約 1,037 件
https://w.atwiki.jp/prdj/pages/2459.html
グラシュティグ Glaistig 奇妙な原初の美の雰囲気がこの女性を包んでおり、人のものならぬ肌の調子と獣じみた脚によってそれが際立っている。 グラシュティグ 脅威度21/神話ランク10 Glaistig CR 21/MR 10 経験点409,600 CN/中型サイズのフェイ(神話、地) イニシアチブ +26; 感覚 振動感知120フィート、夜目;〈知覚〉+37 オーラ 泥酔の有頂天(30フィート、意志 DC32) 防御 AC 40、接触32、立ちすくみ28(+8外皮、+10反発、+12【敏】) hp 422(25d6+335);再生30(風;風殺しを参照) 頑健 +18、反応 +26、意志 +23;第二のセーヴ DR 15/冷たい鉄およびエピック; 完全耐性 幻惑、[精神作用]効果、朦朧、よろめき; 抵抗 [音波]30、[酸]30、[電気]30、[火]30、[冷気]30; SR 32; 弱点 風殺し 攻撃 移動速度 60フィート、穴掘り60フィート、登攀 60フィート; 地潜り 近接 アース・ウィップ=+26/+21/+16(10d6+20/19~20殴打、刺突、または斬撃、加えて“呪術”)またはリーフ・ウィップ=+26/+21/+16(20d6+30/19~20斬撃、加えて“呪術”) 遠隔 アース・ブラスト=+36(10d6+30/19~20殴打、刺突、または斬撃、加えて“呪術”)またはリーフ・ブラスト=+36(20d6+40/19~20斬撃、加えて“呪術”) 接敵面 5フィート; 間合い 5フィート(アース・ウィップまたはリーフ・ウィップは10フィート) 特殊攻撃 注入(ボウリング・インフュージョン、デッドリー・アース、エンタングリング・インフュージョン、エクステンデッド・レンジ、フラグメンテーション、グラップリング・インフュージョン、インペール、キネティック・ウィップ、モービル・ブラスト、プッシング・インフュージョン、スネーク、ウォール)、テラキネシス、フェイのウィッチ、神話パワー(10回/日、+1d12) 擬似呪文能力 (術者レベル25;精神集中+35) 常時:パス・ウィズアウト・トレイス、フリーダム・オヴ・ムーヴメント 回数無制限:クリエイト・ウォーター、トランスポート・ヴァイア・プランツ、ノウ・ディレクション、ピュアリファイ・フード・アンド・ドリンク 3回/日:クラッシング・ロックス(DC29)、呪文高速化コンフュージョン(DC23)、サモン・ネイチャーズ・アライIX、フレッシュ・トゥ・ストーン(DC26)、ムーヴ・アース 一般データ 【筋】28、【敏】35、【耐】30、【知】27、【判】28、【魅】31 基本攻撃 +12; CMB +21; CMD 69 特技 《イニシアチブ強化》、《擬似呪文能力高速化:コンフュージョン》、《技能熟練:真意看破》、《技能熟練:はったり》、《近距離射撃》、《クリティカル強化:キネティック・ブラスト》、《精密射撃》、《精密射撃強化》、《戦闘発動》、《武器熟練:キネティック・ブラスト》、《武器の妙技》、《防御的戦闘訓練》、《迎え討ち》 技能 〈威圧〉+28、〈隠密〉+40、〈軽業〉+40、〈芸能:舞踏〉+38、〈交渉〉+38、〈真意看破〉+43、〈脱出術〉+40、〈知覚〉+37、〈知識:自然〉+37、〈知識:地域〉+37、〈知識:地理〉+21、〈手先の早業〉+40、〈登攀〉+17、〈はったり〉+44、〈変装〉+28、〈魔法装置使用〉+38 言語 エルフ語、共通語、地界語、森語 その他の特殊能力 信仰の対象、森林の優美さ 生態 出現環境 温暖/森林または沼地 編成 単体 宝物 ×2 特殊能力 風殺し/Airbane グラシュティグの森林の優美さと再生はこのクリーチャーが空中にいるとき抑止される。グラシュティグが着地している間、純粋な風の元素の攻撃(キネティシストの風の単純爆発やエア・エレメンタルの叩きつけ攻撃など)のみがグラシュティグの再生を抑止できる。 注入/Infusions グラシュティグは特殊攻撃欄に列挙されているキネティシストの本質注入と形態注入の使用権を得、燃焼を受け入れる必要なくテラキネシスの能力によって与えられた爆発に適用することができる。これは基本燃焼コストにのみ適用される;グラシュティグはプッシング・インフュージョンといった注入を伴う更なる効果を得るために追加の燃焼を受け入れなければならない。 泥酔の有頂天(超常)/Reveler's Rapture グラシュティグは30フィートの有効距離に至福の大酒飲みのオーラを発する。オーラの範囲内に入ったクリーチャーは、野生的の一面が表出し、イレジスティブル・ダンスと等しい効果を受ける。意志セーヴに成功したクリーチャーは24時間そのグラシュティグのオーラに完全耐性を持つ状態となるが、セーヴに成功したとしても依然として1ラウンドの間踊る。グラシュティグの泥酔の有頂天の効果下のクリーチャーは最初より後の各々のターンの終了時に、この効果を終了させこのオーラに完全耐性を持つようになる為の新しいセーヴを試みることができる。グラシュティグは自身のオーラの効果から望む目標を除外することができる。 森林の優美さ(超常)/Sylvan Grace グラシュティグは【魅力】ボーナスに等しい反発ボーナスをACに得、近接でないアース・ブラストとリーフ・ブラストの攻撃ロールとダメージ・ロールに【魅力】ボーナスに等しいボーナスを得る。 テラキネシス(擬呪、超常)/Terrakinesis グラシュティグは20レベル・キネティシストであるかのように様々な地の元力の使用権を持つが、地と植物の物質の混合物の様相を呈する。地と植物に関連した存在として、アース・ブラストを行うことができ、燃焼コストなしで、リーフ・ブラストと呼ぶ特殊な地の元素の合成爆発を行うこともできる。グラシュティグのリーフ・ブラストは斬撃ダメージを与える物理的な合成爆発である。グラシュティグは一般的な注入だけでなく、リーフ・ブラストにデッドリー・アース、エンタングリング・インフュージョン、インペール、プッシング・インフュージョンの注入を適用することができる。グラシュティグはその他の特殊能力欄にある注入と汎用元力の能力を得るが、20レベル・キネティシストとしての他の能力も得ない。 フェイのウィッチ(超常)/Witch of the Fey グラシュティグは荒廃、変装、幸運、不運の呪術と、苦悩、応報の上級呪術、自然災害の大いなる呪術を20レベル・ウィッチとして使用することができる:特技を得る目的でこの能力は呪術のクラス特徴としてみなされる。この能力のセーヴDCは【魅力】に基づいている。近接攻撃が成功すると、グラシュティグは追加の効果として、苦悩、不運、応報の呪術のいずれかを目標に与えることができる。アース・ブラストあるいはリーフ・ブラストを使用するとき、ブラストによってダメージを与える全てのクリーチャーに影響を及ぼすためにこれらの呪術の1つを選択することができる。 保護者としても災害としても迎えられるグラシュティグは地と結びつきその力を帯びた古代のフェイである。悪ではないがグラシュティグは予測できず短気である――簡単に興奮して怒り、軽蔑の対象に大きな危害を与える為の強力な魔法を所有している。 グラシュティグは緑がかった肌とファウヌスやサテュロスのものに類似した山羊の下腿を持つ奇妙な人間の女性に似ている。グラシュティグは流行のローブあるいはガウン、通常は夏や秋の頃の色をしたまま凍った葉から製織されたもの、で獣のような下半身を多い、シンプルではあるがエレガントな宝石で身を飾る。彼らの忘れられないような目は瞳孔を示さず、彼らが踏むあらゆるステップは終わりなき舞踏の中の1つの動きのように見える。彼らは気まぐれかもしれないが、時に深く熟考し行動する、特に大きな怒りが心頭に発する際には。 グラシュティグは現存する中では最古かつ最強のフェイに属する。伝説によると彼らはかつては過酷な世界で農民の素朴な生活をしている初期の人間を守るために努めた地の非実体の霊であり、その保護と近接を通してこれらの霊は現在保持している形状へと合体したのだという。その起源がどうであれ、多くのグラシュティグは地方の農村、森林、沼、そしてそこに住む人々を保護している。彼らの保護はしばしば控えめである;彼らは枝葉の迷彩から自身の力と保護を発現し、荒野自体が侵入者に対して行動しているように見せかけることを好む。しかし大いに必要になった時や、非常に怒った時、グラシュティグは公然と危険に立ち向かう。グラシュティグによって保護されている場所の住人は、しばしば指定された上座に食べ物、飲み物、宝石、工芸品を残すか、グラシュティグが陰から聴けるよう集まって歌を歌ったり話を語ったりする。そのようなコミュニティは森林に住む緑の乙女の物語や、原始のままの荒野の物語を伝え、彼らの移り気な保護者に関するいくつかの教訓的な話を語る。このような話には2つの目的がある:地元のグラシュティグの恵みを保つ為と、しばしば死を意味する事になるこの緑の乙女の怒りを誘発する何らかの行為から若者と愚者を保護することである。そのような慎重な畏敬の念のお返しとして、この年長のフェイの保護下にいる者は時に自分たちの為に不可思議にも動いた畝間や大地、干ばつの間に新鮮な水で満たされた飼葉桶や樽、あるいは彼方へ駆り立てられた殺戮する怪物さえ見つける。しかしそのような調和はしばしば希薄であり、グラシュティグの為に貢ぎ物を残す者たちは、彼女を賞賛するのと同様宥める為の行為も沢山する。水をもたらし土を耕すグラシュティグは同様に、田舎全体を荒廃させたり地震を起こしたりすることができる。グラシュティグの存在感だけで他の者に制御できぬ踊りの発作や発狂した気まぐれな行動を煽ることができ、グラシュティグを怒らせる者は本当に強力な敵を得る。 戦闘では、グラシュティグは容易かつ優雅に動き、典型的にはオーラの効果下にある者を衰弱させる呪術の目標としてから、撤退して援護させる為のアース・エレメンタルを招来し、敵を葉と泥で爆撃する。地とそこの植物と木々とのグラシュティグの体の生きている絆はグラシュティグを空中で脆弱化させ、彼女は地上に留まることができる限り留まる。しかし、怒りの頂点であってもグラシュティグはまだ時々理屈が通じることがある。グラシュティグは典型的に会談のために立ち止まり、貴重な好ましい魔法の十分価値のあるアイテム、典型的には木製や石製のアイテムと引き換えに戦闘を中止するよう揺れ動かされる。グラシュティグ自身は真実を曲げるかあからさまにごまかすことについての良心の呵責はないが、他の者がグラシュティグに嘘をつくとき極度の侮辱ととり、嘘を嗅ぎ分けるのが非常に上手い。グラシュティグが誰かが嘘をついたと推測すると、たとえその事実に反するものがお世辞のために話されたものであったとしても、グラシュティグはその人と再び話すことはないほど怒りに満ちる。 グラシュティグが登場する最も一般的な教訓的な話の一部には、時にグラシュティグが幼い子供を原野の故郷の奥深くまで誘い込み拐し、何らかの形でフェイのペテン師と入れ替えるものがある。実際にはこれらのフェイは子供の無邪気さ、正直さ、遊び心を楽しみ、通常は短時間会話か踊りをする為だけに留めてから家に無傷で送り届ける。
https://w.atwiki.jp/shintoism/pages/69.html
十種祓詞(とくさのはらへのことば) 高天原(たかまのはら)に神留(かむづまり)坐(ま)す 皇親(すめむつ)神漏岐(かむろぎ) 神漏美(かむろみ)の命(みこと)以(も)ちて皇神等(すめがみたち)の鑄顯(いあらは)し給(たま)ふ十種(とくさ)の瑞寶(みづのたから)を 饒速日命(にぎはやひのみこと)に授(さづけ)給(たま)ひ 天津御祖神(あまつみおやのかみ)は言誨(ことをしへ)詔(のり)給(たま)はく 汝命(いましみこと)この瑞寶(みづのたから)を以(も)ちて 豐葦原(とよあしはら)の中國(なかつくに)に天降(あまくだり)坐(まし)て 御倉棚(みくらたな)に鎭(しづ)め置(おき)て 蒼生(あをひとぐさ)の病疾(やまひ)の事(こと)あらば 玆(この)十種(とくさ)の瑞寶(みづのたから)を以(も)ちて 一二三四五六七八九十(ひとふたみよいつむゆななやここのたりや)と唱(とな)へつつ布瑠部(ふるべ) 由良由良(ゆらゆら)と布瑠部(ふるべ) かく爲(なし)ては死人(まかりしひと)も生反(いきかへ)らむと 言誨(ことをしへ)給(たま)ひし隨(まに)まに 饒速日命(にぎはやひのみこと)は天磐船(あめのいはふね)に乘(の)りて 河内國(かはちのくに)の河上(かはかみ)の哮峯(いかるがみね)に天降(あまくだり)坐(まし)給(たま)ひしを 爾後(そののち)大和國(やまとのくに)山邊郡(やまべのこほり)布留(ふる)の高庭(たかにわ)なる石上神宮(いそのかみのかみのみや)に遷(うつ)し鎭(しづ)め齋(いつき)奉(まつ)り 代々(よよ)其(そ)が瑞寶(みづのたから)の御教言(みおしえごと)を蒼生(あをひとぐさ)の爲(ため)に 布瑠部(ふるべ)の神辭(かむごと)と仕(つかへ)奉(まつ)れり 故(かれ)この瑞寶(みづのたから)とは 瀛都鏡(おきつかがみ) 邊都鏡(へつかがみ) 八握剣(やつかのつるぎ) 生玉(いくたま) 足玉(たるたま) 死反玉(まかるがへしのたま) 道反玉(ちがへしのたま) 蛇比禮(へみのひれ) 蜂比禮(はちのひれ) 品物比禮(くさぐさのもののひれ)の十種(とくさ)を 布留御魂神(ふるのみたまのかみ)と尊(たふと)み敬(いやま)ひ齋(いつき)奉(まつ)ることの平(よし{由縁}を &ruby(たひら)けく安(やすら)けく聞(きこし)食(めし)て 蒼生(あおひとぐさ)の上(うえ)に罹(かか)れる災害(わざはひ)及(また)諸(もろもろ)の病疾(やまひ)をも 布留比(ふるひ)除(の)け祓(はら)ひ却(や)り給(たま)ひ 壽命(いのち)長(なが)く伊加志八桑枝(いかしやぐはえ)の如(ごと)く立榮(たちさかえ)しめ常磐(ときは)に堅磐(かきは)に守(まも)り幸(さきは)へ給(たま)へと恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す ひふみ祓詞(のはらへことば) ひふみよいむなやこともちろらねしきるゆゐつわぬそをたはくめか うおゑにさりへてのますあせえほれけ 十種神寶大御名(とくさのかむたからのおほみな) 瀛都鏡(おきつかがみ) 邊都鏡(へつかがみ) 八握剣(やつかのつるぎ) 生玉(いくたま) 足玉(たるたま) 死反玉(まかるがへしのたま) 道反玉(ちがへしのたま) 蛇比禮(へみのひれ) 蜂比禮(はちのひれ) 品物比禮(くさぐさのもののひれ) 布瑠部(ふるべ)由良由良止(ゆらゆらと)布瑠部(ふるべ) 石上神宮(いそのかみじんぐう) 神拜詞(しんぱいのことば) 掛(か)けまくも畏(かしこ)き 石上神宮(いそのかみじんぐう)の大前(おほまへ)を拜(をろが)み奉(まつ)りて 恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)さく 大神等(おほかみたち)の廣(ひろ)き厚(あつ)き御惠(みめぐみ)を辱(かたじけな)み奉(まつ)り 高(たか)き尊(たふと)き神教(みをしへ)のまにまに 天皇(すめらみこと)を仰(あふ)ぎ奉(まつ)り 直(なほ)き正(ただ)しき眞心(まごころ)もちて 誠(まこと)の道(みち)に違(たが)ふことなく 負(お)ひ持(も)つ業(わざ)に勵(はげ)ましめ給(たま)ひ 家門(いえかど)高(たか)く身健(みすこやか)に 世(よ)のため人(ひと)のために盡(つく)さしめ給(たま)へと 恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す 稱(たたへ) 言(ごと) 布都御魂大神(ふつのみたまのおほかみ) 布留御魂大神(ふるのみたまのおほかみ) 布津斯魂大神(ふつしみたまのおほかみ)と 大御名(おおみな)は稱(たた)へ奉(まつ)りて 石上大神(いそのかみのおほかみ) 大神大神稜威赫灼尊哉(おほかみおほかみみいつかがやくたふとしや) 大神大神稜威赫灼尊哉(おほかみおほかみみいつかがやくたふとしや) 大神大神稜威赫灼尊哉(おほかみおほかみみいつかがやくたふとしや) 鎮魂歌「年中行事秘抄」 アチメ オオオオ オオオオ オオオオ アメツチ(天地)ニ キユラカス(玲瓏)ハ サユラカス カミワカモ カミコソハ キ子キコウ アチメ オオオオ オオオオ オオオオ イソノカミ(石上) フルノヤシロ(振社)ノ タチモガト(太刀欲得) 子ガフソノコ(願児)ニ ソノタテマツル(奉) アチメ オオオオ オオオオ オオオオ サツヲラ(薩雄等)ガ モタキ(持有木)ノマユミ(真弓) オクヤマ(奥山)ニ ミカリス(御狩為)ラシモユミ(弓)ノハズミ(弭見)ユ アチメ オオオオ オオオオ オオオオ ノボリマス(上座) トヨヒルメカ(豊日霊) ミタマホス(御魂欲) モトハカナホコ(本金矛) スヱハキボコ(末木矛) アチメ オオオオ オオオオ オオオオ ミワヤマニ アリタテル チカサヲ イマサカエデハ(今不栄) イツカサカエム(何時将栄) アチメ オオオオ オオオオ オオオオ ワキモコカ(吾妹子) アナシノ山ノ 山人ト ヒトモミルカニ(人見歟) ミヤマカツラセヨ(深山蔓為) アチメ オオオ オオオ オオオ タマバコニ(魂匣) ユフトリシテテ(木綿鎮) タマチトラセヨ ミタマガリ(魂上) マカリマシシカミハ(罷座神) イマゾキマセル(今来座) アチメ オオオ オオオ オオオ ミタマガリ(魂上) イニマシシカミハ(去座神) イマゾキマセル(今来座) タマハコモチテ(魂匣持) サリタルミタマ(去御魂) タマカヘシスナヤ(魂返為) ひふみ ・一(ヒト)二(フタ)三(ミ)四(ヨ)五(イツ)六(ムニ)七(ナナ)八(ヤ)九(ココノ)十(タリヤ) ・一(ヒト)二(フタ)三(ミ)四(ヨ)五(イツ)六(ムユ)七(ナナ)八(ヤ)九(ココノ)十(タリヤ)「十種祓詞」より ※鈴木重胤は鈿女命の神憑の歌「人、蓋、を見よ、神威(イツ)、炎々(ムユ)、成々(ナナ)、弥(ヤ)、心(ココ)の、足(タリ)」と捉えた。 