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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 「おう、エリス。ただいま」 「あ、お帰りなさい……な、なんですかこれ?」 慌てて姿勢を正してお辞儀をしたあと、エリスは部屋の真ん中に置かれた衣装箱の山を見て眼を丸くした。 「服よ。買ってあげるって言ってた奴」 「え? あ、ありがとうざいます……えっ?」 至極当たり前と言った風に告げたルイズにエリスは反射的に礼を言い、そして眉を潜めた。 それはそうだろう、せいぜいがバッグ一抱えといった所が関の山な一般人のエリスでは、文字通りで山のような衣装箱など想定できるはずもない。 ……もっとも、その値段を聞いたら驚くどころか卒倒するかもしれないが。 「ところで、何かあったのか? 随分焦ってるみたいな感じだったけど」 「……あ! 先輩、これ……っ」 柊に言われて思い出したのか、エリスは慌てて持っていた紙――コルベールが描いた『破壊の杖』の絵を柊に差し出した。 それを手渡された柊は軽くそれを観察し、あっさりと答える。 「なんだ、箒じゃねえか。エリス、お前絵が上手いんだな」 「箒?」 ルイズが柊の手から紙を奪い取ってそれを見やり、首を傾げる。 「……これのどこが箒なの?」 「いや、掃除に使う箒じゃなくってな。ガンナーズブルームっつって……俺等の世界で使ってるマジック・アイテムみたいなもんだ」 「またその手の代物……?」 胡散臭げに眉をしかめるルイズを他所に、柊はエリスに目を向けて少し困ったように告げた。 「エリス、あんまこういうのを描くってのは――」 「ち、違います! それ、私が描いたんじゃないんです!」 「……は?」 そしてエリスは事情を二人に話し始めた。 勉強中にコルベールに会って追求から逃れられず、異世界のことを話してしまったこと。 宝物庫に納められているという『破壊の杖』のこと。 そしてコルベールが描いた『破壊の杖』の絵が、柊達の見ているものであること。 聞くに従って柊の表情が真剣になり、そして思案顔に変わっていく。 エリスが異世界に関して話してしまった点については、一度渋い顔をして見せたが特に咎めることはなかった。 何しろ柊自身、彼のような類の人間に追及されたら誤魔化しきれないのがわかっていたから逃げていたクチなのである。 むしろ目的であるファー・ジ・アースへの手がかりが降ってきたので瓢箪から独楽というべきかもしれない。 とはいえ、仮に『破壊の杖』が本当に箒――ガンナーズブルームだったとしてもそれ自体は重要ではなかった。 柊達がこのハルケギニアにいる以上、ゲートなり何なりでファー・ジ・アースと繋がる事は確かなのだ。 それ以前に人なり物なりが辿り着いていてもおかしな話ではない。 重要なのはそれが単体できたのか、それとも持ち主ごと来たのか。そして後者ならばその持ち主は今何処にいるのか……である。 「あの爺さんに話を聞いてみるか……」 「それなんですけど、コルベール先生やロングビル先生が学院長に話を通してくれてるそうです。戻ったら伝えて欲しいって」 「マジか! すげえな、何か道が開けてきたぞ……!」 「それじゃ私、先生達に言ってきますね」 「頼む。ありがとな、エリス」 柊が喜色を称えて言うと、エリスは嬉しそうに微笑んでからぺこりと頭を下げて部屋から出て行った。 膨らんできた期待感で平手を撃つ一方で、脇で話を聞いていたルイズの表情はどこか暗かった。 「……どうかしたのか?」 「……。なんでもない……」 怪訝そうに窺う柊に、ルイズは呟くように小さく答えた。 ※ ※ ※ 学院長室を訪れた柊達三人を待ち受けていたのは、部屋の主たる学院長――オールド・オスマンの仏頂面だった。 彼は柊達がロングビルに先導されて入室したのを見届けると、脇に立っているコルベールを一瞥して苦々しく口を開いた。 「研究熱心なのは構わんが、いささか口が軽くなるのが玉に瑕じゃのう」 「それは返す言葉もありませんが……しかし彼等が異境の地に迷い込んでいるのは事実なのです。帰る手助けをするのは人として当然でしょう」 「キミは『破壊の杖』やら異世界やらの話を聞きたいだけじゃろ?」 オスマンが言うとコルベールはうっと言葉を詰まらせ、愛想笑いをしながら視線を反らしてしまった。 改めてオスマンは柊達に視線を送ると、溜息混じりに口を開く。 「やはりと言うべきか何というか、君達も異世界とやらの人間だったんじゃのう」 「……知ってたのか?」 「グラモンの馬鹿息子との決闘であたりはつけておった。後の行動も大方『彼』と同じだったしの」 オスマンの声に柊の眉がわずかに揺れる。 柊は一歩前に進み出ると、コルベールが描いた『破壊の杖』の絵を示しながら言った。 「とりあえず、これが本当に俺達の世界のものか確認させてくれねえか」 「致し方あるまいな」 柊の言葉を受けてオスマンは立ち上がり、柊達を先導して宝物庫へと案内した。 錠を開け、扉を開いてから彼は振り返り柊とエリス、ルイズ、そして付いてきたコルベールとロングビルを順繰りに見やる。 「柊くんとエリスくん、それと……主人たるミス・ヴァリエールは聞いておくべきじゃろうな。残りはここで見張っておくよう」 「そんな殺生な!」 一緒に話を聞けると思っていたコルベールが悲鳴を上げるが、それには構わずオスマンは柊達を宝物庫へと招き入れて扉を閉めた。 念のために懐から杖を取り出して扉にロックをかける。 雑多に納められた数々のお宝を物珍しそうに眺める三人を促し、彼は数多の杖が飾られている一角へと案内した。 名前の彫られたプレートを見るまでもなく、目的のものはすぐに見つかった。 ソレは他のどんな杖よりも大きく、飾られている場所を占有していたからだ。 壁に立てかけられて固定されている『破壊の杖』を見てルイズは純粋に驚きを露にした。 エリスと柊も別種ではあったがやはり驚きを覚え、そして妙な懐かしさを感じてしまった。 なにしろ異世界で自分達の世界のモノを見ることになるとは思わなかったのだ。 「どうかね?」 後ろから届く確認の声に、柊は大きく頷いてから手を伸ばした。 「間違いねえ。これはファー・ジ・アースの箒――『ガンナーズブルーム』だ」 箒(ブルーム)と通称される、ウィザード達が世界を侵す侵魔に対抗するために作り上げた個人兵装。 緋室 灯が使用しているモノとは少々ディテールが異なるが、基本的な構造は間違いなく箒のそれだ。 少々古ぼけているので少し前の世代のものなのかもしれない。 柊が軽く表面をなぞると、埃の取れた地金に刻印が見えた。 擦り切れかけた黒塗りの斧のペイント、その刃をなぞるように刻まれた文字は[Kill em All !!]。 対侵魔組織の巨大派閥である『絶滅社』のロゴである。 「コレを使ってた奴はどうしたんだ? さっき学院長室で『彼』って言ってたよな」 オスマンを振り返って柊が尋ねると、彼は懐かしむように虚空を眺めながらそれに答える。 「そうさの、もう三十年ほど前になるか……ここから山を一つ越えた辺りの森に散策に出ておったら、ワイバーンに出くわしたんじゃ。 明らかに生息域からは離れておったが、運が悪かったんじゃろうの。 ……元より幻獣種と単身でやりあうなど分が悪すぎるが、ソイツはとにかく凶暴で手が負えんかった。 精神力も尽き果ててもうダメかと思った時――『彼』が武器も持たずにふらりと現れおった」 「……じゃあ、学院長はその方に助けられたんですか?」 エリスが呟いた言葉に、オスマンは何故か黙り込んでしまった。 首を捻る一同を他所に彼は僅かに顔を俯かせ、肩をわなわなと震わせながら、低い声で言った。 「……いや。殺されかけた」 「はあっ!?」 その男は虚空から『破壊の杖』を取り出すと、柊が決闘の際に放ったのと似たような光(おそらくプラーナだろう)を纏わせて杖を振るい、ワイバーンを木っ端微塵に吹き飛ばした。 そして彼はそれを喜ぶでもなく、呆気に取られるしかできないオスマンを振り返り――まるで人形のような顔つきで『破壊の杖』をオスマンに突きつけたのだ。 「ワイバーンを一撃で粉砕する超ド級の危険物を人様に向けてきおったのじゃぞ!? しかもフォートレスだのエミュレイターだの訳のわからんことを言いおってからに!! いたいけなジジイに対して何たる仕打ち! こいつはメチャ許せんよなぁ!!」 「落ち着け爺さん!?」 「落ち着いてください!?」 ガクガクと激しくヘッドバンギングしながら叫ぶオスマンに思わず突っ込みながらも、柊はなんとなく状況を理解した。 おそらくその彼はハルケギニアを侵魔の張った異空間――月匣(フォートレス)だと思ったのだろう。 既に異世界に関して知識と耐性があったヒイラギならばともかく、普通のウィザードならいきなりこんなファンタジー世界に放り出されればそれを想定するはずだ。 もしこれが緋室 灯だったならまず間違いなく威嚇としてガンナーズブルームをぶっ放す所までいったはずだ。 そういった意味ではオスマンは幸運だった。 「お、おぉ……ふぅ。大丈夫じゃ、わしはクールじゃよ……」 どうにか平静を取り戻したオスマンは改めて話を再開した。 その後何とか状況を理解してもらって和解はしたらしい。 しかし彼は激しい戦闘を行っていたのか、酷い怪我を負っていた。 一応命を救われた事になるのでオスマンはその男を学園に連れ帰り治療する事にしたのである。 怪我は大きかったものの幸いにして命は取り留めた。 しかし事情を聞いても彼は頑として自らの事を話さなかった。 オスマンが聞き出せたのはかろうじて彼が『ハルケギニアではない場所』から来たという事だけだった。 そして彼は傷が快復すると、柊達と同じように文字を学びながら元の場所に戻る方法を探し始めたという。 「……で、そいつは今どうしてんだ? まさか戻る方法を見つけて帰ったのか?」 ようやく目的の話題になってきて柊はオスマンに詰め寄った。 しかし彼は悲しそうに首を左右に振ると、 「亡くなった。一ヶ月程後の事じゃ」 「……何かあったのか?」 「何もなかった。彼は図書室に篭って調査し通しとったんで、何も起こりようがない。一週間ほどが経って、彼は唐突に倒れたのじゃ」 原因はまったくわからなかった。 出会った時に負っていた傷は総て治療したし、毒の類に冒されているという事もなかった。 しかし彼は一向に快調の兆しを見せずどんどん衰弱していき……そのまま息を引き取ったという。 結局彼は、オスマンに詳しいことを何も語らずに逝ってしまった。 「高名な水メイジに診せたところ、何やら身体の水の流れが人間とは思えないほど異常じゃったと言っておったが……」 「……!?」 それまで沈黙を保っていたルイズの顔色が変わった。 彼女は柊を押しのけてオスマンに詰め寄ると、酷く切羽詰った様子で訴える。 「オールド・オスマン! それって、病気か何かだったんですか!?」 「わからんよ。さっぱりお手上げじゃ……彼は自分で持っとった薬を飲んでおったがわし等には渡してくれなんだし、結局効かなかったようじゃがの」 「薬……!?」 ルイズは呻くように言うと、次いで柊を振り返った。 そして今度は柊に向かって言う。 「柊、何か知らないの!? あんたの世界の人間だったんでしょ!?」 今まで見たこともない、張り詰めた表情のルイズを見てエリスは困惑しながら柊に眼を向けた。 彼は顎に手を当ててしばし思案すると、オスマンに向かって尋ねる。 「あんたが会ったそのウィザード……なんつうかこう人形みたいな感じじゃなかったか? 表情が読めないっていうかそもそも感情がないっていうか」 「む……その通りじゃ。何を言ってもほとんど表情を見せぬし、最初顔を見たときはガーゴイルかと思ったぐらいじゃ」 言い当てられて驚きを見せたオスマンから目を離し、柊はガンナーズブルームを見やる。 「……絶滅社の強化人間か人造人間だな。多分調整ができなくなったから……」 侵魔に抗するために人為的な投薬と強化処理を施したウィザード――それが強化人間や人造人間である。 強化人間である緋室 灯に代表されるように、彼女等は通常のそれに比して高い戦闘能力を得られる一方で、 感情や形成人格の欠損・日常に対する適正の欠如・過剰強化による精神肉体への悪影響などといった副作用も抱えてしまう。 これらを緩和するために必要なのが『製造元』で行う調整作業だ。 この作業は強化度合いによって頻度も異なる。 緋室 灯は月に何度か絶滅社で調整をしているし、酷い例では調整を行ってなお『耐用年数』が二十年に満たない個体も存在するという。 現在のファー・ジ・アースでさえそうなのだから、三十年前ではより調整作業は必須のものだっただろう。 当然の事ながら、異世界では調整などできようはずもなかった。 