約 723,810 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3134.html
前ページ次ページヘルミーナとルイズ 思い出すのは水のせせらぎ、草の臭い、頬を撫でる風の冷たさ、彼女の笑顔。 そのすべてが遠く、遠い。 何もかもが懐かしい。 彼女と過ごした時間が、今の彼を突き動かすすべて。 ルイズは、泣いてくれるかな? サイトは力を振り絞ってデルフリンガーを振るう。 一振り二振り、三度振ったところでたたらを踏んだ。 サイトはこんなにもデルフリンガーが重いということを初めて知った。 あいつ、あれで泣き虫だからな。 段々足に力が入らなくなってきた。 槍で突かれた左腕の傷口からは血が溢れている。そこから命が漏れていくような感覚に怖気が走る。 それでも止まらない、止まったらもう二度と動けない。 それに寂しがり屋だし。 着地ざま、剣を力任せ横なぎに払った。 手に伝わる肉と骨を断った、確かな手応え。 周囲に味方なんて誰もいない、適当でも振り回せば誰かに当たる。 いっぱい悲しんで、いっぱい泣いてくれるかな? 大群の前にたった一人で現れた少年剣士は既に満身創痍。 けれど、彼は今この場にいる誰よりも必死に生き足掻いていた。 すべては彼女のために。 結局あんな別れになったけど、俺、お前のこと、好きだったんだぜ。 包囲していた兵士たちが一斉に槍を突き出した。 再び跳躍、敵のいない方へと渾身の力を込めた一飛び。 直後、サイトの耳に届く空を裂く無数の音。 生意気で、我が儘で、短気。でも、そんなところも好きだったよ。 見上げれば空を黒く染める矢の嵐。 サイトは足が地面についた瞬間、足腰すべてのバネを使ってその場から飛び退いた。 そのはずみで、体の中からぶちぶちと何かがちぎれる音がした。 ごめんな。 かわしきれなかった矢が右の腿と背中に刺さった。 転がりながら足の矢だけ引き抜く、背中の矢は転がった際に半ばから折れていた。 既にサイトの体は血で汚れていない場所など一カ所もない。 本当にごめんな。 真っ赤に染まった少年剣士。 生きているのが不思議なほどの傷を負ってなお、剣を握り、離さない。 なぜそのような姿になってまで戦うのか、この場にいる誰もが理解できないでいた。 お前一人残してごめんな。 衝撃。 爆音と吹き上がる炎、かつてテレビの向こう側で見た爆撃のようなそれがサイトを襲う。 ある意味それは正しい。サイトの周囲に向かって、無差別に火玉の魔法が何十とうち込まれているのだ。 お前は泣き虫だから、きっと泣くと思う。 吹き飛ばされる。 投げ出されて、仰向けに倒れるサイト。 それでも起き上がろうともがくが、一度止まってしまった体は、糸が切れた人形のように動かなかった。 でも、いっぱい泣いて、いっぱい悲しんだら…… 何もかもなげうって、少しでも長く生きるためにサイトは懸命に戦った。 一分一秒一瞬でも長く、ルイズのことを考えるために。そうすることだけが、自分の気持ちを証明する唯一の方法だと信じて。 だが、それも終わる。 俺のこと、忘れてくれ。 涙が止まらない、止められない。 もう体は動かない。 握りしめていたはずのデルフリンガーは、既になかった。 全部忘れて……幸せになってくれ。 遠巻きに包囲した兵士たちが、一斉に弓をつがえ、大砲を向け、杖を構えた。 標的は、たった一人のちっぽけな少年。 「ルイズ、ごめんな」 流星のように降り注ぐ死を眺めながら呟いたそれが、サイトの最後の言葉となった。 ルイズはネグリジェ姿のまま、ベットに腰掛けている。 神聖アルビオン共和国の降伏から既に三週間が経過し、トリステインにも平和な日々が戻り始めていた。 出征していた男子生徒たちも皆学院へと帰還し、授業も平常通りのものへ戻った。 窓の外からは光が差し込み時刻は昼過ぎを知らせていた。 寮で生活していた女性生徒たちの殆どは、今は授業を受けるために本塔へと出払っている。 そんな中部屋に残ったルイズの姿は、痛々しいという他なかった。 目は落ちくぼみ、唇は乾いている。 痩せてはいたが、健康的でしなやかであった体は、今や憔悴しやつれ果てている。 視線は虚空を泳ぎ定まっていない。手には以前にサイトへプレゼントしたセーターと、赤い布きれ。 確かに男子生徒たちは戻ってきた。 戦場で生き残り、ギーシュのように勲章を貰ったものもいる。 けれど、その中にサイトの姿はなかった。 代わりに彼女の手元に戻ってきたのは、どす黒く血に染まったパーカーの切れ端とデルフリンガー。 そして、サイトが死んだということを示す紙切れ一枚。 「ルイズ! ちびルイズ! 返事をなさい!」 「ルイズ! お願いだからご飯だけはちゃんと食べて!」 扉の向こう側から響く、二人の姉の声も今のルイズには届かない。 あの日、あのときから、彼女たちの言葉は届かなくなった。 「どういうこと!? 何であんただけなのよ!? サイトは……サイトは一体どうしたのよ!?」 「落ち着けよ、娘っ子……」 「そうよ、落ち着きなさい。あなたが大声をあげても彼は帰ってこないわ」 ルイズの部屋の中、かつてサイトが寝起きしていた藁の上にはデルフリンガーが置かれている。 そしてルイズの横には二人の姉の片割れ、エレオノールの姿があった。 「サイトは……サイトは生きているんでしょう!? 答えて! 答えてよ!?」 目に涙を浮かべ、手には血染めの切れ端を握りしめたルイズが叫ぶ。 最初に届けられたのは手紙だった。 その中にはヴァリエール家が使い魔の三女、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔が死んだことと、その死を悼む内容が記されており、血染めのパーカーが同封されていたのであった。 この際半狂乱に取り乱したルイズに対して、学院は実家への連絡という手段をとった。 そうして呼び寄せられたのがエレオノールとカトレアの二人の姉であった。 最初はルイズを叱咤してルイズを立ち直らせようとしたエレオノールであったが、サイトを呼びながら泣き叫ぶルイズに折れ、最終的には公爵家の力を使って、サイトの消息についての調査を行った。 そうした調査の末、戦場で収集された武器の中に、一振りのインテリジェンスソードがあり、それが盛んに「ルイズ」「サイト」と叫んでいると分かったのである。 エレオノールは直ぐさまその武具を取り寄せる手続きを行って、その甲斐あってデルフリンガーは再びルイズの部屋への帰還を果たしたのであった。 「サイトは……サイトは無事なの?」 縋るような目つきのルイズ。 「相棒は……」 デルフリンガーは言い辛いことを伝えるときの人間のように一度言葉を区切り、やがて決心したように続けた。 「相棒は、死んだよ」 「嘘よっ!」 間髪入れずに叫んだルイズの言葉。まるでその言葉が予め分かっていたような速やかな反応。 「本当だ。相棒は、もうこの世に生きちゃいない。相棒は、最後の最後で俺を手放しちまったのさ……あの中を、ガンダールヴ無しで生き残るは不可能だ」 「それでも……、それでも!」 ゆっくり、崩れるようにして床へ腰を下ろすルイズに、デルフリンガーもエレオノールも、かける言葉が見つからなかった。 デルフリンガーだけが、最後の希望だったのだ。 「生きてるって言って……お願い……」 すすり泣くルイズに、デルフリンガーは「すまねぇ」と小さく返すしかできなかった。 希望が砕かれたとき、人は惑う。そうしたときに、一人で立ち直れるものは強いものだけだ。 だから、長女として、人生の先輩として、エレオノールはルイズに手を貸そうとした。 彼女なりのやり方でルイズの立ち直りを手助けしようとした。 「いつまでそうしているつもり、泣き虫ルイズ!」 「……」 「お父様が止めるのを聞かずに、戦地になんて行くから、使い魔を死なせる羽目になったのよ」 「……」 姉として、妹を心配していた。 だから、結局のところ、エレオノールが次に発した言葉は、彼女の優しさからであったのだが。 「毅然となさい! あんな使い魔が死んだくらいで……」 その一言で、ルイズの中にある、何かが砕けた。 「使い魔くらい……」 どうってこと、と続けようとしたところで、エレオノールが凍りつく。 泣きはらした目で顔を見上げたルイズのそこからは一切の表情が抜け落ちていた。ただその目が、まるでガラス玉のように無機質で、エレオノールはこれまでの人生で一度も妹のそんな姿は見たことがなかった。 