すなわち人とは神たちのこと、蓋とは天石戸、天照大御神の窟戸を出ましますを感嘆するもの。 ・一(ヒ)二(フ)三(ミ)四(ヨ)五(イ)六(ム)七(ナ)八(ヤ)九(コ)十(ト) ・一(ヒ)二(フ)三(ミ)四(ヨ)五(イ)六(ム)七(ナ)八(ヤ)九(コ)十(ト)ヲヲ ・一(ヒ)二(フ)三(ミ)四(ヨ)五(イ)六(ム)七(ナ)八(ヤ)九(コ)十(トウ)※石上布留神宮記 ・一(ヒ)二(フ)三(ミ)四(ヨ)五(イツ)六(ムユ)七(ナ)八(ヤ)九(コ)十(トウ)『石上神宮の鎮魂祭』より ・一(ヒ)二(フ)三(ミ)四(ヨ)五(イ)六(ム)七(ナ)八(ヤ)九(コ)十(ト)百(モ)千(チ)万(ヨロズ) ・一ツ 二ツ 三ツ 四ツ 五ツ 六ツ 七ツ 八ツ 九ツ 十ヲ「石上神宮の鎮魂祭」より ※巫女が宇気を衝く際 布留の言の本 一二三四五六七八九十祓ひ給へ清め給へ 和歌の本 ふるへゆう 和歌の末 ゆらとをふるへ 大直歌 あたらしき 年のはしめに かくしこそ 千年をかねて たのしきをへめ 魂緒結びの歌 ソロヘテ(一) ナラベテ(二) ミツハリ(三)イツハリ サラニ(四) タネ(五) チラサズ(六) イハヒ(七) ヲサメテ(八) ココロ(九) シヅメテ(十) 鎮魂祭(勝山健雄「祭典略解」より) 掛巻母畏伎○○神社乃御前爾 (※特に八神殿の神等を招請して祭る時は、及添閉氐斎比奉留神魂高魂生魂足魂魂留魂大宮能賣御繕都神辭代主神等乃御前爾) 職名位勲功爵姓名 恐美恐美母白左久 高天原爾神留座 神魯岐神魯美乃命持氐 宇麻志摩治命乃御父饒速日命爾 十種乃瑞神寶 羸都鏡 邊都鏡 八握剣 生玉 足玉 道反玉 死反玉 蛇比禮 八比禮 品々乃物比禮乎授給比氐 天津日嗣止大八島國所知看皇御孫命乃大御身乎始氐 豊葦原乃水穂國爾在與留現志伎青人草等我身爾至麻氐 阿都加比奈米流所有良牟爾波 此乃十種乃神寶乎合世氐 一二三四五六七八九十止云比氐 布流倍由良由良止布流倍 如比奈志}氐婆死禮留人毛生反里奈牟止言依志氐 天降志給比志神乃故寶爾依氐 御代御代乃天皇乃大朝廷爾毛 仕奉良志米給比志神事乃御例爾神習比奉里氐 今此乃大前乎嚴乃淸庭止宇氣槽覆氐 神巫我矛取持知撞登騰呂加志天乃數歌宇多比阿計氐 浮禮往麻久須留玉乃緒乎多親爾結留氐魂結乃神事仕奉留状乎 宇麻良爾所聞看幸閉給閉止 獻奉留禮代乃幣帛乎平介久安介久所聞食坐氐 此乃某我身爾阿都加比奈夜米留病乃氣波早久速加爾伊夜志給比氐 曾我壽命乎婆常長爾守給比氐 玉緒乃身乎去良受浮禮出氐受 現身乃世乃長人止在良志米給閉止 乞祈奉留言乃由乎平介久安介久所聞食給閉止 猪自物膝折伏鵜自物頸根衝抜氐 天乃八平手打上介氐畏美畏美母白須
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1654.html
空賊に捕らえられたセッコたちは、船倉に閉じ込められた。 元の船の乗組員たちはそのまま船の曳航を手伝わされているらしい。 セッコは剣を取り上げられ、ワルドとルイズは杖を取り上げられていた。 周りには砲弾やら火薬樽やら酒樽やら様々なものが雑然と置かれている。 ワルドはそれらを興味深そうに見て回っていた。 考え事をしていたルイズが、暇そうに寝転がっているセッコに向かって声をかけた。 「ねえ、こっそり外の様子を見てきてくれないかしら」 「こっそりは無理だ。」 「なんでよ?」 ワルドが代わりに答えた。 「扉の外に看守がいるし、他にも見張りはいるだろう」 いや、そういうことじゃねえんだけどな。 ワルドに聞かれたくなかったのでルイズの傍に寄る。 (壁や床が、薄すぎる。中に隠れられねえし、通った後に少し穴が残る。) 「そう、困ったわね。なんとかならないの?」 (部屋から部屋へ渡り歩いて一人残らず死体にするぐらいならできるぜ? ホラー小説みたいによお。) ルイズの顔が引き攣った。 「あのね、セッコ?」 「なんだよお。」 「それは、絶ッッッ対、絶対に!駄目!」 面白そうだと思ったのになあ。 その大声に、あたりを調べていたワルドが戻ってきた。 「落ち着くんだ、ルイズ。僕たちはずいぶん丁重に扱われているぞ」 「杖を取り上げられて船倉に押し込まれてる、これのどこが丁重なの?」 珍しくワルドが正しい。気がする。 「だよなあ、ルイズはともかくよお、おっさんとオレが拘束の必要もない病人や子供に見えるかあ?」 まあ、オレに物理的拘束は意味ねえけどな。 「セッコ、ちゃんとワルドのこと名前で呼びなさいっていったでしょう。 ・・・でも、言われてみればおかしいわよね」 ワルドが言葉を続ける。 「それも不自然ではあるが、この部屋には火薬まで貯蔵してあるようだ。 確か、今のアルビオンでは火薬や硫黄が、黄金かそれ以上の価値があるのではなかったかな? もし、僕たちが自爆したらどうなるんだろうね」 「オレはまだ死にたくねえぞ。」 考えるのが面倒になってきたので再び寝転がる。 ワルドとルイズも腕を組んで首を捻った。 その時、突然扉が開いて痩せぎすの空賊が姿を現した。 「頭が、直々におめぇらを尋問したいとさ。」 なんだそりゃ?身代金を取るために家名でも聞くのかあ? ルイズが泡を飛ばして突っかかる。落ち着け。 「空賊風情が、貴族に聞きたいことなんてあるのかしら?」 「細かいことはお頭に聞いてくれ。俺たちも仕事なんでねえ」 そう言って男は笑った。 「いいじゃないか、ルイズ。直接交渉できるならこれほど楽なことはないだろう」 ワルドがルイズを制した。 とりあえず、様子を見るべきかなあ。 狭い通路を通り、細い階段を登り、三人が連れて行かれた先は立派な部屋だった。 どうやらそこがこの空賊船の船長室らしい。 扉が開くと、豪華なディナーテーブルがあり、一番上座に眼帯を着けたヒゲ面の派手な男が腰掛けていた。 大きな水晶のついた杖を持っている。 頭の回りでは、ガラの悪い空賊たちがニヤニヤと笑って、入って来たルイズたちを見つめている。 入り口のそばにいた一人が声をかけてきた。 「おい、お前たち、頭の前だ。挨拶しろ」 しかし、ルイズはそれを無視して頭を睨む。 「失礼ね!聞きたいことがあるならそっちから挨拶しなさいよ!」 頭はにやっと笑って言葉を返した。 「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、なら本題に入ろうか」 「何よ」 「実を言うと俺たちはな、貴族派の密命で、アルビオンに入る連中を監視してるんだよ。 貴族がこの時期のアルビオンに行くからには何かあるんだろう?旅行なんて言い訳は無しにしようや」 「そう、つまりこの船は反乱軍の軍艦なわけね?」 「いいや、それは違うな。俺たちはあくまで空賊。対等なビジネスさ」 「空賊と手を結ぶなんて本当にアルビオンの反乱軍は屑ね。 わたしはアルビオン王党派、いえ、アルビオン王家への使者よ。 曲がりなりにもあなた達が軍と対等な関係というのならば、大使としての扱いを要求するわ」 「なにしに行くんだ?あいつらは、明日にでも消えちまうよ」 「まだ、敗北宣言はしてないでしょう?それに、何のために行くかなんてあんたらに言うことじゃないわ」 頭は、妙に楽しそうな様子でこちらを見ている。そしてルイズに言った。 「成る程な。まあ俺たちはそんな重箱の隅みたいなことまでは気にしてねえさ。 金が入ってくりゃあそれでいいんだからな。ところで、今からでも貴族派につく気はないかね? あいつらは、メイジを欲しがっている。礼金もたんまり弾んでくれるだろうよ」 ルイズは少し震えながらも、胸を張って答えた。 「死んでもイヤよ」 セッコはその様子を見ながら思った。こいつは、本当に強情な奴なんだなあ。 ・・・確かフーケの時もこんなだっけなあ。 その精神構造は基本的に自分優先のセッコにとって納得できるものではない。 だが、“主”として信念を決して曲げないのは多分いいことなんだろう。 少なくとも、ワルドやアンリエッタよりはいくらかマシに違えねえ。 ワルドのほうを伺うと、神妙な顔で“頭”を見つめている。相変わらずよくわからねえ奴だ。 「もう一度だけ言う。貴族派につく気はないかね?」 大きく息を吸い、胸を張りなおしたルイズより先に、いい加減イライラしていたセッコが罵声を上げた。 「つかねえって言ってんだろうがよお。 どうしても寝返らせてえなら、腕を切り落とすなり今ここで現金積むなり 無理矢理従わせりゃあいいじゃねえか!オメーら訳わかんねえよ!何がしてえんだあああああ!」 「ちょ、ちょっとセッコ気持ちはわかるけど落ち着きなさい!」 ルイズが慌てて止める。それと同時に“頭”がセッコのほうをじろりと見た。 「貴様はなんだ?」 「使い魔だがよお、それがどうした」 「・・・使い魔?」 突然、頭が大声で笑い始めた。 「トリステインの貴族は、気ばかり強くって、どうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らずどもより、何百倍もマシだがね」 言いつつ立ち上がる。セッコはいきなりの変貌を観察した。 ワルドとルイズも顔を見合わせている。 「いや、実に失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」 頭はそう言うと、突然顔のパーツを剥がし始めた。 いつの間にかニヤニヤしていた取り巻きたちが直立している。 現れたのは、なんと威風堂々とした金髪の若者だった。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官だ。 もっとも、既にこの[イーグル]号しか存在せず、装わざるとも空賊と大差ない無力な艦隊だがね。 もっとわかりやすく表現するならば、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ルイズは口をあんぐりと開けた。 セッコは首を捻った。 ワルドは興味深そうに、皇太子を見つめた。 ウェールズは、笑みを浮かべると、ルイズたちに席を勧めた。 「アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか」 ルイズはいまだぽかんとしている。セッコは胡乱な目でウェールズを見た。 「なあ・・・おめえ本当に本物かあ?だってよお・・・」 今にもウェールズに掴みかかりそうなセッコを制して、ワルドが優雅に頭を下げた。 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」 「ふむ、姫殿下とな。きみは?」 「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵。 そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢。そしてそこの男がその使い魔です」 「なるほど、して、その密書とやらは?」 ルイズが慌てて、胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出した。 しかし、ウェールズは手紙ではなくルイズの指輪を見つめている。 「あ、あの・・・どうなされました?」 「ラ・ヴァリエール嬢、その指輪はどこで手に入れたのかね?」 「これは、任務を受ける際に姫殿下から賜ったものです」 「やはりそうか!それはアンリエッタが嵌めていた[水のルビー]だな。そして・・・」 ウェールズは自分の手から指輪を外し、ルイズの手に近づけた。 「この指輪は、アルビオン王家に伝わる[風のルビー]だ。 水と風は、虹を作る。王家の間にかかる橋さ」 2つの宝石が共鳴し、虹色の光を振りまいた。 「すごい・・・」 ルイズが感嘆したように呟く。セッコとワルドも目を丸くした。 ウェールズは満足そうに微笑んだ。 「すまない、少し話が逸れてしまった。では密書を頂こうか」 ルイズが一礼し、手紙をウェールズに手渡した。 ウェールズは、しばらくの間手紙を恍惚とした表情で眺めていたが、花押に接吻し、開封すると真剣に読み始めた。 「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い・・・、従妹は」 ワルドとルイズが無言で頷いた。 ウェールズの表情が少し曇ったが、最後まで読み終えた時には、微笑みに変わっていた。 「了解した。姫は、あの手紙を返して欲しいとこの私に告げている。何より大切な、姫からもらった手紙だが、姫の望みは私の望みだ。そのようにしよう」 ルイズの顔が輝いた。 「しかしながら、今、手元にはない。ニューカッスルの城にあるんだ。 姫の手紙を、空賊船に連れてくるわけにはいかぬのでね。多少面倒だが、ニューカッスルまで足労願いたい。 ・・・そうそう、剣と杖を返さないとな」 ウェールズはそう言って笑い、甲板に出て行った。セッコたちもそれに続く。 「なあ、ルイズよお?」 「何かしら?」 「アンリエッタは手紙を回収しろつってたけどさ。」 「それがどうしたのよ、今から取りに行くんでしょう」 「受け取ったら、即焼き捨てた方がよくねえかな・・・」 「なんでわざわざ命令無視しなきゃいけないのよ」 「いや、ヤバい手紙なんだろ?どこにあったって爆弾じゃねえかあ?」 アンリエッタがどうなろうと知ったことじゃねえ。 だが、たかが手紙が原因で同盟破棄?戦争?冗談じゃねえ。 まだ死にたくねえつーの。 「馬鹿ね、トリステインなりゲルマニアなり、ちゃんとした城の中にあれば大丈夫よ」 「盗まれたらどうすんだよ。」 「まともに機能してる城にどうやって忍び込むのよ。[ディテクト・マジック]っていう魔法を探知する魔法だってあるわ」 「いやほら、オレとかヴェルダンデみたいに。」 「あ・・・」 「気づけよ。」 「ま、まあ取り戻して姫様に返す前にでも考えればいいわ、多分」 「ほんとかよ。」 ルイズとセッコが話していると、ワルドを伴ったウェールズがルイズの杖とデルフリンガーを持って戻ってきた。 ニューカッスル城まではまだかなりかかるらしい。 そういえば、今日はまだ何も食ってねえなあ。 セッコは、飴を女神の杵亭に忘れてきたことを後悔した。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8003.html
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……ねえ、ギーシュ。正直に話してくれない?」 ふがくたちがラ・ヴァリエール領に向かった翌日。トリステイン魔法 学院では一人の男子生徒が複数の女生徒に問い詰められていた。 「な、なんのことだい?モンモランシー」 「とぼけないで!この三日間、ルイズと二人でどこ行ってたの?」 「……そのルイズの様子も何か変だったわね。お姉さんに引っ張られて 帰っちゃったからちょっとしか見てないけど、妙に気を張っていたというか。 タバサはどう思う?」 ギーシュに詰め寄るモンモランシーの横で、キュルケは横で本に没頭 している親友に問いかける。その返事は素っ気ない。 「確かに変。たとえるなら、何かの罪に怯えているような感じがした」 タバサの言葉に、ギーシュは小さく肩をすくませ、遠くを見るような 目をする。 「罪……か。あれを罪だというのなら、軍人は全員罪人だよ」 「どういうこと?」 ギーシュのその言葉に、三人は顔を見合わせた。 アルビオンの首都ロンディニウムの南側に、かつて王権が君臨した ハヴィランド宮殿がある。 そこの白ホールは、まさに『白の国』アルビオンの要にふさわしく 白一色に塗りつぶされた荘厳な場所。一六本の白大理石の円柱がホールの 周囲を取り囲み、白亜の天井を支えている。白い壁には傷一つなく、 光の加減で顔を映し出すほどに輝いて見えた。 そんなホールの中央には、巨大な白大理石の一枚岩から削り出した 『円卓』がしつらえられている。平らに磨き上げられた岩盤は、そこに 集う者の心を映すとすら言われていた。 おおよそ二年前までは、そこは大臣たちが王を取り囲み国の舵取りを 行った場所であった。しかし、今その『円卓』の座に座る者は、王政府から 国を取り上げた革命者たち。革命政府の貴族議会議長兼初代神聖皇帝 オリヴァー・クロムウェルは、上座に座り静かに目を閉じる。その背後には、 彼の秘書であるシェフィールドという女性が、影のように寄り添う。 ライトニング姉妹の姿がここにないのは幸いか。クロムウェルは、 戦の傷も生々しい将軍たちを前に、いささかも動じてはいなかった。 一人の男が挙手をする。ホーキンス将軍――白髪と白髭がまぶしい 歴戦の将軍は、その顔の半分を包帯で覆っている。ホーキンスはきつい目で、 ほんの二年前まではただの地方司教でしかなかった皇帝を見つめる。 クロムウェルに促され、彼は立ち上がった。 「閣下にお尋ねしたい」 「なんなりと質問したまえ」 「先程ご報告致しましたように、ニューカッスルの地で我が軍はかろうじて 勝利を収めましたが、艦隊と陸軍戦力再編の必要に迫られました。 艦隊がなければ軍を運ぶことすらできず、兵がいなければ国土を守る 以前の話となりますからな」 うむ、とクロムウェルは頷いた。そして、視線が同じく頭の包帯が 痛々しい肥えた将軍、ネルソン提督に向く。 「先の戦闘で、卿は陸兵五万を見捨てて艦隊を立て直し、見事王党派を 仕留めて見せた。