約 2,183,980 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/979.html
前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 「待て」 その言葉に、食堂が静まり返る―…と言うことはなく、 騒がしいままではあったが、その声は届いたようだった。 「……何だね君は」 ギーシュは顔を歪め、不機嫌な表情――顔が腫れているので、 口調からの推測だったが――と、不機嫌な口調で返した。 それに対しても平静を保ち、ブルーは言う。 「誰でも良いだろう」 「……そうか、君はたしか『ゼロ』のルイズが呼び出した平民だったな? 平民が僕に何のようだ」 「お前が悪い」 いや、実に簡潔な発言だった。 解りやすく、また同時に間違っていなかったため、 周囲の者達もその言葉に乗り、ギーシュを笑い始めた。 「そうだギーシュ!お前が悪い!」 「二股をかけてたのはお前だからな!」 「恋人が居るだけで許せんのに二股をかけるとはどういう事だギーシュ!?」 一人だけ暗い感情を隠してないものが居たような気もするが。 平手打ちを喰らい、華麗な裏拳を決められ、 周囲から笑われたギーシュは、瓶を拾っただけのメイドより、 自分が笑われる原因となったこの生意気な平民に怒りの矛先を向けることにした。 「君は貴族に対する礼儀を知らないようだな?」 「知った事じゃないな」 ブルーがそう返すと、 ギーシュは芝居がかった仕草で続ける。 こういうときでさえギーシュは格好を付けることを忘れない。 それは賞賛に値することだとは思える。 「フン、ならばこの僕が君に礼儀を教えてあげよう。 ヴェストリの広場に来たまえ!そこで平民と貴族の差を示してやる」 「別に構わん」 そう言うと出口へと歩き出す。 ギーシュの友人達がその後をついて行く。 震えていたシエスタが、暫く経ってから言う。 「あ、あなた……殺されちゃうわ。平民が貴族に逆らったら……」 「大丈夫だ」 そう言ったものの、シエスタは青白い顔をしながら走り去ってしまった。 それと入れ違いになるように、ルイズが近寄ってくる。 「ブルー!何してんのよ!?」 「……どうもヴェストリの広場とやらに行かなければいけないみたいだが」 相変わらず平静を保つブルーとは対照的に、 ルイズは激昂しているようだった。 「そうじゃなくて!何で決闘の約束なんてしてるのよ~!」 「決闘の約束だったのか?……まぁ、問題はないな」 そこで初めて決闘の約束をしたことに気付いたらしい。 その様子を見て少し呆れながらもルイズは続ける。 「あのね!……ちょっとこっち来なさい!」 途中で少し逡巡しながらも、ルイズはブルーの手をとって食堂から連れ出した。 間違いなく人の目が無い自分の部屋まで来てから、 ルイズは話し始める。 「……まぁ、この際だから決闘の約束の事には何にも言わないわ。 だけど、どうやってギーシュと戦うつもり!?あれでもメイジよ!」 「術を使えば――」 「ほいほい使うなって今朝方言ったでしょ!」 「……そうだったな」 「……どうするのよ」 二人とも黙り込む。 結構長い間沈黙を保っていたが、そのうちルイズが言う。 「今なら謝れば、許して貰えるかも」 「何で謝るんだ?」 「……それはそうだけど、謝らないと許してはくれないわよ」 その言葉を受けて、考え込むブルー。 またしばらくの時間が過ぎる。 が、ブルーは突然何かを閃く。 「要するに術を使ってないように見せれば良いんだな?」 「……え?そんなこと出来るの?」 「やり辛いことは確かだが、出来る筈だ」 ブルーは自信というよりは確信を持った口調で言い放った。 「諸君!決闘だ!」 ギーシュが両手を広げて叫ぶと、周囲から歓声が帰ってくる。 尚、顔はすでに治療済みである。 打撲ぐらいなら案外簡単に直せるのだろう。 「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの使い魔だ!」 歓声に答えて、薔薇の造花を振ったり、 手を振り返しているギーシュに比べ、 ブルーは非常に落ち着いていた。 一通り歓声に答え終わったギーシュがブルーの方に向き直ると、 周りの観客にも聞こえるように語り始めた。 「まずは逃げずに来たことを褒めてやろうじゃないか、平民」 「逃げる必要もないな」 「……ふん、そんな口を利けるのも今の内だ!始めるぞ!」 ギーシュが薔薇の造花を振ると、 薔薇の花びらが宙に舞い、一体の女戦士の形をした銅像となった。 それがブルーの前に跪く。 「僕はメイジだ、だから当然魔法を使って戦う。 まさか文句は無いね?」 その言葉に応えるように、跪くように座っていたその銅像が立ち上がる。 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。 僕が青銅のゴーレム、『ワルキューレ』が君の相手をしよう」 それに対し、ブルーは右手を前に突き出し、言う。 「そうか、なら俺は――」 ~~~~ 「良いかルイズ。 使うのはたった二つの術だ。『剣』と『金貨』」 「……何よそれ?」 「見れば解る」 ~~~~ 「俺は手品師だ」 と言って、何も持っていなかった右手に『金貨』を現す。 その言葉と、その『金貨』を見て、ギーシュは思わず言ってしまう。 「……は?」 「だから手品を使って戦う。問題はないな?」 そして、今度は『金貨』を消してみせる。 周囲が黙り込む。 そして、次の瞬間には笑い出す。 「ふ……はは、あっはっは!」 「おい聞いたか!手品でメイジに挑むらしいぜあの平民は」 「こいつは笑えるな!」 ルイズと、後二人……いや、四人だけが冷静に見つめていた。 ギーシュはと言うと、馬鹿にされたと思ったらしい。 「ふざけるのもそこまでだ!」 と言い、ワルキューレをけしかける。 それに対し、ブルーは両手を服の内側にしまい込む。 次の瞬間、笑いが一気に止まる。 手品を使って戦うといった平民は、懐からアホみたいな量のナイフを取り出した。 「このナイフの束からどうやって逃れる?」 それにしてもこのブルーノリノリである。 ともかく、ブルーはその『剣』を全てギーシュに向かって投げつける振りをする。 実際は投げている振りをしているだけで、『剣』の力で飛ばしているのだが。 自分に向かってくるナイフを見て、ギーシュは叫ぶ。 「ワ、ワルキューレ!」 青銅のゴーレムが重そうな外見にそぐわぬほど俊敏な動きをみせ、 ナイフを身体で受け止める。 それはブルーが『剣』を投げるのを止めるまで続いた。 ギーシュは冷や汗をかきながらも、続けた。 「は、はは……少しは焦ったが、所詮は僕のワルキューレの敵ではないな」 そして、再び薔薇を振り、6体のワルキューレを作り出す。 これで既に作られて居たワルキューレを含め、7体となった。 「……だが、剣を使うとは、どうも本気のようだね! なら僕も本気で相手をしてあげようじゃないか! 七体全てのワルキューレを出そう!」 6体のワルキューレが、ブルーを囲むように近づいてくる。 一体はギーシュの近くに居た。 ナイフによる飛び道具を警戒しているのだろう。 ブルーも流石に焦り始める。 『剣』はギーシュに当たれば間違いなく致命傷を与えるが、 金属で出来たこのワルキューレとか言うゴーレムに対しては効果が薄い。 それが七体。ギーシュへの直接攻撃も警戒されている。 絶体絶命という奴であった。 (他の術を使えば――) が、辺りを見回してみる。 ワルキューレを全員倒せるような術では、周囲にいる生徒達にすら死者を出すだろう。 「アカデミー」とやらの事を抜きでも、それは出来そうにない。 一体一体倒していったとしても、途中で術力が切れそうである。 ワルキューレを一撃で倒せるような術では、術力の消耗が大きい。 青銅の拳に殴られ、吹き飛ばされる。 「ぐっ……」 倒れていると、近い位置にいたワルキューレが追撃をかけてきた。 ゴーレムの足が、ブルーの左腕の骨を踏み砕いた。 「……ッ!」 激痛に耐えかねて転がるが、結果的にそれで距離が取れたようだ。 だが、状況が好転したわけではない。 ギーシュは勝利者の余裕をたっぷりと含ませて言ってくる。 「ふん、不遜な口をきいていた割には大したことはなかったね。 もう終わらせるとしよう!」 ワルキューレ達が、一斉にブルーへと殺到した。 「オールド・オスマン」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてくる。 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で、決闘が行われているようです。 大騒ぎになっていますが、生徒達に邪魔されて止めることが出来ません」 それを聞いて、オスマンは呆れと嘆きを表へ出した。 「全く、あの馬鹿共が。 暇があるならもっと有意義なことをしろってもんじゃ。 で、誰が暴れてるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモンです」 オスマンは記憶の糸をたどり、顔と名前を一致させる。 「あのグラモンの所の馬鹿息子か。 どうせ女がらみのトラブルじゃろ。で、相手は誰じゃ?」 「それが……メイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔のようなのです」 オスマンは、隣にいたコルベールの方を向いた。 コルベールもまた、こっちを見返していた。 思うところは同じだったらしい。 外からの声が続けてくる。 「決闘を止めるために、『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが……」 その声に対し、オスマンは即座に返した。 「アホウ。子供のケンカ如きで秘宝を使ってどうするんじゃ。 放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 オスマンは再びコルベールと顔を見合わせると、杖を振った。 壁に掛けられた鏡に、広場の様子が映し出される。 ルイズは不安だった。 不安は、自らの使い魔が死にかけていると言うことだった。 どう考えてもそれが正しい。 しかも、何故か術を使おうとしない。 死にかけてまで、術を使わない理由にはならない。 自らの初めての成功の証が、消えてしまうことがこの上なく恐ろしかったのだ。 なので、目を閉じていた。 が、突如走った閃光が、閉じていた彼女の目を開かせる。 そこには、光り輝く剣を片手で構える使い魔の姿があった。 ブルーはある一つのことを閃いた。 ここに来てからというもの、やたらと閃いているような気がするが、 それは今はどうでも良い。丁度良い術があったのだ。 大規模ではなく他人を巻き込まず、 ワルキューレ達を一撃で倒せる訳ではないが、 防御も兼ね備えた術。 更に良いことに、術を使っているとは思われづらい。 左手は折れているようだったが、右手は動かせる。 問題はない。 フラッシュボムを上に投げる。 ここに来たときに大したものは持っていなかったが、 これはあった。 「《光の――」 詠唱を始めると同時に、閃光が走る。 その閃光を目を閉じたブルーは見る事はなかったが、 周囲の観客や、ギーシュの目を眩ますことは出来たようだ。 「―剣》!」 振り上げた右手に、《光の剣》を作り出す。 閃光によって、彼らは目を閉じた。 が、暫くして閃光は収まったことを知ると、彼らは目を開けた。 ボロボロにやられていた平民が、また剣を持っていた。 どうやらまだやるつもりらしい。 同じように閃光から立ち直ったギーシュが、芝居がかった口調で言う。 「……ふふ、褒めてあげよう。ここまでメイジに刃向かうとは、むしろ賞賛に値するね。 だが、もうろくに動けないだろう」 そして、再びワルキューレ達を操り始める。 ワルキューレ達が再び、ブルーめがけて突撃する。 (……なんだ?) ブルーは、自らの身体の異変を感じ取っていた。 身体が軽い。腕の痛みを感じない。 今、自分に襲いかかろうとしているワルキューレ達が遅く見える。 《光の剣》にはこのような効果はない。 だが、取り敢えず今は考えることは止め、目の前のゴーレムに向き直った。 身体を感じたままに動かす。 ワルキューレの拳を回転してかわし、そのまま斬る。 次に来たワルキューレを袈裟切りにする。 そして、返す刃の逆袈裟切りを身体ごと回転して繰り返し、残りの4体を切り捨てる。 ギーシュの眼が、驚愕に見開かれた。 「わ、ワルキューレッ!」 一瞬のうちに6体のワルキューレを斬られたギーシュが、 薔薇を振って巨大な剣を作り出し、残り一体となったゴーレムに持たせる。 ブルーはそれを見て、高く飛び上がった。 自分でも信じられないぐらい、高く飛んだので驚いたが、 落ち始めると、落下の力も加えて剣を振り下ろす。 迎撃する形で剣を振り上げたワルキューレを、大剣ごと縦に真っ二つにし、 その後剣を横に一閃し、ギーシュ……の持っていた薔薇だけを散らした。 腰を抜かして尻を付いたギーシュに、 ブルーは剣を突きつけて言った。 「まだ続けるか?」 その場に居た、本人を含めた誰もがギーシュの敗北を認めた。 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7031.html