「調整? その調整っていうのをすれば、病気が治るの?」 「根治はできねえかもしれねえけど……調整を受けてる限りなら、まあ魔王とドンパチやらかすぐらいには元気だな」 「そう……ファー・ジ・アースにはそんなのがあるの……」 「……ルイズさん?」 エリスは先程からどうにも様子がおかしいルイズを心配そうに覗き込んだが、彼女は逃げるようにエリスから顔を逸らすと引き下がってだんまりを決め込んでしまった。 柊とエリスと互いに顔を見合わせて首を捻るが、思い当たる事がある訳もない。 「……まあともかく。わしの知っておる『破壊の杖』にまつわる由来はこれくらいじゃな」 「あ、あぁ、すまねえ。参考になった……」 参考にはなったが、手がかりは結局何一つ得られなかった。 やはり地道に探すしかないということなのだろう。 「ありがとうございます、学院長」 折り目正しく頭を垂れるエリスにオスマンは一つ頷くと、ふと思い出したように『破壊の杖』に歩み寄った。 「一つ聞いておきたいことがあるんじゃが、よいかね?」 「俺にわかる事なら……」 「この『破壊の杖』は、まだ"使える"のかね?」 「……」 持ち主のウィザードが亡くなった後に状態保全の魔法である『固定化』を施したが、何をどうやっても彼が使っていた時のような力は発揮されなかったらしい。 柊は許可を得てガンナーズブルームを抱え上げると、軽く状態を確認する。 そして囁くように二言三言何かを呟くと、首を左右に振った。 「ダメだな、使えねえ……少なくともこの世界の人間には無理だし、俺とエリスにも無理だ」 躯体内部に施されている圧縮弾倉――月衣の技術を応用して空間を圧縮し、その中に弾頭を収めている――にはまだ十分に弾が残ってはいた。 だが、弾倉から弾を取り出すためにはロックを解除するキーコードが必要になるのだ。 知っているコードをいくつか試してみたが、弾倉が開放されることはなかった。 大抵は規格ごとに統一されているが三十年前ならコード自体違う可能性は高いし、個人で設定していたら事実上本人以外には扱えない。 ガンナーズブルームの機構に詳しい人間ならともかく、その分野に詳しくない柊ではコレを使うことは出来ない。 ――もっとも『武器』としての機能が使えないだけで、『箒』が『箒』と呼称される所以といわれている機能については問題ないようだが。 ガンナーズブルームを元の場所に戻しながら答えた柊を見ながら、オスマンはふむと顎に手を添えた。 しばし何やら考えるような素振りを見せると、彼は柊に向かって口を開く。 「なら、この『破壊の杖』はキミに預けよう」 「え!? これってここのお宝みたいなモンだろ!? いいのかよ!」 「構わんよ。元々わしの私物のようなものじゃし、あのような危険な力が不埒者に使われるのを防ぐためにここに収めたんじゃからな。 使えぬというなら、これはもうわしの恩人の形見でしかない」 言いながらオスマンは『破壊の杖』に手を添え、昔を懐かしむように眼を細めて言葉を続けた。 「それに、彼も生前はキミと同じように元の世界とやらに帰ろうとしておったが、結局それは叶わなんだ。 ならばせめて、これだけでも故郷に帰してやってくれんか」 「……。わかった」 老人の言葉に柊は静かに頷くと、ガンナーズブルームを手に取った。 それはウィザードとして鍛えた柊であってもそれなりに取り回すのに慣れがいるほどに重量がある。 だが、この重みは単にモノ自体の重さだけではないような気がした。 「少々かさばるが、君なら大丈夫じゃろう?」 「ああ、大丈夫だ。ちゃんと元の世界に返すからよ」 「他にもいくつか彼の遺品があるが……それはどうするね? 結構な大きさの水晶なんじゃがのう」 「……。いや、それはいいよ」 言いながら柊はガンナーズブルームを月衣の中に収納した。 オスマンの言っているそれはおそらく特殊弾頭――魔力水晶弾だろう。ガンナーズブルーム使いなら持っていてもおかしくはない。 通常弾が使えなくともそれがあれば射撃武器としての運用は可能だ。 ……が、柊はそれを貰おうという気はまったく起きなかった。 もとより柊の専門は剣であって射撃武器は好みではないし、何よりそれではオスマンに伝えた言葉も渡してもらった意図にも悖ってしまう。 オスマンは像が揺らいで虚空に消えていくそれを名残惜しそうに見届けた後、三人を眺めやって告げる。 「この事はくれぐれも内密にの。ミス・ロングビルは規則や何やと喧しかろうし、コルベールに至っては言わずもがなじゃからの」 「……わかりました」 「けどよ、いくらなんでもあんなのがなくなったらすぐにバレるんじゃねえの?」 「何、近いうちに模造品でも作って飾っておくわ。どうせ誰にも使えんのじゃから、それで十分じゃろ」 闊達と笑いながら言ってのけるオスマンに三人は顔を見合わせると、呆れたように溜息をついた。 ともかく、これ以上ここで得られそうな情報はありそうにない。 三人はオスマンに促され宝物庫を後にした。 部屋を出る間際、ふと思い出したように柊はオスマンに向かって言った。 「……今度時間がある時でいいから、その人の墓とかに案内してくれねえかな。ちゃんと挨拶しときてえから」 「……お安い御用じゃ」 照れくさそうに言う柊をまじまじと見やった後、オスマンは破顔して彼の肩を叩いた。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
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前ページ次ページモニカがルイズに召喚されました 注意事項 極左と極右で言い争っているので下手を打つと世界観バッシングに見えます。 気に入らない人はスルー推奨。 原作の世界観は尊重しますが順守しません。 好き勝手に書きたい事を書いているので作品として軸がぶれています。 ネタばれですが当面ガンダールブ出て来ません。いらない子です。 でもデルフは出すかも? どうやって出すかは考えてないけど 前話の魔砲の人との類似点は気にしない。 (作者の人は『ゼロと魔砲使い』を応援しています) 風邪が流行っているようだから各自注意する事。 最近ギーシュの株が上がっている。 彼本人は別に何をやったわけではないのだが、騒ぎを起こしているのはルイズの使い魔…つまりモニカである。 事の発端はモニカが『メイジの実力を知りたければ使い魔を見よ』と言う言葉を知った所に始まる。 いい加減に、程度の低いクラスメイトからルイズが蔑まれるのと、いちいち言い返して傷口を広げるご主人様に嫌気が差していた。 そこでモニカはこれを利用して事態に終止符を打とうと考えたのだ。 相手を黙らせるのは簡単だ。 相手の土俵まで降りていって一発張り倒してやればいいのである。 トライアングルメイジの使い魔 少なくとも サ ラ マ ン ダ ー より強い事を示してやれば『ゼロのルイズ』がただの落ちこぼれメイジで無い事を思い知るだろう。 4系統の魔法に適性が無いだけで実際に彼女の学科の成績はすごいのだ。 そこまで考えた彼女は『ゼロのルイズ』と主人を馬鹿にする貴族の子供から喧嘩をかたっぱしから買い上げる事にしたのである。 かくして、ギーシュを負かしたモニカを倒して名を上げようとする命知らずや、貴族としての誇りを取り戻さんとする過激派や、強い奴と戦ってみたい上級生などを尽く一方的な展開で下していった事で学内から表立ってルイズを中傷するものは居なくなった。 つまり、負けたものの比較的善戦した(善戦させてもらった)ギーシュの株が棚ボタで上がる訳である。 本件について魔法学院の学長は珍しく頭を痛ませていた。 ある生徒の使い魔に他の生徒が喧嘩を売ってその事如くが負けているからである。 これが相手が口の悪いドラゴン(韻竜は絶滅してしまったと言われているが)なら問題はドラゴンの主人の躾であるが、相手はただの少女である。 いくら強かろうが『うちの生徒はそろいもそろって13歳の少女に勝てません』と言うのは体裁が悪い。 これがばれたら生徒の親御さんに何を言われるか分かったものじゃない。 授業料を取り立ててやるどころかむしろ金返せと言われかねない。 評価が上がったはずのルイズもこれまた頭を悩ませていた。 使い魔はすごいのに相変わらず自分が落ちこぼれである事に自己嫌悪していたのである。 ありていに言っていじけ虫である。 サモンサーバントに成功してから、つまり自分にも魔法が使える事を再確認して(彼女は自分に魔法適性が無い事など認めていない)みんなに隠れて魔法の練習をしていたのであった。 これがちっともうまく行かない。 何か根本的なところが悪いのではないかと考えた彼女は一年生の教科書を引っ張り出すと基礎からやり直す事にした。 ただのいじけ虫では終わらないのが彼女の素晴らしい所で、今日も爆発を量産し続けるのである。 どかん。 まったく着眼点の違う人間も居た。 本人よりモニカが持っている武器に目をつけた人物である。 彼女の名前をタバサと言い、普段はおとなしく『他の事に興味はありません』と言う顔をして本を読んで過ごしている人物である。 しかし実の所この年でシュバリエ(騎士階級、実力者のみに与えられる)を拝命し、定期的に実戦をこなしている優秀な戦士でありトライアングル級の腕を持つメイジであった。 タバサはリングウエッポンの有用性、つまり携帯性と隠密性に気が付いていた。 なにせ通常時は指輪の形をしている、投げても投げてもなくならない投げナイフなのである。 彼女にその気があるなら技量と年恰好とがあいまってさぞかし優秀な暗殺者になるに違いない。 ルイズがモニカを召喚しました 第3話 タバサは見知らぬ武器を持つモニカに話しかける機会をうかがっていた。 ある日、図書館で今夜読む本を物色していた彼女は当のモニカが本を広げてため息をついている所に遭遇する。 話を聞いて見ると文字が読めないらしい。 この大陸の伝説や一般常識レベルの知識を得ようと真っ先に本を求める姿に共感をもった。 そして話しかけるきっかけが出来た事を始祖ブリミルに感謝した。 タバサはモニカがゲルマニア式の考え方をする人間だとあたりを付けていた。 つまりギブアンドテイクが通用するのではないかと考えたのだ。 きっと彼女は同族(読書中毒者)だ。 付け込む様で悪いが字を教えるのと引き換えに彼女の武器を見せてもらおう。 条件を提示した彼女の返答はあっさりしたものだった。 「別に構わないわ」 「本当?」 「ただし、リングの適合率は1% つまり100に1人程度だから、あなたに使えるかどうかは分からないけれど」 ポケットからリングを取り出すと適当に見繕ってタバサの指に付けた。 モニカに出来るのは真似事程度であまりレベルの高いリングの調律は出来ない。 「適合するのならリングは闘気に反応してあなたに一番適正がある武器に変化するわ。 やってみて」 適当に念じてみる。 間髪おかずにリングが光りだした。 驚くまもなくそれは一瞬で杖へと変化する。 サイズは自分のものとそう変わらない。 試行錯誤の上にたどり着いた自分の戦闘スタイルは適正に適っていた様だ。 黄金色をした未知の金属で出来たそれを興味深げに見上げるタバサ。 「身近な所にリングマスターが居たものね。 適正は杖、杖術に適正があるのか、もしくは魔法を使った後衛に徹するべきなのか…」 「…どう言う原理になっているの?」 「専門外だから私にもよく分からないの。 もともとロストテクノロジーだから…そうね、私の大陸の名のある魔道学者なら説明できるかもしれないわね。 あなたには適正があるようだからそれは差し上げるわ。 この大陸の魔法には各自お手製の杖が必要らしいから、魔法発動が出来るかどうかはあとで教えて頂戴。 ただこれだけは守って。 リング=ウェポンには自己複製する性質があるの。 だから複製されたリングは必ず回収して この大陸ではあまり知られていないようだから悪用する人の手に渡ったら大変な事になるわ」 こくりとうなずいて、それから疑問に思った事を口にするタバサ。 「…私は良いの?」 「別にあなたなら無闇に振り回したりしないでしょう? 信頼しておくわ。 それじゃあ早速だけど文字を教えてもらって良いかしら?」 「ABCからはじめれば良い?」 「必要ないわ。 読めなくても意味さえ分かれば良いのだもの。 幸い、文字の組み合わせで単語を作って、単語の組み合わせで文章を作ると言う基本的な ルールは同じようだから単語の意味からお願いするわ」 「それが普通だと思う」 「私の知っている言語には文字自体に意味を持たせてあって何通りも読み方が有るって言うものがあるわ」 持ってきた紙にペンで文字を書いてみせる。 『弥生』 しばらく会っていない友人の名前である。 「これで3番目の月を表すそうよ。 こっちの呼び方だと『ティールの月』かしら? 