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前話 ある所に、一人の少年が居た。 その少年には親が居なかった。いや、それだけでは無い。少年には名前も無かったのだ。 有ったのは名前と呼ぶには余りにも限定的なもの。任務の時にだけ与えられる仮初めの名、コードネーム。それだけしか無かった。 しかし、少年はその名で呼ばれる事に至上の悦びを感じていた。 一方で、普段はその名を呼ばれる事は決して無い。当然だ。それは名では無いのだから。 だからこそ、日に日に想いは募る。名前が欲しいと……。 決して口には出せないその想い。 少年は分かっていたのだ。 少年を拾った存在、主にとって自分はただの駒なのだと。 主に命じられるがままに人を殺す。 普通の人生を歩む者にとっては異質なそれも少年から見れば普通の日々。いや、普通の者が歩む人生こそ少年にとっては異質に映る事だろう。 その日も、普段と変わらず少年は主より任務を授かった。 しかし、その任務は今までとは少しだけ違っていた。 命じられたのは殺害では無く監視。そして対象は嘗ての魔人、ゼロ。その抜け殻とはいえ期限は不明のオマケ付き。 それでも命じられた当初、少年の心に波風は立たなかった。だが、後にそれは揺らぐ事となる。 翌日、少年は一人の若き王に出会う。それは少年にとって運命の出逢いと言えた。 その王は少年がどれだけ渇望しようとも、決して与えられる事が無かった名前をいとも簡単に、当然のように与えたのだから。 その時からだ。 少年の空虚な心に、自身を拾ってくれた主よりも大きな楔が打ち込まれたのは。 それは、名前と言う名の楔。 王と過ごした僅かな日々。だが、それは少年にとっては幸せな日々だった。 王が微笑む度に、少年の心に暖かい何かが広がる。 やがて、少年は次第に任務に付く日が近づくのを疎ましく思うようになっていった。 任務に就くという事。 それ即ち王の袂を離れる事を意味するものであり、オマケにそれは何時終わるとも知れないものなのだから。 少年は悩んだ。だが、拒む事は出来なかった。 主だけでは無く、王もそれを望んでいたのだから。 後ろ髪引かれる思いで王と別れ、任務に就いた少年。 当初は苦痛でしか無かった。だが、そんな少年の心に次第に変化が訪れるようになる。 初めて送る普通の人生。初めて出来た甘えられる存在。その存在より与えられる無償の愛情。 自分でも気付かぬ内に、少年は任務を楽しむようになっていった。 そして、運命のその日。 少年はささいな事から王の怒りを買ってしまう。 王はそれ程に怒った覚えは無い。自分を裏切れる筈がないとの絶対の自信があったからだ。 そして、それはその通りなのだが少年の心は痛く傷ついた。 が、ここで王は一つミスを犯した。 王は知らなかったのだ。魔人が目覚めてる事に……。 同じ頃、目覚めた魔人は少年を籠絡するべく情報を集めていた。 その時、偶然にも見たのだ。画像の中に映る少年の笑みを。 決して演技には見えなかったその笑み。魔人は少年自身もまだ気付いていない内なる想いにいち早く気付いた。 仮に王もその画像を見ていれば気付いただろう。だが、ここでも王はミスを犯した。 王にとって少年個人の学園での生活態度等どうでも良かった。元々、王はこう考えていたのだ。 「少年は生来の暗殺者。そう簡単にその心に変化が起きる訳が無い」と。 ――慢心―― それはこの王の唯一の弱点と言えた。 一方で、見限られたと思い絶望し疲弊していた少年。その心の隙を魔人が見逃す筈もない。 魔人は言葉巧みに王が打ち込んだ楔をへし折ると、王以上に大きな楔を打ち込んだ。 誕生日と家族という二つの楔を。 その王、ライに名を与えられ、魔人、ルルーシュには誕生日と家族を与えられた少年、ロロは遂にライの意に反する事を決意する。 だが、ロロの心の奥底には未だライに打ち込まれた楔。その切っ先が残っていた。 それが、ロロの心を引き留めた。 優先順位はルルーシュとなったものの、ロロにとってはライもまた大切な存在だという事は変わらなかった。それ程にライが与えたインパクトは大きかったのだ。 一方で、ロロがライに嘘を吐いている事に変わりは無い。 ロロの心を引き留めたその切っ先は、同時に彼の心に鈍い痛みも覚えさせた。 その痛みに必死に耐えながらもロロは考えた。自分に名を与えてくれた名も知らぬ王の為に。 考えた結果、裏切った事が自分を拾った存在、V.V.に知られれば王にも危険が及ぶとの結論に至った。ロロはV.V.の非情さをよく知っていたからだ。 しかし、そこでふと思う。 このままシラを切り続ければ、少なくともV.V.が王に危害を加える事は無いのでは無いか?と。 痛みに後押しされながらも悩み抜いた結果、ロロは「王を護りつつ自分の居場所も護る」そんな端から見れば出来る筈も無い道を選択した。 だが、ロロは知らない。 名も知らぬ王、ライの存在理由を知ったV.V.が、彼には決して危害を加えまいと心に誓っているという事を……。 ―――――――――――――――――――――― コードギアス 反逆のルルーシュ L2 ~ TURN03 ナイトオブラウンズ(中編)~ ―――――――――――――――――――――― 「先生。俺とロロに関する全てのイレギュラーを見逃してもらえますか?」 ルルーシュが命じると、紅い鳥に心を蝕まれた監視員は頷いた。 「分かった。そうしよう。二人とも、余り外を出歩くなよ?」 「「はい」」 そうして、何事も無かったかのように立ち去っていった。 「残るメンバーは、ヴィレッタ先生だけだな?」 最後の監視員にギアスを掛け終えたルルーシュが問うと、ロロは小さく頷きながら言った。 「はい。しかし、枢木スザクが居ます。殺しますか?」 「そういう事はもうやめろ。あぁ、それと……」 「はい」 「変な言葉使いは無しにしないか?俺達…兄弟だろ?」 その言葉にロロの心の内に暖かい何か広がる。そして、それが後押しする。 物言いたげな瞳で見つめるロロ。気付いたルルーシュが問う。 「どうした?」 「実は……もう一人居るんだ」 「もう一人?二人以外にか?」 思わぬ言葉にルルーシュが驚いた様子で尋ねると、ロロはそれ以上の言葉を告げた。 「うん……でも、あいつにギアスは効かない」 「なっ!?ギアスが効かない?どういう事だ?」 「学園…というか、エリア11には居ないんだ」 エリア11に居ないという答えに平静を取り戻したルルーシュは再び尋ねる。 「そいつの名前は?」 しかし、返事は無い。 「ロロ。教えてくれないか?」 怒る事無く柔和な笑みを向けるルルーシュ。その笑みに後押しされたロロは、一瞬躊躇したかのように言葉に詰まったが遂には告げた。 ルルーシュが機情を掌握するに当たって最大の障害に成りうる男の名を。 「……機密情報局長官、カリグラ。機情のトップに居る男だよ」 「カリグラ…暴君の名前だな。どんな男だ?」 「……」 「ロロ?」 再び黙り込んだロロに対して、ルルーシュは少々訝しみながら問うた。 すると、ロロは視線を逸らすかのように俯くと言った。 「そっくりなんだ。兄さ…ゼロに……」 「何だと?」 それはルルーシュでさえも全く予期していない答えだった。 ルルーシュは詳しく尋ねるべく歩み寄る。すると、ロロは突然顔を上げると必死な形相で懇願した。 「で、でも、心配しないで。彼奴は僕が抑えるからっ!!」 ロロ自身、カリグラをどうにか出来るという明確な自信は現時点では無かった。 そもそも、ロロは嚮団から派遣されて機情に席を置いているに過ぎない。 その上、これまでのカリグラとの関係はお世辞にも円満とは言い難く、早急な関係の改善を図る必要があった。 当然、それを知っていた訳では無いが、ロロの必死な形相を見たルルーシュは、果たして任せられるのか?と疑問を懐いた。 そしてルルーシュが何事か語ろうと口を開きかけた時、不意に明るい女性の声が周囲に響いた。 「あーっ!!二人ともこんな所に居た!会長、こんな所に居ましたよーっ!」 「やぁ。シャーリー」 声の主、シャーリーの姿を認めたルルーシュは咄嗟に普段の笑みを貼り付けるが、シャーリーは「今日は許さないっ!」といった様子で膨れっ面をしたまま詰め寄った。 だが、その頬が少し紅潮してるのはお約束。 「もうっ!最近は授業にも真面目に出るようになったと思ってたのに、こんな所で油売って!スザク君の歓迎会が近いんだよ?」 「済まない。ちょっと用事があってさ。なぁ、ロロ?」 突然話を振られた事に、ロロが「えっ?」と少々驚いた表情を浮かべると、それを見たシャーリーは勘違いした。 「ロロのせいにしないの!ロロも無理に付き合う必要無いんだよ?」 「そ、それは誤解――」 ロロは慌てて否定しようとするが、生来、思い込んだら一直線な彼女に通じる筈もなく……。 「いいから、いいから。駄目でしょ?ルル」 最早、ルルーシュは苦笑するしかなかった。既にこの場はシャーリーが支配しており、撤退は容易では無い。 それを理解していたルルーシュは、何とか上手く逃れられないかと話題を逸らす。 「それにしても、良く俺達が此所に居るって分かったな」 だが、ルルーシュには見えていなかった。絶対支配者が近づいている事に……。 「そりゃあ、ねぇ?シャーリーはルルーシュの事になったらぁ……」 突然響いたシャーリーとは別の女性の声。 その声を聞いたルルーシュは、内心天を仰ぎたい気分になった。 声の主は言わずもがな。この学園の首魁にしてルルーシュがコントロール出来ない唯一の存在、ミレイ・アッシュフォード。 ニンマリと笑みを浮かべながら、その豊かな胸を強調するかのように腕を組んで仁王立ちしている彼女の姿を見たルルーシュは、瞬間、心の内で諸手を挙げて降参した。 「な、何言ってるんですか!会長っ!!」 慌ててミレイの元に走り寄ると顔を真っ赤にして抗議の声を上げるシャーリー。対するミレイは悪戯っぽい笑みを浮かべてみせる。 「照れない、照れない」 「べ、別に照れてなんか……」 そんなキャアキャアと騒ぐ二人を余所に、最早全てを諦めていたルルーシュはロロにだけ聞こえる声で呟いた。 「ロロ。その男の事を詳しく話してくれないか?」 「う、うん。でも、目と耳は至る所にあるから……僕の部屋でなら……」 「ああ、それじゃあ夕方にでも――」 「何話してるの?行くよー?」 遮るかのように告げられた声。 先程までの照れていた姿は何処へ行ったのか。ルルーシュ並の切り替えの早さを見せるシャーリーに、ルルーシュは軽く相槌を打つ。 「ああ、今行く」 そう言って二人は彼女達の元まで歩み寄ると、不意にミレイが言った。 「そうそう、ロロ。さっきヴィレッタ先生が探してたわよ?」 「先生が…ですか?」 「ええ、何でも"相談"したい事があるって言ってたわね」 その言伝にロロは一瞬だけ眉を顰めると、何を意味しているのか瞬時に思い至ったルルーシュが背中を押す。 「行って来い。こっちは俺達でやっておく」 「ありがとう。兄さん」 ロロは一言礼を言うと彼女達に会釈した後走り去って行った。 ミレイはロロを見送ると残った二人に号令を掛ける。 「それじゃあ、私達は準備に戻るわよっ!」 「はーいっ!」 「はいはい」 元気一杯に返すシャーリーと、苦笑しながら返すルルーシュ。 最後にルルーシュはロロが立ち去った方向に一瞬だけ視線を移した後、何事も無かったかのように彼女達の後を追った。 ―――――――――――――――――――――― 機情の地下施設に入ったロロは、そこでヴィレッタと会話している人物を見て少々驚いた。 ――枢木…スザク……。 「ロロ、遅いぞ」 ヴィレッタの指摘を聞き流しつつロロは椅子に腰掛けると、ヴィレッタは再びスザクに向き直る。 「それで、接触されてみて何か気付かれた点は?」 「いえ、特に……」 「ではやはり、対象の記憶は戻っていないと判断して――」 「待って下さい。もう暫く調査が必要です」 慎重な姿勢を崩さないスザクに、ロロは僅かに身を乗り出すと抗議の声を上げる。 