ゆーき……なんてはしたない…」 咲「それにしても、今回の合宿は勉強になったなぁ」 和「ですね、みなさんやっぱり決勝まで残っただけありました」 咲「はぁ、京ちゃんも来れてたら強くなれたんじゃないかなぁ」 和「」ムカッ 和「もし来れていたとしても、部長の命で雑用をやって終わりだったと思いますよ」イライラ 咲「うーん、部長ももう少し京ちゃんに優しくしてあげればいいのに……」 和「」イライライライライライライライライライライラ 和「み、宮永さ」コーイーシチャッタンダ タブン キヅイテナーイデショー 咲「あ、これって」 咲「京ちゃんからメールだ!」パァァ 和「」プチッ 和「みやながさ咲「え?」 和「!」ガバッ 和「どうしましたか宮永さん!まさかセクハラまがいのメールを!」 和「前からうすうす怪しいとは思っていたんですが、やっぱりやらかしましたかあの変態!」 和「私たちの方を見てたまにニヤっと笑っていたんですよ!」 和「気持ち悪いなぁとは思っていたんですが部活の平穏を乱したくなくて今まで野放しにしてしまいました! 申し訳ありません!」 和「今すぐヤツからのメールや着信履歴を全て削除してアドレスからも消去」 和「ついでに着信拒否リストに入れて、麻雀部、いや清澄高校、いいえ長野から永久追放してしまいましょう!!」 和「大丈夫です!裁判なら両親に頼めば必ず勝てますし、宮永さんは私が必ず守りきってみせます!」 咲「え? いやそんなメール京ちゃんはしてきてないよ?」 咲「ただ、ちょっといきなりっていうか、よく分からないっていうか……」 咲「ほら、これ」スッ 和「…………え?」 和「……何ですか、これ?」 咲「私も全然分からない……」 咲「あ、も、もしかして……」 咲「京ちゃん……あの人のこと……」ジワッ 和「!?」 和(私の咲さんを泣かせるなんて…………) 和(凌遅刑が神からの祝福に思える位の罰を与える必要がありますね……!)ゴゴゴ 和「今すぐ電話して、目的を問いただしましょう!」 咲「う、うん」ピピッ 和(短縮の0番!?)ワナワナ 咲「…………電源が入ってないみたい」 和「宮永さん! こんな訳のわからないお願いなんて聞く必要ありません! もう今日は寝ましょう!!」 咲「…………ううん、行くよ、私」 咲「きっとなにかワケがあるんだよ」 咲「私は京ちゃんを信じる。京ちゃんの力になりたいから……!」グッ 和「」イライラブルブルワナワナバキバキグシャグシャバリバリゴクン 和「…………分かりました」 和「では、私もご一緒させていただきます」 和「私も(咲さんの)力になりたいですから」ニッコリ 咲「原村さん……!」 和「行きましょう、あんまり遅くなると、寝てしまうかもしれませんよ」ニコニコニコニコ 咲「うん! 行こう!」 ――鶴賀部屋―― 桃子「ん?」 桃子(この気配……) 桃子「ちょっと出てくるっす」 ワハハ「んー? あんまり遅くなるんじゃないぞー」ワハハ 桃子「はいっす」 ガチャ バタン 桃子「で、なんの用っすか? 須賀京太郎」 京太郎「今、手を打っているところです。おそらく明日出発するまでには結果が出るでしょう」 桃子「!!」 桃子(本当? ブラフ? いくらなんでも早すぎないっすか?) 桃子「合宿中は無理みたいなことを言ってたと思うんすけど、あれはなんだったんすかねぇ?」 桃子(これは警戒しなくてないけない? いやしかし……) 京太郎「俺の認識不足でした。むしろこの機会を逃すわけにはいかないんです」 京太郎「……そして、この作戦を遂行するにあたって、桃子さんにも協力していただかなくてはなりません」 桃子(きたっ!) 