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『ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合~クロックタワーインフレイム~』 (これまでのあらすじ) ザ・キングオブトワイライト参加者、黒田武志とケルベロス・ミツコは 時計塔内部でラーメン探偵・真野を待ち伏せるが、黒田はラーメンを喰らいBAKUSUIした。 だが、ケルベロスミツコはその刹那にラーメン探偵・真野の攻略の糸口をつかんだのだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 下から感じる冷たいタイル床の感触と背中のリュックから受ける重荷を感じながら、 ぽぽ・光吾は、一週間前の出来事を思い出していた。 希望崎学園「黒樺寮」別名『物置寮』。 そこで発生した大量殺人事件のことを。 その時のことをポポはほとんど記憶していない。 憶えているのは恐ろしいほどまでの”暴力”が吹き荒れたことと彼の大切な 仲間や姉達が次々と虐げられて喰い散らされていったことだけだ。 生き残ったのは彼一人だった。仲間たちと「サヨナラ」の別れすらかわすことなく 唯一人、彼は取り残されたのだ。 だが彼は生まれ変わった。 姉達の魂を吸収・融合することで、ミツゴの魔人ケルベロスと化して。 融合後、その足で寮を出た彼は転校生を名乗った謎の人物の言うとおり、 本大会の渦中にいる。 彼の旅立ちを最後に物置寮に立ち寄る者などもう誰もいないだろう。 涙はない。無情となじるなかれ。 この世紀末の世では大量殺人など、余りにありふれた事件であるからだ。 今、彼は時計塔の中、床に張り付き一人の男を監視していた。彼のスタイルの一つ 手芸者の技能が生きている。今の彼と彼女たちは、探偵であり、手芸者であり、 料理人であり、園芸家であり、未来における数多ある魂たちに対する簒奪者であった。 ケルベロスは、彼とその姉の魂を共有することで常人の3倍のスキルを持つこと を可能としているのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 魔獣ケルベロスは三ツ頭を意味するにあらず他者の魂を喰らう性質そのものである。 「蜜子姉ちゃん、同じ料理人として見た感じ彼の実力はどうかな」 光吾は己の中にいる中華料理人の長女蜜子に語りかける。 「んーどうにも底が見えない相手だな。…ま『むちゃんこツヲイ』級と考えと きゃ間違いないだろ。」 相変わらず大ざっぱな姉だ。続いて次女の満子。科学的知識に富む園芸家で 知能指数も高い。メガネを押し上げながら(注:イメージです)こう分析する 「知能指数も高いわね。戦いの場となった地下のボイラー室、あの手狭な 部屋で戦うことで黒田武志の槍の性能を封じた。あと地の利も完璧。 ”配管工”としての自身のスキルをそこなら活かせると考えたのだわね。」 そして変身タイムは、能力発動から完了までコンマ1秒以下。 この意味わかるわね?と満子の促しに軽く光吾は首肯する。 コンマ1秒以下の間だけ…幾ら能力が高かろうとラーメンであろうと、その 刹那だけは無防備になるはず、ならば取るべきすべは決まっている。 全員で隙を作り、手芸者たる自分がその隙を突く。 ”針に糸を通す様な”作業、それをこなすのは手芸者たる自分の役割だろう。 彼は改めラーメン探偵を見やる。 今のラーメン探偵の姿を見れば、彼がどのような魔人能力を保有しているか 一目瞭然だった。彼の姿は常時の探偵ルックから一変していたのだから。 ゆったりとした青いオ-バ-オ-ル。 腰に差したペンチ。 赤い上着に同じく特徴的な赤い帽子。 そしてチョビひげ。 どこから見ても『配管工』の姿である。 改めて見、思わず唸る光吾。 あの姿を見て探偵の変装と見破れる人間はまずいないだろう。 手芸者視点から見ても完璧な変装といえた。 3人の精神が注視する中、ラーメン探偵にも動きがあった。 探偵は【M】とイニシャルされた帽子を正すと懐に手をやり、そこから アイテムを取り出したのだ。 その取り出したものを見て一同に衝撃が走る。 『キノコ(赤)』 「ッ~~~ツ」 焦る光吾。まさか齧る気か、そんでもって際限なく回復したりするのか、 ならばプランの練り直しが必要となる。だが、焦る光吾を尻眼にラーメン 探偵はソレを目線まで持ち上げると、検分しただけで再び懐に仕舞いこんだ。 ほっと息を― 「「今度は緑だとォォ」」 ―継ぐ暇もなく、2本目のキノコを取り出すラーメン探偵。 蜜子と満子が驚きの声をあげ、光吾は慌てて口を塞ぐ…実際は姉たちは 魂だけなので声が漏れることはなかったのだが、気分の問題だ。 こちらが本命か!?だが、探偵はソレを目線まで持ち上げ、検分しただけで 再び仕舞いこんだ。 「はぁ…次、紫色のでたらどうしましょう?。蜜子お姉様」 「まあ…それはもう『確定』ってことでいいだろ。ミツちゃん。お前も腹くくれ」 何が確定なんですか。どうにも相手のペースに嵌っている気がする、気を つけねば…そう警戒する光吾の目の前を絶妙なタイミングで ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつぅ(甲)と 何かが、通過した。 「?」 一瞬のことだが、彼は目でそれを追いかけてしまう。 そして視線を戻した時には、ラーメン探偵は忽然と姿を消していた。 ―視線誘導(ミスディレクション) ―悔やむ光吾。自らの迂闊さを呪う。 やはりあの男、監視に気が付いていたのだ。しかしなんというウカツ。こんな初歩的な手に ノコノコとひっかかるとは ノコノコと、ひっかかるとは。 「上だな、追うぞ」 蜜子が天上を見やり決然とした態度で断定した。 堅い床だ。流石に潜るわけにはいけないだろう。ならば行き先は必然、 この塔の上階、上となる。 姉の言葉に気を持ち直す光吾、本当にこういう時の姉ちゃんは頼りになる。 流石、姉弟の精神的柱だ。だが、実はこの時の蜜子は違ったのだ。 彼女は覚悟を決めた者の眼をしていた。 ラーメン探偵、彼が発したダイニング・メッセージの意味を正しく受け取ったが故に。 時計塔最上階。 幾つかの踊り場を駆けあがり、出た先そこは時計塔の大時計の裏側に位置する。 時計塔の大時計と言う主役を支える舞台裏の演出家である歯車たちは複雑に絡み合った その動きを止め、機を待っていた。 ケルベロス達はそこに足を踏み入れる。先陣は次女・満子。 冷静沈着さと高い防御能力を併せ持つ彼女はゆっくりと歩を進める。 「さて、どこにいらっしゃるのかしら」 いいつつも歩調は緩めない。さて、どこからくるラーメン探偵。 そして時刻は正午を指し、POPOPOと機械仕掛けの鳩が動き出す。 扉を開閉し前後運動を始める。 「Rassahai!!(「イラッシャイマセ、お待ちしてました」という意味の英語)」 そしてソレは鳩仕掛けの出入り口から現れた。影は一声発すると高く跳躍。 『空中』にそのまま着地し、彼らのほうにくるりと振り返った。 「ドーモ『お客サン』。ラーメン探偵です。」 (クロックタワーインフレイム後半へ続く) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「 Rassahai!! 」 手にオカモチを持ち、探偵ルック姿の男は空中に降り立つと礼儀正しく、 名乗りを上げた。 「ドーモ『お客サン』。ラーメン探偵です。真実を届けに来ました。」 「生憎ッ、間にあってますわ。」 トワイラル・ミツゴは相手の言葉を最後まで待つことはなかった。 猛獣注意! 相手の着地を見てとると次女・満子はメガネを光らせ(イメージです) 素早く鋏を投擲する。それは大きく真野を逸れ、あっさり失速する。 (借りるわよ光吾) だがそれは満子の科学的計算にもとずく絶妙なる投擲であった。 予め鋏には手芸者が使う特別製の糸が結びつけてあったのだ。 グイ。 そして彼女は空中にある何かを手繰りよせるように手を翻し 糸を引きよせる。手ごたえアリ。 束められ、空中に忽然と現れる黄金色に輝く糸。 !?糸、いやこれはラー麺だ。 同時に大きく揺らぐラーメン探偵。 ラーメン探偵、空中浮遊のタネはこれであった。 真野はコートより伸びる糸くずを超ごく細麺として空中に張り巡らし 貼りめぐらすことで、その表麺張力の力によって浮いていたのだ。 ミツコは自らの脚力に麺の弾力による反動をのせると力強く跳躍、 ラーメン探偵の位置まで一気に踊りであた。 手には肉斬り包丁。振るうのは当然、中華料理人の長女・蜜子だ。 ―斬撃!― だがいち早く麺を離脱していた真野にはその刃は届かなかった、 彼女の包丁は空を切り、足場の麺をぷつりと切断する。 交差する二人。 「 」 瞬間、ラーメン探偵は何か彼女に対して声を発した。 (「Gedokuする」か…) 蜜子はその言葉に答えることなく、唇をかみしめ― (「来るぞ。光吾!」「ハイ姉ちゃん」) 弟と切り替わった。 ミツコらとラーメン探偵は今互いに背を向け、自由落下している。 お互い攻撃出来ない状態。 この局面でラーメン探偵が地面到達までに能力発動を行う可能性は 満子の演算によれば実に96%に達していた。 光吾は、 、、、、 糸を操る。 最初に満子が投げた二つの鋏は、まだ生きている。特製の糸で 括りつけられたそれは今、頭上高く上がり、野ウサギを狙う猛禽類 のように死角からラーメン探偵の首筋を狙い急降下している。 まさに三姉弟の連携が可能にした必殺のブラインド・アタック。 だが、真野はここで彼らの思惑とはまるで逆の行動をとる。 カキーン 何か鋏が堅いものに当たり跳ねかえされる音が、あたりに響く。 「はっ?」 真野は“La Amen”を今度は極めてゆっくり展開したのだ。 思わず気の抜けた声を上げる光吾。そして彼は見た、そのラーメンを。 “La Amen”により彼の纏っていたコートが中途から大気に溶け込み、 ZZZZZZZZZZZZAAAAAAA... BBBBBBBAABBBBBBBBBAAABBBBBBBBBBB... ZZZZZZZZZZ ZZZZZZZZZZZZ.. ZZZ BBBAABBBBBBBAAA. ZZBBBAABBBBBBBBBBAAA// ”文字通り”文字と化し、彼の周りを取り巻いているのを。 彼の周りでは打ちだされた『英語』の文字が、力場を伴って浮き出し、 三次元立法魔法陣を構築していたのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 こいつラーメンに英語を練り込んでいたのか これが真野のラーメンがハイブリットと言われる所以の一つ。 まるで遠海を高速で泳ぐ黒マグロの集団じみたマクロの文字列。 これが超高速タイピング術によるショートカット―通称”英速”を実行するのだ。 「空中言語固定装置…まさか完成していたというの…」 化学、薬学などの知識に富んだ満子は茫然と真実の一端を口にする。 