「僕達の監視が信用出来ないと?」 「C.C.の件もあるだろう?君は今まで通り弟役を頼む」 「…Yes, My Lord」 ロロは面倒な相手だと思いつつも下手に勘繰られるのを避けるべく短く返すと、ヴィレッタが今後の予定を告げた。 「生徒会主催で枢木卿の歓迎会を行うようです。そこで再度確認を」 「分かりました」 そこまで言った後、スザクは考え込むかのように瞳を閉じる。が、次の瞬間、意を決したかのように瞳を見開いた。 「一つ、お願いしておきたい事があります」 「何でしょうか?」 不思議そうに問うヴィレッタと、無言で続きを待つロロ。 スザクは一拍間を空けた後、重々しい口調で告げた。 「今後、自分にも報告を上げて頂きたいんです」 「それは……」 予期していなかった頼み事にロロは内心舌打ちし、ヴィレッタは露骨に眉を寄せる。と、彼女の仕草をスザクは不思議に思った。 「何か、問題でも?」 問われたヴィレッタは背筋を正すと自身の考えを告げた。 「貴卿は私共よりもルルーシュと接触出来る機会は多いかと思います。その上更に報告せよ、とは……失礼ですが、そこまでの必要性は無いのでは?」 「自分には軍務もあります。毎日のように学園に出席する事は出来ないんです。ヴィレッタ卿、お願い出来ますか?」 「……どれ程の精度をお求めなのでしょうか?」 「委細洩らさずにお願いします」 スザクの注文にヴィレッタは少々困ったような表情を浮かべた。理由は簡単だ。 機情の監視対象者には、確かにルルーシュも含まれているのだが第一目標はあくまでもC.C.なのだ。 そのC.C.は、彼女の上司から直々に総領事館に居る旨の一報が画像と共に送られて来ていた。これはどうやって撮られたのか、ヴィレッタ自身未だに謎の部分なのだが……。 故に、今重きを置くのはC.C.の動向であり、機情の戦力はほぼ総領事館周辺に傾注されていた。 今のような多少緩めの監視報告ならば問題は無い。緩めと言っても、C.C.接触に対処するだけの人員は揃っていた。しかし、スザクは精密な報告を希望した。 それを行うには今の人数では足らなかった。かといって、C.C.に充てている人員を順位の低いルルーシュに割り振る事は、余り好ましいとは言えなかったからだ。 一方で、二人の会話を無言で聞いていたロロは内心苛立っていた。 ロロも機情の実情は把握していた。 スザクの願いを聞く事になれば手が足りなくなる。そして、その希望を叶える為には増員は必要不可欠だという事も重々承知していた。 だからこそ苛立っているのだ。折角、ルルーシュが監視員にギアスを掛けて回ったばかりなのだから。 要求を受け入れさせるのは避けさせたかったロロは行動を起こした。 「それは僕達だけで判断出来る事じゃないですね」 それだけ告げて、ロロは絶対に断るであろう男に連絡を取らせるべくヴィレッタを見やる。 ヴィレッタは直ぐにロロの言わんとしている事に気付いた。 そもそも。彼女も当初よりそのつもりだった。そういった裁量権は与えられて無かったのだから。 「……少々、お待ち頂けますか」 ヴィレッタは一言断りを入れてスザクに背を向けると、コンソールパネルに指を走らせ始めた。 すると、それを再び不思議に思ったスザクが尋ねる。 「何を?」 だが、その頃には彼女の指は止まっていた。ヴィレッタは再びスザクに向き直る。 「ロロも言ったように私共には決めかねますので、上の許可を――」 「必要無い!!」 突然の怒号。 ヴィレッタは思わず後退り、ロロでさえも思わず目を見張る。 先程までの平静さも何処へやら。「上の許可」という言葉に過剰反応したスザクは声を荒げた。 「どうしてもと言うのなら、ナイトオブセブンとして命じる!ヴィレッタ・ヌウ!」 「Y、Yes, My Lord!!」 直立不動の姿勢で答礼するヴィレッタを見て、落ち着きを取り戻したのかスザクは軽く頭を垂れた。 「すいません。声を荒げてしまって……」 「く、枢木卿。どうか面を上げて下さい」 よもやラウンズから謝罪されるとは思ってもいなかったヴィレッタは心底慌てた。 だが、彼女がどれだけ頼み込んでもスザクが顔を上げる事は無かった。 「お願いします」 ただひたすらに頼み込む姿勢を崩さないスザクに、どうするべきか悩み続けるヴィレッタ。 そんな二人の姿をロロが興味深げに見つめていると、ヴィレッタはとうとう根負けした。 「分かりました。ラウンズである貴卿のご命令となると、私個人は拒否出来る立場には御座いません」 ロロは思わず目を見張るが、その言葉にスザクは面を上げると謝辞を述べる。 「有り難うございます」 「い、いえ」 そんな二人のやり取りを聞いていたロロは、文句の一つでも言ってやろうとヴィレッタを睨む。が、その時、部屋の中に聞き慣れた着信音が響いた。 ヴィレッタは反射的に身体を震わせてスイッチに視線を落とすと、彼女の態度に相手を悟ったスザク。その瞳が薄暗い色を帯びる。 「どうぞ、出て下さい。彼には俺から話を付けます」 「た、助かります」 ヴィレッタは安堵した表情を浮かべてスイッチを押すと、程なくしてその男は現れた。 「何ガアッタ?」 モニターに映る銀色の仮面。スザクは怨敵に瓜二つの仮面を被る男、カリグラをジッと睨み付ける。 同時にカリグラもスザクの存在に気付いた。 「ヴィレッタ、何故コノ男ガ其処ニ居ル?」 「枢木卿は学園に復学されたとご報告――」 「知ッテイル。私ガ言イタイノハ、何故コノ男ヲソノ部屋ニ入レタカトイウ事ダ」 頬杖を付いて不機嫌極まりないといった様子で語るカリグラを尻目に、ロロは内心ほくそ笑む。 その時、スザクが動いた。 「入ってはいけなかったのか?」 「無論ダ、私ハ貴様ノ入室ヲ許可シタ覚エハ無イカラナ」 「君の許可が必要とは知らなかった」 「デハ、二度ト其処ニハ入ルナ」 「それは出来ない相談だ。それに、俺は君に命令される謂われは無い」 「……ダロウナ。私モ"ラウンズ"ニ命令サレル謂ワレハ無イノダカラ」 機情の長とナイトオブラウンズ。互いに皇帝直属である彼等に命を下せるのは文字通り皇帝以外存在しない。 静寂が部屋を支配する。 このまま牽制し合うだけの時間が流れるかと思われたが、それを無駄な時間だと理解していたカリグラは相手を変えた。 「ヴィレッタ、用件ヲ」 「はい。実は枢木卿がルルーシュの監視報告を要望されてまして、つきましては卿のご裁可を頂きたく通信致したのですが……」 彼女は丁寧に説明するが、そこまで言って言葉に詰まる。すると、続きを請け負うかのようにスザクが告げた。 「けれど、それはもう必要無くなった。そうですね?」 「は、はい」 短く同意するヴィレッタを見て、カリグラはスザクが言わんとしている事を理解した。それは、ある程度は予想していた事でもあったからだ。 「………"ラウンズ"トシテ命ジタカ……」 「そうだ」 簡潔な肯定の言葉に仮面の下でライはスザクを睨み付ける。 同時に、自身の懸案事項が現実の物となろうとしている事に歯噛みした。 「勝手ナ真似ヲ……」 「断るなら断るで構わない。だがその場合、俺は勝手にやらせてもらう」 「………」 頑として譲る素振りを見せないスザクの瞳。 その大切な何かを失ったかのように暗く光る瞳を仮面越しに認めたライは思慮に耽る。 勝手に動かれる事はライにとって好ましい状況では無かった。しかし、認めなければ面倒な事になることは請け合い。 十分理解してはいたものの、簡単に認めてしまうのは何となく不愉快だった。 ライは咄嗟にどうするべきか模索する。最も簡単な方法は直ぐに思い付いたのだが、生憎と手も声も届く距離には居ない。 結果として、スザクの行動をある程度コントロール出来る方法等、一つしか無かった。 だが、答えが出ているにも関わらずプライドが邪魔をするのか。彼にしては珍しく長考していると、この殺伐とした空気に耐えれなくなったのかヴィレッタが動いた。 「あ、あの…カリグラ卿?」 それが切っ掛けとなった。ライはカリグラの仮面を力無く左右に振って見せると結論を出した。 「要望ハ"ルルーシュ"ノ監視報告ノ提供。ソレダケダナ?」 「それと自分が軍務で居ない時、ルルーシュに何か変化があれば直ぐに知らせて欲しい」 「……"ヴィレッタ"。要望通リニシテヤレ」 「よ、よろしいのですか?」 ヴィレッタは驚いた。よもやカリグラが許可するとは思ってもいなかったからだ。だが、それ以上に驚いたのはロロだった。 ――不味いことになった。 ロロが何と言うべきか言葉に悩んでいると、彼女の驚きを目の当たりにしたカリグラは軽口を叩く。 「断ッテモイイゾ?」 が、彼女にそのような事が出来る筈も無い。 「い、いえ!その通りに」 ヴィレッタが慌てて断りを入れると、スザクが謝辞を述べた。 「協力感謝する」 「貴様ガ私ニ礼ヲ言ウトハナ」 「それぐらいは辨えてる」 少々意外だったといった様子で語るカリグラにスザクは釘を刺すが、蒼い瞳は全てを見透かしていた。 「本音ハ?」 「……君の存在は不愉快だ」 一瞬、間が空いたが、さして悪びれた様子も無く吐き捨てるスザク。対して、今度はカリグラが釘を刺しに掛かる。 「ダロウナ。ダガ、コノ私ガ譲歩シタノダ。呉々モ言ッテオクガ、私ノ邪魔ダケハスルナ。邪魔ヲスレバ"ラウンズ"デアッテモ許シハシナイ」 それは脅し以外の何物でも無い言葉だったが、スザクは怯まなかった。 「その言葉、そっくりそのまま返す」 再び睨み付けるスザクに対して、仮面の下ではライが妖艶な笑みを浮かべていた。 「……貴様ヲ殺シテヤリタクナッタ」 「でも、それは出来ない。違うかい?」 「本当ニソウ思ッテイルナラ、愚カノ極ミダナ……」 「君命に逆らう気か?」 スザクが目敏く問い詰めるが、カリグラは無視して続ける。 「……一ツ答エロ。貴様ノ目ニ"ルルーシュ"ハドウ映ッタ?」 「どう、とは?」 「何カ気付イタ点ハ無カッタカ?」 「いや、今の所は何も無い。だが、三日後の歓迎会で全てを明らかにするつもりだ」 薄暗い瞳に決意の光を宿すスザク。それを仮面越しに探るかのような瞳で見つめていたライ。不意にその心に嗜虐心が湧いた。 「歓迎会ノ中心メンバーハ、"ミレイ・アッシュフォード"、"シャーリー・フェネット"、"リヴァル・カルデモンド"、ダッタカ?"ロロ"」 ロロは突然話を振られた事に内心驚きつつも無言で頷く。 「何が言いたいんだ?」 一方で、カリグラの意図を理解しかねたスザクが問うと、仮面の下でライは今度こそ壮絶な笑みを浮かべながら口を開いた。 スザクにとって、決して聞き流す事が出来ない言葉を……。 「純粋ニ貴様ノ復学ヲ祝ウ仲間達ヲ欺キナガラ、嘗テノ友ヲ監視スル。今ノ気分ハドウダ?」 「っっっ!!!」 バンッ!!とスザクは両手を勢いよく机に叩き付けて立ち上がると、鬼のような形相で睨み付けた。 その表情に背筋が凍るヴィレッタと一貫して無表情のままのロロ。 一方、今のライにとってスザクのそれは愉快な見せ物でしか無かった。 「精々、偽リノ友情トヤラヲ楽シムガ良イ」 「カリグラァァッ!!」 刃のように辛辣なその一言は、スザクの緒を容易く断ち切った。 スザクは床に固定されている筈の椅子を力任せに引き抜くと、次の瞬間、モニター目掛けて投げ付けた。 「く、枢木卿っっっ!?」 ヴィレッタは慌てふためきながら、ロロは相変わらずの無表情でそれぞれ咄嗟に机の下に身を隠す。ロロはギアスは使わなかった。ヴィレッタと二人だけの極秘事項と思っていたからだ。 ガシャァァァン!!という凄まじい音と共にモニターは破壊された。 火花を散らすモニター画面。だが、通信機器は健在なようでスピーカーからはカリグラの哄笑が響く。 「クハハハハッ!!ソレガ貴様ノ選ンダ道ダ。耐エラレナイノナラバ去ルガイイ……ソレト"ヴィレッタ"。早々ニ復旧サセロ」 「Y、Yes, My Lord!!」 ヴィレッタが机の下から這い出ながら応じる一方で、スザクは何も言い返さなかった。いや、言い返せなかったのだ。スザクは、拳を固く握りしめると怒りに肩を震わせる事しか出来なかった。 