約 1,656,824 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3310.html
京太郎「さて、買い出しは大体こんなもんかな」 京太郎「にしても、色々見てたらすっかり遅くなっちまったぜ」 京太郎「部長、怒ってるだろうな……」 京太郎「まあ、丁度100円セールしてたドーナツ買っといたから、これで何とかなればいいんだがな……」 霞「……」キョロキョロ 京太郎「んっ? あのおもちは……確か二回戦で咲と打った……そうだ、石戸さんだ」ポン 京太郎「うーん、間近で見ると、やっぱ迫力あるよな……」 京太郎「それにしてもどうしたんだ? まさか迷子になってたりして」 京太郎「なんてな。咲じゃあるめえし、そんな訳ない――」 霞「ふえぇぇぇええええええん、迷子になっちゃったよおおお!!!」ビエーン 京太郎「嘘!?」 霞「初美お姉ちゃん!! 巴お姉ちゃん!! 助けてええ!!!」ビエーン 京太郎「な、な、なんだってんだ!? 石戸さんってあんな感じの人だっけ!?」 京太郎「対局見た時は、もっと落ち着いた、大人の女性って感じだったが……」 霞「うえぇぇぇええええん!!!」グスグス 京太郎「んな事言ってる場合じゃねえ!! 大丈夫ですか、石戸さん!!」ダッ 霞「ふぇっ、お、お兄ちゃん誰?」 京太郎(お、お兄ちゃん!?) 京太郎「あの、道に迷ったんでしたら、俺が協力しますよ?」 霞「ひっく、で、でも、巴お姉ちゃんが、知らない人には、ついて行っちゃダメって」グスリ 京太郎「あっ、俺清澄の学生です!! ほら、石戸さんが二回戦で戦った宮永咲と同じ学校の!!」 霞「宮永咲……? あっ、もしかして嶺上のお姉ちゃんのこと!?」 京太郎「そうです、その宮永咲と同じ清澄の学生です! ほら、学生証」ピラッ 霞「本当だ、清澄って書いてある……」 京太郎「だからそんなに警戒しないで下さい」 霞「うん、分かった」 京太郎「ほっ。それで石戸さん、どこに向かってたんですか?」 霞「えっとね……ドーナツ屋さんに向かってたの」 京太郎「ドーナツ屋ですか?」 霞「うん。小蒔ちゃんが甘いの食べたいって言ってたから、買って来ようと思って……」 京太郎「それで道に迷ってしまったんですか」 霞「ねぇ、なんでお兄ちゃんそんな丁寧なしゃべり方してるの?」 京太郎「えっ、だって俺の方が年下ですし……」 霞「えー、お兄ちゃんの方が年上だよ!!」 京太郎(あれ? 確か石戸さんって高校三年生だったような……) 京太郎(それにしても、石戸さんって、大人の女性っていうか、子供って感じだな) 霞「ねぇねぇお兄ちゃん」グイグイ 京太郎「んっ? なんですか?」 霞「お名前教えて」 京太郎「あっ、そういえば自己紹介してませんでしたね」 京太郎「俺、須賀京太郎って言います。清澄高校の一年です」 霞「京太郎お兄ちゃんか……よろしくお願いします!!」ペコリ 京太郎「は、はい……」 京太郎(おかしい……おかしすぎるぞ……どう考えてもこの感じは天江さんと同じだ……) 霞「私は、石戸霞です!!」 霞「いわとかすみ、10歳です!」 京太郎「えっ!?」 霞「えへへ……ちゃんと自己紹介できた」 京太郎「」 京太郎(えっ、嘘だろ?) 京太郎(いやいやいや、冗談きついって) 京太郎(ドッキリなのか!? ドッキリだと言ってくれよ!!) 京太郎(こんな見事なおもちを持った女性が、10歳なんてことある訳がないぜ!!) 霞「京太郎お兄ちゃん? どうしたの?」 京太郎(いや、ちょっと待て) 京太郎(冷静に考えたら、まず10歳はないだろう) 京太郎(これが石戸さんの本来の姿、これもないだろうな) 京太郎(だとしたら考えられるのは……幼児退行!!) 京太郎(それならばすべて辻褄が合う……ふっ、見事な推理だな俺) 京太郎(だがちょっと待て……それなら早く、石戸さんと同じ学校の人に知らせないと!!) 京太郎「石戸さん!」 霞「霞ちゃん」 京太郎「はい?」 霞「霞ちゃんって呼んでくれなきゃ、やっ」プイ 京太郎「え、えっと……」 京太郎(年上の女性の名前をちゃん付けで呼ぶのは恥ずかしいな……) 京太郎「か、霞さん」 霞「『さん』じゃない!! 『ちゃん』!!」 京太郎「は、はい! か、霞ちゃん……////」 霞「なあに、京太郎お兄ちゃん」ニッコリ 京太郎(か、可愛え!!!)キュン 京太郎(って、ときめいてる場合じゃねえ!!) 京太郎「あの、霞ちゃん。霞ちゃんの泊まってる場所って分かりますか?」 霞「泊まってる場所? えっとね、確か○○旅館って所」 京太郎「○○旅館か……(スマホで検索中)よし分かった。ココなら近いな」 京太郎「霞ちゃん、今から○○旅館に戻りましょう」 霞「で、でもドーナツまだ買ってない……」 京太郎「ドーナツか……そうだ、俺が買ったやつあげますから!」 霞「いいの!? ありがとう、京太郎お兄ちゃん!!」 京太郎「だから早く戻りましょうね!!」 霞「うん、分かった」 京太郎(少しでも早く知らせないと。病院にだって行かないといけないしな) ―――――――――― 京太郎「もう少しで着きますからね」 霞「ドーナツ、ドーナツ、ドーナッツ♪」ルンルン ?「霞ちゃーん!! 霞ちゃーん!!!」 京太郎「あれ、石――霞ちゃん呼ばれてないですか?」 霞「あれ、本当だ」 ?「霞ちゃーん!! どこにいるの!!」 霞「あっ、巴お姉ちゃんだ!! 巴お姉ちゃーん!!」タッタッ 巴「霞ちゃん!? 良かった無事で」ホッ 霞「うん、無事だよ」 巴「もう! 一人で外に出ないでって言ったじゃない!!」 霞「ご、ごめんなさい……」シュン 京太郎「あの、すいません……」 巴「えっと、あなたは……?」 霞「京太郎お兄ちゃんだよ!! 私をここまで連れてきてくれたの」 京太郎「どうも、須賀京太郎って言います」 巴「そうでしたか。ありがとうございました」ペコッ 京太郎「いえ、気にしないでください! そ、それより大変なんです!!」 京太郎「石戸さんがなんか子供みたいになっていて、幼児退行してしまってるんですよ!!」 巴「幼児退行……? あぁ」 京太郎「だから早く病院に行かないと、取り返しのつかないことに!!」 巴「いえ、その必要はありません」 京太郎「必要がないって、そんな訳ないじゃないですか!! 現に石戸さんは10歳って――」 巴「ですから、霞ちゃんは、正真正銘10歳なんです」 京太郎「」 巴「団体戦も終わりましたし、お話します」 巴「私たち永水高校は、実はメンバー不足で本来なら団体戦には出られなかったんです」 京太郎「そんなはずないですよね? 永水は昨年のベスト4ですし、部員不足なんて……」 巴「学校は有名になっても、元々うちは麻雀に興味を持ってる生徒が少なかったんです」 巴「加えて永水は巫女や神道系が専門ですので、麻雀部に入る為に受験する人もいないんです」 巴「幸い部員は本家である小蒔ちゃん……姫様と分家の者たちでなんとか団体戦に出場できる数は揃っていました」 巴「しかし県大会のメンバー申請の直前に出場予定の部員の子がケガで入院してしまい、その子が出場ができなくなりました」 京太郎「で、でも他の分家の方や分家以外の部員がまだいるのでは?」 巴「いえ、他の分家の子は中学生、そして小学生の霞ちゃんですから、分家で出れるのは私たち三人だけでした」 巴「分家以外の麻雀部員も、入院中の子以外にはいないので……」 京太郎「人数ギリギリとか、ウチみたいですね」 京太郎「それで、なんで石戸さんが出場することに?」 巴「先ほどもお話した通り、本来なら団体戦は出れないため、個人戦のみに出場する予定でした」 巴「しかし、霞ちゃんがエントリー用紙に自分の名前を書いてしまい、そのまま出してきてしまって……」 京太郎「……それで石戸さんが出場することになったと」 巴「はい……」 霞「てへ」ペロ 巴「申請されたことに気づき、出場を辞退しようにも、周りが永水の団体戦出場で盛り上がってしまい……」 巴「今更辞退するとも言えず、やむなく霞ちゃんを高校生として出場させることになりました」 京太郎「いや、普通に違反ですよねそれ」 巴「はい……ですのでこの事は内密に……」 京太郎「まぁ、事情は分かりましたので、黙っときますけど……」 京太郎「ところで、石戸さん対局中とずいぶん雰囲気が違いませんか?」 巴「いくら見た目が大人でも、中身は子供ですからね。そのまま出したら違和感が出て、そこからバレる可能性がありましたから」 巴「全国大会までに徹底的に見た目に合った話し方、仕草、立ち振る舞いを教え込みました」 巴「幸い、県予選は霞ちゃんまで回ることなく終わりましたので、なんとかなりましたが」 京太郎「でも、今はそんな感じはこれっぽっちもないみたいですが……」 巴「そうなんですよ……出来れば個人戦が終わるまではバレないように演技してもらいたかったんですけどね」 巴「団体戦を敗退した後に、その演技を続けるよう言ったら――」 霞『やっ!! あれ疲れるからもうやだぁ!!』 巴「――こんな感じで嫌がってしまい、極力人前に出さないようにしてたんですが……」 巴「姫様が甘い物を食べたいと言うのを聞いて、自分が買ってくると飛び出してしまい……」 京太郎「それで迷子になったと。なるほど」 京太郎「うーん、でも本当に石戸さんが10歳だなんて、正直信じられませんね……」 巴「当然でしょうね」 京太郎「見た目はもちろんですけど、何よりあのおもちが……」 巴「小学生であれですから、末恐ろしいですよ。まったくもって羨ましいです」 京太郎「でも10歳にしては、少し子供っぽ過ぎませんか? ほら、しゃべり方とか仕草とか」 巴「そうなんですよ。見た目は大人、頭脳は幼児って感じなんです」 京太郎「それなんて小学生探偵ですか? 逆ですけど」 巴「ともあれ、大事になる前に霞ちゃんが戻ってきてくれて助かりました。本当にありがとうございます」 京太郎「気にしないで下さい」 巴「お時間あればお茶でもどうですか? 炎天下歩かれてお疲れでしょうし、お礼も兼ねてどうですか?」 京太郎「いいんですか? それじゃいただきます」 京太郎(ん? 何か忘れてるような……どうせ大したことじゃねえし、いいか) 霞「京太郎お兄ちゃん、一緒にドーナツ食べよ!!」キャッキャッ 京太郎「あ、ああ。いいよ石――霞ちゃん」 霞「やったっ!!」 京太郎「……」 京太郎(話を聞いた後だと、本当に10歳なんだなって思うわ……見た目以外は、だけどな) 永水高校 宿泊部屋 巴「ただいま戻りました」 初美「あっ、巴ちゃん丁度よかったのですよー!!」 巴「どうしたの、ハッちゃん?」 初美「姫様が迷子になった霞ちゃんを探そうと、神様を降ろそうとして……」 小蒔「……」ゴゴゴゴゴッ 初美「間違って全く関係のない、強力な神様を降ろしてしまったのですよー!!」 巴「あぁ、これはマズイわね……」 霞「うわっ、小蒔ちゃん大変!!」 京太郎「一体全体どうなってんだよ!!!」 初美「祓おうにも、巴ちゃんじゃないと無理で、連絡しようとしてたところなんですよー!」 巴「分かったわ、今すぐ祓うわ。ごめん須賀君、少し席を外してくれるかな?」 京太郎「えっ、いいですけど、なんで?」 巴「神様を祓う時は、対象者が一糸纏わぬ姿でないと出来ないので……その……」 京太郎「一糸纏わぬ姿って……裸!? す、すいません、すぐ出て行きます!!////」ダッ 霞「京太郎お兄ちゃん、顔真っ赤っかだったね」 巴「まあ、健全な男性でしたら当然の反応だと思いますが」 初美「そんな呑気に話してないで、早く姫様を戻して下さいよー!!」 巴「そうだったわね。それじゃいくわよ!!」 ―――――――――― 巴「……ふぅ、祓いました」 小蒔「……あれ、私……」ポー 霞「小蒔ちゃん元に戻った!!」 小蒔「あっ、霞ちゃん……良かったです、無事帰ってきてくれて」 霞「もう、みんな心配し過ぎ!! 私一人で大丈夫だもん!!」プンプン 巴「迷子になって須賀君に連れてきてもらった子の言う言葉ではないですね」 初美「かーすーみーちゃーん」ゴゴゴ 霞「はぅっ!! は、初美お姉ちゃん……?」カタカタ 初美「今日という今日は許さないのですよー」ゴゴゴ 霞「と、巴お姉ちゃん!! 初美お姉ちゃんに憑いてるモノも祓って!!」 巴「残念ながら、私には祓えないですね」 霞「嫌あぁあああ!!!」 京太郎(……俺は、今不思議な光景を目にしている) 初美「まったく、霞ちゃんの軽はずみな行動で、一体どれだけみんなが心配したと思ってるんですかー!!」ガミガミ 霞「ごめんなさーい!!」グスグス 京太郎(それはまるで、娘に怒られて正座で大泣きしてる母親のような、そんな光景だった……) 巴「すいません、お待たせしてしまって」 京太郎「いえ、それはいいんですが……あの、お聞きしますが、あの子も10歳ってことは……」 巴「残念ながら、ハッちゃんはれっきとした高校三年生です」 京太郎「マジかよ……」 初美「それに、もし霞ちゃんの正体がバレれば、姫様に迷惑が掛かるんですよー!!」ガミガミ 霞「うぅ……分かってますぅ……」グスリ 初美「失礼したのですよー。霞ちゃんを助けてくれて、ありがとうなのです」 小蒔「元を正せば、私が甘い物を食べたいなどと言わなければ……」 初美「いえ、姫様は悪くないのですよー。……悪いのは、自分勝手な行動をしたこのおバカさんなのですよー」ギロッ 霞「ひうぅっ!! きょ、京太郎お兄ちゃん助けて!!」ムニュルン 京太郎「ちょ、か、霞ちゃん!? お、おもちが……溢れんばかりのおもちが俺の腕にいぃい!!!////」 巴「霞ちゃん、須賀君が困ってるから離れなさい」クイ 霞「巴お姉ちゃんまでいじめる」ブー 春「……ドーナツ美味しい」モグモグ 初美「……はるる、いつ戻ってきたんですかー?」 春「……霞ちゃんが怒られてる途中くらい……かな?」 巴「そういえば祓ってる時にいなかったわね」 春「……黒糖、切れたから買いに行ってた」 巴「それよりドーナツって、買ってきてないはずよね?」 霞「あっ、それ私が小蒔お姉ちゃんの為に買ってきたんだよ!」 初美「ふーん、霞ちゃんがですかー」 霞「すごいでしょう!!」フフン 初美「お金も持たずに、どうやって買ってきたんですかねー?」 霞「あっ……」 京太郎「あー、それ俺があげたんですよ。丁度買ってたんで」 巴「そうだったんですか。すみません、代金は支払いますんで」 京太郎「別にいいッスよ、こんくらい」 初美「それにしても、貰った物を自分で買ってきたなんて嘘付くなんて、霞ちゃんー」ゴゴゴッ 霞「ひゃっ、ご、ごめんなさい!!」 京太郎「神代さんの為に買いに行ったんですから、自分の手で買って渡したかったんですよね、霞ちゃん?」 霞「京太郎お兄ちゃん……」 京太郎「そういうことですから、薄墨さん、霞ちゃんを怒らないであげて下さい」 初美「まぁ買ってきてくれた須賀君がそう言うのでしたら、いいですけどー」 京太郎「ありがとうございます。良かったですね、霞ちゃん」 霞「京太郎お兄ちゃん、ありがとう!! 大好きー!!!」ダキッ 京太郎「だ、だからお、おもちがあぁあ!! たわわに育ったおもちが当たるううう!!!////」 巴「はいはい、離れましょうね」グイ 霞「ぶーぶー」 初美「気になったんですけど、須賀君はどうして霞ちゃんに敬語使ってるんですかー?」 京太郎「えっ、それは……いくら実年齢が10歳でも、この見た目の相手にタメ口なのは、どうも抵抗がありまして……」 初美「名前は『ちゃん』付けなのにですかー?」 京太郎「そ、それは……か、霞ちゃんって呼ばないと話してくれなかったので……」 初美「なるほどなのです。でも少しずつでいいので、普通に話してあげて下さいねー」 京太郎「努力します」 小蒔「ところで京太郎さん。何か他に用事があったのではないですか?」 京太郎「? いえ、別に」 小蒔「そうなんですか? 持ち物が何やら買い物に行かれた後のような気がしましたので」 京太郎「買い物…………!?」ハッ 京太郎「し、しまった!! 買い出しの途中だったのすっかり忘れてた!!」 京太郎「す、すいません。俺帰ります!!」 霞「えー、京太郎お兄ちゃん、もう帰っちゃうのー?」 京太郎「ご、ごめんなさ――ご、ごめんね霞ちゃん」 霞「……また遊びに来てくれる?」 京太郎「ああ、また遊びに来るから」 霞「本当!? 約束だよ!!」 小蒔「今日は霞ちゃんを助けて下さって、ありがとうございました」 巴「気を付けて帰ってくださいね」 初美「いつでも遊びに来て下さいねー」 春「……久によろしく」 京太郎「はい! それでは失礼しますね!!」 清澄高校 宿舎 久「すーがーくーん」ゴゴゴ 京太郎「……はい、申し訳ありませんでした」(←正座中) 久「買い出し頼んで、何でこんなに時間が掛かるのかな~」 京太郎「はい、おっしゃる通りです」 優希「まったくだじぇ!! 頼んだタコスが冷え冷えだじぇ!!」プンプン 久「さーて、どんなお仕置きしようかしら~?」 京太郎「お、お手柔らかにお願いします……」ガクガク 咲「京ちゃん……」 和「須賀君なんかほっといて、あっちで私とイイコトしましょう」 まこ「和……アンタどさくさに紛れて何言うとるんじゃ……」 久「ぷっ、ごめんごめん。お仕置きなんて冗談よ、冗談」ケタケタ 京太郎「えっ、いいんですか?」 久「だって、人助けしてて遅くなったんでしょ? それで怒ったりしないわよ」 京太郎「ちょ、なんで知ってるんですか?」 久「春から電話があってね、迷子の部員を送って遅くなったって言ってたわ」 京太郎(おい、滝見さん!? まさか霞ちゃんが迷子になったこと言ったんじゃないだろうな!?) 久「でも薄墨さんも見た目通り子供ね。迷子になってワンワン泣いてたなんて」 京太郎(あ、薄墨さんが迷子って説明したんだ。良かった) 久「だから遅くなったお咎めはなし! 買い出しお疲れ様、須賀君」 清澄高校 宿舎(京太郎のみ) 京太郎「なんとか助かったぜ……」 京太郎(それにしても今日は色々と驚いたな……) 京太郎(まさか永水の石戸さんが10歳の小学生だったなんて、信じられるかよ……) 京太郎(……でも、事実なんだよな、これが) 京太郎(はぁ……咲との対局見てて、良いなって思ってたんだけどな) 京太郎(さすがに小学生を好きになるとか、犯罪だろうし) 京太郎(ただ、あのおもちの破壊力は凄まじい)ウンウン 京太郎(おもち力53万……それくらいあるだろうな) 京太郎(ただ、見た目以外は本当に無邪気な子供なんだよな……) 京太郎「よし、約束したし、明日また遊びに行ってみるか」 翌日 永水高校 宿泊旅館 京太郎「確か、ここだったな」 京太郎「昨日はそれどころじゃなかったが、改めて見ると高そうな旅館だな」 京太郎(さすが昨年のベスト4、うちとは比べもんにならないぜ) 京太郎「さてと、どうすっかな」 京太郎(遊びに来ていいとは言われたが、そのまま部屋に入っていいんだろうか?) 京太郎(いや、向こうも予定があるかもしれないし) 京太郎(それに女性が泊まってる部屋に断りもなく入るのはマズイだろうしな) 京太郎「あー、連絡先聞いとくの忘れたのは痛かったな」 京太郎「とりあえず、旅館の人にお願いしてみるとすっか」 ―――――――――― 京太郎「えーと……」 春「……」ポリポリ 京太郎「あの、滝見さん……?」 春「……うん」ポリポリ 京太郎「狩宿さんや薄墨さんは?」 春「……姫様と三人で買い物に出てる」バリボリ 京太郎「あー、まずったな」 春「……何か用なの?」ボリベキ 京太郎「いや、暇だったし、ちょっと遊びに来たんッスけどね……」 京太郎「みなさんいらっしゃらないようなんで、出直してきます」 春「……いや、いてほしい」 京太郎「えっ!?」 京太郎(まさか滝見さん……意外だな、てっきり部長狙いだと思ってたんだが……) 霞「あーーー!!! 京太郎お兄ちゃんだーーー!!!」ダッダッ ダキッ 京太郎「か、霞ちゃん――どわあっ!?」ドテン 霞「みんないなくて退屈だったから、京太郎お兄ちゃん遊んでー!」 春「……霞ちゃんの遊び相手に、いてほしい」 京太郎(……ですよねー) 霞「ねぇねぇ京太郎お兄ちゃん。何して遊ぶ?」 京太郎「か、霞ちゃん……まずは俺の上から離れてほしいな」ムニュッ 霞「やぁん……////」 京太郎「や、やべっ!?」 京太郎(離そうと伸ばした手の先に霞ちゃんのおもちがああああ!?) 京太郎「ごごごごめん霞ちゃん!!////」 霞「もぉー、京太郎お兄ちゃんの、エッチスケッチワンタッチ」 京太郎(あれ……あまり嫌がってる感じしないな……) 京太郎(それにしても、なんて柔らかい感触なんだ) 京太郎(生まれて初めて女性(?)のおもちに触れたが……) 京太郎(なんというか、その……感動だな)シミジミ 春「……」ポリポリ 春「……ロリコン」ボソッ 京太郎「はぅあ!!??」ガバッ 霞「うわっ!?」ゴテン 京太郎「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ドゲザ 霞「京太郎お兄ちゃん!? なんでそんなに謝ってるの!?」 春「……綺麗な土下座」パシャ ―――――――――― 霞「それで京太郎お兄ちゃん、何して遊ぶ?」 京太郎「そうだな。霞ちゃんは何がしたいかな?」 霞「うーんとね、あっ、ファッションショーごっこしたいな!」 京太郎「ファッションショーごっこ?」 霞「今度宮守のみんなと海水浴に行くんだけどね」 霞「私はそんなこともあろうかと思って水着を持ってきたんだ」 京太郎「うん、それで?」 霞「いくつか持ってきたから、ファッションショーみたいに着てみせるからね」 霞「その中から、京太郎お兄ちゃんが私に似合うの選んでね!」 京太郎「み、水着を着る!?」 京太郎(ボンキュッボンの霞ちゃんの水着姿が見れるとか最高じゃないか!!) 京太郎(今日は最高の一日になりそうだな) 春「……もしもし警察ですか? 10歳の子供を狙う変態がここに」 京太郎「ごめんなさい反省してますだから警察だけは!!」 春「……間違えた。110番じゃなくてこれ117番だった」 京太郎「時報かよ!!」 京太郎(ダメだダメだ!! 霞ちゃんは10歳だ、変な目で見たらいけない!!) 京太郎(ここは冷静に……そう、妹の水着を選ぶ兄のような気持ちで行こう!!) 霞「京太郎お兄ちゃん……嫌…かな?」 京太郎「ははは、いいよ。可愛いの選んであげるね」 霞「本当!? やったー!!」ピョン プルルン 京太郎「うおっ!? い、いかんいかん」 京太郎(思わずおもちの縦揺れに目が行ってしまった……自重しろ俺!!) 東京都内 繁華街 内木「ふむ……会長の応援をするために単身東京に来たはいいが……」 内木「試合会場がどこにあるのかさっぱりだな」 内木「さてどうしたもんか……」 小蒔「水着買えて良かったですね」 巴「一応霞ちゃんの分も新しいの買っておきましたし」 小蒔「それにしても霞ちゃん、お留守番させて申し訳ないですね……」 初美「仕方ないのですよー。これ以上霞ちゃんの正体がバレるわけにはいかないのですからー」 内木「あ、あ、あ、あれは……!!」ズキュン 巴「これからどこ行きましょうか?」 小蒔「霞ちゃんが可哀想ですし、お土産買って旅館に戻りませんか?」 初美「まったく、姫様は霞ちゃんに甘々なのですよー」 内木「そこのお譲さん」 巴「はい?」 内木「初めまして。僕は内木一太という者です」 小蒔「はあ」 内木「よろしければ僕とお茶でもしませんか?」 巴「お茶でもって……もしかしてナンパですか?」 初美「姫様はモテモテでうらやましいのですよー」 小蒔「えっ、いきなりそんなこと言われても!?」アタフタ 内木「いえ、僕がお誘いしてるのは、あなたです」 初美「えっ?」 巴「こ、これは予想外というか……驚きですね」 小蒔「初美ちゃん可愛いですものね」 内木「ダメ……でしょうか?」 初美「い、いや、ダメというわけではないのですけど……」ドキドキ 初美(うわー、ナンパなんて生まれて初めてですよー!!) 初美「私みたいなチンチクリン誘ったってしょうがないですし……」ドキドキ 内木「何を言ってるんですか!?」 内木「その小柄で華奢な体、男として守ってあげたくなりますし」 内木「少しはだけた服装には色気があって、思わずドキッとしてしまいます」 初美「そ、そんな風に言われたのは初めてですよー」テレテレ 内木「僕はそう――」 内木「ランドセルが似合うあなたに恋をしたんです!!」 初美「」 内木「その成長期を過ぎたにも関わらず、つるぺたな容姿」 内木「あどけなさが残ってる幼女のように可愛らしい顔」 内木「まさに合法ロリ!! ぜひ僕と付き合ってください!!」 初美「断固断るのですよー」イラッ 内木「な、なぜ……」 初美「これ以上その口開けると、警察に通報するのですよー」イライラ 小蒔「初美ちゃん、そんなにきつく言わなくてもいいですのに……」 巴「いや、ハッちゃんがキレるのは当然だと思いますが」 内木「僕の何がいけないんですか!? こんなにも幼女のようなあなたを好きなのに!!」 初美「幼女幼女うるさいのですよー!!」ウガー 初美「私だって、あと数年もすれば姫様や霞ちゃんみたいにボンキュッボンになるんですからー!!」 巴「それは絶対にありえませんが」 内木「ならせめて番号交換だけでも!!」 巴「この状況でまだ食いついてくるのですか!?」 初美「えっと……警察の番号は……」ピッピッ 小蒔「初美ちゃん、ダメです警察は!!」 久「てい、シャイニングウィザード」ダッ 内木「ぐへっ!!??」ゴキリッ 久「ごめんなさいね、うちの副会長が迷惑かけちゃって」 内木「」ピクピク 巴「あなたは……確か清澄の部長さんでしたよね?」 初美「その失礼男は、清澄の方だったんですかー!?」 久「そうよん。何やら嫌な予感がして来てみたら、案の定またやらかしてたみたいだし」 初美「まったく、いきなり人をランドセルが似合うだの、幼女だの散々失礼な事言ってきますしー!!」プンプン 久「それは失礼よね。否定はしないけど」 初美「してくださいよー!!」 久「まあコイツに関しては後でたっぷり罰を与えとくから、それで見逃してくれないかな?」 巴「まあ、ハッちゃん以外には実害ないですし、私たちは構わないのですが」チラッ 初美「絶対に嫌なのですよー!!」 久「そう」 初美「当然です!!」プンプン 久「……そういえば、高校生の大会に小学生が出るのってマズイわよね」 初美「うっ!?」ビクッ 久「もう一度聞くけど、見逃してくれるかな?」 初美「ま、まあ今回は大目に見るのですよー」ガクガク 久「ふふ、ありがとうね」 巴「あ、あの……もしや須賀君から聞いたんですか?」 久「いやいや。須賀君はそういうこと言いふらす子じゃないしね」 巴「で、ですよね……ではなぜ?」 久「うーん、最初は仕草や言葉がなんか作られてる感じがして違和感があったんだけどね」 久「気になって聞いたら、小学生だって教えてくれたわよ――春が」 初美「はぁああるぅううるぅうう!!!」ゴゴゴ 小蒔「初美ちゃん落ち着いて!!」 久「大丈夫よ、秘密にしておいてあげるからさ」 巴「助かります」 久「さーて、このバカにお仕置きしないとね」 小蒔「あの……あんまりひどいことしないで下さいね」 久「大丈夫よ、小鍛治プロや瑞原プロのところにしばらく放り込むだけだからさ」 巴「それはロリコンの彼にとって地獄ですね」 永水高校 宿泊部屋 京太郎(霞ちゃんは10歳霞ちゃんは10歳霞ちゃんは10歳)ブツブツ 霞「おまたせ、京太郎お兄ちゃん!!」ガラッ 京太郎「うおぉっ!?」 霞「えへへ、どうかな……?」 京太郎(す、スク水だと……!?) 京太郎(霞ちゃんのスタイルでピタッと張り付いて、そこが妙にエロい) 京太郎(さらにおもち付近の『5-2 石戸霞』と書かれたゼッケンがさらにヤバい) 京太郎(はっ!? ダメだダメだ、邪なことは考えるな!!) 京太郎「うん、すごく似合ってるよ」ニコッ 霞「本当に!? わーい」ピョンピョン 京太郎「こら霞ちゃん、あんまりはしゃぐとケガしちゃうよ」 霞「大丈夫だよ――うわぁ!?」プルン 京太郎「ぶふぅ!?////」ブッ 京太郎(まさかのポロリだとおおおおお!!??)ダクダク 霞「あはは、またやっちゃった」 京太郎(一瞬だけど見えちまった……大きなおもちに控えめなピンク……)ダクダク 春「……京太郎、刑務所に行っても元気でね」 京太郎「いや待って、今のは事故ですから!?」 霞「じゃあ、次のに着替えてくるね」バタン 京太郎「……な、なあ、滝見さん……」 春「……春でいい」 京太郎「そうか……春、霞ちゃんあれで授業受けてんだろ?」 春「……そうみたい」 京太郎「周りの視線とか、大丈夫なのか」 春「……霞ちゃんの小学校、女子校だから」 京太郎「そうか……それは良かったよ……」 京太郎(あれは小学生の男子諸君には刺激が強すぎるからな……) 霞「じゃーん、次の水着はこれだよ!」ガラッ 京太郎「おおぅ!?」 京太郎(オーソドックスな黒のビキニタイプ……本来10歳には似合わないのだが) 京太郎(霞ちゃんのスタイルにはドンピシャでピッタリだな) 京太郎「うん、いいんじゃないかな。動きやすいだろうし」 霞「そうかなそうかな?」ピョン 京太郎「わー!? ダメだって飛び跳ねたら!! また水着がずれちゃうでしょう?」 霞「そっか、ごめんなさい」 京太郎「ほっ……」 霞「次のに着替えてくるね!」バタン 京太郎(それにしても、あのおもちはすばらだな……) 京太郎(ビキニになってさらに分かるが……あれはおもち力53万は軽く超えたな) 京太郎(あぁ……これで霞ちゃんが10歳じゃなかったらな) 春「……!! 邪悪な気配!!」サッ 京太郎「おぅ!? どうしたんだ春、いきなり?」 春「今、霞ちゃんのおもちのことを考えてる邪悪な気配を感じた」 京太郎「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ドゲザ 春「……なぜ京太郎が謝るの?」 霞「じゃじゃじゃじゃーん!! 最後はこれだよ!!」ガラッ 京太郎「おー!」 京太郎(さすがに三度目は大分慣れたから大丈夫だな) 京太郎(さっきと同じ黒のビキニか……ん? 心なしか布面積が少ない気が……?) 霞「どうかなどうかな?」クルッ 京太郎「がはっ!!??////」ブッ 京太郎(て、て、ティーバックだとおおおおおお!!??)ダクダク 霞「京太郎お兄ちゃん、鼻血出てるよ!?」 京太郎「だだだ大丈夫だから、これ以上近づかれるとおもちの谷間がああ!?////」 霞「ふぇ?」 京太郎(落ち着け京太郎! ここは心を無にして、煩悩を捨てるんだ!!)ダクダク 京太郎「……」 霞「わっ、京太郎お兄ちゃんが風越の人みたいな糸目になってる」 春「……とおらばリーチ(笑)」 京太郎(……よし、なんとか鼻血は止まったな) 京太郎「霞ちゃん、その水着はまだ早いから止めとこうね」 霞「えー。せっかく大人っぽく行こうと思ったのにー」 京太郎「二つ目の水着が一番可愛かったよ」 霞「そう? 京太郎お兄ちゃんが可愛いって言ってくれるなら、二つ目のにしーよっと」 京太郎(ほっ、良かった) 霞「えへへ。京太郎お兄ちゃんと遊ぶの、すっごい楽しいな」 京太郎「そ、そうか?」 京太郎(あんまり遊んだって感じしないけどな) 春「……私も、京太郎で遊ぶの、すっごい楽しい」 京太郎「おいコラそこ、意味変わってんじゃねえか!!」 霞「それじゃ巫女服に着替えてくるね」バタン 京太郎「ふぅ……なんとか乗り切ったぜ……」 春「……おっきした?」 京太郎「してねえよ!!」 京太郎(少ししか) 春「……それより京太郎、服血だらけ」 京太郎「ん? って、マジだ!? あー、鼻血出しまくったからな」 京太郎「まあ畳には血が飛んでねえのがせめてもの救いだな」 春「……露天風呂、入って来たら?」 京太郎「露天風呂? んなもんあんのかよ?」 春「……ある。混浴だけど」 京太郎「おいおい、混浴って嬉し――じゃなくてマズイだろ?」 春「……大丈夫。この旅館は私たちの貸切」 春「みんなには京太郎が入ってるって言っておく」 京太郎「んまあ、このままじゃ帰れねえし、せっかくだし入ってくるか」 春「……ごゆっくりどうぞ」 ?「ふむふむ、これはこれは、おもちな予感がするのです!」 露天風呂 カポーン 京太郎「ふぅ……」ゴシゴシ 京太郎「こんな豪華な露天風呂一人占めできるんだから、最高だよな」 京太郎「欲を言えば、神代さんとか狩宿さんとかとご一緒したかったけどな」 京太郎「霞ちゃん……はさすがにダメだよな……」 京太郎「いくら見た目は大人でも、10歳だしな」 京太郎「俺はロリコンじゃねーし、それに10歳だったら異性と風呂とか嫌だろうし」 京太郎「でも、一度でいいから美人と混浴してみてーな」 京太郎「まあ、今日のところは贅沢な一人風呂ができるってことで良しとしようか」 京太郎「さーて、湯船に浸かるとすっか」 ガラガラ 京太郎「へっ?」 霞「京太郎お兄ちゃん、一緒に入ろー」 京太郎「ぶっ!!??////」ブシュ 京太郎(一糸纏わぬ姿の霞ちゃんがああああ!!??) 霞「京太郎お兄ちゃん、また鼻血なの!? 大丈夫!?」 京太郎「……か、霞ちゃん……な、なんでここに……?」ダクダク 霞「えっとねー、春ちゃんが京太郎お兄ちゃんがお風呂に行ったから、一緒に入っておいでって」 京太郎(はぁああああああああるぅうううううううううううううう!!!!!) 京太郎「で、でも男と一緒に風呂なんて、嫌じゃないのか?」ダクダク 霞「うーん、ちょっと嫌かも」 京太郎「な、なら俺は上がるから、一人でゆっくり――」 霞「でも京太郎お兄ちゃんとなら、嫌じゃないよ」ニコッ 京太郎「うっ!?////」ドキッ 京太郎(やべぇ、めっちゃ可愛い) 霞「京太郎お兄ちゃんは、私とお風呂、や?」 京太郎「……い、嫌じゃねえよ……」 霞「やったー。それじゃ京太郎お兄ちゃんのお背中流してあげるね」 京太郎「……お、お願いね……」 京太郎(見ちゃダメだ見ちゃダメだ本当は見たいけど見ちゃダメだ) 京太郎(あんなに純粋な気持ちで来られたら、断れねえよ……) 京太郎(と、とにかく邪なことは考えず、早く終わらせよう) 霞「ごしごし、ごしごし」 京太郎「……」 京太郎(3.14159265358979323846……)ブツブツ 霞「京太郎お兄ちゃん、気持ちいい?」 京太郎「あ、ああ。気持ちいいよ」 霞「そっか。良かった」 京太郎(26433832795028841971……)ブツブツ 霞「はい終わったよ」 京太郎「ほっ」 霞「それじゃ今度は私の背中お願いね」 京太郎「あ、ああ……分かったよ」 京太郎(69399375105820974944……)ブツブツ 京太郎「はい、終わったよ」 霞「ありがとうね、京太郎お兄ちゃん」 京太郎「それじゃ、湯船に浸かろうか」 京太郎(よし、これで少なくとも身体は隠れるぞ) 霞「うん――ってうわぁあ!?」ゴテン 京太郎「霞ちゃん!? 大丈……夫……」パチクリ 霞「えへへ……ころんじゃった」テヘ 京太郎(ややややばい、まさかのM字開脚!?) 