約 1,530,372 件
https://w.atwiki.jp/jyugoya/pages/1062.html
SS分類/Aの魔法陣 NOTボーナス(1) Aの魔法陣Ver3 NOTボーナス(2) Aの魔法陣Ver3 NOTボーナス(3) Aの魔法陣Ver3 NOTボーナス(4) Aの魔法陣Ver3 NOTボーナス(5) Aの魔法陣ver3 NOTボーナストラック(6) Aの魔法陣ver3ファンタジー NOTボーナストラック(7) Aの魔法陣ver3ファンタジー NOTボーナストラック(8) Aの魔法陣ver3ファンタジー NOTボーナストラック(9) Aの魔法陣ver3ファンタジー 戻る→SS分類
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1043.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 492 れいむの平和な一日(後編)/コメントログ」 シングルでいぶってなんだよwwただのでいぶじゃねーか -- 2010-09-15 14 01 13 最低のクソSSだな なんでれいむだけが足にけが程度でのうのうとしてんだよ? 不可抗力だ、悪気はないで済むと思ってのかボケ ちょっとも笑えねえんだよカス 今まで読んだなかで最低最悪のSSだよハゲ これを本気で面白いと思って投稿したなら即刻病院へ行って 痛んだ餡子脳を取り替えてもらって来い -- 2010-11-15 06 42 43 ↓れいむへの処遇が甘すぎてゆっくりできないことは同感だが…最低最悪のクソコメントだな。今まで見た中で最低のコメンターだよ、お前。 どんな風にSSを作るかは自由だし、プロじゃないんだからクオリティの高低は責められるべき点ではないのに、不可抗力、悪気は無いでは済まないの?ボケ。 なんでお前が済むか済まないか決めてるの?お前の一存での決定は他人にとっても絶対なものだとでも思ってるの?カス。 お前はそんなに偉いの?お金払ってSS読んでるお客様なの?それとも出版編集者なの?違うでしょ? ちっとも偉くもない、むしろ読ませてもらってる側の分際で、なんでそんなに偉そうな態度とってるの?ハゲ。 本気で自分がSS作家さんより偉いと思ってコメントしたんだったら、即刻病院行って腐った前頭葉交換したのち小学校入りなおして道徳の授業受けて歪んだ倫理観を矯正してもらってこい。 -- 2011-01-14 15 18 47 パインサラダとステーキ…後は「隊長にも女が云々」だな -- 2011-10-26 19 58 01 ↓↓↓この人がとってもおもしろいSSを書いてくれるそうですよ、楽しみですね -- 2012-01-09 20 26 57 えー… なんでれいむ殺さなかったの? -- 2012-05-19 19 14 30 でいぶさえいなければ大丈夫だったんじゃないか まりさも読んだ感じ悪い奴ではないみたいだし ただひとつ言えるのは、馬鹿(ゆっくり)と変態(人間)しかいないw -- 2012-08-16 06 27 20 このSSは悪運の強いれいむの一日を書いたものじゃないかな? このれいむの周りでは、れいむのせいで被害にあうゆっくりがいるが、当の本人は気付かない。 そんな漫才みたいな面白さを目指したのでは? -- 2018-01-10 16 49 27
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/4166.html
町中で陽炎揺らせてリズムとってる無機質無気力無責任なビル群に囲まれて 私 平沢憂は39度の記録的且つ壊滅的猛暑と絶賛戦闘継続中 エンジェルフォールもびっくり自信無くして昇天するような滝汗もそのままに 夏休みの通学路を歩いていく 暑い 暑い セミが喧しい 暑い 暑いセミが喧しい暑い暑い暑いセミが喧しい暑い喧しい暑い暑い喧しい喧しい暑い 暑い暑いミンミンミンミン暑いジージーニンニン暑い暑いギィギィ暑い暑いミーンミンミンあぁ暑い 暑い暑いニーンニンニン暑い暑い暑い暑い ゲシュタルト崩壊限界突破な脳内をロデオドライヴ必死こいて制御しつつ 遠くに見えてくる学校をぎろりと睨む 私がわざわざ夏休み直後にベギラゴンみたいな灼熱地獄の通学路を嫌々歩いているのも 追い払っても引っ叩いても泣かせても崇高なるお姉ちゃんに発情することを頑なにやめようとしない 腐った根性が悪の化身アジ・ダハーカを彷彿とさせる 泥棒猫こと中野梓ちゃんの気紛れのせいに他ならない 事の顛末は一週間前 へその緒切った瞬間からお姉ちゃんを愛して崇めて慈しんでいるこの私は当然確実モチのロンに その日もお姉ちゃんと平凡且つ超幸福な一日を過ごすつもりだったんだけど 極上のケーキに這うゴキブリのような害虫中の大害虫中野梓は 一ミリたりとも躊躇せず我が家のチャイムを高々と鳴らした ぴんぽーん 世界の終末を告げる天使のラッパにも似たその音色を聞いたお姉ちゃんが 玄関扉を開けようと部屋から出るのを阻止した私が 換わりにクーラー効いた部屋から出てって アメリカアニメみたくドアが変形する程の勢いで開けてやるんだけど 黙示録の羊 あずにゃんはそんな私を見るなりこう叫んだ 「唯せんぱーい、迎えに来ました!早く買い物に出かけましょう!」 全力でドアをブチ閉める でも泥棒猫が わざわざソニックブームみたいなキンキン声で遠くまで叫んだもんだから お姉ちゃんは「うん!今行くよー」とか返事して 私の脳内で何かが崩れた フレンジングフラット 脳細胞がリセットされる奇妙な感覚キモチワルイ プライベートでショッピング 洋服なんか一緒に買いに行っちゃって 下着売り場の試着室で黒ミサ真っ青な 超驚異的淫行乱舞に及ぶ仲にまで発展しているのかと不安で不安で不安になる 勿論何かの間違いで お姉ちゃんからしたら 薄汚い野良猫にお情けでソーセージ一切れあげるくらいの感覚だと 私は信じてるんだけど それでもしかし 最近妙に調子に乗った目つきで私を見てくる中野梓のことを考えると 無限地獄最低最悪UnderWorldDreamsなパターンも想定しなければならないわけで つか待ち合せにしろよ 嫌がらせかよ めいっぱいおめかししたお姉ちゃんは泥棒猫に連れさられ12時間後に帰宅 久々のお姉ちゃんオーラを深呼吸で肺の中に納めながら お姉ちゃん汗を舐めたいなあとか下劣な妄想しちゃってほんの少し自己嫌悪 お姉ちゃんが身体に付いてしまった 邪悪なゴキブリオーラを取り払う為シャワーに入っている時 私の携帯にメールが届いた ――――――――――――――――――――― From ワモンゴキブリ 題名 妹(笑) 今日は唯先輩[絵文字]とジャンボ「絵文字]海水プール[絵文字]で遊んだんだけど 憂は12時間一人[絵文字]で何してたのかな?ねぇ?ねぇねぇ?[絵文字][絵文字][絵文字] 唯先輩[絵文字]ってさ ぶっちゃけもう憂[絵文字]のこと見てないっぽいよ 当り前だけど そりゃあいつまでも姉妹[絵文字]といちゃついてられないよね それで本題[絵文字]入るとさ もう唯先輩[絵文字]は諦めなよ 姉妹[絵文字]でいちゃつくって傍から見たら相当アレ[絵文字][絵文字]だよ? 何より今は私[絵文字]に夢中[絵文字]みたいだし どうしても手を引けないって言うなら 1週間後の夏休み[絵文字] 学校に来てよ 嫌でも諦めさせてあげるから[絵文字][絵文字][絵文字] ―――――――――――――――――――――― 足でペン握って書いたラテン語よりも読み難い糞メールはどうみても挑発で 一瞬千撃瞬獄殺を叩きこむのに十分な必殺技ゲージを私に提供してくれた そこから一週間 お姉ちゃんとはいつも以上に 親しく愛しく慎ましく接するんだけどやっぱりお姉ちゃん可愛い可愛いアイラブユー 回想終わり お姉ちゃんはまだ 家のふかふかもふもふやわらかベッドで おやすみなさいを夢中で楽しんでいるので 私はそんなすやすや天使を起こすことなく家を出た 帰ったらまず返り血流すシャワーを浴びようとか考えてたら学校に着き迷わず軽音部の部室に赴く 勿論 ドアを思い切り蹴飛ばす イライラしてたので全力全開ゲージMAX100%で蹴飛ばす あわよくばぶっ壊れて吹っ飛んでゴキブリに直撃させる勢いで蹴飛ばす でも 部屋は不気味な程に冷たく静かで落ち着いた空気で満ちていて そこにぽつんと立つ 中野梓は不気味な程に頬を赤らめて微笑んでいた ハナカマキリは凶悪凶暴超肉食系昆虫男子にも関わらずその見た目は部屋に飾れるレベルの華っぷりで 経験値稼ぎにもならないバタフリーをひょいひょいひょいひょい喰って見せるんだけど 目の前に立つゴキブリにも似たような習性があるのかもしれない てか何 その顔 ニヤニヤニヤニヤ 私が嘲笑の意として受け取ろうとしたその瞬間 中野梓は呟いた 「好き」 「へ?」 「だから 私 好きなんだよ」 「ホウ酸団子が?」 「ううん、憂のことが」 思わずぶちかましそうになる右ストレートをなんとか抑えて でもやっぱり我慢できなくて左手で快音を響かせるビンタをかます すぱっちいん 熱でもあるんじゃないのこの子 39度の高熱で 脳味噌やられちゃってるんじゃないのかな セコンドも両手振りながら褒め称えてくれるようなナイス角度で入ったビンタをものともせず 中野梓は再びこちらを向いて さっきよりも情熱的で情動的で官能的な目つきで 私を見て 呟く 「好き」 「何言ってるの?」 「何度も言ってるでしょ。憂の事が・・」 「なんでそうなるの?ドン引きっていうか、お姉ちゃんは?よくわかんないよ梓ちゃん」 「結構前からさ、唯先輩よりも憂の事見てる自分がいて」 「でも憂って妄信通り越して狂信的に先輩に夢中だし」 「とりあえず先輩と憂を離れさせたくて・・ね?」 金の斧も銀の斧も取らずにショボくれた鉄の斧を選ぶ馬鹿の話を聞いたことがあるけど お姉ちゃんから私に鞍替えする超究武神天元突破な大馬鹿女は初めて見たから吃驚仰天摩訶不思議 そりゃあ勿論お姉ちゃんから手を引くって言うのは賢いし当り前だし懸命だし義務だけど だからって妹の私にドス黒いヘドロのような好意を向けられても気持ち悪いだけだ 「無理。じゃあね。バイバイ。さよなら梓ちゃん」 勿論断固としてNOサイン さっさと帰って特製お姉ちゃん朝ごはん(兼昼ごはん)を作ってあげよう 「諦めないよ」 私がドアノブに手をかけた瞬間 蚊の断末魔のような声で中野梓は呟いた 2
https://w.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/403.html
「遠藤様、襲撃者が来ました」 「やはり…来たか…」 遠藤は舌打ちする。 ざわ……ざわ…… (この人間の禁忌と欲望をぶちまけた最高の娯楽を手離すのはいささか不本意だが…) 「ゲームの続行は不可能だと断定します」 「ならば致し方ない……。だが、このゲームはいつぞやまた形にしてみせる」 遠藤はスイッチを押した。 魔術師、荒耶宗蓮。 それが我が名だ。 突然体が軽くなる。 「そうか……遠藤。ゲームは失敗に終わったか。よもや、サイモエが抑止力だとはな…」 荒耶の体はワープし、元の世界へと還る。 「アニロワ4thでまた逢おうぞ」 【荒耶宗蓮@空の境界 生還】 「遠藤様、参加者は全員元の世界に還りました」 「うむ。ではサイモエが息を潜めるまで我々も待避するとするか」 【アニロワ3rd 参加者50名生還 サイモエの介入によりゲーム中止】 ―完― 【補足】 当ロワで現にあった負の産物として残しておくべきだと判断し、収録しました。 以下、が当SSの投下された際の本スレでの流れです。 487 名前: ◆fnRQEOQD1. [sage] 投稿日:2009/12/05(土) 01 59 09 ID hHZXap50 遠藤、インデックス、荒耶投下します! 488 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 01 59 31 ID P3RjyOA6 この流れをぶちこわしてくれ支援 489 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 00 28 ID 0ZkMD1Jy 同じく支援! 