その唇が、小さく震えた。 妹が何かを言おうとしていることを気取ったエレオノールは、焦点の定まらないルイズの瞳を真っ直ぐに見返し挑発した。 「はん、何か言いたいみたいね、言ってごらんなさいよ」 再び、ルイズの口が小さく動いた。 「何を言っているのか、全然聞こえないわ。ほら、ちゃんと口に出してごらんなさい」 「おい止めろ姉っ子! そいつは逆効果だ!」 ルイズの異変に気づいたデルフリンガーが大声で静止するが、何もかもが遅過ぎた。 「黙れ」 「……え?」 無表情な顔をした妹が紡いだ言葉の意味が理解できずに、エレオノールは漏らすようにして聞き返した。 一方、ルイズは自分が見上げているものがなんだか分からなかった。 ひび割れたモノクロのステンドグラスのような形をした何か、それが先ほどから耳障りな雑音をまき散らしている。 その音を聞いているだけでひどく頭が痛くなる。 まるで頭の内側から大きなハンマーで、力一杯ガンガンと殴られているようだ。 だから言ってやったのだ、思ったままを。感じたことをそのままに。 「うるさい うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 その日以来、姉たちの言葉はルイズに届かなくなった。 そして姉以外の者たちの言葉も届かない。 今や、彼女たちはルイズにとって『理解できない何か』になってしまったのだ。 彼女たちが、ルイズの心が分からなかったように、ルイズにも彼女たちが分からなくなってしまっていた。 時折部屋の外で発せられる、『何か』が発する雑音。 ルイズはそれが響く度に手編みのセーターと血染めの切れ端を強く握りしめる。 母の庇護を求める赤子のように、それだけが彼女を守ってくれると信じて。 「サイト、助けてサイト。怖いよ、怖いのがくるよ……」 大切な想いを抱きしめたまま、ルイズはベットに倒れこむ。そして子供のように丸くなって泣いた。 部屋の外、エレオノールとカトレアの二人は揃ってため息をついた。 「ごめんなさい、エレオノール姉さま。私が至らないばっかりに……」 そう言って両手で顔を覆って泣き出すカトレアを、エレオノールは抱きしめ慰めた。 「いいのよ、あなたのせいじゃないわ。あなたはあのとき体調を崩していたんだもの、仕方がないわ」 泣きじゃくる妹っ子のカトレアをあやすエレオノールの顔色も曇っている。 「おい姉っ子、あんまし自分を責めるんじゃねぇぞ。お前さんはお前さんなりに精一杯やったんだろ」 壁際に立てかけられたデルフリンガーの言葉にも、エレオノールの顔は晴れない。 「いいえ、何もかも、私の責任だわ」 「……反省と自分を責めることは似て非なるもんなんだぜ」 分かってはいても、返す言葉もない。 しばらくするとカトレアも泣き止み、表面上は平素通りの様子に戻った。 「ちょっとは食べてるみたいだけど、こんな状態じゃ放っておくわけにはいかないわね」 足下にあるトレイには干からびたパンと、冷たくなったスープがのせられている。 そのパンには小さくちぎった跡が残されていたが、とても健康を保つのに必要な量とは言えそうになかった。 「この扉を破ってでも屋敷に連れ帰るしかないわね。屋敷なら目も行き届くし、何より……この部屋に残すのは良くないわ」 使い魔の少年との思い出がある、という言葉を飲み込んだエレオノールは、いつにもまして辛そうな表情をしていた。 「……可哀想だけど、私もそれが正しいと思うわ」 ルイズの心が壊れてしまった翌日、カトレアもまた彼女の狂乱ぶりを目の当たりにした。 ルイズを可愛がっていた分だけ、彼女の受けた心の衝撃は言葉にできないほどであった。 だが、それと同様かそれ以上に、カトレアはエレオノールのことも心配していた。 ルイズの心を決壊させた原因が自分であると、人一番責任感の強いエレオノールは自分を責め続けているに違いない。 カトレアは愛する妹、そして姉までが苦しんでいるのに、何もすることができないという自分の無力さを強く呪った。 「それで?それはいつやるつもりなんだい?」 カトレアの苦悩を余所にデルフリンガーがエレオノールに問いかけた。 あるいは、エレオノールの注意を自分に向けるためだったかもしれない。 「早い方がいいわね。明日か、明後日にでも」 「……エレオノール姉さま、ルイズは……あの子は、お屋敷に帰ったらどうなるんですか?」 痛いところを突かれたという表情を一瞬見せたが、すぐに眼鏡を直すふりをして手で顔を隠してしまうエレオノール。 それだけで、カトレアには今後ルイズがどういった状態に置かれるかが分かってしまった。 「屋敷で軟禁、でしょうね。外を歩けるようになるのは、だいぶ先のことになると思うわ」 冷たい口ぶりでそう答えるエレオノール。 けれどカトレアには分かっている、その真なる暖かさを。 だからいっそうの切なさを感じるのだ。それが追いつめられたルイズの心に届かなかったという、お互いのすれ違いに。 深夜。 気がつくと、ルイズは階段を上っていた。 素足で堅い石段を踏んでいるはずなのに、どういうわけか足下はふわふわとして、まるで雲の上を歩いているようだった。 心地よい浮遊感に身を任せ、どんどんと階段を上っていく。 理由は分からないけれど、一番てっぺんまで辿り着けば、そこにサイトがいる気がした。 「サイト……待っててね、すぐに、すぐに会いに行くから……」 頭がぼうっとする、まるで霞がかかったように上手く考えが纏まらない。 本来結びつくはずの事実と意味が組み合わさらない、そうしているうちにどちらも泡が弾けるようにして溶けて消えてしまう。 自分が何をしているのか、どうなってしまうのかが考えられない。 でもいい、もうどうだっていい、なんだか疲れてしまった。 ただ、楽になりたかった。 階段は唐突に終わりを告げた。 屋上、冬の空気が鼻孔から入って肺を満たした。 普段なら頭がすっきりするようなそれを受けても、熱に浮かされたようなルイズの足取りは止まらない。 そうして、ルイズは終着へと辿り着いた。 屋上の円周を囲む石塀、そこが行き止まり、そこから先に道はない。 でも、その先にサイトがいるような気がした。 ルイズは胸ほどの高さがある石塀をよじ登り、その上に立って地面を見下ろした。 闇が支配する時間、黒に塗りつぶされた世界、どこまでも続いていそうな、そんな光景が目の前に広がっていた。 サイトのそばに行くための一歩。ルイズがそれを踏み出そうとしたとき、雲間から双月の片割れが顔を出し、眼下の一部を淡く照らし出した。 それは、ルイズとサイトが出会った、あの春の召喚の儀式が執り行われた一角であった。 無表情なルイズの目から、一筋の滴がこぼれ落ちる。 すべてはあの場所から始まった。 馬鹿で、スケベで、浮気者で、お調子者で、ちっとも乙女心が分かっていないサイト。 でも、勇敢で、優しくて、いつも守ってくれた、そして何より、私を好きって言ってくれたサイト。 「我が名は」 自然と、口をついで言葉が出た。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 それは始まりの呪文。 「五つの力を司るペンタゴン」 あの素晴らしい日々の、幕開けを告げた呪文。 「我が運命に従いし」 だからもう一度唱えよう。 「使い魔を召喚せよ」 何もかもを、やり直すために。 光。 背後から自分を放たれる光に気づき、ゆっくりと首をそちらに向けるルイズ。 そこには白く光る鏡のような形をしたゲートが出現していた。 ルイズはゲートが現れた方を、身じろぎせずに、ただ無感動に見つめていた。 そうだ、サイトはゲートの向こうになんていない、いるのは…… 自然と体が正面を向いた。 早く会いたい、サイトに会いたい。 そう思い、再び歩を進ませようとしたところで、声をかけられた。 「あら飛び降り? いきなり目の前で人に死なれるってのいうのも、ちょっと新鮮ね」 聞き覚えのない、女性の声。聞こえた方向、先ほどまでゲートがあったそちらに顔を向けた。 そこには先ほどまであった銀色に輝くゲートはなく、代わりに一人の女性が立っていた。 年の頃は二十歳前後。 腰まで届くロングの髪は薄く紫がかった銀髪、月光に照らされた整った顔立ち、そして何より特徴的な左右色違いの瞳、それらが組み合わさって彼女と その周囲に幻想的な美しさを作り出していた。 