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潮香るミスト・ヴィレッジの夢の家 依頼主 :アクトクーン(低地ラノシア X31-Y20) 受注条件:レベル5~ 概要 :レッドルースター農場のアクトクーンは、冒険者に頼みたいことがあるようだ。 アクトクーン 「おぉ、ちょうどいいところに。 あんたに頼みたいことがあるんだぁ。 ここから北東、風車群からちょうど南に行ったあたりに、 「ミスト・ヴィレッジ」って場所があるんだがよぅ。 なんでもな、そこで居住者を募集してるんだと。 聞いたところじゃ、異邦人の冒険者でも 自分の土地と家を持てる、って話だぁ。 コボルド族だぁ、蛮神だぁって言ってるときに、 提督様は、どうやって土地を用意したんだべな・・・・・・。 だまくらかされてる気もすっけど、信じたい話なんだぁ。 なんつったって、オイラの夢は・・・・・・ 畑付きの自分の家を持つことだからなぁ! ミスト・ヴィレッジの入り口・・・・・・ グレイフリート風車群の南に兵隊さんがいるからよぅ。 そいつから、本当のところを確かめてきてくれや。」 ルーガンロナ一等甲兵と話す ルーガンロナ一等甲兵 「お前・・・・・・冒険者だな? オレは、リムサ・ロミンサを守るグランドカンパニー、 「黒渦団」のルーガンロナ一等甲兵ってんだ。 先日、メルウィブ提督の命があったのさ。 国力増強計画の手始めとして、 冒険者の招致を強化せよ・・・・・・ってな。 この方針を受けて、黒渦団は、かつて海賊王「霧髭」が 隠し港のひとつにしていたという「ミスト・ヴィレッジ」を、 冒険者居住区として開放することにしたのさ。 簡単に言えば、冒険者に限って、 家を建てることのできる土地を提供することになった・・・・・・ っていうこった。 ・・・・・・さてと、こんな所で立ち話をしていても、 「ミスト・ヴィレッジ」の美しさはわからねぇだろ。 さっそく、その目で見てきたらどうだい? そんで、冒険者居住区に興味を持ったのなら、 現地にいる、うちの団の者に声かけてくれよ。 詳しいご案内をさせてもらうぜ。」 ルーガンロナ一等甲兵 「「ミスト・ヴィレッジ」は、指折りの景勝地さ。 モラビー湾から打ち寄せる波の音を聞きながら、 深く漂うカモミールを一杯、なんて素敵だとは思わねぇか? 「ミスト・ヴィレッジ」の美しさを、 さっそく、その目で見てきたらどうだい?」 黒渦団の兵卒と話す 黒渦団の兵卒 「ここは、リムサ・ロミンサの冒険者居住区、 「ミスト・ヴィレッジ」です! 居住区に興味があるのですか? ・・・・・・なるほど。 一戸建てを考えている人がおられるのですね! 申し訳ありませんが、この「ミスト・ヴィレッジ」は 冒険者の方々に限って、分譲している居住区です。 残念ですが、あきらめていただくしかありません・・・・・・。 あなたのような冒険者の方は、お求めいただけますよ! 家や土地について、詳細な話が必要なら、 奥にいる「居住区担当官」に、お声をおかけください!」 レッドルースター農場のアクトクーンに報告 アクトクーン 「おぉ、戻ってきたか。 黒渦団の兵隊さんには会えたかぁ? ・・・・・・おんやぁ、そういう事情なら仕方ないなぁ。 国を守るには冒険者の力が必要だって、 こんなオイラでも聞いたことがあらぁ。 でも、自分の家は諦めきれねぇ! ここで目一杯働いて、いつかオイラも畑付きの家を持つだよ!」
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基礎データ ブランド名 七宝町七宝焼アートヴィレッジ 会社名 愛知県海部郡七宝町 電話番号 Fax番号 メール 企業分類 イベント会場 現在の問合せ結果 ◎ 現在のコメント 継続する性質の広告ではない 最終更新日 2010/01/27 特記事項 基礎データ特記事項 七宝町七宝焼アートヴィレッジ2010年1月11日の毎日朝刊に広告あり 2010/01/23◎(継続する性質の広告ではない) 特に新聞に広告を出している企業は毎日新聞にとって泣き所となるようです 問合せ 問合せ先一覧 / 毎日新聞に広告を出していた企業(日付別) / 毎日jpに広告を出していた企業 / 電話問合せのコツ 結果別一覧 ◎◎-◎-○ / △ / ×(記号、数字、ローマ字) / ×(ひらがな) / ×(カタカナ・ア行~ナ行) / ×(カタカナ・ハ行~ワ行) / ×(漢字・あ行~か行) / ×(漢字・さ行~た行) / ×(漢字・な行~は行) / ×(漢字・ま行~わ行) 分野別一覧 製造業 / 製造業その他 / 小売、卸売 / サービス業、娯楽 / 医療、医薬 / 建設、不動産 / 金融、運輸、IT、その他 / マスコミ、出版 行政等一覧 行政、各種団体等 / 教育機関等 / 政治家、著名人 毎日新聞系列 【その1】 【その2】 【その3】 【その4】 【その5】 【その6】 【その7】 【その8】 【その9】 問合せ報告 毎日新聞関係の凸結果を淡々と張り続けるスレ7 ※「電凸」とは「電話問合せ」のインターネットスラング(俗語)です。(詳細は用語集) 対応評価の大まかな目安 ◎◎ 広告打ち切り・今後広告を出さない・今後広告を出す予定はない ◎ 良対応・厳重な抗議 ○ 普通、中立対応・対応検討中、今後注視 △ 保留・問合せの返答結果待ち(3日以内に回答なければ×) × 悪対応・無回答・処分は十分毎日の姿勢を容認・広告続行 このテンプレを編集 七宝町七宝焼アートヴィレッジ 2010年1月11日の毎日朝刊に広告あり 2010/01/23◎(継続する性質の広告ではない) 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事174 http //hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/ms/1262964672/346 346 名前:可愛い奥様[sage] 投稿日:2010/01/23(土) 21 52 49 ID a1C5PNuX0 転載です 923 名前:松崎名無しげる[sage] 投稿日:10/01/23 21 08 01 ID HprLPVHa メールのお返事ですv 七宝町七宝焼アートヴィレッジです 様 ご質問にお答えします。 今回掲載した広告は、継続する性質のものではございません。 個人情報保護態勢につきましては、七宝町個人情報保護条例等に則っております。 以上です。 ---------------------------------------------- GJ 検索 2010年1月11日の毎日朝刊 広告一覧 問合せ結果分野別一覧その7
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「いけ、ファングナックル!」 ガルムレイド・ブレイズが右腕のファングナックルを発射する。 二形態の内、現在はS形態を取っているガルムレイド・ブレイズ。 TEソフィアによる防御はあるものの、青い躯体の至る所に見られる損傷がゴライオンの猛攻の跡を示している。 ウルフヘッドを模した拳が牙をむき、その獰猛な口を開きながら一直線にゴライオンへ飛ぶ。 エリアC-2の北部から始まった戦闘は西部までに移動している。 その間のゴライオンとの戦闘経験からヴィレッタは先ず直撃のコースだと推測する。 事実、ゴライオンにファングナックルを避けようとする動きは見られない。 「うおおおおおおおおおおおおおお!!」 元々レーベンにファングナックルを避わすつもりはなかった。 一歩も退くことなく、ゴライオンが大きく右腕を振りかぶる。 向かってくるファングナックルとタイミングを合わせ、真っ向からぶつかる。 そう、レーベンはゴライオンの右腕でファングナックルを撃ち返した。 ファングナックルは堪らずガルムレイド・ブレイズの右腕に戻る。 右拳だけとはいえ勢いを全く意に介さず、殴り返したゴライオンの馬力はやはり強烈なものだ。 思わずヴィレッタは下唇をかみしめる。 「どうした女! その程度か!?」 加えて操縦者の方も厄介だ。 確かレーベン・ゲネラールと此処に来るまでに名乗っていた。 先程より少しは落ち着いているようだがそれでも面倒なことに変わらない。 だが、このレーベンは出来るだけ迅速に突破、もしくは撃破しなければならない。 分散することになったタスクとの合流を目指す必要があるためだ。 そして気がかりな事はまだあった。 (先程私の声に反応した参加者……たしかイスペイルという男だったハズ。 タスクにジョーカーのことが知られたら、面倒ね……) レモン・ブロウニングにより指名された7人のジョーカー。 十六時間以内に同じジョーカー以外の参加者を二人殺さなければ首輪が爆発されるルール。 ヴィレッタはそのルールを押しつけられた一人であり、同じ境遇の者がヴェルシーネRに乗っていた。 確認したわけではないがあの特徴的な声はイスペイルという男だろう。 あれでタスクは勘のいい青年だ。あの時、自分の声に反応したイスペイルを疑問に思ったかもしれない。 もしタスクがジョーカーのルールを知ってしまえば自分は選択しなければならない。 即ちタスクとこのまま行動を共にするか、ジョーカーとして他者と戦っていくかを。 だが、生憎ヴィレッタの選択は未だ決まっていない。 (結局は答えが出なかった……時間はあったというのに。 タスクに知られずとも、決めなければ……そう、すぐにでも……!) タスクが気絶していた間、ずっと考えていた。 不用心に気を失うタスクを殺せばノルマの半分は達成される。 考えたくはなかったが、自分でも驚くほどにその考えは自然に零れ落ちた。 しかし、裏切りたくはないという強い思いが実行には移さなかった。 タスクを含め仲間達は、エアロゲイダーの二重スパイとして活動した自分を受け入れてくれた。 そんな彼らをもう一度裏切りは、それも殺すなどは到底出来ない。 だけども、レモンの言っていたノルマを実行しなければ自分はここで終わってしまうだろう。 異星人の一種と思わしきテッカマンランスをいとも簡単に殺した、首輪の爆弾は今でも首に巻きつけられている。 首輪を外せばノルマに従う必要もないが、ここまでの事を仕込む彼らがそれを許すとは思えない。 懸念材料が多い現状では、結局、ヴィレッタはまだ決められはしない――。 「何を呆けている! 女アアアアアアアアアアアアアア!!」 迂闊だったと咄嗟にヴィレッタは自らの行為を悔やむ。 ジョーカーとしてという特殊な身の上から思考に没頭してしまったヴィレッタ。 ヴィレッタが見せた隙は当然ガルムレイド・ブレイズの動きにも伝わり、レーベンはそこを狙った。 ゴライオンは腕を振りかぶり、持っていた十王剣を思いきり投げつける。 充分に乗せられた勢いが十王剣に強力な加速をもたらす。 避けきれない。ヴィレッタの判断は間違ってはいなかった。 TEスフィアを破り、ゴライオンより下方を飛行していたガルムブレイド・ブレイズの肩に十王剣が突き刺さる。 体勢を崩したガルムレイド・ブレイズにゴライオンは更に追撃をかける。 右腕を十王剣へ伸ばし、強引に引き抜くだけでなく右脚で蹴り飛ばす。 「ちっ、この……!」 「こんどこそ本当に終わりだ! 所詮エーデル准将以外の女など、生きる価値などないッ!!」 ガルムレイド・ブレイズが見る見るうちに海上へ落ちていく。 ゴライオンは再び接近。十王剣を逆手に持ちかえ、そのまま振り下ろす。 ガルムレイド・ブレイズの胴体を串刺しにせんと迫る。 堪らず両肩のビームキャノン砲と腰のビームバルカンを乱射するが、ゴライオンは損傷をものともしない。 鬼気迫る勢いを以ってして突撃するゴライオンは既に攻撃に一身を捧げている。 ヴィレッタが己の危機を悟った瞬間、ガルムレイド・ブレイズの下方に存在する海で水しぶきが舞い上がった。 「熱源反応!? これは……!」 驚くヴィレッタを尻目に海中から何かが飛び出す。 一本の赤いドリルが海水を出鱈目に撒き散らし、ゴライオンへ向かっていく。 続けて見えたものは白に染まった強大なショルダーアーマーに、黒を基調とした躯体。 背部には先程飛んできたものと同じく血に染まったように赤いドリルがある。 何よりも鬼と相応しき顔面から覗く緑眼がこちらを見上げている。 両目を見張るヴィレッタには見覚えがあった。 それは武人と称するに相応しい男と死闘を繰り広げた人造人間の専用機。 アースクレイドルに座する主の敵を断つ、斬艦刀を持ちしその機体の名は――スレードゲルミル。 「俺はザフト軍ミネルバ隊所属のシン・アスカ! アンタたち、レイ・ザ・バレルを知らないか!? 知っていたら教えろ……拒否は許さない!!」 パイロットはザフトのスーパーエース。 そして悲しき復讐者、シン・アスカ。 紅に染まった両眼がガルムレイド・ブレイズとゴライオンを鋭く睨みつける。 ◇ ◇ ◇ そこは真っ暗な海の底だった。 周囲に居るものは自由気ままに泳ぐ魚やサンゴ礁ぐらい。 もし、死んだあとにこうやって海に沈んだらゆっくりと眠れることだろう。 憎しみも争いも何ものかも忘れることが出来て、いつまでも安らかに。 海の流れにスレードゲルミルを任せ、その中でシンはそんなことを考えていた。 (フリーダムは討った……この手で、確かに……) ニュートロンジャマーキャンセラー搭載機、フリーダム。 かつて血のバレンタインと呼ばれる悲劇から起きた戦争中に奪取された機体。 シンにとってフリーダムは全てを奪い、また今の自分をつくらせた存在でもある。 ザフトと連合の戦地となった永久中立国オーブ。 一般の民間人でしかなく、戦火から逃れようとしたシンはそこで家族を失った。 父を、母を、そしてたった一人の妹すらも。彼女が伸ばした細い腕を掴んではやれなかった。 全てはフリーダムが起こした戦闘の流れ弾のせい。 だからこそシンは願った。守れる力を、大事なものを奪おうとするものを倒せるだけの力を。 出来るだけの努力は続け、その結果がザフトの士官学校での首席卒業を可能とさせた。 もう二度とあんな悲しい想いは繰り返さない。フリーダムのようなヤツは必ず、自分で斃す。 ただそれだけを願い、妹の面影を忘れずにシンは戦い続けた。 そしてシンはようやくフリーダムを斃すことに至った。 その筈だった。 (だけど俺は……) しかし、喜びはなかった。 残ったものはどうしようもない空虚感のみ。 ずっと燻っていた願いを果たせたというのに。 理由は痛いほどわかっている。 ドモン・カッシュ、そして自分のために死んだジャミル・ニートの存在がしこりとして残っている。 彼らは自分に殺し合いに乗るなと言った。 一般の良識に当てはめれば彼らの言い分が正しいのだろう。 だが、ここでは常識など通じない。人一人の頭が四散したことで全ては始まった。 この異常な状況で良識を持って行動できるほど、シンは器用に自身の感情を抑えられない。 なによりも今度こそ護ると誓った少女のために、死ねるわけにはいかなかった。 既に何分経ったのかもわからない。 ぼんやりとした目で計器を見やる。 どうやらいつの間にか隣のエリアに流れていたようだ。 機体の方はというと――問題ない。マシンセルがずっと修復を行っていたようだ。 ドリルブーストナックルを撃つぐらい問題はない。 だが、問題があるといえばシン自身の方だ。 