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アルビオンの首都、ロンディニウムの外れ。 いかにも安っぽい作りの宿屋に、髭面の大男が入っていく。 「姉御、駄目だったよ」 男は椅子に座ると、ベッドの上に座るルイズに言った。 「どこも貴族派の口利きばかり?」 「ああ、ジョーンズが探してくれてはいるけど、期待はしねぇでくれってさ」 「…そう」 数日前、ルイズが王党派につくと言った時、ブルリンが驚いた。 ルイズは聞き耳を立てて知っていたが、ブルリンは王党派の現状が絶望的だとルイズに忠告し、何度も考え直せと言った。 しかしルイズは頑として聞き入れない、一度決めたことは全うする、それがルイズの頑固なところだった。 仕方なくルイズに折れたブルリンは、ジョーンズに王党派への口利きを頼んだ。 しかし、口利き先もほとんど潰されてしまったらしく、王党派に雇われるのは困難らしい。 何せ王党派は賃金も安いし勝ち目も少ない、貴族派はまず傭兵の口利き先を掌握していた。 王党派に協力しようとする者を探しだし、それを秘密裏に処分したり、より高い賃金で雇うのだ。 ジョーンズの話では、貴族派が登場する前にも、アルビオン王家にはお家騒動があったとまことしやかに噂されている。 ルイズは、信憑性が高いと睨んだ。 なぜなら今回の内乱はただのクーデターではなく、様々な人の思惑の混じった、泥沼の戦いに発展しているからだ。 貴族派の噂は決して良いものではない、農村部からの物資略奪はもちろんのこと、占領した町の民を餓えさせ王党派を誘い出すやり方や、空軍戦力をわざと町に落としアルビオン王家の信頼を失墜させる自作自演。 すべては噂の域を出ないが、なぜかルイズにはその噂を信じる気になっていた。 それには、何処か憎めない、ブルリンという男のキャラクターが助けていたのだが、本人はそのことに気づいていない。 「とにかく、俺はもう一度探してみるよ」 「アタシも行くわよ」 「いいって!それに、昨日酒場でとんでもない豪傑女が居たって、姉御のこと噂されてるんですぜ」 「そう…分かったわ、ここ(宿)で武器の手入れでもするわよ」 ブルリンが宿を出たのを確認すると、ルイズは浅茶色のベッドで横になった。 吸血鬼になったおかげか、オークやトロル鬼の血を吸う生活のおかげか、ルイズは貧しい平民が利用する宿屋でも平気だった。 以前のルイズならば、魔法学院の部屋以上の部屋でもなければ泊まろうとも思わなかっただろう。 ブルリンは『傭兵になるのなら風呂に入れないのは覚悟しなきゃ』などと言っていたのを思い出す。 吸血鬼の肉体は垢も汗も体臭もコントロールできるので、風呂に入れなくても不都合はないし、ノミが血を吸おうとしても血が出ない。 清潔を心がけ、香水で身だしなみを整えていた頃の自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる程だった。 「…デルフ、あんた、どう思う?」 ルイズが寝そべったまま、壁に立てかけてあるデルフリンガーに聞く。 『何がだよ』 「貴族派の首謀者よ、クロムウェル…」 『虚無の力に目覚めて、貴族の心を掴んだって奴か?うさんくせぇなあ』 「私も信用できないと思うわよ、夢物語が過ぎるわ…デルフはどうして胡散臭いと思ったの?」 『いや、なんかさあ、どっかに引っかかってんだよなあ、虚無ってどっかで聞いたような…うーん』 「アンタずいぶん古そうだもんね、始祖ブリミルにでも会ってたりして」 『いや、俺を作ったのはブリミルなんだけど、漠然としか記憶に残ってないんだよな』 「…プッ、あんた冗談が上手いじゃない」 『おいおい、冗談じゃねえぞ、俺は何せ6000年も生きてるんだかんな!嬢ちゃんよりずっと年上だ』 「6000年…ね」 ルイズは考える。 自分はまだ二十年にも満たないが、吸血鬼の寿命は極端に長く、これから先いくらでも生きていられるという自身がある。 200歳、300歳の吸血鬼が討伐されたという話はたまに耳にする。 しかし、6000年も長く生きた吸血鬼の話など聞いたことはない。 デルフリンガーは一種のマジックアイテムとして意志を持ってはいるが、それは人間より吸血鬼に近いものなのだろう。 傭兵になろうと思ったのは、本当に金を稼ぐためだろうか? もしかしたら、誰かの記憶に残りたいと思っているのではないか。 もしかしたら、死を偽装したのは、間違いだったのでは… 思考の海に沈みそうになった時、一階からブルリンの声が聞こえてきた。 『何しやがる!このっ、くそっ!』 ルイズは意識を覚醒させ聴覚に集中する。 「…足音、六つかな」 中央から床板のきしむ音、ブルリンだろう。 その周囲を囲む足音は、床板がきしむ音に合わせてどたどたと動いている。 ブルリン一人を五人で取り押さえようとしているのだと分析し、ルイズはベッドから飛び降りた。 『嬢ちゃん、俺を使うのか?』 「ここじゃ使わないわ」 フードを深く被り、デルフリンガーを背負う。 剣の扱いは素人同然なので、ルイズはデルフリンガーを使わぬよう、鞘に入れたまま部屋を出る。 屋内で振り回したら建物ごと破壊してしまう。 もっとも、素手でも十分破壊できるのだが… 一階に下りるとブルリンが他の傭兵らしき男達に押さえ込まれていた。 「何やってんの、あんた」 「ちょっ、姉御!逃げてくれよ!」 ブルリンが『姉御』と呼んだのに気づき、ブルリンの腕を縛り終わった傭兵がルイズの腕を取る。 そのままデルフリンガーも回収されてしまったが、ルイズは特に抵抗もせず縛られることにした。 「あんたねえ、こう言うときはお互いに知らんぷりするんじゃない?姉御だなんて呼んで、馬鹿じゃないの」 「そっ…そんなこと言ったってよぉ」 取り押さえられながら、情けない声を上げるブルリンと、余裕そうなルイズ。 そんな二人の会話を中断するかのように、傭兵の一人が割り込んできた。 「お喋りはそこまでにしろ、王党派を貴族派に差し出せば報酬が貰えるんだ、大人しくしてりゃ怪我はさせねえよ」 「くそっ、やっぱり貴族派の連中かよ!くそっ! …あ痛ぇ!」 傭兵の一人が、騒ごうとするブルリンをきつく縛り上げる。 「ブルリン、言われたとおりにしましょう…ね」 床に転がされているブルリンが、フードに隠されたルイズの顔を見上げる。 ルイズの瞳は、血のように鈍く輝いていた。 「親方、そっちはソースの鍋ですよ、しっかりなさってください」 「ん?ああ、すまん」 トリスティン魔法学院の厨房、その料理長のマルトーに覇気がない。 慣れた料理にも、ちょっとしたミスをしそうになり、仲間のコック達が心配するほどだ。 その原因は、数日前に厨房を辞めていった使用人の少女シエスタにある。 料理長のマルトーは、シエスタが何か粗相をしてクビにさせられるのかと思いこんでしまった。 驚いたマルトーは、オールド・オスマンを問いただそうとした。 しかし、厨房の仲間達は『いくらなんでもそりゃ無茶だ』と言ってマルトーを止めようとする。 力づくでも学院長室に乗り込みそうなマルトーを迎えに来たのは、ミス・ロングビルだった。 この件についてオールド・オスマンから説明があると伝えられ、マルトーは学院長室に入っていった。 「オールド・オスマン…」 「おお、すまんのマルトー、優秀な人材を奪うようで気が引けるんじゃが」 「い、いいえ!あの、それより、シエスタが粗相をしてもこれは厨房全員の責任です、あの娘一人に責任を押しつけるのは」 「ふむ、何か誤解しているようじゃな、何か粗相があって辞めさせるわけではないぞ」 「で、では、何処かに身請けさせられるんで?」 「身請けというより、入学かのぉ」 入学って何のことだろう…と、マルトーは首をかしげた。 「入学って言いますと、も、もしかして、そういうプレイを」 「それは秘書で試すわい、シエスタはここ、トリスティン魔法学院に入学という形になるんじゃ」 「へっ?」 マルトーが呆気にとられる。 ミス・ロングビルは後でオスマンを簀巻きにして流そうと考えたが、話の続きを聞くためにあえて黙っていた。 平民のメイドが突如魔法学院に入学という異常な事態、興味が湧かない方がどうかしている。 「すまんの、マルトーはシエスタの保証人でもあったからの、追々伝える予定じゃったが」 「はぁ…もしかして、シエスタがここに入学できるって事は、シエスタのじい様は本当に貴族様だったんですかい」 シエスタのじい様と聞いて、オールド・オスマンの目が一瞬だけ鋭くなる。 しかし、すぐにいつもの優しい視線に戻ると、静かに語り出した。 「…正確にはシエスタの曾祖父母の話になるがの」 オールド・オスマンがマルトーに事の次第を説明している間、シエスタは空の上にいた。 『きゅいきゅい』 (お姉さま、やっぱりこの人もメイジだったのね、他の人と違うにおいがするの!) 「あまりはしゃいじゃ駄目」 『きゅい』 (はーい) シルフィードがテレパシーのようなものでタバサに語りかける。 タバサはシルフィードに乗っていても本を手放さず、素っ気なく返事をする。 今朝、タバサとキュルケはオールド・オスマンに呼び出され、シエスタをタルブ村へと急いで連れて行けと指示されたのだ。 まだ空に不慣れなシエスタを後ろから支えながら、キュルケが話しかける。 「上質のぶどう酒が採れるんですって? 楽しみね」 「そんな、貴族様にお出しできるようなものじゃありません、自分で飲むために作ってるんですから」 「そうなの?」 「ええ、ひいお婆ちゃんが草原の一角を葡萄畑にして、自分で作っていたのを細々と続けているだけなんです」 シエスタは魔法学院の制服を着て、オールド・オスマンから渡された30サンチ程の杖を身につけている。 マントに慣れないのか、時折位置をただしている。 「あの…驚かれないんですか?」 「何が?」 シエスタの唐突な質問にキュルケが返す。 「だって、私、この前までメイドだったのに、突然メイジになれだなんて言われて…」 「あら、トリスティンならともかく、ゲルマニアなら経済力や商才があれば、貴族にもなれるし公職にも就けるのよ?」 「えっ、そうなんですか」 「そうよ!実力があれば平民も貴族になれるの、不可能を可能に出来る人って素敵じゃない?」 「はあ…」 「あなたも実力を見いだされたんだから、ちょっとは自信を持ちなさいよ」 シエスタの心の中に、ルイズへの思いが募る。 ルイズと入れ替わるかのように知り合った二人の貴族、キュルケとタバサ。 ルイズの死んだ場所に行ったあの日、シルフィードはシエスタを見て『太陽の臭いがする』と言い出した。 ある日、キュルケのサラマンダーまでもが同じ事を言い出したのだ。 不思議に思ったキュルケがタバサに聞くと、シルフィードも同じ事を言っていたと聞き、キュルケはシエスタを「不思議な平民」だと思っていた。 だが、オールド・オスマンの鶴の一声で、トリスティン魔法学院に入学させられる程だとは考えてもいなかった。 ゲルマニアは実力主義の気があり、魔法だけでなく平民の工業技術にも力を入れている。 トリスティンは貴族主義的な気があるので、平民がどんなに努力してどんなに功績を立てても、シュヴァリエ以上の名誉が与えられることはない。 しかしゲルマニアは違う、その能力と財力次第で公職にも就くことができる。 そんな国出身のキュルケでも、以前ならシエスタを平民上がりかと小馬鹿にしていたかもしれない。 ルイズが死んでからというもの、キュルケは後輩を気遣うことが多く、特に下級生から慕われることも多くなっていた。 何よりも、勝ち気なルイズとは正反対の大人しさを持つシエスタに、ルイズの面影が見えた気がしたのが、その原因だろう。 オールド・オスマンの話では、シエスタはルイズと同じか、それ以上に特殊なケースらしい。 シエスタはルーンを詠唱することで発動する魔法ではなく、口語によって発動する魔法に特化しているそうだ。 そのため、今まで魔法の才があるとは思われていなかったとか。 ルイズの件で反省し、魔法に対する認識を改めたオールド・オスマン。 彼はシエスタを特別なケースとして魔法学院に迎え入れ、既存の魔法だけでなく新たな魔法の発見に力を入れるのだそうな。 キュルケの興味は、『どんな魔法も爆発させる』仇敵ラ・ヴァリエールの娘から、 『水の魔法より純粋な生命力を操る』元平民のメイジへと移っていた。 [[To Be Continued → 仮面のルイズ-14]] ---- #center(){[[12< 仮面のルイズ-12]] [[目次 仮面のルイズ]]} //第一部,石仮面
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前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ 今日も酷い目に遭った。 秘密結社フロシャイム川崎支部将軍ヴァンプは、夕飯である鮭のムニエルをつつきながら溜息を吐いた。 「結構いいところまで行ったと思ったんだけどねぇ、今回」 「なんで正義のヒーローってあんなに都合よく現れるんでしょうね」 話の都合だろ、とは誰もが思いつつも誰もが言わない事であったが、 ともかく毎度の事ながら呼び出した怪人がこうも簡単に屠られてしまうと はたして本部から左遷降格を言い渡されはしないか、と一抹の不安がよぎるのだ。 「お…明日タマゴが特売か」 しかし悲しいかな、何しろ経済的にそう余裕の無い川崎支部では先ず優先すべきは支部の存在そのものの確保なのである。 どんなブラック企業でも赤字では立ち行かない。常識もいいところだ。 だからヴァンプ率いる川崎支部の戦闘員および怪人は日々の倹約の知恵を振り絞り、 それが正義のチンピr…ヒーローたるサンレッドに対する危機感を薄れさせ、 結果毎度の惨敗に繋がる所となっているのだ。 「「今度こそはすっごい奴を呼び出して…」」 それは誰の発した言葉かは分からない、が、その言葉を発した誰もが心の底からそう願っていた。 「魔界の果て、地獄の底に屯す悪魔よ!」「天と地とその狭間の何処かに居る私のしもべよ!」 誰かが魔方陣の前でその口上を結び始める。 「残忍で、凶暴で、冷血な、血を渇望する猛獣よ!」「清く、賢く、美しく、何者をも超越する私の使い魔よ!」 魔方陣は静かに、仄かに、輝き始める。 「「我は心より求める!この地へお前が降り立つ事を!!」」 魔方陣が放つ光に、それを見ていた誰もが目を眩ませ、 …やがて、光の中にその影を認めた。 「…は?」 「しょ、将軍…!?何処へ…ってあんた誰!!??」 「…え?は?…どこだここはぁぁぁ!!?!」 禁呪により神奈川県川崎市へ呼び出された東京都在住の平凡極まる高校生・平賀才人は、 戦闘員ならびに怪人たちによる深い謝罪と交通費を受け取った後、帰路に着いたのである。 「いやぁ~あの鮭のムニエル旨かったなぁ」 「……えっ?」 「…………」 「……………」 「………………誰よ、アンタ」 そして、フロシャイム川崎支部将軍ヴァンプは、 職と、 家を、 失った。 前ページ次ページ秘密結社ゼロシャイム総統ルイズ
