約 2,188,132 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1768.html
仮面ライダーリリカル電王sts氏の手がけた作品 025 ロングアーチララバイ 050 戦士のエチュード TOPページへ バトロワまとめへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/941.html
通路を進んでいく四人、電力の供給が生きているが道は薄暗く見通しは悪い。 だが戦闘機人であるノーヴェは一応の暗視モードを持っており、この程度の暗闇には簡単に対応できる。 さらに各種センサーを内蔵しており、中・近距離の索敵能力ではその能力には頼りになる。 『スバル、どのくらい進んだ?』 『えーと、マッハキャリバー?』 <大体、2000メートルと言った所です> 『今の所隠し通路らしきものは無し。・・・しかしどんだけ潜るんだこの一本道は?』 何が出てくるのか分からないので肉声は厳禁。すべて会話は念話で行われている。 『ノーヴェ、引き続きセンサで全周を警戒して、ギンガ前方に反応は?』 『今の所は何も・・・ただ、カーブあってそこまで遠い距離まで分かりません・・・』 『了解。気を付けて前進して』 なのはは潜ったのは失敗だったかと考え始めていた。思ったより長い秘密通路、しかもただ長いだけの通路。 考えても見ればあの二機、地雷伍長が言うに「伝説のアリーナのトップ、ナインボール・ハスラーワン」が この通路の向こう側にあるであろう何らかの施設から出てきたとは分からないのだ。 しかもまったく同じ構成の機体が二機、なぜ居たのか?そして機体内には誰にも居なかった。 この先にさらに大きい危険があるかもしれない。もっと慎重に行動するべきだったかな? 指揮下にある三人を不必要に危険にさらしているのはあまり指揮官として褒められた判断とはいえない。 一旦態勢を整えて今回の調査はここまでにして引き返そうか? そんな考えが脳裏をよぎった時、銀河から通路の終わりを知らせる連絡が入った。 『なのはさん、通路の終点です。ただ・・・、閉まり掛けのゲートと奥には下降するシャフトが見えます』 ゲートは簡単に開いた。そして先にあった下降用のシャフトには整然と付いた二機分の足跡。 「ここから出てきたのは間違いないみたいです」 「・・・やっぱり、降りなきゃ駄目かな?」 「あの・・・、なのはさん?」 ノーヴェが珍しくなのはに話しかける。 「どうしたの、ノーヴェ?」 「さっきから受信する通信の雑音の中におかしなノイズが入ってるんですよ・・・」 「・・・?とりあえずデコーダーの内容をレイジングハートに転送して。レイジングハートちょっと解析してくれる?」 <了解、マスター> 最近、指揮官的な任務の増加に伴いなのははレイジングハートに上級指揮官用OSを新たに組み込んでいた。 高い情報処理系を搭載し、指揮下の人員を確実に掌握し使用者に高い精度の情報を与え判断を助け、 一心同体の二人をさらに結びつける。 <・・・解析完了> 「はやいね、さすが、レイジングハート。やっぱりキャリバーズのお姉さんだ」 スバルが褒める。 <ありがとうございます。簡単なことです。再生しますか?> 「うん、お願い」 “Sound Only”と表示されたモニターに四人全員の耳目が集中する。 『・・・秩序を破壊する者』 『・・・力を持ちすぎた者』 「こ・・・これって・・・。あの時と同じ?レイジングハート?」 <・・・まったく同じ声です。先ほどドーム内で相対した機体の発した声と> 『修正が必要だ・・・』 『それが私の使命・・・』 おそらく何かがこの施設の下で蠢いている。 『修正プログラム最終フェーズ・・・』 無機質的な男女の声。なのはにはレイジングハートの言うとおりだと頷くしかなかった。 「行かなきゃ駄目かな・・・?」 なのはは迷っていた。もし同じ機体がいたら間違いなく交戦する事になる。おそらくこの奥にまだあの機体が、 まだ少なくとも一機は居る。もしかしたらさらに複数いることだってありうる。 だが、自分達が引き返したら?間違いなく上の施設“渡鴉の巣”に上がる。そうなればアリーナのレイブンに 少なからず被害が出るだろう。一応は降りかかる火の粉を自分の手で払える傭兵・レイブンではあるが、 過去のアリーナのトップを相手に出来るのが今揃っているだろうか? 管理局員の判断基準として魔導士の起した事件を解決する、その基準で今回はその範疇に入るだろうか? 「行くしかないですよ。大丈夫です、陸戦Aランクが三人、空戦のSSランクがいれば解決できないこと なんてありません!!」 スバルはどこに行ってもスバルだ。なのはは思った。 楽観的、だが精神的な強さを併せ持ちどんな苦難にも立ち向かう。 しかもそれを人に伝染させ他者に力を与えることが出来る。それが出来る人間は少ない。 なのはが決断した。 「よし、行こう!!」 「「「はい!!」」」 シャフトの操作系統にレイジングハートで介入、コントロールを乗っ取る。 <操作系統を手中に収めました。下降させます> 「よろしくね、レイジングハート」 シャフトが下降する。 「しかしどこまで潜ればいいんだよ。中でドンパチやって崩れて生埋め、そんなの嫌だぞ」 「大分昔からある施設みたいだし、強度的には大丈夫なんでしょう」 ノーヴェが文句をつけ、それをギンガがたしなめる。 地下奥深くへとシャフトは降りていく。 「終点みたいだね」 シャフトが停止した。前方には上と同じようなゲート、もしかしたら最初に戻ったんじゃないかという 錯覚をしてしまうほど同じような構造。 その先にあったのは再度伸びる長い通路。 「隊形を変えよう。各人間の距離を詰めてスタック隊形、私が後方に回るよ。ほぼ間違いなく敵性の魔導士が いることに注意して」 「「「了解」」」 返事と同時に通路での移動時の隊形に変わる。狭い屋内での基本的な密集隊形、スタックを組む。 だが装備の殆ど同一のナカジマ三姉妹と航空魔導士のなのはがいては前進速度を合わせ辛い。 一番怖いのは後方から強襲される事だがそれは自身ので奇襲は避けれる。 もし、前方から出てきたら?少なくとも自分の砲撃は前衛の誰かを巻き込む。 施設内での突入の先頭は指揮官が勤めるものではない。なのははナカジマ三姉妹の接近戦闘のレベルには及ばない。 交戦距離の近い状況では火力よりも一発の打撃力が大きいほうが有効だろう。 「スバル、先頭を代わって。私が二番、ノーヴェは三番目で行きましょう」 「了解、ギン姉」 「私が二番の方が・・・。ギンガ姉が後方からスバル姉と私を指揮したほうが良くないか?」 「ノーヴェはセンサーで前後に注意を向けておいて。・・・それにね」 ギンガが左手をノーヴェの頭に置く。 「・・・ギンガ姉?」 「まだ調整が終わってないでしょ?ちょっとでも反応が遅れたらあなただけでなく皆が危険だからよ」 「うん・・・」 デバイスが装着され、硬くなった左手で頭を撫でてやる。昔、自分を三人がかりでふっ飛ばしてくれた相手である はずだがそれが無かったかのように優しく接している。 「あ~、ノーヴェばっかしず~る~い~。ギン姉、わたしもわたしも!!」 スバルが警戒をほっぽり出してギンガに擦り付く。 「はいはい、でもスバルの分は後。今は任務に集中しなさい」 ギンガがスバルをたしなめるとノーヴェから手を離し、通路の向こう側を向く。 「さあ、行きましょうか」 通路を進んでいく。途中にあるゲートは開閉システムにアクセスするだけで簡単に開いた。 殆ど何も無い、証明だけが照らす無機質な通路。 「浮遊機雷見っけ。今までと同じ、透明化処置されてる」 「ノーヴェ、生きてる?」 「電子関係の機能は死んでる。けれど中の装薬と機械式信管は生きてるから垂れてるワイヤーに注意して。 多分触れたら簡単に炸裂するよ」 「了解。気を付けて行こう」 浮遊機雷が仕掛けられているがこれを避けて前進する。一人でも触れれば全員に少なからずダメージを与える。 爆破処理をすれば寝た子を覚ますかもしれない。無力化していけば時間がかかる。 「またゲート?よほど重要な施設なのかな?ノーヴェ、ゲートの先はどう?」 「無理だ。ゲートが厚い上に妨害する何らかの処理がされてる」 「スバル、停止。突入用意、なのはさん、いきます」 「了解・・・、さっきから同じ様な部屋ばかり・・・、気をつけてね」 そういうとレイジングハートを構える。 「開けるよ、・・・GO!!」 <ゲート、オープン> レイジングハートが開く。それと同時にスバルが一直線に突っ込み、ギンガとノーヴェが左右に突入する。 「え!?」 「嘘!?」 「マジかよ・・・」 最初に入ったスバルが目を疑い、続いて突入したギンガとノーヴェも信じられなかった。 そこにはアリーナで交戦し、撃破した機体と似たカラーリングの機体が数機、未武装の待機状態で格納されていた。 足元には待機状態から下に落ちたのかこちらにもバラバラになった機体が散乱していた。 「本当はこんだけ沢山いたってことかよ・・・」 「まさに不死身って事ね・・・、一体が倒されてもストックしてある機体からまた出せばいい・・・」 「でも・・・、気付かれずそんなことができるものかな?」 「残骸が散乱しているのを見ると大半が機能しなかったみたいだね。・・・これだけの施設を隠して 運営出来てたなんて・・・」 その場にいた四人は背筋が凍った。もしこれらの機体が完全な戦闘態勢をとって待ち受けていたら? 「・・進もう」 なのはが決断を下す。 まだ続いている通路を進む。この通路は一体どれだけ進めばいいのか、四人にはまったく分からなかった。 スバルがゲートの前に立ち振り返る。なのははそれに合わせてレイジングハートを構え、ゲートを開く。 全員が無言で、念話も無い。 「また!?」 スバルが声を上げる。今度は先ほどの部屋と違い残骸が散乱する事も無い、照明の行き届いたきれいな部屋。 部屋の左右の壁には未武装の機体が六機、格納されていた。 「・・・」 誰も声を発さなかった。 旧暦時代の施設から隠し通路で繋がる大深度地下施設。誰も知らぬ地下の闇の深い場所で眠る何か。 それが目を覚まそうとしている。いや、もう目を覚ましている。 もしかしたら自分達がここに来たのがそれの引き金を引いたのか。あらぬ想像が脳裏に浮かぶ。 『私は守るために生み出された・・・』 「・・・また!!」 今度は雑音交じりの通信ではなく、殆ど雑音の無いクリアーな通信だった。 『・・・私はその使命を守り、破壊された世界達をを再生する』 『全システムチェック終了・・・』 『力を持ちすぎた者はすべて排除する』 この先にまだいるであろう何かの呼びかけ。かつて昔の船乗りに恐れられたというセイレーンの歌声のように。 「ギンガ、スバル、ノーヴェ、どうする?一旦引き返して態勢を整えてからもう一度・・・」 「「「いきましょう!!」」」 次に入ったのは今度は明らかに戦闘で破壊された残骸が散乱している部屋だった。 残骸は焼け焦げ、外観も内部も酷く損傷していた。 柱や壁には激しい戦闘があったことを示す弾痕と爆発痕。 「わたし達以外の誰かがここに来たって事?」 「同士討ち・・・、まさかそんなことは無いでしょうから、おそらくは・・・」 「・・・でも、一体誰が?」 「・・・ん?カートリッジか?」 ノーヴェが散乱する残骸の中から筒状の物を拾い上げる。 「デバイスの汎用の魔力カートリッジじゃないね、大口径機関砲に使われる専用カートリッジの空薬莢だよ」 それを見たなのはがノーヴェに解説する。 「へぇー、ということは間違いなくここに誰か来てこいつらを破壊したって事ですね」 「どうして?」 「こいつらは大型機関砲なんて装備してないです」 「でも来たといっても、大分前ですよ。ここに来る前にあった残骸にひどく錆が浮いてるのがありました」 なのはとノーヴェの会話にギンガが入る。 「開きましたよー」 スバルが通路の先にあるゲートを勝手に開いていた。 恐る恐るスバルがその先を覗き込む。 「あれ?行き止まり?」 「よく見なさい。あそこに穴が開いてるでしょ?」 「あ、ほんとだ」 四人が縦坑内を覗く。内側は十分な明るさがあった。だがその先に何があるのか、 その先が深い闇で全く分からなかった。 「・・・降りますか?」 「わたしから降りるよ。何かあったらすぐに降りてきて」 その言葉にナカジマ三姉妹は顔を見合わせ、なのはを見る。 「なのはさんが降りなくても・・・私が行きますよ?」 ギンガの言葉になのはが頭を振る 「ううん、降りるのは私が行くよ。三人は何かあるまでここで待機、分かった?」 なのはが縦坑の入り口に足をかける。 「じゃあ、行って来るね」 「気をつけてください・・・」 スバルがそう言うとなのはの姿は縦坑に消えていった なのはが縦坑を降りていったその先、広い薄明かりを従えた闇に包まれた空間にいたのは背中に細身の機体に 不釣合いなぐらい巨大な高機動ユニットを背負った機体。機体のカラーリングは一部の地金むき出しの部分を除き、 ナインボールという機体と変らない。だがパーツの形状は大分変り、武装も一見だが変わっている。 そして肩には⑨のマーキング。 「あなたは・・・一体誰なの?」 思わずなのはが聞く。相手が答えるはずのない質問。 「・・・ターゲット確認、排除開始」 相手が返事と思わしき言葉を返す。とてもではないが話し合う余地があるとは思えない、内容。 「いいよ、そっちがその気なら・・・何度でもやって、徹底的に打ちのめしてあげるから!!」 なのはが啖呵を切る。 「レイジングハート、対高機動目標モード、高速目標に最適化。ブラスト・ストライク!!」 いつものように槍のように形態を変化させたレイジングハートを構えるなのは。 その先にいるのは不気味に静かに立つ、魔導甲冑を着た何か・・・。 ナインボールが腰を落とし前屈みの姿勢をとった。 『来ます!!』 スバルが警告を発する。相手微妙な体重の移動を見抜き、動きを読む、突撃ストライカーの必須技能。 だが、相手は接近戦を挑む訳ではなかった。 「・・・誘導弾!!ギンガ、スバル、シールド展開!!ノーヴェは私の後ろに!!」 誘導弾を大量に発射、先手を取られた。 「アクセルシューター、シュート!!」 誘導弾を迎撃する為、アクセルシューターを射出。だが迎撃が間に合わなかった誘導弾が近接信管で起爆、 さらにアクセルシューターに迎撃された誘導弾も破片と魔力片をバラ撒く。 「・・・っく!!」 「ノーヴェ、そっちに行ったわ!!後方の上!!」 「早えよ!!」 なのは達の注意が誘導弾に向いた一瞬の隙を突いて高速移動。 背後を取った相手が後衛だったノーヴェにブレードで斬りかかる。 警告を聞いたノーヴェはジェットエッジで急旋回、後ろに回った相手と正対。斬りつけられるブレードを回避する。 「ん?・・・わ!!」 ブレードから光の刃が浮き出たと思えた瞬間、それがなのはに向けてまっすぐ向かってきた。 <プロテクション> レイジングハートがオートでシールドを展開、光の刃はシールドと接触した時、爆発霧散した。 「みんな、ブレードから出る光刃に注意して!!」 「ノーヴェは回避に専念!!スバル、上へ!!」 「了解、ギン姉!!」 「こいつの動き、さっきのヤツと違う!!」 スバルがノーヴェの後方からウイングロードで目標に肉薄、ギンガは後方に回り後ろを取る。 ノーヴェが避けたブレードから発生した光刃を左二の腕の装甲板で受ける。 「熱!!ギンガ姉、スバル姉、気を付けて!!受けすぎると熱が!!排熱が・・・」 「ノーヴェ、回避!!」 ノーヴェの警告をかき消してスバルが後方から指示。それを聞いてノーヴェが腰を落とす。 「リボルバーシュートォォーー!!」 危険を感じたノーヴェは正面から離脱。一瞬前までノーヴェが居た場所を光弾に暴風が通過、 「・・・嘘?」 並みの相手なら吹き飛ばされる一撃を相手が両手をクロスさせ耐えて見せたのだ。 衝撃を受け止め、一瞬だがナインボールの動きが固まる。その瞬間を後方に回っていたギンガが逃さない。 背中を見せていた相手に左手のリボルバーナックルを叩き突けるためにさらに近接。 「・・・くっ、トライシールド!!」 だが相手の硬直は本当に一瞬、しかもまるで見ていたかのように右に半身を取ると右手のチェーンガンを発砲。 実態を有した魔力弾の連発に堪らずギンガはシールドを張りつつブリッツキャリバーで右に直角カーブ、 だがそれを追うように正確に狙いを付けて相手は追撃する。 「ブラストショット!!」 なのはのレイジングハートの先端に光が収束。収束した光が数条のピンク色の光線を放つ。 相手は半身から左構えに戻ると自身の正面に飛んで来た一弾にシールドを形成、霧散させる。 だが回避されることを前提とした射撃だ。今は相手の動きのデータを取る事が重要。 左側に滑りながら左手に持ったパルスライフルを連射。なのはは射撃で相手を追うが巧みな機動を取り捕らえられない。 「早い!!でもすごい機動・・・」 なのはが感嘆を漏らす。ここまで綺麗に回避できるフェイト位なモノだ。