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Date 2006/06/15(Thu) Author SS1-169 第二章 備える者たち Happy_Happy_Greeting 土御門舞夏の朝は早い。 主人より遅く起きるメイドなど論外だからだ。今日も“義兄のベッド”で目を覚ました舞夏は、家政学校で躾けられた習慣通りに身支度を開始する。 寝起きの顔に冷水を浴びせてハリを戻し、歯をみがく。鏡の前で表情作りの練習をするのも忘れない。シンプルなように見えて踏むべき手順の多いモノトーンの制服を数分かけて身につけ、最後に短い黒髪の上にヘッドドレスをちょこんと乗せればどこに出しても恥ずかしくないメイドさんの出来上がり。 「……でも兄貴いないしなー。見てくれる人がいないと張り合いがないー」 舞夏は愚痴るようにつぶやいて、仕方なしに一人分の朝食の支度を始めた。 この部屋——“男子寮”の一室——の本来の住人、土御門元春は昨日から帰ってきていない。義兄(あにき)がふらりといなくなるのはよくあることなので心配はしていないが、とまれその間、主不在の部屋を管理するのは義妹(まいか)の役目になる。 まあ、昨日に限って言えば、この部屋に泊まったことには別の理由もあったのだけど。 (静かなもんだったなー。電気が消えるまではぎゃあぎゃあかしましかったけどー) 寝不足のため何度もあくびをかみ殺しながらも、料理する手つきに狂いはない。考え事をする余裕さえある。 フライパンに卵を落としながら考えるのは、隣の部屋のこと。 昨日舞夏が目撃した金髪の少女は、結局上条当麻の部屋から出てこなかった。ここで夜遅くまで見張っていたのだから間違いない。 ということは、昨晩はうら若い三人の男女が一つ屋根の下で過ごしたことになるわけで。 ならば普通に考えて——————————まあそういう状況を期待してしまったことに罪はなかろう。 しかし、録音の用意までして待ち受けていたにも関わらず、“そういったこと”はどうやら何もなかったようなのである。 (……連れ込んでおいてそれかー。まったく、おかけでこっちはすっかり寝不足だというのにー) 気を抜いている間に目玉焼きの底が少し焦げた。 遠目に見ただけだが、あの金髪少女はかなりの美人と思えた。先住居候の銀髪シスターも、性格と食欲と行動論理を抜きにすれば美少女と評しても支障はない。そんな二人の女の子と同室で眠って「何もなし」というのは、男性としてどうなのかと思う。 「むむむ。もしかして上条当麻って“あっち側”の人間なのかなー。源蔵さんに報告すべきかー」 目玉焼きを盛り付けながら、まんざら冗談でもなくそんなことをつぶやく。ちなみに源蔵さんとは常盤台中学学生寮の料理長で、舞夏とは顔なじみだ。 いただきます、と言おうとしたときに、ふと卓上のデジタル時計が目に留まった。義兄の趣味か黒い亀の形をしたその時計は、時刻の他に日付も表示していた。 「おー」 今さら実感する。 一端覧祭まで、あと一週間だった。 古人曰く——祭りとはその準備段階こそが最も楽しい時間であると。 いやいやそんなはずはない本番が一番楽しいだろ、でも騒がしさなら確かに負けてねーな、というのが最近の上条当麻の考えだった。 今日も耳を澄ませばいろんな音が聞こえてくる。 あちらからは釘を打つ音と失敗の悲鳴が。「痛ってー指打ったー!」 こちらからは木を組む音と失敗の悲鳴が。「てめーそっち押さえてろって言っただろーがー!」 そちらからは道を歩く音と失敗の悲鳴が。「誰よこんなとこに立て看置いたのー!」 「…………ドジっ子多すぎ」 しかし待て。これにはやんごとなき事情があったりするのだ。 上条の通うこの高校は、もともと会場指定校ではなかった。当初この区域の会場校だった学校に耐震強度偽装問題が発覚し、理事会から急遽代行を命じられたのである。 あの『学舎の園』も招待校に含まれるこの区域(『学舎の園』自体は一般公開されないのが基本なので会場校にはならない)の代表という大役を代役しなければならなくなったというのは、全校生徒、並びに教員一同にとってまさしく寝耳に水の衝撃だった。 