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Round ZERO ~ JOKER DISTRESSED(後編) ◆HlLdWe.oBM 「インテグラ卿!!!」 ギンガの叫びが幾重にも重なった深い煙の中に虚しく響く。 どういう原理か知らないが校庭周辺に漂っている煙の量は半端ではない。 ガジェットに施されたランブルデトネイターによる爆発によって発生した爆煙。 広い校庭の細かな砂が爆発によって舞い上がった事で発生した土煙。 さらにガジェットが爆発した付近には体育倉庫があり、その中にはどこにでもあるようなラインパウダーが保管されていた。 それがガジェットの爆発に巻き込まれて周囲に拡散する始末となった。 つまり現在校庭付近に限定するなら3重もの煙幕が展開されて視界はほとんど防がれている状態。 この異常事態の確かな原因をギンガは知らないが、最悪の状況である事は確かだ。 インテグラはもちろん、膠着状態だった弁慶・カリス・ギンガ・ギラファの4人も爆発の影響で離れ離れになってしまった。 つまり現状誰がどこにいるのかさっぱり分からない状態なのだ。 「インテグ――ッ!」 ギンガはあらん限りの声を上げてインテグラを呼び掛けていたのだが、そこで唐突にある可能性に気付いた。 この状態では目に頼った捜索は困難を極める。 では目に頼らなければどうするか。 答えは耳。 周囲の音から物事を判断する事が自然と重要になってくる。 そしてそんな中で声を上げるという事は自分の居場所を相手に教えるという事に他ならない。 この場所にいる者がインテグラだけなら大して問題ではないが、実際は違う。 ここには始と戦っていたアンデッドと僧侶姿の大男がいた。 そんな危険人物のいる中で自らの居場所を教えるなど少々浅はかである。 (危なかった。あのままだったら、あとでインテグラ卿に怒られてい――) そこでギンガの思考は途切れた。 深く立ち込めた灰色と白色が入り混じった煙の向こうに二つの人影を見つけたのだ。 一つは地面に伏していて、もう一つはその脇に立っている。 それを見た瞬間、ギンガは再び嫌な予感がした。 心の内にチラつく不安に後押しされてギンガは碌な確認もしないまま既に足をそちらに向けて知らず知らずの内に走っていた。 全力で走ってすぐさま現場に着くと、そこにいるのが誰なのか分かった。 地面に伏しているのはインテグラ、立っているのは金色の怪人――ギラファアンデッド。 そして地面にうつ伏せの状態で倒れているインテグラの背中には紅い槍が刺さっていた。 「貴様ァァァ!!!」 限りなく即死に近い状態だった。 槍が刺さっている場所は心臓付近。 そこを穿たれて平気な人間などいない。 しかもインテグラは数時間前に全身火傷を負って体力が消耗している さらに手元に碌な治療用具がない以上適切な処置など不可能。 つまりインテグラの死は確定的だった。 「……見られたか、ならば!」 当の下手人であるギラファはギンガの姿を認めると、静かな殺気と共に襲いかかって来た。 ギラファが殺し合いに乗っている事は火を見るよりも明らかである。 そんな危険な者を、インテグラを殺した怪人を、ギンガはこのまま野放しにする気など毛頭なかった。 ギンガは悲しみを心の底に追いやり、猛然とギラファに向かっていった。 「ハ――ッ!!」 「――ッ!!」 幼い頃よりこの身に刻んできたシューティングアーツの技を惜しみなく繰り出していく。 その一手一手にはカード内に蓄積されていた魔力を順次開放させて上乗せしている。 本調子とまではいかなくても威力は申し分ないはず。 だが届かない。 拳も、蹴りも、魔法も、全て。 ナックルバンカー――魔力付与によって強化した拳は右手の剣で払われた。 ストームトゥース――防御破壊と直接打撃の左拳二連撃は最初の一撃を躱されて膝蹴りを喰らわされた。 リボルバーシュート――猛烈な衝撃波と共に放たれた魔力の弾丸はバリアによって阻まれた。 お互いの声が漏れるたびに拳と剣が交錯する。 戦況はギンガに圧倒的に不利な状態だ。 数手交わしただけでそれが嫌というほど分かった。 おそらく目の前の相手の力は殺生丸や金髪の男と同等だ。 しかもこちらにはデバイスがなく、魔導師としてそれは戦力の低下を意味している。 今までの数手で自分は持てる技を最大限に駆使したが、全く攻撃が届く気配がない。 まだ奥の手のリボルバーギムレットがあるが、あれはナックルスピナーがない状態では回転させる動作制御が不十分になる。 おそらく威力不足でバリアに阻まれて相手に届く事すら叶わないだろう。 いくらカードで魔力を付与してもデバイスがない以上リボルバーギムレットを出すのは難しい。 (ギムレットが無理なら、もう一つの方に賭けるしかな――って、迷う暇なんてないわね。もう今しかチャンスはない!) 今までの攻防でアンデッドはこちらの力量を掴んできたはず。 それはすなわち己との圧倒的な力の差。 そこには僅かだが余裕という名の隙ができる。 だが奥の手を使えばその差を覆せる可能性はある。 逆転の一手を仕掛けるなら今しかない。 決意すると後は行動するだけ。 ギンガは少し溜めを作り、一気に走りだした。 もちろん向かう先は金色の怪人ギラファアンデッド。 「これで終わりにしようか」 必死なギンガとは対照的にギラファは悠然と構えて言葉を放った。 ここまでの戦闘で彼我の差が明らかである以上それも当然だ。 だがそこに僅かながら隙がある。 そしてそれはギンガが狙っていた事。 徐々に距離を詰めていき後数歩という所で―― 「な!?」 ――ギラファの目の前に光の道が出現した。 今まで見せなかったギンガの先天固有魔法・ウイングロード。 突然目の前に紫の光の道ができた事でさすがのギラファも驚愕を隠せないでいた。 だから一拍遅れて迫ったギンガへの反応が遅れる事になった。 (……私は今まで何もできなかった) 最初は空港火災の時、二度目は地上本部の時。 どちらも自分の責任を貫き通す事が出来なかった。 ここに来てからも同じようなものだ。 最初は殺生丸さん、次に矢車さんとキャロ、そして今度はインテグラ卿。 だからせめて目の前の相手だけは倒す。 ここで放っておけば必ず皆に刃を向ける怪人を。 自分は今度こそ責任を貫かなければいけない。 だからここにいる人を、そしてスバルを―― (――私が守るって、決めたんだ!!! だからフェイトさん、殺生丸さん、あなた達の力、貸して下さい!!!) 刹那デイパックより一振りの傷だらけの刀が抜き出された。 その刀の名は殺生丸の形見となった童子切丸。 それを左手に持たせたままその手を腰だめにして構え、逆に右手は前に突き出す。 カードを全て使って魔力の補充は万全。 あとは撃ち出すのみ。 「プラズマアアァァァァァァァァスマッシャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――ッ!!!」 至近距離から放たれた魔法は憧れの対象である恩人の技。 オリジナルのような電撃は付与できないが、全カードを使って補充した魔力で威力は十分だ。 ギンガの決意を秘めた左腕が限界まで込められた魔力と共に突き出される。 (この距離ならバリアも――) (――甘いな!!) ウイングロードで作り出した僅かな隙。 だが後一歩及ばず。 目の前にはあの全てを阻む透明の壁が。 それでもギンガは信じている。 煌めく銀河の雷光が必ずや敵を貫くと。 ここで二人が知らない事実がある。 それは童子切丸の特性である「人間の生き血を捧げれば、あらゆる防御術式を貫く事ができる」というもの。 もちろんギラファアンデッドも、ただ形見として拾っただけのギンガも、この特性を知る由もない。 今回ギンガがこの剣を取り出したのは殺生丸の力にあやかりたいという部分が大きい。 だがここで偶然にも奇跡的な事が起こった。 ここまでの戦闘でギンガは身体のあちこちに傷を負っていて、当然そこから血が流れ出ていた。 それが腕を伝って童子切丸に行き着いていたのだ。 正式な形はともかく童子切丸に「人間の生き血」が僅かばかりでも捧げられた事に変わりはない。 それによって妖刀童子切丸はその「あらゆる防御術式を貫く事ができる」という特性を発動させる事ができた。 当然ギラファのバリアも「あるゆる防御術式」にカテゴリ―されるものであり、童子切丸によって貫かれる事は明らかだ。 もちろんそんな事は知らないギラファはここでバリアを展開して攻撃を防いでから反撃に転ずるつもりだ。 しかしギンガの左拳にはその童子切丸が切っ先をギラファに向けた状態で握られている。 この瞬間バリアは無意味となった。 こうして二人の知らない事実の下で童子切丸は計り知れない力の奔流と共に生身の身体に叩きつけられた。 肉と骨を断った剣は役目を終えたかのように根元から折れて眠りに就いた。 限界まで高められた魔力の激流は出口を与えられた瞬間、目の前の敵に叩きつけられた。 そして全てが終わった。 ▼ ▼ ▼ 俺はもう誰も失いたくなかった。 だがこの傷でじゃ遅かれ早かれ死ぬだろう。 少し無茶をしたせいか、血を流し過ぎたかもしれない。 だから最期に俺はこの身を差し出してやる。 ……和尚……寺のみんな……竜馬……隼人……そしてティアナ。 もう誰かが死ぬのは御免だ。 確かにお前は少し胡散臭いところもある。 だがお前のおかげで俺達はあの時無駄に対立する事を防げた。 お前が悪人ならあの時俺達が勝手に仲違して自滅する様を見ていれば良かったはずだ。 だから俺はお前を信じるぜ。 だから……あばよ、金居…… ▼ ▼ ▼ ギンガは目の前の出来事が信じられなかった。 「え……あぁ……そ、そんな……」 ギンガのプラズマスマッシャーは確かに目の前の男に刃を突き立て魔力の奔流をその身にぶつけた。 もちろん童子切丸による出血とプラズマスマッシャーによる衝撃で既に息はない。 だがギンガの顔は青ざめていた。 なぜならギンガと戦っていたギラファはその男の背後に未だ無事な状態でいるからだ。 ギンガのプラズマスマッシャーを金居から庇った男は武蔵坊弁慶。 弁慶はあの爆発に巻き込まれて地面を転がり出血多量もあって気を失っていた。 そして気絶から回復した弁慶の目に飛び込んできたものは襲われているギラファアンデッド、金居の姿だった。 それを見た時もうこの傷ではそう長くないと悟っていた弁慶は自らの身を挺して金居の身代りになる事を選んだのだ。 しかも驚く事に弁慶は童子切丸でその身を貫かれプラズマスマッシャーでその身を焼かれてその命が尽きても倒れる事はしなかった。 まさに伝説で伝え聞く『弁慶の立ち往生』のようであった。 そんな悲劇としか言いようのない結末を目の当たりにしてギンガはただ呆然としていた。 「弁慶君、感謝するよ」 「……ガァッ――ッ!?」 そしてその隙をギラファアンデッドが逃すはずがなかった。 己のした『あやまち』に心ここに在らずの状態にあったギンガの身体にはインテグラと同様に紅い槍が突き刺さっていた。 しかし咄嗟に身体を捻ったおかげで槍が貫いた部分は左腹。 致命傷のインテグラとは違って適切な処置を施せばまだ助かる傷ではある。 「――え? そ、そんな……ぁ……」 だがギンガの身体は限界だった。 自らが犯した『あやまち』と命を奪う一撃。 その二つの衝撃で若い身体はボロボロになっていた。 もう立つ事すら覚束なくなり、すぐに重力に引かれて身体は支えを失って倒れた。 ギラファに握られたままの槍はそのまま身体から離れ、左の腹に紅い穴を形作っていた。 その穴から紅い生き血が止めどなく流れ出ている事にギンガは気付いたが、もうどうする事も出来なかった。 (私は、ここで……なにも、なにもできないまま……死ぬの……?) 少しの間を置いて地面に叩きつけられたギンガの身体が再び動く事はなかった。 ▼ ▼ ▼ 校庭を外界と遮っているコンクリート製の灰色の壁。 その内側に凭れかかった状態で相川始はいた。 その姿はハートのA「チェンジマンティス」の力を宿したカリスの姿ではない。 ハートの2「スピリット」の姿を宿した相川始のものだった。 あの爆発の衝撃でカリスの変身が解けたのが原因だった。 しかもその際に壁にぶつかった衝撃で今まで気を失っていたのだ。 とりあえず一緒に吹き飛ばされたらしいパーフェクトゼクターをデイパックに仕舞いつつ始は今の状況を確認していた。 (俺はどれくらい気を失っていたんだ? カテゴリーキングは? 弁慶は? そして、ギンガ……) ふと思い出すのは先程の一件。 ギラファの斬撃から自分を守ってくれた少女ギンガ・ナカジマ。 ギンガは自分の正体を知った後でも変わらぬ態度で説得しようとした。 そして危険を顧みず自分の命を助けるために戦いの渦中に飛び込んできた。 そこまで自分に関わってくる理由は己の胸に引っ掛かっているあの言葉に関係あると容易に想像がつく。 だが今の自分はそれに応える事はできなかった。 (人間、か。だが俺は……アンデッド……人間な――! なんだ! この気配は!?) その事が胸に引っ掛かりつつもカリスはまだ痛む身体を起こした。 未だ視界が定まらぬ煙の向こうから感じる禍々しい気配。 それが始に悠長に休息を取っている場合ではないと警告していた。 だが自分の感覚を信じるならばそこにいるのはアンデッドではない。 だがそれ以上の何かを感じさせる者がいる事は確かだった。 周囲一帯に立ち込める煙でほとんど何も見えないが、そんなものを感じさせない程にその存在は異常だった。 不意に一陣の風が校庭に吹いた。 それにより立ち込める煙は一掃されていき、三重の煙幕は徐々に晴れていった。 そしてカリスは見た。 紅い血で真っ赤に染まった地面に倒れ伏すギンガと、その脇に立っている赤いコートの男を。 「……貴様が殺ったのか」 「そうだと言ったら、どうする?」 その言葉を聞いた瞬間、相川始の中で何かが弾けた。 不意に頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなるほどに身体の奥底から何かが沸々と湧き上がってきた。 それは言葉に出来ないほどの暗い衝動。 それが自分の本来あるべき姿を呼び覚まそうとしていた。 それは長らく封印してきた自分の真の姿。 それになるという事は真の意味で化け物になる事だ。 だが。 それでも。 湧き上がる衝動は抑えがたく。 ついに。 「――――――――――ァァアアアア――――――――――ッッッ!!!!!」 その暗い衝動に身を委ねた。 次の瞬間、そこに相川始はいなかった。 そこにいる者は『相川始』に非ず、彼の者の名――それは『ジョーカー』。 ▼ ▼ ▼ アーカードの目の前には一つの死体があった。 見慣れた服装、見慣れた髪、そして確認するまでもなく見慣れた顔。 それは紛れもなくアーカードの主インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングに相違なかった。 アーカードがここに来た理由はガジェットの爆発に気付いたからだ。 その爆発音が市街地を捜索していたアーカードまで届き、戦闘の気配を感じるままに赴いた次第だ。 そして一度は去った学校に再び戻った時、アーカードは主インテグラの気配を感じ取っていた。 先程死にかけの女を抱えて去って行った黒い化物を放っておいたのも近くで主の気配を感じたからだ。 それなのに当の主はアーカードを見るなり悠然と命令を与え終わると、それが最期の力かのように静かに逝ってしまった。 「それがお前の最後の命令(ラストオーダー)か、我が主インテグラ」 ――見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ! 我々の邪魔をするあらゆる勢力は叩いて潰せ! そして、あのプレシアを…… その最期の言葉がヘルシング機関の鬼札<ジョーカー>の胸にいつまでも木霊していた。 【1日目 昼】 【現在地 D-4 学校の校庭】 【アーカード@NANOSING】 【状況】疲労(小)、昂ぶり、セフィロスへの対抗心 【装備】パニッシャー(砲弾残弾70%/ロケットランチャー残弾60%)@リリカルニコラス 【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書 【思考】 基本:??? 1.主の命令(オーダー)は見敵必殺(サーチアンドデストロイ)か。 【備考】 ※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。 ※パニッシャーは憑神刀(マハ)を持ったセフィロスのような相当な強者にしか使用するつもりはありません。 ※第1回放送を聞き逃しました。 ※ヘルメスドライブに関する情報を把握しました。 ※セフィロスを自分とほぼ同列の化物と認識しました。 ※はやて(A s)が死亡した事に気付きました。 ※インテグラの死体(背中に朱羅の片方@魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~が刺さった状態)の傍にデイパック(支給品一式)が落ちています。 ▼ ▼ ▼ 相川始は図書館にいた。 なぜ学校にいた始がエリアを隔てた図書館にいるのか。 それはジョーカーの姿に戻って学校から移動したからだ。 だが本来ならジョーカーとして覚醒すれば赤いコートの男に襲いかかったはず。 しかしジョーカーとなった始は戦わなかった。 「……ぅ……!」 読書用に設置されたソファーの上から微かな声が聞こえてくる。 そこには全身血まみれの少女が寝かされていた。 青紫のショートヘアも、茶色の陸士制服も、その身体を沈ませているソファーも自らの血で汚しつつもまだ少女は生きていた。 ギンガ・ナカジマ。 あの時ギンガがまだ生きていると気づいたから始はジョーカーでありつつも逃走を選んだ。 まだギンガを助ける事ができると信じて。 それは先程ギラファから助けてもらった借りを返そうとしたからかもしれない。 だが実のところはそのようなものがなくとも助けようとしたのかもしれない。 本当のところは始にも分かっていない。 「……始、さん」 ようやく気が付いたギンガの声は明らかに弱々しくなっていた。 当然だ。 左腹からの出血はもう手の施しようのないレベルに達していた。 応急措置をしようにもとっくに手遅れの状態だった。 もうギンガが助かる可能性はなかった。 そのギンガは最後の力を振り絞って何かを言おうとしていた。 始はそれを黙って聞いてやる事にした。 「は、始さん……」 「…………」 「わ、私のデイパックの、中の……録音機を、アーカードという人に……渡して……」 「…………………」 「お、お願い……し……」 「……ああ、分かったよ」 なぜか肯定の返事を返していた。 表情には出さなかったが、そんな事をしている自分に驚いていた。 だが不思議と断ろうという気持ちにはなれなかった。 そして始の承諾を得たギンガの顔は安らかなものだった。 「ありがとう……ござ、います。あと……なのはさんと、フェイトさん……はやて部隊長、それにスバルと……キャロに会ったら――」 「…………………………………」 その言葉の続きがギンガから話される事はなかった。 ▼ ▼ ▼ いつのまにか私は始さんに背負われて、そして寝かされていた。 その時はっきりと相川始は人間だと確信できた。 誰かを助けようとする人が化け物であるはずがないと思ったから。 だから安心して録音機の事を頼めた。 あの中にはここへ来る途中でインテグラ卿がアーカードに対してメッセージを入れていた。 本来はインテグラ卿不在時にアーカードの遭遇した時の備えだったが、こんな事になるとは思っていなかった。 あと出来る事なら仲間の事も話しておきたかったが、どうやら時間切れのようだ。 もう既に意識が遠のき始めていた。 ああ、スバル。また守ってあげられなくてごめんね。 そして。 殺生丸さん、私は―― ▼ ▼ ▼ 紅に彩られたソファーに寝かせられたギンガはまるで安心しきったかのように眠っていた。 だがその眠りは永遠である。 もうギンガが目覚める事はない。 それを理解した時、始は胸に言葉に出来ない何かを感じていた。 それが何なのかなぜそのように思うのか自分でもよく分からない。 「何を考えているんだ、俺は……」 その不可解な感情がジョーカーの心を大きく揺さぶっていた。 