だげすぐに気を取り直す。 「レイジングハート、射撃支援モードでブラスタービットを展開。火力支援を」 <了解、展開します> なのはの後方にブラスタービットが展開。数は四基。 「みんな、追撃は待って。正面から追撃するのは危険なの。態勢を立て直そう」 「「「了解!!」」」 一旦距離をとった相手が強烈な逆噴射とブレーキをかけて停止。だがそれも一瞬、今度は上に飛び誘導弾を 撒き散らしながら頭上を飛び回り、右手のチェーンガンと左手のパルスライフルで地上を掃射する。 誘導弾が着発信管や時限信管で炸裂し、実体弾が地面をえぐる。 「こいつ!!・・・って、わぁ!!」 スバルが付近に着弾した誘導弾の爆風に吹き飛ばされ、ひし形の陣形が崩れる。何もかも計算尽くだと いわんばかりにスバルとなのはの間に開いた連携の穴からなのはに近接する。 「スバル姉!!野郎!!」 「ノーヴェ、熱くならない!!冷静に戦いなさい!!」 「でも!!」 簡単に冷静さを失うノーヴェをギンガが止める。 「スバルなら大丈夫よ。なのはさん!!」 「私も大丈夫、でも接近戦だから支援して。レイジングハート魔力刃を展開!!」 なのはが頭上に上がる。アクセルフィンを高機動モード、レイジングハートは長槍のごとく魔力刃を展開。 運動は確かに苦手、接近戦も不得手。だが色々な人に教えられそれなりにモノにしたつもりだ。 そもそも自分は御神流の末裔の一人!! 「はぁぁ!!」 自身の前面にシールドを半面上に形成し肉薄する。 今回は確実に一瞬の隙が出来た。それを逃さないでさらに肉薄、レイジングハートの鏃の先を向け加速突入。 誘導弾が炸裂するがシールドで止め、パルス弾に実体弾もシールドで受け止める。 「そこぉぉ!!」 間合いに入る。自身の利き腕である左手を軸に槍-杖-で右腰より逆袈裟懸けに刃が軌跡を描く。 加速した為、相手の取ったタイミングより数瞬早く動く。相手は空中で回避機動、 それでも刃は相手の左胸部を浅く薙いだだけ。 だがこちらの間合いはあちらの間合いでもある。左・二の腕のブレードが光を収束、光刃が煌めき高速で振りぬかれる。 なのはが最小限の機動で回避。 「あ!!」 気付くのが遅れ反応も遅れた。相手は右・二の腕にもブレードを格納していた。そのブレードが同じように光を収束、 斬りつけられる。 回避しようと後方に動く。今度はこちらの反応が遅れる番、こちらは左肩の外側を斬り付けられる。 この程度ならかすり傷、いや傷の内にも入らない。だが押し続けられれば自分は不利になる。 自立行動に設定していたブラスタービットが発砲。レイジングハートの組上げた制御管制プログラムは優秀、 各々が射線を変えた偏差射撃をくわえる。それをナイン・ボールは自身命中する射線だけを防御、 不気味に飛び続ける。 「なのはさん、下がって!!」 スバルがウイングロードで近づいてくる。援護するようにノーヴェはガンナックルから光弾を打ち出す。 ノーヴェの光弾が左手のパルスライフルに集弾する。魔力収束パックの部分に被弾したのかライフルが 強烈な光を発した。それを惜しむ素振など見せず、逆にノーヴェに投げつける。 「うわっっ!!」 「ノーヴェ、いいよ!!」 「おおりゃぁぁーーー!!!!」 スバルの右手のリボルバーナックルが光を放ち打ち込まれる。相手は避ける気も逃げる気もない。 それを正面から両手をクロスさせ受け止める。 「よっぽど自信があるのね・・・」 ギンガがあきれる。ギンガはなのはの後方をウイングロードで走り、頭上を飛び越えてスバルを相手に対する 目隠しにして接近していた。 「クリーンヒッットォォーー!!」 正面から襲い掛かる衝撃をブースターを出力最大に噴かし受け止めたのか背後に噴射煙が巻き上がる。 「耐えた?」 まだ相手は浮いていた。だがそこにスバルを飛び越えたギンガの駄目押しが入る。 「シールドブレイク!!」 相手のシールドを突き破り、左手のリボルバーナックルを本体に叩きつけて相手を吹き飛ばす。 「この野郎・・・、ハンマーダウン!!」 それでも立ったまま受け止めて地面を滑るナインボールに今度はノーヴェの蹴りが炸裂。 だがそれでも相手は倒れなかった。背中の高機動パックの噴射を絶妙に調整し、機体自身のブースターを噴かす。 「レイジングハート、全ブラスタービットを収束射撃モードへ」 <チャージング完了> なのはは丸い魔法陣の中心に立つ。左右両翼に従えるのは四基のブラスタービット。そのすべてが魔力をチャージング。 「ディバインバスターーー!!!」 追い討ちをなのはが仕掛ける。 「まだ立ってる・・・?」 「まるでロストロギア級の魔導甲冑じゃない・・・」 砲撃の着弾後、立ち込める煙が退いた中から姿を現したのは赤と黒の機体、ナインボールだった。 一応のダメージを負っているようだが、もし、戦意と言うものがあるというのなら決して衰えていない。 「・・・なのはさん、わたしのISの使用を許可してください」 スバルがなのはに声をかける。 スバルのIS・振動破砕は部隊長の許可なく使用できないようロックがかけられていた。 下手に使用して間違いが起こらないように。 「・・・いいよ、部隊長権限でロックを解除。レイジングハート、確認と記録をお願い」 <解除命令を確認、デコーダに記録します> 「マッハキャリバー、お前も記録しておいてね」 <無論です、相棒> なのはが一応は決められた手続きを踏んで解除する。なのは自身はスバルが間違った使用方法をしないと 分かっているが一応は規則だ。もし無断使用させればただでさえ微妙なスバルの立場が危うくなる。 スバルが両目を閉じる。一寸閉じられた瞳が開かれるとスバルの青い目は金色の目に変わっていた。 「・・・ありがとうございます」 「まだ終わってないよ、お礼は終わった後!!」 なのはが言い終わると同時にまたナイン・ボールが飛んだ。 「また!!」 だが先ほどとはまったく違う動きだった。直線的な動きを繰り返す。動くたびに右手のチェーンガンが、 背中と両肩のランチャーから誘導弾が、ばら撒かれる。先ほどとは比べ物にならないほど激しい爆撃。 射撃に専念するかと思えば、タイミングを確実に計り、いきなり急降下するとブレードで斬りつける。 高速で空を動く相手は地上に居る人間にとって苦手なんて物ではない、天敵だ。 「ツーマン・ターセル!!ギンガはスバルと、ノーヴェは私の後ろ、直近に!!」 すばやい移動と放たれる実体弾と誘導弾に翻弄されながらなのはが指示を出し、全員が配置につく。 「ノーヴェ、私の空戦機動について来れる?」 「勿論!!」 「オーケー、・・・行くよ!!」 なのはが飛ぶ、その後ろをエアライナーを展張、ノーヴェが追う。 『ギンガ、スバル、ノーヴェ、四人で連撃しよう。一人で連撃しようと思わないで、さっきみたいに連携を取って、 一人一撃づつ。決めよう!!スバルが言った通り、この四人が揃えばどんな事件だって解決できる!!』 『『『了解!!』』』 アクセルシューター、スフィア展開、近接設定!!」 正面から向かうなのはが周囲にアクセルシューターのスフィアを展開その数、二十。 「シュート!!」 一斉に襲い掛かる、魔力弾の群れ。管制はレイジングハートが半分、残り半分は自立制御。 同時にブラスタービットも射撃を開始、こちらは自立制御で砲撃を打ち込む。 それらを平然と正面から受け止めるナイン・ボール。 「いくよ!!」 なのはが敢然と槍の如く-杖-レイジングハートを振り上げてナインボールに襲い掛かる。 「あぁ!!」 なのはの一撃を受け止め、さらにシールドを任意でバースト、なのはの動きを止め、追い討ちでなのはのシールドに 左の拳を打ち込む。堪らず吹き飛ぶなのは。 「おい!!」 「あなたの相手はこっち!!」 ギンガとノーヴェが両翼から一撃づつを加える。 二人同時の一撃、ノーヴェは右手で、ギンガは左手で。若干ノーヴェの一撃が早く打ち込まれる。 相手はそれに合わせて新しいシールドを展開。そこにギンガの拳が接触。 「ロードカートリッジ!!」 ギンガの目が金色に変わる。戦闘機人としてのリミッターを解除、そして リボルバーナックルのカートリッジをロード、左拳の指先を伸ばし・・・。 「リボルバーギムレット!!」 左手が高速回転し伸びる。シールドに接触したドリルはそのままシールド表面で空しく回転、。 「まだまだぁぁーー!!」 さらにカートリッジをロード。だがナインボールは右手のチェーンガンを向ける。 「わたしも居るんだよ!!」 ノーヴェが金色に輝く右手のガンナックルを最高出力で叩きつける。 衝突の瞬間シールドが過負荷に耐え切れず消滅。 だが右手のチェーンガンが火を噴くのとほとんど同じだった。 「ギンガ姉!!」 ノーヴェがギンガの横から飛び込む。重なる二人を薙ぎ払うように発砲炎が光る。 「ギン姉!!ノーヴェ!!」 「スバル、行きなさい!!」 ギンガの声が聞こえた。 「振動破砕でやる、行くよ相棒!!」 <了解、ロードカートリッジ> スバルの勢いに思わず後ずさる相手を見据えスバルがIS・振動破砕を発動。 リボルバーナックルにベルカでもミッドチルダでもない、丸く青い二つの結界が方陣が生まれる。 「・・・ぶっ潰す!!」 機械のみならず生身の肉体に対しても使用すれば確実に機械や生体組織を破壊するスバルの技。 「リヴォルバーナッコォォォーーー!!!」 正面から相手の胸の地金剥き出しの装甲を狙う。 両手をクロスさせナイン・ボールが機体を守る。だがスバルはそれを気に止めもしないで右の拳を打ち込む。 両腕に直撃。そのままの体勢で押される機体。 「もう・・・、一ッッ発!!」 そう言いながらやわらかい体を生かし思いっきり右足を振り上げ両腕を弾く。 一瞬だがスバルに怯えの様な感情が感じられた。だが・・・この相手に情けをかけるほどスバルには隙はない。 がら空きになった胸部にもう一度、右の拳を打ちつける。 「おおりゃぁぁーーー!!!!」 前面の装甲板をつきぬけ内部に拳が入り込んだ瞬間、振動破砕を発動。 ナイン・ボールが吹き飛び、地面に叩き付けられる。おそらく、どんなに強力な装甲板をつけてもスバルの 振動破砕から逃れることはできない。 スバルがウイングロードから打ちつけた相手を見下ろす。 「なのはさん!!」 後方から桜色の光、光や音すら通らないこの大深度に太陽のごとく桜色の光が広がる。 そこには桜色の魔法陣の中央に立つなのはが居た。見据えるのはスバルの渾身の一撃を受けたナインボール。 「ブラスタービット、バインド形成、拘束!!」 ピンク色の光が相手に絡みつき、動きを拘束する。 「アクセルチャージャー、安全制限解除!!」 なのはが構えた槍-杖-レイジングハートがカートリッジをロード。 「エクセリオンバスターACS、ドライブ!!」 スバルの振動破砕を受け、機体内に想定以上のダメージを受け動きが鈍くなる。そこになのはのバインドがかかる。 バインドを必死に引き千切ろうとするがそう簡単に抜け出せるほど甘いバインドをなのははかけない。 代わりにシールドの出力を上げる。 「ブレイク・・・」 レイジングハートから発生した六枚の羽がさらに大きく雄雄しく舞う。 「シュート!!」 桜色の光が数条、再びナインボールを包み込む。同色の炸裂した光は方円上に広がり闇を照らした。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3414.html
夢現…微睡みの中に漂うフェイト、彼女の耳に音が小さく響いてくる、 煩わしい…最初はそう感じていた、だがその音は徐々に大きくなっていき最後には大きな爆発音となって脳天を貫く。 その音により自分が気絶していた事に気が付き目を覚まして体を起こすフェイト、 辺りを見渡すと壁や天井の残骸が山のように築かれており、 ふと上空を見上げると其処には白金の魔力光と桜色の魔力光が幾重にもぶつかりあっていた。 その光の正体がなのはとレザードであると気付いたのは、そう遅くは無かった… リリカルプロファイル 第三十九話 黄昏 フェイトは目の前で起きている激戦を見て呆然としていた、何故ならば二人の戦いは既に一線を越えた戦いであったからだ。 なのはから繰り出されるディバインバスターをレザードは詠唱破棄したセラフィックローサイトにて迎撃、 一方でレザードはダークセイヴァーにて追撃するが、なのははディバインシューターを用いて相殺、 変わってなのはがアクセルシューターを撃ち放つのだが、レザードはグングニルを振り払い、弾き飛ばして周囲の壁を瓦礫に変えると、 再度グングニルを振り払い衝撃波を放つが、なのははA.C.Sドライバーを起動させて左に回避、先程までなのはがいた場所は衝撃波により瓦礫と化した。 「逃さんっ!!」 ところがレザードはとっさに左手をなのはに向けてレデュースガード、レデュースパワー、プリベントソーサリーの三種のバインドで縛り付け、 その光景を目の当たりにしたフェイトは、なのはが危機に陥っていると判断して、なのはを救い出す為に向かおうとした。 …だが―― (こないで!フェイトちゃん!) (なのは?!) 突然のなのはの念話に驚きの表情を浮かべるフェイト、だがすぐさま真剣な表情に戻し自分も手伝うと伝えるが、 頑としてなのははフェイトの要求を断っていた。 何故ならば、レザードの実力に対抗出来るのは神とユニゾンした自分のみであり、 言い方が悪いがフェイトの実力では足手まといがオチであると、凛とした声でハッキリと伝えた。 (…それじゃあ、私はなのはの為に何も出来ないの?) (…ゆりかごから脱出してくれるだけでいいよ) そうすれば自分は全力全開で戦えると今度は優しい声で答え、暫くフェイトは黙り込みその後すぐ、意を決しなのはに背を向けてこの場から立ち去り フェイトの後ろ姿を横目で確認したなのはは小さく微笑むと、すぐさま険しい表情に変わりレザードを睨み付けるのであった。 場所は変わり此処動力室では、魔力を使い過ぎて暫く休憩をしているはやての姿があった。 すると其処にフェイトから連絡が入り、その内容に驚きの表情を浮かべる。 「何やて!?撤退ってどう言う事や!!」 「細かい事は後で伝えるから今は!!」 フェイトの必死な態度にただ事ではないと感じたはやてはすぐさま了解し、ヴォルケンリッターに撤退の指示を送ると ザフィーラははやてを背負いシグナムを先頭に動力室から避難した。 一方でスバル達はチンクを引き渡す為に突入口に向かって進んでおり、 スバルはティアナを背負い、フリードリヒにはエリオを騎手にチンクを抱えたキャロの姿があった。 すると此方にもフェイトからの連絡がティアナの下に届く、その内容とは突入口を出たらそのまま、もう引き返す必要は無いというものであった。 そしてフェイトもまた突入口とは違う場所からの脱出を試みると告げ、それを聞いて一つ疑問を抱いたスバルが問い掛けてきた。 「ところでなのはさんは?」 「…なのはは一人でレザードと戦ってる」 フェイトの思わぬ答えに困惑するスバルであったが、取り敢えず今は外に出る事を優先するようにとフェイトは促し スバルは納得のいかない表情を浮かべている中、ティアナが了解して、一同は急いで突入口へ向かっていった。 時間は遡りフェイトが部屋を出た直後、三種のバインドで縛られている状態のなのはが其処にあったが、 体に力を込め容易くバインドを吹き飛ばし、その光景を見てレザードは当然か…といった表情を浮かべていた。 神とのユニゾンは魔力だけではなく本人の身体能力も向上させる事が出来る、つまりバインドではもう捕らえる事が出来ないのだ。 「面倒な相手になったものだ……」 賞賛とも不満ともとれる言葉を放つレザードの前にA.C.Sドライバーを起動させて突進して来たなのはが現れ、レザードはグングニルを盾にして攻撃を受け止める。 だがなのははお構い無しに尚も突進、レザードを押し遣り壁を突き破り更に幾重も突き破って最後にディバインバスターを撃ち放った。 それによって更に壁を突き破り大きな風穴を作り出すと、風穴から直射型のライトニングボルトがなのはに迫り なのはは上昇して回避するが更なる上空に移送方陣にて先回りしていたレザードと出くわし、グングニルを振り払らわれ衝撃波を撃ち出される、 ところがなのはは衝撃波を受け止める為ラウンドシールドを張るのだが、受け止めきれずに押し遣られ次々に壁を突き破っていった。 しかしレザードの顔には手応えを感じたしたという表情が浮かび上がっておらず、ジッとなのはが押し遣られて作り出された風穴を見ていると、 其処から桜色の光が瞬時にレザードの前に現れ光が消えると無傷のなのはが姿を現し、 その姿を見たレザードの表情には驚きの様子は無く、寧ろ当然といった表情を浮かべていた、そしてなのはを見下ろす目線で言葉を口にする。 「そろそろ貴様の仲間が脱出した頃だろう」 「気づいていたの?」 「当然だ」 神の力を得た存在があの程度で倒されるハズもなくまた、この程度の力ではない事は重々承知している。 故になのはの本気を見る為邪魔な存在である彼等が脱出するのを見逃しまた様子を見ていた、その言葉に意外といった表情でなのはが言葉を口にする。 