約 1,012,686 件
https://w.atwiki.jp/touhoukeitai/pages/660.html
No.227 / まかいの 人形 Eルイズ 基本データ 説明 まかいでは ごく ふつうのいっぱんじん らしいがそこそこの のうりょくをもっている。 タイプ ノーマル 特性 めんえき タマゴグループ ひとがたりくじょう 種族値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 合計 90 80 80 80 90 70 490 獲得努力値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 0 0 0 0 3 0 分布 場所 階層 Lv 備考 なし その他の入手方法 なし 進化系統 ちびルイズ ┗Lv20でルイズ ┗Lv38でEルイズ 育成例 レベルアップ技 Lv 技名 001 はたく 007 まるくなる 011 たまなげ 015 かげぶんしん 019 うたう 024 アンコール 029 バリアー 034 たたきつける 041 ピヨピヨパンチ 048 おだてる 055 ミラーコート 062 がむしゃら 技・秘伝マシン技 No 技マシン名 06 どくどく 07 あられ 09 めいそう 10 よめしゅぎょう 11 にほんばれ 12 ちょうはつ 15 LUNATIC 16 ひかりのかべ 17 まもる 20 しんぴのまもり 27 おんがえし 32 かげぶんしん 33 リフレクタ- 37 すなあらし 39 がんせきふうじ 42 からげんき 44 ねむる 45 あさのひざし 49 よこどり No 秘伝マシン名 なし 人から教えてもらえる技 場所 技名 未実装
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/910.html
ドン、と体に衝撃が走り、次の瞬間には礼拝堂の壁に背中を激突させていた。 続いて響いてくる音、エア・ハンマーが床や壁をたたきつける音だろうか。 混濁した意識の中、ルイズは状況を把握しようと必死に視聴覚を働かせようとする。 しかし、強く背中を打ち付けたせいか、呼吸が極端に乱れ、体を動かすことが出来ない、その上ワルドの杖が左肩をえぐり、その痛みがなお呼吸を邪魔していた。 『…ズ ……ルイズ 起きろ』 頭の中に響く声は、夢の中で会った、空条承太郎の声。 その声にハッとしたルイズは、体を丸めて力を入れて、痙攣を押さえ込んだ。 「ワルド…なんで、なんでワルドが裏切るのよっ…」 と、一瞬だけ考えてから、ルイズはかろうじて顔を上げた。 礼拝堂を所狭しと飛び回るワルド達、遍在の魔法で合計七体に分身したワルドは、じわりじわりとウェールズを追いつめていった。 ウェールズもトライアングルとはいえ、かなり優秀なメイジなのか、スクエアであるワルドの攻撃をかろうじて防いでいる。 しかし服はボロボロ、頬や腕からは血を流している、このままでは時間の問題だと、素人でも理解できるだろう。 「ぐっ…杖、杖は…」 視線をワルドに向けたまま、手探りで腰に差した杖を引き抜き、ファイヤーボールの詠唱を始める。 「…ファイヤーボール!」 バァン!と破裂音が鳴り、ウェールズを背後から攻撃しようとしていたワルドの体が弾け、霧のように霧散する。 やった! と喜ぶ間もなく、別のワルドが唱えたエアハンマーで、ルイズの体は再度宙を舞った。 ルイズは勢いよく始祖ブリミルの像に衝突し、ゴォンと重たい金属音を響かせた。 「か は 」 ドサッ、と冷たい床の上に落ちたルイズは、ブリミルの像と床に衝突したショックで、横隔膜を痙攣させて、体をビクンビクンと震わせた。 「ルイズ!邪魔をしなければ、楽に死なせてやろうと思ったのに、いけない娘だ!」 「貴様ァーーッ!」 勝ち誇ったように台詞を吐くワルド、それに怒りを顕わにし、立ち向かおうとするウェールズ。 しかし、ワルドの分身が一人減った程度では、ウェールズが圧倒的不利な状況に立たされている事に変化はなかった。 再度ルイズの頭に声が響く。 『ルイズ、体を貸せ、時間がない』 「ハァ…ッ、と、とっとと、意識を奪えば、いい、でしょ」 砕かれた肩が酷く痛み、呼吸も苦しい、いまにも気絶しそうだが、なぜか気絶できなかった。 『やれやれ…どうやら無理なようだ』 「なんでよっ」 『おまえは、『諦めていない』、だから意識を乗っ取れない』 「肝心なときに、痛っ…じゃあ、どうしろって言うのよ!」 『スタンドをおまえに預ける、俺は…』 『”痛み”を引き受ける』 その声と同時に痛みが薄れ、ルイズの体が軽くなる、ルイズはさっきまでのショック状態が嘘のように立ち上がることが出来た。 それを見たワルドの表情が変わる、そんなバカなとでも言いたいのだろうか、そんな表情だ。 頭の中で声がする。 『思ったより肩からの出血が多い』 「分かってるわよ」 苦悶に満ちていたルイズの表情に、笑顔が戻る。 『スタープラチナはおまえが思ってるほど忠実じゃない』 「分かってるわよ」 痛みなどものともしない、余裕すら感じさせるルイズの表情を見て、ワルドは攻撃対象をルイズに変更した。 「ルイズ!君の傍らに立つ”それ”が、それが君の使い魔か!土くれのフーケが言っていたが、まさかそんな”使い魔”を持っていたとは!ルイズ、やはり君は思った通り、素晴らしいメイジだ!」 そう言いながらも他のワルドが呪文を詠唱する、ワルドの戦い方のもっとも厄介な部分だ。 フライの魔法を使いながら攻撃魔法を使うのは不可能だと言われている、しかしワルドは三人以上に分身することで、浮遊と攻撃の魔法を交互に唱え、自由自在に魔法を駆使するのだ。 ワルドの台詞が終わったと同時に、右から別のワルドがライトニング・クラウドを放つ。 「おらぁーっ!」『オオオオオオラァァ!』 ルイズと同時にスタープラチナが雄叫びを上げ、始祖ブリミル像を破壊する。 その破片の中に隠れるようにして、ルイズは宙に浮き、ライトニング・クラウドの電撃は破片に吸収された。 「何ッ!?」 おそらく本体であろうワルドが驚きの声を上げる。 ルイズは破片の合間を縫って、天井近まで勢いよく飛び上がった。 しかしそこには、別のワルドが接近し、呪文の詠唱を完成させようとしていた。 ワルドが杖を向け、魔法を放つより一瞬早く、ルイズは天井に意識『破壊』のイメージを向けた。 「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらァッ!」 『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!』 スタープラチナの放つ拳が、轟音と共に固定化のかけられた天井を破壊する。 その破片をワルドに向かって跳ね返す、するとワルドはその破片を避けた。 ルイズは考えた、緊急回避が可能ならば、フライでもレビテーションでもない、おそらく風の魔法で飛んでいる。 スタープラチナの目が素早く下を見ると、ワルドの攻撃を必死に避けるウェールズと、こちらぬ杖を向けているワルドが一人見えた。 「スタープラチナ!」 ルイズの叫びと同時に、スタープラチナはルイズの手からブリミルの像の破片を奪う。 そしてスターフィンガーと同じように力を集中させた指先が、目の前のワルドを宙に浮かせているであろう、もう一人のワルドに向けて、その破片をはじき飛ばした。 「ぐあっ!?」 宙に向けて杖を向けていたワルドが声を上げる、破片が左目から頭を貫通し、ワルドは煙のように消えた。 目の前のワルドもあわててフライの呪文を詠唱しようとするが、それよりも早く落下途中の破片をワルドに向けて殴り飛ばした。 「ぐおっ!?」 蛙のつぶれるような声と共に、そのワルドも顔面を削られ、煙となってかき消えた。 (あと四人!) スタープラチナを使って着地の衝撃を和らげると、ウエールズを取り囲んでいた四人のワルドのうち三人が、ルイズから離れるようにして跳躍する。 そしてウェールズと戦っていたワルドが、他の三人とは別方向に跳躍する。 ルイズはその隙にウェールズの側に駆け寄った、ウェールズは全身傷だらけに見えたが、それほど深い傷は受けてはいないようだ。 「殿下!」 「ミス・ヴァリエール、このような目に遭わせてしまって、申し訳がない」 「覚悟の上です!それより、何とかここを脱出しましょう」 「…私が活路を開く、君はその隙に逃げなさい!」 そう言うとウェールズは魔法を詠唱し、竜巻を作り出した。 竜巻はウェールズとルイズを囲み、礼拝堂の中を埋め尽くそうと勢いを増していく。 少しだけでもワルドの足止めが出来ればいい、そう考えての行動だった。 しかしルイズは、ワルドの一人が笑みを浮かべたのに気づいた。 …まずい! そう思った次の瞬間、二人を囲む竜巻から、光り輝く刃のようなものが飛び混む。 刃はウェールズを狙って飛び込んできたが、その直前スタープラチナが刃を弾いた。 「ッ…!」 ルイズの手に痛みが走る、痛みは一瞬だったが、手の甲がパックリと裂けていた。 承太郎が痛みを引き受けてくれてはいるが、ダメージを増やすのは得策ではない。 そんなことを考えている間にも、輝く刃がは竜巻の中で数を増していく、青白い光はルイズとウェールズの血を吸おうと、不気味に輝いていた。 「殿下!風で吹き飛ばしてください!」 「く…、む、無理だ…耐えるのが、精一杯…!」 ウェールズは杖を構えたまま脂汗を流しながら返事をした、すると、それを見たワルド達が高笑いをして、言った。 「「「「ハハハハハハハハハ!」」」」 「ウェールズ皇太子殿下、君はスクエアのメイジを甘く見たな」 「この青白いはエア・ニードル、真空の渦に触れれば肉は裂け骨は砕ける!」 「さきほど、そこを歩いていたメイドからナイフとフォークを借りてね、エアニードルの核にしたのだよ」 「分身を作り出した後でも、この程度の竜巻を飲み込むのはたやすい!」 そう言ってワルドの一人が杖を振る、すると、ウェールズの顔がより厳しいものに変わる。 一人は竜巻を作り出し、ウェールズの竜巻を取り囲み、押しつぶそうとしている。 一人はエア・ニードルの魔法を食器のナイフにかけている。 一人はエア・ニードルを風の魔法で操り、竜巻の中にいる私達に狙いを定めている。 一人は…何かの袋を取り出した。 「火の秘薬だ!」 ウェールズが叫ぶ、そして、同時にワルドの竜巻がウエールズの竜巻を押しつぶし、竜巻は大人二人入るのがやっとの大きさにまで縮められてしまった。 ルイズと、ウェールズの身体をエア・ニードルが切り裂いていく、スタープラチナでナイフを弾き、致命傷を裂けてはいるものの、ルイズの手は切り傷だらけで、何カ所かは骨にまで達している。 袋を開けたワルドが、竜巻に袋を向けて、言った。 「ルイズ、君には驚いたよ、スクエアのメイジを一時的にとはいえ手こずらせたのだからね、だが…ここでお別れだ。だめ押しに火の秘薬を受けたまえ」 そう言ってワルドが竜巻に火の秘薬を流す。 「スタープラチナ!」 「もう遅い!脱出不可能よ!」 そしてワルドは杖を振って、火の秘薬に着火した。 ドォォン…と、城が響く。 火の秘薬は竜巻により、爆発に近い強烈な燃焼を起こし、超高温の竜巻がルイズとウェールズを包んだ。 竜巻が消えた後には、焼けこげた地面しか残っておらず、二人が死んだのは誰の目にも明らかだ多。 