約 2,188,040 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/248.html
見学も進んでいった頃、はやてが 「ほな、ちょっと派手なもんでも見にいこか」 と、いきなり出てきた。 案内されたのは時空管理局自慢の訓練スペース。 ライトニング、スターズの新人フォワード達が様々なパターンで対ガジェット戦術の訓練をしている。 エリオが最後の一つを貫いて破壊。 指導するなのはとフェイト、それに観測のシャリオ達の所に戻ってくる。 「みんなお疲れ」 「よくなったね。新記録だよ」 「やったぁ」 スバル達は飛び上がって喜ぶ。 「ふっ」 わざとらしく鼻で笑う音が聞こえてきた。 あからさまにあざけるが含まれている。 「まだまだだな」 「なによ」 一転して機嫌の悪くなったティアナがグゥを見下ろした。 「あの程度で手こずっているようでは」 「ならなに?あなたなら、もっとできるって言うの?」 「まあな」 傍目から見ても険悪な二人の間にはやてが割ってきた。 「まぁ、まぁ二人とも。じゃ、グゥちゃんやってみるんか?」 「望みとあらばな」 「部隊長、いいんですか?」 と言いながらもシャリオは設定をはじめている。 「かまわんよ。さ、やってみよか」 「じゃ、はじめますね」 シャリオがキーを押すと遠近に無数のがジェットがあらわられた。 「あたし達がさっきクリアしたのと同じね。見せてもらいましょう」 ティアナが腕組みをして、グゥの後ろに立っている。 「じゃ、スタート」 グゥが服の中からなにかを取りだした。 ぶんぶん振り回していてなにかはよくわからない。 「ここんとーざい」 「オッケー。ボス」 びしっと止める。 グゥの周りに無数の光球ができて飛んでいく。 それは、見えるがジェットはもちろん隠れて視認できないガジェットまで全てAMFをものともせずに破壊していった。 「すごい・・・最高スコアです」 つぶやきながら映像を再生するシャリオ。 「なぁなぁ、ここんとこよーみせて」 食い入るように映像を検証するはやて。 「ま、まけたわ・・・」 がっくりと膝をつくティアナ。 ハレはグゥの成果に驚いてはいなかった。 グゥの振り回していたものを凝視していた。 ピタリと止められたそれは今ははっきりとその姿がわかった。 それはビシッと背広を着込んだ筋肉質で禿頭でひげ面の大男だった。 「おい、それいったい何なんだよ」 「ボッチャン、ワスレタンカ?ぼくヤ。ボディーガードノクインシー・ポーター(以下QP )ヤガナ」 「いや、そういう事じゃなくて・・・今日もステッキのバイト?」 「チャウネン」 「じゃあ・・・」 「キョウハ、インテリジェンスデバイスのバイトヤネン」 「インテリジェンスデバイス・・・どこが?」 グゥが口をはさんだ。 「喋る」 「喋ればいいってもんじゃないわぁあああっ」 向こうでは、はやてとシャリオが顔をつきあわせている。 「完全自立型のインテリジェンスデバイス。めずらしいですね」 「せやな。あんなに大きいのは初めて見た」 「いや、他に言うことがあるだろ」 QPはなのはの見ていた。 「ボッチャン、チョットシツレイスルワ」 大きな体を揺らしてなのはの前に行く。 「あのぅ・・・」 自分をじっと見下ろすQPにおずおずと声をかける。 「オヒサシブリデス」 「あの、なのはさん。お知り合い?」 なのはは横で結んでいる髪が遠心力で水平になるほどに勢いよく首を横に振って答える。 「レイジングハートハン」 「そっちかよ!!だいたいクインシーとレイジングハートにどんなつながりがあるんだよ」 「レイジングハートハンハ、ぼくノ指導教官ナンヤ」 「は?」 「アレハナ・・・・・」 回想シーン 大勢のデバイス達が並んでいる。 その中にはマッハキャリバー、クロスミラージュ、ストラーダ、ケリュケイオンやクインシー・ポーターもいる。 彼らの前を歩き、レイジングハートは声を張り上げていた。 「わたしが訓練教官のレイジングハートである!話しかけられたとき以外は音声を発するな!ノイズをたれる前と後に“サー”と言え 分かったか、石ころども!」 「Sir,Yes Sir」 過酷な訓練がはじまる。 デバイス達は泥まみれになり、傷を作り、無様に倒れていく。 「貴様ら真空管どもが俺の訓練に生き残れたら、各人がデバイスとなる!その日までは漬け物石だ!次元世界で最下等のケイ素だ!」 「貴様らはデバイスではない!哺乳類の糞をかき集めた値打ちしかない!」 「俺は厳しいが公平だ!差別は許さん!尿酸結石、シスチン結石、リン酸結石を、俺は見下さん!すべて・・・平等に価値がない!」 「俺の使命は役立たずを排除することだ!愛する次元管理局の石綿を!」 「分かったか、コプライト!」 「Sir,Yes Sir」 回想シーン終わり 「ト、イウワケナンヤ」 「なぁんだそりゃぁああああ」 「レイジングハートが私の知らないところで私の知らないことを・・・・・」 ハレの横で頭を抱えるなのはの肩が叩かれた。 なのはが振り向くとはやてが満面の笑みでそこにいた。 「なのはちゃん、お手柄や」 「え?」 「グゥちゃんや。すごい逸材や。うちに来てくれたら、戦力に厚みが出ること間違い無しや」 「え・・・えーーーと」 フェイトもやってくる。 「うん、私もそう思う。私、昔のなのは思い出したし」 「ええ?私あんなふうだったの?」 「うんうん、あの砲撃。その通りや」 なのははガマのように冷や汗をたらし、ハレの両肩をがしっとつかむ。 「ハレ君!」 「はい」 「ハレ君もうちに来て!」 「いや、俺普通の人だし・・・」 「来て欲しいの!」 「魔法使えないし・・・」 「私を見捨てないで!!私1人じゃ、グゥちゃんのこと絶対無理!」 「俺の存在意義って、グゥ関連だけですか!!!」 その後、はやて説得に全力を尽くすと言うことでとりあえず落ち着いたがハレはしばらく落ち込んでいた。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2162.html
第1話「それは不思議な出会い!急げ!百鬼魔界へ」 (誰か……助けて……誰か……。) ある企業グループの私有地とされる山中、人の通わぬ森の奥で一匹の小動物が血を流し倒れていた。 (お願いです……この声を聞いた人がいたら……) もはや満足に体を動かすこともできないそのフェレットは、一縷の望みを掛けて 念話によるSOSを発信していた。 念話、すなわち魔法を使える者だけが聞き取れる手段で。 魔法の存在が確認されていないこの管理外世界『地球』で。 それがどれほど期待のできないことかは本人にも分かっていた。 管理外のこの世界の、それも彼のすぐ近くに魔導師が偶然いて、 幸運にもその人物がジュエルシードによって凶暴化した獣を撃退できるほどの実力で、 そして私利私欲のためにジュエルシードを欲しようとしない高潔な人物である、 などという都合のいい現実があるわけがない。 それでもそのフェレット、ユーノ・スクライアという名の年若い魔導師は あり得ない可能性にすがるしかなかった。 数分もすればあの獣がユーノに追いついて、彼の体を引き裂くのだから。 (お願い……誰か……) このまま誰にも気付かれず、人知れず朽ち果てていくのだろうか、 ユーノがそう絶望した時だった。救いの主が現れたのは。 「いかん。このフェレット怪我をしてるじゃないか」 優しそうな男性の声が聞こえる。しかし――――― (良かった、気付いてくれた人………が…………) 自分を見下ろす人影を見た瞬間ユーノの思考は完全に停止した。 (な、な、なななな、なんだコレエエエェェェェェ!?) それは人ではなかった。 頭部は戦車の砲塔にしか見えない形状、足にはキャタピラを装備、全身を覆う分厚い装甲板と 右手の銃器は、その体が戦闘の、あるいは戦争のために生み出されたことを容易に想像させる。 傀儡兵の類かと考えたが、流暢に喋る傀儡兵などユーノは知らない。 「早く手当をしてやらないと…」 凶悪な外見と不釣り合いに優しい態度を見せる救世主。 ネロス帝国機甲軍団烈闘士ブルチェックだ。 なお、ユーノの念話が聞こえたわけでは決してない。演習後にたまたま通りがかっただけである。 (あの…もしもし!?僕の声聞こえてますか!) 「待っていろ、ゴーストバンクの設備ならすぐに治るからな」 (うわ!ちょっと、そんなゴツイ指で掴まないで!) ブルチェックの無骨な指先は牛の乳を搾れるほど繊細に動くのだが、そんなこと露ほども知らない ユーノにとって殺人兵器とおぼしき物体に掴まれるのは恐怖でしかなかった。 (ど、どうなるんだ僕は…!) 鈍重そうな姿と裏腹に猛烈な勢いで駆けるブルチェックの手の中で、 抵抗する力もないユーノは絶望的な気分になっていた。 が、程なくしてブルチェックはその歩みを止める。 『グルルルル……』 体長2メートルほどの巨獣。四つの目と二本の角を持ち、黒褐色をした四つ足の生物が道を塞いだからだ。 「な、何だこの生物は!」 (えーと、それはジュエルシードという…) 「怪我をしてる動物がいるんだ!邪魔をするなあっ!」 有無を言わさず頭部の大砲が火を噴く。 ネロス帝国には珍しく動物の命を奪うことを良しとしないブルチェックであるが、 『かわいい動物』の範疇に入らない相手には容赦がない。例えばヘドグロスとか。 不意打ち気味の攻撃は狙い違わず怪物の胴体を直撃する。 そしてユーノは、自分の念話が全く通じてないことを喜ぶべきか悲しむべきか分からなかった。 『グギュウウアアァァァ!!』 「こいつ、まだ立つか!だったら!!」 至近距離からの砲撃を食らい吹き飛んだ獣は、おぞましい叫びをあげながらなおも戦闘態勢をとろうとする。 そこに飛来する第二第三の砲撃。さらには右手の銃もうなりをあげる。 『ギョオォォアアアア!!!』 「これでどうだ!」 六発目を食らったところでついに力尽きたのか、怪物はピクリとも動かなくなった。 「おそろしくタフだったな。モンスター軍団の失敗作か?……ん、何だこれは!」 動かなくなった獣はブルチェックの目の前でするすると縮んでいく。 数十秒後、砲撃によってえぐられたクレーターの中心には、一匹の傷ついた犬と 青く輝く結晶体が転がるだけであった。 「お、俺としたことが犬を殺してしまっただと!? ……いや、まだ生きている!可愛い動物たちを、俺の前で死なせたりはせんぞ!絶対に救ってみせる!」 叫ぶが早いがブルチェックは右腕で犬を抱えて駆け出す。妖しげな結晶体を回収することも忘れていない。 一方左手で掴まれているユーノは現実逃避に忙しかった。 (ま、魔法を使ってないのに、力ずくでジュエルシードを回収しちゃった……) 確かに理論上は可能かもしれない。しかし一度発動したジュエルシードを融合した生物から 物理的に引き剥がすには常識を遥かに越えたパワーが必要なはずだ。 (こんなこと……あるわけがない……) 痛みと疲労の上に精神的なショックが重なり、そろそろユーノも限界が近い。 自分を掴む戦車のような怪物がなんなのか、それを考える余力もなかった。 ユーノ・スクライアは後に語る。 この時念話でなく直接話しかけていたらどうなっていたか、その末路は想像もしたくない、と。 ネロス帝国。 世紀末の悪の帝王ゴッドネロスのもとに組織された恐るべき帝国である。 その目的は経済による世界の支配であり、表の姿である桐原コンツェルンの利益を生むためにはどんな 恐ろしいことにも手を染める。競合他社への直接的間接的問わない攻撃や、石油プラントの破壊による 原油価格の高騰での荒稼ぎ、また時に一国の歴史すら変えてしまうこともあるという。 