「随分と余裕なのね…それとも自信?」 「紳士的と言って欲しいものだ、だが…もうその必要は無い…私の全てをお見せしましょう!」 そう言って両腕を大きく広げ、まるで十字架のように見える形で構えると、 魔力を高め白から白金へと変化し目を見開いて、まるで劇を終わらせるかのように高々と宣言した。 「さあ!フィナーレだ!!!」 場所は変わり此処はミッドチルダ宙域に待機しているクラウディアのブリッチ、 其処には周辺地域の変化をモニタリングしている夢瑠が脳天気に大欠伸をかいていた。 すると其処に本局からの通信が届き、その内容に驚いた表情を浮かべながら対応する夢瑠。 その内容とは今し方隕石が七つ、ミッドチルダに向かっているのを捉えたと言うものであった。 「えっ?!それってどういう事――」 夢瑠は本局に詳細な情報を求めようとしたところ、クラウディアを掠めるようにして七つの隕石が通り過ぎミッドチルダに降りていった。 それを肉眼で確認した夢瑠はすぐさまスタッフに着弾ポイントを予測させる、そして出た結果がゆりかごに向かっている事が判明した。 この結果に脳天気な夢瑠であっても危機感を感じ、すぐさま上司であるクロノと連絡を取るのであった。 「てめぇらの顔も!!」 「見飽きたぜぇぇぇ!!」 時間は遡り、ゆりかご周辺上空ではアギトとユニゾンしたアリューゼが広域攻撃魔法と化したファイナリティブラストにて 次々にガジェット及び不死者を飲み込み爆発もしくは光の粒子と化して消滅させていた。 他にもフェンリルに跨り次々に不死者を凍結させていくメルティーナや、白天王に指示を送りガジェットを次々に破壊しているルーテシアの姿があり 地上では気だるそうな顔をしながら猟犬を使って攻撃するヴェロッサと、ヴェロッサを窘めながらもヴィンデルシャフトを振り抜くシャッハの姿があった。 その中で現場責任者であるクロノは、戦況を確認しながらも次々にガジェット及び不死者を撃破していた。 此方の戦力は全地上魔導師及び教会騎士団の七割を投入、その為ガジェット及び不死者は順調に数を減らしつつあるが、 依然として先の見えない戦いが現状であった、一方で残り三割の戦力はミッドチルダの全住民の避難を完了させ更に怪我人への対応に勤しんでいた。 戦況は悪くはない、だが打開策が無い以上ジリ貧は必死である、すると突入口からウィングロードが伸び其処からスバル達が姿を現し、 それを皮切りにゆりかごの後方部分から火龍一閃と思われる炎が立ち上り、 其処からシグナムを先頭にヴィータ・シャマルそしてはやてを背負ったザフィーラが現れ、クロノの下へ近づいていた。 更にライオットザンバー・カラミティと思われる魔力刃が外壁を切り裂き其処からフェイトが姿を現し同じくクロノへと近付いてきていた。 「はやてフェイト!レザードはどうしたんだ!?」 「今なのはが相手をしている」 「それや!どう言う事か説明してな!!」 するとフェイトは今までに起こった一部始終を余すこと無く伝え、その有り得ない内容に頬に冷たいものが伝う二人、 神とのユニゾンしたなのはの実力は測りきれない程であり、その力に真っ向に対抗出来るレザード 最早ミッドチルダの命運はなのはの手に掛かっている、そう判断しているとクロノの下に夢瑠からの連絡が入る。 その内容とはゆりかごに向かって隕石が七つ向かってきているというもの、その内容に困惑するクロノ達に対しフェイトは断言するように言葉を口にした。 「レザードだ…」 「バカなっ!何でもかんでもアイツのせいにするのは――」 「それはクロノがレザードの実力を目の当たりにしていないからだよ!」 レザードの実力は隕石すら操れても可笑しくないとフェイトは答え、それに真っ向から反対しようとしたクロノの窘めるはやて。 今は兄妹喧嘩をしている場合ではない、レザードの仕業であろうとも無かろうとも隕石が迫ってきている事実は揺らぐ事はない。 そんなはやての言葉に我に返った二人は小さく頷くと、クロノは現場責任者として今この場に集っているメンバーに早急に指示を送った。 「各隊員に告げる!今此処に隕石が迫って来ている!今すぐこの場から退避せよ!!」 クロノの指示に隊員は蜘蛛の子を散らすかのようにして次々に退避、だが中にはガジェットや不死者に阻まれ退避出来ない隊員も多くいた。 するとクロノはアリューゼ達や突入組に救護並びにしんがりを要請、これによって孤立しかけた隊員達は救い出されなんとか退避を完了させた。 そしてクロノ達もゆりかご全体が確認できる位置まで退避を完了させると大して間も無く、空から摩擦熱により赤く輝く七つの隕石が ゆりかごに次々に突き刺さっていき大きな七つの風穴を作り出すと、ゆりかごは音を立てて崩れ始めた。 「ゆりかごが……」 「崩壊していく……」 その光景を目の当たりにしていたはやてとクロノは言葉を口にし、中で戦っているなのはの生存は絶望的であると痛感していると、 崩れ落ちる瓦礫の間を飛び交う白金色と桜色の魔力光が目に映り、フェイトは思わず身を乗り出すかのように一歩前に出て桜色の光を指差した。 「なのはだ!!」 「何だって?!」 クロノは驚きの表情を浮かべつつ、それを確認する為にモニターを開くと 其処には神々しい姿に変わったなのはの姿が映し出されていた。 一方で落ちていく瓦礫の間を飛び交いながらレザードに向けてアクセルシューターを撃ち抜くなのは、 だがレザードは瓦礫をグングニルで砕き吹き飛ばしてアクセルシューターを防ぎ、代わりに誘導性を付け加えたプリズミックミサイルを撃ち放った。 ところが此方もレイジングハートの先端部分に存在する魔力刃にて目の前の瓦礫を砕き吹き飛ばしてプリズミックミサイルを防ぐと、 瓦礫が無くなった目先にレザードの姿があり、すぐさまA.C.Sドライバーを起動してレザードを串刺しにしようと迫った。 だがレザードはシールドを張って攻撃を防ぐが、なのはは先程と同様に尚も突進、それによりレザードは更に上空へと追い遣られていき レザードは左手を引くや否やグングニルを振り払いシールドごと攻撃を相殺した。 そんな中、崩れ落ちていたゆりかごの残骸が積み重なり地上に瓦礫の山が築き上げられた。 その頃上空ではレザードが不敵な笑みを浮かべ右手をかざすと、直径数十メートルの巨大な火球を五つ作り出し 火球は真っ赤に燃え中心は黄色に近い色まで熱を帯びていた。 一方でなのはも右手をかざし足下に環状の魔法陣を広げるとレザードの火球と同等の大きさと数の桜色の魔力弾を作り出した。 そして――― 「カラミティブラスト!!」 「アクセル…シュータァァ!!」 撃ち放たれた二種の魔法は激突するやカフェオレのように混じり合い収束していくと一気に解放 大爆発を起こし、まるで花火を思わせるかのように無数に散らばり、その画は風流とすら思えた。 …だが無数に散りばめられたレザードの炎となのはの魔力が混じったソレは、消えること無く地上に降り注ぎ 二人の足下に広がる森は炎の海と化し木々を燃やし続けていた。 そんな光景の中レザードは距離を置きなのはを見上げる位置に立ち、右手でグングニルを握り締めると 右腕に揺らめく赤い魔力をたぎらせ始める。 「マイトレインフォース!!」 すると赤い魔力は拳からグングニルに伝わり刀身を赤く染め上げると、天を貫くかのようにしてなのは目掛けて投げつけた。 マイトレインフォース、レザードが持つ武器と一撃の威力を1.5倍高める効果を持つ支援魔法である。 一方なのはは右手にラウンドシールドを張り巡らせ受け止めようとするが、抑えきれずグングニルと共に高々と上昇 ミッドチルダを覆う黒い粉塵と混じった灰色の雲を貫き大穴を開け、其処から夜明けが近いと思わせる夜空を覗かせた。 一方更に上昇していくなのははシールドを傾け、その場で右に回転してグングニルを受け流す。 ところがなのはの頭上にはいつの間にか移送していたレザードが、マイトレインフォースを纏わせた右手でグングニルを掴み取り更にそのまま大きく振り上げた。 「貫け!グングニル!!」 そして刀身を赤く染め上げると勢い良く投げつけグングニルはなのはの胸元に突き刺ささり、そのまま加速し一瞬にしてなのはごと姿が消え去り、 レザードはグングニルが向かった方向を確かめると移送方陣にて移動を開始した。 場所は変わり此処はドラゴンオーブの攻撃により消失した地域から程近い北の山岳地帯、 深々と雪が降り積もり山々が雪化粧をしているこの地域に異変が起きる。 それは灰色の雲を穿つ赤い光が突然現れ山に衝突、山は一瞬にして吹き飛ばし変わりに大きなクレーターが姿を現したのだ。 するとその上空に移送したレザードが現れ右手をクレーターに向け右手にに魔力がたぎると クレーターを中心に囲うようにして炎が包み込み、近くの山の雪を溶かしていくと最後にレザードは指を鳴らした。 「イフリートキャレス!!」 次の瞬間、囲んだ炎が大爆発を起こし高熱を帯びた爆風は、山岳地帯に積もる雪を瞬時に溶かし尽くし 山々は岩肌が剥き出しな状態と化した。 その発端であるクレーター中心は炎と熱により一部がまるで溶岩のように真っ赤に染まっており、 その光景にレザードが不敵な笑みを浮かべていると 一筋の桜色の光がレザードの腹部に突き刺さり、それがなのはの魔力刃であると認識した瞬間に一気に急降下、 岩肌が剥き出しの山に激突しその存在を吹き飛ばした。 「貴様!あの攻撃に耐え抜いたのか!!」 「お生憎様、ユニゾンしたお陰で丈夫なったの!!」 なのはに突き刺さったかに思われたグングニルであったが、外側に小さなシールド、 内側…というより内臓にフィールドを張った為、貫かれる事は無かった、 そしてレザードの攻撃に耐え抜き油断したところをA.C.Sドライバーにて攻撃現在に至ったのだ。 しかしなのはの攻撃はまだ終わってはおらず追って突撃し、次々に山々に大穴を空けていき後に山々は音を立てて崩れていった。 なのはの突撃の勢いは西地区にまで及び消失したエルセア地方まで辿り着くと、 レザードはグングニルを形成しなのは目掛けて薙払って吹き飛ばして難を逃れる。 だがなのははある程度吹き飛ばされる程度で止まり、足下に環状の魔法陣を張り レイジングハートの先端部分に存在する魔力刃をレザードに向けカートリッジを三発使用する。 一方でレザードもまた足下に魔法陣を張り右手をなのはに向けると稲妻が走り、それが後に巨大な竜骨と化した。 「エクセリオン!バァスタァァァ!!」 「ブルーディッシュ!ボルトォォ!!」 放たれた二つの魔法は激突して相殺、それによって生み出された衝撃波は残されていた建物を吹き飛ばし海岸線に至っては大波を作り出していた。 そんな衝撃が走る中でレザードは、移送方陣を用いてなのはの後方上空をとると、左手には巨大な稲光が走る黒いスフィアが存在していた。 「押し潰れろ!グラビティブレス!!!」 振り下ろされたグラビティブレスはなのはを容易に飲み込みエルセア地方から南東へと移動、 ポツポツと家が並ぶこののどかな風景が広がる地区へと衝突する。 ところがグラビティブレスに異変が起き亀裂が走ると、桜色の直射砲がグラビティブレスを打ち砕いた。 一方で後を追っていたレザードは先程起きた光景を目の当たりにして歯噛みしていると A.C.Sドライバーの加速を用いて上空に移動したなのはがレイジングハートをレザードに向け足下に円状の魔法陣を張り巡らせ、 先端には桜色の魔力が収束し巨大な魔力の球体を作り出すと大きく振りかぶった。 「スターライトブレイカァァ!!」 撃ち出されたスターライトブレイカーはレザードが瞬時に張ったシールドに直撃、 その瞬間スターライトブレイカーは膨れ上がるようにして広がり周囲を飲み込んでいった。 このスターライトブレイカーはかつて闇の書であった頃のリインが使った広域攻撃型の魔法である。 そして魔力光が落ち着いていくと、のどかな風景が一転荒れ果てた大地へとその姿を変え、なのははその風景を眺めつつも依然としてレザードの姿を探っていた。 あの程度で倒せる存在ではない、あの程度で倒せるのであればこれほど苦労は無い… すると後方で瓦礫が崩れるのを耳にして、すぐさま振り向き螺旋を描く八発のアクセルシューターを撃ち抜くが其処にレザードの姿はなかった。 だが次の瞬間、なのはを中心に青白く輝く五本の光の柱が突如現れ更に五亡星の魔法陣を描き なのははオーバルプロテクションを張り攻撃に備えると光の柱が消え去り、それと同時に衝撃が走って周囲を照らしていく、 そして光が消え去ると中心にいたハズのなのはの姿が無かった。 場所は変わり此処はミッドチルダ南方のアルトセイム地方から遠く離れた海域上空、此処に突如として光が溢れ 其処から先程まで南東地区で戦っていたなのはが姿を現す、なのははアストラルメイズと呼ばれる転送魔法で跳ばされたのだ。 辺り一面は海である、だがこんな所に用がないなのははすぐさま移動しようとしたところ上空に気配を感じ見上げると、 其処には右手を向けて詠唱を終わらせたレザードがおり、彼の頭上には巨大な槍の矛先がなのはに向けられていた。 「この距離では逃れられん!ファイナルチェリオ!!」 なのははとっさにバリアを張ろうとしたが間に合わず、ファイナルチェリオは空しくなのはに突き刺さりそのまま吸い込まれるように海へと沈んだ、 だがレザードの攻撃は終わっていなかった、激しく水柱を立てた直後レザードはアブソリュートゼロを発動、 瞬間的に凍り付かせ海には即席の氷の島が生み出されていた。 「幾ら神と融合したといってもこの距離で―――」 しかし氷の島は揺れ始め振動が徐々に大きくなり島の周辺は波立ち、氷に亀裂が走るとレザードに向かって桜色の直射砲が伸び 一歩下がってギリギリでレザードは躱すと直射砲は雲を貫き夜空を覗かせ、砕け散った氷の島は粉雪のように舞い散り 直射砲が放たれた場所には右の口端から血を流したなのはがレイジングハートを向け不敵な笑みを浮かべながら睨み付けている姿があった。 「おのれぇ!図に乗るなぁ!!」 レザードは海水を引き上げ更に凍り付かせて巨大な氷の塊を三つ作り出しなのはに向けて投げつけ、レザードのデルタストライクがなのはに迫る中 なのははアクセルフィンにて加速、氷の塊の一つに自ら近づくとグリップを深く握り先端の魔力刃を振り下ろし氷を真っ二つに切り裂く。 続いて左に迫ってくる氷の塊に対しそのままレイジングハートを向けディバインバスターを放って撃ち砕くと、 休む暇なく右に迫ってくる氷の塊に対して今度は、環状の魔法陣を二つ右腕に纏わせ拳の先には加速された魔力球が存在しており 力強く氷の塊に拳をめり込ませた瞬間、魔力球を解放させる事により発生した、巨大な直射砲で内部から氷の塊を打ち砕いた。 スバルが考案したゼロ距離ディバインバスターとインパクトキャノンを応用したなのは式ゼロ距離ディバインバスターである。 一方でその光景を目の当たりにしたレザードは歯噛みし更に氷の塊を増やし、その数は12を数え次々に投げつけていく。 だがなのはも負けてはおらず、A.C.Sドライバーを起動させて最初に迫ってくる氷の塊を打ち貫き、続いて右から迫ってくる氷の塊を 未だに張られている右腕の魔法陣で魔力球を作り出し魔力球が触れた瞬間に先程と同様に打ち砕く。 ところが三発目の氷の塊が既に迫って来ており、なのははカートリッジを一発使用するとその場で右回転、 それと同時に右のハイヒール部分に魔力を込め、かかとに魔力刃を宿すとそのまま回し蹴りによって氷の塊を蹴り砕いた。 だが左右から氷の塊が迫って来ており、なのはは一つ舌打ちを鳴らすと今度は逆に左回転、 左手に持つレイジングハートの魔力刃にて薙払い斬り砕くと、更に目の前に氷の塊が押し迫る。 しかしなのははA.C.Sドライバーを起動させて瞬時に上空へと回避し難を逃れると、すぐさまレイジングハートを向けストレイトバスターを発射、 氷の塊に直撃すると反応炸裂効果により周囲の氷の塊を巻き込み結果五つの氷の塊を撃ち砕いた。 残りの氷の塊は二つ、するとその二つが押し迫って来ており、二つの氷の塊に対して更に上昇して回避するが、氷の塊は依然として追ってきており、 なのはは舌打ちを鳴らして縦横無尽に飛び回っているとレザードと氷の塊が延長上に繋がる箇所を発見、すぐさま誘導を仕掛けレザードを見上げる位置で立ち止まると、 案の定氷の塊が一列に襲い掛かりA.C.Sドライバーを起動、更にカートリッジを三発使用して魔力刃が桜色から真っ赤に染まった瞬間に加速、 赤い弾丸が氷の塊を次々に貫きレザードに直撃すると、今度はレイジングハートをレザードごと海に向け更に残りのカートリッジ全てを使用した。 「エクセリオン!バスタァァァァ!!」 「ぬぅ!!」 撃ち放たれたエクセリオンバスターはレザードごと海に直撃、海水を押し遣り海底にまで直撃させると 今度は竿を引き上げるようにしてレイジングハートをゆっくり持ち上げ、未だ発射されているエクセリオンバスターにより海を二つに割りつつレザードを押し遣った。 なのはが撃ち放ったエクセリオンバスターはクラナガン中央区画まで及び、海から一直線上に削られた跡が残されていた。 