約 1,234,669 件
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/654.html
レミリア15
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/643.html
レミリア4 6スレ目 199 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 「なあ慧音。明日辺りじゃなかったっけ? ほら、彼」 「ん? ……あぁ、そうか。もうそんなに経つのか。早いものだな」 ――んじゃ、よろしくお願いします。 ――なんでそこまでする必要がある? ――恥ずかしいんですよ、俺が。 「――扉?」 見回りと掃除を兼ねた仕事中、私は此処に来てから一度も見た事のない扉を発見した。 完全で瀟洒なメイド長である私が把握していない部屋など無い筈なのだが……。 随分放置されてきたのか、相当にボロい。なんとなく気になり、おもむろに扉を開ける。 ――ガチャリ。 さび付いている筈の扉は、いとも簡単に開いた。 そして、中に入り、何があるのか確かめようとしたのだが、 「……え?」 ――その瞬間、世界が、空気が、変わった。 たった今まで日が出ていたのにこの部屋は夜。月が部屋を照らし出す。 知らない部屋、知らない匂い、知らない感覚。 知らないけれど、私はこの感覚を識っている。 ここは紅魔館であって紅魔館じゃない。 時間を操作できる私だから判る。ここだけ時の流れから取り残されたかのような感覚。 本来色を持たない筈の大気はセピア色に染まり、私は外界から断絶される。 ここはさながら壊れて止まった時計の中。紅魔館の中にありながら、紅魔館からその存在を忘れ去られた場所。 警戒する私の前には、知らない男性。 ……誰かしら。この部屋の住人? ――誰が見てるかは知りませんが、お久しぶりです。もしくは初めまして? その場合はさっさと回れ右してください。面白いもんでもないんで。 その言葉で即座に理解する。 この部屋と彼は私と同じ時間軸に存在していない、という事を。 ――そこにレミリアは……いないよな? もしいたら今すぐ出てけ。 つーか今更お前に話す事は無い。お前に話すべき事は全部昨日話した。 ――コホン。見苦しい所をお見せしました。えー、知ってる人は殆どいないでしょうが、なんでも俺はあと1~2日の命だそうです。この映像撮ってる時から。 つまり、名も知らぬアナタがコレを見てる時には、俺はとっくにお陀仏してます。 ――出来れば、皆に直接会って言えればれば良かったんですが、諸々の事情と時間の都合によりそれは無理なんで、この映像を此処の住人への遺言? みたいな形で残します。 ――ちなみに、あんまり早く出しても俺が恥ずかしいんで、俺が死んだ後、とある人に50年ほどこの部屋を隠してもらう予定です。 とりあえず ここに住んでる魔女とか妖怪の皆なら、50年くらい大したことない時間だろうし。あ、死人が恥ずかしがるなとか言わないで下さい。男心は複雑なのです。 ――でももし、コレを見てるのが俺のことを知らない人だったり、紅魔館の住人じゃなかったら……もう一度いいます。今すぐこの部屋から回れ右して、この部屋に入ってからの一切の記憶を消去してください。 その際、紅魔館の住人にはこの部屋の存在については何も言わないで下さい。もう一度いいますが、男心は複雑なのです。 ――いいですか? ……んじゃ、始めますね。 少しの間を置いて、彼は訥々と語り始めた。 ――結果を言えば、ほんの少しの好奇心を持って聞いていたソレを、私は心から後悔する事になるのだが。 ――まず死因ですが、寿命です。この前の満月の日、妹様がちょーっと興奮しすぎちゃって、大変な事になりましたね? その時、ちょいとピンチに陥ってたレミリアを庇ったら下半身と右腕を吹っ飛ばされました(笑)。 死ぬほど痛かったです。死にましたが(笑)。やっぱ人間慣れない荒事はするもんじゃないですね。レミリアは無事だったんでよかったですが。 どうやら当時の彼はその場で死んだらしい。じゃあ彼は今、幽霊なのかしら? それにしても妹様の前に立つとか、命知らずにも程があるわね。むしろアホだわ。 でも、彼は「後二日の命」と言った。矛盾してるわね。 ――すぐさまパチュリーさんが回復に当たったしたらしいのですが、当然間に合わず、俺は9割9分死んだそうです。 ソレを聞いたとき、俺は妹様の圧倒的な破壊の力の中にほんの少しの優しさを感じました(笑)。 なるほど、蘇生したのね。妹様の直撃を食らって蘇生する、ってだけでも人間にしては随分頑丈みたいだけど……。 ――殆ど死んでた俺は詳しい事は知りませんが、それでも色々頑張ってくれたみたいで、俺は今ここにいます。 が、これから先の命の殆どを使っての蘇生だったんで、その分の寿命を持っていかれた。と言う顛末です。 流石人間。妖怪とは寿命も身体の作りも違います(笑)。 まあ、そんなものよね。所詮人間だし。 ――さて、本題ですが、俺が紅魔館で過ごした日々は、二十台の半分にも満たない俺の人生でしたが、その中で一番楽しく、充実した時間でした。 ――そんなわけで、俺がここでお世話になった方々に、一言ずつ言っていきたいと思います。 ――まず美鈴。いつもお仕事お疲れ様。カレーパンを渡した時、君に泣いて喜ばれたのは俺と君だけの秘密です(笑)。 ――次、パチュリーさん。偶には外に出ましょう。この前帽子に茸が生えてましたよ。 ――小悪魔こと、こぁ。悪戯は程ほどに。立派なレディーになる事をお兄さんは祈ってます。 ――メイド隊の皆さん。あんまり長い間じゃなかったけど、俺みたいな若輩者に付いてきてくれてありがとう。 ――最後に、妹様。……なにとぞレミリアと仲良くしてやってください。ああ見えて意外と寂しがりやなんで。 ――皆さん、俺は今、本当に幸せです。本当にありがとうございました。……そして、さよならです。 ……なーんて言うと、ちょっとカッコイイ感じがしませんか? ……それじゃ、本当に、さようなら。 どうやらこれでお終いらしい。大して面白いものでもなかったわね。本人も言ってたけど。 しかし、お嬢様を呼び捨てにしたり、何様なのかしらね。ここにいたら即ハリネズミにする所だわ。今度冥界にでも行こうかしら。 ……それにしても映像、終わんないわね。 目線を外して、やれやれと溜息をつく彼の姿。まだ映写機が動いてるのに気付いてないのかしら? ――はあぃ○○。 ――幽香か。空気読んで待っててくれたのはありがたいけど、とりあえず窓から入ってくんな。……って、このやりとりも、もう最後か。 これって……あの花の妖怪? なんで彼女が紅魔館に侵入してるのかしら。それも普通に窓から。いや、窓からは普通じゃないけど。 ――で、どうした? 風の噂でも聞いたのか? それとも天狗か? ――そんな所よ。……でもほんと残念。貴方と遊ぶのは楽しかったんだけど。……この際吸血鬼にでもなったら? とりあえず死なないわよ。日光とかは駄目になるだろうけど。 ――吸血鬼、ね。 ――嫌なの? やっぱり人間として死にたいとか? ――いやさ、今の遺言には入れてないけど、実は俺ってとっくに吸血鬼らしいよ? 蘇生の時、人間の命じゃ全然足りなくて、レミリアが俺を眷族にしたらしい。それでもこの有様さ。げに恐ろしきは妹様の破壊の力。ってね。 なにがおかしいのか、からからと笑う。 それにしても、お嬢様が眷属に? 彼、よっぽどのお気に入りだったのかしら。 あら? でも、もしそうなら……? ――……眷属になったんなら、主が死ななきゃ大丈夫なんじゃないの? ――そうなんだけど、俺の場合肉体じゃなくて、魂が死ぬんだってさ。パチュリーさんが言ってた。 ――…………。 「…………」 私の疑問と同様の質問をする彼女に、彼はとんでもない事を言ってのけた。 魂の死。それは消滅。何も無い。行き着く先は本当の闇。 冥界に行く事も無く、閻魔に裁かれる事も無い。 それは、とてもとても恐ろしい事。勿論その事も彼女も知っているのだろう。 彼は……怖くなかったのだろうか? ――ふうっ。……あーあ、死にたくねえなー。 ――っ! 「――っ!」 私の思考を読んだかのような一言に、思わず息を呑んでしまう。そんな事、ある筈が無いのに。 不意に、天井を見上げ、苦笑しながら、諦め気味にそう呟いた名も知らぬ彼。 飾り気も何も無い、思った事をそのまま口に出したのであろうその言葉は、これ以上無い諦観に溢れていた。 本当に、死にたくはないけれど。もう、彼は知っていたのだ。もう自分がどうにもならない事を。 ――あー、なんつーか、悪い。誰かがいると、どうも弱音を聞いてほしくなる。 ――…………っ。 ――どした? ……なんだおい。お前泣いてんのか? 自称最強の妖怪がたかが人間一人のために泣いてんのか? ――当たり前、でしょ……。たった一人の……大切な、……友達、……なんだから。 ――……そっか。さんきゅ。ま、皆と仲良くしろよ。無理っぽそうだけどな。 ――ぶつっ。 そこで映像は途切れた。 私の目の前にはボロボロの部屋。 映像の部屋の面影は、ほんの一欠片も無い。 心に一つだけ抱き、私はその部屋を後にした……。 ――――。 「お嬢様」 「何? 珍しく険しい顔して」 時間は巡り、今は夜。 私が部屋に付く頃には既にお嬢様は起きていた。 「お聞きしたい事があります」 「珍しい事もあるものね。……まあいいわ。今日は特別な日だし、なんでも答えてあげる」 「今日、とある部屋を見つけました」 「へえ?」 クツクツと面白そうに笑う。 お嬢様の事だ。大方私が何を言いたいのかも知っているのだろう。 ならばこれ以上無駄な前振りも必要ない。 「率直に聞きます。一体彼は何者なのですか?」 お嬢様が笑うのを止める。 その澄んだ瞳に移る感情は、私には読み取れない。 「……以前の執事長よ」 「執事長?」 予想外だった。 てっきり客かなにかと思っていたのだが……。 「そして、私が唯一大切にしたい、と心から思った人間でもある」 「……!?」 「ふふっ。やっぱり驚いたわね……。ほら」 私の驚きっぷりが予想通りだったのか、嬉しそうに何かの紙を投げて寄こすお嬢様。 音も無く私の目の前に落ちたそれを拾う。 「……」 それは、一枚の写真だった。 場所は……紅魔館のどこかだろう。 中心には満面の笑みを浮かべる例の彼と、赤い顔で膨れっ面をした、ウェディングドレスを着たお嬢様。お姫様だっこで抱きかかえられている。 横には手作りの粗末なブーケを持った、今とは違う幼い小悪魔と思わしき誰か。 その反対には美鈴と、彼女の頭の上に乗った妹様と、相変わらず本を読んでいるパチュリー様。 