前ページ次ページ虚無と十七属性 「ヴェストリの広場で、ギーシュが決闘してるぞ!」食堂に、二年生の誰かが駆け込んできてそう言った。 「え、本当!? 誰と? 誰と?」 「もしかして、さっきの二股が原因?」周りの生徒が、これはいい肴を見つけた、とばかりに飛びついた。 「ああ。なんでも、原因となった小瓶を拾った、ルイズの使い魔と決闘しているらしい。逆恨みだよなー」 その言葉が食堂に響いた後、一斉に視線がこっちを向いた。思わず吹き出しそうになった口の中のものを、必死に飲み込む。 「あんの……馬鹿!」 虚無と十七属性 第七話 バラおとこのギーシュは ワルキュレをくりだした! (※ポケモンの世界に於いて、固有名詞は5文字までしか入りません) 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。よって、君の相手は青銅のゴーレム・ワルキューレがお相手するよ」 「ならば、俺はこの青銅人形を倒せば、勝ちなんだな?」 「いや、僕に参ったと言わせるか、僕の杖を奪ったら勝ちだ。ワルキューレは、あくまで僕の攻撃の手段だ」 「そうか」 これはまた、厄介な魔法があったもんだ。勝てる気がしないな。 ――ならば。 俺は決意をし、バッグの中から『スピーダー』を取り出した。 (※スピーダー:素早さを上げるアイテム) ◇◆◇◆◇◆ キュルケは優雅に観戦していた。 「ねえ、タバサ、どっちが勝つと思う?」友人のタバサを無理矢理連れてきて、だ。 「彼がただの平民であれば、ギーシュの勝ちは決まったようなもの」 「そうよね。流石にあれは、相性が悪すぎるわ」 決闘など興味がないといった風で、タバサは本を読み始めた。 まぁ、タバサらしいと言ったらそれまでだけど。 「……は、あくまで僕の攻撃手段だ」 「そうか」 「では、行かせて貰おう!」 決闘が始まった。ギーシュが杖を一振り、錬金でできたワルキューレに力を注ぎ込んだ。ワルキューレが、命を吹き込まれたかのように動 きだし、恐らく、動作に支障が無いかを確認している。 使い魔の青年は、顔を引き攣らせるでもなく、無表情に、だが興味深げにそれを見ていた。 「あら、随分と余裕じゃないの」 キュルケのその声と同時に、青銅の戦乙女が殴りかかった。 殴るが、青年はしゃがんで避け、そこへ蹴るが、海老のように素早く地面を蹴って後退した。 あの使い魔くん、結構できるわ。 偉大な軍人を輩出する、ツェルプストー家として、彼の評価を見改めなければいけない、と思えた。 だが、青年は、避けてばかりで、ワルキューレに攻撃の一つも与えない。尤も、人間の拳ではあれが倒せない事くらい容易に分かる筈だ が、距離も、どんどんギーシュから離れていっている。 「はは、逃げてばかりじゃ、勝てないよ! 使い魔君!」 ギーシュは、逃げてばかりの使い魔に余裕だ、と言わんばかりに笑った。そして、薔薇の造花を一振りし、長い鉄の棒を錬金した。 一瞬の事だった。 使い魔の青年は、青銅人形が鉄の棒を掴む僅かな隙に、人間とは到底思えない速度でその背後に回り込むと、綺麗な回し蹴りを一発、食ら わせた。がこん、という、内部の空洞に音を鈍く響かせ、ワルキューレは前に突っ伏した。 「なっ!」ギーシュも、予想外と言わんばかりに驚愕の表情を浮かべる。 だが、驚くのはここからだった。そこから青年は、立ち上がってくるワルキューレには目もくれず、信じがたい速度でギーシュに走って迫 ったのだ。ぎゅん、と風を斬る音とともに、ギーシュと使い魔くんの距離がみるみるうちに縮まっていく。 もう目と鼻の先まで迫った青年に、やっと正気を取り戻したのか、ギーシュは間一髪、横に転がって躱した。青年の手は虚空を掴み、勢い を殺せずに4メイルほど先まで行ってしまった。 「今の、杖をねらっていた」本を読んでいたタバサも、青銅の音がしてから顔を上げ、観戦していたようだった。信じられないものを見た、 といった顔で、目を大きく見開いている。「それにしても、早すぎる」 ギーシュは、再び後ろから来る使い魔をなんとか躱すと、再び『錬金』と唱えた。 するとギーシュの下の土が盛り上がり、高さ三メイルほどの直方体の岩となり、ギーシュの巨大な踏み台になった。岩の外壁は青銅でコー ティングされているようで、魔法なしでは上れそうにない。 『フライ』と同時には魔法は使えないので、良い判断だ。一度空に飛んでしまったら、地上のワルキューレは動かせないし、降りた時を狙 われてしまうだろう。だが、この方法ならば、相手に攻撃させることなく、ワルキューレを操れる。 ギーシュは額の汗を拭い、青年は顔を顰めた。 「ふぅ。今のは、中々危なかったよ。だが、反撃もここまでかな」 「……」青年は答えない。どこかで、「卑怯だぞ、ギーシュー」という声が聞こえた。 「残念だったね。いや、敵ながら、あっぱれだ」 「……」 ギーシュは杖を一振りし、新たにワルキューレを五体、生み出した。先程倒れたワルキューレも起き出して、これで合計六体となった。 「今度はこちらの番だ!」 あーあ、あの使い魔くんも、ここまでみたいね。 キュルケは些か残念な顔をした。 ◇◆◇◆◇◆ 「……ぐっ……!」ワルキューレの拳が当たった。 ―― 一発、 ―― また一発 ―― 今度は背後から蹴りを入れられた。いつの間に回られたのか、それにすら気付けていない。 六体に増えてからというもの、ちっとも優位に立てない。スピーダーの効果は尽きた。一応、まだバッグには入ってるが、今使ったところ で、一時的に相手の攻撃を避けられるだけだ。 なんとか必死に避けようとしているが、疲れを知らないワルキューレとは違い、こちらの体力は有限だ。一発一発攻撃を食らうに従って素 早さは目に見えて落ちてきて、攻撃を食らう頻度はますます早くなる。 「まだやるのかい?」 ギーシュが杖を一振りして、攻撃を止めた。自分を囲っていたワルキューレが、目の前に整列する。その言葉と態度からは、余裕が滲み出 ている。 「……ああ。貴様に下げる頭など、誰がもっていようか」 その言葉を発した直後、聞き慣れた主人の声が、増えたギャラリーを割って、聞こえてきた。 「ギーシュ、やめなさいよ! 平民相手にみっともないわよ!」人混みをかき分けて、桃色髪の少女が現れた。 「……ん、ルイズか。いやいや、こう見えて、さっきは結構追い詰められたんだよ」 「今はもう、この有様でしょ!」 「いや、僕はもうやめるように言ったんだ。『ごめんなさい』そう言えば許してやる、と言ったのに、君の使い魔くんは頑なにも言わないの でね」言って、ギーシュは造花の薔薇で使い魔を指した。 ルイズが、こちらを見据え、顔を歪めた。 「もう、いいわよ。アンタは十分頑張ったわ。だから、さっさと謝っちゃいなさい」 「……悪いが、それはできない。これは、俺の戦いだ」 「何言ってるのよ! アンタ、このままだと死ぬわよ!」ルイズが声を荒げた。 「俺は死なん」 「貴族は平民を殺すのに、躊躇したりなんてしないわ!」 「大丈夫だ」 「何がよ!」 「とにかく、引っ込んでいてくれ」ルイズがまた何か説教をしているが、無視する。 こうなっては、使いたくはなかったが、奥の手を使うしかない。 恐らく、いらぬ誤解を生む事になってしまうのだろうが、なんか、ここで負けてしまうのは癪に障る。 『スピーダー』で、あれほどの素早さが出せたのだ。キズぐすりで全回復した後、『けむりだま』をギーシュ本体に投げつけ目を眩ませ て、『プラスパワー』『ディフェンダー』『スピーダー』の三つを使い、一気にカタをつけよう。 バッグに手を入れたその時に、ふと、脳裏に、妙な、懐かしい光景が広がった。 迫り来る巨鳥の群れ。その時隣にいた、金髪の青年。綺麗で、巨大な湖と、青々とした臭いの、湿った草むら。湖岸に追い詰められ、目の 前が真っ暗になりかけた時に見つけた、茶色の鞄。その中には――紅白色の三つの球。 あの球の中に入っていたのは何だったか。 「何だ――」 球のボタンを押し、中から出たのは―― 「そうだったな」 俺は平民の使い魔ではない。貴族でも、ましてや魔法使いなんかでもない。 俺は――ポケモントレーナーだ。 「やれ、ワルキューレ!」ギーシュの命令を受けたワルキューレが6体、こちらへ歩んできた。 ゆっくり、わざわざ威圧感だけを表すために行進するそれらに、もう棒になっている足を奮い立たせて向かい合う。 「何で、立つのよ! 何で、戦うのよ!」ルイズが必死に言った。 「やはり、まだやれるみたいだね」ギーシュが目つきを鋭くさせた。 「……」沈黙を以て答える。でも、俺っていつも黙ってたから、答えた事にならないかもしれない。だが、心配する事はない。俺には、コイ ツがいる。 手を腰のボールへ持って行くと、額の文字が激しく光り、情報を読み取った。 あれ、何故か強さがバラバラなんだが。ああ、そうだ。多分、ここに来る前にボックスの整理をしていたせいだろう。 だが、先頭のポケモンだけは変わることなく、そこに、伝説の名前を刻んでいた。 バラおとこのギーシュが あらためて しょうぶをしかけてきた! バラおとこのギーシュは ワルキュレ をくりだした! いけっ! ミュウツー! ――そして、 『やっと出番か』 黒と黄色のラインの入ったハイパーボールから、白い巨人が、現れた。 前ページ次ページ虚無と十七属性
https://w.atwiki.jp/otome2/pages/55.html
最終更新:2010-12-19 06 48 39 (Sun) このページを編集 文明基本データ(共通) 文明基本データ(比較)ユニット職人 兵士Lv1 兵士Lv2 兵士Lv3 建物本拠地 蔵 兵士育成所 塔 初期金 ストーリー、挑戦でのCPU限定文明のデータも掲載されています。 文明基本データ(共通) 進化所要時間(Lv2, Lv3共通) 30秒 建築物数上限(敵味方問わず) 128個(本拠込?) ダメージ計算式:攻撃する固体の攻撃-攻撃を受ける固体の防御 文明基本データ(比較) ユニット 職人 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 職人巫女 職人メイド 職人戦乙女 職人踊り子 職人ゴスロリ 職人魔法少女 職人デスロリ 職人りんごさん 職人アリス 職人 職人 HP 50 50 60 50 50 45 50 50 50 30 50 攻撃 3(全職人共通) 射程 1(全職人共通) 防御 1(全職人共通) 移動速度 普通 普通 普通 普通 遅い 普通 遅い 速い 微遅 普通 普通 兵士Lv1 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 見習い戦巫女 見習い戦メイド 見習い戦乙女 見習い戦踊り子 見習いゴスロリ 見習い魔法少女 見習いデスロリ 見習い戦りんご 見習いアリス 見習い聖騎士 見習い弓騎士 HP 45 35 55 45 40 40 35 45 40 50 35 攻撃 4 (全兵共通) 射程 10 10 10 9 11 10 12 8 10 2 12 防御 1 1 1 1 1 1 1 0 1 2 1 攻撃間隔 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.7回/秒 1.35回/秒 2.0回/秒 1.35回/秒 移動速度 普通 普通 普通 速い 遅い 普通 遅い 速い 微遅 普通 遅い 兵士Lv2 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 戦巫女 戦メイド 戦乙女 戦踊り子 ゴスロリ 魔法少女 デスロリ 戦りんごさん アリス 聖騎士 弓騎士 HP 50 40 60 50 45 45 40 50 45 60 40 攻撃 6 7 6 射程 12 12 12 11 13 12 14 10 13 2 14 防御 2 2 2 2 2 2 2 1 2 3 2 攻撃間隔 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.7回/秒 1.35回/秒 2.0回/秒 1.35回/秒 移動速度 普通 普通 普通 速い 遅い 普通 遅い 速い 微遅 普通 遅い 兵士Lv3 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 近衛戦巫女 