「なら気体、これならどうかしら」 満子はリュック内の噴出機を作動し、真野に対し農薬を吹きかける。 気化した薬品なら文字をすり抜け、届くという判断からだ。 しかも、農薬、もし相手が有機栽培なら致命的になりうる一撃だ。 「沸騰(イグニ)。」 だが、及ばない。 彼が英唱を組むと共に周りから凄まじい勢いで水蒸気が噴出し、彼女が散布した 農薬を彼女の元に押しかえす。なんという応用範囲の広さ。 速い、上手い、そしてなんか卑怯。それがラーメン3倍段(クレーム対象)だ。 「ンアー。」 自らの液を浴びて悶絶する満子。 水蒸気はそのまま濃霧と化し、ラーメン探偵と3人の姿を覆い隠していく。 ミツコは再び光吾に切り替わると、素早く後退し、壁を背後にした。 ラーメン探偵の英唱はまだ続いていたのだ。続け様に響く英唱。 ―来る。 つまり、それは略式ではない真野のラーメンの到来を意味していた。 ― 沸騰(イグニ)―― ―茹麺(ハルト)― ― 定義(ベースド)― ―深化(オプト)― ――展開(リリース)―――。 濃霧の中、光吾は一瞬の隙も見せまいと神経を尖らせる。 ― ― ― その時 ちゃららーらら♪ちゃらららららららー♪ 遠くから響く口笛の音が聞こえた。それは哀愁と胃袋を刺激する懐かしい笛の音だった。 ― ―とても ―――とても そして、気がつくと彼は 『キノコ入り味噌バターラーメン』を手に持っていた。 キノコ? アレこの感じ、どこかで 姉ちゃんたち?ドコ ―探偵、それは真実の配達人― どこかでそんな声が響いた。 ◆葬魔灯もしくは物置寮殺人事件◆ ― ―― ―――― ――――― それは不幸な偶発的出来事であった。 発端は希望崎学園に何処からか紛れこんだ『異物』。 満子が物置寮で栽培していた菜園にそれはごく自然に溶け込んでいた。 その菜園でいつものように野菜を調達した蜜子はラーメンの付け合わせ として野菜を炒め、自慢の一品を寮の人間たちにふるまった。 その『異物』はほとんどの人間にとって単なる軽微な毒だ。 不幸なのは、たまたま偶然”ソレ”に適合する人物がその中に一人だけ いたということだ。 それは100人に1人、1000人に1人と言うレベルの確率で。だけれども 効果は絶大で…彼はそしてそれを口にした瞬間。 『Grrrrrraaaaaaa――rrr!』 ――――― ―――― ――― ああ、そうなのか …彼は悟った。 何故、あれ程、武力に優れた姉ちゃんが無抵抗に殺されたのか 何故、あれ程、知略に富む姉さんが退くタイミングを喪ったのか 何故、忘れうるはずのない光景の中、自分の記憶がああも曖昧だったのかを その理由を。 自分が、必死に糸を振るっていた相手は一体誰だったのかを ラーメンが全てを思い出してくれた。 「そう、物置寮殺人事件、その犯人はこの僕だ。 魔獣化した僕が、皆を、姉さんを …殺したんだ。」 探偵は真実の配達人。 「うあああああああああああ」 彼は頭を抱え、膝をつく。光吾を打ちのめしたのは姉や仲間達への悔恨だけではない。 それは例えて言うなら一種の『恥かしさ』からであった。 自分は何故、全てを放棄してこの場にいるのか。その事実への”気付き”である。 掛け替えのない人達を喪ったら弔いくらいするべきでなかったか…。 そうでなくとも、探偵なら、らしくまずは真実の追及をするべきでなかったのか…。 しかし彼は転校生を名乗るあの女性の言葉を鵜呑みし、この大会に身を投げた。 彼女のあの時の言葉は酷くそう自分にとって都合がよかったのだ。 少し考えれば…立ち止まれば…判ったはずなのに。そのほんの少しが見えていなかった。 目の前の男はどうか。彼は、対戦相手に関わる未解決事件を看過することなく 放置され見向きもされない事件現場に足を運び、現場検証を行い そして遺留品や状況から1週間前の殺人事件の真相を導きだしたのだ。 そうして、彼はこの場に立っている。 世界を救うという善意を、誰かに犠牲の元、達しようとする自分と相対するために。 真実を届けるという自らの矜持と信念を持って 解毒用キノコラーメンというレシピ(回答)を携え、探偵職に携わる者として。 「………あああ」 無論、死んだ二人の姉は事実をしっていたのだ。それでも付いてきてくれた。 見守ってくれてたのだ。あの優しい殺人者達は。世界を敵に回す覚悟で 気がつくと彼はスープまで綺麗に飲みほしていた。空になった丼を眺めると その丼の底には2文字『別離』と文字が書かれていた。 はっと見やると、探偵は、先ほどのラーメンで抽出したのであろう禍々しい紫色 の瘴気を放つ極彩キノコを手に取っていた。 青ざめる光吾。そして叫ぶ。 「やめろ、止めてくれ、それがないと僕はねえちゃんを、ねえさんを、ねえさん達を」 維持できない。 だが、真野はその歎願などまるでなかったようにあっさりと瘴気の素を握りつぶす。 しゅうと音を立て浄化される瘴気。 「うわあぁぁぁぁぁ」 こいつはこいつはこいつは 光吾は、ありったけの怒りを哀しみを負の感情を右手に集中する。 硬化し伸びる手 魔獣ケルベロスは顕在化する前に潰された、だが身体に残った瘴気を集中すれば フェンリル級の力なら、まだ撃てる。そして一矢報いるのだ。 ワレラガタイガンヲサマタゲル、ラーメンヤドモニ 『Grrrrrraaaaaaa――rrr!』 その時!!!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ だが、何も起こらなかった。 光吾の腕が振り下ろされることも、真野が攻撃をよけることもなかった。 振りあげた右手は後ろから伸ばされた腕により固定され、そこから1mmも 動くことはなかったのだ。 「止めとけよ。」 そういうと”声と腕の主”黒田武志はもう一度同じセリフを繰り返した。 「え?」 「お前らの事情はよくわからんが、だいたい判った。だからもう止めとけよ。そういうの」 もういいからお前はちょっとねていろ。そういい黒田は槍を翻すとの光吾の水月を 石突きし強かに強打した。悶絶状態に入ったところを今度は足払い、綺麗に上下半転 させるとそのまま床に叩きつけた。頭をしたたかに打ち昏倒する光吾。 見事な早業。 黒田は、やれやれとため息をつくと今度は真野のほうに向きなおる。 ラーメンを喰らいBAKUSUIしていた黒田武志が何故ここに? 無論、寝ていた訳だから、目を覚まし起き上ってきたという理由以外の何もない。 正確には緑の甲羅っぽい何かが頭にぶつかり目を覚まさせられたからだったが。 爽やかな眼ざめとは言い難いかったのか、黒田は不機嫌そうに言葉を発する。 「はぁ…。ま、こりゃ、てめぇの勝ちだわな…。 俺は完全に伸びてたし、コイツも今のでおねんねだ。」 ボリボリと頭を搔く。 真野は飄々と肩を竦めた。 「てめぇのラーメン喰ってお前の目的とかヤリテーこととかは、だいたい伝わったしな 素直に応援してやってもいいという気持ちもある。 正直、オレはコイツやお前みたいに重たいもんせおっちゃいねぇからな。」 黒田は”コイツ”を見やってから真野に問いかける。 「ただ、コイツにオレは勝っちまったから、コイツは今からオレの舎弟って感じだな。 何でまあ背負っちまったからには筋は通さなきゃいけない。そういうことだ。判るか?」 判るか?と聞かれた真野は沈黙した。 そして一本指を立て、ワンモア(またはヒントください)のジェスチャをする。叫ぶ黒田。 「だ・か・ら『弟分』の敵はとらなきゃいけねえぇ。つーてんだよ。OK?オケー? あゆれでぃ? つーわけで最後に素手喧嘩で勝負だ。」 そして宣言通り自らの得物のグンニグルを投げ捨てると素手喧嘩の構えをとった。 地面に投げ出されたグンニグルが呆れたような声を上げる。 (「無茶苦茶だぞ。今のお前の説明」) (ああ、コイツは「少年の面倒はオレが見る。安心しろ」みたいなこといっているぞ。 どうせ聞こえてるんだろ。ラーメン探偵) 彼の槍の声が聞こえていたのか、ラーメン探偵は肩を竦めてその注釈に応えた。 何が何だかよくわからないが、黒田の言いたいことは何故か”だいたい”伝わった。 「一発殴らせろ。この薄情野郎。いいかイッセッセーノセーだぞ。」 (意訳すると「オレとコイツの想いをお前に託す、だからお前がそれに値するか度量を見せてみろ。友情!」といっている。) ガングニルが再び注釈を入れる。 真野は静かに爆笑した。 そして、ここでこの試合、初めて構えをとる。手にはオカモチはない。 ラーメン屋でなく探偵としてでもなく一人の男として、この気持ちのよい男と向かうために そう。男の勝負は最後は何時だってカラテなのだ。 「友情!」 「友情!!」 そして 勝ったのは真野だった。 ●ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合終了 「銃ニグル」 黒田武志 (敗退:盛大に吹っ飛ばされて左目に大アザ。他に外傷特になし) 「ケルベロス」ぽぽ・光悟 (敗退:心神喪失につきリタイア。なんかウザい兄貴がツイた) 「ラーメン探偵」真野事実 (勝利:ザ・キングオブトワイライト2回戦進出) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【登場人物名鑑】 黒田武志 (魔人) 魔槍ガングニルを操る若者。高い技量をもっていたが 地下室という閉鎖空間に誘い込まれ、充分に力をふるうことなく ラーメン探偵の前に敗れる。魔人同士の戦いは常に全力を発揮 できるとは限らない。極めてシビアなのだ。 ケルベロスミツコ(魔人) 謎の転校生の手により復活した三つ子の合成魔人(キメラ)。 通常の3倍のスキルを持ち、体内に異界の『異物』を抱き抱える。 魂の吸収を続ければ世界にとって極めて危険な「上客」となる と判断され、ラーメン探偵の手で世界より排除される。 真野事実 (魔人) ラーメン探偵。彼のラーメンは「衣」を纏い「食」を通じ「住」 を与える。衣食住を全て満たすような”何か”を目標としているようだ。 何やらこの世界に対する重要な事実を隠し持っているようなのだが… ??? (転校生) 女性。 詳しくは「クロックタワーインフレイム」エピローグを参照。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ このページのトップに戻る|トップページに戻る
