約 1,435,365 件
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/460.html
autolink() ZM/W03-106 カード名:意地っ張りなルイズ カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:1 トリガー:1 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【起】[あなたの《使い魔》?のキャラを2枚レストする]あなたは自分のキャラを1枚選び、そのターン中、ソウルを+1。 いいわよ、あんなヤツ! ぜんぜんわかってくれないんだもん… レアリティ:PR illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 2008年9月ショップ大会 参加賞 カード公開当初はレストする枚数が1枚だと思われていたが、実は2枚だった。 ノンコストとはいえ後列2枚レストではソウルパンプできる対象は精々1枚。 元々《使い魔》のカードは少ない上、後列で使えるカードはプールが少なく、使い辛い。 とはいえ、上手く使えばキャンセルされない限りノンコストで毎ターン与えるダメージが1づつ増え、 同レベル戦時ならばサイドアタックが通るようになると考えれば悪くはない。 ただし、本人のサイズは1/1手札アンコ+能力1つ持ちや最近多くなってきた1/0能力持ちと同じ程度であるため、やはり採用率は低いだろう。 ・関連ページ 「ルイズ」? 《使い魔》?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2046.html
アルビオンで王党派が敗北したその日のうちに、ニューカッスル落城の知らせがトリステインに届けられた。 当時、アンリエッタに近づくことすら許されなかったアニエスは、王族が用いるユニコーンの警備を任されていた。 そこに、息を切らせて走ってくる者がいた、女王に即位する前の、お姫様だった頃のアンリエッタだ。 足を泥だらけにして、アンリエッタが血相を変えて走り寄ってくるのだ、アニエスでなくても驚いたことだろう。 「姫殿下!?」 「はあっ、はぁ、ユニコーンを!ユニコーンを出しなさい!」 アニエスは、アンリエッタを落ち着かせようとして、扉の前に立ちはだかった。 「殿下、姫様、落ち着いて下さい!」 「どきなさい!アルビオンに、アルビオンに行くの!」 アニエスは、思もしない力で突き飛ばされ、しりもちをついた。 その隙にアンリエッタは『アンロック』で鎖のついた鍵を開け、かんぬきを魔法で持ち上げて地面に投げ捨てた。 ギィ…と音を立て、重厚な扉が開かれる、藁束の上に座っているユニコーンを見つけると、アンリエッタはその背に飛び乗った。 「立って!…どうしたの!立ちなさい!…どうして、どうしてなのですか…どうして私の言うことを聞いてくれないの……!」 ユニコーンはアンリエッタを背に乗せても、黙って座り込んだまま微動だにしなかった。 まるでアンリエッタの愚行を諭すように、沈黙を保っていた。 王党派の敗北を聞いたからといって、ココまで取り乱すのは余程の理由があるのだろう。 そう考えたアニエスはある点に思い当たった、確かウェールズ皇太子はアンリエッタの従兄弟に当たるはずだ。 肉親としての情がアンリエッタを取り乱させたのだろうか? いや、きっとそれ以上に強い『情』があったのだ、殺された恋人の敵討ちをする女傭兵がいたと聞いたことがある。 アニエスはアンリエッタを見て、内心でほくそ笑んだ。 もしかしたら『いい気味だ』と思っていたかもしれない。 「姫殿下、どうか心を静めて下さ…」 泣き崩れたアンリエッタに近づき、アニエスが手をさしのべた、だがその手を切り裂くようなアンリエッタの視線に射抜かれ、アニエスは呼吸を忘れ体を硬直させた。 まるで自分以外の全てを恨むような、復讐者の目つき……アニエスはたじろぎつつも、アンリエッタに手を伸ばした。 アンリエッタはアニエスから視線を外すと、アニエスの手を掴んでユニコーンの背から降りた。 「…心配をかけてしまいました、貴方の名をお聞かせ下さるかしら」 アニエスは跪き、自分を卑しい粉ひき娘ミランだと名乗った、それは『姫は卑しい者の手を取った』と、逆説的にアンリエッタを皮肉ろうと思ったからだ。 「まあ、貴方が?噂は聞いておりますわ、とても優秀な方だと聞いております。さ、顔をお上げになって」 「もったいなきお言葉でございます」 アニエスはポーカーフェイスで答えたつもりだが、内心の疑問が表情に出る寸前でもあった。 優秀とはいったいどういうことだろうか、自分はこの宮殿の中で、貴族に好印象など持たれていないはずだ。 「私はただ、建物の前で立ちつくすだけでございますから」 「そんなことはないわ、貴族に嫌われて噂されるんですもの。足を引っ張るばかりの大臣達が、平民一人の噂に踊らされるなんて、なかなかありませんわ。わたくし、一度貴方にお会いしてみたかったのよ」 「噂…でございますか」 アニエスがアンリエッタの顔を見上げた、噂とは何だろう、純粋な疑問だった。 「アニエス、貴方がメイジ殺しだと言うのは、本当ですか?」 「!!!」 おもわず息を呑んだ。 この姫の意図が理解できなかったが、一つだけ直感めいたものを感じた。 それはつまり、恨み、憎しみといった類の物だ。 その後アニエスは、魔法衛士に連れられていくアンリエッタを、跪いて見送った。 アニエスはいけすかない貴族の男から、姫様を危険な目に遭わせるとは何事かと呵られた後、アンリエッタから秘密裏に呼び出しを受け、銃士隊の構想を告げられた。 結局、ウェールズと再会し、死んだと思われていたルイズとも裁可したことで、アンリエッタは急速に精神的なバランスを取り戻したのだろうが… 王党派全滅の知らせは、アンリエッタを短い間だけでも狂気に走らせたのだ。 あの復讐者としての瞳を、自分と同じ狂気に満ちた瞳を、アニエスは忘れられなかった。 場面は変わり『ねずみ取り』の夜。 そうそうたる殿様方の屋敷が並ぶ高級住宅街、その一角にリッシュモンの屋敷がある。 今から二十年近く前に建てられた屋敷で、高級住宅街の中でもひときわ大きく、どれほどの贅を尽くしているのか想像もつかない。 その屋敷を目指して、雨の中馬を走らせる人物がいた、アニエスである。 アニエスはリッシュモンの館に近づくと、正門の前で馬を下り、門を叩いた。 門についた小さな窓が開かれ、中からカンテラを翳した使用人が顔を見せる。 「どなたでしょう?」 「女王陛下の銃士隊、アニエスが参ったとリッシュモン殿にお伝え願います」 「このような時間に、ですか?」 使用人は訝しげに聞き返したが、アニエスは凛とした表情を崩すことなく言い返した。 「急報です。急ぎ取り次ぎをねがいます」 使用人は首をひねりつつ奥へと消えていった、しばらくすると、ゴトンと重い音がして、門の内側でかんぬきが外された。 アニエスは手綱を使用人に預けると、屋敷の中へと歩いていくと、別の使用人が現れてアニエスを暖炉のある居間へと案内した。 しばらく待つと、寝巻きの上にガウンを羽織ったリッシュモンが現れ、テーブルを挟んで向かい側のソファに座った。 「高等法院長を叩き起こすからには、よほどの事件なのだろうな」 アニエスは長い剣をソファに立てかけ、腰に銃を下げているが、リッシュモンはそれを気にせず、アニエスを見下した態度で話しかけた。 「女王陛下と、ウェールズ皇太子殿下が、お消えになりました」 リッシュモンの眉がピクリと動き、僅かに身を乗り出すようにしてアニエスの顔を視る。 「何者かにかどわかされたのか? それとも、皇太子がらみか?」 「現在調査中です」 リッシュモンは自身の顎を右手で撫でると、うーむ、と唸って視線を下げた。 「なるほど大事件だ……。うむ、なるほど。してそれはいつ確認された?」 「女王陛下は本日午後、練兵場を視察されておりましたが、その帰りの馬車から忽然と姿を消してしまいました。ほぼ同じ頃、執務室に書類を届けようとした女官が皇太子殿下の姿がどこにも見えぬと言って、警備兵に問い合わせております」 「当直の護衛は?」 「我ら、銃士隊でございます」 ぎろりと、リッシュモンがアニエスを睨む。 「君たちか、ふん、無能を証明するために新設されたのかね銃士隊は」 女王陛下が誘拐されたというのに、リッシュモンは悠長に皮肉を言って、アニエスを睨んだ。 「汚名をすすぐべく、全力をあげての捜査中であります」 アニエスが怯むことなく言い返すと、リッシュモンは机をドンと叩いて叫んだ。 「だから申し上げたのだ! 剣や銃など、杖の前ではおもちゃに過ぎん! 平民など数だがあっても、一人のメイジの代わりにもならぬ!」 怯えることなくアニエスはリッシュモンを見つめている、一瞬の静寂の後、アニエスは相変わらず落ち着いた口調で呟いた。 「戒厳令の許可を、街道と港の封鎖許可をいただきたく存じます」 リッシュモンが杖を振ると、羊皮紙とペンが手元に飛んできた、リッシュモンは羊皮紙に戒厳令の旨を書き留めるとアニエスに手渡す。 「全力をあげて陛下を捜し出せ!見つからぬ場合は貴様ら銃士隊など、法院の名にかけて全員縛り首だ。そう思え」 羊皮紙を受け取ったアニエスは、退出しようとしてドアのノブに手をかけ、立ち止まった。 「何だ、早く戒厳令を敷かんか」 「閣下は……」 まるで怒りを押し殺すような、僅かに震えた声でアニエスが声を絞り出した。 「二十年前の、〝ダングルテールの虐殺〟は、閣下が立件なさったとか」 「虐殺? ふん、人聞きの悪いことを言うな。アングル地方の平民どもは国家を転覆させんと企てていた、言わば正当な鎮圧任務だ。昔話などあとにしろ」 それを聞くと、アニエスは無言で退出していった。 音もなく閉じた扉を見つめ、なにやら考え事をしていたリッシュモンだったが、何かを思いつくと羊皮紙とペンを再び取り出して、慌てたように何かを記していった。 屋敷の外に出たアニエスが、使用人に預けていた馬を受けとると、馬につけた道具袋の中から黒いローブを取り出した。 極薄になめされた革のローブは、雨をほとんど通さない。 アニエスはローブの中で、慣れた手つきで拳銃に火薬を入れていった。 ふと途中で動きを止め、改めて火薬と撃鉄の動きを確認し、火蓋を閉じてベルトに挟む。 アニエスが用いているのは火打ち石を利用した新式の拳銃であり、今までとは装填にかかる手間が段違いに少ない。 長剣を背負い、戦いの仕度が整うと、アニスは馬に跨って雨の中を進んでいった。 途中、背中の剣がひとりでにカタカタと揺れだして、まるで耳元で囁くような声を出してきた。 『尾行はされてないぜ』 アニエスが背負っているのは、ルイズから預けられたデルフリンガーであった。 『あ、ワルドが近くにいるぜ、たぶんその先の路地に隠れてる』 無言のまま、アニエスは馬を進めていく。 路地の脇を通り過ぎた時、雨が降っているにもかかわらず、足音も立てずに近づく気配があった。 ちらりと脇を視ると、そこには魔法で水を避け、足音をも消しているワルドの姿があった。 「正午から、リッシュモンと、料理人が二人、使用人が一人出入りしている。