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ラ・ロシェールで一番上等な宿『女神の杵』 この宿に泊まったルイズ達は、一階の酒場で適当な料理をつまんでいた。 今後の予定などを話していたが、ロングビルはラ・ロシェールにとどまると聞いて、ギーシュが何故ここに止まるのかと質問した。 「私は、ミス・ヴァリエール、そしてワルド子爵が帰還されない場合の連絡役ですから」 ロングビルの答えに「なるほど」と頷いていると、そこにワルドが戻ってきた。 ワルドはアルビオンに向かう船を調達するために出かけていたのだ。 席に着いたワルドから、アルビオンにわたる船は明後日になると告げられる。 「あたしはアルビオンに行ったことがないからわかんないけど、何で明日は船が出ないの?」 キュルケのふとした疑問にワルドが答える。 「明日の夜は月が重なるだろう、『スヴェル』の月夜だ。アルビオンに行くには距離がある。その翌日の朝ならアルビオンがラ・ロシェールに近づくんだ」 キュルケは、タバサのシルフィードに乗せて貰えば良いと考えたが、シルフィードに無理をさせるのは少し気が引ける、おとなしくワルドの言葉に従うことにした。 ルイズも同じ事を考えていたが、本来ならお忍びの任務、タバサの力を借りるのはあまり良くないと思い、何も言わなかった。 ワルドが席を離れると、あらかじめ預かっていた鍵を机の上に置く。 「さて…そろそろ寝るとしようか。部屋は取ってある、ルイズと私は相部屋だ、後は…」 それを聞いたルイズは顔を真っ赤にする。 「そんな、ダメよ! ままままだ私たち結婚してる訳じゃないし、それに…」 「婚約者だからな、当然だろう?それに…大事な話があるんだ、二人きりで話をしたい」 そう言って、ワルドはルイズを連れて部屋へと入っていく。 後に残された四人はしばらく悩んだが、ギーシュは一人、他の三人は相部屋ということで落ち着いた。 ルイズとワルドが入った部屋は、この宿でもっとも上等な部屋であり、そのつくりは貴族の館の私室のようで、豪華な装飾の割には落ち着いた雰囲気のいい部屋だった。 「きみも腰掛けて、一杯やらないか? ルイズ」 ルイズは言われたままにテーブルに着くと、ワルドが注いだワインを二人で乾杯した、ルイズは恥ずかしさからか、少しうつむいていたが。 「姫殿下から預かった手紙は、きちんと持っているかい?」 ルイズはポケットの上から、アンリエッタの封書を押さえた。 どんな内容なのか具体的に入ってくれなかったが、恋文に似た思いで書いたのだと想像はつく。 ウェールズから返して欲しいという手紙の内容は、もしかしたら…そこまで考えて頭を振った、今はそんなことを考えても仕方がない。 そんなルイズを心配して、ワルドが語りかける。 「不安なのかい? 無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」 「そうね。不安だわ…だけど……」 そこでルイズはハッと気づく、ワルドの後ろに見える、比較的大きな姿見の鏡に、あの青い色の幽霊が浮かんでいたのだ。 ワルドはルイズの視線に気づき、ふと後ろを見る、しかしそこには誰もいない。 鏡にも何も映っていなかった。 「ずいぶん心配しているのだね…大丈夫だよ。きっとうまくいく。なにせ、僕がついているんだから」 「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね」 ルイズは落ち着いたフリをして答えるが、内心は焦りがあった。 心の中で誰かが警鐘を鳴らしている、何かがおかしい、何かが引っかかる。 昔、吸血鬼が居た。 その吸血鬼のカリスマ性とも言うべき、人を『恐怖』させ『安心』させる姿。 あの雰囲気に共通する、何かがあるのだ。 いつの間にか、ワルドは遠くを見る目になって、ルイズに語り出した。 ワルドはルイズとの思い出を語り、そして、ルイズの魔法は4大魔法ではなく、別の魔法…すなわち虚無の魔法に最も近いのではないかと言った。 歴史書が好きだったワルドは、始祖ブリミルの魔法についても調べていた、火炎と油による爆発は、火と土の合成だが、単体で爆発を起こせる魔法は存在しないはずだとまで言った。 それが本当の事かどうか分からないが、ルドが自分を評価してくれているのは分かる。 しかし現実味を感じられない、どこか白ける気すらした。 そして… 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 「え……」 いきなりのプロポーズに、ルイズははっとした顔になった。 先ほど現れた幽霊のことも忘れ、ルイズはワルドの話をじっと聞き続けた。 一方、キュルケ、タバサ、ギーシュの三人は、景気づけと称した一気飲みでロングビルに敗北していた。 翌日、ルイズ達4人は、ラ・ロシェールの町を見て回っていた、ロングビルは一応護衛なのでルイズと行動を共にしている。 ワルドは後学のためにと、ギーシュを連れて桟橋へ行ったが、実際の所ギーシュは体の良い小間使いだろう。 一通りラ・ロシェールを見て回った四人は、『女神の杵』の裏手にある練兵場に来ていた。 「昔はここで修練してたのねー」 キュルケが興味深そうに呟く。 歴史などには興味のなさそうな彼女だが、練兵場の壁は、高位のメイジが固定化をかけたと思われるほどの丈夫さがあった。 そしてその岸壁にも、いくつかの傷や焦げ跡がある。 集団戦と言うよりは、決闘の痕と言うべき傷が、キュルケの心を喜ばせた。 「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったと聞いています」 ロングビルの言葉に、一同が感心する、言われてみれば宿の作りに不思議な点があったと思い出せるからだ。 そういえば…と、キュルケがロングビルを見る。 「ミス・ロングビルはラ・ロシェールに住んでたの?」 ロングビルはこの宿だけではなく、ラ・ロシェールの事に詳しかった。 事実、町を巡って何か分からないことや疑問があれば、ロングビルが説明してくれたのだ。 「いえ、私は…」 「アルビオン訛り」 ロングビルを差し置いてタバサが答えた、その答えでキュルケとルイズが納得する。 アルビオンの貴族ならば、大陸に来る時にこの町を必ず通る、しかし納得したところで別の疑問が出てきた。 なぜルイズと共にアルビオンに同行しないのか? 故郷ならば、地理にも情勢にも詳しいのだろうが、それなのにアルビオンには同行しないと言う。 その答えは三人にとって驚きのものだった、ロングビルはアルビオンの貴族ではなく、アルビオンの貴族だった者、なのだ。 貴族としての立場を剥奪されたメイジ、ある意味、王党派を恨んでいてもおかしくない人物がルイズの護衛をしていることに、三人は大いに驚いた。 「ミス・ロングビル、なんでルイズの護衛なんて引き受けたのかしら?」 キュルケは不信感を隠そうともしない態度で質問する。 「…私は、戦争を防ぐために手伝って欲しいとしか、オールド・オスマンから承っていませんわ、王党派への恨みがないと言えば嘘になりますが、戦争が始まって孤児が増えるのは…もう、見たくはありません」 ロングビルはルイズを見た、ルイズは何か考えるように、うつむいている。 「私からも一つだけ質問させて頂きます、ミス・ヴァリエール…貴方はなぜモット伯の元へ、シエスタを助けに行こうとしたのですか?」 キュルケとタバサもルイズを見た、この二人にしても疑問に思っていたからだ。 「貴族が、一人の平民を贔屓するのは、決して良いことだとは思えません。モット伯は教育と称して少女を嬲り、売買もしていたと判明しましたが…そうでなかったら、どうするおつもりでしたか?」 その質問は、あらかじめ答えが用意されていた。 いや、ルイズ自身が自問自答していたのだ、これは誰からの受け売りでもない、ルイズ自身の答えだった。 「一度でも友人と呼んだ者を見捨てるのが貴族といえるのかしら」 ルイズは、真剣な目でロングビルを見た。 ロングビルは、その視線に思い出す者があった。 そもそもロングビルの一家が貴族の立場を剥奪されたのは、父親がアルビオンの王家に逆らったからだ。 しかし、父は決して後悔などしていない。 王家よりも、自分よりも、何よりも大事な『理念』を守ろうとした父、その視線とうり二つに見えたのだ。 以前のルイズならば、同じ答えを言ったとしても、そこには説得力が無かっただろう。 しかし今のルイズに見える『威厳』と、目の奥に見える『悲しみ』があった。 「貴方は、精神的にも貴族なのね…」 ロングビルの呟きに、ルイズは少しだけ頬を染めた。 「照れてる」 「う、うるさい!」 タバサの言葉に、いっそう顔を真っ赤にしてルイズが怒鳴る。 「ちょっとあんた何格好いいこと言ってるのよ!ゼロのルイズのキャラじゃないわよ!」 「ゼロって言ったわねこの色ぼけ女!」 キュルケのちょっかいで、普段の騒がしさを取り戻した三人。 その三人を見ながら、ロングビルは何かを決心していた。 キュルケと喧嘩しつつも、ルイズの頭の中にはある記憶が浮かんでいた。 シエスタを助けるため、モット伯へと立ち向かう決心を与えた、ある人物の記憶だった。 『なぜ おまえは自分の命の危険を冒してまで わたしを助けた…?』 『さあな…そこんとこだが おれにもようわからん』 なぜ命がけでシエスタを助けに行ったのか、よく分からない。 アンリエッタからのお願いを、命の危険があると知りながら引き受けたのも、よく分からない。 でも、よく分からないままでも、いいじゃないか…。 前へ 目次 次へ
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「使い魔品評会が開かれます!」 食堂に集まった生徒達は、コルベール先生による使い魔品評会の知らせを聞いて大いに驚いた。 使い魔の品評会は、簡単に言えば使い魔自慢だが、今回はアンリエッタ姫殿下が使い魔の品評を行うという。 アンリエッタ姫殿下はその清楚さと、幼さを見せない凛とした姿に人気があり、国民の憧れの的と言っても過言ではない。 他国からの留学生であるキュルケ、タバサはその逆で、姫には興味がないと言った感じだ。 わいわいと騒ぐ生徒達の中で、ルイズは、本日何度目か解らないため息をついた。 「皆さん静かに! …先ほども言いましたが、品評会は明後日、今日と明日しか猶予はありません。 しかし、トリスティン魔法学院の生徒達は皆、普段から使い魔の能力を熟知し、 パートナーとして最大限の力を活かせるものだと信じております! 尚、今日と明日はオールド・オスマン氏のはからいにより、 授業はすべて中止となります」 授業が中止と聞いて、生徒達は喜び、やった!などと声を上げるものも多かった。 そんな中で、ルイズから向かって右端の方に座っている教師二人が、ボソボソと何かを呟いているのが見えた。 『二学年に、使い魔の居ない人が確か…』 『ヴァリエール侯爵の娘ですよ』 『ああ、そうでしたね』 『欠席は認められないとなれば、魔法学院にとっても恥ではありませんか』 無礼な教師二人の声は、とてもルイズまでは届かない。それどころか最前列に座っている生徒にも聞こえていないだろう。 しかし唇の動きがハッキリと見え、その言葉が頭に流れ込んでくる。 (何よあいつら、聞こえてないと思って好き勝手言って…) ルイズは悔しさに身を震わすばかりで、言葉が見えてしまうことに疑問を感じる暇もなかった。 やがて生徒達は、使い魔にどんな芸をさせようかと思案しながら食堂を出て行く。 後には思い詰めたような顔をしたルイズと、メイドのシエスタが残っており、 メイドは深刻な表情のルイズに声をかけて良いものか迷ったが、意を決して話しかけた。 「あ、あのっ」 「え? あ、この間の…えっと」 「シエスタ、です。この間は私のせいで、貴族様に、その、ご迷惑を」 緊張しているのか、言葉がたどたどしい。ルイズは笑いかけるように言った。 「あれはもう私の問題よ。貴方はメイドとしてちゃんと仕事をしただけじゃない」 「でも…」 「いいの、迷惑だなんて思ってないわよ。それに…」 ”恐怖で人を縛り付けるのはよくない。”と言おうと思ったが、言えなかった。 ルイズの姉エレオノールは威厳と実力を示し、人を従わせるタイプだった。ルイズはその姉が苦手で苦手で仕方がない。 しかし、苦手なエレオノール姉の姿こそ、貴族の理想だと思っていた。 もう一人の姉カトレアは、その穏やかな人柄と、どんな相手にも分け隔て無く接する優しさを持ち、人を従えるのではなく、人が慕ってくるタイプだった。 使い魔召喚に失敗したあの日から見続けている奇妙な夢。 それが、エレオノール姉への憧れを打ち消し、カトレア姉への憧れを強くしていく。 しかし、時には恐怖で人を従わせるエレオノールの振る舞いも貴族のあるべき姿だと思っているのだ。 ルイズは、頭の中の混乱を上手く言葉にすることが出来ない、と感じたのか、余計なことは言わないでおくことにした。 「何でもないわ。それよりも貴方、私のこと貴族様って呼ぶの止めてよ。ルイズでいいわよ」 「は、はい、ルイズ様」 ルイズは少し考えた後。 「様もいらないわよ」 とだけ言って笑いかけ、席を立った。 シエスタは立ち去ろうとするルイズに深々とお辞儀をしてから、 食器の片づけをしようとして、ルイズの席の食器を手に持った。 その時、足下に落ちていた誰かの香水入れを踏みつけ、バランスを崩した。 「!」 この学院で使われる食器は、貴族から見ればそれほどの価値はない。 しかし平民のシエスタにとっては大変なものだ。 もし趣味の悪い貴族に仕えるメイドならば、粗相をしたと言って殺されても不思議ではない。 手の中から滑り落ちる食器の感覚に、この世の終わりのような思いをしたシエスタ。 彼女の耳に食器の割れる音が届くかと思われたが… なぜか食器はテーブルの上に置かれていた。 「ちょっと、どうしたのよ。気をつけなさい…って、それモンモランシーの香水入れじゃない。こんな所にあったら危ないじゃないの」 そういってルイズは香水入れを拾い上げた。 