約 728,523 件
https://w.atwiki.jp/83452/pages/8266.html
この気持ちをどうしたらいいかわかりません。 一人で考えて、悩んで、妄想して。 どうしようもなくなったので、澪先輩に手紙を書くことにしました。 あの優しくて大人びた先輩なら、私に答えを与えてくれる気がするから。 「澪先輩へ。 急にこんな手紙を出してすみませんでした。 きっと先輩は、ひどく驚いたことでしょう。でも、もう私には澪先輩しか頼れる人がいないんです。 突然ですが、先輩は誰かを好きになったことがありますか? 実は私は、とある人のことを考えると胸が苦しくなって、とてもつらくなるんです。 その人は女の子で、しかも私の身近な人です。どうかアドバイスをお願いします。 ×月×日 梓」 「梓へ。 手紙をありがとう。正直言って、すごくびっくりした。あの後バカ律にからかわれて大変だったよ(笑) 私も人を好きになったことがあるから、梓の気持ちはわかる……つもり。 女の子に憧れるのは、ちっともおかしいことじゃない。私にもその気持ちはわかるつもり。 次はその子の、もう少し具体的な特徴をあげてほしい。でないとアドバイスのしようがないんだ。 ×月×日 澪 追伸 次からは誰もいないところで渡してほしいな。冷やかされるからね。」 「澪先輩へ。 お返事、本当にありがとうございます。おかげで少し胸のつかえがとれました。 私の好きな人ですが、実は軽音部の先輩なんです。 その人はいつも練習を怠けてお茶ばかり飲んでる、本当に本当に困った人です。 ですが、その人と演奏すると楽しいし、私は何度もその人に支えられました。 その人はとても温かいんです。もっとずっといっしょにいたいです。 ×月×日 梓」 「親愛なる梓へ。 お前の好きな人、わかっちゃった、と思う。正直、ちょっとびっくりしてる。 私もその人には何度もいじられたし、何度も困らされた。 でもお前の言いたいことはよくわかる。その人は確かに温かいし、私も助けられたことがある。 それに、正直すごく可愛いと思う(この一文を書くのにずいぶん長い時間をかけた)。 梓はその人と、どういう関係になりたいの?それを教えてほしいな。 ×月×日 澪 追伸 次からも手紙は、トイレで渡してくれ。」 「澪先輩へ。 わかっちゃいましたか。なんだか照れくさいです。 単刀直入に言いますが、私は唯先輩(書いちゃいました)と、いわゆる恋人同士になりたいです。 うちの学校にも、よくふざけてデートしたりキスしたりする子がいるじゃないですか。ああいうお遊びの関係は嫌です。 本物の、正真正銘本物の恋人同士になりたいです。 やっぱりおかしいですかね?気持ち悪かったら捨ててしまってけっこうです。 ×月×日 梓」 「梓へ。 お前がどれだけ本気なのかわかった。 前にも書いたけど、私は女の子同士の恋愛はちっともおかしくないと思う。気持ち悪くなんかないから、安心して。 それに私は、梓の選択は正解だと思う。 人を好きになるのに正解も不正解もないかもしれないけど、それでも正解だと思うんだ。 唯は抜けたところもあるけど、明るくて優しくて、いっしょにいるとすごく楽しい。 たまに憂ちゃんがうらやましくなるよ。 ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 突然ですみません。 先日の唯先輩、見ましたよね?私は正直怒ってます。 いくらムギ先輩が優しくしたからって、あんな風に抱きついて頬ずりすることないじゃないですか。 やっぱり唯先輩は、誰にでもああなんでしょうか。だとしたらなんだかやり切れないです。 なんだか、単なるグチになってしまいましたね。すみません。 ×月×日 梓」 「梓へ。 ……まあまあ(笑) 膨れて唯を睨んでるお前を見て、もしかしたら、って思ってたんだ。案の定、気にしてたんだね。 お前の気持ちはよくわかる、と思う。悔しかったよね。わかるよ。 確かに唯は、誰にでもああ接するな。でもちょっと落ち着いて考えてみて。 みんなに同じように、公平に接するのが唯のいいところじゃないかな。 もし唯が人を好き嫌いする奴だったら、梓は好きになったかな? ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 この間はありがとうございました。そしてすみません。 そうですね。確かに誰かを差別しないのも、唯先輩の大切な長所ですよね。 私はちょっとどうかしてました。お恥ずかしいです。 こないだ唯先輩にモンブランの栗をあげたら、すごく喜んでくれましたよね。 子供っぽいけど、可愛かったです。またあんな笑顔が見たいなあ。 そこで相談なんですが、唯先輩の好きな食べ物ってご存知ですか?教えて頂ければ嬉しいです。 ×月×日 梓」 「梓へ。 確かにあれは可愛かったね。私はハムスターを思い出したよ。 唯の好きなものだけど、甘いのなら基本的に何でもありだと思うよ。 特にケーキに乗っかったイチゴは大好きみたい(笑) あ、それからこれは提案。唯にお弁当作ってあげるのはどうかな。 ベタかもしれないけど、けっこう気持ちが伝わると思うんだ。 ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 先日は本当にありがとうございました。 お弁当、さっそく作ってみました。 だいぶ憂に手伝ってもらっちゃいました。もっとお料理できるようになりたいな。 もしよろしければ、唯先輩がどんな様子だったか教えてください。 ……なんか書きながら、すっごくドキドキしてます。変じゃなかったかなあ。 ×月×日 梓」 「梓へ。 あれは梓が作ったのか!どうりで唯が嬉しそうにしてたわけだ。 律がつまみ食いしようとしたら、半ば本気で怒ってたよ(笑) うまくいかなくて、誰かに頼っちゃうのは当たり前。楽器もお料理も同じだよ。 唯だって、いまだに梓に頼ってるだろ? これからも頑張れ!応援するよ。 ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 こないだ、星座占いで1位が出ました。私は絶好調です! 先日はありがとうございます。唯先輩が喜んでくれると、私もとても嬉しいです。 こないだみんなで楽器屋さんに行った日のこと、覚えてますか?