桃子「確かに協力するとは言ったっすけど、内容によるっす」 桃子「当然納得できる理由も話してもらわないと」 京太郎「理由までは……ただ、殆ど手間は取らせません」 京太郎「大丈夫です。俺を信じてください」 京太郎「必ず貴女の望む結果をご覧に入れます」 桃子(……話だけなら、聞いてやるっすか…) ――外―― 桃子(一応、要求されたことはやったっすけど、あれは一体何の意味が……) 桃子(あとはここで少し待てばいいって……) 桃子(少しってどれくらいなんすかね?) 桃子(一応アイツの行いの証拠は、分散して保管してあるから、今のうちに処理するのは無理っすけど……) 桃子(10分待って何も起こらなかったら、処刑確定っすね) ゆみ「……」タッ タッ タッ 桃子「……先輩?」 ゆみ「桃子」 桃子「!?」ビクッ 桃子(こ、これは……) 桃子(先輩……怒ってるっすか……?) 桃子(一体何が……) ゆみ「桃子」 桃子「は、はいっす!」ビクッ ゆみ「ひとつ、聞きたいことがある」 桃子「なな、なんっすか?」ビクビク ゆみ「須賀京太郎をいう男の事を知っているか?」 桃子「!!??」ビックゥ 桃子(ま、まさかアイツ……みんな先輩にバラして……)ブルブル 桃子(こ、殺すっす!!) 桃子「な……んのことだか、さっぱりわからないっすね」プイッ ゆみ「声が上ずっているぞ」 ゆみ「その反応、やはりヤツの言っていったことは本当だったか……」 桃子(なんで、そんなに怒ってるんすか……) 桃子(なんで、そんなに悲しそうな顔するんすか……) 桃子(私のこと、恋愛ではないにしても、好いていてくれていたんじゃないんすか……) 桃子(じゃあなんで……今まで……勘違いさせるようなこと)ギリッ 桃子(あんまりっすよ……) ゆみ「桃子……本気なのか?」 桃子(……!)ギリリッ 桃子「そうっすよ! 本気っす!」ジワッ 桃子「でも何が悪いんすか! 先輩が悪いんっすよ!」ポロ 桃子「私は……私は、ただ……」ポロポロ ゆみ「……」スッ 桃子「っ! 触らないでくださいっす!!」バシッ ゆみ「」ギリッ ゆみ「桃子!」グイッ 桃子「きゃ!?」ドサッ 桃子(え? 何? 押し倒され……) ゆみ「桃子」 桃子「は、はい……」 ゆみ「お前を見つけたのは、私だ」 桃子「え、あ、はい」 ゆみ「だから、お前は私のモノだ」 ゆみ「誰にも渡しはしない」ギュウ 桃子(…………???) ゆみ「私が悪かった」 ゆみ「お前は、なんだかんだでちゃんと分かってくれていると思っていた」 ゆみ「全く、笑い話にもならないよ」 ゆみ「だから」 ゆみ「しっかりと、躾てやらないといけないな」 桃子「はぇ?」 ゆみ「だれがお前の持ち主なのか」 ゆみ「心にも、躰にも」 ゆみ「刻みつけてやる……!!」グイッ 桃子「な、にを んんうぅ!?」チュウゥゥ 桃子(これは一体何がどうなってこうなったんすかぁぁぁ!?) ゆみ「ふぅ」 桃子「はぁ、はぁ……せ、んぱ」ハァハァ ゆみ「……」グイッ 桃子「や、ちょ、そこは!?」ググッ ゆみ「初めてか?」 桃子「……はぁ…? そりゃ、そうっすけど……?」 ゆみ「そうか、そうじゃなかったらモモを殺して私も死んでいたよ」 桃子「ぇ?」 ゆみ「それに、痛くなければ躾にならないだろう?」 ゆみ「一生忘れられないくらい、痛くしてやるからな」 桃子「ちょ、ま、せんぱ」 ~少し前~ ――廊下―― ゆみ「やれやれ、さすがに疲れたな」コキコキ ゆみ(しかし……楽しかったな)フッ ゆみ「…………ん?」 