京太郎(しかもそれを隠す物が一切ないだと!?) 京太郎「ぐはっ!?」ブッ 霞「だ、大丈夫京太郎お兄ちゃん!? ――やっ!?」ゴテン 京太郎「~~~~~////」モゴモゴ 京太郎(霞ちゃんのおもちがあああ、俺の顔にいいいい!!??」 京太郎(あ、やっぱ柔らかいな……おもちって……) 京太郎(人肌でほんのり温かくなったおもちが、俺を楽にしてく……れ……る……) 京太郎「……」 霞「よいしょっと。大丈夫、京太郎お兄ちゃん?」 京太郎「」チーン 霞「京太郎お兄ちゃん、死んじゃやだーーーー!!」エーンエーン 玄「大丈夫なのです! まだ間に合うのです!!」サッ 霞「ふぇ? お姉ちゃん誰?」グスグス 玄「そんなことより、早く誰か助けを呼んでくるのです!!」 霞「う、うん!!」 ―――――――――― 京太郎「……う、うーん」 巴「あっ、気が付きましたか?」 小蒔「大丈夫ですか、京太郎さん」 京太郎「あ、あれ……狩宿さんに神代さん? お、俺どうしてここに……?」 小蒔「京太郎さん、お風呂場で血だらけで倒れてたんですよ。私驚いて失神しそうになりました」 巴「帰ったら霞ちゃんが泣きながら全裸で『京太郎お兄ちゃんが死んじゃう』って言って大変だったんですよ」 京太郎「えっ…………あっ!!」 京太郎「いや、けっして俺は霞ちゃんに欲情したとか、変なことをしたとか、ないですから!!」ワタワタ 巴「大丈夫です、分かってますから」クスクス 小蒔「霞ちゃんのスタイルは、殿方にとって刺激が強いみたいですね」 京太郎「は、はあ……お恥ずかしながら」 巴「でも大事に至らないで良かったです」 京太郎「あの……さっきから気になってたんですけど……」 巴「? 何か?」 京太郎「あそこで正座させられてる三人はいったい……」 霞「ごめんなさーい!!」エグエグ 春「……反省はしてる。後悔はしてない」 玄「私は京太郎君の命の恩人なのですよ!!」 巴「ああ、今回須賀君が死にかけた原因を作ったこと、それと不法侵入に対する説教ですね」 京太郎「ってかなんで玄さんがいるんですか?」 巴「何やら『強大なおもちの気配がするのです』って言って露天風呂に忍び込んだらしいですよ」 京太郎「なにやってんだあの人は……」 初美「いいですか霞ちゃん!! あなたは自分の身体のことを考えて行動するのですよー!!」ガミガミ 霞「だってだって、京太郎お兄ちゃんと一緒にお風呂入りたかったんだもん!!」エグエグ 初美「だからと言って、タオルも巻かずに裸で入る子がありますかー!!」 霞「ご、ごべんなざいいい!!」グスグス 初美「それからはるる!! 霞ちゃんをけしかけたり、清澄の部長さんに霞ちゃんのこと話したりして!!」ガミガミ 春「……ごめんなさい」 初美「まったく、ちゃんと反省するのですよー!!」 春「……次からはバレないように上手くする」 初美「全然反省してないじゃないですかー!!」 玄「なんで私まで怒られないといけないのですか、薄乳さん!」 初美「薄墨ですよー!! 誰が薄乳ですか!!」 玄「私がいなかったら京太郎君は死んでたかもしれないんですよ!!」 初美「それについては感謝してますよー」 初美「でも、貸切の旅館に侵入したのはどうなんですかー!!」 玄「そこにおもちがあるからです」キリッ 初美「カッコよく言っても不法侵入は不法侵入ですよー!!」 玄「だって石戸さんのあのおもち、一度は生で見たいと思うじゃないですか!!」バンッ 初美「なんであなたの方が怒ってるんですかー!!」 ―――――――――― 霞「」チーン 春「」チーン 玄「」チーン 初美「まったく、三人ともしっかり反省するのですよー」 巴「はあはあ……だからといって姫様に神様を降ろさせないで下さいよ……」ゼェゼェ 小蒔「……ん……あれ……?」 京太郎「あ、あの……どうもご迷惑おかけしました」ガラッ 初美「いえ、迷惑をかけたのはこっちなのですよー。本当にごめんなさいなのです」 京太郎「そんな、謝らないで下さ――うおっ、どうしたんですか三人とも!?」 初美「少しばかりキツ目のお仕置きをしただけなのですよー」ニコッ 京太郎「そういえば今日霞ちゃんから聞いたんですけど、今度海水浴に行くんですって?」 巴「はい。個人戦まで日はありますし、その間に宮守の方々と一緒に行こうかと」 京太郎「いいですね」 小蒔「よろしければ京太郎さんもご一緒にどうですか?」 京太郎「えっ!? お、俺もですか!?」 小蒔「はい。大勢で行った方が楽しいでしょうし」 京太郎「あ、ありがたい話ですけど、宮守の人たちも男が一人来たら嫌でしょうし……」 巴「それについては大丈夫です。今姉帯さんに連絡したら『いいよー』との返事がありましたので」 京太郎「はやっ!?」 初美「それに須賀君が来てくれたら、今日みたいなナンパ男を撃退してくれるでしょうし」 京太郎「ははは、あまり争い事は得意じゃないッスけどね」 小蒔「どうですか?」 京太郎「それじゃ、お言葉に甘えて行かせてもらいますね」 霞「京太郎お兄ちゃんも一緒に海行くの!? わーい!!」ダキッ 京太郎「どわあっ!? か、霞ちゃん、嬉しいけど抱きつくのは勘弁して!!////」 霞「やー」 春「……久に写メール」パシャ 京太郎「お願いだから春、部長には送らないで!!」 玄「楽しみなのです、海水浴!!」フンスッ 京太郎「ってか玄さんも来るつもりですか!?」 玄「当たり前なのです!! 京太郎君にばかりおもちで美味しい目に会わせませんから」 小蒔「わあ、海水浴がますます楽しみになってきましたね」 巴「そうですね。須賀君にはますます大変になってきましたけど」 春「……久から返信だ。何々……『ロリコン乙』だって」 初美「霞ちゃん、またお仕置きされたいのですかー!!」 霞「きゃー、京太郎お兄ちゃん助けてー」 玄「ずるいのです京太郎君。私と代わるのです!!」 京太郎「誰か助けてくれーーーー!!!」 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/617.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344166800/ 京太郎「おーっす!あれ?」 和「すぅ……」zzz 京太郎「和は寝てて、みんなはまだ来てない」 京太郎「てことは今がチャーンス!!……なんてな!」 京太郎「コーヒーでも入れるか」 京太郎(それにしても、ぬいぐるみ抱きしめて寝てる和……かわいいなあ……) ???「そんなに和が気になるペン?」 京太郎「お、マジかよ!じゃあ頼む……ん?」 京太郎「俺今誰と話してたんだ……?」 エトペン「ボクだよ!ボク!」 京太郎「」 京太郎「……つまりお前はぬいぐるみの癖に意思を持ってて、話す事ができると……トイストーリーみたいだな」 エトペン「そういう事ペン!それで物は相談なんだけど、ボクとキミの身体を交換しないかい?」 京太郎「またワケのわからんことを……」 エトペン「さっき、ボクと代わりたいって言ってただろ?交換すれば、和に抱きしめられることになるペン!」 京太郎「お前、そんな事も出来るのかよ?ちょっと信じ難いぜ」 エトペン「出来るんだな、これが!どうだい?」 京太郎「うーん……和に抱きしめられるというのは最高だけど、お前にメリットがないじゃねえか。なんか怪しいんだよなあ」 エトペン「いや実は……気になるコが居てさ、人間の体を借りて話してみたいんだペン!」 エトペン「変な事はしないから大丈夫だって、平気平気!」 京太郎「ぬいぐるみの癖に生意気なヤツだな……まあいいや、騙されたと思って乗ってやるよ」 エトペン「話がわかる!よーし、交換するペン!」 ででどん! 京太郎「あ、あれ……ここは」 エトペン「上手くいったペン!」 京太郎「お、俺が俺の目の前に立ってる……!」 エトペン「いやー、人間の体は新鮮だペン!目線が高いっていいな!」 京太郎「という事は……この暖かい場所は和の体!頭の上の柔らかいのは……ごくり」 エトペン「はは、満喫するペン!じゃあボクはちょっと出掛けてくる。魔法は今夜の12時に解けるから気をつけるペン!それじゃ」 京太郎「おっと、俺の体であんま好き勝手しないでくれよ!……行っちまった、大丈夫かな……」 京太郎「ああ、静かだ……陽が差してあったかい……」 京太郎「何だか変な感じだ……和に抱きしめられてるのに、むしろ落ち着く……」 京太郎(女の子って柔らかくてあったかくていい匂いなんだな……) 京太郎(揺り籠みたいに体がゆっくり動くから……だんだん眠く……) 京太郎(赤ちゃんの時を思い出すような……) 和「すぅ……」zzz 京太郎「……」zzz その頃 エトペン「ついに手に入れた……!念願が叶った!」 エトペン「この日をどれほど待ち望んだか……」 エトペン「京太郎の体を好き勝手に弄べる日を!!」 エトペン「すごい……すごいよ京太郎……!興奮してギンギンになってるのが分かる!」 エトペン「なんていやらしい体なんだ!!」 エトペン「ああ……大きい……グロテスクで……熱いよ京太郎!はあはあ……!」 エトペン「ああイきそうだよ!京太郎!君はオレにイかされちゃうんだよ!?はあ……!エッチなミルクいっぱい出しちゃうよ!?」 エトペン「京太郎!京太郎!京太郎!京太郎!!!」ドピュッドピュッ エトペン「ああっ…!はあ…!こ、これが京太郎のミルク……!全部飲んじゃうよ!?ごくっ……」 エトペン「にがい……!京太郎のせーし、オレの喉に絡みついてるよ……!!」 エトペン「また興奮してきた……!!まだイくよ!京太郎……!」 その頃 ハギヨシ「頼まれた仕事に思ったより時間がかかってしまいました、早く帰らなくては……ん?」 ハギヨシ「あのトイレから呻くような声が聞こえました……まさか怪我人では……?」 ハギヨシ「様子を見に行ってみましょう」 ハギヨシ「大丈夫ですかー?」 エトペン「うおおおおお!京太郎ーー!うおおおお!」シコシコ エトペン「京太郎みるく出るううううう!!!」ドピュドピュ ハギヨシ「」 エトペン「うおおお…お!?」 ハギヨシ「」 エトペン(ま、まずい!こいつは確か龍門渕のハギヨシ……何故ここに!?) エトペン(しかも今のオレは、傍目から見たら自分の名前呼びながらイく変態じゃないか……!) ハギヨシ「わ、私は何も見ませんでした……それでは」 エトペン(仕方ない、口封じだ!)ガシッ ハギヨシ「えっ!ちょ、離して下さい!」 エトペン「暴れんなよ!暴れんな!」 ハギヨシ「京太郎さん!まずいですよ!」 エトペン「いいだろハギヨシ!!はむっ」 ハギヨシ「う、うもう……ちゅっ……ぷはあ……誰か……!」 エトペン「よし!じゃあぶち込んでやるぜ!」 ハギヨシ「誰か助けて……!」 京太郎(あれ……眠ってた……) 優希「リーチだじぇ!!」 和「通しませんよ」 優希「んあっー!のどちゃん意地悪だじぇ……」 咲「そういえば京ちゃんは?」 まこ「まだ来とらんようじゃのう」 久「でもここに鞄が置いてあるわ、一度は部室に来たみたいね」 咲「どうしたんだろ?」 京太郎(ここで喋るわけにもいかないからなあ……) 京太郎(それにしても、ぬいぐるみの視点になると色々新鮮だな……タコスでさえ大きく見える) 優希「のどちゃん、ちょっとエトペン貸してー」 和「いいですよ」 京太郎(そしてただでさえ大きい和の胸が頭の上に……ん?) 京太郎(た、タコスの奴何て事を!離せぇ!) 優希「今日もエトペンはかわいいじぇ……あれ?」 優希「なんか今日はにくたらしい顔してる気がするじぇ……」グニグニ 京太郎(ちくしょう、覚えてろよ……) 京太郎(でも、こういう何気ない日常って、いいもんだよな……) エトペン「ほら、気持ちいいだろハギヨシ!!」パンパン ハギヨシ「気持ちいいですうううう!あっ!もっと、もっと突いてくださあああい!あっ!あっ!」 エトペン「ホラホラホラホラ!!もっと鳴けよ!!パンパン」 ハギヨシ「オォン!アォン!も、もう……イっちゃいますう!」 エトペン「いいよ!こいよ!」パンパンパンパン ハギヨシ「イきますうううう!!」ドビュルルル エトペン「お、オレも……ヌッ!!」ドピュドピュドピュ エトペン「ハア……!ハア…!つい夢中になっちまったぜ……京太郎の体と二人きりのはずだったのに……」 ハギヨシ「京太郎さあん……もっと…もっと下さい……」 エトペン「離せよこのホモ野郎!」ペチン ハギヨシ「オフッ」ビクンビクン エトペン「家に戻ってシャワー浴びよう……体洗わなくちゃ……」 エトペン「って京太郎の姿じゃ和の家に戻れないじゃん!どうしよう」 エトペン「学校にシャワー室無いかな、行ってみるか」 ハギヨシ(フフ……逃がしませんよ……) 京太郎(あーあ、動くに動けないし、タコスのペタンコな体じゃドキドキもしねーや……ふああ) 優希「今どこかで悪口言われた気がするじぇ……」 京太郎(今日の12時だっけか、効果が切れるの……ん?) 京太郎(待てよ?てことは……和の家に行く事になるのか!?) 京太郎(着替えとか見られるかもな、へへへへ……おっといかんいかん) 部長「あら?あそこ歩いてるの須賀くんじゃない?ほら、そこ」 咲「あ、本当だ……あそこって部室棟ですよね?」 部長「どうしたのかしらね、兼部はしてないはずだけど」 優希「咲ちゃーん、もう一回勝負だじぇ!」 咲「あっ、うん」 京太郎(あいつ何やってんだ?……ま、かわいいおもちゃのやりたい事なんてたかがしれてるよな、ほっとくか) エトペン「思ったとおりだ!運動部のシャワールームがあった」 エトペン「誰もいないし、早速体洗おう」 サッー! エトペン「Foo↑キモチイー!シャワーっていいもんだな……」 エトペン「それにしてもエロい体だなあ……自分で自分のにしゃぶり付きたいくらいだ……京太郎……」 エトペン「京太郎のおちんちん……おっきくなってる……オレの手で興奮したんだね……」 エトペン「なんかすげえムラムラしてきた……誰もいないよな?……よーし」 ガチャッ モブ部員A「ぬわああああん疲れたもおおおおん」 エトペン(やべっ!) モブ部員B「すっげーきつかったゾ」 モブ部員C「シャワー浴びてすっきりしましょうね」 エトペン(……仕方ない、ちょっと待つか) モブ部員B「あ、そうだ、おい木村ァ!お前さっき俺たちの試合チラチラ見てただろ、熱心じゃねえか」 モブ部員C「いやそんな……/////」 モブ部員A「そういえばお前さっきさ、試合に負けそうな時なかなか諦めなかったよな、えらいぞ」 ハギヨシ「そうだよ(便乗)」 モブ部員C「やめてくれよ……(照れ)、そろそろ出ますね」 モブ部員B「お!待てい!俺たちも出るゾ」 モブ部員A「ビール!ビール!冷えてるかー!」 ガチャッ エトペン「……よし!これで京太郎の体と二人きり……うへへ」 エトペン「はあ……!いいよ!気持ちイイ!あっ!あんっ!」シコシコ ハギヨシ「気持ちいいですか?」 エトペン「気持ちいいよ!出る!出る!」 エトペン「……って何でここに居るの!?」ドビュッ ハギヨシ「ふふっ……いっぱい出ましたね……ひどいじゃないですか、僕の心を奪っておいて逃げるなんて」 エトペン(うわこいつホモだよやべえ……逃げなきゃ(使命感)) エトペン「お、オレはお前に興味なんて無いから!」 ハギヨシ「つれない貴方も好きですよ……/////」 エトペン「オレが悪かった!だから離せ!」バタバタ ハギヨシ「さあ、愛し合いましょう……!」 咲「結局京ちゃん来なかったね……」 優希「サボった罰はタコスの奢りだじぇ!!」 京太郎(いつも奢ってやってるだろ!!) 和「きっと明日は来ますよ、何か用事でもあったんでしょう」 咲「うん……鞄置いてきちゃったけど、いいのかな」 京太郎(わ、忘れてた……!宿題が……うう) 和「それでは、私はここで」 咲「また明日ね!」 優希「ばいばーい!」 京太郎(ドキドキ……いよいよ和の家に潜入…!) 京太郎(エトペン!お前ってヤツは最高だぜ!) ハギヨシ「京太郎さん!好きだ!もっと僕のモノで感じて下さい!!」パンパン エトペン「ちくしょう……!オレの京太郎の体が……!こんなヤツにいい!」ビクン ハギヨシ「恥ずかしそうな顔が!すっごくセクシーですよ!!衣様にお見せしたいくらい!」パンパン エトペン「あん!あっ!あん!アーン!!」ドピュッ ハギヨシ「京太郎さん、ミルク出しちゃうくらい感じてくださってるんですね……大好きですううう!」ドピュッドビュルルル エトペン「オレの京太郎がああ!アン!ああん/////」ビクンビクン ハギヨシ「イき過ぎィ!イくイくイくイく……ンアッーー!」ドビュルルルルル 京太郎(や、やべえええええ!寝てる和に抱きつかれて、ベッドの上、二人きり!!) 京太郎(帰ってきて、着替えとか、私服とか、普段見せない顔とか見ちゃって、ドキドキが最高潮のタイミングで……やばい!) 京太郎(ってもうすぐ12時じゃん!?触るか!?いやダメだろ!えっでも今触らないと……どうする!?) 京太郎(いや落ち着け俺!落ち着いて……うひょおおおおおおっぱいおっぱい!……ん?) 和「むにゃむにゃ……みんなで……ゆうしょう……」zzz 京太郎(……) 京太郎(自分という人間が恥ずかしくなってきた……結局今日は麻雀の練習してないし……) 京太郎(……もう後1分で12時か……さよならだな) 京太郎(和……頑張れよ、応援してるから)ギュッ ででどん! 京太郎(……戻ってきた……) 京太郎(結局何も出来なかったな……ま、いいか!) 京太郎「それにしても夢でも見てたみたいだ……トイレ行って寝よ……あれ?」 ハギヨシ(全裸)「ふふ……きょうたろうさん……だいすき……むにゃむにゃ」zzz 京太郎(全裸)「」 エトペン「あー気持ち良かった(ぺ並感)」 エトペン「でも京太郎大丈夫かなー、あいつと一緒で」 エトペン「もしかして怒ってるかな……オレのこと」 エトペン「無いか。寝よ寝よ」 次の日 京太郎「和、ちょっとお願いがあるんだが……」 和「?何ですか?」 京太郎「エトペン、ちょっと貸してくれないか?」 京太郎友達の妹の誕生日プレゼントで、それと同じぬいぐるみを探してるんだけど、似たのが幾つかあって……」 京太郎「友達に見せてみたいんだ」 京太郎(苦しいな……) 和「わかりました。どうぞ」 京太郎「わりいな、サンキュ……」 和「あの……顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」 京太郎「えっ……だ、大丈夫……夕方には返すから」 京太郎「あのさぁ」 エトペン「きょ、京太郎!どうしたペン!?顔色がすっごく悪いペン!保健室行った方がいいペンよ!?」 京太郎「おい」 エトペン「はい」 京太郎「気が付いたらさ、龍門渕の天江衣の家のベッドにいたんだよ」 エトペン「はい」 京太郎「隣に裸のハギヨシさんも居たんだよ、あれどういう事だよ」 エトペン「ぼ、僕は何の事かわからないペン!!僕はただ…」 京太郎「おい」 エトペン「はい」 京太郎「俺はさ、お前に感謝してたよ?知らない和を見られたし、いろいろいい思いが出来たし」 京太郎「だからお前が気になるコってのとうまくいくといいなって、思ってたよ」 エトペン「はい」 京太郎「もし、それがハギヨシさんって知ってたら、俺だって協力したよ……」 京太郎「ぬいぐるみと人間の恋なんて、突拍子もない話だけどさ……」 京太郎「何もこんなやり方しなくたってさ……」グスッ エトペン(……) エトペン(あれ?これ誤魔化せるんじゃね?) エトペン「……ごめん京太郎、ぼくは、キミにひどい事をしてしまった……その事については、悔やんでも悔やみきれないペン」 エトペン「最初に彼に出会って、腕を直してもらって……運命の出会いだったペン」 エトペン「だから、君を利用して仲良くなろうなんて、馬鹿げた考えをいつしか持ってしまったペン」 エトペン「所詮、偽りの愛でしかないのに……」 京太郎「……」 エトペン「ぬいぐるみは……結局、人間とは愛し合えないのさ……」 京太郎「あのさ……」 エトペン(かかった!) 京太郎「素朴な疑問なんだけど、何で女の子狙わなかったの?俺男でハギヨシさんも男じゃん」 エトペン「ファッ!?」 京太郎「何で?」 エトペン(やべえよ……やべえよ……ん?) ハギヨシ「京太郎さあああああああん!!見つけましたあああ!」 京太郎「うわ見つかった!!おいエトペン!お前一人で部室戻ってろ!」ダダダッ ハギヨシ「待ってください!二人で愛し合いましょう!!」 京太郎「うわあああ!」 エトペン「……行ってしまった」 エトペン「今回は何事もなく終わったけれど、オレは絶対に諦めない!」 エトペン「京太郎をオレのモノにするまでは!!」 おわり
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6271.html
シロ「…京太郎?」 京太郎「すぅ…Zzz」 胡桃「寝てるね」 塞「最近、忙しかったからね…私達が受験だからって色々と雑用とかに専念してくれてたし」 エイスリン[皆で寝ている絵] シロ「私も……寝る」 抱き… 塞「ちょっと、シロ!」 胡桃「なら私も…」 モゾモゾ…←こたつの中にはいり京太郎の上にでてきて抱きつく エイスリン「わ、ワタシモ…」 ダキ←シロと反対側から抱きつく 塞「え、え!?皆がやるなら私もやらないとな」 京太郎の頭を膝枕する 塞「あっ、眠たくなってきた…」 シロ「……おやすみ」 エイスリン「…zzz」 胡桃「zzz…」 ーーーーー 豊音「みんな?、遅れてごめん…あれ、皆寝てるの?」 全員「「…zz」」 豊音「ぼっちは嫌だよ…」 バサ…コートを脱ぎ 豊音「これなら温かいよ……」 シロを後ろから抱きしめて京太郎の手を握る。 ーーーーーーー 京太郎「…起きたら天国だった…上を見たら塞さんのおもちがあって、しかも膝枕されていて。お腹を見ると胡桃さんが寝ていて、左にはエイスリンさん。右はシロさんと豊音さん…豊音さんに関しては恋人繋ぎだし……これはラッキーだな」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/710.html
淡「…」 照「…と、言って別れたものの、その後私が京ちゃんに会う事は何年も無かったんだ」 誠子「どうして?」 照「咲が…妹が私と彼が会うのを良しとしなかったんだ。何度かこっそり病室に行こうとしても 、常にアイツが病室に居たし、彼の退院後は彼にベッタリになった」 照「…私は、アイツに責められるのが怖かった。京ちゃんが怪我したのは、紛れもなく私のせい だったから。だから、文句も言わなかった」 照「…いや。それも実は言い訳で、京ちゃんに会うのが怖かったのかも知れない。その証拠に、 公園に行くのを避けるようになった」 照「ついでに、進学校を白糸台に変えた。…まあ、これは私達姉妹の喧嘩が原因で元から危うか った両親の関係に亀裂が入って、別居が決まったって言うのも大きな原因ではあるんだけど」 照「次第に私もアイツとは険悪な関係になっていってね。妹とは、こっちに来るまでずっと険悪 なままだったよ」 照「…だから、アイツが突然一人で東京に来た時は、驚いた」 照「『今までごめん』って、謝られたんだ」 照「京ちゃんが、妹にもさっきと同じ話をしたらしいんだ。話すのは2人目だったらしい」 照「それがアイツに心境の変化を与えたそうだ」 照「…けど、今度は私の方が苛立ってしまって。京ちゃんが傍に居るからって余裕ぶってるのか この野郎って」 照「まるで、完全に妹に京ちゃんを取られてしまったような気になってしまったんだ」 照「…昔話はこんなとこかな」 淡「そんな話があったんだ…」 菫「なるほどね。そんなこんなで変な性格の歪み方はしたが、なんとかグレずに済んだ、と」 照「…」 菫「…ふう。少し疲れたな。照。それで、それが最近の挙動不審にどう繋がってるかだが」 照「ああ、それは…」 菫「長い話は却下だ。三行で話せ」 淡「エエエエエエエエエエエエ!!?」 菫「うるさいなぁ。何を驚いてるんだ淡は」 淡「いや、だって!さっきまでの話聞いて!ええ!?」 尭深「」カチカチ 淡「何スマフォ弄ってるんですか渋谷せんぱああああああああああああああああああい!!?」 誠子「それでさー。うん。うん。だから頼むよー。そっちだって悪い話じゃ…」 淡「いつの間に電話してるんですか亦野せんぱああああああああああああああああああい!!」 照「…」 淡「ああ!ほら!!宮永先輩黙りこくっちゃって…」 照「京ちゃんに会いに行った」 照「告られた」 照「テンパッて逃げた」 淡「本当に纏めちゃった!!」 菫「馬鹿だろお前」 淡「ひっでええええええええええええええええええええええええええ!!!」 照「…」ショボン 菫「…はぁ」 淡「ちょっと!!この人でなしども!!」 菫「なんださっきから五月蝿い淡。その人でなしてのは私達の事か」 淡「あったりまえです!!」 照「…」 淡「あのですねえ!この鬼畜ども!折角宮永先輩が勇気出してこんなヘヴィなはなししてくれた のに、なんですかこの態度!畜生ですか!」 菫「って言われてもなぁ…いや、馬鹿だろ。なんだこの救いようのない青臭いコミュ障の昔話は 。私なら恥ずかしくて墓の下まで持っていく」 淡「っきいいいいいいいいいいいいい!!」 菫「五月蝿いなぁ…」 淡「あああああああああああ!!」 菫「誠子」 誠子「アイアイサー」キュッ 淡「ゴフッ」 菫「もういいぞ。少しは血の気は収まったか?」 淡「血の気が引きました」 菫「よし。…で、誰に頼んだんだ」 誠子「ああ。最近内に良く取材に来る記者に」 淡「…は?」 誠子「スクープやるからって言ったら、今すぐ車で来ると」 淡「へ?」 菫「よし。尭深。清澄までの地図は」 尭深「バッチ」グー 菫「ん。それじゃあ、車来るまでに各自準備しておくように」 淡「…へ?」 菫「…照」 照「…」 菫「照!!」 照「」ビクッ 菫「お前も準備しろ。急げよ。これから清澄へ行くから」 照「…え」 菫「話は分かった。お前の凹んでる理由も分かった。ついでに解決法も分かった。だから解決に 行く」 照「ちょ…」 菫「拒否権は無いぞ。今までお前には3年間散々振り回されてきたんだ。最後の最後で渾身の力 で振り回してやる」 照「ま…」 菫「要は、お前がその『京ちゃん』に想いを伝え返せば全部解決なんだろう?簡単じゃ無いか」 照「ば、馬鹿言うな!そんな簡単な話しじゃ…」 菫「簡単ですぅー。お前が勝手にややこしくしてるだけじゃないか。テンパッて逃げてなければ 今頃ハッピーエンドだろ?浮かれたお前を私がぶん殴ってそれで終わってたはずだろ?なんでこ んな面倒な事にしてくれてるんだ。ふざけやがって」 照「む、無茶苦茶…」 菫「無茶苦茶なのはお前だ。『京ちゃん』の身になれ馬鹿。想い人に一世一代の懺悔したと思っ たらいつの間にか蒸発されて、数年後に奇跡的に出会って思い切って大告白したら逃げられて… 可哀想過ぎて泣きそうになったわ。アホか」 淡「言われてみれば…」 照「うぐ…」 菫「しかも、お前の話だと妹もその子が好きなんじゃないのか?よく今まで無事だったと思うよ 。運の良さだ・け・は!流石だと言っておいてやる。馬鹿」 淡「確かに奇跡ですよね」 照「おふ…」 誠子「先輩。車が来たみたいです」 菫「よし。それじゃあ行くか」 尭深「これ、カーナビです」スッ 菫「ありがとう。借りておくよ」 照「…」 菫「照」 照「はい」 菫「さっきの反論は」 照「ありません」 菫「ん。じゃあ行くぞ」 照「はい」 泡(あの宮永先輩が子羊のようだ…) 菫「じゃあ、誠子。尭深。明日の部活は任せた。私と照はサボりだ」 誠子「了解」 淡「…」 菫「…淡」 淡「は、はい!!」 菫「……お前も来るか?」 淡「…」 照「あの…菫。一応私がメイン…」 淡「…お願いします。私も連れて行って下さい。弘世先輩」 照「淡まで…」 菫「…ふ。いいだろう」 照「…」 菫「行くぞ。こんなのは、要は行動なんだ。さっさと行ってさっさと済ませるに限る。だろう? 照」 照「はい」 誠子「今から行けば、最短で明日の日の出前くらいまでには長野に到達するでしょう」 菫「よし。わかった。なら、現地に着いたら即効連絡して呼び出せ。連絡先は勿論知ってるんだ よな?」 照「さっき聞いたけど…日の出前に連絡って常識的にどうなの」 菫「お前が言うな」 淡「ばっさりだ…」 菫「さて…それでは諸君。…行くぞ!!」 照「…はい」 淡「…はい」 数時間前 長野→清澄の在来線の中 京太郎「…くー…くー…」 咲「…」 優希「…なあ、咲ちゃん」 咲「…なに?優希ちゃん」 優希「…私は、早く告白しちゃった方がいいと思うじぇ」 咲「え…」 優希「…ん。なんでもない」 咲「それってどういう…」 優希「まだ清澄まで時間あるよな?私は寝るじょ」 咲「あ…」 優希「おやすみ」 咲「…」 優希「…すー…すー…」 咲「…」 咲「…私…」 咲「私は…」 咲「…」 ガタン…ガタン…ガタン… 清澄駅ホーム 優希「さて…それじゃあ、私はさっさと帰るじょ。じゃあな、お前ら」 京太郎「…ん。おう…」 咲「うん…」 優希「…はぁ」 優希「じゃーーーあーーーなーーー!!」 京太郎「うおっ!?」ビクッ 咲「きゃっ!?」ビクッ 優希「ったく…な~に二人してテンション下げてるんだか」 咲「…」 京太郎「わ、悪い悪い…ああ、じゃあな。また明日…」 優希「…京太郎。もしかして」 京太郎「?」 優希「…ん。なんでもないじょ」 京太郎「?」 優希「咲ちゃん」 咲「…うん。また明日。ばいばい」 優希「…ん」 咲「…」 優希「…京太郎」 京太郎「なんだよ」 優希「もう暗いし、咲ちゃん一人で帰らすの、心配だじょ。お前、送ってってやれ」 咲「はっ…!?」 京太郎「…分かった」 優希「うっし!」 京太郎「お前はどうすんだよ」 優希「私のような強者はお前ごときの見送りは不要よ」 京太郎「なんだよそりゃ」 優希「ふっふっふ。…じゃあ、任せたじょ」 京太郎「…」 咲「ゆ、優希ちゃん…」 優希「咲ちゃん」 咲「…なに?」 優希「…」 咲「…」 優希「にひっ」 咲「あ…」 優希「じゃあね~~~~」タッタッタッタッタッ 咲「優希…ちゃん…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「あ、あの…京ちゃ…」 京太郎「行こうぜ。咲」 咲「…うん」 京太郎「…」スタスタ 咲「…」スタスタ 京太郎「…」スタスタ 咲「…」スタスタ 京太郎「…」 咲(…沈黙が、重い。京ちゃんと二人っきりで歩いて、家まで送って貰って…本来は凄く嬉しい はずなのに、居心地が悪いよ) 京太郎「…」 咲(…さっき電車の中で優希ちゃんに言われた言葉が頭に響いてるから?) 咲(…早く告白した方が良いって…そんな、いきなり言われても、私は…どうすれば) 京太郎「…」 咲(それに、京ちゃん、さっきから元気が無い) 咲(ううん。正確には、さっき長野駅のホームでトイレに行ってから。あれから帰ってきた時、 京ちゃん、目に見えて落ち込んでた) 咲「…」 京太郎「…咲」 咲(何かあったの?京ちゃん。電車の発車時間ギリギリに帰ってきて、電車に乗ったと思ったら すぐにふて寝みたいに眠っちゃって…ちょっと怖かったよ) 咲「…」 京太郎「咲?」 咲「あ…う、うん。なに?」 京太郎「お前んち、どっちだったっけって」 咲「え?」 京太郎「いや、お前んち行くの久しぶりだったから。ちょっと記憶曖昧で」 咲「あ、それは…」 咲「…あれ?」 咲「…わかんない」 京太郎「…お前に聞いた俺が馬鹿だった」 咲「むっ…」 京太郎「しっかし参ったなー」 咲「…う」 京太郎「どうすっかね」 咲「えっと…」 京太郎「仕方ねーなー。スマフォで確認すっか。住所は流石に覚えてるよな?」 咲「うん…って、馬鹿にしすぎ!」 京太郎「ははは…で、住所は?」 咲「あ、えっとね…」 咲「ん。この道見覚えあるよ。ここからなら大丈夫」 京太郎「そっか。じゃあもう地図は見なくて大丈夫か」 咲「けど、おかしいなぁ。いつも通ってる道のはずなのに…」 京太郎「それはあれだな。今がもう真っ暗だからだ」 咲「…」 京太郎「夜道は、いつもと違って見えるもんだ」 咲「…」 京太郎「ま、しかたねーよ」 咲「…なんか」 京太郎「ん?」 咲「なんか、優しいね。京ちゃん」 京太郎「…そうか?」 咲「うん。いつもなら絶対私の事からかい倒すのに」 京太郎「…」 咲「…なにかあったの?」 京太郎「…」 咲「その…さっき、の。長野駅で」 京太郎「んー…」 咲「…」 京太郎「まあ、な」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…あの」 京太郎「…」 咲「…何があったか…聞いてもいい?」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…どうすっかなー」 咲「…」 京太郎「ん~…」 咲「…」 京太郎「…誰にも言うなよ?」 咲「…」 京太郎「…実は、さっきさ」 咲「…うん」 京太郎「ふられちった」 咲「え…」 京太郎「…さっき、電車の待ち時間に。照ちゃんに、さ。告白しに行ったんだわ」 咲「…」 京太郎「…好きです!っつってさ。そしたら、泣かれちゃった。で、ごめんね!って言われて、 そのまんま新幹線に乗ってっちまった」 咲「…」 京太郎「まさかあんだけ拒否られるとはなー。せめてお友達のままで…くらいだったらまだ良か ったんだけど…いや。これもやっぱヘコむか」 咲「…」 京太郎「以上」 咲「…」 京太郎「…昔から、ずっと好きだったんだ。諦めかけてたんだけど、まさかの偶然の再開で、テ ンション上げすぎちまったんかね」 京太郎「そりゃ冷静に考えて、昔ちょっと一緒に遊んだガキなんかに今更告られてもどーせいっ ちゅーねんって感じだわな」 咲「…なにそれ」 京太郎「…悪い。キモかったか?引いた?」 咲「…」 京太郎「…そりゃそうだよな」 咲「…」 京太郎「…っと。着いたんじゃね?確かここだろ。お前んち」 咲「…」 京太郎「…じゃ、俺は帰るから」 咲「…って」 京太郎「さって…と。それじゃあ、また明日な。咲」 咲「待って…」 京太郎「お、今日はそう言えばまだまだオリンピックやってるよな。よし、ダッサイふられ男は コンビニ寄って菓子でも買って、自棄食いしながら朝まで生観戦…」 咲「待って!!」 京太郎「…どうした?」 咲「…ちょっと、待ってて…!!」 京太郎「…はぁ」 咲「いい!?待っててね!絶対待っててね!!絶対絶対!黙って帰ったら駄目だからね!!」 京太郎「お、おう…」 咲「っ!!」ダッ バタン ダダダダダダ ドタン バタン ドタン バタン ゲシッ ウギャアアアアアアアア!! 京太郎「?」 バタン 咲「おまたせ!!」 京太郎「お、おう…」 咲「あ、あのね!?京ちゃん!」 京太郎「ああ」 咲「…きょ、今日、お父さんお仕事で帰って来れないんだって」 京太郎「え…?けど、お前んち電気点いて…」 咲「…消し忘れて出てっちゃったんだって。