約 5,503,376 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3432.html
* 一見して工事中だと分かる、鼠色の幌で覆われたビル。 散乱するように置かれた機材は、建設中というより建設中止を思わせるものだ。 しかし敷地外に立て掛けられた看板は綺麗な形を保っており、どこかちぐはぐな印象を抱かせる。 だからだろう、クラナガンの市民も無意識下でビルを避けるようにしているのか、人通りがなかった。 そんなビルの中に入れば、このビルの謎も明らかとなるだろう。 中は、未だ屹立していることが嘘であるかのように、墓標の如く折れた鉄骨が突き立つ廃墟そのものだった。 「チッ、やらかしてくれちゃって」 巧妙に折れていい鉄骨だけが折れ、柱となる鉄骨だけが辛うじて生き残っていた。 逆にそれ以外が折れ過ぎて、もはや下手に触れることすら危うい状況でもあった。 「せっかくの二号店を入れるビルを壊してくれるなんて、あの科学者には借りが出来ちゃったなぁ」 その中心で、軽薄な笑みを浮かべる少年が一人。 彼はその廃墟の中にチャラチャラした服装を纏って立っている。その姿に威厳はない。 にも拘らず、彼はやはり王者だった。 「アイツには悪いけど、アレはボクの獲物だ」 一瞬その姿に。 ヘラクレスオオカブトの戦士が、ブレるように重なった。 リリカル×ライダー 第十七話『決意』 すぅすぅ、という空気の出入りするような細い音が耳に入る。雲のかかったような頭を必死に回転させ、視力を回復させていく。 俺が目覚めて最初に視界を埋めたのは、なのはの寝顔だった。 混濁する頭で四方を見渡しながら体を起こす。どうやら医務室のベッドに寝ているらしいことと、なのはが付き添ってくれていたことが分かった。 (俺は……確か……) 記憶を遡るように探る。そして掘り当てた。俺がこんな場所で寝ている、その理由が。 「俺は、負けたのか――」 ジェイル・スカリエッティ。 いや、レンゲル・ジャックフォームに。 橘さんとの一件を切っ掛けに僅かだが思い出した十五年前にあったバトルファイトの記憶。 その断片的な記憶によると、あの時ブレイド、ギャレンはラウズアブゾーバーを所持していたが、レンゲルは持っていなかったらしい。 つまり、俺はレンゲルの強化フォームについての知識が一切ないのだ。これが初見ということだろう。データで見たという覚えもない。 奴自身が強いとは考えがたい。アイツは科学者であって戦士ではないからだ。ということは、レンゲルのベルトがそれだけ強力ということに違いない。 「チェンジデバイスに、何かデータが残っているかもしれない」 魔法関連の知識は薄いが、スカリエッティがレンゲルのベルトを魔法で再現していることだけは分かっている。 やはりあのカードはラウズカードを魔法で擬似的に模倣したものに違いない。調べれば、何か調査の手掛かりになるかもしれない。 「うぅん……あれ、カズマ君?」 そうして立ち上がりチェンジデバイスを取りに行こうとした所で、俺はなのはに呼び止められた。 「ひどいよ、何も言わずに置いていこうとするなんて」 「いや、起こしちゃ悪いかと思って」 本当はすっかり忘れていただけなのだが、流石にそれを素直に言うのは不味いな。 「カズマ君、ホントはわたしのこと忘れるくらい考え事に没頭してたでしょ」 「うっ……悪い」 なのはにはしっかり見抜かれていた。 そこで訪れる沈黙。口下手な俺には対処しようがない空気。というより、流石に今ので悪いと思っていたので、口を動かすのも躊躇ってしまったのだ。 「――ねぇ、カズマ君」 そんな沈黙を破ったのは、他ならぬなのは本人だった。 「ヴィヴィオとは、よく遊んでるよね?」 「ああ、まぁな。俺は子供苦手だけどな」 急な話題に戸惑いながらも思い出しながら苦笑する。 昔は苦手でもなければ特別得意ということもなかったはずだが、十五年の月日がその能力を劣化させていた。 だがなのはにとってそんなことはどうでもよかったのか、反応はなかった。 「わたしね。カズマ君がヴィヴィオに近付く時……よく、ジョーカーと被って見えるんだ」 「――――嘘、だろ」 心臓が止まるような台詞だった。 「大丈夫、多分わたしだけだよ。幻覚でも見てるってことかな」 何が大丈夫なものか。 自分の娘と怪物が一緒に遊ぶ光景を幻視する。なのはの言うことは、そういう意味だった。そんなの、普通ならまともに見ていられない。 「恐いの、わたし」 「……悪い」 「違うの、カズマ君がじゃないよ」 俯いて前髪が垂れているため、なのはの表情は見えない。けれど、例え顔を上げていても直視することは出来なかっただろう。 悲痛な声が、それを感じさせた。 「わたしね、恐いの。ヴィヴィオに誰かが危害を加えるかもしれないってことが、堪らなく」 ヴィヴィオは聞いた話によるとJS事件でスカリエッティに誘拐され、事件に利用されたらしい。多分怖い思いもしただろう。 恐らくなのはが想像しているのは、そのことだ。 彼女が過保護になるのは多分、ヴィヴィオが可愛いから、なんて理由だけじゃない。 ヴィヴィオは他人に命を狙われる特殊な能力を持っているらしい。そのことが、なのはの不安を増大させているのだ。 「怪我してから、わたしは弱くなった。昔でさえヴィヴィオを守ってやれなかったわたしが、更に弱くなったの」 確かその傷は未だに完治しておらず、また治ることのない後遺症を残すらしい。そのせいで昔よりも魔力精製量が減ってしまったそうだ。 弱体化。 戦士でありヴィヴィオの保護者であるなのはにとって、それは致命的なことだった。 肉体的な意味合いだけではなく、精神的な意味でも。 「わたし、管理局を辞めようって、思ってるんだ」 女の子として心配だった体への傷痕は幸い残るわけじゃないらしいが、なのはにとってはそんなことはどうでもいいのかもしれない。 彼女にとって重要なのは、人を、そしてヴィヴィオを守れるかどうかだけなのだから。 「なんかそう思うと真面目にするのも馬鹿らしくなって、気分転換にヴィータちゃんをからかったりしてみたんだけど……」 「なのは……」 「……ダメだね。やっぱり上手くいかないや」 はやてだって最近のなのははおかしいと言っていた。恐らくもっと付き合いの古いらしいフェイトは初めから気付いていた。 もしかしたら、フェイトはなのはのことを考えて俺に優しくしてくれたのか――いや、そんな考え方は失礼だな。 とにかく、なのはが本調子じゃない理由は、これでハッキリした。 「なのはは、何のために戦っているんだ?」 「たくさんの人を助けたいからだよ」 俯き、沈み込んでも淀みなくすらすら出てくる戦いの理由。九歳から戦い続ける少女が秘める信念。 たとえ繊細そうに見えようと、可憐な少女であろうと、彼女は信念のために戦う戦士だ。だからこそ、その信念は何よりも彼女を支えるもののはずだ。 それは多分、一朝一夕に抱けるようなものじゃない。 「なのはは、今どうしたい?」 「ヴィヴィオを・・・・・・守って、あげたい」 少し涙ぐんでいるのか、最後の語尾が少し震えていた。 今、なのはは悩んでいる。不特定多数の他人を守るか、それとも大切な一人を守るかという、究極の選択で。 俺には特別な後者がいなかったからなのはの悩みは分からない。けれどそれは、どちらかしか取っちゃいけないものなのか? 信念と親愛、それは両立させることが出来ないものなのか? 「なのは」 「……なに?」 「俺を、俺達を――信じてくれ」 「…………え?」 なのはが顔を上げる。想像通り、見るのが辛くなるほど目を真っ赤に腫れさせ、頬を幾筋の透明な線が埋めていた。痛々しいくらいに。 その濡れた瞳を直視する。そうだ、俺には、真っ直ぐ何かを叫ぶことしか出来ないんだ。 だから、目を逸らさず真っ直ぐぶつける。 「なのは一人じゃ無理なら、皆で守ろう。ヴィヴィオも、助けを求める人達も」 「カズマ、君……?」 「なのは、もっと俺達を信じてくれ。なのは一人で抱え込まず、皆で助け合えば、きっと守れるさ」 俺一人では、それは無理だろう。 だけどなのはには多くの仲間がいる。彼女を支え、共に戦ってくれる戦友が。信頼し合える親友が。 それなら仲間を信じ、共に運命と戦えばいい。彼女一人では無理でも、そうすれば叶うかもしれないから。 「…………あり、がとう」 ぽつり、と。 囁くような声量で、なのはは言った。 「でもね」 だが、それには続きがあった。 「皆には皆にとって大切な人がいるの。だから、そんな頼ったり出来ないよ」 「そんなことはないだろ! フェイトだって、あんなに――」 「フェイトちゃんは確かにかけがえのない親友だよ。でもね、フェイトちゃんには守りたい家族がいるの。だから、わたしの分まで負担してなんて、言えないよ」 なのはが袖で目を覆い、俺に背中を向ける。 「なの――」 「……ごめんね、カズマ君」 ポニーテールを揺らしながら、彼女は脱兎の如く去っていった。 彼女を止めようとした右手は、虚空を掴むのみだった。 ・・・ 「スカリエッティはやっぱりチェンジデバイスの開発者やないんか……」 「はい、今回のチェンジデバイスに入っていた戦闘記録とガジェットの残骸から確信しました」 六課において各員が使用するデバイスの整備、改良、開発を行う通称デバイスルームにて。 チェンジデバイスを持ったはやてがここを訪れてからシャーリーと話し出し、すでに三十分が経過していた。 「はやてさん、チェンジデバイスの主機関、オルタドライブの革新的なところは何だと思いますか?」 「それは……魔力を自力で作れることやないんか?」 はやてが顎に指を当てて考えながら答える。それにシャーリーは小さく首肯した。 そもそもこの話題は以前もしたことであり、またリィンを自力で組み上げたはやてはデバイスにもある程度精通しているため、淀みなく答えは出ていた。 「そうですね。ただ、オルタドライブのように外部電源無しで魔力を作り出す機関は存在しませんが、単純に魔力を作るだけなら私達でも可能なんです。 魔力炉や次元航行艦のエンジンなどがその典型例です」 もちろんオルタドライブのように小型化出来てるわけでもないですけどね、と言っていったん話を締め括るシャーリー。 一方ではやてはシャーリーの答えによってますます分からなくなったのか、考え込んでしまっていた。 「はやてさん?」 「ううん……私にもよう分からんなってきた」 「簡単な話ですよ、魔導師が必ず持つリンカーコアの特性を考えれば」 「リンカーコアの、特性?」 魔導師は必ずリンカーコアを持つ。逆に、リンカーコアが無ければ魔法は扱えない。魔導師とは認められない。 その能力の一つが魔力精製機関としての機能。だがそれだけならカートリッジなど、別の手段で魔力を用意すればいい。 つまり、リンカーコアにはリンカーコアにしかない特別な性質が存在する。 そう、リンカーコアの持つ最大の特性は―― 「――魔法を発動させることが出来ること?」 「その通りですはやてさん! 管理局が魔導師を特別扱いするのはそれが理由です。カートリッジが魔力、デバイスが脳の役割を負担しても、最後のはどうしようもなかったんですね」 「そしてチェンジデバイスとガジェットにはその機能が搭載されている、かぁ」 「はい」 はやてが神妙な顔で何度も頷く。はやてからしても、これは想像以上に厄介な展開だった。 この新技術は、つまるところ管理局による管理体制を揺るがしかねないのだ。 これまではリンカーコア保有者だけ管理しておけば良かったが、この技術が広がれば誰でも質量兵器のように魔法を使えてしまう。 仮にこの技術が解明されて世に公開されれば、管理局の基本方針を根本から変える必要が出てくる。地上本部に提出しなかったのは正解だったらしい。 「でもシャーリー、スカリエッティやないって断言する理由はあるんか? こんな厄介なモン、アイツが持ってるならヤバいと思うんやけどな」 「はやてさ~ん、これでも私、執務官補佐ですよ?」 にやりと笑って眼鏡の端をきらりと光らせるシャーリー。 実は平時においてフェイトの補佐として敏腕を発揮していたりするのだが、それはさておき。 「スカリエッティは、未完成か出来の悪い技術は秘匿し、逆に成功作は積極的に公開しています。この事から、彼は慎重だけど派手なことが好きな性格だと推測出来ます」 ふむふむ、と頷くはやて。 