ゆみ(これは、なんだ?) ゆみ(押し隠したような気配……モモに近いが、違う) ゆみ(それにこの感じ……久たちと打っている時にも一瞬感じた) ゆみ「そこかっ!」バッ 京太郎「流石ですね」スゥ ゆみ「! 君は……確か清澄の男子部員」 京太郎「! これは……覚えていただけているとは、意外でした」 ゆみ「なぜここにいるんだ? 久は君を置いてきたと言っていたはずだが」 京太郎「ええ、まあちょっとした理由がありましてね」 京太郎「加治木さんに接触したのも、その理由と関係していまして」 京太郎「少しお時間をいただけないでしょうか」ニコッ ゆみ(……どういうつもりだ?) ゆみ(この男、確かに気配を感じることはできたが、まるであえて私に察知させたような、そんな不自然さがあった) ゆみ(つまり、今の今まで私にも気づかれないような状態で”何か”をしていた可能性が高い) ゆみ(それでも、犯罪行為をしようとしていたなら、気配を消した状態でいくらでも出来たはず) ゆみ(私に直接危害を加えるようなことは、今の時点でするつもりはないということか) ゆみ(……ここで誘いに乗らなかった場合、この男は再び姿を消すだろう) ゆみ(目的が全くわからないままロストするのは避けたい……) ゆみ「わかった、話だけなら聞こう」 京太郎「そうおっしゃっていただけると思っていました」 京太郎「ここでは人目につきます。場所を移しましょう」 ――外―― ゆみ「で、こんな所でしか話せないということは、なかなかに後暗い話題をしたいと見えるが」 京太郎「後暗い、というほどではありませんが……」 京太郎「大手を振って話せるものでもありませんね」 京太郎「……同じ無名校として、決勝での鶴賀の活躍には驚きましたし、素直に敬意を覚えました」 ゆみ(……? なんだ、わざわざ胡麻をすりに来たわけでもないだろうに) 京太郎「とくに、うちの原村を抑えて、副将戦で収支1位を飾った東横桃子さん」 ゆみ「……」ピクッ 京太郎「加治木さんも素晴らしい立ち回りをされましたが、やはり彼女の働きには非常に強い印象を覚えました」 ゆみ「……何が言いたい」 京太郎「そのままです。東横さんが優秀だというお話ですよ」 京太郎「原村和は去年の全中チャンピオン」 京太郎「そして龍門渕透華さんも、去年のインハイでは大いに活躍したそうじゃないですか」 京太郎「そんな二人を押しのけて、鶴賀を優勝まで後一歩のところまで押上げた彼女のような才能が」 京太郎「これを最後に終わってしまうのかと思うと、あまりにももったいなくて」 ゆみ「!?」 ゆみ「それは、どういうことだ?」 ゆみ「モモはまだ1年だ。来年も再来年も、鶴賀のエースとして活躍する」 ゆみ「ここで終わるわけがないだろう!」 京太郎「冷静に考えてみてください」 京太郎「確かに鶴賀は県予選で決勝まで上り詰め、大いに活躍しました」 京太郎「しかし、それだけで来年からも部員が入ってくれるでしょうか?」 京太郎「本当に麻雀がやりたい人なら、長野だと普通は風越に入ります」 京太郎「それに、風越は確かに名門ですが、ここ最近の2連敗は間違いなく看板の価値を落としているでしょう」 京太郎「ではほかの学校はどうか?」 