不安もあったが、ここでいい所を周囲に示せれば第七学区での、いや学園都市全体での地位向上も夢ではない。例えるなら明日のスターを決めるオーディションに飛び入り参加が決まったようなものだ。お祭り気質の強いこの学校のテンションはうなぎ登りに上がっていった。 ——だがしかし。これまで招待参加でのん気にやってきた学校に会場校としてのノウハウがあるわけもなく、あちらこちらそちらで不具合が生じてしまっているのが現状だった。 係分けすらままならず、大半の生徒が「雑用係」という適当な役目を与えられ、昨日買出しに行かされたかと思えば今日はこうして看板のペンキ塗りをしていたりする。しかも一人で。 ろくにスケジュール表も作らず、目に留まったことを上から順にやっている感があるため、放課後の校内はひたすら空回り気味だった。 上条はペタペタペターッと刷毛(はけ)を滑らせてゆく。中庭の壁に大きな木の板を立てかけて、気分だけは画家を気取り。その足元には昨日吹寄と買いに行ったペンキの缶がいくつも転がっていた。 教室内では出来ない作業をするために、中庭にはいくつかのグループがやってきていて、上条もそのうちの一人だった——まさしく。 孤独に刷毛を振るいながら、ため息がもれる。 「はあ……こんなことなら演劇班に入ればよかったかなー」 今の学校内で、唯一まともに役割分担がなされているグループ——それが演劇班だ。役者だけでなく音響、照明なども含まれる(大小道具は演劇以外にも入用なので例外)。 自分が何やってるのかわからないほどあちこち走らされるよりは、理路整然とした活動ができる方が身が入るってものだろう。 と、その時。 「ふむふむ。それなら都合がいいのですよ」 不意に上がった声に振り返ると、そこにはビッ、とチョップみたいな挨拶をしているクラスメイトの図書委員(女子)がいた。 「やっほー。調子はどう? かみやんくん」 左右の横髪だけが長く伸びた外跳ね気味のショートボブ。実用と言うよりはアクセサリーみたいな小さな眼鏡を鼻の頭に乗っけていて、ずり落ちやしないかと気になって仕方がない。右手はビラビラと綿毛みたいにテープ付箋が貼られた紙束を持っていた。 言祝栞(ことほぎ しおり)。 通り名はアウトドア系文学少女。また、現在“とある事情”でクラス内どころが高校内での最高権力を手にしている人物でもある。 上条はペンキを塗る作業を止め、刷毛を持った手で同じようにチョップを返し、 「まあまあだな。しかし、言祝“監督”じきじきの視察とは緊張するな。ま、見ての通りのものでしかないぞ」 反対の手で期待の新鋭上条画伯渾身の作品を指し示す。 言祝はその木の板をちらと見て一言。 「絵心ないね」 「………………そう言うアンタは容赦がないな」 「あはは。気にした? ごめんごめん冗談だって。でもま、そのくらいでなきゃあの演劇班(れんちゅう)の監督なんて務まらないけどねー」 演出の巧みさ、指導の正確さ、ついでに人使いの荒さにも定評のある我らが言祝監督はけらけらと上機嫌に笑った。 彼女が演劇監督に指名されたとき、誰もが「やっぱり……」と思ったほどなのだからただ者ではない。なにせその平坦な胸に朱色で三重丸を描き、白羽の矢を受けるというか射られる前に食らいつこうとしていたくらいなのだ。 元より言祝は校内でも有名な「図書委員」だった。彼女が当番の日に図書室に行くと、例外なく「オススメ」をされる。しかもその強烈さときたら受けた者が口を揃えて「あれはもはや『布教』だ」と証言するほどである。図書委員の権限を傘に着た趣味の押しつけ行為——と思いきや、実はちゃんと人を見て薦める本を選んでいるので、こっそり好評であったりもするのだが。 上条はパレット代わりに使っていたダンボールの切れ端に刷毛を置き、 「そういや、都合がいいとか言ってたけど。またどっか人手の足りない所でもできたのか?」 雑用係が東奔西走する理由の大半はそれだ。