約 4,073,202 件
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/1196.html
顎に突き刺さる拳。ごりっ、という骨を削るような鈍い音。 それに抗う術を一方通行は持たなかった。 「ぐゥ……っ!」 頭蓋を抜けた衝撃が脳を掻き回す。 同時に欠けていた最後のピースがかちりと嵌まる。 明滅する視界の中で一方通行は全てを漸く理解した。 触れるもの総てのベクトルを反射する最強の盾をこともなげにあしらうその存在を忘れるはずもなかった。 彼女の左腕にあるそれは『あの右手』だ。 あの日、あの時、あの瞬間。 自分の前に立ち塞がり、最強の能力者と謳われた自分を殴り飛ばしたあの右手。 「アレイ……スター……!」 絞り出すようにその忌み名を呼ぶ。 きっと彼は今もどこかで笑いながらこの様子を眺めているに違いない。 視界を揺さぶられ、刹那の間だけ一方通行の認識が遅れた。 踏み付けるように御坂の蹴りが胸に穿たれる。 それは一方通行に対し何ら威力を発揮しない。 恐らくは一息に胸板を踏み抜く一撃だったのだろう。 しかしどだい前提条件は覆らない。 その『右手』ならまだしも、その質がどうであれ単純に示せばただの蹴りでしかない。 そんなことは御坂自身百も承知だ。 通常の手段ではダメージを通すことはおろか、逆に放った側が潰される。 己の力をそのまま返されて文字通りに自爆するだけだ。 だがそれは攻撃として放った場合のみについてだ。 他もおおよそ似たような結果になっていただろうが、この場合のみを論ずるならば御坂の蹴りは正しく効果を発揮した。 踏み抜く、という表現はあながち的外れではない。 横方向への震脚とも言うべきそれは通常状態の機能に従い彼の体に刺さる直前方向を転換する。 その力に乗り、御坂は跳躍した。 足首、膝、腰関節。そして大幹を操り威力を削ぎつつもベクトルだけを受け止める。 反射された『踏み抜き』を靴裏で受け止め、その力を足場に、更には跳ね返った力を受け流しながらも決して逃がさず。 単純換算して二倍。そこに自身の力である磁力牽引も加え大跳躍を果たす。 御坂の体は月天極光の下を舞う。 背を反らし、あたかも魚が波間に躍るように。 「おおおおォォおォっ!」 烈風となって黒翼が波となって奔る。 鞭のように撓りながら離れる御坂に食らいつかんとする。 「しつこい――なぁっ!」 追い縋る六枚羽を、しかし御坂は手に現した光剣で残らず迎撃する。 激音と共に虹色の光が四散し爆彩を生んだ。 その動きは明らかに剣技の域を超えている。 妹達が戦闘知識として持つのは単なる教科書通りの型だ。 ただ果てしなく実践的で、かつ状況に応じたそれを正確に再現できるという点では並の兵士など取るに足らない戦技であるのだが。 宙返りする相手を狙って襲い掛かる複数の攻撃を残らず弾くなどという暴挙は言うまでもなくそこにはない。 この状況で御坂が構築し直し発展させた――剣術だろう。 対し一方通行は、露骨な言い方をしてみれば――戦い方をまるで知らない。 相手の攻撃を反射させれば自滅する。 適当なものをぶつけて強引に破壊する。 能力任せに相手を蹂躙する。 蟻を潰すのにわざわざ工夫を凝らす必要もない。 そういう戦い方しかしたことがなかったし、それ以上する必要もなかった。 現時点でも力の差は歴然。 どれだけ力を持とうとも彼にとっては蟻には違いない。 その蟻が空を飛ぶ羽と、毒を持つ牙を備えていたとしても変わらない。 だが、もしもその蟻が歴戦の兵にも勝る頭脳と戦技の持ち主だったら……? 御坂とてそれは理解している。 己は彼にとって羽虫程度の存在でしかない。どれだけ強度を上げようともその絶対条件は変わらない。 世界の四分の一を手に入れたとしても、敵わない。 弱点はある。首元の、チョーカーにも似た電極。 それを破壊してしまえば一方通行は能力が演算できずに、それこそ地を這う虫にも劣る存在となるだろう。 彼にとってのアキレス腱。唯一無二の弱点がそれだ。 ミサカネットワークの崩壊を原因として演算が消失するのも結果的には同じことだ。 直接か、間接か。 どちらにしても『無敵』であるその能力を封じなければ勝ち目はない。 ない……はずなのだ。 「その『右手』……」 御坂の左腕にはそれを破る手段がある。 「……」 距離を離したまま両者は対峙する。 本来在り得ないはずの、彼の『無敵』を妥当し得るという不条理の塊。 だがその存在を一方通行に覚られた。 一方通行の思考は混沌としていた。 彼の死。御坂の左腕。 己の犯した事の結果。 笑顔のままそれを振るう少女。 しかしそれとは別に冷徹な思考が存在していた。 彼の特性ともいうべき分析能力。 それは何も能力を行使しなければ発揮しない代物ではない。 結論だけ言ってしまえば先の一撃で必要最低限の特性を見切っていた。 至近距離でなければ効果を発揮しない――。 実際との差はあるが大して変わらない。 結果として一方通行の選択は御坂を近付かせなければいいというだけのことだ。 かといって一方通行とて遠距離から御坂をどうにかする手段を持たない。 翼の射程は精々が数メートル。その間合いであれば少しでも調子を見誤れば斬り込まれる。 他のまともな攻撃手段は――残らず御坂の能力に阻まれるか、さもなくば矢張り『原子崩し』の剣で迎撃されるだろう。 であれば。 (まともじゃねェ手段を使えばいいだけの話だが) 御坂の能力は確かに強力だ。 電磁気力操作という、世界の四分の一を掌握したに等しい能力。 一方通行のそれはあらゆる力を操作できるが――最大の弱点がある。 ――『一方通行』は自力を持たない。 その能力はあくまで受動的でしかないのだ。 彼の能力は確かに最強かもしれない。 しかしその代償として、あまりに無力だった。 あらゆるベクトルを操れるといっても所詮は己の触れられる範囲でしか操ることができない。 他者を拒絶し、他者を支配し、他者を蹂躙しながらも、他者に依存するという矛盾を抱えた力。 その一点において御坂の能力とは根本的に異なる。 故に能力がどれだけ強大であろうとも、それに相当する力がなければ真価は発揮されない。 今ここで『まともでない手段』は三つある。 彼女が電磁気力を操る能力者であるならばそれ以外の力は防げない。 強い力、弱い力、そして重力。 圧倒的といえるだろう。 単純にそこだけ見ても御坂の三倍の力を有している。 一方通行という能力者にはどうやっても御坂は敵わない。 あえて分かりやすい弱点を狙わなければならないほどに。 しかし彼が触れられる力ともなれば話は変わる。 酷く単純な理由でそのどれもが役に立たない。 強い力も、弱い力も、射程があまりに短いのだ。 素粒子に直接作用するこの二つの力はその力が発揮される距離が非常に短い。 一方通行が触れている――彼自身を構成している力も含めた――力をどう操っても御坂には届かない。 直接御坂に触れて能力を行使した方が早い。 そして重力。これについても致命的な欠点を抱えている。 地球上にいるかぎり1Gを超える重力は存在しない。 次に大きい重力発生源である月の分も入れたところでさほど変わらないだろう。 単純に言って彼の体重分+αの力しか操れない。 重力線を投げて直接押したり引いたりしたところで、その程度であれば余裕で相殺される。 とどのつまり、矢張り黒翼か、さもなければ能力の直接行使しか手段がない。 刻一刻と疲弊しているのは間違いなく一方通行の側だった。 明確なリミットが設定されているのは彼だけで、相手はただそれを待っているだけで勝負がつく。 けれど御坂の能力出力もまた弱体化している。 互いの能力が同じ媒体を共有している以上、本人たちを除けばどちらかが一方的にメリットやデメリットを生むことはない。 ミサカネットワークが一方通行の演算を維持できなくなれば、墜ちる。 黒翼はミサカネットワークの如何に囚われず、御坂はそれに『原子崩し』でしか対抗できない。 数瞬前まで互角だった天秤はどちらに傾くか分からない。 ――時間の流れは果たして誰に味方するのか。 それはどちらにとっても分からない。 両者は互いを睨み合ったまま動きを止めていた。 「……どォして」 ぽつりと口を開く。 「よりによって……オマエがそンな風になっちまったンだよ。オマエは普通に泣いたり笑ったりできる奴だった。 下らねェ幻想を馬鹿みたいに大事にできる奴だった。俺みてェなのとは違う――オマエは『こっち側』じゃなかった」 問いに、御坂が見せた笑顔に彼ははっとなる。 表情が違う。目を細め、静かに微笑んだのだった。 「そんなの決まってるじゃない……もう、いいや、って。全部諦めたから」 くつ、と喉が煮えるような音を立てる。 「だってそうじゃない。当麻のいない世界なんてどうでもいいんだもの。 何よりも大切だった。誰よりも好きだった。掛け替えのない存在だった。 あのときアイツが私の全てだった。私そのものだったのよ。 それがね、死んじゃった。私にはどうしようもなかった。 どれだけ強く想っていても何も出来なかった。想いなんてものは粉々に砕かれた」 御坂は笑う。 狂愛に歪んだ道化のような貌で、まるで泣くように笑った。 「だから私は全部全部放り捨てて、一番大事なものを守るために――狂うしかなかったのよ――っ!」 ごぉん――――……と空気が戦慄いた。 目を焼きつくすほどの閃光は純白としか感じられない。 鼓膜を突き破ろうとする爆音は感覚の許容値を超え地鳴りにしか聞こえない。 燃え上がるような感情の発露は到底理解されることなどなく、ただ世界を震撼させるだけだった。 、 、 、 「……確かに私は超能力なんて妙な力を持ってるけどさ……。 常盤台とか、超能力者とか、第三位とか、そういうごてごてした装飾がついてるけど。 ……でも、私まだ中学生よ? 中二なのよ? 一体私に何を期待してるのよアンタ達は。 馬鹿な事して怒られて、笑って、泣いて、怒って、恋して、そうやって生きてたっていいじゃない」 「……御坂」 「なのに目の前で好きな人が死んじゃって、私を庇って」 くつ、とまた喉を鳴らし御坂は目を細める。 「私が何をしたの? 当麻が何をしたの? 一体どうしてこんな理不尽な目に遭わなきゃならないの。 何が悪いの。何がいけなかったの。何が原因だったの――!」 叫びと共に再び閃光が炸裂する。 爆ぜる雷火は彼女の感情そのものだ。 世界を震わせ、焼き尽くし、純白に染めようとするその暴力こそが彼女の真正。 「…………」 「答えられる訳ないわよね。私だってそういうものだって分かってる。 これが単なる不幸の積み重ねで出来た偶然の産物だって理解してる。……でもね」 御坂は口の端を上げ柔らかく笑み――笑うしかなく――、 「ッ……!」 一方通行はその笑顔の意味をようやく理解する。 最初はどこにでもある惨劇だと高を括っていた。 そんなものは世の中どこにでもある。明るく暖かな日常のすぐ傍で幾らでも起こっている。 次に、これは復讐劇だと思っていた。 それもよくある日常の裏側だ。人と人の情念が交錯するのが世界なら、それもまた起こるべくして起こる必然だ。 けれど違う。 これはそんな難しい話ではない。 御坂の言うように、これは不幸に不幸が連鎖して起こっただけの。 よくある悲劇の物語。 ただ一言『不幸だった』と言ってしまえばそれで済んでしまう。 それだけで済んでしまう程度の――よくある話。 だからこれは、徹頭徹尾、不幸な偶然の積み重ねの果てに生まれた悲劇でしかない。 「だからって、はいそうですかって納得できるほど私は大人じゃない!!」 八つ当たりに等しい行為だと自覚している。 ただの子供の癇癪だ。嫌だ嫌だと駄々を捏ねているだけに過ぎない。 「目の前にこんな分かりやすい『元凶』がいるんだもの。 誰も悪くないなんてそんな甘い事を言って終わらせられなんかしない」 けれど――そうせずにはいられない。 「アイツを、最後の最後まで不幸なんて一言で、片付けさせなんかしない――!!」 ゴンッ!! と空気がハンマーで殴りつけられたように鳴動する。 天から降り注いだ光の柱が御坂に突き刺さる。 、 、 、 、 、 、 極大の雷火柱――それが掲げた右腕の先に留まっている。 さながら天に振り翳した光の剣。 『原子崩し』の光剣など比べようもないほどの強大な力の塊。 彼女、御坂美琴――『超電磁砲』の力そのものを具現化したかのような『雷撃』。 「だから私は――どんなことをしてでも――」 呟きは雷鳴に塗り潰され、そして。 「――展開――『九月三十日』」 ミサカネットワークを一つのデータが埋め尽くした。 それはとある記録だった。 無数ともいえるデータの海の中に埋没していた、たった一つの特異点。 その日、学園都市には二つの『闇』が存在していた。 一人はテロリスト――と表向きは称されているはずの人物。 ただの一人。 銃もナイフも持たないたった一人の女。 彼女が前方のヴェントと呼ばれていた、というのはここでは大した意味を持たない。 彼女は警備員を初めとする学園都市の武力を司る者を、敵対しようとする存在を、根こそぎ昏倒させるという不可解な力を揮い無力化した。 それは一体如何なる手段によるものか。 未だ解明できずにいるものの、結果としてそのたった一人によって学園都市は壊滅寸前まで追い込まれた。 そして裏では、その騒乱に隠れるように動いていたもう一つの影が存在した。 名を木原数多。 学園都市の抱える極大の闇の一つである『木原』を冠する一人の科学者である。 一方通行にとっては名も知らないテロリストよりもよほど因縁深いものだ。 何せ彼は木原数多によって一方通行は二度目の敗北を喫することになった。 打ちのめされ、蹂躙され、何の異能も持たない相手に敗北した。 ……だがミサカネットワークを侵蝕したこのデータには、 木原数多についても、そしてもう一人のテロリストについてもあまり多くは記録されていない。 だからこれら二人についての情報は単なる蛇足的なものでしかない。 ――同時に巻き起こった二つの騒乱の只中に妹達の一人がいた。 これはその日彼女が体験しただけの乱雑なデータ群に過ぎない。 一方通行は身構える。 どう転ぶにせよ、これが最後の一撃だと。 御坂の手にあるそれは単なる稲妻、放電現象だ。 そんなありふれた力では一方通行には通じない。 当然のように。 「……っ」 背の翼が震える。 これから現れるのはきっと、彼の『無敵』を崩す不条理だ。 『未元物質』や『幻想殺し』ではない。 ましてありふれた超能力などでは断じてない。   、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 在り得ないはずの事が起こるという現象そのもの。 ――――それを魔術と人は言う。 『何か』が一方通行の頭の中を掻き毟った。 「……ッ!?」 何百本もの細長い足を持った虫に這い回られたような生理的な嫌悪感を催す幻覚に不意に襲われる。 ぞりぞりぞりぞりと、抉られるように彼の領域が侵される。 正確にはそれは彼の脳内ではない。 外付けの、ミサカネットワークによって補助されている演算機能だ。 「御坂……!」 それが一体どういうものなのか分からない。分からない。分からない。 だが何を意味するのかは分かった。 得体の知れない何かが思考と共に加速される――。 「俺の――演算能力に乗せやがったのか――!」 その有様、性質、理論、解法、条理、妄念。 そういうものを一つ一つ細かく裁断し解析する。 超能力『一方通行』の持つ真の意味は力の解析。 それがどういう代物なのか、どういう理屈なのかを結果から逆算し正体を明らかにするという天眼。 『魔術』という力の本質を解析する。 妹達の『消費』が加速度的に増す。 、 、 、 、 、 、 ネットワークを埋め尽くすそれは破滅的な勢いで食い散らかし、それでも演算を止めようとはしない。 「――――――――――――――――――――!!」 風の中に涼やかに響いたのは歌声だった。 御坂の唇から零れるのは悲痛な慟哭のようで、そしてまるで歓喜の歌だった。 鎮魂歌のように。 賛美歌のように。 あるいはただの恋歌のように。 その声に込められていた感情は一体どんなものだったのか。 一方通行をしてもそれを推し量ることはできない。 ただ、一つの結果が現象として現れる。 これは一方通行を打倒し得る最後の鍵。 恐らく一方通行は『分からない力』でさえも捻じ伏せてしまうだろう。 だが。しかし。 それは世界でただ一つの、『一方通行』をもってしても総てを理解することのできない力の質。 この一手で勝負は決する。 全身の毛細血管がびちびちと爆ぜる。 視界は真っ赤に染まり、骨は軋み、吐息からは硫黄のような味がした。 天を突き刺さんとする巨大な光の塊が鳴動する。 振り上げた右手から伸びる落雷の柱は一度、身震いするように周囲に無数の稲妻を放射した。 その中の一片が――ほんの小さな一雫が一方通行の元へと降り注ぐ。 「――ちィっ!」 何かが拙い。何かがおかしい。 そんな気配を理由もなく直感しながらも――彼は右手を振るう。 設定は『反射』。 全てを拒絶するように飛来した白雷を打ち払う。 雷速の一撃に一方通行の腕は偶然か、正確に命中した。 白い指先に触れた雷光は虹色の光となって四散する。 同時に右手の指が五指纏めて吹き飛んだ。 「ッ――――がァァああああああ!!」 あらゆる力を反射するはずの能力を前にしても、雷撃は確かに一方通行に突き刺さった。 (く……そォが……ッ!) 思考を掻き回す乱雑な情報の嵐が演算を阻害する。 それはこの解析不能な力の源泉なのだろうが、だとしても何かがおかしい。 この情報のままの力なのであれば、そのままを設定すれば理解などせずとも跳ね返せるだろう。 どうしてそれをすり抜ける。 ――それがこの世界にある普通の物理ならな。 「っ……!」 不意に浮かんだ言葉。 それはもう一つの、一方通行の鉄壁を正面から崩した存在。 (よく分からねェ代物に、もう一段階フィルタを噛ませて……!) これは本来、一人の少女を救うためだけに行使されたものだ。 それをそのまま出力したところで、どうして破壊を撒き散らすものか。 (無理だ――) フィルタは他ならぬ『御坂美琴』自身。 魔術の構築式を強引に自分の演算公式を組み込んだだけの継ぎ接ぎだらけの代物だ。 ならばこれは『超電磁砲』という魔術の発露に他ならない。 (俺は雷撃や超音速徹甲弾のベクトルは知ってるが『超電磁砲』なンて能力そのもののベクトルは知らねェ。 そンなものは、アイツの、御坂美琴の観測した世界の中にしか存在しねェンだから――!) 一方通行は歯を食い縛る。 思考を侵す情報の氾濫は頭の中をミキサーでぐしゃぐしゃと掻き回されている錯覚を引き起こす。 右手の先の欠落からくる激痛はまるで御坂の雷撃がべっとりと貼り付いてでもしまったかのよう。 気を失った方が楽に違いない。 だが彼は意識を手放そうとはしなかった。 ……自分は『彼』のようにはなれないだろう。 頭の端に引っ掛かった存在が一方通行を引き止める。 『彼』は英雄のような存在だった。 理不尽に降り掛かる災厄を吹き飛ばしてしまうような、そんな存在だった。 けれど自分は対極に位置する。 自分は災厄だ。理不尽だ。 英雄に吹き飛ばされる存在でこそあれ、英雄などでは断じてない。 ならば何か。 「――――――」 その時彼は見た。 烈光を天に掲げた少女の体が震え。 「――ごぼ――ッ」 口からどす黒い血を吐き出し、目からは血涙を流し。 それでもなお何かに憑かれたような笑顔でこちらを見る少女を。 (――そォだ。俺はアイツになンかなれやしねェ。俺に出来るのはただ――) ぎ、と噛み締めた奥歯が嫌な音を立てて擦れ、一方通行は唇を吊り上げた。 諦念など必要ない。慈悲など必要ない。 英雄の対極に位置する彼に必要なのはたった一つだけ。 破壊の衝動。殺意。 「――殺す。俺はただそれだけの悪党だ」 ただ殺意に任せ、他を残らず無視して衝動的に一方通行は喉を震わせる。 「――――――――――!!」 う た 彼女と同じく、思考を埋め尽くしていた魔術に『一方通行』を乗せる。 理屈は分からない。結果も見えない。 しかしこの御坂に対抗できるのは自分だけで、これ以外にないと直感した。 もしかしたら無駄に終わるかもしれない。 何も起こらず、ただの足掻きにもならないかもしれない。 けれど一方通行は衝動のままに喉を震わせ、歌を紡ぐ。 「な――」 予想外の返歌に御坂は唇を噛む。 自分と同じ事をしているのだというのは理解できる。 ただその結果がどうなるのかは予想できない。 当然だ。魔術を知らぬ御坂には今自身が掲げるこの雷剣ですらもよく分かっていない。 まして他人のそれがどんなものなのか、考え及ぶはずもない。 視界はぼやけているし全身の感覚がまるでない。 けれど掲げた右手には極大の稲妻が握られている。 力に奮えるように鳴動する雷光は何者にも抗えない力の象徴だ。 その性質を、その意味を、御坂は知らない。 そんなものはどうでもいい。 彼を殺すというたった一つの目的のために掲げた腕を――、 「――――っ」 視線の先、殺意を向けた相手は、同等の殺意をこちらに跳ね返している。 歌と共に、血のような殺意に濡れたどろりとした瞳で自分を見据えて笑っている。 狂したように歌声を響かせ、そして。 「ガ、はァ――っ!」 血を吐き、笑い。 ――掲げた右手を振り被り、一息に、 ……こぽん、と小さな音がした。 御坂と同じように、一方通行の喉から零れた血の塊が、まるで風船のように膨らみながらも薄れてゆく。 いや違う。あれは体積を増しているだけだ。 同時に何故だか血の色は失われ、透明になっていく。 意味が分からない。理屈がまるで理解できない。 それが血なのか、もっと別の何かなのか、それすらも判断できない。 だが一目で――駄目だ、と天啓のように覚る。 何故だか分からない。けれど間違いなく直感した。    、 、 、 あれはとんでもなく不吉な予感がする――。 「――――ぅああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」 絶叫と共に振り下ろした。 「――――」 理解できないのは一方通行も同じだった。 如何な一方通行であれ、その力を行使したとしても、理屈の一片たりとも分からなかった。 口から吐いた自分の血液が、膨れ上がって、透明になっている。 ただそれだけの現象だ。 吐血については御坂も同じで、恐らくは何らかの代償なのだろう。 超能力者が魔術を行使したという行為そのものに無理が生じたのか。 それらを理解できないし、しようとも思わない。 (なンだ……これは……) ただ、目の前で水に漂うクラゲのように浮かぶ水球はその結果だ。 どこか呆然とした頭で発生した事象について思考を巡らせる。 (塩酸? 硫酸? それとももっと別の劇物か? 馬鹿な。そンな物をアイツにぶつけたところで――) 思わず――伸ばした左手の先が球に触れる。 「――――」 冷たい、と感じる。 たったそれだけの液体だ。 (――違う!)   、 、 、 、 理解した。 どうしてそんなものが生まれたのか分からない。分からないし、どうでもいい。 ただ、それが何なのか、目の前にある事実だけを理解すれば充分だった。 それは最も身近で、ありふれた存在。  、 、 、 、 、 (これはただの水だ) 水。H2O。 たった三文字の化合式で表される存在。 ――知ってるか。この世界は全て素粒子によって作られている。 理解すると同時に、脳裏にあの言葉が過ぎる。  、 、 、 、 、 、 一方通行を、無敵の能力者の鉄壁を崩した少年の言葉が。 ――俺の『未元物質』に、その常識は通用しねぇ。 落雷が振り下ろされるという物理法則を超えた現象。 当然であり必然だろう。 それは魔術という物理法則に縛られない不条理の塊だ。 その前に一方通行の背から噴出する黒い翼が立ち塞がる 六枚全て、抱き止めるようにその進路を遮る。 バギバギバギバギバギバギィィ! と耳を劈く破壊音が響く。 「ああぁぁああああああああああああ――!!」 「おォォォおおおおおおおおおおおお――ッ!!」 両者の激突は一瞬。 砕かれたのは――黒翼の側だった。 虹色の光を羽毛のように撒き散らしながら翼が割れる。 断ち切られ、寸断され、粉砕され、四散し、粉微塵に、打ち砕かれる。 「一方――通行ぁぁああああああ――!」 あらゆる物を蹂躙し破壊する雷光が白の超能力者に突き刺さる。 閃光の花が夜空に咲いた。 「――――――」 その力の全てを発散したのか、御坂の手からは光は失われていた。 ごぼ、と咳と共に肺に溜まった血を御坂は吐き出し、荒い息を繰り返す。 彼女の前には――未だ一方通行の姿があった。 「……先に一発貰ってて正解だった。 どォにか感覚は掴めたからなァ。何とかベクトルを操れた」 そう言って白髪の超能力者は顔を顰める。 背から弱々しく黒色を吐き出しながら、一方通行は、もしかしたら笑ったのかもしれない。 「そのザマでよくそんな事言えるわね、アンタ」 「……」 眇めた先の少年は、右半身が吹き飛んでいた。 六枚の翼を突き破った先、最後に掲げた指を失った右手が雷光を遮った。 持てる演算力を総動員してその力を統率しようとした彼は――結果、御すること出来ず、けれど力の大半を虹色の光に砕くことに成功した。 ただ、全体の内の一パーセントにも満たない力が彼の体を砕くに至り、腕はおろか、右肩から腰あたりまでを消し飛ばした。 白い顔も半ばまで焼け焦げ、醜い傷痕を刻んでいる。 抉られた腹から中身が零れないでいるのはただ傷口が高熱に焼き付けられたからだろう。 どう見ても致命傷だ。 即死しなかっただけでも奇跡のようなものだった。 「――――は」 御坂の喉からも哄笑が漏れる。 「はは、あはは、あははははは――」 何故だか口が勝手に笑い声を吐き出していた。 「あははははははははははははははははははははははははははははははは――――!!」 愉快だった。痛快だった。 最強だった超能力者は今、自分の前に惨めな姿を晒している。 「は――――」 ごぽり、とまた血を吐く。 大丈夫だ。歌と同時にどういう訳か全身に裂傷が走り内臓にまでダメージを負ったが、ぎりぎりで致命傷には届いていない。 少なくとも数日程度、苦痛にもがき苦しむかもしれないが、一方通行よりは生き延びる。 勝った。 だから御坂は笑わずにはいられない。 、 、 自分の悪夢の発端であるあの一方通行に勝ったのだ――! 「……勝利宣言には早すぎるぜ、超電磁砲」 「え……?」 今更何を言っているのだ、と御坂は疑問する。 どうしてそんな言葉が出てくるのか分からなかった。 触れられてもいない。 そもそも電磁場の壁は何かの接触を認識していない。 何もされてはいない。 そのはずなのに。 彼は御坂に蔑むような笑みを向けていて。 「ごっ――ぶあ――っ!?」 どういう意味なのか問うよりも先に。 言葉の代わりに喉をせり上がってきた血を、口から滝のように吐き出した。 何が起こったのか、何をされたのか、全く分からない。 ただ一つだけはっきりしていることは、どうにもこれは致命的なものだということくらいで。 「アンタ……何を……!」 「冥土の土産だ。一つ理科の授業をしてやるよ」 睨む御坂にひゅうひゅうと掠れる声で一方通行は嘯いた。 ようやく御坂は気付く。 彼の前に浮かんでいたはずの水球がなくなっている。 「どォにかほンの少しだけ『掴めた』からな、利用させてもらった」 「何をした……っ!」 「理科だっつってンだろ。中学生にも分かるよォな簡単な奴だ」 そう言って彼は、一度咳を吐き。  、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 「水を電気分解しただけだ」 「な……」 御坂は絶句する。 「ただの……水……?」 そんな単純な化学反応であるはずがない。 それだけでは帳尻が合わない。 何よりあの不吉な予感がしたものが単なる水であるはずがない……! 「いいや。あれは水には違いねェが……『ただの』と言うのはちィと語弊があるな」 「…………っ!!」 その言葉で御坂は理解した。 あの得体の知れない不吉な予感は間違っていなかった。 確かにそれを水と言ってもいいだろう。 一見してただの水。 だが、正確に言うのであれば。 「重水。水素の同位体、デューテリウムやトリチウムで作られた、文字通りに重い水」 その言葉が意味するところを御坂は理解した。 雷が炸裂したときの爆光はそれだけのものではなかった。 重水を構成する二重水素や三重水素。 この場合用途は一つしか思いつかない。 御坂を穿ったのは熱線でも衝撃波でもない。 それらは電磁気力制御の壁の前に弾かれる。  、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 その正体は核融合によって生まれる電荷を持たない素粒子――中性子線だ。 「水……爆……っ!」 「正解。賞品は地獄行きの片道切符だ」 ぐらりと、ようやく――両者の体が崩れる。 「ハッ……第一位の意地だ。格下に一人勝ちなンかさせてやるかよ」 「…………!」 能力による浮力を失い、二人の超能力者はほぼ同時に地上に向かって墜落した。 ―――――――――――――――――――― 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/519.html
一方「・・・つまりだ。地獄から抜け出した駆け魂はアレ一匹じゃねェと」 エルシィ「はい」 一方「他の駆け魂も全部捕獲しねェと契約も終了しねェってわけか・・・」 エルシィ「はいっ!その通りです!」 一方「・・・そうかい」 一方「・・・・・・」ポカッ! エルシィ「いたぁ!?」 一方「なーンなンだよそりゃあ!?そういうことは先に言えっ!」 エルシィ「あぅぅっ・・・神様がぶったぁ・・・」グスッ・・・ 一方「泣きてェのはこっちの方だ・・・クソったれが・・・」 一方「(っても、グダグダ言ったとこで仕方ねェか・・・)」 エルシィ「ううっ・・・!ぶったぁ・・・!!」グズグス・・・ 一方「(こンなヘッポコに期待する方がどーかしてるってンだ)」 一方「(まァ羽衣の幅広い応用力は認めてやンねェこともねェけどな)」 一方「(・・・着ぐるみは二度と着ねェけどよ)」 エルシィ「うぐぐぅ・・・」グスグス・・・ 一方「って、いつまで泣いてンだっての」 エルシィ「だ、だって・・・神様がぁ・・・」エグエグ・・・ 一方「あァ・・・ンだよ。そンなことか」 エルシィ「そ、そんなことって!?痛かったんですよぉ!?」ムキー 一方「あァ、ハイハイ。悪かったなァ。ごめンなさいっと」 エルシィ「うー・・・いまいち誠意が感じられません・・・」 一方「まァ、ンなことはどうだって良いンだわ」 エルシィ「誠意のかけらも無いじゃないですか!!」ムキー 一方「一々うるせェなァ・・・悪かったって言ってンだろ?」 エルシィ「・・・神様はもう少し私に優しくしてほしいです」 エルシィ「・・・私だって女の子なんですよ」モジモジ・・・ 一方「あァ?ンだって?」 エルシィ「~~~!!!」 エルシィ「もう知りません!!」プンッ 一方「(なに一人でキれてンだ、コイツ?)」 ~~~~~~~~~~~ エルシィ「えへへ~♪やっぱり暑い時には冷たい物ですよね~♪」シャリシャリ・・・ 一方「ったく・・・」 一方「(アイスを買ってやるまでダンマリを決め込むって本物のガキかってンだ)」 一方「(悪魔ってか天邪鬼の間違いじゃねェのか?)」 一方「(結局キレた理由よくわかンねェし・・・)」 エルシィ「美味しい~♪神様も一口いかがですかっ?」アーン 一方「一人で食え。甘ったるいのは好きじゃねェんだよ」 エルシィ「ええ~?こんなに美味しいのに~。でも神様がそう言うなら私一人で食べちゃいます♪」シャリシャリ・・・ 一方「はァ・・・」 一方「(女ってのはなーンで心模様ってもンがすぐに変わっちまうンかね)」 一方「(めンどくせェ生物だ・・・それをまだこれから何人か恋に落とさなきゃいけねェってンだろ?)」 一方「(オリジナルだけで腹一杯だってンだよ・・・)」チャラ・・・ カエル・・・ゲコ太のストラップ・・・ ハッ・・・やっぱり今日も不細工なツラしてやがる ・・・・・・ 良いさ、オリジナルが忘れたようにいずれ俺もあの日のことを忘れるンだ 感傷なンて感情は俺にはいらねェさ 一方「そンでよ、へっぽこ」 エルシィ「なんですかぁ?・・・って、ちゃんと名前で呼んでください~!!」 一方「逃げ出した駆け魂はあと何匹いンだよ?まさかン万匹とか言わねェだろうなァ?」 エルシィ「昨日の時点で六万匹です!」 一方「・・・・・・」 エルシィ「あっ、でもこの学園都市にはあとニ匹だけですね!残りの駆け魂はそれぞれの地区に配属された駆け魂隊のみんなが討伐してくれますのでご安心を!」 一方「・・・そうかい。そりゃ良かった」 エルシィ「はいっ!だから私たちも頑張りましょうね!」 一方「そうだな。命もかかってるわけだし頑張ってやるとすっかァ!」 エルシィ「おー!!!」 一方「・・・ふゥ」 エルシィ「・・・あれれ?どうしたんです神様?ため息なんかついて・・・」 一方「そういうことは早く言えって言ってンだろうがァ!!」ゴンッ!! エルシィ「いったぁ~い!?」 ・・・ったく 六万とかマジで心臓止まるかと思ったぜ・・・ まァ、俺のノルマはあと二匹・・・ エルシィ「なんでぶつの~!?」エグエグ・・・ それだけを捕まえりゃこのヘッポコとも縁が切れると思うと気が楽になるってもンだぜ ~~~~~~~~~~~~ 一方「そーいやァ、お前ってコッチの世界にいる間はどこで暮らしてンだ?」 エルシィ「えっ?」 一方「いや、オリジナル攻略の時は気にも留めて無かったが考えてみりゃァあれから3日は経ってンだ」 一方「流石に悪魔とはいえ睡眠とかは必要だろ。お前、夜中どこで寝てンだよ?」 エルシィ「公園ですけど?」 一方「そうかい公園・・・」 一方「・・・・・・」 一方「野宿かよ」 一方「オイオイ?いくらヘッポコの三流悪魔とは言え仮にも女の形をしてるヤツが公園で野宿ってのはどーなンだよ?」 エルシィ「あっ野宿じゃないですよ!ちゃんと羽衣でテントを張って寝てます!」 一方「羽衣だけはホントに便利だなオイ」 エルシィ「羽衣だけはってなんですかぁ~!?」ムキー 一方「って、テント張って寝ようが野宿は変わりねェじゃねェかよ」 エルシィ「ちゃんと寝袋も作ってから寝てますよ?」 一方「そォいうことじゃなくてだな」 学園都市ってのは治安が悪い 能力を持て余して良い気になっちまったアホや能力者に嫉妬してやさぐれちまうバカで溢れかえってるせいだ ンな場所に夜中に女が一人 しかもこんななーンも知らねェだろうって感じのアホヅラした女がいてみろよ? なにされるかわかったもンじゃねェ・・・ そンで何かされた拍子に首輪が誤作動して二人ともあの世逝きとか死ンでも死にきれねェぞマジで? 一方「・・・しゃーねぇな」 エルシィ「?」 ~~~~~~~~~~~~ 神様曰く公園で女の子一人で公園で寝ることは危険だと言うことです 確かに衛生面は悪いかもしれないけどって思ってましたが、どうもそういうことではないらしいのです 一体どういうことなんでしょう? エルシィ「それにしても・・・」 一方「ン?なンだよ?・・・あァ、ベットは貸しといてやる」 エルシィ「神様の部屋・・・凄いことになってますね・・・」 一方「気にすンな。よくあることだから」 エルシィ「よくあることって・・・」 神様の部屋は人工的に酷く荒らされた形跡が見るも無残な状態になってました ・・・ここで寝泊まりする方が危険なのではないでしょうか? そ、それに・・・ 二人っきり・・・だし・・・ 一方「安心しろ。お前なンかにゃ手は出さねェからよ」 エルシィ「~!?」 エルシィ「そ、そうハッキリ言うものどうかと~!!」ムキー はいはい! どーせ私には色気なんか無いですぅ!! 一方「あァ、あとな。この部屋見てコッチの方が危険とかなンとか思ったりしてンのかも知らねェけどよ」 エルシィ「えっ?」 一方「俺が傍にいりゃお前の安全は100%保障出来る。なンかあったら俺が守ってやるから安心して寝ろ」 エルシィ「えっ・・・うっ・・・?」ドキッ それでもちゃんと女の子扱いはしてもらえてるみたいです ちょっぴりそれが嬉しかったり ・・・この人が私のバディーで良かった
https://w.atwiki.jp/kamiichi_bot/pages/12.html
