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喧嘩番長~一年戦争~/コード チート HP最大維持 _L 0x20001f80 0x8c840004 _L 0x20001f84 0xe4960028 _L 0x20001f88 0xe4960030 _L 0x20001f8c 0x0a20e140 _L 0x20001f90 0x02202025 _L 0x20049b74 0x0e2007e0 走ってもスタミナ切れない _L 0x20038A88 0x44806000 喧嘩慣れ入手n倍 _L 0x20001FA0 0x00C53821 _L 0x20001FA4 0x0A20E214 _L 0x20001FA8 0xAC870070 _L 0x20038848 0x0A2007E8 _L 0x2003884C 0x00052xxx xxx: 840:2倍 880:4倍 8C0:8倍 900:16倍 940:32倍 980:64倍 9C0:128倍 シャバくならない _L 0x2163E2C4 0xFFFFFFCE ポケット10固定 _L 0x2163E2D4 0x0000000A 所持金最大 0x09E437A0 0x0098967F 喧嘩魂999 0x19E437B8 0x000003E7 攻略/コード投稿などなど 名前 コメント すべてのコメントを見る
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同じ頃、 大型輸送艦隊の中では、詰め込まれたメサイア“グレイファントム”達が目覚めようとしていた。 「なんてザマよ!」 モニターやスクリーン、そして計器類の光が走るコクピットの中でそう喚いたのは、ステラだ。 本国へ戻った途端、ハワイでメサイアごと輸送艦に押し込められた彼女もまた、他の乗組員や騎士同様、数週間ぶりになる明日の上陸を楽しみにしていた矢先だった。 この騒ぎでは上陸はお預けだろう。 「こちらステラ・コールマン!ハッチ開けてっ!」 「こちら発艦司令所だ!メサイア使用許可は下りていない!」 「このままフネごと一緒に沈めっていうのっ!?」 「―――今、許可入った!」 直立不動の体勢で搭載されているグレイファントムの頭上でハッチが開かれる。 油圧でゆっくりと開く仕組みのハッチは、まるで亀の歩みさながらに遅く、たまらずステラは――― 「邪魔よっ!」 ベキィッ!! グレイファントムの左腕でハッチを殴り飛ばしてしまった。 「こらっ、ステラっ!」 ハッチが海面に落下する音を聞いたイルマが怒鳴る。 「あーあっ!あなたこれ、給料から天引きされるわよ!?」 「恐いこと言わないでよっ!必要な措置でしょ!?こちらステラ、緊急発進のため、すべての発進シークエンスを省略するっ!」 「ステラっ!始末書は書けよ!?」 発艦司令所の士官もステラに怒鳴った。 「発艦司令所よりグレイファントム全騎。ハッチ解放次第、自力浮揚開始許可!」 「サンクスっ!」 重力力場の理論を用いた一種のブースターを吹かしながら、グレイファントムが甲板上に出る。 甲板上に設置されていたウェポンラックが開き、ステラはそこから90ミリ速射砲を引き出した。 「敵はどこっ!?」 すでに対空砲が全艦から盛大に打ち上げられている。 「右っ!」 「右?」 ピーッ! ステラは右を振り向き様、コクピットに響いた接触警報の意味を即座に悟ることが出来た。 スクリーン一杯に、炎上しながら迫ってくるSu-30が映し出されていたのだ。 速射砲で撃墜するヒマはない。 「うそぉぉぉっ!」 ドンッ! 鼓膜がどうにかなりそうな爆発音と、シェーカーの中に放り込まれたような衝撃がステラ達を襲う。 とっさに構えたシールドにSu-30の体当たりをまともに喰らったステラ騎は、一度海面まではじき飛ばされた。 そのまま落下しなかったのは、イマラのブースターコントロールが絶妙だったからとしか言い様がない。 「な、なんてことしてくれるのよぉっ!」 ステラは騎体を甲板に再び降ろすと、辺りを見回した。 「い、一体、何がどうなって―――?」 グレイファントムの目から見たラピス島基地は酷い有様だ。 滑走路は爆弾で穴だらけで、車が何台かひっくり返っていた。 青い空も、今では黒い煙に覆われている。 そんな中、ステラ達の輸送艦の間近では、爆撃をまともに喰らい、真っ二つにへし折られた別な輸送艦が、舳先を天に向けて沈もうとしている。 さらにその隣。 もう一隻、輸送艦が激しく炎上していた。 艦の構造物のあちこちで走る爆発は、艦内に残っていた弾薬が激しく誘爆を繰り返している証拠だ。 最近の輸送艦は乗組員がほんの数名だとステラは誰かに聞いていた。 だから、乗組員が脱出出来ればいい。 そう思っていた。 だが――― ステラはモニターをズームさせてその輸送艦を見て青くなった。 炎上しているのは、物資輸送艦じゃない。 兵員輸送艦だ。 兵士達が炎と煙に巻かれ、甲板から次々と海に転がり落ちていく。 艦の横腹にまともに爆弾を受けたらしい。 もうもうと立ち上る煙の中、大きく抉られた艦体が見て取れる。 艦自体が受けた被害からして、艦内にいた兵士達は無事ではないはずだ。 「……神よ」 全身を炎に包まれ、まるで踊るように海に飛び込んだ兵士を見たステラは、思わず首から提げたロザリオを握りしめた。 その直後、輸送艦のボイラーに海水が侵入したんだろう、艦の後部、煙突の下あたりから今までで最大級の爆発が発生。 煙突を含む艦上部構造物が、甲板にいた兵士達を巻き込んで根こそぎ吹き飛んだ。 「……っ」 「ステラ」 呆然とするステラに、殺気だった声のイマラから通信が入る。 「敵空母の位置が判明したわ」 「どうするの?」 「今、この海域にある飛行艦は一隻だけ。インペリアルガーズの、“スズヤ”ってフネ」 「それが?」 「―――“スズヤ”は敵空母艦隊に殴り込むわ」 「私達は?」 「飛んで帰ってくる位のことは、このグレイファントムにも出来るでしょう?」 ハッチが開き、グレイファントム達が次々と甲板に出てくる。 「成る程?」 その光景を見たステラは、楽しそうにコントロールユニットを握った。 「お手伝いくらいは、させてもらえそうね」 ●中華帝国海軍空母“天津” リュールカ・サトゥルン製AL−31Fターボファンが唸りを上げ、Su-30の着艦フックがワイヤーに噛みついた。 着艦は成功だ。 甲板要員達が一斉に駆け出し、所定の作業に入る。 その光景を、張艦長は艦橋で満足げに見守っていた。 「まずは目出度いですな」 艦長にそう声をかけたのは、現・艦隊参謀長の毛中佐だ。 「うむ」 張艦長は、ふりかえりもせずに頷いた。 「浮遊機雷にひっかかって沈没した連中の穴埋めを我々がしてやったのだ」 「まさに」 毛中佐は、参謀としての能力ではなく、王制党と上官に媚びる“幇間(たいこもち)”として政治的に出世してきた人材特有のそつのなさで言った。 「艦長の決断があったからでしょう」 「艦長」 飛行甲板士官が一礼の後、報告した。 「攻撃隊の損害がまとまりました」 「どの程度だ?」 「参加60機、未帰還6。中破4、小破12―――小破機は24時間以内に前線に戻せます」 「12時間で終わらせろ」 「はっ」 「毛中佐。本国には報告したのか?」 「はい。戦果撃沈10、大破15、基地滑走路を完全破壊」 「よろしい」 張艦長は再び頷いた。 「レーダー誘導による対艦ミサイルが使用出来なかったのは返す返すも残念だな」 「地磁気の乱れによる障害かと思われます」 「それさえなければ」 張艦長は顔をほころばせた。 「もっと中央を驚喜させることが出来たろう」 「今頃、我々の報告を受けて?」 毛中佐も楽しげに笑う。 「中央軍事委員会は、も涙を流して喜んでいるだろうさ」 張艦長は、自分達に迫り来る存在を、全く知らなかった。 “涙を流して喜んでいる”だろう相手は、空母“天津”によるラピス基地襲撃の報を受け、むしろ青くなっていた。 「誰が攻撃命令を下したか!」 王制党党中央軍事委員会主席、江党総書記は緊急会議の席上、居並ぶ委員会の重鎮めがけて怒鳴った。 「今、ジュネーブで我が国とEUがどんな会議をしているかわかっていたのか!」 中央軍事委員達は一様に黙った。 江総書記の言わんとしていることはわかる。 何しろ、現在、ジュネーブでは早期終戦を求めるEU相手に我が国の外交官達が有利な交渉を進めている最中。 実行支配地域であるモンゴルや東南アジア一帯、そして長年の懸案であるチベットまでを含んだ広大な地域の中華帝国支配を承認させる一歩手前との報告を受けたばかり。 あとは、外交官達の最終的戦果を受け、祝杯を挙げるだけだったのに……。 それが――― ラピス港空襲。 米軍に被害甚大。 この報告がジュネーブを駆け抜けた途端、米国とEUは、まるで事前に申し合わせていたかのように、会議の席を蹴った後、それぞれの大使館に引き上げた。 以降、中華帝国との一切の交渉に応じようとはしない。 第四艦隊の空襲が与えたのは、米軍への打撃ではない。 自国外交への致命的な打撃だ。 「現時点において」 外交部代表の黄大臣は言った。 「欧米が我が国の要求を呑む可能性は限りなくゼロです」 「元からだろう」 江総書記は自嘲気味に歯を見せて喉で笑った。 笑い声が出てこない。 「元からゼロのことをやってのけようとした―――どこぞのバカが愚かなことさえしなければ!!」 どんっ! 江総書記は机に拳を振り下ろした。 江総書記にとって、状況は最悪だ。 元来、アフリカで発生した未曾有の混乱に乗じ、かねてよりの悲願東南アジア征服に乗り出した時は、十分な勝算があった。 スエズを失い、アフリカを越えることが出来ない欧州。 世界最大の米国債負担率を楯にすれば沈黙するしかない米国。 共に怖れるに足らない。 何より、目先のバケモノ共をどうにかするだけで手一杯のはずだ。 つまり―――怖れる物がなにもなくなったのだ。 そう判断した。 だからこそ、彼は判断した。 これは、代々の王朝がなしえなかったアジア全域を支配する一大帝国に発展させる絶好の機会だと。 東南アジアに我が軍の攻撃を止めることが出来る兵力は存在しない。 経済的に依存する国からの経済制裁は怖れるに足らない。 もし、そんなことをすれば干上がるのは奴らだ。 奪うだけ奪い、破壊するだけ破壊し、混乱が一段落した所で、占領を既成事実として欧米に認めさせるだけでよい。 連中の世論が何と叫ぼうと、実際に占領している既成事実こそが全てだ。 チベットでさえ我が国から奪えない欧米なぞ怖れるに足らない。 後はどうとでもなる。 東南アジア占領こそ全て。 それさえ出来れば、我々の勝ちだ。 彼はそう判断したからこそ、全軍の8割を動員した大博打に打って出たのだが―――。 「―――これが結果か?」 総書記の口から出たのは、そんな言葉だった。 「梁君……これが、君の言った結果か?」 「……」 「答えろっ!」 「……軍事的には勝っています」 梁総参謀長は冷たく言い放った。 「すでに東南アジアのの8割が、我が軍の占領下にあります。少なくとも、私の計画通りには進んでいます」 「計画通り……だと?」 「―――ええ」 梁総参謀長は、隣に座っていた海軍司令員に気の毒そうな視線を送った。 「第四艦隊は勇み足でしたな。現在、艦隊司令部を指揮しているのは政治部に属する一派でしたな」 「政治部が誘導したというのか!?」 「だまれっ!」 激高して席を立った軍政治部長を、江総書記が一喝した。 「今更、あんな艦隊の責任なんてどうでもいいっ!問題はこれからだ!」 「―――紫禁城の軒先にぶら下がりたくなければ」 梁総参謀長は言った。 「“この戦争は貴様等のものだ”―――陛下はそう仰せでしたな。“そうです。全責任は私めが―――戦果は陛下がお取りになればよいのです”」 それは、紫禁城で江総書記が切った大見得だ。 「少なくとも、その中に我々は入っていない。陛下も責任はすべて総書記にあるものと見ているでしょう」 「―――っ!」 まるでゆであがったように顔を真っ赤にする江総書記を無視するように、梁総参謀長はタバコに手を伸ばした。 「―――ふぅっ。閣下、ここまで来たのです。そのまま続ければよいのです」 「どうやってだ」 「ですから」 喋るも煩わしい。 そう言わんばかりの声を、梁総参謀長は紫煙と共に吐き出した。 「欧米とより有利な立場で和平を結ぶまで戦えばよいのです」 「―――出来るのか?」 「勝算はあります」 梁総参謀長は灰皿にタバコをねじこんだ。 「隋第二砲兵司令員」 「―――はっ」 梁総参謀長の声に、隅に座っていた小柄で陰湿な印象を受ける男が立ち上がった。 「例の件、江総書記にご報告しろ」 「はい」 隋がファイルを広げた。 「欧米の軍事力は、我が軍より数段優れているとされますが、これはあくまで電子装備の話に過ぎず、逆に言えば、これさえなければ欧米と我が軍は肩を並べることが出来る―――いえ、数で勝る以上、我々に有利です」 「……」 「そして、欧米軍が魔族なる物共に敗北したのは、まさにこの電子装備が使えなかったからに他なりません」 「……」 「幸い、我が軍の兵器がその影響下でも動くことは、アフリカ各国軍の戦闘記録からも明らかです」 「―――何が言いたい」 「つまり」 隋はファイルをめくりながら答えた。 「人為的に、そんな状況を作り上げればよい―――そういうことです」 「―――馬鹿な」 江総書記は、隋の言葉を一笑に付した。 「あれは未知の電波妨害兵器だと聞くぞ?そんなものをどうやって―――」 「手に入れることは出来ます」 梁総参謀長が隋に代わって答えた。 「……貴様?」 「入手ルートは確保している―――そう言ったのです。閣下」 ―――続けろ。 梁総参謀長は隋にそう命じた。 「はっ。それを爆撃機及び弾道ミサイルに搭載。戦域に大規模に散布します。これにより、例えいかなる最新鋭兵器でも、連中は使用することが出来なくなります」 「……そ、そんなことが……梁総参謀長……き、君は一体?」 「入手ルートは合法と言えるでしょう―――続いて今後の戦闘兵器についてですが――」 第四機動艦隊は結局、インダス川河口付近まで逃げ込んだ。 インダス川は河口現在、中華帝国軍の支配下にあり、空母を擁する第二艦隊もまた、ここに展開していた。 空母2隻と地上からの攻撃の危険性が加わったことで、美夜は追撃の中止命令を余儀なくされた。 翌日。 華僑の発行している新聞には、第四艦隊の戦果が華々しくかき立てられている反面、経済系新聞は、ジュネーブ会議の停滞が経済界に与える影響について悲観的な記述を羅列している。 「……馬鹿げている」 カッチ湾に浮かぶのは、中華帝国第二機動艦隊の獰猛達。 急激な経済発展を背景に、爆発とまで言われた程急激な経済発展を遂げた中華帝国海軍の空母保有数は、今や世界最大。米国12隻に対して24隻を誇る。 通常動力型の護衛空母まで含めればその3倍だ。 その中で最も巨大な空母。 “天津”級3番艦“長江”の艦橋に陣取るのは、艦隊司令黄提督だ。 背は低いが、筋肉質のがっしりとした体格の持ち主で、鋭い眼光と共にいるだけで威圧感を感じさせる強者だ。 いかなることがあっても弱音を吐いたことがない黄提督が、そんな言葉を吐いたことを、艦隊参謀長は内心意外に思った。 新聞をゴミ箱に放り込んだ黄提督の手の中には、本国から送られてきた通信が握りしめられている。 「提督?」 参謀長は思いきって訊ねた。 「本国は何と?」 「―――前進だ」 「前進?」 「ああ」 黄提督は従兵の持ってきたコーヒーを飲みながら言った。 「万難を排し、前進に前進を重ねよ。軍事委員会の許可なく停止することを禁ずる―――派閥で出世する御方は言うことが違う」 「中央委員会は、狂ったんですか?」 参謀長は自分の口から出た言葉を慌てて飲み込もうと口元を押さえた。 恐る恐る見回した艦橋に政治将校がいないことを、彼は神に感謝した。 「―――安心しろ」 黄提督は苦笑しつつ言った。 「私も同感だ―――それで?」 「恐縮です。外交団とオーストラリアとの交渉は話がついたそうです」 「“モスキート”……“スピットファイア”……か」 フゥッ。 黄提督は、眼下に広がる甲板に並ぶSu-30を見つめながらため息をついた。 「一応、我々と第四艦隊は本国帰還命令が出ている」 「帰還?」 「ああ……これからは、最新鋭戦闘機が使い物にならなくなるから、本国へ戻せ。代わりにプロペラ機を送る。そのための輸送が任務だ……全く、何の冗談だ」 「ミサイルが使えない以上、図体ばかりデカイジェット戦闘機に意味はありません。VT信管がある以上、対艦戦にも使えませんし」 「対地攻撃任務が主眼となることはわかる……だが」 「狩野粒子散布戦は、第二砲兵隊が実施中。東南アジアからオセアニア一体―――魔族軍の散布まで含めれば、南半球全域で、ICやLSIはもう二度と使い物にならないでしょう」 「よくこの国が認めたものだ」 「認めたと、思いますか?」 「……魔族軍の仕業にしたというんだろう?やめろと言ってくれ」 黄提督は苦笑いしながら言った。 「俺達の職場を狭くするな」 「木製機を生産することで」 参謀長は言った。 