約 3,981,537 件
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/164.html
原作 都築真紀 対談 作画 緋賀ゆかり 「StrikerS(ストライカーズ)」「X(イクス)」を経て3年後の世界へ――第4期シリーズ「Force」誕生までの秘話を明かす! ―「なのは」の新シリーズとして「Force」が始動するまでの経緯を教えていただけますか? 都築 リリカルなのはシリーズをTVアニメシリーズで続けていまして、今まで角川書店さんとは あまり接点がなかった状態だったんですけど、劇場版に合わせて作品を取り上げていただけることになりました それで、なのはに関して何かやれたらいいですねということで、どちらからともなくコミックのお話に。 だから、今回のコミックについては、なのはの続編をやりたいのでそれを、と言うようなお話ではなくて、 角川書店さんとのめぐりあいとご縁があってのお話で、さらに「Force」に関しては緋賀先生との出会いで生まれた作品になります。 緋賀 いえいえ、そんな……。 都築 単行本、全部買っています(笑) 緋賀 私は最初、すごく不安だったんですよ。やっぱり「なのは」は大きい作品なので、作家の中にもごまんとファンがいるんじゃないかって。 だから、私よりも適任者がいるのでは?と思い、一度はお断りしようとも思ったんですが……。 都築 緋賀先生のお名前が挙がった時点で自分が「緋賀先生が描いてくださるならこれで!」と言うふうに、 内容や展開周りを一気に作って、編集さんにお送りしてしまって。 緋賀 そこまでしてくださったので、それなら私も自分にできる限りの範囲で頑張ろうと思って、お引き受けさせていただきました。 キャラクターデザインに時間がかかって、さっそくご迷惑をおかけしてしまったんですけど(笑)。 「『なのは』に出てくるキャラに見えますか?」みたいなことは、最初のうちはよく話していたような気がしますね。 都築 見えますよ!と(笑)。でも新主人公3人に関しては、緋賀先生の絵柄やキャラクターを規律にイメージしていったところが大きいです。 今までのチームで普通に「なのは」の新作を作ったとしたら、この子たちや「Force」の物語は生まれていないですね。 ―なのはが主人公ではないということで、驚かれた読者も多いのではないかと思いますが……。 都築 なのはは主人公とはひと言も言ってないんですけどね。まだ現役です、というだけで(笑)。 緋賀 私もなのはが新しい主人公だと想像していたので、「新しい主人公たちで」と聞いたときにはびっくりしましたし、 しかも男の子と聞いて「大丈夫なのか?」って(笑)。 都築 なのはは「StrikerS」のとき以上に、見守る・導く・救い出す、という役割で、はっきりと師匠系キャラの立ち位置です。 「force」では物語を作っていくのは新主人公のトーマたちに任せる形で、 なのはやスバルらシリーズキャラは物語の進行に合わせて順次、それぞれの立場で出てきて、物語に関わります。 ―では、「Force」の今後の展望について教えてください。 緋賀 読者の方に、「この人なら大丈夫かもしれない」と思ってもらえるくらいに、ちゃんと描いていきたいと思っています。 だからといってファン心理炸裂で描くのではなくて、冷静な目で見ていきたいですね。 都筑先生のイメージをうまく拾えるように、頑張っていきたいです。 都築 物語的にはもう「第一部完」の部分までほぼ固まっています。 あとはそれを形にしていきながら、同時に読者のひとりとして、緋賀先生が作ってくれる新しい「Force」を楽しみにしようと思います。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 少女から戦記へ 「リリカル」シリーズ第4シリーズとしてスタートしたこの漫画。 完全新主人公、なおかつシリーズ初の少年主人公なわけですが…。 Force・ViVidの「ダブル4期」には、どちらも「新メンバーで原点回帰」という目標があったりします。 そして「Force」がピックアップする「原点」は「戦う力を持たなかった主人公が、大きな力を手にすることで 自分自身の世界が変わってゆく、周囲を変える影響力を持つようになってゆく」という部分です。 本作のアニメシリーズにおける主人公達とその周囲の主要人物達は、 いずれも「力そのもの」を望んでを手に入れたわけではありませんでした。 目的があって、それを叶えるために必要な術(すべ)として手に入れ、磨いた力です。 出会った少女を、愛する母を救いたいと願って空を駆ける力を手にした「1st」の2人のエース。 幼い頃に定められた力を、否定することなく受け容れるために使う事を決めた「A s」の夜天の主。 弱い自分を変えるため、助けを求める誰かの声に答えるために、壊す力と向き合う事を決めた少女と 自分の夢に向かうため、夢を夢で終わらせないために強さを求めた「StrikerS」の2人のストライカー。 トーマは、そんな歴代主人公達とは少し違った形で「力」と向き合う事になります。 それは「ViVid」のヴィヴィオが「競技者としての強さ、心の強さ」を 目指してゆくのとまた違った、新世代……そしてトーマという少年ならではの「力」への向き合い方でもあります。 「少女」ではなく「戦記」のタイトルを冠した「Force」では、魔法の力や戦いを「怖いもの」として描いてゆきます。 そしてそれは、緋賀先生の「絵」でしか描けない物語でもあります。 序盤のトーマは、力や状況や自分の過去、敵対勢力……いろんなものに振り回されたり困ったりしてゆくことになると思います。 でも、シリーズ中随一の「等身大に近い主人公」として、きっと四苦八苦しながら生きてゆくトーマと、 トーマのそばで、これから関係性を作っていく事になるリリィやアイシス そんな3人の前に立ちふさがるフッケバイン一家や元機動六課メンバー達の様子を見守っていただければ嬉しいです。 緋賀先生と一緒に精一杯、この物語を描いてゆきます。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき はじめまして、こんにちは。緋賀ゆかりと申します。 「魔法少女リリカルなのはForce」1巻をお手に取ってくださりありがとうございます! 「リリカルなのは」シリーズはとても大きな作品で自分にとっても特別な作品でしたので、 Forceのお話をいただいた当初は自分なりに不安もありましたが、原作の都筑真紀先生をはじめ編集部の方々、読者の皆様、 身の回りの方々の温かいサポートのおかげでこうして無事に発売をむかえる事ができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 「リリカルなのは」ファンとして、「都筑真紀先生ファン」としてこうして公式の場で関わらせていただく機会に恵まれ、とても光栄に思います。 作画面は至らない点も多いのですが、日々精進し努力してまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします…! それではまたお会いしましょうー。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/770.html
ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは クロス元:ウルトラマンメビウス 最終更新:08/04/30 第1話「突然のはじまり」 第2話「再会は唐突になの」 第3話「決意の変身」 第4話「もう一人の、光の巨人なの」 第5話「暗黒の魔の手」 第6話「決意、そしてお引越しなの」 番外編「ロストロギアなんてレベルじゃねーぞ!!」 第7話「超獣の来襲」Aパート 第7話「超獣の来襲」Bパート 第8話「激闘の始まりなの」 第9話「仮面の男」 第10話「再会は異世界でなの」 第11話「兄弟の思い」 第12話「敗北、そして新たな出会いなの」 第13話「因縁の襲来」 第14話「負けられぬ戦い」 第15話「ウルトラマンの資格」 ~ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは 小ネタ集~ ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE- ~ミッドチルダ編~ クロス元:ツバサ 最終更新:08/05/20 プロローグ 第1話「必然の出会い」 第2話「模擬戦」 第3話「牙狼」 L change the world after story クロス元:L change the world 最終更新:08/06/17 第一話「目覚め」 第二話「ミッドチルダ」 第三話「二人の天才」 第四話前編「初事件・遭遇編」 第四話後編「初事件・解決編」 拍手感想レス :そういえばダイナとなのはってF計画繋がりなんですね :ダンが名台詞「その顔は何だ?! その目は!? その涙は何だ!」という台詞をヴィータに言うんでしょうか?気になります :ウルトラ兄弟&なのは最高!次回作、期待しています。 TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2308.html
―――――私は勇者なんかじゃない。 偶然に世界の命運なんてのを託された、運が悪いだけの一般人さ。 私に任された仕事は、本当は私以上に適任の奴がいるはずなんだ。 例えば伝説の英雄とか、聖なる騎士とか、本当の勇者とか、な。 だが運の悪いことにそいつは現れない。 もしかしたら、はじめっからそんな奴はいないのかもしれない。 だから勇者のふりをするのさ。 強くもないのに、強がりながら。 空が燃えていた。 大地は裂け、炎が荒れ狂い、街を呑み込んでいく。 通りを駆け抜けるのは名状しがたい異形ども。 禍々しい鎧兜を纏った戦士達や、冒涜的な姿の怪物たち。 誰の眼にも明らかだ。 かねてより警告されていた通り『門』が開いたのだ。 そして彼らは『門』を通って、地の底より這い出た存在。 ――極めて古典的な名前で呼ぶならば、 『悪魔』 そう形容されて然るべきものであった。 多くの住民が家に閉じ篭って全てが終わるのを待ち、 或いは逃げるのに間に合わず、悪魔どもに無残にも殺されていく。 そんな中、ただ一つの目的を持って駆け抜けていく者がいた。 男だ。男が二人。 1人は様々な苦脳を秘めた厳しい面構えの、平凡な男。 身につけた衣服は僧侶か何かを思わせる、装飾の少ないそれだ。 目前に立ちはだかるのは、つい先ほどまで市民を貪り食っていた怪物ども。 その数は1匹や2匹ではない。あまりにも多すぎる。 「ダメだ、此方の道は奴らが多い! 回り道を――」 「そんな時間があるものか! マーティン、私が切り開く!」 その男――マーティンと呼ばれた男の脇を、一陣の風が擦り抜ける。 身を低くして一瞬にして通りを走り抜けたのは、まるで影のような男だった。 黒い鎖帷子を纏い、頭をすっぽりと外套で覆った彼は、手にした武器を振り抜く。 片刃の長剣――遥かな東方から伝来したと言われる、切れ味の鋭い代物である。 皇帝直属の親衛隊のみが携帯を許されるそれを持っているという事は、この影は親衛隊なのだろうか。 そう思う者がいるならば、あえて言おう。答えは断じて否だ。 護ることよりも殺すことに長けた剣、とでも呼ぶべきか。 およそ真っ当な剣術ではない。どれほどの敵を斬れば、このようになるのだろうか。 断じて、親衛隊などという組織に所属する者の剣技ではない。 凄まじい速さで縦横無尽に振るわれた刃が、次々に怪物どもの命を刈り取った。 彼らは男の攻撃を受けるまで、その存在に気付くことすら無かったのだろう。 あまりにも呆気なくバタバタと斃れ、屍を晒した。 だが、それで終わりではない。 終わりの筈がなかった。 騒ぎを聞きつけた鎧武者達が、具足を鳴らして迫り来る。 その数は遠目に見ただけでも――あまりにも膨大だ。 男は躊躇しない。 マーティンを背に庇い、悪鬼どもを睨みつけ、叫ぶ。 「行け、マーティン! ここは私に任せて、お前はアミュレットを神殿へッ!」 「しかし……ッ!」 「馬鹿者ッ! お前が死ねば其処で終わりだが、お前が神殿につけば此方の勝ちだ! 何も奴らを殲滅するわけではない。『門』が閉じるまでの間だ。 お前の鈍足でも、どうせ五分かそこらだろう。安心しろ。その程度ならば防ぎきってみせる」 マーティンの顔に迷いが浮かんだのは明らかだった。 それなりに長い付き合いだ。この人物の心根の優しさは、よく知っている。 だが、彼は影のような男を見やり、そして押し寄せてくる悪魔どもを見やり、 その全てに背を向けた。 「…………感謝する。アルゴニアンよ。君は、良き友だった」 「ああ。そうとも、マーティン」 「……」 「お前は良い友だった」 会話はそれで終わった。マーティンは走り去り、影は残る。 そうして影は外套の内側で薄く笑うと、それを跳ね除けた。 露になったのは人の頭ではない。似ても似つかぬ蜥蜴の其れだ。 アルゴニアン――辺境に多くが暮らし、帝国人から忌み嫌われる種族。 遥か昔には奴隷として使役された事もあるアルゴニアンだったが、 それでも尚、彼は人々が好きだった。 何よりも、あのマーティンという男は気に入っていた。 躊躇わずに命を賭け、こんな場所にまで付き合うほどには、だが。 刃を構える。 なぁに、不可能な事ではない。難しいことでもない。 このくらいの窮地ならば、過去に幾度となく乗り越えてきた。 「さあ来いデイドラどもッ! 生きてれば一度は死ぬものだッ!!」 アルゴニアンの挑発に対し、悪魔――デイドラの軍勢が雄たけびを上げた。 そして幾度と無く彼らの野望を打ち砕き、今この戦いに終止符を打とうとする男を滅ぼすため、 幾百ものデイドラがこの路地へ押し寄せ、そして―― ――――世界を光が包み込んだ。 ――五年後。 新暦68年 某月某日 日本 海鳴と呼ばれる土地。 深夜。時計の短針が十二を通り過ぎ、一を示す頃合。 喫茶店『翠屋』には多くの人物が集まり、そして眠っていた。 ある者はカウンターに突っ伏すようにして、 ある者はテーブルの下で丸くなり、 ある者は大きな犬にしがみついて。 