約 1,890 件
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/64.html
プロローグ 「そろそろ通りかかります」 まるで噂話をするかのように声のトーンをおとし、橘がそう呟いた。 「あ、ほらほら。見えてきましたよ」 声のトーンを落としたままそう続けた。何を興奮しているのか先ほどより若干大きくなっている。 しかしまだ見えたといっても一人の女子学生が歩いていると確認できる程度で、こちらの声なんか聞こえる距離ではない。 この距離で聞こえるなら聖徳太子といい勝負ができそうだ。普通に声を出せばいいものを。 「いや、それは一概には言えないんじゃないかな。現在科学で証明されているだけでも人間には20以上もの感覚が存在するんだ。 僕たちがこうしている間にも日々科学は発達しているのだから、将来更に見つかる可能性は十分に残されていると言えるね。 それに一般的な五感だけでも聴覚以外に視覚というものがある。耳で聞こえなくても目で見て勘でなんとなく気づく人だっているってことさ。 僕にだって今のキミの憂鬱そうな気分くらいなら分かるからね」 声を押し殺すような独特な笑い方をしながら佐々木が語りかけてきた。 相変わらず小難しい話をしてくるな。悪いが俺の頭は認めたくはないが谷口より少し上くらいだぞ。 誤解のないように言うが学力なら、ということだ。 「お前とは中学の時から一緒だからな。それなりに付き合いもあったから分かるが」 佐々木とは週に2回ほどとはいえ一年ほど共に塾に行き帰りが一緒だったからな。 だが佐々木と俺の学力は昼寝をする前のうさぎとかめくらいのどうしようもない差があった。 だからてっきり俺たちはそれぞれの学力に合った高校に行くと思ったのだがなぜかこいつはここにいる。 もっと上のレベルを狙えただろうに北高にくるとは物好きなもんだ。 毎日ハイキングをして通学するような場所にあるってのによ。 「北高にも特進クラスがあるからね。とりあえず一年間は様子を見てからそっちにいくかどうか決めるよ。 それにあの通学路は中々健康的でいいじゃないか。運動部に入っていない僕たちにはちょうどいい運動さ。 キミと歩きながら色々話もできるし僕としてはとても有意義な通学路なんだよ」 そのおかげで毎日遅刻寸前で学校に通う羽目になってるんだがな。 それでもなんとか遅刻をしないのは母親に命ぜられ面白半分で起こしにくる我が妹と、 それをわざわざ待ち続ける佐々木のおかげといっても過言ではない。 しかし通学路に対する考え方だけでもつくづく頭の出来が違うと感じるね。 もし神様がいるなら一言くらい文句を言っても罰は当たらないんじゃないか? まぁ宗教に無縁な俺が語っても説得力が微塵もないわけだが。 俺がもし真剣に進学を考えるならそんな暇はないと断言してもいい。 頭のいい人間の考えることはよくわからん。 「それよりキミはそれなりの付き合いと言ったが、僕とキミとの一年間の思い出に関してどう認識してるんだい? 少なくとも僕にはそれ相応にキミとの思い出を育んだつもりだがね」 そう言いつつ少し皮肉交じりに微笑しながら、俺をからかうような目線を送っている。 それ相応の付き合いか。まぁ佐々木とは塾の行き来を1年ほど続けていたとはいえ、 他はクラスでの会話などありふれた内容が多くて特別何かあったわけでもないんだよな、俺が覚えている限りでは。 いつもなら他になにかあったかと思い出そうとするんだが生憎今はそんな場合ではない。 だがお前は紛れもなく中学校時代親しくした友人の一人には違いないさ。 そんなことを考えていると突然、あからさまに不機嫌な声色で会話に混じってきた。 「やっとお出ましか。全く無意味な時間をすごしていたようでならないな」 声だけではなくうんざりとした表情で藤原は言った。あまりの不快感からか唇まで大きく歪んでいる。 ただでさえ普段から無愛想なくせにこうなると更に忌々しい。 というか俺は別にお前について来いと頼んだわけじゃないんだぜ? お前のその顔を見ているとただでさえ気分が悪いのに更に悪化する。 「あんたに言われるまでもなくついていくつもりはさらさらなかったがこれも指令なんでな」 女子生徒の待ち伏せまで指令に入ってるとはご苦労なことだ。 未来でアイドルやら有名人やらになると決まっている女子生徒の情報を確保し金儲けでもするつもりなんだろうか。 もしそうならストーカーとして逮捕されちまえばいい。 「―――退屈」 そう一言ぽつんと九曜が言った。量の多い髪は強い風が吹いても少しもゆれることはない。 初対面のときから慣れたとはいえ、無機質な顔にガラス玉のような黒い瞳は未だに少し不気味だ。 九曜本人から聞いた話によるとここの時間の流れは元々いた場所よりかなり遅いらしい。 そのせいかいつもぼーっとしてたり眠そうに過ごしている。正直何を考えてるのかほとんどわからん。 まさか宇宙人ってのはこんな変なやつばっかりなんじゃないだろうな。こんなのはこいつだけと信じたいもんだ。 「何ぶつぶつ言ってるんですか?だんだん近づいてきてるんですからお静かに」 すこし怒気を含みながら橘が話を戻した。俺だって好きでこんなぶつぶつ言ってるわけじゃねぇよ。 「佐々木さんの…いや、世界を元に戻す第一歩なんですからしっかりしてください」 「俺はまだ一言も協力するとは言ってないぞ」 いつの間にそんな展開になっているんだ? 俺は佐々木の件さえなければこいつらと顔をあわせることすらなかったはずだ。 自分の進む先に待ち伏せされているのを知ってか知らずか女子生徒は足早に俺達の方に向かっていた。 遠くから見る限り普通の女子生徒にしか見えないのだが、橘の説明どおりならとんでもない存在だ。 だがこの頃の俺はまだ橘達の言うことを完全には信じちゃいなかった。 同時に自分の運命が変わり始めていることにも気づくことができなかったわけだが…。 桜の花はとっくに散り早くも夏の陽気を垣間見る5月の終わりの午後、 日が傾き始め俺達を赤く染め始めた頃のことである。俺達はある人物を待ち伏せていた。 その人物とは… 「あれが涼宮ハルヒさん。佐々木さんの力の所有者よ」 ―――多分、というか絶対と言い切ってもいいと思う。 今この説明だけではなぜこうなったのか…なんてのはほとんど分からないんじゃないだろうか。 説明口調は橘や佐々木のほうが得意だし俺としてもこいつらに任せたいのだが俺が語り手である以上俺がやらなくちゃならんようだ。 元々不向きなのは重々承知してるさ、だから多くは望まないで聞いて欲しい。 佐々木とキョンの驚愕プロローグ 佐々木とキョンの驚愕第1章-1 佐々木とキョンの驚愕第1章-2 佐々木とキョンの驚愕第1章-3
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/503.html
鈍い痛みと、手首に違和感を感じながら目を覚ます。 足に力が入らず、口の中にも異物感。いったいこれは何だっていうんだ。 「おや、目が覚めたのか、キョン。心配したよ」 声のしたほうを振り向くと、佐々木が俺をみてにっこりと笑いかけてきた。 佐々木、と言いかけたが「ふぐぐっ…」としか声が出せない。 「びっくりしたよ。突然足を踏み外してしまったのだから。まあ、不幸中の幸いという やつだね、どうやら軽度の骨折だけで済んでいるようだ」 なっ、骨折だと?どうしてそんなことに?というかなぜ俺は手や口を拘束されている? 疑問を立て続けに口に出そうとするが、やはり口からはうめき声しか洩れない。 さっきまで俺は、佐々木と並んで堤防の上を歩いていたはずだが…足を踏み外した? 足を意識すると、とたんに痛みが激しく湧き上がってくる。意識したのがまずかったか。 痛みを感じる箇所を見ると、きちんと手当てがしてあるらしく、包帯も巻かれている。佐 々木がやってくれたのだろうか。しかし、何故拘束する必要があるんだ?周りの様子を見 ても見たことのない部屋だ。それに少なくとも病室のようには見えない。 「ああ、大丈夫だよキョン。僕がきちんと手当てをしてあげる。これでも一通りのことは 身につけたんだよ、心配しなくて良いさ。これからじっくりと…時間をかけて君を看る ことができる。誰にも邪魔はされないよ」 ど、どういうことだ。いつもと変わらない佐々木の笑顔。だが、いつもと同じ笑みがこれ ほどまでに不安感を煽り立てるものなのか。体を動かそうとして身をよじるが、ガチッと いう音とともに手に抵抗を感じ、布団に倒れこむ。どうやら手首の拘束具が床に固定され ているようだ。いったい何のつもりだ佐々木。ここから出さないつもりか? 倒れた拍子にさらに苦痛が大きくなる。耐え切れずに口から声が洩れる。 「ほらほら、だめじゃないかキョン、安静にしていなくては。せっかく橘さんや九曜さん に頼んで涼宮さん達から遠ざけてもらったというのに」 笑顔の佐々木がとんでもないことを口走る。ガチャッ。思わず身を起こそうとして、また 布団に倒れこむ。 「動いてしまったら、よくならないだろうキョン?」 邪気のない笑みに恐怖を感じ、必死で身をよじる。ガチャガチャ、ガチャガチャ。足には 力が入らず、手首は床から離れない。まったく意味のない抵抗。と、佐々木がなにか布を 近づけてくる。 「安心したまえ、身の回りの世話は全部僕がしてあげる。突然のことで混乱しているんだ ろうから、とりあえずは休むといい」 話しながら顔に押し付けてきた布に刺激臭を感じつつ、俺の意識は闇に落ちていった…
https://w.atwiki.jp/elysium02/pages/23.html
体型・・・妖魔の大きさ 種族・・・妖魔の種族 性格・・・悪=アクティブ/中立=ノンアクティブ 属性・・・妖魔の属性 攻撃・・・妖魔の攻撃タイプ(距離) 剣塚 等級 名前 メモ 体型 種族 性格 属性 攻撃 ドロップ品 Lv45 黒刀髑髏 中 霊 悪 金 近距離 白骨、黒髑髏の頭、黒髑髏の骨、貫甲鉄、学士の冠、破土の護符、玄鉄の鉱石、朱雲丹、黒刀髑髏血珀、仏陀舎利、無箸舎利、琥珀石、魍、速、白虹剣 Lv48 黒弓髑髏 中 霊 悪 火 遠距離 白骨、黒髑髏の頭、黒髑髏の骨、破土の護符、玄鉄の鉱石、琥珀石、木霊珠、浄清水、無箸舎利、怒雷鳴、直覚 Lv50 黒槍髑髏 中 霊 悪 無 近距離 白骨、黒髑髏の頭、黒髑髏の骨、破土の護符、玄鉄の鉱石、琥珀石、青菱玉、銀鉱石、無箸舎利、蘇生、排除、風雲、蛇頭杖、夜叉戟 Lv60 赤人面蜘蛛 対人、対獣招式が有効 中 人&獣 悪 火 近距離 繭、蜘蛛の卵、黒菱玉、銅の鉱石、琥珀石、怪しい爪、火霊珠、仏陀舎利、吸、律命、巨閣、九環金杖、竜脊 Lv68 白骨鬼 大 精 悪 無 白骨、魔髑髏、銀の鉱石、不思議な水晶、黄珠石、黒鉄面甲、錬鋼の鎖甲冑、紫炎の長衣、巨竜巻 Lv75 赤亡霊 中 霊 悪 土 近距離 亡霊の呪符、玄鉄の鉱石、琥珀石、怪しい爪、玄奘水、紫金の冠、九曜紋の将衣、狂鷲落 Lv80 牛魔王 ボス 巨 魔 悪 金 範囲 琥珀石、玄鉄の鉱石、銀の鉱石、金の鉱石、怪しい爪、黄泉、無痕、青龍の皮甲冑、龍角の宝石、伽藍舎利、仏陀舎利、無著舎利 Lv90 鬼侍 小ボス 巨 霊 悪 金 魔髑髏、銅の鉱石、玄鉄の鉱石、金の鉱石、黄珠石、青銅の心甲冑、幻天の将衣、旋風四門焔、仏陀舎利、無著舎利 Lv95 妖姫 小ボス 中 精 悪 無 藍水晶、銀の鉱石、怪しい爪、水霊珠、格斗の軟甲冑、破天雷爆襲、仏陀舎利、無著舎利 妖魔情報 コメント欄追加 白骨鬼の種類、霊じゃなくて精かなと思って修正 違ったら再修正よろ -- new{2005-04-27 (水) 11 25 48}; ドロップ品大幅更新 -- new{2005-05-09 (月) 01 41 04}; 白骨鬼:低確率で金の鉱石もドロップします。↑×2種類は精で合ってますよ。 -- 名無しさん@天下漬け (2006-02-18 20 57 32) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinmegamitensei1/pages/630.html
