約 1,037 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6665.html
前ページ次ページ重攻の使い魔 第11話『沈む王国』 ルイズ一行を乗せたアルビオン軍艦『イーグル』号は浮遊大陸アルビオンの入り組んだ海岸線を、大陸下半分を覆う雲に隠れるようにして航海した。三時間ほどそれを続けると、前方に大陸から突き出した岬が目に入る。そしてその突端には、高い城が聳え立っていた。 イーグル号は直接城への進路は取らず、更に大陸の下に潜り込むように降下した。疑問を顔に浮かべたキュルケたちを見て、皇太子は遥か上空を指差す。雲の狭間から見て取れたのは、城へと降下しつつある巨大な戦艦であった。全長はイーグル号のゆうに二倍はあり、帆を何枚もはためかせている。 巨艦は城と同じ高度に停止したかと思うと、標的としたであろうニューカッスルの城目掛けて、側舷に並べられた砲門を一斉に開いた。片舷54門の斉射は空気を震わせ、重々しい砲撃音は離れているイーグル号すらも揺さぶった。城壁が砕かれ、小規模な火災が発生しているのがここからでも見て取ることができる。おそらく今の砲撃で、戦死者の名簿に新たな数行が書き加えられたのだろう。 「かつて私の乗艦であった本国艦隊旗艦『ロイヤル・ソヴリン』号だ。叛徒共に強奪されてからは『レキシントン』と名を変えているようだがね。我々が奴らに初めて敗北を喫することになった、……忌々しい土地の名さ」 巨大戦艦は一暴れして気が済んだとばかりに再び上昇していく。艦の周囲には竜が飛び交っているのがかろうじて見えた。皇太子はかすかに悔しさを滲ませた口調で告げる。 「現在我々はあの艦が率いる反乱軍に包囲されていてね。時々嫌がらせのように砲撃していく。もはや死に体のこちらを嬲るが如くね。流石にこの艦であの化け物に勝つのは不可能だ。……だから秘密の港を使って城へと入る。大使を迎えるには色々と味気ない港だが、まあそこは容赦願いたいな」 大陸の影になっていることも相まって、一寸先も見通すことのできない雲中を器用にイーグル号は突き進んだ。数十分ほど航行すると、マストに灯された魔法の明かりによって、直径300メイルほどもある巨大な穴が開かれているのが目に入る。イーグル号と曳航されるマリー・ガラント号は、隠された港があるであろう穴へと入っていく。 反乱軍の目を盗んで侵入する様を見て、ぽつりとワルドが呟いた。 「秘密の港……、まるで空賊ですな」 「君の言うとおり正に空賊なのだよ、子爵」 そういう皇太子の表情は少しばかり楽しそうであった。 イーグル号とマリー・ガラント号は巨大な鍾乳洞を利用して造られた秘密港に係留され、一行は待ち構えていた大勢のアルビオン王党派の人々に迎えられた。皇太子にパリーと呼ばれた老メイジと、集まっていた兵隊達は、マリー・ガラント号の積荷が硫黄だと聞くと、鍾乳洞が崩れんばかりの大歓声を上げた。老メイジは感動にむせび泣き、皇太子と自分達の死に様を楽しげに話し合っている。 皇太子からルイズ一行がトリステイン大使であると聞いた老人は朗らかな笑顔で近付いてくる。 「これはこれは大使殿。わたくしは殿下の侍従を仰せつかっておりまするパリーでございます。遠路はるばるアルビオン王国へようこそいらっしゃいました。大したもてなしはできませんが、今夜のささやかな祝宴に是非ともご出席下さいませ」 ルイズ・ワルド・ギーシュの三人は皇太子に導かれ、彼の私室へと向かった。正式な大使ではないキュルケとタバサは、現在パリーに城内の案内をしてもらっている。ニューカッスル城の最上層部、天守の一角に置かれている皇太子の私室は、一国の王子のものとは到底思えない、非常に質素な部屋であった。これならば、まだしも学院の寮の方が洒落ている。 木材で組まれた簡素なベッドに、同じく木製の椅子とテーブルが一組。この部屋で最も手の込んだ物があるとすれば、壁に飾られている、戦の様子を描いたタペストリーぐらいのものだった。 皇太子が椅子に腰掛け机の引き出しを開くと、中には全体に宝石が散りばめられた小箱が収められていた。彼は先端に小さな鍵の付いた首飾りを外すと、その鍵で小箱を開錠する。中から幾度も読み返され、既にぼろぼろとなってしまっている手紙が取り出された。 皇太子は愛おしそうに口付けし、破かないように優しく開き、そして静かに読み始めた。手垢の付いた手紙は、何度もそのように繰り返し読まれたものらしい。一通り読み返すと、同じように丁寧に折り畳み、封筒に入れた。 「これが姫から頂いた手紙だ」 ワルドが一礼して受け取ろうとした時、皇太子は若干迷った表情を見せた。すまなさそうに手で制する。 「すまない子爵。この手紙は、できればヴァリエール嬢に受け取ってもらいたいのだ。……アンリエッタから指輪を預けられた彼女にね」 素直に下がり、ワルドは虚を突かれた顔をしたルイズの背を押した。ルイズは慌てて一礼して皇太子から手紙を受け取る。 「明朝、非戦闘員を乗せたイーグル号がここを出発する。君達はそれに乗ってトリステインに帰りなさい」 一体いつ送られたのか分からない、酷くくたびれた手紙を見つめながらルイズは考えていた。なぜ死を前にしてこれほどまでに落ち着いていられるのだろうかと。この手紙の内容は、きっと自分が考えている通りのものに違いない。そしてアンリエッタから渡された手紙には、おそらくとある一文が書かれているはずなのだ。 黙りこくってしまったルイズに、皇太子は小さく眉をひそめながらどうしたのかと声をかける。 「殿下……。やはり、王軍に勝ち目はないのですか? 本当にアルビオン王家は汚らわしい反乱軍に敗れてしまうのですか?」 ルイズは思わず口をついてしまう。暗い表情をする少女を前にしても、皇太子は何ら気負うことなかった。王軍300に対し、反乱軍5万。彼我戦力差は絶望的だと、至極あっさりと答える。そして自分は誰よりも真っ先に戦死するつもりだとも。容赦のない現実に、少女は思わず歯噛みする。今ここに己の使い魔がいたならば、もしかしたら戦局を覆すことができたかもしれないというのに。 皇太子の言葉を聞き、ワルドとギーシュに少しの間だけ席を外してほしいと伝えると、ルイズはそれまで考え続けていた疑問を口にした。 「殿下、無礼をお許し下さい。恐れながら申し上げたいことがございます」 「なんなりと申してみよ」 「ただいまお預かりしたこの手紙……、これは姫様からの恋文だったのではありませんか?」 秀麗な片眉を軽く上げると、皇太子はルイズに先を促す。 「この任務をわたしに仰せ付けられた際の姫様のご様子、国を行く末を心配なさっているというよりは、まるで恋人の身を案じるかのようでございました。それに、先ほど殿下が姫様からのお手紙をお読みなさった時のお顔は……、その……」 皇太子は一度は閉じた小箱を再び開けると、内蓋を悲しげな目で眺めた。そしてしばらく眉間にしわを寄せて悩む仕草を見せた後、ぽつりぽつりと話しはじめた。 「君が言うとおり、その手紙は恋文だよ。始祖ブリミルの名において、私に永久の愛を誓っている、ね。この手紙が白日の下に晒された時、ゲルマニアのアルブレヒト三世がどのような選択を取るかは分からない。アンリエッタを重婚の罪だと糾弾して、当然の如く婚約を破棄するかもしれないし、どうでもいいと言って結婚するかもしれない。まあ同盟を考えれば、そのような手紙は処分されるべきだろうね」 「殿下は姫様を今でも愛しておられるのでしょう?」 「……昔の話さ」 皇太子の話を聞く内に、ルイズは徐々に俯いてしまう。自分の中で限りなく確実に近い推測を述べる。 「……トリステインに亡命なさるおつもりはないのですか? 姫様はきっと手紙にそう書いておられるはずです。あの方はご自分の愛した人を見捨てるようなことは絶対になさりません。……わたしは、姫様の人となりをよく知っております」 「そのようなことは一行たりとも書かれてはいないよ」 返された言葉に思わず口を開こうとしたルイズを、皇太子は静かに制する。表情は苦虫を噛み潰したように歪んでいる。 「王族は民に嘘はつかぬ。アンリエッタはトリステインの王女だ。己の都合を国の大事に優先させるはずがない。姫と私の名誉に誓う。亡命を薦めるような文はただの一行も書かれていない」 自分の言葉は皇太子の決意を覆すことはできない。目前に迫った皇太子の死と、間違いなく嘆き悲しむであろうアンリエッタの姿を思い浮かべ、ルイズはどうしようもない無力感に苛まれる。自分一人では何もできない卑小な自分がどこまでも憎かった。 俯いてかすかに震えているルイズを前に、皇太子は務めて明るい口調で話す。 「君は本当に正直な女の子だな、ラ・ヴァリエール嬢。ご両親に似て真っ直ぐないい目をしている。だが、そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい」 そう言うと、皇太子は机の上に置かれている時計、水が張られた盆を眺める。俯いているルイズに部屋から出るように言う。 「そろそろパーティの時間だ。君達は我が王国が迎える最後の賓客だ。是非とも出席して欲しい」 滅びゆく王国の最後の晩餐は、随分と華やかなものだった。明日の一方的な虐殺になるであろう戦闘のことなど頭にないとでも思えるほど、王党派の貴族達の表情は輝いていた。まるで園遊会のように着飾った老若男女が踊りまわる様は、いささか現実離れしていた。 現アルビオン王、ジェームズ一世の演説と、それを聞いて俄然盛り上がる参加者を眺めながら、キュルケは珍しく沈み込んだ表情をしていた。 「死を目前にした人たちのパーティって惨めね……」 「……仕方がないんじゃないかな。無理にでも笑わないと、……戦えないよ」 賓客として迎えられた一行は、上座の傍に席を与えられていた。そこからはホール全体の人々を眺めることができた。 皆笑っている。勇ましい言葉を叫びながら踊り狂っている。ギーシュとキュルケには、しばしば底抜けの笑顔で語りかけてくる人々がどうしようもなく悲しい存在に見えた。ギーシュはグラスに注がれた赤ワインに写る自分の暗い表情を凝視する。もとより感情というものがあるのか無いのか判断しづらいタバサは、そのような人々を前にしても特に何も言うことなく出された料理をほおばっている。ギーシュはかすかに眉をひそめたが、別段非難することはなかった。あまり喋る気分になれないのだ。 ルイズは気分が優れないのか、早々に席を辞していた。一人ふらふらと会場から出て行くのを、キュルケたちは横目で見ていた。ワルドはというと、なにやら皇太子と話し合っている。距離がある上に、参加者の喧騒で会話の内容を知ることはできない。 「ねぇ、ギーシュ。どういう任務だったの?」 「悪いけど言えないよ。何しろ姫殿下から直々に言い渡された秘密任務だからね」 キュルケが話題を振ってみるも、どうにも先に続かず二人は黙り込んでしまった。明日の早朝に自分達は先に脱出する。その後、虐殺されていくであろう人々を残して。親しい顔見知りがいるわけではなかったが、目の前の人々の命がもう一日もないことを考えると、暗澹たる気分になってしまう。世の不条理を受け入れるには、彼らはまだまだ若すぎた。 ルイズは暗い廊下を、蝋燭を載せた燭台を手に歩いていた。人影の無い廊下には、ホールから漏れ出る笑い声が響いてくる。窓から差し込む月光は、地上に暮らす人々の生き死になどどうでもよいとばかりに、普段と変わらぬ輝きを見せていた。 自分の足音だけが響く廊下を通り抜け、砕かれた城壁の瓦礫を踏み越え、秘密の港へと通じる階段を下りていく。昼間、ここにいた大勢の人々は皆宴会に参加しており、港は鍾乳石から滴り落ちる水音と、小さく響く足音に支配されていた。ルイズは係留されているイーグル号へと乗り込み、皇太子から聞いていた倉庫へと向かう。 蝶番を軋ませながら開かれた扉の先には、赤いゴーレムが力無く座り込んでいた。少女はその隣に座り込むと、膝を抱えて顔をうずめさせた。 「どうして……、どうしてあの人たちは死を選ぶの? 姫様が逃げてって言ってるのに……、どうして……」 少女の呟きに返事をするものはいない。床に置かれた蝋燭の炎がかすかに揺れて、倉庫に映し出された影が震える。 「ねぇ、ライデン、起きてよ……。あんたがいてくれたら、皇太子様たちを助けれるかもしれないのよ……。お願い、起きてよ……、ねぇ……。……うっ……ううぅ……」 沈黙を貫く己が使い魔に、少女は涙を零す。やはり自分はこの使い魔がいないと何も出来ないのだ。お勉強ができるだけの頭でっかちな落ち零れメイジが、今この場でできることは何も無かった。またしても少女は己を糾弾する。なぜこんなにも無力なのか。逃げることしかできない小娘が。自虐の螺旋を留めてくれる人間は、ここにはいない。 イーグル号の倉庫でひとしきり泣いた後、ルイズはふらふらとおぼつかない足取りであてがわれた部屋へと戻ってきた。目の周りは流された涙で腫れぼったくなっている。ベッドに飛び込み、枕に顔をうずめていると、部屋の扉が控えめに叩かれた。しばらく無視していたが、しつこく叩かれるので、よろめきながら扉へと向かう。 扉を押しやると、そこにいたのはワルドであった。 「ルイズ、少しいいかな。余りに君が落ち込んでいて気になってね」 「……少しだけなら」 そう言うと、ルイズはワルドを部屋に入れる。簡素なテーブルに腰掛けると、少女もまた同じように腰を下ろした。ワルドは少女の胸ポケットから覗く手紙の端を見やると、ぽつりと尋ねた。 「……手紙、燃やさないのかい?」 その問いに、しばらくルイズは沈黙していたが、小さな声で呟きはじめる。 「……やっぱり、この手紙は燃やせないわ。……せめて、姫様に届けたいの」 ワルドはそうか、と一言だけ言うと背もたれに身を預け、天井を見上げる。そして顔を戻すと、真剣な表情で語り始める。 「僕はしばらくここに残ろうと思うんだ。……少しでも殿下の力になりたいんだよ」 ルイズははっとした表情で何かを言いかけたが、ワルドは分かっているというように制する。 「死ぬつもりはないよ、本当に少しだけさ。役目を終えたらすぐにグリフォンで脱出する。だから心配はしなくていい。君達は先に脱出してラ・ロシェールで待っていてくれ。すぐに追い付くから」 ワルドの決意に、ルイズは目を伏せる。自分は彼のように立派なメイジではない。たとえ言葉でいずれ素晴らしいメイジになると言われているとしても、今はただの無力な少女にすぎない。 俯いたルイズに、ワルドは優しく声をかける。 「ルイズ、こんな時にこのような話をするのもなんだが……、トリステインに帰ったら僕と結婚して欲しい。もう誰にも君を落ち零れなんて言わせたくないんだ」 少女の心が揺さぶられる。四面楚歌、敵に囲まれた中での晩餐会を目にしたことで弱気になっているルイズにとって、ワルドの求婚は安らぎを感じさせるものだった。ライデンが倒れ、すがりつくものを失ったことも影響していた。 ワルドは立ち上がり、ルイズの額に軽く口づけをする。ルイズがそれを拒むことはなかった。 「皇太子殿下は、姫殿下に勇敢に戦ったと伝えて欲しいとおっしゃっておられたよ。……だから僕もそんな殿下の姿を目に焼き付けようと思う。……それじゃあお休み、僕のルイズ」 ワルドが部屋から出ていった後も、しばらくの間ルイズはテーブルに腰掛けたままだった。 結局、皆死ににいくことを美化している。待つ人や残される人のことなど考えていない。ルイズは男特有の身勝手な、それでいて自己陶酔している一連の行動に、どうしようもないやるせなさを感じていた。 前ページ次ページ重攻の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/387.html
前ページ次ページとある魔術の使い魔と主 ワルド達は、再び走り出す。 ルイズは腕の事を心配したが、しきりに大丈夫です~、と若干冗談を交えて当麻は安心させようとした。 剥き出しというのもどうかと、傷を布で覆い隠す。少しでもルイズを不安がらせないようにする当麻なりの配慮である。 (それにしても……) 走りながら、当麻は先程の戦いを思い出す。 あれは完全に当麻が油断してしまった結果である。近接戦闘を行いがら呪文を紡ぎ、魔法を放つ。おそらく天草式の人達と同じタイプなのであろう。 (やっぱりこっちでも魔術に関してはあまり変わらないんだな) 元の世界で幾多の魔術師と戦って来た経験が、役に立つ。根本的な部分はそこまで変わらない。 次は先程のようにはいかない。向こうの誤算はここで当麻を仕留めそこなった事。そういう事にしてやる、と当麻は心に決めた。 階段を上った先には一艘の船が停泊していた。帆船のように当麻は見えた。唯一違う点を挙げるとしたら、羽が突き出ている点だろうか? 枝に何本ものロープが絡まっていて、船は枝に吊るさられていた。 そして、当麻達が乗っている枝が迎えるように甲板へと伸びていた。 彼等が船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員がこちらに気付き、起き上がった。 「なんでぇいおめぇら!」 かなり酔っている。普通の吐く息でさえもかなり臭い。 「船長はいるか?」 「もうお休みさ、用があるなら、明日の朝、改めてくらーことだな!」 男は景気よく、手に持っていたラム酒をラッパ飲みしながら、答えた。いやもう、一発ぶん殴ろうか? と当麻は思った。 ワルドは黙ったまま、杖を引き抜いて男の方へと向ける。すると、男の目が見開いた。 「貴族に二度同じことを言わせるとはな。船長を呼んでくれないか?」 「き、き貴族!」 男はがばっ、と立ち上がると、船長室へと走り去っていった。 当麻はその様子を見て、思わずルイズに話し掛ける。 「貴族って何でもオーケーなんだな」 「当たり前じゃない。貴族と平民は雲泥の差よ」 そうは言ってもな……と当麻は髪をかく。 確かに上の立場、下の立場はあるしそれは認める。 しかし、それを当然だと思うのはどうかと思う。生まれた時からその人生が決まるというが、これはさらに制限されている。 (だから革命が起きたんだろうな) 名前は覚えてないが確かあった……というかなかったら困る。 当麻の世界では貴族はほとんどいない。いたとしてもこのような人格はしていない。 いつかこの世界にも革命が起きるんだろうな、と言葉に出来ない事を思っていると、船長が現れた。 やや寝ぼけており、髪はぼさぼさになりながらもこちらに向かってくる。 少し歳をとって、帽子を被っている。船長のイメージにはピッタシだ。 「何か御用ですかな?」 船長は早く話を終わらしたいように思えた。 「女王陛下の魔法衛士隊隊長のワルド子爵だ」 今度は船長の目が見開かれる。今ので目が覚めたのだろう。こちらの身分が相当高い事がわかった為、言葉遣いがさらに丁寧になる。 「これはこれは……。して、なぜこのような当船に赴いたのでしょうか?」 「アルビオンへと今すぐ出港して欲しい」 「それは無茶です!」 船長の声が途端に大きくなる。本来の予定ならば明日に向かうのだ。だけどなぜ無茶なのだろうか? 予定をちょっと早くなるだけではないか。 「勅命だ。まさか王室に逆らうつもりか?」 「いえ! そのような事は断じてございませんが、朝にならないと出港が出来ないのです!」 「なぜだ?」 「アルビオンが最もここ、ラ・ロシェールに近づくのは朝であります! その前に出発したんでは風石が足りませんや!」 「……風石って何?」 当麻が耳打ちでルイズに聞く。 そんな事も教えなきゃいけないの? といっためんどくさげな目を見られて、当麻はハハハ、と苦笑いを取るしかなかった。 「『風』の魔法力を蓄えた石。それがあるから船は宙に浮かぶの」 ふむ、と当麻は頷く。ならばそれさえ触れなければ沈没、という事はなさそうだ。 「子爵様、当船が積んだ『風石』はアルビオンへの最短距離分しかありません。それ以上積んだら足が出ちまいます。よって今は出港できません。途中で地面に落っこちてしまいまさあ」「なら大丈夫、『風石』が足りない分は、僕が補う。僕は『風』のスクウェアだ」 船長と船員は、顔を見合わせた。おそらく初めての出来事で戸惑っているようだ。少しだんまりした後、再びワルドの方へ向く。 「ならば問題ないかと。料金ははずましてもらいますよ」 「積荷はなんだ?」 「硫黄で。アルビオンでは今や黄金並の値段がつきますんで。新しい秩序を建設ならっている貴族のかたがたは高値をつけてくださいます。秩序の建設には火薬と火の秘薬は必須ですからね」 「その運賃と同額を出そう」 船長は笑みを浮かべた。なんともまぁいやらしい笑みではあったが、こちらの条件に対して頷いた。 無事商談は成立、船長は船にいる船員に命令を与えた。 「出発だ! もやいを放て! 帆を打て!」 こんな夜中にかよ……とぶつぶつ文句を言っているが、船員達は淡々と船長の命令に従い、出発の準備をし始める。 帆を張り、枝に吊した綱を解き放つ。ガクッ、と重力に従って沈んだが、直ぐさま発動した『風石』の力で宙に浮かぶ。 帆と羽が風を受け、ゆっくりと動き出す。 ここまで時間にて僅か数分、ヒュウと思わず口笛を吹いてしまう。 「アルビオンにはいつ頃着く?」 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」 ワルドが尋ね、船長が答える。 まだまだ時間がかかるんだな、と当麻は舷側に乗り出して、景色を見る。 下の方で、ラ・ヴァリエールの明かりが離れていく。かなりのスピードが出ているようだ。 と、誰かに手を置かれた。見るとそれはルイズであった。 「傷は大丈夫?」 心配そうにルイズは左腕を見る。 「あぁ、こんなもん上条当麻さんにはへのへのへ~ですったい。それともあれですか? もしかして心配しちゃってるんですか?」 当麻の冗談を含めた言い方に、ルイズはキッ、と睨んだ。 「当たり前でしょ! 使い魔を心配するのは当然よ!」 ちょっと涙を浮かべながら怒鳴るルイズに、当麻は手を左右に振りながらも慌てた。 「いや、大丈夫だってホント。マジ俺の復活速度は半端ないし。つーか右手でほとんど打ち消したし問題ないって」 ほらほら、と作り笑いをしながら右手を見せびらかす。 ルイズにも当麻の右手、幻想殺しの効果がどれだけ凄いか知っている。 「なら……いいけど」 まだ何か言いたげな様子であったが、とりあえずルイズは納得した様子。 そんな二人の元に、ワルドが寄って来た。 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、包囲されて苦戦中のようだ」 その時、ルイズはある事に気付きワルドへと詰め寄る。 「ウェールズ皇太子は?」 返事の代わりに首を横に振った。 「生死もわからない、か。とりあえずこれからどうするんだ?」 「王党派と連絡を取りたい所ね」 「陣中突破しかあるまいな。スカボローからニューカッスルまでは馬で一日だ」 ゲ……と当麻は口から漏らす。彼にとって馬は、もう半ばトラウマとなっている。 「反乱軍の間を擦り抜けて?」 「そうだ。それしか方法はないだろう。まぁ向こうもこちらに公然と手出しは出来んだろう。