シャーリーもそれに乗って眼鏡の端をくいくいっと持ち上げる。にやっとした笑いも付け足して。 「では問題です。チェンジデバイスを持ったカズマさんが現れたのが三週間前。そして今回のガジェット登場が昨日。 もしチェンジデバイスの製作者がスカリエッティなら、わざわざ御披露目のようにチェンジデバイスより性能の劣ったガジェットを見せびらかすように仕向けると思いますか?」 シャーリーの台詞にはやての顔色が変わる。 それの意味する内容は、シャーリーの軽い口調よりも遙かに重いものだ。 スカリエッティとチェンジデバイス。天才と傑作はとかく繋げやすいもの。しかし、実は天才すらまだ未完成な域にしか到達していないのだとすれば――? はやての視線の先にあるチェンジデバイスは静かに浮かび続ける。中央のクリスタルを光らせ続けながら。まるで、全てを見守るかのように。 「シャーリー! はやては何処・・・・・・って、はやて? ちょうど良かった!」 そこに唐突に訪れる影。現れたのは、現チェンジデバイスの所有者、カズマだった。 ・・・ 「まさか君達の方から訪れてくれるなんて、嬉しいよ」 「くくっ、そっかぁ。確かに似てるね」 地下に作られた巨大なエントランスホールらしき場所で、二人の"者"が対峙する。 そこはとある次元世界にある地下研究所。主はジェイル・スカリエッティ。そう、ここは彼の持つ砦の一つだ。 客人は一人の少年。その名をキングと呼ぶ。 片方は白衣を羽織り、一方はチャラチャラしたアクセを纏う二人の"者"。二人は距離を取って対峙する。 「全く、これでようやく例のカードに関するデータを取れるということだな」 「あっははは! 何言ってるの、君のような出来損ないにボクをどうにかできるとでも?」 チャラチャラした格好のキングはどこまでも見下した視線を向ける。その視線は、正に王である故の余裕そのもの。 彼にとって怖いモノなどない。全ては彼を楽しませるゲームに過ぎない。だからこそ、この狂気の科学者も脅威には含まれない。 その蔑んだ視線に即座に反応したのは、スカリエッティではなかった。 「――貴様、それ以上ドクターを侮辱するなら」 「止めたまえ、トーレ」 すでにグレイブに変身したトーレが、紫の翼――ライドインパルスを展開して高速に迫り、剣を腰から引き抜いてキングの喉元に向けていた。 戦闘機人が持つ特殊スキル、インヒューレントスキルの一つ、ライドインパルス。その高速技とライダーシステムの組み合わせは、強力だ。 一瞬の出来事。だが、それに動じるキングではない。むしろその顔には笑みが浮かんでいた。 「へぇ、面白いじゃん! もう一回やってみせてよ!」 「貴様、喧嘩を売っているのか!」 トーレが菱形のモノアイでキングを睨み付ける。それにはキングは意にも介さず。 「でも、ボクには足りないかなぁ」 「――ッ!」 瞬きする瞬間で、トーレの後ろに回り込んでいた。 その速度は戦闘機人としての処理能力とライダーシステムによる探知能力を持ってしても追いつかない。 「ぐあっ!」 容赦なく蹴飛ばすキング。態勢を崩したトーレから剣を奪い、その頑強な胸部装甲に振り下ろした。 ギギギと耳に残る金属同士の摩擦音。装甲から火花が上がり、そこには荒々しい一筋の跡が走る。軽々しく振るう一撃が、トーレには重かった。 「なるほど。想像以上に厄介だ」 トーレはその程度で引き下がらない。光速の機動力を持って、再びキングに迫る。 流れるようなパンチ、キック。ストレートを打ち込んだ直後に跳ね上げるようなキック、そしてエルボー。コンボとも言える連撃。 だが、ことごとく当たらない。 「クソッ!」 彼女が打ち込むたびに、キングは瞬間移動するようにその場からいなくなっていた。そしてカウンター気味に、奪った剣を叩き付ける! 「グアッ――」 背中の装甲がへしゃげ、負傷しながらも攻撃範囲から脱出した姉の元にセッテが走り寄る。トーレへのダメージは、着実に積み重なっていた。 その光景を、冷ややかにスカリエッティは見つめ、素直な感想を抱いていた。 キングは楽しそうに剣を弄びながらトーレへと投げ放つ。トーレの目の前に、剣は垂直に突き刺さった。 「ボクはキングだからね。個人でも強いけど――あは、そうだ。家臣がいないとつまらないでしょ? 見せてあげるよ」 あっさりと手札をさらすように。 彼の後ろに、四体の怪人が姿を現していた。ライオン、三葉虫、バッファロー、コガネムシの異形達が。 その光景に気圧されたトーレが無意識で数歩引き下がる。絶対的な戦力差。圧倒的な王の軍勢に畏怖するように。 それに対抗するべく、新たに加勢したセッテと共にトーレはスカリエッティの両翼へと並び立った。 「さぁ、ボクとゲームをしようか? 出来損ない」 「フン・・・・・・だが、君達と争い合う前に、一つ話をしておこう」 決して余裕を崩さないスカリエッティ。流石のキングも、その態度には疑問を抱いたのか、表情をしかめる。 確かにスカリエッティには新型ガジェットの軍勢がある。しかしキング達アンデッドにはそんなものはガラクタでしかない。ならばこの余裕は、どこから――? その答えを、スカリエッティは歌い上げるように、告げる。 「私は、君達の洗脳術式を解除する手段を持っている」 レンゲルクロスを天に捧げるように持ち、そう言い放った。 ・・・ 悩むなのはと彼女を救おうと奔走するカズマ。それを嘲笑うように始まる襲撃。誘われるように迎撃へと向かう六課で、なのははどんな決意を抱くか。 一方の不死生物達の王は、狂科学者の元から帰還する。その身の拘束が解き放たれた彼らは、しかし―― リリカル×ライダー 第18話『なのは』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2567.html
第一話『運命の車輪~ホイール・オブ・フォーチュン~』 どんな場所でも、一人くらいは絶対の信頼を置かれている人物はいる。 時空管理局では“エース・オブ・エース”の高町なのは一等空尉等がそれに当たるだろう。 ここミッドチルダ南部にもそんな人物が一人。 だが、その人物の素性を外部の人間が聞いたら驚くのではないだろうか? 男の職業はギャング。 裏の世界の住人が一般市民に親しまれている。 この嘘の様な状況が成り立つのは、ひとえに男の人徳の所以だ。 男はギャングであったが堅気に迷惑を掛けた事は一切無い。 恐喝、闇金、麻薬、人身売買。 これらの全てを男は忌み嫌い、それを行う者全てを許さなかった。 男は決して法を破る事は無い――― 同業者以外の者にではあるが。 ならば何故、男は自らをギャングと呼ぶのか? 理由は単純。 男が他の組織を次々と潰して乗っ取っているからだ。 自分達に害を為すギャングを潰してくれてる上に、本人は人格者。 そんな男を嫌悪する一般市民がいるのだろうか? 彼の人気ときたら法の番人である管理局ですら彼に手出しできないほどであった。 局員の多くがテレビにしか存在しないと思っていた正義のヒーローを敬い。 ギャングと癒着して甘い汁を吸っていた者ですら、市民の反発を恐れて彼を見逃す羽目になっていた。 男がここへ来て半年。 南部にあるほとんどの組織は男によって解体され、市民の心もがっちりと掴んでいた。 男の名はブローノ・ブチャラティ。 ギャングでありながら、最もギャングを嫌う矛盾した存在。 そんな彼の事務所には今日も客人が二人。 「ブチャラティさん! 受かった! Bランク試験受かったよ!」 「そうか、そりゃよかったな」 「まぁ、ギリギリだったんですけどね……」 「それでも合格は合格だ。どれ、ケーキでも奢ってやろう」 「はいっ!ご馳走さんです」 事務所の扉を割りかねない勢いでやってきた来訪者。 はしゃぎながら入ってくる青と、落ち着いた様に見せようとするも今一喜びを隠しきれない橙。 一応ギャングのオフィスであるはずなのに二人は堂々と入ってゆく。 椅子に座って、なにやら地図を眺めているブチャラティ。 彼ももすっかり慣れたの様子で二人に対応する。 「あっ、ちょっと待っててくださいね。お茶淹れますから」 少女、ティアナ・ランスターがお茶を淹れようと走るのを制止するもう一人の少女スバル・ナカジマ。 「はははっ。ティアったら聞いてなかったの? ブチャラティさんがケーキを奢ってくれるんだからお茶は淹れなくていいのよ」 スバルに指摘されて真っ赤になるティアナ。 彼女も十分すぎるほどに舞い上がっていたという事だ。 それを認めたくないが故にティアナは苦しい嘘を重ねる。 「聞いてたわよ!でもね、行く途中に喉が渇くかもしれないじゃないの!?」 だが赤面したままの言い訳は逆効果となり、ついついブチャラティも笑ってしまう。 「ちょっと、ブチャラティさんまで笑わないでくださいよ!」 「すまんな。二人が微笑ましくてつい」 「そうやって私をからかう~」 そうやってむくれるティアナであったがブチャラティにはそんな意図は微塵も無い。 本当に彼は微笑ましく思っているのだ。 かつての仲間と同年代の彼女達が楽しそうにしていることを。 「ほら、分かったからさっさとケーキ屋に行くぞ。 スバルもあんまりティアナをからかうな」 「「はーい」」 ケーキ屋の途中で彼はすれ違う人々のほとんどから挨拶されている。 当たり前のように通行人たちと挨拶を交わすブチャラティを感心の目で見る二人。 「……やっぱり凄いですね」 「本当にビックリするよ。ブチャラティさんの人望には」 「散々派手にやっちまったからな。いやでも目立っちまうだけさ」 ケーキ屋までは徒歩で片道20分はかかる。 なんだかんだで話は流れて、Bランクの取得試験の話へと飛ぶ。 「それでね、私の憧れのなのはさんが目の前に立っててね」 「はいはい、アンタは興奮しすぎなのよ。ブチャラティさん困ってるでしょ?」 「いや、俺は大丈夫だ。続きを聞かせてくれないか?」 「それで、怒られたんだけど二次試験の権利をくれてね。それに合格した訳ですよ!」 「スバルらしい話だな」 嬉しそうに合格までの経緯を語るスバル。 それをたしなめながらも、さり気無く自慢気に話すティアナ。 二人の会話に基本相槌を打ちながらもちょくちょく質問を入れるブチャラティ。 実に平和な三人。 だが目的地のケーキ屋まで約半分。 スバルの声のトーンが急に変わった。 「それでね…私達、なのはさん達が創立する新部隊に転属する事が決まったの……」 俯きながら話すスバル。 そんな彼女を見てられなくなったのかティアナが話を引き継ぐ。 「で、機動六課。私達の転属先なんですが……中央区にあるんで、しばらくお別れになってしまうんですよ… すみませんね、食事前にこんな暗い話題しちゃって……」 唐突に告げられたしばしの別れ。 ギャングになり幾度も体験してきたそれはまたしても訪れる。 暗い沈黙だけが三人の周りを覆っていた。 そしてたどり着いたケーキ屋。 それぞれが好みのケーキを頼み、席に着く。 そこでスバルが口を開いた。 「ブチャラティさんが管理局……機動六課に入れば解決するんじゃないかな? ほら、前に見せてもらったスタンドさえあれば十分やってけるよ?」 一抹の期待を掛けたその言葉はあっけなく打ち破られる。 「すまないが俺は裏の世界の住人……管理局みたいな表舞台に出るのには相応しくない」 「そんな事ありません!あなたは…あなたほどこの地区の為に生きてきた人を私は知らないです!」 「ありがとうティアナ。だがな、まだこの町のギャングは全て潰してない。 潰すだけなら管理局でも出来るかもしれない。 だがな、ギャングはその程度じゃ始末がつかねぇんだ…… 後始末までキッチリやって完全に被害者を無くす、これは俺にしか出来ない。分かってくれ」 「でもッ!でもッッ!!」 必死で反論しようとするスバル。 だが、ブチャラティはそんな二人を怒鳴りつけた。 「でも何だ!?お前ら甘ったれてるんじゃねぇぞ!! その機動六課とやらは自分で選んだ道なんだ!俺一人位は切り捨てて見せろ!!」 「ッッ!」 今にも流れ落ちそうになる涙を必死に食い止める二人。 ブチャラティはその間にも店員に金を支払って店から出ようとする。 店員も止めようと思ったが止める事はできなかった。 ギャングの持つオーラ。 普段の温厚で親切な彼からは想像できない殺気が店員の口を止めた。 「すまんな、騒ぎを起こしちまって。