そのとき、卿は、余に力を貸してくれている双子の 乙女たちとよく似た鋼の翼持つ乙女を見たと言うが、本当かね?」 ネルソンは処刑台に立つ罪人の気分を押し隠し、毅然と起立すると クロムウェルに向かい合う。 「その通りです。閣下。そして、艦と多くの将兵を失った責任は、 すべてこの私にあります」 大破状態でロサイスに帰投した巨大戦列艦『レキシントン』は、現在 予定を前倒しして突貫で改装工事に入っていた。その艤装主任には予定 通り彼の副官であったボーウッドが任されている。そして、ネルソンは 提督の任を解かれ、巡洋艦の艦長となることが決まっていた。 「なるほど。だが、余も卿ほどの優秀な将官を処刑することは忍びない。 卿には、これからもこのアルビオンのためその力を振るって欲しい」 「……寛大なご配慮、誠に痛み入ります」 茶番だ。すべての責任は、総司令官であったサー・ジョンストンが 取るべきなのだ。だが、得てして政治家というものはこのような責任 回避に長ける。しかし、生粋のアルビオン軍人であるネルソン自身が、 あの戦いにおける死者たちに責任を感じていたことは、紛れもない事実 だった。 ネルソンが着席したのを見計らって、クロムウェルは言う。 「……さて、諸君。王党派を打倒した我々は、次なる段階に進まねばならぬ」 クロムウェルのその言葉に、背後に立つシェフィールドがかすかに 笑みを浮かべたことに気づく者はいなかった。この会議がもたらす結果 ――それをハルケギニアの諸国が知るには、まだ少しの時間を必要とした。 夜も更け、双月が天空高く輝く頃……。 そこが最前線であることを雄弁に物語る高い城壁と深い堀に囲まれた ラ・ヴァリエール城の大ホールは、沈黙に包まれていた。 深夜にもかかわらず、娘たちを待っていたかのように開かれた晩餐会。 シエスタは召使いとして参加を許されなかったが、ふがくはルイズの 使い魔ということと、異国の士官待遇であることから、特別に晩餐会への 参加が許されていた。 とはいえ、ふがくはルイズの隣、一番下座である。三十メイルほども ある長いテーブルに座るのは、ふがくを加えて五人だけ。話によると、 ラ・ヴァリエール公爵は今日は戻らないらしい。それでもテーブルの 周りには使用人が二十人ほど並んでいる。壮観な眺めだった。 上座に控えた公爵夫人は、到着した娘たちを見回した。その視線が ふがくに向けられたとき、そのエレオノールをもしのぐ苛烈な視線を、 ふがくは礼で受け流す。 この母にしてこの娘あり、ってとこかしら――ふがくは、公爵夫人の 年の頃を五十過ぎだと見る。だが、それは長姉であるエレオノールの 年齢から推測したものであり、実際には四十半ばに届かないように見えた。 目つきは鋭く炯々とした光を湛え、まだ色あせぬピンクブロンドは頭の 上でまとめられていた。なるほど、カトレアとルイズの髪の色は公爵夫人 ゆずりなのだ。そして、その人をずっと傅かせてきた者だけがまとうことが できるオーラは、ふがくに警戒を超えた敵意を向けていた。 ルイズはそのオーラにすっかり圧迫されてしまい、久しぶりに会う 母親だというのに、かちんこちんに緊張している。この様子だと、家族で 心を許せるのはカトレアだけのようだ。 「母さま。ただいま戻りました」 エレオノールが代表して挨拶すると、ラ・ヴァリエール公爵夫人は 無言で頷く。そして、三姉妹とふがくがテーブルにつくと、給仕たちが 前菜を運んでくる。晩餐会の始まりだった。 (これ、本当に家族?誰も一言も発しないばかりか、みんな公爵夫人の オーラに萎縮しちゃってるじゃない) 息が詰まりそうになるような、銀のフォークとナイフが食器と触れあう 音しかしない時間。結局、誰も言葉を発しないまま、沈黙の晩餐会は 終了した。 ルイズのことは、明日ラ・ヴァリエール公爵が戻り次第ということに なった。 ふがくは自分のために用意された部屋には入らなかった。どうやら 納屋に簡易ベッドを運び込んだらしく、壁には箒が立てかけられ、 ベッドには乾いたぞうきんがかかったまま。トリステイン王国の他国の 士官を遇する手法を見たふがくは、結局この国は魔法が使える貴族以外は 人間だと見ていないのだと再確認しただけ。後でこの有様を見たルイズが 母親に猛抗議することになるのだが、それもあとの祭りである。 そんなこともあり、ふがくはちょうど部屋に来ようとしていたシエスタを 誘って、ラ・ヴァリエール城の一番高い尖塔の上に腰掛けていた。尖塔の 上からラ・ヴァリエール領を見渡すと、真夜中だけあって明かりがついて いるところは衛兵の詰め所くらいしかない。村も眠りについており、 夜の帳が降りた広大な領地の上に星が瞬く夜空が広がっている。 大日本帝国の鋼の乙女たちの駐屯地であった木更津基地から見た空とは 違う光景に、ふがくも、そしてシエスタも思わず目を奪われた。 「学院の仲間が言ってました。ラ・ヴァリエール家は、トリステインでも 五本の指に入る名家なんですって。こんなお城に住むのも、当然ですよね。 はぁ、爵位も、財産も、そして美貌も何でも揃ってて……。 ミス・ヴァリエールが羨ましいな」 溜息混じりにそう言うシエスタ。その様子に、ふがくは小さく溜息をつく。 「そんなものかしらね」 「そうです。だって、わたしが欲しくても手に入れられないものを、 たくさんお持ちなんですもの」 シエスタの顔は赤い。それは照れているのではなく、酒が入っているせいだ。 シエスタも付き添いのメイドとはいえお客様には違いなく、この城の 召使いは彼女をもてなすために酒を出したらしい。吐く息にも酒の臭いが 混じる中、ほろ酔い?のシエスタはがさごそとシャツの隙間からワインらしい 酒の瓶を取り出した。瓶の中で丸のまま漬け込まれた、その口よりも大きな リンゴが酒に揺られている。 「どっから持ってきたのよ」 「もらったのれす」 すでにろれつが怪しい。シエスタはコルクを抜くと直接ぐびっと酒を あおった。その飲みっぷりは、普段のシエスタからは考えられないほど 豪快なもの。ぷはっとシエスタが瓶から口を離すと、その顔には至福の 笑みが浮かんでいた。 「おいふがく」 呼び捨てである。ふがくは無言で差し出された瓶を受け取ると、そのまま 口をつける。リンゴのフルーティな香りがワインより遙かに高いアルコール 度数とともにふがくののどをゆっくりと潤した。 「いいお酒ね。シエスタ、これどっから持ってきたのかしら?」 「厨房のテーブルの上にあったのれす」 どうやらシエスタは、一本つけられたワインを飲み干して気分が良くなり、 そのままテーブルの上の酒を適当に失敬してきたらしい。そこでカルヴァドス、 しかも年代物のラ・ポム・プリゾニエールを選んでくるのは……何とも 酒癖の悪い。しかもこんなものを一気飲みしたにもかかわらず、急性 アルコール中毒になった気配もない。ふがくはシエスタの意外な一面を 見た気がした。 「……相棒。お客さんだぜ」 そんな惨状の中、不意にデルフが言う。デルフは機能低下したふがくの 電探を補うため、背中に背負われている。ふがくが接近してくる何かに 意識を向けると、そこにはルイズを抱えたまま『フライ』で飛び上がって きた、カトレアの姿があった。 いきなりの酒の臭いの歓迎にルイズは面食らったが、カトレアはにこやかに 微笑んでいる。 「あらあら。小さいルイズがまだ高く飛べないって言うから一緒に来て みたけれど……」 「あ、あんたたち……何やってんのよ……」 『虚無』のルイズが『風』の系統魔法である『フライ』を使えるわけが ないのだが、方便として『風』の系統とエレオノールに言ってしまった以上、 そう言ってごまかすしかなかった。だが、それ以前にルイズは尖塔の上で べろんべろんに酔っ払ったシエスタに絡まれながら平然と自分たちに 向かい合うふがくに、思わず溜息をつかずにはいられなかった。 「別に。学院と同じでラ・ヴァリエール家の素晴らしい待遇に涙が出そうに なったから、夜風に当たりに来たのよ」 「学院と……同じ?」 カトレアが不思議そうな顔をする。その様子にルイズは苦虫を噛み潰した ような顔をした。 「……部屋のことは悪かったわ。母さまにちゃんとあんたのことを話して 別の部屋を用意するようお願いしてきたから、ラ・ヴァリエール家が 他国の士官待遇をこんな風に扱うなんて思わないでちょうだい。 それより、ちいねえさまにパインのカンジュメを食べさせてあげたいの。 道具貸して」 ルイズとカトレアがふがくにあてがわれた部屋を訪れた理由はそれだった。 あの日テーブルの上からパイン缶をふんだくったルイズは、ふがくから 保存方法――冷暗所、なのでルイズはクローゼットの中に入れていた――を 聞いてまで、この日のために取っておいたのだ。ところが小皿と銀の フォークの準備も万端、いざ開封しようとして……道具をふがくが持って いることに気づき、それを借りようとしたのだが――あまりのぞんざいな 扱いに顔から火が出る思いだった。 「それはいいけど……ここで食べる気?」 言われてルイズは気がついた。ここは城でも一番高い尖塔の上。 体の弱い姉にはちょっと厳しい場所だ。加えて、酔っ払ったシエスタもいる。 ルイズたちはシエスタを彼女にあてがわれた部屋に寝かしつけた後、 カトレアの部屋に移動した。ルイズはふがくからサバイバルナイフを 受け取ると、格納されていた缶切りを引っ張り出してゆっくりと缶を 開けていく。その甘酸っぱい香りに、カトレアの部屋にいる動物たちも 鼻を鳴らす。 「さわやかな香りがするわね。これがあなたの国の香りかしら」 カトレアの問いかけに、ふがくは静かに答える。 「半分正解……ですね。これは我が国の南方領土で採れる果物ですから」 ふがくの口調に、カトレアはやや不機嫌な様子を垣間見せた。 「あらあら。そんな口調で話されると突き放されているような気がするわ。 あなたはルイズの使い魔だけど、わたしはもっとあなたのことを知りたいと 思うわ」 カトレアはそう言ってふがくに微笑みかける。そうしているうちに ルイズが缶を切り開けて、中から黄色いリング状のパインのシロップ漬けを 小皿に取り分けた。 「ちいねえさま。食べてみて」 ルイズに促されるまま、カトレアは銀のフォークでパインを切り分け 口にする。その甘酸っぱい未体験の味に、カトレアは素直な感想を告げた。 「甘酸っぱくてさわやかで、とてもおいしいわ。わたしの知らない遠い国には、 こんな食べ物もあるのね」 行ってみたい……カトレアの口から誰にも聞き取れないような小さな 言葉が漏れる。それを聞き取ったのはふがくだけ。だがその言葉の意味を 察したのか、ルイズがぽつりと言う。 「……ちいねえさまはお体が弱いの。国中からお医者さまをお呼びして、 強力な『水』の魔法を何度も試したのだけど……全然効かないのよ」 「魔法でもどうにもならない病って、あるようね。なんでも、体の芯から 良くないみたい。多少水の流れをいじったところで、どうにもならないんですって」 ルイズとカトレアの言葉に、ふがくは何も言えなかった。 カトレアの病気は、原因が分からないらしい。体のどこかが悪くなり、 そこを薬や魔法で抑えると、今度は別の部分が悲鳴を上げるのだ。 その繰り返しで、彼女は優秀な素質を持っているのに学校に通うこともできず、 公爵家令嬢という地位も美しい容姿も持っているにもかかわらず嫁ぐことも できなかった。だが、それでも、カトレアは微笑んだ。それがルイズには 姉が不憫で仕方ないとしか思えなくなっていた。 「原因が分からないんじゃ、確かに投薬してもそれが効いてるかなんて 分からないわね」 「そういえば、ふがく、あんたの国って、医学は進んでるの?」 ルイズの問いかけに、ふがくは一瞬どう答えてよいものか迷った。 そのため、返答も曖昧なものとなった。 「……それなりにはね。魔法みたいなことはできないことも多いけど。 第一、それ前にも聞いてこなかった?」 「そうだったかしら?」 「まぁ、それ以前に帰る方法が分からないんじゃ、どうしようもないわね」 肩を落とすルイズ。二人の様子を見て、カトレアがころころと笑う。 「二人とも仲が良いのね。ふがく、ルイズから聞いたのだけど、 あなた、空の上まで飛べるそうね?」 ふがくはルイズを見る。どうやら母親にふがくのことを説明するときに、 ふがくが高高度まで上がれることを話してしまったらしい。アルビオンまで 行ったことは話していないようだが……ふがくは観念したように言った。 「ええ。ご主人様を連れて昇ったこともあります」 カトレアはそれを聞いてやや寂しそうな顔をする。 「まだ硬い口調ね。それに、ルイズのことも普段からそう呼んでいるの?」 ふがくが首を振る。そうすると、カトレアはふがくにこう言った。 「なら、わたしにも普段のルイズと同じ話し方にしてほしいわ。 それからこれはお願いなのだけれど……」 カトレアが申し出たことに、ルイズは思わず目を丸くした。 双月が西に傾き始めた夜の練兵場に、ルイズたちはいた。カトレアは 防寒のために着替えており、デルフリンガーを背負ったふがくもすでに プロペラを回し、軽く浮き上がった状態でそのスタイルの良い腰を背中から 抱きしめていた。翼端灯の光が三人を照らす。 「ふがく!ちいねえさまの具合が悪くなったらすぐ降りてきなさいよね!」 ルイズが心配そうに言う。カトレアは、ふがくにルイズが見たのと 同じ空を見たいと言ったのだ。さすがに具体的な高度の話は母親には しなかったようだが、それは病気のために領地から出たことのない カトレアの好奇心を強く刺激していたのだった。 「それじゃ、お願いするわね」 「分かりました。それじゃルイズ、ちょっと行ってくるわね」 その言葉を合図に、ふがくは助走もほとんどなしに空に舞い上がる。 その姿はすぐに夜の闇に溶け、見えるのは翼端灯の赤青白の光とエンジンの 排気炎だけになった。 「……まったく。どうしてこうなっちゃうのよ……」 練兵場で独りつぶやくルイズ。その様子を見ている影の存在に、 彼女たちの誰も気づいていなかった。 ふがくは上昇角度はややゆるめにし、カトレアの負担にならないように 気を遣いながら速度を上げる。ラ・ヴァリエール城がどんどん小さく なっていくその様子に、カトレアは驚きの声を上げた。 「まあまあ。竜籠には乗ったことがあるけれど、それが馬車に思える くらい速いわ」 「巡航高度での水平飛行なら、もっと速く飛べます。現在高度4000メイル。 カトレア様、体の具合はどうですか?」 「ルイズや二人だけの時は、ルイズにしているように呼び捨てでかまわないわ。 それに、まだ硬いわね。 でも、もうアルビオンより高く上がったのね。速すぎて実感できないわ」 体について何も言わないということは、とりあえずは大丈夫だと判断した ふがくは、そのまま高度を上げる。夜のラ・ヴァリエール領は明かりも ほとんどなく、ルイズから聞いたフォン・ツェルプストー領との国境線を 見れば、そちらの方がこの時間でも明かりが灯っている場所があり 活気づいているように見えた。 「……こうして見ると、父さまが頑張っていても、トリステインと ゲルマニアの差が見えてくるわね。あなたへの仕打ちがそうであるように、 伝統に固執しすぎて見えなくなっているものがあるのね。 ねえ、このまま国境線を越えてみない?この高度とあなたの速度なら、 見つかる前に戻ってこられるわよ」 「冗談でも止めて……。それに、もうすぐ高度8000メイルに到達します。 少し揺れるから、気をつけて下さい」 その言葉にカトレアは目を丸くした。 「あの『風の門』?昔ガリアの竜騎士が挑んで墜ちたという吟遊詩人の 詩でしか聞いたことがないわ。楽しみね」 ふがくはなるべく揺らさないで突破できるよう、角度を調整して偏西風に 突入した。背中の排気タービン式過給器が力強い鼓動を響かせて風を 切り裂き、一気に駆け抜ける。高度13000メイルで風を抜け、ふがくは そこで上昇角度を緩めた。 「すごい西風だったわね。本当に天空への城壁みたい。でも、すごい風の 音がしたけれど、ほとんど風そのものを感じなかったのは、あなたの力かしら」 「まぁ、そんなところです。もうじき高度15000メイルに到達します。これが、ルイズの見た空です」 ふがくは高度15000メイルで水平飛行に遷る。時間はまだ夜明けには 早いが、そこは雲一つない、黒いほどに青い空。空は彼方で大気によって 二つに分かたれ、眼下には夜明け前のラ・ヴァリエール領とフォン・ ツェルプストー領、いや、トリステイン王国と帝政ゲルマニアが、 その区別なくまるで精巧な箱庭のように見えていた。 そのあまりの美しさに、カトレアはしばしの間言葉を失った。そこに あるのは風の音とふがくのエンジン音、そして二人の呼吸だけ。 「…………すごいわ。まるで始祖の御許に迷い込んだみたい。なんだか 暖かいのはどうしてかしら」 「それは私と一緒にいるから。今の状態だと大体十分の六気圧ってとこ だけど、外気温は現在マイナス五六度、気圧も十分の一。私が手を放すと あっという間に体中から血を吹き出して、呼吸もできなくなって凍り付くわ。 その前に気を失ってるでしょうけど」 「それは怖いわね」 脅しに近い言葉を聞いてもカトレアは動じず笑っている。ふがくの 背中で「俺、凍えそうなんだけど」という声が聞こえているが、二人は 無視した。 「ところで、私に聞きたいことがあるからこんなことを頼んだんでしょ? カトレア……さん」 「うーん。もうちょっとね。 でも、それは半分だけ正解ね。ルイズが言っていたように、わたしは 生まれつき体が弱くて、今まで一度もラ・ヴァリエール領から出たことが ないわ。父さまは結婚もできないわたしを不憫に思ってか、ラ・フォンティーヌ領を わたしに分けてくださったけれど、それもいつまで保つか……。 だから、外に出てみたかったというのは、偽りのないわたしの本心よ」 カトレアのフルネームは、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ。つまり、厳密にはラ・ヴァリエール家から 分家したラ・フォンティーヌ家の当主ということになる。体が弱いために 社交界に顔を出したこともなく、求婚者がいないカトレアに、 父ラ・ヴァリエール公爵が与えた精一杯の温情だった。 そのカトレアは、今、ふがくに抱かれてトリステイン王国と帝政ゲルマニアを 見下ろす高みにいる。彼女が思っていた『外』とは異なるが、この空を 見たことがある人間を数えた方が早い場所にやってこられたことに、 今まで感じたことのない充足感を覚えていた。 「だから、まずは、ありがとうと言わせてもらうわね。ルイズを守ってくれて。 あの子、とても怖い思いをしたようね。無理に気を張って、それを 悟らせないようにしていたわ。それに、ルイズが『風』の系統に目覚めたと いうの、あれは嘘よね?」 ふがくはカトレアにどこまで話すか迷ったが……意を決してこう言った。 「超重爆撃機型鋼の乙女である私は、ルイズの命令で、この高度から 五万の敵を焼き払ったわ。それだけじゃない。私は誤爆して無関係な 集落まで焼いたし、ルイズが五万の敵を焼き払ってまで守りたかった 人たちを守りきれなかった……」 カトレアは何も言わず、ふがくの言葉に耳を傾ける。 「ルイズが魔法に目覚めたというのは、紛れもないことよ。でも、 どの系統に目覚めたのかは、その場に居合わせたある人に誰にも話さないよう きつく命じられたから、言えない。それがアンリエッタ姫殿下であっても。 ルイズが嘘をついたのも、その言葉を守ってのこと。だから、そのことは 責めないで」 それだけでカトレアには十分だった。言えない系統――それはただ一つしか ない。ラ・ヴァリエール家は、トリステイン王家の庶子をその祖とする。 つまり、その可能性は自分たちにはあったのだ。それでも、それがルイズで あったこと、そして、これから彼女が背負っていくであろう運命に、 カトレアは憐憫の情を覚えずにはいられなかった。 「……今、あなたを抱きしめられないことがとても悲しいわ。 ありがとう、ふがく。あなたが小さいルイズの側にいることを、 わたしはとても嬉しく思う」 「カトレア……」 「ええ。そう呼んでくれてかまわないわ。 わたしが聞きたかったことはそれだけ。さあ、もう降りましょうか。 あまり長居していると、ルイズが心配するわ」 そうして――再びラ・ヴァリエール城に戻ったカトレアに、ふがくと 一緒に理由も分からぬままルイズは強く抱きしめられたのだった。 前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6897.html