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284 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/10/01(日) 01 27 14 ID DJgEmWri 地方巡業で杉浦美月とドルフィン早瀬が相部屋で泊まるホテルの一室。 狭い室内を占めるベッドを立ち上げて寄せて作ったスペースに置いた麻雀卓を囲むのは入居者2名とRIKKA、八島静香。 八島「間違って財布の中身を全部家に仕送りしてしまい、持ち合わせが無い早瀬を助けると思ってだな、半荘でもいいから、な。」 早瀬「あの…賭け事はちょっと……」 八島「ぁン!?人から借りようとか恵んでもらおうとか考えて無いよな。女なら実力で奪い取る、こうでなくちゃ。」 杉浦「早瀬さんがお金に困ってるのはいいですが、なんであたしとRIKKAさんが打たなきゃいけないんですか」 八島「ホラ、お前相部屋だろ、こういう時助けてやらなきゃいつ助けるんだよ。大体誰が得点計算すると思ってるんだ。RIKKAは丁度廊下にいたから声掛けただけだ。」 杉浦「あたし、助ける気なんてサラサラありませんよ。やるからには完膚なきまでに勝たせていただきます。風速は1で。」 八島「オッ、分かってるじゃねえか。じゃあ始めっか」 東一局 親杉浦 南早瀬 西RIKKA 北八島 杉浦「親の利点を生かすためにここは早上がりね…」 早瀬「ここは慎重に字牌から……」北を切る。 RIKKA「……」パシッ。リーチ棒を置く。 八島「いきなりリーチかよ!ダブリーって言いてえのか?」 コクリとうなづくRIKKA。 杉浦「いきなり読めないわ…」北。 早瀬「こういう時こそ平常心、平常心…」西。 パタン。RIKKAが牌を倒す。 杉浦「ダブルリーチ一発自風裏ドラ1、満貫8000点。」 八島「ロンくらい言えよ…」 早瀬「そんなぁ」 杉浦「これは充分予測可能なアタリだったわ。事故とか思わないで。自業自得よ。」 285 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/10/01(日) 01 28 11 ID DJgEmWri 東2局 親早瀬 早瀬「気を取り直して、と。(ダブ東が狙えるわ…ここは鳴きまくるしか!)」イーピン。 シュバッ!眼にも止まらない速度で早瀬の捨てたイーピンが消える。左を見ると順子が置かれている。 杉浦「RIKKAさん、チーですね。」うなづくRIKKA。 八島「やりづれえなあ。」 5順ほどしたところで 早瀬「(やった!東ツモったわ。ホンイツで2面待ちなんて最高!)りぃーち!」 ヒュッ、パタン。RIKKAが牌を倒す。 杉浦「RIKKAさんツモあがりでチャンタのみ。1000点ね。早瀬さん、リーチ棒分だけ丸損ね」 早瀬「やる気失くしそう……」 東3曲 親RIKKA 八島「RIKKAにばっかり勝たせるのもマズいな。お前ぇら、気合入れていくぞ!」 早瀬「このままじゃRIKKAさんに…でも八島さんや美月ちゃんみたいに徹底的にむしられことはきっと無い…よね?」 八島「あー、RIKKAは俺よりエグいぞ。」 早瀬「そんな…頑張らなくちゃ!」 焦る早瀬の気持ちとは別にゲームは淡々と進んでいき 八島「おう、それカンな。」 八島「それもカン。」 杉浦(ああ…八島さんの考えなしでドラがどんどん増えていく…これを上がったら、裏がついたらどうなるかしら…計算するだけで興奮するわ!) 早瀬「美月ちゃん、目が怖いよ」 八島「おおかたドラでも持ってるんだろうよ」 図星を突かれて顔を赤くする杉浦。 杉浦「そ、そんなこと!」 早瀬「そーなんだぁ。じゃあ美月ちゃんには気をつけないとね。」 八島「ローン。トイトイドラ2。杉浦ァ!何点だ?」 杉浦「満貫。8000点。見ればわかるでしょう。」 八島「わかんねえよ。」 せっかくの高得点を潰されて少しふてくされる杉浦。 早瀬「あー、勝ちが遠のく……」 八島「オゥ、RIKKA!お前の好きにはさせないぜぇ。」 RIKKA「……」 286 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/10/01(日) 01 28 57 ID DJgEmWri 東4局オーラス 親八島 八島「ま、軽く一つ上がれば俺の優勝、最下位はもう決定ってとこだな。わるいなー早瀬。終わったら近くの温泉でひとっ風呂浴びるか、杉浦。ところで風速いくつだった?」 杉浦「たしか10だったかと。」 早瀬「えっ、ウソ!1だよね。1000点100円だったよね?」 杉浦「そんなに安くちゃ早瀬さんもお金に困るだろうし、温泉だって満足に入れませんよねぇ、RIKKAさん?」 無言で頷くRIKKA。 八島「なあに、早瀬。勝てばいいんだよ。勝てば。」 杉浦「そうね。私にもまだチャンスがあるんですもの。良くて早瀬さんから現金、悪くて温泉ならねぇ。リスクなくしてリターンなしですよ。」 早瀬「み、みんなひどい……」 八島「泣き事言う暇あったら牌を積みな。」 早瀬「(美月ちゃん、怨むよ……って、これは、キ、キ、キター!国士無双まであと二つ!)そうね、やるしかないわね!かかってらっしゃい!」 杉浦「(配牌が悪いわ…八島さんに流して温泉ってとこね)そういう早瀬さんの虚勢を見ていたら負ける気がしないわ」 八島「(白と自風でトンズラ決めちゃる。)いーい覚悟だ。泣いても笑ってもこれで決めるぜ、スタート!」パンッ!八島の牌を切る音が部屋に響く。 パタン。 杉浦・八島・早瀬「へ?」 早瀬「イーマン、チューマン、イーピン……えっと」 杉浦「国士無双、役満。32000点。八島さんが最下位。ウマをつけて…ざっと3万5千円はRIKKAさんに払って下さい。」 八島「てめえこの忍者…積んだろ。」 RIKKA「……払え……」 八島「ツんだろッつってんだろうが!」 やおら立ち上がりRIKKAを睨みつける八島。 RIKKA「……払えなければ……」 八島「どうだってんだ!オラァ!」 つかみかかる八島。とっさに後方にジャンプ、三角飛びからの蹴りでカウンターを仕掛けるRIKKA。 八島「上等だぁ!タイマンやってやるよ!」 早瀬「きゃー!やめてやめて。私達の寝る所が無くなっちゃう!」 飛び散るホテルの備品、轟く器物破壊音。 バタン!部屋のドアが開けられる。 287 名前:名無しくん、、、好きです。。。[sage] 投稿日:2006/10/01(日) 01 29 27 ID DJgEmWri (`・(エ)・´)「こんなに暴れて、一体どういうつもりですか?」 RIKKA「……」 八島「え、と…」 (`・(エ)・´)「問答無用です。」 ゴスッ、ゴスッ。パイルドライバー2連発。 (`・(エ)・´)「社長にこってり搾られて貰いますからね。」 のびた八島とRIKKAを両脇に抱え、グリズリーは去っていった。 早瀬「これで、終わり…かな…」 杉浦「なんだったのかしらね…」 早瀬「じゃあ麻雀も無かった事に…」 杉浦「しないわ。」 早瀬「ええっ?」 杉浦「だってウマをつけたら私、あなたに5千円は払ってもらわないと。」 早瀬「その…私がいま持ち合わせが無いってことは…」 杉浦「もちろん知ってるわ。だから東京の本部に帰るまでの五日間、私の世話係をしてもらうわ。日給1000円でね。」 早瀬「そーんなー。」 杉浦「じゃ、最初の仕事よ。この部屋、一人で片付けといてね。私はお風呂入ってくるから。」 早瀬「ううっ。やっぱりみんなひどいよ……」
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SS1 SS2 SS3 SS4 SS1 それでは少し惚気話をしようか。 あれはいつのことだったか。 私と彼女が特に親密な付き合いを始めた頃のこと。 私と彼女が生涯を誓い合った後のこと。 そして、私と彼女の今だ。 □□□ 「何かしら?」 私が目の前、やや下方にある艶やかな黒髪を撫でると、彼女はそう問うた。 もちろん私が何をしたいか分かっていて、あしらっているだけだ。 「そんなところを触られたら、スイッチが入っちゃうわよ?」 特に熱が篭っている訳でもない、冷ややかな声音のまま、彼女はそう言う。 もちろん私はその行為を止めようとはしない。初めからスイッチを入れる気なのだから。 「あなた、さっき病院に行って栄養剤を注射されて帰ってきたばかりでしょう?」 特に私の身体を労わる風でもない、冷ややかな表情のまま、彼女はそう言う。 もちろん私がそんな程度で彼女を構うことを止めるはずもない。 病める時も、健やかなる時も、私は彼女と共に―― 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 ■■■ 「あなたは何がしたいの?」 私の顔の下で、彼女の漆黒の瞳が私を見上げる。 私は言葉は不要と、彼女の奥深くまで、探索を続ける。 「もう新しい発見なんてないでしょう?」 不安も、不満も感じさせない仕草で、彼女は私の両目をその小さな手で覆う。 私は目を封じられようと困ることはない。 彼女の身体の奥の奥、その一番奥の最深まで、道順は空で覚えている。 私が彼女に関する事柄を辞典に纏めるなら、2冊の辞典が完成されるだろう。 「あなたは何を望んでいるの?」 興味も、疑問も見えない彼女の声色。 私の答えは決まっている。例えその日に新たな決断を迫られようと。 「君と共にどこまでも」 「無理ね」 「どうして?」 「私は今度、オンラインの世界へ旅立つから。あなたにそんな時間はないでしょう?」 「人は3時間も寝られれば十分だそうだね」 彼女の鋭い眼差しが私を刺す。 私の微笑みがその視線を迎え入れる。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 □□□ オンラインの世界は秘境だった。 時に下水道へ潜り、時に密林へ赴き、時に城跡へ足を踏み入れる。 未知の怪物が襲いかかり、未知の罠が張り巡らされ、未知の人々と策を弄しあう。 手に持つ武器は易々と折れ砕け、敵は尽きず、辺りには死体が転がる。 秩序の維持にメンテナンスは欠かせず、何も出来ぬ己に歯噛みする。 そんな未踏の領域で、ある日、私の前を行く彼女は立ち止まり、振り返った。 ただひたすらに耐え、無限に耐え、彼女を追ってきた私に、彼女は問うた。 「あなた、なぜついてきたの?」 もちろん私が何と答えるか分かっていて、あしらっているだけだ。 「君が行くと言ったから」――私の答えに、 彼女は喜びの表情を見せるだろうか。感謝の言葉を返すだろうか。否。 「これをあげるわ」 艶やかな黒髪が揺れ、漆黒の瞳が煌き、冷ややかな声音で、彼女は宝箱を差し出す。 そうでなくてはいけない。そうでなければ彼女らしくもない。 「ありがとう」 私は彼女に微笑みかけ、感謝の言葉を返す。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 こうして私は爆発した。 SS2 それでは少し、彼女について話そうか。 □□□ 「ささやき - えいしょう - いのり - ねんじろ!」 彼女は今日もまた一人、それほど親しいわけでもない人間を絶望の海へ沈めている。 そんな彼女は可愛らしい。 「奇襲 - 首切り - 灰 - ロスト!」 彼女は今日もまた一人、すっかり打ち解けたと思い上がった人間を奈落の底へ放っている。 そんな彼女は美しい。 「君は相変わらず厳しいね」 私は笑顔でそう告げる。 