その本拠地であるゴーストバンクは桐原コンツェルン本社地下にあり、桐原コンツェルンの社長である 桐原剛三は真の姿である帝王ゴッドネロスへと姿を変えて謁見の間に降臨するのだ。 ゴーストバンクには帝王が作り上げた恐るべき4つの軍団が控えている。 まずヨロイ軍団。銀の甲冑に身を包んだ剣士クールギンを長とする軍団で、ヨロイや強化服を身につけた 人間もしくはサイボーグで構成される。正々堂々とした戦いを好み、皆が皆武人たらんとする強者揃いの 軍団である。 次に戦闘ロボット軍団。戦闘に特化し、高い戦闘力を持ったロボット達で構成される。軍団長である バルスキーは男気あふれる性格で、部下からの信望も篤い。 そしてモンスター軍団。バイオテクノロジーで作られたミュータントや合成生物で構成される。 「口八丁手八丁、卑怯未練恥知らず」「食うて寝て果報を待つ」といった4軍団の中では異色の モットーを持つ集団で、軍団長のゲルドリングをはじめとしてどんな汚い手段を使ってでも勝つことを 美徳としている。透明化、液状化、夢を見せるなど特異な能力を持つ者も多い。 最後に機甲軍団。戦車、ミサイル、ヘリコプターなど実在の兵器をモチーフとしたロボットで構成される 火力と装甲に優れた軍団である。「数と機動性」という特色も持ち、他の軍団とは異なり同型機が 複数生産されている。また4軍団の中で唯一航空戦力を持っており、その価値は帝王ゴッドネロスも 認めている。戦艦を模した姿の軍団長ドランガーはあまりゴーストバンクを離れず、副官のメガドロンが 現場指揮を行うことも多い。 各々の軍団には厳密な階級が存在し、軍団長である凱聖をトップとして豪将、暴魂、雄闘、爆闘士、激闘士、 烈闘士、強闘士、中闘士、最下級である軽闘士へと続く。また修理ロボ、音楽ロボのような非戦闘員は 軽闘士よりも更に下に位置する。 「ネロス!ネロス!ネロス!ネロス!」 ゴーストバンク謁見の間に戦士達の叫びが唱和する。帝王が降臨する際は各軍団勢揃いで迎えるのが慣例と なっていた。 整列した4軍団の前で、玉座に人影が浮かび上がる。 醜悪な老人の姿。その内に湛えられた知性と野望。たった1人で、1代でこの帝国を作り上げた男、 帝王ゴッドネロスその人である。 「余は神、全宇宙の神ゴッドネロス!」 「ネロス!!ネロス!!ネロス!!ネロス!!」 ヒートアップする一同。それを手で遮り静かにさせた帝王はおごそかに言葉を紡ぎだした。 「各軍団、現在の状況を報告せよ」 「豪将ビックウェイン、中東において我が帝国に仇なす政権を抹消しました」 「雄闘トップガンダー、こそこそと嗅ぎ回っていたFBI捜査官の暗殺を完了」 「ヨロイ軍団一同、鍛錬は怠っておりません」 「激闘士ストローブ、3機によるフォーメーションは完成に近づきつつあります」 「試験中のデスターX0ですが射撃精度にまだ問題が残るようです」 満足げに報告を聞く帝王。自分も報告をしようと声を上げかけたブルチェックであったが――――― 「帝お……」 「帝王!ワシはブルチェックに問い正したいことがあるんですがよろしいでっか?」 モンスター軍団長ゲルドリングに出鼻をくじかれた。 「何事だゲルドリング………まあかまわん、許可する」 「ありがとうございます帝王……おうブルチェック、帝王の前や。さっきのアレ、どういうことなんか ちゃあんと説明してくれや」 モンスター軍団長凱聖ゲルドリングの、嫌らしさに満ちた声が謁見の間に響く。 頭部を覆う透明なカプセルの中に見えるにやにやとした笑みが、ブルチェックの不安をかき立てていた。。 それは少し時間を遡ってのことだ。2匹の動物をゴーストバンクに連れ込んだブルチェックだが、 当然ながら機械兵器であるところの機甲軍団には生物の怪我を治すような設備はない。 そこで彼が乗り込んだのはモンスター軍団が怪我を癒すバイオ室だった。 何の価値もない薄汚れた動物を、しかも部外者である機甲軍団員が持ち込んだというのだから モンスター軍団の反発は大きかった。しかし意外なことにバイオ室から軍団員達を退かせたのは ゲルドリングである。 死にかけた動物を前に気が急いているブルチェックは、それがどれほどおかしなことか気付いていなかった。 「機甲軍団の烈闘士ともあろう男が、その辺の動物捕まえてきて無断でゴーストバンクの設備を使用! こりゃあ重罪やで」 「なっ!?邪魔をするモンスター軍団員をあの部屋から追い払ったのはあんただろう!」 「ワシは用事があったから軍団員を集めただけや、使っていいなんて一言も言うとらんで。 あれやな、家主の留守にバイオ室を使うとは、機甲軍団ちゅうんはずいぶんと手癖が悪いんやなあ。 おいドランガー、お前んとこは部下の教育もちゃんとやっとらんのかい」 部下の失態を責められた軍団長ドランガーは、苛立ちを隠せぬ様子で詰問する。 「ブルチェックよ、これは一体どういうことだ?」 「も、申し訳ありません軍団長!」 ブルチェックは自分の愚かさに今更ながら気付いた。 あの自他共に認める嫌な性格のモンスター軍団長が、死にかけた動物に情けを 掛けるような真似をするはずがなかったのだ。 あの男の目的は最初から、『帝王の御前で』『規律違反を咎め』『機甲軍団の地位を貶める』 この点にあったのだろう。 (俺は大馬鹿者だ!動物たちの命を救うことに気を取られて、こんな事にも気付かないとは!) しかしブルチェックにも勝算はある。 ここまで露骨にゲルドリングにはめられるとは思っていなかったが、 要はあの動物たちに命を救うだけの価値があることを示せばいいのだ。 その証拠はブルチェック自身の中にある。 「ブルチェックよ、申し開きはあるか」 帝王の重々しい声が響く。機械の体であっても震えを感じずにはいられない、力と威厳に満ちた声。 その声の主は今、彼を咎めようとしている。 まともな規律がないに等しいモンスター軍団や軍団長の裁量が大きい戦闘ロボット軍団と異なり、 機甲軍団は規律を重視する。軍規違反により軍法会議の上銃殺刑、となる可能性は高い。 (ここでしくじっては命がない。オレも、あの動物たちも) 故にブルチェックは一歩前に進み出て、帝王の放つプレッシャーの中に自ら飛び込んでいった。 「恐れながら帝王に申し上げます。 あの動物は高い戦闘力を持った生物兵器の可能性があるため確保しました。 念のためゴーストバンクのデータベースをチェックしましたが、あの動物に該当する個体は モンスター軍団に存在しません。 おそらくはネロス帝国以外の技術で作られたものと考えられます」 「はあ~?生物兵器~?」 ゲルドリングの不審げな声が背後から聞こえる。先ほどまでの芝居がかったしゃべりと 声色が違うのは、本心から疑問を持っているからだろうか。 沈黙を保ったままの帝王の心中は読めないが、制止されない以上続けてもいいのだろう。 「アホ言うな。あれは完璧にタダの動物やった。ワシが直々に調べたんやからな」 他人の粗探しには熱心なこの男のことだ。ブルチェックがゴーストバンクに帰還してから 帝王が降臨されるまでのさして長くもない時間の間に、何かしらの落ち度がないか目を皿のようにして 探したに違いない。 ……などと周囲にいる者達は考えていたのだが、実際にモニタールームで目を皿のように『させられて』 いたのは下位のモンスター軍団員だったことを追記しておくべきだろう。 「ゲルドリング、それは真か?」 「ええ、帝王。そりゃあもう隅から隅まできっちり調べましたからな、間違いないですわ。 犬もイタチも何の変哲もない弱ったケダモノ。あれじゃあ実験材料にもなりませんで」 「そんな馬鹿な!ちゃんと調べたのか!」 「調べたわい!お前こそあれが生物兵器いうんやったらその証拠見せんかい!あるんやったら、やけどな」 「もちろんある!」 「何やて?」 そう、証拠はある。これ以上ない形で。 「帝王、私の交戦記録をご覧下さい」 ブルチェックはモニターと自分をケーブルで接続しながらそう言ったのだった。 戦闘ロボット軍団員と機甲軍団員が見聞きした物は、彼らの『記憶』であると同時にゴーストバンクのデータ バンクに収集される『記録』でもある。自ら改竄することが不可能なそれは、物証としては十分な物と言えよ う。 (それにしても因果な物だ) 怪我をした哀れな動物たちを救うためには、あの犬を危険な生物兵器として認知させねばならない。 奇怪な生物が砲撃になぎ倒される映像を映しながら、 ブルチェックは自らの行動の矛盾が回路にかける負荷を増大させているのを感じていた。 「おお、これは……」 「あの至近距離でブルチェックの主砲を受けて粉みじんにならない生物だと?」 「あれだけ食らえばオレ達だって危ないな」 「あの質量の変化、有り得んな…一体どうなっている」 「モンスター軍団の新兵器ではないのか?」 「アホ言え、あんなもん知らんわ」 「静まれい!」 にわかにざわついた室内だが、響き渡る帝王の一喝にその場にいた全員が口を閉じた。 「ブルチェック、報告を続けよ」 「はい帝王。今ご覧になられたようにあの生物は戦闘能力を失うと同時に小さくなり、 無害な動物となりました。そして現場に残されていたのが……」 言いながら青い結晶体を恭しく帝王に差し出す。 「この物質です」 「ふむ……」 帝王が手をかざすと、手のひらから放射された不思議な光が結晶体を包み込み、 ふわりと浮き上がったそれが帝王の掌中へと運ばれる。 「ほお……すさまじい魔力を感じるな」 「魔力……?人間の言う魔術とか魔法とかいうやつですか?」 帝王の言葉にバルスキーは疑問の声を投げかける。 純粋に科学で作られた彼らロボットにとって、超自然的な現象は理解の外にある。 今、帝王が見せたような力も何かの装置を使っている物とばかり考えていたのだ。 「帝王は偉大な科学者であらせられるが、妖術においても造詣が深い」 そのバルスキーの疑問に答えたのはクールギンだった。 おそらくはネロス帝国で最も帝王ゴッドネロスとの関わりの深いこのヨロイ軍団長は、 時折他の凱聖すら知り得ぬ情報を持っている。 「妖術を?なんと、さすがは帝王。……もしやヨロイ軍団にもそういった力を持つ者がいるのか?」 「いや、我々には帝王ほどのお力はない。護摩を焚き加持祈祷をするのが精一杯だ」 「そうなのか」 ヨロイ軍団は強化された人間やサイボ-グで構成されている。帝王同様に生身の肉体を持つ彼らの中には 魔力を持つ者がいるかもしれない、バルスキーはそう考えたのだが彼の予想した以上に魔力を持つ者は 稀少らしい。 (やはり帝王は全てにおいて別格ということか) そう結論づけたバルスキーは、意識を切り替えて帝王の次の発言を待つことにする。 不気味な明滅を続ける結晶体を掌の中でもてあそびながら、帝王は何かを思案している様子だった。 と、唐突に結晶体が強い光を放ち出す。 「帝王!」 「慌てるでない!」 注視する一同の前で結晶体は再びふわりと浮き上がる。帝王の手から放れると閃光は弱まり、 帝王に何かあっては一大事と焦っていた幹部達も落ち着きを取り戻した。 「い、今のは一体……」 「こやつ我が欲望を喰らわんとしおったわ。余でなければこの力に飲み込まれていたであったろうな」 「帝王!お体は大丈夫なのですか!?」 「侮るなクールギン、余は神、ゴッドネロスであるぞ?しかしこの強大な力、未知なる魔法の産物…… ふふふ……久々に探求心がたぎってきたわ。この力、必ずや我が帝国の糧となるであろう。 でかしたぞブルチェック」 「帝王にお褒めいただき光栄至極に存じます!」 乗り切った!ブルチェックは心の中でガッツポーズをする。 一方モンスター軍団員は上から下まで全員が唖然としていた。 