一際大きな爆発が起き、中心地点が砂埃によって何も見えなくなって永い数瞬の時が流れて、成功した事を理解した。 何故なら、中心地点の辺りから聞きなれない音楽が流れて来るからだ。 ゆっくりと土煙が薄くなる中、人型のシルエットが見えたかと思うと、人型を中心に紫に輝く巨大な光の柱によって土煙は一瞬で吹き飛ばされる。 同時に、強過ぎる光によって人型のシルエットがソレ以上鮮明に見える事も無く、誰かが唾を飲み込む音が耳に聞こえた。 「LOVE!」 聴き為れない音楽のテンポに合わせられるように、人型のシルエットが発した声が聞こえた。 声の質からして間違い無く、性別は男性だろう。 何故なら、ハッキリと断言出来る程にその声は低かったのだから。 「&」 徐々に紫色の光によって作られた柱が、細くなる。 同時に、力自慢の工夫が街で筋肉を自慢する為にやるポーズをシルエットがしているのに気付く。 しかしながら、光の柱からはとても強大な魔力を感じた事を考えると、工夫では無く、貴族なのだろう。 ・・・いや、なのだと信じたい。 「PEACE!」 光の柱が完全に消えると、ソコには・・・白鳥の羽を半分のサイズにしたような翼を羽ばたかせながら此方を見る変態が居た。 見た目は人間なのだが、人間かと聞かれれば即座に否と私は答える。 それ以前に、遠巻きに此方を見ていた女生徒の数名が『イヤァァァアアアアッ!!!』っと叫びながら倒れたのか、数名の男子生徒が慌てる声が聞こえる。 正直に自重しろと言いたかったが、言えるわけも無く・・・コレと契約をする為に口付けをするのかと思い、視界が霞むのも気にせずに、コルベール先生の方を向く。 「ミスタ・コr・・・」 「ミス・ヴェリエール。神聖な儀式ですので、早く契約を。それに彼は、古い書物に登場する天使のようですよ」 「てっ、天使?」 「それが私のポリシ~!」 野獣の咆哮。もしくは、爆音のような大声によって、空気をビリビリと振動させる天使(?)を見る。 両腕の筋肉を此方に見せつけながら、胸筋をピクピクと動かして筋肉をアピールしながら私に熱っぽい視線を向ける天使。 服装は・・・正直に言って卑猥と言うよりも気持ち悪いと言う言葉が似合う服装であり、180サントを超えるだろう巨漢の天使?の腕には見慣れぬ文字と絵の刺青が入っていた。 「天使・・・・・・様?」 「まぁ! なんて可愛らしい御嬢さん!」 人の良い笑顔をして、筋肉を強調しながら此方に向かって歩くる変態を見て一歩下る。 風に乗って、汗の匂いが僅かにただよって来たのを感じ、視線を逸らそうとするが、恐怖から逸らす事が出来無い。 「んもう! んもう! 何てキュートなのかしら! 我輩、たまらないわっ!!」 「こっ、来ないでっ!? ファイヤーボール!」 『ドゴンッ!?』と言う、過去最大級の爆発が天使を飲み込む。 これだけの爆発が直撃したならば、お母様とて無事にはすまないだろう。 幾ら天使が人とは違うとは言え、これで死んでくれれば再召喚の機会が与えられる。 それに一縷の望みを賭けた爆発の結果を見る為に、注視し続ける。 「何て可愛らしいアプローチ。こんな風に焦らされるのは初めてで・・・」 濛々と立ち込める砂埃の中から無傷で現れた天使を見て、一歩後ずさる。 何故? どうして? why? と幾つもの単語が頭に浮かんでは消えるだけで、答えなど出て来るはずも無い。 言うなれば、恐怖によって思考が支配されているに近い。 「我輩、軽くイッてしまったわ」 「い、嫌・・・」 両足から力が抜けてしまい、その場にへたり込んでしまう。 動かない両足の代わりに、両手を使って服が汚れるのも気にせずに逃げようと動く。 御願いだから、誰か助けてっ!と叫ぼうにも、その叫びは声にならず、ヒューヒューと口から漏れ出るのみ。 「天使殿、御待ち下さい。彼女が怯えているではないですか!」 声のした方向に首を向ける。 其処には、炎の蛇をしたがえたコルベール先生が天使を睨み付けていた。 「まあっ、理知的なおじ様! 貴方にも後でハグしてあげるから、待っているのよ!」 だが、天使はコルベール先生の話を聞かずに私を捕まえると、両腕で軽々と私を抱き上げた。 その時に無理矢理に近い形で一瞬見せられた顔は恐怖だったと言える。 切れ長の瞳を潤ませ、紫色のルージュが引かれたのであろう唇。 髭面で、髪は角刈り・・・気持ち悪さを助長させて余りあるとしか言えないその姿。 「もう、なんて! キュートな御嬢さん!」 頬擦りされる最中、コルベール先生が繰り出した炎の蛇による一撃が、天使に当たる前に虚空に向かって跳ね返されるのを見て絶望に支配される。 純粋に攻撃力と言う点だけを見れば、火の系統魔法の威力は非常に高いだけで無く、炎によって生み出された熱波が喉を焼く事すらある。 だが、見えない壁によって阻まれた火の蛇からは、熱波すら感じる事が無い。 その為に最終手段とも言える事を行なう為に口を開く。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え・・・」 そこまで言葉を紡ぐと、頬擦り等は無くなり、天使と正面から顔を見合わせる事になる。 正直、ワルド様ならば喜んで顔を見合わせるぐらいの事はするが、こんな濃い変態と言う名の天使と見合わせたいとは思わない。 その為に、意を決して残りの言葉を紡ぐ。 「・・・我の使い魔となせ!」 「貴女に幸あれっ!!」 ほぼ同時に言葉が終わった私と天使の唇が重なり、それで終わったかと思ったのが甘かった。 『むっちゅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!』 と言う言葉が似合いそうなまでのディープキスによって私の唇は蹂躙され、そしてキスが終わった後に地面に優しく下ろされた。 ついでに言うと、『ぢゅぽん!』ってな感じの擬音語が相応しい音を鳴らしながら唇を離した天使に向かって、キスの音じゃ無いと言ってやりたい。 言うだけの体力も気力も無いので言わないが・・・ 「ああん! 左胸に感じた事の無い痛みと模様。我輩を使い魔にする何て、いけない子ねっ!」 気色悪くシナを作りながら、うっとりと私を見つめる視線を感じ、心の底から泣きたくなる。 だがソレも数秒の事であり、天使はコルベール先生に向かって歩いて行く。 「お、御待ち下さい天使殿! 私の名前は、ジャン・コルベール。円滑なコミュニケーションの為に御名前を御教えいただけますかな!」 「んまぁ! 我輩とした事が自己紹介を忘れていたわ。 我輩は、能天使(パワーズ)に属する天使、ハプシエル。以後お見知りおきを」 そう言って、ウインクしたハプシエルがコルベール先生との距離を5メイル程まで続けた時、1人の少女の声が周囲に響き渡った。 「今よ皆! 一斉攻撃っ!!」 赤い髪をした宿敵とも言える少女の声と、その姿を見て私は救いの女神の姿は、彼女と同じ姿をしているのではと考えてしまった。 何せ、彼女の隣を駆け抜ける、女性の姿をした青銅のゴーレムや無数の魔法を見て、彼女がそれだけの魔法を従えているようにすら見えたのだから・・・ 総勢数十と言う攻撃魔法が絶え間無くハプシエルに向かって飛来し、土埃が巻き上がるとホボ同時に風の魔法によって土埃が吹き飛ばされる。 すぐさま、炎の蛇が混ざったのを見て、私も魔法と言う名の爆発を態とタイミングをズラして放ち続けた。 「あああん! 激しい・・・」 ハプシエルが発したその言葉を聴いた一同が動きを止め、絶望に支配されたかのような表情で一様にハプシエルを見る。 誰1人として手を抜いていない、全力の攻撃が何十と降り注ぎ、一部の召喚された使い魔も攻撃に参加していたと言うにも関らず・・・ 掠り傷一つ付いていないその姿を見れば、誰であろうと動きを止めてしまうに違い無い。 「何て激しいアプローチ。我輩、イッてしまったわ!」 最早打つ手無しとばかりに、何人もの同級生がフライで逃げて行く中、コルベール先生はその唇を奪われた。 そして、ハプシエルは逃げて行く同級生を、スキップしながら追いかけて行く。 その日・・・幾度もの絶叫が校舎から木霊した理由を、私は永遠に知りたくないと本気で思うのだった。 場所は変わって、異なる空間に存在するとある学園では・・・ 「エーネウスさん。先輩の機嫌が凄く良いみたいですけど、何かあったんですか?」 「実は、数時間程前の事です。御主人様の前に見慣れぬ鏡が現れたのですが」 「鏡がどうかしたんですか?」 「丁度その時、御主人様を不意打ちで抱き締めようとしたあの天使が、濡れていた廊下で足を滑らせ、そのまま鏡の中に突っ込んで行ったのです」 犬耳に尻尾を生やした美しいメイドの言葉に、ソレを聞いた少年は何と返したら良いのか解らないと言う微妙な表情を浮かべる。 正直、抱き締められてディープキスをされなかっただけでも、運が良かったとしか言い様が無い。 それを考えると、上機嫌なのも確かに頷ける。 「その後、御主人様が鈴穂さんを其処に連れて来て、リボンを外させた為に教授連でも探せないと言う状況になってしまったわけです」 確信的としか言い様が無い捜査の妨害を聞き、少年は自身が先輩と呼ぶ青年に視線を向ける。 丁度、紅茶を机の上に置いたばかりの青年が少年の姿に気付き、口を開いた。 「おお、拓人じゃ無いか。こっち来て適当に座れ。エーネの作ったスコーンがこんなに美味いと感じたのは初めてだぞ」 「何度も申し上げていますが、美味しく無いと感じているのは御主人様の味覚がオカシイからです」 不自然なまでに爽やかな笑顔を向けられ、普段とはまるで別人なその姿に驚きながらも机に向かって行く。 その横で、主人にツッコミを入れるエーネウスの言葉を聞きながら、上座に座る青年に促されるようにして拓人は空いていた椅子に腰を下ろす。 拓人と青年以外で椅子に座っているのは、巫女服とボンテージ姿をした二人の女性がおり、二人揃って地獄から解放されたかのような穏やかな表情をしている。 もっとも、この二人の女性にとっての地獄とハプシエルは、直接的には関係無いのだが、野暮な事を言う必要は無いだろう。 ただ一言、この場に居る者達が発するとしたならば、それは拓人ですら簡単に想像が出来る。 【平和だ】 間違い無く、その一言だと拓人は断言するに違い無い。 尤も、他の地において、ハプシエルが現在進行形でドタバタ騒ぎを引き起こしまくった為に、十数年後にはその地で崇められる者がが変化し、『愛と平和と美の天使ハプシエル』として崇められる事になろうと・・・ この場に居る者達にとってソレは何ら関係が無い事だろう。 続かない。 キャラの元ネタは、「まかでみ・らでぃかる」と言う小説に登場する能天使ハプシエルです。
https://w.atwiki.jp/kotozora/pages/154.html
竹山歿後の懷德堂は別に學主を置かずして、預人と教授とより成立ちしに似たり、教授は履軒なりしが、履軒歿して後ち、預人を以て教授を兼ねしは、竹山の第七子なる碩果なり。 碩果名は曾縮、字は士反、通稱は七郞、號を抑樓と云へり、明和八年を以て生る、母は革島氏、兄の薫園より少きこと四歲なり、兄弟十三人の內、只獨り存生せしより、易の剝の卦の上九に取りて、晩に別號を碩果と云ひ、又石窩とも書けり、夙に家學を承けて成立する所あり、寬政災後には、竹山に從ひて東上せしが、何日の比よりか天滿に別居して私塾を開き居りしに、享和三年兄蕉園早世せしかば、懷德堂に歸りて學校預人の職を繼ぎ、尋ぎて預人を以て教授職を兼ねつゝ、先業を恪守せり。 壙志に『最も心を經術に潜め、往々闡明多し』とあり、岩村南里が憶昔八首の中に、蕉園碩果を稱して一雙の蘭玉と曰ひ、伯兮作v賦才無v敵。叔也傳v經道既通の句あり、然れば碩果は夙に治經を以て儕輩に推されしと見ゆ、但し別に著述なく、今唯其の亡兄蕉園が盤庚に錯簡ありと言ひし說に本づき、序次を改定したる者一篇と、左傳私說一篇とを存するのみ、其の文は逹意を尙び、詩は詠史詠物を好めり、並河寒泉編次して一冊と爲し、名けて箎集と曰へり、其の寒泉に與へし詩に、洛岡正宗閑2聖道1。陸王邪說誤2書生1」の句あり、竹山は程朱を標榜せしも、猶王學を排斥すとも見えざりしが、碩果に至りて外朱内王の學風は、純朱子學に狹めたりしなり。 壙志又平賀明府に勸めて一忠臣を表し、一姦臣を黜けしより、時人大に悅びしことを記せり、平賀明府とは、時の町奉行平賀信濃守なり、碩果も亦竹山の後を承けて城代奉行等の爲に經史を講ぜしなるべく、其の關係より忠言を進めしと見ゆれど、其の事實は傳はらず。 碩果身を持すること嚴正、家を御むると勤儉にして、夙夜怠らざりしとは壙志に記す所なるが、其の孫黃裳の記錄に據れば、竹山時代の懷德堂は用度給せず、始終窮迫の體にて書を買ふ能はず、せめて佩文韻府淵鑑類函の二部なりともと願ふこと久しくして、纔に手に入れし程なりき、碩果の代に至りては、同志の助力にも依るべけれど、碩果天性理財に長じて勤儉を務め、其の妻篠田氏も亦内助の功ありて、懷德堂の用度は一代にて充足し、數多の圖籍を購蓄せしのみならず、庫中の大櫃十二箇には、備〓糧と題して米穀を貯藏せしほどなりとあり、然れば此の人は學問よりも治生に長せしなるべし。 懷德堂は斯に至りて幾變したり、甃菴創業の際は、道學を主として町人教育に適當ならしめんとし、蘭洲教授の比より學風一變して經學文章の培養と爲り、竹山に至りては、學問に貴賤の別なしと爲して武士の上座を廢し、經學文章の上に史學の一派を開き、蘭洲時代に養ひし實力を發揮して、四方の名士と應酬し、海內の學者をして其の風度を景仰せしめつ、此に至りて懐德堂の學風は再變せり、要するに甃菴の草創、蘭洲の培養、竹山の擴張と爲りて、小學より中學、中學より大學に發達せしなり、蕉園の天才にして長生せば、更に詩賦文章の長を挾みて懷德堂の學風を恢宏し、江戶の古賀侗菴佐藤一齋等と對峙して、文化文政の昌運を參贊すべかりけんを、惜しい哉早世せり、抑尋常學者にしては、竹山履軒の盛時に繼ぎて懷德堂の名聲を赫々たらしめんことは、何人も困難を免れず、碩果は此の困難なる時代の繼承者と爲りしなり、碩果乃ち家學を恪守して既成の業を保持するに力め、高く自ら標置して四方俗儒と交游せず、懷德堂の學風は斯に至りて三變し、閉鎖退嬰の方針を取りしが如し、南里が祭抑樓先生文に云く、薰猶同v器。先生是恥。乃引自遠。與v俗背馳。豈其求v高。畏v愆2前軌1。と。是れ蓋し苦心の存する所なり、人各天分あり、多きを望む可らず、予は碩果が家學を恪守して先業を失墜せざりしを多とす、文政八年六月七日は、懷德堂が幕府の官許を得たりし創學壹百年に當りしより、其旨屆出ければ、市尹より緒を承くること永久にして先業を墜さゞるを賞し、之を將來に傳へて永世渝らざらんことを戒飾せり、因て碩果文を作りて甃菴竹山の靈を祭り、『縮不肖乏を教授に承け、任重く力微にして半塗に廢せんことを恐る』の語あり、其の戰々兢々として父祖を忝めざらんことを期せしは、亦儒林世家の後たるに恥ぢず。 碩果の資性は南里の祭文に盡せり、曰く、先生德を秉ること貞正にして、堅苦自ら持し、外は峭属の如く、內は實に坦夷にして、心を操ること翼々、人に接して怡怡、德は中に粥ちて、人の知るを求めずと、其の世儒と交游せずして一方に割據し、人の知るを求めざりしは、亦其の天性にも出でけん、然れば交道極めて狹くして、社友故舊の外には、應酬甚だ希なりき。 