旧約(SS含む) 夏の夜の羽虫を集めるように光を放つコンビニから出てきたのは一五、六歳の少年だ。針金のように細い体、少女のような繊細な肌に白い髪。掴めば折れそうな……という表現に偽りはないだろう。(旧約3) 髪も肌も恐ろしいほどに白い少年。白、と言ってもそれは清潔や潔白と言ったイメージとは対極に位置する、濁りに濁った白濁の白。その腐敗する白をさらに強調させるように、衣服は黒で統一されていた。そして、瞳。鮮血のように赤く、火炎のように紅く、地獄のように緋い、その双眸。(旧約3) 「――だったら、話は簡単だ。研究者達にはこう思い込ませれば良い。最強最強って謳ってるけど、実は一方通行ってメチャクチャ弱かったんだな、って」そう、例えば『学園都市最強』を語っている一方通行が、なんて事のない、ただの路上のケンカで簡単に倒されたら?(旧約3/上条) 落雷のような上条の怒号に、一方通行の言葉が詰まった。まるで信じられないものでも見るかのように、一方通行は上条の顔を見た。何か、生まれて一度も怒られた事のないまま育ってしまった子供のように。(旧約3) 一方通行は最強ではあっても無敵ではない。上条の幻想殺しは、相手が『異能の力』である限りは、触れただけで神様の奇跡すら打ち砕く。いかに一方通行の『反射』が核爆発すら跳ね返すような絶対防御だったとしても、上条の右手だけは防げないはずだ。(旧約3) 一方通行が、世界中の全てが束になっても敵わないような『最強』であっても、世界でたった一つ、幻想殺しすらも防ぐような『絶対』ではないのなら、その誤差に、必ず勝機がある。(旧約3) 毒蛇のように襲いかかる一方通行の右手を見た瞬間、宙に浮いたままの上条はそれでもとっさに右手を突き出した。不幸中の幸いか、上条の右手は何とか一方通行の手を払い落とす。たったそれだけの仕草に、一方通行は、何か信じられないようなモノでも見るような目を上条へ向けて(旧約3) 「まったく、あァそォだった。さっき身をもって経験したばっかじゃねェか、酸素奪われるとこっちも辛いンだっつの。あァ死ぬかと思った。喜べ、オマエひょっとして世界初じゃねェのか。一方通行を死ぬかもしれねェトコまで追い詰めるだなンてさァ」(旧約3/一方通行) 「くっくっ。こりゃ核を撃っても大丈夫ってキャッチコピーはアウトかなァ?ま、酸素ボンベでも持ってりゃ良いンだが。なァ、確かヘアスプレーサイズのボンベってあったよなァ。あれっていくらぐらいするか分っかンねェ?」(旧約3/一方通行) 「―――、で?身構えてどうすンの、オマエ?」炎の中、一方通行は子供のように小首を傾げた。(旧約3/一方通行) だが、凍りつく上条に一方通行は親しげに笑った。「ま、っつってもそンなに気にすることじゃねェンだぜ。実際、オマエは結構頑張ったと思うしな。この一方通行を前に、今こうして呼吸してる事そのものが奇跡なンだよ。それ以上を望むってのは贅沢ってモンじゃねェの?」(旧約3/一方通行) 炎の中で、ぱちぱちと一方通行は拍手した。心の底から、相手を労うような声で、「オマエは頑張ったよ。オマエは本当に頑張った。―――だからイイ加減に楽になれ」(旧約3/一方通行) 「あ、は?い、たい。はは、何だよそりゃあ?面白ェ、ははは、ちくしょう。イイぜ、最っ高にイイねェ。愉快に素敵にキマっちまったぞ、オマエはァ!」(旧約3/一方通行) 「何だ、ちくしょう。何だってオマエにはただの一発も当たンねェンだよ、ちくしょう!」(旧約3/一方通行) かくん、と一方通行のヒザから力が抜けた瞬間、ゴッ!!と。上条の、それまでにない『本気』の拳が顔面へ突き刺さった。(旧約3) 一方通行は上条の懐へ飛び込んでくる。その、触れただけで人を殺す右手が、真っ直ぐ上条の顔面を狙う。(まさか、こいつ)上条は首を振っただけでこれを避けた。特に軍隊みたいな訓練をしている訳でもないのに、簡単に避けることができた。(旧約3/上条) (もしかして―――)上条は、右の拳を握る。攻撃を外した一方通行へ、カウンターを決めるようにさらに懐へと潜り込んで、(もしかして―――メチャクチャ弱い?)(旧約3/上条) 「はっ、負けたことがない、ね」上条はステップを踏みながら、「だからこそ、テメェは弱いんだよ!あらゆる敵を一撃で倒し、どんな攻撃も簡単に反射する。そんなヤツが、ケンカの方法なんか知ってるはずがねえってな!」(旧約3/上条) たった一度も負けたことのない一方通行は、逆に言えば一度も勝負をした事がないのだ。その能力が最強だからこそ通常の運動能力を使う機会がない。いくら不良のケンカも圧勝できない上条にしても、生まれてこの方一度も争った事のない深窓のお坊ちゃまを相手にすればボコボコにする事ができる(旧約3) 「……っ!く、は、面白ェ、何なンだよその右手は!」小刻みな右の拳を何度も顔面に浴びた一方通行は、がむしゃらに手を伸ばしながら叫ぶ。生まれてこの方、たった一度も負けたことのない最強と、たとえどれだけ負けても、決して諦めなかった最弱。(旧約3) 今まであらゆる攻撃を反射してきた一方通行には、目の前の攻撃が『危ない』ものだと分かっていてもそれを『避けよう』という動きに結びつかない。突き刺さる拳も気にせず逃げる上条をただがむしゃらに両手を振って追い駆けるその姿は、大人に軽くあしらわれている小さな子どもにしか見えない(旧約3) 鋭いナイフが人を殺す凶器であっても、それを握っているのが幼稚園児では脅威にならないのと同じ事だ。もう勝負は決したと言って良い。上条が小刻みに与えたダメージは、今まさに蓄積してうたれ弱い学園都市最強の能力者の足を殺しつつある(旧約3) 「はっ……ハァ……!?」一方通行は上体を起こし、前を見る。そこにゆらりと近づく上条当麻の姿を確認して、手だけを使ってずるずると後ろへ下がる。(旧約3/一方通行) 痛い。全ての攻撃を自動的に『反射』してきた一方通行にとって、それは未知の感覚だった。彼にとって痛点とは皮膚から快楽を脳に伝える器官にすぎない。『痛み』に対する耐性をまるで持たない幼い痛覚神経が、過剰な信号を受けて焼き切れそうになっている。(旧約3) ひっ、と一方通行の動きがビクリと止まる。だが、上条は止まらない。嫌だ、と一方通行は首を横に振った。一方通行には『負ける』という事がどんなものか分からない。生まれてこの方、一度も負けたことのない一方通行には、『負ける』という事に対する耐性が一切ない。(旧約3) 一方通行は夜空を抱くように両手を広げて頭上へ吠える。「空気を圧縮、圧縮ねェ。はン、そうか。イイぜェ、愉快なこと思いついた。おら、立てよ最弱。オマエにゃまだまだ付き合ってもらわなきゃ割に合わねェンだっつの!」(旧約3/一方通行) とはいえ、一方通行はわずか一〇秒足らずで膨大な計算式を完全に修正する。これくらい、脳を開発された彼には問題にもならない。教育方法に能力開発を取り入れる学園都市にとって、学園都市最強の能力者とはつまり学園都市最高の優等生の事なのだから。(旧約3) がさり、と。一方通行の背後で、何か物音が聞こえた。「……、」一方通行は、恐る恐る振り返る。そこに、信じられない光景が広がっていた。風速一二〇メートルもの暴風に吹き飛ばされて、風力発電の支柱に激突したはずの少年が、ゆっくりと立ち上がる所だった。(旧約3/一方通行) ありがたい、と上条は思った。向こうから近づいてきてくれるなら、それに越した事はない。今の上条のボロボロの体では、おそらく一方通行の元まで辿り着く前に倒れてしまっていただろうから。(旧約3) 「歯を食いしばれよ最強――」二重の必殺を封殺され、心臓を凍らせた一方通行に上条は言う。密着するほどの超至近距離で、獣のように獰猛に笑い、「――俺の最弱は、ちっとばっか響くぞ」瞬間。上条の右手の拳が、一方通行の顔面へと突き刺さった。(旧約3/上条) 宿題に煮詰まった上条は、これは徹夜の長期戦になると踏んでコンビニへ缶コーヒーを買いに行ったのだが、いつも飲んでいる銘柄だけがぽっかりと穴が空いたように売り切れ状態だった。(旧約5) ふと思う。あの無能力者との一戦には果たしてどれほどの意味があったのか。一方通行と呼ばれる人間は、ぼんやりと思考する。(旧約5) あの一戦を境に、彼は昼夜を問わず多くの者に襲撃されるようになった。『学園都市最強』という壁が取り払われた。そんな事を、本気で信じてしまった者達によって。(旧約5) さて、と。彼は思案する。妹達、超電磁砲が関わったあの一戦を境に、一方通行の何が変わったと言うのだろう?一方通行は弱くなったのか、強くなったのか。それとも、あの名も知れぬ無能力者が強くなったのか、弱くなったのか。(旧約5) 「あー、違うよなァ。牙剥いた馬鹿を見逃すなンて俺の人格じゃねェよ。やっぱ何かが変わったンだ。でも何が変わったンだァ?何なンだこりゃ、なーンなーンでーすかー?」(旧約5/一方通行) なンだ痴話喧嘩か、と一方通行は自分の元へ降りかかる無駄な『声』――空気の振動を『反射』した。その行為があと数秒遅れていれば、彼の良く知る無能力者の絶叫も聞こえたはずだった。(旧約5) 「っつかよォ、チカラが強すぎるってのも考えモンだよなァ。外部刺激が少ねェモンだからホルモンバランスも狂っちまってるみてェだし。おかげで女か男か分かンねェ体型になっちまうしよォ」(旧約5/一方通行) 彼は思い出す。あの操車場での一戦を、何度でも何度でも立ち上がった無能力者を。きっと、彼は自分の思い出を極端に美化している。それが分かっていても、なお思う。最後の最後、何でもないただの拳に打倒されるその瞬間。一方通行は、何を考えていただろうか。(旧約5) 一方通行は道を歩きながらぼんやりと考える。大体、自分にそういった事は似合わないと思う。それは自分の住んでいる世界とは違う気がする。それこそ操車場で一方通行の前に立ち塞がったあの無能力者のような人間にこそ相応しい。(旧約5) 随分と昔のことを、彼は思い出す。一方通行と呼ばれるその人物にも、元々は人間らしい名前があった。名字は二文字で名前は三文字。いかにも日本人らしい名前だったし珍しくもない名前だったはずだ。(旧約5) 一方通行が判断に迷っていると、今度はやはり砕けたウィンドウから道路へ向かって、一人の少年が飛び出してきた。彼はその少年を知っている。「あ、の……ヤロウ!!」一方通行は思わず目を剥いた。妹達を助けるために『実験』を凍結に追い込み、一方通行を殴り飛ばした無能力者の少年だ。(旧約5) 何となく、彼は知った。『実験』を止めるために操車場へやってきた、あの無能力者の気持ちを。何の理由も目的もなく、ただ傷つけられる妹達を助けるために立ち上がったあの男。生まれた時から住んでる世界が違うヒーローのように見えたが、違ったのだ。(旧約5) 一方通行の本名が実は鈴科百合子ちゃんだったり、一万弱もの妹達が押しかけてきて一気に生徒総数が一〇倍以上に膨れ上がったり、羽を隠した天使が降臨してくる場合もあるかもしれない。「い、いけない!それはちょっと楽しそうだとか思った自分がいけない!」(旧約6/上条) 「そしたら何か街の一角の窓ガラスが全部粉々になっててキャリーケースっぽい残骸が散らばってて『中身』らしきものが木っ端微塵になってて屋上にはボッコボコにされた女の子が引っかかってて――どこの誰がやったか知らないけどありがとうって感じだぞ」(旧約8/上条) 「いえーい!言われると思ったよちくしょう!!っつかどこのどいつだ人の獲物を勝手に横取りして何にも言わずに立ち去っていくなんてよぉ!一体どこまでお馬鹿に格好つければ気が済むってんだ!!」(旧約8/上条) 「なンか表がうるっせェなァ一体どこのお祭り野郎が騒いでンだァ?」一方通行は壁越しに聞こえてくる声に眉をひそめた。何かどこかで聞いた事があるような声なのだが気のせいだろう。個室とはいえそれほど広くない部屋の中ポツンと置かれたベッドの上で一方通行は布団をかぶり直す(旧約8/一方通行) さて、八巻です。テーマはそのものずばり超能力ですね。今回はある意味本当に変化球で、明確な男子キャラクターは上条当麻ただ一人しか登場しません。おや、と思った貴方はとりあえずその疑問は保留という方向で。あっちは一筋縄ではいかないのです。(旧約8/あとがき) (こンなクソルールをいちいち一つずつ覚えていくのも面倒臭ェ。ったくシンデレラじゃあるまいし、時間制限つきの最強なンざ笑い話しにもならねェぞ)(旧約12/一方通行) (……どォなってンだこりゃ)こんなのは一方通行の生活パターンではない。というか、ドアを開けるたびに女の着替えだの何だのに遭遇するような人間がいたら腹を抱えて笑っているだろう。(旧約12/一方通行) これは大変な人間と遭遇してしまった、と一方通行は首を緩く振った。日頃からこんなのの相手をさせられている彼女の知人様にはご冥福をお祈りする。(旧約12) とりあえず分かったのは、その『とうま』という人物が何者かは知らないが、話を聞く限りソイツはとんでもなく嫌なヤツだという事だけだ。なんというか、名前が出てくるたびにイライラする。(旧約12) ふうん、と上条は適当に相槌を打った。誰だか知らないけどその相手は良いヤツっぽさそうだな、と漠然と感想を抱く。(旧約12) 「そっか」言っている事の意味の半分も理解できていないだろうが、上条は頷いた。打ち止めの口調に偽りはない。良いヤツっぽいんじゃない。きっとソイツは、間違いなく良いヤツだ。(旧約12/上条) 何だろう。ソイツの行動パターンにものすごく親近感を覚えるのだが、根拠のない事は口に出さないようにしておく。(旧約12/上条) 朦朧とする意識の中、一方通行は思う。これと同じような現象を、知っている。自分が絶対だと思っていた超能力の力を、掌で触れただけであっさりと打ち消してしまう、あの男。『反射』という不可侵の能力すらも打ち砕き、この華奢な体に重たいダメージを次々と叩き込んできた、あの男。(旧約12) (……、誰か)それでも、一方通行は思う。(起きろよ幻想……。手柄ならくれてやる。俺を踏みにじって馬鹿笑いしても構わねェ)雨に塗れた地面に転がり、頭蓋骨を叩き潰される直前で、どこまでも無様に。(旧約12) 二人の少女は交差し、二人の能力者への道が繋がる。本来ならば決して交わる事のない、完全に平行した二つの道。彼らの道が一点へと集束する時、学園都市を舞台にした、本当の物語が始まる。(旧約12) (……、この声?)どこかで聞いた事があるような気もするが、はっきりとしない。電波の状況も良くないし、相手は外にいるのか、スピーカーからは豪雨の音まで入ってきている。(旧約13) 「分かった。後はコッチで回収しておく。オマエはそのケータイを捨てて、サッサと一般人に戻れ」『何言ってんだ!俺も手伝うに決まってんだろ!!』(旧約13) 『かなり無差別的な攻撃みたいだから、お前も気をつけろよ』「面倒臭ェ……」二人はそれぞれ言い合って、少しだけ黙った。(旧約13) 「もしかしたら、『電話の男』は罠ではなかったのかもしれない。だとすれば、こんな惨状に巻き込まれたにも拘らず、打ち止めだけでも逃がしたというあの男は、本物だ。(旧約13) 『馬鹿じゃねェのか!?本当に信じてンじゃねェよ!!』言い終える前に、向こうから怒鳴られた。面食らった上条に、電話はさらに苛立った調子で続ける。(旧約13) 「俺はあの『天使』を止めなくちゃならない。だから本当に、アンタと協力するのは難しくなる」構わねェ、と声は気軽に返ってきた。悪い、と上条は謝ってから、「死ぬなよ」『互いにな』電話を切って、それをポケットにしまって、上条は顔を前に上げる。(旧約13) しかし、そこにいたのは確かに一方通行だ。白い髪、赤い瞳、整った顔立ち、張りのある肌、細いライン、首元のチョーカー、灰色を基調にした衣服、筋肉の少なめな手足、ギラギラと光る黒い靴(旧約13) ダッ!!と。勢い良く、ある少年の背中が一方通行を追い抜いた。「――、」見覚えのある少年だった。というより、忘れる訳がなかった。中肉中背の体格に、黒くてツンツンした頭、そして握られた右の拳。(SS) (あ、の――野郎!!)こちらが暗がりにいたせいか、完璧に意識がデータベースセンターに向いていたからか、あちらは一方通行に全く気づかなかったようだった。(SS) もっとも、ここで鉢合わせになれば二人は殺し合いをしていたかもしれない。それぐらいの相手だった。一方通行は無理に首を振って、意識を切り替えようとする。(SS) (さて、と。あと残ってるスキルアウトは――)「あれか」美鈴の腕を引っ張って出口のドアに向かおうとしている黒い人影に、一方通行は銃口を向けて適当に発砲した。「おわぁああああっ!?」派手な叫び声が聞こえたが、弾丸は人影からわずかに横に逸れた。(SS) 「良いか。目の前で誰かが苦しめられていたとしても、そこで迷わず武器を握って凶漢をブチ殺すよォなヤツは、似たよォな悪党だ。人の気持ちも考えず、更生の機会も与えず、理に適ってるってだけで人を殺せるヤツは善人なンかじゃねェ。オマエはそォいう野郎になる必要はねェ。」(旧約19) 「そいつは俺の領分だ。俺一人だけがやるべき事だ」(旧約19) 「お前のような悪党が、善人を知っているとでも言うのか?」「……、」今度の問いには、わずかな間があった。しかしそれでも、一方通行はこう言った。「知っているさ。……思い返すだけで頭にくるぐらいにな」(旧約19) 「上条当麻・一方通行といったイレギュラーな因子は、あくまでもその『プラン』の許容範囲内においてのイレギュラーらしいわね。だからこそ、『プラン』の軸に据えることができるし、彼らが暴れた所で『プラン』の利益のためにいくらでも応用ができる」(旧約19/ドレスの女) 「とはいえ、思った以上に幼い精神だったな。彼は自らを悪と蔑んでいたが、それは善に対する強烈な渇望の裏返しであると、本人は気づいていたのかね。…彼が背中を追う幻想殺しは、そもそも善悪に属するから行動しているのではなく、自身の内から湧き出る精神活動に従った――」(旧約19/エイワス) 「―――、」わずかに考え、一方通行は顔をしかめた。その上で、彼は実行する。攻撃用のベクトル変換能力を、右手に集中。ゴッ!!という轟音が炸裂した。(旧約20) 「やっぱ、俺には右手は似合わねェか」(旧約20/一方通行) そんな抜け殻になってしまった一方通行の心が、確実に動いた。原因は、大型車の一台。そこに乗っていた男の横顔。それは、学園都市の操車場で一方通行を倒した男の顔だった。『実験』を阻止し、絶対能力者進化計画を永久凍結させ、一万人弱の妹達の命を救った男の顔だった。(旧約20) あいつは学園都市にいるはずだ。何でロシアなんかにいる。そして。そのヒーローが。こんな中途半端な学園都市第一位と違って、きちんと人を助けられるヒーローが。何で、すぐ近くであんなに苦しんでいる打ち止めの危機には気づいてくれず、ただここを素通りしようとしているんだ。(旧約20) 本来ならこれは一方通行が成し遂げるべき仕事だ。それを自分から放棄した上何の縁もないあいつが糾弾されるのは筋違いだというのは百も承知だ。だけど。「…オマエは妹達を全員救ったヒーローなンだろォが。一万人近くいるクローン達を片っ端から助けだした、本物のヒーローなンだろォが」(旧約20) もしもクソくだらない『実験』を止めたほどのヒーローが、こんなくだらない理由であっさりと死んだとしたら。一方通行が知る中で最も重要な位置に存在する『悲劇を食い止めるための存在』がこんなにも簡単に失われてしまうとしたら。この世界は。多分もう本当の意味で終わってしまっている(旧約20) 原因は右手。真上に掲げたその一本の腕が、漆黒の闇を吹き散らす。「――、」一方通行の唇が微かに歪む。最初の一発目で死ななかった事に、彼は心の奥底で何を思っているのだろうか。自分自身でも明確な答えを出さないまま、一方通行は更に黒い翼を振るう。(旧約20) これで終わったはずだ。勝利と同時に、一方通行は何かしらの希望を失ったはずだった。なのに。一方通行の前に、ゆらりと立つ人影がある。白い雪と黒い土の粉塵の向こうに、あの無能力者の少年は立っている。(旧約20) 右手一本でどうにかできる攻撃ではなかったはずだ。しかし確実に一方通行は笑っていた。楽しそうだった。むしろ絶対に倒せるはずの攻撃というセオリーが覆された事を喜んでいるかのようだった。それこそが。どうしようもない運命のレールとやらを軽々と飛び越える象徴のように見えたのだ。(旧約20) 笑う一方通行は、さらに黒い翼に莫大な力を込めていく。メキメキと、頭蓋骨の内側でさらに嫌な音が増す。無能力者の少年は、その拳を握って一方通行の元へと走ってくる。今度こそ、小手調べではない。本当の激突が始まる。(旧約20) 「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」」二つの叫びが重なった。無能力者の少年が、拳の届く圏内まで容赦なく飛び込んできた。一方通行は黒い翼を振るう。対するように固く握られた右拳が飛んでくる(旧約20) 爆風が吹き荒れ、無能力者の少年どころか、一方通行の体まで十数メートル後ろへ転がされた。二人は雪の中から起き上がり、さらに拳を握り、それぞれが距離をゼロまで縮めるべく、最短距離で突撃していく。(旧約20) 「俺みてェなクソったれな悪党が今まで立ち上がっていた方がおかしかったンだよ!どォ考えたって場違いだろォがよ!ヒーローなンかなれる訳ねェだろ!何をどォしたって、俺は血みどろの解決方法しか選べねェンだよ!何で俺がこンな事をしなくちゃならなかったンだ!」(旧約20/一方通行) (これで死ンだろ…。死ななきゃおかしいだろ)一方通行はそう思う。そうでなければおかしいはずだった。にも拘らず。「何でだよ…」思わず、呻くように彼は呟いた。やがて、それは巨大な叫び声になる。