約 36,199 件
https://w.atwiki.jp/wakamatu/pages/41.html
日本海上空 『領空侵犯機に告ぐ。貴機は、日本領空に侵入しかけている。直ちに進路を変え、撤退せよ。繰り返す・・・』 金子二佐が警告を始めた。 「ん?」 風谷は、領空侵犯機の、胴体を見た。何か黒いものがぶら下がってるようにも見えるが・・・。 「!!」 そうか!!こいつは・・・ 「管制塔!!こいつの進路は!?」 『!?え~、民家地帯・・・』 「奴は爆弾を抱えている!!落とす気だ!!」 『重曹ではないんだな??』 「そうだ!!いそがねぇと・・・あっ!領空に入りやがった!!」
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1196.html
北九州市 午後12時32分頃 この時、陸上自衛隊の小倉駐屯地はドーラ軍の攻撃を受けていた。 港に部隊を陸揚げしたドーラ軍は港湾施設と市街地への進攻にあたり、歩兵中心の部隊と騎兵中心の部隊を編成した。 騎兵は地球に生息する種とよく似た馬に騎乗し、煌びやかな甲冑を身に付けている。 その意匠は地球の伝説上の動物であるドラゴンをかたどったようなデザインで、滑らかで艶やかな、金属とは異なる材質でできているような質感をしているのが特徴だった。 騎兵集団のは7~8種類ぐらいのそれぞれ異なる家紋を甲冑のどこかに貼り付けており、それによるグループ分けがなされている。 一つのグループの構成人数はマチマチで、少ない所は10人以下、多いところでは30人は居た。 それらからなる騎兵は200名ほど。 そして、騎兵の一人一人は西洋的なランスでもなく、和槍でもなく、先端に金属球のついた、あの炎や雷を放つ棒状の武器を握っていた。 騎兵集団は北九州の市内を真っ直ぐ南に駆け、わき目も振らずに小倉駐屯地を目指した。 そして、正門に火の玉を放って警衛の自衛官を殺傷すると、突破して敷地内に進入、以後は下馬して戦闘を開始した。 すぐさま第40普通科連隊の隊員たちは小銃を取り、弾薬を受け取って応戦を開始する。 火球や放電と銃弾が交差し、双方が倒れ激戦が繰り広げられた。 2号隊舎付近で部下と共に防御戦闘の指揮を取る内村3尉は、軽装甲機動車(LAV)の車体を掩体の代わりにしながら89式小銃を撃ち、撃ち終わると雨のように飛んでくる火の玉から隠れるために頭を引っ込めて舌打ちする。 3尉の所属する第4中隊の中隊管理棟からは炎が吹き上がり、中隊長ほか自分以外の尉官の半分は行方どころか生死が不明だ。 駐屯地を襲撃した武装勢力の着ている甲冑は、小銃弾を受けても1発程度では倒れない。 防弾プレートでも入っているのか、という抗甚性をもち、倒すにはさらに数発を撃ち込まなければならない。 だが、流石に腕や脚を狙ったものは貫通した。 内村3尉は防衛大卒ではなく、叩き上げの尉官である。 熟練の射撃能力で敵の何人かの太腿を撃ちぬいて、戦闘不能にした。 だが、敵もただ撃たれているだけではない。 拳大の火の玉が頭を下げ損ねた部下を襲い、殺傷する。 それを、別の部下が同僚の援護射撃を受けながら身を低く屈め、負傷者の襟を掴んで引き摺り救出、後退した。 「ちゃんと頭下げろ! 敵の爆発物は、手榴弾ぐらいの威力の奴とロケットランチャーぐらいの威力はある奴と、二種類ある! 大きいほうは当たったら1発でお陀仏だぞ!」 そう叫ぶうちに、「大きい方」の火の玉が近くの軽装甲機動車に直撃、一瞬車体が跳ね上がった轟音と共にLAVは炎に包まれて着地、サスペンションが断末魔の呻き声の様な音を立てて車体の残骸を揺らした。 その威力に内村3尉は身震いし、もう一度舌打ちした。 連隊の本部が置かれている隊舎の方も、炎と黒煙が上がっている。 あちらもかなり苦戦している様だ。 そこへ、その連隊本部への伝令に出していた部下2名が戻ってきた。 「小隊長!」 「おう、連隊本部はまだ生きてるか?」 「はい……ですが、富野分屯地が……弾薬支処が、攻撃を受けている模様です!」 「くそ! 頼みの綱が……ここにある弾薬で応戦するしかないぞ!? 仕方ない、軽MATでも無反動でも武器庫にある火器はなんでも使わせろ! 許可とか言ってる場合じゃない!」 内村3尉の顔に苦いものが混じる。富野分屯地には弾薬支処と通信隊と警務隊しか居ない。 弾薬はあっても装備と戦闘要員が足らないのは明白で、他所からの応援がなければすぐにでも陥落、制圧されるだろう。 そして、弾薬支処からの補給がないとこの駐屯地も戦う事が出来ない。 彼にはこの時知るよしも無いが、分屯地を襲ったのはドーラ軍が市街地に進攻するに当たって編成した歩兵中心部隊の、さらに分かれた一部だった。 「弾薬支所が身動き取れないと、福岡の連中も銃が撃てんぞ……!? 反撃に出てそのまま富野分屯地の救援と奪回に向かうか、どうするか、もう1回連隊本部に言って聞いて来い!」 「はい!」 内村3尉はもう一度部下を連隊本部に走らせると、頭上を飛ぶ火の玉の合間を縫って89式小銃をセミで落ち着いて射撃した。 そして頭を下げ、マガジンを交換する間、部下の一人が軽機関銃でカバーする。 ふと3尉は薬室に5.56ミリ弾を送り込みながら疑問に思った。 「それにしても連中、なんでここと富野分屯地を狙ってきた……? 港からまっすぐ南下すればここで、分屯地も同様に距離的には近いが、なぜこの二つが北九州の軍事防衛拠点だって知ってる……?」 ほぼ同時刻 福岡 ドーラ軍の上陸部隊は福岡市役所に隣接する天神中央公園を調度いい臨時の野外指揮所に選び、天幕を設営して本陣を置いていた。 福岡市に上陸した、ドーラ帝国ヤウフ半島南端に有するフォンザン領駐留の約3000名の集団の指揮を執るのは2名の将軍、アキツとイハマであり、 2人は共にフォンザン駐留軍を統括する5人の守将に数えられ、同格の立場であるが現在はアキツが主将、イハマが補佐する副将の立場にある。 一方、北九州市に上陸した約2000名の集団は同じく同格の将軍、ウガミとエノオに率いられている。 これに、フォンザンに残っている将軍オサワを加え、彼ら5人によって普段は駐留軍とフォンザンの軍政が行われている。 守将らは全て地位の上では同格だが、基本的に年功で序列は決まっている。 福岡市上陸部隊はアキツがイハマよりやや年長のため、主将というわけだった。 「思ったよりもあっけないものだな。 敵軍の兵は最低限の訓練はされているようだが、まるで戦の仕方を知らぬ。 後手に回るばかりで積極的に攻めかかっては来ない。 都(みやこ)は大きいのに軍は弱く、こんな連中によく本国を侵略できたものだ。 おまけに、このような詳細で緻密な地図を、書物庫に保管する訳でもなく堂々と壁に飾っておった」 副将イハマがそう言いながら机の上に眺めているのは、福岡市役所内に掲示されていたものを奪ってきた福岡市内の地図である。 そこに書いてある文字の殆どはドーラ帝国のものと多少似ているが異なる「日本語」だったので何かが書き込まれているのかまでは 読む事が出来なかったが、どの道路が何処に通じているのか、橋が何処にかけられているのか、その大きさから推定できる一度に通行できる兵力まで、充分に読み取る事が出来た。 彼の発言の中に出てくる兵、軍というのは福岡県警・機動隊の事で、揃いの制服に武器を有している事からこれをこの地の守備軍だと勘違いしたものだ。 「おおかた、本国を征服して安心しきっておったのだろう。 我らのような属領の駐留軍が戻って来る事は考えなかったと見える。 この分だと本州、そして帝都まで攻め上って皇帝陛下を蛮族の手よりお救い申すのも容易かろう」 イハマはそう続けてニヤリと笑い、自軍の優勢と敵の弱さからくる余裕に喜んだが、主将のアキツは少し違った。 「だが、敵の兵は一人一人が、我らとは異なる小型の「杖」を有し、牽引する馬や牛も無く走るという第3期文明の遺物「自動車」に乗り移動する。 その杖は連射が効く上に、鉄片を投射する魔法を封入されている。 我が軍の歩兵の鎧は熱や雷や冷気には強いが、弓矢や刃物にはさほど強いと言えぬ。 タイカとの戦に適応させた対魔法戦仕様だからだ。 多くはないとは言え、それなりの被害は出ている……」 おそらくは、奴らが本国を侵略した時にこちらの鎧の弱点を知って対応させたのだろう、とアキツは結論付けた。 が、これは誤解で、ドーラ軍は交戦した日本警察の持っている装備、銃器類を、自分たちの使う第4期文明の遺物、 「魔法」と呼ばれる技術による兵器、「杖」と勘違いしたものであり、ドーラ帝国とこの惑星の戦争では「杖」が飛び道具として 普及しているのに対して地球そして日本では金属の弾丸を発射する銃が主流であるという、技術の違いからくるコンセプトの差で偶然こういう結果になったに過ぎない。 そして、ドーラ軍は時空転移によってこの惑星に出現した日本を、彼らの故国であるドーラ帝国を侵略した敵だという誤解もしていた。 日本政府が航空機や艦艇、そして衛星によって行った調査の通り、この惑星の大陸は地球に大まかにはよく似ている。 細かい部分の形状の違いはともかく、ユーラシア大陸があり、ロシアの東沿岸部があり、朝鮮半島があり、中国があり、台湾がある。日本政府はそこに……大陸の近海に日本列島が転移によって出現したと考えていた。 だが、ここまで地球に酷似した地形をもつ惑星に、日本列島だけ無かったと考えるのは不自然ではないか?という意見もあるのは以前に述べたが、悪いことにそれは当たっていた。 元々この惑星に存在した日本列島に相当する弧状列島にはドーラ帝国という国家が存在したのである。 そのドーラ列島は日本列島が時空転移する際に消滅したのか、日本列島と入れ替わりで地球に時空転移したのかは、結局そのどちらとも、やはり現在は確認する術が無い。 そして、さらに悪いことにこの世界に元々あった列島に存在したドーラ帝国は列強国として周辺の島々や半島の一部を属領として従えていた。 日本列島の時空転移によって本国からの連絡・飛行船や船舶の行き来が突然途絶え、見慣れぬ飛行物体や大型の船舶の 往来を知ったドーラ帝国の属領駐留部隊は本国に何かが起こったことを察知、ただちに偵察部隊を密かに日本列島に潜入させた。 そして帰還した偵察部隊は自分たちが上陸したのがドーラ本国ではなく転移してきた日本列島だと知らぬまま、「ドーラ本国の都市や住民が見えず、見慣れぬ都市が建設され、見知らぬ民族が住んでいる」と報告したのである。 これを、属領駐留軍の将軍たちは「本国が外敵に侵略されて瞬く間に征服された」と判断し、本国救援のための兵力を派遣したのだった。 「いかなる国の蛮族であろうと、許しておかぬ……奴らの王にも兵にも、民の一人一人にも、我らドーラ人の強さを思い知らしめてくれん」 そう言って拳をわなわなと震わせながら握り締めるアキツと対照的に、イハマは余裕のある様子で返した。 「既に奴らの兵は地獄に送り、民は多くを俘虜にして思い知らせてやったわ! フォンザンに送るか、ヤウフの鉱山にでも売れば儲かるぞ!」 「……イハマ、本国を奪還し皇帝陛下をお救いするまでが戦ぞ。 奴隷交易の皮算用は後にしろ」 侵略者から故国を取り戻す重要な戦争であるというのに、イハマの態度はどこか真剣みが無いようにアキツには感じられた。 