近衛戦メイド 近衛戦乙女 近衛戦踊り子 ゴスロリアーク トップ魔法少女 デスタナトス 近衛りんごさん 近衛アリス 近衛聖騎士 近衛弓騎士 HP 60 50 70 60 55 50 50 60 55 80 50 攻撃 8 10 8 射程 14 14 14 13 15 14 16 12 16 2 16 防御 2 2 3 2 3 2 2 1 2 4 2 攻撃間隔 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.35回/秒 1.7回/秒 1.35回/秒 2.0回/秒 1.35回/秒 移動速度 普通 普通 普通 速い 遅い 普通 遅い 速い 微遅 普通 遅い 建物 本拠地 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 本拠地(全文明共通) HP 600 500 500 700 600 1000 攻撃 0 4 0 4 0 射程 0 20 0 20 0 防御 1 サイズ 9×9(全文明共通) 収益金 0 10 0 不明 職人育成所要金 150 職人育成所要時間 6秒 不明 蔵 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 蔵(全文明共通) HP 100 80 60 80 100 50 100 80 60 80 100 攻撃 0 (全文明共通) 射程 0 (全文明共通) 防御 0 (全文明共通) サイズ 3×3 収益金(10秒毎) 15 17 14 14 15 13 不明 建築費 100 不明 建築時間 15秒 17秒 15秒 不明 建築中HP 20 不明 兵士育成所 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 戦巫女育成所 戦メイド育成所 戦乙女育成所 戦踊り子育成所 ゴスロリ育成所 魔法少女育成所 デスロリ育成所 りんご育成所 アリス育成所 聖騎士育成所 弓騎士育成所 HP 200 (全文明共通) 攻撃 0 5 0 射程 0 13 0 防御 1 (全文明共通) サイズ 5×5 建築費 200 不明 建築時間 12秒 17秒 12秒 17秒 12秒 不明 建築中HP 20 不明 兵士育成費 70 60 70 兵士育成時間 9秒 9秒 8秒 8秒 11秒 11秒 11秒 7秒 10秒 10秒 不明 塔 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 弓騎士 名称 見張り台 前哨砲台 裁きの塔 バベルの塔 見張り小屋 タワー 見張り小屋 りんごの塔 砦 砦 砦 HP 200 160 300 240 200 160 200 120 200 攻撃 7 7 12 8 8 6 8 7 7 7 8 射程 15 16 15 16 15 15 15 17 防御 3(全文明共通) 攻撃間隔 4回くらい/秒 サイズ 3×3 5×5 3×3 3×4 建築費 150 150 200 170 150 180 150 120 150 150 不明 建築時間 15秒 15秒 20秒 20秒 15秒 15秒 15秒 17秒 15秒 15秒 不明 建築中HP 20 20 30 24 20 20 20 20 20 20 不明 初期金 巫女 メイド ワルキューレ バビロン ゴスロリ 魔法少女 デスロリ りんご アリス 女王 初期金 500 450 500 500 450 500 450 500 500 500
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7447.html
前ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔 「諸君!決闘だ!」 ギーシュは薔薇の造花を掲げ、高らかに謳う。 ヴェストリの広場にギーシュの友人達と食堂に居た野次馬、さらに噂を聞きつけた生徒で溢れ、歓声が巻き起こった。 ギーシュは手を振って歓声に応え、ミュズの方を向いて冷ややかに仕置きの開始を告げる。 「さてと、では始めるか」 ミュズが目を見開いて周囲の様子を見ていると、ギーシュは薔薇の造花を振り、花弁を一枚、宙に放った。 ミュズがひらりと舞うそれを目で追うと、地面に着いた途端、甲冑を着た女戦士の人形となった。 硬い金属製の肌を淡い陽光で煌めかせ、人間大のそれは小さなミュズの前に立ちはだかった。 「言い忘れてたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 立ち遅れたルイズが人込みの中から飛び出すと、ギーシュのワルキューレが右腕を振り上げて、ミュズに向かって突進していた。 ヴェストリの広場に来るまでルイズは、決闘は禁止だと怒鳴りつけて止めさせようと思っていたが、もう間に合わない。 振り下ろされた拳に、ルイズはミュズが殴り飛ばされるのを想像して目を両手で覆った。 予想していた鈍い衝突音やミュズの悲鳴がルイズの耳に届かず、虚空を削いだ風切り音が聞こえた。 既の事に当たらなかったのを、ギーシュは内心で歯噛みしつつも余裕の態度をした。 「おやおや、避けるとは思わなかったな……手加減が過ぎたかな?」 ギーシュが指示を出すと、ワルキューレが間合いを詰め、両腕をぶんぶんと振り回した。 その青銅で出来た腕を間一髪でミュズは避け続けた。 ルイズはその光景をひやひやと見つめながら、昨晩、ミュズが『ぼく単体でも、十分に戦えます!』と言ったのを思い出していた。 「ええい、ちょこまかとっ!」 一発も当たらない事に焦れたギーシュは声を上げ、造花の薔薇を振るい、二体目のワルキューレを出現させた。 二体に増えたワルキューレの手を機敏にかわしながら、ミュズは瞳にチカチカと光を走らせてワルキューレを観察した。 表面は青銅の割合が大きいが、質量の大半を土や石が占めているのを優れた感覚で捉えた。 関節部分はそれらの粒が念力で纏められていて、身体の芯が中空である事を感知した。 二体のワルキューレでもひょいひょいと動くミュズに触れられず、ズルズルと三体目、四体目のワルキューレをギーシュは造り出していた。 挟撃・時間差・フェイントのコンビネーションを使い、考えを攻撃から捕獲に変えて、やっとワルキューレがミュズの手首を掴んだ。 しかし、そのワルキューレの手もミュズが振り払うと、スルリと外れてしまった。 その様子にギーシュは驚き、額に冷や汗が伝った。 大の大人でも悲鳴を上げる位に力を込めて、腕を折るつもりで捩上げた筈なのに、それをミュズは易々と振り払ってしまったのだ。 ヴェストリの広場の隅に、キュルケとその友人である眼鏡を掛けた青い髪の少女が居た。 「まったく…。小さなミュズちゃん相手にゴーレムを四体も出すなんて、ギーシュも大人げないと思わない、タバサ?」 キュルケはギーシュの行動に呆れながら友人のタバサに同意を求め、ミュズを心配する言葉が口から出る。 「大きい怪我にならない内に終わるといいけど――」 「大丈夫」 「えっ、ほんと?」 いつも冷静なタバサの一言にキュルケは驚いた。 「息が乱れていない。それに……」 タバサはヴェストリの広場にできたリングの一カ所を指差した。そこには周りの小石とは違った光沢を放つ物が見える。 「あれって…。もしかして、ギーシュのゴーレムの指!?」 キュルケの言葉に首肯して、タバサは囁く。「まだ、力を隠している」 タバサはミュズがワルキューレの手を振り払った瞬間、青銅で出来た指が折れて地面に転がるのをその青い瞳で捉えていたのだ。 「でも、ミュズちゃんが攻撃しないのが気になるわね?」 キュルケの疑問にタバサもコクリと頷いた。 ギーシュは引き攣った顔でミュズを見据えながら、五体目のワルキューレを出現させた。 ギーシュは五体のワルキューレにミュズを取り囲ませると、一斉に躍りかかる様に指示を出した。 ミュズはわらわらと襲い掛かるワルキューレ達を捌き切れず、背後から足元に飛び掛かったのを皮切りにワルキューレ達に捕まってしまった。 両腕に一体づつ両脚に一体づつの計四体で、ミュズをがっちりと抑え込み、残りの一体が眼前に立ち塞がった。 「ちょこまかと逃げ回るから、手間取ってしまったじゃないか?」 ギーシュは薄く笑みを浮かべながらそう言うと、ワルキューレはミュズにびんびんと往復ビンタをした。 「どうだい?この全て青銅で形作られたゴーレム、ワルキューレは?」 ミュズは両頬が赤くなった顔をギーシュに向けて、あっさりと答える。 「全て青銅じゃないです。中はからっぽで、隙間だらけです」 ギーシュの顔から笑みが消えた。 先程まで往復ビンタをしていたワルキューレが、ミュズと距離を取ると助走を付けてタックルをぶちかました。 モロに頭にぶつかってゴォンと重く鈍い音を立て、ミュズの手足を掴んだワルキューレの縛めが外れ、ミュズは勢い良く吹っ飛んだ。 「ミュズ!!」 吹っ飛ばされたミュズを見て、ルイズは悲鳴の様な声で名前を呼んだ。 地面に倒れたミュズに駆け寄ると、ルイズは鳶色の瞳を潤ませて心配そうに見つめた。 「あっ。初めて名前で呼ばれました」 ミュズは、立ち上がりながら緊張感の無い声を上げて、ルイズに向かって微笑んだ。 「寝てなさいよ!バカ!どうして立つのよ!」 ルイズは立ち上がったミュズの肩を掴んで大きな声で叫ぶ。 そんな二人に、ギーシュの声が飛んだ。 「終わりかい?」 「まだ、大丈夫です」 ミュズは肩をぐるぐると回しながら、ギーシュに答えた。 ギーシュは口角をひくりと釣り上げた。 そして、造花の薔薇を振った。一枚の花びらがミュズの前に落ちると、花びらを核に地面が盛り上がり、長く鋭い形に変化していった。 「君。これ以上続ける気があるなら、その剣を取りたまえ。 そうじゃなかったら、一言こう言いたまえ。ごめんなさい、とな。それで手打ちにしようじゃないか」 ――それは、剣と言うには余りに大き過ぎた。大きく、分厚く、重く。そして、大雑把過ぎた。それは正にてっ……青銅塊だった。―― 「ふざけないで!」 見た目だけであれば、それは鍔の無い両刃のブロードソードと言った雰囲気であるが、サイズが桁外れなのだ。 オーク鬼やトロール鬼が持つなら分かるが、人間の、特にミュズの様な小さな女の子が扱える物では無い。 ルイズは無茶苦茶な事を言ったギーシュに怒鳴った。 しかし、ギーシュは悪びれる様子もなく、言葉を続けた。 「わかるか?剣だ。つまり『武器』だ。 平民共が、せめてメイジに一矢報いようと磨いた牙さ。未だやる気があるなら、その剣を取りたまえ」 ミュズはその大剣に、そろそろと左手を伸ばす。 その左手が、ルイズによって止められる。 「だめ!絶対、だめなんだから!それを握ったら、ギーシュは容赦しないわ!」 ルイズの制止が効かず、ミュズの掌がその分厚い刀身に触れた。 ミュズの左手に刻まれたルーン文字が光りだし、頭に使い方の情報が流れ込み、ミュズはハッとなり左手を引っ込ませてその甲を見つめた。 ミュズは頭に流れ込んだ情報を咀嚼し、左手をぎゅっと握り締めると、ルイズに真剣な眼差しでミュズは申し出る。 「マスター、これの意味が分かりました。これを使ってみたいです。」 ルイズは大剣に触れたと思ったら、手を引っ込めて上の空のミュズがこれまで無い位に強くお願いをしてきたのに驚いた。 そして、ルイズの脳裏でシエスタに食堂で言われてから考えた、主としてミュズを信じる思いが浮かび上がった。 「分かったわ……。戦えるって言っていたものね。でも、ゴーレムの攻撃を受けたら止めに入るんだからね!」 ルイズは諦め気味に大剣を取るのを認めつつ、口喧しく注意をした。 「はい」 ミュズはシャンと背を伸ばして答えると、地面から生えた大剣の柄に手を伸ばした。 所変わって、ここは学院長室。 コルベールは使い魔召喚の際に、ルイズが少女と黒い甲殻の韻竜を呼び出し、韻竜が溶けて死に少女と『契約』を行った始終を、オスマンに説明した。 その証明として現れたルーンが死んだ韻竜と共に気になり、一晩中掛けて調べた結果、始祖プリミルの使い魔『ガンダールヴ』に辿り着いたのだった。 オスマンは、ミュズを伝説の使い魔の再来とまくし立てるコルベールに、結論を出すには気が早いと諌めた。 そこにドアをノックする音が響き、扉の向こうからロングビルによって、ヴェストリの広場で決闘騒ぎが起きたと言う報告が齎された。 しかも貴族であるギーシュの決闘相手が、今まで話題にしていたミュズだと言うのだ。 オスマンとコルベールはハッと顔を見合わせた。 決闘を止める為に『眠りの鐘』の使用許可が教師達から上がっているのを、ロングビルはオスマンに伝えるが、必要無いと放任する様に突撥ねた。 ロングビルが了解して去って行くとコルベールは決闘の様子を見る様に促し、オスマンは杖を振るって壁掛けの大鏡にヴェストリの広場を映し出した。 