【1日目 昼】 【現在地 E-4 図書館のロビー】 【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状況】疲労(中)、全身に軽い切傷、左腕に強い痺れ、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、カリスとジョーカーに1時間変身不可 【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ 【思考】 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。 1.とりあえず身体を休める。 2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)。 3.アーカードに録音機を渡す? 4.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。 5.ギンガの言っていた人物(なのは、フェイト、はやて、スバル、キャロ)が少し気になる。 【備考】 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。 ※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。 ※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。 ※カリスの方が先に変身制限は解除されます。 ▼ ▼ ▼ 学校で、図書館で、二人のジョーカーが想いを馳せている時、金居は一人東に向かっていた。 目的地は当初の予定通りB-8にある工場だ。 (いくつか誤算はあったが、まずまずの結果だ) 金居は今までの経緯を振り返っていた。 まずはジョーカー――カリスとの戦闘。 この時金居は本気で戦う事はしなかった。 だが一応それなりに戦っていたので精々ジョーカーが違和感を覚えた程度だろう。 このような事をしたのは当初の予定通り弁慶と潰し合わせて漁夫の利でカリスを仕留めようと考えていたからだ。 だからカリスの消耗を待って一気に片付ける気でいた。 あの作戦が破綻した時は少し予定が狂いかけたが、弁慶の捨て身の行動で絶好の機会に転じる事ができた。 ジョーカーの注意を逸らそうと雄叫びまで上げた事が功を奏したのかは知らない。 だがその機会は突然乱入してきたギンガ・ナカジマによって阻まれてしまった。 ここでしばらく膠着状態に陥った時はさすがに本気を出してギンガ諸共カリスを倒す事を優先しようかと考えた。 転機はその直後に起こった爆発だ。 爆発の理由は不明だが、その直前に到着した新たな人物。 その女性はギンガから「インテグラ」と呼ばれていた。 この地でそれに該当する者は「インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング」に他ならない。 そしてインテグラはペンウッド曰く、アーカードの抑えられる唯一の存在らしい。 つまりインテグラを殺せばアーカードを止める者はいなくなり、結果デスゲームの進行に貢献する事に繋がる。 それは金居の望むところだった。 爆発の衝撃はバリアで防いだので即座に行動を再開する事ができた。 そしてすぐにあの煙の中で幸運にもまだ爆発の衝撃から回復していないインテグラを発見できた。 目的は一瞬で終わった。 一気に背後より近付き左手のスケルターで背部を強打。 こちらの姿を見ないまま倒れたところに落とした槍で心臓付近を一突き。 実に呆気ない最期だった。 凶器に槍を選んだのはもしものための保険だ。 ヘルターやスケルターではなく誰でも扱える槍なら下手人が判明する可能性は低くなる。 ついでにインテグラが所持していた銃器を拾えた事は幸運だった。 一番の誤算はその現場をギンガに見られた事だ。 煙で視界が悪いのですぐに済ませれば問題ないと思っていたが、ここは運が悪かった。 だが直後の戦闘でインテグラ同様に槍を刺して殺せたので大した問題にはならなかった。 少し意外だったのは弁慶が身を挺して守ってくれた事だ。 あそこまで仲間想いの奴だとは思っていなかったから少し驚いていた。 だがあそこで弁慶が庇ってくれなければ面倒な事になっていた可能性が高い以上弁慶には素直に礼を言っておいた。 そして直後に得体の知れない禍々しい気配が近づいてきたのを感じたので、その場は弁慶のデイパックだけ回収して立ち去った次第だ。 もし仮に誰かに見られたら不味い場面なのは確実だったので長居はしなかった。 心残りはジョーカーを仕留める事ができなかった事だが、あの様子ではすぐに動く事は難しいだろう。 もし運が良ければあの禍々しい気配と一戦構えてくれればと思うが、そう上手くいかないだろう。 「これが支給されたのは幸いだったな。このおかげですぐに動けるようになった」 金居の手には小さな袋が握られていた。 その中に入っている物こそ金居がこうして戦闘直後にも関わらず不自由なく行動出来ている理由だ。 この袋の中にある物は「いにしえの秘薬」と言って、服用すればどのような傷でも完全に癒し体力も回復してくれる万能薬だ。 これのおかげで本来なら幾らかの負傷と変身後の疲労ですぐには動けない金居が不自由なく動けるのだ。 全体的に今回は上手く立ち回る事ができた。 基本的に戦闘は避けていく方針だったが、止むを得ない時は仕方ない。 ジョーカーとの決着は避けては通れないから。 (とりあえず弁慶君は……ジョーカーに殺された事にしておこう。あながち嘘ではないからな) ふと時計を確認すると次の放送までもう少しというところだった。 これからの具体的な行動方針は放送を聞いてからでも遅くはない。 そう考えを出した金居は落ち着いて放送を聞くために近くのビルに入る事にした。 クワガタムシの始祖たる不死の王の大顎はまだ牙を剥き始めたばかりだ。 【一日目 昼】 【現在地 D-5 西大通り沿いのビル】 【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状態】健康、ギラファアンデッドに1時間変身不可 【装備】なし 【道具】支給品一式×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×9、カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、USBメモリ@オリジナル、S W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、コルト・ガバメント(6/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、ランダム支給品0~1 【思考】 基本:プレシアの殺害。 1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する、強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。 4.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。 5.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。 6.USBメモリの中身を確認したい(パソコンのある施設を探す)。 【備考】 ※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。 ※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。 ※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。 ▼ ▼ ▼ アンジール・ヒューレーは倒れていた。 目の前でチンクを失った事。 それが想像以上にアンジールを苛み、精神的に負担になっていた。 当初はクアットロを探そうと荷物をまとめようとしていたが、チンクの眼帯を見た瞬間何も考えられなくなった。 ディエチとは違ってチンクはすぐ傍にいた。 それなのに守る事ができなかった。 誰もいない大通り上でアンジールはいつまでも己のあやまちを責め続けた。 そして気づけばアンジールはチンクの眼帯を握ったまま当てもなく歩きだしていた。 だがそんな状態がいつまでも続くはずがなく、程なくしてアンジールは己を苛んだまま地面に倒れてしまった。 そして予想以上に精神的に堪えていたアンジールはそのまま意識を手放した。 だからアンジールは気付く事が出来なかった。 荷物をまとめる際にガジェットがどこかへ行ってしまった事を。 そしてそのガジェットが3人の参加者の命を奪う手助けをした事を。 その中にアンジールと同じように誰かを守ろうと必死になっていた者がいた事を。 全て知らないまま2回目の放送の時刻が近付いていた。 【1日目 昼】 【現在地 G-6】 【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】疲労(中)、全身にダメージ(小)、セフィロスへの殺意、深い悲しみと罪悪感、睡眠中 【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、アイボリー(6/10)@Devil never strikers、チンクの眼帯 【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:クアットロを守る。 1.チンク…… 2.クアットロ以外の全てを殺す。特にセフィロスは最優先。 3.ヴァッシュ、アンデルセンには必ず借りを返す。 4.いざという時は協力するしかないのか……? 【備考】 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。 ※制限に気が付きました。 ※ヴァッシュ達に騙されたと思っています。 ※チンクが死んだと思っています。 ※ガジェットが無くなった事に気付いていません。 【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴 死亡確認】 【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸 死亡確認】 【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING 死亡確認】 【全体の備考】 ※以下の物がD-4の学校の校庭に放置されています。 弁慶の死体(腹に童子切丸@ゲッターロボ昴の刀身が突き刺さり全身焼け焦げた状態、仁王立ち)、童子切丸の柄@ゲッターロボ昴、朱羅の片方@魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry、パイロットスーツ(真っ二つにされた状態)@ゲッターロボ昴 ※カード×48@魔法少女リリカルなのはA’sはギンガが全て消費しました。 ※ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerSがD-4の学校まで移動して爆発しました。その際深い煙が発生しました。 ※G-6の大通りにはバニースーツのうさぎ耳、炭化したチンクの右腕が落ちています。 【カード@魔法少女リリカルなのはA’s】 デバイス内での炸裂を必要としない簡易型のカートリッジシステムのような働きをする使い捨ての魔力蓄積装置。 仮面の戦士(リーゼ姉妹)が魔力行使の際に使っていた。普段は左太腿のカードホルダーに収納されている。 【録音機@なのは×終わクロ】 記録用のメモリ式携帯録音機(バッテリー式)。本来の持ち主は佐山御言。 Back Round ZERO ~ JOKER DISTRESSED(前編) 時系列順で読む Next 過去 から の 刺客(前編) 投下順で読む Next 過去 から の 刺客(前編) アーカード Next しにがみのエレジー。~名もなき哀のうた~ インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング GAME OVER ギンガ・ナカジマ GAME OVER 相川始 Next The people with no name 金居 Next MISSING KING 武蔵坊弁慶 GAME OVER アンジール・ヒューレー Next 過去 から の 刺客(前編)
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Burning Dark(後編) ◆9L.gxDzakI ぎん、と。 鳴り響く剣戟の音はさすがに重い。 驚嘆に値する相手だと、改めてアンジール・ヒューレーは思考する。 バスターソードと互角に打ち合える重量を、軽々と振り回すその筋力。 荒々しくも素早い攻撃は、さながら棒切れでも振り回しているかのようだ。 自分も今の腕力を手に入れるだけに、どれだけの鍛練を重ねたことか。 おまけにこれまでに見たこともない、異常なまでの再生能力も備えている。 断言しよう。こいつは強い。 自分達ソルジャーのクラス1stと、ほぼ同等のポテンシャルを有している。 それでも、倒せない相手ではないはずだ。故に剣を振るい続ける。 いかに優れた再生能力を持とうと、完全な不死などということはありえない。 仮にそんなものが呼ばれていたとすれば、その時点で殺し合いのゲームバランスは崩壊する。 もしも奴が本当に不死であるならば、デスゲームの結果は論ずるまでもない。 どう考えても、耐久力の差でアンデルセンが優勝する。 それ以外の可能性はありえない。それはプレシアの望むところではあるまい。 つまり、アンデルセンは無敵ではない。 であれば、倒せる。 ばさ、と。 背後の片翼を羽ばたかせた。 戦闘において、飛行能力とは重要なアドバンテージとなる。 相手が飛べない相手ならば、跳躍の限界以上の高度まで飛べば、それだけで攻撃をシャットアウトできる。 そうでなくとも、相手以上に多様な角度から、攻撃を仕掛けることも可能だ。 敵の頭上を一飛び。一瞬にして、背後を取る。 舌打ちと共に振り返るアンデルセン。 さすがに速い。だが、隙は一瞬でもできれば十分。 「はぁっ!」 気合と共に、一閃。 振り向くその刹那に、一撃。 バスターソードの太刀筋が、アンデルセンの胸部に引くのは真紅のライン。 肉が断たれた。鮮血が弾け飛んだ。 この剣はソルジャーに入隊した記念に、郷の両親が譲ってくれた大切な家宝だ。 使うと擦り減る。勿体ない。 故に本当の危機に迫られた時以外は、敵に刃を立てることなく、全て峰打ちで潜り抜けてきた。 だが、今回は相手が相手だ。再生能力を有した敵は、斬りつけなければ倒せない。 「この程度か! 俺の能力(リジェネレイト)を見ていながら、この程度の傷をつけて満足する気か!?」 「ブリザガ!」 そして今回は、これだけではない。 ただ斬撃を繰り返しただけでも、そうそう勝てる相手ではない。 故に、戦い方を変える。 突き出した左手。足元に浮かぶのはISのテンプレート。 マテリアルパワー、発動。使用するのは氷結の力。 迸る冷気が弾丸をなし、アンデルセンの傷口へと殺到。 命中する。凍結する。斬り開かれ、修復のために蠢く筋肉が、停止。 自慢の再生は中断される。 「ぬおっ……」 「いかに再生能力を持っているといえど、凍らせて復元を止めれば……」 「嘗めるなよ剣闘士(ソードマスター)! この程度の拘束で、俺をどうこうできると思ったか!」 ぴしっ、と。 ガラスのごとき氷晶に入る、亀裂。 そこはイスカリオテの最強戦力、アレクサンド・アンデルセン。 込められた気合が。発揮される気迫が。 氷の枷へと網のごとく、鋭いひびを広がらせ、遂には粉々に砕かせる。 当然の帰結だ。 そもそも最初の遭遇で、アンデルセンは同じブリザガの凍結を破ってみせた。 であれば、部分的な冷凍など、はねのけられないわけがない。 だが。 「――氷を砕くために、その足を止める!」 それが狙いだ。 突撃。すれ違いざまに、また一閃。 氷の砕けたその矢先、今度は脇腹を襲う痛烈な斬撃。 当然、回避などできない。もろに食らった一撃が、深々とアンデルセンの懐を抉った。 治り始めたところを、また即座に氷結。 「俺がその隙を許すと思ったか」 再度標的へと向き直り、アンジールが告げる。 これが彼の狙いだ。 いかに氷を砕けると言えど、そのためには一瞬の間隔を置く必要がある。 これが並の人間同士の戦いならば、何ということもない刹那の隙だ。 だが、ここにいるのは常人ではない。 アンデルセンは熟練の達人であり、アンジールもまた同じく達人。 互いに圧倒的な実力を誇る、彼らの戦いであればこそ、その一瞬こそが命取り。 回復の隙など与えない。傷口を残らず凍結させながら、極限まで追いつめて始末する。 これがアンジール・ヒューレーなりの、再生能力との戦い方。 無論、だからといって楽に勝てるわけではない。 普段に比べて、ISの燃費が悪くなっている。エネルギーの消耗が平時よりも早い。 自身のスタミナが尽きるのが早いか、アンデルセンが倒れるのが早いか。これは極限の我慢比べ。 ばさ、と羽ばたく。 怒濤の三撃目を叩き込まんと。 「チィッ!」 されど、回避。 まさしく紙一重。 その身を強引によじったアンデルセンが、肉薄するバスターソードをかわす。 お返しと言わんばかりに迫る、グラーフアイゼンの反撃。 鉄槌をかわす。剣で受け止め素早くいなす。今度は袈裟掛けに斬りかかる。 これも回避。 振り下ろしたところを、鉄の伯爵の一撃。 大剣の防御。勢いを殺しきれず、滑るように後退。 (防御を捨ててきたか!) さすがにそう簡単にはいかないようだ。 この男、狂人であっても馬鹿ではない。崩し方の割れた再生能力に頼らず、回避行動に専念し始めている。 素早い変わり身だ。防御一辺倒と思っていた男が、ここにきて素早いフットワークを発揮した。 「Amen!」 そうこう考えているうちに、次なる一撃が叩き込まれる。 これまた剣で受け止め、弾き返し、ステップで右側へと回り反撃。 ぎん、と。 弾かれたばかりのグラーフアイゼンが、素早くバスターソードを受け止めた。 やはり手ごわい。 再生能力を抜きにしても、こいつの実力は相当に高い。 少しでも気を抜こうものなら、逆に向こうがその隙を突いてくる。 鉄槌の重圧を振り払い、後退。一旦両者の間に距離を取った。 間違いない。 これまでの戦いと現在の戦いが、アンジールに確信を抱かせる。 このアンデルセンという男、死力を尽くしてぶつからなければ、到底倒せる相手ではない。 そしてこの勝負、負けるわけにはいかないのだ。 ディエチを喪い、今度はチンクの命までもが散ろうとしている。 そんなことは許せない。今度こそ、自分のこの剣で守ってみせる。 びゅん、と。 純白の翼が疾風と化す。 眼前で待ち構えるアンデルセンへと、一直線に殺到する。 振り上がる刃。同時に構えられる相手の鉄槌。 そこからの衝突は、まさに壮絶の一言に尽きた。 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ―――ッ!!」 「カアアアアアァァァァァァァァ―――ッ!!」 一度斬りかかれば反撃も一度。 二度打ちかかってくれば反撃も二度。 十度の攻撃は十度の反撃。 百度の猛攻は百度の反撃。 目にもとまらぬ素早さで、繰り出されるバスターソードとグラーフアイゼン。 さながら横殴りの大豪雨。否、これはもはや押し寄せる波濤。 激流と激流同士がぶつかり合い、やかましい金属音と共にせめぎ合う。 アンジールの一撃が敵を掠めれば、アンデルセンの一撃が我が身を掠める。 一歩も押せず、一歩も引かず。 両者の攻め手は完全に拮抗し、怒号と共に激突し合う。 パワー・スピード・テクニック。そのいずれかでも相手より劣れば、即座にほころびとなるだろう。 しかし、均衡は崩れなかった。 どちらもが死力を尽くし合った結果、そこに優劣は存在しなくなった。 「いいぞアンジールゥ! それでこそ倒し甲斐がある! 殺し甲斐がある! 絶滅させる甲斐があるゥゥゥッ!!」 「知ったことか! お前が俺の家族を奪おうというのなら……倒すまでだッ!!」 ただありのままに、互いの一撃一撃を。 憎むべき敵の懐目がけ、一心不乱に叩き込むのみ。 そして―― 《グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――ッ!!!》 剣戟の轟音すらかき消す絶叫は、この時響き渡っていた。 ◆ 今のは何だ。 ただ戦闘を傍観していたチンクは、割って入った音に周囲を見回す。 それはアンジール達も同じようだ。 互いにつばぜり合いの態勢で静止したまま、意識のみで音源を探っていた。 アンデルセンと戦っていたと思えば、そこへあのアンジールという、訳の分からない男の乱入。 大剣を構えるあの男は、自分に味方してくれた。 であればこいつは一体何だ。またしても現れた第二の乱入者は、味方なのか敵なのか。 轟、と。 地鳴りのような音が響く。 いいや、地面は揺れていない。であればこれはまた別の音だ。 揺れているのは大地ではない。これは大気を揺らす音。 陽炎を起こす炎の音だ。 そしてその音源は――――――北から来る! 「いかん……チンク、逃げろッ!」 アンジールの声。同時に白き翼が羽ばたく。 一瞬遅れ、大通りに沿って現れたのは。 「なっ……!」 鬼だ。 まさしく炎の鬼の姿。 屈強な筋肉を巨体に身につけ、灼熱の業火を撒き散らす鬼神が、猛烈な加速と共に突っ込んでくる。 凄まじい熱量に歪む空気を、その突撃で吹き飛ばしながら。 溢れんばかりの真紅の炎で、その道筋を焼き尽くしながら。 理性で判断している余裕などない。 一瞬前に目撃した鬼は、今や倍のサイズに見えるほどに接近している。 かわせるか。いいや、かわすしかない。 あんなものを食らってはひとたまりもない。 かっ、と。 地面を叩き、バックステップ。 思い出したように、ハードシェルの準備を整える。 だが。 その時には既に遅かった。 一瞬の反応が遅れた結果、防壁が完全に展開するよりも早く。 「う……うわああぁぁぁぁぁーッ!!」 炎がその身に襲いかかった。 ◆ 単刀直入に言おう。 この時、チンクら3人へと襲いかかったのは、地獄の業火を操る灼熱の召喚獣――イフリートである。 その力は、数多いる召喚獣の中でも比較的低い。 クラス1stであるアンジールや、それと同等の実力を誇るアンデルセンなら、恐らく倒せていただろう。 事実として、最強のソルジャー・セフィロスは、かつてこれを一撃で撃破している。 だが、それは敵の攻撃をかいくぐり、こちらの攻撃のみを命中させた場合の話だ。 召喚獣の破壊力は絶大。 骨すら溶かす紅蓮の炎は、食らえば人間などひとたまりもない。 まして、制限によって弱体化されている今の彼らに、生き延びられる保障はない。 そしてその暴力的な力を前に、3人はいかなるアクションを取ったか。 まず、イフリートが使われている世界から来た、アンジール・ヒューレー。 雄たけびでその正体を察知した彼は、誰よりもいち早く離脱することができた。 続いて、イフリートを目撃した瞬間に、ようやく回避行動を起こしたチンク。 たとえ未知の存在であるといえど、似たような魔法生命体の存在は、一応頭に入っている。 間に合わずかの召喚獣の纏う炎を受けたものの、体当たりの直撃だけは避けられた。 真っ向から突撃を食らうことがなかっただけでも、まだましな方であったと言えるだろう。 そして、アレクサンド・アンデルセン。 いかに化物退治を生業とする彼でも、このような巨大生物は過去に見たことがなかった。 彼が屠ってきたのはヴァンパイアやグール。全て人間大の範疇に収まるもの。 故に、こんな冗談のような存在は、これまで目の当たりにしたことがない。 そのためその巨体を前に、一瞬とはいえ魅入られたアンデルセンは―― ――唯一、その直撃をまともに食らってしまった。 ◆ 凄まじい圧力を身体に感じている。 凄まじい熱量が身体を舐めている。 抗う術は既にない。真正面から体当たりを食らった瞬間、グラーフアイゼンは右手から弾け飛んだ。 くわと見開かれたアンデルセンの視線と、イフリートの視線が重なっている。 そうだ。これこそが真の化物だ。 人間の理解を容易に跳ね除ける、このような存在だからこそ、化物(フリーク)の名に相応しい。 掛け値なしの化物共に比べれば、自分など所詮健全な一般人だ。 だが同時に、自分はその化物を駆るべき人間でもある。 殺し屋。銃剣(バヨネット)。首斬判事。天使の塵(エンゼルダスト)。 語り継がれる数多の異名は、この身に培った力の証。 偉大なる神の御心の下、その威光に刃向かう百鬼夜行を、血肉の欠片も残らずぶった斬ること。 それこそが己の仕事であり、己の存在意義でもある。 それがどうした。 そのアレクサンド・アンデルセンが、こんな形で倒れるのか。 絶滅させるべき存在である化物に、逆にくびり殺されて終わるのか。 既に身体は動かない。 アンジールによって刻まれた傷痕から、炎が体内までも侵略している。 再生が追いつくはずがない。身体を動かす余裕などない。 情けない。 何だこの体たらくは。 法王の下へと帰還することすら叶わず、こんなところで朽ち果てるのか。 このまま地獄の炎に焼かれ、消し炭となって路傍に打ち捨てられるのか。 アンジールやチンクを放置したまま。 あの男との決着もつけられぬまま。 ――アーカードを殺せぬまま。 「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉォォォォォォォォォォ――――――――……………ッッッ!!!!!」 【アレクサンド・アンデルセン@NANOSING 死亡】 【残り人数:42人】 ※G-6の南北に走る大通りと、その南側の延長線上の建物が、イフリートの「地獄の業火」を受けました。 道路は焼け焦げ、建物は崩壊しています。 ※H-6の川に、アンデルセンの焼死体と、焼け焦げたデイパックが浮いています。 アレクサンド・アンデルセンは死んだ。 道路に転がったグラーフアイゼンと、最期の絶叫がその事実を物語っている。 それは受け止めよう。もっとも、こんな形で決着がつくとは思わなかったが。 だが、今アンジールの青き視線は、全く別のものを捉えていた。 もはや彼の全神経は、それとは全く異なるものに向けられていた。 「……チンク……」 肩を震わせ、呟く。 視線の先に落ちていたのは、黒い眼帯とうさぎの耳。 何故かバニーガールの服装をしていた、あの小さな妹の身に付けていたものだ。 姉妹の中で最も幼い姿をしながら、12人中5番目に生まれていた娘。 小さな身体とは裏腹に、常に下の妹達の面倒を見ていたお姉さん。 いつしかそこに加わっていたアンジールのことも、仲間の一員として受け止めてくれていた。 ウーノがケーキを買ってきたときにも、自分の代わりに剣の手入れを引き受けるとまで言ってくれた。 「俺はまた……守れなかったのか……」 彼女の眼帯のその先には――同じく黒に染まった、短い右腕が落ちていた。 肘から下の部分であるそれは、完全に炭化してしまっている。 間に合わなかった。 イフリートの突撃を回避できず、その身を炎に焼かれてしまった。 その右腕だけを残して。それ以外の部分は、影も形も残らぬほどに。 地獄の責め苦の苦痛の中で、死体すら残さず燃え尽きてしまったのだ。 自分のせいだ。 自分の力不足が彼女を殺した。 あの時回避をチンクに任せなければ。 距離が離れていようとも、届いて助け出せるだけの速さがあれば。 2人目の家族を、死なせずに済んだのだ。 「……くそ……ッ!」 後悔が。絶望が。 男の顔を、歪ませる。 【1日目 午前】 【現在地 G-6 大通り】 【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】健康、疲労(中)、全身にダメージ(小)、セフィロスへの殺意、深い悲しみ 【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、アイボリー(6/10)@Devil never strikers 【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:クアットロを守る。 1.チンク…… 2.クアットロ以外の全てを殺す。特にセフィロスは最優先。 3.ヴァッシュ、アンデルセンには必ず借りを返す。 4.いざという時は協力するしかないのか……? 【備考】 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。 ※制限に気が付きました。 ※ヴァッシュ達に騙されたと思っています。 ※チンクが死んだと思っています。 ※G-6の大通りには、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 チンクの眼帯、バニースーツのうさぎ耳、炭化したチンクの右腕が落ちています。 全てを見ていた者がいた。 戦場から離れた道路の上で、一部始終を目撃していた者がいた。 黒と紫に彩られた、ゴシップロリータのドレスを纏うのは、未だ10歳にも満たぬ少女。 薄紫の髪を風に揺らし、真紅の瞳は手元を見つめる。 「……お疲れ様」 ぽつり、と呟いた。 視線の先にある、宝石のような球体へと。 マテリアだ。 魔晄エネルギーが結晶化し、固体と化した球状の物体。 人間はこのマテリアを介することで、その種類に応じた古代の魔法を、自在に発動することができるのである。 そして彼女の手の中にあるのは、その中でも召喚マテリアと呼ばれるもの。 対応する召喚獣の名は、イフリート。 そう。 彼女こそが、あの灼熱の魔神を呼び出した張本人。 スカリエッティに協力する召喚魔導師――ルーテシア・アルピーノである。 全てはほんの偶然だった。 元々は当初の予定通り、スカリエッティのアジトへと向かおうとしていた。 しかし、F-7エリアまで足を運んだ時、とある発想が頭に浮かんだ。 ――あの光と風に従ってみよう、と。 ユーノ・スクライアを刺した直前、襲いかかってきた衝撃波を思い出したのだ。 あれが砲撃魔法か何かの余波ならば、当時の状況から推察するに、G-5かG-6に向かって飛んで行ったことになる。 少なくとも、アジトのある北東ではなさそうだ。通り道であったはずの、G-7にその気配がなかった。 あれだけの破壊力の矛先だ。きっとその先には何かがある。 幸いにも、ここからもそう遠くない。 生体ポットの様子を見に行く前に、少し覗きに行っても罰は当たるまい。 そう思い、ひとまずはそちらへ向かうため、大通り沿いにF-6へと踏み込んだ。 そして南下しようとした時、その先に彼らを見つけたのだ。 切り結ぶ剣士と神父、そしてその手前に立つチンクの姿を。 ちょうどいい。 3人も人が集まっているのだ。ここらでイフリートの力を試してみよう。 起動テストも兼ねた実験だったが、どうやら上手くいったようだ。 見事召喚獣は顕現し、その絶大な破壊力を見せつけた。 体力の消耗がついてくるのが玉に瑕だったが、十分な威力と言っていいだろう。 しかし、1つだけ不満がある。 あれだけの猛威を振るっておきながら。 「殺せたのは1人だけ……か……」 【1日目 午前】 【現在地 F-6 大通り】 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、魔力消費(中)、疲労(小)、キャロへの嫉妬、1人しか殺せなかったのが残念 【装備】マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ウィルナイフ@フェレットゾンダー出現! 【道具】支給品一式、召喚マテリア(イフリート)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、 エボニー(10/10)@Devil never strikers、エボニー&アイズリー用の予備マガジン 【思考】 基本:最後の一人になって元の世界へ帰る(プレシアに母を復活させてもらう)。 1.どんな手を使っても最後の一人になる(自分では殺せない相手なら手は出さずに他の人に任せる)。 2.北へ向かい、スカリエッティのアジトへ一度行って生体ポッドの様子を確かめる。 3.一応キース・シルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』を探してみる(半分どうでもいい)。 4.一応18時に地上本部へ行ってみる? 5.もしもレリック(刻印ナンバーⅩⅠ)を見つけたら確保する。 【備考】 ※ここにいる参加者は全員自分とは違う世界から来ていると思っています。 ※プレシアの死者蘇生の力は本物だと確信しています。 ※ユーノが人間であると知りました。 ふらり、ふらり、と。 おぼつかない足取りが、前へと進む。 ぼろぼろに焼け焦げたシェルコートと、ちりちりとくすんだ銀髪を、力なく風に揺らしながら。 火傷を負った全身を、引きずるように歩きながら、少女が東へと進んでいく。 チンクは生きていた。 ハードシェルの展開こそ間に合わなかったものの、何とか一命を取り留めたのだ。 イフリートの炎に煽られた彼女は、G-7の西端へと吹っ飛ばされていた。 そしてその後は、危険な戦場を離れるために、こうして東へと逃れていたのである。 考えるべき事項はいくつかあった。 アンジールはともかくとして、あのアンデルセンはどうなったのか。 見知らぬISを発動していたアンジールは、一体何者だったのか。 何故自分の名前を知っていて、ああも馴れ馴れしく接してきたのか。 だが、そんなことを考える余裕など、チンクには一切残されていない。 それ以上に大きな念が、彼女の脳内を占めていたから。 ぼとり、と。 コートの裾からこぼれ落ちる、漆黒の塊。 それを気に留めることもなく、目の前の巨大な建物へともたれかかり、腰を下ろす。 「……参ったな、ディエチ……」 か細い声が、呟く。 天を仰ぎながら、自嘲気味な笑みを浮かべる。 地獄の業火に飲み込まれたあの時、チンクはとっさに両腕を突き出し、防御態勢を取っていた。 爆発物の投擲を基本スタイルとする彼女にとって、何よりも失いがたい両腕を、である。 その結果かどうかは分からないが、どうにかこうして生き延びることはできた。 全身に負った火傷はひどく痛むが、それでも死には至っていない。 だが、その代償もある。 それこそがあの襲撃の現場に落ちていたものであり、そして彼女がたった今落としたもの。 アンジールが見つけたそれと同じように、ぼろぼろに焼け焦げて抜け落ちたのは――左腕。 「もう、姉は……戦えない身体なんだとさ……」 す、と。 金色の瞳から、一筋の雫が線を引いた。 【1日目 午前】 【G-7 デュエルアカデミア外部】 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、疲労(中)、全身に火傷、両腕欠損、絶望 【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖-、シェルコート@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式×2、料理セット@オリジナル、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA s、 被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(フェイト(StS)、ナイブズ)、 大剣・大百足(柄だけ)@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、ルルーシュの右腕 【思考】 基本:姉妹と一緒に元の世界に帰る。 1.ディエチ……姉は…… 2.G-6~8を中心に、クアットロを探す。しばらくして見つからなかったら、病院に戻る。 3.クアットロと合流した後に、レリックを持っている人間を追う。 4.姉妹に危険が及ぶ存在の排除、及び聖王の器と“聖王のゆりかご”の確保。 5.ディエチと共闘した者(ルルーシュ)との接触、信頼に足る人物なら共闘、そうでないならば殺害する。 6.クアットロと合流し、制限の確認、出来れば首輪の解除。 7.十代に多少の興味。 8.他に利用出来そうな手駒の確保、最悪の場合管理局と組むことも……。 9.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲。 10.天上院を手駒とする。 【備考】 ※制限に気付きました。 ※高町なのは(A’s)がクローンであり、この会場にフェイトと八神はやてのクローンがいると認識しました。 ※ベルデに変身した万丈目(バクラ)を危険と認識しました。 ※大剣・大百足は柄の部分で折れ、刃の部分は病院跡地に放置されています。 ※なのは(A’s)と優衣(名前は知らない)とディエチを殺した人物と右腕の持ち主(ルルーシュ)を斬った人物は 皆同一人物の可能性が高いと考えています。 ※ディエチと組んだ人物は知略に富んでいて、今現在右腕を失っている可能性が高いと考えています。 ※フェイト(StS)の名簿の裏に知り合いと出会った人物が以下の3つにグループ分けされて書かれています。 協力者……なのは、シグナム、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ、ユーノ、矢車 保護対象……エリオ、キャロ、つかさ、かがみ、こなた 要注意人物……十代 ※フェイト(StS)の知り合いについて若干の違和感を覚えています。また、クローンか本物かも判断出来ていません。 ※アンデルセンが死んだことに気付いていません。 ※アンジールと自分の関係は知りませんが、ISを使ったことから、誰かが作った戦闘機人だと思っています。 ※シェルコートは甚大なダメージを受けており、ハードシェルを展開することができなくなっています。 ※G-7のチンクの目の前には、炭化したチンクの左腕が落ちています。 Back Burning Dark(前編) 時系列順で読む Next Paradise Lost(前編) 投下順で読む Next 銀色の夜天(前編) チンク Next 過去 から の 刺客(前編) アレクサンド・アンデルセン GAME OVER アンジール・ヒューレー Next Round ZERO ~ JOKER DISTRESSED(前編) ルーテシア・アルピーノ Next 過去 から の 刺客(前編)