ワルドは、自分を追いつめた婚約者に敬意を払うため、地面に転がっているルイズの杖を拾おうとした。 「うあああああああああああああああああああああア!」 『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーーーッ!!!!』 「ぐがっ!?」 上空から突如現れたルイズに驚いたワルドは、とっさにエア・ハンマーを自分に当てて逃げたが、スタープラチナの拳を胸と腕に食らい、バランスを崩して着地に失敗した。 ルイズは肩に乗せたウェールズを床に降ろしてから、ワルドに近づいた。 「な、なぜだっ!ど、どうやって逃げた!」 「…殴っても消えないって事は、貴方が本体のようね、ワルド」 ルイズの表情が、いつものものでははない、これからワルドを殺そうとしている、それだけの覚悟が感じられた。 ワルドはテレパシーのようなもので他の三人のワルドに意志を伝える、ルイズを殺せと。 分身が杖を振り、魔法を放とうとしたその時、突如分身達の目の前にナイフが現れた。 「「「!?」」」 どすっ、と、訳も分からぬうちに分身達は頭にナイフを生やして、霧散した。 「な…な…」 ワルドは、ただ呻くしかできなかった。 何が起こった? 今、何が起こったのだ? わからない、だが、一つだけ理解できることがある。 ルイズは自分を殺そうとしている。 思い沈黙が流れた。 ドォォォンと、外から爆音が響く。 反乱軍達の侵攻が、とうとう城内に及んだのだろう。 ワルドの頭に、「もう少し時間を稼げば助かるかもしれない」という考えが浮かんだ。 それが命取りだった。 目の前のことに集中していればいいものの、彼は雑念で気を散らせてしまったのだ。 助かるかも知れない、と考えるワルドの腹に、スタープラチナのつま先がめり込んでいた。 「……!」 声にならないワルドに、再度スタープラチナで殴りかかろうとしたその時、偶然、天井が崩れた。 それに気づいたルイズは慌ててウェールズの側に飛んだ。 「スタープラチナ!」 『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!』 落ちてくる天井の破片をスタープラチナで破壊し、ウェールズの安全を確保した時、礼拝堂の入り口から転がるようにして逃げるワルドの後ろ姿を見た。 「ワルド…さよなら」 もう追いかける力も残っていない。 痛みこそないものの、出血が多く、足に力が入らない。 ワルドを追う余力も、攻め込んで来るであろう反乱軍に立ち向かう力も残っていなかった。 とにかく、ウェールズ殿下を逃がさなければいけないのだと、自分に言い聞かせたが、身体が動かない。 トリスティンの政治的には、ウェールズ殿下が生きていてはまずい、それぐらいは理解しているつもりだ。 しかし、アンリエッタはウェールズを愛しているし、ウェールズもアンリエッタを愛している。 ウェールズを助けたい! 例えその結果ゲルマニアとの同盟が反故になっても、アンリエッタを苦しめることになったとしても、この恋だけは成就させなくてはならない。 そんな使命感がルイズを突き動かした。 ウェールズを担ぎ上げようとしたが、うまくいかない。 力が入らない。 駄目なのか、私はここで死ぬのだろうか。 「アン、ごめんね…」 そう呟いて、ルイズは意識を失う。 意識を手放す瞬間、なぜか、身体が浮いたような気がした。 そして場面はキュルケ達に移る。 「もう始まってるわよ!」 シルフィードの上でキュルケが叫ぶ。 目の前に広がるアルビオンの浮遊大陸からは、大砲の音、すなわち戦乱の音が響いていた。 「これでは、ミス・ヴァリエール達を捜すどころじゃないぞ!」 「ギーシュ、あんた昨日は『例え戦地でも姫様のためなら喜んで!』とか言ってたじゃない!」 「そっ、そりゃそうだけど」 シルフィードの上で口論している二人はさておき、タバサはシルフィードの話を聞いていた。 『きゅいきゅい』『ふもー』 シルフィードが話しているのは、ギーシュの使い魔ヴェルダンデ、その得意の鼻がルイズのつけていた宝石のにおいを覚えているというのだ。 タバサキュルケとギーシュに「しっかり掴まってて」とだけ告げて、シルフィードを雲の中に突っ込ませた。 「…あれは何?」 暗雲の中をしばらく進むと、小舟が見えた。 空に浮かぶ船にしては小さすぎる船だ、大人四人が乗れる程度の大きさだろうか。 『きゅいきゅい!』 シルフィードが、ルイズのにおいがすると告げる。 タバサは迷わずその小舟にシルフィードを近づけた。 「ルイズ!」「ヴァリエール!」 突然近くから聞こえてきた声に、小舟に乗った女性…ニューカッスルの秘密港でルイズを迎えたメイドの女性は、驚いて声を上げた。 「あ、あなた方は!?」 「それはこっちの台詞よ、何よ…ルイズ、ひどい傷じゃない」 キュルケが血相を変える、ルイズの身体には包帯が巻かれていたが、出血を抑えきれてはいないと分かったのだ。 「そ、そちらに倒れてるのは…まさか」 ギーシュの疑問に、メイドが答える。 「アルビオンのウェールズ・テューダー殿下…いえ、先皇が討ち死にされた今、ウエールズ・テューダー陛下にございます」 「僕たちはトリスティン魔法学院で、そこに倒れているヴァリエールの友達だ」 「まあ!そうでございましたか、どうかお願いがございます、お二人を連れてすぐにここを離れてください」 キュルケは船に乗り移ると、ルイズを抱き上げた。 ギーシュもまたウェールズをシルフィードに乗せる。 「あなたは?」 タバサがメイドに聞くと、メイドはにっこりと笑って言った。 「私には最後の役目がございます、どうか、できるだけ遠くに離れてください」 タバサはメイドの言わんとしていることを察し、無言でうなずいた。 「あ、それと…、トリスティンのお方ならモット伯にお会いすることもありますでしょう、もしモット伯と、衛士の方にお会いすることがあれば、一人の生徒が勇敢に死んでいったとお伝えください!」 「わかった」 タバサが答えると、そのメイドは小舟の中央に設置された風石の箱を操作し、ニューカッスルの秘密港に向けてゆっくりと移動していった。 それを見送る間もなく、タバサはシルフィードに急いでここを離れろと伝える。 「おい!彼女も連れて行かないのかい!」 風を受けて喋りにくそうにしながらも、タバサに詰め寄ろうとするギーシュだったが、キュルケがそれを制止した。 「ツェルプストー、何をするんだ」 「あんたねえ、野暮って事を知らないの? …あのメイド、メイドのくせに、いっぱしの貴族みたいな目をしてるじゃない」 ギーシュはその言葉の意味が分からなかったが、次の瞬間、あの小舟が飛び去った方から輝く爆炎を見て、その意味を察した。 ごうごうと音が響き、雲が爆風に巻き込まれて散っていく、そして爆炎に巻き込まれた戦艦が看板を火の海にしていた。 ドオン!と、数秒遅れて到達した爆音。 それを見たギーシュは、メイドの言った「最後の役目」の意味が分かった。 アルビオンの下部に設置されていた火の秘薬を、あのメイドが点火したのだろう。 あの規模では、生存は絶望的だと、皆が感じていた。 ルイズは意識を失っていたが、スタープラチナの目が、爆炎を見ていた。 『あのメイドは昨日、ウェールズに詰め寄り、生きて欲しいと懇願していた奴だな』 「死ぬつもりだったのよ、あのメイド…死ぬのは怖いとか言っておきながら、笑顔で死にに行ったじゃない、ホント生意気なメイドね」 『本当に…生意気だと、思っているか?』 「生意気よ。だって………私より、貴族らしいじゃない」 シルフィードがアルビオンの下から抜け出し、太陽の下に出る。 ルイズと承太郎は、スタープラチナの目を通して、アルビオンを包み込む雲を見た。 目の錯覚かも知れないが、雲の一部が、まるで手を伸ばすように伸びた。 その雲はモット伯の別荘で戦ったメイジによく似ている。 手を差し出された雲は、先ほど笑顔で死地に向かったメイドによく似ていた。 二つの雲は、抱き合って、消えた。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1130.html
宝物庫から聞こえてきた音は、地面を伝わって鈍く響いている。 例えるなら、大きな岩にゴーレムが体当たりするような音だろうか。 裏口周りを警戒していた衛兵達も、音のする方へと走って行った。 「今のうちに出発しようかな…」 そう呟くルイズだったが、宝物庫とは別の場所から、ごく小さな振動を感じた。 タタタン、タタタンと、馬が走るようなテンポが感じられるのに、蹄の音はしない。 それを不思議に思ったルイズは馬車の影に隠れると、地面に耳を当てた。 宝物庫の方から聞こえてきた音は、おそらく巨大なゴーレムだろう。 ズシン、ズシンと音を立てて宝物庫から離れていく。 もう一方から聞こえてくる音は、間違いなく馬の蹄の音だ。 一頭の馬が魔法学院から逃げるようにして走っている。 …怪しい。 衛兵達は宝物庫周辺に集まっていだろう。 姫様を守る衛士隊は姫様の護衛が第一任務だから、姫様から離れられない。 生徒達もそうだ、姫様を守る者と、宝物庫での騒ぎに駆けつける者に分かれているはず。 学院内には誰も残っていないだろう。 警備の手薄になった場所から逃げていく者…そんなのは、この騒ぎの元凶に違いない。 ルイズは馬車と馬を繋げているベルトを外し、鞍もつけられていない馬に飛び乗った。 鬣(たてがみ)をグッと掴むと、馬が不快感を感じルイズを落とそうと暴れ出す。 「URYYYYYYY…」 とても人間の声とは思えない、叫び声にも似た音を、馬の耳元でささやく。 すると馬は暴れるのを止めた。 「KUAAAAAAAA…ァァァ…良い子ね、さあ、私を運んでちょうだい」 ルイズの言葉に呼応するかのように、ルイズの乗る馬は走り出した。 馬を走らせて二時間、林を抜けて農耕地に出る。 雑草に包まれた農耕地が、今が農閑期であることを示している。 ふと後ろを向くと、トリスティン魔法学園の塔も森の影に隠れ、見ることは出来なくなっていた。 ルイズは相手に気づかれぬよう、距離を置いて走っていた。 地面を見て蹄の痕跡を探し、後を追う。 先ほどから周囲を警戒しつつ走っているが、見事に誰にも見つかっていない。 相手が何者なのか分からないが、見事な手腕だと思った。 農耕地の先には、先ほど通過した林よりも深い、森が広がっている。 足跡は森の奥へと通じているが、ここから先は罠が仕掛けられているかもしれない。 細心の注意を払って馬を走らせていると、地面に残された馬の足跡が変化しているのに気づいた。 蹄の間隔は短く、それでいて今までより垂直気味に体重がかかっている。 馬を歩かせている証拠だ。 ルイズは馬をその場に留め、樹木の生い茂る森の中へと駆けていく。 森の中をしばらく走ると、ローブを被った女性が歩いているのを見つけた。 その女性は森の中にあるあばら屋に入っていったので、ルイズは音もなくあばら家に近寄り、聴覚に神経を集中した。 「ふふ…やっと手に入れたよ、高く売れるかねえ、このアイテムは」 森の奥にぽつんと建っているあばら屋に、一人の女性がいた。 昔は炭焼き小屋として使われていたのだろう、壊れた窯や、湿気った薪が散乱している。埃の被った机の上に、宝物庫から奪った箱を置く、そして鍵穴に向けて、練金のルーンを詠唱した。 杖を振ると同時に、固定化の魔法がかけられた鍵穴が、土塊へと練金される。 