「国内の木工業者に、また、ジェット戦闘機の数十分の一という低価格で済む通常型戦闘機でさえ、国内の金属、金属加工……その他、数えていたらキリのない業者に仕事を与えることになります」 「……俺の実家は電気業者だ」 「お気の毒です」 「……生産は進んでいるのか?パイロットは」 「パイロットの養成は急ピッチで進んでいます。また、各工場で連日生産される戦闘機及び爆撃機の数はすでに1万機近くに達していると聞きます。我が国に重工業拠点を移動していた欧米では、束になっても我が国の生産能力には追いつきません」 「……飽和攻撃……か」 ―――パイロットは消耗品じゃないぞ。 黄提督は天井を仰いだ。 「……それで」 「わかっている」 それ以上を言い淀む参謀長に、黄提督は力無く頷いた。 「米軍が動く」 「……はい」 その放送が全世界に流れたのは、この日の正午のことだ。 黄提督も、その映像は見た。 テレビに映し出されたのは、スーツ姿の男女が並ぶ集会。 ―――違う。 米国議会だ。 そして今、壇上に立つの金髪の小太りの男こそ、J・ベネット―――米国大統領だ。 ベネットは壇上で静かに語り出した。 「本日、アメリカ合衆国は何の予告もなく、計画的に空と海から中華帝国の攻撃を受けた。 しかも、我がアメリカ合衆国が平和への熱意と希望を捨てずに、彼の政府を相手に誠意を持って交渉を続け、アジアに和平をもたらさんとする交渉の最中にである。 中華帝国軍の航空部隊が大挙して、友好国にして、快く港の使用を許してくれた親愛なる同盟国、イギリス基地にあった我が国の艦隊を爆撃した。 そして、我が艦隊および英国基地に対して重大な打撃を与えた現在にあってもなお、中華帝国政府からは、この事態に関して、満足のいく説明は何もない。 既存の外交交渉を続けることは無用であった。 我が国は、全世界規模の危機に際して中立を宣言することで、我が国に対する軍事行動はないものと信じていた。 だが、中華帝国に対する信頼は、中華帝国自身の手によって覆された。 中華帝国軍が南太平洋まで進出していたのは、まさに中華帝国とその支援国が、我が軍を狙い、以前よりこの海域に、軍事力を展開していた証拠にほかならない。 今、ジュネーブにおいて行われている和平交渉に一縷の希望をつないだ我が国の努力は水泡に帰した。 その期間中、中華帝国政府は、真相を隠し平和の継続への期待を表明して米国を欺き続け、友好国諸共、だまし討ちした。 ラピス基地への攻撃は、米国陸海軍に多大なる被害を与えた。 残念ながら非常に多くのアメリカ人の命が失われたのだ。 すでに中華帝国軍による残虐なる仕打ちにより、東南アジア各国でも、米国の同胞が殺されたと報告されている。 中華帝国軍は、インドを攻撃した。 中華帝国軍は、ベトナムを攻撃した。 中華帝国軍は、ビルマを攻撃した。 中華帝国軍は、インドネシアを攻撃した。 中華帝国軍は、シンガポールを攻撃した。 中華帝国軍は、平和を願う国々を攻撃した。 中華帝国は、インド洋から太平洋にかけての全域にわたる奇襲攻撃をおこなったのである。 過日より続く魔族軍の攻撃に乗じた卑劣なる攻撃は、中華帝国がみずからを語っている。 米国民はすでに世論を形成しており、国家の安全にとってそれが何を意味するか十分に理解している。 陸海軍の最高司令官として、私は軍に対しあらゆる防衛策を命じた。 そして、我が国の国民は決して我々がやられっぱなしの国民ではないことを忘れてはならない。 我々は、この計画的な侵略に打ち勝つのに、いかに長い期間がかかろうとも絶対的勝利を得るまで全力をもって戦い抜くであろう。 私はこの卑劣な行為によって再び我が国が危険にさらされないために、議会と国民の意思の判断が下されんことを確信する。 中華帝国の敵対行為は現実のものとなった。 私は、わが国民、わが領土、そして我々の権益が重大な危機にさらされている事実を見て見ぬふりをすることはできない。 私は国民と共に重大なる決意で立ち上がり、神の加護の元、勝利への道を歩むだろう。 私は今議会に要請する。 中華帝国は、卑怯にも一方的に攻撃を仕掛けてきた。 よって、本日只今より、アメリカが、中華帝国とその支援国と戦争状態にあることを議会は、ここに宣言していただきたい」 大統領の演説が終わり、議会は割れんばかりの拍手がわき上がった。 このベネットの宣言を最も重大なダメージを受けたのは、北京のこの人物だろう。 「総書記っ!」 椅子に崩れ落ちた江総書記を、側近の秘書官達が抱き起こす。 「……」 口をパクパクと開くのが精一杯の江総書記の口に、秘書官が水を流し込んだ。 「―――ふ……ふざけたことを!」 江総書記は怒鳴った。 「何だこの演説は!まるで―――まるで我が軍が攻撃することを知っていたような口振りではないかっ!」 「総書記っ!」 部屋に駆け込んできた政府高官が泣きそうな顔で総書記に告げた事。 それは、中華帝国の経済的な死を意味していた。 「……」 「ど、どうなさるんです?」 「ど……どうするって言われても」 江総書記は呆然とした顔で、何度も弱々しく首を横に振った。 「こんなの……どうしようもあるものか」 「お見事でした大統領」 議会での演説を終え、ホワイトハウスに戻る車内、ワーナー大統領特別補佐官が隣に座る大統領をねぎらった。 「ふん……大したことはない」 大統領は楽しげに車窓を眺めながら言った。 「想定通りだ」 「対中華帝国経済制裁法は議会の9割の賛成で成立しました」 ワーナーは声色一つ変えずに言った。 「やはり、先日の国連爆破テロ容疑で、中華系ロビイストのかなりを予備拘束していたのが聞いたのでしょう」 「中国人と、その支援者達の抱える米国債がいくらだったかな?」 「およそ6千―――いえ。8千億ドルは見込めます。滅亡したアフリカ各国分まで含めれば、我が国は発行済み国債の7割を帳消しに出来ました。そして、この関連法案の成立により、中華系企業の資産を没収できます。戦費はもう考える必要さえ有りません」 「素晴らしい」 大統領は楽しげに笑った。 「借金はカードにもなるというだけだよ―――見たまえ」 大統領が窓の外を指さした。 ワーナーが窓の外を見ると、そこには着飾った東洋人の姿があった。 体に合わないことが明白なスーツと時代遅れのヘアスタイル。そしてどこまでも慇懃な態度の集団が、街路のモニュメントにまたがって遊んでいた。 この街でああいう連中がどこの出身か、ワーナーも知っていた。 「何か?」 「どこの国の出身だと思う?」 「中国人でしょう」 「明日から、ああいう連中がこの街でどうなるかと思うとワクワクしてこないか?」 「はっ?」 「滅亡したアフリカに加え、今度は中華帝国とその支援国向けの発行済み国債を合法的に帳消し出来るんだ。これは我が国の経済建て直しにおいては、千載一遇のチャンスだ」 「……はっ」 ワーナーは言った。 「ところで大統領」 「中国人が泣きついてきたか?」 「あれは事故だ。ここですべてを帳消しにしなければ、全面戦争だと恫喝していますが」 「だから売りつけた国債を帳消しにして、関係を清算してやったんだろうが。これ以上のテロを阻止するんだ。各地での中国人とその協力者の監視を強めろ。議会と政府関係からの排除を最優先に」 「世論の誘導を含め、お任せ下さい。それと、海軍からですが、極東方面の主力部隊がハワイから発進します」 「……アフリカ、南米の事態」 大統領の顔が曇る。 「すべてフェイクだと一笑に付した結果がこれだ」 「……は?」 「何でもない。忘れてくれ」 「……南太平洋方面軍司令官からは、極東方面の戦力を回せとの要請が」 「却下だ」 大統領は言った。 「しかし」 ワーナーは今ひとつ、納得出来ないという顔になった。 南太平洋、つまり、パナマ以東を制圧する任務につく部隊とは別に、極東方面、つまり、日本にメサイアなどの戦力を集中するよう、急遽大統領命令を下したのは、目の前の大統領本人だ。 ワーナーにさえ何一つ説明もなしに突然布告された大統領命令に、ワーナー自身も困惑していた。 「これから戦闘が予想されるのは南太平洋です。極東に戦力を集中させると、下手にチンク共を刺激します」 「極東方面軍の相手は、中華帝国軍ではない」 大統領は苦笑混じりに言った。 「人類でさえない」 「―――まさか!?」 ワーナーはその言葉の意味を即座につかんだ。 「魔族軍が、極東へ!?」 「確証は、ある」 「……」 「南太平洋に戦力を回している余裕はない。必要とあったら」 大統領は、親指で自分の首を切るマネをした。 「……はっ」 ワーナーは頷いた。 「戦略ミサイルが使えるうちでしたら」 「南太平洋の司令官に言ってくれ―――報復は、派手にやれと」
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パイロットスキルクイックアイスキャノン リアアーマー 炸裂弾 マガジンポーチ エンフォーサーエキスパート 爆発バズキル 攻撃的アーマー ヒーリングショット イニシエーター ブリーディングマルチャー ヒーリング爆破 ヒーリングトライショット ウイングマン コールドフィニッシュ ドーンハンマー シルバーバックサルヴォ シルバーバックスコーチャー 共通スキルスコアブースト エピックスコアブースト パイロット 役割:タンク パイロットは強力なパワードスーツのシルバーバックを装備して過酷な状況を生き延び、敵に大ダメージを与える。 アルティメット能力:シルバーバックを召喚する 戦場にシルバーバックを召喚して操縦する 持続時間:35秒 リチャージ:400秒 シルバーバックについて 操作 Lトリガー:左手に装備した武器を撃つ Rトリガー:右手に装備した武器を撃つ Rボタン:リロード/武器冷却 Yボタン:防衛モード(もう一度押すと解除) Xボタン:乗り降り Bボタン:ストンプ(近接攻撃) Aボタン長押し:ダッシュ 武器 初期状態では武器は装備されておらずストンプしか出来ない。 以下のスキルカードをセットする事で武器が装備される。 クイックアイスキャノン 爆発バズキル ブリーディングマルチャー ヒーリングトライショット シルバーバックサルヴォ シルバーバックスコーチャー セットされたスキルカードの左から数えて1番目の武器が左手に装備され、2番目の武器が右手に装備される。 例1) スロット1:アイスキャノン(1番目) スロット2:バズキル(2番目) スロット3: スロット4: スロット5: 左:アイスキャノン(1番目) 右:バズキル(2番目) 例2) スロット1: スロット2:バズキル(1番目) スロット3: スロット4:マルチャー(2番目) スロット5: 左:バズキル(1番目) 右:マルチャー(2番目) 3枚以上セットされた場合は、アルティメットスキル発動の度にセットされたスキルカードの左から順に左右交互に武器が装備される。 例3) スロット1:アイスキャノン(1番目) スロット2:バズキル(2番目) スロット3:マルチャー(3番目) スロット4:トライショット(4番目) スロット5:サルヴォ(5番目) 1回目発動 左:アイスキャノン(1番目) 右:バズキル(2番目) 2回目発動 左:マルチャー(3番目) 右:トライショット(4番目) 3回目発動 左:サルヴォ(5番目) 右:アイスキャノン(1番目) アルティメット解説 発動時にULTのアイコンがタイマーに変化しシルバーバックに搭乗する シルバーバックが設置できるスペースがない場合はULTが不発となる(ULTゲージは消費しない) シルバーバックは防衛設備と同じ判定となっているため設備設置不可の場所(段差等)でもULT発動不可 シルバーバックは耐久値が存在し0になるとULTの残り時間に関係なくULT終了となる シルバーバックのHPは自動回復しないがスキル効果やバーナー等で回復が可能 シルバーバックの弾薬は弾数制限があるがサルヴォのみタクティシャンULTの爆発物補充の効果が適応される 凍結耐性がほとんどなく凍結弾を受けるとほぼ1撃で凍結され移動と攻撃が不可能となるので要注意 パッシブ能力 ダメージを受けるとアルティメットが徐々にリチャージされる パッシブ解説 アルティメットのリチャージを早める効果があると思われるが体感ではほとんど機能していない パッシブ効果はないものと考えていいだろう パーク ライフ アルティメットクールダウン ダメージ 携行弾数 初期武器 Horde:エンフォーサー、ドロップショット、タロン Escape:タロン レベル20の報酬 ヒロイックヴェノムドロップショット スキル クイックアイスキャノン 凍結速度が上昇するアイスキャノンをシルバーバックに装備 Lv1 +10% Lv2 +20% Lv3 +30% Lv4 +40% Lv5 +45% Lv6 +50% スキル解説 ULT発動時のシルバーバックに装備されるスキル 凍結効果は魅力的だが機動力の低いシルバーバックで敵に接近する機会が少ないため 装備の整っていない低レベル時は装備して他のシルバーバック装備が出た際は他のスキルに乗り換えを リアアーマー 背後からのダメージ耐性 Lv1 +30% Lv2 +40% Lv3 +50% Lv4 +54% Lv5 +58% Lv6 +60% スキル解説 シルバーバック搭乗時に背面から受ける攻撃はプレイヤーに直接ダメージが入るため その際のダメージを抑えてくれるスキル HORDEでは背後から攻撃される機会が少ないためカードが集まってきたら他のスキルに乗り換えを 炸裂弾 防衛モード時にシルバーバックで敵を倒すとスプラッシュダメージ Lv1 +50% Lv2 +60% Lv3 +70% Lv4 +75% Lv5 +80% Lv6 +85% スキル解説 シルバーバックの位置を固定する防衛モードに適用されるスキル 爆発ダメージにより雑魚敵の掃討力が大きく上昇するが移動ができなくなるのが難点 狭い通路などを塞ぐように使用すれば大きな効果を発揮する スキル「ヒーリングショット」と組み合わせればシルバーバックのHPも回復できるため より生存力を高めることが可能 マガジンポーチ 全種類のピストルの最大携行弾数が増加する※下記に正確な効果を記載 ※タロンピストルの最大携行弾数が増加する Lv1 +40% Lv2 +55% Lv3 +70% Lv4 +85% Lv5 +100% Lv6 +115% スキル解説 携行弾数増加によりESCAPEでは初期弾数が144発から309発まで増加するスキル ピストルを活用する機会が少ないため採用順位は低め エンフォーサーエキスパート エンフォーサーにより追加ダメージとアクティブエフェクト Lv1 +20% +10% Lv2 +30% +15% Lv3 +40% +20% Lv4 +50% +25% Lv5 +60% +30% Lv6 +70% +35% スキル解説 エンフォーサーのダメージが大きく上昇するが反動が高く遠距離では効果を発揮しづらいスキル 後半のスキル「ドーンハンマー」が解除されればドロップショットがメイン武器となるため 使用機会が少なくなる 後半は他のスキルに乗り換えを 爆発バズキル キル時にスプラッシュダメージを与えるバズキルをシルバーバックに装備 Lv1 +50% Lv2 +60% Lv3 +70% Lv4 +75% Lv5 +80% Lv6 +85% スキル解説 ULT発動時のシルバーバックに装備されるスキル 高威力のバズキルが使えるのは魅力的だが装弾数が40発と少なく弾速が遅いため 大型の敵以外に当てるのが難しいのが難点 他に強力な装備が存在するため後半は他のスキルに乗り換えを 攻撃的アーマー ダメージを与えるとスティムを付与 Lv1 +1HP Lv2 +2HP Lv3 +3HP Lv4 +4HP Lv5 +5HP Lv6 +6HP スキル解説 銃撃・近接問わずダメージを与えた際にスティムを獲得する強力なスキル ダメージを与える対象は自分にも適用されるためグレネードなどによる不意な自爆も防ぐことが可能 シルバーバック搭乗時の攻撃でも獲得できるためULT終了後の無防備な時間に倒される危険性も減らすことができる ヒーリングショット 爆発攻撃でダメージを与えると、ダメージの○%分シルバーバックが回復 Lv1 +20% Lv2 +50% Lv3 +70% Lv4 +90% Lv5 +100% Lv6 +110% スキル解説 スキル「炸裂弾」「爆発バズキル」「シルバーバックサルヴォ」と組み合わせると効果を発揮するスキル シルバーバックのHP回復が可能になりULT終了前に破壊される危険性を防ぐことが可能になる 高難易度ではシルバーバックがあっという間に破壊されることもあるため過信は禁物 イニシエーター フルライフ状態の敵にダメージを与えると敵を挑発 Lv1 2秒 Lv2 2.5秒 Lv3 2.75秒 Lv4 3秒 Lv5 3.5秒 Lv6 4秒 スキル解説 HP全快状態の敵限定となっており挑発時間も短いのが難点 HORDEでは他のプレイヤーも攻撃するため活用できる機会が少ないため採用順位は低め ブリーディングマルチャー ダメージを与えた敵に出血効果を与えるマルチャーをシルバーバックに装備 Lv1 +20% Lv2 +30% Lv3 +40% Lv4 +45% Lv5 +50% Lv6 +55% スキル解説 ULT発動時のシルバーバックに装備されるスキル 装弾数が多く出血ダメージも稼げる強力なスキル マルチャーはオーバーヒート直前まで連射スピードが落ちないためボス等にも 短時間で大きなダメージを与えることが可能 射程も長く精度も比較的高いため積極的に採用したいスキル ヒーリング爆破 爆発攻撃でダメージを与えると、ダメージの○%分が回復 Lv1 +20% Lv2 +50% Lv3 +70% Lv4 +90% Lv5 +100% Lv6 +110% スキル解説 スキル「ヒーリングショット」と違いこちらはプレイヤーのHPを回復するスキル HORDEの初期装備のドーンハンマーを使用すればHP回復が容易になり生存力を向上させる事が可能 ヒーリングトライショット 与ダメージの○%分シルバーバックを回復するトリプルショットをシルバーバックに装備 Lv1 +50% Lv2 +60% Lv3 +70% Lv4 +75% Lv5 +80% Lv6 +85% スキル解説 ULT発動時のシルバーバックに装備されるスキル 精度が高く遠距離からHP回復が可能なのが魅力的だがダメージが低めなのが難点 マルチャーと違い連射を続けると連射力が落ちていくため適度に冷却を挟む必要がある シルバーバックの運用に慣れてきたら他のスキルへ変更を ウイングマン 2人以下の味方が残っている場合、アルティメットをリチャージする。 