街の衛兵の動きはこちらの住宅街に伝わっていないようだ」 アニエスにだけ聞こえるよう、ワルドが呟く。 ワルドは昼ごろからリッシュモンの屋敷を見張っていたが、リッシュモンと組んで金を動かしている商人の姿は見えなかったようだ。 「引き続き監視を頼む」 アニエスが小声で呟くと、ワルドは音もなく夜の闇に消えていった。 『しかしまあ、妙なもんだね』 「何がだ」 何かを不思議そうに感じているのか、人間ならため息混じりであろうデルフリンガーの呟きに、アニエスが小声で聞き返した。 『あのプライドの固まりみたいな貴族が、アンタの言うことを聞いてるんだもんよ』 「なりふりを構っていられないのさ、私も、子爵も……」 『そしてリッシュモンも、ってか?』 「だといいがな……」 アニエスは自嘲気味に呟いてから、手綱を強く握りしめて背筋を正した。 目前に迫った復讐の機会を逃すまいとして、気を引き締めたアニエスの表情から、既に笑みが消えていた。 『魅惑の妖精亭』の屋根裏部屋で、アンリエッタ、ルイズ、ウェールズの三人が体を休めていた。 アンリエッタはアニエスの手引きで脱出し、ウェールズはルイズの手引きで王宮を脱出した。 昨日、アニエスから指定された場所で合流すると、アニエスは王宮へと戻っていった。 ルイズはアンリエッタとウェールズを引き連れ、『イリュージョン』を駆使して城下町を移動し、魅惑の妖精亭へとたどり着いたのだ。 王宮では今頃、行方不明になった二人を捜し出すため、蜂の巣を突っついたような大騒ぎになっている頃だろう。 椅子に座ったルイズは、ベッドに腰掛けているアンリエッタとウェールズを睨んでいた。 心なしか、その目には批難の色が浮かんでいる。 アンリエッタとウェールズは、時々お互いの目を合わせては頬を染めて、微笑み合っては頬を染めて視線を逸らし、また見つめ合って、お互いの手を握りしめている。 ルイズはちょっとだけ仲間はずれ気分を味わっていた。 子供の頃、アンリエッタの遊び相手を務めていたルイズには、一つだけ心当たりがある、『愛の逃避行ごっこ』と称して王宮内で隠れん坊をしたのだ。 幼少のアンリエッタにはラ・ポルトという従者がおり、アンリエッタの教育係でもあった。 そんな彼を『追っ手』と称し、ルイズとアンリエッタは王宮内で『愛の逃避行』をしていたのだ。 今のアンリエッタとウェールズは、まさに『愛の逃避行』を彷彿とさせるシチュエーションであった。 頬を染める二人を見て、ルイズは長い長いため息をついた。 「それにしても…」 アンリエッタの声に気付き、ルイズが顔を上げた。 「アニエスが『ルイズは変装してる』と言うから、どんな意外な姿をしてるのかと思ったけど、予想したとおりだったわ、一目でルイズだと解りましたもの」 ルイズはきょとんとして自分の顔をぺたぺたと触った、ルイズの顔は骨格にも手を加えており、一目でルイズだとわかるはずがないのだ。 「……参考までに、どうして私だと解ったのか教えて欲しいわ」 相変わらず微笑んだままのアンリエッタは、よく見るとルイズの顔ではなく、ルイズの胸を注視していた。 「ルイズなら、私と同じサイズに膨らますと思ったの。三年前の園遊会の時、影武者をルイズに頼みましたよね?。あの時のことは今でも時々思い出すわ」 ルイズの頬が引きつり、不自然な笑顔になる。 「貴方に影武者を頼んだとき、服を交換しましたよね? あの時ルイズったら私の胸を鷲づかみにして『ちょっとぐらい分けてくれてもいいじゃない』とか……」 ルイズが両拳を握りしめる、ミシミシと骨のきしむ音が聞こえてくるのは、気のせいではないだろう。 「ゴホン! あー…その、そろそろ本題に入りたいんだが」 ウェールズが話を進めようとして、わざとらしく咳をする。 アンリエッタはウェールズの顔をきょとんとした表情で見つめ、一瞬遅れて顔を真っ赤にした。 自分がどれだけ恥ずかしいことを喋っていたのか気がついたのだろう、ウェールズもアンリエッタとルイズが繰り広げる百合百合な昔話を聞いて、顔を真っ赤にしていた。 「「…………」」 顔を赤くしてお互いを見つめあう二人は、しばらくしてから気まずそうに視線を逸らした。 そんな二人を見ていたルイズは、目の前で繰り広げられた若々しいカップルのやりとりに言い様のない疎外感を感じていた。 ふと、ルイズの姉であるエレオノールの姿が思い浮かんだ。 彼女はこれまでに何度も婚約と破談を繰り返しており、三十才を目前に控えていながらまだ一度も結婚していない。 魔法学院やアカデミーの後輩が結婚したと聞く度に、エレオノールは不機嫌になりルイズの頬をつねった。 『アタシが独身だからって見せつけやがって…!』 およそ貴族らしからぬ口調で、同級生の結婚式をうらやむ姉を思い出し、ルイズはちょっとだけ姉に同情した。 「ところで、リッシュモンの裏は取れたの?」 場の雰囲気を変えるべく、ルイズが唐突に口を開く。 アンリエッタは慌てて居住まいを正し、わざとらしくコホンと小さな咳払いをした。 「リッシュモンの経済状況を調査ましたが…かなりの額の賄賂が流れています。その額はおよそ7万エキュー。それだけではありません、彼を高等法院へと押し上げた決定的な資料がロマリアからの物だったのですわ」 「ロマリア?」 ルイズが聞き返すと、ウェールズが口を開いた。 「ダングルテールの虐殺事件については、以前少しだけ説明したね」 「覚えているわ、疫病が流行ったという理由で村人ごと焼き尽くされた村よね。新教の流布でロマリアに睨まれて…」 そこまで言って、ルイズは目を見開き、ごくりとツバを飲みこんだ。 アンリエッタはちらりとウェールズを見た、ウェールズは少し俯いていたが、その表情はいつになく厳しいものだった。 「君の想像している通りだ。ダングルテールの大虐殺は、先代のロマリア法皇が暗に示唆したと言われる『新教徒狩り』と見て間違いはない」 ウェールズの言葉を、アンリエッタがひきつぐ。 「あの村を焼き尽くせと命じたのはリッシュモンです。疫病を未然に防いだとして彼はロマリアからも感謝状を頂き、高等法院を司ることになったのです」 ルイズは、誰とも視線を合わせず、床をじっと見つめていた。 その表情はどこか寂しげだが、怒りが噴出するのをこらえているようにも見えた。 「…感謝状ぐらいで彼を高等法院に推薦したの?」 小声で呟いたルイズに、アンリエッタが首を横に振る。 「当時、マザリーニは小国であるトリステインを守るため必死になって外交、内政に尽力していましたが……。卿にとってロマリアからの感謝状は、推薦状と呼ぶより命令書のようなものなのです。」 「あの枢機卿でも、ロマリアには弱いのね。 …でも仕方ないか、枢機卿の立場を保証してくれるのはロマリアだものね」 「マザリーニには『苦渋の決断でした』と言っていたわ。リッシュモンを大臣にすれば国政の中枢に近づけてしまいます。それを防ぐために彼を高等法院へ送り、あえて私財を蓄えさせ、尻尾を出すのを待っていたんですって」 ルイズは顔を上げて、アンリエッタとウェールズを交互に見る。 ウェールズは苦笑いを浮かべてルイズの顔を見返した。 「枢機卿は、冷たいように見えて、なかなか熱い人物だよ。ダングルテールの虐殺は、トリステインの格を落とす重大な事件だと、憤慨していたのだからね」 「あの枢機卿が怒る姿なんて見たこと無いわ」 ルイズがそう言うと、ウェールズはルイズと同じように両腕を胸の前で組み、ぐっと力を込めた。 「君と同じように、彼も両腕を組んで、眉をひそめるんだ。怒りをこらえるようにね」 胸の前で組んでいた腕から、ミシリと骨のきしむ音が聞こえた。 二人はルイズの手を見る、すると、指先が腕の皮膚を突き破り腕の筋肉へとめり込んでいた。 「怒りをこらえる…そうよ、私だけじゃない。枢機卿も、そしてアニエスも爆発しそうな怒りをこらえていたと思うわ」 ルイズは自分への怒りを何度もこらえている、石仮面を召喚したのは自分。被ったのも自分。死を偽装したのも自分。自分の怒りにはやり場がない、すべて自分の責任だから。 だがアニエスはどうだろう、怒りの矛先を目の当たりにしたとき、彼女はどんな行動に出るのだろうか、信用しているつもりだが、少し不安が残る。 ルイズが思考の海に沈みかけたところで、部屋の扉がノックされた。 『サイレント』のかけられた部屋にノックの音は響かないが、ルイズは壁に背中を預けて振動を聞いていた。 ルイズは二人に「仲間が来たわ」と告げると、おもむろに部屋の扉を開けた。 部屋に入ってきた二人を見て、ウェールズとアンリエッタは「えっ」と驚きの声を上げた。 一人は、ウェールズにとって因縁浅からぬワルド子爵だった、だが彼の登場は予想の範囲内なので、それほどの驚きではない。 もう一人が問題なのだ、ワルドに続いて顔を見せたのは、ウェールズにとっては馴染みの深い女性、マチルダ・オブ・サウスゴータだった。 「ミス・マチルダ。君も協力してくれるのか? しかし、なぜ…」 ウェールズが名前を呟くが、マチルダは不機嫌そうに顔を背けるばかりで、何も言わない。 アンリエッタも困惑しているのか、ちらちらとルイズの表情を伺っている。 ルイズは悪戯が成功した子供のように微笑むばかりで、何も言おうとしない。 ルイズとマチルダの接点は、魔法学院ぐらいしか思いつかない。 しかし、魔法学院の秘書とルイズが、いったいどんな経緯で知り合うこととなり、今回のねずみ取り作戦に協力するのか、まったく理解できない。 ウェールズとアンリエッタが困惑しているのを見て、ルイズは満足げに頷き、口を開いた。 「紹介するわ。ご存じの通りこちらはワルド子爵。そしてこっちはミス・ロングビル。またの名を『土くれのフーケ』よ」 アンリエッタとウェールズは、口を半開きにして唖然としている。 そんな二人の様子を見て、ルイズはくすくすと笑い出した。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/320.html