彼女は初対面の者にも、慣れ親しんだ者にも、等しく容赦しない。 物事は段階を踏んで――そんな理屈は通らない。 いわば、レベル1からレベル2になるのが特に厳しいのだ。 極めた先に安泰あり――そんな言葉も通じない。 いわば、レベル100でも一瞬で全てが灰になるのだ。 「あなたは優しくして欲しいのかしら?」 関心も無さそうに彼女は問うた。 それも大変魅力的だけど、と、私は笑顔でかぶりを振る。 平穏なんて、君と共にあるこの緊張には比べるべくもない。 最初からクライマックス――そして最後までクライマックス。 平らかな時など、死んだ後に全て回してしまえばよい。 君といる時に胸高鳴らせず、いつこの胸を鳴らせというのか。 存分に蹂躙してくれて結構。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 ■■■ 「エナジードレイン!」 彼女は今日もまた一人、それほど親しいわけでもない人間の苦労を水泡に帰している。 そんな彼女は輝かしい。 「壁の中に入ってしまった!」 彼女は今日もまた一人、すっかり打ち解けたと思い上がった人間の努力を灰燼に帰している。 そんな彼女は神々しい。 「君は相変わらず人の努力を踏みにじるね」 私は笑顔でそう告げる。 彼女は積み重ねたものを崩すのが好きだ。 どこまでもどこまでも先へ進んだ者を、一瞬で己の足元へ引き戻すことを喜びとする。 彼女を前にしたら、どのような努力も、研鑽も、決して完成を見ることはない。 「あなたはゴールへ到達したいのかしら?」 意味も無さそうに彼女は問うた。 それも素敵な事だけど、と、私は笑顔でかぶりを振る。 達成感なんて、君を追い続けるこの渇望には及ぶべくもない。 完成なし――故に完了なし。 安らかなる時など、死んだ後に全て追いやってしまえばよい。 君といる時に足を動かさず、いつこの足を働かせればよいというのか。 登る山の頂など見えなくて結構。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 □□□ 彼女はいつでも誰にでも厳しい。 彼女はどこまでも無慈悲だ。 彼女について、おおまかにはこれだけ知っていればよいだろう。 これ以上詳しく話そうとしたら、千夜一夜じゃ収まらない。 だがもうひとつ、彼女について忘れてはならないことがある。 「これをあげるわ」 「この宝箱は開けても大丈夫なのかな?」 「95%の確率で何も起こらないわ」 「本当に開けても何も起こらないかな?」 「ええ、もう一度言うわ。95%の確率で何も起こらない」 「それじゃあ開けさせてもらうよ。ありがとう」 彼女はとても嘘吐きだ。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 こうして私は爆発した。 SS3 それでは少し、自分語りでもしようか。 □□□ 「あなたは何で諦めないの?」 その冷たい瞳で私を見据えながら、彼女は問うた。 何度墓石の下へ送り込まれても、 どこまでも迷宮をさまよい歩かされても、 いつまでも暗闇の中を引きずり回されても、 どれほど大切なものを捨てられても、 どれだけ積み重ねた努力をふいにされても、 行き着く先はいつもいしのなかだとしても、 私は彼女を追うことを止めようとはしない。 「私は君を信じているからね」 「私の何を信じられるというのかしら」 「君は私を他の誰よりも酷い目に遭わせてくれると、信じているからね」 私は微笑む。 彼女はその冷たい瞳で私を見据える。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 ■■■ 「あなたは厳しい女が好みなのかしら?」 その凍えるような声音で、彼女は問うた。 決してそんなことはない。 私に優しく接してくれる人と、これまでに多く出会ってきた。 そして、その人達もやはりとても魅力的だった。 あるいは多彩で、あるいは多芸で、 あるいは饒舌で、あるいは親切で、 そういった優しい人達によって、私は育まれてきた。 そういった優しい人達が、私は好きだ。 ただ…… 「そういった人達よりも、不意に訪れるいしのなかの方が魅力的だというだけさ」 私は微笑む。 彼女はその凍えるような声音で応える。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 □□□ 「あなたは結局、何が好きなのかしら?」 その凍てつくような表情で、彼女は問うた。 もちろん、私が何と答えるかは分かりきっているだろう。ただのあしらいだ。 私の手元には既にひとつの宝箱。 彼女からのプレゼントだ。 これを開錠する前に、言うべきことを言っておこう。 私は何が好きなのか。 簡単な話だ。 つまり私は、 こういう風にプレゼントを渡してくれる―― そして、その時にそんな表情を私に向けてくれる―― 「君が好きなんだよ」 私は微笑む。 彼女はその凍てつくような表情を私に返す。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 こうして私は爆発した。 SS4 「知っているかしら?」 「何をかな?」 長い、長いウェディングロードを歩き、その果てに―― 深い、深いヴァージンロードを歩み、その深奥に―― 誓いの場に立つ彼女が、 同じく誓いの場に立つ私に向けて問うた。 「知りて行わざるは、ただ是れ未だ知らざるなり」 「陽明学だったかな?」 純白のヴェールの下で、彼女の冷たい瞳が煌く。 彼女はウェディングドレスの裾を踏まぬように、ゆっくりとこちらへ向き直った。 「あなたは馬鹿ね」 「知っているさ」 彼女と私と、二人の、お決まりのやりとり。 彼女はお決まりのように、冷ややかな表情を浮かべる。 「知っているならなぜ繰り返すのかしら?」 爆発は日常茶飯事で、 墓石の下へ蹴り込まれ、 暗闇の中へ押し込められ、 先の分からぬ迷路で戸惑い、 最後にはいしのなかへと至る。 もう何度繰り返したことだろう。 だがそれは学ばないからじゃない。 己の馬鹿さを知らないからじゃない。 むしろ、しっかりと、知っているから―― 「君が笑ってくれることを知っているからさ」 彼女はその暴虐を行うとき、とても楽しそうに笑う。 厳しく、冷たく、凍えるような、雪を頂く峻嶺のような笑顔を。 彼女は他の誰よりも私に対してその暴虐を振るう。 私は他の誰よりも彼女を笑顔にすることができる。 君の笑顔を見られるのなら、私は馬鹿でかまわない。 「いいのかしら?」 「いいんだよ」 白く輝くウェディングドレスの中、 彼女の艶めく黒髪が揺れ、 彼女の漆黒の瞳が煌き、 彼女は凍てつくような――笑顔を浮かべる。 私は彼女と共にいる限り、何事にも、何者にも、負けはしない。 なぜならば、 私の愛する勝利の女神は、 そのサディスティックな微笑を、 常に私へ向けるのだから。 「病めるときも、健やかなるときも、 悲しみのときも、喜びのときも、貧しいときも、富めるときも、 あなたを愛し、あなたを敬い、あなたを慰め、あなたを助け、 この命ある限り、あなたの笑顔を護ることを誓います」 「病めるときも、健やかなるときも、 悲しみのときも、喜びのときも、貧しいときも、富めるときも、 あなたを爆破し、毒を盛り、墓石の下へ送り、いしのなかへ届け、 この命ある限り、あなたに波乱を与えることを誓うわ」 ありがとう 大魔導師リィ 私は そんな あなたが 大好きだ! 「馬鹿」 こうして私達は結ばれた。 これにて私の語らいは終幕と致しましょう。 それでは、ここにお集まりの皆々様、 どうか、私と彼女との末永き幸福の前途へ、その真心からの祝福を――
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AA描きがSS形式で幻想入り 動画リンク コメント・レビュー AA描きがSS形式で幻想入り 574人目の幻想入り 作者 謎の使者 ◆ARX7.F4gks(魔理しゃもの人) ひとこと 基本SS、時々AAという形式で細々とやる予定です。 主人公 主人公である魔理しゃもは『異世界人』という設定です。 よって、主人公が知っている『東方Project』は 実際の東方Projectと大きく異なっている為、 主人公の知識はかなりあべこべな事になってます。 能力など 能力は第二話で明かす予定。 幻想入りの経緯など詳しい設定は第二章になってから。 動画リンク 新作 一話 予告編 コメント・レビュー 何かこのページが609人目にも重複してて吹いたwww どうやったら削除できるんだろう? -- (謎の使者) 2008-06-05 03 21 50 更新遅れてスイマセン; -- (謎の使者) 2008-06-29 13 19 49 既にまとめの方には入れてありますが、 作者のHDDがクラッシュした為に 制作途上だった動画、画像、そしてネタの全てが紛失しました。 この機会にネタをもう一度練り直してから 改めて挑もうと思います。 -- (謎の使者) 2009-01-23 21 27 07 名前 コメント すべてのコメントを見る ※レビューについては、こちらもご覧下さい。
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西住まほ 逸見エリカ 赤星小梅(水没子・溺田さん) コメント [部分編集] 西住まほ ふたなり秋山優花里×西住まほ×オレンジペコ×ダージリン1-219 ふたなり秋山優花里×逸見エリカ&西住まほ、犬×逸見エリカ1-200] 「ご当地名物は!」前編 ふたなり秋山優花里×西住まほ1-573 「ご当地名物は!」後編 ふたなり秋山優花里×西住まほ1-594 ふたなり西住まほ×逸見エリカ1-622 ふたなり秋山優花里×西住まほ2-1 西住まほ×逸見エリカ百合2-9 ふたなり西住まほ×逸見エリカ2-43 西住みほ×ふたなり西住まほ2-75 ふたなり西住まほ×逸見エリカ2-108 ふたなり西住まほ×逸見エリカ×西住みほ2-124 ふたなり逸見エリカ×西住まほ3-26 「祝!wiki作成感謝編!男子西住みほその1」男性化西住みほ×西住まほ3-168 「今回はみほまほ作戦です!みほ誕生日編」 ふたなり秋山優花里×西住みほ×西住まほ3-535 非エロ 小ネタ [部分編集] 逸見エリカ ふたなり秋山優花里×逸見エリカ&西住まほ、犬×逸見エリカ1-200 ふたなり西住まほ×逸見エリカ1-622 西住まほ×逸見エリカ百合2-9 ふたなり西住まほ×逸見エリカ2-43 ふたなり西住まほ×逸見エリカ2-108 ふたなり西住まほ×逸見エリカ×西住みほ2-124 ふたなり逸見エリカ×西住まほ3-26 男性化西住まほ×逸見エリカ3-156 非エロ 小ネタ [部分編集] 赤星小梅(水没子・溺田さん) ふたなり秋山優花里×赤星小梅×ケイ1-467 非エロ 小ネタ コメント 最新の10コメントを表示しています。 名前 コメント すべてのコメントを見る リンク・タグミス報告、要望などはWiki要望・報告掲示板に