Lv1 +150% Lv2 +160% Lv3 +170% Lv4 +195% Lv5 +200% Lv6 +205% スキル解説 HORDEでは活躍する場面が少ないがESCAPEでのソロプレイやフレンドとの2人プレイの際には効果を発揮する 2分ほどでULTが使用可能になるため難所を突破する際にシルバーバックを使用しやすくなる コールドフィニッシュ HPが25%未満の敵にダメージを与えると凍結ダメージ Lv1 +20% Lv2 +30% Lv3 +40% Lv4 +50% Lv5 +60% Lv6 +70% スキル解説 低HPの敵を即凍結状態にする強力なスキル 全ての敵に適用されボスなどのHPの多い敵は特に大きな効果を発揮する 高難易度では敵のHPも高いため25%以下まで減らした敵に攻撃を与えればほぼ確実に撃破できる 積極的に採用したいスキル ドーンハンマー ドロップショットで追加ダメージを与え、敵をスタン Lv1 +30% 1.5秒 Lv2 +40% 2秒 Lv3 +50% 2.5秒 Lv4 +60% 3秒 Lv5 +70% 3.5秒 Lv6 +80% 4秒 スキル解説 HORDEの初期装備のドロップショットを強化するスキル 大幅なダメージUPに加えてスタン効果が付与され敵の戦闘力を大きく減少させることが可能になる メカニック等に武器ロッカーを用意してもらえばドロップショットのみでHORDEを戦い抜くことも可能に HORDEのパーク「携行弾数」を最大まで上げれば所持段数が8発まで増えさらに強力になる 積極的に採用したいスキル シルバーバックサルヴォ シルバーバックサルヴォでダメージを与えると、シルバーバックの持続時間が延長 Lv1 +0.3秒 Lv2 +0.6秒 Lv3 +0.9秒 Lv4 +1.05秒 Lv5 +1.2秒 Lv6 +1.35秒 スキル解説 ULT発動時のシルバーバックに装備されるスキル 1発のULT延長時間は短めだが20発全弾を命中させれば最高レベルで27秒の延長が可能になる強力なスキル クラス「タクティシャン」のULTの爆薬補給の効果が適応されるためタクティシャンのULTと組み合わせれば より長くULTの延長が可能になる 延長時間はダメージを与えた敵の数に依存するため1発で複数の敵を巻き込めればより長く延長が可能 シルバーバックスコーチャー 追加ダメージを与えるスコーチャーをシルバーバックに装備 Lv1 +20% Lv2 +40% Lv3 +60% Lv4 +80% Lv5 +100% Lv6 +120% スキル解説 ULT発動時のシルバーバックに装備されるスキル 特別威力が高いわけではなく機動力の低いシルバーバックで敵に接近する機会が少ないため 採用順位は低め 共通スキル スコアブースト Hordeでチームスコアが、Escapeでタイムボーナスが増える Lv1 +5% Lv2 +7% Lv3 +9% Lv4 +12% Lv5 +15% Lv6 +18% エピックスコアブースト Hordeでチームスコアが、Escapeでタイムボーナスが増える Lv1 +10% Lv2 +15% Lv3 +20% Lv4 +25% Lv5 +30% Lv6 +35%
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●“鈴谷(すずや)” 艦長室 「斬艦刀は使えるみたいね」 夕食後、斬艦刀に関する報告書を読み終えた美夜は、前に座る二宮へ、ウィスキーの入ったグラスを差し出そうとしてやめた。 「これからしばらくは―――飲酒出来ないわね」 「禁酒の中東圏ですからね」 「関係ないと思うけど……紅茶でいい?」 「コーヒー」 「紅茶になさい。胃に来るわよ?教え子の2騎撃破の申請、認められたんだっけ?」 「そう!」 二宮はそれまでの渋い顔はどこへか、満面の笑みを浮かべた。 「魔族軍メサイア初撃破は長野大尉だけど、複数連続撃破はあの子が初めてなの!戦闘記録を見たけど、踏み込みから武器の使い方、最初から最後まで文句の付けようがなかったっ!」 「……親ばか」 心底嬉しそうな二宮の顔を見て、美夜は笑いをかみ殺すのが精一杯だ。 「そう言えば―――もう一人の秘蔵っ子だけど」 風間祷子のことだと、二宮はすぐに見当をつけた。 「何かわかった?」 「旦那(あのくそやろう)経由の情報だから確かだと思う」 紅茶に口をつけた美夜はソファーの背にもたれかかった。 「あっちもアフリカに送られていた。配属先は開発局直属の特務隊」 「特務隊?」 「ええ。“笠置”。知ってる?開発局が保有する実験艦」 「……速度60ノットの高速艦だったわね。確か、人類最速とか」 「そう。“笠置”を母艦にしてモザンビーク付近に展開しているけど、そこで新型の性能調査中とか」 「……」 「問題は、新兵をそんな所に送り込んできたことだけじゃないの」 「えっ?」 「その部隊……」 美夜はソーサーに乗せたティーカップを二宮の目の前に置いた。 「天皇護衛隊(オールドガーズ)なのよ」 「なっ!?」 天皇護衛隊(オールドガーズ)は、天皇を護衛することのみを任務とする最精鋭部隊だ。 二宮は、危うくティーカップを落とすところだった。 「な、なんで!?」 「ダンナもさすがにそこまでわからないらしいけどさ……元所属でしょ?心当たり、ないの?」 「……実は」 二宮は、長野での演習のことを美夜に話した。 「その新型騎……天皇護衛隊(オールドガーズ)主導で建造されたんじゃないの?」 「……いや、それはない」 二宮が首を横に振ったのは根拠がある。 あの演習の時、監視に来ていたのは麗菜内親王の護衛隊、内親王護衛隊(レイナ・ガーズ)だった。 あの騎の主導権を天皇護衛隊(オールドガーズ)が握ってるなら、内親王護衛隊(レイナ・ガーズ)が介入する余地はないはずだ。 「さすがに笠置は足が速いわ」 二宮の困惑に気づかないのか、美夜は言った。 「アフリカにもう到達していて、部隊出撃回数は10回以上―――教え子のスコア、気になる?」 「スコア?」 二宮は目を丸くした。 「あのボンクラちゃんがスコアを獲得したの!?」 「あんたね……仮にも教官がそんな愛称で」 「風間候補生、怪我してない?おうち帰るって泣いてない?」 「どういう心配してるのよ」 「ガーズのオヤジどもにセクハラされてないかしら―――あーっ!もうお嫁に行けない体にでもされていたら!」 「……まぁ、素行不良中年全開オヤジ共の集まりだからねぇ」 「でしょう!?」 二宮は膝を叩いた。 「あんないろんな意味で危険な連中の所に、私の娘を送り込むなんて耐えられないわ!」 「スコア48騎」 激高する二宮に、美夜は言った。 「……は?」 二宮は意味が分からない。 「昨日6時時点でのその子のスコアよ」 「……48?シミュレーターの結果?」 「実戦よ」 美夜は眉をひそめた。 「初陣で18騎を血祭り。あまりの活躍に、ガーズの連中、今じゃ“姫さん”って傅(かしづ)いているそうよ」 「……あの子が?」 「そう」 美夜は頷いた。 「あなたのアヒルの子は、白鳥どころか、不死鳥にでもなったみたいね」 ビーッ! 美夜のデスクでインターフォンが鳴った。 「私だ」 美夜が受話器を取る。 相手は副長の高木だ。随分困惑した声をしている。 「司令部から緊急?」 その内容を聞く美夜の手からティーカップが落ちた。 「……わかった」 強ばった声で、美夜は頷いた。 「本艦には当面、直接の影響はないだろう。司令部は作戦継続を指示しているんだろう?……クルー達には明日、私から説明しよう。それまでは箝口令を敷け。明日、0700にハンガーへクルーを集合させろ……うん……頼む」 ハァッ。 美夜の口から盛大なため息が出た。 「どうしたの?」 部屋の掃除道具入れから雑巾をとってきた二宮が、床を拭きながら訊ねた。 「あなたらしくもない」 「……してやわれた」 「何を?」 カップが割れていないことを確認し、床にひろがった紅茶の海を丹念にふき取る二宮は、床だけに意識を集中している。 「国連軍司令部が爆弾テロでやられた」 「……えっ!?」 「6時間前だ。それと3時間前」 「……」 「中華帝国軍が近隣国境線を突破した」 ●ベトナム 第8防空ミサイル基地 ベトナムの空を守る基地が炎上していた。 対空ミサイルが爆風にへしゃげ、ロケット燃料がタンクごと燃えていた。 生き残った兵士達が必死に消火しようとするが、一度火のついたロケット燃料はそう簡単に消えてはくれない。 「だ……だめです!」 生き残った通信装置に、兵士が苦しげに報告する。 「ミサイルが―――ぐっ!?」 ズンッ! 破損し、炎上を始めていたミサイルがついに爆発。 兵士は跡形もなく吹き飛ばされた。 「くそっ!」 その光景を司令部のビル―――今となってはビルの残骸だが―――から見ていたのは、基地司令のグエン大佐だった。 自分の基地が、部下と共に焼かれていく。 表現のしようのない怒りが体を駆け回っていく。 「レーダーから報告!海からの攻撃です」 副官の報告に、グエンは怒鳴った。 「そんなことはどうでもいい!」 ズズンッ! また別なミサイルが爆発した。 「どこの攻撃だ!」 「国境防衛隊は中華帝国軍と交戦を開始!」 「……くそっ!」 怒りのあまり、ガラスがすべて割れたサッシに、グエンは手近なものを投げつけた。 あらい息のまま、グエンは一人呟くように言った。 「ベトナムが灰になるぞ……チンクめ!!」 ●中印国境線 「早期警戒機より警報!“赤兎(せきと)”多数、チョモランマを突破した!」 「多数って、何騎だ!?」 「100以上!」 「100!?」 「……情報入った!修正っ!200!200を越えている!」 「こっちは30騎だぞ!?何をどうしろというんだ!」 ●北京 紫禁城 「奇襲は各地で成功しています」 「―――そうか」 鷹揚な態度で頷くのは、中華帝国の摂政だ。 「モンゴルはウランバートルを制圧。政府首脳部を捕縛に成功。無条件降伏文書及び帝国への国家編入宣言を出させます」 「アフリカと東南アジア方面はどうか」 「アフリカは、旧アンゴラ及びナミビアへメサイア大隊を派遣済み。ヨーロッパの白豚共の駆逐にかかります。 また、中東はペルシャ湾に展開した精鋭特殊部隊が米帝海軍基地を強襲しております」 「……今のところ、戦果はどの程度だ?」 「艦艇3隻大破、弾薬庫及び燃料庫の破壊に成功。基地機能は喪失しております」 「よろしい。東南アジアはどうか」 「ラオスとタイは反応弾により沈黙。ベトナムは機甲部隊がサイゴンまで侵攻。特殊部隊がフエの王族の捕縛に成功」 「……インドもか?」 「前線のメサイアはほぼ全滅。“赤兎(せきと)”による掃討作戦が開始されつつあります」 「アメリカや日本、ロシアは?」 「すでにロビイストが押さえてあります。日本は、アメリカが動かなければなにも出来ません」 「よろしい」 摂政は満足そうに頷いた。 「これだけの戦果ならば、陛下にもきっとご満足いただけるだろう。総書記に言っておけ―――しくじりは死を意味するとな」 「はっ」 ●帝国海軍小松航空隊基地 「可動全機は、スクランブル体勢のまま待機だっ!」 「総員非常呼集っ!寝ているヤツはたたき起こせぇっ!」 「警務隊はすべての小銃に弾込めろっ!基地への出入りは原則禁止だっ!」 整備兵とパイロット達があわただしく動き回り、ブンカーからSu-35IJが引き出される中、別な編隊が離陸しようとしていた。 「司令」 「―――うむ」 管制塔に入った柏少将は、その光景を厳しい表情で見つめていた。 在職30年近く。少なくとも娘が生まれてからの19年間、訓練以外でこの光景を見たことがなかった。 副官である黒田中佐が報告する。 「303が対ミサイル迎撃戦闘装備で出動待機中。306はすでに上がっています。防空隊、臨戦態勢」 「もう一度」 柏司令はため息混じりに言った。 「もう一度、状況を説明してくれないか?どうにもこう矢継ぎ早に事態が変わると、私の老いた頭では理解が追いつかない」 「はっ」 黒田は咳払いの後、上官に報告した。 「本日未明、中華帝国が近隣諸国へ向け侵攻を開始。侵攻の理由は、自国民及び自国に属する民族の保護。すでにアフガニスタン他、ほとんどの国は首都陥落」 「早いな」 「メサイアとヘリ主体の空中機動部隊、それと、民間船舶を偽装した海軍揚陸部隊による完全な奇襲です。何より、満足な装備のない近隣諸国では、あの人海戦術は止められません」 「帝国政府の対応は?」 「政治屋連中(ながたちょう)に満足なことが出来ると思いますか?」 黒田は肩をすくめた。 「口先では政治家主導なんてご大層なこといいますが、せいぜいが霞ヶ関(クソども)にお伺いを立てるのがやっとでしょう?」 「……」 柏司令は肩をすくめた。 「幸い、都築国防相の権限でデフコン2が発令されて現状があります。君塚外相はロシア帝国大使を呼び、ロシアの対応を確認」 「どうなった?」 「ロシア帝国は、中華帝国の膨張を望まない―――その言質を得ています」 「中露のタッグ相手だけは回避出来たか」 「不幸中の幸いです。モンスーン級メサイアのコピー問題で国境戦争の一歩手前だったのも幸いしています」 「ロシアからの中華帝国への攻撃は?」 「ありません」 「……」 最初から期待していなかったらしい。 柏は当然、と言う顔で頷くだけだ。 「アメリカも、抗議するのが関の山だろう?」 「ヨーロッパ各国も、です」 黒田は不快そうに頷いた。 「国債をはじめ、世界経済の決定権は今やあの国にあります。債権者にケンカを売る債務者はいないでしょう」 「ましてやこの国では……」 深いため息と共に、柏は訊ねた。 「首相は?」 「後援会や支持団体と未だにゴルフ中とか」 「いいご身分だ」 「確かに―――おう」 黒田が部下から紙片を受け取った。 「大韓帝国は中華帝国支持を表明。それと、台北を出港した中華帝国海軍機動部隊が南シナ海に展開。現在、バシー海峡は完全に海峡封鎖されています」 「我が国への侵攻はないと思いたいが……」 「残念ですが」 黒田は首を横に振った。 「大韓帝国からのミサイル攻撃で、対馬レーダーサイトに大打撃が生じています。現状、陸軍が対馬へ増援部隊を送り込んでいます」 「那覇レーダーサイトが攻撃を受けました。1時間前です。30分後、那覇航空隊所属の対潜哨戒部隊が潜水艦1を撃沈。音紋から大韓帝国帝国の攻撃型と断定されています」 「……他レーダーサイトからの通報は?」 「いまの所、帝国領内に侵攻する航空機及びミサイルは確認されていません」 「確認されたらもうアウトだよ」 柏司令は、その厳つい肩を揺らせて笑った。 「撃ち落とすのが、我らの義務だがね」 司令達の見上げた空。 それは、いつもと同じ、抜けるような蒼穹の空。 いつも見上げてきた空だ。 「この空を、血で汚すのは避けたいものだな……」 柏司令は、ポツリとそう呟いた。 その日以降、世界は激変した。 後にそう呼ばれる日。 中華帝国軍による近隣諸国への武力侵攻。 そして、無関係に近いアメリカや周辺国を含めた無差別に近い電子戦。 これらが開始された日だ。 武力侵攻を受けた国が被害をより大きくし、それ以外の国の対応が遅れた最大の理由。 それが、電子戦闘専門の兵力数万を擁する中華帝国軍電子戦闘師団による電子戦闘攻撃。 彼らによって、念入りに準備された電子戦闘用ウィルスやハッキング、その他、あらゆる手段が用いられた攻撃が世界中を襲った。 先進国で特に被害を被ったのは、日本だ。 