読み方は【やよい】 はじめの字は『ますます』とか『もっとも』と言う意味を持っていて【ビ】【ミ】【や】【いや】【いよいよ】と読むらしいわ。」 「法則が分からない」 「そうね、私にもさっぱり。 だからこの手の言語じゃなかったのは少し安心しているの。 さ、はじめましょ」 中身があまり難しくないだろうと考えて選んだ、文庫本サイズの本を広げて隣の席を勧めた。 「序文…意味は分かる?」 「大丈夫、続けて」 本の中にしか出てこないであろう単語の意味が通じるか一応確認する。 文化が違えば、そんな単語もないかもしれないと言う考えは杞憂だったらしい。 一つ一つ単語を読み上げていく。 モニカは単語を書き写してその隣に知らない文字をならべていく…おそらく彼女の大陸の文字に違いない。 「…人…それは…集める…すべての…世界…誰か…そして…費やす…日、この場合複数形になっていて日々…この…だます。」 「人は誰しも何ものかを隠し、誤魔化しつつ日々を過ごす」 「!」 「単語の意味を聞いた途端に全部こっちの言葉に変換されたわ。 この分では口頭で話している言語も聞えているままか怪しくなってきたわね」 「………使い魔になると特殊能力を獲得する事がある」 「特殊能力?」 「例えば召喚された猫が使い魔になると言葉をしゃべったり」 「魔砲の使えないルイズに、調べ物に便利な言語学習能力…と、言う訳じゃなさそうね」 だって、私未契約だし。 もちろんうっかり口には出さない。 どうも言語の違う相手ともコミュニケーションできるように、サモンサーバントの時点で言語能力に関しては解消されるらしい。 実に至れり尽くせり。 他にも変な効果の影響下にいるのではないかと考えると軽く鬱になった。 「学習の方法を変えましょう。 5、6ページ声に出して読み進めて頂戴。 あとは分からない単語を教えてもらいながら私が読んでいくから、間違っていたら訂正して」 ルーン効果を最大活用してさっさと文字を読めるようにしてしまう作戦に出るようだ。 彼女が欲しいのは言語ではなく、文字で綴られた知識なのだからこの判断はまったく正しい。 そのまま10ページも読み進めると、単語の読み方から発音を推測できる単語まで出てきて 難しい単語に躓くものの、ガリア語(共用語)を読むのに不自由しなくなってしまった。 「どう言うこと?」 「なにかしら?」 「ここには『対立する二つの概念』と書いてある。 けれどもあなたは『運命』と読んだ」 「おかしいわね。 この辺が特殊能力の限界なのかしら?」 「意味自体は間違っていない。 これはそう言った慣用表現」 「もしかしたらこの翻訳能力には適当に意訳する性質があるのかも知れないわね。 でも暗号解読に参加するのは諦めた方が良さそう」 「もしかしたら暗号もルーンが解読してくれる可能性も」 「そうね、ルイズが暗号に挑戦する事があったら文面を見せてもらうことにするわ。 他にもおかしな意訳の仕方をしたら教えて頂戴」 「ルーンが訳してくれるのに?」 「今度、私が文を書く時のためにことわざや慣用句表現を覚えておきたいのよ。 ルーン効果で読めるのなら書くのは独学できるはずだから」 「…そう」 タバサは本へと視線を戻すと、静かな声でつぶやいた。 「頼ってくれても良いのに…」 前ページ次ページモニカがルイズに召喚されました
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「はっはははは、これが地上か。ヴェルザー様が欲する理由もわかるじゃん。」 傀儡師カンクロウは例の次元の穴で地上に出現した。 「カンクロウ様、当初は勇者一行を殺すと言っておりましたがここで彼らに死なれては困るのでは?」 カンクロウにつき従っているアークデーモンがカンクロウに忠告した。 「確かに、何人かは残さないと勇者は出てこないかもな。だがそれは一人人質を取ればすむ・・・」 ふとカンクロウは考え込んだ。 「よし、こうしよう。俺達だけで戦っても勝利よりも敗北の色が濃い気がしてきた。 だったら一人を人質にして全員魔界に呼び寄せる。勇者一行は全て死亡するじゃん。」 こうして、カンクロウは勇者一行がいるであろうパプニカとカールを攻め込んだ。 その頃パプニカでは黒の核晶の始末について話し合っていた。 爆発のチャンスがいくらでもあったのに爆発を起こさなかったので当面はアバンのいるカール王国が見張ることになり、全員の意見が一致した。 ポップ、マァム、メルルは宿に泊まりヒュンケルとラーハルトはアバン達と共にカールに向かった。 その日の夜、二大国は魔界のモンスター達に襲撃されることになった。 「モンスター達が~!!!」 カール王国の国民達は突如として襲い掛かってくるモンスター達から逃げ回っていた。 「なんてことだ・・・こうしてはいられない!」 アバンは剣を持ち王宮から城下町に出た。 「待ってアバン。私も一緒に戦うわ。」 フローラ姫はアバンの後を追ったが彼に止められた。 「姫、貴女はもう貴女だけの命ではないのです。私の様な騎士団の代わりはいるでしょうが、 この国を引き上げていくあなたの代わりは利きません。」 「待ってアバン。私は、私は貴方を・・・」 アバンはフローラ姫にラリホーマをかけた。 「ア・・・バ・・・・ン。」 フローラ姫は愛する男の名を呼びながら深い眠りに堕ちた。 「すみません、私は貴女をを幸せにすることが出来なかった人間です。」 師と弟子は似通う点が幾つかあるという話もあるがこの時のアバンはかつてパプニカの三賢者、エイミに告白されたヒュンケルと同じだった。 アバンは既に炎が蔓延した城下町でヒュンケルを見つけた。 アバンは背にフローラ姫を背負っていて動きが鈍っていた。 「ヒュンケル、フローラ姫をパプニカへ連れて行ってください。」 「・・・わかった。」 ヒュンケルは多くを語らず、すぐにカールを脱出した。 『死ぬな、アバン。』 ヒュンケルは心の奥で師の無事を願った。本来ならアバンと共にモンスターと戦う筈の彼だが、 幾度の戦いを経て、戦うことが出来なくなった体ではかえって足手まといになり自分の所為でアバンを殺しかねないという思いがヒュンケルを戦場から引き離した。 アバンはモンスター達の軍勢に飛び込んで行った。 アバンはモンスターの軍勢に全くひけをとっていなかった。 しかしそれでも多勢に無勢、アバンの体はすでに傷だらけであった。 「これだけの軍勢を相手に一人で戦うなんて馬鹿を通り越して哀れだぜお前。」 モンスター達の嘲笑がカール全域に渡った。 既に国民の死者は数千人を超えていたがそれでもアバンの勝利を信じて疑わなかった国民達はその笑い声に絶望した。 「どんなに、笑われようとも、蔑まれようとも私は倒れるわけにはいかない。 こんなことで私が倒れたら、それこそ世界を救った私の弟子に笑われてしまう。私は人々を守る為にも、ここで死ぬわけには・・・」 アバンへの攻撃は尚も続いた。しかしどんなに拳を叩きこんでも、切り刻まれても、呪文で攻撃されても、アバンはモンスター達を討伐し続けた。 もはや、かれを支えているのは肉体ではなく、真の勇者のみが持つ精神に支えられて立ち続けた。 それでも、アバンに限界は来た。愛用のダテ眼鏡も壊れ、アバンの肉体は切り傷に重度の火傷等で立つのも一苦労だった。 「へへへへへ、偉そうな事を言った割には手ごたえがなかったな。」 一人で立ち向かうことも出来ない低級の魔族達は一斉にアバンに襲い掛かった。 アバンは抵抗することもできず魔族達にタコ殴りにされていた。 一方パプニカにはモンスターは一体も出没せず、代わりに一人の黒服をきた男が現れた。 「さてと、カールのほうはテマリが上手くやってるだろう、そろそろおれも作戦を決行じゃん。」 カンクロウはパプニカ王宮に一人で入って行った。 「ま、待ってください。」 お供のアークデーモンも主の後を追って王宮に入った。 カール国民は絶望の淵に立たされた。 アバンは今モンスター達の手によって抹殺されかかっていた。 しかしモンスター達はわざと手を抜き、ぎりぎりアバンが死なない程度にいたぶり、楽しんでいた。 アバンはもはや声すら出せなかった。それでも立っていた。 「アバン様ーー。」 一人の子供がアバンの名前を呼んでも彼は応えることが出来なかった。 次第にモンスター達も飽きはじめ、一人のアンクルホーンが止めを刺そうとした瞬間だった。 「ハーケンディストール。」 突然、そう突然だった。 アンクルホーンが手を振り上げた瞬間にアンクルホーンの四肢、胴体が細切れになったのである。 「あな・・・た・・・は?」 既に疲弊し尽くしたアバンが傍にいる男にしか聞こえぬ様な声を出した。 そこにいた男は間違いなくヒュンケルの盟友、ラーハルトであった。 「ヒュンケルの頼みでここに来た。カール王国の国境を出た所でヒュンケルに会い、『アバンを助けてくれ。』 とな。」 ラーハルトはモンスターの襲来にいち早く気づきモンスターの討伐のため、カールから出ていた。 「ヒュンケルに決して殺させるなと訴えさせた男だ、俺もあんたの事を評価している。」 ラーハルトはアバンに世界樹の雫を飲ませた。 「ふう、楽になりました。ラーハルトさんでしたね、この恩はいつか必ず。」 体力が回復したアバンの眼を見てラーハルトは思った。 『幾ら世界樹の雫を使ったとはいえ、これが先程まで生死を彷徨っていた男か?それにあの眼は全てを見透かしているような・・・』 ラーハルトもアバンの底知れぬ器を垣間見た気がした。 「あんたもバラン様やダイ様と同じような物を感じる。竜の騎士でもないのに。」 「そんな、私にそんな大きな力はありませんよ。」 アバンのこの謙虚そうな性格も彼の一つの魅力なのだろう。 「おらおら、てめえらさっきから何をごちゃごちゃいってやが、」 アバンとラーハルトの怒涛の逆襲が始まった。 そしてこの争いは十分足らずで終わった。 しかし二人の戦いは終わっていなかった。 「感じます。今まで感じていた邪悪な気配が王宮に向かっています。」 メルルが宿でポップ達に話していた頃にはもうカンクロウは王宮の玉座の前に立っていた。 「あなたは何者なの?まさか城の皆に危害を加えてないでしょうね?」 「御立派御立派。自分の身よりも家臣の心配をする所はさすが一国を王女といったところじゃん。」 カンクロウとアークデーモンはレオナに近づいていた。 「安心しな。城の連中にバレちまうような隠密行動やってたら今頃大騒ぎだろう? だれも傷一つついてないよ。」 城の者達の心配は一応無くなったがカンクロウの素性が知れないレオナは警戒を解かなかった。 「単刀直入に言う。魔界に来い。ヴェルザー様が温かく迎えてくれるだろう。」 ヴェルザー、その言葉を聞いてレオナは警戒心を強くした。 大魔王バーンとの決戦において闇から姿を現した龍の石像、冥竜王ヴェルザーを知っていたレオナにとってカンクロウは、 危険な存在にちがいはなかったのだ。 「キルバーンの言ったとおり、まだ地上を諦めてなかったのね。黒の核晶を地上に送ったのもあなた達の仕業ね。誰が行くもんですか!」 「あんたは人間共の指導者で泳がせておくには危険すぎるんだよな。 折角話し合いで解決しようと思ってたのに仕方がない、腕ずくででも連れて行くじゃん。」 カンクロウがレオナに手を差し向けたその時、天井から三人の人間が落ちてきた。 「おい、この顔中ペイントヤロー、女に、姫さんに手を上げようとするなんて最低のクズだな。」 声の主はポップであった。さらにマァム、メルルの二人もいた。 「もうあんた達はにげられないわ、観念しなさい。」 マァムの声に恐れたのかアークデーモンは逃げようとしていた。 しかし、それを見逃す筈もなくマァムの閃華裂光拳でアークデーモンを倒した。 「あらら、俺の付き人がこうもあっさり。」 「次はお前の番だぜ。」 ポップは既にメドローアの構えを取っていた。 しかしカンクロウはポップの想像以上に速く動き、レオナの胸倉を掴んだ。 「くくく、この姫が死んでもいいならそれを撃ちな。まあ、出きればだけどな。」 「く、くそ。」 「そんな、レオナさんが。」 メルルの予言は最悪の形で実現してしまった。 「誰があんたなんかと、心中するもんですか。」 レオナは忍ばせておいたナイフでカンクロウの腕を斬った。 「この小娘が!やってくれるじゃんよ。」 カンクロウは作戦を忘れレオナを殺そうとした。しかしその一瞬の隙にレオナはカンクロウの魔の手から逃れた。 「畜生がーー!!」 我を忘れてカンクロウはポップ目掛けて走り出した。 「今しかねえ、メドローア!!!」 メドローアはカンクロウに近づいて行った。その瞬間カンクロウの背負っていた荷物の包帯が解けた。 「フン、こんなもの当たるかよ。」 カンクロウは突如として二人に別れ包帯から解かれた方のカンクロウはポップの後ろへ回りもう一方のカンクロウはポップの体に巻きついた。 「ジャアコンドハボクノバン。」 ポップの体に巻きついた方のカンクロウはメッキを剥がすように外郭が剥がれおち、 出てきたのは傀儡人形だった。 「な、なんだこりゃあ!?」 カンクロウは指についている紐を手繰り寄せながら言った。 「地上じゃ相当ばかし合いが上手いと聞いていたが俺の敵じゃねえじゃん。」 「ポップさーん!!!」 「ポップーー!!!」 「ポップ君ー!!!」 三人の叫び声も虚しくポップは体中の骨を破壊された。 「骨まで砕けばグニャグニャになれるじゃん。ただし、首以外にしといてやるよ。くくく。 さてと、レオナ姫、貴女は俺について来い。」 カンクロウはレオナの胸倉を掴み次元の穴を作り、入っていった。