フリーダムを斃せたというのに、結局は得るものはなかった。 復讐をやり遂げてもこんな結末が待っているのはなんとなくわかっていたがやりきれない。 両親や妹のマユが戻ってくると信じたわけでもない。 だけど、何かが欲しかった。 どんな些細な事でもいい。せめて自分がフリーダムを斃せたことで何かが変わって欲しかった。 たとえばザフトと連合の下らない戦争の終結が一日でも速まるような変化が。 青春の全てをなげうって、鍛えぬいた技術に一定の成果があっても良かった筈だ。 戦って、戦い抜いて、そうして進んだ先に待つものがこの空虚だけだとしたら。 自分は一体何を求めて戦っているのか……それすらもわからなくなってしまう。 想像するだけでどうしようもなく怖かった。自分を導いてくれる何かが欲しいと強く思う。 ドモンやジャミルがいくら自分に立派な言葉を投げかけてくれたとしても、結局彼らは赤の他人だ。 あの皆城総士のように、本心では何を考えているかなんてわかりやしない。 しかし、あいつだけは違う筈だ。 (レイ……どこに居るんだ。俺はどうすればいい……教えてくれ、レイ。 スレードゲルミルは俺に何も教えてくれない……お前の、お前の言葉なら俺は……) レイ・ザ・バレル。あまり社交的ではないシンにとっての数少ない友人の一人だ。 士官学校時代からの同期でありその縁はかなり深い。 いつだってレイは冷静で、大抵のことは彼が言うとおりだった。 それはミネルバ隊に配属された後にも変わらない。 レイともう一人の同期、ルナマリアと共にザフトとして戦うと決めた。 ザフトの勝利を勝ち取るために、ギルバート・デュランダル議長の理想を実現するために、 そしてもう二度と大切な存在を失わないために。 あの頃の自分なら迷うことはない。 レイが進むべき道を指し示してくれれば、自分はそれに向かうだけだ。 だから当面の目的はレイとの合流だ。 襲われれば勿論迎撃する。ただ、問題は目の前で戦闘を目撃した際について。 レイ以外の人間は直ぐには信用できない。 たとえ危ういところを助けても絶対に裏切られないとは言い切れない。 だが、他者と接触すればレイの情報を得られる可能性もある。 レイなら自分と違って上手く立ち回っていることだろう。 出会った人間に言付けを頼み、自分を捜していてくれているかもしれない。 取り敢えずの思考は纏まった。 何十分かの静寂がシンの瞳に再び灯を宿させる。 まどろみを振りきり、シンはスレードゲルミルを海上へ飛ばそうとする。 そんな時、けたたましい声をスレードゲルミルのセンサーが捉えた。 『何を呆けている! 女アアアアアアアアアアアアアア!!』 一瞬唖然とするシン。 だが、直ぐに気を取り直して上を見やる。 センサーからは何かがぶつかり合う音が聞こえた。 戦闘だ。先程、自分が身を置いていた暴力の渦が頭上に広がっていた。 やるせなかった。結局は皆戦うことを望んでいると思ってしまったから。 襲う奴は必ず一人は居る。人間だから、周りは皆他人だから。 何も自分だけじゃない。自分のようにただ自分勝手に誰だって戦っている。 死にたくはないから、守りたいものがあるから、ただそれだけだろう。 自分もその一種と自覚するシンにそれを否定するつもりはない。 なら戦ってやるだけだ。真っ向から自分の守りたいものを他人の望みより優先させるために。 ひどく自分勝手なエゴに塗れた考えだが仕方ない。 レイの言葉を聞くまでの間、そのぐらい単純な方針でないと迷いは生じてしまう。 所詮は斃すべき敵でしかないドモンとジャミルの言葉に心を動かされてしまったのがいい例だ。 だから――レイと出会うまで精いっぱいこの状況を足掻く。それだけだ。 スレードゲルミルの両眼が一際鋭い輝きを放つ。 (やってやる……やってやるさ。目についたヤツ全員からレイの情報を聞き出す。口を割らないヤツは……後悔させるまでだ……!) 咆哮を上げながらスレードゲルミルは真っすぐ海上を目指す。 依然として己の道を彷徨う怒れる瞳が、剣鬼を再び戦場へ飛びこませる。 ◇ ◇ ◇ 「レイ・ザ・バレルですって……!」 「知っているのか、アンタ!?」 思わずシンの声が張り上げられる。 ヴィレッタを助けることになったのは偶然でしかない。 その偶然にも助けたヴィレッタがレイの言葉に反応を示した。 直ぐにでもレイの情報が入るかもしれない。 何よりもレイとの合流を目指すシンにとって紛れもなく幸運なことだった。 「いや、私は……」 「はぁ? 何を歯切れの悪いコトを言って……知っているのか知らないのかどっちなんだ!」 しかし、ヴィレッタの返答はなんとも不明瞭なものだ。 レイ・ザ・バレルのことは当然知っている。 何処に居るかはわからないが彼もまたジョーカーの一人だ。 レイについて話すということは当然ジョーカーの存在が露呈されることだ。 同時に自分もジョーカーであることも知られてしまう。 けれどもヴィレッタは未だ自分の身の振り方を決めてはいない。 この状況でジョーカーの存在を口に出してもいいものか。 一瞬の沈黙。ヴィレッタにとってはあくまでも一瞬でしかなかった時間。 だが、シンにとってその時間は長く感じられ、ヴィレッタへの疑惑を膨らませることになる。 「そういうことかよ……! 助けてやったのに、俺なんかに話すつもりなんかないってことかよ!」 「違う! ただ――」 「うるさい! 違うもんか! 信じられるものか!!」 表面上はあくまでも冷静を貫くヴィレッタの態度がシンの激情をますます駆りたてる。 シンは只でさえ頭に血が昇りやすく、そこにレイの情報も加わっている。 碌に喋ろうとしないヴィレッタにシンは敵意を露わにする。 最早取りつくしまもなく、シンはただその暴力に身を任す。 既に戻ってきていたドリルブーストナックルを腕に、それも今度は両腕に装填。 両腕を同時に振りかぶり、ガルムレイド・ブレイズだけを真っすぐと狙う。 「言っただろ、拒否は許さないって!」 一本でさえ強力なドリルブーストナックルが二本同時に発射。 凄まじい回転の果てに生まれる赤い火花が空に軌跡を残す。 反射的にヴィレッタはTEスフィアによる防御を選択。 TEスフィアの出力が間に合ったせいか、寸前のところで侵攻を喰いとめる。 流石はゼンガー・ゾンボルトとのダイゼンガーと互角に張り合った機体だけのことはある。 しかし、そこに更なる追撃が爆風をもって襲い来る。 「どけ! そいつは俺の得物だ! 女はこのレーベン・ゲネラールが殺してやる!!」 「くっ! 邪魔するなよアンタ!!」 声高らげに叫ぶはゴライオンを操縦するレーベン。 抜け目なくゴライオンのフットミサイルをガルムレイド・ブレイズに撃ちこんでいる。 またそれはガルムレイド・ブレイズだけでなくスレードゲルミルの方へにもだ。 レーベンにとってシンは女の殺害を邪魔立てしただけで殺す理由には充分すぎる。 シンに臆する理由もない。直ぐにレーベンに反撃を行おうと考える。 先ずはこれが終わってから――やはり信用に値しなかったヴィレッタに後悔の念を植え付けるために。 遂にはフットミサイルの威力も相まってTEスフィアが破られる。 両のドリルブーストナックルに喰いこまれたガルムレイド・ブレイズへスレードゲルミルが猛追をかけた。 胸部を抉るとらんとばかりに暴れ狂うドリルブーストナックルが耳障りな音をあげる。 「女アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」 「アンタのせいだ……アンタがレイについて話せば、こんなことにはあああああああああッ!!」 ガルムレイド・ブレイズは漸くドリルブーストナックルを振り払うがそこには悪夢のような光景があった。 スレードゲルミルだけでなく、ゴライオンまでもこちらへ向かっている。 奇しくも先ずはガルムレイド・ブレイズから始末しようと考えたのだろう。 ヴィレッタの頬を思わず冷や汗がつたう。これを危機と言わずになんと言えばいいか。 頭部の赤熱線・ブラッディレイやビームキャノン、ビームガトリングで応戦するが止められない。 依然として迫る危機の中、ヴィレッタは一つの案を捻り出す。 (こうなったらレイ・ザ・バレルのことをあのシン・アスカに……!) 幸い此処にはタスクは居ない。 自分がジョーカーであると露呈してもここで仕留めれば問題はないだろう。 そうすればノルマも達成出来、考えるための時間が延びる。 悪くはない考えだ。少なくとも仲間への裏切りよりか心が痛むことはない。 ジョーカーであることについての告白をシンは今更信じようとはしないかもしれない。 しかし、このままではいずれ撃破まではいかずとも今後の行動にも支障が出る。 とにかくこの状況を打破しなければ何も始まらない。 スレードゲルミルとゴライオンへの反撃を練りながら、ヴィレッタはガルムレイド・ブレイズの操縦桿を握った――。 「――知ってるか? 真打ちは遅れてやってくるのがお約束だってことをなぁ!!」 陽気な声が周囲一体に響く。 やがてやってきたものは衝撃ではなく轟音の群れだ。 それはヴィレッタの前方からではなく後方からやってきた。 言いようのない数のミサイルの大群にスレードゲルミルとゴライオンは停止を余儀なくさせる。 巨大なプロペラ・ユニットによる飛行でやってくるは赤い巨人。 最強と呼ばれしメカデウス、THE BIGの内一機、ビッグデュオ。 そしてそのパイロットはギャンブル好きな、陽気でどこか憎めない男。 「てめぇら! よってたかって姐さん苛めるとは……いい度胸してるぜ!!」 「タスク!?」 「アイサー! 遅れてすんません、姐さん」 タスクがビックデュオを強引にガルムレイド・ブレイズの前へ押し出す。 胸部からのガトリングミサイルの掃射は依然として続いている。 絶好の機会を失ったスレードゲルミルとゴライオンはミサイルをやり過ごすしかない。 スレードゲルミルは即座に斬艦刀を形成し、ゴライオンは円形のシールドを翳す。 しかしそれでもビックデュオのガトリングミサイルの威力は無視出来るものではなく、二機は除々に後退を余儀なくされる。 「助かったわ、タスク……それで、さっきの二機は?」 「たたき落としてやったっス! こうガツーンと一発って感じで。まあもう一方は見失っちまいましたけども……」 「そう、それは頼もしいことね」 確かに後方を確認しても機影は見当たらない。 ビックデュオの各部にはビーム痕を始め様々な損傷が見られるが、タスクの言うとおり無事切り抜けられたのだろう。 ヴィレッタは安堵するがそれはタスクの救援が間に合った事だけではない。 ジョーカーについての告白。それを行う必要がなくなった意味合いも含んでいた。 だが、このままで良いというわけでもない。 いつかは決めなければ、タスクとの間にもなんらかのトラブルが起こる可能性もある。 後回しにするのも今回で終わらせるべきだ。 「ちっ! さっきのヤツか! だが、このレーベン・ゲネラールの邪魔立てするヤツは容赦せん! 俺のエーデル准将への想いはこんなものではない!!」 そんな時、ゴライオンが更に上昇しビックデュオへ突撃する。 スレードゲルミルは何故か止まったままだがタスクの注意はゴライオンの方だけだ。 タスクと同じくヴィレッタも狙いをゴライオンに絞る。 今までは数の違いやレーベンの気迫に押されていたがやられるだけではない。 エアロゲイターの切り札ともいうべきSRXチームの隊長を、伊達や酔狂で務めているわけではない。 己の創造主、もう一人の自分というべき存在から預かった契約は、未だ終えていないのだから――。 既に目を通しておいたマニュアルに記載された一文が鮮明に蘇る。 そのコードは――イグニッション、点火を指し示すワード。 「リミッター解除――イグニッション! ヒオウ! ロウガ!」 緑色のカメラアイが発光した後、ガルムレイド・ブレイズが吹き荒れる灼熱を身にまとう。 自然界四つの力に次ぐエネルギーであるターミナス・エナジーはどこにも存在する。 故にそのターミナス・エナジーを動力とするターミナス・エンジンは言うなれば永久機関。 限界のない力が内部でまるで炎のように燃え盛る――灼熱の正体はそれだ。 そして胸部に存在する緑の丸状の部位の輝きはいっそう強くなった。 続けてガルムレイド・ブレイズの各部装甲が外れ、二機の小型機となる。 鳥類を模した方がヒオウ、残りの狼を模したものがロウガだ。 「ターゲットインサイト……! さぁ、いけ!」 一瞬の内にヴィレッタは演算計算を終え、ヒオウとロウガに指示を与える。 二機ともガルムレイド・ブレイズと同じく炎に包まれている。 彼らにもターミナス・エンジンの血は通っているのだから。 ヴィレッタの意思を受け、目前のゴライオンへ強襲。 ヒオウは後ろから周り、ロウガは愚直な程に正面からゴライオンへ駆けていく。 ヒオウは装備されたビームマシンガンを乱射し、レーベンの注意を引いている。 その隙を狙ってロウガが喰らいつき、振り払おうとしたゴライオンの左腕へ逆に噛みつく。 小型機といえどもその威力は侮れるものではなく、連続して鈍い音が響く。 「こ、こいつら! こしゃくな真似を!」 無事な方の腕でゴライオンはロウガを殴りつける。 堪らずロウガは吹き飛ばされ、ヒオウが両脚で受け止める。 ヒオウとロウガの二機ではゴライオンを喰いとめることは出来なかった。 しかし、時間は充分に稼げた。レーベンの新たな隙を誘うぐらいの時間は。 「しつこいヤツは嫌われる……ってね。いい大人のくせにさっきから見苦しいぜオッサン!!」 ヒオウ、ロウガと入れ違いの形でタスクの駆るビッグデュオがゴライオンへ向かう。 プロペラ・ユニットを前へ向け、ロケットエンジンによる噴射が更なる加速をもたらす。 そして両のプロペラ・ユニットからアームが顔を出し、その指が力強く掴む。 掴んだものはゴライオンの両肩だ。 急な接近に対応が遅れたゴライオンの両肩がギシギシと軋む そのパワーは強大。最強のメガデウス、THE BIGの名は伊達ではない。 「くっ、放せ! このクズが!!」 「聞こえねぇなぁ! それより気にならねぇか……俺とアンタの運、どっちが強いかをッ!!」 ゴライオンも右腕をビッグデュオの胸部に撃ちつけ、ファイヤートルネードを噴射させるがビッグデュオは離れない。 元々赤い躯体が更に赤みを帯びてもタスクは動じない。 これぐらいで臆するようであればとっくにヒリュウ改から降りている。 それにジガンスクードのような大型機に乗ってきたタスクにはお得意の戦法だ。 だが、ファイヤートルネードは確実にビッグデュオの装甲を、胸部を溶かしている。 コクピットが胸部に存在するビックデュオには決して楽観できない状況。 それでもタスクはゴライオンを掴むのをやめはしない。 幾ら攻撃を貰おうとも決定打をこちらが打てればいい。 我慢の果てに勝利の一瞬を掠め取っていく。 タスクはパイロットである以前に勝負師だ。 一か八かの状況。そこで勝利をもぎ取ってこそ勝負師たるもの。 たとえ分が悪かろうと勝負と名のつくものに負けるつもりはない。 離脱するどころか両目のアークラインを発射し、駄目押しの一撃を見舞う。 ゴライオンの顔半分が熱戦で焼かれ、思わず反り返った。 そして爆発が起きる。 「運だめしさせてもらったぜ、レーベン・ゲネラール! そんでもって結果はもちろん、タスク様の勝ちだぁッ!!」 遂にはビッグデュオがゴライオンの両方を握り潰すまでに至った。 爆発により、ゴライオンの躯体がビッグデュオから離れる。 辛うじて腕は繋がっているものの両肩からは黒煙が出ている。 