置き書きしてあった」 京太郎「いや、それはなんかおかしくな…」 咲「だ、だから!!!」 京太郎「はい」 咲「…せ、折角だから…わ、私。京ちゃんの自棄食いに付き合ってあげるよ」 京太郎「…」 咲「…うちでテレビ、一緒に見てかない?」 京太郎「咲…」 咲「…う、うち、さ。テレビ結構大きいし、お菓子も飲み物もいっぱいあるし、その、私の他に は誰も居ないから大声出しても迷惑にならないし…」 京太郎「…」 咲「え、えっと…あ、そうだ。それに、今から家に帰ってたら見逃しちゃう競技も、今から私の うちで見たらいっぱい見れるし…」 京太郎「…」 咲「…ど、どう…かな?」 京太郎「…」 咲「あ、か、勘違いしないでよ!あくまで京ちゃんの残念会の自棄食いに付き合ってあげるのが メインなんだからね!」 京太郎「…」 咲「…って、わけなんですが」 咲「い、いかがでしょうか…」 京太郎「…はは。ありがとうな。…それじゃあ、お言葉に、甘えちまおう…かな」 咲「…」 京太郎「…なんて」 咲「う、うん!!じゃあ、入って!」グイッ 京太郎「おっとっと…」 長野行きの車の中 淡「」ソワソワ 照「…淡?」 菫「…どうした淡」 淡「えっと…その…ま、まだ長野には着かないんでしょうかね」 照「いや…まだまだだけど」 菫「やっと首都高を出たところだぞ」 淡「うぐぐぐ…」 照「どうしたの?」 淡「えっと…その…お、お小水が…」 照「ああ」 菫「淡。どんまい」 淡「ええええ!?」 菫「我慢しろ。事態は一刻を争うんだ。…最悪、黙っててやるから」 淡「お、鬼!悪魔!人でなし!」 菫「くー…」 淡「うわああああああん!寝たふりしたこの人ーーー!」 照「菫…それは流石に淡が可哀想…」 記者「って言うか、私の車の中でおしっこなんか漏らさないでよ。記事にしちゃうわよ」 淡「そんなんされたら自[ピーーー]るぅううううううう!!」 菫「仕方ないな…記者さん。次のパーキング停まってあげて下さい」 照「お願いします」 記者「もとからそのつもりだわよ…っていうか、もう着くわよ」 淡「ほっ…」 記者「はい、到着。行ってこーい」 淡「ありがとうございますううううう!!」タタタタ 記者「ついでに、悪いけど私もちょっとコンビニ行ってくるわ。眠気覚まし買ってくる」スタスタ 照「…」 菫「お前も行ってこい」 照「えっ…」 菫「気分転換も必要だろ。ついでに適当に菓子でも買ってくればいい」 照「…」 菫「今からソワソワしても、仕方ないだろ?今の内にちょっとリラックスしておきなさい」 照「…うん。じゃあ、ちょっと行ってっくる」 菫「あ、ついでにコーヒー買ってきてくれ。UCCのブラックのな。財布は出すの面倒だからお前 の奢りでいいぞ」 照「…」 菫「なんだその顔。ほら、行け」シッシ 照「…はい」スタスタ コンビニ 照「…菫、最近酷くない?」 照「…えっと。お茶と、お菓子買ってこう。あとは、菫のはなんだっけ。…あれ?ミルク入りの コーヒーだっけ。…あれ」 照「まあいいや。このカフェオレにしよう。ミルクと砂糖たっぷりのほうが美味しいし」 照「淡にもなんか買っていってあげよう。コーラでいいかな」 照「…消臭ガム買ってこう」 照「えっと、あと、あぶらとり紙も」 照「…ん?」 照「…あ。折角長野に行くんだし、時間有ったら久しぶりに実家に寄ってもいいかな。みんなに 昔の話したら、すっきりしちゃった。咲とも仲直りしたい…」 照「…うん。それじゃあ、これを買っていこう」ヒョイヒョイヒョイ 照「あとは…」チラッ 照「…えっ?」 照「そ、そんな…」 照「なんでコレがここに…!!?」 車内 照「ただいま」 菫「おかえり」 照「はい、コーヒー」スッ 菫「サンキュ…って、これ、カフェオレ…はぁ。お前は…」 照「?」 菫「…まあいい。で?随分と大量に荷物を抱えているけど、どうしたんだ?適当に菓子でも…と は言ったが、車内で宴会でも始める気か」 照「ふふ…」 菫「…?久しぶりに笑ったな」 照「見ろ、菫」 菫「んあ」 照「奇跡だ」ガサガサ 菫「なにが…って」 照「じゃーん。東京ばな奈」 菫「…まあ、高速のコンビニって、たまに名物とか置いてるよな」 淡「すいませーん!おまたせしましたー」タッタッタ 記者「おらぁ!!気合入ったぁ!!」タッタッタ 照「2個はお土産。後は私が食べる」モックモック 淡「うわ…また東京ばな奈だ…」 菫「…見てるだけで胸焼けしそうだ。やっぱりブラックが良かったな」 記者「うおおおおおおお!!レッドブル8本効っくぅうううううう!こっから先はぶっとばすぞ おおおおおおお!!」 淡「え…」 記者「振り切るぜ!!!!」 淡「なにを…」 ギュルルルルル ブオオオオオオオオオオオオオオオオン!!! 宮永家 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「オリンピック、凄いね」 京太郎「ああ…」 咲「…お菓子、食べないの?」 京太郎「ん…まだいいや」 咲「そっか…」 京太郎「うん。もうちょっとテレビ見るのに集中する」 咲「…」 京太郎「…」 咲「……い」 京太郎「…咲?」 咲「…京ちゃんはズルイよ」 京太郎「…あ、ああ、悪い。お邪魔してる立場なのに、1番テレビ見やすい正面のソファに座っ ちまって」 咲「…」 京太郎「…あれ、そうじゃなくて?」 咲「…」 京太郎「咲?おーい」 咲「…ううん。その通り」 京太郎「ごめんごめん。今どけるから…」 咲「いいよ」 京太郎「え?」 咲「そのままでいい」 京太郎「…」 咲「…」スッ 京太郎「ちょ!?」 咲「…私が京ちゃんの隣に座るから」 京太郎「お、お前…!」ドキドキ 咲「」ピトッ 京太郎「あわわわわ」 咲「…ねえ」 京太郎「は、はい!?なんでしょう!!」 咲「…これって、今どっちが勝ってるの?」 京太郎「え?あ、テ、テレビか!?え、えっとな!これは…」 咲「…」 京太郎「それで、これは…こういうルールで…」 咲(…京ちゃん) 京太郎「で、これはこっちが…………で………」 咲(京ちゃん…) 京太郎「この大会のルールだと……で……………の場合は…」 咲(京ちゃん…!!) 咲(好き) 咲(大好き) 咲(大大大大大好きだよ) 京太郎「……だって…………ってルールで…俺の好きな………は……」 咲(愛してる) 咲(…けど、京ちゃん) 咲(私、私、私…!!) 咲「…」 咲(私は……っっっっっ!!) 咲「…ありがとう」ボソッ 京太郎「…へ?」 咲「…」 京太郎「…咲?」 咲「…」 咲(…私は、京ちゃんには告白しないよ) 咲「…」 京太郎「…寝ちまったのか?」 咲(好きだけど。愛してるけど。告白しないよ) 咲「…」 京太郎「…そっか。寝ちまったか…」 咲(うん。私は…眠ってしまったの) 京太郎「…」 咲「…」 咲(…京ちゃんの好きな人が、お姉ちゃんなのなら…) 咲(私は、京ちゃんに告白しないんだ) 咲(絶対に。絶対に告白してあげないんだ…) 咲(してあげないんだから…) 咲(…京ちゃんが、言っちゃったから悪いんだよ?) 咲(私が、それを知ってしまったから…) 咲(だから、告白しないんだよ) 咲(…京ちゃん、今私が身体を寄せた時に、ドキドキしてくれたでしょ?) 咲(…だから、告白してあげないんだよ) 京太郎「…咲」スッ 咲「…」 京太郎(…止めた。寝てる咲に何しようとしてんだ俺は。頭撫でるつもりか。さっきの今で。… 馬鹿野郎。これ以上屑になる気か俺は) 京太郎「…はぁ」 京太郎(…咲がもたれ掛かってるし。動けないな) 京太郎(…俺も、寝よう) 京太郎「…」 咲(…京ちゃんが、お姉ちゃんを好きだから悪いんだよ) 咲(京ちゃんが、お姉ちゃんに告白したから悪いんだよ) 咲(…京ちゃんの中の私が、お姉ちゃんに負けてたって、知ってしまったから) 咲(…だから、私は、告白しないんだ。私は京ちゃんに告白しないよ。京ちゃんが私に告白して くれるなら応えてあげるけど) 咲(…お姉ちゃんに、負けたまんまじゃ、応えてあげないんだから) 咲(京ちゃんは寂しんぼだから、もしかしたら今私が本気で告白したら、応えてくれるかもしれ ないけど) 咲(…けど、それをしたら、お姉ちゃんにも、優希ちゃんにも顔向けが出来ないから) 咲(…だから) 咲(…だから、ねえ京ちゃん) 咲(…私、馬鹿だよね) 咲(…だけど、決めたんだ) 咲(…京ちゃんを、本気で惚れさせてやるって。お姉ちゃんに勝って、京ちゃんの告白に『しょ うがないなー』言って応えてあげるって) 咲(それまで、京ちゃんの1番はお姉ちゃんで良いよ) 咲(けど、絶対に負けないから) 咲(…負け…) 咲(…怖いけど) 咲(不利かもしれないけど) 咲(今のままじゃ、お姉ちゃんがその気になったらあっという間に終わってしまうけど) 咲(…時間もないし、勝ち目も全然見えないないけど) 咲(…それでも、私はこんな不器用な戦い方をする自分を、誇りに思える。肯定できる。だから 、闘う) 咲(…) 咲(…私) 咲(…馬鹿だなぁ) 咲「…」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…」パチッ 京太郎「…すう…すう…」 咲「…京ちゃん?」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…寝たの?」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…寝たんだね」 咲「…」 咲「…京ちゃん」 咲「…待っててね」 咲「それと」 咲「ごめん」 咲「…あとは」 咲「…ばーか」 咲「…」 咲「…」チュッ 咲「…」 咲「…ほっぺただけは、貰っておくよ」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲・京太郎「「…すう…すう…」」 未明 清澄 記者「着いたぁああああああああああ!!…すみません。体力の限界ですので休ませて下さい」 菫「…着いた、か。ご苦労さまです。ふう。流石に田舎だけあって清々しい空気だ」ノビー 淡「うぐぅ…」フラフラ 照「ごふぅ…」フラフラ 菫「なんだお前ら。随分とフラフラじゃないか」 淡「だって…あの激しい運転…」ヨロヨロ 照「…」 菫「情けない…これからが本番だというのに…」 淡「化物ですか先輩の体力」 照「えう…」 菫「…照?」 照「うぷ…」 菫「…おい」 照「…ごぷ」 菫「おい!」 淡「ちょ!?まさか…!」 記者「ま、待って宮永さん!せめて車の外に…」 照「えろろろろろ…」ゴッポォォ 記者「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」 淡「うわぁ…」 菫「やっちまいやがった…」ハァ 照「ギボジワルイ」ウルウル 記者「」 淡「高速の車の中であんなに甘いもの食べるから…」 菫「…おい。大丈夫か?」 照「まずい。死ぬ」 菫「参ったな…流石にこんな状態のコイツにターゲットを会わせるわけにもいかないし…」 淡「どこか、休める場所とかありませんかね」 記者「」 淡「…記者さん、真っ白になってます。…すみません。せめて安らかに…」ナームー 菫「この辺はとんでも無い田舎だしな。休憩出来そうな場所あるか?ホテルとか、カフェとか、 マンガ喫茶とか」 照「…無い。間違いなく」フラフラ 菫「むむむ…」 淡「かと言って、宮永先輩のゲロまみれの車の中は…」 菫「却下だ」 照「その辺の道端でも大丈夫…」 菫「却下。虫が多い」 淡「じゃあ、どうしましょうか」 菫「…照」 照「なに…」 菫「…お前の家はどこだ」 照「…?」ポヘ? 菫「いや。お前の実家だよ。こんな時間に訪ねるのもアレだが、実家なら休憩くらい出来るだろ うが」 淡「あ、ナイスアイディア」 照「えー…」 菫「なんだ。嫌そうな顔だな」 照「なんか咲に顔合わせにくいっていうか…」 菫「お前、今更なぁ…」 照「むぅ…」 菫「兎に角だ。この辺は虫多いし、暑いし、私はいい加減一刻も早くクーラーの効いた室内に行 きたいんだよ」 淡「それが本音ですか」 照「菫、酷い」 菫「五月蝿い。いつまでも駄々捏ねてるとそのトコロテンのような頭をシェイクするぞ」 照「ごめんなさい」 淡(この人にだけは、本当に逆らわないようにしなければ…) 菫「分かったな?それじゃあ早く案内しろ。迷ったらシェイクだ」 照「はい」 淡「あの…」 菫「ん?」 淡「記者さんは…」 記者「」 菫「…記者さん」 記者「あ、は、はい…」 菫「今晩中には東京に戻りたいので、車の中綺麗にしておいて下さい」ニコッ 記者「…」 菫「ありがとうございます。では、よろしく。…さ、行くぞ、照」ズンズン 照「はい…」トボトボ 淡(哀れな…って) 淡「…」チラッ 記者「…」 淡「…えっと」 記者「…?」 淡「…よ、よろしくお願いします!」ペッコリン 記者「…」 淡「弘世先輩ー!宮永先輩ー!待ってくださいよー!」トテテテテ 宮永家 京太郎「…ん」パチッ 咲「あ、起きた?」 京太郎「咲…」 咲「おはよ」 京太郎「…おはよう。今何時?」 咲「まだ5時前だよ」 京太郎「なんだよ。ぜんっぜん寝てねーじゃん…」 咲「ふふ…狭いソファーの上に二人だったからね。無理な体勢でよく寝れなかったのかも」 京太郎「」ドキッ 咲「京ちゃん?」ズイッ 京太郎「あ、ああ…なんでもない」 咲「そっか」 京太郎「お、おう…あ、そういえば今日学校じゃん。授業道具取りに行かなきゃ…」 咲「まだ結構時間はあるよ?」 京太郎「そうだけど、風呂入ってねーしシャワーくらい浴びてきてーし」 咲「…うちの浴びてく?」 京太郎「はぁ!?」 咲「…ふふふ。なんちゃって」 京太郎「お前なぁ…」 咲「あはは!」 京太郎「んじゃ、行くぞ。お邪魔しました…」 咲「ちょっと待って」 京太郎「なんだよ」 咲「私、早起きしたから、朝ごはん作ってたの」 京太郎「…」 咲「ついでだから、食べてかない?」 京太郎「…いいの?」 咲「うん。あと、私はもう食べたし、これからシャワー浴びてくるから」 京太郎「…」 咲「私が上がってきたら、一緒に学校行こ?」 京太郎「…」 咲「京ちゃんが家でシャワー浴びてる時間くらい、外で待ってるから」 京太郎「咲…」 咲「それじゃあ、行ってくるね。あ、ご飯は炊飯器から好きなだけよそって良いよ!おかわりも ご自由に!」タタタタ 京太郎「…行っちまった」 京太郎「もう配膳されてるし」 京太郎「目玉焼きに、味噌汁に、肉じゃが?」 京太郎「…ま、いっか。折角だし、いただきますか」 京太郎「…」ゴソゴソ 京太郎「…」パクッ 京太郎「…ん」 京太郎「んまい」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…ごちそうさまでした」ペッコリン 咲「ふう。いいお湯だった」スタスタ 京太郎「ぶふっ!」 咲「あれ、どうしたの?京ちゃん」 京太郎「…いや、なんでもないです」 咲「そう?」 京太郎「…」 京太郎(すでに制服だけど…湯上りだから髪濡れてて艶っぺー!?) 京太郎(くっそ…!なんなんだよ昨日から!このぉ…咲の癖にぃい…!) 咲「…ご飯、どうだった?」 京太郎「ん。美味かったよ。ごちそうさま」 咲「そう。良かった。お粗末さま」ニコッ 京太郎「…」 咲「洗い物は帰ったらするから、じゃあ、もう出ようか」 京太郎「ん?あ、ああ…そうだな」 道端 照「あれ…えっと…」キョロキョロ 菫「…」 淡「…」 照「えーっと…こっちがあれで、あっちがそれで…えっと…」 菫「…おい。ジモティ」 照「あれ…」ウロウロ 淡「宮永先輩って…」 照「あ、こ、この道!この道なんだか見覚えがある!」 菫「当たり前だ」 淡「…さっきもこの道通りましたよ」 照「…困った。道が変わってる」 菫「お前の生まれ故郷は不思議のダンジョンか」 淡「ああ。それなんか納得しました」 照「あれ?なんで?あれ?」 淡「迷ったんですね…」 菫「まさか本気で生まれ育った故郷で道に迷う奴が居るとは…」 照「あううう…あ、こ、こっち…かも…」 菫「おい、淡。コインランドリー探せ。コイツ一回乾燥機で回してやる」 淡「落ち着いて下さい弘世先輩」 照「しまったな…どうやって私はこの町で生きてきたんだろう」 菫「本当にな…」 照「…キボジワルヒ」 淡「またですか!?」 菫「ほら、道端行け。幸いこの辺田んぼばかりだ。お前の酸っぱいゲロも肥料になろう」 照「オボロロロロロロ…」 淡「…私、なんだか泣けてきました」サスサス 菫「それにしても…ふう。どうしたものか。このままじゃ我々はこのド田舎で遭難してしまうか もしれん」 淡「人様の街を…」 照「…はぁ。はぁ」 淡「…あ、もう大丈夫ですか?」 照「ん」 淡「…なんか、この人随分大人しくなりましたね」 菫「そうだな。麻雀部では威張り腐ってる癖にな」 照「…」 淡「…」 菫「ん?何か言いたそうな顔だな」 淡「いえ。何も」 菫「そうか」 淡(逆にこの人は何故こんなに理不尽なのだろうか) 照「…っ」ピクッ 菫「…ん?」 淡「どうしたんですか?宮永先輩」 照「…ねえ、何か聞こえない?人の声…」 淡「え?ん…言われてみれば確かに」 菫「おお、丁度いいじゃないか。道を尋ねられる」 淡「あ、確かに」 照「…」 菫「良かった、これで遭難を免れられるぞ。早く道を押しえて貰って宮永家に行こう。流石に歩 き疲れた」 照「…」 淡「そうですね。私もお腹すいちゃいましたし…シャワー借りられないでしょうか」 照「…」 菫「…照?」 照「…この声」 淡「…宮永先輩?」 照「…聞き覚えがある」 菫「は?何を…」 照「あっちだ…!」タッ 菫「あ。おい、照…!」 淡「えっ!?えっ!?えっ!?」 菫「淡!ぼさっとするな!追うぞ!」ダッ 淡「あ…は、はい!!」ダッ 咲「 」 京太郎「 」 咲「 」 京太郎「 」 淡「…そして、勢い良く走っていった割にコソコソ後ろをつけるんですね」コソコソ 照「…うん。あの子達が、妹の咲と、私の好きな人の須賀京太郎君」コソコソ 淡「良くあの遠距離で確認できましたね。今だって顔を確認出来るような距離じゃないのに」 照「二人は私の大切な人だもん」 淡「…そうですか」 菫「…何を話してるかは聞き取れないが随分親しげじゃないか。それにこんな時間に二人で歩い て…もう付き合ってるんじゃないのか?今は朝帰りに的な」 照「」ガーーーン 淡「弘世先輩!」 菫「いや、でもあれはどう見ても」 照「…」クスン 淡「ほらぁ。また凹んじゃったじゃないですかぁ…」 菫「面倒くさい…わかったわかった。まだ付き合ってない付き合ってない」 淡「…」 照「…そう、かな」 菫「ああ。大丈夫だ」 照「」ホッ 淡「信じた!?」 菫「しかし、それでもあの二人が随分仲良さそうなのは間違いないぞ」 照「あわわわわ」オロオロ 淡「面倒な人だなぁ…」 菫「どうする?照。まさかここで会うとは色々と手間が省けた感じではあるが…」 照「こ、心の準備まだ出来てないよ…」 菫「だよなぁ…」 照「ど、どどどどうしよう、ねえ、菫、淡…私…」 淡「それに、妹さんもいる前じゃ、ちょっと…」 照「そ、そうだよ。今は咲が居るし。駄目だよ。それにもし二人が本当に付き合ってたら私…」 菫「ったく…」ボリボリ 淡「…菫先輩?」 菫「…照。お前、そこでちょっと待ってろ」 照「…へ?」 菫「行くぞ。淡」 淡「へ?」 菫「私に考えがある。上手いことあの妹ちゃんをターゲットから引き離すぞ」 照「え?」 菫「照。私達がここまでするんだ。まさか私達の頑張りを無視してこのままウダウダしてるなん て情けない真似で終わるんじゃないだろうな」 淡「ちょ!?強引過ぎませんそれ!?」 菫「大丈夫、別に危害を加えるわけでは無いさ。ただちょっと照の告白までの時間稼ぎをさせて 貰うだけだ」 淡「なんか怖いですよ。言っておきますけど、私は不良の真似事なんて絶対にしませんからね」 菫「馬鹿言うな、私がそんな真似するわけないだろ。なあ?照。お前ならわかるだろ」 照「い、妹に手を出すなよ…!」 淡「ほら、信用されてない!」 菫「あれ…おかしいな」 照「い、幾ら菫だって、咲に危害を加えるなら私だって…」 淡「信頼ってなんなんでしょうか…」 菫「めんどくせえなぁ…」 淡「そういうのが悪いんですって!」 菫「ったく。兎に角、行くぞ。照。このままそこで縮こまってたらもうどうなっても知らんぞ。 どうしても妹が心配なら、告白の結末だけ着けてから来い」 淡「妹さん人質!?」 菫「今まで色んな事から逃げてばかりで、情けないと思わないのか」 照「…」 菫「いじめから逃げて、妹と向き合うことから逃げて、自分の気持から逃げて、挙句に好きな人 からの告白からすら逃げて。次は何から逃げる気だ?麻雀か?学校か?人生か?」 照「…」 菫「一個でも最後まで立ち向かって見ろよ。お前、確かに麻雀はバケモノだけど、このままじゃ 壁にぶつかったらそこで終わるぞ」 菫「…麻雀だけじゃなくてもさ。他になんにも取り柄の無いお前だけど、それでも逃げずに立ち 向かえばなんとか打ち勝てるものだって今までの人生には幾らでもあったはずなんだよ」 照「…」 菫「立ち向かえ。お前がさっき妹を私から守ろうとしたろ。そんな風に立ち向かえ。一人が怖い なら私達に頼れ。お前が望むなら、私達が幾らでも力になってやるから」 菫「お前、長野は敵ばかりで、友達が居なかったって言ってたよな?じゃあ、今はどうだ?私は ?淡は?誠子は?尭深?他の麻雀部やクラスの連中は?」 照「…」 菫「例えどれだけダメ人間のお前でも、友人の私達の力が有れば、お前、幾らでも強くなれるだ ろう?」 菫「だから、安心してぶつかってこい。戦うべき時に戦ってこい。勇気出してやりたい事、やる べき事やって、結果見届けて、自分の限界知ってこい」 菫「失敗したら笑ってやるから。一緒に泣いてやるから。成功したら一緒に喜んで笑ってやるか ら」 菫「…それで、私が困ってたら、お前が私を助けてくれればそれでいい」 照「…」 菫「逃げるな。たまには逃げてもいいけど、今だけは逃げるな。逃げるべき時は逃げていいから 。今だけは絶対に逃げるな」 照「…」 菫「…行くぞ。淡」スッ 淡「あ…」 照「…」 淡「…宮永先輩」 照「…」 淡「私も、戦ってきます」 照「…」 淡「だから、待ってます」 照「…」 淡「…っ!」タタタタタ 咲「それでね、京ちゃん…」 京太郎「…ん?」 咲「…京ちゃん?」 菫「おはよう、少年少女達」スタスタ 淡「えーっと…お、おはようございます」 咲「…?お、おはようございます…」 京太郎「…誰?」 菫「ああ、失礼。私は東京の白糸台高校というところの人間だよ。3年生にして麻雀部部長の弘 世菫だ」 淡「お、同じく1年の大星淡です」 京太郎「…はぁ」 咲「えっ。白糸台って…お姉ちゃんの…」 京太郎「へ?」 菫「その通り。宮永照はうちのエースだ」 京太郎「えっ」 菫「そう。宮永照。…私達は親しみを込めて『照ちゃん』と呼んでいるがね」ニヤリ 淡(嘘ばっかり…) 京太郎「えっ!?」 咲「…何の用…ですか?」 菫「ん?何。大したことじゃない。これは恥ずかしながら今まで知らなかった事だが、我等が絶 対的なエースに、なんと妹さんが居ると言うじゃないか」 菫「あの子は恥ずかしがり屋でなかなか自分の事を話さないから、まあ無理もないのだけれどね 」 咲「…」 菫「それで、今日は君をスカウトに来た」 咲「は…」 京太郎「はぁあああああああああああああああああ!?」 淡(この人、悪役やったら板につくなぁ…) 菫「おや、何を驚いているんだい?」 京太郎「ふ、ふっざけんじゃねぇよ!!」 菫「至って真剣だが」 京太郎「尚更悪い!!」 菫「クククク。おや、何故だい?」 京太郎「何故って…全国前にしたこの時期に、王者がチャレンジャーの戦力引き抜きに来るって 、どういう了見だってんだよ!」 菫「おや、と言うことは君達も全国に出るのか、初めて知ったよ。なにせ我々は王者なので、下 々の者には興味が無い」 京太郎「この野郎…!!馬鹿にしやがって」 淡(初出場校はダークホースになりやすいって、いっつも入念に調べまくってる癖に) 菫「そう言われてもね。本当にこの子の存在を知ったのは最近なんだ」 京太郎「それは残念だったな!行くぞ咲!」 咲「あ、う、うん…」 菫「いいのかい?」 咲「…え、えっと…ごめんなさい…」 京太郎「だとよ!悪いけどお引き取り願おうか!王者様!!」 菫「本当にいいのかい?」 咲「…?」 京太郎「咲!耳貸すな!早く行くぞ」 咲「う、うん…」 菫「君の姉から、君宛てにと言って預かっている物があるんだが」スッ 咲「えっ…」 淡(あ…宮永先輩がコンビニで買ったっていう、妹さんへのお土産が入った袋。いつの間に) 菫「実は私もまだ中身を検めてはいないんだが…君にどうしても渡して欲しいと言われているん だが」 咲「…」 京太郎「咲!」 菫「…私と、サシで話をしないか。丁度すぐそこに神社がある。そこで二人きり、ゆっくりとな 」 咲「…わかりました」 京太郎「咲!」 咲「大丈夫だよ。京ちゃん。この人、雑誌で見たことある。本当に白糸台の部長さんだ」 京太郎「けどよ…」 咲「…お姉ちゃんの名前を出したって言う事は、きっと本気でしたい話があるんだ。危ないこと されるとも思えない」 菫「懸命な判断だ」 淡「ひ、弘世部長…?」 菫「なんだ?淡」 淡「い、いや…なんですかこの状況。サシで話って…私が一緒に来た意味一瞬で無くなっちゃっ たじゃないですか。私どうすればいいんですか」ヒソヒソ 菫「さあね」 淡「絶句です」 菫「…お前、昨日から言いたい事あったんじゃないのか?コイツに」 淡「…へ?」 菫「お前、東京には小学生の時に転校してきたんだって?」 淡「…」 咲「…あの」 菫「…ああ、すまない。ちょっと打ち合わせをね」 京太郎「…咲」 咲「大丈夫だよ。…待ってて、京ちゃん」 京太郎「…わかったよ」 菫「こいつは人質だ。私がこの子に危害を加えたら、コイツをいじめ殺して良いぞ」 淡「ふえっ!?」 京太郎「誰がんな事するかよ!」 菫「ふふ。そうだったか失礼。それじゃあ行こうか」スッ 咲「はい」スッ 京太郎「…」 淡「…」 京太郎「…」イライラ 淡「…」ダラダラ 京太郎「…」イライラ 淡(ど…) 淡(どどどど…) 京太郎「…」イライライラ 淡(どおおおおおおおおおおおおおおおしよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!) 京太郎「…チッ」 淡「」ビクッ 京太郎「…あ?」 淡(なんか嫌な予感はしてたんです。確かにしてたんです。宮永先輩の話聴いてた時に、ちらっ と確かに思ってたんです!) 淡(ま、まさか…まさか…まさか…!って!うっすらと嫌な予感はしてたけど、だけど、だけど !顔見た後にああ、やっぱりって思ったけど!だけど!) 淡(まさか、宮永先輩が好きになるような人だし、なんだかんだ言って人畜無害そうな感じの人 だって思ったのに!信じたかったのに!) 淡(それでも一応なんか確かめなきゃいけないと変な使命感覚えてノコノコ付いてきたけど!) 淡(もうずっと前だし、名前も覚えてなかったし、顔もうろ覚えだったし!流石にトラウマ克服 したと思ってたのに!!) 淡(思い出してしまったぁあああああああ!!この人だ!!間違いない!!5年2組の須賀京太 郎だあぁあああああああああ!!!) 淡「」ガタガタ 京太郎「…おい」 淡「ひゃぃっ!!?」ビクッ 京太郎「…なんでそんなビビってんだよ」 淡「す、すみ、すみま、すみません…」ガタガタ 京太郎「…ん?」 淡(ひいいいいいい!) 京太郎「…アンタ、どっかで見たことあるような…」ジーッ 淡「そ、そうですか!?私アナタはじめて見ましたけど!お初にお目にかかると思いますけど! !けど!!」 京太郎「そうだっけ…まあ、確かにそうか。俺に東京の知り合いなんか居ないはずだし…」ブツフ ゙ツ 淡(そしてとっさに誤魔化してしまったぁあああああ!ああああ!だから嫌だったんです!弘世 先輩の鬼!悪魔!弘世菫!あの人が傍にいるならって一緒に飛び出したのに!) 淡(なんで私とコイツが二人きりになる状況作り出してくれちゃってるんですかぁああああああ あああああああ!!?しかも敢えて挑発しまくって印象と機嫌悪くした後に!!) 淡「あわわわ…」ボソッ 京太郎「…ん?」 淡「ひゅっ…」 京太郎「…」 淡(し、しまった…この口癖」。『あわわわ』って、昔からの癖なんだった。下手に使ったら思 い出されてしまう…) 京太郎「あわわわ…って…」 淡(手遅れ!?)ビックーーーン 京太郎「なあ、アンタ」 淡「は、はひ!?」 京太郎「悪い。さっき不意だったから、名前良く聞き取れなかったんだ。もう一回教えてくれる か」 淡「あわわわ…」 京太郎「そう、その口癖。なんか引っかかるっつーか…」 淡「…」 淡(うわああああん!どうしましょう宮永せんぱぁあああああい!!) 淡「あのぉ…」 京太郎「ああ」 淡「そのぉ…」 京太郎「…」 淡「あー…」 京太郎「…」 淡「…」 京太郎「…」 淡「…」 京太郎「…」イライラ 淡(イライラしていらっしゃるぅううううううう!!) 淡(どうしようどうしようどうしようどうしよう) 淡(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい) 淡(嫌。コイツからのいじめが耐えがたくて、わざわざ長野から東京まで転校してきたのに。も う二度とコイツに会う事なんて無いと思ったのに) 淡(いじめられるのが嫌で、地味な外見が原因なのかもって悩んだ挙句に怖い外見になろうとア イツの髪の色真似て染髪までしたのに) 淡(それが…それが、なんでこんな状況になってるの!?) 京太郎「なあ。答えろよ。オイ」イライラ 淡(いやああああああああああああああああああ!!何にも変わってないじゃないコイツ!!) 京太郎「なあ…アンタ」 淡(宮永先輩!コイツ、やっぱり駄目ですって!外見は確かにちょっと丸くなった…ってか柔和 そうな顔にもなりましたけど、やっぱりコイツ悪い奴です!) 淡(正解です!告白に応えないで正解でしたよぉおおおお!宮永先輩がコイツ彼氏としてうちの 部室に連れてきたりしたら、私ストレスで死にますから!!) 京太郎「…」 淡(無言で睨むなぁ!!あああああもうっ!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げた い!逃げたい!逃げたい!逃げ…) 淡「…逃げ?」ピタッ 京太郎「…?」 淡「…」 京太郎「…なぁ「大星淡です」」 京太郎「…へ」 淡「大星淡です。覚えてませんか?この名前」 京太郎「大星…淡…」 淡「はい。まあ、見た目はこの通り大分大人っぽくセクシーになってたので、外見で気付かれな いのは仕方ないかも知れませんが」 淡「…ってか、タメだし敬語使う必要ないよね。須賀京太郎」 京太郎「おお…ぼし…」 淡「思い出せないって言うなら自己申告すれば良いよ。その瞬間ぶん殴ってやる」 京太郎「…お前、まさか…」 淡「思い出した?」 京太郎「…俺が、昔いじめてた」 淡「正解。じゃあ、殴られても仕方ないって、自分でもわかってるよね?」 京太郎「は…」 淡「[ピーーー]!!」バキッ!! 京太郎「いってぇ!?」 淡「ふん。思わず禁止用語を使ってしまいましたが。まあ、これで私の怒りはわかりましたね? この糞野郎」 京太郎「…大星」 淡「ったく…宮永先輩には、今度プリンの王様プリン・ア・ラ・モード奢ってもらわなけりゃ気 が済みませんよ本当に」ブツブツ 京太郎「…あの」 淡「なんですか?この下郎」 京太郎「げろ…い、いや。その、待ってくれよ。お前には色々言いたい事も聞きたい事もあるん だ」 淡「私には聞きたい事も教えたい事もありませんが」 京太郎「…」 淡「…はぁ。なんですか?一個だけ聞いてあげます」 京太郎「…その、昔は、すみませんでした」 淡「はっ。別に今更貴方に謝罪されても私の心には響きません。自分の気を済ませたいなら、穴 掘ってその中でごめんなさいって繰り返してればいいんじゃないですか」 京太郎「それでも、言わせて欲しいんだ。…あの頃は俺が馬鹿だった。大星が嫌がってるのに、 くだらない理由でお前に嫌がらせ繰り返して」 淡「知りませんよ。いじめっ子の心境なんて聞きたくもありません」 京太郎「…」 淡「…けど、まあ、それでも貴方のお陰であるものもありましたし」ボソッ 京太郎「え?」 淡「…いくつか、教えてあげてもいいって思った事がありました。時間が無いので手短に」 京太郎「時間が無い…?」 淡「1つ。私は強くなりましたよ。貴方なんかよりずっと強く。もう負けません。いつだって相 手になってやります」 京太郎「…」 淡「2つ。けど、私が貴方を許す事はありません。少なくとも現時点では、よっぽどの奇跡が起 こらない限りは」 京太郎「…」 淡「3つ。でもまあ、私が自分より弱い奴を恐れる事はもう無いです。覚えておくといいですよ 。私の心は健全です」 淡「そしてもう1つなんですが…」 淡「…照ちゃんは、我々だけでは面倒見切れません。貴方のせいで無駄に元気なので、とっとと 保護義務を果たして下さい」 京太郎「へ?」 ドドドドドド 照「あわあああああああああああああああああ!!」バキイイイイッ 淡「ごふっ」 京太郎「」 淡「」ドサッ 照「京ちゃん!京ちゃん!?いきなり淡に殴られてたけど、大丈夫!?怪我は無い!?ちょっと 淡!何話してた知らないけど、いきなり殴る事ないじゃない!!」ギューッ 京太郎「へ?へ?へ?照ちゃん?へ?」 照「京ちゃん!京ちゃん!京ちゃん!痛くない!?大丈夫!?ねえ!ねえ!ねえ!ええええええ えええん!!」 京太郎「えーっと…」チラッ 淡「…ふん。なんですか、もう話す事はありません」サスサス 京太郎「…まいったな…」 淡「…。あー、そうだ。じゃあ、もう一個だけ教えてあげましょう。これ、実は今までで一番重 要な話かもしれないんですが」 淡「私はプリンが大好きです。以上。じゃあ、言いたい事言ったのでどっか行きます」ムクッ 京太郎「ちょ、待てって、大星!お前さっきから何言って」 淡「嫌です。…宮永先輩。先輩には良く分かんないかも知れませんけど、私は勇気を出しました 。なんか、今なら矢でも鉄砲でも来いって感じです」 照「淡?」 淡「勇気を出してみた先達としてアドバイスを言うとですね。勇気出すと、すっきりしますよ。 気持ちいいです。モヤモヤが晴れます」 淡「あとは、宮永先輩次第だと思いますんで。じゃあ、頑張ってください」 照「…」 淡「では」スタスタスタ 照「…」 京太郎「…」 淡「あ、ところで須賀京太郎。余計な事言ったらぶっ殺しますから。私には完璧超人なりのイメ ージってもんがあるんで」 淡「…ふんっ」スタスタ 京太郎「…なんも言うなってか」 照「京ちゃん?」 京太郎「…照ちゃん。はは。半日ぶり…くらい?」 照「…うん。そうだね」 京太郎「…まさか、こんな早く再会する事になるとはなぁ」 照「…」 京太郎「…何か、用だった?」 