その先端には仰向けの状態で倒れているレザードの姿があり、レザードはゆっくりと起き上がり汚れた衣服を軽く払うとふわりと体を浮かせ 周囲に建ち並ぶビルより更に上空まで上昇すると右手を地上に向け詠唱を始めた。 「其は汝が為の道標なり…我は頌歌を以て汝を供宴の贄と捧げよう!!」 するとレザードの前方からビルを押し遣って巨大な火山が生まれると、其処から熱く燃えたぎる溶岩が噴き出しビル街を次々に飲み込んでいった。 一方でなのははカートリッジを交換した後レザードの様子を知る為、エクセリオンバスターを撃ち抜いた跡を道標に進んでいた。 すると目先にビルを押し遣って巨大な山が姿を現し、其処から帯び立たしい程の溶岩が流れて来ているのを確認する。 「なっ?!何なのあれ!!」 流石のなのはもこれには驚き戸惑いの様子を見せていると、流れ出た溶岩が次々に街並みを飲み込んでいき、更になのはの下へと押し迫っていた。 しかもこの溶岩はまるで自分の意志でも持っているかのような動きをしており、上昇すれば津波のようにしてなのはの行く手を塞ぐのである。 「やっぱり、これってレザードが!!」 「その通り!このカルネージアンセムに飲み込まれるがいい!!」 周囲にレザードの声と笑い声だけが響く中、逃げ場を失ったなのはの前にカルレージアンセムが襲い掛かり飲み込んでいった。 暫くして…辺りは流れ出した溶岩が冷え始め固まりつつある中、レザードは不敵な笑みを浮かべながら見下ろしていた。 そんな中である、冷え切った溶岩に亀裂が走り其処からオーバルプロテクションを張り巡らせたなのはが浮かび上がってくる、 どうやら飲み込まれる瞬間にバリアを張り出来るだけダメージを抑えたようである。 だがそれでも相当なダメージは受けているようで表情を曇らせるが、悟られないよう直ぐに隠し何でもなかった表情に変え上空すると 今度は此方の番といった様子でカートリッジを三発使用、なのはの周囲に現存するビルが次々に桜色の魔力に覆われていき まるで引き抜かれていくように浮かび上がると、なのはの周囲に張られている巨大な環状の魔法陣の上を周回し始める。 その数は15を数え先程レザードが用意した氷の塊の数を更に超える量を用意し、十二分に加速して発射準備を終えたビル群は、なのはの合図を待ち望んでいた。 「いくよぉ!スタァァダスト!フォォォル!!」 最早星屑とは呼べない代物と化したスターダストフォール、先ずは二つ放たれレザードに迫ると、マイトレインフォースを纏わせたグングニルを右手に持ち 一気に下から上へ切り上げビルを真っ二つ、続けて左手を向けて直射型のライトニングボルトにて分解した。 すると今度はビルが三つ襲いかかってきており、レザードはグングニルを振り払い衝撃波にて迎撃、すぐさま急降下して姿を隠そうとした。 「逃さない!!」 だがなのははレザードに向けてビルを二つ飛ばし行く手をふさぐと、今度は五つレザードに向けてビルを放つ。 一方で行く手をふさがれたレザードは、足下に巨大な魔法陣を張り魔力を込めていた。 そしてビルがレザードに迫り直撃しようとした瞬間、魔法陣から巨大な骨の両手が現れ次々にビルを払い、砕くと魔法陣から巨大な骸骨が姿を現したのだ。 なのははその姿に脅威を感じ残りのビルも次々に投げ飛ばすが、巨大な骸骨ペトロディスラプションはいとも簡単に防ぎきり むしろなのは目掛けて襲い掛かり、まるで虫でも払い落とすかのようにして右手を振り下ろし、なのはは弾丸のように地上へと叩きつけられた。 なのはが叩きつけられた場所は大きなクレーターと化し、なのははうつ伏せの状態から起きあがろうとしていたところ 目の前にあの骸骨が姿を現し、その巨大な両拳が餅でもつくかのよう何度も振り下ろされていく。 しかしなのはは大型のラウンドシールドを張って攻撃を防いでいたが、攻撃の嵐は一向に収まらず、クレーターは更に大きくなり周囲の建物はその振動により崩れていった。 その時である、骸骨の動きが止まり大きく口を開けると灰色の煙を吐き出し、周囲を包み込んでいく 煙には魔力による衝撃波が混じり合っており、触れたもの包まれたものを破壊する作用を持っていた。 前へ 目次へ 続きへ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/635.html
機動六課とスカリエッティの軍団との戦いが熾烈を極めていた頃、 万太郎はミッドチルダ内の廃ビルの屋上で体育座りのままいじけてしまっていた。 「Ⅱ世! 元気出してくださいよ!」 ミートが何とか万太郎を説得しようとしていたが、万太郎はいじけたままだった。 「Ⅱ世! 良いんですか? このままではこの世界の何億と言う人の命が失われるかも しれないんですよ!? 我々正義超人は人間達の命を守る為に神から比類無き力を 与えられて生まれてきたんですよ! こういう状況でこそ使わなくてどうしますか!?」 「良いんだよミート…。僕一人がいたってどうにかなる様な状況じゃない。 それにここの人達が自力で何とかしてくれるよ…。」 「Ⅱ世!」 「少し考えれば分かる事じゃないか! 僕はここの人達みたいに魔法は使えないんだよ! ちょっと普通より体格と力があるだけなんだよ! こんな僕なんて役に立たないよ…。」 万太郎はやはりいじけたまま何もしようとはしなかった。だがミートも強情に 説得を続けるつもりであり、万太郎の前にテレビを置いたのである。 「これを見てもまだそんな事が言えるんですかⅡ世!?」 「これは…。」 ミートがテレビを付けると、そこに映し出されたのは現場の中継だった。 聖王のゆりかごと呼ばれる巨大戦艦の周囲に多数の管理局魔導師達や スカリエッティの軍団が使用する無人機動兵器ガジェットドローンが 展開し、壮絶な空中戦が展開されていたのである。 「脆弱な人間だってここまで必死になって戦っているんですよ!? 超人であるⅡ世が戦わなくて どうするんですか!? このままでは何億と言う人の命が失われてしまうかもしれないんですよ!!」 「で…でも…。」 万太郎の心は揺れ動きつつあったが…まだ完全とは行かない。 だがこれはミートにとっても後一押しと言う状況でもあった。 「あれあれ? 良いんですかⅡ世…。ここで大活躍すればⅡ世はこの世界でもスーパーヒーローですよ? 機動六課の女の子達からもモテモテになっちゃいますよ? モテモテにならなくても良いんですか~?」 「ハッ!!」 その時、万太郎の脳内にある光景が浮かんでいた。皆がピンチの時に 自分が颯爽と駆けつけて聖王のゆりかごを48の殺人技で次元の彼方まで投げ飛ばして ミッドチルダの危機を救い、その後でさらに機動六課の美少女軍団に囲まれて ハーレム状態になっている自分の姿である。これには思わず万太郎の鼻の下も伸びると言う物。 次の瞬間万太郎はビシッと勢い良く立ち上がった。確かに万太郎は普段から根性無しだが この様に一度やる気を出せばやる男なのだ。だからこそ普段はドジでダメだと言われていても 何だかんだで様々な実績を残してきたのである。 「行くぞミート!! 僕達も加勢しに行くぞ!!」 「ハイⅡ世!!」 「聖王のゆりかごだか何だか知らないけどあんなデカイ船なんて僕にかかれば 木っ端微塵のミジンコちゃんよ~! 待っててよ~! なのはちゃん! フェイトちゃん! はやてちゃん! スバルちゃん! ティアナちゃん!」 万太郎とミートは走り出した。無論目的は戦闘が行われている現場である! 「ハァ…ハァ…付いたぞー!」 機動六課を含める管理局魔導師達とスカリエッティ軍団との壮絶な死闘が 繰り広げられていた最前線に万太郎とミートは到着した。しかも徒歩で。 この人間ではとても考えられない長距離を短時間で移動出来る(しかも徒歩で)は 超人だから出来る芸当なのであり、万太郎とミートも過去にそうやって徒歩で長距離を 移動する事は度々あった。 「さ~て! 可愛い子ちゃん達は何処にいるのかなー!? なのはちゃ~ん! フェイトちゃ~ん! 何処にいるんだ~い? 僕ちゃん頑張っちゃうよ~!」 「Ⅱ世…。」 やっとやる気を出してくれたのは良いが…女の事しか頭に無い万太郎にミートも呆れていたが、 そこでスカリエッティ軍団の誇るガジェットドローンが多数現れたでは無いか。 「おわー! 何か来たー!」 「これは敵が使っている機械兵器の一種ですよ! でもこれはただのザコに過ぎません。 これに苦戦していては皆を救ってモテモテにはなれませんよー!」 とにかくミートは万太郎がやる気を出す様に煽り立てるが、その思惑の通り 万太郎は堂々とガジェットドローン軍団を迎え撃つつもりの様子であった。 「任せろミート! こんな連中など僕にかかれば木っ端微塵のミジンコちゃんよー!」 万太郎は両腕を組んで堂々と構えていたが…下半身はすっかりチビッちゃってたりする。 「Ⅱ世! 格好付けながらチビらないで下さい!」 「だって怖いんだもーん!」 やっぱり何時もの万太郎だ…。だがガジェットドローンは情け容赦無く襲って来た。 「おわー! 襲って来た! 仕方が無い! やるぞ!」 とにかく万太郎は迫り来るガジェット達を殴り飛ばし、蹴り飛ばした。 リングの上で悪行超人と戦う時と違い、あまり長期戦にするわけにはいかないので 結構あっさりしている。さらに万太郎は一体のガジェットを掴み上げた。 「ええい48の殺人技No.1!!」 何故か万太郎は父であるキン肉スグルが得意としていた48の殺人技を いつの間にか会得していたりするのだが、その中の一つである技を放った。 これは48の殺人技の中でも一番簡単な技であるが、それでもかつてキン肉スグルは この技で相手をハワイから月まで投げ飛ばした事があると言う荒技である。 「それそれそれ! どんどん投げちゃうよ~!」 万太郎はその技によって次々にガジェットを山の向こうの空遠くまで投げ飛ばして行った。 一方その頃、聖王のゆりかご周辺で管理局とスカリエッティの軍団との激しい戦闘が 行われていたのだが…そこで突然多数のガジェット達が次々に吹っ飛んで来たでは無いか。 「うわー! 何だー!? ガジェットがいきなり物凄いスピードで突っ込んで来たー!」 「ギャー! 怖ぇぇ!」 実はこれ…万太郎が48の殺人技でぶん投げたガジェット達だったりするのだが、 これらが次々に聖王のゆりかごに激突して爆発四散していた。 当然これだけ激しいと管理局魔導師達にもとばっちりが来たりするわけで、 もう最前線はグダグダのゴタゴタになっていた。 「皆落ち着いて対処するんやー!」 前線で指揮を取っていたはやても内心慌てながら何とか指揮を取り続けるが、 まさかこのガジェット達を投げ飛ばした犯人が万太郎だとは夢にも思わなかった。 何故ならちょっと人より力のある豚男としか認識していなかったのだから… さて、万太郎の方に視点を戻すのだが…ガジェットを48の殺人技で次々にぶん投げて 調子に乗ってるのも束の間。万太郎とミートは何やら巨大な怪物に追い駆け回されていた。 「うひゃー! 怪獣だ怪獣だー! 怖いよー!」 さて、今万太郎とミートを追い駆け回している怪物の正体はと言うと… それはスカリエッティの軍団の構成員の一人であるルーテシアと言う名の 召喚魔導師の少女が何気無くガジェットを次々投げ飛ばしていた万太郎を発見し、 巨大怪物を召喚して万太郎とミートを襲わせたと言うイキサツである。 「怖い怖いよー! 怪獣怖いよー!」 「Ⅱ世! 今こそこれを食べる時です!」 ミートは万太郎の手にある物を手渡した。それはニンニクである。 「ニンニク?」 「そうです! Ⅱ世のお父上…キン肉スグル大王様もかつてニンニクを食べて 巨大化し、地球を襲う怪獣と戦って来たのです! 今こそⅡ世もニンニクを 食べて巨大化し、あの怪獣と戦うのです!」 「ええいこうなっちゃったらニンニク食べちゃうよー!」 万太郎はミートから渡されたニンニクを食べた。するとどうだろうか 身長176センチの万太郎が一気に数十メートルにまで巨大化したでは無いか。 これこそ正義超人が対怪獣戦の際に使用する巨大化モードなのである。 そしてこの巨大化モードならばルーテシアの巨大召喚獣とも体格負けはしなかった。 「ようし! これで条件は同じだ! 行くよ!!」 万太郎はルーテシアの巨大召喚獣と組み合った。 さて、万太郎がニンニク食って巨大化した事実は周囲で戦っていた管理局及び スカリエッティの軍団の者達を驚かせていた。 「大変だー! 何かいきなり巨大な豚男が現れたぞー!」 「しかもニンニク臭ぇぇぇぇぇ!!」 万太郎が巨大化した分、そこから発せられるニンニク臭もかなりの物らしく 局員はおろか(何故か)ガジェットでさえ苦しむ始末であった。 「あ! あれ良く見たら万太郎君やないか! 何であんなに巨大化してん!?」 勿論はやてもさりげなく驚いている。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/216.html
・後編の前半戦 クルクルクル、シュタッ! 「横回転を決め、華麗に着地ッ!!」 長い石階段を零段目からジャンプで飛び越え、神社の境内に着地したッ!! 狙い定めた着地地点に横たわっていた、黒くて硬そうでとっても大きい狼のような怪物(ややミディアム状態)を踏んでいるが気にしない! それよりも目の前のサイボーグの方が余ほど危険と言うもの!!! 「ぬう!貴様はアメリカ合衆国陸軍機械化小隊、通称"マシンナーズ・プラトーン"のサンダーボルト! 階級はついこの間少佐に昇進し、 腕に仕込んである赤外線照射装置で赤外線を照射することで大気中にイオンの導線を作り上げ、任意の場所に電撃を放てるが、経路に金属物質や伝道物質があれば防がれてしまう弱点を持ち、 さらに大気をイオン化させると独特のイオン臭が発生し、そのために過去アーカム最強のスプリガン御神苗優に敗れ去った、 次世代型サイボーグ・ソルジャーで、主に古代遺跡争奪戦を担当してるため世界中を飛び回っている貴様が何故此処にいる!!」 那美とユーノは同時思った。 (某さん、なんという判りやすい、だけども実際に喋れば何を言ってるのか全然判んないような説明口調!) 「はて、何故と言われましても……。昨日の発光現象が切っ掛けとなって調査をすれば、古代遺跡がらみになるのは当然と言うものですが……。 ついでに御教えするなら、昨日の発光現象が起きる随分前に、この海鳴市周辺に強力なエネルギーを持った"何か"が散らばるのを、我が国の情報収集衛星が観測しています」 「それで此処にジュエルシードがあると知ったのかッ!?」 「いえいえ、私は今休暇中の身でして。……観光と考古学の勉強を兼ね、由緒あるこの八束神社に寄ってみればちょうど魔物化した……今貴方が踏みつけている犬と会いましてね……運が良かったんでしょう」 なんと白々しい台詞を言うやつだ! おそらくジュエルシードの発動するときのエネルギーを感知する装置が出来上がっているかもしれん! これは不味い事になったッッ!! 「こいつをどうする気だ?」 「大型輸送ヘリを既に呼んであります。施設が整っている横田基地に連れて行って調査を行うつもりです」 「あ、あの、サンダーボルトさん!」 かなり離れた位置で、倒れた女性を介抱している巫女姿の少女が泣きかけながらサンダーボルトに質問した。 忘れていたわけではない!目の前に一個小隊の兵士を一瞬でウェルダンにしてしまう能力がある男が居なければ、挨拶と小一時間くらいの世間話をできる社交性を私は持っているッッ!! ちなみにステエキの焼き加減は八種類あり、弱い順で言うと、ブルー・ブルーレア・レア・ミディアムレア・ミディアム・ミディアムウェル・ウェル・ウェルダンとなる! 翠屋でステエキを焼くことは滅多にないが、以前に修行していた東京の下町関陽区にある大衆定食屋で働いていた御蔭でこのような知識が身につけられたのだ!! うむッ、一から料理のイ・ロ・ハを教えてくれた味吉夫婦には感謝の念が止まらない! 「連れて行っちゃうって……そしたらその子どうなっちゃうんですか?元に戻れるんですか!?」 「検査してみない事にはわかりません……。単純に変異の原因となった"モノ"を飲み込んだだけなのか、それとも肉体と完全に融合しているのか……そうなった場合には、残念なことになるでしょう……。 このまま放置すればどのような被害が一般の方に出るかわかりませんですし」 「ちょっと待ってください!取り出すことなら今すぐに出来ます!そしてこの犬が飲み込んでしまったジュエルシードは、もともとこの世界のものではありませんので、私たちで回収させてください!!」 うむ!ユーノ君が、恐るべき戦闘能力を持ったサイボーグに怯まずに言えたぞ!! 「ふ~む……あんまりこう言いたくはないのですが……。実は我が国と日本は、あなた方にそのジュエルシードとやらを渡して、安全保障上、本当に問題が無いか判断がつきかねていまして……。 要するに、ジュエルシードを集めたら我が国に害を与えない保障、この場合"判断材料"が何にもないのです。 我が国にとって最も安全なのは、そのジュエルシードを我が国が責任を持って管理することです。 