ボロボロと崩れた鍵穴に指を引っかけて、箱を開けると、中から一冊の本が出てきた。 「…? なんだいこれ」 本のタイトルは見たこともない文字で書かれていた。 気を取り直して本を開くと、どのページを見てもハルケギニアで使われている文字とは違う文字が使われている。 最後の奥付らしき部分だけ、かろうじて読むことが出来た。 『波紋ハ人間ノ賛歌ニシテ、勇気ノ賛歌。 伝承者ハ慢心セズ修行ニ努メルベシ。 此書、細君リサリサニ捧グルモノナリ。』 「なんだいこれ、読めないじゃないか!」 本に書かれている文字はまったく読めない、その上ディティクト・マジックを使っても反応しない。 何か重要なマジックアイテムかと思ったが、どうやらただの本のようだ。 「これじゃあ苦労して盗んだ意味が無いじゃない…あーあ」 古文書だとしたら、闇市に売るのも苦労する。 このような珍しい文献類は、希少価値は高いかもしれないが、その反面出所が割れやすいのだ。 「こんな事なら当初の予定通り、破壊の杖でも盗んでくれば良かったわ」 ため息混じりに呟き、壊れかけた椅子の背もたれに体を預ける。 すると突然、ドカン!と大きな音を立てて、あばら屋の扉が吹き飛んだ。 「なっ!?」 バラバラに吹き飛んだ扉に驚きながらも、すぐさま杖を手に取り、侵入者を睨み付けた。 侵入者は悠々とあばら屋の中に踏み込んで、こう言った。 「あら、あなたが土くれのフーケだったの?」 侵入者は、ゼロと呼ばれる少女だった。 [[To Be Continued …… 仮面のルイズ-6]] ---- #center(){[[4< 仮面のルイズ-4]] [[目次 仮面のルイズ]]} //第一部,石仮面
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/5581.html
autolink() ZM/WE13-T09 カード名:一緒に買い物 ルイズ カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【永】応援 このカードの前のあなたのキャラすべてに、パワーを+500。 急がないなら、先に行っちゃうから! レアリティ:TD illust. トライアル限定カードの一枚。 同作品の赤のレベル0応援には、効果を持ったキュルケというカードも存在する。 採用するのであれば「ルイズ」?や《虚無》?を持つことを活かしたい。 ・関連ページ 「ルイズ」?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1848.html
少し時間はさかのぼる。 ワルドは母の眠る廟の前に跪き、祈りを捧げていた。 母に再会することはできたが、完全には蘇ることなく、リッシュモンへの怨嗟を上げながら土に還ってしまった。 本人に生き返ろうとする意志がなければ、生命への強い渇望が無ければ蘇ることはできないとルイズに言われたが、それを信用するなら「母は生き返ることを望まなかった」のだろう。 ワルドは母が安らかに眠れるように祈り、そして、リッシュモンへ必ず復讐すると誓った。 ゆっくりと立ち上がり後ろを振り向くと、手ぬぐい程度の布きれを腰と胸に巻き付けたルイズが、濡れた髪の毛をかき上げているところだった。 「行こうか、ルイズ」 「ええ」 ルイズは返事をしつつ塀に近寄り、両手を使ってよじのぼると、周囲を見渡した。 人気がないのを確認すると、塀から降りてワルドを背中に乗せて呟く。 「ガリア寄りの森を通ってトリスタニアに行くわ。ヴァリエール家に見つかりたくないから……しっかり掴まってなさいよ」 ルイズがそう呟くと、ワルドは片腕に強い力を入れてルイズにしがみつく。 「ふっ!」 腹に力を入れ、地面を強く蹴るのではなく、体の関節を順番に動かして地面との反発力を生む。 いくつもの関節の反動が繋がり、体が一本のバネのようになる。 墓所の石畳を砕くことなく、ルイズは高く跳躍した。 何十基も並ぶ墓石を飛び越えたルイズは、そのまま風のように走り、森の中へと入っていった。 まさに風のようだと、ワルドは思った。 ルイズの背中は小さい、本当にか細くて、今にも折れてしまいそう。 しかしそれは大きな間違いだ、濃密な蜂蜜のごとく、ほんの少しの体積に例えようのない甘露が詰まっている。 ルイズの小さな体には、巨体を誇った吸血馬の力が宿っているのだ。 黒毛と栗毛とも表現できぬ不思議な色つやを持った吸血馬、その骨がルイズの意識に反応して、色素を失った毛を触手のように伸ばしていく。 足に埋め込んだ吸血馬の骨は、鋼の糸のような毛をルイズの足に張り巡らしていく。 それは皮下脂肪にまで伸び、複雑に絡み、ルイズの筋力を増幅させていく。 足の裏に伸びた毛はルイズの神経と繋がり、地面の感触を微細に伝えつつ、皮膚に蹄のような強度を与えていく。 ルイズの下半身は細く、シルエットは少女のものであった。 しかし間近で見れば、皮下脂肪が極限まで減らされた筋肉質がくっきりと浮き出て見えただろう。 吸血馬は、死して尚ルイズの力となっていた。 しばらくの間森の中を駆けていると、ふと足下の感触が変化していることに気づいた。 獣道か、それとも猟師の通る山道なのか、地面の感触が他と異なっている。 ルイズは速度を落とし、周囲の匂いを確かめつつ歩く。 「は…ぶはっ」 背負われていたワルドが、首を横に向けてクシャミをした。 ルイズはその場で止まると、ワルドを背中から降ろす。 「大丈夫?…あ、濡れた体で風を受けていたんだから当然よね…ごめんなさい」 「気にしないでくれ、僕の鍛え方が足りないだけだ」 「だからといって放っておけないでしょ」 空を見上げると既に雲は引いており、木々の切れ目から夕焼けの明かりが差し込んでいる。 間もなく夜になってしまうだろう。 「人の通った跡があるわ…この先に街は無いと思うから、たぶん猟師の使う小屋でもあるんでしょう。そこで休めたら休みましょう」 「人がいるんじゃないか?」 「…その時はまた考えるわよ」 やれやれ、と肩をすくめるワルドを見て、ルイズは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めた。 そそくさと足を進めるルイズを、嬉しそうに後を追うワルド。 ふと自分とワルドの関係を考えると、これはこれで悪くないのではないか、という気がした。 しばらく歩みを進めるうちに空は暗くなっていた、まだ雲が残っているのか月明かりが届かず、森の中は泳ぐような暗闇に包まれていた。 「ルイズ」 ワルドがついに歩みを止め、ルイズに声をかけた。 振り返ると、ワルドは定まらぬ視線のまま、手を前に出して何かを掴もうとしているようだった。 ふと、ワルドと自分の身体能力差を考える。 「…ごめんなさい、この闇じゃ何も見えないわよね」 ルイズはワルドの手を取って、ゆっくりと暗い闇の中を歩き出した。 「杖があれば」 ワルドの呟きは、杖のないメイジの弱さを現している気がした。 しかしワルドは風のスクエア、魔法を行使できなくとも、風の流れ、音、匂いには人一倍敏感だった。 杖を使って光を出さずとも、夜の森を通り抜けることはできるが、ルイズのようにすいすいと歩けるほどではない。 その証拠に、暗闇の中にある木の枝を避けて歩けるのだ、何かかがここにある…という違和感が風の乱れを伴うらしい。 しばらくして、不意にルイズが立ち止まった。 がたがたと戸板の動く音が聞こえてきたので、目の前に小屋があるのだろう。 「足下と頭に気をつけて」 ルイズはワルドから手を離して、小屋の中へと入っていく、ワルドは慎重に足を進め、敷居をまたいで小屋の中に入り込んだ。 「今、火をおこすわ…何コレ、湿ってるじゃない」 カラン、カランと音がする。ワルドは薪か何かのぶつかる音だと判断したが、次に聞こえてきたシュウウウウウという音は何の音なのか解らなかった。 ルイズの手に持った薪は、少し湿っていたが、吸血と同じ要領で水分を抜き取ることでカラカラに乾燥した。 薪を両方の手に一本ずつ持ち、圧力をかけて胸の前でゴシゴシとこすり合わせる。 二分ほど勢いよくこすり合わせていると、ついには摩擦熱で焦げる匂いが立ちこめてきた。 手に持った薪を広げると、所々が赤くくすぶっており、夜目に慣れたワルドの眼にハッキリと映った。 片方の薪を地面に置くと、もう一個の薪を両手で挟み込み、今度は渾身の力を込めて握り、すり潰す。 粉状になった木片が燻った木の上に落ちると、じわりじわりと火が燃え移り、ついには火種となって燃え始めた。 「凄いな」 「猟師の知恵らしいわよ。昔本で見たの。実際にやったのは初めてだけど」 ようやく、ルイズの表情が見えるようになった。 ルイズの表情は、子供の頃と変わらぬ無邪気な笑みだった。 「ワルド、あなたって火は起こせる?」 「ああ、杖を持ち、ウル・カーノと唱えれば」 「でも杖が無ければ何もできないでしょう、私には杖が無くても火を起こせるわ、先住魔法じゃないわよ」 「…確かに、杖がなければメイジは非力だ」 「貴族が君臨を許されるのは、魔法を使えるからじゃないと思うの……杖はメイジの誇りであり弱点よ。杖に頼りすぎて、杖に甘えて…いつか大事なことを忘れる気がするの」 「大事なことか。僕はそれを間違えていたのかな」 「私には解らないわ。……私自身、吸血鬼の力と虚無の魔法、これをどう使えばいいのかよく解らないもの」 少しの間、ルイズとワルドの間に沈黙が流れた。 猟師が仮の宿に使う小屋なのか、雨風をしのぐだけに機能を限定された小屋に、火の匂いが充満している。 火のついた薪からパチパチと弾ける音が聞こえ、それが不思議と心地よかった。 「ねえ、ワルド」 「うん?」 「お母様に、酷いことしちゃった…」 ルイズが何を言いたいのか、よく解らない。ワルドは首をかしげた。 「…もっと沢山血を注げば、体全部、生き返ったかも…」 「ルイズ…」 ワルドは椅子から立ち上がると、足で椅子を押してルイズの隣に座った。 「いいんだ。僕は、もっと穏やかな母に再会できると思っていたが、それは大きな間違いだと気づいたんだ…リッシュモンに辱められて命を絶ったというのなら、僕にはそれを止めることはできない」 「どうして?だって、お母様に生きていて欲しいと思ったから、生命の神秘を、虚無を、『聖地』を目指そうとしたんでしょう?」 ルイズがワルドの顔をのぞき込む。 ワルドの表情は、憑き物が落ちたかのように穏やかで、寂しそうな笑みだった。 「母は生前、苦しんでいる姿なんて僕に見せなかったよ、いや、気づいていなかったんだ。 僕は…母の胸中に気づかず、ただ甘えていたんだよ。 母さんが生き返ったとして、その後どうしたものか、辱めは消えることはないんだ、復讐をしても意味はない」 ルイズは、ワルドの言葉に驚き、目を大きく見開いた。 復讐を自ら否定したのだ、ならば、なぜルイズと行動を共にしているのか、疑問がわき起こる。 「けじめだ。これは男としてのけじめなんだ。父を殺し、母を自殺に追いやったリッシュモンを決して許しはしない。けれども殺したところで、優しかった母は、辱めを受ける前の母は帰ってこない」 「ワルド、あなた」 「聞いてくれルイズ、僕は救われた気がしたんだ、君がリッシュモンを殺すと誘ってくれたときに、僕はもう母の無念を忘れてしまった!」 「!」 