そして周囲には私の知らないメイド隊。 ……考えるまでも無い。昔の紅魔館の集合写真だ。 「……これは?」 「昔、小悪魔にせがまれてやった結婚式ごっこよ。まま事みたいなものだったけど、楽しかったわ。彼も、私も、皆も」 「……」 「……あの数年間は幸せだったわ。本当に」 そう月を見ながら微笑むお嬢様の手には、何時の間にかワインボトルと二つのグラス。 「咲夜。少し飲むわ。付き合いなさい」 「……かしこまりました」 私はそれ以上何も聞く事は無かった。聞きたい事はとうに聞いてしまったのだから。 因みに、そのワイン、普段私やお譲様が飲むモノと比べるととてもではないがいいものではなかった。 お嬢様曰く、今の幻想郷では滅多に手に入らない貴重品で、彼が事のほか好んだのだと言う……。 ─────────────────────────────────────────────────────────── ――50年だ。それ以上は待てない。 ――それで十分。あ、お前は偶に来てくれてもいいぞ? ただしあの酒が手に入った時だけな。 あの数日後、私は突然お嬢様に呼び出された。 「咲夜。出るわよ」 「……今日はどちらへ?」 「内緒、よ」 疑問を投げかける私にそう妖しく笑う。 その笑みが激しく気になるが、まあお嬢様の気紛れは今に始まった事でもないので何も言わない。 主の意向にそぐわないメイドなど、完全で瀟洒な従者の名が泣くというものだ。 とりあえず今日は晴れ。日傘を用意しなくては。 「……遅い」 「まあまあ」 門に差し掛かった私達を待っていたのは二つの影。 いつもは図書館に篭りっきりのパチュリー様と小悪魔だった。小悪魔はともかく、珍しい事もあるものだ。 そして何時の間にか、門の周りには知らない妖怪達が十数匹。……いや、私はその顔ぶれを知っている? 「小悪魔、フランは?」 「妹様は……どうしても行けないと」 「……そう」 残念そうに深い溜息をつくお嬢様。 今日出かける所には妹様も関係があるのだろうか? 「じゃ、美鈴。行ってくるわ。後よろしく」 「行ってらっしゃいませ」 珍しくお嬢様が門番に声をかける。私の知る限り、これが初めてじゃないだろうか? その時の門番は、いつものヘタレている彼女と違う、これもやはり私が初めて見る、真面目な表情をしていた。 そして何時の間にか、あんなにいた妖怪達はいなくなっていた。 ――――。 四人は行ってしまった。 私も一緒に行きたくはなかったと言えば嘘になる。 だけど、私には私の仕事がある。そう易々とここを動くわけにはいかない。 「よしよし。行ったな……」 「……」 やっぱり来た。白黒だ。 大方皆が出て行くのを見計らっていたのだろう。 私も随分と舐められたものだ。……いつもの事だし、仕方ないと言えば仕方ないが。 「よう中国。今日も通してもらうぜ」 「……他の日ならいざ知らず、今日は、今日だけは、何があってもここを通すワケにはいかないんですよねー。咲夜さんも行っちゃいましたし」 「はっ! 冗談。こんなチャンスを逃すほど私は人が良くないんでね。そっちの都合なんか知ったこっちゃない」 勿論そんな事は判っている。そんな事で引き返してくれるなら苦労はしない。 そして、彼女を打ち倒す事がそう簡単でない事も。 しかし、今日、お嬢様は私に後の全てを任せた。 ならば、私は持てる全力を超えてでも、お嬢様の信頼に応えなくてはならない――! 「それくらい、こっちも承知の上。だから……」 ――スッ。 「んなっ!?」 私が腕を上げるのと同時に、音も無く魔理沙を囲む私の昔の同僚達。 皆、最後に会った時から何も変わっていない。 今日この日、誰一人欠ける事無く集まってきた事を、私は心から喜ばしく思う。 ――彼は、弱かった。今の紅魔館を束ねる咲夜さんや目の前の白黒、紅白と比べると、彼女達が同じ人間なのか、と疑わしい程に。 ――だから、彼は自身を中心に私達の力を連携によって最大限に発揮し、生かす術を実践した。 ――結果は上々。あの妹様を相手にしてもお嬢様とパチュリー様が到着するまでの数分は持ちこたえられる、という驚異的なものだった。 ――そしてその日から、妹様相手に死者は出なくなった。 ――仕事仲間が誰一人欠ける事の無くなった、という事実に、彼は心から喜んだ。私達も、また同様に。 ――幾度となく繰り返した戦いの果てに手に入れたもの。それは、仲間という名の掛け替えの無い力であり、信頼という絆だった。 「いつも通り頭数揃えて、私に勝てると思ってるのか?」 「いつも通りの、面子なら、無理、でしょうね……」 (こいつ、泣いてる……?) 懐かしく、心地いい空気。 思わず溢れた涙に視界が滲む。 そしてそれに呼応するかのごとく、退屈な日常に色褪せた筈の私の魂が、本来の色を取り戻す。 本来その中心にあるべき彼はもういないけれど。決してあの時には戻れないけど。 彼からもらった仲間への信頼を胸に。力を拳に、弾幕に。私は、皆は、ただ込める。 楽しかった思い出の日々の体現に囲まれて、私はあの時の私に還っていく。 今日の敗北は絶対に許されないのだ。そう。大事な人々の信頼と、私自身の誇りにかけて。 皆と目を合わせる。覚悟と準備は万端。さあ、始めよう。 「……私は紅魔館が門番、紅美鈴!」 「あーあー、派手に口上なんか垂れちゃって」 「美鈴、慣れない事はするもんじゃないわよー」 ……茶化された。にも係わらず、それが心地いいと感じる自分がいる。 彼女達とは、彼を喪って以来会っていないのだから。 もし、彼女達が残っていたら……いや、詮無きことか。 「んじゃ、久々にお仕事と行きますか?」 「狼藉者を追い返す、素敵で野蛮なお仕事をねっ――!」 ――――。 紅魔館から飛ぶ事十数分。 到着したのは小高い丘。そこにあるのは粗末な石が只一つ。 そしてその前には……。 「向日葵?」 「……アイツも来てた? いや、来てるのか」 墓前に咲いた一輪の向日葵を見、感情を込めずに呟くお嬢様。 探ってみれば周囲には一つの気配。あの花の妖怪だ。 彼女ほどの猛者、とうに私達に気付いているだろうに、その場から動こうともしない。 「お嬢様。どうします?」 「どうもしないわ。彼女は彼の一番の友人なんだから。彼女は私の知らない彼を知っている。ふふっ……少し妬けるわね」 ――当たり前、でしょ……。たった一人の……大切な、……友達、……なんだから。 ――……そっか。さんきゅ。ま、皆と仲良くしろよ。無理っぽそうだけどな。 「……」 私はここにきてようやく合点がいった。 この前の彼だ。私が生まれるずっと前に私のポジションにいたという、お嬢様の恋人。 ということは、ここは彼の――。 「やっと気付いたわね、咲夜」 「レミィ。この子、彼の事知ってるの?」 「ええ。最近まで消失してた彼の部屋を見つけたのが咲夜よ」 「……そう。なら話は早いわね。今日は彼がこの世に生を受けた日であり」 「ここは50年前の今日、彼が私を置いて消えて逝った場所」 謳うように言葉を紡ぎながら、お嬢様はあのワインを石にかける。 私の横からは小悪魔の嗚咽。 あーあ、可愛い顔が涙でグチョグチョじゃない。 ――捧げしワインには去りし彼への慕情を。 ――かける言葉には万感の思いを。 「……誕生日、おめでとう」 ─────────────────────────────────────────────────────────── ――夢を見ている。 ――懐かしくて、楽しくて、そして……切ない夢。 さて、今日は此処ね。 湖の畔にある館、人呼んで「紅魔館」。 当主が吸血鬼だかなんだか知らないが、とりあえず気に入らないので虐めに来たのだ。 (誰だか知らないけど門番はザルね。裏からだと余裕じゃない。まあ私なら表でも余裕だけど) とかそんなどうでもいい事を考えていたら、裏玄関から誰かの声が聞こえてきた。 「……! ……!」 なにやら怒鳴っている。 甲高い声が耳にうるさい事この上ない。 (先客かしら?) 慌てて木の上に身を潜める。 って、何で私が隠れる必要があるのよ。今更出て行くつもりも無いけど。 覗く先に映るのは、一匹の氷精と、一人の人間。 「今日こそアタイはアンタ達に勝ってみせるわ!」 「お嬢様は只今お休みの時間ですが」 「だーかーらー! アンタ達だって言ってるでしょ!?」 そう言えば今は昼。確かに吸血鬼の時間ではない。 そんな事を忘れるとは、私も遂にヤキが回ったのだろうか? 「何がなんでも戦うと?」 「勿論! 今日こそギャフンと言わせてやるわ!」 「どうしても?」 「どうしても!」 ヘラヘラと張り付いた愛想笑いを浮かべる男。 ……そのすました顔、気に入らないわね。瞳に感情が無い分、余計に。 「では、ご要望にお応えして、僭越ながら私達がお相手仕ります……皆! 仕事の時間だ!」 ――パチン。 音高く指を鳴らす。それと同時に、何処からともなく十数の影が彼の周囲に現れる。 ……少しは出来るみたいね。勿論私には遠く及ばないけど。 そして気が付けば、その内の一人、赤い、そして長い髪をしたチャイナメイド(?)が氷精を睨んでいる。 他のとは明らかに違うあの服を見るに、彼女がリーダーなのかしら。で、皆の代表として何か言う、と? それにしても彼女、胸……大きいわね。 ――その時の私は、どんな青臭い罵声(例えば、この屋敷とお嬢様は私達が護る、とかそんなの)を浴びせるのかと楽しみにしていたのだが、 そのメイド(後に彼女が門番だと知る)の口から出てきた言葉は、そんな私の予想の遥か斜め上を行くものだった。 ――ぷっ。 「あは、あはははははは! ねえちょっと聞いた? “皆! 仕事の時間だ!”だって! しかも指パッチン! お、お腹いたい!! 死ぬ、これはいろんな意味で死ぬ!!」 「聞いた聞いた! そ、それにしても、隊長の言葉遣い違和感ありすぎ! 聞いてて鳥肌が立っちゃった!」 場は一瞬で爆笑に包まれた。緊張感も何も無い。 きっと今の私は、実に形容しがたい表情をしている事だろう。 しかし、隊長? 彼が? この中で一番弱いであろう、人間の彼が隊長? 「うおい! 折角人がかっこよくキメたっつーのに、お前らのせいで台無しじゃねーか!」 「今更かっこいいもないでしょうに。隊長はむしろヘタレキャラで行きましょうよ。"や、やるのか!?"とか"俺のメイド部隊が全滅だと!?"みたいな」 「ま、私達は隊長のモノじゃありませんがねー」 ……なんだろう、これは。 まさか、私ともあろうものが来る場所を間違えたのだろうか? 「ちょっとアンタ達! アタイをバカにしてるの!?」 「おっと、毎度の事ながら悪いね。どうにも緊張感が無くって」 なーんて軽く現実逃避を始めていたら、氷精が癇癪を起こした。