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* 「人間じゃ、ない……?」 フェイトの発した台詞にジョーカーの体を強ばらせるカズマ。フェイトは彼を抱き締めたまま、その顔は見えない。 彼女がどんな表情で自らを“人間ではない”と言うのか、それをカズマは知ることが出来ない。 「フェイトちゃんは人間だよ!」 「なのは、私はそういう意味で言ったんじゃないの。うん、母さんやなのはのお陰で私は生まれが特殊でも生きてこれた。今でも感謝してるよ」 「生まれが……じゃあ、フェイトはどうやって――」 「――今から話すよ。カズマには、聞いてほしいから」 腕をほどいたフェイトが、カズマに向けて小さく微笑みかけた。 それが、彼女の話の始まりだった。 リリカル×ライダー 第十二話『来訪者』 「プロジェクトFATE――――それがフェイトの出生の秘密なのか」 「……うん」 彼女が話した一つの計画。 時空管理局には組織を束ねる中枢機関、最高評議会と呼ばれる存在があったらしい。 彼らは管理局が質量兵器、つまり銃などの兵器を禁止しているため常に戦力不足であり、そのため次元世界の治安を守り切れない状況だった。そんな現状を打破するために、彼らはある計画を始動させた。 ――プロジェクトFATE 後にプロジェクトF、又は人造魔導師計画とも呼称されることになるこの計画とは、人為的に魔導師を生み出そうとする計画だった。 何故魔導師を生み出す計画になったのかというと、魔導師になれる人間は全体の三割程度で、更に才能ある魔導師となるとその中の数パーセントしかいないからだそうだ。なのはやはやては地球という本来魔導師の生まれない星で誕生した変わり種らしい。 また魔導師の魔導師たる所以である魔力精製器官『リンカーコア』を人為的に再現できないのも理由らしい。周辺の霧散魔力を集積、倍加させる魔力炉や一時的に魔力を充填して魔法の発動を強化、促進するカートリッジなどがあるものの、魔力そのものを生み出すことは出来ないそうだ。 話を戻すが、この計画を遂行する人材を確保するために最高評議会は古代の遺伝子操作技術を用いてある天才を作り出した。 ――ジェイル・スカリエッティ。 彼は遺伝子レベルでこの計画を遂行しようとする意思が刻み込まれており、その最高レベルの知能を発揮して計画を進めた。 彼が取った手段はクローン技術。魔導師をクローニングし、記憶を転写することで魔導師そのものを複製するというものだった。 元々、最高評議会は遺伝子操作技術で計画を進める予定だったため、スカリエッティもその方面に長けた人物になるよう調整されていたのだ。 「今は最高評議会もメンバーが変わったし、計画自体も戦闘機人計画に変わって廃れてしまったんだけどね」 フェイトが疲れたように息を吐く。所々なのはも助力しながら説明された話は、俺には理解し難いややこしい内容だった。 しかし重要なのはこれからだ。 「その計画とフェイトがどう関係するんだよ?」 フェイトが視線を下げる。そこでなのはがフォローするように口を開いた。 「計画自体はさっきも言うように破棄されたの。けれど、ある人がその計画を引き継いだ結果、計画は別の形で続行されることになった。その人が――」 「――私の、母さん」 引き継ぐように、フェイトが重い口を開いた。 「母さんは娘をなくしていて、我が子を生き返らせるために計画を引き継いだの。けれど、結局生み出されたのは失敗作だけだった」 「失敗作、って……」 俺の顔から血の気が引くのを感じる。いつの間にか、俺の体はジョーカーから人間の姿に戻っていた。 「私、だよ。その娘と同じ外見、記憶を持ちながら全くの別人になってしまった失敗作。試験管から生み出された人の形をした異形【ホムンクルス】」 「そういうことか……」 プロジェクト名をそのまま付けられたのは、おそらく失敗作としての烙印だろう。娘の名を授ける気も起きなかったのか。 「……くそっ!」 彼女には本当の親がいない。俺は死んだとはいえ覚えているが、彼女には覚える親の顔さえないのだ。 「でも平気だよ。今は私を大切にしてくれる母さんや親友がいるから。それに私は自分を生んでくれた母さんも好きだから」 そう言って笑うフェイト。 彼女は乗り越えたのだろう。他人には想像も出来ないほどの地獄を、親友や多くの人に助けられながら。 「だから今度は、カズマは私が助ける」 最初はなのはを傷付けた俺に敵意を剥き出しにしていた彼女が、次第に見舞いにも来るようになり、今はこんな俺の手を握って温かい言葉をかけてくれる。 だからこそ、気付いてしまった。 「――ありがとう。けど、俺はここには居れない」 「どうして!?」 フェイトの顔から目を反らして手を見る。俺は誰かに守られる存在でもなければ、ましてや人と共に存在できる体でもない。そう、この手は―― 「――全ての人々を、守るためにあるんだ」 そのためには、何かを求めてはならない。これは無償の戦いだ。例えそれが、目に見えないものだとしても。何か大切なものを作ってしまったら、俺の戦いも終わってしまうから。 そう、こんな所で立ち止まってはおれない。 ――――ドクン。 人々を、守らなければ。 ・・・ カズマがアンデッドを封印するために六課を出た次の日、はやてはまたもや頭を抱えたくなるような事態に直面していた。 「フォォォォォウ!」 意味不明な叫び声を上げる男。先程フェイトちゃんのスポーツカーと違って趣味の良いデザインの車が六課に突っ込んできたのだが、それに乗っていたのがこの男だった。 「いやぁ、入局申請? みたいなのをするために来たつもりが事故の処理をやる羽目になるとはねぇ」 椅子にふんぞり返りながらそんなことを言う男。 アンタが原因だろ、とは言わない。はやては大人なのだ。 「取り敢えず管理局保安部には連絡しておきました。それで、どういった御用件でしょうか」 極めて事務的に、かつ口調を固めに言うはやて。彼女としては、さっさと要件を済ませて出ていってもらいたいのだろう。 だがこの男、アロハシャツに丸いサングラスといった奇抜な外見や奇妙な言動からも分かる通り、一筋縄ではいかない。 「へぇ、キミが部隊長? やっぱり美しいモノは皆好きだよねぇ。けど怖い顔してると美貌も台無し、やっぱ誘うなら笑顔でなきゃ」 「……真面目に答えて下さい」 というより、話が通じなかった。 「いやぁ、管理局に入りにきたのよ。就職、ってヤツ?」 はやては目の前の男を鋭く睨み付ける。冗談にしか聞こえない口調で言っていい内容ではない。少なくとも、はやての前では。 だが彼女は大人だ。どれだけ内心怒り狂っていようとも、公の場では笑顔すら装う。 「管理局は非常に大きな組織です。入局されるのでしたら地上本部で身体検査、心理テスト、学力テストを受けて最適な部署を紹介してもらってください。ここでは募集は行っておりません」 ポーカーフェイスのまま、事務的な内容を告げるはやて。彼女は本人すら気付かぬ内に身構えながら、簡単な地図を描いた紙を差し出す。 「ではお引き取り――」 「――仮面ライダー、ここにいるんだよなぁ?」 その台詞に、はやてのポーカーフェイスは砕け散った。 彼女の頭に浮かぶのは前回の戦い。彼女の愛しい守護騎士が傷付いた、あの戦闘。 『俺は、仮面ライダーだ!』 カズマが放った、あの言葉。 「実は知り合いなんだよねぇ、ちょっと顔を見たくてさぁ」 「カズマ君のことを知っとるん!?」 はやての手は自然と、男の襟首に向かっていた。 「ちょっと過剰じゃない? スキンシップがさぁ」 「何を知っとるんや!? カズマ君はいったい何者なんや!」 魔導師では歯が立たなかった怪人を倒したカズマを思い出すはやて。彼女は彼が普通じゃないことに薄々感付いていた。記憶が戻りつつあることも。 だが彼女はそれを聞くことはできない。聞けばカズマはもうここに居れなくなってしまうから。 彼女は、部隊長なのだから。 「教えてや! 私は、私は知りたいんや!」 「ふぅん? 仮面ライダーって、こっちでも人気なんだ?」 そんな彼女を見ながら笑みを深める男。いつしかその笑みが危険なものになっていることに、はやては気付かない。 「じゃあさ、こうしようか」 「……なんや?」 「ライダーが来るまでに俺を倒せたら、とか」 その瞬間、彼女の体が三メートル先の壁まで吹っ飛んだ。 「ッ! かはっ、けほっ」 「今日は助けてくれる奴、いないんだろ? 二人でお楽しみってわけだ。フォォォォォウ!」 いつの間にか、男の外見は変化していた。 凶悪な面に羊を思わせる双角。左右非対称な体、白い右側の体は肩から真っ直ぐ歪角を伸ばし、白い羊毛で覆われている。 その名はカプリコーンアンデッド。 彼が上級アンデッドと呼ばれる存在であることを、はやては知る由もない。 「まさか、怪人やったなんて……」 吹き飛ばされた直後にデバイスがオートで起動したため、彼女の体は白黒のバリアジャケットに保護されていた。それでも装甲板を埋め込んだ壁をへこませるほど衝撃は、彼女を苦しめた。 「怪人? 違うな、俺達はそんな名前じゃない」 心底愉快気に笑うカプリコーンアンデッドは太く逞しい右腕を振り上げ、掌を拳の形に変えていく。 「俺達はアンデッドって言うんだぜ? フォォォォォウ!」 その右腕を、勢いよく振り下ろした。 「――ッ!」 はやても十字架を模した杖型デバイス、シュベルトクロイツを構えながらプロテクションを発動させて受け止めるが、その凄まじいパワーにじりじりと圧されていく。 「フォォォォォウ!」 さらに左腕も駆使しての連撃を放つカプリコーンアンデッド。その怪力によって打ち出される拳撃は単純なパンチにも関わらず凶器と呼べるレベルである。 特にはやては六課でも屈指の魔力量を生かした大規模魔力爆撃が得意な後方支援型だ。なのはのように砲撃がメインながらあらゆるレンジを対処出来るタイプとは異なる。 そのため近接戦では無類の強さを誇るアンデッドとは余りにも相性が悪すぎた。 (せやかて、こんな所で私は負けられないんや!) 少しずつ後退しながらもはやては新たな魔法の術式を起動させ、足元に正三角形を元にした魔法陣を展開させる。 「刃を以て、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー!」 詠唱によって術式を発動させる。 その瞬間、カプリコーンアンデッドを囲むように12の血に染まったような紅い短剣が出現する。 「行け――!」 それらが一気に中心点を屠るべく迫る。 「グォォォォオ!?」 カプリコーンアンデッドの全身にブラッディダガーが突き刺さり、さらに爆発を以て傷口を抉る。 それに対しカプリコーンアンデッドは今までの喋り方からは想像も出来ないような獣じみた呻き声を上げる。 「今の内に……」 はやてが素早く部屋の隅に備え付けられた警報装置を作動させようとする。だが―― 「なんで!? なんで作動せんのや!」 「テメェ、痛ぇじゃねぇかよ! 可愛い顔して舐めた真似してくれちゃってよぉ!」 作動しないスイッチを叩くはやてを後ろから襟首を掴んで強引に持ち上げるカプリコーンアンデッド。 その右腕を、ぎりぎりと握り込む。 「やっぱり女って汚いよなぁ。前も女に騙されて殺られたが、今度はそうはいかねぇ!」 カプリコーンアンデッドは舐めるようにはやての顔を眺め、そして彼女の腹に向けて拳を打ち込む――! 「フリジットダガー!」 その瞬間、カプリコーンアンデッドに氷で作られたような蒼く透き通ったナイフが幾重も刺さった。 「グォォォォオォォォ!?」 その傷口は瞬く間に凍り付いていき、カプリコーンアンデッドの動作を阻害する。 はやてはそれを見て弛んだ手から脱出する。 「リィン! 気付いてくれたんか!」 「もちろんです~! はやてちゃんを守るのがわたしの務めですから!」 リィンが場にそぐわない明るい笑みを浮かべる。妖精のような外見だから余計に場違いだ。 しかし、そんな笑顔も一瞬で暗いものに変わった。 「ただどこからか分かりませんけど、六課のコンピュータがハッキングをかけられて各設備が使用できなくなってます。ロングアーチスタッフはその処理に追われててんてこ舞いですよ~」 (それが原因やったんか……) いったい誰が、と思考を続けようとするはやて。 しかし彼女がそんな思考に埋没できる時間はない。 「舐めてくれちゃってよぉ。いい加減ブッ殺さないと気がすまねぇなぁ!」 「リィン、ユニゾンや!」 「はいです!」 立ち上がったカプリコーンアンデッドに対抗すべくユニゾンデバイスたるリィンが本領を発揮する。 光り輝き出したリィンがはやてに溶けるように消えていくと同時にはやてを光が包み、髪の色や黒が基調のバリアジャケットを白く染め上げていく。 カプリコーンアンデッドとはやての戦いが、始まった。 ・・・ 「はぁ、はぁ、はぁ――――」 目の前で斬り伏せたジャガーアンデッドの腹部にあるバックルが二つに割れる。その割れ目にはスペードの刻印と9という数字が刻まれている。 俺はアンデッドに向けてカードを放ち、封印する。鮮やかな躍動感のある豹の絵が描かれたカードを確認しながら俺は後ろを向いた。 (おかしい。あの感じは上級アンデッドだったはずなのに……) 今回のアンデッドの反応は妙だった。現れては消えを繰り返すもので、探すのにかなりの時間を費やしてしまった。 しかし今封印したアンデッドの反応だったとは思えない。あれは上級アンデッドのものだった気がするのだ。 (おかしい……) 嫌な予感がする。何か忘れているような、大切なものを放っておいてしまっているような――。 そんな俺の視界に、何かが滑り込んだ。 「また会ったな、剣崎」 「た、橘さん!?」 現れたのは橘さんだった。しかも今回はバイクに跨がって。 そのバイクは―― 「ああ、お前のだ。あの伯爵に頼まれたのでな。今は従うしかないので届けに来た。感謝しろ」 不快そうに眉を潜めながらそう話す橘さん。だが今回ばかりは全く気にならなかった。 ――ブルースペイダー。 あらゆる不整地を走行出来るように計算された高い車体。蒼いカウルで保護された車体。そして最大の特徴たるスペード型の青いスクリーン。 かつての愛車であり、たった一人で戦っていた頃も共にいてくれた相棒。 「……なんで、橘さんが?」 「俺は届けに来ただけだ。次に会うときは殺し合う仲、お前と話すことなんてない」 本当に鬱陶しいんだと言わんばかりにヘルメット(それも俺が使っていたものだ)を脱いでハンドルに引っ掛け、バイクを降りる。 「さっさと行け、お前がベストのコンディションで戦えないと俺も気分が悪い」 「どこに行けと言うんですか?」 「知るか。自分で考えろ」 記憶と随分違う橘さんの言動に戸惑いつつ、話の内容を咀嚼する。 (まさか、六課が……!) 辿り着いた結論は、嫌なものだった。頭の悪い俺の結論にも関わらず、外れている気がしない。 「すいません、行かせてもらいます!」 俺がブルースペイダーに跨る。セルでエンジンを起動させ、クラッチを握りながらギアを一速に切り替える。 橘さんは何も言わずに何処かへと去っていった。 その背中を見届けた後にアクセルを少しずつ捻りながらクラッチをゆっくりと開き、緩やかに、だが徐々に加速させながら走り出した。 ・・・ 「はぁ、はぁ、はぁ……」 はやてが苦し気に息を吐きながらシュベルトクロイツを構え直す。 対照的にカプリコーンアンデッドは腕を軽く振りながら軽い足取りではやてに迫ってきていた。 はやてがリィンとユニゾンしてから、すでに15分が経過していた。 「健気だねぇ、まだ抵抗を止めないとは」 じりじりとあちこちが凹んだ壁へと追い詰められるはやて。バリアジャケットが傷付いて露出した、赤みがかった白い肌を舐めるように見回すカプリコーンアンデッド。 先に動いたのは、はやてだった。 『「フリジットダガー!」』 はやてとユニゾンしているリィンの声が重なるように発されるのと同時に、部屋の各所から水晶のように透き通った冷気を帯びるナイフが幾つも出現する。 それらは目にも止まらない速度でカプリコーンアンデッドに飛来する。だが―― 「ハァァアァ!」 カプリコーンアンデッドが吐き出した青いエネルギー体が、それらを弾き飛ばした。 「くっ……!」 はやてはエネルギー体の突撃をプロテクションで防ぐが、吹き飛ばされて壁に激突してしまう。 「フォォォォォウ!」 カプリコーンアンデッドが止めを刺すべく右手を振り上げる。 その時だった。 「りゃあああぁぁぁ!」 強化ガラスを突き破って、カズマがブルースペイダーに乗ったままカプリコーンアンデッドに突撃した。 「――ッ!?」 ウィリーによって持ち上げられた前輪にかかった力学的エネルギーはカプリコーンアンデッドを容易く吹き飛ばすに足るものだった。 「大丈夫か、はやて!?」 「カズマ君……」 『カズマさん来てくれたんですねっ! リィンはちゃんと信じていましたよ!』 カズマがブルースペイダーから降りつつはやてとリィンの元に行こうとする。 しかし一足早かった者がいた。 「あぐっ!」 その影は太い腕をはやての首に回し、そのまま縛り上げる。 「ベルトを下に置け! さもないとこの女が死ぬぞ?」 影の主、カプリコーンアンデッドは愉しげな声でそう言った。 その台詞、光景に何故かカズマは既視感を覚える。この吐き気のするような光景に。 「卑怯な!」 「五月蝿い! お前のせいで俺はこんな目に遭ってるんだからお前も痛い目を見ろ!」 「何のことだ!?」 「覚えてないとでも言うか!? なら今すぐ思い出させてやる!」 怒り狂ったカプリコーンアンデッドははやての首を絞める腕に力を込めていく。その太い腕と対照的に細いはやての白い首が嫌な音を上げ出す。 「あっ、あ、ああ……」 「はやて!」 「さっさとベルトを置け!」 カズマがカプリコーンアンデッドを睨み付けるが、意にも解さず笑みを浮かべながら首を絞めていく。 だが、この時三人は後一人の存在を忘れていた。そう、はやての中にいるもう一人の存在を。 『フリジットダガー!』 突然はやての内側から舌っ足らずな叫びが上がる。 「な……!?」 その瞬間、カプリコーンアンデッドの真上に出現した氷の刃が彼の脳天を貫いた。 「今だ!」 カズマがそこでショルダーチャージをかけて吹き飛ばす。その腕の中には、救出されたはやてがいた。 「か、カズマく――」 「はやて、離れてくれ。俺はあいつを倒す!」 「……」 はやては一瞬不満そうな表情を浮かべるが、状況が状況故に素早く身を離す。 カズマは醒剣ブレイラウザーのカードホルダーを展開し、二枚のカードを抜き出す。 『KICK,THUNDER』 スラッシュされた二枚のカードから引き出される力は混ざり合い、コンボという名の必殺技へと昇華される。 『――LIGHTNING BLAST』 カプリコーンアンデッドが、ゆらりと立ち上がった。 その動作と同時にカズマはブレイラウザーを地面に突き刺し、彼の元に走る。 カプリコーンアンデッドはそれを見ながら慌てて腕をクロスさせて防御態勢を取る。 カズマはジャンプによって得られた位置エネルギーと、カードによって得られた雷撃の力を、強化された右足に込める。 「うぉあああぁぁぁぁ!」 それを、容赦無くカプリコーンアンデッドに叩き付けた。 「ウォォォォオッ!?」 その力によって、彼は壁をひしゃげさせるほどの勢いで吹き飛ばされる。 カシャンという軽い金属音。 カズマは静かに、『Spade Q』を封印した。 ・・・ 戦いが終わって、ようやく私は応接室を見回す余裕が生まれていた。あまりの酷い惨状に泣きたくなるだけだが。 何だかんだで私も頑張ったと思う。数少ない近接魔法を駆使し、苦手なんてもんじゃないクロスレンジをどうにか戦い抜くことが出来たわけだし。 それはそうと、今は聞きたいことが山ほどあった。カズマ君に。 「――なぁ、カズマ君」 「はやて、大丈夫か? 全身傷だらけだし……。くそっ、俺の帰りが遅れたばっかりに――!」 けれど、こんなに他人のために一生懸命なカズマ君を見ていると、何だかどうでも良くなってきた。まるで往年のなのはちゃんみたいな……って、それは本人に失礼か。 「私は大丈夫や。今リィンが回復魔法をフル稼働中やし。それよりロングアーチに連絡を取ってくれんか? そこの受話器が使えればええけど、無理なら直接行ってくれん?」 「ああ、わかった」 そう、私は大丈夫。私は部隊長、こんなところで倒れるようじゃ『奇跡の部隊』を率いることなんて出来ない。 しかし今回のハッキングを行った者が誰か、それが問題だ。ロングアーチにハッキングするほどの実力者で、怪人に協力できる者。心当たりは、二人いた。 これは捜索を急いだ方が良いかもしれない。 そう思考していた私の元に、唐突に“轟”というエンジン音が耳に入る。 顔を上げた先には、今日二人目の来訪者がいた。 「剣崎、ようやくお前と戦う時が来たようだな」 その来訪者は―― 「――紅い、『仮面ライダー』?」 真紅の配色ながら、カズマ君の変身した姿とそっくりなバリアジャケットを纏っていた。 細部は確かに違う。頭はカズマ君のが一本角なら二本角になっているし、肩のアーマーなども形状が違う。 そして似ているのはカズマ君のバリアジャケットとだ。何故なら、不自然なまでに腹部や肩が何かを塗り潰すように装甲が貼られているからだ。 「橘、さん……」 「剣崎、後でお前に通信を送る。そこに一人で来い。誰か一人でも連れて来ればあの悲劇がここで起きることになる」 「あの悲劇――?」 「お前がかつて己の体をかけて止めた悲劇だ」 そのセリフで、カズマ君の表情が変わった。 「いいな?」 「待ってください、橘さん!」 だが橘さんと呼ばれた紅い『仮面ライダー』はそれに答えることなくバイクを走らせてこの場を去ってしまった。 結局私は、何一つ理解出来ないまま。なのに状況だけが次々と進んでいた。 ・・・ カズマが受けた決闘状。相手はかつての師、戦うのは異国の地、奮うのは人とは異なる体。 人の皮を被る怪物と試験管から生まれた異形がぶつかり合った時、伯爵のストーリーは進む。 次回『決闘』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