當時京都には賴山陽あり、大阪には篠崎小竹あり、山陽小竹を中心とせる兩地の文壇には、騷人雅客の徵逐頗る盛なりしも、其の風流文雅は、碩果の學風と志尙とに投合せざりしより、時流の外に超然として、絕えて交涉なかりしも、獨り山陽とは、世誼姻戚の故を以て交際したりき。 山陽の母篠田氏(本姓飯岡)は梅〓女史と號し、其の春水に嫁せしは、竹山の媒妁なりしが、碩果の妻は梅〓の姪なりしより、山陽母を奉じて大阪に來る每に、碩果夫婦を訪問し、折々は懷德堂に宿泊せり、山陽或時、竹山先生の奠陰集を拜見したきよし請ひければ、碩果手稿を出して之を示せしに、山陽最初は正坐して繙讀しけれども、豪放磊落なる性質とて、追々坐を崩し、遂には足を出して橫になりながら讀みけり、碩果は嚴正なる性質とて、痛く其の無禮を憤り、怫然として坐を起ちたりとの逸話あり、梅〓の日記 を檢するに、此は文政七年九月五日の事なりけり。 四日晴朝の內中井へ往く、俊藏(後藤松陰)より到來の羊羹二匁棹持參、暫時して久太郞(山陽)一緒に奧村(幸右衞門)へよばれゆき、歸り中井に宿る、久太郞は渡し置き(母を中井に渡し置きの意)篠崎へ宿る。 五日晴中井へ久太郞來り、舟の事いひて迎ひに來る、時におもとへ人やり、同人も來、お柔達太郞(越智文平の子か)つれ來る、重五郞(篠田)も來り、暫時話の內、游舟おそくなるよしにて舟へ往く、今日のあそび小竹催しなり、あみうち舟は久太郞しるなり、小竹夫婦俊藏鶴齋(武内確齋)等なり、歸り、久太郞竹山先生遺稿見る、(日記は『家庭の賴山陽』の抄錄に據る) 竹山は山陽の爲には父執にして、父兄行なれば其の手稿を讀むにも、容を改め襟を正すべき筈との碩果の注文らしきに觀ても、碩果の道學先生たりしを知るべく、無頓着なる山陽が安坐寓目の狀と對照して、二人の爲人を想見すべし、此の日の舟游にも碩果は赴かず、閉戶先生なりしと見ゆ、碩果門人の山田孝堂が遺稿に、游2爭龍灘1記あり、中に『余れ幼時懷德堂に寓せしが、賴山陽翁來りて我が先師(碩果のこと)を訪ふ、翁素より酒を嗜み、先師は飮を好まず、杯酌の間、暫く對話して室に入り、余輩二三名をして翁に侍りて興を佐けしむ』と見えたり、竹山の子に似合はぬ下戶なりけん、山陽とは氣質各異りしより、己れは坐をはづして門人輩に相手を命ぜしにや、山陽少年亡命の比、叔父の賴杏坪より山陽の舅氏篠田剛藏への手紙に、蹤跡相分り御座候はゞ、中井御父子へ御相談被成候て、可v然御取計可v被v下候』とあり、竹山蕉園碩果も世話を燒きしなるべし。山陽は碩果より少きこと九歳なりき。 大鹽中齋は幼時碩果に從ふて句讀を受けたりしが、大學の素讀に、與其有聚斂之臣寧有盜臣の句に至り、寧といふ字の訓を覺えざりけるより、碩果は記憶の法を授けて、下に敷く筵席のことを覺えて居れと教へけるに、翌日來りて復習する時は、『其の聚斂の臣あらんよりはゴザ盜臣あらん』と讀みたるより、後々までも話草と爲りけり、其の大鹽既に長じて天保八年の亂を起せし時は、師の碩果火を難波の醫師谷川氏に避けしが、懷德堂は幸ひに兵火を免れたりき。 碩果の門人相應に多かりけんも詳ならず、姪の並河寒泉は別に傳あり、其の他には竹山に從學せし岩村南里も碩果の教を受けたりと見えて、童孩奉v教と記したり、山田孝堂(通稱は養節といへる播州の醫者)懷德堂に學びて碩果に師事し、後ち帷を大阪に下し、尋ぎて小野藩の儒員と爲り、維新の際には藩の學事に盡力せしもの、亦高弟の一人ならんか。 碩果は大鹽亂後四年にして山陽歿後九年なる天保十一年三月廿四日に病歿せり、享壽七十なり、此の春の試筆に、舌存猶坐新皐。比齒墜唯甘小宰羊の句あり、其の徒に授けて倦まざりしを見る、門人私に證して文正と曰ひ、誓願寺の先〓に葬れり、碩果の配は篠田氏、一男八女を生みしも、男は夭して嗣子なし。是より先き姪の並河寒泉を養ふて嗣と爲し、碩果は教授寒泉は學校預と爲りしが、寒泉故ありて本姓に復せしより、更に從弟柚園の幼子修治、後に桐園と號せしを養ふて嗣と爲せしが、碩果歿して後ち、桐園を以て學校預人と爲し、寒泉は教授と爲れり。(因に記す四女は夭し、長女は攝州歌島の醫家小笠原孝治に、四女は並河寒泉に、七女は大阪同心の笹脇正元に、八女は京都の儒醫並河尙教に適けり、)
https://w.atwiki.jp/srwkdm/pages/96.html
29代目スレ 2009/05/27(水) 【前スレの流れ!】 28代目スレ動く!そしてDBに例えられる第2世代! →免許取得!いい返事のゼラド! →味覚音痴!レイナのありったけの調味料! →ダンスバトル!好きですパンク嘘だけど! →くすぐったいぞ!玉フォームゼラド! →勇気で躍進!ランドの娘のブログが荒れる! →バンプレオリなのか!とんがり頭のおじさん! →ザ・連載クラッシャー!あれもこれも ランルさんのせいだ! →南米縦断!マキネ・アンドー17歳の手紙! →踏んでくれ!律儀 が過ぎるカル!→アメリカNo1モデラー!サッキー咲美は人類の誇り! →はしかのようなも の!久保に挑む子供たち! →スルー!ネタバレされないZSPD! →まわりくどいホワイトデ ー!フクミツシゲユキに騙されるな! →エボリューション!誰がハリウッドを見張るのか!? →今日のルルくじ!善行に励めハザリア! →魔法アイテム!姓名判断の威力! →カノウ家 末子!アルマナとの関連は!? →紫雲家長子!騎士道とはハーレムなり! →南極からの帰還! まずはアシの確保! →5期鬼太郎終演!そして年老いたルパン組! →疑惑の1時間30分!ベッ ドの中でお菓子を食べることの是非! →エイプリルフール!そして終わらない審議! →ガンガン の歴史!ドラクエ狩りは前世紀の遺物! →改造!ゼフィア先輩を人外にせよ! →審美眼!女 心のわかるハーレム脳! →おっぱいバレー!お前らほんとナイスおっぱいだ! →OG外伝か ら幾年月!ゾンビ兵はいつまでゾンビ兵なのか! →久保バッドエンド!しかし姉さん的にはそ うでもない! →レタスの部屋!ゴム製品に狼狽するスレイチェル! →ひとり暮らし!意外と 大変じゃない! →スパロボK!(この妄想スレに存続する価値があるのか?) →けいおん! ギターを習おうとするゼラド! →でんぐり返り!裸になってなにが悪い! →ロリコンなのか! ランディ1/2の趨勢 →アストラ改造!スク水だから2次創作じゃないもん! →狼たちの巣窟! 雀卓のナンブ家! →GW!男子のみの旅行! →マリvsハザリア!闇の帝王の作り方!→スラム ドッグマーズ!リサイクルは命がけ! →温泉卓球!乳揺れに妥協しない紫雲家長子!→名は体を 表さない!DQNネームの子供たち! →スパロボ学園!男の上連雀ちゃんが好きなんや! →男女 攻略!クォヴレーは落とせるのか! →駆けろ新スレ!そしてタッチはホモらせろ! ルアフ「暑かったり寒かったりがかわりばんこに来る季節だけど」 アクア「体調を崩しやすい季節ですから」 ルアフ「まあ、うちはまだコタツ出してるんだけどさ」 アクア「出してるだけならともかく、スイッチは切りましょうよ」 ラミア「鍋の準備などもしているがな」 アクア「なにをしているんですか!」 ヒューゴ「俺なんかドテラ着ちゃいますよ」 アクア「ヒューゴぉ~!?」 ぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつ アクア「なんですか、このハンパな時間のガマン大会は!」 ヒューゴ「シッ、アクア、もうカメラまわってるぞ」 アクア「あぁっ、ヒューゴ! どうしてそうハンパに職務に真面目なの!?」 ヒューゴ「あ、どうも皆さん、ここはですね、 アラドさんとゼオラさんの間に生まれた子供ゼラド・バランガを始め、 バンプレストオリジナルキャラクターの子供たちを捏造して、 どっか旅行行ったり乳を揺らしてみたり、 ダンスしたり音楽したり麻雀したり大いに乳を揺らしてみたり、 あと社会とか親子関係とか人間関係に悩みつつも逆に乳を揺らさなかったり、 あれそういえば全然学校で勉強してないなという事実からは目を逸らしつつも、 最終的には地デジ移行を阻止しようという主旨のスレです」 アクア「ヒューゴ! 地デジに反対なの、ヒューゴ!」 ヒューゴ「俺たちはですね、子供たちが通う学校の先生ってことになっています。 テレビがある家なんて、出かけるときガスの元栓閉め忘れればいいのに、ヒューゴ・メディオです」 アクア「ヒューゴ! もはやテレビが嫌いなの!?」 ラミア「ワンセグ機能とか電池食うし、正直あまり使わない、ラミア・ラブレスだ」 アクア「外付けのバッテリー付ければいいじゃないですか!」 ルアフ「そしてうちじゃブラウン管が現役、ルアフ・ガンエデンさ」 アクア「もはや軽い骨董品じゃないですか!」 ルアフ「もちろん、家具調テレビさ」 ラミア「ああ、テレビが家庭の中心にあった時代」 ヒューゴ「床屋さんのレジの上に鎮座していたあのテレビは、 単なる家電製品だなんて呼べない風格があった」 ルアフ「チャンネルを換えていいのは、上座に座るお父さんだけなのさ」 アクア「ヘンなノスタルジーを発生させないでくださいよ!」 ラミア「そんな中、定額給付金でアクオスを買っている女、アクア・ケントルム先生だ」 アクア「なんですか、その紹介の仕方は! いけないんですか、アクオス買っちゃいけないんですか!」 ラミア「べつに、いけなくはないが」 ルアフ「でも、ねえ」 ヒューゴ「まあ」 アクア「なんですか、その煮え切らない反応は!」 ルアフ「え~と、そもそものことの始まりは 2005年9月5日、20時29分18秒、 『ゼオラとアラドだからゼラド?アララ?』という書き込みがされてだね」 アクア「なんですか、突然」 ヒューゴ「アララとか、どこのバッフクランだよとツッコミを受けつつ」 ラミア「アラドとゼオラはその生い立ちからして子供が出来にくく、 いろいろとネガティブなルートを経てイルイ・バランガなどが誕生するのではないかなどといわれていたが、 バランガバランガ呪文を唱えていたら、なんか無事に誕生した」 アクア「あ、なんですか、成り立ちとか、そういうのを説明するんですか?」 ルアフ「夫婦水入らずの時間が欲しかったのか、それとも単に仕事が忙しかったのか、 バランガ夫妻は家を空けることが多かったんだ。 そんなとき、ゼラドくんの面倒を見ることになったのがなんか居候してたクォヴレー・ゴードンくんだった」 アクア「あれ、でも、クォヴレーさんて3αのエンディングでどこかに旅だったんじゃないんですか?」 ルアフ「バナナ忘れたから帰ってきたんだよ」 アクア「いいんですか、そんな適当なこといって!」 ヒューゴ「タイムダイバーとして並行世界やらなんやら行き来しているクォヴレーさんは、 歳の取り方が普通と違って、いま現在20代前半くらいのお兄さんとして認識されています」 ラミア「タイムダイバーではなく、特に並行世界など行き来していないアクア先生は、 バルトール事件当時すでに23歳であり」 アクア「並行世界です! 私だって、並行世界ばんばん行き来します! だから歳の取り方が違うんです!」 ヒューゴ「アクア、教育者として、そういうその場逃れの出任せをいうのはどうかと思う」 アクア「ごめんなさいヒューゴ! そんな、真面目に叱られるとは思わなかった!」 ラミア「バイオロイドである私は、歳とかあまり関係ない」 ヒューゴ「サイボーグである俺も、また同様です」 ルアフ「齢500歳を越える僕は、いまさら10年20年歳とってもどうってことないしね」 アクア「ズルい! みんなしてズルい!」 ルアフ「当初オムツの替え方すら知らなかったクォヴレーくんだけど、 特にアテにならない背後霊の助言を聞くことなく、順調に育児スキルを伸ばしていったんだ」 アクア「並行世界の平和とかはどうしちゃったんですか」 ヒューゴ「当初は性別すら決まっていなかったゼラドも、 女の子であり、ほっぺがぷにぷにであり、大食らいであり、 幼女でありながら朱ければ3倍という法則を知っていたり、 『てとらくとぅすぐらまどん』と流暢に喋ってみたりする子供に育っていったんだ」 ラミア「一方ディス・アストラナガンはメイドになってみたり、 シートの上でゼラドにおしっこされたりされていた」 ヒューゴ「それはさておき、そマブってなんのことなのかわからなかったり、 そマブってググってみても結局イミわからなかったり、 そマブってなんなんだよって書き込んでもスルーされたり、 そんなこんなでそマブの謎は深まる一方だったんです」 アクア「ヒューゴ! どれだけそマブが気になってるの!?」 ラミア「久しぶりに聞いたぞ、そマブ」 ルアフ「あれ、でもいまググったら出てきたよ?」 アクア「そしてゼラドは、クォヴレーのほかにイルイとかオウカとかに面倒見られつつ、 すくすくと育っていったのであった」 ヒューゴ「でも、人生はそうそう幸福にばかり染められているもんじゃなかった。 ゼラド13歳、このあたりの時期はクォヴレーさんが留守にしていることが多かったらしい。 若干荒れるゼラド、そして募る想い」 アクア「そうか! 少し距離をあければそういうことも!」 ヒューゴ「そんな中、αシリーズきっての乳揺れ主人公の子でありながら、いっさい乳がない少女クリハ、 幼稚園児ながら鞭を振りまわす少女レイナなど、順調に交友関係を深めていった」 アクア「なにごともなかったかのようにスルーされた!?」 ルアフ「ヒューゴ先生とアクア先生の関係は、まあこんな感じだよ」 ラミア「さあ、私の胸で泣くがよい」 アクア「泣いてたまるもんですか!」 ルアフ「アクア先生とラミア先生の関係もこんな感じだよ」 ルアフ「さらにレツヤ・オノデラ、ハザリア・カイツ、ヴィレアム・イェーガー、 レタス・シングウジなど、新しいお友達を次々と作っていくバランガ君」 アクア「すみません、一名、まったく聞き覚えのない名前が混じってたんですけど」 ラミア「まあよくある話だ」 ヒューゴ「あっ」 アクア「ヒューゴ、どうしたのヒューゴ」 ヒューゴ「ディストラさんがメイドの格好してるのは、 開発途中でシヴァーさんち付きのメイドさんが混じったからだっていう記述を見つけてしまいました」 ラミア「見つけなかったことにするんだ」 ヒューゴ「うすっ!」 ルアフ「まあよくある話さ」 ヒューゴ「その後、当初はゼラドと相当年の離れた弟であったはずのアオラが1歳違いの弟になってみたり、 ゼラドたちがサルファ当時の戦場に飛んでいくなどのエピソードがあってみたり、 トウキの名前が影も形もない感じに1スレ目が終了したのであったのです」 ラミア「まあ概ね現在と大差ない状態に仕上がっていったわけだ」 アクア「トウキくんは・・・・・・!」 ラミア「なにか?」 アクア「あれ、いまと大して変わらない」 ルアフ「まあ要約すると、何年経とうが大して変わっちゃいないんだよ」 アクア「そういっちゃうのもどうなんですか」 ラミア「メインテーマは、Sport、Music、Assemble、Peopleだ」 アクア「SMAPです! それはSMAPのキャッチコピーです!」 ヒューゴ「そうか! そマブってSMAPのことだったんだ!」 アクア「ヒューゴ! 『ブ』の存在はどう説明つけるの!?」 ルアフ「まあそこらへんも鑑みて、焼酎10杯いってみようか」 ヒューゴ「うーっす!」 ラミア「軽いものだ」 アクア「ああっ、飲まずにはいられない空気にされた!」 ルアフ「じゃあ、まあ、生徒たちが僕らと一緒に楽しくお酒が飲める年齢になるまで、 頑張っていこうじゃないか」 ヒューゴ「その日が来るのが楽しみっすね!」 ラミア「飲むのはいいが、酔った勢いでDFCスーツを着だして捕まる生徒がでなければよいが」 アクア「捕まりませんよ! DFCスーツは捕まりませんよ! これは正式な社交服ですよ!」 ルアフ「じゃあ安心だね」 アクア「安心です!」 ヒューゴ「すでにアクアは若干酩酊している」 アクア「DFCスーツでなにが悪い!」
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/20643.html