「当日、私ハ所用デ席ヲ外ス。タダ、何カアレバ一報ハ入レルヨウニシロ。報告ヲ楽シミニシテイル。デハ――」 と、カリグラはそう言って通話を切ろうとする。 だが、その時ヴィレッタよりも早く机の下から這い出したロロが呼び止めた。 「待って下さい!」 普段なら聞く筈もない。だが、強い口調で懇願するロロを怪訝に思ったカリグラは手を止めた。 「……何ダ?」 「監視員はどうするつもりですか?ルルーシュの監視を強化するのなら今のままでは人数が足りません」 ロロは制服に付いた埃を叩きながら問うた。増員を決定する気なら直ぐにでもルルーシュに伝えなければと思っていたからだ。 しかし、カリグラにその気は無かった。 「ソレニツイテハ現状維持デ良イ」 その言葉に拍子抜けしつつも、増員しないに越したことは無いと思ったロロはそれ以上何も言わなかった。 だが、それは又してもスザクには聞き流す事が出来ない言葉だった。 「どういうつもりだ?」 批難の色を隠すこと無く問うスザクの声を聞きながら、カリグラは語る。 「C.C.捕縛ハ陛下ヨリ賜ッタ至上命題。居場所ガ明ラカトナッタ今、餌ニ対シテ増員スル理由ハ見受ケラレナイ」 「だが――」 「ソレニ言ッタ筈ダゾ?私ハ"ラウンズ"ニ命令サレル謂ワレハ無イ、ト。ソレトモ何カ?貴様ハ私ノ裁量権ニマデ踏ミ込ンデ来ル気カ?」 「君はルルーシュを…ゼロを甘く見ている」 「甘ク見テイレバ、貴様ノ要望ヲ受ケ入レタリハシナイ」 「…………」 スザクは思わず押し黙った。再び沈黙が辺りを漂う。すると、カリグラはそれを終了の合図と判断した。 「話ハ終ワリノヨウダナ。デハ――」 カリグラはそう告げると通信を切った。 だが、言い返せなかったとはいえ納得出来なかったスザクはヴィレッタを問い詰める。 「出来るんですか?今の人数で……」 「それは…何とも……」 出来ない等と言える筈も無い。 ヴィレッタが言葉に詰まっていると、代わりにロロが口を開く。 「出来ますよ」 驚いた様子で振り向いたスザクに対して、ロロは少し言葉を変えて重ねるかのように言う。 「やります」 すると、ロロの瞳から滲み出る力強い光。それを決意と受け取ったスザクは小さく頷いた。 「……分かった。君の言葉を信じる。それとヴィレッタ卿――」 「何でしょうか?」 「モニターの件申し訳ありません。修理に掛かった費用は自分に回して下さい」 最後にそれだけ告げたスザクは踵を返すと部屋を後にした。 そんなスザクの後ろ姿をヴィレッタと同じく無言で見送るロロ。その瞳が怪しく光る。 ――残念ですけど、僕はあなたの期待に応える気は無いですよ? ―――――――――――――――――――――― その日の夕方。 歓迎会の準備からやっとの思いで解放されたルルーシュは、ロロから様々な情報を聞きだそうとロロの部屋に来ていた。 だが、生憎ロロはミレイに捕まっており、まだこの部屋には戻っていない。 今、ルルーシュはロロが来るまでの間、携帯片手にC.C.と連絡を取っていた。 『そうか、学園は支配下に置いたか。流石だな、坊や』 「詰めの部分が残ってはいるがな。ところで、そこに卜部は居るか?」 『生憎、今は席を外している。藤堂達とトレーニング中だ』 「そうか……なら詳細は後で伝えるとして、卜部にはニイガタでの物資受け取りに出向くよう準備を進めておけと伝えておいてくれ」 1年近く拘束されていた他のメンバー達は今のニイガタ、いや、エリア11の現状を詳しくは知らない。 方や卜部は1年間ブリタ二アの追跡から逃げ続けた実績がある。ルルーシュはこの任務に彼以上の適役は居ないと考えていたのだ。 ルルーシュがそこまで考えている事を知っていたのか。または、さして興味が無かったのか。 C.C.は『分かった』とだけ返した。 話が一段落したところで、ルルーシュは問う。自分にとって、目下最重要課題となっている二人の行方を……。 「何か分かったか?」 だが、帰って来たのは落胆する結果だった。 『いいや、何も。相変わらずお前の妹に関しても、ライの事に関しても。何も分からず仕舞いだ』 「そう…か……」 C.C.が一拍の間も置かずに返した事にルルーシュは、本当に探しているのか?と思いながらも、それを口に出す事無く少し暗めの口調で返した。 すると、C.C.は何故か自分が悪いかのように思えてきた。 『そういうお前はどうなんだ?』 咄嗟に問い返すと、ルルーシュは慎重に言葉を選びながら言った。 「一人、気になる男が居る…らしい」 『らしい?』 C.C.は何とも煮え切らない発言をするルルーシュを珍しく思った。 「ゼロと同じ仮面を被った男。機情のトップに居る男だそうだ」 『ギアスを使えば早かろう?』 何を手を拱いているのかと思ったC.C.が一番手っ取り早い方法を提示したが、ルルーシュはあっさりと否定した。 「このエリアには居ない。まだ俺も見た事は無いが、普段はモニター越しに報告を行うそうだ。ギアスは使えない」 『……その男が学園に監視網を敷いたのだな?』 言葉尻に不快な色を滲ませるC.C.をルルーシュは不思議に思った。 「恐らくそうだろうな。だが、それがどうかしたか?」 『いや、あの監視網には随分と苦労させられたと思っただけだ』 「愚痴か?魔女らしくないな」 『それ程に付け入る隙が無かったんだよ。だが、話を聞いているとその監視網も最早ザルに近いな』 冒頭にルルーシュより今の学園の状況を聞いていたC.C.は素直な感想を口にしたが、ルルーシュは慎重な姿勢を崩さなかった。 「表向きはそうだが、恐らくは……俺の変化を窺っている」 『疑われているのか?』 まるで他人事のように問うC.C.。ルルーシュは思わず眉を顰めた。 「その可能性は否定出来ないが、忘れたのか?」 『何をだ?』 「機情の標的はお前だぞ!?お前が喰い付くのを待ってるという可能性もある!!」 思わず声を荒げてしまったルルーシュだったが、C.C.はあくまでもC.Cだった。 『やれやれ、モテる女は辛いな』 彼女の軽口を聞いたルルーシュは、先程まで歓迎会の準備に追われていた事も影響したのか一気に虚脱感に襲われた。 最早、文句を言う気力も失せてしまったルルーシュは、盛大に肩を落としてみせると話題を変えた。 「兎に角、今は好機なのは間違いない。奴らに隙を見せたのが仇になった事を教えてやろう。この学園は、もうすぐ俺の自由の城になる」 ルルーシュは自分を元気付けるかのように、口角を吊り上げて陰惨な笑みを浮かべると、不意にC.C.が呟いた。 『そうか。それは…………頼もしいな』 「……おい、今の間は何だ?何を考えている?」 気になったルルーシュが追及するが、C.C.は何事も無かったかのように惚けて見せる。 「ん?何も。あぁ……物資受け渡しの件は卜部に伝えておく。それじゃあな、おやすみ、ルルーシュ」 「おい!まだ話は――」 ルルーシュの引き留めも空しく、C.C.は通話を切ってしまった。 「何なんだ?あの魔女は……」 先程のC.C.の含みを持たせる態度を疑問に思うルルーシュだったが、答えは出なかった。 ルルーシュは携帯から視線を移すと部屋の窓を見やる。外は茜色に染まっていた。 「あいつはこんな時間から寝る気なのか?」 そう呟いた後、ルルーシュはロロが戻るまでの間、ただ無言で夕陽を眺めていた。 ―――――――――――――――――――――― C.C.とルルーシュが話していた頃、政庁ではちょっとした騒ぎがあった。 それを止めに入った同僚の姿を認めた騒ぎの元凶、ジノ・ヴァインベルグ。 「おぉ!スザク」 彼は自身の駆るナイトメア、トリスタンのコックピットから身を乗り出すと嬉しそうな声で名を呼んだ。 そして、コックピットから降りたジノは破顔しながらスザクの元に駆け寄ると、対するスザクは少々呆れたように言う。 「ジノ。ランスロットを持って来て欲しいと頼んだのに……」 「あぁ、来週ロイド伯爵と一緒に来るよ。それより何だい?この服――」 「学校帰りだからね、制服」 「へぇ、これが……」 興味津々といった様子でいるジノにスザクは苦言を呈する。 「ジノ。幾ら名門貴族とは言え少しは普通の――」 だが、ジノはそれを聞き流しながら背後に回るとスザクを抱き締めるかのように体を預けた。 それはジノなりのスキンシップだった。 それを理解していたスザクはその行為を拒否する事は無かった。いや、何度言っても聞かない事から半ば諦めに近い感情を持っていたと言う方が正しいかもしれない。 しかし、自分よりも大きな相手に凭れ込まれては堪らない。 「あの…重いんだけど――」 スザクが抗議の声を上げた時、一帯に一人の女の声が響いた。 『お仕舞い?』 同時に一機のナイトメアが二人の前に降り立つと、その姿を認めたスザクは思わず呟いた。 「モルドレッド…アーニャまで来ていたのか」 『お仕舞い?』 声の主はアーニャ・アールストレイム。 彼女は、先程の自分の問いに対して答えが返って来なかった事からか今一度問うた。するとスザクの代わりに彼から身体を離したジノが答える。 「終わりだってさ、スザクが」 『ふーん………………つまんない』 心底残念そうに呟いたアーニャはコックピット内で携帯を弄り始めた。 ジノとアーニャ。 二人の実力を良く知っているスザクにとって、軍事面でこれ程頼りになる援軍は無いだろう。 スザクは、モルドレッドを見つめながら一人思う。 ――これで、戦力は十分過ぎる程揃った。ルルーシュ、3日後の歓迎会で全てを明らかにしよう。 ◇ スザクが一人決意を懐いていた頃、通路の天上に巧妙に隠匿されていたカメラが三人の姿を捉えていた。 それから送られて来る映像をモニター越しに眺めながら、彼等の会話に聞き耳を立てている人物が二人。 その内の一人が言う。 「盗撮と盗聴。共に感度は良好みたいだね」 すると、もう一人はその言葉を少々不快に思ったようだ。 「何となく嫌な響きだな……諜報活動と言え。V.V.」 だが、指摘されたV.V.は愉快そうに笑みを溢すのみで反省の色を見せないかった。 「ライ、君は妙な所に拘るよね。でも、政庁の至る所に取り付けるなんてさ……よく気付かれなかったね」 「設置した者達は皆、元は優秀な鼠だったからな」 関心した様子でいるV.V.を尻目にライはさも当然のように返した後、手に持ったティーカップに視線を落とすと感慨深げに言った。 「しかし、便利な時代になったものだ」 「それ、何だか古くさい台詞だよ?」 軽口を叩きながらクスクスと笑うV.V.を余所にライは語る。 「今も昔も、情報というのは鮮度が命だ。あの頃は早馬を出しても手元に届くにはそれなりの時間が掛かったからな」 「人の歴史は戦いの歴史。戦争が通信技術を進歩させたんだよ」 V.V.の指摘にライは成る程な、と思うと同時にその元凶の名を口にしようとする。が、V.V.の言葉がそれを遮った。 「それをさせているのが神。でも、僕は思うんだ。人々を争わせる神なんて必要無い。そんな神様なら……殺してしまおうって」 「それがお前の願いだったな」 陰惨な響きを持ったその言葉に、思い出したかのように呟くライ。そんな彼の言葉をV.V.が補足する。 「それだけじゃないよ。これは君の母親と妹の仇にもなるんだから」 「ああ、だからこそ私はお前達と共に歩んでいる。その為ならば、どれ程汚れた事であっても行うまで。これもその一環だ」 モニターに映る彼等の姿を眺めながら、ライは平然と告げた。 今のライの行為は所属が違うとはいえ仲間を監視している事に他ならない。 いや、ライ自身は仲間だとは思ってはいないが、それでも盗み見ているという事実に代わりは無い。 端から見れば良心の欠片も無いと思われるに足る行為。 だが、V.V.はそう思ってはいなかった。 「諜報機材を設置したのは公の場所だけだよね?」 「公室にも有る。だが、それがどうした?」 「つまり私室には設置していないという事だね……僕はそこに君の最後の良心を感じるよ」 良く分かってるでしょ?とでも言いたげに満面の笑みを浮かべるV.V.。 だが、ライが真面目な表情を崩す事は無かった。 「私は必要と認めれば私室であっても行うが?」 「折角褒めてあげたのに……」 呆れたように告げるV.V.を見て、ライは僅かに口元をつり上げた。 「それは気付かなかった」 「……嘘吐き」 V.V.が軽く溜息を吐いてモニターに視線を戻すと、ライも同じように視線を戻す。 「しかし、枢木一人でも億劫なのだが……よもやラウンズが増員されるとはな……」 「君ならどうとでも出来るでしょ?頑張ってね。ライ」 先程の事を引き摺っているのか、他人事のように語るV.V.。 ライは、少々やり過ぎたと思いつつ、微苦笑を浮かべたその口元にゆっくりと紅茶を運んでいった。 次話 ライカレ厨 40 *