トップ|基礎知識|悪魔合体|悪魔|魔法・特技|アイテム|マップ|攻略|その他 東京タワー マップ|宝箱|出現悪魔 マップ 45F 30F 上へ 宝箱 No. 場所 名称 No. 場所 名称 1 45F 九曜紋の根付(GAMEBOY ADVANCE版) 上へ 出現悪魔 〔30F〕 属性1 属性2 種族 名前 LV HP MP 魔法・特技1 魔法・特技2 魔法・特技3 相性 NEUTRAL LAW 地霊 ドワーフ 26 165 65 ラクカジャ ハンマ 会心 地の魔(衝撃・魔力・万能が効く) NEUTRAL LAW 地霊 ブッカブー 19 105 48 ブフーラ マハーブフ ラクカジャ 地の魔(衝撃・魔力・万能が効く) NEUTRAL LAW 地霊 ノッカー 4 28 25 ザン シバブー タルカジャ 地の魔(衝撃・魔力・万能が効く) NEUTRAL LAW メシア教徒 メイガス 37 305 198 ジオンガ ディアラマ リムドーラ 人間亜人(ガン・電撃に弱い) NEUTRAL LAW メシア教徒 きょうしんしゃ 18 81 35 メディア - - 人間亜人(ガン・電撃に弱い) 〔45F〕 属性1 属性2 種族 名前 LV HP MP 魔法・特技1 魔法・特技2 魔法・特技3 相性 NEUTRAL CHAOS 鬼女 スキュラ 49 560 110 巻きつき ディアラマ 水の壁 水の魔(電撃反射) NEUTRAL LAW 妖魔 キンナラ 55 525 161 マハラギオン スクカジャ ラクカジャ 炎の魔(氷結に弱い、火炎吸収) NEUTRAL CHAOS 堕天使 アバドン 60 666 292 ファイアブレス アイスブレス 毒ガスブレス 死の魔(魔法に強い、呪殺反射) NEUTRAL CHAOS 堕天使 デカラビア 42 460 195 マハザンマ テトラカーン テトラジャ 電気弱(電撃に弱い) NEUTRAL NEUTRAL 魔獣 ケルベロス 43 420 56 噛みつき ファイアブレス サマリカーム 肉体火炎(氷結に弱い、火炎反射) NEUTRAL CHAOS 妖鬼 シュテンドウジ 49 512 128 タルカジャ ラクカジャ 暴れまわり 魔人(全体的に強い、破魔無効) NEUTRAL CHAOS 妖鬼 イバラギドウジ 38 377 98 ドルミナー マカジャマ ラクンダ 魔人(全体的に強い、破魔無効) NEUTRAL LAW メシア教徒 スキャナー 53 510 290 ザンマ マハザンマ リカームドラ 魔人(全体的に強い、破魔無効) NEUTRAL CHAOS ガイア教徒 やみほうし 52 502 320 マハザンマ ラクカジャ マカトランダ 魔人(全体的に強い、破魔無効) DARK LAW 邪神 ミシャグジさま 44 505 212 ジオンガ マハジオンガ ムド ボス0(神経・緊縛に強い) DARK NEUTRAL 妖獣 タマモ 44 499 54 ハピルマ マリンカリン タルンダ 対剣(剣反射) DARK LAW 邪鬼 サイクロプス 51 500 31 守る 暴れまわり マハジオ 人間亜人(ガン・電撃に弱い) DARK CHAOS 幽鬼 おしち 7 39 29 プリンパ アギラオ - 精神体(ガン・神経・呪殺無効) DARK LAW マシン T95D 32 180 0 仲間呼び - - マシン(電撃に弱い) 上へ
https://w.atwiki.jp/ercr/pages/2492.html
発売日 2024年2月22日 ブランド CRYSTALiA タグ 2024年2月ゲーム 2024年ゲーム CRYSTALiA キャスト 柳ひとみ(朱雀院撫子),綾音まこ(滝川小鞠),秋野花(英パルヴィ),木下くわがた丸(滝川一馬),みたかりん(柳生クロメ),葉月ひかり(英いぶき),乙倉由依(白銀メイ),海原エレナ(伊庭神九曜),佐藤涼樹(柳生十兵衛),木之みき(渋澤ニーナ),猫村ゆき(風嶺初乃),上原あおい(九鬼旭),野上結生(佐々木巫琴),飴川紫乃(佐々鳴子),七ヶ瀬輪(中邑さくら),出雲醒(朱雀院柾胤),プル斎藤(ベルセルク海堂),青葉みこ(女性1),茶松くるみ(女性2),田蒲谷糀(男性1),富永修平(男性2),谷井ムロ(男性3) スタッフ 企画・原案:砥石大樹 キャラクターデザイン・原画:ぺろ,うすめ四郎,灰葉 サブキャラクターデザイン・原画:狐ノ沢,noyF,織澤あきふみ,サイキライダー アクション原画・レイアウト:サイキライダー,狐ノ沢 イベント原画・レイアウト:みつはもち。 SD原画:白恵りえ 武器デザイン:サイキライダー,狐ノ沢 3Dモデリング:ののむ シナリオ:砥石大樹,三日堂(東洋IT有限会社),若瀬諒 サブシナリオ:時田シャケ,風間ぼなんざ,逢花ひとは(東洋IT有限会社),りりり SOUND PRODUCE:ALNEAR 効果音協力:市川万里彩(東洋IT有限会社) 歌唱セリフ協力:ピヨニキ(東洋IT有限会社) ムービー制作:AniEmoN(東洋IT有限会社) CVコーディネート&ディレクション・音響制作:株式会社キューブ グラフィック:MOZUKU,ぺろ,白恵りえ,みけ,みつはもち。,きちえも,高橋レコード,にやすけ,ひたち,水瀬くうる,はつ乃,中野一(東洋IT有限会社),株式会社アソビノスピリッツ SDグラフィック:白恵りえ ロゴデザイン:うじお 背景美術:株式会社クリープ 山本練正,小佐野詢,位田恭伍,金田侑季,柳本和沙,仁井七海,劉鴻禹,千葉彩音,榎本瑞生,島田圭介,三浦龍斗,吉井卓実 DTP:きちえも,ぺろ システムデザイン:みけ WEBデザイン:awake studio. プログラム:TAMO システム:fuji,NARIMI.A スクリプト/演出:S.MURATA,まーさん,那桜,NARIMI.A,小判,虎魚,れおま,若瀬諒 デバッグ:横山浩,柴又,藤宮ひいろ 書体協力:(株)フォントワークス スペシャルサンクス:awake studio.,AMUSE CRAFT ALL STAFF ディレクター:那桜 プロデューサー:虎魚 制作:CRYSTALiA 販売:AMUSE CRAFT オープニング主題歌 「双ノ軌跡」 作詞:ALNEAR 作曲:ALNEAR 歌唱:冬乃桜 Produce:RESTARiZE 挿入歌 「無上ノ刃」 作詞:Ryohei Haduki(U-RASIA) 作曲:ALNEAR 歌唱:冬乃桜 エンディング主題歌 「キミノトナリ」 作詞:Ryohei Haduki 作曲:ALNEAR 歌唱:冬乃桜
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1835.html
「なあキョン」 「なんだ、強引に話を中断したのはお前だったはずだが。佐々木」 それは二人して向かい合い、額をつき合わせて夏休みの宿題をやっていた時の事だ。 「そりゃキミが……ああ、いや、言うまい。むしろそれがキミの望みである気がしてならないからね」 「なるほど。つまり俺は『続きを言え』とお前に促せばいいんだな?」 「あのね……いやそれより火急の問題としてだが」 「おう。下級の問題とは限定的だな」 「もうツッコまないよキョン」 「当たり前だ。ツッコむのは俺の方だからな。無論」 「続きを言ったら友誼を切るよ?」 「続きを言うなら友誼が切られても構わないレベルの暴挙に及べ、という前振りだな」 「……キョン」 「なんだ」 「……………テーブルの下でだね。僕の、その、下半身を足先で触れ回るのは止めてくれないか」 「…………手で触れろとは積極的だな」 「言ってないよ! ただ勘弁してくれと言っているだけだ!」 「嫌よ嫌よも」 「好きの内じゃない!」 「流れるようなツッコミに感謝するぞ親友」 「ああ、親友。……ってそうじゃないだろキョン!」 「すまんな佐々木。どうも先日、周防九曜の奴から貰った妙な飴玉が原因らしい」 「なんだって? そうか道理で」 「とか言ったら信じてくれるか?」 「怒るよ?」 「「………………………………」」 「……キョン。確かに、キミに対し僕がかつて本能がどうとかDNAや遺伝子がどうのとか種をつなぐとか年齢的に問題ある発言が」 「……って無言で僕の尻を触らないでくれないか」 「俺は撫でているんだ親友」 「……思うに思春期の青少年にだ、かように性的な話題を振り続けた僕にも責任がないとは言わない。しかしキミは一切そうした」 「……キョン、かと言って太ももに移行せよと言ったつもりもない」 「ならしょうがない。ほれ、俺の膝の上に乗れ佐々木」 「わ、何がしょうがないのか知らないが、乗せておいてから言う台詞じゃないよね?」 「お前軽いな、ちゃんと飯食べてるか?」 「なんだいそのテンプレ台詞。キミには似合わない事この上ないよ?」 「安心しろ。軽いが膝の上の感触は肉感があって実に良いぞ」 「く、ふ、もしや褒めているつもりかい?」 「軽くて肉感がある、つまりだ」 「何がつまりか知らないが撫でるから揉みこむに動作変更しているのはわざとかい? そろそろ怒るよ?」 「違うな佐々木。俺は今まさに怒られているんだ」 「なあ佐々木、そんなにクエスチョンマークばかり付けて疲れないか?」 「なら減らす努力をしてくれたまえ。例えば僕をキミの膝の上から降ろすとか色々やりようがあるだろう?」 「いやな。せっかくこの体勢だから『あててんのよ?』ってやってみたいんだ。男として」 「……僕は何も感じてない。何も触れてない。感じてないぞ」 「不感症か?」 「不干渉にしてくれ」 「なあ、全く無関係な話だが、この間の騒ぎで『キョンの望みであるなら、なんでも聞くつもりでいるよ』とか言ってなかったか」 「そうだね。実に無関係な話だが、これなら九曜さんの精神分析にでもチャレンジする方がよほど容易だと思えるよ」 「精神分析か。もしかしたらこいつも精神病の一種かもしれんな」 「キリッとしながら人のパンツの中をさぐらないでくれ」 「佐々木、このままじゃパンツの中まで濡れ鼠だ」 「キリッとした顔で何を言うんだキミは」 「佐々木、息、荒いぞ」 「本能の、いやいわゆる生理的現象だよキョン」 「それ以上でもそれ以下でもないのか」 「先に言わないでくれ」 「キョン、以前も言ったが僕は気の長い方だ。そして最後に怒ったのは丁度二年ほど前、ひゃっぅ……!」 「らしくないな佐々木。確かに多少は性的な行動を思わせるが、そうした発想は思春期の男女関係を何でも色恋沙汰にあてはめたがる連中と同じなんじゃないのか」 「今まさに人を背中側から抱きしめ、耳元で囁いている人間の言う事じゃないのは確かだよキョン」 「すまんな。どうも調子がおかしいらしい」 「調子を整える為にもだ。親友として一肌脱いではくれんか?」 「敢えて却下する。むしろキミが脱いで欲しいのは肌ではなく、ああ、そうかキョン」 「なんだ。最後まで言ってくれ佐々木」 「キミ、言わせたいだけだろ?」 「何のことだか知らんが、俺はただ、お前の内面世界とやらを感じさせてもらいたいだけだ」 「それはオックスフォードホワイトとかそっちの話とは別の話だよね?」 「佐々木、人体は脅威の小宇宙って言うよな?」 「なんでその話をここで振るんだい?」 「別に深い意味はないぞ。俺には未体験の領域だからな、観測行為によって俺にとっての価値基準を確定させておきたいだけだ」 「キミ、小難しく言えば僕が首を縦に振るとか思ってないかい?」 「お前がそれを言うのか佐々木」 「……キョン。実際僕は動揺しているんだ。僕は、うなじに当人の許可なく舌を這わせるような犯罪者を親友に持ったつもりはないからね」 「親告罪である以上、お前が俺を訴えるという宣言だと解釈するぞ」 「これ以上の暴挙に及ぶなら、そうさざるを得ないな」 「なら何故そうしないんだ佐々木」 「僕とキミの肉体的体格的差異を鑑みれば策もなく暴れたところで事態が好転するとは思えないからね。隙をうかがっているつもりだった。だが、こうなってん、んふ……」 「…………確かに、お前には叫ぶという選択肢が残されているな。だが俺にも塞ぐという選択肢がある」 「………………………バカなんじゃないのかキミは」 「解ってくれないならもう一度やるぞ?」 「………ノーコメントだ」 「なあ佐々木」 「くぅ、なんだい遂に人の胸を揉み始めたキョン」 「お前、昔言ってたじゃないか。胸の事で『岡本さんみたいならまだしもさ』って。けど実際悪くないぞ。むしろ感動的な感触だ。いやお前以外のは知らんから比較しようがないが」 「ふ、ぅん、そうなのか……じゃなかったあの頃のキミはもうどこにも居ないんだねキョン」 「じゃあ俺は何なんだ」 「何なんだよ!」 「すまん。実は橘京子の奴に貰った飴玉が原因らしい」 「やっぱりそうか。橘さんめ今度会ったら」 「って言ったら信じてくれるか?」 「何なんだい!」 )終わり 関連67-9xx「キミこそ余裕がないようだが?」。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/2171.html