『高町なのは復帰記念パーティ』 ようやく復帰した少女――彼らの大事な存在の帰還を祝うため、 殆ど朝から晩まで騒いだ結果が、これである。 「もう、みんな酷いなぁ……。好き勝手に騒いで、勝手に寝ちゃうんだもん」 「仕方ないよ、なのは。それだけ皆、なのはが帰ってくるのを待ってたんだから……」 「うん、それは……わかってるんだけど、ね」 今起きているのは、この二人。 主賓である高町なのは。 そして彼女の一番の親友であるフェイト・テスタロッサ・ハラウオン。 悪戯っぽく笑いあいながら、幸せそうに眠りこけている仲間達を見やる。 本当に幸せだ。 自分達には家族がいて、友達がいて、仲間がいて。 こうして何かにつけて祝って、騒いでくれる。 だが、それもしばらくは見納めだ。 「なのは、その――」 「もぅ、心配性だなあフェイトちゃんは! クロノ君もだけど……。 ひょっとして、お兄ちゃんに似た、とか?」 「なのはぁっ!」 にゃはは、と笑って誤魔化すなのはを、フェイトは怒りながらも心配そうに見つめた。 彼女がとてつもない大怪我をしたのは、一年前になる。 だが、一年もかけねば治らないほどの負傷だったのだ。 そして――まだリハビリを終えたばかりなのだから。 「私のことなら気にしなくて良いよ、フェイトちゃん。 もうすっかり元気だし、前みたいな無茶はもうしない。 それに――フェイトちゃんの執行官試験の方が大事なんだから!」 そう、執行官試験。 今まで二度受けて、フェイトは二回とも不合格になっている。 本人は頑なに否定するだろうが、なのはの事故が影響しているのは間違いない。 だが――……だからと言って、果たしてこのような事になっても良いのだろうか。 ―――――話は数日前、高町なのはが退院する、その直前にまで巻戻る。 退院準備の為、荷物を鞄に纏めていた彼女とフェイトの前に、クロノ・ハラウオンが現れたのだ。 勿論、彼にとって最も大切な目的は、友人であるなのはの退院を祝う事だったが、 それ以外にもう一つ、極めて重要な用件を抱えていた。 「「タムリエル?」」 「そう、第23管理外世界。現地の言葉で『タムリエル』と呼ばれている。 文明ランクは――地球やミッドチルダよりもだいぶ低い。中世クラスだろう。 ただ魔法に関しては正直想像がつかない。これまで、さして注目もされてなかったからね」 「これまで、って事は……今は注目されているの?」 ああ、とクロノは頷いた。 タムリエルは地球など他管理外世界と同様、次元宇宙に接触する技術を保持していない。 そう思われていたのだ。――これまでは。 「事件が起きたのは新暦63年。なのはやフェイトと逢う二年前だ。 タムリエルで大規模な次元震が確認された。 その規模は――恐らく、史上最大。 まず間違いなく『二つの世界が完全に繋がった』ような状態だった筈だ」 それほどの大事件でありながら、事件の詳細は確認されていない。 いや、できなかったのだ、とクロノは語った。 「次元震動が確認されてから一時間と経たず、それは消滅してしまったんだ。 単なる偶然なのか、或いは人為的なものなのか、まるで判らないまま。 そして、その後の調査も不可能だった。 結界……とでも言うのかな。外部からの干渉を遮断するバリアが張られていたのさ。 まあそんな事が可能な魔法技術があったなんて思いもよらなかったから、 管理局のこれまでの調査が如何に杜撰だったか、って問題にもなったけど、 とにかく、その世界への干渉は不可能だったんだ。ところが――三日前に、そのバリアが消滅した」 「それって……つまり、また同じ事が起こるかもしれないの、クロノ君?」 「ああ、そうだ。これは極めて重大な調査になる」 「でも、何で私と、なのはにその話を?」 「……つまり、なのは。君のSランク取得試験内容は『管理外世界タムリエルの調査』。 そして、フェイト。君の執行官資格試験もまた『管理外世界タムリエルの調査』なんだ」 ――魔法少女リリカルなのは The Elder Scrolls 始まります。 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2315.html
この広い世界には幾千、幾万の人達がいて。 いろんな人たちが、願いや想いを抱いて暮らしていて。 その願いは時に触れ合って、ぶつかりあって。 だけど、その中の幾つかは、 きっと繋がっていける。伝え合っていける。 これから始まるのは、そんな出会いとふれあいのお話。 ――――魔法少女リリカルなのはThe Elder Scrolls はじまります タムリエル。 正確に言えばニルンと呼ばれる世界に複数存在する、大陸の一つ。 その全土を支配している、セプティム朝タムリエル帝国の事を示す。 つまり管理局の見解による『第23管理外世界』とは、この世界の一部でしかない。 とはいえ、このタムリエルのみを『管理外世界』とする判断も、決して間違っているわけではない。 何故ならタムリエルと他大陸の間に広がり、互いの交流を阻む「ムンダスの大海」とは、 我々の認識する「水によって満たされた海」ではなく、異世界と半ば地続きとなっている「精神世界」だからだ。 管理局風に呼ぶならば「ムンダスの大海」は「次元空間」と置き換えても良いのかもしれない。 最も、非常に危険が伴うとはいえ通常船舶で航行が可能な以上、やはり厳密な意味で「次元空間」とは別物なのだが。 結界に揺らぎが見られた時点より密かに調査を実施した結果、上記の通り、ある程度以上の情報収集に成功している。 この世界の文明レベルは中世の封建社会に酷似しており、それほど進歩した技術などは持っていない。 石造りの街並みが広がり、機械類は未だ出現せず、よって世界は「剣と魔法」によって支配、運営されている。 しかしながら魔法技術に関しては、時間や様々な技術的要因から調査は難航しており、現在の所は何も判明していない。 だが、外部世界からの接触を遮断する結界。それも管理局に感知、解除できない結界。 このような大規模魔法を行使できることから、その魔法技術は詳細不明なれども高度であると予想される。 本任務は、その結界の基点であると思われるタムリエル中央、シロディール地方へと降下し、 結界の揺らぎ――即ち大規模次元犯罪の前兆と思われる要因を調査し、可能ならば対応する事である。 この異世界タムリエルは前述の通り、極めて未知の世界に等しく、その調査は多大な危険が伴うだろう。 「――――故にくれぐれも注意されたし、か」 深い森の奥で、なのはとフェイトは出立前にクロノから言われた忠告を思い出し、小さくため息を吐いていた。 成程、確かに注意力散漫であったかもしれない。 タムリエル――シロディール地方に広がる森林の風景は、とても素晴らしいものだった。 他都市に比べて多少なりとも自然の多い海鳴町は元より、ミッドチルダでも、こんなに綺麗な森は無いだろう。 彼方此方から小鳥達の歌声が聞こえてくるし、青々と茂った木々の隙間から差し込む木漏れ日は、とても暖かだ。 目を凝らせば林の奥には鹿の姿も見て取れた。周囲を探せば野兎なんかもいるかもしれない。 そして何よりも、なのはが復帰したばかりであったし、二人っきりでの任務なんて本当に久しぶりだったのもある。 ピクニック気分、とまでは言わなくとも浮かれていたのは事実だった。 