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人がいれば部屋の雰囲気は変わって見えるものだ。 さっきは不気味さも感じたこの部屋も、はやてとリィンがいてニコニコしていればそれだけで華やいで見える。 「はい、コーヒーですよ。どうぞ」 「ははは。はぁ、どうも」 リィンの大きさへのつっこみはとりあえず引っ込めておくことにした。 ハレは不安でびくびくしていたからだ。 「ごめんな。居眠りなんかしてしもうて。それにしても、ええ夢やったなぁ。なーんも、考えずにぼーーっとできるところでな、ふわふわー、としとったんよ。またあの夢見たいなぁ」 「あ、私も同じ夢見てました。はやてちゃんと一緒にぼーーっとしてました」 うっとりしているはやて。 ハレは横目でなのはの目を見て視線で伝える。。 (なんか、みんな覚えてないみたいですね) なのはもハレの目を横目でちらっと見る。 (そうみたい。それでよかったかも) 声を出していないし、念話も使ってないが特定案件に関わることについてだけは視線で伝わるようになっていた。 ようやく、うっとりしていたはやてが戻ってくる。 「あ、またぼーっとしとった。いけんなぁ。で、ハレ君とグゥちゃんの見学やったな。予約なしやけどOKや。しっかり見ていったてな」 「ありがとう」 ハレの声は弾む。 「土産がある」 いきなりグゥが立ち上がる。 「おみやげぇ?」 首を縦に振るグゥ。 (へぇ、グゥもちゃんと気をつかってんだな) グゥは胸に巻いている布の中から大きめの篭を取り出し、後ろを振り向く。 篭を体の前に持って行って口を開く。 金属がこすれるような音がしてグゥの口から色とりどりのなにかが出てきて篭の中に積み上がっていく。 「どこから出してんだよ」 その高さがグゥの身長の二倍になったとき、グゥは振り向いて篭を机の上に置いた。 「土産だ」 「ありがとなぁ。なんやろ」 「いや、何もなかったように受け取られても」 はやては篭の中のものを一つ取り出して・・・凍った。 何と言ったらいい物か形容しがたい代物だった。 「ああ。それ、ポクテだよ」 「ぽく・・・・て?」 リィンは1mほど引いている。 「えーと、これ、どうやってつかうんかな?」 「食べるんだ」 「食べ・・・る?」 「うん、ポリフェノールやカロチンを含んで体にいいんだ。ジャングルではよく食べるよ」 「これが・・・」 はやてはポクテの耳を持ってぶら下げてしげしげと観察した。 「ポクテ・・・鳥にはみえんし、牛や豚でもなさそうやし・・・なんなんやろなぁ」 扉が開いた 「はやてー、持ってきたぞ」 ちょうどヴィータが書類の束を持って来た。 「うさぎだよ」 「え?うさぎ?」 「そうなんですか?」 「うん」 紙の束が落ちる音がした。 ハレ達がそちらを向く。 ヴィータが持っていた書類の束をまき散らしてすごい形相で迫ってきていた。 「嘘だ!それがうさぎなわけねーだろ」 「でも、ジャングルでうさぎっていったらこれだし」 「いいや、うさぎなわけがねー。うさぎってのはな、もっとかわいいんだよ。こういう風に」 ハレにのろいうさぎを見せつける。 「それも、かわいいという基準からは外れているような」 「お前はわかってねーんだよ。いいか、よく聞け。うさぎってはな・・・」 横からヴィータにまとめられた書類が渡された。 「ありがとよ・・・・ん?」 書類を私のは青色のポクテだった。 「うあぁあああああああああああああああああああ」 周りを見る。 動いているのは青色のポクテだけではない。 篭はもう空になっていてポクテは部屋中にいる。 「お前、生きたまま持ってきたのか?」 「活きがいい方がいいとおもってな」 「よすぎだああああ」 さらに、全てのポクテがヴィータを凝視している。 「な、なんだお前ら・・・おい、いったい何なんだ」 数歩後ずさる。 ポクテもヴィータに数歩近づく。 扉に向かって全力疾走するヴィータ。 無数のポクテがそれを追う。 あまりの量の多さで扉でポクテ達は扉でつまるが、すぐに外に出てヴィータを追いかける。 「来るな、こっち来るなーーーー」 ドップラー効果でヴィータの叫び声が聞こえた。 「もしかして、ポクテに嫌われた?」 「いや、あれはポクテに気に入られたな」 「うちのヴィータが?でも、なんできにいられ・・・・あ」 「あ・・・そうか」 「あれですね」 「あれね」 全員がヴィータのバリアジャケットの帽子側面についているのろいうさぎを思い出して納得していた。 数日後。 ヴィータの部屋と机は絶えずきれいに整頓され、制服にもアイロンが丁寧にかけられるようになったという。 局員達はそれを小人さん達の仕業だと噂した。 「まさか・・・二人目のポクテ少女?」 前へ 目次へ 次へ
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何処の町にでもある、通りの小さなコーヒーショップ。 夜はバーとなる店で主人がカップなどを磨いていた。時間的に今は空いてる時間。 そんな店のドアを客が開く。タンクトップにズボンという格好の女性だった。 「やあ、スミカ穣ちゃん、いらっしゃい」 「やっほー、オヤジさん、いつものコーヒーセットね」 店の主人らしき人物と顔見知りなのかスミカと呼ばれた女性は なれた足取りでカウンター席に着く。 「仕事はどうだい?」 「最近はあがったりよ。管理局がうるさくてね・・・」 出されたコーヒーをブラックで啜りながらスミカは答える。 「この間の荷物の護送の時もそう。なんか知らないけどいきなり荷物を見せろ、 これは密輸品の疑いがあるから押収するとか言い始めてさ。 嫌になるわよ、お堅いお役所連中は。あなたもそう思うでしょう、コーラルスター?」 <イエス、マスター> 首から提げたドッグタグ状のデバイスが答える。 「ははは、昔から変わってないって事だな。お代わりは?」 貰うわ、そういいながらスミカはコーヒーカップを渡す。 「そうそう、この間、スミカ穣ちゃんに会いたいってのがきたよ」 「仕事?どんなのだった?」 スミカが歳に似合わず目を輝かせ、身を乗り出して聞く。 「いや、会いたいってだけだったな」 「どんなのが来た?政府?企業?個人?まさか非合法組織?もうごめんよ、非合法は」 「いや、子供が二人、さ」 それを聞いた途端、スミカがカウンターに突っ伏す。 「最悪・・・」 どうしたどうした?ファンの子かも知れんじゃないか?」 自由に生きて行く存在であり、実力のあるレイヴンは子供にとって憧れの的だ。 特にスミカのような地域密着型のレイヴンは特に遠い存在である レイヴンという存在を身近に感じれる存在であるのだから。 「うー、オヤジさん、レイヴンのジンクスって知ってる?」 「うん?おいおい、俺も元傭兵魔導士だ。知ってるよ。えーと・・・」 そう言うと主人は腕を組んで考える。 「えーと、『報酬全額前払いの仕事に気をつけろ』か?」 「違う」 「じゃあ、『同業者の依頼に気をつけろ』?」 「ハズレ」 「『楽観的な依頼主に注意しろ』?」 「『子供の持ってくる依頼?受ければ大事件に巻き込まれるさ』よ」 「・・・はっはっは!!なるほどな!!確かにそうだ!!」 ツボにはまったのか主人は腹を抱えて笑っていた。 そんな主人を見ながらスミカは頬杖をついて溜息ひとつ。 「これからどうすんだい?」 ひとしきり笑った後、店主が聞く。 「コーラルスターをちょっと見てもらってくるわ。最近無理をかけてたからね」 「最近『ヴァーテックス』とか言う連中がレイヴンを集めているみたいだが?」 「この間、ネットでメールが着たわ。私はパス。非合法はもうごめんよ」 「合法の管理局も増員してるみたいだが?」 「もっとパス」 そんな他愛無い会話をしていた時だった。 店のドアが開いた。客が一人入ってくる。 「いらっしゃい。」 入ってきたのはスーツ姿で長髪の金髪の女性だった。 店主は歳を二十代前半と読んだ。 もし男性客がいたらほぼ間違いなく全員の視線が集まるであろう。 それぐらいの美人だった。出るところは出て窪む所は窪む。最良のスタイルである。 「隣、いいですか?」 「隣?いいわよ」 どうやらスミカに用があるようだった。 「ご注文は?」 「グリーンティーはありますか?無ければコーヒーを」 ひとつの仕草が絵になっている。こいつはエリートだな。主人は目星をつけた。 だが一番気を引いたのは魔力反応だった。 「スミカ・ユーティライネンさんですね?それにコーラルスター?」 「そうだけど、仕事の依頼?何にせよ、その前に名乗るのが礼儀じゃない?」 「失礼しました。私はフェイト・T・ハラオウン。時空管理局・第7管区統括執務官です。 こちらはデバイスのバルディッシュ」 主人は出そうとしたグリーンティーの入った湯飲みを落としそうになった。 スミカは椅子からずり落ちそうになって、寸での所で止まる。 「どうぞ」 だが肩書きを聞いても臆せず湯飲みを出せるのは主人の積んできた経験か。 「ありがとう。あ、ミルクと砂糖はありますか?」 「・・・ミルクと砂糖ですか?」 さすがの主人も面食らったようだ。 こんな驚いたのは久しぶりだな。グリーンティーに砂糖とミルク?口直しか? 主人はそう思いながらミルクと砂糖を差し出す。 金髪の女性、フェイトと名乗った女性は二つを受け取ると砂糖とミルクを グリーンティーに注ぎ始めた。 スミカと主人は顔を見合わせる。 二人の目は、冗談でしょ?高い茶葉なんだが・・・。そう言っていた。 「いいお茶ですね?」 一口啜るとフェイトは口を開いた。 「あ、ありがとうございます」 香りや旨みが分ってるんだろうか?昔、会った管理官はこんなやつだったっけ? 店主の疑問は尽きなかった。 「スミカさん、少しお話を聞きたいんですが」 「悪いけど仕事に関しては話せないわよ」 「私が聞きたいのは、『ファンタズマ事件』についてです」 スミカの顔色が変わる。 「さらに話したくないわね」 「話し難いのは分ります。ですが、私達の知りたいことは『不死鳥』についてです」 「まさか彼を管理局に引き込もうとしてるの?止めたほうがいいわ」 こりゃこじれそうだな。店主は二人の話を聞きながら思った。 「いえ、話がしたいだけです」 「どんな?」 「『未踏査世界・アビス』について、そしてジャック・Oについて」 「これは任意の協力?それとも強制協力?」 「あくまでも任意です。もちろん、無料とは言いませんが・・・」 スミカは溜息をつく。 「オヤジさん、お代、ここに置いとくね」 「あ・・・」 フェイトが止めようとする。 「ここじゃ何だから、場所を変えましょう」 「わかりました。マスター、代金はここにおいてきますね。おいしかったですよ」 「ありがとうございました。またどうぞ」 「やれやれ、統括執務官とはね。偉いのが来たもんだ」 二人を見送った後、カップを下げながら主人は一人語散る。 「あ、サイン貰えばよかったな・・・、ま、もし二十年若けりゃ相手するんだがなぁ・・・」 そんなことすりゃ女房に殺されるな・・・。場違いな感想を思いついた。 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはStrikers 高町なのは フェイト・T・ハラオウン 八神はやて SP:127 能力 コマンド 消費 SP:124 能力 コマンド 消費 SP:128 能力 コマンド 消費 性格:普通 格闘140 集中 15 性格:冷静 格闘152 直感 20 性格:普通 格闘137 集中 10 射撃153 直感 20 射撃146 迅速 20 射撃152 分析 20 防御110 狙撃 15 防御 99 集中 15 防御 98 直感 20 成長:普通型B+ 技量181 てかげん 1 成長:普通型B 技量181 突撃 30 成長:普通型B 技量181 直撃 30 回避174 魂 50 回避179 魂 50 回避172 友情 35 命中178 愛 65 命中175 絆 55 命中181 期待 60 スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター SP:126 能力 コマンド 消費 SP:119 能力 コマンド 消費 性格:強気 格闘151 加速 15 性格:普通 格闘139 必中 20 射撃138 集中 15 射撃151 努力 15 防御104 不屈 10 防御 97 狙撃 15 成長:晩年型A+ 技量173 闘志 30 成長:晩年型A+ 技量175 集中 15 回避172 気迫 50 回避170 熱血 35 命中173 魂 55 命中177 かく乱 55 エリオ・モンディアル キャロ・ル・ルシエ SP:121 能力 コマンド 消費 SP:127 能力 コマンド 消費 性格:普通 格闘146 集中 15 性格:普通 格闘129 分析 20 射撃136 必中 25 射撃145 応援 35 防御103 気合 30 防御101 信頼 20 成長:晩年型S 技量167 突撃 30 成長:晩年型A+ 技量165 直感 20 回避171 不屈 15 回避166 直撃 35 命中171 勇気 60 命中173 覚醒 70 隊長たち3名は、能力的にはガンダム系のエースパイロットに似た設定にしている。 フォワード4名は才能あふれる新人として、全員大器晩成型の成長タイプにした。。 なのはに関しては、フォワード人の教官としての立場や模擬戦から、てかげんを導入。 愛を習得させるか不屈を習得させるかで迷ったが、彼女の本来の優しさを表すために愛で決定した。 防御系魔法と、元々の素質から防御値は高くした。 射撃値の大きさや命中値、コマンド等から、高機動・射撃戦主体のキラと似たスタンスになっている。 (没となったコマンド 不屈・激励・直撃) フェイトは格闘戦メイン、ライオットザンバー等の武器から突撃を採用。 なのはよりも高機動な為、迅速を所持している。 遠距離戦もこなす為、なのはに比べて全体的なバランスは良い。 最後のコマンドの絆は、無印からの引用。 愛はなのはに譲った。 (没となったコマンド 気合・愛・友情) はやての能力値は広域魔法による殲滅戦をモチーフにしている。 格闘値については、本人が接近戦を捨てているため極力低くした。 SSランク魔導師だが、なのは達に比べて実戦経験がそこまで多くないので、技量値は同じになった。 Asの頃の設定を残し、絆を取るか友情を取るかでフェイトと比べたが、現在はこれで安定した。 彼女の家庭的な優しさから、こちらの方がしっくりくるかもしれない。 (没になったコマンド 絆・覚醒) スバルは、戦闘機人としての能力は反映されていないが、格闘主体としての能力を色濃く設定した。 射撃値は、ディバインバスターがあるが遠距離砲撃とは言い難いので、低く設定した。 ウイングロードがあるので加速を設定。他のキャラにも使えるので、追風でもいいかもしれない。 戦闘機人としての〔覚醒〕は、気迫と闘志に代わりオミットされた。 (没になったコマンド ド根性・気合・突撃・覚醒) ティアナは、本人が認めている努力を軸として設定している。これは彼女という存在の最低条件でもある。 凡人と言っているがそんなことは無い。 最初のコマンドを、集中か必中かで迷ったが、二丁の銃を扱いこなす素質から必中になった。 幻術使いでもあるので、かく乱を設定した。 (没になったコマンド 根性・ひらめき・信頼・直撃・突撃・) エリオは唯一の少年キャラであり、ガリューに恐れず立ち向かったキャラの為、必然的に勇気を覚える。 子供の為、一般的なキャラよりもコマンドの消費は多い。 瞬発力は高いため、フォワードで2番目に高い。 技量値は10歳の子供にしては高く設定した。 (没になったコマンド エリオは迷わず確定した。) キャロはサポートが主なので、他の3人に比べて能力は低い。 サポート関連として応援を所持している。 召還魔導師として、覚醒を設定した。 感応は、今作に登場しないリインフォースが担当するので設定しなかった。 (没になったコマンド 幸運・感応・集中)
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「フォトンランサー・ジェノサイドシフト!解き放て!」 刹那、金色の光の雨が降り注ぐ。そして降り注いだ光は、シアゴーストのほとんどを射抜いた。 シアゴーストの残りは3体。だが、それよりも驚いたのは、はやてが立ち直ったことである。 「はやて!もう大丈夫なのか?」 「うん。心配かけてごめんな。でも、もう大丈夫や」 はやてはそう言うと、シグナムの方を向く。 「シグナム、ありがとな。おかげで目が覚めたわ」 「…何のことかは存じませんが、お役に立てたのなら幸いです」 「ラケーテンハンマー!」『Explosion.』 「紫電一閃!」『Explosion.』 『FINALVENT』「はぁっ!」 遠心力を利用した打撃魔法『ラケーテンハンマー』が、 炎を纏った斬撃『紫電一閃』が、 空中での回転体当たり『シザースアタック』が、3体のシアゴーストを砕いた。 「神崎士郎が言っていた邪魔者…どうやら彼女達のようですね」 帰宅後、誰もいない自室で須藤が呟く。彼の言う邪魔者とは、時空管理局の面々だ。 というのも、時空管理局の面々は神崎から「戦いを邪魔する者」と称され、ライダー達にも先日「早く倒しておいた方がいい」という通告が来たのだ。 「まさかあのような子供だったとは…まあいいでしょう。 前のように邪魔をされては困りますからね、早めに潰しておくとしましょうか」 須藤が敵に回ることが確定した。ちなみに、前というのは浅倉の立て篭もりの一件である。 第十六話『白き翼・ファム』 「名前、水岡和夫、佐伯琢磨…職業パイロット、弁護士、医者…」 「とにかく色々だよ、その他色々!」 資料を読む真司の思考を大久保が止める。 「何スかこれ?」 「その男の今まで見つかった偽名と偽の職業」 令子の説明を聞き、真司がある結論に至った。 「ってことは…!」 「だから詐欺師なんだよ詐欺師!それも名うての結婚詐欺師だ!」 そう、その男(とりあえず、今の偽名『水岡和夫』で呼ぶとしよう)の正体は詐欺師だ。 「名うての」とついた所から察するに、今までかなりの回数、詐欺を繰り返したのだろう。 「あ、なるほど。この男の罪暴くってのが今回の仕事ですか」 「…ピンポン!お前、そうなりゃこりゃ立派な社会正義だよ。 しかもお前その男許せるか?あっちこっちの女にモテまくりやがって!」 真司にしては珍しく察しがいい。そしてそれに私怨交じりで返す大久保。 「許せませんねえ!」 そして真司もそれに同調した。 今現在、この二人の思考は見事にシンクロしている。 分かりやすく言えば「目の前(の写真)にいるこの野郎だけは絶対に許せねぇ!」といった感じだ。 「妬み、僻み…嫉みですか?」 呆れ顔で言う島田に、同じく呆れ顔で令子がうなずく。 それはともかくとして、令子が写真を取り出した。今現在水岡が狙っている女性の写真だ。 「そしてこれが今、その男が狙っているターゲットよ。霧島美穂。中々のお嬢様らしいわ」 「はー…綺麗な人ですね…」 「そんな…彼が詐欺師だなんて…」 「信じられないかもしれませんが、全て事実です」 現在、真司と令子が美穂に協力を依頼しているところだ。 さすがに恋人だと思っていた相手が詐欺師だと言われるのは精神的にこたえるようだ。 だが、無理にでも信じさせなければならない。そうせねば泣きを見るのは美穂なのだから。 「何か証拠でもあるんですか?彼が詐欺師だという証拠が…」 そう言われ、真司が先ほどまで見ていた資料を取り出し、美穂に見せる。 「あの水岡って奴が今まで使ってきた偽の身分のリストです。これだけあれば詐欺師と決め付けるには十分だと思いますけどね」 美穂がリストを手に取り、目を通す。 そこには水岡が今まで使ってきた偽の身分がズラリ。何かの名簿に見えてもおかしくないほどの数だ。 さらに、裏にも何かが書かれているのを見つけ、それにも目を通す。今度は被害女性の名前がズラリ。 さすがに信じたらしく、資料を真司に返す。 「…分かりました。協力します」 そう言って、令子から差し出されていた小型集音マイクを受け取った。 「では、今後の予定は追って連絡します」 そう言い、二人揃って退室していった。 帰る途中、真司の頭に引っかかることがあったが、今はどうでもいいと考えて仕事に戻った。 (あの人の声、どっかで聞いたことがあるんだよな…) そして作戦実行の当日、霧島邸にて。 「いや、これは立派なお宅だ。美穂さんが住むのに相応しい」 「私には広すぎます。ぬくもりが感じられないから…」 そう言って、美穂と水岡がソファーに座る。 「なら、僕達が結婚したら…うんと狭い家で暮らしましょう。そうすれば、いつも一緒に寄り添っていられる」 ちなみに集音マイクで音を拾っているため、外で待機している真司と令子にも会話の内容は筒抜けだ。 「…っかー!キザな奴!」 歯の浮くようなセリフで、真司が多少参っているようだ。 「結婚してくれますね?」 「私なんかのためにこんな…」 水岡が指輪のケースを取り出し、美穂に差し出す。美穂もそれを笑顔で受け取った。 「いいんですよ。婚約指輪くらい、多少無理したって…」 それを聞き、怪訝そうな顔をする。 