「おお、来おったか、ミス・ヴァリエール」 ルイズは、オールド・オスマンに呼び出されて、学院長室にいる。 呼び出された理由は決闘以外のなにものでもない。 「さて…、今日はヴェストリの広場が妙に騒がしかったの」 「………」 ルイズは答えない、いや、答えられない。そもそもルイズとギーシュの決闘という事であれば、ルイズとギーシュが責任を取らせられるが、あのメイドに責任の余波が及んでしまっては自分のしたことの意味がないからだ。 「そこにある遠見の鏡で見させて貰ったぞ」 「はい…」 力なく答えるルイズ。しかし、そんなルイズを見たオスマン氏は楽しそうに笑い出した。 「ほっほっほ、見事じゃった、ミス・ヴァリエール。これであの小僧も少しは反省するじゃろうて」 その言葉に驚いたルイズは、はい、とだけ答えた。 「遠見の鏡と言ってもな、ある程度は声も伝えられるんじゃ。この喧嘩の原因はギーシュの二股ではなく、メイドの…確かシエスタと言ったかの、その娘が原因のようじゃな」 「はい、ですが」 「それ以上言わんでいい。あの娘はメイドとしての義務を果たしただけじゃ。この学院の人事に関する決定権は女王陛下からワシが賜ったものじゃ。生徒が騒いだぐらいでメイドを路頭に迷わすようなことはせんよ」 「ほ、本当ですか!…ありがとうございます」 学園長のオールド・オスマンは、齢300とも言われる偉大なメイジであり、あらゆる立場の者達に分け隔て無く接する貴族だとも噂される。 格式や血統を重視する貴族達の中では珍しい存在だが、正直ここまで暖かい言葉をかけられるとは思っても居なかった。 「それにあの娘もあと五年…いや二年もすればムッチムチのプリンプリンに…」 訂正しよう、平民相手にも貴族相手にも見境のないエロジジイだ。たぶん。 ルイズの軽蔑するような視線に気づいたのか、オホン、と咳払いをして居住まいを正した。 「さて本題に入ろう。アンリエッタ姫殿下が近々この学院を訪問なさるそうじゃ」 「えっ!姫殿下が…」 「そうじゃ、姫殿下は今近隣の領地を視察されておっての、こ視察の締めくくりとしてこの学園に訪問される。そこで『使い魔の品評会』を開こうと言うんじゃが…」 ゴクリ、とルイズののどが鳴る。 「王家からの使いの方が言うには、欠席は認められないそうじゃ」 ルイズの肩に、久しく感じていないプレッシャーが重みとなって感じられた。 欠席は認められない。メイジとして使い魔が居ないというのは、非常に不名誉なことだ。姫殿下の前で一人だけ使い魔のいない姿を晒すのは何としてでも避けたい。 「具体的な予定はまだ決まってはおらんし、中止の可能性もある。順調なら十日後あたりに朝食で発表され、その翌日か翌々日あたりにでも開催されるじゃろう」 オスマン氏はじっとルイズの顔を見た。真面目な表情のオスマン氏を見るのは珍しい。普段はくだらない冗談を言ったりしている。生徒達にも「本当に偉大なメイジなのか」と疑問を持つ人も少なくない。 しかし目の前に居るオスマン氏は間違いなくメイジの、貴族の顔だ。 これにはルイズも緊張して、体を硬直させてしまった。 「ほっほっほ、まあメイジには特性があるしのう。今は精一杯がんばりなさい」 そう言って笑うオスマン氏の顔は、同一人物とは思えないほど和やかだった。 話が終わり学院長室を出ようとしたルイズだが、オスマン氏が何か思い出したかのように「ああ、そういえば」とつぶやき、ルイズを引き留めた。 「ミス・ヴァリエール。ところで女子寮の中で何か変わったことは起きておらんかね」 「え? いえ、特には…」 「ふむ、それならいいんじゃ。行ってよろしい」 オスマン氏の言葉に何か腑に落ちないものを感じつつ、ルイズは学院長室を後にした。 夜中。 キュルケから差し入れられた『ゲルマニア特性冷え性に効く特効薬』を、 半ば無理矢理飲ませられたタバサは、いつもなら眠っている時間に目が覚めた。 尿意だ。 眠い目をこすって部屋を出て、寝間着のままお手洗いに向かう。 廊下を歩く途中、何かが揺らめいたように見えた。 「…?」 よく目をこらして見ると、身長2メイルほどの白い人影が、ぼんやりと浮かび、消えた。 そしてその翌日から、女子寮では小物が紛失するといった事件が多発するようになる。 余談だが 人影を見た翌日、タバサはなぜか下着を二枚く洗濯していたとか。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1607.html
ルイズは、トリステインの宮殿にある馬舎で、吸血馬の世話をしていた。 胴体に結びつけていた皮の袋を取り外し、ニューカッスル城から持ち帰った宝物類を確認する。 吸血馬とはいえ、馬には違いない、ブラッシングをして毛並みを整えると嬉しそうに鳴いた。 「ブルルルル…」 「よしよし、綺麗になったわよ。綺麗な栗毛かと思ったけど、光の加減で漆黒に輝くのね」 一通り手入れを終えると、ルイズは傍らに置かれていた木製のバケツを持ち上げた。 人間の胴が二つ三つは入るであろうそのバケツは、ルイズと吸血馬共通の食事でもあった。 「今日は豚の血ね、美味しかった?」 「グルルル…」 「そう、満足したの?ふふ…そうね、牛よりもしつこい味じゃないものね」 『血に味なんてあるのかね』 「あら、デルフは何人も斬ってるじゃない、味の違いぐらいわかるでしょう?」 『おいおい、いくら俺様だって、味まではわからねえよ』 「血の味はわからなくても、あんたの切れ味は私が保証してあげるわ」 『そりゃどーも』 吸血鬼となったルイズは、人間と同じ食べ物を食べているが、時々血が飲みたくなる。 だが、血を飲んでいる姿を見られるのは不味いので、バケツに指を入れて、指先からこっそり血を吸っていた。 宮殿の馬舎とはいえど、その扱いはあまり高くはない。 高級貴族は馬車を引かせるのに馬ではなく、ドラゴンやユニコーン、グリフォンなどを使うことが多く、馬はどちらかといえば下級貴族と平民御用達であった。 魔法衛士隊のマンティコア、グリフォン、ドラゴンと違って、馬舎は宮殿のもっとも外側に作られていた。 アンリエッタは、ルイズの連れてきた吸血馬をユニコーンの隣で世話しても良いと言ってくれたが、ユニコーンが怖がるかもしれないので遠慮している。 吸血馬がアルビオンで敵陣を突破したとき、ドラゴンを踏みつぶしマンティコアをはじき飛ばすという荒技をやってのけたのだ。 吸血鬼化と、ルイズの細胞が脳を浸食している影響で、吸血馬の知能はかなり高くなっているが、それでもユニコーンと同列に並べるのは気が引けた。 「精が出ますな」 と、そこに背後から声をかけられた。 ルイズも吸血馬も、この者の接近に気が付いていたので特に驚かない。 「ええ、私の自慢の馬よ」 ルイズが答えながら振り向くと、そこには口ひげをいじりながら馬を見つめる、痩せぎすの男がいた。 「ウェールズ皇太子は、この馬に乗って敵陣を突破されたとか」 「ウェールズはもう陛下ではなくて?」 「正式に戴冠式を済ませておりませぬ、故に、かの人は亡国の王子でございましょう」 ルイズは、男の顔を見つめた。 丸い帽子に、灰色のローブ、年齢は40だと聞いているが、それよりも10歳は老けて見える。 アンリエッタの父、つまりはトリステインの先帝亡き後、外交と内政を引き受け、重責を一身に背負った男であり、トリステインを実質的に動かす男、マザリーニ枢機卿である。 「それもそうね、ま、私は義理で陛下と呼ばせて貰うけど…ところで、枢機卿がこんな所に来ていいのかしら」 「一度、ドラゴンを踏みつぶしたという馬を見てみたくなりましてな、正直普通の馬よりも一回り大きい馬が、そこまで並はずれた活躍をするとは」 「この子は普通じゃないわ」 「?」 「私と同じよ」 「…なるほど」 マザリーニ枢機卿は、ルイズが吸血鬼であると知っている数少ない人物であった。 「後ほど、四人で会議を開きます、場所はウェールズ皇太子の…」 「解ったわ」 マザリーニは伝えることを伝えると、早々に馬舎を出て行った。 『なー、あいつ枢機卿なのか?』 「そうよ、マザリーニ枢機卿、けっこうな切れ者だと聞いてるわ、平民の血が混じってるとかで貴族はあまり彼に好意的じゃないけどね」 『おめーも元は貴族じゃんか、それにしては随分あいつに好意的だな』 「あら、解る?」 『まあな、勘ってやつよ』 「インテリジェンスソードの勘ねえ…まあ、否定はしないわよ、以前の私はマザリーニ枢機卿と聞いただけけで嫌悪感を感じたわ」 『へえ』 「今は違うわよ。宮殿に滞在してわかったけど、あれほどの苦労人そうは居ないと思うわ」 『苦労人ねえ』 「たぶん枢機卿は…王族を奉り、トリステインを安定に保つことが自分の役割だと思ってるんでしょうね」 『ずいぶん肩をもつねえ、嬢ちゃん、あの男の何処がそんなに気に入ったんだよ』 「気に入ってる?私が?枢機卿を?…そうね、気に入ってるわよ」 「大勢の貴族に嫌われながら堂々としていられるなんて、見事という他ないわ」 ルイズは、魔法学院でゼロと揶揄されていた頃を、思い出していた。 その日の夜。 マザリーニ枢機卿、アンリエッタ、ウェールズ、ルイズの四人は、トリステイン宮殿内のとある部屋に集まっていた。 亡命中のウェールズが使うこの部屋は、遠くから運ばせた模様のある石を使って作られており、客室としては広くはないが、その造りはまさに第一級のものであった。 10人は席に着けそうなテーブルを、四人で囲む。 アンリエッタが奥の席、ウェールズはアンリエッタから見て右、マザリーニは正面、ルイズは左側だった。 マザリーニがルイズに向かって質問する。 「それで、吸血鬼になったという原因は?」 「サモン・サーヴァントで呼び出した石仮面を被って吸血鬼になった…それは確実よ、でも粉々に砕いてしまったから…」 「石の仮面か…そのようなものが召喚されたという記録は、私の知る限りでは無いな」 ウェールズが呟くと、マザリーニも頷いた。 「でも、マジックアイテムを召喚した例は他にもあるのではありませんか?」 アンリエッタの言葉には、ルイズが答えた。 「どれも眉唾物よ…でも、昔書物が召喚されたという話はあったわね」 「『召喚されし書物』か、あれはハルケギニアでは類を見ない精巧な絵が描かれていると聞いたが、本当だろうか?」 ウェールズの言葉に、皆が考え込む。 公式な記録では、マジックアイテムを召喚してしまった例など、ほぼ残っていない。 使い魔が召喚されるとき、マジックアイテムを持った使い魔が召喚された例はあるらしいが。 「魔法学院か、アカデミーに資料をあたらせましょう」 「…それしか無いのね」 マザリーニのくちから魔法学院という言葉が出て、ルイズはため息をついた。 「貴方が生きているということは伝えません、マジックアイテムの調査…その名目で行きましょう」 「…お願いするわ」 こうして、四人だけの会議は進行していった。 ルイズが吸血鬼になった原因を探ることや、これからルイズの立場をどうしていくかが話し合われていき、深夜に差し掛かったところで議題はアルビオンに移った。 マザリーニがわざとらしく咳払いをしてから、口を開く。 「それでは…次にウェールズ皇太子の処遇ですが」 自分の処遇と聞いて、ウェールズはぴんと姿勢を正したまま答えた。 「私は覚悟しているよ、私がいては、ゲルマニアとの同盟にも影響が出よう」 その姿は堂々たるものだったが、アンリエッタにはそれが辛かった。 「ウェールズ様…」 アンリエッタが、恨めしげにウェールズを見つめる。 それを見ていたルイズは、アンリエッタの様子に違和感を感じた。 泣いて抱きつくぐらいのことはするかと思ったが、今のアンリエッタは涙を流すどころか、『我慢』と『諦め』を感じさせている。 ルイズは、アンリエッタの心情にどんな変化があったのか、不思議で仕方がなかった。 だが、ここでそんな質問をしても仕方がない、ルイズはマザリーニの次の言葉を待った。。 「…亡命は私の一存で受諾することになりましょう、当分の間は身分を隠して頂きますが」 アンリエッタとウェールズが、驚いた表情でマザリーニを見る。 「マザリーニ、それは、本当ですか?」 アンリエッタが問うと、マザリーニはいくつかの書簡を懐から取り出し、テーブルの上に乗せた。 ルイズはおもむろに立ち上がると、書簡を取り上げ、アンリエッタの前へと置いた。 書簡を開き、読み進めていると、そこにはいくつもの驚くべき事が書かれていた。 アンリエッタが従者として重宝しているアニエスは、元はメイジ殺しとして恐れられるほどの傭兵であり、情報収集を得意としている。 書簡はアニエスからアンリエッタに宛てられた報告書だった。 「これは…アルビオンの情勢ですか?」 