すごい雨でしたよね。 床が雨で濡れてたせいで、私は思いっきり滑ってしまいました。 でも、転ぶ直前に唯先輩が抱き止めてくれたんです!あの時の先輩、すごく頼もしかった! ……まあその後、いつもみたいにぎゅーってされて困っちゃったんですけどね(笑) アドバイス、本当に本当にありがとうございました。 ×月×日 梓」 「梓へ。 お礼なんていいよ(笑)私はありきたりなことしか書けないんだから。 あの日のことは私も覚えてる。確かにすごい雨だったよな。 梓が転びそうになった時、たまたま私は唯の方を見てたんだ。 だからお前を抱き止めた唯の顔も見た。ちょっとかっこよかったよ。なんだか唯らしくなかった。 さて、そろそろ梓も、唯をデートに誘ってみたらどうかな。いつまでも見ているだけじゃ仕方ないからね。 怖いかもしれないけど、頑張って。 ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 アドバイスありがとうございました! ……ですが、私は今とても困ってます。どうやって唯先輩を誘ったらいいか、まるでわからないんです。 (そもそも誰かを誘ったことすらないんです。お恥ずかしい)。 どこにお出かけしたらいいか、どんなお洋服を着ていったらいいか、どうやって接すればいいか。何も知らないんです。 どうか助けてください。ダメな後輩ですみません……。 ×月×日 梓」 「梓へ。 あまり私を頼らない方がいいぞ、私だって誰かを誘った経験なんてないんだから(笑) とりあえず、唯の好きそうな可愛いものがある所に行くのはどうかな。 例えば動物園とか水族館とか。アクセサリーのお店も悪くないかもね。 接し方はあまり気にしない方がいいよ。唯は自然なのが一番好きなはずだから。 服装は……こればかりは自分で考えよう。 ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 この間はありがとうございました!なんてお礼を言っていいか……。 デートは大成功でした。水族館に行きました。唯先輩ったら、子供みたいにはしゃいじゃって。 お昼ご飯はパスタを食べました。唯先輩のお口の周り、真っ赤になってたんですよ。本当にしょうがないんだから……。 いろんな唯先輩を見れてとても嬉しいです。夕べもあまり寝れませんでした(苦笑) 本当に本当にありがとうございました。心から感謝します。 ×月×日 梓 追伸 水族館の写真を同封します。イルカと唯先輩のツーショットです。 「梓へ。 写真ありがとう。とても可愛かった。 正直、私も行きたかった。でもそれじゃデートにならないよな(苦笑) 私の提案が役に立ったのは嬉しい。でもそれで満足しちゃダメだ。 私の言いたいことはわかるな? ×月×日 澪」 「澪先輩へ。 あんなものしか渡せなくてすみません。先輩にはお世話になっているのに……。 先輩のおっしゃる通りです。確かにここで満足しちゃいけませんよね。 でも、私の唯先輩への思いは、好きって言葉だけじゃ足りない気がするんです。 そこで唯先輩への思いを、詞という形で綴ってみました。 この手紙に同封しますので、よろしければ採点してください。お願いします。 ×月×日 梓より。」 「梓へ。 詞をありがとう。読ませてもらったよ。 初心者にしては、なかなかよくできてた。これなら渡しても大丈夫。 (なんか私、すごい上から目線だな。ごめんな) 今度またデートするんだろ?いいところ教えてあげる。 こないだオープンした遊園地、知ってる?あそこの観覧車に二人で乗ってくれ。 ゴンドラがちょうどてっぺんに着いたら、告白するんだ。そうすればきっと両思いになれる。 大丈夫、梓ならやれるよ。 それに唯はたぶん、いや絶対にお前を拒絶したりしないよ。だって私が見込んだ奴だもん。 いい結果を待ってるよ。 ×月×日 澪より。」 「澪先輩。お久しぶりです。 ……やりました!やっちゃいました!唯先輩、OKしてくれました! 告白した時のことは、あまりよく覚えてません。観覧車の窓から見えた夕日がきれいだったのは覚えてますが。 気がついたら私、唯先輩にぎゅーって抱きしめられてました。それから先輩、耳元で言ってくれたんです。 ありがとう。これよろしくね、って。 ……なんか思い出したら少し泣けてきました。すみません。 ここまで来れたのは、澪先輩のサポートのおかげです。 幼稚な私に付き合っていただいて、本当にありがとうございました。 ×月×日 梓より。」 「梓へ。 おめでとう。本当におめでとう!心から嬉しいよ。 私の手紙は、もう必要ないな?これからは二人で力を合わせて道を探していくんだ。 しっかりやれよ。私、応援してるから。 唯によろしくな。 ×月×日 澪より」 澪先輩の最後の手紙。 とても力強い、だけど優しい字が踊る便箋。 だけど、なぜでしょうか。 手紙はあちこちが滲んでいて、とても読みにくかったです。 終わり 戻る
https://w.atwiki.jp/briah/pages/720.html
弱小部隊 思いじゃなく『想い』な
https://w.atwiki.jp/f_go/pages/3883.html
│ステータス│入手方法|詳細情報|性能|性能比較│その他│コメント│ 母の思い出 No.943 礼装名 母の思い出 初期最大 Rare 4 LV 80 Cost 9 HP 100 タイプ 絆礼装 ATK 100 美遊・エーデルフェルト(キャスター)装備時のみ、自身がフィールドにいる間、味方全体のNP獲得量をアップ 15% 詳細情報 イラストレーター 東山雄勢 解説 天正から続く旧家、朔月家。 そこに生まれる女児は皆赤い瞳を持ち、 超常の力を有したという。 人の思念を受信し、無作為に現実化してしまう 子供―――神の稚児。 一人目は、冬木を飢饉から救い2歳で死亡した。 二人目は、命より先に精神が尽きた。 三人目からは、出生が秘匿された。 朔月家の女児は、人の思念を遮断する結界内にて 母親一人の手によって育てられるようになった。 それは、神を人へと堕するための儀式。 喋らず、思わず、動かずが是とされる、 正常な子育てとはおよそ正反対の 冷徹な手続きである。 ―――では、この鞠は何なのだろう。 記憶もおぼろげな、母と過ごした日々。 機械的に繰り返されたであろう、 単調無味な母子二人だけの生活。 神の児は人と成り、そしてようやく気づく。 そこには確かに、母の愛があったのだと。 入手方法 美遊・エーデルフェルトの絆レベル10達成報酬 要148.5万ポイント 性能 コメント 名前 すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/kk0201kk0714/pages/2703.html
