約 1,861,608 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/424.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/どこにでもあるハッピーエンド 目覚め いつもと変わらない景色。 右を見ても左を見ても、そして天井を見上げても、そこには上条当麻が普段から見慣れたとある病院の、とある一室があるだけだった。 大きな戦いで彼が大怪我を負って入院するたびに使用する場所。 特にここ数ヶ月はあまりにも頻繁に使用するので、上条にとっては馴染みになってしまっている病室だった。 どこも代わり映えはしない。 たった一つの違いを除いては。 それは、ベッドで眠る患者が上条ではなく御坂美琴で、ベッドの横で彼女を心配そうに見つめるのが美琴ではなく上条であるという点だった。 「どうしてこんなことになっちまったんだ」 上条はベッドで静かに眠る美琴を見ながら辛そうに顔を歪ませた。 事の起こりは一週間前にさかのぼる。 その日上条当麻は、ある目的を持って学園都市に侵入してきた敵と戦った。 上条には理解できない目的を持っている者だったが、とにかく彼と彼の大切な人たちの幸せをその敵が壊そうとしていたことだけは確かだった。 そしてこれはいつものように上条がたった一人で死にもの狂いで行う戦いのはずだった。 自分以外の誰も傷つかないために。 だがその戦いはいつもとほんの少し、いや大きく違っていた。 上条の側には学園都市第三位の能力者、超電磁砲、御坂美琴の姿があったからだ。 上条の本音からすれば美琴を妹達の件以降、二度と危険なことに巻き込みたくはなかった。 特に今回の敵は魔術側に属する敵、美琴のためにも本当は絶対に関わらせてはいけない敵だった。 逆に美琴からすれば上条の記憶喪失を知った以上、彼への恋心を自覚した以上、彼一人を危険な目に遭わせるわけにはいかなかった。 好きな人と一緒にいたい、その人の力になりたい、美琴は純粋にそう願った。 そんな彼女からすれば、半ば強引であろうとも上条の戦いに参戦するのは至極当然のことであった。 少しの口論の後、結局二人は互いが互いをかばい合うように敵に相対した。 激しい戦いの末、上条達は敵を追い払うことに成功した。 だが負けを悟った敵は立ち去る寸前、不意打ち気味に上条に対して最後の攻撃を放った。 虚を突かれた上条には絶対にかわせない攻撃だった。 もうダメだ、と上条が思った瞬間、激しい爆発音が響いた。 しかし上条は全く痛みを感じることはなかった。 不思議に思った上条が爆発のあった方を向くと、そこには超電磁砲を放つ姿勢のまま立ちつくす美琴の姿があった。 上条が美琴に近づくと傷だらけの彼女の体はグラリと傾きゆっくりと倒れはじめた。 慌てて美琴を抱き留めた上条だったが、彼女の顔に全く生気がないことに気づいた。 「ちょ、御坂、どうしたんだ?」 表情を険しくした上条は美琴の体を揺すったが、彼女が反応する様子は全く見られなかった。 「おい御坂、御坂、しっかりしろ。しっかりしろおい、返事しろよおい!」 だがどれだけ上条が声をかけても美琴が目を覚ますことはなかった。 「起きろよ御坂、起きろてくれよ。起きてくれよ御坂、御坂、み坂……みさか――!!」 一週間前の戦いを思い出しながら、上条は悔しそうに唇をかんだ。 「どうして、こんなことになってるんだろうな」 上条はこの一週間、何度となく繰り返した言葉を呟いた。 「俺は、お前に、二度と傷ついて欲しくなんて、なかった……のに」 しかし美琴からの返事はない。 彼女はただ静かにベッドの上で眠り続けるのみだった。 ベッドで眠る美琴、椅子に座りその様子を辛そうな表情でじっと見つめ続ける上条。 二人が病院に来てから一週間、毎日続いている光景だった。 美琴より怪我の程度が軽いとはいえ上条も入院患者だったため、病院のスタッフも入院当初は上条の行動を諫めようとした。 しかし美琴を純粋に心配する上条の態度にやがてどのスタッフも上条の行動に干渉しなくなった。 もっともこれには病院の常連であり、かつ異常なまでの回復力を持つ上条だからこそ許された行為ではある、という事情もあるのだが。 とにかく入院が始まってからの上条の生活は美琴を中心に回っていた。 朝、朝食が済むとそのまま上条は美琴の部屋を訪れた。 部屋に入った上条はベッド脇の椅子に腰掛けると、心配そうにただひたすらじっと美琴を見つめていた。 昼になってもずっと上条は美琴の側にいた。 そんな上条が部屋を出て行くのは美琴の友達が見舞いに来るときだけであった。 特に美琴のルームメイトである白井黒子は毎日必ず見舞いに来ていた。 彼女たちが美琴の部屋を訪れる時はじめて、上条は自室に戻るのだ。 そして美琴の友達が退室すると再び上条は美琴の部屋に。 就寝時間になるまでずっと上条は美琴を見つめ続けた。 ロマンス好きの病院スタッフに言わせると、「まるで眠り姫の目覚めを待つ王子様みたい」ということになるのだが、そう言われても否定できないほどのひたむきさで上条は待ち続けていた。 入院してから今まで、決して目覚めない美琴が目を覚ますのを。 そして今日もまた、そんな一日が終わろうとしていた。 夕方、医者による検査を終えた上条は自分の部屋に戻ることもなく美琴の部屋に入ると、まるでそこが自分の定位置だと言わんばかりに、自然な動作でベッド脇の椅子に腰掛けた。 「御坂、やっぱり目、覚めたりしてないよな……」 上条は美琴が目を覚ましていないことを確認すると小さくため息をついた。 「カエル医者は、お前はもう治ってる、いつ目を覚ましてもおかしくないって言ってたんだけどな。やっぱり、俺がお前の変わりになってれば……」 上条は思わず口をついて出た自分の言葉にはっと息をのむと、頭をぶんぶんと振った。 「違う違う違う、そうじゃない、そうじゃない! そうじゃないんだ、これじゃダメなんだ!」 上条は一度大きく深呼吸をしてから美琴をじっと見つめた。 「なあ御坂。俺、さっきカエル医者に怒鳴りつけられたんだ『君はこの一週間、ずっと彼女を見舞っているのにまだ気づかないのかい?』って。ほんと、情けない話だ。言われて初めて気づいた。お前を助けるために俺が傷ついたら、いや、誰かが傷ついたら、それだけで悲しむ人はいるんだって、そんな単純なことに俺は気づいてなかったんだ」 がばっと上条は頭を下げた。 「本当にごめん。カエル医者から聞いた。インデックスが来てたのは知ってたけど、俺が怪我して寝てる時ってお前はいっつも俺の見舞いに来てくれてたんだってな。心配かけてごめん、それから、ありがとう」 その瞬間、かたっと言う物音がしたが話に夢中になっていた上条はまったく気がついていなかった。 「んにしてもこういうことに全然気づかないって、本当俺って頭悪いよな。まあ、よくよく考えりゃ中学生のお前に勉強教えてもらうくらいだし、補習の常連だし、これじゃ高度な演算ができないレベル0なのも当然か。いや、こんなこと言って努力しないから吹寄から『私は不幸を理由に努力をしないあなたが嫌い』って言われるのか。ああもう、何言ってるんだ俺、今こんなこと関係ないだろ」 イライラしたように頭をかきながら、上条は話し続けた。 「段々自分でも何言ってるか訳わかんなくなってきた。くそう、もうなんでお前がこんな大怪我しなきゃいけないんだよ。だいたい華奢な体してるくせにあんな戦いに飛び込んできやがって。自分が戦闘訓練受けたわけでもない普通の女の子だってこと忘れてんのかよ――って違う! これも違う、こんなこと言いたいんじゃない! お前にお礼が言いたいんだよ、俺は!」 ここでいったん言葉を句切り、上条は自分にできる一番優しい表情を浮かべた 「助けに来てくれて、一緒に戦ってくれて、俺をかばってくれて、本当にありがとう。あの時、お前が来てくれて本当に嬉しかった」 美琴の顔にほんのり赤みが差した。 だがやはり上条が気づくことはなかった。 「そういやお前とこんな感じで話すのって初めてなのかな、いつもけんか腰だったから、お互い」 ここまで一気に思いを吐露した上条は目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。 息を吐きながら今日はやたらと冗長な自分に気づいた。 普段の自分なら言わないようなことまで言っていた。 理由はわかっていた、さっき自分と美琴の主治医である冥土帰しに注意をされて以降、やたらとテンションが上がっていたためだ。 でもそれは嫌な気分ではない、むしろ逆だった。 冥土帰しの言葉をきっかけに思い返しはじめた過去の戦いや過去の出来事。 それらを一つ一つ思い返すたびに、以前から感じていた胸の奥のむず痒さがぶり返してくるのだ。 そのむず痒さはいつ始まったのかはもうわからない。 一週間前、一ヶ月前、いや、御使堕しの事件の頃には既に始まっていたような気がする。 それは上条当麻の中にある不定形でむずむずとした気持ちの悪い感情。 だが今、上条にはハッキリと確信が持てていた。 今のむず痒さは嫌なモノではない、と。 あとはむず痒さが嫌なものでなくなった原因がわかり不定型なモノが形を持てれば、とても嬉しいことが起こる、そんな予感がしたのだ。 だからこそテンションはいやがうえにも上がり、普段言わないような言葉が口をついているのだった。 「正直記憶がない俺にはお前とどれくらいの付き合いなのかわからない、俺が覚えてるのって妹達の時からだからな。でも、それからでも結構いろいろあったよな。御達のこともそうだし、偽のデートもやったし、地下街で会ったこともあった。大覇星際の借り物競走に、そのあと一緒に写メ取って……そうか。そうか!」 原因がわかった。 思い出、美琴との思い出だ。 口にして、言葉にしてようやくわかった。 美琴との思い出が頭に浮かぶたびにむず痒さが激しくなり、嫌なものでなくなっていくのだ。 それと同時に上条はもう一つの事実にも気づいた。 「なんでこんなに調子狂ってばっかりなのかやっとわかった。お前が寝てるからだ。お前と全然話してないからなんだよ」 上条は毛布から出ていた美琴の手をやさしく包み込むように握った。 本当ならば眠り続けている美琴が動くわけもないのに、テンションが上がりすぎている上条がその異変に気づけるはずもなかった。 何しろ今の上条の心は今まで感じたことのない想いでいっぱいになり始めていたのだ。 胸のむず痒さが嫌なものでなくなり、更には胸の奥がほんのりと暖かくなってきていた。 もう少し、もう少し時間をかければ不定形も形を持てそうだった。 今までにない感情の中、上条は素直な気持ちで美琴に声をかけていた。 「お前って、もう俺の側にいて当たり前なんだ。ビリビリやって、大声でわめき合って、泣いて、怒って、笑って、お前とワイワイやって、やっと俺、日常に戻れるんだ。あんな化け物みたいな連中とめちゃくちゃな戦いやったあと、お前がいるから日常に戻れるんだよ。お前がいてくれないと、俺もう全然ダメなんだ、普通じゃいられない」 不意に、上条の目に涙が浮かびはじめた。 テンションが上がりすぎて、心が素直になりすぎて、感情の抑えが効かなくなっていたのだ。 美琴に元気になって欲しい、その想いで心があふれかえりそうだった。 「本当に、目、覚ましてくれ。お前に話したいこと、聞いてもらいたいこと、たくさんあるんだ。一緒にやってみたいことも。それから、あれももうちょっとでなんとかわかりそうなんだ。でも、お前がいないと、起きてないと、なんにもできないし、始まらない。だから、だから……。起きてくれよ、美琴。美琴、美琴、みことぉ……!」 美琴の手を握りしめながら涙で声を詰まらせた上条は、それ以上声を出すことができなかった。 「今起きたら、私の言うことなんでも聞いてくれる?」 「……ああ」 「なんでもって、一回じゃないわよ。二回でも三回でも、ううん、私の気が済むまで聞いてもらうわよ。覚悟できてる?」 「任せとけ、上条さんは男の子だ、男に二言はない」 「気が済むまでなんだから、何日でも何年でもなんだからね」 「ちょ、おま、さすがに何年は――ん?」 ここに来てようやく違和感を覚えた上条は声のした方を見た。 そこにあったのは、寝たままではあったが瞳を潤ませ、穏やかな笑みを浮かべて自分を見つめる美琴の姿だった。 美琴は上条に握られていない方の手で目尻をぬぐい、ぱちぱちと瞬きをした。 次の瞬間上条の目の前には、頬を赤く染め瞳を潤ませてはいたものの、いつもの、上条が会いたがった美琴の笑顔があった。 「まずは私のことはきちんと名前で呼びなさい、ビリビリ禁止、名字もダメ」 「え……えと、みさ……みこ――美琴!? お前、いつから起きてたんだ!?」 「今さっき。具体的には『御坂、やっぱり目、覚めたりしてないよな』のあたりから」 「それって一部始終! あれ? え、えと、えと――」 美琴から手を離した上条はしゃがみ込んでしばらくうんうんとうなると、申し訳なさそうに先ほどとは別の意味の涙目で美琴を見上げた。 「すいません御坂さん。上条さんは一体何を言っていたんでしょうか! 全く記憶にないんですが!」 「記憶喪失ネタはもういいわよ。それとも何? この眠ってた美少女中学生のあまりの可憐さに我を忘れて無意識であんなことやこんなこと言ってたの? あーあ、美しいって罪ね。それからもう一度言うわよ、私のことは名前で呼びなさい」 上条はさーっと顔を真っ青にした。 さっきはテンションが上がりすぎていて自分が何を言ったのかはまったく覚えていなかったが、美琴の様子からかなり恥ずかしい、まずいことを言ったのだけは間違いなかったからだ。 「あんなことやこんなことって? 本当に上条さんはさっき自分が何を口走ったのか、ほとんど覚えていないんです!」 「ふーん」 「で、ですから、なんでも言うことを聞くというのは」 「却下」 「即答ですか? 一刀両断ですか? ですからさっきから言ってる通り上条さんは」 「その控訴は棄却されました。上条当麻は御坂美琴の言うことをなんでも、いくらでも、私が満足するまで一生聞くという法案は満場一致で可決されました」 「横暴だ! て言うかさっきより項目増えてるだろう! さっきまで昏睡状態だったのに口だけはえらく元気だな、おい!」 「ずっと寝てたんだから体力ありあまってるに決まってるじゃない。さ、まずは私の質問にきっちり答えてもらいましょうか。アンタには聞きたいことがたくさんあるのよね。まずはアンタとインデックスって子の関係よね。それにさっき言ってた吹寄って人は誰? どうも女の人っぽいんだけど」 指折り数えながらジト目でこちらをにらみつける美琴だが、当の上条は先ほどの自分の発言内容を思い出そうと必死でそれどころではなかった。 「それにしても俺は一体何を口走ったんだ……ん?」 上条は目をごしごしとこすった。 「錯覚?」 「こら、無視しないでさっさと答えなさい! インデックスって何者? それから五和って子は? あと黒髪の巫女さんにやたら胸が大きくて露出狂の侍! ロリ教師に巨乳の眼鏡! まったく、アンタは一体何人の女を口説いてるのよ! それにどうして胸の大きな子が多いの!」 「まさか、な」 先ほど一瞬だけ上条に見えた物。 それは真っ赤な鎖とそれに結びつけられた真っ赤な首輪。 首輪は上条の首にがっちりとはめられ、鎖の端は美琴にしっかりと握られていた。 「錯覚か? 錯覚、いや幻想だ。幻想に違いない」 青ざめた顔でうんうんとうなずく上条だが、その間も美琴の話は続いていた。 「まあその辺はおいおい白状してもらうとして、他行きましょうか。じゃあねえ……こ、ここ今度の日曜、セブンスミストに行くわよ! ゲコ太のショーやってるの。あ、朝からゆ夕方まで都合五回、全部の講演見るからね!! 一日中付き合ってもらうわよ!!!」 「……結局言うこと聞くってのは決まりな訳ね。あー、ふこ――でもないのか、結構」 いつもの口癖を呟きかけた上条だったが、笑顔で日曜の予定を語る美琴の顔を見ているとそんな気はあっさりと霧散していった。 上条は右手をそっと胸に手を当てた。 「でもあれは、なんだったんだろう?」 上条の心に浮かんだ不定形のモノ、結局それは不定形のまま。 形になるまではまだもう少し時間がかかりそうだった。 「ちょっと、話聞いてるの? 日曜日はいつもの公園で朝九時に待ち合わせ、いいわね! 来週以降もきっちりスケジュールは空けてもらうわよ!」 ――こ、この大バカ! 人が寝てると思ってなんてこと口走ってるのよ! あんな恥ずかしい、頭ぐちゃぐちゃになること! しかも言うに事欠いて覚えてないですって!? もう、もう、もう!! ――覚えててなくても、いいよ、今回だけは許してあげる。だから、いつか起きてる私に、ちゃんと言ってくれる? それまでは、私が、覚えててあげるから。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/どこにでもあるハッピーエンド
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/306.html
小ネタ Go to part3 上条「おい」美琴「なによ」上条「パート2、もう埋まっちまうぞ」美琴「うそっ!? まだ3週間ちょっとよ!パート1は2ヵ月半近くかかってたのに!」上条「何気にばかにするな。ま、作者が増えて来た証だろ」美琴「……まぁ…そりゃそうだけど…」上条「何だよ、もどかしいぞ」美琴「……なんでもないわよ…」上条「…俺達がいちゃいちゃしてるのを見るのが嫌なのか」美琴「ちがっ! …じゃなくて、なんか、こー……やっぱなんでもないっ」上条「はぁー… アレだろ、それ見て、楽しくてにやついてんだろ」美琴「っ!! …そうよ、悪いっ!?」上条「別に悪くはないさ、ていうかキレんな」美琴「……だって……」上条「ほら、もうすぐパート3だ。まだまだ書いてくれるんだから楽しもうぜ、なっ?」美琴「…分かった」上条「ほら、拗ねるなって。笑って終わろうぜ」美琴「………」上条「みんな、俺達が好きなんだ。お互いを好きなんだ。それだけだ、別にからかってはいないぜ?」美琴「分かってる、わよ… …よしっ!」上条「つーわけでみなさん」美琴「次もよろしくね!」上条「御坂がにやにやするいちゃいちゃを随時お待ちしておrぎゃあああ!!」バリバリバリ美琴「よけーな事は言わんでいいっ!」 ――――――Go to part3:http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1341.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/鶴の恩返し -⑫後日談 みんなでプールへ行ってみようか プール編- 少し時間は戻り………駐車場。 「ハァ…どうしてこんなことになってるじゃん」 バスの中、黄泉川は困っていた。 忘れ去られたように最後列でグッタリしている小萌先生の生徒が一人いた為だ。 「これは……引きずって行くしかないじゃんね」 はぁ…と一つ大きな溜息をつき、黄泉川は未だに気絶している青髪ピアスを引きずってバスを降りた。 プールの受付ホールでは小萌と寮監がベンチに腰掛けて話していた。 「やっぱり息抜きは必要ですよね」 「そうですね、寮にいるとやはり終始目を光らせてないといけませんから」 そういう他愛のない話をしているが、小萌はあることに気付き寮監に聞いた。 「それは大変そうですねー、でも今、寮監さん楽しそうな顔してましたよ」 そう、今少し楽しそうに笑ったのだ。 「まあ、手のかかるのが数人いるだけですが…この仕事結構好きですから」 ああ、寮監さんもやっぱり子供が好きなんですね。小萌はそう思った。 「やっぱり好きな仕事が出来るのっていいですよね」 「ええ、そうですね」 そんな風に話していると黄泉川がやって来た。 「こいつ置いてくなんて小萌先生も寮監さんも酷いじゃん」 黄泉川と一緒に、途中で回復した青髪ピアスが受付ホールに入って来た。 「「……………」」 小萌と寮監は、すっかり忘れてた為に沈黙。 「先生方ひどっ! 絶対みんなも忘れてるはずや……どうせ、忘れられてるんや……」 激しく落ち込んでいる青髪ピアス。 それから、4人は各自のロッカーに向かっていくのであった。 □ □ □ 一方その頃 水着に着替えた面々は、この施設で最大級の中央プール付近に集まっていた。 白い椅子に座る上条と土御門、土御門の傍に立つ舞夏。 「いやー、やっぱり夏といったら水着だにゃー」 アロハ柄の黄色の水着の土御門。 「兄貴、それはいいけどわたしの友達に変なことしたら許さないぞー?」 何故か舞夏はメイド服のままであった。 「水着じゃなくていいのかよ」 「ん? これはだなー上条当麻」 そうもったいぶる様に言うと共に、舞夏はメイド服を脱ぎだす。 「ちょ、おいっ!」 上条の過剰の反応に舞夏は黒い笑み。 「ふっふっふ、何を慌ててるんだー? 下は水着に決まっているだろー」 ………すごく心臓に悪い行為だった。 そこから少し離れたプールサイド。 そこには、黒の水着を着た少年と淡い水色にヒマワリの模様が入った水着の少女。 「ねえねえ、ミサカのこの水着はどお? ってミサカはミサカはさっきから唖然としてるアナタに聞いてみる」 くるくると回って水着を見せてくる打ち止め。 「…………あ、あァ…すごく、いいと思うぜェ」 見惚れてしまった一方通行は言葉少なくそう言った。 その近くの喫茶店。 「妹さん、パフェお待ちどうさまです」 初春はこの間のパフェのタダ券で、御坂妹に初パフェを奢っていた。 「こ、これがあのパフェですか…初めて食べます、とミサカは目の前にした可愛らしい食べ物に目を奪われます」 目の前に出されたのは可愛らしいパフェで、御坂妹はそれを見て目をキラキラさせている。 「ゆっくりと味わって食べてください、この店のパフェはとっても甘くて美味しいんですよ」 一口食べるごとに頬を緩める御坂妹を見て、初春は嬉しそうにその顔を見ていた。 人のいない、いや、近寄れない…とあるプール。 「何故、貴女と二人でこのプールに一緒に入らなければいけませんの?」イラッ 白井は隣にいるムカつく女に向けて感情を込めて言う。 「さあね、そんなに嫌なら白井さん、あなたが別のプールに移動すればいいじゃない」 対して言われた本人、結標は平然と白井に言い返す。 「先にいたのは私ですが?」イライラッ 「だったら尚の事、先に出るべきなんじゃない?」 そう、このやり取りを繰り返されてはこのプールに誰も近づけない。 「「……………」」 しばしの沈黙が続き…… {流石に長く生きてるだけあって、口では負けそうですわ……ププッ} 白井は結標に少し聞こえるような感じで悪口を言う。 「白井さん……何か言ったかしら?」イラッ 白井はニヤッと笑みをつくり。 「さあ~なんのことでしょうか?」 誤魔化す事もしない態度で嘘を言う。 そこからは立場が逆転したりしなかったりで、何度も口喧嘩が始まるのであった。 一方、その頃に吹寄と姫神は…… 中央プールの端で足だけ入れながら何か相談しているようだ。 「私って印象薄いのかな。」 「そんなことないと思うけど?」 ………聞かない事にしてあげた方がいいようだ。 そして、一番遅く入った佐天と美琴はというと…… 「ねえ……佐天さん、なんで私達だけこんな離れた所にいるの?」 「それはですね、上条さんには極上のリアクションを期待したいじゃないですか」 変なスイッチが入ってしまっている佐天に連れられ、中央プールからある程度離れているカフェに来ている。 「それは……そうだけど………なにをすればいいの?」 モジモジと頬を赤らめ、上目遣いで見てくる美琴に佐天は 「それを上条さんに今すぐ見せたいんですけどね」 「ん? なんのこと?」 