佐々木からのプロポーズ(驚愕If分岐 Bad End) 「あんた何言ってんのよ!一年後には五人でSOS団作るわよ!」 「残念だが…俺はそれに加わることは出来ない」 俺の言葉に一瞬にして静まり返ってしまった。長門が無口なのは言わずもがなだけどな。 やれやれ…場を大いに盛り下げてしまったが、朝比奈さんの合格祝いで盛り上がってもらえればいいだろう。 「ちょっとキョン!このままあんたがあたし達と競り合うような成績取り続けるなら 何の問題なく皆で合格出来るじゃない!」 しばしの間をおいて、ようやく俺の言わんとしていることに古泉が気がついた。 「まさか…朝比奈さんと違う大学を受けるとでもいうんですか!?」 「ああ。佐々木と同じ大学を受ける。これまでの勉強はそのためのものだ。無論これからもな。 ハルヒや古泉と点数を張りあうようになっていたのは、単なる偶然だよ」 「キョン君…それ、本気で?」 「彼の言葉に嘘偽りはない」 「あんた、佐々木さんとは親友だって言ってたじゃない!別に大学まで同じにする必要ないわよ! それに佐々木さんの受ける大学なら更にレベルが高くなるのよ!?合格できると思ってるの!?」 「合格するために必死で勉強してきたんだ。朝比奈さんの受けた大学よりレベルが上なのは承知の上だ。 俺はあいつと共に生活することにした。それにな…ハルヒ。もう親友じゃないんだよ」 「親友じゃないって……っ!!」 「お察しの通りだ。ハルヒと同様、佐々木も『恋愛感情なんて精神病の一種』と言っていた奴が、 『キョンならそれでもかまわない。僕の存在意義がなくなってしまうからね』なんて言われたよ」 「キョン君、存在意義って…?」 「『人類の一員としていうならば、自分の遺伝子を残すこと。 子をなして自らの構成要素を後の世に伝える』だそうだ。 要するに、俺と結婚して子供を産みたいって事。まったく、今になってもそう思う。 佐々木らしいプロポーズだとな。俺の18歳の誕生日に婚姻届を出しに行こうと思ってる。 結婚式は大学卒業後になりそうだがな。 朝比奈さんの煎れてくれたお茶が飲めなくなって残念だが、これが俺の決めた道だ」 「そんな…恋人どころか婚約しているっていうの?」 「ハルヒも俺みたいなただの人間をいつまでも部活に入れてないでおまえの求めているものを探せばいい。 幽霊や妖怪、異世界人に未来人、宇宙人に超能力者を探すんだろう? 隠しているだけで実はすぐそばにいたなんてこともあるかもしれん。 鶴屋さん、朝比奈さん、折角の場の雰囲気を壊してしまってすみません。 朝比奈さんの合格発表の日は五人で盛大に盛り上がって下さい。俺はお先に失礼させてもらいます」 呆然としている五人をよそにスッと立ち上がり長門の部屋の玄関へと向かう。 「待ちなさいよ!!」 ハルヒが大声で叫んで立ち上がった。他のメンバーもハッとして俺を止めにかかる。 「どうかしたか?」 「あんたが…あんたがいなきゃSOS団は成り立たない。あんたがいなきゃ………意味がない…」 立ち上がってすぐに泣き崩れるハルヒにまわりのメンバーが心配そうに集まる。 「ハルヒ、ただの人間はいちゃいけないんだ。どうしておまえがそこまで泣く必要がある。 恋愛感情なんて精神病の一種だっておまえも言ってただろう?」 「佐々木さんと一緒よ……。あんただけは…あんただけは精神病でもかまわない。 あたしだって…あんたのことが好きなんだから…」 「すまないな、ハルヒ。たとえおまえが先にそれを伝えてくれていたとしても 間違いなく俺は佐々木を選ぶ。あいつは俺にとって唯一無二の存在なんだ。……すまん」 「なんであんたが謝ってばっかりなのよ……」 それはな、ハルヒ。それ以外におまえにかけてやれる言葉がないんだ。すまない。 心の声でそう伝えて、長門のマンションを後にした。 翌日、佐々木を高校に送り届けてハイキングコースを歩いていると、周囲の視線が俺に集まっている。 学校に到着して上履きに履き替えようと俺の下駄箱を見ると、大量のゴミが詰まり、靴には画鋲、 靴の裏にはガムがいくつも付けられていた。これだけで何が起こったか十分想像がつく。 あの女が自覚していなくとも力を行使して俺と…おそらく佐々木がいなくなればいいとでも願ったんだろう。 惚れた男にフラれたくらいでそこまで感情の起伏がある女だとは思っていなかったが、 なんにせよ、向こうも同じようになっているだろう。 俺はまだ良くても…あいつは生物学上は女だ。早急に対処する必要がありそうだな。 現状を確認するため、上履きには履き替えず下足のまま教室へと入る。 ハイキングコースを歩いていた時と同じく、クラスメイトの侮蔑のような視線が俺に集まる。 自分の席の後ろにあの女が座っている。一つ前の机には既に書くところがないほど落書きされており、 椅子には上履きと同じく画鋲。机の中の教科書やノートはズタズタに切り裂かれていた。 すぐに携帯を取り出し、佐々木に電話をかける。 「おい、なんでおまえがここに来てるんだよ!」 アホの谷口の声が聞こえてきたが無視だ。 「キョンかい?キミから連絡があったってことはそっちも同じ状況みたいだね。 涼宮さんの力がマイナス方向に発動するとどうなるかようやく実感できた気がするよ。 今、誰もいない屋上にいる。キョン…傍にいてくれないか」 そこまで言って涙を流し始めた。無視して一向に相手にしない俺に対して、谷口が俺の太股に蹴りを入れる。 「とにかく、すぐ迎えに行く。おまえがそこで見つかれば、 屋上では逃げ道がなくなるだろうから、校門前で待っていてくれ。なるべく誰とも視線を合わせるなよ」 そこまで指示を出して、さっきからうるさいアホに向き直った。 谷口に近づいて髪の毛を掴んで顔面を殴り、腹を蹴る。勢いよく後ろに吹っ飛び、尻もちをついた。 「がっ!!何しやがる!」 「相変わらずアホの谷口には変わりないらしいな。さっきからおまえが散々やってきただろう? そのお返しだよ。文句を言われる筋合いはない」 言い終わるとともにこめかみを蹴り、横に倒れたところで頭を上から思い切り踏みつけた。 歯が2,3本折れ、顎が外れたようだな。こんなアホにいつまでも付き合っている暇はない。 「さて、次はどいつだ?………答えろ!!!」 教室中に俺の怒号が響き渡る。国木田は急いで谷口に近づき、教室から出て行った。 「たった一人やっただけでこの程度とはな。おまえら全員あいつと同様アホな連中だよ…くそったれが」 それだけ吐き捨てて学校を飛び出した。最悪の事態が起こったと見てまず間違いない。 俺たち二人を周り全員から忌み嫌われるようにしたらしいな。朝の家族の様子もどこか変だった。 ハイキングコースを下り終え、自転車で佐々木を迎えに行った。 対処が早く済んだため、制服を強引に引っ張られたり切り裂かれたりはしていないらしいな。 「キョン…僕はこれから一体どうしたらいいんだい?」 「心配いらん。おまえと同じ大学に行くと誓ってから、こうなることもずっと考えていた。 万全とまではいかないが、対策はすでに用意してある。今は俺に身を委ねてくれ」 何も言わずただ泣きながらコクリと頷く佐々木から携帯を借り、着信履歴が一番多いであろう人物に電話をかけた。 「佐々木さん!?あなたから連絡してくれるなんて嬉しいです。 また、わたし達と一緒にいてくれませんか?」 「悪いが、佐々木じゃない。声で俺が誰か識別できるはずだ。要件だけ伝える。 『おまえたちの望みを叶えてやるから、藤原と九曜を連れて六人以上乗れる車で俺の家に来い』以上だ」 「待っ…」 橘の返事も待たずに通話終了ボタンを押した。 「キョン…今のは橘さんかい?僕はもう彼女たちとは………」 「心配いらん。以前はおまえがあいつらに利用されようとしていた。だが、 今回は俺があいつらを利用するだけ利用してゴミのように捨て去るつもりだ。 顔も見たくないだろうが、おまえには絶対に危害を加えさせない。俺の言う通りにして欲しい」 すぐにでもここから立ち去りたいが…俺の最優先事項はコイツだ。何があっても俺が守る。 佐々木が抱きついてきたところで頭を撫で、自転車に二人乗り。 佐々木の腕は俺の腹部をギュッと抱きしめたまま離そうとはしなかった。 家に辿り着いても橘に指示した車は止まってはいなかった。 藤原はまだ連絡がつきやすいだろうが、九曜はそうもいかないだろう。 高校から帰ってきた俺達を見て母親が怒号を上げたが、 「トラブルに巻き込まれた」とだけ伝えて後は何を言って来ようが無視で貫き通した。 部屋へと入り、着替えもせずに佐々木と二人でベッドに横になる。 「とりあえずこれで一安心だ。また嫌な場面を見せてしまう事になるだろうが、 それまでの間はこうやって抱き締めていられる。これだけじゃ物足りないかもしれないが…な」 「十分だよ。私はキョンの傍にいられるだけでいい。一秒でも長くこうしていたい」 ようやく安心できたのか佐々木はしばらくしてから眠りに付いた。 だが、俺は橘からの連絡かインターホンが鳴るまで眠るわけにはいかん。 最悪の事態に陥った場合に備えておいたプランを反芻し、 ぼんやりとしか考えていなかった部分をどうするか検討をしていた。 昼を過ぎ、起きてきた佐々木と二人で弁当を食べ、これまで通り時間を忘れるような世間話。 今朝起こった出来事もこれで忘れてくれればいいのだが… あたりが暗くなってきた頃、インターホンが鳴った。ようやく…と言うのが一番ふさわしいだろう。 俺の条件を満たすのにもう少し時間がかかるかと思ったが十分だ。これで今日決行することが可能だ。 台所から玄関に出てきた母親に「俺の客だ」と告げ、扉を開ける。 目の前には橘一人、藤原と九曜は車の中のようだ。 「あの…あなたは…」と橘が話しかけてきたが時間が無い。佐々木と二人で車に乗り込んだ。 「はっは、まさかあんたからアプローチがあるとは思わなかったよ、過去人。 その上僕たちの望みをわざわざ叶えてくれるとは…滑稽だよ」 「おまえと世間話をしている程暇じゃないんだよ自称未来人。利害が一致しただけだ。 これから俺の言う通りに動いてもらう。最初に言っておく。これは指示じゃない。命令だ」 「この僕に命令だと?ふざけるな!愚かな古代人の言う事を真に受けて成功するとは思えないね」 「その愚かな古代人の戦略に負けて自分の持っていた銃を突き付けられたのはどこの誰だったかな? それとも、おまえは別の時空平面上からきた藤原か?だったらすまんと言っておこう。 与太話もこれで終わりだ。おまえはこの車が隠れられる場所を探して橘に伝えろ。 朝比奈みくるもこのくらい簡単にできた。おまえに出来ないことはないはずだ。 古泉たちの車が追ってくる。一瞬でもいい。隠れたところに入ったら、 九曜は機関の人間からは見えないようにステルスを張れ。これをしなかったからおまえらは失敗した」 ぐうの音も出ないらしい。しぶしぶ藤原が橘に触れて座標を伝えた。 「そろそろです」という橘の言葉に、 「――――まもなく実行する。我々への対抗手段を排除する」と九曜が答えた。 我々への対抗手段…ね。森さんたちが俺達を尾行しているということだろうな。 「九曜がステルスを張り次第、涼宮ハルヒを拉致する。時間も頃合いだ。 SOS団がバラけたところで車に連れ込んでロープで縛れ。 あとはおまえらのアジトに向かって車を走らせればいい。 涼宮ハルヒの力を移したところであの女は用済みだ。ロープで縛った状態のまま投げ捨てる」 何か言いたげな素振りをしている藤原に、あの女の力が移されることに恐怖している佐々木。 心配いらん。あの女の力はおまえには移させない。 SOS団の解散場所近辺で涼宮ハルヒの来るのを待った。 長門、朝比奈さん、古泉の視線から見えなくなったところで藤原が車から降りてハルヒを拉致、 橘が勢いよく車を走らせる。ロープで固定されるまでは抵抗していたが、 自分の力ではどうにもならないと思ったところで抵抗しなくなった。 「あんたたち、あたしを一体どうするつもりよ!…キョン? ……なんでキョンがこいつらと一緒にいるのよ!佐々木さんまで…どうして!?」 「自分の惚れた男にフラれて、大方俺や佐々木がいなくなってしまえばいいとでも思ったんだろう? 今朝の状況を見れば原因はおまえの力だとすぐに判明したよ。 嫌気がしたね。