「アルビオンの?」 アルビオンと聞いて、ウェールズがアンリエッタの書簡に視線を向ける。 アンリエッタはそれに気づき、読み終えた書簡をルイズに渡すと、ルイズはウェールズへと書簡を渡した。 「…これは、なんと…」 内容は、アルビオンを統治する貴族派の横暴が記録されていた。 その殆どが、疎開民からの伝聞であり、事実として扱うには不適切であったが、ウェールズの逆鱗に触れるには十分なものだった。 貴族派の統治は燦々たるもので、農村部、都市部での略奪、見せしめの処刑などが報告されている。 圧政と言うよりは、国民を飢え死にさせようとしている思惑が透けて見えた。 「許せん…!」 怒気をはらんだウェールズの声に、アンリエッタは思わずつばを飲み込んだ。 マザリーニが口を開く。 「その書簡は、ラ・ロシェールで傭兵に紛れて情報収集をしていた、アニエスからのものでございます、今朝早く、フクロウにて届きました」 「アニエスは無事なの?」 アンリエッタがアニエスの無事を心配して、マザリーニに聞くと、マザリーニは静かに頷いた。 「フクロウよりまる一日遅れて、トリステインに到着する予定です」 「そう…彼女には苦労をかけるわ」 先ほどから出てくるアニエスという女性の名前が気になったので、ルイズはウェールズの脇に立ったまま、アニエスとは誰のことなのか聞いた。 「ちょっといいかしら、アニエスって?」 「ああ、ルイズにはまだ伝えてなかったわね。実は…以前から考えていたことなのですけれど、平民だけで構成された部隊を組織するつもりなの」 「平民だけ?」 「ええ…わたくしは、栄えある魔法衛士隊の隊長、ワルド子爵が裏切り、ウェールズ様だけでなくアルビオンの方々を危機に陥らせてしまいました」 アンリエッタの言葉に、ウェールズが続く。 「それでアンリエッタは、メイジが信用できない…と言い出してね」 「まさか、メイジが信用できないという理由だけで平民の部隊を?」 「………お恥ずかしい話ですが、私は、ルイズ、貴方とウェールズ様、それぐらいしか心から気を許せる人がいないのです」 マザリーニ枢機卿は、自分の名前が出てこなかったのを気にする様子もなく、黙っている。 「アニエスは平民ではありますが、その活躍と忠誠心は人一倍だと、私は評価しています。彼女にシュヴァリエを与えて私の侍女にしようと考えたのが始まりですわ」 ルイズは、ふぅとため息をついた。 アンリエッタと再会して解ったことだが、子供の頃と同じように、思いついたことをすぐ実行しようとする悪い癖は抜けていないらしい。 「なるほどね…まあ、信用していた魔法衛士隊の隊長が裏切って、ウェールズを殺そうとしたんだしね…その気持ちはわからなくもないわ」 その言葉に、ウェールズは苦笑する。 自分が殺されそうになったというのに、のんきなものだなと、ルイズは思った。 「私は平民だけの部隊で、姫様の身辺を警護するなど反対ですが…アニエスをはじめとする幾人かの者達は、情報収集に関してはなかなかのものだと考えております」 ルイズは、マザリーニの言葉に驚いた。 噂では、アンリエッタとマザリーニは仲が悪いと聞いていたが、アンリエッタをうまくサポートしているように思えたからだ。 「姫様の身辺警護をさせるのは反対ですが…トリステインに巣くう、言わば『獅子御中の虫』をいぶり出すには、アニエスのような優秀な兵士が必要だと考えております」 と、ここでウェールズが、書簡から気になる点を見つけた。 「…一つ、気になるのだが、王党派の村民が一人残らず貴族派に寝返った…という項目があるが、これは…」 「やはり、そこに目を付けられましたか」 マザリーニがそれについて説明する。 アルビオンのとある集落は、王家に献上する馬を放牧し、管理していた。 その集落は表向きは貴族派についていたが、その実、王党派であった。 王党派の貴族達は彼らを信頼していたが、ある日突然、王党派を裏切ったのだ。 貴族派に情報を流され、ウェールズとは別の部隊が全滅してしまった、それはウェールズにとって真新しい記憶だった。 その集落について、気になる事が書かれていたのだ。 「その集落から脱出した人間によると、村落の人間は皆虚ろな目をしておったそうですな。そして一人の女性が村落の人間に命令を与えていた…」 「強力な『魅惑』?」 マザリーニの言葉に、ルイズが応えた。 「おそらく、そうでしょう」 マザリーニは、強力な『魅惑』のマジックアイテムか、先住魔法によって集落の人間が操られていると考えていた。 「ウェールズ殿下の話では、ニューカッスル城に残った戦力は3百程だったと聞いております、対する貴族派は5万、これは異常なことです」 そう言いながらマザリーニは、書簡の『正気に戻った人間の証言』を指摘した。 「貴族派の内情について証言した男は、元はアルビオンの兵士だったようです。夢を見ていたようだ…と、答えておりました」 ウェールズが口を開く。 「その兵士は、操られていたのが、何かの拍子で元に戻ったのか? …その男は今、どうしているのだ?」 「貴族派を裏切ったものの、今更王党派には戻れないと言って、自殺したそうです」 「………」 部屋に、重たい沈黙が流れた。 しばらくして、会議を締めようと、マザリーニが口を開く。 「とにかく、遅かれ早かれトリステインは攻め込まれるでしょう。ウェールズ殿下の亡命を受け入れようが受け入れまいが、確実に、です」 「…解った、亡命を受諾して頂けるのならば、私はトリステインのために道化を演じる決心もしている、マザリーニ枢機卿、うまくやってくれ」 うつむき加減だったアンリエッタが、顔を上げ、マザリーニを見据えた。 「枢機卿、貴方の思うようにやってください、ウェールズ様と同じように、私も王女として責務を果たしましょう」 「御意に…」 マザリーニが恭しく礼をして、その場はお開きとなった。 その後、ルイズはなぜかマザリーニの執務室にいた。 豪勢な造りではなく、どちらかというとウェールズ皇太子の部屋を思わせる質素な造りだった。 しかし、壁、天井、机、書棚、ソファなどは上質の者ばかりであり、トリステインの貴族主義的、権威主義的な気質が現れている気がした。 「まずは礼を言わせて貰いたい、ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール」 マザリーニは、ルイズと向かい合わせになってソファに座り、ルイズに礼を言った。 「…その名は捨てたと言ったはずよ」 ルイズは、あからさまに不機嫌な顔をしたが、マザリーニは意に介した様子もなく言葉を続けた。 「貴族としてのけじめだと思って頂きたい」 「貴族として?」 「…アンリエッタ姫は、この短期間で、ずいぶんと芯が強くなられた。その原因の一つは貴方の死に様にある」 そうしてマザリーニは淡々と語り始めた。 アンリエッタは、ルイズが『土くれのフーケ』と戦って死んだと知った日から、泣きわめいてばかりだったらしい。 アンリエッタの母、太后マリアンヌもその時ばかりはかなり苦心したらしい。 なにせ娘の唯一の友達が死んでしまったのだから、その時のアンリエッタの取り乱しぶりは相当酷かったそうだ。 「太后マリアンヌ様は、姫様がまるで赤子に戻られたようだと、心中を漏らしておられた。それぐらい貴方の死は衝撃的だったようだ」 「……………」 ルイズはなにも言えなかった。 沈黙するルイズを見て、マザリーニはしばらく間を置いてから、続きを話し始めた。 ウェールズ皇太子に出したという手紙は、マザリーニの知るところではなかったが、予想は付いていたらしい。 アンリエッタがウエールズを好いていることは知っていたが、そのせいでトリステインに被害を被るのは危険だとも考えていた。 だが、アンリエッタがグリフォン隊隊長のワルド子爵に、独断で大使を命じたのは、完全に誤算だった。 アンリエッタが密命を下すとは思っても居なかった上、ワルド子爵が裏切ったというのも予想外だった。 しかし、ルイズの登場で不安は一転したそうだ。 「気づいておられますか?ウェールズ様は、もう何度かアンリエッタ姫殿下を泣かせておられるのですよ」 二人は相思相愛の関係であり、それが原因でゲルマニアとの婚約が破棄されるのが不安材料だった。 しかし、トリステインの城で、ウェールズはアンリエッタに何度も説教したらしい。 それこそアンリエッタが涙を流したのは2度や3度ではない。 「覗き見でもしてたの?」 「そのつもりはありませんが…ウェールズ皇太子のように、重要人物は、部下が絶えず監視しておりますからな」 マザリーニは、ひげを撫でながら言った。 アンリエッタはお姫様として育てられた、言わば政略結婚の材料として育てられたようなものだ。 だが、ルイズが帰ってきたことと、ウェールズに再会できたこと、そしてウェールズによる叱責を受けて、アンリエッタは王女としての『覚悟』を意識し始めたらしい。 「姫様は、内政、外交に気を配られるようになっただけでなく、呵るべき時に呵るべき部下を使うことを意識して下さった、それは私から見れば驚くべき成長なのです」 「なるほどね…」 「ですから、私は『石仮面』殿に一定の信頼を置くのです、しかし、トリステインの敵となるなら、このマザリーニ容赦しません」 「今の私は傭兵、トリステインに縛られるつもりはないわ」 ルイズがマザリーニを睨み付ける。 だが、マザリーニは意に介した様子もない。 「それで結構、もとより、『石仮面』殿に手綱を付けられるとは思ってはいません」 マザリーニの視線は、まるでルイズの瞳を射抜くかのように鋭かった。 ルイズは、心の中で舌打ちした。 マザリーニに舌打ちしたのではなく、むしろ自分の優柔不断さに苛立った。 自由を求める一方で、絆を求めている自分がいる。 絆は時に束縛に変わると解っていても、それでも求めてしまう。 マザリーニの言葉は、自分が、アンリエッタやウェールズのような『ともだち』の側にいられるのではなないかと、淡い期待を抱かせるのだ。 「…ま、アンリエッタとウェールズの敵になるつもりは無いわよ」 ルイズの、必死の強がりだった。 握った手は、汗ばんで、じとっとしていた。 翌日、虚無の曜日。 ルイズは久方ぶりの城下町を楽しんでいた。 フードを深く被り、ブルドンネの大通りを歩く。 久しぶりに見る商店の数々は、ルイズがアルビオンに行く前と変わらず、平和だった。 「懐かしいわね、ねえデルフ、武器屋の店主、また悪どい商売してるんじゃない?ちょっとからかいに行こっか」 『いいねえ!』 前言撤回。 武器屋は平和ではなかった。 前回、土くれのフーケと会った時、小劇場を待ち合わせの場所と決めていたので、劇場に足を運ぶことにした。 劇場は、舞台の明るさに比べて客席は暗く、顔を見るのも難しい。 前から8列目の左から2番目、そこがルイズが指定した席だった。 客はまばらで、ざっと見た感じでは20人ほどしか座っていない、よく見ると薄暗さを利用して恋人同士がお互いの身体を触っている。 ルイズは、自分の視力をちょっとだけ感謝した。 指定した席を見ると、そこには先客が座っていた、エメラルドグリーンの髪の毛は見間違うはずがない。 ルイズは、左端の席に座って、隣の客に声をかけた。 「こんにちは」 「…やっと来たね、待ちわびたよ」 『ミス・ロングビル』であり『土くれのフーケ』でもあるその女性は、深いため息をついた。 