アキツがイハマを嗜めたその時、ちょうど報告を告げる兵が幕舎に飛び込んできた。 「申し上げます! ウゼン(北九州市方面に相当するドーラ帝国の地名)の本陣との転移門が開き、伝令が到着しました!」 「転移」の魔法は、短い一定の距離の間で人や生物、物品などを空間を跳躍して送り込んだり呼び出したりする魔法だ。 それを行うには幾つかの条件を揃え、事前の準備を整える必要があり、いつでも自由に出来るという訳ではない。 呼び出す側と呼び出す対象に魔法的処置を施さなくてはならないし、福岡と北九州までの距離はともかくドーラ帝国の属領フォンザンと日本の九州までは少し距離が足りない。 また、一度に行き来できる質量も上限があった。 だが、移動にかかる時間をほぼゼロに出来るという点では便利で、主に軍事用途に使われている。 二人の将軍は、北九州市に上陸した部隊からの伝令の報告を受けた。 「それで、ウガミとエノオの方の様子はどんなだ」 「は、両将軍は蛮族がウゼンに建てた都を攻めると同時に、ウゼン城とエーテル保管場の制圧に乗り出しましたが、 いずれも市中で遭遇した兵とは異なる練度、装備の精兵と遭遇、苦戦しております」 「何? ウゼン城の奪還には騎士団を持って当たらせるよう命じたはずだが。 精兵とは言えそれほどのものか? 我らドーラの勇猛を持ってなる名門の騎士が梃子摺るほどの」 ウゼン城は、ドーラ帝国が北九州市に相当する地域に建設させた城郭の名前である。 それを奪還するために派遣されたドーラ帝国の騎兵は軍人としての英才教育を受けた貴族の子弟で構成され、全員が「杖」を標準装備し甲冑も魔法に耐えるだけでなく矢や槍を容易に通さぬ最高のものが揃えられている。 歩兵の甲冑を貫通する銃弾も、騎士の甲冑は易々とは通さないはずだった。 「それが、敵兵はその装束も、動きも、用いる杖の性能も市中の兵と大きく異なり……騎士団に大きな被害が出ております。 さらに、騎士団からの第一報によれば、ウゼン城が……城の石垣も堀も、全く見当たらぬ、まっ平らに直されて奴らの陣屋と思しき建物が代わりに建てられていると」 「なんだと!!」 その報告にアキツは机に拳を叩きつけて怒り、イハマも唖然として口を開けるばかりだった。 「ウゼンの城は、西方鎮守府と本州を繋ぐ重要点として心血を注いで建設した、宝だというのに……! あの美しさと威容を兼ね備えた城を、いつか皇帝陛下にご覧になっていただく筈だった……!! それを、奴らは壊して平らにしたというのか!!」 これも誤解で、日本の北九州市の小倉には陸上自衛隊の駐屯地があり、城郭は無かったわけだが、両者が同じ地点に建っていた事によるものだが、 アキツたちドーラの将軍には拠点としても、思い入れとしても価値の高い城が永遠に失われた事による怒りは簡単に収まるものではなく、その迫力をして二人の目の前に控える兵士たちを戦慄させた。 「許さぬ……! なれば、少し早いがドラゴンを出そう。 奴らがこの地に建てた都ごと、焼き払って報復としてくれん!!」 アキツのその発言を耳にしたイハマが、驚いて慎重論に走る。 あまりにアキツの怒り様は尋常ではなく冷静さを欠き、報告を受ける前と役割が逆転していた。 「だがアキツよ、ドラゴンは本来伝令に使うもの。 数も多くは無いぞ? それに、既に撃ち落したという報告が上がっているが、 奴らの喧しい風船(かぜふね:帆走式飛行船の名称 ここで指しているのは撃墜された報道ヘリコプター)がまた出てくるとも限らん。 あれが武器を持っているかどうか未知数だ。 それに、巨大な飛行機械(空自のF-15や海自の哨戒機)にドラゴンが対抗できると決まったわけでもない」 「構わん。 出てくるなら即座にドラゴンか騎乗する騎士が杖で撃ち落してしまえばいい」 こうして命令が下され、湾内に停泊する船の一つの船倉で眠らされていた翼を持つ大型生物たちは、手綱を握る騎士を背に乗せて日本の空へと舞い上がった。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2435.html
「あー! キャロルがアリスのコロッケ取った!」 目に悔し涙を浮かべて、両腕をぷるぷるさせるアリスに私ことスチール…じゃない、キャロルはにやりと勝ち誇った笑みを浮かべてあげます。 「弱肉強食が我が家のルールですよ?」 「勝手にルールを作らない、というかそれ僕の夕飯だし……」 私の隊長であり私たちのマスターである冴えない男が苦笑いを浮かべて「お兄ぃちゃぁぁん!」と泣き付くアリスをあやしつけます。 「隊長、神姫が食べる量なんてたかが知れているでしょう? ねずみに齧られるくらいの量を食べられたからといって文句をたれられても困ります」 神姫である私たちは食事を取る必要はないのですが、せっかく物を食べるという機能が備わっている以上、美味しいものが食べたいというのはなんら不自然な感情ではないはずです。むしろ、私たちの分のご飯を用意していないこの野…男の甲斐性の無さが一番の問題ではないでしょうか? 「文句を言ってるわけじゃないだろ? 美味い?」 腹が立って無意識にもうひとかけらむしり取って食べていた私に甲斐性無し、いや、マスターが話しかけてきました。 「美味しいですよ? ですが、しいて文句をつけるなら食卓に油物しか並んでいない現状は改善した方がいいとは思います」 そういうと立っている食卓をに並んだ食材に指を向けます。 「一人暮らしだとどうしても自分が好きなものしか食べなくなるんだよ。別に太ったわけでも体重増えたわけでもないしいいじゃ……」 「よくないよっ!」 油物野ろ……マスターの胸(正確にはシャツに)にしがみついてぐすぐすと鼻をすすっていたアリスが突如声を荒げました。 「昨日はてんぷらだったし、今日はとんかつとコロッケ、一昨日はえっと?」 「店屋物でしたね。ほっと○っとのカツ丼」 アリスの記憶回路の修理の必要性を感じながら答えました。 「そうだよ! 最近、お兄ちゃん油ものしか食べてない! 絶対体がおかしくなるよ?」 心配そうな瞳で覗き込まれて心が揺らいでいるのでしょうが、マスターは「と、いわれても」というような顔をしています。 「アリスの言うことはもっともですよ、マスター?」 ガラでもないですが、この未来の生活習慣病患者に説教をたれてやることにしました。 「どう考えても野菜が少なすぎます。油分とたんぱく質だけで人は生きてはいけないのですから、せめて食卓にもう一品、そうですね、サラダだけでも追加することを進言します」 私の進言に「えー、でもぉ、めんどくさいしぃ」とでも言いたげな表情を浮かべるマスターに私が苦言を呈する為に右手を上げたところで「確かに、エレガントではありませんわね」と上から目線の勘に触る声が、実際上から聞こえました。 「何しに出てきたんでしょうね、引きこもりの『水銀中毒』さん」 「聞き捨てなりませんわ、とはいえ、どこから訂正していただくのがよろしいかしら?」 パソコンの載せてある台の上でムカつくくらい小粋に足を組み、アメリカ軍では20年以上前から交換が行われている灰色を基調としたUCPパターンの戦闘服で身を包んだHMT型の神姫。 「そうですねぇ、直射日光に当たるのは気が進みませんわ。と家でゴロゴロして、バトルなんて野蛮でナンセンスですわ。とかのたまわってトレーニング機で仮想庭園を作ってお茶を飲んでいるのを、私は引きこもりと呼んではいけないのでしょうか?」 「まぁ、それのどこがいけませんの? わたくしのこの珠のようなボディーに傷がつくのは兄様、いえ、人類全体の損失ですわ。 ましてやバトルなんてとんでもございません」 距離はかなり離れているのですがふふん、と鼻で笑う声が聞こえてきそうな癪に障る話し方に私は味方を求めマスター達の方を振り返り…… 「ねぇ、お兄ちゃん、本当にダメなんだからね?」 「あぁ、わかったって、まったくアリスはかわい「死ねっ!」あごっ!!」 にやけた顔のマスターの顔面に陶磁の箸おきを全力投球してから、再び水銀中毒に向き直りビシィッ!と擬音の響きそうな勢いで指差しました。 「とにかく、そこから降りてきなさい!」 「お断りしますわ」 その一言と同時に私の投げた十円玉をひょいっと避けて、人を小ばかにしたような嘲笑を浮かべてみせたのを見て、私のあるはずのない血管がぶちぃっと音を立てて切れました。 「いい覚悟ですね水銀中毒……榴弾砲で粉々にしてあげますよ?」 「あら、わたくしが『戦わない』からといって『戦えない』と誤解されても困りますわよ? そんなことより、今は兄様の食生活の方が大事なのではなくて? 鋼鉄旅団さん」 売り言葉に買い言葉で、ヒートアップしていく私にやれやれ、これだから野蛮な雌豚は困りますわ。 悔しかったらぶひーっと啼いてみなさいな、とでもいいたげな哀れみすら滲ませた嘲笑から「けっ」っと視線をそらしてから、再びマスターの方に向き直ります。 「で、あちらの糞生意気なビッチこと水銀中毒も言ってますが「誰が何ですって! 兄様になんてことを!」あー、とにかく……」 「アリスが作る!」 その一言がまさしく、その後私達が体験する苦労の引き金を引いたのであった まる 後半へ続く
https://w.atwiki.jp/ja2047_memorial/pages/604.html
Re 交戦者とは 2006/ 8/15 18 05 [ No.37542 / 39216 ] 投稿者 ja2047 あー、ありがとうございます、higetaさん。 法文そのものではありませんが、 以下の記述は、jaさんの説を裏付けるものだと思います。 ええ、当然私の理解とは矛盾しないし、裏付けと言っても構わないのですが、スマ氏の理解とも完全に対立しているわけではありません。彼はこれを自説の裏付けだと言って見事に説明してしまうと思います。 同宣言において興味深いのは、軍服規定を必ずしも厳格にまもらるべきことを要求されていない第10条の規定です。 これは群民兵の規定ですね。 市民が愛国の念から侵入軍に武装抵抗するのは近代国家にとってはむしろ賞賛されるべき行為であるわけで、ブラッセル宣言の後に国際条約となったハーグ規約でも、当然に認められているわけです。 たとえ敵国のことであれ、市民が愛国至誠の情から武器を取って抵抗することは、賞揚されるべき行為であって、処罰すべき行為ではないという思想が近代国際法の根底にあると思うのですが、今日の日本のにわか愛国者諸氏にはこの思想が理解できない。 平和主義者の平和ボケは愛嬌ですが、右翼の平和ボケというのはどうしようもないです。 返信 これは メッセージ 37537 higeta2001 さんに対する返信です もどる
https://w.atwiki.jp/mtgflavortext/pages/9075.html
「我らの盾が奴らの希望を阻んだのだ! 我らの剣が奴らの勝利を切り伏せたのだ!」 "Their hopes dashed on our shields! Their victory slashed by our swords!" アラーラ再誕 【M TG Wiki】 名前
https://w.atwiki.jp/jhs-rowa/pages/68.html