「無理、なさった…?」 「会社の方がうまくいってなくて、資金繰りに困っていて… いえ、すいません。つまらない話をしてしまった…何、大したことありませんよ」 それを言った瞬間、思い切り扉が開く音と、真司の「そこまでだ!」という声が響いた。 「やっぱり最後は金か!毎度同じ手を使いやがって、ネタは挙がってんだよこのイカサマ野郎!」 「な、何だ君達は!」 水岡がそう言うと、待ってましたとばかりに真司が財布から名刺を取り出す。 そして財布を放り投げ、名刺を掲げて名乗った。 「正義の味方、城戸真司!OREジャーナルの記者だ!」 そう名乗っている間に、令子が美穂を逃がす。そして令子が啖呵を切った。 「残念だったわね。ま、女を食い物にするような人生がそう長続きするはずが無いわ。諦めなさい!」 そんなやり取りの最中、美穂の両親と思われる老夫婦がその部屋に入ってきた。 いるはずの無い人間がいる事に驚き、老婦が問い詰める。 「何なんですかあなた達は!」 「美穂さんのご両親ですね?」 「…美穂?何を言ってるんだ?うちに娘はおらんがな」 …はい? 「え?で、でも…」 うろたえながらも家族の写真を手に取る令子。だが、先ほどとは違う写真に差し替えられていた。 どう違うかというと…中央に写っている美穂が、あかんべえをしている。 「あ!?」「何これ?」「これは…!」 ついでに言うと、その写真の近くに放り投げられた真司の財布も無い。 「よっしゃー!指輪ゲットー!」 駅のホームで、美穂が大喜びしている…そう、実はこの女こそが結婚詐欺師だったのだ。 先日の真司達とのやりとりも、全て演技で応えていた。「女は役者」という言葉を体現したような女である。 「それから…何だこりゃ?小銭だけかよ…」 先ほど写真すり替えのついでに盗った真司の財布を開き、中身を確認する。 …が、中身は小銭くらいしか入っていない。それを見た美穂も落胆しているようだ。 「あいつどこに…あ!」 先ほどのやり取りの後、3人で手分けして美穂を探している。 特に真司は財布を盗られているから必死だ…と、見つけたようだ。 だが時既に遅し。美穂は真司の金で缶コーヒーを買った後だ。 「そ、それ!俺の財布!」 「え、あ…これ飲む?奢るけど」 「ああ、ありがと…ってお前ふざけんな!」 「買うものはこれで全部かな…って、あれ?真司?」 買い物帰りのフェイトが偶然通りかかった。 何故駅前まで来ているのかは…探し物が売ってなくて駅前まで探しに来たからである。 で、道路を挟んで反対側に真司の姿を見つけ、現在近寄ろうとしているところだ。 …だが、見慣れない女が真司と話しているのを見て、一度中断した。 「あの人誰だろ…彼女かな?」 「いいから離せって!ほら!」 「いいの?離して」 「いいよ!」 今現在、真司の財布の取り合い…というか、引っ張り合いの真っ最中だ。 フェイトよ、この状況のどこをどう見れば恋人に見えるというのだ。 「はい」 離した。それと同時に真司が転ぶ。 綱引きと同じ要領だ。思い切り引っ張り合っているときに片方が手を離すと、もう片方がバランスを崩すアレである。 そして転んだ拍子に財布の中身を路上にぶち撒けた。 「何やってんだよ、もう!」 慌ててぶち撒けた小銭を拾う真司。だが見える範囲にある小銭を全て拾ってもまだ足りない。 そんな時、目の前に差し出される手。その手には小銭が乗っていた。 「はい。拾っておいたよ」 「あ、ありがと…って、フェイトちゃん?何でここに…」 そのやり取りの間に、美穂が先ほどのコーヒーを口に含む。 「真司こそ。その人とデート?熱いね」 そして思い切り吹き出した。コーヒーで虹が出来たように見えたが、気のせいだと思いたい。 「いや違うって。実はかくかくしかじかで…」 毎回思うが、何故これで通じるのだろうか? …ともかく、フェイトも納得したらしく、冷やかすのも止めたようだ。 「だから言ったでしょ?騙される方が悪いんだって」 「いや人のせいにするなよ」 「あ、でも騙されるのはあたしの美貌が悪い?ってことはあたしを美しくお造りになった神様が悪い?」 「神様のせいにしないでよ…」 現在、美穂の弁解に真司とフェイトが揃って突っ込みを入れている状況だ。 騙される奴が悪いという詐欺師の論法には負けないでほしいと思う。 「おい、指輪を返してもらおうか」 声に気付き、揃って振り向く。声の主は水岡だ。 真司が身振りで指輪を返すようせかす。それに対し美穂は返す気が無いようだ。 「真司、あの人が?」 「そう。さっき話した結婚詐欺師だよ。ほら、指輪返せって」 「やだよ。何でもらい物返さなきゃなんないの?」 そんなやり取りの間にも、水岡が近づいてくる。 だが、水岡への注意は次の瞬間それた。例の金属音である。 水岡以外の3人が気付き、「どこから来る?」といった感じで辺りを見回した。 …と、次の瞬間。金属柱から触手が伸び、水岡が引き込まれた。 「あの触手、もしかして…!」 伸びてきた触手は、フェイトには見覚えのあるものだった。 だが、それはとりあえず置いておき、その金属柱の前へと移動する3人。 そして、変身しようとしたとき、真司が信じられないものを見た。 「変身!」 それは、美穂がライダーへと変身した姿だ。しかもかつて戦ったファムにだ。 (そうか…どっかで聞いたことがあると思ったら、あの立て篭もりの時か) そう思いながら、真司もカードデッキを金属柱へと向け、変身した。 「あんた…あの時のライダーだったのか」 立て篭もり事件の時、その戦いに参加していなかったフェイトは話についていけてない。 「それより、早く行った方が…」 「っと、そうだった!」 すぐに話を切り上げ、ミラーワールドへと踏み込んだ。 「そんな、あのモンスターは前に手塚さんが倒したはず…!」 彼らの前にいるモンスター、それはかつて手塚が討ったモンスターで、管理局がライダーとの戦いに介入するきっかけにもなったモンスターでもある。 そのモンスターの名は…バクラーケン。かつてなのはやフェイトを圧倒したモンスターである。 フェイトにとっては因縁のモンスターといったところか。 「同じ種類のモンスターが複数いるって事くらい、別に珍しくも無いよ。 ギガゼールやシアゴーストみたいに群れで動くのもいるくらいだしね」 そう言うと、ファムがバイザーを振るい、バクラーケンへと向かっていった。 それを見たフェイトも、バルディッシュをハーケンフォームにして突っ込む。 「よし、じゃあ俺も…うわ!?」 ドラグセイバーを手に、龍騎もバクラーケンへと向かおうとする…が、後ろからの一撃で中断せざるを得なくなった。 「くっ、もう一体いたのかよ!」 真司に一撃を喰らわせたモンスター、それはバクラーケンの亜種で、武器の扱いを得意とするモンスター『ウィスクラーケン』だ。 声と衝撃音に気付き、真司の方を見るフェイト。そこでウィスクラーケンの存在に気付いた。 「真司!?待ってて、今そっちに…」 「いや、こいつは俺が何とかする。フェイトちゃんはそっちを頼むよ」 あの時と比べると、フェイトは確実に強くなっている。 通らなかった攻撃も通っている。効いている。攻撃も防御魔法『ディフェンサープラス』で防げる。 と、またハーケンフォームの一撃が通った。さらにファムのウイングスラッシャーが傷口に当たり、通常より大きなダメージを与えている。 「私、強くなってる…?」 『ええ、強くなってますよ。前よりずっと』 フェイトの独り言にバルディッシュが答える。どうやら聞こえていたらしい。 「しゃべってる場合?このまま一気に決めるよ!」 そう言ってカードを取り出すが、煙幕で姿を隠される。 「煙幕なんかで止まるわけないだろ!」 『ADVENT』 地面のアスファルトが砕け飛ぶ。そこから現れたのはファムの契約モンスター『閃光の翼ブランウイング』だ。 砕けた地面から水が噴き出しているのを見ると、どうやら地下水脈があったのだろう。 それはともかく、ブランウイングが羽ばたき、その風で煙幕を吹き飛ばした。だが、バクラーケンは往生際が悪く、再び煙幕を張ろうとする。 「いくよ、バルディッシュ。ブリッツラッシュ」 『Yes,sir. Blitz Rush.』 だが、そうは問屋がおろさない。高速移動魔法『ブリッツラッシュ』で距離を詰め、零距離で左手を突きつけた。 「この距離なら、煙幕を張られても外さない…!撃ち抜け、轟雷!プラズマスマッシャー!」 『Plasma Smasher.』 魔法陣が複数形成される。さらに魔力が溜まってゆく。 そして、雷の砲撃魔法『プラズマスマッシャー』がバクラーケンに風穴を開け、そのまま爆散させた。 一方こちらはというと… 「うわっ、とっ、やっぱ手伝ってもらったほうがよかったかな…?」 ウィスクラーケンの槍をかわし、受け止め、払い、そして隙を衝いて反撃という状況が続いていた。 痺れを切らし、ドラグセイバーで斬りかかる龍騎。だが、ウィスクラーケンはそれをかわし、龍騎に槍を振り下ろしてくる。 龍騎はその槍を受け止め、空いた脇腹に蹴りを見舞った。 「よし…!」 『STRIKEVENT』 ドラグゼイバーを左手に持ち替え、ストライクベントを装填。ドラグクローを呼び出した。 そして剣と拳による連続攻撃を決め、バクラーケンを弱らせる。完全に龍騎のペースだ。 さらにドラグセイバーを投げつけたが、槍で払われてしまう。 だが、その時にわずかな隙が出来た。それで十分トドメを刺せる。 「ハァァァァ…りゃぁぁぁぁぁ!!」 払ったときの隙の間にドラグクローを構えていた。それに呼応しドラグレッダーが現れる。 そして、右ストレートの要領で昇竜突破を放った。 ウィスクラーケンはそれを槍で受け止めようとしたが、槍で炎を受け止められるはずも無く、そのまま焼き尽くされた。 「フェイトちゃん、そっちは終わ…って、聞くまでも無いか」 確かに聞くまでも無い。ちょうどバクラーケンを倒したところだ。 …と、ファムがフェイトに向き直る。 「へぇ、それが魔法?ってことは神崎士郎が言ってた邪魔者ってのは…」 「邪魔者って…どういう事?」 「言葉通りの意味だよ。あんたら魔法使いはライダーの戦いを邪魔するんだって聞いてるんだ」 初耳だ。一体いつの間に神崎に存在を知られたのだろうか? 「何だよそれ…俺はそんなの聞いてないぞ!」 「あんた、その子と親しいみたいだし、邪魔者に加担してるって思われてるんじゃないの?」 なるほど、道理で龍騎の所にはその情報が届かなかったわけだ。 だとしたら、蓮や手塚の所にもその情報は来ていないのだろう。 「今ここで倒してもいいけど…今回は警告だけにしておくよ」 そう言うと、フェイトの喉下にバイザーをつき付け、言った。 「ライダーの戦い、邪魔はしないほうがいいよ」 ファムは言いたい事を言うとバイザーを収め、ミラーワールドを出て行った。 戻る 目次へ 次へ
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崩落 の ステージ(後編) ◆HlLdWe.oBM 今から思えばこの時誰もが油断していたのだろう。 思いもかけぬ再会に心が安らいで気が緩んでいたのだろう。 だから誰も気付く事ができなかった。 一途な願いを叶えるために殺人を犯す小さな魔導師の存在を。 小さな魔導師に仕える炎の魔人を。 主命により魔人がもたらす地獄の業火を。 ▼ ▼ ▼ 「ルル、ありがとう」 シャーリーはこれから死にゆくものとは思えないほど安らかな表情を浮かべていた。 これも咄嗟に掛けたギアスのおかげか。 本当なら再びシャーリーにギアスを掛けたくはなかった。 だがこうするしかなかった。 突然起こった地震並みの揺れとアニメイト全体の倒壊。 降り注ぐ瓦礫の雨と押し寄せる炎の波。 どれも防ぐ事など出来なかった。 魔眼を備えようともこの身は人の域を出ない。 金髪の男や赤いコートの男と同じように人の域を超えた怪物には為す術がなかった。 一瞬で瓦礫は隙間なく降り注ぎ、炎は身体を舐め尽し、こうして思考しているのが不思議なぐらいだ。 唯一出来た事はシャーリーをしっかりと抱きしめてやる事だけ。 『幸せな夢を見ろ』という最期のギアスを掛けたのはその時だ。 これから死ぬ運命を変えるのは不可能だった。 だがせめて死ぬ瞬間までは辛い思いはしてほしくなかった。 もうシャーリーは十分辛い目に遭ってきたのだから。 それにしても、本当に嬉しそうな顔だ。 たぶん俺に告白する夢でも見ているのだろうか。 ふとそんな気がした。 だがシャーリーすまないな。 夢の中の俺なら君の想いに答えてやれるだろう。 だが現実の俺はそれには答えられない。 なぜなら俺が愛する者は唯一人あいつしかありえないからだ。 こんな状況だからこそ改めて分かる事もある。 自分がどれだけあいつの笑顔や行動に救われてきたか。 もうあんな風に口喧嘩する事も笑い合う事もできないんだな。 ――好きだったんですね、その人のこと。 ああ、そうだ。 俺はスバル・ナカジマという女性を心から愛している。 だがその想いも死んでしまえばそこで終わりだ。 「最期にあいつの顔、見たかったな……」 ▼ ▼ ▼ ルーテシア・アルピーノはヴィヴィオを背負って聖王のゆりかごへ向かっていた。 なぜ北へ向かっていたはずのルーテシアがこのような状態になっているのか。 それにはいくつかの理由があった。 【放送前後のルーテシアの動向】 元々ルーテシアの目的地はC-9にあるスカリエッティのアジトであった。 目的は本来ならば生体ポッドの中にいるはずの母メガーヌ・アルピーノがいないという証言の確認。 誰にも会わないままアジトに辿り着き、さらに見慣れた場所ゆえに万事順調に進んで第二回放送前には目的は果たせた。 その結果、メガーヌの姿はどこにもない事が判明した。 これで転送前のプレシアの発言と天上院明日香の発言の裏付けが取れた。 しかしだからと言ってルーテシアの行動方針に変更があるわけではない。 あくまで全ての参加者は別々の世界から連れて来られたという事を再認識しただけだ。 それから行われた第二回放送に関してはプレシアからの提案以外は特に興味を引かれるものはなかった。 敢えて言うなら取引を交わした一人ブレンヒルトの死亡だが、それも最初から乗り気でなかったので特に思う事はなかった。 そして放送後ルーテシアは周辺の探索に勤しむ事にした。 ルーテシア自身の体力は全参加者から見れば下位であるが、それを補う足としてマッハキャリバーというデバイスがある。 このデバイスのおかげで行動距離はずいぶんと広くなっているのだ。 目下ルーテシアの探しているものは大きく二つに分けられる。 一つはキース・レッドに頼まれているキース・シルバーや『ベガルタ』『ガ・ボウ』の情報。 だがこれはそもそも乗り気ではないので正直どうでもいいとさえ思っている。 そしてもう一つこそ本命、つまりイフリート以上の戦力の確保。 確かにイフリートの力は並みの参加者にとっては脅威となるだろう。 だがあの剣士のように対抗できる参加者がまだいるかもしれない。 さらに召喚の際に要するタイムラグと疲労も無視できるものではない。 何よりイフリートを渡してくれたキース・レッドはもしもの時に備えて既に何か対策を講じている可能性は十分にある。 つまりイフリートの力を過信して安易に頼ってばかりはいられないという事だ。 アジト周辺に大して何もない事が分かると、ルーテシアはキース・レッドとの取り決め通り会場の北を中心に捜索しようとした。 だが森の中より市街地の方が見つかり易そうと考えてD-5の橋を渡って北西方面に向かう途中であるものを見つけた。 それはE-7の駅からA-8へと伸びる謎の線路。 地図を確認するとこの会場唯一の駅は橋へ向かう途上の近くにあったので探しものがてら少し寄ってみる事にした。 ちなみに廃墟も近くにあったが、何かあるとは思えないので寄らなかった。 そしてルーテシアは温泉に向かっていたシャーリーを発見した。 この時ルーテシアはある作戦を思いついた。 ――囮だ。 わざとシャーリーを生かして逃がす事で近くの参加者を引き寄せて、そこでイフリートを召喚して一掃するという算段だ。 上手くいけば殺した参加者から有能な道具が手に入る可能性もある。 ルーテシアはその作戦を思いつくと即座に実行に移した。 適度に攻撃射出魔法トーデス・ドルヒを放ちつつ付かず離れずの距離を保って追いかける。 もう既にマッハキャリバーの扱いにも慣れてきたのでシャーリーと違ってルーテシアの疲労は大した事なかった。 シャーリーは最初こそ銃撃や投擲で難を逃れようとしていたが、全て失敗に終わると後は逃げるだけに徹するようになった。 この際見た感じ役に立ちそうになかった弾切れの銃とバッグ以外は何かに使えると思って拾っておいた。 だがバッグを投げた時に零れ落ちた1枚のカードの存在にはシャーリーもルーテシアも気づく事はなかった。 しばらくそれを続けていたが、予想に反していつまで経っても誰も現れなかった。 実際は数人気づく可能性があったのだが、各々の事情で気付く事はなかった。 だからこの地獄のような鬼ごっこはかなりの間に渡って続いたが、最終的に途中で中断された。 その原因は早乙女レイにある。 【エボニーの試射】 ルーテシアがシャーリーを追いかける事を中断したのは瀕死のレイを発見したからだ。 当然ルーテシアの前を走っていたシャーリーも気づく可能性はあったが、逃げる事で精一杯だったので気づく事はなかった。 しかもレイが倒れていた場所は二人がいた道から少し離れた場所だった上にハイパーゼクターの出現もあって尚更だった。 この時ルーテシアはシャーリーが既に限界に近いと勘付いていた。 だから少しぐらい目を離してもすぐに見つかると高を括っていた。 そうして一応シャーリーが西へ向かった事だけ確認してからレイの方に向かったのだ。 ルーテシアがレイに興味を持ったのは荷物を回収する事に加えてエボニーの試し撃ちをしておこうと思ったからだ。 キース・レッドから貰い受けたもう一つの武器、黒鍵を思わせる拳銃エボニー。 質量兵器が殺傷能力に長けている事はルーテシアも知っていたが、実際の威力までは知らない。 だから本番で不覚を取らないように一度試し撃ちをして威力などを確認したいと考えていた。 そこで発見したのが瀕死の状態のレイ。 動かない的として適任な上に参加者殺害によるプレシアからの見返りも期待できる。 そして十分に近づいたところでエボニーを撃った。 レイは最期まで何をされるか分かっていないようだったが、ルーテシアには関係ない事だった。 結局片手で撃てば無理そうだが、両手で撃てば問題ないという結論に至った。 残念ながらデイパックはなかったのでここでの目的は終わった。 そしてシャーリーの行方を探るのだが、意外な事が契機で見つける事ができた。 その原因はスバル・ナカジマにあった。 【イフリートの召喚】 ルーテシアがシャーリーの居場所を見つける事ができたのはスバル・ナカジマの行動のおかげだった。 スバルが裏口で盛大にドアにぶつかった時、ちょうどルーテシアがアニメイトの前を通っていたのだ。 当初西へ向かって捜索していたルーテシアだったが、意外とすぐにシャーリーを見つける事ができなかった。 そんな時にスバルがドアに激突した奇妙な音を耳にしたのだ。 そして気になってアニメイトの中を注意深く覗き込んだ結果、店内にいるシャーリーとルルーシュを発見できた。 ちなみにこの少し前にスバルは正面の入口に来ている。 だが日の光の加減で中の様子が見えなかった事に加えて自動ドアが反応しない時点で裏口に回ってしまっている。 この時自動ドアを叩けば中にいるシャーリーとルルーシュが気づく可能性はあったが、所詮は後の祭りだ。 その時とは違ってルーテシアはドアに張り付き目を凝らす事で中の様子を把握できた。 この瞬間スバルとこなたは裏口で談笑していて死角にいて、ルルーシュとシャーリーは感動の再会の真っ只中。 それはまさにタッチの差としか言いようがないタイミングだった。 そして炎の魔人による蹂躙が始まった。 もう囮作戦も頃合いだと判断するとイフリートを召喚して外から一方的にアニメイトを破壊した。 天高く振り上げられた剛腕から繰り出される槌の如き一撃でアニメイトはほぼ倒壊。 さらに灼熱の業火を思わせる「地獄の火炎」による焼き払いで残骸は灰塵と化した。 まるで元から会場には地図の通りそんな建物は存在しなかったかのように。 そしてアニメイトを襲撃したルーテシアは北へ戻らず、さらに南下して聖王のゆりかごに向かう事にした。 その理由はヴィヴィオにある。 【聖王のゆりかごの利用】 ルーテシアが聖王のゆりかごを目指す契機となったのはヴィヴィオを発見したからだ。 