そしてこの世界で初めて人影を見かけて、ウキウキと話しかけてしまったことも認めて、なのはは頷いた。 「クロノ君、確かに私達が悪かったかもしれない」 でもね。 だけどね。 「こんな猫さんみたいな人に襲われるっていうのは、注意しようがないと思うの」 「猫じゃねえっ! カジートだッ! 良いからさっさと金を出せ! 無けりゃ親御さんに出してもらうんだなッ! それも嫌だってんなら、ぶっ殺して身包み剥ぐだけだ! どっちにしたって手間は大して変わらねぇんだぞ!」」 一方、吼える猫さんみたいな人――もといカジートの山賊は酷く頭が痛かった。 カジートとは、つまり判りやすく説明するならば『猫の獣人』とでもするべきか。 獅子か猫のような頭部を持ち、その体を覆う毛皮や、尻に生えた尾も獣のそれだ。 そして何より特徴的なのは、その頭部に見合った瞳――暗視の力を持っているという事。 その為、多くのカジートが盗賊や山賊へと道を誤ることが多いのだが、 彼もまた、そうして犯罪者へと成り果てた――新米の山賊である。 基本的に山賊、追剥の類は街道沿いの砦跡や、野営地に居座ることが多い。 街道を行く旅人や何かは旅費を持っている事もあるし、良い稼ぎになるのだが―― その一方で、山賊にとって酷く危険な場所でもある。 数時間間隔で街道を巡回している帝都兵は、駆け出しの山賊にはとんでもない脅威なのだ。 何せ帝国軍正式採用の鋼鉄鎧は酷く頑丈であり、その技量は並々ならぬものがある。 まともに戦ったのでは当然太刀打ちできないし、隠れていても見つかるのが関の山だ。 当然、駆け出しの山賊である彼にとって、街道沿いはリスクが高い。 そこで彼は帝都南方に広がるグレートフォレストの、更に街道から南に外れたあたりを根城としている。 洞窟や遺跡が点在し、新米の冒険者が訪れるこの辺りは非常に良い『穴場』なのだ。 なにせ駆け出しの冒険者というのは新米の山賊と、たいして力量の差が無い。 更には身に着けている装備は高く売れるし、上等な品だったら自分の物にしても良い。 勿論、返り討ちにあう可能性だってあるのだが――今回に関しては、その心配はなさそうだった。 何せ上等そうな衣服を身に着けた少女が二人、だ。 杖を持っているのを見た所、魔術師の類かと思って警戒したが……呪文を唱えてくる気配も無い。 というか、このシロディールでも見たことのない形の杖だ。 噂に聞くMOD(意味は知らない。彼はモロウウィンド産だろうと見当をつけているが)とかいう品だろうか。 何にせよ、高値で売り飛ばせるのは間違いあるまい。 「なのは、なのは。ひょっとしたら猫じゃなくてライオンなんじゃないかな」 「そっか……ごめんね、ライオンさん。間違えちゃったよ」 「だーかーらーっ!!」 ああもうやり難いなァッ! まったくもって緊張感が無い。――どこぞの箱入り娘か何かだろうか。 カジートの存在すら知らなかったようだし、そうと見て間違いは無い筈だ。 噂じゃあ、レヤウィンの伯爵夫人は酷い異種族嫌いだとかで、 折りを見ては異種族人を拷問にしかける――のだそうだ。 まあ、其処まで過度じゃないにしろ、差別主義者に育てられた良いところの娘達。 ――なんてところだろう。 こうして威嚇の声を上げて斧を振り回してもまったく動じない辺りを見ても、 やっぱり世間に慣れてないに違いない。 ――そうやって声を荒げるカジートに対し、なのは達もまた途方に暮れていた。 いや、確かに強盗に襲われるなんてのは二人とも初めての経験だったが、 今までの人生――特にここ数年で――それに倍する程の修羅場を潜り抜けている。 それに第一……その、何だ。持っている武器がデバイスでも何でもないただの鉄の斧では……。 正直、バリアジャケットや防護シールドを抜けるとは思えないし……。 彼の纏っている革鎧だって、此方の砲撃魔術に耐えうる品だとはとても……。 「どうしようか、フェイトちゃん?」 「この世界のお金なんて持って無いし――……」 「……泥棒さん相手だったら、お話を聞いてもらうのも、良いと思うの」 「それはちょっと、物騒なんじゃないかなぁ……」 「てめえら、何をごちゃごちゃ喋ってやがるッ! うるさ「いや、五月蝿いのはお前のほうじゃないか?」 その声は、なのは達の背後から、本当に突然響き渡った。 驚き、振り返った二人の前にいたのは――――影のような男。 本当に今の今まで、彼が存在する事にまるで気がつかなかった。 果たして何処からか転移してきたのだと言われても、疑う事は無かっただろう。 或いは、ひょっとするとそれは、このカジートの山賊も同様だったのかもしれない。 明らかに視線の先――視野に入っていたはずの空間に、突如現れた人物を、 彼はこの世のものでない物を見るように見つめていた。 何故なら、その腕には既に弓が引き絞られていたからだ。 この距離だ。弓に矢をつがえる前ならば斧を持つカジートに分があった。 だが、既に矢をいつでも発射できるのなら……話は別だ。 よほど下手な射手でもない限り外すことはないだろうし、 そしてこの男が『よほど下手な射手』である事に賭ける勇気は無い。 だがカジートの山賊は、それでも精一杯の虚勢を張って叫んだ。 「なんだ、てめぇっ! 俺の獲物を横取りする気か!?」 「特段、そんなつもりは無いが。 此方としては彼女達を見逃すのと、少し夢味が悪くなりそうでね。 なので止めに入らせて貰った。 良いから早く逃げ出す事をお勧めする。さもなければ君の頭を射抜くだけだ。 ――どちらにしても、手間は大して変わらない」 その最後の言葉――つまり『いつでも殺せた』という一言が、決定打だった。 カジートは泡を食ったように斧を放り出すと、一目散に街道のほうへと走り出していく。 当然の判断だったろう。それは、なのはとフェイトにも良く理解できた。 この影のような男は、最初から見ていたのだ。一部始終を。 そして――……三人が三人とも、その存在に気づかなかった。 どれほどの力量の持ち主だというのか。 ――若干12歳の二人には、とてもじゃないが見当がつかない。 「……やれやれ、まったく。 ガードの奴ら、鹿狩りには熱心な癖をして街道外の山賊退治は……。 君達、二人とも怪我は無いかい? どこの出身だか知らないが、街道や街から離れない方が良いぞ」 そう言いながら近づいてくる男に対して、二人は礼を言うべくその顔を見上げ――そして固まった。 クロノ君。確かにクロノ君の言うとおり、この世界は色々とわからないことが多いみたいです。 だって、その、さっきの猫さんにも驚いたけど――この人。 助けてくれたし、すっごく優しそうな声なんだけれど、そのお顔が――……。 「「……蜥蜴さん?」」 ……アルゴニアンだ、と蜥蜴頭の男は、苦笑しながら訂正した。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/39.html
魔法戦記リリカルなのはForce第0話 魔法戦記リリカルなのはForce第1話 魔法戦記リリカルなのはForce第2話 魔法戦記リリカルなのはForce第3話
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/980.html