照「…うん」 京太郎「落し物したとか」 照「…ちょっと違う」 京太郎「じゃあ、間違えて誰かのもの持ってっちゃったとか」 照「それもハズレ」 京太郎「忘れ物?」 照「それも、あるかな。でもちょっとハズレ」 京太郎「…」 照「…正解は、迷子。道を間違えちゃったんで、正しい道の歩き直し。そのスタート地点まで、 歩いてる最中なの」 京太郎「…」 照「いっぱい、いっぱい、さ。私、迷っちゃったんだ」 京太郎「照ちゃん、方向音痴だしな」 照「本当だよ。だから、何回だって迷って、変な道行っちゃって。気付いたらいっつも暗い道だ ったり、険しい道だったり、寒い道だったり。心細くていっつも泣いていた」 照「…けど、昨日、今まで歩いて来た道をふと振り返って見て気付いたの。その度に誰かが私の 腕を引いてくれたから、今私はここに居る」 照「行き先もわからずに歩いてきたけど、それでもなんとか道を踏み外さずに引っ張ってもらっ て、ここに居る」 照「さっきの偉そうな奴とか、生意気そうな奴とか、他にも東京には殺し屋みたいな奴とか、お 茶ばっか飲んでる奴とか。後は、咲とか。他にもいっぱい。いっぱい手を引いてくれた」 照「…その中でも、京ちゃんは、私が1番怖い道を歩いてる時に、一緒に歩いてくれてたんだ。 矢が降ってきても、爆弾降ってきても、なんでも無い振りして、傷だらけになって」 照「私、お姉さんなのにいっつも子供みたいにベソかいて道を歩いてたんだ。誰かに手を引っ張 ってもらうまで蹲って。本当、頼りない子だったと思う」 照「…でも、それだけじゃ駄目なんだ」 照「私は方向音痴だから。この先もきっと誰かに手を引っ張って貰わなきゃ歩けない」 照「けど、この先はきっと、自分で行くべき場所を決めなきゃいけないんだ。暗い道を照らすの は、私がやらなきゃ駄目なんだ。歩くのは、自分の意志で歩かなきゃ駄目なんだ」 照「一緒に歩いてく人を支えてあげたい。擦れ違う人を励ましてあげたい。迷った人を照らして あげたい」 照「私を今まで支えてくれてきた人たちのように、今度は私が誰かを支えてあげたい。私が今此 処に在れるように、誰かが其処に在れるようにしてあげたい。その為に、迷子から抜け出したい 」 照「だから私は、戻ってきたの。この、君が居る街に」 照「…ねえ、君。名前、教えてくれるかな。私の名前は宮永照。東京の、白糸台高校に通う3年 生。特技は麻雀。宝物は、妹の宮永咲」 照「…君が、いじめっ子から助けてくれた子」 京太郎「…っ!!」 照「…受かった高校。教えたよ」 京太郎「…お、俺っ!!」 京太郎「…俺は…!」 京太郎「…俺は、須賀京太郎!!長野の、清澄高校に通う、1年生!!麻雀部員だけど、麻雀は 素人。ペットはカピバラ。好きな人は…!」 照「…」 京太郎「好きな人は…!!」 照「…うん」 京太郎「照ちゃんだよ!!!」 照「うん…!」 京太郎「…~~~~っ!!」 照「…やっと、迷子から抜け出せた」 照「やっと、追いついた」 照「やっと、捕まえた」 照「やっと、隣を歩ける」 照「やっと、声を届けられる」 照「ねえ、京ちゃん。じゃあ、忘れ物、返すね」 京太郎「…」 照「…これは昨日の忘れ物だけど…」 照「…『私も好きです』って」 照「『私はすぐ迷子になるので、どうか私が迷わないよう、あなたの手を繋いで下さい』って」 照「『その代わり、私はあなたが道を見失いように、照らし続けます』って」 照「『どうか、私と一緒に道を歩いてください』」 照「『あなたの横で歩かせてください』」 照「『大好きです』って、言い忘れた言葉を。初めて会ったその瞬間から暖めていた想いを乗せ て、あなたに渡します」 照「どうか、受け取ってください。京ちゃん、大好きだよ」 照「付き合おう」 照「…」 京太郎「…ありがとう」 京太郎「改めて…よろしくお願いします…!!」 照「…うんっ!!」 神社の階段のてっぺん 淡「…はぁ」スタスタ 菫「ああ、淡。ご苦労」 淡「ご苦労って…なんですかその、計画通り…!!みたいな顔。なんですか。私の事どこまで知 ってるんですか先輩は」 菫「いやあ、お前の親御さんからな?実は、入部に当たって、相談があったんだ。この部に不良 系は入部することは有り得ないんでしょうかって」 淡「は…」 菫「素晴らしい親御さんじゃないか。お前が小学校の頃いじめられて転校してるのを気にして、 色々手を尽くしてくれてたらしいぞ。お前、ちゃんと感謝しておけよ」 淡「」パクパク 菫「まあ、私も顧問の先生から聞いた話だが。そんな話を聞いたら私も少々気になってな。小学 校やらの経歴は全部調べた。いやあ、まさか照と同じ地域出身だとは。魔境かここは」 淡「あわわわ…」 菫「はっはっは」 咲「…はぁ」 淡「…あ、妹さん…良かった。〆られて無かった」 菫「誰がんな事するか。照の買ってきた土産を二人で食ってたんだ。特等席の神社の階段の上か ら観戦しながらな」 淡「何を買って…って、うわ。東京ばな奈」 咲「…うええええ…京ちゃぁん…」モックモック 淡「しかも泣きながらもすっごい食べてるし」 菫「好物らしい」 淡「はぁ…」 咲「うええええええ…」グスグスモグモグ 淡「なんか、悪いことした気になってくるなぁ」 菫「お前が彼を殴った時、この子も飛び出しそうになってたんだぞ」クスクス 淡「それは…うん。ごめんね」 咲「いいの。全部話はきいたから。私が口挟める問題じゃ無いと思うし…」シクシクモグモグ 淡「…良かったら元いじめられっ子同士仲良くしましょうか。私が元いじめられっ子っていうの は、トップシークレットだけど」 咲「うん…うん…」シクシク 菫「お、もう全部食ったのか」 咲「…うええええ…もっとありません?」チラッ 菫「中々したたかな…照よりしっかりものじゃないか?この子。だがすまん。もう無い」 咲「うえええええええええ…!!」 菫「…はぁ」 淡「…今度、長野代表で東京来るんだっけ?日持ちしないけどマジキチレベルの美味しさって噂 の東京ばな奈バウムブリュレ奢ってあげる」 咲「ううううう…ありがとうございますぅ…」シクシク 菫「…やれやれ」ナデナデ 淡「…あ」 菫「…む?」 咲「…ああぁ~!」 照「…ねえ、京ちゃん」 京太郎「…ん?何だ?照ちゃん」 照「…キス…しよ」 京太郎「…え」 照「…いや?」 京太郎「い、いやじゃない…ってか、その…むしろ嬉しいくらいだけど…その…」 照「?」 京太郎「は、恥ずかし…」 照「ふふ…」 京太郎「わ、笑うなよ!」 照「可愛い」 京太郎「うう…なんだこれ。いきなり照ちゃんが大人になったみたいだ」 照「何言ってるんだ。私は京ちゃんより、2つもお姉さんなんだぞ?ちゃん付けじゃなくて、照 さんって呼ぶべきだ」 京太郎「…照」 照「な!?」 照「なわわわわわ!?きょ、京ちゃん!?今、な、なんて…」 京太郎「付き合ってるんだし、呼び捨てでも良くねぇ?」 照「こ、この!馬鹿!」 京太郎「あははは!ごめんごめん。でもこんなんで動揺するようじゃまだまだだーね」 照「もうっ!もうっ!もうっ!」ポカポカ 京太郎「いって!あは!ごめんって!」 照「~~~~~っ!」 京太郎「で、えっと、なんだっけ。えーっと…」 照「…」 照「…キス…だよ」スッ 京太郎「…へ?」 照「キス」 チュッ 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…ぷは」 京太郎「…」カチコチ 照「…ふふふ。びっくりした?」 京太郎「…」 照「あー。これは完全に固まってるな。ふふふふふ」 京太郎「…」 照「どうだ。見たか。これが年上のお姉さんの実力だ。まいったか」 京太郎「…ハッ」 照「…ふふ。気付いた?京ちゃん」 京太郎「あ、あわわわわ」オロオロ 照「ふふふ。可愛いなぁ」 京太郎「て、照ちゃ…照ちゃん!」 京太郎「うわ…うわ…やっべえ…俺、今照ちゃんとキス…うわ…うっわ…やべ…うわ…顔あっつ …」 照「あはは。その反応、初キスだったかな?」 京太郎「な、なんだよ、その余裕っぽい反応!まさか照ちゃんコレが初じゃない!?」 照「いや、コレが初だよ」 京太郎「へ?」 照「…ふふふふ。顔アッツイ…駄目だ。もう立ってられない」チジコマリ 京太郎「…」 照「あうううう…恥ずかしい…」 京太郎「…えっと…」 照「マズイ。死ぬ。恥ずかしくて死ぬ。あう。あうううう…」キュー 京太郎(この生き物かわええ…) 照「と、ところで、京ちゃん?」クルッ 京太郎「あ、は、はい」 照「…は、初キス…どうだった?」 京太郎「どうって…」 照「その…き、気持ち良かったとか。男の子の唇って思ったより弾力有ってびっくりしたとか。 そういうの」 京太郎(そういう感想だったのか照ちゃんは) 京太郎「…あー。そうだなぁ」 照「うん。正直に言って」 京太郎「…まず、照ちゃんが近づいて来る度にどんどんいい匂いがして」 照「うん」 京太郎「すっげー胸がどきどきして」 照「うん」 京太郎「唇が触れた瞬間に、ものすごい柔らかい感触が唇を擽って」 照「うん」 京太郎「照ちゃんの体温を、今まで感じた事が無いくらい身近に感じられて、嬉しくなって」 照「…うんっ!」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…京ちゃん?」 京太郎「…ほんのり、ゲロ臭かった」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…ごめん」 終わりっ!!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3453.html
http //hayabusa5.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1395844319/ 和(改めて考えると須賀くんってかなりの優良物件ですよね) 和(昔は咲さんしか見てなかったので気にしてませんでしたがなかなかのイケメンですし優しいですし) 和(興味なかったからって男性からの告白を断り続けて気がついたらアラサー、婚期ギリギリです) 和(いつもは咲さんが須賀くんにべったりなのでなかなか積極的に行けませんでしたが今日咲さんは遠征中!) 和(このチャンスは逃せません) 和「す、須賀きゅん!」 京太郎「は?」 和(しまったあああああ!緊張のあまり噛んでしまいました、どうしましょう須賀くんに変な目で見られてないでしょうか) 和「い、いえなんでもありましぇん」 京太郎「お、おうそうか」 和(ああああああああああ!!またやってしまいました!しかもせっかく食事に誘おうと話かけたのに会話きれちゃったじゃないですか) 京太郎「あ、そうだ和。今暇か?」 和「ふぇ!?」 京太郎「本当に今日のお前大丈夫か!?」 和「大丈夫です!暇かですね?いやー普段は忙しいんですが、今日だけ!本当に今日だけなら空いてますよ!」 京太郎「そうか、なら飯でもいかねーか?」 和「ふぁ!?」 和(千載一遇のチャンスキター!須賀くんからなんてそんなオカルトありえたんですね!) ~ファミレス~ 京太郎「いやー今日お前に会えてよかったわ」 和(ハァ、つい五分ほど前ならこの言葉でまた我を忘れるほど喜んだんでしょうが) 和(もうその言葉の意味が分かっちゃってるんですよね。いや、それでも嬉しいですよ?) 和(録音しとけば良かったと思うくらいには、でもまさか) 店員「レディースセットお待たせしました」 和(私にレディースセットを頼ませるためだったとは) 京太郎「今日CMやってうまそうだったからぜひ来たいと思ってたんだけど、今日から咲遠征行っちゃってさ」 和「ええ、咲さんから聞いてます」 京太郎「おう、そうか。相変わらず仲いいもんなお前ら」 和「そうですね、今でも頻繁に連絡を取り合ってます」 和(大体は咲さんの須賀くんとの距離が近い自慢ですけどね。威嚇の意味も込めてあるんでしょうが) 京太郎「でも、今日はこれでいいとして明日からどうしようかな。やっぱりコンビニ飯生活になるのかなー」 和「何がですか?」 京太郎「いや、普段は飯を咲が作りに来てくれるんだけどいまあいついな 和「今なんて言いました!?」 京太郎「いま咲いないなーって」 和「その前です!」 京太郎「おいおいあんまでかい声出すと店に迷惑だろ」 和「あ、すいません。私としたことが」 和「で、さっきなんて言いましたっけ?」 京太郎「えーと、確かいつもは咲が作りに来てくれるんだけど」 和「そ、そんなオカルト……」 京太郎「ん?咲が料理ってそんな意外か?」 京太郎「あいつ家庭の事情であいつが作らざるを得なかったから大分慣れてるぞ。ってこれ言ってよかったのか?」 和「それは咲さんから聞いているので問題ありませんがそういうことじゃなくて」 和(まさか咲さんがここまで和了に近づいていたとは、希望的観測でイーシャン悪く見てテンパイ) 和(これは手段を選んでられませんね。甘いですよ咲さん。三シャンテン程度の状況、普段の私なら降りるところですが) 和(人は予想を超えてくる) 和「須賀くん、コンビニ弁当ばかりだと体に悪いですよ」 京太郎「だよなぁ。まあでも咲がいない間は仕方ないしせいぜい一週間だしなんとかなんだろ」 和「一週間もです。不摂生すぎます。お金も馬鹿になりませんし。」 京太郎「お、おう」 和「で・す・の・で、咲さんがいない間は、私が須賀くんのご飯をつくってあげます」 京太郎「え?」 ~スーパー~ 京太郎(で、和がまずは食材を買いに行きましょうと言ったから流れで来ちゃったけど) 和「やはりここは定番の肉じゃがでしょうかいやスッポン鍋なんかもありですね」ブツブツ 京太郎(高校時代の俺なら、和が料理を作りに来てくれるなんて飛び上がって喜ぶレベルだったけどなぁ) 京太郎(なんか最近の和ちょっと怖いんだよな) 和「須賀くんは何がいいですか?」 京太郎「ん?ああ、なんでもいいよ。作ってもらえるだけで十分だし」 和「そうですか。なら店内を回りつつ良さげなものを見つけたらそれを基にメニューを考える感じでいいですかね」 京太郎「おうそれで頼む」 和「とりあえずこんなもんでいいですかね。結構買ってしまいました」 京太郎「そうだな。おっともうこんな時間だしそろそろ帰った方がいいんじゃないか?送ってくぞ」 和「待ってください。明日の朝食はどうするつもりですか?」 京太郎「別に一食くらい抜いても大丈夫だって」 和「何を言ってるんですか。朝食は一日で最も大切な食事なんですよ?」 和「明日は平日ですから仕事もありますよね?しっかりとエネルギー補給しないで働くなんて体に悪いです」 和「ということでお邪魔でなければ今から須賀くんの家に行ってレンジで温めれば済むような準備をしたいのですが」 ~京太郎のアパート~ 京太郎(和が俺の家で料理作るこの光景、昔何回妄想したかな) 京太郎(色々考えることはあるけどとりあえずは素直に感謝しておこう) 和「お味噌汁の出汁はこんなもんでいいですね、あとは鮭に焼き目をつけて、炊飯器のスイッチをいれて」 京太郎(でもやっぱりこいつかわいいよなぁ」 和「」ガタッ 京太郎「どうした!?大丈夫か?」 和(危うくフライパンをひっくり返すところでした。その様子だと声にだしちゃったのに気づいてないみたいですね) 和(全く、不意打ちなんてズルいですよ) 和「ふぅ、とりあえずはこんなもんですかね。後は温めて食べてください」 京太郎「分かった。ありがとな、こんな時間まで」 和「いえ、構いませんよ。って、あれ?」 京太郎「どうした?」 和「あ、あはは。終電なくなっちゃいましたね////」チラッチラッ 京太郎(落ち着け、落ち着くんだ俺!和は今風呂に入ってる、ただそれだけだ。他には何もない) 京太郎(もう遅い時間だからしょうがなく泊まるだけ。他意はない。) 京太郎(女子が泊まるくらい咲がしょっちゅう来てるだろ。その度なにも怒らせるようなことしてないはずなのに朝不機嫌そうだったが) 和「須賀くん」 京太郎「ひゃい!」 和「クス、どうしたんですかそんな素っ頓狂な声出して」 京太郎「い、いや……ってちょっと待て」 京太郎(バスタオル一枚の和……だと?) 京太郎(俺は夢でも見ているのだろうか?脱衣所の扉を少し開けた隙間から、バスタオル姿の和が俺を見ている) 和「ああ、この格好ですか?いえ、よく考えたら着替えがなかったのでどうしたものかと」 京太郎「さ、咲が忘れてったのがあるから持ってくる」 和「すいません。お願いします」 和(咲さんのだとサイズがあいませんが逆に好都合かもしれませんね) 京太郎(で、咲のをとりあえず着てもらったのはいいものの。これはこれでなんか) 和「さすがに胸元がキツイですね」 京太郎(むしろけしからんことになってる) 京太郎(しかもさすがに厳しいのと寝るだけだからいいとブラをしてないから、さらにヤバい) 和「おっと携帯を落としてしまいました」 京太郎(ヤバい。見えそう。谷間だけでなく色々と) 和「須賀くん?どうしました?お風呂入らないんですか?座りっぱなしですが」 京太郎「い、今テレビから目が放せないんだよ」 和「そうですか。なら一緒に見てもいいですか?」 京太郎「あ、ああ」 和「では失礼して」チョコン 京太郎(ちょっ、肩が触れる距離まで来たんだが) 和「なんの番組ですか?」 京太郎「ホラーだよ」 京太郎(正直風呂に入ってる和が気になってあんま内容が入ってこなかったが) 和「須賀くんはホラー得意なんですか?」 京太郎「普通かな。怖いとは思うけど過剰に反応はしない程度」 和「そうですか」 和(ホラーですか、これはもらいましたね) 京太郎「和はホラー強いだろ?ほら、なんだっけ?そんなオカモチだっけ?」 和「現象は信じてませんが映画やドラマなんかでは演出がすごいものもありますからそういうのは怖さを感じますね」 京太郎「そんなもんなのか」 和「そんなもんなんです」 和(ま、本当は全く怖くないんですけど。こう言っておけば) ワハハーマタハイガカッテニウゴキダシタナー ワラッテルバアイカ サトミチャンコワイヨー ウム 和「キャー(棒)」(京太郎に抱きつく) 和(これが可能ですからね) 京太郎「おい、和?」 和「あ、すいません。つい」 京太郎「い、いや構わないんだけどさ、その」 京太郎(おもちが、腕に咲に抱きつかれたときには感じられなかった豊かなおもちの感触が) 和「その?」 京太郎「な、なんでもない」 京太郎(しかも今和はノーブラなんだよな)ゴクリ 京太郎(っていかんいかんなにを考えてるんだ俺は!) 京太郎「風呂入ってくる!」 和「あ、はい」 和(チッ、後一押しだったのに) 和(行ってしまいましたね。須賀くんがいないんじゃホラー見る意味なんてありませんしチャンネル変えましょうか)ポチッ えり「福与アナ熱愛疑惑について続報がきました」 えり「週刊誌に一般男性と一緒に街を歩いているところを撮られた福与アナに直接伺ったところ」 えり「二人は結婚を前提にお付き合いをしているとのことです」 えり「なかなかそういった話題に疎かっただけに反響を呼びましたが、親交の深い小鍛冶プロとしてはどう思いますか?」 健夜「こーこちゃんも私をおいてくんだね裏切るんだね許さないよなにも私に話さずに婚約にこぎつけるなんて」ブツブツ えり「あ、あの小鍛冶プロ?」 健夜「ああ、うん。めでたいと思うよ?私みたいにアラフォー独身にならずにすんで」 えり「し、CM入ります!」 和(小鍛冶プロ……。昔はアラサー独身なんてと少し笑っていましたが、いざ自分がなるとキツイですね) 和(来年で三十路。なんとしても今週中に決めなければ) 和(次はどうしましょうか) 和(さっきの反応を見る限り須賀くんはあまり女性に慣れていない様子ですね) 和(つまり咲さんともそういった行為はなかったとみていいでしょう) 和(須賀くんのことですから自分がやったことの責任はきちんと取るはずです) 和(つまり次に切る牌は既成事実ですね) 京太郎「ふう、やっぱ風呂入るとさっぱりするな」 和「あ、早かったですね」 京太郎「男の風呂なんてこんなもんだろ」 和「で、ですよね」 和(さすがに経験ないから分からないとは言えませんね) 和「そうだ須賀くん、少しお酒飲みませんか?」 京太郎「いいぜ」 和(勝った) 京太郎「おい和、そんな飲みまくって大丈夫かよ」 和「平気ですよ~。これでも結構お酒には強いんですよ?」 京太郎「全然平気じゃねえだろ。麻雀してる時みてえに顔赤いぞ」 和「なんだか暑くなってきましたね」プチプチ 京太郎「落ち着け和!」 京太郎(元から見えそうだったけど今度は完全に見えちゃう!見ちゃだめなのに目が放せない) 和「あれ~?須賀くんなんでそんな慌ててるんですか?」 京太郎「なんでってそりゃお前が脱ごうとしてるからだろ!」 和「いいじゃないですか別に。私は暑いから脱ぐ須賀くんは私の裸が見れる、win-winの関係じゃないですか。」 和「それともこんなアラサーのだらしない体なんて見たくないですか?そうですよね?」 和「やっぱり男性は若い人がいいんですよね?内木さんも若い子大好きって言ってましたし」グスッグスッ 京太郎「いや全然そんなことないし」 京太郎「なによりお前まだ若いし綺麗で変な意味じゃなくてスタイルいいと思うし見たいとも思うけどそうじゃなくて」 和「じゃあどういうことなんですかー!?」 京太郎「お前やっぱ大分酔ってるだろ!?」 和「酔ってませんよ!」 京太郎「分かった分かった。分かったからとりあえず今日はもう寝ろ」 京太郎「俺の普段使ってるのでよければベッドあるけど、流石に嫌だろうから客用のベッド敷くよ」 和「むー。しょうがないですね」 京太郎「ちょっと待ってろ。持ってくるから」 京太郎「よっと、ちょくちょく干してるからダニとかは心配しなくていいぞ」 京太郎「あと飲み終わったやつ片付けるから渡してくれ」 和「は~い」ポイッ 京太郎「うわ待て投げるな!しかもそれまだ少し入ってるやつじゃ」 ドサッビチャア 京太郎「……」 和「わーお布団濡れちゃいましたね」 京太郎「はぁ、もういいや。和は嫌かもしれんが俺のベッド使ってくれ。俺は適当にそこらへんで寝るから」 和「え~?そんなの駄目ですよ。春先とはいえまだ夜は冷えますし。なにより泊めてもらう立場なのに悪いです」 京太郎「毛布は濡れてないから大丈夫だよ。俺のことなら気にすんな。飯つくってもらうんだから。さて、この布団どうしたものか?」 和「あ、そうだ!いいこと思いつきました!」 和「一緒に寝ればいいんですよ!」 京太郎(結局、あの後和に「須賀くんがベッドで寝ないなら私は外で寝ます」とまで言われたので一緒に寝ることになったのだが) 和「」スースー 京太郎(持つかな俺の理性) 京太郎(いや、最初は和を寝付かせたらこっそり出て床で寝ようと思ったんだけどさ) 和「」ギュー 京太郎(和がいまだかつてないほどの握力を込めて俺の手を放さなくて出れない) 京太郎(もちろん力は俺の方があるから出られるけどそしたら起きちゃうだろうし) 京太郎(しかしこのままではただでさえチラチラ見えてたものが寝相で器用にはだけて) 京太郎(モロ見えになった状態の和と同じ布団で一晩すごすことに) 京太郎(しかし和のおもちは相変わらずすげえな。だらしない体とかいってたがとんでもない) 京太郎(大人になってさらに色気が増してるよ。高校の時よりさらに大きくなってるし。咲は照さんともども……。やはり遺伝子か) 京太郎(ヤバい見てると理性が。しかしおもちの引力から目がのがれられない) 京太郎(……寝てるし、ちょっとくらいならばれないかな) 京太郎「」ソー 和「んん、ふふ~。咲さんがいない間は任せてくださいね」スースー 京太郎「」ビク 京太郎「いや、やっぱこういうのはよくないよな。和の信頼を失いたくないし」 京太郎「はぁ俺もがんばって寝よう」 京太郎(政治が悪いが一匹政治が悪いが二匹政治が悪いが三匹おもちが四つ) 京太郎「」スースー 和(あれ?既成事実を作るはずがいつの間にか少しですが寝てしまったようですね) 和(須賀くんも寝てしまいましたか。残念ですね) 和(しかしここまでお膳立てしてなにもしないとはチキンってレベルじゃないですよ。修行僧かなにかですか) 和(まぁ実際にここでなんのためらいもなくおそってくるような人なら私も考えましたが、いくらなんでも本当になにもしないって) 和(はぁ、なんか毒気抜かれちゃいましたし今日のところは諦めて寝ましょうか。明日からまた策を練る必要がありますね) 和「須賀くん、起きて下さい」 京太郎「ん?あれ?なんで和が?」 和「もう忘れたんですか?あんなことまでしたのに」 京太郎「あんなこと!?本当にごめん!記憶がないんだ!悪い!なんでもするから許してくれ!」 和「なんでも?ふーん……なら、責任とってもらいましょうか」 京太郎「ああ、もちろん!って、それはもしかして?」 和「ええ」 京太郎「で、でもその俺たちまだそんな関係じゃ、いやでもそんな関係じゃないのに手を出したのは俺だし」 和「ぷっ、あははは」 京太郎「ど、どうした和?やっぱり俺が」 和「い、いえはは、こんな、簡単なはは、嘘にひっかかるなんて」 和「須賀くん、機嫌を直して下さいよ」 京太郎「俺さっき本気で焦ったんだからな!」 和「まぁまぁ。だから謝ってるじゃないですか。どうぞ、朝食できましたよ」 京太郎「お、サンキュ」 京太郎「いただきます」モグモグ 和「ど、どうですか?お口に合えばいいんですが」 京太郎「」モグモグゴクン 和「あの?」ドキドキ 京太郎「うめえ!すっげえうめえよ!」 京太郎「この味噌汁とか出汁のアクとか雑味とか全くなくて出汁の旨味と味噌の香りだけが感じられるっていうか」 和「そ、そうですか。なら良かったです」 京太郎「いやホント、毎日飲みたいくらいだよ」 和「」 和「しょ、しょうがないですね。まぁそこまで言われたら、私も悪い気はしませんし?毎日つくってあげるのもやぶさかではありませんよ?」 京太郎「お!マジ?」 和「その代わり、さっきの許して下さいね」 京太郎「許す許す!ていうかもう許してる」 和「ふふ、しょうがないですね。じゃあまず二人で住める家を探さないと行けませんね」 和「いえ将来的に子どもができることも考えるといっそマイホームを建てるのも悪くはありませんね。」ブツブツ 京太郎「の、和?」 和「京太郎君は子どもが欲しいですか?団体戦出れるくらい?手牌の数くらい?」 和「ああ、お金は心配しないで下さい。仕事がら結構いいお給料もらってますし」ブツブツ 京太郎「おいどうした和?」 和「ハッ、い、いえなんでもありません」 和(またこんな、どんだけ焦ってるんですか私は。でも今回は須賀くんがあんなこと言ったせいですからね) 京太郎「えっと、なんかよくわからないけどごめんな?」 和「全く、須賀くん、いいですか?さっきみたいなことは誤解を招きますから下手に使わないでください」 和「私だからなんとかなりましたが他の人に言ったら大変なことになりますよ?」 京太郎「お、おう分かった」 京太郎「ごちそうさまでした。さて洗い物して仕事行かないとな」 和「洗い物なら私やりますよ」 京太郎「そこまでは悪いって。お前も仕事あるだろ?」 和「いえ今日は休みなので問題ありません」 和「なんだったら部屋の掃除と、昨日汚してしまったお布団のクリーニング依頼もやっておきますよ?」 京太郎「いやいやホントいいって」 和「では言い換えましょう。昨日泊めてもらったお礼に私が掃除したいんです。お布団を汚して大分迷惑をかけましたし」 京太郎「んー、まあそこまで言うなら」 京太郎「合鍵預けて置くから今日のとこは自由に使ってくれ」 和「ありがとうございます」ニヤリ 和「さて、須賀くんは行ってしまいましたか」 和「とりあえずはお布団をクリーニングに持って行って、帰りにホームセンター行って鍵を複製しましょうか」 和「後は食材を買って……って須賀くんはお昼はどうするんでしょうか?」 和「ふんふむ」ニヤリ ~須賀の仕事場~ 嫁田「須賀、食堂行こうぜ」 京太郎「おう、ちょっと待ってろ今終わらせる」 同僚「おい須賀!お前に電話だ」 京太郎「俺に?なんだろ。はい今変わりました須賀です」 受付「あ、須賀さん、受付で奥さんがお弁当を届けに来てくださいましたよ。あんなキレイな人がなんて角におけませんね」 京太郎「え?俺どくし──」プツ 受付「あ、来たみたいですね」 和「ええ」 京太郎「おかしいと思ったらやっぱり和か」 受付「もう、女性を待たせちゃいけませんよ」 京太郎「すいません。ってその前に奥さんちゃいます。和がそう言ったんですか?」 和「そんなこと言ってませんよ?ねえ?」 受付「え、ええでも指輪をしてたから」 和「これはファッションです」 京太郎「やっぱりお前のせいじゃねーか!」 嫁田「なんだったんだ京太郎……ってもしかして原村さん?」 和「えっと」 京太郎「ああ和、こいつは元清澄時代の俺の友達で現俺の同僚の嫁田」 嫁田「あ、嫁田と言います」 和「あ、すいません覚えてなくて。多分お会いしたことあるんですよね?私を知ってるってことは」 嫁田「あ、いえこれといった面識もなかったんで知らなくて当然です気にしないでください」 和「じゃあなんで……?」 京太郎「そりゃお前は校内では知らないものがいないレベルの有名人だったからな」 和「そうだったんですか?」 京太郎「当然だろ麻雀部が初出場でいきなり全国優勝したんだぞ。校内で大分話題になったろ」 和「ああそういえば」 京太郎「しかも学年トップクラスの美人だったからな。男子人気もすごかったんだぞ」 和「へえ……その中には須賀くんも含まれてたんですか?」 須賀「……ノーコメントで」 和「ではお弁当も渡しましたし帰りますね。お夕飯もつくっておきますからできるだけ残業とか寄り道とかしないでかえって来てくださいね」 京太郎「おお、弁当ありがとな」 和「それでは失礼しました」 嫁田「あ、はい」 嫁田「おい!須賀なんだよ今の会話!まさか同棲してんのか?あの美人と!咲ちゃんというものがありながら!」 京太郎「ちげーよ。まず咲とはそんなんじゃないし、和は咲がいない間飯をつくってくれてるだけだって」 嫁田「本当になにもないのか?」 京太郎「だからないって。安心しろよ」 嫁田「それはそれであの二人に同情するわ」 京太郎「なんの話だよ?」 ~京太郎のアパート~ 京太郎「ただいま」 和「おかえりなさい。お夕飯もうすぐできますよ」 京太郎「そっか。ん?その大量の荷物は?」 和「ああ、私の着替えです。昨日は着替えなくて困りましたからね」 京太郎「ああなるほど。って今日も泊まる気なのか!?」 和「そのつもりでしたが、いけませんか?」 京太郎「いやいや駄目だろ流石に。親御さんは何も言ってこないのか?」 和「最近あまり家に帰りたくないんです。父がしつこくお見合いを勧めてきて」 京太郎「そんな嫌なやつばっかなのか?」 和「いえ、職業柄大企業にもツテがあるのでそういったところの素晴らしい方なんだと思います」 和「でも、やはり会ったこともない人との結婚はあまり想像がつかなくて」 京太郎「まぁなあ」 和「なんて、こんなこと言ってるから独身のままアラサーなんですよね」 京太郎「俺はそんな悪いこととは思わないけどな。お見合いも悪くはないと思うけど、和が望む形で生きるのが一番だって」 和「須賀くん……」 和「須賀くんは、こんな私でも結婚できると思いますか?」 京太郎「あたりまえだって。和くらい美人で家事もできて優しいやつなら男は黙って無いって」 京太郎「和が結婚できないならそれは見る目のない男が悪いんだよ」 和「それじゃ、あなたも同罪じゃないですか」ボソ 京太郎「ん?なんて?」 和「なんでもありません!それより、もう少しだけここにいさせてもらってもいいですか?」 京太郎「しょうがねえな。ただし、親御さんにしっかり連絡しろよ?」 和「はい、ありがとうございます」 和(なんで、私がお見合いを断り続けたか、自分でも異常と分かるほどに拒否反応を示したのか) 和(今やっと分かりました。私はきっと、自分でもわからないうちに、この人に) 和「あの、須賀くん。図々しいですがもう一つだけいいですか?」 京太郎「なんだ?」 和「京太郎くんって呼んでもいいですか?」 和(それから私と京太郎くんの生活が始まりました) 和(なんていうと新婚さんみたいですが、そんなことはなく、彼は相変わらずわのアプローチにも関わらず手を出し続けることはなく) 和(ただ一緒に時間をすごすだけでしたが) 和(お父さんとも話あってしばらくお見合いはなくしてもらいました) 和(これで駄目ならお父さんに従ってお見合いを受けるという約束つきですが) 和(そして時は流れ、咲さんが遠征から帰ってくる日がきました) 和(しかし私は、彼といる幸せばかりに気を取られ、咲さんがドアをノックする瞬間まで、そのことを忘れていたのでした) 京太郎「相変わらず和の作る飯はうまいな」 和「京太郎くんにそう言ってもらえると作った甲斐があります」 京太郎「でも、この味も今日で終わりと思うと寂しいな」 和「え?それってどういう」 コンコンキョーチャンタダイマー 和「っ!咲さん!?」 京太郎「まだ午前なのに。案外帰ってくるの早いのな。ちょっと悪い。ドア開けてくる」 和「待ってください!」(京太郎に抱きつく) 京太郎「和?」 和「開けないでください。もう少し、もう少しだけ、このままでいさせてください」 京太郎「それってどういう……?」 和「ごめんなさい。京太郎くん。でも少しだけこのまま私の言葉を聞いてください」 京太郎(和、震えてるのか?それに眼がいつもの俺をからかうときとは全然違う) 和「ごめんなさい。私、京太郎くんにウソをついてました。」 京太郎「え?」 和「お見合いを断った理由。初対面の人と結婚できないっていいましたが、あれは違うんです。」 京太郎「じゃあなんで」 和「もう時間もありませんし、後悔したくないので言いますね」 和「私は、ずっと、京太郎くんが! ガチャ 咲「もー京ちゃん。まだあんなところに鍵隠してるの?駄目だよ危ないじゃ、な……え?」ドサッ 京太郎「……」 和「……」 咲「のどか、ちゃん?」 和「……ごめんなさい咲さん」 咲「私、帰るね?」 京太郎「え?」 咲「ごめんなさい」ダッ 京太郎「おい!咲!?」 和「ごめんなさい」(京太郎から体を放す) 京太郎「いきなりどうしたんだ?」 和「忘れてください。なんでもありませんから。それより、追いかけてあげなくていいんですか?」 京太郎「……さっきなんて言おうとしたんだ?もしかして?」 和「もしかして、なんですか?告白とでも思いましたか?勘違いも甚だしいですよ。そんなオカルトありえるわけないじゃないですか」 和「さ、早く行ってあげてください」 和(きょ、いえ須賀くんはもう行きましたよね) 和(攻め切れませんでしたね) 和「仕方ないですよね。私は本来ここにいてはいけない存在ですもの。咲さんの大切な人を横取りしようとした卑怯者ですもの」 和「須賀くんには咲さんがお似合いですよ。私なんかよりずっと長い付き合いですもの」 和「あれ?何故でしょう?涙が。