「何で今ので死なねェンだよヒーローッ!?」(旧約20/一方通行) 言葉が返ってきた。間近で両者の血に濡れた拳を握る、少年の口から。「…ヒーローなんか必要ねえだろ」(旧約20/上条) 「俺みたいなただの無能力者が、そんなご大層な人間に見えるのか!?善人?悪人?ふざけるんじゃねえ。そんな位置に立ってなきゃ、誰も救っちゃいけないのか!!」(旧約20/上条) 言葉を吐くごとに、無能力者の少年の力が増していく。一方通行に向けて放たれている、だけではない。彼の言葉は、彼自身の中にあった迷いをも断ち切っていくかのようだった。(旧約20) 「お前が選べよ…」無能力者の少年は、あのどうしようもないほど血まみれだった操車場の時と同じように、学園都市最強の超能力者の懐へと踏み込んでいた。「このままお前の手で守り続けるのか、他人に全部預けて逃げるのか、それとも俺の手を借りて協力して欲しいのか!!」(旧約20/上条) 轟音が炸裂した。無能力者の少年の拳が、一方通行の顔面を確実に捉えた音だった。『悪』の道を突き進み、いくつかの偶然を経て手に入れた黒い翼の力は、あの少年には通用しなかった。(旧約20) 今まで背中を追ってきた人物は、つまりそういう存在だったのかもしれない。『善』だから『悪』だからではない。始めからそんな事を考えてもいなかったからこそ、何をどうやっても『単なる悪』の一方通行には追い着けなかったのかもしれない。(旧約20) 上条は気絶した一方通行の懐に羊皮紙の束があるのを見つけていた。魔術の品かもしれないので下手に触らなかったが、代わりにインデックスの名を残しておいた。羊皮紙の意味を教えてくれる少女の名を。(旧約20) この状況をどう判断して良いか分からない一方通行。カサリと、懐にしまった羊皮紙の感触が伝わってくる。彼はそこで、打ち止めの小さな体のすぐ横に、小さなメモが置いてあるのを見つけた。タイミングから考えて、あのツンツン頭の少年の可能性が高い。(旧約20) 一方通行は、言葉で返事をしなかった。彼はただ、手の中のメモを両手で握り締めたまま、打ち止めの前で項垂れていた。まるで、白い天使が祈りでも捧げているかのような格好だった。(旧約20) 「……そうだよな」彼は、小さく笑っていた。学園都市第一位との戦いは予想外だったが、そこから得られたものは少なくなかったのだ。「勝手にグズグズ悩みやがって。一方通行に偉そうな事を言えた義理かよ」(旧約20/上条) (……あのクソ野郎の無能力者。一体、俺の何歩先まで進ンでいやがったンだ……?)(旧約21/一方通行) 前へ進む力。学園都市から逃げ出し、このロシアをさまよっていた頃には決してなかった力。あの少年との戦いを機にきっかけを手に入れた『それ』へ、一方通行は今まさに点火させる。一気に起爆させる。(旧約21) この応用力をもってしても、最後の最後まで全く対処のできなかった者を、美琴は二人しか知らない。正と負。双方の極に立つ能力者だけである。(旧約22/御坂) 上空八〇〇〇メートルで要塞から放たれた正体不明のエネルギーの塊と激突した一方通行だったが、その後どうなったのか、自分でも理解できていなかった。――少なくとも自分がこうして生きているという事は、ギリギリの所で大きな破壊を止められたのだろう、と判断する。(旧約22) 新約(リバース含む) だから、良くも悪くも、今の彼に安否の確認はできない。そう。あの戦争に参加した人間の中で、欠けている者がいないかどうか。おそらく最も深い所にいたであろう、『あの男』がきちんと帰って来ているかどうか。(新約1/一方通行) (…あいつは一体どォだったンだ)彼はとある無能力者の少年を思い浮かべる。おそらくは、学園都市最強の座に君臨する一方通行よりも、さらに世界の深い部分で戦っていたであろう少年。当然ながら、あの男にもあの男の居場所があったはずだ。彼はそこに帰ってこれたのか。(新約1/一方通行) (…こォいう役目は、本来俺じゃなくてあのクソ無能力者のはずなンだろォけどな)自分自身と少女の両方に込めて、怪物は告げる。「ヒーローにゃあ向いてねェな、クソガキ」(新約1/一方通行) 「……良いだろう、乗ってやる。その上で、真正面からぶっ壊すのが『あの野郎』のやり方だったよなァ」(新約1/一方通行) そんな所。悪党の領域。今まで、とある無能力者はこういう風に自分を眺めていたんだろうか、と一方通行は思う。(新約1) 完全な静寂。危険性を取り除かれた世界。彼はこの世で最も不可解な右手を振って、浜面仕上と一方通行に向けて、何の気なしにこう言った。「久しぶり」(新約1/上条) 「状況を傍受してここまで来たンじゃねェのか?」「久々に学園都市まで戻ってみたら、なんか騒がしかったから首を突っ込んでみただけ」チッ、と舌打ちする第一位。不幸というその性質も含め、根本的な立ち位置の違いを再確認している訳だが、上条の方にはそんな心の動きまでは読み取れない(新約1) 「魔術、か」呟いたのは一方通行だった。彼がそれを知っている事に上条は驚いたが、それでも話を先へ進めた。(新約1) 上条当麻、一方通行、浜面仕上。『新入生』を撃破し、フレメア=セイヴェルンを助けだした彼らは、各々の携帯電話を突き合わせていた。「アドレス交換、と」「面倒臭ェ……」「ほい、ほい、完了」(新約2) どこか呆れたように(しかし上条当麻が単なる戦闘要員ではない方の側面を提示し、双方をきちんと両立している事に内心では感心しつつ)第一位は呟き(新約2) 「いや、気にしてるのは俺だけじゃないと思うんだけどな。ほら、ついさっき殴りあったばかりで顔合わせにくいみたいなんだよ。だから俺が」(新約2/上条) ユニットバスの方から聞こえてくる騒ぎを聞いて、一方通行は(彼にしては極めて珍しい事に)音もなく顔を青ざめさせていた。(新約2) 思考の一部分、特に攻撃性を移植された黒夜海鳥は、言ってしまえば一方通行が他の道を進んだ別パターンにも等しい。失敗すればああなる。すでに『悪』や『闇』からは乖離しつつある一方通行ではあったが、ああいった事態に巻き込まれるのは避けようと、心に誓うのだった。(新約2) 一方通行は学生寮のベランダに出た。手すりの向こうへ目をやる。すっかり日も暮れ、真っ暗になった街は、本来の『彼』向けといって良い色彩で固められていた。体勢を変えて手すりの部分に背中を預け、彼は大量生産される缶コーヒーに口をつける。(新約2) ぎゃあああああああああああああああああああ!?という絶叫がユニットバスの方から聞こえてくるのを耳にして悦に入っていた番外個体だったが、彼女は部屋の主である上条当麻の怪訝な顔を見るや、一方通行の背中に隠れてしまった。「何してンだ?」「ミサカ、あいつはヤバい気がする…」(新約2) その恐ろしさを、上条当麻は思い出していた。その恐ろしさを、第一位の一方通行は想像できた。その恐ろしさを、チンピラ程度の浜面仕上にはイメージすらできなかった。(新約2) 「……、」一方通行は何も言わなかったが、同意はしたようだ。……実際にはあの戦争の集結は上条当麻一人の行動だけでなく、多くの人々の動きが複雑に絡み合って上条を後押ししていた部分も大きかった。『特殊な力を持っている高校生』を、歴史の分岐点に立たせるほどに。(新約2) しかし、少なくとも。再びその力の一部分が結集したのは、上条当麻が今日まで生き残ったことに起因しているだろう。学園都市第一位は首筋の電極のスイッチを切り替えると、ベランダから一気に屋上へと飛び上がる。(新約2) (ここだな)結論を出すと、一方通行は携帯電話を取り出した。必要なことだけを告げる。「『違和感』は受け取った。第七学区・中央ハブ変電施設。そのど真ン中に、ねじくれて滞った、チカラの淀みみてェなのがあるぜ」(新約2) 仰向けに倒れていた上条は、そこで見た。天井付近の鉄骨に張り付いている、一方通行を。『(……こいつ、伏兵に気づいていやがる!!だからこんな広大な距離設定を……!)』一方通行の『反射』も、こんな相手に通じる保証はない。(新約3/上条) 上条当麻と一方通行は喫煙所の隣のスペースへと飛び込んでいた。彼らはそれぞれ、棒立ちだった人質の子供達を突き飛ばしてここにいる。(新約3) 奥を覗き込もうとした上条は、横から一方通行に首根っこを掴まれる。直後に発砲音が響いた。(新約3) 『オカルトじゃねェな…』一方通行は呟き、『なら、ここは俺の出番だ。オマエはガキども連れてさっさと離れろ』『おい……ッ!』『ガキィ連れたまま鉛球の応酬をするつもりはねェ。それにオマエのチカラがあれば、そいつらを解放する事もできンだろ』(新約3) 一方通行は振り返らずに言う。『ここは俺向きの戦場だ。だからオマエはさっさと行け』『……借りは後で返す。簡単にやられんなよ』(新約3) その時、上条の携帯電話が鳴った。電話に出ると、それは一方通行からだった。(新約3) 第一位の思考の一部分を人工的に移植させられた。本能的な部分の齟齬。群集心理ってヤツにも馴染めない。上条は倒れたまま、改めて自分の動かない左腕へ目をやる。腕に原因があると思っていたが、そうではない。腕を動かす命令を送る心の方に干渉されている。(新約3) 「……くそ、上で暴れてた連中もどっか行っちまったか。できることなら加勢したかったけど」(新約6/上条) ずっと『誰か』の背中を追い駆け、意識し続けるのももう終わりだ。彼は別の道を行く。『誰か』と同じことはできなくても、『誰か』にできない事をする。そんな自分になってやる。(新約6/一方通行) ぐるりと周囲を見回した一方通行は、そこで見知った顔と遭遇した。突撃の瞬間、オブジェの台座の陰へ飛び込み、身を伏せる事で衝撃波から難を逃れたツンツン頭の少年、上条当麻だ。「やるべき事は分かってンのか」「ああ」「なら行け。ここの主役は俺じゃねェ」(新約7) 「ここにいるのは『人的資源』とかいう計画で無尽蔵に操られる、『ヒーロー』とかいうのだ。気をつけろよ」「誰にもの言ってやがる」(新約7) 「……面白ェ。何ならテストしてやるよ、ヒーロー様。その名に冠するに相応しいかどォか、最も血に汚れたこの両手でなァ!!」(新約7/一方通行) 紙飛行機が、目の前を横切っていった。それを追い駆ける小さな影と、全く同じ顔立ちをした少女達がいた。紙飛行機が投げられた方を見てみれば、二人の超能力者が立っていた。第一位と、第三位。少しだけ違う未来の中で、完全な和解を遂げたであろう人達が。(新約9) 『……一体何やってンだ、俺は』―――人混みの中で思わず声の主を捜そうとした上条だったが、結局は見つからなかった。(新約9) 「ふざけやがって。何やってンだあのクソは」学園都市第一位は不機嫌そうに舌打ちした。(新約10) 「…よりにもよって」思わず、唇が動いた。「一番最初が、お前かよ……ッ!!」叫びながら、上条はとっさに腕を振るって、オティヌスを半透明のガラスの上へ仰向けに転ばせた。直後に、一方通行の細い足がゆらりと動いた。(新約10) だが間違っていた。一瞬でもあの怪物から目を離してはいけなかった。あるべき所に誰もいなかった。思考に空白が生じた直後、視界一面を埋め尽くすように白い顔が迫っていた。轟!!という、一方通行の背中に接続された四本の竜巻が空気を掻き乱す音が、遅れて上条の耳へと飛び込んでくる。(新約10) 「いちいち面倒見ンのは携帯電話のメモリに入ってる連中くらいで十分だ。だがオマエの後ろに控えてやがる『そいつ』は、世界を全部ぶっ壊して人類を全部ぶっ壊すかもしれねェンだろ。」(新約10) 「オマエの通ってきた道は、俺にはなぞる事のできねェモンだ」至近距離で、真正面から上条当麻の目を見据え、怪物は告げた。(新約10) ズァ!!と、一方通行の背中から、凄まじい勢いで翼のようなものが噴き出した。その色は黒ではなく、白。互いの拳を押し付けた状態で、数十メートルに及ぶ刃のような純白の翼が、次々と上条当麻に向けて振り下ろされていく。(新約10) 無理解への憤りは覚えるが、それでも少年には第一位を恨めない。単に事情を説明していないから、そんな暇がないから……という理由だけではない。これは、上条当麻自身も通った道。(新約10) 東京二十三区が戦場と化した時、正義のヒーローを気取って楽な方へ流れた彼自身の思考とそっくりそのままだ。いいや、本質的に敵を倒すという事が何を意味しているかを理解して暴虐を振るう分、一方通行の方がずっとずっと聡明で責任感があると言える。(新約10) ピタリと数十の翼が停止した。一方通行は静かな、しかし確実にイラついた調子でこう言った。「……オマエ、さては納得させる気ねェだろ」「『本音』なんてそんなもんだ」ニヤリと笑って上条は答えた。(新約10) 怪物は、回避の事など考えなかった。『反射』の力を過信している訳ではない。あの右手の特異性については思い知らされている。その上で、絶対の壁を貫かれてなお突撃を敢行すると決めていた。意識さえ飛ばなければ、演算さえ保てれば、構わずに少年を押し潰す。右手の威力も把握している。(新約10) 右手で『反射』を無効化させた後。その拳ごと叩き潰してでも、一方通行の心臓に生身の拳だけでは到底与えられない強烈な衝撃を打ち込むために。(あ)わずかな思考の空白。ゴドン!!!!!!という凄まじい音と共に、演算を統括する意識が一瞬で途切れた。(新約10) (うーん……爆心地に伸びたまんまの一方通行を置き去りにしてきたけど大丈夫だろうか)(新約10/上条) しかし上条は直後にこう切り返したのだ。「何だよ、そっちのラインか。って事は一方通行とか御坂とかの知り合いだったりする?」(新約12) 「一方通行ちゃん☆……本名だと意外とカワイイ名前なんだね」(新約15/去鳴) 「馬鹿なヤツ。上条当麻にはさ、"とびきり面倒臭いファン"がついているっていうの知らないの、お・に・い・ちゃん?」直後の出来事だった。ドゴァッッ!!と。上里勢力の包囲網のど真ん中へ、垂直に。白い竜巻が落ちた。学園都市第一位。その到来。(新約15/去鳴) ……それは上里勢力のど真ん中に飛び込んできた第一位や、去鳴辺りと接触したと思しき第三位の事を言っているのだろうか。だとすればあんなのは例外中の例外だが、そこまで考えて上条はふと気づいた。(新約17) …どうして上条当麻という人間には右の拳しかなかったのだろうか。そうでなければ、――学園都市はここまで暴力に特化しなかったかもしれないのに。学園都市第一位が二万人の軍用クローンの殺害を企図した『実験』や、打ち止めを経由し風斬氷華を起爆剤にする事で『天使』を呼び出す仕掛け(新約18) 似ても似つかなかった。そこから聞こえたのは確かに中学生か高校生くらいの少女のもののはずだった。「街の機能中枢は奪われたが、エイワスのコアへ触れるには君の幻想殺しと第一位の一方通行が必須となる。」(新約18/アレイスター) それは、月の光をまともに照り返す白い髪の持ち主で。それは、鳩の血と呼ばれる最高級のルビーよりも美しく禍々しい瞳の持ち主で。それは何より、学園都市最強の座を軽々と独占する正真正銘の第一位であった。(新約19) そして。金網フェンスの外、もう一つの戦場では、これまた別に対峙する二つの影があった。色彩は共に白。その内の片割れ、白い髪に赤い瞳の第一位は、呆れたように呟いていた。「……これは本来、俺の領分じゃァねェと思うンだがなァ」(新約19) 冷たい夜空を引き裂くように、真っ白な閃光が上条達の頭上を薙ぎ払っていった。それがどこの誰を狙って放たれたものかは、今はどうでも良い。あるいは空中を舞う何者かが烈風を操って『相応しき者』の傍へと光源の少女を叩き落としたかもしれない可能性についても。(新約19) 思わず上条当麻はその背で赤子を抱える銀髪の少女を庇っていた。「おいっ……何考えてんだ!?」「逆に聞くがよ、オマエがそいつを庇う理由は何なンだ?」現代的なデザインの杖を突き、一二月の冷たい雨に打たれながら、一方通行は奥歯を噛み締めていた。(新約19) 「学園都市統括理事長アレイスター。この街の全ての悲劇の管理者。つまりそいつが路地裏に撒き散らされた血と臓物の元凶じゃァねェか!何を計画していたかなんて知らねェ。だけどそいつを叶えよォとしなければ、何もこンな悲劇は積み上がらなかったンじゃァねェのか!?」「…それは……」(新約19) 折れた傘の先端からプラスチック製のカバーを取り外した即席レイピアを摑んでいた浜面仕上が、ついに動いた。ただでさえ折れた傘の骨を完全に一本、引き千切る。そして上条当麻と一方通行、その鼻先へそれぞれの鋭い先端を突き付けたのだ。(新約19) 「……一方通行の言葉じゃないけどさ。俺も、アンタには人並みの『恐怖』を思い出してほしいって思うよ」(新約19/上条) 「なら良い」「にっしっし。変わったねえ、第一位。」「何か悪い事なのかよ?」「……あらいやだ、ほんとに一個上のステージに行っちゃってんじゃん。悪の側にどっぷりなミサカはちょっと寂しい」(新約20) 棒立ちのまま噴水のように得体のしれない粘膜を噴き出すクロウリーズ・ハザードの隣に、白い影が立っていた。学園都市第一位。一方通行が、うんざりしたような口振りでこう告げた。「……何を遊ンでやがるンだ、くそったれが」「お、ま、アレ……?」(新約20) 「こンな一山いくらを殺した程度でいちいち怖気づいてンじゃねェ。つか、これが本物だろォがどォだろォが、俺が統括理事長を殺すのに遠慮なンかすると思ってンのか」心の底からくだらなそうに吐き捨て、一方通行はしつこく立ち尽くしている臓腑を奪われた死体を躊躇なく蹴倒してしまう(新約20) 白は、穢されない。噴水のような飛沫は、怪物に触れる事もなく撥水コートのように弾かれてしまう。驚いたのは上条だけではないようだ。壊れた銀の胸当の辺りを片手で覆ったまま、砂浜で尻もちをつく女性騎士が目を見開いたまま、なんか英語らしき言語で叫んでいた。(新約20) 一方通行は一方通行で、首元のチョーカーに手をやっていた。何かの調子を確かめているようだが、詳しい話を聞く度胸がない。(新約20) 「三〇秒前に言ったことも覚えていられないのかね哀れな教え子よ。私も完璧ではない、スタミナの問題がある。そこの第一位も首の電極のバッテリーに限りはあるだろう。」(新約20/アレイスター) 「上条当麻、一方通行。彼らを中心とした人の輪は目的意識がはっきりし過ぎていて、傍観者の立場からすると面白みに欠けるのよね。」(新約20/ネフテュス) 「……他の連中がフケやがったぞ。あの最弱野郎が消えた途端にもォこれだ、ほンとに人望ねェなオマエ」その口振りは、一方通行自身そっちについていけば良かったとでも言外に語っているようだった。(新約20) 「そもそも体を張って引き止めてくれる誰かがいたのなら、今日まで一〇〇年も道を踏み外し続けてこられたと思うかね?」「……実際にいたから、今のオマエは『窓のないビル』の外へ踏み出したンじゃねェのか」「そこを言われると、まあ辛い。お互い同じ穴のムジナか」(新約20) 「無事に上条当麻は処刑塔に秘蔵してあったコアを破壊してくれたようだ。三重四色の最結界を維持するために必要な霊装をな」「……、オマエ」「そんなに怒るなよ、一方通行。君は彼を宝石箱にでも入れて大切に保管したいのかね?」(新約20) 「無事に上条当麻は処刑塔に秘蔵してあったコアを破壊してくれたようだ。三重四色の最結界を維持するために必要な霊装をな」「……、オマエ」「そんなに怒るなよ、一方通行。