こうした攻撃に対して無防備に近い日本は、中華帝国軍が後に“拍子抜けした”と語ったほど、あっけなく国家としての機能を停止した。 公共機関や施設のサーバーやコンピューターをあらかた破壊され、町中では信号機すら動かない有様。 変電所に仕掛けられた爆発物の影響もあって、家庭への電力供給ですらストップ。 全国の7割近い世帯が24時間以上電力供給を受けることが出来ない事態に陥った。 36時間後に、政府があわてて海外とのインターネット回線を物理的に切断した後も、それを待っていたように、中華帝国軍は日本国内からの攻撃に切り替えた。 留学生を装って配置していた電子戦部隊が、ようやく復旧しかけた企業や政府へ攻撃をしかけ、予め用意してあったサーバーからのウィルス散布に切り替え、執拗に攻撃を継続する。 欧米でも類似の事態が発生したのは言うまでもないが、日本政府と企業が、非常手段として、すべての業務においてパソコンとサーバーの使用を禁止したのは、事態発生から実に150時間後のことであり、当然ながら世界で最も遅い結果となった。 その間隙を突き、中華帝国軍のメサイア“赤兎(せきと)”と“帝刃(ていば)”が、次々と国境を突破、隣国に侵攻する軍の先陣を切り、あらゆる敵を薙ぎ払う。 街を住民ごと焼き払い、抵抗する兵士を踏み殺す。 片鱗も躊躇もない攻撃の後、戦車や装甲車、そして兵士達が続く。 中華帝国という赤い竜は、虐殺と略奪、そして暴行の嵐を世界中に吹きちらかした。 侵攻の中心は歩兵部隊。 彼等は、メサイア以上の破壊をもたらした。 すべてを略奪し、女を犯し、殺す。のは、むしろ彼等の仕事だ。 中華帝国軍の侵攻を受けた街から命がけで逃げ出し、その中華帝国軍の暴虐の一部始終を撮影したテープを世界に配信したのは、米国のジャーナリストだ。 抵抗する女を犯しながら酒を飲み、銃を乱射する兵士達。 赤ん坊を銃剣で串刺しにして放り投げる兵士。 燃えさかる街。 あちこちに転がる死体。 銃声と女の悲鳴がこだまする廃墟と化した街。 その光景は、あまりに残酷過ぎるとして、ほとんどモザイク処理してようやくテレビに流せた程であった。 そして、それ故に、そのインパクトは各国に計り知れない衝撃をもたらした。 ―――中華帝国討つべし! 世論はそう動いたが、経済界を中心に、政府や社会上層部はまるで知らん顔を決め込んだ。 この振る舞いを非常識だと避難する前に考えてみて欲しい。 今、この地球上に住む以上、避けて通りづらいことがある。 中華帝国製の服を着て 中華帝国製の靴を履いて 中華帝国製の食い物を食べ 中華帝国製の玩具を子供に与え 中華帝国製の部品で動く車に乗り 中華帝国製の道具で仕事をして 中華帝国製の布団で眠る。 そして、いや、不可能に近いことは一つだ。 近隣にゴキブリと中国人がいない地域に住むこと。 これだ。 ここで言う人とは誰のことか? この世界に住んで、中華帝国を非難する人々のことだ。 世界は中華帝国に依存しきっている。 かの国にケンカを売れば、国内の中華人達が暴動を起こし、国内の物流は止まる。 食料も、衣類も、何もかもが止まる。 そうなれば国境を封鎖されたのと同じだ。 世論の主張通り、対中戦争になれば、一瞬で経済は崩壊する。 財界はそれが骨身にしみている。 それが目先のことしか考えられない、自らの無自覚の結果だと反省もなく、火消しのために政府やマスコミに無視や静観を強制した。 特に酷い反応を示したのが、米国だ。 世論がどう言おうが、経済的に依存する中華帝国が対米債権を一度に放出するような事態を受ければ、米国経済は破綻する。 そのカードをちらつかせる中華帝国ロビイスト達に、米国政府は屈した。 自由と民主主義を標榜する米国がこの事態を前にしたこと。 それは、遺憾と懸念の意を示すだけ。 東南アジアで女子供が強姦され、奴隷として扱われても、米国はその程度しか動かない。 米国の関心はむしろ、中華帝国の持つ対米債権の行方そのものだ。 対米債権をもって米国は沈黙すると最初からわかっていた中華帝国は、侵攻作戦開始から数日ででアラビア海、インド洋、アラフラ海、黄海、 太平洋、東シナ海、南シナ海の7つの海を制圧してのけた。 「規模の大小はあれど、これほど短期間に7つの海を支配した国は他にはいない」と、かつて7つの海を支配したイギリスの新聞記者が嫉妬と軽蔑を込めて書き上げた通りだ。 “鈴谷(すずや)”がアラビア海ではなく、アラビア半島横断を命じられたのは、この中華帝国軍との交戦を避けるためだった。 中華帝国侵攻の報に触れた途端、そう理解しなかった者は、“鈴谷(すずや)”にはいなかった。 すでにアラビア海は中華帝国軍の空母部隊が我が物顔で遊弋(ゆうよく)している。 空母に核兵器を持つ中華帝国軍に対抗出来る海軍力を持つ国は、アラブには存在しない。 まるでその姿を隠すようにアラビア海をゆっくりと航行する“鈴谷(すずや)”のハンガーデッキに集められた美奈代達“鈴谷(すずや)”乗組員を前に、平野艦長が訓辞を始めた。 「近衛軍は、この状況に至って、ようやく、本作戦の中止を決定した」 ―――やっぱり。 皆がそんな表情をする。 「事態が切迫しており、とてもこちらまで手が回らなかったというのが、司令部の言い分だ」 平野の額に青筋が走っているのを、美奈代は確かに見た。 「嫁が艦長を務める艦に対し、私は悪くないという弁明と、すべては中華帝国のせいだと思えという理不尽な言い分だけを……安否や労いの言葉さえなく、わざわざ暗号電文で送ってきた薄情者の亭主とは帰国次第、離婚することとして―――だ」 離婚。 美夜の斜め後ろに立つ二宮の顔が、その言葉を聞いた途端に少しだけ緩んだのを、美奈代達は見逃さなかった。 それに気づかない美夜は、ハンガーに集められた乗組員を前に、平野は背後に容易した巨大な世界地図を指示棒で叩いた。 赤く染まっている所は報道を聞く限りでは中華帝国の支配地域だと、美奈代達にもすぐ見当がついた。 「現状、米国は中立を宣言しているが―――」 指示棒がインドネシアに触れた。 インドネシア周辺は真っ赤に染まっている。 「インドネシアは開戦当日に首都ジャカルタに反応弾攻撃を受け、無条件降伏。近隣諸国も人海戦術の結果、中華帝国に占領されるか、反応弾を怖れて中華帝国の支配下に入った。―――そして」 バンッ!! 平野の持つ指示棒が叩き付けられたのが、オーストラリアだ。 「白人の誇りさえ忘れたこのクソ共が、ついさっき、よりにもよって中華帝国支持を表明した!ニュージーランドとかいうオマケも一緒にな!」 「……」 それがどういう意味をもつかは、美奈代にもわかった。 太平洋とインド洋を遮る壁のように存在するインドネシア。そしてその壁の終わりを担うオーストラリア大陸。 それがすべて中華帝国の支配地域になったのだ。 ここを敵国である日本に属する美奈代達が生きて通れるとは思えない。 美夜は続ける。 「マラッカ海峡とその迂回路を完全に中華帝国に抑えられた格好だ。このままでは中東からの石油輸入が途絶え、我が国は経済的に枯死することになる」 「……」 「しかも、中華帝国は中東の石油を狙い、すでにペルシャ湾に揚陸艦隊を派遣している」 (うちの国も) 美奈代は思った。 (それくらい、段取りよく動けたらいいのにな) 「すでに20万の軍隊がサウジアラビアに上陸。連中がまず抑えたのは、海水淡水化プラントだ。サウジアラビアは水資源に乏しく、必要な水の多くを海水淡水化プラントで生み出している。プラントを抑えられるとはすなわち、水を抑えられたこと、ひいては国家国民の生殺与奪権を握られたことにもなる」 「……」 「現在、サウジアラビア軍がプラント防衛及び奪還のため死力を尽くしている所だ」 「これに対し、海軍力で本来勝るであろう米軍は、先の魔族軍水中部隊との交戦及び、中華帝国軍からのテロに近い奇襲攻撃を受けて壊滅的打撃を被っている。米軍の影響力が及ぶのはバーレーンの周辺だけだ。 おかげで“鈴谷(すずや)”は、この砂漠のど真ん中で、行くことも出来ず、退くことも出来ない。 何しろ、アラビア海に出たら中華帝国海軍が相手になる。アフリカに戻れば魔族、ペルシャ湾横断を目指せば、我々の相手は中華帝国かアラブ近隣諸国か、はたまたラムリアース帝国……いずれにせよ、選択肢にならない」 「……」 美奈代達は、茫然自失になって美夜の話を聞いていた。 アフリカからやっと逃れてきたというのに、今度は人類相手に出口のない状態に陥るなんて、何の冗談だというのだ? 「我々は当初の予定通り、バーレーンに向かう」 美夜は言った。 「地元ベドウィンでさえ通わぬこの砂漠が、我々の隠れ蓑だ。 想定される航路は約2100キロ。 “鈴谷(すずや)”はこれ以降、低速でゆっくりと、時間をかけて向かう。 これ以降、我々にとっては、接近するすべてが敵だ。 各員は、対空監視を怠るな。瞬きする間も惜しみ、空と砂漠に注意を払え。 バーレーンに到着次第、我々は補給物資を受領し、次の作戦に移る。 それまでに、状況が何らかの好転を見せることを祈るしかないが、好転云々の前に、生きてバーレーンにたどり着けねば話にならない。 各員は、鉄の意志をもって任務にあたり、万事において最善を尽くせ―――生きて祖国に生還するために!私が晴れて離婚届にハンコを押せるためにっ!!」
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美奈代騎と二宮騎の作戦は、正直、無駄に近いものとなっていることを、日米両軍で知っている者はいなかった。 中華帝国側、朱少将は、すでに米軍の残存部隊に対する攻撃は貴重な戦力の浪費と見なしており、「撤退するなら勝手にしろ」というスタンスだ。 すでに中華帝国側の米軍残存部隊への攻撃は停止している。 米軍も撤退の通信を受け取っており、負傷兵のTAC(タクティカル・エア・カーゴ)への移乗準備と、TAC(タクティカル・エア・カーゴ)に搭載出来ない兵器や機密文書の処理が進んでいる。 状況は悪くない。 日没まであと1時間。 夕日が眩しい。 金色に染まるジャングルの中、美奈代達はただ、“鈴谷(すずや)”の到着を待っていた。 「もう少しで長野大尉達も到着する」 二宮騎からそんな通信が入った。 すでに敵の攻撃はない。 敵の集結地点はここからかなり離れているし、その方面からの侵入はセンサーで感知出来る。 センサーに反応はない。 「この島ともこれでおさらばだな」 「米軍は、この島を放棄するんですか?」 「違う」 二宮は笑って言った。 「中華帝国は、このままなら降伏するよ」 「―――えっ?」 「連中の補給線を止めた上で小さく叩く。小出しに戦力を使わせれば連中の物資は底を突く」 「……」 「泉。補給線が切れるっていうのは、お前が想像しているより遙かに怖いことだぞ」 「―――はい」 補給線が断たれる恐怖。 そう言われても実戦経験の浅い美奈代には、どうしてもピンと来ない。 ただ、バカみたいに頷くだけだ。 「米軍はこれから制海権と制空権を奪取に動く。後は空から空爆で中華帝国を叩く。こうなればほとんど一方的な戦いになる」 「うまくいきますか?」 「行ってもらわねば―――」 ピーッ! 「熱源っ!」 「何っ!?」 ズンッ!! 二宮騎のMC(メサイアコントローラー)、青山唯中尉の警告。 二宮の驚いた声。 そして、二宮騎が吹き飛ぶ音。 それを美奈代はすぐには理解出来なかった。 目の前で半身を吹き飛ばされた二宮騎が、ゆっくりとジャングルの中に倒れようとしていた。 「泉准尉っ!」 美奈代より早く現実に立ち戻ったのは牧野中尉だ。 彼女の鋭い怒鳴り声が、茫然自失の美奈代を無理矢理に現実に引き戻した。 「―――な、なんですか!?今の!」 「大口径ML(マジックレーザー)の狙撃!」 牧野中尉は引きつった声で言った。 「ま……まさか」 「二宮教官は!」 「バイタル反応正常……せ……センサーに反応なし?そんなバカ……な」 牧野中尉の意識は、敵攻撃に備えたエネルギー感知モニターに集中していた。 ログを見ても、何の反応もない。 「魔法反応まで……ど……どうやって?」 「中尉っ!」 ギンッ! 美奈代の声と、鋭い戦闘機動で、牧野中尉は我に返った。 「て、敵は!」 「センサーに反応なしっ!」 「じゃあ、アレはなんですか!?」 牧野中尉が見たスクリーンに映し出される3騎のメサイア。 重装甲をまとった“歩く要塞”さながらの騎だった。 それは、牧野中尉が見たことのない騎だった。 即座にライブラリーが開かれるが、 「不明っ、該当騎なしっ!」 そう答えるしかなかった。 「い……一体!?」 美奈代達は知らない。 中華帝国側の参謀が言った“帝剣”。 否、それさえ違う。 目の前にいるのは――― 「おそらく、中華帝国側の試作メサイアです」 牧野中尉はそう結論づけた。 「エンジン出力、その他の反応、“帝刃(ていば)”や“赤兎(せきと)”とは比較になりません」 パワースペックは間違いなく“帝刃(ていば)”の倍では効かないだろう。 フレーム反応も最新型だろうことを示している。 あの厚さの重装甲が本物なら、実剣は通らない。 牧野中尉はデータがとれていることを確認しながら、背筋を震わせた。 「こ……こんなの量産されたら!」 厄介じゃ済まない! その声が上がる前に、3騎は動いた。 「准尉っ!後退を!」 牧野中尉は叫ぶ。 データがない敵と斬り結ぶことが如何に危険か知っている牧野中尉の判断は正しい。 だが、 「教官を見殺しにする気ですか!」 美奈代にとって、敵が何だろうと、ここで逃げることは出来なかった。 二宮教官を助ける。 それこそが、美奈代の全てだったのだ。 迫り来る敵は長い柄に斧を付けたハルバードを振りかざす。 対する美奈代騎は斬艦刀を抜刀。 戦いの火ぶたが切って落とされた。 「くそっ!」 鳴り響く警報 魔晶石エンジンから発する甲高い戦闘出力音 スクリーン一杯に迫る甲冑のバケモノ。 美奈代は倒れた二宮騎の前に立ちはだかると、斬艦刀を構えた。 距離はまだかなりある。 あれほどの重量級だ。接近するまでにはかなり間があるはずだ。 ダンッ! 大地を蹴って敵騎が動き出した。 「―――え?」 敵の装甲の厚さは一目瞭然だ。 楯攻撃(シールドやエッジ)の効く相手じゃない。 グリーンの角張った恐ろしく分厚い装甲が美奈代めがけて襲いかかってくる。 「速いっ!」 その動きに、美奈代は目を見開いた。 重装甲をものともしない素早い動きを見せる。象のような鈍重な外観からは全く想像が出来ない機動性だ。 「あの装甲で!?」 重装甲に高機動性ではシャレにもならない。 美奈代は必死に隙を見つけようとした。 装甲がいくら分厚いとはいえ、どこかに弱点があるはずだ。 ―――どこだ!? 美奈代は焦りながら視線を激しく移動させた。 正面から撃破出来そうな場所が思いつかない! ―――背後に回り込めば。 美奈代は、ふと、そう思った。 “装甲は、正面装甲が最も厚いが、後方や上面は得てして薄い” かつて、授業で聞いた言葉を思い出したのだ。 戦車かメサイアか、一体、何の装甲について語った言葉で、誰から言われた言葉かさえ思い出せないが、それでも、このタイミングでこの言葉を思い出したことを、美奈代は誰かに褒めて欲しかった。 美奈代は背面に回り込もうとSTRシステムに力を込め、即座にその無意味を悟った。 否、悟らされた。 ブンッ! 突然、敵騎の上半身で白い光が走った。 メサイアの腕ほどもある三角の円錐状の光が、肩や頭部に走る。 その光に本能的な危機を感じた美奈代は動きを止め、目を見開いた。 「な、何?」 「レーザースパイクです」 牧野中尉が言った。 「固定式の光剣と思ってください。タックルでも喰らったら串刺しです」 「―――くっ!」 背後から斬り込むことはやめた。 三騎であんなものにプレスされたらたまらない。 肩部装甲のレーザースパイクが装甲の動きに合わせて激しく揺れる。 不用意な接近は、自殺行為だと、その動きが教えてくれる。 ―――どうする? 接近のため、激しい動きを見せる敵騎を睨み付けていた美奈代が“そこ”に気づいたのは、そんな瞬間だった。 美奈代は結局、その三騎に何もしなかった。 牽制のためのML(マジックレーザー)攻撃さえしなかった。 三騎から見れば、今の美奈代騎は、突然、仲間が倒されて動揺している程度にしかみえないだろう。 だらりと下げられた長い剣もシールドも構えられてさえいない。 戦闘の意志さえ感じられない。 そんな姿で立ちつくすのが、今の美奈代騎だ。 当然、敵はそんな美奈代騎にかける情けなど持ち合わせていない。 殺されたくなければ、全てを殺せ。 それこそが、戦場における騎士の規範(ルール)だ。 三騎のメサイアを駆る騎士達は、自らの規範に従順過ぎるほどに従った。 それだけだ。 楔形陣形で迫り来る三騎。 前衛騎がハルバードを振り上げた。 槍に斧を付けた斧槍(おのやり) それがハルバードだ。 斧と槍双方として使え、「突き」「切り」「刺し」「払い」―――凡そ近接用武器に求められるほぼ全ての攻撃が出来る優れものだ。 その破壊力の源は、長い柄を操作することによる遠心力や慣性力―――そして操作する者のパワー。 メサイアのパワーを上手く遠心力に乗せることが出来た場合のハルバードの破壊力は、およそメサイアの扱う近接用武器の中では最強の部類に入るだろう。 