「僕が死罪を免れないのは理解している、だがそんなことはどうでもいい。僕はただ、リッシュモンと自分にケジメをつけたい。……それを決心させてくれたのは、君のおかげだよ、ルイズ」 ルイズは、たまらなくなってワルドから目をそらした。 「やめてよ」 心なしかルイズの声は震えていた、二人を照らす炎のゆらめきか、肩が小刻みに震えて見えた。 「馬鹿じゃないの、死にたがっているだけじゃない…私はあなたを利用したいだけよ、だからお母様を生き返らせようとしたのよ。私は…そんな女よ」 そっと、ルイズの肩を抱いて、ワルドが呟く。 「なあ、ルイズ、僕はクロムウェルが死者を蘇らせたのを目の当たりにした。 生前と変わらぬ姿で蘇った彼らは、生前の誇りも忠誠心もどこかに置き忘れて来たのか、クロムウェルに忠実に従っていたよ。 始祖ブリミルのお導きが僕らの運命なら、我々は皆運命の奴隷じゃないか。 もしクロムウェルに母を蘇らせてくれと頼んでいたら、僕は母を運命とクロムウェルの奴隷にしてしまうところだった………。 母の本音を聞かせてくれたのは、僕を大人にしてくれたのは、君だよ、ルイズ」 ルイズは、膝の上で強く自分の手を握った。 怖くて怖くて、体が震えた。 人から信頼されることが、人から礼を言われることが、人の人生に関わることがこれほどまでに責任感の伴う恐ろしいことだとは思ってもいなかった。 ワルドの心境の変化は、多くの貴族が顧みることのない『立場に伴う責任』の重さを、ルイズに十分過ぎる程感じさせていた。 アンリエッタはこの重圧に耐えているのだろうか? そんな疑問が頭をよぎったが、それを考えると深みにはまってしまいそうで、ルイズはただ静かに震えていた。 「!」 不意に、何かが割れるような音が聞こえ、ルイズは顔を上げた。 「ルイズ?」 「あ…何かが割れる音がしたわ…足音も…こっちに近づいてくる」 ワルドも耳を澄ましていると、しばらくして誰かがこちらに向かって走ってくるような足音が聞こえてきた。 ドン!と音を立てて扉が勢いよく開かれ、無精髭を生やした30代半ばの男性が小屋に飛び込んできた。 警戒しようとするワルドをルイズが手で制し、焚き火に倒れ込みそうになる男をもう片方の手で押さえた。 「はぁつ、ひい!ああ」 「ちょっと、どうしたの?」 パニックに陥っている男をルイズがなだめつつ、ワルドが扉から外の様子をうかがう。 流れる風に違和感はないはずだが、男の様子も相まって何か嫌な予感がした。 男を椅子に座らせてなだめていたルイズは、男がある程度落ち着いたと判断して、ワルドに外の様子を聞いた。 「外の様子はどう?」 「特に何も見えない、風にも違和感を感じない…」 「何も見えない…ですって?」 ルイズはワルドを押しのけて外の様子を見た、小刻みに鼻をふるわせ、空気の臭いをかぐ。 ルイズの目つきが変わった。 「さっき私が聞いた音はガラスの割れる音よ、たぶんカンテラの音。あの男には油の臭がしたから間違いはないと思うわ。でも…外の空気に油の臭いは感じられない…火が燃え移った様子もないわよ」 「何者かに追われていたと?」 「メイジに追われるような風体には見えないわよ、傭兵、物取りにしては人間の臭いがしないわ…臭いがなさ過ぎる」 「風下に回ったか」 「おそらくね。……もう、厄介ごとばかり増える、やんなっちゃうわよ」 ずしん、と、地響きにも似た振動が足に伝わってきた。 「今の音は」 ワルドが呟く、どうやらワルドにも聞こえていたようだ。 「あ、ああ、ばけものが!ばけものが、追ってきたんだ!ああ!」 男は顔中から噴出する汗を押さえ込むかのように、頭を抱えがたがたと震えだした。 「落ち着いて、化け物って何?貴方は何に追われていたの、教えてちょうだい」 「半分、半分の牛の頭が!」 ルイズとワルドは、牛と聞いてギョッとした。 牛のような化け物といえば、一つしか思い当たらない。 ここから逃げようと考えたルイズはワルドを見る、ワルドも同じ気持ちだったのか、視線を交差させただけで二人は頷いた。 次の瞬間、ずしん、と大きな振動が伝わった。 同時に、ルイズは男とワルドを掴んで小屋の外に飛び出し、地面に転がった。 「ブゴオオオオオオオ!」 ルイズの失敗魔法のような爆音と共に、小屋は木片となって吹き飛んだ。 一瞬早く飛び出していたルイズとワルドは体勢を立て直していたが、男は腰が抜けてしまったのか、立ち上がることも出来ずに地面にへたり込んだまま動かなくなってしまった。 一撃の下に小屋を吹き飛ばした存在を、二人は冷や汗を流しつつ見上げていた。 身の丈4メイル近い赤黒い巨体と、牛のような頭を持った亜人、ミノタウロスがルイズを見下ろしていた。 「グフゥーーーッ!グフッ!」 涎や鼻水をだらだらと垂らしながら、荒い呼吸を繰り返しているミノタウロス、頭の右半分は抉られたかのように欠けており、右目も潰れているようだった。 「なるほど。あの傷では凶暴にもなるな」 ワルドが髭を撫でながら呟く、メイジの生命線たる杖を所持していないのに、余裕すら感じられる笑みを浮かべている。 「囮になろう」 そう言ってミノタウロスの前に出ようとするワルドを、ルイズが制した。 ミノタウロスの左目は、はっきりとルイズの姿を写していた。 「逃がしてくれそうにもないわね」 ルイズが呟くと、ミノタウロスは確かにその唇をゆがめて、笑った。 ぶふっ、と鼻息を鳴らした次の瞬間、ミノタウロスの左腕がルイズを殴った。 「フンッ!」 ルイズは右腕を縦にしてミノタウロスの腕を防ごうとしたが、ミノタウロスに殴られた瞬間、ルイズの体は軽々と宙を舞った。 バキバキバキバキと音を立てて、ルイズの衝突した幾本もの木々が倒れていく。 大人の胴よりも太い木の幹を、八本ほど倒したところでルイズの体が止まる。 全身を叩きつけられつつ、ルイズは空中で体勢を変え、木を蹴ってより高い空を舞った。 「WRYYYYYYYYYYYYYYY!」 ルイズの手刀がミノタウロスの頭部を狙うが、ミノタウロスは素早く身をかがめると腕を頭の前でクロスさせてルイズの手刀を防いだ。 べろん、とミノタウロスの皮が裂けて肉が露出するが、圧倒的な体格の違いのせいか、ルイズの一撃は致命傷を与えるには至らない。 ルイズはミノタウロスの攻撃を避けつつ、反撃の機会を伺うが、ほとんど理性を失っているミノタウロスの攻撃はがむしゃらで隙がない。 ルイズの力を持ってしても、ダメージを与えることはできるが致命傷を与えられないのだ。 「くうううっ」 ミノタウロスの巨大な腕と、鋭い爪を防ぐので精一杯。 その間にも焚き火の火が小屋の破片に燃え移り、森は少しずつ火に包まれていった。 「KUAAAAAAAA!」 じりじりと、ルイズが押されていく。 ミノタウロスの爪がルイズの首を狙い、避け損ねたルイズは、髪の毛を切られてしまう。 ピンク色の髪の毛が宙を舞うのを見て、ワルドが思わず叫んだ。 「ルイズ!」 「離れてなさい!」 「違う!火に包まれるぞ!」 ワルドの叫びを聞いて、ルイズははじめて周囲が燃えているのに気づいた。 夜目が利きすぎるから気づかなかったのか、戦いに集中していて気づかなかったのか、そのどちらかと問われたら間違いなく後者と答えるだろう。 ミノタウロスは強敵だ、再生能力が強く、皮膚は硬く筋肉も強い、そして何よりそのスピードとパワーが吸血馬を思わせるほど強い。 これでは血を吸う暇も、肉腫を埋め込む暇もない。 それなのに心のどこかが喜んでいる、強敵に出会えて、自分の全力を出し切って戦える相手がいて、嬉しい、嬉しいと喜んでいる。 ルイズの体と心が、震えた。 「おああああああアアアアァァァアああああアァアああ!!」 ルイズの叫びは、吸血馬に届いた。 柔らかい女性の体つきが、鍛え抜かれた女戦士と見まがう程の体つきに変わっていく。 体の細さはそのままだが、体内の筋肉繊維と皮下脂肪に、吸血馬の毛が絡みつき、筋肉が浮き上がる。 腕と足に埋め込んだ吸血馬の骨は、ルイズの体に吸血馬の力と、鋼のような硬度を生み出す。 ミノタウロスの腕から血が弾ける。 ルイズの腕、吸血馬の骨を埋め込んだ手首から、銀色のタテガミが生えていた。 毛は剣を形作り、ルイズの腕から剣が横に伸びた形になる。 ルイズは踊るようにミノタウロスの強靱な皮膚を切り裂き、筋肉を断ち切り、骨を粉砕していく。 燃えさかる炎に照らされたルイズ。 両腕から生えた剣が、光を反射して銀色に輝く。 ワルドは逃げることも忘れて、ルイズに見とれていた。 「!」 はっと気を取り直したワルドが、近くに落ちている木片を手に取り、先端を火であぶる。 槍のように細長く砕けた木片に火をつけると、ミノタウロスの視線がルイズに集中しているのを確認してから、その左目に向けて槍のように投げつけた。 残った目を攻撃されるのは嫌なのか、ミノタウロスは身を反らせば避けられそうな木片を過剰に怖がり、手で顔を隠しつつワルドに向き直った。 「ガアアッ!!」 人間を軽くミンチにする豪腕と爪がワルドを襲う、だが、ワルドは『閃光』の二つ名の通り、紙一重でその攻撃を避けると、炎の渦巻く火の中に飛び込んだ。 ミノタウロスは燃えさかる木々を薙ぎ倒すと、怒りにまかせて鼻息を荒げ、グオオオオと雄叫びを上げた。 その隙を見逃すルイズではない、ルイズは両腕を高く掲げ、手首から生えた剣を腕と平行に伸ばした。 後ろを向いたミノタウロス、その心臓めがけて、腕を向けると、全身の筋肉をバネのようにしならせて地面を蹴った。 ルイズの脚力を吸収しきれなかった地面が、クレーターのようにへこむ。 「AAAAAAAーーーーーッ!!」 ルイズの体はまるで大砲の砲弾のような勢いでミノタウロスの胸にぶち当たり、腕から生えた剣はミノタウロスの心臓を貫通し、先端が背中へと飛び出ていた。 ズキュンッ、ズキュンッ、ズキュンッ と音を立てて一気にミノタウロスの血を吸い取る。 ミノタウロスは背中に張り付いた何者かを払おうとして、自分から火の中に倒れ込んだが、ミノタウロスの血を吸い続けるルイズは体を焼かれても瞬時に再生してしまう。 ミノタウロスは乾いていく体を火の中に投げ込んだことで、炎に焼かれながら寒さに震え、もがいた。 炎の中から、ワルドが飛び出す。 風系統のスクエアである彼は、風の流れから温度の低い場所を探してそこを通り抜け、炎に身を隠しつつ移動していたのだ。 服の所々は焦げていたが、髪の毛にも髭にも焦げた後が見あたらないのは彼のダンディズムか、ポリシーだろうか。 「ルイズ!」 ワルドが叫ぶ、炎の中に落ちたルイズを探そうと辺りを見回す。 すると、炎の中で何かがゆらりと動くのが見えた。 炎の揺らめきではなく、明らかに人間の形がゆらめいている。 腕から生えた剣を、ミノタウロスの体に突き立てたルイズが、空に向けて吼えていた。 「WRYYYYYYYYYYYYYYーーーーーーーー!!」 血を吸い尽くしたルイズは、ミノタウロスの体を、挽肉にするかのようにずたずたに切断し、火の中に投げ込む。 ミノタウロスの再生能力は非常に強く、火で焼いただけでは蘇る可能性があるのだと、昔教わった覚えがあるのだ。 五体を32分割した後、ルイズは地面を蹴って高く跳躍し、ワルドの眼前へと着地した。 「ふっ、ふぅう…ワルド、逃げるわよ」 「ああ」 布きれが焼け落ち、全裸になったルイズと、ワルドの二人が森の奥に向けて駆け出そうとする。 が、その前にルイズは、地面に倒れ気絶している男を背中に乗せた。 