本人に自覚はないようだ…今のは上条に見せれば、なんでも言う事を聞かせてしまう魔法の様な体勢だ。 「まあ、少し恥らう様にしてみれば、上条さんもぐっときて御坂さんを襲っちゃうかもしれないですね」 そんな風に言って笑う佐天。 「ふーん、襲っちゃうね……って! 襲っちゃうって……えぇぇぇっ!!」 「御坂さん、声が大きいですっ」 「あ……どうもすみません………」 店の人たち全員から注目されてしまい謝る羽目になった。 そんな風に騒がせながらも佐天の意見を聞く事になる美琴。 ちなみに昼食の際はある店に全員集合する事になっているのでそれまでが水着見せの勝負である。 □ □ □ 正午。プールにアナウンスがなる。 『待ち合わせのご連絡を致します。第七学区からお越しの~』 そう、団体で来ている人達にはアナウンスをしてもらえるサービスがあるのもここの売りの一つであった。 『同じく、第七学区からお越しの土御門様御一行は南方フロアの南国プール中州にご集合下さい。』 アナウンスがそう告げ、本日来ているメンバーが南方フロアに向けて移動し始める。 「それにしても、便利なサービスだよな」 上条と土御門、青髪ピアスはアナウンスを頼んだ後に南方フロアに向っている。 「って、そないな事よりも、お前ら薄情もんやー!!! 置き去りにして忘れてたクセにその事を無かった事にするなんてー!!!」 そう、青髪ピアスは大分遅れて合流したのだ。 どうやら皆に存在を忘れ去られ、バスに置き去りにされているところを黄泉川先生が発見したらしい。 「まあ、落ち着くぜよ」 「そうだ、落ち着け」 そう諭す上条と土御門に、しぶしぶ落ち着く青髪ピアス。 「そうそう、そういえば小萌先生たちどんな水着なんやろー」 落ち着いたと言うよりは別の何かを気にしだしたようだ。 「小萌先生はピンクの子供用水着じゃないか?」 「ふっ、甘いぜよカミやん……俺様はあえて黒のハイレグと予想するぜよ」 「残念ながら、ワテは純白の三角ビキニをご所望やで~」 三者三様、今日も馬鹿全開のデルタフォースであった。上条は普通…か? 喫茶店にて 「おっ、集合時間みたいだぞー」 「そうみたいですね」 「それでは行きますか? とミサカは腰を浮かしつつ今更なことを聞いてみます」 パフェを食べていた御坂妹たちは、途中で舞夏が来たのでそのままティータイムに入っていたのだ。 「それにしても、プールに来たのに飲んで食べてしかしてないですね……私達」 「それなら午後はいっぱい運動してカロリーを消費しましょう、とミサカは提案してみます」 喫茶店を出て、南フロアに向け歩く三人。 「そうだなー、せっかくプールに来たんだから泳いだ方がいいだろうなー」 もっともな事を言う舞夏。 「まあ、みさかの妹を見た限りではスタイルはすでに抜群だがなー」 「ちょっ、舞夏さん私を哀れむような眼で見るのはやめてくれませんかっ」 「ミサカは初春さんに同情のエールを送ります、と共にミサカはかすかに初春さんに勝っていることで優越感に浸ります」 フッ、と笑みを作る御坂妹にフッフッフと黒い笑みの舞夏、泣きそうになって落ち込む初春もどこか楽しそうだ。 そして、あの11次元計算娘の二人は…… 「だからっ、貴女はいい加減にストーカーみたいに私の前に現れるのをやめてくださいませんっ!」 「同じ様な思考パターンを持つんだから、仕方ないんじゃない?」 まだ言い合っていた、というか段々酷くなっている。 「大体、以前会った時に思ってましたが……貴女は女らしさと言うものを持った方がよろしくなくて」 「ふん、そんな変態水着を着ている白井さんからそんなことを言われてもまったく同意できないんだけど……」 どっちが正論であろうか…… 変態水着ではあるが口調やら、立ち振る舞いがお嬢様のテレポーター 行動や言動は少しガサツな様子が見受けられるが、スタイルや水着は至って女の子らしいムーブポイント 「それよりも、早く向わない? さっきアナウンスなってたから」 「え、あ、そ…そうですわね」 まあどっちが正論でも、結標が一歩ひいて大人の対応をとった為に一時休戦。 アナウンスにしたがって集合場所に二人で向かう様であった。 そして…… 「結局、上条さんに会えませんでしたね」 「うう……これなら初めから当麻と一緒に回った方がよかったじゃない」 さらっと言ってしまった佐天とは対象的に、美琴は落ち込んでいる。 「でも御坂さん、その水着褒められるか心配してたじゃないですか」 「……それは、そうだけどさ」 そう言った美琴はハァ…と溜息をついた。瞬間。 ギュムッ、と誰かに抱きつかれた。 「お姉さまー、ってミサカはミサカは子供みたいに抱きついてみたりー」 どうやら打ち止めのようだ。 「おいっクソガキィ、走って転んだらあぶねェだろォがよォ……」 その後ろから一方通行が現れる。 「ちゃんと打ち止めちゃんのこと見てますねー、一方通行さん」 「まァ…それが俺の仕事見てェなもンだしなァ」 目を閉じ、めんどくさそうに頭を掻きながら佐天に言う一方通行。 「って、御坂さん? あれ、どこいったんでしょうか?」 「……ガキもいねェってことは先に行ったんじゃねェかァ?」 一瞬、目を放した隙に美琴と打ち止めは見える所から消えていた。 「ハァ……まァ、行った所は多分一緒だからよォ、ぼさっとしてねェで行くぜェ」 一方通行は佐天を促し、話しながら集合場所に向うのであった。 その二人を見送る二人の少女。 「一緒に行かなくてよかったの?」 「うん、ってミサカはミサカはハッキリ言ってみる」 美琴と打ち止めだ。少し行った所の店に隠れるようにして、二人を見ていた。 「あの二人が仲がいいのも不思議よね」 「そお? ってミサカはミサカはお姉さまの一言に疑問を浮かべてみる」 打ち止めのその一言から、普段三人の時はよっぽど仲がいいらしい。 「それじゃ、二人の邪魔しちゃ悪いから少し遠回りしながら行こっか?」 「うん、ってミサカはミサカは意見に賛同してみたり」 そう言って二人は姉妹のように手を繋いで集合場所に向うのであった。 □ □ □ 集合場所にはすでに大人3人組と吹寄、姫神の計5人が来ていた。 「さっそく集まってるみたいで何よりだにゃー」 「それはいいが土御門、店は決めているのか?」 のんびりとした口調で話す土御門に吹寄は少し不機嫌に聞いてきた。 「ん? それなら、あそこの店がそうぜよ」 そう言って指差したのは少し高そうな料理店。 「土御門ちゃん、お金は間に合うんですか?」 小萌先生も心配になる様な佇まいの店だった。 「それも問題ないにゃー、ちゃんと料金面はピンきりで予約できてるぜい」 まあ、後で皆に明細書出すから確認してくれた方が早いぜよ、そう言って土御門は黙る。 {なあ、カミやん……} {どうした青ピ} 土御門が話している最中に青髪ピアスがこっそりと話しかけてきた。 {黄泉川先生の着てる水着きわど過ぎやあらへんか?} その一言で上条はチラッと見てしまった。 {ああ、やばい……というかあんなん着るような先生だったか?} {それは多分、無頓着に選んだんじゃないかにゃー} いつの間にか土御門も戻ってきていた。 {それよりカミやんはこの話題に入ってない方がいいぜよ、このままだと危険すぎるにゃー} {ああ、わかった} そう言って上条はその輪から外れる。 どうやらこの二人は寮監や小萌先生、吹寄の水着を見て意見を言い合っているようだ。 「俺一人で時間を潰すのも無理があるだろ……」 そう上条は言うしかなかった……が {上条、ちょっといいか?} 寮監に呼ばれた。 そして、寮監の傍に行くと小声で問われた。 {あの打ち止めと言われた少女と妹さんと言われていたのは御坂の家族か?} 流石に美琴を預かっている身の寮監は鋭い。ここは隠しておくのは得策ではないと正直に答える。 {……ハイ} {ワケありか?} {……ハイ、ですが美琴の奴も本当の家族のように思ってます} {わかった、理由は聞かないでいてやる……で、それを知っているのはお前だけか?} {ここにいるメンバーだと…俺と美琴、一方通行と打ち止め、御坂妹だけです} {そうか……わかった} それっきり寮監は喋らなくなるが…… 「ふぅ、わかった……上条、御坂を頼むぞ」 「はい」 そうして上条は寮監の隣で待つことになる。 {カミやんの奴、なに話してるんやろ?} 多分、妹達がらみのことだろうな……まあ、寮監は大丈夫だろう、あまり詳しくは聞いてこないだろうからな。 {彼女の事で尋問されてるんじゃないかにゃー? 多分近づけば巻き添いくらうかもしれないぜい} 土御門は青髪ピアスに悟られない為にあえて近づかない様に言う。 {それは嫌やなー、触るな危険ってやつやな} うまくいった様だ。 回避もうまくいった事で、今度は一般のお客の水着を品評する二人であった。 それから結標と白井。初春と御坂妹と舞夏。一方通行と佐天が来て。最後に打ち止めと美琴がやってきた。 全員揃ったことを確認し、昼食をしに向う。 土御門は舞夏と、大人は三人一緒に中に入っていく。 一方通行は佐天と打ち止めと、初春は御坂妹と、結標は白井と… 吹寄と姫神は青髪ピアスを引きずって中に入って行き……上条と美琴が取り残される。 「あの、さ……」 「なによ……」 いつもと同じ二人なのに肌を露出しているというだけで緊張してしまう。 「その水着、似合ってると思うぞ……その、なんだ…ちょっといつもよりも大人っぽくてさ」 緊張からか歯切れの悪い上条。 「え、えっと……ありがと」 美琴は素直に言ってみたものの…… 「ねえ……そんなにいつもの私って子供っぽい?」 当然の疑問に少し悲しくなったりする。 「あ、いや…そういうんじゃなくてだな……想像してたのより少し大胆な水着だったというか……なんというか」 視線を合わせてくれない上条を見て、恥ずかしがってる当麻って少し可愛いかも、と思ったりしていた。 「それじゃ、さっさと入ろうぜ…皆待ってるだろうしな」 そう言って上条は美琴の手を引いて店に入って行った。 □ □ □ 昼食は騒ぎ、はしゃぎ、大いに盛り上がった。 そして、食後……皆それぞれ別れて楽しむことになる。 「それじゃ、帰る時にまたアナウンスを流してもらうからにゃー、しっかりと聞いとくんだぜい?」 土御門が店の前でそう言って散り散りになる。 白井と佐天、初春と御坂妹に美琴と上条で一組。 黄泉川に小萌、寮監と舞夏で二組目。 土御門と結標、一方通行に打ち止めで三組目。 青髪ピアスに姫神、吹寄で四組目。 こんなメンバーに別れて何が起きるといえば……平穏なもの以外のなにかだろう。 それから数時間後……… 「ハァ……なんで俺はこんなことやってんだよ」 上条は一人で6人前の飲み物を買いに行かされていた。 そう、それは数分前。 「だぁっ!!!」 不幸にもプールサイドで足を滑らせた上条は、御坂妹と白井を押し倒した。 結果…… 「あ~ん~た~は~、妹に何してくれてんのよっ!!!!」 美琴はそう言い、御坂妹を引っ張り上げ、上条に電撃をお見舞いした。 幸いにも被害者は2名。その他の被害者は無しであった。 「お、お姉様……私の事は心配してくださいませんのね……」 半泣きでビリビリと痺れる後輩に、美琴は平謝りをする事になった。 上条は打ち消して実はなんともないでいるが……言ったが最後、どうなるか保障されない。 「あの、美琴様……ジュースでもいかがでしょうか?」 笑顔と言う仮面をつけ、今をしのごうとする上条。 「あ、なら私のもお願いしますね上条さん…コカゴーヤです」 「佐天さん、ずるいです…私のもお願いします上条さん…えーと、私も佐天さんと同じ物を」 「それなら、とミサカもあなたに同じ飲み物をお願いしてみます」 ………どうやら上条さんのお財布が軽くなるようです。 「それじゃ、私は黒子の分とふたつ、ヤシの実サイダーお願いね」 「はい……」 という具合だったわけだ……不幸だ。 そうしてドリンクや焼きそばを売っているような店に来て…… 「「いらっしゃいませ、なにになさいますか?」」 どうやら二つあるうちのカウンターに、同時に並んだ奴がいるようだ。店員の声がかぶった。 「「それじゃ……」」 今度は客の声がかぶった。 「ヤシの実サイダーを3つとコカゴーヤを3つ」 「ヤシの実サイダーと黒豆サイダー、あとコカゴーヤを1つずつ」 「「かしこまりました、それでは少々お待ち下さい」」 注文も終えた所で店員が持ち場を離れて飲み物を作りに行った。 「「ハァ…なんで女の子のパシリやってんだ……不幸だ」」 隣の客と同時にまた同じ事を言った……気になって隣を見る。 「「………………」」 その客も気になってこっちを見ていた。 あれ? どっかで見たような気がするんだが……気の所為か? と首を傾げる上条。 こいつってあの時、俺をぶん殴ってあの言葉を言った無能力者だよな……? 「あの……どこかで会いませんでしたか? 俺達」 「え、あ……うーん」 上条がいきなり声をかけた所為か相手の客は少し慌てている。 「ある……と言っていいのか、ないと言っていいのか……」 「ん? どっちなんですか?」 曖昧な回答をする客に上条は不思議な顔をする。 「お待たせしましたー」 その客に注文の品が届き…… 「それじゃ、お先に」 そう言って、客は慌てて走り去って行ってしまった。 「なんだったんだ?」 「お客様、お待たせしました」 「あ、はい」 こっちも来たので、御代を払って美琴たちの元に戻ることにした。 途中、自分の飲み物を土御門に奪われるまでその客の事を思い出そうとしたが、さっぱり忘れてしまうのであった。 一方、逃げた方は…… 「はぁ、はぁ、はぁ…もしバレたらまた殴られんのか? 俺って」 最後に考えていたことはそれだった。 「はまづら、そんなに息を切らしてどうしたの? 」 「超遅いですよ浜面、それに言っている意味が超不明です」 そう声をかけてきたのは、自分に飲み物かって来いと命令した絹旗と、心配をしている滝壷だ。 「わかんなくていいぞ、それに……いや、なんでもない」 「「?」」 頭を傾げる二人、まあ、今はそれでいいかと浜面は思う。 説明するのもめんどくさいしな。 □ □ □ そしてグループの面々は…… 「で? なんで私はあなた達と一緒に行動しないといけないわけ?」 「知らず知らずにこうなってたんだにゃー」 「………………」 不満大有りの結標に、のんびりとしている土御門。 目を閉じ、二人の声にイライラしている一方通行。そして…… 「プールっていいねー、ってミサカはミサカは大はしゃぎっ!」 バシャシャシャシャ、とバタ足で一方通行に水をかける打ち止め。 「あら? ずいぶんと懐かれてるのね……ほんとにロリコンだったのね」 「まあ、それは否定できないんじゃないかにゃー」 さらにイライラし始める一方通行。 「それに……さっきから、結標も小さな男の子が近くを通るたびに目で追ってるみたいだけどにゃー」 ぶっ!と飲んでいたスポーツドリンクを噴出す結標。 「ちょ、あ、ああああああなたに言われたくないわよっ! さっきの昼食中に妹にあーんってねだってる、どっか頭が湧いてる奴に言われたくないわよっ!!!」 そして叫ぶ。 「まあ、俺様は自分がそうしたいから、そうしてるだけだからにゃー……否定はしないぜい?」 不敵に笑う土御門。 「…………」 呆れて物も言えなくなる結標。 すると……打ち止めよりも少し大きい少年が打ち止めの近くにやって来て…… 「君……名前はなんていうの?」 ナンパし始めた。 {ちょ、これはすごく面白い展開じゃない?} 結標は土御門に近寄り、耳打ちする。 {そうだにゃー、一方通行はどういう反応をするのか楽しみぜよ} そして、二人で一方通行を見る……が姿が見当たらない。 {{どこいった……あのロリコンモヤシ}} 見当たらないので打ち止めに視線を戻すと…… ガクガク、プルプル、と怯えているナンパ少年がプールで泣いていた。 「「予想通りの行動(だにゃー)」」 実は少々誤解が生じるかもしれないので説明しておこう。 少年がナンパし始め、結標と土御門が打ち止めから目を逸らした瞬間…… バッと一方通行は打ち止めをすくい上げ、肩車して少年に尋ねた。 「ガキ……ナンパするのはいいけどよォ、一生テメェの命張って守る覚悟があるなら交際を認めてやる」 「ハァ? なに言ってんのアンタ?」 「ハァ……、どうしようもねェ、ヤロォだなァおい」 「つーか、アンタだれよ? その子のお兄さんかなんか? 恋人ってわけじゃなさそうだし、つか恋人だったら引くわ」 ギャハハハと笑う少年。次の瞬間、一方通行はその少年の近くに音も無く移動し、耳元で…… {恋人じゃねェ、保護者だァ……あと言っとくがよォ、好き奴でもねェのに口説くたァ舐めた真似してるじゃねェの……次そんな事してるとこ見たら解体してやっからよォ……覚悟しとけェ、いいなァ?} ピッっと最後にプールの飛沫を飛ばし、少年の頬を薄く切り裂き、脅す。 そうして水の上を静かに駆けて場を退散するのであった。 そして、残されたのは一生ナンパのできない身体になった少年と土御門と結標。 「あのロリコンが去って、シスコン猫語男と二人きりって最悪の展開じゃないかしら」 「こっちはショタコン露出女と一緒なんてにゃー、もう少し恥じらいを持って欲しいぜよ」 「ちょっ! 今日来てたメンバーの中では結構露出少ないわよっ!」 「いつもがいつもだからにゃー」ガクガク 首を絞められガクガクと揺すられる土御門。 あ、すこし結標の胸が当たってるにゃー、幸せ? うーん、微妙なんだにゃー 別の思考をしている土御門だが結標は気付かない。 「まあ、それ以上言うなら大恥かかせてやるから覚悟しておきなさい」 「まったく、わかったぜよ」 少しだけ離れた結標に、あれ? すこし残念な自分がいるにゃーと思う土御門だった。 それから、上条が飲み物を買いに行っているのを見て土御門は 「ちょっと、トイレ行ってくるにゃー」 と言って去ってしまい。 「私も白井さんでも探そうかしら?」 と結標もプールサイドから腰を上げてどこかに向うのであった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/鶴の恩返し
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2548.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛 上条は下駄箱で靴を取り出して、外靴と履き替える。 中靴は泥まみれで、汚かったが外靴は買い換えたばかりなのでとても綺麗だ。 ジロジロと奇異と蔑みの視線を浴びて自分の教室へ向かう。 大罪人とは同じ無能力者でも嫌い、そして差別するものなのだと。 たった三人の大罪人の1人と同じ学校だなんて、怖いと思うのも当然だろう。 上条は少し溜息をついて、教室のドアを開ける。 外とは違い、教室の中では皆が上条に挨拶をし、そして話しかけてくる。 「おう上条!訊いたぜ、御坂美琴の専属黒服学生になったんだろ?いいなー」 「給料貰えるんでしょ?上条くんの奢りで焼肉行こうよ!」 「おい、やめとけよ。上条は自分の為に金使えよ?でさ、余裕できたらクラス全員で焼肉行こうぜ?……お前は全く……金遣い荒いんだよ」 「う、うるさいなぁ化粧品を買ってたら自然に無くなるんですぅ」 少女は舌をベーッという風に出して、少年を呆れさせた。 良かった、いつも通りのクラスだと心を撫で下ろす上条。 担任の月詠小萌が出席簿を持って現れ、台が置かれた教壇から目から上の部分だけを出して、背伸びをしながら黒板に何かを書いていく。 カッカッカッというチョークの音が静かな教室に木霊する。 生徒たちはいつもとは異なるユニークで楽しげなハズの担任の醸し出す雰囲気に固唾を呑みながら、その木霊するチョークの音に耳を傾けていた。 クルッと踵を返した小萌はニッコリと生徒たちへ微笑み、そして黒板に大きく書かれた文字を指さした。 「上条ちゃんの専属黒服学生就任祝いとして、今日はシトルセルク地域へ焼肉屋にパーティーなのです!もちろん、上条ちゃんは先生の奢りですよー?」 「……小萌先生はいつも唐突なんだから、さぁ皆!行ける人はこのボードに署名しなさい!自腹だけど」 「……僕は行くでカミやん!」 「俺も行くにゃ―!」 「俺も!」 「あたしも!」 とクラスの大半がその上条就任祝いパーティーに参加し、放課後シトルセルク地域でも有名な焼肉店へ向かった。 シトルセルク地域とは無能力者地域とコーラスフラン地域と隣接している商業的施設が多い地域であり、その焼肉店は1人1500円という安さで様々な サイドメニューも含めてオーダーバイキングとなっていた。 相当余裕の無い者以外は行けるだろう。 * 「ほう……?それで遅くなったと」 「すみません美琴様わたくしめも反省しておりますのでどうかお許しをォォォ!!!」 「許さん、黒子殺れ」 「わかりましたの」 黒子、と呼ばれたものは上条を片手で投げて、そしてコンクリートの壁に磔にされた。 数本の鉄矢が上条の制服を貫通しており、コンクリートに螺子の様に打ち込まれていた。 両足、両手の服が壁と縫い合わされていて、下手に身動きすると怪我をする可能性があった。 「くそっ、なんだこれ!?」 「わたくしの『空間移動』の能力ですの。これからどうぞよろしく、専属黒服学生様?」 「て、テメェ!こ、これどうに……って御坂さん!?どこに行くんですか!置いてきぼりにはしないでってそういうプレイなの?おーいおーい!」 上条はそれから二時間程外で時間厳守についての説明を嫌味ったらしく白井黒子に言い聞かされ、新人学生女中の佐天涙子に「うわぁ」とかなり引かれた 視線を向けられた上条だった。 そして早朝、学生女中の最低起床時間は5時30分であり、上条はその一時間前に起きて風呂場の掃除をしていた。 無駄に広い浴場を一時間かけて掃除し、そして学生女中達を起こし、白井黒子に言いつけられた調理師免許と理容師免許取得の為に30分だけ勉強するという 仕事をこなし、7時に御坂美琴を起こす。 そんな上条は昨日徹夜で縫った制服に腕を通し、誰もいない屋敷の鍵をしめて学校へ向かう。 「あれ、佐天さん。どうしたんだ」 「ああ、チーフ……。ちょっと転んで」 「それほど酷くないな。絆創膏……あったな。自分で貼れるか?」 「ありがとうございます」 昨晩、大雨が降ったのか地面はドロドロで、佐天のスカートは泥まみれになっていた。 上条は遅刻寸前だったが、何かを決意したというか思い立ったのか佐天の手を掴んで屋敷まで戻る。 「え?」 「さぁ、脱いで」 「へ?」 「だから、ドロドロだから洗うんだよ。少しっていうかかなり遅刻するけどいいだろ」 「ああ……じゃあ出てって下さい」 上条はポカーンと、口を大きく開いて「なんで?」と訊いた。 佐天は顔を真っ赤にして「見る気ですか!?」と叫んだ。そして学生鞄を上条の顎元にぶつけて脱衣所のドアをバン!と大きな音を立てて閉める。 いてて、と顎をさする上条は納得した様な表情を浮かべて脱衣所から聴こえてくる布がこすれる音を訊きながらその壁にもたれた。 「なぁ、悩み事でもあるのか」 「……どうしたんですかチーフ。急に」 「いや、今朝も思い悩んでただろ」 神妙な雰囲気になった屋敷。 佐天はふぅ、と一息おいてから上条にその心中を告白する。 「あのですね、実は罪人になったっていうのは嘘なんです。知り合いが大罪人になっちゃって。 それにあたしも関わってたんだけど、罪をかぶってくれて。 罪名は『国家反逆罪』ですよ?別に学園都市は国家でもなんでもないのに」 「……大罪人か。俺と同じだな」 「チーフも……大罪人?」 「ああ、有名な話だ。『第七学区内乱事件』で起こった『CTRR事件』。俺が起こしたんだ」 「史上最悪と言われてるアレですか。詳しい事は……解ってませんよね。アレってどういう事何ですか?」 佐天の問いには答えない。 