けれど可愛らしいかと言われれば否、全体的に紺で纏められている服装は、どちらかといえば妖艶な雰囲気を醸し出している。 妖精というよりは、淫魔サキュバスといった方がこの場合は正しいだろう。 ゲートが閉じて、現れた女。 つまりは彼女が、サイトの『代わり』ということだ。 ルイズが平静の状態であったならば、彼女が現れた意味を悟り、また泣き叫んでいたことだろう。 けれど、今の彼女にそれすらも理解することができない。 ぼうっとした眼差しで女を見つめるルイズ。 対する女もルイズの感情の宿らぬ瞳を見返して、二人はお互いの目を覗き込むこととなった。 ルイズは女の、女はルイズの瞳を覗き込む。 目を見る、ということはその人間の奥底までを見ることに似ている。 人と自分が違うが故に、本来であれば目を見ただけで何かが分かるなどというのはおとぎ話のまやかしだ。 けれど、それが鏡を見るように、同じ瞳に同じ心を持っていたなら? 二人はお互いの内に潜む、深淵を深く覗き合った。 そして直感的に、お互いがよく似たものであると理解する。 それは、同じ何かを持つもの同士のシンパシーだったかもしれない。 「……私の名はヘルミーナ。あなたの名前は?」 女の涼やかな声が聞こえる。 雑音しか聞こえなかったルイズの耳に、久方ぶりの人間の声が届いた。 「ルイズ……ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール」 「そう、ルイズっていうの……何をしてるかは、見た通りなんでしょうね」 口元を隠してくすくすと声を漏らす。 「それで、あなたはどこへ行きたいの?」 「サイトの……サイトのところへ行くの」 不思議だった。 ヘルミーナに問われたままを、唇が勝手に動いて答えていた。 彼女の言葉は砂漠のような乾いたルイズの心に、水滴を落とす如くすっと染みこんでくる。 「そう……あなたも大切な人を喪ったのね」 ヘルミーナの口から漏れた『失った』という言葉がルイズの心を締め付けた。 誰の言葉よりも、重くルイズの心に突き刺さった。 すっと、ヘルミーナが石塀の上に立つルイズへと手を伸ばした。 「だったら、取り戻せばいいじゃない」 「……え?」 ヘルミーナの言っていることがルイズには分からなかった。 だが、『何か』が発する雑音のような不快さは全く感じない。むしろ心地よい不可解さ。 それは人を誘惑する悪魔の声のようだった。 「あなたの手から零れたものを、自分の力で再びその手につかむのよ。私にはその手助けができる」 差し出された手と、ヘルミーナの端正な顔を交互に見つめる。 「そうしてあなたは再び大切なものを取り戻して、心の底からまた笑うの」 冷たく、美しく、微笑むヘルミーナの顔が、月の加減で泣いているようにも見えた。 おずおずと手を伸ばすルイズ、そしてその小さな手をヘルミーナが力強くつかんだ。 泣いた、声を出して泣いた。 恥も外聞もなく、わんわんと泣いた。 ヘルミーナの胸の中、しがみついて、縋り付く。 楽しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと、大切な宝石箱をぶちまけるようにして、心の奥から気泡のように沸き上がってくるそれらを全部ヘルミーナにぶつけた。 ヘルミーナは脆い彼女の背中を抱きしめ、その桃色の髪を優しく撫でていた。 こうしてルイズの幸せな少女時代は、一つの別れと一つ出会いをもって、その終わりを告げた。 前ページ次ページヘルミーナとルイズ
https://w.atwiki.jp/haruka17/pages/506.html
ルイズ(ルイズ・フランソワーズ・・・以下省略。) ロンシャンのポケモン。♀のイーブイ。 イーブイを使っておきながら、それをロクに使いこなせないというポンコツに捕まったことが、彼女にとっての最大の災難である。 むしとり少年のその後(番外編1)にセリフが少々少ないながらも登場。前述の咬ませ犬が生まれた理由は「彼女がでんこうせっかを使ったから」(ももたろう談)とのこと。 ツンデレ。同じ系統なキャラのナギとは少々仲が悪い。似た物同士の同族嫌悪。 嘆きのグラン♪、女王の暴走を止めよでは、他のポケモンが強力な技を仕掛ける中彼女だけは「でんこうせっか」。おんがえしややつあたりといった技は覚えていない様子。 本当はヤマトジが絡んだエピソードで彼女が出てくる予定だった。燃える漢の熱い闘いその他の話が上がったため、デデーン。 由来は「ゼロの使い魔」シリーズのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール(CV:釘宮理恵)。名前がやたら長いのはルイズの元ネタがフランス人「ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール」なせいである。 神楽、桃太郎、ルイズ・ヴァリエール(長いので省略)、三千院ナギ。さてこの3人と1匹の共通点は何だ?・・・答えは「CV:釘宮理恵」。つまり、彼女らは「CV 釘宮理恵のキャラが元ネタのポケモンで統一」された1つのグループの予定だった。・・・現在ははるか♪氏がカップリングを投入したせいでグループはほぼ崩壊している。彼女にはサイト(才人)という将来を共にすると誓いあった立派な「婿」がいるのだが。もう遅いか。 SLN型大脳皮質炎ウィルスのキャリアこのウィルス感染による症状は大脳皮質の炎症であり顕在症状としては思考能力・判断力の低下が原因と思われる他人に対する攻撃的行動や発言がみられる。L型感染者の症例:「ばか」「犬」「うるさい」など他人の人格を否定する発言。その他「あんたってばわたしのガンダールヴなんだからねッ!」など妄想的な発言 唾液の飛沫等により空気感染する。感染者はキャリアと同じく大脳皮質の炎症を起こす。しかしキャリアとは異なる症状がでる。症例:「うぎゅう」という呼吸切迫によると思わる伸吟。不快感の欠落症状。具体的には攻撃的言動に対して快感をおぼえるなど。 治療方法:ホルモンバランスの調整により劇的に改善する。エスロトゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)の投与。または分泌の促進。 抗体はキャリア体内において生成される。しかしこの抗体は空気感染しないため、性交等粘膜接触によって感染させるか注射による体内投与または経口投与が必要となる。 要は抗体が生成されたキャリアと感染者が性交することにより治癒する。ただし避妊具を使用した場合効果がない。 性交により大脳皮質の炎症が治まり攻撃的妄想的言動等の特異行動はなくなる。これをデレたと勘違いされることがしばしば見受けられるが医学的には単に病気が治ったにすぎない。 5~6年前に猛威を振るったが、現在下火となっている。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6603.html
その男は訝しがることもせず使い魔の契約を受け入れた。 どこの田舎者だとルイズが尋ねると、男は辺境の村で農夫をしていたと応えた。 眼に見えて落胆するルイズに何も言うこともせず、その日から男の使い魔としての生活が始まった。 男は有能であった、炊事に洗濯、その他の雑用など男は何も言わず淡々とこなしたし、寝床が床であろうと食事が使い魔のエサであろうと文句一つ言うことすらなかった。 そんな男に馬鹿にされているとルイズが癇癪を起こしたことがあったが、しかしいくら鞭で叩いてもいつもと変わらない陰鬱な表情を崩さない男にルイズの感情は長続きしなかった。 次第にルイズは男のことを気味が悪いと思うようになった。 ギーシュと決闘でそれは頂点に達した。 ワルキューレ達に滅多打ちにされる男、体中から血を流し、常人なら昏倒するほどの傷を受けながら男はいつもの陰鬱な表情をまったく揺らさなかったのだ。 そしてむせ返る血の匂いにギーシュが嫌になり始めたころ。 「気は済んだか?」 ただ一言そういい置いて、折れた足を引きずりながらヴェストリの広場を男は後にした。 誰も一言も口を利けなかった、それは男の雰囲気に呑まれたと言うだけではない。 服が破れ、流れ出た血で赤黒く染まった男の背中には、夥しい数の傷跡が刻まれていた。 