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ユリシーズ・レオパルド 変革の反旗 CHARACTER(UNIT) CH-C51 赤 1-1-0 C クイック (自動A):このカードが「高機動」を持つユニットにセットされている場合、このカードと交戦中の全てのユニットは、特殊効果が無効となる。 M Ad [1][1][0] 高機動ユニットに乗っている場合、交戦相手の特殊効果を消せるようになるキャラクター。 特殊効果ではないテキストを消せない点には注意。 普通高機動を持っている場合、自分が攻撃する時に交戦を考える必要は無い。よほど環境に噛み合っているわけでも無ければ、ただのクイックキャラクターと考えた方が無難だろう。 この能力が効果を発揮するのは防御時。高機動ユニットを防御に回すのは効率が良いわけでは無いが、クイックも持つためコンバット・トリックとしても十分優秀な部類。 その場面に限って言えば防御修正を持つヨン・サンニーの方が優秀だろうが、場に出た以降は射撃修正の方が重要な場面も多いため、まさに一長一短であると言える。
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名前 マンモス西 題名 あしたのジョー フレンド フレンドキャラ 詳細 矢吹丈 自分の技の効果が25%上がる相手の技の効果が%下がる 力石徹 自分の技の効果が%上がる相手の技の効果が25%下がる
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「はい、じゃあ今日の訓練はここまで」 高町なのはのその声が響くと同時、相対していた四人は漸くに緊張を解き、疲れたように地に伏せる。 ホーリーの訓練場を間借りしてのなのはの教導は現在でも続いていた。流石にミッドチルダの時ほどに施設などに関しては贅沢は言えないが、それでも訓練に使える場所を借りることが出来るだけでも重畳だとなのはは思っていた。 JS事件以降、飛躍的に成長を続ける新人たちはそれこそ未来のストライカー候補とするに申し分の無い素質を開花し始めている。 自分が教えられることは、もはやそう多くはないであろう事を察しているなのはには、それが喜んでいいのか、寂しく思うことなのかは微妙なところだ。 無論、それが喜ぶべきことであるのは分かっている。長く教導官を続けてきて、多くの未来ある才能豊かな教え子たちを空へと羽ばたかせてきた。 教え子たちの巣立ちには喜びと誇りを持つことは許されても、それを厭うことなどあってはならない。 それは自分の元を発ち、己自身の力で空を飛ぶ選択をした教え子たちの誇りを汚すことと同じだからだ。 だからこそ、自分が本来しなければならないことは、旅立つ彼らを誇りを持って見送ること、ただそれだけのはずだ。 だってもう自分がいなくても、彼らは立派に飛べるようになったのだから…… それはこの四人も同じだ。 近い将来、いずれ六課が解散するその頃まではこの子達もまた、立派なストライカーズへと成長を遂げているだろう。 そして自分たちと別れた道の先でも、きっと立派に自身の空を自身の力で飛び続けてくれる筈だ。 だからこそ、教導官として高町なのはがすべき事は、その時までにこの四人を立派に鍛え上げて、来たるべく日には自信を持って送り出してやることだ。 多くの教え子たちにそうしたように、彼女たちにもまたそうしてあげなければならない。 それはちゃんと理解している。だが…… (……出来る事なら、もっとずっと教えてあげていたいし、守っていたい) それが己の我が儘だと十二分に自覚しながらも、そんなことを思ってしまっている自分をなのはは恥じてもいた。 間違いなく、この四人は才覚にしろその精神にしても、長く続けてきた教導官の経歴の中でも最高の教え子たちだと言っていい。 彼女たちを教導できた事を、むしろ自分は誇りに思っているし、自分が教えたことが教え子たちの目指す道の先で少しでも役に立ってくれたなら、これほど喜ばしいこともない。 だが同時に、本来ありえてはならない思考だと自覚しながらも、彼女たちを手放すことを惜しいと感じている自分も確かにいた。 輝く原石であった……否、もう充分に輝き始めている今の彼女たちを、許されることならばこれからも誰よりも近くでずっと見ていたいとも思っていた。 恥ずべき独占欲、それを理解しながらもどこかでそれに言い訳をしようとする自分がいるのが分かり、なのはは自己嫌悪すら正直に抱いた。 分かっている。これはただ彼女たちを羨んでいるだけなのだ。いつか成長し、自分たちに勝るとも劣らぬようになるであろう彼女たち。 これからも彼女たちは成長してどんどん強くなっていく、その果てはまだまだ遠いところだ。 一方で、自分はどうだろうか。全盛時の力を失い、これから先は落ちていくことはあっても上がることは恐らくはないであろう己の実力。 愛娘を救い、教え子たちを成長させていくために選び取った代償。自らでそれを自分は選んだ。ならばそこに後悔は無いし、あってはならない。 この先も、悔いることなくこの選択に殉じる覚悟は既に出来ている。 ……出来ている、はずだった。 それでも、と魔が差している自分がいた。 かつて管理局に入ってすぐの頃、上には上がいるという現実を思い知らされ、それでも強くなろうと我武者羅に足掻いた時期があった。 大切な者を守る為には、力とは時に手段として必要になってくる。だから力を求めて強くなろうと頑張り続けた。 色々あって、ただ我武者羅に無茶を続けることは逆効果であることを痛い教訓と共に覚えたが、それでも力を求めていたあの時に確かに感じていたことがあった。 どんどん成長を続けているのが感じられる、強くなっていることを実感できていたその時、確かに楽しいと思う自分がいた。 力そのものに善悪は無く、振るう者の立場によってそれは決定される……などとはよく言われるが、確かに純粋に力だけを求めていた頃は、楽しくも思えた。 それは教導官となってから他人へと教える立場になってからも、教え子たちがかつての自分と同じように強くなることに自信と喜びを感じられている事を察し、皆同じであるのだと言うことは理解できた。 だからこそ、教導官になって以降も教え子たちを鍛え上げながらも、負けずに己自身もまた鍛え上げ続けることを忘れはしなかった。 そうして全盛時とも言えたあのJS事件前の自分、未だ自分に未熟があることは自覚し戒めながらも、それでもこの自分の力なら、大切な仲間たちや教え子たちを守ることが出来ると信じていた。 でも――― 「なのはさん、どうかしたんですか?」 スバルに呼びかけられ、物思いに耽っていた意識をハッと戻すと共に、慌てて彼女には何でもないと言って首を振るう。 いけない、よりによって教え子の前でこんな事を考えていたなどあってはならないことだと思いながら、皆には先に戻ってシャワーを浴びて着替えて通常任務に就けるよう待機しておくように指示を出す。 指示に従い去っていく四人を見送った後、改めて後片付けを兼ねて一人残りながら、なのはは自身が思っている事をハッキリと口に出して言ってしまっていた。 「……きっと不安なんだ、私は」 全盛時の力は恐らくは最早発揮することは叶わない。無敵のエースオブエースと教え子たちが自分へと抱いてくれた幻想は、それこそ本物の幻想と化した。 だからこそ、これから未知の強大な脅威が教え子たちの前に現れた時、自分は彼女たちを無事に守ってやることが出来るだろうか。 その自信が無い事をハッキリと自覚しているから、こうして不安にもなっている。 大切だから失うのが怖い、離れるのが嫌だ。 だからずっと守っていたい、傍にいて欲しい。 それが依存と呼ばれる弱い考えであることは承知の上だ。もはや彼女たちは充分に強くなったのだから大抵のことに心配を抱く必要は無いはずだ。 だというのに、そんな不安を抱き、あまつさえ彼女たちを侮辱しているとも捉えられる不安を抱いている。 だからこそ、なのははハッキリとこの現実を自覚した。 彼女たちは強くなった。本当に、当初の予想以上に。いつかは自分たちと並び、越えていくほどに。自身の空をその力で力強く羽ばたけるほどに。 反面、己は弱くなった。過去の選択に後悔は無いと謳いながら、力に未練を抱いているほどに。そしてそんなに強くなった教え子たちに、まだ不安を抱き続けているほどに。 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed 第1話 機動六課 「本土からの増援?」 「ああ、何でもお前がこれまでやらかした被害も向こうは無視できなくなったんだろ。それで本土の方から新しいアルター使いがやってきたんだとよ」 君島のその説明にカズマは車の座席に背を凭れさせながら、その情報の内容を改めて反芻する。 と言っても、彼が理解できていることは二つだけだ。 ホーリーに本土から新しくアルター使いどもが配備された。 自分はそれをぶっ飛ばす。 以上の二点、実に単純明快なことに過ぎない。 ホーリーや劉鳳とはケリをいずれ着ける心算だったのだから、横槍を入れてくるようなら纏めて潰す、ただそれだけのことである。 「んな奴ら、全部纏めてぶっ潰してやるさ」 「……纏めて潰すって、カズマ、お前この状況が結構ヤバイって分かってる?」 カズマのその相変わらず過程を省く、単純な思考に呆れながら、君島は相棒の分の危機感すらも余計に感じなくてはならないほどだった。 この話、自分の情報網が掴んだものだから確かなものだという自信がある。だがそれは同時に、本土の連中が自分たちを潰しにかかってくるのに本腰を入れ始めたということを証明しているも同じだった。 先のネイティブアルターたちによる対ホーリー同盟軍は敗北に終わり、救出に向かったカズマの健闘も空しく、寺田あやせをはじめとした多くのアルター使いたちが本土へと送られてしまった。 彼女たちが本土でどんな扱いを受けているか、それを心配すると同時に、ロストグラウンドにはホーリーに対抗しようというアルター使いが大量に減ってしまったという危機的現状もある。 かの惨敗のせいで、今更あの時に召集に応じなかった他のアルター使いを頼ろうにも及び腰のアイツ等は二度と手を貸そうなどとは思わないはずだ。 それはつまり襲われれば局所的に抵抗をする者たちがいたとしても、自ら攻めの姿勢でホーリーへと立ち向かうアルター使いはもういないということだ。 ―――隣で不敵に笑っている、この馬鹿一人を除いて。 「でもよ、相手は組織なんだぜカズマ。個人の力で数を相手に勝とうなんて……アルター使いでもありえないくらい都合良過ぎるだろ?」 この相棒の強さは他の誰よりも君島が一番良く知っている。伊達に長いこと組んで共に修羅場を潜り抜けてきたわけではない。 この男はどんな時でも決して諦めない。まるで不可能を可能にすることこそを義務とでもするように、どんな絶望的状況下でもソレに対する反逆の姿勢を決して崩しはしない。 それに憧れてもいる君島は、この馬鹿でクズで……それでも強いこの相棒と組んで戦える事を誇りに思っている。 けれど、これはもう今までのネイティブアルター同士の小競り合いとは完全に次元の違う話になってきている。 とてもではないが、圧倒的とも思える本土やホーリーを相手に、自分たちが勝ちを収められる姿を君島は想像できなかった。 だからこそ、ここはカズマを説得して逃げるのも手なのではないかとこの時に本気で君島は思ってもいた。 だが、 「だから、逃げんのか?」 カズマが不意に睨むようにこちらを見て言ってきた言葉に、君島は内心を見透かされたのかとも思い、ドキリとした。 今この男が非情に不機嫌な状態であることは君島には即座に察せられた。それこそすぐ殴ってくる男だ、次の瞬間にはこちらに手を出してきてもおかしくない。 「逃げてどうすんだよ、君島? 奴らはきっとどこまでも追ってくるぜ。ならまた逃げるか、このロストグラウンド中をアイツ等に捕まらないように逃げ回り続けろってか?……んなの―――」 瞬間、手を伸ばしこちらの胸倉を掴みあげながら、ハッキリとカズマは睨み怒鳴る。 「―――冗談じゃねえ! ゴメンだね、そんな無様なこと! 逃げてたって何も解決しねえ! 奴らが襲ってくるってんなら、奪ってくるってんなら、戦うしかねえだろうが!?」 勝てる勝てない、やれるやれないじゃない。 勝つしか、やるしか他に道は無い。 「クソムカつくあいつ等に好き勝手やられて我慢できるか! 受け入れるのが運命?