そもそも、"一方的に"交流を断って来た、貴方がた異世界人の言う事を、今この場で、その怪物化している子犬の前で、軍人が信用しろというのが不可能に近いですね」 「そ、そんな……じゃあどうすれば信じて貰えるんですか」 ふうむ…あの男の言い分も一理は……ある! しかし、一理はあるが一理でしかない!! 「サンダーボルト!ではこういうことならどうかッ!? この事件を契機に、互いの信頼を高めるための交流促進を行えば良いのだ! ちなみにネオ○チは本日朝9時を持ってして、ユーノ君を正式に『超時空特使ユーノ』として任命済みである! 異世界と交流を結び、それをもって技術革新と進め、世界規模の貧困と格差減少を図るのだ!! そしてえッ!最終的には全人類規模の意識改革をッッ!!」 「ハ~………世の中が貴方の頭みたいに単純なら、誰も苦労はありません。 むしろ異世界の存在を公にすれば、それこそ超古代文明を認める以上に地球レベルで混乱が発生しかねないと私たちは分析しているのですが。 ユーノさん、と言いましたか。ユーノさんは私の考えはどう思いますか?」 「たしかに……間違ってはいないと思います。事実、ボク達の世界の歴史には、不要な接触が更なる流血に発展してしまった事例がいくつもありますから。 ですが、この世界の"外"から来てしまったジュエルシードは、ボク達もこれまでに知った事のない、あまりにも危険な"力"を秘めてるんです!」 「具体的には?」 「……次元世界を滅ぼしかねない力、としか判りません」 「ふむ……」 おお!小さくか弱いフェレットの姿のまま、全身のほとんどを機械化した殺戮兵器に果敢に説得しようとするその勇気! 「ブラフ(脅し)にしては幼稚すぎますね。ユーノさん、信用も無い初めて会った相手を説得するのなら、交換材料を用意しないと駄目ですよ? それに、もう迎えが来たようです」 むうう!澄んだ大気を切り裂くようなエンジン音がこちらに凄まじい勢いで近づいてきた! 「では交渉は一時中断ということで……。我々の手で"保護と治療"をさせていただきます。あ、ちなみに私の行動は、日米安保の公にならない秘匿条項が定める範囲内の行動なので、日本政府からの合意があることを御理解し」 「待てィ!すぐにジュエルシードを封印して、犬を元通りにできると言ったであろうがッッ!!」 「……ボー・ブランシェ少佐。貴方が"その"上に立っていると回収の邪魔になるので、速やかにどいてくださいませんか?」 「その物言い!どうやら必要なのは、ジュエルシードで"変異した"子犬の方らしいな!!何故そう思ったか!それは貴様たち米軍がジュエルシードを何個か手に入れているからだ、どうだ!?」 「軍とCIAの防諜能力の低下には泣けてきてしまいますね……どうせ情報の出所はアーカムあたりだと思いますが」 「フッ、引っ掛かりおったな!今のがブラフだ!!」 サンダーボルトがベレッタM9を抜いて撃ってくるが、そんな遅い動作ではいくらでも避けられるわ! せめてシティハンターレベルに上達せい!! 当然、私を犬から離すための攻撃だ! いきなり電撃攻撃をしなかったのも、実験体となる犬に、電撃を食らった私の足から高圧電流が流れさせないためだ!! もっとも電撃を加えてくるなら、事前動作として腕の内側にある赤外線照射装置を私に向けなければならないが、登場時の私の発言で封じてやったわ! 私は横にスライド移動しながら、予め念話で打ち合わせていた通りに、ヨーノ君を投げた! 場所は鳥居の近くに居る女性二人!たぶん犬の飼い主であろう気絶している女性と、それに付き添っている神咲那美さんだ!! 私の鍛え上げられた肉体によって、剛速球状態で飛んだユーノ君は魔法で減速して着地するや、二人を護るようにして結界を展開する! 当然流れ弾などが当たらないようにするためと、人質にされないためだ! このサンダーボルトという男は、"軍人として"正直なため、人質などと言う下劣な事はしないと判りきっている! しっかぁし、目的を達成するなら如何なる手段を用いる非情さも"軍人として"持ち合わせている男なのだ!! 軍人とは上から命令されれば余程の理由が無い限り従わなければならない! ましてや、世界の軍事バランスを崩すこと間違いない古代遺跡が関わるならなおの事ッ! 「アタタタタッ!!」 分身移動で銃弾をかわしながらサンダーボルトのインサイドに入った私は、すかさず打撃技のコンビネーションを繰り出す! 「分身激烈脚・改ィッッ!」 相手の周囲を高速移動による分身で埋め尽くしながら、必殺の蹴りを繰り出し、見事ベレッタを叩き落とす事に成功した! その他、四方から頭部めがけて出した蹴りは、サンダーボルトの両腕で捌かれ、防御されてしまった! いや、一応フェイントとしての攻撃なんだ!信じてくれぇ!! 当然当たれば倒せる自信はあるが! 私は手応えが無い時点で即座にバックダッシュで離れる! バチィッ! 後退したそばから、電撃! だが、両手から放たれた二条の雷は私の分身を空しく貫き、その向こうの木を破裂させる! 4,6,8本目!! あたりに漂うイオン臭は、戦いが始まる前に赤外線を放って電撃の道筋を何本も作っていたことを知らしめる! 無風状態のこの場なら非常に有効なトラップだ! (……しかし解せん!) そう思った時、サンダーボルトが口を開いた!! 「言っておきますが、敗北から学んでいるのは、なにも貴方だけではないんですよ」 「……まさかマシンナーズ・プラトーンが体術、それも"合気"における「流れ」と「捌き」をマスターしていたとは……。 私の蹴りを一本でも正直に受けていれば、お前の身体ごと吹っ飛ばしていたものを……顔面に行った蹴りを捌いて、ベクトルを変えることで防御したとはな!」 「勘違いしているようなので続けますが、マスターしたのではありません。 我々機械化小隊は現在、まったく新たな『近接戦闘術』を生み出す"基礎"とするために、ありとあらゆる格闘技を学んでいる途中にすぎませんので……。 それでは、今度はこちらから行きます。あ、そうそうこれから30秒間、電撃は使いません」 「ぬあにぃ~?作戦中に情けを掛けるのか!!」 「いえ、私の調べでは神社や仏閣といった、正の霊的スポット入ると貴方の体調が、何故か極端に崩れるはずです。 そんな現在の貴方に、近接戦闘での接触時に電撃を放つという常套手段では有意義な戦闘セータが取れません。 事実、貴方は先ほど、攻撃を続けずに一旦引きました。 格闘家にとって最も恐ろしいものは、相手の身体に触れる行為をした瞬間にダメージを喰らうことですからね。 こういうのを"相性"が悪すぎると言うんでしょう。 ま、今貴方が着用している戦闘服が絶縁能力に秀でていれば話は別です。 ……長話をしているとヘリが到着してしまうので、行きます」 サンダーボルトと私の間隔は6メートル以上あったが、奴はそれを一瞬で縮めた! 速いぞッ!! 半歩のバックステップ! ユーノ君がジュエルシード発動を感知した時点で身に纏ったバリアジャケットの絶縁能力が如何ほどのものかは定かではない! だからあのまま必勝コンボを繰り出さずに引いたのだ! 昔の私だったら迷わず攻撃を続けていた事だろう!これが、これが成長というものなのかッッ!! 「うおりゃああああああ!」 気合一拍! サンダーボルトの三連左ジャブを右手で凪いで流す! サイボーグの拳は鋼鉄の塊、それを高速で突いてくるのだ!ジャブとはいえ真面目に受ければどのようなダメージになるか! 当然喰らったとしても、このバリアジャケットと、そして鍛え上げられた肉体、何より"水の心"、すなわち明鏡止水の境地による読みが、急所の命中を外させる事で致命傷を防ぐ自信がある! しかし、先ほどヤツが言った台詞がどうにも引っ掛かる! 左ジャブ、下段蹴り、右ジャブを二十発、また左ジャブの連続!身体と手、両方の連動した捌きで外して避ける! スピードはあるが、正直単調過ぎる! 微妙な重心の変化!ヤツが右手を繰り出してくるのが読めた!瞬間に私は左ストレートのカウンターを放つ! が、しかし、渾身の一撃は空を裂いただけであった! サンダーボルトが左側に回りこみ、私の顔面に掌をかざしている! 外されたァッッ!! 殺気を読んだ上での絶妙のタイミングであったと自負している!!なのにいいいッ! 一年前、新宮流古武術の道場で関節を外され滅多打ちになりながら、全ての武術にとっての共通の奥義「明鏡止水」を会得したのではなかったのか!? 「これぐらいで驚かれては困ります。私はただ"機"を外したにすぎません」 ヤツは優位に立っても、会った時と変わらず涼しい顔で微笑んでいる! しかし"機"だと?"氣"ではないのか!? 「"機"とは、戦闘における集中とタイミングの概念をまとめたもの……と考えておいてください。ま、これはエリア51のオタクからの受け売りなんですがね。 ちなみにさっきの反撃をよけたものを『遊撃功律動』と我々は呼んでいます。 こちらからリズムを急激に崩す事によって、反撃のタイミングそのものを外させます。 こんな芸当ができるのも、全身の人工筋肉を精妙な急制動を可能にした基礎技術力の向上によるものです。 長い失敗と敗北を重ね、機械化小隊はようやく人間をほんの一歩ですが超えられました。 もっとも、"本気"の貴方や、朧、ルガール、最強の生物といった世界中のオーバーSランク・ソルジャーには、まだまだ劣りますが……。 おっと、30秒経ちましたね」 「うおおおおお!!」 私は身体をねじり、思いっきり跳躍する! 電撃が来ると思っていたが、そうではなかった! サンダーボルトはその場に居た!しかし伸ばしていた手を引き、両足を肩幅よりやや広く開けた空手の構えをしている! 10メートルは開いたこの距離で何をしようというのか!! 「よく見ていてください。何も電気エネルギーを放出して使うわけではありません。電力を電磁力に変換して工夫すればこのような芸当も可能です。 行きますよ~」 ヤツは「ス~」と深く息を吸うと、腹のそこから響くような太い声を出した! 今までヤツが発していた紳士的な空気が変わる! なッ、なんだぁこの圧迫感はッッ!! 「超ォォ~~~電磁ィィィ 逆 突 き ャ ア ア ア ァ ! !」 後編 後半戦に続く! 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2884.html
「ドクター、少しよろしいですか?」 とある遺跡の地下に建てられた研究所、スカリエッティは今までの研究の成果を纏めていると、後ろから呼ぶ声がした。 「どうしたんだい?ウーノ」 「あの男の話、本当に信用なさっているのですか?」 あぁ、あの話か…と思い返しながらも、ドクターはデータを纏め続けていた。 だがしかし…確かにウーノが言う通り、彼レザードが話した話はまるで、おとぎ話のような信じられない内容だった。 リリカルプロファイル 第二話 魂 レザードが居た世界は、世界樹ユグドラシルを中心に形成された三重世界で、 人間の世界ミッドガルド、死者の世界ニブルヘイム、神の世界アスガルドとそれぞれ呼ばれていた。 ある時、神の世界の王オーディンは、やがてくると予言された神々の黄昏“ラグナロク”に備え、 とある神をミッドガルドに派遣、その神は人々から“魂を選定する者”と呼ばれ、その名の通り魂を選定し、 選定された魂は、神の先兵エインフェリアとして神の世界に送られ、神の為にその力を振る事を約束されていた。 そして“ラグナロク”が訪れた日。神の王オーディンは裏切りの神の手によって倒れ、 世界は海に沈み、滅んだかに見られたが“魂を選定する者”が新たな創造神として世界を再生させたのだ。 一方レザードは“ラグナロク”を乗り切るため、賢者の石と呼ばれる石の力を使い乗り切るのだが、 “ラグナロク”後の世界は、レザードにとって望まぬ世界だった。 其処でレザードは過去へと飛び、とある王女の旅に同行、 目的である神の力を得ると、自らが望む世界を創った…というものだ。 「ウーノの気持ちはわかるが、彼は嘘をついて無いよ」 レザードの中に封じられている力、見た事の無い術式など、レザード自身が証明であるとスカリエッティは答える。 だが…神が住む世界、過去へと飛ぶ術式、魂の存在など、今まで比喩的表現でしかなかったものが証明されている世界。 …スカリエッティは思わずつぶやいた。 「もしかしたら、彼が住んでいた世界こそ、我々がアルハザードと呼んでいる世界なのかもしれない……」 アルハザード…かつて魔法を究めたとされる古代世界… その住人の可能性がある人物が目の前に、それも計画に一役担っている。 …今まで休むことなく動いていた手が急に止まり、考えにふけるスカリエッティ。 「……ドクター?」 「…………うん、すまないウーノ、残りのデータを纏めておいてくれたまえ」 「分かりました……それでドクターはどちらへ?」 「ちょっとレザードと話をしてくるよ」 ウーノにそう告げると、足早に部屋を後にする。 彼の話を耳にしてから去来する一つの想い…それを可能に出来るのは彼しかいない、とスカリエッティは思っていた。 此処はスカリエッティによって割与えられた部屋、レザードは此処でこの世界の魔法及び技術を調べていた。 まず、この世界の魔法はデバイスと呼ばれる道具によって使用する事が一般である事。 更に魔法をプログラム化させる技術により詠唱を大幅に短縮出来る事、魔力を属性に変換させて使用するのは珍しく、 むしろ魔力そのものを圧縮、放出、また形状、性質を変化させて攻撃するのが主流だということ。 そしてデバイスには、非殺傷設定が存在することである。 非殺傷設定とはどれだけ強力な攻撃でも、たとえその攻撃が死に値する攻撃であっても、 気絶、もしくは昏睡にとどめるシステムだという。 「非殺傷設定…まるで生粋のマゾヒストかサディストが考えたような設定ですね」 そんなことを考えて苦笑いる時、後ろでレザードを呼ぶ声が聞こえ、 振り返るとスカリエッティが部屋に入って来ていた。 「ドクター何か用で?」 「君に聞きたいことがあってね、率直に聞きたい……造られたモノにも魂が“宿る”事はあるのかい?」 「やれやれ…いきなり来て、何を言い出すのかと思えば……」 両手の平を広げ肩をすくめ、小馬鹿にした表情を見せるが、スカリエッティは真剣な目レザードを見つめていた。 …レザードはため息を一つ吐き、眼鏡に手を当て問いに答える。 「造られたモノに魂が“宿る”という事は………あり得ません」 レザードがかつて造ったホムンクルスしかり、神の器もしかり、そして戦闘機人も同様だろう。 しかし造られたモノに魂を“宿す”事は出来るという。 レザードによれば彼が得た力の一つに、輸魂の呪と呼ばれる呪法が存在し、 それを活用すれば、モノに魂を宿す事が出来るだろうというものだった。 「なるほど……」 「しかし、なぜその様なことを?」 「…レザード私はね、魂を得たいのだよ」 するとスカリエッティは自分の出生を話し始める。 自分はアルハザードと呼ばれる世界の超技術によって造られた“無限の欲望”と呼ばれる存在で、 名の通り欲望のまま、様々なモノを造り上げ、生命をも研究して来た。 そして次にターゲットにしたものは魂だった。 魂を知る為にあらゆる生物を解剖してきたが、魂の存在を確認する事が出来なかった。 魂など存在しないただの偶像と考え始めた矢先、レザードと出会い、話を聞き胸が高鳴ったという。 「私はね…君の話を聞いてから、魂が欲しくてたまらない!何故ならそれこそが人とモノを分かつ絶対条件だと確信したからだ!」 クローン技術、人造魔導師、遺伝子改造、記憶のコピーなど 生命操作を次々に手掛けていくと、人とモノの境界線が曖昧になっていく。 人とモノの境界線をハッキリさせる必要なファクター、それが魂だとドクターは主張する。 「どうだろうレザード、人とモノの分ける証明の為に、 私に魂を与えてはくれないだろうか?…私は人になってみたいのだよ」 いや、なりたいのかもしれない。造られた存在はただの“物”として取り扱われるこの世界。 それからの脱却の為に魂を得る…むしろこれは革命と言っていいのかもしれないと、 熱く語るスカリエッティの言葉を、黙って聞くレザード。暫くして考えが纏まったのか口が開き始める。 「……特に問題はないですが、一つ条件があります」 そう答えたレザードは左胸の裏ポケットから一つのケースを取り出す。中には銀色の髪が数本入っていた。 「この髪の毛を元に戦闘機人を造って貰いたいのですが」 「ふむ、それは別に構わないが、一体誰の毛なんだい?」 「まぁ、“神の毛”…とでも言っておきましょう」 両手の平を開きながら肩を竦め、おどけるレザード。 …これはひょっとしてギャグなのか?と考え込むスカリエッティだが、 戦闘機人製作で魂を得られるのなら、安いものだと、レザードの依頼を快く引き受けた。 レザードにとって無垢の魂を造り出す事は造作もなく、 横になっているスカリエッティの記憶、情報をとある神の技術を応用した術式で読み込み 無垢な魂に刻むと、続いて輸魂の呪の詠唱を始める。 「全てを断ち切る糸よ我其に願う、意を持ちて絡め取りたる魂よ…血と肉と骨を与え、新たなる傀儡をここに紡がん」 これにより魂は、吸い込まれるようにスカリエッティの体に結び付き無事完了。 早速スカリエッティは自分の体を確かめる様に動かし始める。 「………あまり代わり映えしないもんだね」 「まぁ、そんなものですよ、それより約束忘れないで下さい」 あぁ解っている…と頷いて返事し、手渡された髪の毛を持ってスカリエッティは意気揚々と自分の部屋へ帰って行った。 そんな姿を見たレザードは頭に手を当て、やれやれ…と言った表情で見送る。 …暫くしてウーノ達がレザードの部屋にドッと押し掛けてきた。 どうやら、ドクターが自慢するように魂の話をしていたようで、 それに影響されたのか、自分達もまた魂が欲しくなったのだという。 レザードは呆れた表情を浮かべるが、彼女達もまたスカリエッティと同じく造られた存在、 魂という存在に憧れ、欲しがるのは仕方がない事なのかもしれないと考え、一人ずつ丁寧に魂の処置を施した。 「ありがとう“博士”」 「トーレ?その“博士”と言うのは何ですか?」 「ドクターが言っていたんだ。レザードは“博士”だと」 「“博士”………ですか」 レザードは眼鏡を抑え笑みを浮かべる。どうやら本人も満更ではない様だった。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3222.html