ミュズは大剣の柄に手を伸ばした……が、見えているだけでもミュズの身長より大きい刀身のせいでその柄を掴む事が出来なかった。 ルイズは格好良く決めたつもりだったのに、んしょんしょと全身を伸ばして柄を掴もうとしているミュズの姿にズッコケてしまった。 「何やってるのよ?こう言うのは、こうやって――」 うろちょろするミュズを後ろに下がらせ、ルイズは剣とは思えない青銅塊の前に立ち、その鎬と思われる所に前蹴りをかました。 足の裏から骨を通して全身が痺れるが、大剣はびくともしなかった。 それでも気にせず、ゲシゲシと何度も蹴り続けると、僅かに傾いた。 「――傾ければ……、良いのよ……!」 ルイズは「はあはあ、ふうふう」と肩で息をしながら、体をだらりとさせて威厳もへったくれも無い姿で、柄を掴む方法を教えた。 見様見真似でミュズが行うと、一蹴り目で大剣が30度ほど傾き、更に勢い良く踏み降ろした二蹴り目でゴギンと音立てて倒れ、地面にメリ込んだ。 ミュズは柄を拾い上げ、ギザギザの切っ先を下に大剣を斜に構え、片手で横に薙ぎ払った。 その一降りで長い剣の間合いにいたワルキューレを2体、ガギギンと真っ二つに断ち切ってしまったのだ。 ギーシュはその光景に面食い慌ててふためき、急いで呪文を唱え造花の薔薇を振った。 六体目のワルキューレとギーシュが一度に生成出来る最大限の数である七体目のワルキューレを己の前に立たせた。 ギーシュはグラリと風景が揺れる様な目眩を感じた。 平民の兵士と変わらぬスピードで動く四体ものワルキューレ達を、機敏な動きでかわす。 青銅製のワルキューレの勢いを付けた体当たりをくらっても、ケロリと立ち上がる。 我ながら青銅塊と思う剣を片手で、目で追う事が適わぬ速度で振るい、ワルキューレを粘土の様に切り裂く。 あの少女は本当に見た目通り、平民の小娘なのだろうか? ワルキューレを通して間接的に掴んだりぶつかったりした時の感触が、岩や鉄のそれなのだ。 以前にワルキューレとは呼べぬ8体目の青銅塊のゴーレムを作った時の様な、精神の倦怠感が纏わり付く。 そう考えている内に、足止めのつもりで作った大剣でワルキューレを切り捨てながら、少女が疾風の様に素早く近づいて来た。 応戦しようと残ったワルキューレ達の手に、剣より間合いの長い鎗を錬金して持たせると、視界が暗くなり膝が崩れた。 地面が近付くのを感じながら、ギーシュは青銅塊の剣で精神力を大量に消費していた事に、薄れゆく意識の中でやっと気が付いたのだった。 「白じゃな」 『遠見の鏡』でヴェストリの広場での決闘の一部始終を見終えたオスマンが、開口一番に呟く。 「は?『あの少女がガンダールヴか?』と言う疑いに関しては黒だと思いますが……」 「何故、しましまじゃないのかのぉ?」 その二言目でハタと気が付いたコルベールは、オスマンに犯罪者を見る様な軽蔑した視線を刺す。 「オールド・オスマン」 彼が炎の使い手である事を忘れそうな程、冷え冷えとした声が学院長室に響いた。 「カーッ!それが目上の者に向かってする態度かーッ!」 オスマンは目を剥いて怒鳴った。年寄りとは思えない迫力だった。 「それにしても、無闇矢鱈に魔法を使って気絶してしまうとは、凡戦以下じゃの」 オスマンは真面目な顔で話しを逸らした。 「それ程までにあの少女の力に追い込まれたのでしょう。ギーシュはドットメイジですが、それでも只の平民に後れをとるとは思えません」 オスマンの誤魔化しに敢えて乗って、コルベールは話しを繋げた。 「あの身かわしと剣捌き!あんな平民、見た事無い!やはり、彼女は『ガンダールヴ』! オールド・オスマン。早速、王室に報告して、指示を仰がない事には……」 コルベールは興奮した調子でまくし立てた。 「それには及ばん。それに黒い甲殻の韻竜の事もある。お主の事だから、そちらも調べてあるのじゃろ?」 オスマンはコルベールに、もう一つの謎である『黒い甲殻の韻竜』について調べた結果を報告する様に促した。 「はあ。そちらについては、やはり幻獣に関する書物には載っていませんでした。伝承に幾つか有りましたが……」 「うむ、それがどうしたのかね?」 先程からの勢いが一気にトーンダウンしたコルベールの言葉に、オスマンは相槌を打った。 「『昔々』や『数千年前』と言った時代に現れ、『国を滅ぼした』とか『サハラを沙漠に変えた』とか『野蛮な亜人を殖やした』とか悪い行いをしたそうです。 そして、『始祖ブリミル』か『イーヴァルディの勇者』か『大いなる意思の下に集った戦士達』かによって討ち倒されたとされています」 「うむ。伝承と言うよりも、お伽話の様じゃの」 「ええ、生徒が閲覧可能な書架の『お伽話』が書かれている本の中に有りました。 『フェニアのライブラリー』の歴史書にはその様な記述は無く、想像上の生き物が存在したとしか考えられません」 「偽物、作り物と言う可能性は無いのかね?」 オスマンは重々しい雰囲気のコルベールに問い質した。「召喚に立ち会った生徒達は、見世物小屋から持って来たハリボテのドラゴンだと口々に言っていました。 しかし、不可解な点が多い言動や死に様でしたが、作り物ではありえない生々しさが有りました」 重ねてオスマンは尋ねる。 「お主は韻竜のその不可解な言動を見聞きして、どう感じたかね?」 「不可解としか言えません。ただ、その雰囲気が……」 コルベールは言い淀むと、表情が陰り、悲痛な空気を漂わせた。 「実験小隊……かの?」 オスマンはコルベールを気遣う様に言った。 「ええ。あの小隊に所属する幾人かの者の様な、焼尽や破壊に魅入られた雰囲気がありました。それに……」 また、コルベールは言い淀むと、今度は顔を赤らめて恥ずかしがった。 オスマンは気持ちの悪い物を見た顔をして、コルベールに聞き直す。 「どうしたのかね、コルベール君?」 「何と言いますか……。私の様に寝食や、時に社会の常識すら蔑ろにして、興味や知識を満たす様な気配がありました」 「うむ。狂戦士にして狂科学者の、想像上の悪いドラゴンと言った所かの?生きておったら厄介な存在じゃ」 「そうですね……」 相槌を打ったコルベールに、オスマンは真剣な顔で言い渡す。 「兎に角、王宮のボンクラ共にそんな曰く付きの韻竜と一緒に召喚された『ガンダールヴ』を渡す訳にはいくまい。 宮廷で暇を持て余している連中に与えてしまっては、またぞろ戦でも引き起こすじゃろうて」 「ははあ。学院長の深謀には恐れ入ります」 「この件は私が預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」 「は、はい!かしこまりました!」 オスマンは杖を握ると窓際へと向かった。死んでしまった韻竜の言葉に想いを馳せる。 「”宇宙の全ての神秘と真実”か……。一体、どの様なものなのだろうなあ」 コルベールは夢見る様に言う。 「”黄金の船”ネクシート号に乗り、”黄金の地図”ネクストシートを元に探すのでしょうから……」 「ふむ」 「さしずめ、黄金の装丁がされた古文書と言う所でしょうか?」 「その程度の物だとと良いのじゃがな」 想いを馳せる中で、何故か60年前に、自らにそして世界中に起きた怪異の事を思い出し、オスマンは呟いた。 前ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4710.html
前ページ次ページIDOLA have the immortal servant 「あ、あんた何してるの?」 自分の所に食後のデザートを持ってきた使用人が自分の使い魔だったので、ルイズは目を丸くした。 「何。ここの食堂の使用人に世話になったから、労働で返しているだけだ。金は無いが、ただで施しを受けるのは性に合わんのでな。ついでに、服も汚れていたので着替えさせてもらった」 「そ、そう。頑張って」 「うむ」 そう返事を返すと、フロウウェンは給仕の仕事に戻っていく。 我ながらマヌケな返事をした、と思う。借り物であろう執事の格好は恐ろしく様になっていたからだろう。 平民を召喚してしまったと落ち込んだものだが、今でははっきり言える。自分は当たりを引いたのだ、と。 フロウウェンは律儀だし、魔法が使えない自分を馬鹿にしたりしない。 しかも「魔法のようなもの」まで使えるという。使い魔として見た場合、美点はいっぱいあると思う。 だから食前の祈りである、始祖ブリミルと女王陛下への感謝の言葉も、殊更神聖なものに思えた。 しかも、使い魔の運んできたデザートもクックベリーパイというルイズの大好物だったりする。今日はついてるのかもと、パイを口に運びながらルイズはご満悦だ。昼間の失敗も帳消しにしてお釣りが来るというものだ。 端的に言うと、ルイズは浮かれていた。だから食堂の一角で起きている騒動にもまだ気付いていなかった。 その騒動に巻き込まれた形のフロウウェンはというと、目の前の少年をどう扱ったものか困惑していた。 フロウウェンが少年の落とした香水を渡した事で、彼の二股が発覚してしまったらしい。あれよあれよという間に、フロウウェンの目の前で少女二人に三行半を突きつけられた形だ。 それだけなら別にどうという事は無いのだが、少年は頬に手形を貼りつけ、ワインを頭から浴びせられ、それでも芝居がかった仕草で、フラれた責任の所在を自分に求めてくるのだ。 ギーシュの身勝手な主張を聞いていたが、面倒になってきたので溜息をつくとフロウウェンは言った。 「……あー、ギーシュ、だったかな。気の毒だとは思うが、不実なのは感心できんな。例えオレが話を合わせて、あの場を知らぬ存ぜぬで押し通せても、それはあの娘達への裏切りではないのか?」 「そうだぞ、ギーシュ! お前が悪い!」 フロウウェンの言葉はギーシュの痛い所を的確に突いていたが、友人達の横槍と嘲笑があってはギーシュも引くに引けない。何より相手は平民だ。貴族が簡単に非を認めるわけにはいかない。 「君は貴族に対する礼儀を知らないのかね。人前で貴族に恥をかかせるのが使用人のする事なのか?」 「残念だがこの服装は借り物で、オレは使用人ではない。手伝っているだけだ」 「……? ああ、ああ! そうか、君はあのルイズの使い魔だったね。全く主人が主人なら使い魔も使い魔だ」 「……それは、どういう意味かな」 すっと、フロウウェンの目が細くなる。周囲の温度が数度下がるかのような錯覚を受ける、冷たい怒気だった。 自分だけならば大目に見てやる事もできた。しかし関係の無いルイズまで絡めてくるとなれば、聞かなかった、で済ますわけにはいかない。 勘の鋭い者なら、そこで言葉を止めていただろう。 だが、ギーシュは鈍い。絶望的に鈍い。好きにさせれば戦場で真っ先に死ぬタイプだ。だから、言ってしまった。 「言葉通りだよ使い魔君。人に迷惑をかけてばかりで役に立たない、という意味さ」 「ほう」 フロウウェンが薄く笑う。 ―――そういえばその言葉を前に自分に浴びせた者がいた。 あのオスト・ハイル博士だ。 さんざん人を実験動物として利用し、約束も守らず、手に余ると「役立たず」と罵り、遺棄処分にしてくれた。 結局直接のお礼参りもできなかったのだった。 そんな事を、このタイミングでフロウウェンが思い出してしまったのは、ギーシュの不幸だ。 だから、フロウウェンは経験に裏打ちされた、老獪さから来る確信を持って言う。言われたギーシュの反応を完全に読み切って。 「貴族だと言ってみたところでお前がどれほどのものだというのだ。未熟者に対して礼儀など必要あるまい」 「……よかろう。君に礼儀というものを教えてやろう。食後の腹ごなしには丁度いい」 と言って、ギーシュが立ち上がる。 「決闘だ! ヴェストリの広場へ来たまえ!」 これは見物だ、とギーシュの友人達が後に続いた。一人がその場に残る。監視のつもりらしい。 ふと気付けば、シエスタが青い顔をして立ち竦んでいた。 「ヒ、ヒースクリフさん! 殺されちゃう! き、貴族を怒らせるなんて……」 シエスタはフロウウェンの腕を掴んで、自分も付き添うからすぐに謝りに行きましょう、と促してくる。 ここ数日のフロウウェンとの会話で、シエスタはこの老人が本当にトリステインでの常識に欠ける事を知っていた。だから、メイジの恐ろしさを分かっていない事もすぐに理解した。 自分が止めるべきだ。手伝わせたのは自分で……責任がある。 「ルイズを馬鹿にされて、引き下がるわけにはいかない」 「そ、そんな……謝っちゃってもいいじゃないですか! ミス・ヴァリエールだって分かってくれますよ!」 「だろうな」 「なら、何で……!」 「あの娘が、学院で何と言われているか知っているだろう?」 シエスタははっとして、フロウウェンの顔を見詰める。 これから決闘に赴くというのに気負った所はなく、青い目で静かに自分を見つめていた。 「メイジの実力を見るには使い魔を見ろ、と言われているらしいな。ならば退けぬ場面もある。