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エスターク、そしてダイはゴンズを追う。しかし、ゴンズがボブルの塔に入った瞬間、扉は固く閉ざされてしまった。 「くそ、ここまで来て!!」 エスタークの顔にも憤怒の表情が浮かぶ。 一方クロコダインは新たに造った武器を貰う為にロンベルクの家に寄った。 「急な製作の上、前よりも更に強化しなければならなかったからな。それ相応の時間が伴った。」 ロンベルクが少し疲れた顔でクロコダインを見る。その横にはノヴァも立っていた。 「これが、新しく出来た強化版のグレイトアックスです。強度もパワーも前回以上ですよ!」 ノヴァが嬉しそうに語る。不意にクロコダインがノヴァの手を見ると、指が三倍以上に膨らんでいた。 『こいつ、手をここまで腫らしてまで武器の製作を手伝ったのか。有難い。』 心無しか、クロコダインの眼は水に滲んでいた。 「必ず、必ずこのグレイトアックスで、大切な者達を守ってみせる!!!」 クロコダインは大きく手を振りながらロンベルクの家を後にする。 「何だか、クロコダインさんも一皮剥けた感じがしますね。」 ノヴァが、立ち去っていくクロコダインの背を見ながら言う。 一方ポップ達はリンガイアの東を飛び続け、岩山に囲まれた一つの塔を見つける。 「あれが、ボブルの塔、何か嫌な感じがするわ。」 マァムの感じた悪寒は周囲にも伝わっていたが、四人は躊躇いなく塔へ近づく。 「お、ちょうどいいところに穴があるぜ。入ってみるか。」 頂上にぽっかりと開いた穴から四人は侵入した。少し遅れてバーンが塔の頂上にたどり着く。 「この気配は、ドラゴンオーブか……」 物思いに耽るバーンに二人の魔物が近付いてくる。 ボブルの塔に入ろうとする不届き者が一名・・・」 見た目はオークとキメラだが、オークは一般のオークと比べ物にならない闘気を放っていた。 一方キメラも頭に装飾品を付け、明らかに普通のキメラではなかった。 「俺はキメーラと呼ばれているんだ。同族に毛嫌いにされている所をジャミ様に拾われた。」 オークもバーンに槍を突きつけながら近づく。 「貴様の様な侵入者は久しぶりだ、ジャミ様に献上するのもいいが、俺が喰って……」 オークはそれ以上言葉は続かなかった。バーンの手刀によって喉を貫かれていたのだ。 「余が貴様に食い殺されるような事が起こると思うか?」 一瞬で殺されたオークの死骸を見て、キメーラも驚くが、彼の戦意が喪失することはない。 「だったら、俺のブレスをくらいな!」 氷の息をバーンに吐きかけるがバーンはまるで動じない。バーンは指先から小さな火の玉を出し、キメーラの吐くブレスに投げつける。 一瞬で氷は水と化し、キメーラは火に巻き込まれた。 「ぐ、まさかメラゾーマを使うとは…俺も少し面食らったが、こんな傷、べホイミですぐに回復できる。」 行動の速いキメーラはすぐに回復出来たが、彼の寿命が延びた訳ではなかった。」 「今のはメラだ…貴様如き、メラゾーマなど使うまでもない。」 「き、貴様あ!俺を舐めるなー!!!」 キメーラはべギラマを唱える。この一瞬で勝負は決まった。 「カラミティエンド!!」 べギラマを唱えた刹那、バーンのカラミティエンドがキメーラを斬り裂き、キメーラは即死した。 「ふ、カラミティエンドを出すまでもなかったが、圧倒的戦力差で片付けるのもまた一興、中々面白かったぞ。」 バーンは笑いながら穴へ入って行った。 一方上での騒ぎの音を聞きつけた三人は塔の頂上に上がっていた。 「ここから、奴等の場所へ行けそうだな。」 エスタークの眼が血走る。彼の頭にあるのはゲマへの報復しかない。 エスタークは即、穴へ飛び込んで行った。 「ああ、一人で行っちゃ駄目だ!!」 ダイも慌てて後を追う。偶然か必然か、七人はボブルの塔に結集した。 ~大神殿~ 神殿の広間にハーゴンはアトラスを呼び出す。 「アトラス、地上の人間を殺せとイブール様に仰せつかった。しかしベンガーナに集まる実力者共が邪魔だ。お前が始末しろ。」 「わかりました!!。」 大きな声で返事を返すアトラス、彼はそのままベンガーナへと向かった。 「ラマダは驚異にならんと言っていたが、一応芽は摘み取っておくか。破壊神復活の障害になりそうなのでな。」 ミルドラースの下につくハーゴン、しかし彼の真の野望は破壊神の召還にあった。 ベンガーナでは更に敵の攻撃を警戒する様に警備を固め始めていた。 「またラマダの様な巨大なモンスターが来ないとも限りません。どうにかして新たな戦力が欲しい所ですが・・・」 会議もやはり行き詰っていた所へ、クロコダインがガルーダと共に戻ってきた。 「新しい武器は貰えましたか?」 チウが足早にクロコダインの元に駆け寄る。 「グレイトアックスが更に強化されている。これなら魔界の敵が来ても何とか闘えるだろう。」 ベンガーナに残っている中で主力になるのはアバンやフローラ、良くて三賢者といった状況だったのでこの報告は吉報だった。 「クロコダイン、無理はするな。」 「ヒュンケル、お前こそ長年の戦いでろくに体が動かないではないか。この前の様な無理はするな!」 クロコダインは必要に応じては自分の命すら武器にする友を心配する。その事が彼に対して失礼だと思っていても。 そんな中アキームが会議室の扉を開け、大声で叫ぶ。 「大変です!!ラマダとは違う一つ目の巨人が現れました!!!!」 一同は驚愕の色を隠せなかった。 「早速、グレイトアックスの活躍する時が来たか。」 クロコダインは城の外に出る。それにつられて全員会議室から出た。ただ一人、アバンを除いて。 「先刻から気になっていたのですが、何者なんですか?あなたは。」 アバンの背後に魔物が立っている。 アバンが振り向くと同時に魔物はアバンに殴りかかる。 「挨拶はこんなものでいいな。俺はバズズ、ハーゴン様の命令で貴様等を殺しに来た。」 ハーゴンはアトラスだけではなく、バズズにもベンガーナ襲撃を仕掛けていた。 「ハーゴン?そいつはヴェルザーと何か関係があるのですか?」 「ヴェルザーじゃねえ、俺が仕えているのはハーゴン様と大魔王ミルドラース様だ!!」 ~天界~ 天地魔界を支えている世界樹の守り神は天界に赴いた。 「わたわた、やっぱりこれもオーディン様の見た”予言”かな?大事になる前に止めないと!!」 ~地上~ 「なんだ~お前!!」 アトラスがクロコダインに向けて棍棒を落とす。しかし、間一髪、クロコダインは棍棒を受け止める。 「俺は、決して負けるわけにはいかん!!!!」 クロコダインが咆哮した。
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小ネタ 朝、ルイズがいつも通りの時刻に起床すると、彼女の使い魔達はすでにいなくなっていた。 起きて食堂に向かったようだ。 ルイズも着替えを終えるとすぐに食堂へ向かう。 その途中、とてもいい匂いがしていたので厨房を覗いてみる。 「シエスタ、アンタなかなか上手いやないか」 「昔、ひいおじいちゃんに教えてもらったのですよ」 「あとはこれを蒸せばいいのか?」 「そうアルね」 厨房ではシエスタやマルトー達が巨大な返しを持った女性とチャイナ服の女性とお好み焼きや中華料理を作っていた。 ルイズは今日の食事も期待できるとわかると自分の席へ向かった。 席へ座ると、遠くでギーシュが決闘を申し込んでいるのが見えた。 「君達に貴族に対しての礼儀を教えてあげよう」 「てめえ!よくも俺を女と間違えやがったな!覚悟しやがれ!」 「俺を男なんかと間違えやがって!俺は女だ!」 「美しき女性達の心を傷つけるとは許せん!たたっ斬ってやる!」 「二股をするとはけしからん!この風林館高校の蒼い雷が成敗してやる!」 「かごめに手を出しやがって!ぶっ殺してやる!」 「He Boy!その髪の色は校則違反デース!丸坊主にしなサーイ!」 赤いチャイナ服の青年と、背中に男と書かれた男子学生服を着た男装の女性と、刀を持った白い学ランの青年と、木刀を持った青い和風の青年と、巨大な刀を持った犬耳の火鼠の皮衣を着た青年と、頭に椰子の木を生やしたアフロ服の男性がギーシュを睨みつけながら騒いでいる。 「ほらかごめ、アンタの彼氏とその仲間達がまた暴れてるわよ」 「茜、何回も言ってるけどあいつは彼氏じゃないし、あいつらも仲間じゃないわよ」 「そうそう、姉ちゃんの彼氏は僕やで」 ルイズの隣で、水兵服を着た女性二人と鬼族の子供がその様子を眺めていた。 「えー、ヴァリエール嬢美女使い魔達の写真集はいかがですかー?」 「ミス・ナビキ、一冊購入させてくれ」 「あらギトー先生、いつもご購入ありがとうございます」 「お、大きい声で言うのではない!」 食堂の隅ではギトー先生が召喚された女性達の写真集を購入している。 「王手」 「ま、待ってくださいミスタ・テンドウ!」 「パフォ」 「このパンダの言う通り待ったはなしだよ」 別の机で将棋をしていたコルベール先生に、パンダが「待ったなし」と書かれた看板を向ける。 その様子をとあるアパートに暮らしていた住人が観戦している。 「……あったかい」 「ゴロゴロゴロ」 「お茶が入りましたよ」 「ありがとうございます。ミス・カスミ」 「いえいえ」 別の一角ではエプロン姿の女性がタバサと巨大な猫が暖まっているコタツにお茶を持って来ていた。 「いくぜキュルケ!」 「来なさい!」 「きゅいきゅいきゅーい!」 外ではキュルケがシルフィードを借りて最小限の部分しか守れそうにない鎧を着た女性と大豆を発射する銃で戦っている。 「ルイズ、ダーリン見なかったちゃか?」 そんな周りの様子を眺めていると、鬼族の女性がルイズに質問を投げ掛けてきた。 「ダーリン?あいつなら洗濯所にいたわよ」 それを聞くと鬼族の女性は虎柄のブラから何かの機械を取り出し、スイッチを押す。 機械の画面に異常に小さい爺さんとオスマン氏と法師姿の青年と特に特徴のない青年が映しだされた。 『よいか三人とも。この修業はいかに素早く、発見されずにパンティを盗れるかがポイントじゃ!』 『『『はいお師匠様!』』』 鬼族の女性はすぐに空を飛んで洗濯所へ向かった。 数分後にはライトニングクラウド以上の電撃音と悲鳴が聞こえてくるだろう。 そんな使い魔達の様子を眺めつつ、ルイズは一言呟いた。 「ダメだこりゃ」 「これがお主のさだめじゃ」 「こら叔父上、出番がないからって最後に出てくるのではない」