コメント欄です 感想や応援メッセージなどをお気軽にどうぞ(無名コメントも可能です) シャドウラン、原作の雰囲気を出しながらもコミカルなところが面白いです。 続き期待してます。 -- 名無しさん (2010-08-14 06 45 52) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/jzrowa/pages/56.html
【魔法少女リリカルなのはStrikerS】出典の支給品 【リボルバーナックル】 スバル・ナカジマに支給。 スバル・ナカジマ及びギンガ・ナカジマが使用する拳装着型アームドデバイス。非人格型で喋る事も無い。 肘から先を覆う大型かつ重厚な篭手であり、手首の辺りに備えられた二重のナックルスピナーやカートリッジシステムによって攻撃力を上げる事が出来る。マッハキャリバー及びブリッツキャリバーが開発された際にそれらとのシンクロ機能が搭載され、収納と瞬間装着の機能も追加された。元々はスバルとギンガの母、クイント・ナカジマが使用していた物だが、彼女の死後は形見としてスバルが黒い右腕用、ギンガが白い左腕用を使用している。ただし、使用者が特性をインストールすると色も変化するため、クイントが使用していた時のリボルバーナックルのカラーはスバルとギンガが使用している時とは異なり、スバルが左腕用を装着したときも黒に変化した。 【マッハキャリバー】 スバル・ナカジマに支給。 スバル・ナカジマが機動六課より支給されたインテリジェントデバイス。スバル専用デバイスとしてシャリオ・フィニーノ達が開発した。 足首から下を覆うインラインスケート型、分厚い装甲と蒸気を吐き出すマフラーを備えた重厚なデザインで、待機形態はペンダントとなる。リモード2《ギア・セカンド》は他のデバイスのように形態が変わらない。スバルとはお互いに「相棒」と呼び合っている。 戦闘機人の能力を暴走させたスバルからの負荷に耐える事ができず一度破損。その後、マッハキャリバー自身が考案したフレーム及び装甲等の特別強化プラン(代わりに魔力消費量1.4倍、重量2.5倍に増加)と、ファイナルリミット《ギア・エクセリオン》解除を施されている。 【ストラーダ】 ティアナ・ランスターに支給。 ティアナ・ランスターに支給。 エリオ・モンディアル専用のアームドデバイス。 エリオの身の丈以上もある長槍型。穂先部分は左右に噴射機を備えた巨大な三角形となっており、分類としてはパルチザンの形といえる。カートリッジシステムを搭載しており、カートリッジロードや援護魔法による強化を受けると、噴射機が起動し推力を発生させる。待機時は腕時計となり、エリオは普段右手首に付けている。通信機能も搭載されており、中央にモニターが表示される。 ケリュケイオンと共に、マッハキャリバーやクロスミラージュより先に完成していたが、デバイスの使用経験が無かったエリオを慣れさせる為、基礎フレームと最低限の機能だけで渡されていた。だが、スバルやティアナに専用デバイスが与えられたのを契機に、本来の状態に戻された。《スピーアフォルム》を基本形態とし、フォルム2(ツヴァイ)である《デューゼンフォルム》は無数の噴射機を起動させて突撃力を飛躍的に高める形態で、ある程度の飛行も可能。フォルム3(ドライ)である《ウンヴェッターフォルム》はエリオの『電気変換』の能力を最大限に発揮させる為の形態である。 【ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 ルーテシア・アルピーノに支給。 キャロ・ル・ルシエ専用のブーストデバイス。 キャロの両手を覆うグローブ型をしている。複製を発生させて一対となるクロスミラージュとは異なり、こちらは両方共が本体であり、両手に装着しているのが常態である。待機時はブレスレットとなる。 【アスクレピオス@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 キャロ・ル・ルシエに支給。 ルーテシアが使用するグローブ型のブーストデバイス。待機形態が存在しないのか、こちらは常にルーテシアの両手に装着されている。キャロのケリュケイオンに形状が酷似している。普段はルーテシアによって能力限定がかけられている。 元々はルーテシアの母、メガーヌ・アルピーノが使用していたデバイスである。 【レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 ゼスト・グランガイツに支給。 通称「炎の魔剣」。アームドデバイスにしてシグナムの愛刀。 グラーフアイゼンと同じくカートリッジシステムを搭載し、初戦においてフェイトを圧倒、バルディッシュを中破に追い込んだ。通常形態の片刃の長剣《シュベルトフォルム》から、連結刃と呼ばれる刃を備えた鞭《シュランゲフォルム》へ、また鞘と剣を一体化した弓矢型の《ボーゲンフォルム》へと変形する。刀身に魔力を込めて炎を纏わせて両断する「紫電一閃」はシュベルトフォルム、刃に魔力を乗せる中距離攻撃「飛竜一閃」はシュランゲフォルム、刀身を流用して生成した矢を射出する「シュツルムファルケン」はボーゲンフォルムでのみ使用可能。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3357.html
闇の書事件臨時本部が設置されているマンションの一部屋。 その一室にてリンディ・ハラオウンは、宙に映し出されたモニターを険しい顔で凝視していた。 モニターに映し出されるは、鮮やかな金色の短髪を携えた男の姿。 男は、白色の、まるでライダースーツのような服を身に付けており、軽快な振る舞いで画面の中に立っている。 リンディはそんな男の静止画を無言で睨め付ける。 一秒、二秒、三秒と、刻々と流れていく時間の直中で、ただ押し黙り、思考に全神経を集中させていた。 (アンノウン、か……) リンディが臨時本部に帰還したのは、数時間前の正午の事。 それから今まで、リンディはずっとディスプレイとの睨み合いを続けていた。 この数日間は、時間の殆どをフェイト達の付き添いで消費しており、戦闘の解析をする事が出来なかった。 現在、リンディが行っている作業はその穴を埋める為のもの。 守護騎士達がいつ出現するかも分からない今、情報収集は最優先の事項であった。 ふと画面が切り替わり、また別の写真がディスプレイに表示される。 写真の中心にいるのは、先程と同様の男。 服装も髪型も同じである……が、ある一点が大きく異なっている。 そのある箇所とは―――男の左腕。 洗練された名刀と見紛うばかりの刃が、そこには存在していた。 (……先天性能力の一つだと思うけど……それにしては何となく異質な感じね……) 数秒の熟考を経て、リンディの細指がディスプレイ上を走る。 続いて画面上に現れたのは一編の動画。 その動画の中では、少年魔導師の撃墜の瞬間が、事細かに収められていた。 (そして、クロノを撃墜した謎の能力……まるで斬撃そのものを飛ばしているかのような不思議な攻撃…… ……不可視にして速攻……出も早く、射程も威力も強力……最大出力ならば巨大包囲結界すら破壊可能……) 眉間に皺を寄せながら、リンディは記憶の棚から情報を引き出していく。 この強力な能力に対抗できるような有益な情報。 艦長として培ってきた長年の経験から、この男に対する対抗策を練り上げているのだが……その作業は難解を極めていた。 第一に、単純な問題ではあるが火力が桁違いに強い。 奴は、十数人もの魔導師が形成した結界を、易々と両断した。 あれだけ強固な結界を破壊するには、少なくとも高町なのはの最大砲撃―――スターライトブレイカー並の一撃は必要な筈であった。 そう、その筈なのに……奴はただの一振りで結界を破った。 発動の溜めに使用された時間はほんの数瞬。 つまりは、その数瞬で、スターライトブレイカーにも迫る超高威力の攻撃を行使できる程のエネルギーを貯蓄したという事。 余りに異常なエネルギー効率。加えて、それだけの攻撃を放ったというのに、男には疲労の色が寸分も見受けられない。 常識では考えられない現象の数々であった。 (……かなりの難敵ね) 僅かな溜めで超上位砲撃魔法と同等の力を有する攻撃が可能。 攻撃による疲労は、おそらく極軽微。威力の調節も可能である。 男の概要を簡単に纏めると以上の通り。攻略は相当な難易度を誇る。 総指揮を任されているリンディにとっては頭の痛い限りだ。 (守護騎士だけでも手一杯だっていうのにねぇ……) 疲労が浮かんだその表情で、リンディは深い溜め息を吐き出した。 先の戦闘で撃墜されたフェイトとクロノは比較的軽微な負傷で済んだ。 現在は管理局本部で治療に専念しているが、医務員の話によれば、一週間も休養を取らせれば問題なしとの事。戦線への復帰も近い内に可能だろう。 身も蓋もない言い方ではあるが、少しでも戦力が欲しい現時点に於いて、二人の迅速な復帰は非常に助かる。 全体的に下がり気味にある士気も、僅かながら回復の兆しを見せる筈だ。 (なのはさんは大丈夫かしら……) 特に、自軍の最高戦力である高町なのはのモチベーションの低下は、顕著なものであった。 多少の励ましは掛けたものの、殆ど上の空で聞き流されてしまった。 ここ数日間フェイト達に付きっきりであったとはいえ、あの状態の高町なのはを放置してしまった事は完全に痛手。 悪策の極みと言っても過言ではない。 (……少し連絡を取ってみましょうか) フウ、と息を吐くと、大きく上半身を伸ばしながら、立ち上がるリンディ。 作業により凝り固まっていた身体がゴキゴキと鈍い音をたて、軋みを上げた。 モニター室から出たリンディは、リビング兼キッチンとされている一室にて、固定型電話の子機を操作する。 「あれ、電話ですか?」 「ええ、ちょっとなのはさんにね」 と、その時、リビングにて情報整理に勤しんでいたエイミィが顔を上げ、リンディへと声を掛けた。 リンディは受話器に付属された番号を指先で押していきながら、エイミィへ笑顔を送り、ご苦労様と労いを返す。 そして、エイミィの向かい側……茶色の木製椅子に腰を下ろして、機械の中から響くコール音に耳を傾ける。 五回目のコール音が終わるか終わらないかというタイミングで、相手は電話に出た。 「もしもし、なのはさん?」 「あ、リンディ提督。やっぱり帰って来てたんですね」 電話先のなのはは、やっぱり少し疲れた様子を見せていた。 普段のハキハキとした口調は鳴りを潜め、幾ばくかの影を落としている。 「ええ、ついさっきね。そっちはどう? 何か変わった事はあった?」 「いえ、こっちは特に何もありませんでした。いつも通りです。……それで、あの……フェイトちゃんとクロノ君は……」 だからこそ、と明るく振る舞うリンディであったが、やはりなのはの声に覇気は戻らない。 心配の気持ちが表情となりリンディの顔に浮かび上がる。 「二人なら大丈夫よ。クロノもフェイトちゃんもあと何日かすれば復帰できるって。 またそっちの学校に行けるようになるだろうから、アリサちゃんやすずかちゃんにもよろしく伝えてくれるかしら」 「分かりました……」 クロノやフェイトの無事も伝えるも、その鬱々とした様子は一向に引きずられたまま。 予想以上に重傷、いや、時間の経過により重傷になってしまったのか。 元来、高町なのはは責任感の強い優しい子だ。その性格が影響して、二人の撃墜を自己の責任として押し付けてしまったのだろう。 このような事態になった要因の一つに、心のケアの遅れも少なからず存在する筈だ。 本日何度目かの溜め息が、零れ落ちる。 「なのはさん」 次に口を開いた時、リンディの口調は優しげな物から厳格な雰囲気を纏ったものへと変化していた。 今のなのはには、おそらく奨励の言葉は届かない。どう励ましたところで、結局は自責の念へと変換されてしまうだろう。 ならば、逆に、また別の責任を植え付けるしかない。 彼女の心労は増すだろうが、いち早く立ち直って貰うにはこの手段しかなかった。 口調とは裏腹の歪んだ表情で、リンディが言葉を紡ぐ。 「二人の件で心を痛めているのは分かります。ですが、クロノ・ハラオウンとフェイト・テスタロッサが戦線を離脱している今、守護騎士に対抗できる魔導師はなのはさんだけです。 そのなのはさんが士気を低下したままでは、闇の書事件に関わる管理局員全体の士気にも関わるんです。 なのはさんには酷な事だと思うけど……早く、立ち直って下さい。お願いします」 この闇の書事件は、言うなれば世界の存命を賭けた戦いだ。 闇の書が完成、暴走すれば世界が滅亡し、少なくともこの地球という惑星は終焉を迎える。 そんな重大な責任を負わされた任務なのだ。 例え民間の協力者とはいえ、此方側の最高戦力である以上、モチベーションの低下した状態でいられては困る。 劣勢に陥っている現状なら尚の事だ。 向かいの席ではエイミィが作業の手を止め、心配そうな視線を上司へと送っていた。 「……分かりました、すみませんでした……」 「いえ、謝らなくても良いわ……ただ、二人の事は深く考えないように、分かった?」 「……はい」 なのはの口調は、相も変わらず変化の予兆すら見せない。 年不相応のしっかりした少女であるとはいえ、実際はまだ二桁にすら届かない年齢なのだ。 精神訓練を受けているのならまだしも、たったこれだけの言葉で、回復しろという方が無理のある話だろう。 仕方ないか……と、考えたリンディはなのはの激励を諦め、話題を変える。 彼女が持ち出した次の話題は、ヴァッシュ・ザ・スタンピードについてであった。 「なのはさん、今近くにヴァッシュさんは居る? 居るんなら、少し代わってくれないかしら」 映像の中のヴァッシュ・ザ・スタンピードは、明確な敵意を持った表情でアンノウンと会話を交わしていた。 守護騎士との戦闘に於いても飄々とした風貌を揺らがせなかった彼が、明確な敵意を持つ……普通では有り得ない状況に見えた。 おそらくヴァッシュとアンノウンとの間には何らかの因縁が存在する。 そう推測して、リンディはヴァッシュとの会話を望んだ。 彼からアンノウンについての情報を少しでも入手したかったのだ。 「え? ヴァッシュさんならそっちに向かうって言ってましたけど」 が、その目論見もなのはの一言により虚しくも崩れ去った。 え? と、リンディの表情が困惑に染め上げられる。 「なのはさん、それいつの事?」 「えっと、夕ご飯の前だから……確か一時間位前の事ですけど」 リンディが居る臨時本部は、ヴァッシュの居候している高町家の近隣に置かれてある。 歩いて十分、どんなに遅くとも二十分も在れば到着する筈だ。 何かが、おかしい。 「エイミィ。ちょっと聞きたいんだけど、私が作業してる間に誰か訪ねて来なかった?」 「いえ、誰も来ませんでしたよ」 作業を再開させていたエイミィに問い掛けるも、答えは変わらない。ヴァッシュの到来は無いとの事であった。 リンディの困惑は更に深くなっていく。 リンディは、子機を肩と首で挟んで支えると、充電中の携帯を掴み、慣れた動作で電話帳を開いた。 「あの……ヴァッシュさんがどうかしたんですか?」 「……大丈夫、何でもないわ。遅くに電話を掛けてごめんなさいね。なのはさんもゆっくり休んでちょうだい」 「はあ……」 「じゃあ、お休みなさい」 「はい、失礼します」 なのはとの通話を切ると同時に、ア行の欄へ載せられている『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』を選択、何度かコールを鳴らしてみる。 