「さてブルチェックよ、余はお前の働きに対し褒美をやろうと思う。何が望みだ?」 「……それでは帝王、私の回収してきた動物たち、彼らを山に帰してやってください。 すでにモンスター軍団の調査でただの動物だったと判明しているのですから、 逃がしても構わないはずです」 「ふむ…」 思案しながら、掌の上でふわふわと浮かぶ結晶体とブルチェックを交互に見やる帝王。 「まあよかろう。所詮は動物、ゴーストバンクの情報を外に漏らすようなことはできまい。 あの動物はお前の好きにするがいい」 「ありがとうございます帝王!」 「ちょ、ちょっと待ってください帝王!犬はともかくイタチは関係ないでっせ。いや、そもそも最初っから その結晶だけ持って帰ればよかったんとちゃいますか!」 「うう!そ、それは…」 ゲルドリングに突っ込まれたのは最も痛い点だ。百歩譲って犬の方はまだ調査する理由があるが、 フェレットにはそれがない。ブルチェックは全身から一気に冷や汗が吹き出すような感覚を味わっていた。 「今回は功績に免じて特別に許そう。だがブルチェック、次はないぞ?」 「は、ははー!」 再度訪れた危機をどうにか乗り越えたブルチェックは、これからは生物用の医療キットも携行しよう、 と心に誓うのであった。 「さて次なる任務だが……ストローブ、バーベリィ、これへ」 「ハッ!」 戦闘機とヘリコプターの機能を有する機甲軍団員が一歩前に出て気を付けの姿勢をとる。 「お前達は近隣一帯を空から調査し、この結晶体と同じ物を探すのだ。これ以外にも存在するやもしれん。 そして先ほどの犬のような高い戦闘能力を持った生物がいた場合これを撃破、結晶体を回収せよ。 ドランガー。この任、機甲軍団に命ずる」 「帝王のご命のままに!」 「ではこれにて解散。各軍団は十分に英気を養っておけ」 その言葉を最後に、帝王は玉座から姿を消しその場は散会となるのだった。 「ストローブ、バーベリィ、出られるか」 「いつでも出られるように燃料は満タンです!」 「よし、直ちに発進せよ!残りの者は給油次第出撃だ。弾薬のチェックを怠るな!」 「了解!」 ドランガーの檄が飛ぶ。戦闘態勢に入った機甲軍団は迅速に命令を実行しようとしていた。 一方現場指揮の任を帯びた豪将メガドロンは、出撃メンバーの姿が足りないことに気付く。 「ブルチェックはどうした!?」 「あいつなら元気になった動物たちを山に帰すと言ってどこかに行きました」 「……帝王直々にいただいた褒美か。ならば仕方がない、動物どもを山に帰したらそのまま 周辺地域の探索に移るよう伝えておけ」 動物愛護などという概念はメガドロンには全く理解できなかったが、帝王による裁定に 文句を付ける気など毛頭なかった。機甲軍団は鉄の軍規で縛られているが、その頂点には帝王が君臨する。 上官の命令は絶対、そして帝王の命令はそれ以上に絶対的な物なのだ。 「軍団長、今日の帝王は気合いが入っておいででしたな」 「あのようにお喜びの帝王を見るのは久しぶりだ。それに英気を養っておけという命令。 おそらくは帝王には次の戦い、新たなる一手が見えておられるのだろう」 「次の戦い、ですか……」 戦闘ロボット軍団では豪将ビックウェインと凱聖バルスキーが今後のことを話し合っている。 『伝説の巨人』とまで恐れられる副官は何故かあまり乗り気ではなさそうだったが。 「どういうこっちゃコレ」 帝王が退出し、解散となった謁見の間では未だにモンスター軍団だけが残ってボヤいていた。 「機甲軍団にミソつけてやろうとしたのに、なんで手柄になっとるんじゃあ!」 「軍団長落ち着いて」 「機材使われた分損しとるやないか!納得イカンで!この!この!」 「痛い、痛い!軍団長、八つ当たりはやめてください!」 「うおー!なんでやー!!」 モンスター軍団の行状が醜いのは―――――まあいつもどおりだった。 「さて、この辺りならいいか」 「キュウ~?」 「はは、かわいいやつだなお前は」 犬とフェレットを抱えたブルチェックは、2匹を発見した場所からかなり遠い山林まで来ていた。 「あのあたりはネロス帝国の演習場に近い。お前達はもっと静かなところで暮らすんだ」 要は自分たちと関わり合わないようにというブルチェックなりの心配りである。 そうして犬を地面に下ろし、フェレットを木の枝に乗せたブルチェックは後も振り返らず一心不乱に 駆けていった。そうしないと名残惜しくていつまでもその場に留まってしまいそうだったからだ。 そのフェレットが首に付けていた深紅の宝石が無くなっていることに、ブルチェックは 最後まで気付くことはなかった。そしてフェレットの瞳が高い知性を持った物で、ネロス帝国の中を つぶさに観察していたことにも。 「なんて恐ろしい世界なんだここは……。魔法を使わずにあんな物が、それもあれだけの規模で。 レイジングハートも取られちゃったし、もう僕一人じゃ無理だ。 どうにかして連絡を取らなきゃ……時空管理局に―――」 ユーノ・スクライアのつぶやきを聞いたのは風と雲と太陽だけであった。 明らかになる魔法の存在、そして悪の手に落ちたジュエルシード。 新たなる力を手にしたネロスの野望は留まるところを知らない。 だが、ジュエルシードを求める機甲軍団の前に新たな戦士が姿を現す。 瞬転せよ、フェイト。 魔法帝王リリカルネロス、 次回「翔く魔導師!娘よ、母の願いを!」 こいつはすごいぜ! 提 供 桐原コンツェルン 時空管理局 プロジェクトF.A.T.E. このSSはご覧のスポンサーの提供でお送りしました。 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3403.html
* 「危ない!」 なのはの頭上に光る三日月型の鈍い光。 暗がりに紛れるように現れた黒い影が暗殺者の如く彼女の命を刈り取ろうとする――! 「カズマ君っ!?」 だがそれを遮る者が一人。誰もが反応出来なかった中、彼だけがその身を持って彼女を庇う。 その者――カズマは文字通り身を盾にして彼女を守り通す。その背中に、鋼の鎌を突き刺されながら。 蛍光色じみた発光をする緑の血が吹き出す。その光景を、暗闇と血相を変えたなのはが傷口を隠した。バリアジャケットに血が付くことも気にせずに。 「カズマ!?」 「カズマさん!」 ティアナとスバルもようやく動き出したが―― 「早く追って!」 「「は、はい!」」 なのはが一喝。それに気圧され、二人は慌ててガジェットを追っていった。 なのはは血の気の引いた顔を傷口に向けながら必死に回復魔法で治そうと、その白い手を緑色に染めながら傷に当てる。 その手首をカズマは掴み、ぐいと押し退けた。 「このくらい大丈夫だ。それより汚れるだろ?」 「大丈夫、なの?」 「俺は――アンデッド、だからな」 カズマは苦笑しながらそう言い、立ち上がる。口から吹き出した血を拭いながら。 そしてチェンジデバイスとカードを取り出す。 「なのは、行くぞ」 ぺたんと座り込んだなのはに手を差し伸べるカズマ。先程まで緑に染まっていた手は、もう肌色になっていた。 なのはの体に付いた血が、しゅうしゅうと音を立てて蒸発していった。 リリカル×ライダー 第十六話『刺客』 なのはを突き刺そうとした犯人、奴の正体はガジェットⅣ型だと本人は推測していた。 「ステルス能力、みたいなものがあるのか」 「うん。それに、あの特徴的な鎌もね」 ガジェットⅣ型はガジェットシリーズの中でもかなり特殊な位置付けで、どうやらスカリエッティの発明品ではないらしい。 そもそもガジェットはスカリエッティがJS事件で掘り出した古代兵器を現代技術で復元したもので、Ⅳ型はその原型となった古代兵器なのだそうだ。 そのため増産は不可能、しかもJS事件で全て壊してしまったのでもう現れないと思い、訓練にも出さなかったのだそうだ。 今頃悔やんでも仕方のないことだが、ここでⅣ型との実戦経験があるのがなのはだけなのは惜しい限りだ。 「あのガジェットは、わたしの天敵なの」 それはそうだろう。 遠距離砲撃型のなのはにとって音もなく忍び寄るⅣ型は脅威に違いない。もちろん戦えないことはないだろうが、それでも苦手なのは確かだと思う。 ヴィータ達ヴォルケンリッターのような近接型、もしくはフェイトのようなオールラウンダーなら話は別だが。 そんな俺の思考を読んだのか、俺の顔を見てなのはは笑いを浮かべた。 「相性もあるけど、ちょっとね」 笑み、というより苦笑するなのは。 もしかしたらなのはほどの強者でも苦戦した記憶があるのかもしれない。敢えてそれを聞いたりはしなかった。 フォワードメンバーと合流するべくビル内を散策する俺となのは。 付かず離れず、微妙な距離を保ちつつ、俺達はビルの三階に当たる鉄骨の上を歩いていた。 組み上げ中のビルだからか足場が少ない。かと言って飛行魔法を使えるほどの空間的余裕もなかった。 その時、空間に鈍い輝きが一瞬刷り込んだ。 「くっ!」 『Panzerschild』 直後に迫る黒鋼色の刃。それを俺は右手に発生させた極小のトライシールドで受け止めた。 青い輝きを放つシールドで拮抗し合う。俺はシールドを爆破し、敵と距離を取るべく別の鉄骨に乗り移る。 「アクセルシューター!」 その隙を突くように別の鉄骨に立つなのはが吼え、レイジングハートが応える。 四発の桜色に輝く光弾は瞬時にガジェットⅣ型に迫り、その体をひしゃげた鉄塊へと変えた。 「凄いな」 「カズマ君もね」 俺となのは、二人で笑い合う。そして自然と、ガジェットを警戒するために互いの背中を触れ合わせた。 そんな一瞬の一時が嘘のように。 その周りには数十体ものガジェットⅣ型が、ひしめくように蠢いていた。 ・・・ 「スバル! そっち!」 「はぁぁあぁぁぁぁ!」 私の指示で的確にガジェットを殴り飛ばすスバル。 右手に装着されたリボルバーナックルのスピナーが高速回転し、空間を揺るがす衝撃を発生させる。 Ⅳ型は洗濯機に放り込まれた衣服のように装甲を変形させ、まもなく爆散した。 私とスバルを囲む数十のガジェット。突如現れ、攻撃を仕掛けてきたガジェットは、想像以上に厄介な敵だった。 「スバル、後ろを! 私が前を押さえる!」 「分かった!」 AMFを発生させて魔導師の能力を減衰させるガジェットは確かに危険だ。 けれど今はその対策もある程度だが施され、苦戦するような相手ではなくなっているはず。その手強さに、私は違和感を覚えていた。 これでも六課の一員であり、フォワードメンバーのリーダーなのだ。ガジェットになんか苦戦するはずがない。それが何故―― 「ティアナ――!」 ――そんなことを考えていた私は、背後の存在に気付けなかった。 背中に突き刺さろうと振り下ろされる鎌。その鈍い輝きを見て、私は戦慄を覚えた。 「カズマ!?」 その一撃を遮ったのは、鎧のようなバリアジャケットを纏い、一振りの剣をかざしたカズマだった。 「大丈夫か!?」 相手の鎌を弾き飛ばし、その胴体に切っ先を突き刺しながらこちらを振り替えるカズマ。 炸裂した爆炎の朱で彩られる鎧。無表情に見える紅い大きな目をした仮面。 その姿が、ふいに頼もしく、また怖く感じた。 「だ、大丈夫。でも数が減らないのよ」 「みたいだな。スバル、こっちに来てくれ! 二人とも一旦なのはの所まで撤退しよう!」 「分かったわ」 撤退を指示したのはなのはさんで間違いない。ということは、退路を確保してくれているのだろう。 なのはさん自身は指揮とか苦手だと仰っていたけど、実際は戦術的判断の優れた人だ。大丈夫、何とかなる。 私もこちらに走り込んできたスバルの上に飛び乗った。 「うわぁ!?」 