暗闇に気をつけながらも隙を見て、ニューカッスルの陣へと向かう」 「んじゃあさ」 ワルドとルイズは当麻に目をやる。 「とりあえず決まった事だし、休まない?」 どれくらい寝ただろうか? 当麻は眩しい陽の光と話し声で、意識を取り戻した。 ゆっくりと目を開けると、一面青空が広がっている。再び舷側から身を乗り出すと、白い雲が広がっている。どうやら船は雲の上を進んでいるようだ。 あれ? でも息苦しくないよな、と早速この世界の常識に不思議がっていると、鐘楼の上に立っている船員が大声で叫ぶ。 「アルビオンが見えたぞ!」 という事は今は昼過ぎか、随分寝たなー、と閉じそうな瞼をごしごしとこする。 立ち上がり、気付く。隣で小さな寝息を立ててルイズが寝ていた。 どうやらここでも使い魔の仕事をしなければならないようだ。当麻は優しくルイズの肩を揺らす。 「ふぇ……」 「着いたらしいぜ」 一声かけて、体を大きく逸らす。当麻にとって目を覚ますのにはこれが一番だ。 するとルイズが起き上がり、ある方向を向いたまま目線を変えなかった。なんかあるのか? と思い、そちらへと視線を向け…… 当麻は息を飲んだ。 「おいおい、この世界はホントなんでもありだな」 「驚いた?」 そこには、巨大な大陸が文字通り浮いていた。地表には山がそびえ、川も流れている。 当麻の許す視界には収まりきれない程の大きさだ。 「浮遊大陸アルビオン。ああやって空中に浮遊して、主に大洋の上をさ迷っているわ。でも、月に何度か、ハルケギニアの上にやってくる。大きさはトリステインの国土ほどもあるわ。通称『白の国』」 「白の国?」 当麻の質問を待っていたのか、ルイズは大陸の方を指差した。 大河から溢れた水が空に落ち込んでいる。その際、白い霧へと変わり、大陸の下半分を包んでいた。 百聞は一見にしかず、なるほど、と当麻は納得した。 あの霧が雲となって大雨を降らしているのだと、ルイズは補足してくれた。 その時、再び鐘楼の上に立っている船員が、大声で叫ぶ。 「右舷上方の雲中より、船が接近しています!」 当麻は視線を大陸からずらす。そこには肉眼でもはっきしと船が近づいて来ているのがわかる。自分らの船より一回り大きく、舷側に開いた穴からは大砲が突き出ている。 「……いや、そんな事はないですよね? あったら困るよな?」 当麻は最悪の展開を頭に浮かべる。こういった時、よくある事といえば―― 「いやだわ。反乱勢……、貴族派の軍艦かしら」 当麻の代わりにルイズが答えた。 「何ですか一体、どうしてこうも困難フラグが立つんですか!?」 「知らないわよそんなの!」 うがー、と当麻は両手で頭を抱えて悩む。 簡潔に言うと、空賊に船を乗っとられてしまったのだ。 当麻やルイズの予想通りだったのかはわからないが、それは一番質の悪い空賊であった。 あちらは無数の大砲にメイジもいる。こちらは三つだけの大砲に、魔力がないメイジと魔法が放てないメイジ。 戦力の差は決定的、ここは素直に捕まるのを選んだ。 三人は船倉に閉じ込められた。一緒に航空した船員達は、自分達のものだった船の曳航を手伝わされているらしい。 周りには、酒樽やら穀物のつまった袋やら、しまいには火薬樽までもが散らばっている。 ワルドはやることがないのか、興味深そうに見て回っている。 一瞬、当麻の顔が苦痛の表情へと変わる。ズキッと左腕が再び痛みだしたらしい。その一瞬を、ルイズは見逃さない。 「トウマ、怪我痛むの?」 「あー大丈夫だって。いやちょっとは痛むけど」 「痛むならちょっと見せてよ。ほら」 ルイズは当麻の答えを聞く前に腕を掴むと、布を取り払った。 「きゃ!」 ルイズは思わず尻餅をついた。それぐらい当麻の腕は酷かった。 左腕の手首ちょい手前から肩までひどい水ぶくれとなって、見られたせいなのか痙攣も起こし始めた。 「ひどい火傷じゃないの! どうしてほっとくのよ!」 ルイズは立ち上がると、扉を叩いた。 「誰か! そこにいるでしょっ!」 当麻は再び布で左腕を覆い被せる。その間にも看守の男がこちらの様子に気付いた。 「なんだ?」 「怪我人がいるの! 水と……後『水』系統のメイジはいないの!? 治してほしいの!」 「いねぇよ」 「嘘! いるんでしょう!」 「あーもう落ち着けって」 取り乱しているルイズに思わず当麻は手をかける。ルイズはそんな当麻をキッと睨む。 「なんでよ! あんた怪我してるじゃないの!」 「あーすみませんこの子ちょっとオーバーリアクションで……な、ちょっと向こうへいこうか?」 「あ、ちょっと! 何してんのよ!」 ルイズの手を引っ張り扉から離れる。看守の男は首を傾げながらも再び座り込んだ。 「とりあえず落ち着いてくれ。向こうをあまり刺激しちゃマズイ」 「なにムゴゴ」 よ、と言い切る前に当麻が口を塞いだ。しばらくして放すと、ルイズは顔を伏せ、黙った。 「確かに何も言わなかった俺が悪い。けど俺達は姫様から授かった重要な任務のまっさだなかだ。あそこで俺の治療の為に時間を使うわけにはいかなかったんだ」 そう、ラ・ロシェールでもそうだったが、『目的地に辿り着くのが任務』なのだ。だからタバサ達を犠牲にしてここまできた。 その事実があったからこそ、当麻は弱音を吐かなかった。しかし、ルイズにとってそんなのはどうでもよかった。 「あんたはわたしの使い魔なんだから……心配かけさせないでよ」 肩が震えている。顔を隠しているがヒック、と言葉を吐き出す。 「えとー……ルイズさん。もしかして泣いていらっしゃるのでしょうか?」 「泣いてないもん……、絶対に泣かないもん……」 当麻は困った。正直自分が悪い。全責任が当麻にある。慰めようにも多分言う事を聞いてくれないだろう。 仕方なく当麻はワルドの元へ向かう。 「慰めてやってください」 状況を理解していたワルドは黙って頷くと、当麻の代わりにルイズの元へと向かった。見たら殺されそうな気がしたので、視線を違う方へと逸らした。 と、扉ががたんと開いた。空賊の一人が入って来ると、三人に話しかけた。 「頭がお呼びだ」 当麻達三人が連れていかれた部屋はかなり立派であった。豪華なデイナーテーブルが中央に置かれている。その一番上座に腰掛けているのが、この空賊船の船長であった。 大きな水晶のついた杖をいじっているのに夢中で、その周りの部下達がルイズ達をニヤニヤと笑いながら見つめている。 ここまでルイズを連れて来た男が、後ろからルイズをつついた。 「おい、頭の前だ。挨拶しろ」しかし、このルイズははいそうですかと頷かない。挨拶の代わりに頭をただ睨み続けた。 すると、頭はこちらを見てニヤリと笑う。 「気の強い女は好きだぜ。さて、名乗りな」 「大使としての扱いを要求するわ」 頭の体がピクッと動いた。 「どうしてだ?」 「わたしは王党派への使いよ。まだ貴族が勝ったわけじゃないから、アルビオンは王国だし、正統なる政府は王室ね。 わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族だから大使ね。だから、大使としての扱いを要求してるの」 「王党派と言ったな」 「えぇ、言ったわ」 「今ここで言うが、俺達は好き放題暴れる代わりに、王党派に味方するような連中を捕まえるという条件があってな――」 「だから何よ?」 頭の会話に乱入する。が、気にせず話を続けた。 「貴族派につく気はないかね? それなら港まで無料で運ぶし、向こうも礼金をたんまりくれるだろう」 「それだったら死んだ方がマシね」 ルイズははっきしと言った。当麻は頭を抱えたくなった。なんというか、貴族というのはきっと交渉が下手なんだなと思った。 (でもまぁ、その姿勢は誇れるぜ) ルイズの体は僅かながらも震えていた。好きで言っているわけではない。怖いのだ。しかし、たとえ怖くても、真っ直ぐルイズは男を見つめている。 そんなルイズに、当麻は彼女の『力』を感じた。 「もう一度言う。貴族派につく気はないかね?」 頭の口調が重くなった。ぴりぴりと緊張が走る。 それでも、ルイズは負けない。負けないつもりだったが当麻が先に口を開いた。 「無理だ。無理です。無理無理無理無理無理無理無理無理ー!」 だー、と両手を大の字に広げる。全員が当麻に視線を向けた。 「あーもう、何度も繰り返すとかどこのアナウンスさんですか。俺達は王党派なんだ。その事実は何があっても覆んねえよ」 「貴様はなんだ?」 今度は当麻を睨み付ける。しかし、当麻にとってこんなのは怖くもなんともない。 「ただの使い魔」 「使い魔?」 「ただのを入れ忘れてるぜ?」 途端頭は笑った。部屋中を支配するぐらい大声で笑った。 「トリステインの貴族は、気ばかり強くてどうしようもないな。まぁ、どこぞの国の恥知らずどもより何百倍もマシだがね」 頭はそう言うと、再び笑い出して立ち上がる。当麻達はあまりの豹変ぶりに戸惑い、顔を見合わせた。 「失礼した。貴族に名乗らせるなら、まずはこちらからだな」 周りに控えた空賊達が、一斉に直立した。なんだなんだ!? と当麻は身構えた。 すると頭は髪の毛をびりっとはがした。それはカツラであった。眼帯を取り外し、つけひげもびりっとはがす。 現れたのは、凛々しい金髪の若者であった。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……いやこの肩書きよりこちらの方が通りがいいだろう」 若者は再び威風堂々、名乗った。 「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ルイズと当麻、二人が口を大きく開けた。 前ページ次ページとある魔術の使い魔と主
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1329.html
前回までのあらすじ 異 世界、ヌーボルに残った片桐三曹は、聖女スビアと古代ロサールの謎を求めて旅に出る。偵察用オートバイの燃料を気にしていた片桐は偶然助けた村人の案内 で、スビアの村と友好関係を結ぶ村、シュミリで馬を手に入れる。快適な乗馬の旅を続ける2人の前に巨大な都市が現れる。ガルマーニと呼ばれる都市は、60 年前に、偶然この世界に漂着したナチス幹部ボルマンによって支配されていた。彼はクーアードを支配するためにガンドールを弾圧していた。聖女スビアを見初 めたボルマンはじゃまになった片桐を強制収容所に送るが、片桐はそこで出会った元Uボート艦長ハルス、元親衛隊中尉フランツと収容所を脱走。レジスタンス のリーダー、サクートと合流し出陣したボルマンの隙をついて彼の司令部へ潜入する。 愛するスビアを救い出したがボルマン軍はすぐに引き返してき た。スビアは自ら市民に語りかけレジスタンスへの参加を呼びかける。そしてレジスタンスとともにボルマン軍との死闘の末勝利を治める。ガルマーニ市民とレ ジスタンスはスビアに街の指導者になって欲しいと訴えるが2人は旅だった。平穏な旅が始まったと思いきや、片桐を謎の毒矢が襲った。 片桐は、ゆらゆらと不規則に体を揺すぶられる不愉快さで目を覚ました。目を覚ましてすぐに愛しいスビアの顔が目に入り、ほっと安堵のため息をつくが、すぐに自分の視界の異常さに気がついた。 片桐とスビアは、2本の棒に手足を縛られていた。そして罠にかかったイノシシのようにさかさまにつるされて連行されているのだ。そしてそれを担いでいる連 中はおよそ、クーアードでもガンドールでもなかった。彼らはアンバードのように見えるが、体格は人間に近かった。しかし、体中に毛が生えていて、男女の差 を識別するのも困難だった。そのかわり、彼らの持つ武器はアンバードよりも文明人にいくらか近かった。斧や槍は研磨された石でできており、縄で木の枝に結 ばれていた。そして、彼らの腰にはパチンコのような武器が納められていて、その石をしまうであろう木で編んだかごが彼らのベルトに吊されていた。 「片桐、気がつきましたか?」 スビアに声をかけられて片桐は彼らの観察をやめた。どうやら彼女は無傷のようだが、手足は片桐同様逆さに縛られており、彼女の革の靴は脱がされ、裸足のまま縛られていた。片桐のブーツは脱がされておらず、彼らは靴ひものほどき方を知らないことが想像できた。 「彼らはあなたの拳銃も取っていません・・・」 スビアの言葉に自分の腰を見てみた。たしかに彼女の言う通り、片桐の腰に納められたシグザウエルはそのままだった。 「しゃべる、だめ!だまる!」 2人を担いでいた猿が片言の言葉を発した。どうやら文化レベルはアンバードよりは上のようだ。 「しゃべれるなら自己紹介しよう!俺、片桐!」 片桐の言葉にその猿はきっと牙をむきだして威嚇した。 「しゃべる、だめ!だまる!」 その返答は交渉の余地のないことを片桐に示しているようだった。 片桐たちを捕まえた猿たちは、海岸から1時間ほど歩いた森に囲まれた岸壁で行進をやめた。よく見ると、岸壁のあちこちに横穴の入り口が見えた。彼らは洞窟 を住居としているのがわかった。大きな洞窟の前で片桐たちは縄をほどかれた。その洞窟から、ひときわ大きな猿人が顔を出した。周りの連中の言葉から酋長で あることがわかった。酋長は片桐とスビアを交互に見ると、片桐の持っていた89式と、スビアの持っていたガルマーニ製のゲベールを交互に見た。使い方がわ からないようで興味なさげにそばの洞窟に放り投げた。 「なまえ!いえ!」 酋長は片桐に質問した。どうやら名前を聞いているようだ。 「日本国陸上自衛隊、三等陸曹の片桐だ」 片桐ができるだけややこしく答えてやったのに気がついてスビアがくすっと笑った。それを気に入らなかったのか酋長はスビアにも同じ質問をした。 「アムター村の聖女スビアです」 原始人以下の彼らにも聖女の言葉はわかったみたいだ。いささかざわめきが起こった。酋長はそのざわめきを沈めて片桐たちを先ほど、彼らの武器を放り投げた 洞窟に監禁するように命じた。たちまち、2人は後ろ手に木の蔓で縛られて洞窟に放り投げられた。その入り口を大きな石を積んでふさいでいく。すっかりそれ をふさぐと猿人たちは見張りもつけずに去っていった。 「さて、スビア。この状況は幸運ですよ」 「同感です・・・」 片桐の言葉にすぐさま応えたスビアはお互い後ろ手に縛られた蔓を確認した。太い蔓だがいいかげんな結び方をしている。 「かみ切りましょう。まずは俺の蔓をかみ切ってください」 スビアは横たわって片桐を縛る蔓をかみ切ろうとした。実際蔓は太いが結び方がいい加減で大した苦労もなく片桐は自由になった。そして次はスビアの番だった。片桐の手ですぐに自由になったスビアは片桐と無事を確かめ合うようにキスを交わした。 「さあ、でかけましょう」 焦るスビアを片桐は制した。まだ日は高く、見張りはいないが今脱走すると失敗する可能性が高かった。なにより、彼らにはその威力が未知数の飛び道具があった。しかも毒矢まで所持している。 「ではもう少し待つのですね。」 「その通り・・・」 片桐は不安がるスビアを抱き寄せた。元気そうな片桐を確認してスビアは彼の胸に顔をうずめた。 「あの矢で撃たれたときにはわたくしは、絶望しました。もうあなたは死んだと思っていました」 「幸い、あれは獲物を眠らせるための毒矢だったようです・・・」 スビアを抱きしめながら片桐は説明した。自分たちを吊したあの方法といい、毒を用いても殺さない方法。彼の導き出した答えはただ一つだった。 「やつらは、俺たちを食うんです。今夜の晩餐あたりで。だから日が高いうちは安全なのですよ」 「では、今逃げないと・・・」 そう言うスビアの唇に指を当てて片桐は彼女を黙らせた。 「夜まで待ちましょう。そしてここから抜け出して馬を見つけて・・・」 ここで片桐は言葉を止めた。彼らの愛馬を見かけていないことに気がついたのだった。それに気がついてスビアが言葉をかけた。 「ローズとセピアは逃がしました。きっとあの海岸まで行けば見つかるはずです」 それを聞いて片桐は安堵のため息をついた。あの賢い愛馬を失うのは旅の行く末を考えると、絶望的なような気がしていたのだ。 集落ではたき火を囲んで宴会が始まっていた。積み上げられた岩の透き間から片桐がのぞき込むと、酋長を囲んで車座に、猿人どもが踊っている。 「どうやら我々はメインディッシュのようですな」 片桐のジョークにスビアは身震いした。それを見て軽く苦笑すると片桐は再び外の様子に目をやった。1匹の猿人がこっちに向かってくるのが見えた。どうやら、メインディッシュの時間のようだった。 「さあ、いよいよです」 片桐は洞窟の奥まで後退した。スビアがゲベールを構える。猿人たちは彼らに理解できなかった2本の棒がどんなものかをまもなく知ることになるであろう。猿 人は2人を逃がさぬように積み上げた石垣を乱暴に壊すと洞窟にずかずかと入ってきた。彼らが何か持っているのをさして気にしていないようだ。 「こい!こい!」 猿人が手招きした。それに答えてスビアがゲベールを猿人の心臓めがけて発射した。彼女のはなった弾丸は見事に猿人の心臓を撃ち抜いた。ポルの力で発射するゲベールはほとんど銃声が聞こえない。 「さあ!いきましょう!」 片桐はスビアの手を取って洞窟を抜け出した。片桐たちには全く気がつく様子がなく宴会を続けている。2人が森に入ってようやく異変に気がついたようだ。口々に醜いわめき声をあげているのが聞こえた。 「急いだ方がよさそうです・・・」 「同感ですな」 2人は森を海岸に向かって駆け出したが、背後から猿人が迫ってくるのが気配と、あのどう猛な声でわかった。片桐は振り返って暗闇に無数に光る不気味な目に 向けて89式の5・56ミリ弾を続けざまに発砲した。どれだけ命中したかはわからないが、連中の叫び声が少し遠のいた気がした。 片桐が撃たれた海岸まで出てきたが、愛馬の姿が見えなかった。猿人の叫びは徐々に近づいてくる。とりあえず、片桐はスビアを砂浜にぽっかり顔を出した岩に隠れさせ、自分も隣にしゃがみこんだ。 「盛大にやってきますな」 片桐は銃をチェックして森に向けて構えた。予備の弾薬は彼の愛馬が背負ったままだ。今の片桐にはチョッキのポーチにしまっている数本のマガジンしかない。スビアが片桐の腕を持って言った。 「前にもお願いしましたが、もはやこれまでというときは、わたくしを撃ってください。少なくとも、あの猿人たちにローストビーフにされるのだけは免れますから・・・」 「その件は考えたくないですな、一緒に脱出するんだ」 森から猿人たちが現れた。片桐は先頭の猿人を3発でしとめた。後続の猿人があのパチンコを片桐に向けて発射した。びしっ、という音ともに彼の隠れた岩に命中した。かなりの威力だということが音だけでもわかった。 今や猿人たちは片桐の銃撃に犠牲を出しながらもじりじりと2人の隠れる岩に接近していた。すでに2本のマガジンを撃ち尽くしたがいっこうにその進撃はやむ ことはない。さすがに、片桐も絶望を抱きつつあった。しかし、愛するスビアをいくら彼女の願いとはいえ、手にかけることだけは想像したくなかった。 「ぎゃああ!!」 そのとき、片桐たちに迫った猿人の一団がばたばたと倒れた。猿人が少しうろたえて周囲の様子をうかがっている。そうしているうちにさらにもう一団の猿人が撃ち倒された。今や猿人は別の方向からの奇襲に怯え始めているのがわかった。 「片桐、あれを!」 スビアの声に片桐は砂浜の向こうを振り返った。暗くてよくわからないが一団の兵士が、ゲベールらしき武器を猿人に発射しているのが見えた。その後方にも兵 士たちが整列しているのが見えた。そして、次の瞬間に聞こえたいななきを聞いて片桐は身震いがした。間違いなく、興奮した馬のいななきであった。しかもか なりの数だ。 「行くぞ!」 指揮官らしき人物の声を合図にその騎馬隊は猿人に突撃を開始した。暗闇でも彼らの武器が細身の槍であることがわかった。猿人たちが彼らに例のパチンコを撃つのが見えた。片桐はそれを撃とうとする猿人に射撃を浴びせた。 騎馬隊の突撃にすっかり戦意を失った猿人は我先に森に逃げ始めた。その中に騎馬隊は突入して手当たり次第に猿人たちに、彼らの持った槍の一撃を浴びせた。猿人たちは多くの死体を残して森に逃げ帰った。 「わたくしたち、たすかったのでしょうか・・・」 「少なくとも、バーベキューにはならなくてすみそうですね」 暗闇の中、1騎の兵士が片桐たちに近づいてきた。片桐は立ち上がっていつでも89式を撃てる状態にした。だが、月明かりがその兵士を照らしたときに、彼は銃を撃つことを忘れていた。 「あっ」 それは騎馬武者だった。日本式の甲冑に身を固め、兜をかぶり、穂先の鋭い槍を持っている。騎馬武者は下馬すると歩いて片桐に歩み寄った。 「貴殿もご婦人も、ご無事でなによりでした。あの猿人どもは最近は数こそ減ったものの大変どう猛だ。」 そう言いながら騎馬武者は兜を脱いだ。黒髪の長髪を束ね、その顔は日本人とも、クーアードともつかなかったが、22,3歳に見えた。そして日に焼けたその顔はどの時代劇俳優よりも整っていた。 「私は、富田竜之助才蔵。富田家の棟梁です。あなたがたは・・・、ガルマーニから旅立ったご一行ですな」 才蔵と名乗る若武者は礼儀正しく頭を下げた。 「自分は日本国陸上自衛隊、片桐三曹です」 「ほお・・・」 片桐の挨拶に才蔵は目を細めた。少なくとも嫌悪からではないことがわかった。 「貴殿は日本人ですか・・・。伝え聞くバテレンの様な格好をしておるが、名前も日本人の名だ」 才蔵はスビアに視線を映した。彼女も片桐に続いて名前を名乗った。 「おお!ガルマーニのバテレンを打ち破った聖女スビア様ですか・・・。草から話は聞いております。では、片桐殿はその聖女の・・、つまりよろしい間柄の異世界人ですな!」 才蔵は「草」とやらから、片桐とスビアがガルマーニから出発した時から報告を受けていたようだ。そして、この海岸で猿人に拉致されたことを知って軍勢を率いて救助に赴くところだったらしい。 「あなたがたの馬は私たちの村にいます。さあ、ご案内しましょう・・」 才蔵は身をひるがえすと颯爽と馬に飛び乗った。 才蔵の村は海岸にほど近い丘の上にあった。やはり外壁が周囲を囲んでいたのは他の都市や集落と同じであったが、その内部は少々違っていた。その光景は少なくともスビアには感動に似た驚きを持って受け入れられたようだ。 「ここは、なんてすばらしい村なのでしょう・・・」 緑豊かな丘の上の村は適度に距離を置いて家々が存在し、その家々も藁葺きの質素だがしっかりしたたたずまいを見せていた。女たちは畑仕事に精を出し、その周囲の外壁では男たちが槍を携え警戒している。 「我が祖先から受け継いだ村です。お気に召しましたか?」 馬から降りた才蔵がスビアの横に並んであちこち説明していた。片桐はこの村の様子を知っていた。少なくとも、映画の中では知っていた。働いている村人こ そ、この世界のクーアードとガンドールだが、村の運営や家々の作りは間違いなく、時代劇の世界だった。そして今、才蔵に続く多くの部下の格好もそうだっ た。 片桐とスビアを窮地から救ったゲベール隊は編み笠に似た帽子をかぶり、その指揮官は才蔵と似た甲冑を身につけている。騎馬隊の持っている細身の槍は時代劇で見る、独特の細い槍だった。歩兵も甲冑に長槍を持っている。戦国時代・・・・。