これで勘弁してくれないか?」 店員に謝罪しながら、実際の代金とは零が一つ違う料金を差し出すブチャラティ。 「ああ、あんまり気にしすぎる事は無いぜ」 「感謝する」 奥から店長が出てきて、ブチャラティからお札を受け取る。 ゆっくり開く自動ドア。 そしてブチャラティは外へと出て行った―――― ☆ ★ ☆ いたたまれない空気に耐え切れずに店から出てゆく人々。 残された二人は暫らく無言を貫いていた。 20、30分は続いた痛々しい沈黙。 それを破ったティアナがポツポツと話し始める。 「私達…情けないわね」 「そうだねティア……私達はマンモーニだったのかもしれない」 「でも、ここで止まっちゃ私達は本当のマンモーニになっちゃうわよね?」 「うん!行かなくちゃ!行かなくちゃきっと私達は一生弱いままだ!」 「で、ブチャラティさんの行く先はわかんの?」 「うっ…………す、隅々から探せばいいんじゃないかな~なんて…」 「はぁ~。実際それしかないのが辛いところよね」 そういって店から飛び出る二人。 二人の目には既に迷いの色は消え去っていた。 いや、迷いどころか他の事は全く目に入らないらしい。 支払いを完全に忘れていた彼女達の幸運は、ブチャラティが既に代金を払い終わっていた事だろう。 走り続ける二人の脳裏に浮かぶのはあの日の出来事。 命を救ってもらったあの日。 自分達の正義を再確認させてもらったあの日。 そして、ブローノ・ブチャラティという名の正義に出会わせてもらったあの日。 二人はブチャラティに会って何を言うのかは決まってない。 だけど何か言わなくちゃいけない。 言わなかったら彼とは永遠に会うことが出来なくなる。 そんな気がしていたのだ。 ブチャラティさん、私達謝る! これからは自分の覚悟を曲げるような事は言わない! だから、だからこれがお別れなんてやめてよぅ…… そうよ!私達にはそれぞれ夢があるの! あなた一人と別れる位は耐えて見せるわ!! だから、だから最期くらいはきっちりと……ね? ☆ ★ ☆ やっちまったな… だが後悔はしていない。 あの程度で潰れるようならアイツらはそこまでだ。 だがな、俺は二人に期待してるんだぜ? これで成長してくれるといいんだがな…… ここで自分の面倒見のよさに苦笑するブチャラティ。 ジョルノ達は…… いや、俺の部下と比べるのが間違ってるな。 逆にアイツらは面倒の見甲斐が無さ過ぎる。 普通の15、16歳は彼女達みたいな感じなんだろうけどな。 どうも血生臭い世界に浸ってた所為で一般的な感覚が麻痺っちまってるみたいだ。 多少郷愁に浸りそうになるもようやく現実世界に帰ってくる。 しかし、彼は少々後悔した。 ここへ来てからはまだ日が浅い。 その上、現在地は謎の草原。 更に悪い事に、先ほどまで晴れ渡っていた天気は急変して、今にも雨が降りそうであった。 いや、降りそうなのではなくてもう降り始めていた。 ピシャ―ンという音を立てて落ちてくる雷。 彼だってイタリア人。 自分の身嗜みには非常に気を遣っていた。 そんな彼が自分の一張羅がずぶ濡れになるのを好むはずが無く、彼は巨木の下へと避難する。 その巨木の元に入った途端に、待ってましたとばかり大雨が降り出す。 困った事になったな。 これがブチャラティの素直な感想であった。 ここ最近の疲れが溜まってきてる上に、今日はずっと歩き続き。 そんな環境で疲れないはずが無い。 彼の体にはずっしりと睡魔がのしかかっていた。 そんな彼の指先が、よっかかっている木の傷に気が付く。 何となく気になって振り返りその傷を見る。 『FATE TESTAROSSA』 汚い字で彫られたそれは恐らく人名。 運命の名を冠する子供が何らかの機会にこの木の下で彫ったもの。 運命……か… 運命に翻弄されながらも最期まで抗い続けた自分の短い人生。 思えば…色々とあったよな 父と母の離婚 父についてゆくと決意した自分 恐らくここで俺の運命はある程度決まったのだろう 麻薬の取引に巻き込まれた父 病院に送られた父 報復に来るヤクの売人達 初めて人を殺した自分 そして…これが俺の人生最大の転機 パッショーネへの入団 スタンドの発現 個性的な部下達 ……麻薬を売る組織への失望 ゆるやかに死んでゆく俺 ジョルノとの出会い 幹部への昇進 俺らのチームにジョルノという名の黄金の旋風が吹き込んだ ボスの娘の護衛任務 ボスの裏切り ボスへの反逆 これが原因で俺は死んだ……だが俺は後悔してない… あんな世界でも俺は自分の信じる道を歩いてゆきたかった… 再び宿した生 倒れてゆく仲間達 鎮魂歌 そして……二度目の死 俺は遂に運命を解き放つことに成功した だが運命はそう簡単に俺を解放するつもりが無いらしい。 またもや俺は生を得る事となった。 それも異世界でだ。 自らの運命を頭の中で再び辿っていったブチャラティであったが、遂に睡魔に負けてしまったらしい。 スティッキー・フィンガーズの能力を使い、木に即席でベッドを作った。 何となくであったが名前の彫ってある部分を避けてだ。 名前の部分をあえて避けた理由は彼にも分からない。 彼の取り付けたジッパーなら完璧に復元できる。 頭の中では理解していても心が、フェイトとテスタロッサの文字を一時であっても切り離す事を拒んだのだ。 そして眠りに着くブチャラティ。 彼は果たして如何なる夢を見ているのだろうか? 眉一つ動かさないその寝顔からそれを察する事はできない――――― To be contenued…… 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/sola/pages/27.html
※一番下のコメント欄にて現在のパートを報告してくださいなー。 参考サイト→:EQ2i ◆第1章-1 「Liberating the Cavaliers 」 1:コモンランド・ Sir Groktogと話す 2:POPするMOBをKILL ★The Forgotten(177,-46,256 ) ★Lucan s Mount(3,-49,-724) ★グリFP駅(-589, -49, -623) 3:Sir Groktogに報告 4:3でもらったアイテムを使用しCrow s Resting Place, Thieves Guild にはいる@ダウンビロウ(-144, 0, -75)→Sir Wolfgang Motteから次のクエストをもらう ◆第1章-2 「A Crusade to Faydwer 」 1:A Crusade to Faydwer @GF 2:A Poem to the Past@ニュー・テュナリア 3:The Gumshoe Guide @ニュー・テュナリア 3:A Water Tight Case @ニュー・テュナリア 4:The Capture of the Living Flow @ニュー・テュナリア ◆第2章 「Knights in the Round」 1:@アカデキズム 1*「The War Ancient of Zek」の後ろにある本を調べる 2*ラストのボス「Emperor D Vinn」をやっつけてアイテム「The Tools of Vhalen」 をゲト(トレード可・ゾーンアイテム)。 2:@アントニカ~世界中 1*ヴァーレンの塔(@アントニカ)にいき「a vision of Vhalen」と会話 (鐘を鳴らしてPOPさせる)。 2*50個像を拾う。 場所参考→:EQ2i 像の名前 場所 エリア Sir Jeremy Temple of Life水の中(593, -46, -223) 北ケイノス Sir Noel 三の塔黄色ポータル 南ケイノス Sir Dandle アルケミやさん(-135, -45, -43) 東フリーポート Sir Danik 酒場(219, 3, 150) 西フリーポート Lady Aldana 破壊されたマーの塔(51, -2, 115) グレイヴヤード Sir Tallon Sludgewalkers Hatchling room(-7, 1, 61) シーブスウェイ Sir Kendrick Globule Room(-128, 0, -146) サーパント水路 Sir Motin 奥のほう(1121, -9, -762) フォレストルーインズ Sir Lyle VargonとBorthenの間の部屋(155, 7, -12) 裏切りの地下道 Lady Valerian アーデンニードル砦・2階にあがって外の右側 アントニカ Sir Fandor ブラックバロウ(43, -55, -27) アントニカ Lady Ana ストームホールド(57, -68, -152) アントニカ Sir Tankor ストームホールド(121, -22, 10) アントニカ Sir William Taros General VharTaug s Tower(-551, -31, 429) コモンランド Sir Vuldin Kyllik the Fated(-125, -51, -51) 嘆きの洞窟 Lady Tyzania Little Neriak近くの監視建物(196, 28, -115) フォールンゲート Sir Woldred Worm tunnels(751, -26, 1068) サンダリングステップ Sir Paldoras デス本部屋 ヴァースーンの廃墟 Sir Windle West Bear Cave(-1375, 29, -694) ネクチュロスフォレスト Lady Theeral 地下の隠し部屋書斎(-7.89, -13.67, -10-93) ネクトロポス城 Sir Bunynn Shadowed Shrine(719, -17, -308) ゼック島 Sir Yando デス城(7, -25, 22) ゼック島 Sir Ionis Fear Campテント内(-1025, -7, 708) フィーロット Lady Wendee Cave of Fear(-1788, -27, 447) フィーロット Sir Elliot 緑のゴーレム部屋(-70, -20, -121) カジックシュール神殿 Sir Lawrence 1階螺旋階段部屋(-36, 575, 313) ロストソウルのオベリスク Sir Lemenke 奥のほう螺旋階段(-469, 395, 499.5) ロストソウルのオベリスク Sir Dydius The Misty Mine(401, -5, -932) エンチャントランド Sir Hukkle Laughing Trout(-438, -4, -154) リバーベイル Sir Fiddin Jum-Jum tap(381, 22, 116) ドラフリングタワー Sir Magnus 水中?(167, -96, -1584) エバーフロスト Sir Thodin Banquet Table(152, 7, -430) パーマフロスト Sir Gandark ロー寺院(-427, -61, -669) ラヴァストーム Sir Rodrin Forge of Agesすぎたとこの部屋(-124, -593, 190) ソルセックの眼 Sir Cordin Glubbsunk Cove(598, 29, 164) ブッチャーブロック山脈 Lady Tera Dining Room(21, 11, 188) アンレスト Sir Hogunk Queen Varronik s Throne Room(-217, 46, -83) カラディム Lady Hilda Bank Vault・近くのネームやっつけて鍵ゲトでIN(-3, 37, -220) カラディム Lady Erynn Virosinoid Cave(-562, -6, 22) グレイターフェイダーク Sir Pumpy ドヴィンさんの後ろ アカデキズム Lady Kryss Sentry Creation Chamber(-1047, 56, -1414) ニューテュナリア Sir Andral Temple of Arcane Research(-819, 32, -1293) ニューテュナリア Sir Olstag Temple of the Fourth Guard(-512, 92, -651) ニューテュナリア Sir Gunn Temple of Growth(-445, 49, -871) ニューテュナリア Sir Dumple Steamfont Wetlands(-358, 92, 1627) スチームフォント山脈 Lady Shanna 動物園ノームいるとこ(-317, 1, -57) クラッカノン Sir Gubbin OoB近く(791, -38, 523) レッサーフェイダーク Lady Penelope West Overlook tower(250, 58, -312) ローピングプレーン Sir Erol MMC行く時の中の方(-96, -27, -50) ミストムア地下墓地 Lady Myth 水の中(-69, -101, -24) ミストムア地下墓地 1-2の2~ -- あじゅ (2007-04-08 09 50 54) 1-2の2~ -- ゆぴ。 (2007-04-08 15 45 01) 2~かなー -- あじゅ (2007-04-27 13 51 55) 1章の2・ニューテュナリアパート中 -- あいる (2007-05-27 10 44 02) 3からー -- あじゅこ (2007-10-17 18 09 24) あいるも3-・雨音ケレティンタイムあたっきゅ -- あいる・雨音 (2007-10-17 18 09 51) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3499.html