その傷の数と、醜く引き攣れた火傷の跡が残る背中が空想のなかでしか戦を知らない若き獅子の子供達を思いとどまらせたのだった。 だがその背中を見ていたのは平和を謳歌する魔法学院の生徒たちだけではなく…… ルイズと男の仲が進展したのは“土くれ”が学院を襲った時である。 これまでルイズは主人でありながら使い魔として男をどう扱っていいか分からなかった。 だが身を挺してフーケの攻撃から庇ってくれたと言うのになんの感謝の言葉も言わないのでは貴族として誇りが許さない。 それからはルイズの別の形で苦悩に満ちた日々が始まった。 どうやって主人と使い魔の形を崩さずにお礼をすればいいのか? そう言うことばかり考える毎日だった。 男の方にもそんなルイズの気持ちは伝わったらしい、いつもの陰鬱な顔を僅かに緩めながら男は今日も雑用と畑仕事に精を出す。 だがもっとルイズは気に掛かるべきだったのだ、どうやって男が破壊の杖――M72ロケットランチャーの直撃を真正面から受けながら僅か全治2ヶ月程度の怪我で済んだのかと言うことを。 そしてついにその時は来た。 「はっはー、燃えろ、燃えろぉぉぉぉ!」 燃え盛る炎、真っ赤に真っ赤に人と家屋と空気を焼き焦がす炎。 その光景を見たとき、男の血は凍りついた。 「――相棒? おい、どうした、相棒!?」 男の異常にデルフリンガーが叫ぶが、しかし今の男にはその言葉は届かない。 「貴様……」 男の声に、先ほどまで炎を撒き散らしながら高笑いを上げていた白髪の男はゆらりと振り向いた。 「ほう、これは見誤っていたようだ。匂いからしててっきり燃えカスかと思っていれば……」 そうして鉄で出来た棍棒のような杖を振り上げる。 「燃え残りの種火の中にこんな極上品が残っていたとはな!」 そしてメンヌヴィルは白く輝くほどの炎を放った、だが今の男にとってそれはなんら障害とは成りえない。 系統魔法を無効化する魔剣デルフリンガーがある上、男にはハルケギニアにはないある技術がある故だ。 男はゆっくりとデルフを構えその切っ先をメンヌヴィルに合わせる、ここ数年ただの一度も抱いたことのない殺意を込める。 不意に視界の端に鏡が映った、おそらく今の自分はおぞましい怪物の顔をしていることだろうと考えて…… 「だめぇぇぇえええええええええええ!」 “頸”を込めた一刀で叩き切ろうとした炎の前に、男の主が飛び出して来たのは次の瞬間のことだった。 まさに刹那の出来事だった。 男を焼き尽くすはずだった炎は一人の少女が身を持って壁となったことで進路を変え、男の隣を通り過ぎていく。 その視界の端には鏡があった、生徒の素行を監視するためその場所で起こったほんの少し前の出来事を記録し映し出す魔法の鏡。 焼け焦げ、爛れたその鏡には男を庇おうとする主の必死の姿と――そして戦魔が映っていた。 「きぃぃさぁぁぁまぁぁぁああああ!!!!!」 男の全ての感情が塗りつぶされる。 主が消えたことでゆっくりと薄れていく左手のルーンがまばゆいばかりの漆黒の輝きを放つ。 それは憎悪。 人一人が紡ぎだしたとは信じられないほどの極大にして純粋な憎悪の輝きだった。 その輝きにその場にいる者全てが心臓の鼓動を打つのさえ忘れ、ただ恐怖した。 炎の蛇もメイジ殺しもそして歓喜に震える白き炎さえ。 自分が死んだと錯覚した。 もっとも血と焔に餓えた盲目の傭兵だけは、二度とその心臓を動かすことはなかったが。 全てが終わった後、男は炎によってルイズの姿が焼きついた鏡を持って姿を消した。 男の名はヴァレル、ヴァレル=アワード。 かつてその陰惨を極める戦い方から戦魔と謳われた一人の傭兵である。 以上、作品は榊一郎氏の「ストラグル・フィールド~鏡のなかの戦魔~」より「戦魔ヴァレル=アワ-ド」を召喚でした。 キャラ的にはコルベール先生とメンヌヴィルを足して2で割った感じの人です。
https://w.atwiki.jp/toho_yandere/pages/2442.html
ルイズ ロダ -[[(作品タイトル) up***]] スレネタ ■○スレ目 -[[ルイズ/○スレ/□□]]
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3166.html
前ページヘルミーナとルイズ トリステイン西部の海岸沿いに位置する辺境部に、ダングルテールと呼ばれる一帯がある。 そこに点在するいくつもの廃村。その中でも、別段の不吉さをもって語られるものが一つ。 かつて起こった新教徒狩りを目的とした政府による住民虐殺事件、通称『ダングルテールの惨劇』。 その忌まわしい歴史の爪痕を残す廃墟。事件から四十年が経過した現在も、住み着くものがいない闇へと葬られた地。 今はそこに、一人の魔女が住み着いていた。 呪われた地に住まう魔女。 魔女の住む一帯には常に深い霧に包まれており、彼女に会おうとした誰かが足を踏み入れたとしても、必ず道を見失い、霧の外へと戻ってきてしまうという。 そんな不気味な場所に居を構える魔女に対して、人々は様々な噂をた。 ある人は言う、邪悪なる人食い魔女と。 ある人は言う、死者を冒涜する術を使う忌まわしい魔女と。 ある人は言う、すべての知識を持ち合わせた、万能の力を得た魔女と。 彼女に関する噂は枚挙にいとまがなかったが、ただ一つ共通するのはその呼び名。 人は彼女を『ダングルテールの魔女』と呼ぶ。 春が来た、夏が来た、秋が、冬が、そしてまた春が来た。 四季は巡り、止まることなく時間は流れ続ける。 アルビオン崩壊から二十年。 七万の兵士に立ち向かった使い魔の少年が命を落とし、人々の記憶からもその勇姿が忘れ去られるのに、十分なほどの時間が流れていた。 多くの人から『ダングルテールの魔女』と呼ばれているかつて少女であった女性は、今は少数の人々から『錬金術師ルイズ』とも呼ばれている。 当時から近隣の住人であっても近寄りたがらなかったダングルテールの廃村を、住処と定め工房を構えてから早十年。 ルイズに錬金術の教示を与えたもう一人の錬金術師、ヘルミーナの姿はもう隣にはない。 彼女はルイズに己の知りうる限りの知識を授けたあと、己の世界へと帰っていった。 すべての機材と資金を引き継いだルイズは、その後数年間に渡り、ガリアに工房を構え続けた。 ヘルミーナがいなくなってから最初の一年目にしたことといえば、世界をまわり、四人の弟子をとることだった。 ルイズはヘルミーナと過ごした数年間で、錬金術というものが実に広大な海原のようなものであると理解していたし、故に己一人の手での目的へと辿り着くことができないであろうことも理解していた。 ルイズは四人の弟子たちに、己の納めた錬金術の知識と技術とを、四年の年月をかけて教え伝えた。 それも全員に同じものを教えたわけではない、それぞれの弟子たちには適性ごとに別々の事柄を教え込んだ。 自分の限られた時間では辿り着ない境地へと、弟子の誰かが辿り着く未来を願って。 そうして四年間かけて、彼らを一人前の錬金術師に育てたあと、彼女は弟子たちにこう言ったのである。 「錬金術を、世に広めなさい」と。 その一言から、十年以上の歳月が流れた。 たった二十年、それだけの時間で世界は容易く変化する。 様々な部分で、小さく、大きく。 人は年をとったし、真新しかった石畳は薄汚れた。 美味しかったパイの店は主人が引退して息子に代替わりしてから評判が落ち、草木が育たないと言われていた荒れ地も、開墾と土壌改良によって実りをえた。 トリステイン王国は貴族によって寡占されていた職種の一部で、広く平民を登用することを決定した。 ガリア王国では国が分裂し、その片方が共和政府を名乗り今でも内乱を続けている。 ゲルマニアは相変わらずらしいが内部での政争はその激しさを増しているらしい、ロマリアでは弾圧され力を失っていたはずの新教徒たちが力を盛り返し、年々その発言力を増していると聞く。 ここ数百年なかったような、急激な変動が世界に起こっている。 そして、その一端には錬金術の存在があった。 魔法を使えない平民でも容易に扱うことのできる錬金術によるアイテムの存在。更には平民出身でも錬金術師にはなれるという事実そのものが、絶対的であった貴族の権威を揺るがし、貴族に対する平民の地位の向上へと繋がりつつあるのである。 が、このことはルイズとしては別段どうでも良いことである。 ヘルミーナとルイズがガリアにいた頃から平民に貴族に、表に裏にばら蒔いた錬金術とその成果は、やがては四人の弟子たちにも受け継がれ、世界各地へと波及していった。 