決めるのであればここだ。タスクはトドメの一撃を見舞おうと再度ビックデュオの拳を振るう。 右腕をゴライオンに胸部へ、その圧倒的な力を持って動力系を潰す。 海上へ落ちゆくゴライオンにビッグデュオの腕が今まさに届こうとする。 「――フットミサイル!」 「なに!?」 そんな時、ゴライオンが両足のフットミサイルを発射する。 一発目の爆発によりビックデュオのアームユニットが焦げつき、 やや遅れ二発目が胸部にて炸裂し、爆炎が生まれる。 黒々とした煙を突き破り、ビッグデュオがその巨体を再び大空に晒す。 減速はしたものの、完全にビッグデュオの勢いを止めるには至っていない。 だが、レーベンの狙いはビッグデュオの撃破ではない。 至近距離での炸裂による爆風は当然ゴライオンの方にも及んだ。 吹き荒れた爆風をその身に受け、ゴライオンが加速。 その躯体は何処までも広がっていそうな、青い海を目指していた。 「タスク・シングウジ、そしてヴィレッタ……覚えておくがいい! キサマらは必ず俺が殺してやる!!」 ゴライオンは勢いを緩めることなく海中へ飛びこんだ。 さすがのレーベンも状況が不利だと悟ったのだろう。 ビッグデュオから貰った痛手の他に今までの損傷もある。 実に画に描いたような捨て台詞を残し、ゴライオンは離脱していく。 (そうだ……あのイスペイルという男も絶対に許さん! だが、ヤツは一体どうなって……) 殺すべき人間は未だ多い。 獅子の怒りは未だ収まりそうにはなかった。 【1日目 10 30】 【レーベン・ゲネラール 搭乗機体:ゴライオン(百獣王ゴライオン)】 パイロット状況:ブチギレ(戦化粧済み) 機体状況:頭部半壊、両肩破損、左腕にひび、右足一部破損、動力低下、十王剣(全体に傷あり) 現在位置:C-4 第一行動方針:ヴァン、タスク、ヴィレッタ、イスペイルは次こそ必ず殺す 第二行動方針:女、女、女、死ねええええええ! 第三行動方針:ジ・エーデル・ベルナルについての情報を集める 最終行動方針:エーデル准将と亡き友シュランの為戦う 備考:第59話 『黒の世界』にてシュラン死亡、レーベン生存状況からの参戦】 ◇ ◇ ◇ 一方イスペイルはというと―― 「ひ、酷い目にあった……」 波に流され、ようやく海の上まで上がってきていた。 ビッグデュオに叩き落とされた時に気絶していたため、自分がまたしてもループにより移動した事にも気づいていなかった。 【1日目 10 30】 【イスペイル 搭乗機体:ヴァルシオーネR(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)】 パイロット状況:疲労 機体状況:両腕に損傷 EN80% 現在位置:C-7 南端 第一行動方針:まずは生存する為にノルマ(ノーマル、アナザー、どちらでも可)を果たす 第二行動方針:出来れば乗り換える機体が欲しい 最終行動目標:自身の生還 備考:首輪の爆破解除条件(アナザー)に気付きました ◇ ◇ ◇ 「へっ、おとといきやがれってんだ! さぁ~て残りは……」 ビッグデュオの中でガッツポーズを取りながらタスクが周囲に目を回す。 ゴライオンを撃退したもののまだ全ては終わってはいない。 ウォーダン・ユミルの機体、スレードゲルミルという強敵が未だ残っているのだから。 だが、こちらには頼りになるヴィレッタも居る。 二人掛かりでいけばそれなりにやれることだろう。 だから今の戦闘で受けた損傷はそこまで気にしなくともいい――。 そう確信していた。 「貰ったぞ!」 「くっ、おまえは……!」 「姐さん!」 突如として海中から躍り出る機影が一つ。 ヤドカリのような形をしたそれにタスクは見覚えがあった。 ガンダムアシュタロンHC、MA形態がガルムレイド・ブレイズの真後ろを取った。 先程戦闘途中で補足出来なくなったがまさか追ってきていたとは。 戦闘不能に出来なかった自分を悔やみながらタスクは直ぐにビッグデュオを動かそうとする。 しかし、機敏な動きを得意としないビックデュオではどうしようもないタイムラグが発生する。 アシュタロンHCは、アナベル・ガトーにとってその時間は充分すぎた。 歴戦のパイロットであるヴィレッタの反応よりも早く、ガトーはアシュタロンHCを動かす。 ギカンティックシザースを開き、ガルムレイド・ブレイズの両腕を強烈な力で挟み、再び海中へ飛びこむ。 未だヒオウとロウガとの合体を終えていないガルムレイド・ブレイズは満足な状態ではない。 なすがままに海中に引き込まれ、あっという間にタスクの視界から消えてしまう。 「ちっ! なんてこった……今すぐいくぜ、姐さ――ぐ、ぐわぁ!!」 救援に行こうとするビッグデュオに衝撃が走る。 それがやってきた方角からして原因は一つしかない。 再び反転させた視界の先には、丁度今しがた撃ち放ったドリルを手に戻した機体の姿がある。 そいつが何者であるか今更確認するまでもない。 「どけよ! 俺はあの女に用があるんだ……!」 「悪りぃけど絶対にノゥだ。というかドリルブーストナックルなんて軽々しく撃つんじゃねぇ! ちょいと寿命が縮んだじゃねぇか!!」 「知るかよそんなこと! 戦ってるんだ……相手のことまでなんて……!」 どこかふざけたような調子で抗議するタスクにシンは僅かながら動揺するが退くわけにはいかない。 たった今海へ消えていったヴィレッタという女は確かにレイを知っていた。 レイとの合流へ近づくにはあの女の情報を手に入れないわけにはいかないためだ。 やがて少なからず感じた戸惑いをシンは言葉にする。 「だいたいなんでお前はそこまで……もうその機体だってボロボロじゃないかよ! 邪魔しなればお前に用はないんだ。だからそこをどけぇ! そうじゃないと俺は……俺はこの斬艦刀でお前を……!」 迷いが自身の負けに繋がることは重々承知だ。 それでも迷ってしまう自分をシンは確かに認識する。 ドモンやジャミルとの出会いが関係しているのかもしれない。 しかし、あまり時間を喰っていてはヴィレッタを見逃してしまう。 レイの情報を優先するのであれば全力でタスクを斃せばいいだけだ。 そう、先程の戦闘によりビッグデュオの損傷は決して軽くはなく、特に胸部のそれは重いものに見える。 斃そうと思えば簡単に斃せるはずだ。ドリルを背部へ戻し、シンはスレードゲルミルを構えさせる。 両腕に握られた一本の太刀、斬戦刀を上段の構えでビッグデュオへ翳す。 なんとしてでもここは突破する。 ただそれだけを考え、シンはビックデュオを睨む。 「はっ! このタスク様も舐められたもんだ……あいにくだが斬艦刀には慣れてんだ! それもお前よりもっとおっかねぇ人達の斬艦刀だ! 伊達に盾の役目をしてるわけじゃねんだッ!!」 だが、タスクは動じない。 勝負師故の負けず嫌いという理由もある。 斬戦刀といえど振るう人物がゼンガーのような男でなければそこまで怖くはないのも理由の一つだ。 それに何よりもシンと同じくタスクにも退けない理由があるのだから。 「ヴィレッタ姐さんはやらせねぇ……! 姐さんを追うなら俺が相手になってやらぁ!」 仲間の一人も守れないようじゃ……惚れた女なんか守れやしねぇぜッ!! 浮かんだ顔は金髪のどこか意地っ張りな女。 自分が惚れた女の顔を一度も忘れたことはなかった。 今は傍に居ない彼女だが放すつもりは毛頭ない。 だからこそタスクはシンを此処で喰いとめようと考えている。 斬戦刀の刀身がたとえどれほど大きく見えようとも、タスクはビッグデュオを退かせるつもりはない。 そんなタスクの様子をシンは心底憎らしく感じている。 抵抗しなければやられないのに――だが、やらなければならない。 自分は何としてでもレイと合流しなければならないのだから。 「くそ、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」 シンが発した叫びはどこか悲しげなものだ。 結局は変わらない。フリーダムを斃した後も変わらない。 戦うだけしか出来ない自分への悔やみなのだろうかはわからない。 ただシンは全てを振り払うかのようにスレードゲルミルに怒りを込める。 翳していた斬艦刀の刀身を横に向け、スレードゲルミルが一迅の風となってビッグデュオへ向かう。 それは風と呼ぶにはあまりに圧倒的な暴力の塊でしかない。 ガトリングミサイルの発射口を開き、応戦するビッグデュオ。 「勝つか負けるか二つに一つ! タスク・シングウジ、この勝負勝たせてもらうぜッ!!」 ガトリングミサイルの渦をスレードゲルミルが突撃。 機体の各部でミサイルが爆ぜ、衝撃が襲うがスレードゲルミルは止まらない。 やがて斬戦刀を振り切り、ビックデュオの横を追いぬいていく。 轟音が響くと同時にシンは確かに己が振るった斬戦刀に手ごたえを感じた。 断ち切ったものはビックデュオの右腕。 もはや巨大な鉄の塊でしかなくなった右腕が海中へ落ちる。 それは右腕を失い、不安定ながらもなんとか飛行し続けるビッグデュオがスレードゲルミルへ向き直った時と同じ瞬間。 ガトリングミサイルによる損傷が至る所に見られるスレードゲルミルを無傷とは言い難く、痛み分けといったところだ。 しかし、結果的にスレードゲルミルはビッグデュオを突破することになった。 スレードゲルミルに、シンにヴィレッタを追わせるわけにはいかない。 右腕がなくともまだ左腕がある。 そのあまりの威力故に未だ使用していないメガトンミサイルだって健在だ。 だからまだ――戦える。タスクはビッグデュオの腕を突き出し、スレードゲルミルを捉えようとする。 「ちっ! ドジった! だが、まだまだこれからってコト見せてやらああああああああ――」 だが、その腕が掴んだものはあまりにも心許ない空虚のみだった。
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Q:壁につけられていた十字の傷はなんですか? A:ルルーシュがギアス効果の持続時間を調べるためにギアスをかけた元アッシュフォード学園の生徒がつけたものでは。最後の傷は十字ではなく一文字の形で放置されているので、他に壁に傷をつけた生徒がいない、あるいは傷をつけている途中で誰かに止められたということでない限り、ギアス効果は永続的なものではなく限られた時間のもの、ということに。 Q:壁子とか壁っ娘ってなんですか? A:一期で「自分のギアスの効果がどれくらいの時間続くのか」を調べるためにルルーシュにギアスをかけられて、毎日壁に印をつけていた子です。ルルーシュの学校の生徒の大半は入れ替わっているので、壁子ももう本国へ帰っているのでは…? ブラック・リベリオンの時に黒の騎士団の団員に撃たれたんじゃないかという話もあります。ギアスの効果は本国でも継続していて、一定の時間になるとアッシュフォードの壁を目指して夢遊病のように出歩こうとするので拘束されている、という話(メルマガ説)もあります。 Q:ルルーシュの学校の生徒達はどうなったんですか? A:生徒会のメンバーはブリタニア皇帝に記憶を書き変えられています。他の生徒は本国へ帰ったようです。 Q:リヴァルが校舎下の倉庫で見かけたダンボール箱には何て書いてあったの? A: BEARD FACE!! This is mine!! Don t touch - Don t open it! Throw it out and I ll kill you!!! 「ひげ面!! これは私のものだ!! 触るな - 開けるな! 捨てたら殺す!!!」という意味。箱の中身は、C.C.が学園祭の騒ぎの隙に回収しようとしていたぬいぐるみのチーズくん(宅配ピザのおまけ)です。一期の STAGE 13 や STAGE 21 あたりにも出てきます。ひげ面は誰か? …玉城のことではないか、という説が有力です。 Q:ルルーシュは何を材料にヴィレッタを脅迫したの? A:扇とヴィレッタの関係をブリタニア本国に公にすることでヴィレッタは黒の騎士団との関与も疑われ、地位を剥奪されたり身柄を拘束されたりしかねません。ルルーシュがシャーリーから預かったと言ってヴィレッタに贈ったワイン『Chataeu Narga…(Narga の後はラベルが隠れているので読めません。シャトーマルゴー?)』は、3話でルルーシュとシャーリーが選んだ誕生日プレゼントです。 Q:大宦官はシンクーが倒したんじゃないの? A:中華連邦にはガオハイ以外にも大宦官の役職についている人がいます。 Q:ルルーシュは学園内でも監視されてるんじゃなかったの? A:ルルーシュとロロが二人で協力して、二人の行動の全てのイレギュラーを見逃すように監視員にギアスをかけました。劇中では、最後の一人にギアスをかけています。ヴィレッタは水泳部の顧問として学園祭に参加しています。
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アブソルート・ヴィレッジ 『萎び果てた翼』のメインの舞台となった場所。 デーティやヴァイパーが異変を察知して到来した。 聖水の製造が秘密裏に行われていたり、 一人のシスターの元に統括が行われていたりと、 明らかに陰謀が渦巻いていた。 なにぶん平行世界での出来事(正史には存在しない)のため、 あまり詳しい事は聞く事が出来ていない。 なお、正史でのこの村はそういった事件が起こるでもなく、 とりとめもなく平和な村である模様。 ただし、綺麗な水源で一部旅行マニアには有名。
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ラトヴィレッジの湖畔 自然文明 (2) 呪文 ■自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。 ■ターン終了時まで、バトルゾーンにあるクリーチャーは水ステルスと自然ステルスを持つ。(水ステルスと自然ステルスを持つクリーチャーが攻撃する時、相手のマナゾーンに水か自然があれば、それはブロックされない。) 作者:黒揚羽 フレイバー・テキスト DMB-05 「アリスエイジ」湖に生きる者も、苔の生す沼に生きる者も、すべては森に身を隠す。 収録セット DMB-05 「アリスエイジ」-レア 評価 名前 コメント