490 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 01 04 ID W22cAK3f あらやんは予約されてるはず 492 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 01 57 ID QLotUKi8 支援 493 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 02 03 ID oNTZQJ2B え? なにそのメンツ というかあらやん予約済みなので無理です 495 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 02 57 ID JJp/E4uX 予約してないから無理 497 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 03 37 ID CvdIsD3b やっぱりな 498 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 03 37 ID P3RjyOA6 インデックスさん空気過ぎて普通に参加者にいたのかとか思ってた 悪い意味でこの空気がぶち壊せる荒らしSSだなwww 499 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 04 47 ID QLotUKi8 501 名前: ◆PV.nOaaCrQ[sage] 投稿日:2009/12/04(金) 18 23 09 ID t8uIlVQY 美穂子、船井、ゆい、ムギちゃん、あらや 予約したいんですが…まだ、駄目でしょうか? 502 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/12/04(金) 18 34 29 ID UD1kAkHc 501 うん、まだダメだと思うよ 503 名前: ◆PV.nOaaCrQ[sage] 投稿日:2009/12/04(金) 18 47 29 ID t8uIlVQY 返答ありがとうございます やっぱり、そうですよね… 504 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/12/04(金) 19 08 11 ID eLiyeP6E 大丈夫でしょ トレ美穂SSの修正は実質破棄されたし 前の船井組SS投下から24時間たってるし 505 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2009/12/04(金) 19 14 26 ID UD1kAkHc そうか、今の議論に決着付くまでダメかと思ってた。失礼 507 名前: ◆PV.nOaaCrQ[sage] 投稿日:2009/12/04(金) 19 45 06 ID t8uIlVQY ん、予想おkなんですか? なら、予約お願いします とのことです。残念ながら無理ですね。 500 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 05 07 ID oNTZQJ2B ま、いんでないの自分は荒らしですって証明を自らしてくれたんだし 501 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 05 47 ID P3RjyOA6 あ、さっきから最萌えでゴネればいいんだなとかいうレスを延々繰り返してた人か 502 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 06 01 ID zCgU+x35 荒耶は既に別の書き手が予約中 既に予約が入っているキャラを含む予約と投下は禁止 予約なしでの投下は禁止 結論:荒らし乙 504 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 07 58 ID QqZfqCPN なにこのネタSS 505 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 09 08 ID KYYl2N0O いや今までのSSの中で一番面白いわ ◆fnRQEOQD1. 乙 誰かwikiに追加してくれよ 506 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 09 24 ID P3RjyOA6 釣り針がでかすぎる 508 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 10 32 ID hHZXap50 投下終了です。 問題点があれば修正します。 509 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 10 33 ID Y1N9cEnU 黒服「はっ……夢か」 510 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 11 51 ID P3RjyOA6 509がオチだな 512 名前:エピローグ ◆fnRQEOQD1. [sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 18 04 ID hHZXap50 ピンポーンッツ! 呼び出し鈴がなる。 私は胸を高鳴らせ、玄関へと駆ける。 「ピザ○ットで~す」 箱を受け取り、テーブルへと持っていく。 箱を開くと中にはピザが入っていた。 ――ああ、これが幸せなんだね。 荒耶さんは悪くないと呟きながらピザを口にする。 私、中野梓もピザを一切れ頬張る。 きっとこれからもこんな幸せが続いていくのだろう。 【中野梓@けいおん! PIZZA END】 513 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/12/05(土) 02 31 47 ID hHZXap50 支援ありがとうございました。 Wiki収録の際のタイトルは「最萌襲来!」でお願いします。
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/174.html
第二回戦【ジャンボジェット機】SSその2 ~~~~~~~~~~~ 猪狩誠は己の邪悪を自覚しない。 猪狩誠という魔人が如何にして此処に至ったか。 それは、恐らく誰にも解らない。 生まれながらにしての狂気であったのか。 育った環境がそうさせたのか。 あるいは魔人ヤクザ園堂長次郎と出会ってしまった事が彼の邪悪を引き出したのか 猪狩誠自身も解らないのだ。 ~~~~~~~~~~~ (糸かッ?!) 一瞬の判断が生死を分ける。 目の前の、今まで自分が立っていた場所。 エコノミークラスの座席がバラバラに切断されている。 座席の間を縫うように、空間を編み込むかのような複雑な動きで数本の糸が迫る。 (凄まじい動き、これが手芸の技かッ) 手芸。 世間一般でいう手芸とは個人的に行う裁縫、刺繍、編み物などの創作活動をいう。 しかし、魔人の世界においてソレは全く違う意味を持つ。 針や糸を使った人外の技。 無理やり解り易く例えるならば忍者という概念が最も近い。 (だが、避けられる) 冷泉院は特殊なステップで座席の間を飛ぶ。 体が地面についていない時に身体能力を上昇させる“仮面”の力。 狭い機内を縦横に動く糸を避ける。 そして、もう一人の敵を見た。 (凄まじい再生能力を持っているようだが…あれでは、な) ここに集められた三者は共に身体能力が高い魔人である。 戦いが始まった瞬間、同じ場所に放り出されたとき。 ミツコは迷わず攻撃に移り。 猪狩は爽やかに挨拶をしようとした。 冷泉院は宙を舞った。 (その結果がアレか) 少し離れた場所では少年が笑顔を浮かべたままバラバラに切り刻まれていた。 「俺に油断はない!!そして遊びに付き合う暇はない!!」 薙ぎ払われた座席の間に着地すると一気に前方へ走る。 そして、迫り来る糸を全て掴み取る。 (この敵の攻撃には怒りがある。その怒りの矛先は俺ではないだろう。) 地に足をつけた時に使用される能力『白刃獲り没収EX』はミツコの繰り出す糸を全て絡め取る。 奪い取った糸を使いこなす技術は冷泉院にはない。 ならば、素早くステップを踏み加速。 (一撃で、しとめ…) 横合いから顔面に叩き込まれた裏拳が冷泉院を吹き飛ばした。 吹き飛ばされる瞬間に冷泉院が見た男、猪狩誠の顔は涙で濡れていた。 ミツコの視線は猪狩誠を捉えている。 (怒りの矛先はコイツか…。) ~~~~~~~~~~~ 仮面が何者であるか冷泉院は解らない。 仮面が何物であるか夕霧紅蓮と呼ばれた男は知りようがない。 仮面がなにものであるかLローズという名の海賊も知りえない。 仮面がナニモノであるか仮面自身も解らない。 故に、冷泉院拾翠は自身がどういう存在であるか解らないのだ。 ~~~~~~~~~~~ 「俺は、泣いているんだなッ!!」 冷泉院を殴り飛ばした俺はミツコの前に立つ。 ちぎれた腕は新しい筋肉繊維が生えてくっつき、頭部と胴体の間には血管が繋がっている。 「みつおはよぉー、変なことばっかり言う奴だった。でも詩を書くのが上手かったんだ。俺のために応援歌を作ってくれたりしてよぉ。将来は作詞家になるのが夢だったッ!!」 俺は一歩前に踏み出す。 「それは残念でしたね」 目の前の少女が答える。 許せない、まず名乗りの途中で攻撃してきた。 なんて卑怯な奴だ。 「よしずみはッ。いつも空を見ていたッ!!天気に詳しかったッ!!あいつならきっと天気予報士にだってなれた。」 「だからどうしたというのでしょう?」 女は噴霧器を構える。 白い霧?ガス? なんて奴だ、こんな奴のために、みつおとよしずみッ。 「ごふッ!?」 「あらあら?気分が悪いのかしら、いけませんいけません。化学肥料とか農薬とか配分を間違えてしまっては~」 口から血が。 と、ともぞう!!やめろ!!ともぞうの命が!! 毒だとッ!!この外道め!! 「もちろん、農薬というのは無駄に殺しすぎては意味がありません。目的の害虫だけを殺す、それが理想です。あなたの身体データはみっちゃんがしっかり調べてくれていますよ」 「てめえ。人を虫けらか何かと勘違いしてんじゃねーぞッ!!てめえのせいでッ!!」 「あら?この毒で動けるなんてやっぱり…」 体の中の毒が浄化されていくのがわかる。 「もう、ともぞうの俳句を聞くことはできねえんだなッ!!」 こいつのせいでッ!! 力がみちる!! この戦いの前に消費した、あやめッ。 将来女優になるって楽しそうに、役にとらわれないで演技したいって剛力な夢を、いつも俺に語ったAYAME!! 詩人のMITUO、天気のYOSIZUMI、俳句のTOMOZOU。 一回戦で犠牲になった。 MAYU!!MEI!!MASARU!! ああッ!! 真っ黒に日焼けしたヒロ!!HIRO!! 色黒のマツ!!MATSU!! 日焼けサロン大好きウサ!!USA!! ニューヨーク帰りのヒゲなんかはやしてた黒いマキダイ!!MAKIDAI!! サングラスの似合う黒い夏の男アツシ!!ATSUSHI!! マルチに活躍する黒い日焼けのアキラ!!AKIRA!! 沖縄空手と書道が得意な黒い肌のタカヒロ!!TAKAHIRO!! YOKOHAMA生まれのYOKOSUKA育ち色黒ケンチ!!KENCHI!! 料理が得意だった日焼けのケイジ!!KEIJI!! ロマンチック5・7・5、ブラックスキンのテツヤ!!TETSUYA!! ワイルドなヒゲブラック、ネスミス!!NESMITH!! 野球少年だった日焼けのショウキチ!!SHOKICHI!! 特に特徴はないけれど色が黒かったナオト!!NAOTO!! 病弱だけれど色が黒いナオキ!!NAOKI!! どいつもこいつも小学生とは思えないほどに色が黒くてダンスが好きだった。 俺のために予選で犠牲になっちまった13人くらい!! あいつらはこの世からの追放者(エグザイル)になっちまった!! 目の前の女は包丁を構える。 ヤバイ女だ!! だが!!だがよぉ!! 「今まさに死んでいった俺の家族の為にも!!そして俺をここまで連れてきてくれた家族の為にも!!てめえに負けるわけにはいかねえんだよッ!!」 「ハッハーッ!!なんだよリソースって!!ソースの一種?日本語話せてますかァ?!」 「こいよ悪党!!てめえのせいで永遠に失われた俺の家族(リソース)の痛みを味あわせてやるぜ!!」 「腹ァ!!カッ捌いてェー!!てめえの腹の中のどす黒いモン処理してやるよ!!」 腕をもぎ取る。 ああ、確かに早い、すげぇ攻撃だ。 生物の構造を理解した上で解体する技術がコイツにはあるんだろう。 だが、腕をもぎ取るのは俺の方だ!! あやめはもう物を持つことができない!! 「お前のせいで!!」 「自分の傷を治すために子供を犠牲にしているのは貴方だ!!」 何を言っているのかわからない。 なんて無責任なやつだ。 だいたい口調が一定しない、ヤバイやつだ。 会話が通じる気がしない。 こいつは異常者だ。 こんな異常者の為に俺のッ!! こんな異常者に足は要らねえ!! あやめはもう歩けないんだ、ならその報いを!! 