………ッハ、だったら―――」 強く真っ直ぐに、それが当然のことの様にハッキリと。 「―――その運命に反逆してやる!……それが俺たちのやり方だろ、君島ぁ!?」 馬鹿はそんな馬鹿な事を言ってきた。 正直、付いていけないのが普通人である君島邦彦が本音としたいところだ。 どんなに頑張っても君島にはアルター能力も無ければ、カズマのような強い考えだって抱き続けることは難しい。 理不尽に奪われるのは悔しいし、抗えるものなら抗いたいと君島だって思っていた。だがそれでも自分は現実に弱く、何の力も持っていない。 カズマのように、強く在り続けることは出来ない。 「……皆が皆、お前みたいにはなれねえよ」 だからこそ、君島はそんな本音を彼から目を逸らしながら告げていた。 絶対にぶん殴られる、その覚悟はしていた。 何せ自分はカズマの嫌う弱い考えを口にしていたのだから……。 だからカズマがそれを許せず、次の瞬間には怒りに任せて拳を振り下ろしてきても、まったくおかしくはなかった。 むしろこの男なら、容赦なくそうすると思っていた。 だが――― 「……そう、かよ」 苦虫を噛み潰すかのような呻き声で呟いたかと思えば、カズマは掴んでいた君島の胸倉を乱暴に離し、そのまま車を降りて背を向けて行ってしまおうとする。 「………お前がそう思うなら、仕方ねえ。好きにしろ……俺も、好きにするだけだ」 振り返りもせず、背を向けたままカズマは最後にそれだけを言って去っていく。 向かう先にあるのはホールドのトレーラー。補給物資の運搬でこの経路を通るのを事前に知り、待ち伏せをしていたのだ。 その待っている最中に、思い留まらせることも考えて先の話題を振ったのだが、やはりカズマは止める気などないらしい。 独りでもトレーラーを襲撃……否、これからも例え独りだろうとも戦い続ける心算なのだ。 それがあの男の……カズマのこの現実への反逆の仕方だとでも言うように。 それを止めろと声をかけることも、その背を追いかけることも今の君島には出来ない。許されない。 一度でも弱い考えを抱き、それを受け入れてしまった。 それはカズマと共に戦う資格を失ったのも同じ。 ただ項垂れるように、何も言えず、背を向け向かう彼の背中を見送り続けることしか今の君島には許されなかった。 ……これなら、思い切り殴られた方がまだマシだった。 カズマのムカつきは今や最高潮に達しかけていた。 それも当然だ、まさかあの相棒がいきなりあんな及び腰の腑抜けた戯言をほざくだなどとは考えてもいなかったからだ。 そう、他の誰でもなく、己の相棒であるあの君島が、だ。 それがカズマには許せず、苛立ちは益々増していく一方だった。 実に胸糞悪い。あの腑抜けた相棒の姿も、クソったれた現実も、そして我が物顔で好き勝手やってやがるホーリーの連中も、だ。 もはやそれこそ一つド派手な喧嘩でもやらないことには収まりなどつきそうにない。 本土から来たアルター使いども、丁度いい。憂さ晴らしにぶっ飛ばしてやるからかかって来いというものだ。 そいつ等がさも当然のようにこちらの前に立ち塞がるなら、それは敵だ、壁だ。 壁はぶち壊す、この自慢の拳でだ。そこには何一つの例外も無い。 「……だからよぉ」 ―――始めようぜ、喧嘩をよぉ!? そう胸中で叫ぶと共に、自らのアルター“シェルブリット”を発現し右腕へと装着させながら、カズマは目視で確認できたトレーラー目掛けて襲い掛かった。 「物資輸送の護衛、ですか?」 「うむ、それを君たち機動六課へと頼みたい」 ホーリーの部隊長室へと呼び出されたなのははそこでマーティン・ジグマールからそのような要請を請けることとなった。 無論、建前の上では増援部隊である以上はホーリーの部隊長から命じられた指示を断ることは難しく、なのはもまたこの時点でそれをする気は無い。 人手不足と陥っているらしいホーリーの手伝いを断る理由も無く、ロストグラウンドの現状をより深く理解するためにも公然と壁の外での活動が出来るのはこちらとしても望むところだ。 だが、 「本日急に、とは随分といきなりですね?」 こちらにもこちらの都合、色々とした準備がある……などとは間違っても目の前の相手を前に口に出すことは出来ないが、いきなり過ぎるというのも事実だった。 「そのことに関しては情報の行き届きがしっかりしていなかったようだ。確かに急な話になってしまってすまない」 「いえ、こちらもお世話になっていますし、そんなお気遣い無く」 謝罪を述べてきたジグマールになのはも慌ててそう返す。 別に不満があったわけではない。それに仮にも軍属が命令に異議を挟むことも許されることではない。 自分たちは機動六課ではあるが、それも立場上ではホーリーに所属している言わば同部隊の一員。お客様ではないのだ。 だからこそ拝命された以上は、 「了解しました。これより機動六課、物資輸送の護衛任務へ就かせていただきます」 責任を持って完璧にやり通す、それが彼女たちの流儀だった。 「―――高町」 聞き慣れた―――ものに非常に良く似た声に名前を呼ばれてなのはは振り返る。 「……劉鳳君。どうしたの、何か用事かな?」 其処に立っていた劉鳳を確認すると共に用件を彼へと微笑みながら尋ねる。 ホーリー部隊きってのアルター使いであり、実直そうな性格そのままの外見の彼とは色々と話をする機会が欲しいと思っていたのだが、今まで残念ながら互いにその機会は無かった。 そしてこれまた残念ながらこれから任務で出撃しなければならない以上、時間はあまり取れない だが彼の方から進んで話しかけてきてくれたのは初めてだったので、手短でも聞いておきたい興味が彼女にもあった。 「ゼブラ27地区に物資輸送の護衛任務に就くと聞いたのだが……」 「耳が早いね。そうだよ、これから私たちのホーリーでの初任務だけど、応援でもしてくれるのかな?」 だとするならば嬉しいものだ、とからかいではなく本心から言ってみた。 だが生憎と劉鳳の方は、それにいやと首を僅かに振りながら、 「気をつけろ。事によっては“奴”が襲撃を仕掛けてこないとも限らない」 それが言いたかっただけだ、と彼が言ってきたのは警告紛いの……否、実質は警告と同義の言葉だった。 劉鳳が“奴”と口にした時の表情の変化から、それを指す人物が彼にとっては特別な相手なのだということは彼女にも凡そ見当がついた。 恐らくそれは――― 「―――NP3228……ううん。カズマ、くん…だっけ?」 なのはの言葉に劉鳳はそうだと肯定の頷きを示した。 部隊内で話はなのはの耳にも届いている。 ―――曰く、互いがその名を刻み合った宿敵同士。 これまでに幾度も対決をし、劉鳳とそのカズマという男は激戦を繰り広げているのだという。 しかも劉鳳のその相手への拘りは尋常なものでないらしく、部隊内の者達ですら気安く触れられぬ話題なのだとか。 ホーリーきってのアルター使いである劉鳳ほどの男がこれ程までに拘っている、それはやはり只者ではないというハッキリとした証明だろう。 アルター能力の仔細を把握したく、なのはは一度劉鳳との模擬戦を実施したことがある。 無論、互いに制限下の上で全力を出す前に終了したが、それでも自分とあそこまで互角以上に渡り合えた劉鳳の実力をなのはは高く評価していた。 あの絶影はあれ以上の真の力を有しているらしく、そのカズマ相手には一度ソレを解放しているという話だ。 そこまでの相手、ならばその実力は紛れも無く本物。なのははまだ見ぬ相手を決して過小評価はしていなかった。 「お前たちのアルターは俺も把握させてはもらった。正直、この大地においても特にお前には早々に匹敵する相手もそうはいないだろう。だからこそ気をつけろ、あの男はその数少ない例外へとなりうる」 それに女子供だろうと容赦はしない。カズマに限らずネイティブアルターの多くはそんな野蛮さを持ち合わせている。 見かけにそぐわぬ実力を彼女たちが有しているとはいえ、傍から見れば女子供ばかりの集まり……それを危惧する部分もまた劉鳳にはあった。 だがそんな彼の心配にも、なのはは微笑みながら頷くだけ。 ただそれだけの動作だが、それなのにそれには付き合いの短い劉鳳ですら心強さを抱かせる何かがあった。 「心配してくれてありがとう。でも大丈夫、私たちを信じて」 なのはの言葉に、「……あ、ああ。そう…だな」と劉鳳は視線を逸らしながら曖昧に頷くだけだった。 その奇妙な様子に首を傾げるなのはだったが、劉鳳は伝えたいことは伝えたとそれだけを最後にこちらへと告げて早々に背を向けて行ってしまった。 素っ気無い、と言ってしまえばあまりにもその通りだ。 しかし…… 「……やっぱ似てるんだよねぇ」 その声といい、一見すれば実直だが堅物にも無愛想にも見え、けれど奥底にあるのは強い信念と確かな優しさ。 自身の兄をどこまでも年下のあの少年はこちらへと連想させてくれる。 そう思いながら、なのはは劉鳳の去り行くその背を見送っていた。 「どうかしたか、シェリス?」 「べっつに~、何でもないですよ~」 そうは言いながらも、シェリス・アジャーニの態度は明らかにどこか普段とは違うことは流石に劉鳳にも察せられた。 まぁ、その理由が偶然にも何やら彼が高町なのはと廊下で話しこんでいた姿を随分と親しげそうだなどと勘違いしてのことだとは夢にも思わないだろうが。 兎に角、これから自分たちも別地区にて任務があり赴かなければならないというのに、彼女に不機嫌になられたままでは任務に支障が出かねない。 ロストグラウンドへと磐石の秩序を制定させるためにもどんな小さな任務だろうがミスは許されない。 そんな若き使命感に燃えている劉鳳にとっては微妙な乙女心を察することなど不可能なのだが、それでも任務を全うするためにも聞かねばならない。 「シェリス、君が何をそんなに怒っているのか俺には分からない。俺に何らかの不備があったならば謝罪しよう、よければ今後の為にもその理由を教えてもらえば尚助かる」 そんな言い方で機嫌を直す女など、次元世界中探しても見つからないだろうが、この手のことに機微が皆無な劉鳳には最大限の誠意の言葉の心算であった。 こうやって気遣う言葉を選ぶだけでも慣れない劉鳳には苦心した作業だった。やはり女という存在は難しいと彼は改めて思った。 そして惚れた弱みというやつか、シェリスにしても劉鳳が苦心している様子なのは察することが出来る以上は、これ以上の我が儘な態度を取るわけにもいかない。 不機嫌でいても仕方が無かったので、諦めの溜め息を吐きながら彼女は劉鳳へと答えた。 「……ごめんなさい、私もどうかしてた。……でも、高町さんとは何を話していたの?」 それだけはシェリスにとってどうしても聞いておきたかった知りたいことでもある。 ただでさえ彼と幼馴染みであるという桐生水守という存在だけでも頭が痛いというのに、今度はまた本土からアルター使いの女(それも年上の美人ときたものだ)がやってきたのだ。正直、現状は彼女にとって気が気ではない。 高町なのは。劉鳳にも匹敵する実力を持った強力なアルター使い。 しかも彼女はあの水守同様に本土からやって来ている才色兼備の逸材だ。 ジグマールも、そして劉鳳もその実力を高く評価している相手だ。自分では正直、何から何まで勝てる気がしない。 もし彼も劉鳳に気があるなら、もし無いとしてもこれからもそうだとは断定できない以上、シェリスの憂鬱と不安はここのところ治まる兆しも見えない。 悩み多き恋する乙女であるシェリス・アジャーニにとっては、いっそのことこの堅物に早く自分の想いを気づいてもらいたいとすら思わないわけではなかった。 ……そうは言いつつも、口に出す勇気はやはりこれまで同様に無いわけだが。 そんなシェリスの内心に気づきもしない劉鳳は、ただ彼女に訊かれた言葉により、先程高町なのはと交わしていた会話の内容の核心だけを簡潔に述べた。 「大した事ではない。ただ奴が……カズマが襲撃を仕掛けてこないとも限らないから気をつけるように忠告していただけだ」 正直、劉鳳にとってはシェリスにも水守にも、そして高町なのはにも目に止めている余裕などない。 彼がいつだって見ているのはただ一人だけだ。 ―――そう、“シェルブリット”のカズマ……あの男だ。 自分に名を刻ませた、自分が倒す、自分だけの獲物。 とことんまで気に入らず、存在自体が目障りだが、それでも憎悪などと言った感情を超えた部分での純粋な拘りを誰よりも抱く相手。 劉鳳にとってカズマとはそんな男だったのだ。 「でもいくらアイツでも、彼女たちも相当やるみたいだし大丈夫じゃないの?」 シェリスにとってカズマという男は劉鳳にしつこく食い下がってくるネイティブアルターという認識しか抱いていない。 