約 1,100,810 件
https://w.atwiki.jp/mobilegate/pages/73.html
モンスター名 レベル .HP .MP .攻 .守 .速 .賢 01~30 240 480 240 240 240 240 31~60 015 240 015 120 015 120 61~99 624 624 624 312 624 312 01~99 879 999 879 672 879 672 Lv HP MP 攻 守 速 賢 02 ** ** ** ** ** ** 03 ** ** ** ** ** ** 04 ** ** ** ** ** ** 05 ** ** ** ** ** ** 06 ** ** ** ** ** ** 07 ** ** ** ** ** ** 08 ** ** ** ** ** ** 09 ** ** ** ** ** ** 10 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 11 ** ** ** ** ** ** 12 ** ** ** ** ** ** 13 ** ** ** ** ** ** 14 ** ** ** ** ** ** 15 ** ** ** ** ** ** 16 ** ** ** ** ** ** 17 ** ** ** ** ** ** 18 ** ** ** ** ** ** 19 ** ** ** ** ** ** 20 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 21 ** ** ** ** ** ** 22 ** ** ** ** ** ** 23 ** ** ** ** ** ** 24 ** ** ** ** ** ** 25 ** ** ** ** ** ** 26 ** ** ** ** ** ** 27 ** ** ** ** ** ** 28 ** ** ** ** ** ** 29 ** ** ** ** ** ** 30 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 31 ** ** ** ** ** ** 32 ** ** ** ** ** ** 33 ** ** ** ** ** ** 34 ** ** ** ** ** ** 35 ** ** ** ** ** ** 36 ** ** ** ** ** ** 37 ** ** ** ** ** ** 38 ** ** ** ** ** ** 39 ** ** ** ** ** ** 40 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 41 ** ** ** ** ** ** 42 ** ** ** ** ** ** 43 ** ** ** ** ** ** 44 ** ** ** ** ** ** 45 ** ** ** ** ** ** 46 ** ** ** ** ** ** 47 ** ** ** ** ** ** 48 ** ** ** ** ** ** 49 ** ** ** ** ** ** 50 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 51 ** ** ** ** ** ** 52 ** ** ** ** ** ** 53 ** ** ** ** ** ** 54 ** ** ** ** ** ** 55 ** ** ** ** ** ** 56 ** ** ** ** ** ** 57 ** ** ** ** ** ** 58 ** ** ** ** ** ** 59 ** ** ** ** ** ** 60 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 61 ** ** ** ** ** ** 62 ** ** ** ** ** ** 63 ** ** ** ** ** ** 64 ** ** ** ** ** ** 65 ** ** ** ** ** ** 66 ** ** ** ** ** ** 67 ** ** ** ** ** ** 68 ** ** ** ** ** ** 69 ** ** ** ** ** ** 70 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 71 ** ** ** ** ** ** 72 ** ** ** ** ** ** 73 ** ** ** ** ** ** 74 ** ** ** ** ** ** 75 ** ** ** ** ** ** 76 ** ** ** ** ** ** 77 ** ** ** ** ** ** 78 ** ** ** ** ** ** 79 ** ** ** ** ** ** 80 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 81 ** ** ** ** ** ** 82 ** ** ** ** ** ** 83 ** ** ** ** ** ** 84 ** ** ** ** ** ** 85 ** ** ** ** ** ** 86 ** ** ** ** ** ** 87 ** ** ** ** ** ** 88 ** ** ** ** ** ** 89 ** ** ** ** ** ** 90 ** ** ** ** ** ** Lv HP MP 攻 守 速 賢 91 ** ** ** ** ** ** 92 ** ** ** ** ** ** 93 ** ** ** ** ** ** 94 ** ** ** ** ** ** 95 ** ** ** ** ** ** 96 ** ** ** ** ** ** 97 ** ** ** ** ** ** 98 ** ** ** ** ** ** 99 ** ** ** ** ** **
https://w.atwiki.jp/dqm2-battle/pages/191.html
特性 初期ボディ 初期特性 初期特性 初期特性 初期特性 +25で追加 +50で追加 新生配合で追加 超ギガボディ AI4回行動 神の息吹 いあつ ギャンブルカウンター デインブレイク 炎ブレスブレイク ときどきバイキルト 秘めたる力 能力値(基本) - HP MP 攻撃 守備 早さ 賢さ 通常 2205 750 511 483 580 483 4枠にしてブレスの化身。 GB版ではデイン系の特技の使い手だったためか、デインブレイクを踏襲している。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5277.html
前ページ次ページルイズが世界を征服するようです 唐突だが、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、同級生であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのことが嫌いだ。 それはツェルプストーとヴァリエールの確執などという問題ではなく、純粋に、キュルケ個人として、ルイズ個人のことが、だ。 嫌っていた、という表現では、少々生温いかもしれない。 憎悪していた、というのはややニュアンスが違う。 忌み嫌っていた、というべきか。 キュルケは、常々こう思っていた。 一言で彼女のことを言い表すならば。 まさしく、『邪悪』だと。 この言葉を聞いたキュルケの親友、タバサは、無言で頷いたという。 幼きある日、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、自宅の池に浮かべた小舟の上で考えていた。 先ほどのメイドの言葉を思い出す。 小腹が空いた、何かつまもうとキッチンに入り、たまたま聞いてしまった陰口。 『貴族の癖に、魔法が使えないなんて――』 もっともな言葉だと、ルイズは歪んだ笑みを浮かべた。 貴族とは即ちメイジであり、魔法が使える。 当たり前の認識だ。 その常識に照らし合わせれば、なるほど、確かに自分は落ちこぼれのクズだろう。 しかも、ここは名家も名家、誰もが畏れるヴァリエール伯爵家なのだ。 姉や父が怒るのもわかろうというもの。 だが、彼女はそれをまったく、これっぽっちも気にしていなかった。 ある予感がするのだ。 いや、確信と言ってもいい。 ――自分はおそらく、貴族だとか平民だとか、そういう下らない次元ではなく、もっと遥かに大きな概念で括られる存在になるのだ、と。 ルイズは、そんなひどく傲慢な確信を抱いていた。 ……しかし、ゴチャゴチャとうるさくさえずる輩を、このまま放置しておくのも癪だ。 ここらでひとつ、黙らせておく必要があるだろう。 それには、魔法を成功させるのが一番だ。 今やってもどうせ失敗するだろうが、しかし、試さずして魔法が成功することなどありはしまい。 魔法が使えない、と言っても研鑽を怠っているわけではない。 専属の教師を雇い、多くの書物を読み漁って、彼女は既に一人前の魔法使いたるに十分な程の知識を蓄えていた。 どの魔法を試してみようか。 魔法に成功した、ということが一目でわかるようなものが良いだろう。 仮に『ライトニング・クラウド』に今成功したとしても、誰にも見られず空しく散るのがオチだ。 となれば、錬金。いや、使い魔召喚が妥当か。 本来ならば魔法学院の進級試験になる筈のものだが、構うまい。 先に召喚していたとしても、さして問題があるわけでも無いだろう。 そうして彼女は、詠唱を始めた。 成功する、とは思っていない。失敗して元々。成功したら――むしろ驚く。 「5つの力を司るペンタゴン――」 驚いた。 「なんだ……ここは……?」 舞い上がる水飛沫の向こう、現れたものを見て、ルイズは更に目を見張った。 おまけに喋った。ということは、あれは――人間なのか? 身を包んでいるのは紫のローブ。手にしているのは先端に竜の頭部を象った杖。 しかし、その姿は人間とはかけ離れている。亜人、だろうか。 そして、何よりも異常なのが、こうして面を向かい合わせているだけで伝わってくる凄まじく強大な魔力と、その邪悪さである。 一瞬にして理解した。理解する間もなく思い知らされた。 これは、巨悪なのだと。 「……小娘。これを引き起こしたのは貴様か? 何なのだ、これは」 こちらを睨めつけてくる。 ひるんではならない。こいつは、私の、使い魔なのだ。 「小娘じゃない。私は、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 お前の、主よ」 「……主、だと?」 圧迫感が更に強くなる。 怯える心に鞭を入れ、ルイズは笑った。引くな。笑え。傲岸不遜であれ。 それが、主だ。 「そうよ。アンタは私の使い魔召喚に応じた。 