「自分が勝つために他人を犠牲にしているのでしょう…?」 「人のせいにしているのかッ!?あやめはこんなヤツの為にッ」 体がこれほど傷ついても冷静に語ってやがる。 サイコパスとかシリアルキラー? どっちにせよ変態だな!! こんなやつが勝ち進むなんて許されるわけがない!! だがコイツはもう動けない。 止めを!! んおおッ!?が!?い、痛え!! 背中に包丁?これはさっきもぎ取った腕といっしょに捨てたミツコの包丁か!? 「一撃でやられるとでも思ったか?」 仮面!! こいつが包丁を投げたのか? 一撃で倒れていればいいのに!! コイツも俺の家族(リソース)を消費させるのか!! 自分の部屋を持つのが夢だったテツコ!!TETUKO!! 「なんてことするんだ!!『限りある家族(しげん)を大事にしよう』って学校で習わなかったのかよぉ!!お?うおおおおッ!?」 なんだ!!この機体の揺れはッ!! まさか?ジェット機が落ちている? 「この機体はまもなく墜落する、自由落下状態の機内はほぼ無重力」 「コソコソとそんな事を!!街に落ちたらどうするんだ!!この外道!!」 「お前の力は確かに凄い、だが足場を失ったお前と、空中での戦いを得意とする俺、どちらが勝つんだろうな!!」 「人の話聞いてんのかッ!!お前、他人の迷惑とか考えたことあるのか!!」 こいつは絶対に許せない!! ~~~~~~~~~~~ ミツコは知っている。 ミツコ達は知っている。 自分たちが何者であるかを!! 自分たちが何に怒り何を倒すべきなのかを!! 世界に理不尽を振りまく敵の喉を食い破る三つ首の地獄の番犬!! 相手が世界の敵ならば、その敵を喰らうのがケルベロスの役目!! ~~~~~~~~~~~ 冷泉院は空中を走る。 凄まじい速さで移動し猪狩を一方的に攻撃している。 強いなぁ。 「できると自覚せよ!!出来損ないとは言え俺は転校生になれる!!」 「何言ってんだァ!!このテロリストがッ!!」 痛い。 痛いな。 やっぱり腕と足を引きちぎられると痛いなぁ。 でも、あの時の痛みに比べればどうってことはない。 姉さんの用意した鎮痛効果のある化学薬品と姉ちゃんの用意した薬草にも使えるハーブでとりあえず気を失わずに居られる。 「なんどでも首をへし折ってやる。その再生力が尽きるまでな!!」 「おおおッ!!ボクシングが好きだったコウキ、ダイキ、トモキ!!」 空中を舞う冷泉院と両足を壁に突き刺しながら歩くことで体を安定させた猪狩の戦い。 今のところは冷泉院からの一方的な戦い。 でも、僕の調査では。 「そうかっ。空気を蹴ってるんだなァ!!」 「なッ!?なんだとッ!!」 「アンタに出来る事は、家族の力を得た俺にはできる!!つかまーえたぁッ!!」 「馬鹿なッ」 掴んだ冷泉院を機内の色々なところに叩きつける。 痛そうだな。 そして搭乗口に向かう、ああ猪狩のやる事がわかる、酷いな。 「アンタは空を飛ぶのが好きなのか?そういえばミユキは客室乗務員になるのが夢だったな。アレ?ヨシコだったかな?まあいいや、あの子の空を飛ぶ夢を奪ったのはアンタだからさァ」 「がッ!!こ、このゲスめ!!」 「はあ?飛行機墜落させようとしてるゲスはアンタだろ?安心しなよ。ミユキの、ああもう!!どっちかわからないぞ。ミユキとヨシコ二人分の絆があればこの飛行機を安定させるくらいはできるからさぁ」 「こいつ…」 「アンタは先に空の旅を楽しんできなよッ!!」 無理やり開けた入口から冷泉院は外に投げ出される。 空気圧で機内の残骸も空中に放り出された。 でもボクは残った片腕でなんとか耐える。 ドアは閉められたようだ。 そして程なくして機体は安定する 「体制を立て直して空を走った所でジェット機のスピードには追いつけないよね。ふう、壊されてたんじゃなくて良かった。ここから飛び降りなきゃならないとなると。もう少し必要だもんなあ、さて残るはアンタだ。どうする?降参する?」 「降参はしないよ」 「哀れだなぁ、大人しくしていれば殺す理由もないんだけどな、だって俺ヒーローだしさ」 「降参する理由はない、君のその力」 「ああ!?」 「その家族の絆、リソースはやがて世界に及ぶだろう」 「まあね、俺は人類みな兄弟って言葉信じてるからさ」 「その言葉、本気だね」 「ああ、俺は世界を救うぜ。家族を痛めつけるヤツを許さねえからさ。みんなが家族になれば、それを俺が守ってやるさ。」 「君の力は無敵だ。世界中で常に誰かが死ぬ。悪意も善意も関係なく事故や病気で死ぬ。それが君の力になる。それが君の到達点だ。」 「ああ、今までみたいにやる必要もなくなるから楽だなあ」 「君に逆らう者はいなくなるだろう、君は実質世界と同一になる」 「はははッ。面白いこと言うなアンタ。」 「ボクはこれでも探偵の端くれだからね。君のことは調べたよ。君の家も家族のことも。」 「なんだ俺のファンなのか?じゃあもうアンタも俺の家族だな」 「君は世界を喰らう、そしてそれは君自身の為だけに使われるだろう」 「まあまあ面白い話だったぜ!!後でゆっくり話そう!!俺とアンタの仲だからさ!!」 猪狩が腕を振り上げる。 「でも、一応。家族の分殴らせてくれよ。ホラ、拳で語って生まれる友情ってヤツさ。」 「だから、君は!!世界の敵だ!!」 ザザザザザッ… 「なんだァ?」 世界にノイズが走る!! ~~~~~~~~~~~ ヒーローってヤツはさ。 ピンチに現れるもんだ。 はっはっはァ!!おーこりゃすげー!! だって俺は主人公だもんな。 ~~~~~~~~~~~ 「流石に二回戦ともなると、おもいきって数を切らねばならんか…」 暗い階段を降りる男がいた。 手にはノコギリを握りしめている。 「だが、結果的に得るものがあれば良い、誠ぉまっとれよ」 地下室の扉を開ける。 冷たい石造りの部屋には様々な拷問器具が並べられ。 床には何人かの子供が寝息を立てている。 「スマン、スマンなァ。これも誠の為だ。ひひッ。」 「さてどれからイこうかの。」 舌なめずりをして初老の男は子供達を舐めるように見た。 だが、そんなことはさせないぜ!! 「うげぇッ!?な、ながあああ!!」 腕に突き刺さった槍を見て初老の男が絶叫する。 「お、おごう!!あああ!!痛えッ!!な、槍?」 「おーこりゃすげー!!実に変態趣味だなァ。ガングニル。」 「そのようだ、そして間違いない園堂長次郎。ジグ・ソウの園長と呼ばれた男に間違いないぞ武志。」 「てめえッ。コラァ何しやがる!!」 「はっはぁ、何ってヒーローがやることは人助けだぜ!!」 「単なる目立ちたがりかもしれんがな」 「言うねえガングニルゥ!!今日はいつもより話してるじゃん」 男に気づかれないように跡をつけてきたのさ。 そう、この悪事を見逃す俺じゃあねえ!! 俺の名は黒田武志、ちょっぴり目立ちたがり屋のヒーローさ。 「くっ、ワシの邪魔を!!がああッ!!」 「おっと動くなよ?俺の槍はスゲー早いぜ、誘拐犯!!」 「誘拐犯だと?何を言っている?ここはワシの運営する孤児院だぞ。この子達は気分が悪いから寝とるだけだ。大工仕事の途中に子供の寝顔を見に来ただけだってのに。この不法侵入者め!!」 「おお、こりゃすげー。よくそんなにスラスラと出まかせを言えるもんだ、おおッっとぉ」 手に持ったノコギリを投げつけるが、そんなものが俺に効くとでも思ってんのかねェ。 階段を園長が駆け上がっていく。 ちッ 扉を閉められたか。 まあこの扉くらいはカンタンに破壊できるぜ。 逃がしはしねえ。 「ああん?どうしたんだオッサン逃げないのかよ」 鉄の扉を破壊して一階に登った俺が見たのはガックリと膝をついた男の姿だった。 「な、なんじゃコレは。ワ、ワシのどんぐりの家は…ワシの孤児院は…いったい?」 「何言ってんの?ここが孤児院だったのはもう4年も前だぜ」 「ばばばばば、馬鹿な事をいうなァ!!ワ、ワシが地上げして孤児院を再建して!!」 「孤児院は無くなったんだよ」 「なな、何を言っている。相次ぐ災害で家族を失った子供が道にあふれておる、飢えたガキどもを集めて孤児院を作って、それをワシが、ワシがァ…。誠を手に入れたワシは世界を…。」 「オイオイ、オッサン。食糧難っていつの話だよ」 「ばっかもんがァ!!世の中を見ろ!!そこらへんで飢えたガキなどいくらでも!!」 「いねーよ」 「なッ、ナにぃ!?これだから新聞も読まんクズは!!」 「オッサンこそ新聞読んでる?真野真実のラーメン基金財団とか知らねーの?」 「ラーメン?基金?なんじゃソレは!!」 「子供達を飢えから救うそれがたった一つの真実ってさ。真実を届けに来ましたとか言ってよ、得意の英語で世界中から食料を集める活動をして食糧危機を救ったのさ。たった一人のラーメン屋がな」 「なら、ワシは、ワシは一体…」 「おっさんはガキを誘拐して薬とか使って洗脳したあげくに売り飛ばしたり殺したりする誘拐犯じゃねーの?元は魔人ヤクザだったけれど組を放逐されたとか」 「馬鹿な…馬鹿な…ここには子供が、沢山いるんじゃ、この子供をリソースにしてワシと誠は世界を…手に…五本指…ワ、ワシの可愛い誠の餌を養殖する、どんぐりの家…」 「夢でも見てろや、爺さん。あとは牢獄でさ。」 「いいや!!まだじゃ!!これは恐らく何らかの能力!!誠が勝てば打ち破れる!!」 「お、オイ。暴れんなっての!!」 「誠ォー!!ワシの命を使え!!そして勝て、勝ちさえすればお前は何でもできる!!いずれワシを生き返らせることもできる!!ワシが生き返ればどんぐりの家なぞなんぼでも作ってやるワイ。お前のための良質な餌場をなァ!!」 「離れろ、武志!!この男の能力は『ジグ・ソウ』対象を切断する能力だ!!」 「お前が射程距離のある能力だった時点でワシに勝ち目はない。指でゆっくりなぞった線を切断する能力じゃからな!!だが、こういうことはできるぞ!!」 「コイツッ自分をバラバラにッ!!」 「受け取れ誠ォ!!お前を最も大事にしているのはワシじゃあ!!ワシこそがお前の最大のリソース!!」 ~~~~~~~~~~~ 世界の敵の敵 ~~~~~~~~~~~ ザザザザザッ。 世界にノイズが走る。 「なんだ、何が。ん?」 猪狩の体が輝きを帯びる。 「ま、まさか死んじまったのか?園長ォ。何があったか知らねえが。この力は使わせてもらうぜッ」 しかし。 「な、なんだ。力が。園長の力がすぐに消えていく、え?どういうことだ?俺のオヤジは。園長は俺のオヤジ同然の…。あ?あれ?おかしいな?体の感覚が…」 メキョッ。 猪狩誠の首が折れ曲がる。 「あ?あー?なんだ?痛いぞ」 ビキッ。 背中からは血が流れ。 猪狩誠の体に無数の線が浮かび血が滲む。 「えーと、アレ?」 皮膚が焼けただれるるような痛み。 「いやいやいや、おかしいよコレ」 グチャ。 足が潰れる 「園長、どうして死んだんだよ。早く俺の代わりに家族を、さ。」 「それは今日の分です。」 ミツコが告げる。 告げたのは恐らく弟のミツゴだろう。 「あやめ、みつお、よしずみ、ともぞう…」 ミツゴが名を告げるたびに猪狩の体は欠損していく。 「ボクの能力は主人公の力で世界を救う能力。テツコ、コウキ、ダイキ、トモキ…」 「何言ってんだよぉ。そいつらは俺の家族だ気安く呼ぶんじゃねえ」 「世界にはびこる病を消すには至らなかったけれど、真野さんと黒田さんの二人の力があればこの程度の不幸を消すことは簡単です。ミユキ、ヨシコ。彼女たちは死んではいない、当然あなたの家族でもなく今はどこかで平和に暮らしている。」 ゴリッ。 猪狩の顔がへこむ。 「あ、あが。なんだって?」 「貴方は正しく世界の敵だ。世界の敵は主人公が倒す。いままで何人の家族をリソースにしてきたんですか?」 「はははッ。俺は過去を引きずらない。だって俺が見ているのは明るい未来だけだからな」 「あなたの歪みを引き受けてきた家族は居なかった。だから貴方の痛みは貴方だけのモノです。誰かに分け与えるべきじゃない。まゆ、めい、まさる。」 ぞりゅ。 右腕から先が圧縮されて赤い小さな塊に変わる。 「俺は、家族を傷つけるやつを許さねえ、園長の死を無駄にはしない」 「これほどの負荷を受けてまだ喋っていられることが園長の貴方への思いなのでしょう。とても歪んだ思い、でもヒロ、マツ、ウサ、マキダイ、アツシ、アキラ、タカヒロ、ケンチ、ケンジ、テツヤ、ネスミス、ショウキチ、ナオト、ナオキ。たったひとりの思いであなたが踏みにじってきたリソース分を賄いきれるとは思えません。今まで数百人単位で世界を食ってきた貴方の払うべき制約は、こんなものではない」 もはや猪狩誠は赤い塊だ。 辛うじて眼球と口が伺える。 「実際、貴方は自分を唯一無二だと思っているのかもしれませんが、他人を犠牲にして能力を発揮する魔人は少なからずいます。貴方ほど歪んでいる人は珍しいけれど。」 「ひひッ。俺は天才だからなァ。それに俺は家族の為を思って動いている。数十人は犠牲になるだろ?でも、それはお前らが強いから悪いのさ。俺は悪くない。」 「この世界にはルールがある。他人を犠牲にする事で力を得る能力者は味方しか犠牲にできないと」 「ヒヒヒッ!!生き残ったやつに利益は分配するさ、だって家族だもんな。俺が家族のために頑張ってるのを邪魔してるのはテメーらさ。テメーらが邪魔しなけりゃ誰も苦しまねえんだよ。ヒヒヒッ。」 「あなたの家族はもういない。あなたが救わなくても他の誰かが救うでしょう。」 「そうだ。アンタ最初の挨拶の途中で攻撃してきただろ、ひでえよな。な?」 「ボクは君に似ている所がある。他人のの主人公力をリソースにしているという点ではボク達も君に近い存在だったのかもしれない。」 俺は、猪狩誠だ。なあ…正々堂々戦おうぜ。 さようなら、世界の敵、猪狩誠。 貴方がまっとうな主人公になれる世界を必ず。 ザザザザザッ。 世界にノイズが走る。 赤い肉塊と化した猪狩は家族(リソース)を失った。 仮面の男、冷泉院は戦闘空域から引き離されて場外負けとなった。 二人の主人公力を吸い取り。 ミツコは次の戦いへ挑む。 ~~~~~~~~~~~ 2回戦ジャンボジェット機の戦い 了 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/namu/pages/29.html
