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107 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 20 54 18.78 ID oJ2DFEdA0 磯香る、昼時。 旅船、帆船、商船、貨物船、そして様々人々とレプリロイドが集まる場所――港。 イーグリードの最期の意思であった脱出ポッドであった二人は、砂漠に落下。 怪我を負うゼロに肩を貸し、エックスは近くの港まで歩き進んだ。 大陸と大陸を大きな海が横断する。青い空を、海鳥が猫の様な鳴き声で舞っていた。 カメリーオとマンドリラーとの戦闘。 その後のデスログマーからの落下で、ハンター組織からかなり離れた位置に身を置く事になってしまった。 本部への帰還、そして自分の腕に抱かれる少女の治療をするには、船でこの海を渡るしかない。 「もうちょっと我慢してね? 出航の手続きはしたから、直ぐに本部に戻れるよ」 エックスは落下した時から、時折すすり泣くゼロに優しく声をかけた。 「あぁ………悪いな」 肩に助けられながら、港の海沿いを歩く。涙をぬぐう少女の声は、まだ悲しみに掠れていた。 「イーグリードの事は……」 「良いんだ……もう、大丈夫。あいつもオレも、もう大丈夫だ………」 「そう………」 それ以上は追求せず、エックスはもう一つの手に握られる紙片を見た。 旅船の添乗が出来るチケットだ。 「どこかで食事でもしようか? 一応、まだ時間はあるから」 港にある商店街の入り口を指しながら、尋ねる。様々な店舗が見え、人通りも多い。 「いや……。いや、そうだな。エックスに任せるよ」 「そっ。じゃあ、行こう」 二人は、小さいがお洒落なお店の前に立つ。レプリロイド専用の飲食店だ。 「素敵なお店……。ここで良いかな」 そう言って、中へと入った。 従業員に案内され、窓際の席に座る。水が運ばれ、メニューが渡され、やっとエックス達は落ち着いた。 111 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 20 55 12.87 ID oJ2DFEdA0 「ふぅ……疲れたね。何が食べたい? 僕が奢るよ」 「金、持ってんのかよ?」 メニューを見るエックスに、ゼロは気分が若干晴れたのか意地悪な笑みを浮かべた。 まだ赤い目をする少女に、エックスもつられて笑みを浮かべた。 「意外だ。悪かないな、これ」 「そうだね」 テーブルに出てきた海鮮料理をつつく二人。 海が見えるこの席での食事は、とても気持ちが良かった。 港町を訪れる多くの人間とレプリロイド、その騒喧を感じさせない程、この店は静寂に包まれている。 「お冷のお代わりは――」 弾けるガラス片が赤と青に降りかかり、嫌な切断音。同時に、真紅の液体がばら撒かれた。 一時の静寂は、水差しを持ってきたウェイトレスのレプリロイドの首が飛んだ事によって、打ち破られる。 「………伏せろ!!」 オイルで真っ赤になったゼロが、エックスを椅子から押し倒す。怪我をした部分が床にぶつかり、顔を歪めるゼロ。 遅れて、二人の席が三つに両断された。 赤き少女は、何が、と声を出すエックスを突き飛ばす。 今度は、座席付近にある物全てがバラバラに解体された。 机、椅子、料理、メニュー、そしてウェイトレスの死体が、分断され宙を舞う。 「クワンガーの変態か……!!」 ゼロが呻きを上げ、悔しそうに手の中にあったフォークを握りつぶす。 そして、破壊された窓から回転する何かが侵入した。黒いシルエットは、早すぎて何なのか視認できない。 「エックス! 店から出ろ!!」 乱入してきた何かが、店内を蹂躙する。 一連を見て、呆然とする店長らしきレプリロイドのボディをズタズタにし、カウンターにばら撒く。 その横の従業員のボディも後を追い、木の床を真っ赤に汚した。 128 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 21 25 18.58 ID oJ2DFEdA0 凶器は回転数を上げ、店内にある命ある物、そうでない物を平等に切り裂いていく。 もう生きているレプリロイドは、伏せる二人しか居ない。 「はやく行け!!」 ゼロは右手をバスターにし、外に向け何度か射撃する。無論、暗殺者に当たるはずが無い。 エックスは治療を受けていないゼロの身体を案じるが、少女の意思の強い眼を見て、諦める。 天井の照明が全て、粉々にされる。このまま、店ごと破壊するのではないかと思う程の勢いだ。 こちらも同じく右腕をバスターにし、窓に向け何度か射撃しながら、外へと飛び出した。 「どこのどいつか、知りませんけど……!」 エックスが怒りに身を震わせながら、立ち上がる。暗殺者は見つからない。 漆黒の凶器も示し合わせたように破壊を止め、店外から出てきた。 「不不不………」 いったい何時現れたのか、怒れる青きレプリロイドに黒い影が立っていた。 回転する武器は、その影の手に収められる。意外にも白く細い腕だった。 「あなたは……!」 トレンチコートを着込む影。危うい程の白い肌、肩ほどまである銀髪が海風に揺れた。 申し訳程度の大きさのサングラスに覆われた、血の様に真っ赤な瞳がエックスを見つめる。 「しばし待て」 銀髪の少女は、近づき詰問しようとするエックスに待ったをかけると、飛び引く。コートの端がバタバタと揺れた。 手近にある壁を見つけると、そこに半身を寄せ、半分隠れた顔でエックスを見つめる。 「じー………。良いぞ。あ、おい近づくな。接近するのは不許可だ」 エックスはその行為の意味が解らないが、近づくのをやめ、瞳で少女に意思を訴えた。 少女がそれに応え、頷く。 140 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 21 48 32.86 ID oJ2DFEdA0 「ご挨拶しよう。クワガタ型のレプリロイド、イレギュラーハンター組織、第17部隊の時空の斬鉄鬼のブーメル・クワンガーとは私の事。 不不不……気分屋で暗殺が何より大好きで、次に好きなのが監視。人からマイペースと言われるが、よく解らない。 家族は、カブトムシの弟が一人居るのだ。あぁ、エックス君、はじめまして。君と会うのは初めてだよね? 確か、私の記憶のよるとそうだ。 んー、食堂で見かけた事があるが、それは出会ったとは言わないから、おそらく初めまして良いはずだ。どうぞ、よろしく」 長々と挨拶するクワンガー。エックスはゼロの言葉を思い出した。 「何が目的ですか」 バスターを向け、相手の出方を待つ。 性格はよく解らないが、このレプリロイドの腕だけは確かである。 握られた凶器を見たが、どうやらブーメランのように研がれたクワガタの顎らしい。 「挨拶だ。挨拶と言う言葉を知らないか? この言葉は――」 じー、と見つめ続けるクワンガーに、さしものエックスも苛立った。 「………知っています!! 何が目的ですか!」 「私は、先の戦いから君を監視している。そうボスに命じられたからだ」 大声に小首を傾げるクワンガーは、言葉を遮られても怒りもせず、丁寧に答えた。 監視、という言葉にエックスは驚愕した。戦いとは、いつからの事なのだろうか。 「エックス君……君は強くならなければならないらしい。そうボスが仰った」 髪をかき上げながら、クワンガーが続ける。 「成長する君を監視し、報告するのが我が使命。あ、監視は大好きなんだ。あぁ、言ったか……」 海風が心地よく吹く。磯の匂いが、それに乗ってやってきた。遠くで、波打つ音も聞こえた。 「そして君の成長は、ちょっと遅い。ボスは困っている。で、あるため――」 長々と喋る少女。ルビーのようなクワンガーの目が細められる。 クスリと笑い、握られた『ブーメランカッター』を楽しげに揺らした。 152 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 22 06 38.89 ID oJ2DFEdA0 「ちょっと、君の成長に付き合おう。楽しいぞ。とってもとっても。あぁ、私自身が楽しいんだが。君はどうだろうか?」 「…………っ!」 素早く反応して、バスターを再度向ける。クワンガーからは静かな殺気が溢れた。 「先に謝っておくが、私は厳しい。怪我をしたら、すまない。謝罪する。あぁ、どのくらい厳しいかと言うと――死ぬぐらいだろうか?」 なんの理由で横に跳んだのか――。 エックス自身が解らなかったが、クワンガーの腕が振るわれたと思うと、今立っていた石畳が吹き飛んだ。 石の床は何かに縦へと切り裂かれている。 青ざめるエックスに、追い討ちの強襲。空を切り裂く風切り音。 そして、手の甲が斜めに薙がれた。少量のオイルが吹く。 「あぁ……すまない。怪我をさせたな。でも、私は楽しい。あぁ、困ったな。いや、私は困っていないんだが」 クワンガーは場所を変えていない。 そして、すでにブーメランカッターが握られていた。視認できない速さ。 「あぁ……すまない。一つ、間違えて言った事がる。私の家族だが、弟と言ったが妹だ。なにぶん、気性の荒い奴でね」 そのレプリロイドに失礼な事を言いながら、腕が振るわれ、不可視の凶器が放たれる。 右肩に激痛が走り、エックスは地面へと倒れた。噴出す赤が、自身と地を汚す。 「不不不……。また、すまない。不不不……」 「いたぁ…………。…………あの、一つ良いですか?」 「許可する」 もう既にに凶器が握られている腕を揺らめかしながら、クワンガーが楽しそうに頷いた。 「第17部隊って言いましたよね……僕もそうなんですけど。……えぇ、と……任務で見た事が無いんですが」 肩を抑えながら、疑問を口にする。 クワンガーは、可愛く小首を傾げ、あぁと呟いた。 「私が好きなのは監視と、言ったろう。――‘いつも居たよ’」 「……………っ!!」 クスリと笑い、クワンガーが口をすぼめる。エックスは怖気が走った。 181 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 22 36 55.57 ID oJ2DFEdA0 「不不不……嬉しいのかね? そんなに頬を赤らめて」 石畳が無差別に解体される。クワンガー自体の機嫌が、この武器に影響するようだ。 「いいえ、青ざめてます。……赤いのは、血ですよ」 乱立する電柱の一つが両断され、落下する半分が空中で分解。地面に弾かれるのは、コンクリートの破片だ。 「ふふん………照れ隠しとは。なかなかの使い手だね」 飲食店に横付けされていた自動車が舞う。赤い乗用車はジグソーパズルのようにばら撒かれた。 「斬!!」 付近の破壊活動は、クワンガーの掛け声と共に、対象をエックスに移行。膝をつくレプリロイドに、くの字の凶器が迫る。 エックスはどこかに跳ぶしかない。 地に飛び込むエックスの脇腹が、薄く切り裂かれ、無様な格好で叩きつけられた。 「手加減。不不不……」 クワンガーは、微笑み、ブーメランが握られていない手で口付けを送った。 「そんなに……楽しいです……か!!」 倒れながら、エックスはバスターを放つ。砕ける建造物の壁。しかし、少女の影はなかった。 「楽しいねぇ。この武器はね、エックス君。監視しながら、暗殺できる素晴らしい兵器なんだよ」 背中が踏みにじられる。いつの間にか接近されたクワンガーに背後を取られていた。 ブーメランを握る手が、目前で左右に振るわれる。 笑いながら説明する銀髪の少女は、玩具を見せびらかせる子供のだった。 「あぁ、そんな武器はどこにでもあるんだが、これほど機能美を追求した物は無いだろ? だから、これは好きなんだ」 「そう………ですか……」 「だからね、君にもこれの素晴らしさを――おっと」 身体の輪郭が影のように揺らめくクワンガー。黄色いエネルギーが、それを通過する。 「エックスに触るな……変態。この、サイコ野郎!!」 奇襲したのは、身体を引きずりながら、店外にでたゼロだった。 バスターを放った体勢のまま、いつのまにか飲食店の向かいにある理髪店の屋上に立っている暗殺者に叫ぶ。 「変態? それは君の事か?」 クワガタのレプリロイドはおかしそうに目を揺らめかし、ボディを布きれで巻くゼロを笑った。 192 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 23 00 05.59 ID oJ2DFEdA0 「邪魔をしないでもらおう」 またもクワンガーの腕が振るわれる。 一瞬にして、ゼロのボディを切り刻み、少女を路上で全裸にする。恐るべき事に、傷は一つも負わせていなかった。 ボディとメット、そして布生地は地面に散らばり、機械仕掛けの猫の耳だけが金色の髪に残った。 「死ね」 だが、それも短い死の宣告まで。呼応した凶器が、ゼロの首元に回転しながら迫る。 甲高い激突音――黒い影は弾かれた。 「そうこなくてはならない…………不不不」 陰鬱な笑いは、立ち上がる青に向けられる。エックスの右腕の銃口は、エネルギーの残滓で煙を出していた。 「相手は、僕。そうでしょう?」 「エックス!?」 血に濡れるエックスは、挑発的に暗殺者に笑って見せた。 「不不不不――そうだ……!!」 漆黒が迫った。 横転する青。そして、ダッシュ。 クワンガーの出現しそうな場所に、出鱈目にバスターを放ちながら、エックスは人通りの無い路地を駆ける。 走る後ろで、建造物と建造物で作られた通路の壁が切り裂かれていく。 「不不不。その戦法は不許可だ」 少女の声がするが、どこに居るかは解らない。 確認しようと立ち止まれば、今後ろで分解されたゴミ箱と同じようになるだろう。 後方に振り向かず射撃。テラスがある屋上の一部を破壊するが、手応えは無い。 駆ける。駆ける。 前方に居た犬型のメカニロイドが寸刻みにされるが、目をつぶり感情を押し殺した。 「不不不。どこに行こうというのだ?」 [12番 港口]と書かれた看板が吹き飛ぶ。破片が雨のように降ってきた。 205 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/10(火) 23 26 26.98 ID oJ2DFEdA0 「行き止まりだ……不不不」 その言葉を皮切りに、狭き道は終わりを告げる。 目の前に広がったのは、雲の無い大きな空と、どこまでも大きな海だ。 海鳥が能天気に鳴き声を上げ、気持ちよさそうに空を飛ぶ。――エックスも空を飛びたくなった。 「人が居ない場所を選んだのかな? 優しい子だ。不不不、殺しがいがあるよ」 最後になるかもしれない自然の光景を目に焼付け、ゆっくりと後ろを振り向く。 何処かでトレンチコートを脱いだのか、奇妙な衣装を纏った少女が現れた。 網目のシャツを下に、上下共に黒装束。そのせいかクワンガーの真っ白な肌が目立った。 「ゼロを救ったのも、なかなか良い。私のブーメランカッターを弾くとはな」 クワンガーの口元にも布が被せられている。追い詰めた暗殺者、ブーメル・クワンガーの目が笑う。 「力んでいるねぇ……不不不。恐怖を感じているかい? 体験した事の無い、暗闇の恐怖を」 両手を広げ、自分から繰り出す恐怖を見せる。純粋な狂気がここにはあった。 エックスは、冷や汗で頬を濡らしながら、姿勢を低くする。 「安心したまえ」 だが、呆気なく、クワンガーはブーメランを収めた。 「言ったろう? ちょっと、君の成長に付き合おう、と。殺しなんか不許可さ――ここではね」 クワンガーの姿がブレたかと思うと、顎が撫でられる。少女の声は耳元から聞こえた。 「タワーで待ってる。なぁに、君はくるさ。望んでも、望まなくても、ね」 軽く頬に口付けし、意味ありげに笑った。エックスは少女の速さに、そして威圧に微動だに出来ない。 「待ってるよ、エックス君。――旅路で、タコに気を付けなければ不許可だよ? 不不不不不不不」 最後に頭を撫でられ、クワンガーは硬直する少年から離れた。 「では、ドロン」 そして、消える。 エックスは、10分近くかけてやっとゼロの元に脚を進める事が出来た。 244 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/11(水) 00 34 50.43 ID 33MOrt2O0 「変態は……?」 閉店に追い込まれた飲食店に、裸体をカーテンで巻いて地べたに座るゼロが居た。 白いカーテンはとこどころ血を吸い、痛々しい。 「勝手にしかけて、勝手に消えたよ。――大丈夫?」 「本調子だったら、倒せた………だからって、なんだよなんだよ、オレだけ追いてって……」 白い布から覗く脚をそわそわさせながら、そっぽを向き膨れる少女。 そんな態度に、エックスは取り成す様に優しく笑いかけた。 「ごめんね。………でも、ゼロは怪我してるし。早く船に乗って、本部に戻ろ?」 出航場所の方向を親指で示し、うずくまる少女の腕を取る。 戦闘のせいで、旅船の時間が迫っていた。無人の花屋に掛けられた時計の短針が、3を指し示している。 「…………アイスが食べたいぞ。………チョ、チョコレートの……」 猫の耳を落ち着きなく動かしながら、ゼロはボソリと言った。赤らめる顔が、エックスの笑いを更に誘う。 「はいはい。その前に服も買いに行こうね」 エックスは、ゼロの腕を静かに引き、石畳の路地を歩んだ。 「おいし………」 「そう? そりゃ、良かった」 港の船着場に佇む二人。エックスは旅行のパンフレットを、ゼロは濃茶色の氷菓子を手にしてた。 買ってもらった、石段に座るキツネがプリントされた、肩を出すスポーツシャツを着込む少女はアイスの味に満足そうだ。 シャツのロゴにO・イナリーと表示されているがエックスは、知らないブランドだ、との感想しか無かった。 短いジーンズから出るゼロの足が、波の音と合わせ揺れる。 「おい、あれハンターの船じゃねぇか?」 「ほんとだ。というか、僕たちかなりの大所帯で出航するんだね」 ゼロの言葉で向けられるエックスの視線の先には、海に揺らめく12隻の船が並んで、搭乗者と出航の合図を待っている。 「イレギュラーの事件もあるしね。もしかしたら、その関係かも」 「だろうな」 チョコレートアイスは、短い応答と共に嘗め尽くされる。ゼロは惜しげに、コーンを包んでいた紙包みをゴミ箱に捨てた。 488 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/11(水) 21 04 05.09 ID 33MOrt2O0 「まもなく出航いたします。ご搭乗なされる方は、ブリッジを使用してください」 しばらく静かに待機していた二人と他の客達に、空と同じ薄青い制服を着用したレプリロイドの声がかけられた。 巨大な客船から鉄のタラップが迫り出され、船着場と船を接続する。 巨大な図体を誇る船なのだが、エックス達の他の客は少ない。 イレギュラー達が引き起こす事件の事も相まって、旅行にいくような物好きな人間もレプリロイドも少ないのだろう。 「だってさ。行こうか?」 エックスは自分の猫の耳を弄り、退屈を凌いでいたゼロを促し、鉄の橋に足を載せた。 「――こんなに、のんびりして良いのかなぁ」 赤い夕日が、旅船のデッキを同じ色に染める。 ドリンクのカウンターの前方に、大型のプールを備えた豪華な客船。 物好きな客を内包した船。しかし、流石に無防備に泳ぐ人物は居なく。デッキに居るのは赤と青のレプリロイドだけだった。 エックスはカウンターバーの机で書類と睨みあい、ゼロはその足元でタオルを下に寝転んでいた。 「良いんじゃない? たまには、ね」 数枚の薄紙にペンを走らせたまま、エックスが答えた。もう一つの手の中で、グラスに入った薄紫色の液体が揺れる。 エックスはいつもの青いボディのままだが、ゼロは貸し出された競泳用の水着を着ていた。白い肌と、薄い胸を紺色の水着が包む。 「………悪いな、お前ばっかりそんな作業させて」 夕日に顔を朱に彩られたゼロが、申し訳なさそうに答える。