とある七人の接触交戦【エンカウント】(前編) ◆j1I31zelYA 『以上が、お主の未来日記に関する説明じゃ。何か分からないことはあるかの?』 「いや、正直、突っ込みたいところは色々とあるんだけど……『日記』の、ルールを覚えるだけはできた」 「おお、今回はみな日記の理解が早いようで、ワシとしても助かるのじゃ。 それで、どうじゃ? お主も所有者となるのか?」 「えっと……本当のところ、遠慮したいと思ってた。だって、日記が壊れたら契約者も死んじゃうんだろ? 水没したり、携帯をいじってる間に寝ちゃって潰したりすると危ないじゃないか」 「お主、殺し合いというのに庶民的な思考よのう……なら、契約は見送りということで良いのか?」 「いや……それでも私は、その『契約』っていうのをしたい」 「ほう。つまり心境の変化があったということかの?」 「もし、秋瀬さんに携帯を見せてもらわなかったら……拒否してたかもしれない。 でも、アレを見た以上、日記があるのとないのでは、すごく違った結果になるように思えるから」 「了解じゃ。では、これでお主も、『The wacther』の所有者と『みんなーっ! 七森中学一年生の、赤座あかりだよーっ!』 「あかり!?」 「……っていう経緯で、私は『所有者』になったんだ」 「へー、じゃあキミは、最初に拡声器を使った方の子の知り合いだったんだ」 とっぴな話を信じてもらえるかどうか不安だったけど、同行者は恐いぐらいあっさりと納得してくれた。 真希波と名乗ったその女の人もまた、秋瀬さんと同じく独特の雰囲気を持っていた。 大人びた容姿をしているけれど、たぶん私たちと歳は変わらない。 すらっとしたスタイルで、真っ暗な山道をスイスイと猫みたいに歩いて行く。 しかも鼻歌まで歌っている。 機嫌が良さそうにすら見える。 つまり、このヒトもあの秋瀬という男の子と同じで、『非日常』の側にいる人間なんだろうな、という匂いがある。 そんな場馴れした感じの真希波さんに、ほてほてと付いて行くように歩く私の姿は、傍目にはきっと頼りなく見えただろう。 最初に声をかけてきたのは真希波さんの方だったけれど、『不安だから一緒に来て』という風ではなかった。 『付いて来たいなら別にいいよ』という感じ。 同行することになったいきさつは、簡単なものだ。 出会って、のん気に自己紹介なんかを交わして。 とにかく、詳しい話は目的地に向かいながらしましょうということになって。 なんて無警戒な、と人が見たら呆れそうなぐらい、わたしたちは簡単に組んでしまった。 いや、声をかけられた時は緊張したし、人並みに警戒もした。でも、真希波さんの持つ、ほにゃーんとした空気に呑まれてしまったところがある。 もちろんそれだけで連帯したわけじゃない。 真希波さんもわたしも、おおげさな言い方をすると『同じ目的』を持っていた。 しばらく前に聞こえた、二つの『呼びかけ』が気になっていて、それが聞こえてきた方に向かっているところなんだ。 「じゃあ、キミが山小屋の方に向かってるのは手がかりを集めたいから? 『あかり』っていう子は、呼びかけたのにいなくなっちゃったみたいだし」 「うん……桐山っていう人の話だと、近くにあかりの……その、殺された跡はないようだし、たぶん無事なんだとは思う」 『遺体』という言葉を使うには、まだ抵抗があった。 そのうち、嫌応にも慣れるのかもしれないと思うと怖いけど、今は、まだ。 「うん、あの呼びかけは、嘘をついてなさそうだったしね~。 皆殺しをするために人を集めたいなら、『協力しないやつは殺す』とか物騒な脅しをつける必要はないもんね。 ……ただ、あんまり平和的な人とも思えないな。月岡クンも、桐山って人は危険だって言ってたし」 「はい、私の『予知』にも、かなり危険なことが書かれてます」 私があかりの声に反応したのに対して、真希波さんは二度目の呼びかけ主に興味を示したらしい。 私と会う前に会話した人から、『桐山和雄』のことを聞いていたそうだ。 その人は『桐山和雄には近づかない方が……』と忠告してくれたそうだけど、真希波さんは『だからこそ気になるじゃない』と言ってのけた。 そんな彼女は、やっぱり『非日常』を楽しめる側の人間みたいだ。 もっとも、私も同じ場所に行こうとしてるんだから、人のことは言えない。 ……だって、あかりは大事な後輩で、幼なじみなんだから。 「『予知』って言えば……その『日記』で、桐山と『手ぬぐいの人』のことは何か分からないの? ほら、本当に殺し合いに乗っているかとか」 「残念ながら、そこまでは。……どうも『2人の日記』は、『相手を殺すこと限定の予知』に特化してるみたいです。 今のところ、互いに『いかに殺すか』の予知しか出てません。……だからこそ『手ぬぐいの人』が乗ってるのは間違いなさそうですけど」 「ふ~ん。それでもそこに行くんだ。あたしが見たところ、キミは戦うことが好きってタイプじゃなさそうだけど」 「それはそうなんですけど……でも、その『手ぬぐいの人』が、あかりのことを知ってるかもしれませんから。 ましてや、その人があかりに何かしたかもしれないなら、見過ごせません」 自分で言ってて、かなり『未来日記』の情報に踊らされてるな、と思う。 逆に言うと、支給品のおかげで行動方針が固まった、ということなのだけど。 あの自称探偵という男の子の助言に従って、私は支給された道具にすがった。 そして契約したのが、『ある程度の未来を予知する力』。 漫画みたいだけど、私の身の上におこっていることだ。 とはいえ私の未来日記である『wacther(正式名称The watcher)』自体には、予知能力がない。 『wacther』は、他人の未来日記を読むことができる未来日記だった。 『それってチートじゃん!!』という京子の歓声が聞こえてきそうだ。 『他人の日記を読める日記』が出て来るからには、『未来日記』を支給された人はたくさんいるのだろう。 ……などと感心している間もなく、山小屋の方に近づくにつれて2つの予知が来た。 片方の日記には、『手ぬぐいを鉄に変えて、桐山和雄という人物を殺す方法』が、 もう片方の日記には『鉄の槍を回避しながら、その男を殺す方法』が、 それぞれ、予知されていた。 もちろん、『桐山和雄』という名前には聞き覚えがあるわけで。 しかも『手ぬぐい』という言葉は、その桐山和雄が放送で口にしていた単語でもあるわけで。 どう見ても、『殺し合いに乗った手ぬぐいの人』と、『殺し合いに乗った人を殺すつもりの桐山和雄』が、殺し合う光景を読んでいた。 そんな2人の間に割って入って、何ができるかというと困るのだけど……でも、あかりの手がかりを見過ごすことは、それ以上にできない。 ……せいぜい考えて決めたのが、こっそり近づいて状況を見守り、割って入るかは状況次第、ということ。 「あ……」 「どーしたの?」 「『手ぬぐいの人』の方の日記が予知から消えた……このエリアから、外に出ちゃったんだと思います」 ちょっと聞いたところ反則気味な『wacther』だけど、制限もかかっているらしい。 同じエリア内にいる参加者の未来日記しか、覗き見できないそうなのだ。 日記の所有者が死ぬと『DEAD END』という予知が出るそうなので、『手ぬぐいの人』は死んだのではなく逃げたのだろう。 「う~ん、なら手ぬぐいの方が逃げて、戦いは終わったってことなのかな。」 「それで桐山さんの方はまだこの辺にいる、と……あ、山小屋が見えて来た」 「よし、じゃあ用心して、こっからはライトを消してと。 ……あれ? でも、人影は複数いるみたいだよ。ほら、携帯の灯りが2つ」 なるほど、そこには確かに、3つの人影があった。 携帯を持って――そして銃器らしい形の塊も持って――立っているのが2人。 座っていて、銃を向けられているのが1人。 会話を交わしているみたいだけど、ここからは聞き取れない。 でも『膠着状態』に陥っている事はよく分かった。 ……どうしよう。 迂闊に割り込んだら、どっちかの持っている銃器がこっちを向くことは想像に難くない。 何より、2人の行動が『wacther』に予知されていないことが私には不利だった。 桐山和雄からすれば、あの行動は予知するまでもないことらしい。 これじゃあ、状況を見極めて情報を聞きだすことができない。 「よし。んじゃー、あたしが確かめて来よう。あたしも、どうしてああいうことになったのかは知りたいからね」 「ええっ。そこまでしてもらうわけには……」 いくら真希波さんが楽しげでも、真希波さんだけに任せるのは遠慮したい。 あかりの安否が気になるというのは、私の都合なんだから。 私の都合で、危険な役目を、出会ったばかりの真希波さんに背負わせたりはできない。 「大丈夫だよ。あんな危ない放送をした人がすぐに殺さないなら、むしろ交渉の余地がありそうでしょ。それに、こっちにだって武器はあるのだよ」 真希波さんは、支給された銃器を頼もしげに掲げてみせる。 その笑顔からは、何の恐怖も気負いも見てとれなかった。 「それにさ……自分の目的に人を巻き込むのって、気おくれしない?」 一転して、真希波さんの表情が切り替わった。 温から冷に。 ニマニマした笑顔から、真剣かつ悟りきった表情に。 その独特の空気に引き込まれて、私は頷く。 「あたしもそうなんだ。だから、それって逆も然り、だよね。 他人の目的に巻き込まれて、他人に気おくれさせるのも気が引けるでしょ? だからあたしは、『そこまでしてもらう』とかじゃなくて、自分の興味からこうするの。 そこんとこ、よろしくね」 ウインクする人をカッコいいと思ったのは、初めてのことかもしれない。 ◆◆◆◆◆ 落ちつけ、七原秋也。 ひとつ間違えれば、宗屋は死ぬぞ。 俺はそう肝に銘じて、桐山にかける言葉を探した。 桐山の銃口が、宗屋に向いている。 そこにいる桐山和雄は、俺の知らない桐山和雄のようだ。 第68回プログラムで俺と殺し合ったりしていないし、この殺し合いに乗っているわけでもないらしい。 けれど、おそろしく冷たい目をして、淡々と人間に銃口を向ける姿は、かつて殺されかけた桐山和雄という人間そのものだった。 このままだと、桐山は宗屋を撃つ。 俺がひとつ間違えても、桐山は宗屋を撃つ。どころか、俺さえも撃つ。 「待て、桐山。俺も宗屋も、お前に危害を加える意志はない。 だから宗屋を撃つ前に、俺の話を聞いてもらえるか」 この状況で、桐山を撃つというのは無謀だ。 桐山和雄の強さを、俺はよく知っている。 1対1の撃ち合いで俺が有利に立てるとは思えない。 仮に立てたとしても、桐山の性格上、間違いなく宗屋を盾にするだろう。 果たして桐山は、俺の方を向いた。 銃口は、宗屋へと向けたまま。 「話を聞こうか」 感情の欠落した透明な瞳に睨まれながら、俺は考える。 桐山の人間性について、オレが知っていることは多くない。 一度殺し合った仲ではあるものの、オレたちとこいつは会話らしい会話もしたことがなかった。 でも、見当ぐらいはついている。 と言っても、オレが考えたことではなくて、川田の分析をそのまま鵜呑みにした考察だけどな。 川田が言っていた。 桐山和雄には、『理由』がない。 自分が何の為に何をしたいとか、何をしたくないとか、何をしてはいけないとか、何をすべきだとか、そういう価値基準がない。 そしてオレも、それが本当のところだと思っている。 