未使用SSの一覧 侵入SS ノーマ・リー まさかこんな時にお鉢が回ってくるとは思わなかった。 数匹の猫と共に走りながら、ノーマ・リーは溜息をついた。別に深刻な顔はしていないが、溜息だけは出る。別に不満も愚痴も出ないのだが、一種の癖のようなものだ。 ああ何で僕こんなとこにいるんだろ、てかいつの間に一人で侵入してんの僕。 「にゃー(今更、怖じ気づいたか)?」 「にゃにゃー(こいつ結構ビビリだしねえ)」 「ほっといて。てかまだビビリでも敵前逃亡してないから。チキンじゃないから」 「にゃうー(あんま変わらないって)」 「変わるよ?! てか五十歩でも百歩でも結構距離あるよ?!」 「「「にゃーにゃー(変わってない変わってない)」」」 『……漫才はそこまでにしてください』 溜息混じりに声を――というか思念を送ってきたのは、同道する猫たちではなく、遠くで話を聞いていたオペレーターの方だった。 『そろそろ作戦区域です』 「……了解」 「「「にゃう(了解)」」」 途端にシリアスになる空気。 ノーマも口当てを引っ張り上げ、改めて武器をチェックする。 目的地まではあと少し。相手は視線が合えば即死。緊張しないと言えば嘘にはなるが、侵入する行為そのものに、彼は一切の危惧を抱いてはいなかった。 なにしろこの男、運だけはいい。その証拠にあれだけ騒いでいたのに敵の包囲網にかすりもしていない。何より死ぬのはそれほど怖くない。 どうせ一度、国と一緒に消えかけた事がある命だから。 「これより、作戦行動に移ります」 『……武運を』 「ありがと」 小さく笑って。 そうして、彼は猫三匹と共に、走り出す。 医療支援 南無@るしにゃん王国 これで何度目だろうか、見えぬ戦況を思い描き七海は声には出さずに呟いた。 即席で用意された殆ど野ざらしと変わらぬ治療の場。 決して陽気の為などではない汗を拭う事も出来ぬ白衣、あるいはオペ服を纏う者達。 傷ついた兵士。血の香。漏れ聞こえる前線の気配。 コパイロットとして前線に出た事もあるが、戦場というのはそれがどこであっても同様の緊迫感に包まれる。 誰一人手を休める事は出来ず、足を止める事も出来ない、もしここでそれをする者がいればたちまち前線の死者が増えるのだ。 早く平和が来るといい、誰もが戦わず、この様な死との境界近くまで踏み込まず、生きていける世界が。 そんな、誰しも思っているだろうことを今更口にすることはなかったが。 外の景色が入り口を塞ぐ影によって遮られた。 小さな手術用テントの中にいることを思い出す。 今から自分はここに運ばれる重傷者を救わねばならない。 自分にしか出来ないことではない、だが、自分にできることだ。 この手に培った技術が有り難い。 以前戦場に出たときよりも、医療技術は向上している。 額を束縛する頭冠が、精神の集中を助けてくれた。 高位森国人、と自分が提唱した未知の知識、精神と言うべきか、それの発見によって、 今るしにゃん王国民は各々の分野での成果を高めることに成功していた。 何事もおこらない暢気な風土の中ではそれはまるで無敵の技術のようであったが、戦場に出ると必ずしもそうではないのを痛感する。 ぴっちりとした手袋をはめ、メスを手渡される。蒸した空気の中、患者の止まらぬ血液に塗れた肉を切り裂き、内から蝕む異物を除去する。 血管を繋ぐ。肉を繋ぐ。折れた骨を接ぐ。 これで何人目か、主な治療が終わると直ぐに次が来る。テント外に運ばれ、見えなくなった患者は生きているのか、 常ならば予測もつこうものだが、今は判断が出来ない。 (違う、思い出せる。まだ5人だ……もう5人か) 医者は自分だけではない。誰もが今手を尽くしている。息絶えようとする人々を救っている。自分が処置した数などたかが知れていた。 5人目の傷を塞ぐ。処置は衛生が徹底しきれないし、道具も少ない、だが縫い目は恐ろしく細かい。 この、今は意識のない人は恐らくまた戦場へ向かってしまうのだ、だからせめて強く、動きに少しでも馴染むように、正確に傷口を塞ぐ。 (落ち着け。必要とされている今、全力を尽くせなくてどうする) 一瞬乱れかけた集中力は直ぐに取り戻された。頭冠はこの人々の熱気を受けてなお、冷たい。 この力は誰の為のものだ、七海は自問する。既に今日幾度も自分に問いかけた言葉だ。 目前に意識のない男の身体が運ばれる。そうだ、今この瞬間からこの力の全ては彼の為のものだ。この処置が終わるそのときまで。 「手術開始します」 必要最低限の言葉を紡ぐ。スタッフが痺れる手を動かす。自分もまた消毒されたばかりの器具を手に取った。 夜明けは、訪れただろうか。 過る思考はたちまちの内に霧散する。 自身の戦場に再び没頭し始めた七海の耳に、外からの声はもう聞こえなかった。 指揮官ちゃき支援 ちゃき@るしにゃん王国 いつものことだった。 戦争の前には、ちゃきは部隊を見て回る。 さしもの新しくて一番でかいものに目がいく。 …これが、今回からはじめて使う未婚号… ちゃきは、その大きな機体をしげしげと眺めた。 魔道兵器としても使えるこの機体を見上げ、口元を緩める。 ついで、新しく導入された弓兵部隊 今回の目玉とも言える部隊であった。 未知数とは言え、サブ火力としては一級だと見ていた。 自らが率いる風の中心を探すもの達… 決戦は近い、部隊を見終わったちゃきは 満足した顔でそれらを見つめると部隊が見える小高い場所に立って部隊を見渡した。 ここに森国最強の布陣が出来たぞ この地上でもっとも戦車らしい戦車それは未婚号だった。 設計者の意図などどうでもよかった。 ちゃきは、その性能だけ見ていた。 詠唱技能によるその攻撃と防御は最強クラスだった。 さらに、そいつを二人でやるのだから燃費もよかった。 唯一の気がかりは、敵の特殊能力である根源力制限による死だった。 それは、世界解析でつぶしてしまおうと思っていた。 歩兵としての風の中心を探すものの露払いに 絶対的な火力と装甲の未婚号 まさに、戦車のコンセプトそのものだ。 さらに、サブ火力の弓兵… ちゃきは、持っていた杖で魔方陣を描く 青い燐光が体をつつむとまるで敵を捉えた様な目になる。 そして、全軍を見渡して 「さあ、見せてやりますか戦争って奴を。今までにないくらい見事にやれそうです。」 (…蹂躙、露払いに皆殺しか まったく戦争だな。いやだいやだ) クレール「どうしました?顔にやついてますよ」 ちゃき「いや、なんでもないですよ」 さあ行こうか、我らの力を見せ付けに…まもなく弓兵の許可される。予定どおりならば その時、一人の猫士が駆け込み静寂を切り裂く。 「で、伝令ですにゃ!」 「どうした?」 「弓兵の申請が延期となりましたにゃ」 「ばっ…分かった」 これが、人が伝令なら確実にぶん殴って司令官解任だ。まったくありがたい気遣いだ。多分、正義がつかわしだろう。天領に出向いて交渉までした結果がこれだというのに… 正義の心労はどれほどだろうか いや、考えるまい あるもので戦うだけだ。 それが、報いるということだ。 敵さんには悪いが、発散させてもらおう 声。 スゥ・アンコ@るしにゃん王国 「皆、兎に角何処でもいいから隠れて……ッ!」 敵の攻撃が間近に迫る中、誰かの声が聞こえた。 それが誰の声かを判断する余裕もなく、クレールは木の影になる位置へと隠れた。 すぐ傍の岩に誰かの影が見えるが、それを確認する余裕も、やはり現在は残されていない。 長い髪が敵の攻撃に揺れる。 ぴ。 攻撃による跳ね返りなのか、小さな小石がクレールの頬に当たり、小さな痛みに顔を顰める。 (ここで――……ここで、死ぬ訳にはいきません。) 愛しい人の姿を、心の中に描き出す。 彼に会うまでは、そう、絶対に死ぬ訳にはいかないのだ。 折角小笠原で掴んで手がかりを、己がここで倒れる事によって失う訳にはいかない。 「アイヤー。こんなの反則アルよ。どうしろって言うアルかーッ!!」 逃げ惑う誰かの声に、クレールは唇を開く。 「一刻も早く、遮蔽物に隠れてください! 敵の攻撃は強力、かつ、無慈悲です!…明日の為に、皆で生きのびるんです!!」 魔法使いの印でもある杖を強く握り締めて、敵の攻撃を耐え抜くべく、麗しき女性は、その声を部隊へと響かせた。 明日の皆の笑顔を勝ち取る為にも。 るしにゃんナイン はやて@るしにゃん王国 戦場独特の緊張感が、周囲を包んでいる。 後方配置の迎撃部隊とはいえ、敵が空から妨害を受けることなくやってくる可能性は高い。 そして空の敵の行動力は、歩兵のそれと比べれば大幅に高く、少なくともまず一撃は攻撃をくらう覚悟が必要だった。 なんとかこの戦場に送り込むことのできた弓兵アイドレスを身に着けた国民は、7名。 それに射撃目標の特定や距離の測定、その他知識面のサポートとして加えられた魔法使い2名を加えた9名が、I=Dの使えないこの戦場で頼るべき対空戦闘力だ。 その中で、いつ敵がくるか分からず、ただ待ち続けるという緊張感に飽きたのか、猫耳尻尾の少年がたん、と地面を踏み鳴らす。 「あーもう……待ってるだけじゃイライラすんなっ、前に出て先にヤツらに一撃ぶつけてやるとかできねーのかよっ?」 そんなはやての傍らで、黙って弓の点検を繰り返していたかみんは努めて気軽な声で肩を竦めた。 「まあまあ、焦らなくても敵は来るさー。万が一ここまで来たときのために僕らがいるんだし」 「そうアルよー、もっと余裕を持って構えるアル。戦場では焦りを見せた者からゴミのように斃れていく………って正義が言ってたアルよー?」 さらにその後ろから、お気楽そうな声でモノマネまでしながら話しかけてきたのはスゥ・アンコ。何故か腕組みを崩さないその姿勢が、胸元を隠すためだとは今のところ誰も気づいていない。 「お前それ絶対余計なコト付け加えてるだろ……? 大体別に焦ってなんか……」 はやてがそのモノマネの似てなさっぷりに脱力してからアンコに食ってかかろうとしたとき、その後ろから魔法使いの女性の声が響き渡る。 「敵、来ますっ!!それぞれ攻撃に備えてくださいっ、相手からの攻撃を避けきってから反撃に入りますから!」 全員が空を見上げる。そこからやってくる敵の姿。直後、間髪を入れずに来る攻撃。 それと同時に展開される、理力による障壁と魔法使いたちによる回避の"おまじない"。 一斉に散開する、世界忍者としての能力も備えた弓兵たち。 それは攻撃のみではなく、防御においてもその能力を存分に発揮しはじめる。 「誰もやらせませんよ……みんな、生きて帰ります!」 「来たアルねっ、弓兵のチカラ、とくと見せてやるアルっ!」 「おうよっ!! …そんなヘボ攻撃……食らってたまるかよぉっ!!!」 るしにゃん王国弓兵部隊、9名の戦いがはじまった。 詠唱攻撃SS 合作:はやて@るしにゃん王国 スゥ・アンコ@るしにゃん王国 南無@るしにゃん王国 今や敵は目前、こちらは装甲値も7という圧倒的無力、そもそもこの分隊、作成された時点で詠唱一撃勝負で行こうぜ!ってことだった、のはいいのだが。例によってタイトスカートなど着込んだ少年は軽い不安に呻いた。忍者一筋十と云年、今この手にある杖に自然の理に反するこの力を集束させる術はまだ不慣れなもので 「うう、無理ですようこんなの倒すとか!やっぱり回避できないでしょうか 」参謀モード、軽く臆病らしい。杖と魔術教本を抱え込んで涙目で後退った。 その傍にいる娘は、目の前にある圧倒的な戦力を前にしたにも関わらず、酷く呑気であった。いや、どんな時でもこの女性がペースを崩す、だなんて余程の事が無い限り、無いと断言して良いのだけど。