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「この鍵で開く筈だ。」 牢の合鍵で扉を開けた。 「やった!」 「出られるなんて、信じられない。」 捕らわれていた女性の中には、歓喜に震え、ある者は涙さえ流した。 「やはり、エスタークを救う事が出来たのだな。」 「いやあ、運が良かったんだ。」 ダイはそう言いながらも頬を赤らめた。 「私達は村に帰るが、そなたも来てくれないか?」 ダイは快く頷いた。 こうして、全員で村へ帰った。 「ダイ、俺は村に入る訳にはいかない。村の女性を監禁してきた罪は許されるものではない。」 そう言って、エスタークは村に入ることを拒んだ。 「俺はお前に話したいことがある、村の前で待っている。 ダイはエスタークの気持ちを汲み取り、村に引き入れなかった。 村に入るとレイラと長老が出迎えた。 「なんと、全員ではないが、女達が生きておったか!!」 長老は帰って来た女達にひたすら謝り続けた。 謝っても許される問題ではないことも分かっていたが、それでも長老はそうせずにはいられなかった。 「本当にエスタークに勝ったなんて、信じられない。」 レイラは安堵し、喜んだ。 「長老さん、俺、そろそろ行かなきゃいけないんだ。」 その言葉にレイラが反対した。 「嫌よ!!ダイは私の命の恩人なのに、こんなに早く別れなきゃいけないなんて・・・」 「レイラ、ごめん、でも俺は地上に戻らないといけないんだ。」 ダイの言葉も今のレイラには聞こえなかった。 レイラは知らないうちにダイに恋心を抱いていたのだ。 「ダイ君には帰るべき場所があるのだ、ここに残ることは許されない。 それに今生の別れという訳でもあるまい、またいつかどこかで会うことも出来るじゃろう。」 レイラは涙ながらに無言で頷いた。 「それじゃ、さようなら!!」 ダイは村を出発した。 「ダイーー!!必ず、またこの村に来てねーー!!」 レイラの声にダイは頷き、走り去った。 「レオナ姫を連れてまいりました。」 カンクロウはヴェルザーの前に立ち、その場で敬礼した。 「御苦労だった。そろそろ我愛羅もオレの体を持ち帰って来る頃だろう。」 ヴェルザーはやたら上機嫌にカンクロウに話した。 「あんたがヴェルザーね、何故私をこんなところに連れてきたの?」 「オレはお前を連れてこいという命令はしていない、全てカンクロウの独断だ。」 レオナは部下の好きに行動させるヴェルザーの感性がとても信じられなかった。 「カンクロウが貴様を捕えるという機転を利かせてくれたおかげで地上の制圧は捗るだろう。」 「だったら、私を殺した方が良かったんじゃないの?」 「人質があるからこそ地上の制圧は上手くいくのだ、貴様もオレの道具としてこれから生きていけ、ハハハハハハ。」 ヴェルザーの部下たちによりレオナの身ぐるみは剥がされ、口に布を噛ませて自害をさせないようにした。 もはや死ぬことさえ出来なくなったレオナはただ祈ることしか出来なかった。 『助けて、ダイ君。』 アーリーの村を出たダイは村の前に立っていたエスタークに声を掛けられた。 「俺も連れて行ってくれないか?」 「いいけど、どうして?」 「俺は八千年前にエビルプリーストに進化の秘法を俺に使用した時点で俺は死んだ筈だった。」 「どうして進化の秘法を使われたの?」 ダイの質問にエスタークは絶望した表情を浮かべながら話した。 俺の両親を殺したダークドレアム、奴に二度戦いを挑んでも、一瞬で惨敗した。 俺は三度目に奴を自分の体内に封印することで勝利したと思っていた。 だが、俺のような魔族に封印しきることは無理だった。 そんな中エビルプリーストが進化の秘法を使えば完全に封印することができると話したんだ。」 「けど、エビルプリーストとダークドレアムは繋がっていたよ。」 ダイの言葉にエスタークは頷いた。 「ああ、ダークドレアムが俺の体内に自ら飛び込むように入っていったのもその為だろう。 そして、俺は理性を失った怪物になり下がった。 その俺を救ってくれたのがお前だ。どうしてもこの恩を返したい。」 「話したい事ってそれだったんだね、俺としても仲間が増えるのは嬉しいし、 是非仲間になってくれよ。」 ダイはエスタークの申し出に承諾した。 その時突然二人の前に物体が落ちてきた。 「これは、俺の剣!!」 地面に強く刺さったダイの剣をダイは抜いた。 「それが、お前の剣か?」 ダイは嬉しそうに頷いた。 真魔剛竜剣がなくなった今、ダイにとってはこれ以上ない武器が主の元に戻ってきたのだ。 「俺と戦った時の剣よりも強い力を感じる、その剣を造った者は相当の腕の持ち主だな。」 エスタークは瞬時にダイの剣の力を知った。 アーリーの長老の家に捕らわれていた女性が来ていた。 「長老、かつて私は一人の騎士によって魔界に変革が訪れると予言した事を覚えていますか。」 「もちろん、覚えているとも、それがどうしたのかね?」 「私はあの少年こそがその騎士の様に思えるのです。 何千年経っても変わらないこの魔界に新しい歴史を創ると私は確信しています。 「まさか、気のせいじゃろう。」 しかし、この予言が現実の物となるのは目と鼻の先である。 後年の人々はこれから始まる天地魔界を激突させた戦争においてその戦争を収めた最後の竜の騎士をこう呼んでいる。 三界の救世主と。
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目次 【時事】ニュースソアラ ダイ RSSソアラ ダイ 口コミソアラ ダイ 【参考】関連項目 タグ 最終更新日時 【時事】 ニュース ソアラ ダイ 1/43サイズの高精度スケールモデルで揃える傑作国産車のコレクション 『国産名車プレミアムコレクション』2021年12月8日(水)創刊! - PR TIMES ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第60話「ダイとポップ」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第58話「意外な救世主」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp クルマ好きが観た『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』 真のボンドカーはどれか?(ENGINE WEB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『ダイの大冒険』第52話、ダイが反抗期のよう?前野智昭&小松未可子にもツッコミ!「夫婦はお前らだろw」「ややこしい」 (2021年10月15日) - エキサイトニュース トヨタとスバルのスポーツカー「GR86/BRZ」はクーペ再興の救世主?(マイナビニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第52話「父子竜出陣」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第44話「氷河に消えた勇者」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第43話「最強剣激突」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第38話「世界会議(サミット)」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 「冒険の軌跡、これからの旅路」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第37話「一瞬にすべてを」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp アニメ『ドラゴンクエストダイの大冒険』あらすじ - ORICON NEWS アニメ『ダイの大冒険』28話“次回予告”でネタバレ!? 不遇なボラホーンに同情... - まいじつ AOSHIMA、2.5GTツインターボL/4.0GTリミテッド選択式の「JZZ30 ソアラ」模型 - 価格.com 希少なエキゾティック・クーペ──新型レクサスLC500試乗記 - GQ JAPAN TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』追加声優に小原好美さん・塩田朋子さん・石田彰さん・杉村憲司さん・木村昴さん決定! 5人意気込みコメントも到着 - アニメイトタイムズ 【1月のトミカ】トヨタ「ソアラ」がトミカプレミアムに登場 - 価格.com RSS ソアラ ダイ 1/43サイズの高精度スケールモデルで揃える傑作国産車のコレクション 『国産名車プレミアムコレクション』2021年12月8日(水)創刊! - PR TIMES ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第60話「ダイとポップ」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第58話「意外な救世主」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp クルマ好きが観た『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』 真のボンドカーはどれか?(ENGINE WEB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『ダイの大冒険』第52話、ダイが反抗期のよう?前野智昭&小松未可子にもツッコミ!「夫婦はお前らだろw」「ややこしい」 (2021年10月15日) - エキサイトニュース トヨタとスバルのスポーツカー「GR86/BRZ」はクーペ再興の救世主?(マイナビニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第52話「父子竜出陣」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第44話「氷河に消えた勇者」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第43話「最強剣激突」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第38話「世界会議(サミット)」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 「冒険の軌跡、これからの旅路」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp ドラゴンクエスト ダイの大冒険 第37話「一瞬にすべてを」 | TVO テレビ大阪 - tv-osaka.co.jp アニメ『ドラゴンクエストダイの大冒険』あらすじ - ORICON NEWS アニメ『ダイの大冒険』28話“次回予告”でネタバレ!? 不遇なボラホーンに同情... - まいじつ AOSHIMA、2.5GTツインターボL/4.0GTリミテッド選択式の「JZZ30 ソアラ」模型 - 価格.com 希少なエキゾティック・クーペ──新型レクサスLC500試乗記 - GQ JAPAN TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』追加声優に小原好美さん・塩田朋子さん・石田彰さん・杉村憲司さん・木村昴さん決定! 5人意気込みコメントも到着 - アニメイトタイムズ 【1月のトミカ】トヨタ「ソアラ」がトミカプレミアムに登場 - 価格.com 口コミ ソアラ ダイ #bf 【参考】 関連項目 項目名 関連度 備考 参考/DRAGON QUEST -ダイの大冒険- ★★★★ 登場作品 参考/山崎和佳奈 ★★★ キャスト タグ キャラクター 最終更新日時 2013-02-28 冒頭へ
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ロングビルを助けたギーシュ達は、ロングビルの治療のためシルフィードに乗ってトリスティン魔法学院に急いだ。 学院に到着する頃、遠くから昇る朝日を見て、キュルケはルイズの身を案じていた。 「早く帰ってきなさいよ…」 ギーシュ達が魔法学院に到着した頃。 ルイズは夢を見ていた。 使い魔品評会の日に、アンリエッタがルイズに会いに来た、その時の夢だ。 メイジの常識で言えば、使い魔の居ないルイズはメイジとして失格だと思われても仕方がない。 そんな自分に、アンリエッタは重要な任務を任せた。 他のメイジ達が聞けば、アンリエッタは気が狂ったのかとでも思われるだろう。 なぜ自分だったのか? おそらく、アンリエッタの周囲には、心から信頼できる人が居ない。 この手紙の件を話せる人が居たとしても、アンリエッタの周囲にいる貴族が『政治』を担っている以上、決して話すことは出来ない。 アンリエッタは、この手紙を交渉の材料として使われることを恐れたに違いない。 だから、『おともだちのルイズ』に任せたのだろうか。 もし、アンリエッタが自分を利用しているとしたら? …関係ない、自分は貴族なのだから、王女の命令に従うのは当然だ。 もし、アンリエッタが自分を利用しているとしたら? …関係ない、アンリエッタになら騙されていてもいい、そう思って引き受けたのだから。 アンリエッタが『おともだち』として自分を信頼してくれているのなら、絶対に生きて帰らなければならない。 でなければ、アンリエッタは友達殺しの罪に、一生苛まれる事になるだろうから。 ルイズの意識が、朝焼けと共に覚醒してくる。 わずかに暗い空に流れ星が流れ、あの時名付けた名前を思い出す。 「スタープラチナ…」 ルイズが呟くと、ルイズの手からもう一本の手が現れた。 その手を握りしめ、開き、また握りしめて、その『感触』を確かめた。 「アルビオンが見えたぞ!」 鐘台の上に立った見張りの船員が大声を上げた。 