(歌詞は著作権に触れるため省略) アーティスト:ケツメイシ 予想レベル:1 作詞・作曲:ケツメイシ 想定歌唱範囲:頭サビ 地声最低音:mid1D♯(歩いたかい岸線、感じる) 地声最高音:mid2F♯(思い出してる 思い出せる) ボーダフォン日本法人(現 ソフトバンク)CMソング。 全体的にケツメイシ特有の跳ねるリズムで構成されているため、譜割りのミスに要注意。 「感じるこの季節が」の跳躍や、終盤に訪れる最高音にも気をつけよう。
https://w.atwiki.jp/b_sr/pages/33.html
思い出の章 欠片 やさしい右腕 市丸ギン・卍解 ぶらり霊場突撃旅 浮竹十四郎 雨竜、極限の力 涅マユリ・卍解 鬼神・剣八 東仙要 戦う理由 夜一 処刑日の朝 浦原喜助
https://w.atwiki.jp/jewelry_maiden/pages/1106.html
「ん?」 気配を感じて振り返るとペリドットが立っていた。 手には大きなバスケットが二つ。 「まったくお前は……。 人の家を訪ねるときに気配を消すやつがあるか」 といっても、普段から足音もたてずに歩くような奴だ。 意識してやっているわけじゃないしな。 「それでも、貴女には気が付かれてしまいますね。 おじゃましますね」 アトリエの一角にあるテーブルと椅子をすすめる。 グラスに注ぐのはアイスミントティー 裏の池に自生しているミントを摘んで夏の暑い季節に使っている。 「爽やかで美味しいですねぇ」 「よかったら、少し持っていくといい。 お前のマスターも、そのミントの香りは気に入っていたはずだ」 右の眉がピクリと動く。 なんだ、知らなかったのか。 ちょっとまずいことを言ってしまったかと後悔する。 こいつを怒らせると、かなり困ったことになる。 ましてやマスターのこと。 私は龍の逆鱗に触れてしまったかのような錯覚に陥った。 体に嫌な汗が滲む……。 「そうですか……。それでは少しいただいて参ります。 美味しい淹れかたも教えて下さいね」 「淹れかたなんて簡単だ。 濃い目に入れて氷をたっぷりと入れたグラスに注ぐだけだ。 基本的にはハーブティーだからな。 ところで、そのバスケットは? ここに来た目的はそれだろう?」 さりげなく話題を変えてみる。 これ以上、こいつのマスターに関わると嫉妬の炎で焼かれてしまう。 事象の地平線を越えるのはイタズラ娘だけでいい。 私は御免こうむる。 「実は、パイを焼こうと思ったのですが手ごろなオーブンがなかったものですから……」 「パイ? 見せてみろ」 バスケットから取り出したのは大きなパイ皿に盛られた見事なものだった。 しかし……どこかで見たような……。 「覚えているかしら? 昔、姉さんがよく作ってくれたミートパイ」 「ああ、あれか!」 私たちが、まだ幼かった頃。 真珠が育ち盛りの妹たちの為に作ってくれたものだった。 そうそう、こんなに大きな皿だったよ。 そういえば、作り方も教えてもらったのに 何度も試しても真珠の作った味にならなくて諦めたのだっけ。 材料、下ごしらえ、生地の練り方、寝かせ方。 焼き方や火加減も工夫したがダメだった。 真似事をしてもダメなんだと、自分で料理を工夫することを決意させられたのが このミートパイだったな。 「姉さんの味とは違うけれど、私が初めて覚えた料理ですから。マスターに食べて欲しくて……」 「真珠の味、できなかったな。 なぜだと思う?」 「レシピは完全に教えてもらっています。 微量の隠し味まで全て。 でも、何度作ってもダメでした。 単なる錯覚や思い入れだとは思えません。 何か一工夫が隠されているか、何かの加減が違うのか」 「私も試したよ。 でも出来なかった。 工夫が足りないとは思えん。 真珠が何かを意図的に隠しているのだと思う。 おかげで、お前も私も意地になって料理に励んだし。 おかげでずいぶんと達者にもなった。 それも真珠の狙い通りだと思うと、少し悔しい気もするがな」 「あの姉さんのことですから。 一筋縄ではいきませんよ。 この歳になってさえ、何一つ勝てる気がしません」 自嘲気味に笑う妹が二人。 まったく、姉という奴は いつも妹の一歩先をいく。 少しは手加減してくれてもいいのに。 「自宅にある電気式のオーブンでは入らないものですから。 ここなら、薪の古い型のオーブンがあると思いまして」 「ああ、最近の電気式の調理器具も便利なのだが古い食器だと使えないものが多いからな。 虎目に手伝わせて古い焼き釜を再現したのだよ。 料理にも焼き菓子にも重宝している。 薪は裏に積んであるから、好きに使うといい。 それで、そっちのバスケットは何だ?」 「いっしょにパンも焼こうと思って。 それと、使わせていただくだけでは申し訳ないですから 少しですけれど同じミートパイを一つ。 私の味ですけど、どうぞ」 「それはどうも。 今夜の楽しみにしよう」 二人で薪を運び火を入れる。 釜の中の温度が上がるまでの間、新婚のノロケ話に付き合う。 まったく、少しは遠慮して欲しいものだ。 聞いてるこっちが恥かしくなる。 「そろそろだな」 薪を足し、皿を奥へ入れ蓋を閉じる。 後は温度が上がり過ぎないように時々、様子を見ながら焼き上がりを待つだけだ。 「思い出の味か……」 何度も失敗を繰り返して、材料をダメにしてしまって落ち込んだときもあったっけ。 それでも真珠は怒りもしないで『また、頑張りなさい』って…… 不味い料理も残さずに平らげて、冷静に批評してたっけ…… 初めて及第点を貰ったのが、私が何日も煮込んだビーフシチュー、ペリドットがプレーンオムレツ。 嬉しかったっけ。 はぁ、妹か。 今の妹達に何を教えたっけか? もう少し、伝えてやらなきゃならないことがあるなぁ。 揺らめく炎を見つめながら妹達の顔を思い浮かべる。 