君は彼を宝石箱にでも入れて大切に保管したいのかね?」(新約20) 残骸一つ残さず吹き散らされた悪魔の少女などやはり気にも留めず、四角い煙突の上に立っていた一方通行は吐き捨てるように言ってきた。「やたらと右手にこだわるな」「ただの憧れさ。君はどうかね?」この辺、悪びれもなく言う所は、さしもの第一位の調子さえ崩してしまうようだった。(新約20) アレイスターはくすくすと笑いながら、「人間なんて矛盾した生き物だろう?悪たる属性の者ほど、あの右手に憧れる。ただしその程度の存在を、あの幻想殺しが選ぶはずもない」「それでか?」「ああ。生ぬるいと思ってもらって構わない。これが、私の戦争なのだ」(新約20) 「……おい馬鹿野郎、ありゃ何だ?全体的に説明しろ。A・O・フランキスカの時と同じか!?」「君達は全く正反対のくせに、似たような結論に至るものなのだな。エイワスやコロンゾン級の異種高次生命などそう簡単に転がっているものではないよ」(新約20) 死の匂いが、もう一つ。現代的なデザインの杖をつく学園都市の第一位の超能力者が、ゆらりと墓地へと現れたのだ。ーーその肩書きが表に出てきた時点で、上条もまた『黄金』と呼ばれる魔術結社に対する返答を見出していた。(新約20) 並び立つ。第一位と共に、『黄金』を決して容認できなかった銀の少女の左右を固めるようにして。最強と最弱から、声を重ねて宣戦布告があった。「「アレイスターは一人ぼっちじゃない。ヤツの成果物はここにいる!!」」(新約20) なす術もないアレイスターだが、科学の地を作り、そこで積み重ねた一〇〇年は無駄ではなかった。上条当麻と一方通行。科学の総本山・学園都市で積み重ねた努力の『成果』である二人が、ついに最大最強のメイザースに立ち向かう――!(新約21/あらすじ) 上条は拳を振り抜いている真っ最中。ただ頑丈な杖であっても無防備な喉や眼球を一突きされればこちらは終わりだ。ましてそこに魔術の炎が乗ったらどうなるか。答えを想像する暇もなかった。どっっガッッ!!と。学園都市第一位、一方通行の拳が真横からメイザースの頬骨を打ち抜いたからだ(新約21) 首を振った先にいた誰かに向け上条はとっさに叫んでいた。「一方通行!頼む!!」「チッ」舌打ちが一つ。ッッドン!!という爆音が炸裂する。ベクトル操作をも利用して墓地の地面を蹴った学園都市第一位の白い影が右腕で上条、左腕でアレイスターの体をさらった。(新約21) 「この辺りで良いだろう、バッテリーは可能な限り温存しておけ」「がっつり助けられておいてその言い草かキサマ」一方通行より上条の方が呆れて呟いてしまったが、白い怪物はいちいち拘泥などしない。(新約21) 「……、」第一位はジュースの自販機に背中を預けたままわずかに思案して、「まだ何かさせる気か、あの右手に……?」(新約21) 炸裂の瞬間。上条は自分が何を叫んでいるのかも理解できていなかった。ただ。落雷の如き衝突の瞬間、思わず首筋の電極へ手を当てようとした一方通行の手首を掴んで床へ引きずり倒したアレイスターが、奇妙に網膜に焼きついていた。(新約21) 言えば素直に聞いてくれる上条は言葉で叩くだけで構わないと考えたのだろう。アレイスターの最優先は状況の判断がどうしてもワンテンポ遅れてしまう第一位の方だったようだ。(新約21) まずい、と上条は思った。統括理事長はもちろんとして、オティヌスも特に解説してくれず、あの第一位からも『分かっているならそっちでよろしく』な目線を向けられてしまった。(新約21) 「……、」「そこの男か女かはっきりしてないヤツも。何か不満そうだな?」(新約21/一方通行・オティヌス) 「…チッ」「一方通行さん?ちょっとその舌打ちについて真意を説明していただいても!?つかテメェはテメェでずるくねぇ?なんか全部お見通しですの香りを漂わせてるけどお前ほんとに分かってんのかよ、だってさっきから黙りこくっているだけじゃん!!」(新約21) ぎぎぎと上条は背後を振り返って、学園都市第一位の方を見た。一番頭の良い子に留年ギリギリいっぱいまで追い込まれ中の馬鹿が反旗を翻す。「……どうだついてこれないだろう?」「何でオマエがドヤ顔なンだよ」(新約21) 「ふはは何故ならきちんと追体験しているはずのこの俺ですらもはや半信半疑の領域に突入しているからだ!何の予備知識もなくいきなりイシス=ウラニアとか言われても分かるまい、分かる訳がねえんだほんとは頭ん中ハテナでいっぱいになってんだろこの涼しげ二枚目フェイスがよおーっ!!」(新約21) 「確かになァ」「えっ、な、ちょ、もおっ、何で認めちゃ、それじゃボケが悪者になっ……」(新約21) 「一方通行、床だ!!」「温にして乾」「うるせえ良いからやれェェェえええええええ!!!!」ゴッ!!と。沈み込んだのはメイザース側ではなく、上条や一方通行の足元だった。床が半径一メートルほど真下へ陥没する。まるで水面へ沈むサメのように、二人は揃って下の階層へと落ちていく。(新約21) 「ぶっ飛べ!!」今度の今度こそ、であった。学園都市製の少年達の方から頭上の障害物をぶち抜き、一方通行が足元からメイザースへと襲いかかる。それが致命傷になるかは分からない。しかし床が崩れれば下に落ち、あの幻想殺しの射程に収まるという事実は捨て置けない。(新約21) 今さらのようにバタバタと追加の足音がいくつか響いてきた。『黄金』の魔術師や、ましてやメイザースではないだろう。あの調子では軍神から叱られているのではあるまいか。少々心配になってきたところで、壊れたドアから部屋を覗き込むような格好で上条当麻と一方通行が顔を出してきた。(新約21) 「あれは、そう」そして上条当麻と一方通行は声を揃えてこう言った。「「『王室派』の皆様を首都ロンドンから安全なスコットランド方面へお連れする、だ」」(新約21) 「おいっ一方通行、お前はどうすん……」「知るかよ勝手にやらせとけよ」「逆の道!?えっ、ええーどこに帰ろうとしてんだよお前!!」慌てて叫んだが、第一位はひらひらと片手を振ったと思ったら、首元のチョーカーをいじくった。(新約21) 聖守護天使エイワスをも凌駕する大悪魔に向けて、少年はこう宣告したのだ。「あのふざけた幻想を、粉々にぶっ壊すッッ!!」 ぴくんっ、と。大型トラック後部の密閉式荷台、その壁に背中を預けるようにして体を丸めていた一方通行の体が、わずかに震えた。(新約21) 適当に呟きながら、第一位は自分の細い首に手をやっていた。チョーカーに触れている。成り行きでついてきたが、いっそ自分でやってしまった方が手っ取り早いのではないか。言外にそう言ってるようなものだった。(新約21) 『幻想殺しとかいう弱っちいのは開始早々即死していましたからアテになるかどうかはすんごく怪しいもんですけどおププー』「…ほォ?」『ハイ今なんか思いっきり地雷踏みましたね!それも対人とか対戦車とかみみっちい事は言わねえ核地雷レベルのヤツをですとにかく全力で猛省しますう!』(新約22) ぐっ、と。一方通行は鉤爪のようだった五指を硬く閉じ、思い切り握り込んで後ろへ引いたのだ。大振りでも良い。そのための隙は作った。ある少年と同じ。その拳に全力を注ぎ、思い切り打ち放つ!!(新約22) かつての第一位もそうだったではないか。操車場で『実験』を食い止めようとした第三位を殺しかけた時に立ち塞がった、何の力も持っていないはずの無能力者。ヤツに視線が移った途端、それまでいたぶっていた第三位なんて意識の中から吹っ飛んでいたはずだった。(新約22) こういう時、あの無能力者ならどうするだろうか。拳で殴り、五指で引き裂くことは得意でも、涙を止める方法については心当たりがない。ヤツならきっと、誰とでも当たり前に目線を合わせて同調する事ができただろうに。つまり白い怪物も偉そうなことを言えた義理ではなかった。(新約22) 「……別に」今の一方通行には、これだけでは理解できない。だがあの右拳の無能力者なら違うのだろう。見てきたものは同じでも、辿ってきた道が違う。ここも埋め合わせていく必要もありそうだ。(新約22) あの少年ならどうするか。悪魔に言い放った言葉と同じだ。最初から全部が全部パーフェクトに進むはずがない。分かるところからピースを埋めて全体の絵を作っていけば良い。上条当麻の見ている世界を眺めろ。(新約22) それでいて、ヤツの足跡をなぞるだけでは意味がない。別枠の視点を確保し、見えないものを捉えて、ヤツにはできない事を行う誰かになれ。今回の一件はクリファパズル545だけのハードルではない。学園都市第一位の怪物、一方通行にとっても最初の一歩が始まった。(新約22) 「パパじゃねェだろボケ」『あれえ?じゃあママなんですう???』「………………………………………」『あっ……。これは間違った揚げ足をやっちまって本格的にお説教の予感……』(新約22) 一方通行が気に留めているのは軍勢全体の動きではなかった。その混乱下、いくつかの影がノーマークのまま乱戦の中を抜けたらしい。ケタ外れの大型バイクにまたがっているのは第三位の女と、ツンツン頭の少年だ。「ふン。……底の底で及第点か」(新約22) 「一方通行のヤツ、こんな時まで容赦なしかよ……」(新約22) この考え自体は、上条当麻のものとあまり変わらない。第一位の場合は舵を切って迷走させるのではなく、彼らの胴体より太いタングステン鋼のスクリュー軸を叩き折って前進できないようにする方向だが。(新約22) 「…少なくとも、幻想殺しはこっちにない。スカイブルーなんて絞りかすで、大部分は向こうにあるのかもな。今の俺を特別にしているものは何もないんだ」「……、」一方通行の目が、鋭く怒気を孕む。(新22R) そして新聞紙ドレスの少女の絶叫と共に、無言の白い怪物の豪腕がビンタというより爪を立てるような格好で空気を引き裂いた。「あヴぁほろばうあーっ!?」「…どォいう事だ?マジでそのまま通っちまったぞ」何故かぶん殴った方がわなわなしていた。(新22R) 「だから何だってンだクズが。そもそも俺はストーカーじゃねェンだ、オマエの足取りを一つ一つ年表にして丸暗記している訳じゃあねェ。ハナから知らねェンだよオマエの話なンて。で、昔の話がねェから何だ?今ここで会話ができてるオマエに何か不備でもあンのか」(新22R) 「言っておくが、俺だってオマエに話した事は何もねェぞ。学校だの役職だのどころか、俺の本名だって知らねェだろ。」(新22R) 「そんなもん先に感情移入しちまった方だろ。もしかしたらもう一人の方と早く会ってりゃ、そっちに肩入れしてたかもな」「そう、なのか?」なんか微妙に第一位がイライラしているので、これは『テーブルに着いた全員の総意』ではなく、あくまでも浜面仕上個人の意見なのだろうが。(新22R) 「…うざってェ野郎だ。最初っから答えが決まってンなら何のための話し合いだってンだ。いちいち雁首揃える必要もねェだろォが」『あれえ?ご主人様フリークの私の見立てですと、口振りに反して何だか目尻が嬉しそうな気がギョブッフウッ!?しっぽ、ごしゅっ、強く握っちゃヤぁあっ!?』(新22R) 「どォもここでの混乱が収まらねェと学園都市にとっても足を引っ張られかねねェ火種を残しそォだしよ」「学園都市にとって?お前らしくもない言い回しだな」「…オマエに俺の何が分かるってンだ?」『ですからご主人様がまた前触れもなく嬉しそっぶはあ!そこは足のツボぉ!?』(新22R) 「アンタは?そこまで俺の問題に肩入れする理由はあるのか」「単純なギブアンドテイク」浜面はあっさりと答えた。「そこのそいつに守ってもらう約束なんだよ。日々の生活ってのをな」?と上条はちょっと眉をひそめた。浜面が顎で指したのは白い厄災一方通行だ。(新22R) 「そいつが『上条当麻』にこだわる理由って何かあんのかな。特別なチカラを持った人間…例えばそっちのどんよりお姫様とか、そこのそいつみたいに学園都市の」どんっ、と。一方通行はテーブルの上に載せた足をもう一度軽く振り下ろした。黙っていろ、という事らしい。(新22R) (…野郎考えナシに面倒な仕事押し付けやがって。バッテリーは長持ちしねェから囮は苦手なンだがな。こまめにオンオフして時間を稼ぐしかねェか)「どうした。状況の割に、嬉しそうな顔に見えるが」「どこの脂肪から毟り取られてェンだクズ…」(新22R) そしてその怪物は、真正面から突撃してきた。どれだけリスクがあっても、最前線の懐に向かって、誰よりも速く真っ直ぐに。ドンッ!という音が遅れて炸裂するほどの勢いで。合理性の話ではない。ここからでも良い。誰かが目指そうと思える誰かになるために。(新22R) だからこそ、最後の最後で出すべき切り札はこれなのだ。第一位の一方通行。軌道上兵器でもオジギソウでも肉食の植物でもない。そんな次世代兵器が飛び交う中でも、トドメの一発として最も相応しい破壊力を持っているのなら、迷わず使い切らなくてはならない。(新22R) それが。それこそが。かつて誰かの背中を追い駆けながら、同じ道を歩むだけでは終わらなかった、とある怪物が羽化すべき何かの像なのだから!!「手前勝手な理屈を並べてウチの生徒に手ェだしておいて、無傷で帰れるなンて思ってンじゃあねェだろォなァッッッ!!!???」(新22R) 真正面から。小細工抜きで懐へ飛び込んで、英国女王エリザードへ右の拳を振り抜いていく。余計な轟音などなかった。ベクトルを完全に掌握しているからだろう。攻撃に使った衝撃を余さずエリザードの体内で炸裂させたため、むしろその終わりは静かなものだった。(新22R) ツンツン頭の少年とは種類が違う。後ろへ大きく弾き飛ばされるのではなく、真下に向けてストンと落ちるような倒れ方だった。「…ふン」『あれえ?トドメは刺さないんですか、ご主人様』「アホ、刺しちまったら誰でも彼でも殺すヤツになっちまうだろォが」(新22R) 学園都市第一位にして、統括理事長。だけど最強の白い怪物にできるのはここまでだ。「後は、ヤツ次第か」(新22R) 創約 「ようは統括理事長絡みの話です、とミサカは一言で結論から入ります」「あいつの?」上条が怪訝そうに言った。ここで言うあいつとは、アレイスターと呼ばれていた『人間』の話ではない。ヤツの後に、その座を引き継いだ別の人物が存在する。(創約1) 「自分が今までやってきた事を暴いていく。そうする事で、例外はないと内外に示す。恐怖に脅えて半信半疑の人達を日向の世界まで引きずり上げるには、それくらいしなくちゃダメだって…実際に、警備員の詰め所まで顔をだして自首してる」「自首って、あいつがッ!?」(創約1/御坂・上条) 「この方法は、おそらく今日しか使えない。俺達の知らないところで誰かが戦ってくれたからここまで弱らせる事はできたけど、この先根丘が回復しないなんて保証はどこにもないんだから。それならこのチャンスは使うべきだ。どこかの誰かが始めてくれた事を、しっかりと繋ぐべきなんだ。」(創約1) 「…でなけりゃ同じ事の繰り返しだ。打ち止めはさらわれて一方通行は破滅して、舞殿の代わりに別のヤツが人生を奪われて『駒』として補充される。笑うのはただ一人、ふざけた潔癖症の根丘だけだ!!」(創約1) 「これはひょっとしたらヤツの苦労や努力を全否定するかもしれんが、まあそこまで義理立てしてやることもないだろ」「とうま?」「御坂妹。打ち止めについてはお前に預ける、ただし逃げ込む先を一個だけ提案したい。それで構わないか?」「採用するかはさておいて、意見を聞く程度でしたら」(創約1) 息を吸って吐く。そして上条当麻は笑顔で全部まとめて台無しにした。「一方通行が籠城している警備員の詰め所があるんだろ。そこまで打ち止めを連れていって、一緒に固まってろ。後はあの学園都市最強が根丘の兵隊を押しのけてくれる」(創約1) 自分からは外に出ない。学園都市の自浄作用を信じる。なるほど結構。だったら一方通行が鉄格子の外に出なくても打ち止めを守れる環境を整えてやれば良い。同じ建物にいる分には構わないだろう、自衛のために両手を振り回した結果たまたま居合わせた民間人を助けてしまったとしても。(創約1) 上条当麻には、難しい大人の話は分からない。単なる暴力を抜け出して、そんな複雑な世界で戦ってる統括理事長はすごいと思う。でも。だけど。どう考えたって、この子はあいつが守るべきだ。効率とか合理性とか、そういう話の前に、最初からそう決まってないとおかしい。(創約1) 上条達は、ここに居合わせることができた。なら気づいてやらなくてはならない。そして行動するべきだ。世界の全部はいきなり救えなくても目に見えるところから一つずつだって。そうやって誰でもできる事を誰もが挑戦していく事で、世界全体の天秤が少しでも傾くことに賭けた『人間』がいた。(創約1) 見せてやれ。望んだ世界はここにあると。学園都市第一位が思い描いた世界であれば、もう舞殿星見みたいに他人の都合で道を踏み外す人間はいなくなるかもしれない。踏み外してしまったとしても、もう一回だけやり直すチャンスを与えてもらえる優しい社会ができるかもしれないじゃないか。(創約1) 他人任せではない。できるかどうかは学園都市で暮らしている、どんなに小さくたってその歯車になっている、上条達自身にかかっているのだ。そう信じろ。ヤツがそうしたように、自分も賭けろ。(創約1) 透明なテーブルに足を投げていた一方通行は軽く舌打ちして、「何か動いたか?」「今正面玄関に打ち止めを連れた少女がやってきているじゃんよ。それから根丘の子飼いを気絶したまま抱えてる」安っぽい椅子ごと後ろにひっくり返るかと思った。(創約1) 今頃、御坂妹や打ち止めを預けた警備員詰め所の方でも何かが動いているだろう。あそこには第一位がいる。滅多なことでは壁が破られる事はないだろうが、滅多な事が絶対起きないとは限らない。(創約1) そんな打ち止めが自分の肌をさすり、脅え、泣き喚くよりも先にこう言ったのだ。だから、ここに二択は必要ない。選択肢は一つあれば良い。『あの人を助けるために戦ってくれる?ってミサカはミサカはお願いしてみる!』(創約1) 何が救いになるかなんて、上条には分からない。ここで一二人しかいないクソ野郎、統括理事に勝ったとしたって、一方通行は自分の意思で鉄格子の中に入るだけだ。控えめに言って、それは正しいかもしれないけど幸せな人生ではないはずだ。(創約1) 一人でも本気で止める人がいたならばそういった選択はしなくても良いのではないか。上条はそんな風にさえ思ってしまう。けど。だけど。答えが分からないのなら安易に否定してもならないと彼は思っていた。これは一人の人間が見つけ出した道であって、その小さな芽は簡単に潰してはならないと(創約1) 『その、まあ、何だ。うーん、じゃあこうしようぜ』だから少年は笑って言った。ここで笑える誰かになりたいと、そう思ったから。『今から黒幕んトコ行って全部ぶっ潰してくるから、結果を待ってろ』(創約1) その口で言った約束を違えるな。強大な権力に具体的な武力があれば、あらゆるルールを踏みつけにできる。だけど本当に本物の人間の強さは、そんな所では決まらない。今なら繋げられる。一人の人間が自分で決めた『道』を。ただの少年の意地一つで。(創約1) 守り抜け。学園都市第一位の超能力者、なおかつ新統括理事長。一方通行が紡いだ、その夢を。(創約1) 本当に本当の『暗部』がどういったものか、上条には分からない。ひょっとしたらそれは、あの白い第一位の方が詳しいのかもしれない。