京太郎「今回の決勝の4校で考えてみましょうか」 京太郎「龍門渕のメンバーは全員が2年生で、来年もレギュラーメンバーは変わらないでしょう」 京太郎「メンバーに空き枠がなく、横のつながりだけで強さを保っているところに、新入生が入るとは考えにくい」 京太郎「そもそもあのチームは学校の麻雀部というより、龍門渕さんの私設クラブとしての色合いが強いですから」 京太郎「そうなると鶴賀と清澄はですが、ここは両方共ほぼ無名です」 京太郎「目立った戦果は、今年の物のみ」 京太郎「そして、両方が無名ならば」 京太郎「『全国優勝校』という泊のついた清澄の方を、普通ならば選ぶでしょうね」 ゆみ「!!??」 ゆみ「ちょっと待て!」 ゆみ「自分の仲間に対して自信があるのは結構だが、随分と大きな風呂敷を広げるじゃないか」 ゆみ「そんな根拠の乏しい推測をもとに、うちの麻雀部を不当に低く評価するとは、君は随分恥知らずな人間のようだな」 京太郎「本当に根拠に乏しいと言えますか?」 京太郎「先鋒の片岡は、個人戦で歴代ハイスコアを出すほどの腕前」 京太郎「副将の原村は言わずもがな」 京太郎「大将の宮永は、去年のMVPである天江衣を制し、個人戦でも全国出場が決定しています」 京太郎「そして、常に収支を±0にするという驚異的な実力」 京太郎「これは個人戦でも本人の気が変わるまでやってのけていましたから、全国でも通用すると思われます」 京太郎「どんなに異常なことか、加治木さんならよくお分かりでしょう?」 京太郎「残りの二人も、ほかの3人ほどの派手なモノはありませんが」 京太郎「どちらも安定してハイレベルな試合ができるというのは、加治木さんも骨身にしみて理解しているはずです」 京太郎「ここまでの実力者が揃いながら、清澄が優勝を狙うには力不足だと思えるのなら」 京太郎「それは少しばかり観察眼というか、まあ“何か”が足りないんじゃないでしょうか」ニコッ ゆみ「君は……随分と人をからかうのが好きなようだなっ……」ギリリッ ゆみ「仮に、だ」 ゆみ「仮に来年鶴賀の麻雀部が団体戦に出られないとしても」 ゆみ「モモには個人戦があるだろう」 ゆみ「そうなれば、少なくとも彼女の才能が埋もれるということはない!」 ゆみ「彼女は、あの特殊な能力が先行してはいるが、麻雀の実力も文句のないレベルだと思っている」 ゆみ「問題は全くない」 京太郎「……東横さんは、どうして麻雀部に入ったんでしょうか?」 ゆみ「!」 京太郎「どうやら彼女は初めから麻雀部に入ろうとは思っていなかったようですよね?」 京太郎「誰かが強引に麻雀部に連れ込んだと聞いていますが」 ゆみ(この男……いったい…) 京太郎「もしもですよ」 京太郎「もしもその人がいなくなってしまったら」 京太郎「東横さんが麻雀部にいる理由、その物自体が消えてしまうということになるのではないでしょうか?」 ゆみ「!?」 ゆみ(そんな……モモが……) ゆみ(いや、そ、そんなことはないはずだ) ゆみ(…………ホントにそう言えるのか……?) ゆみ(いや、まて、相手のペースに飲まれるな!) ゆみ「どうも人の周りを嗅ぎ回るのが好きな、趣味の悪い人間がいるようだが」 ゆみ「いったい、どこからそんな噂話を仕入れてきたのかな」 京太郎「加治木さん、あなたほど聡明な方だ」 ゆみ(無視、か) 京太郎「人の気持ちに鈍いというわけでもない」 京太郎「なら、もう気づいているんでしょう?」 京太郎「東横さんがあなたに向けている感情に、ね」 ゆみ(…………っく!?) 