グスっ、ヒック、わあああああああああああん」 ~とある公園~ 京太郎「咲!」 咲「……京ちゃん」 京太郎「やっと見つけたぜ」 咲「いつもそうだよね。私が悲しいことがあって飛び出したとき、いつも最初に見つけてくれる」 京太郎「……咲、お前もしかして泣いて」 咲「いつからだろう。私、京ちゃんがずっとそばにいて、ずっと私を守ってくれて……」 咲「ずっとこうして見つけ出してくれると思ってた。それがあたりまえだと思ってた。」 京太郎「咲、お前……」 咲「でも違うんだね。京ちゃんには京ちゃんの人生があるんだよ」 咲「そして私にも私の人生がある」 咲「京ちゃん私たちはもうあんまり関わらない方がいいのかもね」 京太郎(そんなこと……) 京太郎「そんな寂しいこと言うなよ!」(咲を抱きしめる) 咲「……京ちゃん」 京太郎「関わらない方がいいなんてそんなさみしいこと言うなよ!」 京太郎「俺だってお前が飯作りにきて、一緒に食べて、相変わらず嫁田にちゃかされて、そんな人生が当たりまえだと思ってたよ!」 京太郎「お前がいない人生なんて考えられない!だから、そんなさみしいこと言わないでくれよ」ポロツ 咲「……京ちゃん、男のくせに泣いてるの?」 京太郎「そ、そんなわけねえだろ」 咲「クス、そういうことにしといてあげますかね」 京太郎「なんだよその言い方」 咲「京ちゃん、帰ろっか」 ~原村家~ 恵「本当にいいのか、和?お見合いをしろとは言ったが、なにもすぐさま結婚しろとは」 和「いいんです。私が決めたことですから」 和「それに、こうでもしないと諦められませんからね」 恵「まあ、相手さんもお前を気にいってくれてるし、お前がそういうならいいんだが」 和(今私は、式場の手配に教会にきています。お相手は、お見合いで知りあった人) 和(とても優しい方ですし、大企業の重要ポストですし、かっこいいですし、申し分のない方なのに、どうして心が惹かれないのでしょうか) 和(須賀くんよりも、全然すごい方のはずなのに) 和(どうして私は、いまだに須賀くんを忘れられないのでしょうか) ???「あれ?のどちゃん?」 和「?」 ???「やっぱりのどちゃんか!久しぶりだじぇ!」 和「!優希……」 優希「いやーまさかこんなとこでのどちゃんに会うなんて思わなかったじぇ」 和「私もです。優希も結婚式の予定が?」 優希「だじぇ!近いうちに式をあげたいと思ってな」 和「そうなんですか。私も近いうちに」 優希「の、割りに浮かない顔だな?」 和「いろいろあるんですよ私にも」 優希「そんな顔ののどちゃん初めて見たじぇ。でその顔はいつかの私に似てる」 優希「話すだけで楽になるじぇ。辛いのは分かる。私もあいつにふられたときそうだった」 和「それって……」 優希「のどちゃんならさすがに分かるか、でも今はとっくに忘れて新しい恋と幸せにいきてるじょ」 和(もうすぐ式もあげるしな、と付け加えて言った彼女の表情は、確かに陰りがなく、昔見た無邪気な明るい笑顔のままでした) 和「ありがとうございます優希。こんな言い方はおかしいかもしれませんが、失恋の先輩として、相談にのってもらえますか?」 優希「おやすい御用だじぇ!」 和「これが、私のいきさつです」 優希「それで?」 和「それでもなにもこれで終わりですが」 優希「はああああああ?なにが終わりだじぇ!なにも終わってないじょ!」 優希「要するにのどちゃんは終わらせるのが怖いから逃げただけなんだじょ」 和「逃げたなんて、私は咲さんを裏切れなくて」 優希「それが逃げだと言ってんだじぇ!」 和「なにも知らないあなたに」 パァン! 和「……え?」 和(初めて優希に叩かれました。ふざけて須賀くんを軽く叩くことはしょっちゅうでしたが) 和(心優しい優希が本気で人を叩くところなんて、中学時代から今までで初めてです) 優希「甘えてんじゃねーじょ!」 和(ええ、わかってましたよ。そんなこと。優しい咲さんのことです) 和(私が成功しようと失敗しようときっと私よりも泣いてくれるであろうこと。私はただ恐れてただけだということ。) 和「そうですね、優希。確かに私は逃げてました。きっと私もフラれると思います」 和「でもあなたのおかげで、それも悪くないと思えてきました」 優希「のどちゃん。良い目になったな。さっきまでとは違う。みんなとインハイに出たときのようなイキイキとした目」 和「ありがとうございました。優希。これでやっと前に進めます」 優希「健闘を祈るじぇ」 和「ええ。そちらも。式には呼んでくださいね」 ~京太郎のアパート~ 咲「はい、京ちゃん。お夕飯」 京太郎「おう」モグモグ 京太郎「なあ咲、味噌変えた?」 咲「ううん。いつも通りだよ。なんで?」 京太郎「いや、なんか味変わったような気がして」 咲「変な京ちゃん」 咲(あれから私たちは同棲を始めました) 咲(幸せなはずなのに、京ちゃんは時々ドアの方を何するでもなくずっと見ています) 咲(とても悲しそうな目で。誰かが来るのを待ってるかのように) 咲(いえ、誰かなんて曖昧な言い方をしましたが、私にはわかってます。京ちゃんは和ちゃんをずっと待ってるんだと思います) 咲(そして私も、幸せかと言われるとそうでもありません。あの日から和ちゃんへの罪悪感に押しつぶされてしまいそうで) 咲(和ちゃんとほいまだに連絡がとれていません) 咲(どんなことを言われてもいい。許してもらえなくてもいい) 咲(だからもう一度だけ、もう一度だけでいいの、和ちゃんに会って謝りたい) 咲(和ちゃん。今なにしてるの?) 咲(まさかはやまったことをしてなんかないよね?) モーイッポフーミダセル 咲「着信!まさか和ちゃん!?」ピッ 咲「もしもし!和ちゃん?」 ???「久しぶりだな、咲ちゃん。残念ながらのどちゃんではないじぇ」 咲「その声はもしかして」 優希「元気にしてたか?」 咲「久しぶり優希ちゃん。突然どうしたの?」 優希「いや、まあなんというか」 咲「歯切れ悪いね、言いにくいことなの?」 優希「……その、最近のどちゃんから連絡はあったか?」 咲「いや、ないけど。こっちからもちょくちょくかけてみてはいるんだけど繋がんなくて」 優希「そっか」 咲「どうかしたの?」 優希「ごめん咲ちゃん。先に謝っておくじょ。私、咲ちゃんに悪いことしちゃった」 咲「え?」 優希「実はこの前式場で……」 咲「そんなことが」 優希「本当にごめん咲ちゃん。私は咲き咲ちゃんのライバルに塩をおくってしまったじぇ」 咲「謝らないで。優希ちゃん。むしろ感謝したいぐらいもん」 咲「私このままじゃいけないと思ってたの」 咲「このままじゃきっと私も和ちゃんも京ちゃんも、みんなが不幸になってた。だから、そうならないようにきっかけを作ってくれてありがとう」 優希「咲ちゃん……」 咲「私なら大丈夫。どうなろうと、京ちゃんが選んだ結果なら悔いはないから」 優希「ありがとう咲ちゃん」 優希「それでのどちゃんのことなんだけど。この前式場に行った時に聞いたんだが、のどちゃんのお見合い相手との式は明日らしいんだ」 咲「明日?」 優希「うん。だから今まで連絡なかったのならもうすぐのどちゃんがなんらかのアクションを起こすはずだじょ」 咲「うん、分かった」 優希「こんなこと咲ちゃんに言っていいかわからないけどもしあいつがそれを受けてなにかしようと思っても、止めないで欲しい」 咲「大丈夫。分かってる。それが私のできる唯一の罪滅ぼしだもん」 優希「咲ちゃん、ありがとう」 咲「優希ちゃん、連絡ありがとね。ダメだった後は二人で飲みに行こ?」 優希「全くこいつらはなんで二人ともフラれると決めつけてるんだか」 優希「まっ咲ちゃんには私がフラれた時世話になったからな。お安い御用だじぇ!」 ~翌日、結婚式場~ 恵「ついに当日だが、大丈夫か和?」 和「はい」 恵「和、いい表情をしてるな。少し前までは沈んだ表情だったから心配していたが」 和「ええ。素晴らしい友人のおかげでもう迷いはありません」 恵「そうか。じゃあ私は相手さんの方に顔を出して来るから」 和「では私はドレスに着替えに行きます」 恵「和のドレス姿、楽しみにしてるぞ」 和「期待してて下さい」 和(お父さんはもう行きましたよね) 和(ごめんなさいお父さん、咲さん、未来の旦那さん、今日祝福にいらしてくれたみなさん) 和(私はもう後悔をしないと決めたんです) ~京太郎のアパート~ ワタシーマッテタヨー 咲「!きた!和ちゃんからのメール!」 ~京太郎の仕事場~ ゼッタイユーズレーナイコノトキヲマーテタヨー 京太郎「ん?取引先からか?……和!?」 嫁田「おい!どこいくんだよ!」 京太郎「すまん腹が超痛いから早退する」 嫁田「はぁ、その必死な様子、なんかあったんだな?てめえの分も請け負っといてやるからしっかりケリつけとこいよ?」 京太郎「おう!」 ~結婚式場~ 神父「それでは近いのキスを」 和「あのすいません。その前に少し、この場を借りてお話したいことがあるんですが」 神父「今ですか」 和「今じゃないとダメなんです。神父さん、懺悔したいことがあるんです」 神父「……しかし」 恵「私からも頼む」 和「お父さん!」 神父「よろしいのですか?」 恵「娘は今、私が見てきた中でもっとも決意に満ちた表情をしている」 恵「思えば私はいつも娘に迷惑をかけてきた。自分のエゴを押し付けてきた。場にそぐわないことはわかってる。恥知らずも承知だ」 恵「だからみなさん!少しだけ、この馬鹿で恥知らずな私の娘の頼みを聞いてやってください」 和「お父さん、ありがとうございます」 和「お父さんに反発してばかりの馬鹿娘でしたが、お父さんの娘に生まれてきて本当に良かったと思います」 神父「新郎側の了解も得られましたから、少しだけなら構いませんよ」 和「ありがとうございます」 和「まずは祝福に来てくださったみなさんに多大なるご迷惑をかけたことについてお詫びしたいと思います」 ~街~ マケタクーナイアキラメナイホンーネデショウブー ピッ 京太郎「もしもし!咲か?」 咲『うん、そうだよ』 京太郎「このタイミングでってことは」 咲『そう、和ちゃんのこと』 京太郎「そっちにも連絡行ってたのか」 咲『うん、それでお願いがあるの』 京太郎「お願い?」 咲『うん。時間もないから手短に言うね。私は何があろうと二人のことを恨んだりしないから』 咲『だから!余計なことを考えずに京ちゃんの選択をして欲しいの』 京太郎「なんだ、そんなことか」 咲『そんなことって言い方酷くない?』 京太郎「ああ悪い悪い。でもほんと、そんなあたり前のことを頼んできたから」 咲『……そっか。なら大丈夫だね」 京太郎「任せとけ」 ~結婚式場~ 和「私は危うく親友も大切な人も、自分自身も失くしてしまうところでした」 和「幸い、もう一人の親友との偶然の再会のおかげで、自分をとりもどすことができました」 和「でも、今の私は欲張りなので、他の二つも諦めてません」 和「こんなことをこの場でやるべきではないというのは重々承知ですが、お互いの退路を塞がなければまた逃げてしまいそうで」 和「分の悪い賭けですが、私の尊敬する先輩にならって、たまには悪待ちというものをしてみようと思います」 和「……なるほど、普段は絶対にしませんがたまにはいいかもしれませんね、悪待ちも」 京太郎「和!」 咲「和ちゃん!」 和「お久しぶりです。京太郎くん、咲さん」 咲「うえええんのどかちゃん会いたかったよおお」 和「連絡ができずにすいませんでした咲さん」 京太郎「……久しぶりだな和。元気だったか?」 和「ええ。優希のおかげで」 咲「ごめんね和ちゃん、あの時、京ちゃんとの仲を邪魔して。京ちゃんを和ちゃんから奪おうとして」 和「咲さんが謝る必要なんてありません。悪いのは、咲さんと京太郎くんとの間に割って入ろうとした私ですから」 咲「ううん私が悪いの」 和「いえ、私です」 咲「和ちゃんは悪くないよ」 和「咲さんこそ悪くありません」 咲和「「……クス」」 咲「ごめんなさい。そしてこれからもよろしくお願いします和ちゃん」 和「こちらこそすいません。そして末長くよろしくお願いします咲さん」 ???「なんとかなったみたいだじぇ」 ???「ええ。二人とも心優しいすばらな子ですから。それはあなたの方がよく知ってるでしょう?」 ???「まーな。あと先輩、昨日迷ってる時に相談にのってもらってありがとな」 ???「いいってことですよ」 和「さて、京太郎くん。言わなくてもわかるとは思いますが」 京太郎「ああ大丈夫だ。元はといえば俺のせいだからな。けじめはつけるよ」 和「その前に、あの日言えなかった言葉を言わせてください。これを言わないと、私は踏み出せない気がするんです」 京太郎「……スー……ハァー……よしこい」 和「……私はあなたのことが、須賀京太郎くんのことが大好きです。結婚を前提にお付き合いしてください」 ~居酒屋~ 咲「ハァー全く失礼しちゃうよねー。京ちゃんったら。こーんな可愛い二人の告白をどっちも袖にしちゃうんだから」 優希「全くだじぇ。あの犬なんかに咲ちゃんはもったいないというのに!」 咲「しっかし、ビックリしちゃったよね!あのスタッフの対応の早さ」 優希「新郎身内がブーイングを出す前に犬にタキシードを着せて式をやり直そうとしてたからな」 咲「あの勢いに呑まれて終始ポカーンとしてたよね」 優希「あそこまでされたらさすがになんも言えなかったんだろうな」 咲「でも新郎さんがいい人で良かったね」 優希「『僕がなにをしても一度も見れなかった笑顔を和さんの方からださせるなんて芸当されたら、諦めざるを得ないじゃないですか』」 優希「とか言ってクールに去ってったからな」 咲「あ、今のちょっと似てた!」 優希「そうか?『諦めざるを得ないじゃないですか』」 咲「ちょ、笑っちゃうからやめて」 咲「あと意外だったのが!」 優希「そう!」 咲優希「「のど(か)ちゃんのお父さんの対応!」 咲「私結構怖そうなイメージ持ってたからビックリしちゃった」 優希「まさかあんな笑顔で協力してくれるとはな」 咲「最後のほうなんて泣いてたもんね」 優希「もう声をあげて泣いてたな」 咲「仕事仲間の人たちすごい表情してたよね」 咲「いやー、今日は面白いものをいっぱい見せてもらったよね」 優希「そうだな」 咲「このおかげでしばらくは笑いに困ることはなさそうだよ」 優希「咲ちゃん……」 咲「もうなにその顔?ほんとだよ?悔しくなんか…ない、し」 優希「咲ちゃん、私の前でくらい強がらなくていいんだじぇ?」 咲「ゆうきちゃあん。うえええええん。」 ~そして時は流れ~ 咲(あれからかなりの月日が流れました。私はプロ雀士の現役を退いて、専業主婦として生活してます) 咲(今でも麻雀教室なんかにおよばれして打つことはありますけどね) 咲(え?結婚したのかって?ええまあ。危うく独身アラフォーになるとこでしたけど) 咲(色々ありましたけどなんだかんだ幸せに暮らしてます。和ちゃんとも相変わらず仲良くさせてもらってます) 咲(あ、郵便着てる。あ、和ちゃんからだ。ね?) 咲(えーと、なになに) 和『お久しぶりです咲さん。この度はめでたく無事に第二子を出産できました』 和『今度は男の子ですよ。目があの人にそっくりなんですよ、ほら』 咲「あ、写真が入ってる」 咲「ふふ、確かにそっくりだね。これは将来女を泣かせる逸材になるのかな?」 カン! おまけifルート 咲「なんでのどかちゃんがいるのかな?」 京太郎「い、いやこれはだな」 咲「わたしはのどかちゃんにきいてるの。ねえ、なんで?」 咲「なんでのどかちゃんがわたしと京ちゃんのあいのすにもぐりこんで京ちゃんにだきついてるの?」 和「さ、咲さんこれは違うんです」 咲「なにがちがうのかな?のどかちゃんはどろぼうしようとしたんだよね?わたしから京ちゃんをうばおうとしたんだよね?」 咲「京ちゃんはなにもわるくないよ。ぜんぶそこのめすぶたのせいだよ」 咲「かわいそうな京ちゃん。めすぶたにたぶらかされてつみまでかぶらさせられて」 京太郎「おい、咲!話を聞けって!」 京太郎の必死の説得も虚しくついに咲は持っている巨大な凶器を振りかざし、 一歩ずつゆっくりと恐怖を与えるように和へと近づいていく。 和「ひっ」 生まれてこのかた味わったことのないほどの恐怖に和は全身の筋肉が麻痺し、逃げることもできずにいた。 咲「まっててね京ちゃん。いまたすけてあげるから」 また一歩また一歩と距離を詰める咲。 和「い、いやぁ」 恐怖のあまりに失禁までしてしまった和だが、咲は歩みを止めない。 咲「だらしないなあのどかちゃん。だれがそうじするとおもってるの?」 咲「わたしと京ちゃんのあいのすにへんなにおいつけないでよめすいぬさん」 ついに和の真ん前についた咲は張り付いた笑顔のまま鉈を振り下ろした 京太郎「あぶない!」 京太郎が急いで間に割ってはいる。 しかし一旦振り下ろした鉈の勢いが止まることはなく。 頭蓋骨が割れる音が部屋に鳴り響いた。 咲「ふふ、のどかちゃんも少しはいい顔になったね」 咲「差ろその顔じゃあ人の男をたぶらかすことなんてできないよね。そもそも普通の人には顔と認識できないだろうけど」 咲は眼前の原村和だったものに話かけたが応答はない。それも当然である。 目の前にあるのは人かどうかすらさだかでない肉片なのだから。 咲「でももうこれだけ汚れちゃったらここには住めないかな。引越ししないとだね。京ちゃん」 咲はそう言うと頭蓋骨が陥没したもののまだ人の形をなす想い人を持ち上げると部屋を後にした 咲「京ちゃんが浮気する心配もなくなったしこれはこれでいいかな」 も一個カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/61.html
45 ~京・咲・和・優希 46 ~おっぱい揉みたいシリーズ2 47 ~京・清澄メンバー 48 ~38の続き 49 ~京・清澄メンバー 50 ~京・和・咲 51 ~京・咲・照 52 ~京・池田 53 ~年賀状 54 ~新年ネタ 55 ~京・久 56 ~池田ネタ 57 ~ジャージ 58 ~京・久? 59 ~まこデレ 60 ~京・久 61 ~原村父 62 ~轟盲牌 63 ~京・和 64 ~下ネタ 65 ~優希・魔王→京→和 66 ~部活ネタ 67 ~宮永家他 68 ~京・優希 告白 69 ~京・優希 バレンタイン 70 ~ヤンデレ小ネタ 71 ~バレンタインネタ 72 ~新婚小ネタ 73 ~誕生日 74 ~プレバレンタインネタ 75 ~京・桃 76 ~京・優希 77 ~京・優希 78 ~空気いじめ 79 ~京・和 80 ~京太郎×妹尾 81 ~京・和 82 ~バレンタインネタ 83 ~バレンタインネタ 84 ~久ネタ 85 ~京・久 86 ~咲小ネタ 88 ~ツイノネスト 89 ~iPS細胞 90 ~京・マホ 91 ~京・マホ 92 ~エロネタ 93 ~寝言 94 ~京・久・咲 95 ~ワハハ 96 ~モモネタ 97 ~のどかなひみつ 98 ~笑ゥせぇるすまん 99 ~京・優希 100 ~ともきーvs咲 101 ~泣けるコピペ 102 ~京・久 セクハラ 103 ~菫ネタ 104 ~睦月ネタ 105 ~合同合宿の結末 106 ~モモ小ネタ 107 ~どうしてこうなった 108 ~小ネタ 109 ~咲さん 110 ~不機嫌なタコス 111 ~モモ小ネタ 112 ~風越 113 ~新部長 114 ~須賀京太郎強奪大食い戦 115 ~淡ネタ
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/709.html
照が長野から逃亡(3度目)した翌日・放課後 白糸台高校麻雀部部室前の廊下 淡「ふー!やっと授業終わったーっと。さて部活部活ー…って…あれ?どうしたんですか?皆さんお揃いで」 菫「ああ、淡か。いや何ちょっと…な」 淡「?」 尭深「…うん。ちょっと…」 誠子「ちょっと…ね…」 淡「変な先輩方…っていうか、もう早い人部活始めてる時間ですよね?どうしたんですか一体」 菫「今日は、レギュラー以外は皆休みだ」 淡「はあ?この時期に!?」 菫「…ちょっと、例のお姫様が変なんでな」 淡「…」ヒクッ 菫「…今部室の中に居る」 淡「ここから覗いてみても大丈夫ですか?気付かれたら襲いかかってきたりしませんか?あと、噛まれたりしません?」 菫「問題無い。何なら触っても大丈夫だと思うぞ」 淡「触ってもって…」 菫「見た感じの機嫌自体はな。すこぶる良いんだ。否。良すぎる。気持ち悪いくらいに」 淡「…え?」 尭深「あれはブチギレてる証拠。ただし、自分自身に」 誠子「1年は知らないかもだけど、試合で納得いかない麻雀をした日の翌日とかたま~になるんだよ。最近はそういうのもほとんど無かったんだけど…こりゃ過去最大級かもね」 菫「周りに自分の不機嫌を悟られまいと不自然に周囲に愛想を振りまく」 尭深「記者会見でも無いのに全方位営業モード」 淡「うわぉ…」 誠子「まったく…怪我を悟られないために自然に振る舞う野生動物みたいだ。他の部員も気味悪がってさ」 菫「だから私が皆を帰したんだ。…まあ、淡ならアイツの奇行には馴れてるし大丈夫だろう。ためしに話しかけてみればいいさ」 淡「はあ…」 菫「さあ、行け」クイッ 淡「…もしかして、皆さんで廊下に居たのって、私に先陣を切らせるためじゃ…」 菫「そうだ。行け」 尭深「がんば」 誠子「悪いね」 淡「せめて誤魔化すくらいはして欲しかった…」 淡「…わかりましたよ。じゃあ、骨は拾って下さいね。あと、皆さん今日は帰りに私に一個ずつお菓子を奢ること」 菫「善処する。どら焼きでいいか」 尭深「抹茶プリンあげる」 誠子「私はマックでなんかセットでも」 淡「…約束しましたからね」 淡「…はぁ」 淡「…」 淡「おっはよーございまーーーす!」ガチャッ 照「ん?ああ、淡!お疲れ様!」キラキラ 淡「ひっ!?」ゾワワワッ!! 照「もう、遅いじゃない。菫が今日は大会も近いから、レギュラーだけでミーティングだって言うからずっと待ってたのに…」 照「みんな、私がずっと待ってるのに来ないんだもん。不安になっちゃう!」プンプン 淡「す、すみません…じゅ、授業が長引いちゃいまして…」 照「そうだったの?なら仕方ないね。部活も大事だけど、あくまで私達学生の本分は勉強だもんね!」ニコッ 淡(だ、誰だこの人ーーーーーーーー!!?) 照「それにしても、来たのは淡だけ?菫達は知らない?」 淡「…」チラッ 菫「…」カキカキ 菫「」サッ メモ『近くに居るって言ったら殺す』 淡「…」 照「淡?」 淡「は、はい!…すみません、私も良くは知りませんので…おそらくみなさんもうすぐ来るとは思うんですが…」 照「もうっ!相手は全国で地区予選を勝ち抜いてきた手強い高校ばかりなんだよ?しっかりミーティングして、相手を研究しなきゃ、油断してたら足元すくわれちゃうんだから!」 淡(言ってることは正論なのになんでこんなに心に響かないんだろう…) 照「あ。そうだ淡。ところで、お腹すいてない?」 淡「は?」 照「大切なミーティングの前に、糖分補給。ちゃんと頭回らせておかないと、ミーティングの内容が頭に入らないぞっ☆」 淡(なんだろう。本人は大真面目なのかもしれないけど、凄く馬鹿にされている気がする…) 淡「は、はあ…まあ、甘いモノは大好きですが…」 照「そうでしょ?だと思って、淡にプレゼント!」 淡「…」 照「あとでみんなが集まってから出そうと思ってたんだけど、みんなが遅いんだししょうがないよね」ゴソゴソ 淡「…」 照「…はい!じゃ~~ん。東京ばな奈~!しかも4箱も!」 淡「…おうふ」 照「ね!ね!ね!私達でみんなが来るまでに1箱食べちゃわない?実は私これ大好物なんだー」 淡(やばい…意識が遠のいてきた…) 照「…淡?」 淡「あ、す、すみません…そうですね。食べましょう。いただきます。ありがとうございます…」 照「ふふ。淡は面白いな。はいどうぞ」スッ 淡「いただきます…」 照「…」 淡「はむはむ…うん。おいひい」モグモグ 淡(なんかアレであるけど…まあいいか。東京ばな奈自体は嫌いじゃない) 照「…」 淡(うーむ。この柔らかい食感と濃厚なクリーム。流石高いだけあって結構なお味…)ホワホワ 照「…」シュン 淡「?宮永先輩、どうかしました?」 照「あっ!ご、ごめんごめん!淡が美味しそうに食べてくれるものだから、ついつい見ちゃって…」 淡「はあ…」 照「本当に、ごめん…」 淡「…?」 照「ごめん…ごめん…気持ち悪いよね私…ごめん…」 淡(なんか一気にダウナー系!!?) 淡「い、いやいや!そんな事ないですって!ただ宮永先輩は食べないのかなーって思っただけなので!」 照「えっ!?あ、そ、そう!?いや、ごめんごめん。そうだったね。それじゃあ私もいただきますっ」 淡「」ホッ 照「はむっ!もぐもぐ…」 照「」ホワ~~ン 淡(おお。マジで美味しそうな顔。口元が緩んでる) 照「うん、美味しいね」 淡(ここは話に乗って、良い感じにご機嫌を取っておこう) 淡「そうですね、最高に美味しいです。私東京ばな奈大好き!」 照「ふふ。私もだ。東京ばな奈は、昔長野に居た頃から憧れのオヤツだったんだ」 淡(口調が戻ってきた!機嫌が治ってきた?よしこの調子で) 照「だから、こっちに来て早速、初めて買って食べて、予想通り…いや、それ以上に美味しくて嬉しくて…いつか、大好きな人とこの大好きなオヤツを一緒に食べるのが夢で…」 淡「…?」 淡(…あれ?) 照「先日、ついに居ても立ってもいられなくてその夢を叶えようと勇気を出して、その人に会いに行って…いつでもいっしょに食べるチャンスは一杯あって…」ジワッ 淡(ま、マズい。地雷を踏んだ?) 照「そうしたらあんな事があって、凄くびっくりしたけど、本当に嬉しくて、けど気が動転しちゃって、何をすれば良かったのかも私は訳がわからなくなってしまって…」ブツブツ 淡(うわああああ!これはヤバイ!本格的にヤバい!怖い!面倒くさい!なんとか話題を逸らさないと…) 照「本当に…痛感したよ。私は救いようのない馬鹿だ。…いっそ死んでしまいたい」 淡「な、何言ってるんですか!!!」 照「…淡?」 淡「み、宮永先輩は馬鹿なんかじゃないです!」 淡「そりゃたまには…て言うか、しばしば…結構…かなり…アレでソレな所もありますし、私には特に実害も結構な頻度で及んでて勘弁して欲しいなーこの人とか思うことも良く有りますけど!」 淡「この私に対する偉そうな態度がムカツクんでいつか麻雀で徹底的にボッコボコにして悔しがってるを写真に撮ってネットでばら撒いてやりたいとかも思ったりしますけど!」 淡「な、なんだかんだいいところは一杯有りますよ!宮永先輩は!ほら…その…角とか…」 照「淡…具体的に褒めたとこが角だけ…」 淡「と、兎に角!そんな欠点も含めて!麻雀の強さや人格も含めて!私は宮永先輩のことは、その…嫌いじゃない…んで…」 淡「し、死ぬとか…そういうのは…無しで…お願いしたいんですが…」 淡「…なんか悲しくなっちゃいます。私を悲しませないで下さい。先輩なんですから」 照「…ごめん」 淡「まったくです」 照「…」 照「…」 淡「…」 照「…」 淡「…」 淡(し、しまったーーーーー!何恥ずかしいこと言ってるんだ私!アホか!!しかも今の何にも考えずに口から出たって事は、本音か!!アホだ!!) 照「…」 淡「…」 照「…」 淡「…」 淡(しかも会話無くなったし!) 照「…」 淡「…」 照「…」 淡「…」 淡(ううううう…沈黙が重い…) 淡(な、なにか…話題…話題は……あっ!) 淡「あ、あれ?宮永先輩」 照「…何?」 淡「い、いえ。その…卓の上に置いてある携帯…」 照「ああ。それがどうした?」 淡(あ、口元が緩んだ。これはやっぱり、聞いて欲しいからわざわざこんなところに置いたんだろうな。と言う事は私のこれからする質問は間違ってない!) 淡「可愛いストラップが着いてますけど、こんなの持ってましたっけ?」 照「あ…ああ、それは…。ちょ、ちょっと入手までの経緯に複雑な事情があるんだけど…」 淡(おお、珍しい。はにかむような、困ったような、嬉しいような、悲しいような…こんな複雑な表情も出来たんだこの人) 淡「えー?なんですか?複雑な事情って。あ、もしかして好きな人にでも貰ったとか?」 照「な!!?お、おい淡。お前なんでそんな…いや、そういう訳では…えっと…その…」オロオロ 淡(おおおー!?なんだこの反応!乙女か!!まさか弘世先輩の言ってた、例の幼馴染君の話なのかーーーーー!?) 照「あ、あの…ね?淡。こ、こういう話はちょっと恥ずかしいから…特に菫にはナイショにしておいて欲しいんだけど…」 淡(はは。まさか酒に酔わされてすでに自白済だとは思うまい。同情しますよ。宮永先輩…) 淡「えー!聞きたい聞きたい!教えて下さいよ宮永先輩!この、ハート型のストラップを受け取った経緯!」スッ 照「…は?」 淡「へー。プニプニしてるんだ。面白いですねコレ」プニプニ 照「…」ビキッ 淡「それによく見たら顔が付いてる。あはは、ブサ可愛い感じで結構いいかもー…」プニプニ 照「…淡?」 淡「なんか、この安っぽい感じがいい味出してますねー。メイドイン・チャイナって感じで…」プニプ… 照「…おい、貴様何してる」ガシッ 淡「…へ?」プニッ? 照「誰が触って良いと言った」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 淡「…えーっと…」プニプニ… 照「」ガタッ 淡「…あ、あの…宮永先輩…?」 照「」ギュインギュインギュイン 淡「なんか、その…腕にサイクロン的な何かが集まってるような幻影が…」 照「死ね!」ブンッ 淡「おわあっ!?」サッ 照「避けた!?」 淡「な、何するんですか!いきなり殴りかかってくるなんて!」 照「五月蝿い!無断でそのストラップに触るな!それは私のものだ!」ブンッ 淡「ひょわぁ!?お、落ち着いて下さいよ!」サッ 照「くっ…ちょこまかと…!!」 淡(あわわ。宮永先輩が運動音痴だから助かってるけど、このまま避けてるだけじゃいずれ捕まる…) 照「逃がさない…」ジリジリ 淡「ぐううう…」 照「ふん!!」ブンッ 淡「わっ!」サッ 照「たあ!」ブンッ 淡「やば、避けれな…」 淡「きゃぁ!」サッ バキッ 照「痛っ…」 淡「~~~っ…」プルプル 淡「…」 淡「…はれ?」 照「いたたた…」 淡「あれ…殴られてない…?って…あ。無意識に先輩の携帯盾にしちゃったんだ…」 淡「…げ」 照「くっ!淡!お前、よくも私の携帯を…」 照「…」 淡「…まず」 照「あ…」 淡「えーっと…」 照「あああ…」 淡「その~…」 照「ああああああああああああああああああああああああ!!!」 淡「す、すみません…ストラップ…千切れちゃいました…ね…」 照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」 淡「うあー…」 照「わあああああああああああああああああああああん!!わあああああああああああああああああああん!!わああああああああああああああああああ!!!」 淡「…こ、これはどうしたものか…」 照「うええええええええええええええん!ええええええええええええええええええええええん!!えええええええええええええん!!!」 淡「こんな泣きまくってる宮永先輩初めて見た…ど、どうしよ…」 菫「まったく…何をやってるんだお前は」スタスタ 誠子「あーあ。可哀想に…」スタスタ 尭深「泣ーかした泣ーかした」テクテク 淡「せ、先輩方…」 菫「いじめっ子め」 淡「え…何ですかこの雰囲気。まるで私が悪いみたいな…」 照「ええええええええええええええええええええん!ええええええええええええええええん!!淡のばかあああああああああああああああああああ!!」 淡「私が悪いの!!?」 菫「ほら、照。落ち着け。大体、さっきから変だぞお前。何があったか一から話してみろ」ユサユサ 照「ヒッグ…ううえええ…す、すみれえぇええええええええ…うええええええ…」 誠子「よしよし、大丈夫ですよー。宮永せんぱーい。私達で良ければいつでも力になりますからー」 照「ええええええん。あ、ありっがとっ!せい゙ごぉおおおおおおおおおおお」 尭深「はい、冷たいお茶。落ち着いて…」 照「たかみ゙~~~~~~~~~~~!!」 尭深「ん」ナデナデ 淡「なんだこれ…」 菫「よしよし。落ち着いたら話聞いてやるから。な?ほら。特別にだっこしてやる」ギューッ 照「うん。うん。ありがと…うん。ごめんねすみれ…うん…」スンスン 菫「はいはい。そしたらちょっと休めお前」ナデナデ 照「すみれのおっぱいやわらかい…」ギューッ 菫「わかったわかった。お前は硬いな。はいはい」ナデナデ 照「…」ギューッ 菫「はぁ…」 淡「幼児退行してるし…」 照「…」ギュッ 照「…」 照「…」コックリコックリ 照「…」 照「すー…すー…」 淡「寝た」 菫「…ま、ざっとこんなものだ」 淡「…おみそれしました」 尭深「淡には、おっぱいが足りない…」 淡「ほっといて下さい!!」 誠子「まあ、なんにせよ話はこの人が起きてからだね」 淡「はあ…」 照「すやすや…」 10分後 菫「落ち着いた?」 照「…うん。すまない菫。尭深。誠子。ついでに淡」 淡「ついで…ぐぬぬぬ。まあ、私もすみませんでした。その…色々失礼なこと言ったりやったり」 照「いや。私の方こそすまない」 菫「よし、お互い謝罪は終わったな?それじゃあ、話してもらおうか。照、お前、日曜に…いや、ここ数日に何があった?」 照「…」 菫「話せ。お前、ここ数日の自分の奇行を誰にも疑問視されてないと思っていたのか?」 照「…」 菫「全国の近いこの時期にエースに身も心もあっちへフラフラこっちへフラフラされては私達も堪ったもので無いんだ。もういい加減話してくれてもいい時期だろう」 誠子「それに、私達だって、宮永先輩にはなんだかんだお世話になってきてますから。恩返し…じゃないですけど、力になれる所は、なりたいんですよ」 尭深「魚の干物のお礼もまだ。お返ししたい」 照「…」 淡「わ、私も…」 照「…淡?」 淡「私も…宮永先輩には、その…悲しい顔似合わないって言うか…その、そんな顔されてたら調子狂うって言うか…」 照「…」 淡「…その…げ、元気だして欲しいから…」 照「…」 照「…わかった」 淡「…」 照「…何があったか話す」 菫「…そうか。ありがとう」 照「けど、その前に」 菫「ん?」 照「尭深。お茶淹れてきて」 尭深「?…わかりました」 照「はい皆。東京ばな奈。みんなに均等に渡るように。あ、余った分は私のだからな。買ってきたのは私だし」 誠子「へ?」 淡「何やってるんです?」 菫「さあ」 尭深「淹れてきた」 淡「早っ!」 照「ありがとう。それじゃあみんな。聞いて欲しい。私の犯した馬鹿な間違いの話を」 菫「馬鹿な間違いねえ」 照「で、ついでに相談に乗って欲しい。これから私はどうすればいいか。何をすべきなのか」 誠子「何をって…まあ、出来る限りで」 照「でも、その前に、もう一個聞いて欲しい事がある」 尭深「もう一個?」 