リリカル遊戯王GX クロス元:遊戯王GX 最終更新:08/01/17 第一話「異世界デュエル!? ハーピィ・レディVS機動六課!」 第二話 魔法とデュエルと謎の敵なの! 第三話 飛べスバル! ペガサスに乗る魔法拳士! 第四話 潜水艦の罠! 打ち破れディバインバスター! 第五話 ゾンビ生徒の恐怖! 駆け抜けろライトニング! 第六話 最高の最悪 エリオVSスバル! 第七話 レイ救出作戦! 恋する相手はなのはさん!? 第八話 恐怖のバーンデッキ! 守り抜けブラストフレア! 第九話 学園分裂!? 腹ぺこデュエル! 第十話 キャロの決意! 突き抜けろスターズ! エーストライカーズ クロス元:リリカルなのはA s(A sとStSのクロス) 最終更新:07/12/29 第一話 拍手感想レス :このクロス待ってました、覇王VS魔王希望。 :いつも楽しみにしてます。異世界編、誰かが翔を殴り説教展開希望です。3期放映当時、傍観者気取りで、クアットロといい勝負で嫌われてましたからね…。 :レインボードラゴンを目にしたキャロのリアクションが楽しみです。 :捕獲したならバインドよりなにより、デバイス取れよ。 TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2171.html
時空突破グレンラガンSTrikerS クロス元:天元突破グレンラガン 最終更新:09/11/14 第01話「あたしを誰だと思ってる!!」 第02話「貴様の気合いを見せてみろ!!」 天元突破リリカルなのはSpiral クロス元:天元突破グレンラガン 最終更新:08/09/02(更新停止) 更新停止のお知らせ 諸事情から「リリカルなのはSpiral」の執筆に詰んでしまい、色々と悩んだ結果、この度「グレンラガンStrikerS」という形で再スタートさせて頂くことにしました。 リメイク作品の執筆開始にあたり、申し訳ありませんが「リリカルなのはSpiral」の更新は停止させて頂きます。 長い間ご愛読ありがとうございました。 プロローグ「わしを……誰だと思っている!!」 第1話「貴方は、何者なんですか?」 第2話「軽くこれまでのおさらいしとこーか」 第3話「あたしの拳は天を突く!!」 第4話「二人合わせてラゼンガン」 第5話「皆さん、螺旋研究所へようこそ」 第6話「色々と波乱万丈やね、うん」 第7話「これからウチらの向かう先には……何かあるで」 第8話「騎士はやて……貴女は、卑怯だ……!」 第9話「一緒に飛んでみませんか?」 第10話「ジェイル・スカリエッティ……!」 第10.5話「初めて会っていきなりだけど、一緒に頑張ろうね」前編 中編 後編 完結編 第11話「スバル達は強くなるよ」 外伝「そんな、優しい夢を見ていた」前編 中編 拍手感想 :グレンラガンとのクロスオーバー とてもおもしろいです! 更新楽しみにしています。 :漢女(おとめ)の魂完全燃焼キャノンボールアターーーック!!! :逃げるんだよぉぉぉ!!スモーキー!! :リニアを止めるって操縦はどうすんだよ!『パイロット』を!あんたらここまで来てこんな大切なこと忘れてどうする気だ!ヒヨっ子のオレたちの誰が操縦できるって言うんだ! コメント欄です 感想や応援メッセージなどをお気軽にどうぞ(無名コメントも可能です) 久々の最初から見直しました 武装隊ノリノリ過ぎww -- 名無しさん (2008-09-05 17 14 30) シモンは今二十代?それともオヤッさん? どっちにしても燃えまくる!!! 続き頑張って下さい!! -- 名無しさん (2008-09-06 21 31 36) グレパラ最終回、もしくは劇場版アバンを見てしまうと、スバルと共に戦うことになったラゼンガンが、けだし意味深ですね ロージェノム…! -- へまむしN (2008-09-17 03 30 51) ふと・・・この世界のレジアス中将は螺旋の戦士として大暴れしているような気がしたw -- 名無しさん (2008-10-11 06 16 33) 「燃える展開」という言葉はこの作品のために生まれて来たのだ、と確信しました。 -- 携帯から失礼します (2009-01-06 13 42 12) 超天元突破ラゼンガンは、緑色に輝く宇宙規模のマントだけ全裸スバル………ゴクリ -- 名無しさん (2009-04-27 04 37 11) いやぁ、スバルは、グレンラガンに対してまったく違和感ないね〜 口上絶叫してる姿がありありと想像できる魔法少女も、どうかとおもうが -- 名無しさん (2009-11-18 09 00 55) 流石スバルはもちろん、エリオあたりも親和性が高そう、新作も応援してます。がんばってください -- 名無しさん (2009-11-27 16 14 30) 読ませてもらいました。グレラガキャラとスバルのクロスコンビ、どこまで行くか楽しみです!グレラガSTS!! -- 999 (2009-11-29 01 52 19) 名前 コメント TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/strikersonj/pages/4.html
故に我あり ストライカーズオンラインで起こったことを記録していこうで
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2328.html
――平凡な小学生だった私、高町なのはに訪れた突然の事態。 渡されたのは赤い宝石。手にしたのは魔法の力。 出会いが導く偶然が今、光を放って動き出していく。 繋がる想いと、始まる物語。 それは魔法と日常が並行する日々のスタート。 だけどそれは、決して私だけに訪れた事態じゃなかった。 彼に渡されたのは護符。手にしたのは自由な世界。 日常と冒険が並行する日々の始まり。 でも彼が手にした出会いは、本当に儚いもので。 その事を私達が知るのは、もっとずっと後のことで。 ――今はただ、この偶然が導いた出会いに、感謝するばかり。 魔法少女リリカルなのはThe Elder Scrolls はじまります。 「……ふむ。とすると君達は、そのミッドチルダとかいう場所からシロディールまで旅をしてきたのか」 「ええと、まあ……そんな所、なのかな?」 「聞いたことがない地名だが……モローウィンドよりも遠い所って言うんじゃ、仕方ないか。 それにしては旅慣れていないように見えるが……。 山賊やらカジートやらもいないような所なのかい、そのミッドチルダは?」 「にゃははは……うん。そんな所です」 それはまた随分と辺境なんだなと呟くアルゴニアンに、なのは達は苦笑いを浮かべた。 実に奇妙な一行だった、と思う。 女の子二人にアルゴニアンが一人。 タムリエル広しと言えども、好んでアルゴニアンと接したがる人はそういない。 かつては奴隷であり、未だに多くが泥沼の近くで原始的な生活を営んでいる、被差別種族なのだから。 勿論おおっぴらに差別される事は無いが、見目の悪さと相俟って潔癖症な帝国民からは嫌われている。 先ほど彼女達が出会ったカジートの山賊も知っていたように、レヤウィンの伯爵夫人に関する噂もある。 