「何を考えていました?」 「おそらく、お前と同じことだ」 「今週末辺り、お茶会でもしましょうか。 準備するところから始めますから、早めに来て下さいね」 「ああ、様式やマナーも教えなきゃならん。 何人かで持ち回りでやろう」 焼きあがったパイを取り出す。 香ばしい香りがあたりに漂う。 「懐かしい香りだ。 真珠の味に近いのじゃないか?」 「食べてみてからのお楽しみですよ。 今日はありがとう、ウチにも遊びにいらしてね」 「ああ、火傷しない程度には寄らせて貰う。 とりあえずは週末にお邪魔するよ。 彼も参加するのかい?」 「もちろんですよ。 お仕事が休みの日ですから、ずっと私の隣にいてもらいます」 ふっ、あのマスターのことだ。 照れながらも愛想良く据わっているだろう。 ペリドットを見送りアトリエに戻る。 今夜はコイツを肴に一杯飲もうか。 思い出の味を探りながら、思い出を辿りながら。 たまには、真珠と飲み明かすのも悪くないかな。
https://w.atwiki.jp/shibumakubungei/pages/53.html
思い 第一話 一目惚れ← →次の章 第二話 片思い 気が付いたら、湊(みなと)くんだけを見ていた。……湊くんしか、見えて無かったんだ。 「……こ、美子(みこ)?」 「へっ!?」 呼ばれた声にはっとして、前屈していた体を一気に起こした。まずい、部活の柔軟中だった。 「わっ」 ペアを組んでいたクラスメイトの辻^(つじ)晴香(はるか)――通称ハルが私が体を起こすと同時にそんな声をあげて、バランスを崩した。 「あ、……ごめん」 「いやいや、生きてるならなにより」 そんなことを言ったハルは、本当に心底ほっとしたという表情で笑う。そして、「先輩たち呼んでるから」と私に向かって手を差し出した。 顔を上げると、先輩たちがこちらを心配そうに見ている。「すみませんっ!」とぺこりとお辞儀をした私はハルの手をとり、少し強引にその手を引いて駆けだした。 すっかり、意識が飛んでしまっていた。高校に入ってから、こういうことが多くなった気がする。もちろん、受験が終わって、無事に入学もして気が抜けてるのはあるかもしれない。だけど、本当の理由は、そんなものじゃないんだ。 「湊くんと、同じクラス」 入学式の日、何度その言葉を口にしたか分からない。とにかく信じられなくて、それでいてとても嬉しかった。 小さい頃にお母さんが事故で死んで、施設に預けられた私。そこで、湊くんと出会った。 出会ってからは遊ぶのも、食事も、寝るのもずっと一緒で。幼なじみ、家族……どっちにも当てはまるようで当てはまらない関係だった。ありきたりな「湊くんのお嫁さんになる」なんて台詞も当然のように言っていた。 そして私は、湊くんを男の子として意識し始める。小学校時代、施設でもクラスでも人気な湊くんだったけど、誰にも奪われない自信があった。自分が「かわいい子」の部類に入るのは周りの目で分かっていたから。小さい頃から、私の隣には湊くんがいて、湊くんの隣には私がいる。「お似合い」っていう嬉しい言葉だって、何回かけられたか分からないくらいで。それは、ずっと、ずっと変わらないはずだった。 状況が変わったのは、中学に入る直前のこと。施設に同学年の女の子が一人、やって来た。それが、今私と湊くんのクラスメイトでもある、更級(さらしな)亜耶(あや)。 亜耶は、最初の頃は話しかけても首を振って簡単な応答しかしてくれなくて、笑顔もなくて。 それでも半年もしたら施設にもクラスにも慣れたみたいで徐々に口数も増え、笑顔も時々見せた。それでもやはり大人しい、静かな子には変わりなく、私は少しだけ安心していた。亜耶には湊くんはとられない、と。 それに、中学一年の夏祭りで、 「私、湊くんが好きなんだ」 と、亜耶の反応を知りたくて報告した時、私の予想と反して亜耶は 「見てれば、分かるよ。……応援してる」 と言って微笑んだ。 その後も、私たち三人はいつも一緒に生活をしていた。私は何回か告白されても断って、湊くんも、同じだった。しばらく経って、湊くんが告白を断っている理由が「好きな子がいる」だという事を友達から聞いて私は知る。その「湊くんの好きな子」は誰なのかというのは表でも裏でも噂が駆け巡っていた。 「村越湊の好きな子は、日向美子」。それが、最終的に噂の行き着いた結論だった。完全に信じていたわけではなかったけど、期待と自信は確かにあった。私を含めて、校内のほとんどの人がそれ以外の選択肢を持ち合わせていなかった。 湊くんのスキンシップは明らかに私に対するものが多い。頭を撫でたり、ごみを払ってくれたり。登下校だって部活が違うとか関係なくて、いつも二人で。たまに亜耶と時間が合えば一緒に帰ったりしていたけれど、亜耶はいつも学校へ行くのが私たちよりも三十分以上早い。そのためか、ほとんど一緒になることはなかった。 そして、中学二年の夏。告白したら湊くんの彼女になれるかもしれない、と思った。 だけど同じ頃、湊くんに対してある違和感を感じた。スキンシップを含め、私に対する態度があからさますぎること。まるで彼氏さながらで。周りから見ればきっとようやく二人は付き合っていると映っているのかもしれないけれど、私は気付いたんだ。湊くんの目に私が映っていないことに。 湊くんの視線の先にいたのは、亜耶だった。 最初は疑問しか浮かばなかった。私が亜耶に劣っているのは正直なところ学業と家事だけ。なんでだろう、とずっと考えていた。湊くんと亜耶が二人で話しているところなんて見たこともなくて、どちらかというと二人とも私を挟んで距離をとっているように見えていた。 それでも、湊くんが亜耶を恋愛対象で見ているのは確実だった。そして、亜耶の気を引くためか、嫉妬してもらいたいとかいう理由できっと私に優しくしてくれている。 それでも、私は嬉しかった。幸せを感じている。だって、湊くんが触れるのは亜耶じゃなくて、私。湊くんが笑いかけるのも亜耶じゃなくて、私。 多分、湊くんは私の気持ちに気が付いてる。そして、亜耶が私たちに気を遣っていることも。だから、湊くんはきっと亜耶には告白しない。湊くんが自分のことを好きだと亜耶が知ったら、一番苦しむのは亜耶だから。 そして私は、そんな亜耶の優しい心と湊くんの気配りに甘えてる。二人に甘えて、自分一人束の間の幸せを感じてる。