着替え終わった佐天は少し暗い表情で脱衣所から出てくる。寝衣だ。 制服はすぐに洗濯機に入れて、急速に洗い始める。 佐天はコレ以上訊くのは少し失礼か、と考え違う話題を探していた。 彼女自身、『何故、御坂美琴の学生女中に志願したのかという問いは答えれない』訳なのだが。 「何か、喉乾いたな。お茶沸かすの忘れてたし……買ってくるわ!」 「はぁ、そうですか……」 上条は財布を持って、コンビニに向かう。 この時間帯だと自治団体に声をかけられそうだが……上条は大丈夫かと楽観的に見て走る。 その道中で、彼女を見た。御坂美琴。 しかし常盤台の生徒がこの時間帯にここに居るのだろうか?まだ9時過ぎとはいえ、この時間帯にはおかしい。 軍用ゴーグルを頭につけて、サブマシンガンを片手で持って辺りを見回していた。 「おい、御坂?」 「はい、なんでしょうか。とミサカは声をかけてきた見知らぬ少年に対し、警戒心を込めながら返事します」 「……御坂じゃ……無いのか」 「ミサカですが?」 「訳わかんねぇ、もしかして御坂の妹か何かか?」 「そうですね、といっても遺伝子レベルで同じですが」 「それにしても似てるなー、双子か?」 上条は舐め回す様に御坂の妹と言い張る少女を見る。 「おっと、もうこんな時間ですか。とミサカは時間に厳しい側面を見せながら目的地へ向かいます」 「?、何かするのか?」 「何って―――――廃棄処分ですよ」 意味が分からなかった。 しかしサブマシンガンを持ちながら、中央通りを徘徊するのはいかなるものか、と上条を呆れされる。 引きつった笑みを浮かべながら御坂妹を見送った上条はデジタル腕時計を見て焦りながら何も買わずに屋敷に戻る。 * 「た、ただいまーっ」 「遅かったですね、もう乾いたんで行きますよ?チーフはどうするんですか」 「俺はもう今から行くのも面倒くさいし、このままサボるわ」 「そうですか、じゃあ」 上条は佐天の居なくなった屋敷の個室のソファーにダイブした。 「アレ……マジ誰だったんだ」 第三話 『廃棄処分される人形達』 上条は、目を大きく開いていた。今日は休日だ。しかし佐天涙子は補修、御坂美琴はゲコ太というカエルキャラクターを買い集めるとかで居なくなり、白井黒子は能力開発についての講習があるらしく上条は1人だった。 「……散歩でも行くか」 散歩なんて、超貧乏時代なら出来なかっただろう。御坂様々だな、と感謝しながら靴をはいて外に出る。 眩いばかりの光がコンクリートを反射して目に入ってくる。 眉をひそめながら歩き出す。 休日とはいえ、忙しい学生も多いらしく上条は呑気な表情で眺めながら大きな欠伸をした。 ふと、上条は『違和感』というか懐かしい感じがし、後ろを振り向いた。 軍用ゴーグルを頭に装着している少女は誰だ。御坂美琴だった。昨日の少女か?と悩んだが御坂美琴にしか見えない。 まさか娯楽地域のヲタクタウンまで軍用ゴーグルを買って行っていたのか、と上条は裏路地に消える御坂をこそこそと追いかけていく。 しばらくし、御坂は学園都市でも『選ばれた』研究所の裏口に入っていき、上条もまたその裏口から追う。 「……誰ですか?」 「見つかったか……?」 息を潜める。ガチャッと何かの音がして革靴の音を木霊させながら近付いて行く。 突然、ババババババ!!!と銃声がすると上条の隠れていたコンテナに衝撃が走る。 キュッ、と方向転換した音を上条は聞き取ると御坂じゃない誰かのサブマシンガンを蹴り飛ばす、が。吹き飛ばされたサブマシンガンは磁力により御坂ではない誰かの手に戻る。 そして銃弾を装弾し、再び上条目掛けて引き金を引く。 上条は異能を持つ人間じゃない。到底、銃弾を避けるスキルも止めるスキルも、弾き返すスキルもない。 となると隠れて、好機を探すしか無い。 「嘘だろ!?」 上条の肩に跳弾がかする。 「計算しています、とミサカはネットワークを駆使しながらあなたを処理します」 「ネットワーク、どういうって!危ないな……」 「甘いですね、とミサカはあなたの行動を嘲笑します」 鋭い蹴りが上条の腹部に突き刺さり、地面に膝をついて倒れる。 見下ろす形になったが、少女は上条を踏みつけてサブマシンガンを頭部へ向けた。 引き金を引けばこの少年は簡単に死ぬことになる。 「お前がッ!甘い!」 上条は少女の足に護衛用に渡されていた軍用ナイフを突き刺し、痛みに支配された少女の苦痛の表情を見ながらも左腕で少女の右頬を殴り飛ばす。 ゴリッ、という鈍い音が骨から聴こえ、少女はコンテナに体を打ち付けた。 少女の頭から軍用ゴーグルを外して、上条は片目で除く。中は電子線や磁力の流れなどを確認するモノで上条の周囲からも微弱な電磁波が観測された。 上条は更に奥底へ進んでいく。大きな空洞に出て、鉄製の階段のカツン、という音が響き渡る。 軍用ナイフと殺傷力の低いフリントロック式のゴム弾を持っていたが、使う機会はまだありそうだと固唾の呑んで先へ進む。 機械音がどこかからきこえてくる。 それに合わせてグチャ、ガッ、グショッと妙な音が聴こえてきた。上条はそこから漂う血臭に吐き出しそうになった。 唐突に、銃弾が上条の肩を貫く。 「おいおい、なんで一般人がこんな所にいるんだよ」 「……だ、誰だ……ッ」 「俺か、俺は木原数多っていうここで『お給料』を貰ってるしがない科学者(サラリーマン)だよ」 * 「お前もあの中に入りたいのか?」 「……くっ」 「ああ、そうか。撃ったんだったな。血液不足だ、もうすぐ楽になれるぞ。あの中ではな、出来損ないの人形が廃棄処分されてる。 まずは毒ガスで殺し、大型のプレス機械で骨までグチャグチャにする。簡単だろ?本当はとある実験で使われるハズだったんだが」 「さ、さっき俺が。倒した奴は?」 「コンテナの周りで倒れてた奴か。10032号だった気がするわ、記念すべき10000体目の廃棄処分だ。来週には11000号まで処分する」 「……な、なんだそれは?アイツ、御坂に似てなかったか?」 「そりゃそうだろ、超電磁砲の体細胞で組み上げられた軍用クローンだ。だが、二年前の大規模予算修正で、軍用クローンは必要ないと判断されてな。 絶対能力者進化計画に使うつもりが、上の連中が決められた研究所しか使わないモンだから樹形図の設計図の使用許可は降りない。 アレが無かったら、どうしようもない。処分するしか道は無いな」 「クソ……ッ勝手なことしやがって」 上条の顔に血色は無かった。真っ青で今にも死にそうな。 肩からは血が垂れていて、致命傷では無いが放っておけば死んでしまう。 最後の力を振り絞って、ポケットからフリントロック式のゴム弾を取り出す。ある程度の衝撃を加えると電気が発生する仕組みだ。 しかし木原数多は動じない。白衣のポケットから拳銃を取り出して、上条の頭へ突きつける。 「フリントロックか、今時そんな珍しいモンがあるとはなァ」 「……木原数多、俺に協力しろ」 「……頭大丈夫か。お前、自分を撃った相手に協力を頼むなんてよ!!」 「お前は、この、現状に満足してない。違うか」 「大した洞察眼というか。仕方ねぇな、協力してやるよ幻想殺し(イマジンブレイカー)!」 互いに銃をしまう。上条は壁をつたってまずは病院へ向かおうとしていた。 木原数多はメモ帳に走り書きで書いたモノを上条に手渡し、手を振って未だ血生臭い廊下を歩いて行く。 上条は何度も意識を手放しそうになりながらも、一度訪れた事のある病院へ入っていく。 人は多く、上条の怪我を見ると人は絶句する。待ち時間はそれ程長くなかった。 上条は待合室でニヤニヤと笑う彼を睨みつけた。偶然か、二度と逢いたくなかった人物が目の前にいた。 「垣根帝督……」 「なんだ、前の様に帝督兄ちゃんって呼んでくれないのかよ」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1090.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/白紙の未来設計図 第四章『水曜日 ~Le Messager~』 (……お姉さま、起きられましたわね…) ホンのわずかな物音で、御坂美琴のルームメイトである白井黒子は目を覚ます。 その物音は、ホントにわずかなもので、いつもの白井であれば絶対に起きることはない。 しかしここ数日、まともに寝ていない彼女は、そんな物音でさえも眠りを中断させるには十分だった。 目が覚めたといっても、白井はベッドから起き上がったりなどしない。 布団に包まれたまま薄目を開けて、目の前で身支度を整えていく美琴の姿を追っていくだけだ。 (ホント楽しそうですわね……) 美琴は、まだ眠っていると思っている白井を起こさないように、細心の注意を払って着替えをしていた。 そのような姿を見て、普通の人間が楽しいだの疲れているだの判断できるはずがない。 しかし、半年以上寝食を共に過ごしてきた白井には、お姉さまの動き一つでその感情を推し量ることが可能になっていた。 (お姉さまが、幸せならばそれでもよろしいのですが……) 見苦しくない程度に身支度を整えた美琴を、白井は見送りながら考える。 行先は共同キッチン。目的はお昼のお弁当作り。 (…くやしいですが、あのお弁当は、あの殿方が食べられますのね) あくまで白井の想像なのだが、彼女の中では確定事項のようになっている。 過去の白井なら、美琴のそのような行動を許せずにいただろう。今すぐにでも飛び起きて、美琴を止めていたに違いない。 だが、美琴の幸せそうな姿を見るたびに、嫉妬に似た感情は薄らいでいた。 「お姉さまが幸せなら、あの殿方とお付き合いされてもよろしいのですが」と思えるほどになっている。 美琴が上条を好きなことは分かっている。すなわち、美琴が自分のことを恋愛対象としてみてくれないということだ。 もし、二人が付き合うようなことになったら、わずかな望みもすべて雲散霧消してしまうだろう。 当然、白井は美琴に手を貸そうなどとは思わなかった。わずかな望みの残る現状のまま過ごしていきたかった。 だから、白井は動けずにいた。 しかし… 「そろそろ動き出さないといけませんかしら…」 白井は体を包んでいた布団を思いっきり投げ飛ばすと、決意したように立ち上がる。 いつの間にか、窓の外は朝日が昇っていた。暗闇に慣れた目には日の光は痛く感じた。 「結果は吉と出ますか、凶と出ますか…」 体験入学三日目。 今まで動かなかった世界は、少しずつ動き始めていていた。 目が覚めると、いつものバスタブの中だった。 いつもは起きたときはまだ薄暗かったはず…今日はやけに明るいなあと寝ぼけた頭で思っていると、ハッとしたように勢いよく上体を起こす。 時計代わりにしている携帯電話を見ると、充電切れのようで液晶には何も表示されない。 慌ててユニットバスをでて、手近にある時計を見るとすでに起床予定時刻を三十分も過ぎていた。 「ち、遅刻だーー!!」 上条の発した声が部屋中に響き渡る。 今週に入ってからの早朝補習だったが、特に問題なく起きられていたので油断してしまったようだ。 超音速で制服に着替えると、鞄を手に取り玄関から駆け出そうとする。 が、遮るように白いものが目に入った。 眠い目を擦りながら、立ちはだかったそれは、 「とうまーおはよう。お腹が減ったんだよ。」 白い修道服に身を包んだ、インデックスだった。上条の叫び声を聞いて目を覚ましたらしい。 上条は自分の迂闊さを呪った。あの時、叫ばなければ良かったと。 「えーっと、インデックスさん。上条さんは、非常に急いでいるので朝ご飯なしということでは…」 というわけにはいくはずがない。 上条が言い終わるか否かというタイミングで、インデックスの噛みつき攻撃が炸裂する。 「インデックス!!やめて、マジ死ぬ!!」 「うぐぐぐががぐ(とうまは私を餓死させる気?)」 結局、泣く子とインデックスには逆らえませんと、大急ぎで簡単な朝食を用意する。 もちろん、遅刻ギリギリの上条にはそれを食することはあたわず、 「不幸だー」と叫びながら、学生寮の廊下を走ることしかできなかった。 上条の起床時間は、高校へ向かうバスの時間にあわせていた。つまり、寝坊をした時点で、そのバスには乗ることは出来ない。 登校時間のピークからずれている、早朝のこの時間にはバスの本数は非常に少ない。 結局、上条は朝食抜きの腹ぺこ状態で高校までの道のりを全力疾走することになる。 普段は通学路に散らばる不幸トラップを避けながら行くのだが、 今日のようにギリギリの状態では、そんなことに力を裂いている余裕もなかった。 果たして、道に転がっているボールを踏みバランスを崩した上条は盛大に転倒する。 「痛っつーやっぱりこういうオチかよ!」 右足をくじいてしまったらしい。歩くたびに激痛が走った。 ただ、不幸中の幸いか、学校まであと少しのところだったので、痛い足を引きづりながら上条は道を急いだ。 「上条ちゃん。遅いのですよーっ!」 満身創痍、ボロボロになった上条を出迎えてくれるのは、笑顔を湛えた白衣の天使などでは決してなく、 怒りに顔を引き攣らせた、身長一三五センチの化学教師、小萌先生だった。 「先生。そんなこといわずに、がんばった俺をほめてくださいよ」 上条が学校に着いたのは、補習の開始時間から十分ほど過ぎた辺りだった。 十分程度ならば、終了時間を遅らせばいいだけなのだが、小萌先生としては遅刻してきたということが許せないらしい。 「そんなことでは、社会に出てから苦労するのですーっ」 と、ご高説を賜った。 時間を無駄に出来ないとばかりに、すぐに補習が始まりあっという間に一時間が過ぎていく。もちろん、十分延長されて。 補習が終わり、机に突っ伏していると小萌先生が、 「上条ちゃんは、今日は遅刻しちゃいましたが、一応がんばっているみたいなので、プレゼントをあげますよー」 「えっ!?まさか大量の宿題とかじゃないですよね?」 と、上条は少し身構えるが、 「違いますよーちゃんとしたものです!」 「あー学生時代にやられて嫌だったことはやらないとかってやつですか?」 「それも違うのです。上条ちゃんに宿題出してもやってこないからですよーっ!」 「それはごもっともで。それで、何なんですか?プレゼントって」 小萌先生は、上条の宿題なんてやる気ありません発言で、少しムッとして表情になるが、 「先生の友人に農家の人がいまして、野菜を送ってくれたんですよーだから上条ちゃんにお裾分けです。 今日、レシピ研究やるらしいじゃないですか?姫神ちゃんから聞きましたよー」 「えーっ!?!?マジですか?」 と、上条は小萌先生の意外なオファーに素直に喜んだ。 たかだか野菜という事なかれ。 学園都市は『戦争』が始まって以来、物価上昇が続いている。それは闘いが収束した今も変わらない。 流通に問題があるのか、それとも誰かが値上がりを見越して買い占めているのかわからないが、 物価の上昇は市民生活に、いまだ暗い影を落とし続けていた。 それは学生にしたって例外でなく、いやむしろ仕事をもたず仕送りや奨学金という決まった枠で生活からこそ、 日常生活に与えるダメージは相当大きかった。 現在あれだけガラガラな学食も、戦争が始まるまでは皆が先を争うほど繁盛していた。 しかし、戦争による物価上昇は自炊派に転向させるほどになっている。 だから、小萌先生のプレゼントは、ただでさえインデックスのおかげでエンゲル係数を押し上げている上条家にとっては、 天からの恵みに相当するほどありがたいものであった。 「先生、本当にありがとうございます。俺には先生が天使のように見えますよ。もう!先生大好き!!」 「そんなに感謝しなくてもいいのですよー。職員室で預かっておくんで、放課後取りに来てくださいねー!」 と、小萌先生はなぜか頬を赤らめながら職員室の方へ消えていった。 あれやこれやで4限目が終了し、お昼休みとなった。 上条にとって、午前中の授業は空腹との闘いであった。特に4限目の体育は地獄と言っても過言ではない。 なにせ、お昼前のもっともおなかが減っているときに、冬の体育の定番とばかりにマラソンをさせられたのだ。 朝、登校のときにくじいてしまった右足は、4限前までには痛みも引いていたのだが、 マラソンを走っている途中に、再度痛み出してしまった。 「先生もう限界です」と足の痛みを訴えたのだが、「限界を超えることが重要じゃん」と言われ走り続けることになった。 上条は足が痛いということを伝えなかったので、単にへばったと誤解されたのだが、そのことにも気付かないほど彼は地獄にいた。 緑色のジャージを着ている女体育教師へ、多くの男子生徒を惑わせるほどのプロポーションの持ち主にもかかわらず、 上条は軽く殺意を覚えるほどだったのだから、そのつらさといったら推して知るべしであろう。 その地獄の体育から解放され、上条は教室に向かう。 教室で着替えを済ませれば、即ち昼休み。空腹を満たす時間となるわけだ。 いつもだったら、超高速で教室に戻って速攻で着替えているのだが、今日は右足に痛みがある。 そんなわけで、無情にもおいてけぼりにした男子クラスメイトを恨みながら、上条は一人教室に向かうのだった。 永遠と続く廊下を歩いていると、一人の男子学生が走ってくるのが目に入った。 ぶつからないようにと横に避けるのだが、彼もなぜか上条と同じ方向に避けてくる。「危ない!」と思った瞬間、二人は見事に衝突していた。 このような場合、得てしてぶつけられたほうがダメージが大きい。 上条は右足の怪我も手伝ってバランスを崩すと、目の前にあるドアに飛び込みそうになる。 思わず目をつぶって、ドア激突というさらなる痛みに身構えるのだが、「幸運」にもそのドアが開け放たれた。 衝突は避けられたものの、もちろんバランスを崩した姿勢なので、そのまま中へと突き進む。 そして、保健室にあるような布製のカーテンが張られた衝立に、 ちょうどサッカーボールがゴールネットに絡まるように顔から突っ込み、衝立とともに上条は床に倒れることになった。 上条は、とりあえず誰かに怪我を負わすことも、自らが負うこともなさそうなので、安心していたのだが、 次の瞬間、鼓膜が破れるかと思えるくらいの悲鳴が、あたりに響き渡った。 何が起きたのか一瞬分からなかったが、布製のカーテンを押しのけて周りを見ると、上条は自分の目を疑った。 そこには、楽園……もとい、下着姿の女子たちが多数いたのだ。 上条が侵入してしまった場所は、まぎれもなく女子更衣室だ。しかも、現在使っているのは上条のクラスの女子… 次の瞬間彼は悟る。 (………殺される!!) 悲鳴は鳴りやんだが、今度は物理的排除に攻撃が移行した。つまり、手当たり次第に物を投げられる。 彼女たちのかばんの中から小出しに投げてくればまだいいほう。かばんごと飛んでくることもある。 なぜか更衣室にあった、野球の硬球など様々なものが飛び交っていた。 上条は必死にそれらを弾いて自分に当たらないようにするが、数が数だけに避けきれずに直撃することのほうが多い。 当然のようにこのまま更衣室にとどまっているのは危険と判断し、この場から立ち去ろうとする。 しかし、手当たり次第に投げられた体操服や制服が上条の視界を遮った。 視覚情報を奪われ、さらに衝立の布に足を取られてしまい、上条はバランスを崩してしまった。 再度、床との激突を覚悟した上条だったが、いつまでたってもその衝撃は来ない。 その代わり、顔のあたりに妙に柔らかい感触のものが当たった。上条は、それに支えられながら倒れこむ。 先ほどまで、どんな無理ゲーなどと思うほどだった弾幕がピタリと止まる。ついでに空気までもが凍りついたようになった。 上条は顔にまとわりついた体操服やら制服やらをはぎ取ると、恐る恐る顔を上げる。 そして見えるのは、 怒りに満ちた表情の姫神の顔だった。 いつもは表情に乏しい姫神だが、月に一度あるかないかの頻度で、誰からも感情がわかる表情をする時がある。 まさに今がそれだった。 そしてその感情は、百パーセント怒りだ。 姫神の表情が、刻一刻とゆがんでいくのが手に取るように分かる。 上条は現在の状態を再確認した。 彼は姫神の上に圧し掛かり、顔は彼女の胸に埋める形になっている。 しかも、姫神は着替えの途中。つまりは下着姿である。 これは相当な制裁が来るだろうな、などと覚悟を決めていると、思わぬ方向から攻撃がやってきた。 「ア、アンタ、なにやってんのよ!!」 その聞きなれた声の主は御坂美琴だった。上条は思わず声のする方向に振り向く。 彼女は着替える前であったのだろう、つまり体操服姿のまま更衣室のドアのところに、怒りに満ちた表情で立っていた。 彼女の周りには青白い光がまとわりついている。 思わず上条は叫ぶ。 「御坂!今ここでビリビリはマズイ!!」 この更衣室には、上条のクラスの女子がいる。しかも、狙われるはずの上条の下には姫神がいた。 もし、上条に向けて電撃を放ったとしたら、間違えなく姫神も巻き添えを喰らう。 上条はとっさに左腕に力を込めて、なるべく人のいない方向へ床を転げまわる。 そして、右手を突き出した。 刹那、電撃の槍が上条目がけて放たれる。その槍は上条の右手に触れた瞬間に打ち消された。 上条は周りを見渡す。 クラスメイト達は何が起こったの分からないといった風にポカンとした表情をしていたが、誰も怪我などをすることなく無事だったようだ。 「ふぅ~」っと上条は安堵のため息をつくが…… とっても重要なことを思い出してしまう。それは、周りのクラスメイトも同じだったようで、 「出てけーーーー!」 と一斉に怒りに満ちた声を上条に投げかけるのだった。 上条は可及的速やかに、怪我をしている右足をかばいながら、四つん這いの状態でその場から立ち去ろうとする。 更衣室から出て立ち上がると、 「不幸だーー!!」 と叫びながら、片足ケンケンで教室へ去っていった。 御坂美琴は肩を落としながら、廊下をトボトボと教室に向かって歩いていた。 北側に面した廊下は、日の光が入ることもなく昼間だというのに薄暗い。 それが美琴のここに追い打ちを掛けるように、彼女の心をさらにネガティブなものに変えていく。 体育のマラソンで喉がカラカラだった美琴は、クラスメイト達から抜けて一人水飲み場で乾きを潤してから着替えに向かった。 女子更衣室に近づくと、なにやら騒がしい。どうしたものかと中にに入ってみると、そこにいるはずのない人物を見つけてしまった。 上条当麻。美琴の想いの人が更衣室の中で下着姿の女子と抱き合っている。その女子生徒は姫神秋沙だった。 その光景を目の当たりにして美琴は我を忘れて、上条に向けて電撃を放っていた。 正気に戻った美琴は後悔していた。なぜ電撃を放ってしまったのかと。 もし、その場に上条しかいなければ問題はない。彼は美琴の電撃を打ち消せるから。 しかし、姫神やその他のクラスメイトがいる中で放てば別問題だ。 狙いがはずれてクラスメイトに直撃していたら、大惨事になっていた。 上条が打ち消したとしても、彼が抱きついていた姫神に被害がいかないとは限らない。 普段の美琴だったら、電撃を放つことはしなかったはずだ。 ならば、なぜ電撃を放ったのか?美琴は考える。 上条が他の女子の下着姿を見ていたから?誰かと抱きついていたから? いや、違う。 大覇星祭のとき銀髪碧眼のシスターに抱きついていたのを見たときでも、きちんと手加減していた。 それを証拠に、電撃を食らった彼は多少痙攣をしただけだった。 抱きついていた相手が姫神だったから? 美琴にとって彼女は目下のところ最大のライバルだ。 ならば、美琴が怒りにまかせて電撃を放ったとしても不思議ではない。 でも…… そこまで考えて美琴の頭に、一つの理由が思い浮かぶ。 それはあまりにも唐突に、まるで天から何かが舞い降りたようだった。 (……私、アイツに抱かれたかった?) 美琴は顔を真っ赤にしながら、首をブンブンと横に振る。