曰くレヤウィン城の地下には秘密の拷問部屋があるだとか、 曰く目をつけられたアルゴニアンやカジート達は生きて帰れないだとか、 曰く血の淑女なる人物が全ての拷問を取り仕切っているだとか、 まあ、多くの人は噂話だとして片付けているのだけれど。 そう言った噂が流布すること事態、如何に異種族を嫌う人間が多いかということの証明と言える。 なのはとフェイトが出会ったアルゴニアンは、奇妙なことに自らを行商人と名乗った。 何でもブラヴィルで仕入先の人と、取引をした帰りだったそうだが――……。 アルゴニアンの行商人なぞ、滅多にいるものではない。――人に嫌われている種族だからだ。 とはいえ、二人はその事を『奇妙』と思わずに受け入れた。世界の常識にはとことん疎い。 それに何よりこのアルゴニアン。不思議なことに人を惹き付ける何かがあった。 こうして共に並んで旅をしていると、それが良くわかる。 仕立ての良い緑色の衣服。動きやすそうな革のブーツ。 首から下げた宝石や、両手の人差し指に一つずつ嵌めた指輪も、 あまり自己主張をせず、綺麗に纏まっている。 背中に弓矢を背負い、腰に剣を吊るしているとはいえ―― 先ほどのように盗賊に襲われることを鑑みれば、当然と言えた。 「シェイディンハルまで品を運ばなきゃならないんだがね。 久々にレヤウィンから大回りしようかとも思ったが、まあ帝都に向かって良かったよ。 まったく、街道から離れたところを旅するなんて――女の子のやる事じゃあないぞ」 つまり二人にはブラヴィルもシェイディンハルもレヤウィンも、どんな都市なのか見当もつかない。 それにしても、話を聞くだに物騒な世界である。 山賊が蔓延り、怪物が闊歩し、世間に危険が満ち溢れていて。 ミッドチルダや地球といった、治安の良い世界に暮らしていた二人には、ちょっと想像できない。 「にゃはは……。道を五分も歩けば山賊に出会うって、ちょっと大げさな気もするけれどねー」 「大袈裟なもんか。私が旅に出たばかりの頃は、それはもう酷かったんだぞ。 まあ、さすがに帝都の近くまでくれば治安も良いが――衛兵が巡回しているからだな、結局は」 「……………あの、アルゴニアンさん?」 「うん? どうかしたか、フェイト」 「地図とかって、持って無いですか? シロディールの」 「そりゃあ私は持ってるが――そうか。二人は持ってないのか」 はい、と頷くフェイトに対し、ふむと考え込むアルゴニアン。 「別に見せるのも、渡すのも構わんが――どちらにしろ、もう少し後にした方が良いだろうな」 そう言って彼は、ちらりと視線を空に上げる。 つられて二人も見上げると、もう夕焼けも過ぎ去り、夜が迫ってきているのがわかった。 また、その空の美しさに息を呑む。 夕焼けが端の方から暗くなっていき、煌く星の瞬きが徐々に鮮明になっていく。 その数は、とてもではないがミッドチルダや海鳴の比ではない。 文字通り『満天の星空』と言ったところか。 そして何よりも目を引くのは――大きな二つの月。 彼女達が知っている月というのは勿論一つで、白や黄色なのが普通だったが、 このタムリエルで見える月は二つ。それも様々な色が混じり合った、奇妙な美しさを持っているのだ。 「う、わぁ……」 「凄い――綺麗」 「……もう遅い。この先に私の行き付けの宿がある。 どうせ今から帝都に向かうには夜通し歩くか、途中で野宿だろう。 其処に泊まろうと思うのだが、どうだ?」 二人から拒絶の言葉がでる筈もなかった。 ―――宿屋『不吉の前兆』。 あまりにも、あまりな名前である。 ましてや、かつてその宿で凄惨な殺人事件が起きたとなれば、だ。 何でも泊まっていた老人が、何者かによって刺殺されたのだとか。 その鮮やかな手並み、そして老人が何かに怯えたような素振りを見せていた事から、 此度の殺人事件は、ある集団の手によるものだと実しやかに囁かれている。 曰く――暗殺組織『闇の一党』の仕業だ、と。 だが、そんな事情があるとなれば、宿屋の辿る運命は二つに一つ。 つまり寂れるか、栄えるか、という至極当然の二択であり、 幸いにも『不吉の前兆』が辿ったのは後者であった。 近くにある宿屋『ファレギル』が街道から少し逸れた場所にある事も手伝って、 この小さな、個人経営の宿屋はそれなりに繁盛をしているらしい。 ランプの明るい橙色の光に照らされた室内は、活気に溢れていた。 食堂には数人の客が思い思いに食事を楽しみ、酒を飲み、 店主はその光景を楽しそうに眺めている――と言った具合だ。 新たな客の存在に意識を奪われた店主は、其の人物が常連客であることを認めると、 その顔に満面の笑みを浮かべ、両手を広げて迎え入れた。 「やあアルゴニアン、よく来てくれたね!」 「ああ、相変わらず盛況なようで何よりだ。――二部屋頼めるかい?」 「二部屋? そりゃ構わんが――ああ、後ろのお嬢ちゃんがたは、あんたの連れか」 「そういう事だ」 「…………娘か?」 「馬鹿を言え、アルゴニアンにインペリアルの娘がいるものか」 そんな和やかな会話の末、あっという間に宿泊の手続きが進むのを見て、 なのはとフェイトはある事実を思い出し、慌てて口を挟もうとした。 理由は明白だ。 『この国のお金が無い』 それを言うと、アルゴニアンは笑った。 「子供がそんな事を気にするものじゃあない」 という訳で、あっという間に二人は寝室に放り込まれていた。 『子供は寝る時間だ』という事らしい。 12歳ともなれば、九時や十時に眠るという事に多少なりとも抵抗は感じるのだが、 ――とはいえ、其処は女の子が二人。パジャマに着替えた後は自然にお喋りの時間となる。 寝台――小さなものが一つ。とはいえ少女二人ならば十分な大きさだ――の上に座り、 先ほどアルゴニアンから手渡されたシロディールの地図を広げ、興味津々といった様子で覗き込む。 「ええっと……帝都は、この真ん中の湖に浮かぶ島、だよね」 「たぶん。それで街道を南東に下って――川沿いのブラヴィル。海まで行くと、レヤウィン」 「其処から川の対岸に出て、ずーっと北上すると――帝都の東側に、シェイディンハル、かー。 アルゴニアンさんって、こんな長い距離を歩くつもりだったんだね」 大雑把な地形の上に街道と、各地の大都市の位置だけが記された地図を見ながら、 移動中に彼の語った土地の場所を確認していく。 『空を飛ぶ』という概念の無いらしいこの世界において、この距離を歩くのは中々に堪えそうだ。 とはいえ行商人ともなれば、やっぱり方々を歩き回るのだろうし、然程の苦労でもないのだろうか? 「……そうだ。ねえ、なのは。気づいてた?」 「うん? 何のこと?」 「あの人、行商人って言ってたけど――『売るほどの荷物』を持ってなかった」 「…………」 言われてみれば、だ。 仕入先の人と取引をした、という事はそれなりの『商品』を持っていなければならない。 だが――彼はそんなに大量の荷物を持っていただろうか? 否だ。勿論、旅人の常として背負い袋は持っていた。 だが……その中に売り物が入っているとは、到底思えない。 「……それに、助けてもらった時もだけど。 ただの行商人が、あんな風に気配を消せるのかな……」 「……でも、この世界は物騒だって言ってたよ。 それにアルゴニアンさんが何を売ってるのかにもよるんじゃないかな? ひょっとしたら、凄く軽い物なのかもしれないの」 「それは……そうだけど」 押し黙る二人。 やがて出た結論は『まだこの世界の事をよく知らないから』だった。 違和感は感じる。奇妙だと思う。 だがそれは、この世界では普通なのかもしれない。 ――それに悪い人じゃなさそうだし。 「……そう、だね。少し考え過ぎてたかもしれない」 「そうそう、一日歩いて疲れちゃったんだよ、きっと。 ――今日はもう、寝ちゃおうか」 「うん……おやすみ、なのは」 「おやすみなさい、フェイトちゃん」 フッと蝋燭の火が吹き消され、 二人にとって『初めての日』は、ゆっくりと過ぎて行った……。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1446.html