あの小僧や周りの連中に、知らしめる必要がある」 ようやく騒ぎを聞きつけたルイズがこちらへ向かってくる。それを目にしたフロウウェンが、シエスタに言う。 「シエスタが心配してくれた事は有り難く思う。今の話はルイズには黙っていてくれ」 シエスタは何も言えなくなってしまった。 「なにしてんの! ギーシュと決闘なんて、何考えてるのよ!」 「何か問題が?」 「何勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」 「うむ。これはオレが勝手にやった事だ。だからルイズに責任はない。安心していい」 「そういう事を言ってるんじゃなくて……」 フロウウェンはにやり、と悪戯を思いついた少年のような笑みを浮かべる。 「あの小僧は食後の腹ごなしと言っていたが、その通りだ。難しく考える必要は無い。小僧は、さっき聞いたメイジのランクではどれくらいだ? ラインか? トライアングルか?」 「ドットよ。あのテクニックとか言うので戦うの? 自信あるの?」 「やってみなければ分からんよ。純粋にテクニックユーザーとして見た場合、オレも最下級だろうからな」 最下級、という言葉を聞いて、ルイズの顔色が変わった。 「ちょっと! 下手したら怪我じゃ済まないのよ!? 言っておくけどギーシュの魔法は」 「その先は言わなくとも良い」 その言葉をフロウウェンは遮る。 「な、何よ」 「戦う前に相手の戦術を知ってしまっては興が冷めるというものだ。何せ一対一の決闘だからな」 「はぁぁっ!?」 頭が痛くなってきた。何だかんだでノリノリじゃないかこの男。 「さて、案内してもらおうか」 「こっちだ。じいさん」 「ああもう! 怪我しても知らないからね!!」 「諸君、決闘だ!」 広場は噂を聞きつけた生徒達でごった返していた。ギーシュが煽るとわあーっと喚声が上がる。 どうやら暇を持て余した連中は殆どがギーシュの味方らしい。 こちらの味方と言えば、心配そうに見守るルイズとシエスタだけだろう。だが、それで充分に過ぎる。 「決闘だ! ギーシュとルイズの平民が決闘をするぞ!」 喚声に腕を振って答えるギーシュ。 対するフロウウェンも堂々としたもので、まだ笑っていた。目は全然笑っていないが。 「とりあえず、逃げずに来た事は誉めてやろうじゃないか」 「抜かせ、小僧」 「さて、始めようか。僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句は無いね?」 「好きにするが良い」 ギーシュは満足そうに頷くと、手にしていた薔薇の花を振る。 花びらが一枚宙に舞って、見る見る内に甲冑の女戦士の人形になった。 「ほう。これは『錬金』の応用か。こんな事も出来るのだな」 とすると、目の前の少年の属性は土、という事になる。フロウウェンとしては、火球を飛ばされたり、雷を放たれたりといった、遠距離主体の戦闘になると予想していたのだが。 まあ、近接戦闘なら望む所だ。人型であるなら尚更やりやすい。 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、この青銅のゴーレム、『ワルキューレ』がお相手する」 「来い」 猛然とワルキューレが突進する。 初弾はあっさりと避けられた。それなりに早いしパワーもある。が、直線的で力任せのそれは、フロウウェンにとって見切る事は容易かった。 操る者に体術の心得が無いのだ、とフロウウェンは感じた。 続けてワルキューレが青銅の右拳を繰り出す。が、易々と受け止められた。 フロウウェンはワルキューレの手首を掴んだまま力の方向を反らし、重心を操作して難なく地面に引き倒す。そのまま肩口に足をかけ、右腕を肩から捻り上げる。 金属の軋む嫌な音が、ヴェストリの広場に響いた。 一連の、流れるような鮮やかな動作でワルキューレの右腕を肩口からもぎ取ると、ギーシュの方向に向かってワルキューレを蹴り返した。 5メイルは飛ばされて、ワルキューレが派手な音を立てて地面を転がる。 「な……」 絶句するギーシュ。ギャラリーも一瞬静まり返った後、喚声を上げた。 「ふむ」 もぎ取ったワルキューレの腕を弄びながら、首を左右に振ってこきこきと音を鳴らす。 ワルキューレを見て最初に想起したのは自分の世界の女型アンドロイドだった。 だが、ワルキューレと、フロウウェンの世界でのアンドロイドでは、その構造の精密さからも戦闘能力からも比較対象にはならないようだ。 ゾーク・ミヤマという長年の親友がフロウウェンにはいた。 彼の家には旧式のアンドロイドが三代に渡り仕えていたが、戦闘用ではないという彼女でさえ、もう少し動けるだろう。 「中身はがらんどうなのか。どうやって動かしているのか知らんが、関節は案外脆いようだな」 「ば、馬鹿力が自慢か! いいだろう全力で相手してやる!」 ギーシュが花びらを撒き散らすと、新たに5体のワルキューレが出現した。 ここに来て、まだギーシュはフロウウェンの戦力を誤解していた。ワルキューレを蹴り飛ばした瞬発力は確かに大したものだが、最も警戒すべきはそこではない。 ワルキューレと、それを操るギーシュの技量を初弾で見切り、重量、力、速度で人間に勝るはずのゴーレムをあっさり引き倒した技の冴え。それこそがフロウウェンの最大の武器だ。老いて尚剣筋が衰えぬと言われた、たゆまぬ研鑽の賜物だった。 一方、学院長室では――― 「で、どこにも該当するルーンが見当たらなくて、なんで始祖ブリミルの使い魔に行き着くんじゃ」 「人間の使い魔は古今、例がありません。しかし、明記されているわけではありませんが、この『始祖ブリミルの使い魔』たちの記述を見てください。 それぞれ、あらゆる武器を使いこなす、あらゆる動物と心を通わせる、叡智とその手に持った道具で主を支える、とあります。 能力に差異はありますが、人間かエルフのような亜人ならば、いずれもこれらの記述が自然に想像出来るとは思えませんか?」 いささかコルベールは興奮しているらしい。鼻息荒く、自分の考えを語る。 武器を使うのならば手はあっただろう。 動物と心を通わせるのが、また動物というのも納まりが悪い……かもしれない。 そしてミョズニトニルンに至っては叡智と手にもった道具、か。 「それで、人間が召喚されて、刻まれたルーンがガンダールヴでもヴィンダールヴでもミョズニトニルンでもないから、語られぬ最後の使い魔かも知れぬじゃと? それはいくらなんでも飛躍しすぎてはおらんかね、ミスタ・コルベール」 それはコルベールも承知していた。ただ、動物や幻獣に刻まれたルーンは記録がいくらでもあるし、効果もどのようなものか大体分かっている。 だから何度も何度も過去の記録とルーンを照合し、フロウウェンに刻まれたルーンが記録にない事を確認してからここにきたのだ。 しかし、他に該当するルーンがないという事を証明するのは俗にいう悪魔の証明という奴で、どれだけ調べても絶対だと言い切るのは不可能に近い。 現時点で言える事は、類例のない人間の使い魔に、これまたやたらレアそうなルーンが刻まれた、という事だけだった。 「ですから、オールド・オスマンに話を伺いに来たのです。その、ミス・ヴァリエールの使い魔自身も……危険は無いと思いますが、監視が必要ではあると思うのです」 コルベールはフロウウェンの青い目を思い出していた。 あれは、戦場を知っている目だ。そしてその空しさも知っている目。だから彼の人柄には危険がないと判断し『コントラクト・サーヴァント』を行わせた。 「現時点では何とも言えんのう。その、ヴァリエール公爵家の三女の属性はなんだったかな?」 「分かりません。彼女が使う魔法は全て爆発してしまいますからね。彼女がもし、虚無の属性であるなら……これは」 「うむむ……」 オールド・オスマンは腕組みをして黙ってしまう。 コツコツとドアが叩かれた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン」 その声はミス・ロングビルのものだった。 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいるのですが、生徒に邪魔をされて止める事が出来ないと」 「全く……暇を持て余した貴族というのはこれだから始末に悪いわい。誰が暴れておるんじゃ?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンのとこのバカ息子か。親父も息子もどうしようもない女好きじゃからな。おおかた女の子の取り合いが原因じゃろ。で、もう一人は?」 「それが……メイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔だと」 オスマンとコルベールは顔を見合わせる。 「教師たちは『眠りの鐘』の使用許可を求めておりますが」 オスマンはほんの少し逡巡した後、告げる。 「放っておきなさい。たかがケンカじゃろ」 勿論、真意は別の所にある。少しだけ迷ったのは、始祖の使い魔の「四人目」の記述が少々引っかかったからだ。 「わかりました」 ミス・ロングビルの足音が去っていくと、オスマンはコルベールを見やる。 「確認するが……その、ミス・ヴァリエールの使い魔というのは、人格的には問題が無さそうなんじゃな?」 「私の見立てでは、そうです」 オスマンは頷くと、壁にかかった大きな鏡に杖を振るった。鏡にヴェストリの広場が映し出された。 「あら」 何時の間にかキュルケの隣にタバサが来ていた。それはいつもの事なのだが、本から目を離して決闘を熱心に眺めている。興味の対象が本以外の物に移る事すら珍しいのに、とキュルケは思った。 「どうしたの? こういうのに興味なさそうなのに」 「勉強になる」 タバサは答えた。 「あー。あれはちょっと……相手が悪いわね。ギーシュも気の毒にね」 そういって蒼白になっているギーシュを見て笑う。 五体からのワルキューレから一斉攻撃を仕掛けられながら、一発の命中も許してはいない。時に足を引っ掛けてワルキューレを地に転がしたりしながら、ルイズの使い魔はまだ本格的な攻撃に転じていなかった。 まず、体重移動と足裁きが抜群に上手い。決してフロウウェンの方が早く動いているわけではないのだ。 離れて見ていると、カラクリが分かる。踏み込む足が左右どちらかに捻りが加えられていて、一歩を踏み出すと同時に軸足を回転させて死角へ、死角へと高速で回り込んで行くのだ。 距離と方向を効果的に稼いで、前後左右、縦横無尽に隙を見せずに動き回るので、数で勝るはずのワルキューレ達がまるでついていけない。 仕舞いにはワルキューレ同士で激突したり絡みあったりする有様だ。攻撃もされていないのにワルキューレはあちこち傷だらけになっていた。 「多対一の戦いに慣れている」 「そうね。何か体術を習得してるわよ、彼」 そうこうしてる間にフロウウェンが、ワルキューレ達の背後を取った。 足を止めて、ワルキューレの一団に向けて右手を突き出す。 そして……それだけだ。否、周りの者からはそれだけに見えた。 体勢を立て直したワルキューレがまたフロウウェンに向かっていく。 「何、今の?」 「わからない。でも何か……」 状況に変化があった。フロウウェンは真正面からワルキューレ達を相手にするつもりらしい。 「動く……!」 最初、ルイズはフロウウェンが何かテクニックを使うのかと思った。 が、右手を突き出しただけで終わりだった。拍子抜けしたが、それでいいと思う。 だってこんな場面でテクニックを使ってもみろ。まず間違いなく先住魔法だと誤解されて大騒ぎになる。だから思いとどまったのだろうとルイズは納得し、そして……続く光景に顎を落とした。 一瞬腰を落としたフロウウェンが地面を蹴って、ワルキューレ達に向かって―――跳んだ。 手にしているのは、先程もぎ取ったワルキューレの腕。それを、先頭のワルキューレの胴体に叩きつける。上半身が折れて吹き飛ぶ。 返す刀で二体目の肩口から叩き込む。ワルキューレが、ひしゃげて崩れる。 三体目の左腕と頭を跳ね飛ばした所で、ようやくフロウウェンの持っていた青銅の腕が、関節部からへし折れた。 頭を飛ばされたワルキューレはそのまま地面に倒れて、後ろから続く生き残りの仲間に踏み潰される。 背中から殴りかかってきた片腕のワルキューレの拳を、振り向きもせずにかわしてその腕を取る。殴りかかってきた勢いを殺さず、そのまま前方に背負いながら投げつけた。 四体目の頭に腰から落ちて、片方は首から潰され、片方は腰に穴が開く。二体のワルキューレがまとめてスクラップと化した。最初の接触から、わずか三秒足らずの間の破壊劇だった。 「なな、なああっ!?」 ギーシュは目の前の光景が理解出来ずに口をパクパクさせるしかない。 残るは一体。ギーシュが自分を守る為に側に待機させていたものだ。 「その杖。花びらが残っているな。まだ一体、人形を出せるのだろう?」 