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「――ッ! ここは……」 エリアD-1、灯台下でバンダナを巻いた青年が目を覚ます。 タスク・シングウジ。彼曰く端正な顔だちには未だ疲労の色が見える。 それもその筈、彼は苦しい戦闘の末今まで意識を失っていたのだから。 だが、タスクは様々な戦いを潜り抜けた歴戦のパイロットだ。 覚醒したばかりの意識を辿り、自分の置かれた現状を冷静に確認しようとする。 「目を覚ましたようね、タスク」 「姐さん!?」 そんな時、タスクに細身の女性が声を掛ける。 ヴィレッタ・バディム。タスクの上官に位置する人間だ。 タスクは思い出す。そう、彼はヴィレッタに保護されていた。 運良く出会えたのが信頼できる上司であったことはラッキー以外のなにものでもない。 己の幸運さを噛みしめながらタスクは先ず思ったことを疑問にする。 「あのー……ちなみにオレ、どのくらいぶっ倒れてました?」 「そうね……一時間半程といったところかしら」 「マ、マジっスか!?」 タスクは支給された時計を慌てて見やる。 時間は午前九時を過ぎていた。 気絶した正確な時間はわからないがヴィレッタが言うなら一時間半ぐらい経ったのだろう。 一時間半もあれば危険な奴が襲ってきてもおかしくはない。 先程のバカみたいに腕が伸びる奴が追撃しに来た可能性もある。 しかし、今の自分は五体満足。 支給されたビックデュオも気絶する前となんら変わりはない。 ただ単に運が良かったのだろうか。 それもあるかもしれないが先ず考えられる理由は目の前にある。 「すみません、ヴィレッタ姐さん! 俺、とんだお荷物だったみたいで」 「いいのよ、タスク。気にすることではないわ。それに色々と考えることも出来たのだから……」 恐らくはヴィレッタが警戒に当たってくれていたのだろう。 ビックデュオの傍に聳えるはヴィレッタに支給された機体、ガルムレイド・ブレイズ。 ターミナス・エンジンを積んだそれはジョーカーの機体として選ばれただけのことはあり、強力な機体だ。 そこにヴィレッタの技量も加われば並の相手なら難なく迎撃出来たことだろう。 謙遜するヴィレッタへタスクは頭を下げながらますます感謝の念を覚えていた。 「さぁ、気がついたのであれば機体のチェックでもしなさい。いつまでもここにいられないわ」 「了解!」 ヴィレッタの指示にタスクは素直に従う。 SRXチーム程の交流はないがヴィレッタと不仲ではない。 常に冷静沈着。実にクールビューティという言葉が似合う女性であるとタスクは常々思っている。 たとえばこれ見よがしに強調されたあの双房などあまりに刺激が強すぎる。 健全な青少年たる自分をうっかり危ない道へ誘ってしまう程だ。 (ん……あれ。待てよ、何か忘れてねぇかな……) そんな時、不意にタスクは思考に耽る。 気絶するまではいい。 面目ない結果に終わったが全て思い出せる。 問題はその後。戦闘終了と気絶の間に何かがあったような気がする。 それも些細なことではなくて一世一代のとっておきの出来事が。 超大穴に賭けたチップがビッグボーナスに成り替わろうとする瞬間を見届けるような瞬間が。 言いようのない興奮が、確かに目の前にあった筈なのに―― (考えろ!考えろタスク・シングウジ……! お前はやれば出来るやつだ。 何かあった筈なんだ! 幻想じゃねぇ……幻想だっていう奴が居るなら俺がぶっ飛ばす! 俺の純真な心をくすぐってくれる何かが、あったんだ!!) 今まで生きてきた中で、きっとここまで考えたことはなかっただろう。 己の脳細胞に軽く謝りながらタスクは無我夢中に考える。 無意識に俯き、視線はただどこまでも広がる その形相はあまりにも必死で、周囲から見れば何があったのかと思われるに違いない。 「タスク?」 だからこそヴィレッタは声を掛ける。 あくまでも部下を気遣う上官として、それ以上でも以下でもなく。 声を掛けられたタスクは思わず顔を上げた。 そこに広がったのは――まさに夢の光景。 水着ともボンテージとも取れる黒のスーツ。 細い両肩はあらげもなく露出しているだけでなく、おへそ周りも真っ白な肌が見えている。 さらにはすらっと伸びる四肢がヴィレッタのプロモーションをこれでもかと強調している。 間違いない。自分が求めた希望は目の間にあった。 理性よりも先ず本能が先走り、タスクは口走る。 もちろん、全開の笑みでヴィレッタへ。 「姐さん! なんですかそのコスチュームは!? サイコーっスよ! 全ての男共を代表させて言わせてもらうっス!! ところでそれって姐さんの趣味ですか!? こんな趣味してるならもっと早くいってもらえれば――」 グボ。 鈍い音がタスクの腹部から響く。 「……バカを言うな。恥ずかしいのよ、これは」 ほのかに顔を赤らめたヴィレッタが拳を握っていた。 ◇ ◇ ◇ 「女!女アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」 「くっ、しつこい! なんなのだお前は!?」 エリアD-7の上空で二つの起動兵器が飛行している。 同行しているわけではなく、片方がもう片方を追いかけているのは明らかだ。 追っている方はアルテア星の守護神、ゴライオン。 追われている方はスーパー・マシンナリー・ヒューマノイド、ヴァルシオーネR。 両機はかれこれ一時間程は周囲を彷徨っていた。 「うろちょろ逃げ回らずにさっと死ね! 女ッ!!」 ゴライオンからもう何度目かわからないレーザーマグナムが撃たれる。 戦闘行動が長引いた原因は一つ。 ゴライオンを操縦するレーベン・ゲネラールが持つ女性に対する歪んだ憎悪のせいだ。 ヴァルシオーネRの外見はどう見ても女の子でしかない。 だが、機械と生身の人間という違いはレーベンにとって些細なことだったようだ。 たとえ起動兵器であろうとも、レーベンは目の前の女を破壊するためにゴライオンの猛攻を止めようとはしない。 「お、おっと! こいつめ……!」 一方、ヴァルシオーネRはバーニアを駆使しながら器用に銃弾を避ける。 ヴァルシオンとは違い、機動性に重点を置かれているためいまだ被弾はない。 寧ろこれまでの戦闘の損傷があるゴライオンの方が状況的に不利だろう。 しかし、ヴァルシオーネRのパイロットであるイスペイルはただ困惑していた。 装備されたハイパービームキャノンでゴライオンを牽制しながら思考を回す。 (我々の情報が漏れているとでもいうのか……! くそ、シャドウミラーめ! 殺し合いをしろと言ったくせに、公平なルールさえも満足に用意出来んのか!) ジョーカーとしてイスペイルが他者に行ったことはこれといってない。 したがって警戒はまだ仕方ないとしても、危険人物として断定はされない筈だ。 そう、今のように有無を言わさず執拗に狙われることなど考えにくい。 故にイスペイルはレーベンには自分にとって何か不利な情報が伝わったのではないかと推測した。 イスペイルは他者と接触していないため、当然情報源はシャドウミラーとなる。 開始早々から7人のジョーカーといった仕込みを用することから不信感はある。 他に疑う材料がない分、シャドウミラーならやりかねないと考えてしまう。 やはりシャドウミラーもイディクスの幹部である自分を警戒していたのだろうか。 (いや、ヤツはさっきから女としか言っていない。狙いは私ではなくこのヴァルシオーネR……!) しかし、イスペイルは直ぐに自らの考えを翻す。 ゴライオンの攻撃からは形容しがたい憎しみが感じられる。 それになによりも敵はイスペイルという存在よりもヴァルシオーネRに固執している。 女と口汚く罵るのが何よりの理由だ。 この殺し合いに呼ばれる前にこっぴどくやられたのだろうか。 事実は定かではないがどちらにしろ迷惑極まりない。 それもこれも全てはふざけた外見をしたこの機体を支給されたせい――。 イスペイルの頭の中で何かが閃く。 (待て! ヤツの狙いがヴァルシオーネなのは疑いようはない。 だが、もしヤツの本当の狙いが私の考えている通りなら……やってみる価値はあるか!) ハイパービームキャノンの連射を構わず突進してきたゴライオンを避けながらイスペイルは一つの推測を出す。 科学者の悪意が集まったことで形成されたイスペイルには彼の部下とは違い確かな知性がある。 それこそ知的生命体である人間以上に考え、自我を以て行動することが可能だ。 たえば自身を創造した君主への謀反を企てる程に。 故にイスペイルは今までのレーベンの行動から考え一つの行動に出る。 「そこのライオンロボのパイロット! 少しだけでいいから私の話を聞け!」 ヴァルシオーネRには似つかわしい威厳に満ちた声が周囲に反響する。 イスペイルはヴァルシオーネのオープンチャンネルで呼びかけた。 それは勿論反転し、再び襲いかかろうとしたゴライオンに向かって。 ゴライオンを操縦するレーベンの表情が僅かに険しくなる。 「なんだ!?」 レーベンにヴァルシオーネを逃がすつもりはない。 エーデル准将以外の女に、しかもここまでコケにされ、ただで済ますわけにはいかない。 しかし、イスペイルの言葉で動きを止められたことが彼にほんの少しの冷静さを戻させた。 計器を見ればかなりのエネルギーを喰っている。 ここはがむしゃらに攻めるだけでなく、イスペイルの話を聞く振りでもし、隙を窺ってもいいかもしれない。 密かに算段を練り始めたレーベンは操縦レバーを握る手に込めた力を僅かに緩ませる。 そんな時、レーベンは思わず自分の耳を疑った。 「キサマの趣向に口出しするつもりはない……だから私はキサマを特別に可哀想なヤツだとは思わん! 地球人とは色々なヤツが居ると私も知っているからな」 地球侵略以外にイスペイルは個人的に人間の研究を行っている。 その内容はより絞れば人間の心についてであり、人間の感情も範疇に入っている。 元々が科学者だったためかその探究心は強い。 だからこそイスペイルは目星をつけていた。 狂的な程にヴァルシオーネRをつけ狙うレーベンの行為にもなんらかの意味があるのではないか。 死ねとは言うもののこれはもしやアレではないだろうか。 地球の、何かの文献を読み漁っていた時に見つけた資料に書かれた言葉が蘇る。 ゴライオンの動きが丁度止まったこともあり、イスペイルは最後まで言い切ることを決める。 この時点で自分が何か可笑しなことを言っていることに気づく筈もなく、彼はつづけた。 「だから提案だ。お前と私の機体を交換しようではないか! お前が欲しいのはこの機体なのだろう。この機体で寂しさを紛らわすつもりかもしれんが……まあ、いいではないか。 私もこの機体では色々と不便なのでな。悪い話ではあるまい?」 知識を詰め込む者は時折自らの得た知識が全てと思いがちになる。 科学者であるイスペイルにとってそれは尚更のことだろう。 『愛を超越すれば、それは憎しみとなる』――何故だかここになってイスペイルが思い出した言葉だ。 当時は眉唾ものだと思っていたが、なるほど実際に目の前にすればある程度納得は出来る。 そもそもレーベンとはまともに意思疎通も出来そうになく、彼を深く考えるのは頭が痛くなってくる。 だからこそイスペイルは己の知識にレーベンを当て嵌めることにした。 女を愛するが故に歪んだ憎しみを持ってしまった悲しい人間。 それがイスペイルのレーベンに下した評価だ。 (そう、悪い話ではない。なにせどちらかといえば私の方が損をしている条件だ……! ヤツの機体の方が損傷は大きい。しかし、もうこの機体は……嫌だ。やはり私には合っていない……!) 右の人差し指をヴァルシオーネRはゴライオンに向ける。 その姿は勇ましく、まさしくヴァルキュリアと呼ぶに相応しい。 イスペイルの自信に満ちた言葉と態度が実に反映されているようだ。 対するゴライオンの動きは完全に止まり、沈黙を貫いている。 考え込んでいるのだろう。除々に余裕が出てきたイスペイルはじっと待ってやる。 その何気なく振りまく優しい気配りが、部下に慕われている密かなポイントなのだが彼は知らない。 やがてレーベンが返答する。 「……キサマ、名前はなんだ?」 「私か? 私はイスペイルだが……」 「そうか……なら――」 先程とはうって変って静かな様子を見せるレーベン。 しかし、イスペイルはなんだか妙な気がしてならない。 人間の言葉で言えば直感というやつだろうか。 何故だか不吉な、それかなり不吉な予感がする。 そしてその予感は――案の定現実のものになった。 「死ねええええええええええええええええええええ! イスペイルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」 あまりにも的外れな言動をたらたらと流したイスペイルのヴァルシオーネRにゴライオンが迫る。 その勢いはここ一番。女に対する怒りを込めたものと見劣りしない。 侮蔑を、それもよりによって女絡みの侮蔑とは考えるだけでおぞましい。 やはりこいつはここで殺す。最早レーベンに一切の迷いはなく、ゴライオンの右腕が大きく振りかぶられる。 「なに!? 交渉すら出来んとは嘆かわしい!」 対するイスペイルはまだ自分の言ったことは間違ってはいないと思っていないらしい。 だが、そんなことをいつまでも言っていられない。 今まさに繰り出されようとしているゴライオンの右拳から避けようとする。 「くっ、速い!?」 しかし、ゴライオンの速度はイスペイルの目測を遥かに超えていた。 レーベンの怒りの理由を知らないイスペイルにとって彼の変化は予測できない。 咄嗟にヴァルシオーネRの両腕を交差させる。 「ぐあああああああああ!!」 間髪いれずにヴァルシオーネRの華奢な躯体に衝撃が走る。 200万馬力は伊達ではない。たとえ防御しようともダメージを完全に殺し切れはしない。 両腕を損傷させながらヴァルシオーネRは海中へ落ちていく。 ブースター系統が壊れたわけではないためイスペイルは直ぐに姿勢制御に取り掛かる。 されどもその隙を逃すほどレーベンは甘い男ではない。 「地獄の底で後悔するがいい! キサマのようなクズはこれで終わりだッ!!」 いつの間にか十王剣を手に持ち、ゴライオンがヴァルシオーネRへ振りかぶらんとしている。 落下運動による重力の補助を受けていることもあり、ゴライオンの速度は速い。 一方、ヴァルシオーネRのイスペイルは姿勢制御だけで手いっぱいだ。 辛うじてハイパービームキャノンを幾つか撃つに至るが、ゴライオンが止まる気配はない。 被弾しながらもなお接近し続けるゴライオンに、イスペイルは自らの危機を覚えた。 (まさか、こんな場所で……!) イスペイルには何故か十王剣の動きがゆっくりと見えた。 そして――突如として二本のビームキャノンが両機の間を駆けた。 「チッ! だれだ!?」 横方向から伸びたビームをゴライオンは寸前で避け、レーベンが吼える。 振り返った先に佇むものは一機の黒い小型機だ バックパックから伸びた二対の鋏が印象的だ。 才能を否定され、新たな世界の創造のために暗躍した兄弟の内、弟の機体。 その名はガンダム、ガンダムアシュタロンHC。 「アナベル・ガトー……見るに堪えん戦場だが、私は私の義を貫かせてもらう!」 そしてアシュタロンHCを駆るは、今は亡きジオンのエース。 ソロモンの悪夢、アナベル・ガトー少佐が戦場へ介入する。 ◇ ◇ ◇ ガンダムアシュタロンHCがビームキャノンを撃つ。 巨体ながらもゴライオンはビームを掻い潜り、腕を振るう。 されども機動性ならばアシュタロンHCに分がある。 ガトーの技術も重なりブースターを吹かせながら悠々と避けてみせる。 お返しにと言わんばかりにアシュタロン・HCが再びビームキャノンを発射。 二本とも直撃するが、既にゴライオンは身構えており、さしたる被害は見られない。 アシュタロンHCにはゴライオンの装甲を破壊する出力が。 対してゴライオンにはアシュタロンHCを捉えきる速度が足りなかった。 「チッ、このままでは消耗戦か……!」 アシュタロンHCのコクピットでガトーが苦虫を潰したような表情を浮かべる。 ガトーはイスペイルとレーベンの戦いを数分前から監視していた。 無理に仕留める必要もないが、目につく参加者を逃すつもりもなかった。 優勝するのであればどの道他の参加者を倒すしかない。 故に片方がやられ、消耗したところを狙ってもそれは構わないことだった、その筈だ。 しかし、明らかに一方的な戦局にガトーは介入の頃合いを速めてしまった。 (あの奇妙な機体、連邦のものかはわからん。 だが戦闘用ではないのは確かだ。戦う術も、意志すらも持たん人間を一方的に追撃するなど……やはり見てはいられんな。 