ルイズは起きあがり、船員の指さす方を見ると、雲の切れ目からアルビオンの大陸が見えていた。 周囲をきょろきょろと見回すと、右舷の方向に何かの影が見えた。 「…?」 雲の切れ目から何かが現れたような気がしたので、その方向に向かって集中力を高める。 するともう一つの目が景色を拡大させる、遠見の鏡で遠くを見るかのように、雲の切れ目がクッキリと拡大されていく。 雲の切れ目から見えたのは、大砲を備えた船であり、輸送船や客船には見えない。 「あの船は何?」 ルイズが船員に聞いたが、船員にはその船が見えないらしく、 「何もありませんぜ」 としか返事は帰ってこなかった。 しかし、その船員はルイズの言葉を嫌でも信じるハメになる。 「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!」 ルイズが見た船は、いつの間にか輸送船の死角となる雲中から現れ、大砲の照準を向けてきたのだ。 後甲板で、ワルドと船長は、見張りが指差した方角を見上げ驚いていた。 黒くタールが塗られた、いかにも戦艦だと思わせる船体からは、二十数個も並んだ砲門をこちらに向けていた。 「アルビオンの貴族派か?それとも…」 見張り員が輸送船の副長に合図を送る、すると青ざめた顔で副長が船長に駆け寄り、見張り員からの報告を伝えた。 「あの船は旗を掲げておりません!」 船長の顔も、みるみるうちに青ざめる。 「してみると、く、空賊か?」 「間違いありません! 内乱の混乱に乗じて、活動が活発になると予測されていましたが、既に…」 「逃げろ! 取り舵いっぱい!」 船長は輸送船を空賊から遠ざけようとしたが、既に空賊の船は輸送船と併走していた。 ボン!と音を立てて空賊の船から砲弾が発射され、輸送船の進路上にある雲に砲弾の穴が開く。 「船長!停船命令です…」 空賊の船から手旗での停船命令を受けると、船長はワルドを見た。 ワルドはこの船を浮かすために魔力のほとんどを傾けていたため、戦っても勝ち目はない。 ワルドは短く「私も打ち止めだよ」と言った。 船長は、停船命令を受ける旨を、見張り員に伝えた。 空賊に捕らえられたルイズ達は、船倉に閉じこめられていた。 輸送船の船員達は、船の曳航を手伝わされているらしく、ここには居ない。 ルイズはワルドから「チャンスを待とう」と言われ、ワルドの隣に座ってじっとしている。 がちゃりと扉が開き、船室に空賊の男が入ってきた。 「飯だ」 ルイズはじっと黙ってその男を見ていた。 ワルドが受け取ろうとしたとき、男はその皿をひょいと持ち上げた。 「質問に答えてからだ…お前たち、アルビオンに何の用なんだ?」 「旅行よ」 ルイズは床に座ったまま答えた。 「トリステイン貴族が、いまどきのアルビオンに旅行だって?いったい、なにを見物するつもりだ?」 「そんなこと、あなたに言う必要はないわ」 「へっ、随分と強がるじゃねえか」 ルイズが顔を背けると、男は皿と水の入ったコップを床に置いた。 ワルドが皿を取り、ルイズに先食べるよう薦める。 「食べないと、体がもたないぞ」 しかしルイズはそのスープを飲もうとしない。 仕方なくワルドは半分だけ飲み、しばらくしてからルイズもスープを飲んだ。 「あんなやつらの出したスープを飲むなんて…」 ルイズが悔しそうに呟くと、ワルドはルイズの肩に手を回した。 「今は体力を温存するんだ、僕のルイズ…きっとどうにかしてみせるさ」 いつものルイズなら、恥ずかしがって顔を赤らめていたかもしれない。 しかし、今は違う。 ルイズは自分の思考が恐ろしい程冷めているのを実感していた。 ワルドに『毒味』させたのだ、悔しがるような台詞はそれを誤魔化すための演技だった。 私はこんな性格だっただろうか、そんな事を考えながら、ワルドに身を預けていた。 その時再びドアが開かれ、今度は別の男が船倉に入ってきた。 「おめえらは、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」 男の質問には答えない。 「おいおい、だんまりじゃ困っちまう、貴族派だったら失礼したな。俺らは貴族派の皆さんのおかげで、商売させてもらってるんだ。」 「…じゃあこの船は、貴族派の軍艦なのね?」 「おめえらには関係ねえことだがな。で、どうなんだ? 貴族派なのか? そうだったら、きちんと港まで送ってやるよ」 ルイズは、悩む仕草をしているワルドを差し置いて、立ち上がった。 そして空賊を見据え、言い放った。 「誰が貴族派なものですか。バカ言っちゃいけないわ。わたしは王党派への使いよ!し、正統なる政府は、アルビオンの王室ね。わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使ね。だから、大使としての扱いをあんたたちに要求するわ」 「………」 ワルドはじっと黙っていた、ルイズにはそれが気になったが、決して勝算が無くてこのような事を言ったワケではない。 ルイズの右腕からもう一つの腕が伸びる。 いざとなれば、この使い魔を使って何とかしようと考えていた。 この船が貴族派のものだとして、これから拷問にかけられるのならば、何かの道具を使って拷問しようとするだろう。 それを奪えるだけの力があるはず、そう考えての発言でもあった。 「ハッハッ!こいつは驚いた、お嬢ちゃん正直なのはいいが、ただじゃ済まないぞ」 「あんたたちに嘘ついて頭を下げるぐらいなら、死んだほうがマシよ」 「頭に報告してくる。その間にゆっくり考えるんだな」 そう言って空賊の男はは去っていった。 ワルドはルイズを抱き寄せて、耳元でささやいた。 「君は昔からそうだったなぁ…いいぞ、さすがは僕の花嫁だ」 しばらくして、再び扉が開き、先ほどと同じ空賊が入ってきた。 「頭がお呼びだ」 狭い通路を通って連れていかれた先は、空賊にしては上品に過ぎると思えるほどの部屋だった。 後甲板の上に設けられたその部屋は、空賊船の船長室らしい。 大きな水晶のついた杖をいじる空賊の頭、杖をいじっていることから、メイジであることが理解できる。 その周囲では、ガラの悪そうな空賊たちがニヤニヤと笑いながら、ルイズたちを見ている。 「おい、お前たち、頭の前だ。挨拶しろ」 自分たちを連れてきた空賊がそう言っても、ルイズは頭をにらむばかりで、頭を下げようとはしなかった。 「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、名乗りな」 「大使としての扱いを要求するわ」 ルイズは、先ほどと同じセリフを繰り返した。 そして、ゆっくりとスタープラチナの腕に意識を向ける。 三歩、いや二歩前に出られればそれでいい。 空賊の頭が杖を振り、こちらに向けてくれば好都合だ。 この『腕』は、自分の腕から更に2メイル(m)の距離まで伸ばせるはず。 二歩前に出られれば、空賊の頭から杖を取り上げることも可能なはずだ。 ルイズが悩んでいる間にも、空賊の頭は話を進めていく。 「王党派か…なにしに行くんだ? あいつらはもう風前のともし火だ。それよりも貴族派につく気はないかね?来るべき革命に向け、戦力となるメイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ」 「死んでもイヤよ」 「もう一度言う。貴族派につく気はないかね?」 ルイズはきっと顔を上げ、腕を腰に当てて胸を張る。 「無いわ」 ルイズの言葉を聞いて、空賊の頭は大声で笑った。 「トリステインの貴族は、気ばかり強くって、どうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らずどもより、何百倍もマシだがね」 空賊の頭は笑いながら立ち上がり、杖を納めた。 そして縮れた黒髪と、付けひげと、眼帯を外す。 「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはいけないな」 周りに控えた空賊達が、一斉に整列する。 その中央には、凛々しい金髪の若者。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官、本国艦隊といっても、すでに本艦『イーグル』号しか存在しない、無力な艦隊だがね。まあ、その肩書きよりこちらのほうが通りがいいだろう」 金髪の若者は威儀を正して名乗った。 「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ルイズは驚き、そして緊張が解けたせいか、膝の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。 「アルビオン王国へようこそ。大使殿」 そう言ってウェールズは、ルイズとワルドに席を勧めた。 あまりのことに驚いたルイズだったが、ワルドがルイズを立たせて、ルイズの代わりに申し上げた。 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」 「ふむ、姫殿下とな。きみは?」 「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵」 ウェールズが「ほう」と呟く。 「そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢でざいます。殿下」 「なるほど!きみ達のように立派な貴族が、私の親衛隊にあと十人ばかりいたら、このような惨めな今日を迎えることもなかったろうに!して、その密書とやらは?」 ルイズは慌てながらアンリエッタの手紙を取り出す。 ウェールズに近づき手紙を渡そうとしたが、その前に、確認することがあった。 「あ、あの……」 「なんだね?」 「その、失礼ですが、ほんとに皇太子さま?」 ウェールズは笑った。 「まあ、さっきまでの顔を見れば、無理もない。僕はウェールズだよ。正真正銘の皇太子さ。なんなら証拠をお見せしよう」 ウェールズはルイズの指に光る、水のルビーを見つめて言った。 自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取り、水のルビーに近づけた。 二つの宝石が共鳴しあい、虹色の光を振りまく。 「この指輪はアルビオン王家に伝わる風のルビーだ。君がはめているのは、アンリエッタのはめていた、水のルビーだ。そうだね?」 ルイズは頷いた。 「水と風は、虹を作る。王家の間にかかる虹さ」 「大変、失礼をばいたしました」 ルイズは一礼して、手紙をウェールズに手渡すと、ウェールズは愛おしそうにその手紙を見つめ、花押に接吻した。 その様子を見たルイズは、やっぱり恋文だったのねと、心の中で呟いた。 その後、ウエールズは手紙の内容を見て驚き、そして、今自分たちの置かれている状況を話した。 表向きには知られてないが、一月ほど前から既に王党派は何人も暗殺され、静かに革命が始まっていた。 アルビオンの所有する戦艦の殆どは貴族派に押さえられており、王党派は既に政治の実権どころではなく、地下に潜伏して逃げ隠れている状態なのだ。 それを聞いたルイズは、トリスティンに伝わっている情報がほんのごく一部だったことを思い知らされた。 アンリエッタからの手紙には、昔の手紙を返して欲しいと書かれていた。 そのため、アルビオンの城、ニューカッスル地下にある秘密港にまで来て欲しいと言われ、ルイズ達はそれを承諾した。 アルビオンの日陰になる雲の中は、暗闇といって差し支えないほどの空間で、周囲は何も見えない。 そんな中でも、熟練の船員達は船を秘密港まで移動させている。 その技術にワルドも驚きを隠せないようだった。 秘密港に到着すると、ルイズ達はウェールズに促されるままタラップを降りた。 そこに、背の高い年老いたメイジと、20代半ばのメイドが近寄ってきて、ウェールズの労をねぎらつた。 「ほほ、これはまた、大した戦果ですな。殿下」 年老いたメイジは、軍艦『イーグル』号に続いて現れた輸送船を見て言った。 「喜べ、パリー。硫黄だ、硫黄!」 ウェールズの言葉に、その場にいる者達が歓声を上げる。 硫黄は火の秘薬として用いられ、使い方によっては恐るべき破壊力を生む。 戦争を避けられぬ彼らにとって、待ち望んだ物だった。 「戦を前にしてお客様が来られるとは、思っても見ませんでした」 パリーと呼ばれた老メイジと共に、ルイズ達を迎えたメイドを見て、ルイズは息を呑んだ。 『……一人前のメイドになって、アルビオンの王族に、仕えることになった、娘を見て、うれしかった…………』 この女性(ひと)だ…! ルイズの頭の中に、モット伯の別荘でメイジと戦った記憶がよみがえる。 なぜ今まで忘れていたのだろう? あの時、私は、この女性の父親を、見捨てて… そこまで考え、ルイズは、気を失った。 ---- #center{[[前へ 奇妙なルイズ-21]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-23]]}