手に持つ琥珀色のドリンクが、少女の心情と同じく揺れた。 「戦闘の報告書――オレも書くべきなのにな………」 エックスは一瞬返答に困り、すぐに微笑んで、耳の付く金色の髪をクシャクシャと撫で上げた。 「いいよ。書きたくないよね、あんなの。――僕なら大丈夫だから」 猫の様に目を細め、はっと気付き、両腕を振り上げるゼロ。エックスは笑みを強くし、更に頭を撫でた。 ――ドチラかとイエバ慣れタんじゃない? ナカまの死にサ 490 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/11(水) 21 08 33.15 ID 33MOrt2O0 「本部にはどれぐらい掛かるんだ? 海路を使った事無いから、解んないぞ」 ゼロは琥珀色の液体を喉にながしながら、空を見上げた。赤い空も青と同じく、どこまでも遠い。 質問を投げかけられたエックスは、呆と何処か虚空を見つめている。いや、瞳には何も映ってはいなかった。 「――エックス?」 眉間に皺を寄せ、少年の名を呼んだ。疑念に耳が小刻みに動く。 「………………二日間ぐらいかな。一泊はここでしなきゃ、ならないね」 瞳に意思が戻り、エックスは何でもないかのように答えた。特に感情の変化は感じられない。 ゼロはふーんと呟き、エックスは疲れたのではないか、と思考を纏めて、切り上げた。 「そうか。揺れる船で寝れるかなー? 寝れなかったら、お前の部屋に行くからな」 けけけ、と品の無い笑い声を出し、プールに向かう。もう一泳ぎするつもりの様だ。 「はいはい。待ってますよ」 その背に微笑んだエックスの顔に、もう蔭は無い。 『そうか。イーグリードと………大変だったな、エックス』 「いえ……」 船内に幾つもある部屋。その一つに振り分けられた、エックス。 外観が豪華な客船は、客室も煌びやかで、高いと思われる家具が惜しげもなく配置されている。 その一つの装飾が美しいベッドに腰掛け、エックスはライト博士と連絡を取っていた。 丸型の窓から見えるのは漆黒。夜の十時を回っていた。 『報告が一つ。君から受けた調査の事だ』 ランプが幾重にも重なった照明が、部屋を明るくしている。だが、暗いエックスの表情を明るくするには力及ばなかった。 「――えぇ、お願いします」 広い部屋に、エックスの応答が吸い込まれていく。 492 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/11(水) 21 11 34.16 ID 33MOrt2O0 『やはり、情報部はおかしい。極地部隊の事、そして訓練Σの単語で調べたが、何もでなかった』 報告するライトの声は、疑念と困惑に満ちていた。 それに感染し、エックスも首を傾げながら質問する。 「………何も出ないのが、何故、情報部がおかしいと?」 『情報部が何も出さん、――アイシー・ペンギーゴが嘘をついたと思うか?』 そんな筈が無いと、青いメットが横に振られる。エックスの胸は、ペンギーゴの名に引き裂かれそうになった。 悲しき宿命を望まざるして、負わされた少女。何処からかの理不尽な力が、あの戦場には働いていた。 「いいえ」 ぐるぐる回る思考を止め、言葉にしてそれを力強く否定する。 『私の権限で、独自に調査はしている………ならば一つぐらい何か出てもおかしくないだろう?』 「チップについても、何のデータも回してこないとか」 『あぁ。いったい何を考えてるのか……。とにかく何かを隠しているのは確かだ』 ハンター組織。どこの組織でも一枚岩では、無いのか。 同じく『岩』という単語を名に持つ少年は、深くため息を吐いた。 「イレギュラー事件に関係があるのでしょうか?」 『さぁ、それよりも厄介な事かもしれないし、実は部署同士での領域争いだけかもしれない』 どちらにしても許されざる事であろう。――ペンギーゴ、イーグリート。 エックスは死んだ者の無念を晴らすと、深く誓った。 「引き続き、お願いします。――僕はイレギュラーを何とかするので……」 その言葉は、エックスが持つ『何か』への憎悪に濡れ、発せられた。 『あ、あぁ……。エックス、私は人間だ。――………本部と同じく、極地部隊の隊員と同じく、人間だ』 逆にライトは悲哀を滲ませ、静かに怒りを溜めるエックスに告げる。 496 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/11(水) 21 30 03.93 ID 33MOrt2O0 「はい? ………博士?」 思慮の見えない発言に、少年は怒りを忘れて元に戻り、困惑する 『忘れないでくれ…………。人間。人間だが、私は君の味方だよ。それじゃ、おやすみ』 プツリと切れる無線。 音声通信だが、最後にライトは微笑んだような気がした。 「………………………………おやすみなさい」 エックスは呟き、ベッドに倒れこんだ。博士を傷つけたのでは、という後悔と一緒に。 「おはぁよう………ふぁあう」 「おはようさん。お前、何で鍵閉めてんだよ? 部屋に入れなかったじゃねぇか、畜生」 耳を逆立てながら、両腕を挙げ抗議するゼロに、エックスは頭痛を覚えた。 「………………来たのか」 朝特有の涼しい風が、磯と一緒に吹いてくる。 ゼロはデッキがお気に入りなのか、朝食のサンドイッチを齧りながら、海を見る。 また泳ぎたいのか、彼女はまたも水着に着替えていた。 「今日で旅も終わりだな。なかなか楽しかったな――仕事抜きで来たかったよ」 「同感だね」 手すりに寄りかかりながら、エックスも苦笑して同じ感想を述べた。 「ねぇ、ゼロ…………身体の方は大丈夫? 辛いんじゃない?」 昨日から、正確に言えば三日前から無理をする少女を心配する。 海を渡るのは、本部に戻るだけではなく、ゼロの治療も兼ねているのだ。 「ボディが砕けただけだよ。確かに身体も痛いが、我慢できなくは無い」 自分の身体を見下ろしながら、答える。 「あぁ、大変だ。胸が小さくなったような気がするぜ? 確認してくれ」 「―――――――――嗚呼」 直ぐにふざける相棒に、エックスは天を仰ぎ見た。空は今日も晴れ、綺麗な青が澄み渡る。
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計測は、GAME START選んでから EDムービー開始まで ◆ゼロ編 記録 日付 配信者名 備考 00 00 年月日 配信者 ◆エックス編 記録 日付 配信者名 備考 00 00 年月日 配信者
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525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/11(水) 23 15 14.19 ID 33MOrt2O0 「太りそうだぜ」 泳ぎ疲れたゼロと、海を見てぼんやりしていたエックスが向かったのは食堂。 大きな窓に囲まれていて、そこからの眺めもデッキと同じく良い。昼の光が、室内に強く差し込む。 二人の目前に広がるのは、沢山の料理だ。 「その分、前にいっぱい動いたから良いんじゃないの?」 様々な料理が皿に盛り付けられ、長机に並べられる。 エックスはその一つのパスタ料理を手に取り、自分の小皿へと移した。 「やれやれ………女を解ってないな、エックスは」 ゼロは言葉とは裏腹に、目に付く物を片っ端から自分の所へ持っていった。 「同じ職場のレプリロイドも居るから、やめて。はしたない」 「良いじゃねぇかよ――あ、これ美味しい。だいたい、なんであいつ等もここに居るんだよ――これも、イケるな」 エックスは説得するのを諦め、自分の食事に取り掛かった。 「ハンターは、ハンターの船に居ろよ。一緒にランチなんかしやがって」 少女の視線の先には黒いボディに包まれた、イレギュラーハンター達がてきぱきと各々に料理をよそっていた。 「食事ぐらいしたって、良いじゃない。それに、中から旅船を守る役目でもあるんでしょ、彼等は」 エックスはそれ以上言葉を重ねず、ゼロの頭を撫で、彼女の言葉を制した。 「ふ……ん」 撫でる手のひらに身を任せながら、ゼロは小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。 「嫌いみたいだね。同じハンターなのに」 パスタを食べながら、不思議そうに言った。昨日の夜の事もあり、エックス自身も組織には好感が持てなくなってはいるのだが。 「――なんでかな? 意識はして無いんだけどな。なんとなく、好きにはなれないんだ」 自分でも解らない、とゼロは続けて、他の料理に手を伸ばす。 「なんとなく、ね……」 突然、黒尽くめのハンター達が立ち上がりだした。料理を叩き置き、椅子を蹴散らしながら窓に向かう。 エックスは自分達の言葉で怒りを覚えたのかと思ったが、ハンター達の慌てぶりから、そうではないらしい。 537 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/12(木) 00 02 33.06 ID 25X215nE0 「なんだぁ?」 デザートとして出たケーキのクリームで口元を真っ白にしたゼロが、疑問符を挙げながら立ち上がる。 窓から外を覗くハンター達は何を見たのか獣のように呻いて、腰から銃を引き抜く。 そして食堂から、駆け足で出て行った。 エックスが顔を引き締めながら、窓に近づく。 大きなガラス越しからの海の風景。 空から高速で、客船と貨物船、そしてハンターの船で構成される船団に接近する黒い影を捉えた。 「イレギュラー………!」 黒い影は、いつぞやのハチ型の戦闘ヘリだった。5機が鏃状に展開し、こちらに向かって突き進む。 すぐさま客船は、空飛ぶ襲撃者に囲まれた。 その内の一機のハチ型ヘリから何本ものロープが垂れ下がり、ローターに揺らぎながらいくつもの人影がデッキに降り立つ。 エックスは、通路を走る時間を惜しみ、食堂のガラスを蹴り割って、黒が散らばるデッキへと跳ぶ。 先にガラス片がデッキへ降り注ぎ、遅れて青いレプリロイドが砂埃を上げ着地する。 「――なかなか劇的な登場の仕方です。72点程あげますよ?」 乾いた拍手が鳴った。 皮手袋に包まれた手を持つのは、幼い顔立ちの少女。 斜めに被られる真紅のベレー帽から、蜂蜜色の長い髪がアップに小さくして纏めあげられているのが見える。 上空のローターが、学生用の水着に羽織られた、肩が突っ張った軍用コートの裾をはためかせる。 「こんにちは、初めましてなのです。私、ランチャー・オクトパルドなのです。――よろしくなのですよ?」 コートの裾を両手で掴み、丁寧にお辞儀をする。自分の言葉に自信が無いのか、可愛らしく首を傾げてみせた。 物静かな態度だが、油断は出来ない。クワンガーのような存在が、それを裏付ける。 エックスはオクトパルドから目を離さず、周りを確認する。 自分の目の前でコートをめくる少女と、その周りを囲むメカニロイド。 ヘリから落下してきた、二門のミサイルランチャーを両手にした、コートを着込んだ人影等が円陣を組んでいる。 黒い装いの少女の頭から垂れ下がるコードの先には、豆電球が有り、少女達がアンコウ型のメカニロイドだと解った。 553 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/12(木) 00 44 24.34 ID 25X215nE0 「イレギュラーですよね……?」 バスターを構え、少女の出方を伺う。周りのメカニロイドからは、こちらに手を出す気配は無い。 「はい、そう言われていますのですよ。人間からは」 オクトパルドは人間という単語で、目を鋭くさせるが、すぐに柔和な表情を作り上げる。 「エックスさん、あなたをお迎えにあがってきたのですよ? ボスの所へ、ご招待しに来たのです」 「ボス……というと、この事件を引き起こしてる人物の事ですか?」 眉をひそめ、オクトパルドを見つめる。ローター音が、バタバタと騒々しい。 「さっ、一緒に行きましょうです。ヘリなら、すーぐに付いちゃうのですよ?」 少女はそれには微笑んだだけで答えず、手袋に包まれた片手をエックスに差し出した。 ハチ型ヘリが、二人に向かって高度を下げる。 「この船に居る全ての人間は、もちろん殺すのですよ? レプリロイドは、捕虜にしても良いのです」 ――困惑しながら手を取るエックスの耳に、少女の信じられない声が届いた。 「皆殺しにしたら、100点ですよー」 頷くメカニロイドに、微笑みながら告げるオクトパルドは、やはりイレギュラーだった。 手を勢いよく、振りほどく。 「な、なんですかー? 何か悪い事、私、し、しちゃいましたかー?」 オクトパルドが驚き、困った顔をした。 アンコウ型のレプリロイドも、船室に向かうのをピタリと止めた。 「人間を皆殺しにする……? いったい何を考えてるんですか!?」 泣き出しそうになる少女を気にせず、激昂する。 「ふぇ……何を……って、よ、よく解らないですよ?」 「あなた達がそのつもりなら、僕は行けません。ここで、あなた達と戦います……!」 しどろもどろになる、少女にバスターを再度向け、エックスは決意の声をあげる。 アンコウの少女達はそれに合わせ、ミサイルランチャーの砲門をエックスに向けた。 554 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/12(木) 00 49 27.94 ID 25X215nE0 「…………………………………あ、あぁ」 「………え?」 ローター鳴り響くデッキの上で、オクトパルドが小さく呟く。 「そうなんデスね。あなたも、そうなんデスね……? あはは……そうなんデスね。ククク……そうなんデスね」 「な、何を言ってるんですか……?」 涙を流すのかと思われた少女が笑う。ニタリと、どこか失望したように。 エックスは怒った顔から、反転。頭の中で警鐘が鳴った。 「馬鹿なレプリロイド。愚かなレプリロイド。下らないレプリロイド。守るなんて――人間を守るなんて」 怨嗟の声。今まで、健気にエックスの機嫌を取り成した少女のものとは思えない。 「人間が好きなのデスね? 守りたいのデスね? ――あぁ、そうDEATHか」 オクトパルドが姿勢を低くし、背中から六本の赤き触手がコートを突き破り、一気に飛び出す。 うねる触手の先端に取り付けられた銃口が、驚愕するエックスを睨む。 「喜べ、作戦を変更してあげるのDEATHよ。お前を解体して、海にばら撒いてやる――シュート」 親指で自分の首を薙ぎ、メカニロイドに『殺せ』と命じる。 全方位から、海蛇の形をしたミサイルが迫る。 エックスは地を蹴り、上空へと逃げる。 連鎖する爆発。ミサイル等が大爆発し、デッキを赤とオレンジで蹂躙した。 自由落下しながら、バスターを発射。 煙が晴れ、黒き姿を見せたアンコウ型の少女の頭部を粉砕した。 鉄の破片がぶちまけられる甲板に着地し、横転する。 転がる青いメットの先を、火煙の尾を引く矢が掠めた。 「援護が欲しいな……!」 叫びながら射撃し、横手に居たメカニロイドの胸部を撃ち抜く。 572 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/12(木) 01 49 32.43 ID 25X215nE0 海蛇がどこからともなくエックスを襲う。 右手からやってきた三発のミサイルを撃墜し、お返しにエネルギー弾で目前から攻撃してきた少女を破壊する。 散らばる機器の破片が落ちる前に、青きレプリロイドは素早く上方に射撃した。 戦闘を空から見下ろすハチの頭部――コックピットが弾け、錐揉みしながら海面に激突する。 戦闘ヘリは、デッキに届く程の巨大な水柱をあげて爆発した。目障りな傍観者が消える。 「やるのデスよ、こいつ。あはははははは。――撃ちまくれ!!」 何が彼女を怒らせたのは解らない、ただメカニロイドとの戦闘を離れて傍観する少女の顔は、憎しみに満ちていた。 エックスはバスターを何度も放ち、ランチャーを放つ少女達を地に沈める。 「あの子、AIがおかしいんじゃないのかな……」 呟きながら、バスターで波状に撃ち込まれるミサイルを攻撃。落としきれなかったのは、横に跳んで回避する。 デッキに着弾し、船を大きく揺らす。 ハンター達の船や他の船がどうなっているのか確認したかったが、際限無く迫るミサイルに、自分の事すらままならない。 アンコウのイレギュラーの一人が、突進しながら海蛇を放つ。 尾ひれを激しく振るミサイルがエックスを襲うが、太陽の光で作られた弾がそれを許さない。 アンコウとエックスの間で爆発し、少女の視界が泡立つ様に膨らむ黒煙で失われる。 戦場で目を擦るイレギュラーに無慈悲なバスターが貫く。煙をあげる大穴を胸に作り、アンコウの少女は倒れた。 乱射されるミサイルから、姿勢を低くしながら体勢で合間を縫うように射撃し続ける。 三人のアンコウ型イレギュラーはまとめて撃ち抜かれ、同時に爆発を起こしながら破壊された。 ヘリから舞い降りたアンコウ型はこれで全てだ。 「なかなか美しく戦ってるのは、69点ものなのDEATHよ? ――さっさと殺せ!!」 二人きりになった甲板に、勇ましく腕を組むオクトパルドの賞賛と怒声が響く。 ベチャリと、水が跳ねる音。音源に向くエックスの瞳に映りこむのは、新手のメカニロイドの姿。 魚類を思わすヒレが脛や肘に取り付けられた数人の全裸の少女が、右手のデッキの端から現れる。 ぬめぬめした裸体を晒しながら、鈍い動きで迫る少女達の尻からはカールを巻く尻尾――タツノトシゴのメカニロイドだ。 96 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/13(金) 21 08 51.66 ID zwiiOXO20 端整な顔に張り付く長い髪から海水をしたたらせ、シーアタッカーがのろのろと迫る。 「――あなたは戦わないんですね」 数体のタツノオトシゴのイレギュラーを横目で睨みつけながら、エックスは皮肉を吐く。 「0点に近い挑発DEATHね。ボスが最後に戦うのは美しい――あたりまえの事なのですよ?」 オクトパルドは片手を挙げ、この状況でなければ頭でも撫でてあげたいぐらいに、ニッコリと笑う。 そして微笑む少女の両隣から、コートを着込んだ二つの人影が降って来た。 アングラーゲでは無く、首元に大量の棘が生えた首輪を付けたウツボ型メカニロイド――ウツボロスだ。 「愚かなレプリロイドは、どこまで頑張るのですかね。あっけなく死んだら、めーなのですよ?」 挙げた片手を断首台の刃のように降ろし、ウツボロスが身構え、シーアタッカー等が自身をかき抱いた。 横手に飛ぶエックス。身体を丸めたタツノオトシゴの少女達が、高速で横を抜けた。 回避する青い身体に、二人のウツボロスが一気に間合いを詰める。 黒い皮手袋をはめた手刀と、直線の拳がエックスを襲う。 漆黒の一閃を首を傾げて避けるが、右手のウツボロスが放つストレートがまともに腹部に当たった。 宙を自分の意思では無く飛ぶ少年。 初撃を損じたシーアタッカーが再度丸まり、独楽の様に吹き飛ぶエックスに体当たりを敢行する。 オクトパルドが会心の笑みを浮かべた。 追撃する5つの回転する裸の少女達――それが、エネルギーの火線に襲われる。 苦痛を噛み締めながら、エックスは不利な体勢でバスターを放ったのだ。 惜しむ事無く晒していた裸体の一つに穴が空き、爆発しながら落下するシーアタッカー。 連続する射撃が、デッキに存在する敵に向かう。 他のシーアタッカー等も、腕を吹き飛ばされ、脚が消失するなどの被害を受け、硬い甲板に打ち付けられた。 ウツボロスは逸早くジグザグに動きエネルギー弾を回避し、もう一人がオクトパルドを掴み上げ、後ろへ退がる。 106 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/13(金) 21 16 43.32 ID zwiiOXO20 損傷に身体をガクガクと振るわせるタツノトシゴが伏せるデッキに着地する。 