それでも、その考えは捨て去ることが叶わない。 (ち、違う。そんなことない) 頭の上から湯気でも立ち上りそうな美琴は、必死になって否定する。 なのに、彼に優しく抱きしめられる想像が消えることはなかった。 「そ、そう。あれは、単なる嫉妬。それだけよ…」 ついには声に出してまで否定していた。 教室に入ると、空気はすでにランチタイムのものとなっていた。 上条と姫神が二人で話をしていたので、「レシピ研究」に参加している美琴はそこに向かう。 美琴の姿を認めた上条が声を掛けた。 「おう、御坂。学食行くか?って、お前、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」 美琴は先ほどまでの想像の所為で、上条の事を正視できずにいた。 それでも、恥ずかしくて恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてしまう。 「…………」 言葉すら発することも出来なかった。 「御坂、大丈夫か?保健室いった方が…」 「だ、大丈夫よ!!マラソンの所為で血行が良くなったんでしょ」 上条の心配そうな声を遮るように、美琴は何とか言葉を発することが出来た。 「それならいいけど… で、レシピ研究どうする?って言っても、今日は寝坊して俺、学食しか選択しないんけどな」 「上条君。私のお弁当食べる?今日は多めに作ってきたから。」 姫神が無表情のまま、顔を赤らめて上条に言う。 さっき抱きつかれたからなのか、お弁当のことでなのか分からなかったが、どちらにしても美琴には気にくわなかった。 しかし、それよりも美琴は今の心理状態で上条と一緒にご飯を食べること避けたかった。 「アンタと一緒にいると何されるか分かったモンじゃないわ。 今日は、私は姫神さんと二人で食べるから。アンタは、一人で学食へ行ってきなさい!」 その言葉を受けて、姫神は美琴の方を見る。おそらく睨んでいるのだろう。 「お前が一人で食べろ」とでも言いたそうに感じた。 それでも、美琴はこの二人を一緒に行かせたくはなかった。最低限、自分が体験入学としてここに通っている間だけは。 「あーわかったよ。上条さんは一人寂しくお昼食べてきますよっと」 と、不服そうに立ち上がる。美琴はすばやく財布から一枚のカードを取り出すと、 「ち、ちょっと待って。これアンタにあげる」 と、それを手渡した。 そのカードはマネーカードだ。残高はあまり残っていないが、学食程度なら食べられるはず。 姫神のお弁当を、自分のせいで諦めさせたのだ。少しばかりの罪滅ぼしのつもりだった。 「おぉ~マジですか?マジ感謝ですよ」 上条は美琴の手を取り、感謝の意を表すがごとく大げさに上下に振った。 「べ、別に余ってたからあげるだけだから!そんな端数、学舎の園じゃ何も買えないし」 手を握られたことでさらに顔を赤らめた美琴は、恥ずかしさを紛らわすためにいつものように素直じゃない言葉を吐いていた。 「ごめんなさい!!」 お弁当を食べる前に、美琴は姫神に謝る。 美琴は謝るべき事がたくさんある。 電撃を放ってしまったこと、上条とのご飯の時間を奪ってしまったこと…… いくら我を忘れていたとはいえ、相手がライバルだとはいえ、許されることではないと思った。 しかし、 「別に。構わない。電撃は怖かったけれど。 それに。上条君抜きで。あなたと話してみたかったところだったし。」 姫神は特に責めるようなこともなく、いつもと変わらなく口調だった。 「あと。今日は上条君の家に行くんでしょ? あんな真っ赤な顔で恥ずかしがっていて。大丈夫?」 「それは……」 姫神の続けた言葉に、美琴は驚いた表情のまま固まってしまう。なぜなら、姫神が自分の心の中を読んでいたからだ。 あのシチュエーションならば、女子更衣室に侵入した上条に怒っていると考えるのが普通だ。 そういえば、美琴は彼女の能力を知らない。もしかしたら読心能力者なのかと思ったのだが、 「私は読心能力者じゃない。あなたは。表情がわかりやすすぎるよ」 と、またしても、心を読まれてしまった。そして、 「あなたが上条君の事好きなの。すぐに分かるくらいに。」 姫神に、今一番触れられたくないところを、それも直球で指摘され、 美琴は少しは引いていたはずの顔の熱さが、また戻ってきたのを感じる。 いよいよ、言葉を次の言葉を発することが出来ずに沈黙していたら、後ろから声を掛けられた。 「あ!姫神さん。珍しい!お昼に教室にいるなんて」 「もしかして、さっきので上条君とケンカした?ってなわけないか」 振り返るとそこにいたのは、昨日話しかけてきた発電能力者とその友達だった。 美琴には分からなかったが、さっきのは冗談だったのだろう。二人はクスクスと笑っていた。 「なんで、ケンカしてないって分かるの?」 話の軌道が変わったことで、呪縛から解き放たれた美琴は、疑問を投げかけてみた。 「そりゃねー」 「ねー。あんなの日常茶飯事だから」 「そういうこと。いちいち目くじらたててたら。上条君のクラスメイトなんてやってられないわよ」 「ま、見られるのは嫌だから、制裁は加えるけどね~」 美琴は、驚きのあまりまたしても言葉を失ってしまった。 さっきの更衣室のようなことを日常茶飯事で片付けられるほどの頻度で行っているのだ。故意以外考えられない。 自分の好きな人は、単なる変態なのかと思っていると、 「上条君のあれは。全部偶然。単なる事故よ」 「そうそう。今日のも誰かにぶつかったみたいだし」 「上条君、足怪我してたらしいしね」 と、三人がフォローを入れてきた。 事故だと分かっているから、許せるのかもしれない。ただし、過失分の制裁は加えるようだが。 「御坂さんは、抱きつかれたり、下着見られたりしたことないの?」 考えてみれば、美琴にはそういう出来事の記憶がない。 (えーっと膝枕は…あれは、私がしたんだよね…) クラスメイトほど近しい距離にいないのが原因なのかと思ってしまう。 (そもそも、アイツの前で着替えることないし…) クラスメイト以外なら一番近い距離にいると思っていたが、勘違いだったのかと考えてしまう。 ああいうイベントがあるというのが上条との距離を表しているのではないはずなのだが、美琴は多少盲目気味になっているのかもしれない。 必死に考えていると、一つだけ思いついた。それは、大覇星祭の玉入れのときのことだった。 「アイツに押し倒されたことがあるわ。『黙ってろ。ちょっと動くな』って言われて」 それを口にした瞬間、まるで、この空間だけ時間の流れが止まったように、三人の表情が固まる。 予想外のことに、美琴は慌てて、 「え?え?どうしたの三人とも」 その言葉を聞いて、発電能力者の子が思い出したように口を開いた。 「み、御坂さん。そ、それって、偶然じゃないことない?」 「わ、私たちのは完璧な『偶然』よ。着替えてたら入ってこられたり、つまずいて抱きつかれたり…」 「…………」 二人は口々に言い合っている。一方、姫神は言葉を失ったまま固まっていた。 そして、姫神は思い出したようにボソリと、 「……私。上条君にブラのホック外された。」 と、小さな声でつぶやいた。 それを聞いた二人は、詳しく教えろと姫神に詰め寄るが、「内緒」の一言で躱される。 最後に、 「あー私たちには望みなしか…」 「上条争奪戦は、姫神さんと御坂さんで決まりかな…」 と言って、自分たちの席に戻っていった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/白紙の未来設計図
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2371.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲 12月23日 ――――――――― 喫茶店を出て、気が付くとアイツと手を繋いで歩いていた。 アイツの顔は、まるでさっき飲んだストロベリージュースのように赤くなっていて。 わたしの顔も、アイツと同じように赤くなっている、と思う。 美琴(…ってか、なんなのよ!?この状況!?)/// 理解不能。意味不明。 美琴(コイツはいったいどうしたいのよ!?)/// 喫茶店を出てからはずっと無言で、だけど、いつの間にか手を繋いでいて。 さっきから胸はバクバクしっぱなしだし、掴まれた右手はじっとりと汗ばんでしまっているように思えるし、それはそれで女の子として凄い恥ずかしいっていうかなんていうか…。 美琴「ね、ねえ?どうしたのよ?」 上条「…なんて言えばいいのか、考え中です」 美琴「なによそれ?」 上条「いろいろしちゃいましたから」カァッ 美琴「確かに、いろいろ、しちゃった…わね」カァッ 上条「正直、やりすぎた感じが否めないわけですが、…御坂のアレが一番ヤバかった」 美琴「よーし、今すぐ忘れろ忘れるのよ忘れなさい!!」ビリビリ 上条「ちょっと待って御坂さん!自分から舐めといてそれはあんまりじゃないでしょうか!?」 美琴「へ?」 上条「その、指で拭ってペロッって…」 美琴「ぎゃああああああああ!!なに言ってるのよアンタ!!」(てっきりパンツのことかと思ったじゃないの!)/// 上条「いや、でもなあ。アレは反則だぞ」 美琴「な、な、仲のいいお友達なら普通のことよ!」 上条「女の子同士ならいいかもしれないけど、上条さん男の子ですよ!?」 美琴「ア、ア、アンタならわたし、気にしないけど!?」(って、なに言っちゃってるの!?わたし)/// 上条「御坂…。お前俺のことそんな風に見てたのかよ」 美琴「うぇ!?そ、そ、そ、そ、そんな風ってどんな風に見られてると思ってるのよアンタ!!」 上条「んー。お前の言葉を借りれば『仲のいいお友達』ってやつか?」 美琴「そ、そ、そ、そ、そうね!!そんな感じかしら!?」 上条「そっか。…まあ、そうだよな」ギュッ 美琴「!?」(な、なんで急に握り締めるのよ~!?)/// 頬が熱くなるのを自覚しながらアイツを見ると、アイツはなんとなく寂しげな表情を浮かべているように思えた。 なんとなくそれが引っ掛かった。アイツはわたしのことどう思っているのだろう。 美琴「ア、アンタは、どう思ってるのよ。…わたしのこと」ギュッ 不意に握り締められたお返しにとばかりにわたしは質問とともにアイツの手を握り返した。 アイツの視線が、わたしの視線と重なる。 上条「あー。その上目遣いも反則だ」/// 美琴「アンタわたしより背が高いんだから仕方ないじゃない」 上条「そ、そうか。まあ、御坂は俺のことを、記憶のことも含めてよく知ってくれている数少ない仲間…っていうか、戦友?とも違うな…。うーん。なんて言えばいいんだ?」 美琴「…」(まあそんなことだろうとは思っていたけど) 上条「まあ、気心の知れた相手って言えばいいのか?そんな感じだったんだ。…昨日までは」 取って付けたように漏らした『昨日までは』という言葉に、美琴は違和感を感じずにはいられなかった。 美琴「どういうこと?」 上条「えーっとだな、ちょっと長くなるけど、聞いてくれるか?」 美琴「いいわよ」 上条「とりあえず、階段のところにあるベンチまで行こう」 美琴「別に歩きながらでもいいけど?」 上条「あんまり他人に聞かせたくないんだよ。あそこなら誰かが来てもすぐわかるし、寒さも凌げるから」 美琴「わかった」(他人に聞かせたくないって、どういうこと?)ドキドキ 建物の中に入り、ファンシーショップやブティックの間の通路を、二階へと続く階段へと歩いていく。 そのまま階段を上り、中二階の登り階段側に置かれたベンチの前で立ち止まると、―気のせいじゃなければ少し躊躇いながら―繋いでいた手を離した。 上条「座って」 美琴「うん」 促されるまま、わたしはベンチに腰を下ろす。するとアイツはわたしの右横に腰を下ろして、膝の上で両手を組む。 上条「…昨日、お前に電話しただろ?買い物に付き合ってくれってさ」 美琴「うん」 上条「あれさ、友達と他愛のない話をしているうちに、御坂のことが話題になって、誘ってみろって言われて買い物に誘ったんだ。アイツが言うには二つ返事で了承するからって」 美琴(なんだ。自分から誘おうと思ったんじゃないんだ)ショボン 上条「で、そのとおりになってさ、…正直言うと焦った。断られると思ってたから」 美琴「…」(あー。コイツの中じゃ断られること前提だったから勝手に勘違いしたのね) 上条「それで、部屋に帰ってから、気が付くと御坂のこと考えてたりしてさ」 美琴(え?それって?) 上条「俺って結構、御坂に助けてもらってるなとか思ったりなんかして」 美琴「そ、そんなことない…でしょ?」 上条「御坂に勉強を見てもらったおかげで補修は免れたし、家計がピンチの時にはインデックスともども美味しい豪勢なご飯を作ってもらったし、御坂になら安心して背中も任せられるし」 美琴「べ、別にそんな大したことじゃない」アセアセ 上条「いやいや、そんな謙遜しないでくれ御坂。インデックスのこと何かとフォローしてもらったりさ、ホント、感謝してる」オジギ 美琴「まあ、女性にしかわからないことってあるしね。むしろアンタが完璧にあの子のことフォローできてたら退くわよ」 上条「はは。確かにな。ま、ともかく上条さんは御坂に感謝してるわけですよ」 美琴「はいはい。あの子のことは今、関係ないでしょ?」(今はアンタの話をしてるんでしょうが) 上条「悪い。話が逸れたな。えっと、どこまで話したっけ」 美琴「感謝してる、ってトコ」 上条「そ、そっか。…えーっと、そんなわけで今朝も朝も早く目が覚めたりなんかしてさ」 美琴(わたしなんて眠れなかったんだから。…なんて言ったらどう思うかな?) 上条「早めに部屋を出て公園で御坂を待ってるときに、なんつーか、凄い楽しみにしてる自分がいてさ」 美琴「ちょっと待ってアンタ。そういえば震えてたけど、いつから公園で待ってたのよ」 上条「ん?御坂が来る十五分くらい前かな」 美琴「そ、そう」(ん?コイツ今、『凄い楽しみにしてる自分がいて』って言った?) 上条「おう。それでお前が来て、いきなりアレだろ?上条さん頭の中が真っ白になりましたよ」 美琴「う、アレは、アンタが寒そうだったからつい、その。…黒子にくっつかれたとき温かかったから、ね」カァッ 上条「やっぱり女の子のスキンシップだったんだな。うんうん。次からは気をつけような」ナデナデ 美琴「うにゃっ、いきなり撫でるな!」/// 上条「ビリビリ対策です。さすがにここで電撃はよろしくないので」ナデナデ 美琴「うぅ」/// 上条「それでまあ、ゲコ太のためにカップルケーキセットを頼んで、いろいろやっちゃったわけですけど」カァッ 美琴「…何でそこで赤くなるのよアンタ」 上条「…スマン、…その、ゲコ太思い出した」カァッ 美琴「よーし今度こそ今すぐ忘れろ忘れなさい忘れるのよ!」 上条「お、お、お、落ち着いて御坂さん!もうちょっとで上条さんの話し終わるから!」 美琴「…それで?」 上条「俺は友達に『デートの邪魔するな』って言っただろ?その後、御坂が白井に同じこと言ってさ」 美琴「う、うん」/// 上条「それを聞いてさ、俺、喫茶店を出ても御坂とデートしていたいって思ったんだわ」カァッ 美琴「…え?」 上条「それで御坂の手を掴んで、とりあえずどう伝えればいいものかって考えていたら、声をかけられたってわけ」 美琴「…ちょっと待って、整理させてくれる?」 上条「ああ」 美琴「昨日から今朝のアンタの心境は、…まあ置いといて」 上条「ひどっ」 美琴「簡単に言うと、わたしとデートしたいってこと…かな?」ドキドキ 上条「う…、はい。そうです」カァッ 真っ赤になって視線を逸らすアイツ。 『デートしたい』っていうのを素直に認めたのは嬉しいけど、問題はそこじゃなくて。 美琴「…ねえ、わかってる?アンタ」 上条「なにをでございましょう?御坂さん」 美琴「デートの意味」 上条「う…。まあ、わかっているつもり…です」カァッ 美琴「ふぅん。じゃあ、…その前にすることがあるんじゃない?」 大事な、とても大事なこと。 上条「あー、御坂。ひとつ聞いていいか?」 美琴「なによ?」 上条「そうなったら、…お前は俺とデートしてくれるのか」/// 美琴「…アンタ、ずるい」 上条「な、なんでだよ?」 美琴「わたしの答えを聞いて、回避しようとしてるの見え見えじゃない」ハァ 上条「う…」 美琴「…まあ、わたしは嫌いじゃないわよ。アンタのこと」/// 上条「…」 美琴「…」ドキドキ 上条「御坂…」ドキドキ 美琴「…」ドキドキ 上条「…」ガバッ アイツは、掠れた声でわたしを呼ぶと、次の瞬間、左手でわたしを抱き寄せた。 美琴「ふにゃっ!?」ビクッ 上条「悪い。お前の顔見て言えないから、こうさせてくれ」ダキッ 美琴「う、うん…」ドキドキ 上条「好きだ!御坂。付き合ってくれ」/// 美琴「…」 上条「…」ドキドキ 美琴「…うん」 嘘みたい。 これって、夢じゃないよね? 美琴「…ね、ねえ?」 上条「な、なんだ?」 美琴「わたしで…いいの?」 上条「御坂じゃなきゃ、嫌だ」 美琴「ホント?」 上条「本当だ」 美琴「じゃあ、もう一回、わたしを見て、言って」 アイツの左手をそっと押しながら、わたしはアイツへと向き直った。 アイツも、左手を離しながら、わたしの方を向く。その顔は林檎のように真っ赤だった。 上条「わたくし、上条当麻は御坂美琴が好きです。付き合ってください」/// 美琴「…わたし、御坂美琴も上条当麻が、好きです」/// そう返したわたしの顔も、きっと負けず劣らず真っ赤になっているだろう。 上条「み、さか…」 想いが止まらない。気が付くとわたしは言っていた。 美琴「ずっと、好きだったの」 上条「…マジで?」 美琴「…アンタは、まったく気づいてなかったけど」 上条「悪い」 美琴「でも、アンタが言ってくれたから、許す」 上条「御坂…」 美琴「ねえ、最初のお願い。彼氏なら、わたしのこと、名前で呼んで」 上条「…美琴」 美琴「よく、できました」ニコッ 上条「はは。なんだよそれ」 美琴「えへへ」 上条「あ、じゃあ、お前も俺のこと名前で呼んでくれるのか?」 美琴「ふにゃ!?アンタのことを名前で!?」カァッ 上条「俺だけ名前で呼ぶんじゃ不公平だと思いますけど?」 言われてみて気付く。確かに不公平かもしれない。えーっと、コイツの名前は…。 美琴「と、と、と、と、とうみゃ!?」/// 思いっきり噛んだ。慣れないことはしちゃいけない。 上条「なに噛んでんだ、落ち着け」 美琴「だ、だ、だ、だって、今までそんなこと考えてなかったし」/// 上条「付き合うことになったら名前で呼ぶとか思わなかったのお前?」 美琴「ことごとくスルーされてる相手と付き合うことになった後のことなんて考えられないわよ」 上条「…あー、スマン」 美琴「わかればよろしい」 上条「…俺は、たまに名前で呼んでたけどな」ボソッ 美琴「へ!?それってどういうこと!?」 上条「んー。今考えると結構前からお前のこと好きだったのかもしれない。お前が中学生だからストッパーかけてたんだと思う」 美琴「そ、そういうものなの?」 上条「たとえば、お前の同級生が小学生の男の子を好きだって言ったらどう思う?」 美琴「…ショタコンってやつかしら?」 上条「そうだろ?だから俺が中学生を好きだって言うと、同級生からロリコンと思われるわけだ」 美琴「ああ、そういうものなのね」 上条「そうなんですよ」 美琴「アンタとわたし、二つしか違わないんだけどねー」 上条「そうだな」 美琴「そのくらいの差って普通よね?」 上条「ああ」 美琴「じゃあ、考えるのやーめた」ダキツキ 上条「お、おい、当たってる。当たってるから」/// 美琴「嬉しいでしょ?と・う・ま」ニヤニヤ 上条「お前、キャラ変わってるぞ!?」カァッ 美琴「いいじゃない。積極的な彼女は嫌い?」ギュッ 上条「嫌いじゃない、嫌いじゃないけど、ここではヤバイ」 美琴「むー。どうしてよ?」 上条「馬鹿!お前、健全な男子高校生の性欲舐めるな!」 美琴「せっ!?」/// 上条「とりあえず離れる、離れれろ、離れましょう!そして上条さんにクールダウンの時間をください!」 美琴「せ、せ、せ…」アワアワ 上条「おーい、美琴さーん?」 美琴「ふにゃあああああっっ!!」プシュー 上条「み、美琴!?なんで倒れるの!?ふ、不幸だああああああ!!」 それぞれ、大きな紙袋を抱えて、巫女装束が似合いそうな黒髪の少女と背の高い青髪の少年が肩を並べてショッピングモールを歩いている。 青ピ「ホンマ助かったわ。ありがとな、姫神ちゃん」 姫神「ううん。こちらこそ。ありがとう」 青ピ「どうして姫神ちゃんがお礼言うんや?」 姫神「私も。クリスマスオーナメント買いに来たから」 青ピ「ってことは、もしかしてボク、姫神ちゃんとお揃いのツリー!?」ハッ 姫神「お揃いってことは無いと思う。あと。小萌のツリーだし」 青ピ「小萌先生のツリー!?」 姫神「明日。小萌の家でクリスマスパーティ」 青ピ「なんやて!?」 姫神「女の子だけ。…あ。あの子は男の子だったかな?」 顎に人差し指を当てて考えるようなポーズをとりながら、少女が言うと、少年のこめかみにビキッっと青筋が浮かび上がる。 青ピ「…ボク、そいつに殺意が芽生えたで」 姫神「ふふ。シスターの連れてくる猫だけど?」 青ピ「猫かい!」 姫神「ふふ」 青ピ「…姫神ちゃん、案外、意地悪やな」 姫神「そうかな?」 青ピ「うん。今のわざとやろ?」 姫神「ふふ。どうかな?」 そう言って笑う少女を、背の高い青髪の少年は眩しそうに見つめていた。 青ピ(あかん。その笑顔は反則やで) 姫神「どうしたの?青ピ君」 青ピ「んー?姫神ちゃんは今日も綺麗やなーって思って見とれてた」 姫神「青ピ君は。お世辞がうまいね」 青ピ「お世辞じゃないで?姫神ちゃんはホンマに綺麗やし」 姫神「ふふ。さっそく猫のお返し?」 青ピ「ま、そういうことにしておくわ」 姫神「ふふ」 パステルピンクに彩られたクレープショップの前で青髪の少年が振り返る。 青ピ「さ、ついたで。姫神ちゃん、なに食べるん?」 姫神「チョコバナナストロベリースペシャル」 青ピ「じゃ、ボクはハニーベリーズで。…おにーさん、作ってる間に自販機で飲みもん買って来てもええ?ほな、ちょっと行ってくるわ。姫神ちゃん、なに飲む?」 姫神「んー。ココア」 青ピ「おっけー。ほなちょっとここで待ってて」 姫神「うん」 そう言うと青髪の少年は自動販売機まで走っていき、飲み物を二本買うと、また走って戻ってくる。 それから店先に置かれたベンチに持っていた紙袋を置いて、手招きをした。 青ピ「姫神ちゃん、ここ、ここ座って」 姫神「わかった」 青ピ「はい、ココア」 姫神「ありがとう」 青ピ「お、クレープできたみたいやな?もろてくるからちょっと待ってて」 姫神「うん」 青ピ「おおっ!?スペシャルってごっついなー。スプーンまで刺さってるんや。…ほなこれで。おおきに。姫神ちゃん。お待たせ」 姫神「ありがとう。いただきます」パクッ 青ピ(可愛いで。姫神ちゃん) 姫神「ふふ。美味しい。幸せ」パクッ 青ピ「…ボクも幸せや」 姫神「まだ。食べてないのに。幸せ?」 青ピ「うん。姫神ちゃんの幸せそうな顔見たら、幸せやなーって」 姫神「そ。そうなんだ」/// 青ピ「へ、変なこと言うてゴメン。お、ホンマや、美味いで。このクレープ」パクパク 姫神「…」パクッ 青ピ「…」(や、やってもうた) 姫神「…」パクッ 青ピ(ちょい赤くなってる姫神ちゃんもなかなかええなぁ)パクパク 姫神「…」パクッ 青ピ(伏せ目がちなところもなかなか…)モグモグ 姫神「…そんなに。見ないで」/// 青ピ「ス、スマン。でも、見惚れちゃって」/// 姫神「馬鹿」/// 青ピ「…姫神ちゃん、やっぱりわざとやってるやろ。さっきから男の萌えポイントつきまくりやで」 姫神「そんなの。