「どうするんだ、その男を」 「放っておく訳にはいかないでしょう」 「そうかい?」 「そうよ」 「そうかな」 「そうよ」 二人は大火事を背にして、その場から走り去った。 翌朝、ルイズは森から出て、街道沿いの村にたどり着いていた。 地理的にはガリア寄りの、この村では、大火事を確認しに行った男達が帰ってくるところだった。 ルイズは村に入る前に、背負っていた男の記憶を確かめることにした。 茂みの中で、ルイズは男の頭に肉腫を埋め込む。 びくんと体を硬直させ、男は目を覚ました…が、目は虚ろであり、意識は覚醒していない。 「あなたの村はどこ」 「げるまにあの こっきょうぞいの」 ルイズは男にいくつかの質問をした、どこの出身か、どこの村の出か、なぜミノタウロスに追われていたのか…… 森の中で頭に傷を負ったミノタウロスに仲間が殺され、必死で逃げてきたらしい。 逃げている最中に、明かりのついた小屋を見つけたので、助けを求めて駆け込んだのだとか。 ルイズは暗示をかけるように、肉腫を操りながら男に言い聞かせた。 自分の顔に大きく傷を付けると、中途半端に皮膚を再生し、火傷痕を再現する。 「あなたが見たのは、顔に火傷を負った短髪の女。名前は知らない、そうね?」 「ああ、うん、やけど、かみのけ、みじかい」 「ミノタウロスに小屋を襲われた後、貴方は一人でここまで逃げてきた…」 「お、おれは、ひとりで、ここまで、にげてきた」 男がルイズの言葉をたどたどしく復唱する。 それを確認してから、ルイズは肉腫を男の頭から抜き取った。 ふっ、と男の意識が無くなると、ルイズとワルドの二人は村から盗んだボロ布を身にまとって、街道へと歩き出した。 傷跡を治してしまえば、もう別人。ルイズはそう考えていた。 しばらくしてから男は村人に発見された、服の焦げ後から火事に巻き込まれた男だと判断し、事情を聞くためにも手厚く介抱された。 街道は、意外にも人の通りが少なかった。 二人は昨晩の話をしつつ、街道を歩く。 「それにしても…綺麗だった」 「あら、何が?」 「君の戦いぶりさ、腕の剣と、一糸まとわぬ体が炎に照らされて輝いていた……あんなのは初めて見たよ」 「やめてよ、恥ずかしいわ」 思い返してみると、ワルドに全裸を見られたのは一度や二度ではない。 今だってボロ布のマントの下には、申し訳程度の腰布しか巻かれていないのだ。 急に顔から火が出るような気がした。 「あの剣は何だい?突然、腕から生えたような気がしたが」 「あの子が…吸血馬が力を貸してくれたのよ。色が抜けて銀色になったけど、たぶんあの子のタテガミね」 「死して尚、主人のためにか…僕とは大違いだな」 「本当に大違いよ。でも……」 ルイズは、何かを言いかけたが、結局口をつぐんだ。 肉腫の力で吸血馬を洗脳していたことに、後悔しているが、だからといって今更何を言えば良いのか解らなかった。 「ルイズ、折角だから、名前を付けたらどうだ」 「名前?」 「ああ、東方から伝わった書物によれば、腕から剣を出す術に名前があったんだ…確か、リスキニハーデンとか……」 「私のこの”剣”にも、名前を付けろって?ふふ…デルフが拗ねるわね」 「そうだ……”光のモード”というのはどうかな。炎にきらめいて、美しかったから思いついたんだが」 「名前なんてどうでも良いわよ。でも、ワルドって意外と子供っぽいのね。名前一つ決めるのがそんなに楽しい?」 「何を言ってるんだ、僕を大人にしてくれたのが君なら、僕を子供扱いしてくれるのも君だけだよ、ルイズ」 ワルドの笑みに、ルイズははにかみで答えた。 ふと思う…人間は死を覚悟できるからこそ輝かしい。 ウェールズを守ろうとしたアルビオンの衛士達がそうだったように。 人間は、もしかしたら、いずれ死んでしまうからこそ美しいのではないだろうか。 焼けこげた森の中では、近隣から派遣された部隊が消火活動を続けていた。 火の勢いは強く、簡単には消すことは出来ない。 地方のメイジ達だけでは簡単には対処できぬほどの大火だった。 だが、たまたま近隣貴族の領地を視察していた一人のメイジが、この火事を消し止めた。 十人を超えるメイジでも消せなかった火事を、いとも簡単に消した女性の名を、カリーヌ・デジレという。 ラ・ヴァリエール家に帰ろうとする馬車の窓から、鎮火した森を見つめていたカリーヌは、従者の一人が扉をノックしているのに気づいた。 「奥様、お耳に入れたいことがございます」 「申しなさい」 「火事は、怪我を負い正気を失ったミノタウロスが山小屋を襲撃したことで起こったようです。生き残った者は、ミノタウロスと戦った人物が二人いたと話しております」 「……」 「ピンク色の頭髪、年の頃は20、顔立ちは幼さを残し、顔に大きな火傷のある女性。それと元貴族らしき20代後半の男性の二人だったと……」 そこで従者の言葉が止まる。 カリーヌは、何か言いにくいことがあるのかと察した。 「……続けなさい、言いにくいことでもかまいません」 「はっ! …元貴族らしき男は、その女性を『ルイズ』と呼んでいたそうです…」 「下がりなさい」 「はっ」 がたごとと揺れる馬車の中で、カリーヌは、無意識のうちに杖を握りしめていた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/saikyouwoman/pages/275.html
【作品名】ゼロの使い魔 【ジャンル】ライトノベル 【名前】ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 【属性】虚無の使い手 【大きさ】153cmぐらいの16歳女子 【攻撃力】多少鍛えた年齢相応の少女並み、教鞭サイズの杖所持 【防御力】人間サイズの(勘違いするなよ、人間の拳じゃねーぞ。ルイズの身長に直径が匹敵するサイズだぞ)の石の拳で 才人もろとも石の壁を貫く勢いで殴り飛ばされても戦闘続行可能。 【素早さ】多少鍛えた年齢相応の少女並み 【特殊能力】 虚無の特性で何を唱えても爆発する。自分を巻き込まないように撃てる。 8巻では二言で人間大の人形を破壊する威力は出していた。 エクスプロージョン:虚無の呪文 発動には以下の詠唱が要る 「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴュエル カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル」 詠唱終了後に杖を振ることで光の球が発生、視界を覆い尽くすほどまで巨大化して それに巻き込まれた200mの空中戦艦(木造)及びその護衛艦を炎上・墜落させた 破壊力は約25mの鉄製の騎士人形を爆破できるが、タイガー戦車の主砲には全く敵わない(らしい)。 魔法による障壁を貫通して本体を直接攻撃できる 上記の戦艦の乗組員は無事だったが、呪文の性質については 「巻き込む。すべての人を。自分の視界に映る、すべての人を、己の呪文は巻き込む。 選択は二つ。殺すか。殺さぬか。破壊すべきは何か。」とあるので射程は視界内全てで、対象を選ぶことができるようだ あと、膨大な精神力を使うため基本的には一発限り 【長所】一部の読者からの人気が凄い。 【短所】貧乳。嫉妬深すぎ。詠唱が長い。 【戦法】速攻で逃げつつ二言の呪文を唱える。 死なないようなら「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴュエル カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル」を唱える。 【備考】苗字より後はめんどくさいからランクインした時は外していいよ 【参考】ちなみにモデルは↓の人物。非常に華奢で、片足が不自由だったらしい。 http //ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB 参戦vol.3 375,401 vol.3 430 :格無しさん:2011/03/27(日) 21 48 31.63 ID 5F7h30TB ルイズ修正版考察 ○:リリーナ>杏本詩歌>平沢唯 反応でやや勝っているので爆殺勝ち ○:藤林杏 同上。 ×:南春香 反応でやや負けている。微妙だが刺殺負けか。 ○:清浦刹那 反応でやや勝っているので爆殺勝ち。 ○:桜野タズサ 一発ではやられないだろうし爆殺勝ち。 これより上の鍛えた鈍器持ち相手は厳しい。安定して勝てるのはここまでが限度か。 南春香>ルイズ>清浦刹那=藤林杏 vol.5 376 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2012/01/23(月) 00 27 04.47 ID 2/XEAsuH ルイズ再考 石壁を貫く攻撃に耐えるのでもう少し上のはず ○:~伊勢谷緋華 耐えてエクスプロージョン勝ち ×:川崎明日香 ボコられ負け ○○○○:向坂環>桜井さくら>丸井ふたば>上原 耐えて爆発勝ち ○:エステル 爆破しまくって勝ち ×:ニャルラト先生 一撃で倒され負け ○:来栖川 綾香 耐えてエクスプロージョン勝ち 戦うヒロインの壁上へ ○*6:神奈備命~竜宮レナ 耐えてエクスプロージョン勝ち ×:河原桜 パンチ負け ○:涼宮ハルヒ(やる夫) エクスプロージョン勝ち ×:毛利蘭 蹴り負け さすがに車相手は無理だろう。 河原桜>ルイズ>涼宮ハルヒ(やる夫)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/555.html
「…それで、その『ゼロのルイズ』が平民を助けたと言うのか」 「ええ、そうよ」 城下町の小さな劇場に、サイレントの魔法で包まれた二人組がいた。 一人は仮面を被った男、もう一人はミス・ロングビルである。 ロングビルが男に話したのは、ルイズに関することだった。 昨日、モット伯の別荘に平民が連れて行かれたのを知った『ゼロのルイズ』は、単身でモット伯の別荘に乗り込んだ。 それを知ったロングビル、タバサ、キュルケの三人は、タバサの使い魔シルフィードに乗り、モット伯の別荘へと急いだ。 途中、馬で逃げようとしたモット伯を発見し、ロングビルが保護。 別荘に向かったルイズはシエスタを背負って屋敷から出てきたが、キュルケとタバサを見るなり気を失った、現在シエスタが看病している。 モット伯を魔法学院で保護しようとしたが、そこにマンティコア隊が現れ、モット伯のバックを没収し、モット伯の身柄は拘束されてしまった。 翌日オールド・オスマンから話を聞くと、モット伯は以前から汚職の件で疑われていたのだと言う。 モット伯が持ち出した書類の中からその証拠が発見され、最低でも身分剥奪は免れないとか。 「…腑に落ちん、『ゼロのルイズ』と呼ばれるメイジが、モット伯に仕えていたメイジと戦い、勝利したというのはな」 「実力を隠してたんじゃないかしら?…それにしても、ずいぶんあの娘のことが気になるのね」 ロングビル…いや、本物の『土くれのフーケ』は、宝物庫でこの男から受けた脅迫を忘れたかのように、男をからかいつつ話を進める。 男は、それがフーケの虚勢だと気づいているのだろうか、男はフーケに言い返した。 「気にしているのはお前の方だろう、平民を助けようとするメイジに、心を乱されているようだな」 「………」 フーケは、何も言い返せなかった。 