京太郎「自らの存在を非常に認識されにくいという、あまりにも特異な体質を持って生まれてしまった、一人の女の子」 京太郎「存在を気づいてもらえないがために、誰からも必要とされることなく生きてきた」 京太郎「だがある日、そんなつまらない日常から自分のことを引き上げてくれる人が現れた」 京太郎「彼女がどれほどの喜びを感じたかは、想像に難くありません」 京太郎「そして、求められるということに喜びを感じた彼女は、恩人とも呼べるその人に着いていくことを決める」 京太郎「ですが……」 京太郎「自分を見つけてくれたその人は、自分自身が麻雀の大会に出るための頭数が欲しかっただけで」 京太郎「高校生活最後の試合が終わると、目の前から姿を消してしまう」 ゆみ「!!……ち、違う!!」 ゆみ「私はそんな……そんな道具のような扱い方をモモにしてきたことは断じてない!!」 ゆみ「モモは私の大事な……大事な仲間だ!」 京太郎「仲間……そうですよね」 京太郎「あなたから見れば、彼女は確かに大切な仲間です」 京太郎「ですが、お分かりのはずです」 京太郎「彼女が貴女との間に求めている関係は、もっと特別なものだと」 ゆみ「そ……れは」ビクッ ゆみ(たしかに、モモが求めているものはわかっている、が……) 京太郎「そして、貴女がどんなに彼女のことを大切に思っていたとしても、鶴賀を去ってしまうのは、曲げることのできない事実」 京太郎「彼女が麻雀部にいる理由を失ってしまうのも、従って事実です」 京太郎「ですから“このままでは”彼女の才能は埋もれてしまうんですよ」 ゆみ(…!) ゆみ(まさか、コイツの狙いは) 京太郎「本題に入りましょうか」 京太郎「東横桃子さんが後腐れなく清澄の麻雀部に入れるように、彼女との縁を完全に断って頂きたい」 ゆみ「ば……馬鹿かお前は!」 ゆみ「私がそんなことをすると思っているのか!」 京太郎「他のメンバーの方のことでしたら、どうぞご心配なく」 京太郎「彼女たちも、まとめて受け入れる準備は出来ていますから」 ゆみ「準備が出来ている……だと?」 ゆみ「まさかこの話、久も噛んでいるのか……?」 京太郎「おっと、この話は完全に俺のワンマン企画ですよ」 京太郎「うちの部長はああ見えて、曲がったことが大嫌いでしてね」 京太郎「おまけに頭がキレて、感も鋭い」 京太郎「部長にばれずに準備をするのは大変でしたよ」 京太郎「本当はもっと面倒な手順を踏んで東横さんに接近するつもりだったのですが」 京太郎「今回の合宿企画が持ち上がったのは本当に幸運だったというより他ありません」 京太郎「この機会を逃すと面倒なので、加治木さんには早くご決断をして頂きたいのですが……」 ゆみ「……君が清澄の戦力の増加のために、モモをうちから盗ろうとしているのは分かった」 ゆみ「しかし、君は男子部員で、女子部員の成果は直接利益になるとは思えない」 ゆみ「なのにどうしてそこまでモモに固執するんだ?」 京太郎「……正直言って、今の清澄は部長の強力なリーダーシップによってまとめられている状態です」 京太郎「飄々としていながら、彼女ほど抜け目のない人間もなかなかいない」 京太郎「うちのメンバーは、一人ひとりが優れた雀士ではありますが、部長の跡を継いで組織を引っ張っていける人間がいない」 京太郎「宮永はそもそも内向的な性格ですし、片岡は自分勝手すぎる」 京太郎「原村は信念が強すぎるあまり、狭窄な考えに陥りがち」 京太郎「染谷先輩は一番まともではありますが、いい人どまりでリーダーとしては力不足な感が否めません」 京太郎「そうなったとき、いったい誰が部の舵取りをしていくのか」 京太郎「そうなった時に、俺がその責務を引き受けようと思っているわけです」 ゆみ「随分自己評価が高いと見えるな」 ゆみ「私にはただの自惚れにしか感じられないが」 京太郎「消去法ですよ、手配の中に安牌がこれしかなかったんです」 