あの後少々やりすぎた感を抱きながらルーテシアはアニメイト跡地で何か使えるものが残っていないか探した。 だがイフリートの力によってデイパックは中の道具諸共ほとんどが灰となり、死体も炭化していた。 辛うじて回収できたのはなぜか無傷だったトランプのカードと、少し離れた場所に落ちていて無事だったアサルトライフル。 実はトランプが燃えなかったのはアンデッドを封印する特殊なカードだからで、ライフルはこなたが落としたものなのだが、当然ルーテシアはそのような事情は知らない。 その二つは途中で拾ったデイパックと一緒に自分のデイパックに入れておいた。 そして予想外の収穫は唯一の生存者ヴィヴィオである。 なぜかバリアジャケットのような意匠の服を着ていたのでそのおかげかとも思ったが、どうも違うらしい。 なぜヴィヴィオは無事なのか。 それはヴィヴィオ自身と装備していたクラールヴィントのおかげだ。 あの時ヴィヴィオは迫り来る危機に対して無意識で「聖王の鎧」を発動させていた。 ひとたび危険が迫れば本人の意思とは関係なくその身を守るという古代ベルカ王族が遺伝子レベルで所有している自動防衛能力。 それに加えてクラールヴィントが自主的に発動させた防御魔法。 この2つの防護のおかげでヴィヴィオは無事だったのだ。 そして襲撃時にアニメイトの一番奥に位置する事務室にいたのも幸いだった。 そのおかげで地獄の火炎はヴィヴィオに至るまで瓦礫に阻まれて威力は半減していたからだ。 だが今は直前にルルーシュへの治癒魔法も行使していた事もあって多大な魔力を消費したために意識を失っている。 しかしルーテシアにとってはそのような事情はどうでもよかった。 重要なのはヴィヴィオを保護できたという事。 聖王の器であるヴィヴィオは聖王のゆりかごを起動するための鍵である事はルーテシアもチンクから聞かされて知っていた。 そのヴィヴィオは今自分の手元にある。 つまりこのまま聖王のゆりかごに行けば、その強大な戦艦の力を手に入れる事ができる。 それはイフリートよりもさらに強力な力であり、おそらく実現すれば生存している全参加者で太刀打ちできる者はいない。 だからルーテシアはヴィヴィオを背負って聖王のゆりかごに向けて移動しているのだ。 その先にある希望を信じて。 【1日目 午後】 【現在地 G-7 大通り上(南下中)】 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、魔力消費(中)、疲労(中)、キャロへの嫉妬、ヴィヴィオを背負っている 【装備】マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ウィルナイフ@フェレットゾンダー出現! 【道具①】支給品一式、召喚マテリア(イフリート)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、エボニー(9/10)@Devil never strikers、エボニー&アイズリー用の予備マガジン×1、レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レイとフェイト(A’s)のデイパック(道具②と③) 【道具②】支給品一式(名簿の裏に記述あり、内容は情報交換のメモと同じ)、SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、情報交換のまとめメモ(内容は守りたいもの参照) 【道具③】支給品一式、フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX 【思考】 基本:最後の一人になって元の世界へ帰る(プレシアに母を復活させてもらう)。 1.どんな手を使っても最後の一人になる(自分では殺せない相手なら手は出さずに他の人に任せる)。 2.南に向かい聖王のゆりかごを起動させる。 3.18時に地上本部へ行き、キース・レッド他集まった参加者をイフリートor聖王のゆりかごで一網打尽にする。 4.3がキース・レッドに察知された時の保険として一応キース・シルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』を探す(割とどうでもいい)。 5.もしもレリック(刻印ナンバーⅪ)を見つけたら確保する。 【備考】 ※ここにいる参加者は全員自分とは違う世界から来ていると思っています。 ※プレシアの死者蘇生の力は本物だと確信しています。 ※ユーノが人間であると知りました。 ※マッハキャリバーは参加者の時間軸の差異に気付いています。 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、疲労小、魔力消費極大、シャーリーへの心配、知り合いが死んだ事への悲しみ、強い決意、浅倉に対する複雑な感情、ルーテシアに背負われている、気絶中 【装備】クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フェルの衣装、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ 【道具】支給品一式、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:六課の皆と一緒に脱出する。 1.シャーリーお姉さんを助けたい、ルルお兄さんも助けたい。 2.ママ達がいなくなってもヴィヴィオがんばる! 3.天道お兄さんを助けたい、浅倉お兄さんともお話したい。 【備考】 ※浅倉は襲い掛かって来た矢車(名前は知らない)から自分を救ってくれたヒーローだと思っています。 ※浅倉をまだ信頼しており、殴りかかったのは何か理由があるのだと思っています。 ※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道を助けてくれるいい人だと思っています。 ※この場にもう1人なのはやフェイトがいる事に気付いていません。 ※クラールヴィントは浅倉を警戒しています。 ▼ ▼ ▼ 泉こなたが目覚めた瞬間に目にしたものはこちらの顔を心配そうに覗き込むスバルの顔だった。 「こなた、気が付いて良かった……」 「え、私、なんで……」 こなたは意識を失う前の出来事を懸命に思い出そうとした。 ルルーシュとシャーリーの再会に水を差してはいけないと思ってリインを連れて外に見張りに行こうとした。 一応なぜかシャーリーが持っていた自分のデイパックと護身用にアサルトライフルは持ち出した。 そして静かに事務室に移動。 それから二人の邪魔にならないように配電盤を操作して自動ドアが開かないようにセット。 次いでソファーの上でまだ眠っているヴィヴィオを確認してから裏口に向かった。 そこで鍵が掛かったドアを無理やり開けようとする何者かの存在に気付いた。 恐る恐る覗き穴から確認するとそこにはドアを拳で破壊しようとしているスバルがいたので急いでドアを開けて再会した。 そこで記憶は途切れていた。 「スバル、ここはどこ?」 「アニメイトから少し離れたところにある建物。たぶん見つかってはいないと思うよ」 その言葉は暗に自分達が追われているという事を意味していた。 護身用に持っていたはずのアサルトライフルが無くなっている事からも何か非常事態が起きた事は想像できた。 そしてスバルの左腕には骨折を処置したと思われる包帯が巻かれていた。 おそらく必死に守ってくれた証なのだろう。 「え、もしかして私達襲われたの?」 「うん、誰が襲ったのかは分からなかったけど……ただ炎の巨人を操っている事だけ分かったよ」 よくゲームで見る召喚士みたいな人をこなたは一瞬思い浮かべた。 だがそれよりも気になる事があった。 それはアニメイトにいたルルーシュやシャーリーやヴィヴィオの安否だ。 「スバル! ほ、他の皆は無事!?」 「お、落ち着いてこなた。私はこなたを守って逃げるだけで精一杯だったけど、リイン曹長なら無事だよ。 最初の攻撃を無理して防いでくれたせいで今はまだ気絶しているけどね」 「え、リイン以外は……?」 その言葉を聞いた瞬間、スバルの顔が一気に青ざめるのがよく分かった。 今までこなたとリインが無事で安心していた顔にはもう未知の怖れしか見えなかった。 「う、うそ……もしかして、アニメイトにまだ誰かいたの!?」 その時こなたは悟った。 これから自分の言う事はスバルを深い悲しみに追いやるだろうと。 だがいつかは分かってしまう事だ。 それならば早いうちに知らせた方がいい。 だからこなたは重い口を開いた 「アニメイトには……ルルーシュとシャーリーとヴィヴィオが残っていたんだ……」 「え――?」 その言葉はスバルがまたしても仲間を守れなかった事を意味していた。 【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX 死亡確認】 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル 死亡確認】 【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル 死亡確認】 【1日目 午後】 【現在地 G-6 市街地 アニメイトから少し離れた建物】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】疲労小、全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、質量兵器に対する不安、若干の不安と決意、仲間の死によるショック 【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定) 【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照) 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。 1.う、うそでしょ……。 2.かがみを止めにいく。 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。が、かがみの事はどう説明するべきか……。 4.アカデミアに戻って首輪を回収したい。 5.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。 6.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。 【備考】 ※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。 ※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 ※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。レイにも注意を払うようにしています。 ※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 ※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。 【泉こなた@なの☆すた】 【状態】疲労小、仲間の死によるショック 【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ(疲労大、気絶中)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS 【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、救急箱 【思考】 基本:かがみん達と共に家族の元に帰る為、自分の出来る事をする。 1.うそ、みんな……死んじゃったの……? 2.落ち着いたらこれまでの事をスバルと話し合う。 3.リインが心配。それと時間が経ってから後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる。 4.かがみん達……大丈夫だよね? 5.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで。 【備考】 ※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。 ※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました(スバル達に話すつもりはありません)。 ※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。 ※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。 ※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。 ※地図に載っていない施設が存在する事を確信しました。 ※PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 ※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、浅倉、キング、レイを警戒しています(特にレイとアーカードには二度と会いたくないと思っています)。 ※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからこれまでの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。 【リインフォースⅡ:思考】 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。 1.落ち着いたらこれまでの事を話し合う。 2.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。 【備考】 ※自分の力が制限されている事に気付きました。 ※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからこれまでの経緯を聞きました。 【チーム:黒の騎士団】 【共通思考】 基本:このゲームから脱出する。 1.これまでの情報を纏める。 2.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。 3.首輪を見つけた時には機動六課か地上本部で解析する。 4.それぞれの仲間と合流する。 【備考】 ※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。 ※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。 ※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は守りたいもの本文参照。 ※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。 ※チーム内で、以下の共通見解が生まれました。 要救助者:万丈目(注意の必要あり)、明日香、かがみ、つかさ、ルーテシア 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、チンク、クアットロ、C.C./(フェイト及びクアットロには注意の必要あり) 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ)、炎の巨人を操る参加者 以上の見解がそれぞれの名簿(スバル、こなた)に各々が分かるような形で書き込まれています。 【全体備考】 ※アニメイトは全壊・全焼して灰塵と化しました(跡地にルルーシュとシャーリーの焼死体があります) ※以下のものが焼失しました。 ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、シャーリーのデイパック(支給品一式、デュエルアカデミア売店の鍵@リリカル遊戯王GX)、ルルーシュのデイパック(支給品一式、洞爺湖@なの魂、小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×4、シーツ数枚) ※【E-7駅】と【G-6アニメイト跡地】の間のどこかにレッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D s ―LYRICAL KING―が落ちています。 ※リインフォースⅡのお出かけバッグとゼロの銃(0/10)は破壊されました。 【涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)】 某有名アニメ涼宮ハル○の憂鬱に出てくる主要人物が通っている県立北高校の女子用の制服を再現したもの。 水色と白のセーラー服とスカートで、胸元の臙脂色のリボンが特徴的。 ただし涼宮ハル○(CV:平野綾)仕様という事でオプションとして黄色のカチューシャと『団長』と書かれた腕章が付いている。 こなたはアルバイトのコスプレ喫茶でこの衣装を着用している。 【フェルの衣装】 某18禁ゲームプリズム・アー○に出てくる自称「自称天才魔法操者」フェル(CV:水橋かおり)の衣装を再現したもの。 先が二つに分かれた大きな薄紫色の帽子と背中の大きな薄橙色のリボンが特徴的。 Back 崩落 の ステージ(前編) 時系列順で読む Next 共振~バイブレーション~ 投下順で読む Next 機動六課部隊長斬り捨て事件~バトルロワイアル放浪ツアー、街角に待ち受ける幻惑の罠、鉄槌の騎士と烈火の剣精は聞いていた~ ルーテシア・アルピーノ Next ロリッ!幼女だらけのクリスマスパーティー ~ボインもあるよ!~(前編) ヴィヴィオ Next ロリッ!幼女だらけのクリスマスパーティー ~ボインもあるよ!~(前編) スバル・ナカジマ Next Blue Swear―――蒼い誓い 泉こなた Next Blue Swear―――蒼い誓い 早乙女レイ GAME OVER ルルーシュ・ランペルージ GAME OVER シャーリー・フェネット GAME OVER