その実力は認めるが、それでも力馬鹿であることは変わらず、劉鳳が本気になれば敵ではないという認識を持ってもいた。 それに比べれば、下手をすれば本気の劉鳳を相手に比肩しかねないあの高町なのはならば負けるとは思えないと考えてもいた。 それは劉鳳とて同じ、そう考えていたのだが…… 「断定は出来ん。高町は確かに強い、俺もそれは認めている。……が、あの男の驚異的な成長速度もまた侮れたものではない」 決して高町なのはがカズマに負けるなどと思っているわけでも望んでいるわけでもない。 ただ――― 「……ふ~ん、何だかアイツを倒すのは俺だって顔だね?」 その劉鳳の表情から思わずそんな内心だろうと察し、からかい混じりに言ったのだが、 「―――ああ、それを否定する気は無い」 あっさりと認めてしまった劉鳳の言葉には今度は彼女が呆気に取られた。 それこそ本当に、劉鳳はあの男しか見ていないのだという事をシェリスは漸くにも理解した。 それこそ何て皮肉だろう、妬むべきは水守でもなければなのはでもなく、あの男だと言うことらしい。 「……高町さん、さっさと倒しちゃっていいよ」 「ん、何か言ったか?」 思わずポツリと呟いていた本音に、劉鳳は聞き取れずに聞き返してくるが彼女はそれに何でもないと微笑みながら返すだけであった。 そして内心で本気でこうも思っていた。 もしあの二人が遭遇して戦うようなら、彼女には容赦なくあの男を倒してもらいたい、と…… そんなシェリスの他力本願な願いなど知る由もなく、なのはたち機動六課を乗せたトレーラーは、目的の物資も一緒に乗せてロストグラウンドの荒野を進んでいた。 各自には非常時に備えてトレーラー内で待機を命じてはいたが、今のところ何も起きる様子も無く、車内は平穏そのものと言った様子であった。 「ねえ、ティア。この世でやっぱり一番大切なのは速さだと思うんだ」 「はいはい、そういう布教活動は他所でやってよね」 「フリード、瓜核さんの西瓜がすっかり気に入ったみたいだね」 「うん、エリオ君も良かったら食べる?」 スターズもライトニングも、両新人たちは車内にてそんな呑気な会話をしている始末だ。 いくらなんでも緊張感の欠如しすぎで咎めるべき所、と思えなくもないが一見リラックスをしている彼女たちだが次の瞬間にも異変が起これば直ぐ様に対応へと移ることは出来る。 その最低ラインは保った上での行為ではあり、何よりも自身で考え事に没頭していたなのははそれを咎めることはなかった。 なのはが思考に割いていた大部分の事柄は、やはりアルター能力に関してのことだった。 魔法とは明らかに異なるメカニズム、法則性に基づいた超常の異能力。 管理局が稀少技能と呼んできたもののどれとも異なる、多種多様に満ちた神秘の力。 その原理の詳しいことは解明されてはいないらしく、生憎と独自に調査や考察を続けているなのは自身にもその解には未だ至れない。 それでもはっきりしていること、それはやはりこのアルター能力は使い様によっては魔法同様に非常に危険な力になりかねないということだ。 この秩序の失われた大地において、無法の輩がこの能力を犯罪へと用いれば確かに脅威以外の何ものでもない。 故にこそ、ホーリーという存在もまた必要だということはなのはにも理解できる。 これまでのこの組織の活動記録には調べてみれば多少強引なところがあると彼女自身も思うところがあるが、現地組織への必要以上の介入が許されない管理局員としては口を挟むことは出来ない。 だがあのホーリーを率いるマーティン・ジグマールは八神はやて以上の食わせ者であろうことは察せられるが、決して無頼の徒と言う訳でもない。 ある程度の犠牲は容認しても、最終的に目指す部分に人々の嘆きはないはずだ、それを信じられる程度には彼女もジグマールの人格を評価している心算だった。 互いに利用し合う関係、その本質は変わらないが、少なくともホーリーとの間における六課側の協力関係はこれからも維持していくべきだろう。 ジグマールの意図や目的が気にならないわけでもない、だが自分たちは管理局員としての仕事をまず全うすることを優先させなければならない。 それこそが、過去幾度にも渡って起こっているこの世界で発生する次元震の原因究明とその解決、これをしないことには始まらない。 (鍵はやはりアルター、これは間違いないと思う) アルター能力に接し、調査を進めて行く内になのはは己の仮説の信憑性が改めて高くなってきているのではなかろうかと考えていた。 次元震の影響がアルターによるものだとしたら、それは起こしていることは間違いなく人間だということになる。 どうやって、どれほどのレベルで、その意図や目的は……早計は危険とはいえ、この仮説が当たっているのなら、これを起こしている人物とは何者なのだろうか。 その人物はアルター能力の詳細を把握しているのだろうか。 (今は情報が足りない。まだこれからも調べていく必要がある) これは思った以上の長丁場となりかねない。ミッドチルダに残してきた娘との約束を果たすのはまだまだ先となりそうだ。 それを申し訳なく思い、自身でも残念と思いながら、せめて娘が元気でいるように祈ることくらいしか今は出来そうにもない。 ……思考が私事に脱線している、それに気づき改めてなのはは思考の修正にかかる。 とはいっても現時点ではこれ以上の考察は情報不足により望めそうも無い。今は現状の任務に集中して保留としよう。 だが、とふと今回のこの急な任務についてなのはは考える。 物資輸送の護衛、何の変哲も無い管理局の任務でも何度か経験のある任務だ。 実際、警戒こそ絶やせないが問題さえ起きなければ自分たちの出番など殆ど無いと言ってもいい任務だ。 そして現実にこの瞬間においてもまた平穏そのものだ。 (……でもこのまま平穏、何事も無く終わるとは思えない) 無論、それに越したことは無い。……が、あのジグマールが何事も無く終わるような任務などを自分たちに命じるとは思えない。 自分たちがホーリーを利用しているように、ジグマールもまた自分たちを何らかの形で利用しようとしていることは明らか。 部隊長である彼だけは、なのはたちの魔法がアルターと異なるものだということをはっきり知っている。 そしてそれを何らかの別の形で活用しようとしているだろうことは彼女にも察しがついている。 だからこそ、きっとこの任務は何かが起こるはずだと警戒してもいた。 (それに何だろう? この予感は……) そう、彼女の胸の内には今日の朝からずっと正体不明のモヤモヤとした表現することも困難な何かしらの予感があった。 きっと何かが起こる。……それこそ、これからの自分たちに強く関わってくる何か……或いは、誰か。 これが出会いの予感なのだとしたら誰と、いったいこの任務中にどのような人物と――― そこまで考えかけ、咄嗟になのははいきなり立ち上がると運転席へと向かった。 予感がした、来るという予感が。 何かが……或いは、誰かが……来る。 ならばそれは――― (―――襲撃だ!) 経験則と直感、それが弾き出した答えに導かれ彼女は運転手へとハッキリと告げる。 「停まってください。それから早く扉を―――」 開けて、と最後まで言い切るのも億劫になのははそのままトレーラーの扉へと急いで向かう。 なのはのそのただならぬ様子に、新人たち四人の間にも強い緊張が走り指示を待つ待機姿勢へと変わっていた。 上出来だ、そう内心で頷きながら彼女たちには自分が出た後に、様子を見て出撃してくるように命じた。 やがてトレーラーは停まり、重い扉が今にも開きかける。 「―――レイジングハート!」 『Standby, ready.』 扉を潜り抜けると同時に、セットアップを完了し直ぐ様に飛び立ち――― 「うぉらぁぁぁあああああああああ!!」 ―――トレーラーの真上へと叩きつけるように拳を振り下ろし落下してくる男を発見した。 瞬時に、それを遮るように射線に割り込みプロテクションを展開。 男の赤い拳となのはの桜色の障壁が激突する。 未知のパワーとの衝突、その衝撃が間違いなくアルターのものだとなのはは瞬時に理解した。 「邪魔だぁぁぁああああああ!! どけぇぇぇええええええ!!」 男の拳がなのはの翳した手より展開されるプロテクションを突き破らんと勢いを増し更に押し込まれてくる。 だがなのはも負けじとプロテクションに更に力を込め、外部からの圧力を弾き飛ばしにかかる。 両者ともその力は互角と呼んでいいほどに拮抗していた。 凄まじい衝撃が周囲に波となって伝播し、拳と障壁の接触面は火花を散らすように明滅している。 それこそまるでヴィータの鉄槌の一撃を真正面から受け止めているかのような衝撃に突き崩されそうにもなるが、賢明になのははそれを許さずに弾き返しにかかる。 重装型の砲撃魔導師としての自負、それに掛けても容易く目の前の男の一撃に屈するわけにはいかない。 だがそれは恐らく相手にとっても同じ、まさに何ものをも砕くその自負を持って繰り出されているはずの拳を早々に退けるわけがない。 だからこその、これは両者にとっての等しい意地の張り合い。 「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「はぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」 不屈の思いが激突し、勝敗を決したのは――― 拮抗を作りヒートアップしていた二人の激突。 それが行われていたのは外界の時間で言えば僅か十秒にも満たない。 突き込む拳と弾く障壁。 矛と盾にも喩えられる激突にも似たそれは、結局両者共に後方へと同時に弾かれるという形で終わった。 つまりはお互い互角、引き分けとも呼べる結果。 無論、それは互いに本気を出し合っての事ではない。先の鍔迫り合いの攻防も所詮は互いにとっては挨拶代わり以上の何ものでもない。 だが両者とも、先の激突により一つの事実を直感的に悟った。 それ即ち――― ……この女、やりやがる。 確かに全力ではなかった、だが打ち抜く心算で放った一撃だったのは確か。 そしてそう決めて打ち下ろした拳であった以上は、その結果はそうなっていなければおかしい。 だが現実にはそうならなかった。相手のアルターの予想以上の堅さを打ち抜くことが出来なかった。 言うなればそれは屈辱。……そう、あの日に劉鳳に味合わされた敗北の味の再現と同じ。 無論、負けたなどとは思っていない。今度は必ず打ち砕く、意地でもそうする。 けれど…… (……手加減できる相手でもねえか) 本気でぶつかるに値する相手、それがカズマの眼前の女に対する偽らざる評価だった。 ……この人、かなりの力だ。 確かに全力ではなかった。だが制限下とはいえ自身の頑丈さには鉄壁に近い自負があった。 重装型の砲撃魔導師として、長所として磨き上げた誇りとも呼べるものであったはずだ。 それが危うく屈しかけた。後少しでも力を抜いていれば確実に打ち破られていただろう。 言うなればそれは脅威。……久しく経験していなかった、自身を脅かすに値する危険性だった。 だが屈したわけではない。まだ自分には余力もカートリッジという切り札もある。 それでも…… (……油断は即敗北にも繋がりかねない) それだけの力量を有している、それが高町なのはの眼前の男に対する本心からの評価だった。 ロストグラウンドの反逆者と時空管理局のエースオブエース。 互いに不屈の信念を持つ両者の初会合による激突とその結果。 そして抱いた互いへの評価。 皮肉と言って良いほどに、それは酷く似通ったものだった。 だがこうして、遂に――― ―――遂にこの大地の上で、二人は出会った。 目次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3108.html 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「さて、それじゃあ聞かせてもらおうかな?」 沈黙の中、最初に口を開いたのはボウケンブルーこと最上蒼太だった。 当然その質問の対象は伊能真墨。 「なんのことだ?」 「惚けないでほしいね。勿論、本当の理由のこと」 先程は終始沈黙していた蒼太が、今はやけに饒舌さを見せている。 「さっきの理由もあるんだろうけどね。僕はあの場から逃げる時に先頭で援護していたけど、そんな理由だったとは思えない」 真墨は澄ました顔をして蒼太を見ている。これまで同様、特に動揺した素振りを見せることもなく沈黙を保ったままで。 「どういうことなの?真墨、蒼太さん?」 菜月は場の状況がいま一つ理解できていなかった。そんな彼女に構わず蒼太は流れるようにスラスラと言葉を続ける。 