さて、場面は移り、ここはトリスティン魔法学院の女子寮。 ルイズが目を覚ますと、すでに日は高かく昇り、午後の授業が始まる頃の時間だった。 驚いたルイズはベッドから飛び起き、ベッドから降りようとすると、なぜかベッドの脇に置かれている小さな机に足を引っかけ、盛大に転んでしまった。 どべちーん、と音を立てて、おでこから床に落下したルイズ。 「ルイズ様!」 それを見て驚いたのはメイドのシエスタ。 なぜかルイズの部屋にいたシエスタは、ルイズを助け起こすと、こんな所に机を置いた私が悪いんですと謝り始めた。 そんな事はどうでも良いから、なんでシエスタがここに居るの?と問うルイズ。 謝り続けるシエスタ。 何がなんだか分からずシエスタを慰めるルイズ。 授業が終わり、夕食前にキュルケとタバサがルイズの様子を見に来るまで慰め合戦は続いた。 「それにしてもあんた、凄いじゃない、タバサが感心してたわよ」 「……」 キュルケの言葉に無言で頷くタバサ。 だが、当のルイズは何の話なのか分からず、頭にクエスチョンマークを浮かべた。 何の話なのか質問しようとした時、シエスタがルイズに頭を下げた。 「あの…ルイズ様、助けて頂いて、本当にありがとうございました」 「助けて?…って、あ、そっか、シエスタ!あの変態に何かされてない?大丈夫?」 ルイズはシエスタの一言で、モット伯の別荘で起こったことを思い出した。 「呆れた!ルイズ、あんた今まで自分が何をしたのか忘れてたの?」 キュルケが両手を左右に開き、ジェスチャアを交えつつ、心底呆れたように言う。 そしてタバサはルイズの若年性痴呆症を疑っていた。 ルイズには地下牢でオークに殴られてからの記憶がはっきりしていない。 タバサが言うには、ミス・ロングビルはオールド・オスマン不在の間、学院に異常がないか監視するように言われていた。 夜間外出したルイズを見たロングビルが、マルトーに話を聞き、キュルケとタバサの二人に頼んでルイズを追いかけたそうだ。 破壊された別荘のテラスにルイズとシエスタを発見し、すぐさまシルフィードで助け出したが、ルイズは気を失っていた…という事らしい。 窓から別荘の廊下を見たタバサは、風を使うメイジとルイズが戦ったのではないかと分析した。 キュルケは、ルイズは前兆のない『爆発』を起こせると知っているので、タバサの考えに異論を挟まなかった。 ほかの生徒たちはルイズが何をしたのかまでは知らされていないが、おそらくルイズがほかのメイジと戦えば惨敗すると思っているだろう。 何よりも驚いたのは、オークに立ち向かうルイズの話だ。 杖のないメイジがオークに立ち向かうのは自殺行為と言える、しかし、シエスタを守ろうと自ら危険な役を引き受けたという。 キュルケにとって、ルイズを含むヴァリエール家は宿敵だが、ルイズに対しては友情に近い感覚が芽生えている、すでに彼女は『ヴァリエール』ではなく『ルイズ』と呼んでいるのだから。 もっとも、本人はそれを否定するだろう、素直になれない友人に、少しだけ苦笑いするタバサだった。 「…いけない」 突然、タバサが立ち上がった。 タバサの表情は変わらなかったが、いつになく緊迫した雰囲気が漂っている。 その様子に驚いた三人は、タバサから目が離せなかったが、遠くから響く夕食終了の鐘の音を聞いて、慌てて食堂へと移動した。 「あちゃー、片づけられちゃったわね」 そう言いながらテーブルを見渡すキュルケ。 タバサは誰かが食べ残した食事を見て、自分の好物が無惨にも残されているのに気づき、少し腹が立った。 ルイズも空腹感はあったが、ちょっと疲れているので、いつものコッテリとした夕食を思いだし、食べなくても別に良かったかなと考えた。 そんな三人にシエスタは、おそるおそる話しかける。 「あの、私、料理長に掛け合ってみます」 「いいわよ、遅れたのが悪いんだし、規則は守らなきゃね」 ルイズはシエスタを庇うように言う、そうでもなければシエスタは自分のせいだと思いこんでしまうからだ。 「あら、いいじゃない、たまにはぬるいスープじゃなくて作りたてを食べたいわよ」 「ハシバミ草大盛り」 キュルケとタバサの遠慮のない言葉に苦笑いするルイズだったが、シエスタは嬉しそうに微笑んでいた。 シエスタが交渉する間もなく、ルイズが来たと聞いた料理長によって、三人は厨房へと招かれた。 料理人たちの食事である『まかない』を作っている最中だったが、その香りにキュルケとタバサは鼻をひくつかせた。 「美味しそう」 グー… タバサが小さく呟くと、タバサのお腹がグーと鳴った。 「何よ、タバサったら食いしんぼ…」 グー… 続いてキュルケのお腹も鳴る。 「二人ともお腹すいてるんじゃない」 グーー そしてルイズのお腹がひときわ盛大に鳴り響いた。 「あんたが一番」「食いしん坊」 ルイズは、キュルケとタバサに言い返すことも出来ず、顔を真っ赤にした。 「ほっほっほ、お前たちもつまみ食いに来たか?」 厨房の奥から出てきた意外な人物は、三人を見ると嬉しそうに声をかけた。 オールド・オスマンである。 オスマンは三人を厨房の奥のテーブルへと招くと、そこには厨房で働くメイドや料理人達がいた。 オスマンはテーブルの端に座ると、キュルケ、タバサ、シエスタ、ルイズの席を々席に着くように促す。 貴族嫌いのマルトーが仕切る、普段の厨房の様子からは考えられないほど、ルイズ達は好意的に迎えられた。 「ええと、ヴァリエール公爵嬢様、シエスタを助けてくれて、本当に、ありがとうござい…ます」 「ほっほっほ、マルトー、お前が敬語を使ったら雨が降るわい」 オスマンが笑うと、マルトーは頭を振って、少し恥ずかしそうにした。 「ミス・ヴァリエール、魔法学院で学ぶ生徒達は、国家の宝であるとは何度も申しておるな。ここに居る料理人達やメイド達も、魔法学院にとっての宝であることに代わりはない。貴族の横暴によって損なうことなど、決してあってはならん」 料理人やメイド達、そしてルイズ達もオスマンの話を神妙に聞いている。 「魔法学院の長として、ワシからも礼を言わせてもらうぞ、ミス・ヴァリエール。『身分に応じた責任を負う』それがメイジを貴族たらしめる理由じゃ。今回の件は国家預かりになっておるが、ワシは勇気ある行動を尊敬するぞ」 ルイズはオスマンの言葉に驚いた。 ほかの料理人、メイド達までルイズにお礼を言い始めたので、更に驚いた。 今までに感じたことのない、むず痒い気持ちに困惑してしまう。 子供の頃から魔法が使えず、メイジとして失格とまで言われてきた。 しかし今はどうだ、『貴族』として尊敬を受けているのだ。 「さあ、お友達の二人も食べていってくれ、腕によりをかけたんだ!そうだ、おいシエスタ、34年もののワインがあったな、あれを三人に出してくれ」 マルトーが威勢の良い声で料理を作り、そして運ぶ。 次々にテーブルの上を彩っていく料理の数々に、キュルケは素直に感心した。 「何よ、これがまかない料理って奴なの?…美味しいじゃない、あんたたち厨房でこんな美味しいもの食べてるなんてずるいわよ」 タバサも無言で食べ続ける、心なしかいつもよりペースが速いぐらいだ。 「ところでマルトー、せっかくじゃから、ワシの分もワインを…」 「ちょっと、学院長、またミス・ロングビルに怒られますぜ」 「彼女は城下町に用があって出かけておる、酒は別れによし再会によしと言うじゃろう、ここにいるヴァリエールがおらねば、シエスタと再会できなかったかもしれんのじゃぞ?野暮なことを言わずワインを出しなさい」 「そこまで言うなら、アッシも飲ませてもらいますぜ!」 「ベネ!」(良し!) 妙にノリの良い学院長の一言で、全員に振る舞われる酒。 ルイズは、自分が記憶を失っている間に何が起こっていたのか、これから先どうなってしまうのか、姫様から頼まれた用事を前にしてこんな事をして大丈夫だったのか… 等々、いろいろな事が頭を駆けめぐった。 だけど、今はとにかくこの時間を楽しもうとして、ワインをあおった。 ワインは確かに美味しいものだったが、この楽しい雰囲気と、マルトー特製の料理は、酒の肴にするには勿体ないと感じた。 そして飲み過ぎた。 翌日、シエスタは恥ずかしそうに、四人分の布団と下着を洗っていたとかいないとか。 ---- #center{[[前へ 奇妙なルイズ-13]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-15]]}
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1496.html
「虚無って……何、これ」 アンリエッタも、ウェールズも、ルイズの疑問に答えることは出来なかった。 ルイズが更にページをめくり『始祖の祈祷書』を読み進めようとすると、よりいっそう『風のルビー』が強く輝いた。 「風のルビーが、輝いている」 アンリエッタがルイズの手にはめられた『風のルビー』を見ると、ウェールズの言ったとおり、不自然なほど強く光を反射して輝いていた。 「本当…ねえ、ルイズ、『始祖の祈祷書』を私にも……」 アンリエッタが試そうとするが『始祖の祈祷書』には何の文字も現れない。 もしやと思い『風のルビー』をはめて試すが、やはり何の文字も現れなかった。 「ルイズ、私の『水のルビー』でも読めるか、試して?」 「…………」 ルイズは無言のまま、アンリエッタの差し出した指輪を受け取り指にはめた。 「読める……読めるわ……」 『始祖の祈祷書』には、『風のルビー』をはめた時と同じように文字が浮き出ていた。 「まさか……私が、そんな、そんな」 ルイズは顔を押さえ、狼狽えた。 この本に書かれていることが本当なら、私は虚無の使い手。 今までの魔法の失敗は、私が系統魔法ではなく虚無の魔法の使い手だったからだと考えれば納得がいく。 だが、納得できない。 『なぜ吸血鬼になる前に教えてくれなかったのか!』 と、怒りにも似た感情が『始祖の祈祷書』に向けられる。 だが、本はそのまま、本として無機質な顔を見せたままだった。 アンリエッタから水のルビーを借りて、始祖の祈祷書を読もうとしていたウェールズだったが、自分には読めないことが分かると、顎に手を当てて何かを考えていた。 「アンリエッタ、この本がニセモノである可能性は?」 「ウェールズ様が疑われるのも無理はありません、ですが、『始祖の祈祷書』は過去に魔法学院やアカデミーで研究されているはずです。この本には『固定化』以外になんの魔法も付加されていないはずですわ……」 アンリエッタの言葉は少し震えていた。 ルイズの言葉が本当なら、伝説だと思われていた『虚無』の手がかりが現れたことになる。 そして、ルイズを悩ませていた魔法失敗の原因が、今解明されるかもしれないのだ。 アンリエッタは王女として、一人の友人として、期待せずにはいられなかった。 「そうなのか……ならば、石仮……いや、ミス・ルイズ。虚無の魔法とはどんなものなのか、確かめられるような魔法は書かれていないのか?」 正直なところ、ウェールズはまだ『虚無』に対して懐疑的だった。 アンリエッタやルイズを信用してはいるが、虚無の魔法ともなれば、その内容を確かめてからではないと信用は出来ない。 『伝説の虚無系統を、この目で確かめてみたい』というのが本音かもしれないが…… 虚無の魔法に対して懐疑的なのは、ルイズも同じだった。 