気持ちは判らないでもない。 そして、そんな彼女に苦笑交じりに向き直る彼は、本当に、普通の、人間だった。 「……へぇ」 ――弾幕ごっこが、始まった。 ――彼はひたすらメイド達に指示を出し、自身は決して弾幕は張らない。寧ろ張れないというべきだろうか? ――そして、一際目を引くのは、彼女達メイドのやる気のあるのか無いのか判らない態度だった。 「隊長! 残業手当として今日も夜雀の屋台で奢りヨロシク!」 「あ、じゃあ私は香霖堂で!」 「こっ、の極道メイド共が! 俺の財政状況を知らんわけでもあるまい! 赤字も赤字、まっかっかだぞ! つーかまだ通常勤務だ!」 「またまたぁ! そんなつれない事言っちゃって! でもお優しい○○は結局奢ってくれるんでしょ? だから、好、き、で、す、よ!」 ――ちゅっ そんな事を言いながら、あの最初のチャイナが弾幕をギリギリで避けながら彼に投げキッス。 余裕綽々にも程がある。……あ、氷が頭に当たった。きっと彼女はヘタレね。間違いない。 「あははっ! 美鈴、隊長誘惑してるとお嬢様に怒られちゃうわよ? “いい度胸だ。気に入った! 中国、地下室で妹をFU○Kしてきていいぞ!” とか言われて」 「うっわ、それはイヤ。絶対死ぬ(笑)」 中国……なるほど。言いえて妙ね。 てかメイドがFU○Kとか言うの止めなさいよ。イメージってもんがあるでしょうが、イメージってもんが。 「ば、ばかにすんなー!」 あ、氷精がキレた。 まあ、殆どシカトに近い扱いだったしね。怒りもするか。 ――にやり。 「隙あり! ぽちっとな」 そこに彼が嫌な笑みを浮かべ、屋敷のブロックの一つを押す。 だが、その発動音声はボタンの場合だと私は声を大にして言いたい。隠れている手前言わないが。 ――ガンッ!! 「ジェロニモッ!?」 超高速で氷精の頭に直撃したのは、かなり大きめの金ダライ。 ……ていうかここ、屋外よね。今のどこから降ってきたのかしら? 視線を戻す。氷精はと言えば、あの一撃に見事にKOされていた。まあ、相当な速度だったし無理もないか。 「さーて、今日も完勝、大妖精さん呼ぶか……」 「ちょっと! アタイは……! まだ、負けてないわよ!」 「今日はお終い、また今度な。次はお前がすっごく強くなった時に相手してやるよ。主に美鈴とコイツらが」 「ちょ! 隊長! 次こそは自分だけでやってくださいよ! 門番の美鈴はともかく、私達は仕事があるんですからね!」 「無茶言うな! 俺が出来る事はメイド隊という名のファンネルの操作だけだ! それに仕事があるのは俺だって同じだっつーの!」 「またこの人はワケのわかんない事を!」 意味の無い会話を交わし、笑い合っている。 彼自身にはなんの力もないくせに、彼女達妖怪から慕われていることがよく判る。 ……うん。面白い。少し興味が沸いた。 後で彼の部屋に遊びに行ってみよう。ついでに死なない程度に虐めに……。 ――――。 「……寝ちゃってた、か」 起きるのと同時に伸びをし、目を擦る。 時刻は夕方になろうかという所だろうか。 例の吸血鬼とそのご一行さまは、数分間墓に話しかけたりした後、帰っていった。 で、その後つい日差しが気持ちよくって寝てしまったという所だろう。どうせ風邪なんか引かないので問題ないが。 「ちょっと、聞いてんの? アタイ、ちゃーんと覚えてたわよ? 最後に会った時、強くなったらまた来いって言ったでしょ?」 「……」 そして丁度そこに新たな声と気配。今度は……あの氷精、と大妖精とかいう奴? そういや、夢の中でもそんな事言ってたわね。 結局あれから、彼は死ぬまで毎回同じ事言ってたみたいだけど。 「アタイ、すっごく強くなったんだから! この前なんて、閻魔にだって勝ったのよ! もう最強よね!」 「でね、死神と閻魔にアンタの事聞いたの。でも、二人とも、そんな人間は知らないって。あの世には来てないって……っ!」 「チルノちゃん……」 「っ……! 勝ち逃げ、なんて……、絶対許さないんだから……!」 「チルノちゃん! ……って行っちゃった。じゃあ、○○さん。また、来年も来ますね」 氷精は凄い速度で飛んでいってしまった。そしてすぐさまそれを追いかける大妖精。 それにしても今の言葉を聞くに毎年来てるとか? 律儀ねぇ。 近くに花畑がある関係で、此処には結構な頻度で来てるけど、今初めて知ったわ。 ――胸に抱きし想いに気付けども、貴方は当に消えてしまい。 ――ただ一つの逢瀬が叶いしその場所は、遥か遠き夢の中。 「……なんてね」 感傷に浸るなど私らしくないが、たまにはこういう日があってもいいだろう。 なにせ今日は、この私の友達の誕生日なのだから……。 ――了。 「ちょっと、あんた達……ナマってんじゃないの……? ズタボロじゃない……」 「そういう美鈴だって……体力落ちたんじゃない……? とっくの昔に引退した私たちはともかく、アンタは現役でしょうが……」 「うるっさいわね……門番ってキツイのよ……。一日一食に減ったし……。しかも昔と違って今はサボるとナイフ飛んでくるし……」 「まったく……隊長が今のアンタ見たら、きっと泣いて指差して笑うわよ……? “赤貧の俺から散々集った罰だ! ざまーみろばーか!”とか“俺のありがたみが判ったか!”とか大人気無い事言って……」 「あぁ……それ、凄くわかる……。ありがたみも……」 ――(今度こそ本当に)了。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 6スレ目 583 「ふう……。やっと着いた」 俺は目的地に着いたので、そう呟いた。 「……何時見ても大きい屋敷だな」 目的の場所――紅魔館――を見てそう言ってしまう。 「しかし、何で俺なんかを指名したんだろう?」 俺はそう思いながら館に入っていった。 「じゃあ○○、付いて来て」 咲夜さんに部屋まで案内してもらう事になった。 目的の場所まで歩きながら俺は、ポケットに入れておいたブツを見る。 そして思う こんな物持ってきて良かったんだろうか? と。 そう思っていると部屋が見えてきた。 場所は変わって屋敷の一室。 「ところで、なんで俺なんかを呼んだんだ? 他にも友人は居るだろうに」 俺は自分を呼び寄せた元凶である少女――レミリア・スカーレット――にそう聞いた。 「ん? 理由か? 今日は知り合いは皆用事が有るらしいからな、一人暇なお前に相手をしてもらおうと思ってな」 俺が理由を聞くと、かなり自分勝手な事を言ってくれた。 「有り難いと言えば有り難いが、おまえ何か俺を馬鹿にしてないか」 その答えに幾分か呆れながら俺は言う。 「うん? そんな事あるはず無いだろう?」 俺がそう言うとレミリアは、さも可笑しそうに言う。 ……ぜってー面白がってやがる。 この際アレを渡さんでおこうか。 本気でそう思ってしまった。 「じゃあここで。ところでパチュリーさん達も居ないのか?」 俺は一手打ちながら言う。 彼女が皆いないと言ったので、あの人もどこかに行く事が有るのかな? と思ってしまったからだ。 「むう、ここだな。ああ、パチェは魔法使い同士で語り合うらしい。今日に限っては咲夜しか居ないぞ」 レミリアも一手打ちながら答えてくれる 「……。あの人が何処かに行くとはめずらしいねぇ」 まず……。 次の手が思いつかないので少し話を振って時間稼ぎする事にした。 「確かにそうだな、って○○その手には乗らんからな」 しかし彼女は、俺の思惑に勘付き釘を刺してくる。 だが俺は次の手をもう考えている。 「ち、流石にこんな手には乗らないか……」 しかし俺は、自分の思いとは反対の事を言う。 「……まあいい。さっさと打て」 そんな俺をレミリアは疑っているのか、なにやら考えながらも先を促す。 「じゃあこのナイトをここに。しかしここはクリスマスを祝わないのか?」 そう言い、一手打つ。 「……阿呆か貴様は。吸血鬼が、悪魔がキリストの誕生日を祝う訳無かろう」 レミリアはそう言い返しながら、一手打つ。 まあ当たり前の返事だなと俺は思う。 「確かにそうだな。しかし如何でもいい事なんだが、貴様と言うのは普通男からしか言わんぞ」 一つ穴があったのでそこを指摘してやる。 「そうだったか?」 するとレミリアは、一瞬キョトンとした顔になった。 この時の顔は、見た目の年齢に相応しい無邪気なものだ。 中々レアなものが見れたな。 俺がそんな事を思っていると、彼女はそう聞き返してくる。 「ああ、そうだった筈だぞ」 そして俺はそう言ってやった。 「……チェックメイトだ。」 俺は何とかそう告げた。 数十手にも及ぶ勝負の決着がやっと付いた。 「く、これで通算56戦23勝31敗2分けか……」 レミリアは悔しそうにそう言う。 「ん……。そうだな今回は何とか勝てたな」 俺は、咲夜さんに持ってきて貰ったワインを少し口に含みながら言った。 「ん、ん……。ふう、次は負かしてやるからな」 彼女も俺と同じように呑みながら言う。 「ああ、楽しみにしているよ」 そして俺は、少し機嫌よく言った。 「と、そうだ咲夜さん、これ受け取って貰えますか?」 そう言いながら俺は、ポケットから綺麗に包装された小さな箱を一つ取り出し咲夜さんに手渡した。 「私に?」 すると驚いたように聞いてくる。 「はい。何時もお世話になっていますからね」 この人には、よくお世話になっているのでそう言う。 「あ、でもそんな良いものでは無く、ただのペンダントですし……」 「……いいのよ値段なんて。とっても嬉しいわ。ありがとう○○」 俺がそう言うと、咲夜さんは少し微笑んで受け取ってくれた。 「○○、私には何も無いのか?」 するとレミリアが、期待に満ちた目で聞いてくる 俺はやっぱりな、と思う。 咲夜さんに渡せばそう聞いてくると思ってた。 ここで普通に渡しても良いが、どうせなら少しいじめてみようか。 そして俺は実行した。 「ん~。悪魔はクリスマスは祝わないのでは無かったのか?」 俺はレミリアを苛めるように言う。 「た、確かにそう言ったが、一応私もお前の面倒を見てやったりしているぞ」 レミリアは、なんとかそう言い返してくる。 「確かにそうだが、俺はお前の暇つぶしとやらに付き合って色々苦労もしているぞ」 だからそう言い返してやる。 「む……。……そうだなお前には迷惑も掛けてきたしな、私は諦めるか」 すると、レミリアは少しだけ悲しそうに言った。 「じゃあ、そろそろ俺は帰るな」 時間もだいぶ遅くなってきたので、そろそろ帰ることにする。 「……ああ○○、気をつけて帰るんだぞ」 レミリアはまだ悲しそうにしている。 そんなレミリアを一瞥して俺は部屋を出た。 「ちょっと待ちなさい○○」 しばらく歩いていると、咲夜さんが追いかけてきた。 