なんで俺は自分の恋路までおまえなんかに邪魔されなくちゃならないんだと思ったらな。 おまえのわがままに俺たちを巻き込むな!」 「……それは…でも、あたしがちょっと考えただけで、なんであんたにそこまで言われなくちゃいけないのよ! それにあたしの力って何のこと!?説明しなさいよ!」 既に古泉からの着信があり、朝比奈さんや長門は俺たちの行動や現在地まで掌握されているだろう。 とはいえ、この女にははっきり分からせないといけない。 「涼宮ハルヒ、おまえには世界を改変する能力が備わっている。 おまえがちょっと考えただけで今朝のような事態が起こる程な。 もう一つ例を挙げるとすれば、去年の映画の収録で秋なのに桜が咲いてしまったことくらいか。 もちろん、おまえが知らないだけでおまえの理不尽な力に振り回されていたけどな。 そして、その能力を監視するために長門や朝比奈さんが集まり、 おまえがイライラすると出現する閉鎖空間の怪物退治に古泉たちが駆り出されていた。 嬉しいお知らせを一つ教えてやろう。おまえが入学式の自己紹介で願ったことは、 すでに実現されていたんだよ。長門が宇宙人、朝比奈さんが未来人、古泉が超能力者だ」 どういう表情をしていいのかわからんらしいが、時間が無い。事を先に進めよう。 「ここにいる三人はお前のその理不尽な能力が目当てでこうやって拉致したり、 朝比奈さんを誘拐しようとしたりした。どれも失敗に終わったが、今回は俺と利害が一致した。 九曜、この女の力を俺に譲渡しろ!」 「何ぃ!?ふざけるなよ貴様!そいつから器の佐々木に譲渡しなければ意味がない。 やはり古代人だったか…愚かな策に便乗した僕が馬鹿だったよ」 「申し訳ありませんがその通りです。あなたではただの超能力にしかなりません。 佐々木さんでないとわたしたちの願いを叶えることはできないのです」 自称未来人は飽きれ果て、橘は運転してはいるものの落胆を隠しきれないでいた。 「愚かなのはおまえたちの方だ。佐々木はこの受け渡しを全力で断ると言ったはずだ。 ただでさえ、おまえたちとの接触を避けていたのに、それでも今はこうやって行動を共にしている。 一旦俺に移し、佐々木と充分話し合った上でその女の能力を譲渡する。 おまえらごときがいくら交渉しようと脅そうと佐々木は壁を作るだけ。 焦らされる思いだろうが、もうしばらく待て。 佐々木が力の受け渡しを了承したところでお前らとコンタクトを取ればそれで済む」 「チッ!僕が古代人なんかに諭されるとはな。いいだろう、あんたの策に乗ってやる。 九曜、その女から力を譲渡しろ!」 涼宮から金色のオーラがあふれ出し、俺へと移動を開始した。 車内から放たれた光のせいで前方が見えなくなり、橘が慌てて車を止める。 「何よ…これ……?」 「言ったはずだ。おまえは今まで全く自覚してなかった理不尽極まりない力だと… だがそれもあと少しで終わりを迎える。数日中にSOS団は解散するだろう」 「SOS団が解散って…一体どういう事よ!」 何とか縄をほどいて俺にくってかかろうとしたが、そのまま座席に上半身を預けるだけだった。 金色のオーラが全て俺に受け渡されたところで再度涼宮に話しかけた。 「長門と朝比奈さんはこの力の監視をすることが任務。おまえがただの人間に成り下がれば、 二人とも自分の元いた場所へと帰るだろう。おまえがイライラするたびに怪物退治に追われた古泉は 今頃喜んでいるだろうな。昼夜問わず駆り出され、おまえが少しでも苛立つことの無いように ニヤケスマイルでおまえのご機嫌取りをしていたんだからな。 さっきから古泉からの着信がうるさいんだ。ちょっと電話に出てどういう反応をするか話してみよう」 携帯の通話ボタンを押した。古泉の第一声、なんて言ってくるだろうな…。 「すみませんが、単刀直入に申し上げます。あなたは一体何をしたんですか!?」 「古泉、おまえが一番良く分かっているはずだろう? 涼宮ハルヒの気違いな能力が発動して、俺と佐々木は全世界から忌み嫌われるようになった。 こいつの自分勝手な妄想になぜ俺たちが被害を受けなきゃならんのだ。 お前も俺の机や椅子、下駄箱を見たはずだ。俺だけならまだしも佐々木までもこいつは巻き込んだ。 許せるわけがないだろう?理不尽な能力なら俺が貰い受けたよ。 おまえやエージェントの超能力も消えたはずだ。もうこの女に従う必要はない。 機関は解散になるだろうが…寝不足な日々を過ごすこともなくなるんだ。おまえの好きにすればいい」 「なるほど、そういう事でしたか。確かに僕やエージェントの超能力は消えました。 閉鎖空間の出ることなく、神人も現れないのであれば願ったり叶ったりと言ったところでしょう。 ですが、我々はいいとして、今後は情報統合思念体や天蓋領域、未来からの干渉もあるでしょう。 あなたなら簡単に打ち破ってしまいそうですが、お気をつけて… これまで我々の使命に付き合っていただいてありがとうございました。それでは、失礼します」 …と言うわけだ、などと言う必要もなく力を失った女は縛られて倒れたまま泣き崩れていた。 「藤原からすれば、力の受け渡しが終わったおまえに用はないと始末するだろうが、 俺達が受けた苦しみを十二分に味わってもらう。 もう用済みだ。拉致しといて悪かったな。これで解放してやるよ」 涼宮の縛られたロープはそのままに車のドアを開け、涼宮を車外へと蹴り飛ばした。 橘がそれを見届けて車を急発進。あとは手筈通り、佐々木が了承したらこちらから連絡すると伝えて、 俺達はテレポートで俺の家へと戻った。二人分の夕飯を部屋へと運び、一緒に食事しながら話しだした。 「橘さんが言っていたけど、これでキョンも超能力が使えるようになったようだね。 いきなりテレポートするから吃驚したよ。でも、彼らとの約束はどうする気だい? キミも………僕がその力を引き継ぐことに…賛成……なのかい?」 一連のやり取りで最も恐怖を感じていたのはこいつに間違いはない。だが… 「心配するな。あいつらをその気にさせるために便乗しただけにすぎん。それより、 あの女から力を譲渡したが、未だに俺もおまえも周りから忌み嫌われていることに変わりはない。 おまえに力を与えて元に状態に戻すのが一番いい。だが、それが嫌だということも承知の上だ。 明日からのことは俺が何とかするから、心配しないでくれ。 橘たちも二、三日したところで始末しに行くつもりだ。これでおまえに危害を加える奴はいない。 状況的に仕方が無かったとはいえ、苗字で呼んでしまって悪かった。すまない」 「嬉しいよ、キョン。明日以降、同じようなことが起きてもキミがなんとかしてくれるんだろう? それだけで十分満足だよ。高校は違っても、さっきのようにテレポートで来てくれる。 僕はそれだけで安心していられる。キミがいてくれて本当によかったと思う。 ところで…初めてテレポートを使ったはずなのに、どうしてこんなに正確にテレポートできるんだい? しかも移動中の車の中から…」 安心していられるならそれでいい。今日は…特にコイツは嫌な思いをしてばかりだったからな。 一緒に寝るときはギュッと抱きしめて寝ることにしよう。 しかし、超能力に興味を持ち始めたらしい…違う意味で寝かせてくれないかもしれん。とりあえず… 「あの女の力が俺に注がれてきた時に、この力をどのように使えばいいか、どんな能力があるのか、 どうやって使えばいいかが全て知識として入ってきたんだよ。サイコメトリー能力というらしい。 俺も実際に使ってみないことには実感がわかないだろうが、色々説明するより、明日以降見られる筈だ。 百聞は一見に…ってやつだよ」 「明日が待ち遠しくてならない。周り中からいじめを受けているとは思えないくらいだ」 そのあと交互に風呂に入り、ゆったりくつろいでから部屋の明かりを消した。 超能力の話で盛り上がりながら、テレパシーで会話してみたり、俺たちの身体にコーティングを施したり。 佐々木の方のコーティングはサイコメトリー能力も付けておいた。 ナイフや銃弾でも跳ね返すコーティングのようだしな。 殴る、蹴るは当然のこと、バットや鉄パイプでもダメージを受けることはあるまい。 翌朝・・・当然家族からも忌み嫌われているのは変わりないが、 食事や弁当に毒を盛ったりすれば、サイコメトリー能力ですぐにわかる。 証拠は?と聞かれれば、実際に食べさせればいいんだからな。 食事と身支度を終えてから佐々木の高校へと向かった。今回は俺も校内に入る。 北高の制服のままだが教員が校舎をうろついているなどほとんどない。 まずは下駄箱。昨日の俺の下駄箱と同じ状態になっていた。 何をすればいいのか身体が分かっているかのように勝手に動き、右手をかざした瞬間、 佐々木の下駄箱が元通りになっていた。自分でもこれには驚いた。 「百聞は一見に…だったかい?まさか一瞬で解決するとは思わなかったよ。 どうやったのか教えてくれないか?」 やった本人も驚いているのに説明を求められても困るな…だが、 「下駄箱をサイコメトリーして、おまえの下駄箱に悪戯をしたやつを特定。 テレポートでそいつのところに移動させた。ガムや画鋲を入れた奴は今頃どうしてるかな?」 勝手に口が動いている…ような気がする。とりあえず、教室の机も昨日の俺と同じ状態。 さっと一撫でしたところ、これ以上書くところが無いくらい描かれていた落書きが消え、 ズタズタにされていた教科書やノートが元通り。椅子に置いてあった画鋲もなくなり、 後ろから悲鳴が聞こえた。画鋲をおいた犯人らしいな。 安心して椅子にこしかけた佐々木と俺のところへ男子生徒が一人やってくる。 「この学校の生徒でもない奴が何の用だ!?」 「用?それなら見ていた通りだ。佐々木に対する嫌がらせを解消したまでだ。 すでに犯人が名乗りをあげているようだがな」 悲鳴が聞こえた方向へと視線を移すと、スカートの上からお尻に画鋲が刺さっている女子がいた。 「てめぇ!」 と俺のところへやってきた生徒が俺の顔面を殴ってきた。 コーティングされた俺には何のダメージも無く、殴った方がダメージを受けている。 「痛っ!」 などと悲鳴をあげているが聞いていて気持ちがいいものでもない。いい機会だ、釘をさしておこう。 「これ以上佐々木に妙な真似をすれば俺がこうして現れる。嫌がらせをしたいのなら勝手にしろ。 そのあとどうなるか…わかっているな?」 朝倉並の俺の殺気が教室を支配した。立っていた女子数名が腰を抜かし、悪戯の実行犯とおぼしき生徒は 「ごめんなさい、ごめんなさい…」と悲痛な声をあげている。 一週間ほどすれば問題ないだろう。そのまま北高の屋上へとテレポート。 自転車も同様に駐輪場へとテレポートした。 今度は俺の番。先ほどと同様下駄箱を元に戻し、教室に入る。 クラスメイトが侮蔑の目で俺を見ているのは変わらんが、知ったことか。 机も元通りにして座席についた。俺の後ろの奴も登校してきたらしい。ついでにあのアホもな。 「谷口、もうやめときなよ!」 「うるせぇ!ここまでやられて黙っていられるか!おいキョン、てめぇ!」 「何か用か?」と谷口に向かって振り返りながら、俺の殺気で教室を埋め尽くす。 「丁度いい。俺に喧嘩を売るとどうなるか見せてやるよ」 透明な閉鎖空間を展開。手をかざして谷口の机と椅子を宙に浮かせ、窓ガラスを割ってグラウンドへ。 グラウンドの中央まできたところでかざした手を握り締めた。 爆音と共に机と椅子が爆発。見ていた全員が恐怖で身体がこわばる。 「だからどうしたってんだ!これでお前は割れた窓ガラスと、俺の持ち物を全て弁償してもらう。 おい、さっさと金出せよ!」 足を震えさせながらよくもまぁ啖呵を切れたものだと思いながらアホの谷口の言い分に応じた。 「割れた窓ガラスってのはどのガラスのことだ?座席も全て揃っているだろう?」 「ふざけるな、おまえがさっき……え?…国木田、さっき窓ガラス割れたよな?…なぁ?」 閉鎖空間を解除して窓ガラスも机や椅子も元通り。 国木田も何が起きたかさっぱり分からず、谷口の問いかけに答えられずにいた。 教室に岡部が入ってきてHRがはじまった。 クラス全員、さっきの爆音を聞いていなかったのかという表情だったが、 岡部からその話は一向にでることはなかった。 教室にいる人間しか閉鎖空間の中に入れていないから当然だ。 あとで誰が何を説明しようが、そんなものは聞こえなかったで済まされる。 何事もなかったかのようにHRが終わり授業へと入った。 休み時間に教室にいるのは俺、谷口とそれを引き止めようとしている国木田、あと俺の席の後ろの女の四人。 