* 「あと一枚、か」 初老の男は、そう呟いた。 彼を照らすのは広大な部屋全体を浮かび上がらせるほどの大きな半球状の電灯。オレンジがかった光の中で、老人は一枚の画面を注視していた。 映し出された画面からは一陣の光とそれを見送る若い青年の姿が見える。彼はそれを、じっと見つめていた。 彼が動く。コンソールに置かれた手を流れるように滑らせ、画面を切り替える。表示されたのは、六課が戦う光景。スバルが、ティアナが、エリオが、キャロが、シグナムが、ヴィータが……そして、なのはが。 「……ジェイル」 莫大な数のガジェットと強力な戦闘機人に攻め込まれた六課の魔導師は、しかし的確に迎撃を行っていく。端から見ても分かるほど並みの実力ではない。奇襲にも関わらず、一糸の乱れすらなかった。 特に、魔力を無力化するAMFという防壁を持つガジェットの相手に手慣れているかのような手際の良さだった。 その遠方に、全てを睥睨する一人の男がいた。紫の髪と白衣を棚引かせ、不吉な笑みを張り付けた災厄の科学者にして、無限の欲望を持つ男。 緑色のベルトを腰に付けた男は、魔法陣を展開して何処かへと去っていく。 「今回は確かに私の負けだ。だが、アンデッドを暴走させた程度で剣崎君を止められると思うなよ」 初老の男が画面の向こうに映る彼を眺めながら白髪混じりの髪を撫でる。その紫の髪を、引き裂くように、忌々しげに。 彼は射殺すような視線を、ずっとジェイル・スカリエッティに送り続けた。 リリカル×ライダー 第十九話『天馬』 「サンダーレイジ!」 小柄な体のエリオが自身の身の丈を越える槍――ストラーダを地面に突き立てる。 一発のカートリッジが射出されるのと同時に魔力が電撃に変換され、それが雷の洪水となって刺さった地面を伝播し、ガジェットを一掃する。 「おりゃあああぁぁぁぁぁ!」 それに続く形で、エリオの頭上すれすれを通過して伸びる青色の魔力で編まれた道――ウイングロードに乗ったスバルが殴り込みをかける。 マッハキャリバーによって加速されたスバルが、巨大な球状のガジェットⅢ型に拳を構える。ハイスピードで迫るスバルの体が一瞬でガジェットの目の前に滑り込んだ。 「振動拳ッ!」 スバルの目が金色に光り、腕のリボルバーナックルに付いているナックルスピナーが高速回転を開始する。 その回転による運動エネルギーが魔力的に増幅され、拳に集約する……! 「はあああァァァァァ!」 『Protection AMF』 それに対抗するように、ガジェットも上部から排莢を行い、強大な魔力でバリアを張り巡らす。 そして両者が衝突した。 「おああぁぁぁぁぁ! 一撃、必倒!」 魔力を無力化し、更に強固なバリアとしても機能するガジェットの障壁により振動拳の威力は削がれていく。だが、スバルはそれで決して止まりはしない。 強引に伸ばした腕から更に排莢が行われたなことで破壊力が増し、ついにバリアを打ち砕く。 そして球場のボディに突き刺さった拳の振動が一瞬で構造材を脆くさせ、ガジェットⅢ型は呆気なく崩れ落ちていった。 「スバル、次行くわよ!」 「オッケェ!」 そこにスバルを攻撃しようとするガジェットを迎撃していたティアナが合流する。敵の数は、半数程度にまで減らされていた。それでもまだ相当な数が蠢いているのだが。 だからこそ、ティアナはここで手を休めるつもりはなかった。 「エリオはキャロと合流して空をお願い!」 「はい!」 「私達は海上から上陸してくるガジェットをやるわよ」 「よーし。ティア、行くよ!」 その上空を空舞う飛竜フリードリヒが横切る。 無数に群がるガジェットは、しかしその優美な白竜の炎に次々と落とされ、ガジェットの攻撃は逆にフリードを操るキャロの魔法によって全て塞がれる。 三人の少女と一人の少年で編成されたフォワードチームは、確かにストライカーズと呼ぶに相応しい活躍をしていた。 一方で―――― 「キャハハハハ!」 菱形のモノアイに赤いアーマーを纏う女――クアットロが哄笑する。ボウガンという装備から見ても非常に軽装なのに対し、その力は想像を遙かに越えていた。 あのなのはが、血を流す左腕を庇いながら追い詰められる羽目になっていたのだから。 「くっ……」 「自慢の砲撃も、当たらなきゃダメよねぇ?」 なのはが不意打ち気味にアクセルシューターを放つ。桜色の光弾は速射性と追尾能力に定評のある命中率の高い魔法だ。 だが、当たらない。 魔法弾がクアットロの鎧を捉えたときには既にその姿は消えており、いつの間にかなのはの後ろに回り込んでいた。 「シルバー……カーテン、かな」 瞬間的に後ろに張ったプロテクションが、クアットロの魔弾を弾く。 「あらぁ、エースオブエース様に私のISを覚えて頂けるなんて、光栄だわぁ」 クスクスと嗤うクアットロを、なのはが忌々しげに睨み付ける。 ISシルバーカーテン。 クアットロが持つ戦闘機人としての固有技能で、高い幻惑能力を持つ。姿を消す、架空の物体を投影するといった撹乱に最適の技能だ。 本来は後方支援系の技能であり、故にクアットロは前線で戦うタイプではない。しかし新たに手にした力、新世代ライダーシステムがそれを可能にしていた。 『Master,please withdraw!』 「あら、逃げ出しますの? なら"あの子"を血祭りに上げちゃいましょうかねぇ」 安い挑発を嫌らしく甲高い声で発するクアットロ。その血塗られたような装甲が不気味に黒光りする。 普段のなのはなら挑発に乗るなんて考えられない。しかし、今のなのはにとってそれは禁句だった。 「エクセリオォォォン、バスタァァァァァッ!」 突撃槍のような形状のエクシードモードに変形したレイジングハートを振りかざすなのは。愛杖からの制止を聞きもせず強引にコッキングレバーを引いてカートリッジをロードする。 そしてその鋭い切っ先から鋭い砲撃が迸る。 ディバインバスターより鋭い射線は微妙に曲げることができ、クアットロの動きに対応して放つことができる。故に命中率が高く、またカートリッジの使用により威力も高い。 「――あはははっ! 当たりませんわよぉ?」 ……にも関わらず、彼女を捉えられない。 いつの間にか隣に現れたクアットロにレイジングハートを向けようとするが、その前にボウガンを向けられる。そこに、カードがスラッシュされた。 『Excellion Baster』 『Master! ――Protection EX』 ボウガンから紅い鏃のような鋭い砲撃、なのはが今撃った砲撃と同じ魔法が放たれる。そう、なのはの目の前で。 「く――あっ……」 だが寸前でレイジングハートのフォローによって発動した防御魔法がなのはを守った。しかし、衝撃までは殺せない。バリアと共に、なのはが吹き飛ばされる。 落ちていく。エース・オブ・エースの撃墜。コンクリートの床とのキスまで後、数秒。 『Master!』 「なのはぁぁぁぁぁ!」 だが、その寸前で彼女は救われた。一筋の稲妻が、彼女に駆け抜けたことによって。 その光から輝くような金髪と、温かな笑みが浮かび上がる。それは、フェイトの笑顔だった。 ・・・ 「――こんな策しか用意出来んのが悔しいなぁ」 爆炎と騒音から離れてたった一人で佇むはやてが、小さくため息を付いた。 ここは最終防衛ラインと言うべき六課隊舎前。皆がランニングなどを行う前庭にて、はやてはバリアジャケットを纏って宙に浮いていた。 ちなみに、ここにいるのは彼女だけで、他には誰もいない。ただし、独り言を呟いているわけでもなかった。 『本当は、はやてちゃんも行きたかったんですよね~』 「仕方ないやろー、ここを離れる訳にはいかんし」 はやてとユニゾンしているリィンの言葉に苦笑する。そう、はやてだって十年来の友人の元に馳せ参じたかったのだ。 しかし彼女にはそれが出来ない。後方支援タイプであることと部隊長であることが、その理由。そう、彼女の背負ってる責任が、重すぎるからだ。 それでも、彼女なりに出来ることはやったのだ。責めることは出来ないだろう。 「そろそろカズマ君が帰ってくる頃合いやないかなぁ――」 「――くくくっ、そうかぁ。彼はまだ帰ってきていないのか」 そう、それは唐突な出来事だった。 「! スカリエッティ!?」 「残念だな、今から彼と遊べると思ったのだがね」 そう、はやての目の前に立つ男、その名はジェイル・スカリエッティ。 まさに唐突としか思えないタイミングで、一瞬前まで無人だった前庭に白衣と歪なバックルをしたベルトを巻いたスカリエッティは存在していた。 「……どうやって現れたかは知らへんけど、ここは通さへんで」 『ですですーっ!』 はやての足元に白い三角形の魔法陣が出現する。陣が回転を開始すると同時に白い光にはやての体が包まれていき、魔力が高まっていく。 それを見たスカリエッティは、薄く笑みを浮かべたまま、バックルのカバーに手をかけた。 「くっく……変身」 『Open Up』 カバーをスライドさせた瞬間に魔力が彼の体を包み込み、一瞬で全く別の姿へと変化する。 黄金の縁取りが成された緑色の装甲と無機質な複眼。王冠を模したようなマスク。右手に握られる短いスピア。 それが伸長して瞬時に錫杖へと変化する。 「八神はやて、君は私を楽しませられるかな?」 「私かて何時までも対人戦が苦手なわけやないで……!」 『はやてちゃんと私なら貴方くらいケチョンケチョンにしてやるんですからね!』 はやてが凛々しく、リィンが可愛らしく台詞を決める。その様に仮面の下で笑みを深めるスカリエッティを尻目に、二人の内心は焦りがにじみ出ていた。 理由は簡単。忙しすぎるはやてに訓練をする暇など、あるはずがなかったからだ。 「(ど、どないしよう……これで退けんくなったやないか!)」 『(ででででも、これ以上下がるなんて最初から無理です~!)』 そう、ここは最終防衛ラインなのだから。 はやては十字形を模した形状の杖型デバイス、シュベルトクロイツの切っ先を真っ直ぐスカリエッティに向ける。その切っ先は、小刻みに揺らしながら。 スカリエッティが動く。その手にカードを握り、錫杖の石突きにあるスラッシュリーダーへと運びながら。 「仄白き雪の王、銀の翼を以て眼下の者を白銀で穿て。来よ、氷結の一撃――クーゲル・デス・アイゼス!」 『――Blizzard』 詠唱を終えたはやて。シュベルトクロイツの周囲に三つの青白いキューブが浮かび上がる。程無くして魔力を湛えたキューブが回転を始める。 そしてはやてが十字杖を振り下ろす。 キューブは回転を最高潮に高めたまま、まるで巨大な氷の弾丸のように撃ち出される。はやての強大な魔力によるそれはリィンの制御によって、正確にスカリエッティを狙い撃つ。 