だけどここにいるのは上条当麻だ。彼が立ち向かわなくてはならない。不幸不幸と言っているが、上条はまだ幸運だった。(創約1) 白い髪に赤い瞳の怪物、一方通行は秘匿取調室の分厚い扉に背中を預けたまま、床に座り込んでいた。片足を投げて、片足を抱え込み、天井を見上げて。そうやって、第一位は一つの終わりを確かめていた。結局、だ。その怪物は、一度たりとも扉の外には出なかった。(創約1) 「それにヤツが納得できる学園都市を作れるかどうかは、貴様の肩にもかかっている。上の人間が呼びかけただけで街の形が丸ごと変わる訳ではない。呼びかけに応じる者がいなければ、壇上に立った発案者を孤立させるだけだ」(創約1/オティヌス) その言い草に、上条は思わず苦笑しそうになった。やはり選ばれた超能力者。この辺り、正しい事に対してはとことんまで傲慢だ。第三位が自分のクローンを守るために無数の研究所を叩き潰してきたように、第一位が『暗部』の一掃を一人で決めてしまったように。(創約2) 「……代替わり、か」「そっちの統括理事長は、早くも社会的な自殺でもしたがってるようだけど?」(創約4/上条、ステイル) 『──同人物はクローン人間二万人の殺害を前提とした異様な「実験」へ自らの意思で参加したと主張しており……』「……、」上条当麻はわずかに沈黙する。すでに観たニュースでも、それでも思わず立ち止まる。振り切るようにして、大画面から視線を外す。(創約4) 敵は第三位、第四位の模造品だけではない。空港近くのテント基地の中にあった金属コンテナ、そこのラベルを上条当麻はきちんと覚えている。ファイブオーバーOS、モデルケース『アクセラレータ』(創約4) 「なるほど、あれだけ不自然を極めた『ハンドカフス』の顛末もここに帰結する訳だな。白い怪物は、『暗部』をなくすという夢自体には手が届いていたはずだったんだ。それを横からねじ曲げて毟り取ったクソ野郎がいる」「オティヌス?」「いや、何でもない。こっち側の話だよ」(創約4) Five_Over OS. Modelcase”Accelerator”「最後に立ち塞がる壁が『あなた』の名を冠するとは。これもまた運命の皮肉でしょうか、とミサカ一九五五九号は静かに呟きます。……だけど”本物”なら、絶対に彼の邪魔はしない」(創約4) 遅すぎるよ、という一方通行の唇の動きにさて老いた裁判長は気づいただろうか。世界中が勝利に沸き踊る中、誰よりもそれを願った人間だけが地獄に落ちる。新統括理事長の狙い通りに。(創約4) 「……。」「……、」性別不明の怪物。その人間の左右両隣には、厳めしい制服を着た刑務官が二人ついていた。(創約5) (新しい統括理事長の計画、か。まさかあの野郎、R&Cオカルティクス辺りにまんまと振り回されたりしていないだろうな。お互いの領分がどうのこうの以前に、魔術サイドと科学サイドは基本的に仲が悪い、って大前提くらいは覚えていると信じたいもんだけど)(創約5/上条) 何が『暗部』だ。だから仕方ない?もう諦めろ?ふざけるなよ、不幸。二五日の夜には間に合わなかったかもしれないけど。上条当麻ならここからどうするかを見せてやる。(創約5) アリスは悪くない。それは分かる。だから上条当麻は誘われるようにしてただ言った。「……なら全部戻せ、アリス。こんな風にお前の力を借りたら、本当の意味での決着なんか永遠につけられないんだよ」(創約5) 「お前がもたらす勝利は…」弱々しく、吐き捨てて。たっぶり一分以上かけて、上条当麻はアレイスターのぬくもりから離れていく。「次の統括理事長が目指す何かとは、全く別の道だ。『ハンドカフス』は、すでに二五日の夜に結果の出た話だ。それは失敗したかもしれない。」(創約5) 「…でも、だからって屍は踏めない。拾えるものがあるなら、ここからでも拾っていかなきゃならない。アンタはまだ救いのある道へ、ただセメントを分厚く流し込んで地べたに全部蓋をしてしまおうとしているだけだ。まだ息がある、それでいて動けないで倒れている人達を、もろともに」(創約5) 「だとしたら?」「断る。俺の血は、俺が自分で流す。…アンタが生きていたのは、素直に嬉しい。でも自分の意思でこの街から出ていったアンタに、学園都市の行く末とやらを外からとやかく言われる筋合いなんかない」(創約5/アレイスター、上条) 「学園都市はアンタが創った。でもここは、もうアンタの街じゃない。どんな気紛れだかたわむれだかは知らねえが、アンタが自分で決めた決定だろ。今さらにやけ面して学園都市の悲劇を肯定するなよアレイスター。アンタが自由にして良い命なんか、この街にはもう一人もいないんだよ。」(創約5) 「……どけアレイスター。二五日の夜がどうだろうが、二九日は俺のものだ。『ハンドカフス』の敗北なんかもう許さない。今度は俺の手でハッピーエンドにしてやるよ……」それが己の命まで削った上条当麻の精一杯だった。(創約5) 恐る恐るそちらに向かい、軋んだドアを開けて、電話を見る。どれだけ待ってもベルの音は止まらない。ややあって、上条は受話器を掴んでみた。耳元に当てると、声があった。『よォ』「…あ、一方通行?」(創約5) 意味が分からない。目を白黒させる上条は、ようやくこれだけ搾り出した。「おまえ…たしか、つかまっていたはずなんじゃあ…?」『ああ。だから獄中からかけてる』(創約5) 『これは、本来オマエなンかが関わる必要のねェ事件の後始末だ。勝手に首突っ込みやがって、やるならハンパで終わらせてンじゃねェよ三下』「……、」相変わらずであった。電話越しでもギスギス感が止まらない。(創約5) 『大体の流れは悪魔のヤツにモニタリングさせてた。ただし、大体だ。だからこれから細部を詰めていく。構わねェな?』今現在何が進行しているか理解もできないまま、上条はとにかく頷いた。電話なのに首を縦に振ってから、仕草は相手に届かないと思い出して声で肯定の意思を伝えた。(創約5) 『まだ助けてねェヤツがいる』答えがあった。新統括理事長・一方通行は、確かにこう言ったのだ。『リサコだ。まだ見つけてねェよォなら赤点だぜ、さっさと木原端数から助け出せ』(創約5) 一方通行は答えを言わずに通話を切ってしまった。この状況でわざわざなぞなぞをしたい訳ではないだろう。あいつはあれで学園都市最高の頭脳の持ち主でもあるから三段飛ばしで答えを弾き出している可能性が高い。目の前に、もうある。分かり切っているから口に出すまでもなかった。(創約5) 映像を吹き散らすような格好で、広いコンコースを白く強い照明の光が埋めていく。やっぱりまだ終わっていない、そして今動けるのは上条達だけだ。これから学園都市がどうなっていくかは、きっとこの事件にかかっている。(創約5) 『オペレーションネーム・ハンドカフス』は最悪の事件だったかもしれない。だけど事件に巻き込まれた人達には何の可能性もなかった訳ではないのだ。今度こそ、完全にこの手で終わらせた。上条当麻はそれを強く思う。(創約5) とある魔術の電脳戦機 『ったく』搭乗者は吐き捨てるように呟いた。『世話の焼ける野郎だぜ』(VO/一方通行) 「…見てらンねェな」声が、聞こえた。しばらく、上条はそちらを見る事すらなかった。相手も動かない。こちらの反応を待っている。やがて、ゆっくりとゆっくりと、ギリギリと人形の首をひねるようにして、上条はようやく音源を視界に収めた。白い髪に赤い瞳の怪物。(VO) 一方通行は手を貸さなかった。最後まで、それを待っていた。「本当は、オマエには必要ねェはずだったモンだ」そんな前置きと共に、胸板へと押し付けられたのは、例のレポートの束だった。「オマエが踏み込んできたから必要になった。自分の立ち位置を忘れンなよ」(VO) 「こんなもん、どうやって手に入れたんだ?」「オマエとは別の道から入って、同じ地点に到達しただけだ」「……?」上条は一瞬、一方通行が浸っている真っ黒な世界を思い浮かべたが、「…そっち絡みで話が回ってきたンなら普通に無視してるっつの」(VO) 言外に。上条当麻が見てないだけで、この事件には全く別のもう一本の道があったと開示されていた。上条と同じくらいの波乱を超えて、同じ厚みを持って、ここまで踏み込んできたのだと。(VO) では、他に何があったのか。この怪物には、日の当たらない以外の世界があったのか。接点となるものが。上条が純粋な疑問の目線を送るが、向こうも向こうで全てに答えるつもりもないらしい。うんざりしたように目線を外し、舌打ちして一方通行は言う。(VO) それ以上、第一位は何かを語ろうとはしなかった。きっと彼は彼で何よりも優先すべき何かがあったのだろう。上条と共に動けば、達成できるような何か。(VO) 学生寮を出て少し歩くと、一方通行が待っていた。彼は現代的なデザインの杖に体重を預けながら、「どォすンだ?」「『ブルーストーカー』をぶっ飛ばす理由が増えた。だから望み通りにやってやる」「具体的にどォやって?」「使えるものなら何でも使うさ…それがたとえ、お前の手だとしてもな」(VO) 「火力を貸せってのか、この俺に」「いいや」上条が即答で遮ったのを耳にして、一方通行はわずかに眉をひそめた。続けてツンツン頭の少年はこう言い放ったのだ。「…俺が、本当に『ブルーストーカー』を殺しそうになったらお前が止めてくれ。そういう意味での協力だ」(VO) 静かな声だった。だがそれは、感情の起伏が存在しない声ではない。これまでも一方通行は色々な怪物と渡り合い、様々な悪意と触れてきた。にも拘らず、その瞳の昏さだけは、決して素通りできなかった。(……仕方がねェな)(VO) 「何でも構わねェがどこから当たるつもりなンだ?ノーヒントで街中をひっくり返す訳でもねェンだろォが」これで何も出てこなければぶん殴って一人で解決しようと考えていた一方通行だが意外にも上条当麻はこう切り返してきた。「一つだけ心当たりがある。警備員が動いてたらおしまいだけどな」(VO) そして男の元へ、面会時間をガッツリ無視した来訪者が二人いた。上条当麻に一方通行。無遠慮な闇夜の訪問を受けて、ベッドの上の男が笛のような音を洩らす。(VO) 白い怪物は告げる。「『これ』で頭壊しながら聞き出すって手もあるぞ?」「あ、あぶあ!?あぶればっ!待ってくれ、俺は入院しているんだ!!」「まあ、まあ、まあ」上条はあくまでも笑顔のまま、見舞い客用のパイプ椅子をずるずると引っ張り、ベッドサイドへ向かう。(VO) 口をパクパクと開閉させたまま、男は救いを求めるように一方通行の方を見上げた。直接的な得物を振り回すあの怪物の方がまだマシだと思えるほどの圧迫感があったからだ。ゆっくりと椅子に腰掛けながら、上条は笑顔で続けた。(VO) 「だそうだ。じゃあ帰ろう」あ、え?とうろたえる男を無視して、上条は一方通行にこう語りかけた。(VO) 「…良いのかよ?十中八九こいつ死ぬぞ」「死ぬ訳ないと思ってるんじゃ仕方がない。俺達が怪我人に無理強いできる事は何もないんだから」「馬鹿なヤツ。ここで『ブルーストーカー』を潰しておけば自分は助かったかもしれねェのに、みすみす死ぬコースに乗っかりやがって」(VO) 「だからそれをこいつが何とかしてくれるんだろ俺達の代わりに。こっちは安心して嵐が過ぎるまでグリスボックとアファームドを守りぬくとしよう。俺とお前、一人ずつで対応できるよな?犠牲は少ない方が良い例えゼロにはできなくてもだ」各々呆れた息を吐きながらあっさりと病室の出口を目指す(VO) 必要な情報を得ると、上条と一方通行は今度こそ個室を出る。杖を突いて真っ暗な廊下を歩きながら、第一位の怪物は半ば呆れたようにこう言った。「おっかねェヤツ」「こっちが何度お前みたいな怪物に揉まれてきたと思ってんだ」(VO) 「違う、そォじゃねェよクソが」とりあえず床に資料を広げてポータブルデバイスで指示を飛ばす上条に、一方通行は今度こそ馬鹿にしたような調子でそう言った。(VO) 「良いから、やれえええええええ!!!!!」応じるように一方通行は動いた。ふっ、と。全身を完全に覆っていた『反射』を自らの力で解除したのだ。激突する。わずかに両者の動きが止まる。だが上条のテムジンがバラバラに引き裂かれる事はない。それでようやく、上条は第一位の選択を知った。(VO) 『どっちだろォが、同じ事だ』その雑音は人の声であった。『だったら、オマエが成し遂げろ。おそらくこれは、俺が助けても意味がねェ問題なンだからな』ザザザザザ!!と全てが壊れたような大音響の中に消えていく。擱座したスペシネフの機体が、中に取り込んだパイロットごと虚空へ消えていく(VO) それを上条は許さない。『ブルーストーカー』を、ではない。決死の覚悟で託されたチャンスを無為にする事を。全力で前へ、高速ダッシュで空間すらも切り込むように。(VO) ゲーム とある魔術の電脳戦機 一方通行はそもそも『ものを楽しむ心』をあまり持ってない人なので、何かに関わる時は、それが胡散臭い、もしくは危険なものであるから関わっているのだと思います。(VO全テ) 一方通行は厳密に言えば脳波とかも操れる子ではあるんですけど、それ以前に『物理攻撃最強』のイメージが強いじゃないですか。そんなヤツに直接精神を操れる能力を付加したら、もう無敵になってしまうので(笑)(VO全テ) 例えば、上条はあまりゲスな事ができないキャラじゃないですか。一方通行は、表立って真正面から人助けをするキャラじゃない。でもレッサーの場合、見た目は悪なんだけど、良い事をやっても問題がない。(VO全テ) ――上条に頼ることができないのも、その辺の心理なんでしょうね。//そうそう、返しきれない大きな借りがあるからこそ、富良科は誰にも相談できない状況になっているので、一方通行の方から、その殻をぶっ壊してもらえたゲーム版の状況は、とても助かったと思ってるはずです。(VO全テ) 上条の場合は、『幻想殺し』の持つ力の影響ではなくて、事件の核心に触れていたから、世界が改変されえても軸がぶれなかったので覚えている――一方通行はある程度、記憶は残っているんだけど、小説版とゲーム版の状況が違うから、その齟齬について富良科を通して確認している感じですね。(VO全テ) 上条がきちんと頭を下げて、一方通行に仲間になってもらう。さらに、仲間になった後も、上条の方が完全にキレていて、「俺が人を殺しそうになったらお前が止めてくれ」なんて頼んでいたり、一方通行は一方通行で「仕方ねえな」と呆れながら絶対止めるという関係(笑)。(VO全テ) 「チッ」「あー落ち着くっていうか和むわー」「どこがだよ馬鹿野郎アンゴルモアの大王そのものじゃねえかッ!?」「でもとうま、あの白い人は迷子になった時にお役立ちな人なんだよ!」(VOG) 「世界は今日も平和なんだよとうま」「だな、ブルーストーカーとか亡命ポータブルデバイスとかが出てくる訳でもあるまいに」「……平和なのはオマエ達の頭ン中だけだ」(VOG) 「いいか、これからバカにバカでも分かる言葉でバカ丁寧に助言してやる。世の中の問題の大半は、ある日突然顔を出す訳じゃねェ。シロアリと同じって事さ。目に見えて分かった時にはもォぐずぐず。見ろ。オマエがモタモタやってる内に、もォ『アレ』がやってきたぜ。」(VOG) 「チッ、相性的に言って一番メンドクセェのが出てきやがったな」「一方通行……?」「あら。その相性力最悪は私と彼、どっちを指しているのかしらあ?」「……本当に、ウザってェ野郎だ」(VOG) (……こォいうのは俺のガラじゃねェンだが、ご都合主義のクソ野郎が顔を出さねェンじゃ仕方がねェ)「何に絶望したンだか知らねェが、当たって散らす程度の余力があるならそンなもン入口も入口だ。……そンな理由で殺しちまっても、最後に苦しむのはオマエだぞ。」(VOG) (……懐かしい空気だ。ちっぽけだが、よォやく吹いてきたか、ご都合主義の風ってのが)「仕方がねェ……、次に繋げてやるよ、くそったれがァ!!」(VOG) (妙だな。富良科にしてもそこのガキにしても、自分の意思で動いてる感じがしねェ。単純に感情を爆発させているだけじゃァ……ねェってのか?何かしらの外的要因があるとしたら)「よォやっと、ご都合主義の風ってのが強くなってきたなァオイ」(VOG) 「どンだけ打ちのめされても絶対に傷つかない最強のセカンドキャラ、か。……まるで昔の俺だな。どこまで保険保険に保険を重ねりゃ外の世界と触れられるってンだ、クソ情けねェ臆病者が」(VOG) (最善はねェ。次善で良ければ怪我人引っ張り出してここを出る。後は『殺せる世界』の完成を待つって線か。その間、『外』から醸成を邪魔される訳にゃいかねェし、クソ面倒な門番役も継続しなくちゃならねェ、と)(VOG) 「あなたは……」「臭せェ偽悪主義だの自己犠牲だのはどォでも良い」「……覚えて、いるんですか?『前のバーチャロン』の事を」「どォでも良いっつったはずだ。測定してやるよ、オマエの悪意の程度ってヤツを。」(VOG) 「はあ……。タングラムへの挑戦権自体なら難しくはありません。一方通行さんが『タングラムを殺せるフィールド』ごと現世側へ引きずり出してくれましたから」(VOG) 「おーい、どうしたんだよお前達」「……別に」「……なンでもねェよ、クソッタレが」「あー……もしかして、過去のいざこざが尾を引いてるとか?仲良くしろよ。な?」「「…………」」「それをオマエに言われるとなァ――」「――すっごいムカつくのよ!」(VOG) 「なんか雰囲気丸くなった?」「ブッ飛ばされてェのか、コラ」(VOG/上条・一方通行開幕セリフ) 「絶対に……勝つ!」「二度も負けてたまるかよォ……!」(VOG/上条・一方通行開幕セリフ) 「またオマエとやれるなンてなァ!」「俺……今度こそ死なないかな……」(VOG/上条・一方通行開幕セリフ) 「あなたって本当は良い人?」「ハッ、極悪人だよ」(VOG/インデックス・一方通行開幕セリフ) 「真っ白な髪がとっても綺麗なんだよ!」「……チッ」(VOG/インデックス・一方通行開幕セリフ) 「ハッ、オマエもあの野郎に当てられたかァ?」「……余計なお世話です」(VOG/凛鈴・一方通行開幕セリフ) その他SS ゴロゴロといつまでも廊下を転がり続ける上条は、ぐるぐる回る視界の中で一方通行が尻餅をついているのが見えた。 学園都市最強の超能力者が。 かつて操車場で激突した絶対能力進化候補が。 夏服っぽい半袖のセーラー服で。 ミニスカートで。(とある学園の禁書目録) あいたたたー、という感じで舌をぺろっと出して。 落っことしたカバンからはノートやら教科書やらが散らばり、そこには『鈴科百合子』という名前が書かれている。 (とある学園の禁書目録) 「あとなンか色々ヤルけどちょっぴり憎めねェキャラらしいンだわ」 「んな訳ねえだろ!!お前はさんざん傍若無人に主人公を振り回した末に最後の最後で手編みのセーターを手渡してくれるちょい不良気味の素直になれない女の子か!?」 (とある学園の禁書目録) かくして理事長キャラは倒れ、上条当麻は神妙な顔で額の汗を拭う。「これで世界は平和になったんだろうか?」「あァ?っつーかよォ。オマエは毎回そンな真似してンのかよ?」(とある学園の禁書目録) うだー、としている上条に、横から声がかかる。「ウザってェよなァ」ビクゥ!!と上条がスタンガンでも浴びたように肩を震わせる。隣を見るとそこに座っていたのは一方通行だ。「何でーっ!?」体育館中に絶叫が響き渡り、校長先生からお叱りの声が飛んで小萌先生がオロオロとした。