あとは陰湿な嫌がらせをその都度排除していけばいい。 長門たち宇宙人も似たような能力を持っていたんだと今になって気付いた。 朝倉もナイフにこだわる必要もないと思うのだが…。そんなことを考えていると、 『今日の放課後部室に来て。話がある。朝比奈みくるも呼んである』 長門からのテレパシーが届いた。もはや俺も古泉もSOS団では無いのだが… それにテレパシーで授業中でも会話できるのなら、わざわざ部室に呼び出さなくてもいいだろう。 まぁ、全員で話がしたいってところだろうな。 放課後、話の内容は大体想像がつく。佐々木も迎えに行きたいし早く帰って受験勉強をしたいのだが…。 今日であいつらと別れられるなら…しょうがない、今日で最後だ。 佐々木にテレパシーを送ってしぶしぶ部室へと向かった。 部室の扉をノックすると朝比奈さんの美声が聞こえてくる。 卒業した人間をその二日後に呼ぶのもどうかと思うのだが…意外な人物がそこにいた… 「古泉、なんでおまえがここに来ているんだ?」 「ええ、あなたのおっしゃる通りです。もはや僕がここに来る必要はありません。 今日は、僕がここに持ってきたものを全て持ち帰ろうと思いましてね。 一人で全部運ぼうとしたんですが、何分数が多くて… 何度もここに足を運ばなくてはならないのかと思っていたところ、 新川さんが車で迎えに来てくれまして。…すみませんが校門前まで手伝ってもらえませんか?」 そんなことならお安い御用だ。さっさと運んでしまおう。 長机の二段目から古泉のボードゲームを全て取りだしたところで長門が俺達を引きとめた。 「待って。五人揃っていられるのもこれが最後かもしれない。時間はとらせない、座って」 「そんな……有希まで…」 「折角の新川さんの好意を無碍にしたくありません。手短にお願いしますよ?」 「情報統合思念体は涼宮ハルヒに元通り力を戻すことを望んでいる。朝比奈みくるの組織も同じ」 「そんな話なら、とっくに結論は出ている。古泉、新川さんのところに行こう」 「そのようですね。では、失礼します」 「ちょっと、あんた達!待ちなさいよ!」 いつもの定位置に座り落胆していた女がようやく立ち上がって叫んだ。 だからといって止まる奴も止める奴もいない。まったく…未だに理解できてないらしいな。 「誰に向かって命令しているんだ?団長ごっこなら一人でやってろ。 もうおまえに関わろうとする奴は誰もいない」 「わたしからもお願いします!キョン君も古泉君も待って下さい!」 舌打ちと溜息が出てきた。朝比奈さんの頼みなら…と以前の俺なら従っただろうが……仕方がない。 「古泉、校門前へテレポートする。ボードゲーム持って新川さんのところに行こう。 これ以上新川さんを待たせるわけにはいかない。 おまえにはまたここに戻ってもらうが…話が終わったら自宅まで俺がテレポートで送り届ける。 このまま帰っても、こいつらはまた俺たちを集めるだろう。今回はそれで手を打たないか?」 「名案…とは言えませんね。それが我々の妥協案と言ったところでしょう。 家までテレポートで送って頂けるとは思ってもみませんでしたよ。是非お願いします」 古泉の承諾を得て二人でテレポート、部室と校門前をボードゲームを持ったまま何度も往復していては、 どこで誰にみられているかわからんしな。案の定リムジンで校門前へきてくれていた新川さんに事情を告げ、 ボードゲームだけ乗せてハイキングコースを下っていった。 あいつらが俺達を引き止めなければ新川さんを使いっぱしりにしてしまうことも無かった筈だ。 古泉とアイコンタクトをして、くだらない話なら即刻帰ろうと伝えた。 向こうも同じ意見のようだ。あの女に振り回されてきた分、阿吽の呼吸でお互い動くことができる。 古泉とは今後も連絡を取り合ったりしたいもんだな。来年一年間は無理だとしても、 佐々木と同じ大学に合格することができれば、ボードゲームにも付き合っていられる。 アイツとも話が合うだろうしな。それに・・・ 朝比奈さんも未来に帰るように言われていてもおかしくない。 もう朝比奈さんが受験した大学を志望する必要はない。古泉なら俺たちと同じ大学に行けるだろう。 さっさと話を切り上げて自宅に戻ろう。アイツが家で待っている。 二人で部室に戻りいつもの席にこしかけたところで長門の話が再開した。 「先刻の通り、あなたの今持っている力を涼宮ハルヒに戻してほしい。 情報爆発が起こせるギリギリのラインまでで構わない」 「こっちも同じだ。すでに結論は出ている。この女に二度と力を戻すことはない」 「キョン君どうして…どうしてダメなんですか?」 相変わらず律儀な人だ…テレポートして届けて来るまでの間にメイド服に着替えている。 「簡単な話だ。ただでさえ、俺と佐々木は陰湿な嫌がらせを受けているにも関わらず、 この女の世界改変能力が再度使えるようになれば、次はいじめではなく殺害を計画するだろう。 不慮の事故に見せかけたり、遺書を残して部屋で首を吊っていたりな。 佐々木が死んでからこの女を殺したところで俺の気は晴れない。 今すぐ消し飛ばしてもいいくらいなんだ。同情の余地はない。 無自覚とはいえ、この女は俺たちの不幸を願った。いくらお願いされようが俺の考えは変わらない。 加えて、ようやく古泉がこの女のご機嫌取りから解放されたんだ。 その古泉を再度あの理不尽な生活に陥れようとするなんざ、俺にはできん」 「同感ですね。昨日ようやく解放されてエージェントたちと盛り上がっていたんです。 夜中に何度も起こされながら学業に専念しなければならない生活なんて、 もう二度と御免被りたいですね」 「そんな……古泉君まで……」 「失礼、そんなに気安く僕のことを呼ばないでいただけますか?少なくとも、 彼と同程度かそれ以上の憤怒をあなたに対して抱いているのですからね」 「あたしは……あたしは一体………一体どうしたらいいの…?」 馬鹿な女だ。取り返しのつかない事をやっておいて未だに助かる道を求めている。 この女の言葉で言うなら、 「反論があるなら、終わってからA4用紙にまとめて提出しなさい。一応見てあげるから」だな。 もう事は終わっている。いくら言葉を投げかけてこようが一応聞いてやる。だが俺たちの考えは変わらない。 「何も無ければこれで帰らせてもらうぞ。それに古泉。俺と一緒に佐々木の志望する大学受けないか? この部室のような部屋を抑えれば、ボードゲームで遊べるし、三人で会話もできる。 来年一年間の我慢だと思えば悪くないと思うんだが、どうだ?」 「それは名案です。あなたの考えが変わらない限り、朝比奈さんがこの時間平面上にいても意味がない。 いつ未来へ戻るか分からないのであれば、彼女と同じ大学でなくてもよいというわけですね。 わかりました。あなたの提案に乗ることにしましょう」 「待って!この状態を維持してしまうと今度は急進派どころか主流派まで動いてしまう」 「だからどうした。力の受け渡しならおまえでも簡単にできるはずだ、長門。 それをせずにおまえはこうやって俺たちを説得しようと試みている。 たとえ主流派が動いたとしても今の俺には通用せず情報統合思念体が消される。 この女の持っていた力がどれほどのものかおまえらが一番よく知っているはずだ。そうだろう? おまえの親玉に伝えろ。『俺たちに危害を加えるなら全て滅ぼす』ってな」 「………わかった。そう伝える。でも、私個人としてはここに残ってあなたの傍にいたい。 わたしもあなた達と同じ大学を受験する。朝倉涼子の使っていた部屋が空いたままになっている。 あなた達で使ってもらって構わない。けど、少しでもいい…あなたと一緒にいさせて」 古泉ではないがこれは名案と言っていいだろう。狭い部屋で佐々木に申し訳ないと思っていたんだ。 これで長門の任務もなくなり宇宙人としての力もなくなってしまったとしても、 こいつなら難なく合格するだろう。ならばここに置いてある本も移動する必要がありそうだな。 超能力も使えるようになったことだしな。 「わたしも同じ大学を受けます!!」 いきなりで驚いた。朝比奈さんはもう合格発表を待つだけで落ちるわけがない。 その大学を蹴るというのか?一年間を棒に振るのか…? 「未来からの帰還命令が出ても戻りません!いえ、戻りたくありません!! 指令が出た場合はこの時間平面上から行くことにします。 今の大学に合格してもわたし一人じゃ寂しいだけです! 皆さんと一緒にいられるのなら、一年くらい大したことはありません。 同じ大学一年生として一緒に居させて下さい!」 「決まりのようですね。佐々木さんを入れた五人で同じ大学を目指す。 おそらく朝比奈さんも僕に続くと思いますが、 長門さん、これから一年間あなたの部屋に泊めてもらえませんか? 朝倉さんの部屋には彼と佐々木さんが住む。 佐々木さんは放課後すぐに彼が迎えに行ってしまいますから、 受験勉強をするのは長門さんの部屋になりそうですね」 「わたしからもお願いします!」 「問題ない。わたしも古泉一樹と同様ここにある本をわたしの部屋へと移す。 帰ったら全員で引っ越し作業をすればいい。彼がテレポートしてくれる」 「有希……あたしも…あたしもそこに入れて!…お願い……お願いよ」 「不可能。故意ではないにせよ、あなたは彼の逆鱗に触れ力を奪われた。 力を戻すとどうなるかも彼が既に予測を立てている。強引に戻そうとすれば真っ先にあなたが殺される。 こうなってしまった以上、わたしも朝比奈みくるも情報統合思念体と未来へ帰らなければならない。 でも、わたしたちはまだ彼らと一緒に行動がしたい。けれど、その中にあなたは入れない。 文芸部部長の権限をあなたに譲渡する。予算も好きに使ってくれてかまわない。 そのかわり、わたしたち四人がここにくることは二度とない」 長門がとどめを刺したらしいな。涙も枯れて呆然と椅子に座っていることしか出来ないでいる。 会議が終了した時点で四人が席を立った。長門、本棚の本、湯呑セットを長門の部屋へ。 朝比奈さんは制服にドレスチェンジ(テレポートの応用だ)して自分の部屋へ。古泉も同様だ。 最後に俺が自転車と一緒に自宅へと戻った。夕食を二人で食べながら、放課後の会議について話した。 「彼女に力を戻さず、そういう結果になっていたとは思わなかったよ。 僕も話し相手が増えて嬉しい。是非参加させてくれたまえ」 それなら…と食事が済んだところで母親に連絡。 「あんたたちがこの家からいなくなるのならそれでいいわよ。勝手にしなさい」 相変わらずあの女の力が継続したままだが、俺たちはもはや四面楚歌じゃない。 頼れる仲間と対抗できる力を手にしたんだ。あとは引っ越しと事後処理をすればそれでいい。 それぞれの荷物をまとめた後、一旦佐々木を自宅へと帰した。 俺は先に505号室へと移動し、家具を情報結合。寝室には天蓋付きのダブルベッドを用意した。 長門の部屋ではないがさすがにカーテンをつけないわけにはいかない。 どのような部屋にするかはあとで佐々木と相談することにしよう。 翌日、長門の部屋に五人が集まり朝食を摂る。朝比奈さんの用意してくれた弁当を持って、 先に二人で佐々木の高校へと向かった。誰かが教員にチクったらしいな。 俺の侵入を阻む教員たちがいたが関係ない。100%の殺気で邪魔な連中を押しのけ、高校に入る。 下駄箱は昨日よりも酷くなっていたが、やることは変わらない。悪戯をした本人に返してやった。 殺気をそのままに教室へと出向き、机や椅子を元通りに。 「二回までは許してやる。次にコイツに何かすればどうなるか…わかっているな?」 逃げたくてもその場から動けないというのが適切らしい。その様子を見て全員に聞こえるように伝えた。 「明日から俺はもう校舎の中には入らない。だが、昨日今日と同じ事が起こっているなら話は別だ。 その場合は俺に連絡してくれ。文字通り『すぐに』駆けつける」 「わかった。『すぐに』…だね?」 全員の見ている前でテレポートして見せ、どこへでも行けることを周りの生徒の頭に叩き込んだ。 俺の方も同様だ。画鋲でお尻や足の裏を刺された奴、教科書やノートをズタズタにされた奴が増えていく。 アホの谷口は毎日俺に挑んでは怪我をする箇所が増えていく。 俺の後ろの女は相変わらず登校してきているが、どんなアプローチをしようがもう何も変わらない。 長門の宇宙人的能力が失われる前に情報操作し、三年時のクラス編成を谷口とあの女を3-4に、 俺、長門、古泉、国木田が3-5となった。 あの事件以来、ようやく己の願望が果たせると俺からの連絡を心待ちにしていた橘と自称未来人は 九曜を含め、アジトに集まらせたところで閉鎖空間を展開。 九曜の力は未知数だったが、同位体二体を相手にすることはコイツは不利と判断する。 同位体とは違った力を起こす前に排除するまでだ。 アジトごと消し飛ばして閉鎖空間を解除、金庫の中に入れてあった現金を全て強奪した。 俺と佐々木の大学の授業料に結婚資金、婚約指輪と結婚指輪も買わなければならない。 俺が有効活用してやるよ。 その後、あの女が自宅で自殺したという連絡が入ったが俺たちには関係ない。 通夜にも告別式にも参加せず、パーティで盛り上がっていた。 情報統合思念体からも未来からの干渉も一切なくなり、長門や朝比奈さんは戻ることなく俺たちと生活。 五人で合格して俺と佐々木は結婚式を挙げた……… Bad End おしまい