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第一回戦:試合場【美術館】 このページではダンゲロスSS3第一回戦、美術館の試合SSを公開します。 ここは、得票数がもっとも多いSSが勝者となる、誰が一番面白いお話を書けるか競いあうインターネット上のゲームを行なっている会場です。 試合SS このページを訪れた方は、誰でもご自由に以下のSS(ショートストーリー)を読んでいってください。 それぞれのSSを読み比べて、より面白いと思ったお話に投票しましょう! 面白いと判断する基準はなんでも構いません。貴方が面白いと思ったお話に投票しましょう。 貴方の投票がゲームの勝者を決める! 【投票結果】を見る ※投票は終了しました 試合SS 引用する幕間SS 文字数 第一回戦【美術館】SSその1 なし 29,693文字 第一回戦【美術館】SSその2 なし 19,303文字 第一回戦【美術館】SSその3 なし 8,142文字 試合場・選手情報一覧(選手名50音順 試合SSの順番とは無関係) 試合場 キャラクター名 特殊能力名 美術館 雨竜院雨弓 睫毛の虹 黄樺地 セニオ イエロゥ・シャロゥ(黄色の浅瀬) 姫将軍 ハレル & 参謀喋刀 アメちゃん+98 刀語 (かたながたり)
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萌えスレ(二次SS) - (2011/03/01 (火) 03 47 06) のソース 05/06/22~06/01/14 【二次創作】TRPG系萌えスレッド【好みキャラ】 ログ 本スレ
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あんこうチーム カメさんチーム(生徒会チーム) アヒルさんチーム(バレー部チーム) カバさんチーム(歴女チーム) ウサギさんチーム(1年生チーム) カモさんチーム(風紀委員チーム) レオポンさんチーム(自動車部チーム) アリクイさんチーム(ネット戦車ゲームチーム) コメント [部分編集] あんこうチーム 西住みほ,五十鈴華,秋山優花里(グデーリアン),武部沙織,冷泉麻子 秋山優花里×西住みほ1-36百合 エルヴィン×秋山優花里(グデーリアン)1-54百合 冷泉麻子×園みどり子1-94百合 秋山優花里ふたなりオナニー1-162 ふたなり秋山優花里×西住みほ1-170 ふたなり秋山優花里×逸見エリカ&西住まほ、犬×逸見エリカ1-200 ふたなり秋山優花里×西住まほ×オレンジペコ×ダージリン1-219 「落日のバレー部」ふたなり秋山優花里×河西忍×近藤妙子×佐々木あけび1-394 「落日のバレー部 エピローグ」磯辺典子1-424 ふたなり秋山優花里×赤星小梅×ケイ1-467 「カマとハンマー」ふたなり秋山優花里×ノンナ1-506 「ダスヴィダーニァ」ふたなり秋山優花里×カチューシャ1-525 「ご当地名物は!」前編 ふたなり秋山優花里×西住まほ1-573 「ご当地名物は!」後編 ふたなり秋山優花里×西住まほ1-594 ふたなり西住まほ×逸見エリカ1-622 ふたなり秋山優花里×西住まほ2-1 小ネタ:ふたなり秋山優花里×西住みほ2-28 「ソドムとゴモラ」冷泉麻子×ふたなり園みどり子(そど子)2-62 「それが私達のコスプレ道です(前編)」ふたなり秋山優花里×西住みほ2-67 西住みほ×ふたなり西住まほ2-75 「ソドムとゴモラ」武部沙織×ふたなり園みどり子(そど子)×後藤モヨ子(ゴモヨ)五十鈴華×金春希美(パゾ美)2-86 「それが私達のコスプレ道です(後編)」ふたなり秋山優花里×西住まほ2-95 「雪の進軍」ふたなり秋山優花里&エルヴィンvsニーナ&アリーナ(プラウダ編その一)2-116 ふたなり西住まほ×逸見エリカ×西住みほ2-124 ふたなり西住みほ×生徒会×あんこうチーム2-141 「雪の進軍」ふたなり秋山優花里&エルヴィンvsニーナ&アリーナ(プラウダ編そのニ)2-151 生徒会制裁編2-161 生徒会制裁編2-188 生徒会制裁編2-218 生徒会制裁完結編2-228 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」(前編)ふたなり秋山優花里・五十鈴華・新三郎vsナオミ2-243 生徒会制裁完結編おまけふたなり秋山優花里×武部沙織2-253 生徒会制裁完結編五十鈴華&新三郎×ふたなり園みどり子2-293 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」(その2)ふたなり秋山優花里・五十鈴華・新三郎vsナオミ2-307 ふたなり西住みほ×秋山優花里2-357 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」(その3) 暗黒あんこう&ダーク新三郎vsナオミ2-375 ふたなり秋山優花里×ダージリン2-395 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」(その4) ふたなり秋山優花里×冷泉麻子2-426 「今回はゆかまこ作戦です!その1お風呂編」 ふたなり秋山優花里×冷泉麻子3-52 武部沙織×ふたなり秋山優花里×冷泉麻子3-91 「今回はゆかまこ作戦です!その2 さおりん誕生日編」 ふたなり秋山優花里×冷泉麻子×武部沙織3-132 男性化西住まほ×逸見エリカ3-156 「祝!wiki作成感謝編!男子西住みほその1」男性化西住みほ×西住まほ3-168 「祝!wiki作成感謝編!男子西住みほその2」男性化西住みほ×武部沙織3-235 wiki作成お礼SS 秋山優花里×男二人 少し暴力あり 夢オチ3-257 「祝!wiki作成感謝編!男子西住みほその3」男性化西住みほ×蝶野亜美3-315 「今回はゆかまこ作戦です!その3 麻子誕生日編」 ふたなり秋山優花里×冷泉麻子×武部沙織×五十鈴華3-370 「祝!wiki作成感謝編!男子西住みほその4」男性化西住みほ×ダージリン3-463 「今回はみほまほ作戦です!みほ誕生日編」 ふたなり秋山優花里×西住みほ×西住まほ3-535 「祝!wiki作成感謝編!男子西住みほ番外編 私はちゃんとモテるもん!」武部沙織×武部磯三(さおりん父) 3-584 「優花里とみほのただれた性生活 前編」ふたなり秋山優花里×西住みほ4-4 「今回はゆかまこ作戦です!ダーク華さん誕生日の前編」 武部沙織×河嶋桃 冷泉麻子×ふたなり秋山優花里4-17 「今回はゆかまこ作戦です!ダーク華さん誕生日の後編」 4-44 非エロ 小ネタ 小ネタ:ガルパン娘のオナニーを想像してみた3-593 [部分編集] カメさんチーム(生徒会チーム) 角谷杏,小山柚子,河嶋桃 ふたなり西住みほ×生徒会×あんこうチーム2-141 生徒会制裁編2-161 生徒会制裁編2-188 生徒会制裁編2-218 生徒会制裁完結編2-228 「今回はゆかまこ作戦です!ダーク華さん誕生日の前編」 武部沙織×河嶋桃 冷泉麻子×ふたなり秋山優花里4-17 「今回はゆかまこ作戦です!ダーク華さん誕生日の後編」 4-44 非エロ 小ネタ [部分編集] アヒルさんチーム(バレー部チーム) 磯辺典子,河西忍,近藤妙子,佐々木あけび 近藤妙子1-316ショタ 4P 「落日のバレー部」ふたなり秋山優花里×河西忍×近藤妙子×佐々木あけび1-394 「落日のバレー部 エピローグ」磯辺典子1-424 ふたなり磯辺典子自慰3-474 ふたなり磯辺典子×佐々木あけび3-503 ふたなり磯辺典子×佐々木あけび3-523 ふたなり磯辺典子×佐々木あけび3-555 ふたなり磯辺典子×河西忍3-570 ふたなり磯辺典子×近藤妙子3-604 非エロ 小ネタ [部分編集] カバさんチーム(歴女チーム) カエサル(鈴木貴子)/エルヴィン(松本里子)/左衛門佐(杉山清美)/おりょう(野上武子) エルヴィン×秋山優花里(グデーリアン)1-54百合 「雪の進軍」ふたなり秋山優花里&エルヴィンvsニーナ&アリーナ(プラウダ編その一)2-116 「雪の進軍」ふたなり秋山優花里&エルヴィンvsニーナ&アリーナ(プラウダ編そのニ)2-151 ふたなりゆかりん歴女・ダージリン導入部2-345 ふたなりカエサル×ふたなりカルパッチョ3-185 カエサル×ふたなりカルパッチョ3-244 ふたなりカルパッチョ×カエサル3-424 非エロ 小ネタ [部分編集] ウサギさんチーム(1年生チーム) 澤梓,山郷あゆみ,丸山紗希,阪口桂利奈,宇津木優季,大野あや 生徒会制裁編2-161 宇律木優季1年生売春ネタ2-322 非エロ 小ネタ [部分編集] カモさんチーム(風紀委員チーム) そど子(園みどり子),ゴモヨ(後藤モヨ子),パゾ美(金春希美) 冷泉麻子×園みどり子1-94百合 「ソドムとゴモラ」冷泉麻子×ふたなり園みどり子(そど子)2-62 「ソドムとゴモラ」武部沙織×ふたなり園みどり子(そど子)×後藤モヨ子(ゴモヨ)五十鈴華×金春希美(パゾ美)2-86 生徒会制裁編2-161 生徒会制裁編2-188 生徒会制裁編2-218 生徒会制裁完結編2-228 生徒会制裁完結編五十鈴華&新三郎×ふたなり園みどり子2-293 「今回はゆかまこ作戦です!ダーク華さん誕生日の後編」 4-44 非エロ 小ネタ [部分編集] レオポンさんチーム(自動車部チーム) ナカジマ(中嶋悟子)・スズキ・ホシノ・ツチヤ 非エロ 小ネタ [部分編集] アリクイさんチーム(ネット戦車ゲームチーム) ねこにゃー(猫田)/ももがー/ぴよたん ねこにゃー(猫田)2-132 非エロ 小ネタ [部分編集] コメント 最新の10コメントを表示しています。 名前 コメント すべてのコメントを見る リンク・タグミス報告、要望などはWiki要望・報告掲示板に