そして、何が起こったか解らず呆然としているシエスタは、少しの思考の後『ルイズ様が魔法で何とかしてくれた』という結論に達し、ルイズに対する尊敬はますます高まっていくのだった。 そして、魔術学院の学生達が待ちに待った、使い魔品評会、その前日の夜。 ルイズはベッドの中で丸まっていた。 どうしよう、どうしよう、と、終わりのない自問自答を繰り返す。 サモン・サーヴァントは一回も成功していない。 このままでは使い魔品評会で恥をかいてしまう。 使い魔を呼び出すサモン・サーヴァントは、成功確率が高い魔法と言われている。 使い魔と主従の契約を交わすコントラクト・サーヴァントの方が難しいこともある。 どんな魔法を使っても爆発、つまりは失敗。 もしかしたら、自分は魔法の才能が無いどころか、メイジですらないのかもしれない。 数え切れないほど失敗を繰り返したルイズの手には火傷の痕が残り、頬にはかすり傷もついていた。 「退学…かな…」 最悪の結果を考えて、ルイズは自分が弱気になっていることに気付いた。 使い魔品評会には、使い魔がいなければ何も出来ない。 ギーシュとの決闘の時、私は魔法を使って勝ったはずだと何度も自分に言い聞かせた。 落ち込むばかりじゃいけない、まだ少しだけ時間がある。 ルイズは寝間着の上にマントを羽織り、杖を持って、最後のチャンスに賭けようと外に出た。 中庭は二つの月に照らされて明るく、神秘的な雰囲気を醸し出していた。 その中央に誰かが立っている。誰だろう?と思い近づいてみると、シエスタが二つの月を見上げていた。 「何やってるのよ、こんな時間に」 「!…ご、ごめんなさ…ルイズ様?」 「様はいいわよ、もう…幽霊でも出たかと思って驚いたじゃない」 「すみません…ちょっと、祖父のことを思い出していたんです」 「お爺さんの?」 「はい。私の髪の色は、ここでは珍しい色です」 そういえば黒い髪なんてあまり居ないわね、と心の中で呟く。 「祖父の生まれた土地では、黒い髪の毛の人しかいなかったそうです」 ルイズは自分の祖父の姿を思い出しながら、シエスタの話を聞いていた。 「…祖父は、遠く東の果てから来たと言っていました。村の人たちは誰も信じません。 でも、祖父はいつも月を見上げては、故郷の月は一つだった…って言っていたんです」 「月が一つ?そんなのどこに行けば見られるのよ」 不意に、ルイズの思考を別の記憶が流れ込む。 私は砂漠の中に立っていた。 昼間の熱気とはうってかわって、極端に寒くなる砂漠の夜。 仲間達と共に月を見上げ、ひとときの休息を味わう。 「村の人は誰も信じません。でも、私には祖父の言葉が嘘だとは思えなかったんです」 「信じるわよ」 「えっ?」 「そんな世界も、どこかにあるかもしれないじゃない」 その時のシエスタの表情は、今までに見たことのない、明るい笑顔だった。 「私も、月が一つの世界に、一度行ってみたいわ」 そう言ってルイズは月を見上げ、記憶をたぐり寄せる。 高速で巡る月。 加速する世界。 娘に降り注ごうとするナイフの雨。 ナイフを弾き、次の瞬間、切り裂かれる自分の体。 「あうっ!」 「え、る、ルイズさん!どうかしたんですか!?」 膝の力が抜け、倒れそうになるルイズを、シエスタが支えた。 「だいじょうぶ、だいじょう、ぶ、ホントに、大丈夫だから…気にしないで」 「でも、お顔が真っ青です。それに、こんなに震えて」 「月明かりのせいよ」 「違います。すぐに治癒の先生の元へお連れしますから」 「大丈夫。本当に大丈夫よ。ちょっと足が震えただけなんだから、部屋で休めばすぐ治るわよ…」 シエスタは口で答えるよりも早くルイズの体を支え、ルイズの部屋へと歩き出した。 夜中なので足音を立てぬよう、静かに歩く。 女子寮に入るのは初めてだったが、ルイズの案内で部屋の前まで来ると、フードを被った不審な人物が、ルイズの部屋の前で立ち往生しているのが見えた。 「ルイズ!ルイズ・フランソワーズ、どうしたの?そんな、辛そうにして…」 フードを被った人物は女性らしい細い声で、ルイズに声を掛けた。 シエスタはフードを被った人物が誰だか分からなかったが、ルイズの体を支えようとしたので、ルイズの友人だろうと判断した。 フードを被った女性はルイズの部屋を開け、シエスタはルイズをベッドに座らせる。 その間にフードを被った女性は扉を閉めて、罠を関知する魔法で安全を確かめ、サイレントの魔法で部屋の音を外に漏らさぬようにした。 「ルイズ…ああ、どうしたことでしょう。顔を真っ青にして…」 そう言いながらフードを外し、アンリエッタ姫殿下ルイズを抱きしめた。 「ああ、ルイズ! 懐かしいルイズ!」 「…ひ、姫殿下、いけません。こんな下賎な場所へお越しになられるなんて……」 「そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい。あなたとわたくしはお友達じゃないの!」 そう言って二人は、ルイズの体の調子を気にしつつも、過去の思い出話に花を咲かせた。 幼い頃、ルイズはアンリエッタ姫の遊び相手をしていた。利欲と陰謀の渦巻く王家と貴族の間で、アンリエッタ姫が唯一心を許せる友達がルイズなのだ。 「あら。ごめんなさい、貴方のことをすっかり忘れていたわ。私の友達を助けてくださったのに…」 さっきから一人放置されていたシエスタは、突然自分に声を掛けられて、それこそ輪切りにされてホルマリン漬けにされる程驚いた。 「あ、あの、ご、ご無礼を、いたしました…」 先ほどのルイズよりもひどく震えながら、アンリエッタ姫の前に土下座するシエスタ。 その態度から、アンリエッタはシエスタが平民だと見抜き、そして寂しそうな表情をした。 「貴方は平民なのですね。そんなに怖がらないで。私の友達を助けてくださったのですから、貴方に感謝することはあれど、罰することはありませんよ」 アンリエッタがそこまで言っても、シエスタは土下座したまま震えている。きっとパニックに陥っているのだろう。 ルイズは無言でシエスタを抱き起こす。シエスタの目にはハッキリと怯えが見えていた。 「…これは、私の至らなさが原因なのです」 ぼつりと、アンリエッタが呟き、そして話が始まった。 アンリエッタが諸侯を視察している時の話だ、道中、外を見ると、アンリエッタを歓迎する貴族と平民達が見える。 皆の喜ぶ顔はアンリエッタにとっても喜びだった。 しかし、その一方で、躾と称して平民を殺す貴族もいる。過剰な拷問を趣味にしたり、平民が貴族に逆らえないのをいいことに、平民の少女でハーレムを作る貴族もいる。 アンリエッタは、それがとても汚らしいものに見えた。 しかしそれを正せるほどの権威は、今の自分には無い。そんなことをすれば貴族達からの反感を買い、クーデターが起こってもおかしくはない。 ルイズという身分違いの友達を得ることで、アンリエッタは自分の本心を見せられる友達のありがたさを知り、身分の差を疎ましく感じるようになった。 それと同時に、自分は籠の中の鳥なのだ。貴族の暴虐を黙認し、その見返りとして貴族に守られなければ、何も出来ない弱者なのだと感じていた。 「それは姫様だけの責任ではありませんわ!貴族全員の…」 「わかっています。ですが、王家の者として、貴族が恐怖の象徴として扱われることに責任を感じているのです」 話を聞いていたシエスタも、少し落ち着いたのか、悲しそうな表情で姫を見た。 それは同情からくるものであり、無礼ではあったが、アンリエッタは数少ない理解者が増えた気がして、その視線に喜びを感じていた。 「あ、あのっ、難しいことはよく分かりませんけど…わたし、アンリエッタ姫様が、今の話で、好きになりました。ですから…あ、あの」 この時代、貴族に、しかも王族に話しかけるという行為すら咎められることがある。勇気を振り絞ったシエスタの言葉を聞き、アンリエッタとルイズは心底嬉しそうに笑った。 しばらく三人で談笑した後、アンリエッタは、 「それでは、明日を楽しみにしています、ルイズ、体をいたわって下さいね」 と言って、シエスタと共に部屋を出て行った。 結局、使い魔の召喚には成功していない、明日恥をかくのはもう避けられない。 けれども別の充実感があった、アンリエッタ姫にまた一人友達が増えたことだ。 一人だけでになり、寂しくなった部屋で、ふと窓の外を見た、 もし、使い魔がいたら、私はどんな名前を付けただろう。 そう考えたルイズの目に、銀よりも強い輝き、白金色の光をまとった流れ星が流れた。 『星 の 白 金』 「スタープラチナ」 ルイズは、小声で呟いた。 翌日朝、使い魔品評会が始まる直前まで、女子達の間では新たに出現した幽霊の話で持ちきりだった。 『月夜に中庭に立つ幽霊』 『廊下で足を引きずって歩く幽霊』 『フードを被った女性の幽霊』 ルイズは冷や汗をかき。 キュルケは呆れ。 タバサの洗濯物は今日も一枚多かった。
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「虚無って……何、これ」 アンリエッタも、ウェールズも、ルイズの疑問に答えることは出来なかった。 ルイズが更にページをめくり『始祖の祈祷書』を読み進めようとすると、よりいっそう『風のルビー』が強く輝いた。 「風のルビーが、輝いている」 アンリエッタがルイズの手にはめられた『風のルビー』を見ると、ウェールズの言ったとおり、不自然なほど強く光を反射して輝いていた。 「本当…ねえ、ルイズ、『始祖の祈祷書』を私にも……」 アンリエッタが試そうとするが『始祖の祈祷書』には何の文字も現れない。 もしやと思い『風のルビー』をはめて試すが、やはり何の文字も現れなかった。 「ルイズ、私の『水のルビー』でも読めるか、試して?」 「…………」 ルイズは無言のまま、アンリエッタの差し出した指輪を受け取り指にはめた。 「読める……読めるわ……」 『始祖の祈祷書』には、『風のルビー』をはめた時と同じように文字が浮き出ていた。 「まさか……私が、そんな、そんな」 ルイズは顔を押さえ、狼狽えた。 この本に書かれていることが本当なら、私は虚無の使い手。 今までの魔法の失敗は、私が系統魔法ではなく虚無の魔法の使い手だったからだと考えれば納得がいく。 だが、納得できない。 『なぜ吸血鬼になる前に教えてくれなかったのか!』 と、怒りにも似た感情が『始祖の祈祷書』に向けられる。 だが、本はそのまま、本として無機質な顔を見せたままだった。 アンリエッタから水のルビーを借りて、始祖の祈祷書を読もうとしていたウェールズだったが、自分には読めないことが分かると、顎に手を当てて何かを考えていた。 「アンリエッタ、この本がニセモノである可能性は?」 「ウェールズ様が疑われるのも無理はありません、ですが、『始祖の祈祷書』は過去に魔法学院やアカデミーで研究されているはずです。この本には『固定化』以外になんの魔法も付加されていないはずですわ……」 アンリエッタの言葉は少し震えていた。 ルイズの言葉が本当なら、伝説だと思われていた『虚無』の手がかりが現れたことになる。 そして、ルイズを悩ませていた魔法失敗の原因が、今解明されるかもしれないのだ。 アンリエッタは王女として、一人の友人として、期待せずにはいられなかった。 「そうなのか……ならば、石仮……いや、ミス・ルイズ。虚無の魔法とはどんなものなのか、確かめられるような魔法は書かれていないのか?」 正直なところ、ウェールズはまだ『虚無』に対して懐疑的だった。 アンリエッタやルイズを信用してはいるが、虚無の魔法ともなれば、その内容を確かめてからではないと信用は出来ない。 『伝説の虚無系統を、この目で確かめてみたい』というのが本音かもしれないが…… 虚無の魔法に対して懐疑的なのは、ルイズも同じだった。 あまりにも突然の出来事で、頭が混乱しているのかも知れない。 だが、今は『これが虚無である』と確かめられるような呪文を探すのが先だ。 ルイズは一心不乱にページをめくり、文字を探した。 「……以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』……意味は、爆発?」 爆発と聞いて、ルイズとアンリエッタが「あっ」と声を上げた。 ルイズはいつも、呪文を唱えると、爆発を起こしていた。 あれは、ここに書かれている『虚無』ではないだろうかと、思い当たったのだ。 考えてみれば、爆発する理由は誰も答えられなかった、ラ・ヴァリエール家の教育係も、両親も、姉も、誰もその疑問には答えられなかった。 ただ、彼らの望む結果を出せなかったから、ルイズの魔法は『失敗』で片づけられていたのではないか。 ルイズは更にページをめくる。 こんな所で爆発を起こしてしまったら、それこそ大問題だ。 別の何かはないかと、必死になって探した。 ルイズは本を凝視し、精神を集中させた。 ふとページをめくる手が止まる。 光と共に文字が浮かび上がり、別の呪文が姿を現した。 「初歩の初歩……〝イリュージョン〟……描きたい、光景……強く心に思い描くべし、なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すであろう…………かしら」 ルイズは、静かに詠唱を始めた。 それはアンリエッタとウェールズも聞いたことがない、長い呪文。 だが、ルイズにとっては、なぜか懐かしく、そして心落ち着く呪文だった。 ルイズは思い描く。 アンリエッタとウェールズの姿を思い描く。 テーブルの上に、二人が並んで立っている姿を想像して、詠唱する。 詠唱する。 詠唱する。 詠唱する…… テーブルの上に雲のようなものが集まり、徐々に人間の形を成して、色が浮かび上がっていった。 テーブルの上に立つのは、高さ15サント(cm)程のウェールズ、アンリエッタの姿。 ……だけではない。 羨ましい程のスタイルを持つ赤毛の女性。背丈より高い杖を持ち眼鏡をかけた水色の頭髪の少女。薔薇の造花を持った金髪の少年。長い髪の毛を綺麗にロールさせた女性。 ぽっちゃりとした体型で肩に鳥を乗せた少年。黒い頭髪と瞳を持つメイドの少女。眼鏡をかけた緑色の頭髪を持つ女性。逞しい肉体と髭をたくわえ豪華な鎧を着た男。ルイズを金髪にして眼鏡をかけたような女性。ルイズと同じ髪の色で目つきの優しい女性。 ほかにも沢山の人の姿が、まるで人形を並べていくようにテーブルの上に形作られていった。 「すごいな……、少し、確かめさせて貰うよ」 テーブルの上に作られていく人形に向けて、ウェールズは『ディティクト・マジック』を唱える。 光り輝く粉のような物が舞い、その存在を調査していく。 