くるくる、と軽やかに、明らかに本来の使用用途とは違う動きで、杖を回転させながら、比較的最近得た魔法の力を集中させていく。 「無理なんて事ないアルよー。ワタシの少林寺拳法的魔術で、あんなヤツら一発粉砕アル。」 色々と矛盾を感じてならない技の名前を口走りながら、臆病な――少女、のような少年に向かって、朗らかに笑った。全く、戦場に似合わない笑みだった。 2人とは少し離れた場所。敵との彼我の距離は未だ手の届く場所にはあらず。術を唱えることのできぬドレスを着用している身には、自分が何もできないのが歯がゆい。いらだつように地面を踏み鳴らせば、それに同調するように猫の尾がばたばたと激しく動いていた。目を細めて敵の様子を伺えば、普段より悪い目つきがなおいっそうのこと険悪さを持ち、余裕が少なさげに見えるのは少年くらいの年齢であれば仕方のないことだろう。気持ちを整えるようにふぅ、っと息をつくと、軽く瞳を細めて意識を飛ばす。森国人特有の、瞑想通信 「(………南無っ、アンコっ!あんなやつら、一撃でブチのめせよっ!手加減なんかすんじゃねーぞっ!!)」 「そんなこと言って、アンコちゃん私と大して力変わらないじゃないー、って、ま、待って、私も攻撃しますー」 半泣きで覚えたばかりの詠唱を…そこはそれ、忍者出身なので単純に物覚えは良かった…小さく唱えだす。まだ腰は引けているのだが。つい、位置もアンコの斜め後ろあたりまで移動してしまうのは臆病者の性だった。力を構築する過程でふっと割り込んできた、比較的親しい人の声がする。集中している為詳しく意味を捉えるまではできなかったが、それでも気持ちだけ、伝わったのか僅かに肩の力が抜けた。 「大丈夫、正義にたくさん教わったんだもの、わ、私負けるわけにはいかないですからー」 ほとんど、自分に言い聞かせる、類の物言いだった。 種族特有の手段で伝わってくる、少年の言葉に、ハン、と鼻で笑うように唇に笑みを浮かべる。手加減、だなんて単語こそ、己に似合わないものだと。 「任せておくアル。とっておきのをサービスしてやるアル。 ――南無とワタシじゃ、人としての器が違うアルよ。」 確かに、着ている職業も、アイドレスも一緒。根源力に若干の差はあれど、力に差は無い筈だ。正義――、この国にいる、オーマの名を聞けば、笑みはより深く唇に刻まれ。 「…あの、青いのを越える一発、くれてやる…、アル!」 杖を媒介にして、己の力が光となっていく。光を向けるのは、ただ、一つ。そう、目の前の敵に向かって 。 器レベルで言われて自分の人間性に欠片も自信のない少年は見事に落ち込んだのだが、逆に自分の立ち位置が明確になってほっとした風でもあった。所詮、下僕の属性、補佐と思い込んだ方がよっぽど力が出せる 「そうだよね!さすがアンコちゃん!よし、私もお手伝いするね…!」 急に前向きな、根っこは極端に後ろ向きな明るい声でそうのたまった。それが別働隊のはやてにまで届けばいい。多分届くだろう、俯き加減がなおったので。晴れやかな笑顔で思う。見ててください正義、私の晴れ舞台、待っててください王様、我等の帰りを、まあ死体かもしれないけど。集まりの悪かった魔力が杖先に一点に凝縮されて行く。 「私は、負けない。この力はその為に、得たのだから…」 ちょっと、声が低くなった。あるべき姿に戻ったのかもしれない 「欠片も残さぬよう、殲滅します!」基本、ろくでもない種類の方へ。 そして魔力の光が、弾ける。 「……あーっ、俺もハデな忍術とか使えりゃ……っ!!」 火炎とか、水流とか。くしゃくしゃと髪をかき混ぜると、額に巻きつけたバンダナがずり落ちかけ、慌てて位置を整える。と、返事の代わりか、魔法使いたちの詠唱が幽かに耳に入ってきた。聞きなれた仲間たちの声ではあるが、紡ぎだす呪文の響きは敵を前に普段より真剣に聞こえた気がした。ぎゅっと拳を握りしめ、瞳を見開いたその瞬間、自分たちの横合いを抜け、幾条ものまばゆい光が一直線に伸びてゆき、一つに束ねられて敵を射抜きかかる! 「っし、行けぇぇぇっ!!!!!」 オペレーターSS ノーマ・リー@るしにゃん王国 「……司令部、通信繋がりません」 報告のアナウンスをしながら、ノーマ・リーは頭を掻いた。 まあいつものことだとはいえ、戦闘には異常事態ばかり起こる。ろくでもない。本当にろくでもない。というか攻撃受けたんだろーか。 (そういえば、前にソーニャさんがナンタラノープルがどうこう言ってたっけ) 同国人――既に二人とも故郷を離れて久しいから、元同国人というべきか――が、少し前に話してくれたことを思い出して頭を掻く。 かなり昔の戦争の話だ。小回りの利く部隊に一挙に攻め入られて壊滅したやつ。分かり易くビジュアルで言うとクマと戦闘するより、虫の大群に襲われる方がヤバいみたいな、そういう話だった。 年貢の納め時。 そんな言葉が頭に思い浮かんで、首を振る。いかんいかん。それはよくない。精神衛生上めちゃよくない。 「―――どうしましょ?」 インカムを押えながら振り返ってみる。 そこには、現在の滞在国・るしにゃん王国の、それと知られた戦上手が集まっていた。やがて、中の一人――眼鏡も凛々しい今回の指揮官、ちゃきが肩を竦める。 「どうもこうもないな。既に敵はいるし、押し付けられそうな味方はいない」 「闘うしかない、ですか」 「そうなると思うよ」 「了解。――じゃあ、出来るだけのデータを集めます」 「そうしてくれ」 ここまで来たからには腹をくくるしかない。 既にここは戦場だ。味方もいて、敵もいて、戦端はいつ開かれるかも判らない。 なら、オペレーターはオペレーターの仕事をしよう―――
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/173.html
第二回戦【ジャンボジェット機】SSその1 1回戦終了翌日、大会本会場近くのホテルの一室。 “ケルベロス”ミツコたちは、早くも次の対戦相手の一人、猪狩誠の研究を始めていた。 テレビモニターには硫酸風呂から飛び出した猪狩が、儒楽第に連打を叩きこむシーンが映し出されている。 「…妙だな。」 画面を見ながら光吾はそう呟いた。 「まぁ確かにちょっと強すぎだよねー。」 内容とは裏腹に満子の言葉には気楽さが感じられる。 「それもだけれど、試合開始時の動きと違いすぎない?」 そう言って光吾は映像を試合開始時に戻す。 「あー。確かに言われてみると全然違うかも。」 「力を温存してたとするにもちょっと不自然な感じがしますわね。」 「うん。だからこれが彼の能力だと考えていいと思う。だとすると問題になるのは。」 「制約かー。」 「強い能力には必ず強い制約がある。これが猪狩さん攻略のカギになるということですね。」 「よーし、ミツゴ君。もっかい頭から再生!最初に見つけた人が今晩のデザート決定権ね!」 3人は真剣にビデオに見返す。しかし 「うーん。ダメだァ、何回見てもわかんないー。」 何度映像を見ても、猪狩が何かしら制約を払った様子は見つけられなかった。 「後払いか、何らかの条件を満たすタイプなのかもしれませんわね。」 「そうなのかもしれないね。それか、もしかしたら制約を支払ったのは彼じゃなくて……」 「どういうこと?」 「ううん、やっぱり考えるのは一旦やめにしよう。ちょっと休憩!」 光吾は気分転換に窓を開き、テーブルにおいてあった新聞を何気なく手にとった。 直後、一面の隅に小さく書かれていた記事に彼の目は釘付けになった。 「『ザ・キングオブトワイライト本試合会場で、8歳の男児が重症』」 「どうかなさいました?」 「見て、被害者の名前が『まさる』って書いてある。」 「あれ?確かそれってぇー。」 先ほど何度も繰り返し聴いた言葉。『まゆ、めい、まさる』 それは猪狩誠が発した言葉だったではないか。 これは偶然ではない。彼の……光吾の探偵としての勘が、そう告げていた。 「この子の居る病院を訪ねてみよう。もしかしたら猪狩の能力の手がかりが、つかめるかもしれない。」 ……数日後、彼らは確信する。 猪狩誠の能力の真の力と、その恐ろしさを。 --- 第2回戦試合場、ジャンボジェット機。 普段は多くの旅行者を安全に、速やかに運ぶそれは、 この時、3人の魔人たちが死力を以って闘う、鉄の棺桶となる。 試合場に転送された猪狩はまず、窓の外を見て驚きの声を上げた。 「これが飛行機って奴かぁ……。話には聞いてたけど、本当に飛んでんだな。」 彼が驚くのも、無理はない。 核やパンデミックの影響で今の世界では飛行機は殆ど飛んでいないのだ。 もっとも、飛んでいたとして、それに乗る金銭的余裕など今までの猪狩にはなかったわけだが。 (立ってるだけでも変な感じがする……。揺れてたりするし、なんか落ちつかねえなあ。) 初めての飛行機に、少しばかり不安を抱きながらも、猪狩は敵を探し始めた。 本来三つ巴ならば、一度身を隠すなどして、残る二人が潰しあうのを待ってから、漁夫の利を狙うのがセオリーだ。 しかし、今回の相手には“ケルベロス”のうちの一人、光吾……すなわち手芸者が居る。 手芸者は直接の戦闘に長けるだけではなく、罠や不意打ちなどの搦め手を用いる事が多い。 放っておけばそれだけ罠を仕掛けられるだろうし、不意打ちされる確率も上がる。 また、猪狩は1回戦で、優勝候補筆頭であった儒楽第を、真っ向勝負で下している。 ミツコと冷泉院が彼を警戒し、手を組む事も考えられる。 故に、時間を与えればそれだけこちらは不利になる。猪狩はそう考えたのだ。 過去の仕事で得た経験を生かし、罠や待ち伏せを警戒しながら、 油断無く、そして迷い無く、速やかに機内を進んで行く猪狩。 どうやら、進む方向は正解だったようで、道中罠が仕掛けられていた。 それらを避け、または解除しながら、更に奥へ進む。 仕掛けられた罠も結構な数になってきた。そろそろ出くわすころだろう。 そう思った猪狩の目に、また一つ新しい罠が映りこむ。 脛のあたりの高さに張られたワイヤー。触れれば罠が作動し、何かしらの手傷を負うことになるだろう。 引っ掛らないように足を上げて通過しようとする猪狩。 その時、気流の影響で、機体全体が僅かに揺れた。 「うおおっ!?」 揺れ自体は小さい物だったが、猪狩は過剰反応気味に、大きく後ろに飛んだ。 それが、彼を救った。一瞬前まで彼の頭が在った位置を、閉じた鋏が通過した。 「…………!」 よけられたのは、全くの偶然。先ほどの揺れがなければ、猪狩は何をされたか気付く事も無く、死んでいただろう。 だが、猪狩に動揺はない。すぐさま射出方向へと向き直り、構えを取る。 光吾が身を隠していたのは、天井に配備された開閉式の荷物入れの中だ。 罠を張り、それに敵が引っ掛ればよし。罠に気づかれても、気をとられている内に奇襲で仕留められれば、それもまたよし。 それが、“ケルベロス”ミツコの作戦だった。 「くっ……!外した!姉ちゃん!」 奇襲が失敗した光吾はそこから降り、すぐさま姉の蜜子へと交代。 「ヒャッハー!バラ肉にしてやんよぉー!」 蜜子は料理魔人独特の動きで肉切り包丁を振り、猪狩へと切りかかる。 だが、対する猪狩も様々な苦境を乗り越えてきた歴戦の魔人。 「……ハッ!」 僅かな動きでそれをいなし、カウンター気味に一撃を放つ。 「ミツコちゃーん!」 蜜子は満子へ交代し、驚異的なタフネスでそれに耐える。 「何……っ!?」 「……効きませんわ!」 すぐさま噴霧器を使い反撃に出る満子。猪狩はバック転でそれを回避。 「逃がさない!」 しかし、距離を取った猪狩に、リリアンによって蜘蛛の巣状に編まれたネットが襲い掛かる。 「……クソッ!」 猪狩は無茶だとわかっていながらも、網の下へ飛び込むようにして潜り抜けるしかない。 体勢を崩した猪狩に振り下ろされる肉切り包丁。初撃と違い、今度の猪狩にはそれを避けきる余裕はない。 「ヒャッハー!」 「ぐあっ!」 猪狩の腕が大きく切り裂かれる。 「……まだまだぁ!」 それに怯まず、猪狩はミツコに拳打を叩き込む。 「でりゃあー!」 「ヒャッハー!」 再び始まる両者の攻防。 状況を覆そうと猪狩は気迫をこめて攻撃するが、3人の息の合ったコンビネーションが、それを許さない。 「がっ……!」 「ぐうう……!」 「ぐあああ!」 幾度となく、猪狩の体に大きな傷が刻まれる。 今や猪狩には至るところに傷が刻まれており、その体は血だらけだ。 対するミツコは一つも有効打を食らっておらず、ほぼ無傷に近い。 「もういいでしょう。実力の差は明らかです。これ以上は時間の無駄、降参なさい。」 満子が諭すような口調で言う。だが 「………まだ、だ!」 猪狩の闘志は微塵も落ちていなかった。その目はまるで、自分が負ける事など在りえ無いと確信しているようだ。 「………自分には家族が居るから、ですか?」 「そうだ……。俺には家族が居る。勝たなきゃいけない理由がある。家族が居る限り、俺は負けない!」 力強くその問いに答える猪狩。 満子は一つため息を付いた。 「みっちゃん。