(卒業SS) 学園都市最強の超能力者は小指で耳の穴をほじりつつ「あれからイロイロあったよなァ」「うん、いや、あったけど!でもテメェがこの学校に来ることだけは絶対になかったはずだ!!」「……オマエの知る限りではな」「意味ありげな事を言った所で絶対にねえよ!!」(卒業SS) ハンカチ片手にしみじみしている校長先生を眺めて一方通行は一言。「オマエ色々やってンなァ」「お前にだけは何も言って欲しくない」次第にヒートアップしていく校長先生を前に上条もぐったりしながら返事する。(卒業SS) 「――後はそこで大口開けてあくびしてる不幸馬鹿とチョーカー電極野郎!!前からテメェらだけは大人の怖さを教えてやらなくちゃならないと思っていたんゴァ!?た、体育の黄泉川先生に生活指導の災誤先生!何故わたしの両腕を摑んで引き摺り下ろすのですか――」(卒業SS/校長) 一方通行は退屈そうにあくびして、「……あの校長そろそろ死なねェかな」「ああいうヤツほど生き残るんだ。お前みたいに」「オイオイ。あの手の寝言はオマエの専売特許だろォがよ」「「――、」」上条当麻と一方通行はお互いに見つめ合って全力で殴りかかった。(卒業SS) 「ああそうか……。『実験』が終わってねーっていうなら、そっちも止めなくちゃいけないのか?またあの白いのをぶん殴るのかよ。メンドイなー」(最終回SS/上条) 「なぁ風斬氷華とか一方通行とか色々あったろ大事な伏線!幻想殺しの正体は?っつか俺の記憶喪失は!?最後がこれって本当に大丈夫なのか!?」(最終回SS/上条) 「だから大丈夫だって。人間の身体ってのは見た目より頑丈なんだ。一方通行にハリケーンみたいな突風でぶっ飛ばされたってなんだかんだで生き残ってるし」(俺妹コラボ小説/上条) 「今さら何の伏線もない中ボスが何だってんだ!こちとら生身で音速動作する『聖人』だの全方位ベクトル反射の第一位だのゲテモノスペックの連中と戦いまくってんだ、ちょっとやそっとのことじゃ驚きませ―――」(上条当麻の異世界訪問/上条) 「たまに触れただけで死ぬ第一位とエンカウントしたり、一万人のクローンが闊歩していたり―――概ね平和なのんびりワールドだよ。へいわへいわ」(上条当麻の異世界訪問/上条) まず『ラッシュ』を足止めしなくてはならなかった『ベイビーマグナム』が自由を得た。さらに一本、一方通行の手で主砲を毟り取られた訳だが、そこで速やかにお姫様は後退する。着地のタイミングを狙って第一位の超能力者へ飛びかかったのは、言うまでもなく上条当麻だった。(ASコラボ小説) その他(各公式媒体・関係者) 鎌池さんに『一方通行が実は女の子とかだったら、私的には最高のキャラなんですが』と言ったら凄い微妙な笑顔を向けてくださいました。(2004/12/09 成田氏の日記より https //t.co/b5o3daPrwM) 「はァ?俺がヒーロー?本物のヒーローってのは、どこぞの三下……いや、何でもねェ」(『とある魔術の禁書目録 頂点決戦』内イベント/一方通行) 「うおおおおお、一方通行!!また今度なああああああ!!」(PSP『とある魔術の禁書目録』隠しシナリオ/上条) 少年の頭に、とある『ツンツン頭』の少年の顔が過ぎる。苦蟲を噛み潰した顔をしつつ、目を逸らしながら言った。「ま、いろンな意味で今の俺にはなってなかったンだろうがな」(禁書目録VSデュラララ! 池袋編/一方通行) 「……ツンツン頭?」その単語を聞き、嫌な予感が少年の頭を過ぎる。だが、考えても無駄な事だと、更に一歩近づいた。(禁書目録VSデュラララ! 池袋編/一方通行) 「どうせ愛娘に『和泉一方通行』ちゃんとか名付けて、娘から何十年も憎まれ続けるんでしょ?」「唐突に危険なネタぶっこんでくるのやめろ!」(エロマンガ先生9巻) ―第3期で印象に残ってるシーンを教えてください。// アクセラレータが、自分を悪党悪党言ってるけど、全然じゃん!って思いました。とんだツンデレだよ!と(笑)。なんか、こじれたヒロイン臭がするんですよね(笑)。(アニメガイド 19 インタビュー / 阿部敦氏) 阿部:上条さんは確実にふたりに影響を与えていますよね。特にアクセラレータは、絶対に本人は認めないでしょうけど一番熱烈なファンだなって(笑) 日野:『ヒーロー』って言ってましたし一番好きだよね。 岡本:完全に認めちゃってます(笑)(電撃文庫MAGAZINE 2019年5月号) アニメ 「俺の前に現れた御坂と瓜二つの妹、何だか訳ありらしいのだが。そして彼女を追う、白髪の少年。えっ、学園最強の超能力者!?次回『お姉さま(みさかみこと)』科学と魔術が交差するとき、物語は始まる。」(アニメ『とある魔術の禁書目録』#10 次回予告/上条) 「ほんの僅かな奇跡を求めて御坂妹は実験場へと向かう。そこで待つ学園都市最強の超能力者、その能力とは。次回『一方通行』科学と魔術が交差するとき、物語は始まる。」(アニメ『とある魔術の禁書目録』#13 次回予告/上条) 「世界でたった一人のお前のために一体何ができる。ヤツに近づけもしない、最弱の俺に。次回『最強VS最弱』科学と魔術が交差するとき、物語は始まる。」(アニメ『とある魔術の禁書目録』#14 次回予告/上条) 「一方通行が出会ったミサカ20001号、打ち止めと呼ばれる彼女の頭には天井亜雄という研究員によって不正なプログラムが書き込まれていた。それが起動すれば1万近い妹達による無差別攻撃が行われてしまう。どうする、一方通行!って、今回も俺、出番なし!?」(アニメ1期#20 アバン/上条) 「激突するグループと無能力者たち、御坂美鈴を巻き込み大混乱に。俺と一方通行は、再び――。次回『武装集団』科学と魔術が交差するとき、物語は始まる。」(アニメ『とある魔術の禁書目録Ⅱ』#24 次回予告/上条)
https://w.atwiki.jp/pachimon/pages/59.html
23-1決起するゴブリン族 出現モンスター ★3 ★3 穴ゴブリンキングx1 森ゴブリンキングx1 ステージ情報 消費スタミナ 10 バトル数 1 金塊 0 ランクEXP 51 モンスターEXP 4650 23-2怒りの乳牛族 出現モンスター ★3 ★3 乳牛娘ウッシィーナx1 ビッグオックスx1 ステージ情報 消費スタミナ 11 バトル数 1 金塊 ? ランクEXP 51 モンスターEXP ? 23-3牙をむく鋭狼たち 出現モンスター ★3 ★3 鋭狼漢クールファング×1 怪菌王オオサマダケ×1 ステージ情報 消費スタミナ 11 バトル数 1 金塊 ? ランクEXP 51 モンスターEXP 4575 23-4反撃の桃豚族 出現モンスター ★3 ★3 突弾豚ビッグポーガーx1 桃豚娘ポインクピンクx1 ステージ情報 消費スタミナ 11 バトル数 1 金塊 ? ランクEXP 54 モンスターEXP 4875 23-5野生は爆発だ! 出現モンスター ★3 ★3 暴熊漢グリズリベアーx1 鱗帝マスターリザード×1 ステージ情報 消費スタミナ 11 バトル数 1 金塊 ? ランクEXP 60 モンスターEXP 5025
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/594.html
攻略 初日 常盤台中学前 エルシィ「ほえー・・・これが常盤台中学・・・」 一方「おーおー。流石はセカイ有数のお嬢様学校ってか?」 並の学校の15倍以上の敷地面積があるとは聞いていたが予想以上にデケェわ 学校ってか最早一つの街だなコリャ エルシィ「・・・さんもそうですが美琴さんもこの学校に通っているんですよね・・・」 一方「・・・・・・」 一方「・・・まァ、そォだろ。何を当たり前のことをぬかしてやがンだ?」 エルシィ「・・・神様」 一方「あン?」 エルシィ「そんな名高いお嬢様を恋に落とした神様って一体何者なんですか・・・!」 一方「・・・・・・」 エルシィ「も、もしや…やはり貴女が上条…」 一方「いい加減そのネタもしつけェぞ」ポカッ エルシィ「いったぁい!?」ぐすっ… 一方「・・・・・・」 一方「(オリジナル・・・御坂美琴・・・)」 一方「(思えばヤツの攻略からこのバカげた物語は始まったンだっけな)」 一方「・・・・・・」チャラ・・・ 一方「(クソガエル・・・ゲコ太のストラップ・・・)」 一方「(・・・いつまで付けてンだ俺はよ。ペアのストラップに何か期待でもしてる チェリーボーイかっての)」 一方「(まァ、オリジナルが今も付けてるとは限らねェけどよ)」 一方「(そうさ・・・アイツの記憶は無くなったンだ。こンなもンいつまでも付けて るもンじゃねェだろォが)」 「・・・攻略した方の記憶は消えてしまうんですか」 一方「・・・!」 心理掌握「それって寂しくありません?神様の記憶は残ったままなのに」 エルシィ「(あっ!心理掌握さん!)」 エルシィ「(ど、どうして攻略後の女性の記憶について知っているの・・・!?)」 心理掌握「・・・・・・」 心理掌握「(悪魔さんは私の能力、まだちゃんと把握出来てないのかな・・・)」 心理掌握「ごきげんよう神様。またお会い出来て光栄です」ペコリ 心理掌握「わざわざ私の学校まで足を運んでくださるなんて嬉しさで胸が熱くな りますわ」 一方「あァ、どンだけ皮肉を言われようが俺は今はお前しか見えねェからなァ」 心理掌握「あら。情熱的なお言葉ですね。照れてしまいます」 エルシィ「(おおっ!?神様がいきなり猛アタック!しかも反応も良好ですっ! )」 エルシィ「(これはエンディング間近でしょうか!?)」ドキドキ 一方&心理「・・・・・・」 心理掌握「苦労、しているのですね」 一方「アイツは・・・本物のバカだからな」 エルシィ「?」 心理掌握「しかし神様?少し話を戻させていただきますが・・・」 一方「なンだよ?」 心理掌握「貴方は過去に御坂美琴さんを恋に落とした。これは事実でしょうか?」 一方「・・・・・・」 心理掌握「Yesですか。 へぇ…あの御坂さんをですか・・・」 心理掌握「あながち神様というのも誇大表現では無いのかもしれませんね」 エルシィ「むー!?誇大も何も神様が神様なのは事実ですぅっ!」プンスカ 心理掌握「・・・・・・・」 心理掌握「そして神様・・・」 エルシィ「無視ぶっちぎりです!?」ガーン 心理掌握「・・・心の中を読ませていただいた結果、御坂美琴さんの記憶は攻略と同 時に消去された。という結論が出たのですがそれでよろしいでしょうか?」 一方「・・・・・・」 一方「・・・そンなことをテメェが聞いてどーすンだ」 心理掌握「・・・・・・」 心理掌握「私の能力は精神する関することならなんでも可能です」 一方「!?」 心理掌握「私を恋に落とす?」 心理掌握「私しか見えない?本当でしょうか?」 心理掌握「貴方はペアのストラップを見つめながら攻略の時を思い返していたの に?」 心理掌握「神様は御坂美琴さんのことをどう思っていらっしゃるのかしら?」 一方「オイ、テメェ!?何を考えて…!?」 心理掌握「・・・あら?イヤですわ。わかっていらっしゃるじゃないですか」 心理掌握「記憶の復元。意志の増幅」 心理掌握「貴方と御坂美琴さんがあの日から恋に落ちた状態のままになったと し たら」 心理掌握「・・・一体、私の攻略はどうなるのでしょうね?」クスッ… 私は貴方を必要としていません 私のセカイには貴方はいらないんです ~~~~~~~~ 美琴「・・・・・・・」チャラッ・・・ ゲコ太の限定ストラップ・・・ 私はどうしてこれを持っているんだろう? まぁ、それは映画に行ったからなんだろうけど けれど、どうもしっくりこない その時私は誰と映画に行ったの? ハッキリと思い出せない 美琴「(でも・・・何故か手放せないのよね。このストラップ)」 美琴「(どうしてなんだろう・・・)」 心理掌握「ねぇ、神様?どうでしょうか?」 心理掌握「御坂美琴さんの記憶・・・復元したいと思いませんか?」クスッ・・・ エルシィ「えっ!?美琴さんの記憶の復元・・・!?」 一方「・・・さげたこと言ってンじゃねェゾ・・・!!」ギリッ・・・! 心理掌握「あら?そんなことを言われるなんて心外ですね」 心理掌握「私は神様の為を思って・・・」 一方「ハッ!俺の為だァ!?テメェが楽しンでいるだけ・・・」 心理掌握「・・・寂しいでしょう?」 一方「・・・あァ?」 心理掌握「どれだけ多くの思い出を作っても」 心理掌握「どれだけお互いに理解し合えても」 心理掌握「覚えているのは貴方一人」 心理掌握「一人だけなんですよ、神様」 心理掌握「御坂美琴さんは貴方との思い出を何も覚えていないんです」 心理掌握「そう。思い出を作る前の貴方のことしか」 一方「・・・・・・」 一方「・・・言いてェことはそれだけか?」 心理掌握「御坂美琴さんのこと・・・気になってるのでしょう?」 心理掌握「いや、二人目の攻略者さんのこともでしょうか?気が多い方ですね」 心理掌握「その方は・・・涙子さん。素敵なお名前ですね」 心理掌握「けれど涙子さんも貴方をことを忘れてしまっているのでしょう?」 心理掌握「・・・貴方は今、一人ぼっちなんですよ神様」 一方「・・・・・・」 心理掌握「だから私の能力で記憶の復元を行えば・・・」 エルシィ「それは違いますっ!!」 心理掌握「えっ?」 一方「・・・エルシィ?」 エルシィ「神様は一人ぼっちなんかじゃありませんっ!!」 心理掌握「・・・いきなり大声を出したかと思えば・・・」 心理掌握「『神様には私がいますっ!』ですか?ありがちな思考回路ですね」 エルシィ「う、うー・・・」 一方「オイ、エルシィ。コイツの言うことは気にせず黙って・・・」 エルシィ「あ、ありがちで何が悪いんですかっ!?」 心理掌握「・・・!」 一方「って、オイ!?」 エルシィ「神様は今日まで一人で生きていたわけじゃありませんっ!」 エルシィ「様々な人達との思い出があって今もそれを作っているんです!」 エルシィ「中には悪い思い出もあったかもしれません・・・攻略者さんの記憶が無くなって寂しいと思っているかもしれません・・・」 エルシィ「それでも!神様はそれを受け入れて今も生きています!」 エルシィ「そして私はそんな神様をお側で見てきたんです!」 エルシィ「昨日今日出会ったばかり貴女に『記憶を復元した方が良い』とか『一人ぼっち』だとか勝手なこと言ってほしくないですっ!!」 一方「エルシィ・・・」 心理掌握「・・・・・・」 心理掌握「・・・私は心の中が読めるんです」 心理掌握「寂しさや不安、全てを読み取ることが出来ます」 心理掌握「そんな私に対して『勝手なこと言わないで』ですか・・・」ジロッ・・・ エルシィ「う、うー!?」グッ・・・ 心理掌握「・・・・・・」 心理掌握「・・・不愉快な気分になりましたので私はこれで失礼させていただきます」 エルシィ「・・・ふぇっ?」 心理掌握「それでは・・・」タッタッ・・・ エルシィ「・・・・・・」 エルシィ「・・・か」 エルシィ「勝ったぁ!!」 一方「勝ったじゃねェ!!」ゴツン! エルシィ「いったぁい!?」グスッ・・・ エルシィ「い、いきなり何をするんですかぁ!?」エグエグ・・・ 一方「勝手にイベント進めンな!勝手に好感度を下げンな!!」 エルシィ「だ、だってぇ~・・・」スンスン・・・ 一方「・・・・・・」 一方「・・・帰ンぞ」 エルシィ「・・・えっ?」 一方「『俺ら』の家に帰ンぞ。今日はもう攻略続行不可だからなァ。帰ってこれからの計画を立てる」 エルシィ「・・・!!」 エルシィ「は、はいっ!帰りましょう神様っ!!」 一方「・・・ったく」 一方「役立たずのポンコツのくせにでしゃばりやがってよ・・・」 一方「・・・・・・」 一方「(・・・そうさ。オリジナルや涙子がなンだってンだよ・・・)」 ~~~~~~~~ 心理掌握「(あんな悪魔さん相手に・・・私としたことが・・・)」 心理掌握「(少々、神と悪魔というものを侮っていたかもしれない・・・)」 心理掌握「(けれど・・・)」 美琴「(いつもの自販機でイチゴおでん買って帰ろうかな?)」 心理掌握「(私のセカイには近づかせない)」 心理掌握「(だからお二人とも)」 心理掌握「(思い出に抱かれて・・・死んでください)」 ~~~~~~~~ エルシィ「できたぁ~!!」 エルシィ「ふふ~神様っ!今日のお夕飯は私の自信作です!きっと神様も気に入ってくれると思いますよっ!」 一方「あーそうかい。ごちそうさン」 エルシィ「はい!お粗末様・・・って、まだ一口も食べてないじゃないですかぁ!?」 エルシィ「うー・・・どうしてそんないぢわるするんです・・・?」グスッ・・・ 一方「悪ィがカニバリズムは趣味じゃねェ」 エルシィが出してきた夕飯・・・もといオブジェ 人の手らしき物体で野菜と肉をサンドした・・・ エルシィ「今日のは絶対美味しいのに・・・ハンドウィッチ・・・」シュン・・・ 一方「せめて爪剥がせよ」 エルシィ「うー・・・結局今日も食べてもらえませんでした・・・」ショボン 一方「もう少し見た目に親しみやすさをアップしてくれりゃァ、いつか気が向いたら食ってやるよ」 エルシィ「こんなに親しみやすい見た目なのに・・・人間の方の好みは難しいなぁ・・・」 一方「(どこがだっての)」 一方「さってと・・・落ち着いたとこで今後の今後の攻略対策でも立てるかァ」 エルシィ「あっ、はいっ!そうですねっ!」 エルシィ「神様っ!私に出来ることがあれば何なりと・・・」 一方「・・・・・・」 エルシィ「・・・神様?」 一方「そォだな。ここは1つ悪魔に魂を売ってみっかァ」 エルシィ「えっ?」 一方「帰宅途中に考えはある程度はまとまっていた」 一方「エルシィ」 一方「今回はお前の力も必要だ」 一方「(やっと舞台の役者になれた感じだな)」 一方「(だか、まだデケェ問題が残っている)」 一方「(それを処理出来るか出来ないかは俺と・・・) 一方「(アイツ次第だ)」 ~~~~~~~~ 美琴「(ありゃ?またイチゴおでん売り切れてる・・・)」 美琴「(案外人気なのかしらね・・・まぁ実際美味しいしね)」 心理掌握「・・・・・・」 心理掌握「(イチゴおでん・・・?おでんにイチゴ・・・?)」 心理掌握「(しかも美味しい・・・?)」 心理掌握「(・・・心が読めてもそれを理解出来るとは限らないわね・・・)」 心理掌握「(って、呆然としている場合では無いわ)」 心理掌握「ごきげんよう、御坂美琴さん」 美琴「えっ?」 美琴「・・・げっ!?」 心理掌握「今、お帰りですか?」ニコッ 美琴「(メ、心理掌握!?なんでコイツがこんなとこに!?)」 美琴「(いや、別にいても変じゃないけどなんで私に話しかけてくるのよ・・・)」 美琴「(まいったなぁ・・・私コイツ苦手なのよね・・・)」 美琴「(女王様気質な性格がどうもねぇ・・・)」 心理掌握「・・・・・・」 心理掌握「奇遇ですね。私も貴女のことを快く思っていませんので」 美琴「・・・!」 美琴「それでいてその能力なんだから・・・ホントにタチが悪いわ・・・」 心理掌握「ふふっ・・・褒め言葉として受け取っておきしょう」クスッ・・・ 美琴「で?一体何の用なのよ?」 美琴「知り合いを見つけたから挨拶をしておこうっ!ってガラでもないでしょ?」 心理掌握「そうですね。用件が無ければ貴女に話しかけたりなんてしませんもの」 美琴「・・・無駄話はキライなの。さっさと本題に入ってくれない?」バチッ・・・! 心理掌握「あら、怖い。けれど私も時間を無駄にしたくありませんので単刀直入に済ませましょう」スッ・・・ 美琴「ん?」 心理掌握が私に向かって指を指してきた 一体何のつもり? 洗脳系の能力でもかけようっての? 悪いけど、そんなヤワな脳構造じゃ・・・ 心理掌握「貴女のそのカエルのストラップ・・・」 美琴「・・・えっ?」 美琴「(ストラップ・・・?このゲコ太の・・・?)」 美琴「(これが何だって言うの?)」 心理掌握「・・・思い出したくはありませんか?」 心理掌握「そのストラップを手にした時のことを」 美琴「・・・えっ!?」 美琴「(ス、ストラップの・・・思い出・・・!?)」 美琴「え、なっ・・・!?」 美琴「(コイツ・・・このストラップのことについて何かを・・・?)」 美琴「(い、いや深く考えちゃダメ・・・!深い意味なんて無いはず!)」 美琴「あ、アンタもゲコ太の映画を観に行ったの?」 美琴「い、意外ね~!こういう物には興味無いのかと思っていたけど・・・」 心理掌握「私は」 心理掌握「貴女がこのストラップを手に入れた日のこと」 心理掌握「そして・・・」 心理掌握「その日、貴女の隣にいた人物のことも把握しています」 美琴「・・・なっ!?」 心理掌握「御坂美琴さん」 心理掌握「大切な思い出を・・・」 心理掌握「取り戻したいとは思いませんか?」 記憶を取り戻す つまり心理掌握の能力で失った記憶を復元してみないかってことでしょ? なんでコイツがそんな提案を・・・? 何か裏があるに違いない 復元と称して油断させて精神に細工されるかもだし! だけど・・・ 美琴「・・・ホントに取り戻せるの?」 あの日失った思い出・・・ そして傍にいた誰かのことを・・・ ・・・思い出したい きっと私にとってかけがえのない時間だったはずだから