片桐が持った第一印象だった。 「さあ、こちらへ!」 才蔵は村の中でもひときわ大きな屋敷に片桐たちを案内した。日本風の邸宅だが、片桐が懐かしいと思うそれではなく、やはり武家屋敷を思い起こさせる造りだった。しかし細部にはこの世界の建築様式が取り入れられ、はなはだ実用的に見えた。 片桐たちと才蔵は玄関で別れた。そこから先は、才蔵と同じく、クーアードっぽいがそうではない武士(片桐にはそうとしか表現できない)に案内されて、大き な板の間の広間に通された。粗末だが、座り心地のいい座布団を与えられ。2人は床に座った。案内役の武士は広間の一団高い部分のすぐそばに座った。 「いや、お待たせして申し訳ない」 さっきまでの甲冑姿ではなく、才蔵は見るも鮮やかな和服姿で再登場し、部屋の一段高い部分に座った。どうやらここが上座のようだ。 「改めて言いましょう。私は富田竜之助才蔵。こっちはいとこの弥太郎です」 才蔵のそばに控えた武士が頭を下げた。片桐は時代劇の世界に投げ込まれたようで呆然としていた。それを見て才蔵はにこやかに言った。 「我ら富田一族は400年前にこの世界に流れ着いたのです。この世界のことは片桐殿よりは少々は知っています」 才蔵は、富田一族のいきさつを語った。 彼の言う、天正2年。才蔵の祖先は信濃の国の豪族だった。信濃は当時、武田、織田、徳川の列強の最前線で、そこで暮らす豪族はどの勢力に荷担するかで生死 を決定しなければいけなかった。富田一族は、織田、徳川に荷担すべく出陣したが、留守役の家老の反乱で居城を失い途方に暮れていた。兵士と同行した少数の 女性は山道をさまよううちに、いつの間にかこの世界に到着していたそうだ。 運命を悟った富田一族は現地のクーアードやガンドールとともにこの地 を開拓し、猿人たちの脅威からその武力で自衛した。時は流れ、クーアードとの混血が進み今に至っているそうだ。才蔵の祖先が率いてきた武士たちで、直系で 祖先の血を引くのは棟梁の才蔵といとこの弥太郎だけだという。 「で、片桐殿は日本からいらしたのでしょう?日本の話をお聞かせください」 片桐はいささか躊躇したが、知っている限りの日本の歴史を教えた。才蔵は身を堅くして、弥太郎はうろたえながらその話を聞いた。 「で、では今の日本には武士はいないというのか?」 片桐の話を聞き終えた弥太郎がうろたえながら言った。片桐は無言で頷いた。弥太郎は納得行かない、という表情をしていたが才蔵がそれを目で制した。 「ははは!いいではないか!異世界で生まれ育った我々が文字通り、最後の武士という訳なのですか?」 才蔵は一通り笑うと片桐を見据えた。 「だが、武士は頑固者でも回顧主義でもない。この世界で生き抜き、すばらしい領地とすばらしい民を得ている。片桐殿の言う、文明開化もすばらしいが、この世界では我らの生き方も成功例であると認めて欲しい」 才蔵の意見に片桐は少しも異論はなかった。それを認めた才蔵は上座から立ち上がって片桐に歩み寄った。そしてその手を取った。 「我、終生の友を得たり!片桐殿、あなたの率直な人柄、猿人に立ち向かう勇敢な様、才蔵、恐れ入りました。どうか、我が友として今日のことを覚えていてください!」 「こ、光栄です・・・」 片桐がどうにか答えたときだった。ローマ時代のような衣服を身につけたクーアードが縁側の外に跪いた。 「申し上げます!猿人どもが開拓地に現れました!」 「よし!すぐに行く!弥太郎!種子島を持って先行しろ!」 才蔵の声に弥太郎はすぐに立ち上がった。 「ははっ!」 開拓地とは、丘を下って森を切り開いた畑だった。そこを猿人が襲ったのだ。才蔵たちが出発した後、そのことを聞いた片桐はスビアとともに現場に向かった。小高い丘から見下ろす開拓地には猿人たちが侵入していた。 「おまえたちの好きにはさせぬわ!」 猿人の中にいきなり才蔵が斬り込んでいくのが見えた。後に弥太郎や数名のクーアードが続いた。手にはゲベールがあるが、それを発射すると才蔵に続いて斬り込んだ。 「あああ、無謀です!」 スビアの意見に片桐も同感だった。しかし、急いで片桐が89式のマガジンをチェックする間に才蔵は次々と猿人を斬り倒した。彼の手には細い日本刀しか見えない。 才蔵の動きにまったく無駄はなかった。目の前の猿人を袈裟懸けに斬って、返す刀で横の猿人を斬りあげた。さっと後ろに飛び退いたかと思うと間合いを取って後ろの猿人を上段から斬り倒す。 「あの方の戦い・・・。美しいようにすら見えます・・・」 スビアがつぶやいた。確かに、片桐も反論はしなかった。才蔵はまるで舞を舞うかのように敵を切り伏せていた。ふと、才蔵は丘の上から戦況を見守る片桐とスビアに笑いかけたように見えた。 その隙をつかれたのか、才蔵の真後ろの猿人が才蔵の背中を蹴った。彼がいとも簡単にうつぶせに倒されるのを片桐は見逃さなかった。 「スビア、ここにいてください!」 そう叫ぶと片桐は89式を構えて丘をかけ下った。間に合えばいいが、弥太郎もその部下も自分の目の前の敵に手がいっぱいのようだ。片桐は89式のセレク ターをセミオートに切り替えて才蔵を蹴った猿人を撃った。生命の危機をだっした才蔵が片桐をうれしそうに見た。それに答える余裕もなく片桐は目に付いた猿 人を片っ端から撃ち倒した。10を越える死体を見て、猿人は森に逃げ帰った。 才蔵は刀を片手に立とうとしていた。片桐は黙って手を差し出した。 「片桐殿・・・。借りができましたな」 「友というのは貸し借りもなく動くものでしょう」 才蔵は片桐の言葉に満面の笑みを浮かべると彼の手を取った。片桐はこの才蔵という男が好きになりかけていた。現代の日本人がなくしかけている礼節や責任 感、人情を彼は持ち合わせている。自分よりも年下でしかも、異世界で生まれ育った彼に、日本人の原点を見たような気がしたのだ。 片桐とスビアのために才蔵の屋敷でささやかな祝宴が催された。才蔵に弥太郎、主立った家臣が集まって無礼講の祝宴だった。片桐が驚いたのは、まず乾杯で出された酒だった。 「これは・・・」 びっくりする片桐に才蔵がうれしそうな反応を示した。 「驚いたでしょう。酒はこっちに来られてからはありつけなかったでしょうからな」 間違いなくその味は日本酒だった。片桐の反応に満足した才蔵は、ぱんぱんと手を叩いた。ガンドールが素早い動きで皿を持ってきた。 「これが草のバートスです。」 バートスと呼ばれたアンバードは一礼して片桐とスビアの前に皿を置いた。その皿には真っ白な白米で作られたおにぎりがいくつか盛られている。思わず、片桐はそれをほおばった。間違いなく米の味だった。 「片桐殿、みんなにお国の話をしてもらえないでしょうか・・・」 才蔵に頼まれて片桐はちょっと迷った。迷う片桐をスビアが後押しした。 「そういえば、わたくしもよく聞いたことがありませんでした。いい機会だから是非聞かせてください。」 片桐は福岡の話をした。福岡タワーに福岡空港。都市高速を車で移動する人々。天神のビル街・・・。一同はただただ驚くばかりだった。 「すばらしい!」 一通り話し終わると一同から驚嘆の声が続々とあがった。才蔵も満面の笑みで片桐を見た。彼の戦いの時の表情と、今の表情は全然違っていた。今はやさしい棟梁として楽しむ部下を笑顔で見守っている。片桐はいつのまにか、その雰囲気に酔いしれ眠り込んでしまった。 2,3時間して片桐は別の間の布団で目を覚ました。板で作られた引き戸をろうそくが照らしている。 「いつの間にか寝てしまったらしいな・・・」 ひとりごちながら起きあがった。そこへ足音が聞こえて片桐のいる部屋の前で止まった。 「では、片桐殿にもよろしくお伝えください」 「はい・・・では」 才蔵とスビアだった。よく耳を澄ますと遠くでまだ盛り上がっている家臣たちの声が聞こえた。才蔵らしき足音が遠ざかると、板の引き戸が開いた。スビアが入ってきた。 「あら、目が覚めまして・・」 笑いながら片桐の枕元に腰掛ける。彼女もだいぶん飲んだようだ。顔が少し紅潮している。 「ええ、昔はもっと強かったんですがね・・・」 枕元に用意された水を飲み干しながら片桐が言った。スビアはそれを聞いてふふっと笑った。 「才蔵様が言っておりました。片桐殿は久しぶりの美酒でよく眠っておられるって。あの酒はこの村の自慢だそうですわ」 確かに、最高の酒だった。そして最高の宴席だった。スビアは上機嫌で言葉を続けた。 「才蔵様はすてきな方ですわ。あの戦いの見事さはヌーボルを探しても右に出る者はいないでしょう。それにあの優しいこと。村人を見ていればよくわかります。きっとあの方のご先祖様はさぞや立派な方だったに違いないでしょう」 それには片桐も同感だった。まったく異論を挟む余地はない。しかし、自分の恋人によその男を手放しにほめる言葉を聞かされるのはあまり心地のいいものではない。 「そうですな・・・」 ぶっきらぼうな片桐の返答にスビアはなおも言葉を続けた。 「あら、お友達のことというのにやけにぶっきらぼうではないですか?才蔵様なら片桐の話をすれば、そんなことはきっと言わないはずです」 酒の勢いもあって片桐は思わず起きあがってスビアに言った。 「才蔵は確かにいい友人です。しかし、あなたの口からそれを必要以上に聞くのはあまり好きではありませんな」 スビアは片桐の言葉を聞いて、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。どうやら片桐に負けずにだいぶ、酒が入っているようだ。 「片桐、もしかして嫉妬しているのですか?」 「嫉妬?」 今度は片桐は完全に布団から起きあがっていた。 「俺が才蔵殿に嫉妬?ばからしい!そういうあなたこそ、才蔵殿をいい男ってくらいに思ってるんじゃないですか?」 今度は片桐の言葉にスビアが立ち上がる番だった。 「わたくしが才蔵様に恋しているとでも?それこそばかばかしいことです!」 「彼はさぞや立派な家柄ですからね・・・。お似合いじゃないですか?」 売り言葉に買い言葉だった。片桐の言葉にスビアの頬は酒の影響以上に真っ赤になった。 「あなたがこんな失礼な人とは思いませんでした!あなたとは口も聞きたくないです!」 片桐は89式を持って防弾チョッキを着ると引き戸を開けて縁側に出た。自分のブーツを見つけてひもを結び始めた。 「ようやくお互いの意見が一致しましたね!」 ブーツを履いて片桐は捨てぜりふをはいて引き戸をぴしゃっと閉めた。 「片桐のバカ!!」 引き戸の向こうでスビアの怒鳴り声が聞こえた。それを無視して片桐は歩き出した。歩いて夜風に当たっているとだんだん冷静になっていく。 「あああ、なんてことしちまったんだ・・・」 そうは思っても今更戻ることはできない。片桐にも意地があった。一大決心をして異世界に残ったただ一つの理由はスビアだった。その当人からいくら、好人物とはいえ才蔵を下手ほめするせりふをあれだけ聞かされるのは男としてのプライドが許さなかった。 「片桐殿・・・」 声をかけられて片桐はうつむいていた頭を上げた。いつの間にか、屋敷の門の近くまで歩いてきていたのに初めて気がついた。そして声の主は門の柱に寄りかかる才蔵であることもわかった。 「才蔵殿」 「スビア様と派手に喧嘩されておったようですなぁ」 才蔵は高らかに笑った。片桐は返す言葉もなかった。才蔵は全部知っているのだ。 「私の態度が、あなたの感情を傷つけたのならお詫びします。」 才蔵の言葉に片桐は今度は恐縮した。しかし、こんな時の男の気持ちを打ち明ける相手は、高崎士長が向こうに帰ってしまった今では彼以外にいないような気がした。ことのいきさつを聞いた才蔵は大笑いした。 「ははは!400年たっても男女のいさかいの原因はあまり変わらぬものですな!」 あまり笑いすぎるのも片桐に失礼と思ったのか、才蔵は門を開けた。門の外にはいつの間に用意したのか、片桐の愛馬、セピアが待っていた。 「い や、笑いすぎて申し訳ない。だが、私の愛する女性が私に向かって、あなたのことを手放しにほめる話を延々としていたら、私もきっと同じ気持ちになったで しょうな・・・。さあ、こんな日は馬にでも乗って頭を冷やすのが一番です。ここから半里(約2キロ)のところに村があります。その村の酒場の酒は絶品です ぞ!」 片桐は才蔵の心の広さに感服するばかりだった。自分のことが原因で始まった客人の喧嘩をこんな形でフォローするとは。やはりそれは棟梁の資質がなせる技なのだろうか。愛馬にまたがりながら片桐が言った。 「せっかくですから才蔵殿もいっしょにどうです?」 「私は棟梁です。この村を勝手に離れるわけには参りません。スビア様には私から明日の朝にでも言っておきましょう。」 片桐はその言葉に甘えることにした、今更、スビアのいる部屋には少なくとも今夜は戻れそうにないし戻りたくなかった。 「ただし!」 才蔵は大声をあげた。 「私が同じ状況になったら、あなたには朝までつきあっていただきますから、そのつもりで」 そう言って才蔵は片桐の愛馬の尻を叩いた。賢いセピアはゆっくりと走り始めた。才蔵は笑顔で片桐を見送った。もはやあの笑顔にはかなわいな。そう思わずに はいられないほどの聡明な笑顔だった。片桐は、この世界で得た初めての「親友」の気遣いに感謝しながら、隣村へ出発した。 才蔵の教えてくれた村はガンドールの村だった。村の門はすでに開かれていて、まるで片桐の到着を待ちかまえているようだった。その理由は片桐が村に入って馬をつなげたときにわかった。 「片桐様・・・。」 バートスだった。いつの間にか村の入り口に立っていた。バートスは好奇心いっぱいの笑顔で片桐を迎えた。 「スビア様と大喧嘩して居場所がなくなってここに来そうですねぇ。才蔵様のご命令で門を開けておきました。スビア様はかんかんですよ。では俺は才蔵様に無事、あなたがここに到着されたことを報告に帰ります。」 そう言ってバートスは村の外の暗闇に消えた。片桐は村を見回した。奥に明かりがともった家が見えた。あれがどうやら、才蔵おすすめの酒場のようだった。 「らっしゃい」 ドアを開けるとクーアードのマスターがカウンターに立っていた。客はみんな地元のガンドールのようだった。片桐はカウンターの空いた席に座った。 「今のあんたにはこれがいい」 マスターは片桐の前にショットグラスのようなコップに満たされた液体を出した。 「バートスから何か聞いてるのかい?」 片桐の問いにマスターは笑った。どの世界でもこの手の商売をしていると人間の心理がある程度読めるようになるらしい。 「なにも聞いちゃいません!あんたの顔でわかる。おおかた女と喧嘩したんでしょう?そんなときはこいつが一番ですわ」 片桐はそのグラスの中身を一気に飲み干した。ウイスキーに似た味だった。確かに、イヤなことを紛らわすときにはうってつけの酒だ。片桐は続けざまに3杯それを飲んだ。 「異世界の人、なかなかやるな!」 「いけいけ!」 「女のことなんか忘れちまえ!」 常連客のガンドールと意気投合して片桐は明け方近くまで飲み続けた。 翌 朝、片桐は酒場のソファーの上で目を覚ました。痛む頭で周りを見回すと、常連のガンドールも、マスターも眠りこけている。密閉された室内は酒臭いことこの 上ない。とりあえず、ドアを開けて外に出た。外ではガンドールたちがうろうろしていた。子供たちが走り回るのも見えた。空を見ると太陽は頭上近くまで昇っ ている。かなり寝坊したということがわかった。 片桐は店の中に戻ると、近くの樽から水をくんで飲んだ。飲み過ぎで脱水症状気味だった体に水分が行き渡り頭がしゃっきとするのがわかった。片桐はカウンターで眠っているマスターを起こした。 「ん???なんです」 「勘定をしたい」 そう言って片桐は防弾チョッキのポケットからスビアと半分ずつ分けた金を出した。それを見てマスターは飛び上がった。 「こんなにいただけません!40サマライで結構です!」 マスターは片桐が出した金色の貨幣を受け取ると銀色の貨幣を6枚返した。よく見てみると片桐が持っている貨幣は3種類の色があった。金銀銅。オリンピック のメダルと同じだった。100サマライは金色1枚。銀色は10サマライ。銅色は1サマライだった。片桐はお釣りを受け取るとドアを開けた。 「異世界の方!」 マスターが声をかけた。 「愚痴はここで言うだけ。惚れた女に逃げられちゃ元も子もないですよ!」 笑顔でマスターに手を挙げると片桐は店を出た。彼に言われるまでもなかった。スビアのところへ帰ろう。彼女も酔いがさめているはずだ。冷静に話せば仲直り できる。そう確信していた。 片桐は門のところまで歩くと馬の準備を始めた。今は一刻も早く才蔵の村に戻ることだけを考えていた。そこへ、村の外から1人 のガンドールが息を切らせながら走ってくるのが見えた。 「たいへんだ!たいへんだ!」 そのガンドールは叫びながら村の門をくぐった。騒ぎを聞きつけた村人がぞくぞくと集まってきた。そのガンドールは村人に差し出された水を飲み干すとようやく話し始めた。 「才蔵様の村が猿人に襲われた!村人も家畜も捕まって森に連れていかれちまった!」 この報告に村人がざわめいた。 「まさか、才蔵様の村が・・・」 「最近奴らも知恵を付けてきていたから・・・」 しかし、誰よりもその報告に衝撃を受けたのは片桐だった。彼はようやく呼吸の整ったガンドールにつかみかからんばかりの勢いで質問した。 「才蔵殿は、スビアはどうなったんだ?」 ガンドールは片桐の勢いに咳をこらえながら言った。 「俺が見たのは空っぽの家といくつかの猿人の死体だけだ!猿人は捕まえた捕虜は森に連れ帰って、食べるか、奴隷にするかのどっちかだよ!」 それを聞き終わらないうちに片桐は馬に飛び乗り、才蔵の村目指してダッシュで馬を走らせていた。そして馬上で自分を責めていた。夕べあんなことで腹を立て ないでいれば、スビアや才蔵を守れたかもしれない。そう思うと自分に対して腹が立って仕方がなかった。その怒りをぶつけるように片桐は馬を走らせた。 村は見事に奇襲されたようだった。美しかった家々は燃え、あちこちに猿人の死体が転がっている。片桐はまっすぐ才蔵の屋敷に向かうと、スビアの部屋の引き戸を開けた。中は無人だった。夕べ片桐が寝ていた布団と、傍らには彼女のゲベールがあるだけだった。 「くそっ」 屋敷中を探し回ったが人っ子一人いないようだ。最後に見回った大広間で、やっと片桐は人を見つけた。 「片桐殿ではないか・・・」 弥太郎だった。足を斬られて動けいないようだった。片桐はチョッキの救急医療キットを出して弥太郎の手当を始めた。 「明け方、急に猿人が襲ってきたのです。今までにやつらが夜襲をするなんてなかったので我々は無防備でした。たちまち、村人も才蔵様も捕まり、スビア様も・・・。私は奴らに足をやられて気を失ってしまいました。それでここに残されたわけです」 「で、やつらはみんなをどこに?」 片桐の質問に弥太郎は苦悶の表情を浮かべながら答えた。無理もない。止血のために片桐が彼の股を強く縛っていたのだ。 「奴らは今までの洞窟では捕虜をやしないきれないようで、さらに森の奥に連れていくと言っていました・・・、片桐殿!どうか、才蔵様を助けてください!」 「もちろんです。彼は俺の大事な友人です!」 その言葉に弥太郎は安堵の表情を浮かべた。 「それから、スビア様は連れ去られる寸前まであなたのことを心配しておられました。どうか!ご無事で!」 弥太郎の手当を済ませると片桐は愛馬に飛び乗った。一気に森を抜けて海岸まで出ると、再び森に入った。手綱を操りながら89式をチェックした。 「絶対!絶対!助ける!!」 自分の決心を声に出して確認するように片桐はさらに愛馬のスピードを速めた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8952.html