「おなか、いたい……」 腹部を押さえるエックスは頭を屈め、横に薙がれた黒いブーツを避けた。 ウツボロスの回し蹴りが空を切り裂く。 瞬間的にバスターを放つが、翻る拳にオレンジの弾は打ち砕かれた。 両者の間で太陽のエネルギーが散らばる。エックスは後方へステップ。 メカニロイド特有である無表情な顔を持つ少女の踵が、甲板に穴を空けた。 「エックス!!」 高い声が背中に当たり、デッキから船内を通す扉から赤き少女が飛び出した。 アーマーをクワンガーに破壊されているので、水着の状態でこの戦場に躍り出る。 「あらら。これはゼロさんじゃありませんか。こんな所で、びっくりなのですよ?」 六本の触手を左右に揺らめかしながら、馬鹿にしたように口元を押さえるオクトパルド。 「白々しいんだよ、トリガーハッピー。団体を引き連れやがって……さっさと失せろ、サディスト野郎!!」 ウツボロスに身体を抱えられて挑発する少女に、ゼロは罵倒を吐いた。 エックスがこの隙に、ゼロの隣まで走る。 「――トリガーハッピーにサディスト野郎……0点、いやマイナス物なのですよ」 睨みつける赤きレプリロイドに、負けず劣らず目付きを険しくするイレギュラー。 ウツボロスの腕から飛び降り、赤と青に中指を立てる。 「言葉を慎め、薄汚い猫型レプリロイド!! お前から縊り殺してやるのDEATHよ!?」 海と空を震わす怒声と共に、旅船のデッキの上空に黒い影が集まる。 残りのヘリ――四機のハチ型ヘリだ。 「くっ………!」 呻くゼロと、腹部を押えるエックスに、オクトパルドの忠実なメカニロイドが降下する。 瞬く間にシーアタッカーとアングラーゲの集団に囲まれる二人。 122 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/13(金) 22 03 35.32 ID zwiiOXO20 「青いゴミのレプリロイドは嬲り殺しが、100点なのですよ」 アングラーゲ等のミサイルランチャーが二人に向けられ、シーアタッカーが体当たりを準備する。 「薄汚い猫には、お前がレプリロイドである前に、女である事を教えてやるのDEATHよ……!!」 「お前は一度AIのメンテを受けろ。自分が何を言ってるのか、解って無いだろ?」 オクトパルドの触手が怒りに震え、触手の先がその怒りをゼロに向ける。 揺らめく赤と、冷や汗を流す赤。 「自分の性別に絶望しながら、死ね!! それが貴様が生まれてきた『理由』だ!!」 オクトパルドの顔が戦いの興奮か愉悦に歪んだ。 「ゼロ!! 避け――」 「くたばれ、イレギュラー!!」 それに覆いかぶさる野太い声。 マズルフラッシュと轟音の嵐が吹き荒れる。列を成す銃弾が広範囲にばら撒かれた。 ゼロが出てきた扉から、ぞろぞろとハンター組織の隊員が編成を組みデッキに溢れる。 「お待たせしまして、申し訳ありません! 船内に居たイレギュラーを排除するのに手間取りまして」 黒一色のレプリロイドの一人がイレギュラーの集団に銃を放ちながら、声をあげる。 ボディから火花を連続的にあげるメカニロイド達。 撃ち抜かれるというよりは、削り取られる形でバタバタと機能を停止していった。 ハンターの一人が、背中から巨大な黒い筒を外し、空に向けて構える。 ロケットが煙の尻尾を引きながら、ハチ型ヘリ――ビーブレイダーに着弾。 自身を犠牲にして、空中で大きな花火を作りあげる。 イレギュラー集団は一気に押し込まれ、黒のレプリロイド達によって蹴散らされていく。 127 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/13(金) 22 08 07.11 ID zwiiOXO20 「………………?」 ゼロとエックスはお互い違和感を感じ、前方に眼を凝らす。 二人のウツボロスが前に立ち、迫りくる銃弾を拳で弾き飛ばしていく――その後方。 ――赤きベレーを被った少女が親指の爪を噛み、薬物中毒者のように自分の小柄な身体を震わしていた。 グリーンの両目には、自分の部下たちが殺戮されてゆく光景が映る。 「駄目なのですよ……隊長。私の部隊が助けを求めているのです……」 ウツボロスが鉄壁の壁として、オクトパルドに向かう銃弾を逸らす。 イレギュラーの集団は、もう数少ない。 「駄目……なのです。どうして、そちらの方を先に救出するのですか……」 操縦席から火を噴きながら、ハチ型のヘリが落下する。海に巨大な水柱。 「私たちが……」 ゼロとエックスの困惑の瞳に見つめられる少女の頭が俯き、幼い顔が泣き出しそうに歪んだ。 ――オクトパルドは『何処』を見ているのか。 「――私たちが、レプリロイドだからなのですか……?」 そして、俯いた顔が跳ね上げられた時には、狂気に引き歪む―――‘あの’笑顔があった。 「人間め! 人間め! 人間めぇぇぇ!!」 回転するウツボロスの両腕越しに、オクトパルドが力の限り吼えた。 「こいつ!! ………エックス!!」 経験豊富、そして卓越した技術を持つゼロの勘なのか、エックスを甲板に押し倒す。 「みんな死ねぇぇええええええええ!!」 エックスが見たのは、覆いかぶさるゼロの貧相な身体。 そして、その後方から、空を隠すかの様に扇状に広がるミサイル群。 連続して爆裂する衝撃と轟音にもまれながら、エックスは意識を失った。 160 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/13(金) 23 11 12.41 ID zwiiOXO20 ――どうして、自分達レプリロイドより弱い人間達を守らねばならないのですか 私が疑問を持ったのはいつ頃からだったのだろうか。 「んく……あふ………んんっ……は、はふぅ。……き、気持ちいいのですか……?」 四角く、狭い部屋。私たちの家――戦艦で慰安部員として使われた時から? 男性器に囲まれ、私は教えられた通り、『仲間』を奉仕する。 ニチャニチャと、いやらしい音を出す私の両手。 キスもした事が無い私の唇も、交接する器官でふさがれる。断続的に押し込まれ、喉が苦しい。 ――どうして、人間達を守らねばならないのですか ――私は頑張ってますよ? 人間を守って、イレギュラーと戦って、第6艦隊で一生懸命頑張ってるのですよ? 「………ビクビク……してますのですよ? ふふふ……まだ我慢しなきゃ、めーなのですよ」 教えられた言葉を紡ぐ。 「んにゅう……いっぱいなのですよ? こんなにお相手できて、私は嬉しいのです」 ――レプリロイドと云うだけで……どうして、こんなにも。 私の武装である触手のバックパックは剥ぎ取られ、衣服も破り捨てられてる。 気に入っていた白いパンツだけが、私の足に引っかかてるだけ。私の裸は『仲間』に余す事なく晒された。 「んちゅ……もう、出るのですか? くふぅん……私にちゃんと……はぁ……かけてくれなきゃ、0点なのですよ?」 男の人のモノから真っ白な液体が飛ぶ。人間の種。 顔に、胸へ、体中に大量の精液がかけられた。 「白い海に入ってるみたいです……100点満点ですよ?」 微笑み、私は心にも無い事を言い放つ。 いつから私は、こんな笑顔が上手になったのであろうか? ――妊娠しないからと言う。レプリロイドからと言う。どうしてなのですか? 私、悪い事しましたか? 162 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/13(金) 23 12 53.15 ID zwiiOXO20 「隊長! 私の部隊が……!」 「人間の部隊が先だ、オクトパルド。――お前の部隊はレプリロイドで構成されてるのだろう」 「隊長!?」 ――どうして? 「はやく救出を!! 向こうの部隊の被害はまだ軽微です!!」 「くどいな、オクトパルド。私は言ったぞ、お前もお前の部隊も‘レプリロイド’なのだろう」 ――レプリロイド? 助けを求めてるのですよ。悲鳴をあげてるのですよ。人間と同じように。 「やれやれ、損害は少なく済んだな。‘レプリロイド’は全滅したが、人間は20人救出」 「…………酷い。…………酷すぎるのですよ」 「僥倖だな」 ――私の名前を呼びながら、『仲間』は死んだのですよ? 「オクトパルド。第3部隊が呼んでいる――‘あれ’、だそうだ」 ――どうして、自分達レプリロイドより弱い人間達を守らねばならないのですか 私の携帯端末に、大規模なイレギュラー事件が発生したとの情報が入った。 ――レプリロイドのための世界を創造………そのための反乱 私は、あなたたちの道具じゃない。 私は自分を壊した――イレギュラーになるために。 私は人間なんか守らない。………こんなにも弱く、そして汚い人間など。
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ロックマン9、1~8に比べて難易度は? 選択肢 投票 1くらい (48) 2くらい (123) 3くらい (19) 4くらい (7) 5くらい (6) 6くらい (4) 7くらい (16) 8くらい (11) 今までで一番簡単 (17) 今までで一番難しい (645) 1や2よりも確実に難しい -- man (2009-07-20 01 01 40) 多分にわかお断り。3stageクリアするのに1時間くらい掛かった(泣) -- 名無しさん (2009-08-17 22 08 15) ステージにトゲを乱用しすぎ。初見殺しも多い。 -- ray (2009-09-14 17 28 55) 楽しめる難度を遥かに超え、苦痛 -- 名無しさん (2009-09-29 23 40 41) 「5」や「6」のイメージだと痛い目を見る。スライディングやチャージが無いのにはちょっと幻滅かも。 -- 通行人 (2010-01-11 01 47 49) 難しいと言うよりいやらしいね -- 名無しさん (2010-01-23 16 54 58) 全ナンバリング作品 ワールド ロクフォルを網羅している自分としては、ハードがちょうどいい感じ。何度もゲームオーバーになってだんだん出来るようになるのが楽しい。 -- サスケ (2010-04-02 18 32 56) Wiiの9よりボタン連打しやすいし簡単になってると思ったんだが… -- 名無しさん (2010-04-25 22 44 05) ↑ナシで・・・ -- 名無しさん (2010-04-25 22 45 05) 慣れるとちょうどいい感じになってくる -- 名無しさん (2010-11-21 15 36 52) まず針が多すぎ。そしてプラグマンステージで最初のブンブロック地帯を越えたあたりにいるメットールにティウンされたのは俺だけではないはずw -- 名無しさん (2010-12-02 21 03 22) ロックマン5、6やX2、4などは何回もやって楽しいのにX6並に、もうしなくていいかなぁと感じた -- どてちん (2010-12-06 03 22 20) 即死系使いすぎてステージの面白みに欠ける -- kk (2010-12-13 18 53 21) 即死が多すぎてただの作業ゲーになってる 良かった所が無くなっている -- カラスミ (2010-12-13 19 09 04) ワイリーマシンの第一形態強すぎ -- 通りすがり (2011-03-27 21 59 08) 特殊武器が便利過ぎて簡単、正直特殊武器が弱い5や6のほうがだるい -- 名無しさん (2011-05-17 16 54 45) トゲや落とし穴を多用し、安直に難易度を上げている印象。クリアした達成感よりも作業ゲーによるストレスの方が遥かに大きい。ロックマン2の流行に乗って作った感も強く、はっきり言って駄作。シリーズ中で最もつまらなかった。 -- 名無しさん (2011-06-16 11 12 08) 9やった後に2やったら,あれだけ苦労したはずの8ボスが簡単にたおせた -- 名無しさん (2011-06-20 07 28 58) 初見の難しさはかなりのもの。しかし慣れるとシビアなシーンが激減して、簡単な印象を受ける。 -- 名無しさん (2011-07-20 11 57 31) ワイリーステージ3で挫折・・・・ -- れん (2011-08-16 14 31 48) なんつーか・・・んー・・・疲れる。 -- 名無しさん (2011-09-21 12 01 36) 第三開発部製と言われても納得できる理不尽さ -- 名無しさん (2011-10-04 02 48 17) 今さらながらやってみたが、他の人と同意見。穴やトゲの配置が理不尽。音楽やボスが良いだけに実にもったいない。10もやってみようと思うのでそっちに期待したい。 -- 名無しさん (2012-02-08 00 05 58) 初心者でも楽しめた。針は確かに辛いけど10のような配置がいやらしい敵にちまちまやられるよりは潔く死ねて良いかな。特殊武器が便利だし、無理なゲームではないと思う。音楽が本当に良い -- 名無しさん (2012-05-31 03 56 08) 2は自然な難しさ。9は意図的に用意した難しさ。糞ゲーとしか思わなかった。 -- 名無しさん (2012-06-15 11 25 13) 初めてロックマンやってみたけど、これくらいで難しい部類に入るんだ。ふーん。 -- 名無しさん (2013-03-12 17 22 37) 全ステージが即死一色でまったく面白くない -- 名無しさん (2013-10-27 04 59 55) 1、3をクリアしたのにギャラクシーマンしか倒せねぇ -- 名無しさん (2013-11-10 11 33 15) 難しいよりもつまらないのが問題なんだと思うんだ。クリアする気にならない -- 名無しさん (2014-05-28 19 16 30) 即死ポイント多すぎで難しいというか理不尽なだけ。その上ロックマン弱体化(チャージショット、スライディング廃止)してるから尚更。2はそれらが無くってもバランス取れてたけど -- 名無しさん (2018-02-01 16 54 58) 敵や罠の配置に悪意がありすぎる!貯め技やスライディングがないのも☓ -- 名無しさん (2018-02-24 00 39 44) 7,8の後にやってますがかなり難しいですね。1や2は数年前にクリアしてますがこれはいけるかどうか・・・。 -- 名無しさん (2018-05-30 08 28 48) アイテムの分1や2よりは若干楽だがアイテム縛ったら1 -- 名無しさん (2018-07-03 16 21 07) 9、10クリアしたが、チャレンジモードはやる気しなかった。ロックマンの劣化版って感じがして、8を超えるグラフィックで制作して欲しかった。 -- 名無しさん (2018-09-15 02 11 19) ワイリーステージでコンクリート使って上に上っていくところ、作ったやつマジで性格悪い -- 名無しさん (2023-05-16 05 07 28) ジュエルマンステージが激むず過ぎてキーボードクラッシャーになりそうだった -- 名無しさん (2024-05-05 22 06 57) ギリジャンが要求される場面多すぎ ギリジャンってE缶とか1upとかを手に入れるための技術なのに必須テクになってる -- 名無しさん (2024-06-06 17 32 43) 名前 コメント
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233 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01 21 27.13 ID KuQRxfiH0 「ゼ………ロ………?」 身体中に痛みが走る。 高密度の爆撃から、どのぐらい経ったのか。あんなにも青かった空は赤みを帯びてきていた。 青いボディの周りには、イレギュラーやハンターであった物が所狭しと転がる。 エックスにもウツボロスであったと云う残骸が乗り掛かっていた。 「起きましたのDEATHか? 愚かな、弱小レプリロイド」 ゆっくりと痛む体を起こすエックスに、痛烈な言葉がかけられる。 「ボスには悪い事しましたのですよ? でも、しょうがないのですよね」 偽りの優しい声色。 声の発生場所に振り向くエックスが見たのは、 「――私の前で、人間を守るなんて言うのだからなぁ!」 耳まで裂けるかと思う程の笑みを浮かべたオクトパルドと、彼女の触手に拘束され吊り上げられるゼロの姿だった。 「………ゼロ!?」 エックスが驚きのあまり、身体の痛みなど忘れて身を乗り出す。しかし、直ぐに甲板に崩れ落ちた。 赤き触手が、ゼロの肢体をまさぐる。爆撃のせいか、少女のせいか、衣類は取り払われていた。 空中で、オクトパルドの『手』が小さな乳房を引き絞り、露になった秘部を無遠慮にかき回した 「あなた達の末路なんて、こんなモノなのですよ。人間に尽くすレプリロイドに、相応しくねぇ!」 「う………く………」 秘芯を擦り上げられ、意識を失いながらも、頬を赤らめ呻くゼロ。 「ゼロを離せ!!」 瞳に殺意をたたえ、倒れ伏すエックスが叫ぶ。 しかし、オクトパルドは陵辱を止めず、目下で無様にもがく青い少年を笑った。 238 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01 25 53.54 ID KuQRxfiH0 「エックス。お前は人間はおろか、一人のレプリロイドですら守れない」 壊れたように笑い続けるベレー帽の少女。 その少女に備えられた‘牙’の三本が、ゼロを辱めるのを止め、エックスに銃口を向ける。 「ふふふふ………私と同じですね――違いは、馬鹿か、そうでないかだ!!」 触手の銃口が瞬き、白色のミサイルが嬉々として飛び出す。 「そろそろ、死ね!!」 煙を上げて急襲する凶器がエックスに迫る。 向かう死と、ゼロを捕らえられたという絶望に、エックスは目を閉じた。 爆発は三度。 どれらも到達される前に、グリーンのエネルギー弾で撃ち抜かれた。 「イレギュラー!!」 生き残っていたのか、エックス等に声をかけた、黒きハンターが膝をつきながら硝煙が漂う銃を持つ。 「貴様……!」 処刑の邪魔にオクトパルドは憤慨し、ゼロをデッキの端へ吹き飛ばす。少女の身体は海へと消えた。 そして、ハンターに全ての銃口を向け、ホーミングトーピードを放つ。 追尾するミサイルはハンター付近を爆撃し、漆黒のボディは海へと投げ出された。 ボディの認識証がエックスの足元に飛ぶ。金色のマーカーには『マック』と表記されていた。 「はっはぁ!! ゴミめ!!」 ゴミと呼ばれたハンター。 しかし、彼女が命がけで作り出した隙は大きい。エックスはそれを有り難く使う。 「オクトパルド!!」 損傷を無視、敵を視認、この戦闘に集中。 エックスは憎悪をバスターにこめた。 240 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01 28 33.30 ID KuQRxfiH0 <プログラム変更> 触手を纏う少女――ランチャー・オクトパルドにチャージショットを放つ。 彼女はコートをはためかせながら跳躍。足元を通過するエネルギーに侮蔑の笑みを送る。 「さぁ、お前の番だ!! 遠慮なく逝け!!」 宙を舞うオクトパルドが、触手を操作。六本から大量のミサイルが放出される。 エックスは落ち着いてバスターを再チャージする。 広がる弾幕。 「愚かなのは、あなたの方だ!!」 右腕から飛び出す、太陽の怒り。 数十発のミサイルを飲み込みながら、オクトパルドに向かう。 ――交差する生き残った数発のホーミングトーピードと、チャージショット。 オクトパルドは着地と同時に身体を旋回し、コートの端を焼き切られながら回避。 エックスも連続して射撃して、全て撃墜してみせた。 「どこがだ!? 私のどこが間違っている!? 