「手で触れることはできないが、ディティクト・マジックにすら反応しない幻……これが虚無なのか…」 「水でも、風の系統でもありませんわ、これが『虚無』の初歩なのね、ルイズ…………ルイズ?」 ウェールズが感心する一方、アンリエッタはルイズの表情に影が差していたのを見逃さなかった。 コンコン と、応接室にノックの音が響く。 「姫さま、会議の時間が迫っておりますが……」 アンリエッタは、ウェールズの処遇と、ワルド子爵の裏切りについて会議があるのを思い出した。 「ルイズ、後でまたお話ししましょう。すぐに部屋を一つ準備させますから」 ルイズはうつむいていた顔を上げ、アンリエッタを見て言った。 「は、はい……あ、私のことは、どうか誰にも言わないで」 「大丈夫ですわ、貴方がウェールズ様を守って下さったように、わたくしも貴方を守りましょう」 「……ありがとう」 アンリエッタとウェールズの二人は応接室を出ると、外で待機していた侍女がアンリエッタの言付けを受けて、すぐに上等なゲストルームへとルイズを案内した。 侍女が恭しく一礼し、ゲストルームを出て行くと、ルイズは糸が切れたようにソファに倒れ込んだ。 『イリュージョン』を唱えた影響なのか、ルイズの精神は思ったよりも疲弊していた。 侍女が出て行った途端、緊張の糸がほぐれたのだ。 ルイズは目と口を半開きにしたまま、意識を手放した。 夢の中で、ルイズは魔法学院にいた。 『ツェルプストー!見てみなさい、ふふーん、アタシは虚無に選ばれたのよ!』 『へー、すごいじゃない。でもその胸なら納得よね』 『ああああアンタ!エクスプロージョンでぶっ飛ばしてやるわよ!』 『ミス・ヴァリエール……貴方にお願いがある』 『え?お願いって……』 『タバサがお願いだなんて珍しいじゃない』 『虚無なら、ハシバミ草を育てる魔法があるはず』 『そ、そんなもん、無いわよ』 『……ふぅ』 『何よその落胆したようなため息はー!虚無よ虚無!凄いのよ!伝説よ!』 『ハハハ、ミス・ヴァリエール、君が虚無に選ばれただなんて、なんの冗談だい?』 『えい、金的』 『ウッギャー!』 『ちょっとルイズ!あたしのギーシュに何するのよ!』 『あれぐらい当然の罰よ、罰』 『駄目なの!ギーシュを罰していいのは私だけなのよ!』 『モンモランシー…あんた本当にギーシュが好きなのね。ならプレゼントよ”イリュージョン”』 『えっ、あ、ギーシュが一人、二人、三人……や、そんな、そんな沢山のギーシュに見つめられるなんて、私…ぽっ』 『あら、ヴァリエールったら、本当に虚無の魔法を使えるのね』 『ふふん、やっとツェルプストーも私の力を認める気になったのね』 『でも私はもっと派手なのがいいわ、心の底から恋を焦がすような、熱と光は無いの?』 『あるわよ』 『ふーん、じゃあやって見せなさいよ、ゼロのルイズ』 『ほえ面かいても知らないわよっ!”エクスプロージョン!”』 洪水のような熱と光に、魔法学院と級友達、そして自分自身が焼かれ、ルイズは目を覚ました。 ソファから身体を起こして窓を見る。 外には見慣れた月が二つ浮かび、ゲストルームをうす明るく照らしていた。 「……夢?」 自分の身体を触り、焼けこげていないか確かめる。 服を確かめても、夢の中のように魔法学院の制服は着ていない。 ルイズは「ふぅ」とため息をついて、再度ソファで横になった。 「戻りたい」 学院に。 「戻りたい」 人間に。 ルイズの小さな呟きは、誰にも聞かれることなく、月明かりに消えていった。 その頃、会議を終えたアンリエッタは、ルイズの作り出した幻のを思い出していた。 あの幻で作られたのは、ルイズの父母、姉達、魔法学院の制服を着た人々。 「子供の頃から、強がってばかり……」 空に浮かぶ二つの月を見上げると、月は一つの球体が二つに分裂するかのように位置をずらしていた。 アンリエッタは『おともだち』を、どんな手を使ってでも守ろうと決心していた。 ウェールズと再会できたのも彼女のおかげなのだから。 アンリエッタの表情は、いつもよりも遙かに堂々としていた。 沸き上がる『自信』も『決意』も、『おともだち』がくれたものだと思っていた。 「アニエスなら……ルイズに協力してくださるかしら?」 会議では、ウェールズの亡命を受け入れるには至らなかったが、親衛隊の新設が決定された。 ワルド子爵の裏切りが、親衛隊の新設を後押しする形となり、『銃士隊』の結成が決定されたのだ。 その隊長として、アンリエッタが選んだのは「アニエス」という平民の女性。 元傭兵のアニエスは、今はトリステインに所属する軍人として並々ならぬ功績を上げている。 アンリエッタは彼女に『シュヴァリエ』の位を与えたかったが、まだ他の貴族からの反感も大きく、実行には移せていない。 だが、機会を見てアニエスを中心とした『女性だけで構成された近衛兵』を集めるつもりだった。 「私も、私のお友達も、ずっと子供のままなのかもしれませんわ……」 アンリエッタは、ルイズと同じ月夜を見上げていた。 そして、数日後。 トリステイン魔法学院では、ある変化が生徒達を驚かせていた。 『風が最強だ!』と耳にタコができそうな程繰り返していたギトーが、どこか大人しくなり、傲慢さがなりを潜めてしまった。 それどころか、属性の使い分けと、連携を中心として授業が進められていく。 その変化に驚いたある生徒は『魅了』で記憶を改ざんされたのではないか……と言い出す程だった。 もう一つの変化は、シエスタの変化だった。 いつもより堂々と、自信に満ちた笑顔を見せて、授業を受け、実技に挑戦し、キュルケ達との会話にも物怖じしない、それは女性としての自信と言うより、戦士としての自信だったのかもしれない。 もっとも、それに気づいているのはキュルケとタバサぐらいのものだが。 元は平民なので、シエスタはどの貴族に対しても丁寧に接していたが、そのせいかマリコルヌが何かを勘違いして得意げにしていたのは秘密だ。 だが、いかに治癒の力を持つとはいえ、シエスタは元平民。 平民と貴族が同じ授業を受けるなど、馬鹿馬鹿しいと言って、シエスタに敵意を向ける者も存在していた。 シエスタは空を飛べない。 そのため、魔法学院の外で規模の大きい風の魔法を実習する時など、走ってその場まで移動する。 他の生徒達は『フライ』の魔法を使って移動している。 単独で空を飛行する魔法、風の基礎中の基礎、『フライ』すら使えないシエスタを馬鹿にする者も多かった。 だが、キュルケ達は違う。 ルイズが死んだ罪悪感からか、それとも純粋にシエスタの『治癒』の力を認めているのか、『フライ』が使えないからといってシエスタを馬鹿にすることは無かった。 キュルケ達と仲の良いシエスタを見て、ある生徒がこんなことを呟いた。 『キュルケは、平民上がりのメイジを飼っている』 その噂は瞬く間に広がり、キュルケとシエスタは侮蔑と好奇の混じった視線に晒された。 だが、元々同姓から羨まれ、恨まれるキュルケは気にしていない。 シエスタもそれがどうしたと言わんばかりの、堂々とした態度でいつもの生活を繰り返している。 そうなると面白くないのは、噂を広めた当人達。 キュルケとシエスタへ向けられていた好奇の視線、それが少なくなるに従って、今度は二人の人気が高まっていった。 姉のように振る舞うキュルケ。 優しい妹のようなシエスタ。 二人の人気を妬む、一部の生徒の『危険な』嫌がらせが実行されるのも、時間の問題だった。 To Be Continued → 25< 目次
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サー・ヘンリー・ボーウッドは、自らが艦長を務めるアルビオンの旗艦「レキシントン」の弱点を知っていた。 ついこの間の艤装作業で、この戦艦の内部構造は数カ所の弱点を生み出してしまった。 『ロイヤル・ソヴリン』と呼ばれていた頃、この戦艦まさに無敵だと言えたのだが、新式の大砲を積み込み、砲弾、炸薬の収納庫を拡張したせいで、この戦艦は内部破壊に弱くなってしまった。 強くなったのは外に向けられた武装だけなのだ。 ニューカッスル城から脱出したという噂の『騎士』『鉄仮面』。 レキシントンに侵入したのがその『騎士』だとしたら、もしそれが噂通りの力を持っているとしたら、この戦艦はあと何分持つだろうか。 アルビオンの誇る竜騎兵を失った今、レキシントンの内部を守るメイジの数は限られていた。 そこに伝令の一人が飛び込んできた、伝令は息を切らせながら、悲鳴のような声で報告をした。 「『騎士』は、風石を狙っております!」 「KUAAAAAAAA!!」 ドカン!と、爆発音のような音を立て、火薬庫の扉が吹き飛ばされる。 ルイズが体当たりで扉ををぶち破ったのだ。 手当たり次第に壁をぶち壊し、扉を破壊しつつ、ルイズはウェールズから教わった風石庫の場所へと突き進んでいた。 風石の納められている部屋は火薬庫と同じぐらい丈夫な隔壁に包まれていた。 だが、吸血鬼の腕力で振るわれたデルフリンガーの前ではほぼ無意味、鉄の扉や壁がバターのように切り裂かれる姿を見て、レキシントンの乗組員達は戦慄した。 駆けつけてきたメイジ達が、背後からルイズに魔法を繰り出す。 だが、ルイズは自身に飛来する水、風、炎の固まりをデルフリンガーで打ち払った。 熱で溶けかけた鉄の仮面越しに、声を野太く変声させて、ルイズが叫ぶ。 「死にたくなければ失せろおッ!」 殺意と視線と怒声に射竦められ、メイジ達は、デルフリンガーの峰で小石を蹴飛ばすようになぎ払われていった。 「うおあああああああああああああッ!!!!!」 叫ぶ。 ルイズは一心不乱に叫び、火薬庫の扉を破壊し、壁を破壊し、大砲の発射台を破壊する。 アルビオンは木材資源が豊富であった。 戦艦にも木材が使われるが、固定化などの魔法で保護されており、魔法や火竜のブレスによって燃やされるということはほとんどあり得ない。 こと戦艦の事情はトリステインもガリアも同じであり、それを知っているからこそ、固定化のかけられた船体を打ち砕けるほどのカノン砲を使った戦闘に頼ることになるのだ。 今、レキシントンは、石仮面という名の大砲を船内に持ち込まれているのと同じ状態であった。 一心不乱にデルフリンガーを振るう、レキシントンの内部を破壊するためだけに振るう。 人間のことは考えない、人間はなるべく殺したくない。 吸血鬼の腕力でデルフリンガーを操るルイズ、その姿はまさに化け物だった。 それなのに内心では、人間を狙って殺さぬよう、船内の破壊に意識を集中させている。 飛び散った破片で人間がちぎれ飛ぶのは、仕方のない巻き添えなのだと自分に言い訳するために、「死にたくなければ去れ」と叫び続けていた。 「っぶ ぐ」 不意に何かが躰を貫いた、一瞬、ルイズの動きが止まる。 床から生えた何十本もの槍が、ルイズの躰を貫いていた、土系統のメイジが練金したものだと容易に想像できる。 動きの止まったルイズを焼き尽くさんとして火球が襲いかかる。 だがルイズは躰に突き刺さった槍をものともせずデルフリンガーを振るう、火球はデルフリンガーに吸い込まれて消滅した。 ルイズが動くたびに、槍がルイズの体に穴を空けて肉を裂いていく、心臓や首にも槍が突き刺さり、血があたりにまき散らされた。 だが、その傷は片っ端から再生されていく、体を引き裂かれたアメーバが元の形に戻るように、傷口が塞がっていく。 一人のメイジが叫ぶ。 「ばけも の!」 叫びきらぬうちにメイジの体は一刀両断された。 「わあああ!」「ひいっ」「あああああああ!!」 ルイズは力づくでデルフリンガーを振るい、船の隔壁ごと人間を破壊していった。 アンリエッタとウェールズが空を見上げる。 ラ・ロシェール上空で停泊していたレキシントンの艦砲射撃が止み、高度が落ちてきたのだ。 周囲に停泊する戦艦も艦砲射撃が止めている、おそらくレキシントンを巻き添えにするのを恐れているのだろう。 「お二人をお守りしろ!」「右翼は突撃体制に入れ!」「タルブ方……」 檄を飛ばす将軍達の声が聞こえなくなる、魔法衛士隊がアンリエッタとウェールズを囲み、筒状の風の障壁を繰り上げているせいだ。 その中央にはグリフォンにのったアンリエッタとウェールズがいる、二人は杖を掲げ、呪文を詠唱し、周囲に竜巻を巻き起こした。 この竜巻はただの風ではない、むしろ台風とも呼べるものであった。 アンリエッタが呪文を唱え、周囲の空気中から集められる限りの水分を集めていく。 ウェールズがそれに重ねて詠唱し、アンリエッタが集めた水分混じりの空気に竜巻状の動きを与えていった。 竜ではない、東方の『龍』を思わせる水の竜巻が、二人の周りをうねり始めた。 アンリエッタの『水』『水』『水』。 ウェールズの『風』『風』『風』。 トライアングル同士といえど、魔法を重ね合わせるほど息が合うことはほとんど無い。 しかし、選ばれし王家の血と、二人の思いがそれを可能にさせている。 王家のみ許された技術である『ヘクサゴン・スペル』が、今ここに発動していた。 二人の魔法が互いに干渉しあい、巨大に膨れ上がる、まるで大津波のようなエネルギーを持った竜巻が向きを変えて、居並ぶアルビオンの船を飲み込んでいった。 荒れ狂う。 風の力を借りた水滴が、戦艦の窓や隙間へぶつかり、船体をきしませていく。 何人もの人間が宙を舞って吹き飛ばされていくのが見える。 時には弾丸のように、時には巨人の腕のように、竜巻が船を破壊していった。 「これが王家の技か!」 地上で、誰かが叫ぶのをマザリーニが聞いていた。 マザリーニの心にも、希望という名の光明が感じられたが、すぐにそれを意識の外へと排除した。 全軍の指揮を任せられた以上、今やるべき事は決まっている。 浮かれている将軍達が油断と慢心を抱かぬよう、注意しなければならない。 もう一つは、『ヘクサゴン・スペル』を使い、魔力を使い尽くした二人をどうやって守るか。 先王亡き後、一手に政治を引き受けてきたマザリーニ枢機卿。 そんな彼だからこそ、冷静にこの戦況を見ていられたのかもしれない。 ヘクサゴン・スペルが艦隊を飲み込む直前、レキシントンから飛び出した影があった。 レキシントンの砲座を、デルフリンガーで無理矢理広げたルイズが、トリステイン軍の方角とは逆方向に飛び出していたのだ。 「WWRYYYYYYYY!」 叫び声をあげつつ、きりもみ状態になって地上へと落下するルイズを、吸血竜が空中でキャッチした。 ドスン!と音を立てて、吸血竜の背中でキャッチされたが、人間なら五体がバラバラになっていてもおかしくない衝撃だった。 「グルルル……ゴアッ」 「く…あんたも酷くやられたわね」 よろよろと立ち上がりつつ、吸血竜の背中を見たルイズが呟く。 