「プレシャスバンクから盗み出されたバジリスクの化石。新しく現れるはずのないのに現れた邪悪竜……」 確かに蒼太の言うように、遺伝子操作でジャリュウを生み出すことができるのはリュウオーンだけのはずだった。 「そしてあいつは手に入れたバジリスクの瞳をすぐに自分に嵌め込み、自分の目として使った。 ここまで条件が揃えば、あの邪悪竜がバジリスクの化石から生み出されたジャリュウだってことは簡単に想像がつく。 そこで調べた伝説のバジリスクの特徴と照らし合わせれば――」 そこには普段の陽気で気障[キザ]な洒落男はいなかった。淡々と理論を展開していくのは流石に元スパイだけある。 鋭い洞察力と情報力――それが彼の本来の姿。 「八本四対の手足。鶏冠のような頭部。見た者を石化させる眼。そして――」 そこでサロンの扉が開き、蒼太の言葉が途切れる。 「ああ、真墨君。解析の結果が出ました」 声の主は牧野だった。瞼を擦る彼の仕種にも疲れが窺える。 「どうだったんだ!?おっさん」 今まで表情を変えることの無かった真墨が牧野に駆け寄った。 「ええ、真墨君と映士君の読みどおりです」 牧野は一度サロンにいる真墨、蒼太、菜月、ボイスの全員を見回して咳払い。そしてゆっくりと説明を始める。 「え~、ごほん。研究所に搬送された少年を詳しく調べたところ、石化の原因はバジリスクの瞳による呪力と推定されます。 これは、以前映士君が西のアシュ『オウガ』によって石化した時と類似した点も見受けられます。 全身がほぼ一瞬で石化している為、これ以上は戻ってみないと分かりません」 「それで、戻る方法は?」 牧野の言葉が途切れるとすぐに真墨が質問を返し、蒼太と菜月もそれに頷く。 「バジリスクが死ぬことで石化も解けると思いますが……。何にせよ瞳が手に入らなければ治療は不可能ですね」 「くそっ!結局はあいつを倒すしか方法は無いってことか……」 真墨が拳を合わせ、苦々しげに呟く。 「アクセルスーツを着用していれば石化することはないでしょう。ですから強いダメージによる装着解除には注意してください」 一通りの説明を終え、牧野はサロンの椅子に倒れるように座る。かなり疲れている様子だ。 無理もない、サージェスで一番忙しく働いているのは多分彼だろう。 「お疲れ様、牧野先生」 「ああ、ありがとうございます」 菜月が牧野の肩を揉みだす。真墨はソファに座り腕を組み何やら考え込んでいる。 同様に蒼太も口元に手をやり考えていた。 瞳の――プレシャスの力。一年半前のオウガ戦で映士が石化したこと。少年はほぼ一瞬で石化。 牧野の説明を経て蒼太の推理は確信に変わった。 「さっきの続きを話してもいいかな。最後の一つ、それはバジリスクの体液は全てが他の生物にとっての猛毒であること」 「ええっ!?」 と、声を上げたのは菜月だけだった。 「人質にされた少年をシグナムとヴィータちゃんが助けた時、体液が少年にもかかったんだ。そして毒はすぐに少年の身体中に回った。 きっと映士はエイダーでも治療は出来ないだろうと判断したんだ。伝説の生物の毒に対する解毒剤なんてないだろうしね。 いや、それ以前に山を降りるまで持つかどうかも解らなかったかもしれない」 真墨と牧野、ボイスは黙って耳を傾けている。 「だから賭けに出たんだ。石化させることで毒の進行を食い止めようとした」 一度自分が石化しているから可能性はある、と考えたのだろう。 それでも危険な賭けには違いない。とはいえ、それ以外に手段は無く、迷っている時間も無かった。 「だから最後に残ったんだろ?真墨」 真墨は腕を組んだまま目線だけを蒼太に向け、一言、 「そうだ」 とだけ答えた。 菜月もようやく理解したのか真墨に微笑みを向ける。だが、すぐに?を浮かべ首を傾げた。 「あれ?じゃあ何で真墨は、シグナムさんやヴィータちゃんに問い詰められた時に黙ってたの?」 その理由を話していれば彼女達もあんなに怒りはしなかったのではないか。 そう菜月は思った。 だが、真墨のことだ。「自分のミスはミスだ」とでも考えて一人で背負おうとしたとも考えられる。 「うん、僕も最初はそう思った。でもそれだけじゃない。危険なプレシャスを奪われたこの状況でそんな理由で連携を乱すようなことはしないよ」 「それじゃあ……」 蒼太の視線が次に向いたのは――ボイスだ。 「これはボイスと真墨と牧野先生あたりの3人で考えたんじゃないかな?」 「どういうことかな?ブルー君……」 当然、▽のCGからも機械で加工した声からもその心理は解らない。どこかコミカルで可愛いそれも、感情が読み取れなければ薄気味悪く思える。 「僕が全部説明してもいいけど、真墨の理由は真墨から話して欲しいな」 「……お前の考えてる通りだよ」 サロンには緊迫した空気が流れ、菜月は相変わらず?の表情のままだ。 ここから先は蒼太も自分の推理に自信は無かった。 もしかすると話すべきではないのかもしれない。だが、蒼太も真実を知りたかった。 ここで少しでもはっきりさせておかなければ、新人達を本当の意味で仲間として迎えることはできない。 真墨にはチーフとしてその理由を。これが『テスト』であるなら、そのことを話して貰わなければならない。 自分と菜月、映士にはそれを知る必要があるのではないか? 何か大きな影を感じる今、真に6人のボウケンジャーとなる為に。 「まず、シグナムとヴィータちゃん。あの二人がサージェス・ヨーロッパから来たって云うのは嘘だと思う」 「調べたのか?」 真墨は一応聞いてみた。 蒼太は情報収集のプロだ。それくらい容易に調べられる。 だが――。 「いいや、もう仲間のことを影であれこれと調べるのは止めたよ。これは僕の推測だ」 やはりそうだったか。今の蒼太は真に知りたいなら、こうやって正面から訊くだろう。 「あくまで仮定に過ぎないけど、二人はサージェスとは別の組織。サージェスとは現在、一時的に協力関係にありながら、内情を把握していない組織の一員だ。」 「どうしてそう思うの?」 「う~ん、二人はサージェス・ヨーロッパにいたにしては、地理、生物、サバイバル知識etc……が欠けてるからかな。それを急拵えで誤魔化してたのも余計に不自然だ。 それなのに、戦闘に関しては頭抜けてる。あれは僕達よりも戦い慣れてるね」 そう、彼女達は何度も戦闘を経験している。だが、それは普通の斬り合いや撃ち合いではなさそうだ。シグナムはともかくヴィータは動きがややぎこちなく感じた。 「そう仮定すると辻褄が合う。こうすれば二人は独自に動くかもしれない。そこから組織のことや彼女達の本来の戦い方が解るかもしれない」 プレシャスは危険なものが多い。それこそ世界を滅ぼす程に。 素性の知れない、信用できない組織と手を組んで情報を知られるのは絶対に避けなければならない。 「だけど、それじゃあその組織が協力してくれないんじゃないの?」 菜月の疑問は最もだ。それでもサージェスがそんな行動に出るとするならば――。 「それでも目的の為なら多少の無理は相手が協力せざるを得ない、と考えてるからさ。目的は何かのプレシャス、そして相手はあまりプレシャスに詳しくないのかもね」 プレシャスとプレシャスの情報が最も集まるのはサージェスだからだ。探すならサージェスに助力を頼むのが手っ取り早い。 「彼女達が素性を伏せているのは、おそらく向こうの組織もサージェスを全面的に信用していないからだ。プレシャスが集まるがゆえにプレシャスを狙ってる相手もいるかもしれない、ってね」 それでもシグナム達を受け入れたということは、サージェスも協力が欲しいということ。どちらも考えてることは同じだ。 「そう、だからサージェスはこのアクシデントを利用してみようと考えたんだ。駄目なら言い訳も立つし、もし結束できればそれでも良し」 「う~ん、つまり……両方が協力してほしいのに、お互いが隠し事してるから素直に協力できないってこと?」 「さっすが菜月ちゃん。僕はそうじゃないかと思ってるんだけど――どうかな、ボイス?」 菜月に向けた笑顔から一変、ボイスへと射抜くような視線を送った。 無表情だったボイスがやがて眉を八の字に曲げる。どうやら観念したようだ。 「やれやれ……君達に隠し事はできないねぇ……」 「流石はボウケンジャーの皆さんですね」 牧野もそれを認めてパチパチと軽く手を叩く。 「なんだか菜月だけ仲間外れみたい……」 頬を膨らませる菜月の肩を蒼太が叩く。 「何言ってるの。菜月ちゃんが最後に解りやすく纏めてくれて助かったよ、僕」 「大体はブルー君の推理通りだ。サージェスにも色々あってね、君達を利用して済まなかった。私がブラック君に指示したんだよ」 結局はシグナムとヴィータも、自分達も組織の都合に振り回されていた訳だ。ここで蒼太が明らかにしていなければ知らないままだったかもしれない。 そんな状態じゃ本当の冒険なんて出来はしない。 「彼女達の組織について……話しておくかい?」 ボイスに対して菜月と蒼太は同時に首を横に振る。その顔には笑顔が浮かんでいた。 「影で調べるのは止めたって言ったでしょ?フェアじゃない」 「必要ならシグナムさん達もいつか話してくれるよ」 あの二人なら自力でそこに辿り着くだろう。それは全く理論的な根拠のない伊能真墨の勘に過ぎないが。 「ブラック君もそう言っていたよ」 いつの間にかモニターのボイスは笑顔になっていた。 牧野は今度は解毒について調べれる為にサロンを去った。ボイスの姿もモニターにはない。 サロンには真墨と蒼太、菜月のみが残った。 「でもさ、いつもの真墨ならこんなこと嫌がるんじゃないの?」 そうだ、真墨ならこんな役回り指示されてもやらない。 「まぁな……。いつもなら蹴ってただろうな」 ようやく真墨が少しづつ、ゆっくりと話し出す。 「テスト……だろ?」 蒼太は長々と説明して疲れたのか、いつもの椅子に座って真墨を見ている。 「ああ、俺達が逃げる為に盾にしたって言った時に、どう反応するかを見てたんだ」 二人とも凄く――凄く怒っていた。そして悲しそうにしていた。 「もしも何とも思わないような奴らなら、ボウケンジャーとして認める気は無かった」 でも、それだと気付かないまま、誤解したまま辞めてしまうかもしれないのではないか? 「そこまで頭が回らないようなら同じだ。解ってて気に入らないならそれも仕方ない。 明石も俺達に意地の悪いテストをしただろ?俺ならあいつらのどこを見るか……そう考えたんだ」 「真墨ってホント不器用だね」 「そうそう蒼太。水臭いよ?」 菜月は真墨の頭をポンポンと軽く叩く。一人で生きてきた切れ者の冒険者ながら時々子供みたいに思えるから不思議だ。 明石然り、案外冒険者とはそんなものかもしれない。 「うるせえんだよ、お前らは……」 真墨は鬱陶しそうに手を振り払う。 一人で嘘を吐いて、怒りとぶつけられて、それを背負い込んでいる――彼は昔から変わらず不器用な人間だった。 一人で突っ走ることのある明石とは違う危うさがあるが、それでも彼はボウケンジャーのチーフだ。 蒼太も、きっと映士もそう思っているだろう。 三人は心地良い沈黙に、暫しの休息を感じていた。 だが、程なくしてそれは牧野によって破られる。 『街でジャリュウ一族が暴れています!すぐに向かってください!』 「了解!二人に連絡は?」 『正直、戸惑っている様子でしたが……』 隣を見ると既に菜月と蒼太も立ち上がっている。 迷っている暇は無かった。サージェスと彼女達の組織――お互いに警戒しながらも協力せざるを得ない事態。 新たに生み出された邪悪竜とカースを操るもの。 何かが起ころうとしているのは間違いない。 「あいつらは行ってると思うか?」 「うん!真墨もそう思ってるんでしょ?」 「あんまり女の子を待たせる訳にはいかないんじゃない?」 たとえサージェスと彼女達の組織が知らないところでどう動こうと、自分のするべきことは変わらない。 それがボウケンジャーだからだ――明石ならきっとそう言うだろう。 真墨が指を弾いて号令する。 「よし、俺達"も"急ぐぞ!ボウケンジャー、アタック!!」 戻る 目次へ 次へ