まともに喰らえば、美奈代騎は真っ二つだ。 ピピピピピピ―――ッ!! センサーが脅威を感知し、操縦者である美奈代に警告を告げる。 長い柄を両手で握って振り上げつつ接近する敵騎を、美奈代は強ばった顔で見つめていた。 ―――チャンスは一度だ。 美奈代は自分に言い聞かせていた。 ―――しくじったら……終わりだ。 終わり。 つまりは―――死。 死ねば、全てが終わる。 そこまで考えるのが、今の美奈代にとっては精一杯だ。 目の前に迫る敵騎を前に焦る心を押さえつけるのがやっとなのだ。 「―――くっ!」 歯を食いしばった途端、 ブンッ!! 凄まじい音を立てながら、敵騎がハルバードを振り下ろした。 まともに喰らったら、メサイアは脳天からかち割られるだろうその攻撃だったが、 ガンッ!! その斧が捉えたのは、何の変哲もない大地。 メサイアの魔晶石エンジンが産み出す大出力を遠心力に変えて繰り出された一撃は、大地に深々をめりこみ、砕かれた大地が土砂となって舞い上がった。 ―――かわされた!! 前衛騎の騎士は、即座にハルバードを大地から引き抜こうとして―――出来なかった。 「!?」 ハルバードの斧の根本。 何かが押さえつけている。 必殺の一撃をかわしたメサイアの脚だとわかった次の瞬間、 グガンッ!! コクピットを凄まじいほどの振動が走った。 コクピットを形成していた様々な装備が吹き飛び、モニターや計器類が一斉に消えた。 振動が収まった時にはコクピットの中は暗闇となった。 手元でさえ見えない事態に、予備電源まで切れたことを悟った騎士が次に感じたのは、奇妙な重力感。 立っていることが出来なくなった自騎が倒れる感覚だった。 メサイアの弱点である喉部防護用可動式装甲と騎体の隙間に斬艦刀を突き刺された前衛騎は、頭部にあるMCL(メサイア・コントローラー・ルーム)と本体を結ぶ操縦系統を根こそぎ破壊されたことで動きを止めた。 人間でいえば、頸骨を切断されたのと同じ。メサイアといえ、ここを破壊されればどうしようもない。 ズズゥゥ……ンッ!! 奇妙な程ゆっくりと前衛騎が倒れる。 その光景に狼狽した後続騎達が一歩、後ずさった。 美奈代にはそう見えた、その次の瞬間――― ブンッ!! 突然、左騎の腕が光った。 「ぐっ!?」 騎体に激しい振動が走り、警報が一斉に鳴り響いた。 「さっきの一撃ですっ!」 牧野中尉が怒鳴った。 「シールド43%融解、左部異常加熱警報!」 「くっ!?」 騎体の状態を示すステータスモニターをちらりと見る。 騎体の左側が危険なほど加熱していることを示す赤色で点滅している。 「一体!?」 後衛の二騎のうち、美奈代から見て右騎が何かを構えているのに、美奈代が初めて気づいたのは、その時だった。 巨大な筒―――バズーカだ。 とっさの牽制用に撃ったんだろう至近弾だけでシールドが溶け、騎体は半身が焼けた。 一体、どれほどの高出力のML(マジックレーザー)が発射されたのか、美奈代はそんなことを考えている余裕さえなかった。 キュィィィッ 筒の中が光り出した。次は外さないだろう。 「えっ!」 美奈代騎が動いた時、美奈代が急速後退をかけてその攻撃を回避する機動をとると思っていた牧野中尉は、眼が点になった。 自分の乗っている騎体は後退したのではない。 前進したのだ。 「ちょっ!?」 ここで前進すれば、自分から的になりにいくようなものだ。 いくらなんでも、美奈代だってそれがわかっているはずだ。 それなのに―――? 唖然とする牧野中尉の目の前にバズーカを構えた敵騎が急速接近してくる。 よく考えられて配置された装甲は、幾重にも重なって鉄壁の防護とはどういう代物かを牧野中尉に教えてくれる。 この位置から喉部を狙うことはまず無理だ。 美奈代にどういう勝機―――いや、美奈代自身が正気なのかさえ、もうここまで来たらわからない。 そっと脱出装置の位置を確認した牧野中尉の耳に美奈代の声が響く。 「さくら、シールドパージっ!」 「はいっ!」 美奈代の声に、美奈代騎の左腕が大きく振られ、溶けたシールドが左騎めがけて飛んでいく。 右騎は、シールドを難なくかわした代わりとして、射撃のタイミングを失った。 そこが、美奈代の付け入るタイミングだ。 「そこっ!」 美奈代騎が右騎の懐に飛び込んだ。 ピーッ! ピピピッ! MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)にそんな音が響く。 スクリーンに映し出されるのは、敵の装甲だけ。 そのあちこちが光り始めていた。 牧野中尉は、敵騎の近接防御用のML(マジックレーザー)が発射態勢に入ったことがすぐにわかった。 ―――まずいっ! この至近距離からML(マジックレーザー)を喰らえば無事では済まない! 「准尉っ!後退を!」 たまらず牧野中尉が叫ぶ。 その目の前で、自分の乗る騎が奇妙な動きを見せた。 ザンッ! 大地に斬艦刀を突き刺した右腕が、右騎の腰回りを防御している巨大な装甲プレートの端を掴むと、一気に持ち上げたのだ。 ベギッ! 奇妙な音を残して装甲プレートの可動部を止めていたボルトが破断、装甲プレートが外れた。 装甲プレートに隠れていた右騎の股関節部が丸出しになった。 そこへ――― ガンッ! 再び斬艦刀を握った美奈代騎は、斬艦刀の切っ先を股関節に突き込んだ。 股関節から真上に突き入れられた斬艦刀は、熱せられたバターナイフがバターを易々と溶かし切るように、内部構造物を解かし、破壊した。 騎体の中からは、何かが連続して砕け、爆発する音が響く。 斬艦刀から手を放した美奈代は、とっさに右騎の腕からバズーカをもぎ取ると、撃破したばかりの、その騎体の背後に回った。 背後から襲いかかろうとしていた左騎が、右騎にハルバードを振り下ろそうとする。 右騎の背後から突き出されたバズーカの筒先が左騎の装甲とぶつかった瞬間――― 美奈代はバズーカのトリガーを引いた。 「泉准尉が撃破した正体不明の騎は」 作戦終了後、洋上に撤退した“鈴谷(すずや)”のハンガーで、美夜は二宮に言った。 その背後には、美奈代が撃破した三騎のメサイアの残骸が転がっている。 「中華帝国軍の最新鋭メサイア―――それも」 整備兵達が忙しく立ち回るのをチラリと見た美夜は続ける。 「王制党親衛軍の次期専用騎と見て間違いないわね」 こうして見ると、その装甲の分厚さは信じられないほどだ。 整備兵達が騎体のあちこちを調べているのを眺めながら、美夜は嬉しげに言った。 「この騎をこの程度の破壊で確保出来たことは、実に有益な事よ」 そして、苦い顔をしている二宮に言った。 「あんたの騎体中破は、部下の功績で不問にされるだろうし」 「……感謝、します」 二宮は、むすっとした顔で敬礼した。 その顔が余程気に入ったのか、美夜は嬉しげに微笑んだ。 「あんたの弟子にしておくにはもったいない素質ね。あの子」 「……」 「育てた甲斐があったんじゃない?」 「このことで」 二宮は言った。 「つけあがらなければ良いけど」 「大丈夫じゃない?」 “鈴谷(すずや)”帰艦時点のスコア16騎、陸戦艇1の戦果は、むしろ伝説の世界だ。 美奈代騎担当の整備兵達の足取りが明らかに軽いのがわかる。 「―――とはいいたいけど」 美夜は、ちらりと二宮を見た。 「あの子、抜擢されるかもよ?」 「抜擢?」 「内親王護衛隊(レイナガーズ)か、天皇護衛隊(オールドガーズ)」 「まさか!」 「なにがよ」 美夜はあきれ顔だ。 「宗像准尉だって、内親王護衛隊(レイナ・ガーズ)配属が内定していたんでしょう?それに、あなただって―――」 「おおいっ!艦長っ!」 ハンガーの隅々まで届くその大声を発したのは、坂城だった。 「あの騎体のことだが」 今、艦長室にいるのは、坂城とその部下のシゲ、美夜と副長の高木少佐。そして二宮と長野だけだ。 壁にもたれかかった姿勢で腕組みをする坂城の表情は、愛用のレイバンに隠れてわからない。 「エライことがわかった」 「エライこと?」 「電磁筋肉はアメリカ製のE&H社製の最新型。去年の冬、シンガポールの見本市でお披露目になったばかりの量産されていないヤツだ。ついでに電子機器の大半はドイツ製」 「……」 「……」 皆がポカンとした顔で坂城を見た。 撃破したのは中華帝国騎だ。 戦闘後、捕虜となった騎士とMC(メサイアコントローラー)は中華帝国人だ。 「どういうことです?」 長野が訊ねた。 「対立する国のパーツで組み上げた騎だというのですか?」 「そんなこと、俺が知るか」 坂城はにべもなく答えた。 「俺は技術屋で、政治屋や外務の役人じゃねぇ」 「……」 「といっても、俺からすればもっと厄介なことがある」 坂城はそう言うと、ポケットから何かを取り出すと、長野に放り投げた。 「外せたのは、それだけなんでな」 それを長野は両手でキャッチした。 銀色に輝く金属の塊。 サイズはタバコのフィルターくらいだ。 恐ろしく軽い。 「検査は中央に任せるつもりだ。“鈴谷(すずや)”の機材じゃ詳しいことはわからねぇ」 「これは?」 手の上で転がすように眺めていた長野が訊ねた。 「泉の嬢ちゃんがブッ倒した騎が掴んでいたエモノから外したのさ」 「獲物?あのバズーカですか?」 「ああ」 坂城は顎で合図すると、脇に控えていたシゲがテーブルに写真を数枚、ひろげた。 「長野大尉さんよ―――そいつが何で出来ているか、わかるか?」 「……アルミですか?」 二宮や美夜達も長野からその金属を受け取った。 「そうね……でも、アルミにしては感触が」 「詳しくないけど……セラミックかしら?」 「硬度からしてアルミでもセラミックより固てぇ」 「じゃぁ、なんです?」 「さぁな……学者先生にでも聞いてくれ」 壁から離れた坂城が、写真に広げられたテーブルに両手をついた。 「俺からすれば、泉の嬢ちゃんの最大の功績は、“こいつ”を捕獲したことだ」 テーブルの上に広げられた写真は、すべてあのバズーカの各部を撮影した物だ。 「単なる……」 長野は、そこまで言いかけて口を閉ざした。 実体弾ではなく、大口径高出力のML(マジックレーザー)砲だ。 それだけなら、長野は発言を止めなかったろう。 問題は、発射時にML(マジックレーザー)特有の反応は何もなく、メサイアのシールドを瞬時に融解させるほどの破壊力を持つ。 トドメとして、横にいる上官、二宮が感知するどころか、避けることさえ出来なかったことだ。 MC(メサイアコントローラー)二人が“攻撃はセンサーで拾えなかった”と主張しているし、ログもその通りだったことを示している。 ML(マジックレーザー)攻撃飛来を告げるセンサーが、ML(マジックレーザー)攻撃を検知出来なかった。 かすっただけで、対ML(マジックレーザー)コーティングが施された装甲が溶けた。 それは、看過出来る話ではない。 「これから話すことは、俺の仮説に過ぎねぇと思われるだろうが」 坂城は言った。 「こいつは人類の造った代物じゃねぇ」 「……は?」 二宮と美夜が目を点にした。 「どういう?」 「まず、こいつにはネジがねぇ」 二宮が見る限り、坂城は本気だ。 「それらしいモノぁあるんだが、バラし方がわからねぇ。もし、中華製だとしても、工業規格ってもんは今時世界共通だ」 「……」 「わざわざ、この砲のためだけに、特別な規格を造ったなんてこたぁありえねぇ」 「……よろしいですか?」 坂城とほぼ同い年の高木が言った。 「憲兵隊からの報告によれば、捕虜が興味深いというか、おかしなことを」 「ん?」 「あの兵器は、中華帝国でも知っている者はごく一部で、単に“筒”とだけ呼ばれていたそうです。捕虜達も数日前に初めて見たと」 「“筒”?」 「はい。装弾数6発。実は」 高木が首を傾げた。 「おかしい。というのは、ここからでして」 「言ってみろ」 「はい―――パイロットやMC(メサイアコントローラー)達が知っているのは、その砲の使い方……単に、トリガーを引くことだけなんです。しかも、彼らは、この兵器をML(マジックレーザー)を発射出来るバズーカ程度としか聞かされていません。使用後は梱包の上本国送り。なにより分解整備は禁止されていたそうです」 「……で、だ」 坂城はテーブルの上にあった写真の一枚を掴んだ。 筒の端に取り付けられていた金属製のプレートが写っていた。 「何て書いてあるかわかるかい?」 「ん?」 美夜が写真を受け取ったが、 「……?」 首を傾げるしかなかった。 「少なくとも、目にしたことのある表記じゃないわね」 「北京語、ハングル、アラビア語にサンスクリットまで調べたが、該当するモノぁねぇ」 「じゃあ?」 「……シゲ」 「へい」 脇に控えていたシゲが鍵の付いたアタッシュケースを開いた。 「……こいつは、アフリカの記念にもらっておいた代物だ」 アタッシュケースの中身は、半ば焼けこげた金属のプレートだった。 「これは?」 「魔族軍のメサイアの残骸さ」 「!?」 その一言に、二宮と長野の表情が強ばった。 「アフリカで擱座した魔族軍メサイアで、“鈴谷(すずや)”に収容されたのがあったろう?あの騎体から剥がれ落ちたプレートが、これだ」 坂城は写真とプレートを横に並べた。 「―――比べてくんな」 「……い」 何度も見た。 目が痛くなるほど見比べた。 そして、そういう結論にイヤでも達した。 「一体……これは」 長野が救いを求めるように上官達の顔を見た。 その表情は硬く強ばっている。 「……坂城整備班長」 美夜は殺気だった声で言った。 「情報に感謝する」 「プレートは返しておくさ」 坂城は言った。 「これから、イヤでも手にはいるだろうからな」 坂城がアタッシュケースから取り出し、写真の上に乗せたプレート。 写真とそのプレートをみれば、イヤでもわかるだろう。 一つは魔族の兵器からとったプレート。 もう一つは、中華帝国軍メサイアの兵器のプレート 接点はない。 あってはならない。 そのはずなのに。 「中国人っては、誰と商売しているんだ?」 二宮の皮肉を咎める者は、ここにいはなかった。 誰でも一目でわかること。 プレート同士の言語は―――共通していた。
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パイロット 西国人+猫妖精+パイロット 西国人+猫妖精+パイロット+名パイロット 西国人+パイロット+名パイロット+ホープ 高位西国人+猫妖精+パイロット+名パイロット #新記述 L:パイロット = { t:名称 = パイロット(職業) t:要点 = パイロットスーツ,マフラー t:周辺環境 = 飛行場 t:評価 = 体格-1,筋力0,耐久力0,外見0,敏捷0,器用0,感覚1,知識1,幸運-1 t:特殊 = { *パイロットの職業カテゴリ = ,,,基本職業アイドレス。 *パイロットのパイロット資格 = ,,,搭乗可能({I=D,航空機,宇宙艦船})。 } t:→次のアイドレス = 名パイロット(職業),瀧川陽平(ACE),カール・T・ドランジ(ACE),舞踏子(職業) } #旧記述 L:パイロット = { t:名称 = パイロット(職業) t:要点 = パイロットスーツ,マフラー t:周辺環境 = 飛行場 t:評価 = 体格-1,筋力0,耐久力0,外見0,敏捷0,器用0,感覚1,知識1,幸運-1 t:特殊 = { *パイロットの職業カテゴリ = 基本職業アイドレスとして扱う。 *パイロットはI=D、航空機、宇宙艦船のパイロットになることができる。 } t:→次のアイドレス = 名パイロット(職業),瀧川陽平(ACE),カール・T・ドランジ(ACE),舞踏子(職業) }
