約 2,188,128 件
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/155.html
書き手リスト 投下SS数 名前(敬称略) 代表的な登場キャラ 備考 44 ◆Vj6e1anjAc セフィロス、スバル・ナカジマ、ルルーシュ・ランペルージ、ディエチ 元◆9L.gxDzakI氏、元本スレ書き手、反目のスバル氏 38 ◆7pf62HiyTE スバル・ナカジマ、八神はやて(StS)、泉こなた、柊かがみ 38 ◆HlLdWe.oBM 高町なのは(StS)、柊かがみ、キース・レッド、ブレンヒルト・シルト 元◆RsQVcxRr96氏 21 ◆gFOqjEuBs6 相川始、柊かがみ、金居、キング、天道総司、ヒビノ・ミライ 本スレ書き手、マスカレード氏 19 ◆Qpd0JbP8YI セフィロス、八神はやて(A s)、ユーノ・スクライア、L 10 ◆jiPkKgmerY ミリオンズ・ナイブズ、アレクサンド・アンデルセン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、殺生丸 本スレ書き手、リリカルTRIGUN氏 6 ◆WslPJpzlnU 新庄・運切、エネル、ヴィータ、アーカード 本スレ書き手、なのは×終わクロ氏 5 ◆WwbWwZAI1c 柊つかさ、金居 元◆wsuikZ7zFc氏 5 ◆LuuKRM2PEg 天道総司、アンジール・ヒューレー、キング 本スレ書き手、地獄の四兄弟氏 3 ◆UOleKa/vQo 本スレ書き手、リリカル遊戯王GX氏 3 ◆vXe1ViVgVI 2 ◆WMc1TGFkQk 2 ◆yZGDumU3WM 元本スレ書き手、ゲッターロボ昴氏 2 ◆Qz0BXaGMDg 1 ◆ga/ayzh9y. 本スレ書き手、ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは氏 1 ◆C1.qFoQXNw 1 ◆19OIuwPQTE 高町なのは(StS)、ヴィヴィオ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1776.html
1話 時を越えろ 空を駆けろ 第97管理外世界 地球 ゴルゴム神殿 今、仮面ライダーBLACK 南光太郎とゴルゴムとの決着が付こうとしていた。 「最後だ! 創世王!!」 BLACKが、サタンサーベルを創世王に向かって投合する。 投げられた剣は創世王のバリアを貫き創世王を串刺しにした。 「フグァッ・・・・、見事だブラックサンだがこれで終わったわけではない・・・・・」 「貴様をシャドームーンとともに異世界へ飛ばす!シャドームーンを倒し創世王になれば元の世界に戻ることも容易い・・・・」 「そうはさせんぞ! 創世王!!」 BLACKは阻止するため、ライダーキックを放つ。 「創世王を決める戦いは終わらん! さらばだ! ブラックサン!!」 BLACKの抵抗も虚しく創世王による移転は発動する。 「――ッ・・・創世王ォォォォォォオオ!!」 創世王が消滅するとともにゴルゴム神殿は崩壊する・・・・・ そして仮面ライダーBLACK、南光太郎とシャドームーン、秋月信彦はこの世界から消えた・・・・ ■■■ 「これは・・・ゴルゴムの仕業か?」 光太郎は空港の屋上で目覚めた。 だが、その空港は普通ではなく、火に包まれ地獄を連想されるものだった。 「おのれゴルゴム、罪の無い人々の幸せを引き裂くとは・・・・絶対に許さん!!」 t突如、光太郎の耳に助けを求める声が響く。 「――聞こえる・・・・助けを求める声が・・・・今もどこかで助けを求めている!」 少しでも早く、苦しんでいる人々を助けるために・・・・ 光太郎は精神を集中させ両拳を引き寄せ、強く握り締める。 「変―― 腰に拳をあて、左手を逆方向に伸ばし半円を描くように回転 ―――身! 掛け声と同時に両手を一気に右側へ振り切る! 瞬間、光とともにエネルギーが吹き荒れた! ―――その時、不思議なことが起こった――― キングストーンは瀕死の創世王の時空移転により傷つき キングストーンは光太郎の体から分離し、変身が不完全になってしまったのだ。 そして、その体はキングストーンの魔力によって構成される。 そして光太郎は,仮面ライダーBLACKに変身する、・・・はずだった 「この姿は・・・・BLACKの姿ではない・・・・」 その姿に仮面は無く、それはBLACKの格好を魔術師にしたようなものだった。 共通点といえばベルトと胸の世紀王のエンブレムぐらいだ。 姿は違うものの感覚は鋭くなり、体は軽い、熱も遮断したようでただの服ではないようだ。 「間に合ってくれ! トゥア!!」 どんな姿になろうが助けることができれば関係ない・・・・ 光太郎は救助に向かうため空港の屋根を拳で突き破り火の海に飛び込んでいった。 「だめだ!だめだ!こっちはだめだ!」 「この先にはまだ少女が・・・クソッ!」 数人の男たちが己の無力さを嘆く時、天井が崩れ瓦礫が崩れ轟音が響く。 黒いバリアジャケットを纏う青年、南光太郎だ。 その本人はバリアジャケットのことなど、知るよしもない。 「大丈夫ですか!?」 「管理局の魔術師か!こっちは大丈夫だ!それよりもこの先にまだ少女が取り残されているんだ!」 聞きなれない単語に光太郎は考える。 (管理局?魔術師?やはり僕は異世界に来てしまったのか?それにこの姿はいったい・・・・) 「頼むぞ・・・!」 「わかりました!」 光太郎は男の願いを聞き、火に突っ込んでいく。 「すごい・・・・火に飛び込んで・・・」 「・・・大丈夫そうだな、彼に任せてみよう。時期に彼女も来る」 女神像の傍で少女、スバル・ナカジマは泣いていた。 「こわいよう・・・・家に帰りたいよう」 火に取り残された少女は、泣いて、力なく助けを求めていた。 そんな少女に残酷にも、女神像の台座が砕け始めスバルに向けて崩れてきた。 「あ・・・・!」 時すでに遅し・・・・このままではスバルは女神像に押しつぶされてしまうだろう。 だが・・・! 「ライダーチョップ!!」 直径100mmの鉄棒を切断をも切断するライダーチョップが女神像を一刀両断していた。 切断された女神像は見事にスバルを押しつぶさず、その両脇へ倒れる。 「もう大丈夫だ・・・よかったな・・・ッ!」 光太郎は嬉しそうな表情でやさしく少女を両手で抱き上げた。 その時だった管理局魔術師、高町なのはが遅れて到着したのは・・・ 見たこともないBJを纏う光太郎になのはは声をかける。 「あなたは・・・・?」 突然の呼び声に光太郎は瞬時に振り向き叫ぶ。 「空を飛んでいる!貴様ゴルゴムかッ!?」 優しかった光太郎の表情は一瞬にして鬼の形相に変わる。 そのあまりの変化にスバルは小さく咽せてしまった。 南光太郎・・・人生最大の勘違いである。 「ゴ、ゴルゴ!?・・・ち、違います!私は時空管理局魔術師、高町なのはです!」 「管理局・・・!では貴方が!」 光太郎は先ほどの男たちから管理局や魔道士の言葉を聞き、なのはを味方と判断した。 「この子を頼みます!僕は次の救助へ向かいます!」 光太郎は勝手に一人合点したようで、なのはにスバルを預け、すさまじい跳躍で視界から消えていった。 あまりの速さになのは唖然とするばかりだった。 スバルの救助を終えたなのはは、さっきの青年を探しへいく。 そう思ったよりも時間はかからず青年は救急車の瓦礫に座り込んでいた。 沈んだ表情をしていて考え事をしているようだった。 なのはは青年へ近づき声をかける。 「救助お疲れ様」 青年ははっとした表情でこちらを向き、愛想よく微笑む。 「まだ名前聞いてなかったね、あなたは?」 「僕は南光太郎といいます。なのはさんでしたね?あの・・・管理局とは?」 「あなた・・・時空遭難者みたいだね」 「時空遭難者・・・そうだと思います」 「なら、管理局に来てくれないかな?もちろん悪いようにはしないし、いろいろ聞きたいこともあるから・・・・」 「わかりました・・・もう僕には行く場所はありませんから」 光太郎は考えていた。 (創世王が戦わせるために、この世界に送ったなら・・・信彦は・・・・信彦は生きている! 信彦、僕は諦めない・・・僕は運命を変えて見せる!) 異世界に来て戦友も、家族も、故郷までも失った光太郎にとって信彦は唯一の希望だった。 信彦を救う、そう決意すると光太郎はなのはについて行くのであった。 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3257.html
戦いは、すでに始まっていた。 アンデッドとこの世界の住人の初戦闘。だが、やはりアンデッドに勝てはしないだろう。 アンデッドは死なない。封印能力を持つジョーカーかライダー、または統制者の力が無ければアンデッドは決して止められないのだ。 案の定、あの守護獣はものの見事に打ち倒されていた。 そしてあの獣人を受け止める二人の女性ににじりよるアンデッド。 そこに、ようやく奴は現れた。 「遅いぞ、剣崎ぃ!」 思わず歓喜の叫びが漏れる。そうだ、今こそ奴の力を解放するときだ。俺が倒すべき力を。仮面の力を! 俺は煙幕を兼ねたステルス結界を展開しながら、奴の元に接近していった。 リリカル×ライダー 第十話『ライダー』 「俺は、『仮面ライダー』だ!」 カズマから溢れ出す力。封印されていた力が解放され、細胞の一片までも余すところ無く活性化される。 銀色に光るアーマーの各部に穿たれたスペードの刻印、ハンドガード部に展開式のカードホルダーが設けられたことで本来の状態に戻った醒剣ブレイラウザー。 ライダーシステム二号機、ブレイド。 これこそが、カズマの刃だった。 「そうだ、それだ! その力こそ僕が打倒したかったものだ!」 イーグルアンデッドは空から地上の煙幕越しにカズマを見つめる。その鋭い瞳は、最高の獲物を見つけたことによって輝いていた。 カズマは空を見上げる。未だ煙幕は濃く、視界には白い煙しか映らない。だが彼の視線は正確にイーグルアンデッドに向けられていた。 そんなときだった。 『久しぶりだな、剣崎君』 「えっ!?」 突然チェンジデバイスから声が発生する。 その声が、台詞が、カズマの様々な記憶を揺さぶる。 (剣崎……そうだ、俺の名字だ。そうだ、俺はこんなもので仮面ライダーに変身したりはしなかった。何故? それにこの男は……) 『剣崎君、今は目の前のことに集中したまえ』 その台詞にはっとする。そうだ、今はこの上級アンデッドの封印が先決だ。 『手短に説明するが、そのチェンジデバイスには魔導師モードとライダーモードがある。 今はライダーモードを起動しているが、ライダーモードは全機能を解放するモードだからその状態でも魔法は使用可能だ。すぐに飛行魔法を使用したまえ』 「待て、アンタは一体――」 『君の恩人であり、君を苦しめる者。忘れているだけだよ、君は。さぁ、急げ。剣崎君』 それきりチェンジデバイスは何の反応もしなくなった。 カズマは嘆息をつきながら両脚に力を込める。そう、今はそんな瑣末なことを気にしてはいられない。戻った力を使って、目の前の脅威を振り払わなければならない。 「フライブースター!」 『Fly booster』 力強く地面を蹴り上げ、カズマは飛翔する。 イーグルアンデッドの待つ、蒼空へと。 ・・・ ついに憎きライダーが本来の力を取り戻した。 欠けていた刻印とカードも戻り、かつて戦ったときと同じ姿になった。ベルトだけは違うが、それはどうでもいいことだ。 そう、これでかつての雪辱を晴らすことができる……! 「ライダーァァァッ!」 「うあぁぁぁあぁっ!」 俺は鉤爪を振るい、奴は醒剣を奮う。 激しい摩擦音と火花。 パワーは同じだが、技のキレは増している。やはり記憶も連動して戻っているのだろう。前回の野獣そのものの戦い方とは別人のようだ。 互いに力を入れて相手を吹き飛ばし合いながら一旦間合いを取る。 そして僕は自らの鉤爪を遠心力がかかるように振り回しながら奴に叩き付ける! 「ぐっ!?」 だが奴はそれを剣で受け流し、あまつさえ反撃としてこちらの腹を蹴飛ばした。 「うあぁぁぁっ!」 更なる連撃。 こちらが怯んだ隙を突くように斬撃を放ってくる。それは滝のような激しさと流麗さ。 「調子に乗るなっ!」 僕はそれを鉤爪で受け止めつつお返しに奴のヘルメットを左手で殴り飛ばす。 勝負は全くつかない。 僕は戦術を変えるために翼を羽ばたかせ、高度を一気に上げた。 「食らえ!」 奴の上空から羽根を展開し、奴に撃ち込む。数十の魔弾はそれぞれが独自の軌道を描きつつ、ライダーを射抜かんと迫る。 『――SLASH』 「でやあっ!」 同時に奴は剣の側面にあるカードリーダーにカードをスラッシュさせ、アンデッドの力を引き出す。 互いの渾身の一撃がぶつかり合い――その余波が僕を襲撃する。 「何っ!?」 両翼を畳んで盾としながら何とか防ぐ。 信じられなかった。 いくら奴がアンデッドの力を操る能力を持っているとしても、上級アンデッドが放つ精魂の一撃を容易く破れるはずがない。 (何故、だ……?) 奴を見る。 その無機質な仮面に付いた複眼からは、今までとは違う澄んだ力が感じられる。そう、目の輝きが以前より増している。 だがそんなことはどうでもいい。僕は、勝たねばならないんだ! 「ライダァァァアァァァッ!」 奴に向かって突撃する。己の信じる得物に全てを託し、身体中の細胞を躍動させ、自らの全てを懸けて。 『――KICK』 奴はカードをスラッシュさせた後、足元に魔法陣を展開させ、その上で独特の構えを取りつつ剣を魔法陣に突き刺す。 「僕は、カリスと決着をつけるんだ!」 「俺は皆を、全ての人々を守るんだ!」 互いが誇る最強の攻撃。 僕の突きと奴の蹴り。 原始的で単純で、それ故に最強足り得る攻撃が衝突する――! 「……が、はっ」 結果、アンデッドの力を纏ったライダーの蹴りは僕の腹に直撃し、僕の突きは奴の剣によって受け止められた。 「がほっ、ごっ」 身体から力が抜けていく。敗者の証明として、アンデッドバックルが開かれる。 たかが低級アンデッドの力を纏っただけの、人間の一撃。しかしそれはこの僕を確実に貫いた。 (これが、奴の――人間の、力……) ――人間は弱い。けれど強い。 過去が一瞬フラッシュバックする。 カリスと決闘の約束を交わした後、残ったアンデッドの掃討をしている時の記憶。 ――僕らには、守るべき者がいるから。 そう、自分を倒した存在。カリスではないただの下級アンデッド。 ヒューマンアンデッドの記憶。 (そう、か。奴には……) それを理解した数瞬後、僕は一枚の紙切れに吸収されていく自分を感じた。 ・・・ 「ようやく、ここまで来たな。剣崎君」 広大な広間に広がる機械群。空中に展開される無数のモニター群。たった一人の人間には広すぎるはずの空間は、それらによって狭くすら感じる場所となっていた。 その一枚には、緑の光になりながら一枚のカードに封印されていく一体の上級アンデッドが映っていた。 