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「カズくんと一緒にこんなにゆっくりするのって、久しぶりだね」 「そうだっけ?」 「そうだよぉ」 そんな会話を交し合うのは二人―――カズマと由詑かなみである。 今日は二人で少しばかりの遠出でやってきたピクニック………まぁ先日から色々と続いていたギスギスとした問題が一応の目処がつき解決したことを祝してやってきたというわけだ。 とはいえあの一連のなのはとも関わる一件。結局はその真実をカズマはかなみには説明していない。 いつか話す、そんな口約束を交わした程度なのが現状だ。 けれどかなみはそれでも良いと頷いた。いつか話してくれる時がきたら話してくれればそれでいい。それがかなみが出した結論であるらしい。 或いは、何かを察しているのかもしれないなとカズマは密かに思っていた。学はなかろうとそういった事に関しては彼女は鈍くも馬鹿でもない。 だからこそ何かを知って、そして遠慮しているのが真相かもしれないとはカズマも思っていたのだ。 それでも憂うことは無い。かなみを巻き込む心算など一切ないのだ。いつかこの問題は自分の手で解決して終わらせる。ただそれだけのことだとカズマは決めていた。 ―――かなみだけは護る。 ホーリーからも、なのはからも。 ただそれだけのことだと誓い、固く拳を握っている自分がいた。 「………ねぇカズくん。市街の人たちがこっちの方に来てる噂って知ってる?」 そう何処か不安げな様子で唐突に尋ねてくるかなみ。 彼女が指す市街の人とはなのはの事を言っているのではない(少なくとも彼女の視点では)。 かなみが指す市街の人とは再開発を名目に最近になって活動が活発化してきたホールド………ホーリーを指して言っているのだ。 基本的に引っ込み思案で気が弱い、けれど優しい少女だ。だからこそホーリーに対しては人一倍の恐怖を抱いているのだろう。 尤も、そんな恐怖を抱いているのは何もかなみに限ったことでは無い。この辺りに住んでいる大抵のインナーたちもまた同じだ。 狼藉を働くネイティブアルターと同じレベルで、ホールドやホーリーは一般のインナーからすれば明確な暴力と恐怖の象徴なのだ。 今、誰もが不安になってきている。かなみも例外に漏れずその一人ということに過ぎない。 「………ん、ああ」 「………ちょっと、怖いな」 歯切れの悪い受け答えをするカズマから目を逸らし、遠くを見つめながらやがてかなみはポツリとそう呟いた。 不安を顕にしたまごう事なき少女の本音だっただろう。 沈黙が流れる最中、やがてカズマはチラリとかなみの表情を窺いながら意を決して言葉を投げかける。 「かなみ、俺たちが何か悪いことしたか?」 そうかなみへと問いかけるカズマ。 確かに後ろ暗いことなら自らの言葉通りカズマは幾らでもしてきた。犯罪に手を染めてきた事実とて懺悔をする気は毛頭なくも突っぱねて事実から逃げようとは思わない。 ………そう、少なくとも自分ならばだ。 「何もしてねえだろ? だったら心配することねえって………なっ?」 だがかなみは何も後ろめたいことなどに手を染めず真っ当に生きてきた。 不安に怯える必要も、自分が悪いなどと感じる必要も一切ない。 ただ胸を張って生きていればそれでいい。少なくとも、彼女にはそれが許される立場だ。 それを分かって欲しかったから、カズマはあえて気楽な態度で彼女に自信を持たせ不安を払拭させる為にそう促がした。 それがかなみにも伝わったのだろう。 「―――うん! そうだよね」 元気良く嬉しそうに頷いた。 彼が一番見たくて護りたかった、その笑顔だった。 それに満足して安心しているとそこにいきなり聞こえてくる猫の鳴き声。 視線を向ければ直ぐ其処に一匹の野良猫が近寄って来ていた。 「あ! ミーミーだっ!」 「………あ? ミーミー?」 「今付けたの!」 そう言いながらかなみはその野良猫(彼女命名ミーミー)の元へと嬉しそうに駆け出していった。 その辺りは無邪気というか子どもっぽいというか、歳相応だ。 まぁ子どもらしくてよろしいと何処か微笑ましげに見守りながらカズマは納得した。 「ほら、カズくーん!」 嬉しそうに笑いながら野良猫を持ち上げそれをこちらに見せてくるかなみ。 それにカズマはおざなりにならない程度の態度を見せながら右腕を振ってやり………途中で止めて右腕を凝視し始めた。 右腕を隠す服の袖を引っ張る。そこには明らかにアルターに侵食された痕跡がハッキリと残っていた。 シェルブリットのパワーアップとその使用の代償。 アルターの森で戦った両腕に雷を纏う謎のアルター。 そしてスバル・ナカジマ、高町なのはといった本土のアルター使いとの激闘。 都合三度の使用は消えない証となって残ってしまっていた。 「………まぁ、これっぽっちで背負えるなら安いもんさ」 小さく、自分以外には聞き拾えないような呟きを漏らす。 事実、この程度の代償には今更後悔など抱かないし、これからのこの力の使用だって躊躇う心算は毛頭ない。 全ては目の前の少女を、気の置けない相棒を、そして自分が関わり背負うと決めた者たちを護る為に得た力だ。 この力があれば護れる。気に入らない奴らだってぶっ飛ばせる。 ホーリーも、劉鳳も、そして高町なのはも。 壁として立ち塞がってくるってんなら問答無用で叩き壊すだけだ。 そんな決意を猫と戯れる少女の笑顔を見つめながら、改めて誓うと共にカズマは立ち上がった。 これからの行く末を暗示する予兆か、少し強い風が吹き始めていた。 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed 第4話 スーパーピンチ 初回の赴任早々の捕り物劇以来、今までデスクワークばかりに回されてきたヴィータに漸く回ってきた外地を回る任務。 これで公然となのはを誑かす原因―――NP3228ことカズマをぶちのめせると思っていた期待と喜びは現在最悪な気分で一杯となっていた。 その理由は任務に携わる際に作戦行動を共にすることとなった同行者が原因だった。 彼女の同行者は二人。 一人は元々の部下でもあるスバル・ナカジマ。別にこちらは何も問題ない、というより別に不満を抱く相手でもない、しっかり面倒を見ねばならない後輩だ。 問題はもう一人………こちらの方が問題だった。 「私が貴女達に同行するからにはもう安心ですよ。このエマージー・マクスウェル、またの名を“崖っぷちのマクスウェル”が全身全霊で貴女方をお守りしますから」 などと良く回る口で言ってくるひょろりとした何処となく頼りの無さそうな青年。 その紹介の通りホーリー隊員の一人であるらしいエマージー・マクスウェル。 この男がヴィータを最悪な気分にさせてくれている元凶だった。 「お前さ、大口叩くのは勝手だけど自分が足手纏いだって自覚があるか?」 そろそろ忍耐も限界に達しかけてきたような口調で冷たく告げるヴィータ。スバルはそんな態度のヴィータをまぁまぁと宥める他にない。 ヴィータが苛立っている理由はその彼女が言った言葉通り故にだ。 ハッキリ言って使えない。 それがヴィータの、そして失礼ながらも密かにスバルもまた思うエマージーへの評価だった。 それはそうだろう。アルターをトンデモ能力ではあるものの味方としてならば信頼してもいい頼りになる能力だとヴィータはそれなりに評価をしていた心算だった。 それは勿論、劉鳳や瓜核、イーリィヤン等のアルターを見てそう思っていた。 この男も最初に同じような大口を初顔合わせの際に言ってきたのだ。ならばさぞその大口に見合った能力を披露してもらえるのだろうとヴィータは高く期待していた。 だが結果はまったくの予想外。 試しに三人一組のチームとして本隊から分かれてネイティブアルターのチームと交戦する機会が早速訪れた。 ヴィータはネイティブアルターたちがそれぞれのアルターを顕現させて向かってくるのと同様にエマージーもまたその自慢のアルターを披露してくれると疑っていなかった。 だというのに、結果はなんとアルターも発動せずにただ一方的にボコボコに袋叩きにされるエマージーを目撃することになった。 ………あれ? こいつってホーリー隊員じゃなかったっけ? 当然のように、ヴィータはそんな疑問を落胆と同時に抱いた。 けれど本人はアルターも発動させずにただボコられているだけ。ついでに何故かスバルの方までネイティブアルターを相手に普段とはかけ離れたほど動きが悪い。 結局、その戦いはヴィータが三人分の奮闘を示し、三倍疲労するというふざけた結果で幕を閉じた。 戦いが終わった後、当然ヴィータは大口を叩いた割には何も出来ていなかったエマージーにどういうことかと締め上げて聞き出した。 それに対して本人曰く、 『私はその名の通り崖っぷちのピンチに陥らなければアルターが発現しないのです』 その言葉の瞬間から、エマージー・マクスウェルはヴィータの中で戦力外通知を叩きつけた対象となった。 当然だろう、そんな綱渡りみたいな安定性の欠けた能力をどうして信頼できる? どうして命を預けることが出来る? 出来るわけがない、少なくともヴィータはゴメンだし、大切な部下たちにもそんな危険なものに命を預けさせるなど許さない。 それは恐らくなのはとて当然に思うはずのことだ。 だからこそ、もはやヴィータはこの男を戦力としてカウントしないことに決めた。 そしてスバルの不調(?)も気になる以上、彼女に無茶はさせられない。 ならばやはりカズマとは自分一人で戦うしかない。 ………まぁ、それは別に良いのだが。 「さあさあ、もう直ぐあの男が出没するであろうポイントに着きますよ」 そんな事を言って先頭に立ってリーダー面している使えない男―――エマージーを務めて無視しながらヴィータはスバルへと視線を向ける。 やはり何処か浮かない顔をしたまま、本当に調子が悪いのかもしれない。少し心配になってきていた。 「スバル、調子が悪いなら無理するな。あの野郎とはあたしが戦う。お前はあの使えない野郎を護って下がってればいい」 一応ヴィータなりに気を遣って言った言葉だったのだが、しかしスバルはそれに弾かれたように振り向きながら慌てて首を振ってくる。 「い、いえ! 私は大丈夫です! それよりあの人とヴィータ副隊長が戦うなんて―――」 「何言ってんだ、あの野郎をふん捕まえる為にあたしたちは出張ってきたんだろうが」 「その通りですよ。あのNP3228を打倒する為に、この私―――“崖っぷちのマクスウェル”がこうして出向いてきたのですから」 「………お前はもう良いから隅で大人しくしてろ」 いきなり会話の最中に図々しくも割り込んできたエマージーをヴィータは蝿でも追い払うような仕草であっちに行ってろと追い払った。 まったく使えないくせに自分を戦力だと過信している馬鹿ほど友軍に有害な存在はいないとヴィータは改めて思った。 まぁ、本当にエマージーはどうでもいい。死なせなければ、とりあえず大怪我させたとしても任務による負傷だと言い訳が立てられる。流石に死なせると問題………でもあるし、寝覚めが悪くなるのでその辺りにだけは最低限気を遣っている。 問題はこんな男の事ではなくスバルだ。それこそこのままじゃ任務中にヘマをやらかしかねない。 八年前のなのはの一件………それを引き摺っているヴィータとしては任務の同行者に兎角気を遣っていたのだ。 「………まぁ兎に角、無茶だけはすんなよ」 最後にそれだけ気を遣って告げながら、ヴィータはそのまま彼女より先に進み目的のポイントへと向かうことにした。 そう、イーリィヤンの“絶対知覚”が予測した次にカズマが現れるであろうポイントへと。 もう直ぐ顔を合わせたこともない敵視し続けてきた相手に会えるかと思うと、やはり緊張感と共に高揚は隠しようがなかった。 「………ところでよ、その背負っている袋は何だよ?」 「これですか? フフフ、まぁ後のお楽しみということで」 「………なんだそりゃ」 自分の先を歩くヴィータとエマージーが交わしていた雑談のような会話を聞くともなしに聞き流しながら彼らの後に続くスバルの表情と足取りは重いものだった。 其処に正義はあるのか? あの橘あすかとの遭遇、そしてそれ以前に見せた劉鳳の………否、ホーリーの容赦のないやり方に彼女は益々その疑念を強めていたのだ。 今の自分たちがやっていることは本当に正しいのか? これで本当に多くの人たちが幸せになれるのか? もう誰も泣かないで、笑顔に戻ることが出来るのか………? 分からない、本当に分からなかったからスバルは悩んでいた。 ティアナは己の立場と任務を忘れるなと言った。それは分かっている。自分は管理局員、次元世界の問題事を解決し、調停するべき役職にあるものだ。 無論、その己の職業には誇りを持っているし、今回の本当の任務だって必要なことだとわかっている。 ………けれど、この任務は? ホーリーと協力し、ホーリーを支援する。 本来の任務とは別に課せられた任務。だがこの任務でしていることは正しいのか? この任務は皆の笑顔を護れているのか? ネイティブアルター狩り、回転留置場、本土への検体移送。 その全てが、本当に誰かの………力無き者たちの笑顔を護ることに繋がるのだろうか? どうしても確信が持てず、繋がるとは思えないからこそ、スバルは悩んでいた。 