前ページ次ページThe Legendary Dark Zero かつて、魔界では巨大な戦乱が勃発した。 弱肉強食の世界で生きる悪魔達にとっては力こそが全て。力ある者こそが全てを支配する資格を持つ。 己より力無き者達を跪かせ従わせる闇の王達は、乱世に満ちた闇の世界そのものすら統べようとした。 力ある悪魔達は幾多の勢力に分かれて互いに覇権を争った。より強い力を持つ勢力は他の勢力を打ち破り、己の下へと加え、さらに力を伸ばしていく。 全てを支配する野心を胸に、幾千年にも渡って続けられた熾烈な争乱。 その中心にあったのが、〝羅王〟と呼ばれし魔の支配者が率いる軍勢。 幾万をも超える圧倒的な手勢を放ち、勢力の長でありながら自ら戦線に立ち、全てを破壊し尽す修羅の王。 ある意味、最も悪魔らしい蛮勇さに満ちたその王は、力と力をぶつけ合い、容赦なく敵を討ち滅ぼさんとす。 戦いに策など不要。いかなる小細工を仕掛けようが圧倒的な力を持って策もろとも敵を捻じ伏せるのみ。 それでも〝羅王〟は惜しくも闇の世界を統べることはできなかった。 手勢を失い、敗北した修羅の王は雪辱を果たさんと長きに渡って力を蓄え続け、新たなる手勢を集め続けた。 1500年以上も昔、かつて肩を並べた〝魔帝〟の勢力が人間界を攻め入るのに失敗した後も力が完全になるまでひたすら静かに待ち続けたのだ。 無様に敗北した〝魔帝〟に代わり、人間界を我が物とするために。 そこで思わぬ事態が起きた。 生意気にも悪魔を従えていたという人間の魔術師。その魔術師の手によって〝羅王〟は強制的に人間界へと呼び出された。 力なき者に従う道理などない。〝羅王〟は己を従えようとするその魔術師を始末しようとした。 だが、ここでも〝羅王〟にとっては予想打にしない出来事があった。 かつて〝魔帝〟の勢力に属し、何を血迷ったか人間界侵攻を阻止した逆賊、〝魔剣士〟が挑んできたのだ。 互いに力はかつての戦乱の時より衰えていた。だが、〝魔剣士〟は剣の力を持って〝羅王〟の力を切り離し、魔界へと追い返した。 力を失った〝羅王〟はさらに長き時をかけて新たな力を蓄えることを強いられた。 ところが、今度は〝羅王〟にとって嬉しい誤算が起きた。 閉ざされた空間で新たに見出した異世界。人間界とよく似ていたが、その環境は人間界とは明らかに異なる。 だが、その異世界から流れ込んでくる膨大な力の奔流。それは〝羅王〟の糧となり、失ったはずの力が僅かな時で蘇りつつあった。 まだ他の勢力が手を出していないその世界を制するため、〝羅王〟は不本意ではあったが策によって力なき人間達を利用した。 全軍を一気に侵攻させる出口を作るため、争いの火種を撒くことで魔界との境の安定を乱したのだ。 そして、全ての準備は整った。 後は、異世界の自然現象により魔界との境界が極限まで薄らぐのを待つのみ。 修羅の王が率いる幾万もの血に飢えた兵達と共に、今か今かと待ち続ける。 その時こそ、〝羅王〟自ら壁を突き破り全軍を侵攻させる。脆弱な人間共を消し去るなど容易い。 暗黒の闇が太陽を喰らう時こそ、〝羅王〟は現世へと降臨するのだ。 スパーダが地獄門を通り、魔界へと向かってから、丸一日が過ぎようとしている。 魔界から流れ込んでくる瘴気から出来るだけ遠ざかるためにルイズ達は広場の入り口辺りでタバサのシルフィードと共に待機している。 その間、地獄門に開けられた次元の裂け目からは時折下級の悪魔が這い出てきたのでスパーダに留守を任されたネヴァンが容赦なく己の稲妻で仕留めていたのだ。 ルイズも自分の〝バースト(炸裂)〟の練習のため一緒になって悪魔達に爆発をぶつけ続けていたのだが、途中でキュルケによって止められてしまった。 「これから戦争が起きるかもしれないんだから、力を温存しておきなさいよ」と諌められて。 レコン・キスタ、そして魔界の侵攻がもうすぐ始まるというのに消耗してしまっては今後の戦いに支障が出てしまう。 キュルケもタバサもスパーダが戻ってくるまでは無駄に魔法を使って精神力を消耗させるわけにはいかないため、ただひたすら大人しく待ち続けるしかなかった。 ルイズとしては、「お前の力など取るに足らない」と言わんばかりに力を見せつけてくるネヴァンに身を震わせる悔しさを感じていたのだ。 そこにタバサが「挑発に乗ったら負け」と、一言を添えたためにようやくルイズも引き下がっていったのである。 以前はその挑発に乗ってしまったがために半殺しにされたことを思い出したのだ。腹立たしいが、これ以上ネヴァンの挑発に乗っても良いことは何もない。 ルイズはスパーダが戻ってくるまでは我慢して、キュルケ達と一緒にじっと待つことに決めた。ネヴァンのことも無視することにする。 地獄門を通り、魔界へと向かったスパーダのことが心配であったが、彼は伝説の魔剣士と呼ばれた屈強な悪魔だ。 並大抵の悪魔なんかより故郷を渡り歩くなど容易いものだろう。 たとえ魔界の悪魔達が襲い掛かってきても、スパーダにとっては敵ではないはずだ。 必ず自分達の元へ戻ってきてくれるとルイズは自然に信じていた。故に安心して、スパーダが魔界から帰還するのを待ち続けていたのだが……。 (まだ帰ってこないわ……何やってるのよ、もう……) 膝を抱えながら座り込み、じっと地獄門の穴を睨み続けていたルイズは未だスパーダが戻ってこないためにやきもきしていた。 魔界がどれだけの広さかは分からないが、スパーダにとっては庭みたいなもののはずだ。自分の故郷で迷うなんてことはまずあり得ない。 あの次元の裂け目を覗き込んで様子を窺ってみたいと考えていたが、魔界から流れ込んでくる瘴気をまともに浴びればただでは済まないだろうからそれはやめておいた。 そうしてルイズがスパーダのことを心配し続けていたその時。 「何かしら?」 ふと空を見上げると、遠目に無数の影がゆっくりと飛んでくるのが窺えた。 立ち上がったルイズは額に手を当て、その影が何なのかを確かめるべくじっと凝視する。 影はぐんぐん近づいてくるにつれて大きくなり形もはっきりと判別できるようになり、やがてそれらが七隻ほどの艦隊であると認識することができた。 それもただの船舶ではない。どれもトリステインの紋章を付けた、全長50メイル以上にもなる軍艦だ。 「あれって、トリステインの艦隊でしょ? メルカトール号とかいうのも見えるわね」 退屈凌ぎに化粧をしていたキュルケが差したのは、先頭を飛んでいる他のより一回りは大きい軍艦である。 その艦隊はルイズ達がいる広場の真上、およそ1000メイルの高さを静かに航行していく。 「そういえば今日は、トリステインの艦隊がアルビオンの政府からの親善艦隊を出迎えるって聞いてるけど……」 頭上を通り過ぎていく艦隊を見送りながら、ルイズは顔を顰め憮然としていた。 魔界の悪魔達が裏で手を引いているとはいえ、王殺しという恥知らずな所業を行った連中を賓客として歓迎しなければならないとは……たまったものではない。 いくら公的には不可侵条約を結んでいるとしても狡猾な悪魔達と手を組んでいる以上、汚い手段を用いて条約を破り、戦争を仕掛けてくるに違いないのだ。 「親善訪問ねぇ。まるっきり何かを仕掛けてくる気満々ね」 「ねぇ、キュルケ。あんた達の国とはとりあえず軍事同盟を結んでるんだから、レコン・キスタが宣戦布告をしてきたら当然参戦してくれるんでしょう?」 ルイズからの問いに対し、キュルケは何とも言えない微妙な表情を浮かべて唸りだす。 「うぅ~ん……まあ、するにはするでしょうけど。正直言って、ゲルマニアも悪魔との戦いなんてまともに経験したことないものね。 レコン・キスタだけならまだ遅れを取ることはなかったでしょうけど、悪魔の軍勢も相手をするとなると厳しいでしょうね。やっぱり、ダーリンの力も借りないと」 ハルケギニアにとっては未知の敵でしかない悪魔と対抗するには、その悪魔達のことを熟知している伝説の魔剣士、スパーダの力が必要なのだ。 人間達の力だけではとてもではないが、勝ち目が無いことをキュルケは察していたのだろう。 「いつになったら戻ってくるのよ……自分の故郷なんだから、パッパと行ってさっさと戻ってきても良いのに……」 地獄門の次元の裂け目を睨みながらルイズは焦燥を募らせる。 「明日の日食までにはまだ時間があるんだし、焦らずに待ちましょうよ。その間に何か起きても、あたし達でできることをやればいい訳だし。 ダーリンが戻ってきたら、彼の力になれるようにがんばらないとね」 「当然じゃない。あたしはスパーダのパートナーなんだから」 「……ふふふっ」 「な、何よ」 突然キュルケがルイズの顔を横目で眺めながら楽しげに笑い出したために戸惑った。 「まさか、いがみ合ってたあたし達がこれから肩を並べて戦うことになるなんてね。ご先祖様が聞いたら、何て言うのかしら」 「こ、今回だけなんだからね! 全部終わったら、またあたしとあんたは敵同士なんだから!」 恥ずかしそうに顔を僅かに紅潮させながら顰めるルイズ。 本来ならばヴァリエール家先祖代々の仇敵であるツェルプストーと肩を並べて戦うなんてご先祖や実家の家族が聞いたら嘆いてしまうことだろうが、 今はハルケギニアそのものが危機に立たされている時なのだ。この世界を生きる者達の力を団結させなければ悪魔達には決して勝てない。 「はいはい。それまでの間はお互い生き残れるようにがんばりましょ。ヴァリエール」 こんな時でも本当に素直になれないルイズを、キュルケは素直に己の気持ちを露にしながら優しく肩を叩いていた。 ルイズはぶすっと剥れたまま、キュルケから顔を背けていた。未だその顔は気恥ずかしさで真っ赤に染まったままだった。 「タバサも絶対に死んだりしちゃ駄目よ?」 そんな二人の横で、黙々と本を読み続けているタバサの頭を撫でつつ真顔でキュルケは言う。 当のタバサもその言葉に、分かっていると言いたげにはっきりと頷いていた。 隣では、いつの間にかタバサの姿を写し取っていたドッペルゲンガーが全く同じ姿勢で、全く同じ動作を行っている。 自分の母親を救うという目的があるタバサにとってはこれから起きるであろうレコン・キスタと悪魔達の侵攻は大量のレッドオーブを集めるまたとない好機なのである。 それに悪魔達との戦いによって己の力をさらに磨き上げることができるため、まさに一石二鳥だ。 ――ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! 辺りの空気を震わせてしまうほどのその轟音は、ラ・ロシェールの方角から届いているものだった。 これから正午になろうという昼時。故郷のタルブで休暇を過ごしているシエスタは弟達と共に草原に出てきて、轟音が聞こえてきたラ・ロシェールの方角を眺めていた。 見晴らしの良いこのタルブの草原からだと、すぐ近くのラ・ロシェールの上空に浮かんでいる何隻もの軍艦を目にすることができる。 つい今しがた雲の中から静かに降下し十数隻もの軍艦を引き連れて現れた、一際大きな軍艦が礼砲を放ったのである。 「お姉ちゃん。何の音なの?」 「あれは礼砲といって、アルビオンからのお客様をああして迎えているのよ」 幼い弟や妹達が少々不安そうにしているが、シエスタは姉らしく振る舞いながら肩を抱いて宥めていた。 つい先刻には何隻ものトリステインの軍艦がこのタルブの上空を通り過ぎていったのをシエスタは目にしている。 アンリエッタ姫殿下の婚儀を祝うアルビオンからの親善訪問を歓迎するためにラ・ロシェールに停泊しているのだろうと察することができた。 アルビオンとは不可侵条約を結んだという触れはシエスタはもちろん、この村の人達もタルブの領主を通して聞き及んでいる。 故に戦争が起きることはないだろうと誰もが思っていた。 (……何だろう。この嫌な感じ……) アルビオンの艦隊が姿を現してからというものの、シエスタは言い知れぬ不安と胸騒ぎが湧き上がっていた。 何か良くないことがこれから起ころうとしている。それが何なのかは分からない。 だが、悪魔の血と本能が目覚めていたシエスタは得体の知れない不穏な雰囲気をその身で感じ取っていたのだ。 ――ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! 今度はトリステイン側の艦隊から礼砲が放たれている。 ただの空砲にすぎないとはいえ、ああして軍艦同士が大砲を鳴らしているのを眺めているとまるで本当に戦争をしているのではと思えてしまう。 のどかな農村であるタルブにとっては、そもそも軍艦が近郊を飛んでいるという光景自体が異様なのだ。 礼砲が鳴る度に幼い弟や妹達の不安も大きくなっているのが分かる。 「さあ、家へ戻りましょう」 弟妹達をこれ以上心配させまいとシエスタは己の不安を隠しつつ一行を連れて自分達の生家へと戻ろうと村の中へ入っていく。 他の村人達も礼砲が鳴り響いたことに驚いている様子で、仕事を中断し立ち止まって空を見上げていた。 「お姉ちゃん、見て!」 「お船が……」 村の広場までやってきた所で弟妹達が空を振り返って驚きだし、声を上げていた。 ――ボウゥンッ……!! 礼砲とは全く違う爆発音が轟いたのを耳にし、シエスタも思わず振り返る。 そこには思いもしなかった光景が視界に飛び込み、さらにシエスタの目は愕然と大きく見開かれていた。 トリステインの艦隊が出迎えていた十数隻ものアルビオンの軍艦の中の一隻が激しく炎を吹き上げながら墜落していくではないか。 沈むように落ちていった軍艦は地上に激突する前に空中で更に爆発を起こし、四散した。残骸が燃え盛る炎と共に地上へと降り注いでいく。 その光景を見届けた村人達は騒然とし始め、手をつけていた仕事をやめてみんな家の中へと逃げるように戻っていった。 「何が起きているの? お姉ちゃん」 弟妹達がシエスタにしがみついてきたが、当の本人は顔を真っ青にしたまま空を見上げ続けていた。 (来る――。……あの、悪魔達が) あいつらは、もうすぐ近くにいる。 心臓が激しく高鳴っている。 呼吸が、いつもより速くなり、息苦しくなる。 シエスタの身に宿る悪魔の血と本能が、血に飢えた魔の住人達の気配を、殺気を感じ取っていた。 がくがくと足を、手を、肩を、唇を震わせている姉の姿に弟妹達はさらに不安になる。 「シエスタ。何をやっているんだ」 恐怖と緊張で体を硬直させ、動けないでいるシエスタとその弟妹達の元に、彼女達の父親が駆け寄ってくる。 他の村人が家の中に避難しているのに自分の子供達だけがまだ外をうろついているのを見て、連れ戻しに来たのだ。 「お前達も、外は危ないから家の中に入りなさい。シエスタ、お前も早く……」 父は幼い子供達を促しながら、長女であるシエスタにも声をかけようとしたが……。 ――ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ! 三度響き渡る激しい轟音。そこから一行の目に映っていたのは、恐るべき光景であった。 アルビオンの軍艦がトリステインの艦隊に向けて次々と砲撃を始めたのである。トリステインの艦隊はなすがままに砲弾を受け続け、船体から炎が吹き上がっていた。 中でも雲と見まごうばかりの一際巨大なアルビオンの軍艦から放たれる砲撃は容赦なくトリステインの軍艦を襲っていた。 ほとんど一方的な砲撃は続き、数分と経たぬ内にトリステインの軍艦が次々と撃沈されていく。 あまりにも信じられない光景を見届けていたシエスタ達は、その場から動くことができずに硬直していた。 唖然とする父は我が目を疑い、未だ地上へと落ちていくトリステインの軍艦を凝視している。 「馬鹿な。アルビオンとは不可侵条約を結んでいたはずじゃないか」 だが実際に目の前ではアルビオンの軍艦が砲撃を加え、トリステインの軍艦を撃沈していったのだ。 それにいつの間にか軍艦の周囲を飛び交っている無数の小さな影……あれはドラゴンだろうか? 遠目すぎてよく分からない。 その影がまるで鳥が集団で獲物に襲い掛かるかのように残ったトリステインの軍艦を取り囲んでいく。 「はやく……」 突然、がくんとその場で崩れ落ち蹲りだしたシエスタが己の肩を抱きながらがくがくと震えだした。 全身からどっと冷や汗を溢れ出させ、苦しそうに喘ぐような荒い息を漏らしている。 「みんなを、避難させなきゃ……」 戦慄に震えた声で、シエスタは喉の奥から声を絞り出す。 「シエスタ? どうしたんだ?」 「お姉ちゃん? 大丈夫?」 「しっかりして」 「森に……南の、森に、みんなを……」 家族達が心配する中、途切れ途切れで言葉を紡ぎだし続けるシエスタ。 その森には、先日スパーダ達を案内した〝聖碑〟の遺跡がある。 「はやく、しないと……悪魔が……」 シエスタの身に流れる悪魔の血と本能は、曽祖父にして中級悪魔であるブラッドから引き継がれたもの。 人間の血も共に宿しているシエスタにとっては、そのおぞましい感覚はあまりにも刺激が強すぎるのであった。 そうしてシエスタが恐怖と戦慄に震え、家族達が困惑する中、トリステインの艦隊を全滅させたアルビオンの艦隊はラ・ロシェールからこのタルブへと近づいてくる。 空を飛び交う、無数の異形の大群と共に。 ものの数分で、アルビオン艦隊は国賓歓迎のために出向いていたトリステインの艦隊を全滅させていた。 レコン・キスタの更なる侵略の筋書きはこうだ。 本来、数日後に執り行われるはずであったトリステイン王女アンリエッタとゲルマニア皇帝アルブレヒト三世の結婚式の親善訪問と称し、だまし討ちを仕掛ける。 その手段は至って単純で、そしてあまりにも卑劣なものである。 親善艦隊を出迎えてきたトリステインからの礼砲と同時に、自軍艦隊の一隻であるホバート号に火を点けて放棄することで撃沈したように見せかける。 アルビオン艦隊はそれをトリステイン艦隊が砲撃を加えたと見なし、自衛のためと称して応戦を名目にした攻撃を行う。 そうすることでアルビオンはトリステインに対して合法的に宣戦布告ができ、不可侵条約を信じて戦闘の準備が整っていないトリステイン艦隊をなぶり殺しにできるというわけだ。 その奇襲作戦を指揮していたのはレキシントン号の艦長、サー・ヘンリー・ボーウッドであった。 彼としてはこんな汚い手段で他国を蹂躙するなど反吐が出るものであったが、所詮軍人でしかない自分にはその策を実行するしかない。 (あの悪魔め……) 心の中で、ボーウッドは自分にこの破廉恥な策を命じたクロムウェルに対して毒づいていた。 旗艦である『ロイヤル・ソヴリン号』――今では『レキシントン号』の上では、「アルビオン万歳!」「神聖皇帝クロムウェル万歳!」という兵士達の唱和があちこちで上がっている。 その中には神聖アルビオン共和国皇帝、オリバー・クロムウェルの信任厚いことで知られる艦隊司令長官にして貴族議会の議員、サー・ジョンストンの姿もあった。 (戦闘行動中に万歳とは……) 後甲板で、つい今しがた墜落していったトリステインの艦隊を悼むように見つめていたボーウッドは肩越しに冷たい視線を送りながら眉をひそめた。 かつて空軍が王立であった頃はあのようなことをする輩などいなかったというのに。 ――ケエエエッ……! ――ブウウウゥゥンッ……。 風に乗って届いてきた不快な奇声や羽音を耳にしたボーウッドは、忌々しそうに左舷から眺めることができる空域を睨んでいた。 一面に広がる大空の中を、拠点制圧のために飛び上がった竜騎士達のドラゴンと共に無数の影が飛び交っている。 奇襲作戦の開始から数分と経たぬうちにどこからともなく姿を現した、異形の怪物達。 赤い体に鳥のように羽ばたく奴らはトリステインの艦隊に容赦なく襲い掛かり、死肉を喰らうハゲタカのごとく群がっていったのだ。 今も奴らは先ほど爆沈させたメルカトール号から吹き飛ばされてきた艦長らしき者の体に群がり、空中でその身を啄ばんでいた。 青い体をしている巨大なハエみたいな怪物に至っては、空中に投げ出された兵達の亡骸を四肢や頭などをわざわざ引き千切ってからムシャムシャと喰らっていく。 あまりに凄惨な光景に、ボーウッドは思わず目を背けたくなる。同じような光景が空域のあちこちで見られた。 ……こんな悪魔のような奴らと、これからトリステインに攻撃を仕掛けねばならぬとは。ボーウッドの心中はいつまでも複雑な気分であった。 「艦長。実に見事な指揮であったな。これで私は閣下より預かった兵を無事、トリステインに下ろすことができる」 (クロムウェルの腰ぎんちゃくめ) 近づいてきたジョンストンが心から満足した様子で話しかけてきたが、ボーウッドは心の中で名ばかりの司令官に過ぎない男を吐き捨てていた。 つい先ほどまでは兵の士気が下がる、などと抜かして軍艦を近づけさせることにさえ怯えていた男が一転して有頂天になっている。 この男は空を飛び交う異形の怪物達を何食わぬ顔で見ているだけであった。それがまるで自分達のために動いてくれるガーゴイルなのだと思い込んでいるように。 「私は与えられた命令を実行したまでだ」 冷たく答えたボーウッドはこれから制圧の拠点とするタルブの草原へと降下する命令を冷徹にかつ迅速に命じていく。 礼砲のものではない爆音が轟いた時、ルイズ達はそれが異変が起きた証明であると受け取っていた。 すぐにタバサのシルフィードに乗り込み、空に舞い上がるとそこには恐ろしい光景が広がっていたのだ。 アルビオンの親善艦隊がトリステインの艦隊に砲撃を加え、次々と撃沈していったのである。それはあまりにも一方的すぎる攻撃で、トリステイン側はなす術なく全滅させられてしまった。 ルイズ達はシルフィードの上で虐殺にも等しいその光景をただ見ているだけしかなかった。 「やっぱり、案の定というわけね」 キュルケが呆れたように肩を竦める。予想はしていたとはいえ、こうも堂々とやられると脱帽してしまう。 「どうしてよ! 日食は明日だっていうのに、話が違うじゃない!」 トリステイン艦隊を全滅させたアルビオン艦隊を睨んでルイズは憤慨した。 奴らは裏で糸を引いている悪魔達と同調してトリステインに戦争を仕掛けてこようとしていたはずだった。 それなのに現実は見ての通り、レコン・キスタは全く違うタイミングで攻撃してきたのだ。おまけに見れば、悪魔達の姿もある。 スパーダの日食に攻めてくるという読みは外れた。このままではトリステインは奴らに蹂躙されてしまう。 「違う。あれは主力じゃない」 タバサは空を飛び交う悪魔達を観察して呟いた。 確かに悪魔達の姿はあれどもその数は100にも満たない。竜騎士達より数が多いとはいえ、悪魔の軍勢が攻めてくるにしてはあまりにも少なすぎる。 おまけにどれもが格も高くない下級悪魔達ばかりである。 恐らく、裏で暗躍している悪魔がレコン・キスタに貸し与えている軍勢の一部なのだろう。 「でも、ダーリンが戻ってくる前に仕掛けてくるのはさすがに予想外だったわね……」 「どうするのよ!? このままあいつらを黙って見過ごすって言うの!?」 「落ち着きなさいよ。あたし達じゃあの艦隊をまともに相手になんかできないわ」 「じゃあ、どうするって言うのよ」 困惑するルイズに、キュルケはくいっ顎でタルブの草原を指し示す。 見ればタルブの村から次々と村人達が逃げ出し、地獄門がある南の森の方へ向かおうとしているのが窺えた。 タルブの草原にアルビオンの艦隊が降下してくると、次々に地面に錨を下ろしていく。どうやらここを侵攻の拠点とするようだ。 その艦隊から次々と竜騎士や悪魔達がタルブの村目掛けて飛来していく。本隊上陸の準備としてつゆ払いをするらしい。実に手際の良いことである。 村にはまだ逃げ延びていない者達がいるのだ。このままでは戦う力のない農民でしかない彼らが奴らの餌食になってしまう。 そして、その中には学院のメイドであるシエスタの存在もある……。 「今、あたし達にできるのは彼らが無事に森まで逃げられるのを手伝うことよ」 キュルケが杖を構え、タバサはシルフィードに村の上空へと近づくように命じる。 (あたし達がやること……) ルイズは草原を必死に逃げ惑うタルブの村人達を見て、己の胸の内を徐々に熱くさせていった。 魔法を使えることが貴族ではない。敵に後を見せず立ち向かう者こそが、真の貴族である。それがルイズの貴族としてのポリシーだ。 だが、ただ戦うだけならば平民の戦士にだってできること。では、貴族の使命とは何か? 既に、その答えはルイズには見えていた。 それは、民をこの手で守りぬくこと。それが貴族の果たすべき使命なのだ。 公爵である実家の父だって、領民の安全を守ることを何より優先していたのだから。 スパーダもフォルトゥナの領主であった時はもちろん、今だって人間達を守るために戦っていたのだ。 きっとアンリエッタ王女も、民の危機を知れば彼らを救い、守るために行動するだろう。 ならば、自分だって……。 杖を引き抜いたルイズは迫り来るレコン・キスタと悪魔達に向かって吠える。 「かかってきなさいよ! レコン・キスタ! あんた達にこれ以上、好き勝手なんかさせないんだからね!!」 その叫びと同時に、竜騎士達と共に飛来してきた血に飢えた悪魔達がシルフィードに向けて一斉に突っ込んできた。 竜に乗り、空を飛び交う三人のメイジ達は、襲い来る敵を迎え撃たんと杖を振るわんとする。 あまりにも張り切りすぎて興奮していた彼女は、指に嵌めている水のルビーが光っていることに気づいていなかった。 王都トリスタニア、トリステインの王宮に国賓歓迎のための艦隊が全滅したという報せが届いたのはすぐのことである。 さらに同時にアルビオンより宣戦布告が届けられたことにより、王宮は騒然となり混乱は熾烈を極めていた。 それまでゲルマニア皇帝との結婚式の準備で忙しかったのが急変し、即座に大臣や将軍達が集められて突然のアルビオンからの宣戦布告に対する会議が開かれた。 会議室には宰相マザリーニ枢機卿、そして上座にはこれからゲルマニアへ行こうとしていた王女アンリエッタとその母である太后マリアンヌの姿もあった。 アンリエッタは本縫いが縫い終わった純白のウェディングドレスに身を包んでいるのだが、この状況でその姿を気に留めるものなど誰もいない。 「まずはアルビオンへ事の次第を問い合わせるべきだ!」 「いや、ゲルマニアより軍を派遣するよう要請すべきだ! 何のために彼らと同盟を結んだのだ!」 「そのように事を荒立てていかん。偶然の事故が生んだ誤解なのですぞ? 今ならまだ誤解を解くことができるかもしれん」 「ええい! 残りの艦を全てかき集めるのだ! 数でかかればアルビオンの艦隊と言えど何とかなる!」 だが、この卓上で続けられているのは会議とは思えぬ不毛な議論による怒号、それによりもたらされる紛糾のみであった。 有力貴族達の意見は一向にまとまる気配を見せない。 