京太郎「ともかく、俺がそうやって部をチームとしてまとめ上げていくとなれば、当然勝ち進むために何ができるのか、と考えるわけです」 京太郎「そして、まずは強力な人間の頭数を増やそうと思ったわけです」 京太郎「部内に強者が大勢いれば、内輪の練習だけでも十分技量の進歩は望めますから」 ゆみ「この陰険な謀は、全て部のためにやっていることだと言いたいのか」 京太郎「もちろん、それだけではありません」 京太郎「先程も申しましたように、清澄麻雀部は高い確率で優勝杯を持って帰るでしょう」 京太郎「そして、来年、再来年とそれを続ければ」 京太郎「史上初の3連覇を成し遂げる、ということになります」 京太郎「……今や、麻雀はこの世界で最大のゲームとなっています」 京太郎「そして麻雀強豪国である日本のインターハイで殿堂入りになるということは」 京太郎「世界レベルで実力が認められることになるでしょう」 京太郎「そうなったとき、そのチームを間接的に勝利に導いた人間も、十分すぎるおこぼれを貰えるのでは」 京太郎「そう考えたんですよ」ニコッ ゆみ(やはり私腹を肥やすことを考えていたようだな) ゆみ(しかも仲間を利用して……どこまでも下衆な男だ) ゆみ「久に……この話が知れたらどうするつもりだ?」 ゆみ「たったさっき自分で言ったばかりじゃないか」 ゆみ「久は曲がったことが嫌い、そう自分で言っただろう。短い付き合いだが、それは私もよく知っている」 京太郎「確かに多少面倒なことになりますが、問題ありませんよ」 京太郎「そもそも、この話は加治木さんに伏せたまま進めても、何の問題も無かったんですよ?」 京太郎「大切なのは“桃子”さんの意思ですから」 ゆみ(桃子……だと!?) ゆみ「キサマが彼女をその名で呼ぶな!!」 京太郎「落ち着いてくださいよ、加治木さん」 京太郎「俺があなたにこの話をしたのは、桃子さんができるだけ憂いを残さずに清澄に来れるようにしたかったから」 京太郎「俺は心の底から彼女のことを案じているんですよ?」 ゆみ「減らず口をっ……!」 京太郎「よく考えてみてください」 京太郎「一度求められることを、暖かさを知ってしまった彼女は、もはや以前のような孤独には耐えられなくなっているでしょう」 京太郎「いつ瓦解するかもわからない、風前の灯のような部活で、孤独に耐えながら暮らすのと」 京太郎「全国制覇の錦を飾る場所で、みんなから必要とされながら送る高校生活」 京太郎「どちらが桃子さんにとって幸せだと思いますか?」 ゆみ(…………) 京太郎「ねぇ、加治木さん」 京太郎「いい夢、見れたでしょう?」 ゆみ「な……っ!?」 京太郎「皆で全国を目指して走り続け」 京太郎「途中で敗退はしたけれど」 京太郎「それでも夢のように楽しかったんじゃないですか?」 京太郎「高校生活最後の、素敵な思い出は“もう出来ている”んですよ」 京太郎「ですが、桃子さんにはまだまだ未来があります」 京太郎「あなたが自分の思い出のため“だけ”に作った部活に、無理に残す必要はないでしょう?」 京太郎「彼女を夢の抜け殻に縛り付けておくなんて残酷な真似が」 京太郎「あなたにできるんですか?」 ゆみ「そ、んな……しばる、なんて……そんな…つもりは」 京太郎「加治木さん、あなたと桃子さんの関係、どうして俺が知っていたと思います?」 ゆみ「…………あ、え……?」 京太郎「直接聞いたんですよ。