あまりにも突然の出来事で、頭が混乱しているのかも知れない。 だが、今は『これが虚無である』と確かめられるような呪文を探すのが先だ。 ルイズは一心不乱にページをめくり、文字を探した。 「……以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』……意味は、爆発?」 爆発と聞いて、ルイズとアンリエッタが「あっ」と声を上げた。 ルイズはいつも、呪文を唱えると、爆発を起こしていた。 あれは、ここに書かれている『虚無』ではないだろうかと、思い当たったのだ。 考えてみれば、爆発する理由は誰も答えられなかった、ラ・ヴァリエール家の教育係も、両親も、姉も、誰もその疑問には答えられなかった。 ただ、彼らの望む結果を出せなかったから、ルイズの魔法は『失敗』で片づけられていたのではないか。 ルイズは更にページをめくる。 こんな所で爆発を起こしてしまったら、それこそ大問題だ。 別の何かはないかと、必死になって探した。 ルイズは本を凝視し、精神を集中させた。 ふとページをめくる手が止まる。 光と共に文字が浮かび上がり、別の呪文が姿を現した。 「初歩の初歩……〝イリュージョン〟……描きたい、光景……強く心に思い描くべし、なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すであろう…………かしら」 ルイズは、静かに詠唱を始めた。 それはアンリエッタとウェールズも聞いたことがない、長い呪文。 だが、ルイズにとっては、なぜか懐かしく、そして心落ち着く呪文だった。 ルイズは思い描く。 アンリエッタとウェールズの姿を思い描く。 テーブルの上に、二人が並んで立っている姿を想像して、詠唱する。 詠唱する。 詠唱する。 詠唱する…… テーブルの上に雲のようなものが集まり、徐々に人間の形を成して、色が浮かび上がっていった。 テーブルの上に立つのは、高さ15サント(cm)程のウェールズ、アンリエッタの姿。 ……だけではない。 羨ましい程のスタイルを持つ赤毛の女性。背丈より高い杖を持ち眼鏡をかけた水色の頭髪の少女。薔薇の造花を持った金髪の少年。長い髪の毛を綺麗にロールさせた女性。 ぽっちゃりとした体型で肩に鳥を乗せた少年。黒い頭髪と瞳を持つメイドの少女。眼鏡をかけた緑色の頭髪を持つ女性。逞しい肉体と髭をたくわえ豪華な鎧を着た男。ルイズを金髪にして眼鏡をかけたような女性。ルイズと同じ髪の色で目つきの優しい女性。 ほかにも沢山の人の姿が、まるで人形を並べていくようにテーブルの上に形作られていった。 「すごいな……、少し、確かめさせて貰うよ」 テーブルの上に作られていく人形に向けて、ウェールズは『ディティクト・マジック』を唱える。 光り輝く粉のような物が舞い、その存在を調査していく。 「手で触れることはできないが、ディティクト・マジックにすら反応しない幻……これが虚無なのか…」 「水でも、風の系統でもありませんわ、これが『虚無』の初歩なのね、ルイズ…………ルイズ?」 ウェールズが感心する一方、アンリエッタはルイズの表情に影が差していたのを見逃さなかった。 コンコン と、応接室にノックの音が響く。 「姫さま、会議の時間が迫っておりますが……」 アンリエッタは、ウェールズの処遇と、ワルド子爵の裏切りについて会議があるのを思い出した。 「ルイズ、後でまたお話ししましょう。すぐに部屋を一つ準備させますから」 ルイズはうつむいていた顔を上げ、アンリエッタを見て言った。 「は、はい……あ、私のことは、どうか誰にも言わないで」 「大丈夫ですわ、貴方がウェールズ様を守って下さったように、わたくしも貴方を守りましょう」 「……ありがとう」 アンリエッタとウェールズの二人は応接室を出ると、外で待機していた侍女がアンリエッタの言付けを受けて、すぐに上等なゲストルームへとルイズを案内した。 侍女が恭しく一礼し、ゲストルームを出て行くと、ルイズは糸が切れたようにソファに倒れ込んだ。 『イリュージョン』を唱えた影響なのか、ルイズの精神は思ったよりも疲弊していた。 侍女が出て行った途端、緊張の糸がほぐれたのだ。 ルイズは目と口を半開きにしたまま、意識を手放した。 夢の中で、ルイズは魔法学院にいた。 『ツェルプストー!見てみなさい、ふふーん、アタシは虚無に選ばれたのよ!』 『へー、すごいじゃない。でもその胸なら納得よね』 『ああああアンタ!エクスプロージョンでぶっ飛ばしてやるわよ!』 『ミス・ヴァリエール……貴方にお願いがある』 『え?お願いって……』 『タバサがお願いだなんて珍しいじゃない』 『虚無なら、ハシバミ草を育てる魔法があるはず』 『そ、そんなもん、無いわよ』 『……ふぅ』 『何よその落胆したようなため息はー!虚無よ虚無!凄いのよ!伝説よ!』 『ハハハ、ミス・ヴァリエール、君が虚無に選ばれただなんて、なんの冗談だい?』 『えい、金的』 『ウッギャー!』 『ちょっとルイズ!あたしのギーシュに何するのよ!』 『あれぐらい当然の罰よ、罰』 『駄目なの!ギーシュを罰していいのは私だけなのよ!』 『モンモランシー…あんた本当にギーシュが好きなのね。ならプレゼントよ”イリュージョン”』 『えっ、あ、ギーシュが一人、二人、三人……や、そんな、そんな沢山のギーシュに見つめられるなんて、私…ぽっ』 『あら、ヴァリエールったら、本当に虚無の魔法を使えるのね』 『ふふん、やっとツェルプストーも私の力を認める気になったのね』 『でも私はもっと派手なのがいいわ、心の底から恋を焦がすような、熱と光は無いの?』 『あるわよ』 『ふーん、じゃあやって見せなさいよ、ゼロのルイズ』 『ほえ面かいても知らないわよっ!”エクスプロージョン!”』 洪水のような熱と光に、魔法学院と級友達、そして自分自身が焼かれ、ルイズは目を覚ました。 ソファから身体を起こして窓を見る。 外には見慣れた月が二つ浮かび、ゲストルームをうす明るく照らしていた。 「……夢?」 自分の身体を触り、焼けこげていないか確かめる。 服を確かめても、夢の中のように魔法学院の制服は着ていない。 ルイズは「ふぅ」とため息をついて、再度ソファで横になった。 「戻りたい」 学院に。 「戻りたい」 人間に。 ルイズの小さな呟きは、誰にも聞かれることなく、月明かりに消えていった。 その頃、会議を終えたアンリエッタは、ルイズの作り出した幻のを思い出していた。 あの幻で作られたのは、ルイズの父母、姉達、魔法学院の制服を着た人々。 「子供の頃から、強がってばかり……」 空に浮かぶ二つの月を見上げると、月は一つの球体が二つに分裂するかのように位置をずらしていた。 アンリエッタは『おともだち』を、どんな手を使ってでも守ろうと決心していた。 ウェールズと再会できたのも彼女のおかげなのだから。 アンリエッタの表情は、いつもよりも遙かに堂々としていた。 沸き上がる『自信』も『決意』も、『おともだち』がくれたものだと思っていた。 「アニエスなら……ルイズに協力してくださるかしら?」 会議では、ウェールズの亡命を受け入れるには至らなかったが、親衛隊の新設が決定された。 ワルド子爵の裏切りが、親衛隊の新設を後押しする形となり、『銃士隊』の結成が決定されたのだ。 その隊長として、アンリエッタが選んだのは「アニエス」という平民の女性。 元傭兵のアニエスは、今はトリステインに所属する軍人として並々ならぬ功績を上げている。 アンリエッタは彼女に『シュヴァリエ』の位を与えたかったが、まだ他の貴族からの反感も大きく、実行には移せていない。 だが、機会を見てアニエスを中心とした『女性だけで構成された近衛兵』を集めるつもりだった。 「私も、私のお友達も、ずっと子供のままなのかもしれませんわ……」 アンリエッタは、ルイズと同じ月夜を見上げていた。 そして、数日後。 トリステイン魔法学院では、ある変化が生徒達を驚かせていた。 『風が最強だ!』と耳にタコができそうな程繰り返していたギトーが、どこか大人しくなり、傲慢さがなりを潜めてしまった。 それどころか、属性の使い分けと、連携を中心として授業が進められていく。 その変化に驚いたある生徒は『魅了』で記憶を改ざんされたのではないか……と言い出す程だった。 もう一つの変化は、シエスタの変化だった。 いつもより堂々と、自信に満ちた笑顔を見せて、授業を受け、実技に挑戦し、キュルケ達との会話にも物怖じしない、それは女性としての自信と言うより、戦士としての自信だったのかもしれない。 もっとも、それに気づいているのはキュルケとタバサぐらいのものだが。 元は平民なので、シエスタはどの貴族に対しても丁寧に接していたが、そのせいかマリコルヌが何かを勘違いして得意げにしていたのは秘密だ。 だが、いかに治癒の力を持つとはいえ、シエスタは元平民。 平民と貴族が同じ授業を受けるなど、馬鹿馬鹿しいと言って、シエスタに敵意を向ける者も存在していた。 シエスタは空を飛べない。 そのため、魔法学院の外で規模の大きい風の魔法を実習する時など、走ってその場まで移動する。 他の生徒達は『フライ』の魔法を使って移動している。 単独で空を飛行する魔法、風の基礎中の基礎、『フライ』すら使えないシエスタを馬鹿にする者も多かった。 だが、キュルケ達は違う。 ルイズが死んだ罪悪感からか、それとも純粋にシエスタの『治癒』の力を認めているのか、『フライ』が使えないからといってシエスタを馬鹿にすることは無かった。 キュルケ達と仲の良いシエスタを見て、ある生徒がこんなことを呟いた。 『キュルケは、平民上がりのメイジを飼っている』 その噂は瞬く間に広がり、キュルケとシエスタは侮蔑と好奇の混じった視線に晒された。 だが、元々同姓から羨まれ、恨まれるキュルケは気にしていない。 シエスタもそれがどうしたと言わんばかりの、堂々とした態度でいつもの生活を繰り返している。 そうなると面白くないのは、噂を広めた当人達。 キュルケとシエスタへ向けられていた好奇の視線、それが少なくなるに従って、今度は二人の人気が高まっていった。 姉のように振る舞うキュルケ。 優しい妹のようなシエスタ。 二人の人気を妬む、一部の生徒の『危険な』嫌がらせが実行されるのも、時間の問題だった。 To Be Continued → 25< 目次
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/746.html