照「ああ。これは、最近の話じゃないんだけど…」 照「私の初恋の話」 淡「!!」 照「そして、私がこっちに来る前の、長野に居た頃の話」 照「私が、それまで一体どんな人間だったのか…」 照「それまでどんな人生を歩んできていたのか…」 照「どんな事を考えてきていたのか…」 照「物凄く恥ずかしい話なんだけど…」 照「もしかしたら、私の事を馬鹿にしたり軽蔑するようになるかもしれないけど…」 照「凄く凄く話すのが怖い話なのだけど…」 照「今まで、誰にも言えなかった話なんだけど…」 照「…でも、みんなには聞いて欲しい」 照「…お願いだから、聞いて欲しい」 淡「えっと…」 淡(なんかすっごく重そうな…だ、大丈夫なのかな私こんな話聞いちゃっても…) 誠子「おっ!もったいぶりますねー!」 尭深「なんだかワクワク。B級映画か糞アニメみたい」 淡「えっ。いや、お二方そんな軽い感じな…ってか、渋谷先輩今さらっと酷い事言いましたね」 菫「是非も無いさ。お前がそうやって大袈裟に言った相談事が私に本当に手に負えなかった事は無いんだ。今までもそうだったのなら、これからもそうだ」 淡「弘世先輩まで!?」 菫「話してみればいい。その口ぶりだと、どうやらその話は今までお前にとって随分と重荷だったらしいが…」 菫「お前のような麻雀以外ポンコツ女が一人でえっちらおっちら運んできた荷物など、我々5人で抱えればどれほどのものでも無くなるさ」 淡「…」 菫「それが仲間って奴だろう?まあ、柄じゃないがな」 淡「…」 淡「ま、私だって宮永先輩よりはしっかりものな自信ありますし。ちょっとくらいなら心の支えにはなれると思いますが」 照「…ありがとう。あと淡、あとで覚えてろ」 淡「…えへ」 照「…ふふ。それじゃあ長くなるから、お茶でも飲みながらゆっくりと話していこうか」 照「…」 照「…すーっ…」 照「…はーっ…」 照「…」 照「…あれは、私がまだ中学生だった頃の話だ…」 照「そう。たった数年前の話…」 淡(その日私が聞いた話は、まるで遠い世界の、知らない人の事のようでした) 淡(なぜなら、お話の中に出てくる宮永先輩は私の知ってる宮永先輩と全く違う人のようで…) 淡(途中で「年月はこうも人を変えるんですね」と素直に溢しちゃった私は、亦野先輩にゲンコツを食らったりもするんですが、まあそれは置いといて…) 淡(兎にも角にも、それはほんのちょっっぴりむかしのはなしです) 淡(牌に愛され、高校生史上最強のチャンプとまで言われ、まるで神に選ばれたかのような才能を誇る少女の、意外な昔話) 淡(妹想いで、優しくて、どん臭い、普通の女の子の話) 淡(それは宮永照が中学3年生の頃の話でした) 3年前・ある夏の日 宮永家リビング そこには、ソファに腰掛け、物憂げに本を読む宮永照の姿があった 照「…ふう」 照「…もう、5時か…」 照「…咲、遅いな」 一息ついて深呼吸。ふと気になって壁掛けの時計を見やると、呟く 普通の中学生1年生の女の子が帰って来る時間としては、それほど遅い時間では無い。部活をやっていたり、友人と遊んでいればこれくらいの時間に帰ってくるのは寧ろ早いくらいだ 照「…大丈夫かな」 …だが、照はソワソワと不安そうに窓から外を覗くばかりだ。妹の帰りを待つその姿はどう見ても普通の様子では無い。過保護も過ぎるように見受けられるが… 照「…あっ」 タッタッタッタ… 小走りに狭い歩幅の足音が聞こえ、安堵した声を漏らす照。雑誌をコーヒーテーブルに置き、立ち上がる。急いで玄関まで向かう 照「…」 ガチャッ 果たして玄関に辿り着くとほぼ同時、勢い良く宮永家のドアが開かれた 照「…おかえり、咲」 優しい笑顔でおかえりの挨拶を告げ、そっと腕を広げながら、靴も履かずに土間へ降りてゆく。膝を曲げ、目線を妹の高さに合わせる。足が汚れるが知ったことか。それよりも今は… 咲「…ヒッ…ヒック…ヒック…」 照「…また、いじめられたの?」 咲「…」コクン 照「そう。頑張ったね。もう大丈夫だよ」ギュッ 咲「うわああああああああああああああああああああああああん!!」 照「よしよし。もう大丈夫。もう大丈夫。もう怖くないから、大丈夫だよ」ナデナデ 咲「おねえちゃああああああああああああん!!!」 この大切な妹を、慰めてあげなくてはならない。この、最愛の、妹を 照「お姉ちゃんがついてるから。大丈夫だから。大丈夫。大丈夫だよ…」 咲「ええええええええええええええん!!えええええええええええええん!!!ええええええええええええええええええええええん!!!!」 照「…」ギュッ 妹は 咲は、いじめられっこ 臆病で 人見知りで どん臭くて いじめられて当然の…いじめられっこ いじめられ、泣いて帰ってくる咲を慰めるのが、この頃の照の日常 泣き続ける妹を抱き締めながら、いつからこんな事になったんだろう、と考える 深く思い返すまでも無い。そう、あれは咲が中学生になって間もない頃の事だ 4月のある日、照が学校から家に帰ってくると玄関に咲の靴が置いてあったので、先に帰ってきていた妹とおしゃべりをしようと、部屋を訪ねることにした (中学生にあがって一人部屋を貰って、咲は大喜びしていた) ノックしてドアを開けて貰おうと手を差し伸ばした瞬間…部屋からすすり泣く妹の声が聞こえたのだ その瞬間、気付けば部屋に飛び込んでいた。いつドアを開けたのかすら記憶にないくらいだった。今でもはっきりと覚えているのは、部屋の隅で小さくなって泣いている妹の姿 思わず激しい剣幕で何があったのかを問い正し、咲がいじめにあったのを知ったのは、それからすぐの事だった 大した理由など無い。強いて言うなら、ただ弱そうな獲物が目に入ったからいじめる事にしたのだろう。子供のいじめなどそんな程度のものだ 泣きじゃくる妹の前で、ただ呆然と立ち尽くすしか出来なかったその日から、咲と照にとってひたすらに辛い日々が始まった しばらくして咲が泣き止んだのを見計らい、極力優しい様に声をかける 照「…もう、大丈夫?」 咲「…うん。ありがとうお姉ちゃん」 気丈に答える咲。目は真っ赤で、頬はクシャクシャだ。無理をしてるのがはっきり分かる。照の胸にまたチクリと鋭い痛みが走る 照「…そう」 自分の無力さに目眩を覚える 咲「お姉ちゃんが、慰めてくれたから…」 照「…」 咲「大丈夫…ありがとう、お姉ちゃん…」 照「…」 そういって笑う咲の笑顔が、悲しい 照「…ごめんね、咲」 咲「ふぇ?」 照「私がなんとかしてあげられればいいんだけど…」 咲「…」 無力感に打ちひしがられながら、思わず呟く。一度咲の担任に掛け合った事もあるが、巧妙に行われるいじめを暴く事は、照には出来なかった 照自身がいじめっ子に話を着けることも事も考えたが、逆に照が居ない時にいじめが激化する可能性を考え、それも出来なかった 親に相談するのは、二人とも考えもしなかった。最近両親の仲がギクシャクしているのには気付いている。今余計な問題を抱えさせて、これ以上二人の仲が悪くなるのだけは避けたい 照「ごめんね…ごめん…ごめん…」 だから、強く強く…ギュッと咲を抱き締める。せめて、この子の心の痛みを少しでも和らげられるように 咲「あはは…いたた…痛いよ、お姉ちゃん…」 照「ごめん…ごめん…ごめん…ごめんね、咲…」 咲「お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃん…うええええ…」 照「咲…咲…咲…」 そんな地獄のような日々を送っていた二人に、思わぬ救いの手が現れたのは、それから少し経ってからだった 照「…遅くなっちゃった。咲は、もう帰ってきてるかな」 早足で帰路に就きながら、そんな事を呟く照 友人から遊びに誘われ、断っている内に結構な時間が過ぎていたのだ 最近は咲の為にとなるべく早く帰宅しようとしているので、友達と遊ぶ事も少なくなった さっきはそれで最近付き合いが悪いと非難を浴びていたところだ 理由を尋ねられても、妹がいじめられているからなど、友人に話せるような内容ではないので、はぐらかして謝るしか無い ここで適当な嘘を付けないのは照の美徳でも有り、欠点でもあった 照「早く咲を慰めてあげないと…」 ようやく家の前まで辿り着いた。逸る気持ちを抑え、呼吸を整える。殊更ゆっくりと玄関を開け、靴を確認すると、咲の靴が有る。帰ってきてる 照「…すぅー…はぁー…よし」 咲の前では余裕を持って接しよう。ここで自分まで余裕を失っては、咲の心の拠り所が無くなってしまう。そうだ、今、咲には私しかいないのだから… リビングに咲の姿を確認し、優しく、元気に挨拶の声をかける 照「た、ただいま!咲…」 咲「あ、お姉ちゃん!おかえりっ!」 照「…え?」 咲「えへへ。今日は遅かったね。久しぶりに私の方が早く帰ってきたもんね」 照「あ、そ、そうだね…」 咲「今日も暑かったね。汗かいてない?冷凍庫にアイスが有ったから、持ってこようか?」 照「えっと…」 咲「あ、でもお姉ちゃん、ちゃんと手洗ってうがいした?アイスはその後だからね!」 照「うん…」 咲「うんっ!じゃあ私、お姉ちゃんが洗面所から戻ってくる前にアイス用意しておくから、早く戻ってきてね!」 照「さ、咲…?」 咲「ん?どうしたの?お姉ちゃん」 照「ど、どうしたの…?その…」 咲「うん」 照「なんだか今日は…その…凄く嬉しそう…だけど…」 いつも苛められて帰ってきていた貴女が、今日に限ってなんでこんなに嬉しそうなの? そんな想いを、どうやって伝えようか迷っていると、咲が察して、いや、実は言いたくて言いたくて堪らなかったのだろう。自分から話してくれた 咲「えへへ。聞いて聞いて、お姉ちゃん!実は今日ね…!」 咲の話は、興奮していた為か、ややまとまりに欠けるものだった いつものようにいじめっ子にちょっかいを出されて泣いていたら、一人の男の子に助けられた 割りと背も高めのその子は一度も話した事の無かったクラスメートで、放課後に咲がいじめられていた現場に、偶々立ち寄ったらしい その子は同学年の女子とはいえ複数の悪そうな子達相手でちょっと怖気づいていた様で、「いじめ、カッコ悪い。by前園」と結構ふざけた感じで注意してくれた いじめっ子達もその間抜けな注意に毒気を抜かれたのか、それとも男子相手では分が悪いと思ったのか、引っ張っていた咲の髪を離してスゴスゴと退散していった 余りにもあっさりとしたその撤退に、咲自身も拍子抜けしてしまったくらいだ それよりも、いじめっ子達が完全に立ち去ってから小さな声で「やーいやーい!弱い者いじめしてるんじゃねーよ、この臆病者どもー!」と急に強気?な態度で悪口を言い始めた男の子の姿が余りに滑稽で 咲は、泣きながら大笑いしてしまったという 京太郎「ああー!何笑ってんだよ、人が折角いじめっ子ども追い払ってやったのに!」 咲「あはははは!グスッ。ご、ごめんなさい!け、けど、だって、みんな居なくなってからそれって…あははは…!グスッ…ヒック」 京太郎「せめて泣くのか笑うのか、はっきりしてっ!」 咲「…ヒック…ヒック…ご、ごめんなさ…ヒック」 京太郎「…訂正。やっぱ笑ってもいいです」 咲「うぇ…ご、ごめん…なさ…ヒック…ヒック…うええええ…」 京太郎「おいおいおい。なんか、俺が泣かしたみたいになってるし…勘弁してくれよ。ダチに見つかったら俺が殺されちまう…」 咲「ううん。ごめんね。須賀君は悪くない…ありがとうね…ありがとう…ありがとう…」 京太郎「…」 咲「ありがとう…ありがとう…ありがとう…ありがとう…」 京太郎「…いじめられてたのか」 咲「…」 京太郎「そっか…」 咲「…」 京太郎「…あー…」 咲「…」 京太郎「…その、なんだろ」 京太郎「…あ、そうだ。あいつらって、クラスの連中だよな」 咲「…うん」 京太郎「…だよな」 咲「…うん。あと、隣のクラスの子も何人か。中学の時一緒だったんだって」 京太郎「はぁ。参ったなぁ。まさか自分のクラスでいじめが有ったとは。こえーなー」 咲「…」 京太郎「あ、悪い。えっと、別にお前が悪いって言ってるんじゃ無いぞ?」 咲「うん…」 京太郎「えっと…宮永だっけ」 咲「…うん」 京太郎「…ま、元気だせ」 咲「…」 京太郎「…」 京太郎「しょ、小学校の頃とか、こんなの無かったんだけどなー…」 咲「そうなの?私の学校は小学校でも有った」 京太郎「…お前もいじめられてた?」 咲「ううん。…私は、怖くて見てるだけしか出来なかった。…下手に手を出したら、私もいじめられるんじゃないかって…」 京太郎「そ、そうなのか」 咲「うん。…誰も助けてあげれなくて…遂にその子、転校しちゃった」 京太郎「おお、ヘヴィ…」 咲「…罰が当ったのかな。私があの時、あの子を助けてあげなかったから、私もいじめられるようになったのかな」 京太郎「…」 咲「…だからみんな、私の事助けてくれなかったのかな」 京太郎「あー…」 京太郎「いや、ただ単に知らなかっただけじゃね?」 咲「…え?」 京太郎「いや、だって。現に俺、今助けたじゃん」 咲「…須賀君みたいな人、中々居ないよ。私も須賀君みたいに勇気が有ったら…」 京太郎「有っても、宮永じゃどうにもならねーだろ」 咲「…だよね」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「えっと…ま、まあ、今回は女子相手だったし…俺でもどうにかなりそうかなって思っただけだし」 咲「…」 京太郎「う、運が良かったんだよ。もしあれが番長グループみたいのだったら、俺だってどうしてたかわかんないし…」 咲「…番長グループなんて有るの?この学校」 京太郎「…いや、流石に無いでしょ」 咲「だよね」 京太郎「…お前、結構ツッコミ上手いな」 咲「ごめん」 京太郎「…と、とにかく!怖いものは怖いんだ。そうやって、いじめられてた子を気にしてやれるだけ、お前は優しくていい奴なんだろ」 咲「けど…結局その子は…」 京太郎「その子を救うためにやりようとかは有ったのかもだだけどさ。だからって、宮永みたいな子にそんな、他人のために全てをかけていじめっ子と戦えなんて、言えないだろうし…」 京太郎「大体、その子だって転校して転校生デビューしてるかもだろ!」 咲「だったらいいけど…」 京太郎「だったら、その先はその子次第だ!あー!もうこの話やめやめ!暗い話しても良い事無いって!明るい話しようぜ!」 咲「明るい話って…」 京太郎「例えば、最近したおもしろい遊びとか!」 咲「最近…いじめられるから、なるべく早く帰るようにしてた。お昼休みとかは、教室で寝たふりして…」 京太郎「ですよねー!俺が悪かったですすみません!!」 咲「…」 京太郎「あう…」 咲「…えっと…」 京太郎「…うん」 咲「す、須賀君は…どんな遊び…とか?」 京太郎「…あー…そうだなー…」 咲「…」 京太郎「…例えば、この間の金曜に生物の授業で、先生が川の生き物の話してたろ。ほら、トビケラの幼虫がどうのって」 咲「うん。ザザムシの事だね。長野くらいなんだよね、あれ食べるの。たまにスーパーに置いてるけど、気持ち悪い…」 京太郎「…次の日にダチと川に行って釣りしてたんだ。そこでなんとなく石ひっくり返したらザザムシが居て…」 咲「…まさか、食べた?」 京太郎「じゃんけんして負けたほうが食べるって話になったんだけど、食べ方が分からなくて…取り敢えず揚げれば食えるだろうって焚き火起こして素揚げしてみたら、爆発した」 咲「なにそれ怖い」 京太郎「いや、マジで大惨事だったぜ。飛び散ったなんかの汁と油が驟雨の如く降り注ぎ横殴りに俺ら…ああ、全部で4人いたんだけど…を襲ったから」 咲「いきなり難しい言葉使い出した」 京太郎「そんで慌てて一旦避難しようとしたら、ダチが袖に油入れた小鍋引っ掛けて」 咲「大事件じゃん」 京太郎「それをかわそうとしたら俺、ジャケットに火が燃え移る」 咲「うわ」 京太郎「ダチ爆笑」 咲「爆笑なんだ」 京太郎「慌てふためく俺に、ダチが叫ぶんだ。川に飛び込め!!」 咲「脱ぐって選択肢は無かったの?」 京太郎「もう必死で」 咲「なるほど」 京太郎「で、飛び込んだはいいんだけど、水深がメチャクチャ浅くて、膝までしか濡れなくて」 咲「駄目じゃん」 京太郎「また友人爆笑」 咲「愛されてるね」 京太郎「どうすんだよこれ!!って半切れで叫んだら、全員でバケツに入った水ぶっかけて来やがってさ」 咲「最初からそれで良かったよね」 京太郎「そのあとでみんなして俺を抱えて一番水深深くて急流なとこに投げ込みやがった」 咲「男の子って凄い」 京太郎「為す術もなく流される俺」 咲「自然の脅威だね」 京太郎「10mもせずに岩に引っかかる俺」 咲「自然の優しさだね」 京太郎「必死こいて岩に手を着いて、ビショビショの服でみんなのとこに戻ってさ」 咲「よく風邪ひかなかったね」 京太郎「その後はもう乱闘よ。全員川に流してやったぜ。俺も流されたけど」 咲「私のいじめって、なんだか大したこと無かった気がしてきた」 京太郎「ちょっとは気が楽になったか?」 咲「え…もしかして、そのために…」ドキッ 京太郎「いや、ちょっとこの間の武勇伝を話したかっただけ」 咲「ぷっ…」 京太郎「…ま、ちょっとでも喜んでくれたんなら…」 咲「あはははははははははは!!」 京太郎「…」 咲「あははははははっはははははははははははははは!!けほっ!!ふはっ!げほげほ…っあはははははははははは!!」 京太郎「…」 咲「あははははははは!!須賀君っておもしろっ!!あはは!!あはははははははは!!」 京太郎「お、おう…」 咲「くふっ…あはは!あはははははははは!!ご、ごめ…ツボに入った…あははははは!!」 咲「はぁはぁ…」 京太郎「落ち着いた?」 咲「うん」 京太郎「そっか」 咲「うん……………………きゅふふふふ…」 京太郎「変な忍び笑いしやがって…ま、いいや。宮永って、結構明るい奴だったんだな」 咲「え?」 京太郎「お前がこんなにコロコロ表情変えてるの、初めて見た」 咲「そう…かな?」 京太郎「ああ。今のお前くらいアグレッシブな奴相手なら、誰もいじめには来ないだろ。普段人と話す時もそれくらい明るいキャラでいけよ」 咲「…けど、友達居ないし…誰とでも仲良く話せる訳じゃ…」 京太郎「…もしかして、宮永って人見知り?」 咲「…」 京太郎「…っぽいな」 咲「…うう。他人とお話する時は、どうしても気構えしちゃて…」 京太郎「…の割に、なんかお前俺相手には結構息合うよな。きもーち毒舌だし」 咲「だ、だって…なんか、その…」 京太郎「?」 咲「なんか、須賀君って、その、話やすいし…」 京太郎「初めて言われた」 咲「そう…?」 京太郎「…うーん。でも、確かにな。俺も宮永とは話ししやすいって言うか…テンポが合うんだよな」 咲「…」 京太郎「とても初めて会話したとは思えない、むしろ長年の知り合いのような…」 咲「…」 京太郎「…ああ、良い事考えた」 咲「え?」 京太郎「幼馴染」ビシッ 咲「は?」 京太郎「宮永、今から俺の幼馴染設定な」 咲「はい!?」 京太郎「実は、小さい頃から面識が有ったのです」 咲「須賀君、頭大丈夫…?」 京太郎「殴るぞ」 咲「ごめん」 京太郎「だから、俺の知り合いはお前には初めて会った人間でも、ただの他人じゃ無い」 京太郎「逆に、俺の知り合いから見ても、へー幼馴染居たんだー。じゃあこれから仲良くしてねー的な?」 咲「そう上手く行くかな…」 京太郎「大丈夫だって。俺の知り合い馬鹿ばっかだし。…それに、女の子の幼馴染って欲しかったし」 咲「それが本音!?」 京太郎「やべっ!!」 咲「…」ジーッ 京太郎「い、いやいや!そ、そそそそそんな事有りませんぞ!?」 咲「…ふふっ」 京太郎「…宮永?」 咲「…幼馴染だったら、いじめっ子から守ってくれる?」 京太郎「…」 咲「幼馴染だったら…私が泣いてる時、助けに来てくれる?」 京太郎「…」 咲「幼馴染だったら、私が困ってる時…ピンチの時…駆けつけてくれる?」 京太郎「…それって、幼馴染ってより、ゲームのお姫様と騎士の関係じゃ…」 咲「…あれ?そうかな…」 京太郎「…ま、いいけどさ」 咲「…」 京太郎「幼馴染だからな。守ってやるよ」 咲「…じゃあ、私達、今日から幼馴染だ」 京太郎「…なーんか、力関係が理不尽なことになってる気がするんですけど…」 咲「…ふふっ♪」 京太郎「…ま、いっか。それじゃあ、これからよろしくな。『咲』」 咲「!!」 京太郎「…ん?」 咲「ううん!よろしく!『京ちゃん』!!」 京太郎「うげ、京ちゃん?なんだその間抜けっぽいあだ名。初めて言われたぜ」 咲「えー。いいじゃん。可愛いあだ名だよ!」 京太郎「だって、なんだか恥ずかしい…」 咲「いいじゃんいいじゃん。京ちゃん京ちゃん京ちゃ~ん♪」 京太郎「うおーっ!なんかむず痒い!」 咲「へっへっへ~」 京太郎「覚えてろ、こうなったらこっちにだって考えがある」 咲「な~に?どうしたの、京ちゃん」ニヤニヤ 京太郎「ん。なんでもねーよ。それより、もう下校時間だ。帰らねーの? 咲「あ、そっか。そうだね。それじゃあ私はそろそろ…」 京太郎「」ニヤリ 京太郎「姫、家までお送りいたしましょうか?」 咲「」ピシッ 京太郎「」ニヤニヤ 咲「…はい?」 京太郎「姫」 咲「…ひ…め…?」 京太郎「はい。お姫様」 咲「あ、あううううう…」カアアアアア 京太郎「ぷぷっ」 咲「な、ななななななあ…」 京太郎「あははははは!なーにそんな顔真っ赤にしてんだよ!」 咲「なっ!なに言ってるのー!」 京太郎「あはははは!照れてら。可愛いぞー、ひめー」 咲「~~~~~っ!!」プルプル 京太郎「お?どうした?ひーめ!ひーめっ!宮永姫!」 咲「うわあああああん!もうっ!もうっ!もうっ!もうっ!」バシッバシッバシッ 京太郎「あはははは!いてっ!いてててて!こらやめろ姫!」 咲「う~~~~っ…」 京太郎「ん?どした?ひ…」 咲「うわああああああああああああああああん!京ちゃんのばかあああああああああああああああああああ!!」ダッ 京太郎「あー…やりすぎたか」 咲「いじわるーーーーーーーーーーーーーーーー!!」タッタッタッタ… 京太郎「咲ーーーーーー!気を付けて帰れよーーーーー!!また明日なーーーーーーーーー!!」 咲「…と、こんな感じ」 照「そっか。良かったね、咲…」 咲「うん!」 照(良かった…うん。本当に良かった…咲に、味方が…) 咲「えへへへ。ちょっとおっちょこちょいでイジワルだけど、本当格好良かったんだよ」 照「そう…良かったね…良かった…良かった…」 咲「お姉ちゃん…?」 照「うっ…うっ…うっ…」ポタ…ポタ… 咲「お姉ちゃん?なんで泣いてるの…?」 照「良かったよぉ…本当に良かったよぉ…嬉しい…こんなに嬉しいのは生まれて初めてだよぉ…本当に…良かった…」 咲「お姉ちゃん…」ギュッ 照「うええええええええええええええええええええええん!!」 咲「…ありがとう、お姉ちゃん。…私のために泣いてくれて」 照「えええええええええええええええん!!えええええええええええん!!!ええええええええええええええええええええええええええええええん!!」 その後、イジメはぱったりと止んだ。例え傍に京太郎が居なくてもだ。要は切掛だったのだ いじめっ子に怯えずに立ち向かう意志さえ見せれば、たった一握りの勇気さえ示せば、それだけで打ち勝てたのだ その日から咲は少しづつ変わってゆく 京太郎を通じ、いつしか友人が出来た その友人から紹介され、更に友人が出来た そして遂には、咲は自分から友人を作ることにさえ、成功したのだ 泣いてばかりいた弱虫は、いつしかその名の通り、花の咲くような満面の笑顔を浮かべるようになっていた まるで今までの分を取り戻すように、今、彼女の前には沢山の「楽しい事」ばかりが広がっている そして だから だから 咲は、気付かない 気付かなかったのも、仕方ない 仕方ない 仕方ない 咲は、悪くない 悪く、ないんだ… 数ヶ月後、咲はすっかりクラスに馴染み、家でも照に嬉しそうに友人の話をするのが日課になっていた 国語の点数で良い点を取った事、次から体育の授業がマラソンなので嫌な事、クラスで図書委員に立候補した所、満場一致で当選できた事、休み時間に友達としたおしゃべりの事… 嬉しかったことも、楽しかった事も、嫌な事でさえも、目をキラキラと輝かせながら、大好きな姉に語る咲 特に、『京ちゃん』の話題では、その目の輝きが一層増し、照には眩しいくらいだった 穏やかな気持で咲の話を聞き、相槌を打つ照 咲「それでね!それでねっ!京ちゃんったら…」 咲「その時、京ちゃんってば…」 咲「そうしたら京ちゃんが…」 咲「京ちゃんのお陰で…」 照「ふふ。咲は、本当に京ちゃんの事が大好きだね」 咲「んなっ!」ビクッ 照「ははは」 たまにからかってやると、ゆでダコのように顔を真っ赤に染める妹が愛しい 咲「…」 照「咲?」 咲「…私、将来は京ちゃんのお嫁さんに…」 照「そ、そう…か。あはは」 ガチ過ぎた 咲「そ、その…お姉ちゃん?あの、やっぱ、付き合う時って、やっぱり、その、わ、私から告白した方がいいのかな…」 照「…ねえ、咲」 咲「うん?」 『京ちゃん』 咲にとってのヒーロー 照「…須賀君の事、ちゃんと捕まえておかないと駄目だぞ」 咲「うん!!」 ならば、当然照にとってだって、ヒーローだ 照「そうだ。今度家に呼んだら良いよ。お姉ちゃんにも、須賀くんを紹介して欲しいな」 咲「もちろんだよ!!」 …最愛の妹を救ってくれたのだから 照「じゃあ、明日学校が終わったら連れておいで」 咲「えー!そ、そんなに急に!?こ、心の準備が…」 照「ふふ。そんなこと言ってていいの?」 咲「?」 照「なるべく早く彼氏にしちゃわないと、誰かに取られちゃうかも」 咲「っ!それは嫌!!」 照「でしょ?だったら、少しでも早く、沢山、仲良くならないと。…ね?」 咲「うん…」 照「大丈夫。咲は可愛いよ」 咲「…」 照「私が保証する。がんば」 咲「お姉ちゃん…」 照「…ね?」 咲「…ん。じゃあ、明日京ちゃんを連れてくる」 照「うん」 咲「けど、お願いがあるの、お姉ちゃん」 照「何?お姉ちゃんに出来る事なら、なんでも聞いてあげる」 咲「京ちゃんにお姉ちゃんを紹介したいから…明日は、早く帰ってきて」 照「…」 咲「最近、お姉ちゃんたまに遅いから…一応、お願い」 照「…」 咲「…大好きな人を、大好きなお姉ちゃんに紹介したいから。大好きなお姉ちゃんを、大好きな人に紹介したいから…だから、明日は早く帰ってきて欲しいの」 照「…」 咲「…駄目?」 照「…うん。わかった。なら、明日は急いで家に帰るよ」 咲「本当!?」 照「うん。…ふふ。大好きな妹の、大好きな人だもん。紹介してくれるのを楽しみにしてるよ」 咲「やったあ!ありがとう、お姉ちゃん。…私、頑張るね!」 照「うん。頑張れ、咲」 咲「…うう。けどなんか緊張してきた」 照「はは。大袈裟だよ」 咲「むうー!だってだって!」 照「咲」 咲「…どうしたの?お姉ちゃん」 照「…」 咲「?」 照「お姉ちゃんは、いつだって咲の味方だから」 咲「…ありがとう。けど、お姉ちゃん。私だって、いつだってお姉ちゃんの味方!」 照「…そう。ありがとう、咲」 咲「えへへ。あ、そうだ。あとね、お姉ちゃん。もう一個お願い」 照「ん?」 咲「今日、お姉ちゃんと一緒の布団で寝てもいい?」 照「…またか。中学生にもなって咲は甘えん坊だな」 咲「えへへ。だって、お姉ちゃんあったかいんだもん」 照「ふふ、仕方ないな。それじゃあ、一緒に寝ようか。お風呂に入って着替えておいで。私はその間に宿題を終わらせるから」 咲「うん!じゃあ、お風呂入ってくる!」 照「ああ、行ってらっしゃい」 照「…」 翌日、咲は約束通り京太郎を家に連れて来た 自慢の姉を紹介する、と言って だがしかし、その日、午後6時に京太郎が家を出るまでに照が帰ってくる事は無かった 咲が京太郎を家に誘っているのと同時刻 照(授業、終わった…!!) 帰りの挨拶と共に、弾かれたように椅子から立ち上げる照 照(早く、帰らなきゃ。今日は咲が『京ちゃん』を連れて来るんだ!早く…!早く帰らなきゃ!!) 授業道具はホームルーム中にこっそりと鞄に詰め終わっていた。そそくさと教室の後ろ側のドアへと向かう 照(急げ…急げ…急げ…急げ!!)ガラッ 教室のドアを開ける。さあ、あとは廊下を一目散に駆けるだけ… 「はーいちょっと待った、宮永さん」 …肩を強く掴まれた 照「痛…」 「あ、ごめんごめーんねー。けど、そんなに急いで帰ることないじゃんさー」 「そうそう。私らとー遊んでこうよー」 「あんたの付き合いが悪いから、こうしてわざわざ無理矢理にでも遊びに誘ってやってるんだよ。喜べよ」 「いつもの遊び場に行こうか。屋上ね」 照「…離して」 「あ?」 照「…お願い。今日はどうしても大切な用事があるの。明日だったら付き合うから…お願いだから、今日は許して」 「ざけんなっつーの。アンタの都合なんて知ったこっちゃねーんだよ」 「今日は私らの機嫌が悪いの。そんだけだから」 「遊び道具が生意気な口聞いてんじゃねーぞ」 照「…」 「なに?その目」 「調子にのってるんじゃ…」 照「っ!!」バシッ 「うわっ?」 照「…!!」ダッ 「逃げた!!」 「このガキ…!捕まえろ!」 「こいつ!」ガシッ 照「きゃっ!離して!お願い!お願いだから!!」 「うっせー!おい!早く連れてくよ!」 照(なんで…) 「なんだよお前ら!こっち見んな!」 照(なんで、いつも誰も助けてくれないの…?) 照「いやっ!」 「うぜえ!」パンッ 照「…っ!」 「黙った?よーし、それじゃあ行っくよー」 「ったく。普段抵抗なんてしない癖に…おもちゃの分際で…」ブツブツ そう 少し前から、照はいじめられていた 運動は出来ないが、頭が良く、器量も優れ、人格者 そんな照が、友人達から距離を置き(実際には当時いじめられていた咲のために家に早く帰るようになっただけだが)、孤立した あんなにムカツク女が一人ぼっちだ なら、今の内にいじめてしまえ そうして少しずつクラスの不良達にいじめられ始めた照は、徐々に友人達から本当に距離を取られ始め 今では、完全無欠のいじめられっ子 そして、いつしかその不良達の彼氏がカラーギャングだと言う噂が流れ始めた頃 照の味方は誰も居なくなっていた まるで、いつかの妹のように 不良達にサンドバックにされながら、照は考える 照(ごめん、咲。お姉ちゃん、今日、間に合いそうにない…かも…) 髪を掴まれながら、考える 照(ごめんね。ごめんね。咲。お姉ちゃん、馬鹿だよね…昨日あんな事言っておいて…ごめんね…) 腹を殴られながら、考える 照(折角咲が勇気出してくれたのに、ごめんね。『京ちゃん』と、仲良く遊んでてね。お姉ちゃんのせいで気まずくなったり、しないでね…) 倒れ伏し蹲りながら、考える 照(…はは。ごめん…ごめんね。ごめんね。咲…お姉ちゃん、最悪だ) 背中を蹴られながら、考える 照(…お姉ちゃん、咲が…ちょっと、羨ましいって思っちゃった…) 考えるのは、絶望に潰れそうな自分を支える唯一の希望 大切な妹がくれた、不確かな希望 『いつか、誰かが私を助けてくれないかな』 『いじめっ子を追い払って、私をここから助けだしてくれる人が』 『泣いてる時に助けに来てくれて、困ってる時、ピンチの時に駆けつけてくれるゲームに出てくる騎士みたいな人』 『友達を作ってくれて、笑わせてくれて、勇気をくれる人が…」 『いつか、私にも『京ちゃん』が現れてくれないかな…』 その日、照が家に帰り着いたのは、夜の8時を過ぎてからの事だった 結局、不良達が照への暴力に飽きて彼女を開放したのは、午後6時半を過ぎた後 不良達も心得たもので、面倒を避ける為に顔などの傍目に見える部分に痣を付けることはしないでくれていたが 鍛えていない照の身では、殴られたダメージが抜けて歩けるようになるまで、そしてその足で家まで帰り着くまでには、1時間強の時間を有したのだ 照「咲…咲…」 未だ痛みの引かない身体を引きずって、うわ言のように妹の名を呼び、帰宅する照 どういう訳か、日の落ちたこの時間にも関わらず、家の中は暗く、光が漏れてこない 照「二人とも、まだ帰って来てないのかな…」 最近帰りの遅い両親が、今日もまだ帰宅していないのだろうかと考える 照「…けど、咲は今日、『京ちゃん』を家に連れて来てるから家に居るはずだし…」 ズキン。頭に鈍い痛みが走る。思考が上手く回らない。まあいいや。早く家に帰って、ゆっくり休もう。ズキン。ああ、お腹も痛い。思いっきりパンチされたし… 照「…畜生、あいつらめ…」 不良達のニヤニヤとした厭らしい笑いが頭から離れない。ズキン。鈍い痛みが増してきてイライラする ああ、なんてどうしようもない奴なんだ私は。咲との約束を破っておいて、こんな怖い顔をして家に帰るつもりか こんな、こんな…ああ、マズい。駄目だ。お腹が痛い。頭が回らない。イライラする。ズキン。痛い。腹が立つ。痛い。痛い。痛い。ズキン… ガチャッ 扉が開く。痛い。マズい。咲だ。急げ。平気な顔を作れ。ズキン。ああ痛い…痛い…疲れた…痛い… 照「…」 咲「あ、お姉ちゃん…」 照「…咲」 咲「…おかえり」 照「…ごめんね。遅刻しちゃった」 咲「…」 照「きょ、『京ちゃん』は、連れて来れた…の?」 咲「…うん。もう帰ったけど」 照「そっか…」 咲「…うん」 照「そっか…うん。そっか……」 咲「…ねえ、お姉ちゃん」 照「うん?」 咲「…どうして遅れたの?」 ズキン @ 照「…」 咲「…」 照「…」 咲「…」 沈黙が痛い。重い。息苦しい。この沈黙は、咲が怒っている証だ。こうなった咲はしつこい。なんとか誤魔化さなきゃ。それに、今日の結果も知りたいし 照「それは…」 咲「それは?」 照「…」 咲「なんでそこで黙るの?」 照「えっと…」 ああ、けどマズいなこれは。頭とお腹が痛くて、思考が全然まとまらない。咲に真実を知られるのだけは避けたいし… 照「その…」 咲「なにさ」 けど、どうやって言い訳しよう。咲は人の気持ちには鋭い子だ。下手なこと言ったらすぐに感づかれちゃうよ。こんな事なら帰る前に言い訳を用意しておくんだった 照「あの…」 咲「言えないような事なの?」 照「いや、そういう訳じゃないんだけど…」 咲「なら早く教えてよ…!!」 ああ、マズい。マズい。咲が苛ついてるよ。ごめんね咲。だけどお姉ちゃんも今結構いっぱいいっぱいなの。早く横になって痛いのを回復させなきゃ… 咲「なんで黙ってるの!!」 ああ、咲がなにか言ってるよ。怒ってる。当然だよ、私が悪いんだから。ごめん咲。ごめんね、咲。駄目なお姉ちゃんでごめんね。本当にごめんね 咲「お姉ちゃん!!」 いじめられるのって、こんなに辛いんだね。痛いんだね。ごめんね、咲。お姉ちゃんが悪かったよ。あの時、咲がいじめられていた時、私は強引にでも咲を助けるべきだったんだ 咲「…お姉ちゃん?」 私が助けてあげるべきだったんだ。あの時、咲がいじめられてるって知った時、その瞬間にでも、いじめっ子の家にでも殴りこんで、取っ組み合いしてでも、咲をいじめから救うべきだったんだ 咲「お姉ちゃん!」 