「まず前提を確認したいんだが……俺は、お前に協力する意志がある。だから、できるだけ穏便に話を進めたい。 俺が知る桐山和雄は、殺し合いに乗っていた。だがお前は脱出を目指している。 しかし、殺し合いに乗った人間は殺す。非協力的な人間も殺す。 そしてお前は、宗屋を『非協力的な人間』と見なして銃を向けた。そうだな?」 頷き、肯定する桐山。 聞いただけでは、過激な独裁者のような振舞いだ。 しかし、きっと大した理由なんてないんだろう。 コイントスの結果とか、棒を倒した方向とか、じゃんけんで負けたとか、そんな小さな気まぐれで。 「違うんだ! 佐野はぶっちゃけ、殺し合いに乗るような奴なんかじゃねえ! さっきは俺のミスで逃がしちまったけど、もっと上手く説得すれば、頼もしい仲間に――」 「宗屋、今は少し黙ってて欲しい。この男には、そういう話をしても無駄だから」 『佐野』という男を殺さずに止められる、と言ったところで、桐山相手に意味はないだろう。 桐山は、『殺し合いに乗った人間を殺す』と決めただけだ。 別に、犠牲者を減らそうだとか、殺し合いに乗った人間を説得できるかとか、そういう人並みの『理由』があってそうしてるわけじゃない。 だから俺は、違う角度から反論した。 「宗屋はあの男を逃がそうとして逃がしたわけじゃない。お前に非協力的な態度をとったりしてないぞ」 「しかし、その宗屋という男には、佐野という男を殺す意志がなかった。それは、俺のやり方に反したことになる」 桐山の主張は、痛いところをついていた。 ようするに、桐山はこう問いかけているわけだ。 宗屋は、『殺し合いに乗った男』の仲間なのか、と。 『殺し合いに乗った男』を助けるつもりなら、敵と見なすと。 どうする。 宗屋の愕然とした視線と、桐山の静かな視線を同時に的にされて、俺は冷や汗を流した。 たとえこの場で「仲間じゃない」と言ったところで、あの佐野という男と再び遭遇すれば、宗屋が今回のようなことになるのは目に見えている。 かと言って、宗屋に仲間のことは諦めろと言うわけにもいかない。 納得するような奴じゃないだろうし、もし俺が同じ立場で典子のことを諦めろと言われたとして、そんなことできるはずがない。 宗屋が『桐山に否定的な人間』であることは、隠しようがない。 ならば―― 「桐山、俺に1つ『提案』があるんだが――」 「ちょっといいかな。あたしもまぜて欲しいなー」 実に無造作に、第三者が割り込んできた。 少し長めの髪を2つに縛った、眼鏡の女だった。 特に緊張した風でもなく進み出たその手の中には、小型拳銃が光っている。 桐山のマシンガンが、女の方に向く。 奴のことだから、女の接近には薄々感づいていたのかもしれない。向こうから接触をして来ない限りは宗屋の対処を優先したってとこだろう。 どっちにしても、俺たちにとっては不味いことになった。 この女の子が、大人しく殺し合い否定派を名乗って、桐山を刺激しなければそれでいい。 しかし、そうじゃなかった場合は―― 「銃口を降ろせ。指示に従わない場合は、敵対する意志があると判断する」 「それはお互い様じゃないかな。あたしはキミの放送を聞いてここに来たけど、キミが危険人物じゃないという確証をまだ得てないよ。 ……例えば、キミは一度殺し合いに乗ったことがあるんでしょ? 月岡クンから聞いてるよ」 月岡クンから聞いている。 つまり彼女は、俺たちのクラスメイトである月岡彰と接触したらしい。 それも、俺と同じく『第六十八プログラムに参加した』月岡彰と。 「そっちがここに招待してくれたんだから、まずはそっちが信頼を得られるように証明なり弁明なりをすべきじゃないかな」 少しだけ安堵した。 どうやらこの女の子、思いのほか、『情』より『利』で物事を判断するタイプみたいだ。 そして桐山には、そういうタイプの方がよほど相性がいい。 俺は宗屋に向かって声を出さず、今のうちに近くに来いと手ぶりで合図する。 女の子と桐山の対応次第では、俺はリスクを冒してでも桐山を撃たなきゃならない。 「なるほど、お前の言うことに一理がある。しかし、『プログラムに乗った件』については、俺に弁明のしようがない。 というのも、俺はそのプログラムに参加した桐山和雄ではないからだ。 ここにいる七原の弁明を信じるならば、『プログラムに参加した桐山和雄』はおそらく存在する。しかし、それは俺ではない。 現時点では、それが時間操作によるものか、あるいは並行世界の理論を持ち出すか、いずれにせよ超常現象として説明する他はない」 「ぎにゃあ……その説明は、いくら何でも、苦しいにもほどかあるんじゃないかな~……。 でもあたし、『並行世界』って言われると、心当たりがないこともなかったりするんだよにゃ~」 俺も心当たりがあると言われて驚いたけど、宗屋と佐天から聞いた学園都市やら神様やらの話を思い出す。 きっとこの子もまた、2人と同じ様に『大東亜共和国のない世界』から来たんだろう。 「じゃあ尋問の方向を変えるよ。最初に呼びかけた『赤座あかり』って子がいなくなったのは本当? その子に危害を加えたりはしてないの?」 女の子は追求の矛先を変えた。 もしかすると、その赤座という子の知り合いなのかもしれない。 「その2つの質問には『そうだ』と言うしかないな。俺は手ぬぐいの男に、赤座あかりの居処を問いただした。 しかし奴は、赤座あかりを知らないと言っていた。手ぬぐいの男が殺し合いに乗ったと認めた以上、やつがその点においてのみ嘘をついたとは考えにくい」 「ふ~む。それもそうだねえ。それに、同じことはキミにも言えそうだ。協力しないヤツは殺しにかかると宣言したのに、赤座さんの一点で嘘をつくのも不自然だし……」 「納得してもらえたか? ならば――」 「ちょっと待って、一番気になる問題が残ってるってば。キミたち、今の今までどうして銃を向けたり――」 「全員、武器を捨てな!」 狂った怒声が、全員の危機感を駆り立てた。 その叫び声が鳴り響いたのは、メガネの女の子が出て来た灌木のさらに奥。 聞き覚えのある声に、俺は舌打ちする。 案の定、そいつは口の裂けたような笑みを浮かべて姿を現した。 そして、そいつの抱えた『モノ』を見て、全員の動きが止まる。 畜生。 『これ』は俺のミスだ。 桐山の呼びかけを聞いたのは、『あの女』から逃げて間もない時だった。 拡声器の呼びかけに、『この女』が反応する可能性だって考えておくべきだったのだ。 さっき俺たちを襲った緑髪の女が、黒い短髪の少女を連れて現れた。 左腕で首を締めて、拘束していた。 ◆◆◆◆◆ 「うぐっ……」 捕まえた女の首を左腕で締めながら、私は優越感に浸っていた。 何せ、1対6――人質にしたこいつを戦力外としても、1対5だ――という圧倒的不利の中で、場の主導権を握っているのだから。 普通に奇襲をかければ、まず失敗していただろう。 これだけ人数差があれば、1人2人を奇襲で仕留めたとしても、残りの人数から一斉に銃撃を受けてしまう。 でも、私には大きなアドバンテージがあった。 ひとつは、こっそりと首尾よく捕まえた人質。 そして、最初に殺した女のディパックに入っていた、拳銃と、必殺の支給品。 「おっと、妙な真似をするんじゃないよ」 携帯電話を取り出そうとした桐山(拡声器で呼んでくれた男)に警告して、あたしは右腕に抱えていたものを地面に置いた。 「ほら、これが何か見れば分かるでしょ。下手に攻撃したらドッカンだよ! あはははははは!!」 桐山を含めて、銃を構えようとしていた全員が動きを止める。 見た目はただの、台座つきの平べったい箱だ。 しかしそれの危険性は、誰しも映画とかで見たことがあるだろう。 「クレイモア地雷の有効加害範囲は50メートルだ。 爆発すりゃ、ここら一帯がズタズタになるよ! あたしも死ぬけど、あんたたちも道連れさ!」 空いた右手でスカートに差していた拳銃を抜き取り、威嚇として一度発砲する。 女を拘束した左腕の先には、手の中でしっかりと起爆スイッチのリモコンを握りしめる。 下手にあたしを撃てば、はずみでスイッチを押すだろう。 心が鬼になっているのに、頭はとても冴えていた。 桐山なる男が持っているのはマシンガンだ。リモコンを持った手だけを狙うような、ピンポイントな狙撃はできまい。 悔しげに歯噛みしてる長髪の男が抱えた散弾銃だって、精密狙撃に向かないところは同じだ。 一番に近くにいるメガネの女が持っているのは、そういう射撃に向いてそうな小型拳銃だけども、おそらく女本人が射撃に慣れていない。 銃口がやや不安定にぶれている。 おまけに、人質という『盾』までいる。 つまり、状況は私にとって圧倒的有利! なんて冷静! なんて抜け目ない! なんて万能感! これで6人殺せる! 悟史君にまたぐっと近づく! 「なんでだよ! なんでそんな簡単に人を殺せるんだよ! 死にたくないなら、みんなで力を合わせて脱出すりゃいいじゃねえか!」 声を上げたのは、さっき取り逃がした男の、サル顔の方。 その義憤に満ちた声を聞いて、私はすぐ理解した。こいつは、私とはすっかりかけ離れた人種のようだ。 「決まってるじゃないか。欲しいんだよ。神の力ってやつが。 だって私には、会いたい男がいるんだから! 会える会える、皆殺しにしたら会える!!」 サル顔が信じられないという顔をするのが、すごく爽快だった。 さて、どいつから撃ってやろうかな。 サル顔の男も見てて苛々するけど、先に仕留めた方がよさそうなのは、桐山っていう男かな―― 「おっと、妙な真似をするんじゃないよ」 背後から、さっきの私と同じ声がした。 背筋がぞわりと寒気に襲われる。 その声には心当たりがある。 私と同じ声をした人間など、この世に1人しかいない。 ――お姉……魅音? 憎むべき半身、魅音の声。 眼前の獲物たちを頭から捨て置いて、私は振り返った。 振りまわされた格好の人質が、小さく悲鳴を上げて、 誰もいなかった。 ――やられた! 一度、同じ手に引っかかっていたのに! それが私の声だったばかりに、魅音の存在を感じ取ってしまった! 偶然のイタズラに苛立つ間もなく、前方を向き直ると同時に次の攻め手は襲って来た。 ――バシッ! 左手の甲に激痛が走った。 衝撃の正体は、小さくて冷たい。 まさか、桐山の持っていたコインか? そんなチャチな玩具とは思えないぐらい、鋭い痛みが刺さった。 手がしびれる。起爆スイッチがあっけなく手のひらからこぼれ落ちた。 それが地面にぶつかるより早く、散弾銃を持った影が飛び込んでくる。 銃のバレルでしたたか殴りつけられた。 昏倒しかけたところに足払いを食らわされる。 倒れこんだのは、地雷を置いたのと逆の位置だ。長髪の計算だとしたら、抜け目ない。 気づけば長髪が、リモコンと人質の女とをその腕に抱え込んでいた。 「大丈夫か?」 「はい……あの、ごめんなさい」 もう片方の手には私の頭を照準した散弾銃がある。 私が持っていたグロック26は、少し離れた位置に転がっていた。 どれを取ってもそつのない動きだった。実戦に対する備えを積んでいることは明らかだ。 精密な動きに自信があるんだろう桐山がリモコンを排除し、その間にもう一人の方が人質を助けつつ私を取り押さえる。 何の合図もなくやってのけるとは、腹が立つぐらい見事な連携じゃないか。