例えば砂場に穴が見つかったとして、それを埋めるために他から砂を集めるのだが、そのせいで今度は別の場所に穴ができる。その繰り返しだった。吹寄などの実行委員も頑張ってはいるようだが、砂場がまっ平らにならされるにはまだ大分かかりそうである。 しかし、言祝の反応は単なる人手不足にしてはちょっと深刻そうだった。 「……実はねー。演劇班から抜けるって人が何人かいて、このままだと練習も立ち行かなくなりそうなのですよ。それで、雑用係から移ってくれる人いないかなーってうろついてたら、ちょうどかみやんくんがぼやいてたから」 ね? と言祝は両手の平を合わせて「お願い」のポーズをとった。 つまりは演劇班への勧誘だ。それも監督が自ら足を運んでの。 うーむ、と上条は考え込む。 今から仕事を覚えるのは大変そうだが、あれやこれやと要領悪く使われるよりはマシかもしれない。中庭で代わりを探していたのなら、おそらく力仕事の類だろう。何よりこの学校の一番の見せ所である演劇「シンデレラ」が立ち行かなくなりそうだというのなら、断るわけにはいかない。 結局、お人よしな上条当麻は引き受けることに決めた。 「オッケー。で、どこに入ればいいんだ? つか、この時期に抜けるなんて迷惑な話だよな」 言祝は困ったように頬をかき、 「部活の出し物との掛け持ちがやっぱりしんどいってことで……もともと無理言って来てもらってたから、責めるわけにもいかないのですよ」 一端覧祭で出し物をするのは学校別でだけではない。吹奏楽部や美術部などの文型クラブにも発表のために相応のスペースと時間が与えられる。大抵は各学校の同じクラブとの合同という形になるが。例外的に、今年は文芸部と陸上部と弓道部が協同で企画をするらしい。 みんなそれぞれ頑張ってるんだなー、と帰宅部所属の上条はしみじみ思った。 言祝は一歩近づいてきて、 「というわけで。はいこれ」 手に持っていた紙束を差し出してきた。 コピー用紙をホチキスで留めた冊子で、表紙には「シンデレラ 役者用台本」と印字(プリント)されている。 上条は目を丸くする。じわじわと嫌な予感を背筋に覚えながら、 「へ? いや、これ言祝のじゃねーの? つか裏方なら役者用の台本じゃ駄目だろ」 すると言祝は、ありゃりゃ、とでも言うように表情を変えて、 「裏方なんて一言も言ってないんだけど」 「役者だとも一言も聞いとらんかったわ!」 「だって言ったら断られたと思うし」 「は!?」 「演劇部から来てくれてた役者さん達が、他校との合同公演に専念したいって言うからさ。だったらついでに前々から考えてたスペシャルキャストを採用してみようかと思い立った次第であります」 「てことはたまたま俺がぼやいてたからってのは嘘か!? 始めから騙してでも役者にするつもりでここに来たんだな!? てか演劇部の連中が抜けたのってこの腹黒文学少女(アーティスト)の野望に邪魔だったからじゃねーだろうなぁ!?」 身を震わせてわめく上条を眺めて、言祝は小首をかしげた。 「はて。なにが不満なのやら。かみやんくんには最高の役を用意しているのですよ?」 えー、と上条は全く信用していない。それに、この監督の下ではたとえ王子様役であったとしても惹かれはしないだろう。 言祝は受け取ってもらえなかった台本をペラペラと開き、 「ほらこれ」 と、ある文字を指差し示した。 ——それは確かに最高の役。 知らない者などいない伝説的キャラクター。 文句なしの、主役(プリマ)だった。 『シンデレラ』 たぶん、世界が十秒は止まったと思う。 「っっっっっっっっっっっっっっけんなぁ!? こんっなヤな汗かいたのは夏の海以来だ! ツンツンブラックヘアーでXY染色体持ち(じゅんせいだんし)のシンデレラ姫がどこの世界にいるっつーんだ!?」 「二次創作の世界ならいるんじゃないかなぁ」 「どこだよ!? 違う! そこ重要違う! 俺が言いたいのは、なんだって俺がシンデレラをやらなくちゃなんねーのかってことだ!!」 「あ、せーちゃんは王子様役だから」 吹寄制理→吹寄「制」理→「せい」→「せーちゃん」 (※注 ここ試験に出ます) 「吹寄も巻き込んだのかよ! ならあいつにシンデレラやってもらえばいいじゃん! 