アンリエッタは貴族達のあまりに見苦しい姿に呆然としていた。マザリーニもマリアンヌも、卓上で繰り広げられる彼らの不毛な言い争いに頭を痛めるばかり。 とは言っても、彼女達ですら結論を出しかねている状況であった。 マザリーニはできることなら外交による解決を望んでいた。どんなに努力をしようといずれこうなると分かってはいたものの、負ける戦などしたくはないのである。 マリアンヌは心の中でこの現状を憂いていた。 彼らがこうも混乱を極めているのは、彼らを導く指導者がいないからに他ならない。 だが、自分は女王などではない。亡き夫である先王を偲んで王妃としての立場を貫き、即位することはなかった。 故に紛糾する彼らを正す資格も力もない。夫や先々の王であった父・フィリップ三世ならばすぐにでもこの混乱を収拾できたであろう。 マリアンヌは今になって後悔する。国は指導者なくしては決して機能しない。その指導者を長きに渡って失っていたがためにこのような事態に陥ったことに。 そして、何もかもが遅すぎたことに。 「やはりゲルマニアに軍の派遣を要請しましょう!」 「いや、アルビオンに特使を派遣すべきだ! こちらから手を出せばそれこそ全面戦争の口実を与えることになる!」 そうこうしている内に昼が過ぎていたが、未だ会議室では不毛な議論が怒号と共に繰り返されていた。 その間にも様々な報せが会議室へと届けられてくる。 アルビオン艦隊はタルブの草原に降下して占領行動へと移ったこと。 タルブ領主、アストン伯の軍勢が交戦を始めたこと。 ……数え切れない報告が次々と舞い込んでくる。そして、その報告が届く度に貴族達の混乱はさらに激しくなっていく。 もはや、会議としての機能さえ果たしていないのではないかと思うくらいに貴族達は卓上で無意味な論争を続けていた。 (ウェールズ様……) 怒号が鳴り止まぬ中、アンリエッタは己の指に嵌められた風のルビーを握り締める。 生きているのか死んでいるのかすら分からない、愛している人が勇敢に戦い続けていたのであれば、自分もまた勇敢に生きてみよう。 ルイズからこの指輪を託された時、そう誓ったのではないのか? 今、自分に何ができるのか。アンリエッタは醜い争いを続ける貴族達を視界に捉えぬようそっと目を伏せ、考える。 「急報です! 所属不明の風竜が戦闘区域に乱入! 敵軍と交戦している模様!」 何度目かも分からぬ急報が届いた時、貴族達は議論を中断してその報せに耳を傾けていた。 だが、彼らは訳が分からないといった様子で顔を顰めだす。 「どこのどいつだ! 余計な真似をしおって!」 急使は戸惑いつつも届けられた報告を淡々と読み上げていく。 「偵察に向かった竜騎士によると風竜に乗っていたのは三人組のメイジで、先日この王宮に参られた魔法学院の生徒だとのことです」 魔法学院の生徒――その単語を聞いた途端、アンリエッタは目を見開いていた。 思わず席から立ち上がりかけるほどの衝動に駆られたが、かろうじて抑えこむ。 魔法学院の生徒……風竜……そして、この王宮へと最近訪れたことのある者達。 たったそれだけで、アンリエッタはその三人組のメイジの詳細を理解することができていた。 (あなたなの? ルイズ……) 自分があまりにも無茶な願いを命じてしまった、幼き日からの友人。 彼女は仲間達と共にアルビオンで任務を果たし、生きて戻ってきてこの風のルビーを託してくれた。 その彼女が、今度はこの国を守るために戦っている? 無二の親友が今起こしている行動に、アンリエッタは心打たれていた。 貴族として、王族として君臨する者が今すべきことは何なのか。 アンリエッタはようやく、今自分が行えることが何であるかを見出すことができた。 (ありがとう。ルイズ……) そして、心の底より無二の親友に感謝する。それはあまりにも単純なことであり、何も難しいことではなかったのだ。 「だからどうした! そんな者達のことなど、どうでも良いことだ!」 「今はこの事態の収拾をつけることが先決なのだぞ!」 だが、貴族達はルイズ達が懸命に行っている活動に関心すら抱かずに吐き捨てていた。 貴族として、王族としての役目を軽んじ踏みにじるその発言に、ついにアンリエッタは憤慨した。 「いい加減になさい!」 大きく深呼吸して立ち上がり、アンリエッタはあらん限りの声量で威厳に満ちた声を張り上げる。 会議室に響き渡る王女の一喝に、それまで騒然としていた貴族達は面食らったようにアンリエッタへと一斉に視線を注いでいた。 それまでこのトリステイン王国の象徴的存在にして、飾りの姫としてか見えなかった愛らしい姿が一変してしまっていることに貴族達は唖然としていた。 「姫殿下?」 「アンリエッタ……」 同様に、隣に控えているマザリーニやマリアンヌさえ彼女の姿に動揺している。 「あなた方は恥ずかしくないのですか? 先ほどから聞いていれば、世迷い言も甚だしい……。国土が敵に侵されているこの状況で同盟だ、特使がなんだと騒ぐ前にやるべきことがあるでしょう?」 貴族達の一部はひそひそと声を潜めて囁き合う。これからゲルマニアに嫁ぐはずだった飾りの姫が、熱くなっていきなり何を言い出すのかと。 アンリエッタは卓上を叩き、大声で叫ぶ。 「わたくし達がこうしている間にも、民の血が流されているのです! 彼らを守ることが、我ら貴族の……王族の務めではないのですか!」 その言葉に貴族達は黙り込む。マザリーニもマリアンヌもアンリエッタの発した言葉が胸に響いていた。 アンリエッタはつい先ほど、無二の親友の行動を蔑んだ貴族の一人を睨みつけた。 王女の射抜くような視線に、彼はびくりと竦み上がる。 「あなたは言いましたね? 魔法学院の生徒達のことなどどうでも良いことだと。彼らは本来、騎士はおろか軍人でさえありません。 ですがそのような者達でさえ国を、民を守るために戦ってくれているのですよ? その行動が、どうでも良いというのですか?」 「い、いえ……姫様……」 冷め切った視線と声でアンリエッタはそのまま言葉を続ける。それはかつて、ルイズの使い魔を務めている異国の貴族が自分に対して向けたものと同じであった。 「あなた達は怖いのでしょう? 敗戦後に責任を取らされることが。反撃の計画者になりたくない、このまま恭順して命を永らえたい。だから民のことなどどうでも良い。そう言うのですね? ……わたしは決して屈しません! 戦わずして、民を守れずに敵に降伏するなど、貴族の誇りを捨てるようなもの。死も同然です!」 決意に満ちた表情で、アンリエッタはかぶっていたヴェールを払い捨てた。 「そんなに怖いのであれば、いつまでもそこで論議を続けていなさい!」 「姫殿下!」 二人に一礼したアンリエッタはそのまま会議室を飛び出していく。貴族達は慌ててアンリエッタを押し留めようとする。 「お待ちを」 そこにかかる、宰相マザリーニの一声。 貴族達もアンリエッタも、その声に振り返っていた。 「姫様だけを行かせたとあっては末代までの恥。私もお供をしましょうぞ」 アンリエッタに歩み寄ったマザリーニはその前で跪く。 全ては姫の言う通りであった。既に彼が望んでいた外交的解決の努力は水の泡となっている。これ以上、論議を重ねるだけ無駄なこと。 今、やるべきことはただ一つ。それはあまりにも単純であり簡単な行動であることを失念していた。 マザリーニの言葉に、アンリエッタは強く頷く。そして、上座に控えたままの母へ笑顔と共に視線を向けた。 マリアンヌは愛する娘の指導者らしい勇ましい姿に心から満足し、微笑みながら頷きを返していた。 前ページ次ページThe Legendary Dark Zero
https://w.atwiki.jp/imaska/pages/397.html
前ページPart2 ネタバレ、タグ、考察 織田信長 + ネタバレ注意! 雪歩から余りある程の強い想いを寄せられているのには、最初から気付いている。 …だが、なかなか素直になれないでいる。恋愛はかなり奥手。 もっとも、内心では雪歩を何よりも大切に考えていて、心の内では優しく接している。 しかし、雪歩は自分に過ぎたる存在だとも思っている。 自分の事をどう思っているかと雪歩に強く聞かれ、遂に「フィアンセ」として考えている事を雪歩に告げた。 しかし、それでも信長は雪歩に対して積極的になれなかった。 …その理由は、意識は自分でも体は『信長』の物であるという可能性を捨て切れなかったから。 よって、自分が雪歩に手を出せば『信長』が雪歩と関係を持ってしまう事に強い嫌悪感を持っていたのであった。 …しかし、雪歩曰く「大好きな人のカラダを間違えるなど、有り得ない」と確信を持って自分自身の体である事を証明された。 その後の信長は、比較的本音で雪歩に接している。 自分を巡る雪歩と春香の争いは、手に余ると即座に判断。 千早と律子を中心に、協力を要請する考えを持っている。 だが、既に信長は「どれだけ歪めて考えても、雪歩以外は考えられない」という意思を持っている。 + あの顔 信長には『あの顔』は無いと思われる。 …だが、ハメられて仕方なく大名になったのが原因か、どうも器が見えない場面が目立つ。 元々、プロデューサー時代から「希望を受け入れて、その中で最良の道を探す」という方針だった。 よって、自分の独断で物事を決める事は、ほとんど無い。(まず雪歩に通している) 雪歩としては、妻は夫を支えるものであり…っと、考えているようだが、頼りない信長に代わって自分が決断を下す事も、はっきり言って多い。 そして、義妹達から提案を受ければ基本的に採用する。 反発したとしても、これが織田家の意思であると、つまり『数』で勝負されると非常に弱い。 付和雷同では無いが、義妹達の思い通りにやらせていると言わざるを得ない。 …このままでは、無自覚のまま傀儡に成り下がってしまうだろう。 だが、信長はそこまで権力に固執していないのも事実である。 …やはり、そうなると雪歩が色々と進言するしか無いのであろうか? 音無小鳥 + ネタバレ注意! 自己紹介の時に、木下秀吉に27歳と即座に判断された。 …だが、どう考えても年上の義妹です。本当にありがとうございました。 毎日、酒場で一杯やっている。ちょくちょくアイドルを巻き込む。 林秀貞は、お酒友達。人生の道を踏み外した者同士? 信長から技術(知識)を身に付ける修行期間を与えられたが、迷わずに海津城の高坂昌信の下に衆道を学びに行く。 (若き日の高坂昌信と武田晴信は、衆道の関係であった事が明らかとなっており、晴信が昌信に宛てた『浮気の言い訳』をする書状が現存している) 当然、信長からは叱責を受けるが、全く反省などしていない。 「雪歩☆ちゃんねる」では、年増ネタを使われて散々な扱いを受けた。 だが、あずさへ言い放った「過熟メロン」に比べれば、まだマシな気がする。 浅井長政が清洲城に訪問した際に「イケ☆メン」の臭いを嗅ぎ付けて、興奮を隠せない様子だった。 その姿を見たやよいは思わず(仕事しろ)と心の中で突っ込まずにはいられなかった。 …実際、小鳥の現在までの仕事ぶりは褒められたものでは無いようだ。 信長は「仕事は仕事で出来る人」と評価しているが、 本来の信長の弟である織田信勝曰く「執拗なまでに衆道に拘り、普請中に妄想に陥る」との事。 春香と雪歩の争いは、小鳥自身は既に信長と雪歩のカップリングは想定内。むしろ、春香の過剰なまでの反発の方が意外だった。 しかし、自分の半分程度しか生きてない伊織に嫁入りで先を越された為、内心はそれ所では無いようだ。 っと思いきや、自ら率先して意見を募るなど、なかなかの行動力を見せている。 直接的な解決には繋がらなかったかもしれないが、義妹達から信を得られる存在となったのは間違いない。 降伏後の春香の様子を見るのは、主に彼女の仕事。 …もっとも、それは未だに専門の仕事が無いからである。 + あの顔 普段は妄想全開で自重という言葉も知らない小鳥だが、いざという時は冷静に状況を把握してまとめる事が出来る。 春香の時も、ハト派の人間を正しく判断して、彼女達だけで密談を行う事に成功した。 派閥的にはハト派に属すると思われるが、タカ派の真美からも情報を得ようとするなど、交流関係の広さを垣間見る事が出来る。 (もっとも、真美は敢えて情報を小鳥にリークしたのだが) 根は真面目、それは事実。 …ただし、やっぱり普段がアレなのを改める気は毛頭無いようだ。 タグ 雪歩メイン架空戦記シリーズ この作品は、一時期ではあるがタグ戦争が発生した。 内容は「雪歩ファンの聖地」というタグを付けるか消すかというものだった。 そもそも、このタグはPV向けであり、架空戦記やノベマスに付けられている作品は、現在の所は1個も無い。 タグが付いた直後は、作者である大阪Pがブログで記事にする程、驚いていたようだ。 …だが、不毛な争いによって、コメントが荒れたり、不快な思いをする人が増えるのを危惧していた。 そこで第1話にロックされたのが、このタグ。 これによって、タグ戦争は一気に終結した。 (現在の所、このタグを他に使っている作品は無い) 萩原雪歩(黒) …どこも否定する所がありません、そのままです。 派生として、萩原雪歩(病)、萩原雪歩(フヒ)、萩原雪歩(白)、高槻やよい(黒)などがある。 雪歩が織田姓を名乗ってからは、当然だが1度もこのタグは付いていない。 ニコニコ歴史戦略ゲー アイマスの架空戦記なのに何故?っと思う人も多いだろう。 理由は、大阪Pの出身界隈である。 架空戦記としての処女作は、らきすた架空戦記シリーズ『小早川ゆたかの降臨』である。 その時は、当然「ニコニコ歴史戦略ゲー」のタグを利用していた。 よって、舞台をアイマス架空戦記に移しても、出身的な意味合いもあってか、このタグもロックされている。 その界隈では、大阪Pは『ゆたかの人』と呼ばれている。 (歴戦ランキングにも、それなりにランクインしている) ←いいえ、太閤立志伝です ゆたか時代もそうなのだが、大阪Pの作品は紙芝居の比率が自称「99%」と言われている。(ゆたか2ndは戦争シーンに動画を使っているが) よって、信長の野望でありながら、背景などは太閤立志伝Ⅴの物を『ほぼ100%』使っている。 もっとも、ステータス紹介などの画面は革新なので、一応は「信長の野望」に属するのである。 間違っても『信長の野望』のタグを消さないように。←ロック対象が多くて、ロックしきれていない。 ※彼女達はアイドルです。 華やかなアイドル…のはずだったのに。 気が付けば、戦場で狂気とも言える振る舞いで、敵兵を恐怖のどん底に落としている。 …敵兵の命は『織田家の天下の為に必要な贄』と判断しているので、平気で殺す。 春香に至っては、向かってくる者は殺す。背中を向けて逃げる者も『生き延びてまた戦おうとする意思がある』と見なして殺す。 命を助けるケースは、平伏して降伏するのみである。 うん、もう…アイドルじゃないよね。っと思った視聴者に抵抗するかのように、このタグが付けられた。 だけど、ねえ…。 修羅場M@STER iM@S架空昼ドラシリーズ …色んな意味で、屈指です。 ゆたか時代を見てもそうだが、恋愛(愛欲とも言う)の描写が異常に多い。 そして、今作では信長の事が本気で好きなアイドルが2人(雪歩と春香)いたので、こんな事になったのであった。 …が、ゆたか2ndでも、雪歩と春香との間に確執があるようなシーンがある。 よって、案外この対立…かなり前から構想されていたのかもしれない。 『上級者向け』と言われる所以は、コレが原因。 戦う事が当たり前の架空戦記で、この手の展開は、なかなかお目にかかれないだろう。 考察 雪歩がギリギリまで信長との同棲を秘密にした理由は? + ネタバレ注意 まず、雪歩達が戦国時代に飛ばされ、生活を営むようになった時に、思わぬ好機が訪れる。 それは、それぞれの義妹達に屋敷を与えられた事である。 当然、そこを生活の拠点として暮らすのが当然だろう。わざわざ帰蝶が与えてくれたのだから。 …そして、環境に不慣れである以上、心を落ち着かせてくれる場所。つまり、居住空間というのは非常に重要である。 そんな状況を逆手に取って、雪歩はその初日に動いた。 事実上の恋仲となっているのもあって、信長に一気に急接近しようと同棲を考えて実行に移したのだ。 何故、初日なのか? それは簡単である。ある程度の月日を重ねると、他の義妹達も環境に適応してくるからである。 その時に、屋敷にいたはずの雪歩が急にいなくなった…では、怪しまれるからだ。 (最初の内ならば、屋敷にいなくても余裕が無いので、そこまで考えが回らないであろう) 雪歩としては、それまでに何としてでも既成事実を成し遂げて、他の追随を許さぬ状況にしたかった。 9話で男湯に突撃したのも、15話で松永久秀の前で正室を名乗ったのも、徐々に積み重ねていこうという考えゆえだろう。 (これらをしなくても、既に99.9%勝利は決まっていたようなものだが、天文学的数字級の確率の不安要素でさえ、雪歩はかなりの嫌悪感を持っていた。 確実なる勝利が計算出来るまで、慢心も妥協もしなかった。そして春香に対しても、あまりにも過剰な対応をしたのであった) そして、やよいと真美が城に突撃した時も、心を許せず1度は帰らせようとした。 …しかし、2人に信長の隣りを奪う意思が無いと見ると、ここで雪歩は『自分を認めてくれる存在』を求めた。 一気に態度を軟化させて事実を認め、料理を2人の為に振舞うまでに至る…が、これも考えあっての事だろう。 やよいと真美も一緒に泊まるというのは、雪歩にとっては譲れるギリギリのラインだったであろう事は想像に難く無い。 その後は、亜美も仲間に引き入れて距離を縮めていった。 これは双方に利点があった、雪歩としては上記の通り、自分を認めてくれる仲間が出来る。 …もっとも、雪歩のやり方は『褒められたものじゃない』という考えで一貫しているようだが。 やよい達にとっては、慕う信長の近くにいる事が出来るし、事実上の最大権力者である雪歩の信も得られるのである。 だが、雪歩にとっては『便利な使用人』と言った所だろうか。 (よって、この3人は春香に対しては、相当のタカ派。そして、現在も義妹の中では、かなり顔を利かせている) 何故、他の義妹は春香に肩入れしないのだろうか? + ネタバレ注意 答えは出ている。雪歩が強すぎるのだ。 元々、現代にいる内から事実上の恋仲であった。 そして、他の義妹達がアイドルとして成功したのは、実はミリオンヒットを達成した雪歩による『ブーム』のおかげだったのだ。 更に加えて、既に信長が雪歩を選んでいるので、春香を推す事は信長に逆らう事になる。 彼を信奉している義妹としては、それは絶対に有り得ない選択である。 更に言うならば、春香は雪歩が正室の座に付いた事を非難した。そこまでは良い。 だが、春香も正室を狙っているのは明らか。 雪歩を非難しておきながら、実際は蹴落として正室の座を奪おうとしているのだ。 …そこが大きい。素直すぎるが故に、下心がみえみえなのだ。 少しでも春香に肩入れしようものなら、雪歩によって粛清されるのは目に見えている。 それが連なって、信長の信頼を大きく失う事にもなりかねない。 他の義妹達からも、かなりの非難を浴びて、下手したら反逆者として殺されるかもしれない。 (雪歩の失脚を目論む乱心者。…これならば、十分だろう) 結局、雪歩は他の義妹からどう思われているのだろうか? + ネタバレ注意 現段階では、勝者として認識されている。 …だが、内心では相当嫌われているのが目に見えている。 けれども、雪歩は既に信長の正室である。云わば、主君だ。 彼女の機嫌を損ねたり、期待に応えられなければ、信長から信を得られ難くなるのは明確だ。 よって、義妹の中で地位を高める為には、譲れるギリギリまで、雪歩に媚びるのが正しい。 既に、義妹は雪歩の手駒と化している。 上記の本懐を満たす為には、プライベートは捨てなければならない。 政略結婚も受け入れて、子供を産む事にもなるだろう。 だが、それも全ては信長がいるからである。 義妹にとって、信長は一宿一飯の恩義どころか、一流のアイドルに育ててもらった人生最大の恩人なのである。 彼の期待に応え、天下統一の覇業を支える事こそ、彼女達の生きる道なのである。 …よって、忠誠心も依存心も異常に高い。 仮に、信長が世を去ったら、雪歩の言う事を聞く者は極めて少ない、もしくはいないだろう。 後継者の後見役にすらなれないかもしれない。(もしも子供が産まれて、信長の後を継いだとしても) もっとも、雪歩は信長に殉ずるつもりらしい。 …この事を、既に見越しての事か? 義妹の中で、1番忠誠心が高いのは誰? + ネタバレ注意 まず、速攻であずさと小鳥と真美は落とす。 理由は言うまでも無い。 春香の場合も忠誠というよりは、隣りが欲しいので純粋な忠臣とは言えない、よって落とす。 亜美も、どこか懐疑的な所が見受けられる。強者に従っているだけの印象が拭えない。落とす。 美希は、尊敬する千早のリスペクト(真似)と思われる描写がある、よって落とす。 伊織も織田家への思いは強いが、結構好き勝手やっていたので、落とす。 残ったのは、やよい、千早、律子、真である。 ここからが難しい…。 かなり強引に落としていく必要がある。 千早は依存心こそ強いが、周りと協調する面に大きく欠ける。草薙に血を吸わせる事に憑かれている面もあるので、落とす。 律子もかなり忠誠心も強いのだが、雪歩を快く思って無く、更に利用した事もある。確かにやってる事は織田家の為なのだが…落とす。 真は、信長も雪歩も慕っている。だが、春香に対しても同情的である。反発した相手に…っとも思えない事も無い、よって落とす。 最後に残ったのはやよいである。やよいは信長にも雪歩にも強い忠誠心を示している。(雪歩の同棲を問い詰めたが、それは実質は救いの手であった) また、自分がどうすれば織田家の為に力になれるかを真剣に考え、忍術を一から学ぶという努力を見せる。 信長と雪歩に結婚を勧めたのもやよい。城に不定期ながら泊まる事を許されているのも大きい。 よって、1番忠誠心が高いのは彼女では無いだろうか? 現時点で、1番権力のある義妹は誰? + ネタバレ注意 23話現在で考えてみよう。 まず、春香とあずさは落とす。理由は言うまでも無い。 そして、小鳥も比較的外から眺めていて、献策などはしてないので落とす。 伊織は浅井家の嫁いだので、本来は上位に食い込むだろうが対象外。 更に言ってしまえば、ハト派の真と律子は落とす。 現に、席次などでも上座はタカ派が独占しているのが現状らしい。 (雪歩に近いというのも強味) 千早と美希は、権力などは興味が無い。信長の敵なら心を無にして殺す、それだけ。落とす。 残ったのは、タカ派の亜美・真美・やよいとなる。 まず、真美は傍観者(ウォッチャー)なので、表立って動く事は少ない。落とす。 そして、難しい選択になるが、やよいは真美と同じく側近だが、いたずらに権力を行使する方では無い。落とす。(『ダメ押し』は、真美の発案で、しかもやよいは殆ど春香と言い張っていない) …よって、1番権力があるのは、戦場に置いて諸将を従え、春香を入牢させる事を独断で決めたが全く反発されず、他の者の発案に平気で異を唱えている。 そんな、亜美では無いだろうか? コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2311.html