夕方になり、ワルドとギーシュが女神の杵に戻ってきた。 ギーシュは、あっちを見てこいこっちを見てこい等と、一日中こき使われたらしい。 「魔法衛士隊は、ばけものだ…」 酒場のテーブルでへばっていたギーシュが、そう呟いた。 「馬鹿ねえ、朝は『魔法衛士隊隊長のお供が出来るなんて幸せだ!』とか言ってたクセに」 「ううう…」 キュルケに言われても何の反論も出来ない、それを見たタバサは相変わらずパジャマ姿のまま読書していた。 しばらくしてから、ワルド、ロングビル、ルイズも酒場へ集まり、明日の予定が話し合われた。 今日ギーシュとワルドが交渉したおかげで、朝一番に出航する輸送船でアルビオンに行けることになった。 明日は朝が早いので、遅れたら置いていくと語るワルドに、ギーシュは今日何度目か分からない冷や汗を流した。 そろそろ部屋に戻ろうと、ワルドが立ち上がった時に、酒場の外からガヤガヤと声が聞こえてきた。 ラ・ロシェールの町は宿場町でもあるので、夜中でも人通りはある、しかし何か雰囲気がおかしい。 ワルドに続き、キュルケとタバサもそれに気づいた。 次の瞬間、扉が吹き飛ばされ、軽装鎧を着込んだ男がルイズ達に弓矢を向けた。 突然の事に驚いたのはルイズ達だけではない、この酒場には他の客もいるのだ。 慌てて逃げようとした客達は、弓矢におびえてカウンターの下に隠れている。 ラ・ロシェール中の傭兵が集まっているのではないかと思えるほどの傭兵を前にしては、キュルケ達でも分が悪かった。 テーブルを盾にして矢をしのぎ、魔法で応戦していたが、どうにも勝手が悪い。 傭兵たちは魔法の有効な範囲になかなか入ってこない。 メイジとの戦いに慣れているのか、キュルケ達が応戦しているうちに射程を見極められているようだった。 他の客たちはカウンターの下で震えているのが見える。 「参ったわね…」 ロングビルの言葉に皆がうなずく。 「いいか諸君、このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ成功とされる」 非常事態にもかかわらず本を読んでいたタバサは、ワルドの言葉を聞いて本を閉じた。 そして、ワルドとルイズとロングビルを指さした。 「桟橋」 そしてキュルケと自分とギーシュを指さし 「囮」 と呟く。 ワルドがタバサにタイミングを尋ねると、タバサは今すぐと答えた。 「聞いてのとおりだ。裏口に回る、行くぞ!」 ルイズははキュルケ達を見ると、キュルケはご自慢の赤髪をかきあげ、つまらなそうに唇を尖らせていた。 「危なくなったら逃げなさいよ!」 「何言ってんのよ、もう十分危ない目に遭ってるじゃない」 ルイズがキュルケを心配するが、キュルケは余裕の表情を崩さない。 タバサがルイズを見つめた。 「行って」 ギーシュも薔薇の形をした杖を手に持ちつつ、ルイズを見た。 「こ、これも姫様のため、そして友人のためさ!」 緊張か恐怖のあまり、微妙にろれつが回っていなかったが、そんな虚勢がルイズの心を解きほぐした。 「ねえ、ルイズ。勘違いしないでね?あんたのために囮になるんじゃないんだからね」 「わ、わかってるわよ、か帰ってきたら決着を付けるんだからね!」 ルイズはそう言ってから、キュルケたちにぺこりと頭を下げた。 そんなちぐはぐな態度がおかしくて、震えていたギーシュにも少し余裕が戻る。 ロングビは転がっていた椅子をバリケード状の金属板に練金し、ワルドとルイズを連れて裏口へ急いだ。 通用口から出る頃には、酒場から爆発音が聞こえてきた、陽動が始まったのだろう。 「……始まったみたいね」 先行するワルド、しんがりのロングビルに挟まれて、ルイズが言った。 裏口の方へルイズ達が向かったのを確かめると、キュルケはギーシュに厨房の油をもってくるように命令した。 「じゃあおっぱじめますわよ。ねえギーシュ、厨房に油の入った鍋があるでしょ」 「揚げ物の鍋のことかい?」 「そうよ。それをあなたのゴーレムで取ってきてちょうだい」 「お安い御用だ」 ギーシュはテーブルの陰で杖を振りワルキューレを出す。 ワルキューレは矢を体にめり込ませながら厨房に走り、油の入った鍋を運び出した。 「ギーシュ、それを入り口に向かって投げて」 そう言いながらもキュルケは化粧を直している。 「こんなときに化粧するのか。きみは」 呆れ気味のギーシュがワルキューレを操り、油を酒場の入り口に向かって投げる。 「だって歌劇の始まりよ? 主演女優がすっぴんじゃ、しまらないじゃないの!」 まき散らされた油に向かって、キュルケは杖を振る、油は一気に引火して、酒場の入り口とその周辺に炎を振りまいた。 「花びら」 タバサが短く言うと、風の呪文を詠唱して床に風を起こす。 ギーシュは言われるままに、薔薇の形をした杖から花びらを放ち、風に舞わせた。 「練金」 タバサの指示にハッと気づいたギーシュは、花びらを油に練金する。 色気たっぷりの仕草で呪文を詠唱するキュルケが、再び杖を振るう。 タバサの風が花びらを巻き込み、花びらは油となる、そこにキュルケの放った火球が混ざり、地面を炎が覆い尽くした。 炎は酒場の外にいるる傭兵達にまでからみつき、つい先ほどまで統制のとれていた傭兵達は、一瞬で混乱状態に陥った。 ギーシュは驚いていた、キュルケとタバサの使った魔法はごく基本的な魔法だ。 しかし、火、油、風の三つが、酒場の外を覆う傭兵達を混乱させ、何割かを戦闘不能に陥いらせている。 ルイズは自分の失敗魔法をコントロールすることで、ギーシュとの決闘に勝った。 ギーシュは使い方次第で驚くべき効果を発揮する魔法と、それを効果的に操るキュルケとタバサに尊敬のまなざしを向けた。 そして、自分の無知を恥じつつ、ルイズの無事を案じていた。 その頃ルイズ達は桟橋へ向けて走っていた。 とある建物の間にある長い階段へと駆け込み、脇目もふらず駆け上る。 長い階段を上りきって丘の上に出ると、そこに生えた巨大な樹が四方八方に枝を伸ばしていた。 山ほどもある樹の枝に、船が吊されているのを見て、ロングビルは「急ぎましょう」とルイズに言う。 この樹は内側が空洞になっており、いくつかの階段があった。 ワルドが階段にかけられているプレートから目当てのものを探し、そこを駆け上がる。 途中の踊り場で、ルイズは後ろから近づいてくる何者かの気配に気づいた。 後ろを見ると、ロングビルの後ろに黒い影が近づいている。 ばっ、とロングビルとルイズの頭上を飛び越して、その影はルイズの前に立った。 「ヴァリエール嬢!」 ロングビルの声に反応したルイズが、後ろに飛ぶ。 男はルイズを捕まえようとしたが、ルイズが予想外の反応速度で跳んだのでからぶってしまう。 その隙にロングビルが仮面を付けた男の足下を練金し、足を鉄で拘束する。 「行きなさい!」 ロングビルが叫ぶ、ルイズは無言で頷き、仮面を付けた男の脇を走り抜けようとした。 男は杖を振り呪文を唱えたが、それより一瞬早くルイズの周囲に金属のドームが作られた。 仮面の男が持つ杖から電撃が放たれたが、ドーム状の金属に吸収されて、あっけなく霧散してしまった。 仮面の男は、ロングビルを見た、いや、仮面に隠されてはいるが、その目は明らかにロングビルを睨んでいるのだと分かる。 「土くれのフーケ…貴様、裏切ったか…やはり盗賊は盗賊だな」 「ふん、あんたが何者なのか知らないけどね、あたしは一匹狼が似合ってるのよ」 そう言いながらロングビルは男の周囲を練金し、男を土で包み込んだ。 「貴様!後悔することになるぞ」 「おあいにく様、狙われるのは慣れっこよ」 男は、ベキベキベキベキと嫌な音を立てながら、土の中に消えた。 「ふう…あたし、何やってんだろ」 そう呟くロングビル…いや、土くれのフーケの表情は、貴族をからかっていた時の笑顔とはまるで違う、和やかなものだった。 「まったくだな」 「!?」 ロングビルは、背後から突然聞こえた声に驚いた。 慌てて後ろを振り向くと、そこには今死んだはずの、男が杖を向けていた。 呪文を詠唱する間も無いと悟ったロングビルは、踊り場の窓を突き破って外に飛び出す。 フライの呪文で体勢を立て直そうとするが、仮面の男はそれよりも早く外に飛び出て、ロングビルに杖を向ける。 「『ライトニング・クラウド』!」 バチン、と男の周囲で空気が弾ける音が鳴り、次の瞬間、ロングビルの体を電撃が走っていた。 「ッあああァァあァアアあッ!」 電撃による衝撃で意識を失い、ロングビルは地面に落ちるかと思われたが、仮面の男はロングビルをゆっくりと地面に着地させた。 そして、ふと『女神の杵』の方を見る。 既に傭兵達を倒したであろう三人が、ロングビルの後を追ってくるのは想像に難くない。 仮面の男は、懐から掌に収まる程度の箱を取り出すと、うつぶせに倒れたロングビルと地面の間に挟み、短く練金の呪文を唱えた。 小さな箱から、カチリ、と不吉な音が鳴った。 ---- #center{[[前へ 奇妙なルイズ-19]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-21]]}
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/377.html
ルイズがルイズを召喚した。 何の冗談と思われるかもしれないが事実だ。 サモン・サーヴァントの直後、召喚したルイズと召喚されたルイズは凄まじい舌戦を始め、周りの人間を呆れさせた。 曰く、私が召喚したんだから、あんたが使い魔になりなさい! 曰く、私だって召喚してたらあなたが前にいたの。そっちが使い魔になりなさい! 『うるさいうるさいうるさい!』 喧々囂々、余りの勢いにクラスメイトも流石に引いた。 結局、教師の取り成しで何とか契約までこぎつけたものの、二人の仲は最悪だった。 まさに近親憎悪である。 召喚以来毎日喧嘩の絶えなかった二人のルイズだが、ある出来事を境にそれも止んだ。 青銅のギーシュとの決闘である。 二股を働いたギーシュを咎めた召喚主ルイズに対し、「ゼロ」と暴言を吐いたギーシュ。 怒り狂う主を目にした使い魔ルイズも、文字通り他人事ではないため同調する。 この時、二人のルイズの心は一つになった。 結局使い魔の方がギーシュに決闘を申し込んだ。 貴族同士の決闘は禁止されているのだが 使い魔は「ここには私が貴族として帰る家が無い。つまり今の私は貴族とはいえない」 そう苦渋の表情で語り、ならばと勝負する事になる。 青銅のゴーレムに苦戦するも、土壇場でガンダールヴの力を発揮し、ギーシュを下した使い魔。 それを機に、二人はどんどん仲が良くなっていった。 やはり同一人物ということもあるのか、彼女らの息はぴったりだった。 それ以降、二人は次々と難事件を解決していくが、婚約者ワルドが裏切った時点で使い魔の様子がおかしくなってきた。 日に日に口数の少なくなっていく使い魔。 仲の良かった使用人の少女にはこう漏らしていたらしい。 私の世界は今どうなっているのだろうか、と。 使い魔の不安は開戦直後より決定的なものとなった。 アルビオンの旗艦をダブル・エクスプロージョンで破壊し、大喜びする主とは裏腹に使い魔の表情は暗い。 どうしたのかと問う主にも、何でもないとしか答えない使い魔。 その時、運命は分かたれた。 ★☆★☆★ 「大人しく始祖の祈祷書を渡しなさい」 ある日突然、使い魔が主に魔剣デルフリンガーの切っ先を向けた。 主には何が起こったか分からない。 「私は私の世界に戻らなければならないの。一刻も早く。 戦争で皆が死ぬ前に。家族を守るために」 悲壮な表情で、しかし全く迷いの見れない様子で使い魔は言い放つ。 「帰る方法は私が探してあげるわ!」 「一体それはいつ? 祈祷書は持ち主が必要としたときにしか呪文が現れない。 もし帰る方法が虚無にあったとしたら、今のままでは帰れない。あなたは私を必要としているもの。 そして漸く『ここ』の問題を解決して、私を帰してもいいとあなたが思った頃には、私の世界は滅びているかもしれない。 だから、帰るためには私が祈祷書を使う必要があるの。 虚無で帰れなかったとしても、私は別の方法を探しにここを出るわ。もう、あなたの都合なんて知らない」 決意を胸に秘めた使い魔と、覚悟を持つ事が出来ない主。 二人の未来や如何に。 ~嘘予告~ 二人はルイキュア