私もまだまだということか) 自分の甘さをガトーは実感する。 わざわざ不要な困難を自身に強いることになった自分を悔やむ。 先程は出来た筈だった。たとえガンダムという因縁の敵であろうと、自分も無抵抗の人間を殺そうした。 しかし、今回は出来なかったどころか救助さえもしてまった。 自身の不審な行動に心当たりがないわけではない。 一年戦争時の技術を遥かに超えるガンダムならまだしも、あんなふざけた外見をした兵器など存在するわけがない。 所詮戦闘の機体ではなく後でどうとでも始末出来るとは思えるがそれは都合の良い言い訳だろう。 ならば何故、自分はこの戦場に介入したのだろうか。 だが、考えられる原因は他に何もないわけではなかった。 (フジワラシノブ……ふっ、私としたことがあんな若造に毒されるとは。 だが、ヤツは私が討った。いまさら後ろへ向ける背などもってはいない……!) 先程の戦闘で戦ったパイロット、藤原忍。 カナードが居なければあまりにもあっけなく命を散らすことになっただろう。 藤原は一言で言えば熱い男だった。 腐った連邦の将校とは違い、頑なに真っすぐな意志はジオン軍人の魂にも通じていた。 彼のような若者がこれからのジオンを支えていけばいつか悲願成就の日が来るに違いない。 やはり迷いが生じてしまったのだろう。未熟な我が身を思わず恨む。 あの非戦闘用の機体に藤原のような男が乗っていたらと思わなかったわけではない。 結局は藤原の命を奪った自分が言うことではないだろうが、彼はこんな場所で死ぬべき男ではなかった。 だからこそ彼の未来を奪った自分はなんとしてでも生き残らなければならない。 だが、藤原の事よりもガトーがこの戦いに介入した強い理由は別のことだった。 女、女と狂ったように叫ぶパイロットからは理性の欠片すらも感じられない。 恐らくはこの殺し合いという状況で狂ってしまった愚かなパイロットだろう。 ならば苦しませるのは酷だ。他者に、藤原のような信念を持った人間にとっては邪魔でしかない。 どうせ全ての参加者を倒すであれば、自分が汚れ役を背負うのも些細なことだ。 一旦ゴライオンから距離を取った後、ガトーは操縦桿を倒す。 瞬く間にアシュタロンHCはMA形態へ変形する。 「ちっ、変形した!」 「ただのMSとでも思ったか!」 両方のギガンテイックシザースを開き、ビームキャノンを乱射しながらゴライオンへ迫る。 変形したアシュタロンHCにゴライオンはレーザーマグナムで応戦する。 ビーム砲とレーザーマグナムの応酬が行われる。 ゴライオンはその場に踏みとどまり射撃に専念する構えだ。 しかし、アシュタロン・HCは止まることなくゴライオンへ突っ込む。 レーザーマグナムがかすり、装甲を削っていくが逆にアシュタロンHCの速度は見る見るうちに上昇する。 レーベンがイスペイルを逃がすつもりがないのと同じく、ガトーにもレーベンを逃がす気はない。 遂にはレーザーマグナムの雨を突っ切り、追い抜きざまにギガンテイックシザースを振るった。 ゴライオンの胴を猛烈に殴りつけ、アシュタロンHCは離脱していく。 それは俗に言う一撃離脱の戦法。旋回し、再び戻ってきたアシュタロンHCをレーベンは憎らしげに見やる。 「許さんぞ、キサマああああああああああ!」 「キサマではない! アナベル・ガトーだ!」 「ならば俺はカイメラの若獅子、レーベン・ゲネラールだ! 覚えておけ!」 「笑止! そのような言葉、私が覚えるに値する腕を見せた後にでも言ってもらう!」 迫りくるアシュタロンHCを尻目にゴライオンは更に上昇を掛ける。 続けて右腕を突き出したかと思うとすぐさまその腕から灼熱が生まれた。 ファイヤートルネードによる高熱の渦がアシュタロン・HCへ襲い来る。 突撃を敢行していたアシュタロンHCは急速に減速するが、完全には減らしきれない。 眼前に広がるファイヤートルネードに敢え無く突っ込む形となる。 「ぬぅおおおおおおおおおおおお!!」 ガトーの叫びがコクピット内で木霊する。 同時にアシュタロンHCはマシンキャノンの連射を開始。 牽制用に使われるマシンキャノンで狙いを絞るのは難しい。 だが、ガトーはマシンキャノンをあくまでも乱射するのではなく、ある一点を狙っている。 それは正面の少し上、丁度ゴライオンが居ると思われる地点。 マシンキャノンの一斉掃射によりその部分だけファイヤートルネードの層が薄くなる。 続けてビームキャノンをやはり二本とも発射、更に厚みが無くなった。 そして今度は急速に加速。やや軸を上に向けながらアシュタロンHCが全速で突撃。 身体に襲い来るGの衝撃に口元を歪ませながらも、ガトーはアシュタロンHCの操縦に全てを注ぐ。 やがてマシンキャノンとビームキャノンで薄くなったファイヤートルネードの突破に成功する。 纏わりつく火の粉を振り払うようにアシュタロンHCは再度変形。 右腕にビームサーベルを握りしめ、勢いは殺さずにそのままゴライオンへ斬りかかる。 「もらった!」 頭部を護るように掲げられたゴライオンの左腕を袈裟に斬りつけた。 両断には至らなかったものの、火花を伴った裂傷はハッキリとわかる。 確かな手ごたえを感じたガトーだったが彼はすぐさま次の行動に移る。 追撃ではなくもう一度離脱に意識を。 バーニアを利用し、ゴライオンの頭上をアシュタロンHCが飛ぶ。 止めを焦ることはない――だが、そんな時言いようのない悪寒がガトーを襲う。 「なめるなあああああああああああああああああ!!」 「なに!? やってくれる!」 見れば下のゴライオンがこちらに腕を振り上げている。 反撃は予測できた。しかし、予想よりも圧倒的にタイミングが速い。 事実、近接戦闘を得意とするレーベンの反撃は鮮やかなものだった。 止むを得ずアシュタロンHCは反転し、背部でゴライオンの拳を受けることになる。 拳の衝撃によりアシュタロンHCは吹き飛び、不規則な軌道を描きながらゴライオンから離れるがやがて停止した。 すぐさまガトーはアシュタロンのコンディションチェックに取り掛かる。 充分とは言えないが距離があったのは確かだ。 ダメージは当然あるが通常飛行に問題はない。 やがてアシュタロンHCのカメラアイがゴライオンを見やる。 「レーベンと言ったか。キサマ、カイメラとはなんだ? 連邦の特殊部隊か?」 「連邦だと!? 我々カイメラは新連邦の特殊部隊だ」 「なるほど。やはり連邦の一派か……!」 ガトーが知る知識では新連邦という組織は存在しない。 しかし、名前から察するに連邦の流れは汲んでいるに違いない。 信じがたいがアシュタロンHCの存在は、既にガトーにいつぞやの未来にもガンダムはあると示している。 ならばガンダムをフラッグマシンとして擁する連邦も存在しているのだろう。 更に醜く膨れ上がった連邦の成れの果てでもいったところだ。 我々ジオンはやつらに掃討されてしまったのだろうか。 その事実に悔しさを覚えずにはいられないが、今は目の前の戦いに集中するしかない。 先程の動きを見ればこのレーベンと言う男は新兵ではなく、明らかに実戦経験を積んだ兵士なのだから。 もはや聞きたいことは終えたといわんばかりのガトーだったが、レーベンが再び口を開く。 「だが、勘違いするな! 俺は新連邦などに属したつもりはない! 全てはエーデル准将のために、 いずれエーデル准将がお創りになる世界のために……俺はこの身を捧げるつもりだからだ!!」 ガトーにはエーデルという人間に心当たりはない。 したがってそのエーデルが一体どういう思想を持つ人間なのかもわからない。 だが、わかることはあった。 機体越しに伝わってくるはレーベンの強き意志。 一途なまでに強大なそれは信念というには最早生温い。 「見ろ! この俺の戦化粧を! これこそが俺の全て……エーデル准将への想い!! この想い、キサマらごときクズどもがいくら集まろうと決して消せはしない!!」 思わずガトーは息をのむ。 唐突に転送された画像には金髪の青年の姿があった。 おそらくはレーベン・ゲネラールの素顔なのだろう。 しかし、何よりもレーベンの顔に施された真っ赤な戦化粧がガトーの注意を惹く。 更に両目はまるで研ぎ澄まされた太刀のように光り、ありあまる闘志を感じられる。 まるで獅子だ。それも負い目ではなく、躍動感に溢れる獅子だ。 レーベンという人間をただの狂人だとは思っていたが、ここにきてガトーは己の考えが違っていたのだと考える。 だが、ガトーの戦意が消失することなど、有り得るはずもない。 確かにレーベンの気迫は凄まじいものだが、ガトーにも譲れないものがある。 「レーベン・ゲネラール、その意気やよし! だが、キサマに忠義を誓う君主が居るように私にも居るのだ! いや、君主だけではない、私は国家のために戦っている! 三年……三年待ったのだ。死んでいった同胞達に報いる日を迎えるまで、私は死ぬわけにいかん!!」 宇宙世紀0079年、後に一年戦争と呼ばれる戦争。 ガトーにとっては苦い負け戦であり、全てはあの時に止まってしまった。 ジオンの理想は、自らの命を預けるに相応しいと信じた理念が。 それがようやく成就しようとしている。 こんな殺し合いになど興味はない。 だが、ジオン再興の日を見届けるためにはこの場で生き残らなければならない。 そのためなら、たとえどんな信念や義を捧げる者であろうとも負けるつもりはない。 そう、たとえばこの獅子のように闘志を剥き出しにする若者を目の前にしても――何があろうとも、絶対に。 再度レーベンを倒すべき敵と認識し、ガトーは猛々しく叫ぶ。 「こい、カイメラの若獅子よ! キサマの信念、ジオンのアナベル・ガトーが討ち砕いてくれる!!」 「フン! いいだろう! 望むところ――――――――だ……?」 しかし、そんな時レーベンが素っ頓狂な声を上げる。 何事かと思いガトーはゴライオンを観察する。 見ればゴライオンはとある方向をじっと見ていた。 その先には一機の起動兵器、白い機体とピンク色の毛髪が嫌でも目を引く――。 それはこそこそとこの場から離れようとしているヴァルシオーネRの姿。 丁度海の上でバチャバチャと腕と足をかき、犬かきのような格好で。 イスペイルはヴァルシオーネRを泳がせて逃走を図っていた。 ◇ ◇ ◇ ゴライオンとガンダムアシュタロンHCが戦っている最中、ヴァルシオーネRは海中に沈んでいた。 アシュタロンHCの介入により十王剣の一撃を貰わなかったため致命傷はない。 だが、反転上昇は間に合わず、敢え無くヴァルシーネRは敢え無く海に墜落していたわけだ。 その理由は既に助かる筈もないタイミングだとイスペイルが半ば諦めていたことがあげられる。 というか、ぶっちゃけそれだけだった。 「くっ、やつらめ……ことごとく私を無視しおって……!」 結果的に助けられたがイスペイルにあまり良い気はしない。 なにせ両機とも自分に目もくれていないのだ。 これでは追撃を恐れて直ぐにでも上昇しようかと思った自分が悲しくなってくる。 しかし、ヴァルシオーネRが全く戦えないというわけではない。 いっそのことこのままあの戦いに乱入し、奴らに自分の力を見せてやろうかと思った。 ジョーカーとしてのノルマもいずれは果たさなければならないのだから。 だが、迂闊に飛び込んではうっかり流れ弾に直撃する可能性もある。 もう少し様子を見てもいいだろう。 怖いわけではないが、二機の注意を引かないようにイスペイルは除々にヴァルシオーネRを移動させていた。 バーニア類は使わずあくまでも四肢の駆動で、要するに海上を漂うといった形でだ。 「ふむふむ、向こうはアナベル・ガトーか……覚えておこう」 そんなこんなで色々と情報が入ってきた。 なにせ上空の二機は音声を外部にダダ漏れで戦闘を行っているのだ。 その音はイスペイルに嫌でも聞こえ、彼はアシュタロンHCのパイロットであるガトーの名を記憶する。 向こうはレーベンとは違い、自分の危機を救う形となったのだ。 一度くらいは見逃してやってもいいかもしれない。 下らない算段を練っている中でも依然として両機の戦闘は続いている。 『こい、カイメラの若獅子よ! キサマの信念、ジオンのアナベル・ガトーが真っ向から討ち砕いてくれる!!』 ガトーの咆哮は当然イスペイルにも届いた。 勝負をつけるつもりかもしれない。 ならば周囲への被害は今まで以上のものになるだろう。 しかし、相打ちでなくとももう片方も損傷は残る筈だ。 漁夫の利を得るためにも、あまり離れすぎず、安全を確保できるように、 またそれでいてやはり二人の注意を引かないようにするにはやはり泳ぎだろう。 既にヴァルシオーネRを泳がせるに慣れたイスペイルは両機からさらに離れる。 外見とは裏腹にあまり華麗な泳ぎでないことにはこの際目を瞑って欲しい。 そんな時だ。強烈な視線をイスペイルが感じたのは。 『フン! いいだろう! 望むところ――――――――だ……?』 後ろを振り返りたい。 だけども振り返られない。 振り返ってしまえば絶対に後悔すると思ったから。 だからイスペイルは気を取り直して泳ぐのを続けた。 しかし、予想に反して何も起こらない。 (き、気のせいか。なんだかとても悪い予感がしたのだが……ま、まあいい!) ホッと安堵するイスペイル。 だが、彼はレーダーモニターを見る勇気はなかった。 まあ、どっちにしろ見る必要も――なかったのだが。 「逃がさんぞ、キサマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 もう二度と聞きたくないレーベンの叫びが、背後からイスペイルを襲った。 ◇ ◇ ◇ 「タスク、機体の調子はどうかしら?」 「万事オーケーっス、姐さん!」 ガルムレイド・ブレイズに操縦するヴィレッタが通信を送る。 それに答えるのは二度の気絶を体験したタスクだ。 ただし二回目は無理やりに起こされたという違いはあるのだが。 そして二人が現在いる場所はエリアC-2。 彼らは周囲の探索を行いながら、地図を見たうえで生じた疑問の答えを確認しようとしていた。 「ところで姐さんはどうなっていると思いますか? 俺はやっぱ端っこは行き止まりになってるんじゃないかって思うんですけども」 「そうね……まあ、直にわかることだわ」 参加者に配られた地図の端はどうなっているか。 極めて自然な質問だが知っておくに越したことはない。 よって共に飛行を行える機体でもあるので二人は確認する事に決めた。 ここまでは特に異常なし。出会った人間も一人も居ない。 だが、そんな時先行していたガルムレイド・ブレイズのレーダーに反応があった。 「接近する機影を確認……! タスク、何か来るわ!」 「了解! さぁ~て、どうなることやら……!」 ガルムレイド・ブレイズとビッグデュオが共に臨戦態勢を取る。 ヴィレッタが言った通り、前方からは何かの音が響き、タクスに緊張が走る。 飛び出してくるのはユウキ・ジェグナンのような信頼できる仲間か、 はたまた有無を言わさず襲ってくるようなヤツか。 生来の博打好きが故に吉と出るか凶と出るかの状況に、僅かに興奮を覚えるが冷静さは損なわない。 操縦桿を握る手に込めた力が一段と強くなり、やがてタスクは迫りくる来訪者達を確認する。 「女! どこだここは!?」 「知らん! 私が知ってたまるか! そもそもお前が追ってくるからあの壁がなんだったかわからなかったのだ!!」 タスクとヴィレッタにはわからないが二機は会場のループにより此処まで辿りついていた。 