実はここまで予想道理の展開である。 そう思いながら俺は言う。 「咲夜さん? どうかしましたか?」 すると咲夜さんは俺に聞いてくる 「本当にお嬢様には何も無いの?」 と。 だから俺は言った。 「いいえ、ちゃんとありますよ」 すると今度は、別の事を聞いてくる 「なら、なんで渡さないのかしら?」 彼女の質問は尤もなので、俺は理由を言った。 「これがクリスマスプレゼントだからですよ。これって、眠りから覚めた時に有った方が良いと思わないですか?」 俺がそう言うと彼女も理解したようだ。 「つまり、これをレミリアが寝た後に枕元に置いて欲しいんですよ」 そして俺は包装された小さな箱と一枚のカードを手渡す。 「解ったわ。本当なら貴方が置くべきだけど、貴方じゃ気付かれちゃうからね」 そして咲夜さんはレミリアへのプレゼントを預かってくれた。 「じゃあ、頼みましたよ」 俺は最後の確認にそう言う。 「ええ解っているわ」 彼女は心強い返事をしてくれた。 「では良いクリスマスを」 そして俺はそう告げて歩き出す。 「貴方もね」 彼女も俺にそう言い、送り出してくれた。 今年のクリスマスは、彼女達にとって最高の日でありますように。 俺はそう思いながら帰路に着くのだった。 あとがき レミリアを格好良く書きたかった。 しかし俺にはこれが限界だった。 まぁ、そんな事は置いておき、最後に一言。 皆さんよきクリスマスを―― ────────────────────────────────────────────────────── 7スレ目 170 「・・・・ねえ○○」 「ん?どうした?レミリアいつになくしおらしいじゃないか さすがのお前も始めての出産に緊張してるのか?」 「・・・・・・・・・」 (図星かよ・・・まあそれもそうか、初めてだったわけだし・・・ そうなると子どもを生むのも初めてになるよな) 「あーすまん、俺が軽率だった、そりゃ不安にもなるよな でも安心しろ俺が付いてるしなにより紅魔館の皆がいるじゃないか」 「・・・ええ、そうねそれにこのおなかにいる子は○○と私の子ども その事を思うだけで私はこの500年生きててよかったって思うのよ」 「そ、そうかありがとな」 「それはこっちのセリフよ、○○と会えて本当に良かった」 「絶対に幸せにするからなお前もおなかの子も」 「ふふふふ、頑張ってね お と う さ ん」 ────────────────────────────────────────────────────── 7スレ目 518 541 コンコン 「んー?どうぞー開いてるよー」 「お邪魔するわね○○」 「ん?どうしたよレミリア」 ある日の夕方何もせずに夕飯までごろごろしていた俺の所にレミリアが咲夜さんを連れずにやって来た 「あら、恋人の家に来るのに理由なんて要るのかしら?」 「そりゃそうだな、まあどこか適当に座ってくれ、今お茶入れるから 咲夜さんほどじゃないけど」 「期待しないで待ってるわ」 カチャ 「ほい、お待たせ」 「ありがとう、それにしてもどうしたのこの葉、結構いいものじゃない」 「ん?ああ、アリスがなんかやるって言ってんで貰った」 「……そう」 そう言うとレミリアは突然黙り込んでしまった そこまでまずかったんだろうかこの紅茶 と、そうおもったその瞬間 がしっ レミリアは俺の首を掴んで壁にたたきつけた どがっ! 「ぐぅ!?レミ、リ…ア何を?」 ぎりぎり 「……やっぱり駄目ね、貴方の口から他の女の名前が出るだけで私はこんなにも嫉妬してしまう だから、今日この場であなたを私の眷属にするわ」 そう言ってレミリアはおれの首筋に牙を付き立てた ぷつっ レミリアに血を吸われ自分の体が人ならざるものに変質していくのが分かる 「ごめんね○○、ごめんね、それでも私は貴方の事が好きなの」 「気に……する、な」 泣きながら俺に謝罪するレミリアを見ながら俺はそんな言葉しか言えずに意識を手放した 勝手に↑の続きなんぞを書いてみた。 「・・・○○、目が覚めた?」 彼に出来る限り微笑みながら私は問いかけた。 「ああ、まだ体がちょっとだるいけど・・・問題ないよ。」 「そう、良かった。」 しばしの沈黙。 「・・・・・・俺は、もう人間じゃないんだよな。」 「・・・・・・」 「俺はレミリアと同じ吸血鬼になったんだよな。」 「ええ。」 私の返事に彼は苦笑いを浮かべた。 そして彼はまた真剣な顔つきに戻るとこう言った。 「レミリアは、後悔してないのか?」 「えっ?」 「レミリアはこれから俺と長い年月を過ごすことになる。 本当に俺を選んで後悔はしてないのか?」 彼は何を言っているのだろう。 何故彼は私が吸血をしたことを責めないのだろうか。 「あなたは私に血を吸われたことについて何も思わないの?」 「思うって・・・ああ、血を座れるのはちょっと痛かったよ。 出来れば次からは勘弁してほしいな。」 「そうじゃないっ!!」 私は思いっきり立ち上がり叫んだ。 「なんであなたは私を責めないの!?なんであなたは恐れを感じていないの!? なんであなたは・・・!」 私の心配をしているの・・・? 「レミリア・・・。」 「私はあなたの了承も得ずに勝手に血を吸った。勝手にあなたを自分の物にした。 しかもただの嫉妬で!あなたが他の女の名前を出しただけで!!」 「私は・・・、私は自分一人の意思であなたの運命を変えてしまった。 500年生きていても、結局見た目と同じ、幼稚な考えしか持てない最悪な女・・・いえ、子供よ。」 再び沈黙が流れた。 彼は何も言わず、私を見ている。 「・・・そうだな、俺はレミリアを許すわけにはいかない。」 「・・・・・・。」 「レミリアが悪い、って思ってるなら一つだけ俺の願いを聞いてくれ。」 「・・・何?」 「お前の命が尽きるまでずっと隣にいさせてくれ。この願いを聞いてくれるなら俺はお前を許す。」 そう言って彼は優しい笑みを浮かべた。 私は思わず彼の胸に飛び込んだ。 「私からも・・・、私からもお願い。ずっと私の隣にいて。」 「ああ、わかった。」 そう言って彼は私を抱きしめた。 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/hi_remilia/pages/56.html
キャラ対策「レミリア・スカーレット」 レミリア・スカーレット ○キャラ概要・言わずと知れた紅魔館の主人の吸血鬼。・能力は「運命を操る程度の能力」・貴族なので体面こそ気にしてはいるが、性格は外見通りワガママ。・お嬢様・・・お美しいです・・・ ぎゃおー、たべちゃうぞー。○特徴打撃寄りの万能キャラだが動作は他になく特殊。打撃は発生が速い技が多いが判定は弱め。攻略wikiはここです! 警戒したい状況について 切り替えしに使われるスペルカード 画像 スペルカード名 無敵 概要 夜符「デーモンキングクレイドル」 打撃無敵 入力から打撃無敵な打撃スペルカード。・射撃には無力。斜め上に飛ぶため斜め上には広いが、上や下にはあたりにくく落としやすい。・ガードできれば落下中にゆっくりと反撃ができる。 紅符「不夜城レッド」 完全無敵 レミリア使いなら誰でも信用するであろうスペルカード。・発生が速いので暗転を見てから反応では間に合わないかもしれない。・ガードかグレイズできれば、攻撃後の隙に自由に反撃ができる。 夜王「ドラキュラクレイドル」 完全無敵 デーモンキングクレイドルをそのまんま強くしたスペルカード。・範囲が肥大化し非常に拾いやすくなった。・デーモンキングクレイドルと違い、暗転前は完全無敵なので暗転前を射撃でつぶすことはできない。発生後は打撃無敵のみなのでそこは潰せるが、範囲が広くなったためおとなしくガードしたほうが安全。 紅魔「スカーレットデビル」 完全無敵 入力から攻撃判定終了まで完全無敵なスペルカード。・不夜城より遅いが意外とぶっといので余裕を持ってグレイズしよう。・不夜城と同じとなめてガードをすると割られる可能性も。 警戒したい基本行動 同キャラ対決。打撃で地の強さ、射撃で動きの丁寧さが問われる。 打撃 打撃に関しては上をとったほうが有利だが、撃ち落とされないように注意。レミリアは判定が弱いので相打ちになりやすい傾向がある。相手の動きを読み、ウォークやクレイドルを使おう。読めればおいしく、はずせばフルコンorカウンター。 射撃 おそらく射撃の刺しあいになるであろう。きちんとグレイズしペースを引き込みたい。ダッシュでグレイズしてきたらダッシュの性質上狩りやすい。 要注意スペルカード 画像 スペルカード名 概要 必殺「ハートブレイク」 入力から暗転まで無敵、暗転から発射までグレイズを持つ射撃。・コストが低くダメージもそこそこなため、天候操作や射撃を見てからぶっぱに使われやすい。・落ち着いてしゃがむかグレイズをしよう。近距離で回避できたら反撃ができる。中距離~遠距離では反撃はちょっと難しい。 夜符「バッドレディスクランブル」 アローを強化したようなスペルカード。・グレイズが付いていて移動が速くガード・回避されても反確になりにくいため空中にいる場合や台風のときには要注意。・打撃属性なので各種クレイドルで返せます。・めくりには注意。大体1画面分程度離れた位置始動のバットレディは警戒すべし。 運命「ミゼラブルフェイト」 無敵・グレイズのない射撃で、ガードクラッシュに定評のあるミゼラブル。・飛翔の性能が悪いレミリアは空中で霊力を減らした場合ミゼラブルが確定しやすい。相手がミゼラブルをセットしたら空中でダッシュを使い切らないようにしたい。・使われたら下飛翔で着地からダッシュで接近が無難だろう。・飛翔がなければ最悪アロー。壁が近ければ勝てることも。・ちなみに各種クレイドルを外すと生あてフルヒットをもらう。ダメージは3300くらい。 要注意スキル デーモンロードウォーク 言わずと知れたグレイズ突進の必殺技。・フライヤーやフォークをするときに相手がウォークの範囲内にいると刈り取られる。間合いをきちんと見よう。 デーモンロードクレイドル 打撃無敵持ちの必殺技昇竜。・起き攻めする際はこれに注意。ガードできれば反確。射撃と同時に攻めれば安全だが完全に重ねないと負けるかも。 デーモンロードアロー 攻撃判定中にグレイズをもつ必殺技。・油断しているとCHから追撃で大ダメージをもらう。・油断せず、きちんとガードしきちんと反撃。焦ってジャンプは少し危ない。 サーヴァントフライヤー 時間差蝙蝠弾の怖さは自分で受けるとよくわかる。・相手のレミリアの動きをよく見てターンを取り戻そう。HJ→2飛翔で上に誘導したり溜めCでかき消してみたり、逆にウォークで突っ込んでみるのも有り。 