https://w.atwiki.jp/medadictionary/pages/2474.html
ムーンシャドウ 登場 S ※本項目の折りたたみには、メダロットSメインストーリーのネタバレが含まれます。 閲覧の際にはご注意ください。 ムーンシャドウ 基本的設定 性格 人間関係 ムーンシャドウの過去 作中の活躍第5部「大波乱の新学園生活!」 第6部「ラナンキュラのゲーム」 関連人物 基本的設定 メダロットSメインストーリー第5部「大波乱の新学園生活!」より登場する、秘密結社ロゼットネビュラ幹部。 紫色の全身タイツ(と思しき衣装)にマントと、目を覆う紫と赤の左右で分かれたツートンの仮面を着用した男性。 コスチュームだけを見れば快盗レトルトを彷彿とさせるが、彼とは異なり悪役である。 対立する側から変態呼ばわりを受けているのも、奇しくも同じである。 素顔は明らかにされていないが、ロゼットネビュラ首領の「綺麗な顔をしている」という台詞から、相当の美形であることがうかがえる。 首領からは博士と呼ばれており、同組織所属の科学者であると思われる。 後述するある事情からパートナーメダロットを持たなかったが、偶然からエトワールをなし崩し的にパートナーとした。 名前の由来はバラの品種のひとつ、ムーンシャドウから。 ▲ページ上部へ▲ 性格 基本的には忠実に首領ブラックロゼットの命に従う。 しかし、その行動が他人に危害を及ぼすと考えた場合や、ラナンキュラの暴走を危惧した場合、独断で行動することが間々ある。 その様な点から実際のところは心優しい人間だが、少々抜けたところがある。 そのため首領からは真面目すぎる、文句が多くてちょっとおマヌケと語られていた。 ブラックロゼットの悪趣味さとラナンキュラの悪辣さもあって、悪役だが悪人とは言いがたい人物。 その生来の性格故に人望は厚く、統率はともかく多彩なスキルを持つ部下が居る。 その部下からは、ロゼットネビュラはこの人の居るべきところではない、と心配されている。 夜のコウボウ学園内でピアノを披露しており、回想でも音楽と花が好きであることが語られている。 ▲ページ上部へ▲ 人間関係 ブラックロゼットに対しては後述する事情もあり忠実だが、ラナンキュラの存在を悪魔そのものとまで危険視している。 イクがその姿を見た時には、驚いた様を見せていた。 この理由については、イクおよびイヴィルレックスの項目を参照のこと。 また、イクもムーンシャドウとは過去に面識があるらしき反応を示していた。 だが仮面のせいでそれが何者だったかは断定出来なかった。 ▲ページ上部へ▲ ムーンシャドウの過去 + 「ムーンシャドウ」と名乗る前の出来事 ムーンシャドウは、過去にパートナーメダロットを失っている。 その前か後かは不明だが、海で自死を図っていた(※)際に彼は、ブラックロゼットに出会う。 この時に彼は、ロゼットネビュラに所属することになる。 ムーンシャドウの名は、彼の容姿をして紫の薔薇が似合うと名付けられたもの。 いわば、生まれ変わった彼の新たな名前である。 この過去もあってムーンシャドウは、二度とパートナーメダロットを持たないと決めていた。 メダケイドロの最中のラナンキュラとのロボトル時には、さくらちゃんZを使用していた。 だが動きが悪いとアラセから語られており、このメダロットはパートナーではない。 その後、ムーンシャドウは成り行きで、エトワールをパートナーとする羽目に遭うのだった。 ※明言は無かったが、ブラックロゼットの台詞をみるに明白。 ▲ページ上部へ▲ 作中の活躍 第5部「大波乱の新学園生活!」 部下と共に深夜のコウボウ学園に潜入。 そこでたまたま、学園七不思議を調査するために潜入していたアラセとイブキに遭遇。 実はムーンシャドウこそが、部下を利用して学園内に七不思議を広めていた張本人だった。 その目的は、学園内に人が入ってこない様にするためだった。 + ムーンシャドウの目的 ムーンシャドウの真意は、ブラックロゼットが仕掛けたエンヴィメダルを回収することにあった。 嫉妬心を増幅させるエンヴィメダルの特性から、少年少女をエンヴィメダルの実験台にすることをよしとしなかったムーンシャドウは、首領に背いて回収しようと夜の学園内を探索していた。 学園七不思議を広めたのは、コレを円滑に行うための人払いのためであった。 彼の配下の団員が校区の子供のメダルを奪っていたのも、コレの一環である可能性がある。 その後、開発したオリンディアースをエンヴィメダルを手にした同学園生徒の魚島に渡している。 だがコレが原因となり、コウボウ学園校区では野良メダロットによる怪事件が起こってしまった。 この時はエンヴィメダルが選んだのが生来は優しい魚島だったおかげで、親友の九曜と山畑の学内からの排除未遂で終わっていた。 だが、もし邪悪な心の持ち主であればこの程度では済まず、世界が未曾有の危機に瀕していた危険性があった。 エンヴィメダルの活動停止か力の暴走を危惧して回収を目論んでいたが、ついに山畑の拉致という暴挙に及んだことで、再び学園内に潜入。 エンヴィメダルの活動停止後、オリンディアースと魚島に渡したメダロッチ諸共回収し、アラセ達の前から姿を消した。 第6部「ラナンキュラのゲーム」 MiRacleSteamとメダTuberがゲスト出演したコウボウ学園管弦楽部のコンサートの最中に出現。 ラナンキュラ配下のロゼットネビュラ団員達に撤退を命じ、状況を収拾させた。 この時はラナンキュラが仕掛けたメダル探索ゲームの只中にあったが、ラナンキュラに自身の邪魔をしない様に掣肘されていた可能性がある。 続いてラナンキュラが学園で仕掛けた、九曜とマリカの熱愛という飛ばし記事に端を発した校内抗争を利用したゲームの最中に出現。 ラナンキュラが中庭に仕掛けたトラップを解除して、ワイワイ真剣ロボトルを頓挫させた。 + メダケイドロでの行動 ラナンキュラによってメダケイドロが開催されている中、メダケイドロを止めるために学内に潜入。 その最中にロージィによって誘き出され、シェルメダルを手にする。 コレによってシェルメダルが完全覚醒し、シースワローのパーツを装備して彼のパートナーメダロット、エトワールとなった。 アラセとイクが屋上庭園に辿り着いた際、突如としてエトワールと共に立ちはだかる。 コレはラナンキュラから、負けたら屋上庭園がどうなっても知らない、と脅されたことからの行動だった。 しかし彼女の発言はブラフで、騙された形となった。 ▲ページ上部へ▲ 関連人物 メダロッター仮面舞闘会 快盗レトルト 悪を許さぬカレーなるメダロッター 快盗レトルトレディ? 悪の花散らす天から舞い降りたメダロッター 宇宙メダロッターX ロボトルランキング日本最強、快盗に似たる黄金仮面 快人Z ロボトルワールドからの使者、快盗に似たる仮面 快人Zレディ ロボトルワールドからの使者、女快盗に似たる仮面 キャプテン メダルハンターズリーダー、少年を導く者 怪盗ジル ペッパータウンを震撼させる仮面の怪盗 ムーンシャドウ 仮面の下に優しさを隠した紫の薔薇 ラナンキュラ 恐怖のゲームマスター、愛知らぬ可憐な悪魔 パートナーメダロット エトワール かつての相棒の面影まとう、殻破る殻なき者
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/58.html
佐々木さんポニーに再挑戦の巻 佐々木「中学時代の苦い思い出を踏まえ、 きちんと髪を伸ばしてからポニーにしようと思ったんだ」 橘「そうなのですか」 佐々木「でも、涼宮さんが無理やりポニーにしたという情報を妹さんから入手したので、 とりあえずウイッグで仮ポニーにして偵察してこようと思ったの」 橘「いわゆるヅラって奴ですね……ごめんなさいごめんなさい、睨まないでください」 佐々木「でも、それでは今までと変わらないと私は気づいたんだ。 おそらく私のシミュレートでは、キョンは髪型を変えても、気づかないか、 似合わないと言下に切り捨てられるかしかありえない。 ここはまず、慎重な偵察の上で、キョンにうまく髪型を意識させる 最善のタイミングを選ぶべきだと考え直したんだ」 藤原「なにをくだらないことでシミュレートなどと……ああごめんなさい! それは癖になるからやめて!」 九曜「--ポンジーは、いい声で鳴く--」 佐々木「やあキョン……、キョン? どうしたんだね。まるっきり上の空じゃないか」 キョン「おお佐々木か、すまんすまん。 最近な、SOS団で妙なイメチェンが流行っててな。そのことを考えてた」 佐々木「イメチェン?」 キョン「ああ。長門がこの前、突然メガネを掛けてきたんだ。何かあったのかと聞いたら、 『……気分転換』とか答えるもんだから、まあそれはそれで人間ぽくっていいことだ、 って答えたら、なんか一日返事をしてくれなくってな」 佐々木「……へえ」 キョン「ところがそれを見たハルヒが、何故か突然翌日からあの髪をショートポニーに 無理やり変えてきて、「イメチェンよ!」とか怒鳴るんだよ、こっちが何も聞かないうちに」 佐々木「……そのせいか」 キョン「あいつが誤解してるようだから、お前はポニーテールの奥深さを分かってない、 って説明してやったら、何故かここ数日やたら不機嫌で活動も休止なんだ。 おまけに古泉も学校休んでるし」 佐々木「……君という奴は」 キョン「挙句に朝比奈さんも、何故か最近メイドルックやめて、朝比奈さん(大)みたいな 妙に胸元が開けたシャツ着るんだよな。『暑くなってきましたから』って。 まあ、こちらとしては正直嬉しいが、目のやり場に困るんだよな。 なあ佐々木、最近女子の間でそーゆーイメチェンって流行ってるのかね?」 佐々木「…………」 橘「佐々木さん!? いくらなんでもウイッグにメガネに豊胸パッドを一度にやるのは、 どこから見ても異様だと思います! 特に最後のがムリありすぎです! 何枚重ねてるんですか」 佐々木「わかってる! 自分でもわかっちゃいるんだよ! でも、SOS団が自爆覚悟でああも積極的に攻勢に出ている以上、 私も何かしなきゃならないじゃないか」 橘「さ、佐々木さんが血の涙を……」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3012.html