翼は3枚しか残されておらず、残った翼も穴だらけでボロボロになっている。 胴体にも穴を穿たれた跡や、切り裂かれた跡が残っている、吸血鬼化した生物でなければ既に死んでいただろう。 「ワルドはどうしたの?」 「グルルルル…」 『遊ばれた、って言ってるぜ』 デルフリンガーが吸血竜のうめき声を翻訳する。 「遊ばれた?」 ワルドの実力は、やはり並大抵ではないと気づき、ルイズは背筋に冷たいものを感じた。 ヘクサゴン・スペルで、戦艦の錨と、それを繋げていた鎖が吹き飛ばされていく。 吸血竜はそれを器用にかわしながら、ヘクサゴン・スペルの届かない距離にまで飛んでいった。 ルイズが後ろを振り向くと、戦艦がいくつも落ちていくのが見えた。 コントロールを失い斜めになって落ちていくものもあるが、落下速度が遅い。 風石にまで影響を受けていなかったのか、それともメイジの乗組員が『レビテーション』や『フライ』を用いているのか……。 (……馬鹿馬鹿しい、戦場で、敵の命を心配してどうするのよ……) ルイズは、考えを振り払うように顔を上げた。すると上空に漂う雲の切れ目から、黒い影がこちらへ一直線に向かってくるのが見えた。 「デルフ!」 『あいよ!』 ルイズは慌てながら、その影にデルフリンガーを向けた。 次の瞬間、デルフリンガーに『エア・ハンマー』がぶち当たった。 「ワルドッ!」 上空から飛来した影は、風竜と、それに跨ったワルドだった。 羽を奪われ、体力を消耗し、飛行能力の衰えた吸血竜では風竜の機動力に敵わない。 ルイズはデルフリンガーを身構えつつ、腕の中にしまいこんだ杖に意識を向けた。 「石仮面! 貴様は、貴様はわたしの足かせだッ! 今、ここでッ、それを断ち切ってやる!」 ワルドが叫びつつ杖を振りかざす、ルイズは自身に降りかかる魔法の刃を警戒し、体勢を低くした。 『下だ!』 デルフリンガーが叫ぶと同時に、ルイズの足に吸血竜のたてがみが絡みつき、ルイズの体を固定した。 「!」 次の瞬間、翼を畳んだ吸血竜が、長い尾を鞭のように動かして大きく体をうねらせた。 突然のことに驚きながらも、デルフリンガーを離すまいと必死に耐えるルイズの眼前に、もう一人のワルドが姿を現した。 「やばっ」 遍在のワルドが放つエア・スピアーをデルフリンガーで逸らしつつ、自身の体勢を立て直す。 すかさずルイズはワルドの偏在に、デルフリンガーで斬りかかろうとした。 「ワルド!」 ガキン!と音が響く。 もう一人の遍在が『エア・ニードル』でデルフリンガーを受け止めたのだ。 「名乗っていなかったかな!私は『閃光』のワルド!貴様の再生能力と腕力は驚嘆に値するが、スピードでは私が上だ!」 ワルドの言ったことは事実だった、吸血竜が体の内に仕込んだ骨を飛ばしても、長い尾を鞭のように振り回しても、ワルドは風の障壁で防御しつつ風竜を操り回避していく。 そもそも、ニューカッスルの城で見たワルドの能力が全てだとは限らないのだ。 軍人として訓練されたスクエアを相手にするのが、どれほど困難なのか、ルイズは身をもって感じていた。 空中で戦いを繰り広げながら、ちらりとラ・ロシェールの方向を見る。 既にアンリエッタとウェールズが繰り出したヘクサゴン・スペルは消滅しているが、レキシントンは船体にダメージを受けて高度を著しく下げていた。 マンティコア隊、グリフォン隊、ドラゴン隊がレキシントンに取り付いているのが見える。 だが油断はできない、いくつかの戦艦はまだ戦闘を続行しようとして方向を転換している。 アルビオン軍の地上部隊もある程度は混乱していたが、本陣はまだラ・ロシェールへと攻め込むべく突撃体勢をとっているようだ。 アンリエッタは無事だろうか? ウェールズは無事だろうか? アニエスは無事だろうか? エア・カッターで脇腹を貫かれ、その傷口にウインド・ブレイクを放たれ、体が上下にちぎれそうになりながらも、考えは止まらない。 『気を散らしすぎだ!』 デルフリンガーがルイズを叱責する。 「…っ ……!!」 ルイズは返事もせず、ただひたすらワルドとその遍在の猛攻を防いでいた。 返事をしないわけではない、返事ができないほどに、ワルドが強いのだ。 「おおあああああッ!」 ワルドの遍在が雄叫びを上げながら飛来する、慌ててデルフリンガーでなぎ払おうとしたが、それをエア・ニードルで受け止められてしまった。 そして遍有は、ずぶり、と自身の体にデルフリンガーを突き刺しつつ、エア・ニードルを振りかざしてルイズに迫った。 エア・ニードルがルイズの左腕を払うと、螺旋状になった魔力の渦が、ルイズの左腕と仮面を巻き込んで破壊する。 遍在は次の瞬間にかき消えたが…ルイズの体には大きなダメージが残されていた。 腹部は大きく抉られ、内蔵はいくつか吹き飛ばされ、左腕はほとんど切断され垂れ下がっている。 血が足りない。 吸血鬼のボディが限界に近づいていた。 エア・ニードルで抉られた仮面がゆがみ、視界が塞がれる。 焼け付いて皮膚に癒着したを仮面を、ベリベリと音を立てて引きはがすと、かろうじて繋がった左腕でそれを投げた。 「フン!」 ワルドは軽く杖を振り、風を巻き起こして仮面をはねのけた。 ケロイド状になった顔が再生されていく、血を失い頬がこけてはいるが、その顔はワルドの記憶にある『ルイズ』の姿に酷似していた。 仮面の中に封じられていた髪の毛は、戦いの中で染料が落ち、元の桃色がかかったブロンドへと戻っていた。 「やはりか、石仮面よ! その顔だ、その顔が俺の決意を鈍らせる…!」 「………」 ワルドが、風竜の上でルイズを睨み付ける。 その視線を受けて、ルイズはある策を思いついた。 「私を見て、裏切りの決意が鈍るとでも言うの!」 「裏切りの決意か! 何とでも言うがいいさ!」 「私が婚約者に似ていると言ったわ!裏切るような人が、なぜあの時そんな話をしたのよ!」 「そうだ!貴様は似すぎている!」 風竜の上から、ワルドが絞るように叫んだ。 「私が母の教えに背いたとき母は死んだ! レコン・キスタの誘いを受けたときもルイズが死んだ! もはやトリステインに執着はないと思った時に貴様が現れたのだ! これが始祖ブリミルの導きならば、私が裏切ることを見越して残酷な運命を課したのか!?」 「ルイズの顔をして俺の前に立ちはだかる貴様こそが、立ち向かうべき運命の象徴だ!跡形もなく消し飛ばしてやるッ!」 杖の先端がルイズに向けられる。 ルイズはすかさず鉄製の肩当てを外して、ワルドに投げつけた。 風の障壁を作り、それを防ごうとしたワルドは、凄まじい勢いで投げられたはずの肩当てが、風の障壁に干渉せず通り抜けたのを見て驚いた。 「な!?」 その肩当ては、風竜の体を貫通して、ワルドの背後へと飛んでいく。 しかし不思議なことに、風竜の体には傷一つ付いていなかっった。 「幻か!?」 そして次の瞬間、ワルドの左胸に、どこからか投げられた金属片が衝突した。 「ぐぶっ」 ボキボキと嫌な音を立てて、ワルドの体がきしむ。 衝撃に耐えきれず、跨っていた風竜から体を滑らせて、ワルドの体は地面へと落下していった。 「GOAAAAAAAAAAA!!」 目の前に見えているはずの吸血竜とは、別の場所から聞こえてきた雄叫びに、風竜がたじろいだ。 次の瞬間、眼下に広がる森林と、空の景色が裂け、その隙間から現れた吸血竜が風竜の首に噛みつく。 ベキベキと不快な音を立てて風竜の首の骨が破壊され、突き立てられた牙から血が奪われる。 鳴き声一つあげることなく、からからに干からびた風竜が、ワルドの後を追うように地面へと落下していった。 「げ、ほっ」 『大丈夫かよ』 ルイズは吸血竜の上で膝をついた。 「あっ、足が…た、立てない。ず、頭痛が、する…吐き気も…」 悪寒に襲われて、ブルブルと体を振るわせるルイズに、吸血竜は風竜から吸い取った血を吹きかけた。 「あり、がと、う……うう、あ、オエエエエッ!」 喉の奥からこみ上げてる嘔吐感が、ルイズの全身を振るわせた。 胃の中に何か残っているわけでもない、それどころか、先ほど細切れに吹き飛ばされた内臓も再生しきってはいない。 全身を襲う不快感の理由は、先ほど使った『イリュージョン』と、肉体的な疲労の両方だろう。 さきほど肩当てと一緒に引きちぎったベルトが、胸の前でだらんと垂れる。 デルフリンガーは、胸当ての隙間からルイズの胸を見る、するとそこには、唇と同じような形の裂け目が作られていた。 『おでれーたよ、こんな詠唱見たことねえ。無理しすぎだ』 「あ、っ、あたしだって、できるとおもってなかったわよ」 ルイズは体組織の再生能力をコントロールして、胸に口をもう一つ作り出したのだ。 右腕に隠していた杖を、ワルドから見えないように掌に露出させて握りしめる。 そして相手にわざと顔を見せつつ、もう一つの口でイリュージョンを詠唱。 翼を何枚も取り込み、異形の竜となった吸血竜からヒントを得たのだが、ルイズにとっては一か八かの賭と同じだった。 魔法の使いすぎで気絶しそうになりながらも、ルイズはワルドを退けることに成功し、安堵のため息をもらした。 『おい、ありゃなんだ?』 どうやって戦線に戻ろうかと考えていると、デルフリンガーが何かに気が付き、声を上げた。 「…?」 ルイズが顔を上げると、輸送船と思わしき一隻の船が、ラ・ロシェールに向かっているのが見えた。 既にレキシントンをはじめとするアルビオンの戦列間は戦闘行動を止め、ラ・ロシェール付近の地面に落ちていたが、その船だけは何かが違った。 何かが引っかかる。何かが。何かが… 『上層部からの命令で腑に落ちないことはなかった?』 『あった』 『それを答えなさい』 『しょ、食料を積み込まなかったのが、2隻ある、食料の代わりに火薬と脱出廷を多く積んだ』 「まずい!」 デルフリンガーと、吸血竜の鬣を強く握りなおして、ルイズが叫んだ。 『どうしたよ!』 「食料を積み込まなかった船は二隻よ!そのうち一つは自作自演で使われた!」 『じゃあ残る一隻は』 「あの輸送船よ!」 吸血竜が必死に羽ばたくが、すでに輸送船は落下を開始していた。 仮に火の秘薬が積み込まれているとしたら、ラ・ロシェールに衝突した場合ただでは済まない。 トリステイン軍は、ラ・ロシェールを本陣として布陣しているはずだ、そこに火の秘薬を満載した船が落ちたら…… 「間に合わない」 ワルドとの戦いで傷つい吸血竜は、思うように速度を出せず、苦しそうに飛んでいた。 このままでは間に合わない。 ここまで来たのに、こんな土壇場でアンリエッタとウェールズを失うわけにはいかない。 失うわけには、いかないのだ。 「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ」 杖を掲げ、ルイズが詠唱する。 何よりもルイズの体に合うリズム、懐かしさを感じるリズム。 ルイズの神経はとぎすまされ、風の音も、何の雑音も聞こえなくなっていった。 『おい!? おめえの体は……』 だから、デルフリンガーの声も聞こえない。 「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド」 体の中に生まれてくる力の波は、イリュージョンや忘却の比ではなかった。 「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ」 渦巻く、体の中で波が渦になり、凝縮され、今にも暴れそうになる。。 力が行き先を求め、今にも暴発しそうな勢いで体の中を荒れ狂う。 『ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……』 ラ・ロシェールへ落ちていく輸送船めがけ、ルイズは杖を振り下ろした。 アンリエッタは、ウェールズは、マザリーニは、信じられない光景を目の当たりにしていた。 勝ち戦の雰囲気になり、トリステイン軍の将兵達はうかれていた。 だが、そこに輸送船が落ちようとしているのを見つけ、トリステイン軍は一時混乱状態に陥りそうになった。 遠距離ゆえに、またその重量ゆえに、そしてほとんどのメイジが精神力を消費し尽くしていたがために、船を弾くことができなかったのだ。 ウェールズはルイズからの報告を思い出し、戦慄した。 二隻の船に積み込まれた火の秘薬、つまりは、自爆を前提にしている船が二隻あったはずなのだ。 そのうち一隻はトリステイン侵攻の名目を作るために自沈、もう一隻がまさかこんな時に出てくるとは思っていなかった。 完全に、油断していた。 だが、絶望に包まれかけたトリステイン軍の上空に、津波のような光の奔流が現れ、すべてを包み込んでいった。 光が収まった頃、辺りは恐ろしいほどの静寂に包まれていた。 アンリエッタも、ウェールズも、将兵達もみな呆然と空を見上げていた。 ラ・ロシェールめがけて落ちようとしていた船が、跡形もなくどこかへと消え去っていたのだから。 そしてしばらくして、気を取り直した誰かが「トリステイン軍万歳」と叫びはじめた。 全軍から見れば一滴の水滴でしかなかったその声は、波紋となって広がり、敵味方を全て包み込む。 後にタルブ戦と呼ばれるこの戦闘は、トリステインの圧倒的な勝利で幕を閉じた。 一方、その頃… 「ゴボ グボオオオオオッ」 ジュウジュウと音がする。 硫酸でも浴びたかのように体が溶け、骨を露出させた馬が、よろよろと森の中を歩いていた。 「ブルル…ア………ァ」 声にならぬ声を上げ、どたん、と音を立てて地面へと横たわる。 不自然に膨らんだ腹が破け、中から一人の少女が姿を現した。 艶やかなピンク色の髪の毛が、濡れた肌に張り付き、妖しくも美しい姿だった。 「…………」 体の大半が溶けた馬は、残った片目で少女の姿を確認すると、そっと目を閉じた。 溶けた体がシュウシュウと音を立てて気化し、骨が風化していく。 それを見ている一人の男がいた。 グレーの髪の毛と髭をたくわえた精悍な男だが、両足は着地のショックで砕かれ、左腕に着けていた義手も砕けていた。 這い蹲って少女に近づき、近くに転がっている石を掴む。 少女の頭ほどもある石を振り上げて、今まさに振り降ろさんとしたとき、少女の目が開かれた。 少女は夢を見ていた。 子供の頃、屋敷の庭に作られた小さな池に船を浮かべて、一人でそこに隠れていた。 いつの間にか小舟には、憧れの子爵様がいて、少女の隣に座っていた。 母に怒られるたびに、父に怒られるたびに、姉に怒られるたびに、家庭教師に怒られるたびに、少女は憧れの子爵様に助けられていた。 「……さま」 少女の呟きが、石を振り下ろそうとしていた手を止めた。 男は、見当違いの場所に石を投げると、少女の顔をのぞき込んだ。 「わるどさま」 少女の手が、ワルドと呼ばれた男の頬に触れる。 男は、声を上げて泣き崩れた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