393 :影響を受ける人:2014/02/01(土) 20 23 28 設定:休日世界モニカルート 独自解釈・独自設定が出てきます。 記憶力の低い頭で考えました。 それでもOKという方はお進みください。 ある者の悩みと考え 『高亥』原作を知るものでは「出落ち」とも呼ばれる彼だが、以外にも才能があり、「贅沢をするために努力は惜しまない」という異色の人物であった。 自ら贅沢と楽をするために努力する。そんな彼だが、だからこそ部下の信頼は厚かった。 何せ決断力はあるし、ちゃんとに部下の言い分も聞いてくれるのだ。 そんな彼でも宦官排除の動きを止める事は出来なかった。 そこで一計を案じ、“清”を作って独立してしまった。 彼以外の宦官の働きもあったろうが、大部分は自分の功績だと誇っている。 “ジェンシー”もその一つだ。 多大な出費だったが、自国でKMF制作が出来るのは何よりも大きい。 それでも満足せず、油断なく動いた。 シベリア戦争 高亥はEUに攻め込んだ。 狙いは・・・未発掘のサクラダイト鉱山。 EU内部は主にアフリカ方面の資源に頼っている面も有り。冬は厳しいこの地方の開発は、田舎というイメージもあって全く進んでいない。 そこに高亥が秘密裏に内情探るべく、密偵を放っていたのだが・・・「赤く光る石を見たことがある」という酒場の与太話を仕入れたことにより、“清”の発足は早まった。 慎重に、慎重に調べ上げ、未発掘のサクラダイト鉱脈・他鉱山をみつけだすことに成功し。 その鉱山を手中に収めるべく手勢を動かした。日本や、ブリタニア帝国に依存しないサクラダイトを求めて・・・ 国際的に何か言われるのを避け、宣戦布告をしっかり行ってからの戦争は、かなり順調な滑り出しであり。 連戦連勝、“清”の国民が高揚すると同時に、ここまで整備した高亥も満足する。 少し気がかりなのは―勝ちすぎている―事だけ。 懸念は現実となった。 総大将の曹将軍を無視して進撃する部隊が続出したのだ。 それは他の宦官の手勢であり、戦争当初は完全に後方にいた連中だった。 曹将軍が防衛戦構築の為に進撃を緩めたのを好機に、内部工作をしてまで進撃をする。 完全に暴走状態となった軍を高亥は激怒し、後のEU大反撃で曹将軍を更迭しようとまでした(後に高亥の情緒不安定も彼等の策だと判明)。 高亥自身も他の宦官に対して軍を引かせるよう要請したが、表向きの理由に賛成して拡大しているのに、なぜ抑えるのかと反撃した。 彼等は高亥が鉱山を得るために戦争を起こしたことを実は知っており、自分達が“占有”できる鉱山があるかもしれないという思いを持って拡大を指示している。 その所為もあって泥沼の戦争になりつつあり、最悪な事に冬将軍が到来してしまう。 両軍が動けないその間にEUは立て直し、猛烈な反撃を受けた。 これに宦官の手勢は大打撃を受けて大きく後退し、ようやく高亥の手に主導権が戻ったのだった。 そして新型KMF【夏候】・新型陸上戦艦【芳珠】そして偶然の産物、最悪の気化爆弾を投入して敵軍に対して大ダメージを与え、占領した土地の防衛線構築に成功する。 ――― ―――――― ――――――――― 394 :影響を受ける人:2014/02/01(土) 20 23 58 シベリア戦争後、高亥は寝る間を惜しんで働いた。 軍の立て直しもあるが、国内整備も忙しい。 新たな土地に入植した者達は鉱山で懸命に働き、それに見合った報酬を得て暮らしている。 ただ富を溜めるのではなく、適度に配ればさらに冨が集まる。 これを実感した高亥は、積極的に配分している。 もっとも、高亥以外はまるでしていないのが現状だが・・・ そんな彼も、大宦官同士の会議は疲れる。 今日も今日とてお互い腹の探り合いに終始し、ほとんど進まずに終わった。 「はぁ…まったくあ奴らは…」 いっそ切り捨てるか。そうつぶやくが、貴重な政治のスケープゴート。そうそう簡単に切り捨てられない。 切り捨てるにも時期がある。そう・・・思っておこう。 護衛が周りを固める中移動し、すでに車が玄関前に待機しており。車の前で一人の人物が彼を待っていた。 小柄で、目が細めで、メガネをかけ、冷たい印象がある。 「待たせた。ゆくぞ。」 「はい。了解しました。」 一つ声をかけて中に入ると、待っていた人物も乗り込んでドアが閉まった。 「どうだ。なれたか?」 「はい。曹将軍も、私に慣れつつあるようです。」 車がゆっくり動きだし、しばらく走ったところで声をかけた。 対面式の車内で、お互いに見える位置に座っている。 高亥の前に座る若い人物、背はそんなに高くなく、体の線も細い。 顔の表情は変わらず、動かない。 「ソナタを見つけられたのは幸運であった。」 「それは買いかぶりです。」 「くく…相変わらず硬いのう。もうちょっと柔らかくなれば、自分の後継者となろう」 「…恐縮です」 「精進せよ。蘭」 「はい」 蘭と屋ばれた人物は女性で。 今年の文官採用試験の際に目に留まった人物で、面接試験の時にマジックミラー越しに受け答えを聞いてみた。 その回答はなかなかに独創的であったが、高亥の「贅沢をするために努力する」と言う信条に近いものを持っていた。 最近後継を考えていた高亥は、思い切って彼女を傍に置いたのだった。 腹心と言える曹将軍は当初戸惑ったが、何とか後継者として受け入れてくれているようではあった。 そうこうする間に高亥の住居に戻り終え。 二人はそのまま大会議室に向かう。 これからが“本当の会議”である。 入室すると、その場にいた高官・文官・武官が立ち上がって頭を下げた。 軽く手を挙げ、頭を上げさせると上座に座り。蘭は資料を取り出して右後ろに待機する。 「では、はじめようか。」 「「「「「「はっ!」」」」」」 号令をかけると左側手前の一人を除いて全員座った。 「まずは人口面です。戦争により一時的に減っていた人口ですが、中華方面から職を求めて流民が相次で入国しています」 「ほぅ…間者などは?」 「おそらくいるでしょう。そこは情報部と協調して対処しています。ですが…」 「わかっておる。だが、警戒は言にせよ。それと、職につけるのはこの国に定住する者のみとすることを怠るでないぞ。」 「承知しております。」 報告が終わり、座ると変わって右側手前の高官が立ち上がる。 395 :影響を受ける人:2014/02/01(土) 20 24 30 「農林水産についてです。一部機械化が進み能率が上がっています。また、以前よりのテコ入れによりさらに今年は上がりそうです。」 「働き手はどうじゃ? 足りておるのか?」 「戦争にだいぶ持って行かれましたが、先程の流民を一部と要する事で何とか補いました。後は彼等の定住化が進めば安定するものと思われます。」 「…暴動が起きないよう注意せよ。」 「他の、宦官の方の動きには注意しております。ご安心を。」 報告を終え、彼も座る。この後、他の細々とした報告がなされ、その度に質問し、蘭からは必要な書類を見せてもらって納得していく。 「曹です。EUの大反撃を受けて消耗しましたが、戦線の防御には成功しました。 以前の戦線よりも後退しましたが、鉱山等を守るのに必要な、防衛戦を張れる場所は確保できました。 当面は大丈夫でしょう。 陸上戦艦【芳珠】の配備は遅々として進んでいませんが、デリケートな面も多い為に今は早急な配備は望んでいません。」 「【夏候】の配備はどうじゃ?」 「それは順調です。すでにKMF全部隊の75%を変えています。また余剰となった【ジェンシー】は国境警備に回すなどをし、他の面の戦力向上にも努めております。 さらに【ガンルゥ】についてですが、一部のライン以外は新しい機体にしています…他国はMTFと呼びますが…【岩洞】【岩蜘蛛】に変更しています。 【岩洞】は【ガンルゥ】の後継機で、コストを抑えるべく【ジェンシー】の部品を主に使えるように設計してあります。 【岩蜘蛛】は敵から鹵獲した多脚兵器を解析したものです。平地ではあまり活躍はありませんが、起伏にとんだ場所では戦車よりも活動でき、KMFでも歩行困難場所でも安定して移動できます。 なにぶん新設計なので、生産は少し抑え目です。」 説明に頷く高亥をみて少し安心する曹だったが、次の説明はどうにも気が重くなる。 「続いてエース用として限定生産している【夏候・弐型】ですが…やはり整備性が悪いと不評です。」 高亥の眉間に皺がよるのが見えた。 無理もない。本来ならば時間をかけてシェイプアップしなければならないのを、無理やり性能を上げる工夫をしているのだ。 【夏候・弐型】は【夏候】の改良機だ。関節機構や動力を弄って性能アップを図ったが、その為の部品が完全オーダーメイドで、手作りの上に生産するのが難しいときている。 整備する側も大変だろう。 それもこれも多脚兵器と同じように鹵獲した、第七世代相当の機体のせいである。 その機体はEUにおいて【アレクサンダ】といわれているがこの際は置いておく。 第七世代機相当のKMFの性能はずば抜けていた。 装甲が薄いという面を覗けば、【夏候】よりも性能がいい。 しかも市街地戦や、地形が不安定な場所での奇襲などの特殊戦に強いのも上げられる。 一部の報告では、たった一機に【ジェンシー】が全滅させられたという話も聞く。 396 :影響を受ける人:2014/02/01(土) 20 25 57 「…こちらの開発はどうなっている?」 「はい、それなりに進んでいます。ですが…」 【夏候】開発終了から、開発班は二つに分かれた。 一つは改良する為、もう一つは次世代機。 その次世代機開発が猛烈な勢いで進められている。 清の純正KMF【呂布】 分類:第七世代相当KMF 所属:大清連邦 外見モデル・ガサラキの壱七式戦術甲冑 雷電(ライデン) 製造:清の重工業 生産形態:限定生産型 全長:4.6m 本体重量:6.8t 推進機関:ランドスピナー 補助推進機関:使い捨てロケットエンジン 固定武装:スラッシュハーケン×2 スタントンファー スモークディスチャージャー(閃光弾等にも変更可能) 装備武装:マシンガン アサルトライフ 75mm低圧砲 50mmグレネードランチャー 重斬刀 etc. 乗員人数:1人 これが、次世代機として開発が進められているKMFだ。 【夏候】に比べて軽量化がなされており、随所に【アレクサンダ】からの教訓を生かしている。 最も可変機構はいらいないと判断されているので、関節機構は頑丈になっている。 生産性を優先しているせいで首の可動部分はなし、対人機銃もなし、スラッシュハーケンは射出部から上下に先端を動かすだけで54°角が限界。 未だ設計段階であり。実機すらない状況。 「仕方あるまい。しっかりやるように申し付けよ。故障だけは無いようにな…」 「高麗とは違います。お任せください」 溜息をつきたいのを我慢しつつ曹将軍に言うと、再び細々とした報告受け、それらに指示と新たな方針を告げていく。 会議は少し遅くまで続いた。 ――― ―――――― ――――――――― 会議が終わり、自室で軽くお酒を飲む。 その姿は某苦労性の元首相を思い起こさせた。 「ふぅ…」 「…」 溜息をつく自分の上司を、ただ変わらぬ細目で見る。 蘭は只己の実力を示すために努力する。その努力に見合った報酬を得るのは当然という思いもある。 女の身の上ではあるが、同じように努力する者を馬鹿にする事は無く、最大限努力し地位を維持している高亥は尊敬に値する人物だ。 だが・・・最近は物思いに耽ることが多い。 理由はわかっている 397 :影響を受ける人:2014/02/01(土) 20 26 28 EU崩壊の速さ。 当初の見積もりではシベリアを取られたぐらいでは揺らがないはずだった。 確かに政治不安な所はあったが、それでも猶予はあると判断していた。 だが予想に反しEUの内情はガタが来ていた。 その為、ブリタニアに居候しているユーロブリタニアの動きが活発化している。 もし彼らが動けば日本も動くだろう。友邦を助けるために。 それにつられて他の宦官が余計な動きをするかもしれない。 馬鹿な高麗が動くかもしれない。 EUが打倒されれば・・・次はこちらだろう。 奪われた土地を取り戻すという大義名分があちらには在り、しかもそこには旨味のある鉱山すらある。 排除されるの恐れ、その前に“清”を建国したのは間違いだったのだろうか? 「否…それはない。出なければ今頃は絞首刑台の上だ」 先程浮かんだ疑問を力強い言葉で否定する。そうでなければ今までの自分を否定する事になるから。 だが、どうする? あの連中と心中する気はない。 さりとて・・・ 「高亥様」 「なんじゃ」 再び考えに沈みそうになったが、蘭が中断させた。 普段はけしてそういう事をしないので、少し驚くと同時に不可解に感じる。 だが、普段しない事をしたのだ。何か思う所があるのかもしれない。 顔と体を向けて話を聞く体制をとる。 「高亥様が悩んでおられるのは、あの寄生虫共の事ですか?」 「そうだ。」 確かに日本・ブリタニア帝国・ユーロブリタニアは脅威だ。 だがそれも、こちらにちょっかいを出さなければいいだけの事。 上記に挙げた理由だけでは少し弱い所もある。 なので問題は足を引っ張る連中となる。 「策ならばあります。恐らくは考えられているとは思いますが…」 「ならば言うてみよ。」 「はっ。では失礼して…」 蘭は策を話す。その顔は相変わらず無表情で冷たい 話の内容は高亥が考えている策と全く同じだった。 「…以上です。」 「…」 話し終り、もう一度酒を飲む。 そして酒器を置くと天井を仰ぎ見る。 「やはり、それしかないか…」 「高亥様が生き残るには最善かと」 やはりままならない。 この国に、愛着を持ってしまった今では苦渋の決断を強いることになる。 何度考えてもこの考えが離れない。他に最善の策はないか考える。 しかし・・・かわらない。 「ままならぬな…」 高亥は酒を注ぎなおして今度は勢いよく飲んだ。 旨い最高級品のはずなのに、酷く不味く感じた。 398 :影響を受ける人:2014/02/01(土) 20 27 29 以上になります。 オリジナルキャラ“蘭”を登場させてみました。 彼女のイメージは侍スピリッツ・アスラ斬魔伝の羅刹ナコルルです(私の趣味丸出し)。 彼女は高亥の後継者で、冷徹な判断を下せます。しかし努力する者は誰であれ、身分関係なく認め称賛します。 反対に驕れる者に対しては限りなく冷徹に見ます。もしくは道具にしか見ません。 まだ若い所為か、硬い面がみられるために柔軟な思考が身につくよう指導されています。 曹将軍は女性が後継者と言う面に戸惑いましたが、自分も高齢になりつつあるので納得しています。 話の内容は、ほとんど今までの議論纏めでしかありません。 清の純正KMF【呂布】 出てきた清の第七世代相当のKMFです。 しかしながら【アレクサンダ】よりも生産性が悪く、扱いづらい機体となっています。 完全にエース中のエース向けです。 もし時間があれば外見が【壱七式戦術甲冑改 震電(シンデン)】で、名前も【高順】となり、生産性は多少向上してエースに配備されます。 それでもそれでも整備性は・・・
https://w.atwiki.jp/83452/pages/12156.html
時はたぶん戦国時代。 陰謀渦巻き、血の繋がった親類ですら信用できない時代。 長子相続の原則はあったものの、その長子に力が無いと見なされれば、下の者が上の者を克す。 すなわち下克上がまかり通る世の中であった。 ここ尾張を支配する平沢家もそんな世の例に漏れず、家督相続を巡る姉妹の対立で大きく揺れようとして……。 いなかった。 というか、対立すらおこらなかった。 できの悪い姉。 できの良い妹。 日頃からゴロゴロしてばかりいるため家臣からは「ニート候補」、民草からも「池沼殿」と軽んじられる姉・平沢唯と、「よくできた妹」「姉の良いところを全部吸い取った」と評判の平沢憂。 本来なら、妹の憂が家督を相続しそうなものだが、「お姉ちゃんはやればできる子!」と言ってあっさり跡目争いから降りてしまったのである。 しかし困ったのは平沢家家臣団である。 当主となった唯は周辺国の様子を他所に、ひたすらゴロゴロばかりしている。 このままでは平沢家はおろか、自分達の未来も無い。 そこで平沢家筆頭家老、真鍋和の元に相談を持ち込むも、子供の頃に唯が和の屋敷の湯殿をザリガニでいっぱいにした話をされ、「心配ない」とあっさり追い返されてしまった。 そんな家臣の不安を他所に唯は、今日も領内を無為に歩き回っていた。 「うんたん♪ うんたん♪」 得意の拍子を取りながら唯は、今朝和から言われた「このままじゃニートになっちゃうわよ」と言われたことを思い出していた。 なにかしなくちゃ。 そう思うものの、何をすればいいのかわからない。 「う~ん」 腕を組んで首をひねって考えるも、皆目検討がつかない。 「こらっ! 泥棒猫!」 突然唯の後方からそんな声が聞こえてきた。 「ふみゅっ」 考え事をしていたからだろう。 振り返ったひょうしに唯は尻餅をついてしまう。 そんな唯の横を通り過ぎようとした少女の髪の毛が、さっき怒鳴ったであろう男に掴まれる。 「こいつ、ゴキブリみたいな頭をしやがって!」 男は髪を二つに結んだ少女の手から大根を引き抜くと、その少女に殴りかかろうとした。 そんな二人の様子を見ていた唯は慌てて止めに入る。 「ま、待った!」 そもそも男が領主である唯に挨拶すらしなかったのは唯の存在に気づいていなかったからなのだが、気づいてからも男のたいして変化しなかった。 「これはちしょ……お殿様」 男は「池沼殿」と言いかけて、慌てて言い直す。 唯も何か言いかけたことはわかり、何と言い間違えたのだろうと首をひねったものの、 「おまえ、殿様ならさっさと助けろです!」 との、少女の言葉に、あっさり思考を遮られる。 「か、かわいい!」 少女を見た唯は、思わずそう漏らす。 「おじさん、この子を許してあげてください!」 次の瞬間、唯は殿様とは思えない態度で謝った。 面食らったのは男の方である。 いくら池沼殿とはいえ、一国を支配する主である。 「ま、まぁ、殿様がそこまで言うなら……」 と、渋々ながらも引き下がった。 一方、残された少女の方も唯の態度に面食らっていた。 この少女も、貧しいながらも戦国を生きる者である。 下克上がまかり通る世の中にあって、上の者が下の者にあんなにあっさり謝るなどあり得ない。 この殿様はよほどのバカか、よほどの大人物か……。 そう少女が思案していると、 「じー」 唯の視線に気づいた。 「な、何ですか?」 少女がそう言うと、 「名前は?」 「歳は?」 「好きな食べ物は?」 唯は矢継ぎ早に質問を浴びせる。 「な、中野梓、です……」 「じゃあ、あずにゃんだね!」 少女が名前を名乗ると同時だっただろうか、唯は間髪入れずにそう言った。 「あ、あずにゃん?」 この殿様はバカだ。 梓はそう判断した。 しかしバカとはいえ、殿様は殿様。 利用する価値はある。 「あ、あの……」 梓が何か言いたそうにしているのを見た唯は、「何?」とにっこり問いかける。 「あ、あの……ぞ、草履を……あた、暖めてあげます!」 「草履?」 梓の突然の申し出を不思議に思った唯は、梓の足下を見る。 裸足だ。 しかも泥だらけで、生傷も見て取れた。 唯も本当のバカではない。 さっき大根を盗もうとしたことといい、この少女が困窮した生活を送っていることが見て取れた。 「うん、なら私がおぶってあげるよ! 任せて、あずにゃん!」 「え、ええ!?」 草履をよこせという話が何故おんぶしてあげるという話になるのだろうか。 梓は、やっぱりバカだ、この殿様はバカ殿だ、そう思った。 「え、いや、そういうことじゃなくてですね……」 「大丈夫だよ、あずにゃん、お城までおんぶしていってあげるよ!」 唯は「ふんす」と鼻息も荒く、自信満々に答える。 こうなったらお城まで行くしかない。 そして頃を見て逃げだそう。 そう、こんな殿様の国なんて、いつ他国に攻め滅ぼされるかわかったものではないのだから……。 梓は唯の背中におぶさりながら、そんなことを考えた。 「というわけで、天下布武を目指すことにしました!」 城に帰った唯は、憂と和を前にそう高らかに宣言した。 もちろん唯の背中には泥だらけの梓がいて、唯の着物も梓の泥が付着して汚れている。 そんな姿の唯が突然「天下布武」と言い出したのだ。 まして日頃からゴロゴロしていた唯である。 「唯、あなた何か策はあるの?」 和はそう唯に尋ねた。 「え? 無いよ。でもみんなで頑張ればきっと大丈夫だよ!」 和は痛み出した頭を押さえながら、「こんな子が当主で大丈夫かしら、平沢家……」と思っていた……。 「ところでお姉ちゃん、その背中の子は?」 「あ、この子はあずにゃんだよ!」 「あ、あずにゃん?」 不思議そうな顔をする憂に梓は。 「……中野梓です。あの、よろしくお願いします」 ぺこりと頭を下げた。 「あ、私は妹の平沢憂です。よろしくね、梓ちゃん」 あ、そうだ、と憂は、 「私、お風呂を沸かしてくるね」 と手際よく駆けだしてゆく。 そんな憂の姿を見た梓は、この二人は本当に姉妹なのだろうか。 それに先ほどの唯の「天下布武」という言葉。 どこまで本気なのだろうか。 力さえあれば天下を取ることもできる戦国の世。 しかしここ尾張は小国である。 天下なんか取れるわけが……。 梓はそう思うと同時に、もしかしたらあるいは……。 そうも思った。 唯は民草からも「池沼殿」と呼ばれるようなバカ殿にしか見えない。 天下取りはバカが見る夢――。 「天下布武」を目指すと答えた唯の目は真剣そのものだった。 そういえば……。 「お姉ちゃんの背中、暖かかったでしょう?」 風呂に入る前、憂がそう言っていたことを思い出す。 ここに留まってみるのも面白いかもしれない。 梓は憂の沸かしてくれた湯につかりながら、そんな風に思うようになっていた。 「憂、唯先輩は!?」 梓が平沢家に仕え始めてからしばらく後、駿河・遠江・三河の三国を治める琴吹紬が駿府から兵3万を発したとの報が入り、尾張はにわかに殺気立っていた。 琴吹家と言えば、血筋は将軍家に連なり、紬自身も東海一の弓取りとも呼び名される、天下に最も近い大名家である。 そんな琴吹家の軍勢が刻々と尾張に迫っているというのに、朝から唯は行方不明であった。 「大丈夫だよ、梓ちゃん」 梓の焦燥とは反対に、憂は落ち着き払っている。 しかしお家存亡の危機に、当主がいないという状況に平沢家家臣団は浮き足立っていた。 籠城か野戦か。 大軍を擁する琴吹家に野戦で挑むは、むざむざ死にに行くようなもの。 ならば籠城で少しでも時間をかせいで……。 平沢家の大勢は籠城策に傾いてはいた。 後は当主の唯が一言「籠城」とさえ言えば、籠城に決まるだろう。 だが、その肝心の唯がいない。 「池沼殿は怖じ気づいて逃げ出したのだ」 公然と唯を非難する声も家臣団からは上がっていた。 「うんたん♪ うんたん♪」 にわかに奥の襖が開くと、唯はいつもの節を取りながら上座に着く。 奥に座っていた憂と和はさっと頭を下げたが、多くの家臣は、 「存亡の危機だというのに何をのんきな……」 「やはり池沼殿だ、この危機がわかっていない……」 と、落胆と軽蔑の眼差しを唯に向ける。 