そしてきっと、これからは彼の気持ちも利用してしまうんだ。彼もまた、優しいから。 「……あ」 いつも通り二人での下校中、ふと視線を私から今来た道に移した湊くんが、そんな声をあげて私を一瞥した。湊くんの向く方を見ると、クラスメイトで確かバスケ部の東間くんと三枝くんが並んで歩いている。私が笑って頷くと、湊くんは二人に向かって軽く手をあげた。 「……随分と、仲がいいんだな」 私たちに追いつくと、三枝くんが少し嫌味の含まれたようなトーンと表情でそんなことを湊くんに言った。 「幼なじみ、だよ」 湊くんは東間くんに向かってそう微笑む。 湊くんの得意げな表情に東間くんは「あぁ、そう」と少し不機嫌になる。だんだん表情も険しくなっていて、心の中で思いっきり舌打ちでもしてそうな顔。なんだか、少しかわいいとか思ってしまった。 「幼なじみって、いつごろから?」 東間くんの様子を見かねてか、三枝くんは歩きながら私たちに問う。 「んーと、美子が施設に越して来たときからだから、五歳くらい?」 「……施設?」 今度は急に、さっきまで不機嫌だった東間くんが私に聞いてくる。 「あ、うん。私たち施設暮らしなんだ」 「へぇ、じゃあ、住んでる所も一緒だと」 なんか、また不機嫌になりかけている東間くん。一方の三枝くんはそんな分かりやすい東間くんの表情を楽しんでいるようで、一人微笑みつつ、小さくため息を吐いていた。 「じゃ、俺たちはこっち側だから。また明日、二人とも」 駅に着き、方面が逆だったので湊くんの言葉をきっかけに、私たちは東間くんたちと別れた。 中学時代、湊くんは「俺は美子のボディーガードだから」と言っていた。施設の先生が、「年頃の女の子が暗い道を一人で歩くなんて……」と言った事が今の習慣のはじまりだったと思う。いつも、部活が終わって帰ってくる時、施設の前に立つと夕飯のいいにおいが漂ってくる。「あ、今日はカレーだ」とか、夕食の当てっこも昔からずっと、変わっていない。 「今日はあれだね、亜耶のハンバーグ」 「……うん」 湊くんは、施設の中から亜耶の作る夕食の匂いが漂ってくると、いつも途端に嬉しそうな顔をして、少し早足になる。そして元気に「ただいま」と言って、真っ先に台所へ向かう。 今日だって、ほら。 「ただいまー。亜耶、すぐ俺たちの夕食できる?」 そう言って、荷物を玄関に置きっぱなしで、すぐさまリビングの方へと向かおうとすると、亜耶がリビングの扉から顔を出した。 「あ、うん。おかえり二人とも。もう小学生は食べちゃったから、いつでもできるよ。荷物置いて、降りてきてね」 「あいよ。じゃ、美子、また後で」 湊くんは返事をしたあと私にそう言うと、駆け足で階段を上がって行った。私もちらりとリビングの方を見ると、亜耶が少し心配そうにこちらを見つめている。 「私も、着替えて来るね」 本当は、苦しい。だけど、亜耶に心配させるわけには行かないから、とびっきりの作り笑顔で笑いかける。 「あ……うん」 何か言いたそうな亜耶に気付かないふりをして、逃げるように自分の部屋へと階段を駆け上った。 高校に入って、余計に湊くんを意識するようになってから、毎日がつらい。湊くんの亜耶を見る目が切ないから。だけど、湊くんは誰にもとられたくない。 布団の中で一人、夏祭りまでに結果はどうであれ私の思いをしっかり湊くんに伝えよう、と決心した。 →次の章 第一話 一目惚れ←
https://w.atwiki.jp/yariba/pages/297.html
君はずっと知らないでいて欲しい【きみはずっとしらないでいてほしい】 公輝、斗真、里穂 「里穂ってさ、斗真の事好きだろ」 確信があっての問いかけ 「…えっ!?えぇえぇえっっ!?」 「声でけーよ」 里穂は多少大袈裟なくらいの反応を見せた 「なっ何で分かったの…?」 「何でって…里穂の好みまんまじゃん」 「たっ確かに…」 「それに見てりゃ分かるし」 そうだよ、見てりゃ気付くんだよ ―――嫌でも、な 「えっ嘘!?」 「そんな嘘ついてどうすんだよ」 「それ…本人には…」 「言ってない。多分本人も気付いてないと思う。鈍感だし」 だって、里穂からの視線に気付いてたら 俺からの視線にも気付くはず 「…本人には言わないでね?」 「言わねーよ」 それで斗真が里穂を気にしだしたら嫌だし ―――だって、俺、斗真が好きだもん ――― ― 「…何?」 「え?」 授業中に隣の席になった斗真をじっと見てたら気付かれた 「いや、ずっとこっち見てたから」 「あ、マジで?悪い、ちょっと考え事してた」 斗真が気付くぐらい見つめてたのか 少し恥ずかしい 「俺の顔に何か付いてんのかと思った」 「悪い悪い」 「そんな見つめるなよ。気になるだろ?」 ―――いっそ、気にしてくれたらいいのに 「分かった」 素直に従って前を見ると、前列の右端の方で里穂がチラチラ見ていたのに気付いた 隣を見ると、どうやら斗真は気付いてない様子だった いいな、と思った 気付かれないのも寂しいかもしれないが気付かれずにずっと見ていられるなんて羨ましい 何より、里穂が女である事が羨ましかった 「…何だよ」 ふと隣から視線を感じてそちらを見る すると斗真が俺を見ていて目が合った 「さっきの仕返し」 「もー…ちゃんと授業受けろよ」 「前田に言われたくねーよ」 斗真は可笑しそうに笑ったから、俺も一緒になって笑ったが 内心ドキドキだった 「誰見てたの?」 「え?」 「誰か見てたんじゃないの?百面相して」 「…別に誰も…ってか百面相なんてしてねーし」 「してたって!何か悲しそうな顔したり複雑そうな顔したり…」 俺は里穂を見ながらそんな表情をしていたのか 「お前何見てんだよやめろよ恥ずかしい」 「前田が先に見てきたんだろ?いいじゃん、前田面白かったし」 「面白がるなよなー」 「ははっ」 「コラ、前田に生田。そんなに俺の授業つまんねぇか?」 「「あ」」 気付いたら加藤さんがそばに立っていた 「ったく…珍しく授業出てると思ったら…生田はお前が居ないと真面目なのにな」 加藤さんは俺に向かって言った 「えー嘘だー斗真が真面目?」 「何疑ってんの、マジだよマジ。俺真面目だし」 「うっそだー斗真が真面目だったら俺も真面目だし!」 