対するスカリエッティはカードをスラッシュして解放された吹雪のエネルギーを、錫杖をはやてに向けることで放出する。 二つの凍てつく刃が今、激突する――! はやての氷弾は鋭さと質量を持ってスカリエッティのブリザードに立ち向かう。スカリエッティ自身の魔力によって具現化した吹雪だが、一気にはやてのそれに押されていく。 「私と撃ち合いやなんて、良い度胸やっ!」 氷と氷がぶつかり合う甲高い音。 一瞬にして、はやての一撃がスカリエッティの吹雪を吹き飛ばした! ……スカリエッティを見失う代償を払って。 『Absorb Queen』 「――ッ!?」 真後ろから聞こえた電子音に慌てて振り向くはやて。そこには左手に装着したラウズアブゾーバーにカードを持っていく、スカリエッティの姿があった。 スカリエッティが仮面の下でニヤリと笑う。 『Fusion Jack』 そして彼は変身した。 「フォームチェンジ……」 猪の頭に似た巨大な牙を持つ肩の装甲と、黄金の刃を先端に装着した錫杖。そして胸部には黄金の猪のレリーフが刻まれる。レンゲル・ジャックフォーム。 はやては唖然としながらも高度を取る。単純に距離を取るだけではダメだと、そう考えたかのように。 リィンも内心で、固唾を飲んでいた。 そしてスカリエッティが二枚のカードを引き抜いたのを合図に、はやてもまた再び動き出した。 「ブラッディダガー!」 『Screw,Rush――Revolver Rush』 はやての周囲にミッド式魔法陣が展開され、血塗られたような紅い短剣が無数に出現する。それらが杖の一振りで射出され、スカリエッティに狙いを定める。 しかしスカリエッティの発動したカードの魔法により回転力と刺突力を与えられた錫杖が、それらを叩き落とすだけでなく、更にはやてのバリアジャケットにも直撃する。 「――あぐっ!?」 吹き飛ばされたはやての口から血が一滴流れる。直撃した部分のバリアジャケットは捻れるように千切れており、内出血の痣が付いた腹が露出している。 スカリエッティはつまらなそうに錫杖を振り回し、その腹に切っ先を向ける。 「アアアアアァァァァァ!」 それを遮るタイミングで。 空から飛来したカズマが天馬を駆ってスカリエッティに突撃していった。 ・・・ 「良かった……間に合って」 「フェイト、ちゃん……」 目元に涙を浮かべながらフェイトはなのはを抱き締める。それは温もりを分け与えようとする母親のように。 なのはは瞼を僅かに開いて、温もりの在りかを見つめる。その瞳から、一滴の涙が流れた。 「ごめん、ね……。わたし、足――引っ張っちゃった」 「そんなことない!」 顔を背けようとするなのはを強く抱き締めるフェイト。 一方のクアットロは邪魔が入ったことに苛立ちを隠そうともせず、ボウガンの銃口を振り上げる。 それにフェイトも即座に反応した。 「私の楽しみを邪魔しないでくださるぅ!?」 「させない!」 『Defencer』 クアットロが引き金を引くと同時に数十の弾丸が発射される。それらは何の捻りもない魔力弾だが、威力と弾速、そして数があれば意味合いも異なる。 フェイトはなのはを左手で抱え、右手に持ったバルディッシュでディフェンサーによる防御を行う。だが彼女は高速型、防御は決して得意ではない。 ディフェンサーが砕ける一瞬前に、フェイトはソニックムーブを起動して瞬間的にその場を離脱した。 「わたしは、皆の足を引っ張りたくない」 「なのは……」 なのはがフェイトから身を離す。 フェイトが隠れるように降り立った空間シミュレーターの廃ビルの壁を背に、なのはは震えを止めるかのように自らを抱き締めた。 「皆だって守る人を抱えているんだから、わたしの我が儘には付き合わせられない」 「それは違うよ」 辺りに無数の赤い影が現れる。シルバーカーテンは透明になることも、逆に分身を作ることも出来るのだ。 さらに乱立する廃ビル全てを破壊するかのような爆撃が遠雷のように轟き、フェイトとなのはの足下にまで振動を伝達する。クアットロの苛立ちを象徴するように。 「私は、私が守りたいと思うから守るだけだよ。私がなのはとなのはにとって大切な人達を守りたいと思うから守るだけ」 「フェイト、ちゃん……」 射撃音が徐々にフェイトとなのはに迫る。無差別な破壊に見える攻撃だが、実際は的確に二人を追い詰めるように攻撃を繰り返していた。 だが二人は微動だにしない。そもそも、今だけはどちらもそんなことは気にも止めていなかった。 「見損なっちゃ嫌だよ。私となのはは、友達だもの」 フェイトがバリアジャケットの下から何かを取り出す。身を縮こまらせたなのはの元に歩み寄り、その手を開いた。 それは、ピンク色のリボンだった。 「あ……ッ!」 「これをもらって、初めて友達が出来て――嬉しかった。だから私は、頼まれなくても友達を守ろうと誓った。そうしたかったから」 十年も前、二人が敵から友達に変わった日からフェイトが大切にしてきたなのはのリボンは、痛みこそあるものの綺麗な色をしていた。 そしてなのはもまた懐から取り出す。それは、かつてフェイトが付けていた黒いリボン。 「……そうだよね。わたしは、知らず知らずの内に、友達すら信じられなくなってたのかもしれない。ばかだ。わたし、ばかだよ……」 なのはの涙ごとフェイトは抱き止める。間違えることはある、勘違いもある。すれ違うこともある。人間なら、仕方ない。 それでも何度でも、間違えればまたやり直せる。それが、友達なのだから。 「あらぁ、そこにいましたのぉ? 二人纏めて地獄に送ってやりますわッ!」 二人を覆っていたコンクリートが砕け散り、そこから赤色の鎧を纏う悪鬼が姿を表す。 だが、もう怖くはない。 圧倒的な強さを持ったクアットロだが、しかしもはや敵ではなかった。 『Master. Are you ready?』 「ばっちりだよ。さぁ、いこうか、レイジングハート」 『All ready. Drive Ignition.』 なのはとレイジングハートにとって最高のパートナーが、側にいるのだから。 「いくよ、バルディッシュ」 『Yes,Sir.』 管理局のエースオブエースと六課最速の魔導師、二人による演舞が今――始まる。 ・・・ 空に桜色の光痕と金色の稲妻が交差する。蒼い空を錯綜する光の舞は美しく、そして魅力的だ。そこに混じる紅という不純物だけが鬱陶しいと感じるほどに。 それを発する二人の少女もまた、戦いの中にあって尚、美しい。それは同性が見てもそう思うほどに。 その輝きを見つめるはやての目には、少なくともそう写っていた。 「……やっぱ、あの二人は特別なんやなぁ」 「ぐ――が、はっ……」 『はやてちゃーん、遠くを見てる場合じゃないですよ~!』 そんなはやてを背景に、二人の仮面を付けた戦士が対峙していた。ただし片方は錫杖にすがりついて腹を庇いながら、もう一人は悠々とバイクに跨がりながら。 そのバイクには、鋼の翼が生えていた。 「スカリエッティ――ここで決着を付ける!」 「バ、カな……。カズマ、君に、こ……んな、隠し玉、が……」 カズマが跨がるのは愛車のブルースペイダー。 しかしジャックフォームのカズマが乗ったと同時に、カズマの背中で雄々しく羽ばたくオリハルコンウィングに似た魔力で編まれた鋼翼が形成されていた。 ブルースペイダーそのものは特に変化していないが、シートカウルから生えた両翼によって姿形は全くの別物となっている。その姿は神話に登場する―― 「――ペガサス、みたいやな」 ぽつりと、はやての口からそんな言葉が漏れ出る。確かに、今のブルースペイダーを指すのにこれ以上相応しい言葉はない。はやての視線は、釘付けになっていた。 そんなはやてと同じく、ユニゾン中のリィンもまた夢中になっていた。 『確かカズマさんのバイクはブルースペイダーって言うんですよね?』 「ブルースペイダーペガサス。カッコええやん!」 救援の登場で一気に外野と化したはやてとリィンが好き勝手語る一方で、カズマは追撃のために二枚のカードを用意していた。 何とか立ち上がるスカリエッティ――レンゲルを叩き潰すべく。 一方のスカリエッティは、レンゲル・ジャックフォームの固い装甲をも引き裂く刃のような翼にやられた傷を庇い、動けずにいた。 『――THUNDER,MACH』 二枚のカードをバイクのカードリーダーにスラッシュするカズマ。 ガォンとアクセルを捻ることでアトミックブラストエンジンが咆哮を上げる。エンジンの回転数はメーターを振り切るほどに回り、その熱は周りに蜃気楼を起こさせるほど。 覚醒した荒々しき天馬が、無限の欲望を喰い尽くす――! 『――LIGHTNING STORM』 「おあああああァァァァァ!」 二つのカードによるコンボ技。それによるアンデッドの力がブルースペイダーペガサスに宿る。 稲妻をカウルに帯びさせ、ブルースペイダーペガサスが舞い上がる。そして疾風の如き加速を持って、天馬は悪を叩かんと突撃していった。 ・・・ 新たな力を得たカズマと六課の活躍によってスカリエッティの攻撃は失敗に終わった。 はやてはガジェットの航跡からスカリエッティの隠れ家を探し出し、反攻作戦を画策する。その一方で、王は自らの役割を自覚し始めていた――。 次回『反撃』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/148.html
【エリオ・モンディアル@デジモン・ザ・リリカルS&F】1 No. タイトル 作者 登場人物 時間 009 Heart of Iron ◆WMc1TGFkQk エリオ・モンディアル、シェルビー・M・ペンウッド、柊かがみ 1日目深夜 【アグモン@デジモン・ザ・リリカルS&F】3 No. タイトル 作者 登場人物 時間 016 非常食? ◆9L.gxDzakI 武蔵坊弁慶、アグモン 1日目深夜 037 クロノは大変な超人達を集めていきました ◆jiPkKgmerY 武蔵坊弁慶、アグモン、ヒビノ・ミライ、アーカード 1日目黎明 042 盟友(前編)盟友(後編) ◆WslPJpzlnU ヒビノ・ミライ、アグモン、ヴィータ、アーカード、クロノ・ハラオウン 1日目黎明 【ギルモン@デジモン・ザ・リリカルS&F】1 No. タイトル 作者 登場人物 時間 018 家族(前編)家族(後編) ◆gFOqjEuBs6 ヴィータ、キング、ギルモン、八神はやて(StS) 1日目深夜
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/159.html