知らない」/// 青ピ「可愛い。可愛すぎるで、姫神ちゃん」 姫神「青ピ君。なんか。怖い」 青ピ「姫神ちゃんが可愛すぎるのがアカンのや」 姫神「私は。可愛くなんて。ない」 青ピ「姫神ちゃんは自分の魅力に気がついてないんやな」 姫神「もう。知らない」パクパクッ「…ぐむ!?」ドンドン 青ピ「姫神ちゃん、落ち着いて!ココアを飲むんや!ココア!!」 姫神「…」ゴクッゴクッ「…はぁ」 青ピ「大丈夫?」 姫神「な、なんとか」 青ピ「よかった」ホッ 姫神「…ごめんね」 青ピ「なにが?」 姫神「心配させた」 青ピ「心配するんはボクの勝手やん?姫神ちゃんが悪く思うことないんやで?」 姫神「でも…」 青ピ「デモもヘチマもないで?」 姫神「…」 青ピ「…じゃあ、明日もボクの買い物付き合ってや。それでご破算」(なーんて) 青髪ピアスはあくまで冗談で誘ったのだが、姫神秋沙は唇に人差し指をあてて何か考えるようなそぶりを見せた後、小さく頷いた。 姫神「別に。いいよ」 青ピ「…マジで?」 姫神「うん。小萌の家のパーティーは夕方からだし」 青ピ「言ってみるもんやなー」 姫神「ふふ。なにそれ」クス 青ピ「じゃあ、今日はこれで帰るとしよか。…ホンマは今日買い物しとこ思たけど、明日付き合うてもらえるし」 姫神「わざわざ出直すなんて。何を買うの?」 青ピ「せやなー。姫神ちゃんへのクリスマスプレゼントとか」 姫神「ふふ。お返ししなくてもいいなら」 青ピ「姫神ちゃん。悪女やなー」 姫神「ふふ。そういうことにしておく」 青ピ「じゃ、途中まで一緒にいこか?」 姫神「そんなこと言っても。小萌の家は。教えない」 青ピ「あ、ばれた」 姫神「ふふ。残念でした」 学生寮方面(常盤台中学前方面)へのバスが出るバス停へ向かいながら、並んで歩く。 青ピ「で、明日はどないする?」 姫神「んー。9時40分ごろにバス停」 青ピ「また中途半端やな」 姫神「バスの時間に合わせただけ」 青ピ「…姫神ちゃん。できる女やね」 姫神「ふふ」 青ピ「ほなそれで。お、ちょうどバスがきたやん」 姫神「ナイスタイミング」 青ピ「ほな、帰ろか」 姫神「うん」 青ピ(あれ?姫神ちゃんとボク、ええ感じやない?) 姫神「どうしたの?青ピ君?」 青ピ「ん。なんでもないで」 姫神「そう」 青ピ「うん」 バスに乗り込むと、少女は運転席の後ろの席に座り、少年はその後ろの席に座った。 少女の隣が空いていたが、そこに座る勇気は少年には無かった。 姫神「隣。座ればよかったのに」 青ピ「いや、狭いやろ?」 姫神「そうかな?」 青ピ「そうやで」 姫神「まあ。これでも。話はできるけど」 青ピ「せやな」 姫神「…ねえ。青ピ君」 青ピ「ん?なんや?姫神ちゃん」 姫神「今日。楽しかった?」 青ピ「ああ。楽しかったで」 姫神「…そっか」 青ピ「うん」 姫神「…ありがとう」 青ピ「なんか、今日、姫神ちゃんそればっかりやな」 姫神「そうかな?」 青ピ「そうやで。今日は、姫神ちゃんも楽しんでくれたなら、ボク、それで満足や」 姫神「…うん。楽しかった」 青ピ「そない言ってくれると嬉しいわぁ」 姫神「ふふ」 目的地がアナウンスされると、少女が手を伸ばしボタンを押した。 ほどなくしてバスが停車し、少女が立ち上がる。少年もそれに続いて立ち上がるとバスを降りた。 姫神「じゃあ。また。明日」 青ピ「うん。また明日」 少女が建物の影に入って見えなくなるまで、少年はその後姿を見送ると、自分も下宿へと向かって歩き始めた。 佐天「う~い~は~る~。隙あり!」バサッ 初春「ひゃあああっ!!捲らないでください佐天さん!!」/// 佐天「ピンクの水玉ゲットォ~!」 初春「そんな大声で言わないでください!!もおっ!!」/// 佐天「あはは。ゴメンゴメン。ところで、初春?御坂さんはここで間違いないんだよねえ?」 初春「…う。駄目ですよ佐天さん。御坂さん怒りますよ」 佐天「えー。昨日、あたしをハブってマコちんたちとバーガーショップ行ったのは何処の誰かなあ?」 初春「だ、だって佐天さん、用事があるってさっさと帰っちゃったじゃないですか」 佐天「まーそれはそれ。ホントは初春だって見たいんでしょ?恋する乙女の御坂さんをさ」 初春「わ、私はやっぱり、覗きはいけないことだって思うんです」 佐天「まーまー、そんな都合よく見つかるとは限らないんだし。それにあたしたちはショッピングに来たんだからさ。たまたま御坂さんに遭遇するってことがあるかもしれないってだけよ」ニカッ 初春「そうですよね。そんな都合よく見つかるなんて…ことは…」ハッ 言いかけて頭に花飾りを付けた少女は足を止め、目を見開いて口を押さえる。その頬はみるみる真っ赤になっていった。 初春(み、み、み、み、御坂さーーーん!!)カァァァッ 佐天「初春?どうしたのーって、ぬっはぁっ!?」 初春「だ、だ、だ、駄目ですよ佐天さん!大声出しちゃ!」ボソボソ 佐天「いやー。衝撃の出来事にあたくし佐天涙子、困惑しております」ボソボソ 近くのファンシーショップを覗いている振りをしながら、少女たちは階段の方をチラ見していた。 踊り場のベンチに座っているツンツン頭の少年。その少年に膝枕されて横になっているのは、少女たちの友人に間違いなかった。 佐天「あれって、どういうシチュエーションなの?」ボソボソ 初春「御坂さん、眠っているみたいですね。昨日眠れなくって力尽きたとか…じゃないですかね」ボソボソ 佐天「おおっ!?髪を撫でてる。それに優しい目で御坂さんを見てますよ」ボソボソ 初春「うーん。恋人同士って感じですね。御坂さんの様子だとそういうのじゃないって思ったんですけど」ボソボソ 佐天「お?御坂さんがお目覚めのようです」ボソボソ 初春「あ、御坂さん赤くなってる」ボソボソ 佐天「慌てて立ち上がって後ずさった。あちゃー、修羅場か?」ボソボソ 初春「喧嘩ではないと思うけど、御坂さんにとって膝枕は予想外だったんじゃないかな?」ボソボソ 佐天「出るか!電撃…って、ぬっふぇっ!」/// 初春「はわわわわわっ!!」/// 二人の少女の目に飛び込んできたのは、ツンツン頭の少年が少女を抱きしめる光景だった。見ている方が恥ずかしくなるような雰囲気が二人から迸っている。 佐天「…い、行こっか?初春」/// 初春「そ、そうですね」/// いたたまれなくなった二人は慌ててその場を後にしたのであった。 ――― ――そっと愛しい少女の髪に指を通すと、自然と口元に笑みが浮かんだ。 夢じゃない。現実が幸福で塗り潰されていくような感覚。 少年は穏やかな微笑を浮かべ、眠る少女をただ、見つめていた。 ――― ――上条当麻は御坂美琴が好きです。付き合ってください。 肩を引き寄せられての突然の告白。 今まで、そんなそぶりなど見せたことの無い少年からの、突然の告白。 胸が壊れそうなほど、激しく早鐘を打っている。 まるで目覚まし時計の鐘のように。 美琴「…ん」 上条「…」 美琴「んぅ。…夢かぁ」ショボン ――アイツが、あんなことを言うのはいつも夢の中のことだ。 だから、目が覚めたとき、傍にアイツがいなければ、それは夢ということになる。 美琴(ん?でもここ、寮じゃない…) 上条「何が夢だって?」 頭の上から声をかけられる。紛れも無くアイツの声。 美琴「ふぇ!?ア、ア、ア、ア、アンタ!!って!うぇぇぇぇ!?」/// 上条「お目覚めですか。姫」 美琴「うぇぇぇ!?ひ、膝、膝枕!?」/// 上条「落ち着け、美琴」 美琴「あ、あぅあぅ」(な、名前で呼ばれた)/// 上条「目、覚めたか?」 美琴「さ、覚めた覚めた!そりゃもうばっちり!!」/// 言いながら少女は飛び起きて後ずさり、今、自分が置かれている状況を整理する。 ――喫茶店でカップルケーキセットを食べて、階段の踊り場でアイツに告白されて、自分も告白をして。そこで目を覚まして、アイツに膝枕をされていて。 美琴「あれ?…夢じゃない?でも夢?あれ?あれ?」 上条「なに混乱してるんだお前」 美琴「混乱?」 上条「…ったく。仕方ねえな」ギュッ 美琴「ふぇっ!?」/// ――何の前触れも無く、アイツがわたしを抱きしめる。でも、ぜんぜん嫌じゃなくて。 上条「好きだぞ。…美琴」 美琴「…あ」 上条「彼女になってくれるんだろ?」 ――ああ。そっか。夢じゃなかったんだ。 美琴「…うん。…当麻」ギュッ 上条「よく言えました」 美琴「馬鹿」 上条「寝ぼけてた奴に言われたくないな」 美琴「う…」 上条「…まあ、一世一代の告白を思い出していただけたなら、上条さんはそれで満足です」 美琴「…ありがと」 上条「どういたしまして」 ――忘れない。忘れたくない。 あんなにまっすぐで、とんでもなく心に響く言葉。幸せってああいうのを聞いたときの気持ちを言うのかもしれない。 わたしも素直に自分の気持ちを伝えられたし。 美琴「…あー…と、当麻のせいだ」 上条「ん?何が?」 美琴「わたしがこんなところで気絶したの。変なこと言うんだもん」/// 上条「そんな変なこと言ったか?俺」 美琴「『健全な男子高校生の』とか」ボソッ 上条「…あー。悪い。その、いっぱいいっぱいだったからさ」/// 美琴「なによそれ」 上条「…っ、さすがに公共の場で襲うわけにはいかねえだろうが」/// 美琴「なっ!!」(お、襲うって!?)/// 上条「でも、お前の柔らかさに我を忘れそうになったのは事実でありますので、美琴さんへの戒めの意味も含めてああいう表現を使用した次第であります」 美琴「あぅ…」/// 上条「ってか、こうしているだけでも、結構きてるんだけどな」/// 美琴「そっか」(わたしもドキドキしてるけど) 上条「というわけで、一旦離れましょう」 美琴「ん。わかった」 上条「でも、手は握るけどな」ギュッ 美琴「ん…。ありがと」ギュッ ――― セブンスミスト2階。紳士服売り場 上条「お、これは温いな」 美琴「わたしのお勧めはこれ。着てみて」 上条「軽っ!?なにこれ?」 美琴「カシミアよ。わたしのマフラーやコートと同じ」 上条「へー。いいな。これ」 ボタンを留めて体を動かしてみる。軽くて動きやすい。 美琴「…じゃ、それにする?」 上条「…へ?」 美琴「クリスマスのプレゼント」 上条「いやいや、美琴センセー。これ、上条さん家の一ヶ月の食費並のお値段ですよ!?」 美琴「わたしとお揃いって、嫌?」クビカシゲ(お揃いって言っても素材だけなんだけど) 上条「嫌ってことは無いけど、貰うには高すぎるって言うかなんていうか…」 美琴「わたしは、お揃いにしたいんだけど」 上条「うーん。でもなあ」 美琴「だいたい、この時期になってコートも着ていないなんておかしいわよ」 上条「いや、だから見に来たわけで」 美琴「それ、気に入ったんでしょ?」 上条「まあ、そうなんだけど」 美琴「じゃあ、わたしが選んだんだし、プレゼントさせて」 上条「だからお値段がですね…」 美琴「あのねえ、わたしとしては今朝みたいに震えてるアンタを見たくないの。…わたしの我侭なの。聞いてくれない?」 上条「美琴…」 美琴「駄目、かな?」ウワメヅカイ 上条「…貧乏学生の上条さんがこんな凄いコート着てたらおかしくない?」(その上目遣いは反則だって) 美琴「デザイン的にはよくある普通のロングコートだし、大丈夫だと思うけど?似合ってるし」 上条「そ、そっか」 美琴「うん。いいと思う」 上条「あーもー。負けた負けた。でも本当にいいのか?」 美琴「うん」ニコッ 上条「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」ペコッ 美琴「じゃ、行きましょ」 上条「え?おい、脱がなくていいのか?」 美琴「いいのよ。そのまま着ていけば」 戸惑う少年の手を引き、少女は慣れた感じでカウンターにいた店員に声をかけ、カードを出して会計を済ます。その間に別の店員が少年の着ていたコートのタグや留め紐(コートのスリットを×で縫ってあるやつ)を取り除いてくれた。 美琴「お待たせ。準備できた?」 上条「ああ。全部取ってもらった」 美琴「じゃ、今度は下に行くわよ」 そう言うと、少女は少年の左腕を掴む。 美琴「腕、組んでいい?」 上条「しがみついたりしなければ、むしろ組みたい」 美琴「じゃ、組もっと」ギュ 上条(柔らかいものが当たってるんですけど、気のせい気のせい)「…なんか、店の商品を着たまま出て行くのって緊張するなあ」 美琴「ふふ。その気持ち、わかる気がする」 上条「で、何を見るんだ?」 美琴「んー。ダウンジャケットがいいかな」 上条「そのコート、よく似合ってるけどな」 美琴「ん?あ、わたしじゃなくってあの子にね。あの子も持ってないでしょ?防寒具」 上条「え?インデックスか?」 美琴「うん。アンタがコート着てるのを見て、あの子の分が無かったら噛みつかれるんじゃないの?」 上条「う…。ひ、否定できない」 美琴「だからあの子にもクリスマスプレゼントってことで。あ、わたしが贈りたいだけだから、アンタは気にしないで」 上条「悪いな。ありがとう」 美琴「だーかーらー。アンタに感謝される筋合いは無いっての」 上条「でも、ありがとう」 美琴「はいはい」 ――― 小萌「さーて、これで完成ですよ」 インデックス「なんだか楽しみなんだよ」 結標「ちょっと点けてみましょうか」 姫神「じゃあ。スイッチを入れる」カチ 小さいながらも細々と飾り付けられたクリスマスツリー。その電飾がキラキラと光を放つ。 インデックス「綺麗なんだよ!」 小萌「うん。綺麗ですねー」 結標「…なんか、こういうのも悪くないわね」 小萌「ふふ。そうですね」 姫神「綺麗」 インデックス「小さいけど、ヤドリギには使えそうなんだよ」ボソッ 小萌「シスターちゃんはロマンチストですねー」 インデックス「そ、そんなんじゃないんだよ!?」カァッ 姫神「…」 小萌に冷やかされてぱっと頬を染めるシスター。上条君。罪な人。 結標「ヤドリギって、なんだっけ?」 小萌「ふふふ。北欧にはクリスマスのヤドリギの下でキスをしたカップルは永遠に幸せになれるという言い伝えがあるのですよ」 結標「あー、私には関係ないわね」 インデックス「わ、わ、私にも関係ないんだよ!シスターとしてこもえやあいさやあわきがそういう風にしたくっても大丈夫だって思っただけなんだよ!」カァッ 小萌「シスターちゃーん?どこにそんなヤローがいるのか先生に教えてくれるかな?」 結標「だから私は関係ないって言ってるじゃない。それに、ヤドリギの下って言うくらいなんだから、こんなツリーじゃなくってショッピングモールのツリーの方がいいんじゃない?」 ショッピングモール。上条君と女の子が一緒にいたところ。 インデックス「あいさ。どうしたのかな?」 姫神「…上条君は。明日はここに来ないかも」 インデックス「とうまが?なんで?」 姫神「えっと。ごめん。正直に言う。上条君。さっき女の子とショッピングモールでデートしてた」 インデックス「…そっか。たぶんみことだよね」 姫神「みこと?」 インデックス「うん。たまにご飯作ってくれたり、服とか買ってくれたりするの」 小萌「上条ちゃんも隅に置けないですねー。超能力者と付き合っちゃうなんて」【注:新約2巻での砂場に落とした磁石に付いた砂鉄的な遭遇後、門前払い後に電気を纏いながら暴れているのは第三位の御坂美琴だと結標に説明されている】 結標「あれ、姫神さんも会っているはずだけど?常盤台の女の子に」 姫神「うーん。覚えていない」【注:新約2巻での砂場に落とした磁石に付いた砂鉄的な遭遇時、暴れる吹寄を抑えていたため】 インデックス「とうまが幸せなら私はそれでいいんだよ」ポロッ 小萌「シスターちゃん、泣かないで」 インデックス「あれ?おかしいな。なんで…ふぇ、ふぇぇぇぇん」ポロポロ 小萌「よしよし、上条ちゃんは悪い子ですねー。シスターちゃんを泣かせるなんて」ナデナデ インデックス「とうまのせいじゃないんだよ。みことのせいでもないんだよ。でも、涙が出ちゃうんだよ」ポロポロ 小萌「はいはい。思いっきり泣いてすっきりしちゃいましょうねー。夕御飯は豪華絢爛焼肉セットですよー」ナデナデ インデックス「ふぇぇぇぇぇんっ」ポロポロ ――― 上条「…なあ」 美琴「なーに?」 上条「今日、上条さん的にはクリスマスプレゼントとして髪飾りでも贈ろうかと思っていたのですが」 美琴「そ、そうなんだ」 上条「その、名前で呼び合える仲になったことだし、…上条さんって実は独占欲が強いわけでして」ギュッ 美琴(独占欲って)/// 上条「ペアリング、なんてどうだ?あまり高いのは買えないけど」 美琴「うん!嬉しい!」ギュッ【注:この話では、新約3巻のアレはありません】 上条「じゃ、じゃあ、どの店がいいかな?」 美琴「そうね。友達がよくネックレスとか見ているお店があるから、そこに行ってみよっか?」ニコッ 上条「お、おう」 必然的に少女が少年を引っ張っていく格好となる。少女はとても嬉しそうな笑みを浮かべていた。 ――― 初春「あ、これなんて佐天さんに似合いそうですよ」 佐天「さっすが初春。あたしの好みを良くわかっているわね」 初春「あ、これなんか御坂さんに似合いそう」 佐天「どれどれー?おー、確かに」 美琴「あー、可愛いわねー」ヒョイ 初春「あ、御坂さん」 佐天「ちょうど御坂さんに似合いそうなヘアピンの話をしていたんですよーって、ぬっふぇ!?」 初春「なに変な声出しているんです…か」/// 二人の少女は声をかけられたので友人の方へ顔を向ける。するとそこには友人と男性が仲良く手を繋いで立っていた。 美琴「あははー。邪魔しちゃってゴメンね。姿が見えたから声かけなきゃって思って」(ついでにコイツの紹介なんかしちゃったりして)/// 佐天「いや、それはわざわざ恐れ入ります御坂さん。で!そちらの方は、つまり、その、御坂さんの、…彼氏さんでよろしいですか?」 美琴「あー、うん」/// 初春「はっ、はじめまして。私、柵川中一年の初春飾利です」(あっさりと認めた!?) 佐天「あたしは柵川中一年の佐天涙子でーす。はじめまして」 上条「あ、はじめまして。…なあ美琴?いきなりお友達紹介はハードル高いんじゃないか」ボソ 佐天「うっはっ!聞いた初春!?御坂さんを名前呼びだよ、名前呼び!」 上条「!」/// 初春「さ、さ、さ佐天さーん!失礼ですよー」アワアワ 佐天「んでんで、御坂さんは彼氏さんのことなんて呼んでいるんですか?やっぱり名前呼びだったりします?」 美琴「う、うん」/// 上条「いや、最初だけでさっきから呼んでくれないじゃないか」 美琴「ア、アンタは余計なこと言わない!」/// 佐天「御坂さーん、彼氏さんもこう言ってるんですから、呼んであげたらどうですか?」ニヤニヤ 美琴(しまったー。佐天さんのスイッチ入っちゃった!!)/// 初春「さ、佐天さん!御坂さんすみません」アセアセ 佐天「彼氏さんも名前で呼んで欲しいですよね?」 上条「そ、そうだな…」ボソッ 美琴「!」 初春(そこで肯定しちゃうの!?カミジョーさん!!ああ、御坂さんが真っ赤になって…) 美琴「…と、当麻」ウワメヅカイ 初春(み、御坂さん~!?そこで名前呼んじゃうの~!?) 佐天「ぬっふぇ!熱い、熱いですねー」ニヨニヨ 上条「…まー、相思相愛ってやつだったからな」ボソッ ――――――――― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1960.html
18スレ目ログ ____ ________________ 18-10 夢旅人(15-189) ミサカネットワーク上のアリア ~Aria_ on_ MISAKA-NETWORK 18-29 くまのこ(17-598) もし学園都市最強の電撃使いが初めからデレていたら 18-77 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 5 第5話『プレゼントタイム』 18-106 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 7 3日目 中編 18-110 くまのこ(17-598) 小ネタ 未来的日本昔話 「ビリビリ」 18-127 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 1 18-137 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 2 18-156 ひろたか(18-154) 八月の詩 1 18-166 ひろたか(18-154) 八月の詩 2 18-173 月見里(12-676) 洒涙雨 1 ―前編― 18-192 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 1 前編 18-201 くまのこ(17-598) もし常盤台の超電磁砲が初めからデレていたら 18-206 ひろたか(18-154) 八月の詩 3 18-214 かぺら(5-906) 夏休みの終わりには 18-231 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 13 恋、はじまる 18-242 17-491 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 18-260 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 2 後編 18-279 月見里(12-676) 洒涙雨 2 ―中編― 18-292 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 14 恋、はじまる 18-303 くまのこ(17-598) もし最強無敵の電撃姫が初めからデレていたら 18-312 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 15 恋、はじまる 18-325 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-331 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-343 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 8 3日目 後編 18-350 月見里(12-676) 洒涙雨 3 ―後編― 18-367 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 16 恋、はじまる 18-389 くまのこ(17-598) もし32万8571分の1の天才が初めからデレていたら 18-397 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-402 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-417 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 17 恋、はじまる 18-431 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 6 Always_On_My_Mind 18-441 またーり三世(18-440) 美琴 「黒子聞いて、新しい能力を開発したわ」 18-452 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 8 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-466 くまのこ(17-598) 酔い上さんは絡み酒 18-475 くまのこ(17-598) 酔い琴さんは泣き上戸 18-483 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 9 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-494 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 7 Always_On_My_Mind 18-510 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 9 4日目 上条編 18-519 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ぴろーとーく 18-529 久志(18-529) 小ネタ 着うた 18-540 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 10 第9話『走れ、上条』 18-554 くまのこ(17-598) 3人のゲテモノメイドと+α ですの 18-562 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 1 18-569 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 2 18-586 い~む(16-135) 未来からの来訪者 13 ~5th day まこみことうま~ 18-605 くまのこ(17-598) もし御坂家の御令嬢が初めからデレていたら 18-608 くまのこ(17-598) 小ネタ 上と琴でイチャイチャさせてみた 18-651 琴子(4-448) 小ネタ 上条さんと家庭教師(美琴さん) 18-659 夢旅人(15-189) Just_Married ~私たち結婚しました 18-702 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 1 18-715 月見里(12-676) ふたり 18-739 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 2 18-754 アクセ(18-753) 二人の鈍感 18-766 17-491 友達ルート? 