だって、こんなにも、こんなにも、いじめは辛いものだったんだから。痛いものだったんだから。咲の立場を思いやってる風に見せかけて、結局私は自分が可愛いだけだったんだ 最愛の妹を見殺しにして、『京ちゃん』が現れなきゃ、咲は未だにいじめられてて、私は友達と仲良くやってて、それで、それで… ……………そ れ で 私 は 咲「お姉ちゃん!!!」 ドサリ 目が覚めた時、照は自室のベッドに眠っていた 傍には泣きじゃくる咲の姿。…取り敢えず、気付いたことを知らせようと声をかける 照「…咲」 咲「お姉ちゃん!?気付いた!良かった!」 照「…私、は…」 咲「心配したんだよ!?いきなり倒れたから…大丈夫?」 照「ん…あいたたた…」 起き上がろうとして身体に痛みが走る。起き上がるのを断念して、もう一度横になる …と、そこである事に気付く 照「…寝間着になってる。咲が着替えさせてくれたの?」 咲「…うん。汗が凄かったから」 照「…」 咲「…」 照「…って、言う事は…」 咲「…うん」 照「…」 咲「…」 照「あの、さk…」 咲「…あの、お姉ちゃん、その…み、見ちゃった…んだけど…」 照「…」 咲「…」 照「…」 咲「…お、お腹とか…青くなってて…」 照「…」 咲「す、すり傷とかも、いっぱい有って…」 照「…咲」 咲「そ、その…み、見覚えって言うか、その…経験が有る痣って言うか…」 照「…」 咲「…お姉ちゃん、いじめられてるの?」 照「…」 咲「なんとか言ってよ!」 照「咲」 咲「なんで!?いつから!?あんなに友達がいっぱいいたお姉ちゃんが!なんでいじめられてるの!!?」 照「咲!」 咲「わけわかんないよ!私みたいに友達の居なかった子ならまだわかるとして、お姉ちゃんはクラスの中心だったじゃない!ちょっと前までは友達だっていっぱい連れて来てて!!」 照「咲!」 咲「そういえば、お姉ちゃんが友達連れて来なくなったの、私がいじめられてるのをお姉ちゃんが知ってからだよね!?ずっと気になってたの!もしかして、私がいじめられてたのに関係してるんじゃ…」 照「咲!!!!」 咲「っ!!」ビクッ 照「…関係ないよ。それは」 咲「…嘘」 照「本当」 咲「嘘だよ!!だったらなんで目を伏せたの!?お姉ちゃんの嘘を吐く時の癖…」 照「咲、質問に答えて」 咲「…っ」 照「…お父さんとお母さんには、連絡した?」 咲「…うん。した。二人ともすぐ帰るって」 照「なんて言って?」 咲「えっと…お、お姉ちゃんがいきなり倒れたって…」 照「そう。なら、咲。口裏を合わせるんだよ。私は貧血で倒れたの。いい?いじめの事なんて絶対言っちゃ駄目」 咲「で、でも…」 照「咲だってわかってるでしょ?今、お父さんとお母さんは凄く難しい状態にあるの。二人に余計な心配をかけちゃ駄目」 咲「け、けど、お姉ちゃん、その痣けっこう酷いよ…?私の時なんかと比べ物にならない位酷い怪我。最近たまに帰ってくるのが遅いのって、もしかしていじめにあってたからなんじゃ…」 照「…咲は賢い子だね。そのくらい賢いなら、わかるでしょ?今二人に私がいじめにあってるなんて知られたら、また喧嘩になっちゃう」 咲「けど!!」 照「…最悪、二人が離婚しちゃうかもしれないんだよ!!!!」 咲「…え?」 照「…」 咲「…り、りこ…ん…?」 照「…っ」 咲「り、離婚って…な、なにそれ…なんでお姉ちゃんがそんな事…」 照「…まだ決まったことじゃないけどさ。…二人が、離婚の話ししてるの、この間聞いちゃった」 咲「そ、そんな…」 照「…ねえ、咲。今私がいじめられてるなんて知られちゃったらさ。…私をいじめから遠ざけるとかそんな口実にされて、二人が別居なんて事にも…」 咲「そ、それ…は…」 照「…それは嫌でしょう?」 咲「い、嫌だよ!そんな…そんな事…」 照「じゃあ、やる事は一つしかないんだ」 咲「…」 照「…ね?」 咲「お姉ちゃん、大丈夫なの…?」 照「大丈夫だよ。今までは咲の言ってたように、私は人気者だったんだ。こんないじめ、一過性の物だよ。そうだ。はしかみたいなものだよ」 咲「…」 照「それより、京ちゃんとは、どうだったの?」 咲「へっ!?」 照「ふふ。うちで二人きりだったんでしょ?なんか素敵な事なかったの?」 咲「な、なんにもなかったよ!いきなり何言ってるのお姉ちゃん!」 照「ははは。何だ残念。咲、なら、もう一回連れておいでよ。今度はいじめにあってじゃなくて、普通にすっぽかしてあげるから」 咲「へ?」 照「二人っきりのチャンスはあんまりないかもよ?」 咲「~~~~~~~~!!」ボッ 照「あはは。顔真っ赤だ」 咲「もう!お姉ちゃんのいじわる!もう知らないんだから!!」 照「ごめんごめん。…さ、それじゃあ、咲もそろそろ寝る準備しておいで。お母さんたち帰ってきたら、私から説明はしておくから」 咲「…」 照「咲」 咲「…うん。わかった」 照「いい子だ」 咲「…」 照「心配しないの」 咲「…」 照「…ね?」 咲「…うん。わかった」 照「ん。じゃあ、おやすみ。咲」 咲「…」 咲「…おやすみ。お姉ちゃん」タタタタタ 照「…」 照「…ふう」 照「…」 照「…ごめんね。咲」 こうして、日常は守られた。それは子供たちが家族の離散の危機を防いだ事を意味し、同時に照の受難の日々が続く事も意味する いじめは続く。受難は続く。万人に悪者をやっつけてくれる都合の良いヒーローが駆けつけてくれるなんてお伽話は無い 『京ちゃん』は現れない 照はいじめられ続ける いじめは次第にエスカレートし、照は、次第に精神を病み始める。イライラすることが増え、性格も捻くれ始めて来る やり場の無い怒りが彼女自身を飲み込み始め、次第に周囲への態度が変わり始める 自分の生まれた土地が憎い。周囲の人間が憎い。今の内に精々喜んでおけ。いつか必ず見返してやる、この田舎者共め… そんなある日、照は遂に出会うのだ 彼女にとっての救いの神に ヒーローに 彼女だけの、『京ちゃん』に それは、ある秋の放課後の出来事だった この日、照は教室の掃除当番で、いつものように誰とも会話する事無く、黙々と掃除を終わらせてすぐ、そっと消えるように教室を出た 今日は不良達は昼から何処かに遊びに行ったのか姿を見せず、照にとって久しぶりの恐怖を伴わない幸運な数時間を味わえた。無事に一日を終えられた事にほっと一息を吐く とは言え、既にこの教室には彼女が友人と思える人間は居ない 自分を不良達からのスケープゴートにして青春を謳歌する同年代の人間達を心の底で呪いながら、帰宅の準備を早々に済まし教室を後にする 掃除で遅れた分、早く帰りたい。この腹立たしい同年代共の顔を見ずに住む場所へ。唯一の味方が居る場所へ 一刻も早く、帰りたい そう考え、近道をしようと大通りの公園を通り抜けようと考えたのが悪かった 「おっ。宮永じゃん」 「本当だ」 照「っ!?」 照は知らなかった。その公園が最近、不良達の溜まり場になっていた事を 「馬鹿な奴だねぇ。うちらがこの辺で遊んでんの、知らなかったんだ」 「いじめて欲しくて来たじゃないの?いじめられ過ぎてドMに目覚めたとか」 「けけけけ!きもっ!」 照「……」スッ 「おい、どこ行くんだよ」 「無視しないでくれますぅ~?宮永さん」 ニヤニヤと不快な笑みを浮かべ、照を四方から囲む4人の不良達。随分と手馴れている。大方こうやって弱そうな獲物を囲ってカツアゲでもしていたのだろう 照「…どいて」 「ああ?」 「何言ってんのコイツ」 イライラが爆発し、勢い余って強い口調が出てしまう。言った瞬間にしまったと思った 「何偉そうな口利いちゃってる訳?」 「学校外だから殴られないとでも思ってんの?」 「調子のんなよ」グイッ 照「あっ…!」 案の定、すぐに実力行使が来た。4人の内一人が、徐ろに照の髪を引っ張ったのだ。慣れた痛みだが、思わず細い悲鳴が出てしまう。…悔しい 「ノコノコいじめられに来やがって。丁度いいや。金よこせよ。恵まれない子供達に愛の募金ってやつ」 照「やだ…!」 「この雑魚が!反抗してるんじゃねぇよ!」グンッ 照「あぐっ!?」 髪の毛を掴んだまま振り回される。プチプチと何本か髪が抜ける音と、激痛が走る そこが限界だった。今日は久しぶりにいじめられない筈だったのに。早く帰って咲とゆっくりお話する筈だったのに 自分の情けなさに腹が立つと同時に、遅ればせながら目の前の4人に対する怒りが鎌首をもたげてきた 照(なんで私が、こんな底辺みたいな屑共らにいいようにいじめられなきゃいけないんだ…!!) 照「やめてよっ!!」バシッ 「うわっ!?」 「こいつ!!」 照「も、もうやめてよ!!どっか行ってよ!!なんで私をいじめるの!!!他の人でもいいじゃない!!!」 「うるせえ!お前がムカツクからいじめるんだよ!!」 「理由なんかあるか!!」 照「いい加減にしてよ!!!」 何を言っているのかよくわからなかった。口から出るのは、今まで腹の底に溜まっていた黒く卑屈な感情。憎悪。自分でも驚くぐらい醜い言葉が次々に飛び出す 照「ムカツクって言うなら、他のクラスの奴らだってムカツク奴らいっぱい居るでしょ!?私なんてもう貴方達に逆らったりもしてないよ!?他の人をいじめてよ!!」 「はぁ?何言ってんだコイツ」 照「どんなに殴られても、いじめられても!今まで私、貴方達にそんな気に触るほど反抗したことあった!?敵対したことあった!?」 照「お金だってそんなに持ってないし!いじめる意味無いじゃない!!」 照「お金欲しいならもっとお金持ってる子にたかってよ!ストレス解消したいなら、もっとなんの取り柄もないような弱い子いじめてよ!!」 照「私『達』ばっかり狙わないでよ!!」 「うっぜ。何だコイツ」 「顔面行っとく?」 「いいね。やろやろ。最近コイツ殴られてもスカした顔する様になってきたから、生意気だったんだよね。いきなりキレられてマジムカツクし」 照「っ!!」 照(なんで…!どうして…!どうして私達ばっかり、こんな目にあうの!?私ばっかり不幸な目に会うの!?なんで!?どうして!!?) 「おい、宮永」 照「な、なに…?」 「どうしてお前をいじめてるか教えてやろうか」 照「…」 「お前が『お前』だからだよ。特に理由なんて無いの。強いて言うなら、浮いてるからかな?誰からも距離があるから、いじめやすいんだよ」 照「…っ!!」 「ねーねー。後で彼氏に連絡しようか?何人か飢えてるの連れてきて、ハメ撮っちゃおうよ。高く売れるかも」 「おっ。いいねー」 照「ひっ!?」 「さ、そんじゃやりますかー」 照「い、いや…」 照「来ないで…」 照「誰か…」 照「助けて…」 金髪「何してんの?」 照「…えっ?」 「…ああ?なんだこの金髪」 金髪「いや、お姉さんたち何してんのって」 「すっこんでろよチビ。格好付けてナイト気取りか?お姫様よりちいせー奴がなにしてもダッセーし、そんなんしてもモテねーんだよキメーな」 金髪「いや、そんなつもりじゃねーし」 「見てわかんないのかよ、アタシら今、カツアゲやってんだよ。わかったらとっととどっか行けよガキ」 金髪「いや、カツアゲにしてはちょっとバイオレンス感多くねえっすか?」 「ふざけたガキだな。お前からも毟ってやろうか?」 「ナマ言ってんじゃねーぞ?アタシの彼氏はカラギャンやってんだぞ。テメーなんか速攻ボコられるからな」 金髪「…」 「何黙ってんだよ」 金髪「早くどっか行けよ。俺はこの子に用が有るんだよ」 「ああ!?」 金髪「怒るぞ」 「ふざけんなよ。今から彼氏呼ぶわ。ボコって貰うから覚悟しろよ」 金髪「いいのっかなー」 「なんだよ」 金髪「俺は『あの』佐藤さんに可愛がって貰ってるんだぜ」 「!?」 「さ、佐藤さん…!?」 「『あの』佐藤さんって、もしかして『あの』福西組の佐藤さんの事…か?」 「あ、『あの』狂犬で有名な佐藤さんか…」 「や、やべえな…」 金髪「そうそう。その佐藤さんに可愛がって貰ってる俺が、どこの誰だか知らねーがお前らの彼氏?にやられたって言ったらよ。お前、そのカラギャンごと潰されるかもよ」 「くっ…」 金髪「ほら、今ならまだ無かった事にしてやるから。早くどっか行け馬鹿野郎」 「…くそっ!行くぞ!」ダッ 「あ、待ってよ!!」ダッ 照「…」 金髪「…行ったか」 照「…」ポカーン 金髪「…ふう」 照「あの…」 金髪「…佐藤・鈴木・田中はどこにでも居る…」ボソッ 照「…はぁ?」 金髪「ふへぇ…流石にビビったぁ!福田組ってなんだよ。あれか、爽やかヤクザか。マジビビったわー。退いてくんなかったらどうしようかと思ったよ」 金髪「女とは言え、俺より年上だし4人だしなぁ…」ブルブル 照「君…」 金髪「あ、すみませんねお姉さん。本当はもっと格好良い助け方したかったんですけど、4人相手はちょっと…」 照「…どうして私を助けてくれれたの?」 金髪「へ?ん~…なんでって…」 照「…」 金髪「…なんとなく?」 照「…」ズルッ 金髪「…」 金髪「…うん、なんとなくだ。なんとなく…」 京太郎「…なんとなく、お姉さんが知り合いに似てたもんだから……」 それが、照と、『照の京ちゃん』との出会いだった 照「…」 呆気にとられ固まる照に、声をかける京太郎。心配そうな様子の中にも、少しだけ得意気な表情が見え隠れしており、それが幼い感じがして、照は可愛いらしいと思う 京太郎「…ところで、うわ。お姉さん、大丈夫?怪我してない?」 照「…」 京太郎「ああ、ほら。ちょっとそこのベンチに行って座ろうか。消毒液と絆創膏が鞄の中に入ってるから、怪我してたら言ってくれたら使っていいから」 照「…」 京太郎「ほら、な?歩ける?」 照「…うん」コクン 京太郎「そっか。よし、それじゃあ行こう。な?」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…どうかした?」 照「…やっぱりあるけない」 京太郎「…そうっすか」 腰が抜けていた 照「…」 京太郎「…参ったな」 照「…」 京太郎「…ほら。手貸すから、ゆっくりで良いから歩こう?な?…ここに居たら、目立ってしょうがない」 照「…うん」 京太郎「ん」スッ 照「…」スッ 京太郎「よし、それじゃあゆっくり歩くよ?」 照「…」コクン スタ スタ スタ 京太郎「…」 照「…」 照「…初めてだ」ボソッ 京太郎「…ん?なんか言った?」 照「…ううん。なんでもない」 京太郎「…そっか」 照「…うん」 照「…初めて男の子に手、握られちゃったなって」 京太郎「って!なんでもなくねーじゃんか!」ズサッ 照「…ふふ」 京太郎「え、ちょ、お、おれ、その、そんなつもりじゃなくって!その!」ワタワタ 照「冗談だよ。もう一人で歩けるから。…ありがとう」 京太郎「…うう。なんか、いきなり気恥ずかしくなってきちまったじゃんよー…」ブツブツ 照「…ありがとうね」 京太郎「…」 照「…初めて、誰かに助けて貰ったなって…」 京太郎「…そっか」 照「…」 京太郎「…ん。ベンチ、着いた。お姉さん、座る。傷見せる」 照「なんでカタコト?」クスッ 京太郎「…」プイッ 照「…照れてるの?」クスッ 京太郎「むっ。…って、俺、一応恩人ですよね?お姉さんの」 照「はは。ごめんごめん」 京太郎「…ったく。これだから年上は苦手なんだよ…」ブツブツ 照「そういう君は、一年生?」 京太郎「そうっすよ。はい、傷無いか見せて下さい」 照「今日は大丈夫だよ。髪の毛掴まれただけだし」 京太郎「…『今日は』?」 照「あっ…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…今日だけじゃないのか」 照「…」 京太郎「…いじめられっ子ってやつ?」 照「…」 京太郎「…そっか」 照「…」 京太郎「…あの、俺…」 照「あっ!!」 京太郎「うおっ!?」ビクッ 照「お、おもいだした!今日ははやく家にかえらないといけない用事があったんだった!」 京太郎「棒読み…」 照「というわけで、ごめんね!わたしはこれで帰るから!」 京太郎「あ、ちょっと…」 照「本当にごめん!それじゃあバイバイ!!」ダッ 京太郎「ちょっと!お姉さん!?おーーーーーーーーーーーい!!」 照「~~~~~~~~っ!!」タッタッタッタ 京太郎「…」 照は逃げた その金髪の少年との会話を打ち切って、逃げてしまった 照「何故そうしちゃったんだろうね」 淡「…」 照「彼が、会って間もない自分の問題に、深くまで踏み込もうとした気配を察したからかな」 照「正直に話しても、どうせいじめられっ子な自分を馬鹿にされるのがオチだと思ったのかも?」 照「ううん。違う。きっと、幻想を抱きたかったから」 照「この世には、私の悩みなんて何の問題でもない風に振る舞って、どんな困難からでもあっさりと私を救ってくれるヒーローが存在するんだって、そんな都合の良い幻想を信じていたかったんだ」 照「いじめから守ってくれて、孤独から救ってくれて、友達を作ってくれて、一緒に笑い合ってくれる。そんなヒーローが居ると信じていたかった」 照「私さえ拒絶しなかったら、そんな救いは有るんだって、私にも『京ちゃん』が出来る可能性はあったんだって、未だに信じていられるからって」 照「今思えば、結局彼の事を信じていなかったんだろうなって思う。どうせ気まぐれで私を助けてくれただけなんだって…その時は、まだ」 照「けど、私はその瞬間、同時に浮かれてもいたんだ。まるで全ての悪い事が、この瞬間に解決されたんだって勘違いしたってくらいに」 照「家に帰った時、私は満面の笑顔だったらしい。妹が、お姉ちゃん、どうしたの?って聞いてきてさ」 照「クスクス笑う妹を不思議に思った私が逆に尋ねたら、お姉ちゃんなんだか嬉しそう!…って、あの子まで嬉しそうに笑ってて」 照「笑顔の理由は教えてあげなかったけどね。まだこの記憶を独り占めしていたかったんだ。思えばこれがまたややこしい事になった原因かもしれないんだけど」 照「…けど、その日は。その日だけは本当に嬉しくて、久しぶりに二人で笑い転げまわったよ」 照「…本当に楽しかった」 照「しかも次の日、珍しい事にいじめっ子達は私を無視したんだ。…そうだな。訂正しよう。私と咲が楽しく過ごせた期間は、もう少し長かった。数日ほどかな。相変わらず友達は居なかったけどね」 照「そうだ。数日ほどいじめは無かった。私はホッとしたよ。あれがきっかけで、遂にいじめが無くなったんじゃないかと」 照「…けど、そうじゃなかった。いじめが再開したのは、彼に出会ってから4日後の事だ」 照「どうやら、いじめっ子達は彼が私の味方であるのかを探っていたらしい。行きがかりに助けられただけの関係だというなら怖くないとばかりに、数日間の分を取り戻すようにいじめられたよ」 照「この頃から、痣になる暴力が増えだした」 照「私は耐えたよ。もしかしたらあの時彼と話をしていたらいじめから開放されたんじゃないかって、何度も自分を呪った。けど、その度に自分に言い聞かせた」 照「いじめっ子達の彼氏が本当にカラーギャングなら、彼を巻き込むわけにはいかなかっただろ?って。私がいじめられて済むなら、それで良かっただろ?って」 照「ふふ。自分を誤魔化す言い訳ばかり上手くなっていたよ」 淡「…」 菫「…」 照「…そして、それから更に事が起こったのは、数日後の放課後だ。私は一時期のように授業が終わると同時に教室から一目散に逃げ出すのが日課だった」 照「この頃のアイツらは蛇みたいだったよ。今までは学校の外まで逃げ切れば私の勝ちだったけど、学校の外まで追いかけてくるようになったんだ」 照「勝率は…5分5分ってところかな。アイツらは明らかに楽しんでいた。鬼ごっこのつもりだったんじゃないかな。捕まったら適当な所に引き釣りこまれてボッコボコ」 照「この日は駅までの途中で捕まって、前回の時の公園に引きずり込まれたんだ」 照「…殴られながら彼がまた助けに来てくれないかって、うっすら思ったけどね。そうそう都合は良くなかったよ」 照「随分盛り上がっちゃったらしくて、ボロ雑巾みたいにされて。アイツらの気が済んで立ち去った後、私はもう立ち上がる気力も無かった」 照「このまま夜までここで寝てたら、危険だってのは気付いてたんだけどね。もうどうにでもなれって思って、そのまま意識を落としちゃった」 照「…目を覚ました時、私は真っ暗な公園のベンチで横になっていた。傍にはあの時の少年が座ってた。…その時の気持ちは…なんていうか、言葉では言い表せない感じだったな」 照「…複雑だったけど、いじめっ子達に対する感謝の言葉すら、脳裏を過ぎったよ」 全身に鈍い痛みを感じ、照は意識を覚醒させる。傍に誰かの気配を感じるが、嫌な感じはしない。むしろ、優しい気配に守られているようで、安心する 照「…ん」 京太郎「…あ」 照「いたた…あ、あれ?私…」 辺りを見回すと、ここはさっきの公園のようだ。但し、自分がいじめられていた場所とは少し離れている 横になっているのに視線が高い事と、背中の硬い感触で、自分がベンチの上で横になっていることに気付いた 京太郎「お姉さん、大丈夫?」 照「君は…」 隣の気配の正体にも気付く。…この間の彼だ。ゆっくりと身を起こし、彼の顔を見る。今にも泣きそうな、心配そうな顔だ 京太郎「そうですよ。この間の奴です。お姉さん、またアイツらにやられたんですか?」 照「ぐ…」ズキッ そうだった。私はまたアイツらにやられたんだ。さっきまでの殴る蹴るの暴行を思い出し、身体が痛みを思い出す その様子に、心配そうだった彼の表情が険しさを増す。怒気を孕んだ彼の形相に、思わず照の身が縮こまる 京太郎「ひっでぇ怪我だ…。この間の比じゃねぇ。幾らなんでもやり過ぎだろうが…!!」 照「…」 京太郎「なあ、今までずっとこんないじめされてたのか!?」 照「…うん」 京太郎「なんで黙ってるんだよ!」 照「…」 京太郎「先生だったり!友達だったり!相談してみろよ!!」 照「…嫌だ」 京太郎「はぁああ!?」 照「…みんな、信用出来ないもの」 京太郎「何ふざけたこと言ってんだよ」 京太郎「黙ってたらやられっぱないに決まってるだろうが!!なんで誰にも頼らないでほっといてんだよ!こんなボロボロにされといて、いい加減洒落で済まねーだろうが!!」 照「嫌だ…!いじめっ子も嫌いだけど、あんな奴らも信用出来ない!!」 京太郎「どうしてだよ!!」 照「どうしてもだよ!!!」 京太郎「…」 彼の激しい口調には情緒不安定になった照の神経を逆なでし、応える照の口調も荒くなる。溜まりに溜まったイライラが、遂に発散場所を求めて噴出する かつての友達連中にも、先生にもぶつけられなかった怒り。いじめっ子には怖くて口をつむぎ、不仲の両親には遠慮して、咲には隠すしかなかった泣き言を、行きずりの少年にぶつける …自分でもわかっていた。これはただの八つ当たりだ。彼は何も悪くないのに。むしろ助けてくれた側なのに。手を差し伸べようとすらしてくれたのに 照「今まで、何回だって相談した!妹の時に何度もしたよ!!けど、先生たちはずっと黙ったまんまだった!助けてくれなかった!!」 照「私の友達だってそう!今までずっと仲良くしてたのに、私がいじめられてるの知ってて、それでも黙ったまんま!いじめられてるの見ても、見て見ぬ振り!!」 照「そんな人達の事、どうやって信じればいいの!?」 京太郎「…」 照「逃げても逃げても追ってくるいじめっ子達、それを見て目を逸らす友達だった人!先生達は妹がいじめられてた時、私が掛けあってもなんにもしてくれなかった!」 照「どうせみんな私達の事なんてどうでもいいんだ!自分の事が可愛くて、怖い人には逆らえなくて、面倒な事には関わりたくない!人間なんてそんなもんなんだ!他人なんて信じられるもんか!」 照「君だってあの時、最初からアイツらがカラーギャングの関係者だって知ってたら、助けてくれた!?」 照「本当は女の子ばっかりだったから、自分でもなんとかなるって、そんな程度の軽い気持ちで助けただけじゃないの!?」 照「さっき、今までの比じゃない怪我って言ったよね!?そうだよ!君がつまんない正義感で下手に手助けしてくれたばっかりに!こんなにもいじめがエスカレートしたんだよ!?」 照「君のせいだ!!君のせいで私はこんなにいじめられてるんだ!!」 照「どうせ下手に希望を抱かせるくらいなら、気まぐれに助けないでくれれば良かったよ!中途半端に助けないでよ!!いい迷惑だよっ!!」 京太郎「…」 照「…はぁ…はぁ…っ!!」 京太郎「…」 照「…なんとか言ってみなよ!」 京太郎「…わかったよ」 照「…?」 京太郎「…アンタ、ガキだな」 照「…ガ、キ…?」 京太郎「うん。ガキ」 照「は?何言ってるの?君。君こそまだ1年生でしょ?私3年生だよ?そっちがガキじゃない。それにチビだし」 京太郎「身長は確かにまだアンタよりは低いけど…っていやいや。何だよその言い草。それにまるで俺が悪いみたいな」 照「だって、本当にあの後いじめが酷くなったし…」 京太郎「それに、この間だってなんか言い訳していきなり逃げたのそっちだ」 照「…うぐ」 京太郎「ありがとうも言わないで、さ。助けてもらってアレはないだろ」 照「…」 京太郎「ガキー」 照「うるさいチビ」 京太郎「…恩知らず」 照「恩着せがましいよ」 京太郎「ひねくれ者」 照「マセガキ」 京太郎「…はぁ」 照「…」 京太郎「…あ゙ーーーーー…」 照「…」 京太郎「…アンタ、名前は?」 照「…」 京太郎「…おーなーまーえー。なんて言うんですかー」 照「…先にそっちが名乗るのが礼儀だよ。子供はそんな事もわからないの?」 京太郎「子供だからわかりませーん。それに、子供だからいーやーでーすー」 照「…」 京太郎「…」 照「じゃあ私も名乗らない」プイッ 京太郎「あ、そ」プイッ 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…照だよ」ボソッ 京太郎「…ん?」 照「…なんでもない」 京太郎「あっそ」 照「ん」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…そっか」 照「ん?」 京太郎「照って名前なのか」 照「…っ!」 京太郎「なるほどねー。照ってのかー。ふーん。で、名字は?」 照「て、『照』!?」 京太郎「ん?どうした?照」 照「こ、コラ!君!」 京太郎「んー?」 照「な、なに!?その呼び方!」 京太郎「ん?何って、何が?」 照「わ、私は年上だよ!?呼び捨てにしないでよ!ちゃんと敬意を払って!」 京太郎「つっても、いじめられっ子相手に敬意払えって言われてもなー」ツーン 照「この…!」イライラ 京太郎「ま、どうしてもって言うなら?わかったよ。それじゃあこう呼ぶことにするわ。てーる『ちゃん』」 照「はぁああああ!?」 京太郎「ん?どうした?照ちゃん」 照「ちゃん!?ちゃんって何!?もうっ!もうっ!もうっ!!」 京太郎「うん。ぴったりだわ。照ちゃんって。ガキっぽいし」 照「むぅうううううううう!!」 京太郎「あはは。むくれてやんの。可愛いぞ?照ちーゃん」 照「か、かわ…」 京太郎「照ちゃん可愛い」 照「あああああああああああああ!」 京太郎「照ちゃん可愛い」 照「こらっ!馬鹿にして!」 京太郎「照ちゃん可愛い」 照「ああっ!こら!こら!こら!!君っ!もう!こらっ!」 京太郎「あはははは。おもしれーなー照ちゃんって」 照「ああもおおおおおおおおお!馬鹿ぁあああああああ!!」 京太郎「で、照ちゃんの名字はなんてーの?」 照「だ、誰が教えるもんか!」 京太郎「あ?なんでだよ照ちゃん」 照「ま、まだ照ちゃんって…!…じゃなくって!君の方こそ名前教えてくれてないじゃない!」 京太郎「だーかーら。名字教えてくれたら俺の方も教えてやるよ照ちゃん」 照「んもー!またぁあああ!」 京太郎「あはははは!」 照「うううう…」 京太郎「…で、名字」 照「…教えません」プイッ 京太郎「えー?なんでだよ」 照「どうしてもです」プイーーッ 京太郎「だったら、俺も名前おしえませーん」 照「…」 京太郎「…」 照「いじわる」 京太郎「いじわるです。ガキなので」 照「…本当にガキだ」 京太郎「名字は?」 照「教えるもんか」 京太郎「ガキー」 照「クソガキ」 京太郎「貧乳」 照「うるさい馬鹿」 京太郎「馬鹿です。ガキなので」 照「…」 照「…じゃあ、君の事なんて呼べばいいの?」 京太郎「んー?そうだなー。それじゃあ、ア・ナ・タ(はーと)とか」 照「発想がおっさん臭いよ」 京太郎「…」 照「…ふんっ」 京太郎「…じゃあ、通称きょ「本名じゃないなら、やっぱり言わないでいい」」 京太郎「…ん?」 照「…君がちゃんとした自分のフルネーム言うまで、『君』って呼ぶから」 京太郎「…」 照「わかった?『君』」 京太郎「…強情すなぁ」 照「そっちこそ。自分の本名言うだけだよ?」 京太郎「照ちゃんが名字言ったら教えるけど」 照「やだ」 京太郎「年上の余裕見せてもいいんじゃない?」 照「年長者に敬意を払ってよ」 京太郎「だかーらー…って…」 照「…?」 京太郎「…照ちゃん」 照「…なに?」 京太郎「…へへ。やっと笑顔になったな」 照「…え?」 京太郎「顔、笑ってる」 照「…」ペタペタ 照「…」 京太郎「…俺さ。照ちゃんよりチビだし、ガキだし、大したこと出来るかはわかんないけどさ」 京太郎「けど、あの時からいじめが酷くなったていうなら、確かに俺にも責任あるだろうしさ」 京太郎「それに折角友達になれたんだし、それなら俺は照ちゃんの事助けたいよ。なんか手を貸せることあったら、なんだって言ってくれよ」 京太郎「…力になりたいんだ」 照「…」 京太郎「…照ちゃん?」 照「…とも…だち…?」 京太郎「ああ。…友達だよな?」 照「友達…」 照「…友達」 照「…友達?」 京太郎「え。もしかして嫌っすか」 照「…」 照「…ううん。嬉しい」 京太郎「…ほっ」 京太郎「それじゃあ、明日っから放課後は一緒に遊ぼうぜ?この公園でさ」 照「え…け、けど、この公園は…」 京太郎「アイツらの溜まり場だってか?だからいいんじゃん。この間は俺にビビって撤退したんだし、俺らがきまぐれで助けた関係じゃなくて仲良しだって知ったら、きっとアイツらも手出さなくなるって」 照「そう…かな」 京太郎「そうそう!」 照「けど…怖いよ?」 京太郎「怖いけど」 照「アイツ等女の子だけど、沢山居るよ?喧嘩になったら君一人で勝てる?」 京太郎「いざとなったら照ちゃん手伝ってよ」 照「えー…」 京太郎「『えー』じゃ無しに!いじめっ子との喧嘩は、相手にめんどくさい奴って思わせたら勝ちなんだから」 照「けど、殴られたら痛いよ?」 京太郎「今と何違うんだよ」 照「…」 京太郎「…」 照「…ああ」ポン 京太郎「…」 照「確かに」 京太郎「…照ちゃんって、見た目と違って天然なんだな」 照「…?」 京太郎「…まあいいや」 照「はあ」 京太郎「あとは、あいつ等のバックにカラーギャング?が居るんだって?」 照「…うん。そいつ等が来たらどうする?」 京太郎「…まあ、そいつ等が来たら任せろよ」 照「…大丈夫?」 京太郎「…ん。まあ、一応考えはある」 照「おおー」 京太郎「…」 照「…ねえ」 京太郎「…ん?」 照「…頼っても、いい?」 京太郎「…」 照「……いい?」 京太郎「ああ。任せろって!」 照「…うん。じゃあ」 照「頼っちゃう」 翌日の放課後、照は必死に走って公園まで辿り着く。そこには、タバコを吸って缶ビールの缶を足元に転がした彼の姿。少し幻滅する それでも兎に角いじめっ子から逃れたい一心で彼に話しかける。居心地の悪い気分でつまらない雑談を続けていると、しばらくして後をつけていた筈のいじめっ子達の気配が消えた 頃合いを見て、京太郎が呟く 京太郎「…連中、行ったっぽい?」 照「…うん」 京太郎「ま、ざっとこんなもんってな」 照「…けど、びっくりした。君、タバコ吸うんだ。それに、お酒も…」 京太郎「ん?あー。これ?ははは。これはさ」 照「…」 京太郎「本当は吸わないんだけど、さ。ダチに貰ってきたんだ。まっずいわコレ。あと、空き缶はそこのゴミ箱から漁ったやつね」 照「…」 京太郎「ふふん。どーよ?対いじめっ子への威嚇用ってやつ?不良っぽさの演出とも言うかな」 照「…ぷっ」 京太郎「ふふ。どうだい?悪っぽいだろう。くくくく…」 照「あはははは!」 京太郎「あははははは!」 照「あはははは!バカみたい!」 京太郎「へ?」 照「だ、だって!不良っぽく見せるための小道具にタバコとお酒って!」 京太郎「あれ…へ、変だった?」 照「変って言うか…発想が子供っぽいよ!」 京太郎「…」 照「あはははは!可愛いなぁ、君は!子供っぽくて!あはははは!」 京太郎「…くすん」 照「あははははははは!」 再びいじめっ子から開放された照。けれど、照は連日、放課後になる度に急いで教室を飛び出す 原因はいじめっ子では無く、友達。クラスに馴染む気はもう無かった。彼女にとって唯一の友達に会うために今日も照は教室を飛び出す。そして益々クラスから浮く けど、どうでも良かった。楽しい日々は続く。胸には、未だに名前を教えてくれない意地悪な少年への確かな友情と、微かな恋心 絶対に私が名字を教える前に、向こうに名乗らせてやる。そんな子供っぽい感情を示す事が出来る相手は、今の照には彼しか居なかった 何をするでもなく、二人公園で会話を続ける日々 いじめの事も、クラスからの孤立も、両親の不仲も忘れて、夕方まで一緒に笑い合う 歯車が狂った事に照は気付かない いつ狂い始めたのかも分からない いや、もうとっくに狂っていたのだろう。ずっとずっと前に けど、それが明らかになったのは、それからしばらくして 季節は巡り、秋 その頃、照は進学する高校に迷っていた 10月27日 京太郎「へっくし!…ふー。寒いなー。今日は」 照「そうだね。もうすっかり秋だ。そしてもうすぐしたら冬」 京太郎「げっ。思い出させるなよ。雪積もったら嫌だなぁ」 照「地面が凍ったら嫌だね。私、毎年転んじゃうんだ」 京太郎「あー。俺も俺も。去年なんて、折角一度も転ばずに雪解け迎えれそうだってのに、何にもないトコで後ろからダチに突き飛ばされて完全試合達成ならずだったんだぜ」 照「ふふ。それは残念」 京太郎「それにしても…冬が終わったら、俺も2年生かー。そして照ちゃんは進学だ」 照「え?」 京太郎「どこに行くの?」 照「そ、それは…」 京太郎「うん」 照「…」 照(…なんて答えよう。未だに迷ってるんだよね。風越女子に進学して麻雀部をやってみたい気もするし、近い清澄でもいいかなと思ってるし…あとは…) 照「えっと…」 京太郎「…もしかしてまだ迷ってる?」 照「…うん」 京太郎「早く決めちゃえよ」 照「わかってるけど…」 京太郎「…照ちゃんが進学したら、流石にもうこうして会うのは難しくなるのかな」 照「…」 京太郎「…それまでに名字教えてくれていいんだぜ?」 照「き、君こそ、随分と強情だな!そろそろ名前教えてよ」 京太郎「えー?だから言ってるだろ?照ちゃんが名字教えてくれたらって」 照「私の台詞だよ!」 京太郎「ちぇー」 照「…もうっ!」 京太郎「…へへ。ま、そうだなぁ。そしたら、照ちゃんの進学校名でもいいかな」 照「…え?」 