“モモ”から」 ゆみ「何を……」 ゆみ(何を……言っているんだ……この男は) 京太郎「話の流れで気づきませんでしたか」 京太郎「モモは、もうこの話を了解済みなんですよ」 京太郎「だから、あなたとのことも全て知っているんです」 京太郎「“モモから皆聞かせてもらいましたから”」 ゆみ(…………なんだ、なんなんだこれは) ゆみ(このおとこはいったいなにをしゃべっているんだ) 京太郎「ですから…………ぁ……」ボソッ ゆみ(え?) 京太郎「いいえ、なんでもありません。話を続けましょう」 ゆみ(なんだ、この男、一瞬むこうを見) ゆみ(!) ゆみ(モモ、と、清澄の……原村と、宮永……?) 京太郎「……こでは……ろと……あれだけ……」ブツブツ ゆみ「な、んの、ことだ」 京太郎「…………いえ、モモにはその、清澄に入ってからもスムーズに行くように」 京太郎「人間関係もある程度構築しておくように言っていたんですが……」 京太郎「できるだけ内密にしろと言ったはずなんですが……」ハァ ゆみ( ) ゆみ( ) ゆみ( ) 京太郎「ああ…………加治木さん」 京太郎「彼女はこっちに来ることを決めてからも、あなたのことでずいぶん悩んでいました」 京太郎「最後までモモの心を縛っていたのは、部活でも麻雀でもなく」 京太郎「貴女だったんですよ、加治木ゆみさん」 京太郎「だから、俺は最後の憂いを立つために、あなたにこのお話をしたんです」 京太郎「分かって頂けますよね」 ゆみ「」ガクッ ゆみ「」ドサッ ゆみ「モモ……私は…………お前……モモ」 京太郎「色よい返事を……いえ、返事は結構ですので、行動で示してください」 京太郎「失礼します」スゥ… ~翌朝~ ――車の前―― 久「それにしても、なんだかつやつやしてない?」 ゆみ「まさか、今にも倒れて眠りたい気分だよ」 久「確かに、あなたの後輩の……東横さんはそんな感じだけど……」 ゆみ「ああ、二人でちょっと遅くまで話をしていてな」 ゆみ「うちの麻雀部は来年も人集めが大変だし、そのことについて、な」 久「ふぅん……」 ワハハ「おーい、そろそろ出発するぞ。名残惜しいのはわかるけど、早く車に乗ってくれ!」ワハハ ゆみ「だそうだ。悪いがもう行かせてもらうよ」 久「ええ…………ねぇ、ゆみ」 ゆみ「ん?」 久「あんまり無理させちゃダメよ?」 ゆみ「………………善処しよう」 久(微塵も反省してないみたいね) 久(東横さんも大変ねぇ……) 桃子(痛いっす……あらゆる箇所が痛いっす……) 桃子(須賀京太郎……まさかこんな搦手を使ってくるとは……) 桃子(でも) 桃子(やっぱり、誰かに求められるっていうのは、あったかいっすね)フフ 佳織「桃子さん……? どうかしました?」 桃子「いや、楽しかったなぁって」 桃子「新しい知り合いも出来たし」 桃子「今までの私の人生じゃ、考えられないくらい楽しかったっす」 佳織「人生って……」 桃子(ん? あれは) 京太郎「」サムズアップ 桃子(……今回は感謝してやるっす) 桃子「須賀京太郎」ボソッ ゆみ「」ピクッ 桃子(あ、やば) ゆみ「モモ」 桃子「は、はいっす……」 ゆみ「今日はそういえば、午後から私の家で勉強を見てやる予定だったよな」ニコニコ 桃子「いやぁ、その、今日は疲れたから家でゆっくり休みたいかなぁって……」 ゆみ「なら、私の家に来て、我慢できなくなったらそのまま寝ればいい」 ゆみ「泊まっていってもいいしな」 桃子「き、今日は帰って撮っておいたドラマを」 ゆみ「 モ モ 」ニ゙ゴッ ワハハ「……!?」ゾク 睦月(なに!?)