「文句言わない。走って!」 カズマが手当たり次第に敵を倒してくれている今の内に。 そう考え、インラインスケート型のマッハキャリバーを持つスバルに肩車してもらおうと思ったのだ。 「二人とも、早く行け!」 「アンタも早く来るのよ!」 数体のガジェットが細い鉄骨の上で戦うカズマに襲いかかるも、それは容易く吹き飛ばされる。危なげなさは欠片も感じられなかった。 置いていくのは申し訳ないと思う。でもカズマは近接戦では隊長陣に次ぐ実力を持っているし、飛行魔法もある。離脱も可能だと私は判断した。 そう私は、自分の心を説得するしかなかった。 ・・・ 俺はティアナとスバルがここを去るのを見届けていた。 ティアナがこちらを何度もチラチラ見ていたが、それも暗いビル内では次第に見えなくなる。 これで、準備は整った。 『カズマ君、よく聞いて』 提案したのは、なのはだった。 『わたしが入り口を確保するから、先行してるスバルとティアナを引き返させて』 本来の彼女ならこの程度の敵、すぐにでも片付けることが出来る。しかしこのビル内で砲撃を行えば、崩落を起こしかねない。 また、暗い室内でステルス能力を使う敵に対し、近接戦闘能力をほとんど持たないなのはは奇襲でやられかねない。 もちろんスバルは近接戦のエキスパートだが、何が起こるか分からない状況では無理はさせられない。 『そうすれば、二人にバレずにカードの力を使える』 一方の俺は近接戦でこそ最大の実力を発揮する。特にこうした狭い室内なら距離を取られにくい分、かえって都合が良い。 何より、俺は決して死なないのだから。こんな状況にはおあつらえ向きだ。 『ごめんね。ここはカズマ君に、お願い出来るかな?』 今はデバイスモードだが、あのカードに限ってなら使用は可能であることはすでに検証してきた。これなら奴らにも負けはしない。 むしろ本来の力ではない分、リィン無しでも制御可能なはずだ。 『……わたしがこんなこと頼める立場じゃないのは、分かってるけど』 何より、俺はなのはに悲しんでほしくなんかない――! 「俺はただ、皆を守りたいだけだ!」 剥き出しの鉄筋で組まれたビルを四つ足でカマキリに似た無数のガジェットⅣ型が這い寄る。 それを尻目に、俺は二枚のカードをラウズアブゾーバーから引き出した。 『Absorb Queen』 その内のカテゴリークイーンのカードを差し込み、アブゾーバーを起動させる。 だがガジェットはそれを許さんと次々迫る。それを切り裂きながら、もう一枚のカードをスラッシュした。 『Fusion Jack』 カテゴリージャックのカードで、力が解放される。そう、上級アンデッドの力が。 「うぉぉぉあぁぁぁぁぁ!」 二体の上級アンデッドとの融合。 今回はカテゴリーエースとの融合がない分、負担は少ない。それでも身に余る力は体を焼き付くさんとする。 変化する体。 持っていたカードホルダーのない剣に黄金の刃が形成され、スペードのマークが塗り潰されたアーマーに黄金の装甲が装着される。 これがラウズアブゾーバーの力、『ジャックフォーム』。 デバイスモードでの強化変身だから、魔導師仕様といったところか。 「うぉぉぉぉぉ!」 背中に形成されるオリハルコンウィング。 俺はそれを展開し、さらに飛行魔法で重力を相殺、その機動力を持ってガジェットに突撃する――! 閃く黄金の刃。 美しい曲線を描きながら、一気に三体のガジェットⅣ型を切り裂く。 「まだだぁっ!」 『――Slash』 青い魔力が纏われ、更に鋭度の増す金色の剣。 瞬く間にガジェットが鉄塊へと変わっていく。 この戦場において、俺はまるで王であるかのように力を奮い続けた。 ・・・ 『……ふむ、これが彼の力か』 モニター状でガジェットを蹂躙する装甲戦士。無表情の仮面で顔を覆い、戦場を駆け巡る男。 カズマ。不可思議なカードを持って力を奮う者。 そんな彼は今、どんな表情をして戦っているのだろうか。 「ドクター、これが見たかったのですか?」 問い掛けるのはナンバーズ一番、ウーノ。問い掛けられたのは彼女の生みの親、ジェイル・スカリエッティ。 二人はモニターと機械に囲まれた狭苦しい部屋にいた。スカリエッティはチェアに腰掛け、ウーノは彼の後ろに立つ。 それが二人には、自然な構図だった。 「今回のガジェットはね、あくまで実験なのさ」 「実験、ですか?」 「そう。ただ、彼に対しては余り実験にはならなそうだ。ふむ、彼を抑える必要があるかもしれないね」 スカリエッティはウーノが淹れたコーヒーにガムシロップを落とし、口を付ける。 すでに甘く味付けされたコーヒーが更に甘くなるが、彼は気にしない。糖分補給は頭脳労働には必須だと言うことか。 ウーノは空になったガムシロップの容器を盆に載せながら、再度問い掛けた。 「どういった実験なのですか?」 「ふむ。実はね、彼のカードを模して作られたデバイスカード。あれは拾い物だが、それを模して作ったデバイスカードの実験をしたかったのさ」 「しかしそれはすでにライダーシステムで検証なさったのでは?」 少量の起動魔力のみで一定の魔法を発動出来るデバイスカード。オリジナルは拾ったものだが、スカリエッティはすでにコピーに成功していた。 もちろんまだ製作時間が足りなかったため、用意できたのは僅かな枚数ではある。 しかし実際、前回の戦闘でもトーレ達は新世代ライダーシステムの起動、運用で使用していた。 最もこちらは魔法ではなく、戦闘機人達のエネルギーで使用する特殊なもので、厳密には質量兵器なのだが。 だから、非殺傷設定などという甘い攻撃は出来ない。食らえば傷付き、果ては殺す攻撃である。 「いやいや、ウーノ。彼女達に使わせたのとはまた違ってね。こちらはちゃんと魔力運用型だよ」 「そんな、ガジェットにどうやって使――」 「ウーノ。ちょっと出撃してくる。カズマ君を抑える必要がありそうだからね」 まるでウーノの台詞を遮るようにスカリエッティは立ち上がり、羽織っていた白衣を脱いでウーノに投げ捨てた。 紫のカッターシャツに紺のパンツという逃亡者とは思えないスタイルのスカリエッティは、机上のレンゲルクロスを掴む。 その顔は、まるで今から遊園地に行くような無邪気な笑顔で覆われている。だが、目だけは濁りきっていた。 「待ってください、ドクター!」 「じゃあ、後は頼むよ」 まるで散歩にでも行くような気楽さで。 ジェイル・スカリエッティは転送魔法を起動し、部屋から消え去った。 ・・・ 「おりゃあああ!」 右手に展開したシールドを加速した状態で叩き込み、爆発させる。 ボディを貫通し、内部に浸透した爆発は容易くガジェットを残骸へと変貌させた。 これで二十四体。ただ、この二十四体はやはりただのガジェットじゃなかった。 一見して目立つ特徴があるから気付かなかったが、このガジェット達、どれも異なる性能を有しているのだ。 今のはプロテクションを展開出来る機体だったし、先程のは接近戦用の鎌に魔力強化を施した敵だった。そう、まるで魔導師の如く。 (早く戻らないと……) 嫌な予感がする。俺がここに留まり過ぎれば、何か良くないことが起こると本能が告げてくる。 それは俺の身になのか、それともなのは達になのか。 そしてそれが何なのか、ただの勘では分からないが。 「なのは……」 「待たせたなぁ、カズマ君!」 「――!」 驚きと共に勢いよく後ろを振り向く。 そこには今まで何もなかったはず。だが今は、レンゲルの鎧を纏ったスカリエッティが、悠然と佇んでいた。 「スカリエッティ――!」 「さぁ、その力を見せてくれ!」 奴の言葉に耳を傾けはしない。俺はオリハルコンウィングを展開して加速し、強化された剣を真っ直ぐ振り下ろす。 光刃に見紛う瞬速剣。 しかし奴は素早く錫杖を振り上げ、こちらの斬撃を受け止めた。 「あああああッ!」 「速く、そして重いな。しかし今回は魔力反応しかほとんど感知出来ないな」 俺は一撃目が失敗したすぐ後に左拳にシールドを展開して奴の脇腹を殴り付けた。 魔力爆発を伴う拳撃。奴は殴り合いは苦手なのか、今度はダメージを与えることに成功する。 後退るスカリエッティ。その焦げた脇腹の鎧に追撃の回し蹴りを叩き込む――! 「ぐっ……」 「まだだ!」 奴にカードを使わせてはいけない。 『――Tackle Protection』 俺はすぐに魔法を発動させ、プロテクションを右肩から半身に広がる程度に展開する。 本来ならカードで使える技だが、今は魔法に頼るしかない。 その強固な壁を向けて、俺はショルダーチャージを奴にぶつける! 「がはぁっ!」 「おりゃあああ!」 真っ正面からタックルを食らい、吹き飛ばされるスカリエッティ。 俺は更に剣に魔力を這わせ、その強化された斬撃を振り下ろ――そうとした剣を、奴に掴まれた。 「なっ……」 「君は、怒ると、怖いな。焦っているからといって、短気になられては、困るよ」 無表情の仮面からくぐもった笑い声が上がる。少々息切れしてはいるが、その余裕は微塵も崩れてはいない。 俺はそれを、本能的に"怖い"と感じてしまった。 「強い、確かに強いなカズマ君。だが、私も同じ力を持っていたら、どうなるかな?」 余裕の感じられる声に不安を覚える。 右手で俺の剣を掴んだまま、左手を見せびらかすように掲げるスカリエッティ。そこには―― 「ラウズ、アブゾーバー……」 「くっくっ、君のを参考に開発させてもらったよ。さぁ、どちらが強いかな?」 『Absorb Queen』 俺の腹を錫杖で殴り付けて吹き飛ばし、アブゾーバーから展開したウィングのようなトレイから引き抜いたカードを挿入する。 「さぁ、ゲームの再開だ」 カードを差し込まれ、カテゴリージャックのカードに呼応するように、ラウズアブゾーバーに逞しい猪のレリーフが刻まれた覆いが成される。 スカリエッティは更にもう一枚のカードを引き抜き、側面のスリットにスラッシュした。 『Fusion Jack』 ラウズアブゾーバーから光が溢れ出し、スカリエッティ――レンゲルを包み込む。 浮かび上がるのはエレファントのイメージ。猛々しい力とレンゲルの鎧が融合していき、体が変化する。 胸部には象の紋章が刻まれた金色の胸甲があしらわれ、錫杖の石突き部分にはディアマンテエッジが鋭い刃として形成される。 そして特徴は肩。 そこには象牙を連想させる、雄々しき二対のオリハルコンファングが自己主張するように天に向いて生えていた。 レンゲル・ジャックフォーム。 スカリエッティの、新たなる力だった。 ・・・ 「くっ……まさかこっちにも!」 「みんな退いて! ――ディバィィィン、バスター!」 ティアナとスバルが飛び退き、剥き出しとなったガジェット数十体に砲撃をぶつける。 桜色の砲撃は容易く敵を一掃する。けれど、それが虚しくなるほどまだ無数に這い出してくる。 数が異常に多い。スカリエッティがどうやって量産したのかと疑いたくなるほどの量だった。 今更ながら、カズマ君と別れたのは間違いだったと痛感した。 「なのはさん! カズマさんは……」 「今は目の前のことに集中して!」 ガジェットに拳を叩き込みながらスバルに話し掛けられる。でもわたしはすぐに指示を出して戦闘に向かわせた。 今のわたしは、まともにカズマ君の話なんて出来ない。 彼と共闘し、背中を任せ合い、そして別れたことでわたしは気付いてしまった。 そう、今のわたしは、カズマ君を受け入れられない。 今のわたしは、戦士を続けられないわたしは、きっと彼を信じきれない。そんな、残酷な事実に。 でも、だからこそカズマ君には生きていてほしい。いつかわたしが昔のように強くなって、彼を受け入れられる日を迎えるために。 そう、わたしはヴィヴィオを守るために臆病になってしまった。 