Wolkenritter ◆9L.gxDzakI 頼りない月明のみが周囲を照らす薄暗闇の中、灰色のジャングルが広がっていた。 建ち並ぶ巨大なビルの群れ。賑やかな街並みの面影を残したそこは、しかし人っ子1人すらいないまま静まりかえっていた。 夜中という時間帯もあるが、それでもまだこれくらいなら、ネオンも光っているだろうし、車も走っていてもいい頃である。 そしてそれらすらもない無明の街の中、ヴォルケンリッターの湖の癒し手の姿は随分と浮いていた。 「あれがフェイトちゃんのお母さん、プレシア・テスタロッサ……」 歴戦の勇士たるシャマルは、その穏やかな性格の割には冷静に状況を分析する。 この異常自体の中、その様子は逆に異常なものにさえ見えた。 クロノやユーノからは、プレシアは目的のためには自分達以上に手段を選ばない、過激な人間だと聞いている。 しかし同時に、元は聡明な魔導師であるとも聞いている。何の考えもなしに荒事を起こす馬鹿ではないことは、容易に想像できた。 であれば、行動に見合うだけの理由があって人々をここに集め、殺し合いをさせているということか。 (……今のところ、それはどうだっていいか) 首を振りながら、頭の中の思考を払いのける。 今重要なことはそこではない。この殺し合いのふざけたゲームを生き残り、同時に大切な人を救い出すこと——それが考えるべきことだ。 名簿の中には、確かに「八神はやて」の名前があった。自分達守護騎士の守るべき、夜天の主の名が。 「……いいえ」 微かに、目を伏せる。 まぶたの裏に浮かぶ人影は、はやての姿だけではない。 シグナム、ヴィータ、ザフィーラ。長き時を共に過ごしてきた、大切な家族達。 なのは、フェイト、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ……機動六課という同じ屋根の下の、大切な仲間達。 この手の中には、いつの間にか——“こんなにたくさんの守りたい人達ができた”。 今一度、己自身に問い質す。 自分の使命は何だ。 我々守護騎士に課せられた役割とは何だ。 守りたい者達を守れずして、何がヴォルケンリッターか。 「……みんなを守ることくらい、私達にもできるはずよね」 言いながら、シャマルは顔を上げる。 そして、確固たる意志と共に、その一歩を踏み出した。 “全ての仲間達を守り抜くために”。 都心のビル街から少し離れれば、そこは一転して住宅街となる。 それでも街の寂しさは変わらず、いやむしろ、更にそれを増しているようにさえ感じられた。 ヴォルケンリッターの烈火の将は、その中で手にした得物を振り回していた。 身の丈をも凌ぐ巨大な剣を、その勝手を確かめるように振る。刃の広い大剣が、鋭い音と共に空気を切り裂いた。 (あの女……かなり高位の魔導師のようだな) シグナムは未だ身体に残るバインドの感触を思い返す。 少なくとも、自分と互角のSランクには相当していただろう。あれだけの大魔導師には滅多にお目にはかかれない。 しかし、自分達に殺し合いを要求するとは一体どういう了見なのだろうか。そこだけがどうにも解せなかった。 お互いに顔も知らぬ相手をわざわざ殺そうとするだろうか? そもそも、それならそれでこんなまどろっこしい手段を取るだろうか? (……今はそれは重要ではないな) 静かに思考を振り払うと、剣を振る手を止めて自身の肩に預ける。 今重要なことはそこではない。この殺し合いのふざけたゲームを生き残り、同時に大切な人を救い出すこと——それが考えるべきことだ。 名簿の中には、確かに「八神はやて」の名前があった。自分達守護騎士の守るべき、夜天の主の名が。 「……いや」 微かに、目を伏せる。 まぶたの裏に浮かぶ人影は、はやての姿だけではない。 ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。主を優勝させるためには互いに果てねばならない、捨て駒達。 なのは、フェイト、ユーノ、クロノ。主を救うための闇の書完成を阻む、倒すべき敵達。 この目の中には、誰一人として——“殺さずに済む者など存在しない”。 今一度、己自身に問い質す。 自分の使命は何だ。 我々守護騎士に課せられた役割とは何だ。 守るべき主君を守れずして、何がヴォルケンリッターか。 「……待っていてください、主はやて。必ず貴方を守り抜いてみせます」 言いながら、シグナムは顔を上げる。 そして、確固たる意志と共に、その一歩を踏み出した。 “全ての敵を打ち倒すために”。 同じ使命を持った同志達。 2人は同じ街の中。 湖の癒し手は東へ歩み。 烈火の将は西へと進む。 全ての命を救うために。 全ての命を奪うために。 数百年の歴史の中では、小さな点にもひとしき10年という時間。 それがあるかないかの、ほんの小さな違いだけで。2人の騎士の道は分かれてしまった。 枝分かれした2人の道は、二度と交わることはないようにさえ思えた。 【1日目 深夜】 【現在地 F-4】 【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状況】健康 【装備】無し 【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3個 【思考】 基本:はやてを含めた、全ての仲間を守り抜く。 1.まずははやてとの合流が最優先 2.できればヴォルケンリッターの仲間達とも合流したい 【備考】 シグナムが10年前の世界から来ていることに気付いていません。 【現在地 F-3】 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】 【状況】健康 【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜2個 【思考】 基本:はやてを優勝させるため、全ての敵を排除する。 1.まずははやてとの合流が最優先 2.できればヴォルケンリッターの仲間達とも合流したい 【備考】 シャマルが10年後の世界から来ていることに気付いていません。 Back それは最悪の始まりなの 時系列順で読む Next 武人と魔女 Back 少女の泣く頃に〜神流し編〜 投下順で読む Next 武人と魔女 GAME START シャマル Next 幻惑の銀幕 GAME START シグナム Next 火神——マーズ——
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1322.html
魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 第三話「異変」 「で、異次元世界にどうやって連絡してきたんですか?」 「あはは…潜入?」 「やれやれ…。」 親分、ドクといったハンター組の代表、ジェイが依頼主の機動六課の部隊長八神はやてと話をしている。 艦長室に連れてこられて海を渡るどころか次元を引き裂いて移動したからジェイは驚くしかなかった。 で、聞いてみるとこうだ。ポッケ村の集会所に新人受付嬢にアルフなる犬耳の女をおく。そしてジェイ達が受け取ったクエストを貼る。 手にとって受ける、と言ったハンターが出現したら八神はやてに念話で連絡、ということらしい。 本当にやれやれとしか言い様がない。そのアルフは突然目の前で子犬に変身して二度びっくり。ここではジェイの世界の常識は通用しない。 「で…、ジェイさん。」 「ん?」 「ヴィータちゃんのこと、本当にありがとうございました。」 「!!?」 三度びっくり。八神はやてが頭を下げてきた。 ヴィータのこと…あぁ、あのことか。 「よ…よしてくださいよ。あれはあくまで…」 「『逃走に無理やり付き合わせた』でしょ?いいですか?ウチの家族をどういう形であれ命を救ってくれたのは事実です。 素直に礼を言わせてください。」 「は…はぁ。」 あれ?なんで説教されてんの?なんて思いつつもはやての言葉を聞く。 笑顔から一変、真剣な表情に切り替えた。依頼の件について話をするみたいだ。ジェイもつられて真剣な話を聞く。 「で…な。依頼の件なんやけど…。」 話は過去に遡る。 JS事件が終わり、機動六課も一段落といったところに一件の事件が転がり込んできた。 『突然魔導士が行方不明になる』という不可思議な事件。スバル達が調査に行くとそこには竜の姿があったのだという。 蒼い人ほどの大きさの竜。足元には食いちぎられた局員の死体があったのだという。パニックになりながらも証拠を収め、脱出。 上に連絡したのだがトリック(手品)だと判断。機動六課がマスコミ等に叩かれるがある日、竜の目撃証言が多発。 調査を進めてみたところ蒼い竜より遥かに巨大な竜たちが一斉に出現、暴れだした。太刀打ちしたが恐るべき甲殻の硬さと戦力でほぼ全滅。 ミッドチルダの市民達は避難しているが不安な生活を送っている。そこで対策を立ててほしいと今まで叩いていた者たちが頼み込んできた。らしい。 ジェイはまず思った。 (はぁ…バカか?バッカじゃねぇのか?…またはアホか?) 自分でも誰に向けたかわからない憤怒とかが頭を廻る。ため息をついて窓から見える次元の渦を眺めながら質問する。 「…で、白い前足の生えた竜、見ませんでした?」 「え…見なかったし、証言もありません…。でも、どうして?」 「えっと…俺達ハンターが上手くやっていけるのは…モンスターが絶滅しないから。で、その絶滅しないわけは、やつ等の進化が 早すぎるんです。二匹別世界にぶち込んだだけでその別世界に適合して進化しやがる。十日で何万…ってぐらいかな。 中に祖龍ってやつがいるんだが…、そいつは繁殖できる速度と進化できる速度がずば抜けて…」 「あーっ!!!!」 「おわっ!?」 はやてが大声を上げながら立ち上がると驚いてジェイは椅子ごと後ろに倒れた。 あわててジェイに駆け寄り顔を心配そうに覗き込む。 「で…心当たりが?」 「あぁ、うん、少し前に竜を二体密輸した艦を捕らえようとして出動したんですが…残ってたのは死体と残骸だけで…」 「それだ。」 これで筋は通った。そのミッドチルダに巣食う祖龍を全滅させれば、あとは大丈夫なはず。 でも…あいつと戦ったことがあるとはいえ50戦1勝49敗。こんな成績で大丈夫なのか自分。 どちらにしろ、受けてもう戻れない場所に自分はいる。やってやろうじゃないか。その前に一つ。 「…お互いに敬語やめません?」 「え…あ~、そういうことなら…うん。」 「OK,これで話しやすくなった。」 「じゃ、じゃあ他のメンバーはもう自己紹介済んでるみたいだから、ジェイもしてきてな?」 「あいあいよ~。」 またもやれやれ、といった感じで案内されてついていく。 「フェイト・T・ハラオウンです。」 「シグナムです。」 「スバル・ナカジマです。」 「ティアナ・ランスターです。」 「エリオ・モンディアルです。」 「キャロ・ル・ルシエです。」 入った瞬間敬礼をされて自己紹介。とは言っても自分の名前を名乗ってるだけじゃあないか。 まぁ、仕方ないことなのだが。それに皆も表情が硬いっていうか睨んでない?ジェイはひたすら考える。 「ジェイ・クロードです。っと…なんか味気ないな…。」 首をかしげてうーん、と考える。まぁ、このメンバーは蒼い人と同じ大きさの竜…おそらくランポスの食事をバッチリ見てしまったから その時のショックが抜けていないのだろう。ジェイ自身もその「食事」の場面や生肉を剥ぎ取るときに吐き気に襲われたことがある。 次に他に案内するところがあるからとはやてに手招きされて出て行こうと歩き出した。 「あの…。」 スバルが恐る恐る手を上げてジェイに質問した。当然皆の視線がスバルに集まる。 話すときも結構言葉を詰まらせていた。 「ドクって人は…、アタシ達のことどう…思っているのでしょうか?」 やれやれ、またあいつか。何か問題発言でもしたのだろうか? 「どうって、何が?」 「質問とかしても『関係ないことだ』とかで返されてしまって、もしかしたら…」 やっぱり。と呟きジェイは肩を竦める。スバルに歩み寄ると頭の上にポン、と手を置いてスバルの今にも泣き出しそうな顔を覗き込み、 口の端を少し吊り上げるだけの笑みをした。 「大丈夫、アイツは人見知りで素直になれないちょっとしたツンデレ男さ。」 それだけ言うとジェイは手を振ってスバル達と別れた。スバルのキョトンとした表情は今でも覚えている。 このあとにいろんなアースラの中を見て回った。 「驚かないのか?」 「あぁ、うん。慣れちゃった。」 喋る蒼い狼、ザフィーラと会って 「ちょ、なんで胸から手ぇー!?」 「ごめんなさい。ちょっとしたいたずらのつもりだったんだけど…。」 医者だというシャマルさんとも会った。 「リィンフォースⅡです。よろしくなのですよー。」 「アギトだ。ってかバッテンチビ邪魔だ!」 「邪魔なのはアギトのほうですよー!」 「あははははは…」 目立ちたがり屋な制服来た妖精、リィンフォースⅡとアギトにも。 ともあれ、略した人もいたが一通り六課メンバーとは会って、ドクの部屋へ。 「というかさ、ドク。確かに常識はずれな連中だとは思うけどさ、もう少し愛想良くしたらどうよ?」 「関係ないと言っている。」 「あのさ、ドク。もうちょっと…。」 「関係ない!!君に私の何がわかるのかね!?」 突然のドクの怒声に驚いた。普段良く大声を出すとはいえそれはすべて歓喜の叫びか笑い声。 ドクは自分にまで敵意をむき出しにしている。なら何故受けたのか、まったくわからない。 「わからないさ。第一聞いてもいないし、ドクは喋ってないだろう?この際、聞いてやろうじゃないの。」 ジェイは驚きながらもドクの過去を、知りたいと思った。最初はもちろん黙っているだけだったが、まるで独り言のようにポツリポツリと話し始めた。 自分の本名はジェイル・スカリエッティだということ。そして自分が行ってきたこと。このクエストの最中、ドサクサにまぎれて機動六課に復讐を企んでいたこと。 みんな洗いざらい話してくれた。 「今では私のほうが愚かだがね…。」 とだけ呟くとグラスに入っている果実酒を少しだけ口に含んだ。舌の上で転がすように味わう。なぜだろう。甘いはずなのにどこかほろ苦い。 ジェイはしばらく黙っていたが口を開いて何を喋りだすかと思いきや、意外なことだった。 ナイフを取り出すとスカリエッティの首筋を叩いたのだ。もちろん叩いたので切り傷はない。 「な…何を…。」 「確かに今のアンタは愚かだ。ちょっと、前見たら?後ろを振り返るのもそりゃ重要だけどさ。後ろばっかり見て、囚われて。これはなんかのイタチゴッコ? そのうちまたつまづいて転ぶよ?簡単に吹っ切れるもんじゃないってわかっているんだけどさ。」 ナイフをしまうと立ち上がり背を向けてドアに向かう。開けようとするが動きを止めた。 「こんなこと言った後でなんだけど、最後に決めるのは自分自身だから。んで、もしそれで道を間違ったらぶん殴って、連れ戻して、 もう一度説教するさ。嫌になるくらいな。んじゃおやすみ。『ジェイルさん』。」 ジェイが出た部屋でもう一度果実酒を飲むドク、いや、スカリエッティ。彼の表情はどこか穏やかで、目には光るものがあったという。 「…面白い。そこまで言うなら一度、前を向いて歩いてみようじゃないか。」 余談だが、翌日ゼクウとジェイがスバルに向かって謝っているスカリエッティの姿を見たという。(顔はもちろん見せてない) ジェイはにやけて、ゼクウは何がなんだかわからない表情をしていた。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/98.html