フロウウェンが言う。 「……っ」 確かに、ギーシュは後一体分の『錬金』が可能だった。予想以上にフロウウェンの腕が立ちそうなので、不測の事態に備えて一体分の余力を残しておいたのだ。 「どうする。もう一体出して、二体の人形で勝負に出るか? 或いは……」 「は、ははは、はは……いや、降伏はない。誇り高きグラモン家の家訓にある。命を惜しむな、名を惜しめ、とね。家名に傷をつけるわけにはいかない」 青い顔をしながら、それでもギーシュは笑って見せた。 しかし、薔薇を持つ手は小さく震えている。とっくに、勝てない相手に喧嘩を売ってしまったのだと解っていた。 「決着をつける前に、聞きたい。貴方はいつだって……そう。最初にワルキューレを一体だけしか出さなかった時なんて、いくらでも僕を倒すチャンスがあったはずだ。僕が侮っていたから僕を嬲るつもりだったのかい?」 「それは違う。少々身体に違和感があってな。暫く様子見はさせてもらったが、他意はない」 「なるほど……」 ギーシュが呟く。薔薇を持つ、右手首を爪が食い込むほどの力で押さえ、無理やりに震えを止めた。 「では、このギーシュ・ド・グラモン。全身全霊を賭けて貴方の相手をさせてもらう」 薔薇をフロウウェンに突き付け、言った。 フロウウェンは一瞬驚いたような顔になるも、すぐに表情に戻すと上体を軽く落とし、臨戦態勢を整える。 ギーシュは己の真正面にワルキューレを配置する。 ワルキューレを破壊されても自分の負け。フロウウェンの動きに着いて行けず、ワルキューレを突破されても自分の負けだ。 「ヒースクリフ・フロウウェン。推して参る」 フロウウェンが正面から突進してくる。ギーシュも、迎え撃つべくワルキューレを突撃させた。チャンスは一度だけ。失敗は許されない。 「今だ!!」 叫んで杖を振るう。使う魔法は『錬金』。 瞬間、フロウウェンの踏み込んだ足が、脛まで埋まった。地面が深い泥濘に変わっていたのだ。 これで、ギーシュの精神力は看板だ。ワルキューレを作る力は残されていない。 「ほう!?」 フロウウェンは感嘆の声を漏らしていた。 泥濘の外から、ワルキューレがフロウウェンに向かって跳躍した。青銅の身体が陽光を受けて輝く。 対するフロウウェンはスタンスを広げて上体を落とし、泥濘に身体を安定させる。 足を止めたまま、右拳でワルキューレを迎え撃った。 拳が交差した瞬間、ヴェストリの広場が静まり返る。 フロウウェンの頬から一筋、赤い血が伝う。 ワルキューレの拳は、フロウウェンの薄皮一枚を持っていく程度だった。ギーシュの全霊。わずか届かず。 青銅の女騎士は、胸部が陥没していた。白髭公の一撃が突き刺さっていたのだ。ずるりと、動きを止めたワルキューレが重力に従って、泥濘の中へと落ちていった。 それは、素手の一撃にしては確かに強烈ではあったが、本来ならばそれでもまだワルキューレは戦闘不能にはなるまい。ワルキューレが動きを止めたのは、ギーシュのコンディションの方に原因があった。 「僕の、負けだ」 ギーシュは結末を見届け、敗北を認める言葉を口にすると、意識を手放して白目を向くと仰向けにぶっ倒れた。離れた場所に大きな泥濘を作った事で、相当な精神力を消耗したらしい。 何せ、フロウウェンの速度が並ではないし、挙動はギーシュの理解の範疇を超えている。確実に捉える為には、より大きな範囲を泥に変える必要があったのだ。既にワルキューレを六体作り出しているギーシュには、限界を超えたものだった。 「見事だ」 満足そうに、フロウウェンは頷いた。 「ヒースって、本当に強かったのね。テクニックも使わずに勝っちゃうなんて」 ルイズが呆れたように言う。 「いや、使ったぞ」 「え? だって」 「ザルア、と言ってな。相手の耐久力を一時的に低下させるテクニックだ。でなければ最初の一撃で青銅の腕が折れている」 フロウウェンのアイテムパックにはモノメイトとモノフルイドが三個ずつ。セイバーの発振装置という、平常時での待機任務の時の装備が入れられていた。 だが、これはどうもこちらで使うとまずい事になりそうだと、フォトンチェアーとギバータの時にしっかりと学習していたので、フロウウェンは派手なテクニックと共に使用を控えていたのである。 ギーシュの操るワルキューレがもう少し手強い相手ならばそうも言ってはいられなかっただろうが。 「そうだったの……」 色々出来るのね、とルイズは独りごちる。 「あ、あの。怪我がなくて何よりです。ヒースクリフさん」 シエスタが言った。 「心配をかけたな」 「いえ……」 「ギーシュ! ほんとに馬鹿なんだから!」 モンモランシーが走ってきて、ギーシュを『レビテーション』で運んでいった。ギーシュが目が覚ましたときに、まだ悶着がありそうだが、それはフロウウェンには関わりのない事だ。 それよりも、フロウウェンには先程からずっと、気になっている事があった。 「やはり……これは異常だな」 フロウウェンは頬に手を当てて呟く。 「え? 今なんて?」 「……いや、何でもない」 答えて、歩き出す。その頬には血の跡があるばかりで、傷一つなかった。 「……勝ってしまいましたな」 呆然としていたコルベールが言った。 「うむ」 「ギーシュは一番レベルの低い『ドット』メイジですが、それをあっさり打ち破ったとなると……あの男、相当な腕前ですぞ」 「うむ。あの体術もすごいが、あの男、何か魔法を使ったな。気付いたか?」 「はい。ゴーレムに打ち掛かる前の、あれですな。生徒達には言っていませんでしたが、実は『ディテクト・マジック』を使った時に妙な魔力を感知してはいたのです。しかしまさか、杖も詠唱も無しに魔法を行使するとは! あれは先住魔法ではないでしょうか?」 「かもしれん」 オスマンは腕組みして、髭を弄りながら思索を始めてしまう。 「オールド・オスマン。王宮に報告した方が良いのでは?」 「それには及ぶまい。まだ正体も分かっていないし、王室のボンクラどもに引き渡して見ろ。戦好きなあの連中の事じゃ。ロクな事に使われまい。当然、その主人のミス・ヴァリエールも巻き込まれることになる」 「成る程……学院長の深謀には恐れ入ります」 コルベールの瞳に一瞬暗い影が差す。権力者の「やり方」を、コルベールは誰よりも知っていた。 「この件はワシが預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」 「は、はい。かしこまりました!」 オスマンは窓から空を眺めて、呟く。 「伝説の使い魔、か……」 前ページ次ページIDOLA have the immortal servant
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/152.html
「……は?今なんて?」 「だから私のダーリンがギーシュと決闘するって言ったのよ」 「そういう事じゃなくて何で貴方の新しいダーリンとギーシュが決闘する事を私に報告するのかしら?ツェルプストー」 「そりゃあダーリンが貴方の使い魔だからじゃないの……」 どこか遠くを見るような目でそう言い放つキュルケに対し (何?さっき打たれたばかりなのに惚れたの?キュルケってもしかしてドM?) と思い、自分の友人がそっち方面であったのかもしれないと思い多少ドン引く が、アブノーマル認定されかかっている事も知らずにキュルケが多少熱を帯びた言葉を続ける。 「そりゃあ急に打たれた時は驚いたわ…今までの彼は私自身や私の家を目当てで優しくしてくれたり甘い事を言ってくれた人ばかり… でも彼は違ったわ…貴族でもないのに私を対等に扱ってくれた初めての人よ…これが燃えられずしてどうするのよ!ヴァリエールッ!!」 もう微熱どころかイタリア・ヴォルガノ島火山より燃え上がっているご様子。 そして完全に放置食らってるルイズ、半分意識が飛んでいた。 「……………って決闘ぉ~~~~!?何プロシュートが?何でギーシュと!?」 そして、数秒送れて肝心の本題に気付く。 「彼プロシュートって言うの…ステキな名前ね…」 完全に自分の世界へ入っているキュルケ嬢。なんかもうルイズの目に『ラリホ~』と言いながら周りを浮かぶ趣味の悪いピエロが見える。 「早くあいつを止めないと大変な事になる…!止めなきゃ!」 (ギャラリーが出来きるであろう決闘で召喚した時にあいつが使った妙な能力を使われたら大惨事になる) という事からプロシュートを止めるという事だったがもう一人の方は 「いいじゃない…平民が勝てないと分かっているメイジに挑む…燃えるわぁ~」 などとキュルケがのたまう。 (駄目だこいつ……!はやく何とかしないと……!!) 一瞬だがそういう思考が頭をよぎるが『決闘』という重大事にそれを後回しにする。 半分トリップキメているかのようなキュルケを後にしプロシュートを探す。 居た。というか凄まじく目立っているためほとんど探す必要も無かった。 ちょ、ちょっと!ギーシュと決闘するってどういう事!?」 「仕掛けてきたのはヤツの方だぜ」 (マズイ…!目が本気だ…!) 「人が大勢居る場所であんな物騒な事しないでって言ったばかりじゃない!」 「誰がアレを使うと言った?対処法がバレると厄介なんでな、使うつもりはねぇ」 授業をロクに聞いてはいなかったが水系統の魔法で氷が作り出せるという事は聞いていた。 グレイトフル・デッドの老化に対して唯一有効な手段である「体温を下げる」 生徒とはいえあの大人数の前で広域老化攻撃を使えばそれがバレる可能性がある。 後の事も考えればそれは避けたいとこだ。 「それじゃあアンタに勝ち目なんてあるわけないじゃない!今すぐギーシュに謝ってきて!」 「無駄だな、ヤツは完全にプッツンキてる。例えオメーが謝ったところでどうにかなるもんでもねぇ」 「ああもう、それじゃ逃げなさい!私から何とかうまく言っといてあげるから!」 「ヤツはオレに決闘を挑むという覚悟があってやってるんだぜ? 一時身を隠したとしても必ず追ってくるだろうよ。だからこっちが先に『やられる前にやる』んじゃあねーかッ!」 プロシュートがそう言い放ちルイズをその場に残し広場に向かう。 「……怪我じゃすまないかもしれないのにどうするのよ!」 だが、ルイズが思い違っている事が三つある。 一つは「グレイトフル・デッドというスタンドの存在」 二つは「プロシュートが一級の暗殺者」 そして三つめ「プロシュートにとっての『やる』は『殺る』」であった事… そして『ヴェストリの広場』 「遅かったじゃないか… 逃げ出してしまってたものかと思っていたよもっとも、逃げたところで無駄なんだけどね!」 「殴られた後が顔に出てるぜ?まぁその方が人気が出そうだがな」 「ぐッ…!平民が貴族を馬鹿にした報い受けさせてやるッ! 僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまい!」 ギーシュが薔薇の造花を振るうと花びらが一枚離れ金属製の人形が一体出現する。 「青銅のゴーレム『ワルキューレ』僕が青銅のギーシュと呼ばれている由縁だッ!」 「その名前ならさっき頭から香水をブチ撒けられた時に聞いたな」 「いつまで減らず口を…!まぁいい、この一体だけで片付けてあげるよ!」 ワルキューレが猛然とプロシュートに突っ込んでいく。 だがプロシュートは動かない。しかし目だけはワルキューレを凝視している。 ワルキューレとプロシュートの距離が2メートルを切りワルキューレが拳を繰り出す。 だが拳が目標に当たりそれを砕く瞬間拳の軌道が瞬時に変わった。 「何ッ!?」 「今の見たか!?」 「ワルキューレの拳の軌道が急に変わったぞ!」 そうギャラリーが騒いでいる間にもワルキューレは両の拳を繰り出すが全て当たる直前に軌道を曲げられてしまう。 「こいつ…!平民のはずじゃないのか!?」 「フン…ノロいな、その程度のスピードじゃあスティッキィ・フィンガースに遠く及ばねー」 自分が最後に戦ったスタンドの名を出しながら性能をS・Fと比較する。 「確かに人間と比べては優れちゃあいるがそれだけだな、特徴としては堅さぐらいか」 そう言い終えた瞬間――ワルキューレが腕と脚と全て弾けさせ砕けた。 「確かに正面装甲は堅いが…関節部はそうでもねーな」 「な…僕のワルキューレに何をした…? 何をしたと聞いているんだ!答えろォォォオオ!!」 「…………」 無言でギーシュを見据えるプロシュート。だが自慢のワルキューレを破壊されたギーシュはそれを挑発と受け取る。 「いいだろう…言いたくないのならそれでいい!嫌でも言いたくなるようにしてやるさ!」 薔薇の造花を振るい6枚の花びらを舞わせ残り全てを出現させる。 ――ギーシュが平民相手に本気になった。そう思った観客が騒ぎ出す (ちッ…六体か) プロシュートのグレイトフル・デッドはそれ自体の拳の射程距離だけなら近距離パワー型に属する。 だがヴェネチア超特急クラスの列車丸ごとをカバーできる老化の射程距離。 