もしかして、昔からの知り合いだったのか? 私は射殺さんばかりに長髪を睨み上げながら、腐葉土の臭いを近くに嗅いでいた。 桐山が、私のグロックを拾い上げた。 「七原、そのまま撃て」 静かだけれど、有無を言わせぬ調子があった。 こいつらの関係を知らない私でも、ニュアンスが汲みとれる。 こういうことだ。 ここで敵を仕留めて見せなければ……分かっているな。 サル顔の男が、反論しかけるように口を開いた。 しかし七原なる男は、やむを得ず、という顔をした。 やられる。 畜生、畜生、畜生、畜生畜生畜生畜生畜生―― 「詩ぃちゃんを殺さないでっ!!」 でも、七原は撃つ機会を逸した。 ――ピシィッ! 糸のようなワイヤーが、頭上をしなるのが見えた。 それはひゅうんと唸り、七原の銃身に叩きつけられた。 「うおわっ」 七原はすぐさま後方に飛び、銃身を取り落とさないように抱え込んだ。 別に七原が非力だったせいじゃなくて、糸の材質とかが特殊だったんだろう。 糸をぶつけたとは思えないぐらい、鋭い音が出たのだから。 私の命を救ったワイヤーが眼の前でぷらぷらと揺れる。 その鞭の使い手が、七原のいた空間に割り込んで立ちはだかった。 「レナ、さん……」 釣り竿のような形をしたムチを持った竜宮レナが、そこにいた。 助かった、と思うより先に。 どうして、という驚きが先行した。 確かに魅音を介しての交友はあったけれど、まさか命がけで割って入ってくれるほど、親しく思ってくれていたとは。 私は、部活動メンバーの仲をほほえましく思いこそすれ、竜宮レナという個人には、そこ知れない苦手意識を持っていたけど……。 さっきまで私の獲物だった聴衆の注目を集めて、レナは説得を始めた。 そんなに簡単に殺そうとしないで、それこそ主催者の思うつぼだ、とか。 信用できないようなら、詩ぃちゃんが何かした時に私が止めてみせるとか、何とか。 桐山が竜宮レナに銃口を向けようとして、七原がその銃身をつかんで止めた。 ずいぶん甘ちゃんの主張だったけど、レナはある程度の勝算を持って勝負しているようだった。 まあ、レナは来たばっかりだから、桐山の怖さを知らないしね。 人数だって6対1だ。少しでも頭が回る奴なら普通は抵抗じゃなく命ごいを選ぶだろうし、レナもそう見越してるから、私に隙だらけの背中を見せられるんだろう。 そして、積極的に私を殺そうとしてるのは見たところ桐山だけなんだから、自分が空気を変えさえすれば、赦免は無理でも拘束に持ち込めるんじゃないか、と読んでいるのかな。 なんだかんだで、レナさんは計算する女だから。 まあ、それでも桐山なら、問答無用でレナもろとも撃つ気がするね。何かアイツだけ、纏ってる空気が違うもん。勝算は薄いよ、レナ。 でも、そういう計算を差し引いても、レナの取った行動は勇敢だった。 だってそうだろう。銃口が三つも私を向いてるのに、そこに割りこめる胆力は尋常じゃないよ。 何を考えてるか分からない、食えない女だけど、基本的にイイ奴だ。 本当に、イイ奴。 泣きたくなるぐらい、イイ奴だ。 でもね、もう私は、レナの知ってる詩音じゃないんだよ。 私、鬼になっちゃったもん。 私――人を殺しちゃったもん。 ここに来てから殺した、髪の長い女の子だけじゃないよ。 あんたの友達の――沙都子を。 殺しちゃった後だもん。 悟史君から『沙都子を頼む』ってお願いされたのに、沙都子を殺しちゃったんだよ。 だから私、もう、悟史君に会う資格が、無くなっちゃったんだよ。 だからさ、私はもう、『神様の奇跡』のおすがりするぐらいしか、ないんだよ。 何人殺しても後で生き返らせればいい、とは思わないけど、せめて、沙都子ぐらいはね。 罪滅ぼしとか、そんなキレイゴトじゃない。 私はただ、悟史君に会いたいだけ。 どんなことをしても会いたいだけ。 だから、レナさん。 ――死んで。 (後編)
https://w.atwiki.jp/mh_rifujin/pages/168.html
Q: 733 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/08/28(火) 19 15 06 ID GFPsPv2T モンスターの屍の部位破壊ができないのは何故ですか? 507 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/11/30(金) 04 36 46 ID 6Ntc26pQ モンスターとの交戦中には角や翼爪、尻尾などの部位を破壊可能なのに対し、 討伐に成功した後はいくら攻撃しても破壊不可能なのは理不尽だと思います。 相手が動くことのない討伐後の方が壊し易いはずではないでしょうか? A: 735 2/2 2007/08/28(火) 20 56 25 ID fOFkOtxw 733 死人に鞭打つ。と言う故事成語があります。 ハンター達は、倒した相手をさらに痛めつける ことを嫌うのです。 え、剥ぎ取り?…言い忘れました、ハンターは 二枚舌です。 736 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/08/28(火) 21 29 27 ID FefBe+Bn 部位破壊はできなくても攻撃すると出血はする件 737 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/08/28(火) 22 18 15 ID fOFkOtxw 攻撃すると出血する件については、血を絞り出して いるのです。しかし、一部例外を除いて、血が使われる ことは無いため、残酷な行為だ。と避難されることもあります。 でもって、弓やボウガンの場合は、特別に作らせた、 ストロー状の矢を使って、血を出させています。 気圧やら何やらの関係で、血が噴出すのです。 …私は、ランスとガンス一筋なので、他の説があるかも しれません。 739 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/08/28(火) 23 39 40 ID Ug+0QTof 死後硬直のようなものが起きるため、生存時は綺麗に破壊できる部位が大半の場合それが不可能になってしまうためです。 生存中は尻尾等は非常に綺麗に切れるのですが、死後に切ると中々切れない上に切れても素材として使い物にならない事が多いそうです。 剥ぎ取りで取れるのは死後硬直後でも取りやすい部品だけなんですね。 741 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/08/29(水) 01 49 44 ID 10bgurQy 出来ます。が、意味ありません。 そもそも部位破壊というのは、破壊された部位をハンターの目に付かない所で即座に回収するシステムです。 破壊可能部位というのはそのシステムが必要な部位であり、死んでしまった後から剥ぎ取っても既に硬化・劣化し使い物になりません。 でなければ、わざわざ破壊しなくとも結局最後に回収すれば全部素材が手に入ることになってしまいますよね。 捕獲で時折部位破壊が必要な素材が手に入るのもそれに起因しています。 756 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/08/30(木) 15 45 14 ID 8VTExwF2 733 屍の部位破壊不可 >人間にも死後硬直というものがありますが、同じ現象がモンスターに起こっています。モンスターは絶命後、急激に硬直が進み それこそ、外皮から尻尾の付け根、ヤドを新鮮に保つ体液などが瞬時に硬化し、破壊できないほどの強度になります。 508 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/11/30(金) 10 02 56 ID w9I8MWD1 507 討伐した瞬間、そのモンスターはギルドの所有物になるとみなされるからです。 そのため、認められている回数剥ぎ取りをした後は部位破壊が禁じられているのです。 509 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/11/30(金) 10 42 43 ID 66a5q886 507 以前の調査結果では死後硬直のため素材としての品質が下がってしまい使い物にならない説が有力でした。 鯖の生き腐れと言うように、素材の扱いとは常に最善細心の注意が必要なのですね。 510 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/11/30(金) 16 09 34 ID QZK5wjhY 507 軍人は腐ったら負け犬以下と言うものがありまして‥‥ それは置いといて、品質が下がったり死んだら血が凝固したりすると思われます 部位破壊
https://w.atwiki.jp/gai-hako/pages/104.html
ここでは、国際領土協定の補足をして関係用語の解説をしたいと思います。 さらに詳しく知りたかったら、ご自分でお調べください。 作成国 ザンジバル公国 資料 ウイキペディア、日本外務省、ほか多数から参照 領土 領陸又は狭義の領土ともいう。日本においてはこの意味における領土に関して定めた法律がなく、主として条約、特に日本国との平和条約(通称:サンフランシスコ講和条約)が法規範になると考えられる。 領有とは、領土などを自国、自分のものであるとすること。とくにこの領有という言葉は、自分のものであるという主張を意味し、領土編入の際、早い者勝ちというのが大半である。しかし、一番速く領有したとしても、領土問題に発展したり、あるいは、紛争の大きな原因と指摘されている。条約などの取り決めによって領土が画定されていない時などの場合を言う。 占領とは、自国の領土に属さない地域を軍事的に支配すること。占領地においては軍政が敷かれるか、支配下においた現地政権を通じた間接統治がなされる。 対象地の既存政権あるいは監督政権の承認あるいは黙認のもとに、重大な戦闘を伴わず兵を進めることを進駐と呼ぶ。進駐は実態は占領と似ているが、対象地の既存政権や監督政権の許諾によるため、厳密には占領とは異なる。 占領地における被占領国の主権は占領国の監督下や制限下におかれるものとされ、領有権が占領国に移行したわけではない。従って占領は、領有あるいは国家の併合を意味するものではない。同じように主権の制限が伴う場合でも、文民支配を前提とした被保護国や保護領、属国、植民地などとも区別される。 領海 狭義の領土、すなわち領陸の沿岸に沿った一定の幅の帯状の海域で、当該国家の主権が及ぶ範囲のものをいう。古くは、大砲の着弾距離を根拠として低潮線より3海里を領海の幅とすることが国際慣習とされていたが、12海里や200海里を主張する国家も存在していた。現在は、1982年に採択され1994年に発効した「海洋法に関する国際連合条約」(通称:国連海洋法条約)により、それぞれの国が12海里を超えない範囲で自国の領海の幅を決める権利を有するとされている。