本当は斗真が真面目な事は知っていた だから最初は、ただ羨ましかった それがいつから“好き”に変わったかは分からない 「前田は生田と違って普段から不真面目だろうが。その証拠にその首にある装飾品」 「あ、これ?俺の体の一部」 「そうか、ならその着脱可能な体の一部は没収な」 「えー!マジで!?やだやだダメだって!」 「後で俺のとこ来い」 「…はーい」 加藤さんが手を差し出すので意味が分からす手を重ねると斗真に爆笑された そして加藤さんには「バカかお前。ちげぇよ装飾品外して渡せっつってんだよ。没収だっつったろ?」と言われた 「あーマジウケた!素でそういう事するんだもん」 「公輝そんな事したの?マナも見たかったー」 「伊倉さん病院行ってて遅刻したんだから仕方ないよ」 授業が終わった後、斗真は俺を見るなりまた爆笑し始めた それを見たさっき来たばかりの愛美が何事かと寄ってきた 「ホント病院なんて行かなきゃ良かったー」 「あの時加藤さんも驚き通り越して呆れてたし」 「だって何してんのか分かんなかったし」 「クラス皆爆笑してたもんなー」 「今度はマナも居る時にやってね」 「もうやんねーし」 少し恥ずかしいその話題を、俺は早く忘れて欲しいと思っていた だがしかし、自分の話を彼にしていて欲しいとも思った ――― ― 「なぁ、斗真の好きなタイプってどんな奴?」 瑛士が遅刻してきたある日 俺はまだ瑛士が来てないから珍しく斗真と2人屋上で昼食をとっていた 2人だけで話すのは久しぶりだった 「天然入ってて笑顔が似合う子かな」 「男?」 「女で。男でなんて勘弁してよ。そっちの趣味は無いし、気持ち悪いだろ?」 それはきっと、同性愛者を否定する意味じゃなく自分がそうだったら、という意味だろう だけど俺には 心臓を抉られるようなくらい残酷な言葉で 「ははっ…それもそうだな」 笑って言ったつもりのそれが、不自然になった 「何で?」 幸いにも、斗真はそれには気付いてなかった 「いや…知り合いにさ、女なら誰にでも手を出しちゃう奴が居てさ。もし今気になってる奴とか居るなら俺が言っといてやろうと思って」 それは半分瑛士の事で 瑛士なら俺から言わなくても、自分でその辺は上手くやっていけるだろうけど だが斗真は瑛士を知らない 「へぇー公輝、本当色んな知り合いが居るのな。気になってる奴かぁ…」 「誰か居るのか?心当たり」 「心当たりって言うか…最近ちょっと飯田さんが気になってるかな、みたいな」 ああ 2人はいつか近い未来に結ばれるのだろう だって、2人は両思いじゃないか しかもきっと、2人を結び付けるのは俺だろう 「へぇ…里穂かぁ…」 「あっ本人には言うなよ?」 「言わねーよ」 いつかの里穂に言われた時と、全く同じ返し方をした 「あ、公輝」 「…おう」 昼からの授業は出る気になれなくて、そして何となく風に吹かれたくなって屋上に行く そこには今日初めて会う瑛士の姿があった 「お前何処行ってたんだよ」 「授業でも出ようかなって教室に。あ、そうだ。瑛士、里穂には手出しちゃダメだからな」 「…ああ、いいけど」 柵にもたれかかった時、ちょうど向かいの校舎の俺達のクラスに、斗真と里穂の姿が見えた 「…好きなのか?」 「え?」 2人が仲良さげに笑いあって話しているのをぼんやりと見ていると、隣に並んで同じように柵にもたれかかった瑛士が俺に聞いた 「里穂ちゃんってあの子だろ?公輝の幼なじみの」 ちょうどあそこに見える子、と瑛士が指差した 「うん」 「好きなのか?」 瑛士は俺を見てもう一度聞いた 「…いや」 「?じゃあ何で」 「斗真が気になってんだってさ」 ほら、今一緒に居る子 そう言うと瑛士はまた二人を見た 「…好きなのか?」 また同じ質問 だけど今度は里穂の事じゃなく、斗真の事 「…好き…だよ」 自分で思っていた以上に弱々しい声が出た 「…そっか」 「…さっきさ、『男は勘弁してくれ』って『気持ち悪いだろ?』って言われた。気持ち悪いってのは自分が、斗真自身が男好きだったらって事だろうけど」 それでもキツいよなこの言葉 そう言った俺の声が、自分自身が思っている以上に自分はショックを受けている事を証明した 「…ごめん瑛士、瑛士もそういうの嫌いだったら今の話、」 「嫌いじゃない。前から興味はあった」 「…そっか」 前から興味はあった、なんてサラリとすげー爆弾発言だな そう考えて、何も深く考えずに 「…そういう経験、してみる?俺と」 そう口にしていた 「…そんな泣きそうな顔して言われたら、断れねーだろ」 「あー俺今そんな顔してんの?…いいんだぜ?断っても」 「いや…断る気なんてサラサラねーよ」 「そっか」 そうやって誰かを巻き込んで この思いは無かった事に出来ればいいのに ――― ― 「公輝ー!」 「ん?何?」 「里穂ってこういう映画平気!?」 あれから何日かして、斗真は里穂と付き合い出した そしてちょっとした心配事ややりとりについてなど色々な事がある度に斗真か里穂のどちらかは俺に報告したり相談したりする ―――同性だからか、斗真からの相談のが多いが 「それくらい本人に相談すればいーじゃん」 「だって里穂には楽しんで欲しいしさーちょっとしたサプライズな感じのが嬉しいかなって」 「バカじゃねーのお前。一緒にデートの計画立てるのも楽しみの一つだろ」 「そうそう。それに里穂みたいなタイプはサプライズより一緒に計画立てる方が喜ぶって」 今日はたまたま瑛士と一緒に居る時だったから良かった ――― ― 「そっかーなるほどね!いやー公輝に相談して良かったわ」 「そりゃどーも」 「それじゃ早速里穂のとこ行ってくる!」 斗真は嬉しそうに笑うと急いで里穂の居る教室へと向かった 「…もう平気なのか?」 斗真が出て行った扉をぼんやり見つめていると、瑛士が言った 「何が?」 「斗真の事、もう諦めたのか?」 「…ああ、それ?…うん…っていうか斗真が幸せならそれでいいよ」 好きな人には幸せで居て欲しい なんて俺は乙女なんだ なんて俺は良い人なんだ ―――諦めれてなんか無いけど 「…泣きたきゃ俺の胸貸しますよ?」 「泣かねーよバーカ」 「そー。ならいいけど」 瑛士と2人、俺のクラスの教室前の廊下が見えるフェンスへと移動し、もたれかかる ちょうど斗真が急いで教室に入るのが見えた 「………瑛士」 「ん?」 「胸はいいから手借りてもいい?」 「おう、いくらでもどーぞ」 いつかこの想いが消えてしまって 俺がちゃんと心の底から2人を祝福出来るようになるように 今日もただ願っている事を どうか、君はずっと知らないでいて欲しい