それを封印するのはブルーのインナースーツにスペードの刻印があしらわれた銀色の装甲に身を包む仮面の戦士。 「いよいよ奴も、そして橘君も動き始めたようだし、これから忙しくなるよ」 一人の男がデスクに腰を下ろしてコンピューターを操作する。壮年の皺が入った頬を引き締め、紫の短髪をかき揚げながら彼は機械を操作し続ける。 「頼むよ、剣崎君。あの偽物を追い詰めてくれたまえ。私があの男を殺すために。そう、過去に清算を付けるために」 モニターに四人の女性に囲まれた白衣を着た長髪の男が映る。その画面を注視しながら、男はキーボードを力強く叩いた。 そこに映し出されるのは膨大な量の文章。正確には一つの物語。 だがそれは彼が書いたものではない。周辺のモニターに映る数値に合わせて更新されている、いわば計画書。 「これは、私のケジメなのだからな」 男は静かに、画面に映る白衣の男を睨み付けた。 ・・・ 結局、煙幕もとい妨害結界のせいで戦いの一部始終を見ることは叶わなかった。 後方支援部隊のロングアーチも妨害によって今回の戦闘を記録することができなかったと報告している。指揮官自ら戦場に出向いたのもミスだったかもしれない。 「しかしどうやってあの怪物を倒したんやろう……」 最後に見た緑の閃光を発しながら消えていく怪人の姿が思い出される。あの現象が何なのかも分かっていない。 すでに染み付きつつあるため息を漏らす。まだ19歳なのにどないしよー、となのはちゃんやフェイトちゃんに相談する始末だ。せめて皺などは入らないようにしなければ。 閑話休題。 「フェイトちゃんとティアナが帰ってきてくれて良かったわ」 ちょうど戦闘が終了した一時間後に二人は捜査を終えて帰ってきていた。ザフィーラが重傷を負った時だったので心強い限りだ。お陰で六課の防衛は二人に任せることができる。 なのはちゃん達はまだ二日ほど帰ってこられないのもあって、二人の存在は想像以上に六課の皆を安心させている。というより、私が安心しているのだが。 かつてJS事件のときに一度隊舎を破壊されたことがあるので、その安心感は何よりも欲していたものだ。私は広域殲滅魔法が専門だから迎撃などは向いていないし。 「カズマ君も元気みたいやしな」 あの戦闘後、今までとは打って変わって明るく元気になったカズマ君は、今はフェイトちゃん達と夕食を取っている。 本当は私も行きたかったのだが、今回の事後処理にザフィーラの通院申請と、やることが山ほどあったので諦めた。 「私はいつも退け者やぁ……」 独り言が増えたのは内緒だ。 ・・・ 高い天井と広さを兼ね備えた部屋を橙色の灯りが照らし出す。 ホテルのロビーのように整っている部屋は、しかしホテルのように誰かを迎え入れるようには作られていない。 そこは作戦室。 または闘技場。 円形のそこは、そのような用途で作られていた。 そこに現れる影が二つ。 片方は以前と比べてさっぱりした薄紫の髪と白衣が特徴の男、ジェイル・スカリエッティ。 もう一人は彼の秘書にして、戦闘機人――スカリエッティの生み出した一種のサイボーグ――でもある妙齢の美女、ウーノ。 スカリエッティは単に広い場所を求めてここに来ただけらしく、大量の機材をカプセルのような外見をしたガジェットⅠ型に運ばせてきていた。ウーノは彼についてきただけのようだ。 スカリエッティはある装置の上に以前手に入れた緑を基調に金の装飾の入った箱を置く。装置を起動させると、いくつものモニターが空間に浮かび上がった。 「やはり、偽物だな」 「……はい?」 突如呟くスカリエッティに、ウーノが戸惑いながらも問いかける。 スカリエッティが思い付きや考えなしに独り言を言い出すのは今に始まったことではないのだが、ウーノがいちいちご丁寧に反応するのも今に始まったことではない。 「ウーノ。これはね、オリジナルを元に誰かが作り出した贋作なのだよ」 「は、はぁ」 ウーノとて頭は悪くはない。いやむしろ秀才とすら言っていいほど彼女の頭脳は優れている。戦闘機人故にそれはコンピューターそのものとすら言えるほどだ。 しかし彼女には柔軟性という人間として決定的なものが欠けていた。 「カードの方も偽物だ」 憎々しげに吐き捨てる。そう言いながらカードもしっかりと手放さずに握りしめているのだが。 「オリジナルはおそらく何らかの不死生命体のようなものから力を汲み出す装置のようなものだったんだろうが、これは魔力を通せば特定の効果が発動するだけの、ただのデバイスだ」 デバイスカードといったところか、と漏らすスカリエッティ。 ウーノにはやっぱりついていけなかった。 「これもレンゲルクロスという名前らしいことは分かったんだがね……」 偽物なのが残念だ、と言いながら弄り回す。しかし何だかんだ言いながら、スカリエッティはそれをいたくお気に召しているらしかった。 彼の顔に張り付いた笑みが、それを証明していた。 「失礼します」 そこに現れる新たな影。 「どうしたんだね、セッテ」 影の正体は、薄桃色の可愛らしいストレートヘアに似合わない無表情を浮かべた少女だった。 彼女、セッテはスカリエッティ奪還には参加せずに秘密基地の確保に向かったナンバーズであり、彼女を含めた四名が今スカリエッティの元に残ったナンバーズである。本来は12名もいたため、今は三分の一に戦力が低下していた。 「ラボのシステムが完全に復旧しました。これで全ての部屋に動力が供給されます」 「御苦労、休んでいてくれたまえ。これからまた忙しくなるからな」 「ドクター、これから何かなさるのですか?」 その言葉に、ウーノが素早く反応した。 「当然だ。良い玩具も手に入ったことだし、ゲームでも始めようと思ってね。機動六課には借りがあるんだし、もうすぐ解散するそうだから、いっそのこと”消してしまえばいい”と思ってね」 ウーノの言葉に顔を醜く歪めながら答えるスカリエッティ。だが彼の視線はウーノにではなく、レンゲルクロスの横のカプセルに注がれていた。 そう、レンゲルクロスに似た、三つの機械に。 「ドクター……。いえ、わかりました」 ウーノは答える。そう、彼女は決してスカリエッティには逆らわない。彼女は他の愛し方を知らないのだから。 ・・・ 久しぶりに会ったフェイトとティアナとの夕食。それが終わった俺は、外に出て空を眺めていた。 記憶。 そう、俺は、重要な記憶をいくつか思い出していた。 まずは本名。剣崎一真という己の名。 そして自らの正体、正確には仕事。それが、仮面ライダー。 最後に、俺が戦う理由。 それは、イーグルアンデッドとの戦いが思い出させてくれた。 (そうだ。俺は、母さんや父さんの時みたいに後悔したくない) 脳裏に過る灼熱の業火。明るく弾ける我が家と、光に押し潰される両親。何も出来ずに打ちひしがれるだけだった幼い過去の自分。 ようやく思い出せた、自らの存在意義。 (俺が例え何者であろうと、人々を守らない理由にはならない) それが、ようやく分かった。 まだジョーカーとして活動していた頃やライダーとして戦っていた頃の記憶は曖昧だが、今はこれで十分だ。アンデッドが発生している原因を突き止め、この世界の人々を守る。それを決意することができたのだから。 そうして自分の気持ちに整理をつけ、隊舎に戻ろうとした刹那―― 「――動かないで」 凛とした声が、俺を押し止めた。 ・・・ ついに本来の力を取り戻したカズマだが、そんな彼に彼女が戦杖を突き付ける。 そして二人の前にあの男が立ちはだかる――! 次回『火焔』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2314.html
少女、その想い アパートのに寄りかかるように金髪の少女が佇んでいた。 その少女、フェイト=T=ハラオウンを今構成しているのは、戸惑いと混乱、この言葉だけだ。 虚数空間に落ち、死亡したと思っていた母が生きていた、それは嬉しい。どうやって生き延びたのかは分からないが、素直に喜べた。 だが、何故殺し合いなど、あの母が冗談など言わないことは誰よりもよく知っている。 それに、母に歯向かい首輪を爆破……殺された人についても考えるべき点は多い。 アリサという自分の親友と同じ名前の少女、それに応えていたなのはと――自分と同じ名前、同じ声の女性。 名簿を見てみれば確かに自分の名前が二つある。 気になるのはなのはとはやての名前も二つあるということだが、こちらは今一わからない。 「この人も、母さんって言っていた……」 どういう事なのか、一つだけ思い当たることがあった。 「母さん、また、同じ事を……?」 アリシアのクローンとして生み出された自分、 ならば、他にも自分と似た人間がいてもおかしくはない。 そしてそれは、自分はもう母にとっていらない存在であるということ。 「っ……」 一度はなのは達の支えもあって立ち直った、いや、母が死んだ以上立ち直るしかなかった。 新しい家族を得た自分を、母はどう思っているのだろうか? 「……違う、そうじゃない」 答えなどわかっている「何とも思っていない」のだ。 そんなことはずっと前から、それこそジュエルシードを集めている頃から知っていたことのはずだ。 だが、それでもこの事実は心を傷つけていく。 「なのは……クロノ、お兄ちゃん……」 違う、ダメだ、震えて助けを待っているだけでは何にもならない。 頭では理解している、もう一度話さなくてはならないと、今度こそ母の過ちを止めなければならないと。 だが、足が震える、心が恐怖する、また拒絶されるのではないかと脳が逃げようとする。 「……あっ」 気づけばその場に座り込んでしまっていた。 ダメだ、立ち上がれ――立ったところで何もできやしない。 こんな殺し合い、止めないと――無理だよ、私に母さんに逆らう勇気なんてない。 違う、今度こそ止めないといけないんだ――私一人でそんなことできる訳がない。 でも、このままじゃ、なのは達も――デバイスもない自分がいたって、足手まといになるだけじゃない。 別の自分が、弱い自分が動こうとする体を止める――本当に動こうと思ってるの? 「違う! 動かないと、動かなきゃダメなんだ!」 「あの……大丈夫?」 「え?」 アパートの一室でデイバックを調べながら少女、早乙女レイは考える。 自分はマルタンを正気に戻そうと、十代やなのは達と共に対峙していたはずだった。 背後からはデュエルゾンビと化したフェイトたちが迫り、絶体絶命の状態……のはずが次の瞬間にはあの殺戮劇だ。 「っ……」 人の首が吹き飛ぶ凄惨な光景を思い出し、思わず口元を押さえる 誰かが死ぬ瞬間を見ることなど初めてだ、デュエルゾンビ達と化した者の何人かは死んでゾンビとなったらしいが、その瞬間を見ていないのなら同じこと。 吐き気を必死で堪える、こんなことで無駄に体力を使うわけにはいかない。 なにしろ――これから人を殺すのだから。 「十代様、待ってて……!」 レイとてまだ幼い少女だ、こんな殺し合いを本気で乗る人がいるとは思えない。 だが――自分は知っている、殺し合いをする、しないといった思考など超えてしまっている者がいることを。 フェイト、エリオ、万丈目。 この三人はデュエルゾンビと化し、ただ戦いを求めるだけの存在となっている。 そして三人に襲われた者も、やらなければやられると思い殺し合いに乗ってしまいかねない。 なのは達は心配するまでもないし、明日香はあれで割り切れる部分がある、命の危険に見舞われたら身を守ることを優先するだろう。 だが十代は違う、彼はきっと限界ギリギリまで相手を正気に戻すことを優先する。 けれど、その限界は自分達が思っているより遥かに早いのだ、それはあの少女が殺されたことで理解した。 このまま彼が誰か殺し合いに乗った者と出会ったら、間違いなく殺されてしまうだろう。 「そうなる前に……」 殺し合いに乗った人間を自分が殺す、そうするしかない。 人を殺すなど、やりたくもないし考えたくも無い、 だが、それ以上に十代が殺されるという事を恐れていた。 そうだ、何も罪の無い人まで殺すわけではない、殺人鬼を、犯罪者を殺すんだ、罪を感じる必要はない。 何度も言い聞かせるように呟き、銃を持って部屋を出る。 「あ、そういえば……」 名簿になのはやフェイトの名前が二つあることを思い出す。 それに最初の部屋、あの時殺された彼女と話していた「フェイト」は正気だったように思える。 「同姓同名の人? でも、声まで似てるなんて……」 考えてはみるが、いくら頭を悩ませても答えが出てこない。 「……会ってみれば、わかるよね」 危険だが、それしか方法はないだろう。 再び歩き始めるが、すぐに誰かがいることに気づき慌てて物陰に隠れる。 そっと様子を窺うが、何やら悩んでいる……というより怯えているようでこちらに気づく気配はない。 見れば自分より年下のようだ、どこかで見たような雰囲気を感じるが、あの様子では人殺しなどまずしないだろう。 とりあえず接触してみようと近づこうとした瞬間、その少女は叫びだした。 「違う! 動かないと、動かなきゃダメなんだ!」 「あの……大丈夫?」 「え?」 話しかけるとようやくこちらに気づいたようで顔を上げる、 と先ほどの独り言と言うには大きすぎる叫びを聞かれたことに気づいたのだろう、頬が朱く染まる。 「あ、その、えと、私……」 「――っ!? 私は早乙女レイ、貴方は……もしかして、フェイト、さん……?」 「え!? どうして、私の事を……」 声を聞いてもしやと思ったが、まさか本当に予想通りだっただったとは。 しかしそうなるとどう言う事なのか、目の前の少女は子供の頃のフェイトとでも言うのか? 確かにそれなら正気なのは当然だが……異世界というのは知っているが、魔法は時間まで遡ることが可能なのだろうか。 「あの……?」 「あ……ご、ごめん、ちょっと考え事を」 さて、どうするべきか。 魔法についてはよく知らない、本当に時間に関する魔法があるかもしれない。 ならばこの少女は過去のフェイトということになりえる、 そうすると自分の知っているフェイトについてどう説明するべきか、未来のあなたは殺人鬼になってるから殺します。とでも言えと? 「フェイトさ……ちゃん、殺し合いには乗ってないんだよね、どうするか、決めてる?」 ――言える訳がないだろう。 こんな子供に、そんな残酷なことを伝えられるほどレイは強くない。 出来る限り知られないようにしたかった。 「……いえ、なのは達……友達と合流したいですけど」 「そっか……」 友達の名前がなのは、ますます過去のフェイトである可能性が高まってきた。 しかしどうする、自分と一緒にいてはいずれデュエルゾンビと化したフェイトと出会うことになりかねない。 だからといって、自分よりも幼い子を一人置いておくのも気が引ける。 ……まあ、魔法が使えるのだったら自分よりずっと強いのだろうけど。 「……さて、どうしようかな」 【一日目 深夜】 【現在地 G‐4/アパート前】 【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】 【状態】健康、不安、戸惑い、混乱 【装備】無し 【道具】支給品一式、 不明支給品1~3(デバイスは無い) 【思考】 基本:なのは達との合流 1、レイと会話 2、殺し合いを止める 3、プレシアともう一度話したい……けど 【備考】 ※魔法少女リリカルなのはA'sサウンドステージ3以降の参戦です。 ※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています。 ※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています。 【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康 【装備】SIG P220(9/9)@リリカル・パニック 【道具】支給品一式、不明支給品1~2 【思考】 基本:十代を守る 1、連れて行くべき、かなぁ 2、殺し合いに乗っている者を殺害する 3、フェイト(StS)、エリオ、万丈目を強く警戒 【備考】 ※リリカル遊戯王GX10話から参戦です。 ※フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています。 ※フェイト(StS)、エリオ、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています。 【デュエルゾンビについて】 ユベルの力によってただひたすら戦いを求めるのみの存在 会話、だまし討ちなど多少の思考能力はある模様 このロワ内ではまず出ません。 Railway Track 本編時間順 CROSS CHANNEL Railway Track 本編投下順 CROSS CHANNEL それは最悪の始まりなの フェイト・T・ハラオウン(A's) - GAME START! 早乙女レイ -