四人の高弟たちは、各地に錬金術を広める傍らに弟子をとり、更なる錬金術の広まりに貢献した。 最初は争いの場に、やがては貴族たちの社交の場に、そしてついには平民たちの生活の場にまで錬金術は手を伸ばした。 早くから錬金術が広まったガリア王国には、錬金術を専門で研究する機関を設立する気運が高まっているとも聞く。 分裂し、国力を殺がれたとはいえ、格式と伝統の国ガリア。彼の国で錬金術が認められたとなれば、各国ともそれを追随せざるをえまい。 それもこれも何もかも、すべてはルイズの思い描いた通りに。 工房地下に作られた廃棄処理施設、ルイズはそこで失敗作を破棄する作業を行っていた。 かつては美しかった桃色のブロンドも今はくすみ、その鮮やかさの面影を残すのみとなっている。 三十路半ばの盛りを過ぎた体は全盛期の美しさは失っていたが、逆に円熟した大人の女性を感じさせる。 露出を抑えつつも色気を発露させている黒いイブニングドレスを身に纏った姿は、妖しいとか、艶やかという言葉がよく似合う。 だが、それらの魅力と氷のように冷たい眼光とが合わさって、一種近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。 失敗作を炉に放り込んで再生成し、新たなる錬金術の礎とする。錬金術師なら誰でも行っている行程である。 薄暗い地下で、こぼれ落ちる汗も気にせずに、根気よく作業を続ける。 錬金術というものは、これでなかなか力仕事が多い、今回のそれもなかなかに重労働であった。 弟子がいた頃にはこういった面倒な作業はすべて彼らに任せっきりにしていたことが、今は懐かしい。 手の平大のものから一抱えもあるものまで、様々な失敗作や欠陥品を焼却台の上へと並べていく。 そうして、最後の一体に取りかかろうとしたところで、光源を最低限に抑えてある地下に不意に光が差し込んだ。 「ん……?」 ルイズは視線を上げて階段の上、闖入者の姿を確認しようとする。 逆行になってその顔は確認できなかったが、背格好とほのかに香った香水の匂いで、それが女性であることだけが知れた。 「『ダングルテールの魔女』さん、であっているかしら?」 ヒールの音をたてながら降りてくる声には女性的な瑞々しさが溢れており、推測が正しかったことが証明された。同時、ルイズはその声に引っかかるものを感じたが、そちらの方は無視することにする。 ルイズがじっと見つめる中で人影は石段を下り、残りが数段になる頃には、その姿をはっきり見て取ることができた。 燃えるように赤いロングウェーブに褐色の肌。身長はルイズよりも高い、百七十サントほどはあるだろうか。 どこか見覚えのあるような青いのローブと緑のマントを着用したその女性は、口元に不適な笑いをたたえている。 「ふん……初対面の相手を前にしたら、まずは自分から名乗りなさいってこともゲルマニアでは教わらないのかしら?」 先ほどの違和感を表へと出さぬように、『ダングルテールの魔女』は普段通りの対応で客を出迎えた。 「あら、随分と変わったなと思ったのに、悪態の付き方だけは昔のままなのね。ゼロのルイズ」 久しく耳にしていない名前で呼ばれ、面食らうルイズ。 『ゼロのルイズ』自分をそう呼んだ赤髪の女性、古い古い記憶の中に一人だけ心当たりがあった。 「……キュルケ?」 遠い記憶の肖像画と、目の前の女性とが重なった。 「あの高名な『ダングルテールの魔女』に名前を覚えていて貰って光栄だわ」 あの頃と変わらずに、腰に手を当てて、自信に満ちた顔と仕草で微熱のキュルケが微笑んでいた。 「その派手な特徴を忘れろって方が無理があるわね。それで一体何のようかしら、同窓会の誘いならお断りよ」 皮肉げな声と表情で、作業を続けようとするルイズ。 半ば予想していたとはいえ、目の前の女性の過去と現在の差異にキュルケは小さく嘆息した。 「ふう……それにしてもここは熱いわね。長くなりそうだから上で話したいんだけど、駄目かしら」 キュルケの言葉にルイズは作業の手を止める。 「さっさと上に行きたいならそっちの方を持って頂戴。これをそこの台の上にのせるから」 そう言ってルイズが失敗作の端を指さすと、キュルケもそちらの方へ目線を移した。 「これ? ええと、この辺を持てばいいのかしらね?」 「それで良いわ。合図をしたら持ち上げるわよ。……いち、にぃ、さんっ!」 重い何かを二人で持ち上げ、少し離れた場所にある台まで運んでいってその上にのせる。今日の分はこれでお終いである。 「ところで、これって……」 キュルケが自分が持ち上げた袋状のものに入れられた何かを指さす。渡り百五十サント以上はありそうな大きな長細い袋、中には所々弾力のあるごつごつしたものが入っているようだった。 「ただの失敗作さ」 応えるルイズであったが、たまたまキュルケの指さしたその袋の一部が破れており、中身が覗けるようになっていることに彼女は気がついた。 好奇心で中にあるものを覗き込むキュルケ。 直後、彼女はそのことを後悔することになる。 そこから見えたのは、眠るように目を閉じたあの使い魔の少年の顔だった。 作業を終わらせたルイズはキュルケを伴って階段を上り、彼女の居住空間も兼ねている工房へと戻っていた。 煩雑にものが散らかった工房に、申し訳程度に置かれている丸いテーブル、そこに向かい合い座っている二人。 周囲には色とりどりの瓶や良く分からない鉱物の欠片、果てにはバナナの皮なんかも落ちている。 ふと何かが動いた気配を感じてキュルケがそちらを見ると、箒とちり取りがひとりでに動き回り掃除をしているところだった。 訪れる前に想像していた以上に、そこは『魔女の住処』じみていた。 失敗作の正体と、それを無造作に炉へ放り込むルイズに顔色を失ったキュルケだったが、今は立ち直ったのかそんなことはおくびにも出していない。 「それで、長くなる用向きとは何かしら?こう見えても暇じゃないものでね、さっさと済ませたいのだけど」 「そうね。さっさと用件を済ませたいのはこちらも同じだわ」 そう言ってキュルケが続けようとしたとき、工房の奥から小間使いの少年が現れて二人の前に紅茶の入ったカップを置いていった。 その小間使いの少年は、サイトの顔をしていた。 「……」 それを見て、開きかけた口を再び閉じて押し黙るキュルケ。 「ここは魔女の工房さ。そんなことで一々驚いてちゃ身が持たないよ」 言いながら優雅な仕草で、運ばれてきたカップを口元へと運ぶルイズ。 その姿は確かにあの頃の片鱗を思わせたが、それ以上に『魔女』の凄みを感じさせた。 「ええ、あなたがとびっきりイカれてるってのはよく分かったわ」 「あらそう。ありがとう」 運ばれてきた紅茶に手をつけぬまま、キュルケは懐から一通の書簡を取り出して、それをルイズに手渡した。 「これは?」 「読めば分かるわ」 ごもっとも、と答えて封筒の端を手でちぎり、その中に入っていた一通の手紙に目を通す。 そこにはキュルケの服装を見てから予想していた通りの用件が、事務的に書かれていた。 「こんな用件のためだけにあの霧を抜けてきたなんてね、とんだ酔狂がいたものだわ」 くすりと声を漏らしてから、白魚のような指で手紙を破り捨てる。その様子を見てもキュルケは何も言わなかった。 「伝えて頂戴。答えはノー、私には余計なことに関わっている時間はないと言っていたと」 細かな紙切れとなって床に落ちていく手紙に書かれていた内容は、ルイズをトリステイン魔法学院の教師として迎え入れたいという旨の打診であった。 魔法学院とはいえ、国の抱える高等教育機関。その教員ともなればそれなりの名誉には違いない。 けれど、ここ数年このような願いが各地からルイズの元へと寄せられる度に、彼女はそのすべてを断っていた。 その多くはルイズの持つ錬金術の奥義を己がものにしようとする政府や組織の意向によるものばかりで、本当の意味で教師や職員として迎えようなどというものは一つとして無かったからである。 「私は誰かの子飼いになって研究するつもり気はさらさらないわ。別に援助なんて受けなくとも資金面での苦労なんてしていないもの」 そう言い放ち、話はこれまでと腰を浮かせるルイズの手を、キュルケがさっとつかんだ。 「学院はあなたを子飼いの研究員にしようとなんてしてないわ! ただあなたを純粋に錬金術の講師として雇いたいと言っているの!」 