使い魔ならば、主である私に従うのが道理でしょう」 次々と重ねられる問いに、ルイズは答えていった。 召喚の儀式。使い魔。主。ハルケギニア。トリステイン。ヴァリエール。魔法。貴族。 やがて、その応答も尽きた頃。そいつは、突如として笑い始めた。 「ク……ハハハハハハハハハハ! 窮地に突然現れたものに、飛び込んでみれば……別の世界とはな! これぞ、精霊のお導きだろうよ! 感謝するぞ!」 「…………」 ルイズにはわかっていた。 精霊だと? そんなもの、こいつが信じているわけがない。 こいつは、自らこそ神と称するような者。 精霊など、鼻で笑い飛ばして無視するような輩だ。 ――だが。 それでこそ、私の使い魔に相応しい。 「よかろう。小娘よ、貴様と契約してやる。 この世界は、少々我とは馴染まぬようでな。力が出てこん。 貴様と繋がれば、我は十二分に元の力を発揮できるだろうよ」 これで、まだ不調だというのか。 だとすれば、一体、こいつはどれだけの力を持っているというのだろう。 「結構。でも、小娘ではないわ。あんたは使い魔。私に従属する者よ。わかる? 私のことは、主と呼びなさい」 「クククク! 承知した、我が主」 膝を着き、頭を下げる使い魔を見下ろしながらルイズは考える。 こいつは、決して素直に従うような奴ではないだろう。 『使う』のには、ひどく苦労する筈だ。 だが、そのデメリットを補って余りある力。 そう、この力だ。これさえあれば、――国を手に入れることすら、不可能ではあるまい。 「主よ。我にはわかる。貴様も、おそらく我と近しい者。 躊躇無く世界を踏みにじる種類の人間だ。 我は待っていた。貴様のような者が現れるのをな」 「随分と言ってくれるわね。私はそんな、あんたみたいな悪じゃないわよ。 で、何が言いたいの?」 そいつは立ち上がると、ルイズの目を見て笑った。 どこまでも邪悪でありながら、赤子のように無垢な笑い。 「もし我の味方になれば――世界の半分をお前にやろう」 こうして。 後に歴史書に『魔王』と記される、主と使い魔は出会った。 2人は、幼い子供でも笑い飛ばすような目的を叶えるための行動を、ここに開始する。 即ち。 世界征服である。 「乗ったわ」 使い魔――りゅうおうの額に、ルーンが刻まれた。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 進級試験でもある召喚の儀式は、滞り無く終わった。 そして大半の予想を裏切り、あのルイズは召喚に成功した。 『ゼロ』の異名を持ち、今まで一度も魔法を成功させたことの無い、あのルイズが成功したのだ。 それに驚かなかったのは、学院生徒では僅か2名。 キュルケ。そして、タバサである。 儀式を終え、夕暮れ時。学院の廊下を並んで歩きながら、キュルケが漏らす。 「――茶番ね」 「おそらくそう」 普段は寡黙なタバサが、珍しく言葉を続けた。 「彼女が召喚したあの小さな黒竜。 あれはおそらく、既に前から使い魔だった。でもなくとも、彼女と何らかの繋がりがあったと思われる」 「そう思う理由は?」 熱にうかされたように、タバサは喋り続ける。 「ヴァリエールは魔力を使っていなかった。詠唱の真似事をしていただけ。 あそこであの竜が現れたのは、おそらくは竜自身の能力に拠るもの。 転移時の爆発で砂埃を起こし、それを皆の目から隠した」 「……私も同意見よ。問題は、どうしてそうしたのかってことね」 キュルケが眉根を寄せ、タバサが応じた。 「たった今召喚したように見せかけたのは、あの竜を今まで隠匿していたため。 あれは、普通の竜ではない」 「……まさか、韻竜、ってこと?」 韻竜。 極めて高い知性を持ち、先住魔法すら操るとされる、伝説の存在である。 「違う。……おそらくは、それをも越える存在」 「どうして、わかるわけ?」 タバサが立ち止まる。 ちょうど、彼女の自室の前だった。 「それを今から見せる。が、他言はしないで欲しい」 「了解よ。ツェルプストーの名にかけるわ」 キュルケは即答した。 この時間の短さこそが、揺るがぬ信頼の証であり、 つまるところ彼女達の関係を如実に示すものだった。 タバサがドアを開く。 窓から夕焼けの陽光が差し込み、赤く染まった部屋。 その隅で、巨大な何かが蹲っていた。 「……さっきあんたが召喚した風竜じゃない。どうしたの? こんなとこに蹲って」 タバサは問いに答えることなく使い魔に近づいていく。 竜の背にそっと手をやった途端、竜が痙攣するように跳ねた。 身を縮め、更に部屋の隅へと体を押し込めていく。 「ヴァリエールがあれを召喚してから――したように見せかけてから、ずっと怯えている」 ぶつぶつと、何かを呟く声が聞こえる。 はじめ、キュルケは誰が喋っているのかと部屋を見回し――やがて、その顔に理解の色が浮かんだ。 「まさか……」 「そう。私が召喚したのは、韻竜だった」 キュルケが目をひん剥いた。 「す、凄いじゃないアンタ! 韻竜を使い魔にするなんて、聞いたこt」 「今はそれを問題にしている時ではない」 興奮するキュルケの言葉を遮り、タバサは続けた。 「この竜はずっとこう繰り返している。 『あのお方が来た。あのお方が。あのお方がいらっしゃった』。 ……極度に怯えてしまっていて、会話は難しい状況。 何とか聞き出せたのは、あの黒竜が、竜を統べる『王』のような存在であることだけ」 キュルケの顔が歪む。 「伝説の韻竜をそこまで怯えさせる、『王』……。 一体、なんなのよそれ」 タバサは頷いた。 その顔は、夕日に照らされていてもはっきりとわかるほどに青白かった。 「ヴァリエールが今まで魔法が使えない『フリをしていた』のは、皆を油断させるためではないかと私は思う。 今ここでその偽装を止めて、黒竜を皆の目に晒した。 おそらく彼女は、本格的に『目的』に向かって動き出す筈。 あの黒竜が、どれだけの力を持っているのか。……私は、恐ろしい」 ――そして、沈黙。 部屋には、怯える風竜の呟きだけが響いていた。 「どうしたの? リュウオウ」 儀式から数日後、食事の場。 肩に乗せた小竜が妙な素振りをしていることに気付き、ルイズは小声で話しかけた。 「まさか、あの騒ぎが気になるわけ? 放っておきなさい、あんなの」 ルイズが目を向けた先では、金髪の少年――ギーシュが黒髪のメイドを怒鳴りつけていた。 関わる意味も価値も無い、どうでも良いことだ。 だが。 「あの髪……目……いや、まさか」 「リュウオウ? どうしたの?」 「バカな、まさか、そんな筈は。 だが、あの瞳、忌々しい輝きの瞳、間違える筈も」 ルイズは顔をしかめた。 幼い頃からの付き合いで、動じた所など1度も見せたことのないリュウオウが、どうしたというのだ? 「こんなところに、かの血を受け継ぐ者が居る筈がっ……!」 「リュウオウ!」 声量を抑え、使い魔を怒鳴りつける。本当にどうしたのだ。まったくもってらしくない。 リュウオウは沈黙し、……やがて、掠れた声を出した。 「……主よ。あのメイドは理不尽な謝罪を要求されている。 助けてやるべきではないのか?」 「……アンタ、頭腐ったの?」 「あのメイドに恩を売っておけ。なんとしても、あやつを敵に回してはいかん。 あれは――我らの『運命の敵』だ」 「はははは! ルイズ! 『ゼロ』の君の使い魔が、僕と決闘だなんてね! 確かに竜種は強力さ! だけど、手のひらサイズのそれじゃあね! 僕の敵じゃない!」 言葉と同時に、青銅の戦乙女が組み上げられる。その数、7。 それを鼻で笑い飛ばし、ルイズは己の使い魔に念話を伝えた。 『リュウオウ。――蹴散らしなさい』 『承知した、我が主』 異世界の魔法、『ギラ』。 初歩の魔法である筈のそれ。 だが、魔王の手によるものとあれば――最早、別の魔法と言っても過言ではない威力を持つ。 小さき黒竜から放たれた閃光は鋭く、ただの一瞬ですべてのゴーレムを溶かし尽くした。 「な!? ぼ、僕のワルキューレが!」 「……『大嵐の聖剣』?」 「うむ。城の宝物庫に収められていたのだがな。 昨夜の騒ぎで、それが盗まれた。かの大悪党、『土くれのフーケ』じゃ」 どうでもいいわ、と鼻をほじるルイズに、使い魔からの念話が届く。 『主よ。この討伐、引き受けよ。他の者に譲り渡してはいかん』 『リュウオウ?』 ほじった鼻××を飛ばす主に顔をしかめながら、りゅうおうは笑った。竜のくせに器用な顔である。 『最早、驚くことも出来ぬ――この世界と我の世界とは、想像以上に縁深きようだ』 「『エクスプロージョン』!」 ルイズから放たれる、『虚無』の魔法。 りゅうおうの指導を受け、自らの属性に目覚めてから幾数年。 使い魔からあふれ出る魔力のバックアップをも受け、ルイズの力は凄まじいレベルに達していた。 一撃で巨大なゴーレムを砕き、無数の残骸へと散らす。 「がっ、ぐっ……な、なんだその魔法は……」 地に叩きつけられ、動きを止めるフーケ。 その傍らから、ルイズは奪われた物を拾い上げる。 「これが、『大嵐の聖剣』……?」 光差さぬ森の中で、自ら光を放つように輝く一振りの長剣。 それと対を成すように、小さき黒竜が闇に包まれる。 闇から現れたのは、紫のローブを纏った亜人。彼本来の姿である。 「ク……ハハハハハハハハハ! 愚か者どもめ! 『大嵐の聖剣』だと!? ああ、確かにその剣は、念じれば強力な風の刃を生み出す! 我らが扱う魔法の一つ、『バギクロス』をな! なるほどなるほど、強力な魔法だが……その剣の本質は、そんなものではない!」 おかしくてたまらない、というように腹を抱えて笑うりゅうおう。 そう、この剣の強さは、そんなものではない。 それは、希望。 それは、光。 それは、正義。 それは、絶望と悲しみの暗闇の中を、燦然と照らす一条の光。 それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほどに輝きだす白銀。 それは、例えすべてを無くしても、尚この胸より生まれ出る最強の力。 それははじめ、ただの強力な剣だった。 だがそれは、時を経るにつれ、人々の希望を、意志を、夢を、その剣身に集めていった。 折れるわけにはいかないから、折れなくなった。 曲がるわけにはいかないから、曲がらなくなった。 故に最強。最強であれ、と望まれた――それ故に最強の、勇気ある者のための剣。 それは、絶望を知りながら、それでも尚闇に抗う人々の希望を担った、伝説の剣。 それは、人々の歓声を一身に受け、血を吐いて泥に塗れながらも強大な魔王へ立ち向かう、勇者の剣! 「この剣に相応しき名は2つ! 『王者の剣』! そして……『ロトの剣』だ!」 ルイズは悟った。 ああ――この剣を持つ者こそが、私たちの『敵』なのだ。 剣は、りゅうおうが魔法でどこぞに転送してしまった。 「この剣を破壊することは出来ぬ。よって、封印した」 ということらしい。 「さて。――じゃあ、こいつね」 ルイズはそう言うと、土くれのフーケへと顔を向けた。 「ひっ!」 フーケは先ほどから、りゅうおうの出す凄まじい邪悪な気配に怯え切っていた。 