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1274.html
魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第十話「龍と雷光」 忠勝は優しき雷神、フェイトの武器、バルディッシュによく似た大剣を振る。 振る度に量産型は爆発。残るは数体。 だが、その数体を大剣で一掃しようとはしなかった。大剣を黒い宝石に戻すと。地面へと降りる。 (ヴィヴィオを救うにはやはり突入か・・・!!) 今度は金色の宝石を取り出すとその腕を天に掲げる。目の色から金色から雪の如き白へ。 宝石が光り、杖へと姿を変えた。 「あの杖って・・・!」 「シュベルト・・・クロイツやて・・・・!?」 その杖は最後の夜天の王、八神はやてが手に握る杖「シュベルトクロイツ」に似ていた。 忠勝は両手で杖を構えると十字の先の部分から白い稲妻が発生。稲妻は異様といえるほど大きくなる。 刹那、その大きすぎる稲妻は量産型とガジェットドローンを巻き込みながら聖王のゆりかごへ迫る。 案の定展開してあった結界にぶつかる。それでも忠勝は諦めない。叫び声にもよく似た鋼の唸るをとが響く。 大きな爆発の後結界が一箇所だけ見事に割れ、潜入できるほどの穴ができていた。 「・・・・忠勝さん!なのはちゃんとヴィータちゃんと一緒にゆりかご内部へと潜入!フェイトちゃんは先ほどの指示通りにスカリエッティの研究所へと潜入!」 指示された皆は頷くと、それぞれの場所へと飛ぶ。戦いはまだ、続く。 「ぐはぁぁぁっ!」 その戦場から少し離れ、吹き飛ばされたのはエリオだ。壁をぶち抜いてビルの中で倒れこむ。 吐血するエリオだがガリューは容赦なくエリオの腹に蹴りを入れていく。 「ぐふっ・・・!!」 「エリオ君っ!きゃあぁ!」 エリオの方に注意が逸れたところをルーテシアにつかれ、攻撃されるキャロ。 しかしルーテシアやガリューの方も優勢とはいえ次第に体力を奪われていく。そう、エリオとキャロのガッツで。 だが召喚のほうに問題がある。フリードリヒは今巨大な龍となってルーテシアの召喚虫を蹴散らしているがキリがないのだ。 おまけに地雷王という巨大なのもいるし、ルーテシア達の後ろでヴォルテールと戦っている白天王というのもいる。 「く・・・!」 エリオは槍を杖代わりにして立ち上がるがすでに満身創痍。 キャロも同じような状態である。 「ルーちゃん!私のお話を聞いて!」 「・・・消えて・・・!!」 ルーテシアは再び魔力を放つ。魔力に襲われ吹き飛ぶ二人。その足元には蒼い渦だった魔方陣が。 「え・・?キャロ・・・・これ!!」 「魔方陣・・・!?」 その瞬間晴天のはずの空から稲妻が落ちる。 稲妻の落ち方は尋常ではなく、何本もの稲妻が一本に集結、大きな一本となって落ちてきたのだ。 「Ha!楽しそうなpartyじゃねぇか・・・・!俺も混ぜろや・・・・・!」 そこには、一人の蒼い侍が立っていた。 蒼い侍は腰に挿していた六本の刀を片手に三本ずつ構える。 「さぁ行くぜぇ!イカレたパーティの始まりだ!Let s rock!!」 ━━━━"The dragon without the right eye" runs(「右目の無い龍」は走る。) ━━━━The sword that it is called "the nail of the dragon" to grasp in the hand.(その手に握るのは「龍の爪」と呼ばれる刀。) ━━━━"The dragon" infringes upon an enemy as far as there is a fight there and cuts it down.(「龍」はそこに戦いがある限り、敵を蹂躙し、切り倒す。) ━━━━Orbit of the lightning that it is blue that a nail weaves. But the blue does not have the cloudiness.(爪が織り成すのは蒼い稲妻の軌道。だが、その青に曇りはなく。) ━━━━And the dragon gives its name.(そして龍は名乗る。) 「この奥州筆頭、伊達政宗を楽しませてくれるヤツぁ、ここにいねぇのかい?」 奥州の龍、伊達政宗推参、その背後には斬り捨てられた召喚虫の群れ。 だがその中の一匹が立ち上がり、腕を振るう。腕は当たることなく、「龍の右目」に防がれた。 「政宗様、背中が隙だらけとあれほど・・・・!!」 ━━━━To a dragon without the right eye, there are the right eye and a man to be able to invite.(右目の無い竜には、右目と呼べる男がいる。) ━━━━The man did not have the nail of the dragon, but there was scathing brightness of the eye named the sword.(その男に龍の爪はないが、刀という名の鋭い眼光があった。) 「あぁ?俺の背中はお前が守るんじゃなかったのか?」 「無論、この片倉小十郎。命を賭けて政宗様の背中をお守りいたします!」 「Coolじゃねぇか。それでこそだ。」 槍使いの少年と龍使いの少女の前に現れたのは、一匹の「龍」だった。 「小十郎、俺は黒いあいつと戦う。他のは任せたぜ。」 政宗はガリューへと目標を変え、走り出す。すぐにぶつかり合う刃と刃。ガリューは背中から生えた触手で政宗の腹を打ち、吹き飛ばす。 ビルに突っ込む政宗だが体勢を立て直してまた突撃。顔は、笑っていた。 「やれやれ、困ったお方だ・・。さて・・・嬢ちゃん、俺はできればアンタと戦いたくないんだが・・・?」 小十郎は刀を肩で背負い、ルーテシアを見据える。 ルーテシアは小十郎の問いかけにも答えず、魔力の球を撃ち出す。 素早く刀を前に突き出して球を斬る。真っ二つに割れた球はかなり後方で爆発。 「こっちも困ったやつだ・・・。流石に斬るわけにはいかねぇけどな。」 そう言って刀を反す。にらみ合いが続く中で何かを思いついたように後ろにいるエリオに声をかけた。 「おい、そこの坊主。」 「は、はいっ!?」 「ちょいと手を貸してくれねぇか?作戦があってな・・。」 小十郎はエリオに背を向けたままできるだけ小声で話す。 「Hey!よーく耳を澄ませな、俺の心臓はここだぜぇ?」 自分の左胸を親指で指し、ガリューを挑発する。ガリューはそんな挑発に乗るほど短気ではない。 じっとしてたら政宗が接近、三本の刀で斬り上げる。 「!」 攻撃を防御するガリューだが政宗の攻撃は終わりじゃない。そのまま空中に上がり、もう片方の三本の刀を振り下ろしてくる。 「DETH FANG!!」 その攻撃も防御したが明らかに先ほどの斬り上げより重い。すこし手が痺れ、震えている。 自分も負けてはいられない。触手をまた政宗の腹に打ち込むと今度はそのまま接近。手首についた刃を突き出す。 ギリギリのところで避けたから兜の緒が切れ、兜が地面に落ちる。 「ヒュウ、やるねぇアンタ。」 「・・・・。」 また刀と刃のぶつかり合いへと変わるが、直ぐに両者は離れた。 政宗は片手に六本の刀を持ち、ガリューへと接近。六本の刀を横に凪ぐ。 「PHANTOM……」 「!!」 横凪ぎは今までの政宗の攻撃を遥かに凌ぐ重さ。ガリューの体が浮いた。政宗はジャンプし、ガリューへと迫る。 手には六本の刀。六つの斬撃が、ガリューの体に向けて振り下ろされた。 「DRIVE!!」 その四肢は宙を舞い、地に落ちる。刀を仕舞い、倒れているガリューへと言葉を送る。 それは一言だけだったが今の気持ちを伝えるには十分な言葉。 「楽しかったぜ。」 「……というわけだ。いけるか?坊主。」 「はい、やってみます。」 エリオは立ち上がり、ストラーダを再び構える。 小十郎はその隣に立ち、腰を落とす。ルーテシアは何もしないままだ。 静寂が場を支配する。何も動かず、聞こえるは風の音と自らの心臓の音。静寂は十秒、五十秒、一分。長く続く。 先に動き出したのは小十郎だった。一歩踏み込み、二歩目で地面を思い切り蹴る。 刀を前に突き出して蒼いオーラを纏いながらルーテシアに突進していく。 「穿月!」 穿月はルーテシアを捕らえることはなく、横を通り過ぎる。 「うおぉぉぉぉ!」 小十郎のあとに続きエリオがストラーダを構え、突進してきていた。ルーテシアは思わず飛び退くがエリオは止まる。 ルーテシアが飛び退いた先に小十郎がいた。刀を上に掲げ、肩と首を叩くと気絶。その場に倒れこんだ。 「今は静かに眠れ・・。」 刀を鞘へと納めると同時に政宗が近づく。どうやら終わったようだ。 エリオとキャロが近づき、少し戸惑いながらも二人の武将の前に立つ。フリードリヒもキャロの近くに降りてきて元の小さい竜へと戻り、 ヴォルテールの方も決着がつき、消える。白天王を含めた召喚虫はルーテシアが気を失ったと同時に消えてしまったみたいだ。 「あの、ありがとうござい・・・」 「おっと、礼はまだだ。オメェらにはまだ行かなきゃならねぇ所がある。だろ?」 言い切る前に政宗が喋る。言葉に対してエリオとキャロが頷くと政宗と小十郎は顔を見合わせて微笑。 フリードリヒの上にルーテシアを乗せ、四人はゆりかごへと走り出した。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1966.html
戦士のエチュード グリフィスは川岸にいた。ザフィーラの埋葬の場所を探して。 「とにかく、ザフィーラを埋葬しよう。でないと報われない」 傍らにはザフィーラの遺体。右手には木刀、左手にはデイバックを持っていた。 「ザフィーラ…、あなたはもしかしてあの娘を…」 ザフィーラの遺体の近くにいて、ザフィーラを殺害したと思われる少女。 もしかしたらあの娘は自らの身を守っただけでは? だとしたらザフィーラは殺し合いに乗ったというのだろうか? そんなことを考えながらも埋葬場所を探していた。 「だとしたら、あなたも彼女も罪を問われるべきなんだろうな…」 真面目な彼はそんなことを考えていた。 移動しようと、デイバックを持っていく為にザフィーラの側から離れた瞬間、赤い熱線が先程までいた場所を抉りザフィーラの遺体を消し去った。 (なんなんだ、一体) そう考え、上空を見ると、そこには身体に大きな傷を負った、魔導師だと思われる人がいた。 グリフィスがザフィーラの遺体を川岸に運んだ頃、少年エリオ・モンディアルは川の対岸にやって来ていた。 彼は、戦う相手を求めここまでやって来たのだ。 ヤクトミラージュを握りしめ、マジンカイザーを使い。 そして、エリオは見つけた。新たなる敵を、グリフィスを。 本来グリフィスは非戦闘員。しかし、今のエリオにはそんなことはどうでもよかった。 ただ、戦えればいいのだから…。 だから放つのだ無慈悲の閃光を。 「ファイヤーブラスター!」 しかし幸か不幸かグリフィスは移動し、閃光は外れた。 エリオにはこう移った避けたのだと…。 「次はあなたが相手をしてくれるんですか?グリフィスさん」 グリフィスは焦っていた。突然の襲撃者に。今、自分に武器はない。木刀は先程の攻撃の衝撃で落としてしまった。 どのみち、木刀では魔導師には勝てない。 グリフィスは先程の攻撃で断定した。相手は魔導師だと。 そして今の自分に魔導師と戦う力はない。ならば方法は一つ。 逃げる、とにかく逃げきることである。 幸い近くに森がある。森の中なら相手が飛んでいようと関係はなくなる。 しかし、エリオはそれも許さないかのように射撃をしてくる。 「うわッ!あ、眼鏡が」 激しい攻撃にふとした拍子に転び、眼鏡とデイバックの中身が放り出された。 グリフィスは急いで立ち上げろうとする。 その右手にカードデッキをつかんでいることに気付かず。 地面に放たれた魔力弾の光。それは眼鏡に反射しグリフィスとカードデッキを写した。 そして、グリフィスの腰にバックルがセットされる。 「これはもしかして…」 グリフィスは考える。これはこの箱の力を引き出すものではないのか、と。 しかし、エリオは待ってくれない。 「鬼ごっこは終わりですか?」 「一か八かだけど、ウオォォォ!」 エリオの放つ魔力弾が迫る中、グリフィスはデッキをバックルにはめこんだ。 そして、 「やっぱり戦いはこうじゃないと」 そこには緑の鎧を纏った戦士がいた。グリフィスである。 戦士の名はゾルダ。 神崎が作り上げたデッキの力を纏った姿である。 「早く戦いましょうよ。ねっ!」 「狂ってる…」 【1日目 現時刻AM2 46】 【場所 I-5 森付近】 【グリフィス・ロウラン@リリカルなのはFeather】 [状態]健康。疲労(中)ゾルダに変身中 [装備]マグナバイザー、カードデッキ(ゾルダ@マスカレード [道具]遊戯王カード「バスターブレイダー」「魔法の筒(マジックシリンダー)」「光の護封剣」@リリカル遊戯王GX [思考・状況] 基本的にこのゲームには乗らない。 1.目の前の魔導師の拘束しなければ 2.部隊長…、どこに…。 〔備考〕 ※カードデッキの制限については知りません。 ※魔導師がエリオだとまだ気付いてません。 【1日目現時刻AM2 45】 【場所 I-5 森付近】 【エリオ=モンディアル@リリカル遊戯王GX】 〔時間軸〕第六話終了後 〔状態〕左胸上部から右脇腹への裂傷、デュエルゾンビ化、魔力消費大、体力消費大 〔装備〕マジンカイザー@魔法少女リリカルマジンガーK s ヤクトミラージュ@NANOSING 〔道具〕支給品一式 レヴァンティン@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL ローザミスティカ@ヴィータと不思議なお人形 [思考・状況] 基本 戦いを楽しむ 1.グリフィスさんと戦おう。 2.なのはさんを探す 049 本編投下順 051