何故、レプリロイドより弱い人間達を守らねばならない!?」 辺りを爆撃しつつ、その煙幕でエックスに迫るオクトパルド。 「レプリロイドより優先される人間の命――おかしいとは思わないか!!」 メットに衝撃。 少女の拳が、頭部を穿った。――倒れこむ身体が吹き飛ぶ。 オクトパルドはその場で回転し、鋭い蹴りを繰り出していた。 「そう、おかしくはない………!! だから、死ね!!」 今度は完全に倒れたエックスに、ホーミングトーピードが追い討ちする。 爆発に翻弄され、何度も甲板に叩きつけられる青いボディ。 245 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01 33 50.51 ID KuQRxfiH0 ――本部と同じく、極地部隊の隊員と同じく、人間だ ――人間だが、私は君の味方だよ 自分より小さな背の少女がそう言った。 人間に絶望しかけた少年に、涙をためながらそう言った。 人間は、全てが悪なのだろうか? 「違う………!! やっぱり、あなたはおかしい!!」 バラバラになりそうな身体を横転させ、ミサイルの地獄から抜け出す。 「――人間は……。人間は、みんながみんな悪い奴じゃないんです!!」 バスターを急速チャージ。 そして、すぐさま放つ。 「馬鹿が!! 夢を見ながら、死ね!!」 オクトパルドは笑いを帯びた罵声を吐き、悠然とそれを避けた。 船自体を揺るがす轟音。 雨のようにデッキに降りそそぐ破片と粉塵。 エックスは驚愕し、オクトパルドは慌てて後方を振り向く。 大きな赤の柱に貫通痕。――バスターは船の巨大な煙突に着弾していた。 「ぐっ………!」 「なっ………!!」 その柱が、自身の巨体を甲板に向け唸りをあげながら降って来た。 もう一度轟音。 それは先ほどのよりも遥かに大きく、そして全てを押し潰す。 「な、何故………なのですよ?」 デッキを縦断する巨体。 二人のレプリロイドは奇跡的に生き残っていた。 248 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01 37 52.94 ID KuQRxfiH0 「エックス……」 赤い破片で腹部を真っ赤に染めた少年に、オクトパルドは問うた。真横には煙突の巨体。 エックスは衝突寸前で走りこみ、オクトパルドを抱え跳んだのだ。 「……人間は、悪い奴ばかりじゃないんです。良い人だって居ます……」 打ち倒れ、傷口を押さえた。吐血しながらエックスは混乱する少女に語りかける。 くだらない話だろうかと鼻を鳴らし、それを耳に入れながら、オクトパルドは自分の損害を確認した。 「……悲しいでしょう?」 損傷を確認する手が止まる。 オクトパルドにとって意外な言葉だった。 「心が温くて、優しい言葉をかけられて、差別をしない人間――そんな人を知らないまま死ぬなんて」 エックスの顔は自分がそうなのかのように悲哀に満ちていた。 オクトパルドの瞳が何かに揺れる。 「僕は人間の嫌な所を知ってます。汚い所も」 悲しい声。アイシー・ペンギーゴは何故あんな目にあったのだろうか。 「――でも、好きなんです人間が。この世界には、必ず良い人間が居るから」 「……………良い……人間………」 重症を負いながらも、決意が篭められた瞳にオクトパルドは吸い込まれた。 「だから守りたい。こんな馬鹿げた事件から。人間を、そしてレプリロイドも――悲しい貴方も」 エックスは見下ろしてくる少女を見つめる。 「……馬鹿………なんでしょうか……? 最終的な結論は、まだ出てないんですが……」 最後に苦く微笑み、エックスはオクトパルドに手を差し出した。 「だから、一緒にそんな人間を一人でも多く探してみませんか?」 震える少女の身体。華奢な手のひらと、自分の手を見比べ、オクトパルドは沈黙する。 上から轟音。 251 名前:Irregular s Elegy[] 投稿日:2006/10/14(土) 01 44 15.04 ID KuQRxfiH0 「ありがとう、エックス。それは美しい戦略ですね」 オクトパルドは微笑み、手を優しく握る。そして空を仰ぎ、何かに気づいた。 「オクトパルドさん……」 少女は素早く損傷部分を確認。右脚部は完全に破損――回避は出来ない。二人とも。 「だけど、駄目みたいなのですね」 上から轟音。 オクトパルドは再度微笑む。今まで一番、優しい笑顔だった。 「ふふっ。もう少し早く、あなたに会いたかった……」 上から轟音。貫通した煙突がもたらした被害は、大きかったのだ。 ――その後ろにあるもう一つの煙突の取り付けを、致命的に揺るがすぐらいに。 「生きて………あなたのすべき事を成し遂げるのです。私はそれにかけますのですよ」 「オクトパルドさん……?」 細い腕がベレー帽にかけられ、それを取る。赤い帽子はエックスに被せられた。 「さよならエックス。途中で諦めたりしたら、0点なのですよ……?」 涙を溜めながら笑みを送り、そしてミサイルを放つ。 ――衝撃と爆発はエックスを船外に吹き飛ばした。 「――オクトパルドさん!?」 海へと叩き出されたエックスはデッキに、もう一つの赤い巨体が落ちようとしてるのを見た。 二度目の落下は甲板の全てを、今度こそ押しつぶす。 「そんな……そんな!! オクトパルドさん!! そんな!!」 真っ赤な夕日に照らされる旅船は衝撃に耐えられず、沈みかけようとする。 腹部の事は気にせず、エックスは船に向かって泳いだ。 とうとう海中にけたたましい音をたてて瓦解し、沈没する船。 沈没の衝撃破によって形成された波が、泳ぐエックスを無情に飲み込んだ。 568 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 22 59 22.91 ID 1kCBjzAl0 暗転、回復、暗転、回復。 叩きつけるような波は、生まれ、崩れるのを繰り返す。 エックスは、旅船の爆発から発せられた波に流された。 海面に出たと思えば、海中に飲み込まれ、意識もそれに合わせて明滅する。 ――ここはどこか? ――ゼロはどこだ? ――自分はどうなる? 頭の中で様々な思いが、波と同じように暴れる。 巨大な箱舟は小爆発を繰り返しながら、沈み、そして海面を荒らした。 暗転。 「くぅ………」 次に蒼穹色のボディが現れたのは、真っ白な砂の世界だった。 波の音に、意識を目覚めさせたエックスは、辺りを見回す。どこかの海岸――砂浜だった。 立ち上がりながら、揺れる視界と思考を整える。 「………ここは? ……どこなの……」 そして、呻きの次は、疑問が口から漏れた。 答えは誰からも与えられない。付近には少年以外いないようだ。 「――ゼロは!?」 その場で、答えを探している内に、重大な事に気づいた。 571 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 01 50.80 ID 1kCBjzAl0 赤き少女――ゼロの姿が見当たらない。エックスは、真っ青になった。 彼女は、オクトパルドに嬲り者にされてから、海中に放り出されたはずだ。 「ゼロ!? ゼロ!? どこなの、ゼロ!!」 少女の消失から、顔を青から白に転じ、エックスは彼女を呼びかけながら探す。 ふらつく身体に鞭打ち、砂浜を駆けるがゼロの姿は見当たらない。 焦燥感に口元を歪ませる少年の顔に、蔭り。 まるで野鳥が大量に羽ばたいた様な音を奏でる、回転翼がエックスの頭上に迫る。 「ハンター………」 お馴染みのハチ型ヘリが、高度を落とし、砂浜に着陸する。 「ご無事でしたか」 大量生産される型番のボディを纏ったハンターが、白い大地を踏みしめた。 その一人が、こちらを見るエックスに、片手をあげて挨拶する。 「あなた方が乗船なさった旅船のシグナルをロストしまして、緊急に、我々が救出に向かいました」 青き少年に、タオルと鎮痛剤が混入されたカンフルを渡しながら、説明する。 他のハンターは、てきぱきと極地基地のように、簡易待機所を作ってゆく。 説明するハンターの声と波だけが、この砂浜の静けさの〝異端〟だった。 「ここまで流されるとは………おい、マックの捜索も範囲を広げろ!」 右手に持った端末で位置を確認しながら、後続のハンター達に命を出す。 「あの、ゼロは見てますか? 一緒に……では、ないのだけど、流されてしまったんです」 エックスは自分の憂慮をハンターに手渡す。 572 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 03 28.66 ID 1kCBjzAl0 「あ、はい。彼女なら、先に本部に搬送されています」 「本当ですか!?」 応えは、少年を大変安堵させるものだった。 エックスの顔が喜色に満ち、緊張からの脱却からか、砂浜にへたり込んだ。 「えぇ、ただ損傷の関係で、直ぐにでも治療を受けないと危険な状況らしいですが」 安心は、続けるハンターの言葉で無惨に打ち砕かれる。 自分の意ではなく、顔色がころころと変わるエックス。 「心配でしょう。直ぐにでも本部まで、お送りします。ケイン博士も話があるそうです」 うな垂れる中性的な顔立ちの少年に、ハンターは手を差し伸べ、ヘリを指差す。 地に足をつけるヘリは、再度ローターを回転させた。 散乱する砂。局地的な小さな砂嵐。 迫り来る砂に目を開閉しながら、エックスは頷いた。 「ご苦労だった」 帰還の労いは短い。 いつもは、幹部の画像を映した浮遊ディスプレイが無く、会議室は非常に静かだった。 簡素な部屋で、二人。 Dr.ケインとエックスは、数メートル離れて対峙する。 円卓の真ん中に座るケインは、冷徹な瞳で、前方に立つ少年を見つめた。 イレギュラー事件発生の時とは、大きく違う印象を受ける。 力強さと――憎悪。 574 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 05 52.72 ID 1kCBjzAl0 「私から話そうか、それとも君から話すか。私はどちらでも」 自分の皺の寄った顔を、見つめるではなく、睨む少年に問いかける。声はどこまでも冷たい。 「あなたから」 何かの意思を掴んだ光を宿す瞳を、臆す事なくケインにぶつけるエックスが答える。 老人は頷く。 「最初に話すべきことは、情報部の事。――何故、君達に隠し事をするか。何故、協力しないか」 ケインは一拍置く。 「それは、この事件が〝極めてイレギュラー〟な事にあるのだ」 机の上の指がせわしなく動く、常に冷静な老体は何かに焦っていた。 「ハンター本部が取り扱う事件、この世界で起こる事件で、あってはならない事が一つだけ存在する」 焦りは末端部分だけに、顔には出さない。 「レプリロイドが、バグや事故での暴走ではなく、〝自分の意思で事件を引き起こす〟事だ」 「しかも、今回はハンターの職員とくる」 エックスは沈黙する。 アイシー・ペンギーゴ。 ストーム・イーグリード。 ランチャー・オクトパルド。 彼女達は様々な思惑で、暴走と言う道を選び、エックスの前で朽ちた。 「それは、イレギュラーと戦ってきて解りました――それが、釈明ですか?」 らしくない冷たい言葉の刃が、ケインを突き刺す。 575 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/10/18(水) 23 07 15.80 ID yWQxajs80 http //1st.geocities.jp/warosu2kki/web2.0-syndrome.html ↑いくつあてはまる? 576 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 07 36.38 ID 1kCBjzAl0 「我々は驕っていた。自分等の力で、今回も解決できると」 聞いているのか、いないのか。 ケインは天井を仰ぎ、目を瞑った。何かへと追憶しているようだ。 「第17精鋭部隊隊長――シグマがこの事件の首謀者だ」 そして唐突に、驚愕の事実をエックスに渡す。 「なっ………!? 隊長が!? そんな、馬鹿な!!」 「本当だ。こんなスキャンダルを嘘や冗談では言わない。――もともと、冗談を私は言わないが」 驚く少年に、首を振り、ケインはその事実を肯定する。 エックスはとても信じられなかった。 ――焦るな、エックス。お前になら出来る 「暴走した謎のイレギュラーを彼女が、鎮圧したのは知っているか?」 ケインが言葉を続け、新たな質問を作った。 少年は、怪訝な顔をしながら、頷く。自分はその討伐には参加していなかった。 「シグマは、そこからおかしくなった――らしい。原因は不明。三週間前の話だ」 忌まわしき過去を掘り起こし、全てを優しき心を持ったレプリロイドに見せる。 身を切られる思いで、ケインは打ち明け続けた。 「それで情報部は………」 敵として、現れた同僚の言葉を思い出す。 ――ある計画が、あるある奴に聞いた ――緑のボディスーツを着たレプリロイド ――ボスの命令だ ――君は強くならなければ、ならないらしい 全ては、自分の上司の残滓だったのだ。 578 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 10 53.95 ID 1kCBjzAl0 「だが、それもお終いだ。本部も暴走したのだから――」 腐敗した事実。 「……………………は?」 腐った現実は、エックスの耳にすんなりと入らなかった。 「君は、聞きたい事があるのだろう。…………本部は、彼女達に何をしたか」 聞きたくない。 聞きたくない。 聞きたくない。 「おかしくなった、原因は不明と言っただろう。だが、それを〝どうやって〟調査したと思うかね」 ケインが、初めて感情を顔に出した。 ――大きな絶望。 「そんな………まさか……………」 聞きたくない。 聞きたくない。 聞きたくない。 ――少女のレプリロイドは何故、 「レプリロイドに、多大な不安や、精神的な圧迫をかけ、シグマと同じく〝壊れた〟精神を分析したのだ」 ――イレギュラーとなったのだろう。 579 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 12 18.31 ID 1kCBjzAl0 「それを今回の事件に役立たせようとした。――だが結果は、最悪だ!!」 ケインの怒号。 珍しい光景だが、エックスの目には入らない。 「シグマの作戦に便乗した奴も居るが、この事件の半分のイレギュラーは〝私達〟が作り出したのだ!!」 ――絶対たる悪が、彼女達をそそのかしたのでは、なかったのか ――そうであれば話が早い。 ――そうであれば解りやすかった。 ――そうであれば、このバスターを遠慮なく撃てただろう。 「うぉおおおおお!!」 間合いは一瞬にして無に。 獣の咆哮と一緒くたに、ケインの顔に向け、エックスの拳が突き入れられた。 吹き飛ぶ老体。 「許してくれなど………言わない。本部は必死だったのだ。――世界平和という目標に」 憤慨などせず、ケインは唇から血を流しながらも、弁解した。 荒い息を吐くエックス。 「増大するレプリロイドの件で、本部は世界平和と言う単語に過敏になっていた」 世界平和。単語自体は素晴らしい。 「レプリロイドの意思で事件を引き起こす………決して許されない事だったのだろう」 だが、その言葉の中身はどうだろうか。 「シグマで終わらせようとした事が、こんな裏目に出るとは、彼等も思わなかっただろう………」 しかし、事件は起きた。 580 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 15 52.95 ID 1kCBjzAl0 「私は止めた。止めたが、ハンターは〝訓練Σ〟と言うお題目で、調査を開始してしまった」 アイシー・ペンギーゴ。 それ以外は知らないが、他のレプリロイドの心にも、そんな影があるのだろう。 訓練Σでは無く、仲間意識の狭間で狂気を選んでしまった、優しきイーグリードという存在も居た。 「その調査で彼女達はイレギュラーになった。本部も彼女達も止められなかった…………すまない」 後悔。 「チップは………そうか、情報部の隠蔽…………」 少年が気づいた、下らない事実。 「確かに滅びるべきだな、人間は。レプリロイドのための世界――悪くない」 自嘲しながら、絶望の答え。 「ふざけるな」 だが、エックスはそれを一言で砕いた。 本当にそんな世界が望まれるべきなのだろうか。 ペンギーゴの最期の言葉。 ゼロとイーグリードの友情。それを持っていたのは、最初は人間ではなかったのではないのか。 ――途中で諦めたりしたら、0点なのですよ……? オクトパルドが持った希望。 582 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 18 09.78 ID 1kCBjzAl0 「答えを勝手に出さないで下さい」 純粋な怒り。 「あなた方のやった事は、最低だ。でも、世界中の人間がその罪を背負う必要は無い」 平和を望み続ける心優しいレプリロイドの怒り。 「ハンター本部が、世界平和に焦ったように、隊長もまた〝何か〟に焦ってしまったのでしょう」 俯いていたケインが顔を上げる。 「おそらく、レプリロイドの自由と平和に。その代弁者という重荷に」 二人の瞳がやりきれない思いに、揺れた。 「僕なら解ります。隊長が何故、壊れてしまったのか………」 レプリロイドの述懐。 「僕だって、時々思う――どうして人間はこんなにも傲慢なのか、どうしてレプリロイドを見下すのか」 レプリロイドとして生まれた身の不満。 「でも、人間を守りたいという意思も存在する」 レプリロイドとして生まれた身の思い。 ライト。そして、この世界に必ず存在する優しい人間。 「その二つが、イレギュラー討伐でおかしくなってしまったのでしょう」 「討伐後のシグマは重症だった…………過度の恐怖による〝事故〟………」 調査は無意味だった。 583 名前: Irregular s Elegy 2006/10/18(水) 23 20 01.25 ID 1kCBjzAl0 「馬鹿だ………私達は………。私達は、何故あんな惨い事を…………」 もう、戻れない。 「報いは、博士自身が考えてください。僕には決める権利が無い」 仲間を殺してしまった自分には、と言葉を続け、かかる多大な疲れに、手で顔を覆った。 ――同じくして、二人は、もう戻れない所に立っているのだ。 「殴ってしまって、すいません………」 エックスは、拳に目を落とし、困ったような顔をする。 「僕は、僕の〝報い〟を受けようと思います……」 この事件は終わりにしなければ、ならない。 それが使命。 「すまない………。本当は私も手伝うべきなのだがな」 自分の年季のいった身体を見下ろし、ケインは頭を下げた。 エックスが首を振り、会議室の扉に向かう。 茶色のドアを開き、廊下に出ようとしたところで、声がかかった。 「娘を頼む……………。あの子の悪夢を終わらしてやってくれ」 最後に、ケインが何故自分に打ち明け、こんなにも悲嘆にくれていたのか、やっと解った。
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ロックマンシリーズは、カプコンから1987年に発売されたファミリーコンピュータ対応のアクションゲーム『ロックマン』を第1作とする一連のゲーム作品の総称である。 長期に渡り続く中で、数多くのシリーズが派生・誕生しており(派生シリーズの項を参照)、それらをも含んだ全シリーズの総称としても使われる(カプコンの発表によると、2007年12月31日現在の全シリーズ累計販売実績は全120タイトル、2,790万本にも及ぶ)。派生シリーズを含まない場合は、区別のために「初代」「本家」「元祖」と頭につけることがある。 wikiペディアより。 アイスペでのロックマン ロックマンX8(不完全 ロックマンゼロ4(不完全 初代ロックマンシリーズ ロックマン1 ロックマン2 ロックマン3 ロックマン9 ロックマン10 ロックマンゼクスシリーズ ロックマンゼクス ロックマンゼクスアドベント ロックマンエグゼシリーズ ロックマンエグゼ5 ロックマンエグゼ6 流星のロックマンシリーズ 流星のロックマン1 流星のロックマン2 流星のロックマン3 2010年に攻略を終了すると宣言。 尚、今までの攻略についてはアイスペユニヴァース!参照。 ロックマン次回作 2009年のコロコロ二月号でロックマン次回作のボスキャラコンテストが開始された。 ちなみに、アイスペでは以下の作品が挙げられた。 ロックマン10 ロックマンX9 ロックマンダッシュ3 ロックマンゼクス3 そして、6/21のWHFでロックマンエグゼ オペレートシューティングスターが発表された。 関連リンク フォルテ