それこそこの任務への出動前、スバルはなのはへと意を決してこの悩みを打ち明けた。 この現状、そして桐生水守や橘あすかとの会話を交わして自分が思ったこと。 それらを全て、恐る恐るではあったがなのはへとスバルは打ち明けたのだ。 そのスバルの打ち明けをなのはは真剣に聞き頷き、最後にこう言ってきた。 『………じゃあ、スバルはこれから私を信じられる?』 真剣に問うてきたその言葉に、スバルは迷わずに頷いた。 ずっと憧れ続けてきた自身の目標でもあり、かつての命の恩人でもある恩師。 時には凄く厳しくもあるが、それでも本当はとても優しいなのはさん。 彼女の言葉なら、スバルは信じることが出来た。 だって彼女はずっと自分の進むべき道を照らし続けてきてくれた存在なのだから。 スバルが本気で彼女を信じていることが伝わったのだろう、なのはも頷くスバルをやがて真剣に見つめた後に、 『………分かった。じゃあスバルも私と一緒に戦おう』 任務から戻ってきたら話がある、そう言ってなのはは自分を送り出してくれた。 なのはの話とは何だろうか、それだけが今スバルが一番気になっていたことだった。 あれ程真剣ななのはを見たのは、それこそJS事件の最終戦の際に自分たちを信じて送り出してくれた時以来だった。 あの時と同じように、なのはは自分を信じてくれている。信頼していてくれている。 その事実が凄く嬉しく誇らしげなのと同時に、だからこそ気になっていたのだ。 ………なのはさんは、いったい何をする心算なんだろう? 「それでなんとか仲直りは出来たってわけか?」 「………ああ、まぁな」 カズマがかなみと暮らし寝ぐらといている廃墟と化した歯科医院前、そこに停められている型遅れの車は彼の相棒である君島邦彦の現在の愛車である。 現在、カズマはその君島の車へと凭れかかりながら運転席に座っている君島と会話をしている最中だった。 話題は先日からのかなみとの一件について。一応この男にも事の相談を持ちかけていた手前、顛末を聞かせろと君島がしつこく言ってきて仕方が無かったからだ。 「そうか。いやぁ、俺も一肌脱いだ甲斐があったってもんだ」 「………一肌脱いだって、お前何かしたかよ?」 「したじゃねえか! 相談乗ってやったし、アドバイスだってしてやっただろうが!………だいたい俺が考えてやった上手い言い訳でかなみちゃんの機嫌が直ったんだろう? それをまぁこの恩知らずは―――」 やれやれだと大仰な溜め息を吐く態度も顕に君島はカズマに不満をぶちまける。 こちとら乙女心の“お”の字も解せないような甲斐性無しのロクデナシ、ついでにクズの朴念仁に色々と気を利かせてやったフォローをしてやったというのに、それも直ぐに忘れてこの態度とは………本当に相棒としてどうよと君島は本気でウンザリしかけていた。 だが君島のその脱力すら次にカズマが言ったトンデモナイ言葉に打ち消されることになる。 「………あぁ、お前の考えてくれた言い訳か………悪い、そういやそれ結局使ってねえや」 それこそ鳩が豆鉄砲喰らったような顔、というやつを今の自分はしていたのではないかと君島邦彦は後に振り返ってみて思う。 それ程に、何言ってんですかコイツは? がこの時の君島の本音だった。 「ちょっと待てぇ! お前、あれ程俺が親切にお前でも言えるくらいに簡略し且つかなみちゃんの機嫌も直せるようなナイスな言い訳を考えてやったってのに………使わなかったたぁどういう事だよ!?」 それこそ運転席から飛び出してきて噛みつかんばかりの勢いで問い質してくる君島の迫力には流石のカズマも五月蝿げに耳を塞ぎながら眉を顰める。 確かにカズマは君島に相談に乗ってもらった後、彼からどうすればかなみの機嫌を直すことが出来るか、その当時の失敗をフォローするだけの素晴らしい言い訳(嘘)を色々と捻出して貰った。 それは物覚えの悪いカズマですらも何とか覚えられて言え、そして肝心のかなみの機嫌も取り直せるような、そんな画期的とも言える言い訳だったはずなのだ。 それこそ君島にしても本来ならば自分が憧れているあの寺田あやせに想いを伝える時のためにとって置いたようなとっておきに更に其処からああでもないこうでもないと改良を加えた最終兵器の口説き文句だったはずなのだ。 それを使わなかった? 「………お前さ、ふざけてる?」 「ふざけちゃいねえよ。………ただ、状況が変わって使う機会も無かったっつーか、ただそれだけだ」 何となくだがどんよりと途轍もなく重い空気で尋ねてくる君島の迫力に気圧され、カズマも若干罰が悪いといった態度でそう言い切る。 それを聞き、そしてそのカズマの態度を見てそれこそ君島は脱力してハンドルに凭れかかった。 「………何だよ、それじゃあ結局雨降って地固まる程度の痴話喧嘩かよ。………ハァ、アホらしい。それじゃあ俺の努力は全部無駄かよぉ」 やってらんねえぜとばかりに愚痴愚痴と不貞腐れた文句を零す君島にカズマにも漸くに罪悪感の一つも芽生え始めた。 とはいえ、此処でこの相棒を宥めすかすような上手い口回りが発揮できていればそもそもかなみとギクシャクせずに済んだのだが。 結局、今回も君島にどうフォローすれば良いか分からなかったカズマは、 「そ、そんなことよりホーリーだ、ホーリー! 奴らの情報はどうなってんだよ!?」 手っ取り早く話題の変更を提案した。 そのカズマの機転が功を奏したわけでもなかったが、それでもホーリーという目下の話題へと切り替わったことにより多少のモチベーションの持ち直しが君島の中にあったようだ。 「………駄目だな。色んな情報が入り混じって、どれが本当の情報か分かりやしねえ」 尤も、こっちもこっちで君島としてはあまり面白くも無い話題らいい。 まぁ事情通で通っている彼としても、真偽も定かでない情報が混在する現状というのは不安であると同時に不気味とも言えるのだろう。 君島とてここ数日の間決してフラフラと遊んでいたわけではない。これからのカズマと一緒の連中への大喧嘩に備え、せめて情報面でくらい有利に立ちたいと手間隙を惜しんで情報を自らで拾い回っていたのだ。 その結果がこうもパッとしないものでは、これまた面白くは無いのも当然だ。 だがそんな君島の事情はどうであれ、とりあえずは相棒がやる気を取り戻し、話題も真剣なものへと変わってきたので、ならば自分もとカズマは頭を切り替え意見を出す。 「だったらお前の知ってる話の、上から三番目を教えろ」 当然いきなりそんな中途半端な事を言われても君島とて咄嗟に「はぁ?」とでも首を傾げることしかできない。 だがカズマはそれにすら気にした様子も無く、そのまま勢いに乗って彼の車の助手席へと転がり込みながら、 「こういう時はな、行き当たりバッタリの方がいいんだよ」 そう告げてしれっとした態度で早速に車の座席に身を沈める。 カズマのその態度に君島はそれこそ珍しげに感心したような態度を見せながら尋ねる。 「へぇ~、誰に教わった?」 その君島の問いにカズマはそれこそ自信たっぷりな態度でニヤリと笑いながら、 「―――俺、だ」 ハッキリとそう告げた。 君島はそれこそ一瞬呆気に取られたような態度を見せたものの、直ぐに何かを悟ったように可笑しそうに笑い始める。 そして――― 「ハハハ、お前らしいな。―――んじゃあ、元気良く行くか!」 景気付けといわんばかりに勢い良くギアを上げアクセルを踏む。 それを境にカズマと君島、二人を乗せて停まっていた車はそれも終わりよとばかりに軽快に走り出していった。 丁度その瞬間、表へと出てきてまた仕事をサボって何処かに行くカズマを見て文句を言っているかなみを置き去りにして……… 「直接、問い質す………?」 高町なのはが驚いたように呆然と確認してくるその言葉に桐生水守はハッキリと頷いた。 「そんな! 危険すぎるよ、水守さん!」 バンッとそれこそ勢い良くテーブルを叩いて身を乗り出して言ってくるなのはに水守は周囲の視線の事を促がして彼女を宥める。 ホーリー専用のレストルームの一角、今は多くのホーリー隊員が現地に出払って閑散としたものとなっていたが、それでも少なからずの人員は本部に残っているし何処に監視の目や聞き耳を立てられているかも分からない。 故にこそ、あまり二人で話し合うこうした密談の際には周囲へと最低限の注意を払うのが自分たちで課した取り決めでもあった。 ………尤も、イーリィヤンの“絶対知覚”のような能力がある以上はこんなことをしたとて無意味であるのはどちらにも分かりきっていたことだったが。 なのはにしても水守にしても、自分たちの動向は既にジグマールに筒抜けであり、そうでありながらも今は泳がされているだけなのだろうということは察しがついていた。 無論、それはあの男が情報のほぼ全てを絶対的と言って良いほどまで取り締まり、把握しているという圧倒的なアドバンテージから来ている余裕なのであろう事は分かっている。 経験も駆け引きも、所詮はまだ小娘に過ぎない二人ではあの老獪な男には決して敵うべくないことは理解している。 だが余裕を相手が持っていられる内は少なくとも裏返せば油断をしているのとも同じだ。 其処こそが付け入るべき唯一の隙であり、そしてその機会を見誤ることだけはしてはならないともなのはは考えていた。 やるからには好機を活かした相手に反撃も体勢を整えさせるような隙も与えずに終わらせる一撃必殺、それを狙うべきなのだ。 だがそれを狙うには現時点では余りにもこちらの準備は不完全だ。これでは決して成功せず勝てないという確信がなのはにはあった。 だからこそ今回の水守の言い出したことは機会を見誤った早計過ぎる行動だとなのはは彼女を説得しようとしていたのだ。 しかし――― 「………恐らくは高町さんの仰るとおりです。今の私の取ろうとしている選択はみすみすあるかもしれない好機の芽を自らで摘み取ろうとしていることなのでしょう」 その自覚は充分にあると水守は告げ、なのはも彼女が本当にそう思っていることは理解できている。 だがだからこそ解せない。冷静な行動を試されている今、その冷静な行動を本来ならば取れるはずの彼女こそが感情論で動こうとしている。 そしてそれは一歩間違えれば文字通りの身の破滅にだってなりかねない危険な行動なのだ。 自分のように魔法が使えるわけでも、この世界の特殊能力であるアルターを使えるわけでもない生身の人間に過ぎない彼女が取るにはそれは無防備すぎる。 そしてそんなことは全て理解しているはずの彼女が、敢えて理解しながらもそんな行動を取ろうとしている。 それは不合理且つ無謀過ぎる。そしてそれが分かっている以上は見殺しそのものにもなりかねないそれを高町なのはは見過ごせない。 だからこそ彼女のこれからしようとしていることを思い留まらせようとなのはは必死だった。 「今行動を起こすのは単なる無謀だよ。今は確信を得られるだけの情報を集めて、私たちに賛同してくれる仲間を募るべき時だよ。………まだ私たちは何の準備も整っていない状況なんだし」 そしてその力も無い。 二人だけで協力しこうして零から始めてそれは両者ともに改めて実感していることでもあったはずだ。 だからこそ、これからなのだ。これから自分たちが掲げた目的の為にも戦わなければならないのだ。 そしてその雌伏に耐えるべき準備期間こそがこの時だ。 「………スバルがね、あ、私の部下のことだけど………一緒に戦ってくれるって。まだちゃんと事情は説明できてないけど、それでも彼女なら賛同して戦ってくれるはずだよ」 そして他の六課のメンバー、ホーリーの隊員たちの中にだってきっと自分たちに賛同して共に力を合わせてくれるものだっているはずなのだ。 今はそのそんな協力者たちを見つけ出し、手を取り合って理解を深め合っていくべき時なのだ。 それらの何の準備も無いままに行動に移れば………結果は、明らかだ。 だからこそ――― 「もう少し………もう少し、皆を信じて待とう。水守さん」 ―――今はただそんな言葉を言うことしか出来なかった。 桐生水守にとって高町なのはは未知なる存在であったのと同時に、初めて出来た理解者であり仲間、いや同志であった。 切っ掛けはそれこそあの時、あの正体を見極めようと探りを入れたのが始まりだった。 アルター能力の研究者であり専門的知識に長けていたが故、水守は彼女たちが扱う力がアルターとは似て非なる別種の能力であることを看破した。 無論、今まで自分を含め世間に認知されていたアルター能力の更なる発展系という可能性も無くは無いことは理解していたし、なのはにもそう論破される可能性があることも覚悟していた。 