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地上に戻ってきた五人は城の会議室に行くことにした。 「私達が魔界に行っている間に魔物が襲ってきたという事はもう既にヴェルザーが地上を狙っている証拠。 ダイ君やレオナ姫が気になりますが一時地上に留まりましょう。」 「ダイ・・・姫さんも何処にいるんだ?」 不本意ながらも五人は地上に留まる事を余儀なくされた。 「これからもし魔物達が大軍で攻め込んできた時の事を考えましょうか?」 「相手の出方が分からない今正面からぶつかるしかない。」 バーンとの戦いと違い敵が攻めなければ情報の得られない状況ではヒュンケルの答えにすがる他はなかった。 そんな中会議室の窓から一通の手紙の様な物が入ってきた。 ~宇宙~ ”それ”は太陽の近くから発生した。 一人の魔族の死体から発生した黒い霧、”それ”は太陽を求めて戦い続けた魔族の凄まじい(生への執着)を意味していた。 黒い霧はだんだんと人の形を模る。”それ”は急速に星に落ちる。 一人の魔族は凄まじい生への執着と目的を達成する為、転生を始めていた。 ~天界~ 「この花を竜の騎士の神殿の奥に置いてくれるか?」 オーディンは一本の花をダイに渡す。 「大きな花だね。でも何でこれを神殿に?」 「理由は少しすれば分かる。さあ、私が君を地上に送ろう。」 オーディンのバシルーラによってダイは天界から消えた。 ダイが飛ばされた場所は神殿の水晶のある部屋だった。 「ここに花を置けばいいんだよね?」 ダイは水晶の近くに花を添えた。 しかし花を添えても何も起こらなかった。 「あれ?何も起こらないや。何でだろ。」 不思議に思いながらもダイは神殿を後にする。 神殿から出て湖を泳ぎ切ると水面上に神秘の国、テランが映る。 ダイは地上に上がり、実感した。 「ああ、地上に帰って来たんだな。」 回り道をしながらも地上に戻ったダイだが魔界に残したエスタークの事を考えると素直に喜べなかった。 ~天界~ 「オーディン様、”世界樹の花”を渡して良かったのですか?」 「もう神々の力ですら止めることが出来ぬ程の悪が栄え、聖母竜は新たな竜の騎士を産むことは出来ない。 しかし”あの男”ならば蘇生が間に合うはずなのでな。駄目で元々、世界樹の花の蘇生力に賭けるしかない。」 オーディンはこの絶望的な状況で一筋の光を見出したかのように呟く。 その願望に応える様に竜の騎士の神殿は光り出した。 運悪くダイは水面が光り出した事に気付かないまま出発してしまった。 一方ベンガーナ城に入った一通の手紙を一行は読んでいた。 『地上の様子を見ていました。貴方達に頼みたい事がありますので是非天空城へお越しください。 追伸 天空への塔を経由して下さい。』 「これ、行くのか?」 ポップが問う。場内にいる全員答えはYESだが主戦力が行くという事はなるべく避けたかった。 「俺は天空城に行くぜ。城に留まるなんて出来ねえからな。」 「ダイ様も天空城に呼ばれている可能性もあるかも知れん。俺は行く。」 ヒムとラーハルトが出発すると意気込んでいる所をフローラ姫がまとめる。 「今回はマァム、貴女が行って下さい。何時攻められるか分からない状況でアバンが動く訳にもいかないでしょう?」 こうして最初の四人の内、アバンの代わりにマァムを入れる形になって天空城へ向かうことになった。 「ポップさん、お気をつけて・・・」 メルルは少し小さい声でポップに告げる。 「心配すんな!必ず戻ってくるさ。」 そして四人は出発した。 世界の中心に空高く聳え立つ塔、天空への塔に四人は行きつく。 「うわ!てっぺんが見えねえ!!」 やけにハイテンションなポップを尻目に三人は中へ入る。 塔の中はやたらと複雑なうえ、モンスターも出てくる。 「あー、またあのシールドヒッポの野郎アストロンをしやがった!!」 というような声も珍しくはない。 既に三時間は経っているが塔の全行程からすればまだ序盤の方である。 「はあ、そろそろ疲れたぜ。」 と、ポップが言い始めていた時正面に少し小柄な中年に入っていそうな男がガーゴイルから逃げ回っていた。 「わーーー!!!」 「ペタン(重圧呪文)!!!」 ポップの重圧呪文でガーゴイルを退け、一命を取り留めた男性が近付く。 「ありがとうございます。私はプサンと申します。天空城へ行きたいのですがモンスターが強くて・・・」 「ああ、だったら俺達と一緒に行こうぜ?」 ポップの言葉にマァムが反対する。 「ちょっと!こんな素性も知らない人と・・・」 「いや、俺は賛成する。」 答えたのはラーハルトだった。 「うまく言えないがこの男はバラン様やダイ様と同じ様な気配を感じるのだ。」 こうしてプサンが加わり五人となったチームで塔を登ることにした。 ~魔界~ 「気分はどうかな・レオナ姫。」 個室で幽閉されているレオナを覗き込むようにヴェルザーは話す。 「こんな所で気が休まるわけないじゃない。」 レオナは衰弱仕切っていていつ死んでもおかしくなかった。 「死なせはせん、貴様にはまだ利用価値があるからな。」 ヴェルザーの高笑いが魔界に響き渡った。
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気を失ったルイズは、手近な部屋のベッドへと運び込まれた。 ニューカッスル城の水のメイジは、極度の緊張から解放されたストレスで気を失ったのだと診断した。 ウエールズの計らいで、ワルドもまた、消費しきった魔力を回復するためにルイズの傍らで体を休めていた。 ルイズは、すぐ側の椅子にワルドが座っているのを感じていた。 起きあがり声をかけようとしたが、体も動かず、声も出ない。 なんとか体を動かそうとするルイズに、誰かの声が聞こえてきた。 『………ズ』 『…ルイズ…』 しばらくその声に耳を傾けていると、少しずつハッキリと聞こえてくるようになった。 「だれ? 私を呼んでるのは」 『やれやれ、やっと気づいたか』 暗い意識の中で、ルイズの目の前には、不思議な出で立ちの男が立っていた。 五芒星の装飾をあしらった黒い服に身を包み、マントと見まがうような長いコートを着ている。 少なくともトリスティンでは見たこともない服装だったが、ルイズはその男が誰なのか知っていた。 「あんた、オークに殴られた時に助けてくれた…ええと…なんだっけ」 『空条承太郎だ』 「クゥジョー、ジョォタロー? 変な名前ね…ねえ、貴方、もしかしてあの変な円盤から出てきたの?」 ルイズが使い魔召喚の日に見つけた、銀色の円盤を思い浮かべる。 そのイメージが伝わったのか、承太郎は無言で頷いた。 「ふーん…何よ、やっぱり私、サモン・サーヴァントに成功してたんじゃない」 『やれやれ、いろんなスタンド使いと戦ったが…使い魔として呼び出されるなんてのは初めてだ』 「そりゃそうでしょうね、貴方の記憶が夢に出てきたもの、あなたの世界ってこっちとはずいぶん違…」 そこまで言ってルイズは思い出した、目の前の男は、承太郎は、時間の加速した世界の中で、仲間がバラバラにされていくのを見ていたのだ。 その中にはもちろん実の娘もいた、杉本鈴美が自分以外の幽霊の姿を見たように、彼もまた幽霊の視点で娘の死を見ていたのだろう。 『…気にするな、徐倫は、やるべきことをしたんだ』 「ごめんなさい…でも、あの時死んだ貴方がなぜDISCになって現れたの?」 『さあな、それは俺にも分からん、だが、今俺は使い魔として召喚され、お前の意識に同居している、それだけが事実だ』 ルイズは意識の中で、腰に手を当て、胸を張った。 「使い魔としての自覚はあるのね、ちょっと複雑だけど…でも、いいわ。それと私のことはルイズでいいわよ。どうせ他の人には聞こえないもの」 『わかった』 「で、突然私の前に現れたのはなぜ?ウエールズ王太子殿下に手紙を渡さないといけないのよ」 『その事だが、一つだけ言っておきたいことがある』 「何?」 『ワルド…奴には気をつけろ』 「えっ…」 そこでルイズの意識は光に包まれた。 ガバッ、と体を起こすと、そこはベッドの上だった。 近くにいたワルドがルイズを心配して駆け寄る。 「ルイズ!目が覚めたか、大丈夫か?」 「あ、ワルド…うん、大丈夫よ、ちょっと疲れたみたい、ごめんなさい」 「それならいいんだ、僕の花嫁に何かあったら、僕は気が気じゃないからね」 今まで何かの夢を見ていた、それだけは覚えている、しかもワルドに関わる夢を見ていたはずだ。 しかし、その夢の内容が思い出せない。 ルイズはベッドから降りると、ウェールズ王太子に面会するため、ワルドと共に部屋を出て行った。 ウェールズの部屋は王子の部屋とは思えない程粗末で、質素な部屋だった。 ルイズはウェールズから手紙を受け取る、確かにアンリエッタの花押が押されている。 「ありがとうございます」 ルイズは深々と頭を下げ、手紙を懐にしまった。 「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号が、ここを出港する。それに乗ってトリステインに帰りなさい」 ウェールズは実に爽やかに言ってのける。 しかしその言葉は、自分はそれに乗らないというニュアンスが含まれていた。 「あの、殿下…王軍に勝ち目はないのですか?」 ルイズは一瞬だけ躊躇したが、ウェールズの目を見据えて言った、それに答えるかのように、ウェールズも凛々しいまなざしをルイズに向けて答えた。 「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。万に一つの可能性もありえない。我々にできることは、勇敢な死に様を連中に見せることだけだ」 ルイズは俯いた。 「殿下の、討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」 「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」 ガタン、と扉から音が鳴った。 それに気づいたウェールズは杖を振って扉を開く、すると扉の向こうには、ルイズ達を迎えたメイドが立っていた。 「きみは…」 そのメイドは、恭しく頭を垂れると、ウェールズの部屋へと入り、扉を閉めた。 「殿下、お使者の方々、失礼をお許し下さい。恐れながら申し上げたいことがございます」 「…申してみよ」 「どうかトリスティンに亡命なされませ、私どもはアルビオンの意志と血を絶やさぬために戦うのです、どうか、王太子殿下だけでも生き延びて…」 「それは、できない」 ウェールズがきっぱりと言い放つ。 「君は非戦闘員だ、女子供を無惨に殺されるわけにはいかぬ、私は名誉のために死を選ぶのではない、意志を伝えるために戦うのだ、戦わなければ、意志は受け継がれないのだよ」 「ですが…!」 「トリスティンからの使者の前だ、これ以上の無礼は私が許さん、下がりなさい」 ウェールズの固い決心を聞いてもなお、納得いかないといった表情だったが、メイドは一礼するとウェールズの部屋から退室した。 「ふぅ…メイドが失礼をした、あのように私を慕ってくれる者もいるのだ、だからこそ私は戦わなければならないのだよ」 ルイズはウェールズの言葉を黙って聞いていたが、意を決して話し出した。 「この、ただいまお預かりした手紙の内容、これは…」 ごくり、と喉が鳴る。 「この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫さまのご様子、尋常ではございませんでした。そう、まるで、恋人を案じるような……。それに、手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい、もしや、姫さまと、ウェールズ皇太子殿下は……」 ウェールズは微笑んだ。ルイズが言いたいことを察したのである。 「きみは、従妹のアンリエッタと、この私が恋仲であったと言いたいのかね?」 ルイズが頷くと、ウェールズは悩んだ仕草をしたあと、口を開いた。 「その通り。きみが想像しているとおり、これは恋文さ、彼女は始祖ブリミルの名おいて、永久の愛を私に誓ったんだ」 ルイズは「ああ」と心の中でため息を漏らした。 始祖に誓う愛は、つまり婚姻の際の誓い。アンリエッタが既にウェールズと愛を誓っていると知られれば、ゲルマニアの皇帝との結婚は重婚となる。 重婚の罪を犯したと知られれば、ゲルマニアの皇帝は、姫との婚約は取り消し、同盟の約束も反故にしてしまうだろう。 