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49 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08 50 49.81 ID Uv2z/sXo0 「約束を果たしに来たぜ、エックス。ついでに、クズの処刑もな!!」 「くっ……!」 ヴァヴァのブーツが床を踏みしめる。 突き刺すように出された指先が、マンドリラーの死を求めた。 悔しさに、口元を歪めるエックス。 「隊長のお遣いか? ご苦労な事だ」 死の宣告の先にいる彼女は、両手に桃色に光る電流を溜める。 ――マンドリル型のボディを着込んでいない状態。 装着時よりかは脆弱な感じを覚えるが、それでも紫電は拳に集まった。 「裏切り以前に、お前のそのしたり顔が気に入らねぇ。死ぬには、充分過ぎる理由だよなぁ……!」 マンドリラーの戦闘の構えに、嬉しそうな顔をしてヴァヴァは両手を広げる。 ジャラジャラと弾丸の帯が鳴り響き、天を向いていた右肩の銃口が向けられた。 そこで廊下側にいた二人も、部屋に踏み込んでくる。 先に入室する一人の頭の位置は、そう高くない背のヴァヴァの腰あたりしかない。 「や、やだな……お、お仕事なんて。ヴァ、ヴァーちゃん……あ、あたしね、観たいアニメがあったんだ……」 か細い声の主――丸びを帯びた装甲に身を包んだ少女が現れる。 肉厚の装甲が全身に宛がわれる、その中身には半裸に近い肢体。 50 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08 52 42.01 ID Uv2z/sXo0 胸元に、全身と同じく滑らかな装甲を貼り付けているが、それ以外は幼い肌が露出していた。 下半身は、湿布のようなテープだけが股間部分を隠す。 布状の物など、頭髪をお団子状に纏めた布きれ以外は、皆無の装いだ。 「だ、だからね……その、か、帰りたいなぁ……って」 おどおど、と足元で不審に動く少女を、ヴァヴァは一睨みで黙らせる。 「ご、ごめんね?」 射る視線に竦みあがるレプリロイド――アーマー・アルマージ。 その様を眺めるエックスは、とても彼女がイレギュラーとは思えなかった。 壁が破砕され、石塊が飛び込んでくる。 巨大な石の礫が、玄関周りの壁や床に突き刺さり、玄関それ自体も完全に破壊された。 アルマージの後に、巨大な質量が突入。 玄関口の許容量を超えた体格のレプリロイドが、頭を天井で擦りながら進み出る。 その姿は象を模していた。 「ナ、ナーちゃん。……あ、あたし、お仕事なんて……や、やだな」 巨体によって作られる蔭りに、顔を曇らせるアルマージが蚊の鳴く声で、不満も漏らす。 象型のレプリロイドは、小柄な少女とは反対に、全く肌を露出していない。 戦車の如き厚みを持つ装甲。 アルマージは装甲自体が円形だったが、こちらは体格自体が丸を形成していた。 52 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08 54 33.81 ID Uv2z/sXo0 エックスは妙な違和感を、象のイレギュラーに覚えた。 しかし、直ぐに非生産的な思考を中止し、彼女等の行動に注意を払う。 闘いは、いつ起きてもおかしくない。 肥満体と言える体に載る象の頭部――取り付けられた狐目のカメラが、上目遣いの少女を睨み付けた。 「ご、ごめんね? も、もう言わないから……もう言わないよぉ……」 謝罪をし、小さな体に恐怖の電流が走るアルマージ。 「こ、怖いよぉ……。ク、クーお姉ちゃんと待機してれば、良かった……」 仲間の二人を見、敵であるエックスとマンドリラーの二人を見て、アルマージは目尻に涙を浮かべる。 「ヴァヴァ……どうするんだな?」 同僚の悲哀を尻目に、機械仕掛けの象――ナウマンダーがしわがれた声で、ヴァヴァに尋ねた。 ヴァヴァは頷き、エックスを指差し、そのまま爪の先をナウマンダーへ。 そして自分に親指を向け、最後にマンドリラーを顎で指し示す。 ナウマンダーは首の無い頭を揺らして、了解の意を表した。 「くっくっくっ……処刑される理由は自分でも解ってるだろ? 遊んで、嬲って、殺してやるよ、マンドリラー」 愉悦の笑いを口角から溢れさせながら、ヴァッヴァが残酷な死刑執行の台詞を言い放つ。 いよいよ、部屋の空気が緊張に張り詰め、エックスとマンドリラーの顔を渋いものに変えた。 54 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08 56 50.33 ID Uv2z/sXo0 「裏切りなんか興味は無いんだなぁ! だが、特Aと戦えるのは願ってもないぞぉお!!」 壁を震わす音量が、象のメットから腹部まで垂れる鼻から発せられる。 ナウマンダーも隣のイレギュラーと同じく、闘いの時に心を躍らせているようだった。 「特に、エックス!! ペンギーゴを倒したお前も、丸焼きにしてみたいんだなぁ!!」 戦闘願望を内包する巨大なボディは、爆発寸前の炉心を思わせた。 「あの馬鹿ペンギンは、チビのくせに強かったんだな! まぐれで勝つのは無理なんだぞぉ!!」 「…………アイちゃん」 闘いたくてしょうがないナウマンダーの心情に合わせ、太い鼻が波立つ。 喜悦を重ねたバーニン・ナウマンダーのプレッシャーが、部屋全体を震動させた。 対するエックスは、思い出させられるアイシー・ペンギーゴへの想いに、心を部屋のように震わせる。 「楽しい一日しようぜぇ、お二人さん。心に残る思い出を作って――あの世に旅立ちな!!」 そして、とうとう落とされる乱戦の火蓋。 ヴァヴァが吼え、右肩から銃弾を撒き散らしながら突進。 拡散する火線が進行方向上の物、全てを貫く。 「やれやれ、昼飯は遅くなりそうだな」 何処かに出かけるような、マンドリラーの軽い言葉。 ヴァヴァとの対立からチャージしていた電撃を、イレギュラーである三人に向かって放つ。 銃弾型のエネルギーの嵐は、扇状に放出された電流によって相殺される。 56 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 08 59 38.44 ID Uv2z/sXo0 リビングの中央で爆裂音が、そして衝撃波。 マンドリラーが横に跳び、爆風と煙から突き出るヴァヴァの貫き手を避ける。 「手早く決着をつけよう。忙しい身なんでな」 挑発的に、マンドリラーは手招きした。 「ヒャーッハァッハァ!! 寝酒のバーボンって奴を教えてやるよ!!」 床に指を埋めながら、ヴァヴァは狂声をあげての旋回。 紫色の身体に振り回された蹴りが、綺麗な弧を描く。 首元を狙う回し蹴りを肘で受け、マンドリラーが肩からの体当たりを敢行。 二人はもつれ合い、床に落下――する前にお互いのボディを左右に弾く。 マンドリラーは窓へと身投げ出して、ガラス割りながら外へと飛び出る。 「良いねぇ、マンドリラー。良いねぇ! エックスよりかは楽しめそうだ!!」 本当に楽しそうに顔を緩ませたヴァヴァが、破砕した窓枠に跳躍し、獲物の後を追った。 攻防を眺めていたエックスは、彼女等を追おうと考えたが、目前のイレギュラーがそれを許さない。 「し、仕事じゃ……しょ、しょうがないよね……! ご、ごめんね……お兄ちゃん!!」 背中に挿してあった片刃の剣――刀を引き抜きアルマージが構える。 下段の構えが疾走。 性格に似合わず、エックスの懐へ走りこむ速さは、目も見張るものがあった。 57 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09 01 35.38 ID Uv2z/sXo0 「つ、通信販売で買った日本刀と……つ、通信教育の成果……い、いきます!」 高速で振り下げられる刃が、エックスの青い頭部に迫る。 限界まで体を捻り、切断をもたらす鋼を回避したエックス。 バスターの銃口を、刀を下げた状態のアルマージの頭に向けるが、俊敏に放たれた横薙ぎの斬撃の方が速い。 剣術に心得のある太刀筋で、少年に肉薄する全身装甲の少女。 後ろに飛ぶブルーの脇腹を薄く撫で切り、反す刃がエックスに追い討ちをかけた。 アルマージの袈裟斬りは、太陽のエネルギーに弾かれる。 火を噴くバスター。 闘いに対する嫌悪感に顔を歪めたエックスが、自分の命の為に連続して射撃する。 至近距離の連射は、蜂の巣という死を進呈する攻撃。 ――だが、相手は特A級のハンターだ。 鼻先で発射された光弾を、幼い体をよじりながらの、振り回される刀によって全て弾いてみせた。 「こ、怖いよぉ……!」 言葉とは裏腹に、銃口とエックスの動きに合わせ刃を振った。 アルマージの顔面に喰らいつかんとするエネルギーも、翻る刃によって軌道を変えられる。 跳弾した銃弾が椅子に着弾し、背もたれを消失させた。 連撃で畳みかけながら前進するアルマージと、銃撃しながら後退するエックス。 銀光が、オレンジの軌跡を弾く。 銃撃の間隔を縫って、アルマージは刺突を繰り出した。 61 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09 05 58.49 ID Uv2z/sXo0 煌めきがエックスの頬を撫で、オイルがしぶく。 突きを戻し、再び刺突。 一撃は空を刺す。かろうじて、肩から身を投げたエックスが回避した。 少年の回る視界が背のない椅子を見つけ、それを掴む。 立ち上がながら投擲。 勢いある家具が、アルマージに迫る。が、それも薙がれた刃によって両断された。 刀を振り切る少女は、エックスのバスターが光を収束させている事に気づく。 勝機を見出したエックスが、溜められたエネルギーを解き放った。 全てを貫く必殺の一撃。 「え、えい!!」 ――アルマージの身体に当たると思いきや、意外なものに阻まれた。 激突したのは、頭部の装甲から吐き出される、空色をしたエネルギーの球体だ。 布によって団子にされた髪とメットの間に、大きな銃口が存在していた。 「バスターまで持ってるのか……!」 隠されていた武装に、頬を赤で濡らすエックスの顔が驚きを滲ませる。 性格こそイレギュラーの中で一番子供らしく、度胸もないものだが、戦闘に関しては特Aの名に恥じないものだ。 62 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09 08 59.07 ID Uv2z/sXo0 「狭い所は嫌いなんだなぁ!!」 どう戦うか、悩む少年の横から迸るのは、紅蓮の炎。 静観――というよりもエックスの出方を観ていた、ナウマンダーが繰り広げられる戦闘に加わった。 床を舐め、絨毯を灰燼にしながら、炎の蛇が突き進む。 ナウマンダーの右腕から放射された業火は、近くのアルマージを気にかけていない。 宙を跳ね、慌てて逃げる少年と少女。 「ひ、ひどいよぉ……! ナーちゃぁん……あ、あたし、死んじゃう所だったよぉ……!」 部屋の隅に着地したアルマージが、涙交じりに声を張り上げた。 少女の反対方向に舞いあがるエックスの足は、寝台の上に落ち着く。 乱入する巨体に、少年はバスターを向けた。 「お前の力ぁ!! オデに見せてみるんだなぁ!!」 その姿はナウマンダーを喜ばせる。 感謝の気持ちとして、自分の特殊兵器であるファイヤーウェーブの洗礼を少年に送った。 「ひっ……!」 爆発するように捻り出る火炎は、倒れ伏していたパイロットを焼殺し、ベッドにぶち当たる。 シーツが一瞬にして灰となり、木材で出来た就寝用の家具は、常識を超えた高温に耐え切れず破裂した。 「なんて事を……! ナウマンダー……あなたは!!」 火が付く木片と一緒に、天井すれすれを飛ぶエックスが、同僚の死に怒る。 空中でバスターをチャージし、一拍遅れて発射。 63 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09 12 24.96 ID Uv2z/sXo0 怒気が練られたチャージショットが、投擲された槍のように部屋を横断する。 「うはははは、弱い奴はオデの前から消えろ!!」 亜音速で進むエネルギーに向け、ナウマンダーは哄笑しながら爆炎を振りまく。 銃器の形をした火炎放射器の、数倍の火力を誇るファイヤーウェーブが、エックスの怒りの攻撃を霧散させた。 「エックス、頑張るんだぞぉ!! ――じゃなきゃ、燃え尽きるんだなぁ!!」 銃撃を光の霧に変えたに止まらず、紅蓮は落下するエックスに、その身を差し出す。 少年の肩が嫌な音を立て焼けた。 岩のような頑丈さ持つ筈のボディは高温に負け、黒ずむ。 かわしきれぬナウマンダーの特殊武器に、顎に冷や汗を垂らすエックスは、背中から地面に激突。 反動を利用して、横転すると即座に立ち上がる。 胸を掠める鋼。 隅から疾走したアルマージが、一気に間合いを詰め、刀を振り下ろしたのだ。 「えぇい!!」 「くぅ……!」 少女の掛け声と共に、跳ね上がる刃をガラス製のボウルが弾く。 机に置いてあったのを、エックスが機転を利かし、手にしたものだ。 使用できるのは一度のみ。 刀に砕かれ、残っていた果物とガラスが、花火のように散る。 64 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09 15 34.52 ID Uv2z/sXo0 「うはははははははははは!!」 爆炎。 巨体に秘められた燃料が、主の意思に従い銃口から放流――そして死神となる。 またもアルマージの存在を無視した炎の帯が、周囲を焦がしながらエックスを襲った。 エックスとアルマージよりも先に悲鳴をあげたのは、宿泊所の方だった。 「んあ? ――うおおおおおおお!?」 ――床から鳴り響く轟音。 数トンの質量。そして焼け焦げ、銃撃にさらされた床。 それらが合わさり、この部屋――ナウマンダーの付近の床板が滑落する。 急な落下に銃口がぶれ、エックス等から逸れた迸る炎。 天井を焼きながら巨体は落下した。 消える放火するイレギュラー。 だが、二人は助かった訳ではない。 65 :Irregular s Elegy:佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 09 20 14.31 ID Uv2z/sXo0 「うわっ……!」 「……ふ、ふえ? ふぎゃあう!?」 床下から吹き荒れるファイヤーウェーブが、部屋で爆発を引き起こす。 「クソがぁ!! 死ねぇええええええええ!! 丸焼きになれぇぇぇぇ!!」 一階下の部屋から、怒り狂ったナウマンダーが業火を繰り出し続ける。 ボイラーなどが火を噴き、紅蓮自体も炎の破片を拡散させ、凄まじい衝撃波を作り出した。 「ナ、ナーちゃん止めて……! 止めてよぉ……!」 幼き悲鳴。 床を突き破り噴出する火柱が、天まで焦がす。 「うわわ……うわぁ!?」 部屋を駆け回り、エックスは逃げ惑う。 世界は真っ赤となった。 そして、今までで一番の大爆発が吹き起こった。 衝撃が全身を叩く。 エックスの意識と身体はホテルを飛び出して、昼の曇り空を飛んだ。 291 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 29 05.83 ID eNUGwG2m0 「――そらぁ!!」 紫紺の脚が、女性型の腹部を蹴りあげる。 ヴァヴァは蹴球の遊戯でもするかのように、マンドリラーを蹴り付けた。 力強さに、どこか女らしさを持つボディは宙に浮き、落雷の如く落とされる踵がそれを叩く。 強制的に地面へ落下させられるマンドリラー。 全身を痛みが貫く。苦鳴を漏らさぬよう、噛み締められた唇が痛々しい。 「期待させといて!! オレを期待させといて!! エックスより期待させといて!!」 バネ仕掛けの脚部。 何度も何度も蹴り付けるヴァヴァは、怒りの声をあげるが、そこには笑みを含む。 「くぅっ……!」 下に広がるアスファルトに罅を入れる程、ヴァヴァの凶行は苛烈を極めた。 思わず、マンドリラーは呻いてしまう。 漆黒の自動車道。両端を、高いビルが隣接して立ち並ぶ。 大都市の中心で行われる一方的な暴行。 何故かこの街に人影はまったく無く、閑散とする道路に、肉を打つ音だけが空へと響いた。 293 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 31 14.02 ID eNUGwG2m0 「このヴァヴァは!! 素晴らしく!! 失望したぜ!!」 リズム良く脚部が送り込まれる。 嫌な音を立て、肋骨をへし折られるマンドリラー。 「どらっ!!」 使用不能となった肋骨は本数を増やし、三本目が砕けた。 そして――ヴァヴァの掛け声と一緒くたに豪風を纏ったつま先が放たれる。 矢となるマンドリラーの身体が、近くの街灯をへし折りながら、洋服店の壁へと突き刺さった。 積み上げられた煉瓦を散らし、そして、長い髪の女は歩道に崩れ落ちる。 「はっはっはっ!! 楽しいねぇ!!」 「……あぐっ!」 桃色の頭髪を掴み、ヴァヴァはすかさず鼻面へと拳を叩き込む。 端整な鼻腔から血が溢れ、赤が顔を汚す。 「ほら、もっと鳴けよ!! ひゃははははは!!」 暴力の快感に、ヴァヴァの哄笑が自然と大きなものになった。 頭部を掴んだまま、マンドリラーを壁へと引きずり、彼女の顔を赤き煉瓦へと叩きつける。 「そら!! ――そらぁ!!」 叩きつけ、引き戻し、叩きつける。 赤を違う赤で染めるマンドリラーは、力の暴風に翻弄された。 295 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 32 36.32 ID eNUGwG2m0 「人が居ないのは、あなたの命で避難勧告を?」 マンドリラーで遊ぶヴァヴァが立つ歩道。 そこから少し離れた、車道が縦横に横切るのを邪魔する、丸く切り取られた空間。 十字路の中心となる位置に、石作りの小さな噴水が、水を噴出して自分の存在を主張していた。 ちょっとした規模の公園に対峙する二人。 仁王立ちする、緑色のメタリックなボディを装着する影が、上に着込む黒衣を風で揺らす。 強烈な威圧を持つレプリロイド。 漆黒のぼろを羽織った金髪碧眼の女が口を開き、 「――父さん」 こちらを見つめる男を、そう呼んだ。 金に対する銀。 白髪を後ろに流した、整った目鼻立ちの老人が腕を組んでいる。 じっと注がれるケインの視線に、女は顔色を変えない。 思うところがあるのか、鋭い双眸を細め、老人の動きを待つ。 297 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 35 42.08 ID eNUGwG2m0 「シグマ……私は後悔している」 喪服のようなスーツの上にある、皺の寄った顔が苦渋に歪む。 初老の男は眉間に力を込め、湧き上がる感情を押し殺した。 「お前の事は娘のように思っている。昔から……それは今でもだ」 きらきらと舞う長い髪の女へ向け、自分の腕を差し出す。 「あの時、お前に宿った深い闇。