それ程に水守とてアルターという未知の力の本質を未だ掴みきれていないのが現状だったからだ。 だが彼女たちは違う、そう感じてしまったのは確たる証拠などがあったからでもない。 それこそただの直感に過ぎなかった。別にその上に科学者のとか女のが付くわけでもない、それこそ本当に単なる直感だった。 ただ同じ世界に住んでいる人間のようには思えない。 彼女たちは自分の知らない、それこそもっと遠くて別の世界からこの世界に来たのではないのかと思ってしまったのだ。 人はそれを単なるロマンチシズムとでも言うのかも知れない。仮にも己とて末席に連なる程度の研究者の端くれとはいえ、己の考えをどうかと疑いもした。 けれどそれでも、水守は聡明であったのも事実ではあったがそれ以上に夢や人間の情というものに重きを置き無視できない性格でもあった。 研究者としては本来ならば不向きな性格だろうという自覚も少しはあった。 そんな彼女の目の前に、ある日その夢のような魔法使いたちは現れたのだ。 異世界から来た魔法使い。 自分たちの正体はソレだと高町なのはは水守に告げた。 それこそ本来ならば妄言と切り捨て、鼻で笑うであろう胡散臭さだ。 けれど、それを桐生水守は信じた。 無論、抵抗が無かったわけではない………が、彼女たちの操る力―――自称『魔法』がアルターとは源泉からしてあまりにも異なる能力であると言う証拠もあった。 それに真剣に話し、信じてくれるかと問うてきた相手の言葉を確たる否定材料もなしに否定することを水守はしようとしなかった。 だからこの人たちは、その彼女たちの言葉通りに『魔法使い』なのであろうと認識した。 「………貴女はこの世界を………いえ、この大地をどう思いますか?」 自分は異なる多くの世界を見てきたと高町なのはは言った。 それが所謂ところの平行世界と呼ばれるものなのかどうかは水守には分からない。けれど、その彼女のその言葉を信じ、ならばこの大地がどう見えるのかを率直に聞きたかった。 水守のその問いに対しなのはが示した返答はそれこそ彼女の予想外のものだった。 この世界は自分の生まれた育った世界と殆どが同じだが、この大地だけはまったく異なる未知のものだと、彼女は言った。 何でもかつて神奈川と呼ばれた一部地域を含むこのロストグラウンド、かつての日本の一部であり、今は独立自治の名目が謳われる失われた大地。 なのはもまた幼少時に同じような歴史を辿った日本に住み、しかしその世界では大隆起は起こらなかったという。 故にこそ、彼女の生まれたこの世界とも極めて似た世界はロストグラウンドもアルターも存在しないと言う。 それこそ水守にとってそれはifの世界であり、興味を注がれたのも事実だ。 あって当然、あるのが当たり前のものが無いどころか、ある方が異常という世界。魔法とやらも大概だとは思うが、それでもやはり興味深い。 そう桐生水守は高町なのはの世界の事を思った。 けれど逆になのはの方はと言えば……… 「あまりにも私たちの世界と同じだからこそ、尚更に同じじゃないこの大地には色々と思うことがあるよ。………けどね、やっぱり考えていることはいつも同じかな。 此処は同じだけど違う、でも違うからこそ―――」 ―――この大地で、自分が出来る事とは何なんだろうか……… そんなことばかりを考えていると言う。 赤の他人が住むまったく知らない大地でも、それでもその大地に住んでいるのも同じ人間なのだから。 そんな人たちを助ける為には何をすれば、どう戦えば良いのか。 ………そんなことばかりを考えるのが多い、と彼女は言った。 その言葉を聞いたからこそ、この人だと桐生水守は思ったのだ。 初めて同じ想いを持っていることが分かった、異なる世界の魔法使い。 この大地に外から来た余所者。 だが所詮は異邦人に過ぎないとしても、それでもこの大地に住む人々の行く末を真剣に案じることが出来る者同士。 この人となら、同じモノを見て、同じ理想の為に戦えるのではないかと思った。 そして手を取り合って欲しい事を頼み、現在にまで至るのだった。 そんなある意味では劉鳳以上に信を置いている同志である彼女。彼女の言葉だからこそそれも正論であり聞き入れたいとも思った。 けれど――― 「………すみません。それでも私は―――」 ―――此処で止まれない、待つことは出来ない。 そうなのはへと頭を下げた。 確かになのはの言い分は尤もだし、自分は焦りすぎているという自覚もある。 けれどこのまま時間をかけて手を拱いたまま待ち続けるということは水守には出来なかった。 自分が作成したアルター能力者判別のデータが書き換えられていたこと、捕獲されたアルター能力者の移送先や乗員名簿すらも抹消されていることなどの理由もある。 このまま準備を整えようと慎重に画策したところで自分たちのソレは全て筒抜けであり、ジグマールの掌で踊っているようなものだという懸念もある。 そしてそれ以上に――― 「………待ち続ける間にも、準備を整えようとする今にすら、この大地に住む多くの人が犠牲になっている」 それが見過ごせなかった。 だがそれすらも本当の建前であることを桐生水守は自覚していた。 ………そう、そんなものはただの建前に過ぎない。 本当に自分が思っていたこと、それは――― 「―――私は、まだ信じたいんだと思います」 自分が生まれ育った本土を、マーティン・ジグマールという男を。 そしてそれ以上に………己の想い人がその理想と正義を捧げているホーリーという組織自体を。 非常に愚かで馬鹿げた判断であることは承知の上で。 それでも、それを信じたかった。………信じたかったのだ。 「ホーリーは此処に来たのか!? どうなんだよ、早く答えろよ!? おい!?」 それこそ詰問を通り越して尋問のような勢いで向かった情報先の町の門番へと迫るカズマ。 それを見ている君島自身とて流石のその態度はどうかと呆れること少々。 されど、当の問い詰められている門番の中年の男たちの方は素知らぬ態度を崩そうともしていなかった。 それどころか、 「お前みたいな無礼な奴に教える気は無い」 目も合わそうともせずに追い払うかのようなそんな態度で言ってくる始末だ。 流石ににべもないその態度に苛立ったのだろう、遂には胸倉を掴みかかり怒鳴るカズマ。 「ふざけんな! 状況分かってんのか!? ホーリーの奴らが―――」 「―――来るわけないよ。こんな土地に」 「何だとっ!?」 いい加減連中とカズマとのやり取りをウンザリしたような態度で見守っていた君島ですら、 「もうやめようぜ、カズマ」 と言い出す始末だった。それ程にこの町には自分たちがありありと拒絶されているのが理解できたからだ。 「そんなに連中を敵視しなくても良いだろう」 鼻を鳴らしながら不満そうに言ってきた相手の言葉に、それこそ今度は鼻を鳴らしながら何を言っているのかと相手を睨みつける。 「なに能天気な事言ってんだ! おっさんよぉ!?」 それこそそのまま不毛なやり取りに、いい加減にカズマの堪忍袋の緒が切れそうにもなった瞬間だった。 「―――あ! 玩具のお兄さん来てる!」 一人の子どもがそう叫ぶと同時、周りにいた大勢の子どもたちもまたそれに歓声を上げながら一斉に走り出した。 その様子をわけも分からず見送ったカズマと君島は再び互いの眼が合うと、 「………何だぁ?」 「行ってみっか。玩具だってよ」 そうやって意見の一致を持って子どもたちの後を追って駆け出した。 無論、門番をしていた中年の男たちが慌てたように背後から制止の声を上げていたが当然の如く無視。 此処まで来て何の収穫もなしに帰れるはずなどなかったのだから。 「そんなに押さないでくれよな、数はまだまだあるし、私は逃げも隠れもしないよ」 そう言いながら集る様に寄って来る子どもたちに背中に背負った袋から玩具を取り出し渡す男が一人。 ホーリーに所属するアルター使いの一人、エマージー・マクスウェルである。 彼が今行っていることはそれこそサンタクロースの真似事かと最初はヴィータも思った。 こんな辺境の町にまでやって来て、何をするかと思えば背負ってきた袋の中の玩具を子どもたちへとプレゼント。 まぁそれ自体にヴィータは特段に文句をつける心算は無い。否、少しだけエマージーのことを見直したと言っても良いだろう。 戦力としてはこの男、まったくと言って良いほどの足手纏いだ。だが子どもを相手に玩具を与えて喜ばすと言うその姿、その発想はある意味ただ戦う以上に価値がある。 無垢なる子どもたちの笑顔を護る………ああ、そうさ悪くない。 「何だよ、ホーリーにも良い奴はいるじゃねえか」 「ええ、そうですね」 ついつい少しばかり群がる子どもたちに玩具を与えるエマージーの姿が微笑ましく零してしまった呟き。 隣で同じように眺めているスバルもまた何処か嬉しそうであった。 ………そう、少々過酷な環境下で戦いに触れ過ぎていて忘れていたが、自分たちはそもそもああいった子どもたちの笑顔を護ってこその管理局員なのだ。 エマージー・マクスウェルという男の評価を、ヴィータは使えない男から案外にも良い奴と上方修正しておくことにした。 「………けどよ、コレと任務は別物だってのも事実だ」 まぁエマージーがこのまま子どもたちに玩具をプレゼントしておくのは別に良い、何の問題だってない。 元々戦うのは自分だとヴィータは決めている以上、標的が現れれば進んで自ら戦いもしよう。 けれど、それも現れればの話だ。 「イーリィヤンの奴が予測を立てたポイントは此処だって話だが………本当に奴は現れんのかねぇ」 零すヴィータの言葉は大いに懐疑的だった。 さもあらん、ここ数日この近辺を中心に張り込んではいるが一向に件の標的は姿を見せない。 このままではそれこそ辺境の町でボランティアを行っただけだった、などという結果にだってなりかねない。 ………まぁボランティアを否定しようとは思わないが、それでもそうなってしまえば大きな肩透かしとなってしまうのも事実だ。 だからこそ――― 「出てけって何だよ! 相手はホーリーだぞ!? 何考えてるか分からねえ奴らに好き勝手させとくのかよ!?」 ―――そんな怒鳴り声が聞こえてきた先、振り向いてみれば間違いなく当人だと思われる標的が存在したことに、ヴィータはそれこそ衝撃と安堵を同時に覚えた。 「………スバル、あいつで間違いないよな?」 「………え、ええ、そうです。………間違いなく、カズマさんです」 ヴィータの確認の問いにスバルもまたえらく驚きながら頷いた。 ………そうか、アイツがそうなのかとヴィータは改めてカズマを見る。 確かに資料にあった写真、撮影された戦闘映像、それらに映っていた姿に間違いの無い容姿だ。 ………いや、更に鋭さの増した刃物。ギラついた凶暴な獣のような奴だと思った。 まぁそんな印象はこの際どうでもいい。要はアイツが――― 「―――アイツが、なのはを誑かしてやがる張本人ってわけだ」 ただそれだけで、己には敵対視するに充分な理由だった。 それこそ眼前の光景は意味不明と言ってよかった。 どうしてホーリー野郎がガキ共に玩具何ぞ渡しているのか。 そしてどうしてガキはおろか大人も含めてこの町の連中はホーリーを受け入れてやがるのか。 ハッキリ言ってカズマにはサッパリ訳が分からなかった。 だからこそ怒鳴り、問い質した。 けれど返ってきた返答はそれこそカズマには理解しがたいものでしかなかった。 「色々と援助もしてもらっとるし、子どもたちも喜んどる。ハッキリ言ってあんた等の様な連中に来られても迷惑なんだ」 理解不能を通り越し、それこそ本当に聞いて呆れる答えであり現状だった。 こいつら馬鹿か、恥も外聞も、危機意識も無いのか。 それらの思いも込めて一緒に怒鳴り散らしてやろうと思ったその時だった。 「やぁやぁ、カズマ君」 「あぁ!?」 それこそ馴れ馴れしく笑みを浮かべ手を上げながら近づいて来る男に、カズマはチンピラそのものの形相で睨みつける。 だが臆した様子も一切無い様子で男は目の前まで来て優雅とでも気取ってるような一礼を示しながら言ってくる。 「私は君の事を待っていたんですよ」 だがカズマはそんなものは思い切りガン無視し、男の付けているマフラーを掴みあげながら怒鳴り返す。 「何だぁ、やる気か!?」 無論、傍から見れば誰が見ても悪質な絡みを見せるチンピラのソレである。 「エマージーさん!」 「エマージー! テメエ、そいつを放しやがれ!」 そう叫びながら駆けつけてくる者が二名。 二人ともホーリーのものとは別種の茶色の制服を身に付けた少女だった。 一人は初めて見る顔だが、もう一人の方には見覚えがあった。 ………そう、あれも中々に印象的な喧嘩だった。だから忘れてなどいない。 