「どうしたの?ずいぶんお疲れの様子じゃない」 「まあね、ここもちょっと不安なんだ、場所と時間を改めてくれないかい?」 「どこに?」 「ピエモンの秘薬屋裏の安宿、『ロイズ』の名前で借りてあるよ」 「その前に、宝物だけどこかに預けたいわ」 「前にも言ったけど、秘薬屋のオババが預かってくれるわ、そっちは合い言葉があるけど」 「『ボロ土は入荷してるか?』よね」 ロングビルは無言で頷いた。 それを見たルイズは早々に立ち去る。 機嫌の良さそうなルイズを見て、ロングビルはため息をついた。 しばらく後、正午を告げる鐘が鳴る前に、ルイズはロングビルの指定した宿に来ていた。 「お泊まりですか」 「”ロイズ”の連れよ」 「へえ、承っておりやす、12番の部屋でさ」 ルイズは階段を上がり、二階にある「12」と書かれた部屋に入る。 小さな窓のついた部屋には、安っぽいベッドと、申し訳程度の棚が設置されている。 「ま、この程度よね」 ルイズは誰に言うわけでもなく呟いた。 しばらくして昼を告げる鐘が鳴る、ルイズはデルフリンガーを傍らに置き、ベッドに寝そべってその音を聞いていた。 『なー、嬢ちゃん』 「なによ」 『あの馬、名前つけてやらないのか?』 「……ちょっとは考えたんだけどね、保留よ」 『保留?』 「ブルート…って名前にしてあげようと思ったんだけど」 『ほー、確かブルリンの本名だったな、なんだ嬢ちゃん、やっぱり寂しがり屋じゃねーか』 「余計なお世話よ」 『そりゃすまねー』 「…本当は、あの馬をブルートって呼びたいけど、私には無理、代用品みたいで嫌じゃない」 『ふーん、こりゃ本物だな、嬢ちゃん、ブルリンに惚れてたんだな』 ルイズはデルフリンガーを抜き、束と切っ先を握って、全力で曲げ始めた。 『ちょっ!冗談だ冗談!マジやめて!やめて!折れる!』 「くっ…あ、あんた意外と丈夫ね、本気でやったけど…ゆがみもしないわ…ふんっ!」 『本気でやるなよ!』 そんな風にしばらくデルフリンガーと戯れた後、ルイズは、ふと立ち上がって窓の外を見た。 裏通りにあるとはいえ、正面の店『ピエモンの秘薬屋』は一階建てで小さい。 窓からは大通りを見下ろすことが出来た。 「こうして見ると、色んな人が歩いてるわよね」 『そりゃな、俺もいろんな奴に背負われてきたが、まあ時代が移り変わると服装も変わってくるもんだぜ』 「……………」 『いつごろだったかねえ、ガリアで、東方から来たっていう楽団を見たときは、さすがの俺もおでれーたな』 「……………嘘」 『嘘じゃねえよ、ちゃんと見たんだって…って、嬢ちゃん、どうした?』 「…嘘でしょう」 『…?』 「嘘だ…嘘だ、嘘だ!」 『おい、嬢ちゃん!?』 ミシッ、と音がして、ルイズの手が握りしめられる。 自分自身の手を握る握力が強すぎて、骨がきしみ、メキメキと音を立てる。 「KUAAAAAA……」 『おい!嬢ちゃん、落ち着け!落ち着けよ!』 デルフの声は、もはや届かなかった。 ルイズの顎はガクガクと震えている。 心を落ち着かせようとしても、身体がそれに反して興奮してしまう。 ルイズの目には、あるものが映っていた。 欲しくて、欲しくて、たまらないものが映っていたのだ。 『おい、嬢ちゃん、ルイズ!』 「五月蠅い……」 ルイズは、デルフリンガーを掴んで、握りしめた。 興奮が収まらず、ルイズの心臓の鼓動が早くなる、そして血液が沸騰するかのように熱くなり、全身を駆けめぐる。 ルイズの自制心は、完全に吹き飛んでいた。 ガチャリ、と音がして扉が開かれる。 入ってきたのはロングビルだった。 『ロック』で鍵を閉めて、窓際に立つルイズを見る。ルイズはデルフリンガーを握りしめて、窓の外を見つめていた。 「…なにやってるんだい?」 ロングビルは、ルイズに近寄ったが、突然振り向いて睨まれて動きを止めた。 牙を剥き出しにしたルイズが、紅く輝く瞳で、ロングビルを見ていたのだ。 「ひっ」 思わず、小さく悲鳴を上げる。 「カハァァァァァァァァァ…」 ルイズの呼吸が、やけに甘く感じられた。 ロングビルの腰に左手を回して、まるでダンスを踊るような姿勢で、ロングビルの身体に牙を近づけた。 「あ…待って、お願い、止めて」 震えながら、涙目で、辛うじて止めてくれと懇願する。 「フーケ…私のものになって、わたしだけのものに」 ルイズは、母親の乳を吸うかのように、ロングビルの右の乳房へと牙を突き刺した。 ブルドンネ大通りには、三人の女性が歩いていた。 魔法学院の制服に身を包んだ、キュルケと、タバサと、シエスタ。 かつての友達が、笑っていた。 ルイズという存在がいなくても、彼女たちは笑っていられるのだ。 本当に欲しがっていたものが、窓の外を無慈悲に通り過ぎていった。 「わたしのものになってよ、わたしのものに」 ルイズは吸血鬼になって初めて、その本心を見せた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4520.html
前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ 今日も酷い目に遭った。 秘密結社フロシャイム川崎支部将軍ヴァンプは、夕飯である鮭のムニエルをつつきながら溜息を吐いた。 「結構いいところまで行ったと思ったんだけどねぇ、今回」 「なんで正義のヒーローってあんなに都合よく現れるんでしょうね」 話の都合だろ、とは誰もが思いつつも誰もが言わない事であったが、 ともかく毎度の事ながら呼び出した怪人がこうも簡単に屠られてしまうと はたして本部から左遷降格を言い渡されはしないか、と一抹の不安がよぎるのだ。 「お…明日タマゴが特売か」 しかし悲しいかな、何しろ経済的にそう余裕の無い川崎支部では先ず優先すべきは支部の存在そのものの確保なのである。 どんなブラック企業でも赤字では立ち行かない。常識もいいところだ。 だからヴァンプ率いる川崎支部の戦闘員および怪人は日々の倹約の知恵を振り絞り、 それが正義のチンピr…ヒーローたるサンレッドに対する危機感を薄れさせ、 結果毎度の惨敗に繋がる所となっているのだ。 「「今度こそはすっごい奴を呼び出して…」」 それは誰の発した言葉かは分からない、が、その言葉を発した誰もが心の底からそう願っていた。 「魔界の果て、地獄の底に屯す悪魔よ!」「天と地とその狭間の何処かに居る私のしもべよ!」 誰かが魔方陣の前でその口上を結び始める。 「残忍で、凶暴で、冷血な、血を渇望する猛獣よ!」「清く、賢く、美しく、何者をも超越する私の使い魔よ!」 魔方陣は静かに、仄かに、輝き始める。 「「我は心より求める!この地へお前が降り立つ事を!!」」 魔方陣が放つ光に、それを見ていた誰もが目を眩ませ、 …やがて、光の中にその影を認めた。 「…は?」 「しょ、将軍…!?何処へ…ってあんた誰!!??」 「…え?は?…どこだここはぁぁぁ!!?!」 禁呪により神奈川県川崎市へ呼び出された東京都在住の平凡極まる高校生・平賀才人は、 戦闘員ならびに怪人たちによる深い謝罪と交通費を受け取った後、帰路に着いたのである。 「いやぁ~あの鮭のムニエル旨かったなぁ」 「……えっ?」 「…………」 「……………」 「………………誰よ、アンタ」 そして、フロシャイム川崎支部将軍ヴァンプは、 職と、 家を、 失った。 前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1848.html
少し時間はさかのぼる。 ワルドは母の眠る廟の前に跪き、祈りを捧げていた。 母に再会することはできたが、完全には蘇ることなく、リッシュモンへの怨嗟を上げながら土に還ってしまった。 本人に生き返ろうとする意志がなければ、生命への強い渇望が無ければ蘇ることはできないとルイズに言われたが、それを信用するなら「母は生き返ることを望まなかった」のだろう。 ワルドは母が安らかに眠れるように祈り、そして、リッシュモンへ必ず復讐すると誓った。 ゆっくりと立ち上がり後ろを振り向くと、手ぬぐい程度の布きれを腰と胸に巻き付けたルイズが、濡れた髪の毛をかき上げているところだった。 「行こうか、ルイズ」 「ええ」 ルイズは返事をしつつ塀に近寄り、両手を使ってよじのぼると、周囲を見渡した。 人気がないのを確認すると、塀から降りてワルドを背中に乗せて呟く。 「ガリア寄りの森を通ってトリスタニアに行くわ。ヴァリエール家に見つかりたくないから……しっかり掴まってなさいよ」 ルイズがそう呟くと、ワルドは片腕に強い力を入れてルイズにしがみつく。 「ふっ!」 腹に力を入れ、地面を強く蹴るのではなく、体の関節を順番に動かして地面との反発力を生む。 いくつもの関節の反動が繋がり、体が一本のバネのようになる。 墓所の石畳を砕くことなく、ルイズは高く跳躍した。 何十基も並ぶ墓石を飛び越えたルイズは、そのまま風のように走り、森の中へと入っていった。 まさに風のようだと、ワルドは思った。 ルイズの背中は小さい、本当にか細くて、今にも折れてしまいそう。 しかしそれは大きな間違いだ、濃密な蜂蜜のごとく、ほんの少しの体積に例えようのない甘露が詰まっている。 ルイズの小さな体には、巨体を誇った吸血馬の力が宿っているのだ。 黒毛と栗毛とも表現できぬ不思議な色つやを持った吸血馬、その骨がルイズの意識に反応して、色素を失った毛を触手のように伸ばしていく。 足に埋め込んだ吸血馬の骨は、鋼の糸のような毛をルイズの足に張り巡らしていく。 それは皮下脂肪にまで伸び、複雑に絡み、ルイズの筋力を増幅させていく。 足の裏に伸びた毛はルイズの神経と繋がり、地面の感触を微細に伝えつつ、皮膚に蹄のような強度を与えていく。 ルイズの下半身は細く、シルエットは少女のものであった。 しかし間近で見れば、皮下脂肪が極限まで減らされた筋肉質がくっきりと浮き出て見えただろう。 吸血馬は、死して尚ルイズの力となっていた。 しばらくの間森の中を駆けていると、ふと足下の感触が変化していることに気づいた。 獣道か、それとも猟師の通る山道なのか、地面の感触が他と異なっている。 ルイズは速度を落とし、周囲の匂いを確かめつつ歩く。 「は…ぶはっ」 背負われていたワルドが、首を横に向けてクシャミをした。 ルイズはその場で止まると、ワルドを背中から降ろす。 「大丈夫?…あ、濡れた体で風を受けていたんだから当然よね…ごめんなさい」 「気にしないでくれ、僕の鍛え方が足りないだけだ」 「だからといって放っておけないでしょ」 空を見上げると既に雲は引いており、木々の切れ目から夕焼けの明かりが差し込んでいる。 間もなく夜になってしまうだろう。 「人の通った跡があるわ…この先に街は無いと思うから、たぶん猟師の使う小屋でもあるんでしょう。そこで休めたら休みましょう」 「人がいるんじゃないか?」 「…その時はまた考えるわよ」 やれやれ、と肩をすくめるワルドを見て、ルイズは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めた。 そそくさと足を進めるルイズを、嬉しそうに後を追うワルド。 ふと自分とワルドの関係を考えると、これはこれで悪くないのではないか、という気がした。 