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/34928.html
あおのおもいで【登録タグ FloatGarden あ 初音ミク 曲】 作詞:FloatGarden 作曲:FloatGarden 編曲:FloatGarden 唄:初音ミク 曲紹介 イラストはあてごや 氏が手掛けている。 歌詞 (FloatGarden(作者HP)より転載) 君と海の方に 行ったことを 褪せた写真を見て 思い出していた ふわり 春の風が 君の髪を 乱して 僕に 直してと 背を向けて 目を瞑った 格好悪いことに 僕の手は震えていて なるべく君に触れないように なんとか 栗色の髪を直す 僕は恋愛の難問を 優しさに すり替えて 解こうとした 君のことが好きだから 大好きだから 抱きしめられずにいた You leave the knot somewhere in the world to protect our fragile bonds. Memories of us will shine beautifully forever. In black and white and blue. 君は笑顔のままで 揺れる波打ち際で 水と戯れて はじける 青を見ていた 僕は 踊る君の 姿 捉えきれずに そこに 寝転んで 見上げる 青を見ていた 君は 不意に見つめて 「おかえり」と 笑うから なるべく君に触れないように 僕は「ただいま」と かえした 僕は恋愛の難問を 永遠に すり替えて 解こうとした 君が君のままでいて 幸せで 僕は 青に溶けてゆく (間奏) 君は 幸せについて ある時 僕に訊ねた 君の 静かな 激しさを 僕は 冬に咲く 白い花に たとえた 僕は恋愛の難問を 思い出に すり替えて 解こうとした 君のことが好きだから 終わらせた その青い物語 (どれだけの 時間 ながれて) (きみ ぼく かわってしまっただろう) (僕らの青春の 答え合わせをしよう) (素敵な 後日談を つけよう) 僕は恋愛の難問を 優しさに すり替えて 解こうとした 君のことが好きだから 大好きだから 抱きしめられずにいた 君と街の方に 行ったことを 褪せた写真を見て 思い出していた 二人 人混みの場所で 待ち合わせして 君が 僕を見つけて ふと 笑顔になったこと コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/693.html
606 「confession」 (1/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/11(水) 06 08 13 ID jtHKhgx1 「折角のお誘い悪いんだけど、妹が家で待ってるから、帰らせてもらうよ」 「妹なんてほっときなさいよぉ。気にしなきゃ、家で男咥えこんで喘いd」 「少し黙ってくれないかい? 俺には、君を殴らない自信なんてないから」 「な、何よぅ……ぅあ、ご、ごめんなさい…………」 気分の悪い夢を見て、目が覚めた。 夢の内容は、2ヶ月前の職場での飲み会の席の一幕だった。 酔っ払った同僚の女性達に、しつこく絡まれて、つい怒った大人気なかった日。 でも、妹のことを貶されたくはなかった。俺は―― 「兄(にい)、おはよう。悪いんだけど……」 部屋の扉を開け、妹が入ってきた。毎朝妹が来るため、鍵は締めていないのだ。 「おはよう。わかってるよ、ちょっと待t」 会話の途中だったが、突然妹に唇を塞がれてしまった。 どうも最近、妹の我慢が効かなくなってきているらしい。 「ん……ちゅ……むぐ…………」 俺に口付けた状態で、勢いよく唾液を啜りとる妹。 それだけではなく、舌をかきいれてきて、直接唾液を奪い尽くしていく。 その一連の行為を、俺はただ黙って受け入れている。 「にゅ……ふ…………ぷはっ」 ようやく妹の「衝動」が治まったようだ。同時に俺から唇を離す。 妹は――いつも通りの、申し訳なさそうな表情。 「大丈夫か? まだ足りないなら、もう少し」 「大丈夫。大丈夫だから……ごめんなさい」 いつものように謝ってくる妹。別に構わないといっても、やはり謝ってくる。 そんな妹に、俺は優しく励ましてやるようにしている。 「仕方ないよ。おまえの身体は、こうしないと死んでしまうんだから」 ――DNA dependence。 日本では「生体組織依存症」などと呼ばれるこの病気。 21世紀になって数年としないうちに、全世界に流行した狂気の病。 厳密な症状や治療法は確立されていないが、有名な特徴は次の3つ。 ――この病は、精神病にして、外部感染による繁殖力をもつ特殊な病気である。 ――感染因子保有中に、誰か他人の生体組織を摂取すると、95%の確立で発症する。 ――発症すると、最初に摂取した誰かの生体組織を定期的に摂取しないと、衰弱死する。 1年前、妹はそんな恐ろしい病気を、発症してしまった。 この病に侵されてからというもの、妹は自分の将来を諦めて、家に閉じこもるようになった。 父親は10年前に他界し、母親は敏腕弁護士として遠方の地で働き、家計を支えている。 そうして、家には妹と、妹の看病のためにという理由で自分の、あわせて2人が残った。 かわいい妹が元気になってくれるなら、望んでいた遠方の就職先なんて、どうでもよかった。 なのに、妹は自分のことを恥じて疎んで、憎んでさえいる。 妹が自らを嫌悪の対象にしている理由、それは明白だ。 この少女の「依存相手」――摂取対象は、俺――つまりは「実の兄」なのだ。 「――わかった。じゃあご飯ができたら、また呼びに来るね」 「ああ、それじゃあ」 妹と他愛ない会話を交わし終えて、俺は再びベッドの上に倒れこむ。 今日は仕事が昼から、と言った時の妹の表情を思い出す。 とても嬉しそうだった――けど、俺は一緒にいることを断った。 あの表情を見せた妹を見ていると、自分の方が、我慢できなくなるからだ。 わかっているんだ。妹が俺を愛していることは。 わかっていたんだ。俺も妹に恋していることに。 