「………お前、確か本土のアルター使いの………」 スバル・ナカジマを見ながらカズマはそう言葉を返す。 撃滅のセカンドブリットを破り、散々こっちをボコってくれた上にシェルブリット・バーストまで引き出させやがった相手だ。 こいつらのボスである高町なのは程では無いが、それでもホーリーである限りはいけ好かない相手であることに変わりは無い。 まさかこんな所で再び巡り会えるとは思っていなかっただけに驚きだ。 そしてもう一人の方は……… 「………何だぁ、またガキかよ」 ウンザリしたような態度でヴィータを見ての第一声がそれだった。 まぁカズマにして見れば、それこそ見た目はこれまたかなみと大差なさそうな年齢の少女だ。ハッキリ言ってやる気が削がれるのも仕方がないというものだった。 本土の連中はガキばっか使って何企んでやがるんだと逆に別の苛立ちすら感じ始めたほどだった。 ………尤も、それが相手のタブーにモロに触れたことにカズマはまだ気づいていなかったが。 「………………ガキ、だぁ…………?」 ヴィータにして見れば見た目で侮られるのは、彼女からして見れば最大級の侮辱である。 ただでさえなのはを誑かしている気に入らない相手である上に、ここまで舐められれば、当然許せるはずがない。 ぶっ飛ばす、もはや問答無用、ボコボコに叩き伏せないと気が済まない。 そんな怒りも顕に戦闘態勢に突入しようとした瞬間だった。 「まぁまぁ、皆さんここは一つ落ち着いて」 そんな呑気な声で割って入ってきたのは、あろうことか未だマフラーを掴みあげられている当人―――エマージー・マクスウェルだった。 「んだとぉ、このホーリー野郎がッ!」 だが先程から苛立ちが増すばかりのカズマにしてみれば、横槍に勝手な仕切り……それこそこのままぶん殴るには充分に足る理由だった。 実際、このままこのにやけた顔面に拳をぶち込んでやろうかと本気で拳を固めて振り上げかけた程だった。 ―――しかし、 「おやおや私を殴るおつもりですか?……無垢なる子どもたちの目の前で?」 余裕そのものと言った態度でそんな疑問を当然のようにぶつけてくるエマージー。 事実、咄嗟に拳を振り上げるのを止めたのは彼を掴んでいる自分に一斉に非難の目を向けてくる子どもたちがあればこそだった。 それこそカズマは忌々しげに歯痒い苛立ちも顕にしながら、その場を踏み止まる以外に道はなかった。 確かにカズマは自他共に認める無頼だ。……が最低限の良識や分別そのものを理解できないほどに愚かではない。 ……何より、子どもからのそう言った視線は彼にとって何よりも苦手なものの一つでもあった。 故にこそ、心底忌々しい舌打ちを吐きながらも乱暴にエマージーを離すことしかカズマには出来なかった。 「他のホーリー隊員はいざ知らず、私は争いを好みません」 掴まれて乱れた胸元を整えながら、まるで当然と言った口振りでそんなことを言ってくるホーリー隊員。 出来の悪い冗句、そうにしかカズマには聞こえなかった。 「あぁ!? 何言ってやがる!?」 それこそ次こそ本当に噛み付かんばかりの苛立ちを込めて怒鳴るカズマに背を向けながら、エマージーは群がる子どもたちに視線を合わすように屈みながらその頭を優しく撫でながら告げる。 「すまないねぇ、ボクちゃんたち。私たちは此処にいるお兄さんたちと話があるんだ。それが終わったら、また此処で会おう」 エマージーの告げた言葉に子どもたちはそれこそ残念そうな顔を見せながらも、彼が言ったその言葉に「本当だね?」「絶対だよ!」等と希望を持って問い直していたほどだ。 子どもたちのその問いに、それこそエマージーは自信に満ちた顔で頷きながら、 「ああ、勿論だとも。私のプライドと―――ピンチに懸けて、ね」 ウインクまで交えた誇らしげな返答を返していた。 目次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3108.html 前へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3156.html 次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3157.html
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マンモス諸侯領(the Realm of the Mammoth Lords) マンモス諸侯領 は、アヴィスタン亜大陸北方に位置する、南では絶滅した巨大な獣が闊歩し、ケーリド人たちが他国の影響を受けない本来の文化を保持している原始の地である。 歴史 原始的な部族社会であるこの地は太古から同じ時間が流れているが、エイローデンの死後、東部にあったバーバリアンの国 Sarkoris がデーモンの軍勢に蹂躙され、ワールドウーンドが生まれた。未だにそれは脅威として存在し続けている。 政治 南の地にあるような中央政府は存在せず、家族単位の部族からなる。強力な指導者や戦士が出た場合、それを中心として部族が連合し“following”が生まれることがある。指導者が死んだ場合、新しい指導者を選出するか、他の指導者の下につくか、解体して部族に分かれてしまう。現在最大の Following は Mighty Kuldor の率いる 3000人ものBearpelt Following で、アイスステアの近くに住み、交易で大きな利益を得ている。部族や Following は徒歩で移動し、マンモスなどの飼い馴らした獣に荷物を載せたソリを引かせる。また、伝統的なシャーマンの道以外の魔法には不信感を持っている。 この地のケーリド人たちはジャイアントに奇妙な憎悪と敬意が入り混じった感情を抱いており、コダー山脈 Kodar Mountains や牙山脈 Tusk Mountains のジャイアント部族と常に抗争しながら、時にジャイアントの子供を捕えて大平原のやり方を教え、名誉ある兄弟として扱うこともある。時としてそのようなジャイアントは自らを捕えた者たちを家族と見るようになり、それを守るために死ぬまで戦う。このような巨人の奴隷を所有していることが following の権力の象徴であり、Mightly Kuldor は1ダース近い巨人のしもべを抱えていることで知られている。 地理 マンモス諸侯領はマンモスやスミロドンを始めとした巨大な哺乳類が豊富に生息する。南のベルクゼンの領土からはそれらを捕えて軍用獣に使うため、多くのオークがやってくる。また、東のワールドウーンド、西のイリセンも、ゆっくりとこの地に勢力を伸ばしてきている。 アースナヴァル Earthnavel:牙山脈にある深い谷間から広がる洞窟網の中心にある縦穴。その壁面はゴラリオンをかつて闊歩していた巨獣の骨で飾られており、その底にはダークランドにつながる人間が入れるほどの開口部がある。 ギンジ台地 Ginji Mesa:北部にある the Nightsnake と呼ばれる翼ある蛇の縄張り。時にサンドポイント・デヴィルとして知られるクリーチャーを率いるこの蛇は、恐るべき凝視で獲物をすくませ、空中から狩人や家畜を襲撃する。 ヒルクロス Hillcross:牙山脈 the Tusk Mountains を横切る最大の通路があり、南からの商人たちが通過する。マンモス諸侯が使用する集会場でもある。 アイスステア Icestair:世界の冠を経由してティエン・シアへ行く通商路の入り口にある、この地域最大の都市。支配者である Po La はかつて東方の 炎の女帝に仕える文官だったと言うが、主の娘と衝突して命からがら逃げ出してきたと言う。 レッドルーン峡谷 Red Rune Canyon:ワールドウーンドの境界からはるか西にある曲がりくねった峡谷。最近、時々泥が泡立ち、血のような液体が流れ、動物たちは醜く攻撃的に変わってきている。マンモスたちはこの地に近づくことを嫌がるようになり、訪れた者たちは峡谷の外観がデーモンのルーンに似てきたと言うようになった。 サンダーステップ Thunder Steppes:牙山脈の麓からワールドウーンドにまで広がるステップ地帯。サーコーリス陥落までは無数の Following と部族が存在したが、今ではデーモンの穢れによってどんどん敵対的になっていく狂った巨獣の群れがいるのみである。 トルガス Tolguth:世界の冠のふもとに位置するが、地熱による奇妙に温暖な谷間。恐竜までもが生息している。壁を張り巡らせた居住地がある。近年ワールドウーンドから侵入してきたクリーチャーが大きな脅威となっており、西からはイリセンの冷気が徐々に広がってきている。噂では地下世界ダークランドには擬似的な太陽があり、恐竜たちの繁栄する無人の世界とつながっているという。パスファインダー協会は、そこに5回探検隊を送り込んだが、生還者はおらず、詳細は不明である。 参考文献 [1] Erik Mona et al. (2008). Campaign Setting, p. 92. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1 [2] James Jacobs et al. (2011). The Inner Sea World Guide, p. 106. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2 カテゴリー:内海地域
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装甲マンモス 装甲マンモス 基本情報 攻撃 ユニットタイプ 動物-戦車 攻撃アイコン 出現レベル 30,35,39,40,44,45 ダメージタイプ HP 400 ダメージ 78-116 56-83(x3) 装甲 100 射程 1-3 1-2 ブロック ブロック 射程圏 第一線 第一線 ベース 85% 85% 125% 爆薬 ∞ ∞ 装甲 25% 25% 75% リロード - - 撃破経験値 128 使用火薬数 1 1 撃破獲得金 640 補給時間 2 1 備考 装甲貫通力40% -
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魔法少女リリカルなのは 魔法少女リリカルなのはA's 魔法少女リリカルなのはStrikerS StrekerS SoundStage X 魔法少女リリカルなのはViVid 魔法戦記リリカルなのはForce 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st
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このページでは、18禁恋愛シミュレーションゲーム作品『とらいあんぐるハート3 ~Sweet Songs Forever~のおまけの りりかるなのは とは何かを説明します。 ゲームクリア後(とらいあんぐるハート3 ~Sweet Songs )のおまけシナリオとして収録された「CMスポット」において新番組として予告された架空のテレビアニメ作品のタイトル。 本編のパロディ的な内容で嘘企画であると明記されており、 後に実際に制作された作品である2.~4.のいずれとも全くの別物である。 1.のファンディスク『とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱』に収録されているミニシナリオ。 狭義にはこの作品が4.の原作にあたるが、実質的には1.をはじめとしたとらいあんぐるハートシリーズの後日談にあたる作品であり 4.とは全くの別物である。 1.のOVA版に先行して発売されたミュージッククリップ集『とらいあんぐるハート ~Sweet Songs Forever~ サウンドステージVA』に2.のオープニングアニメという名目で収録されている短編アニメ作品。なお、この作品及びOVA本編は4.と同一スタッフによる制作である。 1.~3.からスピンオフし、世界設定を大幅に変更した上で制作されたテレビアニメ作品。以下のシリーズ3作品からなる。 なお、18禁恋愛シミュレーションゲーム作品 『とらいあんぐるハート3 ~Sweet Songs Forever~』 については、別記で紹介する 魔法少女リリカルなのはTPOへ戻る
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