登録日:2012/05/20(日) 01 39 21 更新日:2024/09/06 Fri 17 07 20NEW! 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 お坊ちゃん 二代目 五大老 備前宰相 八丈島 八丈島のトビウオ 宇喜多直家 宇喜多秀家 岡山城 岡山県 御曹司 戦国大名 戦国時代 戦国武将 日本史 武将項目 水泳部 豊家の貴公子 関ヶ原 慶長14年、関ヶ原の勝者家康は天下統一の仕上げとして豊臣に戦を仕掛ける。 太閤秀吉がその力を全て込めた居城大坂城。 そこにはかっての栄光を取り戻すため、豊臣のため多くの浪人、武将が集まっていた。 かっては土佐22万石の主 長曾我部盛親 秀忠3万を足止めした昌幸の子 真田信繁 宇喜多家57万石の筆頭家老であった 明石全登 黒田家では1万6千石を拝領した男 後藤基次 豊臣へ為、1千石をなげうち馳せんじた 毛利勝永 豊臣家臣筆頭大野治長の弟 大野治房 秀頼の乳兄弟、弱冠22の美男子 木村重成 かれら七将の他、薄田兼相、塙直之等の歴戦の強者達 しかし、大坂城の最高権力者は秀頼の母淀とその取り巻き達であり、七将らの発言力は弱かった。 又、この七将達も思惑はそれぞれ。真に豊臣の為に戦うは毛利、木村、大野くらいか…。 その時、浪人で溢れかえる大坂城の人だかりを掻き分けて本丸に向かう男が一人。 全身に水を滴らせ、息も絶え絶えだが、眼光鋭く人々は気押され、彼のために自然と道が出来ていた。 しかし、一介の城兵を城内に入れるわけにはいかぬと彼を遮る門番。しかし、そのずぶ濡れの男は一喝した。 その頃、殿中では真田、後藤らの野戦出兵策は退けられ、籠城と戦いの方針は決まっていた。 「真田殿、後藤殿の策を取れば勝てようものを……」 歴戦の武将達はこの大坂城の首脳陣を嘆くと共に、彼等を押さえ、七将すら束ねる強い指導力と実績を持つ男が居れば…と思わずにはいられない。 初めはそれを、秀吉の遺児、秀頼に期待したものだが、もはや望むべくもない…そんな時だった。 ――バタン!! ふすまを開き、ずんずんと上座に進む男。それはさっき、大坂城に現れたずぶ濡れの男だった。 「何者ぞ!!」 叫んだのは若き秀頼の忠臣、木村重成。 しかし、彼の後ろの淀殿や治長、いや、彼らだけでなく後藤や真田ですらその顔に驚きを浮かべ、ただ呆然とその闖入者の顔を見ていた。 「殿……」 明石全登がようやくといった感じで放った言葉に、重成を初め、その場に居た武将達は皆、驚きの声をあげた。 「宇喜多備前中納言八郎秀家、豊臣家の御危機を聞き、八丈島より 泳 い で 参 っ た !!!」 宇喜多秀家とは戦国時代の武将(1572-1655)。宇喜多直家の嫡男であり備前岡山57万石の大名である。 【経歴】 元亀三年に岡山城で直家の次男として誕生するも秀家が九歳の折に直家は病死してしまう。 当時、宇喜多家は織田家に臣従しており、信長の計らいにより本領は安堵されるが、しがない地方大名でしかなかった。 しかし、ここで秀家は運命の出会いを果す。毛利征伐に出向していた羽柴秀吉である。 経緯は不明であるが秀吉は幼い秀家にべた惚れ状態になる。 一説には母、円融院が大変な美貌の持ち主であり秀吉が調略されたとか。 ま、おサルさんは女好きで有名だからね! 他には直家と秀吉が毛利攻めで一緒になったときに意気投合し仲が良くなり、直家が自分の死に際し秀吉に秀家のことを託したという説もある。 【豊臣政権下の秀家】 秀吉から「秀」の一文字を賜って秀家として元服する。 秀吉の猶子となり、暫定であるが後継者候補となる。 正室に秀吉の養女である豪姫を迎える。おねと秀吉には子どもが出来なかったが、その二人に親交があった前田利家、まつ夫妻が養子に出したのが豪姫である。秀吉夫妻が豪姫を可愛がったのは間違いなく、その娘を正室として迎えた秀家への期待が窺い知れる。またこの件で秀家は名実共に準豊臣家の一員となり豊臣政権下の筆頭大名である前田家と親戚関係になる。後にこの婚姻で秀家は命を繋ぐことになる。 秀吉は明を征服した後は秀家を朝鮮か日本の関白にしたいと述べている。 朝鮮から帰国後、五大老に任じられ秀頼の補佐を任せられる。 と父と比較して、あまりにも毒々しくない豊臣の後継者として秀家は成長していった。 これには叔父兄貴恐怖症の忠家も安心しただろう。 だいたい直家は一切合切を暗殺で仕留めるなんて卑怯だよ……、おっと誰か来たみたいだ。なに、茶でも飲まぬかって しかし、秀家の栄達は養父、豊臣秀吉の死去で瓦解してゆく。 【関ヶ原へ】 秀吉没後の翌年に宇喜多家でお家騒動が巻き起こる。 原因は秀家の豊臣第一の政策による財政の悪化と家臣団の派閥対立とされているが、原因は不明である。 実際秀家は嫁にくっついてきた中村次郎兵衛を引き抜いて重用していたし、浪費癖もあったのでそれらが要因でないとは言い切れない。 このお家騒動の調停に失敗したことにより直家以来の優秀な家臣団は出奔してしまう。 忠家の息子である従兄弟・詮家とは折り合いが悪かったようでこの時の騒動で敵対し出奔、関ヶ原では東軍につき大名となって坂崎直盛と改名している。というかこいつが調停できない最大の要因だったんじゃ しかし粘着気質なDQNで千姫事件を引き起こし、家臣に殺害され改易された。 安心なんてできなかったね忠家… 慶長五年 徳川家康が会津征伐へ出向いた隙に石田三成、毛利輝元らと計って家康打倒の兵を挙げる。 その中で秀家は西軍の副大将として一万を超す軍勢を率いて関ヶ原の戦いに臨んだ。 宇喜多騒動で優秀な家臣団の多くを損失していたが、筆頭家老である明石全登により東軍の主戦力である福島隊と一進一退の攻防線を展開するが、 小早川秀秋の裏切りから戦線は総崩れとなり、撤退を余儀なくされる。 戦後、秀家は薩摩で捕えられる。 他の西軍首謀者が半月以内に捕縛されているのに対し、一人だけ二年以上逃げ延びていた。 死罪になる可能性もあったが親戚である前田家の嘆願もあり八丈島への流罪に減刑された。 そして、月日は流れて大坂の陣へ…… 「宇喜多秀家 八丈島より 泳いで参った!!!」 とはならず、大坂の陣より40年後にひっそりと死去した。享年86歳。当時としてはかなりの長寿で、あの家康よりも長く生きている。ただ流転先では前田家の支援の地元民の援助もあったりと、それほど過酷ではなかったようだ。その後も宇喜多家は前田家から明治まで支援を受け続け、明治政府から請うをもらって、八丈島から帰還している。 関ヶ原本戦に一軍を率いて参戦した武将では最も遅くまで生きていた(*1)。 なお共に流された宇喜多家の面々が八丈島で血脈を繋ぎ現代まで続いていたり、八丈島の方言に岡山方言由来と思われる言葉を残していたりと、ある意味では遠く離れた流刑先で大活躍している。 二代目としての評価は、徳川秀忠や上杉景勝に遠く及ばないかもしれないが、 豊臣恩顧の大名として唯一、豊臣を裏切らなかった男の最後はいかばかりのものだろうか。 その忠義は、10万石で復帰させようと打診されたものの秀家が固辞したという逸話からもうかがえる。 なお、冒頭のコピペは2ちゃんねるの大坂の陣スレで誕生した、 「宇喜多秀家が大坂方の総大将だったら…」←「八丈島から来るの無理w」というネタから生まれたものである。 追記・修正は八丈島より泳いでからお願いします!!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] きっと パパからは めっさ溺愛されたろうな~ -- 名無しさん (2013-12-01 14 53 39) どっちのパパなんだ……コピペのネタは他にもコーエーから出た「決戦」ってゲームで大阪城の豊臣軍に秀家がいたって話も聞いた事がある -- 名無しさん (2014-10-09 08 20 27) 八丈島で子孫も残し、その末裔はコミックトムの編集部にまでいる・・・とは「風雲児たち」でのみなもと太郎の談 -- 名無しさん (2016-01-02 18 06 23) 「幼い秀家にべた惚れ」でアッーかと思ったが秀吉は一般人出身だから衆道に興味ないんだっけ。才能に惚れ込んだ感じかな? -- 名無しさん (2016-08-24 14 43 30) そういえば、八丈島から泳いで渡って、徒歩で大阪まで行った人っているのかな? -- 名無しさん (2016-08-25 13 59 28) 1万5000の兵で6,000の福島隊と互角程度ではやはりイマイチだね -- 名無しさん (2016-09-16 22 48 25) 地形と装備と士気と体調なんかにもよるがな -- 名無しさん (2016-10-06 12 12 22) それにしても、大阪の陣スレってなんだよ、とつくづく思うww -- 名無しさん (2017-02-02 13 01 59) 創造の秀家は、なかなかイケメンだったw -- 名無しさん (2017-08-28 12 28 05) それと立志伝5の秀家は、関ケ原に負けると戦死してゲームオーバーになっちゃうのね。『泳いで参った!』やりたかったのに……。 -- 名無しさん (2017-08-28 13 40 01) 宇喜多の場合は八丈島で子孫を残したというか八丈島に閉じ込められたままだったというか・・・本土の一族が嘆願して呼び戻してもらえたら良かったんだがそれがよりにもよって粘着キチガイ坂崎直盛という -- 名無しさん (2017-08-28 20 29 45) どうでもいいけど、本当に八丈島から泳いで来られたとしてもそこから大阪城に行くまでに乾くだろ! ……え、街道は徳川方に抑えられてるから直接大阪湾まで泳いで行ったって? -- 名無しさん (2019-04-25 03 18 14) 関ヶ原の戦いに参加した大名クラスの武将の中では敵味方含めて一番長生きしたとか -- 名無しさん (2019-04-25 03 26 19) ↑大半が配流された流刑地での生活だがな。仮に大阪の陣で豊臣方に参加していたら、どうなっていたであろうか・・・。 -- 名無しさん (2019-04-25 12 57 07) 架空戦史もののなろう小説で、主人公が大阪の陣直前にタイムスリップしてきて、それで秀家と意気投合してリアル『泳いで参った!』して、大阪の陣の結果を変えちゃう、っというのでないかなぁ……。意外とありそうだと思うのだが。 -- 名無しさん (2019-04-26 12 16 14) ゲッテンカというアーケードゲームでは何故かプレイアブルキャラだったりする -- 名無しさん (2020-03-07 17 40 01) 八丈島から泳いで参るのは脈絡もなさすぎるので、ネタの由来についても書くか削除したほうが良いのでは。 -- 名無しさん (2020-12-30 12 50 45) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nekomimi-mirror/pages/181.html
たんたんたぬきの 第二話 まいにち とんとんとん。 葱を刻む音が台所から響く。 お布団を干してきた僕は手持ちぶさたに朝ご飯を待つ。 ほんとは『セイヤ様にお布団干させるなんて!』って言われたけど、ちょっと無理言ってやらせてもらった。なんか、何もしないなんて申し訳ないし、それにお布団がアレになったのは半分ボクのせいでもあるわけで……。 「おまたせしました~」 襖を開けて入ってきたイナさんがお膳を二つ抱えて入ってくる。 「あ、セイヤ様。そんなところにいないで、上座へどうぞ」 「いや、いいよここで。なんか上座は落ち着かないし」 「でも客人神様をぞんざいに扱うわけには……」 「いいよいいよ。それより早く食べよう?ボクお腹減っちゃった」 「はい。ご飯お代わりありますから」 二人でお膳を向かい合わせて手を合わせる。 『いただきます』 白いご飯に刻み葱入り御味噌汁、煮付けた鮎にお新香。 正直もう一品欲しいけど、贅沢言い出すとイナさん無理しそうだしね……。 「どうでしょう、お口に合いますか?」 昨日も聞かれた質問。本当に心配してるみたいで真剣な顔で聞いてくる。 「鮎がおいしいよ。イナさん料理上手いね」 「や、その、ありがとうございます」 褒められてイナさんが顔を赤くして照れる。 そんな照れる事無いのに。実際ボクと同じぐらいなのに一人で料理やお風呂や洗濯を……あれ? 「そういえば、イナさん」 「はい?」 「イナさんはここに一人で暮らしてるの?」 あ、 言ってしまってから、不味いと気が付いた。 イナさんが箸を置いて、困ったように寂しいそうに微笑む。 「父は、昨年風邪をこじらせて……」 「ご、ごめん!ボクそんなつもりじゃ……」 「いえ!セイヤ様が悪いわけではないですから……。それから一人で社を預かっているのです」 「……イナさんは偉いなあ」 「え?いや、わたしなんてまだまだ修行中です」 そういって手を振って否定するイナさん。でもそれは違うよイナさん。 力量が云々じゃなくて、一人でも頑張ろうとするのが偉いんだ。 「決めた」 「は?」 「イナさん、なんかボクに手伝える事があったら言って」 「ええ?だ、だめですよ!客人神様に働かせるなんて!」 「いいの、ボクが手伝いたいの。それでもダメ?」 「えぅ……それは」 戸惑うイナさんをじっと見つめる。今度はボクが真剣な顔で聞く。 「じゃあ、お願いします……」 「うん、頑張るよ!」 *とってんぱらりのぷぅ* というわけで、まずは朝のお勤めであるお掃除から。と言ってもあまり大きな神社じゃないし普段使わないところしか掃除しなかったりするらしい。……けど。 「イナさん、あっちの建物は掃除いいの?」 「あ、あちらは後でみんなでお掃除しますから」 「ふぅん?」 みんなで? ま、いいか。今やらなくていいなら。 箒ではいたり雑巾で拭いたり(うう、夏でよかったあ。冬もこれやるのかな)してお掃除を終わらせた後は、神様に朝のお参り。本殿でここの氏神様に祝詞をあげるのだとか。 「ねえ、ここの氏神様ってことはボクより偉いって事になるのかなあ?」 「……どうなんでしょう?まあ、客人神様はお客様ですし」 「じゃあご挨拶した方がいいのかな。なんかドタバタしてていままでやってなかったし」 「なら、今日の祝詞はそういった方向でいきましょう」 イナさんが本殿の扉を開けると薄暗い、けどどこか空気が軽く抜けていく雰囲気の空間が見える。 その奧には斜めに差込む朝日に照らされた、注連縄まかれた信楽焼のタヌキが酒瓶と大福帳をもって鎮座ましましていらっしゃった。 ……うん、想定の範囲内だけどね。逆にど真ん中過ぎてボク見送っちゃったよ。 「こちらのご神体にまかり越して下さるのが、氏神様である他化自在命(たけじざいのみこと)様です」 「うわー、そうなんだー」 ネーミングめっちゃ邪神っぽーい。とは思ったけどイナさんの誇らしげな顔の前では言うのを憚られる。相づちだけ打って促されるようにとりあえず正座でかしこまる。 「では、まいります。……とほかみえみため はらひたまへ きよめたもふ まもりたまへ さきはたまふ――」 榊の枝を振りながら、一定のリズムを保ちイナさんの祝詞が小さなお堂に満ちていく。言っている意味は良くわからないけど、荘厳な空気にうたれて自然と背中が伸びている。こうしてみると、タヌキの置物もどことなく神々しく見えてくるような……。 「――かしこみ かしこみ もうしあげるー……」 しゃん。と鈴のように榊の葉が音を奏でる。たっぷりの余韻が静寂に溶けていく。どうやら終わったみたい。うっすらと汗をかいたイナさん、きれい……。 「ふぅ、さてと」 イナさんがボクに向き直ってちょっと真剣な顔になった。何だろ。 「これからちょっと忙しくなりますが、セイヤ様……」 「な、なに?」 「お料理は出来ますか?」 *とってんぱらりのぷぅ* 「イナせんせー、こんにちはー!あー、しらないひとがいるー。みせてーみせてー!」 「に゛ゃーっ!?また増えたあ!」 階段を駆け上がってきた女の子が、子供達にたかられてるボクを見つけて突進してくる。うわーん敵の増援が増えたぁ! 「へんなみみー、だれこれー?」 「まろうどさまだってー」 「さわるとごりやくがあるよー」 「さわらせてー」 「まろうどさまおっぱいちっちゃいー」 「せんせーよりちっちゃいー」 「ボクは男の子だよぅ!あっやっ、つまんじゃらめぇええ!」 「ほんとだきんたまついてるー」 「そこコリコリするのもダメだよぅ……」 「こらー!!」 イナさんが大声で叱ると蜘蛛の子散らすように子供達が逃げていく。(といっても楽しそうだけど)うう、もう少しでボク陵辱されちゃうところだった……。 「もー!客人神様に悪戯しちゃダメでしょー!」 「えー、いたずらしてないよー」 「さわっただけだもんねー」 「まろうどさまおはだすべすべだったー」 「ゆーこと聞かないと、お昼ご飯抜きですよ!」 『ごめんなさーい』 みんな揃ってごめんなさいが綺麗にハモる十余人ほどの子供達。この子達わざとやってるな……。 にしても、イナさんから事前に聞いていたとは言えここの男の子達は……直立した子狸が服着て喋ったり遊んだりする光景ってとってもメルヒェン。 「はい、ちゃんとごめんなさいできましたね。じゃあお手々洗ってご飯にしましょう」 『はーい』 イナさんに連れられて、手を洗った子供達がお堂の中に入る。お堂の中には既に人数分のご飯が湯気を立てていた。(制作イナさん、配膳ボク) この島では、お寺や神社が学校みたいに読み書きとかを教えてて、特にこの村ではみんなでお昼ご飯を食べてから授業をするのが伝統なんだとか。 午後だけの授業で、しかも3才から10才までの期間で大丈夫なのかなあとは思ったけど、最終的に読み書きと四則演算ができれば農家なら困らないらしい。 「はい、じゃあみんなそろいましたね。せーの、いただきます」 『いただきまーす!』 綺麗に揃ったあいさつ、と言うよりかけ声と共に始まる給食の時間。ぺちゃくちゃぺちゃくちゃやいのやいのとうるさいのは、異世界の異世界人でも変わらないんだなー。 お昼ご飯が終わると、かたづけの後にお勉強。読み書きをならったり、イナ先生のありがたーいお話だったり。(にしても、字もほとんど日本語といっしょなのね。まろうどの書物が元らしいけども、日本語の本ばっかり落ちてくるのかな?) ボクはイナさんの隣で見学。なんとなく教育実習生気分。まあボクが先生やる訳じゃないんだけど手伝えるところはお手伝い。教科書とかそろばんとか配ったりして、ついでにちゃんとありがとうを言えた子は頭を撫でて誉めてあげる。うん、素直な子はお兄さん好きだな。 ああっ!弟とか妹ってこんなに可愛かったんだ!アレな姉しかいなかったから知らなかったよ! VIVA弟!サイコー妹!LOVELOVE愛してる! ……うん、心の声にしてもちょっと言い過ぎた。反省してる。捕まる前に自重する。 日が傾いて来たところで、イナ先生の授業は終わり。お勉強の後はみんなで連れ立って遊びに行ったり、家を手伝いに行ったりと子供達が三々五々帰っていく。 最後の子供を送り出したところで、イナさんが大きくため息をついた。 「ふいぃー……」 「お疲れ様。いつもこんなに忙しいの?」 「やー、今日はセイヤ様が見ていてくれたせいか、みんな少しおとなしかったです。助かりました」 あれで大人しいと申されるか。 普段はどんなだ。 「いつもだとこわーい式を一回ぐらいは使わなきゃいけないんですけどねー」 学級崩壊寸前のようです。たすけてGTO(Great Tsundere Onizuka だったはず)。 「で、これからのご予定は?」 「んー、今ぐらいから夕食までは特に決まってないんですよね……。昨日は山菜採りに行ってセイヤ様と出会ったわけですけど」 「あれ、途中って事は結局山菜取れてないって事?」 