これが他の近距離型スタンドとグレイトフル・デッドの差だ。 パワーそのものは近距離型に劣るとはいえある程度のものを有するもののスピードと精密動作性が致命的に劣っている。 それを埋める為の老化だが今回はそれを使っていない。―――つまり ワルキューレの内三体がプロシュートを襲う。 さっきと同じように拳の軌道が変わる、観客達はそう思った。だが結果は違っていた。 ズドォォオオ 一体ワルキューレが吹っ飛ぶ、だが残り二体がその隙を襲う。 片方の攻撃を弾くが、もう片方は間に合わない。 ボゴォ 「うごォっ!」 横からの攻撃を受け吹っ飛ぶ。そしてそれを見たギーシュが勝利を確信したかのように勝ち誇る。 「君のその妙な能力はワルキューレ一体には抗えても複数体だと無理みたいだね その弱点が分かったからには次は残り全てでやらせてもらうッ!土下座するならいまのうちだッ!」 (骨には問題ねぇが…内臓を少しやられたみてぇだな) 立ち上がりギーシュに向き直る、だがその口からは血が出ていた。 「フン、血ヘド何て吐いて神聖な決闘を何だと思っているんだい? まぁ使い魔だけあって少しだけ妙な力があるようだが魔法を使えるメイジに勝てるはずないのさ!」 だが次のプロシュートの言葉はギーシュにとって意外だったッ! 「ハァー…ハァー…それがどうした?」 「何だって…?」 「それがどうしたと言ったんだ」 「この後に及んで強がりかい?みっともないねッ!」 だがそれに構わず言葉を続ける。 「確かに魔法ってのはスゲーもんだ、オレだってそう思う だがなッ!オレが居た場所には空気そのものを凍らせるヤツやあらゆる物体を切断できるヤツなんてのが居るッ!」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ (何だこいつ…!?周りの空気が急に変わったぞ!) 「オレ達チームはなッ!常にそういう連中を相手にしてきているッ! オメーらみてーなマンモーニが使う薄っぺらい魔法なんかと一緒にするんじゃあねぇッ!」 「…ハッタリのつもりかい?だとしたらメイジも甘く見られたものだ。いいだろう!もう手加減なんてのは無しだッ!」 ギーシュが武器を精製しそれぞれのワルキューレに武器を取らせる。 どれもこれもマトモに受ければ良くて重症、悪ければ死に至るものばかりだ。 「後悔する時間も与えないッ!」 残った6体のワルキューレをプロシュートを囲むようにして布陣させる。これでもう逃げ道は無い。 ギーシュの号令を待つように囲むワルキューレ達、観客の誰が見てもギーシュの勝ちは明らかだと思っている。 ルイズがそれを止めようと観客達を押しのけ間に割って入ろうとする。だが遅かった。 「行けッ!ワルキューレ!!」 そう聞こえた瞬間ルイズはその場に立ち竦み己の使い魔がなぶり殺しにされる光景が脳裏に浮かび――倒れた。 その声を合図としプロシュート目掛けワルキューレが殺到する。 だがプロシュートが取った行動は実にッ!意外だったッ! 普通4方から囲まれているなら身を守るのが当然だッ!だがプロシュートは逆に…… 『思いっきり突っ込んだッ!』 一体のワルキューレ目掛け猛然と突っ込む。その先にはギーシュが居る。 「一体だけなら対処はわけねぇからなッ!」 「ば、バカなッ…!」 固まって動かれればワルキューレの層を突破できない、だから自分を囲ませるように仕向けた。 そうして包囲網が縮まる前に一点突破を仕掛ける。それが狙いだ。 グレイトフル・デッドでワルキューレを投げ飛ばす 壊すのは時間の無駄と判断しての事だ。 「くそぉ…来るなァァァァアアア!!」 ギーシュにさっきまでのような余裕はスデに無い。狼狽しながらも魔法を使うべく杖をプロシュートに向ける。 だが当たらない、ギーシュがいくら魔法を撃っても一発たりとも当たらない。 拳銃と同じだ、落ち着いて心を決めていなければ魔法といえども当たるはずはなかった。 後ろから6体のワルキューレを引き連れたプロシュートが迫り薔薇の杖をグレイトフル・デッドでヘシ折った。 「うぁ……あ…ま、参った…」 貴族が平民に負けた、誰もがそう思った。そしてこの決闘が終わったと思った。 否、実は終わってなどいない(古谷 徹の声で) どこからか『倍プッシュだ』というような声が聞こえたが多分幻聴だ。 「参った…そんな言葉は使う必要がねーんだ… なぜならオレやオレ達の仲間が敵と戦った時の決着は」 次の言葉で観客達のほぼ全てが凍りつく 「どちらかが死んじまってるからだッ!だから使う必要がねェーーーーッ! オメーもそうだよなァ~~~~『決闘』を挑んできたんなら…分かるか?オレの言ってる事…え?」 「ひぃ…!こ…殺される…助け…」 だがその言葉は最後まで言えない、グレイトフル・デッドが首を掴みギーシュの体が中に浮く。 「ギ、ギーシュが浮いたぞ!」 「いや…違う!見ろ、首を何かに『掴まれて』いるッ!」 グレイトフル・デッドは見物人達には見えないが何かに首を掴まれている跡だけはハッキリと見えた。 ズキュン! 「何だァーーーーーッ!あれはァーーーーッ!!」 観客達が騒ぎだす。当然だ、ギーシュがあっという間に老人の姿になったのだから…! 「うわぁぁぁぁ!やっぱり…あれは夢じゃあなかったんだッ!『ゼロ』の呼んだ使い魔は…悪魔か何かなんだァーーーーッ!」 そう叫ぶのは最初に巻き込まれた連中だ。それを皮切りに他の者が次々と騒ぎ出す。 ドザァァア ほとんどミイラと化したギーシュが地面に崩れ落ち、周囲から悲鳴や怒号が上がる。 中にはプロシュートに杖を向けている物さえ居る。 だがプロシュートはあくまで冷静に言い放つッ! 「これぐらいの事で騒ぐんじゃあねぇッ!オレがいた世界ではな! 決闘を仕掛けて『参った』なんていう負け犬は居ねーんだからな…」 ピクリとも動かない元ギーシュの首に足を乗せ―― 「『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!!」 その言葉と同時に広場に乾いた音が鳴り響びく。この場を見ていない者であれば枯れ木を踏んだかのよに聞こえたであろう。 そして、その瞬間その場に居た者達は理解をする。 仕掛けられた決闘とはいえ貴族を―メイジを顔色一つ変えることなく滅せる者がただの平民ではないという事を。 ギーシュ・ド・グラモン―死亡(頚椎骨折) 二つ名 「青銅」
https://w.atwiki.jp/orboffafnir/pages/39.html
戦闘 キャラクター 街 世界 ジョブ 戦闘 戦い方のキホン その1 一度に多くの魔物を相手にしてしまわないように、気を付けよう。 戦い方のキホン その2 範囲攻撃のブレイクスキルで、密集している敵を一掃しよう。 戦い方のキホン その3 一部の魔物は、特定の属性に強い耐性を持っている。攻撃が効かない相手には、違う属性のスキルで攻撃してみよう。 戦い方のキホン その4 厄介な状態異常を引き起こす攻撃には気を付けよう。 戦い方のキホン その5 敵が強力な攻撃を仕掛ける構えをしたら、安全な場所まで距離をとろう。 テンション チャージスキルを使用するとテンションが溜まる。テンションを消費することで強力なブレイクスキルが繰り出せる。 コンボ プレイヤー同士で連携してブレイクスキルを コンボダメージのチャンス。 回避・盾ガード 敵の正面を向いて攻撃を受けると、回避や盾ガードが発生することがある。 攻撃する際の向きについて スキルの中には、使用する際の向きで効果が変わるものもある。例旋風撃…敵の正面から使用するとダメージが増加猛攻乱舞…敵の背後から使用するとダメージが増加 敵視について 敵にダメージを与えると、敵視(ヘイト)が上がり、敵の標的になりやすくなる。そのため、自分がターゲットにされている時は、攻撃を控えるなどの判断も重要となる。ただし、コンボでのダメージは敵視が上がりにくいので、コンボ中は積極的に大ダメージを狙うチャンス。 敵の範囲攻撃 敵の攻撃範囲は黄色く表示される。発動前に範囲外に逃げることで回避可能。 キャラクター 妖精 かつては最強のワルキューレであったが、ファーヴニルを封印したことでその力の全てを失い、小さな妖精の姿となった。全てのワルキューレの監視役であり、絶対的な命令権をもつ。何よりもワルキューレとしての使命を最優先とし、人間に対しては冷たい態度をとる。 クラウディア 今まで一度も命を失わずに戦い続けているワルキューレ。真面目で口数も少なく、コミュニケーションはあまり上手くない。使命感が強く、仲間を思う気持ちも強いが、頑固でもある。 ノーラ 20年前のファーヴニルの災厄で命を落とし、最近転生したワルキューレ。明るい性格で人懐っこいが、戦いでの回復役に重荷を感じ、時に感情的になることもある。ワルキューレとしての使命感は薄いが、人間的な人情の一面を持っている。 街 預言者 いつも街の噴水近くにいる謎の女性。遥か昔から街にいるようだ…… 街の商人 街の商人たちは、時々新しい商品を仕入れてくる。街を訪れた時は覗いてみよう。 美食家 豊満な美食家の女性。食べられるものはなんでも食し、新たな美食の探求に余念がない。戦闘食のレシピは彼女に教えてもらおう。 冒険家 《澱みの魔物》を探して旅をしている小柄な老人。《澱みの魔物》の居場所を掴むと討伐を依頼してくることがある。 マーケットボード 街のあちこちに置かれている、ユーザー同士の便利な取引掲示板。 重なった世界のワルキューレたち 街で他のワルキューレと交流してみよう。 世界 ファーヴニル 北欧神話に語られる巨竜。欲望の化身として知られ、世界中のあらゆる富を長大な懐の中に抱え込んでいるといわれる。神々により長きに渡って封じられてきたが、封印が解けると共に、その体は数多の小さな宝珠となって人の世に降り注いだ。 宝珠 巨竜ファーヴニルの体が粉々に砕け散ったもの。多種多様な魔力を擁し、人や獣に悪しき影響を及ぼす昏き瞬きを灯す。だが、その瞬きはワルキューレにとっては、無限の力を齎す眩い煌きとなる。 ワルキューレ 天上の世界に住まう戦乙女にして、プレーヤーの分身。数多の欠片となったファーヴニルの宝珠を回収するために人の世へと派遣された。 魔物 宝珠によって怪物化した地上生物。宝珠の影響を受けただけのものと、宝珠を直接体内に取り込んだものがいる。取り込んだ方がより強大かつ異形の存在となる。 地上の種族 地上では人間族、ウルフ族、サハギン族が、それぞれの領土内で生活している。知能や大きさに大差はない。ウルフ族とサハギン族の間では、たびたび争いが起きている。 モノリス 神々によって、かつて地上の島々に設置された建造物。宝珠の影響でその力を妨害されてしまっているので、魔物を退けなければならない。 ジョブ ファイター 攻守のバランスに長けた戦場の要。挑発や自身の防御力を高めるスキルを使い、敵の攻撃を一身に引き受ける。 プリースト 味方を癒やす回復魔法の使い手。メイスを用いた物理攻撃もある程度こなすことができる。 メイジ 攻撃魔法を駆使した遠距離攻撃を得意とするジョブ。空中の敵にもダメージを与えることができる。 ウォーリア 肉弾戦のプロ。大型ハンマーを用いた強力な一撃を得意とする。ただし、両手が塞がっている為盾は装備できない。 フェンサー 素早い攻撃が得意な遊撃職。背後からの攻撃や味方のヘイトを下げるなど、テクニカルなスキルが豊富。 テンプルナイト 戦場の砦。大盾に重鎧を着こなし回復魔法や様々な強化スキルを使いこなすタフな前線。 ドルイド 攻撃、回復の両方の魔法を使用できる支援職。大きなスタッフを使用するため盾を装備できないので、魔物と距離をとって戦おう。
https://w.atwiki.jp/choshirodon/pages/16.html
これまでMiuが披露した替歌歌詞を集めたページ チームMiuが勝手に作った歌詞をMiuが好意で披露してくれているw 目次 ソフトクリームはとまらない ソフトクリームはとまらない(縦長Ver) タコイカsoul ソソッカでごめん 一度だけの鯉なら ソフトクリームはとまらない 2024/07/06公開 原曲:ワルキューレがとまらない ワルキューレ 作詞 唐沢美穂・加藤裕介 作曲 加藤裕介 編曲 加藤裕介 ソフトクリームはとまらない(縦長Ver) 2024/07/06公開 原曲:ワルキューレがとまらない ワルキューレ 作詞 唐沢美穂・加藤裕介 作曲 加藤裕介 編曲 加藤裕介 タコイカsoul 2023/03/16公開 原曲 ultra soul B'z 歌詞 稲葉浩志 作曲 松本孝弘 どれだけ投げれば良い 誰かの為なの 分かっているのに 課金がらぐ ソソッカばかりに気を取られ この罵倒を楽しめない メマイ タコじゃないあれもこれも その手でタコを投げましょう 罵倒が欲しいのなら 課金をして タコを投げましょう そして寒いよ タコイカSoul!(みゅー!!) おのれの限界に気付いたつもりィカい 漢字でさえも まともに読めない 一番大事な場所でほら またやらかしてみてる I can tell イカじゃないあれもこれも 今こそイカを焼きましょう 罵倒が欲しいのなら 底なしのお金 つぎ込んできましょう そして破産だ タコイカSoul!(みゅー!!) タコとイカに 遊ばれて ソソッカしてるよ Miu×4 タコじゃないあれもこれも 今こそ罵倒をやりましょう 罵倒が欲しいのなら 課金をして パーッとばらまけ 台本だらけあれもこれも その真っ只中 ソソッカするでしょう そしてポカンだ タコイカSoul!(みゅー!) ソソッカでごめん 2023/01/23公開 原曲:可愛くてごめん ちゅーたん 歌詞:shito 作曲:shito 編曲:HoneyWorks 一度だけの鯉なら 2022/12公開 原曲:一度だけの恋なら ワルキューレ 歌詞:唐沢美帆・加藤裕介 作曲編曲:加藤祐介