腰が抜けており、それでも何とか逃げようと、手を使って後ずさる。 「怯える必要は無いわ。私たちは、アンタに危害を加えるつもり無いから」 りゅうおうがククク、と笑う。 ルイズは満面の笑みを浮かべ、尻をついているフーケに手を差し伸べた。 「先ほどのゴーレム。見事だったわ。 私達は、力のある人材を求めてるの。 ああ、アンタなら、十分にその資格がある」 フーケは、理解できないものを見る目でルイズを見つめ、震える声で尋ねた。 「な、なに、を……?」 「もし、私たちの味方になれば――そうね、世界の2%くらいはくれてやってもいいわ」 捜索の甲斐無く、奪われた『大嵐の聖剣』は、戻らなかった。 騒ぎの後、ミス・ロングビルが突然の辞職願いを残し、実家に帰ったという。 「……ふぅ。疲れた。頭の中花畑な奴の相手は疲れるわ」 「クク。そんなことを言ってよいのか、主? あやつはこの国の王族であろう?」 「は。だから花畑だってのよ。王女のくせに、その責務すら理解していない。 あれ、放っておくとその内この国を滅ぼすわね」 アンリエッタが、寮の自室を去った後。 ルイズは寝台に寝転がって愚痴を漏らしていた。 テーブルの上に乗っている小竜は、ルイズに問いかける。 「しかし、主よ。先ほどの話、どうするのだ?」 「ああ、アルビオンの話? 受けるに決まってるじゃない。 そもそも、あいつを傀儡にしてこの国から手に入れる計画なんだから、 繋がりは強くしておかないとね。何をきっかけに近づこうかは悩みの種だったし、渡りに船ってやつよ」 「クハハ! あの王女も、まさか親友がそんなことを考えておるとは、夢にも思うまい!」 堪え切れぬ笑いを漏らす使い魔に、ルイズは輝くような笑顔を向けた。 「知ってるかしら、リュウオウ? ――親友ってのはね、お互いそう思ってるから親友なのよ」 「そこまでよ、ワルド」 今まさにウェールズを刺し殺さんとするワルドの背後。 ルイズは、突如としてそこに出現していた。 「これ便利ね。『トヘロス』だっけ?」 「ああ。自らより弱き者に、気配を悟られぬようにする魔法だ。 今の我らならば、気付かれる心配は皆無だろうよ」 「そんな便利な魔法あるならもっと早く使いなさいよ、バカ竜」 「な……!」 突然現れたかと思えば、肩に乗せた使い魔との会話を始める婚約者。 ワルドは、絶句していた。 「ミ、ミス・ヴァリエール! こ、このワルドは裏切り――」 「ああ、アンタ黙ってて」 使い魔が何事かを呟くと、ウェールズは瞬時に昏倒した。 ……どうやら、眠っているらしいことをワルドは見てとる。 「る、る、ルイズ……? 一体、何なのかな……これ……?」 恐る恐る尋ねるワルドに、ルイズはようやく顔を向けた。 「ワルド。あなたが、『レコン・キスタ』の尖兵だってことは、もう知ってるわ」 「――――!」 瞬時にその場から飛びのき、距離をとる。 考える。悟られていた。ならばこれは? 王女の罠か? あの腐れビッチ、愚鈍なのはまさか演技なのか? いや、ならば何故ルイズを選んだ? 戦闘力も皆無な筈なのに? 婚約者ならば情で落とせると思ったのか? ――混乱する頭ではじき出された、最初の言葉はこれだった。 「る、ルイズ。……何で、私、呼び捨て?」 片言であった。 「……ぷ、ははははは! いいわ、ご希望なら今まで通り、ワルド様と呼びましょうか?」 「ああ、頼む」 「頼むのか」 使い魔が突っ込んだ。珍しい光景である。 「さて、ワルド」 「様をつけてくれ」 「こだわるのね。――あなたが先に勧誘した『土くれのフーケ』は、私たちの仲間よ」 「……そういうことか」 先日、『レコン・キスタ』に加わった大盗賊、『土くれのフーケ』。 ……間諜だったか、とワルドは失敗を悔いる。 「けどね。私たちは、別にトリステインに仕えているわけではない。 これがアンリエッタの罠だとか想像しているかもしれないけど、大外れ。 安心なさい。あの王女は、見かけ通りよ」 「なに?」 困惑するワルドを前に、ルイズは笑った。高らかに笑った。 「聖地奪還? 下らない。ああ、下らないわ。小さいわね、ワルド。 仮にも、私の婚約者ならば――世界征服くらいは言って欲しいものよ」 「様を」 「貴様、しつこいぞ」 魔王は突っ込み役に回っていた。他に居ないのだから仕方が無い。 ルイズは腕を広げ、演説を続ける。 「私達は、世界を欲している。 『偏在』をはじめとした強力な魔法を駆使するスクウェア・メイジ。 おまけに騎士としても極めて優秀なあなたならば、私たちの仲間たるに十分な力よ。 このりゅうおうが居れば、更なる力をあなたに与えるのも容易。 ねぇ、ワルド。あなたが、必要なのよ」 そうして、ルイズはワルドに手を差し伸べた。 「あのクロムウェルにいつまで従属しているつもりかしら? あれはただの小物。あなたが付き従う価値など、欠片も無いような男なのに? さぁ――この手をとりなさい、ワルド。そして、一緒に世界を踏み躙りましょう? もし、私たちの味方になれば――うーん、えー、世界の1%くらいは、あげなくもないというか、善処するわ」 ワルドはしばらく黙考する。今の状況。レコン・キスタ。クロムウェル。ルイズ。そして、この使い魔。 「……君の目的は、何だ?」 「ククク。物分りの悪い男だ。 世界征服だと、先ほどから言っておろう」 ……本気なのか、とワルドは額に汗を浮かべる。 世界征服。聖地奪還どころの話ではない。 人間やエルフ、この世界に住む全てを敵に回すつもりなのか。 「……クロムウェルは、伝説の『虚無』の使い手だ。 『レコン・キスタ』を敵に回せば、いずれ相対することになる。勝算は、あるのか?」 「ああ。あれ、嘘よ」 「は?」 ワルドの口があんぐり開いた。 「う、嘘? ……………………嘘ぉ?」 「あいつが使ってるのは、水の秘宝で……ってああもう、面倒ね」 ルイズは嘆息すると、おもむろに杖を腰から引き抜いた。 ワルドに突きつける。 「言葉で納得できないなら、力で示すわ。 かかってきなさい、ワルド。力とは何なのか、教えてあげる」 「……いいだろう。私も、口先だけでは納得できない。 そこまで言うなら、お手並み拝見といこう。 君たちが、あのクロムウェル卿をも上回る力を持っていると、納得させてくれれば―― その時は、君の下につく」 ワルドは自らの愛杖を抜くと、詠唱を始めた。 「ユビキタス・デル・ウィンデ――」 手加減をしている余裕など無いだろう。 最初から、全力でいく。 「ユビキタス。『偏在』せよ!」 5人にその数を増やしたワルド達が、ルイズに殺到する! 「リュウオウ」 「承知した、我が主」 『ベギラマ』。中級閃熱呪文。 魔王の手によって放たれたそれは、4人のワルドを瞬時に消し飛ばした。 「な――!」 慌てて動きを止める、残り物。 ワンアクションで、分身全てを消し去るほどの威力。 しかも、あいつは今――わざと、本体を避けた。 つまり、本体がどれか、ということも、一瞬で把握したのであり―― 「……なるほど。わかったよ、ルイズ。確かにこの使い魔の力は、君が言うだけのことはある。 使い方次第では、まさしく世界を征服し得る力だろう。 わかった。君に、従う」 「それは重畳。じゃ、こいつはさよならね」 黒竜から放たれた、初級爆裂呪文『イオ』。 眠るウェールズ・テューダーは、無数の肉片へと散った。 「姫様。……ウェールズ皇太子は、裏切り者の手により、その胸を刺し貫かれて――」 「我が力及ばず、申し訳ありません」 アンリエッタの前、平伏するルイズとワルド。 「……そう」 平静を装うアンリエッタだが、その顔は蒼白。 「ご苦労様でした。……もう、下がって下さい」 「これで、よかったのかい? ルイズ?」 王宮の廊下を並んで歩きながらの問いかけに、ルイズは微笑む。 「ええ。これでアルビオン貴族派への憎悪は煽った。 あとは、きっかけがあれば――トリステインは、アルビオンへと侵攻する」 ワルドは肩をすくめた。 「やれやれ。可愛い婚約者が、こんな酷いことを考えるようになっていたとはね。 君の仕業かな、リュウオウ?」 使い魔は念話で低い笑いを漏らした。 『ククク。何を言うか。主は、我と出会った時よりこの有様であったぞ。 それを見抜けなかったのは、貴様の目が腐っておることの証であろう』 「おや。手厳しいね」 2人と1匹は、声を揃えて笑った。 「タバサ。いえ、シャルロット・エレーヌ・オルレアンと呼ぶべきかしら?」 学院裏庭の片隅。 突然かけられた言葉に、タバサは一瞬にして迎撃体勢を整える。 「見事ね。流石はシュヴァリエ。 その恵まれない体格でありながら、よくもそこまで磨き上げたものだわ」 拍手をしながら姿を見せたのは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 タバサは無表情のまま、杖を握り締める。 「緊張する必要は無いわ。私に、あなたを害するつもりは無い。 私の用は、ただ一つ。勧誘よ」 ククク、と肩の上の黒竜が哂う。 「……私に、あなたに与する意志は無い」 断言するタバサ。 この邪悪に、手を貸すことなど決して無いと、目が告げていた。 「ああ、知っている。知ってるわ。 あなたとキュルケが、何やらコソコソ動いていたのはね。 ――でもね、シャルロット。この言葉を聞けば、あなたはきっと、私の味方。 私の信頼する仲間になってくれるわ」 「その名前で、私を呼ぶな」 敵意をむき出しにするタバサを前に、ルイズは笑った。 それは、絶対的な優位に在る者の傲慢。 抵抗を可愛く受け止める、強者の微笑み。 「こんなのはどうかしら。 もし、私の仲間になれば――あなたに、母を返してあげる」 タバサの顔が、凍った。 「どうしたっていうのよ、いきなり!」 「これ以上の協力は、出来ない」 突然態度を変えたタバサに、キュルケは苛立ちを隠せない。 あのルイズが裏で、何をしているのか。 それに関する調査もようやく進んできたというのに、一体どうしたのか。 「何があったの!? あいつに、何かされたわけ!?」 「これ以上は、言えない」 目を伏せ、視線を合わせないタバサ。 それを見て、キュルケは嘆息した。 「……そう。あんたなりの、思いやりってわけ?」 「関わらない方がいい」 ふん、とキュルケは鼻を鳴らした。 「冗談。あいつは、私の敵よ。あの邪悪を、放っておくことは出来ないわ」 「許して欲しいとは言わない。が、これ以上は言えない。 もう一度言う。関わらない方がいい」 「くどいわ」 タバサが顔を上げ、キュルケを見上げる。 ――一瞬だけ。2人の、視線が交わされた。 それで、十分。 まるで違う性格でありながら、それでも親友だった2人。 幾つもの死線を潜り抜け、互いの背中を任せあった2人。 その2人にとっては、その一瞬で十分だったのだ。 「じゃあね、タバサ。楽しかったわ」 「今まで、ありがとう。さようなら」 それは。 親友同士の、決別の瞬間だった。 「……知っていたんですか」 自室の扉を開け放ち、突然現れた黒髪のメイド。 ルイズは驚き、音を立てて椅子を離れる。 「シエスタ!」 「……知っていたんですか、アルビオンが、タルブに侵攻するのを!」 シエスタは叫ぶ。