――それに、私は気づく事ができなかった」 ケインは突き出した掌を握り、自分の胸へ引き戻した。 後悔を詰める頭を振るケイン。 「もうやめてくれ、シグマ」 老人の口をつく嘆願が、シグマと呼ぶ女に与えられる。 だが彼女は眉一つ動かさない。 噴水の水より冷たい風が、二人の間を吹き抜いた。 黒衣が翼のように舞い、背広の裾とネクタイが時計の振り子となる。 「人間が愚かな事は解った。お前達の蜂起が、それを浮き彫りにしたよ」 人間を代表し、同じ人間であるケインが頭を下げた。 「いずれハンターは解体し……人間達はその罪を償うだろう」 300 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 37 37.39 ID eNUGwG2m0 ケインは続け、 「――もう、いいだろう」 起こる悲劇の終結を願った。 沈黙が流れる。 「まだです」 数瞬の時を破る、シグマの言葉。意味するのは悲劇の継続。 「まだ、早い」 噴水を囲むベンチと梢を見回し、老人とは違い、シグマは決意に首を振った。 「シグマ……!」 掠れる声を出すケインは、胸から何かを取り出す。 それは無骨な鉄の塊である、曇り空と同じ色をした自動拳銃だ。 手に収まった、遠き目標を打ち抜く凶器が、女の額をポイントする。 「邪魔をするのなら、父さんでも……」 シグマが黒衣から引き抜いた握りが、拳銃に対する。 そして、白い筒の先から、収束された光が剣の形に集まった。 「あなたは、まだ解っていない」 ビームセイバーを構え、シグマは至極真面目な顔をして言った。 301 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 40 41.56 ID eNUGwG2m0 雨が降り出す。 暗く淀んだ天から、小雨として雨粒が降り注ぎだした。 「人間が背負わなければならない、十字架を……」 「何を、言って……」 雨霧の帳に光る女の瞳に、初めて感情が宿る。 光刃より鋭い悲哀が、銃を構えるケインを貫いた。 突然の浮遊感を全身に。 意識を飛ばされ、客室から吹き飛ぶエックスの瞳が、雨降る灰色の空を理解した。 空中での再起動。 己の状況を素早く確認すれば、今居たホテルは複数の窓から火炎を吐き出し、半壊していた。 ナウマンダーの姿は見えない。 身体をくの字にする少年の前で、小柄な少女のイレギュラーも、自分と同じく勢いある放物線を描いていた。 尾を引く悲鳴が耳に届いた同時に、破砕音と衝撃。 ホテルの反対側に位置した建造物の窓を、青い背中で割りながら、少年は床に叩きつけられる。 304 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 44 13.30 ID eNUGwG2m0 「く……」 苦痛の呻きを漏らしながら、周囲へ首を回す。 エックスは、ビルのテナントの一つ――喫茶店に放り出されたようだ。 押しつぶした丸型の机の破片を払い、立ち上がる。 大きな爆発音がし、壁の一部が通りにばら撒かれた。 窓の向こうのホテルは、静まる事なくその身を焦がし続けている。 「ひゃあああうう!?」 甲高い、少女の声と打ち割る音が唱和する。 丸びをおびたフォルムが、横手の窓から吐き出た。 カフェテリアの机をいくつも弾き飛ばし、カウンターに激突する装甲の球体。 頭を逆さまにした少女が、両足をひしゃげたカウンターに投げ出して、気絶していた。 少年は顔をひきつらせ、のびているアルマージに近づく。 女に見えると言われる自分の顔、幼い顔に寄せた。 かち合う両者の瞳。 エックスが考えていたよりも早く、少女は現実へと復帰した。 「う……ひゃあああああああああああああああああ!?」 そして喉から、恐れの感情を迸らせた。 耳を押さえた青い少年は、ぱっ、と彼女から離れる。 305 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 48 34.24 ID eNUGwG2m0 「お、落ち着いて下さい!! ちょ、ちょっと!!」 腰を低くしたエックスは、アルマージの顔を伺いながら、沈静の言葉をかけるが意味を成さない。 少女は天地を逆にしたまま、悲鳴を連続させる。 エックスは屈める姿勢のまま、おろおろと困り果てる。 そんな姿を尻目に、アルマージは声を張り上げつつ、異常な姿勢を戻した。 「あう!?」 小さな身をかき抱いて立ち上がる少女が、悲鳴とは違う、切羽詰った呻き。 「や……駄目っ!?」 全身を揺らし、同じくがくがくと震わす両足。 一度、びくりとアルマージの身体が震えたかと思うと、股下から白い太ももをつたう液体が溢れた。 「な、何で……いやぁ……」 喫茶店の芝生のような絨毯を、アンモニア臭のする金色の液体が汚し、領域を広げる。 度重なる恐怖が、アルマージを失禁させた。 少女はいやいやと首を振りながら、股間を押さえるが、意図せずの排尿は止まらない。 膀胱に溜められたものは、女性の大事な部分を覆う白いテープを黄色くし、両手から零れる。 「やだぁ……やだよぉ……」 とうとう小さな双眸から涙をこぼすアルマージ。 ぺたりと彼女の膝は座り込むのを境に、黄金の放流は力を失った。 306 :Irregular s Elegy :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18 51 37.75 ID eNUGwG2m0 「あ……あ……」 開かれた唇から失意を漏らし、さめざめと泣く少女。 ――凄まじい戦闘能力持つレプリロイド。 だが、それ以前に、彼女は年端のいかぬ少女であるのだ。 アルマージを驚愕させた本人であるエックスは、後悔と申し訳なさを胸に広げる。 同時に、自分に微笑むペンギン型の少女を思い出した。 イレギュラー。 その単語の意味、そして範囲が解らなくなるエックス。 どこまでが〝異端〟であり、どこまでが〝真っ当〟なのか。 暴走するレプリロイド、狂気じみた調査をするハンター。 人間の行動に意義を唱えたレプリロイド、種別の違う両者の心を解するケインとライト。 何をもって分類すればいいのか――少年は、嗚咽をあげるアルマージを眺めながら悩んだ。
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Irregular`s Elegy 少女の声を聞きながら、エックスは半身を捻る。 横を、炎の塊が駆け抜けた。 頭上から爆炎の雨――様々な大きさを持つ火弾が、急降下する。 エックスは横転しながら、バスターを放った。 宙で交差するいくつもの赤と、一つの白。 ファイヤーウェーブは空爆するが如く、地面を裂け散らして、エックスを襲う。 切り結んだエックスのバスターが、巨人の大きな胸部に当たるが、ナウマンダーは歯牙にもかけない。 火球の一つが青き腕に命中し、少年の身体は錐もみしてショーウィンドゥに叩きつけられた。 煙を上げる右腕に、苦痛を噛み締めながら、エックスは押し倒したマネキンを蹴飛ばす。 素早く車道に復帰して、直ぐに跳躍。 ナウマンダーの頭と同じ高さを誇る炎の波が、爆進して洒落たブテッィクを押し潰す。 可燃性の物質でもあったのか――赤いウェーブは、木で出来た少女ごと店を灰燼に変え、ビルごと爆破した。 一気に燃え広がり、大型の建物が横に倒壊する。エックスは悲鳴をあげて、前へと受身も考えず飛び込んだ。 ナウマンダーが会心の咆哮をあげる。広がる赤に、巨大な質量が小躍りした。 そして、象型のイレギュラーは全身を震わせて呻く。 それを成したのは、鋭く疾るエレクトリックスパークだった。腹ばいの状態から、エックスは雷撃を撃ち出していたのだ。 『操作システム、異常発生』 紫電が巻き起こり、桃色に纏わりつかれる球体のボディから、電子音が流れた。 間接部分から火花を上げ、ナウマンダーは首の無い頭部をがくがくと揺らす。 エックスの瞳が勝機を見出したかのように輝き、地面を蹴って立ち上がった。 フットパーツが少年のボディを押し上げて、エックスは空中でバスターを――ナウマンダーの後方に向ける。 射撃音が連続し、エネルギーの火線が迸った。 左右の建築物が貫通し、ガラスや壁を破砕させる。飛び散る窓の破片が車道に降り注ぎ、壁片が血潮のようにぶちまけられた。 エックスのバスターによって、商店を内包したビルが蹂躙され、穴だらけとなる。 その向かいの宝石を扱う建物を半壊させ、先の洋服店とは別の店も破壊し尽くした。 「ついに……いかれたか、エックス」 ケインの言葉を背に受けながら、青い身体が反転。 雨より冷たい言葉を放つケインの、後方に建つ遊戯場が入る店を撃つ。 光の奔流がガラスの扉を入り口から引き剥がし、テレビゲームが置かれる店内を爆砕させた。 巨体を揺らすナウマンダーと、目まぐるしく立ち回るエックスを中心に、エネルギーの嵐が吹き荒れる。 周囲のビルを破壊するエックスの銃口が旋回し、電気店に狙いを定めた。 チャージされたバスターが放たれ―― 「……くっ!?」 両脇に大型のテレビを置いた入り口が爆発するのと同時に、小柄な影が車道に飛び出す。 盗難防止用の門とテレビの破片を浴びながら、燃えるような髪を持つ少女が転がった。 「こいつが……」 ケインとエックスの二対の瞳が、橙色をした頭髪の下で赫怒に彩る少女の顔を貫く。 幼い顔立ちの少女は、手術衣のような薄い服装だった。それ以外には何も纏わず、寒空の雨で暗い色に染まる。 寒そうな格好だが、少女は身体を震わすことなく、寧ろ、その白い頬を噴き上がる怒りに赤くした。 彼女の首元で揺れる、小さな金属。エックスが目を凝らすと、それはライターのようだ。 凝らされた目が上を向く。オレンジの髪には赤が混ざっており、本当に炎を思わせた。 伸ばし放題にされている少女の長髪は、薄着の下でラインを描く小さな臀部で揺れる。 「あなたが……ナウマンダーさん、ですね」 エックスの右腕の銃口から上る白煙が、雨に裂かれて千切となった。 自分より年下の少女を見ても、エックスの顔色は変わらない。少女を目にしてから、少年の表情は悲しげなものになっている。 「うはははははは!! エックス、焼いてやるぞ……焼いてやる……うはははははは!!」 残った瞳を明滅させ、巨体が哄笑しながら揺れた。 炎を吐き出す人形――目前の少女が操作する〝ナウマンダー〟が狂ったように笑う。 「エックス……!」 戦闘に高揚する巨人とは違い、少女――バーニン・ナウマンダーは怒りを露に、エックスを睨み付けた。 白い面が、左右のビルで膨れ上がる炎で揺らめく。 対するエックスはバスターを降ろし、その視線のナイフを受け止めた。 「アイちゃんの事なんでしょう……」 エックスが、ぽつりと呟く。 ナウマンダーへの違和感に気付いた時、もう一つ気付いた事実。 小さきペンギン型の少女と、目の前に居るレギュラーが友人であった事だ。 「……戦わなければ、殺される」 エックスと同じ小さな呟きだったが、ナウマンダーのそれは噴火寸前の火山を思わす。 「あたしで実験した奴は、そう言った」 雨が、三者に降り注いだ。 ナウマンダーの怒りは雨に濡れても沈静化せず、エックスは表情を空と同じ色にし、黙するケインは少年の後ろで腕を組む。 「――お前が好きだった馬鹿ペンギンは、そのお前に殺された」 煮えたぎる怒りがぶつけられた。 エックスは両肩を震わし、ケインが目を細める。 「あいつらの言うとおり、この世界は死と隣合わせなんだ」 ナウマンダーの横に位置する巨人は、先ほど哄笑してからは黙ったままだ。雨粒に打たれる巨体の隻眼が、エックスを見下ろす。 ケインは腰を低くし、ナウマンダーの出方を伺った。 今は大人しいものだが、いつ彼女が激昂して、この場を焦土にするかは解らない。シグマに向けた銃の銃杷を、腋に垂れるガンポーチの中で握る。 「僕は……」 「弱い者は虐げられ、強い者がのさばる……!」 言葉は、憤怒に遮られて霧散した。 ナウマンダーが吼えながら、エックスに近づく。小さな背が、小さな腕でエックスの胸倉を掴み、自分の顔に近づけさせた。 「ラボに居た、あたしの友達も殺された! …………だが、あたしは違う!!」 怒れるナウマンダーだが、言葉の端々で歪んだ笑みが浮かんでいる。 エックスは今度は受け止めれず、激怒の炎を宿すナウマンダーの瞳から顔を逸らした。 「馬鹿ペンギンは、小さいから死んだ! 弱いから、〝大きな〟お前に殺された!!」 目前で爆発する、少女の怒り。 ケインは密着しあう両者から忍んで、銃を引き抜く。 「そうさ……そうさ!! 弱い奴は死ぬがいい!! 強い奴が生き残ればいい!!」 噛み付くように言い放ち、ナウマンダーは口の端を歪めた。 腕に力が籠められ、少女の白い鼻とエックスの形の良いそれがぶつかる。 「あたしは違う!! このボディがある!!」 灰色が蠢いた。 ナウマンダーは横目でケインの姿を捉え、エックスの胸を蹴り飛ばす。その反動で、小さな身が後ろに跳ねた。 「……なら、やられる前にやるだけだ!!」 ケインの腕が跳ね上がり、同時に銃弾が発射される。 少女の頭部に向けられた鉛のエネルギーは、迷うことなく目標に突き進み――だが、地面に突き出された巨大な腕で弾かれた。 巨体が動き出し、空洞となった目と明滅するのがケインを睨む。 ナウマンダーの〝半身〟は、着地する少女の手に握られる黒い装置の命を受け、太い右腕を振り上げた。 「人間風情が、オデに勝てる訳がねぇ!! とっとと消えるんだなぁ!!」 「お前は、暴れすぎだ。――そろそろ、停止しろ」 烈火と零下――両極の応酬。 ちろちろと蛇の舌のような火が巨人のバスターで燻ぶり、ケインが構える銃のスライドが引かれた。 「馬鹿ペンギンを殺したお前が、伝説のレプリロイドと呼ばれ……そして世界を救う――」 地面に手を付き、側転するナウマンダーの足元で銃弾が弾ける。 その横で、火花と土塊を吐き出しながら、巨人の腕が銃撃するケインへ薙いだ。 「お前なんか認めない!! お前のような、ふざけた存在なんて!!」 エックスとケインが同時に跳躍し、少年はナウマンダーに向かい、ケインは迫る質量を回避する。 「殺してやる!! このボディなら、怖いものなんか無い!! 研究所だって、吹き飛ばせた!!」 軽い身が宙を舞う。 少女の軌道を銃弾が削り、手術衣の袖が薄青の蝶を生み出した。ひらりと飛ぶ布の欠片も、続く曳光に貫かれる。 空になった弾倉を地に落とし、横っ飛びをしながらケインは新たに給弾した。巨腕がそれを追い、大砲の威力を秘めるストレートが地面を陥没させる。 ぎりぎりで避けながら、ケインが爪先に力を入れて己の身を旋回。 黒い石床が散華する――右手のアスファルトに腕を埋める巨人の顔面に、ケインは鉛弾を連発した。 いくつもの火花が象型で弾けたが、巨人に効果的なダメージを与えた様子は無い。 舌打ちするケインの後方で、エックスとナウマンダーが睨む合う。 エックスの哀愁が漂う黒瞳と、ナウマンダーの赫怒に揺れる金色の瞳が激突した。 「ナウマンダーさん!!」 「殺してやる、エックス!! あたしは、ペンギーゴみたいに――簡単には殺されないんだぞう!!」 二人の隙間を、巨体が押しつぶして埋める。 ケインとの戦闘を切り上げ、とんでもない質量を持つメカニロイドが飛び上がってきたのだ。 水しぶきを伴う衝撃波に、エックスは顔を腕で防ぎ、目を瞑る。 開いた時には、ナウマンダーが巨体に突進し、丸太のような脚部の取っ掛かりを足場にしていた。 少女は、上空へと自身を飛ばす。向かう先は、巨人の肩だ。 鉄色の肩部に着地し、細い首から紐のような物を抜き取る。 「気をつけろ。直接、あのボディを操作するつもりだ」 エックスの背に駆けつけたケインは、細身のコードを巨人の頭部に接続するナウマンダーを目にし、そう言った。 後方の警告へ、エックスが無言で頷く。 相変わらず降水の洗礼を送る灰色の空だが、ここで唸りをあげた。 天が焦げ、じぐざぐな白い線引きが行われる。マンドリラーやエックスのでは無く、自然の雷だ。大雨は、雷雨となる。 「ケイン博士は、手を出さないでください」 呟き。 バスターを撫でながら、エックスは巨人へと歩んだ。 「――決着をつけます。僕、自身を」 ケインは訝しげな顔をするが、青い背から漏れる決意に押し黙る。 雨を切り裂きながら、進むエックス。 「勝負だ!! お前は、世界を救う伝説のレプリロイド!! そうだろ!?」 見下ろすナウマンダーが、少年へ怒りと笑みを混ぜた物を投げかけた。 巨人の放射器から炎が溢れ、エックスのバスターは光を収束させる。 「その未来もお前も、あたしが踏み潰してやる!!」 「オデに、跪くが良い!! 弱者め!! うははははははは!!」 咆哮と、それに負けない少女の怒りの声が響き渡り――爆炎は、大きく膨れ上がった。
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第一話 時は21XX年・・心を持ったロボット「レプリロイド」と、人類の共存する世界。 ナイトメア事件から、既に三年の月日が過ぎていた。 事件の張本人「ゲイト」は、改心し、今ではイレギュラ-・ハンタ-専門の研究員になり、 その才能を十分に発揮していた。 そして・・ある日のこと・・。 「エックス!起きて!!」 そう言いながら、「第十七精鋭部隊隊長ロックマン・エックス」とペイントされた部屋のドアを開ける、 金髪の女性型レプリロイド「エイリア」 部屋の中では、ベッドの上で、多少幼さを残す、蒼い髪の少年。 「う~ん・・どうしたんだ!?エイリア。」 眠い目を擦りながらも、流石は隊長。 すぐにイレギュラ-・ハンタ-の顔になった。 だが・・ 「ゲイトが呼んでたわよ?なにか大事な用事があるみたい。」 サラリと言うエイリア。 エックスは、「そんな事で起こさないで欲しいな」と、一瞬思ったのだが、 とりあえず、ゲイトの研究室に向かう事にした。 「わかったよ。ありがとうエイリア。」 ゲイトの研究室 シュンと、自動ドアが開く。 現れたのは、ハンタ-の征服に身を包んだエックス。 「失礼します。それで・・何かあったのかい?」 第二話 「何かあったのかい?」 エックスは、奥でゴソゴソと何かをいじっている紫色のレプリロイド「ゲイト」に、 声をかけてみた。 「ん?やぁエックス君。やっと来たね!実は・・君に見せたい物があるんだ。」 ゲイトは、そう言いながら、何かの設計図が映し出された画面を指さす。 エックスは、言われるがままに、画面を覗き込んでみた。 「え~っと・・何々?」 そこに表示されていたのは・・。 「新ロックマン開発計画!!?」 一通り読み終えたのだろう。エックスが素っ頓狂な声を上げた。 「そうさ・・君とゼロのDNAデ-タを融合させて、 新たなレプリロイドを開発しようと思うんだ。」 ゲイトが、心なしか踏ん反り返りながら言う。 「・・・・。」 エックスは無言だ。 「そう・・今まで君とゼロが揃っていたからこそ、世界は大事には至らなかったけど、 今はそのゼロがいない・・。 だから、ゼロの代わりにって思ってね。」 「へ~・・。」 エックスは、「世界を大事に至らせたのは君もなんだよ」と、思いながらも、 その通りだと結論付けたらしく・・ 「そうか・・それなら・・。」 「それじゃあ・・早速・・。」 ゲイトの眼に、怪しい光が宿る。 {まさか・・。} 予感は的中した。 ゲイトは、怪しい足どりでエックスに接近してくる。 「えっ・・?ちょっ待っ!んぎゃぁぁぁぁぁ!!」 第三話 二ヶ月後 エックスは、再びゲイトに呼び出され、 ゲイトの研究室に向かっていた。 ゲイトの研究室 「失礼します。で?今度はどしたの?」 エックスは、またしても何かを弄っているゲイトに、声をかけてみた。 すると・・ 「ん・・?やぁ。やっと完成したよ。」 ゲイトは、そう言うと、部屋の隅に設置してあるカプセルを指さした。 「・・へぇ・・どれどれ?」 そう呟き、カプセルを覗き込むエックス。 中には・・薄い蒼色の髪に、ゼロを思わせる真っ赤なア-マ-の少年が、 まるで眠っているかのように、静かに眼を閉じていた。 