ロケットキックアップ 斜め上に高速弾を放つ特殊技。・上空で飛翔回数を使い切ったときは要注意。・対レミリアでこのカードを宣言する人はそうそういないとは思うが・・・。・レミリアの飛翔・ダッシュではキックアップはちょっとグレイズしにくかったりする。 クラッシュ属性つきの攻撃 技名 備考を記入 基本戦術 文章で記述する。 各状況の立ち回りについて 距離ごとの立ち回り 1.地対地 近距離 詳細を記入 中距離 詳細を記入 遠距離 詳細を記入 2.空対空 近距離 詳細を記入 中距離 詳細を記入 遠距離 詳細を記入 3.地対空 近距離 詳細を記入 中距離 詳細を記入 遠距離 詳細を記入 4.空対地 近距離 詳細を記入 中距離 詳細を記入 遠距離 詳細を記入 起き攻め 文章で記述する。 切り返しポイント 技名 備考を記入 ガード後反撃確定ポイント 技名 備考を記入 スキル考察 236 備考を記入 623 備考を記入 214 備考を記入 22 備考を記入 注意する天候 快晴 備考を記入 霧雨 備考を記入 曇天 備考を記入 蒼天 備考を記入 雹 備考を記入 花雲 備考を記入 濃霧 備考を記入 雪 備考を記入 天気雨 備考を記入 疎雨 備考を記入 風雨 備考を記入 晴嵐 備考を記入 川霧 備考を記入 台風 備考を記入 極光 備考を記入 固め・連携対策 回避結界の狙い所 赤字が結界ポイント コマンドを入力 備考を入力 コマンドを入力 備考を入力 攻略意見 かわいくて殴れない - 名無しさん 2008-09-28 07 27 47 兄弟喧嘩と思えば問題なし - 名無しさん 2008-11-02 01 59 15 名前
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1370.html
レミリア22
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1371.html
レミリア23
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/656.html
レミリア17
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/655.html
レミリア16
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/659.html
レミリア20
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1372.html
レミリア24
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/649.html
レミリア10 うpろだ1121 7年ほど勤めいていたホテルを退職した。 退職した理由だが、俺が研修した新人があろうことかパーティーの配膳中、主賓に料理をこぼしてしまった。 あわてて謝罪と処理をし、なんとかその場は納め事なきを得た。 そして後日、もう一度フロア長であった俺と上司とで謝罪にいった。 先方はその時の新人に責任を取らせろ。と行ったが、研修したのは俺であり、配置を考えたのも俺だった。 結果として俺は責任を取って退職する事にした。 長年勤めた職場で未練もある、だが筋は通しておきたかったし、事を円満に収める為には誰かが退職しなければならないような剣幕だったので俺が退職する事にした。 高校を出た後、実家の旅館に嫌気が差し、次男に後を任せて勘当同然で飛び出しサービスの道に進み、今の職場に就職し、とにかくがむしゃらに勤めてきた。 そのかいあって功績は認められ、フロア長にもなった。日々忙しい中でも仕事の時間は実に充実し、これからも更に頑張ろうとしていた所での退職だった。 職場の上司や部下に挨拶を済ませ、荷物をまとめて外に出た。 いつもは従業員用の出入り口から入るのでホテルの外観をあまり見なかったが、改めて眺めてみるとずいぶんと大きく感じた。 見ていると涙腺が緩むのを感じたので、俺は足早に慣れ親しんだ職場を去った。 帰路、長い間張り詰めてきた糸がきれたかのように何もやる気が起きず、かといって家に向う気も起きず、とにかくどこか遠い所へ行きたかった。 何も考えずに電車に乗り、降り、また乗る。 そうこうしているうちに夕方になり、駅の看板を見るとどうやら岩手まで辿りついていた。 岩手といえば幼少の頃、岩手にある叔父の家によく兄弟で遊びに行っていた事を思い出した。 今ではすっかり疎遠になってしまったが、ここまで来たのなら久々に叔父の家に行ってみようと思った。 叔父に話してみれば今のこの気分も少しは晴れるかもしれない。そう考えると足取りも少し軽くなった。 なんとかバス停の名前だけは憶えていたので、そこまでバスに乗って行く事にした。 町外れのバスを降りると、辺りはすっかり暗くなり、空は雲のおかげで月も出ていないが、初秋の心地よい風と虫の声に包まれた。 深呼吸すると都会とは違う清々しい空気が体内に送り込まれ、退職してから初めてすがすがしい気分になった。 そして、幼少の記憶を手繰り寄せるように道を歩んでいった。 ・・・が、見事に道に迷った。 途中で分かれ道を間違えたのだろうか?一時間ほど歩いて何も無いというのは、やはり道を間違えたのかもしれない。 だが、いざとなったら一晩ぐらい野宿しても死にはしないだろう、という確証もあった。 どうせ昼になれば見晴らしは良くなる。 そのまましばらく歩いて行くと、急に足に感触があり、その場で後ろ向きに転んだ。 一瞬何が起こったのか理解できなかったが、少なくとも頭はうたずに済んだ事はわかった。 何か変なものでも踏んだのだろうか・・・。倒れた時に背中を打ったらしく、少々痛みを感じたが、起き上がって足元を見回した。 見回したが、何もそれらしいものは発見できなかった。 辺りは溢れんばかりの月光に照られているので、それらしいものがあればすぐにわかるはずだが・・・。 ・・・そういえば月なんて出ていただろうか。 少なくとも、俺がバスを降りた時には出ていなかった筈だ。だが、今は真っ青な月により、辺りは照らされていた。 気がつけば辺りの様子も先ほどまでとは何かが違う事にも気づいた。 さっきまでは周囲で虫の鳴き声しかしなかったが、今は時折犬だか何か良くわからない動物の鳴き声が聞こえてきて気味が悪い。 明らかにおかしい。 道路はいつのまにかアスファルトですらなくなっていた。 いくら幼少の頃の記憶を辿っても、こんな所は思い出せない。 俺は迷うことなく元来た道を戻ろうとした。 だが、振り返ってみると後ろには森が広がっていた。 いくら暗かったとはいえ、森を歩いていたら流石に気づく。 いつのまにこんな所に迷い込んだんだ。一体ここは何処なんだ? 携帯を開いてみると圏外、俺の頭は完全に混乱状態に陥った。 時刻を見てみると20時を回ったところだった。まだこの時間ならば誰かいるかもしれない。混乱した頭でとにかく助けを求めて叫んだ。 叫びながらも歩き続け5分が立ったところだろうか、後ろから何かの気配を感じて振り返った。 そこには熊・・・だろうか大きさ2メートルほどの4足の獣が目を光らせていた。本能がヤバイ、と告げていた。 間髪置かずに俺は荷物を放り出し、反転して駆け出した。 後ろから獣が追ってくるのが気配でわかった。 いくら走れども背後の気配は一向に消えない。それどころか距離が縮まってくるのを感じる。俺は全速力で走り続けた。 ろくな呼吸もなしに駆け出したので、心臓が悲鳴をあげている。 そもそも俺は何故こんな所にいるんだろうか、あの時新人に責任を取らせれば今もいつもと変わらない日常ではなかっただろうか? そんな考えが頭をよぎりつつも、とにかく俺は逃げ続けた。 駆け出して数分、すでに肺も心臓も限界を迎え、走るスピードも見る見る遅くなっていく。 同時に足がもつれ、前のめりに倒れた。 起き上がろうとするも、目の前には獣が回りこんでいた。 それでも逃げよう、と思い、膝をついたが足が震えてどうも立ち上がれない。 見上げると月夜に照らされた長い爪が振り下ろされようとしているところだった。 おそらく数秒後に来るだろう痛みに向け、俺は反射的に顔を背けた。 バシュッ!という空気を切る音がした後、顔に温かく、生臭い液体がかかったのを感じた。 十秒ほど経っただろうか、まだ痛みは感じない。 何が起こったのか、未だに体を襲わない痛みを不審に思い、俺は恐る恐る目を開けた。 そこには、俺の目の前に立っていた獣が串刺しになり、血を噴出しながら倒れている光景だった。 真紅の槍が突き刺さり、俺を襲おうとした格好のままで絶命していた。 いつのまにか真赤になっていた月が、さっきまで獣だったものを照らしている。 助かったのか、もしそうならば助けてくれた人がいるはずだ。 そう思って槍の柄の方を目で追っていくと必然的に月を見上げる事になった。 そこには月を背負って人影があった。 背丈は少女のものだが、背中には不釣合いな羽。間違いなく異型の存在だった。 だが、月を背負うその姿はとても美しく、貴く、恐ろしかった。 何かこちらに向けて話しかけたのが聞こえたが、その姿を見ての感動と恐怖、先ほどの逃走劇の疲れで俺の意識は途切れた。 目が覚めると、知らない天井だった。 俺は何故こんな所にいるのだろう、と考えていると昨夜の出来事を思い出した。 得体の知れない獣に追われ、その後に何者かに助けられた所で俺の記憶は終わっている。 悪い夢であればいいのだが・・・。とりあえず、今の時間を確認する為に腕時計を見ようとすると、手と腕に昨夜の獣のものであろう赤黒い血の跡がこびりついている。 やはり昨日の出来事は夢ではなかったのだろうか。 それでも信じられなかった俺は、試しに頬をつねってみる。鈍い痛みを感じ、現実であるという事実に引き戻される。 とりあえず現状を把握しようと周囲を確認すると、どうやら建物の一室のようだ。 ぱっと見ただけで調度品は高価な物であるという事がわかり、掃除も行き届いている。 だが、全体的に窓が少なく、配色が赤く、一般的な建築ではない。この館の主の趣向なのだろうか。 念のために携帯を取り出すが、やはり圏外。電池の問題もあるので、俺は電源を切っておく事にした。 それにしてもここは一体どこなのだろうか・・・。 これだけ立派な部屋には電話なりで使用人を呼ぶ手段があるはずだ。 それらしきものがないか確認すると、扉の隣にチャイムが置いてあった。 鳴らすと、独特の高い金属音が扉の外から響いた。 