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ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブをお気に入りに追加 楽天課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> 楽天GORAでコースガイドを見る、予約をする。 情報1課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> #bf 外部リンク課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> ウィキペディア(Wikipedia) - ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ 楽天GORAで探す プレー曜日 平日 土日祝 プレー料金 指定なし 5,000 7,000 9,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 円~ 指定なし 5,000 6,000 8,000 10,000 11,000 13,000 15,000 17,000 19,000 21,000 23,000 25,000 円 エリア 全地域 北海道・東北 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 関東 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 静岡県 北陸 新潟県 富山県 石川県 福井県 中部 岐阜県 愛知県 三重県 近畿 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 中国 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 四国 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 九州・沖縄 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 海外 Amazon.co.jp ウィジェット 保存課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> 使い方 サイト名 URL 0314_golf-ladies_165x100%5B1%5D.jpg ezaki-g165.jpg 20090902_golf_putter_165x100.jpg 1221_golf-comparison_165x100.jpg 情報2課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> #blogsearch2 成分解析課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの95%は鉄の意志で出来ています。ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの4%は乙女心で出来ています。ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの1%は白い何かで出来ています。 報道課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> ゴルフ場買収再開の狼煙か「アコーディア・ゴルフ」が岡崎カントリーを傘下に - M&A Online 【ラウンド招待券】「ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ」平日ラウンド無料招待券3人 - ZAKZAK 情報3課 <ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ> #technorati JAWS_260.jpg CAJ3CYVY.jpg 楽天GORAゴルフ場索引 北海道・東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州・沖縄 海外 楽天売れ筋ランキング ゴルフ総合 クラブ(メンズ) クラブ(レディース) ボール グローブ シューズ メンズウエア レディースウエア バッグ ヘッドカバー トレーニング用具 パーツ 小物 コンペ用品 その他 楽天売れ筋ランキング レディースファッション・靴 メンズファッション・靴 バッグ・小物・ブランド雑貨 インナー・下着・ナイトウエア ジュエリー・腕時計 食品 スイーツ 水・ソフトドリンク ビール・洋酒 日本酒・焼酎 パソコン・周辺機器 家電・AV・カメラ インテリア・寝具・収納 キッチン・日用品雑貨・文具 ダイエット・健康 医薬品・コンタクト・介護 美容・コスメ・香水 スポーツ・アウトドア 花・ガーデン・DIY おもちゃ・ホビー・ゲーム CD・DVD・楽器 車用品・バイク用品 ペット・ペットグッズ キッズ・ベビー・マタニティ 本・雑誌・コミック ページ先頭へ ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ このサイトについて 当サイトはキーワード毎にインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ページをブックマークしておけば、ほぼ毎日そのキーワードに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、キーワードが同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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バイオレット・ヴィレッジの戦い 惑星マーズの戦いには勝利したものの、 ルスト軍は未だ、地盤を固めるには至っていなかった。 そのためには時間が足りず、圧倒的に出遅れていたのだ。 そこで引き続き同盟状態のカレン軍に頼み込み、 ストレンジャー軍駐留中のバイオレット・ヴィレッジに 攻撃を仕掛けるよう、要請をしたのであった。 カレン軍としてもセシリアの思惑は別にして、 ストレンジャー軍を攻める事自体に特に異議は無く、 先にストレンジャー軍を攻める事が決まったのであった。 かくしてルスト軍はこの間に地盤を固める事となる。 カレン軍は奇襲作戦を採用し、守りの要として デリア=ラルを、奇襲要員としてハイラム=ガトーを それぞれ単独行動させる事とした。 この急報に慌てたのがストレンジャー軍であった。 エドウィンは急遽、対抗作戦を立案し、 逆にカレン軍本陣への奇襲を画策。 フロントを指名し、その任務に就けたのである。 また、守りの要にはリアなどを配置、 連合軍の思惑とは裏腹に、それなりの態勢で臨むに至った。 しかし、この両軍奇襲という混沌とした互いの編成が、 対抗戦最大の乱戦になろうとは誰も予想出来ないのであった。
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声優 セイバー セイバーオルタ 川澄綾子代表作「To Heart」(神岸あかり) 「のだめカンタービレ」(野田恵) 「灼眼のシャナ」(吉田一美) 「苺ましまろ」(桜木茉莉) 「怪物王女」(姫) 「かのこん」(源ちずる) 「ゼロの使い魔」(アンリエッタ) 衛宮士郎 杉山紀彰代表作「NARUTO」(うちはサスケ) 「BLEACH」(石田雨竜) 「コードギアス 反逆のルルーシュ」(リヴァル・カルデモンド) 「おおきく振りかぶって」(高瀬準太) 「もやしもん」(川浜拓馬) ランサー 神奈延年代表作「剣風伝奇ベルセルク」(ガッツ) 「Get Backers -奪還屋-」(美堂蛮) 「マクロス7」(熱気バサラ) 「スーパーロボット大戦シリーズ 」(アクセル・アルマー) 「バッカーノ!」(ロニー・スキアート) 「聖闘士星矢 冥王ハーデス編」(水瓶座のカミュ) 「真・三国無双シリーズ」(曹丕) ライダー 浅川悠代表作「ラブひな」(青山素子) 「あずまんが大王」(榊さん) 「劇場版機動戦士Ζガンダム」(ロザミア・バダム) 「一騎当千」(趙雲子龍) 「スターオーシャン3」 (ネル・ゼルファー) 「とっとこハム太郎」(トンガリくん) バーサーカー 西前忠久代表作「ソウルクレイドル 世界を喰らう者」(ガンツフルト) 「MOONLIGHT MILE」(マクダウェル) 「スーパーロボット大戦シリーズ 」(カイ・キタムラ) 「魔人探偵脳噛ネウロ」(ペドロ・ニシカワ、教師、柏木誠一) 「湾岸ミッドナイト」(稲田) ギルガメッシュ 関智一代表作「機動武闘伝Gガンダム」(ドモン・カッシュ) 「テイルズオブデスティニー」(スタン・エルロン) 「機動戦士ガンダムSEED」(イザーク・ジュール)、 「フルメタル・パニック!」シリーズ(相良宗介)、 「ドラえもん」(骨川スネ夫(2代目)) 「らき☆すた」(兄沢命斗) 「のだめカンタービレ」(千秋真一) 「新世紀エヴァンゲリオン」(鈴原トウジ) 「武装錬金」(火渡赤馬) アサシン 三木眞一郎代表作「頭文字D」(藤原拓海) 「バーチャファイター」(結城晶) 「ポケットモンスターシリーズ」(コジロウ) 「スーパーロボット大戦シリーズ」(リュウセイ・ダテ) 「フルメタル・パニック!シリーズ」(クルツ・ウェーバー) 「機動戦士ガンダム00」(ロックオン・ストラトス) 「BLEACH」(浦原喜助) キャスター 田中敦子代表作「攻殻機動隊」(草薙素子) 「うたわれるもの」(カルラ) 「スーパーロボット大戦シリーズ」(ヴィレッタ・バディム) 「ストリートファイターIII」(春麗) 「式神の城III」(ふみこ・オゼット・ヴァンシュタイン) 遠坂凛 植田佳奈代表作「マリア様がみてる」(福沢祐巳) 「魔法少女リリカルなのはA s、StrikerS」(八神はやて) 「ハヤテのごとく!」(愛沢咲夜) 「魔人探偵脳噛ネウロ」(桂木弥子) 「魔界戦記ディスガイア2」(雪丸) アーチャー 諏訪部順一代表作「テニスの王子様」(跡部景吾) 「灼眼のシャナ」(フリアグネ) 「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(スティング・オークレー) 「BLEACH」(グリムジョー・ジャガージャック) 「GUILTYGEAR XX アクセントコア」(ヴェノム) 「FINAL FANTASY Ⅹ」(シーモア・グアド) 言峰綺礼 中田譲治代表作「HELLSING」(アーカード) 「ケロロ軍曹」(ギロロ伍長) 「MELTY BLOOD」(ネロ・カオス、ネコアルク・カオス) 「空の境界」(荒耶宗蓮) 「GULTYGEAR2 OVERTURE」(ソル・バッドガイ) 「戦国無双シリーズ」(上杉謙信、徳川家康) 「COMPILATION of FINAL FANTASYⅦ」(ヴァイス) 間桐桜 下屋則子 代表作「DS版FINAL FANTASY 4」(リディア) 「神無月の巫女」(来栖川姫子) 「武装錬金」(河合沙織) 「オトメディウス」(エリュー・トロン) 「ヴィオラートのアトリエ~グラムナードの錬金術師~」(ヴィオラート) ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト 伊藤静代表作「ハヤテのごとく!」