日本においては「領海及び接続水域に関する法律」(昭和52年法律第30号)によって原則として基線から12海里の海域と定めており、一部の特定海域については3海里となっている。 領空 狭義の領土と領海の上方の空間をいう。古くは上限は無制約とされていたが、現在は1967年に発効した「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」(通称:宇宙条約)で宇宙空間の領有が禁止されているため、宇宙空間に属する部分は領空に含まれないとされている。しかし、領空と宇宙空間との境界を明確に画定することには成功していない。 排他的経済水域(EEZ, exclusive economic zone)とは、国連海洋法条約に基づいて設定される経済的な主権がおよぶ水域のことを指す。 沿岸国は国連海洋法条約に基づいた国内法を制定することで自国の沿岸から200海里(約370km 1海里=1852m )の範囲内の水産資源および鉱物資源などの非生物資源の探査と開発に関する権利を得られる代わり、資源の管理や海洋汚染防止の義務を負う。 海洋は自由航行の認められた公海と沿岸国の主権がおよぶ領海(外国船舶は無害通航権を行使すれば領海内でも航行できるが、沿岸国が設定する無害通航に関する法令の遵守を求められる)とに分けられる つまり、排他的経済水域とは、沿岸国の権利と自由通航の確保という矛盾する要請を同時に満足させるための方策として考え出されたものである。200海里もの広範な領海を設定していた国の主張を経済的主権に限定して認める代わり、自由航行のできる水域を確保したのである。 接続水域 同条約によって領海から12海里以内の排他的経済水域内では、その国にとって必要な法規制・通関の取締りを行うことが認められている。これを接続水域という。 防空識別圏 (ぼうくうしきべつけん ADIZ Air Defense Identification Zone)とは国の防空上の理由から設定された空域のことである。 他国の航空機がこの防空識別圏を通過する場合は事前に飛行計画を提出しなければならない。ただ、この防空識別圏は国際法で確立したものではなく、領空、領土の範囲を定めたものではない。 国境線 国境は、陸上にある場合もあれば海上、湖上にある場合もある。国境は自然的国境と人為的国境に分けられる。自然的国境は、山脈、河川、湖水、海洋などの自然的条件に基づいて定めたものである。人為的国境は、条約、民族、経線、緯線、道路などによって決められたものである。いずれもこれを境として、国の領土または領海を分ける。陸上にある場合は、標柱、遮断機、壁などが設置され、柵などの障害物によって往来を困難にし、ゲートのある地点でのみしか往来ができない。国境にどの程度の透過性を与えるかは、それぞれの国の主権者が決定する事項であり、国家がグローバルな競争の領域単位である状況の下では、労働力や財の市場を最適化するように透過性が操作される。労働ビザや定住ビザの発給数や、非合法で入国した労働者取締の強度が、この透過性操作に当たる。 国境の物理的な強度は、この社会的透過性の程度によって規定される。透過性が乏しい国境は、壁や地雷原などにより、二重三重に封鎖され、人の往来が許されないだけでなく、人の自由や権利にとっても国境であるといわれることもある。南北朝鮮を分割する板門店やドイツが東西に分割されていた当時の境界などがその例である。 通常、ゲートのある地点では、パスポート・コントロールが行われる。欧州連合域内では、このような国境での検問は行われなくなってきている。海上にある場合には、両国の中間線などが国境となる。 戦時国際法 中立法規 交戦当事国とそれ以外の第三国との関係を規律する国際法である。中立国は戦争に参加してはならず、また交戦当事国のいずれにも援助を行ってはならず、平等に接しなければならない義務を負う。一般に次の三点に類型される。 回避の義務 中立国は直接、間接を問わず交戦当事国に援助をおこなってはいけない義務を負う。 防止の義務 中立国は自国の領域を交戦国に利用させない義務を負う。 黙認の義務 中立国は交戦国が行う戦争遂行の過程において、ある一定の範囲で不利益を被っても黙認する義務がある。この点について外交的保護権を行使することはできない。
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/236.html
ボーイ・ミーツ・トンデモ発射場ガール ep.1_Index 05 交戦 前へ 戻る 次へ [19764] ep.1_Index 05 交戦 Name nubewo◆7cd982ae ID f1514200 Date 2011/01/17 23 31 赤毛の神父の生み出した人型の炎には、素早さはなかった。 人が歩くのより少し遅い程度。 だが、煌々と赤黒く輝く体と対照な瞳の部分の昏(くら)い色は、ジリジリと光子の冷静さを奪い取っていく。 光子は傍においてあった植木鉢をつかんで、投げやすいように構えた。 「――くっ。近寄らないでくださいませ!」 「投げても君の腕力じゃとどかないと思うよ」 何をするでもなく、目の前の少女の足掻きをステイルはぼんやりと眺めた。 『魔女狩りの王(イノケンティウス)』に当たったところでどうもならないし、ステイル自身にまで届くことはありえない。 だが、その予想に反し、植木鉢の軌跡はあまりに直線的だった。 ボッ、という音と、サッカーボールのような弾道。 植木鉢はまっすぐに『魔女狩りの王』に突っ込んだ。 「へぇ。それが君の能力なのか。すごいね!」 大げさに、ステイルは驚いてみせる。 余裕を感じさせるリアクションだった。 「ただ、僕の『魔女狩りの王』はそれじゃ止められないよ」 赤い炎と黒いタール状の体が無残に飛び散っていた。 だが、それだけだ。 『魔女狩りの王』はあっという間に元の形に戻り、焦げた植木鉢は廊下に落ちて割れた。 自分の能力が事態を何も好転させなかったことに、光子はじわりと焦燥感を覚えた。 「あまり遊んでられないし、さっさとアレを回収しないとね。死なれちゃ困る」 真面目にやろうという合図だったのだろうか。 深く吸ってから投げ捨てた煙草の吸殻が、激しく燃えて消え去った。 「アレ……?」 「君たちが匿っている、あの子だよ。詳しくは言えないけれど、アレはきちんと管理しておかないと大変なことになるんだ。君たちみたいなどこの誰とも分からない人間の手元に置いていいものじゃないんだよ」 神父は知ってか知らずか、光子が聞きとがめた事とはずれた返事をした。 『誰』の話をしているかなど、とっくに分かっている。 「訂正していただけませんこと? アレという代名詞は、日本語では人には使わないものですわ」 「知っているよ。そんなに気に食わなかったかい?」 殊更に露悪的に振舞うその神父の態度が、癇に障った。 脳裏を少しずつ恐怖以外の感情が占めていく。 あの少女の苦しそうな表情を思い出す。 インデックスは光子を庇って傷ついた。 だが、それでも恨み言の一つも言わず、気を失う直前まで光子を気遣ってくれた。 すくんでいた足を、まっすぐ立たせる。 このまま放りだして逃げ出すことの出来ない、そういう理由、いや矜持が光子にはある。 勇敢にとまではなれなくとも、それが光子を奮い立たせる。 少しだけ取り戻した普段の態度で、光子は相手に話しかけた。 「名乗っていただいたのに返礼がまだでしたわね。私は常盤台中学の婚后光子と申しますの」 「ああどうも。で?」 「人と物の区別もつけられないような馬鹿な神父さん。狼藉物の貴方を、成敗して差し上げますわ」 この神父の出した炎は、正体不明なせいで恐ろしく感じる。 だが、超能力者でも似たようなことは出来る。 そして系統は違えど、自分だって超能力者なのだ。 見かけにおびえることはない。 いま用意すべきは、何よりも心構え。 ここで引いたら、インデックスと当麻が次に襲われる。 それだけは、止めなければならない。 「この街には、発火能力者(パイロキネシスト)と呼ばれる超能力者がいることはご存知?」 「ああ。火を操る異能の力って意味じゃあ、親近感を覚えるものがあるしね」 光子に付き合うのは、あちらにも余裕があるからだろう。 いや、余裕を見せ付けあうのも駆け引きのうちだということか。 「特に詳しいわけではありませんけれど、あの方々の能力開発の基礎のとして叩き込まれる知識を、貴方は学んでおられないのかしら?」 「……謎解きをする気分じゃないね。時間稼ぎがしたいだけならそろそろ鬼ごっこを再開させてもらうよ」 光子はもう一つあった植木鉢を持ち上げた。 それを、ステイルに向ける。 とはいえその間には『魔女狩りの王』が立ちはだかっている。 「燃やす、あるいは熱を伝えて物を溶かすという行動において気をつけなければいけないのは炎の温度でも量でもありません。正解はなんだかご存知?」 胸の高さに置いた鉢の底にそっと触れる。 それだけで、植木鉢は砲弾となる。 「対象の熱伝導率と接触時間ですわ」 再び、空気を切る音と共に植木鉢が飛翔した。 光子は加減をしなかった。 見得を切っている数秒の間、植木鉢の底に気体分子を『チャージ』した。 蓄えられた推進力は冗談にでも人に向けてはならないレベルだ。 す、と植木鉢から手を離す。 次の刹那、レーシングマシンみたいな加速が始まった。 向かうは『魔女狩りの王』。 二酸化珪素を主成分とするレンガの植木鉢、それは金属などとは比べるのも馬鹿らしいほど、熱を伝えない。 炎の温度なんてものは気にするに値しない。 光子の能力による飛翔体の航行速度は音速にまで達する。 この短い加速距離ではその四分の一がせいぜいだが、それでもあの炎の塊をぶち抜くことなど0.01秒で事足りた。 「なっ!」 水面を叩いたような、バンという破裂音。 『魔女狩りの王』が花火のように飛び散った。 荒れ狂う炎と陽炎の壁。 それを突き抜けて植木鉢が、砕けつつもなおミサイルのように飛んで来た。 そして背の高いステイルは立っているだけで大きな的になる。 「く、おォォっ」 ステイルはみっともなくしゃがみ込んだ。 頭を掠めて、植木鉢ははるか先に飛び、ばしゃんという音と共に割れ散る。 視界一杯に広がった『魔女狩りの王』が、人型ではなく火の海を作っていた。 少女がいる廊下の先が、全く見通せない。 ――直線状の廊下はまずい。 ステイルは防御に関して脆弱だ。 それは自らの能力をめいいっぱいに攻性魔術に振り分けた代償。 追い詰めたはずの少女から遠ざかり、階段に身を隠す。 そして『魔女狩りの王』を再構成。 視界を遮っていた炎と煙の壁を取り払う。 「なに?」 炎の先に、いるはずの少女が、いなかった。 光子は綺麗な廊下を走る。 焦げ目のある荒れた廊下は、ひとつ下の階だ。 ここから階段を降りれば、あの神父に見つからずに攻撃できますわ――! 空力使いの能力の一つの応用例、飛翔。 光子のそれはロケットの射出に近いものがあるが、それを使って光子は神父との間の視界が悪いうちに、一つ上の階に上がっていた。 足音を立てないように進む。 弾になるものがなかったので、財布からコインを取り出す。 苦肉の策だ。 銃弾にするには光子の能力が出せる速度は不十分だから、出来ればもっと大きな質量のものが欲しかった。 