「唯先輩! どこに行ってたんですか!?」 梓も唯に詰め寄る。 「あ、あずにゃ~ん!」 唯はいつものように梓に抱きつくと、 「あずにゃん、お外行こ、お外♪」 と言って梓の手を引き、 「憂も一緒に行こう♪」 と、憂の手も引き、あっさりと野戦に決めてしまった。 確かに唯の判断は正しい。 援軍が期待できない以上、籠城をしてもせいぜい時間稼ぎにしかならないだろう。 まして兵力差があまりに大きすぎる以上、時間稼ぎにも限度がある。 となれば打って出る以外に勝ち目はないのだが……。 「唯先輩、いいんですか?」 梓は唯に従いながら、そう尋ねた。 引き連れて来たのは2千ばかりの兵だ。 「ん? 大丈夫だよ、お城は和ちゃんがいるから」 「いえ、そうじゃなくて……。打って出て勝ち目はあるんですか?」 「う~ん、どうかなぁ」 あまりに頼りない唯の返事に、梓はがっくりと来た。 「あ、そうだ憂」 「なぁに、お姉ちゃん?」 「ムギちゃん達、今どの辺にいるの?」 「うんとねぇ、田楽狭間だよ」 「よし、じゃあ、そこに行こう!」 「あの、唯先輩? ムギちゃんって誰ですか?」 唯と憂のやりとりが終わったのを見て、梓はそう尋ねた。 「ん? ムギちゃん? えっとねぇ、琴吹紬ちゃんでしょ? だからムギちゃん、なんだよ、あずにゃん!」 「ぷっ」 さも名案を思いついたかのような唯の口ぶりに、梓は思わず吹き出した。 敵にまであだ名(?)をつけるなんて、唯先輩らしい。 梓はそんな唯を見ながら、初めて「あずにゃん」と呼ばれた日のことを思い出していた。 田楽狭間。 雨も降り出し、休息を取っていた琴吹家の隊列は縦に伸びきっていた。 「唯先輩、これを狙ってたんですか?」 確かに琴吹家は3万の大軍を擁している。 しかし縦に狭い道を進軍すれば、隊列は細く縦に伸びざるを得ない。 ここを横から奇襲すれば、少ない軍勢でも対等に戦える。 「うんとねぇ、昔蟻さんの行列を見てたんだ。そしたら、蟻さんはたくさんいるのに、私の目の前を通る蟻さんは一匹だけだったんだよ! すごいよね!?」 たぶん唯が言っている「すごい」は、そこからこんな作戦を思いついて「すごい」ではない。 もっと単純に、そんな蟻の動きが「すごい」という意味での、蟻に対する「すごい」、だ。 「ええ、すごいです」 梓は唯に対して「すごい」と言った。 「そうだよねぇ、蟻さんはやっぱりすごいんだよ、あずにゃん!」 梓にとっては、いや、多くの凡人にとっては、そんな蟻の動きなど当たり前のことでしかない。 しかし唯はその当たり前を見逃さずに観察し、こうして作戦を思いついた。 「ね、お姉ちゃんはやれば出来る子だって言ったでしょ?」 憂は誇らしげな顔で梓に言った。 数刻後。 唯の仕掛けた奇襲は見事に成功し、大混乱におちいった琴吹家は、縦に伸びきった戦列から本陣への救援もままならず、3万を数えた軍勢もわずか2千の軍勢にあっさり敗れた。 「何も言うことはないわ……」 捕らえられた琴吹家当主琴吹紬は、唯の前で静かに言った。 「えっと、あなたがムギちゃん?」 唯の問いかけに紬は不思議そうな顔をする。 「あ、えっと、琴吹紬ちゃんだからムギちゃんなんだよ!」 紬は、これが東海一の弓取りと呼ばれた自らを破った敵の大将なのだろうか、と疑問に思った。 尾張の池沼殿。 そう呼ばれる唯をあなどり、油断があったことは否定しない。 だが、あの鵯越の逆落としを思わせる見事としか言いようのない奇襲。 それを指揮したであろう平沢唯という武将。 その唯を目の前にして、紬は落胆していた。 「あ、私は平沢唯。唯って呼んでね」 敵の総大将を前に、威厳のかけらもない。 「そう、平沢さん……」 紬はそう言うと、静かに唯の前に首を差し出した。 「違うよ、ムギちゃん! 唯だよ! 唯ちゃんって呼んでよぉ~」 そう言うと、唯は突然鼻をひくつかせ始めた。 くんくん。くんくん。 「ねぇ、ムギちゃん、この匂い何?」 唯はあたりの様子を探るようにきょろきょろとしながら、紬に尋ねる。 「ケーキよ、唯ちゃん。みんなで食べようと思って持ってきたんだけど……」 「ケーキ!?」 「そう、南蛮のお菓子」 「お菓子!? ねぇ、ムギちゃん、ケーキ貰ってもいい?」 「ええ、全部あげるわ」 「ホントにぃ~! やった~! ねぇねぇ、あずにゃん、憂! ケーキ! ケーキ貰ったよ!」 唯の無邪気すぎる態度に、唯の後ろで控えていた二人も呆れ気味だ。 すると唯は突然。 「ねぇ、ムギちゃんも一緒に食べよう♪」 最期の晩餐のつもりだろうか。 そう言って唯は、紬にもケーキをすすめる。 「ちょ、唯先輩!」 あまりの唯の姿に、たまらず梓が呼びかける。 「ん? どうしたの、あずにゃん?」 「どうしたのじゃありません! 早く首を!」 「首? 首じゃなくてケーキだよ、あずにゃん」 「だから、そうじゃなくって……。合戦で勝った方が負けた方の首を取るんです!」 梓が特別残酷なわけではない。 この時代では当然のことを言ったまでだ。 その証拠に紬も、「大変ね……」という表情を梓に向けている。 「え~!? だってムギちゃんはケーキをくれたんだよ! 悪い子じゃないよ、良い子だよ!」 この唯の言葉にはさすがに紬も驚いた。 タチの悪い冗談かとすら思った。 この時代、大義があろうがなかろうが、勝った方が正義なのである。 まして相手は自らを滅ぼそうとした敵。 ここで情けをかければ、今度は自分がやられるかもしれない。 だが唯の瞳は真剣そのもので、とても冗談とは思えない。 「本気なの、唯ちゃん? 私は唯ちゃんを攻めようとしたのよ?」 紬がそう言っても、唯の考えは変わらなかった。 「ムギちゃん、友達になろうよ」 「お友達?」 「そう、友達だよ」 人なつっこい笑顔を向ける唯を眺めながら紬は思った。 なるほど、人が「池沼殿」と呼ぶのも無理はない。 あまりにあけすけで、自らの愚を隠そうともせず。 素直で正直で。 おおよそ時代権謀術数には向かない性格だが、信念だけは曲げない。 もしこの乱れた世を直せる人がいるのだとしたら、それは唯ちゃんみたいな人なのかもしれない。 いや、唯ちゃんのような人にこそ天下人になってもらいたい。 「私の負けね……。ふふっ、一緒にケーキを食べましょう、唯ちゃん」 その紬の言葉を聞いた唯は、 「うん♪」 と、最大級の笑顔を紬に向けた。 後に桶狭間の戦いと呼ばれるようになる先の合戦で琴吹紬を破ってしばらく後。 尾張一国を支配するだけだった平沢家は、琴吹家当主だったムギを人質に同盟を結んだ。 事実上琴吹家を属国にし、駿河・遠江・三河を支配する大大名へと一挙に成長したわけである。 というのは、事実を元にした対外的な印象だろうか。 実際のところは、ムギは自ら進んで尾張に入り、唯への臣従を申し出た。 しかし唯はそれをよしとはせず、同盟という形にこだわった。 困ったムギは、唯の元に留まり、人質となることで事実上の臣従ということになったのだが……。 「ムギちゃん、今日のおやつはなぁに?」 「今日はカステラよ、唯ちゃん」 おおよそ人質とは程遠い、のどかな日常を送っていたのである。 「私、唯先輩がよくわかりません……」 梓は和にそう打ち明けた。 「私も唯がわからなくなることがあるわ。あの子時々、私たちの理解を超えたことをするでしょう?」 「それ、わかります……」 もしあの時唯がムギの首を取っていれば、何年にも渡る琴吹家の旧領をはぎ取る戦が始まっていたかもしれない。 しかし唯がムギの首を取らなかったことで、労せずして3カ国が手に入ったのだ。 憂は「お姉ちゃんはやっぱりすごいでしょ~、えへへ」と言っていたが。 「やっぱり唯先輩はよくわからない……」 結局梓には唯がすごいのかすごくないのかよくわからなかった。 2
https://w.atwiki.jp/for_orpheus/pages/54.html
恐怖の相を浮かべた、大勢の男達が屯する広い室内に、汁を啜り、硬いものを噛み砕き、咀嚼する音が、間断無く響いていた。 音の発生源は、室内の上座に位置する場所に設られた、椅子と机。其処で、殆ど全裸に等しい美女を複数人、周囲に侍らせて、食事を取っている、アジア系の巨漢だった。 胴も腕も脚も太く、一見すれば肥満体とも見えるその身体は、しかし、肥満と見られる様な脆弱さは微塵も持ち合わせてはいない。 その身体を、その肉を見れば、その身体から放たれる熱を感じれば、誰しもが思うだろう。この男の前に立つのは、機関銃を持っていても出来ないと。 肉体から放たれる熱が、覇気が。僅かな所作から感じられる“力”が。男が根本的に己とは違うのだと理解(わか)らせてくる。 更に男の存在そのものから、凄まじいという言葉では到底足りぬ“圧“が放たれていた。 只其処にいる。それだけで、否が応でも意識が巨漢へと向いてしまう。 巨漢の意志も意識も、周囲には全く向けられていない。にも関わらず、利剣の切先を口に突き入れられているように感じられる“圧”。距離が充分に離れているにも関わらず、狭い檻に、狂える獅子と一緒に入れられているかのような“圧”。 その“圧”を齎すものは、肥満体と見えるその身体の内に秘める、千の軍勢も一人で殺し尽くせるだろう“暴”と、森羅万象を意に介さず、この世の全てを膝下に隷属させるという獰猛な覇気だった。 例え百万の軍勢を率いていても。例え万夫不当の豪勇を、屠龍の勇者を傘下に従えていても。10倍の敵を一戦で殲滅する策を苦も無く編み出す智者と、その策を完遂して勝利を獲得する名将が幕下に居ようと。 それら全てを頼ること無く。それら全てを顧みず。只々己の力のみを信じ用いて、己の望む結果を勝ち取る。 己が意志。己が力のみを唯一絶対の基準として君臨する絶対者。 『魔王』と、そう呼ばれ、そう称しても、誰も異を唱えまい。およそ人の範疇に収まるとは思えない男だった。 男の名は董卓。前後合わせて四百年の永きに渡り、中華の地を統治した漢王朝の末期に於いて、比類無き暴虐を恣にし、大乱世の烽火となった男である。 広いテーブルに並べられた、精緻な器に盛られた料理を、ある時は箸を器用に操って口に運び、ある時は器を直接手に散って中身を嚥下する。 只それだけ、凡そ人であるならば、誰しもが行う行為であるにも関わらず、周囲に侍らせた女達は元より、部屋に屯する男達の視線が、恐怖に満ちているのは何故なのか。 董卓に向けられる視線が、人に対する其れでは無く、人外化生を見るものなのは何故なのか。 その答えは,侍っていた女達により、空になった器が下げられ、新たな女達が運んできた器の中身が、百万の言葉よりも雄弁に物語る。 ある器の中身は、柔らかくなるまで煮込まれた人間の右手首だった。 ある器の中身は、視神経を引く人間の眼球が浮かぶ吸い物だった。 続々と運び込みれてくる、程よく焼けて香ばしい匂いを放つ諸々の肉料理も、人のものであるのだろう事は疑う余地もない。 化け物を見る周囲の視線を、董卓は一切意に介すること無く、運び込まれてきた悍ましい肉料理に口へと運ぶ。 再び、室内に響く、柔らかい肉を喰い千切り、骨を噛み砕き、眼球を嚥下する音、 室内の男女の恐怖と緊張が頂点に達し、何人かが意識が遠のくのを感じた時。 室内を、極北の風雪を思わせる冷気が充たした。 「戻ったぞ」 部屋の広さに相応しく、重く大きな扉を軽々と開けて、部屋に入って来たのは、腰まで届く銀髪と蒼氷色(アイスブルー)の瞳が特徴的な軍装の女。 只の女ではない。美女、それも飛び切りの、という言葉が頭に付く。 董卓の周囲に侍る容色優れた女達が、悉く色褪せ、見窄らしく見える。それ程に美しい女だった。 女の声を受け、董卓の意識が、初めて外へと向けられる。 ただ意識を外へと向ける。それだけで、生あるもの達が生命の危機を感じ、精神が押し潰されそうな重圧を感じる。 どよめきが部屋の空気を震わせた。室内の無数の男女の上げる苦鳴だった。 魔王の目覚めに立ち会ってしまった、不幸な人間は、この様な声を出すかも知れなかった。 董卓の視線が、女へと向けられる。 董卓と女との間に居た者達が、血相を変えて左右へと飛び退いた。 董卓の視線を浴びる────どころか、視界に入っただけで死ぬとでもいうかの様な、怯え振りだった。 董卓の視線を受けて、女は涼しげに嗤った。董卓が魔王ならば、女は魔人か。董卓の視線を受けて平然としているどころか、董卓の首を取りに行くかの様な、獰猛な精気を全身から発散させている。 女は両手にぶら下げていた首を投げ転がした。中年の男の首も、水気をとうに失った老人の首も、十代半ばの少女の首も、皆等しく董卓の前に転がされる。 「当然だが、サーヴァントの首は持って帰れないのでな。マスターのものだけだ」 董卓が緩やかに、それでいて山でも動かせそうな力を感じさせる動きで右手を動かすと、即座に数人の男が動き、転がされた頭部を運び去った。 「転がして、猛り狂うほどの首であったか」 女の行為を、気にすら留めぬ董卓の問い。 「少しばかり愉しめた程度だ。中々死ににくてな」 「俺の命は果たしたか」 「ああ、サーヴァント共が次に限界した時、お前の名を聞いただけで血反吐を吐いて死ぬ様に殺してやったぞ」 空気が凍てついた。女の返答に、全員がつい最近此処繰り広げられた惨劇を思い出したのだ。 ◆◆◆ 東京は新宿区若松町に有る、都内でもそれなりに名の通った暴力団。 合法非合法を問わずシノギを行い、それなりに収益を上げ。警察にも充分に鼻薬を嗅がせ、組の幹部連には司法の手が及ばない犯罪の方法を編み出し、実践を経て有効性を検証し。 内部を良く統制し、他の暴力団や海外のマフィアとの抗争も制し、新宿という東アジアでも有数の街に於いて、確たる勢力を築き上げた組織が有る。 その暴力団の組長の住む邸宅が、襲撃を受けたのは、三日前の事だった。 縄張りの場所が場所だ。警備は厳重を極めていた。 五百坪の敷地を、高さ4m、厚さ30cmの鉄条網付きの鉄筋コンクリート製の塀で囲い、各所に監視カメラを配して厳重な警護を敷いたその屋敷に、二人の男女が押し入ったのだ。 唯一の通路である正門にしたところで、厚さ20cmの鋼板に太い鋼柱を閂として使用している。戦車を持ち出しても、簡単には突破できない堅牢強固な門扉の内側に、この男女は至極当然の様に、いつの間にか立っていた。 この侵入者達を、屋敷内に詰める組員達が見逃す訳も無く。或るものは素手で、或る者は短刀(ドス)で、或る者は銃で、或る者は飼育されている土佐犬をけしかけ、男女を死体に変えるべく襲い掛かり、その悉くが死体となって転がった。 銃を持った者は、女が振り上げ、振り下ろした腕の動きに合わせるかの様に出現した氷柱に顔や喉首を貫かれて絶命し。 素手や刃物で向かった者は、董卓の拳が振るわれる度に、骨の砕ける音と共に、ある者は脳漿をぶちまけ、ある者は血反吐を吐いて死んだ。 土佐犬に至っては、確実な死を認識したのだろう。男女に向かって顔を自然に埋めて尻尾を振る始末。 死の擬人化ともいうべき男女を前に、動きが止まった組員達に向けられる男の眼。 圧倒的。という言葉ですら、到底追いつかない。狂える獅子か、目覚めし魔王の如きその眼を前に、組員達は悉く魂が抜け落ちたかの様に喪心し、男女の進軍を見送った。 その後は至極樹単純な話だ。そのまま適当な若衆を捕まえて、組長の元へと案内させる。若衆に否という権利は無い。元より拒もうという発想すら抱けず。 案内された部屋で、組長の周囲を固める代貸し以下の幹部連と警護の若衆を見ようともせず、董卓は一直線に組長へと近づいて、その頭を握り潰した。 血濡れた手を拭おうともせず、董卓は幹部連を振り返り、一言だけ口にした。 「従え」 拒めばどうなるかは、董卓の足元に転がる頭の無い『元』組長が雄弁に物語っている。 董卓の放つ、暴力的な覇気に呑まれた幹部連は一斉に平伏して忠誠を誓い、董卓と美女の意のままに動く傀儡と化したのだった。 ◆◆◆ 「それで、まだ敵は見つかってないのか?」 恐怖の視線を向けてくる有象無象など知らぬとばかりに、女は董卓へと問う。 戦を終えて凱旋したというのに、まだ戦い足りぬと言いた気に。 女の声に、猛獣に追われる兎を思わせる勢いで、代貸しが進み出て、跪いて報告する。 「も、申し訳ありませんッッ!目下、組員のみならず、傘下の者達にも探させているのですが、何分にもこの街には刺青をした者は非常に多くッッ! 赤い刺青というだけでも、絞り込むのは困難にございましてッッ!!」 熱病に罹ったかの様に、震えて跪く代貸しに、東京都に名の通った暴力団のNo.2だった面影など微塵も無い。 彼等が脅し付け、財産も尊厳も生命も奪い尽くしてきた堅気(弱者)と同じ姿が在るだけだ。 董卓が代貸しへと視線を向ける。床に顔面がめり込む勢いで額を擦り付けている代貸しの身体が大きく痙攣したのは、董卓の視線に籠る“圧”の為だ。 「仕方無いさ。ここの人口は『帝都』の比ではない。探すのは困難だろうよ」 女が取りなす。董卓の視線が女へと向き、“圧”から解放された代貸しは動かなくなった。安堵のあまり失神したのだ。 「許すか」 「許すさ。この程度で一々殺していては、人手が足りなくなる」 董卓と美女の会話が始まる。周囲の者達は、ただそれだけで意識を喪いつつあった。 魔王と魔人の語り合い。聴く羽目になった只人は、只々両者の意識が己に向かぬことを祈るのみだ。 「呂布の様な獣とは違うな。貴様は」 「只々戦うだけのモノに、人はついてこないからな。戦争を愉しむのなら、必要なんだよ」 「求めるものは只々戦のみ。やはり貴様は純一戦士よ」 死して後。この冥界の都市で、この女を初めて見た時より理解(わか)っていた事。 呂布の様に純粋で、己と同じ様に、天意も、後世の歴史も、同じ天の下、同じ地に生きる者達も省みる事なく 只々己が力のみを信じ、我意のままに突き進む。 その有り様を巨漢は美しいと。女の精神が収まった身体の造形などよりも遥かに美しいと。そう思った。 天井を、その先に有る蒼天を見上げて、魔王が吼える。鯨波の様に、凱歌の如く。 「エスデスよ。我が戦の光となれい!」 美女の名はエスデス。千年続いた帝国が滅びる際の動乱に於いて、一個の兵としても、軍を率いる将としても、無双無類の強さを誇り、最強の名を恣にした女将軍。 最強の武を従えて、天下を奪いて天下に君臨した魔王董卓には、相応しいサーヴァントと言えた。 【CLASS】 アーチャー 【真名】 エスデス@アカメが斬る! 【属性】 混沌・悪 【ステータス】 筋力: C 耐久: C 敏捷: B 魔力:A 幸運: C 宝具;A+ 【クラス別スキル】 単独行動:A マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクAならば、マスターを失っても一週間現界可能。 対魔力:B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。 宝具【魔神顕現デモンズエキス】の影響で、高いランクを獲得している。 【固有スキル】 ドS:A 敵を蹂躙し屈服させる事を、至上の喜びとする精神性。 他者の苦痛と嘆きを何よりも好む。 ランク相応の精神異常と加虐体質の効果を持つ。 帝国最強:A 1人の兵としても、軍を率いる将としても、帝国最強の名を恣にした事に由来するスキル。 ランク相応の無窮の武練及び軍略の効果を発揮する。 獣殺し:A 幼少期に、住んでいた北辺の地の獣を狩り尽くした逸話に基づくスキル。 天性の狩人であるアーチャーは獣の殺し方を知っている。 獣の属性を持つ者に対し特攻効果を発揮する。 拷問技術:A 解剖学や薬学(毒)を用いて巧みに拷問を行う。 卓越した技量により、生かさず殺さず延々と苦痛を与え続けられる。 【宝具】 【魔神顕現デモンズエキス】 ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜聖杯戦争のエリア全域 最大補足:自分自身 無から氷を生み出し、自在に操る帝具。その来歴はある超級危険種の血を搾り取ったもの。 一口飲むだけで、脳裏に響き渡る、殺戮を求める声により正気を保てなくなるが、アーチャーは全てを飲み干したうえで、殺戮へと駆り立てる声を自身の自我により制圧。完全に自分のものとしている。 『氷を生み出す』と言ってもその応用性は非常に広く、基本技としての氷の矢の射出や、氷の剣や槍、鎧といった武具の生成。これらの武具は、大きさを任意で変えることができる。 氷を浮遊させ、その上に乗る事で、速度は遅いものの飛行を可能とする。 氷だけでなく冷気も操ることができ、触れる事で対象を凍らせることや、大河や城塞を凍結させる冷気を繰り出せる。 果ては独自行動が可能な『氷騎兵』の大量作成。一国を覆い尽くす吹雪を起こす『氷嵐大将軍』といった、理外の威力を持つ宝具。 これだけの多彩な効果を持つ割に『対人』宝具なのは、この宝具が血を飲んだ者へと働きかける宝具で有る為。 【摩訶鉢特摩(マカハドマ)】 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:聖杯戦争のエリア全域 最大補足:ー 愛しい男を逃さない為に編み出した時空間凍結技。二十四時間に一度しか使えない。極僅かな間、時を凍らせ、万象を停止させる。 【Weapon】 サーベル 【人物背景】 千年続いた帝国の滅亡期の将軍。帝具抜きでも万軍を寄せ付けぬ武練と、麾下の精鋭を手足の如く操る用兵術を持って、帝国の周辺諸国や、国内の反乱勢力に恐れられた。 闘争と、その結果としてある敗者の蹂躙とを、何よりも好む戦闘狂にしてドS。 生涯唯一の心残りは、恋した少年の笑顔が、遂に自分に対して向けられなかった事。 【聖杯にかける願い】 思うように生きて死んだので、特に願いは無い。取り敢えずは闘争と蹂躙を愉しむ。 【解説】 千年続いた帝国の滅亡期の将軍。帝具抜きでも万軍を寄せ付けぬ武練と、麾下の精鋭を手足の如く操る用兵術を持って、帝国の周辺諸国や、国内の反乱勢力に恐れられた。 闘争と、その結果としてある敗者の蹂躙とを何よりも好む戦闘狂にしてドS。 【マスターへの態度】 董卓とは馬が合う上に、割と好感度は高いので、先に死なれたりしない限りは、裏切らずに付き合う。 【マスター】 董卓@蒼天航路 【マスターとしての願い】 この世に再び生を受ける 【能力・技能】 弓馬に優れる。史実では両手に弓持って同時に撃てたとか。 瞬間移動じみた動きで数十m詰めることとかやっている。身体能力が人類の範疇に無い。 【人物背景】 後漢末期の人物。黄巾討伐に失敗したフリをして辺境に留まり、異民族を懐柔して麾下に加え、中央の政変に乗じて都入りし、偶然とは言え皇帝を擁し天下の権を握る。 暴虐を恣にし、三国志初期オールスターズともいうべき反董卓連合を退け、都を焼き払って遷都。 天意も地の歴史も省みる事なく、我意我欲のままに生きるが、呂布に裏切られて死亡する。 参戦時期は死亡後。 【方針】 董卓の名を聞いただけで、血反吐を吐いて死ぬ様に戦う 【サーヴァントへの態度】 呂布の同類だと思っている。戦いという餌を与えておけば、この聖杯戦争で裏切る事は無いだろう。