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敵は3騎。 長野大尉騎もまた、別な敵騎と交戦している。 助けに来た以上、今更“助けてください”はとても言いたくない。 「このっ!」 美晴騎が120ミリ速射砲を放つが、敵騎はそれをあっさりと回避。 美晴騎に肉薄する。 「来るなっ!来るなぁぁぁっ!」 120ミリ戦車砲弾の直撃をものともせずに飛び込んでくる敵騎。 その光景に本能的な恐怖を覚えながら、美晴は後先考えずにトリガーを引き続けた。 ピーッ! カチッ! アラームの後、トリガーの感覚がなくなった。 「―――弾切れっ!?」 美晴は一瞬、残弾を確認しようと視線を動かしてしまった。 近衛のメサイアは、騎士に必要な情報を網膜に直接投影するため、視線の移動を必要としない。 敵から一瞬でも視線を外せばどうなるか――― 美晴は、視線を敵騎に戻した時に、それを悟らされた。 「美晴っ!」 さつきの目の前で、美晴騎の両腕が、シールドと速射砲ごと吹き飛んだ。 シールドと速射砲を×の字状態で組み合わせたのだが、それさえも敵の戦斧はモノともしなかった。 敵の攻撃が弱かっただけだ。 美晴は警報が鳴り響くコクピットで、妙に冷静に状況を判断していた。 間合いを間違えたんだ。 もし―――間合いが正確だったら。 背筋を、冷たい汗が流れた。 私は―――死んでいた。 「美晴っ!」 呆然として動かない美晴騎を敵騎は蹴り飛ばした。 3騎で攻めてきながら、実際に手を下すのは一騎のみ。 両腕を破壊された柏騎を前に、さつきは嫌なことを思い出した。 高校時代のケンカだ。 弱い相手と知るや、たった一人で複数を相手にいきがるチンピラ共―――。 やっていることは、それと同じだ。 本人はかっこいいつもりかもしれないが、端から見れば最低だ。 騎士同士の戦いとはとても思えない。 それでも、それを許してしまう自分たちも十分――― 「くっ!」 さつきは、右腕で剣を構えた。 「候補生っ!」 MC(メサイア・コントローラー)が怒鳴る。 「後退を!左腕の喪失で戦闘力は半減していますっ!」 「冗っ談っ!」さつきは怒鳴り返した。 「一方的にやられてはい終わり!?ふざけないでよ!」 「ですがっ!」 「いくら私が女だからって、戦いまで受け身でたまるもんですか!」 さつきは、美晴騎を踏みつけて悦にいる敵騎に斬りかかった。 「さつき―――加勢するっ!」 宗像騎から通信が入る。 二騎同時なら―――もしかしたら! さつきは、その可能性に賭けた。 敵騎が、まるでズームしたように、スクリーン一杯に迫ってくる。 宗像騎とさつき騎は完璧なまでに同時に敵騎に斬りかかった。 ―――が。 ガンッ! 攻撃が命中したにしては奇妙な感覚がSTRシステム越しに伝わってくる。 「―――え?」 さつきは、自分の騎体に何が起きているのか、正直わからなかった。 ギギィィ……ッ 腕が―――動かない。 ギッ……ギッ…… 「な……何?」 腕が、振り下ろされる途中で止まっている。 STRシステムを力任せに押しても何も変わらない。 何? 何で? その理由を知った時、さつきは、自分が賭けに負けたことを悟った。 敵が、2騎同時に、完璧に同じタイミングで、しかも同じ方法で襲ってきたとしたら? それはある意味必殺の攻撃と思われるかもしれない。 だが、攻撃方法が同じならば、一つの攻撃を崩す方法を単に2騎に応用すればいい。 それだけだ。 敵騎が何をした? 振り下ろされようとしていた2騎の腕を掴んだ。 それだけだ。 後は力押し。 そして―――その面でも、さつき達に勝ち目はなかった。 「離せぇぇっっ!」 さつきはコクピットで満身の力をこめる。 宗像でさえ、エンジン音からして同じことをしているだろう。 2騎同時に暴れているというのに、全く歯がたたないなんて!! ミシッ……ミシミシミシッ…… 掴まれた腕から奇妙な音がし始めた。 腕の装甲に亀裂が走る。 ベギィッ!! 背筋が寒くなるような音がして、さつき騎と宗像騎の腕から剣が落ちた。 腕は明後日の方角にねじ曲がった。 敵騎の握力の前に、握りつぶされたのだ。 「なんてパワーだ!」 普段、冷静沈着な宗像でさえ、我を忘れて叫び、思わずコクピットの中で身を乗り出してしまった。 「これほどの握力を確保するなんて、一体、どういう仕組みだ!?」 その返答は、二騎同時に襲ってきた敵騎の回し蹴りだ。 2騎は同時に横に吹き飛ばされた。 派手にスライディングして、2騎が並んで大地に転がった。 さつき騎は両腕を失い戦闘能力を完全に喪失。宗像騎も脇腹に受けた一撃でシステムがすべて飛んだ。 スクリーンもパネルもすべてがブラックアウトしたコクピットで、宗像はそれでもシステムの再起動を試みた。 システムのリカバリーにどれほどかかるか? いや。 敵がどれほど待ってくれるか。 絶対、待ってはくれないだろう。 そう思うと、今、自分がやっていることが馬鹿馬鹿しくなってきた。 足掻いている所を殺されるなんて、ごめんだ。 死ぬならきれいに死にたい。 そう思う宗像は、再起動する手を止め、目をつむった。 ―――やるならやってくれ。 誰となく、そうつぶやいた。 ―――私は、負けたのだ。 宗像の気持ちがわかるわけではないだろう。 戦斧を構える敵騎に襲いかかる2騎のメサイアがいた。 「このぉぉぉぉっっ!」 上空から戦斧を構える敵騎に襲いかかったのは美奈代騎だ。 着地する寸前に長剣を振り下ろした。 それまで、“征龍改(せいりゅうかい)”や“幻龍改(げんりゅうかい)”の装甲や武器を切り刻んだその戦斧が、真っ二つに切断された。 狼狽する敵騎に、美奈代は容赦なく襲いかかった。 「よくも―――こいつぅぅぅっっっ!」 逆袈裟切りで敵騎の胴体を真っ二つに切断し、返す刀で脳天を唐竹割にした美奈代は、敵騎を文字通り4つに切り刻んでしまった。 近衛軍の最新鋭兵器―――斬艦刀の威力だ。 「す……すごい」 その光景に目を見張ったのは敵だけではない。 使用した側の牧野中尉も同じだ。 歴戦の猛者である牧野中尉でさえ、こんな光景は見たことがなかった。 「装甲を……こんなにあっさりと……」 それまで傍観を決め込んでいた2騎がハルバードを構え、同時に襲いかかってきた。 「候補生っ!」 「仲間を守りますっ!」 美奈代は怒鳴った。 「私を仲間はずれにした落とし前つけてもらうまで、死なせてたまるもんか!」 美奈代騎は接近する敵騎2騎に逆に襲いかかった。 守勢に回ると思っていた敵騎が突然、攻勢に転じたため、タイミングを失った2騎は、それでも振り上げたハルバードで美奈代騎を攻めた。 一騎が袈裟切りに。 もう一騎が横薙ぎの一撃に攻めた。 美奈代は、あえて突撃速度を早めると、ハルバードの懐に入った。 ハルバードは槍に斧をつけたような武器だ。 先端部である斧の内側に入れば―――。 ガガンッ!! 鈍い音が連続してスピーカーから聞こえてくる。 そして―――舌をかみそうな衝撃。 数瞬の間を置いて、 ズズゥゥンッ!! 何か、大質量の物体が地面に叩き付けられた音がした。 「やったぁぁぁっっ!」 “さくら”の歓声がして、牧野中尉は自分が死んでいないことに初めて気づいた。 「―――えっ?」 恐怖のあまり、つむっていた目を恐る恐る開いてみる。 見慣れたMCR(メサイア・コントローラー・ルーム)が目の前にある。 「あ……あれ?」 手であちこち触れてみる。 感覚がある―――つまり、 「私……生きてる?」 「マスター、すごぉぉぉいっ!」 “さくら”が飛び跳ねて喜んでいる。 「2騎同時キルなんて勲章モノだよぉっ!」 2騎同時? 牧野中尉は、戦闘記録をあわてて再生させ、そして絶句した。 「あの敵を2騎同時に仕留めた!?」 染谷騎の“鈴谷(すずや)”収容を見届け、“鈴谷(すずや)”と接触して初めて事態を知った二宮と共に、教え子の救援に向かおうとした長野は、その報告を最初は信じようとしなかった。 「何かの間違いでしょう!?」 本気でそう言ってのけた。 二宮でさえ一方的に叩かれたあのバケモノ共を3騎撃破。そのうち2騎は同時に撃破したなんて、候補生のやっていいことじゃない。 大破した“幻龍改(げんりゅうかい)”や“征龍改(せいりゅうかい)”達の回収作業が終わり、美奈代騎の戦闘データを見るまで、長野自身、何回、「冗談だ」とか「嘘だ」と言ったかわからない。 「まぁ、そう言うな」 長野をたしなめる二宮の視線の先には、仁王立ちになって怒鳴りまくる美夜と、正座させられて小さくなる美奈代がいた。 結局、美晴達は全員医務室送り。平野艦長の説教は、共謀者扱いされた美奈代一人がうけるハメになっていたのだ。 すでに、“鈴谷(すずや)”はこれ以上の戦闘は不能として、海上を移動。 アラビア半島へと移動を開始していた。 「勝手に出撃して、おかまいなくとは何事だ!」 美夜はカンカンだ。 説教はしばらく続くだろう。 「自業自得はいえ、少し気の毒だな……」 ぼやく二宮に、 「中佐」 整備兵が近づくと、二宮に一枚のディスクを手渡した。 美奈代騎の戦闘記録だ。 「……とりあえず」 二宮は長野にそのディスクを手渡した。 「これを見れば、いろいろとわかるだろう」 「絶対、何かの間違いですよ」 長野はディスクを胡散臭そうに眺めながら言った。 「もし本当だったら、俺は死ぬまで泉に逆らいません。誓ってみせますよ」 “征龍改(せいりゅうかい)”が突撃。 ハルバードの懐に飛び込むと、右から横薙ぎに襲ってきたハルバードの柄を右肘部装甲で、左から袈裟切りにきた方の柄は、シールドで受け流し、両方の柄をレールのように滑らせながら、何の躊躇もなく敵騎に襲いかかる。 右側の騎がハルバードを操作して対処を試みるが、もう遅い。 次の瞬間には、斬艦刀の切っ先が右側の敵騎の胴体を貫通し、同じタイミングでシールドのエッジが左側の敵騎の胴体に深々とめり込んでいた。 戦闘記録を元に、コンピューターが割り出した戦闘の光景が、3Dポリゴンで詳細に再現される。 戦闘再現システムといい、パイロットである騎士やMC(メサイア・コントローラー)でさえ見たことのない、第三者としての視点から敵味方の戦闘時の動きがわかる優れものだ。 そのシステムが割り出した戦闘の光景を前に、言葉を失ったのは長野だけではなかった。 完璧すぎる。 長野が見たことすらない完璧の上を行く機動が示されていた。 メサイアの機動教本に掲載すべき内容だ。 「ぶ……武器の性能が……」 長野は口の中で言いかけて、その言葉を無理矢理飲み込んだ。 違う。 そんな簡単な話じゃない。 武器の性能ではない。 それなら敵騎の方が圧倒的に有利だと、自分でも嫌という位味わっている。 それに、泉は俺と同じ騎に乗っていたんだ。 では? 「これは……」 長野の口から出たのは、そんな言葉でしかない。 何と言うべきかは、長野自身が思いつかない。 映像が繰り返されるたびに、あちこちで驚嘆と歓声が上がる。 戦闘再現システムの映像は、余程の負け戦でもない限り艦内に筒抜けになる。 3Dポリゴンの映像の美しさと、自分たちが命がけで運用している、メサイアの戦闘記録は、乗組員達の丁度よい娯楽になるのだ。 「―――まぁ、長野大尉」 二宮は、ポンッと長野の肩に手を置いた。 「さっきの話は、聞かなかったことにしてあげます」 「か……感謝、します」 空にはアフリカの星が瞬いていた。 星座のことなんてこれっぽっちも知らない。 ただ、きれいだと思った。 男は、擱座したメースの黒こげになった騎体の上に寝転がった。 目の前に広がる満点の星空。 欲しいな。 そう思った。 こんなにたくさんあるなら、一つくらい、手に入れることが出来るんじゃないか? そっと手を伸ばしてみるが、届くはずもない。 「星を掴むような……か」 彼の故郷では、“あり得ない話”という表現だ。 故郷とは全く違うのに、美しさだけは変わらない。 見るだけで、心が安らぐ。 彼は、まるで星空を抱きしめるかのように、目を閉じた。 ―――ブロロッ 不意に、ガソリンエンジンの音がした。 光を感じたものの、彼は目を閉じたままだ。 ―――ギギィッ 耳障りな音がする。 「少佐」 そんな声がしたのは、エンジン音にまじってのことだ。 「ご無事で?」 「……遅いぞ」 彼はのっそりとした動作で起きあがった。 「勘弁してくださいよ」 横たわったメサイアの下に停車した立つ士官が肩をすくめた。 「メサイア部隊はまだ何もかもが整っていないんですよ?何しろ、士官の俺でさえ、移動用にって、人類が残したこんなシロモノ割り当てられてるんですから」 士官は、ウィルスジープのボディを拳で軽く叩いた。 「部隊を前線に送るなら、回収部隊もそろえて送るもんだろうが」 「“メースを送れ”と言えば、我々回収部隊がオマケでついてくると思っているんでしょうよ」 士官は手を振り下ろした。 すると、背後から強い光が走り、横たわったメースを照らし出した。 擱座したメースの回収を任務とする回収部隊だ。 「……派手にやられましたな」 「油断した」男はニヤリと楽しげに笑った。 「よくもまあ、ここまでやってくれたもんだよ。敵さんも」 男の駆るメースは、確実に敵騎を追いつめた。 あと一歩という所で、謎の爆発に巻き込まれ、騎体はこのザマだ。 「失礼しますよ」と断ってからメースによじ登り、ハッチを開いた士官に、男は訊ねた。 「なおるか?」 「我々は野整備部隊じゃないんで」 士官はハッチから顔を出さずに言った。 「……まぁ、何とかなるんじゃないですか?」 「通信装置まで破壊され、部隊の他の連中と連絡がとれない。通信装置を貸してくれ」 男はそう言うと、メースから飛び降りて、士官が乗ってきたジープに向かって歩き出した。 「ご存じなかったんですか!?」 士官は目を丸くした。 「―――何がだ?」 「少佐の部隊は……」 士官は、メースの上に立ち上がり、うなだれたように頭を垂れた。 「……全滅です」 「―――何?」
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「きゃあっ!」 とっさに構えたシールドが左腕ごと切断された。 シールドを持った左腕が宙を舞い、地面に落下していく。 「な、何が!?」 シールドが全く何の役にも立たなかった。 装甲をチーズのように切り裂くという表現があるが、これじゃまるで豆腐だ。 「近衛の装甲って、飾りなの!?」 左腕を失ってバランスを失ったさつきは、騎体バランスをとろうとSTRシステムと格闘しながら怒鳴った。 「装甲の役目果たしてないっ!」 「早瀬っ!」 宗像が怒鳴った。 「長野教官との接触は一時お預けだ。降りるぞ!」 「で、でもっ!」 「敵の機動性に、こっちがついていけない。このままなら一方的にこっちが不利だ!」 「―――わかった!」 「美晴、私と一緒に敵騎をけん制しろ。さつきは後退しろ」 「了解っ!」 「困るんだよ」 静かな、しかし明白な叱責を含んだその一言に、神妙に頭を下げたのは、かつて神音の元を訪れたあの男だ。 「ユギオ……もう10年だ」 「……はっ」 神音の前でみせた軽さはどこにもない。 「この10年間の我々の投資額を、考えたことはあるのか」 「……申し訳ありません」 「我々にも投資するからには理由(わけ)がある。世論が言うような馬鹿げた慈善事業(きれいごと)に投資しているつもりはない」 「はい」 「この10年間、何をしてきた?レンファの怠慢ぶりにすべての責任を負わせるつもりだろうが、我々相手ではそうはいかんぞ?」 「……」 「レンファを選んだ選定ミスといい、その怠慢を放置したことといい、お前達の罪こそ叩くべきだという者が圧倒的多数だ。 状況は10年前とは大きく変化しつつある。 世論は負けっぱなしのお前達に愛想を尽かし始めている―――誰の非かは、一々口の端に乗せるつもりもない」 「……」 「……一年だ」 「一年?」 「これが最後通告だぞ、ユギオ」 「一年で、せめて我々を説得するだけの功績をあげろ」 「……はっ」 「―――さて。状況を説明してもらおうか?その……人類同士に争わせるという話を」 ● 特殊艇“ヒューマー”艦橋 「トラウムへようこそ!エーランド少佐!」 特殊艇“ヒューマー”艦橋に入ったエーランド少佐を出迎えたのは、ずんぐりとした体型の中年男、ゴトランド大尉だ。 エーランド少佐とは、長年に渡って魔界の辺境紛争で死線をくぐり抜けてきた因縁深い仲だ。 「世話になるぞ。ゴトランド」 「なんの」 ゴトランドは楽しげに肩をすくめた。 「ベネルスボリイ紛争以来ですな。すでに退役されたと聞いていたのですが」 「ぬるま湯の生活は性分にあわん」 「少佐は戦場の方がお似合いです」 「世辞か?」 「ハハッ!まさか!」 「まぁいい。“鍵”の現在位置は?」 「はっ―――おい」 ゴトランドに声をかけられた彼の副官が一礼の後、スクリーンを操作した。 スクリーンに映し出されるのは、アフリカからアラビア半島にかけての地図だ。 「3時間前、“アフリカの角”を離れた“鍵”は現在、アラビア湾を移動中。このままのコースをとると、オマーン湾、ホルムズ海峡を経由して、明後日にはドバイに入ります」 「ドバイ?」 「人類が作り上げた砂上の楼閣ですよ」ゴトランドは言った。 「酒に女に―――ロクでもないところですよ」 「ずいぶん楽しんだらしいな」 「ガハハッ!少佐にはかなわない―――まあ、船乗りの特権とでも見てください」 「とがめてはいないさ」 スクリーンから視線を外すことなくエーランド少佐は小さく笑った。 長い金髪が照明を美しく反射して輝いている。 背の高い、すらっとした容姿といい彫りの深い顔立ちといい、俺なんかよりずっとドバイの女達にはモテるだろうな。と、ゴトランドは内心思った。 「どのあたりで追いつきそうだ?」 「艦そのものが追いつくのはアラビア湾上空、16時間後を予想。ですが、メースでしたらソコトラ島上空、発艦後1時間以内で叩けます」 「忙しいことだ。部隊の乗艦が済んだばかりだというのに……」 「前祝いですよ」 「そう願おう」 エーランド少佐は笑みを真顔に戻した。 「ゴトランド、出るぞ!」 「了解っ!」 ●“鈴谷(すずや)”士官室 泉美奈代が20年近い人生の中で、この日、初めて自覚出来た感情が一つあった。 嫉妬だ。 「……」 「いや……だから」 美奈代達の目の前では、別室で食事をとる染谷達の姿があった。 染谷達といっても、染谷と後は二人。 小林少尉と、あの金髪の少女―――フィアだ。 あどけなさの残るものの、恐ろしいほど愛くるしい体を、艦内用に支給されているスウェットスーツに包んだフィアは、まるで体を染谷にすりつけるような、甘えた仕草をしながら食事を続けている。 目の前の美奈代達なんて眼中にないといわんばかりだ。 