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2173.html
リリカル・コア外伝第2話「騎士と鴉」 「えーと、今日の分の日誌はこれで良し、後は月例報告に添付する画像はと……」 エリオ・モンディアルは自身に割り当てられた端末と向かい合って格闘していた。 「あのデータ、何処に入れたかな……?」 機動六課在隊時に当時スターズ分隊副隊長だったヴィータに仕込まれたとは言えまだまだぎこちない。 エリオにとってはこのようなデスクワークよりも訓練、そして今ではキャロやルーに及ばないとは言えそれなりに 心を通わせれるようになった自然保護区の動物達と交流しているほうが落ち着くというのが本音である。 「あった。これを添付して……」 「エリオ、ちょっといいかい?」 「タントさん?どうかしましたか?」 「ちょっとね」 書類を作成後、提出し裁可して貰う現在の上司に声を掛けられる 「すいません、書類にはもう少し時間がかかりそうなんです……」 「ああ、それはまだいいよ。でも来たばかりの頃に比べれば大分此処にも業務にも慣れてきたね?」 「はい、おかげさまで」 六課解隊後、エリオはキャロと供に自然保護隊へ異動した。 エリオには他の三人と違い、前任部隊は無く、陸士部隊―特に一線級部隊から―からの引く手数多であったが、 結局自身の希望を通してもらう形で自然保護隊への転属となった。 六課解散後から一年と少し、牧歌的な“後方部隊”と揶揄されることもある辺境自然保護隊とは言えど、密猟者等の 追跡や捜査も一義的には任務として負っており、密猟者と向き合えば立派に“前線部隊”となる。 そんな中対密猟者戦において自然保護隊内の専門部隊以外、数少ない取り締まりも出来る保護官として実績も上げていた。 騎士として鍛練は一日も欠かさず行い、六課時代よりも上達のテンポは少し遅くなったものの、今では誰もが一目置く 自然保護隊最強の一角である。 「ちょっとお願いがあるんだ」 「お願いですか?」 「そう、ちょっとした荷物の受け取りに行って欲しいんだ」 「荷物の受け取りですか?それじゃあフリードと一緒に……」 「いや、そんなに大きくないから一人で大丈夫だよ」 タントが言葉を区切る。 「荷物って何なんですか?」 「時々大きな規模で発生してる“蟻”の話は聞いてるね?」 「“蟻”って……、まさか……?」 「うん、そう。“バグ”。幾つかの世界で猛威を振るう“蟻”さ」 “蟻=バグ”。 何者かが作り出した生物兵器とされ、女王を中心とした集団、つまり蟻に似た組織を作り地中深く潜み、 時々現れては人間の生活圏を脅かす生命体。 「やっぱり人の手による物……、何でしょうか?」 「おそらくね、自然の生命体がその世界以外で同種が確認されるのは極めて稀、自然保護隊や過去の記録を見ても殆ど無いよ」 「この世界への流入があったんですか?」 「まだだよ、でも大分前に“蟻”が一つの都市を壊滅させた時、何者かが開発した極めて強力な駆除剤を使用したんだ。 そのおかげでその都市の“巣穴”の“蟻”を全滅させれたんだ」 その都市の住人はは殆ど死亡したんだけど……、タントが付け加える。 「荷物というのはその駆除剤の事ですか?」 「やっと生産が軌道に乗って此処にもそれが回ってくるということさ。備えあれば憂いなし。でも物が物だから受け取りに 行って欲しいんだ」 「でも、あれって人の手が入った生命なんですよね?研究元を叩かないと……」 「ああ、それなら君の保護者さん達がやってるよ」 「フェイトさんですか?」 「……くしゅん!!」 「風邪ですか?」 「うーん、違うと思うけど……。何て言うんだっけ?」 「……人が噂してるから、ですか?」 「そうそれ」 (フェイトさんなら四六時中誰かが噂しててもおかしくないと思うんだけど……) ティアナが当然の疑問を脳裏に思い浮かべ、すぐにそれを打ち消す。 「えーと、報告の続きですが、“バグ”といわれる生物兵器群の開発元とされるケミカル・ダイン社ですが クローム社の解体後、グループ企業だった同社の企業内の研究内容は細切れにされ散逸、 何処にあるかも分かりません」 「あー、それじゃこの線は望み薄?キサラギの方が望みが在るかな?」 「そうでもありません。ケミカル・ダイン社の実験施設と思われる施設の場所の特定に成功しました。そこには まだ稼動中の記録媒体があるかもしれません。つまり……」 「どこで“実地試験”をしていたかが分かると……。さすが、ティアナ、よく分析したね」 「これぐらい出来なければ執務官補の名が泣きますから。でもコイロス浄水場で発生した生物ですか? これも生物兵器って言われてますが……。なんでこんなものばかり作るんですかね、人って……」 ティアナはため息一つ、フェイトも同じ気持ちだった。 鉄道貨物ターミナル。列車の引込み線にクレーンが聳え立ち、周囲には色取り取りのコンテナが並ぶ、そしてコンテナを 積載するためのトラック・ヤード……。 普段こじんまりとした場所を中心に動くのに慣れたエリオにはこの貨物ターミナルの広さは圧巻であった。 「広い……、この施設だけで六課の施設ぐらいの敷地ぐらいはありそう」 タントに示された荷物保管所だけでもエリオの観点からすれば大きい部類に入る。 「すいません、荷物の受け取りはこちらですか?」 受付と思しき場所を見つけそこに明らかに暇をもてあましている係員 「はい、どちら様でしょう?」 「時空管理局自然保護隊、エリオ・モンディアル一等陸士です」 受付の顔に一瞬驚きが走る。だがそれも一瞬、すぐに仕事の為の顔に戻る。 一応は自然保護隊の制服を着用しているとは言え自分がおそらく管理局員として驚かれているのではなく、かつての 機動六課の隊員の一人として驚かれているのにエリオは慣れていた。 「積載されたコンテナはわかりますか?」 「特別仕立てのコンテナって聞いてるんですが……」 係員が端末を向き、 「それでしたら……。えー、管理局使用のコンテナですが次の列車で到着するとの事です」 「次のって、どのくらいですか?」 「まあ、後四十分程度ですね」 「エントランスで待たせて貰って良いですか?」 「どうぞ」 係員の言質を取り、エントランス内で適当な場所を見つけ、そこに座る。 あまり危険は感じられず、リラックスできる空間。冷房が効き過ぎずなおかつ暑くない申し分無しの場所。 だがエリオは自分がこの敷地内に入ってからずっと監視されていたのに気付いていた。 (外の車両に一人、監視カメラ、警備員がエントランスと廊下の向こうに二人ずつ……。ストラーダ、他には?) 《建物の外、小隊規模の“有明”を確認しています》 念話でストラーダに確認。しかし高々一等陸士を監視するにはあまりに物々しい警備。 (僕ってそんな危険人物に見える?) 《もしくは別の何かを警戒してるのでは?》 (うーん、ストラーダ、一応記録しておいて) 《Ya》 「間も無く着くそうです。一応契約上、コンテナの封印を解くのをお願いします。解除手順は分かりますか?」 「大丈夫です。ストラーダ、コードは分かってるよね?」 《Ya》 この係員がエリオを見て驚くのは二回目。デバイスを使ってることに驚いたようだ。一応民間では警備・巡察等を除く、 通常の任務では攻撃的なデバイスの所持・仕様には一応の規制が掛けられている。 重要な荷物の受け取りとは言え、通常の任務の観点から見れば取るに足らない任務である。デバイス、特に六課謹製の ストラーダは過剰といえば過剰な装備であるといえる。 「いいデバイスですね?」 「……?ありがとうございます」 係員がそういったのは皮肉かそれとも正直な感想かエリオには分からなかった。 建物の外、強い日差しが降り注ぎ敷かれたコンクリートを熱していた。 各区画を結ぶ連絡路の一つをエリオは職員の誘導に従い、その中を歩く。 自身の歩く先、目的地と思しき場所までには“有明”が二機、着座していた。 (ストラーダ、周囲の状況は?) 《“有明”の小隊に動きはありません。我々を見ているのは監視カメラのみです》 取り越し苦労だったのか、一応彼らが注目しているのは別の何からしい。 「あの、此処って何時も警備は厳重なんですか?」 エリオが自分を先導する職員に聞いた。 「さあ、何処もこんなモノだと思いますよ?」 職員の答えは素っ気無いモノだった。その答えが疑わしい物であるのは明々白々。 (タイミング、悪かったかな……?) エリオの思考が巡ろうとした時、周囲の平和な空気が一変した。 電柱に着きえられたスピーカから何者かの襲撃を伝える警報と警告。 『管制塔より全職員へ、敵性飛行体が接近、所定のシェルターへ移動せよ。繰り返す……』 「……え?」 まさかの事態に思わず素っ頓狂な声を上げる。管理局の質の悪い冗談でもこんな事はない。 「……状況は?……こちらも避難させた方が良いのか?」 先導の職員が手持ちの端末で確認していた。 (ストラーダ、通信を聞ける?) 《可能です》 ストラーダから直に送られてきたのは管制塔と警備小隊の交信。 <管制塔、接近に気が付かなかったのか!?> <NOEで接近された。レーダーの探知が遅れたんだ!!> <前衛より各機、機種を確認した。“ウェルキン”無人攻撃機だ> <こちら管制塔、全火器の使用を許可、繰り返す……> <リーダー了解。小隊全機、施設への被害を最小限に抑えろ> 最後の通信と同時に“有明”が動いた。 エリオの正面に着座していた二機はほぼ同時に起動し、右手に持つサブマシンガンを発砲。 発砲音が空気を震わし、さらに排夾されたカートリッジの地面に落ちる音が響く。 思わず耳をふさぎ、頭を下げた。 だが目は周囲を確認し、体は自然とひざを曲げ、半屈の姿勢をとり、次の動きに備える。 エリオ達の後方から別の音が聞こえ振り返る。後方にいた一機が背部のブースターを点火、地面の コンクリートに脚を擦り、火花を上げながらこちらに向かっていた。 「危ない!!」 通過した一機は寸前で跳躍、二人の上を影を残し通過していった。 エリオと職員、二人とも顔の前で腕を組んで通過の風圧に耐える。 その次に来たのは弾幕を抜けた“ウェルキン”が一機、航過していく。 機体下面に装備された大口径機関砲は一機の“有明”を狙う。が、狙われた機は半身を取って寸前で回避。 “ウェルキン”は狙った機体に回避されたとはいえまだ地上に攻撃する目標はあった。 エリオと職員、“有明”に比べれば容易な標的。 「……不味い!!ストラーダ!!」 『Sonic form』 子供とは思えないような力と爆発的な加速で以って自身と職員を射線上から退避させる。 つい先ほどまで居た空間を機関砲がなぎ払い、破片をばら撒く。 (……あれ?) 職員の体に接触した時、、そして抱えた時、職員の体は妙に堅く、普通の人間とは思えない違和感を持っていた。 (ボディーアーマー?それに……拳銃型のデバイス?) 違和感の正体はすぐにわかった。職員は着ていた作業服の下にボディーアーマーを着込んでいる。 さらに右の腰には外側からは簡単に判らないように拳銃型のデバイス、さらに予備弾倉を携帯していた。 (一般職員までここまで武装をしている?) そもそも一般職員が武装するのであればそれは着用する必要は殆んど無い。 警備班が警報を鳴らした後にでも装備を付けさせれば良い。“普段の業務”では戦闘装備は不要な物だ。 だが此処に居るのは本当に一般職員なのか?手際よく管制塔への連絡を取った手腕、落ち着いた交信内容。 しかもただのターミナルにしては豪華すぎる警備小隊の“有明”配備……。 (もしかしたら……) おそらくはこの襲撃を此処の職員達は知っていた、もしくは予期していた可能性に思い至る。 建物の陰に隠れ、職員を下ろし、建物を盾に周囲を見渡す。 しかし襲撃側の狙いはなんなのか?皆目見当が付かなかった。 「此処は危険です!!」 端末を耳からはずした職員が叫ぶ。エリオは現実に引き戻される。 かれのその声は耳には入っている。だが目は空を飛ぶ“ウェルキン”を追い、耳は聞きながら周囲の 闘騒音を拾い、頭は周囲の状況を組み立てる。 「これがテロであれば管理局員として見逃すわけにはいきません!!手を貸します!!」 「しかし、此処は社有地です!!管理局員といえど礼状や所有者の許可無くデバイスを使用するのは……!!」 職員の言葉は正しい。しかしエリオには違う教えがあった。 「……大丈夫ですよ」 努めて表情を殺し、低く落ち着いた声をだそうとする。 「……な、何がですか?」 職員の顔が引きつった。 成功だ。エリオは内心ガッツポーズ。 「例えどんなのが相手だったとしても!!……ストラーダ!!」 騎士甲冑の着用は人前で裸をさらすようなもの。が、いまはそんな贅沢は言ってられない。 (最初の発光で目をつぶっていますように……) エリオはそう願いつつ、騎士甲冑を着用、待機状態から実体化したストラーダを握り、振るう。 「降り掛かる火の粉を払って!!……まずはお話を聞いてもらうんです!!」 吐き捨てるように叫ぶとストラーダで以って加速、空に舞う。 エリオは航空魔道士ではないがストラーダを使えば限定的な空戦は可能。 「ストラーダ、敵の数は!?」 空に上がったと同時に周囲を確認、自分の目にも見えるがストラーダのセンサー系の方が広く全周をカバーできる。 『“ウェルキン”を十機以上確認。警備の“有明”は敵味方不明とします』 ストラーダが眼前に索敵結果を表示。テロリスト側は“ウェルキン”、こちらは敵性を示す赤。 “有明”は六機、こちらも味方とは言い切れないが一応は味方に近い緑の表示。 <こちらターミナル管制塔!!エリオ・モンディアル一等陸士へ!!状況への介入を依頼していない!!直ちに退去しろ!! 繰り返す!!直ちに退去しろ!!……退去しない場合は貴官もテロリストとして対処する!!> 管制塔からの警告。 「時空管理局、エリオ・モンディアル一等陸士です。場所と状況は承知しています。 ですが今は人手が少しでも必要なはずです!!」 <こちらリーダー、管制塔へ。その通りだ。手駒は多いほうがいい。