(桂ヒナギク) 「D.Gray-man」(リナリー・リー) 「ToHeart2」(向坂環) 「ヤッターマン(第2作)」(上成愛/ヤッターマン2号) 「灼眼のシャナ」(ヴィルヘルミナ・カルメル) 「真月譚・月姫」(遠野秋葉) 「魔法先生ネギま!」(柿崎美砂) 「魔法少女リリカルなのはStrikerS」(シャリオ・フィニーノ、オットー、ディード) バゼット・フラガ・マクレミッツ 生天目仁美代表作「ハヤテのごとく!」(桂雪路) 「ToHeart2」(十波由真) 「灼眼のシャナ」(マージョリー・ドー) 「真月譚・月姫」(アルクェイド・ブリュンスタッド) 「苺ましまろ」(伊藤伸恵) 「スクールランブル」(周防美琴) リーゼリット 宮川美保代表作「ドルアーガの塔 〜the Aegis of URUK〜」(エンレ) 「Canvas2 〜虹色のスケッチ〜」(杉原紫衣) 「黒神 The Animation」(邪陀) 「けいおん!」(先生) 「夏のあらし!」(倉本) ゼロ・ランサー 緑川光代表作「テイルズオブデスティニーシリーズ」(リオン・マグナス、ジューダス) 「コードギアス~反逆のルルーシュ~R2」(黎星刻) 「SLAM DUNK」(流川楓) 「新機動戦記ガンダムW」(ヒイロ・ユイ) 「スレイヤーズ」シリーズ(ゼルガディス=グレイワーズ) イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 門脇舞以代表作「びんちょうタン」(ちくタン) 「LEMON ANGEL PROJECT」(渚砂みる) 「ご愁傷さま二ノ宮くん」(月村真由) 「こどものじかん」(宇佐美々) 「ストライクウィッチーズ」(サーニャ・V・リトヴャク) 葛木宗一郎 中多和宏代表作「アイドルマスター XENOGLOSSIA」(ジョセフ・真月) 「頭文字D Fourth Stage」(舘智幸) 「彩雲国物語」(黄奇人)
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■『ゾク』とは? ●族パチ天国CRぶっこみの元さん必勝攻略本 レモン「なんでそんなもの読まなくちゃならないのよ。 わたし、パチンコみたいな脳細胞を使わないギャンブルには興味ないの」 ギャンブルそのものに興味がないわけではないらしい。 やっぱり、血筋だろうか。 ●『続々三匹が斬る』 レモン「あのキャスティングは一種の奇蹟よね。 最初バラバラの立ち位置にいた3匹が絡んでく過程が好きよ。 好きな時代劇だけど、特に関連書籍を読んだ覚えはないわねえ」 ●『続・人間の証明』 レモン「そうそう、たしかそう。 なんだか薄気味の悪い話だったわねえ。 たしかジャンルはミステリーで、『続』って付いてるくらいなんだから、なにかの続編なんでしょ」 ミステリー小説か。 ■ミステリー小説を探す ●レイナの家に たしかに、レイナの家というかルアフ先生の本棚には古今東西のミステリー小説がそろっている。 でも、あの人にはあの通り、わざとはぐらかすクセがある。 また暗号が増えてしまう気がする。 ●図書館に 【午後5:00 図書館】 この町にある図書館は2、3年前に新築されたもので、子供向けの絵本から難しい専門書まで、かなりの蔵書量があると聞く。 聞く、というのはつまり、実際に来たことがないということだ。 俺は、あまり読書家な方じゃない。 図書館の中はしんと静まりかえっていた。 夕方になっているからだろうか。児童書コーナーに子供の姿はない。 ふと、ひとつの机が目に付いた。 古い新聞が散らばっている上に、分厚い本が開きっぱなしのまま載せられている。 机の左右では椅子がふたつ、乱れた位置で佇んでいた。 なにか調べ物をしていて、慌てて立ち上がったというふうだった。 マナーの悪い利用者もいるものだ。 ゼラド「閉館は6時だって。急がなくちゃね」 そうだ、こんな机に構っている場合じゃない。 俺は文庫本コーナーに向かった。 ゼラド「これかなあ」 ゼラドが一冊の文庫本を手に取っていた。 その背表紙には、『続・人間の証明』とある。 著者の名前はセイイチ・モリムラ。 主に二十世紀のニホンで活躍したミステリー作家だった。 かなりの著作があり、本棚の一角にはおなじ著者の名前がいくつも並んでいた。 その中のひとつ、『人間の証明』というタイトルが俺の目を引いた。 ■調べる ●『続・人間の証明』を ぱらぱらとページをめくっていると、『生体を裂きしメスにて檸檬割る』という文字列が俺の目に飛び込んできた。 ルアフ先生がいっていたのは、この小説で間違いないらしい。 ●『人間の証明』を ぱらぱらとページをめくっている途中で、俺ははたと手を止めた。 『ストーハ』という文字列が目に飛び込んできたからだ。 ゼラド「そっか、『ストーハ』っていうのは」 俺の横から文庫本を覗き込みながら、ゼラドが呟く。 普段はのんびりとしている彼女だけど、たまにこういう表情を浮かべる瞬間がある。 こういうとき、ゼラドは信じられない閃きを発揮するんだ。 ゼラド「じゃあ、『斉藤寝具』っていうのはsightseeingのことなのかな?」 そうか、聞き違いか。 『人間の証明』は、まだニホンで英語が一般的でなかったから可能だったミステリーだったといえる。 ニホン人とはよっぽど英語が苦手な民族だったようで、 『What time is it now』を『掘った芋いじるな』、『Water』を『藁』、『I get off』を『揚げ豆腐』など、 冗談なんじゃないかと思うような間違いをしていたらしい。 俺も、おなじような間違いをしていたのかもしれない。 ゼラド「えーと、『サ・イン』? 『サーイン』? 『シャイン』? 『シュアイン』?」 ■『サ・イン』とは? ●サランヘヨ いくらなんでもそれはないと思う。 でも、その意味するところはいつかちゃんとゼラドに対していうつもりだ。 ●修羅院 なんだか、探したらありそうな感じがするけど。 しかも、屈強な男たちがひしめいてそうな感じもするけど。 生憎と、ちょっと心当たりがない。 ●シュライン ゼラド「シュライン、聖堂、聖地、神社!?」 この町で神社っていうと。 ■どこへ行く? ●ゾンボルト家 まあ、神棚くらいあるかもしれないけど。 たぶん、あるんだろうなあ。ドイツ人のご家庭なのに。 とはいえ、いくらなんでも神棚を神社呼ばわりするとは思えない。 ●ケイサル神社 【午後6:00 ケイサル神社】 日が暮れてきた。急がないと。 この町にたったひとつだけある神社が、ケイサル神社だ。 ケイサルという名前のおじいさんと、その孫娘のルサイケが二人で住んでいる。 ゼラド「……」 高い石段を登ってきたからだろうか。ゼラドが足をふらつかせた。 ヴィレアム「大丈夫か、ゼラ……」 声をかけようとした瞬間だった。 突如としてゼラドが身体を丸め、俺に体当たりを仕掛けてきた。 まったく予期しなかった衝撃に、俺はたまらず尻餅をついた。 その目の前で、ミニスカートの裾が翻る。 ゼラドは一目散に駆け出していた。 おかしい。普段の彼女からは考えられない俊敏さだ。 ひょっとしたら、ゼラドではないのかもしれない。 ヴィレアム「まさか、若い母さん!?」 俺は立ち上がり、ゼラドのあとを追った。 本堂の横をすり抜け、雑木林の中に入る。 薄暗い中に、ゼラドの小さな背中があった。 ヴィレアム「ゼラド!」 俺の声は、突如轟いた銃声によってかき消されてしまった。 銃声だ。俺は慌ててベルトのあたりをさぐった。 ない。ベルトにはさんでいた、若い母さんの拳銃がなくなっていた。 体当たりされたときに奪い取られたのか。 銃声が何発も連続した。 あまりにも正確なウィーバースタンスで拳銃を握りしめ、ゼラドは銃弾を放ち続けていた。 銃口が向かう先には、古ぼけた祠がある。 銃弾を受けて、扉がボロボロに砕け散ってしまっていた。 ■どうする? ●祠を守る たしかに祠が壊されているのは愉快なものじゃない。 だけど、銃弾から命がけで守ろうと思うほど俺は信心深いたちじゃない。 ●ゼラドを止める ヴィレアム「やめるんだ、ゼラド!」 俺はゼラドの手に飛びつき、拳銃をもぎ取ろうとした。 ゼラド「わあぁっ、わあぁぁっ、わぁぁぁぁっ!」 幼い子供のようなわめき声だった。 ゼラドの顔色は紙のように白くなり、白い歯を固く噛み締めていた。 それこそなにかに取り憑かれたように、引き金を引き続けている。 銃弾が尽き、カチカチと虚しい音がするようになっても引き金から指を離そうとしない。 明らかに異常だった。 これはゼラドじゃない。 かといって、若い母さんだとも思えない。 いったい、なにが起こってるっていうんだ。 ゼラド「わあぁぁぁーーーーっ!」 甲高く叫んだかと思うと、ゼラドの腕からふっと力が抜けた。 ゼラドが俺の胸の中に倒れかかる。 暖かさと柔らかさに、俺の心臓がかすかに揺れる。 いや、ときめいてる場合じゃない。 ゼラドの身体は熱かった。 ロマンチックな意味じゃない。不吉な意味で熱いんだ。 ヴィレアム「ゼラド、大丈夫か、ゼラド!」 ゼラドは応えない。いや、応えられないのか。 焦点の定まっていない目を2、3度しばたかせ、がっくりとくずれ落ちる。 意識を失ったのか。 血色を失った唇から、苦しげな吐息が漏れている。 大きな胸が不規則に上下していた。 ■どうする? ●襲う 落ち着け。 俺まで錯乱してどうする。 ●祠に運び込む ゼラドは俺の腕の中でぐったりとしたまま動かない。 病院に運ぶべきか。いや、ついさっきゼラドが見せた行動を考えると、うかつに人と会わせるのは危険かもしれない。 ゼラドが銃を向けていた祠が目に入る。 銃弾を受けて木製の扉はボロボロに壊れていたが、建物そのものは無事だった。 中に入ると、真っ暗だった。四方の壁を見ても、ロウソクの類はひとつもない。 長く締め切られていたのだろうか、しめっぽく、かび臭い。 それに、これはなんだろうか。なんともいえない独特の臭いがあった。 奥には石灯籠に似た石塔が鎮座し、その周囲では正方形をした木札が散らばっている。 火袋に当たる部分に、白い布が敷かれているのが見えた。 かなり古いものらしい。昔は白かったのだろう布は、ねずみ色に汚れていた。 ただ、中央部分が浅くへこみ、その部分だけは変色の度合いが薄い。 なにか置かれていたが、最近になって持ち去られたように見える。 ご神体泥棒でも出たんだろうか。 ともあれ、せまいながらもゼラド1人を横たえておくスペースはありそうだ。 俺はゼラドを祠の中に運び込んだ。 数分が経った。 ゼラドは古ぼけた板の間の上に横たわったままだ。 目を覚ます気配はない。 切なげな吐息だけが、休むことなく俺の耳を震わせていた。 ゼラド「……お……兄ちゃ……」 ちくと、胸が痛む。 ゼラドには、昔から実の兄のように面倒をみてくれていた人物がいる。 俺がゼラドに対するのとおなじように、ゼラドがその人物に対してある種の感情を抱いていることは、ずっと前から知っていた。 勝ち目はないのかもしれない。何度もそう思った。 それでもあきらめきれなかった。 その挙げ句が、これか。 くそ、俺はなんて馬鹿なんだ。 若い母さんに取り憑かれたことで、やっぱりゼラドの体調は万全じゃなかったんだ。 それなのに俺ときたら、ゼラドをあちこち連れ回して。 ゼラド「……んんっ」 ゼラドが苦しげに呻き、細い眉を歪める。 ■どうする? ●救急車を呼ぶ 俺はポケットから携帯電話を引っ張り出した。 アンテナは一本も立っていない。圏外だ。 ●キスする マウス・トゥ・マウスのことか? ゼラドはべつにおぼれたわけじゃない。 ●服を脱がせる ゼラドの手が、苦しげに胸のあたりをさまよった。 服がきついのかもしれない。 そういえば、人並み外れて大きなバストを持つ彼女は、合う服がないとよくこぼしていた。 俺はごくと唾を呑んだ。 違うぞ。これは、そういう意味じゃない。あくまで、介抱としてだ。 自分に言い聞かせるような、誰かにいい訳するようなことを呟きながら、俺はゼラドの胸元に手を伸ばした。 と、そのときだった。 どん、と遠くで空気が揺れた。 祠がミシミシと音を立てて揺れ、天井から細かいものが降り注いでくる。 地震でもあったのだろうか。 そう思ったときだった。 ギイと、いやな音をさせて半ば壊れかけていた祠の扉が開かれた。 俺は目を疑った。 発育過程の雌豹のような体格にブルーのボディースーツを貼り付かせ、青みがかった髪を持つ少女が祠の入り口に立っていた。 若い母さん、イングレッタ・バディム、なのだろうか? ???「見ぃつけた」 しゃがれた声だった。 これは、違う。俺は直感した。 たしかに、若い母さんは普段から大人びている。 その一方で、単に感情表現を知らないだけの子供のような部分があることを、俺は知っている。 目の前にいるこれには、その両方がない。 深い皺ができるほど口を横に押し広げ、赤々とした口の中でいやに長い舌をぴちゃぴちゃと踊らせている。 野生動物を思わせる生臭さと、老婆を思わせる老獪さ、それに、見ただけで嫌悪感を催させるような異様さだけがあった。 イングレッタ「どきな」 のそりと、若い母さんの姿をした何者かが祠の中に入ってくる。 と、そのときだった。 俺の真横で鋭い風が吹いた。 ゼラドが突如飛び起き、祠の戸めがけて突進したのだ イングレッタ「じゃぁおっ!」 若い母さんの口からヤマネコのような声が飛び出す。 身を翻してゼラドの突進を避けるや、鋭角に折り曲げた肘を頭上に振り上げた。 打ち落とされた肘がゼラドの背中に突き刺さる。 と同時に、下から突き上げられた膝が容赦もなくゼラドの鳩尾にめり込んだ。 無茶だ。俺は声もなく悲鳴を上げた。 勝敗は目に見えている。 中に若い母さんが入っているとはいえ、ゼラド自身は特別な訓練なんて受けたことがない普通の女の子だ。 身体が着いていくわけがない。 しかも、今は理性が働いていないような異常な状態だ。 対して、若い母さんの動きにはためらいもなければ隙もない。 イングレッタ「面倒、かけさせるんじゃねえよ」 崩れ落ちたゼラドの髪をつかみ、若い母さんはきゅうと唇をVの字に歪めた。 ■どうする? ●イングレッタに挑む 俺は板の間を蹴って跳び、若い母さんの手首をつかもうと腕を伸ばした。 その腕を、あっさりと弾かれる。 がらあきになった懐の中に、コンパクトな構えを取った若い母さんが飛び込んできた。 小刻みな、無数の打撃。ひとつ残らず食らった。 肋骨がメキメキと軋み、肺から空気が絞り出される。 ふいと意識が飛びかけた。 そこに、痛烈な突き蹴り。 吹き飛ばされた。背中をしたたかに打ち付ける。 ダメだ。とてもじゃないが近づけない。 ●ゼラドを突き飛ばす とにかく、ゼラドを若い母さんから引き剥がさなくちゃ。 俺は板の間を蹴って跳び、肩からゼラドにぶつかった。 祠の扉を完全に壊し、ゼラドが雑草の上に転がり出る。 危険な気配が俺の感覚を鋭く刺激する。 真横からの痛烈な一撃が俺の顔面にめり込んだ。 ぐわんと揺れた視界の中で、若い母さんが踵を返す。 またゼラドを捕まえる気か。 俺は手を伸ばし、若い母さんの肩を後ろからつかんだ。 イングレッタ「邪魔すんじゃねえよっ!」 若い母さんの口からは聞いたことがない、荒々しい怒鳴り声だった。 ヴィレアム「若い母さん、いったい、なにがどうなってるんだ。 ゼラドを、どうするつもりだ」 イングレッタ「知れたこと。食らうのよ」 視界に火花が散った。 食らった。裏拳。鼻の下にある急所、人中にモロだ。 頭部に立て続けに食らった衝撃に、脳が悲鳴を上げる。 続いて、来る。後ろ蹴り。とっさに受け止める。 しかし若い母さんは寸秒の間も止まらない。 小さな拳を顔の前で揃え、俺の懐に飛び込んでくる。 ■どうする? ●乳をもぐ 女性というものは、乳房をつかまれると反射的に動きを止めると聞いたことがある。 あまり褒められた手段じゃないけど、緊急事態だ。 俺は小振りな乳房に向かって手を伸ばした。 鋭い痛み。 手をはたき落とされた。 肩から背中にかけて、がら空きの姿を相手にさらす結果になる。 脇腹に痛烈な一撃が突き刺さる。 次の瞬間、ぐいと身体を後方に引っ張られた。 柔道でいわれるところの奥襟を取られた。 大外刈りの変形のような投げ技。床に叩きつけられる。 まったく無防備な姿をさらした瞬間に、喉を踏みつけられた。 命の危険を感じる。 俺は自分の馬鹿さ加減をののしった。 もっともガードが固められた胸元を攻めればこうなると、わかりそうなものだったのに。 ●髪をつかむ 男女問わず、兵士や格闘家は髪を短く刈り上げているものだ。 それは、格闘戦をやる上で長い髪の毛が大きな弱点になるからにほかならない。 いうまでもなく、人間はほかの生き物と比べると異常なほど頭部が大きい。 そこに深く根付いた髪の毛をつかまれれば、全身のコントロールを失う。 若い母さんも、そのくらいのことを知らないはずがない。 それでも彼女が髪を伸ばしているのは、自分の腕前について絶対の自信があるからだろう。 ただし、今の若い母さんならどうだ。 荒々しい息を吐き、目をギラギラとたぎらせるその姿には、普段の冷静さがまるでない。 いけるかもしれない。 俺は若い母さんの髪に向かって手を伸ばした。 つかむ。つかめた。 若い母さんがいまいましげに顔を歪める。 ヴィレアム「わあぁぁぁっ!」 無我夢中で、俺は若い母さんの身体を振りまわした。 若干の抵抗が入る。俺はますますメチャクチャに喚きたてた。 俺と若い母さんはもつれ合うように祠から飛び出し、雑草の上に転がった。 俺の下に、若い母さんの顔があった。 ほとんど偶然だったとはいえ、俺は若い母さんを組み敷いていた。 いくら相手が若い母さんでも、単純な体格と腕力では俺が上だ。 このままおかしなことをしなければ、若い母さんを捕まえておける。 イングレッタ「けひひひひ!」 奇怪な笑い声を上げて、若い母さんがぐわと口をあけた。 白い歯が上下に広がり、そして噛み合わされた瞬間火花が散る。 ゼラド「ヴィレアムくんっ!」 ゼラドの悲鳴が聞こえたような気がした。 俺が感じたのは、ただ『熱い』というひと言だった。 真っ赤なものが俺の眼前に押し寄せる。 炎、なのか。まさか、若い母さんが火を吐いた? 俺はたまらず顔をのけ反らせた。 髪の焦げる異臭が鼻を刺激する。 さらに、電撃に似た衝撃が俺の全身を貫いた。 五感が一瞬機能を止める。激痛が身体を麻痺させる。 俺の身体を押しのけ、若い母さんが立ち上がるのがわかった。 おれには、なにもできない。 熱風が俺の全身に吹き付けていた。 かすれた視界は一面の赤に彩られている。 火事だ。 若い母さんが吐き散らした炎が、草や木にまわったのか。 燃え盛る炎の中で、ゼラドと若い母さんが対峙しているのが見えた。 逃げろ。俺の口は、そのひと言すら発してくれない。 イングレッタ「手間ぁかけさせんじゃねえよ。 あたしゃぁ、おめぇを食らうんだからよ」 ゼラド「うん」 こくんと、小さく、しかしはっきりとゼラドが頷く。 ゼラド「わかるよ。今は、わたしもあなたも、イングレッタちゃんだから」 イングレッタ「だったら、おめぇ」 ゼラド「うん、ごめんね。 わたしの中のイングレッタちゃんは、あなたを怖がってる」 イングレッタ「怖いだぁっ?」 若い母さんがぎりと歯ぎしりをした。 その全身が一瞬青く発光したかと思うと、青い稲妻が大量にほとばしり出た。 電撃は四方に散らばり、無数の木々を一瞬で黒焦げにし、打ち倒す。 イングレッタ「てめぇ、どんだけだったと思ってんだ!」 地響きの中で、若い母さんの姿をした何者かは荒れくるっていた。 イングレッタ「500年、500年だぞ! わたしゃぁ、500年も待ったんだ! その挙げ句に、てめぇがわたしを嫌がるっつうのかよぉっ!」 放たれる叫び声と、吹き荒れる紫電の中で、ゼラドはとつとつと歩く。 雷撃に肩口を焼かれても、その歩みは揺らぐことがない。 荒れくるう若い母さんに近づくと、その顔に向かって白い手を伸ばした。 怒りの皺が刻み込まれた頬を、両側から覆う。 ゼラド「怖がることないんだよ? どっちも、イングレッタちゃんなんだから、ね」 誰に話しかけているのかもわからないゼラドの言葉に、若い母さんの姿をした何者かがはっと息を呑んだ。 イングレッタ「おめえは、そうか、若いわたしと溶けて」 ゼラド「大丈夫。わたしがあなたを食べてあげる。 わたしの口の中なら、なにも怖くないでしょう?」 野獣の形相を呈していた若い母さんの顔が、不意に和らいだ。 長い旅路の末にようやく自分の家に帰り着いた子供のようだと、俺は思った。 若い母さんが、どこからか握り拳大の石を取り出した。 鈍い青色に輝くその石を、ゼラドに向かって差し出した。 ゼラドが、小さく頷いた。 青い光が膨らんだ。 溶け込むように、ゼラドと若い母さんの姿が見えなくなる。 しばらくの間、気絶していたらしい。 俺の前で、ゼラドと若い母さんが倒れている。 全身の痛みに歯を食いしばりながら、俺は二人のところに身体を引きずっていった。 ヴィレアム「ゼラド、若い母さん」 返事はない。しかし、心配もないように思えた。 パチパチと火が爆ぜる音に囲まれながら、ゼラドも若い母さんも穏やかな顔をしている。 静かな寝息すらたてていた。 安堵しかけた横から、熱風が吹き付ける。 そうだ、火だ。 俺は二人の身体を両手に抱え、周囲を見渡した。 完全に炎に囲まれている。隙間はまったく見えない。 しかし、このままここにとどまっていれば間違いなく全員焼け死んでしまう。 できるか。 二人を火からかばいながら、炎の壁を突破する。 もしも炎が分厚ければ、そこで命運は尽きる。 それでも、やらないわけにはいかない。 俺は下腹に力を入れた。 と、そのときだった。 突風、いや爆風が起きた。 炎が吹き散らされる。 炎のカーテンに破れ目ができた。 なにが起こったのか考えている暇はない。 俺は二人を抱え、土煙が上がる中に飛び込んでいった。 ???「何者だっ!」 敵意を含んだ声。男、いや少年の声だった。 そして、聞き覚えのある声だった。 濃い土煙の中に、二人分の影が浮かび上がる。 灰色がかった銀髪を持つ少年、そして赤みがかった髪を持つ小柄な少女が並んで立っていた。 ヴィレアム「ハザリア?」 ハザリア「貴様、ヴィレアムか?」 【午後9:00 病院】 急な患者ということで、俺たちはおなじ病室に押し込められた。 ヴィレアム「つまり、あの爆発はお前がやらかしたものだと」 ハザリア「つまり、あの火事は貴様らが起こしたものだと」 俺とハザリアは、隣り合ったベッドの上で互いに睨み合っていた。 ヴィレアム「お前はなに考えてるんだ。死ぬかと思ったぞ!」 ハザリア「ふざけるな貴様ぁっ! せっかく氷結地獄から脱出したと思ったら火炎地獄に迷い込んでしまったときの俺の恐怖がわかるか!」 ヴィレアム「この、ビビリ!」 ハザリア「このヘタレが!」 リトゥ「あの、二人とも」 マリの妹であるリトゥ・スゥボータがおたおたと口をはさむ。 そのまま、ハザリアたちはなにやらぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。 あいつらはいつもこうなんだ。相手にしていると傷に障る。 ヴィレアム「でも、あの若い母さんはなんだったんだろう」 俺はちらりとふたつ隣のベッドを見やった。 