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電波っ子那由他と我が隊長石田咲良 登場人物【順不同・敬称略】 久遠寺 那由他: 石田咲良への親愛だけを持ってこの世界に飛び込んだ御存知ナニワの駄猫文族。 今回のゲームのため入国後1ヶ月で28マイル貯め、ほとんど全部咲良につぎ込んだというホントに駄目な猫。 石田咲良を我が隊長と呼ぶが、本人の前では使えないへたれ。 今回もいろいろとやらかす。 どうやらプロフィールに書いてあることは謙遜ではなくホントだったらしい。 守上藤丸: 御存知ナニワの超美人摂政(サターン藩王推奨呼称)、ラブコメブラッド、微笑む摂政などの異名を取る偉い人。 今回は心細いと那由他に懇願されてついてくることに。 本当は挨拶だけして引っ込む予定だったとか。 最後までいろいろと大変な気苦労を掛けたようですいません。 大阪万博: 頂点のレムーリア、ゲームGPO劇中劇のシーパレードマーチに出てくる美形青年。 エロリストの異名を取るだけあって男も女も口説く。 彼の招聘を熱心に指示した守上摂政を気に入っているらしく、度々彼を振り回している。 だがその軽薄な言動と裏腹に繊細で真摯な心根を持つらしく、ナニワ国民も何度も救われている。 今回わかばの癖に天領に乗り込んだ那由他を助けるためだけに出現。 実にかっこよく去っていった。 あんたはん、ほんまにエエ男や・・・。 石田 咲良: 言わずと知れたGPO白のヒーロー。 那由他のあこがれの人である。 ちなみに今回召喚されたのはゲーム版の石田咲良で、あの虚弱な咲良、後のターニとなる谷口やサーラの記憶は持っていない。 冬の青森で幻獣と戦っていることから時間設定も白の章のものらしい。 性格がきつい方、という芝村氏の言葉通り、那由他は1RでKOされることに・・・。 久遠寺 明宗: 那由他の描く物語にのみ現れる。 那由他付きの猫士として、故郷を出奔した那由他を追ってきた。 猫士と名乗ってはいるが、那由他を見守るだけで具体的には何もしないという思うさま怠惰な黒猫。 詳細不承。 /*/ 2008年1月11日。 前年末に発表された小笠原放棄決定より1ヶ月足らず、場所を移しての小笠原ゲーム、いや、天領ゲームが再開された。 まだ年も明けて間もないこの日、その天領に早速二人のナニワアームズ商藩国民がやってきている。 一人は灰白の髪に色鮮やかな長い布を巻き付けた守上藤丸摂政。 そして一張羅のイェロージャンパーに身を包んだ同国の駆け出し文族、久遠寺 那由他特別飛行士。 ニューワールドに住む者にとって、名前は聞いたことがあっても未だ謎の多い天領。 二人はその中にある春の園といわれる公園区画でぼんやり立っている。 一般には天領には何でもある、とまことしやかに言われているが、春の公園がそのままあるとまでは思ってなかったらしい。 暖かな日差しが降り注ぐ中、花壇に咲き乱れる色とりどりの花の甘い匂い、のどかに鳴き交わす小鳥のさえずり、そんなものが柔らかな風と共に漂ってくる。 鼻がむずむずするな。花粉症が再発しなきゃ良いけど。 「あー・・・いいなぁ。ここー・・・。 昼寝したい・・・」 守上は早くも環境に適応したのか、春の日差しの中でのんびりと言った。 常日頃激務に追われる摂政のこと、こういった場所に来る機会は実は少ない。 一人では心細い、という那由他に懇願されてついてきたのだが、思わぬ休養になりそう、と守上は少しだけ期待していた。 実のところその期待はものの見事に裏切られるのだが。 まあそれも彼の運命ってヤツだろう。 「我が隊長はいずこへおいででしょう・・・」 対照的に落ち着かなそうにクーラーボックス抱えてきょろきょろしているのが那由他。 勢いだけで故郷を飛び出し、ナニワアームズ商藩国に入国してより早1ヶ月、この日のために朝夜の別無く闘争を重ねてきた。 無理もないかも知れなかった。 僕は何時だって一番近くでその様子を見てきたから良く知っている。 そんな二人をみつめる黒い影。 「ふーに」【ありゃまぁ、迷子じゃあるまいしきょろきょろしちゃって】 二人に見付からないよう藪の中に身を潜める黒い毛皮の猫、那由他の相棒である猫士の明宗。 つまりは僕だ。 故郷を飛び出した那由他に続いてナニワに現れ、以来彼女を見守り続けている。 見守るだけで具体的には何もしないことにしてる。 それについてはまあ、そのうちに話す機会もあるかも知れない。 今日は那由他が始めて天領ゲームをやるということで、心配というか見物がてら様子を見に来たわけだ。 「なご」【お、きたきた。さて、那由他は上手くご挨拶できるかな?】 一人呟きながら次の観察ポイントへと黒いシャクトリムシのように匍匐移動する僕。 我ながらしなやかなこの動き。 青々とした芝生に覆われた公園の中に通された、石畳の歩道。 その向こうから青い髪の少女が珍しそうにあちこち見回しながら歩いてくる。 青森の第108警護師団第1小隊、通称ヒロイン天国小隊長、石田 咲良。 策源地北海道と本州の分断を図る幻獣の強襲により大打撃を受けた青森防衛諸隊のテコ入れとして学兵の小隊に任官された最新最高性能の 指揮官型成体クローン。 紅い瞳のブルーヘクサ。 別の人生では数々の悲劇に見舞われたヒーロー。 そして那由他が憧れ、心の支えとし、共和国への亡命を決意させ、日々の闘争の原動力となった娘。 遂に間近に捉えたその姿に、那由他は一度ぶるっと身体と尻尾を震わせるとクーラーボックスを抱えてがちがちに緊張したまま歩き出した。 良いだけ緊張してるな。あれは。 「荷物、良かったら持つよ?」 「いえ、これには大事な物が」 何が入っているのか(というか僕は中身を知っているが)、大事そうに大きなクーラーボックスを抱えている那由他に守上が声を掛けるが、那由他は小さく頭を振って前を、咲良だけを見据えている。 足を止めてさえずる小鳥の姿を探しているらしい咲良に、静かに歩み寄る那由他。大丈夫かな~という感じで守上が後に続く。 驚かさないように、丁寧な挨拶を、簡潔に。 自分に言い聞かせながら深呼吸すると、那由他はともすれば震えがちな声を抑えて切り出した。 「初めまして、石田 咲良さん。 おいで頂いてとても嬉しいです。 ナニワアームズ商藩国から参りました文族猫の久遠寺 那由他と申します」 そういって勢いよく頭を下げる那由他。 頭を下げていたので守上があっちゃー、という顔をしていたのについぞ気が付かなかった。 ほんとにあっちゃー、だ。思わず僕も前足で顔を押さえてしまった。 那由他の勢いに仕方なく守上も外交官風に優雅に礼をする。 「守上藤丸です、はじめまして」 「なにその変な所属。 もっと常識で、ものをしゃべって」 小鳥のさえずりがやみ、二人の方に向き直った咲良は腰に手を当てると苛烈で冷然としたな口調でそう言った。 那由他にとっては巨人の一撃のようなその言葉。 一気に心拍数が上がり、尻尾がまるで棒のようになる。 何か答えなくては。 所属、ナニワでは、確か・・・。 それだけが頭の中を駈け巡っている。 いわゆるぐるぐる、ってやつだな。なんのために他人のゲームログを読みあさって予行演習までしたんだか。 「はっ、実際は戦闘員なのですが今は非戦闘時と言うことで主に文章を書いて食べております」 あーあ、言っちゃった。第5世界人の咲良にいきなりそれはないだろ・・・。 直立不動の姿勢で答える那由他に咲良の紅い瞳が不審そうに細められた。 容赦のない詰問は続く。 「どこの部隊の所属?」 「特別飛行隊という呼称の、I=D部隊であります。I=Dは御存知でしょうか?」 咲良は譫言のように意味不明な答えの那由他から目を逸らすと、いきなり暴走を始めた彼女に呆気にとられ傍らでなすすべなく沈黙を続ける守上を見た。 氷点下以下の魂も凍るような目をしている。 だからさ、守上くらいにしときゃいいんだって。ファンなので会いに来たんです、握手してください。とかさぁ。 外野から突っ込む僕の存在など知るよしもなく、不承の部下の失地を回復させるべく、守上は必死で頭を回転させている。 ちら、と見ると那由他はもう完全にフリーズしていてものの役に立ちそうも無い。 守上藤丸、本日も孤立無援。 ほんとうに、彼に同情したくなった。 「あー・・・と。広島駐屯陸軍に所属してます」 「師団は?」 なんとかそう答えた守上に咲良の追及は依然厳しいままだった。 「今は、どうなってるのかな・・・。所属がはっきりしてなくて、部隊」 守上にしたって第5世界の部隊まで詳細に把握しているはずもない。 ましてや広島での戦闘に参加したのは随分と前のことだ。 これが三千世界に散らばる咲良達とニューワールドにいて多数の世界を知覚できる那由他達の認識のギャップ。 一見全てを見通す神の地平に立っているかのように見えて、その実群盲象を撫でるが如し。 こんな簡単なことも解らない。 ゲーム初心者が最も陥りやすい芝村の罠。 あわれ、その罠に那由他もものの見事に尻尾の先まで嵌り込んでる。 「申し訳ありません。入営して1ヶ月で、色々とおぼつかなくて・・・」 もうだめだ。隊長のこんな視線には耐えられない。 丁寧に謝罪して、ナニワへ逃げ帰ろう。 そして・・・。 那由他が後ろ向きな思考にとらわれかけたその瞬間、まるで魔法のように、救いの手が差し伸べられた。 「105だ。お嬢さん」 「!!」 「あなたは・・・?」 その救いの手は濡れた髪の美形青年の形をしている。 背後から出し抜けに声を掛けられた守上が驚きで顔を引きつらせる。 余りに唐突な出現に咲良も詰問を忘れて目の前の美形に見入っている。 引き締まった長身にラフにスラックスとシャツだけを纏った彼こそがナニワアームズ商藩国の賓客にしてエロリストの異名を持ち、たぐいまれなる個人戦闘力を備えた絢爛舞踏。 23番目のクラスメイト。 その名を大阪万博といった。 彼と守上摂政の因縁(?)の数々については藩国史をひもといてもらうとして、相変わらずなんの予告もなしに現れた大阪は不敵に笑いながら3人の前に歩み寄った。 那由他にウインクする。 なんとまぁ、良いタイミングで現れること。 きっと那由他を新しいオモチャが出来たとか思ってるんだろうな。 「こんにちは・・・」 守上が色々言いたいのを我慢して挨拶する。 那由他は彼と直接会うのはこれが初めてだが、文族の仕事を通して色々と彼のことは聞き及んでいる。 主にアレとかアレとか、アレのことだ。 彼なら絶対に何とかしてくれる。 なんの根拠もないけど、那由他はそう確信した。 「部下が失礼しました」 「失礼致しました」 言いながら実に様になる敬礼。 威風堂々とした高級士官、そういう役回りを演じている大阪に倣って守上も敬礼する。 「我々は105山岳騎兵師団、第一連隊第3大隊所属です」 「ああ・・・・・・二線級部隊の」 大阪のオーラに気圧されるように納得する咲良とこくこくと頷く那由他。 まあなんだ、二人とも素直だな・・・。 那由他の方は大阪が言ってるのは以前サターンが率いた部隊のことだと思ってる。 ちょっと調べればそれが105GEP1311、シュークリームナイト小隊のことだってわかったのに。 「ま、それはお互い様で。 警護師団の方ですね。無理やり呼んですみません。 実は私の部下が、貴方の大ファンでして」 大阪のでまかせもまあ間違ってはいない。 「うん。わたしは最高最新の新型だ」 「ええ。それでですね。ぜひお話なんぞできればと」 「少しの間、お付き合いいただければ嬉しいです」 そう言葉を添えた守上に押し出されて、那由他がよろけるように前に出る。 覚悟を決めた。 「はい。大変失礼かと思いましたが、クリスマスの時にもその・・・マフラーを贈らせていただきました」 顔を真っ赤にして訥々と語る那由他。 あれは酷かったな。 奇襲を掛けるようなスケジュールでほとんどぶっ通しで作業してたっけ。 