アースラ艦橋。 「大型モンスターの反応を確認、現在はやてちゃんと手塚さんが迎撃に向かっています!」 こちらでもディスパイダーの出現はキャッチしていたようだ。 なぜ念話はダメでレーダーは使えるのかは気にしてはいけない。 「それと…手塚さんとは別のライダーの反応が!」 「別のライダー?手塚が話していた13人のうちの一人か…?」 別のライダーの存在を聞き、少し考えるクロノ。 読者の皆様には分かるだろうが、その別のライダーとは龍騎のことだ。 「はやてさん達に『別のライダーがいるから、話が通じるようなら協力を頼んで』と伝えて」 はやてが何かを話している。 「え?別のライダー?…はい。」 『はやてちゃん、どうかしたんですか?』 「ああ、エイミィさんから念話や。別のライダーがおるから、話通じるようなら協力頼めって」 そんなことを話している間に目的地へとついた。 「ああ、出たの私らの家の近くやったんか」 はやての家の近くにはアパートが二つある。そのうちの一つが榊原のアパート…つまりディスパイダーが現れた場所である。 ミラーワールドへと入ろうとするが、車の前で何かを見つめている女性がいる。 ここで変身や甲冑の装備をしたら見られてしまう可能性がある。 だから近くの路地に行き、そこからミラーワールドへと入った。 そして今に至るというわけだ。 「お前…ライアの手塚海之!?」 「俺はお前を知らない…だが、どうやらお前は俺を知っているらしいな」 エビルダイバーを引きつれ、ライアが現れる。 さらに遅れること数秒、はやてが路地から現れた。 その事で龍騎がさらに驚く。 「はやてちゃん!何でこんな所に…しかも生身でいるんだ!?」 「え…その声、真司君?そのカッコどしたん?」 どうやらこの二人は知り合いのようだ。 龍騎にしたって知り合いが生身でミラーワールドにいたら驚くし、はやてははやてで知り合いがライダーになってミラーワールドにいたら驚くだろう。 「ああ、もう!この際事情の説明は後だ!とにかくコイツを何とかするぞ!」 全員それで納得し、臨戦態勢を取る。 戦闘再開である。 第五話『龍騎』 『SWINGVENT』 ライアがエビルウィップを手に、ディスパイダーへと向かっていく。 そして例のごとく叩く。先ほどのライドセイバーと違い、結構効いているようだ。 そんな様子を見て龍騎も先ほど取り出したカードを装填しようとするが、腕の痛みが響く。 「真司君?もしかして腕を…」 「いや…大丈夫大丈夫!」 はやてが心配して声をかけるが、真司は心配かけまいと強がる。 そして腕の骨折であることを思い出した。 「そうだ…手塚!」 声に反応し、龍騎の方を向くライア。すると一枚のカードが飛んできた。 飛んできたカードをキャッチして見ると、『STRIKEVENT』と書かれている。 「それをベントインしてくれ!」 ストライクベントを手塚のバイザーに装填させようとする。 ちなみにカードをバイザーに装填することを『ベントイン』と言うのだが、便宜上装填とさせていただいた。 ライアは指示通り受け取ったカードをエビルバイザーに装填する。 『STRIKEVENT』 上空からナックル『ドラグクロー』が飛来する。 そして飛来したドラグクローは龍騎の右腕に納まった。 一部のカード以外は誰が装填しても持ち主に効果が現れるのである。 「っしゃあ!」 ドラグクローという武器を得て、ディスパイダーへと突撃する龍騎。 『マイスターはやて、私達も!』 「わかっとる。二人ともよけてや!」 はやての声を聞き、思い思いの方向へと飛ぶ龍騎とライア。 「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け!石化の槍、ミストルティン!」 魔法陣から7本の光の槍が飛ぶ。そしてそれらは全てディスパイダーに直撃した。 この魔法の名は『ミストルティン』。光の槍を飛ばし、当たった相手を石化させる魔法である。 着弾箇所からどんどん石化するディスパイダー。それを見て龍騎が驚く。 「何だよこれ…」 「驚いている場合か!終わらせるぞ、合わせろ!」 『COPYVENT』 他のライダーの武器をコピーするカード『コピーベント』で龍騎のドラグクローをコピーするライア。 そしてそれを龍騎とともに構える。 「ハァァァァ…」 構えると同時にドラグレッダーが飛来。口の中に炎を溜めこみ、それが球体となる。 その瞬間、龍騎とライアの動きが同調した。 「「食らえ!」」 二人同時にドラグクローを突き出す。それと同時にドラグレッダーが火球を放つ。 これが、ドラグクローを前に突き出すことにより、ドラグレッダーの火球を叩き込む大技『昇竜突破』である。 昇竜突破を二人同時に放ったのだ。破壊力も増大するのは自明の理である。 炎が直撃し、爆発。ディスパイダーが木っ端微塵に砕け散った。 決着の後、彼らはミラーワールドを出て、現実世界へと帰ってきた。 帰ってからいろいろ真司に問い詰められたが、「アースラに着いてから全て話す」と言って口を封じた。 で、現在位置はアースラの艦橋である。 「――――ということなんだ」 「…まあ、鏡の世界とかモンスターとか時間を戻すカードとか、そんなのがあるんなら魔法もあるよな」 どうやら事情の説明が終わったところのようだ。 というかライダーバトルという非常識すぎる事に巻き込まれているのだから、今更この程度の非常識では驚きはしないだろう。 「ってちょっと待った。時間を戻す…って、どういう事なん?」 「…13人目のライダー『オーディン』は、時間を戻すカードを持ってて、それで時間を戻して戦いを調整してるんだ。 多分オーディンが勝ち残るまでやり直し続けるんだと思う」 「…なるほどな、あの次元震もそのカードの影響だと考えれば納得がいく。だが、なぜそれを知っている?」 「多分、何度も戻されてるから耐性が出来たんだと思う。このデッキを見つけたら、時間が戻る前の記憶が戻ったんだ」 「それなら手塚さんのこと知っとってもおかしくあらへんな。多分時間が戻る前にどこかで会っとったんやろ」 手塚のことを知っていた件はこれで納得がいったようだ。 納得したところで真司が手塚に話を振る。 「手塚、お前は確かライダーの戦いを止めたいんだったよな? だったら時間が戻るカードのことは覚えておいたほうがいいんじゃないか? 他のライダーにも、教えれば止められるかもしれないしさ」 それを聞き、すぐさまユーノが理解する。というか、ユーノいたのか。 「それって、いくら戦っても願いは叶わないって分かるから、戦う理由も無くなるってこと?」 「そうそう、そういうこと」 その後、手塚のときと同じようなやりとりの末、真司もアースラに協力することになった。 「せや。真司君医務室どこだか分かる?」 突然はやてに話しかけられる。 「医務室?何で?」 「ほら、真司君左腕痛めとったやろ?治療してもらったほうがええんとちゃうかって」 「いやだから大丈夫だって」 やはり気付かれていた。だが、心配させまいと再び強がる。 …近くにいたクロノがノックする要領で左腕を叩く。 「!!!!!!」 もの凄く痛そうな反応だ。というか折れているのだから実際痛い。 「…ただの強がりだったようだな」 「ああやっぱり。ほら医務室行くで」 はやてに連れられ医務室へと向かう真司。どっちが年上だか分からない。 そして医務室 「あら?はやてちゃん、どうしたんですか?」 医務室に行くと、そこにはシャマルがいた。 「私はただの付き添いや。真司君がモンスターに片腕やられてるみたいやったから」 「…ども」 入りにくそうに医務室に入る真司。 「…え?真司さん?何でここに…」 「真司君も手塚さんと同じやったんよ。ライダーやった」 「…えぇ!?」 あからさまに驚くシャマル。まあ、知っているのはさっき艦橋にいたメンバーだけだから仕方ないといえば仕方ない。 とにかく腕の治療をしてもらう真司。 さっきありえない方向に曲がっていたからまさかと思ったが…やはり折れていた。 この後真司は「骨折しとったのに何で無理して戦ってたん?」とはやてに問い詰められて四苦八苦していたのは別の話。 ちなみに治療魔法『静かなる癒し』をもってしても全治1週間程度まで治療するのがやっとだった。 ギプスを使わずに済むだけまだマシといったところか。 アースラから帰ってきた真司は、まだ仕事の真っ最中だということを思い出し、急ぎOREジャーナルへと戻った。 途中で抜けたの怒っているだろうと思いながらバイクを運転しているといつの間にかOREジャーナルに着いていた。 すぐに編集部に行き、ドアを開ける。 「すいません、編集長。戻んの遅くなりまs「真司、お前ちょっとこっち来い」え?あ、はい」 多分途中でさっさとどこかに行ったことでどやされるんだろうな。真司は最初そう思った。 だが、聞かれた内容でそれは違うと確信する。 「城戸君、あれはどういう事?」 質問してきたのは令子だった。 「え?令子さん、『あれ』って…何のことですか?」 「とぼけないで、私見たのよ。あなたが特撮ヒーローみたいな姿に変身して窓の中に消えたのを」 見られていた。いつ?どこで? 決まっている。ディスパイダーを倒すために変身したあの時だ。 「真司、お前何か隠し事してるな?」 …言い逃れは不可能。ばれている。 「…分かりましたよ。話します。けど、これは絶対内緒ですからね!」 「なんか…一昔前の特撮ヒーローみたいね」 エンジニアの島田奈々子がそうつぶやく。 「真司、嘘つくならもっと現実味のある嘘にしろ…って言いたいところだが、令子が見たのも合わせるとどうも本当みたいだな」 「そうですね編集長。それなら行方不明事件も『全員モンスターに食べられた』で解決できますし」 「行方不明事件の真相がこんなとんでもない物だとはな…」 全員渋々ながらも信じたようだ。 「それで、お前はこれから先もその仮面ライダーとして戦うつもりか?」 「…はい。モンスターと戦って人を守れる、そういう力があるんです。ならそのために使いたいんです」 真司の決意は固い。 もはや誰が何を言っても止まらない、大久保はそう感じ取った。 「よし、分かった。やってみろ!」 「ありがとうございましたー」 OREジャーナルの近くにあるコンビニ。真司はそこにいた。 「早く戻らないと編集長がうるさいからな…えっと、俺のバイクは…」 今回の締め切りが近いので、全員揃って残業である。 ならばなぜ真司はコンビニにいるのか?その答えは簡単、夜食の買い出しだ。 そして全員分の夜食を買い、OREジャーナルへと戻ろうとした… キィィィン…キィィィン… どうやら戻る前に一つやる事ができたようだ。 モンスターだと思い周りを見る真司。だが近くにモンスターの気配は無い。 気のせいだったかと思い、バイクに乗ろうとその方向を見ると、サイドミラーに神崎が映っていた。 『仮面ライダー龍騎…城戸真司か』 「神崎士郎…お前、こんな戦いを何回繰り返すつもりだよ!」 それを言い終える頃には、神崎は映っていなかった…。 それもそのはず、真司の後ろにいたのだから。 『ほう、タイムベントの記憶があるのか。そのまま同じように繰り返すといい』 「残念だったな、もう前と違う進み方してるんだよ!」 『どういう事だ?』 「前はディスパイダーとの戦いで蓮に会った。でも今回は蓮じゃなくて手塚に会ったんだ」 言い終える前に、神崎は再び鏡に戻っていた。 「それだけじゃない。この時点では前は誰にもばれてなかったのに、今回は何人かの人にばれているんだ」 『すでに前と違う進み方をしているのか…それもいい』 「神崎士郎!俺は絶対に、ライダーの戦いを止める!誰一人死なせたりしない!」 『それがお前の願いか。いいだろう。そのために戦え…戦え!』 言い終えると、神埼が消えた。 (そうだ、誰かに死なれてたまるかよ…!) 次回予告 「はやてちゃん、真司さんと前から知り合いだったみたいだけど…」 「いやー、アパート追いだされちゃってさ」 「イライラするんだよ…」 「何ですって?浅倉が!?」 仮面ライダーリリカル龍騎 第六話『蛇と蟹』 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/679.html