使用人が来るまでの間、窓から外を眺める事にした。 窓からは屋敷の庭と門、その奥には湖が広がっている。屋敷全体が湖に囲まれているのだろうか。 それにしては船着場も橋も無いのにどうやってこの館に入るのか、不思議だった。 考えているうちに、コンコン、とノックする音が聞こえた。 「はい、どうぞ」 答えると「失礼いたします」と、女の声がして、ゆっくりと扉が開いた。 礼儀正しく入ってきたのは、銀色の髪、整った顔立ち、そして奇妙なメイド服を身にまとったメイドとおぼしき女性だった。 10代後半に見えるが、全体から醸し出す雰囲気はもっと大人びている。 「何の御用でしょうか?」 メイドの声で思考をやめ、一番聞きたかった事を口にした。 「一体ここは何処なんですか?」 俺は最初に疑問に思っていることを口にした。 「ここは紅魔館。主のレミリア・スカーレットの館ですわ」 随分と日本語離れしてきた名前が出てきたが、気にせず質問を続ける事にした。 「紅魔館とは?携帯も繋がらないのですが、ここは日本の何処にあたるのでしょうか?」 メイドは少し考え、こう答えた。 「ここは幻想郷、あなたの住んでいた世界とは少し違う世界ですわ」 違う世界とは一体何なのだろうか・・・、どうも話が噛み合っていない気がする。 一先ずこの件はおいて、質問を換えることにした。 「昨夜、獣に襲われていた私を助けてくれたのはあなたですか?」 「いえ、私ではなく主のレミリア様ですわ。ちなみに血まみれだったあなたを運んだのは私」 こんな少女に運ばれるとは・・・、少々恥ずかしかったが、感謝の意を伝えておいた。 「それは有難うございました。あなたの主にも礼を言いたいのですが、あわせて頂けませんか?」 「お嬢様はただ今お休みになっていますので、また起きた時に連絡いたしますわ」 「感謝します。それと、できればお風呂を貸して欲しいのですが」 いい加減この獣の血を洗い流しておきたかった。衛生的にも良くないし、血まみれと言うのは不快だ。 「それでしたら部屋の奥に添えつけのバスルームがありますので、そちらをお使いください」 メイドが指した方向にはバスルームに繋がっていると思われる扉があった。 「それでは、御用がありましたらまたおよび下さい」そう言ってお辞儀をし、メイドは出て行った。 いろいろ腑に落ちない事はあったが、まず風呂に入って落ち着くことにした。 全身についた血を洗い流し、風呂から出た後は添えつけのバスローブを纏ってベッドに寝転んだ。 寝転んでから気づいたが、いつのまにかベッドのシーツも布団も換えられている。 メイドの手際の良さに驚きながらも、思考を巡らせていた。 どうしてこんな所にいるのか、昨夜は一体何があったのか・・・。 だが、いくら考えても結論は出ない。唯一確かなのは、ここは日本ではなく、幻想郷の紅魔館という事だけだった。 物思いに耽っていると、いつのまにか時刻は16時を回っていた。 こんな時間まで休んでいるとは、この家の主はどんな不摂生な生活を送っているのか不思議に思った。 そういえば、着替えはどうしたのものかと気づいた。命の恩人に血まみれの服やバスローブで挨拶など失礼極まりない。 ふと添えつけのタンスの方を見ると、退職する時に持ってきた大き目のカバンが目に入った。 獣にから逃げる時に慌てて放り投げて来たのだが、先ほどのメイドが拾ってくれたのだろうか。 あの中には仕事で使っていた道具と燕尾服が入っているはずだ。奇妙な格好かも知れないが、少なくとも汚れた服よりはマシだろう。 俺はカバンを開け、いつも仕事で着ている服に着替えた。 着替えを済ませ、身嗜みを整えた。鏡にはいつもの仕事着の自分が映っている。 まあ、これなら失礼ではないか・・・。そう思っていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。 「お嬢様がお目覚めになりましたので、お客様の準備が整いましたらご案内いたしますわ」とメイドの声が聞こえた。 「はい、すぐ行きます」 俺は答え、扉を開け、初めてこの部屋の外に出た。 出てすぐに気づいたが、廊下も赤かった。そして窓が少ない。やはりこのデザインは館の主の趣向で一貫しているのだろう。 ふとメイドを見ると、少々驚いた表情をして俺を眺めている。流石に血まみれだった男がいきなりこの格好になるのは驚いたのだろう。 数秒後「それでは、ご案内いたしますわ」と、メイドは何事も無かったかのように俺の先導をした。 主の部屋までは長い廊下が続いていた。 途中、格好はメイド風だが羽の生えた人と度々すれ違ったので、あれは何なのかとメイドに聞いてみた。 「うちで働く妖精メイドですわ」と、またしても変な答えが返ってきた。 妖精といえばおとぎ話に出てくるあの妖精だろうか・・・。 それにしても動きが雑なメイド達だった。彼女らが俺の招かれた部屋の掃除等をしていると思うと腑に落ちない。 ここはどうもに理解できないことが多すぎる。 そうこうしているうちに、先ほどから歩くごとに威圧感が増してきているのがわかる。歩くたびに空気がピリピリしている。 どうやら、この威圧感は主の部屋に近づく毎に増してきているようだ。 そして立派な扉の前まで来た。 「ここがレミリア様の部屋ですわ」メイドは威圧感などまるで感じない様子で、扉をノックした。 中から「入りなさい」と少女らしき声が聞こえた。 メイドが扉を開けると、中からは先ほどまで感じていたものとは比べ物にならない程の威圧感が溢れ出して来た。 思わず足が硬直しそうになったが、足元を見て、一歩一歩としっかり踏みしめ、部屋に入った。 ようやく部屋の中ほどまで進むと、後ろで扉の閉まる音が聞こえる。メイドが扉を閉めたのだろう。 足元を見て進んでいくと、高価そうな椅子が行く手を阻んだ。 目線を少しあげると、椅子の先には机があり、机の後ろに威圧感の元凶が鎮座しているのがわかった。 俺は意を決し、それに目を向けた。 そこには、昨夜見た、少女が、真赤な月明かりに、照らされていた。 透き通るような白い肌、ウェーブのかかった青い髪、見られるだけで震え上がるような真紅の瞳、そして背中の不釣合いな羽。 忘れるはずも無い畏怖の存在。俺を襲った獣とは比べ物にならない威圧感があった。 そして月夜を浴びる少女の姿は昨夜にも増し、美しかった。 「こんばんわ、今日も良い月夜ね」 呆然としていると、少女が先に口を開いた。 「は、はい」つい間抜けな返事をしてしまう。 それを聞くと、少女は無邪気に笑って言った。 「ふふっ、別にお前を獲って食おうって訳じゃない。恐れるのはいいけど、それじゃあ会話にならないよ」 俺は昨夜の礼を言うべく、深呼吸をして心臓を落ち着けた。 「さ、昨夜は命を救っていただいただけでなく、安全に寝る場所まで提供して頂きありがとうございました」 と言い、俺は頭を下げた。 「構わないわ、夜の散歩でたまたま私が通りがかっただけだもの。自分の運の良さに感謝しなさい」 こんな所に来た時点で運が良いのかどうかはわからないが、死なずに済んだ自分の悪運に感謝した。 「それよりお前の格好は何?随分と着慣れているみたいだけど。そんな服はあった?咲夜」 少女は俺の着る燕尾服を見て、不思議そうにメイドに尋ねた。 「いえ、私が呼びに言った時にはその格好でした。恐らく、彼のカバンに入っていたものでしょう」 メイドが答えると、少女は面白そうにこちらを眺めた。 「ふーん。そう言えば、まだ名前を聞いていなかったわね。あなたの名前は?」 しまった・・・、感謝のする事に必死でに自己紹介を忘れていた、威圧感にも少し慣れ、ようやく頭が正常に回転してきたのがわかる。 「私は○○と申します。この服装は先日まで働いていた職場のものです」 「私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主をしているわ」 目の前にいる少女がメイドの言っていたレミリア・スカーレットで、この館の支配者だと言う事がわかった。 「そういえば、先日まで働いていたと言ったけど、今は?」 「それは私も興味がありますわ」後ろで聞いていたメイドも口を挟んだ。 俺は仕事を辞めた経緯、そしてこの奇妙な地に迷い込んだ事を簡単に話した。 「またスキマ妖怪の仕業か。それにしても数奇な運命ね」 スキマ妖怪が何のことかはよくわからなかったが、運命、と言う言葉には脳が反応した。 退職し、この辺鄙な所に迷い込み、命を救われ、この館に招かれたのも、運命なのだろうか。 そしてこの少女に出会ったのも運命なのだろうか。 初めて出会って一日やそこらだが、俺はこの少女、いや、レミリア・スカーレットの虜になってしまった。 美しさ、貴さ、そして、恐ろしさの虜に。 「それより、これからはどうするつもり?帰りたいなら、明日にでも咲夜に神社まで送らせるよ」 そう聞かれたが、俺の答えは一つだった。俺はこの方の為に働きたい。 その思いが現実への未練をはるかに凌駕していた。 「もし叶う事なら・・・」 「もし叶う事なら、私をこの館で働かせてください」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 月夜の訪問者(うpろだ1239) 「本当に行くのね、○○」 「ああ、長いようで短かったけど、おかげで旅資金が出来たよ、ありがとなレミリア」 「・・見つかると、良いわね。」 「ああ、アテは無いけど、動かないと始まらないしな」 「じゃあ、みんな世話になったな」 「あ、○○・・」 「?どうしたパチュリー」 「これ、持って行って」 「また分厚い本だな」 「長い旅になるかもしれないから、暇つぶし用に貸してあげるわ」 「そうか、あんがとな。じゃあまた返し行かなきゃだな」 「・・ええ、待ってるわ。」 ~月夜の訪問者~ ―5ヶ月後。 「ふぁぁ~あ、眠くなってきたし、そろそろ寝るか・・」 俺はパチュリーに借りた本に栞を挟み、 電気を消そうとしたその時・・ バサッ バサッ バサッ! 「・・・ん、何だ・・?窓からなんかこっち向かって来る・・?」 小さな影がだんだん大きくなったかと思うと、 そのまま窓を突き破ってきた ガシャァァァァーーーン!!! 「んのわああああああああああ!!!」 俺は腰を抜かして間一髪で避けた。(結果的に) 「よっと。つい勢い余っちゃったわ。久しぶりね○○」 窓の事など全く気にもせず、最初に出た台詞はコレである。 紅魔館の主、レミリア・スカーレットだった。 全くこんな時間に一体なんだってんだ、血ならやらんぞ 「お前・・こんな夜中に何しに・・」 「あら、お客様に失礼じゃない、せっかく遊びに来て上げたのに」 窓壊しといて失礼も何もないだろう。 