しばらく歩みを進めるうちに空は暗くなっていた、まだ雲が残っているのか月明かりが届かず、森の中は泳ぐような暗闇に包まれていた。 「ルイズ」 ワルドがついに歩みを止め、ルイズに声をかけた。 振り返ると、ワルドは定まらぬ視線のまま、手を前に出して何かを掴もうとしているようだった。 ふと、ワルドと自分の身体能力差を考える。 「…ごめんなさい、この闇じゃ何も見えないわよね」 ルイズはワルドの手を取って、ゆっくりと暗い闇の中を歩き出した。 「杖があれば」 ワルドの呟きは、杖のないメイジの弱さを現している気がした。 しかしワルドは風のスクエア、魔法を行使できなくとも、風の流れ、音、匂いには人一倍敏感だった。 杖を使って光を出さずとも、夜の森を通り抜けることはできるが、ルイズのようにすいすいと歩けるほどではない。 その証拠に、暗闇の中にある木の枝を避けて歩けるのだ、何かかがここにある…という違和感が風の乱れを伴うらしい。 しばらくして、不意にルイズが立ち止まった。 がたがたと戸板の動く音が聞こえてきたので、目の前に小屋があるのだろう。 「足下と頭に気をつけて」 ルイズはワルドから手を離して、小屋の中へと入っていく、ワルドは慎重に足を進め、敷居をまたいで小屋の中に入り込んだ。 「今、火をおこすわ…何コレ、湿ってるじゃない」 カラン、カランと音がする。ワルドは薪か何かのぶつかる音だと判断したが、次に聞こえてきたシュウウウウウという音は何の音なのか解らなかった。 ルイズの手に持った薪は、少し湿っていたが、吸血と同じ要領で水分を抜き取ることでカラカラに乾燥した。 薪を両方の手に一本ずつ持ち、圧力をかけて胸の前でゴシゴシとこすり合わせる。 二分ほど勢いよくこすり合わせていると、ついには摩擦熱で焦げる匂いが立ちこめてきた。 手に持った薪を広げると、所々が赤くくすぶっており、夜目に慣れたワルドの眼にハッキリと映った。 片方の薪を地面に置くと、もう一個の薪を両手で挟み込み、今度は渾身の力を込めて握り、すり潰す。 粉状になった木片が燻った木の上に落ちると、じわりじわりと火が燃え移り、ついには火種となって燃え始めた。 「凄いな」 「猟師の知恵らしいわよ。昔本で見たの。実際にやったのは初めてだけど」 ようやく、ルイズの表情が見えるようになった。 ルイズの表情は、子供の頃と変わらぬ無邪気な笑みだった。 「ワルド、あなたって火は起こせる?」 「ああ、杖を持ち、ウル・カーノと唱えれば」 「でも杖が無ければ何もできないでしょう、私には杖が無くても火を起こせるわ、先住魔法じゃないわよ」 「…確かに、杖がなければメイジは非力だ」 「貴族が君臨を許されるのは、魔法を使えるからじゃないと思うの……杖はメイジの誇りであり弱点よ。杖に頼りすぎて、杖に甘えて…いつか大事なことを忘れる気がするの」 「大事なことか。僕はそれを間違えていたのかな」 「私には解らないわ。……私自身、吸血鬼の力と虚無の魔法、これをどう使えばいいのかよく解らないもの」 少しの間、ルイズとワルドの間に沈黙が流れた。 猟師が仮の宿に使う小屋なのか、雨風をしのぐだけに機能を限定された小屋に、火の匂いが充満している。 火のついた薪からパチパチと弾ける音が聞こえ、それが不思議と心地よかった。 「ねえ、ワルド」 「うん?」 「お母様に、酷いことしちゃった…」 ルイズが何を言いたいのか、よく解らない。ワルドは首をかしげた。 「…もっと沢山血を注げば、体全部、生き返ったかも…」 「ルイズ…」 ワルドは椅子から立ち上がると、足で椅子を押してルイズの隣に座った。 「いいんだ。僕は、もっと穏やかな母に再会できると思っていたが、それは大きな間違いだと気づいたんだ…リッシュモンに辱められて命を絶ったというのなら、僕にはそれを止めることはできない」 「どうして?だって、お母様に生きていて欲しいと思ったから、生命の神秘を、虚無を、『聖地』を目指そうとしたんでしょう?」 ルイズがワルドの顔をのぞき込む。 ワルドの表情は、憑き物が落ちたかのように穏やかで、寂しそうな笑みだった。 「母は生前、苦しんでいる姿なんて僕に見せなかったよ、いや、気づいていなかったんだ。 僕は…母の胸中に気づかず、ただ甘えていたんだよ。 母さんが生き返ったとして、その後どうしたものか、辱めは消えることはないんだ、復讐をしても意味はない」 ルイズは、ワルドの言葉に驚き、目を大きく見開いた。 復讐を自ら否定したのだ、ならば、なぜルイズと行動を共にしているのか、疑問がわき起こる。 「けじめだ。これは男としてのけじめなんだ。父を殺し、母を自殺に追いやったリッシュモンを決して許しはしない。けれども殺したところで、優しかった母は、辱めを受ける前の母は帰ってこない」 「ワルド、あなた」 「聞いてくれルイズ、僕は救われた気がしたんだ、君がリッシュモンを殺すと誘ってくれたときに、僕はもう母の無念を忘れてしまった!」 「!」 「僕が死罪を免れないのは理解している、だがそんなことはどうでもいい。僕はただ、リッシュモンと自分にケジメをつけたい。……それを決心させてくれたのは、君のおかげだよ、ルイズ」 ルイズは、たまらなくなってワルドから目をそらした。 「やめてよ」 心なしかルイズの声は震えていた、二人を照らす炎のゆらめきか、肩が小刻みに震えて見えた。 「馬鹿じゃないの、死にたがっているだけじゃない…私はあなたを利用したいだけよ、だからお母様を生き返らせようとしたのよ。私は…そんな女よ」 そっと、ルイズの肩を抱いて、ワルドが呟く。 「なあ、ルイズ、僕はクロムウェルが死者を蘇らせたのを目の当たりにした。 生前と変わらぬ姿で蘇った彼らは、生前の誇りも忠誠心もどこかに置き忘れて来たのか、クロムウェルに忠実に従っていたよ。 始祖ブリミルのお導きが僕らの運命なら、我々は皆運命の奴隷じゃないか。 もしクロムウェルに母を蘇らせてくれと頼んでいたら、僕は母を運命とクロムウェルの奴隷にしてしまうところだった………。 母の本音を聞かせてくれたのは、僕を大人にしてくれたのは、君だよ、ルイズ」 ルイズは、膝の上で強く自分の手を握った。 怖くて怖くて、体が震えた。 人から信頼されることが、人から礼を言われることが、人の人生に関わることがこれほどまでに責任感の伴う恐ろしいことだとは思ってもいなかった。 ワルドの心境の変化は、多くの貴族が顧みることのない『立場に伴う責任』の重さを、ルイズに十分過ぎる程感じさせていた。 アンリエッタはこの重圧に耐えているのだろうか? そんな疑問が頭をよぎったが、それを考えると深みにはまってしまいそうで、ルイズはただ静かに震えていた。 「!」 不意に、何かが割れるような音が聞こえ、ルイズは顔を上げた。 「ルイズ?」 「あ…何かが割れる音がしたわ…足音も…こっちに近づいてくる」 ワルドも耳を澄ましていると、しばらくして誰かがこちらに向かって走ってくるような足音が聞こえてきた。 ドン!と音を立てて扉が勢いよく開かれ、無精髭を生やした30代半ばの男性が小屋に飛び込んできた。 警戒しようとするワルドをルイズが手で制し、焚き火に倒れ込みそうになる男をもう片方の手で押さえた。 「はぁつ、ひい!ああ」 「ちょっと、どうしたの?」 パニックに陥っている男をルイズがなだめつつ、ワルドが扉から外の様子をうかがう。 流れる風に違和感はないはずだが、男の様子も相まって何か嫌な予感がした。 男を椅子に座らせてなだめていたルイズは、男がある程度落ち着いたと判断して、ワルドに外の様子を聞いた。 「外の様子はどう?」 「特に何も見えない、風にも違和感を感じない…」 「何も見えない…ですって?」 ルイズはワルドを押しのけて外の様子を見た、小刻みに鼻をふるわせ、空気の臭いをかぐ。 ルイズの目つきが変わった。 「さっき私が聞いた音はガラスの割れる音よ、たぶんカンテラの音。あの男には油の臭がしたから間違いはないと思うわ。でも…外の空気に油の臭いは感じられない…火が燃え移った様子もないわよ」 「何者かに追われていたと?」 「メイジに追われるような風体には見えないわよ、傭兵、物取りにしては人間の臭いがしないわ…臭いがなさ過ぎる」 「風下に回ったか」 「おそらくね。……もう、厄介ごとばかり増える、やんなっちゃうわよ」 ずしん、と、地響きにも似た振動が足に伝わってきた。 「今の音は」 ワルドが呟く、どうやらワルドにも聞こえていたようだ。 「あ、ああ、ばけものが!ばけものが、追ってきたんだ!ああ!」 男は顔中から噴出する汗を押さえ込むかのように、頭を抱えがたがたと震えだした。 「落ち着いて、化け物って何?貴方は何に追われていたの、教えてちょうだい」 「半分、半分の牛の頭が!」 ルイズとワルドは、牛と聞いてギョッとした。 牛のような化け物といえば、一つしか思い当たらない。 ここから逃げようと考えたルイズはワルドを見る、ワルドも同じ気持ちだったのか、視線を交差させただけで二人は頷いた。 次の瞬間、ずしん、と大きな振動が伝わった。 同時に、ルイズは男とワルドを掴んで小屋の外に飛び出し、地面に転がった。 「ブゴオオオオオオオ!」 ルイズの失敗魔法のような爆音と共に、小屋は木片となって吹き飛んだ。 一瞬早く飛び出していたルイズとワルドは体勢を立て直していたが、男は腰が抜けてしまったのか、立ち上がることも出来ずに地面にへたり込んだまま動かなくなってしまった。 一撃の下に小屋を吹き飛ばした存在を、二人は冷や汗を流しつつ見上げていた。 身の丈4メイル近い赤黒い巨体と、牛のような頭を持った亜人、ミノタウロスがルイズを見下ろしていた。 「グフゥーーーッ!グフッ!」 涎や鼻水をだらだらと垂らしながら、荒い呼吸を繰り返しているミノタウロス、頭の右半分は抉られたかのように欠けており、右目も潰れているようだった。 「なるほど。あの傷では凶暴にもなるな」 ワルドが髭を撫でながら呟く、メイジの生命線たる杖を所持していないのに、余裕すら感じられる笑みを浮かべている。 「囮になろう」 そう言ってミノタウロスの前に出ようとするワルドを、ルイズが制した。 ミノタウロスの左目は、はっきりとルイズの姿を写していた。 「逃がしてくれそうにもないわね」 ルイズが呟くと、ミノタウロスは確かにその唇をゆがめて、笑った。 ぶふっ、と鼻息を鳴らした次の瞬間、ミノタウロスの左腕がルイズを殴った。 「フンッ!」 ルイズは右腕を縦にしてミノタウロスの腕を防ごうとしたが、ミノタウロスに殴られた瞬間、ルイズの体は軽々と宙を舞った。 バキバキバキバキと音を立てて、ルイズの衝突した幾本もの木々が倒れていく。 大人の胴よりも太い木の幹を、八本ほど倒したところでルイズの体が止まる。 全身を叩きつけられつつ、ルイズは空中で体勢を変え、木を蹴ってより高い空を舞った。 「WRYYYYYYYYYYYYYYY!」 ルイズの手刀がミノタウロスの頭部を狙うが、ミノタウロスは素早く身をかがめると腕を頭の前でクロスさせてルイズの手刀を防いだ。 べろん、とミノタウロスの皮が裂けて肉が露出するが、圧倒的な体格の違いのせいか、ルイズの一撃は致命傷を与えるには至らない。 ルイズはミノタウロスの攻撃を避けつつ、反撃の機会を伺うが、ほとんど理性を失っているミノタウロスの攻撃はがむしゃらで隙がない。 ルイズの力を持ってしても、ダメージを与えることはできるが致命傷を与えられないのだ。 