握り締めた拳を震わせていた。 『……話を聞かれたか。少々、無用心だったようだな』 使い魔の念話に、ルイズは硬い表情で頷きを返した。 「……まぁね。あっちには、何人か間諜を忍ばせてあるから」 「なんで、なんで、それを前に――」 「必要だったからよ」 返された答えに、メイドは戸惑う。 「必要――?」 「そう。トリステインがアルビオンに侵攻するための、口実としてね。 バカが向こうから来てくれたおかげで、やりやすくなったわ。 これでこちらとしては、何の憂いも無くアルビオンを叩き潰せる」 シエスタが目を伏せる。 握り締めた拳から、一筋の血が垂れた。 「そんな理由で、見捨てたんですか。 タルブを。私の、故郷を。お父さんも、お母さんも、弟も、みんな、死んだ」 「見捨てたわ。――どうでもよかったから」 視線を上げ、ルイズを睨みつけるシエスタ。 その瞳の輝きに、りゅうおうは体を震わせた。 ――ああ、あの瞳、あの瞳の輝きこそが、かの血脈の証。 幾度倒されても決して折れぬ意志の現れ。 人々の希望を背負う、一筋の光。 正にあれこそ――勇者たるものだ。 「……優しい人だと思ってた。 名前を覚えてくれたり、私を助けてくれたり。 今、この時より。あなたは、私の敵です」 『……厄介なことになったな』 メイドが去った後。 また盗み聞きされるのを警戒してか、念話でりゅうおうは話しかける。 『ま、なってしまったものは仕方が無いわね。 いずれ敵対するのならば、それがいつであっても大差は無いわ』 「……参ったわね。ちょっと、水の指輪を舐めてた」 「あれほどの力を持つとはな。少々、計算が崩れた」 小高い丘の上。本来の亜人の姿に戻ったりゅうおうと、ルイズは語り合う。 「よいのか? 今まで隠匿していた力、ここで晒してしまって? 7万の敵が相手となれば、流石に隠し通すことは不可能であろう」 「仕方無いわね。ここでトリステインの兵力を失うのはまずい。 ま、もう政府の8割がたは掌握したし、国内は力押しで何とかなるでしょう」 7万の敵を単騎で食い止める、決死の任務。 ルイズとその使い魔は、自ら志願してここに立っていた。 「お、来たわね。よくもまぁ、あんなに群れちゃって」 「数こそが人間の力。主よ、侮るでないぞ」 「わかってるわ」 遠目に見える丘の向こう、見え始めた敵の先頭集団。 それに向かい、ルイズは意識を集中させた。 「最初から全開でいくわよ。叩き潰すわ」 「承知した、わが主」 制御できる限界スレスレの出力で放たれた『エクスプロージョン』と、最上級爆裂呪文『イオナズン』。 初撃は、数千の敵を消し飛ばした。 「がっ――!」 「リュウオウ!」 ルイズは目を疑った。 本来の姿を取り戻したリュウオウが、あのリュウオウが――圧倒されている。 アルビオンの片隅にある、小さな村。 こんな所に、何故こんな使い手が! 「くっ……何者だ、貴様!」 言葉と共に、『ベギラマ』を放つりゅうおう。 しかしその閃光は、敵の左手にある大剣に吸収されてしまう。 この世界のものとは思えぬ奇妙な服装に、黒い髪の若い男。 何かのルーンが浮かび、光り輝く左手には大剣。魔法を吸収する、対魔法使いのためと思われる兵装。 そして、その右手には―― 「何で、その剣がここに――!」 ルイズの疑問ももっともだった。 その剣は封印した筈。あのリュウオウが封印したのだ、そう簡単に破れるわけもない。 だというのに、何故、ここにあるのか。 『大嵐の聖剣』。いや―― 「『王者の剣』。……『ロトの、剣』――!」 「か、カカカカカカカカ! クハハハハハハハ!」 戦闘中、しかも劣勢だというのに、りゅうおうは笑い出した。 魔法を放ち、剣を杖で防ぎながら、堪えきれぬ笑いに身をよじらせる。 「そうか。――そうか! ついに現れたか! この世界にも、やはりいたか! だとすれば、その剣を持っているのも不思議ではない、必然だろうよ! 運命、だからな!」 そう。その剣は、必ずやある者の手に渡る。 闇に抗う者。 勇気ある者。 人でありながら、ただ自身の努力と意志だけで人を超えた存在。 「現れたか! 我が愛しい怨敵! 我が愛すべき天敵! ――『勇者』よ!」 ここに、物語の主人公は降臨した。 前ページ次ページルイズが世界を征服するようです
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/816.html
苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。 形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。 ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。 当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。 一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。 当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。 拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。 そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。 悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。 錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。 片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。 その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。 一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。 その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。 こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。 そうしてルイズは眠りに就いた。 深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。 ―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。 こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。 ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。 大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。 ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。 ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。 しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。 この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。 まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。 彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。 ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。 「ヴェストリの広場に来て」 そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。 一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。 肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。 彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。 彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。 「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」 「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」 「なんだい?何でも言ってくれたまえ」 「私とゲームをしましょう」 「ゲーム?」 「そうよ、ルールは簡単」 そう言って自らの杖を取り出すルイズ。 「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」 その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。 決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。 つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。 勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。 「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」 「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」 人は本当のことを言われると怒り出すものである。 自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。 力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。 「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」 ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。 ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。 「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」 まったく淀みない口調でルイズは言う。 もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。 しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。 「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」 ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。 所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。 「呼んだわね。では私のターン」 ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。 そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。 「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」 放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。 「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」 ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。 そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。 「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」 ギーシュはわけがわからなかった。 ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが! エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!? 混乱するギーシュへとルイズが促す。 「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」 ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。 「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」 「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」 そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。 その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。 しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい! 「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」 「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」 「なんだって!?」 辺りを見渡すギーシュ。 しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。 当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。 「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」 「うぅ……」 短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。 そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。 無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。 「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」 7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。 それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。 「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」 ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。 その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。 「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」 呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。 「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」 ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。 ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。 「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」 剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。 「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」 痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。 エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。 「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」 「あ、あ、あ、、、」 恐ろしい恐ろしい恐ろしい。 ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。 「罰ゲーム!」 ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。 ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。 ―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。 ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2212.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは人生最大の試練に立ち向かっていた。 何せこの使い魔召喚を失敗したら進級出来ず退学もありうる。 まさに背水の陣、ルイズにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際と言っても良い。 ルイズは全身全霊を込めて呪文を唱える。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 呪文の成立とともに目の前が爆発し、煙が辺りを覆う。 すわ失敗かと落胆するルイズだが、その煙が晴れてくると、そこに何かが要る事に気づき喜色満面となるも、煙が 晴れていくにつれ当惑の表情へと変化していく。 召喚された物体は、彼女が思い描いていた使い魔とはあまりにもかけ離れていたからだ。 するとそこにいた物体、手足の生えたりんごは、その渋い顔にマッチした渋い声で言った。 「俺が神聖で美しく強力な使い魔だ」 召喚主であるルイズはおろか、周りで事態を見守っていたクラスメイト、さらには教師であり今まで数々の召喚儀 式を監督してきたコルベール出さえ、あまりの発言に言葉を失い戸惑う。 と、その使い魔は絶妙の間をおいて言い放った。 「ウソだけど」 ルイズは素早く足を上げると、思いっきり踏みおろした。 果肉と果汁が飛び散り、見るも無残な轢殺死体が出来上がる。 内心の怒りの為かさらに何度か踏みにじり、完全に粉砕すると何事も無かったように再び呪文を唱え始めた。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より 求め、訴えるわ……我が導きに答えなさいッ!!」 見た事も無い服装をした平民の使い魔が召喚されたのは、その後しばらくたってからであった。 完 -「極楽りんご」より
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1010.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの人生とは、 這い寄る闇からの逃走劇も同然だった。 魔法が使えないこと、身体が幼いこと、他人に認められないこと――。 それら闇から逃れるため、ありとあらゆる努力を重ね、研磨し、足掻いた。 ――それでも、何も変わらなかった。 いくら呪文を知っていても、魔法は使えない。 いくら健康になっても、身体は育たない。 いくら貴族として立ち振る舞っても、誰も認めない。 逃げても逃げても追ってくる闇――だが、幸か不幸か、今までそれに捕らわれる事は無かった。 魔法が使えなくても、学園が自分を放り出すことは無かったし、 身体が幼くても、どうしても気を引きたい相手などはいないし、 他人が認めなくても、自分はれっきとした貴族だって分かっている。 けれど、もうここまでだ。 この学園では、2年生への進級するための儀式として、『使い魔の召喚』がある。 今までに一度たりとも魔法を成功させたことの無い自分に、できるはずもない。 案の定、呪文を唱える度に、地面を爆発させた。 他の生徒たちの嘲笑が聞こえる。文句が聞こえる。罵倒が聞こえる。 ――本当は、分かっていたのだ。 魔法が使えなくては、進級できない。 身体が幼くては、婚約者は去るかもしれない。 他人が認めなくては、貴族にはなれない。 それでも、足掻きたかった。 ちっぽけな希望を抱き、この闇を打ち破り、この広い世界に歩みだしたかった。 闇はすぐ後ろにいる。 未来までも黒で覆い、光を奪おうとしている。 お前は、何者にもなれないと、絶望を突きつけようと―― ――そうして、その使い魔は現れた。 ルイズは、その使い魔を召喚したときのことを、一生忘れないだろう。 その姿を目にした瞬間、自らを覆おうとしていた闇は、一瞬で消し飛んだ。 