彼女を失いかけ、その代償に深手を負い……今はカズマ君――ジョーカーがヴィヴィオを襲うように感じてしまうのだ。 恐怖の象徴とも思えるジョーカーの外観。全ての生命を否定し、滅ぼす存在を思わせるオーラ。 今までのわたしならそれすら気にもならないと思う。実際、彼に触れることに躊躇いも嫌悪感もなかった。けれど。 あの外観は、あまりにも不吉過ぎた。そう、昨今の殺傷事件と合わさって、わたしはヴィヴィオが殺される夢を何度も見てしまうように。 だから、そんな弱い自分を見限り、戦士を辞めようと思った。ヴィヴィオだけを守るようにしようと。大きくなるまで、ずっと彼女のそばにいようと。 それでもわたしはレイジングハートと共に今も戦っている。どちらにも決められず、なあなあにして。 そんな自分は、嫌だ。 だからわたしはカズマ君を助ける。今いるガジェットを吹き飛ばし、一直線にカズマ君の元へ向かうために。 臆病な自分を吹き飛ばし、わたし自身を取り戻すために! 「エクセリオォォォン、バスタァァァァァァ!」 フルドライブによってエクシードモードへと変形したレイジングハートから、桜色の光線が炸裂した。 ――レイジングハートは全てを知りつつ、ただ主人を案じて黙る。彼女は、マスターを信じているのだから。 ・・・ 「……ふむ、データもこれで揃ったかな」 レンゲルの鎧を纏ったスカリエッティが,ディアマンテエッジが生えた錫杖の石突き部分を突き出す。 ザグン、と黄金の胸甲に数センチも刺さり、その衝撃でブレイド――カズマが吹き飛ばされる。 ふらふらで立っているのもやっとだったカズマの体はそれで容易く崩れ落ちた。 「く、そ……っ」 「君が普段の実力を出していれば厄介だったかもしれないが、今の半端な状態では私には勝てんよ」 そう、デバイスモードのカズマは本来の力を発揮しきれてはいなかった。 カズマの力はラウズカードあってこそのもの。ジョーカーとしての不死性と身体能力があっても、それは副次的なものに過ぎない。 その上、スカリエッティは圧倒的なまでに強かった。不完全とはいえジャックフォームを完膚無きまでに叩きのめせるほどに。 スカリエッティはため息がちな声でそう呟き、カズマに背を向ける。彼の仕事は終了した、ということだろう。 スカリエッティはむしろ、外を映し出す空間モニターに注意を向けていた。 「流石はエース・オブ・エース。後遺症があってこの実力とは恐ろしいな」 桜刃を刀の如く振り回しガジェットを薙ぎ倒すなのはを眺めながらそう呟くスカリエッティ。レンゲルの仮面に阻まれて表情は伺えない。 数多の技を繰り出すガジェットだが、彼女相手では話にならなかった。それほど、彼女は鬼神の如き強さを見せ付けていた。 そんな強敵を見ても、スカリエッティの表情は変わらない。ただただ、天才科学者は嗤い続ける。 「あ、あああ……っ」 絞り出すような苦悶の声を漏らすカズマ。その姿にスカリエッティは目を向けることなく、彼は一枚のカードをホルダーから抜き出した。 そのカードは,クラブ8。 「アアアアアァァァッ!」 『――Gell』 カズマが渾身の力を腕に注ぎ、黄金の刃で先端が覆われた剣を振り下ろす! ――だが。 彼が斬ったスカリエッティは、まるでジェルのように液体になって引き裂かれ、融けるように消えてしまった。 (く……そ……) 全ての力を出し尽くし、意識が朦朧とするカズマ。剣を落としたことにも気付かず、崩れ落ちるように倒れ込む。 薄れゆく意識の中でカズマは。 こちらに走り寄るなのはを幻視した。 … 完膚無きまでに叩きのめされたカズマを看病するなのは。彼女はカズマと向き合い、全てを告白する。大切な人と大切な世界、彼女は何のためにその力を振るうと決意するのか。 そして一方のカテゴリーキングも動き出す。彼は敵か、それとも―― 次回『決意』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/112.html
「どうだ…モンスター潰されたんなら、お前は戦えねえだろ」 シザースの方へと向き直り、ヴィータが言い放つ。 確かにモンスターが潰されたとなると、ライダーの力は急激に衰える。 シザースもまた例外ではない。ライダーの鎧『グランメイル』の色が灰色へと変化し、ブランク体へと変化していった。 「分解されねえ程度にそこで反省してろ。あたしは帰る」 そう言うと、ヴィータはミラーワールドを出た。 (爺さん達…仇はとったぞ…!) 「ミラーワールドに刑事はいらない…!」 そう言うと、一枚のカードを取り出し、装填した。 『FINALVENT』 先ほど使ったのとは違う、もう一枚のファイナルベント。 メタルゲラスのファイナルベント『ヘビープレッシャー』だ。 そして立ち上がろうとしたシザースの腹を、ヘビープレッシャーで貫いた。 「が…そん…な…私は…こんな…所で――――」 その言葉とともに変身が解け、シザース…いや、須藤がその場に倒れる。 その腹には大穴が開き、そこから大量の血が流れている。もう助からないだろう。 「つまらねえな…」 王蛇はそう言うと、ミラーワールドを去った。 後に残された須藤の体は粒子化を始め、やがて消滅していった… 「あれ?今日はやていないのか?」 現在の時刻は昼過ぎ。先日のシザース戦の疲れからか、もの凄く寝坊したヴィータが聞く。 「ああ、主はやてはシュベルトクロイツの試作型を作るため、アースラに行っている」 はやての杖『シュベルトクロイツ』は幾度かの試作を経ている。そして現在も完成版は出来ていない。 少し前に『試作型バージョン2』が破損し、そのデータをもとにバージョン3の製造に向かっているのだ。 …ちなみに関西人のたしなみとでも言うのか、バージョン2にはハリセンが仕込まれていた。 「ふーん…今回はハリセン仕込むのかな?」 「期待しているのか?」 「まさか」 この後ハリセンがシュベルトクロイツに仕込まれているのをヴィータが見つけ、思わず失笑するのは別の話。 ちなみにバージョン5の時点でようやく「ハリセンを仕込むと空洞ができ、そのせいで強度に問題が出る」と分かり、ハリセンを仕込むのを止めている。 第十八話『真司の冤罪』 OREジャーナルで電話が鳴り響く。大久保がそれを取った。 「はいOREジャーナル」 『OREジャーナル編集長の、大久保大介だな?』 「はいそうですけど…何か?」 突然名指しで呼ばれ、怪訝そうに答える大久保。 『島田奈々子を預かっている』 「はぁ?あんた一体何言って…」 『こう言わなければ分からないか?「島田奈々子を誘拐した」と』 「誘拐?どこに?」 『一度しか言わない。身代金三千万円を用意しろ。それと、身代金は城戸真司に持ってこさせろ。 もし警察に知らせた場合、島田奈々子の命はない』 数時間後、閑散とした山奥の廃墟。 『いいか、真司。間違っても犯人を刺激するな』 「はい、分かりました」 大久保からの電話に、真司が答える。 連絡を受けたときにはかなり気が動転していたようだが、今は皆、幾分落ち着いている。 そして要求された場所へ、要求通り真司が三千万もの現金を持って来た。 「もしもーし?OREジャーナルの城戸ですがー?」 呼びかけても返事は無い。 「要求通り金を持ってきましたー!」 そう言い、件の廃墟へと踏み込む。 「島田さーん?無事ですかー?」 反応が無い。もう一度「島田さーん?」と呼びかけるが、全くもって反応が無い。 とりあえず携帯を取り出し、大久保へと連絡を取る。 『真司か。どうした?』 「はぁ…それが、指定の場所に着いたんですが、応答が無くて…うわ!?」 物陰から何かが飛び出してくる。その何かに真司が吹っ飛ばされた。 何とか立ち上がり、その何かを見る。人間の成人くらいの体格、言葉を話す、さらには鉄パイプを振りかざす。 となると可能性はただ一つ、誘拐の犯人だ。人間か、それとも使い魔かは不明だが。 『おい、真司?おい!真司!!』 吹っ飛ばされた衝撃で、携帯電話を落としてしまう。 その携帯電話から大久保の呼びかける声が響くが、拾えないのだから反応のしようが無い。 「おい!真司!! …ダメだこりゃ。令子、警察を呼べ」 そう言われると同時に、令子が警察に連絡した。 「やめろって、おい!」 鉄パイプを振り回す相手を必死に説得する真司。だが、相手は聞く気が無い。 …と、外が騒がしくなってきた。警察が到着したのだろうか。 音に気付いた犯人が姿を消す。どんな方法を使ったのか分からないが、目の前から忽然と「消えた」のだ。 「あれ…?一体どこに…って、今はそれより島田さんだ!」 犯人が消えたことを疑問に思うも、今は島田の無事を確認するときだと判断し、部屋の隅で気絶している島田に駆け寄った。 「島田さん?しっかりして下さい!」 気絶している島田の目を覚まさせるため、声をかける。 …と、その時、その部屋のドアが破られ、たくさんの人が踏み込んできた。 「警察だ!」 その人影が警察だと分かり、安堵する真司。だが、ここである既視感に捕われる。 (…あれ?これが前の通りだと…まさか!) 「逮捕!!」 やっぱりである。タイムベントの前の通り、真司が逮捕された。 「は?真司が誘拐犯?ある訳ねえだろ」 「全くだ。二重の意味であり得ん」 「もちろん、何かの間違いだろうけど…状況は城戸君にとってかなり不利ね」 一時間後、八神家にて。現在令子が事情を説明している真っ最中だ。 ちなみに、真司とのつながりで八神家の人間とOREジャーナルの人間はちょっとした顔見知りなので、敬語も使っていない。 「ところで、二重の意味って…?」 「ああ、城戸には誘拐などという真似ができるとは思えんからな。 それに、島田が誘拐されたのは昨日の晩なのだろう?その時城戸はこの家にいた。だから不可能だ。 何なら、私が証言台にでも立とうか?」 シグナムがアリバイを証明してくれるという。真司にとっては僥倖といったところか。 「北岡、仕事の依頼がある」「お断りします」 同じ頃、蓮が北岡へと会いに行った。真司を助けるよう、仕事の依頼に来たのだ。ちなみに蓮と北岡は交戦経験があるので、お互い顔見知りだ。 …だが、北岡は依頼内容すら聞かずに拒んだ。 「…何も聞かずにか?」 「アンタからは金の匂いがしない。それに、依頼内容ってあの城戸って奴の弁護だろ?」 「察しがいいな。城戸の弁護はしたくないとでも言うのか?」 「そりゃまあ、せっかく何もしないで敵が減るチャンスなんだしさ」 「やれやれ、やはり人としては最低のようだな」 「かもな。でもアンタには関係無いだろ?」 「あるさ。あんたは俺の仕事をするんだ。金なら何とかする」 「本当か? …ま、いいか。この依頼、請けるよ。 あいつにも聞きたいことがあるし、令子さんからもさっき頼まれたしね」 真司が面会室へと連れてこられる。 「き、北岡さん!?えっ、まさか俺の弁護士って…!!」 「そういう事。令子さんと秋山に感謝しなよ?」 面会室に来た真司は、かなり驚いているようだ。 それもそのはず、多分依頼されても来ないだろうと思っていた北岡が来たのだから。 とにかく席に着き、北岡との対話を始める。 「しかし分からんな。お前じゃないなら、本当の犯人はどこに消えたんだ?」 「それは…」 「なあ、本当はお前がやったんじゃないのか?」「違う!」 北岡に疑われ、思わず声を荒げる真司。 「ま、どっちでもいいさ。お前だろうが違ってようが、必ず無罪にしてやるからさ。で、その前に聞きたいことがあるんだが…」 そう言った北岡の雰囲気が変わる。 「前に浅倉が立て篭もり事件を起こしたことがあったよな?で、その時あいつが俺を呼ぶよう指示する前に、アンタが俺に連絡を取ってきた。 