とはいえ、直撃すればそれなりの怪我を負わせることにはなるだろうが。 「ふっ!」 10円玉3枚を、階段から身を乗り出してすぐに放つ。 神父はいなかった。 マントの端がかすかに視界に映って、それで敵がさらに下の階に降りたことを悟った。 「お待ちなさい! ――っ!!」 背後に言いようのない圧迫感を覚える。 振り返るのと同時くらいで、『魔女狩りの王』がそこに顕現していた。 「きゃあっ!」 無造作に振り下ろされる、真っ赤な腕。 レンガは無理でも、人間なら容易に燃やせる炎の塊。 みっともなく階段を滑り落ちながら、光子はそれを避けた。 追いかけてこられる恐怖が、頭の中をじわりと支配し始める。 「そんな、自律的に行動しますの?!」 神父はここから見えない階下にいる。 目の前の炎の塊は、光子を追ってくるらしかった。 自分は赤毛の神父を追いかけ、そして『魔女狩りの王』が自分を追いかける。 身の危険をチリチリと感じる、鬼ごっこが始まった。 「そろそろ、答えのほうを変えてはいただけませんか?」 「こと……わるっ!」 目の前の少年の意志の固さに、神裂は戸惑っていた。 階はすでに5階にまで達している。 それは2メートル近くある1階分の高さを4回も蹴り上げられたことを意味していた。 肉体破壊が目的ではないので毎回ガードはさせているが、それでも気絶くらいはしていいダメージだし、普通の人間ならそろそろ意思が折れていることだろう。 だが、少年の目はまだ火を灯している。 「このままではあなたが蹴られる一方で、状況は何も変わりませんが」 「……」 当麻も、ジリ貧な現状を理解していた。 殴りかかってはみたがまるで歯が立たない。 超常現象が一切介在しない純粋なケンカにおいては、当麻は本当にただの一般人だった。 鍛えた人間にはかなわない。 ――考えろ。今一番必要なのは、時間を稼ぐことだ。 それが足りればインデックスは回復するし、光子や黄泉川先生が帰りの遅い当麻を心配してくれるだろう。 殴り合いでは時間が稼げない。 接触はマズい、なら。 幸いに、階段の傍には防災設備が備え付けてあった。 よろける足を踏ん張って、5階から6階へと、自分で駆け上がった。 「……ご協力に感謝を。自分の足で上がっていただけると助かります」 冷めた口調で、見えない階下からそんな声が聞こえた。 おそらく当麻が何かをたくらんでいるのだと、気づいているのだろう。 当麻は意図を見透かされているかもしれないという不安を意に介さず、階段から少し離れた場所にある非常ベルのスイッチを、躊躇わず押した。 ジリリリリリリリリリリ、というけたたましい響きがマンション中に響き渡った。 神裂にとって、勿論それは不都合な出来事ではある。 だがあらかじめ予想していた事態でもある。 「困ったことをしてくれたものです。 脱出の面倒が増えました。 ……まあ、もとよりあの子の回収はあと数分で終わる予定でしたから何も変わりはしませんが」 カツカツと少年が待ち受けるであろう6階へ歩みだす。 どこにいるのかと辺りを見回した瞬間。 目の前がホワイトアウトした。 消火器の中身を、遠慮なく長髪の女に浴びせかける。 粘性の強い、消えにくく熱にも強い泡が階段を立っている女ごと真っ白に染めた。 何秒間でこれをやめるか、そのさじ加減が問題だ。 装置そのものは1分間頑張ってくれるらしいが、まさか1分も突っ立って消化剤を浴びてくれる相手ではないだろう。 嫌な予感に背中を押されて、当麻は弾けるように飛びのいた。 直後、当麻の頭があった部分を強烈なアッパーが通り抜けた。 テレビのお笑い番組でしか見ないような、真っ白に染まったその状態で、目の前の女は当麻の頭部を性格に補足しているらしい。 「ずいぶんなことをしてくれましたね」 これまでより、一段と声が冷ややかだった。 鋭い蹴りが飛んでくる。 消火器でそれを受け止めつつ、当麻は放射をやめなかった。 「残念ですがあなたの居場所は見えずとも分かります。無駄なあがきは……なっ」 攻撃を繰り出そうとした神裂の体が、くらりと揺れた。自分の体が意思に反したような動きだった。 「効いてきたらしいな」 「な、何を……」 「消化剤がお前の周りの酸素を食ってるんだよ。死ぬほどの低濃度にはなりやしないが、お前の周りの酸素濃度じゃ、激しい運動は無理ってことだ」 学園都市謹製のこの消火器は、酸化反応による酸素消費と、並行して起こるポリマーの吸熱熱分解反応による二酸化炭素の放出によって、酸素濃度と物体の温度低下を行う作りになっている。 万が一人に向けて使っても死には至らないよう設計されているが、危険なのは間違いなかった。 「小ざかしいことを……っ」 「がっ!」 だが、その程度の支障では女は止まらなかった。 手にした消火器ごと、当麻は蹴り飛ばされた。 「成る程、消防団を呼んで時間稼ぎですか。策そのものは賢明でした。ですが私がそれに付き合う義理はない」 五発、六発、と倒れた当麻に重い蹴りが突き刺さる。 それを当麻は避ける術がなかった。 「ご安心を。手加減はしましたから病院にいけば回復しますよ。さて、ステイルがそろそろ……ステイル? なぜ降りてくるのですか?」 階段を駆け下りる音はベルの音にまぎれて聞こえなかった。 「神裂! 随分と面白い仮装をしているじゃないか」 「本意ではありませんよ。それより、どうして降りてきたのですか」 「ちょっと梃子摺っていてね。……神裂、空だ! 避けろ!」 「!?」 反射的に長身の二人組みが身を翻した。 ほんの少し遅れて当麻が廊下の外に目をやると、光子が上から降ってきた。 手の平からそっと投げられた硬貨が、すさまじい速度で相手を狙う。 「当麻さん!」 「光子! 大丈夫か?!」 「ええ。私は。それより……当麻さんが」 「大丈夫だって。骨は折れてない」 「そんなの大丈夫だって説明になってませんわ!」 「今はそんなこと言ってる場合じゃ、って光子!」 当麻は光子の後ろの何もない空間に、手を突き出した。 いや、当麻が動くとほぼ同時に、そこに炎塊が出現した。 「くっ、おおおおおおおおおおおお!!!!!」 「当麻さん!」 当麻がせき止めた『魔女狩りの王』の傍の壁を光子は手で叩く。 一瞬後に壁から噴出した風が、『魔女狩りの王』を吹き飛ばした。 「……君が何とかしてくれるだろう、という考えはまずかったようだね」 「私もそれは反省するところです。時間も限られています。手荒な方法も致し方ないでしょう。構いませんね、ステイル」 「もとより僕はそのつもりで動いているよ」 「くっ……」 光子と合流は出来たが、事態は好転したとはいえなかった。 こちらは別に戦うことにおいて、タッグを組んだペアではない。 一方、目の前の赤髪の神父と神裂という女は、明らかにそういう二人組みだろう。 その二人よりもさらに一枚手前に、あの人型の炎が再び姿を現した。 あれを押し留めるだけなら、当麻にも出来る。 だが、光子を守りながらさらに二人組みをどうにかすることは、当麻には無理そうだった。 ジャリっと、神裂という女が足場を固める音がした。 もう、躊躇する時間もない。 「それでは、いきますよ」 感慨もなく神裂がそう告げた。その時。 目指す階上で、この学園都市にはありえない、魔術の光が瞬いた。 目の前の光景に、黄泉川は呆然となった。 10枚の羽根を持った金色の天使。 明確な感情を表情に載せることなく、アルカイックな笑みを浮かべている。 それを説明付ける何かが欲しくて、ひたすらに頭の中で物理の教科書を手繰ろうとする。 「想像を揺らさないで! ここには確かに、今貴女の目に見えているものがあるのです」 その言葉にドキリとする。 そうだ、超能力というのは、まず理屈でなく頭ごなしに受け入れてみることから始まるのだ。 ……目の前にあるこの天使についても、その姿勢は流用できる。 黄泉川は自分が物理法則という言葉で語りえぬ目の前のソレを言外に受け入れつつ、インデックスの紡ぐ歌を唱和した。 テーブルの上にはこの部屋の『コピー』がある。 上に乗せられた二つの人形が、自分達に同期して歌う。 そして歌のフレーズに区切りがついた瞬間。 インデックスを模した人形についていた傷が治癒していくのを黄泉川は見た。 それは生物のプロセスとしての治癒には、お世辞でも見えたとはいえなかった。 むしろ塩化ビニルの高分子が加熱によって溶融し、形の汚くなった傷口を均していくような、そういう物理だった。 向かい合わせで座ったインデックスの背中に起こっていることを、黄泉川は想像できなかった。 「――――――生命力の補充に伴い、生命の危機の回避を確認。『自動書記(ヨハネのペン)』を休眠します」 その一言で、どうやら成功したらしいと黄泉川は悟った。 「そんな、魔術……だと?」 「あの子は使えないはず……いえ、誰かに協力してもらったということでしょう」 「神裂、それは」 「禁書目録を使う魔術師が、上にはいるということです」 「この町を根こそぎ荒野に変えるくらい造作もない魔術師をあと数分で制圧しろ、ってことかい?」 「……残念ながら撤退という選択肢を選ばざるを得ないようですね」 「チッ」 忌々しげにステイルは二人の少年少女を睨みつけた。 「貴方達の健闘は、賞賛すべきもののようですね。我々は今回は時間切れのようです」 ファンファンと警笛を鳴らす車両の音が、もう近づいてきていた。 「これで終わりだとは思わないことだね。……行こう神裂」 切り替えが潔いのもまた、手馴れているということなのだろうか。 光子と当麻は、二人の足音が遥か遠くなってもまだ、体の硬直を解くことが出来なかった。 「行った……のか?」 「……」 落としていた重心を少し上げて、当麻は構えを解いた。 「光子!」 尻餅をつくようにくたりとなった光子を、慌てて抱きかかえる。 「どっか怪我とかしたのか?!」 「ううん。大丈夫です。けど、ちょっと気が抜けてしまったから」 支える当麻に、光子はぎゅっとすがリついた。 「当麻さん」 「ん?」 「よかった、お怪我されてなくって」 「それは俺の台詞だって。光子に怪我させちまったら、ゴメンじゃ済ますことなんて出来ないし」 「もう。それは当麻さんにだって同じことですのに」 ようやく二人は、ほっと息をついた。 ざわざわと、マンションに人の気配があるのが無性に心強かった。 「って! そうだ! インデックスはどうなったんだ?」 「そうですわね! 様子を見に行きましょう」 ほんの数階分の高さが、疲弊した二人には辛かった。 前へ 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/ova-v/pages/271.html