少なくとも俺よかは似合うって! 全国の玉の輿(シンデレラドリーム)を夢見る少女たちのためにどうかー!」 「うーん。でもさ、タキシードも似合うと思わない? あとレイピアとか」 「……………………………………い、いかん。ここで納得したら負ける、負けるというのに……!」 はっきり言って、タキシードを着てどっちが様になっているかと問うならば、答えは自明だ。女性に対して失礼だとは思うが、似合うのだから仕方ない。 しゃがみこんでしまった上条の肩に手を置き、言祝栞監督はまるで(もなにも)最後通牒のように優しく、 告げた。 「——ガンバレッ! お姫様(プリンセス)!」 「イ…………イヤダァァァァァァッ!!」 上条当麻は一方通行(アクセラレータ)や追跡封じ(ルートディスターブ)と戦った時にも決して上げなかった——本心からの悲鳴を上げた。 無理だ。いくら神様の奇蹟さえ打ち消せる幻想殺し(イマジンブレイカー)でも、他人の頭の中にある空想(わるのり)だけは殺せない。 何を以てここまでこだわっているのかは不明だが、言祝は完璧に上条シンデレラを舞台に立たせることに決めているようだ。そしてぶっちゃけた話、今の言祝に逆らえる人物などこの学校にいない。権力以前に論破することが不可能なのだ。一度こうと決めた芸術家の意思は鉄より硬く星より重い。 なら諦めるのか。諦めて、豪奢なドレスを着て余所の学校からも大勢の観客が集まる舞台でシンデレラ姫の役をやるのか。 (……………………………………………………うわぁ) 想像力なんて嫌いだ。一瞬でも思い浮かべてしまったことを吐くほど後悔する。ビジュアルだけでも十分死ねるが、その後の未来予想はまさに世界の終わり(カタストロフ)。校内では後ろ指を指され、校外ではまだ乙女の心を残していそうな超電磁砲(レールガン)とか空間移動(テレポート)とかに絵にもできないような目に合わされる…… 駄目だ。三日ももたない。 (だったらどうする、だったらどうする上条当麻! 逃げるのは駄目だ、この場でなんとかしないと勝手に話を進められてやがては学校全体が敵になる。くそっ、文学少女のこだわりがこれほどまでに強敵だったとは! あえて言おう! 不幸だー!) のたうつ上条を一言で表現するのなら、「崖っぷち」以外にありえない。後は堕ちるのを待つばかり、と言祝は余裕の表情だ。この状況をひっくり返すのは、もはや上条一人の力では不可能だった。 誰か、誰か救いの神はいらっしゃらないのかー! とよりにもよって右手を伸ばした上条だが、 珍しいことに今回ばかりは、幸運の天使が舞い降りたようだった。 カツン、という足音。 首を上げて見ると、校庭に通じる道から誰かが中庭に入ってきたらしい。目を凝らせば、どうやら余所の学校の女生徒らしかった。 小さくレースが入った白いブラウスに、真っ赤なスカーフが映えている。膝丈のスカートも同じ赤だった。両手で持っている手提げ鞄はあまり可愛げのないデザインだから、学校指定のものかもしれない。 (…………………………え?) 上条の頭が疑問符で埋め尽くされる。 別に、他校の生徒が校内にいることが不思議だったのではない。会場の下見目的で訪れている学生を何度か見かけたこともある。だから“彼女”も、“上条を確認して近づいてくる彼女も最初はそうだと思っていたのだけど”————! 「……問一。トーマ、地面に這いつくばっているのは修行か何かか?」 断じて違う、と答える声も出ない。 ゆるく波打つ金髪(ブロンド)。ヘアピンで上げられた前髪の下から白いおでこが覗いている。ここまで近づいてようやく気づいたが、手提げの中身はやはり大工道具。 その名もサーシャ・クロイツェフ。 上条さん家の赤シスター。 上条は精神的なダメージから起き上がることのできないまま、 「あのー、サーシャ? なぜにウチの学校へいらっしゃるので? 確か家でインデックスと『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』探しの計画を立てていたはずでは?」 