着信に応答する気配はなく、数回のコールの後に留守録機能へと繋がってしまう。 言いようのない嫌な感覚が、リンディの心に巣食い始めた。 「どうかしたんですか? ヴァッシュさん」 「ええ、何かアクシデントに巻き込まれてるみたいなんだけど……ちょっと嫌な予感がするわ。大事にならなければ良いんだけど……」 繋がらない携帯電話を片手に、増加し続ける悩みの種に眉間の皺を増やすリンディ。 彼女の口から、再び深い深い溜め息が漏れた。 □ ■ □ ■ それはまさに偶然と言う他なかった。 熟考に身を任せ、見知らぬ市街地を放浪していたヴァッシュ・ザ・スタンピード。 家族と共に夜食の買い物をしていた八神はやて。 その付添いとして買い物に連れ添っていたヴィータとミリオンズ・ナイブズ。 それは誰もが予期していなかった遭遇。 人間台風ことヴァッシュ・ザ・スタンピードは勿論、ミリオンズ・ナイブズですらこの出会いは予想の範囲外。 余りに出来過ぎな偶然に、ヴィータとナイブズは身動きを忘れ、ヴァッシュもまた茫然と、まるで時間が静止したかのように固まっている。 ただ一人、現状を理解していないはやてのみが、三人の様子を困惑の表情で見つめていた。 「て、てめぇ!」 不意の事態に混乱している中でありながら、ヴィータは主を守護する為に動いた。 ヴァッシュからはやてを奪取し、二人の間に身体を滑り込ませ、主を庇うように両手を広げる。 その瞳には敵愾心がありありと浮かんでおり、眼前の敵対者を強烈な視線で睨み付ける。 「ナイ、ブズ……」 だが、肝心のヴァッシュ・ザ・スタンピードはヴィータの姿を視界に捉えてはいなかった。 ただ、その後方に佇む金髪痩躯の男性を茫然と見詰めている。 ヴィータも、はやても、彼等を器用に避けていく人波も……ナイブズ以外の何者もその視界には映らない。 ヴァッシュの視界は、そしてその思考もまた、ナイブズへと注がれていた。 それはナイブズもまた同様。彼にしては珍しく、感情をそのままに表情へと宿していた。 「久し振り……だな、ヴァッシュ」 その想いの差が影響してか、一早く立ち直りを見せたのはナイブズ。 表情を悦楽に歪ませて、未だ膝を付いたまま動作を止めているヴァッシュへと言葉を降らす。 瞬間、市街地に響く、ギリという不快な重音。 それは、噛み締められたヴァッシュの歯から漏れた音であった。 「何故、お前が……!」 彼の胸中に宿る万感を吐露するには、言語という表現法は余りに不自由であった。 ともすれば、獣じみた絶叫と共に、真紅の外套の下に隠された拳銃を引き抜きそうになる。 だがヴァッシュは、制御不能の寸前まで上り詰めている感情を、理性を総動員し押し殺していた。 此処で銃を抜けば、周囲にいる全ての人間を巻き込む結果となる。 それを理解しているからこそ、心中で暴れ回る感情を必死に抑える。 「相も変わらずせっかちな奴だな、お前は」 ナイブズはヴァッシュに対して、呆れを含んだ口調で呟き、そして小さく溜め息を吐いた。 その小馬鹿にしたような表情に、ヴァッシュの感情が盛大にざわめきたつ。 「まぁ、落ち着けよ。今回の出会いは俺にとっても予想外なんだ。少しは話を交えるのも良いだろう? 今後の為にもな」 この偶然をナイブズは好機だと考えていた。 ナイブズ自身、ヴァッシュとの対立は良しとしていない。ナイブズからすればヴァッシュは貴重な同族であり、唯一の兄弟。 現在は思念の差違により正反対の道程に立つものの、何時かは説き伏せて見せると思っている。 その見解からすれば、現状は将に天からの恵み。またとない機会だと言えた。 「えーと……二人は知り合いなんか?」 と、そこで事態の把握ができず沈黙を余儀なくされていた八神はやてが、些細な疑問をきっかけとして会話に割り込んできた。 その発言にはやての存在を思い出したヴァッシュは、宿敵へと固定されていた視線を少女の方に向ける。 ナイブズもまた視線を外し、幸運に心を震わせながら、はやての問いに肯首を持って返答した。 そんなナイブズの心中を知る由もないはやては、変わらぬ当惑を映したまま再び疑問を零す。 「じゃあ、この人もその……別の世界から来たって事なんか?」 そもそもはやての認識からすれば、ナイブズは別世界からの来訪者。 そのナイブズが初対面の人間と、まるで見知った仲であるかのように会話をしているのだ。 加えて普段は滅多に感情を表に出さない彼が、それはもう愉しげに口を動かしている。 これ等の事象は、はやてを驚愕させるには充分すぎる出来事であった。 「そうだ。まさかコイツまでがこの世界に来ていたとは思わってもみなかったがな」 「そうなんか……」 ナイブズの答えに、はやての顔に陰が射す。 恐らくその境遇に同情でも浮かべているのだろう、はやては沈痛な面持ちでヴァッシュの事をジッと凝視する。 そのはやての様子に、彼女を庇うように立っていたヴィータは、嫌な予感を感じた。 そして、その予感は不運な事にもドンピシャの正解。ヴィータの予感は、はやての口を通して具現される事となる。 「あの……ぶつこうてしまったお詫びも兼ねてですけど、今から家に来ませんか?」 「えっ!?」 その発言に慌てた声を上げたのはヴィータ。そんなヴィータに対してはやては片目を瞑り、両手を合わせてお願いする。 幼少時に両親を亡くしたはやては、二桁にも至らない短い人生の中で、孤独の辛さを痛い程に知ってきた。 常に傍らで胡坐を掻いていた孤独に押し潰されないよう、必死に、身体を震わせながら、此処まで生きてきたのだ。 だからこそ、何らかのアクシデントで別次元の世界からやって来る事となったナイブズやヴァッシュに、一際大きな同情の念を抱いてしまう。 「で、でも、コイツは……!」 しかし、ヴィータもまた頑として首を縦に振ろうとしなかった。 ヴィータからすれば、ヴァッシュは管理局の一員である敵対者。 家に招き入れるなど持っての他。潜伏場所が漏れてしまえば、戦闘に赴くまでもなく、平穏な日常は崩れ去ってしまう。 だからこそ、それは何としても阻止しなくてはいけないのだが――― 「俺も賛成だ。コイツと少し話がしたい」 「はぁっ!? お前何言ってんだよ!?」 ―――予想外にも、全ての事情を知っている筈のナイブズすらはやての提案に賛同した。 すかさずナイブズへと食ってかかるヴィータ。物凄い剣幕でナイブズに詰め寄り、その澄まされた顔を睨み付ける。 が、ナイブズは熱り立つヴィータを物の見事にスルーし、はやてへと声を掛ける。 「すまないな、はやて。コイツに夕食でもご馳走してやってくれないか?」 「全然ええよ、もう腕によりをかけたるから」 「だからぁ! ダメだって、はやて!! こんな訳のわかんねー奴、連れてってどうすんだよ!!」 反対の意を大声で捲くし立てるヴィータに、笑顔で事を進めるナイブズとはやて。 そんな三人をヴァッシュは、地面に腰を落とした状態のまま、未だ茫然とした様相で見詰めていた。 その脳裏には様々な疑問や困惑が去来しており、冷静な思考を打ち消していた。 「ヴィータも強情やなあ。別の世界から飛ばされた友達同士、今ようやく出会えたんやよ? 家に招待するぐらい別に良えやん」 「違う……違うんだって、はやて!」 「もう、今日のヴィータは少し変やよ……すみませんなぁ、家の子が我が儘ばかり言うて。どうですか? えと、ヴァッシュさんが良ければ、今から家に来て欲しいんですけど?」 だから、思わずだった。 ただこのままナイブズと別れる訳にはいかないという想いが、ヴァッシュに決断をさせる。 先の事など何も考えていない。ただ無意識の内に、想いが表へと飛び出していた。 その行動は殆ど条件反射。 思わずヴァッシュは首を縦に振り―――はやての提案を受容していた。 その服の中で震え続ける携帯電話に、ヴァッシュが気が付く事は、遂になかった。 □ ■ □ ■ 「シグナム、調子はどう?」 「ああ、もう問題ない。明日には蒐集に参加させて貰うぞ」 因縁深き二人の兄弟が運命の再会を果たしたその時、八神家にてシグナムとシャマルの二人は、灰色のソファーに並んで座っていた。 更にその横には、蒼色の大型犬に変身しているザフィーラが寝そべっている。 シャマルはシグナムの右腕に手を翳し、緑色の発光と共に魔法を行使していた。 「あなたがそう言うなら止めないけど……無理はしないでね」 「心配するな、お前たちの将はそうヤワに出来ていない」 買い出しには毎回付添いとして赴くシャマルであったが、この日は珍しく自身から留守番を願い出た。 その理由は一つ、前回の戦闘で四肢を負傷したシグナムの治療をする為だ。 傷自体はそれなりに深刻なものであったが、シャマルの治癒魔法が強力だったのか、シグナムの治癒力が高かったのか、もう完治の寸前にまで達している。 シグナムとシャマル、二人の表情は知らず知らず安堵に包まれていた。 「蒐集の方はどうなってる?」 「ナイブズが頑張ってくれててね、あなたの穴を埋めてるわ。ペースは今までと殆ど変わらない筈よ。 上手くいけば予定より早い完成も、充分有り得るわね」 「そうか……頼もしい限りだな」 シャマルの言葉通り、シグナムが撃墜されてからのナイブズは獅子奮迅の活躍を見せていた。 如何なる魔法生物を相手にしても寸分も臆す事なく、その全てを両断し、撃破していく。 ナイブズの手助けにより、闇の書完成の時は着実に近付いてきていた。 「……奴は、何者なんだろうな」 だが、その圧倒的な力に感謝する一方で、また別種の疑問を感じてしまうのを、シグナムは抑えられなかった。 次元のひび割れから唐突に登場した謎の男―――ナイブズ。 エンジェル・アームと称した、原理その他が一切不明の謎に満ちた能力を使用する男。 経歴や能力の大半が謎に占められた男であり……元の世界に戻る術を探すでもなく、はやての為だと、自分達に力を貸してくれている―――家族である。 「……分からないけど……でも、多分、悪い人じゃないわよ……」 ナイブズという男は、まさに無愛想を世に現したかのような人物であった。 日常の殆どを無言無表情で貫き通し、彼自身から言葉を掛けてくる事など殆ど無い。 まぁ、無愛想とはいっても、他との交流を蔑ろにしているという訳ではないのだが。 語り掛ければしっかりと返事を返すし、時折その仏頂面に笑顔にも似た影がよぎる事もある。 自分達が闇の書のプログラムでしかないと知った後も、何ら態度を変化させる事なく接してくれたし、そして何よりはやてを救済する為に尽力してくれている。 気難しい奴だとは感じるが、悪人であるとも思えなかった。 「……そうだな、私もそう思う」 「蒐集作業が終われば、彼の世界を探索してあげられるんだけどね……」 シャマルにはそう答えたが、シグナムの内に眠る疑問の種が潰える事はなかった。 左腕を白刃へと変貌させ、超射程の斬撃を放つエンジェル・アームという能力。 奴自身の反応速度、身のこなしも相当に高位なもの。何物をも斬り裂く左腕と相成って、近接戦でも充分な戦力を有している。 加えて戦闘に対する恐れも、おくびにもださない。 管理局の魔導師と相対した際にも、その無表情を押し通し、易々と撃墜に至らせた。 特殊能力、身体能力もさることながら、その精神力もまた人間離れしている。 奴は元の世界で何を目的としてどのような事を行っていたのか、シグナムは非常に興味を持っていた。 「あ、はやてちゃん達、帰ってきたみたい」 と、そんなシグナムの思考を遮るように、シャマルの声がリビング内に響き渡った。 詮索のし過ぎか、とシグナムも思考を打ち切り、顔を上げる。 傍らにて両目を瞑り伏せていたザフィーラも面を上げ、立ち上がる。 「……あれ?」 「どうした、何かあったのか?」 「いや、はやてちゃん達と一緒に誰かいるみたいなの……一人だけだけど」 「なに……?」 八神家の周囲には、侵入者を警戒して、簡易なものではあるが結界魔法が張り巡らされている。 付近にはやてや守護騎士、ナイブズ以外の人間が接近すれば、シャマルに情報を伝達してくれる優れ物である。 その結界魔法がシャマルへと、来訪者の存在を声高に告げていた。 シャマル、シグナム、ザフィーラの表情に戸惑いが浮かぶ。 「ただいま~」 「……ただいま……」 「おじゃましま~~す!!」 玄関へと続く扉を潜り、困惑するシグナム達の前に姿を現す四人。 買い出しに出掛けた八神はやて。 その付き添いを買って出たヴィータ。 ヴィータに無理矢理連れて出されたナイブズ。 そして―――派手という形容詞が最適な髪型と赤コートを携えた男が一人。 「「「なっ……!?」」」」 満面の、憎らしい程の笑顔と共にヴァッシュ・ザ・スタンピードが、そこに居た。 □ ■ □ ■ 「いやぁ~美味い! 本当に美味しいねぇ、はやての料理は!」 「ホンマですか、ヴァッシュさん?」 「その年でこれだけの料理作れるなんてねぇ~。こりゃ将来、良いお嫁さんになるって。僕が保証するよ」 「そないに喜んでもらえると、こっちも嬉しいです~。ほら、ヴィータ達も遠慮せんで、食べて食べて!」 「……は、はい」 「もうこのハンバーグとかね! 士郎さん達にも食べさせて上げたいくらいだよ」 「そんなもう~! ヴァッシュさんはホンマにお世辞が上手いんやからぁ!」 「いやいやいやいや、謙遜しちゃって~!」 そして約束通りの晩餐会。 晩餐会は予想外にも穏やかで、和やかで、騒がしいものとなっていた。 ……というより、ヴァッシュとはやてが勝手に盛り上がり、勝手に食事を進めていると云うだけなのだが。 同じ食卓に座っている守護騎士の面々は一様に押し黙っており、食事に手を付ける事すらままならない。 念話で口論を繰り広げながら、その警戒心を全開にまで引き上げ、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの一挙一動に意識を集中させていた。 唯一の例外はナイブズ。 会話に参加するでもなく、念話に参加するでもなく、警戒するでもなく、無言で食事を口元へと運んでいた。 結局晩餐会は、食後のお喋りも含めておよそ一時間の長きに渡り、行われていった。 「あ、もうこないな時間か。ごめんなナイブズ、折角の友達との再会やっていうのに、ずっと話し込んでもうて」 「いや、気にするな」 「じゃ、じゃあ、はやてちゃん、先にお風呂に入りましょうか! その間、二人はゆっくりと話を楽しめば良いわ」 「そやな~、なら二人共ゆっくり話してってな!」 「ああ、その方が良いでしょう……頼むぞ、シャマル」 「……ええ、任せといて。そっちもよろしくね、シグナム、ヴィータちゃん、ザフィーラ」 「ああ、分かっている」 「OK、任せといてよ」 粗方の食器も片付け終わり、晩餐会もお開きの空気が漂い始めていたその時、はやてとシャマルの二人が、入浴の為にリビングの奥へと下がっていった。 そして、二人の姿が完全に扉の向こう側へ消えたその刹那、事態は急変する。 勿論、先程までの団欒の様子とは正反対の、ギスギスとした険悪な事態へと。 扉が閉まると同時に、動いたのは二人の守護騎士だった。 「貴様っ……!」 「てめえっ……!」 発現した二つのデバイスが持ち主の手により、ヴァッシュの首元へ、互いに交差するように突き付けられる。 もう一人の守護獣も、ついさっきはやて達が退出した扉の前に立ち塞がり、ヴァッシュを睨んでいる。 その刃と鉄槌に対して、ヴァッシュは寸分の反応すらも見せる事がない。 ただジッと椅子に座り込んまま、斜め前方の椅子に自分同様に座る男を見詰めていた。 「はは、これで何度目だろうな。お前が俺に、その不細工な道具を突き付けるのは」 いや、静止していた訳ではない。 ほんの一瞬、コンマ数秒にも満たない一瞬の間であったが、ヴァッシュは動作を行っていた。 紅コートの下、腰部のホルスターに装着されていた白銀の大口径を、抜き構えていたのだ。 六発の弾丸が込められてる拳銃を、二人の守護騎士の抜刀よりも早く、宿敵の眉間へと―――向けていた。 (やはり、早い……!) (早ぇえ……!) その抜き撃ちの速度に、シグナムとヴィータは驚愕と動揺を隠し切れずにいた。 初見であるヴィータはまだしも、その身を持ってヴァッシュの早撃ちを知っているシグナムすらも、固唾を呑む速度。 単純な力では語る事のできない脅威が、眼前には存在していた。 だが、その矛先にいるナイブズは至って涼しい顔のままであった。 「ナイブズ、話を聞かせてもらうぞ……!」 拳銃を握るヴァッシュの表情は数分前の状態からは考えられない程に、強張っていた。 歯を食い縛り、眉間に皺を寄せ、両手を握り込み、ナイブズを見る。 豹変とすら言える程の感情の変化に、対面する守護騎士達も当惑を覚えていた。 「その銃を下げろよ! シャマルが防音結界を張った。抵抗するんなら容赦しねぇぞ!」 「ヴィータの言う通りだ。この場は四対一、如何に貴様であっても切り抜ける事は不可能。悪いが此処で仕留めさせてもらう」 しかしながら、当惑はせど武器を引く事はせず。守護騎士の二人は、突き刺さるような視線をヴァッシュへと送っていた。 切り詰まっていく場の空気に、それぞれの額には小さな冷や汗が浮かび上がる。 