投稿者:怨是 大型地下駐車場というものは、当然ながら外――ましてや上空からではその子細に至る迄を覗き見る事が出来ない。 “バイトの姉ちゃん”と呼ばれるこの女性は、ヘリのトリガーを操作し、比較的駐車場に近い場所へと探知機(リコン)を投射した。それから、機体のカメラとリンクし、ショートテイルの機体――ドレイクの様子を見る。敵反応が次々と消失して行くのと同時に、柱の陰に隠れていた戦車部隊がみるみるうちに鉄屑へと姿を変えて行く。それは、ドレイクの両手に持ったマシンピストルが戦車の装甲を貫いているからだった。 《さぁて、今回も楽勝だっちゃ!》 通信機からは底抜けに明るい声が響く。 「今回“も”って……また無理しないでよ? 借金返済が目的なんだから」 《解ってるっちゃよ。ヒーローに二言は無い。それは、当然の摂理だっちゃ》 ショートテイルの豪語とは裏腹に、彼女の戦い方は随分と無駄が多い。まず、わざわざ戦車の密集している場所へと突っ込み、正面の戦車を破壊する。一度後退し、次に左右の戦車を破壊した。六両目、七両目が柱の陰から出て来ないのを見るや、ドレイクは片方の戦車に背を向けて六両目を蹴り潰し、それから転回して背後の七両目を撃ち抜く。そういった具合だ。 その間受けた砲弾は計十六発、自機損傷率にして早くもおよそ三割。幾らジャンクの寄せ集めで修理費が割安とはいえど、終始この体たらくでは小言の一つや二つは浴びせたくなるというものだ。バイト女はヘリ操縦士の中年――グッドマンの目が届かぬ所で眉間に皺を寄せた。それから、改めて、あの脳天気な野生児寸前の緑髪を担当させた上司を呪った。 《ご覧あれ、これがヒーローの華麗なる戦ぶり! 敵将の御首頂戴まであと僅か!》 「はいはい……そう云って次から次へと出撃する度に赤字の収支報告書を作らせたのは誰かしら? 今度こそフイにしたらブッ殺すわよ。Fランクの更に下のGランクという特別枠でも作るかしら? あんたゴキブリみたいにしぶといから丁度いいんじゃない?」 《ゴキブリってあなたってばもう……この、売れ残りの年増が……ウチは腐っても乙女だっちゃよ。それをゴキブリ呼ばわりとは何と失敬な。どうせ“イ”の母音で伸ばすアルファベットにするなら“Zランク”の方がまだ、何かワケありっぽくてカッコイイっちゃ》 こいつは本当に……。 危機感の欠如した、度し難き阿呆め。年増呼ばわりは百歩譲って伝家の宝刀“大人の対応”で許してやるとしても、冗談を抜かしている暇など何処にも無い事だけは解ってくれないものだろうか。こいつも、自分も、正真正銘の崖っぷちなのだ。 「……馬鹿。状況考えてよ状況を。明日からオペレータも保険も無しで放り出されてみなさい。マジで物理的に身体を売りながら生活するハメになるからね」 まだまだ云いたい言葉はあるが、女性は今この場で必要な事だけを云う事にした。これ以上の事を云えば、奴は確実に再起不能になるし、自分もきっと、口元の小皺が昨日よりも多くなるからだ。 《それは、ちょっと勘弁願いたいっちゃ》 「だったら精々無駄を減らす事ね。その地下駐車場は遮蔽物が多いんだから、もっと有効活用なさい」 《お言葉だっちゃが――》 「――云っておくけど“ヒーローは隠れて撃つなんて卑怯な真似はしない”とか、そういうアレなら受け付けないわよ。ここはミッション。アリーナとは違うんだからね」 まさかと思って先手を打ってみたが、どうやら真面目にそういった内容の反論をするつもりだったらしい。 《えっと、その……はい》 ショートテイルは言葉に詰まり、以降、戦闘領域内に蠢く有象無象の雑魚共を綺麗に片付けるまでは一言も喋らなかった。その間、幾度か無駄な行為はあったものの、指摘する前ほどには多くなかった。なるほど、利口にやってくれるじゃないか。 「そいつで最後ね。ご苦労様」 自分なりの労いの言葉を掛けてやる。が、ショートテイルは相当拗ねているのか、返答は何も無かった。以前から何処か可愛げの無い奴だとは思っていたが、まさかこれ程とは。この何か引っ掛かる感情の正体を探るが、今の所、答えは出て来なかった。 「グッドマン、回収地点にヘリを」 「勿論さ。お姫様を運ぶのが馬車の役目だからな」 ヘリの操縦士――グッドマンは軽口を叩き、ヘリを移動させる。 ――あの子がお姫様なら私は何? そんな質問を投げ掛けたくなったが、女性は口を噤み、そっと胸中へと疑問を仕舞い込んだ。どうせ、深い意味など無いのだ。下らない答えをわざわざ聞いて、それで「案の定下らない答えが返ってきた」などと落胆するくらいなら、酸素を少しでも節約して次の事へと思いを馳せた方が建設的だ。 例えば、女性はショートテイルの他にも三名ほどの傭兵を専属で受け持っていた。その内の一人、キリーという傭兵は中々の美男子と云っても過言ではない容姿の持ち主だ。突っ慳貪な態度が少しばかり鼻に付くが、時折見せる物憂げな表情、そういった時に話し掛けた時に必ず見せる、捨てられた子犬の様な目が、この女性の心を鷲掴みにした。もっと彼の事を知ってみたい。もっと彼と話してみたい。その為に、カストリカのとあるビルの屋上にあるレストランのクーポンまで貰ってきた。蜥蜴重工では専属オペレーターが傭兵と恋愛沙汰になる事は御法度となっているが、食事に誘うくらいなら恋愛でも何でもない。自然と笑みが零れ―― ……突如、オペレーター画面からAC接近の警告音が鳴る。モニターを見やれば、赤い三角形のアイコンが二つ、それも出入り口という極めて厄介な場所にあった。 「駐車場出入り口から敵反応……ACだわ。二機来る」 《ちょっ、無理! 二機とか絶対無理! 有史以来の大ピンチだっちゃ!》 「落ち着きなさい。この程度、ごくありふれたピンチでしょ。敵側の通信が来てるわ。内容はどうせ大した事無いかもだけど、聞く?」 《一応……》 通信回線を開き、ドレイクにもリンクさせる。その間にも探知機の範囲内に居るこの二機の敵ACをスキャンし、情報を集めた。勝利は望み薄だとしても、せめて敗北を遠ざける術は見出さねば。 《おうおう。やっちまったねぇ。俺達の縄張り荒らしといて、只で済むと思うなよ》 若い男。だが、粗野な声だ。どう考えてもまともな育ちとは呼べない。パイロットネームはカラブローネ。ACネームはヴェレーノ。スナイパーキャノンと迫撃砲を持つ、重量逆関節型だ。遠距離戦闘に適した構成という事か。が、ハンガーに積まれた小型HEAT榴弾砲とレーザーブレードが妙に気掛かりだった。 《まぁACから降りて土下座するなら許してやるぜ。その機体、多少は金になりそうだしなァ》 少し中年に差し掛かった男。気怠げな口調からは、やはりカタギとは程遠い険呑さが伝わってきた。パイロットネームはスペクター。ACネームはグレイゴースト。ガトリングガンにバトルライフルを搭載した重量二脚型。ハンガーにはセントリーガンとリコンジャマー、ショルダーにはチャフと、相方の欠点を補う形の構成だ。 《いやそれは、ちょっと》 《降りるのが嫌ならそれでも構わないぜ。たっぷり可愛がってやるからよ!》 《ウチを捕らえてあんな事やそんな事をするつもりだっちゃね! エロ同人みたいに!》 彼らの声にまともに応対するショートテイルもショートテイルだ。何をやっているのか。 《望み通りそうしてやらぁ。ほらよ、逆関節なら逆関節らしく、飛んで逃げ回ってみやがれ! バッタみてぇにブッ潰してやる!》 地下駐車場でそれは、少し無理な相談だ。唯一、逆関節の得意分野である跳躍力を活かせない事が懸念事項であったが、こうも最悪のタイミングでACによる邪魔が入るとは。 データベースとの照合が完了し、更に詳細なデータを受信する。端末に表示されたデータから、彼女はある結論に辿り着いた。 端末を叩き、現状で最善のルートを割り出す。ガイドビーコンとして、それをドレイクに送信した。 「ショートテイル、聞こえる?」 《はいはい、なんとか……》 「駐車場の脱出ルートを送信したから、さっさと逃げなさい。あんたの腕じゃ無理よ、そいつ等は」 情報に依れば、彼らはスプーキーズと呼ばれる武装勢力である。悪名轟かすならず者共ではあるものの、さほどの腕は無い為、多少の実力があればどうにかなる相手だ。が、生憎こちらはショートテイルという万年最下位の雑魚傭兵しか居ない。 《云われなくてもスタコラサッサだっちゃ》 《まぁ待ちなよ子猫ちゃん。もうちょっと遊んで行けって》 まずい。迫撃砲の爆風に巻き込まれている。スプーキーズのAC達による、己のアジトの損害すら顧みぬ猛攻に、ドレイクの損傷率はみるみるうちに拡大していった。 《嫌だぁあああ!》 《やらせろぉおおお!》 《無理ぃいいいい!》 重量二脚の反応が消えた。 《おっと。俺を忘れちゃ困るぜ》 と、思いきや、ドレイクの真後ろからブーストチャージを繰り出してきている。これは柱を足場にブーストドライブ機動で真横に跳び、回避。窮地に陥ったショートテイルはしばしば、こうして天才的な回避能力を発揮する。常にそれをやっていればこんな状況になる事も無かったが…… 《忘れられるか! 既に軽くトラウマだっちゃ!》 《おう、そうかいそうかい。じゃあもっと怖がってくれなきゃな》 探知機の反応が一気に増える。セントリーガンの仕業だな。型番から察するに、バトルライフルタイプの子機だ。普段ならばあんなのろい(・・・)弾など楽に避けられる。その為に第9領域でのミグラント間の評価は、然程高くなかった。が、どうやら閉所で大量に展開されると評判以上の脅威となるらしい。セントリーガンがパルスタイプでないのは、味方への誤射を防ぐ為か。なるほど、戦法らしい戦法をとらない在野連中にしては、よく考えている。 《スペクター、そっちは塞いだか?》 《きっちりばっちりだぜ》 がりがりと、嫌な音がドレイクの装甲を薙いだ。HEAT弾頭はドレイクの装甲と相性が悪い。装甲値の数字が見る見る内に目減りして行く。 《よう、子猫ちゃん、逃げないのか?》 《そろそろ降りて貰おうかねぇ、よっと!》 リンクした映像越しの衝撃音に、女性は顔を一度背けた。 ――とうとう、やられてしまったか。 そう思っていた。が、遅れてやってきた声に安堵する。 《ふおぉッ?!》 男が驚愕する声だった。ドレイクのブーストチャージが見事、重量二脚のACに命中したのだ。 《追い詰められた爬虫類は……虫をも喰らうっちゃ》 別に追い詰められなくても、爬虫類は虫を食う生物だろうにと云いたかった。暢気に微笑みながらヘリを操縦する眼前の中年男性もきっと同じ事を考えているのではなかろうか。それはさておくとして、包囲網は崩れた。 《てめぇ! この機体幾らすると思ってやがる! あ、くそ、脚に穴空いてんじゃねぇか!》 《うひゃひゃ、ざまぁ!》 破損による動作不良で動きが止まった重量二脚型を振り切り、ドレイクは順調に出口へと向かっている。 ――よしよし、その調子だ。うん、振り向いて指差しとか、そういう無駄に人間じみた機動をしなくてもいいから。そこ技術求める所じゃないから。 《おい、スペクター! しくじったなこの野郎!》 《あのクソアマのせいだ! Fランクだから油断した!》 連中が仲間割れをしている間にも、ドレイクは出口を目指して一直線に駆け抜けて行く。敵機は機動力が低く、追い付いていない。 《このまま逃げ切るっちゃ!》 「……是非ともそうして。諸経費を計算したら、まだ黒字だわ。このまま被弾を抑えれば多少は返済出来るわよ」 出口まであと僅か。女性の口元は、気付けばにやついていた。 ここ最近、失敗ばかりだった。それを、漸く抜け出せる。汚名を返上すれば、業績も回復する。蜥蜴重工上層部も、これで少しは自分の手腕を認めてくれる筈だ。 ドレイクのカメラ越しに見える駐車場出口の光は、まるで低迷した己の業績の出口でもある様に感じられた。 「これからなのよ、全ては」 Home/Call of Revenants Back/Chapter 0-3 それぞれの前夜 Next/Chapter 1-2 深紅の雪 怨是