1 18-783 蒼(4-816) Presented to you 9 ―beginning・一二月三日②― 18-793 夢旅人(15-189) 愛してると言って ~Say_You_Love_Me 18-817 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 11 最終話『すべての真相』 18-829 琴子(4-448) とある10人のハロウィンパーティ 1 Let s_do_something! 18-842 夢旅人(15-189) その香りは誰がための 18-858 久志(18-529) 小ネタ 上琴ドッキリマル秘報告 18-871 くまのこ(17-598) 集結!御坂DNA だとよォ 18-893 18-892 小ネタ 正夢? 18-933 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 3 18-940 mm(18-939) 上琴の勉強会 18-956 くまのこ(17-598) いちゃいちゃって難しい 18-975 O.T.(18-974) この半径30cmの中で Way_to_Answer. ▲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1921.html
前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情 EXTRA EDITION_2(上条さん地獄の10日間 二日目:美琴初めてのエプロン編) 地獄の補習期間に入って三日目。 補習期間であるにも関わらず、上条当麻は幸せだった。 美琴が上条の勉強を見るのはコレが初めてではない。 今までにも何度か機会があったのだが……。 その時はどうしても恥ずかしさが先に立ってしまい、キツく当たってしまう事があった。 だが、今は違う。 美琴は上条を支えたいと願い、上条も美琴に応えたいと思っている。 コレがこの二人の本来の姿なのだろう。 イヤ……チョット、違うな……。 アレが、あの仕掛けがなければ……もっとイチャイチャしてるはず。 (上琴)「「ウルサい!!!」」 そんなに恥ずかしがらなくても……。 今日は『イチャイチャ』させてあげる予定なんだけどな……。 (琴)「ホント!?」 (上)「もしウソだったら、タダじゃ済まさねえ」 ハイハイ……。 という事で、今日は土曜日。 午前中は学校に行きそこで補習。 昼からは【喫茶店エトワール】の裏で課題の勉強である。 だが、その前に……シッカリ二人でイチャイチャお昼ご飯タイムを満喫してたりする。 (琴)「ハイ、当麻。ア~ン」 (上)「ア~ン。……モグモグ……うん、美味しいぞ」 (琴)「ホントはさ……私が作ってあげたかったんだけど……午前中に外せない用事があって……」 (上)「イイよ、イイよ。その気持ちだけで嬉しいよ。それに……美琴に『ア~ン』して貰うだけで……」 (琴)「えっ?」 (上)「いつものマスターの料理が数倍……美味しくなるから……(テレッ//////////)」 (琴)「(ポンッ!!!////////////////////)エヘッ、嬉しい。……ねぇ……当麻。(じーーーーーーーーーーーーーーッ)」 (上)「(こっ、この視線は……?)……あッ、そっ、そうだ。……じゃあ、美琴にも……ア~ン」 (琴)「ア~ン。……モグモグ……エヘッ、美味しいよ。当麻」 (上)「アッ、ほっぺにソースが……ペロッ……(チュ)……」 (琴)「ふえッ!?」 (上)「アッ、ごっ、ゴメン……。そっ、その……つい……」 (琴)(ほっぺに『ペロッ』て……、その後……軽く……き、キス……?) (上)(し、しまった……。やり過ぎたか!? でッ、でも……美琴がカワイすぎて……つい……) (琴)『(ボンッ!!!)プシューーーーーーーーーーーッ!!!』 (上)「わッ!? みっ、美琴ぉッ!? ……って、アレ? 漏電が、電撃が……来ない?」 (琴)「エヘ……、エヘ……、エヘヘ……」 (上)「オイッ!? 美琴ッ!! シッカリしろ!!! ……ん?(オレ、いつの間に右手を……? もう、ほとんど条件反射になってきてるなあ……)」 (琴)「エヘ……、当麻に、……当麻に、食べられちゃったぁ……」 (上)「え゛?」 (琴)「もう……お嫁に行けない……。当麻に……、当麻に食べられちゃったから……当麻のところにしか、お嫁に行けない……」 (上)「う゛……」 (琴)「当麻に食べられちゃった……、私、もうダメ……」 (上)「オイッ! 美琴ったら!? シッカリしろぉ~~~~!?」 (琴)「ふにゃぁ~~~~……」 もう、桃色空間全開である。 それを監視(覗き見とも言う)しているアッコさんも……。 (ア)「もう、好きにして……」 と、既にサジを投げている。 コレも勉強中の『イチャイチャ禁止令』の反動なのだろう。 それにしても……あの仕掛けの反動はスゴいな……。 ある意味逆効果になってるんじゃ……。 (上琴)「「あうあう……」」 そんなこんなの騒動もあったが、時間になればあの山のような課題に取り組み始める。 ……と言うより、取り組まないとまた例の仕掛けが作動してしまうので、やらない訳には行かないのだ。 それに課題をこなしていく上で、ペナルティ・ボックスに上条が閉じ込められるのはタイムロスに繋がるのだから、出来る限り避けなければならない。 それらの理由で、二人はペナルティを科せられないように、必死に課題に取り組むのであった。 そして、夕飯近くになった頃……。 チョットした事件が……。 (上)「ウーン……」 (琴)「あ、そこはね……ココをこうして……」 (上)「え?……ふんふん……」 (琴)「そしたらこうなって……」 (上)「うんうん………」 (琴)「そしたら、どうなる?」 (上)「えッ?」 (琴)「全部私がやっちゃったら意味がないでしょ?」 (上)「うッ……」 (琴)「ほら、頑張って」 (上)「う~ん……」 (琴)「……」 (上)「あ……もしかして……」 (琴)「……」 (上)「ココをこうすれば……」 (琴)「そうそう、やれば出来るじゃない、当麻」 (上)「なるほど、なるほど。……美琴の教え方がイイからだよ」 (琴)「当麻が頑張ってるからだよ。エヘヘ」 『ピピー、ピピー、ピピー、ピピー』 (マ)『嬢ちゃん、すまねえがチョット店まで来て貰えねえか?』 マスターがいきなりインターフォンで呼びかけてきた。 (琴)「えッ!? 何? 何なのッ!?」 (マ)『ビックリさせてすまねえな。とりあえず店まで来てくれ。そしたら分かるから……』 (琴)「あ……ハイ……。一体何だろ?」 (上)「マスター、かなり慌ててたみたいだけど……」 (琴)「とりあえず行ってみるね。その間、ちゃんと自習しててよ」 (上)「ハイハイ、分かってますよ……」 (琴)「あ、そうだ! えいッ!!!」 (上)「えッ!? こっ、コラッ!? 美琴ッ? こんな風に抱きついたら、またペナルティが……」 (琴)「イイじゃない。どっちみち離れるんだもん。その前にちょろっとスリスリしとくのぉ~」 (上)「あ、あの……オレがペナルティ・ボックスに入る事は……考慮無しですかああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!?」 叫び声と共に、上条はペナルティ・ボックスへと吸い込まれていった。 (琴)「15分経つ頃には戻ってくるからねぇ~」 そう言って、ご機嫌になった美琴は店の方へと歩いて行った。 独りペナルティ・ボックスに閉じ込められた上条は……、『シクシク』と泣きながら自習に勤しむしかなかった。 (上)『ふ、不幸だ……』 仕方無いよ。運命だもの……。 さて、店の方に移動した美琴は……信じられない光景を目にする。 何と……店がお客さんで、満席になっていた。 (琴)「ぅ、ウソ……? こんなの……信じられない」 (ア)「美琴ちゃん、サラッとキッツいコト言わないでくれる?」 (琴)「あ、アハ……アハハハハハ……」 (ア)「とは言え、ホント大忙しなのよ……」 (琴)「あ、あの……マスターは?」 (マ)「ああ……嬢ちゃん、すまねえな。急に呼び出したりしてよ」 (琴)「あ、マスター?」 (マ)「見ての通りなんでな。とても上条と嬢ちゃんの晩飯を作れそうにねえんだ。悪いがオレの代わりに作ってくれねえか?」 (琴)「え?」 (マ)「悪いが頼むよ。キッチンは裏にもあるからさ。材料は好きなもん持ってってイイから」 (琴)「あ……ハイ。分かりました」 (マ)「実はこの後、黄泉川がさ……若いの連れて来るって言ってやがるんでな。その準備もあるんで手一杯なんだよ」 (琴)「え? 黄泉川……さん?」 (マ)「昨日の一件が原因だろうな。あのバカ……言うなって言ってるのに……」 (琴)「でも……マスター、嬉しそう……」 (マ)「んなことねえよ。まぁ、若えのが来るのはイイんだけどな。大騒ぎになるのが目に見えてるからなぁ……っと、こうしちゃいらんねえ」 (ア)「アンタ、次のオーダー。カキフライ定食でデザートはコーヒーゼリー。アフターはコロンビア、それから……」 (マ)「……アイよッ。んじゃ、嬢ちゃん頼んだぜ」 (ア)「エプロンは裏のロッカーに入ってるから、それ使ってねぇ~」 その忙しさに圧倒される美琴。 だが、マスターとアッコさんはテキパキと接客をこなしてゆく。 それを見た美琴は下手な手伝いはジャマになると判断し、裏からキッチンに回って必要な材料を調達する。 (琴)「さっきカキフライ定食がどうとか言ってたっけ。じゃあ、今夜のメインはそれにしよっと」 (琴)「あ、そうだ……。当麻に言わなきゃ……」 そう呟くと、美琴は勉強している部屋の前で上条に呼びかける。 まだ15分は経っていないので、上条はペナルティ・ボックスの中だ。 (琴)「当麻ぁ~、聞こえるぅ~?」 (上)『聞こえてるぞぉ~』 (琴)「お店が忙しくて、晩ご飯を私が代わりに作る事になったから、自習しててねぇ~」 (上)『ええッ!? み、美琴が作ってくれるのか!?』 (琴)「うん、そうだけど?」 (上)『そ、それって……もしかして……エプロン姿も……』 (琴)「あ……うん、見せたげる……ね……」 (上)『おッ、オレッ! 頑張るからッ!!!』 (琴)「あ、うん。じゃあ、頑張ってね」 (上)『ああッ!!! うわぁ~、すっげえ楽しみだなぁ~~~!!!』 (琴)「……どうしてか知らないけど……エラく張り切ってるわね? ……ま、やる気になってくれるのはイイことだわ」 そう独り言を呟くと、美琴は勉強部屋の隣にあるキッチンに向かう。 そして、ロッカーからエプロンを取り出して制服の上から羽織り、料理を始める。 簡易のキッチンとはいえ、必要なモノは全部揃っていた。 美琴はテキパキと準備を進めていく。 下ごしらえを終え、後はご飯が炊きあがる時間に合わせてフライを揚げるだけである。 (琴)「うん、コレで準備OKね。じゃあ一度、当麻の様子を見に戻ろうかな?」 そう言って、キッチンを後にして勉強部屋に戻る美琴。 だが、この後起こるハプニングを全く予想だにしていなかった。 (琴)「『ガチャッ』当麻ぁ~、頑張ってる~?」 (上)「頑張ってます……よ……オオッ!?」 (琴)「え……どしたの?」 (上)(い、いきなり……かよぉ~!? でッ、でも……夢にまで見た……美琴のエプロン姿が……、今、目の前にぃ……。お、お、落ち着け、落ち着けオレッ!!!) (琴)「ど、どしたの? 当麻……? 目が……怖いわよ?」 (上)「え? あ、イヤ……アハ、アハハハハ……(まさか、美琴のエプロン姿に我を忘れかけていたとは言えない……。でも、カワイいなぁ……)」 (琴)(なッ、何? 当麻が変なんだけど? 目も血走ってるし。あ……、そう言えば、エプロン姿が見たいって……さっきも言ってたわよね?) (琴)「ど、どうかな?」 (上)「えっ!? なッ、何が?」 (琴)「だって……、見たがってたじゃない? 私のエ・プ・ロ・ン・す・が・た。エヘッ」 そう言うと、美琴はクルッと一回転して頬に人差し指を当てて、カワイくウィンクをしてみせる。 だが……それがいけなかった。 (上)『ズッキューーーーーーンッ!!!』 (上)「美琴ッ!!! おッ、おッ、オレッ!!!!! オレッ!!!!! ……もう、……もうダメだ!!! みっ、美琴ォッ!!!!!『ギュッ!』」 (琴)「キャッ!? えッ!? とっ、当麻ッ!? ……ふにゅう」 (上)「ごっ、ゴメン!! で、でも……美琴が、エプロン美琴がカワイすぎて……オレもう、抑えが……『ギュウッ!!!』」 (琴)「ふええッ!? 当麻ッ!!! そっ、そんな……いきなりッ!?(こっ、心の準備が……あッ、そんなに強く抱き締められたら……ダメになっちゃうよぉ……)」 どうやら今の上条さんには、『美琴のエプロン姿』は刺激が強すぎたようです……。 しかし……上条さんの『エプロン属性』……かなり重症のようですね。 でも、お二人さん……何か忘れてません? (琴)「ふにゅ……、当麻ぁ」 (上)「ゴメン、美琴……。……でもオレ……」 (琴)「うん……」 (上)「美琴、可愛すぎだよ……オマエ……」 (琴)「エヘッ、嬉しい……。ねぇ……当麻……」 (上)「うん?」 (琴)「わッ、ゎたっ、わたッ、私とそのッ、けっ、けけけけけけけ結婚したら……、毎日見られるよ……。エプロン姿……」 (上)「そんなコトになったら、上条さんは幸せ過ぎて死んでしまいますですよ……。ハイ……」 (琴)「バカ……。死んじゃったら意味ないじゃない……」 (上)「言葉の綾なんですけど、その通りでせうね。……だ、だから……」 (琴)「だから?」 (上)「死なないようになるまで、待って欲しいんでせうが?」 (琴)「え……?」 その時……。 『ガシッ』 上条は何かに両肩を掴まれる。 (上)「え゛?」 まだ勉強時間中ですよね。 ペナルティ・ボックス行き。 決定ですね。 (上)「ちょッ!? ちょっと待てッ!!! 待って下さいッ!! 後ちょっとだけでイイからッ!!! お願いだからぁッ!?」 それは無理です。 勉強時間中にイチャついたアナタが悪い。 15分間、反省しなさい。 そう言わんばかりの容赦ない行為に、上条はいつもの口癖を叫ぶしかなく…… (上)「ふッ、不幸だぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ」 と、美琴を置いて再びペナルティ・ボックスに吸い込まれていきました。 (琴)「……あ……」 美琴はただただ、その様子を呆然と見ているしかないようで……。 あれ? 何か様子が変ですけど……? (琴)(待って欲しいって……何を待つの? もしかして……、もしかして……でも、もしそうだったら……、どうしよッ!? どうしようッ!?) (琴)「ふ、ふ……ふにゃああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……」 『バチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!!!!』 何を想像したのかは知りませんが、上条の『待って欲しい』の一言に過剰反応した美琴は、ふにゃー化して漏電してしまいました。 部屋は、いざという時のために耐電仕様になっていたので、黒焦げにはならずに済みましたが……。 運が悪い事にと言いますか、いつものパターンと言いますか、当然の『不幸』と言いますか……。 何故か耐電仕様であるはずのペナルティ・ボックスの動作システムに漏電の影響が及んでしまい、上条はずっと閉じ込められ、エプロン装備の美琴とお手製の夕食をおあずけされ続けたのでした。 結局、そんなこんなのドタバタ騒ぎの所為で、上条が言った『待って欲しい』が何を意味するのかは有耶無耶になってしまいましたとさ。 ちゃんちゃん。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/794.html
前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のマフラー計画 御坂の寝顔を見ながら、先程までの自分の行動を思い直す。 今思えば自分は相当テンパっていたみたいだ。 一昨日の御坂へのキス未遂後、御坂に連絡が取れなかった。 嫌われてしまったんではないか?そう思うと心穏やかではいられなかった。 後は延々と悪い方へ思考が進み、終いには御坂と会いたくない、などと言う逃げに走ってしまった。 「まったく、俺らしくないよな。」 「ほんとそう思うわ。」 いつの間にか起きたようで、御坂は上条の隣に座っていた。 だがその表情はこわばって、声も震えている。 「アンタってあの手の問題は馬鹿正直に真正面からぶつかってくる人間だと思ってたけど?」 「馬鹿正直ってなあ…、まあ確かにさっきまでの俺はどうかしてたよ。お前と連絡取れなくって、嫌われたかなって焦っちまったんだな。」 「…アンタって意外と肝っ玉小さかったのね。連絡取れなかったのは、ちょっと風邪引いて寝込んでただけよ。」 「そうだったのか…。風邪はもういいのか?」 「もう大丈夫、って話が逸れたけど。…アンタの話聞く限りだと、もう会わないって言うのは、撤回されたと思っていいのよね?」 「ああ、撤回させてくれ。本当におれはどうかしてたよ。ごめんな。」 御坂はその言葉を聞いて安心したのか、大きなため息と共にこわばっていた表情を緩めた。 それと同時に何かを思い出したようにハッ!として顔を赤くする。 「そ、そう言えばアンタ!何よさっきのは!」 「ん?さっきのって?」 「だから、その、私が泣き出したときに…。」 「え、あー。あは、あはははは。あれはですね、体が勝手に動いたというか…。」 「泣いてる女の子を手篭めにしようと、体が勝手に動いたわけね。へー、ふーん。」 「ち、違う!ああするしかお前を落ち着かせられないと・・・!そもそもお前だって抱きついてきたじゃねーか!」 「な!あ、あれは頭の中ぐちゃぐちゃで分けわかんなくって嫌々!そう、嫌々抱きついたのよ! (ああもう何でいつも素直になれないのよ私は!)」 そう、御坂の反応はいつも通りだった。 しかし上条の反応が違った。 御坂が嫌々と言ったのに反応して落ち込んだように顔を暗くした。 「…そうだよな、嫌だよな。好きでもない男に抱きs」 好きでもない男に抱きしめられたくないよな、そう言いかけた上条の体が御坂の視界から消えた。 正確には今の話を聞いていた白井に吹っ飛ばされた。 「お、お、お姉様になにしとんじゃこの若造がァァァァァァァあああああああああああああああああ!!!!」 「え、く、黒子!?」 「昨日お姉様の様子がおかしいからと探してみれば!お姉様、もう大丈夫ですの! お姉様を汚したあの類人猿に黒子が裁きをぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」 「…ってぇー。し、白井!?違う、これは違うんだ!違わないけど違うんだ!だから落ち着いて話を!」 「死ねぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!」 「不幸だあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」 そう叫んで追いかけっこをする二人はあっという間に御坂の視界から消えていった。 「ちょ、ちょっと!私を置いてくなーーー!!!」 そう叫んだが後の祭りである。 もっとも、叫んだぐらいで止まるわけも無いだろうが。 諦めた御坂は二人が去っていった方向を見ながら、先程上条が見せた表情を思い出す。 自分の言葉を聞いて落ち込んだ、暗い顔。 「なによあんな顔しちゃって……。なんでアンタが悲しそうな顔するのよ…ばか。」 「うう、酷い目にあった…。」 あれからなんとか白井の追跡を振り切り、寮の自室まで帰ってきた。 制服に所々穴が開いているが、奇跡的にケガはしないで済んだようである。 「夕飯遅くなってインデックスの奴怒ってるだろうな…。っていうか元々機嫌直ってないし…。」 一昨日から静かな怒りを纏うインデックスに言い知れぬ恐怖を感じている。 これならまだ噛み付かれた方がマシだ。 このままだと精神が噛み砕かれてしまうかもしれない。 だからと言ってばっくれたら余計に後が怖いので覚悟を決める。 「ただいまー、すまんインデックス今から夕飯作るぞ!」 「あ、とうまおかえりなさい。でももう遅いんだよ!」 「お帰りー、遅かったわね。」 「……なんでお前がここに居るんだよ。」 「とうま、その発言はみことに失礼かも!みことはわざわざ御飯作ってくれたんだよ!」 「アンタ黒子に追いかけられてしばらく帰って来ないと思ったから、わざわざ御飯作りにきてあげたのよ。感謝しなさい。」 「とうまとうま!みことのご飯すっごいおいしいんだよ!特別にとうまの分もあるから早く食べるんだよ!」 「あ、うん。さんきゅー。じゃなくて!なんかお前ら急に仲良くなってない!?」 「あの後ここに来たらインデックスがお腹減った~って倒れててね。