https://w.atwiki.jp/isoroku_be/pages/95.html
情報 作者名:SWinX 引用元:なでしこ初心者掲示板「アイデア1 部分コピーの実施例」 概要 1/4円、1/4円弧を描画します。 解説 引数 OBJ:描画先 X1,Y1:始点(左上座標) X2,Y2:終点(右下座標) S:「右上」or「右下」or「左上」or「左下」 サンプルプログラム 線色は赤色。 塗りスタイル=「透明」。 母艦の0,100から100,200へ"左上"を四半円。 母艦の0,100から100,200へ"右下"を四半円。 塗りスタイル=「格子」。 母艦の200,100から300,200へ"右上"を四半円。 //本体 ●四半円({グループ}OBJのX1,Y1からX2,Y2へSを) CWとは整数=X2-X1 CHとは整数=Y2-Y1 SXとは整数。SYとは整数。//欲しい部分の左上座標 Sで条件分岐 "左上"ならば、SX=0。SY=0 "右上"ならば、SX=CW。SY=0 "左下"ならば、SX=0。SY=CH "右下"ならば、SX=CW。SY=CH Aをイメージとして作成 A→可視はオフ A→サイズ="0,0,{CW*2},{CH*2}" A→画像="" OBJの(X1-SX),(Y1-SY),CW*2,CH*2をAの0,0へ画像部分コピー Aの0,0からCW*2,CH*2へ円 AのSX,SY,CW,CHをOBJのX1,Y1へ画像部分コピー A→壊す。 大小チェックをしていないので、X1,Y1は左上座標、X2,Y2は右下座標を指定する必要があります。 -- SWinX (2008-09-28 22 35 26) 修正させていただきましたー。ありがとうございました -- 管理人 (2008-09-30 21 30 48) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/marowiki/pages/464.html
目次 【時事】ニュース行義 マナー manner RSS行義 マナー manner 口コミ行義 マナー manner 【参考】ブックマーク 関連項目 タグ 最終更新日時 【時事】 ニュース 行義 消防協力者表彰式を実施しました(令和3年8月6日) | 消防本部・消防署 - 今治市 マナー 韓国の大型スーパーで親子がとんだマナー違反、店内の隅でおしっこしそのまま立ち去る - ニフティニュース 立民・枝野前代表 野党共闘「誤解で世の中を染められた」(神戸新聞NEXT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 広島6位末包昇大「一番年上なので」新人選手の“マナー講師役”(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【浦和】引退表明の阿部勇樹が天皇杯・準決勝C大阪戦へ「来季につながる。観戦マナーをしっかり継続しよう」 - SAKANOWA株式会社 北京市のオリンピック村、住民が冬季五輪をオンライン・オフラインで歓迎_中国網_日本語 - チャイナネット JAL、パイロットの訓練ノウハウ生かした企業研修 2月から(Aviation Wire) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 名門でも安心なのは安価で無難なデザイン!? ビギナーはどこでゴルフウエアを購入すべき?(e!Golf) - Yahoo!ニュース - スポーツナビ 劇団四季、一部公演で開演前「撮影OK」に 解禁理由は?広報に聞く - J-CASTニュース 逗子で活動する「FUJIO PROJECT」に「スポーツ振興賞 観光庁長官賞」(みんなの経済新聞ネットワーク) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 13日夜に月が沈んだらピーク!今年の最後の天体ショー・ふたご座流星群(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 携帯が途中で鳴る日大学長の“緩すぎる”会見、学生への謝罪ゼロ 「学費値上げの可能性もある」と識者〈dot.〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース SixTONES 高地優吾はキャンプインストラクターの資格を取得 森本慎太郎、京本大我……好きなことや経験を仕事に繋げる姿(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 筒井康隆原作の「libido F 最後の喫煙者」開幕、岩澤哲野「いい作品に出会いました」(ステージナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「急いでいた」混み合う本通りでスケボー 47歳男性を書類送検 広島市(RCC中国放送) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「性的衝動を抑えられなかった」コンビニ駐車場で下半身露出…37歳男性自衛官を 停職 女性目撃し通報 - www.fnn.jp 3人感染北海道 前週と同数 で横ばい続く…札幌市は5日ぶり「0」 7日間合計で前週と比べ約3割減少 - www.fnn.jp イラっとする…身近にいた「マナー違反な人」エピソード6つ - モデルプレス 通行の邪魔をする犬を注意しない飼い主、法的に問題は? 弁護士が解説(マネーポストWEB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【スコア150から110を目指すタイミングで受けたい】「ゴルフDEミガク マナー研修」リリースのお知らせ 株式会社Growth design(グロースデザイン) - PR TIMES 「なに食べたい?」と聞かれたら 育ちのいい人 はどう答える?映画やドラマで俳優のエレガント所作を指導するマナー講師に振る舞いを学ぶ ~12月10日「くにまるジャパン極」 - 文化放送 「お昼のショッカーさん」放送・配信情報が明らかに、劇場の鑑賞マナーCMにも登場(コミックナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース BTSのJ-HOPE&V、米LAでのスケジュール終え帰国。Vはファンのマナーに感謝「おかえりVOPE」|スポーツソウル日本版 - スポーツソウル日本版 ジム利用者が覚えるべき10個のマナー、なかやまきんに君が解説し話題!「インターバル中にスマートフォンは…」 - COCONUTS マナーうんちく話2084《日本人なら知っておきたい「年末に大掃除をする理由」》 - JIJICO 聴覚障害の学生、衆院選のアルバイト不採用に 函館市選管(毎日新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース “激レア”渡り鳥が飛んできた 絶滅危惧種の「ソデグロヅル」が西条市に飛来 南下中に迷ったか【愛媛】(テレビ愛媛) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 持続可能な社会づくりへ向けた取り組みを発信 モスバーガー原宿表参道店 12月15日(水)オープン:時事ドットコム - 時事通信 トラウデン直美、マスクは「周りを安心させるため」にネット「出演中不安だったのでは」(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース あわや事故に・・・歩行者すれすれワゴン車運転手を摘発(HTB北海道ニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「撮り鉄」のモラルハザード、なぜ減らない? 加熱する迷惑行為、拍車をかける背景とは〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 改めて確認しよう!食事デートで注意したいマナー - モデルプレス マナーのプロが伝授する「言いにくいことを言う方法」5つのポイントでストレス軽減! (1/1)| 8760 by postseven - 8760 by postseven 視聴率8.9%、韓国メディア各社が報じた“横浜惨事”――スコアだけでなく「マナーでも負けた」屈辱的な敗戦【2021総集編】 - サッカーダイジェストWeb あちこちで見かけるけどどういう意味? 「スクランブル交差点」とは(WEB CARTOP) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース “ドライバー”でマナーはプラス 事故はマイナス(九州朝日放送) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「更年期ドック」って何? 婦人科で内診の前にはビデを使うのがマナー??|産婦人科専門医 監修(FASHION BOX) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 高級マンションの「粗大ごみ不法投棄」、「防犯カメラで犯人探し」をしてもいいのか?(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「育ちがいい人はハンバーガーをこう食べる」具材がはみ出ない 画期的な持ち方 (プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 金融業界で一般的な「おじぎハンコ」って何? ビジネスマナーの賛否両論について解説 - マイナビニュース 人気イチョウ並木の神宮外苑で迷惑行為 車道で写真パチリ 警察出動(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース <こちさが>クロハゲワシ、佐賀市内に 畑で羽休め、若い迷鳥か(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 静岡人インタビュー「この人」 後藤真衣子さん 静岡鉄道の乗車マナー啓発動画を制作した|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞 年末年始のマナー講座(2021年12月04日放送) - UMKテレビ宮崎 梅宮アンナ、ウォッシャー液騒動で炎上…難しい芸能人の情報発信 「僕らは取り上げられやすいし…」坂上忍が私見(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 社会人の世界では「100―1=0」になる理由 JALの元CAが語るマナーの奥深さ 一つの失敗で全員が(埼玉新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース Web会議のマナーは? 服装や進め方など参加中の注意点をくわしく解説 - マイナビニュース [マナーの基本]クッション言葉で柔らかく 就活スペシャル 就活 教育・受験・就活 - 読売新聞 「日本では当たり前だけど…」外国人から驚かれる日本特有の変わった文化3選!(男の隠れ家デジタル) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 徳島・岸田社長 J2降格に陳謝も…マナーの悪い一部サポーターへ激怒「クラブの名が汚された」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 下呂温泉の名物「噴泉池」が足湯専用に…背景にマナー違反やトラブル 入浴復活の可能性を聞いた - www.fnn.jp 名刺入れのマナーとは? 色・素材などの選び方や名刺交換の作法を解説 - マイナビニュース マナーうんちく話2082《豊かな時代に改めて心にとめておきたい言葉「食事五観」》 - JIJICO 梅宮アンナ 運転マナー巡り反論 - goo.ne.jp ティーカップのソーサーは持つ? 持たない?育ちがいい人はどうする? - ダイヤモンド・オンライン “オンライン会議のマナー”が続々と誕生中! 「事前に接続準備」より意識されていたマナーは?【ドコモ・モバ研調べ】(Web担当者Forum) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【マンガ】「和食で醤油にワサビをとくのは不作法!」と怒鳴るマナー講師に板前が投げかけた“キツい一言” - 文春オンライン やっぱりゴルフ場には革靴で行ったほうが最強に無難なのか?(e!Golf) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日本マナー良い に異論/中|ニフティニュース - ニフティニュース Zoom会議で初心者がついやってしまいがちなマナー違反5つ【2020年BEST5】 リアル会議にはないルールとは - PRESIDENT Online 東松島市役所で働く日本航空CAが接客マナー講座|NHK 東北のニュース - NHK NEWS WEB 面接試験の印象アップへ、高3がマナー受講…麹町女子 - 読売新聞 お歳暮の時期やマナーは?(ハルメクWEB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【流行語大賞】「黙食」コロナ禍の食事のマナー定着/選考理由 - 社会 - ニッカンスポーツ 「新幹線はゴミ箱じゃない」座席に食べ物、空き缶放置 酔っ払い集団の最悪マナーに乗客激怒(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【流行語大賞】「黙食」コロナ禍の食事のマナー定着/選考理由(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 徳島、「あまりにも敬意を欠いた不適切な発言」のサポーターを無期限の入場禁止に(ゲキサカ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 通勤社員が横断歩道で手を上げて マナー「日本一を目指します」 大垣市 - 岐阜新聞 飲み会の「お酌マナー」って? ビールや日本酒の注ぎ方や受ける場合のマナーも解説 - マイナビニュース 箸マナーとは? 正しい使い方やタブーを一覧で紹介【画像あり】 - マイナビニュース 【素敵な結婚式のための心得とマナー】結婚式が終わったら必ずやることリスト(25ansウエディング) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ユナイテッドアローズもゴルフウエアに参入 おしゃれしたいゴルファーに“グッドマナー”なウエア(WWDJAPAN.com) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 席次とは? 会議室などのシーン別の順位を上座・下座と併せて解説 - マイナビニュース 水辺のマナー悪化 トラブル懸念 北海道・支笏湖で新ルール検討へ(北海道新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 目指せ「60m、1分ちょうど」 自転車押す「チャリンピック」 商店街、マナー向上へ催し(神戸新聞NEXT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 関ジャニ∞“13年ぶり”横アリ公演に感慨 村上信五「ジャニーズファンのマナーの良さが認められた」(オリコン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 硬い言葉はやわらかい言葉に言い換える 話し方&マナー講師永田之子 - JIJICO エスカレーターの片側あけ「欧米のマネ」で広まった謎マナーはいつまで続くのか? - キャリコネ 元バブル女子だからわかる! デキるオトコのレストランマナーとは?(LEON.JP) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 接客1年生でもできる!「あなたが担当でよかった!」と思われるシンプルなコツとは(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース JR浦和駅と浦和区役所、鉄道利用のマナー啓発 駆け込み乗車の危険性や譲り合いテーマ、川柳など作品展示(埼玉新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 靴の脱ぎ方で育ちがわかる!意外とやってない? NGな所作 - ダイヤモンド・オンライン 【素敵な結婚式のための心得とマナー】結婚式当日のよくあるハプニング対処法【後編】(25ansウエディング) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 中高生が困惑する電車・バス内の迷惑行為「マスクつけて」「ヘルプマーク無視しないで」(高校生新聞オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 小学生がバスの安全な乗り方やマナーを学ぶ【佐賀県】(佐賀ニュース サガテレビ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 公共交通マナー等絵画コンクールの作品を募集します - PR TIMES マナー啓発動画を放映 静鉄 静岡デザイン専門学校生徒が作成|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞 【サッカー通信】日本人はマナー良し?! Jリーグの実証実験「ワクチン接種もマスク9割超」 - 産経ニュース 「道の駅」相次ぐマナー違反 駐車場で鍋パーティー? 火気厳禁のはずなのに - www.fnn.jp 【旅のマナークイズ6選】コース料理や日本料理の食べ方・席次の正解は? (2021年11月23日) - エキサイトニュース 今こそ考え直したいLINEのマナー|「既読スルーを気にするのは無益」とマナー講師が断言するワケ(8760 by postseven) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 絶対に教えておくべき5つのビジネスマナー【「丁寧」なのに仕事が速い人のヒミツ】(サライ.jp) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース マナーうんちく話2079《生涯楽習こそ最良の終活!主催講座が100回目を迎えました》 - JIJICO 別冊『常識&マナーのきほんBOOK』に元NMB48・吉田 朱里が登場! アイドル卒業後初のウエディングドレス姿を披露!理想のプロポーズや結婚に関する悩みを明かす - PR TIMES 京阪石山坂本線で高校生が乗車マナー呼び掛け 優先座席や携帯電話について啓発 - びわ湖大津経済新聞 「美しい行動」 日本代表スタッフが 美マナー 、試合後の振る舞いにベトナム感銘(Football ZONE web) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 栄一、西洋式マナーの習得に悪戦苦闘.......大河ドラマ『青天を衝け』第35話 - RBB TODAY 【クッキングコース3年】テーブルマナー体験 | 学校法人 新渡戸文化中学校・高等学校 - nitobebunka.ed.jp オンライン会議時のマナー「特に何もしていない」シニアが約3割--若年層ほど意識 - CNET Japan コース料理にドキドキ!中学生がテーブルマナー学ぶ(テレビ高知) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日本は“マナー大国”?謎マナー乱立の理由をマナー講師に聞いた(Yahoo!ニュース オリジナル 特集) - Yahoo!ニュース manner 中国で「コーヒー経済」が急成長 1~9月の融資額816億円近くに(CGTN Japanese) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 中国のコーヒーブームで台頭した新星「Manner」、次のluckin coffeeになるのか(36Kr Japan) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース タイBL「Manner of Death」コミカライズ1巻、容疑者×法医学者のサスペンスラブ(コミックナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 先が読めない本格サスペンス!名作タイBL「Manner of Death」の魅力を考察(WEBザテレビジョン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 話題のタイ発の法医学BL作品がついにコミカライズでも登場!『Manner of Death』本日より電子版単話販売スタート! - PR TIMES 売上げランキング1位獲得! タイBL『Manner of Death』人気の理由にせまる - カドブン タイ発の注目ドラマがついに世界同時公開!本格クライムサスペンスBL『Manner of Death/マナー・オブ・デス』を「ビデオマーケット」と「Rakuten TV」で先行独占配信スタート - PR TIMES RSS 行義 #gnews plugin Error gnewsは1ページに3つまでしか使えません。別ページでご利用ください。 マナー #gnews plugin Error gnewsは1ページに3つまでしか使えません。別ページでご利用ください。 manner #gnews plugin Error gnewsは1ページに3つまでしか使えません。別ページでご利用ください。 口コミ 行義 #bf マナー #bf manner #bf 【参考】 ブックマーク サイト名 関連度 備考 Wikipedia ★★ 関連項目 項目名 関連度 備考 研究/倫理 ★★★★ 研究/社会 ★★★★ 研究/社交 ★★★★ 研究/共同体 ★★★★ 研究/エチケット ★★★★ 研究/モラル ★★★★ 研究/リテラシ ★★★ 研究/冠婚葬祭 ★★★ 研究/霊長 ★★★ 研究/恋愛 ★★★ 研究/生活 ★★★ タグ 生活 社会 霊長 最終更新日時 2012-12-07 冒頭へ