『マルディアス』。神々の戦いで一度死に、そして千年の時をかけて蘇った世界。 今この世界では、千年前の戦いに敗れ、封印されていた邪神『サルーイン』が復活しようとしていた。 魔物やサルーインの信徒が起こしていた幾多の事件。それらはやがてサルーイン復活へと繋がる。 世界は再び、千年前のような混沌の時代へと移り変わろうとしていた。 しかし、サルーインと戦う者達は確かに存在していた。 神々が創り上げ、英雄『ミルザ』へと与えられた十の宝石。それらはとある五人の運命を絡め取り、サルーインとの戦いへと駆り立てた。 灰色の長髪をした剣士『グレイ』。 迷いの森を守る弓使いの少女『クローディア』。 エスタミルを根城とする盗賊の少年『ジャミル』。 三角帽を被った術士の女性『ミリアム』。 トカゲの姿をした亜人『ゲッコ族』の戦士『ゲラ=ハ』。 彼らは現在、かつてミルザが神々に認められるために行った試練……通称『最終試練』に参加している。 その内容は、試練の地で十二体の強大なモンスターを打ち倒し、祭壇まで辿り着く事。 そして今、彼らは十二体目のモンスターである金色の龍『ゴールドドラゴン』との死闘を繰り広げていた…… 魔法少女リリカルなのは ―Minstrel Song― Event No.00『最終試練』 【十字斬り】 グレイが刀を振るい、金の巨躯へと十字の傷を付ける。 刃渡りは長く、切れ味も十分。それなのに大したダメージを与えられていないらしく、龍が傷をものともせずに接近。 そのままグレイへと牙を剥き、喰らいつく。 【かみ砕く】 その牙の鋭さは、かつて戦った同種の ―但しこちらの方が遥かに強いが― モンスターで身をもって味わっている。 それ故にこれは喰らってはいけないとすぐに理解し、チッと舌打ち。そのまま刀で受け止めた。 龍と人間の力には元々大きな差があり、それはこれまでの戦いで鍛えられたグレイでも例外ではない。せいぜい三秒もてば良い方だろう。 「クローディア、援護頼むぜ!」 だが、このメンバーにはそれで十分だ。 ジャミルが愛剣『エスパーダ・ロペラ』を手に、高く跳び上がる。その後方には『藤娘』に矢をつがえるクローディアの姿が。 そのままジャミルは近くの岩を蹴り、ゴールドドラゴンへと飛びかかる。それと同時に矢が放たれた。 【ホークブレード】 【プラズマショット】 【連携:ホークショット】 ジャミルの剣がゴールドドラゴンの背を掻き斬り、そこにクローディアの矢が直撃。 いかにゴールドドラゴンといえど、傷口にプラズマショットという電流付きの矢を撃ち込まれればたまったものではない。 そのダメージから思わず牙を離し、その間にグレイが離脱する。そしてその隙にゲラ=ハが自身の持つ槍『マリストリク』をドリルのように回転させながら接近した。 【螺旋突き】 突っ込んでいったゲラ=ハが傷口へと槍をねじ込んだ。それも先にグレイが付けた十字傷へのピンポイント攻撃。 さすがに傷口への攻撃は効くらしく、結構なダメージはあるらしい。 だがその代償として、ゴールドドラゴンを本気で怒らせてしまった。これはかなりまずい状態だ。 大きく咆哮し、首を空へと向けるゴールドドラゴン。その口からは炎が漏れ出している。おそらくブレス攻撃が来るだろう。 それを阻止すべく駆けるゲラ=ハ。だが、一足遅い。 【火炎のブレス】 辺り一面を焼き払うほどの炎が吐き出された。 その炎はグレイ達へと直撃し、死にはしないまでも多大なダメージを与える。無事だったのはあらかじめ炎の盾の術『セルフバーニング』を使っていたミリアムくらいだろう。 中でもゲラ=ハは前に出ていた分、より大きなダメージを受けていた。先に復活の術『リヴァイヴァ』を使っていなければそのまま倒れていただろう。 「……さすがに最終試練の最後の一体。強いですね」 そう言いながらマリストリクを構えるゲラ=ハ。それに対し、グレイが言葉を返した。 「ああ……だが、時間は稼げた。ミリアム、やれるな?」 【スペルエンハンス】 グレイが振り向いた方向では、先程からミリアムがスペルエンハンスで魔力を高めている。 今使った分のスペルエンハンスがかかると同時にミリアムが気付き、そして答えた。 「大丈夫、これならやれるよ!」 そう言うと同時に、ミリアムに大量の魔力が集まり、それが龍の真下で形を成す。 それは巨大な炎の玉。それがゴールドドラゴンの真下からせり上がり、そして飲み込む。 【クリムゾンフレア】 その炎……いや、クリムゾンフレアが龍を飲み込み、少し地上から離れたところで停止。その上には巨大な陣が形成され、少し遅れて炎が爆発する。 だが、クリムゾンフレアはそれだけでは終わらない。爆発の後に上空の陣が巨大な火柱を落とすという大仕掛けが残っているのだから。 爆発と同時に五本もの火柱が巻き起こり、ゴールドドラゴンを灰燼へと変える……それで本来は終わりのはずだった。 だが、まだ終わらない。ゴールドドラゴンとはここまでやられてもまだ戦えるほどのタフネスを持っている。 「嘘、あれで倒れないの!?」 さすがのミリアムも驚きを隠せない。まあ、無理もないだろう。 何せ自分が持つ限りで最高クラスの威力の術を喰らって立っていられる相手だとは思わなかったのだろうから。 だが、それでも相当弱っているのが見て取れる。倒すなら今だ。 それを理解したのか、クローディアがすぐさま藤娘を構え、グレイとジャミルに指示を飛ばした。 「グレイ、ジャミル、私に合わせて」 そう言うと、すぐさま矢の速射を撃ち込む。それに合わせてグレイとジャミルが追撃。 上空から見れば、この三人がまっすぐ一列に並んでいるのが分かるだろう。 ……そう、ちょうど竜騎士から教わったあの陣形のように。 【龍陣】 その並びに反応したかのように、ゴールドドラゴンを中心とした光の円が地面に形成される。 これこそが『龍陣』。それぞれの連携の末に龍が追撃するという陣形だ。 そこからすぐにグレイが動き出し、次々と連携を決めていく。 【龍尾返し】 【三星衝】 【サイドワインダー】 【連携:龍尾三星ワインダー・龍牙】 まずグレイが懐に飛び込み、ナナメに一閃。そこから横にまた一閃。 そこからジャミルがゴールドドラゴンの急所といえる位置……すなわち、グレイとジャミルによって付けられた二つの傷口と、龍尾返しで新たにできた傷口にほとんど同時に突きを見舞う。 