だが、問題はそこではなくこの二機が一体何なのかだとタスクは考える。 一方はリューネ・ゾルダークの機体、ヴァルシオーネR。 もう一方はサイズを考えるとジガンスクードのような特機だ。 タスクには両機から聞こえる声に心当たりはないがわかることはある。 あんまり関わり合いになりたくない。タスクは本能的にそれを悟った。 追っている方も追われている方も、普通じゃないような気がする。 失礼だとは思うけども、両者の様子からタスクはそう受け取った。 「そこの二機、止まりなさい!」 ガルムレイド・ブレイズを全面に出し、ヴィレッタが逸早く制止を掛ける。 内心どうしようかと悩んでいたタスクはヴィレッタの判断の速さに感嘆する。 やはり頼りになる上官だ、と思わずにはいられない。 ビッグデュオよりも小さいながらもガルムレイド・ブレイズから確かな頼もしさが感じられた。 これで奴らも少しは落ち着くか。そんな事を思いながらもタスクは慎重に状況を見守る。 「むっ、もしやその声は……?」 ヴァルシオーネRからは訝しげな声が聞こえた。 少なくとも知った声ではないが、ヴィレッタの知り合いなのだろうか。 まあ、どこか謎がある彼女ならどんな知り合いがいても可笑しくはない。 だが、その次に飛び出してきた言葉にタスクは唖然となった。 「その声!? キサマ――女かアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 今まで女性型の起動兵器をつけ狙っていたレーベンが更なる怒りを見せる。 レーベンが何よりも嫌うのはエーデル以外の生身の女だ。 声色からしてヴィレッタを憎むべき女とだとレーベンは断定する。 ヴァルシオーネに撃ち放っていたレーザーマグナムの照準をガルムレイド・ブレイズへ。 更には足を向けて無理な体勢を取ってまで、フットミサイルすらも撃ち放つ。 「くっ!」 既に回避出来るタイミングではない。 レーザーマグナムとフットミサイルの衝撃によりガルムレイド・ブレイズが吹っ飛ぶ。 その後をゴライオンが追いすがる。 大きさ故に嫌でも目につくビックデュオを追いぬいたあたり、余程女という存在が気に食わないのだろう。 当然タスクがレーベンの行動を黙って見ているわけもない。 「待ちやがれ! てめぇよくも姐さんを――」 「タスク! 後方からまだ!!」 「な、なんだって!?」 直ぐに援護に出ようとするタスクをヴィレッタが諌める。 慌ててレーダーに目を向けるタスク。 しかし、確認するよりも早くビッグデュオに衝撃が走った。 起点はビッグデュオの背部。方向からしてレーベンのゴライオンではない。 そもそもゴライオンはいままさにガルムブレイド・ブレイズに殴りかかろうとしている。 ならば一体誰が――答えは直ぐにわかった。 「エリアC-2だと……原理はわからんが、まあいい。私のやるべきことは変わらん!」 レーベンがループによりやってきたようにガトーも此処に辿りついていた。 今しがたビームキャノンを放った、MS形態のガンダムアシュタロンHCがビックデュオと対峙する。 悠然と構えるアシュタロンHCからはこれといった隙は見られない。 こいつはかなりやる相手だ。直感的にタスクはそう悟るが、駄目もとで通信を開く。 「俺はタスク・シングウジ。あいにくだけどアンタと殺し合いをするつもりなんかねぇ。 だから見逃せ……っていってもどうせ見逃してくれないんだよなぁ?」 「ふっ、わかっているのであれば無駄な口を開かんことだな、若造」 「ゲェ!? やっぱりそうきますか」 短い会話が終わった途端、アシュタロンHCがビッグデュオへ突っ込む。 更に二門のビームキャノンによる砲撃というオマケつきだ。 タスクにとって予想出来た展開ではあるが全然嬉しくもなんともない。 気を取り直して胸部に装備されたガトリングミサイルで応戦。 サイズの違いもあり、一発でも受ければ危ういミサイルの雨がアシュタロンHCを襲う。 対するアシュタロンHCは咄嗟に変形する。 更に下降し、掃射されたガトリング砲を掻い潜る形で空を駆けていく。 その速度は凄まじく、敵であるというのにタスクがガトーに掛かるGを心配してしまう程だ。 「くそ! こっちはパワー自慢の特機なんだ。そうチョロチョロ動かれたら困るって!」 「無論、それを狙っている!」 「ちっ、いちいち反応してくれるとは、ずいぶん律儀な方でえええええええええええええええええッ!!」 やがてガトリングを避けるだけでなく、アシュタロンHCはビッグデュオの下方すらに潜り込む。 今度は一転して上昇。ビッグデュオの背部と並行する形で上空を目指す。 同時にビームキャノンを撃ち、避けようのないビックデュオの背部が砲撃にさらされることになる。 揺れるコクピット内でタスクは舌打ちを撃ちながらも、ビックデュオの頭部を動かそうとする。 両目部分に装備された超光熱線、アークラインによる反撃を考える。 だが、そんな時ビッグデュオのレーダーがとある反応を示す。 そういえば何か忘れていたような気がタスクにはしてならなかった。 「キサマら……ことごとく私を無視しおって……! もういい! ならば私にも考えはある。 ここらでスコアを稼がせてもらおうではないか!!」 宙に浮かんだヴァルシオーネRの中でイスペイルが憤慨する。 度重なる冷遇の末にイスペイルは所謂やけくそな状態に陥っていた。 気がつけばヴァルシオーネR自身も可愛らしく怒っている。 この光景はリュウセイ・ダテにとっては喜ばしいものに違いないが、タスクにとって全く嬉しくはない。 何故なら自分の予感が当たっていた。 ヴァルシオーネRの予備動作に覚えがあったのだから。 両肩に装備された円形のユニットに光が集まる。 それぞれ右肩の方には青い光を、そして左肩には赤い光を、 くびれた腰をまわして、回転を加えながらヴァルシーネRは右腕を突き出す。 それこそが合図、二輪の光輪が唸りをあげながら射出される。 「クロォォォォォォスソーサー!!」 変則的な軌道を描きながらクロスソーサーがビッグデュオを襲う。 判っていたもののビッグデュオに避ける術はなかった。 空中戦に特化したビッグデュオではあるがその巨体ゆえどうしても格好の的になりやすい。 後方に退くことで少しでもクロスソーサーの直撃のタイミングを遅らせる。 だが、可愛らしい外見はしているものの、ヴァルシオーネRは最強ロボ・ヴァルシオンの兄弟機だ。 依然として回り続けるクロスソーサーは容赦なくビッグデュオの胸部装甲を抉る。 コクピットブロックが胸部に存在するため、あまりダメージを受けるのは不味い。 しかし、そんな時上空から伸ばされたビーム砲がビッグデュオの頭部を直撃する。 「私が居ることを忘れたか!」 そうだった。未だにガトーのアシュタロン・HCは健在だ。 いつのまにかアシュタロン・HCとヴァルシオーネRに囲まれる形となってしまった。 勿論ガトーとイスペイルが事前に打ち合わせたわけではない。 ただ一際大きなビッグデュオを先ずは潰しておこうと判断したのだろう。 単独では火力が足りずとも、二機掛かりなら充分に勝機はある。 あくまでも推測でしかないが、決定的なのは自分の状況が危機以外のなにものでもない事だ。 「く、くそ、ヴィレッタ姐さんの方も気になるってのにしかたねぇ! 俺もちょいと腹くくってやらぁ! 男、タスク・シングウジ……やる時はやるってこと、見せてやるぜ!!」 先程吹き飛ばされたヴィレッタへの心配を忘れずに、タスクは操縦桿を強く握りしめる。 今は自分に出来ることを、自分でやりきるしかないのだから。 誰にも頼らず、ただ自分だけの力をタスクは一重に信じ、ビッグデュオにその命を預ける。 ◇ ◇ ◇
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第11話 『月灯りと銃身』 勝利条件 敵の全滅。 敗北条件 R-GUNの撃墜。 ↓味方増援出現後 1.R-GUNの撃墜。 2.母艦の撃墜。 熟練度獲得条件 5ターン以内に敵を全滅させる。 ステージデータ 初期味方 R-GUN(ヴィレッタ) 初期敵 ペレグリン/バレリオン/コスモリオン/SF-29ランゼン 味方増援 ジーベルのHP90%以下/3PP ヒリュウ改(レフィーナ)/選択出撃8機 敵増援 無し 敵データ 初期 機体名 パイロット Lv HP 最大射程(P) 獲得PP 獲得資金 数 E N H 撃破アイテム 備考 ペレグリン ジーベル 12 29000 8(2) 9 9000 1 1 1 ---------- ---- ぺレグリン C軍艦長 11 29000 8(2) 9 9000 2 2 2 ---------- ---- バレリオン C軍兵 11 7800 8(4) 2 2500 - 5 6 ブースター ---- コスモリオン C軍兵 10 4200 7(4) 2 1800 - 6 8 カートリッジ ---- SF-29ランゼン C軍兵 10 2400 5(5) 1 1200 - 4 0 ---------- ---- 敵撤退情報 ジーベル(HP90%以下/3PP) ペレグリン全機(ジーベル撤退後) 攻略アドバイス 戦艦はすぐに撤退し、雑魚だけが残る息抜きステージ。 ヴィレッタは回避能力にやや不安があるため、毎ターン集中を使用すること。 味方増援は南西に出現するため、北側の敵への攻撃が遅れやすい。ヴィレッタは最初から狙いをそちらに絞り、他の敵にはあまりENを消費しないように攻撃しよう。 ジーベルのHPを減少させることでも味方増援は出現するが、およそ4回の攻撃が必要なので結局、動けるのは3PPからになる。ジーベルは無視しよう。 クリア後入手物資 無し 第10話『再会、そして巨大なる盾』 第12話『ムーンクレイドル』
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前話 ある所に、一人の少年が居た。 その少年には親が居なかった。いや、それだけでは無い。少年には名前も無かったのだ。 有ったのは名前と呼ぶには余りにも限定的なもの。任務の時にだけ与えられる仮初めの名、コードネーム。それだけしか無かった。 しかし、少年はその名で呼ばれる事に至上の悦びを感じていた。 一方で、普段はその名を呼ばれる事は決して無い。当然だ。それは名では無いのだから。 だからこそ、日に日に想いは募る。名前が欲しいと……。 決して口には出せないその想い。 少年は分かっていたのだ。 少年を拾った存在、主にとって自分はただの駒なのだと。 主に命じられるがままに人を殺す。 普通の人生を歩む者にとっては異質なそれも少年から見れば普通の日々。いや、普通の者が歩む人生こそ少年にとっては異質に映る事だろう。 その日も、普段と変わらず少年は主より任務を授かった。 しかし、その任務は今までとは少しだけ違っていた。 命じられたのは殺害では無く監視。そして対象は嘗ての魔人、ゼロ。その抜け殻とはいえ期限は不明のオマケ付き。 それでも命じられた当初、少年の心に波風は立たなかった。だが、後にそれは揺らぐ事となる。 翌日、少年は一人の若き王に出会う。それは少年にとって運命の出逢いと言えた。 その王は少年がどれだけ渇望しようとも、決して与えられる事が無かった名前をいとも簡単に、当然のように与えたのだから。 その時からだ。 少年の空虚な心に、自身を拾ってくれた主よりも大きな楔が打ち込まれたのは。 それは、名前と言う名の楔。 王と過ごした僅かな日々。だが、それは少年にとっては幸せな日々だった。 王が微笑む度に、少年の心に暖かい何かが広がる。 やがて、少年は次第に任務に付く日が近づくのを疎ましく思うようになっていった。 任務に就くという事。 それ即ち王の袂を離れる事を意味するものであり、オマケにそれは何時終わるとも知れないものなのだから。 少年は悩んだ。だが、拒む事は出来なかった。 主だけでは無く、王もそれを望んでいたのだから。 後ろ髪引かれる思いで王と別れ、任務に就いた少年。 当初は苦痛でしか無かった。だが、そんな少年の心に次第に変化が訪れるようになる。 初めて送る普通の人生。初めて出来た甘えられる存在。その存在より与えられる無償の愛情。 自分でも気付かぬ内に、少年は任務を楽しむようになっていった。 そして、運命のその日。 少年はささいな事から王の怒りを買ってしまう。 王はそれ程に怒った覚えは無い。自分を裏切れる筈がないとの絶対の自信があったからだ。 そして、それはその通りなのだが少年の心は痛く傷ついた。 が、ここで王は一つミスを犯した。 王は知らなかったのだ。魔人が目覚めてる事に……。 同じ頃、目覚めた魔人は少年を籠絡するべく情報を集めていた。 その時、偶然にも見たのだ。画像の中に映る少年の笑みを。 決して演技には見えなかったその笑み。魔人は少年自身もまだ気付いていない内なる想いにいち早く気付いた。 仮に王もその画像を見ていれば気付いただろう。だが、ここでも王はミスを犯した。 王にとって少年個人の学園での生活態度等どうでも良かった。元々、王はこう考えていたのだ。 「少年は生来の暗殺者。そう簡単にその心に変化が起きる訳が無い」と。 ――慢心―― それはこの王の唯一の弱点と言えた。 一方で、見限られたと思い絶望し疲弊していた少年。その心の隙を魔人が見逃す筈もない。 魔人は言葉巧みに王が打ち込んだ楔をへし折ると、王以上に大きな楔を打ち込んだ。 誕生日と家族という二つの楔を。 その王、ライに名を与えられ、魔人、ルルーシュには誕生日と家族を与えられた少年、ロロは遂にライの意に反する事を決意する。 だが、ロロの心の奥底には未だライに打ち込まれた楔。その切っ先が残っていた。 それが、ロロの心を引き留めた。 優先順位はルルーシュとなったものの、ロロにとってはライもまた大切な存在だという事は変わらなかった。それ程にライが与えたインパクトは大きかったのだ。 一方で、ロロがライに嘘を吐いている事に変わりは無い。 ロロの心を引き留めたその切っ先は、同時に彼の心に鈍い痛みも覚えさせた。 その痛みに必死に耐えながらもロロは考えた。自分に名を与えてくれた名も知らぬ王の為に。 考えた結果、裏切った事が自分を拾った存在、V.V.に知られれば王にも危険が及ぶとの結論に至った。ロロはV.V.の非情さをよく知っていたからだ。 しかし、そこでふと思う。 このままシラを切り続ければ、少なくともV.V.が王に危害を加える事は無いのでは無いか?と。 痛みに後押しされながらも悩み抜いた結果、ロロは「王を護りつつ自分の居場所も護る」そんな端から見れば出来る筈も無い道を選択した。 だが、ロロは知らない。 名も知らぬ王、ライの存在理由を知ったV.V.が、彼には決して危害を加えまいと心に誓っているという事を……。 ―――――――――――――――――――――― コードギアス 反逆のルルーシュ L2 ~ TURN03 ナイトオブラウンズ(中編)~ ―――――――――――――――――――――― 「先生。俺とロロに関する全てのイレギュラーを見逃してもらえますか?」 ルルーシュが命じると、紅い鳥に心を蝕まれた監視員は頷いた。 「分かった。そうしよう。二人とも、余り外を出歩くなよ?」 「「はい」」 そうして、何事も無かったかのように立ち去っていった。 「残るメンバーは、ヴィレッタ先生だけだな?」 最後の監視員にギアスを掛け終えたルルーシュが問うと、ロロは小さく頷きながら言った。 「はい。