ロハであの“機動六課”が手助けしてくれるんだ。 最高の援軍だろ?> 此方は警備小隊のリーダーらしき機体からの通信が割り込む。ご丁寧に管制塔と自機の場所を送ってきた。 管制塔の位置はエリオからそう離れていない。しかもご丁寧に敵機の動きも付いている。 ストラーダが自身のデータを更新、表示した。 <リーダー、指揮権は此方にある!!余計な事を言うな!!> 管制塔の指揮官らしき男が叫ぶ。 <……所長!!来ます!!> 管制塔を目標に定めた“ウェルキン”が居た。数は二機、機首を管制塔に向け、機関砲の射程距離まで猶予は無い。 「……!!」 ストラーダが噴射ノズルを制御、エリオはそれに併せ方向変換と増速の動作をとる。 両手でストラーダを保持、コートをはためかせ一直線に“ウェルキン”に向う……、のではなく、少し軌道をずらし 管制塔を掠める軌道を取る。 <……待て、一体何を……> 管制塔の内部の人間がこちらを見る。 真横を通過する瞬間、ストラーダの噴射を停止、さらに急制動。 一瞬、体が浮いた。再びストラーダの噴射を再開だがあくまで一瞬だけ強力な姿勢制御用の噴射。 足が堅い物を踏む。地面ではなく、管制塔の強化ガラスを足で強く踏む。 「ストラーダ!!」 『Sonic form』 見せ付けるようにガラスを蹴り、再び加速、狙うのは前方の二機。 おそらく管制塔はストラーダの煙で視界は遮られている。 “ウェルキン”は突然の乱入者に臆する事無く機関砲を向け発砲。 機首下面のが光る寸前にエリオとストラーダはランダムで噴射を繰り返し接近。 相対速度の関係で接触するまではほんの一瞬、手の届くような距離にまで接近すればよし。 飛び道具を殆んど持たないエリオにとっては相手に以下に早く接近するかが一番重要なこと。 速度を保ったままストラーダの穂先に魔力刃を展開、すれ違いざまに一機の翼を切り落とす。 もう一機は標的をエリオに変更、急旋回に入るがエリオのほうが動きが早い。 急旋回のため速度を落とした“ウェルキン”の機体のほぼ中央にストラーダの魔力刃を突き立てる。 二機撃墜。戦果を確認すること無く、エリオは着地。地上で気配を殺し、絶えず周囲に目を配る。 何機かの“ウェルキン”が“有明”の十字砲火を受け墜落していくのが見えた。 <子供にしては良くやるようだ。だが……> 先ほどのリーダー機からの通信。強い敵意は感じられない。だが歓迎をしているとは感じられない声音。 <だが覚えておけ、お前はあくまで無許可で戦闘しているということだ。ああ、一応此方とリンクさせろ そっちの方が都合がいいだろう?> 『Ya』 ストラーダがエリオの代りに返答を代行、データリンクを表示。 「手出ししないほうが良かったかな?」 『降り掛かる火の粉は自分で払うのでは?』 ストラーダの返答。もしかしたら自分はとんでもない越権行為に手を染めてるのではないか? 疑問が脳裏をよぎる。 だが、今はそれを考える時ではない、疑問を頭から振り払い次の“獲物”に視線を定める。 「ストラーダ!!」 ストラーダが応える。不安定な飛行ではあるが、それを可能にするのはエリオとストラーダの相性の良さと 一人と一機のポテンシャルの高さ。 このコンビにとってガジェット並みかそれ以下の無人兵機など物の数ではない。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/176.html
第八話「第二ラウンド」 12月12日 1916時 時空管理局医療ブロック 蒐集されたことでリンカーコアに悪影響が出てないか調べる為の検査も 異常がなければ今日で最後となるはずだ。他にもエイミィさんがカートリッジの適性検査とか 魔力の限界圧縮率検査とか云々言っていたが何の事なのかよく分からなかったので とりあえず黙って受けることにした。 「体は健康そのもの、リンカーコアも異常なし。これで通院も終了だね。」 担当医がカルテを見ながら満足そうに頷き、目の前のなのはに言った。 「ありがとうございました。」 「まあ、『闇の書』の蒐集行為は過去にも何度かあったから 医療データだけはたくさんあるんだよね。」 「そうなんですか。」 「ああ、前回は11年前だったかな。あの時も多くの人が運ばれてきたよ。 『闇の書』は厳重に封印されてここに護送される予定だったんだけど途中事故がおきてね。 L級巡航艦が轟沈したよ。タカ派の連中が騒いで当時はすごくもめたものさ。 自分達に一任させていればこういう事態は起きなかったって・・・ そういえば、そのとき沈んだ船の艦長は、今回の捜査の指揮を取ってるリンディ提督の旦那さんだったな。」 「え?」 なのはは耳を疑う。クロノ君もリンディさんもそんなこと一言も言ってくれなかった。 「あれ、もしかして知らなかった?あちゃー、僕から聞いたってのは内緒にしてくれよ?」 担当医は額に手を当て、やってしまったという感じに首を振った。 どうやら聞いてはいけない類の話だったようだ。 まずいことを話したと思ったらしく担当医の口数は明らかに減り、検査はそのまま終了し なのはは医務室から出る。部屋の前で待っていたフェイト達が診察結果を聞いてくる。 「なのは、結果はどうだった?」 「うん、ばっちりだよ。健康そのものだって」 「レイジングハートとバルディッシュの修理もちょうど終わったところだよ。」 自分たちの変わりに傷ついた相棒の修理も終了したとのことだ。 これでなぜあの人達が『闇の書』の完成を目指すのかを確かめることが出来る。 クロノ君は動機は後で取り調べればいいと思っているようだが自分にとってそれは重要なことだ。 「じゃあ、帰ろうか」 ユーノ君がそう言ってみんなで転送ポート向かう。 本局から海鳴までおよそ1時間といった所である中継ポートを 複数回乗り継ぎようやく到着する距離である。 それなら支部を作ればいいのにと思ったりもするが管理局の陸上部隊との 予算ぶん取り合戦でなかなか実現できないそうだ。 さらに言えば次元航行部隊は巡航艦など専門性の強い装備を使っているので これらを扱える人材を育成するのも大変なお金と時間がかかるのだ。 それからしばらくして最後の中継ポートに乗り継ごうとしたときエイミィさんから通信が入った。 「みんな、今どこ!?」 「最後の中継ポートですけど、どうしたんですか?」 「武装隊が守護騎士二名を発見したんだよ!今、12人がかりで包囲してる。 クロノ君がもうすぐ向かってるけど、残り2人の騎士と『闇の書』の主のことを 考えるとどうなるか分からないんだ。 4人は、そのまま海鳴の現場に向かって!」 遂に来た。このときの為になのはとフェイトは魔法の訓練を自らに課してきた。 今回は戦っても負けない。 なのは、フェイト、ユーノ、アルフは転送先を変え中継ポートに乗る。 早ければ10分後に現場に到着するはずだ。 同日 1920時 海鳴市 市街地上空 「君達は包囲されている。おとなしく武装を解除して投降せよ。 投降した場合、君達には弁護の機会が与えられる。」 いつものお約束の言葉である。 包囲している武装隊員は12人、これからもっと増える可能性もある。 「ザフィーラ・・・」 「心得ている」 どうやらザフィーラも同じことを考えてたらしい。 お互いに背中を預け、戦闘態勢に入る だがヴィータ達が仕掛けるために踏み出そうとしたとき、武装隊員は急に散開しだした。 「なんだ?」 その行動を不審に思い警戒を強めるが、奴らは何かしてくるわけでもなかった 「ヴィータ!上だ!」 ザフィーラの声と共に上を見上げると黒衣の執務官が百を超える魔力刃を発現させている 離れたのはこのためか、武装隊員12人程度では自分達の相手には役者不足だ。 12人は足止めが目的で、執務官の到着を待っていた。そんなとこだろう 「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」 宣言と共に大量の青白い刃がヴィータとザフィーラに殺到する ザフィーラはヴィータを庇うとようにバリアを展開するが、いくらかは貫通しザフィーラたちを襲った。 「ザフィーラ!?」 「大丈夫だ。この程度でどうにかなるほど軟ではない」 「へ、上等!」 幾分かのダメージはあるようだが、ザフィーラの言葉に少し安心した この守護獣は基本的に正直者だ。どんなにやばいときでも顔色一つ変えずに淡々と事実のみを言うのだ 「どうやら他の連中は、結界に集中するみたいだな。 あの執務官は相当信頼されてるらしいな」 集団戦法に優れたミッドチルダ式で個人戦を最も得意とするベルカ式に挑むとは腕に自信のある証拠だ だが、相手がこちらの流儀にあわせてくれるならやり易い 1対1でベルカの騎士に負けはないと自負している 「ザフィーラは手を出すんじゃねーぞ」 「それはいいが、新手だ」 馬鹿でかい魔力反応が転移してくるのを感じ、その方向に目を向けると見知った連中がビルの屋上にいた。 一人は亜麻色の髪の少女、紅い宝玉を握り締めまっすぐこちらを見ている 一人は金髪赤眼の少女、ザフィーラと同じような使い魔を従えている 「あいつらは・・・!」 同日 1926時 海鳴市 強装型捕縛結界外 「ヴィータ達はあの中か」 包囲された直後ザフィーラがすぐに思念通話でそのことを伝えてきた 管理局武装隊の強装型捕縛結界・・・・外6人、内6人で結界の維持を行っているのか 『行動を!』 自らの半身とも言うべき相棒が行動を促す 外にいる連中を倒し結界破壊を優先すべきか、それとも結界内に入りヴィータ達の援護に回るべきか 『私の主ならあらゆる困難を食い破ってくれるものと信じています』 そう付け加える炎の魔剣はどうやら先日着け損ねたテスタロッサとの決着をつけたいようだ。 「そうだな。お前の期待に応えるとするか」 『Ja(承知)!』 レヴァンティンから薬莢が排出され、圧縮された魔力が炎に変換される シグナムはそのまま加速し強装結界に己の魔力を衝突させた。 上空の騎士達を見つめるなのはとフェイト 「レイジングハート!」 「バルディッシュ!」 「「セットアップ!!」」 その言葉と共に巻き起こる桜色と金色の魔力 だが、何かいつもと違う。それは力強く、活力に満ちていた。 『二人とも、よく聞いて。今日帰ってきてから説明するつもりだったけど その子たちには新しいシステムが組み込まれてるの』 エイミィさんから通信が入る。今日受けた検査と何か関係があるのだろうか? 「新しいシステム?」 『その子達が望んだの。主である貴女たちを守る為に・・・・ ベルカ式カートリッジ・システムの搭載を・・・ 呼んであげて、レイジングハートとバルディッシュの新しい名前を!』 心に流れ込んでくる新しい名前と守りたいという願い。 その願いは自分のものでもあり、手の中の相棒のものでもあった。 「レイジングハート・エクセリオン!」 「バルディッシュ・アサルト!」 『『System all green, Set Up!』』 魔力が最高潮に高まり、新たな力が起動する。 なのは達は一応武装はしたがこれはあくまで保険に過ぎない 本当の目的はお話を聞いてもらうことだ。 「私達はあなた達と戦いに来たんじゃない」 「『闇の書』の完成を目指す本当の目的を教えて」 「あのさあ、言うと思うのかよ?」 予想はしたことである。もし話し合いの余地があるのなら 最初から問答無用で襲ったりはしないだろう。 「それでも私達は知りたいの」 強固な意志が宿った瞳がヴィータ達を見る 一瞬だけヴィータはたじろいだがすぐにこちらを睨み返した。 「うっせーな、言うわけにはいかねーんだよ どうしても聞きたいのなら、あたしらを捕まえてからにしな」 そう言って武器を構えるヴィータ どうやら話し合いの余地はないようだ 「じゃあ、約束だよ。私が勝ったら事情を聞かせてもらうよ」 そういって、なのはは周りの人に念を押すように言う。 「フェイトちゃん、みんな、手を出さないで。私、あの子と1対1だから」 「うん、分かった。それに私も・・・」 フェイトはヴィータやザフィーラがいるより先を見る 突如、凄まじい音と共に何かが落ちてくる。 それはビルの屋上に着地しこちらを見る。 「シグナム・・・」 フェイトはどうやら彼女が来るのは予期していたようだ この強装型の結界は念話を遮断する能力は備わっていない 包囲された時点で他の騎士たちに連絡が行っていても不思議ではない そして、フェイトの読みどおりシグナムは現れた。 無言で剣を構えるシグナム、それに呼応するようにヴィータ、なのは、フェイトも構える。 アルフもすでにザフィーラと臨戦態勢に入ってる 「ユーノ、僕と君で結界の外側と内側を調べる」 「残りの騎士と主がいるかもしれないってこと?」 「ああ、主はいないかもしれないが残りの緑の騎士がどこかに隠れているはずだ。 君は結界の内側、僕は外側だ。」 緊張が高まり空間が軋みだす。二人の会話が終了したのと同時に8人は空へと躍り出す。 「約束は守ってもらうよ。私が勝ったら事情を聞かせてもらうから」 「へ、やってみろよ」 『Master. Please call me load cartridge.(カートリッジロードを命じてください)』 レイジングハートが搭載されたばかりのシステムを起動するように言う なのはも同じ考えだった。 古来より相手が自分より優れた武器を持ったときに行う対抗策は 新たな戦術を作るか、相手と同じ武器を持つかのどちらかだ。 自分達は後者を取った、戦術を作るには時間が足りないし 武装隊の人たちと連携を取る訓練を受けてない自分はただ足手まといになるだけだ 「レイジングハート、カートリッジロード!」 『Yes,load cartridge! Drive ignition!』 カートリッジに圧縮された魔力が解放され、なのはの膨大な魔力がさらに膨れ上がる。 魔力の扱いには慣れていたつもりだがこれはこれで応える。 体中の血管が膨れ上がるような感覚に襲われた 「でも、制御してみせるよ」 前方の見ると赤熱する4つの鉄球が飛んでくる 距離があるので余裕を持って回避することが出来た。 しかし、相手はすでに次の手をうっていた。 相手もカートリッジを使いデバイスを変形させる時間を稼ぐ為の行動だ。 紅い髪の女の子は自分を倒した、あのスパイク付きのロケットハンマーで一撃必殺を狙ってくる 『Protection powered(プロテクションパワード)』 それに反応し、バリアを展開する。 波紋状の光の壁と相手のハンマーが衝突し、辺りに火花を撒き散らす。 今までのバリアならば3秒とたたずに叩き割られただろう だが――― 「く、かてぇ・・・!」 カートリッジから供給された魔力によってバリアの硬度は今までの比にないほど上がっていた しかしこのまま攻撃を受けているだけでは勝てない 反撃に移る為、レイジングハートはある魔法を発動させた。 『Barrier Burst(バリアバースト)』 相手のハンマーが接触している所にバリアの光が集まり点滅していき その間隔が次第に短くなり限界まで点滅した途端バリアが爆発した。 