「くうううっ」 ミノタウロスの巨大な腕と、鋭い爪を防ぐので精一杯。 その間にも焚き火の火が小屋の破片に燃え移り、森は少しずつ火に包まれていった。 「KUAAAAAAAA!」 じりじりと、ルイズが押されていく。 ミノタウロスの爪がルイズの首を狙い、避け損ねたルイズは、髪の毛を切られてしまう。 ピンク色の髪の毛が宙を舞うのを見て、ワルドが思わず叫んだ。 「ルイズ!」 「離れてなさい!」 「違う!火に包まれるぞ!」 ワルドの叫びを聞いて、ルイズははじめて周囲が燃えているのに気づいた。 夜目が利きすぎるから気づかなかったのか、戦いに集中していて気づかなかったのか、そのどちらかと問われたら間違いなく後者と答えるだろう。 ミノタウロスは強敵だ、再生能力が強く、皮膚は硬く筋肉も強い、そして何よりそのスピードとパワーが吸血馬を思わせるほど強い。 これでは血を吸う暇も、肉腫を埋め込む暇もない。 それなのに心のどこかが喜んでいる、強敵に出会えて、自分の全力を出し切って戦える相手がいて、嬉しい、嬉しいと喜んでいる。 ルイズの体と心が、震えた。 「おああああああアアアアァァァアああああアァアああ!!」 ルイズの叫びは、吸血馬に届いた。 柔らかい女性の体つきが、鍛え抜かれた女戦士と見まがう程の体つきに変わっていく。 体の細さはそのままだが、体内の筋肉繊維と皮下脂肪に、吸血馬の毛が絡みつき、筋肉が浮き上がる。 腕と足に埋め込んだ吸血馬の骨は、ルイズの体に吸血馬の力と、鋼のような硬度を生み出す。 ミノタウロスの腕から血が弾ける。 ルイズの腕、吸血馬の骨を埋め込んだ手首から、銀色のタテガミが生えていた。 毛は剣を形作り、ルイズの腕から剣が横に伸びた形になる。 ルイズは踊るようにミノタウロスの強靱な皮膚を切り裂き、筋肉を断ち切り、骨を粉砕していく。 燃えさかる炎に照らされたルイズ。 両腕から生えた剣が、光を反射して銀色に輝く。 ワルドは逃げることも忘れて、ルイズに見とれていた。 「!」 はっと気を取り直したワルドが、近くに落ちている木片を手に取り、先端を火であぶる。 槍のように細長く砕けた木片に火をつけると、ミノタウロスの視線がルイズに集中しているのを確認してから、その左目に向けて槍のように投げつけた。 残った目を攻撃されるのは嫌なのか、ミノタウロスは身を反らせば避けられそうな木片を過剰に怖がり、手で顔を隠しつつワルドに向き直った。 「ガアアッ!!」 人間を軽くミンチにする豪腕と爪がワルドを襲う、だが、ワルドは『閃光』の二つ名の通り、紙一重でその攻撃を避けると、炎の渦巻く火の中に飛び込んだ。 ミノタウロスは燃えさかる木々を薙ぎ倒すと、怒りにまかせて鼻息を荒げ、グオオオオと雄叫びを上げた。 その隙を見逃すルイズではない、ルイズは両腕を高く掲げ、手首から生えた剣を腕と平行に伸ばした。 後ろを向いたミノタウロス、その心臓めがけて、腕を向けると、全身の筋肉をバネのようにしならせて地面を蹴った。 ルイズの脚力を吸収しきれなかった地面が、クレーターのようにへこむ。 「AAAAAAAーーーーーッ!!」 ルイズの体はまるで大砲の砲弾のような勢いでミノタウロスの胸にぶち当たり、腕から生えた剣はミノタウロスの心臓を貫通し、先端が背中へと飛び出ていた。 ズキュンッ、ズキュンッ、ズキュンッ と音を立てて一気にミノタウロスの血を吸い取る。 ミノタウロスは背中に張り付いた何者かを払おうとして、自分から火の中に倒れ込んだが、ミノタウロスの血を吸い続けるルイズは体を焼かれても瞬時に再生してしまう。 ミノタウロスは乾いていく体を火の中に投げ込んだことで、炎に焼かれながら寒さに震え、もがいた。 炎の中から、ワルドが飛び出す。 風系統のスクエアである彼は、風の流れから温度の低い場所を探してそこを通り抜け、炎に身を隠しつつ移動していたのだ。 服の所々は焦げていたが、髪の毛にも髭にも焦げた後が見あたらないのは彼のダンディズムか、ポリシーだろうか。 「ルイズ!」 ワルドが叫ぶ、炎の中に落ちたルイズを探そうと辺りを見回す。 すると、炎の中で何かがゆらりと動くのが見えた。 炎の揺らめきではなく、明らかに人間の形がゆらめいている。 腕から生えた剣を、ミノタウロスの体に突き立てたルイズが、空に向けて吼えていた。 「WRYYYYYYYYYYYYYYーーーーーーーー!!」 血を吸い尽くしたルイズは、ミノタウロスの体を、挽肉にするかのようにずたずたに切断し、火の中に投げ込む。 ミノタウロスの再生能力は非常に強く、火で焼いただけでは蘇る可能性があるのだと、昔教わった覚えがあるのだ。 五体を32分割した後、ルイズは地面を蹴って高く跳躍し、ワルドの眼前へと着地した。 「ふっ、ふぅう…ワルド、逃げるわよ」 「ああ」 布きれが焼け落ち、全裸になったルイズと、ワルドの二人が森の奥に向けて駆け出そうとする。 が、その前にルイズは、地面に倒れ気絶している男を背中に乗せた。 「どうするんだ、その男を」 「放っておく訳にはいかないでしょう」 「そうかい?」 「そうよ」 「そうかな」 「そうよ」 二人は大火事を背にして、その場から走り去った。 翌朝、ルイズは森から出て、街道沿いの村にたどり着いていた。 地理的にはガリア寄りの、この村では、大火事を確認しに行った男達が帰ってくるところだった。 ルイズは村に入る前に、背負っていた男の記憶を確かめることにした。 茂みの中で、ルイズは男の頭に肉腫を埋め込む。 びくんと体を硬直させ、男は目を覚ました…が、目は虚ろであり、意識は覚醒していない。 「あなたの村はどこ」 「げるまにあの こっきょうぞいの」 ルイズは男にいくつかの質問をした、どこの出身か、どこの村の出か、なぜミノタウロスに追われていたのか…… 森の中で頭に傷を負ったミノタウロスに仲間が殺され、必死で逃げてきたらしい。 逃げている最中に、明かりのついた小屋を見つけたので、助けを求めて駆け込んだのだとか。 ルイズは暗示をかけるように、肉腫を操りながら男に言い聞かせた。 自分の顔に大きく傷を付けると、中途半端に皮膚を再生し、火傷痕を再現する。 「あなたが見たのは、顔に火傷を負った短髪の女。名前は知らない、そうね?」 「ああ、うん、やけど、かみのけ、みじかい」 「ミノタウロスに小屋を襲われた後、貴方は一人でここまで逃げてきた…」 「お、おれは、ひとりで、ここまで、にげてきた」 男がルイズの言葉をたどたどしく復唱する。 それを確認してから、ルイズは肉腫を男の頭から抜き取った。 ふっ、と男の意識が無くなると、ルイズとワルドの二人は村から盗んだボロ布を身にまとって、街道へと歩き出した。 傷跡を治してしまえば、もう別人。ルイズはそう考えていた。 しばらくしてから男は村人に発見された、服の焦げ後から火事に巻き込まれた男だと判断し、事情を聞くためにも手厚く介抱された。 街道は、意外にも人の通りが少なかった。 二人は昨晩の話をしつつ、街道を歩く。 「それにしても…綺麗だった」 「あら、何が?」 「君の戦いぶりさ、腕の剣と、一糸まとわぬ体が炎に照らされて輝いていた……あんなのは初めて見たよ」 「やめてよ、恥ずかしいわ」 思い返してみると、ワルドに全裸を見られたのは一度や二度ではない。 今だってボロ布のマントの下には、申し訳程度の腰布しか巻かれていないのだ。 急に顔から火が出るような気がした。 「あの剣は何だい?突然、腕から生えたような気がしたが」 「あの子が…吸血馬が力を貸してくれたのよ。色が抜けて銀色になったけど、たぶんあの子のタテガミね」 「死して尚、主人のためにか…僕とは大違いだな」 「本当に大違いよ。でも……」 ルイズは、何かを言いかけたが、結局口をつぐんだ。 肉腫の力で吸血馬を洗脳していたことに、後悔しているが、だからといって今更何を言えば良いのか解らなかった。 「ルイズ、折角だから、名前を付けたらどうだ」 「名前?」 「ああ、東方から伝わった書物によれば、腕から剣を出す術に名前があったんだ…確か、リスキニハーデンとか……」 「私のこの”剣”にも、名前を付けろって?ふふ…デルフが拗ねるわね」 「そうだ……”光のモード”というのはどうかな。炎にきらめいて、美しかったから思いついたんだが」 「名前なんてどうでも良いわよ。でも、ワルドって意外と子供っぽいのね。名前一つ決めるのがそんなに楽しい?」 「何を言ってるんだ、僕を大人にしてくれたのが君なら、僕を子供扱いしてくれるのも君だけだよ、ルイズ」 ワルドの笑みに、ルイズははにかみで答えた。 ふと思う…人間は死を覚悟できるからこそ輝かしい。 ウェールズを守ろうとしたアルビオンの衛士達がそうだったように。 人間は、もしかしたら、いずれ死んでしまうからこそ美しいのではないだろうか。 焼けこげた森の中では、近隣から派遣された部隊が消火活動を続けていた。 火の勢いは強く、簡単には消すことは出来ない。 地方のメイジ達だけでは簡単には対処できぬほどの大火だった。 だが、たまたま近隣貴族の領地を視察していた一人のメイジが、この火事を消し止めた。 十人を超えるメイジでも消せなかった火事を、いとも簡単に消した女性の名を、カリーヌ・デジレという。 ラ・ヴァリエール家に帰ろうとする馬車の窓から、鎮火した森を見つめていたカリーヌは、従者の一人が扉をノックしているのに気づいた。 「奥様、お耳に入れたいことがございます」 「申しなさい」 「火事は、怪我を負い正気を失ったミノタウロスが山小屋を襲撃したことで起こったようです。生き残った者は、ミノタウロスと戦った人物が二人いたと話しております」 「……」 「ピンク色の頭髪、年の頃は20、顔立ちは幼さを残し、顔に大きな火傷のある女性。それと元貴族らしき20代後半の男性の二人だったと……」 そこで従者の言葉が止まる。 カリーヌは、何か言いにくいことがあるのかと察した。 「……続けなさい、言いにくいことでもかまいません」 「はっ! …元貴族らしき男は、その女性を『ルイズ』と呼んでいたそうです…」 「下がりなさい」 「はっ」 がたごとと揺れる馬車の中で、カリーヌは、無意識のうちに杖を握りしめていた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/362.html