教えてさし上げて。」 気配がスゥと入れ替わる。 「猪狩君、残念だけど君に勝ちの目はない。なぜなら、僕達は既に、君の真相にたどり着いている。」 入れ替わった光吾は淡々と告げ、懐から数枚の写真を取り出す。 「これ、は……!」 写真を見るや否や、驚愕に見開かれる猪狩の目。 その写真に写っていたのは、孤児院『どんぐりの家』と……そこから連れ出される、十数人の子供たち。 「既に君の武器は封じさせてもらった。この勝負、君に勝ち目はない。」 --- 一方その頃、希望崎学園、黒樺寮前。 「子供たちを、わしの子供達を返してもらおう!」 どんぐりの家の園長、松五郎はそこで家族を取り戻すため、孤独な戦いを挑んでいた。 ほんの僅かな時間、孤児院を留守にした間の失態。 幸いにも、万が一の事態のために五本指に持たせてある発信機によって居場所はすぐに知れたが、単身駆けつけた園長を迎え撃つのは十数人の希望崎魔人だった。 「ミツコの頼みだ!あんたを通すわけにはいかねえんだよ!」 園長はかつて炭夜紫会屈指の武闘派として恐れられた男。並大抵の魔人が叶う相手ではない。だがしかし 「オラッ!おっさん後ろだ!」 園長は蹴られながらも、その足を匕首で切りつける。 「残念、『身長190cmの世界』。膝より下は全部シークレットブーツでしたァ。」 弱小魔人たる黒樺寮寮生たちは真っ向勝負など挑まない。 妨害、撹乱こそ彼らの常套手段であった。 押しては引き、入れ替わり立ち代わり行く手を遮る彼らによって、園長は寮の門をくぐることすらできず、いたずらに時間だけが過ぎていった。 (いかん…このままでは、誠が) 焦りを感じた瞬間 「ヒャッハー!」スライディングタックルで足を払われ、地面に倒される。 次々とのしかかってくる魔人たちの重みで、体の動きが封じられた。 「グゥゥ、くそぉ、殺せ!わしを殺せぇ!!」 「おっと、そうはいかねえ。ミツコちゃんからは決して怪我をさせるなとも頼まれてるんでね。」 (ケルベロスミツコ、やはり誠の能力に完全に気づいておったか。……こうなれば、やむを得ん!) 「誠ぉー!後のことは、全て任せたぞ!」 叫ぶやいなや、園長は渾身の力を顎に込め、突き出した舌に向けて両の歯を噛みあわせた。 しかし、なんたることか、その歯は舌の上をツルリと滑り、そのまま上下の歯が打ち合わされる。 「!?」 何度繰り返しても、結果は変わらない。園長の舌はするりするりと歯を掻い潜る。 その様子を見て寮生の一人が得意げに語る。 「これぞ我が能力『魔術師手術中(マジシャンズオペレーション)』。極限の滑舌を持ったものは決して噛むことは無い!」 「く、クソォー!誠、誠ォーーー!」 必死の形相で叫ぶ園長。しかし、状況は絶望的だ。 園長の声は黒樺寮に虚しく木霊するだけだった。 --- 猪狩と“ケルベロス”ミツコの戦いは、もはや一方的な虐殺へと形を変えていた。 「ぐ、ぐううう……!」 「ヒャッハァー!しぶとい奴だねぇー!」 猪狩の傷は先程よりも増え、もはや息も絶え絶えといった感じだ。 もはや殆ど攻撃を仕掛ける事も無く、ひたすら逃げながら、ミツコの攻撃を防ぎ続ける。 『All for one』を封じられ、肉体的にも追い詰められている、絶望的な状況。 そんな中でも、猪狩の目は、いまだ闘志の輝きを宿していた。 なぜだ……?何故、彼はまだ諦めていないんだ? それが、絶対的に有利なはずの光吾の心に、僅かな不安を芽生えさせる。 園長が子供たちを取り返してくれると期待しているのか? それとも……もしや自分たちの推理に見落としが有ったのだろうか… 「俺の家族に手出しをするやつに、俺は絶対に負けねえ……」 真っ直ぐに自分を見据える猪狩の瞳を見ていると、彼は本当に自分たちが考えていたような外道なのだろうかという疑念が膨れあがる。 「みっちゃん!しっかり!」 はっ。と、我に返る光吾。 「やっちまったもんはしょうがねぇだろ。考えるのは倒してからやりゃあいいんだよ」 「……そうだね。ごめん、姉さん。姉ちゃん。よし、一気に勝負を決める!」 アイアンロッドを構え、猪狩を見据える。 だが、その視線の先の猪狩は、どこか遠い目で外を見ていた。 「………来た。」 ぼそりと、猪狩が呟く。そしてそれと同時、猪狩を中心に風が巻き起こる。 「なん……!?」 今度は光吾が驚愕に目を見開く番だった。 封じたはずの、猪狩の能力『All for one』が、今、発動していた。 --- 数分前、黒樺寮。 そこには、園長の叫びを、聞き届けた者たちがいた。 「ねえ、今の声……もしかして、園長じゃ?」 「いやでも、あのお姉ちゃんは園長と猪狩おにいちゃんの頼みだって言ってたし…」 それは、黒樺寮の中に連れて来られた園児たち。 (……やっぱり嘘だったんだ。あの人の言ってたこと。) そしてその中には勿論、五本指の一人、ももこも含まれていた。 (誠お兄ちゃんが、危ないんだ……。) 園長の叫びを理解したももこは、部屋の奥に目をやった。机の上にはナイフが置きっぱなしにしてあった。 ももこの脳裏に、まゆとめい、そしてまさるの顔が思い浮かぶ。 ……猪狩の能力の正体に気付いていたのは、ミツコだけではなかった。 五本指の一人、ももこは、子供達の中でもとび抜けて賢く、勘のいい子だ。 彼女はまゆ、めいのいなくなったタイミングと、猪狩の逆転のタイミング。そしてまさるが入院した事等から推理し、猪狩の能力を見抜いていたのだ。 (あの3人も……お兄ちゃんの力になれて嬉しかったのかな) 監視の目にとまらないよう、ももこはゆっくりと、机に近づく。 (お兄ちゃんは優しい人だ……。きっと3人を傷つけたのも理由がある。……それに) ナイフを手に取り、刃を自分の喉元に向ける。監視がももこの異変に気付くが、もう遅い。 (どんな理由でも。誠お兄ちゃんが望むなら、私は……。) そのまま倒れこむようにして体重をかけ、ナイフを突き立てる。喉からは温かい液体が流れ出し、体からはその分の熱が引いていくのを感じる。 同時に、周りの景色も、声も、意識も、だんだんと曖昧になっていく。 (私はどうなってもいい。だから……。勝って、誠お兄ちゃん……。) 子供達の叫び声が、黒樺寮の魔人の声が、園長の声が、遠くに聞こえる。 そして、ももこは……。 --- 猪狩の目から、一筋の涙が零れた。 「ももこが、死んだ」 「どうして……?誰ひとり傷つけるなって、僕は確かに言ったんだ。誰も傷つけずに戦いを終えられるはずだった…」 激しい動揺を無理やり押さえつけ、リリアンネットを放つ光吾。 「………はぁっ!」 猪狩はその場から動かず、手刀によってそれを切り裂く。 「こんなもので……今の俺を止められると思うな!」 「……!みっちゃん!危ない!」 猪狩は距離を一足でつめ、打撃を放つ。操作権を奪った満子がそれを防ごうとする。 「が、ぐぅ…っ!」 しかしそれよりも、猪狩のほうが圧倒的に早い。 ボディに直撃を受け、後ずさる満子。 「お前らさえ余計なことをしなければ……ももこは辛い思いをしなくて済んだんだ!」 「ああああっ!」 怒声とともに、もう一撃。満子はそのまま、数m吹き飛ばされる。 満子は蜜子に切り替わり、倒れた状態から一瞬で飛び上がって、猪狩に包丁を振るおうとする。 (ダメだ、姉ちゃん……!) 「う……!?」 だが、包丁を振るうより先に、猪狩がその手を掴む。 「こ、この……!」 蜜子は手を振り払おうとするが、猪狩に掴まれた手はピクリとも動かない。 「……でやぁ!」 猪狩が気合と共に、掴んでいた腕を勢いよく捻る。 「ぎっ……!?」 ごきゅり、という嫌な音とともに、蜜子の右腕がありえない方向へ曲がる。 「が、があああああああああ!?」 痛みのあまり、叫び声をあげる蜜子。形勢は、完全に逆転していた。 「オラァ!」 さらに顔面に叩き込まれる、猪狩の拳。 「あの世で……ももこに侘びろ!」 それに続いて、2発、3発と、まるで機関銃の如く、連続して拳が打ち込まれる。 「オォォォォォォォォォォォラァァァァァ!!」 「――――――ッ!」 『All for one』によって強化された連打に、耐え切れるはずもない。 “ケルベロス”ミツコは声をあげることも出来ずに、吹き飛ばされていった。 「…俺と園長に任せておけば、もっと穏やかな気持で死なせてやれたのに」 猪狩はそう呟くと、流れる涙を拭った。 「…やっぱり、どっちにしろ殺す気だったんだな」 立ち去ろうとした猪狩の背に、光吾が声をかける。 「一瞬でも君を信じようとした僕が、バカだった。…外道、お前こそが“世界の敵”だ…!」 光吾はガクガクと震える足に鞭打って無理矢理に体を立たせる。 もはや戦闘を続ける力はどこにも残されていない。しかし 「僕の能力は『世界の敵の敵』。一人の主人公の死と引換えに世界の災いを打ち消すことができる能力だ」 光吾の言葉には強い決意があふれていた。 「お前をこのまま野放しには出来ない。僕の命と引き換えにしてでも、消し去ってやる」 「ミツゴ君!」 「みっちゃん!」 「ごめん、姉さん。姉ちゃん。」 「何いってんの!ひとりだけいいかっこしてんじゃないよ!」 「そうですわ。私たちはいつも3人一緒ですわよ。」 「……ありがとう。」 光吾は左手の拳を猪狩に向かって突き出す。 「3人分の魂、お前にくれてやる!」 握られた手の中から溢れたまばゆい光が、空間を満たす。 「な、なにを…」 『世界の敵の敵!!』 全てを白く塗りつぶす、純白の闇。 永遠にも思える一瞬の後、世界は再び元の姿を取り戻した。 元の、姿を そう。世界は何一つ変わっていなかった。 眼前に立つ猪狩誠の姿もそのままだ。 「バカ…な…」 すべての力を失った“ケルベロス”ミツコは愕然としてその場に膝をつき、絶命した。 「俺が世界の敵だと?そんな訳はねえ。俺が、この大会にかける願いはただひとつ。……人類総家族化(せかいへいわ)なんだからな。」 --- 「夕霧、どうやら勝負がついたようです。」 「やはり、勝ったのは猪狩か。」 同時刻。飛行機の操縦室で瞑想を行っていた冷泉院は 猪狩とミツコの戦いが終わった事を感じ取り、ゆっくりと立ち上がった。 徹底した合理主義者である冷泉院は、乱戦を避け、最初から端に陣取って静観を決め込んでいた。 探偵である“ケルベロス”ミツコなら、猪狩の能力の秘密を暴き、打ち破れるのではないか。 そう思ったが、生憎その期待は外れに終わったようだった。 「まあ、当てが外れるのはいつもの事だ。」 トン、トンと、軽くステップを踏み、『仮面の力』が正常に働いていることを確かめる。 そして、義足を操縦席の計器類に向かって、勢いよく振り下ろした。 「さて、どこまでやれるか。」 ゴゥン、と気味の悪い音が響き、機体がぐらりと揺れた。 冷泉院は軽く頷くと、扉を開き、猪狩誠の待つ機体の後部へと移動し始めた。 --- 「うおっ……!?」 “ケルベロス”ミツコを下してすぐのこと。 猪狩が冷泉院を探して操縦室の方へ向かっていると、 突如、ジャンボジェット機の機体が、大きく揺れ始めた。 「なんだ……!?どうなってんだ……!?」 揺れは、一時的なものではない。それもそのはず。これは気流の影響などではなく、 冷泉院が制御装置を狂わせることによって起きた揺れだからだ。 「くそっ……!もしかしてこれ、落ちるんじゃないだろうな……!」 あまりの揺れにの大きさに翻弄される猪狩。そんな彼の元に、一人の男が姿を現した。 「予想通り、随分と苦労しているようだな」 「お前は……!」 真鍮製の義肢と顔を半分ほど覆う仮面という、独特の外見。 そんな特徴的な姿をしていながら、このトーナメントで最も謎が多い男。そしてこの試合の、もう一人の対戦相手。 「冷泉院、拾翠。」 現れた冷泉院は距離を取り、注意深く猪狩を観察する。 能力は既に発動しているようだが、一回戦の時とは違い、 その体には“ケルベロス”につけられたと思わしき傷が、治りきることなく残っていた。 “ケルベロス”のお陰かは判らないが、どうやら1回戦のときほどの力は、今の猪狩にはないらしい。 「この揺れを引き起こしたのは、お前か。」 「だったらどうする。」 猪狩の問いに素っ気無く答え、冷泉院が飛び掛る。 小さな動きでそれをかわす猪狩。 「ハァッ!」 「……!くっ!」 しかし、機体に起こった揺れのせいで、うまく体勢をコントロールできない。 直撃を受けることはなかったが、反撃を行うことができない。 対する冷泉院は、その動きの殆どを空中で行っていた。揺れの影響は、猪狩よりも遥かに少ない。 計算通り。 猪狩が十全の力を発揮できれば、冷泉院は敵わないだろう。 だが、この揺れがひどい機内では、空中戦を主とする冷泉院のほうに地の利がある。 時間と共に、徐々に押されて行く猪狩。 そして遂に、冷泉院の強力な一撃が、猪狩を捕らえた。 「ぐああっ!」 蹴りをまともに食らい、大きく吹き飛ばされる猪狩。 冷泉院は地面を強く蹴り、追撃を加えようとする。 同時に、猪狩が動いた。