ゾクゥ 佳織(ひぃ)ゾクゾク 桃子「……はいっす」 桃子(前言撤回) 桃子(ちょっと……いや、かなりやりすぎっすよ…) ――清澄部屋―― ブオォォォン ブロロロロロロ 和「んんぅ……」 和(車……そうか、もう朝なんですね) 和(鶴賀の人たちが帰るんでしょうか) 和「ふあぁ」ムクリ 和(それにしても……) 和(結局昨日の須賀くんのメールはなんだったんでしょう) 和(指定した時間に指定した場所で、東横さんと親しげに話して欲しいって……) 和(何を考えていたんでしょうか) 和「?」 和(この香りは……)スンスン 和(同類――百合の香り!?)バッ 和(あっち……鶴賀の車の方から……) 和(これは……)スンスン 和(加治木さんと、東横さん……でしょうか…) 和(おかしいですね……) 和(昨日の時点では何も……) 和(あのあと、何かあったということでしょうか?) 和「…………」 ――何処かの木の上―― ハギヨシ「京太郎君……」 ハギヨシ(まさか、あそこまでのことをやってのけるとは) ハギヨシ(彼のやったことは、話術で相手を乱すだけではない) ハギヨシ(衣様が月の力を得て、卓上を支配するように) ハギヨシ(彼はこの周囲一帯の空間を、自らの気……いや、自らそのもので染め上げた……) ハギヨシ(まさか、使えるものが今の世に生まれようとは……) ハギヨシ(一体貴方はどこへ行こうというのです……) ハギヨシ(もしかしたら私は、とんでもない怪物を目覚めさせてしまったのでは……) ハギヨシ(………………) ハギヨシ(師としては失格かもしれません) ハギヨシ(しかし、私は……) ハギヨシ「見たい」 ハギヨシ「京太郎君、あなたがどんな覇道を征くのか」 ハギヨシ(あんなものを再び“魅せ”られては、どうしようもないですね) ハギヨシ(そういえば、あの方は今一体何をしているのでしょうか……) ~帰宅後~ ――木間書店―― 京太郎(今回はさすがに疲れた……) 京太郎(まさにカミソリの上を滑るような、危険な賭けだった) 京太郎(アトモスフィアでの情報収集の成果がなければ、あそこまでうまくいかなかっただろう) 京太郎(まさに日頃からの地道な作業が実を結んだと言える) 京太郎(なぜか失敗のビジョンは少しも浮かばなかったが) 京太郎(もしかしたら、咲とか衣ちゃんの感覚って、あんな感じなのかもなー) 京太郎(しかし、丸く収めるためとは言え加治木さんには随分ひどいこと言っちまったな……) 京太郎(今度会うことがあったら、ジャンピング土下座で謝る必要があるか) 京太郎(得られるものも多かったけど、やっぱりこんなことは二度とやりたくないな……) 京太郎(まぁ二人の様子はしっかりと記録させてもらいましたがね!) 京太郎(それにしても、ボロボロになったことに変わりはないか……) 京太郎「さっさと帰って」 『ひらり』 京太郎「これを読んで、癒されたい……」 京太郎(昨今、百合雑誌が増えてきている) 京太郎(まだまだマイナーなジャンルであることは否めないが、それでもこの流れは喜ばしい限り) 京太郎(中でも百合姫の他に出版されている百合雑誌『つぼみ』と『ひらり』の存在は大きい!) 京太郎(今回買う『ひらり』は、平尾先生の短編や、最近画力が向上してきた袴田先生の作品など目を離せない要素がたくさんあるが) 京太郎(なかでも俺が注目しているのはTONO先生の「ピンクラッシュ」!) 京太郎(ガチ百合娘のアタックを受けているうち、徐々に彼女のことを受け入れていくマールの姿が堪らない!) 京太郎(ただ、初期に掲載されていた小説がなくなってしまったのは残念ではあるが……) 京太郎(まぁそれより今は、さっさと家に帰ってこいつを堪能する方が重要だ!) ?「あれは……」ジー カン!