「回答一。そのインデックスから言伝を承ってきた。——今日の夕飯はオムライスがいいと」 それだけかーい! と叫ぶ勢いで立ち上がる。 と、そして気づいた。ある場所からある場所へ、ものすごい視線が送られていることに。 送信元、受信元共に上条ではない。しかしその二点を結ぶ線上に彼は立っていたのだ。熱量を伴っている気さえする視線を背筋に浴びながら、ゆっくりゆっくりとジャングルで猛獣に遭遇したときのように慎重に体をずらしていく。 そして、遮る物はなくなった。 「……………………………………、」 言祝栞からサーシャ・クロイツェフへ。 注がれる視線は熱く、それでいて静かで、ありえないほど運命的だった。 やがて震える唇がやっとの思いで言葉を紡ぐ。 「……………………採用」 「……問二。何のことだかさっぱり不明なのだが」 困ったように首をひねるサーシャに、しかし上条は返す言葉もなく、果たしてこれは本当に幸運だったのだろうかと真剣に悩み始めていた。
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祭りから戻ったザフィーラは、居間でのんびりとくつろいでいた。 なのはたちは、なのはの実家の喫茶店『翠屋』を貸し切ってパーティーをやっている。なのはの家族だけでなく、学生時代の友人のアリサやすずかも来て旧交を温めているはずなので、さぞ賑やかなことだろう。 こんなに心安らぐ時は久しぶりだった。この家には晴明や十二神将たちがいる。守りだけでいえば、六課本部など比べ物にならない。 心強い仲間が大勢いるせいか、はやてたちもいつもより気が抜けているようだ。残ったライトニング分隊には悪いが、この機会に主たちには羽を伸ばして欲しい。 「お、ザフィーラ、こんなところにいたのか」 酒瓶を抱えたもっくんがやってくる。 「晴明から酒をもらってな。よかったら一緒に飲むか?」 「いや、せっかくだが遠慮しておこう」 襲撃される危険があるので、さすがにそこまで羽目は外せない。その点、十二神将は普通の酒ならまず酔わない。 「そうか。だが、一人で飲むのもなんだし、茶でいいから付き合え」 「心得た」 ザフィーラの前に皿が置かれ、ペットボトルから茶がなみなみと注がれる。 もっくんは長い爪を器用に使って、おちょこで酒を飲んでいる。 「せっかく付き合ってもらってるんだ。日頃の憂さはないか? この機会に晴らすといい」 今、この家にいる六課メンバーはザフィーラを除けば、スバルとティアナだけだ。その二人も自室に戻っているので、話を聞かれる心配はない。 「憂さではないのだが……」 ザフィーラが重い口を開いた。 「最近、どんどん扱いがぞんざいになっている気がするのだ」 「それは犬扱いが嫌ということか?」 「いや。守護獣だから、それはいい。もっとなんというか……」 「あー。マスコットのような扱いになっているということか?」 「そうだ」 もっくんにも経験がある。昌浩の扱いがどんどんおざなりになり、危うく十二神将ではなく、ただの防寒用えりまきになりかけたことがある。 「それなら、答えは簡単だ。たまに人間形態になるといい。それだけでグンと待遇が良くなる」 相手が人間と同等の存在だと認識させればいいのだ。 「…………」 しかし、ザフィーラは渋い顔をしている。 「どうした?」 「いや、前から思っていたのだが……昌浩もエリオも、よくあの環境に耐えられるな」 六課フォワード部隊の男女比率は男一人に対して女七人だ。はやてやリインが参加すれば、さらに差は開く。ロングアーチやバックヤードスタッフには男性もいるが、やはりフォワード部隊で一緒にいることが多い。 「ザフィーラよ。もしやお前が人間形態にならないのは、男の姿だと居づらいからか?」 「…………」 沈黙が肯定だと告げている。 「ならば、言っておく。昌浩とて、かなり苦労したんだぞ」 小学生の頃、はやてやなのはたちと一緒にいるところを級友に見られ、冷やかされること星の数、喧嘩になること数十回。 