(※ これは谷口探偵の事件簿のつづきです) 俺の名は谷口。探偵だった男だ。 探偵だった、と過去形の物言いをしているが、廃業したわけじゃい。休業しているだけだ。 休業と言っても元々、OPENとかCLOSEDとか時間帯によって使い分けているわけじゃないから厳密には開店も閉店もないのだが、本拠地である事務所から離れ、今は故郷へ里帰りしているから便宜上は休業としているわけだ。 故郷に帰ってきて郷里の風景を懐かしんでいたら、いきなり近所のジッチャに捕まった。なんでも人手が足りないから、若い衆に手伝ってもらいたいことがあるらしい。田舎は地域ぐるみのおつきあいがあるから、こういう時に断れないのが辛いところだ。 何をやらされるかと思ったら、山へ連れていかれた。うちは荒神様の年回りじゃないはずだが。 「谷口さんとこのせがれ、これ杜まで運んでくれや」 そう言ってジッチャは畑にうづ高く積まれた草っぽい物の小山を指さした。谷口さんのせがれって、俺も谷口さんなわけだが。 そんなこんなで、せっかく里に帰ってきたというのに俺は数日の間ジッチャにこき遣われて畑からとれたヒゲ根植物をひたすら運搬させられていた。 「人類みな兄弟。手と手を取り合って仲良くみんなで暮らしていきましょう」 と平和的に繁茂している地下茎の植物というやつは、なかなかどうして厄介なものだ。「ええやないか、ええやないか」 とみんなして地の下で強烈に仲良くくっついているから、この野郎この野郎、と力いっぱいひき剥がそうとしても取れやしない。しょうがないからそのまま抱えて運ぶのだが、根に土までからみついて総重量が10kgを超えていたりもするのだ。 そんな生活が3日も続いたものだから、筋肉痛と倦怠感ですっかりバテてダウンしてしまった。 なんのために俺は田舎へ帰ってきたんだろう。少なくとも修行鍛錬のためじゃないはずだが。 しかし少なくとも、そうやって体力を消耗して一つのことに集中している間だけは、あの日のことが忘れられてありがたかった。 ようやく全てのお役を完了して自宅の居間でごろごろしていた昼下がり。控えめなインターホンの音が鳴りひびいた。こんな昼間っから誰だろう。両親なら留守だぜ。 ああ、そういえばamazonでおしかりCDを注文してたんだった。きっとあれが届いたんだ。「このやろー、うちの畑あらすな~」ってやつ。 畑あらすな~ふふんふん、と鼻歌まじりに口ずさみながら玄関に降りると、そこには見知らぬ女の子が立っていた。誰だ、この子? ベリーショートの髪に少しふっくらとした少女っぽい輪郭。理知的な瞳、落ち着いた雰囲気。どっからどう見ても年頃の女の子だが、髪型のせいだろうか。ボーイッシュで男の子のような印象も受ける。 しかし、初対面のはずなのに、どこかで会ったことあるような気が……。う~む、思い出せない。どちら様だろう。おしかりCDを持ってきた配達屋には見えないんだが。 「あれ。谷口さんじゃないですか」 お久しぶりです、という声を聞いて、俺はハッと気づいた。 ひょっとしてお前、佐々木か? 客間に通した佐々木に茶を差し出し、俺は机をはさんでその対面に腰を落ち着けた。 「偶然ですね。ここへ来るのは初めてで土地勘がないから道を訊くためにインターホンを鳴らさせていただいたお宅が、まさか谷口さんの実家だったなんて」 佐々木はくっくっと、喉の奥でボブ・サップが餅をついているような独特の笑い声をもらした。 偶然はもういい。飽き飽きしてるんだ。それより、お前どうしたんだ? そんなに荷物抱えて。芸能界を引退したって話なら一時期、テレビや雑誌でもちきりの話題だったから知っているが。もしかして、人生を見つめ直すための一人旅でもしてるのか? 「それも面白そうですけど。残念ながら人生を考えるための道行きじゃないんですよ。内容は濃かったけれど、見つめ直すために立ち止まるほど長く生きているつもりはありません」 そう言って佐々木は麦茶のコップを手にして、曖昧に微笑んだ。なにか言いたげな様子だ、と思ったが、詮索はやめておいた。元アイドルのワケあり旅情に横槍いれるほど野暮じゃないつもりだ。それに佐々木が言いたくなれば、俺が尋ねなくても勝手に話すだろう。 そう言えばお前、外見変わったよな。前はもっと女の子女の子してたのに。 「芸能界は引退したし。これからは普通の一般人として暮らしていくつもりですから、自分なりにいろいろ変えてみたんですよ。髪も短くしたし、化粧もなし。この服だって、店の男性用コーナーで買ってきた安いシャツなんです。これで僕もまた一歩、普通の青年に近づいたということですね」 確かに俺も一目で佐々木だと分からなかったくらいだから、一般人の中にとけ込めているとは思うけれど、悪いがまだ男には見えないぞ。良くて中性的といったレベルだ。 「う~ん。難しいですね、男らしくなるというのは。僕はどうもそういった身なりについては無頓着で」 骨格や顔立ちなんかは先天的なものだから、整形でもしないと見た目を変えるのは無理だろう。手っ取り早く外見を変えたければ、無精ヒゲを生やしてみるとか……いや、あんまり似合わないかもしれないな。ヒゲ。 「僕、ヒゲが生えないんですよ。声も相変わらず低くならないし」 悩みの種なんですよね。と言って佐々木は麦茶を飲み干した。 人の悩みなんて、分からないものだな。俺にしてみれば佐々木のかわいらしい部分がモテそうで羨やましく思うんだが、佐々木本人にしてみれば、男なのに男として見られないというのはジェンダー的なコンプレックスなんだろう。あんまりこっちの話題には触れない方がいいかな。 そういえば、お前が芸能界一直線のころにマネージャーやってた、周防さん……だっけ? 彼女はどうしてるんだろうな。やっぱり、別のタレントのマネージャーを担当してるのかな。すごい個性的な人だったけど。 快活な笑いをあげながら俺は佐々木の湯のみに麦茶をもう一杯ついでやりつつ、相手の顔色をうかがった。 佐々木は、まるで携帯電話とテレビのリモコンを間違えて携帯ショップへ修理に持って行ってしまった時くらい落ち込んでいた。 おい、どうした佐々木。気は確かか? おーい? もしもし? さっちゃん? 「……実は、そのことで、僕はここへ来たんです」 佐々木は、キャビアの缶詰だと思って開けたら実はサバ缶でした的な落胆ぶりで、言葉を区切るようにそう呟いた。 「……谷口さんもご存じの通り、以前僕は芸能界を辞めるため、周囲の迷惑も考えずに強引な手段をとりました。今にして思えば正常な人間のすることではなかったと思えるのですが、あの時期は各方面からの重圧で、僕もそこまで頭が回っていませんでしたから」 ずいぶん前のことのように思えるが、今でもはっきり覚えている。こいつは芸能界を辞めるため、自分の部屋に自ら盗聴器を仕掛けて、悪質なストーカーに粘着されているように偽装したんだった。ストーカー絡みの話には俺もほろ苦い思い出があるから、あまり突っ込んだ話はしたくないんが。 「僕はあの後スケジュールを消化して、円満とはいかないまでも、はれてプロダクションを辞め、芸能界から離れることができました。それで僕はよかったんです。願いがかなったのですから。ただ、プロダクション側からしてみれば、納得ができない部分もあったんでしょう。自分で言うのもなんですが、会社が勢力を挙げて売り出していた人気アイドルの僕が突然辞めてしまったわけですから。上層部としても、なにかケジメ的なものが必要だと思ったんでしょうね。結局、いろいろあった後、僕があんな行動に出るのを未然に防げなかった責任があるとして、スケープゴートにされたのが」 当時マネージャーだった周防九曜ってわけか。 「そうです。表向きには自己都合による辞職となっていますが。僕が、あんなことをしなければ、周防をこんな目に遭わせなくて済んだのに。そう思うと、やりきれなくて。彼女の足取りをたどり、周防がこの町にいると聞いてやって来たというわけです」 え、あの姉さん、この町にいるの? 全然知らなかった。 「あくまで噂ですよ。彼女の実家がこの県にあるということは知ってましたから、その後の足跡を調べてみたんです。あまりあてにはなりませんが、この近くにいるんじゃないかと目星をつけて来たんです」 ふーん。お前も大変なんだな。 で、周防の姉さんに会ってどうするの? 四方山話をするだけなら電話でもメールでも事足りるだろうから、ご挨拶をするだけじゃないんだろ? 「どうする、とは具体的に考えていないのですが、とにかく謝りたいと思ってます。でも、携帯やメールも通じないし。それにこういうことはやはり直接会って、面とむかって言うべきだと思うんです」 気持ちは分かるが、周防としては困るんじゃないか? 別に佐々木が悪いわけでもないのに、ごめんって謝られても困惑するだけだと思うんだが。 ガキのケンカじゃないんだし。世の中にはそのままそっとしておいてあげた方が相手のためになるってこともあるんだぜ。 それからしばらく、佐々木は眉をひそめて考え込んでいた。 佐々木が真摯な顔を上げて答えを告げたのは、俺がトイレに立とうとした時だった。何もこんな時に答え出さなくても。もうちょっとタイミングずらせよ。 「それでも、僕は彼女に会いたい。会って話をしたんです」 そう言って佐々木が頭を下げるものだから、俺はトイレに行くのを我慢するハメになってしまった。冷たい麦茶飲んでポンポン冷えちゃったのに。 「お願いします、谷口さん。しょせん素人の僕が人の行方を追えるのはここまでが限界なんです。どうか、一緒に周防の居場所を探してくれませんか?」 まあ、とりあえず頭を上げろ。そこまで平身低頭しなくてもいいだろう。 「いいえ、谷口さんがやってくれると言うまで僕は頭を上げません。今は手持ちが少ないですが、後々必ず依頼料をお支払いします。だから、僕の依頼を請けてください!」 探偵に仕事頼みたいのは分かったけどさ。ちょっと待ってくれよ。俺トイレに行きたいんだ。 「我慢してください」 ムリクソ言うなよ。けっこうピンチなんだぞ。 それに今は里帰り中で、仕事の書類とか全部事務所に置いてきてるから、依頼手続きとかがすぐにできないんだ。今年から探偵業法が施行されて、公安委員会の目も厳しくなっちゃって。なあなあで仕事を請けられなくなったんだ。悪いけど。 「そこをなんとか、お願いできませんか?」 アフターサービスは請けてないし。仕事としては、ムリだな。 「……そうですか。無理を言って、すいませんでした」 がっくり肩を落とし、佐々木は座を立ち上がりかけた。 でも、探偵とか依頼とか、そういう社会のシガラミ的な損得勘定抜きにして、単純に友人の人探しのお手伝いという形なら何の問題もないぜ。 あっけにとられたような表情で、佐々木が上目遣いに俺を見る。 「それは、どういう……?」 どういうもこういうも。プライベートとして姉さん探すのを手伝ってやるって言ったんだよ。ちょうど暇してたところだしな。 「本当ですか?」 ウソついてもしかないだろう。同じ湯釜で煮られた仲じゃないか。遠慮するなよ。それに、本当にこの界隈にあの凶悪な目つきの元ジャーマネがいるんなら、すぐに見つけられそうだしな。 「ありがとうございます。本当にありがとうございます」 いいって。別に。気にするなよ。今の俺は私立探偵じゃない。休業中の探偵なんだ。 俺がそう言ってやると安心したのか、佐々木は安堵の息をもらして再び腰を落ち着けた。 「よかった。この見知らぬ土地で、偶然会えた谷口さんに断られたどうしていいか分からなかったところです」 困った時はお互い様だ。ま、すぐに見つかると思うから、今日はうちにでも泊まっていきな。 「そうさせてもらいます。ああ。なんだか安心したらトイレに行きたくなってきた。ちょっとトイレを借りてもいいですか?」 馬鹿野郎。俺が先にきまってるだろう。 おい居候。今帰ったぞ。 家の玄関を開けて帰還を告げると、奥からエプロンと三角巾をつけた佐々木が現れた。 「お帰りなさい、谷口さん。部屋の掃除、終わりましたよ」 うむ、ご苦労。しかし今時、三角巾かぶって掃除してる人もいないと思うんだが。 ところで佐々木。今日は良いニュースと悪いニュースがあるんだ。どっちを先に聞きたい? 「ニュースって、周防関係で、ですか?」 そう。周防九曜関係で。言ったろ? あの姉さんなら探すのは簡単だって。 「そうですか。それじゃあ、うん、そうだな……良いニュースから聞かせください」 OKブラザー。別に廊下に正座しなくてもいいから。立ったまま聞いていいぞ。いちいち仕草が女性っぽいな。 良いニュースは、周防が見つかったということだ。ボルホスの502 BIG BLOCKなんて怪物バイクに乗ってる人間は日本国内でも数えるほどしかいないからな。バイク屋を何店か聞き込みして回ったらすぐに見つかったよ。居場所もつきとめた。ちょっと遠くなるが、今からでも行ける場所だ。 「そうですか! さすが谷口さん。やっぱり彼女はこのあたりにいたんですね。それじゃあ早速行きましょう。僕は出かける準備をしますから、谷口さんは少し待っていてください。それほど時間はかかりませんから」 まあ待て。そう急ぐなよマイケル。言ったろ? ニュースはもう1つあるって。そう言って俺はエプロンを外しかけた佐々木を呼び止めた。 「悪いニュースですか……あまり聞きたくないですが、聞かせてください。まさか、周防が病気や怪我をして入院しているとか?」 いや、周防九曜は病気も怪我もなく健康そのものらしいんだが……。その、あれだよ。ほら、何て言うか、アレ。 「アレとかコレとか、代名詞ばかりじゃ分かりませんよ。健康でいるなら言うことはありませんが、伝えるべきことは明確にしてください」 そうだな。じゃあ単刀直入に分かりやすく一言で言うぞ。 「はい」 グレてるんだって。 「……は?」 だから、周防はグレてるんだって。