https://w.atwiki.jp/etcranking/pages/6087.html
大阪市営地下鉄 四ツ橋線ランキング一覧 一覧説明 大阪市営地下鉄 四ツ橋線の乗降車人数を駅別でランキングにしています。 一覧の中に阪急京都線等路線名がありますが、これはその路線からの直接の乗降車を指しています。 ランキング一覧(現在30ランキング) 乗降者総人数★ 乗車人数★ 降車人数 名称 種類 説明 総人数(10) 乗客数 多い順 乗降車人数を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 定期 多い順 乗降車人数を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 定期の割合 多い順 定期で利用している人の割合を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 割合 多い順 四ツ橋線の中で、どれくらい乗降車がいるのか、比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┗ 割合(定期) 多い順 四ツ橋線の中で、どれくらい定期での乗降車がいるのか、比べました。 ┗ 少ない順 名称 種類 説明 乗車(10) 乗客数 多い順 乗車人数を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 定期 多い順 定期で利用している人数を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 定期の割合 多い順 定期で利用している人の割合を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 割合 多い順 四ツ橋線の中で、どれくらい乗車がいるのか、比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┗ 割合(定期) 多い順 四ツ橋線の中で、どれくらい定期での乗車がいるのか、比べました。 ┗ 少ない順 名称 種類 説明 降車(10) 乗客数 多い順 降車人数を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 定期 多い順 定期で利用している人数を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 定期の割合 多い順 定期で利用している人の割合を、駅別で比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┣ 割合 多い順 四ツ橋線の中で、どれくらい降車がいるのか、比べました。 ┃ ┗ 少ない順 ┗ 割合(定期) 多い順 四ツ橋線の中で、どれくらい定期での降車がいるのか、比べました。 ┗ 少ない順 トップページ
https://w.atwiki.jp/hamaosenmatome/pages/51.html
http //news.kanaloco.jp/localnews/article/1111210016/ 藤沢市が放射性物質量対策を拡充へ、給食食材を毎日検査/神奈川 2011年11月21日 藤沢市は21日、市立小学校の給食食材の放射性物質の量を毎日検査するほか、1週間分を冷凍しミキサーにかけて調べる方針を発表した。 このほか、空間放射線量の測定器を70台購入、うち30台ほどを市民向けに貸し出すなど対策を拡充する。いずれも来年1月までに段階的にスタートする。 給食の調査は、これまで1週間1回だった食材1品目の検査を毎日実施するほか、調理済みの献立1週間分を、月曜日にミキサーにかけ放射性物質の量を確かめる。毎日の食材検査と、1週間分の検査を併せて実施するのは県内の自治体で初という。 また、30台の測定器は、公民館などに2台ずつ配備し、要望に応じて貸し出す。除染の必要がある放射線量を検知した場合の対応などを示したパンフレットも提供する。残りの40台は市の各部局で使う。 子どもを持つ保護者などから多くの要望が寄せられていたため対応策を拡充することにした。 市は、これらの施策で補正予算案に336万円を計上した。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/587.html
「ドラゴン?」 結標が言う。疑問に思うのも当然だろう自分たちが戦っていた連中以外の組織があったのだから。 「このぐらいで驚いてンじゃねえよ」 海原が続く 「まあ、確かにまだ組織があっても不思議じゃないですからね。それで土御門どんな情報があるんですか?」 「ああ、どうやらこいつらはアレイスター直属の実行部隊で、メンバーは俺たちと同じ四人らしい。内レベル5の第六位瞬間氷結が所属してるみたいだ。」 「そンでそいつらはどこにいるんだ?」 土御門が黙る。 「ああ、どうやらこいつらはアレイスター直属の実行部隊でメンバーはおれたちと同じ四人。!!・・・幻想殺し複製計画だと!?」 「なァンだその幻想殺しってのわ?」 「そうかお前と結標は知らなかったな。幻想殺しはあらゆる異能の力を消すことができる能力だ。そう、お前と戦って勝利した男のことだ」 一方通行から明らかな殺意が放たれている。 「ははははははははァ最高じゃねえかあいつと同じ能力の奴と戦えるなんてよォ」 やたらとテンションが上がっている一方通行を無視して、土御門は続ける。 「あと使われていた施設がシスターズの作られた場所らしい。この『滑空回線』にある情報はこれだけだ、とりあえず調査に行って見ようぜ」 研究所前 「開いてるみたいだな」 土御門が戸をあける。 「全く物好きなもんだァなこんな所で、また実験なんて」 中には行っていくと大きなホールのような所に出た。 「妹達を作るための機械があった所みたいだな。なんだ!?」 突然上からライトが照らされた。 「わざわざご苦労なこったなグループの皆さん」 「誰だ!」 土御門が叫ぶ。 「お前は!上条当麻か?」 影から出てきた人物は、そう『上条当麻』とうり二つの人物だった。 「正解のようで正解じゃないな、俺は献体番号2596番、まあ番号で呼ばれるのもイヤだから上条錬魔とでも呼んでくれ」 「なんだ、クローンか土御門さっさとあいつを捕まえて帰ろうぜ」 電極のスイッチを入れながら一方通行はだるそうに言った。 「言ってくれるじゃないかロリコン」 錬魔も負けずに言い返した。 「てっめえ絶対ブッ殺す」 一方通行は、近くに落ちていた瓦礫を高速で投擲した。 しかし、瓦礫は見えない壁に防がれたように消滅した。 「まあ、今日は挨拶代わりだまた会おう。生きていればの話だがな」 次の瞬間二十機程度のパワードスーツが壁を突き破って、入ってきた。 「そいつらは、ESPジャマーが搭載された特注品だ、がんばるんだな」 錬魔は笑いながら去っていった。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3528.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 第09話 一方通行(1) 「是故百戦百勝、非善之善者也。 不戦而屈人之兵、善之善者也」 学園都市1位というのは以外に窮屈なものだ。 日本国刑法35条の正当行為、または刑法36条の 正当防衛に該当しなければ、 殺人・傷害事件を起こせば処罰される。 強大な火力を持つ自分にとって実験でいつ人を殺すか内心 いつもひやひやしている。 いくら業務でも過失致死でも起こせば私が少年院行きだ。 だから、実験でも細心の注意を払って、研究員や軍需企業の 関係者の安全を確保する。 できるだけ無人兵器の実験の依頼を受けるのもそのためでもある。 近年のAI 技術の進展に伴い、無人兵器が軍備の主体になりつつあるのが 幸いし、実験にはあきがない。 だからあのおぞましい実験を1年前に2位殿へ所長が押し付けたのも、 まさに戦わずして勝つということだ。 どうせあんな実験、誰かのじゃまが入っておじゃんになる。 そうすれば一方通行は自滅するだろう。 それが、所長の見立てだった。 所長は、本来私が引き受けるべき 絶対能力者進化実験を、 知人の木原数多に依頼し学園都市2位の一方通行へ 押し付けた。 それに・・所長は多分知っているだろう。 メインプランではこの実験は失敗することを。 彼はこの茶番が失敗する運命なんてしらないでしょうね。 一方通行は私にとっては、ちょっとシャイな兄貴だが、世間一般の 見立ては一言、口の悪い目つきの悪い怖い人だろう。 所長と一方通行の主任研究員木原が知人なこともあり、私と 一方通行は兄妹みたいな関係だ。 だから数多さんのいる研究所には私と所長も時々お邪魔するし、 一方通行も私の研究所へ遊びに来る。 だからお互いよく知っている。性格も能力も趣味も感情も。 兄貴は本当は心根のイイヤツなんだ。 だけど小学低学年でいきなりレベル5になり、突然あらゆる兵器 で攻撃されれば、そりゃ人格だって捻じ曲がる。 百戦百勝を宿命づけられた存在。つらいよね。兄貴はとなる。 スライム2万匹をつぶして、レベル6になる。 詐欺みたいな話だ。 いくら、クローンがライフルだので武装しようが、兄貴の反射じゃ、 そもそも当たらないだろう。 自分がやることを想像してもあまりの退屈さにあくびがでる。 レベル3のAIM拡散力場なんてすぐ場所を特定できるし、そこへ 電子線でも撃てばそれでおしまいだ。 はっきり言ってコイン一枚で十分なのでつまんーない。だ。 自分の体を電磁場で覆えば、弾一つあたらない。 まさにワンサイドゲーム。 私は、核ミサイルやら、ファイブオーバやら、戦闘機やら、 戦車やら、世界中のあらゆる兵器と戦っているのだ。 戦闘レベルは比較にならない。 毎日が、戦場と言っても過言でないし、 しかも難易度は最高レベルだ。 でもそれだけやってもレベル6にならない。 それを。たかだかレベル3を2万回殺害でレベル6? なんかおかしくないか? 正直な話、私や一方通行クラスならスライムを殺すのは簡単だ。 殺すのはノーリスク、戦いながら生かすのは困難でリスクがある。 2万体レベル3を殺したところでレベルなんて上がりはしない。 いくらそれが、「御坂美琴」のクローンだってね。 兄貴は理事長に担がれてないか?それが私の正直な感想だ。 はっきり言って兄貴は戦う前に負けている。 でもな兄貴は賢いからな。そんな私がわかることは 兄貴もわかっているはずなんだ。 まさか、かわいい妹のために泥をかぶる? ははは、な馬鹿な 空想を笑い飛ばしたが、・・ 後でそれが一面の真理だったことを知る。 ふふなんか考え事しちゃったな。 上条当麻の不可思議な能力を見て、なぜか一方通行を思い出した。 そして実験動物妹達を思い出した。 気をとりなおし、PCの画面を広げ、さきほど終わった 上条当麻との模擬戦闘レポートを書く。 本当にびっくりぽんだ。 あんなものが出るなんて。 彼の頭上3Mにポジションを確保し、磁力で浮遊した。 負けはしない。ある意味ずるいやりかたを選択。 ふふ・・上条当麻は飛べないからね。 そこから100億KWの電撃や、砂鉄の剣、弱い1億度のプラズマでジャブ だんだん強度を上げ、おおよそ1兆KWの交流電撃で右手が処理落ちすることを確認した。 最後に私が調子にのって右手及び左手付け根を1兆度のプラズマをビームサーベルのように使い切断したが、突然竜らしきものが出てきたのはおどろかされた。プラズマ温度を100兆度まで上げ竜をなんとかかわしたが、あらかじめツリーダイアグラムであの竜の存在を想定し、心の準備をしていなければ敗北するところだった。 彼は両手を失い、それ以上戦闘できる状態でないので、実験は終了となった。 すぐにあの、6KM離れた冥土帰しの病院へ私が60秒で彼を送り 病院で両手を縫合した。 まあ・・なんか楽しくて調子に乗ってしまったな。 あやうく殺すところだった。あぶないあぶない。 でも楽しかったな。スライムを相手じゃこんな経験値は得るとはできない。 兄貴、強い相手と戦闘しないと伸びないよ。力はさ・・ でもあのイマジンブレイカーも処理の限界があることを確認できて よかった。イマジンブレイカーはある巨大な存在から上条当麻が能力 を借りたものであるという作業仮設を提起できる。 それは、ある巨大な存在が、AIM拡散力場など通常の物理原則で 発生しない現象を感知し、その意思の力で、発動する。 先日のペンデックスそしてイマジンブレーカ おそらく通常科学とは全く 異なる理論・・魔術で起動する現象。 とはいえ、魔術も人が作りし現象。 かならず理解できる。最低でも利用法はあると思っている。 ただ、どうやらそのままでは我々能力者には利用できないものらしい。 なぜ?・・・ここになんか理事長の思惑がありそうだ。 まあいい、試行錯誤は科学研究の必要なステップ。 上条当麻の龍の首。 インデックスのドラゴン・ブレス 人工衛星のデータを解析して糸口を捕まえよう。 そして、上条当麻をくっそたれな運命が救おう。 ふふふ・・アイツ 私が、御坂美琴がなにものか 気がついたみたいね。 プラズマ・キャノン 学園都市1位=御坂美琴とね。 口止めしないといけないかな。 まあ彼は守秘義務契約は守るでしょ。 今朝契約金500万払ったしね。 明日午前の授業はキャンセルしよう。 実験でトラブル発生したと言ってね。 上条当麻 あんたの力を見せてもらったわ。 あんたはただの高校生なんてうそをつくのはよくないわ。 あんたは、龍の力を持つ、最強の能力者なのよ。早く自覚しなさい。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン)
https://w.atwiki.jp/rowamousou/pages/345.html
【名前】零崎人識 【出典】戯言シリーズ 【性別】男 【年齢】19歳 【名ゼリフ】「そーいやこの辺で殺したあいつに似てるな。かはは、仇討ちか」 【支給武器】ロストドライバー@仮面タイダーW、DG-X@.hack//G.U. 【本ロワでの動向】 キチガイ殺人鬼。 参戦時期が、哀川潤に負ける前だったため、このステータスは厨二ロワにおいても遠慮することなく発揮された。 ゲーム開始直後にシックスと遭遇。 人識はシックスの悪意になんらかの魅力を感じ、シックスも人識の純粋な殺意に魅かれ互い手を組むことになる。 そして、そこに運悪く近づいてしまった折原舞流を発見し、好みじゃなかったからとシックスと共に嬲り殺す。 主にシックスが拷問で人識が殺害担当である。 しかしこの殺害が人識の死因となってしまうことになる。 しばらく移動すると人識は支給されていたロストドライバー@仮面タイダーWの事が気になり鞄から取り出す。 シックスと共にそれを観察していると、ロストドライバーを大道克己に奪われる。 変身した大道克己相手に応戦するが敵側に西丈一郎が参戦し、分が悪いことして撤退。 第二回放送後には食堂の男と遭遇。 自身やシックスの悪意や狂気を遥かに上に行くような彼のオーラに思わず引いてしまい、人識は屈辱的に下手に下ることになる。 その屈辱を人に見せた自分に嫌味を覚え、シックスや食堂の男から逃げるように別れる。 その後、夕方にはD-2中学校の傍らで一方通行と遭遇。 同時、その場に上条当麻といーちゃんが乱入。 同作の敵味方勝負となり、流れで一方通行と組んで闘うことになる。 こと、単純な戦闘力では、人識・一方通行コンビのほうが格段に高かったのだが、相性は最悪だった。 人識といーちゃんは対局とも言える存在で千日手とんってしまい、一方通行は当麻相手には反射が効かず押され気味であった。 ならばと、互いに相手を入れ替えればよかったのだが、見知らぬ相手同士、コンビネーションが成り立つわけもなく、相手の調子を狂わすいーちゃんの戯言もあり、戦況は不利になる一方であった。 ならばと一方通行を囮にして逃げ出そうとするも、学園都市でも有数の頭脳を誇る一方通行にそのことを先読みされてしまい、ベクトル操作にて、当麻といーちゃんの全ての攻撃を直撃させられてしまう。 そのまま逆に囮にされてしまった人識は絶大なダメージを受けてしまう。 幸い、いーちゃん側も性格の相性は良くなく、追撃は免れ、撤退に成功。 第二回放送がエリア中に響いていたが、人識にはもうそれを聞く気力すらなく、傑作だぜと自嘲しながら、ただ、歩くことしかできなかった。 そんな彼の目の前にある男が現れ、手にしていた大きな石を持ちこちらに向かって走ってきた。 零崎特有の殺意察知能力で、人識は間一髪で避けるが、その男は言う。 「お前だろ…?」 人識はその声を聞くとその男の顔を見る。 その男の顔はいつかどこかで見た顔であった。 そうだ、最初に殺した折原舞流だと気付くやその男は舞流の親族か何かだと気付く。 殺人鬼でありながらも、家族を大切にする零崎一賊なだけあって、すぐに事情を察する。 「そーいやこの辺で殺したあいつに似てるな。かはは、仇討ちか」 「仇討ち?おいおい勘違いするなよ化け物。俺は俺のために、君を殺すんだ」 こうして、もはや戦う力の残っていなかった零崎人識は折原臨也に人ならぬ鬼として殺された。 波止場のコンクリートの地面の上で永遠の眠りに就いたのである。 哀川潤に負け、人殺しを禁じられる前から参戦したことで、彼は命を落とすこととなった。 家族の仇は必ず取るとされる殺人鬼、零崎一賊の鬼子が、鬼と断じられ家族の敵討ちで殺される。 零崎人識がたどった顛末は皮肉としか言いようが無いだろう。