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登録日: 2009/05/26(火) 19 34 37 更新日:2024/06/30 Sun 11 38 24NEW! 所要時間:約 9 分で読めます ▽タグ一覧 ある意味ホラー くぎゅぅぅぅ アニヲタ キモヲタ キモヲタの極み コピペ コピペ項目 ゼロの使い魔 マジキチ ルイズ ルイズたんのコピペ レモンちゃん レモンは英語の隠語で貧乳という意味 三大コピペ 変態項目 心の叫び 恐いよ(泣) 文化の極み 文化の違い 日本の文化 日本語の持つ可能性 日本語の本気 流石は日本。他の追随を許さない 狂気 病気項目 破壊力抜群 言葉の暴力 驚くべき立ち直りの速さ ルイズたんのコピペ(あるいは単に『ルイズコピペ』)とは、アニメヲタクのキモさを日本語の機能をフルに使い、見事なまでに表現したもの。 概要 初出は2006年12月に2ちゃんねるアニメ2板のゼロ魔スレ毎晩投稿されていたレス。 これの24日に投下されたものが改編、コピペネタ化した。 アニメやコミックの放映・出版状況から考えると、2007年7月にアンサイクロペディアに投稿されたものが定型化されたようだ。 (原文ではアニメ「化決定」、コミックは「一巻」らしい) ちょっと固有名詞等を入れ替えるだけのバリエーションの作りやすさから、「けいおんver」「オバマver」などといった感じで上記を改変したものが多数出回っている。 今は勢いが下火になっているが、再びメディア化すればよく見ることになるだろう。 というか汎用性が高いので亜種をよく見る。 間違っても朗読してはいけない、間違っても記録してはいけない、間違っても某動画サイトにうpしてはいけない。 【以下コピペ】 ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 小説11巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁ ああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニメ2期決まって良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ! コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃあああああああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!! この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる? 表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃ んが僕を見てるぞ!! アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!! あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあアン様ぁあ!!セ、セイバー!!シャナぁああああああ!!!ヴィルヘルミナぁあああ!! ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニアのルイズへ届け! 2007年版 ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 小説10巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニメ2期決まって良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ! コミック1巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!! この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる? 表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!! アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!! あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあアン様ぁあ!!セ、セイバー!!シャナぁああああああ!!!ヴィルヘルミナぁあああ!! ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニアのルイズへ届け!俺は実はサイト萌えなんだっ!! オマケ 最近良く貼られるコピペ。因みに原作本文。通称「レモンちゃん」。 「ルイズ……、お前、可愛かったんだな……。が、頑張ればできるじゃねえか」 「なにそれ。かわいくなんかないもん」 「か、可愛いって。まるでレモンちゃんだ」 「レ、レモンちゃんじゃないわ。というかレモンちゃんてなによ」 「肌がすべすべで、レレレ、レモンちゃんだ」 夢中になって、ルイズの首筋に唇を這わせながら、才人は呟く。脳内はすでに花畑なので、自分が何を言っているのか、才人自身が理解していなかった。 「ばかぁ……。こんなことするサイトなんてキライなんだから……。ちょ、や、やめ……」 「わ。ここはもっとレモンちゃんじゃないか。こ、ここなんかどうしようもないほどにレモンちゃんだ」 「はう。……わ、わたし、よくわかんないんだけど、ほんとにレモンちゃんなの?」 「そうだよ。とりあえず、レモンちゃん恥ずかしいって言ってごらん」 沸いてる、というレベルを光年の単位で超えている才人の茹だったセリフだが、ルイズも根は相当アレなので、なんだかそれがロマンチックな響きに聞こえた。というか一旦こうなったら、結局ルイズはなんでもいいのだった。その辺の趣味は、才人よりある意味ひどい。 「レ、レモンちゃん恥ずかしい……」 で、言った。頬を真っ赤に染め、とろんとした目で、口を半開きにしてルイズがそんなアレを言いやがったので、才人は激しく興奮した。 「可愛い! レモンちゃん可愛い! 本気可愛いよ! さ! じゃあぬいじゃおうっか! 服とか邪魔じゃない? きみの魅力を隠してしまう、いけない布じゃない?」 といまどき三流カメラマンでも言わないようなセリフを吐き出しながら才人がルイズのシャツのボタンに指をかけたとき…… (省略されました。続きが読みたい場合、コメントに「うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!!」と書きこんで下さい) 以上が原作本文です。 大事なことなので二回言いました。 なお、ルイズ関連のコピペとしてはこちらも有名。念のため閲覧注意。 追記・修正してくれないとレモンちゃん恥ずかしい……。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2013-05-14 20 12 37) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- あ (2013-05-30 02 44 19) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2013-06-13 15 02 28) おめぇら…。 -- 名無しさん (2013-06-17 11 51 14) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2013-09-04 15 59 48) ちくわ大明神 -- 名無しさん (2013-09-04 17 51 10) おい誰だ今の -- 名無しさん (2013-09-04 19 05 14) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2013-09-11 21 20 05) ちょんまげえ~ -- 名無しさん (2013-10-07 22 29 05) 天国のヤマグチさん…見てるかい?あなたの作品は色んな意味で沢山の影響を与えてくれたよ… -- 名無しさん (2013-10-08 03 30 11) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2013-10-08 07 36 58) 訓練され過ぎだwww -- 名無しさん (2013-10-25 18 30 35) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-01-06 22 27 48) ちくわ -- 名無しさん (2014-01-06 22 30 22) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- a (2014-01-06 22 39 20) 大明神 -- 名無しさん (2014-01-06 22 39 47) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-01-27 00 50 02) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-01-27 01 04 32) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-01-27 01 09 19) 誰だ今の -- 名無しさん (2014-01-27 01 17 42) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-01-31 07 42 19) (アカン) -- 名無しさん (2014-01-31 11 55 32) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-02-02 10 41 28) ちくわ大明神 -- 名無しさん (2014-02-02 10 51 54) 誰だ今の -- 名無しさん (2014-02-02 10 56 17) ちくわwww -- 裏の表 (2014-02-04 06 49 09) ドイツの科学は世界一ィィィィィィィ!! -- 名無しさん (2014-02-04 07 07 02) ルイズコピペって、もう一種類あったよね。 -- 名無しさん (2014-02-04 07 45 35) ↑もしかして:となりでルイズが寝ていた -- 名無しさん (2014-02-04 07 46 14) ↑そう、それ。 -- 名無しさん (2014-02-04 12 25 41) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-02-14 04 02 35) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-02-14 13 21 01) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-02-15 16 33 51) 表紙絵のルイズちゃんが僕を見ているんです!信じてください! -- 名無しさん (2014-02-26 12 41 47) うるちゃいうるちゃい!!謹慎だもん!一週間だもん! -- 名無しさん (2014-03-22 10 51 03) マジキチ -- 名無しさん (2014-03-22 12 44 01) ↑2まさかのエースネタWWW。 -- 名無しさん (2014-03-23 02 40 05) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃない もん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-05-15 04 50 33) うるちゃいうるちゃい!!ウイングガンダムゼロじゃないもん!コードギアスのゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2014-05-15 08 11 30) うるちゃいうるちゃい!俺はゼロだもん!セブンの息子だもん! -- 名無しさん (2014-05-15 08 14 35) ↑セブン「ゼロ、たるんどるぞ!」(ジープのエンジンをかけて -- 名無しさん (2014-05-15 08 18 37) うるちゃいうるちゃいうるちゃい!ちゃんと完結したもん!アニメではちゃんと完結したもん! -- 名無しさん (2014-06-09 00 02 27) うるちゃいうるちゃい!絆、ネクサス!!! -- 名無しさん (2014-06-26 16 44 01) こっちもあっちもカオスだな ルイズコピペってのは -- 名無しさん (2014-06-26 16 53 22) うるちゃいうるちゃい!!英雄じゃないもん!目の前に敵が現れたら叩き斬るまでだもん!! -- 名無しさん (2014-06-26 16 55 12) みんな…疲れているのか? -- 名無しさん (2014-06-27 11 13 49) まあもうメディア化されないだろうなあ -- 名無しさん (2014-06-27 11 43 53) クンカクンカ!スーハースーハー!ペロッ……これは青酸カリ! -- 名無しさん (2014-06-27 12 02 48) ↑そ れ は あ か ん -- 名無しさん (2014-06-27 13 07 34) うるちゃいうるちゃい!私はゼロだもん!ブリタニアに対する反逆者だもん! -- 名無しさん (2014-07-05 17 56 16) うるちゃいうるちゃい!ゼロじゃないもん!目玉飛び出ないもん! -- 名無しさん (2014-07-07 10 15 46) とりあえずルイズにペロペロされた時の事を想定して、眼鏡をコンタクトにしておこう。邪魔だろう。…私は何て気遣いの出来る男なんだろう。 -- 名無しさん (2014-07-07 10 41 10) ほら、こんだけ言ってんだから続き書いてくれよ!(錯乱) -- 名無しさん (2014-07-09 15 38 02) うるちゃいうるちゃい!ミカンじゃないもん!オレンジだもん! -- 名無しさん (2014-07-09 15 41 06) うるちゃいうるちゃい!ゼロじゃないもん!妹5人も殺さないもん! -- 名無しさん (2014-07-18 15 08 48) うるちゃいうるちゃい!!我に従え!! -- 名無しさん (2014-08-22 21 58 59) リー!リー! -- 名無しさん (2014-08-30 20 20 25) お前さん病気だ。医者に行こう、な? -- 名無しさん (2014-09-02 23 38 32) うるちゃ -- ビギナー (2014-09-07 21 45 24) うるちゃいうるちゃい!二次元がどうした!そこにあるのは確かに愛だ!落としたんで若干歪んじゃったけど味に問題ないから! -- 名無しさん (2014-11-28 14 09 47) ↑3うるちゃいうるちゃい!病気じゃないもん!病気じゃないもん! -- 名無しさん (2015-01-14 14 47 07) うるちゃいうるちゃい!ハヤテのバーカバーカバーカ! -- 名無しさん (2015-01-15 21 14 26) うるちゃいうるちゃい!僕は捜査官だもん!君達喰種だから殺しちゃっても仕方ないんだもん! -- 名無しさん (2015-01-15 21 31 13) このコピペ初めて見た時はこれが狂気の最果てだと思ったが、原作はそれをはるかに超えていた -- 名無しさん (2015-01-23 00 59 37) そのうちコメント欄が修正されかねない…… -- 名無しさん (2015-02-09 03 06 14) ぱはりノボルは天才だったんだなとじっかんせざるえない -- 名無しさん (2015-02-19 19 40 37) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2015-04-20 23 28 58) ゼロ再始動だもん!ゼロ再始動だもん!!(マジ) -- 名無しさん (2015-06-26 18 47 01) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2015-10-02 03 37 53) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- あ (2015-10-02 03 39 11) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!イザナミだ… -- 名無しさん (2015-10-02 08 39 49) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!エックスだ… -- 名無しさん (2015-10-02 09 43 50) うるちゃいうるちゃい!ドンピシャじゃないもん!手遅れだもん! -- 名無しさん (2015-10-02 10 03 52) ???「二回言わなくていい…」 -- 名無しさん (2015-10-02 10 06 45) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2015-11-26 12 35 14) 売るチャイ売るチャイ!!インドのレストランだもん!2杯1ルピーだもん!! -- 名無しさん (2015-11-26 12 42 35) ルイズルイズルイズルイズはあはあルイズルイズはあはあ -- 平賀 (2016-01-26 09 53 08) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2016-03-02 05 49 08) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2016-03-05 14 02 50) たしかこの直後にルイズの両親が仁王のような表情で睨みつけてたのに気付いたサイトが命からがら逃げだすんだっけ? -- 名無しさん (2016-03-18 03 13 26) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2016-03-19 23 22 07) これが狂気の果てなのか……とか思ってたら原作とコメ欄の方が遥かに狂っていたでござる -- 名無しさん (2016-04-07 16 57 40) なんだこのコメント欄は・・・たまげたなぁ・・・・・・。 -- 名無しさん (2016-05-07 13 26 05) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2016-06-29 13 24 34) みさくら語変換器にかけたい -- 名無しさん (2016-08-06 19 10 42) なにこの珍百景みたいなコメントの数々… -- 名無しさん (2016-08-12 23 25 47) 「うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!!」 -- 名無しさん (2017-01-11 09 27 20) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2017-01-15 03 19 14) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2017-02-27 19 33 38) さあ、x→+0 の極限を求めるのだ。 -- リミットくん (2017-02-27 19 35 02) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2017-07-06 05 06 29) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2017-08-01 19 21 52) なんだこの魔窟は… -- 名無しさん (2019-01-17 21 34 52) ちくわ大明神 -- 名無しさん (2019-10-08 16 01 49) おい誰だ今の -- 名無しさん (2019-10-08 17 11 38) 狂気を感じる -- 名無しさん (2019-10-08 22 53 52) 高速リア充追尾式撲殺釘バット -- 名無しさん (2019-12-19 07 36 31) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2020-01-09 20 42 18) 伝説って? -- 名無しさん (2020-03-04 18 36 53) ああ! -- 名無しさん (2020-06-13 16 34 52) 適当に考えておいて! -- 名無しさん (2021-01-29 18 20 47) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2021-03-11 13 47 05) 欲望が渦巻いてて草 -- 名無しさん (2021-09-23 18 14 50) 「うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!!」 -- 名無しさん (2021-12-25 22 20 34) 昔どっかで見たノムリッシュ版が好きだった。冥府の騎士スーハースーハー(殲器)…… -- 名無しさん (2021-12-25 22 53 03) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2021-12-28 00 53 45) こんなこったろうと思ってましたよ -- 名無しさん (2021-12-28 00 54 15) 釣られてる奴多すぎだろw -- 名無しさん (2022-01-22 13 57 06) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2022-01-22 13 57 32) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2022-02-14 17 03 05) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2022-04-16 19 51 00) 「同じことを繰り返すくらいなら死んでしまえ」そう岡本太郎も言っていた -- 名無しさん (2022-08-17 12 21 16) なんだこの項目(呆れ) -- 名無しさん (2022-08-19 11 49 38) 初出しが16年前とそんなに古くないんだな -- 名無しさん (2022-09-25 11 18 23) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-03-06 11 18 35) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-03-30 19 02 52) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-05-01 22 17 27) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-07-10 17 56 24) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-08-08 21 47 47) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-08-27 20 02 12) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-08-27 20 03 17) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2023-09-04 00 12 46) ごめん、単純に怖いよ -- 名無しさん (2024-02-23 16 18 46) 誰か令和最新版を作ってくれないかな -- 名無しさん (2024-02-23 16 59 42) 読んでて心からほっとした。ここは落ち着く。 -- 名無しさん (2024-03-27 22 37 11) 朝起きたらとなりでルイズが寝ていた。じゃない方のコピペ -- 名無しさん (2024-03-27 22 55 59) ネットミーム文化財 -- 名無しさん (2024-06-07 13 39 39) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2024-06-07 13 48 40) うるちゃいうるちゃい!!ゼロじゃないもん!ゼロじゃないもん!! -- 名無しさん (2024-06-30 11 38 24) 名前 コメント
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「WRYYYYYYYYYYYY!!!!」 肉片が散らばり、血しぶきが樹木を濡らす。 まず一匹目。 腕力を試すために投げられた剣によって死んだ。 次に二匹目。 どの程度の勢いで血を吸えるのか試すため、心臓に腕を突きさして血と水分を完全に吸い取った。 そして三匹目。 巨大な棍棒で顔面を殴られたので、その棍棒を殴り返した、ルイズの手も棍棒も、オークの顔面も砕けた。 四匹目。 殴られたせいで口に溜まった血液を、可能な限りの勢いで噴き出した、すると逃げようとしたトロル鬼の脳髄を背後から貫く結果となった。 最後に五匹目。 棍棒を捨てて命乞いするトロル鬼の頭を掴んで、火を消した時と同じように、体温を下げる… トロル鬼は瞬く間に氷のオブジェと化し、軽く爪で弾くと、バラバラに砕け散った。 周囲を警戒し、他に動物の気配がないことを確認すると、ルイズは満足そうに頷いた。 肉体の能力はだいたい確認できた、潰された顔も、砕けた手も既に復元され、元通りになっている。 それこそ髪の毛の一本まで完全に復元されているのだが、ここでふと困ったことに気づいた。 ハルケギニアの吸血鬼は日光に弱い、光に当たっただけでも火傷してしまう。 しかしルイズは違う、伝承よりもはるかに強く、強靱な生命力を備えている。 その代わり、吸血鬼が使えるはずの先住魔法が使えない。 吸血鬼やエルフ等、知能の高い亜人種は、先住魔法と呼ばれる自然界のエネルギーを利用した魔法を行使する。 現在、絶滅したと言われている『風韻竜』は、先住魔法を使い人間に変身することもできたと言われている。 今のルイズは生命力が強すぎるため、意図して再生を止めないと、どんな怪我も『元の姿形に』治してしまうのだ。 ルイズは地面に散乱している骨を見て、変装の手段を思いついた。 その二日後、トリスティンの城下町で、宮殿へと続く大通りを歩く一人の女性がいた。 ミス・ロングビルである。 彼女はトリスティン魔法学院に所属するメイジではあるが、貴族ではない。 魔法学院の教師達は、注文した品物を馬車で届けさせる事が多く、彼女のように城下町までやってきて秘薬や日用品を買うのは珍しい。 「こんにちは」 「…?」 突然、隣から声をかけられた。 ロングビルに歩行のペースを合わせて歩くその女性は、頭までフードをすっぽりと被っており、赤みがかった茶色い髪を房にして右肩から前に垂らしている。 どこかで聞いたことのある声だと思ったが、自分と同じぐらいの身長で、赤毛の女性には心当たりがない。 「どちら様かしら」 「分からない?私よ、わたし」 ロングビルの足が止まる、この声には一人だけ心当たりがある、しかし、目の前にいる人物は記憶の中の人とは全く別人に見えた。 「ねえ、昼食はまだ?よかったら一緒に食べましょうよ」 「え、ええ…いいわよ、でも、生ものは勘弁して欲しいわ」 引きつった笑顔で答えるロングビルに、フードの中から笑みを返した。 城下町のはずれにある小さな劇場、ここでは夜は演劇が上演され、昼間は漫談を堪能することが出来る。 