緊迫が、周囲を押し込んでいた。 「シグナム、ヴィータ……悪いが、剣を引いてくれないか。コイツと二人きりで話をしたいんだ」 「それは駄目だ……貴様の実力は知っているが、それでもみすみす危険に晒す訳にもいかない」 そんな中ナイブズが望んだ事は、ヴァッシュとの二人きりでの対話。 当然の如く、シグナムとヴィータは反対の意を告げるが、その言葉をナイブズは完全にスルー。 一人立ち上がり、三人の視線も、突き付けられた銃口すらも意にも介さず、ベランダの方へと歩き始める。 「来いよ、ヴァッシュ。お前も対話を望んで此処まで来たんだろ」 招き入れるように顎でベランダを指し、挑発的な笑みを浮かべ、緊迫のリビングから退室するナイブズ。 押し黙ったままのヴァッシュも意を決したように、立ち上がる。 その動きに準じて、喉元に置かれたデバイスも持ち上がるが、それ以上の動作には繋がらない。 突き付けられてはいるが、その皮膚に接触する事はなく、中途半端な位置に留まったまま固定されていた。 ヴィータとシグナムも判断をしかねていたのだ。 このままヴァッシュとナイブズを二人きりにして良いのか、それとも阻止するべきなのか、そもそも自分達はこの男をどうすれば良いのか……。 二人の守護騎士達は判断する事が出来ない。 「……大丈夫だ、ここで争う気はない」 ヴァッシュは、ナイブズが待つベランダへと歩み寄りながら、戸惑う守護騎士達にそう告げた。 思考を読み取ったかのような一言に、シグナムとヴィータは大きく目を見開く。 そして、宙ぶらりんの状態にあったそれぞれの得物をヴァッシュの喉笛から―――下げた。 敵意の充満した視線は変わる事がなかったが、武器を引き、ナイブズのいるベランダまでの道を開けた。 「ありがとな」 最期に謝礼を一つ残し、ヴァッシュは透明な窓を潜り抜け、宿敵の待つベランダへと足を踏み入れた。 室内と外気との温度差にブルリと震える身体。 ヴァッシュの視界の中に、悠然と星を見上げるナイブズの姿が飛び込んできた。 その視線が射殺すかのように鋭利なものへと、変貌する。 持ち主の感情を察知したかのように、ヴァッシュの右手に握られた白銀のリボルバーが、震えていた。 「驚いたぜ、ヴァッシュ。まさかあんな肥溜めの中でお前に遭遇するとはな」 遠い目で夜天を見上げたまま、ナイブズが唐突に言葉を紡ぎ始める。 ヴァッシュは、己の内に沸き上がる感情を抑え付けながら、その口から吐き出される言葉に耳を傾けていた。 「教えろ、ナイブズ。お前は何が目的でこの家に住み着いている。何故、闇の書の守護騎士に協力している。 あの子と―――八神はやてとお前は、どんな関係にあるんだ!」 吐き出された疑問の数々は、八神家に招待されてからずっと、ヴァッシュの脳裏にこびり付いていたものであった。 守護騎士やあのナイブズと仲睦まじげに交流する少女……八神はやて。 管理局のデータベースには存在しない人物であった。 その様子を見る限り決して悪人には見えない。なのは同様に年不相応の、しっかりとした性格を持った少女であった。 彼女と守護騎士、そしてナイブズとは、どのような関係の上に在るのか? ヴァッシュには事態を把握しきれずにいた。 「―――家族さ。俺と守護騎士の連中は、奴が言うには家族という関係らしい」 「……家族……? お前と……彼女達がか?」 その返答が想像の範疇を越えていたのか、ヴァッシュは思わず素っ頓狂な声を上げていた。 数瞬前まで張り付いていた憤怒に似た感情も僅かの間であったが抜け落ち、呆けた表情へと変化する。 眼前の宿敵から、まさかこのような答えが出てくるとは思っても見なかったのた。 「笑えるだろ? 俺が、糞にも劣る人間如きに家族扱いだ。下らなくて笑えてくるよ。今すぐにでも奴をくびり殺したくなる」 ―――だが、直後に続いた言葉を聞き、ヴァッシュの表情に感情が戻った。 百と五十年前から何ら変わらない、寧ろ増大する一過を辿っている人間に対する憎悪の念。 その憎悪を目の当たりにして、やはり眼前の男は仇敵だと再認識するヴァッシュであった。 「……なら、何故、彼女達と行動を共にしている。何故闇の書の完成に力を貸しているんだ」 ヴァシュの問い掛けにナイブズはようやく夜天から視線を外し、傍らの兄弟へと向け直した。 表情に宿る狂気と共に、双眸をヴァッシュと激突させる。 瞬間、背筋に走る悪寒。ヴァッシュの頬を一筋の冷や汗が伝い、灰色の地面へと落下していった。 「なぁヴァッシュ、この世界には虫螻が多すぎると思わないか?」 唐突に外の世界へと振り向き、大業な身振りで両腕を広げるナイブズ。 そして、ナイブズはその鉄仮面を笑顔に歪曲させ、夜天の下で小さく語りを上げる。 異常な、決して人間には醸し出せない空気をその周囲に纏いながら、ナイブズは口を開く。 「あの乾季の惑星と比べて、この惑星は余りに寄生虫が蔓延りすぎているんだよ。 俺としては今すぐにでも駆除してやりたいんだがな、それにしては余りに数が多すぎる。あの異能殺人集団がいないのも痛手だ」 その時、ナイブズが浮かべていた表情は、可笑しな事に人間で言うところの『困った表情』であった。 語られる凄惨な内容からすれば、余りにズレた感情。 憤怒に震えるでもなく、厄介だと舌を打つでもなく、ただ単純に困ったというような表情。 言うなれば、散らかった部屋を前にして溜め息を吐く主婦のそれや、余りに多い作業量に辟易する人間のそれと同様のもの。 ナイブズは心底から困ったような表情で、語りを終えた。 「だから……闇の書の力を利用しようというのか……!」 「その通りだ。長距離を移動する時は車を使う、大規模な計算をする時はコンピューターを使う、大量の害虫を駆除する時は殺虫剤を使う……今回のことも同じ事だ」 ナイブズの熱弁を聞き、ようやくヴァッシュにも、その目的が理解できた。 結局は今までと何ら変わらない。 この平穏な世界に於いても、何ら心に変化を来す事なく、ただ目的の為に自らの覇業を突き進んでいる。 何も変わっていないのだ。 この男は、あの時から、寸分も―――、 「お前は……彼女を、八神はやてを見ても、何も思わないのか……?」 気付けば、言葉を発していた。 胸裏に覗く思いの丈を、人間の全てを醜悪だと断定する宿敵へと。 理解を求める言葉を吐き出していた。 「……人間は皆、素晴らしいなどとは言わない。 でも、誰もが誰も、お前のいうような人間じゃない。はやては、知らない世界からやって来たお前を、家族として迎え入れてくれたんだろ? 損得も何も考えずに……ただ優しさからお前を受け入れてくれたんだ! 何故、その現実を直視しない! 何故、頑なに人間を否定するんだ! はやてや、レムのように、前に進もうとする人間だってこの世には沢山いる!!」 ヴァッシュは、人間を信じている。いや、信じようと努力している。 砂の惑星を渡り歩き、この自然に恵まれた世界で様々な人間と触れ合い、彼は信じ続ける。 人間は変革する事が可能な種だと―――、 人間は未来に向けて前進できる種だと―――、 ナイブズが人間を害虫と断ずるように―――ヴァッシュもまた人間の可能性を信じている。 だから、対立する。その凶行を阻止せんと、唯一の兄弟と対立する。 実弟が放った信念の咆哮に、ナイブズは狂気の微笑みを内に戻し、代理として哀愁を表に出した。 「違うな……それは違うよ、ヴァッシュ。奴は、俺が人間だと思っているから、家族として受け入れたんだ。 俺に世界を滅亡するだけの力が秘められていると知れば、奴は恐怖に慄き俺達を拒絶するよ。 自分達の居場所を脅かす存在に人間どもがどんな対応をしてきたかは、その歴史が語っている!!」 「でも……それでもレムは違った!! 一度は過ちを犯したが、彼女は前に進めた!! 全てを知って尚、彼女は俺達を……俺達を人間として扱ってくれた!! 人間は前に進めるんだ、ナイブズ!!」 だが、結局二人の超越者達の信義は平行線を辿ったまま、交差しようとはしなかった。 片や滅亡を、片や共存を願う信義……どちらも正解であり、また不正解でも有る難解な議題。 全ての想いをぶつけ合った論争も、互いの信念を揺さぶるには至らずに終焉を迎えた。 熱した場を冷ますように冬季の寒風が二人の元を通過する。 静寂が、場を包み込む。 「……良い事を教えてやるよ。貴様ら管理局が探し求めている、闇の書の主についてだ」 話題の転換は突然であった。 紛糾した信念のせめぎ合いから、現時点で相手が抱えているだろう問題へと、話の内容を変える。 しかし、この話題についてはヴァッシュも、今宵見てきた状況からある程度の解答は導き出していた。 管理局にとっては喉から手が出る程に入手したい情報。その全容を掴み取れる状況に、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは立っていた。 「大体分かるさ……闇の書の主の正体は……八神はやてなんだろ」 守護騎士と同居し、家族として接する八神はやて。 その屋内にある人の気配は、はやてや守護騎士、ナイブズの物のみ。 此処までヒントを与えられれば、小学生にも理解できる問題だ。答えは自ずと見えてきた。 闇の書の主―――その正体は、先程まで晩餐を共にしていた少女・八神はやてでしか有り得ない。 「ただ、分からない……何で彼女は、管理局と敵対してまで闇の書を完成させようとしている?」 その正体までは推理できたヴァッシュであったが、そこから先の領域には至らない。 八神はやてが闇の書を完成させる動機……それだけが、幾ら考えれど出て来なかった。 どう理屈付けても、先程までの団欒の光景と矛盾してしまう。 彼女が力を望むとも思えないし、何より彼女は守護騎士達を本当に大切にしているように見えた。 彼女達が傷付くような事は絶対にしない筈だ。 「簡単な事だ。闇の書の蒐集にはやては関与していない。全て、シグナム達が自己の意志により行っている行動だ」 「……どういう事だ……」 「教えてやるよ、ヴァッシュ……その全てをだ」 ―――そして、ナイブズは全てを語った。 はやての下半身が不随なその理由。 闇の書自体が持ち主であるはやての身体を蝕んでおり、このままでは内臓器官すら機能停止に至らせる事を。 つまり、闇の書が完成しなければ―――八神はやては死亡する。 それら事実を、冷酷に、冷徹に、馬鹿げた理想を望み続けるガンマンへと、ナイブズは語った。 その反応を愉しむかのような笑顔を携えたまま、彼女達の間にある実情の全てを、ナイブズは語ってしまった。 「……成る程な、そういう事だったのか……」 だが、そんな仇敵の期待に反して、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは殆ど表情を変える事がなかった。 いや、寧ろ、その表情には安堵の色さえ浮かんでいるようにも見える。 予想外の反応に、ナイブズの眉が不審げに歪む。ナイブズの心中には、何とも言えない感情が広がっていた。 何か、この男についてを読み違えている……そんな予感が、ナイブズの内に浮かび上がっていたのだ。 「ナイブズ、俺はお前の思惑を潰す。この世界を壊そうとするのなら、俺の全力を掛けて阻止する。 絶対に壊させやしない……この世界を、レムが愛した人間達を、俺は絶対に壊させない!」 それは宣戦布告だった。 人間台風ヴァッシュ・ザ・スタンピードから、宿敵ミリオンズ・ナイブズに対する歴然とした布告。 はやてと守護騎士達の苦悩を知らされて尚、僅かな葛藤を見せる事もなく告げられた言葉に、ナイブズは小さな戸惑いを覚えていた。 茫然と立ち尽くすナイブズの視界の中、ヴァッシュは彼に背中を向け、歩き去る。 台風の行き先は警戒の守護騎士達が待っているだろうリビング。 ヴァッシュを逃がす為に、わざわざベランダという外界と連結した場所を選択したナイブズからすれば、これまた予想外の事態。 その視線の先で、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、彼にとって敵地のど真ん中である筈の八神家へと再度入室していった。 「……良く戻ってきたな。てっきりあのまま逃亡を計るものだと思っていたが」 そして、舞い戻ってきたヴァッシュを待ち受けていた者は三人の守護騎士。 烈火の騎士・シグナム、鉄槌の騎士・ヴィータ、そして盾の守護獣・ザフィーラ。 それぞれ敵意に満ちた瞳で侵入者を睨み、それぞれがそれぞれの得物を構え、相対する。 その痛ましいまでの超アウェー空間の真っ只中で、ヴァッシュは右手に拳銃を握り締め、立ち尽くす。 八神はやてとシャマルはまだ入浴を楽しんでいるのか、その姿はまだ無かった。 数秒の沈黙の後、ヴァッシュは唐突に、だがゆったりとした動作で右手の拳銃を持ち上げる。 その動作に伴い、守護騎士達の間に流れる空気が、一斉に緊迫感を増した。 そして、十数分前には多種多様の料理が並べてあった机の上に―――置いた。 そう、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは手離したのだ。 自身の得物を、魔導師と対等に渡り合う為に必要不可欠な武装を―――ヴァッシュは事も無げに手離した。 場を支配していた緊迫感が、困惑で染め上げられていく。 「あのさ、お願いがあるんだけど」 そうして殆ど無防備となった状態で、ヴァッシュはシグナムを真っ直ぐに見詰める。 力強い意志が込められたその瞳を、シグナムもまた目を逸らさずに、受け止める。 「……何だ」 そして、その口から放たれた言葉は――― 「僕にさ―――闇の書の蒐集を手伝わせてくれない?」 ―――誰もが予想だにしていなかった言葉であった。 「「「……は……?」」」 守護騎士達から漏れた音は、勿論、驚愕を示す物。 闇の書の封印を目的とする管理局。 闇の書の完成を目的とする守護騎士。 人類の滅亡を目的とするミリオンズ・ナイブズ。 そして、どんな思惑が在っての発言か、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。 こうして、偶然から始まった運命の邂逅は、彼等の戦いに大きな転換を与える結果となった。 [[前へ リリカルTRIGUN13話前編]] [[目次へ リリカルTRIGUN氏]] [[次へ リリカルTRIGUN15話]]
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2824.html
コメント欄です 感想や応援メッセージなどをお気軽にどうぞ(無名コメントも可能です) ですが、コメント同士での会話や荒らしコメは禁止。度を越えた展開予想もやめてください。 後編がまちどうしくて、たまりません。 -- 流れ星 銀 (2008-11-06 10 57 23) 続き期待してます -- K (2008-11-11 11 02 56) 続編が楽しみで仕方ありません。 続編もがんばってください! -- レーバテイン (2008-12-11 18 30 41) 早く続きを書く作業にもどるんだ! -- 名無しさん (2008-12-24 10 46 50) ストーム1かっこよすw 続きを待ってますぜ! -- もびお (2009-01-08 18 34 18) 地球防衛軍はやったことないですが面白かったです。これからどうなるか楽しみです。 -- 名無しさん (2009-01-17 00 07 27) いい作品ですね、続きが気になります リリカルなのはは知らないですが頑張ってください -- HEAVEN (2009-01-24 04 54 18) プレデターの話がとても気になります!次回が楽しみ! -- ぽにゃ (2009-02-08 22 51 37) おもしれええ 続き期待!! -- 名無しさん (2009-02-12 21 40 44) EDF連載が面白すぎです。 続編楽しみに待っています。 -- 怨呪 (2009-03-23 15 49 31) 続編めっちゃ楽しみです応援してます -- 名無しさん (2009-10-08 21 23 53) 私は、いくらでも待ちます。続編頑張ってください -- 名無しさん (2010-05-05 20 49 46) これを読むまでなのはの事はよく知らなかったけどこれで興味を持ったよ -- 名無しさん (2010-08-07 15 04 16) EDFIAにEDF2Pそして念願のEDF4発売決定! これを機に続きが投稿されることを願って今日も地球を守り続けます! -- 名無しさん (2011-01-07 01 23 57) 本部、本部! 続編が待ち遠しすぎるせいで皆やられました! せめて生存報告くらいはお願いします! -- 名無しさん (2012-01-22 17 03 47) 誰か…応答してください!…誰か! -- 名無しさん (2013-06-25 00 39 52) EDFは的に背中を見せない!それだけは忘れるなぁ! -- 名無しさん (2014-05-05 13 18 07) 名前 コメント