「まわろうと思ってた場所には行ってなかったですね……。ならそうしようかな。セイヤ様は山歩き とか平気でしょうか?」 「う゛っ、苦手分野です」 自慢じゃないが体力のなさには自信があるぞ。ボクに出来る事と言えば、漫画を描く事とコスプレ衣装を縫う事ぐらい……。 あ。 「イナさん、もう使わない服とかある?」 「父と母の服がまだありますけど、それがなにか?」 「もらっちゃっていいかな?ボク用に寸直しするから」 *とってんぱらりのぷぅ* 「これで終わりっと」 イナさんが山菜採りに行ってる間に繕い物をちくちくと。ボクの服だけじゃなく、イナさん用にもちょっと作ってみたり。そして時間が余ったからもう一着。アレをイナさん用に寸直ししてちょうど終わったところ。 ……うわ、いつの間にか日が沈みかけてる。イナさんまだかなあ。プレゼントが出来たのに。 「ただいま帰りました~」 おっと、噂をすればだね。 台所の方から声がしたから、裏口から上がったみたい。 「おかえりー」 声を掛けてボクも台所に向かう。さあ、晩ご飯だ *とってんぱらりのぷぅ* 「わわ、もう全部終わってるんですか?」 晩ご飯が終わって、一息ついて、ボクのお仕事をお披露目する時間になった。 「うん。こっちをボクの分にさせてもらったよ。それで、これがイナさんの分」 「え?わたしの、ですか?」 「うん。お母さんの服の寸を詰め直しただけだけどね」 「あ……ありがとうございます!うわー、お母さんの着物……」 おお、イナさんが嬉しそうにためすすがめつしつつ胸に当ててみたりしてる。よもやここまで喜んでいただけるとは、職人妙味に尽きますな。しかし!本命はこれからなのです! 「それでね、イナさん。もう一着イナさんにプレゼント」 「ぷれぜんと?んーと、贈り物の事でしたっけ?」 「そうそう、というわけでこれをどうぞ!」 そう言ってボクはタンスの中に隠しておいた秘密兵器を取り出す。 ふわりと揺らぐ紺のワンピース!あくまで純白のフリル付きエプロン!頭に輝くヘッドドレス! 我が名において今宵彼岸より来たれ、汝の名はエプロンドレス!またの名を――メイド服!! 「え……、えええええっ!?いいんですか?これはセイヤ様がお召しになっていたものでは……」 「いーのいーの、これはもともと女の人が着る為の服なんだから」 「え?女の人が着る服をなんでセイヤ様が着ていたんですか?」 「……ごめん、そこは追求しないでお願い」 「はあ、良くわかりませんが頽れてまで聞くなと言うなら……」 うう、思ったより痛いよ。無垢の刃で黒歴史(生まれてから昨日まで)を掘り返されるのは。 「ともかくも、ちょっとオサレな服としてイナさんにもらって欲しいな、と」 「うわ……でも、こんな貴重なものなんて……」 「いいのいいの。どうせもうボクは着ないし、だったらイナさんに着て欲しいから」 「お気持ちは嬉しいんですけど………お返しできるものがありませんし……」 ううん。イナさん、すっかり恐縮しちゃったみたいでなかなか受け取ってくれない。かといってこのまま腐らせるのもなあ……。 だったら、ちょっと強引に行くか。 「じゃあさ、この服あげるから今着てみてくれない?」 「え? えっと、どうゆうことでしょう?」 「ボクがこの服を着たイナさんを見てみたいなあってこと。ボクからのお願いだけど聞いてくれる?」 「そ、そういうことなら、仕方ないですねえ」 おお、お願いなら聞いてくれるんだ。ううむ、これは思ったよりも気持ちいいぞ。権力欲というものがそこはかとなく理解できた気がする。それにどことなく嬉しそうに隣の部屋に行くイナさんがかわいい。 ……あれ、戻ってきた。 「あ、あの……。これ、どうやって着るんでしょう?」 「あ」 しまった、失念してた。そういえば和服にボタンの概念は無いんだっけ。 ……じゃあ、しょーがないにゃー♪ 「なら、ボクが着せてあげるよ」 「は、はい?」 「だいじょーぶだいじょーぶ、イナさんはじっとしてて。天井の染みでも数えてる間に終わるから」 「え、ちょ、あの……」 *とってんぱらりのぷぅ* 「――完成!」 「あ、あの……完成って」 ケモ耳を邪魔しないようにあえて小さくしたヘッドドレス! スカートは後部を腰まで切り上げ、尻尾を出してからボタンで留めていくという仕様に変更。もちろんロングですよ?当然じゃないですか、ミニなんて邪道です。色気と萌えはちがうんじゃー! 上半身部分はわざとぴっちりめに作って、無いペタをアピールする方向で。 絵元結はあえてボリューム多めの三つ編みに結い直し。 「これがっ!これがっ!これがイナさんメイドモデルだっ!」 「あ、あのー?どなたにおっしゃってるんでしょう?」 「そいつに触れる事は特に死を意味したりはしない!ということで、はい」 姿見をイナさんに見せてあげる。ちょっとびっくりして、マジマジと鏡をのぞき込むイナさん。 「うわー……」 「うんうん、似合ってるよイナさん」 「あ、ありがとうございます。セイヤ様」 ……来た。 ズッキュゥゥゥーンとか効果音が心のど真ん中に来た。 太眉ぽややんなアットホーム系メイドさんに様付けで呼ばれるというこの破壊力! 「……もう一回、名前呼んでくれる?」 「は、はい。セイヤ様」 むう、二回目となるとさすがにさっきほどのインパクトはないな。でもなんかじわーっと来るような愛おしさがこみ上げてくるような。 恐るべきメイド服。これならアジトに這っていけと言われても納得できる。いや、むしろやる。 「あの?セイヤ様?」 ……おおう。なんか気が付いたら目の前で手をヒラヒラされている。そんなにトリップしてたかボク。 「うん大丈夫。ちょっと見とれてただけ」 「み、みとれてただなんて……」 顔を真っ赤にして後ろを向くメイドイナさん。恥ずかしがるのが、かーわーいーいー。……てい。 「ひゃうっ!?せ、セイヤ様なにお……」 思わず後ろからぎゅっ、と抱きしめて耳元に口を寄せる。イナさんも身じろぎするけど特に嫌がってる風じゃない。そのまま囁くような声音で、とりあえず関係ない事から話し始める。 「その服はね、僕らの世界で偉い人に仕える人間が着る制服みたいなものなんだ」 「制服ですか。あ、やん、息がかかりますぅ……」 「そ。だから、イナさんが神様の前で着る白衣と緋袴みたいなものだね」 「はふ、じゃあセイヤ様もあちらでは誰かに仕えてらっしゃったのでしょうか。ん、あつい……」 一瞬否定しようとして、お姉ちゃんの顔が脳裏に浮かぶ。 ……うん、あれは主従関係。いや、愛玩動物と主人の関係だな。 「うん。横暴な支配者に振り回されていたんだ……。だからボクが偉くなったときには慈悲深くなろうと思ってたんだよ」 そうおもいつつも僕の手は服の上からさわさわとイナさんのお腹を撫でる。ここから上にも下にも行ける。そんなポジションを右手に取らせつつ左手はふかふかの尻尾に伸びる。 「あはぁんっ!」 「わっ!?」 びっくりしたぁ。尻尾を軽く握っただけなのにイナさん大きな声出すんだもの。 ……いや、もしかするとこことか耳とかって感じやすいの? 「イナさぁん」 「や、あ、セイヤ様、声が、いやらし……んくぅ!」 名前を呼びつつ耳を毛繕いするように舐めてみると、くなくなと力無く首を振って逃げようとする。でも尻尾を握った手に少し力を込めると身を固くして耐えようとする。 なんというサイヤ人体質!これは満月を見せるとケモノになるに違いない。 でも今はメイドイナさんを見たボクがケモノです。 「かわいー。イナさん、好きー」 「はうぅん、セイヤさまぁ……」 泣きそうな声のイナさんの膝からついに力が抜ける。 ケガしないように支えながらゆっくり四つんばいの姿勢を取らせてあげる。でも尻尾は離してあげないけどね。 「ゴメンねイナさん。イナさんのかわいい姿見てたらボクのこんなになっちゃった」 ふんどし越しにおっきくなったボクのおちんちんをイナさんの尻尾に押しつけた。直接じゃないからもどかしいけど、その分えっちな体温をじっくり味わえる気がする。イナさんの尻尾も興奮してるのか毛がぶわっと逆立って倍ぐらい大きく見える。 「セイヤ様ぁ、いやらしいですよぉ……」 「でも気持ちいいでしょ?」 応えるかわりに顔を畳に伏せていやいやするイナさん。ふふふ、でもこっちはそうはいってないよお? ちゅく。という音がして、ボクの指がスカートの中の下着に触れる。 この下着も腰巻きじゃないボク特製。まあ特製と言っても小さい手ぬぐいの角に紐を付けて、紐パンみたいにしただけなんだけど。 ともかく、薄い木綿の布地は粘っこい液体で汚れてた。 「ほら、気持ちいいんだぁ」 「やぁん……いじわるです……」 「濡れてて気持ち悪いでしょ?脱がせてあげるね」 「やっ、ああん!」 イナさんが止める前に紐をほどいて脱がせちゃう。そしてスカートを尻尾ごとまくり上げて生まれたままのお尻を突き出す格好にしちゃう。うわ……すじまんなのにこんなに濡れてる……。 もー我慢できない! 「イナさん、いくよ……」 「ひゃ、あ、ああっ!」 急いでふんどしをほどいて、ぷにぷにの割れ目の中にボクのおちんちんを埋めていく。狭いのにほとんど抵抗無くボクを飲み込んでいく。腰がぴったりくっつくまで押し込んでその感触を味わう。 「ふ、うっ…………?」 ぴったりくっついたまま動かないボクに不審を覚えたのかイナさんが首だけで振り向いてこっちを見る。ボクは腰を動かさないままイナさんの尻尾をそっと抱きしめる。 「ふえっ!?」 尻尾の刺激にびっくりしたのか、イナさんの尻尾と身体がよじられる。きついあそこの感触もきゅきゅっと締まる。 さわさわと毛並みに沿って撫でてあげるとまた身体をよじってきゅんきゅん締める。 さわさわ。よじよじ。きゅんきゅん。きもちいい。 「あ……あん、やん…セイ……ヤ…さまぁ…」 昨日は勢いに任せてガンガンやっちゃったけど、今夜はエロスよりも萌エロスを優先させてじっくり味わいたい気分。モフモフな尻尾を可愛がるのって素敵だよね! 撫でるだけじゃなくて、手櫛を入れて梳いてみるとイナさんが甲高い悲鳴を上げて背をのけざらせる。そのたびにおちんちんが違うところに当たって刺激される。くりくりの白いお尻が震えるのも可愛い。イナさんはもう声にならない吐息をはふはふと口からこぼしている。 ……もっと感じさせちゃったらどうなるんだろ。 「えい」 「ひあっ!?」 イナさんの右脚を掲げて大きく広げる。そのまま左腿に乗っかり松葉崩しの体位にもってく。ボクの左肩にイナさんの脚をかけて、左手で尻尾を、右手でクリトリスを触る。 「きゃうっ!?だめ、だめだめですっ!そんな、あっ……!!」 「だめじゃないよ、ほら、きもちいいでしょ?」 「やあっ、やあで……ひぁうっ!!」 尻尾、中、クリトリスの三点責めでイナさんが激しく悶える。刺激が強すぎるんだと思うけど、もうボクの方が止まれない。ヌルヌルに濡れた太腿の上に腰を滑らせて、奧に奧に突き込む。 まくれたロングスカートの中と顔だけを露出した女の子が、これ以上ないってはしたない姿勢で喘ぎ声をあげてる。あげさせてる。 ちゅぱんちゅぱんと腰が当たる音がする。不規則におちんちんが擦られて頭がくらくらする。 「も、もう、だめですーっ!!」 「ああっ、うっ、うっ……」 イナさんが絶叫とすると同時にボクのおちんちんがきつく締め上げられる。 痛いぐらいの締め付けにボクも耐えきれなくなって発射する。 どくん、どくん、どくん……。 脈動とイナさんの痙攣がシンクロする。 そのまま一分ぐらい繋がって息が落ち着いてきたところで、にゅぽんと力の抜けたおちんちんが抜けた。 どろりとイナさんの割れ目からこぼれる粘液が、ロングスカートに落ちて汚した。 *とってんぱらりのぷぅ* 「もう、セイヤ様ったら……」 「ごめん。ホントゴメン」 勢いに任せてやっちゃったから、着たばっかりのメイド服はいろんな液で汚れて皺になっちゃってる。まあ、もちろんボクの服もだけど。だから今は身体を拭いて着替えてさっぱりしたところ。イナさんもいつもの巫女服に戻ったからか、リラックスした感じ。 「その、いやというわけじゃないんですけど、せっかくの新しい服なんですから……」 「いや~、イナさん可愛くて我慢できなかったんだよ」 そういうとイナさんが顔を真っ赤にしてうつむいちゃう。 「も、もうっ!可愛いだなんて……」 あうあう、もっとこの方向でいじりたいけど、そうするともう一戦やらかしてしまう気がするのでちょっと自重。ボクはボクの下半身を信じない。 「洗濯して綺麗にしたら、また着て見せてね。ボクも自分が縫った服を着てもらえるの嬉しいから」 「はい。……それと」 「?」 「ありがとうございます。宝物にします」 そう言って幸せそうに微笑むイナさんを見て、 ボクは「またどこかで布を見つけてコスプレ衣装を縫おう」と思った。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9403.html
前ページ次ページ暗の使い魔 赤くかがやく焔が、目前の無数の人々を包んでいくのを眺め、『彼ら』は割れんばかりの歓喜の声を上げた。 地を埋め尽くす群衆。その、一人ひとりが武装した軍団の中心で、煙にまかれて砦が燃える。 赤みを帯びた夕焼けの空へ、高く高く黒煙が昇っていった。 炎の中から響く無数の断末魔にも耳を貸さず、彼らは叫ぶ。 見ているか、と。 革命を掲げる『彼ら』にとって、その狼煙とも言える黒煙は、ある者どもへの何よりのメッセージである。 ――岬の城に籠った脆弱なる王家よ、見えるか?貴様らを助けに行く者どもはもはやこの地にいない。助けられるものもいない―― ここから遠く離れた王党派の居城ニューカッスルからも十分に目視できるほどの大火であった。 砦を囲むから声が上がりオオオ――と鬨の声が上がる。王を廃した貴族派による、新たな政治を夢見る彼らには、最早迷いも躊躇いも無い。 目前のすべてを塗り替えて新たな時代を作るのだ、と息巻くのだ。 「諸君!」 と、突如の大声量が鳴り響く。全軍団が、一糸乱れずそちらへ向き直る。 彼らの視線の先には、燃え落ちる砦を背景に立つ、一人の男。 まるで僧のような恰好だが、手に握りしめた杖ときらびやかな装飾から、男の位の高さが伺える。 そして表情は岩のようだが、そのぎらついた眼はむしろ溶岩を連想させる。 静かにたたずむ群衆の目前で、彼は口を開いた。 「見よ、王軍に与する最後の支城は焼け落ちた。これより我らは、ニューカッスルに籠る本軍を叩く」 仰々しく手を広げ、彼は続ける。 「みたまえこの光景を!炎を!これは灯である。我らの行く末をきらびやかに照らす未来のともしびである!」 それを聞き、全軍から再び割れんばかりの歓声が巻き起こる。 彼らは口々に叫んだ。 「クロムウェル陛下万歳!」 「神聖アルビオン万歳!」 それを聞き彼、貴族派総司令オリヴァー・クロムウェルは、静かに笑みを浮かべた。そして再び声を張り上げた。 「全軍!ニューカッスルの部隊と合流せよ!愚かな王家を討ち滅ぼし、あらたな夜明けを迎えるのだ!」 号令とともに、全軍が動きだした。黒い軍団が、うねるよに大地を飲み込んでいく。 それを見て、クロムウェルはますます笑みを強めた。 その時。 「陛下」 突如、黒いローブの人影が彼の背後から歩み寄り、彼に声をかけた。 細身の体の人間、そしてそれに合致するような年若い女の声である。 クロムウェルは振り返ると、変わらぬ笑みで彼女を迎えた。 「おお、ミス!ご苦労だったな!して、状況はいかがかな?」 影がクロムウェルに近づき、耳元で囁く。 「ふむ、そうか順調か。多少の狂いはあったが、無事進行しているようだな」 報告を聞き、彼は満足そうに頷く。 「いよいよ明後日、我らの目的は果たされる。彼ならば必ずやり遂げるだろう。だが――」 突如クロムウェルが言葉を閉ざす。先ほどと変わり少々笑みを曇らせ、彼は押し黙る。 意図を察した彼女が静かに呟いた。 「ご心配なく、陛下。あ奴に関しては、此度の計画に手出しは無用と釘はさしております」 それを聞き、クロムウェルはむぅと唸る。 「万に一つ動くようなことがあれば、あの程度の異邦の者など――」 「成程、わかった」 一通り聞いたクロムウェルが彼女のこれ以上の言を制す。落ち着いた仕草だが、そこには何かを避けたいような様子が見え隠れする。 「ミス・シェフィールド」 「はい」 名を呼ばれた彼女が、彼に向き直る。 クロムウェルは彼女に背をむけながら、静かに呟いた。 「くれぐれも、頼んだぞ」 シェフィールドはそれを聞き、静かに応答する。 しかし、彼女は聞き逃さなかった。 そのクロムウェルの声の、微かな震えを。 暗の使い魔 第二十一話 『ニューカッスルの夜』 「な、なななっ……!」 黒田官兵衛は、わなわなと、実に分かりやすく動揺していた。 長曾我部と船で戦い、気を失い数時間。たった今目覚めた自分が、置かれているこの状況に。 「全部……」 震える声で、彼は叫んだ。 「全部終わっただとーーーーーっ!!?」 ぎゃんぎゃんと、屋内に響く叫び声に耳を塞ぎながら、ルイズはため息をついた。 「そうよ。あんたが寝てる間に皇太子殿下との話は終わったわ。あとはこの手紙を無事姫様に届ければ――」 「任務は完了だよ、使い魔君」 ルイズの言葉を引き取って、ワルドが答えた。 目覚めたベットに腰かけたまま、官兵衛は頭を抱えた。 官兵衛が目覚めたここは、アルビオン大陸の先端岬に位置する居城ニューカッスル、その一室である。 長曾我部の襲撃騒ぎから数時間、官兵衛が寝込んでる間に、ルイズたちは無事ニューカッスルの城についた。 現在貴族派の大群に囲まれているニューカッスルの城へは、陸路やまともな方法では入城できない。 そこで彼らは、アルビオン大陸の真下にもぐりこむ航路をとった。 その先には、王軍だけが知る秘密の港があったのだ。 ルイズの話に官兵衛が舌を巻く。 「大陸の真下を通るだと?目隠ししながら航行するようなもんじゃないか」 巨大な大陸の下は太陽の光も届かない。