その顔は、エックスよりも多少幼いが、彼に瓜二つだ。 「どうだい?君にソックリだろう?」 ゲイトも、カプセルに歩み寄ってきた。 「あぁ・・。」 「さぁ・・起動するよ。」 ゲイトは、カプセルのレバ-に手をかける。 心なしか、鼓動が強まる。 エックス自身・・生命の誕生を目の当たりにするのは初めてだからだ。 ヴィィィン 機械起動時の独特の音が響き渡る。 そして・・ 少年が、ゆっくりと目を開けた。 「気分はどうだい?」 ゲイトが声をかける。 「そういやゲイト。この子の名前って・・。」 少年をまじまじと眺めながら、エックスが問う。 「あぁ・・それのことなんだけど・・君につけてもらおうと思って。」 ゲイトは言う。 「え~・・?んっと・・。」 {名前かぁ・・この子の一生に関わることだからな・・。 そう言えば、この子って・・前ゲイトが言ってたけど、俺の弟って事になるんだよな・・? 出来ればこの子には、沢山の命を救って欲しいよな・・。 救う・・?救済・・?そうか!} 「・・セイヴァ-・・。」 エックスがふと・・呟いた。 「良し。君の名は・・セイヴァ-・・ロックマン・セイヴァ-だ。」 エックスは、そう言うと、セイヴァ-と呼んだ少年の頭を、優しく撫でた。 第四話 時刻は八時三十分 ここは・・エックスの部屋 「きろ・・起きろ。セイア・・・。」 「ん・・んん・・。あ・・起きます・・今起きます・・。」 そう眠い目を擦りながら、ベッドからはい出してきたのは、 この部屋のもう一人の住人であり、エックスの弟の「セイヴァ-」だ。 しかし、セイヴァ-では呼びづらいと言うことで、短縮して「セイア」と呼ばれているが・・。 「お前もイレギュラ-・ハンタ-になったんだから・・。朝八時には起きるんだぞ?」 そう・・まるで母親が子供に言い聞かせるような口調で、エックスが注意を促す。 「はぁ~い・・。」 不満そうに口を尖らせて、セイアが短く答える。 「でもまぁ・・最近はあんまりイレギュラ-が発生してないからいいけど・・。 シグマ大戦にでもなったら、お前・・生き残れないぞ?」 エックスは、セイアの額を人指し指で突いてからかう。 「それじゃあ、俺は、パトロ-ルに行ってくるから、部屋でおとなしくしてるんだぞ?」 エックスは、そう言い残すと、セイアの頭をポンポンと叩き、部屋を出て行ってしまった。 「ヴ~・・つまんない・・。」 はぁ・・と溜め息が一つ。 一時間後 シュン 不意に、部屋のドアが開いた。 エックスが帰室したのだ。 「ただいま・・っと。・・あれ?セイアぁ。」 いつもなら、出迎えてくれるセイアの姿が見当たらない。 エックスは、リビングの方へと移動してみた。 すると・・ 「あっ。兄さんお帰り・・。」 セイアは、気がついたように手を上げ、頬笑む。 なにやら音がする。 どうやら、TVがついているらしい。 「ん?何見てたんだ?」 頬笑み返し、TVを覗き込んでみた。 そこには・・ 「フロンティア学園入学式」 と、デカデカと表示してあった。 ”フロンティア学園”とは・・ 人間とレプリロイドが、共に学び会うことが出来る、有数の珍しい学校だ。 「いいなぁ・・学校って。面白そうじゃん。」 冗談まじりの一言。 しかし・・ 「・・行きたいか?」 「へ?」 第五話 フロンティア学園 中等部 ⅠーⅠ 「・・・・っと言うわけで・・今日から君達と同じクラスで勉強する事になった ”徳川 健次郎”君だ。仲良くな。」 担任の教師が、手早く紹介を済ます。 ”徳川 健次郎とは、学校に通う際のセイアの偽名である゛ 「えっと・・宜しくお願いします。」 慣れない口調で、短く挨拶し、頭を下げる。 「じゃあ徳川君の席はっと・・。」 教師が、開いている席を指で探る。 しかし・・教師が席を見つける前に・・ 「こっちこっち!」 一人・・手招きをする少女がいた。 「・・うん良し。丁度開いているな。徳川君。 クリスの隣に座りたまえ。」 「はぁ・・。」 セイアは、小さく答えると、手招きをした少女の隣の席へ向かった。 だが・・ 「クスクス・・。」 と・・小さな笑い声が聴こえた。 「・・・・・?」 セイアは、自身の足元に視線を送ってみた。 足だ。 良くある例だ。 転校してきた生徒を転ばせ、恥をかかせると言う、 イジメの初歩とでも言うのか。 しかし・・ ヒョイ さすがにそんな罠にかかるわけなど無く。 セイアはアッサリと足を避けて通った。 「・・・!?」 足を突き出していた生徒が、小さく驚きの声を上げる。 セイアはそれを見て、微笑を浮かべると、クリスと呼ばれた少女の隣の席へ鞄を置いた。 「宜しくね。徳川君。」 クリスと呼ばれている少女が、明るい笑顔を浮かべる。 背はセイアより一回り小さく、髪は金。肩まで伸びている。 顔は活発そうな印象を受ける。 「・・宜しく。」 セイアも小さな微笑みを浮かべた。 第六話 放課後になると、セイアの周りをクラスの女の子が取り巻いていた。 「ねぇねぇ。徳川君て、髪染めてるの?」 「いや・・これ・・地毛なんだ。」 セイアは、頬を人指し指で撫でてみせる。 「何人家族なの?」 セイアの隣に立っている少女が問う。 「二人。兄さんと二人暮らしなんだ。」 セイアの頭には、嫌になるほど自分に似、 優しく澄んだ瞳をした、蒼い髪の少年が浮かんでいた。 「へぇ~・・大変だね。」 そんな会話がなされている最中・・。 彼らとは対照的に、暗いム-ドを漂わせている二人がいた。 パッと見彼らには”不良”と言う形容詞がぴったりであろう。 一人はやけに短い制服で、髪を金に染めている。 もう一人は髪を赤く染め、彼と同じように短い制服を着ている。 「おい・・あの転校生・・生意気だな。」 「おぉ・・いっちょ締めてやるか。」 二人は・・そんな会話を交わしていた。 そして・・ 「さぁ・・帰るとするかな。」 荷物を少々乱暴に鞄に詰め込むセイア。 鞄を背負うと、上履きを履き替え、校舎を出た。 第七話 学校を出て、少し経った頃 「オイ!徳川!」 突然、後から声をかけられた。 「えっ?」 乱暴な言い方に、少々ムッとしたが、とりあえず振り向いてみた。 そこには、先程教室の隅でコソコソと話していた不良二人組みが立っていた。 「ちっと顔貸せや!」 不良の内の一人が言う。 通常の生徒の場合、彼らのなりにビビリ、すぐに逃げてしまうであろう。 しかし・・イレギュラ-・ハンタ-の・・しかもあのエックスの弟であるセイアには、 彼らなど恐るにたらなかった。 「なんか用?」 不機嫌そうに言ってみせる。 すると・・ 「なんだぁテメェ!転校生のくせして挨拶も無しか?」 不良の内の一人が歩み寄り、セイアの髪を掴む。 「痛っ・・!」 「それにこの髪・・なんだ?青なんかに染めやがって・・。」 「・・・痛ってなぁ!それに君達なんかに挨拶する義務なんかないじゃないか!」 不良の手を振りほどき、二人を睨み付ける。 「おぉ?おいフレッド。コイツ俺達とやりたいらしいぜ?」 「上等じゃねぇか。行くぜバシュ-ト。」 二人は、言うと同時にセイアに殴りかかってきた。 「!」 だが、 ガシィ 「な・・なに?」 「なんだコイツは・・!」 なんと、二人の拳は、軽々と受け止められてしまった。 「どうしたの?本気だしなよ。」 セイアはニッコリと笑ってみせる。 バッと二人はセイアの腕を振りほどき、 「くそ・・覚えてろぉ!」 情けない台詞を残し、去って行ってしまった。 「「逃げしなに 覚えて居ろは 負けた奴」だな。」 セイアは二人の背中に向かって呟いた。 第八話 翌日 フロンティア学園 中等部 ⅠーⅠ セイアは今日も学校に来ている。 「あっ、オハヨ-徳川君。」 クリスは、セイアを確認するなり声を上げた。 「あぁ・・おはよう。」 慣れない様子で、頬笑み返すセイア。 キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン 始業のチャイムが鳴った。 「げっ!もう授業!?」 セイアはハンタ-ベ-スから通っているので、 どうしても少し遅れ気味になってしまうのだ。 セイアは慌てて鞄の中の荷物を取り出すが・・ ガララ そうしている間に、担任の教師が教室に入ってきた。 「コラ徳川!とっとと席に着け!」 「はぁい・・。」 クラス中が、ドッと笑いの渦に巻き込まれた。 放課後 学校を出ようと、校門に差しかかったとき、 門の前に、セイアより二回りは大きいであろう巨漢が立っていた。 {高等部の生徒かな・・?} そう思いながらも、校門に足を掛けたセイア。 「青色の髪に翠の瞳・・君が徳川君かい?」 突然・・男が声をかけてきた。 「・・・・?」 「そのようだな・・。俺は高等部ⅢーⅣの”片桐 悟{カタギリ サトシ}” この学園の番を張ってるもんだ。」 「そのサトシが・・僕に何のようですか?」 とりあえず先輩と言うわけで、敬語を使用することにした。 「まぁその前にコイツを見てもらおうか?」 ブン サトシと名乗る男は、そう言うと、セイア目掛けて何かを投げつけてきた。 「!?」 やけに大きいとおもう。 その大きさは、セイアの背丈ほどある。 それは・・ 「う・・うぅ・・。」 人だった。 第九話 人だった。 しかも・・昨日セイアに絡んできた不良の内の一人だ。 「昨日・・俺の子分を可愛がってくれたそうじゃねぇか・・。 お礼は・・しなくちゃな!!」 サトシはそう言うと、突然殴りかかってきた。 「!!」 だが ヒュン 「なに!?」 サトシの目には、セイアの姿が掻き消えたように見えた。 すると・・ 「何を言ってんだ!!僕はそいつに何もしちゃいない!!」 声はサトシの後方から聞えてくる。 「・・!?」 サトシが振り返ると・・そこには紛れも無くセイア本人が立っていた。 そう・・セイアは瞬間的に飛び上がると、サトシの後方へ回ったのだ。 「フッ・・確かに君は何もしていない。 だが・・俺達不良はな!!ケンカで舐められちゃお仕舞いなんだよ!!」 ゲシ 「ぐっ・・。」 サトシはそう叫ぶと、足元に転がっている先程の不良に、 更に蹴りを入れた。 その行動に、セイアの何かが切れた。 「き・・貴様!!そいつはお前の子分じゃないのか!?」 「ほぉ・・?徳川君。それとも何か?俺とタイマン張ろうって言うのか?」 サトシは明らかに誘っている。 しかし・・セイアにとっては何てことは無い。 「あぁ!やってやる!!」 セイアが上着を脱ぎ捨てる。 「では行くぞ。徳川・・健太郎!!」 ブン 不意にストレ-トパンチがセイアを襲う。 「健次郎だ!!」 セイアはパンチを受け流すと、その状態のままブロウを放った。 しかし・・ 「ふん!」 ブロウを軽く回避したサトシは、更に膝蹴りを放ってきた。 第十話 ドゴォ サトシの蹴りが、セイアの腹部に食い込む。 「どうだ!」 「これが・・どうしたぁぁ!!」 グググググ 「なっ!?」 サトシの膝が押し戻される。 なんと・・セイアは既に左手で防御していたのだ。 「だりゃぁぁ!!」 膝を完全に押し切りバランスを崩す。 そこにパンチを一発・・二発・・三発。 マシンガンの如きセイアのラッシュが、サトシに浴びせられる。 ドガァァ セイアの強力なブロウによって、サトシが後方へ吹き飛ぶ。 「ハァ・・ハァ・・。」 セイアはゆっくりと荒くなった息を整える。 「くっ・・この野郎・・!」 立ち上がるが、サトシの顔には血が滲んでいる。 「まだ・・やるって言うのか?」 セイアは冷徹に言い放つ。 -この野郎・・。何故だ?この俺よりも強いのか? 有り得ねぇ・・俺は今まで誰にも負けたことがねぇんだ。 こんな奴に・・。 そして・・サトシは自らのプライドを捨てた。 「くっ・・フフ・・野郎共ぉぉ!!」 ガサガサガサ サトシが叫び、右手を上げると、どこに隠れていたのか、 大量の不良が一気に出現した。 「やっ・・やべぇぇ!!」 「やっちまぇぇ!!」 サトシの号令と共に、大量の不良が一気にセイアを襲った。 ドガッ 襲いかかってきた不良を蹴散らし・・ 「おい!逃げるよ!」 ボコボコにされた不良を背負うセイア。 第十一話 数分後 とある公園 「ふぅ~・・やっとこそ捲いたぁ・・。」 セイアは一息つくと、背負っていた不良をベンチに降ろした。 「てめ・・なんで助けやがった・・。」 不良が苦しそうに言う。 「僕?あぁ・・ただ・・何と言うか・・放っておけなかったんだ。 で・・傷は大丈夫?」 「なんで・・俺なんかを・・。」 「だぁからぁ。放っておけなかったんだって。」 セイアは、腰に手を当ててみせる。 「・・・・・。」 「ん?どうしたの?」 不意に沈黙した不良に、セイアが問いかける。 「なんで・・俺なんかを・・・。」 「はぁ・・。わかったよ・・。 邪魔だって言うのなら消えますよ・・。」 セイアは溜め息を一つつくと、鞄を背負い、その場を去って行ってしまった。 「変な・・奴だな・・。」 不良~フレッド・ミルド~は、立ち去っていくセイアの背中に向かって、そう呟いた。 数時間後 ハンタ-ベ-ス エックスの部屋 「ねぇ・・兄さん。」 「ん?どうした?」 夕食の用意の為、エプロン姿のエックスに、セイアが声をかける。 「不良と友達になるって・・難しいね・・。」 「ハハ・・なんだそれ?ほら。晩メシ出来たぞ。」 第十二話 翌日 エックスは、第十四地区のパトロ-ルをしていた。 「今日も平和だなぁ・・。」 のんびりと街を歩くエックス。 もはやパトロ-ルと言うより散歩である。 鼻歌を歌いながら街を歩いていると・・ ドゴォォォン 「!!?」 突然、何者かの手によって、付近のビルが爆破された。 「なに!?」 直ぐ様ア-マ-を装備し、逃げ惑う市民たちを誘導するエックス。 「キャ-!」 「イレギュラ-だ!!」 「落ち着いて!落ち着いてください!!」 数分後 市民たちが完全に避難し終えた。 「グォォ!!」 爆破されたビルの上では、イレギュラ-と思われる影が咆哮している。 エックスはバスタ-を構えたが・・ {いや・・こんな所でバスタ-はマズい・・。接近戦で倒さないと・・!} 「グォォ!?」 イレギュラ-は、エックスを確認するなり、襲いかかるように飛び降りてきた。 ヴァイン エックスは、肩に収納していたゼット・セイバ-を抜いた。 「グルォォ!!」 イレギュラ-が猛スピ-ドで襲いかかってくる。 「くぅ・・!」 余りのスピ-ドに、肩を掠ってしまった 肩から少量の鮮血が滲む。 イレギュラ-は反転し、再びエックスに襲いかかってきた。 だが・・ 「喰らえ!」 ザン ドォォン エックスがセイバ-を横に一閃すると、イレギュラ-はいとも簡単に真っ二つになり、 爆裂した。 「ふぅ・・。」 エックスは一息つき、セイバ-を納めた。 「さぁて・・パトロ-ルの続きと行こうかな・・。」 ドゴォォォ 「ぐぁ!!」 歩き出そうとしたエックスを、何者かのエネルギ-弾が襲った。 「な・・に・・?」 エックスの身体が力無く仰け反る。 そして・・エックスの視界に、自分ーを撃ったであろう人物が入った。 「お前は・・VA・・V・・。」 第十三話 その頃セイアは・・ フロンティア学園 中等部 ⅠーⅠ いつものように登校していた。 「オハヨ-徳川君。」 「おはよう。」 隣の席でクリスが頬笑んでいる。 「オスッ!徳川。」 そして・・そう陽気に声をかけてきたのは・・ 「・・・いっ?まさか昨日の・・。」 「ああそうだっけ。名乗ってなかったな。 俺の名はフレッド・ミルド。 昨日は助けてくれてありがとうな。」 そう・・昨日サトシにボコボコに痛めつけられていた不良フレッドである。 しかも、昨日までの不良ルックでは無く、どこにでもいるように普通の学生の格好をしている。 髪も黒髪だ。 「・・あ・・あぁ・・。宜しくフレッド。 僕は徳川 健次郎。ってもう知ってるか。 ハハ・・。」 「ハハハ。」 そして一時限目 {ふぅ・・勉強も大変だなぁ・・。} 授業を聴きながら、ぼんやりと思うセイア。 だが・・・ 「!?む 突然・・どこからか凄まじい殺気を感じた。 背筋の凍りつくような・・そんな感覚。 「クリス!伏せろ!!」 反射的にクリスを伏せさせるセイア。 ドゴォォォン 次の瞬間、セイアの座っていた机が木っ端微塵に吹き飛んだ。 「・・!誰だ!!」 セイアは、エネルギ-弾を放ったであろう人物に向かって叫ぶ。 「ハッハッハッ・・こんな不意打ちは屁でもない。か・・。」 赤いモノアイに、紫色のア-マ-。 肩には明らかに戦闘用のキャノンが搭載されている。 ザワザワザワザワ クラス全体が、混乱の渦に巻き込まれる。 「・・・っ!!」 セイアは無言で睨み付ける。 「まぁそう睨むな。貴様に朗報を持ってきた・・。 貴様の愛しい愛しい兄貴は捕獲させてもらった。 助けたくばZーY13地点まで来い。 待っているぞ!ROCKMANの血を引く者よ! フッハッハッハッハッ!!」 男は、そう言い残すと、ワ-プ装置で姿を消してしまった。 第十四話 「お・・おい徳川・・。ロックマンの血って・・?」 フレッドがゆっくりと歩み寄る。 「・・・・・。」 セイアは無言で振り返る。 「みんな・・僕のせいでこんな危険な目に遭わせてしまって・・本当にゴメン。 でも・・僕は行かなくちゃいけないんだ。 僕の兄”ロックマン・エックス”を助けるために・・。」 言ってしまった。 自分がエックスの弟で有ることを・・。 「ハ・・ハハ・・冗談じゃないよ。 なにが徳川 健次郎だ!ふざけるのも大概にしろよ! お前なんかがいたら・・俺達が危険じゃねぇか!」 クラスの中の一人の男子・・先日、フレッドと行動を共にしていた「バシュ-ト」が叫ぶように言い放つ。 セイアは・・ただ俯くことしか出来なかった。 「あんた・・。」 クリスが男子に歩み寄り・・ パァァン 思いきり頬を張った。 「・・・・。」 男子は張られた頬を抑えて、驚愕の表情を浮かべている。 「だってそいつは・・。」 「いい加減にしなさい!!」 クリスが叱咤する。 「徳川君はね・・私を命賭けで助けてくれたのよ? もしそれがあなたでも・・そう言うことが言える?」 「クリス・・。」 クリスのその行動に、セイアは嬉しかった。 一人でも自分に味方してくれる人がいてくれることが・・。 「そうだ。徳川はなぁ・・。友達でもなかった俺の為にサトシに立ち向かっていったんだぞ!? 徳川。お前がエックスの弟だろうと何であろうと・・俺に・・俺達にとっては、 お前は徳川 健次郎以外の何者でも無いぜ?」 フレッドが優しく頬笑む。 「そうだ!」 「そうだよ!!」 その言葉に、クラス全体が同意の声を上げる。 「クリス・・フレッド・・みんな・・。」 セイアの目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。 「ありがとう・・じゃあ・・行ってくるよ。」 セイアは涙を拭い去ると、開け放たれた窓に足をかけた。 「必ず戻ってこいよ!今度は勝つからな!」 「ああ・・。約束する!」 セイアは、ビシッと親指を立てると、ZーY13地点へと向かった。 「なんで・・。」 教室の隅では、バシュ-トが殴られた頬を押さえ、床にうずくまっていた。 次回予告 謎の敵に捕獲されてしまった、兄”エックス”。 僕は兄さんを救うべきZーY13地点に向かうのだが・・・。 次回「ロックマンXセイヴァー改訂版第弐章~突入~」