灰色の世界に光が射し込み、自分を、世界を、輝かせる。 ――もう、何も怖くない! 魔法が使えなくても、この使い魔がいれば何でも出来る! 身体が幼くても、この使い魔がいれば何も言わせない! 他人に認められなくても、この使い魔がいれば何も要らない! ショボイ魔法などどうでもよくなり、 チンケなコンプレックスは消え去り、 周囲の視線は、畏怖と羨望の視線となった! 吊り上っていた眼は、絶対なる意志を持ち、 追い立てられるような歩きは、王者の余裕を持ち、 張り詰めていた雰囲気は、覇王のようなカリスマあるものへと変わった! 使い魔が自らと在る限り、 自分に出来ないことなど無いのだと、 自分は何処へでも行けると、ルイズは確信した! ――そう、ルイズは、果てしなく続く戦いの道(ロード)へ歩み始めたのだ!! 喧嘩売って来た色ボケメイジを、ぶっ飛ばしてやった。 悪名高い盗賊を、その僕の巨大なゴーレムごと吹き飛ばしてやった。 国と自分を裏切った婚約者を、そのお仲間諸共消し飛ばしてやった! ルイズは止まらない。 何者にもルイズは止められない! ――そして今! 眼下には、卑劣にも条約を破り、攻め込んできたアルビオン軍が展開している。 「こないだ、アルビオンで躾けてやったというのに……まだ足りないらしいわね」 虫けらを見るような目で――事実、そう思っているのだろう――白の国のゴミクズどもを眺める。 「ならば教えてやるわ……この、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのいる、 そして、我が最強のしもべのいる、このトリステイン王国に攻め込んできた、その愚かさを――!!」 ルイズは緩やかに右手を上げる。 それは、ルイズがしもべに敵の殲滅を指示する、号令なのだ――! ルイズは高らかに謳い上げる――破壊を告げる言葉を! 「滅 び の ッ ! バ ァ ァ ァ ス ト ス ト リ ィ ィ ィ ィ ィ ム ッ ッ ! !」 その瞬間――。 青き眼の、白き最強龍は、口内から光を放つ――! それは、あらゆるものを滅ぼす、破壊の光――!! 「強 靭 ッ ! 無 敵 ッ ! 最 強 ォ ―― !!」 光は全てを飲み込んでいく! 戦艦を蹴散らし、ブチ壊し、滅茶苦茶にしていく! 竜騎兵など蝿も同然! 地べたを這いずるメイジや兵士どもなど、塵芥に等しい! 「粉 砕 ッ ! 玉 砕 ッ ! 大 ・ 喝 ・ 采 ―― !!」 何が来ようと、何も恐れることは無い。 我がしもべ、『青眼の白龍』の前には、全てが平伏すのだ――! 「ワハハハハハハハハハハ―――――!!」 その後、ルイズは『滅び』の二つ名と、 ありとあらゆる名誉を手にいれ、トリステイン最強の力として、君臨した。 ルイズは最期まで魔法を使えなかった。 ルイズは最期まで体系はお子様だった。 ルイズは最期までメイジとは認められなかった。 だが―― ルイズは『力』を使えた。 ルイズはあらゆる名家の男たちから誘いがあった。 ルイズは至上最強の竜騎兵として認められた。 そして、友も得た。 ルイズは未来を切り裂き、幸せを手に入れた。 そして、これからも、ルイズは止まらない! ルイズの踏み出した道――それが未来となるのだから――! 「ずっと私のターン!!」 『滅びのルイズ』…… 完 -「遊戯王」より青眼の白龍を召喚
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7304.html
トリステイン魔法学院の学生にして失敗ばかりの落ちこぼれ『ゼロのルイズ』。 二年生への進級をかけた『春の使い魔召喚の儀式』へと臨んだ彼女は”彼”を召喚した。 召喚されたばかりの”彼”を見たルイズはただの平民の子供だと思った。 自分よりも年下のようだが、そう年が離れているわけでもなさそうだ。 ともかく召喚自体は成功したのだから、まるでダメと言うわけではないのだとルイズは自分を元気付けた。 そして周囲を不安げに見回し、怯える犬が威嚇するように唸る”彼”を宥めながら使い魔の契約をした。 使い魔のルーンは”彼”の胸へと刻まれた。 そんな”彼”との生活が始まったのだが、それはとても多忙な日々となった。 まず、”彼”は何かしらの障害を持っているのか、言葉を話さないのだ。 ”あ~”、”う~”などの唸り声を上げるだけ。 次に好奇心が旺盛であり、感情の起伏が激しい。他の使い魔を見れば時と場合を選ばず飛び掛り、 魔法の授業の時には練金で小石が真鍮に変わったのを見るや、怯えて暴れ出した。 更に食欲も旺盛。最初に食堂に連れて行った時は野生児の如くテーブルに飛び乗り、料理を散々に食い荒らした。 その事があって食事の件は知り合いのメイドであるシエスタが何とかしてくれる事になったのだが、 結局はこれらの事実にルイズは頭を悩ませる事になった。 だが、それでもルイズは”彼”を見放そうとはしなかった。 自分が召喚できた使い魔だと言う事もあるが、何より”彼”はルイズやシエスタに懐いていたのだ。 その懐きぶりは自分が下の姉に甘える姿にとてもよく似ていたのだ。 それゆえ、無下に突き放す事も出来なかったのだ。 そんな”彼”をルイズは日が経つにつれ、ただの平民だとは思えなくなった。 …その原因は”彼”の成長にあった。どういう訳か、”彼”は常人とは比べ物にならない速度で成長していったのだ。 どんどん成長し、ついにはドラゴンなどと比べられるほどの大きさになった”彼”に、 使い魔召喚の儀式から”彼”に刻まれたルーンに興味を持っていたコルベールも驚きを隠せなかった。 そして、最初はルイズと同じか多少低い位だった”彼”の背丈は、今や二十メイルに達しようかとしていた。 最早疑う余地は無かった。”彼”の常人とは異なった言動もこれで説明がつく。 ”彼”は亜人だ――そうルイズは思い至った。 そんなある日…、学園にルイズの姉であるエレオノールがアカデミーの研究員数名と共にやって来た。 ハルケギニアに生息するどの亜人よりも巨大で異質な”彼”は王宮の、アカデミーの興味を引いたのだ。 そして実験体としてアカデミーに連れてくるように指示が出て、エレオノールらが来たのだ。 エレオノールは”彼”の引渡しを妹に伝えるが、ルイズは当然それを拒否した。 幾ら頭の上がらない姉であろうと大事な使い魔を渡せるはずが無かったのだ。 すると他の研究員が”彼”を魔法で捕縛し、強引に連れ出そうとしだした。 ”彼”は怯え、激しく抵抗し、暴れた。その結果、研究員の内二名が巻き込まれて死亡した。 そのまま”彼”は魔法学院から逃げた。一度だけ、ルイズの呼び声に振り向き、悲しそうな表情を見せて。 ルイズは”彼”を連れ戻すべく、魔法学院を飛び出した。コルベールとエレオノールもそんな彼女に付き添った。 消えた”彼”は食料となる家畜を襲いながら、トリステイン中を放浪しているようだった。 目撃情報を得ながら、ルイズ達は”彼”の姿を捜し求めた。 そんな最中、ガリア南部の山地の中に点在するアンブランと言う村が何かに襲われ、村人全員が行方不明となる事件が起きた。 その村は以前からコボルドに襲われていた為、最初はそれらの仕業かと思われたが、そうではない事が解った。 破壊された家々はコボルドとは思えない、巨大な物に叩き壊されたような物ばかりであり、 何より人の死体が一つも無い所が妙であった。 コボルドに人の死体を一々始末するような知能が無い事は、ハルケギニア中の人間は知っているのだ。 そして、この奇怪な事件の犯人が先日トリステイン魔法学院から逃げ出した亜人では無いかと、人々は噂しあった。 無論、ルイズはそんな事は信じなかった。”彼”が自分から人を襲った事など、ただの一度足りとも無いのだ。 だが、世間はそんな少女一人の気持ちなどでは動かなかった。 事件がガリアだけに止まらず、ロマリア、ゲルマニアでも起こり、”彼”を完全に危険視したのだ。 各国の王宮は討伐隊を編制し、”彼”を捜索を開始するに至った。そんな状況にルイズ達は焦った。 そして、ルイズ達は朝靄が掛かる森の中でそれと遭遇した。 突如として地面が盛り上がり、巨大な怪物が姿を現したのだ。 それを見たコルベールは、その怪物が何か解った。 それは大昔に韻竜と共に絶滅したはずの火竜の亜種『バラナスドラゴン』であった。 怪物は地面から這い出るや、ルイズ達を見つけて大きく咆哮する。 その耳まで裂けた口から赤い液体が滴り落ちている。 それが人の血液であると言う事は直ぐに解った。…口の端から”人だった物”が除いていたのだから。 ルイズは吐き気を覚えたが、それを上回る激しい怒りが頭の中を駆け巡った。 ルイズは杖を振り、失敗魔法の爆発を怪物に放ち、エレオノールとコルベールも魔法を唱えるが、 怪物はそれらに全く怯む気配を見せなかった。 ついに精神力が切れ、魔法が撃てなくなったルイズ達は怪物から逃げた。 だが、ルイズだけが躓き、地面へと倒れてしまった。そのルイズへと怪物は牙の並んだ口を開けて迫る。 もうダメだ、とルイズが絶望した時、怪物の角が何者かに掴まれた。 見上げれば、怪物の角を掴んでいるのは”彼”だった。 ”彼”が怪物と戦っている隙にやって来たコルベールがルイズを抱え上げ、その場を離れた。 ”彼”と怪物の戦いは、人間と獣の戦いだった。 怪力と知恵で戦う”彼”に対し、怪物は牙や爪、ブレスを進化させたかのような強烈な熱戦、 更には最高百メイルに達する跳躍力で持って”彼”に襲い掛かる。 そんな理性と野生の対決は壮絶な物となった。 結果的に頭脳プレーで攻める”彼”に怪物は遂に逃げ出し、地中へと逃れた。 その後、”彼”は逃げる最中に謝って足を滑らせ、崖下へと転落したエレオノールを助け出し、 ルイズとコルベールの下へと送り届けるや、再び姿を消したのだった。 トリスタニアへと戻ったルイズ達は王宮へと事の次第を報告した。 全ての事件はバラナスドラゴンの生き残りの仕業であり、”彼”は無関係だと。 しかし、絶滅したはずのバラナスドラゴンが生き残っているなど在り得ない、と否定された。 更には、使い魔だからと問題の亜人を庇っているのではないか、と言われる始末だ。 結局、何を言っても信じてはもらえなかった。 そして、バラナスドラゴンの生き残りである怪物は再び現れた。 夜闇に隠れ、シエスタの生まれ故郷であるタルブの村の人々に襲い掛かったのだ。 次々と家が壊され、村人が老若男女の区別無く食べられていく。 タルブ領主のアストン伯が慌てて討伐隊を率いたが、一人残らず熱戦に焼かれたり食物にされた。 そんな地獄の様な光景を見ながら震えるシエスタに怪物は迫った。 その時、再び”彼”が姿を現し、怪物へと立ち向かった。怪物の首を締め上げ、投げ飛ばす。 だが、怪物もやられてばかりではなかった。二度も食事を邪魔された事は怒りを爆発させるには十分だった。 怒りの所為か、威力の増した熱戦が怪物の口から迸り”彼”に命中する。 最初は耐えられたそれも、威力の増している状態では耐え切れなかった。 僅かに怯んだ”彼”の隙を突き、怪物は大きく跳躍して覆い被さる。 鋭い牙で噛み付こうとする怪物の口へ、”彼”は岩を押し込み蹴り飛ばした。 