607 「confession」 (2/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/11(水) 06 09 00 ID jtHKhgx1 でも、今すぐ妹の気持ちに応えて、そういう関係を持つことはできない。 別に近親相姦が怖いわけではない。今の摂取――キスにも何の抵抗もない。 それでも、俺は、妹と少しでも長く、一緒に生きて、共に暮らしていきたい。 だから、妹と今以上に近づくことは、できないんだ。 たとえ、いま扉の外に居るだろう妹が、俺からの「愛撫」を求めていようとも。 「生体組織依存症」は、現状では治療法のない、不治の病と言われている。 あくまで「摂取」のみが一時的に衰弱症状を和らげる手段で、それ以上はない。 そして「摂取」でさえ永遠の有効策ではない、ということも、俺は知っている。 例えば、食用調味料。例えば、薬物依存症。 アレは、摂取を続けるうちに身体が慣れ、より多い量、そして次の段階を求める。 「生体組織依存症」も、要するにそれとまったく変わらない。 唾液で済む現状は、やがて血液や精液・愛液の欲求へと進行し、やがて最後に―― 考えたくもない悪夢。「依存対象」を殺し、時間を置いて結局「患者」も殺す。 だからと言って、摂取量を抑制し続ければ、患者は衰弱し、発狂し、死に至る。 こんな病気、誰かが悪意を持って生み出したとしか考えられない! 唯一の救いにして最大の悲劇は、「患者」と「摂取対象」同士の関係性がカギであること。 最も信頼し合い、また愛し合うもの同士のみが、この病に苦しむというのだ。 「dependence」という単語には、「依存」の他に「信頼」という意味があるらしい。 この病の名づけ親も、よっぽどタチの悪い性格をしていたんだろう。 この病は、「患者」と「依存対象」との「信頼」を糧に増長する、まさに悪魔だ! いま妹を受け入れて、キス以上の関係に発展すれば、それだけ妹の病は進行する。 そして、性的関係を結ぶうち、妹は「摂取」の欲求に耐えられなくなり、俺の肉を―― だから、今以上に仲良くしていてはいけない。長く生きたいなら。 本当は離れて暮らしながら、定期的に妹のところへ、血液を届ければいいはずなんだ。 実際、病に冒された人間への対処方法は、世界基準でもそんな方法しかないのだから。 それでも、俺は妹と共に居ることを決めた。 それを決めた時、学校関係者や友人達、そして当時の就職先にはかなりの迷惑をかけた。 遠方に暮らす母親には、「自分を捨てるなら、好きなようにすればいい」と言われた。 妹には、やっぱり泣かれてしまった。一時は「摂取」を拒むほど悩んでいたくらいだ。 それでも、やっぱり俺は、愛おしい妹と、一緒に居たかった。 「はははは……笑わせる。本当はそんな資格なんてないのにな」 俺は目元を両手で押さえて笑う。妹には聞こえない程度の小声で。 本当は聞こえていて、今すぐにでも扉を開けて入ってきて欲しいくせに。 情けないよな。妹に嫌われたくないから、本当の事を言えないなんて。 けど、このことを話しても嫌われないという確信もあるから、嫌なんだ。 妹が発症した原因は、妹本人から聞いている。 妹が、寝ている俺の唇を、無理矢理にむさぼったからだ。 けれど、どこで感染源から病の因子をもらったかは、妹は知らない。 知っているのは俺だけだ。いや、正確には俺が悪いんだ。 妹が病の因子に感染したのは――俺が寝ていた妹に、キスをしたからだ。 608 「confession」 (3/3) ◆6AvI.Mne7c sage 2009/03/11(水) 06 10 32 ID jtHKhgx1 それは、妹が俺に夜這いをかけた原因、恋人を作った一件まで遡る。 あの時の俺は、明らかに、妹に対して良からぬ眼を向けていた。 そんな最低な自分に悩みながら、妹と笑いあい、学業をこなし、就活を終えて―― いざ卒業の日、という時に、大学の同級生だった女の子から、告白された。 あまりそういう場面に耐性がなかった俺は、彼女にキスされて、半ば脅された。 おそらく、あのキスの際に、俺が病の因子を、彼女から貰ってしまったのだろう。 結局その日は返事をせずに家に帰り、リビングで寝ている妹に遭遇した。 あの告白の時も、キスされた時も、妹の顔ばかりが浮かんでいた自分。 このままでは、妹の将来にさえ、自分が多大に干渉し続けるであろう、恐怖。 だから、吹っ切るつもりで、あの同級生からの告白を受けることにした。 だから、決別するつもりで、眠っている妹の唇に、口付けてしまった。 その後の顛末は、あまりに情けなさ過ぎて、いまだに思い出すのも辛い時がある。 告白を了承して、晴れて恋人同士になったことを、妹に報告した。 その夜、実は両思いだった妹に、俺がしたようにキスされて、妹が病に倒れた。 それを聞いて、俺は恋人より妹を選び、その場で元恋人に別れを告げた。 三角関係とか、泥沼とか、そんなチャチなもんじゃ決して無い、真の修羅場を味わった。 そうして、俺は今もなお、妹の傍に居る事ができている。 内定していた就職先を変え、自宅から近くて、さらに時間に余裕のあるものを選んだ。 大学での学業成績や、自分の才能を捨てる行為。家族を含め、いろんな人から責められた。 正直なところ、今でも充分に後悔している。 けれど多分、そうしないと、もっと後悔していたのだろう。 俺は、少しでも生きて、妹と共に暮らしていきたい。 それが、結果的に妹を長く苦しませてしまう原因になろうとも。 今、妹が必死で、自慰などに頼って「恋」や「摂取」の衝動を抑えていることも知っている。 抑えなければ、欲望のままに俺を襲い、処女を散らせながら愛欲に溺れるであろうことも。 一緒に居る事で妹を苦しませているが、これは俺の身勝手なワガママ。情けない俺の願い。 最後に妹が耐え切れなくなるまで、妹には悪いが、俺は今の立ち位置を崩さない。 俺は最低だ。近親相姦も、殺されることも怖くないくせに、妹に我慢をさせる、最低の兄だ。 きっとこの先、妹が耐えられず襲ってくるまで、妹の愛を否定する、最低の兄だ。 ――でも。それでも。願わくば、俺が妹に殺されるその日まで、妹の傍にいられますように。 そう心の中で呟き、俺は部屋の前から離れていく妹の事を想っていた。 ― END ―