それでご飯作ってあげたら懐かれちゃった♪」 「私はみことの事誤解してたんだよ!こんなにおいしいご飯作ってくれるなんて!」 餌付けされたのかよ!と心の中で突っ込む。 それに自分よりもインデックスと仲良く見える事になんだか釈然としない。 「まあ二人が仲良くなってなによりだ。上条さんの心の重荷が一つ減りましたよっと。それじゃお嬢様の料理とやらをいただきましょうかね。」 「ふふん、食べて吠え面かくんじゃないわよ。」 「「ごちそうさまでした。」」 「ねぇ、私の料理、どうだった?」 「想像以上に美味かったよ。正直御坂がこんなに料理上手とは思わなかった。これなら毎日作りにきて欲しいぐらいだ。」 一緒にたべる人が増えるのも良いもんだしな、と付け加える。 たしかに御坂の料理はうまかった。 だがそれ以上に目の前の少女と食卓を囲めるのがなんだか嬉しかった。 「ほ、ほんと!?じゃ、じゃあまた作りに来てあげよっか…?」 「みことの料理ならいつでも大歓迎なんだよ!ね、とうま?」 「けどこれ以上迷惑掛ける訳にもいかないしなー。」 「べ、別に私が好きでやってるからいいの!せっかくインデックスとも仲良くなれたんだから。」 「んーでも悪いし…。」 「じゃあアンタ、私になにか恩返ししなさいよ。っていうかアンタまだこの前の約束だって全然果たして無いじゃない。」 「わりぃそうだったな。分かった何か考えとくよ。」 「素直でよろしい。」 「よかった、またみことの料理が食べられるんだね!」 「ふふ、期待してなさい。それじゃ今日はもう遅いし帰るわね。」 「とうま、ちゃんと美琴を送ってくんだよ。みことに変なことしたら承知しないんだからね!」 「お前御坂への態度変わりすぎだろ…。んじゃ寮の近くまでお送りしますよ姫。」 「はいはいお願いしますね。じゃあねインデックス。」 「ばいばいみこと。」 すっかり暗くなった道を二人で歩く。 静かな道を二人で並んで歩くのも悪くない。 そういえば周りからは俺達はどう見えるのだろう。 恋人、は無い。片やさえない高校生で、片や常盤台のお嬢様。どうみても釣り合わない。 そう思うとなんだか凹んでくる。 (って!なんで俺は落ち込んでるんだよ!しかも自分の妄想で!) 「アンタなに百面相してるのよ…。気持ち悪いわね。」 「き、気持ち悪いって、それはあんまりだろ…。」 「ぷっ、何本気で落ち込んでるのよ。ジョーダンよ。何か考え事?」 「え、えーと…。」 自分達がどう見えるか考えてた、なんて言えるはずも無い。 必死で頭を働かせると、先程の御坂とインデックスの事を思い浮かべた。 「あーそうそう、インデックスとお前の事だよ。なんかあっただろ?明らかに不自然だったぞ。」 「あー、やっぱりわかる?」 「いくらインデックスでも飯だけでああはならんだろ。んで、何があったんだよ?」 「(そういう事には敏感なのよね…。)んー実はね。あの事全部喋っちゃった…。」 「あの事って、ま、まさか!あれ全部しゃべったのか!?」 「し、仕方なかったのよ!なんかあの子の様子がいつもと違って、話さざろう得なかったって言うか…。」 その言葉に上条は頭を抱える。 おそらく帰ったらその事でインデックスから追求されるだろう。 「その事を話したら、意外にもあの子怒らなくってね。正直な人は好きなんだよ、なーんて言われてね。私も毒気抜かれちゃった。」 その時一瞬悲しそうな顔をしたのよね、と心の中で付け加える。 「いいよなーお前らは仲良くなれたから…。そのしわ寄せは全部俺にくるんだからな!お父さんお母さん、先立つ不幸をお許し下さい。」 「自業自得よ。自分の行動を反省して諦めなさい。骨は拾ってやるわよ。」 「不幸だ…。あの時の俺の馬鹿野郎…。」 不幸だ、と口では言っているが内心それほどでも無かった。 一時は御坂と友達でいられなくなると悩んだのに、今ではこうやって軽口をたたきあえる。 それだけで不幸じゃなくなるな、と思った。 「(よくビリビリしてくるけど、根はいい奴だからな。)でも、お前と友達でよかったよ。」 「な、何よ急に!そんなのああ当たり前じゃない!私と友達なんだからもっと感謝すべきよ!」 そういって顔を逸らす御坂を見て苦笑する。 「( いつまでもこうしてられたらいいのにな…。)…っと、もう寮の近くか。」 「あ、うん。それじゃあ後は黒子に迎えに来てもらうから。ありがとね。」 「ああ、分かった。…、なあ御坂。」 「なに?どうかしたの?」 「えー、あー、いや、なんというか。」 「何よ、はっきりしないわね。」 呼び止めたものの、特にコレといって何か有るわけでもない。 なんで呼び止めてしまったのか、上条自身よくわからなかった。 「(えーと、なにか話題を…。)そ、そうだ。恩返しの事だよ!」 「ああ、その事?焦んなくていいわよ。アンタの甲斐性にはあんまり期待してないし。」 「それはさすがに上条さんも傷つくんですが…。それで、次の日曜日空いてるか…?」 「へ?なんで?」 「その日一日付き合って、お前に少しでも恩返ししようかなーと。うん。」 これは恩返しだから、他意はないから。 そう自分に言い訳をする。 「俺にできる事なんてそれぐらいだしな。こういうのじゃ、ダメか?」 不安そうな表情で御坂を見る。 (これってもしかしなくてもデートの誘いよね!こいつからなんて信じられないけど、夢じゃないわよね!?) 「だ、ダメだじゃない!けどこれってもしかして、・・・デ、デ、デ、デートの、お誘い…?」 おそらくデートだろうとは思うが、なんといっても相手は上条だ。油断はできない。 流行る気持ちを抑え恐る恐る聞いてみる。 「一応、そういうことになるか、な?じゃ、じゃあ、またあとで連絡するから、またな!」 上条は落ち着かない様子でそそくさと立ち去ろうとする。 「ま、まって!」 「どうした?…やっぱ、だめか?」 「ううん、そうじゃなくて……日曜日、楽しみにしてるから………。」 消え入りそうな声だったがなんとか上条の耳に届いた。 楽しみにしている。 その言葉に自然と笑顔になる。 「お、おう!任せとけ!日曜日は楽しませてやるからな。それじゃまたな。」 「あ、うん、またね…。」 そのまま上条は足早に去っていった後、御坂はしばらくその場に立ち尽くしていた。 上条からのまさかのお誘い。 現実感が無くて体がふわふわしているように感じる。 (これって、夢じゃないわよね。私も素直になれてたと思うし。なんか話が上手すぎて怖いなぁ…。でも、アイツとデートかぁ…。えへへ。) その後ぼーっとした頭で日曜日のことを考え続けていた。 しばらくして我に帰り白井に迎えを頼んだが、にやけたままの顔だったため、白井から執拗な追求を受けるのであった。 御坂と別れた後うかれていた上条であったが、自室の前まで戻ってきたところで、自分の危機を思い出す。 御坂とのここ数日のことがインデックスにすべてバレてしまった。 どうやってご機嫌を取るべきか。 食べ物は無理。自分より料理の上手い御坂に餌付けされている。 他に方法はないか? 「うん、ないな。さようなら俺の人生、不幸だけどそれなりに楽しかったぜ。」 そうすべてを悟った顔で扉を開ける。 「ただいまー。」 「…おかえりとうま。ちょっと話があるからそこに座って。」 すわ来たぞ。 だが悟りを開いた上条に恐怖はなかった。 諦めたとも言う。 「うむ。さあ何でも聞きたまへ。今の上条さんは何でも答えますよ。」 「?へんなとうま。でも丁度よかった。これは大事な話だから、良く考えて、真剣に答えて欲しいんだよ。」 いつになく真剣な眼差しのインデックス。 その様子に上条は気圧されそうになる。 「単刀直入に聞くよ。とうまは、みことの事が好きなの?」 「………………………はい?」 (おかしいな、聞き間違えか?俺は悟りを開いたはずなのに、インデックの言葉が理解できないぞ?) 「えーと、インデックスさん?よく意味が分からないのですが?」 「とうま、私は真剣に答えてって言ったよね?」 「いや、だって。何言ってるんだよ、俺が、え?御坂を好きって?はは、そんなわけ…。」 それ以上言葉を続けられなかった。 御坂美琴は大切な友達だ。 傷つけたくない、守るべき存在。 だがそれだけだろうか? わからない。自分の心が分からない。 「俺、は…。」 「……さっきね、とうまとみことが一緒にごはん食べてたとき、とうまはすごい嬉しそうだったよ。」 「それは、御坂の料理が美味かったから…。」 「本当にそれだけ?」 「……よく、わかんねー。」 「…もう一度聞くね、とうまはみことといると嬉しい?」 その問を受けて考える。 たしかにあの時、食事を抜きにしても、彼女と居られることは嬉しいかった気がする。 「ああ。そうかもしれない。」 「とうまは、みことともっと仲良くなりたい?」 「…たぶん、そうかもな。実はさっきインデックスと御坂が仲良くしてるの見て、少し羨ましかった。」 「とうまは、みことの事が好き?」 「ああ…。」 ああ、そうか。 彼女を傷つけたくなかったのも。 泣いている時抱きしめたのも。 一緒にいて嬉しかったのも。 恋人に見えそうも無くてがっかりしたのも。 「そっか、俺、御坂が好きだったんだな………。」 インデックスはその言葉に一瞬だけ顔を曇らせる。 だがすぐに優しい表情を浮かべる。 その表情の変化に上条は気づくことができなかった。 「ふふ、とうまはやっぱり馬鹿なんだね。やっと自分の気持が分かるなんて。とうまはやっぱりとうまなんだよ。」 よしよしと上条の頭を撫でる。 「ああほんと馬鹿で情けねーよな、インデックスに気付かされるなんて。」 自分のことも気付けないなんてな、と呆れたように苦笑する。 「とうまの事は誰よりもよく見てるんだよ。最近みことの話しばっかりしてたしね。」 「そ、そうだったか?でも、インデックスが居なかったら、俺はずっと自分の気持に気付けなかったかもな。インデックス…ありがとう。」 「お礼はいらないんだよ。とうまにはいっぱい助けてもらったからね。だからちょっと恩返ししただけなんだよ。」 「そっか。はは、自分のこと不幸不幸って思ったけど、ぜんぜんそんな事無かったな。こんないい友達を持って、俺は幸せだよ。」 「これぐらいの幸せで満足しちゃだめなんだよ。明日からがんばって、みことを振り向かせるんだよ!」 「それが難しことなんだけどな…。まあなるようにしかならないし、当たって砕けてみるか。」 「みこともとうまの事は嫌いじゃないと思うんだよ。だからとうま、がんばってね。それじゃもう私は寝るんだよ。おやすみとうま。」 そういってインデックスはベッドに潜り込む。 「おやすみ。俺は風呂でも入ってくるかなー。」 上条が風呂に入ったことを確認してから、インデックスはひとり呟く。 「とうま、みことと、幸せになってね。恋人になれたら私は邪魔になっちゃうけど、それまではここに居させてね。」 言い終わると我慢していた涙を流す。 彼が出てくるまでに涙を流し尽くそう。 絶対に自分が泣いているのを悟られてはならない。 誰よりも大好きな彼のために。 声を出さず一人泣いた。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のマフラー計画
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2372.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲 12月23日 ――――――――― 佐天「ひゅふっ!?」/// 美琴「なっ!?な!?何を言っちゃってるのアンタ!!」カァッ 上条「また呼び方戻ってるぞ。美琴」 美琴「う、あ、と、当麻」/// 佐天「ど、ど、ど、どうしよう初春。ラブラブカップルが目の前にいる!!」 予想外の展開に慌てている少女を見て、頭に花飾りをつけた少女はすばやくその腕を掴む。 初春「じゃ、じゃあ御坂さん!私たちこれで失礼しますっ!お邪魔しました!!」 美琴「え?あ、うん」 佐天「え?初春?なに言って…てか危ないから引っ張らないで!!ねえ、うーいーはーるー…」ジタバタ 美琴「行っちゃった」(ちゃんと紹介したかったんだけどな) 上条「いやーテンション高かったなー」 美琴「あはは。佐天さん、スイッチ入っちゃうと止まらないから」 上条「まあでも、あの子のおかげで、また名前で呼んでもらえたからよしとするか」 美琴「あ、そういえば…さ」/// 上条「ん?」 美琴「さっき『相思相愛』って…」/// 上条「ま、まーな。ま、間違ってないだろ?」/// 美琴「…うん」/// なんとも形容し難い空気が二人を包み込む。それはそれで心地いいのだが、先に雰囲気に負けたのは少年の方だった。 上条「…あー、指輪ってあっちの方か?」 美琴「うん。いこっか」 上条「ああ」 ――ショーケースを覗きながらコイツ―当麻―と手を繋いで歩く。たったそれだけのことなのに、凄く楽しくて、嬉しい。 昨日までのわたしだったら、手を繋いだまま佐天さんや初春さんに声をかけようなんて夢にも思わなかっただろう。 でも、今はコイツと一緒にいるのを隠そうとは思わない。 上条「んー。結構ゴツイのが多いな」 美琴「基本的にファッションリングだからね」 上条「俺は普段着けていても邪魔にならないようなシンプルなのがいいと思っているんですけど」 美琴「え?ずっと着けているつもりなの?」 上条「ペアリングってそういうものじゃないの?」 美琴「ゴメン、常盤台ってそういうの厳しいから、普段着けるのは難しいと思う」 上条「…なあ、その、正当な理由があれば着けることは可能か?」 美琴「指輪を着ける正当な理由なんて…」 どくん。と胸が高鳴った。 上条「…婚約指輪とか」/// 美琴「ア、アンタ、なに言ってるの!?」カァッ 上条「さっき言っただろ?独占欲強いって」 美琴「…まあ、正式なものならいいかもしれないけど、中学生でそんなものしてる子いないわよ」/// 上条「そうか。…じゃあ、ペアネックレスとかにする?ネックレスなら隠れるだろ?」 美琴「…やだ」 上条「へ?」 美琴「ペアなら指輪がいい」 上条「でも、いつも着けてられないんだろ?」 美琴「…当麻とお揃いなら指輪がいい」 言いながら、わたしも彼に負けず劣らず独占欲が強いことを自覚した。 同時に携帯を取り出して、ある番号に電話をかける。 美琴「わたしも独占欲強いからね。…覚悟して」 上条「へ?」 コール音が途切れ、相手が電話に出る。わたしは大きく息を吸って話し始めた。 美琴「あ、ママ。ちょっといい?」 上条(なぜ美鈴さん!?) 美鈴『いきなりなーに?美琴ちゃん。ママ、昨日飲みすぎちゃって眠いんだけど』フアー 美琴「典型的な馬鹿大学生ね。…まあいいわ。あのさ、大覇星祭のときに会った人、覚えてる?」 美鈴『美琴ちゃんがいじめる。っていうか、大覇星祭のときに会った人って白い修道服の女の子かなー?』 美琴「違う、男の方」 美鈴『あー、詩菜さんの旦那様』 美琴「わざとか?わざとね!わざとなのねこのヤロー!!」 美鈴『うふふ。美琴ちゃんってからかいがいがあるから。で、上条当麻君がどうしたの?』 少女は少年に視線を向ける。 ――さあ、覚悟しなさい。 美琴「彼に、プロポーズされた」 上条「んなっ!?」/// 美鈴『え?美琴ちゃん?今なんて?』 美琴「だーかーらー、プロポーズされたの。それで、ママの了解を貰おうと思って」 美鈴『りょ、了解って?どういうことなの?』 美琴「婚約したい。――当麻と」/// 美鈴『うっわー。ママの予想をはるかに超えていたわー。やるわね、美琴ちゃん。ママ、すっかり目が覚めちゃった♪』 美琴「茶化さないで!真剣なんだから」 美鈴『…上条君はそこにいるの?』 美琴「うん」 美鈴『代わりなさい』 美琴「…代わってって」ケイタイ サシダス 上条「わかった。…代わりました上条です」 美鈴『いやーん!!上条君!美琴ちゃんになにしたの?ナニしちゃったの?奪っちゃったの!?』 上条「まだ何もしてねええええ!!いきなりなんなんですか!そのノリは!?」 美琴「!」ビクッ 美鈴『やだなあ、婚約したいなんて美琴ちゃんが言ってるから、全部済ませちゃったのかなーって。で、で、…避妊はちゃんとしたの?』 上条「まだ何もしてませんってば!!」 美鈴『それなのに婚約って、気が早すぎない?もし相性悪かったらどうするのよ』 上条「あ、いや、その。なんて言いましょうか、その、そういうのって美琴さんとしか考えられないので、約束手形が欲しいといいますかなんといいましょうか…」 美琴(わたしとしか考えられないってなに言ってるのよ)/// 美鈴『うーん。弱いわね。一時の気の迷いじゃないの』 上条「それはないです。俺は、…美琴を俺のすべてをかけて守りたい。…決して一時の気の迷いなんかではないです」 美琴「…」/// 美鈴『美琴ちゃんを、愛してる?』 上条「…はい」/// 美鈴『じゃあ、美琴ちゃんにわかるように言葉にして』 上条「…上条当麻は、御坂美琴を、愛しています」/// 美琴「ふぇっ!!」(あ、あ、あ、あい、あい、あい、あい…)/// 美鈴『…また清清しいまでに言い切ったわね。上条君。美鈴さんの負けだわ。…美琴ちゃんをよろしく。代わってくれる?』 上条「…」ケイタイ サシダス 美琴「あい、あい、あい…」ニヘラー 上条「美琴!電話」/// 美琴「ひゃいっ!?も、もしもし」/// 美鈴『美琴ちゃんはどうなの?上条君を、愛してる?』 美琴「…うん」/// 美鈴『じゃあ、上条君にわかるように言ってみなさい』 美琴「御坂美琴は、上条当麻を、世界中の誰よりも、一番愛してる!!」/// 上条「!!」/// 美鈴『見事に言い切ったわねー。美琴ちゃん。いいわ。認めてあげる』 美琴「ありがとう、ママ」 美鈴『いきなり婚約なんて言って、いかにもどこかの店内から電話してくるってことは、指輪でも買ってもらうのかしら?若いっていいわねー』 美琴「へ?なんでわかったの?」 美鈴『落ち着いた音楽と喧騒が聞こえてくるし、学校で指輪をつけていても咎められない理由が欲しいんでしょ?』 美琴「う、うん」/// 美鈴『じゃ、学校には連絡しておくわ。美鈴さん公認の許婚ができたってね』 美琴「…」/// 美鈴『とりあえず、結婚できる歳まではエッチしちゃ駄目よー』 美琴「なっ!なに言ってるのよ!!」/// 美鈴『まあ、若いふたりは耐えるのは難しいかもしれないわね。じゃあ避妊だけはしっかりすること!ゴムよりも学園都市製経口避妊薬の方が確実よ』 美琴「アンタ中学生の娘になに吹き込んどるんじゃあああ!!」/// 美鈴『あはは。じゃあ、近いうちにみんなで会いましょうねー。バイバーイ』 通話を終えて携帯電話をポケットに入れる。それから辺りを見回して胸を撫で下ろした。 美琴「ママが電話で『人の喧騒が聞こえる』とか言うから焦っちゃったわ。悪目立ちしてなかったみたいね」 上条「あんまり人いなくて助かったな」 少女はもう一度辺りを見回してから、頭を少年の肩に預ける。 上条「み、美琴?」/// 美琴「嬉しかった。ちゃんとママに言ってくれて」 上条「俺も、嬉しかった」 美琴「…」ギュッ 上条「…」ギュッ 美琴(なんか、幸せ…) 上条「…なあ、あれなんて、どうだ?」 そう言って少年はシンプルなメタルリングを指差した。光の加減でうっすらと青みがかって見えるプレーンリング。 上条「あ、すみません。そこのペアリング、見せてもらってもいいですか?」 店員を呼び、ショーケース内の指輪を出してもらい、それぞれ左手の薬指に嵌めてみる。 上条「あ…」 美琴「うそ…」 その指輪は、まるであつらえたかのように、お互いの指にぴったりと納まった。 上条「ヤバイ、なんか運命的なものを感じる」 美琴「うん、凄い馴染んでる感じ」 上条「じゃあ、これください。あ、このまま着けてってもいいですか?」 店員「ええ、構いませんよ。タグの紐を切らせていただきますね」ニコッ 上条「ありがとうございます」 店員「いえいえ。彼女さんも…はい、これでいいですよ」ニコッ 美琴「あ、ありがとうございます」 店員「いえいえ。はい、じゃあ確かに頂きます。ありがとうございました」 手を繋いで店を出る。少女は自分の左手を広げて指輪を眺めながら微笑を浮かべていた。 美琴「許婚、か」ニヘラー 上条「俺も親に電話しないといけないなあ」 美琴「…今、かけちゃう?」 上条「…そうだな。じゃ、階段のところまで行こうか」 美琴「うん」 ――引っ張ってくれる手に、さっきまでは無かった硬いものの感触があって、それが心地良かった。 階段のベンチに並んで腰を下ろすと、彼が携帯電話の通話ボタンを押した。 上条「もしもし」 詩菜『あら、当麻さん。珍しいわね?どうしたの?』 上条「いや、えーっと、なんといいましょうか…。母上様、驚かずに聞いていただきたいのですけれども」 詩菜『当麻さん…まさか女の子を孕ませてしまったとかじゃないでしょうね?』 上条「…アンタ自分の息子をどんな目で見てるんだコラ!」 詩菜『だって当麻さん、刀夜さんと同じでいつの間にか女の子と一緒にいることが多いんじゃないのかしら?うふふ』 上条「最後の笑い怖いよ!それにそんなことないですから!」 詩菜『自覚しないと、そのうち酷い目に会うわよ』 上条「だーかーらー、何でそういう話になってるんですか!?じゃなくって、俺は真面目な話があるんだ」 詩菜『なにかしら?』 上条「大覇星祭で会った人、覚えてる?」 詩菜『美鈴さん?』 上条「の娘さん。御坂美琴」 詩菜『ええ、覚えていますよ。彼女が何か?』 上条「事後承諾で悪いけど、…御坂美琴と婚約しました。美鈴さんには了解貰ってます」/// 詩菜『え?当麻さん、もう一回言ってもらえるかしら?』 上条「御坂美鈴さんの了解を頂いて、御坂美琴と婚約しました」/// 詩菜『…当麻さん。中学生を手篭めにしたの?』 上条「してねえよ!まだ指一本触れてねえよ!」/// 美琴「ふぇ!?」/// 詩菜『え?それで婚約って気が早くない?』 上条「なんで女親って揃いも揃って同じこと言うんだ。上条当麻は御坂美琴を愛してる!それが理由だ文句があるか!」 美琴(ま、また言ってくれた!)/// 詩菜『あらあら、若いっていいわねー。ところで、美琴さんは傍にいるの?』 上条「ああ」 詩菜『代わって』 上条「…代わってくれって」ケイタイ サシダス 美琴「か、代わりました。御坂美琴です」/// 詩菜『当麻さんとしちゃったの?』 美琴「ぶふぉっ!?いきなりなに言ってるのアンタ!!」/// 詩菜『お母さま公認で当麻さんと婚約っていうから、てっきりそういうことかなと思ったのだけど』 美琴「そういうことしなくっても、お互い愛してるんだから約束してもいいじゃないですか!」/// 上条「!!」/// 詩菜『ねえ、美琴さん。当麻さんはね、疫病神、不幸の使者と呼ばれていた子ですよ?…本当にそんな子と一緒にいたいのかしら?』 美琴「そんなの!!そんなの関係ない!!アイツは、当麻はわたしにとって、かけがえの無い人だもの!!いくら親でもそんな風に当麻のこと言うのは許せない!」 上条(美琴…)/// 詩菜『…ありがとう』 美琴「え?」 詩菜『当麻さんのために怒ってくれて。あの子のことお願いします』 美琴「あ、いえ、こちらこそお願いします」ペコリ 詩菜『あ、美琴さん。避妊だけはしっかりしなさいね。スキンよりも経口避妊薬の方が確実よ』 美琴「お、女親ってそれしか言えないのかあああ!!」/// 詩菜『うふふ。美琴さんだって、まだ母親にはなりたくないでしょう?』 美琴「そ、それはそうですけど…でも、当麻との…なら…」ゴニョゴニョ 詩菜『まあまあ。当麻さんも幸せ者ね。こんなに可愛い彼女が傍にいてくれて』 美琴「…」/// 詩菜『当麻さんと代わってくれる?』 美琴「あ、はい…」ケイタイ サシダス 上条「…変なこと吹き込まなかっただろうな?」 