軽食をとりながら鑑賞できるので、昼間でもまばらに客が入っている。もっとも繁盛しているとは言い難いが。 フーケは、フードを被った女性を端の方席に案内し、自分も隣の席に座った。 座ってすぐにサイレントの魔法を唱え、会話の内容が漏れぬように注意する。 この劇場は、舞台を明るく見せるため、客席は適度に暗い。 顔も見えにくいので、交渉に便利な場所として重宝しているそうだ。 「…サイレントの魔法ね、いいなあ、私なんて”ゼロ”なのに」 「吸血鬼は先住魔法が使えるんじゃないのかい?」 ”吸血鬼” この言葉を周囲の観客が聞いていたら、冗談を言っているのだと笑われるか、本気で恐れられるかのどちらかだろう。 サイレントの魔法で声は周囲に漏れないが、人間が食屍鬼(グール)にされず、吸血鬼と会話しているなどと知ったら、皆驚いて腰を抜かすに違いない。 吸血鬼と呼ばれた少女は、先住魔法すら使えない事実に苦笑した。 「無理みたい、まあ、それを補う技術やアイテムがあればいいんだけれど…」 「あんたの能力に先住魔法が加わったら、それこそ誰も太刀打ちできないのにねえ」 「そう都合良く行かないみたい、あーあ、折角魔法が使えると思ったんだけどなあ…」 舞台の上では、ギターらしき楽器を使って音楽を演奏しつつ、一人の男がくだらない小話を話している。 時々、周囲から笑い声や、時にはヤジも飛ぶが、二人にはその声も届かなかった。 「吸血鬼って言ったって、ちょっとぐらい弱点がないと、可愛げがないわよ」 「あら、言ってくれるじゃあない、フーケお姉さん」 「お、お姉さんって…そういうの止めておくれよ、アタシはそっちの趣味はないんだ」 「私より年上のクセして照れちゃって、キュルケみたいに根が純粋なのね」 「年上?ああ、アンタ吸血鬼になったばかりなんだっけ…なんかアンタの方が年上のような気もするわ、その姿も」 フーケは、隣に座る女性の姿をまじまじと見た、どんな魔法を使ったのか知らないが『ゼロのルイズ』と呼ばれていた頃と比べて、明らかに背が伸びているし髪の色も違う。 「これはね、ちょっと骨を借りたの」 「骨?」 「そう、森の奥に傭兵らしき女性の骨が転がっていたわ、それを手足に埋めて、背を伸ばしたのよ」 「せ、先住魔法を使う吸血鬼より、よっぽど化け物じゃない」 フーケが青ざめる。 「化け物ね…、骨を見つけた時、トロル鬼に襲われたわ。この骨の持ち主もトロル鬼にやられたと思ったんだけど、ちょっと違うみたいなの」 「?」 「この骨、鋭い刃で斬られたような痕が、何百カ所もあるのよ。手作業だとは思えないわ、『エア・カッター』を食らったんじゃないかしら?」 「なるほどね…女の傭兵なんて、いたぶられて殺されるのも珍しくないからね…」 「メイジの傭兵が、この女傭兵をいたぶって、森の奥に放置したんでしょうね、平民から見たらメイジも立派な化け物だと思わない?」 爛々とした瞳でフーケを見るルイズ、フーケはその瞳に飲まれて、静かに頷くしかできなかった。 「ところで、その髪は?」 「ああ、そこの店で買った染料よ、服を染めるらしいけど」 「…今度会ったときのためにマトモな髪染めを用意しておくわ」 しばらくして漫談が終わると、舞台を改めるために緞帳が下りる。 それを期に二人は劇場を出ることにした。 「連絡の方法はまた後で伝えるわ、それと、これからはルイズじゃなくて別の名前で呼んで貰える?」 「別の名前って、どんな名前よ」 「そうねえ…『石仮面』とでも呼んで頂戴」 ルイズと分かれたロングビルは、城下町の馬舎に預けてある馬に乗って、魔法学院へと帰って行った。 「石仮面…か、仮面の下は人間のつもりなのかね…偉そうなこと言って、未練たらたらじゃないか」 そう呟いて、空を見上げる。 ロングビルは、故郷に住む人…正確には人とは言い切れないのだが…自分の守るべき人を思い出す。 「ハーフエルフの保護者…今度は吸血鬼のお世話…何やってんだろ、アタシってば」 一方ルイズは武器屋を目指していた。 ロングビルから武器屋の場所を教えてもらったのだ。 元々貴族であるルイズが武器を使おうと思ったのは、これからの身のフリを考えてのこと。 ディティクトマジックにも反応しないこの体なら、人間に混じって仕事をしていても問題はない。 しかし、魔法を使えばメイジだとバレてしまうし、爆発を起こせば『ゼロのルイズ』の噂に引っかかるかもしれない。 身分を隠して金を稼ぐには、この腕力を利用して傭兵になるのが一番だと考えた。 名誉と家柄を重んじるトリスティン貴族であるルイズが、仕事として傭兵を選んだのにはもう一つ理由がある。 トロルを倒したときの精神的な余裕が、貴族として生きてきたルイズの価値観を崩していた。 トロルに口づけする女性などいやしない。 しかし、人間が動物を食べるときは口を使う。 『動物』ではなく『食物』として扱えば、動物の体の一部が人の口に触れるのはごく当然のことだと思える。 ルイズはトロルの屍体を噛みちぎり、血を吸い、肉を食らった。 人が香りを嗅ぐだけのために草花を摘むのと同じように、トロル鬼の命をつみ取った。 それでも、人間の血を吸うのは、どこかためらいがある。 使い魔、ペット、それら動物を無碍に殺せないのと一緒で、人間を殺すのはなるべく避けたいと考えていたのだ。 だが『敵』なら殺せる。 『害虫の駆除』なら罪悪感もない。 そんなことを考えながら、やっと見つけた武器屋に入っていった。 「野郎よくもニセモノを掴ませやがったな!」 「…?」 武器屋の中では、奇妙な光景が展開されている、身長2メイル(m)近くはある大男が、カウンターごしに店主(らしき人物)を掴み上げているのだ。 胸ぐらを掴まれ宙に浮いた店主は、ヒィヒィと泣くような声を出して、必死に謝ろうとしている。 「あ、あの剣は、ゲルマニアで練金された極上の品だと聞いて、入荷したんでさ!あ、アッシも騙されたんでございやすよ!」 「うるせえ! てめぇ自信満々で俺に売り付けただろうが、死にたくなかったらイロつけて金を返して貰おうじゃねえか!」 「ヒーッ!」 どうやら、大男はこの店でニセモノを掴まされたらしい。 ルイズはそんな騒ぎを無視して、壁に掛けられている剣を手に取った。 吸血鬼の腕力で扱えばどんな武器でも人を殺すことは出来る、しかし、なるべくなら長持ちする武器が欲しい。 「ねえ、この店で丈夫そうな武器って言ったら、どれかしら」 ルイズが大男を無視して、店主に話しかける。 「ああ!?今取り込み中だ、女は失せな!」 大男がわめきはじめるが、ルイズは意に介さない。 「おい、てめえ、聞いてるのか!」 男は店主を離した、ちょっとだけ宙に浮いていた店主はそのまま床に落ちて、しりもちをついてしまった。 「それと…剣とか、槍とか、大人数を相手するのに効率の良い武器が欲しいのよ、見繕ってくれないかしら」 「このアマ!」 無視されたのがよほど頭に来たのか、大男はルイズの顔面を殴りつけた。 バキッ、ゴキッと音がする。 しかしルイズは一歩も動かない。 男は三分間ほどルイズを殴り続けていたが、びくともしないのを見て、さすがに顔色を変えた。 「お、おめえ、何なんだよ」 「……トロル程じゃ無いわね」 そう言いながらルイズは、側に置いてある箱を手にとって、大男に手渡した。 鉄製の槍が数十本本納められている箱を、『とても軽そうに』手渡されたが、思いがけない重さ手を滑らせ、て箱を足の上に落としてしまった。 ギャース!と叫んで片足立ちでピョンピョンと逃げていく大男の姿が滑稽で、店主とルイズは思わず笑ってしまった。 「あはははははは!あー、やっぱり見かけが全てじゃないのね」 『おでれーたな!細身の娘っ子のどこにそんな力があるんだ?』 と、突然どこからか声がした、この店には店主とルイズしか居ないはずだが、確かに声が聞こえた。 店内を見渡すがどこかに人が隠れている気配もない、ルイズは首をかしげた。 「お、おいデルフ!お客の居る間は喋るなって言ったろう!」 『んなこと言ったってなー、人間だって大道芸に拍手すんだろ?あれと同じよ、同じ』 店主がデルフと呼んだそれは、店の一角、長剣が並ぶ棚に立てかけられていた。 カタカタと刀身を揺らして喋っているそれは、どこからどう見ても『剣』だった。 「インテリジェンスソード?珍しいわね」 「へぇ、その通りでやす。こいつは特に口が悪くて厄介な奴ですが…あ、先ほど丈夫な武器とか言ってませんでしたか?」 店主がルイズの言葉を思い出し、ぽんと両手を叩いて言った。 「でしたらそいつをお持ち下せぇ、昔、こいつがあまりにも口が悪いんで火のメイジ様に頼んで溶かして貰おうと思ったんでさ」 『あんときゃ熱かったなー』 「ですが、トライアングルのメイジ様の炎でも、こいつは溶けませんでした、錆びも浮いて見た目は悪いですが、丈夫さなら折り紙付きでさぁ」 ルイズは口元に指を置いて、少し考え込む仕草をすると、デルフと呼ばれたその剣を手に取った。 「気に入ったわ、これを頂戴」 そう言いながらカウンターにデルフを置く、すると先ほどまでの威勢の良さそうな声ではなく、どこか慌てたような声でデルフが叫んだ。 『ま、待て!こいつに俺を渡すな!こいつは…』 デルフの叫びもむなしく、店主はデルフを鞘に仕舞ってしまう。 「こいつの名前はデルフリンガーと言うそうでさ、鞘に入れちまえば声も聞こえなくなります、さっきの男を追い払ってくれたお礼にお持ち下せぇ」 ルイズが金を払おうとすると、店主がそれを制止した。 ルイズはロングビルから借りた金貨を数枚、無理矢理カウンターの上に置いて、武器屋から立ち去っていった。 トリスティン魔法学院。 ルイズの部屋に、オールド・オスマンが佇んでいた。 何度も魔法を失敗し爆発させたのか、部屋の中央の床にはヒビが入り、壁も何カ所か砕けている。 そして床には一枚の大きな紙が敷かれていた。 その上には薔薇の造花が一本、香水が一つ、メイド服が一着、乾燥ハシバミ茶一袋、ゲルマニア特性おっぱいの大きくなる膏薬が置かれ、手向けられていた。 「東方のお供え物とかいう習慣じゃったな、気持ちは分からんでもないが…後かたづけも考えて欲しいのう」 オールド・オスマンは部屋を見渡すと、部屋の修理に必要な箇所をチェックしていく。 本来ならロングビルの仕事だが、今日は虚無の曜日なので城下町に出かけている、オスマンもたまには自分で仕事をしようとルイズの部屋にやってきたのだ。 本当は、ルイズの母カリーナ・デジレが、この部屋に余計なことをしていないかと危惧して見に来たのだが、そんなことは人には言えない。 ヒビの入った壁に触れ、ヒビの深さを測ろうとした時、『何か』の破片が食い込んでいるのを見つけた。 練金の呪文で周囲を土に変えて、『何か』の破片を取り出す。 それは石のようでありながら、骨のように軽い、何か不思議な材質で出来ていた。 光にかざして見てみると、丁度、唇のような膨らみから、牙が突き出たような形をしている。 背筋に氷を差し込まれたかのように、オールド・オスマンの体が震えた。 脳裏に浮かぶのは、ロングビルが取り返した、あの本だ。 『石仮面を被り吸血鬼となった者は太陽によって消滅する。 されどハルケギニアの大地に注ぐ太陽光は脆弱であり、 吸血鬼を破壊するには至らない。 リサリサの知る種の吸血鬼が、ハルケギニアに訪れたときのため、 口伝によって伝えるべき波紋を、あえて書に残す。』 「これは…これは本当に偶然か…!」 オールド・オスマンは、実に100年ぶりに、恐怖と武者震いの混じった悪寒を感じた。 To Be Continued …… 8< 目次
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autolink ZM/W03-106 カード名:意地っ張りなルイズ カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:1 トリガー:1 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【起】[あなたの《使い魔》?のキャラを2枚レストする]あなたは自分のキャラを1枚選び、そのターン中、ソウルを+1。 いいわよ、あんなヤツ! ぜんぜんわかってくれないんだもん… レアリティ:PR illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 2008年9月ショップ大会 参加賞 カード公開当初はレストする枚数が1枚だと思われていたが、実は2枚だった。 ノンコストとはいえ後列2枚レストではソウルパンプできる対象は精々1枚。 元々《使い魔》のカードは少ない上、後列で使えるカードはプールが少なく、使い辛い。 とはいえ、上手く使えばキャンセルされない限りノンコストで毎ターン与えるダメージが1づつ増え、 同レベル戦時ならばサイドアタックが通るようになると考えれば悪くはない。 ただし、本人のサイズは1/1手札アンコ+能力1つ持ちや最近多くなってきた1/0能力持ちと同じ程度であるため、やはり採用率は低いだろう。 ・関連ページ 「ルイズ」? 《使い魔》?
https://w.atwiki.jp/pmvision/pages/1821.html
《ルイズ》 No.1134 Character <第十三弾> GRAZE(1)/NODE(3)/COST(1) 種族:魔界人 (自動α): 〔このキャラクター〕は「戦闘修正+X/±0」を得る。Xは相手プレイヤーの手札の枚数の半分(端数切り下げ)に等しい。 攻撃力(2)/耐久力(4) 「まぁ、魔界はいいとこな。んで、ゆっくり観光でもしてくといいわ☆」 Illustration:三日月沙羅 コメント リメイクされた魔界の住人A。 今回は相手の手札を制限するのではなく、相手の手札によって戦闘修正を得る。 攻撃力アップは相手の手札に依存するのでこちらのターン中は通常+3が限界である。 その場合は戦闘力5/4になるのだが、基本的に手札消費の激しいゲームなので+2もされればいい方である。 仮により大きい修正を得られたとしても相手の手札が多いということはそれだけこのカードに対処できる可能性も高いということなのでいまひとつ安定しない。 また耐久力は4のままであり、戦術も一切持たないためキャラクターとの戦闘は少し苦手。 このカードと同様に相手プレイヤーの手札の枚数によって攻撃力が変動するキャラクターに河城 にとり/7弾があり、彼女のスペルカードである河童「お化けキューカンバー」や河童「のびーるアーム」とシナジーがある。 収録 第十三弾 関連 「ルイズ」 ルイズ/7弾 ルイズ/13弾 ルイズ/16弾