猪狩は吹き飛ばされた勢いを殺さず、そのまますばやく起き上がり、そして…… 「オラァー!」 直ぐ脇にあった飛行機の扉に、拳を突き立てる。 勢いよく外に吹き飛ばされていく扉。そして機内に巻き起こる暴風。 「な、なんだと!?」 空中にいた冷泉院は吹き飛ばされそうになるものの、とっさに座席を掴み、何とかそれに耐える。 「これでもう、あの力は使えない。俺の勝ちだ、冷泉院。」 冷泉院拾翠の能力 『仮面の力』は、地面から完全に体を離さなければ、使う事は出来ない。 しかしこの状況下でそれをすれば、暴風に体を持っていかれ、まともに戦う事は出来ない。 猪狩の言うとおり、『仮面の力』は封じられた。これ以上やっても、冷泉院に勝ち目はない。 だが、冷泉院はまだ、諦めきってはいなかった。 「降参したいところだが、勝負は最後まで……何が起こるかわからない」 1回戦でも、敗北を覚悟したところから、彼は逆転したのだ。今回もまた、何かが起こるかもしれない。冷泉院はその考えを捨てきれずにいた。 「そうか。それじゃあ……終わらせよう。」 冷泉院に止めをさそうと、猪狩は地面を踏みしめながら、冷泉院に近づいていく。 猪狩が拳を振り上げ、冷泉院を真っ直ぐ見る。 「ふっ」 冷泉院は絶体絶命のピンチでありながら、真っ向から視線を受け止める。 『白刃獲り没収EX』 何も持たず、素手で攻撃しようとしていた猪狩に対して、冷泉院のもう一つの能力が発動する。……その能力は、冷泉院にも予期していなかった、異常な事態が引き起こすことになる。 「「な、なに!?」」 冷泉院の能力によって呼び出された武器を見て、二人が驚愕の声を上げる。 「い、いったい此処は……どこじゃ!?わしにいったい何が……っ!」 そして同時に、呼び出された武器……『どんぐりの家』園長も、驚愕の声を上げた。 --- 「え、園長……!」 「ま、誠!?どういうことじゃ!」 驚きのあまり、三者の動きが止まる。 その中で最も早く次の行動に出たのは、冷泉院であった。 (……夕霧――――) 仮面の声が冷泉院の頭に響き、冷静さを取り戻させる。 冷泉院は突如現れた男、園長に飛び掛った。 「ぬう……!?」 攻撃の気配を感じた園長は振り向きながら、手に持った匕首で攻撃しようとする。だが、 「なっ……!?しまった……!魔人能力か…!」 その匕首は冷泉院の能力によって奪われ、逆にそれを突きつけられてしまう。 「………動くな。」 園長を人質に取った冷泉院が、猪狩に話しかける 「……こいつが誰だか、俺はよく知らない……。だが、俺の能力で出てきた以上、何かしらお前と関係があるんだろう。」 園長の首に匕首を更に近づけ、冷泉院は続ける。 「もしもこいつが死んだとして……果たして運営の奴らは治療するかな……?」 こいつを殺されたくなければ、今すぐ降参しろ。冷泉院はそう告げているのだ。 「かまわん、誠!わしごとやれぇーっ!」 園長が、悲痛な叫びを上げる。 この脅迫が、もしも他の、まともな倫理観を持つ対戦相手に対して行われたのなら、恐らく有効だっただろう。 だが、相手が悪かった。今回の対戦相手、猪狩誠には……そのようなまともな倫理観は、存在していなかった。 「園長!あんたなら、そう言ってくれると思ってたぜ!」 「な…………っ!?」 「う、おおおおおおおおおおおお!」 何の躊躇いも無く、園長に拳を叩き込む誠。 園長を傷つけた事で更に強化された拳は園長で止まらず、その後にいた冷泉院も、まとめて貫いた。 「なん……て……奴だ……」 園長と冷泉院。二人の目から光が消えていく。 「園長………っ!」 猪狩は腕を引き抜き、倒れかけた園長を支える。 「誠……そんな顔をするな……。これでいいんじゃ、これで……」 穏やかな顔で、園長は猪狩に話しかける。 「死ぬな……死ぬな園長!直ぐに病院に連れて行ってやるからな!」 必死に園長を呼ぶ誠。しかし、園長の顔からは見る見る血の気が引いていく。 「いいんじゃ……。子供達を手に掛けた時から、こうなる事も覚悟していた。何より……」 園長がゆっくりと手をあげ、猪狩の頬に触れた。 「我が子の手の中で死ぬというのも……。悪いもんじゃあ、ない……ぞ……」 「園長……!?おいっ!園長……!」 持ち上げられた手が力を失い、地面に落ちる。 「……園長!………えんちょおおおおおおおおおおおおお!」 飛行機内に、猪狩の悲痛な叫びが響き渡る。……それに答えるものは、もう、誰もいなかった。 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/irosumass/pages/330.html
「全力全開!!」 人物 私立聖祥大附属小学校在籍 小学3年生 声は田村ゆかり 性格 明るく優しい性格で正義感も強い 原作は魔法少女リリカルなのはだと思われがちだが実際はとらいあんぐるハート3 〜Sweet Songs Forever〜の登場人物〔ちなみに主人公は彼女の兄〕 原作設定では誕生日は3月15日 身長は129cm。体重は24kg。血液型はO型 彼女について詳しく知りたい場合は本人のウィキを見ていただいたほうが早いであろう→http //ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%94%BA%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%AF SSにおける高町なのは 第4章から登場しそれ以降は毎回登場 戦闘にもよく参加し敵を倒すこともある 原作と比べるとやや気性難で突然語気が荒くなることも ボケをやらかすことは殆ど無く役回りはほぼ突っ込み 補足 テラカオスに魔王の魂を植えつけられ敵になっていたことあり その際ピコ麻呂により救われ、その後魔王を体から追い出すことに成功 歳が近いためか江戸川コナンと相性がいい 中野梓は彼女のファンである イロスマゾーンの件で仮面ライダーゼロノスに恨まれている パズルゲームが好きなのでピコ麻呂のぷよぷよ禁止令が苦手 技 強力な射撃系魔法を得意する 超能力は持っていないためすべて魔法である ディバインバスター 直射砲撃魔法 エクステンションやフルバーストなどバリエーションも多い アクセルシューター 誘導制御系魔法 一度に数十発魔法玉を発射する エクセリオンバスター 大威力の砲撃魔法 かなり強い スターライトブレイカー 最大奥義 特大の力ではなつ収束砲撃魔法 スターライトブレイカーDD ライトとの連携技 ライトプリズムと同時発射で威力倍増 チェーンバインド 数少ない拘束系魔法 魔王シューベルト 化身、見た目はニコニコRPGの魔王 化身技は魔王の斧 グランドソード開放 グランドソードのエネルギーを開放し時空ごと敵を切り裂く フォームチェンジ グランドソードフォーム 魔王シューベルトを化身アームドすることで進化する グランドーソードを使うほかレイジングハートとグランドソードを合体できる
https://w.atwiki.jp/83452/pages/10082.html
200X年… 百合関係では子供ができないという事実に胸を痛めた琴吹紬により秘薬「PNSHAEL」が開発された これにより、世界中の恵まれない百合が救われたのであった… 唯「う~ん、う~ん…」 ぴんぽーん 和「こんにちは、唯。赤ちゃん見せてもらいにきたわよ」 唯「和ちゃん、いらっしゃ~い。う~ん…」 和「おじゃまします」 唯「どうぞどうぞ~。う~ん…」 子供「…」 和「あらかわいいわね」 唯「ありがと~。う~ん…」 和「ねえ、この子の名前はなんていうの?」 唯「…………」 唯「えっ!?」 和「だから、名前よ」 唯「え~、うん、名前ね…」 和「…あんた、もしかしてさっきから唸ってたのって…」 唯「………………」 和「………………」 和「…こうやってニートが生まれてくるのね…」 唯「名前がないだけでニート!?」ガーン 和「この子、生まれてからどれくらいたつの?」 唯「え~と…、13…?14だったかな…」 和「ちょっと、もう時間ないじゃない…」 唯「いや~、候補はたくさんあるんだけどなかなか決められなくて…」 和「一応考えてはいるのね。ちょっと聞かせてみて?」 唯「うん、私とあずにゃんの名前から一文字づつとって…」 唯「唯の『ゆ』とあずにゃんの『ず』で『ゆず』!」 和「栄光の架橋ね」 唯「あずにゃんの『あ』と唯の『ゆ』で『あゆ』!」 和「塩焼きが食べたくなるわね」 唯「あずにゃんの『ず』と唯の『い』で『ずい』!」 和「小野妹子ね」 唯「あずにゃんの『さ』と唯の『い』で『さい』!」 和「ツノに見えるのは実は毛なのよ」 唯「みんないい名前で決められないよぉ~!」 和「最後のほう名前になってないと思うけど」 … 梓「ただいま~!」 唯「おお~!愛しの妻あずにゃん!おかえり~!」ムギュー 唯「今日は早いねぇ~!」 梓「久しぶりにみんなに会えるから早く帰ってきちゃった」 和「あいかわらず仲の良いこと」 梓「あ、和先輩お久しぶりです。いつも唯がお世話に…」 和「いえいえ、挨拶はいいから早く着替えてらっしゃい」 梓「はい、それでは…」 唯「あずにゃんお着替えしましょ~!」 和「やれやれ」 ――――― 梓「改めてまして、お久しぶりです。和先輩」 和「そうね、結婚式以来かしら…」 和「あ、そうだ。あなた達の赤ちゃんのことなんだけど」 梓「見てくれましたか!?とってもかわいいですよね!?」 和「うん、かわいいんだけど…」 梓「だけど!?」 和「名前は?」 梓「名前ですか、それが唯の考える名前がみんなかわいくて…。一つに決められないんです!」 唯「そうだよね!さすがあずにゃん!」 和(だいぶ唯の影響をうけているようね…) 梓「ゆ~い~、たい焼き~」 唯「はいはい~」 和「子供の名前で悩むのも幸せなことだけど、さすがにそろそろ決めた方がいいんじゃない?」 唯「う~ん…。こんなことなら占いとかしてもらえばよかったな」 和「仕方ないわね。私が見てあげるわ」 唯「え?和ちゃんできるの?」 和「はあ…。あなた今まで私の何を見てきたの?」 和「私だってムギほどじゃないけど便利キャラとしては名が知られているのよ」 唯「よくわからないけどお願いします」 和「では、この子の手相、人相、その他色々見てみましょう」 和「フーム」 唯「ドキドキ」 和「フーム」 梓「ドキドキ」 和「…ととのいました」 唯「そのこころは?」 和「まず、この子は梓ちゃん似ね。ちっちゃくてかわいいツインテールの似合う子になるでしょう」 唯「おお~!」 和「性格も梓ちゃん似ね。クールな感じで素直になれない性格ね」 唯「もうあずにゃんでよくない?中野あずにゃん!」 梓「う~ん…。子供と名前が同じっていうのも…」 和「あなたの名前はあずにゃんではありません」 梓「唯に似ているところはないんですか?」 和「え~と…、髪の毛の色は唯似ね」 唯「それだけ…?ちょっと淋しい…」 和「それから、この子はかなり頭がいいと思うわ」 唯「え?それ私?」 和「そうよ。考えてみなさい。憂はすごく勉強できるでしょう」 和「同じ腹から生まれてあなたができないはずはないわ」 唯「そう…?」 和「それに、大学だってあんなに遅く勉強始めたのにちゃんと合格したじゃない」 和「唯は実はすごく勉強できるのよ。やる気がないだけで」 唯「そっか…!私ってできる子だったんだ…」 梓「唯…!よかったね!」 和「まあこんな感じかしら」 梓「え~と…。総合すると、私みたいに小柄でツインテールが似合う…」 唯「あずにゃんみたいに素直になれない性格で、けっこう頭がいい…」 唯「………………」 梓「………………」 唯・梓「!」 唯「今、すごくいい名前がうかんだよ!」 梓「ほんと?私も!」 唯「ちょ、ちょっと教えて?」 梓「う、うん」ゴニョゴニョ 唯「…」 唯「うおおー!」 梓「ど、どうしたの?」 唯「すごいよ!私とあずにゃんの考えた名前おんなじだった!」 梓「ほんと!?」 和「ねえ早く聞かせてよ」 唯「うん、じゃあせーので…」 唯・梓「せーの…」 唯・梓「すず!」 和「へぇ…。いい名前じゃない」 唯「うん、これも和ちゃんのおかげだよ」 梓「どうもありがとうございました」 唯「よかったね、あなたの名前はすずちゃんだよ」 すず「…」 和「ところで、出生届急げばギリギリ間に合うんじゃない?」 唯「ほんとだ!じゃあ急いで行ってくる!」 梓「私も!」 唯「和ちゃん、ちょっとすずちゃん見てて!」ビュー 和「…」 和「これって放任主義なのかしら…」 …… 唯「いや~、何とか土下座して間に合ったよ」 梓「お騒がせしました」 和「まあ、とにかくよかったわ」 ぴんぽーん 律「こんちわー!」 唯「あ、りっちゃん達だ!」ダダッ 澪「唯、久しぶりだな。近所に住んでるのになかなか会えないな」 唯「しょうがないよ~。