「行こう?。美奈代」 「そうだな」 「ちょっと待って!」 女子候補生からのあからさまな冷たい視線を、半分泣きそうな顔にやっと笑みを浮かべて誤魔化そうとしていた染谷は、その冷たい言葉に悲鳴に近い声を上げた。 「あ、あの……その……」 声がうわずって、うまくしゃべることが出来ない。 「こ、こういう女の子は、女の子が面倒を」 つまり、代わってくれ。と言いたいのだ。 ところが、頼んだ相手は―――。 「私達メサイアパイロットの候補生だし」 さつきは汚物を見るような目つきで言った。 「任務じゃないわね」 「そういうことだ」 「だから誤解だ!ぼ、僕は!」 立ち上がろうとした染谷だったが、腕を掴まれ、動きを止めた。 フィアが甘えた顔で染谷の腕に抱きついたのだ。 染谷の腕に頬をすり寄せるフィアの表情は、恍惚としている。 「……はいはい」 美晴が冷たい声で言った。 「ごちそうさま」 「まさか……染谷がロリコンだったなんて」 「よく憲兵隊が何も言わないものだな、この性的病人に」 「恐ろしく言いたい放題言われている気がするのは何故だろう」 「私達、これから訓練だから」 「通りかかっただけなんです」 「病気が移ると困るので。失礼します」 「一体、君たちは僕をなんだと思って!」 抗議する染谷に、美晴とさつきが揃って答えた。 「性犯罪者(×2)」 「なっ!?」 「……その格好で」 中学生位の少女とベタベタしている光景を冷たく指さして宗像は言った。 「自分がノーマルだと言う方がどうかしている……訓練に遅れるぞ?行こう」 宗像に促され、じっと二人を見つめていた美奈代は、しぶしぶという顔で踵を返そうとした。 不意に、フィアの視線が美奈代のそれとぶつかったのは、その瞬間だ。 感情を殺した美奈代の視線と、好奇心さえ感じるフィアの視線。 動いたのフィアだ。 まとわりついていた染谷の腕から体を離し、一瞬だけ美奈代に挑発的な笑みを浮かべたかと思うと、首を伸ばして瞳を閉じた。 チュッ そんな効果音が、小さく響いたのは、その直後のことだった。 ●“鈴谷(すずや)”ハンガーデッキ 「一体、誰なのよ?あの子。ねぇ、美奈代?」 しきりと拳銃の手入れを続ける美奈代は、妙に何かをぶつぶつ言い続けていた。 「?」 さつきが、そんな美奈代の口元に耳を近づけた。 「……暴発による業務上過失致死は……」 「やめなって!」 「……劇薬を、食事に混ぜるのはどうだろう……」 「勘弁してよ!」 さつきは美奈代の肩を揺すった。 「私ゃね!?ワイドショーで“あの子なら、絶対いつか何かやるだろうと思っていました”なんて言いたくないからね?」 「早瀬……せめて“あんな真面目そうな子が”程度にしてやれ」 宗像は言った。 「初めて出来たオトコに、別のオンナが出来たんだ。嫉妬するなという方が無理だ」 「それが流血沙汰ですか?美奈代さんらしいというか」 「お前ら、私を何だと思っているんだ?」 美奈代は声を荒げた。 「まるで、二宮教官の男運のなさが乗り移ったみたいに!」 「どういう解釈かわかんないけど……そうか」 ポンッと手を叩いたのはさつきだ。 「そう考えれば、染谷が美奈代に惚れるなんて前代未聞の珍事も納得出来る!」 「結果は100%の失恋ですね!」 「かなり手ひどい終わり方になるな……なにしろ、あの人の男運だ」 「ちょっとぉ!」 「泣くな泉。オンナに走ればいいことだ。いつでも協力してやろう」 「それで……二宮教官が普通の男運になれば」 美晴が言った。 「二宮教官も今年こそ本命のカレが出来ることに!」 「1年前に、これが現実になっていればよかったのにねぇ……」 さつきはしみじみと言った。 「欲求不満を、私達へのシゴキで発散するなんていう、不毛な生活を、教官も味わわずに済んだのに」 「風邪だって、誰かにうつすとよくなるって言いますしね」 「あんなにヒドイ男運もらってたまるもんか!」 美奈代はたまらずに怒鳴った。 「あれは不幸どころじゃないぞ!あんなヒドい男運をもって、それでもオンナとして―――」 次の瞬間、美奈代は、目の前で腕組みしながらにっこりと微笑んでいる相手を見て二つのことを思いついたという。 一つは、フィアというオンナ殺して自分も死ぬか。 もう一つは、ここで死ぬか。 ……しかし、相手はそんな美奈代の子供じみた発想を認めてくれるほど、甘くはなかった。 何しろ、相手は、美奈代達にとって鬼より怖い相手なのだ。 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「大陸から?」 「間違いありません」 美夜に答えたのは、レーダー要員の川村真由軍曹だ。 「電探、魔探共に反応ありませんが、衛星がとらえています」 「連中は、人工衛星というものを知らないらしいな」 美夜は、その間抜けぶりがほほえましくさえ思い、小さく笑った。 「どれくらいで接触しそうだ?」 「推定20分後」 アデン湾上空1200メートル上空。 あと10分でソコトラ島上空にさしかかる。 海上では圧倒的に不利だが、陸地ならメサイアも本領を発揮して戦える。 進路は決まった。 「針路変更。ソコトラ島へ向かえ―――全艦戦闘態勢、メサイアの発艦急がせろっ!」 “鈴谷(すずや)”の“目”が接近するメースをとらえたのはそれから5分後のことだ。 海面すれすれを高速で移動してくる反応は3。 反応の大きさはメサイア級だ。 訓練のため発艦しようとしていたメサイア隊は即座に武装を演習用のそれから実戦用のそれに変更し、艦を続々と離れた。 皆がアフリカ大陸方面からの攻撃に備えていた。 何が来るかわからない。 レーダーが攻撃をとらえるかさえ不明。 美奈代達は、内心でおびえながら神経をアフリカ方面へと集中させていた。 ―――しかし ●紅海上空 太い光が走ったかと思うと、 「きゃっ!?」 左舷側に展開していた美晴騎から悲鳴が上がった。 「な、何!?」 「6時方向より艦砲射撃!」 牧野中が怒鳴った。 「魔族軍が後ろから!?」 「違います!この攻撃は―――」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「北イエメン軍だと?」 「艦艇数6,いずれも“25型”コルベット艦タイプ」 「ずいぶんな骨董品だな……まだ浮いていたのか?」 「艦長。飛行艦“ホデイダ”より通信です」 「通信?」 「貴艦は我が領空を侵犯しつつあり。速やかに武装を解除し停船せよ。停船に応じない場合は……撃沈する」 「馬鹿な!帝国はソコトラへの寄港と上空通行の許可を―――!」 わめきかけて、美夜は司令部が犯した大失態にようやく気づいた。 「通信……相手は、北イエメン軍と言っていたな?」 ●紅海上空 「少佐。敵に増援の模様」 「さっきの一撃は、景気づけですかね」 「……さてね」 海面すれすれを高速で移動するメースのコクピットで、エーランドは小さく笑った。 ついさっき、観測された高魔法エネルギー反応。 それは、全く見当違いの方角を狙った一撃にすぎなかった。下手をすれば味方に当たっていたはずだ。 接触しようとする艦があの艦の味方なら、あんな発砲は、意味を為さない。 「……まさかな」 エーランドは、自らにわき上がった発想に首を振った。 「あれが、あの艦にとっての敵だなんて……」 「少佐、どうします?」 「エーリヒ、クンニ。このまま突っ込むぞ。お前達は後方の艦をやれ」 「了解っ!」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 イエメン共和国。 それが、現実世界の名だが、それは1990年5月22日の南北イエメン合併があってこその存在だ。 かつての一大王国イエメン王国は15世紀に王朝が分断し、南北両イエメン王朝が成立。ヨーロッパの植民地化など紆余曲折の末、再び両国が成立したのは1967年のこと。 南イエメン王国と、北イエメン共和国となって以降も、相手国は自国の領土と主張し、紛争が絶えない。 相手国は自国領。 つまり、ソコトラ島も片方の国からすれば領土なのだ。 だからこそ、ここを通行したり利用したければ、双方の国に許可を得る必要がある。 それがこの紅海を渡る際の常識だ。 ところが――― 「北が来るとは……」 美夜が頭を抱えたのも無理はない。 帝国外務省は、国交がないことを理由に、北イエメンからの通行許可を入手していなかったのだ。 “鈴谷(すずや)”は北イエメン軍からすれば、領海・領土に侵入する敵でしかない。 「前門の虎……後門の狼……か」 「どうなさいますか?」 「“ホデイダ”へ通信開け。我、魔族軍の追撃を受け撤退中。通行を許可されたし」 返答は至近距離を狙った攻撃だ。 「図々しい……ってわけか」 もう苦笑するしかない。 「針路そのまま、艦隊を突っ切るぞ!」 ●北イエメン軍飛行艦“ホデイダ”艦橋 “鈴谷(すずや)”が向かう先に展開するのは、アヴドラ提督率いる北イエメン軍だ。 「日本軍、速度落とさずに接近します!」 レーダー手の報告に、アヴドラ提督は無言で頷いた。 「日本軍となれば恐れる必要はない」 「しかし」 アトバラ副司令は異議を唱えた。 「ここでの交戦は日本との国際問題に」 「あんな腰抜け共に気を使う必要なんてあるものか。だいたい、外交チャンネルのない国同士で、どうやって国際問題が起きる?」 「それは」 アトバラはそれでも食い下がった。 相手はメサイアをすでに発艦させているのだ。 「魔族軍の追撃から逃れてきたと宣言しています」 「欺瞞だ」 アヴドラ提督は言い切った。 「問題は、連中が我が国固有の領土を侵していること。違うか?」 「……はっ」 「なら、我々がここで国際法にのっとり、停戦命令を出すことに問題はないだろう」 アヴドラ提督は命じた。 「停船しないならば撃沈しろ!照準、日本軍艦艇!」 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「北イエメン軍索敵レーダー、本艦を照射!」 「どうしても、やるつもりか」 「艦長!8時方向から魔族軍メサイア2騎、本艦を追い抜きます!」 「追い抜く?連中、どこへ?」 「針路には、北イエメン軍が」 「記録しっかりとっておけよ!?あの黒人共に警報を出せ!」 「本艦の対空砲は!?」 「動ける候補生共は、全員対空砲座につかせろ!けん制だけでやらせるんだ!」 海軍艦艇が搭載する、実体弾を使用する対空システムは、砲弾一発ずつの一発必中を前提とはしていない。 敵機の予想針路に面で砲火を叩き込むことで、どれか一発ぶち当てるような、そんな仕組みにすぎない。 別な表現をすれば下手な鉄砲を数撃って当てる仕組みなのだ。 これに対して、飛行艦の対空砲は、弾数こそ少ないが、SC(シップス・コントローラー)の火器管制によって射撃されるML(マジックレーザー)を使用する関係上、一発ごとに命中が期待出来る。 無論、一発必殺の狙撃がそう簡単に出来るはずもないし、こんなことが公然と言われるようになったのは、第4世代の火器管制装置が出回ってからだ。 現在、イエメン軍が装備する飛行艦とその砲は、ML(マジックレーザー)が開発されたばかりの頃の代物。 一発必中なんて夢物語。 撃てるだけマシ。 そんな頃の代物だ。 現在の艦艇の中でも一二を争う高額な装備である火器管制装置を、イエメンのような貧乏国がそう簡単に更新出来るはずもない。 さらに、イエメン軍の配備する飛行艦は、ML(マジックレーザー)砲を主砲以外に搭載していないフリゲート・タイプと、さらに小型のコルベット・タイプにすぎない装備の貧弱さもある。 つまり、何が言いたいかというと――― ●紅海上空 魔法攻撃の火線が走り、すぐ近くの海面で連続した爆発が生じる。 「下手くそがっ!」 派手な爆発ではあるが、騎体が水を被ることさえない。 全く見当違いの場所に攻撃が降り注ぐ中、メースを駆るエーリヒは、僚騎を駆るクンニと共に海面を自在にメサイアで駆ける。 ML(マジックレーザー)を、右へ左へとかわすその機動は、とても人類側のメサイアの出来る芸当ではない。 エンジン出力と、そこから生み出される大推力に裏付けられた、魔族軍メースの真骨頂というべき機動だ。 「クンニ!やるぞ!」 エーリヒは、腰にマウントしていた銃を構えた。 人類の分類で言えば、ML(マジックレーザー)砲を連射出来るML(マジックレーザー)速射砲が陽光に照らされ、黒く鈍い光を放つ。 海面の爆発が段々と近づいてくる。 さすがに接近すれば敵狙いやすいということか。 エーリヒはそう思うが、恐怖だけは感じなかった。 これで恐怖を感じていたら、ずっと昔に死んでいるはずだ。 ズームしたように接近する人類側の飛行艦に、エーリヒは照準を合わせた。 ●“ホデイダ”艦橋 飛行艦サヌアの真横を、メサイアがすり抜けた。 アヴドラ提督の目にはそうとしか見えなかった。 ただ―――すり抜けた。 そう見えたのだ。 だが……。 ズンッ!! 次の瞬間、サヌアは上下二つに引き裂かれたように爆発、炎の塊に変化した。 爆発の衝撃が、斜め後方を飛行していた“ホデイダ”を激しく揺すった。 「なんだ!?」 「メサイアです!」 突然の振動にバランスを崩し、手近にあったパイプを掴んだアトバラは怒鳴った。 「メサイアがやったんだ!提督!」 その時、彼の目に映ったものは、席に座る提督と、その背後の船窓越しに見えるメサイアの青い騎体だった。 ●“鈴谷(すずや)”艦橋 「“ホデイダ”、撃沈!」 「これは……艦長!」 目の前で一方的に沈められていく北イエメン軍飛行艦達を前にした高木副長は、すがるような目で美夜を見た。 「真理!」 美夜はインターホンを掴むと、二宮に回線を開いた。 「敵メサイアをけん制して!その間に“鈴谷(すずや)”はソコトラに逃げ込む!」 ●紅海上空 「了解した」 二宮は答えると、教え子達に命じた。 「全騎、当てなくていいから、敵騎の“鈴谷(すずや)”への接近をくい止めろ!“鈴谷(すずや)”からの対空砲火の巻き添えになるんじゃないぞ!」 「了解っ!」 「2騎同時に動け!1騎がけん制のための砲を撃て、もう1騎は斬艦刀を装備、敵が近づいたら振り回せ!」 ちらりと美奈代騎を睨んだ二宮は続けた。 「楯になってもいい!」 「何で私を見ながら言うんですか!?」 「ふんっ」と、二宮は鼻を鳴らした。 「泉は私と組め。長野大尉は柏と、さつきと宗像でペアを」 先の戦闘で捕獲したハルバードを装備するのは、さつきと美晴。剣は二宮、手斧は長野が装備している。 さつきと美晴は長物が得意だということは、富士学校時代から体に叩き込まれているので、美奈代は文句を言うつもりもない。 飛行戦闘という、メサイア同士の戦闘では異例の戦いでも、リーチを稼げる長者使いを上手く使った方が効率がいいこともわかる。 ただ―――なんで自分が二宮教官と? そんな美奈代の疑問に答えるように、二宮がイヤミたっぷりに言った。 「男運のないオンナ同士、仲良くやろうじゃないか」 「さて……逃してくれるかしら?」