若い母さんは、まだ目を覚まさないまま寝息を立てている。 ゼラド「あれは、引き裂かれたイングレッタちゃん。 氷の中で、500年も閉じこめられてたんだって。 500年もなにも食べてなかったら、それはちょっとイライラしても、仕方ないよねえ」 いや、あれは『ちょっとイライラ』なんていうレベルじゃなかったと思うけど。 それを、ゼラドは近所にいる更年期障害のオバサンのことのように話すのだ。 でも、どうしてゼラドにそんなことがわかるんだろう。 俺の視線に気が付いたのか、ゼラドはどこか困ったような笑顔を浮かべた。 ゼラド「あのとき、わたしとイングレッタちゃんの心はほとんど溶け合ってたの。 だから、ちょっとだけ事情がわかるっていうか」 フィジカル優位とメンタル優位という言葉を、若い母さんは使った。 つまり、あの荒れくるっていた若い母さんにはメンタルというか魂がほとんど入っていなかったのだろう。 それなら、あのケダモノじみた言動も少しは理解できる。 ヴィレアム「ゼラドを食らうとかいってたあれは、 ようするに元の1人の若い母さんに戻るっていう意味だったのかな」 ゼラド「うん、たぶん」 ヴィレアム「でもそうすると、なんでゼラドの中にいた若い母さんはあんなに抵抗したんだろう。 元に戻らなくちゃっていうのは、自分でもいってたのに。 魂が溶けて、まともな判断ができなくなってたのかな」 ゼラド「それもあるんだろうけど」 ゼラドはどこか悲しげな表情を浮かべて、ふいと空中に視線をさまよわせた。 ゼラド「なんかね、イングレッタちゃんはわたしの中から出ていきたくなかったみたい」 ヴィレアム「まさか、ゼラドの身体を乗っ取ろうと?」 ふると、ゼラドは緩くかぶりを振る。 ゼラド「なんかね、わたしの中は居心地がよかったみたい」 それは、どういう意味だろう。 俺は若い母さんが寝ているベッドを見やった。 驚きに身体が止まる。 ベッドはもぬけの殻だった。 脇にあった窓が開け放たれ、クリーム色のカーテンが夜風に揺れている。 あの人は、本当に何者なんだろう。 ;ENDING ;黒で塗りつぶし(裏画面も含む) #FILLBLACK =1 ;ENDING後 ;エピローグ 明けて覚めると、俺は落胆することになった。 あの日のことを、ゼラドはまったく覚えていないらしい。 どこからといえば、若い母さんに取り憑かれたところからだ。 あれもこれもどれも、すべて忘れてしまったのだという。 ゼラド「今日連絡があったの。あのね、お兄ちゃん、もう少しで帰ってくるって」 今日も、今までとなにも変わらない一日だった。 ゼラドは目をウキウキと輝かせて俺に話しかける。 俺とゼラドの関係はなにひとつとして変わっていない。 ゼラドの、あの人に対する感情もなにも変わらない。 俺のゼラドに対する感情だけが、痛みを伴う膨張を続けるだけだ。 ゼラド「それでね、お兄ちゃんと話したの。 今度ヴィレアムくんと三人でどこか行こうって!」 ヴィレアム「俺も?」 ゼラド「うん、あの日、ヴィレアムくん、カッコよかったから!」 いいかけて、ゼラドははたと口を押さえた。 ゼラド「あれ、いつカッコよかったんだろ」 なにかいおうか、いってもいいのかと慌て始める俺の前で、ゼラドはやっぱりいつもの通りに笑うのだった。 ゼラド「ま、いいよ。ヴィレアムくんだって、お兄ちゃんのこと好きだもんね!」 ゼラドがいて、あの人がいて、俺がいる。 今は、その関係でいいのかもしれない。 でも、これから徐々に変えていこう。 いつでも、あの日くらいの勇気が出せるように。 ゼラドが困らないくらいカッコいい姿を見せられるくらいに。 #GOTITLE
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アーント・ペグズ・ヴィレッジストア ショップ:Aunt Peg s Village Store 東京ディズニーシー オープン:2001年9月4日 所属:アメリカンウォーターフロント ケープコッドエリアにある唯一のショップで、アットホームなペグおばさん*が経営している。赤い羽目板の外壁に青緑の屋根が特徴的。 ケープコッドエリアらしく、ダッフィー*のグッズが充実している。 かつては東京ディズニーシーで唯一、『くまのプーさん』のグッズを扱う店として知られていた。 店の裏手には家庭菜園がある。
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忠犬クヴィレット 651 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/11/30(月) 00 40 49 ID LrhdJXfh なんか、ニュースに出てた。可愛すぎる…のでちょっとこうしてみた。 ≫649 就学前だがどうか? スパッツ 652 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/11/30(月) 00 57 23 ID a/pVbvJ0 ?PLT(15000) クヴィレットがこのスレに!可愛い! 653 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/11/30(月) 03 16 42 ID TpNZLOi9 ああ、すげー恐縮してたあの仔なwかわいい
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ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブをお気に入りに追加 楽天GORAでゴルフ場を探す 北海道・東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州・沖縄 海外 ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブとは ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの95%は鉄の意志で出来ています。ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの4%は乙女心で出来ています。ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの1%は白い何かで出来ています。 ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブの報道 ゴルフ場買収再開の狼煙か「アコーディア・ゴルフ」が岡崎カントリーを傘下に - M&A Online 【ラウンド招待券】「ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ」平日ラウンド無料招待券3人 - ZAKZAK ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ@ウィキペディア ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブのリンク #bf ページ先頭へ ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ このページについて このページはヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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蘇れ、英雄戦記 ――暗い。 彼の歩く道は、果てしない闇に包まれていた。 それは今歩いている場所が光すらほとんど届かない海底だから、という理由だけではない。 彼の感じる闇は、どんな夜でももたらすことのできないほど、暗く重かった。 その道を歩き続けて、行き着く先。 彼には、それが見える。 多くの命と想いを踏み躙り、最後にたった一つ残った悪意が、哀しき高笑いを上げる姿。 殺し合いの中で運命を歪められた男が、失われた愛しい人を求めて、新たな悲劇を巻き起こす光景。 そんな不思議なイメージが、彼の頭の中に過ぎる。 未来を覆い尽くすのは、それらと同質の闇。 そこには一欠片の希望も救いも感じられない。 あの時と同じだ。 いや……あの時とは比較にならないほど、感じる闇は色濃い。 破滅。虚無。絶望。そして、さらなる悪夢。 彼には予知能力があった。未来を垣間見ることができた。 その未来は……暗雲に包まれていた。 死亡者26名。僅か8時間で、当初の3分の1を軽く上回るほどの人間の命が失われた。 覚悟はできていたはずだった。悲しいかな、人間は決してそこまで強い存在ではない。 死の恐怖や生への執着から、命を奪う者・奪われる者が多少なりとも発生することは、予測の上だった。 だが……これは多少どころの数ではない。 まさか、ここまでとは……予測を遥かに上回る絶望的状況に、さしものギリアムも言葉を失うほかなかった。 その中には、かつて激戦を繰り広げたインスペクターの首領と幹部の名前も含まれていた。 そして……彼の仲間の名も。 (タスク……!) 放送の全てを馬鹿正直に鵜呑みにするわけではない。 だが、これがシャドウミラーの戯言であると一蹴できるほど、彼は冷徹にはなり切れない。 義理人情に厚く、仲間を愛する彼だからこそ……仲間を失うことを何より恐れ、許さなかった。 悲しみと怒り、そこから沸き起こる衝動。 彼が死んだというなら。その可能性があるというなら。 すぐにでも飛び出し、彼を殺した者を探したい。 犯人に、自分の怒りをぶつけたい。彼の無念を晴らしたい。そんな感情に駆られる。 しかしそれらは、彼自身の理性によって抑えられる。 怒りのままに刃を掲げることこそ、シャドウミラーの思う壺であるとわかっているからだ。 それでなくとも、過去に家族同然の仲間を失った時、感情に任せ先走った結果不覚を取ったこともある。 もう、あの時とは違う。自分を見失ったりはしない。 だから、今はただ彼に、そして死んでいった者達にせめてもの黙祷を捧げるだけだ。 DC戦争以来多くの大戦を共に戦い抜いてきた仲間、それがタスク・シングウジだった。 厳しい戦いの中で、彼は持ち前の陽気さから常にムードメーカーとして部隊の空気を明るくしていた。 その姿も、もう見ることはできない。 彼の死は仲間達にどれだけの悲しみをもたらすことだろう。 特に彼を憎からず想っている金髪の少女は、そのまま生きる意志すら失ってしまうのではないか。 そこまで思えるほど、ここ最近の彼女はタスクに依存している感が―― ……最近の? そういえば、殺し合いに巻き込まれたタスクは、本当に最近の……自分と同じ時間軸のタスクなのだろうか? 今の自分の時間よりも過去、または未来から来たという可能性はないのか? 真壁一騎と遠見真矢の例もある。彼らと同じケースが、タスクにも適用されるとしたら? ヴィレッタやユウキにしてもそうだ。 ここにいる彼らは、自分と同じ時間の……同じ世界の人間なのだろうか? もしそうだとすれば。彼らが別の時間、別の並行世界の者だとすれば。 ここにいるタスクが死んだとしても、自分の世界にいるタスクは―― (……) それがどうした?だから何だというのだ? 仮に別の世界のタスク・シングウジだとしても、タスクが死んだということに何の変わりがある? 知識を得すぎたが故の弊害だろうか。 思考を腹立たしいほど冷徹かつ合理的に働かせる自分に、時に嫌悪感すら覚える。 並行世界の彼だから死んでも問題はないなどと、そんな非情なまでの割り切り方は彼にはできない。 本当にそれくらい割り切ることができれば、かえって楽なのかもしれない。 だが、そんなものは結局ただの傲慢な自己満足。そして人としての一線を越えることと同義でもある。 無論、越えた先に得られる地位は神でも超越者でも何でもない。