ひっくり返る怪物に”彼”は更に岩を投げつける。 怒り狂う怪物は熱戦を吐き散らしながら”彼”に襲い掛かる。 ”彼”は怪物の注意を自分に引きつけ、村から引き離していった。 遅れて村へとやって来たルイズは、”彼”の意図を理解し、馬に乗るや後を追って森へと入った。 移動を続けながら二体の戦いは激しさを増していく。 やがて森を抜け、二体はハルケギニア随一の巨大な湖『ラグドリアン湖』へと辿り着いた。 そこで遂に戦いは終わりを迎えようとしていた。 ”彼”に投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた怪物はフラフラになる。 その怪物の首を”彼”は渾身の力で締め上げる。 怪物は苦しみ、激しく暴れたが、”彼”も必死に締め上げる。 やがて、怪物の鳴き声が弱々しくなっていき、大きく一声鳴くとそのまま口を閉じた。 直後、骨が折れる音が首から響いた。 不自然に首が折れ曲がった怪物は地面に力なく横たわる。 その怪物の身体を”彼”は二、三度蹴り飛ばしたが反応は無い。完全に事切れていた。 ”彼”は怪物の死骸を持ち上げると、湖に向かって力任せに放り投げた。 大きな水飛沫を上げて怪物の身体は湖底へと沈んでいった。 怪物が沈んだのを見届け、”彼”は勝利の雄叫びを上げる。 その彼の勇姿に駆けつけたルイズだけでなくエレオノールやコルベールも笑顔を浮かべた。 ――だが、事はそれで終わらなかった。 突如、ラグドリアン湖の水面から巨大な水柱が立ち上り、そこから声が辺りに響き渡る。 声の主はラグドリアン湖の水の精霊だと名乗った。 水の精霊は自らの領域を侵した”彼”へと制裁を加えると言った。 直後、水面が盛り上がり、巨大な蛸が姿を現した。それは水の精霊の使いだ。 呼吸する音が不気味な鳴き声のように聞こえ、足や胴体が動く度に粘液が嫌な音を立てる。 大ダコは八本の大蛇の様な足を振り回しながら”彼”へと襲い掛かった。 ”彼”は必死に戦ったが、怪物とは勝手が違いすぎた。 柔らかい柔軟性に長けた身体は木や岩を投げつけられても大したダメージを受けずに弾き返してしまう。 業を煮やした”彼”は肉弾戦を仕掛けたが、逆に大ダコの足に絡め捕られてしまった。 そのまま”彼”は大ダコに力任せに湖へと引きずり込まれる。 ”彼”の危機にルイズは助けようと杖を抜くが、エレオノールに止められる。 水の精霊を怒らせればどんな事になるか解らないのだ。 そんな事はルイズも解っている。だが、理屈では割り切れない事もあるのだ。 しかしエレオノールは譲らず、暴れるルイズの頬を叩いた。 そして、ルイズは気付いた。…姉もまた、自分の命の恩人の危機を見つめている事しか出来ないのに苦しんでいるのを。 結局、”彼”が大ダコによって湖底に引きずり込まれるのを見ている事しか出来なかった。 こうして、事件は一応の終わりを迎えた。 この日を境にルイズは一つの可能性を考える事となった。 それは”異種族との和解と共存”だった。 この後、ルイズはアルビオンで一人のハーフエルフの少女と出会い、 彼女と協力してエルフとの和解を実現させる事になる。 そして、彼女は和解成立のその後も毎日ラグドリアン湖へと通った。 何時の日にか”彼”が戻って来てくれる事を信じて…。 『終』
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/926.html
「パタリロ!」のジャック・バルバロッサ・バンコラン ルイズ!-1 ルイズ!-2 人物紹介 パタリロ 前世がパンドラ、愛読書が「人をおちょくる50の方法」、あとは本編の描写でどんな人物か判断出来るはず。一番分かりやすい言い方をすれば「両津の同類」 ジャック・バルバロッサ・バンコラン MI6のダブルオーエージェント。実際はバルバロッサの姓は家庭事情から名乗っていない。プレイボーイだが相手は必ず美少年。つまりそういう人。超能力とか信じてない割りに超能力者、ただし視線が合った相手を虜にするというはた迷惑過ぎる能力。 マライヒ・ユスチヌフ 元暗殺者の女性……的な美少年(♂)で、バンコラン(♂)の愛人。彼の子を出産(!)したことも。ナイフと格闘術に長けていて、天才的な頭脳の持ち主。嫉妬深い性格で、浮気を続けるバンコランは度々ズタズタにされている。 アーサー・ヒューイット CIAの腕利きエージェントにして射撃の名手。重度のロリコンでCIA長官の娘に手を出したり、任務中に少女に気を取られて任務に失敗するなどの失態でよく左遷させられている。それでもクビにならないのは彼がバンコランに匹敵するほど有能だから。 ミハイル S国(どう考えても旧ソ連)のエージェントで「氷のミハイル」の異名を持つ。異名の由来は自分の体温を零下32度まで自由に変えられる超能力から。有能だが危ない橋を渡るのは嫌い。意外にも家族思い。何故かパタリロをカリメロと呼んでしまう。 タマネギ タマネギみたいな髪形とひし形の口をしたマリネラ国の中枢を担う役職についた人達の総称。相当なエリート軍人しかなれない重要な人材……なんだが有給は10年に1日で普通の会社の日当並みの年収と、労働環境はピラミッドの最底辺に位置する。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3383.html
ルイズとその使い魔として召喚された猫耳少女・南波の2人は、学院の温室でキノコ狩りをしていた。 「あったー! ほら見て見て!」 そう言って南波が差し出したキノコは、鼻にツンとくる異臭が漂い傘が蕩けかけていた。 「……真面目にやる気あるの?」 「えー!?」 取ってきたキノコを投げ捨てたルイズに不満そうな南波。 「それにしてもタバサちゃんも来ればよかったのにね」 「用事があるって言ってたから仕方ないわよ」 そう肩をすくめたルイズだったが、最初からタバサを誘ってはいなかったのだ。 「きっと残念がってるから今日の話はしないようにしましょ!」 「ルイズちゃんやっさしー!」 「そっ……、遭難したー! まだ2レスしか経ってないのに遭難しちゃったよ!」 「うるさいわね。落ち着きなさいよ」 「私のせい? 『そうなん』です。なんちゃっ――」 「落ち着けー!」 この状況で笑えないギャグをかました南波に、ルイズは容赦無く魔法で吹っ飛ばした。 遡る事30分前。 南波はルイズの手を取って今にも崩落しそうな崖の先端部に生えているキノコを取りに行き……、 お約束通り崖が崩落、2人は断崖絶壁から落下した。 さらにその下を流れる激流の川に流されて、熱帯性の植物が繁茂するこの場所に漂着し現在に至る。 「ここどこ? ジャングル?」 「私が聞きたいわよ!」 ――グキュルルル~…… 朝食から数時間、そろそろ昼時という事もあって南波の腹の虫が盛大に泣き声を上げた。 「お腹空いたなあ……。そういえば、さっき崖で取ったキノコ……」 南波が懐からキノコを取り出した瞬間、ルイズはそれを神速の速さでひったくり、 「! ……あんたほんっとーにキノコを見る目が無いわね! この毒々しい色、臭い! どう見ても毒キノコよ! こんなキノコのために私達遭難したの!?」 しかし南波はそんなルイズの言葉に耳を貸さず、 「……ルイズちゃん。そう言ってこのキノコ独り占めする気なんでしょ!」 「!?」 と一口で丸呑みしてしまい、案の定、 「お……、美味しい……」 ばったり倒れ伏してしまった。 「嘘おっしゃい!」 キノコの毒を受け、南波は脂汗を垂らしつつうんうん呻いている。 「大変!! 凄く苦しそう! 毒キノコを食べた時の治療法は……」 ルイズは慌ててなぜか持っていたサバイバルに関する書物から治療法を得ようとするが、その内容は彼女の想像を超えていた。 「……じ、人工呼吸!?」 思わず赤面するルイズだったが決意を固め……、 「そうね、今は一刻を争うんだから仕方ないわ……こ、心の準備が……」 ……たものの、やはり照れからか顔を背けてしまった。 「よし、今度こそ……」 「あ~、死ぬかと思った!」 今度こそ人工呼吸をと思った瞬間、何事も無かったかのように南波がむっくり起き上がった。 「治るの早いわよ!」 「???」 「ルイズちゃん、ごめんね。まさか本当に毒キノコだったなんて……」 「まあ、体が何ともないならいいんだけどね」 体調は回復したものの空腹までは回復しなかったようで、南波は何か食料が無いか周囲を見回していた。 「あ~、お腹空いたなあ……バナナだ!」 とある木にバナナがなっているのを発見はしたものの、実には到底手が届かない。 「でも高いなあ。あ、棒と箱が落ちてる!」 南波は棒を振り回してみたり箱の上でジャンプしてみたりしたが、バナナには手が届かなかった。 その様子を見かねてルイズが箱の上に乗り棒でバナナを叩き落すと、南波は心底感心した表情で手を叩き、 「ルイズちゃん、凄ーい!」 「私にこんな恥ずかしい格好させて……。わざとやってんじゃないでしょうね!?」 ルイズは怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「お腹は膨れたけど、私達帰れるのかなあ……」 俯いて深刻な表情の南波だったが、バナナの皮の山を背にしているためいまいち緊張感に欠ける。 「だ、大丈夫よ! 帰れるに決まってるわ! ……それにいざとなったら私がいるんだから」 自分の言葉に赤面したルイズだったが、 ――アーアアー 「ターザンだ!」 その時既に南波の興味は遠くから聞こえてきた謎の声に向いていた。 「は?」 「凄い! ターザンって本当にいたんだ! こっち来た!」 そして垂れ下がった蔓にぶら下がって2人の前に現れたのは――、 「タバサちゃんにそっくり!」 どう見てもタバサです。本当にありがとうございました。 じー…… さっ じー…… さっ 顔を覗き込んでくるタバサの視線からルイズは必死に顔を背ける。 「なぜ目を逸らすの」 「タバサ、誘わなかったから怒ってるんでしょう?」 「私はターザンだからわからない。でも近々素敵な事が起こる」 肩を竦め無関係なふりをしてさらりと不吉な発言をするタバサ。 「ひぃいいい!!」 「ルイズちゃん、ターザンと知り合いなんて凄い!」 「だから、あんたはわざとやってんの!?」 そんな2人を南波はやはり心底感心した表情で目を輝かせて見つめ、ルイズはまたも怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「こっち」 そう言ってタバサは藪をかき分け2人を先導し始める。 「帰り道も知ってるなんて流石ターザン!」 「……何にせよ助かってよかった……」 「でもルイズちゃんと2人で遭難するの、結構楽しかったよ。また一緒に遭難しようね!」 「まったく、縁起でもない!」 南波を魔法で吹き飛ばしたものの、少し嬉しいルイズだった。 (いつまで歩くのかしら) ルイズがそう思い始めた時、突然ラバサが立ち止まった。 「? タバサ?」 「迷った」 『ええええええ~!??』 「てへ」とでも付けそうな口調でのタバサの発言に、南波・ルイズの悲鳴がジャングル中に響き渡った。 その時、 「ミス・ヴァリエール~!」 そう3人に向かって大声を張り上げる人影――コルベール――がゆっくり降下してきた。 「ミス・ヴァリエール、心配させないでください」 「ミスタ・コルベール……」 「しかし、まさか隣接する人工ジャングル温室に迷い込むとは……」 「何でそんな温室があるのよ!」 翌日……、 「それでね、ターザンがね!」 救出後に書いてもらったサイン片手に心底楽しそうに昨日の話をタバサにしている南波の様子を、ルイズはジト汗を垂らして見ていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2111.html