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/4527.html
戦乙女の人形(いくさおとめのにんぎょう) 概要 アビスに登場した人形系の装飾品。 ワルキューレシリーズに登場するワルキューレを模した人形。 ▲ 登場作品 + 目次 アビス 関連リンク関連品 ネタ アビス 羽根の装飾が施された兜をかぶった人形。さまざまな戦闘能力が上昇。 アニス専用の装飾品。 物攻、譜攻が50上昇し敵撃破時にHP&TPが10%回復する。 つまりヒールバンクルとメンタルバンクルの効果に加え攻撃力アップまで図れる贅沢な装備。 比較的早期に入手できる割に効果が非常に高い。 蟻地獄人の人形を入手するまではアニスの装飾品はこれで決まりだろう。 なお2周目以降、これを装備していると戦闘勝利時の台詞が「出直してらっしゃい!」になることがある。 分類 ぬいぐるみ 属性 - 物防 0 譜防 0 買値 - 売値 5000 特殊効果 トクナガの外見が変化物理攻撃力と譜術攻撃力が50上昇敵を倒すとHPとTPが最大値の10%分回復 装備者 アニス 入手方法 拾 ベルケンド:研究所の医務室薬棚 ▲ 関連リンク ワルキューレ 関連品 ヒールバングル メンタルバングル ミラクルバングル-アビスには登場していないが、ヴェスペリアに登場した装飾品。同じくヒールバンクルとメンタルバンクルを同時に得られる。 ▲ ネタ 前述のとおり、モデルはワルキューレシリーズに登場するワルキューレ。 ▲
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1066.html
本来は良識の府の象徴的存在としてあるべきなのだが、トリステイン魔法学院の学院長室は、部屋の主と同じくどこまでも軽かった。 秘書が本の整理をすれば背筋に指を這わせ、秘書がかがめばネズミを走らせ、秘書が横にいれば臀部へと手が伸び、三度に一度秘書からの反撃が受ける。 このように乱れた部屋が権威を持とうはずもないのだが、今日の学院長室は気まずくも重い雰囲気に包まれていた。 原因はただ一つ。「遠見の鏡」に映し出された平民の女だ。 後ろを振り返らず、すれ違う者の目を気にもせず、全力で手と足を振り、廊下を真っ直ぐに駆けていく。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あの平民、逃げてしまいましたが……」 「うむ」 「あの逃げ足! そして躊躇の無さ! 主人への気遣い皆無! あんな使い魔見たことない!」 「うむむ……」 真面目と不真面目、ハゲとヒゲ、好一対の二人は苦い顔を見合わせた。 「まさかあそこまでアレな使い魔とは予想外でした。やはり参加者はある程度絞っていくべきかと」 「まぁ待て。結論を出すのはまだ早かろう。あの使い魔にしても何かしらの考えがあってやっておることかもしれん」 万事に拘泥しないオールド・オスマン個人としては、なるだけ門戸を広く開いておきたい。 だが使い魔の自覚が無いただの平民を晒し者にしては、使い魔本人も主のメイジも気の毒だろう。 しかし開始前から爪弾きにするというのも問題だ。どうすべきか、慎重に事を決める必要があった。 「平民の使い魔はもう一人いたはずじゃな。それを見て決めるのもよかろう」 「はあ」 「それにじゃ。君の意見を汲むとすれば総合的な評価をつけることになる。臆病さを打ち消すだけの長所があれば問題あるまい」 「なるほど」 「私としても実現させたいと思っておるよ。君の提案した『使い魔大品評会』を」 お父さま、今までお世話になりました。 お母さま、わたしの死体に怒りをぶつけるのはやめてくださいね。 ちいねえさま、悲しませてごめんなさい。 もう一方姉さまがいたような気もするけど、たぶん気のせい。そうですよね、エレオノール姉さま。 ……ここまで悲観的なこと考えておいてなんだけど、あれ当たったからって死にゃしないわよね。 医務室行きは確定だろうけど。あーあ、秘薬って高いのよね。顔に傷でも残ったら嫌だから使わなきゃならないし。 以上、時間にして一秒半。あ、今二秒になった。 人間の潜在能力というのは大したもので、ワルキューレがわたしに振り下ろした拳を見ながらここまで色々と考えることができた。 殴られる覚悟を決めて、その百倍はグェスをぶん殴ることも決めて、わたしは頬を差し出したけど、今日のわたしは良くも悪くも全てが裏目で、望んでもいない助けが入った。 わたしの頬と青銅で作られた拳の間に一枚の掌が差し込まれた。 人を殴り飛ばそうとするだけの勢いがあったはずなのに、ぴたりその場で静止する。 「勇気と無謀とは似て非なるもの」 厚く、傷だらけで、でもほんのりとした暖かさを持つ掌の持ち主は……。 「蚤の無謀をとるか、人の勇気をとるか。当人次第じゃな」 ぺティ! いきなりのお説教にムカッときたものの、どうやらその相手はわたしじゃなかったらしい。 ぺティの目は食堂の一隅を占める大釜へと向けられていた。 わたしは退いた。殴られる気こそあれ、退く気なんてさらさらなかったのに、それでも一歩退いた。 半ば以上はよろけていたと思う。これを認めるのはとんでもなく悔しいんだけど、わたしを襲ったワルキューレではなく、助けてくれたぺティに圧されていた。 よろけ、転びかけたところを後ろの誰かが受け止めてくれた。 「老師、よろしくお願いします」 その誰かは見なくても分かった。あんたまた人の見せ場とる気? かわいい女の子に容赦しないくらいだから、老人のぺティにだって容赦するわけがない。 ワルキューレの拳がぶんぶん振るわれる。当たれば死ぬ。嘘。でも大怪我はするでしょ。 そんな攻撃が降りそそぐ中、ぺティのフットワークは羽根のよう。すげー。 その左手には、たぶん荷運びしていた中から失敬してきたんだろう、ワインが一瓶握られていた。 右手には、いつも着ている使い古したコートが提げられている。 そのコートで暴れる牛をあしらうようにして、左足で一撃、ワルキューレの足首へ蹴りこんだ。 さらに避けたところでもう一撃、椅子の上から着地しなに鋭く蹴り刻み、青銅の足首が大きく変形する。 流れるように三撃目が決まり、青銅の足首がポキリといった。 さっすが修行者、やってくれるわ。ギャラリー含むわたし、歓声。 「ふむ。あきらめは悪いようじゃな」 釜の中でくぐもった詠唱が乱反射している。ぺティを取り囲み、ワルキューレが全部で三体練成された。 ギャラリー含むわたし、ブーイング。修行者だからって平民相手にやりすぎでしょ。 周囲が騒ぐ中、当のぺティと、わたしの後ろの誰かさんは、慌てる様子も見せない。 ぺティにいたっては右手のワインのコルクを飛ばし、喉を鳴らして飲む始末。落ち着いてるっていうか混乱してるのかしら、ひょっとして。 ギーシュがワルキューレをけしかけようとした時には、すでにワインが一瓶空になっていた。速っ。 あーあ、あの飲み方は悪酔いするわよ。殴られて痛くて、起きたら頭も痛いって最悪じゃない。 「それではいくかの」 行くってどこに行くのよ。酒飲みの行くとこっていえば一つしかないけど。 ぺティは大きく息を吸い込んだ。大きく大きく吸い込んだ。どこまで吸うの? 吸った分だけ吐き出した。大きく大きく吐き出した。吐きすぎじゃない? 内臓出るわよ? ぺティの呼吸はどこまでも大きくなる。息遣いがここまで聞こえてくる。変なの。 その息遣いに合わせて口から赤い何かが出てきて、うええっ内臓……いや内臓じゃない。内臓は青銅を切断しない。濡れてる……液体? ワイン? 口から出てきた赤い液体が……っていうと血みたいね。 ワインか血か分からない何かが、形を変え、矢継ぎ早に噴き出された。見た目はともかく、威力に関しては血やワインなんてものじゃない。 ゴーレムの末端を狙い、液状の円盤が次々に命中した。足首を断ち切られ転ぶもの、頭を削り取られるもの、腕が落ちるもの。 あらゆる方向へ飛び、かといって狙いは過たず、真紅の散弾がワルキューレを斬りさいなむ。 直線で飛ぶならともかく、あきらかに不自然な軌道を描くものもある不思議。これ、魔法? ギャラリーは喝采を通り越して呆然、ただ一人空気の読めない誰かさんだけが拍手を送る。 もう這いずる事すらできないくらいズタボロにされたワルキューレを避け、ぺティが大釜へと進み出た。 足を踏み出すたび、手を差し伸べるたび、床に飛び散った赤い飛沫がダンスを踊る。何これ。 どうやら魔法ってことは間違いないみたいだけど、原理はこれっぽっちも分からない。 釜の底に指をかけ、返した。息を呑むギャラリー含むわたし。 重そうな釜を軽々とひっくり返したから驚いたわけじゃない。 中のギーシュが幽鬼のように痩せこけていたからというわけでもない。 わたし達が驚いた理由は、釜の中にいたのがギーシュだけじゃなかったから。 二体のワルキューレがギーシュの両脇、一体だけ突出したワルキューレが小脇に剣を携えていた。 その剣を前へ突き出し、ギャラリーの呑んだ息が悲鳴として吐き出されんとしたその時。 ぺティが、ぺティのコートが、ゆらめいた。その動きは、例えるとしたら意地の悪い蛇。 蛇が、その身を縮ませ、思い切り伸ばす。反動でぺティは縦に一回転、横に半回転、半秒ほどで天井近くに跳び上がった。 ワルキューレの剣はコートを突き刺し、なぜか抜けなくなったみたいでもがいているけど、誰もそちらは見ていない。 上。滞空速度は異常なほどに遅い。混乱するギャラリーが身を乗り出し、輪をかけて混乱しているはずのギーシュが撃墜を命じる時間は充分すぎるほどあった。 左からワルキューレ。右からも同じタイミングでワルキューレ。 迎撃されることを知りつつ、正しい放物線を描いてただ前へ落ち、左右から襲いくるワルキューレに向けてそれぞれ一本ずつ脚を伸ばした。 打撃をくわえようって蹴りじゃない。その証拠にワルキューレは削れもへこみもしていていない。 ぺティの脚はあくまでも遮蔽物を排除するために伸びていた。 二体のワルキューレに挟まれる形で落ちてきたぺティが、両の脚でワルキューレを押しのけた。 ということは、つまり、ギーシュは丸裸でぺティの前に身を晒すことになる。 ワルキューレに脚をかけたままで、十字に組まれた手刀がギーシュの喉元へと突きつけられた。 なんて早業! 始まった、と思った次の瞬間にはもう終わっている。まるで稲妻ね。 壁に押し付けられた格好でギーシュは動けない。動いてみようがない。 怒りのためか、それとも焦りのためか。青ざめていた顔に赤みが差してきた。そしてこけた頬に柔らかな肉が……ってええええっ!? 充血し、濁っていた目に一条の光が差した。だらしなく半開きになっていた口元に力が戻る。 視線はしっかりと定まり、くたびれていた髪は艶やかさを取り戻し、一匹の幽鬼がわたし達の知るギーシュ・ド・グラモンになった。 モンモランシーは驚き、戸惑い、そこから喜び、喜びを隠すように口を一文字に引き結んだ。 彼氏彼女で百面相してりゃ世話無いわ。 「もういいようじゃな、お若いの」 右のワルキューレを蹴り、その反動で左を蹴り、誰かさんの隣に着地した。悔しいがお見事。 支えを失ったギーシュは壁を背にして尻餅をついた。 モンモランシーは「馬鹿馬鹿大馬鹿」とギーシュを叩く。その瞳からは滂沱と流れる涙がって見せ付けんじゃないわよ。 「お嬢様、そうむやみに殴っては頭が馬鹿になってしまいます。ゲ……ゲ」 そう思うのなら止めなさいよ。だいたい馬鹿に関してはもう遅いわよね。 「よかった、よかった。仲直りできた。ねっ」 ……誰? 「お疲れ様でした老師」 よくよく考えてみると、あんた何もしてないじゃない。 いつの間にか殺伐だった空気が微笑ましいそれに変わり、ギャラリーはなぜか拍手。わたしも拍手。 確実に見せ場をとられた。絶対に気のせいじゃない。ちょっと涙目でわたしも拍手。グェス何処行った。見つけたら皮剥いでやる。