「ふん、口だけなら何とでも言えるわね。手を離しなさい、話は終わったわ」 「終わってないわ!」 振りほどこうとするルイズだが、キュルケはつかんだ手を頑として離そうとしない。 「良いから聞きなさい! 学院は来年度新設される平民向け教育カリキュラムに、錬金術を取り入れる予定よ」 平民向け教育カリキュラムという聞き慣れない単語に、ルイズの目が細まった。 キュルケはその仕草でルイズの興味を引けたことを確信すると、話をたたみかけた。 「トリステイン魔法学院は来年度、出自を問わない専門課程として錬金術を中心としたクラスを設立することに決定したの。生徒の数は十五人、修学期間は三年間。教育費用は王国が大部分を負担、その上で奨学金制度を用意するわ」 「離しなさい」 今度こそキュルケの手を振り払い……腰を下ろす。 「ガリア王国で三年後に設立される予定のアカデミー、それを受けてトリステイン王宮内でも錬金術教育を進めるべきという声が上がって、その先駆けとしてトリステイン魔法学院に錬金術教育部門が新設されることになったのよ。 そして、その目玉として『ダングルテールの魔女』であるあなたを、教師として迎え入れたいというのがオールド・オスマンのお考えよ」 「……正気かい?」 『ダングルテールの魔女』と言えば、確かに最初に錬金術を伝えた『旅の人』より直々に手ほどきを受けた、その道の第一人者。錬金術を少しでも囓った人間でその名を知らなければモグリであろう。 しかし同時に、多くの戦争兵器や毒薬を生み出した残虐な魔女としても名が通っている。 彼女が歩いてきた道は、決して綺麗な道などではない。屍に屍を重ねて作った血塗られた道だ。 そんな人間だと知ってなお教師として雇おうなど、ルイズが学院長の正気を疑うのも無理はなかった。 「ええ、正気よ。大真面目よ。だからあなたも真面目に答えて頂戴。トリステイン魔法学院で、錬金術の教鞭を執るつもりはないかしら?」 「……考えさせて貰うわ」 途端、キュルケが右手を握ってテーブルを叩いた。 「これはあなたのためでもあるのよ! 確信したわ、あなたはここにいたら駄目になる」 キュルケの激昂にもルイズは動じない、ただ小間使いの少年にお茶のお代わりを持ってくるように言いつけるだけ。 「さっきのアレは何? お人形さんにサイトの格好させてサイトの顔させて、おまけに失敗作って言って眉一つ動かさずにゴミ扱い!」 彼女自身こんなことを言うつもりはなかったのだが、キュルケの二つ名は微熱。その名に恥じない情熱と感情の迸りを、思うがままに放埒に言葉にのせる。 「もう二十年よ!? 忘れたって良い頃合いだわ! 第一彼があなたのそんな姿を望んでると思っているの!?」 年を重ねても、そんなところこだけは当時のままだった。 懐かしい、と思わないでもない。 しかし、 「黙りなさい」 そんなことでは揺るがない。 静かに言ったその一言は、ルイズがそれまで積み重ねてきた二十年、その重みを感じさせるような暗く淀んだ声。 「あなたに何が分かるって言うの? 私はこの二十年間、必死にサイトを取り戻そうと努力してきた。私はあなたが二十年をどう過ごしてきたか知らない、でもあなただって私がこの二十年 をどうやって過ごしてきたのか知らないはずよ。あなたは何をもってそれを否定しようとするのかしら? あなたの正しさはあなたが決めなさい。でも、私の正しさは、私が決めるわ」 この二十年、一日たりともサイトを忘れた日はなかった。 それでも年月は人の記憶を薄れさせる。 嬉しかったことも、悲しかったことも、苦しかったことも、全部、全部。 ある日気づいた。サイトの声が思い出せなくなっている自分に。 はっきりと覚えていたはずのサイトの顔も、おぼろげになっていることに気づかされ、そんな自分に愕然とした。 忘れないと、サイトを忘れないと誓ったはずなのに、月日の流れは残酷にも岩を削る川の流れのようにして、彼女の記憶を風化させていた。 ルイズは恐怖した。 いつか自分がサイトの顔も、サイトへの想いも忘れてしまうのではないかと気が狂ってしまいそうなくらい恐怖した。 だから作ったのだ、サイトの写し身を。 彼を忘れないために。 サイトのパーカーから抽出した血を用いて、ルイズは人工生命を作り出した。 彼はサイトの声で喋り、サイトの顔で微笑んだ。 だが、それはサイトではなかった。 肉体の複製は作れても、そこに宿る魂はサイトのものではない。 サイトの魂の復活なくしては、それはただのサイトの形を模した人形に過ぎないとルイズはこのとき知った。 加えて彼は、かつての恩師ヘルミーナがルイズに教えた通りの欠陥を抱えていた。 それは寿命。 人の手により生み出された彼のそれは、人間のものに比べて余りに短かったのである。 最初のサイトは、二十日で動かなくなった。 改良を加えた二人目も、三十日でその生を終えた。 ルイズはそれからもサイトを生み出し続けた、何人も、何人も。 けれど、どれほどの業を用いたかも分からぬ今になっても、その問題は解決できないでいる。 今この工房で生きているサイトは、都合百二十五日目を迎えていたが、ルイズの予測ではあと四十日ほどで寿命を迎えるはずであった。 欠陥だらけの失敗作、それがルイズの下したサイトたちへの評価だった。 だが、それでもルイズは彼女の作品たちを愛した。 彼らに罪はない。罪があるとすれば、それは己の無力さが罪なのである。 そうしてルイズは何度も何度もサイトを失った。 最初は一人のサイトが死ぬ度に、心が軋み、悲鳴をあげた。発狂するような痛みが心を貫いた。 だが、二人、三人、やがて何十人と繰り返すうちにそれも慣れてきた。 折れた骨が太く硬くなるように、ルイズの心もまた堅く強ばっていった。 ルイズは工房の窓から、霧の中へと去っていくキュルケの後ろ姿を黙って見つめていた。 その背中は何かを語っているようであったが、キュルケの最奥を知らぬルイズがそれを理解することなど、適うはずもない。 周辺を覆う霧は推薦状無しに訪れたものを拒む効果があったが、それがあろうとなかろうと、出て行くものには干渉しない。 キュルケがこの工房へと辿り着たのは四人の高弟の一人、今はトリスタニアに工房を構えているらしい彼女の推薦状があったからだったのだが、それも既に取り上げた。 これを燃やして話を聞かなかったことにすれば、今回の件は終わりだ。 二度とキュルケがここを訪れることはないだろう。 窓辺を離れる。 この先やらなくてはいけないことは山積みされている。 工房の機材の中、持っていくものと残していくものを選別しなくてはならない。 大き過ぎるものや取り扱いが難しいものは、推薦状を渡した高弟のところへ出向いて巻き上げる算段をたればいいだろう。 以前自分がヘルミーナから渡されたレジュメも探さなくてはいけない。 まあ、何よりもまず工房の中を整頓するのが最優先に違いない。 保留ということでキュルケに返事をしたが、実際のところ、ルイズは今回の誘いを引き受けるつもりでいた。 彼女が言っていたことは実に傲慢かつ正論ぶった内容で、とても気に入らなかった。 だが、その中で一つだけルイズにも同意するところがあるとすれば、それは「ここにいたら駄目になる」という部分。 それはルイズ自身にとっても、本当は気がついていたことだったのだ。 この工房には定期的に世界に散った高弟たちから、各地で行われている錬金術研究の成果が送り集められてくる、そういう仕組みになっていた。 ダングルテールにいながら、ルイズの元には常に世界中の最新の情報が集められてくる。 正に隠者として過ごすならば理想的な環境、研究をするだけならば工房にいるだけでことは満ち足りる。 人目を避けて外界を拒絶し、孤独に一人研究を続ける。あるいはこれが自分の終着点であると思った時期もあった。 けれど、この工房で十年を過ごし、何人ものサイトと触れあって分かったことがある。 これでは、駄目なのだ。 ただ一人で過ごし、サイトの死を諾々と受け入れ続ける自分。 そんなことを続けていけば、サイトへの想いはやがて変質する。 本来あるべき形を失って、歪んだ何かへと変わってしまうかもしれない。 それは到底認められないことだった。 人間は摩耗する。気力は衰え、在り方は変容する。 人は外部からの刺激無しに己を貫くことはできない。 だが同時、刺激に対して反応し、変化せずにはいられない。 