まったく同じ言葉、あるいは名称であっても、時としてそれはまるで正反対であったり、または異なる意味となることもある。 ここに一人の少女がいる。 名をルイズという。 メイジでありながら、魔法が使えない。 成功率ゼロ。 そんなところから、ひと呼んでゼロのルイズ。 この二つ名は生涯変わることはなかったけれど、ある時期から、それはまったく異なる意味を持つようになる。 それは何かというと…………。 「……あんた、何?」 召喚した使い魔と契約を終えた後、ルイズは引きつった表情で、己の従者となった生き物に向かってつぶやいた。 珍しい生き物ですな、などと教師は言っていたが、ルイズ自身はあまり喜べずにいた。 召喚したその生き物はどこをどう見ても、すごそうには見えなかったからだ。 一言で言うなら、丸い魚チックな生き物だった。 本当に真ん丸いのだ。 よく言えば可愛いが、悪く言えば間抜けな姿だった。 ほえええ……。 鳴き声もひどく間抜けだった。 ふよふよと空中に浮かんでいるが、動きも鈍そう、というかちいとも動かない。 使い魔のルーンが刻まれている時もぬぼうっとしたままだった(ちなみにルーンは額あたりに)。 有効性を期待するのは恐ろしく不毛な予感がする。 「あんた、なんて生き物?」 ルイズはこのおかしな使い魔の顔(というか、体全体が大きな顔みたいでもあるが)をのぞきこみながらつぶやく。 ――……くーよん。 「へ?」 その時、ルイズの頭に何か声のようなものが響いた。 驚いてキョロキョロとしていると、とんでもないことが起こった。 使い魔が。 召喚したばかりの使い魔が、消えてしまったのだ。 まるで、煙か何かのように。 「……はい?」 ルイズは事態が飲み込めず、しばらくぼーぜんとしていた。 他の生徒たちから、嘲笑を投げつけられるまで。 朝になって、ルイズは重苦しい気分でベッドから目を覚ました。 気分だけでなく、体全体も重苦しい。 ベッドで泣き伏し続け、そのまま眠ってしまったようだ。 自分ではわからないが、目が真っ赤になり、その下には痛々しい隈ができている。 せっかく召喚したはずの使い魔。 それが、逃げてしまった。 というより、どこかへ消えてしまった。 そこまで思い出し、ルイズは思考を止めた。 頭の中を、毒蛇がのたくっているような、嫌な気分になってきたのだ。 胸がむかむかして、吐き気もしてくる。 そのくせ、心がざわつき、落ち着かない。 ゼロ。 成功率ゼロ。 ゼロのルイズ。 そんな言葉が頭の中でぐるぐるとまわっていた。 何だか、わけのわからない気持ちになってきた。 悔しいのか、悲しいのか、それとも情けないのか。 あるいはその全てなのか、そのどれでもないのか。 ルイズはのろりのろりと身を起こして、何気なく机の上を見た。 ペン刺しのペン。 するりと抜いてみる。 先がとがっている。当たり前だが。 ルイズは、ぼけっと手にしたペンを見ていたが、ふと妙な気持ちになった。 急に、ペンを自分の腕に突き刺してみたくなったのだ。 手の甲でも平でも、どこでもいい。 とにかく自分の体を傷つけたい衝動に駆られた。 そして、ぐいとペンを振り上げてから、そのまま動かなくなった。 (何やってんのよ……!) すんでのところで、行動を制止する。 そんなことをして何になるのか、自分が痛いだけである。 ルイズはいらだつ気持ちを抑えきれず、ペンを床に叩きつけた。 これというのも、あの忌々しいボールのせいだ。 いきなり幽霊みたいに消えやがって。 契約したご主人様を無視して。 おかげで、自分がどれだけ恥をかいたか。 覚えていろ。 もし見つけたら、 (どっかにいるってんなら、出てきなさいよ!! ただですまさないんだから!!!) ルイズは心の中で、叫んだ。 ぼうん。 「うひゃ!」 いきなり、間抜けな音がした。 ひっくり返りそうになりながら、ルイズは何事か目を凝らす。 そして、本当にひっくり返った。 そこには消えた使い魔が、相変わらずの間抜け面でふよふよ浮かんでいたからだ。 「出てきなさい」 小声でルイズは呼びかけた。 ぼうん。 音を立てて、ルイズの前に使い魔が現れる。 「うーーん……」 何回かのテストの後、ルイズは3つのことを理解した。 1、使い魔は逃げたわけでなかった。 2、使い魔はしばらくすると消えてしまう。 3、使い魔はルイズの声(正確には意思)に応えて姿を現す。 「けっこうすごい感じではあるんだけど……」 しかし、だからどうだという気もする。 呼び出せばすぐに出てくるところは便利だが、 (こいつに何ができるか、よねえ?) ただそこでぬぼっとしているだけなら、普通の猫や鼠でも召喚したほうがまだましである。 (でもまあ、ここは……) ひとまず契約は成功していたというところが大事だろう。 (このことを、ミスタ・コルベールに説明しとかないと) そう考えるとじっとしてはいられない。 ルイズは乱れた髪を簡単に整え、部屋を飛び出した。 途中でキュルケと出くわしたが、無視する。 今は相手にする気分でなかったし、そんな暇もない。 コルベールのもとに向かいながら、ルイズが先ほどと異なる棟のざわめきを感じていた。 先のそれが暗いマイナスなものなら、これはプラス。 これから、いいことが起こりそうな気がする。 そんな予感がむくむくと膨らんでいた。 ただし、そのいいことが、ルイズにとってはよくても、他の人間にはどうであるのか。 ルイズはそんなことは考えもしなかったのだけれど。 きっかけは何だったのか。 思い出せばくだらない言い争いが原因だったのかもしれない。 気がついた時には、食堂でギーシュと言い争いになっていた。 だが、決定的なスイッチとなってしまったのは、このやり取りだろう。 「君のその、丸っこい使い魔に何ができるというんだい?」 「さあね? でも、あんたの死ぬほど不細工なモグラよりは可愛いんじゃない?」 売り言葉に買い言葉とはいうけれど……。 それはギーシュをぷっつんさせるには十分すぎる威力を持っていた。 何だかかんだで、ルイズはギーシュと決闘することになってしまった。 ルイズは、不思議と負ける気はしなかった。 それは予感というよりも確信に近かった。 何故そんなことを思ったのかは、謎であるが。 決闘の前にギーシュが何か言っていたが、ルイズは聞いていなかった。 それよりも、早く使い魔を呼び出したくてうずうずしていたのだ。 そんなルイズのなめきった態度に、ギーシュはマジ切れしたのだろう、お得意の青銅ゴーレムを呼び出し、いきなり突進させてきた。 ルイズは目の前に出されたご馳走を出され、さあどうぞと言われたような気分で、 「出てきなさい!!」 使い魔を呼んだ。 主人の呼びかけに応じた使い魔は、この時通常とは異なる行動に出た。 いや、今までは呼び出しても何もしなかったのだが。 ほええええええええええええ!! 使い魔はその口から、何かきらきらと光る粒子のごときをものを吐き出したのだ。 その美しい、宝石の雪のようなものが周囲に降り注いだ瞬間、ギーシュのゴーレムはぼろりと崩れた。 「え? な? なんで??」 うそだろという顔つきで、ギーシュはまたゴーレムを出そうとする。 が、無駄だった。 形を形成する前に、ゴーレムはぼろぼろと土くれになってしまう。 しまいには、それさえも起こらなくなった。 硬直するギーシュの真横を、強烈な爆裂が通り過ぎた。 ルイズの失敗魔法。 普段ならば嘲笑の対象であるそれは、この時のギーシュには悪魔の凶器であった。 「……まいった」 「な~に~? 聞こえんな~~~」 かすれる声でいうギーシュに、ルイズは死ぬほど邪悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと広げた右手を突き出す。 「具合でも悪いのかしら~~? じゃ、下手糞で悪いけど、回復の魔法かけたげるわ」 煙をあげながら倒れるギーシュを見下ろしながら、ルイズは自分の使い魔の能力を理解しはじめていた。 何故、負ける気がしなかったのか。 それは、もしかすると契約を通じて、無意識ながら、使い魔の能力がルイズに伝えられたのかもしれない。 いずれにしろ、 (これはいけるかも……!!) ルイズは笑った。 ルイズが使い魔の能力の、本当の凄まじさを理解するのは、のちにフーケ事件と呼ばれる騒ぎでのことだった。 土くれのフーケと呼ばれる盗賊。 それが学園の宝物庫を狙ってきたのだ。 とはいえ、その時ルイズはそんなことなど知るよしもなかった。 ただ、夜散歩をしていたら、いきなりばかでかいゴーレムに出くわしたのだ。 最初はかなりびびっていた。 けれど、それだけにその後はかなりリラックスしてしまった。 使い魔の吐き出す輝く粒子。 それはあっという間に空中高く舞い上がり、ゴーレムをギーシュと時と同じように土に戻してしまった。 もっとも粒子は風の流れのせいか、宝物庫までとんでいき、防御のためにかけられている魔法も消してしまったが。 ちなみに、何か怪しい人影がいたので失敗魔法でぶっ飛ばしたらそれはミス・ロングビルだった。 ロングビルは爆発をまともに食らって全治三ヶ月の怪我をおい、ルイズはギーシュの一件もあり、謹慎処分をくらう羽目になる。 宝物庫の中は無事だったので、謹慎は短くてすんだのだが。 謹慎を食らっても、ルイズはちっともこたえてなかった。 何故ならば、自分の使い魔がどれだけすごいか、頭ではなく魂で理解できたから。 (メイジの実力を見るなら、使い魔を見ろ……か。なるほど、私にぴったりじゃない!) 部屋でじっとしてても、ニヤニヤと笑いが止まらない。 あの使い魔、原理はわからないがあれの吐き出す粒子は魔法を消去してしまう力がある。 ドットクラスのギーシュくらいのものなら、それなりでしかないだろうが、あの馬鹿でかいゴーレムさえ苦もなく無効にできるのだ。 自分の魔法が消された時の、ギーシュのあの顔! 思い出すだけでも傑作だ! 翼をもがれた鳥みたいにぶざまな姿だった。 ゼロのルイズ。 その二つ名は大嫌いだった。 でも、これから思い切り好きになれそうだ。 「そうよ、私はゼロのルイズ」 ルイズはくすくすと笑う。 (でも、ゼロなのは私じゃない……。ゼロになるのは……) 自分以外の、あらゆるメイジだ。 後年、ゼロのルイズの名は永く広く語り継がれることになる。 いかなるメイジも、彼女の前ではゼロになる。 ただ、虚無の属性をのぞいては。