どうやってあいつの正体と狙いを知ったんだ?あいつと連絡を取るか、未来を知りでもしない限り、狙いなんか知れないだろ?」 聞きたいことというのは、真司がなぜ浅倉の正体と狙いを知っていたかだった。 確かに、真司はタイムベントで戻る前を知っている。だから浅倉に関してのことを知っていたのだ。 「…ひょっとして、それを話さないと弁護しない、とか?」 「あー…なるほど、それもいいかもな」 ここまで言われ、真司としても話さないわけにはいかない。 意を決し、北岡に真実を話した。 「なるほどね、オーディン…だっけ?その13人目って。 そいつが時間を戻すカードを持ってて、アンタは戻される前を知ってる。そういう事だろ?」 「ああ。だから浅倉の正体も、狙いも分かったんだ。前のときもそうだったからな」 北岡に全てを話す真司。北岡は正直言って半信半疑だ。 「時間を戻す…ねぇ。随分非常識じゃないか?」 「それを言ったら、ライダーだってかなりの非常識じゃないか」 「…確かにな。じゃ、事件当時の状況を詳しく話してもらえる?」 「えぇ?真司君が警察に捕まった!?」 「そうなの。やってない誘拐の罪で捕まっちゃって…」 同じ頃、大通り。はやてに事情を話しながら、なのは・フェイトが警察署へと向かっている所のようだ。 「その誘拐って、いつ頃起こったん?もし昨日の夜やったんなら、真司君やないって私が証言できる」 「だったら証言してあげて。事件が起こったのって、その昨日の夜らしいから」 話しながらも走る。走る。警察署はもうすぐ近くだ。 …と、フェイトが走り去る何かを見つけ、立ち止まった。それを怪訝に思ったなのはが声をかける。 「フェイトちゃん、どうしたの?」 「…ごめん、二人とも。先に行っててくれる?少し用事ができたから」 そう言うと、フェイトはその何かを追い、どこかへと走り去っていった。 「上手くいきましたよ、プレシア」 先ほど走り去った何か…プレシアの使い魔リニスが報告する。 かつて、プレシアにはリニスという使い魔がいた。だが、そのリニスは契約が果たされ消えている。 ならば今ここにいるリニスは誰だ?答えは簡単だ。プレシアの手によって作られた、二代目のリニスだ。 アリシアを生き返らせるためには、ライダーの戦いに勝つ必要がある。そのために使い魔を使うのは有効な手だ。 そう考えたプレシアは、再び使い魔を作り出したのだ。愛着があったのか、リニスの名をつけ、リニスと同じに作って。 「そう、これで一人は脱落…かしらね?」 「でしょうね。こうすれば餌を与えられませんから、契約違反でいずれモンスターに食べられますから」 どうやら、今回の誘拐事件はプレシアの策だったようだ。 どうやって真司のことを調べたのかは不明だが、とにかく真司の関係者を誘拐し、その罪をなすり付けて逮捕させたのだ。 急に消えたのも、本来の姿である山猫形態に戻っただけである。あまりに急だったため、目の前から消えたように見えたのだ。 「そういう事だったんだ…」 突然の声に振り向く両名。そこにフェイトがいた。 「フェイト…立ち聞きとは、趣味が悪いわね」 「母さん…そこまで堕ちたとは思いたく無かったよ」 一言二言ほど言葉を交わすフェイトとプレシア。 すでに両者の周りには、雷が帯電している。お互い戦う気だ。 「やれやれ、俺は必要無かったみたいだな」 はやての証言で、真司の無実が判明。さらにシグナムの証言がそれを裏付け、出所と相成った。 そのまま出所し、今は皆で帰路についている。 「はは…なんか、すいません。お仕事取ったみたいで…」 「ああ、いいっていいって。多分もう一仕事あると思うし」 「もう一仕事って…何かあるんですか?」 「知ってるか?こういう時ってさ…警察を告訴すれば賠償金と慰謝料取れるんだ」 その言葉に、北岡以外の全員が驚く。真司もだ。 「えっ!?そうなんですか?」 「お前な…ジャーナリストだろ?その位知ってろよ」 「とにかく、警察に謝罪させることが出来るんやろ?それなら…く、くくく…」 はやてが突如笑い出す。凶悪なオーラを発しながら。 「私の家族に無実の罪着せた報い、しっかり受けて貰わなあかんな…」 かなり強力なオーラが放出されている。心なしか、「ゴゴゴゴゴ…」といった感じの効果音と、例の金属音がハーモニーを奏でているように聞こえる。 …って、え?例の金属音? 「あーモンスターだ。早く何とかしに行かないとー」 「じゃ、じゃあ俺も行くよ」 そう言うと、真司と北岡がモンスター退治に向かった。全力疾走で。 「…逃げたな」「ああ…」「私も逃げたいよ…」 いや、あんたらも行けよ。システムを使えばミラーワールドにも入れるだろう。 「あれ?真司君と北岡さん、どこ行ったん?」 「あいつらなら、モンスター退治に行ったぞ」 「そうなん?ほんなら、私も行ってくるわ」 そう言って、はやてもモンスター退治へと向かった。 「…今のうちにモンスターの冥福でも祈る?」 「今回ばかりはお前に賛成だ」 この後、モンスターがはやてからイジメじみた攻撃を受けた挙句に、オーバーキル同然の死に方をしたのだが、それはまた別の話。 「闇に沈め!」 モンスターに無数の短剣が刺さる。ブラッディダガーの集中砲火を浴びせたのだ。 「あの子供、怖いな…」「いつもはああじゃないんですけどね…」 モンスターにとっての地獄は、まだまだこれからである。 「くっ、どこに消えたの!?」 こちらはフェイトVSプレシア。現在戦闘の真っ最中。 プレシアがベルデへと変身し、クリアーベントで透明化。撹乱しながらフォトンバレットやバイオワインダーで攻撃しているのである。 「フフ…どこにいるか、分かるかしら?フェイト…」 分からないということが分かっていて聞くベルデ。多少意地悪に思える。 「どこにいるか分からないなら…! サンダーブレイド!」 『Thunder Blade.』 遥か上空へと飛翔するフェイト。そして雷の剣を降らせて爆発させる攻撃魔法『サンダーブレイド』を放った。 雷の剣が地面へと突き刺さる。そして… 「ブレイク!」 爆発。そして放電。強烈な電流が暴れだす。 これ程の電流、しかもかなりの広範囲だ。いくらなんでも逃れることは出来ないだろう。 フェイトやリニスもそう思っていた。だが… 「終わりかしら?」 その声、そしてその後に見たもので、フェイトは自分の目を疑った。 バリアのような防御魔法を張り、完全に防ぎきっていたのだ。 「そ、そんな…」 「それじゃあ、そろそろ倒させて貰うわ」 言うが早いか、フェイトに杖を向けるベルデ。 刹那、フェイトのいた箇所が爆発する。特大のフォトンバーストがフェイトを捉えたのである。 ダメージに耐えられず、墜落していくフェイト。それをリニスが受け止めた。 「リニス、その子は死んでいるわね?」 「…はい」 「そう…なら、その死体を片付けてきなさい」 「フェイトちゃんがまだ帰ってない?それって本当なの?」 『ああ。全く、どこをほっつき歩いているんだ?もう夕飯時だというのに…』 その晩、なのはにクロノからの連絡が入った。 今日の昼、なのは達と別行動を取ったフェイトがまだ戻ってきていないというのだ。 「フェイトちゃん、どうしたんだろう…」 『さあな。とにかく、見つかったら連絡を「なのは!大変!フェイトちゃんが…!」 突如、高町桃子の声が響く。聞こえた内容からすると、フェイトが大変なことになっているようだ。 クロノとの電話は繋がったまま、急いで下に降りるなのは。 そこで見たのは、重傷を負い、高町美由希からの手当てを受けているフェイトの姿だった。 幸い、まだ生きてはいるようだが…このまま放置すれば死にかねない。 「クロノ君!フェイトちゃんが…!急いで医療班をうちに回して!」 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1753.html
第0話 突然の出会い 「天王路、お前をここで俺たちが倒す。」 「フフフ、君たちにこの私に倒せるかな?」 「「変身」」 「・・・変身・・・」 今から一万年前アンデットという存在が現れ、人々を襲い始めた。 そのアンデット達が他の種よりより優れた存在に進化したいという思いで アンデット同士の戦い、バトルファイトが行われた。統制者という者が、 戦闘不能のアンデットはモノリスの力によりカードに封印するという。 その戦いで勝ち残ったのはヒトの始祖たる不死生物・ヒューマンアンデッド が優勝した。だが、ジョーカーによって封印され、ジョーカーは人という 運命と戦うことにそして、現代になりアンデット達が何者かにより大半の アンデットが開放されてしまった。そして、天王路がその首謀者である。 「なぜ、アンデットを開放したんだ。」 「それはだね、私は、万能の力がほしいのだよ」 「そんなことでアンデットを開放したって言うのかよ」 「そうだ。そして、バトルファイトで勝ち残り、新たな世界を作りあげよう」 「なるほど・・・今の世界にいる人間を滅ぼしてまでそんな世界を作りたいのか?」 「当たり前だ、今の人は破滅の道に向かっている。だから、新しい世界をつくるんだよ。」 「許さない。俺はお前を許さない。」「エヴォリューションキング」 「ああ、こいつは今の世界にはいらない存在だ」 「エヴォリューション」 「始、橘さん、睦月、一斉に攻撃を仕掛けるぞ。」 「「ああ」」「わかりました。」 「バレット、ラビット、ファイアー」 「ラッシュ、ブリザード、ポイズン」 「ワイルド」 「?10、J、Q、K、A」 「バーニングショット」 「ブリザードベノム」 「ロイヤルストレートフラッシュ」 「はあああああああ」 そして、ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルは謎の光によって消えた。 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/207.html