ルイズは自分がなぜこんなところに隠れるように住まうようになったかを分かっていた。 怖かったのだ、何もかも変わっていく風景が。 恐ろしかったのだ、サイトを忘れろと語りかける周りの声が。 だから逃げ込んだのだ、何も見えず、何も聞こえないこの場所へと。 しかし、孤独は彼女を救いはしなかった。 変化を避けて逃げた先に待っていたものは変質であった。 そのジレンマに気がついて以来、ルイズは如何にすれば自分を保つことができるかを考え続けていた。 朝も夜も昼も考えた。 そうして今、彼女は一つの答えへと辿り着いている。 それは、伝えること。 サイトのことを漏らさず余さず、すべてを伝えること。 自分の気持ちと共に、それを伝えるということが、ルイズの見つけた答えであった。 例え自分の中でサイトが薄れても、伝えた誰かが覚えてくれている。 分からなくなったら、誰かの中にあるサイトを確認すればいい。 伝えられた人の中でもきっとサイトの姿は変化するだろう。 だが、何百人何千人と伝えることで、彼らの中にある真実の断片を繋ぎ合わせて、本物に近いサイトを見つけることができるはずだ。 そうして、伝えながら常に自分でも確認するのだ、サイトへの想いを。 キュルケの誘いは、外の世界へ踏み込めないでいたルイズへの、最後の一押しとなった。 孤独の中で変質するか、困難であろうとも人の中で自分を貫くか。 ルイズが選んだのは後者。 もう恐れはしない、変化する世界を、人々の声を。 だから伝えていこう、錬金術を、サイトへの想いと共に。 いつの日か、本当にサイトが蘇るその日まで。 ◇◇◇ 「先生! ツェルプストー先生! またルイズ先生が!」 火の塔、キュルケの研究室への扉を騒々しく開けて飛び込んできたのは、錬金術科の女生徒。 「あらら、どうしたのかしら?」 ある種の予感をもって、キュルケの手が机の引き出しの一番上、書類などを納めたそこへと滑る。 「先生! ルイズ先生ったら酷いんです! 魚をとりたいって言ったら薬をくれて……それを使ったら川の魚が全部浮かんできたんです!」 「また人騒がせな……」 こめかみを抑えてキュルケが呻く。 伸ばした手で引き出しの金具をつかんで引く、そうしてそこから一枚の書類を取り出すと、そこには「始末書」の文字が躍っていた。 ルイズは錬金術科の統括教師、一方キュルケは一年生の学年主任をしている。 駆け込んできたのは錬金術科とはいえ一年生、キュルケの管轄には違いない。 加えて彼女はルイズがこの学院へと赴任して以来、何か問題を起こした際にはその後処理を行う役目も任されていた。 そもそも、当初学院において評判の悪い魔女であり、不名誉きわまりない退学者であるルイズを召致するという思い切ったことを主張したオールド・オ スマンを強く支持したのは、このキュルケくらいだったのである。 学長が自分の権限を使いルイズを呼び寄せた今、自然とルイズが何か問題行動を起こした場合に、面倒ごとに巻き込まれるのはキュルケというのが、一つの決まり事となりつつあった。 「まったく酷いんですよルイズ先生ったら! この前はこの前で畑の収穫を増やしたいって言ったら……」 そこから先はキュルケが続けた。 「畑の養分をすべて作物に変える苗を渡した、だったかしらね」 ルイズの問題行動はこれが初めてでも、ましてや二回目や三回目というわけでもない。 無論、それぞれオスマンからのフォローも入っていたが、細々とした書類上の処理などはキュルケが行っている。 何か起これば一蓮托生、それが現在のルイズとキュルケの関係なのである。 「そうなんです! あの人は魔女です! きっと悪魔に魂を売り渡してるんです!」 そう言って地団駄を踏む生徒を見ながら、キュルケは嘆息した。 そして更に詳しい事情を女生徒から調書する。まあ、それによれば自分で調合せずに手抜きをしてルイズを頼った生徒の自業自得とも受け取れる内容であったのだが…… 「あー、はいはい、落ち着いて落ち着いて。そっちの方は私の方から彼女に言っておくから」 「ツェルプストー先生! 確か先生とルイズ先生って同期なんですよね? ルイズ先生ってば昔からあんなに根性ひん曲がった人だったんですか? あんな性格が異次元な人、わたし他に知りませんよ!?」 半泣きになりながら訴える生徒をぼんやり聞き流しつつ、指先でペンをくるくると回す。 「んー……昔はだいぶ違ったんだけどねぇ……」 キュルケにすれば何の気は無しに漏らした一言だったのだが、それがいけなかった。 とたんに女生徒の目は輝き、おもちゃを見つけた子猫のように、その動きをピタリと止める。 「え? ルイズ先生って昔からあんな感じだったんじゃないんですか?」 女生徒の顔が好奇心に燃えるのを見て、キュルケは先ほどの自分の失言に気がついた。 「あちゃー……」 「いいじゃないですか! 教えてくださいよ!」 「うーん、そうねぇ……」 しばし頭をひねって考える。するとキュルケの頭に何とも素晴らしい妙案が思い浮かんだ。 「話しても良いけど、これから聞いたことを絶対誰にも口外しない、勿論ルイズにも。あとそれから今回の件は忘れること」 ルイズの過去と、今回の面倒事とを秤にかけて、結局後者が勝ったのだ。 「いいですいいです! それで先生、昔のルイズ先生ってどんな感じだったんです?」 「そうねぇ。どこから話せばいいか迷うけど、彼女と最初に会ったときのことから話しましょうか……」 椅子を引っ張り出してきて、その上にある書類をどかして勝手に座る女生徒。 彼女を前にしてキュルケは語り始める、長く切ない過去の話を…… これはとある女性の人生の、ほんの一部分だけを抜き出した物語。 彼女は色々なものを失って、ほんの少しを手に入れた。 長い時間の中で、姿や考え方、性格まで変わってしまった彼女。 けれど、変わりゆく流れの中で、己の本質だけを守り通そうとした、そんな強い彼女の物語。 最後に、この物語を閉じるにあたり、彼女が初めて教壇に立った際に口にした言葉をここに記し、幕引きに代えることとしよう。 初めは誰もが無力だった。 不死身の勇者も、高名なる錬金術士も王室料理人も 初めは何の力もないごく普通の人間だったのだ。 だが、彼らは誰よりも夢や希望を強く抱き、追い続けた。 だからこそ世に名を轟かすほどの存在になれたのだ。 夢は、追いかけていればいつか必ず叶うものだから…… ――ルイズ 前ページヘルミーナとルイズ
https://w.atwiki.jp/kzai2012/pages/23.html
尚屋尚(なおやなお) 俺SHJOJOのキャラクタ。モデルは尚屋。 男性。 年齢:16(高校生) 身長:愛以上街以下 基本色:赤 スタンド:緋色の悪魔(シャイターン) 発火能力 主人公キャラ3人のうちの一人。 神崎愛に一目惚れし、彼女を大切に想っている。生活能力が高い。 実は財閥の御曹司であり、なんとこの歳にして実権を握っている。金と権力は腐るほど持っています。
https://w.atwiki.jp/mangaroyale/pages/615.html
【ルイズ】 ルイズとはゼロの使い魔からの参戦者である。 詳しくは書かないが、パロロワとゼロの使い魔は長い因縁があり、 どうせ序盤、もしくは無惨にゼロの使い魔キャラは死ぬだろうという噂が後を絶たなかった。 しかし、彼女が覚悟を決め、死に行く流れを見て評価は一変。ロワ全体に波紋を呼ぶことになる。 疎まれるキャラであろうと全力で魅力を引き立て、散らす。これも漫画ロワの特徴であろうか。 追記 人気投票で杉村も成しえなかった、四冠制覇&ワンツーフィニッシュを達成。
https://w.atwiki.jp/fantasicfarmeryaruo/pages/88.html
ルイズ 職業;トリスティン王国の魔法使い 説明 国を救う為に勇者(スザク)を召還する アンリエッタの淫乱ぶりに処女を奪われないか心配している オナニーもしてないし、処女だし、パイパンとのこと 対アンリエッタのツッコミ要因 おそらく出奔したらトリスティンが崩壊するブレーカー的存在 アンリエッタのビッチやスザクが役に立たなかったり、勝手に姉の結婚を決められたりと胃に穴が開きそうらしい ほどなくしてその姉のアヘ顔Wピース映像が送ってこられ、それを見たルイズは気絶。アンリエッタに睡姦レイプは思いとどまってもらえたものの、くぱぁ画像を取られ、スレにUPされてしまった