しかし、枢木スザクが居ます。殺しますか?」 「そういう事はもうやめろ。あぁ、それと……」 「はい」 「変な言葉使いは無しにしないか?俺達…兄弟だろ?」 その言葉にロロの心の内に暖かい何か広がる。そして、それが後押しする。 物言いたげな瞳で見つめるロロ。気付いたルルーシュが問う。 「どうした?」 「実は……もう一人居るんだ」 「もう一人?二人以外にか?」 思わぬ言葉にルルーシュが驚いた様子で尋ねると、ロロはそれ以上の言葉を告げた。 「うん……でも、あいつにギアスは効かない」 「なっ!?ギアスが効かない?どういう事だ?」 「学園…というか、エリア11には居ないんだ」 エリア11に居ないという答えに平静を取り戻したルルーシュは再び尋ねる。 「そいつの名前は?」 しかし、返事は無い。 「ロロ。教えてくれないか?」 怒る事無く柔和な笑みを向けるルルーシュ。その笑みに後押しされたロロは、一瞬躊躇したかのように言葉に詰まったが遂には告げた。 ルルーシュが機情を掌握するに当たって最大の障害に成りうる男の名を。 「……機密情報局長官、カリグラ。機情のトップに居る男だよ」 「カリグラ…暴君の名前だな。どんな男だ?」 「……」 「ロロ?」 再び黙り込んだロロに対して、ルルーシュは少々訝しみながら問うた。 すると、ロロは視線を逸らすかのように俯くと言った。 「そっくりなんだ。兄さ…ゼロに……」 「何だと?」 それはルルーシュでさえも全く予期していない答えだった。 ルルーシュは詳しく尋ねるべく歩み寄る。すると、ロロは突然顔を上げると必死な形相で懇願した。 「で、でも、心配しないで。彼奴は僕が抑えるからっ!!」 ロロ自身、カリグラをどうにか出来るという明確な自信は現時点では無かった。 そもそも、ロロは嚮団から派遣されて機情に席を置いているに過ぎない。 その上、これまでのカリグラとの関係はお世辞にも円満とは言い難く、早急な関係の改善を図る必要があった。 当然、それを知っていた訳では無いが、ロロの必死な形相を見たルルーシュは、果たして任せられるのか?と疑問を懐いた。 そしてルルーシュが何事か語ろうと口を開きかけた時、不意に明るい女性の声が周囲に響いた。 「あーっ!!二人ともこんな所に居た!会長、こんな所に居ましたよーっ!」 「やぁ。シャーリー」 声の主、シャーリーの姿を認めたルルーシュは咄嗟に普段の笑みを貼り付けるが、シャーリーは「今日は許さないっ!」といった様子で膨れっ面をしたまま詰め寄った。 だが、その頬が少し紅潮してるのはお約束。 「もうっ!最近は授業にも真面目に出るようになったと思ってたのに、こんな所で油売って!スザク君の歓迎会が近いんだよ?」 「済まない。ちょっと用事があってさ。なぁ、ロロ?」 突然話を振られた事に、ロロが「えっ?」と少々驚いた表情を浮かべると、それを見たシャーリーは勘違いした。 「ロロのせいにしないの!ロロも無理に付き合う必要無いんだよ?」 「そ、それは誤解――」 ロロは慌てて否定しようとするが、生来、思い込んだら一直線な彼女に通じる筈もなく……。 「いいから、いいから。駄目でしょ?ルル」 最早、ルルーシュは苦笑するしかなかった。既にこの場はシャーリーが支配しており、撤退は容易では無い。 それを理解していたルルーシュは、何とか上手く逃れられないかと話題を逸らす。 「それにしても、良く俺達が此所に居るって分かったな」 だが、ルルーシュには見えていなかった。絶対支配者が近づいている事に……。 「そりゃあ、ねぇ?シャーリーはルルーシュの事になったらぁ……」 突然響いたシャーリーとは別の女性の声。 その声を聞いたルルーシュは、内心天を仰ぎたい気分になった。 声の主は言わずもがな。この学園の首魁にしてルルーシュがコントロール出来ない唯一の存在、ミレイ・アッシュフォード。 ニンマリと笑みを浮かべながら、その豊かな胸を強調するかのように腕を組んで仁王立ちしている彼女の姿を見たルルーシュは、瞬間、心の内で諸手を挙げて降参した。 「な、何言ってるんですか!会長っ!!」 慌ててミレイの元に走り寄ると顔を真っ赤にして抗議の声を上げるシャーリー。対するミレイは悪戯っぽい笑みを浮かべてみせる。 「照れない、照れない」 「べ、別に照れてなんか……」 そんなキャアキャアと騒ぐ二人を余所に、最早全てを諦めていたルルーシュはロロにだけ聞こえる声で呟いた。 「ロロ。その男の事を詳しく話してくれないか?」 「う、うん。でも、目と耳は至る所にあるから……僕の部屋でなら……」 「ああ、それじゃあ夕方にでも――」 「何話してるの?行くよー?」 遮るかのように告げられた声。 先程までの照れていた姿は何処へ行ったのか。ルルーシュ並の切り替えの早さを見せるシャーリーに、ルルーシュは軽く相槌を打つ。 「ああ、今行く」 そう言って二人は彼女達の元まで歩み寄ると、不意にミレイが言った。 「そうそう、ロロ。さっきヴィレッタ先生が探してたわよ?」 「先生が…ですか?」 「ええ、何でも"相談"したい事があるって言ってたわね」 その言伝にロロは一瞬だけ眉を顰めると、何を意味しているのか瞬時に思い至ったルルーシュが背中を押す。 「行って来い。こっちは俺達でやっておく」 「ありがとう。兄さん」 ロロは一言礼を言うと彼女達に会釈した後走り去って行った。 ミレイはロロを見送ると残った二人に号令を掛ける。 「それじゃあ、私達は準備に戻るわよっ!」 「はーいっ!」 「はいはい」 元気一杯に返すシャーリーと、苦笑しながら返すルルーシュ。 最後にルルーシュはロロが立ち去った方向に一瞬だけ視線を移した後、何事も無かったかのように彼女達の後を追った。 ―――――――――――――――――――――― 機情の地下施設に入ったロロは、そこでヴィレッタと会話している人物を見て少々驚いた。 ――枢木…スザク……。 「ロロ、遅いぞ」 ヴィレッタの指摘を聞き流しつつロロは椅子に腰掛けると、ヴィレッタは再びスザクに向き直る。 「それで、接触されてみて何か気付かれた点は?」 「いえ、特に……」 「ではやはり、対象の記憶は戻っていないと判断して――」 「待って下さい。もう暫く調査が必要です」 慎重な姿勢を崩さないスザクに、ロロは僅かに身を乗り出すと抗議の声を上げる。 「僕達の監視が信用出来ないと?」 「C.C.の件もあるだろう?君は今まで通り弟役を頼む」 「…Yes, My Lord」 ロロは面倒な相手だと思いつつも下手に勘繰られるのを避けるべく短く返すと、ヴィレッタが今後の予定を告げた。 「生徒会主催で枢木卿の歓迎会を行うようです。そこで再度確認を」 「分かりました」 そこまで言った後、スザクは考え込むかのように瞳を閉じる。が、次の瞬間、意を決したかのように瞳を見開いた。 「一つ、お願いしておきたい事があります」 「何でしょうか?」 不思議そうに問うヴィレッタと、無言で続きを待つロロ。 スザクは一拍間を空けた後、重々しい口調で告げた。 「今後、自分にも報告を上げて頂きたいんです」 「それは……」 予期していなかった頼み事にロロは内心舌打ちし、ヴィレッタは露骨に眉を寄せる。と、彼女の仕草をスザクは不思議に思った。 「何か、問題でも?」 問われたヴィレッタは背筋を正すと自身の考えを告げた。 「貴卿は私共よりもルルーシュと接触出来る機会は多いかと思います。その上更に報告せよ、とは……失礼ですが、そこまでの必要性は無いのでは?」 「自分には軍務もあります。毎日のように学園に出席する事は出来ないんです。ヴィレッタ卿、お願い出来ますか?」 「……どれ程の精度をお求めなのでしょうか?」 「委細洩らさずにお願いします」 スザクの注文にヴィレッタは少々困ったような表情を浮かべた。理由は簡単だ。 機情の監視対象者には、確かにルルーシュも含まれているのだが第一目標はあくまでもC.C.なのだ。 そのC.C.は、彼女の上司から直々に総領事館に居る旨の一報が画像と共に送られて来ていた。これはどうやって撮られたのか、ヴィレッタ自身未だに謎の部分なのだが……。 故に、今重きを置くのはC.C.の動向であり、機情の戦力はほぼ総領事館周辺に傾注されていた。 今のような多少緩めの監視報告ならば問題は無い。緩めと言っても、C.C.接触に対処するだけの人員は揃っていた。しかし、スザクは精密な報告を希望した。 それを行うには今の人数では足らなかった。かといって、C.C.に充てている人員を順位の低いルルーシュに割り振る事は、余り好ましいとは言えなかったからだ。 一方で、二人の会話を無言で聞いていたロロは内心苛立っていた。 ロロも機情の実情は把握していた。 スザクの願いを聞く事になれば手が足りなくなる。そして、その希望を叶える為には増員は必要不可欠だという事も重々承知していた。 だからこそ苛立っているのだ。折角、ルルーシュが監視員にギアスを掛けて回ったばかりなのだから。 要求を受け入れさせるのは避けさせたかったロロは行動を起こした。 「それは僕達だけで判断出来る事じゃないですね」 それだけ告げて、ロロは絶対に断るであろう男に連絡を取らせるべくヴィレッタを見やる。 ヴィレッタは直ぐにロロの言わんとしている事に気付いた。 そもそも。彼女も当初よりそのつもりだった。そういった裁量権は与えられて無かったのだから。 「……少々、お待ち頂けますか」 ヴィレッタは一言断りを入れてスザクに背を向けると、コンソールパネルに指を走らせ始めた。 すると、それを再び不思議に思ったスザクが尋ねる。 「何を?」 だが、その頃には彼女の指は止まっていた。ヴィレッタは再びスザクに向き直る。 「ロロも言ったように私共には決めかねますので、上の許可を――」 「必要無い!!」 突然の怒号。 ヴィレッタは思わず後退り、ロロでさえも思わず目を見張る。 先程までの平静さも何処へやら。「上の許可」という言葉に過剰反応したスザクは声を荒げた。 「どうしてもと言うのなら、ナイトオブセブンとして命じる!ヴィレッタ・ヌウ!」 「Y、Yes, My Lord!!」 直立不動の姿勢で答礼するヴィレッタを見て、落ち着きを取り戻したのかスザクは軽く頭を垂れた。 「すいません。声を荒げてしまって……」 「く、枢木卿。どうか面を上げて下さい」 よもやラウンズから謝罪されるとは思ってもいなかったヴィレッタは心底慌てた。 だが、彼女がどれだけ頼み込んでもスザクが顔を上げる事は無かった。 「お願いします」 ただひたすらに頼み込む姿勢を崩さないスザクに、どうするべきか悩み続けるヴィレッタ。 そんな二人の姿をロロが興味深げに見つめていると、ヴィレッタはとうとう根負けした。 「分かりました。ラウンズである貴卿のご命令となると、私個人は拒否出来る立場には御座いません」 ロロは思わず目を見張るが、その言葉にスザクは面を上げると謝辞を述べる。 「有り難うございます」 「い、いえ」 そんな二人のやり取りを聞いていたロロは、文句の一つでも言ってやろうとヴィレッタを睨む。が、その時、部屋の中に聞き慣れた着信音が響いた。 ヴィレッタは反射的に身体を震わせてスイッチに視線を落とすと、彼女の態度に相手を悟ったスザク。その瞳が薄暗い色を帯びる。 「どうぞ、出て下さい。彼には俺から話を付けます」 「た、助かります」 ヴィレッタは安堵した表情を浮かべてスイッチを押すと、程なくしてその男は現れた。 「何ガアッタ?」 モニターに映る銀色の仮面。スザクは怨敵に瓜二つの仮面を被る男、カリグラをジッと睨み付ける。 同時にカリグラもスザクの存在に気付いた。 「ヴィレッタ、何故コノ男ガ其処ニ居ル?」 「枢木卿は学園に復学されたとご報告――」 「知ッテイル。私ガ言イタイノハ、何故コノ男ヲソノ部屋ニ入レタカトイウ事ダ」 頬杖を付いて不機嫌極まりないといった様子で語るカリグラを尻目に、ロロは内心ほくそ笑む。 その時、スザクが動いた。 「入ってはいけなかったのか?」 「無論ダ、私ハ貴様ノ入室ヲ許可シタ覚エハ無イカラナ」 「君の許可が必要とは知らなかった」 「デハ、二度ト其処ニハ入ルナ」 「それは出来ない相談だ。それに、俺は君に命令される謂われは無い」 「……ダロウナ。私モ"ラウンズ"ニ命令サレル謂ワレハ無イノダカラ」 機情の長とナイトオブラウンズ。互いに皇帝直属である彼等に命を下せるのは文字通り皇帝以外存在しない。 静寂が部屋を支配する。 このまま牽制し合うだけの時間が流れるかと思われたが、それを無駄な時間だと理解していたカリグラは相手を変えた。 「ヴィレッタ、用件ヲ」 「はい。実は枢木卿がルルーシュの監視報告を要望されてまして、つきましては卿のご裁可を頂きたく通信致したのですが……」 彼女は丁寧に説明するが、そこまで言って言葉に詰まる。すると、続きを請け負うかのようにスザクが告げた。 「けれど、それはもう必要無くなった。そうですね?」 「は、はい」 短く同意するヴィレッタを見て、カリグラはスザクが言わんとしている事を理解した。それは、ある程度は予想していた事でもあったからだ。 「………"ラウンズ"トシテ命ジタカ……」 「そうだ」 簡潔な肯定の言葉に仮面の下でライはスザクを睨み付ける。 同時に、自身の懸案事項が現実の物となろうとしている事に歯噛みした。 「勝手ナ真似ヲ……」 「断るなら断るで構わない。だがその場合、俺は勝手にやらせてもらう」 「………」 頑として譲る素振りを見せないスザクの瞳。 その大切な何かを失ったかのように暗く光る瞳を仮面越しに認めたライは思慮に耽る。 勝手に動かれる事はライにとって好ましい状況では無かった。しかし、認めなければ面倒な事になることは請け合い。 十分理解してはいたものの、簡単に認めてしまうのは何となく不愉快だった。 ライは咄嗟にどうするべきか模索する。最も簡単な方法は直ぐに思い付いたのだが、生憎と手も声も届く距離には居ない。 結果として、スザクの行動をある程度コントロール出来る方法等、一つしか無かった。 だが、答えが出ているにも関わらずプライドが邪魔をするのか。彼にしては珍しく長考していると、この殺伐とした空気に耐えれなくなったのかヴィレッタが動いた。 「あ、あの…カリグラ卿?」 それが切っ掛けとなった。ライはカリグラの仮面を力無く左右に振って見せると結論を出した。 「要望ハ"ルルーシュ"ノ監視報告ノ提供。ソレダケダナ?」 「それと自分が軍務で居ない時、ルルーシュに何か変化があれば直ぐに知らせて欲しい」 「……"ヴィレッタ"。要望通リニシテヤレ」 「よ、よろしいのですか?」 ヴィレッタは驚いた。よもやカリグラが許可するとは思ってもいなかったからだ。だが、それ以上に驚いたのはロロだった。 ――不味いことになった。 ロロが何と言うべきか言葉に悩んでいると、彼女の驚きを目の当たりにしたカリグラは軽口を叩く。 「断ッテモイイゾ?」 が、彼女にそのような事が出来る筈も無い。 「い、いえ!その通りに」 ヴィレッタが慌てて断りを入れると、スザクが謝辞を述べた。 「協力感謝する」 「貴様ガ私ニ礼ヲ言ウトハナ」 「それぐらいは辨えてる」 少々意外だったといった様子で語るカリグラにスザクは釘を刺すが、蒼い瞳は全てを見透かしていた。 「本音ハ?」 「……君の存在は不愉快だ」 一瞬、間が空いたが、さして悪びれた様子も無く吐き捨てるスザク。対して、今度はカリグラが釘を刺しに掛かる。 「ダロウナ。ダガ、コノ私ガ譲歩シタノダ。呉々モ言ッテオクガ、私ノ邪魔ダケハスルナ。