澪ちゃんお仕事してるんだし」 律「私はけっこう会ってるけどね」 唯「いや~、りっちゃんとはよいお茶飲み友達で…」 唯「あ、どうぞどうぞ~」 律・澪「おじゃまします」 澪「和、もう来てたのか。久しぶりだな」 和「そうね、あなた達もあいかわらず仲が良さそうね」 律「おかげさまで」 和「あら?あなた達も赤ちゃん連れてきたのね」 和「でも二人ってことは…。もしかして、双子?」 律「そうなんだ!すごいだろ~!」 和「ねえ、この子達名前はなんていうの?」 律「こっちの澪にそっくりなのが『しの』でこっちの私の髪の毛の色みたいなのが『ありあ』だよ」 澪「もうすぐ1才になるんだ」 和「へぇ…。ね、どっちがお母さんなの?」 律「私だよ」 和「え?そうなんだ」 律「何だよ、その以外そうな顔は」 和「あ、ちょっとイメージ的に…」 澪「私も生みたかったんだけど、律がどうしてもって」 和「どうして?」 律「え!?いや、その…、あの、私、澪のお嫁さんだし…、大好きな人の赤ちゃん生みたかったし…///」 和「何これ…。ばかにかわいらしいじゃない…」 唯「あれ?和ちゃん知らなかったっけ?」 唯「りっちゃんは澪ちゃんとお付き合いを始めてからとってもぷりちーになったのです」 律「唯、ぷりちーとかいうな////」 和「ふたりが付き合い始めたのって高校の頃よね…。全然わからなかったわ」 澪「あの頃は教室では全力で演技してたからなあ」 唯「部室では澪ちゃんに甘えっぱなしで…」 律「だからやめろって…///」 和「あらまあ」 唯「澪ちゃんにしつもーん!澪ちゃんが選ぶ一番かわいいりっちゃんは?」 澪「そうだな…。料理をする律、しのとありあの世話する律、何もしないでぼけっとする律…」 澪「どれもすごくかわいいがあえて言うなら」 澪「ベッドの中の律だな」 和「!? 澪…。あなた性格変わった…?」 唯「澪ちゃんはりっちゃんとお付き合いを始めてからとってもだんでーになったのです」 澪「フフフ…。ベッドの中の律のかわいさはこんなもんじゃないぞ?」 和(これダンディー…?) 律「やめてよ、澪…。恥ずかしい…///」 唯「み、澪ちゃん!ちょっとでいいから教えて?」 和(唯…。天然が変な方向に…) 澪「律、どうする?」 律「え…。み、澪がいいなら…、いい…///」 澪「それじゃ、少しだけ教えてやろう」 澪「私たちは寝る時は裸で寝てるんだが…」 唯「ちょっと待って、いきなりすごい話…」 和「澪…。あんた…」 2
https://w.atwiki.jp/83452/pages/5141.html
純「お昼ご飯、食べよ」 憂「うん」 相変わらず蟹女は、姦しい。 梓「疲れたー」 純「お疲れー」 中野梓も、やってきた。 いつのまにか私の机を囲んで昼食をとるのが当たり前になっていた。 純「いや、だから私は鯛焼きはしっぽから食べたいんだってば」 純「普通に頭から食べた方がウマイよ」 梓「そんなことないもん」 純「そんなことあるよ」 梓「憂はどう思う?」 純「憂も普通に頭から食べた方がウマイって思うでしょ?」 不毛な話題をこっちに振らないでほしい。 しかし、質問に答えなければこの二人がさらに やかましく騒ぎ立てるのは、目に見えているので私は少し考えて、こう答えた。 憂「お姉ちゃんは頭から食べるよ」 純「そ、そうきたか」 梓「唯先輩は参考にならないよ」 どういう意味だ。答え次第では……。 それから二人は再び生産性のない、実にたわいのない会話を繰り広げ始めた。 たけのこの里がどうとか、きのこの山がどうとか。 それを私はぼんやりと眺めながらご飯を食べる。 そして時々、会話に混じったり、テキトーに相槌を打ったりする。 そんなお昼休みが徐々に日常として、当たり前のものとして私は、ごく普通に受け入れていた。 正直、楽しいのか、愉快なのか、もしくは不愉快なのか 或いはもっと別の感情なのか、今の状態は自分にとってどうなのか、判断がつかなかった。 でも。 最近は、お昼休みの間、無意識に時計の針を目で追うことが多くなった気がする。 純「ねえねえ、憂の卵焼きちょうだい」 憂「……」 純「昨日、初めて憂が作った卵焼き食べたけど、うちのお母さんが作るのよりウマかったんだって」 梓「純、憂からもらいすぎ」 純「だってえ。本当に美味しかったんだもん」 確かにここのところ、私のお弁当の中身は何かしら鈴木純の胃に入ってる気がする。 本来私が作ったものは、お姉ちゃんに捧げるものであって鈴木純のエサではない。 純「あ、じゃあこのカニカマあげ……んっ!?」 大きく開いた口に卵焼きを突っ込んでやると、鈴木純は目を白黒させた。 純「ごっくん……うん、やっぱ憂の卵焼きは美味しい」 梓「純だけずるい」 そう言いつつ、なぜか私に訴えかけるかのような視線を送る。 いつかの黒猫が脳裏に浮かんだ。 憂「……食べる?」 梓「え?いいの?」 思いっきり「よこせ」って目で訴えていたくせに、中野梓はそんなことを言って顔を輝かせた。 梓「ありがとう」 小さな弁当箱に卵焼きを移してやると、中野梓は瞬く間に卵焼きを口に放り込んだ。 喉を大きな音にビックリした猫のように、中野梓は両目をパチクリさせて、喉を鳴らした。 本当に猫みたいだ。 梓「美味しい。すごく美味しいよ、憂」 純「でしょでしょ?」 鈴木純が得意げな顔をした。自分が作ったんだと勘違いしてないか。 梓「ていうか、純は最近ずっと憂からこんなにも美味しいおかずをもらってたなんて……ずるいっ」 純「梓ももらえばいいじゃん」 梓「そ、それは」 猫娘は、今度は遠慮がちに上目遣いで私を窺う。 なんでだろう。 お姉ちゃんに見つめられたわけでもないのに、中野梓の猫のように丸い目を見ていたら、顔が熱くなるような感覚を覚えた。 私は人見知りだ。 人と喋るのが苦手だ。 人と目を合わせるのも苦手だ。 人と面と向かって喋るなんて、考える前に勝手に身体が拒絶してしまう。 はっきりと原因は分からないけど、多分恥ずかしいから、人とコミュニケーションをとることができないのだと思う。 でも、今こうしていつものように、中野梓から目を逸らしたのはもっと別な理由な気がする。 憂「……ぃいよ」 中野梓が首を傾げた。私は息を吸い込んで、お腹に力を入れる。 憂「余裕があったら中野さんの分も、鈴木さんの分も作ってくる」 「「本当!?」」 中野梓と鈴木純が、聞き返してきたので、私は三回ぐらい首を縦に振った。 ……二人の母親がこれを見たらどんな表情をするんだろう。 梓「でも、本当にいいの?大変じゃない?」 純「そういやお姉ちゃんの分も作ってるんだっけ?」 憂「気にしなくていい」 どうしてかは自分でも分からなかったが、喉から出た声は妙につっけんどんになっていた。 しかし、二人はまるでそんなことを意に介した様子もなく、はしゃぎはじめた。 純「そういえば、もうすぐ中間テストじゃん。明後日から一緒に勉強しようよ」 梓「三人寄ればなんとやらだね。いいよね、憂?」 私が勝手に進んでいく流れに流されるまま頷いたのと、チャイムが鳴ったのは、ほとんど同時だった。 お昼休みが終わった。 あっという間に終わった。 梓「あー疲れた」 憂「あ、梓ちゃん」 純「お疲れ。はいイチゴオーレ 梓「ん、ありがと」 純「にしても今日も、世界史は退屈だったなあ」 憂「純ちゃん寝ちゃってたもんね」 梓「純は世界史の時はいつも寝てるよね」 純「う~、世界史ヤバいかも」 梓「前みたいに前日に泣きついてくるのはやめてよ」 憂「そういえば、前回のテストでは純ちゃん、梓ちゃんのノートを写させてもらったんだよね」 純「今回も、梓の力を借りなければいけないかもしれない」 梓「自分でなんとかしなさい」 純「おおー梓に裏切られてしまったよーうーいー」 憂「よしよし」 何か非常に気味の悪い夢を見ていた気がして、私はベッドに預けていた身体を起こした。 あずさちゃん。 じゅんちゃん。 ……ないない。そんな呼び方はナンセンスだ。 カニ女と猫娘。 鈴木純と中野梓。 鈴木さんと中野さん。 うん、やっぱりこれが一番、私にはしっくりくる。 さあ、さっさと起きてお姉ちゃんと私とプラス二人分、作ってしまおう。 憂「ふぅ……」 全員の分のお弁当の準備を終えた私は一息ついた。 準備完了。 「うーいー」 人間の耳にいい音には様々なものがあるらしいけど、もちろん私の耳に一番いいのはお姉ちゃんの声だった。 着ボイスにもしてある。 憂「どうしたの、お姉ちゃん?」 いつもならまだ安眠を貪っているはずの、お姉ちゃんが目をしょぼつかせて、リビングの扉の前で突っ立ていた。 起こしてしまったのだろうか? 憂「ごめん、起こしちゃった?」 唯「ううん、お腹がすいて目が覚めたんだ」 憂「お弁当のあまりものがあるよ。食べる?」 唯「食べる食べる」 嗚呼……お姉ちゃんってやっぱ天使なのかも。 唯「憂、最近少し変わったね」 卵焼きを頬張るお姉ちゃんの膨らむほっぺは、思わず突っつきたくなる愛らしさがあった。 憂「……」 唯「憂、聞いてる?」 憂「うん、聞いてるよ」 いけないいけない。 お姉ちゃんの可愛さに思考が提出しかけていた。 神の啓示にも等しいお姉ちゃんの言葉を聞くために、私は洗いものをしていた手を止める。 憂「それで何だっけ?」 唯「聞いてないじゃん……」 今度は怒ってほっぺを膨らませる。やばい。超カワイイ。 唯「だから。憂、少し変わったなあって思って」 憂「変わった?」 私が変わった? 何が? きっと疑問が顔に出てしまったのだろう。 お姉ちゃんは、私のような愚妹にも分かるように語りかける。 唯「前よりもずっと明るくなった気がするし、口数も増えたよね」 そう言われたところで自分ではよく分からなかった。 唯「それに……」 憂「それに?」 唯「あずにゃんや純ちゃんって娘のことも話すようになった」 思い返してみれば、どうだろう。 基本、私は誰と喋っている時でも聞き手に徹することがほとんどだった。 いや、最近だって私から積極的に話そうとすることなんて無かったはずだが。 唯「この前、私が聞いたこと覚えてる?」 憂「この前っていつ?」 唯「えと……一週間くらい前かな?」 ……思い出した。 憂「もしかしてお姉ちゃんが、私にどうしていつもより早く起きるの、って聞いてきた時のこと?」 唯「そう、それそれ!」 そういえば、その日は初めて鈴木純と中野梓の分のミニお弁当を作っていて、今日みたいにお姉ちゃんが、いつもより早めに起きてきたのだった。 唯「あの時の憂、嬉しそうに鈴木さんの分と中野さんの分を作ってるって言ったんだよ」 確かに私にはそのように答えた記憶はあったが、しかし、嬉しそうにしていた覚えはまるでなかった。 憂「そう、なんだ」 唯「うん、そうなんだよ」 お姉ちゃんの笑顔はいつだって私に力をくれた。今日も頑張ろう。そんな気持ちにさせてくれるのだ。 でも、今日はそれだけじゃなかった。 暗闇の中に灯る明かりのように、胸に温かな何かを感じる。 曖昧として判然としないそれは、不思議と心地の好いものだった。 唯「あとね、もう一つ変わったことがあるよ」 お姉ちゃんが、私が作った卵焼きを目の前に差し出す。 こ、これは……俗に言う、あーん! 私は思わずそれにかぶりついた。 唯「憂のご飯が前よりも、もっと、もっともっと美味しくなった」 確かに――口に広がった味は、前よりも遥かに美味な気がした。 …… 純「憂は今日、放課後時間ある?」 中間テストが終わって一週間が経った放課後。 憂「あんまり、遅くなるのはダメ。けれど、少しならいいよ」 純「久々にハンバーガー食べに行こっ」 久々も何も、まだ一回しか行ったことないはずでは? まあいいや。鈴木純は基本的に考えるよりも行動が先のタイプの人間だ。 と、いうのを最近私は分かりはじめてきた。 純「あ、ちなみに梓は今日は普通に部活だから」 憂「鈴木さんは、ジャズ研はいいの?」 純「……」 鈴木純は急に神妙な顔をしたかと思うと、私の顔をたっぷり三十秒は窺った。 純「まあ、今日は女二人で語り明かそうよ」 純「今日はなんと純ちゃんが奢ってあげたりしなかったりしちゃいます」 ガラス張りの店内に入ると、鈴木純は背後の私を振り返った。 つまり奢るのか、奢らないのかどっちだ。 私が財布を取り出すと、鈴木は私の手を慌てて取った。 純「ストーップ!だーかーら、私が奢ってあげるってば」 憂「そう」 純「あ、ただし四百円までね」 憂「吝嗇って言葉知ってる?」 純「りんしょく?知らないけど、どういう意味?」 憂「チーズバーガーとジンジャーエールでいいよ」 純「スルーするな」 席に着いてからはいつも通りだった。鈴木が一方的に話して、私が相槌を打つ。 純「でね、変な夢を見たんだ」 憂「うん」 純「なんか知らないけど、朝起きたら別の世界に飛んでってるって夢」 にしても、この女は相変わらず食べるのが、速い。そして喋るのも速い。 口の動きが異常なのだ。いつか愕関節症にならないか、人事だけど心配だった。 6