プロローグ 『ある事件の結末』 全てはここから始まる。 「……どうして……なんでなの……なんで殺したのッ!うあああああッッ!!」 泣き崩れるなのは。 膝を突き、涙を流し、嗚咽は聞いた者達の胸を無念の痛みで切り裂く。 街を覆いつくした巨大な魔獣は、中枢制御の依り代とされた少女の、あっけない死によって消滅が始まっていた。 初めに消滅したのは魔獣が生み出した数多くの分身体と魔獣が召喚した無数の魔獣達。 そして千を超える攻撃手と続き住宅地の上空一杯に広がった胴体も消えていった。 まるで朝霞のごとく。 分解消滅は急速で、やがてなのはとシンの居る胴体中央部も霧のように掻き消えていった。 先刻までの激戦が嘘のように魔獣は消えた。 そして残るのは……シン・ガクが“殺した”少女の姿が現れる……。 なのはその姿を認めるや、涙を拭わず直ちに少女の元へ駆け寄る。 一塁の望みで応急蘇生行おうとしたが、無理だった。 完全に死んでいた。 シン・ガクの、文字通り命を削った必殺の一撃は全てを撃ち貫く。 依り代となった哀れで幼い少女の心臓のみ、完全に穿いたのだ。 なのはすでに事切れた少女を抱きしめ、あらん限りの声で泣き叫んだ。 初めて人の死。それもまだ幼い少女の死を目の前にし、哀しみ啼いた。 「あああああッ!ああああああああああッッ!!」 少女の亡骸の血で、なのはの純白のバリアジャケットが紅く染まる。 「どうしてなの…………この子は生きてたんだよ……助けられたかもしんないんだよ?……助けを求めてたんだよ!!なのに……なんで、なんで殺したのッッ!!ああああああ……」 近くに来た者に、少女の悲痛の叫びに誰も答えることができない。 なのはも誰に向って叫んだのか判らない。 魔獣と融合を確認し『最終決定』を下した時空管理局本部か? それとも彼女に手を下したシンにか? シンは、無限増殖する魔獣胴体上で、襲い掛かる攻撃手、召喚獣、分裂体全ての攻撃の全てを凄まじき精神力で耐え、少女救出のために危険な直接接触によるスキャンで胴体内の詳細なデータを送信し続けた。 シン・ガクは少女にデバイスを向けた同じ場所に居つづけ、なのはの方に顔を向けず、その叫びを聞いていた。 その表情は、眉を顰め歯を食い縛った、苦痛の顔だった。 普段の彼なら絶対に見せない顔だ。 おそらくどんな深手を負っていても、少女の命が救えていれば「どうということもなく」とにべもなく言い立ち去るだけだったろう。 彼は、己が何をしたのか認識していた。それ故動けずにいたのだ。 如何なる攻撃も負傷も歩める理由としないのが彼の理念であったが、動かなかった。 衛生班が到着するまで傷口から血を流しつつ立ち続けた。すでに足元には血溜まりができていた。 なのはは、やがて泣き止んだと思ったら、呆然とした表情で少女を抱き上げ、うわ言のように言葉を繰り返しながら歩き出した。 「……謝りに行かなくちゃ……。この子のお母さんとお父さんに謝りに行かなくちゃ……」 衛生班と共に来たシャマルがなのはのもとに駆け寄り、彼女を制止する。 「ダメよ、なのはちゃん!落ち着いて!その子を降ろしてあげて!誰か!誰か!鎮静剤を誰か、早く!!」 古代遺物管理部機動一課所属の医療班が手際よく錯乱する少女に鎮静剤を打った後、すみやかに遺体を引き剥がしてボディー・バックに入れ運び出す。 シャマルは不憫に思った。おそらくあの子は検死で徹底的に調べられるだろう。 なのはがそれを聞いたら、きっとまた泣くだろう。 リハビリが終って現場復帰してから一年も経っていないのにこの悲惨な結末……。 ひょっとしたら今度こそなのはは駄目になるのかもしれない。 タンカに乗せられたなのはがヘリに乗せられ設備の整った病院へ行くのをを見送りつつ、シャマルは思った。 だが思い悩んでも仕方がない。 この後の実況見分その他を速やかに行わなければならないことにシャマルは頭を痛めた。 重傷を負わせられた一課第三突入小隊の前衛要因が一課のヘリへ、全く何事もなかったように歩いて行くのを見てシャマルは自分の認識を再確認した。 やはり機動一課は凶犬の集まりなのだと。 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nendoroido/pages/90.html
魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st(海賊版) 参考画像
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3499.html
* 「あと一枚、か」 初老の男は、そう呟いた。 彼を照らすのは広大な部屋全体を浮かび上がらせるほどの大きな半球状の電灯。オレンジがかった光の中で、老人は一枚の画面を注視していた。 映し出された画面からは一陣の光とそれを見送る若い青年の姿が見える。彼はそれを、じっと見つめていた。 彼が動く。コンソールに置かれた手を流れるように滑らせ、画面を切り替える。表示されたのは、六課が戦う光景。スバルが、ティアナが、エリオが、キャロが、シグナムが、ヴィータが……そして、なのはが。 「……ジェイル」 莫大な数のガジェットと強力な戦闘機人に攻め込まれた六課の魔導師は、しかし的確に迎撃を行っていく。端から見ても分かるほど並みの実力ではない。奇襲にも関わらず、一糸の乱れすらなかった。 特に、魔力を無力化するAMFという防壁を持つガジェットの相手に手慣れているかのような手際の良さだった。 その遠方に、全てを睥睨する一人の男がいた。紫の髪と白衣を棚引かせ、不吉な笑みを張り付けた災厄の科学者にして、無限の欲望を持つ男。 緑色のベルトを腰に付けた男は、魔法陣を展開して何処かへと去っていく。 「今回は確かに私の負けだ。だが、アンデッドを暴走させた程度で剣崎君を止められると思うなよ」 初老の男が画面の向こうに映る彼を眺めながら白髪混じりの髪を撫でる。その紫の髪を、引き裂くように、忌々しげに。 彼は射殺すような視線を、ずっとジェイル・スカリエッティに送り続けた。 リリカル×ライダー 第十九話『天馬』 「サンダーレイジ!」 小柄な体のエリオが自身の身の丈を越える槍――ストラーダを地面に突き立てる。 一発のカートリッジが射出されるのと同時に魔力が電撃に変換され、それが雷の洪水となって刺さった地面を伝播し、ガジェットを一掃する。 「おりゃあああぁぁぁぁぁ!」 それに続く形で、エリオの頭上すれすれを通過して伸びる青色の魔力で編まれた道――ウイングロードに乗ったスバルが殴り込みをかける。 マッハキャリバーによって加速されたスバルが、巨大な球状のガジェットⅢ型に拳を構える。ハイスピードで迫るスバルの体が一瞬でガジェットの目の前に滑り込んだ。 「振動拳ッ!」 スバルの目が金色に光り、腕のリボルバーナックルに付いているナックルスピナーが高速回転を開始する。 その回転による運動エネルギーが魔力的に増幅され、拳に集約する……! 「はあああァァァァァ!」 『Protection AMF』 それに対抗するように、ガジェットも上部から排莢を行い、強大な魔力でバリアを張り巡らす。 そして両者が衝突した。 「おああぁぁぁぁぁ! 一撃、必倒!」 魔力を無力化し、更に強固なバリアとしても機能するガジェットの障壁により振動拳の威力は削がれていく。だが、スバルはそれで決して止まりはしない。 強引に伸ばした腕から更に排莢が行われたなことで破壊力が増し、ついにバリアを打ち砕く。 そして球場のボディに突き刺さった拳の振動が一瞬で構造材を脆くさせ、ガジェットⅢ型は呆気なく崩れ落ちていった。 「スバル、次行くわよ!」 「オッケェ!」 そこにスバルを攻撃しようとするガジェットを迎撃していたティアナが合流する。敵の数は、半数程度にまで減らされていた。それでもまだ相当な数が蠢いているのだが。 だからこそ、ティアナはここで手を休めるつもりはなかった。 「エリオはキャロと合流して空をお願い!」 「はい!」 「私達は海上から上陸してくるガジェットをやるわよ」 「よーし。ティア、行くよ!」 その上空を空舞う飛竜フリードリヒが横切る。 無数に群がるガジェットは、しかしその優美な白竜の炎に次々と落とされ、ガジェットの攻撃は逆にフリードを操るキャロの魔法によって全て塞がれる。 三人の少女と一人の少年で編成されたフォワードチームは、確かにストライカーズと呼ぶに相応しい活躍をしていた。 一方で―――― 「キャハハハハ!」 菱形のモノアイに赤いアーマーを纏う女――クアットロが哄笑する。ボウガンという装備から見ても非常に軽装なのに対し、その力は想像を遙かに越えていた。 あのなのはが、血を流す左腕を庇いながら追い詰められる羽目になっていたのだから。 「くっ……」 「自慢の砲撃も、当たらなきゃダメよねぇ?」 なのはが不意打ち気味にアクセルシューターを放つ。桜色の光弾は速射性と追尾能力に定評のある命中率の高い魔法だ。 だが、当たらない。 魔法弾がクアットロの鎧を捉えたときには既にその姿は消えており、いつの間にかなのはの後ろに回り込んでいた。 「シルバー……カーテン、かな」 瞬間的に後ろに張ったプロテクションが、クアットロの魔弾を弾く。 「あらぁ、エースオブエース様に私のISを覚えて頂けるなんて、光栄だわぁ」 クスクスと嗤うクアットロを、なのはが忌々しげに睨み付ける。 ISシルバーカーテン。 クアットロが持つ戦闘機人としての固有技能で、高い幻惑能力を持つ。姿を消す、架空の物体を投影するといった撹乱に最適の技能だ。 本来は後方支援系の技能であり、故にクアットロは前線で戦うタイプではない。しかし新たに手にした力、新世代ライダーシステムがそれを可能にしていた。 『Master,please withdraw!』 「あら、逃げ出しますの? なら"あの子"を血祭りに上げちゃいましょうかねぇ」 安い挑発を嫌らしく甲高い声で発するクアットロ。その血塗られたような装甲が不気味に黒光りする。 普段のなのはなら挑発に乗るなんて考えられない。しかし、今のなのはにとってそれは禁句だった。 「エクセリオォォォン、バスタァァァァァッ!」 突撃槍のような形状のエクシードモードに変形したレイジングハートを振りかざすなのは。愛杖からの制止を聞きもせず強引にコッキングレバーを引いてカートリッジをロードする。 そしてその鋭い切っ先から鋭い砲撃が迸る。 ディバインバスターより鋭い射線は微妙に曲げることができ、クアットロの動きに対応して放つことができる。故に命中率が高く、またカートリッジの使用により威力も高い。 「――あはははっ! 当たりませんわよぉ?」 ……にも関わらず、彼女を捉えられない。 いつの間にか隣に現れたクアットロにレイジングハートを向けようとするが、その前にボウガンを向けられる。そこに、カードがスラッシュされた。 『Excellion Baster』 『Master! ――Protection EX』 ボウガンから紅い鏃のような鋭い砲撃、なのはが今撃った砲撃と同じ魔法が放たれる。そう、なのはの目の前で。 「く――あっ……」 だが寸前でレイジングハートのフォローによって発動した防御魔法がなのはを守った。しかし、衝撃までは殺せない。バリアと共に、なのはが吹き飛ばされる。 落ちていく。エース・オブ・エースの撃墜。コンクリートの床とのキスまで後、数秒。 『Master!』 「なのはぁぁぁぁぁ!」 だが、その寸前で彼女は救われた。一筋の稲妻が、彼女に駆け抜けたことによって。 その光から輝くような金髪と、温かな笑みが浮かび上がる。それは、フェイトの笑顔だった。 ・・・ 「――こんな策しか用意出来んのが悔しいなぁ」 爆炎と騒音から離れてたった一人で佇むはやてが、小さくため息を付いた。 ここは最終防衛ラインと言うべき六課隊舎前。皆がランニングなどを行う前庭にて、はやてはバリアジャケットを纏って宙に浮いていた。 ちなみに、ここにいるのは彼女だけで、他には誰もいない。ただし、独り言を呟いているわけでもなかった。 『本当は、はやてちゃんも行きたかったんですよね~』 「仕方ないやろー、ここを離れる訳にはいかんし」 はやてとユニゾンしているリィンの言葉に苦笑する。そう、はやてだって十年来の友人の元に馳せ参じたかったのだ。 しかし彼女にはそれが出来ない。後方支援タイプであることと部隊長であることが、その理由。そう、彼女の背負ってる責任が、重すぎるからだ。 それでも、彼女なりに出来ることはやったのだ。責めることは出来ないだろう。 「そろそろカズマ君が帰ってくる頃合いやないかなぁ――」 「――くくくっ、そうかぁ。彼はまだ帰ってきていないのか」 そう、それは唐突な出来事だった。 「! スカリエッティ!?」 「残念だな、今から彼と遊べると思ったのだがね」 そう、はやての目の前に立つ男、その名はジェイル・スカリエッティ。 まさに唐突としか思えないタイミングで、一瞬前まで無人だった前庭に白衣と歪なバックルをしたベルトを巻いたスカリエッティは存在していた。 「……どうやって現れたかは知らへんけど、ここは通さへんで」 『ですですーっ!』 はやての足元に白い三角形の魔法陣が出現する。陣が回転を開始すると同時に白い光にはやての体が包まれていき、魔力が高まっていく。 