力や知識に溺れただけの、ただの愚者。 ギリアム・イェーガーは、人間だ。それで十分だった。 (過去のケース……と言っていたな、アクセルは) 放送の中でアクセルの口にした言葉を思い出す。 言葉の通りに受け取るなら、過去にも同じようなバトルロワイアルが行われたことになる。 この殺し合いは、何度も行われている中の一回だというのか? そして、今行われているこのバトルロワイアルが完遂されたとすれば。 これもまた、過去のケースとなるのだろうか? いったい、どういうことだ? 俺の知らない所で、何が起きているというのだ? この残酷な殺し合いが、あまりにも甲斐のない悲劇が……幾度も行われている? (……冗談ではない) 淡々と喋っているように見えて、アクセルの口調からは愉悦の念が確かに滲み出ていた。 それが意図的なものか、はたまた本心からのものかどうかはわからない。 また、ここにいるアクセルが自分の世界の彼なのか、並行世界の彼なのかどうかも。 もはや、どちらでも構わない。ここにいるアクセル・アルマーは、間違いなく敵だ。 そしてシャドウミラーも、何としても打倒すべき悪しき存在であることを再認識する。。 どんな理由や理想があろうが、断じてこの愚行を許すわけにはいかない。 止める。このバトルロワイアルを。 そして、次の可能性があるというのなら……潰す。これから先、二度と繰り返させない。 彼は歩き続ける。 闇に満たされた、暗黒の未来へと連なる道を。 向かう先から、来るべき未来から、声が聞こえてくる。 無駄だと。諦めろと。お前のその行動も、所詮は悲劇の糧にしかならないと。 それでも、彼は歩みを止めはしない。 未来に闇しかないから、どうだというのだ。 もし目指す先に光がないというのなら。希望が存在しないというのなら。 自分達が希望となろう。 未来に蔓延る闇を切り裂き、光をもたらすまでだ。 希望の芽は、確かに存在する。 真壁一騎が、遠見真矢が。 相羽タカヤが。彼についていくことを選んだ、エルピー・プルも。 最初の場でヴィンデル達に敢然と立ち向かったロム・ストール。 もちろん、自分の仲間であるヴィレッタ・バディムとユウキ・ジェグナンも忘れてはならない。 そして、まだ見ぬ戦士達。殺し合いを良しとしない者達は少なくはないはずだ。 その可能性を信じ続ける限り、希望の光は絶対に消えることはない。 あの時もそうだった。 破滅を迎えるはずだった未来を、彼らは確かに切り拓いてみせた。 暗黒の未来を、光ある未来へと変えてみせた。 あのかけがえのない仲間達は、証明してくれた。 彼らの見せてくれた光を信じる限り、俺の心は決して折れはしない。 ヴィンデル・マウザー。お前は人間を舐めた。 そのことを、今度は俺達が、これから証明してやる。 ――俺達が、エルピスだ。 【ギリアム・イェーガー エステバリスカスタム・アキト機(機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-) パイロット状況:良好 機体状況:損傷軽微、EN消費(中) スクリューモジュール、メガ・プラズマカッター装備 現在位置:F-6海底(南) 第1行動方針:G-7施設でクロガネと合流する 第2行動方針:仲間を探す 第3行動方針:首輪、ボソンジャンプについて調べる 最終行動方針:バトルロワイアルの破壊、シャドウミラーの壊滅】 【1日目 14 10】 BACK NEXT 096 第一回放送 投下順 098 拡散する情報――そして惑わすもの 0 [[]] 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 093 take the wave ギリアム・イェーガー 1 [[]]
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蘇れ、英雄戦記 ――暗い。 彼の歩く道は、果てしない闇に包まれていた。 それは今歩いている場所が光すらほとんど届かない海底だから、という理由だけではない。 彼の感じる闇は、どんな夜でももたらすことのできないほど、暗く重かった。 その道を歩き続けて、行き着く先。 彼には、それが見える。 多くの命と想いを踏み躙り、最後にたった一つ残った悪意が、哀しき高笑いを上げる姿。 殺し合いの中で運命を歪められた男が、失われた愛しい人を求めて、新たな悲劇を巻き起こす光景。 そんな不思議なイメージが、彼の頭の中に過ぎる。 未来を覆い尽くすのは、それらと同質の闇。 そこには一欠片の希望も救いも感じられない。 あの時と同じだ。 いや……あの時とは比較にならないほど、感じる闇は色濃い。 破滅。虚無。絶望。そして、さらなる悪夢。 彼には予知能力があった。未来を垣間見ることができた。 その未来は……暗雲に包まれていた。 死亡者27名。僅か8時間で、当初の3分の1を軽く上回るほどの人間の命が失われた。 覚悟はできていたはずだった。悲しいかな、人間は決してそこまで強い存在ではない。 死の恐怖や生への執着から、命を奪う者・奪われる者が多少なりとも発生することは、予測の上だった。 だが……これは多少どころの数ではない。 まさか、ここまでとは……予測を遥かに上回る絶望的状況に、さしものギリアムも言葉を失うほかなかった。 その中には、かつて激戦を繰り広げたインスペクターの首領と幹部の名前も含まれていた。 そして……彼の仲間の名も。 (タスク……!) 放送の全てを馬鹿正直に鵜呑みにするわけではない。 だが、これがシャドウミラーの戯言であると一蹴できるほど、彼は冷徹にはなり切れない。 義理人情に厚く、仲間を愛する彼だからこそ……仲間を失うことを何より恐れ、許さなかった。 悲しみと怒り、そこから沸き起こる衝動。 彼が死んだというなら。その可能性があるというなら。 すぐにでも飛び出し、彼を殺した者を探したい。 犯人に、自分の怒りをぶつけたい。彼の無念を晴らしたい。そんな感情に駆られる。 しかしそれらは、彼自身の理性によって抑えられる。 怒りのままに刃を掲げることこそ、シャドウミラーの思う壺であるとわかっているからだ。 それでなくとも、過去に家族同然の仲間を失った時、感情に任せ先走った結果不覚を取ったこともある。 もう、あの時とは違う。自分を見失ったりはしない。 だから、今はただ彼に、そして死んでいった者達にせめてもの黙祷を捧げるだけだ。 DC戦争以来多くの大戦を共に戦い抜いてきた仲間、それがタスク・シングウジだった。 厳しい戦いの中で、彼は持ち前の陽気さから常にムードメーカーとして部隊の空気を明るくしていた。 その姿も、もう見ることはできない。 彼の死は仲間達にどれだけの悲しみをもたらすことだろう。 特に彼を憎からず想っている金髪の少女は、そのまま生きる意志すら失ってしまうのではないか。 そこまで思えるほど、ここ最近の彼女はタスクに依存している感が―― ……最近の? そういえば、殺し合いに巻き込まれたタスクは、本当に最近の……自分と同じ時間軸のタスクなのだろうか? 今の自分の時間よりも過去、または未来から来たという可能性はないのか? 真壁一騎と遠見真矢の例もある。彼らと同じケースが、タスクにも適用されるとしたら? ヴィレッタやユウキにしてもそうだ。 ここにいる彼らは、自分と同じ時間の……同じ世界の人間なのだろうか? もしそうだとすれば。彼らが別の時間、別の並行世界の者だとすれば。 ここにいるタスクが死んだとしても、自分の世界にいるタスクは―― (……) それがどうした?だから何だというのだ? 仮に別の世界のタスク・シングウジだとしても、タスクが死んだということに何の変わりがある? 知識を得すぎたが故の弊害だろうか。 思考を腹立たしいほど冷徹かつ合理的に働かせる自分に、時に嫌悪感すら覚える。 並行世界の彼だから死んでも問題はないなどと、そんな非情なまでの割り切り方は彼にはできない。 本当にそれくらい割り切ることができれば、かえって楽なのかもしれない。 だが、そんなものは結局ただの傲慢な自己満足。そして人としての一線を越えることと同義でもある。 無論、越えた先に得られる地位は神でも超越者でも何でもない。力や知識に溺れただけの、ただの愚者。 ギリアム・イェーガーは、人間だ。それで十分だった。 (過去のケース……と言っていたな、アクセルは) 放送の中でアクセルの口にした言葉を思い出す。 言葉の通りに受け取るなら、過去にも同じようなバトルロワイアルが行われたことになる。 この殺し合いは、何度も行われている中の一回だというのか? そして、今行われているこのバトルロワイアルが完遂されたとすれば。 これもまた、過去のケースとなるのだろうか? いったい、どういうことだ? 俺の知らない所で、何が起きているというのだ? この残酷な殺し合いが、あまりにも甲斐のない悲劇が……幾度も行われている? (……冗談ではない) 淡々と喋っているように見えて、アクセルの口調からは愉悦の念が確かに滲み出ていた。 それが意図的なものか、はたまた本心からのものかどうかはわからない。 また、ここにいるアクセルが自分の世界の彼なのか、並行世界の彼なのかどうかも。 もはや、どちらでも構わない。ここにいるアクセル・アルマーは、間違いなく敵だ。 そしてシャドウミラーも、何としても打倒すべき悪しき存在であることを再認識する。。 どんな理由や理想があろうが、断じてこの愚行を許すわけにはいかない。 止める。このバトルロワイアルを。 そして、次の可能性があるというのなら……潰す。これから先、二度と繰り返させない。 彼は歩き続ける。 闇に満たされた、暗黒の未来へと連なる道を。 向かう先から、来るべき未来から、声が聞こえてくる。 無駄だと。諦めろと。お前のその行動も、所詮は悲劇の糧にしかならないと。 それでも、彼は歩みを止めはしない。 未来に闇しかないから、どうだというのだ。 もし目指す先に光がないというのなら。希望が存在しないというのなら。 自分達が希望となろう。 未来に蔓延る闇を切り裂き、光をもたらすまでだ。 希望の芽は、確かに存在する。 真壁一騎が、遠見真矢が。 相羽タカヤが。彼についていくことを選んだ、エルピー・プルも。 最初の場でヴィンデル達に敢然と立ち向かったロム・ストール。 もちろん、自分の仲間であるヴィレッタ・バディムとユウキ・ジェグナンも忘れてはならない。 そして、まだ見ぬ戦士達。殺し合いを良しとしない者達は少なくはないはずだ。 その可能性を信じ続ける限り、希望の光は絶対に消えることはない。 あの時もそうだった。 破滅を迎えるはずだった未来を、彼らは確かに切り拓いてみせた。 暗黒の未来を、光ある未来へと変えてみせた。 あのかけがえのない仲間達は、証明してくれた。 彼らの見せてくれた光を信じる限り、俺の心は決して折れはしない。 ヴィンデル・マウザー。お前は人間を舐めた。 そのことを、今度は俺達が、これから証明してやる。 ――俺達が、エルピスだ。 【ギリアム・イェーガー エステバリスカスタム・アキト機(機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-) パイロット状況:良好 機体状況:損傷軽微、EN消費(中) スクリューモジュール、メガ・プラズマカッター装備 現在位置:F-6海底(南) 第1行動方針:G-7施設でクロガネと合流する 第2行動方針:仲間を探す 第3行動方針:首輪、ボソンジャンプについて調べる 最終行動方針:バトルロワイアルの破壊、シャドウミラーの壊滅】 【1日目 14 10】 BACK NEXT 096 第一回放送 投下順 098 拡散する情報――そして惑わすもの 0 [[]] 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 093 take the wave ギリアム・イェーガー 1 [[]]