「それはともかくだ、少しは人間の寝る時間というのをだな・・」 「だって昼間だと動きにくいし、まあ実際起きてたから良かったじゃない♪」 「・・いや俺は寝る直前だったわけであって・・ 「あら、結構いい~家じゃない。私には狭いけど。」 …わざとらしいスルーである。 「ま、相変わらずでよかったよ、色んな意味で。」 「どういう意味よ?それ。 それより、お客に出すお茶はまだかしら?」 「・・・・」 もうちょっとお客さんらしく出来ないものかね。 コポポポポ 「紅茶でいいか?」 「任せるわ」 「俺は眠みぃから珈琲にしようっと・・」 「まったく夜が愉しい時なのに・・人間というのは人生損しているわねえ。」 酷い言われようだ。 「あら、なかなか美味しいじゃない、この紅茶」 「ああ、これはアリスに貰ったんだ。なかなか良いだろ?」 「いつだったかご馳走になった時、つい『美味い』と言っちまったんだよ。」 「・・・それであんなに棚が紅茶でギッシリ埋まってるのね。・・何となく読めたわ。」 「ああ、嬉しそう~にドッサリ渡されたよ、帰りに。」 というような全くどうでもいい会話をしているが、 本当にわざわざ遊びに来ただけなのか?このお嬢様は。 何か企んでそうな気がしてならないんだが・・ 「そういえばあなたが紅魔館を離れてどれくらいになるんだっけ」 「そうだな、もう5ヶ月位になるんじゃないかな。 てことは俺が此処(幻想郷)に飛ばされてもう半年以上になるのか・・」 「早いものね。みんな会いたがってたわよ、たまには帰ってきなさいよね~」 「はは、そうだな。紅魔館のみんなは元気か?」 「ええ、変わらず騒がしいわ」 「・・でも、紅魔館に活気が出たのも、あなたがうちで働いてからなのよね。」 「そう、なのか」 「そうよ。まったく、あなたにはホント驚かされるわ。パチェもフランも あなたが来る前までは食事の時間に顔すら出さなかったのに。昔と比べて食卓が賑やかよ。」 「そうか、そりゃよかった」 「あなたが去って二人ともまた元に戻らないか心配だったけど、 ・・・ちゃんとあなたの言いつけ守ってるみたいね。全く、どんな催眠術を使ったのよ」 「まあ・・ちょっと説教(?)したら思ったより二人とも素直だったってだけさ。」 妹様の方は命掛けだったが。マジで。 「そういえば、こんな時間にこんな所に居て咲夜が心配してないのか?」 「そりゃ心配してるでしょうね。」 「・・いやいや普通に落ち着いて飲みながら言うなよ。まさか黙って来たのか?」 「勿論。あなたの所って知ったらみんな騒ぎそうだし」 「なんだそりゃ。」 「さっきも言ったけど皆もあなたに会いたがってるからよ」 「パチェは、あなたに貸した本の感想が聞きたいとか何度かボヤいてたし 美鈴なんて『愚痴を親身になって聞いてくれる唯一の仲間が・・』とか酒を呑む度に口にしてるわね。」 アレを親身になってるように見えてたなら周りの普段の扱いが容易に想像できてしまう。 本の方は・・まだ読み終わってないんだよな。なんせ分厚い上に俺は読むのが遅い。 「咲夜は、時折あなたの心配をしてたわよ。弟のように想ってるかもね」 「まあ、咲夜には一番世話してもらったからな。。俺に仕事のイロハを教えてもらったのも咲夜だし」 「ま、とうてい真似は出来なかったケドネ」 「ふふ、気をつけた方がいいよ~?1度咲夜に心配されるようになると 私みたいに自由に動けなったりするかもよ。気も遣わせちゃうしね」 「はは、それは困るな」 「ま、そんな空気で私だけ出し抜いたなんて知られると、後で何言われるやら分かったもんじゃないわ」 「そっか。みんな元気ならよかった。」 少しの沈黙の後、レミリアは聞く 「で、外の世界に戻る目処はついたの?」 …正直、これを答えるのが辛かったから自分から言わなかった、 でも聞かれてしまったなら本当の事を言うしかない。 「ああ、ついたよ。」 「・・そ、そうなの」 「境界を操る妖怪に会って、そいつに頼めばいつでも、だそうだ。」 「・・そう、あいつ(紫)に接触したのね」 「やっぱり、知ってたか。」 「・・・。」 「全くみんな人が悪いよ、どういう訳かみんな知らない振りしてるような感じだったんだよな。 ま、自分で探すと決意して、旅をしながら幻想郷を知るいいキッカケになったからいいが、 紫に辿り着くまで冥界に行ったり鬼にも会ったり、なんか振り回された感じで色々大変だった」 「あいつは神出鬼没だからね。会おうと思って会えるような奴じゃないのよ」 「・・それで、いつ?」 「ん?」 「いつ、帰るの?」 さっきからレミリアお嬢様のお顔が怖いです。 「まだだよ、パチュリーにもまだ本返してないし」 「でも、返したらその後帰るんでしょ?」 「・・まあ、そりゃ・・。俺は此処の住人じゃないし、いつかは帰らないといけないだろう」 カチャン という、俺の言葉をさえぎる様にカップを少し力強く机に置いてレミリアが言った。 「・・焦らなくてもいいんじゃない?」 眼が怖い。これ怒ってる・・よな。 俺は怒られてるのか。 「・・俺は妖怪たちと違って寿命が短いんだ、俺には時間に余裕がないんだよ。」 「はぁ、全く・・あなたも相変わらずね・・。」 レミリアが急に立ち上がり、俺の隣に来て座った。 「・・私があなたにまだ帰って欲しくないって言ってるの察しなよ・・」 「・・・悪い。レミリアはそう思ってくれて嬉しいが、他の人は・・」 「不器用ね・・ほんと。」 またしばらく沈黙の後、紅茶を飲み干すレミリア。 「ごちそうさま。」 「・・パチェが貸したその本、本当に旅のお供にっていう意味だけと思ってる?」 「どういう事だ?」 「あなたが紫に会ったとき、何故すぐに帰らなかったかを考えれば分かるはずよ。」 「この本をまだ返してないからだが、、それが一体・・ってまさか」 「・・そうよ、あなたにまだ帰って欲しくないからそんな分厚い本をあなたに貸したのよ。」 「ほんと、こんな回りくどい事するのパチェらしいわね・・」 「・・・」 「あと、周りが紫の事知らない振りしてそうみたいな事さっきあなたが言ってたけど、多分それ本当よ」 「何故そう思うんだ?」 「あなた気に入られやすい性格なのよきっと。」 「いやいや答えになっとらんぞ?」 「・・一生悩んでなさい」 「・・まあ、あなたがそう言うなら止めない。あなたの問題だもの。私がどうこう言う事じゃない」 そう、普通の人はこう言う・・でも私は・・」 「・・?」 「ごめん、私は我儘な吸血鬼なの」 突然ぎゅっとしがみ付いて来た。 …なんだこの展開は。 ボソっと何か言ってるみたいだが、よく聞き取れない。 「お願い・・ないで・・」 「・・何?」 「お願い、まだ帰らないで・・」 …つまり我儘なのを開き直ったって事でよろしいのでしょうか。 まったく、カリスマの欠片もないな。 でもこれがレミリア・スカーレットなのだろう。 こういう時のおぜうさまは妹様より子供っぽい。 「いやだからすぐには帰らないってば、『いつか』だよ」 「・・人間の『いつか』は私たちにとっては『明日』と同義なの。 100年なんてあっという間なのよ?私たちにとって」 やれやれ・・ レミリアはさっきから俺にしがみ付いたまま離れない。 「レミリア・・お前そろそろ帰らないと夜が明けちまうぞ?」 「やだ。帰らない。」 ぷくーっと膨れっ面をしながら言った。 まったく、さっきまでの高慢なお嬢様は何処に行ったんやら。 これじゃただの駄々っ子と変わらんぞ。 「・・まいったな」 「分かった分かった、しばらく此処に残るから」 「・・しばらく・・?」 「まだ先だから・・」 「まだ先・・?」 「ああもう、分かった、ずっと居てやるから機嫌直してくれ、な?」 「本当・・?」 「・・ああ、約束する」 もうほんとガキの頃の俺にソックリ。 つか、こんな約束しちまってよかったんだろうか。 現金に笑顔を見せたかと思ったらそのまま寝やがった。 「・・やれやれ。」 レミリアをベッドに移し、布団を掛けてやった。 「ふぁ・・ぁぁ、・・俺が早く眠りにつきたかったのに、 先に寝るたぁ、全くどういうお客さんだよホントに」 …って、ベッド1つしか無いんだった。 ……。 ま、いいか。いいよね?いいよな。俺のベッドだし。 じゃ、ちょっと失礼しますよっと。 …ちょっと狭いかな。仕方ないか、一人用のベッドだし。 しかし、我儘に屈服したとはいえ、こんな約束してしまって良かったのか・・。 それにしても 「すぅ・・すぅ・・」 こいつの寝顔初めて見たな・・。 こいつがこの時間に寝るって滅多に無いんだろうな。 …。 ああいかんいかん。変な気起こす前に俺も寝よう。 窓の外を見ると、大きな月が眩しいくらいに幻想郷を照らしている。 「月、綺麗だな。永遠亭のあいつらも元気してるかな・・」 永遠亭を出る時も、冥界を出る時も、 みんなにまた帰ってくるって約束したんだったっけか・・。 破っちゃ、駄目だよなぁやっぱ・・。 急に光に包まれた。それと同時に聞いたことがある声が聴こえる・・ 『あなたにはまだ色々やるべき事がいっぱい残ってるわ。』 「やるべき事・・?」 『それは自分で考えなさい。』 「・・・・。」 『でも、ヒントをあげるわ。』 「・・なんだ?」 『幻想郷を・・もっと深く知る事・・よ。』 「今のがヒントか?っておい、待てって!」 『ふふ、それじゃあね。』 …… 「くかー、くかー」 「すぅ・・すぅ・・」 そう、これは夢の中の声。 夢って分かる夢ってのも変な気分だな・・。 答えは自分で探す・・か。分かったよ。 様々な場所で妖怪、人間、宇宙人、幽霊、鬼等に出会い、別れ、 そして様々な地に足を入れた俺ではあるが それでもまだ、俺はこの幻想郷のほんの一部しか知らないんだろう。 もっと知るためにも、やるべき事を見つける為にも、 またみんなに会わなきゃ・・な・・。 ―窓の外、 そこから少し離れた木の上。そこには一人の妖怪が居た。 「(・・ふふ、あなたはまだ此処(幻想郷)に必要なの。 私にとっても、そして幻想郷にとっても、ね。)」 「(それにしても夢に出るのはちょっと卑怯だったかしら・・ま、念は押しとかないとね。)」 ズズズズズ・・・ 安堵の笑みを浮かべながら、その妖怪は空間の裂け目からゆっくりと姿を消した。 ~月夜の訪問者~ 完。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 新ろだ150 「カリスマ溢れるお嬢様を世に知らしめる!」 「紅魔館の威厳を世に知らしめる!」 昼に生きるもの達は寝静まった丑三つ時。 夜に生きる者の王、レミリア・スカーレットと、自称その下僕である○○の叫びが唐突に、その静寂を破った。 