それを見たスカリエッティは、薄く笑みを浮かべたまま、バックルのカバーに手をかけた。 「くっく……変身」 『Open Up』 カバーをスライドさせた瞬間に魔力が彼の体を包み込み、一瞬で全く別の姿へと変化する。 黄金の縁取りが成された緑色の装甲と無機質な複眼。王冠を模したようなマスク。右手に握られる短いスピア。 それが伸長して瞬時に錫杖へと変化する。 「八神はやて、君は私を楽しませられるかな?」 「私かて何時までも対人戦が苦手なわけやないで……!」 『はやてちゃんと私なら貴方くらいケチョンケチョンにしてやるんですからね!』 はやてが凛々しく、リィンが可愛らしく台詞を決める。その様に仮面の下で笑みを深めるスカリエッティを尻目に、二人の内心は焦りがにじみ出ていた。 理由は簡単。忙しすぎるはやてに訓練をする暇など、あるはずがなかったからだ。 「(ど、どないしよう……これで退けんくなったやないか!)」 『(ででででも、これ以上下がるなんて最初から無理です~!)』 そう、ここは最終防衛ラインなのだから。 はやては十字形を模した形状の杖型デバイス、シュベルトクロイツの切っ先を真っ直ぐスカリエッティに向ける。その切っ先は、小刻みに揺らしながら。 スカリエッティが動く。その手にカードを握り、錫杖の石突きにあるスラッシュリーダーへと運びながら。 「仄白き雪の王、銀の翼を以て眼下の者を白銀で穿て。来よ、氷結の一撃――クーゲル・デス・アイゼス!」 『――Blizzard』 詠唱を終えたはやて。シュベルトクロイツの周囲に三つの青白いキューブが浮かび上がる。程無くして魔力を湛えたキューブが回転を始める。 そしてはやてが十字杖を振り下ろす。 キューブは回転を最高潮に高めたまま、まるで巨大な氷の弾丸のように撃ち出される。はやての強大な魔力によるそれはリィンの制御によって、正確にスカリエッティを狙い撃つ。 対するスカリエッティはカードをスラッシュして解放された吹雪のエネルギーを、錫杖をはやてに向けることで放出する。 二つの凍てつく刃が今、激突する――! はやての氷弾は鋭さと質量を持ってスカリエッティのブリザードに立ち向かう。スカリエッティ自身の魔力によって具現化した吹雪だが、一気にはやてのそれに押されていく。 「私と撃ち合いやなんて、良い度胸やっ!」 氷と氷がぶつかり合う甲高い音。 一瞬にして、はやての一撃がスカリエッティの吹雪を吹き飛ばした! ……スカリエッティを見失う代償を払って。 『Absorb Queen』 「――ッ!?」 真後ろから聞こえた電子音に慌てて振り向くはやて。そこには左手に装着したラウズアブゾーバーにカードを持っていく、スカリエッティの姿があった。 スカリエッティが仮面の下でニヤリと笑う。 『Fusion Jack』 そして彼は変身した。 「フォームチェンジ……」 猪の頭に似た巨大な牙を持つ肩の装甲と、黄金の刃を先端に装着した錫杖。そして胸部には黄金の猪のレリーフが刻まれる。レンゲル・ジャックフォーム。 はやては唖然としながらも高度を取る。単純に距離を取るだけではダメだと、そう考えたかのように。 リィンも内心で、固唾を飲んでいた。 そしてスカリエッティが二枚のカードを引き抜いたのを合図に、はやてもまた再び動き出した。 「ブラッディダガー!」 『Screw,Rush――Revolver Rush』 はやての周囲にミッド式魔法陣が展開され、血塗られたような紅い短剣が無数に出現する。それらが杖の一振りで射出され、スカリエッティに狙いを定める。 しかしスカリエッティの発動したカードの魔法により回転力と刺突力を与えられた錫杖が、それらを叩き落とすだけでなく、更にはやてのバリアジャケットにも直撃する。 「――あぐっ!?」 吹き飛ばされたはやての口から血が一滴流れる。直撃した部分のバリアジャケットは捻れるように千切れており、内出血の痣が付いた腹が露出している。 スカリエッティはつまらなそうに錫杖を振り回し、その腹に切っ先を向ける。 「アアアアアァァァァァ!」 それを遮るタイミングで。 空から飛来したカズマが天馬を駆ってスカリエッティに突撃していった。 ・・・ 「良かった……間に合って」 「フェイト、ちゃん……」 目元に涙を浮かべながらフェイトはなのはを抱き締める。それは温もりを分け与えようとする母親のように。 なのはは瞼を僅かに開いて、温もりの在りかを見つめる。その瞳から、一滴の涙が流れた。 「ごめん、ね……。わたし、足――引っ張っちゃった」 「そんなことない!」 顔を背けようとするなのはを強く抱き締めるフェイト。 一方のクアットロは邪魔が入ったことに苛立ちを隠そうともせず、ボウガンの銃口を振り上げる。 それにフェイトも即座に反応した。 「私の楽しみを邪魔しないでくださるぅ!?」 「させない!」 『Defencer』 クアットロが引き金を引くと同時に数十の弾丸が発射される。それらは何の捻りもない魔力弾だが、威力と弾速、そして数があれば意味合いも異なる。 フェイトはなのはを左手で抱え、右手に持ったバルディッシュでディフェンサーによる防御を行う。だが彼女は高速型、防御は決して得意ではない。 ディフェンサーが砕ける一瞬前に、フェイトはソニックムーブを起動して瞬間的にその場を離脱した。 「わたしは、皆の足を引っ張りたくない」 「なのは……」 なのはがフェイトから身を離す。 フェイトが隠れるように降り立った空間シミュレーターの廃ビルの壁を背に、なのはは震えを止めるかのように自らを抱き締めた。 「皆だって守る人を抱えているんだから、わたしの我が儘には付き合わせられない」 「それは違うよ」 辺りに無数の赤い影が現れる。シルバーカーテンは透明になることも、逆に分身を作ることも出来るのだ。 さらに乱立する廃ビル全てを破壊するかのような爆撃が遠雷のように轟き、フェイトとなのはの足下にまで振動を伝達する。クアットロの苛立ちを象徴するように。 「私は、私が守りたいと思うから守るだけだよ。私がなのはとなのはにとって大切な人達を守りたいと思うから守るだけ」 「フェイト、ちゃん……」 射撃音が徐々にフェイトとなのはに迫る。無差別な破壊に見える攻撃だが、実際は的確に二人を追い詰めるように攻撃を繰り返していた。 だが二人は微動だにしない。そもそも、今だけはどちらもそんなことは気にも止めていなかった。 「見損なっちゃ嫌だよ。私となのはは、友達だもの」 フェイトがバリアジャケットの下から何かを取り出す。身を縮こまらせたなのはの元に歩み寄り、その手を開いた。 それは、ピンク色のリボンだった。 「あ……ッ!」 「これをもらって、初めて友達が出来て――嬉しかった。だから私は、頼まれなくても友達を守ろうと誓った。そうしたかったから」 十年も前、二人が敵から友達に変わった日からフェイトが大切にしてきたなのはのリボンは、痛みこそあるものの綺麗な色をしていた。 そしてなのはもまた懐から取り出す。それは、かつてフェイトが付けていた黒いリボン。 「……そうだよね。わたしは、知らず知らずの内に、友達すら信じられなくなってたのかもしれない。ばかだ。わたし、ばかだよ……」 なのはの涙ごとフェイトは抱き止める。間違えることはある、勘違いもある。すれ違うこともある。人間なら、仕方ない。 それでも何度でも、間違えればまたやり直せる。それが、友達なのだから。 「あらぁ、そこにいましたのぉ? 二人纏めて地獄に送ってやりますわッ!」 二人を覆っていたコンクリートが砕け散り、そこから赤色の鎧を纏う悪鬼が姿を表す。 だが、もう怖くはない。 圧倒的な強さを持ったクアットロだが、しかしもはや敵ではなかった。 『Master. Are you ready?』 「ばっちりだよ。さぁ、いこうか、レイジングハート」 『All ready. Drive Ignition.』 なのはとレイジングハートにとって最高のパートナーが、側にいるのだから。 「いくよ、バルディッシュ」 『Yes,Sir.』 管理局のエースオブエースと六課最速の魔導師、二人による演舞が今――始まる。 ・・・ 空に桜色の光痕と金色の稲妻が交差する。蒼い空を錯綜する光の舞は美しく、そして魅力的だ。そこに混じる紅という不純物だけが鬱陶しいと感じるほどに。 それを発する二人の少女もまた、戦いの中にあって尚、美しい。それは同性が見てもそう思うほどに。 その輝きを見つめるはやての目には、少なくともそう写っていた。 「……やっぱ、あの二人は特別なんやなぁ」 「ぐ――が、はっ……」 『はやてちゃーん、遠くを見てる場合じゃないですよ~!』 そんなはやてを背景に、二人の仮面を付けた戦士が対峙していた。ただし片方は錫杖にすがりついて腹を庇いながら、もう一人は悠々とバイクに跨がりながら。 そのバイクには、鋼の翼が生えていた。 「スカリエッティ――ここで決着を付ける!」 「バ、カな……。カズマ、君に、こ……んな、隠し玉、が……」 カズマが跨がるのは愛車のブルースペイダー。 しかしジャックフォームのカズマが乗ったと同時に、カズマの背中で雄々しく羽ばたくオリハルコンウィングに似た魔力で編まれた鋼翼が形成されていた。 ブルースペイダーそのものは特に変化していないが、シートカウルから生えた両翼によって姿形は全くの別物となっている。その姿は神話に登場する―― 「――ペガサス、みたいやな」 ぽつりと、はやての口からそんな言葉が漏れ出る。確かに、今のブルースペイダーを指すのにこれ以上相応しい言葉はない。はやての視線は、釘付けになっていた。 そんなはやてと同じく、ユニゾン中のリィンもまた夢中になっていた。 『確かカズマさんのバイクはブルースペイダーって言うんですよね?』 「ブルースペイダーペガサス。カッコええやん!」 救援の登場で一気に外野と化したはやてとリィンが好き勝手語る一方で、カズマは追撃のために二枚のカードを用意していた。 何とか立ち上がるスカリエッティ――レンゲルを叩き潰すべく。 一方のスカリエッティは、レンゲル・ジャックフォームの固い装甲をも引き裂く刃のような翼にやられた傷を庇い、動けずにいた。 『――THUNDER,MACH』 二枚のカードをバイクのカードリーダーにスラッシュするカズマ。 ガォンとアクセルを捻ることでアトミックブラストエンジンが咆哮を上げる。エンジンの回転数はメーターを振り切るほどに回り、その熱は周りに蜃気楼を起こさせるほど。 覚醒した荒々しき天馬が、無限の欲望を喰い尽くす――! 『――LIGHTNING STORM』 「おあああああァァァァァ!」 二つのカードによるコンボ技。それによるアンデッドの力がブルースペイダーペガサスに宿る。 稲妻をカウルに帯びさせ、ブルースペイダーペガサスが舞い上がる。そして疾風の如き加速を持って、天馬は悪を叩かんと突撃していった。 ・・・ 新たな力を得たカズマと六課の活躍によってスカリエッティの攻撃は失敗に終わった。 はやてはガジェットの航跡からスカリエッティの隠れ家を探し出し、反攻作戦を画策する。その一方で、王は自らの役割を自覚し始めていた――。 次回『反撃』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/244.html
ジャングルはいつもハレのちグゥ リリカル 6課編 クロス元:ジャングルはいつもハレのちグゥ 第一話 第二話 第三話 第四話 TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/114.html
BATTLE OF ACES 設定解説