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窮奇退治は昌浩の完治まで、延期が決定した。敵はあの大妖怪、なるべく万全の状態で挑みたい。 昌浩が養生している間、一度だけ彰子が見舞いに来た。 自分がさらわれたせいで、昌浩が重傷を負ったと彰子は酷く気に病んでいた。 昌浩は彰子は励まそうと、必死に明るい話題を振った。その中で、彰子が蛍を見たことがないと言った。蛍の時期はとうに過ぎていたので、ならば来年一緒に蛍を見に行こうと昌浩は約束した。 その間、ヴィータが歯ぎしりせんばかりに不機嫌だったのに、昌浩は最後まで気がつかなかった。 数日もすると、昌浩は起き上がれるようになった。激しい運動は厳禁だが、それ以外の行動は大体許されている。シャマルの治癒術は本当に素晴らしい。出来るなら教えてもらいたいくらいだった。 昌浩は書物と睨めっこをしながら、円盤状の物体をからからと回していた。 「何してんだ?」 ヴィータが昌浩の手元を覗き込む。 昌浩が目が覚めましてからというもの、ヴィータは食事を運んでくれたり、何かと世話を焼いてくれる。あまりに優しいので、昌浩の方が戸惑っていた。 「これは占いの道具なんだ。窮奇の居場所が占えればと思ったんだけど」 結果は芳しくない。それにこれくらいのことは晴明がとっくにやっているだろう。晴明すらわからないことを、昌浩がわかるわけない。 「占いねぇ」 ヴィータは占いという奴がどうも信じられない。未来が本当に予知できるなら、未来はすでに決まっていることになる。努力するもしないもすべて決まっている。ならば、心は何のためにあるのか。 「あ、疑ってるな。よし、ならヴィータの未来を占ってやる」 昌浩が道具に手を伸ばす。 「おもしれぇ。やってみろ」 円盤がからからと回り、結果を示す。昌浩はじっとその結果を読み取ろうとする。 無言のまま、時間だけが過ぎていく。 「おい」 昌浩は真剣な顔のまま答えない。そのあまりに真剣な様子にヴィータが不安になる。 「まさか、よくない結果が……」 「ごめん。わからない」 「うーがー!」 ヴィータが吠えた。 「さんざん待たせて、なんだよ、それは!」 「ご、ごめん、だって見たことない形だったから」 昌浩は本で頭部をかばう。 「もう少し時間をちょうだい。きっと占ってみせるから」 「まったく。それでも晴明の孫かよ」 「あー! ヴィータまで孫って言ったー!」 「いやー。この台詞一度言ってみたかったんだよ」 「孫言うな!」 憤慨する昌浩を、ヴィータはきししと笑う。ふとその顔が疑問に染まる。 「お前、今何て言った?」 「孫言うな」 「その前だよ」 「えーと、ヴィータまで孫って言った、だったかな?」 「お前、名前……」 「ああ、ヴィータだよね。やっと言えるようになったよ」 昌浩はにっこりと笑う。 「いやぁ、苦労したよ。毎晩ヴィータ、ヴィータ、って繰り返し練習して」 ちなみにザフィーラの名前はまだ練習中だ。 「ヴィータ。これで合ってるんだよね?」 ヴィータの拳が昌浩の頭を叩く。 「な、何すんだよ、ヴィータ」 昌浩が頭を押さえてうずくまる。 ヴィータは拳を握りしめたまま、全身を震わせていた。 「ヴィータ?」 「気安く呼ぶんじゃねぇ!」 ヴィータが再び拳を振り下ろす。その顔が真っ赤に染まっていた。 「どうしたの、ヴィータ?」 「だから、繰り返すな~!」 ドタバタと暴れる音が屋敷中に響いていた。 「いやー。春だねぇ」 「夏だがな」 「連日快晴だねぇ」 「それはその通りだ」 もっくんとザフィーラは、昌浩の部屋の屋根の上で並んで日向ぼっこをしていた。 「昌浩についていなくていいのか?」 「そんな野暮はせんよ」 もっくんが後ろ脚でわしわしと首をかく。本人に自覚があるかどうかは知らないが、ヴィータの気持ちは傍から見れば明らかだ。 「すまんな。気を使わせて」 「いや、昌浩にとってもいいことだ」 「ほう。もっくんはあの彰子とかいう娘を応援しているのかと思ったが?」 「おっ。堅物かと思いきや、話せるねぇ。ただし、もっくん言うな。俺のことは騰蛇と呼べ」 「心得た」 「それで彰子に関してだが、結論から言って、あの二人は絶対に結ばれない」 もっくんは一転、厳しい表情になる。 「どういうことだ?」 「身分が違い過ぎる。かたやこの国一番の貴族の娘。かたやどうにか貴族の端に引っかかっている昌浩。あり得ないんだよ、この二人が結ばれるなんて」 「身分とはそんなに大事なのか?」 しょせん同じ人間ではないか。気にするほどの差があるとザフィーラには思えない。 「そうだな。お前たちの主は女か?」 ザフィーラの緊張が一気に高まる。 失言だったと、もっくんは詫びた。 「お前たちの主を詮索しようとしたわけじゃない。例えば、お前たちの主が女だったとしよう。もしお前が主に恋愛感情を抱いたら、どうなる?」 「なるほどな」 ザフィーラは遠い目になった。彼のはやてを敬愛する気持ちに、一片の曇りもない。しかし、それは決して恋愛感情ではない。 ザフィーラはあくまで守護獣、人間ではない。そんな自分と主が結ばれることはない。それなのに、主に恋心を抱けば、それはまさに地獄だろう。 「つまり、この国で身分とはそれほどの差ということだ」 しかも、彰子と天皇の結婚の準備が進められているという。晴明の占いでも、それはすでに決まった運命ということだった。もし運命を変えられる力があればと、もっくんは己の無力をこれほど呪ったことはない。 失恋から立ち直る一番早い方法は新しい恋を始めることだ。昌浩を好きなヴィータがそばにいてくれれば、これほどありがたいことはない。 「しかし、我らは……」 「わかっている。窮奇を倒したら帰るんだろう。それでもいいんだ。立ち直るきっかけになれば。それに二度と来れないわけじゃあるまい?」 「それもそうだな。その時は主も連れてこよう。きっと喜ばれる」 そう、きっと大丈夫だとザフィーラは思った。いつか主を含めた全員でこの地を訪れることができる。その時は、闇の書も完成し、主の命も助かっている。時空監理局から追われることもなくなっている。 我ながら虫のいい考えだと知りながら、そんな未来が来るのを願わずにいられない。 ザフィーラともっくんは雲一つない空を見上げた。 その頃、庭ではシグナムが見知らぬ女と対峙していた。女は黒い艶やかな髪を肩のあたりで切りそろえ、この時代では珍しい丈の短い服を着ている。十二神将の一人だろう。 六合と稽古の約束をしていたのだが、六合の姿はない。 「私の名は勾陣(こうちん)。六合は晴明の供で行ってしまってな。代わりに私が来たというわけだ」 「そうか。では、今日の相手は勾陣殿が?」 「ああ。せっかくだから、少し趣向をこらさないか?」 勾陣は三つ叉に別れた短剣を両手に持ち、宙を切り裂いた。空中に裂け目が走り、シグナムの体がその中に吸い込まれる。 シグナムが目を開けると、そこは砂と岩ばかりの荒涼とした大地が広がっていた。 「次元転移?」 「ここは我ら十二神将が住む異界だ。稽古もいいが、ここなら思う存分暴れられるぞ」 勾陣が口端を釣り上げる。氷のように鋭い酷薄な笑みだった。 シグナムも勾陣と同じ笑みを浮かべる。 「なるほど。より実戦的にというわけか」 「それと最初に言っておく。私は六合より強いぞ」 「面白い。では、いざ尋常に勝負!」 シグナムのレヴァンティンが炎をまとい、勾陣の魔力が炸裂する。 普段は静かな異界に、その日はいつまでも爆音が轟いていた。 夕刻、帰宅した晴明は昌浩の部屋に向かった。天皇と彰子の結婚が正式に決まったということだった。後は日取りを決めるのみ。今すぐということはないが、もはや二人の結婚は避けられない。 薄々感づいてはいたのだろう。昌浩は「そうですか」とだけ呟いた。 それからさらに数日が過ぎた。 昌浩は表面上は明るく振舞っていたが、時折沈んだ表情や物思いにふけることが多くなった。そして、以前にもまして窮奇を倒すべく猛勉強を始めた。まるで勉強に打ち込むことで、何かを忘れようとしているかのように。 早朝、昌浩は目を覚ますと素早く着替える。怪我の為、長期休みになってしまった。同僚にも迷惑をかけたし、今日は出仕するつもりだった。晴明から頼まれた仕事もある。 「よし。完全復活」 「ほう。よかったじゃないか」 今日はよほど早起きしたのか、ヴィータが戸口に立っていた。 「うん。これもヴィータたちのおかげだよ。本当にありがとう」 シャマルの魔法とヴィータの看護がなければ、まだろくに動けなかったに違いない。 「いやー。そう言ってもらえると、こっちもありがてぇよ」 ヴィータはのしのしと部屋に入ってくる。ヴィータは指で昌浩に座るように示す。 「大事な話?」 昌浩はまだ気づいていない。ヴィータの目がまったく笑っていないことに。 ヴィータは深く息を吸い込み、 「この大馬鹿がー!!」 大音量が安倍邸を揺らした。昌浩は耳を押さえて顔を引きつらせる。 ヴィータは指を鳴らしながら、昌浩に詰め寄る。 「お前が治る日を、どれだけ待ったことか。怪我人を怒鳴りつけるのは趣味じゃないからな。これで思いっきりやれる」 晴明から託された昌浩を叱る役をヴィータは忘れていない。それどころか世話を焼くことで、怒りが鎮火しないようにしていたのだ。ヴィータの怒りは最高潮に達していた。 「あの……ヴィータさん?」 「やかましい! そこに正座」 「はい!」 「大体お前は自分が怪我をしてどうするんだ。助けるにしたって、もっと上手くやれ!」 「いや、でも」 「言い訳するな!」 「ごめんなさい!」 ヴィータが機関銃のように怒鳴り続ける。昌浩はそれを黙って聞くしかなかった。 それから一刻の後、もっくんが昌浩の部屋を訪れと、晴れ晴れとした顔でヴィータが出てきた。 「いやー。ようやくすっとしたー」 もっくんが部屋の中を覗き込むと、そこには真っ白に燃え尽きた昌浩がいた。 その夜、昌浩が仕事を終えて帰ると、シグナムたちは晴明の部屋に集められていた。 「昌浩や。彰子様には会えたのか?」 「はい」 昌浩は寂しげに笑う。晴明の取り計らいで、昼頃、昌浩は彰子と対面していた。そこで昌浩は彰子に絶対に守ると誓った。誰の妻になってもいい。生涯をかけて彼女を守る。それが昌浩の誓いだった。 「それで窮奇の居場所は?」 「はい。貴船山だと思います」 都の北に位置する貴船山。そこには雨を司る龍神が祭られている。 窮奇が北に逃げたのと、ヴィータたちが来てからというもの、一度も雨が降っていない。それが根拠だった。おそらく窮奇によって封印されているのだろう。 「ならば、一刻の猶予もないな」 シグナムにとって、ここは楽園だった。六合や勾陣、他の神将たちとも、実は紅蓮とも、幾度も手合わせした。こんなに心躍る相手がいる世界をシグナムは知らない。 「そうだな」 ヴィータとて離れがたい気持ちはある。 しかし、八神はやてを救う為、二人は未練を振り切って立ち上がる。 「はやてちゃんの為にも、お願いね、みんな」 シャマルが転送の準備を開始する。それをザフィーラが咳払いで遮る。 シグナムとヴィータがじと目でシャマルを見つめていた。 「あっ」 うっかり、はやての名前を口に出してしまっていた。だらだらと脂汗がシャマルの顔を滴る。ちなみに、ヴィータは以前自分がはやての名前を出しことを覚えていない。 「わしは何も聞いておりませんぞ。なあ、昌浩や」 「えっ? ……ああ、はい。俺も何も聞いてないよ」 「二人とも、気を使わせてごめんね」 シャマルが涙目で感謝の意を告げる。 やがて緑の魔法陣が足元に出現する。 昌浩、もっくん、シグナム、ヴィータ、ザフィーラが、最終決戦の場へと飛んで行った。 その頃、アースラ艦内では、クロノたちが出撃の準備を進めていた。 「それでヴォルケンリッターの動きは?」 「それが変なの」 クロノの質問にエイミィが首を傾げた。 「あの世界、時間の流れが全然違うみたい」 アースラでは、クロノたちが青龍たちと戦ってから、一晩しか経っていない。それなのに、向こうでは半月以上の時間が経過しているようだった。 どうもその間、ヴォルケンリッターたちは原住生物と戦い続けているらしい。 「闇の書もかなり完成に近づいたということか。みんな、準備はいいか?」 クロノが集まったメンバーを見回す。 ユーノにアルフ、青い顔をしたなのはとフェイト。 「な、なのは、どうしたの?」 ユーノがなのはの顔を心配そうに覗き込む。 「ちょっとイメージトレーニングを」 なのはは車酔いをしたかのようにふらふらしていた。 青龍に備えて、父と兄に怒られた時のことを一晩中ずっと思い出していたのだ。 「フェイト、しっかりおしよ」 「……アルフ、大丈夫よ」 フェイトの使い魔のアルフが、フェイトの体を揺さぶる。それにフェイトは消え入りそうな声で答えた。 「エイミィ」 クロノが無言で逃げようとしていたエイミィの腕をむんずとつかんだ。 「フェイトに一体何をした?」 「ええと、頼まれてあの戦いの映像をちょっと……」 フェイトはフェイトで、あの戦いの映像を一晩見続けたのだ。しかもエイミィの好意で、男連中の顔を大写しにした編集版を。 苦手意識を克服しようと無理をすれば、かえって悪化する場合がある。なのはたちの負けず嫌いが今回は完全に裏目に出た。 クロノはユーノとアルフをつれて、部屋の隅に行った。 「いいか。男連中の相手は僕らでやる。二人には絶対に近づけるな。最悪、一生のトラウマになる恐れがある」 ユーノとアルフが決意を込めた表情で頷く。 そして、五人は転移を始めた。 目次へ 次へ
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第2話「音速は伊達じゃない!!」 ~あらすじ~ ソニックは何と自分が起こしたカオスコントロールを制御できずに、 首都クラナガンに飛んでいってしまった! そこから新たな生活が始まろうとしていたのだが… 「あなたの名前は?」 「オレ?オレの名前はソニック。ソニック・ザ・ヘッジホッグさ!!」 明朗快活にそう答える青いハリネズミ。 フェイトは、本当にさっきのエネルギー反応の根源がこのハリネズミか気になっていた。 「あの…ソニック…さん?一体どうしてここに?」 「ん?なんか、カオスコントロールを制御しきれなくって…この世界に飛んじまったってわけだ。」 「カオスコントロール?」 フェイトにはその単語の意味がさほど理解できなかったが、時空間魔法の一種だとは容易に推測できた。 (となると、次元漂流『者』か…いや、次元漂流鼠、というべきかな?) この世界では、次元漂流者などはフェイト達の属する機動六課が責任を持って元の世界に返す、という義務があった。 「あの、ソニックさん。とりあえず、機動六課に―――――――――――――――っていない!?」 ソニックは、フェイトが何か考え事をしている内にどこかへ走り去ってしまった。 (まだそう時間はたっていないからそう遠くへ入ってないはず…) そう推測し、周囲に青いハリネズミがどこに行ったか、聞き込みをするフェイト。 だが、【そう遠くへ行っていない】という考え方では、ソニックを連れ帰ることができないということを、フェイトは知らなかった。 ソニックは今、どこかの森の中を走っていた。 ここがどこかなんてどうでもいい。ただ、退屈したくない。 そんなさっぱりとした、しかしどこか抽象的な概念のもとで生きてきた。 「………寝るか。」 周りを見渡して、一番涼しそうな木の下で寝始める。 穏やかな風が気持ちよかった。 目を閉じていると心地よい睡魔に襲われる。 だが、その睡魔はすぐにどこかへ吹き飛んでしまった。 「見つけた。」 その声の主が誰かと思って見上げたら、そこには明らかに怒っているフェイトが立っていた。 「突然どこかに行ったりして!何を考えてるんですか!」 「だって、さっきの話は退屈だったんだぜ~?俺は、自由に生きたいんだ。」 陽気に話してくるソニック。 そんなソニックに少し苛立ちを覚えるフェイトであった。 「とにかく!一緒に来てもらいます。手続きとかいろいろやらなきゃいけないのに…」 その言葉を聞いてソニックが嫌そうな顔をする。 退屈なのはいやだ、といったそばから退屈そうなことが回ってくるのはごめんだ。 「……オーケイ、じゃあ、こうしよう。これからレースをしようじゃないか。オレが勝ったら、放っておいてくれ。 オレが負けたら、連れていくなり何なり好きにすりゃいい。これでどうだ?」 目を丸くして何を言っているのか分からなさそうにしているフェイト。 だが、その言葉の意味を理解すると、真剣な表情で頷いた。 (大丈夫。スピードだったら、私に分がある。) 勝ちを確信したフェイトだが、ソニックの本当の速さを知らない。 多少警戒して、念のためにバリアジャケットに着替えるのであった。 レース場は高速道路。ソニックが逃げるのでフェイトはそれを捕まえればいい、という鬼ごっこ形式のものだった。 「3…2…1…GO!!」 ソニックが高らかにスタートを宣言した。 フェイトがスタートダッシュしてソニックを捕まえようとした矢先だった。 「っ!?」 フェイトの手はむなしく宙を舞う。ソニックを逃してしまった。 そして気がつけば、ソニックと100メートルほど離れている。 なぜ、と疑問が浮かんだが、考えている暇はなかった。 フェイトはソニックを追い、全速力で飛んだ。 「くっ…」 正直、ここまで速いとは思っていなかったフェイト。 ソニックはこちらを振り返り、にやりと笑ってスピードを上げる。 (仕方ない。攻撃魔法を多少使うか…) そういってバルディッシュを一振りし、 「プラズマランサー!!」 数本の光の矢がソニックを追う。 だがそれらすべて、ソニックに当たることはなかった。 「こんな攻撃じゃ、欠伸が出るぜ!!」 といいながら、全て避けきる。 ソニックはまだ余裕の表情だが、このレース場は大きな欠陥があった。 それは、『ここの高速道路はまだ工事中』ということだった。 ソニックの目の前に断崖絶壁が広がる。 (勝った!) そう確信したフェイトは、この世のものとは思えない動きを目にする。 「!?」 ソニックはその崖から飛び降りた。ここまでは良かった。 しかしそのおよそ0.5秒後、ソニックはハイスピードで上昇し、断崖絶壁の向こう側にたどり着こうとしていた。 「どうして………?」 物理的法則を捻じ曲げたとしか思えない動き。 しかし、フェイトが驚いていることに驚いた。 (どうして………って、ライトダッシュしただけじゃないか。) ソニックはただ単に、この高速道路の端から端まで続いていたリングにライトダッシュしただけなのだ。 (もしかして…リングが見えないのか?) そんな余計なことを思っていた時だった。 「ふぶっ!」 ソニックの顔面に何かがぶつかる。 それが何か、確認してみると、ピンクの網。 しかも、その網はどうやらソニックをがっちりと捕獲していた。 「フェイトちゃん、おつかれさま。」 その声にフェイトが振り向く。 そこには、茶髪のツインテールで綺麗な人が立っていた。 「なのは!」 「もう、帰りが遅いから心配したんだよ~。」 「ご、ごめん……」 「でも、無事だったから、いいよ。」 などと、ソニックそっちのけで話が進んでいる。 「と、こっち忘れてたね。」 「なのは、それ、どうするの?」 「とりあえず、はやてちゃんに相談しなきゃ。」 そういって、なのは―――と呼ばれたばれた女性―――はソニックを捕まえた網ごと空へ飛ぶ。 それに合わせ、フェイトも飛ぶ。 「NO~~~~~~~~!!!!!」 こうして、ソニック対フェイトのスピード勝負は実質ソニックの勝ちだが、結果的にフェイトの勝ちで幕を閉じた。 「なんや、ハリネズミっちゅーのは聞いとったけど、ネズミにしてはずいぶんでかいなぁ。」 かれこれソニックが捕獲(?)されて20分。ソニックははやてのもとに連れてこられていた。 もちろん、なのはお手製の檻の中で。 「しかし、本当に奇妙な構図やな~。」 ピンクの檻、その中にいる青いハリネズミ。しかもしゃべる。 はやて自身、アルフやユーノとは知り合いなので見慣れていたといえば見慣れていたが、やはり、シュールだった。 「それで、本当に君は一人でその『かおすこんとろーる』を使ってここに来たの?」 「何度も言ってるだろ~。カオスコントロールがうまく発動しなくって、無理やり発動したら、ここに飛んできたんだ。」 半ばふてくされて言うソニック。 こんな質問をゆうに、20回ほど聞かれれば、ふてくされるのも当然だろう。 「そうすると…彼はロストロギア並み、いや、それ以上の危険性を持っているっちゅーことか…」 「となれば厳重な保護観察が必要ね…それも、そのカオスコントロールを無作為でも発動させられれば、 ソニックを殺してでもそれを阻止しなければいけない…」 自分を殺す、という言葉を聞いてソニックはようやく真剣に聞く態度になった。 「それなら心配ないぜ。オレのスーパー化は疲れるから、そんなに使えないしな。それに、ここにはカオスエメラルドもない。 オレは今この場じゃ、ただの歯牙無いハリネズミだぜ。」 その言葉を聞き、なのはが当然の疑問を投げかける。 「カオスエメラルドって何?」 「言ってみれば『奇跡の石』だな。7つ集めれば強大な力を手に入れることができる。それ一つで ……そうだな~。少なくともここら一体の電力くらいは補えるんじゃないか?」 何気なく口にした言葉がその場の空気を凍らせる。 「そ、その石には数字が彫ってなかった!?ローマ数字が!!」 「?い、いや…彫ってないぜ。」 突然フェイトが聞いてきたので何事かと思いきや、そんなことか、とソニックは少し脱力する。 「よし、わかった。ソニックはしばらくここで預かることにする。その間はなのはちゃん、フェイトちゃん、 ソニックのこと頼むで。ソニック、あんたもさっき言った通り、カオスコントロールを発動させれば、 あたしたちはアンタを殺してでも止めるからな。」 はいはい、といった様子で肩をすくめるソニック。 ふと、自分を縛っていた網がどこかえと消えた。 「この管理局から出ない限りは、一応自由ってことで。」 なのはにそう言われたが、制限つきの自由では物足りない、といった表情だった。 「OK。わかったよ。」 その条件に妥協したソニックは、おもむろに立ち上がり外に出る。 「なのはちゃん、フェイトちゃん、頼んだで。」 その言葉にうなずいた二人は、ソニックの後をついていく。 そんなこんなで、青いハリネズミの新しい生活が幕を開けるのだった。