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5970.html
数十回目の失敗をした私はクラスメイトにまた馬鹿にされた。 何で私の魔法は失敗なの? 何で私の魔法が成功しないの? 何で私は使い魔が呼び出せないの? もうサモン・サーバントは唱え飽きた。 それでも、私は成功を祈って唱える。 たとえ周りから馬鹿にされても、たとえ何千、何万と失敗したとしても。 クラスメイトが付き合ってられないと一人、また一人と帰っていく。 そして、半分ほど居なくなった。 でも、私は諦めない。 本当に私が魔法が使えないとしても。 だって私は……貴族だから。 そして、唱えた魔法。 いつもより大きな爆発とともに、辺りに砂煙が広がる。 その中心に見える影。 ついに私は……。 影に駆け寄り、使い魔の姿を確認する。 なんでもいい。 猫、犬、鳥、もう贅沢は言わない。 たとえそれが見るに耐えないものだったとしても。 使い魔は鉄の色をしていた。 液体が水溜りのように地面に広がっている。 その液体からふつふつと泡が立ち上っては消えていく。 水溜りの中心に膨らんだ場所があり、そこに目と口がついている。 こんな生物見たこと無い。 でも、私が召還した使い魔だ。 その使い魔に、 コンタクト・サーバントをしようと、 顔を近づけたとき、 使い魔は、 逃げ出した! ゼロのルイズがドラゴンクエスト3より、はぐれメタルを召還して逃げられました? 使い魔は目にも止まらぬ速さで去っていった。 気が付いた時には目の前から消えうせていた。 私は唖然とした。 コンタクト・サーバントの前に使い魔が逃げ出すなんて聞いたことがない。 ちょうどその時、砂煙が晴れていった。 「おい! 見ろよ! また失敗だぜ!」 「さすがゼロだな! 砂煙が大量に上がったからまさかと思ったけどね」 ぼうっと呆けていた私はその言葉に目を細める。 そうか。 砂煙で私が召還した使い魔がみんなに見られていないのか。 ああ、また最初からだ。 成功したと思った喜びから、失敗という絶望に変わる。 ついに成功したのに、誰にも認められず、誰にも理解されない。 目から涙があふれそうになるのを必死にこらえて、目を落とす。 すると、さっきまで使い魔が居た場所に袋が落ちている。 さっきは無かったと思ったのだが……? 袋をあさると中から金色の宝石で彩られた靴がでてきた。 これは、あの使い魔の落し物? 「おお! ゼロが靴を召還したぞ!」 「まさか生き物ですらないとは!」 ッ……! このままではこの靴が私の使い魔となってしまう。 「先生! もう一度コンタクト・サーバントをさせてください!」 「ミス。それはだめだ。これは神聖な儀式です。やり直すことはできません」 手遅れだった。 そして私は……靴とキスをした。 先生がコンタクト・サーバントを認めた後、私の額が焼けるように熱くなった。 「いたぁぁぁあ!」 そして、ルーンが私に刻まれた。 私は部屋に戻った。 使い魔の入った袋をベットの上に投げ出す。 鏡を見ると額についたルーンが目に入る。 泣きたいのをこらえる。 ああ、私は何か間違ったことをしたのでしょうか。 外へと目を向けようとして、袋が目に入った。 袋から取り出した靴を手に取った瞬間、私は額が熱くなるのを感じた。 そして頭の中にその靴の情報が流れ込んできた。 装飾 しあわせのくつ 装備して歩くと経験値が上がる びっくりして靴から手を離してしまった。 おそるおそる手でまた靴をつかむと、同じ情報が流れ込んできた。 ……経験値ってなに? 朝、私はいつも通りに目を覚ます。 髪を手入れし、服を着て、いつもの靴を履こうとした。 そして、ふと思った。 あの靴を履いてみよう、と。 靴を取り出した。 よく見るとこの靴は黄金でできている。 さらにこの靴に使われているたくさんの宝石は、靴の黄金に負けないと言わんばかりに光を放っている。 こんな靴見たことが無い。 靴を履くとまるで靴が足に合わせて設計されたかのようにサイズがぴったりだ。 すこし、気分が晴れた。 使い魔に逃げられた時には絶望したが、何も無かったよりましかもしれない。 部屋の中を歩き回ってみる。 何も起こらない。 経験値ってなんなんだろう。 外が騒がしくなってきた。 そろそろ朝食の時間なので外へ出ようと歩き出した時、急に体が軽くなった。 あまりにも急だったので驚いた。 気のせいだと言われればそうだと思ってしまう。 それほど微妙な変化。 しかし、ルイズは気が付いた。 まさか……靴? 授業は退屈なものでしかなかった。 早くこの靴の効果を確かめるために歩き回りたい。 そして長い授業が終わり、急いで外へと向かう。 学校の敷地に沿って歩きだす。 すると、また体が軽くなった気がした。 さらに授業中に溜まった疲れが一気にとれた。 気分がよくなり、また私は歩き出す。 学校の敷地を沿うように、1周、2周と。 そのうちまた体が軽くなった。 これは……本物だ。 これはもしかすると本当にすごいことかもしれない。 歩くのも飽きたので自分の部屋に帰ることにする。 女子寮への長い階段。 いつもは上がるだけで疲れていた。 しかし、今は違う。 あれだけ歩いた後、この階段を上がっても疲れない。 次の日、私はいつもより早く起きた。 靴を履き、外に出て行く。 そして、また敷地に沿って歩き出した。 朝に散歩するのは気持ちがいい。 しかし、学校の敷地に沿って何回も回っていると、朝早くから起きているメイドからの視線が痛い。 明日からは別の場所を散歩することにしよう。 そうしてたくさんの年が過ぎた。 散歩をすることで知り合ったメイドのために、ギーシュと戦ったり。 盗まれた破壊の杖を取り戻すために土くれのフーケと戦ったり。 アルビオンの戦争に巻き込まれたり。 虚無の魔法を覚えたり。 7万の軍隊と戦ったり。 エルフの女の子が瀕死になった私を助けてくれたり。 聖地奪還のためにエルフと戦ったり。 そして、いつも私はこの幸せの靴を履き、毎日歩いた。 体力もついた。 魔法力だって、足の速さも早くなった。 今、私はこの魔法学校の教師をしている。 私の二つ名は「お散歩」 このハルケギニアに私のことを知らない人はいないだろう。 ガサガサと動く茂みの向こう。 そこに一瞬だけ見えた鉄の色をした水溜り。 よく見ようと目を凝らした時にはもうなかった。 私は思わず笑みがこぼれた。 遠くから生徒が走り寄ってくるのが見える。 「先生!」 「なぁに?」 「どうしたら先生みたいにすごいメイジになれるの?」 「ふふ……それはね……」 お散歩ルイズ 終
https://w.atwiki.jp/wixi/pages/77.html
女(『キス』したいッ!しかし男くんは『周りに人がいる場所ではベタベタしたくないタイプ』ッ!! いかにしてさり気無く『キス』するかッ!それがこの勝負の分かれ目になるッッ!!!!) ドドドドドドド 男(『女』の様子が……おかしいッ!あれは『キスしたい』と思っている顔ッ! しかし俺はこんな公衆の面前で『キスする』ワケにはいかない!! 何故なら……何故なら……『恥ずかしい』ッッ!!) ――――――勝負は 一瞬で決まるッ!!!!―――――― 女「キスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキス!!!!!!!」 男「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaatttooodaaaaaaaaaaaaayyyyyyyyyyy!!!!!!!!!」 ドッシャァァァァァァ!!!!!! 男「馬鹿なッ!この『男』がッ!『かわいいヤツめ』と思ってしまうッ!!断りきれないッッッ!!!!」 女「キスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキィィィィィィィィィィ!!!!!!」 男「いつの間にか……『キス』が『スキ』になっていたのか……完敗だ……俺の……」 ドォォーーーン 女「おまえが気にする『クラスメイト』なんて……おまえが恥ずかしいと思う『羞恥心』なんて…… 今!ここにある『男くんだいすき♪』に比べれば ちっぽけな力なんだッ!! 確実にここにある!!今、確かにここにある『ときめき』に比べればなッ!」 教師「えー、二人とも、授業中は勘弁してください」