「流石は分かっているじゃない、○○!」 「もちろんです、お嬢様!」 同じような答えに行き着いた二人は親しげに握手を交わす。 レミリアと○○、この二人は非常に気の合う者同士なのである。 そのために○○は、時折彼女のティータイムにお呼ばれをして、紅魔館に足を運んでいるのだ。 ただの人間に、レミリアがここまで気を許すとは、いやはや世の中分からないものである。 「……さて、そうは言っても、どのようにすればいいかしらね」 「任せてください! 俺に考えがあるんです。名付けて、『スカーレットプロジェクト』!」 「……へぇ、私達の輝かしい第一歩に相応しい名前じゃない」 ……ついでにこの二人、破滅的なセンスの持ち主でもある。 主にネーミング的な意味で。 「それで、どのような物なのかしら、その『スカーレットプロジェクト』とやらは」 期待を込めた眼で○○を見つめるレミリア。 「はい、簡単に言ってしまえば、紅魔館改造計画です。この館の全ての格を上げれば、自ずとそこの主であるお嬢様のカリスマは跳ね上がる。そして同時に紅魔館の名前も威厳も上げられるという一挙両得の計画です!」 「素晴らしいわ、○○! 流石は私の見込んだ男」 「光栄に存じます」 「それで、具体的にどのようにするのかしら?」 「はい、まずはお嬢様本人ですが、こちらに関してはなにも問題はありません。 その麗しいお姿と、漂う気品は見るもの全てを虜にしますし、強さに関しては他の追随を許しません」 「ふふん、当然ね」 誇らしげに胸を張るレミリア。 「それからこの館、紅魔館ですが、確かに幻想郷一美しい屋敷と言えますが、お嬢様が住まうには少し役不足です」 「……ふむ」 「夜の王たる貴女が住むからには、そこに在るというだけで、見るものを震え上がらせる恐ろしさと、存在感がなければいけません」 「……成程」 「そこで俺が外の世界の知識を参考に、イメージ図を描いてみたのですが、如何でしょうか?」 ○○が取り出した紙に描かれていた屋敷に目を見開くレミリア。 「これは、……素晴らしいわ○○! まさか貴方にこんな才能もあるなんて」 「お気に召していただけましたか」 「文句なしよ! そうよね、私ともあろうものが、この程度の屋敷で満足していては駄目よね」 「もちろんです! あなたはもっと上に行く御方だ!」 お互いの認識を深め、二人で盛り上がる○○とレミリア。こんな夜中にやかましいことこの上ない。 「……そして、他の住人のことですが、やはりお嬢様の下につくには、少々力不足です。 並み居る強者を従えてこそ、王者の中の王者。 お言葉ですが、皆お嬢様の供としての自覚が足りません」 「それは私もうすうす感じていたわ」 「そこで、単純な手段ではありますが、スペルカードを考えてみました。これらを各々が使いこなせるようになれば、かなりの戦力になること間違いありません!」 「……これはまた、凄まじい物を考えたわね。 これが使えれば、霊夢もスキマも敵ではない。残念ながら、私には勝てそうにないけど」 「この世界でお嬢様に勝てる者など、いるわけがありません」 「しかし、私以外を相手にするのならば十分ね」 「有り難きお言葉」 「早速全員にこのスペルカードを作らせるようにしましょう」 「では、明日からとりかかりましょうか?」 「そうね。さあ、これから忙しくなるわよ。レミリア・スカーレットこそ、幻想郷最強ということを、知らしめてやるわ!」 レミリアと○○は拳を高々と突き上げて、不敵に笑いあった。 美鈴は後ろで聞こえた破砕音に振り向くと、あんぐりと口を開いた。 見えたのは紅魔館の変わり果てた姿。 外観の一部が砕かれたのだろうか、瓦礫が庭にうず高く積まれている。 紅の塗装もあちこちがぼろぼろに剥げ落ち、地の色とまだらになりみすぼらしい。 玄関の扉は、その機能を果たせずに、だらしなく蝶番ひとつでぶら下がっていた。 そしてその扉の目の前には、最近紅魔館に入り浸る人間○○が、満足げに扉を見つめている。 「……ちょ、ちょ、ちょ!? ○○さん!? なにしてるんですか!?」 「紅魔館を、そしてお嬢様の名を幻想郷中に轟かせる記念すべき第一歩だよ」 「はあ!?」 意味を理解できず茫然とする美鈴に、○○は紙切れを渡す。 「丁度良かったよ美鈴。その紙に描かれたスペルカードを今すぐ作ってね。これはお嬢様の命令だから」 「いや、そうでなくて、咲夜さんやお嬢様に怒られますよ!」 「平気平気。これはお嬢様の意思だから」 「訳分かりませんから。……ってちょっと待って、○○さ~ん」 上機嫌で館へと入っていく○○を美鈴は必死に追いかけた。 咲夜は館の惨状に頭を抱えていた。 まるで妹様が暴れまわったかのように、あちこちが破壊されている。 その景観はそう、外の世界にあった、幽霊屋敷その物だ。 何が起こったのか知らないが、このままではお嬢様に叱られてしまう。 何とかしなくてはと思った矢先、紅い砲弾が目の前をかすめ、廊下の角にあった調度品を砕いた。 何事かと振り反るとそこに現れたのは、主であるレミリア。 「……お嬢様!?」 「あら、咲夜。どうしたのそんなに慌てて」 「どうしたもこうしたも、この惨状。一大事です」 「ああ、いいのよいいのよ。これはスカーレットプロジェクトの一環なんだから」 「はあ?」 「だから、スカーレットプロジェクトよ。咲夜にはこのスペルカードを作ってもらうわ。こっちはパチェに渡しといて」 「え、ちょっと、お嬢様。お止めください!」 「○○さ~ん!待って……」 「レミィ、さっきから何の騒ぎ!? 本がめちゃくちゃなん……」 「お姉様! お気に入りのカップが割れちゃったじゃない! どうしてくれ……」 ○○を追いかけて来た美鈴と、この騒ぎの被害を受けたフランとパチュリーが、ロビーに来て絶句する。 「……何コレ?」 「……さあ、私にも分かりかねます」 「わ~い、わたしもまぜて~」 一番最初に立ち直ったフランは、嬉々として破壊活動に加わる 残された三人は目の前の風景に呆然とする他なかった。 「……なんでこんなことになってる訳?」 「……プロジェクトがどうとか。そういえば、パチュリー様にと、お嬢様が」 咲夜が先程レミリアからもらった紙切れをパチュリーにわたす。 「何コレ? ……ええと、『月月火水木金金符、年中むきゅ~。とにかく色んな弾をばらまく』?」 「スペルカードらしいです」 「「「……」」」 果たして、喘息持ちの彼女の体力は考慮されているのだろうか。 「ひょっとしてわたしのもですか? 「なになに『名刺、紅美鈴。紅、美、鈴の形にした米弾をばらまく』?」 「「「……」」」 そこまで彼女の名前は浸透してないのだろうか。 「咲夜も貰ったわけ?」 「はい。『瞬殺、メイドインアサシン』だそうです。時を止めてその間にナイフで相手を一刺し」 「「「……」」」 不可避弾幕禁止というルールがあったはずだが。 「……これらをスペルカードとして作るようにと」 「……で、これはまあ、いいとして、アレはどういうこと?」 無茶な要望に少し苛立ちながらパチュリーが尋ねる。 「……あの、ひょっとしたらこれじゃないですかね?」 美鈴が差し出したのは、館の絵が描かれた紙。 足元に落ちていたらしいそれには、上部にスカーレットプロジェクトと書かれ、描かれた館は妖怪屋敷と呼ばれるような外観。 「……つまり、ここをこんな風にするために、あんな真似をしているのかしら?」 魔導書の一部を駄目にされたパチュリーは、怒り心頭。 いい感じに額に青筋が立っている。 「……ご安心下さい、パチュリー様。いきすぎた主をたしなめるのも、従者の役目」 穏やかな、あまりにも穏やかな声で答える咲夜。 この後の作業を考えれば、あの二人には、言っておかなければならないことがある。 それはもう、たっぷりと、こってりと。 「……妹様、危ないですから降りてきてください」 スペルカードといい、妖怪屋敷(門前で啜り泣く悪霊役)といい、あんまりな扱いを受けた美鈴も、普段とは違う笑顔でフランに呼び掛ける。 暴れ足りなくて不満そうに振り向いたフランは、しかし、三人の殺気に、慌ててロビーに舞い降りる。 「……さて」 美鈴が腰を低く落として構える。 「……二人とも」 パチュリーが、いつも抱えている魔導書を開く。 「……いい加減に」 咲夜が自身の後ろに無数のナイフを展開する。 「「「しなさーーーい!!!」」」 怒りの弾幕一斉掃射。 ただの人間である○○はもちろん、全く気付いて無かったレミリアも、ルナテイック越えのこの弾幕をかわせるわけもなく。 ピピチューン! 「「う~~~~~~!!」」 紅魔館の一部とともに見事なまでに吹っ飛んだ。 紅魔館、原因不明の半壊 昨日未明、霧の湖付近にある屋敷、紅魔館が半壊するという事件が起こった。 住民からの取材協力を得られず、目撃者もいないことから、詳細は不明だが、最近紅魔館に頻繁に出入りしている、とある人間は「これは、お嬢様の輝かしい栄冠の第一歩に過ぎない。幻想郷を紅魔郷と改め、レミリアお嬢様が支配する日は、そう遠くないだろう」と、レミリア・スカーレットの関与を仄めかす発言をしている。 紅霧異変以来、大人しくなったかと思われた紅魔館だが、また何かしら騒ぎを起こすつもりなのだろうか? 少なくとも、博麗の巫女の世話になるようなことは、御免こうむりたいものである。 ーとある日の文々。新聞一面 「なかなか良い受け答えをするじゃない、○○」 新聞を片手にご満悦といった様子で、レミリアは言う。 「ありがとうございます。実はこれも計画の一つでして」 「計画?」 「結果を急いだために失敗した前回を教訓に、新しく計画を打ち出したのです。名付けて『スカーレットストライクバック』」 「ほう……」 果てしなく同レベルの、素晴らしいネーミングに、食い付くレミリア。 「こうして紅魔館の、そしてお嬢様の恐ろしさを世に広めるわけです。事実あのブン屋は、お嬢様を恐れてこんな記事を書いた。 これを他の者が読めば、お嬢様の恐ろしさを思い知ることになる。 そのうちに、すきまや巫女の方から、お嬢様に跪くことになるでしょう」 「……○○、貴方は本当に、なんて冴えているのかしら」 「恐れ入ります」 「人間にしておくのはもったいないわ。わたしの右腕になりなさい」 「……と、いいますと」 「貴方を眷族として、迎え入れてやろうというのよ」 「……お嬢様!」 最高の褒美に歓喜する○○。 「不肖この○○、どこまでも貴女の側でお仕えさせていただきます!」 後に⑨血鬼と呼ばれる夜王の眷族が、幻想郷縁起に掲載される、ほんの少し前の話である。 ───────────────────────────────────────────────────────────