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今日 - 合計 - スーファミターボ専用 SDガンダムジェネレーション 一年戦争記の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 16時06分04秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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紆余曲折の末、“鈴谷(すずや)”がバーレーンに入ったのは、命令から実に3日目の昼すぎのことだ。 魔族軍の攻撃は一切なかった。 ただし、まるで“鈴谷(すずや)”と入れ替わるかのように、ラムリアース帝国軍をはじめ、各国がアフリカめがけて兵力を大量動員しているという情報が美夜達に届けられただけだ。 「暑い!」 手でパタパタと風を送ってみたものの、熱風しか来ないことを知ったさつきは、信じられない。という顔つきで空を仰ぎ見た。 「何よこれ……ここ、本当に地球?」 「言い過ぎだと思うが」 「美奈代は、暑くないの?」 「私も暑い」 「二宮教官も平野艦長も、これじゃあ外に出ないだろうしね」 「仕事で忙しいんだろう?」 「何言ってんのよ」 さつきは楽しげにポンッ。と、美奈代の肩を叩いた。 「この太陽の下、この暑さに“あの二人”が出てごらん?すぐにシミになって、メイクが崩れてそれはもう―――」 そこまで言いかけ、愕然とするさつきの前を通りかかったのは、その二人だった。 「―――ふむ」 甲板の上で女性士官が腕立て伏せをしている。 「この炎天下の下、真面目な士官だ」 エーランドはそうつぶやくと双眼鏡から目を離した。 「それにしても」 ベドウィンに変装したシグリッド大尉がその双眼鏡を受け取りながら言った。 「これは派手にやられましたな」 シグリッド大尉が言うのも無理はない。 船舶が停泊する港周辺の建物のいくつかが黒く焼けこげ、燃料タンクは原形さえ留めていない。何隻かの船が横転したり喫水線をはるかに越えて浸水し、甲板の残して水底に沈んでいる。 ここまで来るまでにも、その余波だろうか。市街地のあちこちが破壊されていた。 中華帝国の破壊工作の結果だ。 本当なら高台から港を見たかったエーランド達だが、銃を持った兵士達が高台や道のあちこちに立っているおかげで、下手な動きが出来ない。 半日がかりであちこち歩き回り、小高い丘にある繁華街の放置された古いビルの残骸から港が一望出来ることを、ようやく悟ったばかりだ。 このビルは火災にあったらしい。 焼けこげた建材や家具が散らばるビルの物陰に隠れているものの、人間で言うならば白人種に属するエーランドは、その豪奢な金髪を白い民族衣装で隠した。 「水中戦隊の仕業、ではないですな」 「人類の仕業だよ。アフリカ近海から太平洋に至るまで、派手に暴れた結果がコレだ」 「そいつは豪勢だ!」 シグリッド大尉は、その浅黒く日焼けした顔をくしゃくしゃに笑って双眼鏡をエーランドに戻した。 「我々も、どうせならそれ位、やってみたいもんですな!」 「―――しっ」 エーランドは小さく、しかし鋭くシグリッド大尉に言った。 「静かにしろ」 ビルの面した通り。 何か罵声のような大声が聞こえてくる。 すさまじいほどの罵声と銃声、そして悲鳴が聞こえてくる。 銃を手にした男達が集団で大通りを歩いている。 その真ん中にいるのは、黄色い肌をした男女だ。 首からは、エーランド達が読めない文字が書かれたプラカードらしいものをぶら下げている。 男女は10名近く。 皆、顔から血を流し、立っているのもやっとという有様の者も少なくない。 そんな彼等を、男達は殺気だった顔で小突いて歩かせている。 立ち止まろうものなら、容赦なく銃尻が叩き付けられ、蹴り飛ばされる。 殴られ、蹴られたくなければ歩くしかない。 エーランド達の目の前で、不意に倒れて動かなくなったのは、まだ服装からして若い女性だ。 ひげ面の男が、銃尻で頭を殴るが女はぴくりとも動かない。 男達が罵声を浴びせ、女を周囲から容赦なく蹴りつける。 それでも動かないとわかるや、体格のいい男がわざとらしい仕草で自動小銃を天に突き上げ、何事か大声で怒鳴ると、銃口を女に向けた。 鈍く乾いた銃声が数発、町中にこだました。 「少佐……あれは」 男達は、小銃弾で蜂の巣にされた女の死体の脚にかけたロープで引きずっていく。 「私刑だ」 エーランドは言った。 「おそらく、この街を攻撃した軍の仲間と思われているんだろう」 「じゃあ、あいつら」 エーランドは無言で手刀で首を切る仕草をした。 「うへぇ」 たまらない。という顔で、シグリッド大尉は舌を出して嘔吐の仕草で返すが、すぐに二人は仕事に戻った。 「とにかく、“鍵”の反応は間違いなく、あの飛行艦から出ている」 「“鍵”は、ここでは降ろさないんですね」 「本国は弓状列島と聞いている。そこまでは、あの船の中だろうな」 「どうします?」 「メースで急襲してとも思うが……」 唸るエーランドの視線の先。 米軍基地に並ぶのは、小豆色のメサイア達。 米軍の主力メサイア“グレイファントム”だ。 無骨なデザインの重装甲が与えられた重厚なフォルムをした巨大な鎧が、四方ににらみを利かせている。 グレイファントムが単なるメサイアだったら、エーランドもここまで躊躇しないだろう。 エーランドは、そっと双眼鏡を構え、グレイファントムを見た。 ざっと見るだけでその騎数は20騎近く。 そのすべてが武装して周辺を警戒している。 エーランドの双眼鏡に仕込まれた魔力分析装置が、その内の一騎を包む魔力反応を分析する。 装甲に張られた装甲魔法は大したことはない。 多くの騎が持つ速射砲も脅威ではない。 問題は、その手が掴む巨大な戦斧だ。 その無骨なまでの刃先には、攻撃系魔法がかかっている。 エルプス系魔法とは違う。 ダメージ増強系の魔法だ。 だが、その魔法の詳細が分からない。どんな効果があるのだろう? 人類のオリジナル魔法だとすれば、あまりにデータ不足だ。 「あの魔法がどの程度のものかわからないと……」 エーランドが危惧するのは、あの斬艦刀の破壊力を知っているからだ。 数十騎があの武器をもっていたら、わずか4騎で戦を仕掛けるのは愚の骨頂だ。 「リスクが高すぎる」 そう、結論づけるしかない。 「どうします?」 「メースでの下手な攪乱は、逆に連中を警戒させかねない」 すぐ近くで歓声と銃声が響き渡った。 「シグリッド。貴様の艦で、潜入工作に長けたは者は?」 「ウチは元々、そういうのが本業です」 「上等だ」 エーランドは嬉しそうに頷いた。 「今晩、かかるぞ」 バーレーンに入港してからというもの、美奈代達女性士官が、代わる代わる見に行く場所がある。 “鈴谷(すずや)”に接続された真水の供給装置だ。 “鈴谷(すずや)”の舷側につけられた取り込み口が開かれ、専用のクレーンに取り付けられたホースがそこに接続されている。 このホースが取り付けられている限り、真水タンクは一杯になるし、艦内では水が潤沢に使える。 美奈代達は、そのホースがつながっていることを確かめては、腕時計を見て仕事に戻る。 一体、何を楽しみにしているのか? 風呂だ。 “鈴谷(すずや)”の空いた居住ブロックには、整備兵がメサイアの廃棄パーツを流用して 作り上げたという伝説の大浴場がある。 大浴場を持つ軍艦なんて、実際“鈴谷(すずや)”くらいなものだろう。 そして、こういう階級組織では、一番最初に使えるのは、当然ながら最も階級の高い者となる。 一番風呂に意気揚々として入ったのは、美夜と二宮だ。 次にMC(メサイア・コントローラー)達と士官、そして下士官と兵達が順番に入ることになる。 女性の長風呂で消費される水量は半端ではない。 外部から水を入れて、常に湯を作らなければ、湯が不足するし、何より汚れて入れたものではなくなる。 美夜と二宮が二人で夕食前1時間、次にMC(メサイア・コントローラー)と女性士官と来て、例えパイロットだろうがなんだろうが、士官候補生でしかない美奈代達は、軍隊士官兵牛馬猫鼠油虫士官候補生のヒエラルキーの最下層に属する者として、当然ながら最後だ。 一度、湯を抜いて、みんなで掃除して、再び浴槽に湯が満たされたのは、夜の9時過ぎだ。 皆が脱衣所で服を脱いで、風呂に入れる喜びを語り合っている時、不意にドアが開いて当然という顔をして入ってきたのは、フィアだ。 皆に優雅な仕草で一礼し、美奈代を殺気立った目で睨み付けると、さっさと服を脱いで風呂場に消えた。 「……まだ、警戒されてるんですかねぇ」と、美晴は少し寂しげに言った。 「私、お昼一緒だったんですよ?」 「あの子、スゴい人気高いんだよねぇ」さつきは服を脱ぐ手を止めて言った。 「明るいし、礼儀正しいし、物腰優雅だし。ちょっといないタイプだよね」 「……おかげで染谷がロリコン扱いされているがな」 宗像は興味がないといわんばかりに服を脱ぐ手を止めない。 「“幻龍改(げんりゅうかい)”のSTRシステムに高圧電流を流そうとした整備兵がいたらしい」 「ロリータ染谷って、都築あたりが喜んで言いふらしていらるらしいよ?」 「あいつ、うらやましいだけじゃないのか?」 「それより……」 さつきは言った。 「貯まっていた下着、あの子の前で洗濯したくないんだけど……」 美奈代達は、パンパンに膨れあがった袋を前に、互いに顔を見合わせた。 裸のおつきあい。 それが、お風呂での日本人の礼儀。 真偽の疑わしいことを言って、さつきと美晴がフィアと戯れている。 “鈴谷(すずや)”乗組員の中では最も年齢的に近いせいもあるだろう。 フィアも楽しげに会話に参加している。 キャーキャーという、楽しげな黄色い声が大浴場に響く。 それと距離をとるのは、宗像と美奈代だ。 元々が長湯だという宗像は、ゆったりと湯船の中で見事すぎるスタイルをさらけ出している。 反面、お腹のあたりが気になる美奈代は、誰を見てもため息ばかりだ。 「あの子、はやく出てくれないかな」 「宗像……お前は本当に」 美奈代はあきれ顔で言った。 「興味のない女の子には恐ろしいくらい冷淡だな」 「……そういうものだろう?」 「そういうものか?」 「うむ」 二人の視線の先ではフィア達三人が背中を流しあっている。 「それにしても……」 白い陶磁器のような肌。折れそうなほど細く長い手足。くびれたウェスト。 そして、服の上からでは想像も出来ないほど豊かな双丘。 「……うっ」 そこまで見た美奈代は、その視線を自分の体に向け、そのまま浴槽の中に沈んだ。 結局、消灯時間が近いことを理由に、さつき達はフィアを浴場から追い出した。 親密になりたいが、それよりもたまった洗濯物をどうにかしたいという本音が勝ったのだ。 「では、失礼します。お休みなさい」 一礼して大浴場のドアを閉めようとしたフィアの手が、不意に止まった。 「あっ。瞬、ごめんなさい。待った?」 「―――まぁ、待て」 顔を真っ赤にして大浴場から飛び出そうとした美奈代を羽交い締めにして止めたのは宗像だ。 「洗濯物、どうするんだ?」 「……っ!」 「明日から履ける下着がなんだろう?」 事態が動いたのはそれからすぐのことだ。 皆が残り湯で洗濯物を洗っていた。 もう誰もいないと思い、こっそりと下着を洗いに来た女性士官や兵が、それぞれの洗い場に陣取り、風呂場は奇妙に賑わっていた。 とても男共には見せられないわねぇ。 誰かがおどけて笑いをとる。 そんなのどかな光景ではあった。 フィーッ! フィーッ! 不意にそんな音が艦内に響き渡ったのは、本当に消灯時間が間近になり、皆が風呂場から出なければならなくなった時だ。 もう、真夜中に近い時間だ。 少なくとも、美奈代達は、その音を聞いたことがなかった。 「何?」 洗い終えた洗濯物を袋に詰めようとしていた美奈代は、その手を止めた。 「侵入者警報です」 誰かが言った。 すると、それを証明するかのように、艦内放送が流れた。 「憲兵隊より警告!艦内に侵入者あり!各ブロックを緊急閉鎖、各員はマニュアル所定の対応をとれ。各憲兵隊員は自由発砲許可、各騎士は憲兵隊の指揮下にて対処せよ」 結局、侵入者は見つからず、徹底した調査の結果、艦内での破壊工作等は確認されなかった。 ただ一つ、犠牲者が出ただけだ。 山科教官だ。 一体何故、その場にいたのかわからないが、普段は閉鎖されている物資貯蔵Fブロックから外部に通じる“F45”緊急脱出用ハッチの間近にある隔壁に頭を潰される格好で死んでいた。 物資貯蔵Fブロックは、メサイアのパーツを保管するための区画であり、深夜、人がいるべき場所ではない。 それが問題になった。 憲兵隊が、各通路に仕掛けたセンサーの反応を確認した結果、侵入者が入り込んだのは、その“F45”緊急脱出用ハッチだと断定したのだ。 根拠は十分にある。 “F45”緊急脱出用ハッチの真下は5メートル程の高さで海面に接している。 不時着水時に艦内から脱出するために用意されたもので、普通は使用されることはない。 そのハッチ周辺から複数の海水に汚れた靴痕と、脱出用のハシゴを引っかけるフックに何かロープのようなモノで擦ったような痕が発見されたのだ。 さらに、ハッチの操作レバー付近に、拭き忘れたと思われる山科教官の指紋が残されていたことが決定打となった。 山科教官がハッチを操作し、外部からの侵入者を招き入れたとしか思えない。 しかし、その理由は? それを解き明かしたのも憲兵隊だった。 山科教官の部屋を徹底的に調べた結果、ベッドのフレームにガムテープで貼り付けることで隠されていたのは、白い錠剤の入った袋だった。 「簡易検査の結果、合成麻薬であることが確認されました」 憲兵隊長の鬼塚軍曹が独特の塩辛声で美夜に告げた。 美夜は、顔をしかめながらテーブルに置かれた錠剤を睨み付ける。 「……鬼塚軍曹」 「はっ?」 「全員の簡易検査を。反応が陽性だった者は構わないから営倉にぶち込め」 「了解であります」 「……頼む」 「……それと」 普段なら、命令があればすぐに動く鬼塚軍曹がその場に立っている。 軍人にとって憲兵は関わりたくない兵種の最たる連中だ。 鬼塚軍曹もそれがわかっており、仕事の用件を除いては、普段から誰とも関わろうとしない。 それはつまり、まだ話が終わっていないことを意味した。 「どうした?」 「米軍憲兵隊からの協力要請がありました。同行を願いたいのですが」 「同行?どこへだ」 「米軍憲兵隊本部です」 美夜と副長の高木は、鬼塚軍曹をつれてバーレーン米海軍基地内部にある憲兵隊本部の正面玄関をくぐった。 憲兵隊を率いるマーロウ大佐がオフィスで出迎えてくれたかと思うと、すぐに美夜達は地下にある死体安置室に連れて行かれた。 清潔感とは違う、言いようのない飾り気のない内装をした死体安置室。 ステンレス製の筒がいくつも壁に詰め込まれて並んでいる。 その一つ一つが、死体を保管するための冷凍ケースだと、さすがに美夜も知っていた。 「こちらです」 鬼塚軍曹同様の寡黙な人物で、鍛え抜かれたフットボール選手を連想させるいかつい体格の持ち主のマーロウ大佐は、部下に命じて、美夜達の前に台に乗せられた死体袋を6体、引き出した。 「死体を見たことは?」 「私は軍人です」 美夜の答えに納得したのか、マーロウ大佐はあごで部下に指示を出した。 部下は、無言で死体袋のジッパーを下げた。 「……うっ」 死体袋をのぞき込んだ美夜が思わずうめいたのも無理はない。 真っ白にふやけてた肉塊がそこにあった。 人間の頭部だが、ザクロのように裂けた頭から青白くなった脳漿がみてとれる。 胃液が逆流しなかったのは幸いだ。 「今朝、スズヤの近くの海で発見された―――黄色人種であることは間違いない」 マーロウ大佐の部下が、すぐに死体袋のジッパーを戻した。 「遺留品はこれです」 ストレッチャーが音もなく運ばれてきた。 銀色に輝くストレッチャーの上には、着衣だろうウェットスーツや酸素ボンベなどが並べられていた。 「さすがに身元を示すようなモノはなにもない。物好きがダイビングでもして、スクリューに巻き込まれでもしたか?普段ならそうとも考えたが」 マーロウ大佐が手にしたのは、酸素ボンベの脇に置かれていたゴム製のケース。 「状況が状況だ。しかも」 マーロウ大佐はゴム製のケースを開いた。 中からはゴルフボール大の黒いブロックがいくつも出てきた。 「こんなものをダイバーが持っているはずがない」 「……これは?」 マーロウ大佐は、慣れた手つきでブロックを指に挟んで美夜達に見せた。 「爆薬です―――他にも」 爆薬をストレッチャーに戻すと、さらに横に置いてあったモノを美夜達に見せた。 銃身をすっぽりと覆うサイレンサーのバケモノのような銃だった。 「64式消音短機関銃です」 「……その名前が来るということは」 「そうです」 マーロウ大佐は頷いた。 「昨晩、スズヤに侵入を試みたのは、中華帝国軍ということになるでしょうな」 「我々としても情報が欲しいのです。出航を差し止めることはしませんが、ご協力を」 マーロウ大佐にそうオフィスで告げられた後、 「艦長」 憲兵隊からの帰り道、高木が問いかけた。 「どうされますか?」 「司令部には報告する」 車に乗り込んだ美弥はそっけなくそう答えたが、 「だが……辻褄が合わん」と、腕組みをして唸りだした。 「……は?」 「考えてみろ、高木少佐」 美夜は言った。 「仮に山科がチンク共に買収された内通者だったとして、奴を用済みだと殺したのがチンク共だと見なしてもいい」 「だが……何故、奴らが殺されるんだ?誰に殺されたんだ?」 「そ……それは」 「山科?バカな。あいつは頭を潰されたんだぞ?いくらなんでも、頭を潰されてなお、相手を殺す?ありえた話ではない。何より」 「……」 「……銃ではない。あれは何か、鈍器に近い武器で殺された痕だった」 「では……相手は騎士」 「……鬼塚軍曹」 ハンドルを握る鬼塚軍曹に、美夜は訊ねた。 「聞き忘れていた」 「―――はっ」 「侵入者は、どこから逃走をはかった?」 「D区画と思われます」 「……思われる?」 「D区画での目撃情報を最後に、行方をくらませています」 「待ってくれ軍曹、D区画とは」 「……部隊には箝口令を敷いています」 鬼塚軍曹は、後ろを振り返ることもなく、まっすぐ前だけを見ながら答えた。 「佐官以上の高級将校向け居住区画。そこから海に逃れたとしか考えられません」 「なっ……」 「何しろ、ハッチを開かずに脱出するためには船窓が必要です。船窓があるのは、あの辺りだけです」 「しかし!」 高木は信じられないという顔で、鬼塚軍曹と美夜を交互に見るだけだ。 「現在、D区画を使用している佐官は一人だけです」 鬼塚軍曹は乱れることもなく言う。 「誰か、報告しましょうか?」 「いらない」 「……いかがなさいますか?」 しばらくの沈黙の後、美夜は言った。 「二人共」 「はっ」 「……はい」 「この件は、私に任せてもらいたい」 「……はっ」 「……憲兵には、難しい依頼ですな」 「個人的感情を交えるつもりはないが……今、彼女を失うことは、“鈴谷(すずや)”にとっては自滅を選ぶようなものだ」 「……戦時の特別判断としましょう」 鬼塚軍曹は言った。 その言葉には、美夜達も頷くしかなかった。 「“白百合の守護者”が銃殺台の露に消えたなんて話は、自分も聞きたくないですからな」