ウイングロードで突っ走った先にあるのは、狙撃型オートスフィア。 遠くからさんざ撃たれまくったけれど、 ティアの幻術が道を拓いて、やっとあたしの射程内。 半年に一度のBランク昇格試験、ここで落とせば、また半年後。 あたしだけじゃない、ティアの夢が、こんなところでつまづくのなら。 足をくじいたティアを放って、あたしだけがゴールするくらいなら。 そんな未来は、握った拳でぶち砕く。 あの日、あの時、あの人が、あたしにそうしてくれたように。 そして、もう二度と、守れないことのないように。 神 聖 破 撃 ディバイン・バスター 魔力球、形成! 振り抜く右のリボルバーナックルで殴打、衝撃波、発生! 敵の攻撃全部はね飛ばし、無理矢理に隙をこじ開ける。 分厚い天井をぶち抜いて生きる道を創ってくれた、あの人の魔法。 間髪入れずにウイングロード、展開! ローラーブーツ、最大加速! 作った道は、あたし自身で駆け上って、極めるんだ! 右の振り抜きざま、左の素拳に込められた力は、 踏み出した足と同時に、真正面の『未来』にめり込む。 「 因 果 (いんが)!」 あの日の空に 見つけた憧れ あたしは あたしの なりたいあたしに なる ! 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第九話『二人(前編)』 「因果だってよ、覚悟くん」 「否、あれはディバインバスターなり」 照れなくてもいいのに。 少し嬉しそうで、少し哀しそうな顔をしている覚悟くん。 やっぱり、一度は生命を助けた子だから、 わざわざ戦いの場に戻ってくるのを止めたい本音もやっぱりあって。 でも、あのとき、あの子を助けた魔法の名前を受け継いで、 誰かを助ける仕事を望んでくれた…伝わる思いも、うれしくて。 また映像に目を移したら、ティアナちゃんを背負ったスバルちゃんが、 制限時間ぎりぎり、全速力でゴールに突っ込んでくるところ。 合格は間違いなしだった。 満点はあげられないけど、見せてくれた奮戦と結果は、納得するには充分すぎる。 そんな、感激の目で見ていたから、あやうく気づかないところだったけど。 「危険だ」 「…まずいね」 ヘリから一緒に飛び降りた。 このままじゃ二人とも、ゴールの先にある瓦礫に正面衝突だから。 最後の最後でこんなミス…危険行為の減点は大きいけれど、 今はそんなこと、気にしている場合じゃない。 覚悟くんは覚悟くんらしく、正面から二人を受け止めきるつもりみたい。 だったらわたしはその後ろからアクティブガードで、さらにやさしく受け止める。 誰も痛くないように…そう、思っていたんだけど。 スバルちゃんのとった行動は、覚悟くんの予想も、わたしの予想も超えていたんだ。 わたし達が受け止める体勢をとるよりも前に、スバルちゃんは、ティアナちゃんをお姫様抱っこして。 …自分で、仰向けに転んだんだ。 「んんうううぅぅぅぅぅぅッ!」 歯をくいしばりながら、背中でアスファルトを滑ってゴールを通過。 ティアナを上に載せたまま、平手を地面についてブレーキ。 わたしと覚悟くんよりはるかに前の地点で、速度を完璧に殺して止まった。 正直、言葉もなかったよ。 だって… 「…ゴール、だよ、ティア」 「っの馬鹿ぁ!」 バリアジャケットの上着は摩耗しきって消滅して、 肩とか背中とか、こすった後が一直線に赤く残ってる…地面に。 痛い、痛いよ。 これは痛い、見てるだけで。 「なんてこと、なんてことしてんのよ! あんた…あんた、正気ぃ?」 泣きそうな顔で胸ぐらを掴み上げてるティアナちゃんに、 スバルちゃんは少し笑って答えてた。 血みどろの背中に、全然気づいてないみたいに。 「その…ティアが、足、怪我してるから。 これで、公平かなって…」 「馬鹿言ってんじゃないわよ、なにが公平よぉ」 「それより、間に合ったよ、制限時間内に、ゴールできたみたい」 「んなの、どうでもいいわよっ、いくら、あんたが…」 覚悟くんが近づく。 わたしも近づく。 二人とも、それに気がついて、こっちを見た。 試験の結果は、今は二の次。 言ってあげなくちゃいけないことができたけど、 それは覚悟くんがやってくれそうだったんで、わたしは止まって待っている。 少しぼんやりした顔のスバルちゃんの正面に立つと、覚悟くんは。 「馬鹿者! 己が身を大事にせよ!」 開口一番で怒鳴りつけてくれた。 思わずきつく目を閉じるスバルちゃんに、かまわず続けていく。 「父と母より受け継ぎし玉身(からだ)。 昇格試験ごときで、粗末に扱ってはならぬ」 「…ごとき、じゃ、ないです」 だけど、ここでまた。 「ティアの夢が、かかっているんです。 ここでダメにしちゃったら、また半年先になるから。 半年も遅れちゃうから、だから…」 スバルちゃんは、明確に反論してきたんだ。 この試験には、これだけのケガをわざわざしてまで受かる意味があるって。 それは友達の夢を守ることなんだ、って。 そう聞かされた覚悟くんは、少し、むずかしい顔をしてから。 「その意気やよし」 「…わっ?」 「よくぞ、これほどになってまで守り抜いた」 脱いだ機動六課のジャケットを、スバルちゃんの背に放り投げるようにかけた。 当然だけど、覆い隠された傷口の部分から、すぐに血で汚れていく。 「だが、できるだけ自ら傷を負うことは避けよ。 おまえの友も喜ばぬ」 目配せされたティアナちゃんも、一瞬遅れて弱々しくうなずいた。 覚悟くんは満足するようにここから立ち去ろうとして、 その背中をまた呼び止められる。 「あ、あのっ、これ、上着」 「医務室で処置を受けて後、返しに来るがいい」 「でも、血で…」 「おれもあの時、きみの服をおれの血で汚したはず。 これにて公平!」 「…………」 あとは覚悟くん、振り返りもしなかった。 これからは、守るべき誰かじゃない。 一緒に戦っていく後輩になる。 覚悟くんに言わせてみれば、スバルちゃんは生命の恩人で。 スバルちゃんがいなければ、火事の中、一人で力尽きていて。 そんな子を戦わせるのはやっぱり嫌って本音は、きっと、どうにもならない。 でも、そんな覚悟くんだから、わたしはすっごく期待してる。 絶対に死なせたくなくて、その上、スバルちゃんの戦う意志が揺るがないなら。 覚悟くんは、スバルちゃんにティアナちゃん、それとまだ来ていない二人にも、 育てるために全身全霊を尽くしてくれる。 これは確信かな。 その後、試験が終わった二人に、すぐ機動六課の話を持ちかけた。 二人が出会った、あの怪人の背後関係を今は追っているって説明した。 だから多分、他よりも、ずっと危険で血なまぐさい仕事を請け負うことになるよ、って。 断りたければ、断ってもいい。 二人にはその権利があるから、って。 …答えはね、ふたつ返事だったよ。 これからよろしくね。 スバル、ティア。 わたしも、二人を絶対、死なせたりしないから。 スバル・ナカジマ、およびティアナ・ランスター。 この二名は良し。 だが、もう二名はどうか? エリオ・モンディアル、およびキャロ・ル・ルシエ。 魔導の素質すぐれたるフェイトの養子二人。 スバルとティアナが今回の試験にて勝ち取った陸士Bランクを、 エリオなる少年、すでに保有しているも、それだけでは信用できぬ。 精神(こころ)伴わぬ戦闘力は危うき候。 たとえるならば、嵐に揺らるるいかだの上、樽に詰まったニトログリセリンに同じ。 保有する大破壊力、正しく扱えねば自らを滅ぼす。 これ父、朧(おぼろ)の教えなり。 ゆえにおれは問わねばならぬ。 両名の、戦士としての了見を。 別にフェイトを信じぬわけではないが、こればかりは拳を突き合わせねばわかるまい。 両名を機動六課官舎に呼びつけて早々、おれは模擬戦を申し込んだ。 むろん、フェイトが立ち会う。 養子二人がこれより志望するは、殺意うずまく戦場なれば、 むざむざ死にに行かせるを承知するわけもなし。 ただ、これだけを言って、この模擬戦を許したのだ。 「私は信じてるよ。 二人の持ってる、ゆずれないもの」 「その言葉、覚えたぞ」 模擬戦場には、基礎的に廃墟を設定。 高速道路跡上にて、おれと両名は向かい合っている。 紅の少年と、桃色の少女。 まだ年端もいかぬ子供… とはいえ、おれとて十歳にして零式鉄球をこの身に埋め込んでいるのだ。 そして、さらには。 あの高町なのはも、フェイト・テスタロッサ・ハラウオンも… はやてまで、十歳に届かずして実戦に身を投じているという。 すなわち、身体未成熟であろうが、面影に幼さ残っていようが、あそこにあるは未知の敵。 いささかなりとも、あなどる気は無し! 「正調零式防衛術(せいちょう ぜろしきぼうえいじゅつ)、葉隠覚悟…参る!」 「…エリオ・モンディアルと、ストラーダ!」 「う、あ、あの…」 紅の少年、エリオは槍を掲げて返礼したが、 少女は気後れしきって何も言わぬ。 早くも底が知れたか? そのようなわけはあるまい。 「名乗れ! 戦う前から気迫に呑まれてどうする!」 一喝。 これでひるんでしまうならば、戦場に立つ資格なし。 だがそこで、傍らにいたエリオ、少女の背を軽く叩き、 振り向く少女に目を合わせ…うなずく。 そして再び、槍をこちらに構え、突き出す。 宣戦布告、確かに見たり。 少女もまた、気合いを入れ直し、今度こそ名乗った。 「召喚師、キャロ・ル・ルシエ! フリードリヒと、ケリュケイオン!」 エリオから多少の力をもらったか。 それも良し。 少女、キャロの背に隠れていた竜、フリードリヒも姿を現わし、開幕準備完了。 「…来い!」 戦士の礼にて、相手つかまつる! 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/471.html
第一訓 ツインテールに悪い奴はいない 第二訓 傀儡兵は魔術師が責任を持って最後まで相手をしましょう 第三訓 小説版なのはには中二病的な物が潜んでいるから気を付けろ 第四訓 第一印象がいい奴は魔術師にはいない 第五訓 10年たってもあだ名で呼び合える仲間を作れ 第六訓 お前ら闇の書なんて作ってる暇があるなら学校にでも行ってきな 第七訓 一度狙った魔術師は死んでも落とせ 第八訓 カッコよさとダサさは紙一重 第九訓 魔法はグーでやるべし 第十訓 疲れた時は甘い物を 第十一訓 弾幕使う魔法少女なんてなぁ魔法少女じゃねぇバカヤロー 第十二訓 全世界の魔術師ども日本は守れ 第十三訓 原作で生まれるのは青白いモノばかり 第十四訓 バリアジャケット着るならキャラまで変えろ 第十五訓 魔術師にはデバイス使えて一人前みたいな訳のわからないルールがある 第十六訓 考えたらリリカルなのはってスピンオフ作品じゃねーか!って凄ッ!! 第十七訓 魔法少女だってほぼお前らと同じことやってるんだよ 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