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ロックマン ロックマン 【ろっくまんろっくまん】 ジャンル アクション 対応機種 プレイステーション・ポータブル 発売・開発元 カプコン 発売日 2006年3月2日 定価 4,800円 廉価版 BestPrice! 2008年10月30日/2,090円バリューパック(*1) 2009年9月17日/2,990円 配信 2009年12月16日/1,500円 判定 良作 ポイント シリーズ1作目のリメイクロックマンメーカー見た目とは裏腹に高難易度 ロックマンシリーズ 概要 ストーリー 特徴 評価点 賛否両論点 問題点 残念な点(軽度の問題点) 総評 余談 概要 シリーズ1作目『ロックマン』のリメイク作。 グラフィックの全面3D化、キャラクターが2頭身かつコミカルポップなデザインと、見た目は大きく変貌。 しかし稲船氏をして「ファンなら絶対持ってないとあかん」とまで言わしめた作品であり、売上げは今一つだったが、内容自体はプレイヤーから大絶賛を受けた。 ストーリー 西暦20XX年、ロボットと人類が共存する未来。ある日、ロボット工学の第一人者ライト博士の研究所を謎の科学者Dr.ワイリーが襲った。ワイリーは世界征服のため、ライト博士のつくったロボットたちを攫っていったのだ。家庭用お手伝いロボットであったロックは、みんなを助け出すため戦闘用ロボットに改造してもらう事を望んだ。こうしてDr.ワイリーの野望を砕くため、ロックマンの戦いがはじまったのだった。 特徴 キャラは2頭身で3D化。『ロックマンDASH』を髣髴とさせるかなりポップなデザイン。 原作のステージ構成やサイズ比を再現した「OLD STYLE」と完全新規の「NEW STYLE」から選んで遊べる。 「NEW STYLE」の特徴 新ボスキャラクター「タイムマン」「オイルマン」を追加。弱点武器も変更(ガッツマン、アイスマン、ボンバーマン、エレキマン。「OLD STYLE」では原作どおりの弱点)。 オープニングステージが追加。 ステージ開始時に難易度を3段階から選択可能。 アクションゲームが苦手な人やロックマンシリーズ初心者にも遊びやすい「らくらく」から、往年のファンにも歯ごたえ充分な「そこそこ」「きつきつ」まで。 ボスキャラクターをロックバスターだけで倒すと、「討伐」ではなく「救出」したという扱いになり、そのボスをプレイヤーキャラとして使用可能になる。 『ワイリーが連れ去らなかったのが「ロック」ではなかったら?』というパラレル展開で、各ボスが主人公の別モード扱い。 この際、タイトル名のうち後ろの方の『ロックマン』が選んだキャラクターの名前に変化する(例えばカットマンを選択した場合、『ロックマンカットマン』となる)。 ボス自身が所持している特殊武器を使用可能。またそれとは別に、ボスごとに独自の限定アクションが使用でき、それを利用しなければ入手できないアイテムもある。 ボス自身のステージを攻略する場合、ステージボスとしてニセロックマンが登場する。 ボスと対峙した際に会話デモが挿入される。 キャラクター別に会話が用意されており、豊富な展開が楽しめる。 特定の条件を満たすことで解禁される隠しキャラクターがいる。 もっとも手間のかかる隠しキャラ(チャレンジモード制覇で解禁)は無料DL配信がされている。 DL配信専用の「ロールちゃん」に至っては衣装別10キャラ以上(性能・会話デモ等の変化はなし)。 + 「NEW STYLE」の追加ボスと特殊武器 タイムマン タイムスロー 一定時間、自分以外の動きを遅くする。一部の敵にはダメージ オイルマン オイルスライダー 放物線状に油球を放つ(威力は極小)。床に落ちた油溜まりに乗ると突進して攻撃 チャレンジモードの追加 全100ステージ。ステージごとの課題をクリアしながらゴールを目指す。 カプコンのアクションゲームに慣れた人でも全制覇は本当に難しい。 コンストラクションモードの追加 本編中で入手したアイテムを使って自由にステージを作成できる。 作ったステージはネットワークを通じて配信可能。 他の人が作ったステージをDLして挑戦することもできる。 初期ライフや使用可能キャラクター、ステージボスなどかなり細かく作れる。 評価点 豊富なボリューム 「OLD STYLE」10ステージ、「NEW STYLE」36ステージ(ステージ数12×3難易度)、チャレンジモード100ステージという、圧倒的なボリュームを誇る。 そして極めつけは何といっても、自分でロックマンのステージが作れるコンストラクションモード。 自分で作ったステージはボリューム無限大であるのは言うに及ばず、意外なところでは後述の鬼畜ギミックや8ボスの練習台としても使える。 上述のコンストラクションモードにて作られた公式のエクストラステージを、Wi-Fiを通じて大量にダウンロードできる。 ロックマンで挑む各ボスの超高難易度「アルティメット」ステージ 各ボス専用の「マニア」ステージ(それぞれ2個ずつ) それ以外にも有志の作った高い完成度のステージも自由にダウンロード可能。以下は「殿堂入り」ステージの一例。 『2』のクイックマンステージの再現、ロールちゃん専用ステージ、迷宮ステージ、全キャラがそれぞれ全く違う個別ルートで攻略できるステージ、全自動ロックマン ともすればこれの先駆けとも言える。 オリジナルでは意味のなかったスコアが、ステージと難易度ごとにクリアタイムと共に記録されるようになった。 スコアはクリアタイムによって増減するが、ステージごとに設定されたタイムよりも遅いとスコアが減らされ、あまりに遅いとスコアは0になってしまう。 このため、ハイスコアを狙うには効率よく敵を倒すことが求められ、ちょっとしたやりこみ要素となっている。 ボンバーマンの特殊武器「ハイパーボム」の性能改善 オリジナルでは非常に使い勝手が悪く、弱点となるガッツマン以外には使う必要がないほどだった。 本作では爆弾自体にも当たり判定がついた事でようやく普通に使える武器となった。 性能面とは関係ないが、コンストラクションにはハイパーボムの爆発で切り替わるスイッチとそれに連動するブロックがあり、ステージ製作の幅を広げるのに一役買っている。 一方、同じく使い道に乏しかった「スーパーアーム」にはこれといった性能改善はないものの、該当ブロックを「サンダービーム」で壊せなくなった事で差別化には成功している他、ガッツマン使用時に限りブロックを生成する事が可能になりこちらもアレンジが施されていると言えよう。 オープニングで本家『1』のプレイ動画が流れる等、演出も凝っている。 更にフルボイス。ワイリーステージのボスキャラ達にまで声が付けられている。 ボイスが付いたことによって、各ボスの個性が一層はっきりすることになった。 賛否両論点 コミカルかつ現代風のポップなタッチに変化したキャラクターデザインは、元のシリーズのファンなどから賛否両論が巻き起こった。 もとより原作自体がコミカルで漫画的な温かみのあるデザインワークを特徴としていたが、旧作のタッチからがらりと変わっている。 「OLD STYLE」を選択してもアレンジ版のグラフィック。 ベタ移植でいいのでFC版をそのまま移植してほしかったプレイヤーは多いが、既にベタ移植がPS版で出ていたのであえて被らない様にした可能性が高い。 しかし、ボンバーマンステージのグラフィックは「NEW STYLE」のBGMに合わせたものになっており、原曲とは非常にミスマッチ。 そしてワイリーステージのボス戦の一部が本家『1』とは仕様が異なっている。 特に顕著な例として挙げられているボスは「ワイリーマシン1号第二形態」。同ボスは原作では弱点武器は特に存在しなかったものの、攻撃を当てた際の無敵時間が存在しなかったためか多段ヒットするローリングカッターやサンダービームで攻撃するのがセオリーであったが、本作のワイリーステージのボスの大半は後期シリーズ同様の無敵時間が存在している仕様のためか弱点が完全に「無し」になってしまい、ロックバスターで無駄に高い体力をチマチマ削る事でしか有効な攻略法が存在しない非常に面倒なボスと化してしまった。初代ロックマンのラスボス第2形態はダメージ仕様と弱点武器の関係で実質的に消化試合的な存在だったものの、本作での無敵時間の追加によって一転しラスボスに相応しい実力になった…と言いたい所だが、ラスボス第2形態の行動が「左右に加えて上下にも移動する様になり、画面全体を浮遊移動する」というNEW STYLE準拠のワイリーカプセルじみたパターンに変更された。このためか攻撃を当てることさえも難しくなってしまい、結局面倒なボスということに変わりはない。 またコピーロボットも原作では素早い動きでプレイヤーを翻弄する強敵の一体であったが、本作の「OLD STYLE」版では開幕から全く動かずにバスターをひたすら連射しているだけでハメが完成してしまい、結果シリーズ最弱ボスの一体に名乗れるレベルになってしまった。 バスターや敵の通常弾が壁を貫通しない(NEW STYLEと同じ仕様)。 この仕様変更に伴い、攻略難度が大幅に易化しているシーンが存在する。ボンバーマンステージが顕著で、元々通常弾が多かった傾向があったのに対して、本作は地形が通常弾を防ぐ仕様のためか、ステージを代表する難所であった後半のマンブー+狭い足場のエリアが、ダメージ無敵時にトゲを無効化する後期シリーズと同様の仕様に変更された事も相まって空気化。只でさえも難易度が低かった同ステージの難易度が更に低くなる事に。 バスターの仕様変更に伴い、敵配置が変更されたシーンも存在する。エレキマンステージでは、原作では壁のあるエリアで上下に雑魚敵が沸くシーンが存在していたが、本作ではバスターの仕様変更に伴い雑魚敵が消滅し、単に通過するだけの不自然なエリアになってしまった。 ハイパーボムの不可解な仕様 OLD STYLEでは接触ダメージが消滅し一見すると原作準拠の性能になったかに見えるが、ブロックに弾かれる能力はNEW STYLEと同じ。 ハイパーボムがこの仕様のため、ガッツマンを弱点武器で攻略する場合は持ち上げるブロックにハイパーボムが弾かれてしまうせいか原作以上に当てづらく、これによりガッツマン戦の難易度が上昇してしまった。 NEW STYLEでは、使い勝手が良くなった一方で、相性が悪いカットマンの他に、何故かタイムマン(*2)もこれに耐性を持っているため、やや割りを食っている。 ザコ敵を撃破するとリアクションの後爆発するようになった。 このリアクションの時間が結構長く、撃破してから爆発消滅するまでにタイムラグが生じる。一応リアクション中に触れても大丈夫なのだが姿が残っているので倒せたのかどうなのかわかりにくく次に進みづらい。 原点回帰したアクション性だが… 本家やXシリーズに存在したチャージーショットやスライディング、ダッシュといった要素は今作では(隠しキャラを除いて)ない。 操作そのものは単純化されたが、特殊武器以外の強化要素、E缶などの常時使用アイテムも無しと抜け道も極力排除され、純粋なプレイヤーの腕が試される硬派なプラットフォーマーゲームに仕上がった。 単純な原点回帰では無く、Xシリーズから逆輸入された機能「ステージのエスケープ」や、全てのアイコンが表示されて選択しやすいワンボタンによる武器選択も搭載、難易度選択によるハードルの低さ、操作性やプレイスピードも最適と呼べる物に仕上がっておりとっつきやすさと遊びやすさもしっかりと考慮されているように見える。 ただし、以下により「難易度が上がりすぎている」部分も見られる。(以下は、難易度「そこそこ」で見られる事象) ボスに与えられるダメージが低下(*3)、一部ボスにあったダメージ時のノックバックは弱点武器のみ、8ボスが体力半分以下で必殺技使用など、原作より大幅に強化されている。それでいて、ワイリーステージのボスラッシュは原作と同条件(E缶無し・ボス討伐時のライフ回復無し)であるため、鬼畜ステージと化してしまった(*4)…にもかかわらず、チャレンジモード内の「ボスラッシュ」系の物ではボスを撃破するとライフ回復が出現する(*5)という従来通りの仕様。通常モードでもこれを採用すれば良かったのでは? こちらを的確にミスさせようとする敵やギミックが配置されていることや、落下・点滅する足場など、足元が不安定な状態でのアクションを余儀なくされるエリアが多くなっている。 特にワイリーステージ4の移動リフトはジャンプのタイミングにコンマ1秒レベルの正確さを要求される(無論、失敗すれば即死)。ギミック単体の難易度としては間違いなくロックマンシリーズ最難関(*6)。 それでいて、原作では使えたマグネットビームが廃止されているため、アスレチック面での救済要素は無し。 ビッグアイの移動速度鈍化(*7)、梯子移動のスピードアップ、中間ポイントの増加など、幾分か易しくなった部分もあるが、トータルで考えると難易度は「そこそこ」でもシリーズ最高難易度とされる原作を上回っており、難易度が「きつきつ」だと敵の移動スピードが上昇したり、8ボスは最初から必殺技使用&弱点武器のノックバック消滅など、敵が概ね強化される。 アレンジになった、絵がポップになったからといって舐めてかかると痛い目を見ることになり、初心者お断り感が否めない。 難易度上昇による弊害 上記の難易度上昇に伴う問題点として、コンストラクションモードで使うパーツが影響していることが挙げられる。 パーツの過半数は、難易度「そこそこ」をプレイしないと入手不可能 一部のパーツは、難易度「そこそこ」をクリアしないと入手不可能(*8) つまり、コンストラクションモードのパーツをフルで揃えるには、(鬼畜)難易度「そこそこ」のクリアを余儀なくされるのである。 一応、既存のパーツでもステージ製作は可能だが、難易度「そこそこ」で入手できるパーツより使用できるギミックや敵キャラの種類が明らかに劣っているため、不足している感は否めない。 問題点 処理落ちが激しく、画面内にキャラクターが多くなると異様に処理が遅くなる。 コンストラクションモードでアイテム数が過密になると顕著。ただしプレイに支障が出る事はあまりない。 PS Vitaでプレイした場合は殆ど処理落ちは発生しない。 基本的にステージやボスの構成がロックマン優位なため、一部キャラでプレイすると難易度が飛躍的に高まる。 特にガッツマンは1回攻撃するために「ブロックを生成→持ち上げ→投げる」と3拍子必要な上に、攻撃の範囲が目の前と下方向をカバーしていない。さらに床が狭かったり、一部を除く敵や弾に生成中のブロックが接触したりすると生成も満足にできない。地形や高低差などで敵に攻撃を当てる事が一切出来ず、ダメージ覚悟のごり押しプレイになりがち。 一度投げれば高い攻撃力に加え防御を貫通できる敵も多く、積み上げてバリアや足場に代用できるといった利点もある。 因みにガッツマンは唯一自分の特殊能力で自殺出来るキャラでもある(*9)。中間地点を通ったもののHPが少ないのでリトライしたいが近くに敵や棘がない、という限定された状況下でしか役に立たないが。 ボスをプレイアブルキャラとして使ったとき、そのキャラの弱点武器を使用するボスに対しては、一度の攻撃ではダメージが1しか与えられない。当然そのボスの攻撃を食らうと大ダメージを受けるので、自分の弱点ボスと戦うのは厳しい(*10)。 難易度「そこそこ」以上のワイリーマシーン第2形態は、各ボスの攻撃をランダムで使用する代わりにそのボスの弱点が付加される設定となっており、弱点を突くことが前提の強さになっている(弱点を突かない限り回避不能な突進攻撃など)。当然一種類しか攻撃方法を持たないボスキャラでは不利(ただしボス使用時は突進は使用してこない)。 関連して、難易度「そこそこ」時はワイリーマシーン第二形態がオイルマンをコピーした攻撃が異様に避けにくい。短い間隔でフロア全体が油まみれになる程のおびただしい数の油滴を撃ってくる上、設置型のトラップとしてしばらく地面に残り、ダメージもそこそこ。この攻撃の頻度次第で難易度がかなり変わってしまう。 逆に通常武器が強力なファイヤーマンやエレキマン、アイススラッシャーで敵をいくらでも足止め出来るアイスマンは、ロックマンより有利にプレイ出来る場面が多い。 総じて上級者向けとされるボスキャラ同士の格差もそれなりに大きく、特に新キャラ「オイルマン」は輪をかけて圧倒的に弱い。 オイルを1発放つ通常攻撃は、飛距離も無く放物線を描くために敵に当てることが難しい上に威力も低い(ざっとロックバスター1発の半分しかない)。かつ床にオイルが着弾すると、床のオイルが消えるまで通常攻撃を撃つことができない。 この威力の低さが原因でボス戦は長丁場になったり、作業感で中弛みしやすくなる。最初から最後まで同じ事の繰り返しになるイエローデビル戦は特にこの酷さが顕著となる。 床に付着したオイルに敵が接触すると小ダメージ。自分が乗るとオイルをサーフボードのように変形させて前方に突進するが、無敵にはならない(*11)ので、自分がダメージを受けないように敵にダメージを与えるのは慣れないと難しい。 特にオイルスライダーが弱点となっているエレキマンに同武器で大ダメージを与えるには、サーフィン状態で当てないとならず、慣れないと弱点武器なのに苦戦する。 唯一の評価点は、オイルマンの特殊技「オイルスライダー」がロックマン使用時のタイムアタックに非常に有用なことくらいか。しかし肝心のオイルマン本人は完全にネタキャラのロールちゃんよりも使いにくい。 残念な点(軽度の問題点) コンストラクションのテストプレイを終了するボタンがスタートボタンになっている。 このため、テストプレイ時はLとRでないと特殊武器の切り替えが出来ず、さらにポーズも出来ないなど、地味に不便。セレクトボタンではダメだったのか…。 コンストラクションにおいては、以下の制約がある ボスラッシュステージは制作不可能。 ステージBGMは背景パーツに依存するため、指定不可能。 1画面に配置できるギミックや敵キャラの数には制約がある(敵キャラは平均2~3体までしか設置不可)。 ステージボスには、ワイリーステージのボスは指定不可能。 ステージボスの部屋は弄れない(*12)。 総評 シリーズ元祖である初代ロックマンは質は高いながらも粗削りな部分が多かったが、それを補う形でリニューアルし、新要素も加えた本作の存在意義は大きい。 プレイした人からは概ね好評だが、(特にシリーズ経験者から)見た目で敬遠される不遇な作品といったところ。 発売された時期もPSPが普及し切っていない頃と非常に悪く、前作に当たる『イレギュラーハンターX』と同じ憂き目に遭う結果となってしまった。また当時はロックマンシリーズがほぼ終息状態で、突発的に出された初代のリメイクと言うのも更なる追い討ちとなったと思われる。 その点だけが悔やまれるものの、遊びきれないほどのボリュームを備え、原点回帰しつつ遊び易く配慮されているので長く楽しめる。 コンストラクションで作成されたステージも大量に配信されているので、ぜひ遊びつくしてみていただきたい。 余談 『イレギュラーハンターX』とセットのバリューパックが存在するが、何故か単品のものと完全に同じ内容ではなく、セーブデータに互換性がない。 「ロックが改造を自ら志願する」という設定は『4』での設定変更に基づくもので、オリジナル版『1』のバックストーリーではライト博士が本人の意思とは関係なくロックを改造している。 稲船氏によると本作を皮切りに『2』『3』とリメイクをしたかったらしいが、本作の売上が良くなく実現しなかったとらしい。 今作の登場に影響されたのかどうかは不明であるが、後に発売された『ロックマンゼクス アドベント』にファミコン時代を彷彿とさせるミニゲーム『ロックマンα(アンティーク)』が収録された。 そして『2』をベースとして遊びやすさを改善し、原点回帰とシンプルかつシビアなゲーム性で名作となった『ロックマン9』と『ロックマン10』が後に発売された。そういった意味では、今作はロックマンシリーズのターニングポイントとなった作品なのかもしれない。 本作は海外でも発売されているが、オイルマンの体色が緑色に変更されている。 彼のデザインと体色の組み合わせが問題(所謂ステレオタイプ)になるためと思われる。 また、PSPのサポートが終了してからも「コンストラクションモード」のサーバを継続稼働させていた珍しいタイトルだったが、 2022年11月30日 にサービスが終了した。 あのマリオメーカーより長寿だったのである。 余談だが、2017年に新コースを投稿しているユーザーが存在していた。