ドスン、と響く巨大な足音。 ルイズは巨大な土のゴーレムを目の当たりにし、少しばかり後悔していた。 使い魔品評会で恥をかくはずだったルイズは、ルイズの出番が来る前に現れた巨大なゴーレムのおかげで、その難を逃れていた。 巨大なゴーレムを見て、ここ最近噂になっている「土くれのフーケ」の話を思い出した。 土くれのフーケは通称だが、その名の通り土の系統のメイジだと言われている。 時には巨大なゴーレムを操り、時には強固な宝物庫の壁を土に錬金して穴を開けてしまう。 ゴーレムを目の前にしたルイズは、フーケの能力がかなり高く、トライアングルかそれ以上の実力を持つと噂されるのがよく理解できた。 使い魔が居ないのを誤魔化すため、フーケの前に一番乗りしたつもりだったが、既にゴーレムと闘っている男がいた。 二股の…もとい、青銅のギーシュである。 ギーシュはドット、つまり初級のメイジであり、土くれのフーケ相手に勝ち目はない。 それなのにギーシュは闘っている、と言うよりも逃げ回っていると表現すべきだろうか。 ゴーレムから逃げるように右往左往しているギーシュの姿に疑問を感じたが、すぐに疑問は氷解した。 誰かが倒れている。特徴的な色のカエルがその傍らにいるので、カエルを使い魔にした水系統のメイジ、モンモランシーだろう。 ルイズは後悔しつつも、呪文を詠唱した。 ズドン! と、空気を震わせてゴーレムの右腕が爆発する。 「土くれのフーケ!あんたの相手はこっちよ!」 ルイズが叫ぶ。それに気付いたギーシュは驚き「ヴァリエール!?」と叫んだ。 「とっととモンモランシーを助けなさい!」 ルイズが叫ぶと、ギーシュは慌ててモンモランシーに駆け寄り、その体を拘束している鉛の手かせを土に錬金して開放する。 ルイズがゴーレムを引きつけている間にモンモランシーを抱き上げて、その場を離れようとしたが、ギーシュの耳にルイズの叫びが響いた。 「逃げて!」 え?と疑問に思う間もなく、ギーシュに影が差す。 ゴーレムは自分の体をちぎるようにして投げ、ギーシュの真上に投げたのだ。 ギーシュが上を向くと、直径2メイル(m)はありそうな鉛色の固まりが、自分に向けて落ちてくるのが見えた。 ルイズには見えていた。 ゴーレムの一部が鉛に錬金され、ギーシュとモンモランシーを押し潰すそうとしている。 まるでスローモーションのように落下が見えた。 魔法を唱えて爆発を起こすのは間に合わない。 駆け足で10歩の距離では突き飛ばすこともできない。 絶望的な状況の中、ルイズは自分でも気付かぬうちに、ある言葉を叫んでいた。 「ス タ ー プ ラ チ ナ !」 次の瞬間、爆発音とは違う鈍い音が響き、大きな鉛の固まりはくの字に変形して宙を舞いつつ地面に落下した。 ルイズは、何かが鉛の固まりを吹き飛ばした事に驚いていた。 土くれのフーケも驚いていた事だろう。 呪文の詠唱も無く、杖を振りかざしてもいない。 そこにいた一同は何が起こったか分からなかった。 一番訳の分からないのはルイズだ。 今のは自分がやったのか? それとも誰かが助けてくれたのか? そもそも、今のは魔法なのか? 今起こった出来事が何なのか分からず、頭の中が混乱する。 「ヴァリエール!」 ハッ、とルイズの思考が戻る。 土くれのフーケと闘っているのを思い出し、ルイズは慌ててゴーレムに向き直る。 振り向いたルイズが見たものは、鉛の鈍い輝きだった。 まるで小石を蹴飛ばすかのように宙を舞うルイズ。 そのまま宝物庫の壁にぶち当たり、ルイズの爆発魔法よりも大きな音が響いた。 ギーシュは目を見開いた。体が震えるのを止められなかった、恐怖からではなく、それは純粋な驚きからだった。 あの決闘の日から、ギーシュはルイズに一目置いていた。それには少なからず畏敬の念が混じっている。 ルイズをメイジとして認めたつもりはない。しかし、彼女は間違いなく『貴族』だと思った。 ルイズに負けたとき、ルイズの迫力に体が震えた。そして、悔しさよりも情けなさが勝っていた。 その貴族たるルイズが! 自分と!モンモランシーを助けようと! 果敢に巨大なゴーレムに立ち向かったのだ! ギーシュはゴーレムの肩に乗るフーケを睨んだ。フーケもまた、ギーシュを見てニヤリと笑った。 今までのようなくだらない自尊心からではない。ギーシュは、フーケに対して確実な殺意を向けたのだ。 そんなギーシュにはお構いなしに、ゴーレムは巨大な手を上げる。 ギーシュは死を覚悟している。しかしモンモランシーだけでも逃がした。 でなければ、ルイズに会わせる顔がない。 『自分はどうすればいい!?』 生まれて初めて感じる、悔しさだったかもしれない。 だが、次の瞬間、もう一体の巨大なゴーレムが、土くれのフーケごとゴーレムを殴り飛ばした。 もう一体のゴーレムは土くれのフーケが操るゴーレムより一回り大きく、その上形も均整が取れていた。 フーケよりも実力のあるメイジの作り出したものだと、即座に理解出来た。 あまりの衝撃に受け身も取れず地面に落ちたフーケ。ゴーレムはあえなく崩れ去り、フーケは意識を失ったのが分かる。 それと同時に、もう一体のゴーレムも崩れ去り、跡には土の山だけが残った。 一歩出遅れたタバサは、空中からその様子を見ていた。 「ヴァリエールを!彼女を助けてくれ!」 ギーシュがタバサに向かって叫ぶ。タバサは頷くより早くルイズの元に駆けつけ、レビテーションの魔法でルイズの体を浮かせ、治癒魔法を得意とする教師の下へと急いだ。 モンモランシーを担いだままだったギーシュは、力なく膝をつくと、モンモランシーを地面におろした。 モンモランシーには外傷はない。気絶しているだけだ。 フーケに目を向けると、遅れてきた衛兵が土くれのフーケを捕縛している。 喜ばしいはずなのに、ルイズのことを考えると、ギーシュは決して喜ぶことが出来なかった。 「あんた無茶するわねえ」 「ゼロ、ゼロって馬鹿にされるよりいいわよ」 その日の夜、ルイズ、タバサ、キュルケの三人は治療室で談笑していた。 ルイズは派手に蹴り飛ばされたが、奇跡的にほぼ無傷。 ただ、背中を強く打ち付けたせいか、呼吸が酷く乱れていたが、寝ているうちに落ち着いたようだ。 「本当に驚いたわよ。あんたどんな丈夫な体してんの? 宝物庫の壁はスクエアメイジが固定化の魔法をかけてるって言うじゃない。その壁がへこむ程の勢いでぶつかったのよ。それで『打撲』で済んじゃうなんて、どんな体してんのよ!」 「あたしに言われたって分かるわけないでしょ!」 「ここ、病室」 キュルケとルイズがヒートアップする度、タバサがツッコミを入れて落ち着かせる、そんなやりとりが続いていた。 「失礼、ミス・ヴァリエールはこちらかな?」 キュルケとタバサが部屋に戻ろうとした時、ギーシュが治療室を訪ねた。 「ミス・ヴァリエール…この度は」 「礼なんて別に良いわよ。怪我もたいしたこと無かったし」 ギーシュにはルイズの言葉が信じられなかったが、現に本人が元気そうにしている以上、あまり多く追求することも出来ずにいた。 「その、とにかく、一言だけでも礼を言わせて貰うよ。この恩は忘れない」 いつものギーシュからは想像出来ないほど神妙な言葉に、キュルケは呟いた。 「ルイズに惚れたの?」 「ち、違う!僕はモンモランシー一筋さ!これは愛情ではなくて、そう、尊敬とかそんな感じのアレだよ!」 「怪しい」 タバサですら疑っている。どうやらギーシュの信用はかなり薄いらしい。 「え…ええと…」 困惑するギーシュが余程滑稽だったのか、その後しばらく笑い声は止まなかった。 その頃、学院長のオールド・オスマンは、宝物庫の壁を見に来ていた。 周囲には衛兵と、教師のコルベールがおり、興味深そうに壁の凹みを見ている。 「どう思うかね、ミスタ・コルベール」 「私には何とも言えません、ただ…」 「ただ?」 「ミス・ヴァリエールは、既に使い魔の召喚に成功しているのかもしれません」 壁に残った痕跡は、小柄な少女の者ではなく、身長2メイルはあろうかという筋骨隆々とした男の背中の跡だった。 オールド・オスマンは、今日はもう休ませて貰う、とコルベール先生に告げ、その場を離れた。 宝物庫の壁の修理。 今回逮捕された土くれのフーケ。 おそらく”本物の土くれのフーケ”が作り出したゴーレムの痕跡と、そこに残された予告状。 『次は破壊の杖を頂きます』 「今年は問題ごとばかりですねえ」 コルベール先生は、ため息をついた。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/560.html
autolink() ZM/W03-077 カード名:ルイズ&アンリエッタ カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:1500 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【永】応援 このカードの前のあなたのキャラすべてに、パワーを+500。 【起】[このカードをレストする]あなたは自分の山札を上から1枚見て、山札の上か下に置く。 RR:アンリエッタ「私たちはお友達じゃないの!」 RRR:アンリエッタ「ありがとう、ルイズ・フランソワーズ」 レアリティ:RR RRR illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 小悪魔 杏や香水のモンモランシーの互換効果を持つ。 杏やモンモランシーとは違い条件がカードのレストであるため毎ターンデッキトップ確認&コントロールが可能であり、 応援持ちであるため後列に居座って邪魔になる事もない。 レベル1でコスト不要であるため、デッキトップ連動効果や一ノ瀬 ことみなどでの手札交換、集中を多用するデッキならば、入れておいても損はないだろう。 ・関連ページ 「ルイズ」? 「&」?
https://w.atwiki.jp/touhoukeitai/pages/660.html
No.227 / まかいの 人形 Eルイズ 基本データ 説明 まかいでは ごく ふつうのいっぱんじん らしいがそこそこの のうりょくをもっている。 タイプ ノーマル 特性 めんえき タマゴグループ ひとがたりくじょう 種族値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 合計 90 80 80 80 90 70 490 獲得努力値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 0 0 0 0 3 0 分布 場所 階層 Lv 備考 なし その他の入手方法 なし 進化系統 ちびルイズ ┗Lv20でルイズ ┗Lv38でEルイズ 育成例 レベルアップ技 Lv 技名 001 はたく 007 まるくなる 011 たまなげ 015 かげぶんしん 019 うたう 024 アンコール 029 バリアー 034 たたきつける 041 ピヨピヨパンチ 048 おだてる 055 ミラーコート 062 がむしゃら 技・秘伝マシン技 No 技マシン名 06 どくどく 07 あられ 09 めいそう 10 よめしゅぎょう 11 にほんばれ 12 ちょうはつ 15 LUNATIC 16 ひかりのかべ 17 まもる 20 しんぴのまもり 27 おんがえし 32 かげぶんしん 33 リフレクタ- 37 すなあらし 39 がんせきふうじ 42 からげんき 44 ねむる 45 あさのひざし 49 よこどり No 秘伝マシン名 なし 人から教えてもらえる技 場所 技名 未実装
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/6592.html
【TOP】【←prev】【NINTENDO64】【next→】 バンジョーとカズーイの大冒険 2 タイトル バンジョーとカズーイの大冒険 2 機種 ニンテンドウ64 型番 NUS-P-NB7J ジャンル アクション 発売元 任天堂 発売日 2000-11-27 価格 6800円(税別) バンジョーとカズーイの大冒険 関連 N64 バンジョーとカズーイの大冒険 バンジョーとカズーイの大冒険 2 駿河屋で購入 ニンテンドウ64