咲良はあの不格好なマフラーを思い出したらしく、ようやく表情を和らげた。 「ああ。 そうか、そうだったのか、疑ってすまない」 「こちらこそ、舞い上がってしまいまして申し訳ありませんでした」 「いえ、こちらこそ。失礼致しました」 ぺこりと頭を下げる那由他と守上。 「では、この子たちをお願いします」 にやりと笑うと、それだけ言い残して大阪は来たときと同じように颯爽と去っていった。根本でくくった髪に、青い組紐が揺れた。 何か言いたげに口を開き掛けた守上と感激した面持ちで尻尾を振っている那由他を残して。 大阪はきっと迷宮に戻ったんだろう。 ただこのためだけに、本当にご苦労なことだ。 ナニワに滞在しているといっても形だけで、一度も会ったことのない那由他になんの義理もないだろうに。 「にゃご」【そういうところがなんというか、彼らしいんだけどな】 「ありがとうございましたー!」 (と言うか私も離れた方がいい?) (いてください!) 大阪をの去った方を少しの間眺めて、守上と那由他は小声で短い遣り取りをした。 守上としてはこの辺りで退散して公園でのんびりしたかったのか、それとも大阪の後を追って少しでも話がしたかったか。 しかし未だに不安な那由他は守上の袖をしっかり掴んで放さなかった。 こっそり溜息をついて落ち着いて話せそうな場所を探す守上。 「山岳騎兵は、いつも動いて大変だろう。その点警護部隊は動けないで困ってる」 「私などは、じっとしているより動いている方が性にあってますので、何とかやっています」 「わたしはまだ新米なので実感はないのですが、先輩方をみると大変そうです」 うん、と頷く咲良の機嫌が直ったのを感じて那由他は緊張しつつも大分まともな会話になっている。 うんうん、ここまで来るのに大分かかったなぁ。 「そっかー。我々は雪でほとんど部隊を動かせないんだ」 「ええ。東北の雪深さはわたしも身にしみています。 あの、何処かお座りになりませんか?」 「あ、うん」 故郷の冬を思い出して苦笑する那由他に短く答えて咲良は周囲を見た。 二人に対する態度が不審者から親しくない部下に対するものくらいには軟化している感じ。 辺りには暖かい日差しを浴びて三々五々芝生に腰掛ける人たちが見える。 噂に聞く天領民というものなのか、那由他達と同じくゲームに来ているプレイヤーなのか、ちょっと見た限りでは判別できない。 結局すぐ近くの芝生の上を見定めると、那由他が唐草模様のハンカチを広げた。 ナニワを出る時にちりかみと一緒にイズナに持たされたやつだな。 咲良は小さく笑って、芝生に座った。 那由他の大仰な仕草がおかしかったのか、春の日差しが嬉しかったのか、どっちだろう。 ううむ、こっからだとよく見えないな。 咲良に続いて守上と那由他も腰を下ろした。 ここだけ見ると、学生ののどかな昼休みみたいなんだけど。 「芝生の上も、いいですね」 「うん。こういうのははじめてだ」 ああ、確かに。 咲良は冬生まれでまだ春を経験していない。 緑の芝生自体始めてなんじゃないかな。 「わたしも久しぶりです。ちょっとちくちくしますね。 ところで、石田隊長は甘いものはお好きでしょうか」 もう安心かな?守上はそう思ったらしく、芝生の上に寝転がって大きく伸びた。 なんというか、いつもすまないねえ。 那由他のは生耳に尻尾出しっぱだからな。そりゃちくちくもするだろうさ。 まずそこから不審だ。 「甘いものは・・・・・・ま、まあまあ・・・・・・?」 本当はもっとうち解けてから、と決めてたらしいけど、今回は色々手間取って時間がない。 お土産を開くタイミングを伺う質問に、咲良は嘘をついた。 多分、甘いもの全般に大好きなはずだ。 「あ、それはよかったです。 本日はお土産を用意させていただきました。 宜しければお召し上がり下さい」 そう言いながらクーラーボックスを開く那由他。 大きなクーラーボックスから取り出されたそいつを見て、咲良の目が点になってる。 さすがに予想外だったらしい。 「・・・どうやって作ったの・・・」 守上も呆れている。 そりゃそうだ。 これに驚かないのは噂に聞く帝国宰相くらいなもんだろう。 「それは摂政閣下にもヒミツです。味は保証いたしますよ」 食べていただけるかなぁ。 そういう感じで上目遣いに様子をうかがう那由他に、咲良の目がちょっと輝いているように見えるな。 「なんかもう、食べれるかどうか分からないけど。 うん。食べてみたいかも」 「そのあだ名はやめてってば」 そうそう、ここまで来て摂政閣下はないだろ。 テンション爆超の那由他にはもう聞こえてないみたいだけど。 集中したら周りが見えなくなる。 こういう子なんだよ。那由他っていうのは。 「ありがとうございます!石田隊長、どうぞ。摂政閣下も」 ほらまた言った。 実に嬉しそうに尻尾と耳をぱたぱたさせてそいつ、生クリームとカラメルとチェリーで飾られた2㎏の巨大プリンアラモード。 正式名称:久遠寺流広域殲滅用質量兵器【黄色い奇跡】を切り分ける那由他。 つまりどんな空腹なやつもこれ1個で満腹、甘い幸せに浸られるからケンカも起きないっていう。 命名したのは僕じゃないぞ。なんでも那由他は子どもの頃こういうのばっかり喰ってたらしい。 こういうのをおやつに出すとは随分ワイルドな母親だよな? 那由他は小さく切り分けたつもりらしいが、皿の上でぷるんと震えたそいつは、切ってもでかかった・・・。 「ありがとう」 自分の分の皿を受け取って心なし顔を引きつらせる守上。 そういえば、2、3日前に那由他が『摂政閣下は甘いものなら幾らでもいける口ですか?』とか聞いてただろう? 気をつけた方が良いぞ、守上。 那由他は冗談に見えて本気なときと、真顔で嘘をつくとき両方ある。 今回のは、両方。 バカと冗談がてんこ盛りだ。 「これ、どんなお店にあるの?」 しげしげとプリンをみつめて不思議そうに問う咲良。 カラメルの黒、生クリームの白、チェリーの赤。 沢山の牛乳と卵で作られたほの黄色いプリン。 甘いバニラの匂い。 育ち盛りの女の子を誘う究極の物体がそこにある。 「いえ、わたしの手作りです。 卵と牛乳、あとは少しのゼラチンだけです」 「こっそり、がんばってましたよ」 守上は那由他がこっそり、何かしているのは感づいていたらしい。 元々隠す気はない上に連日談話室に籠もってあーでもない、こーでもないしててバレない方がおかしいんだが。 「作れるんだ!」 がーん。 目の前の巨大なプリンと那由他を見比べて驚愕する咲良。 「ですよねぇ。どうやって作るんだか・・・」 それはレポートに纏めてあるからそっちを見てよ。 作り方さえ解れば意外に簡単だ。 あとは根性とバカが少々あればOKだな。 「食べ切れない分はお持ち帰りいただいて、是非隊の皆さんにも。 ・・・え、ええ。本当は焼きプリンが美味しいのですが。 流石にこのサイズですので・・・」 那由他もちょっとやりすぎたかな?とか思い始めている。 まぁ、普通の家庭でこんな物は出て来ないよな。 「工場でできるんじゃないんだ・・・なんかこわい」 「工場で作られる物もありますが、わたしは食べていただきたいものは手作りしたかったのです。 気持ち悪い、でしょうか…」 若干ヒキ気味の咲良に那由他はしょんぼり。 「さすがに量産しても元手が取れないんじゃないでしょうか・・・」 ちなみに材料費は2にゃんにゃんいってないぞ、守上。 無菌無塵の工場生まれの咲良にとって、ハンドメイドのプリンなんて想像の埒外らしい。 これは咲良に限らず、今時の子供に共通することなのかも知れないけどね。 綺麗に包装されて型に収まった規格品に比べれば、那由他の作ったコイツは正体不明の怪物みたいなもんだろう。 大きさは抜きにしても、な。 「とにかく一口食べてみていただけませんか。素材は選んだつもりです」 もしかして触れてはいけない領域?とか、咲良の生い立ちを知っている那由他は大あわてだ。 那由他にはとにかくひとさじ、それだけ食べて貰えば美味しいのを解って貰う自信があった。 なんせ、冷たい雪に手を真っ赤にして冷やしてたからな。 僕もボウルに残ってたのを少し貰って嘗めたけど、これはマジで美味い。 4時間かけて作った那由他のプリン、食べてあげてよ。 いつの間にか僕も傍観者であることを止めて祈るような気持ちになってた。 いかんいかん。 咲良は左手にプリン、右手にスプーンを持ったまま紅い瞳でじっと守上と那由他を観察してる。 「?」 (摂政閣下~さきにたべてみてくださいよぅ) 咲良の視線に怪訝そうな守上の横腹をこっそり那由他が肘でつつくのとそれに守上が思い至るのと同時だった。 要するに、毒味してプリンが美味しいことを証明してみせれば良いんだ。 那由他が先に手を付けなかったのは目上から先に食べさせる習慣からだよ。 案外こういう場では古風なとこも出る。 「お先にいただきます」 役回りに思い至ると守上の頭の回転は早い。 那由他が望む通り、にっこり笑うとプリンを口にした。 実は余り甘いものが好きじゃないらしいけど。 「わたしもいただきます~」 「いい甘さだねー」 「プリンは幸せの味がしますね」 なんだかCMみたいな二人の遣り取り。 守上は良いけど、那由他、顔の端が引きつってるぞ。 普段から笑う訓練をしてない罰が当たったな。 二人の反応に、とりあえず危険な成分は混入されてないと判断したか、咲良もやっと一口プリンを口に運んだ。 「おいしい」 信じられない、といった口調。 ま、見た目があれだから大味そうだけど。 実は卵と牛乳も選りすぐりの高級品だ。 黄身だけ取り出すのが上手く行かなくて、倍の卵を無駄にしてたっけ。 白身過多のスクランブルエッグを処理したのは主に僕だ。 咲良に掛ける情熱の100分の1でも向けてくれればもう少し僕の食生活も改善されるんだがなあ。 「本当ですか!宜しければ、たくさんありますから!」 「うんっ」 破顔して頷く咲良にもう嬉しくてしかたない。 実に、単純だ。 もふもふした尻尾をばたばたさせてプリンを取り分ける那由他。 あーあー、いくら何でもそんなには喰えんだろ。 「よかったぁ~・・・・・・」 おかわりを美味しそうに食べている咲良の様子にへなへなと脱力する那由他。 「よかったね」 「ありがとうごさいます」 こっそり守上が耳打ちすると目をうるうるさせた那由他が小さく答えた。 良かったな。ついさっきは一瞬、引退も考えたもんな。 大きなプリンを手に咲良は嬉しそう。 咲良、プリンは美味しいかい?そいつは見た目ちょっとアレだが那由他の真心が山ほど入った魔法のお菓子だよ。 つられて那由他もにこにこ嬉しそうだ。 ここに来て初めてみせる本当の笑顔。 これだけでもニューワールドくんだりまで来た甲斐があったってもんだ。 「あ、でも本当にこの量3人は多いと思うので持って帰られませんか?」 「はい。宜しければ隊の皆様にも」 その様子を微笑ましそうに見守っていた守上が切り出した。 うん、流石に摂政は心配りも一線級だねぇ。 (隊の皆さんも喜んでくれるかな) 那由他はちょっと心配そうだけど大丈夫、咲良は部下に食べさせようと思ってる。 そうして食べて貰えば解って貰えるって。 「じゃあ、貰おうかな。ありがとう」 その言葉を受けてそつなく持って帰れるようにクーラーボックスにプリンを詰め直す守上。 いやいや、頭が下がるねぇ。 那由他に代わってお礼を言うよ。 そんな守上にも気付いていない、当の那由他はにっこり笑って大きなクーラーボックスを咲良に手渡した。 ヒロイン天国小隊員にも思わぬお土産になって、良かった良かった。 「はい、このままお持ち下さい。 ところで・・・石田隊長、一つ、ぶしつけな質問をよろしいでしょうか」 「質問?うん」 残り時間わずか。 左手首に巻いた航空時計に目をやった那由他は最後の勝負に出た。 がんばれ。 「ありがとうございます。 えー・・・あの、マフラー・・・いかがでしたでしょう・・・。 拙い物で失礼をしたのではないかと気がかりで・・・」 もじもじ指を絡ませながら訥々と切り出す那由他。 うん、何度も言うが、あれは酷かった。 なんとかマフラーの形にはしたけど、編み目もバラバラだったし。 気を利かせてそっと二人から距離を取る守上。 うーん、その心配りが自分のゲームで出来れば、もっと幸せになれるぞ、守上。 (どきどきします。しっぽぴーんです) 「こ、今度使ってみる。 ごめん、まだつかってないんだ」 「いえ。そのお言葉だけで十分嬉しいです。 お許し頂けるなら、また贈り物をしても良いでしょうか・・・?」 「本格的に寒くなるのはこれからですしねー。 よかったね。なゆたさん」 草葉の陰からうんうん、と頷く守上。 那由他よ、喜ぶのはまた早いかもしれんよ? そんな僕の心の声など幸せ絶頂な那由他に届くわけもなく。 那由他は真剣な目で咲良の紅い瞳を見つめた。 対して咲良はなん気負いもなく微笑むと小さく頷いた。 「うん」 「ありがとうございます!つぎはきっともっとずっといいものを編みますから!」 感激。幸せ。うれし泣き一歩手前? とにかく那由他は勢いだけでそう言っちゃった。 あーあ、僕は知らないぞ。 出来上がりを見てがっかりされても。 「うん!」 だけど、咲良は無邪気に笑うと大きく頷いた。 ほんとうに、純粋で素直な良い娘だよな。 それで、クーラーボックスを抱えて青森に帰っていく咲良を見送って守上と那由他もナニワに帰っていった。 道中色々なことに今更気付いた那由他は守上に平謝りだった。 そっちについてはまあ、ここでは良いだろ? 何せ僕の方も急いでナニワの女子寮にある那由他の部屋に帰ってないといけなかったからね。 天領からナニワに戻った後、談話室に立ち寄って色々反省していた那由他は、大分遅くなってから自分の部屋に帰った。 早速毛糸と編み物の本がデスクの上に並んでる。 そして、今は端末に向かって真剣な表情で何かタイプしていた。 『お姫様と黒耳猫』 タイトルにはそう記されている。どうやら今度は絵本らしい。 ま、これがいつもの那由他だね。 その調子で、これからもがんばれ。 そして咲良と仲良くなれるように、僕も心から祈っているよ。 那由他が望みを叶えたとき、その時からやっとこさ僕の物語が始まるのさ。 今夜も半徹らしい那由他に小さく尻尾を振ると、僕は食事をねだりに食堂のおばちゃんの元へ静かに歩み去った。 いつもの平和な、ナニワの風景である。 今日のところはめでたしめでたし、だ。 /*/
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死者たちのたまり場PART4 レス番号601~800 タイトル 登場人物 備考 衣が心配 龍門渕透華、竹井久、伊藤開司、福路美穂子、ディートハルト・リート コスプレ 神原駿河、池田華菜、ファサリナ、中野梓、ユーフェミア・リ・ブリタニア、ライダー、田井中律、琴吹紬、アーニャ・アールストレイム、キャスター、セイバー 解散 アーチャー、御坂美琴、衛宮士郎、白井黒子、セイバー、インデックス、C.C.、戦場ヶ原ひたぎ、上条当麻、池田華菜、平沢唯 ラジオに向けての会議 C.C.、八九寺真宵、琴吹紬、刹那・F・セイエイ、本田忠勝、ヒイロ・ユイ、神原駿河、戦場ヶ原ひたぎ、明智光秀、船井譲次 牢獄にて 遠藤勇次、張五飛、ファサリナ、浅上藤乃、バーサーカー、荒耶宗蓮、馬イク ひたぎウィッチ・百合? 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、神原駿河、琴吹紬、八九寺真宵 ひたぎウィッチ・今日は投下日 C.C.、戦場ヶ原ひたぎ 漫才! 八九寺真宵、伊藤開司 本編投下前~中の風景 龍門渕透華、加治木ゆみ、竹井久、福路美穂子、千石撫子、セイバー、黒桐幹也、アーチャー、海原光貴、ユーフェミア・リ・ブリタニア、浅上藤乃、伊達政宗、神原駿河 食堂の風景 インデックス、上条当麻、C.C.、戦場ヶ原ひたぎ、衛宮士郎、セイバー、白井黒子、御坂美琴、アーチャー 第二十六回死者スレラジオ~ふじのん編~ 伊達政宗、神原駿河、浅上藤乃、安藤守 nice boatと次期パーソナリティ 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、アーチャー、上条当麻、御坂美琴、セイバー、白井黒子、衛宮士郎、インデックス 食堂にて 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、アーチャー、レイ・ラングレン、田井中律、白井黒子、セイバー、衛宮士郎、インデックス、上条当麻、御坂美琴、キャスター かませ犬結界 龍門渕透華、キャスター、琴吹紬、刹那・F・セイエイ、本田忠勝、ヒイロ・ユイ、明智光秀、田井中律、平沢唯、中野梓、竹井久、伊藤開司、八九寺真宵、リリーナ・ドーリアン、荒耶宗蓮、加治木ゆみ、トレーズ・クシュリナーダ、福路美穂子、池田華菜、黒桐幹也、片倉小十郎、月詠小萌、真田幸村、上条当麻、御坂美琴、衛宮士郎、白井黒子、セイバー、アーチャー、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、船井譲次、遠藤勇次 明日は投下日 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、上条当麻、御坂美琴、白井黒子、衛宮士郎、アーチャー、セイバー、インデックス 食堂のインデックス インデックス、上条当麻、御坂美琴、アーチャー ひたぎウィッチwith八九寺真宵・次期パーソナリティ投票 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、八九寺真宵 弁当作り セイバー、衛宮士郎、白井黒子、御坂美琴、アーチャー、上条当麻 重い空気 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、インデックス、上条当麻、御坂美琴、白井黒子、衛宮士郎、セイバー、アーチャー、田井中律、平沢唯、中野梓、琴吹紬 第三回ラジオ紛い~二人の黒服と武田の馬 上条当麻、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、アーチャー、衛宮士郎、御坂美琴、白井黒子、セイバー、インデックス、初代黒服、二代目黒服、武田軍の馬 PSP版超電磁砲 戦場ヶ原ひたぎ、御坂美琴、C.C.、白井黒子、衛宮士郎 衣、死す 明智光秀、ヒイロ・ユイ、神原駿河、船井譲次、本田忠勝、刹那・F・セイエイ、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、竹井久、伊藤開司、加治木ゆみ、田井中律、琴吹紬、福路美穂子、トレーズ・クシュリナーダ、平沢唯、中野梓、龍門渕透華、安藤守 控え室にて遭遇 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、上条当麻、天江衣、アーチャー、衛宮士郎、白井黒子、御坂美琴 歓迎会の準備と控え室の衣 龍門渕透華、竹井久、田井中律、福路美穂子、平沢唯、中野梓、池田華菜、伊達政宗、片倉小十郎、天江衣、忍野メメ?、真田幸村、伊藤開司、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、上条当麻、白井黒子、御坂美琴、インデックス 牢獄から 荒耶宗蓮、遠藤勇次 部長の誘惑 龍門渕透華、竹井久、キャスター、田井中律、平沢唯、池田華菜 牢獄組の限界 荒耶宗蓮、遠藤勇次、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、御坂美琴、白井黒子、アーチャー、衛宮士郎、セイバー、上条当麻、インデックス 衣と食堂の人々 戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、アーチャー、衛宮士郎、セイバー、インデックス、上条当麻、御坂美琴、白井黒子、天江衣 キャスター暴走!第二安土城の激闘!(前編) 田井中律、竹井久、キャスター、伊達政宗、真田幸村、本田忠勝、刹那・F・セイエイ、ヴァン、カギ爪の男、龍門渕透華、福路美穂子、千石撫子、八九寺真宵、池田華菜、セイバー、琴吹紬、上条当麻、戦場ヶ原ひたぎ、C.C.、御坂美琴、白井黒子、天江衣、衛宮士郎、アーチャー、インデックス、ハロ、黒服、妹達、月詠小萌、神原駿河 キャスターが放った魔術のデータはA-10に装備されている機関砲アヴェンジャーから取ってます キャスター暴走!第二安土城の激闘!(中編) トランザムバーストが発動していますが真宵と小萌が指揮権を持ってるということは…ということで理解していただきたい! キャスター暴走!第二安土城の激闘!(後編) 衣と牢獄の人達 インデックス、C.C.、天江衣、荒耶宗蓮、遠藤勇次 歓迎会準備・最終段階 八九寺真宵、月詠衣、戦場ヶ原ひたぎ、上条当麻、セイバー、衛宮士郎、神原駿河、アーチャー、御坂美琴、白井黒子、千石撫子、トレーズ・クシュリナーダ、ユーフェミア・リ・ブリタニア、海原光貴、浅上藤乃、天江衣、C.C.、インデックス 汚染された第二安土城での死闘!(前編) 黒桐幹也、月詠小萌、八九寺真宵、御坂美琴、妹達、加治木ゆみ、平沢唯、中野梓、デュオ・マックスウェル、ヒイロ・ユイ、張五飛、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア、リリーナ・ドーリアン、ゼクス・マーキス、トレーズ・クシュリナーダ、戦場ヶ原ひたぎ、セイバー、上条当麻、アーチャー、衛宮士郎、船井譲次、明智光秀、琴吹紬、刹那・F・セイエイ、竹井久、キャスター、田井中律、浅上藤乃、ライダー、真田幸村、伊達政宗、本田忠勝、バーサーカー、インデックス、C.C.、天江衣、龍門渕透華、福路美穂子、馬イク、ヴァン、アーニャ・アールストレイム、カギ爪の男