だが、爆発したといってもなのははダメージを受けてはいない 指向性の爆風が攻撃側のみにダメージを与え、相手を吹き飛ばす それがこのプロテクション・パワードの派生魔法の効果である。 『Let s shoot it, Accel Shooter.(アクセルシューターを撃ってください)』 距離を取り直したところでレイジングハートはもうすでに次の魔法を用意していてくれた 「アクセルシューター、シューート!」 魔力が水増しされたことで弾数は増えるだろうと思っていたが、それでも6発くらいだと思っていた しかし、発射されたのは予想を大きく上回る12発 制御が行き渡っていないアクセルシューターはそのまま直進していくが このままだとただの花火になってしまう。 『Control, please.(コントロールをお願いします)』 制御に集中し12個の弾丸がヴィータの周りをぐるぐると飛ぶがひとつも当たらない 相手はそれを見て先ほど飛ばした鉄球をこちらに放ってくる これほど多くの弾丸を精密にしかも同時制御するのは無理だろうと判断したのだろう。 自分もそう思った、12個同時制御なんて出来ない 『It can be done, as for my master.(出来ます。私のマスターなら)』 その言葉と共にある考えが浮かんだ。 この方法ならできる。なのはは目を閉じ集中する 飛んでくる四つの鉄球を迎撃する為こちらも4つのアクセルシューターに意識を集中する 1・・2・・3・・4! 半年の訓練でシューター系の同時精密制御は4つが限界だった それはこれから訓練すればもっと数を増やせるのだろうが今はこれが精一杯 しかし4つあれば十分だ。鉄球の迎撃に成功し、今度こそ相手は攻撃手段を失う。 「約束は守ってもらうからね!」 手を振り上げ、12個の弾丸を3つの編隊に分ける。その3つを入れ替わり精密制御していくなのは 編隊Aが攻撃し終わると編隊Bに制御を移し攻撃を始め、それが終わると編隊Cと入れ替わり A→B→C→Aという感じでローテーション組んで攻撃してゆく。 こうして波状攻撃を加えることで12個の魔力弾をフル活用する それこそが、なのはが考え出した制御方法だった。 『Panzerhindernis.(パンツァーヒンダーニス)』 ヴィータは12個の弾丸から逃げ切るのは無理だと判断したらしく防御壁を全方位に展開する だがそれも完璧ではない。アクセルシューターの弾丸が当たるたびに防御壁は削られ、あっちこっちが軋み、ひびが入る。 もちろんぶつかるたびにアクセルシューターのエネルギーも消費されて入るのだが カートリッジで供給された魔力のおかげでまだ余力がある。 「まだ、私の番は終わってないよ!」 先日の戦いと今日戦ってみて分かったが目の前の紅い娘は手数で勝負するタイプじゃない 最前線に出て防御の上からでも相手を叩き潰す一撃必殺を好むタイプのようである そうであるならば、こちらにイニシアチブがあるうちに勝負を決めるのが一番だ 『Load cartridge, ”Buster Mode”』 レイジングハートからさらに薬莢が2発排出され、三日月だった形が音叉状に変わる。 体が焼け付くような感覚に襲われるが、それを気合で押さえ込むなのは。 なのはの足元に桜色の魔法陣が現れ周囲の魔力がレイジングハートの先端に集まっていく アクセルシューターの数が減るが、それでもまだ2編隊ある 「チェックメイトだよ。この距離なら外すほうが難しいよ。」 照準は完璧、この距離で相手が動けないのならば外すことは100%ありえない 「私の勝ちだよね?事情を聞かせてもらえないかな?」 「まだ負けてねえ!鉄槌の騎士ヴィータを舐めんな!」 そうは言ったもののヴィータの顔には焦りの色があった。 なのはが言ったとおり、この状況を打破するのは難しい 下手に動けば砲撃の餌食、かと言ってアクセルシューターで削られた防御壁がいつまで持つか・・・ ヴィータは頭をフル回転させるが考えが纏まらず、相手を睨むことしか出来なかった。 一方、その頃フェイトは剣の騎士との壮絶な打ち合いの最中だった シグナムの剣戟は長年蓄積され、裏打ちされた実に合理的なものだ。 どう打ち込まれたら相手が嫌がるか、どう相手の攻撃を払ったら次に繋げやすいか 打ち合う度に新しい発見があった。 「やるな、テスタロッサ。打ち合うわずかな一瞬で私の技術を盗んでいるようだな」 「私の手数じゃ、どうやっても貴女に及ばない。ならある所から持ってくるだけです。」 しかし、僅かの一瞬で盗めるほどシグナムの技術は簡単なものではない 「いいセンスだ。」 この少女は大きな器だ。後からどんどん物を継ぎ足せる。 シグナムはしばらくぶりに出会うことができた好敵手を見て 自分が興奮していることに気がつく。 「いい・・・センス?」 「そもそもお前のデバイスは斧型だ。しかし私の技は剣に最適化されている。 お前はそれを斧でも使えるようにとっさにアレンジしている。 ・・・まさか無意識でしているのか?」 フェイトが気付いてなかったようだがシグナムはそれを看破した その言葉にフェイトは一瞬照れてしまったが、すぐに気を取り直し武器を構える。 シグナムもそれに呼応しレヴァンティンを構える 「ハッ!」 気合と共にフェイトはシグナムに突進する バルディッシュで脳天を狙うが、シグナムはレヴァンティンでそれを弾く。 攻守が入れ替り今度はレヴァンティンが閃き、袈裟切りが放たれる。 「シャッ!」 フェイトはシグナムの斬撃をシールドで受け止め相手の重心をずらそうとする。 「レヴァンティン、カートリッジロード!」 シグナムの魔力が高まり重心がずらされる前にシールドごと叩き斬ろうとする。 フェイトも負けじとバルディッシュのリボルバーからカートリッジを3発ロードさせる。 しかし矛と盾の競争は、えてして矛が有利なのだ シールドは真っ二つにされ、フェイトは自分の企みが失敗したと判断し、すぐさまシグナムと距離を取る。 「やっぱり、まだ正面から向き合うには足りないかな?」 もう一度距離を取りながらカートリッジを1発消費し魔法を編む 「プラズマランサー、ファイヤ!」 力場に封入された4発のプラズマの弾丸がフェイトの前に出現する それは高速でシグナムに殺到するが、スピード自慢のシグナムは余裕を持って上に回避する だが、それは予想していた。自分の本当の目的はシグナムをあの場から動かすこと・・・ 「かかった!」 フェイトは手を振ってバルディッシュに命令し、シグナムの剣を受け止めるときに 仕掛けておいた別の魔法を発現させる。 「なに!?」 突如シグナムの周りに現れる魔法陣、それが煌いたと思ったら 足に金色の丸い輪のようなものが絡みつく。 「これは設置型のバインド、いつの間に・・・!?」 すぐさまバインドを破壊しようとしたが、その一瞬で決着は着いた。 「私の勝ちです。投降してください、シグナム」 目の前に戦斧を突きつけ投降を促すフェイト 「3発もカートリッジを使ったわりにシールドが脆かったのはこのためか。 ・・・・どうやらお前の策に嵌ったようだな」 「私では技量もパワーも貴女に勝てません。 だから、罠に掛けることにしました」 「久々の強敵に熱くなった私の未熟だな。 ・・・いつぞやとは立場が逆になったな、テスタロッサ。それで我々はこれからどうなる?」 そうは言うがシグナムは不敵な面構えをしていた。 地上ではアルフ、ザフィーラがパワー勝負をしている 体格ならザフィーラが、しかし主の魔力量ならばアルフが上である故に なかなか勝負が着かない。 「オラオラ、いい加減お前らの目的を吐いて楽になっちまいな」 アルフはワンインチパンチを繰り出しながら、悪役のような台詞を言う。 「言うわけがなかろう。管理局が『闇の書』をどういう風に処理してきたか知らんわけでもあるまい。」 ザフィーラが痛いところを突く様に返す。 アルフも聞いたことがある。闇の書が完成すれば手がつけられなくなる 故に被害が拡大する前に魔導砲で吹き飛ばしてしまうのだ。 もちろん主ごと・・・・ 「貴様も使い魔なら主がそのような目に遭うことを我慢できるはずがなかろう」 「そうだけどさ、完成する前ならそんなことする必要なんてないんだよ」 「信用・・・・できん!!」 ザフィーラは力を込めアルフの胸倉を掴み全力で投げ飛ばす。 距離が出来たことで結界の外にいるシャマルに思念通話を入れる。 (シャマル、聞こえるか?) (ザフィーラ?中の様子はどうなってるの?) (ヴィータは防御壁の中から動けない、シグナムはバインドに捕まって動くことが出来ない このままでは2人とも管理局に捕まる。) (そんな・・・・どうにかできないの?) (俺も相対している相手がいる。どうにかできるのはお前だけだ。 やはり『闇の書』の力の一部を解放して結界を破壊するしかない) (でも、それじゃあページが・・・・) (今、使わなかったら『闇の書』の完成自体が不可能だ。) (・・・わかっ) 突如シャマルからの思念通話が途切れる。 不審がるザフィーラは何度も思念通話を送るが返事はない。 シャマルも見つかってしまったのか?そう思い結界の外の方に目をやるところである事に気がつく あの臭いがする。 テスタロッサという魔導師の使い魔も臭いを感じ取っているようだが その臭いが何の臭いかは分かってはいないようだ。 ドンドンドン! どこからか聞こえる発砲音。ザフィーラは音のする方向に目を向けると そこには注目を集めるように上空に発砲しているM9の姿があった。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/171.html
第三話「混戦」 12月2日 1955時 海鳴市 市街地 時間は、なのはとヴィータが衝突する少し前に戻る。 宗介はゴーストタウンと化した市街地を混乱しながら走っていた。 (一体何が起こっている?) つい先ほど前まで辺りは人で賑わっていた。だが今はどうだ? 自分がよく知った中東の廃墟のように辺りは、がらんとしている。 さらに分からないのは護衛対象が空を飛んでいたことである。 (俺は夢でも見ているのか?) が、すでに自分の頬を三度もつねった。 これは夢ではない、現実だ。 仕方なく自分を信じて対象が飛び去った方向に走ってゆく。 「ケット・シー、聞こえるか?応答せよ」 別の場所からヴァーチャーを監視・尾行していた情報部員に通信を入れても応答はない。 通信機は先ほどから空しいノイズを垂れ流すだけだ。 (通信機の故障、いやジャミングされている?) 様々な可能性を考えているうちに、オフィス街に差し掛かった。 完全に対象を見失ったか? そう思っていると突如ビルの外壁が崩れ、巨人が現れた。 あれは・・・ 同日 2004時 海鳴市 オフィス街 敵に止めの一撃を刺そうと、アイゼンを振り下ろすヴィータはビルを揺らす衝撃にバランスを崩した。 「な、何だ!?」 突如背後の外壁が吹き飛び、巨大な手が出現する。完璧な奇襲をくらったヴィータは回避する間もなく その手に捕まってしまい遠くに投げ飛ばされる。そうして、初めて自分に起こったことに気付く。 ビルの三階ほどある高さの巨人が背後にいきなり現れたのだ。 マッシブなシルエットに灰色の装甲、頭部から伸びるポニーテールが異彩を放ち、禍々しい印象を与えていた。 腰に2本の大型ナイフが保持されている。 「何だ、こいつ?管理局の傀儡兵か?」 傀儡兵はゆっくりこちらを向き、大型ナイフ―――ヴィータは知らないがGRAW-3という 名称の30ミリ機関砲つきの単分子を構え、発砲。 ヴィータはすんでの所で回避に成功する。 いきなり警告なしの攻撃は管理局らしくない。そもそも質量兵器を使ってること自体あいつららしくない が、そんなことを考えているうちに敵の傀儡兵は砲弾をばら撒いてきた。 「く、一体なんだって言うんだよ!」 ビルの中で苦痛に喘いでいるなのは。リアクティブ・パージのおかげでダメージが 最小限になったとはいえ、背後の壁に衝突した痛みは小学三年生には耐え難いものだった。 なんとか立ち上がろうとしたところで天井の一部が崩れなのはの上に落ちてくる。 傷ついた体で避けることもできず、反射的に目をきつく瞑る。 ? だが、いつまで経っても来るはずの衝撃は来ない。 ゆっくりと目を明けると破片は緑と金色の波紋状の膜によって受け止められていた。 「ゴメン、なのは遅くなった。」 バリアを展開しながら女顔の少年ユーノは、なのはの肩に手を乗せた。 「ここまで来るのに手間取って」 黒い外套、金髪のツインテールの少女フェイト・テスタロッサは申し訳なさそうに言い バリアの角度を変え、少し離れた場所に建材を落とす。 「急になのはが住んでる地区に大規模な結界魔法が発生して急行したんだけど 結構離れた場所にいたから遅くなった。ゴメン。」 「ううん。来てくれて嬉しいよ。フェイトちゃん、ユーノ君」 「取り合えず、ここを出よう。また崩落が起きたら厄介だ。」 ユーノは、なのはを担ぎフェイトと共にビルから出る。 (フェイト、フェイト。あの傀儡兵、なのはを襲った奴に攻撃してるよ) 念話を使って、フェイトの使い魔であるアルフがここから少し離れた場所で起きている戦闘を伝えてくる。 傀儡兵は持っている銃剣を襲撃犯に発砲しており、そのせいで襲撃犯はなかなか攻撃のチャンスに移れていない。 脱出するなら今がチャンスだ。 「ユーノ、この結界から今すぐ転移魔法を使って脱出できる?」 「ちょっと待って・・・・・・駄目だ。出る分は、また別の転送魔法を編まなきゃいけないみたいだ。」 「どれくらい掛かりそう?」 「アースラのバックアップが無いから何とも言えないけど、20分以上かかるよ。 邪魔が入らなければの話だけど。」 「分かった。それまで私とアルフでなのはとユーノを守る。」 宗介は、それを見るとすぐ様物陰に隠れた。 (なぜヴェノムがここにいる?) そんなことを考えていたが、すぐさまマオに通信を入れる。 「ウルズ2、マオ聞こえるか?こちらウルズ7、応答せよウルズ2」 最初はノイズが走り、またも無反応に思われたが今度は繋がった。 『こちらウルズ2、どうしたウルズ7』 「市街地中心から少し離れたオフィス街でヴェノムが出現した。 俺の装備では歯が立たない。こっちに来てくれ。」 『何言ってるの?・・・・いや分かった、至急そちらに向かう』 最初は、冗談だと思っていたマオも通信の向こうから聞こえてくる機関砲の砲声を聞き それが紛れもない事実だと理解した。 『日本の市街地でASって、奴ら正気?この時間帯なら目撃者は膨大な数になるでしょうに』 「それは分からん、辺りには誰もいないんだ。それと敵の主武装はGRAW-3単分子カッターだ。 早く来てくれヴァーチャーが巻き込まれかねん。」 辺りは崩れたビルの破片で煙が立ちこめ、宗介はヴェノムが発砲している先に 何があるのか確認することはできなかった。 『分かった。ソースケ、アンタは私と交代よ。』 宗介の見立てでは、近くの河川を利用して全速力で移動すれば5分以内に来れるはずだ。 それまでASの注意を逸らしたいが敵の前に出るのは自殺行為だ。 