詩菜『当麻さんの悪口言ったら、怒ってくれたわよ。それだけで当麻さんの嫁として合格です』 上条「なっ!?」/// 詩菜『当麻さん。一度守ると決めたのなら、最後まで貫きなさい』 上条「…ああ。約束する」 詩菜『じゃあ、近いうちに美琴さんを連れて家にいらっしゃい。刀夜さんと一緒に嫁いじりして楽しむから』 上条「そんな危険なところには連れて行かない!」 詩菜『あらあら。可愛い嫁を連れてこないなんて親不孝者ね。当麻さん』 上条「だー!もー!!以上!連絡終わり!」 通話を終えて、少女を見る。少女が小さく微笑んでくれるだけで、少年にも自然と笑みがこぼれた。 美琴「どうしたの?」 上条「散々からかわれた。…けど認めてくれた」 美琴「そ、そっか」/// 上条「ああ。美琴は上条家の嫁ってお墨付きをいただきました」 美琴「よっ、よ、よ、よ、よ、よ、よめっ!?」カァッ 上条「ま、まあアレ、ほら、許婚だからな!」/// 美琴「そ、そ、そ、そうよね!!許婚だもんね!」/// 上条「ははははは」/// 美琴「うふふふふ」/// ――― 手を繋いでバス停へと向かう途中、少年の携帯電話が鳴った。右手で携帯電話を取り出して画面を見る。 上条「小萌先生か。なんだろ?ちょっとゴメン」 美琴「うん」 上条「もしもし…」 小萌『上条ちゃんはお馬鹿さんですから、シスターちゃんは今日、先生の家にお泊りなのですよー』 上条「インデックスを預かってくださるのは助かりますが、なんなんでしょうか?その棘のある一言目は!?」 小萌『明日のクリスマスパーティーは女の子限定ですから、上条ちゃんは来ちゃ駄目なのですよー』 上条「スルー!?そして上条さんにご馳走を食べる権利が無くなった!?」 小萌『上条ちゃん?大事な人がいるのに、クリスマスに先生に世話になろうなんて思っちゃいけないのですよー?』 上条「大事な人?え?え?」 小萌『御坂美琴さん、でしたか?上条ちゃんも隅に置けませんねー』 上条「う、え…」(な、なんで知ってるんだ!?) 小萌『今もデート中なのでしょう?』 上条「ま、まあ…」/// 小萌『ふふふ。壁に耳あり障子に目ありですよ。上条ちゃんと常盤台の子がデートしているって聞いたものですから』 上条「まいったな…」 小萌『ひとつだけ聞かせてください。上条ちゃんは、御坂さんを選んだのですね?』 上条「…いまいちなにを聞かれているのかがわからないのですが?」 小萌『上条ちゃんの周りにいる女の子の中で、一番大事な人は御坂さんということでいいのですよねー?』 上条「あ、えーっと…。はい」/// 小萌『じゃあクリスマスは御坂さんと仲良くするのですよー。あ、でも、学生としての節度は守るのですよー』 上条「なっ!?」/// 小萌『ではでは、良いクリスマスをー』 上条「ちょ、ちょっと!?小萌先生!?」 一方的に通話を切られ、少年は困惑して携帯を見る。 美琴「どうしたの?」 上条「ん?小萌先生がインデックスを今日泊めるってさ。それで、明日のパーティーは女性のみでやるから俺は来るなって。それで、クリスマスは美琴と過ごせってさ」 美琴「ア、アンタとわたしのこと、何でアンタの先生が知ってるのよ!?」/// 上条「あー、青ピから連絡行ったか、誰かに見られたのかもしれない」ウーム 美琴「何でアンタそんなに冷静なのよ?」 上条「ん?だって俺たち許婚だろ?親公認だし、別に隠す必要も無いかなって」 美琴「~っ!!」カァッ 上条「自分も独占欲強いとか言っておいて、何で照れてるんでしょうね美琴さんは」 美琴「うぅ。それはそうだけども…」(やっぱり恥ずかしい)/// 上条「ま、ゆっくり慣れてけばいいよな」ニコッ 美琴「…うん」 上条「さて、と。じゃあ今日の夕飯と明日の食事はどうするかなあ」 美琴「あ、そっか。あの子いないんだっけ」 上条「そうなんですよ。ま、今日は適当に作るとして、明日は…、明日もデートしようか」カァッ 美琴「デ、デート!?」/// 上条「今日みたいにショッピングでもいいし、どこか遊びに行くのでもいいし」 美琴「う、うん。…あ、あのさ?」 上条「ん?どこか行きたいところとかあるか?」 美琴「そうじゃなくって、その、さ。…今日の夕飯とか、明日のご飯とか、作ってあげようか?」 上条「…ホントに?」 美琴「うん」 上条「うわ。すっげえ嬉しい」 美琴「ふふ。じゃあ、スーパー寄っていこう。何か食べたいものとかある?」 上条「美琴センセーにお任せします」 美琴「じゃ、行こっか」ニコッ 少年に向かって微笑むと少女は手を引いて歩き出す。その顔はとても楽しそうであった。 ――― 寮監「御坂」 美琴「は、はい。なんでしょうか?」 スーパーで買い物をして、少年の家でカレーなどを作ってから門限ぎりぎりの時間に寮へ戻ると、寮監から声をかけられた。 寮監「ちょっと私の部屋へ来てくれ」 美琴「わかりました」(なんだろう?) 部屋に入り、促されるままダイニングテーブルの椅子に座る。部屋の主はティーカップとティーポットをテーブルの上に置き、少女の対面に座る。 寮監「飲むか?」 美琴「いただきます」 寮監「砂糖はいるか?」 美琴「いえ」 寮監「そうか」 寮監は優雅に紅茶を一口飲むと、音を立てずにソーサーにカップを置き、まっすぐに少女を見た。 寮監「まずは、おめでとう。と、言っておこう」 美琴「は?」 寮監「…婚約だ」 美琴「…は、はい」/// 寮監「お前を呼んだのはその件だ。常盤台は淑女を教育するための学校でもあるから、親公認で許婚ができることもまあ珍しくは無い。だが、正直に言うと、私にはお前に許婚というのは想定外だった」 美琴「…」 寮監「話が逸れたな。とりあえず、許婚がいる場合、門限や外泊に関しての規則が緩和されることになる。もっとも、届出は必要になるが。…まあ、お前の場合は研究協力なども多いから今までとあまり変わらないかもしれないが」 美琴「…」 寮監「あとは、その、親公認である場合は、薬剤が処方される。なるべくはやく薬局へ行って処方してもらってこい。これが処方箋だ」ペラ 美琴「はい。わかりました」(薬?) 処方箋に目を通した少女の顔が一瞬で紅に染まる。 美琴(こ、これ、これ、これって~~~!!)/// 薬剤の備考欄には『常盤台中学校 特措×-○における対象生徒 健康管理のための処方 エストロゲン調整剤 PI:0.1 要継続摂取』と記されていた。 授業で習っているため、エストロゲン調整剤の意味を少女は知っていた。エストロゲン調整剤、簡単に言えば経口避妊薬である。 寮監「まだ早いとは思うが、なにぶん相手もあることだし、学校としては不測の事態を避けるためにもあらかじめ処方することにしている」 美琴「あ、あはは~。わたしにはまだ早いと思いますけど」/// 寮監「服用は月経が終わってから、準備期間は一週間だ。それまで、性行為は慎むように」 美琴「せっ、せっ、せっ!!」アワアワ 寮監「お前がまだ早いと思っているのはわかるが、男というものは征服欲が強い。まして許婚ともなれば家単位で法律よりも慣習を優先させる傾向がある」 美琴「…」(ア、ア、ア、アイツと…)/// 寮監「御坂。私はな、寮監という立場上、そういった生徒を見てきた。だから、お前が傷つかないよう服薬をすることを勧めさせてもらう。傷つくのはいつも女の方だからな」 美琴「…」 寮監「私からは、常盤台の学生として、節度ある行動を心がけるよう行動してくれとしか言えない」 美琴「…はい」 寮監「次は装飾品についてだが、婚約指輪や慣習で引き継がれる貴金属は校則で禁止されているアクセサリー類からは除外される」 美琴「…」/// 婚約指輪という言葉に反応して、そっと左手に触れ、少女は頬を染める。その様子を見て、寮監は小さく首を傾げた。 寮監「…御坂は、許婚に対して恋愛感情を持っているのか?」 美琴「ふぇ!?」/// 寮監「いや、すまない。家の都合で婚約するものが多いから、お前みたいに嬉しそうにしているのは珍しいから…な」 美琴「あ、えっと、はい。…好きです」/// 寮監「相手もお前のことを好いていてくれるのか?」 美琴「は、はい」/// 寮監「…そうか。それは良かった」 美琴「…わたし、恵まれてるんですね。好きな相手と、婚約できて」 寮監「そうだな。だが、私は、婚約とは本来そういうものであって欲しいと願っている」 美琴「…」 寮監「だから、御坂。私はお前が相思相愛で婚約したということを、常盤台の寮監としてではなく、一人の知り合いとして祝福したい。おめでとう。御坂」 美琴「あ、ありがとうございます」/// 寮監「ところで、公表はするのか?」 美琴「友人以外には言わないと思います。まあ、すぐに広まるとは思いますけど」/// 寮監「そうだな。学校というものはそういう話に敏感だからな」 美琴「…彼にも言われたのですけど、親公認だから、その辺は開き直ってしまおうかと思いまして」/// 寮監「許婚はどんな奴だ?」 美琴「わたしよりも二つ年上で、お人よしで、おせっかいで、正義感が強くて、超能力者だろうがなんだろうが特別視しない人です」 寮監「高校生か。超能力者だろうがなんだろうが特別視しないということは、学園都市の生徒か?」 美琴「ええ、まあ」 寮監「…そういえば一時期、常盤台の超電磁砲が追い掛け回している無能力者がいるという噂があったな。お前の相手はその噂の相手なのか?」 美琴「うぇ!?」(う、噂になってたんだ)/// 寮監「幼馴染か何かか?」 美琴「あー、幼馴染ではないです。でも縁があるというかなんというか…」 寮監「見知った仲ではあるということか」 美琴「まあ、そうです」/// 寮監「…学園都市で知り合って、親公認の許婚か。…それは運命の相手と言えるのではないだろうか」/// どこか遠くを見るような眼差しで、寮監は言うと頬を紅く染めた。 美琴「…へ?」 寮監「幾多の困難を乗り越え、将来を誓い合うふたり。そこにあるのは真実の愛」ウットリ 美琴「りょ、寮監様?」 寮監「…羨ましい」ボソッ 美琴「あ、あはは」(あれ?寮監ってこんな人だった?)/// 寮監「…んっ、ゴホン。ともかく、おめでとう」/// 美琴「あ、ありがとうございます」(あ、戻った) 寮監「…報告はいつでも受け付けるからな」 美琴「ほ、報告なんてしません!!」(やっぱり戻ってない!!)/// 寮監「そうか。遠慮しないで良いのだぞ」ニコッ 美琴「し、失礼します」(寮監が壊れた…)バタン まるで年下の友人のように恋愛話を聞きたそうにしている寮監に恐れを抱いた少女は、すぐに立ち上がって部屋から出た。 美琴(寮監も乙女だってことかしら…)ブルブル 幸い寮監が追いかけてくることはなかったので、そのまま自室へと足を向ける。 美琴(そういえば黒子に文句言わないといけないわね。黒子のせいでアイツにパンツ見られちゃったし)/// 軽く頭を振って恥ずかしさを振り払うと、部屋の扉を開けた。 美琴「ただいま。黒子」 黒子「……………………」ブツブツ ルームメイトはベッドの上で体育座りをして、なにやら呟いていた。 黒子「お姉様が類人猿と間接キスをしていただなんて黒子は認めないですの。でもお姉様が類人猿の口に付いたクリームを指で掬ってペロッと舐めたのは事実。いえ、あれはきっと何かの間違いですの。黒子は疲れていた。お姉様は実験をしていた。でも、実験をしていたお姉様は類人猿の好みで短パン+ゲコ太パンツを履かずに縞パンを履いていた。つまり類人猿によって穢されていて、そんなこと、そんなこと黒子は、黒子は認めないですの」ブツブツ 美琴「アンタはなに呟いてるんじゃゴラアアアア」ビリビリ 黒子「ああ~んっ!!愛の鞭ですのぉぉぉぉぉぉ!!」ビクンビクン 美琴「てか、実験って何よ!アンタどんな妄想してるのよ!」 黒子「…ハッ、黒子はなにも見ていません!お姉様とは会っておりませんの!縞パンなんて見ておりませんの!」(実験のことは秘密でしたの!) 美琴(縞パンって、確か妹達が履いていたわよね…。妹達の一人が偶然、黒子に会って実験中とか言って誤魔化したのね、きっと)「そうよね。アンタは喫茶店でわたしの短パンずりおろしただけよねぇ…」ビリビリ 黒子「お、お姉様!?落ち着いてくださいませ。あれは、お姉様の貞操を確認したかっただけですの」 美琴「アンタねえ。デートの邪魔しておいて言いたいことはそれだけかしら?」 黒子「デ、デ、デート!?今、デートと仰いましたの!?」 美琴「ええ。アンタ、わたしのデートを邪魔したわよね」 黒子「あ、あ、あの類…殿方とお姉様がデート!?」 美琴「そうよ。わたし、当麻と付き合うことになったから」 黒子「な、な、名前呼び…」ブルブル 美琴「別に、彼氏のことを名前で呼んでもいいでしょ?」 黒子「お、お、お姉様が、お姉様が殿方のことを彼氏と…。黒子は、黒子は、少し外の風にあたってきますの…」フラフラ ツインテールの少女は虚ろな表情で立ち上がると、そのまま部屋から出て行った。 美琴(なんか思ってたよりも静かだったわね。もっと騒がれると思っていたんだけど) ベッドに仰向けになり、左手を上げて薬指を見る。 美琴(許婚、かあ)ニヘラー 幸せそうな微笑を浮かべて、少女はしばらくの間、指輪を眺めるのであった。 ――― ――お姉様が…殿方と恋仲に… 寮の屋上へと移動したツインテールの少女は、夜空を見上げながら溜息をついた。 ――わかっていたことですの。でも、お姉様から直接言われると、やはり堪えますわ。 夏頃からあのツンツン頭の少年を追い掛け回していたのは知っている。『電撃が効かないムカつく奴がいる』と、楽しそうに話していた。 秋が近づくにつれ、ツンツン頭の少年のことを話すたびに赤くなったり、挙動不審になったりすることが多くなった。 第三次世界大戦の後、しばらくの間ツンツン頭の少年のことを呼んで魘されていた。 ――なにがあったのかはわかりませんが、あの時のお姉様はそれはもう酷い有様でしたわ。今にも壊れてしまいそうなくらい打ちひしがれていて…。でも、いつの間にかお元気になられて、殿方のことを呼んで微笑んだりして…。 秋の初め頃、研究協力の一環として外泊することがあった。その頃には常盤台のエースの名に恥じない超能力者第三位に戻っていた。 ――なぜか私服を持っていかれたりしましたけど。もしかしたら学園都市の外の協力企業への出向だったのかもしれませんが。 黒子「…」ハァ ――あの殿方と一緒にいるときのお姉様を見てしまうと、黒子が入る隙は無いですの。 しばらくの間、空を見上げながら、ツインテールの少女は呟いた。 黒子「上条当麻…お姉様を泣かせたりしたら許しませんですわよ」 ――― とある男子学生寮の一室 ベッドの上の寝具を床に置いてあったものと取替えると、少年はその上に仰向けに倒れこんだ。左手を上に上げ、薬指の付け根をじっと眺める。 上条「許婚、か」 自然と、頬が緩む。 待ち合わせ場所で抱きつかれた時に、自分の中にあった想いを自覚した。 喫茶店で自分の想いを確信して、そのままの勢いで階段の踊り場で告白して、両想いだったことに幸福を感じた。 いつでも一緒のものを身に着けていたい我侭から、お互いの親に連絡をして許婚になった。 上条「…結構ぶっ飛んだことをしたよなあ」 後悔はしていない。むしろ絆が深まったことに幸せを感じている。 上条(それだけ俺は、美琴のことが好きだったんだな) 夕飯に作ってもらったカレーは、今まで食べたカレーの中で一番美味しかった。 寮の前まで送ろうと思ったのに、『抱きしめて欲しいから』と言われて、公園で抱きしめた後、姿が見えなくなるまでそこで見送った。 上条(しかし、何であんなにいい匂いがするんだろうな)/// 頬を赤くしながら、天井を見上げて両手を挙げる。 上条「幸せだー」 ――― 布団の中で、銀髪の少女は目を開けて天井を見た。 インデックス(とうまとみことがデートをしていた) 頬を赤く染めていた茶髪の少女の顔が思い浮かぶ。 茶髪の少女は、安全ピンで留めた修道服を『そんなの着ていると危ないから』と言って縫ってくれた。 『女の子は身嗜みも大切よ』と言って、ショッピングモールへ連れて行ってくれて、下着や部屋着、小物、生活用品を買ってくれた。 たまに部屋に来ては同居人のツンツン頭の少年に勉強を教えたり、わざわざ材料を持ってきて食事を作ってくれた。 ときどき外に連れていってくれて、一緒に遊んでくれた。 インデックス(最初はとうまを虐める酷い奴だと思っていたんだよ) 茶髪の少女は、外で会うと必ずと言っていいほど、ツンツン頭の少年に向かって雷撃をぶつけてきた。 でも、何度か見ているうちに、攻撃というよりは、話すためのきっかけを作るためにそうしているんだと気が付いた。 ツンツン頭の少年と話している時の茶髪の少女は、とても嬉しそうで、楽しそうだったから。 インデックス(やっと、とうまに想いが届いたんだね) 銀髪の少女の口元に優しい微笑が浮かぶ。そして再び目を閉じた。 インデックス(よかったね。みこと) ――― 学習机の椅子に座り、右手でシャープペンシルを弄りながら、黒髪の少女はノートに視線を落とす。 姫神(上条君。楽しそうだった) 常盤台中学の女の子と真っ赤になりながら、ケーキを食べさせあっていたツンツン頭のクラスメイトの少年。 青髪ピアスのクラスメイトの少年が乱入した時には『デートの邪魔をするな』と言って、しっかりと女の子をかばっていた。 姫神(デート…か。あれもデートになるのかな?) 青髪ピアスのクラスメイトの少年に頼まれて、一緒にクリスマスオーナメントを選んだ。そのお礼にと、クレープとココアを奢ってもらった。 姫神(私は。どうして。OKしたんだろう?) 青髪ピアスのクラスメイトの少年との約束。明日も彼のショッピングに付き合うことになっている。 姫神(別に。今日買ってもよかったと思うんだけど) 青髪ピアスの少年はどうしてわざわざ明日を指定してきたのだろう。 姫神(まあ。楽しかったから) 青髪ピアスの少年との他愛の無い話や、クリスマスオーナメント選びは思っていたよりも楽しかった。 姫神(青ピ君…か) 青髪ピアスの少年のことを思い出しながら、少女は小さく微笑んだ。 ――― 12月23日夜、とあるふたりのメール ――――――――― From 御坂美琴 Subject:今日は 本文:ありがとう。嬉しかった。夢じゃないよね?わたし、当麻の婚約者だよね? ――――――――― From 上条当麻 Subject Re 今日は 本文:夢だったらどうする?俺は泣く。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re Re 今日は 本文:泣くだけなの?わたしは死んじゃうかも… ――――――――― From 上条当麻 Subject 安心しろ 本文:御坂美琴は上条当麻の婚約者だ。冗談でも死ぬとか言うな。好きだぞ。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:わたしも 本文:よかった。ごめんなさい。大好き。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:明日 本文:10時に自販機前で待ち合わせでいいか?ゲーセンでも行こうぜ。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re 明日 本文:了解。一緒にプリクラ撮りたいな。新作のゲコ太フレームのやつが出たんだ。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re Re 明日 本文:ゲコ太に邪魔されないツーショットが欲しいかも。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re Re Re 明日 本文:うん。それも一緒に撮ろうね。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re Re Re Re 明日 本文:ゲコ太は確定かよ。まあいいけど。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:ゲコ太 本文:イヤ? ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re ゲコ太 本文:イヤじゃないぞ。好きなんだろ? ――――――――― From 御坂美琴 Subject:Re Re ゲコ太 本文:うん。でも、当麻の方が好きだからね。 ――――――――― From 上条当麻 Subject:Re Re Re ゲコ太 本文:サンキュー。俺も、好きだぞ。 ――――――――― From 御坂美琴 Subject:あのね 本文:言葉で、聞きたいな。 ――― 常盤台中学学生寮208号室 ベッドの上に横になり、茶色い短髪の少女は携帯電話を握り締めていた。 ルームメイトであるツインテールの少女は、勉強机の前に座ってノートパソコンを開き、キーボードに何かを打ち込んでいる。 他愛の無いメールのやり取り。それはそれで楽しかったのだが、文字だけでは物足りなくなってくる。 美琴(わがままだなあ。わたし)ハァ 小さく溜息をつくと同時に、握っていた携帯電話が震えて、少女は小さく体を震わせた。 ディスプレイに表示された、『上条当麻』の文字に頬が赤くなるのを自覚しながら、少女は通話ボタンを押す。口元に幸せそうな笑みを浮かべて。 美琴「も、もしもし」/// 上条『まったく、お前は甘えん坊だなあ』 美琴「わ、悪い!?」 上条『いーや、悪くないですよ美琴さん。…ホントのこと言うと、俺もお前の声、聞きたかったし』 美琴「ホ、ホント?」 上条『お前に嘘ついてどうするんだよ。あー、…好きだぞ。美琴』 美琴「わたしも、好き!」/// その言葉を聞いて、ツインテールの少女の身体が小さく震え、キーボードを打つ手が止まる。(彼女に聞こえているのはルームメイトの少女の声だけ) 黒子(まさかとは思いますが…殿方とのラブトークですの!?)ブルブル 上条『…上条さん、幸せを噛み締めてるんですけど』 美琴「ふふ。当麻♪す~き♪」 黒子「―――!!」(ギュオエエエエエエエエエッッ!!あの類人猿めえええええええっっ!!)ギリギリ 上条『あー、もー!なんでこう美琴さんは、今日一日でこんなに可愛くなっちゃったんですか!』 美琴「当麻が告白してくれたからに決まってるじゃない!わたしはずっと、当麻のことが好きだったんだから!だから、当麻が好きって言ってくれたから、わたしも素直になれたの」/// 黒子(告白ですとおおおおっ!?こ、これはまずいですの。この後は延々とお姉様の惚気話が続くかもしれなくて、そのようなもの、わたくしには耐えられませんの…)ガタガタブルブル 上条『上条さんは幸せ者です。こんな素敵な彼女がいて』 美琴「わ、わたしも幸せ!当麻の彼女になれて」/// 上条『美琴』 美琴「当麻」/// 黒子「…!!」(酸素、酸素が足りませんわ!お姉様が電気分解でオゾンでも精製させておりますの?)ゼエゼエ 上条『やべ。これ以上話していると会いたくてたまらなくなる』 美琴「ホントに?わたしも今、同じこと考えてた」 上条『はは。似たもの同士だな』 美琴「えへへ」 上条『じゃあ、また明日。おやすみ』 美琴「…もう一回、好きって言って?」 黒子「――!!」(げ、限界ですの…)パタリ 上条『美琴。好きだ』 美琴「わたしも、好き。おやすみ。当麻」 上条『おやすみ。美琴』 少女は携帯電話を閉じると、それをそっと胸に抱いた。 美琴(おやすみ。当麻) 黒子「…」 ――――――――― クリスマス狂想曲12月23日 了 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/クリスマス狂想曲