さらにその箇所を性格に狙い、クローディアが蛇のように曲がりくねった軌道の矢を放つ。それは見事に命中した。 そしてここからが龍陣の真骨頂。一頭の巨龍が下から現れ、ゴールドドラゴンを巻き込んで徹底的に大暴れしていった。 さすがにここまでやられて戦えるほど、ゴールドドラゴンはタフではない。 その場でグラリと崩れ落ち、そして倒れた。 決着から数分、彼らは最奥である試練の祭壇へと辿り着いていた。 階段を上り、祭壇を視認。それと同時に、彼らにここのことを物語として教えた吟遊詩人も視認。 ただし、吟遊詩人はいつもとは違い、どこか人間離れした雰囲気を漂わせている。 ……ここまで来れば、この吟遊詩人がただの人ではないことが容易に想像できるだろう。 「お前はいったい何者だ?」 ならばこの男は一体何者なのだろうか。それを疑問に思ったグレイが問う。 それに対し、詩人は答えずにただ笑顔で自分の思っていたことを口にした。 「グレイ、そしてその仲間たち。君達がここまで来ると信じていたよ」 その口調もいつもの敬語ではなく、まるで父親が子供に語りかけるような言葉。 それがグレイの頭にとある可能性を叩き出させる。普通なら誰も信じないような、そんなとんでもない可能性を。 「……まさか」 「そう、私は光の神。神々の父『エロール』だ」 ……どうやらたった今叩き出された可能性は大正解だったらしい。 何故吟遊詩人……いや、エロールが人間として生きているのかはこの際置いておくとしよう。考えても仕方が無いのだから。 それより他に気になることがあるらしく、クローディアが階段を下りるエロールへと聞いた。 「貴方はサルーインより強いのでしょう? ならば何故、自分で戦わないの?」 かつての神々の戦いの時、サルーインとその兄弟……伝説上は『三柱神』と呼ばれているのだが、それらがエロールと戦い、そして敗れた。 三柱神のうち、長兄『デス』と末妹『シェラハ』はその時に降服。しかしサルーインだけは最後まで戦い続けた。 エロールがミルザに宝石を与えたのはその後、すなわちサルーインただ一人を残した時であった。 そこからでも分かるように、三柱神のうち二人を降服させるほどの力を持つのがエロールだ。 ならばエロールが戦えば勝てる。なのにそれをしない。それを疑問に思った結果が今のクローディアの問いである。 エロールはその歩みを止めず、階段を下りながらクローディアへと答えを返した。 「……かつて神同士の戦いがあった。そのとき世界は一度死んだ。それほどに神の戦いは激しいのだ。 私は二度と世界を死なせたくない」 千年前の神々の戦い。それは世界を一度殺すのには十分過ぎる程の規模だという。 エロールはそれを分かっている。だからこそ、自身がサルーインとの戦いに赴かないというのだ。 「なるほどな。でも、俺達じゃサルーインには勝てないかもしれないぜ?」 ジャミルが軽口を叩きながら階段を下りる。それに合わせて他の四人も一緒に下りていく。 「人には自分の運命を自分で決める権利がある。 サルーインの復活を傍観するか、サルーインを打ち倒すか、それともサルーインに敗れ去るか。全て自分達で選ぶことができる」 既に階段の一番下の段に辿り着いていたエロールが言葉を返す。 少なくともこの五人は、サルーインと戦う道を選んでいる。だからこそこの言葉を贈ったのだろうか。 やがてグレイ達五人も階段の一番下へと到達。そしてミリアムはその場で立ち止まった。 「本当は、もう結果が分かってるんじゃないの? やれるかどうかも分からないのに、あたい達に任せるとは思えないもん」 ミリアムが笑ってそう聞く。確かに、勝てるかどうかも分からない……というより、負ける公算の高い戦いをさせるとは思えない。何しろ、負ければ世界が危ないのだから。 だが、その問いはエロールが横に首を振ったことで否定された。 「神々とて、それほど先のことがわかっているわけではないよ」 そう、たとえ神々でも未来というものは分からないのだ。 封印したことによってサルーインの憎しみが増すとは予想していなかった。 サルーインが『ミニオン』という使い魔達を生み出すとは思っていなかった。 かつての戦いで生み出し、ミルザへと与えた宝石『ディステニィストーン』が世界を混乱させるとは思わなかった。 「……全て、私の失敗だよ」 心底悔やんだような顔(帽子と髪型でよく見えないが)でエロールが言う。 未来が分かっていれば、このような失敗もしなかった。そしてその失敗の結果がサルーインの復活だ。 「勝敗はやってみなければ分からない、そういう事ですか……荷が重いですね」 「だが、やるしかない。エロール、俺達が負けても文句は言わせんぞ」 ゲラ=ハの言葉にグレイが言った。それを聞いたエロールが笑顔で答えを返す。 「私はこの世界そのものと、世界に存在する全てのものをいとおしく思っている。 どのような結果も、受け入れるだけだ」 「さて、サルーインの居場所ですが……実を言うと、今はこの世界にはいません」 吟遊詩人の口調に戻ったエロールが、サルーインの居場所を言う。が、それはあまりにも理解しがたいことだった。 もっとも、いきなり『実はこの世界にはいません』というのは驚かないほうが不思議だろうが。 「何だと? それは一体どういう意味だ」 いきなり突拍子の無いことを言い出すエロールにグレイが問い返す。 見れば他の面々も全く理解できていないような表情。中にはジャミルのように「それはひょっとしてギャグで言ってるのか」とでも言い出しかねない表情の者までいる。 だが、エロールは全く動じずにその続きを言う。 「グレイ達が動いているのを感づいたのでしょう。どうやら数日前に異世界へと飛び去ったようです。 おそらくは妨害されないよう、異世界で復活を遂げてからこちらへと戻ってくる……そういうつもりでしょう。 もっとも、転移に使ったエネルギーを取り戻すだけの時間だけ復活は遅れるでしょうが」 サルーインにそのような芸当ができたとは初耳である。千年前の戦いの記録にも、そのような事は載っていない。 だが、事実サルーインは異世界へと飛んでいる。ならば追って復活を阻止、最悪の場合復活したサルーインを打ち倒す必要があるのだ。 「消耗したエネルギーの分だけ復活が遅れると言いましたね……具体的にはどれ程遅れるのですか?」 「……長く見積もっても、あちらの時間で数ヶ月といったところでしょう」 サルーイン復活まであと数ヶ月の遅れが出る。異世界に向かい、探して打ち倒すには十分な時間だろう。 その頃には彼らの中に異世界行きを迷う者など誰一人としていなかった。 ……まあ、どうやって行くのかを一切考えていなかったが。 「私が一度あなた方を地上へと送ります。準備が済んだら北エスタミルのパブまで来て下さい。 そこから私の力でその世界へとお送りしますし、決着がついた頃にそちらへと迎えに行きます」 数日後、北エスタミルで謎の光が確認された。 その光の正体は無論、エロールがグレイ達を異世界『ミッドチルダ』へと送るための力である。 「頼みましたよ、皆さん……」 彼らがいなくなった北エスタミルで、エロールは一人呟いた。 そしてグレイ一行とサルーイン、そして『機動六課』と『ジェイル・スカリエッティ』を巻き込んだ物語は……ここから始まる。 目次へ 次へ