おまけにこちらは、9ミリ拳銃と予備弾倉が3つ、手榴弾が3つ、クレイモア地雷が一つ アーミーナイフ、投げナイフと各種薬物だけだ。 これで、ASの相手は無理だ。 断腸の思いで宗介は対象を探し離脱する為、その場から離れた。 ヴィータは傀儡兵が放つ砲弾を回避するのに専念していた。 フルオートならば毎分300発、しかも音速並みの速さで飛来する砲弾だ。 当たれば痛いでは済まない。即座に血煙にされてしまうだろう。 今まで避けてこれたのは回避に専念してきた事と相手の狙いが甘い為だろう。 だが、その均衡も長くは続かなかった。傀儡兵が発砲した砲弾がヴィータの背後のビルに命中し 建材の破片がヴィータに降りかかってしまい足が止まってしまう。 その隙を突いて、傀儡兵は一瞬にして間合いを詰めてヴィータに切りかかる。 「しまっ」 回避も弾くことも間に合わない。ヴィータは目の前に迫る白刃を見つめるしかできなかった。 やられる。そう思った瞬間、目の前に白いジャケットを羽織った背中が現れ・・・ 「はああああ!」 凄まじい金属の衝突音と共に巨人の刃は弾かれる。 「レバンティン、カートリッジ・ロード」 『Jawhol(了解)!』 薬莢が排出され刀身が炎を纏い、現れた騎士はポニーテールを持つ傀儡兵に突進していく。 傀儡兵は、それを一度手の大型ナイフで受け止めたが刀身が溶けていくの見て後ろ跳びで距離を取った。 「縛れ、鋼の軛 !」 傀儡兵が跳んだ先に突然、白く発光する鎖が現れ傀儡兵の片腕を縛る。 すぐに引き千切ろうとするが、ザフィーラの鎖は異様に頑丈のようだ。 「どうした、ヴィータ。お前らしくない。」 「シグナム・・・。うっせーな、弾切れを待って反撃する予定だったんだよ。」 「そうか、それはすまなかったな。で、あれは一体なんだ?」 シグナムは鎖で腕を拘束された巨人を見る。 「知らねーよ、背後にいきなり現れて襲ってきた。」 「そうか。・・・アレの相手は私がしよう、お前はザフィーラと蒐集を急げ。」 ようやく鎖を大型ナイフで切り裂いた傀儡兵はザフィーラに発砲し、こちらを見る。 「分かったよ。」 「ああ、それと落し物だ。修復もしておいた。」 飛び去ろうとするヴィータにさっき落とした帽子が投げ渡し シグナムは傀儡兵に向かって突進した。 「来た。アルフ、迎撃いくよ。」 「あいよ、フェイト。」 飛んでくる紅い娘と褐色の男を迎え撃つ為バルディッシュに刃を発現させる。 相手は、あのなのはの装甲を破った相手だ。クロスレンジでの戦闘は避けたほうがいい。 時間稼ぎが第一目標であるのでフェイトはアークセイバーを放ち距離を保ちながら戦うことにした。 (アルフ、本来の目的は脱出までの時間稼ぎだからね?それと出来る限り相手の情報も集めとこう) (了解だよ、フェイト。) その言葉とともに空中戦が始まった。 傀儡兵の弾幕を切り抜けながらシグナムは敵に肉薄していた。 ヴィータの速さも決して悪くはないが、スピードで言えばヴォルケンリッターで一番はこの自分だ。 「はあ!」 シグナムは傀儡兵を縦に両断すべく、己の得物を振り降ろす。 傀儡兵はそれに反応し左手の大型ナイフで受け、そのままシグナムを押し飛ばす。 シグナムは後退し、正面から薙いでくる敵の刃に自らの剣を這わす。 火花が飛び散る、お互い立ち位置を変えず激しい攻防が続く。 突き、薙ぎなど様々な傀儡兵の攻撃にシグナムはレヴァンティンを這わせ、軌道を変える。 一息に一回の割合の応酬が二回、三回とスピードを上げていく。 (パワーでは、やはりあちらが上・・・だが小回りは自分のほうが上だ。ならば!) レヴァンティンからカートリッジをロードし、地面に炎を放ち土煙を巻き上げる。 その煙に紛れ背後からの一撃を加え、その攻撃は敵を真っ二つにし――――― しかし、そこでシグナムは目を疑う。 「なにっ!?」 レヴァンティンの刃が壁にぶつかった様に虚空で止り、逆にシグナムは弾き飛ばされた。 反撃が来る。シグナムは、そう思い身構える。 だが、追撃は来なかった。 傀儡兵はシグナムには興味を失ったかのように道路の先を見つめていた。 突如、何もないはずの空間から砲弾が飛び出してきた。 だが、またもや傀儡兵の前で攻撃は防がれ砲弾が弾け飛ぶ。 (なんだ?) そうシグナムが不思議に思っていると、インクが滲み出してきたように新たな巨人が姿を現した。 色は、目の前の傀儡兵と同じだ。スマートで華奢なシルエットをしているが力強い印象を見るものに与える。 新しく現れた傀儡兵は、こちらを見て一瞬呆然とした感じがしたが ポニーテールを持つ傀儡兵が攻撃の構えを執るのを見て、そちらに集中したようだ。 (どういうことだ、味方同士ではないのか?) シグナムは困惑するが、すぐに自分の目的を思い出す。 傀儡兵が自分達を邪魔しないのなら、蒐集を急ぐべきだ。 そう考え、ヴィータとザフィーラの援護に向かう。 上空の戦いを見ながら、なのはは自分の無力感に打ちひしがれていた。 今も、自分を倒した娘と戦っている親友のフェイトちゃん。転移魔法を編んでいるユーノ君、大柄な褐色肌の男を足止めしているアルフさん。 (私は何もできないの・・・?) レイジング・ハートは中破し、自分もボロボロ・・・でも何か、何かできることがあるはず 「なのは、敵の新手が来たみたいだ。二対三は流石のフェイト達でも不利だ。僕も戦闘に参加してくる。君は動かないで」 敵の来襲を察知したユーノ君が告げ、飛び立つ。 でも、ユーノ君は戦闘向きじゃない。私が何とかしなくちゃという気持ちに拍車がかかる。 そう思っていると、手に握っているレイジング・ハートがなのはに言う。 『マスター。スターライト・ブレイカーを撃ってください』 「それは・・・だめだよ。今、撃ったらレイジング・ハート壊れちゃうよ。」 『このままでは、ジリ貧です。状況を打破するには結界を破壊しなければいけません。』 確かにそうだ。相手には自らの魔力を爆発的に上げる何かがある。 下手をすれば、助けに来てくれた三人も自分の二の舞になってしまう。 だけど・・・・ 『私は大丈夫です。信じてください、マスター』 その一言が背中を押してくれた。そうだ、一緒に困難を乗り越えてきた相棒を信じなくてどうするだろうか? 今、この場を何とかできるチャンスがあるのは自分達だけだ。 「行くよ。レイジング・ハート!」 「Yes,master.」 (フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん、私がSLBで結界を破壊するから!) 他の三人はなのはの行為を心配するが、構わずチャージを開始する。 『10』 デバイスの先端にディバイン・バスター以上の魔力が集まりだす 『9』 自分の魔力だけに留まらず、周りの魔力も集める。相手もこちらの狙いに気付いたらしいが、みんなが決死の思いで足止めをしてくれている。 『5』 半年ぶりに撃つ分、制御は慎重に・・・だがダメージを受けてる分、前に撃ったときより負担が大きい。 『3・・・・3』 レイジング・ハートが壊れかかった声を出す。相棒のことを心配するが、レイジング・ハートは先を促す。 魔力は十分に収束し、後は発射するだけだ。なのははデバイスを振り上げる。 「スターライトッ!?」 最後の仕上げである魔法の名前を放とうとしたとき、それは思わぬ痛みによって止められた。 手だ。自分の胸から手が生えている。ホラー映画のワンシーンのような現実に眩暈を起こしそうになる。 その手には光る何かが握られていたが、もうそんな事を気にしている暇はない。 痛みに耐え完成した魔法を放つ為、レイジング・ハートはカウントを再開する。 『2・・1・・0』 「スターライト・ブレイカァァァァァ!」 自身最高の威力を誇る収束魔力砲を放ち、結界が破られるのを確認してなのはは気を失った。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3278.html
* 「人間じゃ、ない……?」 フェイトの発した台詞にジョーカーの体を強ばらせるカズマ。フェイトは彼を抱き締めたまま、その顔は見えない。 彼女がどんな表情で自らを“人間ではない”と言うのか、それをカズマは知ることが出来ない。 「フェイトちゃんは人間だよ!」 「なのは、私はそういう意味で言ったんじゃないの。うん、母さんやなのはのお陰で私は生まれが特殊でも生きてこれた。今でも感謝してるよ」 「生まれが……じゃあ、フェイトはどうやって――」 「――今から話すよ。カズマには、聞いてほしいから」 腕をほどいたフェイトが、カズマに向けて小さく微笑みかけた。 それが、彼女の話の始まりだった。 リリカル×ライダー 第十二話『来訪者』 「プロジェクトFATE――――それがフェイトの出生の秘密なのか」 「……うん」 彼女が話した一つの計画。 時空管理局には組織を束ねる中枢機関、最高評議会と呼ばれる存在があったらしい。 彼らは管理局が質量兵器、つまり銃などの兵器を禁止しているため常に戦力不足であり、そのため次元世界の治安を守り切れない状況だった。そんな現状を打破するために、彼らはある計画を始動させた。 ――プロジェクトFATE 後にプロジェクトF、又は人造魔導師計画とも呼称されることになるこの計画とは、人為的に魔導師を生み出そうとする計画だった。 何故魔導師を生み出す計画になったのかというと、魔導師になれる人間は全体の三割程度で、更に才能ある魔導師となるとその中の数パーセントしかいないからだそうだ。なのはやはやては地球という本来魔導師の生まれない星で誕生した変わり種らしい。 また魔導師の魔導師たる所以である魔力精製器官『リンカーコア』を人為的に再現できないのも理由らしい。周辺の霧散魔力を集積、倍加させる魔力炉や一時的に魔力を充填して魔法の発動を強化、促進するカートリッジなどがあるものの、魔力そのものを生み出すことは出来ないそうだ。 話を戻すが、この計画を遂行する人材を確保するために最高評議会は古代の遺伝子操作技術を用いてある天才を作り出した。 ――ジェイル・スカリエッティ。 彼は遺伝子レベルでこの計画を遂行しようとする意思が刻み込まれており、その最高レベルの知能を発揮して計画を進めた。 彼が取った手段はクローン技術。魔導師をクローニングし、記憶を転写することで魔導師そのものを複製するというものだった。 元々、最高評議会は遺伝子操作技術で計画を進める予定だったため、スカリエッティもその方面に長けた人物になるよう調整されていたのだ。 「今は最高評議会もメンバーが変わったし、計画自体も戦闘機人計画に変わって廃れてしまったんだけどね」 フェイトが疲れたように息を吐く。所々なのはも助力しながら説明された話は、俺には理解し難いややこしい内容だった。 しかし重要なのはこれからだ。 「その計画とフェイトがどう関係するんだよ?」 フェイトが視線を下げる。そこでなのはがフォローするように口を開いた。 「計画自体はさっきも言うように破棄されたの。けれど、ある人がその計画を引き継いだ結果、計画は別の形で続行されることになった。その人が――」 「――私の、母さん」 引き継ぐように、フェイトが重い口を開いた。 「母さんは娘をなくしていて、我が子を生き返らせるために計画を引き継いだの。けれど、結局生み出されたのは失敗作だけだった」 「失敗作、って……」 俺の顔から血の気が引くのを感じる。いつの間にか、俺の体はジョーカーから人間の姿に戻っていた。 「私、だよ。その娘と同じ外見、記憶を持ちながら全くの別人になってしまった失敗作。試験管から生み出された人の形をした異形【ホムンクルス】」 「そういうことか……」 プロジェクト名をそのまま付けられたのは、おそらく失敗作としての烙印だろう。娘の名を授ける気も起きなかったのか。 「……くそっ!」 彼女には本当の親がいない。俺は死んだとはいえ覚えているが、彼女には覚える親の顔さえないのだ。 「でも平気だよ。今は私を大切にしてくれる母さんや親友がいるから。それに私は自分を生んでくれた母さんも好きだから」 そう言って笑うフェイト。 彼女は乗り越えたのだろう。他人には想像も出来ないほどの地獄を、親友や多くの人に助けられながら。 「だから今度は、カズマは私が助ける」 最初はなのはを傷付けた俺に敵意を剥き出しにしていた彼女が、次第に見舞いにも来るようになり、今はこんな俺の手を握って温かい言葉をかけてくれる。 だからこそ、気付いてしまった。 「――ありがとう。けど、俺はここには居れない」 「どうして!?」 フェイトの顔から目を反らして手を見る。俺は誰かに守られる存在でもなければ、ましてや人と共に存在できる体でもない。そう、この手は―― 「――全ての人々を、守るためにあるんだ」 そのためには、何かを求めてはならない。これは無償の戦いだ。例えそれが、目に見えないものだとしても。何か大切なものを作ってしまったら、俺の戦いも終わってしまうから。 そう、こんな所で立ち止まってはおれない。 ――――ドクン。 人々を、守らなければ。 ・・・ カズマがアンデッドを封印するために六課を出た次の日、はやてはまたもや頭を抱えたくなるような事態に直面していた。 「フォォォォォウ!」 意味不明な叫び声を上げる男。先程フェイトちゃんのスポーツカーと違って趣味の良いデザインの車が六課に突っ込んできたのだが、それに乗っていたのがこの男だった。 「いやぁ、入局申請? みたいなのをするために来たつもりが事故の処理をやる羽目になるとはねぇ」 椅子にふんぞり返りながらそんなことを言う男。 アンタが原因だろ、とは言わない。はやては大人なのだ。 「取り敢えず管理局保安部には連絡しておきました。それで、どういった御用件でしょうか」 極めて事務的に、かつ口調を固めに言うはやて。彼女としては、さっさと要件を済ませて出ていってもらいたいのだろう。 だがこの男、アロハシャツに丸いサングラスといった奇抜な外見や奇妙な言動からも分かる通り、一筋縄ではいかない。 「へぇ、キミが部隊長? やっぱり美しいモノは皆好きだよねぇ。けど怖い顔してると美貌も台無し、やっぱ誘うなら笑顔でなきゃ」 「……真面目に答えて下さい」 というより、話が通じなかった。 「いやぁ、管理局に入りにきたのよ。就職、ってヤツ?」 はやては目の前の男を鋭く睨み付ける。冗談にしか聞こえない口調で言っていい内容ではない。少なくとも、はやての前では。 だが彼女は大人だ。どれだけ内心怒り狂っていようとも、公の場では笑顔すら装う。 「管理局は非常に大きな組織です。入局されるのでしたら地上本部で身体検査、心理テスト、学力テストを受けて最適な部署を紹介してもらってください。ここでは募集は行っておりません」 ポーカーフェイスのまま、事務的な内容を告げるはやて。彼女は本人すら気付かぬ内に身構えながら、簡単な地図を描いた紙を差し出す。 「ではお引き取り――」 「――仮面ライダー、ここにいるんだよなぁ?」 その台詞に、はやてのポーカーフェイスは砕け散った。 