非行に走ったってことだな。今は元気に暴走族やってるそうだ。 人間は誰しも、やさぐれるものである。子どもが親から十分な愛情を受けずに育つとその子は愛情を欲する心が反面的に噴出し、非行に走ったりするだろうし、いくら努力しても苦労が報われず他人から認められなかった人は 「どうせ俺なんて!」 と世間に絶望したりもするだろう。 他人から認めてもらいたい、自分の存在を知ってもらいたい、かまってもらいたい、そういった想いや願望が叶わず爆発すると、えてしてそれは歪んだ形で表出してしまうものだ。 飛ぶ鳥を落とす勢いの人気アイドルの敏腕マネージャーだった周防九曜も、仕事上のちょっとしたことで山の上から谷底へ転がり落ちてしまった。しかもそれが自分の力量及ばぬことに原因があるのではないとしたら、理不尽を感じて人生にイヤ気をさし、グレたとしても不思議ではない。 暴走族になってカタギの人たちに迷惑をかけているんだとしたら、それは社会的に許されることじゃないのだが、同じ人間としては大いに同情するね。というか今の俺も、ある意味では都落ちしてきた同じ穴の狢なのだ。彼女の行いを非難する気にはなれない。 俺と佐々木がビルの物陰からそっと首を出して様子をうかがっているとも知らず、周防は閉鎖されたコンビニの駐車場で、車のように巨大なバイクにもたれかかり缶コーヒーを飲んでいた。あの大きな頭と冗談抜きに他人を視殺できそうな切れ長の目は、周防九曜本人に間違いない。 周防の周囲には10人ほどのゴロツキっぽい男女が群れているが、あれがきっと噂の暴走族メンバーなのだろう。しかしどう見ても周防が暴走族の一員であるというよりも、周防が暴走族を率いているヘッドのように見えるのは気のせいだろうか。 「久しぶりに見たけど、周防、元気にしてたんだ。よかった」 元気ではあるんだがな……。彼女に関してはもうちょっと落ち込んでるくらいがちょうどよかったんじゃないか? とにかく、周防がこのあたりにいるということは判明したんだ。どっかそのへんのファミレスにでも行って、今後の方針について話し合おうじゃないか。まずは彼女の後をつけて、現住所を探るところから…… 「おーい、周防!」 って、うおおおぉぉぉぉぉぉい!? ちょ、佐々木さん!? なんで手ふって暴走族の群れにむかってるんスか!? うわ、すごい見られてる! あんた怖いもの知らずかよ!? もう少し自分を大切にしたほうがいいですぞ。 「あん? なんだお前。俺たちに何か用か、嬢ちゃん」 駅前で待ち合わせしていた恋人を見つけて笑顔で走って行く純情高校生くらい爽やかに駆けて行く佐々木に、一番手前にいたチンピラふうの出で立ちの男が詰め寄る。早速つかまっちゃったよ……。ああいいう手合いとは、あまり関わり合いたくなかったのに。でも、俺も行かないといけないんだよな。まったく、面倒くさい。あいつ、こんなに軽いキャラだったかな。 突然すいません、お楽しみの途中。俺たち、そっちの周防さんの知り合いで、ちょっと用があるもんで。 「何だテメェ。周防の姐さんに用だって?」 姐さんって……。ああ、でもあんまり違和感ないかも。貫禄あるしな。主にバイクと頭と目つきが。 周囲の目が痛い。暴走族の面々は、明らかに異物をいぶかしむ目で俺と佐々木を見ている。照れるからあんまし見ないでもらいたいんだが。 佐々木を引き止めたチンピラが、ヤンキー特有の威嚇の視線で佐々木をにらんでいる。それに対して佐々木はというと、何を思ったか 「初めまして、佐々木といいます」 と自己紹介を始めた模様。バカン。メンチきってる暴走族相手に自己紹介してどうするんだよ。今後ともよろしくとでも言うつもりか? まずいことに、危ないヘラヘラ笑いを浮かべつつ俺と佐々木の周りに集まり始める暴走族たち。因縁つけられたら最後だぞ、ヘタをうってくれるなよ佐々木。こうなったら、頼みの綱は周防だけだ。 「周防さん。こいつら周防さんの知り合いだなんて言ってますけど、マジっすか?」 何故かものすごい近い距離で俺の顔をのぞきこむ茶髪のチンピラ男。なんでこいうヤツらって、こんなに距離をつめてくるんだろう。人にはそれぞれコミュニケーションのテリトリー範囲があるんだから、一定距離よりは近づいてもらいたくないんだが。そんなに俺と親交を深めたいんなら、まずは交換日記から始めようじゃないか。 それにしてもこいつ息が臭いな。舌苔も青くなっている。内臓のどこかを悪くしているに違いない。こんなところで非行に走ってないで、病院へ行きなさい。 周防が無言で手を振ると、俺と佐々木を取り囲んでいた暴走族たちは打ち合わせていたようにさっと後ろへ下がっていく。よく教育してるじゃないか。 「────お久しぶりです……佐々木さん────谷口さん────」 「うん、久しぶり。周防も元気そうで何より」 以前会った時よりも段違いの威圧感を感じさせる周防に、佐々木はまったく動じることなく語りかける。この2人仲良かったもんな。きっと佐々木の中では、周防が暴走族の頭やっていようが児童相談所の相談員やっていようが、立場なんて関係ないんだろうな。 向かい合って見詰め合う2人を見ていると、佐々木が周防のことを信頼できる人物だと言っていたことを思い出した。 「────場所を……変えましょう。佐々木さんと2人きりで、話をしたい────」 低い声でそう言うと、周防九曜は佐々木を伴ってつぶれたコンビニの奥にひっこんでいった。 ……あれ、俺は? 2人の話とやらはすぐに終わるものだとばかり思っていたが、待てど暮らせど帰ってこない。結局2人が戻ってきたのは、俺がなんとか口先三寸二枚舌で暴走族のチンピラたちに取り入ったところだった。 暴走族たちの中にとけ込むのはさほど難しいことじゃなかった。周防の知り合いという路線で話を進めていったら、ほとんど警戒されることもなかったし。こういう連中はお友達意識がとても強いから、ちょっとしたきっかけがあって話が合うと思わせられれば、すんなり輪の中に入れるもんだ。 俺も今じゃすっかり谷ちゃんと呼ばれて親しまれている存在だ。誰が谷ちゃんだ。俺はYAWARAちゃんかよ。 「お待たせ」 そう言って、心なしか悄然とした様子で佐々木が俺の隣に戻ってきた。こんなに長い間、何を話してたんだろう。まあ久しぶりに会ったんだから積もる話もいろいろあっただろうが、谷ちゃんと呼ばれて愛玩されていた俺の身にもなってみろ。 そうこうしていると、BIG BLOCKの前に立った周防九曜が号令を発した。族の構成員たちが一斉にダラダラと緩慢に周防の方を向いた。胸を張って語れるような主義主張も持たない根無し草たちをまとめあげているんだ。大したカリスマだよ。 「────私は今日で……チームを抜ける────」 突然の周防の辞任発言に暴走族たちがざわざわと騒ぎ始めた。厭な予感がひしひしと感じられ、俺の脳みそもざわざわと騒ぎだした。 「おい、どういうことだよ谷ちゃん」 さっきまで友好的だった天然パーマくんが、敵意むき出しの不審声で俺を問いつめてきた。どういうつもりの周防の発言なのか、それは俺が一番知りたいよ。せっかく平穏無事にここから脱出できるよう話を進めてきたってのに、これじゃ台無しじゃないか。もしかして、また佐々木が変なこと言ったのか? もしかしなくても、佐々木のせい以外に考えられないんだが。 「暴走族はよくないよ。騒音や排気ガスで一般人に迷惑をかける。だから僕はやめるよう、説得したんだ。周防にこんなこと、させておくわけにはいかない」 良いか悪いかで言えば確かに宜しくはないが、好きでやってるんだから放っておいてやれよ。母ちゃんかよ、お前は。いや、どちらかと言うと父ちゃんか。 頭が痛くなってきた……。 険悪なムードの中、舗装の剥げかけた駐車場で族員たちが総出で周防の説得にあたっている。俺は目の据わったテンパくんに胸ぐらを掴まれて前へ後へ右に左とがっくんがっくん揺さぶられている。佐々木は俺の背に隠れて事の成り行きを見守るかまえだ。この野郎。 「おい谷ちゃん、聞こえてんのか!? どういうつもりかって訊いてんだよ。ああん!?」 ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は何も知らないんだ。マジで。これは俺にとっても不測の事態ってやつでだな。だからお互いアクシデントにみまわれた者同志、ひとまず落ち着こう。な? 「周防は僕の大切な友達なんだ。友達が間違った道に進んで行こうとしたら、身体を張ってでもそれをくい止めてあげるのが本当の友情でしょう」 なんという少年漫画的価値観の持ち主。良いこと言ってるつもりなのかも知れないが、どう考えても身体を張ってるのは俺オンリーじゃないか! ちょっと前と後を代われよ。お前が身体を張ってくれ。そして俺を助けてくれ。 「組抜けよ! 組抜けの儀式よ!」 周防のそばにいたケバい女性が金切り声を張り上げた。なんだよ、びっくりしたな。ヒステリックな声を上げやがって。 それより組抜けの儀式ってなんだ。いや、組抜けはいいとしても、儀式って? 「俺たち 『沙慈汰理亜栖Ⅲ』 を抜けようとする者は、組抜けの儀ってもんを受けないといけないんだ」 緊張の面持ちで、俺の胸ぐらをつかんでいたテンパくんが、やおら手を離した。 儀式って、何をするんだ? 最近のドライな若者に似つかわしくもない、厳つい言葉じゃないか。ヤクザじゃないんだから。 そしてチームの名前が、沙慈汰理亜栖Ⅲって……。ネーミングセンスもさることながら、Ⅲの意味が分からない。 「組抜けの儀では、チームを抜けようとする者とチームのリーダーがチキンレースで勝負して、見事リーダーに勝てたら脱退が認められるんだ」 ああ。あるある、そういう掟。ドラマとか小説の中の設定だけでだけど。 「しかしよ。今のチームリーダーである周防さんが抜けようとしているんだから、チキンレースの相手がいないぜ」 「そうだ。周防さんがリーダーなんだから、走りの相手がいなけりゃレースにならねえ」 暴走族の内部は、さらに混迷を極めて荒れていた。どうやら、誰がこの一大レースに出馬するかで議論が交わされているようだ。明言は避けているが、どうやら誰もレースには出たくないらしい。そらそうだよな。勝負に負けたら仲間たちから総スカンだもんな。 大事なレースができないとあっちゃ、ケジメがつかないからな。うんうん。その調子で大いにもめててくれ。この隙に俺たちは退散させていただきますんで。じゃ、そういうことで。 「あいつらにやらせればいいんじゃないか。周防さんの知り合いっていう、2人によう」 「そうだな。元々、あいつらが来たから、周防さんがチーム抜けるなんて言い始めたんだ。本来なら全員でリンチにしてやりてぇところだが、チキンレース受けるってんなら、行かして帰してやってもいいよな」 よからぬセリフが背後から聞こえ、イヤな汗を流しながら俺と佐々木はふり返る。聞こえないふりをきめこんでいたかったんだが……。 振り返ると、凶悪な目つきをしたミニ暴力団が、群でこっちを睨んでいた。 10人ほどの暴走族たちが、突き刺すような目線を俺に注いでいる。隣に諸悪の元凶である佐々木もいるのに、みんなこぞって俺を見ている。そりゃそうだ。どう見ても佐々木は小柄でボーイッシュな普通の女の子。こういう場合、見つめられるのは男っぽい男だと相場がきまっているもんだ。 「谷ちゃん、覚悟きめろや」 テンパの彼が俺の肩を叩いた。ダメだ。こいつら全員、本気だ。とてもじゃないが逃げられそうにない。 久しぶりの絶体絶命だ。背中に悪寒が走る。 わずかな期待をこめ、暴走族たちの壁のむこうにいる周防へアイコンタクトを送るが、どうやらおれのサインも彼女には届かなかったようだ。 「────私が勝てば……私はチームを抜ける────谷口さん……手加減は無用────」 しかも俺がチームのリーダー役かよ。 「もし手抜きなんてしてみろ。谷ちゃん、どうなるか分かってんだろうな?」 ああ、うん。分かった。分からないけど、たぶん分かったと思う。だからそんなに睨まないで。 もし俺が周防に負けたりしたら、怒り狂ったキレやすい最近の若者たちに集団暴行されかねないな……。なんでこんな憂き目に……。 「谷口さん。がんばってください。ここが正念場です!」 俺の背後にピッタリ隠れて佐々木がエールを送ってくる。誰のせいで正念場をむかえていると思ってるんだこの野郎……。 俺の代わりにこいつをギャングに差し出してトンヅラしたかったが、もうそんなエスケープが通じる状況でもないようだ。 なんで俺ばっかりこんな目に……。 ~つづく~