京太郎「照ちゃんが進む高校決めて、それ教えてくれたら俺の名前教えてあげる」 照「…」 京太郎「もし照ちゃんが遠くの高校に行く事になって何処に進むかわからなかったら、このままじゃ連絡の取りようも無くなっちゃうだろ?」 照「…うん」 京太郎「だから、さ。流石に進学と同時にハイサヨナラじゃ、寂しいしさ」 照「…」 京太郎「…へ、偏差値近かったら、同じ高校目指すかも…」ボソッ 照「…え?」 京太郎「…」プイッ 照「ねえ、君、今なんて…」 京太郎「な、なんでもねー!」 照「…そっか」 京太郎「そ、そう!」 照「…じゃあ、さ。受験受かったら教えてあげるよ」 京太郎「っ!」 照「けど、受かってからだからね。言っておいてそこ落ちたら格好わるいし」 京太郎「わ、分かった!絶対だぞ!」 照「…うん」 京太郎「頑張れよ!応援してるからな、照ちゃん!」 照「うん。ありがとう。それじゃあ、今日はちょっと大事な用事有るから、私はもう帰るね」 京太郎「あ…そういえば今日はなんかあるって言ってたっけ。駅まで送ってこうか?」 照「大丈夫だよ。最近はいじめっ子達も大人しいし」 京太郎「…本当に?」 照「うん。ありがとう。それに、買い物もしたいし」 京太郎「んー。まあ、照ちゃんがそう言うなら…」 照「それじゃあ、私は帰るね。バイバイ」 京太郎「ん。じゃーなー」 照「…さて、と」 照「…」 照「…あは」 照「…偏差値が近かったら、私と同じ高校を目指すかもっ…か。あはは」 照「…うん。決めた」 照「進学校は、清澄にしよう」 照「風越と違って共学だし、近いし、学力はそこそこ。麻雀部は無いけれど、そんなのどうだっていい」 照「2年したら、もしかしたら、あの子と一緒の高校に通えるんだ」 照「こんなに楽しみな事は無いよ」 照「ああ、楽しみだな。あの子と同じ校舎に通えるんだよ?あの子の先輩になれるんだよ?」 照「素敵だな…とても素敵だ」 照「…おっといけない。早くお店に予約していた玩具を取りに行かないと」 照「今日は咲の誕生日だもんね」 照「最近あんまり元気が無かったよな。最近あんまり話を聞いてあげてなかったけど、京ちゃんと喧嘩でもしたのかな?」 照「最近は私も放課後帰るのが遅くて、いっぱい構ってあげられてないから。今日こそは盛大に祝ってあげなくちゃ…」 照「早く玩具を受け取って、急いで帰って、パーティーの準備を手伝わなきゃ」 照「今日は早めに帰ってくるように伝えておいてあるし、急いで準備しなきゃ」 照「ふふふふふ…」 京太郎「…行っちゃった、か」 京太郎「…はぁ。俺ってば情けない」 京太郎「さっさと名前くらい教えればいいのに」 京太郎「そしたら照ちゃんももっと打ち解けて心許してくれるだろうになぁ…」 京太郎「そ、そんでもって…こ、告白も…」 京太郎「…しっかし、今更切欠も無しにこっちから名前告げるのもアレだったてのはわかるけど、なんだよ進学校決まったら教えるって」 京太郎「つまりそれまで名前伝えれないって事じゃん」 京太郎「名前も知られてないのに告るわけにいかないし…」 京太郎「…先延ばしかよカッコ悪い。臆病もんだわ俺…はぁ」 京太郎「…帰ろう」 京太郎「おお、そういえば、こんな早くに帰るの久しぶりかも。最近は放課後照ちゃんとダベってばっかだったしなー」 京太郎「…ダチとの付き合いも蔑ろにしちゃいかんよな。うん。アイツら、俺が年上の女の人と会ってるって知ってから俺に冷たいんだよなー」 京太郎「…しゃーない。咲に説得と橋渡し頼むか。アイツら、咲の言う事はちゃんと聞くし」 京太郎「…そう言えば、咲とも最近、放課後遊んで無かったなー」 京太郎「…って」 京太郎「…」 京太郎「…」 京太郎「…コンニチワ」 「コンニチワ」 「おい、なんだ?このガキ。お前、知ってんのか?」 「結構前に話した事あったんだけど、覚えてない?私らのイジメ対象庇った生意気なガキの話」 「ああ。コイツが」 「もーアイツなんかどーでも良かったんだけどさ。偶然会っちゃったんなら仕方ないよね」 「なになに?どうすんの?コイツ」 「折角だしやっちゃってよ。喧嘩、得意なんでしょ?」 「一捻りだな」 「そういえば、佐藤さんの件、嘘だったんでしょ?ムカつくし、またいじめ再開しようかな」 京太郎「あ、ヤバいこれ…」 京太郎「…」 京太郎(…はぁ。仕方ない。奥の手、使いますか) 京太郎(これだけは使いたくなかったんだけどなー…) 咲「…」テクテク 咲「…今日は誕生日、か」 咲「…はぁ」 咲「結局、京ちゃんは今日も放課後すぐにどっかに行っちゃった」 咲「ここしばらく、ずっとだよ。確かに友達は他にもいっぱい出来たけど…私は、京ちゃんと1番遊びたい…」 咲「…寂しいなぁ。誕生日だっていうのに、寂しいよ…」 咲「…京ちゃん」 咲「…」 咲「…ん?なんだろう、救急車…?」 咲「公園のほうだ。何かあったのかな?ちょっと見に行ってみよう」 宮永家 照「…咲、遅いな。まったく。どこほっつき歩いてるんだか」 照「…でもまあ、昔は考えられなかったことだよね。友達と放課後遊ぶようになったって事だし、京ちゃんには、感謝しなきゃだ」 照「でも、今日くらいは早く帰ってきて欲しいだけどな。咲の誕生日だし」 照「…あ。でも、もしかしたら京ちゃんにお祝いしてもらってるのかも?それなら遅くなるのもしかたないのかも」 ジリリリリ 照「…ん?電話だ」 照「はい、宮永ですが」 照「ああ、咲か。どうしたの?え?今病院?」 照「ちょっと、落ち着いて話して。何があったの?うん、うん」 照「え?京ちゃんが喧嘩で怪我した?」 照「…だから落ち着いて、咲。大丈夫。大丈夫だから。うん。今お姉ちゃんも行くね。うん。それじゃあ待ってて。すぐ行くから。うん」 照「大丈夫だよ、咲。泣かないで。お姉ちゃんがついてるから」 照「うん。うん。それじゃあ、今から行くから、待ってて」 照「…」プツッ 照「…」 照「…咲、待っててね。すぐ行くからっ!」 病室 咲「ヒック!…ヒッ!ヒック!!」 京太郎「…」 咲「うえええ…えええええ…えええええ…」 京太郎「…」 咲「京ちゃん…京ちゃん…京ちゃああああん…うえええええええ…」 京太郎「…ん」 咲「!!」 京太郎「…あれ、俺…」パチッ 咲「京ちゃん!!」 京太郎「…あ?…ここ…どこ…」 咲「京ちゃん!ここ、病院だよ!京ちゃん、悪い人に殴られて…」 京太郎「あー…頭痛てえ…くっそ」ボー… 咲「京ちゃん!京ちゃん!!」 京太郎「…あれ。照ちゃん」 咲「…」 咲「…え?」 京太郎「…?なんで俺の名前…?言ったっけか?」 咲「え?」 京太郎「…あはは。そんな泣くなよ照ちゃん。ひっで~顔してるぜ…いたたた」 咲「…京…ちゃん?」 京太郎「悪い、嘘。まだ目がまともに動いてないわ。頭打ったからかな。グラグラしてるんだ。気持ち悪い」 咲「京ちゃん…」 京太郎「ぐう…悪い、ちょっと目閉じるな。本格的に気持ち悪い。ああ、そうです。俺、京ちゃん…ははは。なんだか、アイツに言われてるみたいで変な感じだなぁ」 咲「ねえ…京ちゃん?何のこと?それに照ちゃんって…」 京太郎「…ほら、前にも話した事あんじゃん。俺の幼馴染の子でさ。ドン臭い奴がいるんだーって。宮永咲って言うんだけど、照ちゃんにそっくりでさ」 京太郎「…初めて会った時も、最初一瞬アイツがいじめられてるのかって思っちまったくらいなんだぜ。まあ、アイツはチンチクリンだけど。…はは。これナイショな」 咲「…京ちゃん」 京太郎「…ああ、ごめんごめん。会った事も無い奴の事言われてもどうしようもねーよな」 咲「…」 京太郎「あ~…しっかし、どっかのタイミングで名前言っちゃったっけなー。くっそぉ。ごめんなさい。覚えてねーや…」 咲「…」 京太郎「くっそ。畜生。格好悪いなぁ。なんかモヤモヤするし、改めて自己紹介させてくれないか?照ちゃん」 京太郎「…俺、須賀京太郎って言います…ヨロ…シ…ク…」 咲「…」 京太郎「……ごめん。ちょっと眠いから、寝るわ」 咲「…」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 ガチャッ 照「…咲?病院の人にこの部屋だって聞いたんだけど…」 照「…って」 照「この子は…!!」 咲「…」 照「…咲?」 咲「…やっぱり」 咲「…知ってるんだ」 照「…咲」 咲「…ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃん、この子の事、知ってるんだ」 照「…」 咲「ねえ、お姉ちゃん。答えてよ。知ってるんでしょう?」 照「…」 咲「当然だよね。だって、さっきこの子、私の顔見て、『照ちゃん』って言ってたもん」 照「…っ!」 咲「ねえ、お姉ちゃん。ねえ。ねえ、答えてよ。なんでさっきから黙ってるの?ねえ」 咲「ねえ、知ってるんでしょう?お姉ちゃん、『京ちゃん』の事」 照「…この子が」 照「…『京ちゃん』だったのか」 咲「っ!!ふざけないでよ!!!」 照「咲」 咲「なにそれ!?なんなのそれ!!?ふざけてるの!?馬鹿にしてるの!!?ねえ!!」 照「咲、落ち着いて」 咲「落ち着け!?落ち着けって何さ!!この状況でどうして落ち着いていられるの!!!」 照「咲、京ちゃんが起きちゃう」 咲「うるさいっっっっ!!!!!」 照「…」 咲「ねえお姉ちゃん!お姉ちゃん!!なんで私がこんなに怒ってると思う!?ねえ!?お姉ちゃん!!」 照「…」 咲「お姉ちゃんが私にナイショで京ちゃんに会ってたからだと思う!?最近お姉ちゃんが私にあまり構ってくれてなくなってた原因がそれだったからだと思う!?京ちゃんと知り合ってたのを私に黙ってたからだと思う!?」 咲「違うよ!!全部違う!!そんな事よりも、もっと酷いよ!!そんな事全部どうだって良くなるくらい酷い!!!」 咲「京ちゃんがなんで怪我したと思う!?私聞いちゃったよ!最初に救急車を呼んでくれた人が、一部始終見てたって!!」 咲「京ちゃん、不良の人に散々に暴行受けてたって!!殴られながら、蹴られながら!!必死に土下座してたって!!なんでだと思う!?原因はお姉ちゃんだよ!!」 咲「お姉ちゃん、前にいじめてた人の彼氏がカラーギャングだって、話してくれたことあったよね!?その人だよ!!きっとその人に、復讐されたんだ!!」 咲「京ちゃん、言ってたらしいよ!!いくら殴ってくれてもいいから、これで手打ちにしてくれって!!この通りです、この通りですって!!頭地面に叩きつけながら必死に叫んでたって!!!」 咲「何もかも全部お姉ちゃんのせいじゃない!!!」 照「そ…そんな…」 咲「お姉ちゃんのせいだよ!!!お姉ちゃんのせいで京ちゃんがこんな目に合ったんだ!!!」 咲「いじめられてるからって!!京ちゃんに助けを求めたから!!!」 咲「お姉ちゃんなんかが…お姉ちゃんなんかが京ちゃんに近づくからいけなかったんだ!!!」 照「…」 咲「出てって!!!」 照「……さい」 咲「出てってよ!!!」 照「……さ…」 咲「今すぐここから出てけ!!!!」 照「五月蝿い!!!!!」 パンッ 咲「……」 照「さっきから黙ってたら…なにさ…!!」 照「咲は、私の気持ちなんか知らないんだ」 咲「…」 照「すぐに京ちゃんに会えて、仲良くなって。すぐにいじめも無くなって。友達だって出来て、学校で嫌なこと有ったって帰ったら私に泣きつけばいいんだ」 咲「…」 照「咲ばっかりズルい!私には京ちゃんと一緒に居る権利すら無いって言うの!?一生いじめられてろっていうの!!?そんなの不公平だ!!!」 咲「っ!!よく言うよ!私にずっと黙って京ちゃんと密会してたくせに!しかも自分の素性も隠して!?私の姉だって事も説明しなかったの!?」 照「だから、私はこの子のことを京ちゃんだって知らなかった!!」 咲「信じられるわけ無いじゃない!!!」 照「っ!!」 咲「ねえ…」 咲「…それとも、私のお姉ちゃんだって、知られるのが嫌だったの…?」 照「…」 照「…ああ。そうだよ」 咲「…」 照「お前なんかの姉じゃなければ良かった…」 照「お前なんか、妹じゃない!!!」 咲「~~~~~っ!!!」 咲「っ!!帰る!!!」ダッ 照「あ…」 バタンッ!!! 照「…」 照「…あ」 照「…ああ」 照「…ああああ」 照「ああああああああ!!」 照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 数時間後 照は、まだ病室に居た 先ほどの姉妹喧嘩の騒ぎを聞きつけて遅れ馳せながらにやってきた看護婦に叱られて、追い打ちのように意気を消沈させた照は、項垂れたまま備え付けの椅子に座り続ける 途中、京太郎の両親がやってきた。眠っている息子の顔を見て、ほっと一息吐く彼の両親に、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、涙が零れた 挨拶もそこそこに、医者と話をしに行くので出来れば様子を見ていて欲しいと頼まれた照は、また所在無さげに椅子の上で京太郎の顔を見る 布団の上からでもわかるのは、包帯でぐるぐる巻きにした額だけだ 他にどんな怪我があるのだろう、後遺症は残らないだろうか、と心配でまた涙が溢れる 両親が戻って来た 肋が数本折れていたらしい。他にも打撲、内出血などは無数にあるが、後遺症になりそうな怪我は無し。ただし何週間かは入院することになるらしい 説明を受けて、次に照が咲から聞いた事情を話した。彼らは黙って聞いていた。途中何度も嗚咽が止まらなくなり、辿々しくもなんとか説明を終えた頃、今度は京太郎が目を覚ました 京太郎本人から、照の話とは全く違う、彼が絡まれた喧嘩に乗ったという話を聞いた彼の家族は、子供達に何も言及する事無く、今は入院に必要な道具を取りに家に戻っている 照は、動けない 固まったまま椅子に座り、じっと俯いたまま、何も話せない 照は泣いていた 声もなく、泣いていた しばしの逡巡の後、京太郎は意を決したように、照に話しかける 京太郎「…なあ、照ちゃん」 照「…」 京太郎「…照ちゃん」 照「…」 京太郎「…泣かないで。照ちゃん」 照「…無理、だよ…」 京太郎「…」 照「…全部、聞いたよ。なんで、逃げなかったの?なんで、そこまでしてくれたの?なんで、お父さんたちに、嘘の原因、教えたの?」 照「…なんで。なんで、なんで私を助けてくれるの?そこまでして」 照「なんで私なんかのために。なんで私なんかのために。なんで、どうして…」 照「なんで…なんで…なんで…?なんで?なんでそんなに優しいの?」 京太郎「…俺もさ。実は、昔いじめられっ子だったんだ」 照「…え」 京太郎「…ずっと前な。小学校低学年とかそんくらい。ちょっと体弱くってさ。まあ、照ちゃんみたいにひでーもんじゃなかったけどね」 照「…」 京太郎「…で、その後急に身体丈夫になって。割とヤンチャな友達も増えて…はは。その後、どうなったと思う?」 照「…わかんない」 京太郎「…いじめっ子になった」 照「…」 京太郎「…嘘だと思う?」 照「…」 京太郎「そう。マジ話ね、これ。…話すの、照ちゃんが初めてなんだぜ?」 照「…そう」 京太郎「何考えてたんだかね。あの頃は」 照「…」 京太郎「…ああ。本当、何考えてるんだかなぁ俺。こんな話して、照ちゃんに嫌われそうだって思っちゃった。当たり前だ。いじめから助けてようとした友達は、実はいじめっ子でしたってか。ああ、俺の馬鹿」 照「…」 京太郎「…ごめんな。けど、なんかどうしても話したくなっちまって」 照「…」 京太郎「…懺悔でもしてるつもりなのか俺は」 京太郎「…ああ。本当、馬鹿…」 京太郎「…馬鹿…馬鹿…馬鹿野郎…」 照「…本当だよ」 京太郎「…だよなー…」 照「うん」 京太郎「…」 照「…そんなので、私は『京ちゃん』を嫌いにならないよ」 京太郎「…」 照「…そりゃあ、びっくりしたけどね」 京太郎「…」 京太郎「…いじめられて、いじめて、いじめて、いじめて…で、ある日いきなり気付いたんだよな。『あ、俺コイツの事別にいじめたくていじめてるわけじゃねーわ』って」 京太郎「…ノリでやってたんだよ。いじめられてる間は一体どんな深い理由があって!とか、色々原因考えたりもしたけど、やる立場になって分かった。…いや、全員が全員ってわけじゃないのかもしれないけど、さ」 京太郎「…気付いて、駄目になった。もうそいつの事いじめられなくなった」 京太郎「同時に、今までいじめてきた奴らの事を振り返って怖くなった。俺はコイツらに一体どれだけの嫌な想いをさせて来たんだろうって」 京太郎「…その後は、いじめは止めろ!!って立ち上がれれば最善だったんだろうけどな。すぐには無理。いじめるふりして庇うとか、蹴散らすふりして本当にいじめられるの回避させる、とかその程度しか出来なかった」 京太郎「…ダチもみんな俺と大して変わんなかったよ。中学上がって、ちょっと大人になったら、いじめグループは自然消滅。リア充グループもどきの誕生だ」 京太郎「…糞だったよ。いじめ過ぎて壊れそうになって、転校しちまった子も居た」 京太郎「…本当、いじめ、格好悪い、だ」 照「…それで、助けてくれたの?」 京太郎「…」 照「…今までいじめてた人達の分、いじめを無くそうって。いじめられっ子を助けようって」 京太郎「…どうなんだろうね。それでも結局、俺は今までいじめてきた奴らにとっては、ずっといじめっ子だ」 照「…」 京太郎「許してくれなんていえねーよ。俺だって昔俺をいじめてた奴らは、未だに許せない」 照「…」 京太郎「自分勝手だろ?」 照「…」 京太郎「…幻滅した?」 照「…それでも」 照「…私にとって、京ちゃんは、ヒーローだった」 京太郎「…」 照「…私が会った京ちゃんは、いじめられっ子でもいじめっ子でも無くて、私を助けてくれるヒーローだったから」 京太郎「…」 照「だから、もし京ちゃんが今までの事を悪かったと思って、私の私を助けてくれた事を誇りに思えるのなら」 照「…京ちゃんは、今までにいじめて来た子達に恨まれながら、私みたいに困ってる人達を助けていけばいいんじゃないかな」 京太郎「…」 照「そうしてる内に、もしかしたら、君にいじめられて来た子達の中でも、今の君を知って許してくれる、なんて事があるかもしれない」 京太郎「…俺」 照「…期待しちゃ駄目だよ。私はあのいじめっ子達が今後改心したって、簡単に許してあげれる自信は無いから」 京太郎「…ああ」 照「…でも、君が望むなら」 照「私は、君と一緒に、その子達に謝ってあげる」 京太郎「…照…ちゃん…」 照「…薬、効いてきたのかな?眠そうだよ」 京太郎「…る…ちゃ…」 照「今日はもう、おやすみ。…また来るから」 京太郎「まっ……て…俺…たえ…い…と……」 照「…ばいばい」 京太郎「…る…ゃ…」 バタン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5745.html
1 : ◆VB1fdkUTPA [saga]:2013/03/07(木) 01 52 52.64 ID 7H4LaEIS0 ヤンデレNo01.独占恋愛型『駄目だよ、京ちゃん。私以外を見ちゃ、だめ』 ヤンデレNo02.自虐型『私は所詮凡人、京太郎君の周りにはもっとええ子がおるやん』 ヤンデレNo03.奉仕型『僕は君の為にいる。だから、君はただそれを感受してればいいんだ』 ヤンデレNo04.ストーカー型『ずっと、見てるっすよ』 ヤンデレNo05.あがり症型『(女性が男性の手を握ってる絵)』バッ ヤンデレNo06.他者依存型『やだ、やだやだやだやだ!もう生意気言わないからっ!だから傍に、傍にいさせて!!』 ヤンデレNo07.愛情独占型『……ダルいけど、言うよ。―――なんで、他の子見てる?』 ヤンデレNo08.愛憎一体型『咲さんは渡したくないのに、なんで貴方なんかに私は、私は、私……』 ヤンデレNo09.魔性型『狭いとこってどうして落ち着くんでしょうね、須賀君?』 ヤンデレNo10.思い込み型『京太郎、死ぬまで一緒って約束したからな……うち、病弱やけど付き合ってな』 ヤンデレNo11.強襲型『犬!せっかくだから私の世話する栄誉をやるじぇ!』 ヤンデレNo12.教育型『ふふっ、君は本当に――――デキの悪い、生徒だよ』 ヤンデレNo13.百合デレ型『あは……部長と一緒に、可愛がってあげます』 ヤンデレNo14.束縛(監禁)型『ぼっちじゃ、ないよ………』 ヤンデレNo15.破滅型『みんな、みんな無くなっちゃえばいいんです』 ヤンデレNo16.愛縛型『おいで、京ちゃん。怖くないよ』 ヤンデレNo17.排除型『邪魔……退いてくれるかな?』 ヤンデレNo18.被虐型『や、ぁあ……も、っと……いじめてぇな……』 etc、etc、etc―――――― ※このスレの女の子は総じて病んでます。 ※男須賀が主人公。 ※死にます、殺されます。 ※ループしてます。 ※キャラ崩壊注意。 【ルール説明】 1、舞台は全国大会。 2、安価指定のキャラクターと接触。 3、安価内容で関わりあう。 4、病むか、でれるか。 5、病みメーターが一定の数値に達するほど女の子の行動がNPC化していきます。 6、期間は14日から~28日間 7、豊音は大天使、はっきり分かんだね 8、オダワラハコネ先生のセーラはぐうかわいい 9、泉ちゃんのお尻スパンキングしたい 10、かわいい(腹パン) 11、クロチャーはホームグラウンド特化型 12、クロチャーの手首はボロボロ
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/591.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1343646963/ 京太郎「はい。オレ、みんなのために執事になりたいんです。ハギヨシさんみたいな」 ハギヨシ「執事になるのは難しいですよ。須賀様」 京太郎「大丈夫です。どんな修行にも耐えてみせます」 ハギヨシ「そうですか……わかりました。まずは濃厚至極なホモプレイからはじめましょう」 京太郎「ホモプレイですか?」 ハギヨシ「はい。執事になるためには老若男女問わず、すべての方におもてなしする必要があります」 ハギヨシ「そのためには、ホモプレイも必要なのです」 京太郎「わ、分かりました。男に二言はありません。始めましょう」 ハギヨシ「それでは攻めと受けを決めましょう」 京太郎「ハギヨシさんが攻めで」 ハギヨシ「かしこまりました。それでは須賀様こちらにお尻を向けてください」 京太郎「はい」 ハギヨシ「それでは、拝見させていただきます」ズル 京太郎「ハギヨシさん?」 ハギヨシ「……これは素敵な蕾をお持ちでいらっしゃいますね。つい、見とれてしまいました」 京太郎「ありがとうございます」 ハギヨシ「さて、味のほうはどうでしょうか」ペロッ 京太郎「うっ、ハギヨシさん。何をしているんですか?」 ハギヨシ「ほぐしているのです。須賀様は初めてでいらっしゃる。なので、最初に良くほぐす必要があるのです」 京太郎「そうですか」 ハギヨシ「はい。そして味見も兼ねています」ペロッ 京太郎「味なんてあるんですか」 ハギヨシ「もちろんです。須賀様の蕾は大変すばらしい」 ハギヨシ「こんなにも芳醇な香りと濃厚なコクを持つ蕾には出会ったことがありません」キッパリ 京太郎「それより、始めませんか」 ハギヨシ「これは失礼しました。つい、我を忘れていました。まずは、指でならしましょうか?」ニコリ 京太郎「は、はい」 ハギヨシ「そんなに緊張なさると入るものもはいりませんよ」ズプリ 京太郎「うっ!」 ハギヨシ「大丈夫ですか、須賀様?一度、抜きますね」ズポッ 京太郎「ひっ!」 ハギヨシ「やはり、この修行は須賀様には早かったようですね」 京太郎「だ、大丈夫です。ちょっと驚いただけで、続けてください」 ハギヨシ「分かりました。須賀様がそうおっしゃられるのでしたら、私も鬼になりましょう」 京太郎「お願いします」 ハギヨシ「いきなりになりますが、私の愚息を須賀様の中に入れます」 ハギヨシ「細心の注意を払い特性のローションを使いますが、よろしいですね」 京太郎「さぁ、来い」 ハギヨシ「いきます」ズプリ 京太郎「うあっ!(これが愚息だって……すごく大きい)」フルフル ハギヨシ「須賀様、力を抜いてください」 京太郎「む、無理です」 ハギヨシ「それでは、深呼吸を」 京太郎「スーハースーハー」 ハギヨシ「そうです。それではしばらくこうして慣らしましょう」 京太郎「大丈夫です。咲たちは今も一生懸命、特訓しているんです。それなのにオレだけ甘えてなんていられませんよ」 ハギヨシ「須賀様……。どうやら私は鬼になりきれていなかったようですね」 ハギヨシ「須賀様の覚悟、たしかに受け取りました。須賀様の覚悟に執事として精一杯答えたいと思います」フンッフン 京太郎「うっ、うっ」 ハギヨシ「須賀様、分かりますか?私の愚息が須賀様の中で動いているのを」 京太郎「はっ、はい。分かりますっ。ハギヨシさんのオレの中を進んだりしているのが」 ハギヨシ「それでは、次の段階に移ります。そのまま締め付けてください」 京太郎「締め付けるってこうですか?」キュッ ハギヨシ「そうです。須賀様はすばらしい才能をお持ちでいらっしゃる。私もつい出してしまいそうになりました」 京太郎「そうですか。ありがとうございます」キュー ハギヨシ「す、すばらしい締め付けです。ですが、ただ締め付ければ言い訳ではありません」 ハギヨシ「緩急をつけ、さらには包み込むことも大切です」 京太郎「緩急。そして、包み込む……。こうですか」 ハギヨシ「うっ!」ドピュッ ビュルルル 京太郎「(ハ、ハギヨシさんのがオレの中にっ!)オ、オレも」ドピュッ ビュルルル ハギヨシ「こ、これは失礼いたしました。須賀様のアヌスがすばらしくて、不覚にも須賀様の中に出してしまいました」 ハギヨシ「執事として、奉仕するものとして、先に出してしまうなんて……一生の不覚です」 京太郎「気にしないでください。ハギヨシさんがそんなに気持ちよくなれたなんて、オレ、うれしいです」 ハギヨシ「須賀様……。いえ、これからは最大限の敬意をこめて京太郎様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか?」 京太郎「そんなにかしこまらなくてもいいですよ。それよりもハギヨシさんのことを師匠って呼んでもいいですか」 ハギヨシ「京太郎様、こんな私を師匠と呼んでくださるなんて……。京太郎様は透華様に並ぶほどのお方です」 京太郎「そんな、オレなんてたいした人間じゃないですよ。それより、次の修行はなんですか師匠」 ハギヨシ「次は”口”です」 京太郎「口って具体的にどんな修行を?」 ハギヨシ「それは、野獣と化して昏睡レイプです」 京太郎「野獣と化して昏睡レイプ?」 ハギヨシ「はい、執事たるもの口で相手を昏睡させ、野獣と化しレイプできなければいけません」 京太郎「そうなんですか?」 ハギヨシ「はい、優しい京太郎様には酷かもしれませんが、これも修行です」 京太郎「師匠がそういうんでしたら、オレやります」 ハギヨシ「まずは白糸台先鋒の宮永照さんからやりましょう」 京太郎「宮永照って、たしか咲のお姉さんで白糸台のエースですよね」 ハギヨシ「よく、ご存知で」 京太郎「む、無理ですよ。そんな有名人にいきなりなんて」 ハギヨシ「いきなりでなければよろしいんですね?」 京太郎「えっ?」 ハギヨシ「いきなりでなく、段階を踏めばよろしいんですね?」 京太郎「どういうことです、師匠?」 ハギヨシ「私を練習に使ってください」 京太郎「師匠で練習?」 ハギヨシ「はい、京太郎様に自信がないのでしたら私で練習をしてから本番に臨むというのはいかがでしょうか?」 京太郎「師匠に対して野獣になんてなれませんよ!それにレイプだなんてそんな真似……」 ハギヨシ「いいえ、これは和姦です。私も望んでいるのですから、これは和姦です。京太郎様が心を痛める必要はないのです」 京太郎「(どうする)」 京太郎「分かりました、師匠お願いします」 ハギヨシ「それでは、やり方を説明します。まず、キスをします」 ハギヨシ「そして、相手ののどの奥に舌を入れると同時に相手の肺から酸素すべて奪うような感じで息を吸います」 ハギヨシ「これで相手を昏睡状態にします」 京太郎「そんなことが出来るんですか?」 ハギヨシ「京太郎様なら出来ます、それだけの才能を持っていらっしゃるはずです」 京太郎「それで野獣と化すにはどうすれば?」 ハギヨシ「それは、京太郎様の思うままに行動すれば、よろしいのです。それでは、練習しましょうか」 京太郎「はい。それじゃあ、師匠お願いします」 ハギヨシ「かしこまりました」 京太郎「師匠!」ガバッ ブチュ ジュルルルル ハギヨシ「ん!(見事です!京太郎様)」フッ 京太郎「師匠、師匠師匠」フンッフン ハギヨシ「……」ユラユラ 京太郎「アッーーーーーーーーー」ビュルルル ハギヨシ「……」ビクンビクン 京太郎「はぁ、はぁ、こうですか師匠?」 ハギヨシ「見事です。京太郎様」 京太郎「ありがとうございます、師匠。師匠は大丈夫ですか?」 ハギヨシ「お気遣いありがとうございます。私は問題ありません。さて、このまま、照様のもとへ向かわれますか?」 京太郎「そうですね……」 京太郎「師匠はどう思いますか?」 ハギヨシ「そうですね……私を初めて昏睡したとすれば、もうこの修行は終わりにしても良いでしょう」 ハギヨシ「それでは次の修行……デートにおける女性のエスコートの術を教授します」 京太郎「デート!」 ハギヨシ「はい、執事には女性をエスコートする能力も必要ですから」 京太郎「それで、誰とデートすればいいんですか?」 ハギヨシ「私です。京太郎様」 京太郎「師匠とですか?」 ハギヨシ「はい、私とデートをしていただいて、採点いたします。よろしければ、お好きな方に変身しましょうか?」 京太郎「えっ!そんなこと出来るんですか?」 ハギヨシ「もちろんです。執事ですから。いかがいたしましょうか?」 京太郎「それじゃあ……鶴賀の東横桃子さんで!」 モモヨシ「どうすっか~京太郎君」 京太郎「本当に変わった!!」 ハギヨシ「いかがでしょうか」 京太郎「戻った!!でもすごいですね師匠。そんなことが出来るなんて」 ハギヨシ「そんなことございませんよ。それより京太郎様。どこに向かわれますか」 京太郎「それじゃあ・・・」 京太郎(……おかしいだろ、この状況。なんで、見た目美少女の師匠が男湯のサウナで足に鍵をつけているんだぞ) 京太郎(しかも裸で。たしか、ここは公共の場だよな?他の人は気づいてないのか?) モモヨシ「どうかしたんすか?京太郎君、なんで黙ってるんすか?」 京太郎「師匠、なんで誰も気づいてないんですか?」ヒソヒソ モモヨシ「それはですね~。私が変身している東横様はとても影が薄いそうで、ステルスモモと呼ばれてるらしいっす」 モモヨシ「ですから、私が変身することで東横様の能力を強化再現してるんっす」 京太郎「そうですか。しゃべり方とかもまねてるんですね」ヒソヒソ モモヨシ「もちろんっすよ。変身する以上は完璧に変身しないと気がすまないんっすよ」 モモヨシ「それで、京太郎君はこの後、どうすんっすか?」 京太郎「オスプレイですかね」 モモヨシ「オスプレイっすか。いいっすよ。どこでやります?」 京太郎「そうだな……」 京太郎「ここでやりましょう。師匠」 ハギヨシ「ここは、竹井様のご自宅のお隣ではないですか」 京太郎「そうです。ここは部長が住む部屋の隣の部屋。がんばってる成果を部長に少しでも知らせたいんです」 京太郎「だから、ここを選びました」 ハギヨシ「そうですか、京太郎様。私、感動しました。なので、私も全力を持ってオスプレイしましょう」アッー 京太郎「師匠!」 ????「京太郎様、私のことはただ、ホモヨシとお呼びください」 京太郎「ホモヨシ?」 ホモヨシ「はい、私はただ京太郎様を愛する、京太郎様のための存在、ホモヨシでございます」 京太郎「でも、オレはおっぱいが好きなただの男子高校生ですよ。それでもいいんですか師匠?」 ホモヨシ「かまいません。京太郎様がどなたを愛されようとも、私の想いは変わりません」 ホモヨシ「ですから、師匠などと呼ばずにホモヨシとお呼びください」 京太郎「でも、それじゃあ、師匠……いや、ホモヨシさんの気持ちはどうなるんですか?」 京太郎「ホモヨシさんはそれでいいんですか?報われないんですよ!それに、あなたが仕えてる龍門渕家は?」 ホモヨシ「京太郎様!たしかに、龍門渕家にはご恩があります」 ホモヨシ「それでも、今このときだけはあなたとオスプレイできればそれでいいのです。 ホモヨシ「ですから、京太郎様、私とオスプレイしてくれませんか?」 京太郎「ホモヨシさん……」 京太郎「ホモヨシさんはそんなにもオレのことを想ってくれているのに、オレは……オレは……なんて最低な奴なんだ……」 京太郎「分かりました、ホモヨシさん。あなたとオスプレイします」 ホモヨシ「ありがとうございます……。京太郎様それではお願いします」 京太郎「京太郎で……いいぞ。ホモヨシ」 ホモヨシ「分かりました、京太郎」 ――――――隣の部屋―――――― アッー 久「あら、この声はたしか……」 おしまい
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4415.html
恭子「そういや須賀君、ちびっと聞きたいことあるんやけど」 京太郎「え、なんですか?」 恭子「私らと対局した時、やたらとチャンタ和了りしてたでな。漫ちゃんに振り込んだ時も、ヤオ九牌の一盃口の九待ちやったし」 京太郎「はい、そうでしたね」 恭子「な、なあ、それってもしかして赤木プロのチャンタ戦法リスペクトなん?実はな、私も前に験かつぎに真似してみたことあってな、もし須賀君もなんやったらお揃いやでな……!」(ワクワク! 京太郎(気のせいだよな、なんか末原さんに犬の耳とか尻尾が見えるなんて……) 京太郎「とりあえず違いますよ……あの人のやり方なんて、俺には真似できません……」 恭子「あ……そうなん。やっぱ違うんな……」(´・ω・`)ショボン 京太郎(……なんかキュンと来たCVカッパのカーたん飼い主)ざわ……ざわ…… 恭子「じゃあ、ヤオ九牌の和了り多いんは偶然なん?」 京太郎「うーん……偶然かどうかって聞かれると…………半ば必然だったんじゃって気もしますけど」 恭子「ん……どういう意味?」 京太郎「だってほら、俺も雀士の端くれですから」 恭子「うん?」 京太郎「えっと……雀士とかけてチャンタ戦法と解きます」 恭子「その心は?」 京太郎「は…………端(一・九)くれ……なんちゃってー」 恭子「メゲるわ……」 京太郎「…………すみませんでした」 京恭「ハイ、ありがとうございましたー!」 絹恵「アハハハハッ、端くれでヤオ九牌くれとか、アハハッ、アハハハハッ!」 洋榎「おもんないぞー、ひっこめー!」 漫(なんか主将の野次に感情こもってる気がする……) 由子(いろいろと難しい年頃なのよー)