彼女の頭に浮かぶのは前回の戦い。彼女の愛しい守護騎士が傷付いた、あの戦闘。 『俺は、仮面ライダーだ!』 カズマが放った、あの言葉。 「実は知り合いなんだよねぇ、ちょっと顔を見たくてさぁ」 「カズマ君のことを知っとるん!?」 はやての手は自然と、男の襟首に向かっていた。 「ちょっと過剰じゃない? スキンシップがさぁ」 「何を知っとるんや!? カズマ君はいったい何者なんや!」 魔導師では歯が立たなかった怪人を倒したカズマを思い出すはやて。彼女は彼が普通じゃないことに薄々感付いていた。記憶が戻りつつあることも。 だが彼女はそれを聞くことはできない。聞けばカズマはもうここに居れなくなってしまうから。 彼女は、部隊長なのだから。 「教えてや! 私は、私は知りたいんや!」 「ふぅん? 仮面ライダーって、こっちでも人気なんだ?」 そんな彼女を見ながら笑みを深める男。いつしかその笑みが危険なものになっていることに、はやては気付かない。 「じゃあさ、こうしようか」 「……なんや?」 「ライダーが来るまでに俺を倒せたら、とか」 その瞬間、彼女の体が三メートル先の壁まで吹っ飛んだ。 「ッ! かはっ、けほっ」 「今日は助けてくれる奴、いないんだろ? 二人でお楽しみってわけだ。フォォォォォウ!」 いつの間にか、男の外見は変化していた。 凶悪な面に羊を思わせる双角。左右非対称な体、白い右側の体は肩から真っ直ぐ歪角を伸ばし、白い羊毛で覆われている。 その名はカプリコーンアンデッド。 彼が上級アンデッドと呼ばれる存在であることを、はやては知る由もない。 「まさか、怪人やったなんて……」 吹き飛ばされた直後にデバイスがオートで起動したため、彼女の体は白黒のバリアジャケットに保護されていた。それでも装甲板を埋め込んだ壁をへこませるほど衝撃は、彼女を苦しめた。 「怪人? 違うな、俺達はそんな名前じゃない」 心底愉快気に笑うカプリコーンアンデッドは太く逞しい右腕を振り上げ、掌を拳の形に変えていく。 「俺達はアンデッドって言うんだぜ? フォォォォォウ!」 その右腕を、勢いよく振り下ろした。 「――ッ!」 はやても十字架を模した杖型デバイス、シュベルトクロイツを構えながらプロテクションを発動させて受け止めるが、その凄まじいパワーにじりじりと圧されていく。 「フォォォォォウ!」 さらに左腕も駆使しての連撃を放つカプリコーンアンデッド。その怪力によって打ち出される拳撃は単純なパンチにも関わらず凶器と呼べるレベルである。 特にはやては六課でも屈指の魔力量を生かした大規模魔力爆撃が得意な後方支援型だ。なのはのように砲撃がメインながらあらゆるレンジを対処出来るタイプとは異なる。 そのため近接戦では無類の強さを誇るアンデッドとは余りにも相性が悪すぎた。 (せやかて、こんな所で私は負けられないんや!) 少しずつ後退しながらもはやては新たな魔法の術式を起動させ、足元に正三角形を元にした魔法陣を展開させる。 「刃を以て、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー!」 詠唱によって術式を発動させる。 その瞬間、カプリコーンアンデッドを囲むように12の血に染まったような紅い短剣が出現する。 「行け――!」 それらが一気に中心点を屠るべく迫る。 「グォォォォオ!?」 カプリコーンアンデッドの全身にブラッディダガーが突き刺さり、さらに爆発を以て傷口を抉る。 それに対しカプリコーンアンデッドは今までの喋り方からは想像も出来ないような獣じみた呻き声を上げる。 「今の内に……」 はやてが素早く部屋の隅に備え付けられた警報装置を作動させようとする。だが―― 「なんで!? なんで作動せんのや!」 「テメェ、痛ぇじゃねぇかよ! 可愛い顔して舐めた真似してくれちゃってよぉ!」 作動しないスイッチを叩くはやてを後ろから襟首を掴んで強引に持ち上げるカプリコーンアンデッド。 その右腕を、ぎりぎりと握り込む。 「やっぱり女って汚いよなぁ。前も女に騙されて殺られたが、今度はそうはいかねぇ!」 カプリコーンアンデッドは舐めるようにはやての顔を眺め、そして彼女の腹に向けて拳を打ち込む――! 「フリジットダガー!」 その瞬間、カプリコーンアンデッドに氷で作られたような蒼く透き通ったナイフが幾重も刺さった。 「グォォォォオォォォ!?」 その傷口は瞬く間に凍り付いていき、カプリコーンアンデッドの動作を阻害する。 はやてはそれを見て弛んだ手から脱出する。 「リィン! 気付いてくれたんか!」 「もちろんです~! はやてちゃんを守るのがわたしの務めですから!」 リィンが場にそぐわない明るい笑みを浮かべる。妖精のような外見だから余計に場違いだ。 しかし、そんな笑顔も一瞬で暗いものに変わった。 「ただどこからか分かりませんけど、六課のコンピュータがハッキングをかけられて各設備が使用できなくなってます。ロングアーチスタッフはその処理に追われててんてこ舞いですよ~」 (それが原因やったんか……) いったい誰が、と思考を続けようとするはやて。 しかし彼女がそんな思考に埋没できる時間はない。 「舐めてくれちゃってよぉ。いい加減ブッ殺さないと気がすまねぇなぁ!」 「リィン、ユニゾンや!」 「はいです!」 立ち上がったカプリコーンアンデッドに対抗すべくユニゾンデバイスたるリィンが本領を発揮する。 光り輝き出したリィンがはやてに溶けるように消えていくと同時にはやてを光が包み、髪の色や黒が基調のバリアジャケットを白く染め上げていく。 カプリコーンアンデッドとはやての戦いが、始まった。 ・・・ 「はぁ、はぁ、はぁ――――」 目の前で斬り伏せたジャガーアンデッドの腹部にあるバックルが二つに割れる。その割れ目にはスペードの刻印と9という数字が刻まれている。 俺はアンデッドに向けてカードを放ち、封印する。鮮やかな躍動感のある豹の絵が描かれたカードを確認しながら俺は後ろを向いた。 (おかしい。あの感じは上級アンデッドだったはずなのに……) 今回のアンデッドの反応は妙だった。現れては消えを繰り返すもので、探すのにかなりの時間を費やしてしまった。 しかし今封印したアンデッドの反応だったとは思えない。あれは上級アンデッドのものだった気がするのだ。 (おかしい……) 嫌な予感がする。何か忘れているような、大切なものを放っておいてしまっているような――。 そんな俺の視界に、何かが滑り込んだ。 「また会ったな、剣崎」 「た、橘さん!?」 現れたのは橘さんだった。しかも今回はバイクに跨がって。 そのバイクは―― 「ああ、お前のだ。あの伯爵に頼まれたのでな。今は従うしかないので届けに来た。感謝しろ」 不快そうに眉を潜めながらそう話す橘さん。だが今回ばかりは全く気にならなかった。 ――ブルースペイダー。 あらゆる不整地を走行出来るように計算された高い車体。蒼いカウルで保護された車体。そして最大の特徴たるスペード型の青いスクリーン。 かつての愛車であり、たった一人で戦っていた頃も共にいてくれた相棒。 「……なんで、橘さんが?」 「俺は届けに来ただけだ。次に会うときは殺し合う仲、お前と話すことなんてない」 本当に鬱陶しいんだと言わんばかりにヘルメット(それも俺が使っていたものだ)を脱いでハンドルに引っ掛け、バイクを降りる。 「さっさと行け、お前がベストのコンディションで戦えないと俺も気分が悪い」 「どこに行けと言うんですか?」 「知るか。自分で考えろ」 記憶と随分違う橘さんの言動に戸惑いつつ、話の内容を咀嚼する。 (まさか、六課が……!) 辿り着いた結論は、嫌なものだった。頭の悪い俺の結論にも関わらず、外れている気がしない。 「すいません、行かせてもらいます!」 俺がブルースペイダーに跨る。セルでエンジンを起動させ、クラッチを握りながらギアを一速に切り替える。 橘さんは何も言わずに何処かへと去っていった。 その背中を見届けた後にアクセルを少しずつ捻りながらクラッチをゆっくりと開き、緩やかに、だが徐々に加速させながら走り出した。 ・・・ 「はぁ、はぁ、はぁ……」 はやてが苦し気に息を吐きながらシュベルトクロイツを構え直す。 対照的にカプリコーンアンデッドは腕を軽く振りながら軽い足取りではやてに迫ってきていた。 はやてがリィンとユニゾンしてから、すでに15分が経過していた。 「健気だねぇ、まだ抵抗を止めないとは」 じりじりとあちこちが凹んだ壁へと追い詰められるはやて。バリアジャケットが傷付いて露出した、赤みがかった白い肌を舐めるように見回すカプリコーンアンデッド。 先に動いたのは、はやてだった。 『「フリジットダガー!」』 はやてとユニゾンしているリィンの声が重なるように発されるのと同時に、部屋の各所から水晶のように透き通った冷気を帯びるナイフが幾つも出現する。 それらは目にも止まらない速度でカプリコーンアンデッドに飛来する。だが―― 「ハァァアァ!」 カプリコーンアンデッドが吐き出した青いエネルギー体が、それらを弾き飛ばした。 「くっ……!」 はやてはエネルギー体の突撃をプロテクションで防ぐが、吹き飛ばされて壁に激突してしまう。 「フォォォォォウ!」 カプリコーンアンデッドが止めを刺すべく右手を振り上げる。 その時だった。 「りゃあああぁぁぁ!」 強化ガラスを突き破って、カズマがブルースペイダーに乗ったままカプリコーンアンデッドに突撃した。 「――ッ!?」 ウィリーによって持ち上げられた前輪にかかった力学的エネルギーはカプリコーンアンデッドを容易く吹き飛ばすに足るものだった。 「大丈夫か、はやて!?」 「カズマ君……」 『カズマさん来てくれたんですねっ! リィンはちゃんと信じていましたよ!』 カズマがブルースペイダーから降りつつはやてとリィンの元に行こうとする。 しかし一足早かった者がいた。 「あぐっ!」 その影は太い腕をはやての首に回し、そのまま縛り上げる。 「ベルトを下に置け! さもないとこの女が死ぬぞ?」 影の主、カプリコーンアンデッドは愉しげな声でそう言った。 その台詞、光景に何故かカズマは既視感を覚える。この吐き気のするような光景に。 「卑怯な!」 「五月蝿い! お前のせいで俺はこんな目に遭ってるんだからお前も痛い目を見ろ!」 「何のことだ!?」 「覚えてないとでも言うか!? なら今すぐ思い出させてやる!」 怒り狂ったカプリコーンアンデッドははやての首を絞める腕に力を込めていく。その太い腕と対照的に細いはやての白い首が嫌な音を上げ出す。 「あっ、あ、ああ……」 「はやて!」 「さっさとベルトを置け!」 カズマがカプリコーンアンデッドを睨み付けるが、意にも解さず笑みを浮かべながら首を絞めていく。 だが、この時三人は後一人の存在を忘れていた。そう、はやての中にいるもう一人の存在を。 『フリジットダガー!』 突然はやての内側から舌っ足らずな叫びが上がる。 「な……!?」 その瞬間、カプリコーンアンデッドの真上に出現した氷の刃が彼の脳天を貫いた。 「今だ!」 カズマがそこでショルダーチャージをかけて吹き飛ばす。その腕の中には、救出されたはやてがいた。 「か、カズマく――」 「はやて、離れてくれ。俺はあいつを倒す!」 「……」 はやては一瞬不満そうな表情を浮かべるが、状況が状況故に素早く身を離す。 カズマは醒剣ブレイラウザーのカードホルダーを展開し、二枚のカードを抜き出す。 『KICK,THUNDER』 スラッシュされた二枚のカードから引き出される力は混ざり合い、コンボという名の必殺技へと昇華される。 『――LIGHTNING BLAST』 カプリコーンアンデッドが、ゆらりと立ち上がった。 その動作と同時にカズマはブレイラウザーを地面に突き刺し、彼の元に走る。 カプリコーンアンデッドはそれを見ながら慌てて腕をクロスさせて防御態勢を取る。 カズマはジャンプによって得られた位置エネルギーと、カードによって得られた雷撃の力を、強化された右足に込める。 「うぉあああぁぁぁぁ!」 それを、容赦無くカプリコーンアンデッドに叩き付けた。 「ウォォォォオッ!?」 その力によって、彼は壁をひしゃげさせるほどの勢いで吹き飛ばされる。 カシャンという軽い金属音。 カズマは静かに、『Spade Q』を封印した。 ・・・ 戦いが終わって、ようやく私は応接室を見回す余裕が生まれていた。あまりの酷い惨状に泣きたくなるだけだが。 何だかんだで私も頑張ったと思う。数少ない近接魔法を駆使し、苦手なんてもんじゃないクロスレンジをどうにか戦い抜くことが出来たわけだし。 それはそうと、今は聞きたいことが山ほどあった。カズマ君に。 「――なぁ、カズマ君」 「はやて、大丈夫か? 全身傷だらけだし……。くそっ、俺の帰りが遅れたばっかりに――!」 けれど、こんなに他人のために一生懸命なカズマ君を見ていると、何だかどうでも良くなってきた。まるで往年のなのはちゃんみたいな……って、それは本人に失礼か。 「私は大丈夫や。今リィンが回復魔法をフル稼働中やし。それよりロングアーチに連絡を取ってくれんか? そこの受話器が使えればええけど、無理なら直接行ってくれん?」 「ああ、わかった」 そう、私は大丈夫。私は部隊長、こんなところで倒れるようじゃ『奇跡の部隊』を率いることなんて出来ない。 しかし今回のハッキングを行った者が誰か、それが問題だ。ロングアーチにハッキングするほどの実力者で、怪人に協力できる者。心当たりは、二人いた。 これは捜索を急いだ方が良いかもしれない。 そう思考していた私の元に、唐突に“轟”というエンジン音が耳に入る。 顔を上げた先には、今日二人目の来訪者がいた。 「剣崎、ようやくお前と戦う時が来たようだな」 その来訪者は―― 「――紅い、『仮面ライダー』?」 真紅の配色ながら、カズマ君の変身した姿とそっくりなバリアジャケットを纏っていた。 細部は確かに違う。頭はカズマ君のが一本角なら二本角になっているし、肩のアーマーなども形状が違う。 そして似ているのはカズマ君のバリアジャケットとだ。何故なら、不自然なまでに腹部や肩が何かを塗り潰すように装甲が貼られているからだ。 「橘、さん……」 「剣崎、後でお前に通信を送る。そこに一人で来い。誰か一人でも連れて来ればあの悲劇がここで起きることになる」 「あの悲劇――?」 「お前がかつて己の体をかけて止めた悲劇だ」 そのセリフで、カズマ君の表情が変わった。 「いいな?」 「待ってください、橘さん!」 だが橘さんと呼ばれた紅い『仮面ライダー』はそれに答えることなくバイクを走らせてこの場を去ってしまった。 結局私は、何一つ理解出来ないまま。なのに状況だけが次々と進んでいた。 ・・・ カズマが受けた決闘状。相手はかつての師、戦うのは異国の地、奮うのは人とは異なる体。 人の皮を被る怪物と試験管から生まれた異形がぶつかり合った時、伯爵のストーリーは進む。 次回『決闘』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