「殿下…姫様の手紙には、殿下に亡命を求める内容など一言も書かれてはいなかったと思います。 それが、それが姫様の、姫様の『覚悟』でございます、ですが、私は…私は殿下に亡命を、トリスティンへの亡命を進言致します!」 ワルドがルイズの肩を押さえる、落ち着けと言いたいのだろうが、ルイズの興奮は収まらない。 「それはできんよ」 ウェールズは笑いながら言った。 「殿下、これはわたくしだけの願いではございません!姫さまの願いでございます!姫さまがご自分の愛した人を見捨てるわけがございません!姫様の覚悟を、どうか!」 ウェールズは首を振った。 「…君は、本当にアンリエッタのことを知っているのだね、幼い頃の遊び相手の話を、アンリエッタはよく話してくれたよ、君がそうなのだろう?」 「殿下!」 ルイズはウェールズに詰め寄った。 「私は王族だ。そしてアンリエッタを愛する一人の男でもある、だからこそアンリエッタの覚悟を汲まねばならぬ。アンリエッタはこの手紙を覚悟して書いたのだろう、『この手紙に書かれていることが真実である』と『覚悟』して書いたのだろう。だからこそ、姫と、私の名誉に誓って、私はここで戦い、そしてアルビオンの意志を貴族派の者達に、世界の者達に見せなければならぬ」 ウェールズは苦しそうに言った。 王女であるアンリエッタが、どれだけの苦しみを覚悟して、残酷な手紙を書いたのか、ウェールズには痛いほど理解できたのだ。 ウェールズがルイズの肩を叩く。 「きみは、正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、純粋な、いい目をしている」 ルイズは、寂しそうに俯いた。 「忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい」 ウェールズの微笑みは、爽やかな、魅力的な笑みだった。 「しかしながら、亡国への大使としては適任かもしれぬ。明日に滅ぶ政府は、誰より正直だからね。なぜなら、名誉以外に守るものが他にないのだから」 そう言うとウェールズは時計を見る、決戦前夜のパーティーの時間が近づいていた。 ウェールズは、ルイズとワルドにパーティへの出席を促すと、部屋を出て行った。 パーティは城のホールで行われた。 簡易の玉座が置かれ、そこにはアルビオンの王が腰掛けて、集まった貴族や臣下を見守っていた。 とても、明日には滅びる者達のパーティとは思えない、華やかなパーティーだった。 最後の晩餐に参加したトリステイン客、ルイズとワルドの二人は、城に残った王党派の貴族達に最高のものを振る舞われた。 明日死ぬかもしれない、そんな悲観に暮れた言葉など一切漏らさず、二人に明るく料理を、酒を勧め、冗談を言ってきた。 ルイズは歓迎が一段落つくのを見計らって、ホールを離れた。 城のバルコニーへと出て月夜を眺めようとしたのだ。 しかし、そこには先客が居た。 先ほどウェールズに進言しようとしたメイドが、ウェールズに何かを訴えていたのだ。 「殿下…怖くは、ないのですか?」 「怖い?」 ウェールズはきょとんとした顔をして、メイドを見つめた、そしてはっはっはと笑った。 「怖いさ!だがね、私を案じてくれる者がいるからこそ、私は笑っていられるのだよ」 「そんな…私だったら、私だったら、怖くてとても、殿下のように笑えません、そんな風に笑えるなんて、私には」 「いいかね? 死ぬのが怖くない人間なんているわけがない。王族も、貴族も、平民も、それは同じだろう」 「では」 「守るべきものがあるからだ。守るべきものの大きさが、死の恐怖を忘れさせてくれるのだ」 「何を守るのですか?私は、モット伯に引き取られたとき、モット伯の衛士の方から、どんなにふがいなくとも生きろと教えられました、生き残る屈辱に耐えて、伝えるべき『魂』を伝えろと、そう教わったのです」 メイドは語気を強めて言ったが、ウェールズは笑顔を崩さない、そして、言い聞かせるように優しく語り始めた。 「優しいのだな、君は、だからこそ私は君たちに生きて欲しい、語り継ぐのは君たちの役目だ、私が戦わなければ、アルビオンの貴族が勇敢に戦ったと言えなくなるのだよ」 「でも…もう、すでに勝ち目はないですのに…」 「我らは勝てずともいい、せめて勇気と名誉の片鱗を貴族派に見せつけ、ハルケギニアの王家たちは弱敵ではないことを示さねばならぬ。君は将来、誰かと恋に落ち、そして子を育てるだろう、私はその子らの為に戦いに行くのだ、無碍に民草の血を流させぬためにも、少数でも団結した者達が如何に難敵であるかを見せつけねばならんのだよ。」 「そんな…」 「これは我らの義務なのだ。王家に生まれたものの義務なのだ。内憂を払えなかった王家に、最後に課せられた義務なのだよ、君は違う、生き延びなさい」 そう言ってウェールズはバルコニーを離れた、廊下で立ち聞きしていたルイズを見つけ、ウェールズはルイズに微笑んだ。 「おやおや、聞こえてしまったが。…今言ったことは、アンリエッタには告げないでくれたまえ。いらぬ心労は、彼女の美貌を害してしまう。彼女は可憐な花のようだ。きみもそう思うだろう?」 ルイズは頷いた。それを見たウェールズは、目をつむって言った。 「ただ、こう伝えてくれたまえ。ウェールズは、勇敢に戦い、勇敢に死んでいったと。それで十分だ」 それだけ言うと、ウェールズは再びパーティーの中心に入っていった。 翌日、非戦闘員が秘密港から避難している頃。 始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズ皇太子は新郎と新婦の登場を待っていた。 周りには誰もいない、戦の準備で忙しいのだ。 ウェールズも、すぐに式を終わらせ、戦の準備に駆けつけるつもりだ。 礼拝堂の扉が開き、ルイズとワルドが現れる。 ルイズは礼拝堂と、ウェールズの姿を見て呆然としたが、ワルドに促されて、ウェールズの前に歩み寄った。 ルイズは戸惑っていた、朝早くワルドに起こされ、ここまで連れてこられたのだだ。 戸惑いはしたが、深く考えずに、半分眠ったような頭でここまでやってきた。 死を覚悟した王子たちの様子、そして、前日に聞いたメイドとウェールズの会話が、ルイズの頭を混乱させていた。 ワルドは、そんなルイズに「今から結婚式をするんだ」と言って、アルビオン王家から借り受けた新婦の冠をルイズの頭にのせた。 新婦の冠は、魔法の力で永久に枯れぬ花があしらわれ、なんとも美しく、清楚なつくりであった。 そしてワルドはルイズの黒いマントを外し、やはりアルビオン王家から借り受けた純白のマントをまとわせた。 新婦しか身につけることを許されぬ、乙女のマントが、ルイズの背中を包んだ。 しかし、そのようにワルドの手によって着飾られたルイズは戸惑っていた。 確かにワルドはあこがれの人だ、その人から結婚を申し込まれて嬉しくないはずはない。 しかし、何かが引っかかる、ワルドの変わらぬ笑顔が、なぜかとても冷たいものに見えた。 ワルドは戸惑い恥ずかしがるルイズの様子を、肯定の意思表示と受け取った。 ウェールズの前で、ルイズとワルドは並び、一礼する。 「では、式を始める」 王子の声が、ルイズの耳に届く。 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」 ワルドは重々しく頷いて、杖を握った左手を胸の前に置いた。 「誓います」 ウェールズはにこりと笑って領き、今度はルイズに視線を移した。 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」 朗々と、ウェールズが誓いのための詔を読みあげる。 相手は憧れていた頼もしいワルド、自分の父とワルドの父が交わした、結婚の約束が、今まさに成就しようとしている。 ワルドのことは嫌いではない、しかし… 「新婦?」 ウェールズがこっちを見ている。ルイズは慌てて顔を上げた。 「緊張しているのかい? 仕方がない。初めてのときは、ことがなんであれ、緊張するものだからね」 にっこりと笑って、ウェールズは続けた。 「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」 そしてルイズは思い出す。 スタープラチナが視た映像を。 桟橋で、ルイズの前に現れた、仮面の男。 その男の背丈は、ワルドと完全に一致する。 顔に被った仮面も、ワルドの変わらぬ笑顔を象徴するかの如くだった。 そして何よりも、ワルドは風のスクエアであるという事実。 風の魔法には、偏在の魔法という、分身を作り出す魔法がある。 偏在とは、空気が『色』と『形』を持ち、見た目こそ魔法を詠唱したメイジと変わらぬ姿を出現させるが、その中身は言わば『雲』だ。 ルイズの傍らに立つ使い魔、スタープラチナの腕が、承太郎の心臓を止めた時のように、ワルドの身体に入り込んでいた。 ワルドの身体の中には、内蔵の感触が無かった。 「新婦?」 「ルイズ?」 二人が怪訝な顔で、ルイズの顔を覗き込む。 ルイズはワルドに向き直り、悲しい表情を浮かべて首を横に振った。 「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」 「違うの…」 「日が悪いなら、改めて……」 「そうじゃない、そうじゃないの。ワルド、わたし、あなたとは結婚できない」 いきなりの展開に、ウェールズは首をかしげた。 「新婦は、この結婚を望まぬのか?」 「そのとおりでございます。私は…分身と結婚しようとは思いません」 ウェールズは困ったように首をかしげたが、『分身』の意味するところに気づき、真剣な表情でワルドを見た。 ワルドはウェールズに見向きもせずに、ルイズの手を取った。 「……緊張してるんだ。そうだろルイズ。きみが、僕との結婚を拒むわけがない」 「さわらないで!」 ルイズがワルドの手をはねのける、するとワルドはルイズの肩を掴む。 ワルドの目はつりあがり、既に笑顔はない、まるでトカゲか何かを思わせる表情に変わった。 「ルイズ。僕は世界を手に入れる! そのためにきみが必要なんだ!」 ルイズはワルドの手から逃れようと後ろに飛ぶ、そしてウエールズがワルドとルイズの間に割って入り、ワルドを制止した。 「なんたる無礼!なんたる侮辱だ! 子爵よ、風が教えてくれている、本体は扉の外に隠れているな!」 そう言ってウェールズはウインド・カッターを唱え、ワルドの身体を切り裂く、するとワルドの身体は霧のように霧散して消えた。 それと同時に、礼拝堂の扉が開かれた、そこにはワルドと、城の衛士の死体が転がっていた。 ワルドの表情は怒りでもなく、笑顔でもない。しかし無表情でもない、言うなれば冷たい表情で、じっとルイズを見つめていた。 「君はなんたる無礼な振る舞いをしたのだ!我が魔法の刃は、きみ決して許しはせぬぞ!」 ウェールズの言葉を意に介さず、ワルドは礼拝壇に向けて歩き出した。 「この旅で、きみの気持ちをつかむために、随分努力したんだが……」 「よく言うわ」 「こうなってはしかたない。ならば目的の一つは諦よう」 ワルドは唇の端をつりあげると、禍々しい笑みを浮かべた。 「この旅における僕の目的は三つだ、その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」 そう言いながらワルドは、ウェールズを指さした。 「まず一つはきみだ。ルイズ。きみを手に入れることだ。しかし、これは果たせないようだ」 ルイズは黙っていた、ウェールズもワルドを警戒しながら杖を向ける。 「二つ目の目的は、ルイズ、きみのポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ」 ルイズも杖を抜き、魔法の詠唱を始める。 「そして三つ目……」 ワルドの『アンリエッタの手紙』という言葉で、すべてを察したウェールズが呪文を詠唱した。 しかし、ワルドは二つ名の閃光のように素早く杖を引き抜き、一瞬で呪文の詠唱を完成させた。 礼拝堂の入り口から、目にも止まらぬ速度でウェールズへと接近したワルド。 ウェールズの胸を、魔法をまとった杖で貫こうとした、そのとき、ルイズの身体が何かを『超えた』 『最初は幻覚だと思った、 訓練された戦士は、相手の動きが超スローモーションで見え、 死を直感した人間は、一瞬が何秒にも何分にも感じられるあれだと思った。 だけど、私は、 その静止している空間を、二歩、三歩と駆けて、ウェールズ殿下の身代わりになることができた、 幻覚では、なかったんだ…』 ---- #center{[[前へ 奇妙なルイズ-22]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-24]]}