一歩間違えば闇の中、大陸の岩肌に衝突して一巻の終わりだ。 それを彼ら王軍は涼しい顔で航行してのけたという。 その時のウェールズの話では、それは空を知り尽くした軍人には造作もないことだだ、という。 無粋な貴族派に空を制すことはできない。 彼らが裏で空賊に扮した行動をとれたのは、この航空技術によるところが大きいという。 話を聞き終えた官兵衛は、思わず感嘆の息を漏らした。 案外、王軍もやるじゃないかと。 しかしその時ふと、官兵衛の脳裏に、ある疑問が浮かんだ。 「(確かにその技術はすごいが、それだけでここまで持ちこたえられるのか?)」 考えが浮かんだらすぐ口に出したくなる官兵衛。 おい、とルイズに呼びかけようとした、その時だった。 不意にガチャリと戸が開き、部屋に初老の男性が入ってきた。 「失礼いたします。お連れの方がお目覚めになられたと聞きまして。」 実に丁寧に一礼する男性。ルイズとワルドもそれに合わせる。 そして男性は官兵衛にも同じように一礼すると名乗った。 「わたくし王族付きの執事を務めさせていただいております、パリーと申します」 官兵衛も、その丁寧で洗礼された仕草に対して、礼をする。 「小生は、黒田官兵衛。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの……その、使い魔だ」 使い魔の部分をやや声をひそめて言う。 パリーは嫌な顔一つせず、にこやかに言った。 「クローダ様、ようこそアルビオンへ。皇太子殿下もお目覚めを心待ちにされておりました。」 「ああ……ん?」 返事をして、ふと言葉が止まる。やや呆けた表情で、官兵衛は思わず聞き返した。 「皇太子、ああいや!皇太子殿下がなんだって?心待ち?」 それに対してパリーは柔和な笑みを浮かべる。 「ええ、ぜひ一目お会いください。今夜は盛大なパーティでございます。」 再びパリーが礼をして、扉の外へ視線を向ける。そこにはすでに、宴参加の準備をしようと、多数の侍女が控えていた。 「うおっ!うおおこりゃすごい!」 「相棒~。はしゃぎすぎだよ」 夕日が沈みかけた頃、官兵衛は、宴の会場を訪れた。 官兵衛はデルフを携帯し、背中に背負っている。 背中から掛かる、うるさい声などものともせずに、官兵衛は声を上げた。 「こいつぁまた随分と豪華な。学院の宴とはまた一味違うな!」 城内で最も広いであろうそのダンスホールでは、所狭しと人々が並び、きらびやかに着飾って談笑している。 ホール中央の巨大なテーブルには、ローストされた巨大な鳥がソースに塗られて光っており、周りにはデザートからオードブルまで様々な食事が山盛りになっていた。 てんやわんやで、今朝から何一つ食事をとってない官兵衛は、腹の虫が鳴りっぱなしであった。 「飯、飯、飯!とりえず鳥か。あとは……!」 「相棒ー。あんまがっつくなって!一応王様主催のパーティなんだからな?」 「へいへい、わかってる。目立たんようにコッソリ、仰山!たらふく食うぞ!」 官兵衛が息巻くのを見て、デルフリンガーはやれやれと言う。 「相棒、わるいけどそりゃもう無理そうだぜ」 「あん?なんでだ」 「周り……みてみ?」 その言葉にはっとして見回したときはもう遅かった。 周囲の人間が、食事の手を止め、ぱちくりと官兵衛を見据える。 「…………あぁ、ハ、ハジメマシテ」 収束する視線の中、はぎこちない笑顔でほほえむ。 この瞬間から、鉄球を引きずったまま剣と会話する男が、一斉に宴の話題になったのだった。 そのころ、パーティ会場から下へ下へと階段を下り、地下の秘密港へ続く階段の途中。 そこから分かれた岩壁の通路を進んだ、その先の牢獄、そこにその二人はいた。 「チクショウ!俺様をこんなところに閉じ込めやがって!開けやがれってんだ!」 「あーあ終わったねアタシら。よりにもよって王軍最期の戦場真っただ中に連れてこられたんだから」 鋼鉄の扉で閉ざされた狭い牢獄の中で二人、長曾我部とフーケは思い思いの言葉を吐いた。 2メイル四方程度の狭い牢獄内は窓もなく、小さなともしびが揺れてるのみ。 壁は分厚い石壁である。その壁に両足を鎖でつながれた二人は、暇な時間を無駄口を叩きながら過ごしていた。 「まったく!あんたがさっさと王様を押さえてりゃあこうはならなかったのにさ!」 「あぁん!?おめえがあんな髭にあっさり捕まるのが悪いんだろうが!」 壁を背にして座り込んだ二人は、仲良く並んで罵り合う。 「あたしゃあガッツリ時間は稼いだだろうさ!あんな狭い船で逃げ回るのがどれだけ大変かわかってんの!?」 「うーるせえぃ!俺だってあんにゃろうの妨害がなきゃあとっくに――!」 ――ぐうぅううううぅ……―― むなしい腹の音が、二重奏を奏でた。 その間の抜けた音色と、底知れない空腹感に、二人は静かに閉口し、うなだれた。 「腹ぁ減った」 「あたしも」 はああ、と深いため息が同時に漏れる。 これ以上しゃべると余計に腹が減ることを察したのか、二人は押し黙ってじっとしていた。 するとどこからか、なにやら鼻腔をくすぐる香りが、漂ってくる。 場所としてはおそらく看守室だろう。夜勤の牢番が食事でもとってるのか。 「おい牢番さんよ!うまい飯くれよ!」 「そうさ!あたしらはお客人だよ!ちょっと挨拶が手荒だっただけじゃないのさ!飯くらいまともなのおくれよ!」 とうとう我慢できなくなったか、二人はぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。それを聞きつけ、牢番が飛んでくる。 「ええいさっきからうるさい奴らめ!殿下の身を危険にさらした賊にかける慈悲などあるか!食事ならそこに転がってるパンとスープでも食らっておけ!」 いうや否や、牢番は持ち場へ戻っていく。 「けっ!仕方ねえ」 長曾我部は短く言うと、床のトレイに置かれたパンをかじり始めた。 乾いてカチカチになったそれを、苦い顔でかじりながら長曾我部は言う。 「ほういや、ふーへよ」 「口にもの入れながら喋るんじゃないよ。行儀悪い」 ごっくんとパンを嚥下しながら長曾我部が改めて言う。 「んぐっ。そういや、フーケよ。俺たちゃこれからどうなんだ?まあ大方予想はつくがよ」 長曾我部の問いに、フーケがため息をつく。 「まー王様の裁量に任されてるとこだろうけど」 彼女が一息おいて言う。 「まあこのまま城とともに放置されて死ぬのか、処刑てとこかね。なんせ王族を襲ったんだから」 「だよな」 それを聞いて、長曾我部もまたため息をついた。 「まあただの密航者ならトリステインに送り返されるだけだったろうけど。それでも監獄に逆戻りするだけだしねぇ。あー成功してりゃあ……」 人質さえとれてればうまくいったのに、とフーケは愚痴を漏らした。 「まあしょうがねえ。終わっちまった事は」 長曾我部も仕方なさげに首を振る。 「それよりよフーケ……」 その時、ふと長曾我部が声をひそめてしゃべり始めた。 「なにさ」 フーケも牢番に気づかれないよう身を寄せる。 「お前、あの髭に捕まったよな。何があった?」 「なんだい、失敗したのはお互い様だろ?もうこのやり取りは止めようよ」 「ちげえ、気になるんだよ」 「何が?」 ぶつくさ言いながらフーケも聞き返す。 「あいつは王軍が扮した賊につかまってて、丸腰だったよな。でお前はあいつの杖がある武器庫にいたと」 「ああ」 未だに質問の意図がわからないまま、彼女は聞く。 「あの髭、丸腰じゃなかったってことか?」 その瞬間、フーケはハッとした。 自分は突如あらわれたあいつに―― 「そう、そうだよ!あいつは確かに杖を持ってた!隠し持ってたのさ!」 そうだ、自分は出合頭に何か魔法をくらってそのまま意識を手放した。奴の手には、短い杖が光ってたのだ。 「やっぱりな」 聞くや否や、長曾我部は黙り込んだ。 「どういうこと?」 「こいつはやべえかもな……」 それからだった。長曾我部が一言も発しなくなり、静かに鎮座したままになったのは。 「あんた?おいモトチカ?」 幾度の呼びかけにも答えない。 何時間だっただろうか。 やがてある事が起こるその時まで、彼はフーケと言葉を交わすことはなかった。 「おお!あなたがトリステインからいらしたクロード殿ですな!」 「クローベ殿!空の旅は快適でしたかな!」 「さあさあこのワインを!旅の疲れなど吹き飛びましょうぞ!」 波が押し寄せるように、人がわんさか寄ってくる。 「あーいや!ありがとさん、ありがとさん!ちょっと待ってくれ!」 官兵衛はそれを、手に持ったチキンで制しながらやり過ごす。 「おお!黄金鳥の蒸し焼きですな!それよりこちらのパティでもいかがか!」 「ややや!脂っこいもの続きではもたれてしまいますぞ!こちらの果物でも!」 「さあさあさあ!しかし鉄球とは面白い!トリステインでは新しい試みが多いと聞きますが、まさに!はっはっは!」 「(いやいやありがたいんだが、さすがに簡便してくれっ!)」 好意が過ぎると逆効果な好例だろうか。官兵衛はやや疲れ始めていた。 パーティが始まって一時間くらいは過ぎただろうか。官兵衛は怒涛のもてなしを受けていた。 なぜ自分にこうも人が集まるんだろうか。そりゃあ鉄球つけてれば目立つが、それでもよほどな状況である。 官兵衛はそんな群れをやりすごし、パーティ会場の片隅に座り込む。 「……でもまあ、無下にはできんよなあ」 「そうさね相棒。なんせあいつらにとっちゃあ、今日は最期の晩餐だからね」 官兵衛はしみじみと言う。 「だな」 官兵衛は上座の人々を見る。 そこにはウェールズ皇太子と無数の付き人。戦時中にもかかわらず、さわやかな笑みを浮かべ、臣下と会話に花を咲かす。 そして、そのさらに上座に鎮座する人物。 見るからに老いた風体。しかしその白髪の上には、紛れもなく王たるを示す冠が輝く。 アルビオン王国の現国王、ジェームズ一世である。 臣下に支えられながらよろよろと歩く姿から、すでに体も衰えているのだろう。 官兵衛は静かに視線を落とす。先ほどのジェームズの演説が思い起こされた。 「皆の者よく聞け!貴族派は、明日の午後に総攻撃を開始する! 皆、よくぞこれまでこの無能な王に付いてきてくれた。明日の戦いは、もはや戦いではなく、一方的な虐殺になるであろう」 かすれた声で精いっぱいの声を張る。そしてひと際大きな声で言い放つ。 「よって朕は諸君らに暇を出す!明日この城から、非戦闘員をのせた難民船が飛び立つ! それに乗り込み、この忌まわしき大陸を離れるがいい!」 言い終わるやいなや、王は激しくせき込んだ。 殿下、と付近の臣下が背をさする。 演説から、状況から、そして何より弱弱しいその王の姿が、この王国がじきに消え去ることを連想させた。 しかし、それに返ってくる言葉はなんとも活力に満ち溢れていた。 「陛下!我らはただ一つの命しか望みませぬ!全軍前へ!全軍前へ!今宵は酒のため、それ以外の命は聞こえませぬぞ!」 「耄碌するにはまだ早いですぞ!命じてくだされ!」 次々と、王に付き従う声が上がっていく。 勇ましい忠誠の声に、ジェームズは涙をぬぐった。 その光景を脳裏に浮かべ、官兵衛はグラスのワインをぐっとあおった。 旅の道中口々に聞く、戦争の情報から、勝敗はわかってはいた。 王党派は明日、最後の攻撃で一人残らず討ち死にする。 ゆえに今この宴があるのだ。 最期の最後に、貴族派に精いっぱいの勢いを見せつけてやろう。 我らの活力を見せつけよう、と。 だからこそ彼らは官兵衛に、異国の男に、その様を伝えようと関わってくるのだ。 それを無下にできようものか、と官兵衛はデルフに言うのだった。 「……腹が減ったな」 「おう、いつも以上に食うね!」 デルフが茶化すように言う。 ただ官兵衛は、とにかく食べたかった。 のしのし歩いて、テーブルからごっそり肉を盛る。 そしてかっこむ。 途中でまたもや話しかけられたが、官兵衛は楽し気に話を進める。 それが、こういう場での習わしだと感じた。 アルビオンの人々は、終わり際に必ず『アルビオン万歳!!』と叫んで帰っていく。 官兵衛はそんな彼らを無言で見送った。 「うむ!うまいな!こっちの飯はあんま食いなれてないが、何か、とりすていんとは味が違うな!デルフ」 「そだね。まあ俺は剣だからわからねえがね」 官兵衛は何でもない風に、料理を堪能していた。 デルフがどうでもよさげに言う。 その時ふと、官兵衛に声がかけられる。 「ああ、その料理はハーブが効いてるからね。アルビオン特有のものさ」 「ほう、はーぶ?山椒みたいな、もの、か……」 後ろから聞こえた親切な説明に振り返った官兵衛は、その瞬間面食らった。 「やあ、楽しんでくれてるかな?」 ウェールズ皇太子が、変わらぬ笑みでそこにいた。 「ウェールズ皇太子……殿下!」 とっさに敬称を付け加えながら、官兵衛は言った。 ウェールズが笑いながら言った。 「ははは、ウェールズでいいとも、クロダ殿」 「あ、ああ……」 とりあえず口に詰まった食事を咀嚼しながら向き合う官兵衛。 そんな彼にウェールズは気兼ねなく話しかける。 「先ほどは大変そうだったね、すまない」 「ああ、いや。気にしなさんな」 先ほどからもてなしで休む暇がなかった官兵衛を気遣ってのことだろう。 官兵衛は気にした風もなく返す。 「……こういう時だからね。みんなは異国の大使がそうとう珍しいと見える」 相も変わらず笑顔だが、どことなく寂しげにウェールズは言う。 「嬉しいのさ。最後に、我らの誇りを見に訪れてくれた客人が」 そうか、と官兵衛は静かに呟く。 しばし、二人の間に沈黙が流れる。 パーティーのにぎやかな喧噪だけが、ほんの少し遠くに聞こえた。 やがてどちらからか口を開く。そこから楽しげな談笑が始まった。 官兵衛はといえば、アルビオン大陸を初めて見た時の感動、空を飛んだ感動、雲、空。 果ては長曾我部のことまでと、なんでも口にした。 出身については異世界などと言えないので、遥か離れた東方の地、ということで誤魔化す。 ウェールズもそれをたのしげに聞き、時には問いかける。 程よく酒も入り良い気分だ。 そして不思議とその時は、時間がたってもだれも二人に介入しようともしなかった。 「そうか!我がアルビオンはそんなに美しいかね!」 「おう!なかなか見れるもんじゃないねえ!」 互いにグラス一杯のワインを飲み干しながら、笑いあった。 そのとき、やや間をおいて官兵衛が問いかける。 「いいのか?皇太子殿下がずっとここにいて」 「なに、一通りの話は済ませたさ。君やヴァリエール嬢、ワルド子爵と話をしたいからね」 ふん?と官兵衛が言う。 「君らがいたから、僕はこうして最後の地に戻ることができた。君ら三人の活躍があったからね」 ウェールズが続ける。 「おそらく、皆同じ気持ちさ。君らは単なる大使殿ではない。恩人なのさ」 そういって微笑むウェールズに、官兵衛は若干申し訳ない気持ちになった。 船を襲った長曾我部と自分は面識がある。共謀を疑われると思っていたからだ。 それゆえに官兵衛は、パーティのさなかも警戒していたのだ。 最も、今のウェールズの言葉を本心だと過信はできないが。 「疑わないのか?」 官兵衛は問いかける。それに対してウェールズはきょとんとする、が、ややおいて。 「ふっ!ははは!それもそうか、いやすまない」 大きく笑いながら言った。 「突然失礼。いやなに、ヴァリエール嬢と話をしたんだ。短い間だったが、君の話は色々聞いてしまってね」 ルイズが、と官兵衛が言う。 「なに、僕はともかく周りの家臣は疑ったさ。みんな君とあの賊との話を聞いていたからね。君が賊を引き込んだんじゃないかと」 ウェールズが真顔になる。しかしウェールズは、だが、と続けた。 「彼女は言うんだ。カンベエにそんなこと大それたこと出来るわけがない、とね!」 ウェールズは表情を緩め、再び笑った。 官兵衛はあっけにとられて話を聞いていた。 「それに僕は思うよ。あの素直で優しい大使殿の使い魔殿さ。疑う余地はない、とね」 ウェールズはふう、と息をつくと言った。 「滅びゆく王国は、みな正直なのさ。誇り以外守るものも無い。僕らのことは信じてほしい」 頭を下げるウェールズを見て、官兵衛は言った。 「すまん」 顔を上げ、ウェールズも言う。 「いいさ」 二人は再び笑いあった。 ニューカッスル最後の宴、その喧噪はどこまでも響き渡った。 それは敵の貴族派の陣営にも。 突き出た岬のニューカッスルを見下ろすように、その艦船は上空を浮遊していた。 大きさは、王軍のイーグル号のゆうに二倍はあろう。 要塞と見まごうほどの巨体のその船は、貴族派艦隊旗艦レキシントン号。 彼らが初めて、反乱を成功させた町の名だ。 この戦争も、この船の反乱から始まったのだ。 そんな貴族派にとって、最も重要ともいえるこの船に乗るのは、艦隊提督、そして。 「耳を澄ませたまえ。あの熱に」 静かで、落ち着いた声色が、傍らの影に語り掛ける。 二つの人影が、甲板で気流に晒されながら、岬の城を見つめていた。 「幾度か出会った光景ではあるが、卿はあれに何か感じるかね?」 宴の喧噪について、声がもう一方の影に語り掛ける。しかし返答はない。 もう一方、細身の影はただじっと黙して佇むのみ。その手に、身の丈ほどの得物を握りながら。 「なんだ。卿も言葉を失くしていたのか。残念だ」 声の主は、ややつまらなそうに呟く。 が、やがて吹き荒れる甲板が飽きたか、風が肌障りか、踵を返して歩き出す。 「私は一足先に戻るよ。卿は、そうだな……精々懸命に動き給え」 声の主は、静かに船内へと消えていった。 残された細身の影は、静かに甲板の縁へと立つ。 ゆっくり目的の城を見下ろし、そして天を仰ぐ。 夜も更け、輝く星空でも見えるかと思ったが、どうにも雲行きは悪いようだ。 分厚い雲が空を、星を、月を覆おうとしていた。 「闇夜か。有難い」 年若い声が、するりと甲板から落ちていった。 眼下に広がる居城では、いまだに賑やかな喧噪が鳴り響いている。 ニューカッスルの、長い長い夜が始まろうとしていた。 前ページ次ページ暗の使い魔