邪魔ヲスレバ"ラウンズ"デアッテモ許シハシナイ」 それは脅し以外の何物でも無い言葉だったが、スザクは怯まなかった。 「その言葉、そっくりそのまま返す」 再び睨み付けるスザクに対して、仮面の下ではライが妖艶な笑みを浮かべていた。 「……貴様ヲ殺シテヤリタクナッタ」 「でも、それは出来ない。違うかい?」 「本当ニソウ思ッテイルナラ、愚カノ極ミダナ……」 「君命に逆らう気か?」 スザクが目敏く問い詰めるが、カリグラは無視して続ける。 「……一ツ答エロ。貴様ノ目ニ"ルルーシュ"ハドウ映ッタ?」 「どう、とは?」 「何カ気付イタ点ハ無カッタカ?」 「いや、今の所は何も無い。だが、三日後の歓迎会で全てを明らかにするつもりだ」 薄暗い瞳に決意の光を宿すスザク。それを仮面越しに探るかのような瞳で見つめていたライ。不意にその心に嗜虐心が湧いた。 「歓迎会ノ中心メンバーハ、"ミレイ・アッシュフォード"、"シャーリー・フェネット"、"リヴァル・カルデモンド"、ダッタカ?"ロロ"」 ロロは突然話を振られた事に内心驚きつつも無言で頷く。 「何が言いたいんだ?」 一方で、カリグラの意図を理解しかねたスザクが問うと、仮面の下でライは今度こそ壮絶な笑みを浮かべながら口を開いた。 スザクにとって、決して聞き流す事が出来ない言葉を……。 「純粋ニ貴様ノ復学ヲ祝ウ仲間達ヲ欺キナガラ、嘗テノ友ヲ監視スル。今ノ気分ハドウダ?」 「っっっ!!!」 バンッ!!とスザクは両手を勢いよく机に叩き付けて立ち上がると、鬼のような形相で睨み付けた。 その表情に背筋が凍るヴィレッタと一貫して無表情のままのロロ。 一方、今のライにとってスザクのそれは愉快な見せ物でしか無かった。 「精々、偽リノ友情トヤラヲ楽シムガ良イ」 「カリグラァァッ!!」 刃のように辛辣なその一言は、スザクの緒を容易く断ち切った。 スザクは床に固定されている筈の椅子を力任せに引き抜くと、次の瞬間、モニター目掛けて投げ付けた。 「く、枢木卿っっっ!?」 ヴィレッタは慌てふためきながら、ロロは相変わらずの無表情でそれぞれ咄嗟に机の下に身を隠す。ロロはギアスは使わなかった。ヴィレッタと二人だけの極秘事項と思っていたからだ。 ガシャァァァン!!という凄まじい音と共にモニターは破壊された。 火花を散らすモニター画面。だが、通信機器は健在なようでスピーカーからはカリグラの哄笑が響く。 「クハハハハッ!!ソレガ貴様ノ選ンダ道ダ。耐エラレナイノナラバ去ルガイイ……ソレト"ヴィレッタ"。早々ニ復旧サセロ」 「Y、Yes, My Lord!!」 ヴィレッタが机の下から這い出ながら応じる一方で、スザクは何も言い返さなかった。いや、言い返せなかったのだ。スザクは、拳を固く握りしめると怒りに肩を震わせる事しか出来なかった。 「当日、私ハ所用デ席ヲ外ス。タダ、何カアレバ一報ハ入レルヨウニシロ。報告ヲ楽シミニシテイル。デハ――」 と、カリグラはそう言って通話を切ろうとする。 だが、その時ヴィレッタよりも早く机の下から這い出したロロが呼び止めた。 「待って下さい!」 普段なら聞く筈もない。だが、強い口調で懇願するロロを怪訝に思ったカリグラは手を止めた。 「……何ダ?」 「監視員はどうするつもりですか?ルルーシュの監視を強化するのなら今のままでは人数が足りません」 ロロは制服に付いた埃を叩きながら問うた。増員を決定する気なら直ぐにでもルルーシュに伝えなければと思っていたからだ。 しかし、カリグラにその気は無かった。 「ソレニツイテハ現状維持デ良イ」 その言葉に拍子抜けしつつも、増員しないに越したことは無いと思ったロロはそれ以上何も言わなかった。 だが、それは又してもスザクには聞き流す事が出来ない言葉だった。 「どういうつもりだ?」 批難の色を隠すこと無く問うスザクの声を聞きながら、カリグラは語る。 「C.C.捕縛ハ陛下ヨリ賜ッタ至上命題。居場所ガ明ラカトナッタ今、餌ニ対シテ増員スル理由ハ見受ケラレナイ」 「だが――」 「ソレニ言ッタ筈ダゾ?私ハ"ラウンズ"ニ命令サレル謂ワレハ無イ、ト。ソレトモ何カ?貴様ハ私ノ裁量権ニマデ踏ミ込ンデ来ル気カ?」 「君はルルーシュを…ゼロを甘く見ている」 「甘ク見テイレバ、貴様ノ要望ヲ受ケ入レタリハシナイ」 「…………」 スザクは思わず押し黙った。再び沈黙が辺りを漂う。すると、カリグラはそれを終了の合図と判断した。 「話ハ終ワリノヨウダナ。デハ――」 カリグラはそう告げると通信を切った。 だが、言い返せなかったとはいえ納得出来なかったスザクはヴィレッタを問い詰める。 「出来るんですか?今の人数で……」 「それは…何とも……」 出来ない等と言える筈も無い。 ヴィレッタが言葉に詰まっていると、代わりにロロが口を開く。 「出来ますよ」 驚いた様子で振り向いたスザクに対して、ロロは少し言葉を変えて重ねるかのように言う。 「やります」 すると、ロロの瞳から滲み出る力強い光。それを決意と受け取ったスザクは小さく頷いた。 「……分かった。君の言葉を信じる。それとヴィレッタ卿――」 「何でしょうか?」 「モニターの件申し訳ありません。修理に掛かった費用は自分に回して下さい」 最後にそれだけ告げたスザクは踵を返すと部屋を後にした。 そんなスザクの後ろ姿をヴィレッタと同じく無言で見送るロロ。その瞳が怪しく光る。 ――残念ですけど、僕はあなたの期待に応える気は無いですよ? ―――――――――――――――――――――― その日の夕方。 歓迎会の準備からやっとの思いで解放されたルルーシュは、ロロから様々な情報を聞きだそうとロロの部屋に来ていた。 だが、生憎ロロはミレイに捕まっており、まだこの部屋には戻っていない。 今、ルルーシュはロロが来るまでの間、携帯片手にC.C.と連絡を取っていた。 『そうか、学園は支配下に置いたか。流石だな、坊や』 「詰めの部分が残ってはいるがな。ところで、そこに卜部は居るか?」 『生憎、今は席を外している。藤堂達とトレーニング中だ』 「そうか……なら詳細は後で伝えるとして、卜部にはニイガタでの物資受け取りに出向くよう準備を進めておけと伝えておいてくれ」 1年近く拘束されていた他のメンバー達は今のニイガタ、いや、エリア11の現状を詳しくは知らない。 方や卜部は1年間ブリタ二アの追跡から逃げ続けた実績がある。ルルーシュはこの任務に彼以上の適役は居ないと考えていたのだ。 ルルーシュがそこまで考えている事を知っていたのか。または、さして興味が無かったのか。 C.C.は『分かった』とだけ返した。 話が一段落したところで、ルルーシュは問う。自分にとって、目下最重要課題となっている二人の行方を……。 「何か分かったか?」 だが、帰って来たのは落胆する結果だった。 『いいや、何も。相変わらずお前の妹に関しても、ライの事に関しても。何も分からず仕舞いだ』 「そう…か……」 C.C.が一拍の間も置かずに返した事にルルーシュは、本当に探しているのか?と思いながらも、それを口に出す事無く少し暗めの口調で返した。 すると、C.C.は何故か自分が悪いかのように思えてきた。 『そういうお前はどうなんだ?』 咄嗟に問い返すと、ルルーシュは慎重に言葉を選びながら言った。 「一人、気になる男が居る…らしい」 『らしい?』 C.C.は何とも煮え切らない発言をするルルーシュを珍しく思った。 「ゼロと同じ仮面を被った男。機情のトップに居る男だそうだ」 『ギアスを使えば早かろう?』 何を手を拱いているのかと思ったC.C.が一番手っ取り早い方法を提示したが、ルルーシュはあっさりと否定した。 「このエリアには居ない。まだ俺も見た事は無いが、普段はモニター越しに報告を行うそうだ。ギアスは使えない」 『……その男が学園に監視網を敷いたのだな?』 言葉尻に不快な色を滲ませるC.C.をルルーシュは不思議に思った。 「恐らくそうだろうな。だが、それがどうかしたか?」 『いや、あの監視網には随分と苦労させられたと思っただけだ』 「愚痴か?魔女らしくないな」 『それ程に付け入る隙が無かったんだよ。だが、話を聞いているとその監視網も最早ザルに近いな』 冒頭にルルーシュより今の学園の状況を聞いていたC.C.は素直な感想を口にしたが、ルルーシュは慎重な姿勢を崩さなかった。 「表向きはそうだが、恐らくは……俺の変化を窺っている」 『疑われているのか?』 まるで他人事のように問うC.C.。ルルーシュは思わず眉を顰めた。 「その可能性は否定出来ないが、忘れたのか?」 『何をだ?』 「機情の標的はお前だぞ!?お前が喰い付くのを待ってるという可能性もある!!」 思わず声を荒げてしまったルルーシュだったが、C.C.はあくまでもC.Cだった。 『やれやれ、モテる女は辛いな』 彼女の軽口を聞いたルルーシュは、先程まで歓迎会の準備に追われていた事も影響したのか一気に虚脱感に襲われた。 最早、文句を言う気力も失せてしまったルルーシュは、盛大に肩を落としてみせると話題を変えた。 「兎に角、今は好機なのは間違いない。奴らに隙を見せたのが仇になった事を教えてやろう。この学園は、もうすぐ俺の自由の城になる」 ルルーシュは自分を元気付けるかのように、口角を吊り上げて陰惨な笑みを浮かべると、不意にC.C.が呟いた。 『そうか。それは…………頼もしいな』 「……おい、今の間は何だ?何を考えている?」 気になったルルーシュが追及するが、C.C.は何事も無かったかのように惚けて見せる。 「ん?何も。あぁ……物資受け渡しの件は卜部に伝えておく。それじゃあな、おやすみ、ルルーシュ」 「おい!まだ話は――」 ルルーシュの引き留めも空しく、C.C.は通話を切ってしまった。 「何なんだ?あの魔女は……」 先程のC.C.の含みを持たせる態度を疑問に思うルルーシュだったが、答えは出なかった。 ルルーシュは携帯から視線を移すと部屋の窓を見やる。外は茜色に染まっていた。 「あいつはこんな時間から寝る気なのか?」 そう呟いた後、ルルーシュはロロが戻るまでの間、ただ無言で夕陽を眺めていた。 ―――――――――――――――――――――― C.C.とルルーシュが話していた頃、政庁ではちょっとした騒ぎがあった。 それを止めに入った同僚の姿を認めた騒ぎの元凶、ジノ・ヴァインベルグ。 「おぉ!スザク」 彼は自身の駆るナイトメア、トリスタンのコックピットから身を乗り出すと嬉しそうな声で名を呼んだ。 そして、コックピットから降りたジノは破顔しながらスザクの元に駆け寄ると、対するスザクは少々呆れたように言う。 「ジノ。ランスロットを持って来て欲しいと頼んだのに……」 「あぁ、来週ロイド伯爵と一緒に来るよ。それより何だい?この服――」 「学校帰りだからね、制服」 「へぇ、これが……」 興味津々といった様子でいるジノにスザクは苦言を呈する。 「ジノ。幾ら名門貴族とは言え少しは普通の――」 だが、ジノはそれを聞き流しながら背後に回るとスザクを抱き締めるかのように体を預けた。 それはジノなりのスキンシップだった。 それを理解していたスザクはその行為を拒否する事は無かった。いや、何度言っても聞かない事から半ば諦めに近い感情を持っていたと言う方が正しいかもしれない。 しかし、自分よりも大きな相手に凭れ込まれては堪らない。 「あの…重いんだけど――」 スザクが抗議の声を上げた時、一帯に一人の女の声が響いた。 『お仕舞い?』 同時に一機のナイトメアが二人の前に降り立つと、その姿を認めたスザクは思わず呟いた。 「モルドレッド…アーニャまで来ていたのか」 『お仕舞い?』 声の主はアーニャ・アールストレイム。 彼女は、先程の自分の問いに対して答えが返って来なかった事からか今一度問うた。するとスザクの代わりに彼から身体を離したジノが答える。 「終わりだってさ、スザクが」 『ふーん………………つまんない』 心底残念そうに呟いたアーニャはコックピット内で携帯を弄り始めた。 ジノとアーニャ。 二人の実力を良く知っているスザクにとって、軍事面でこれ程頼りになる援軍は無いだろう。 スザクは、モルドレッドを見つめながら一人思う。 ――これで、戦力は十分過ぎる程揃った。ルルーシュ、3日後の歓迎会で全てを明らかにしよう。 ◇ スザクが一人決意を懐いていた頃、通路の天上に巧妙に隠匿されていたカメラが三人の姿を捉えていた。 それから送られて来る映像をモニター越しに眺めながら、彼等の会話に聞き耳を立てている人物が二人。 その内の一人が言う。 「盗撮と盗聴。共に感度は良好みたいだね」 すると、もう一人はその言葉を少々不快に思ったようだ。 「何となく嫌な響きだな……諜報活動と言え。V.V.」 だが、指摘されたV.V.は愉快そうに笑みを溢すのみで反省の色を見せないかった。 「ライ、君は妙な所に拘るよね。でも、政庁の至る所に取り付けるなんてさ……よく気付かれなかったね」 「設置した者達は皆、元は優秀な鼠だったからな」 関心した様子でいるV.V.を尻目にライはさも当然のように返した後、手に持ったティーカップに視線を落とすと感慨深げに言った。 「しかし、便利な時代になったものだ」 「それ、何だか古くさい台詞だよ?」 軽口を叩きながらクスクスと笑うV.V.を余所にライは語る。 「今も昔も、情報というのは鮮度が命だ。あの頃は早馬を出しても手元に届くにはそれなりの時間が掛かったからな」 「人の歴史は戦いの歴史。戦争が通信技術を進歩させたんだよ」 V.V.の指摘にライは成る程な、と思うと同時にその元凶の名を口にしようとする。が、V.V.の言葉がそれを遮った。 「それをさせているのが神。でも、僕は思うんだ。人々を争わせる神なんて必要無い。そんな神様なら……殺してしまおうって」 「それがお前の願いだったな」 陰惨な響きを持ったその言葉に、思い出したかのように呟くライ。そんな彼の言葉をV.V.が補足する。 「それだけじゃないよ。これは君の母親と妹の仇にもなるんだから」 「ああ、だからこそ私はお前達と共に歩んでいる。その為ならば、どれ程汚れた事であっても行うまで。これもその一環だ」 モニターに映る彼等の姿を眺めながら、ライは平然と告げた。 今のライの行為は所属が違うとはいえ仲間を監視している事に他ならない。 いや、ライ自身は仲間だとは思ってはいないが、それでも盗み見ているという事実に代わりは無い。 端から見れば良心の欠片も無いと思われるに足る行為。 だが、V.V.はそう思ってはいなかった。 「諜報機材を設置したのは公の場所だけだよね?」 「公室にも有る。だが、それがどうした?」 「つまり私室には設置していないという事だね……僕はそこに君の最後の良心を感じるよ」 良く分かってるでしょ?とでも言いたげに満面の笑みを浮かべるV.V.。 だが、ライが真面目な表情を崩す事は無かった。 「私は必要と認めれば私室であっても行うが?」 「折角褒めてあげたのに……」 呆れたように告げるV.V.を見て、ライは僅かに口元をつり上げた。 「それは気付かなかった」 「……嘘吐き」 V.V.が軽く溜息を吐いてモニターに視線を戻すと、ライも同じように視線を戻す。 「しかし、枢木一人でも億劫なのだが……よもやラウンズが増員されるとはな……」 「君ならどうとでも出来るでしょ?頑張ってね。ライ」 先程の事を引き摺っているのか、他人事のように語るV.V.。 ライは、少々やり過ぎたと思いつつ、微苦笑を浮かべたその口元にゆっくりと紅茶を運んでいった。 次話 ライカレ厨 40 *