昌浩がヴィータと特に仲良くなったのは、幼い容姿のヴィータならば近所の子供の面倒を見ていると言いわけできたせいもある。 ちなみに昌浩をからかった連中を、怒ったヴィータが叩きのめしたことがある。おかげでヴィータは、昌浩のクラスメイトから紅の鉄騎ならぬ、紅の悪鬼の二つ名で恐れられている。 「今、昌浩が平気でいられるのも平常心を保つ修行の賜物だ。後は慣れと諦めだな」 もっくんが目元を覆って涙をこらえる。 そこに勾陣がやってきた。一足早くパーティーから帰ってきたシグナムも後ろにいる。 「酒盛りか?」 「勾か。お前も一緒にやるか?」 「ああ。シグナムはどうする?」 「私も茶でよければ付き合おう」 四人で机を囲む。もっくんは机の上に座っているが、ザフィーラは人間形態になって湯飲みに持ち替えている。慣れるために努力することにしたらしい。 「お前のその姿も久しぶりだな」 シグナムがからかうように告げる。どうやらザフィーラが人間形態を取らない理由を薄々察していたらしい。 「しかし、こうしていると、あの日々を思い出すな」 「私たちには数年前でも、騰蛇たちにとっては千年以上も昔なのだな」 大妖怪窮奇との死闘。先代の昌浩や晴明との出会い、別れ。 ふとシグナムの表情に影が落ちる。 「お前たちは……どうやって」 「シグナム」 ザフィーラが制止する。 それだけでシグナムが何を言おうとしたか、場の全員が理解する。 シグナムたち守護騎士と十二神将はよく似ている。しかし、違うのは、心から慕う主との別れを経験したことがあるかどうかだ。 これまでの闇の書の主は、守護騎士を道具としか扱わなかった。もしかしたら、優しい人もいたのかもしれないが、システムの欠陥で覚えていない。 刻一刻と成長していくはやてと、変化しない守護騎士の差を見せつけられるたび、シグナムは時々怖くなる。はやての死と共に自分たちも消滅できればいいが、もし万が一、生き延びてしまったら、自分たちははやての喪失に耐えられるだろうか。 十二神将たちは一体どんな心境で、先代の晴明や昌浩を看取ったのか。主との別れをどれだけ経験したのか。 それでも以前と変わらずにいられる十二神将を、シグナムは心から尊敬している。 もっくんが酒を一息に煽りながら言った。 「たいした助言はできんが、ただ受け入れるしかない。こういうことは各自で乗り越えていくしかないんだ」 「そうだな」 もっくんと勾陣が寂しげに眼を閉じる。その胸中にどんな思いが渦巻いているか、シグナムには計り知れない。 「すまない。盛り下げてしまったな」 「気にするな。どうせ、この面子(めんつ)で、そこまで盛り上がるわけないし」 「酒を飲んでいるのか」 そこに十歳くらいの黒髪の少年、玄武が現れた。 「我もいただいていいか?」 「お前は駄目だ」 「何故だ? 騰蛇よ、我も十二神将だぞ」 「見た目を考えろ!」 言い合いを始めるもっくんと玄武に、シグナムは思わず笑みをこぼす。ザフィーラも珍しく肩を震わせていた。 賑やかではなくとも、心温まる時間が過ぎて行った。 スカリエッティの研究所では、陰陽師と十二神将のデータの解析が急ピッチで進められていた。 スカリエッティは陶酔したようにキーボードを叩き続ける。 「素晴らしい。陰陽師の性能も素晴らしいが、特にこの男」 画面に紅蓮の姿が映し出される。 「人間の根源的恐怖を呼び覚ます魔力。まさか私の作ったナンバーズが恐怖を感じるなど、ふふ、まったく想定していなかった」 脇に控えていたトーレが悔しげに歯がみする。 『ですが、これでは今後の作戦行動に支障が出ます』 「わかっているよ、ウーノ。だが、十二神将、人間の想念の具現化。これは私もまだ研究したことのない分野だ。どれだけの可能性を秘めているのか、ああ、考えるだけでわくわくする」 ナンバーズ十二機も全て稼働状態に入った。準備は着々と進行している。 『もう一つ問題があります。聖王の器はどうされるのですか?』 ウーノがヴィヴィオの姿をディスプレイに移す。 安倍邸の守りは強固だ。強力な結界に守られ、昌浩と晴明、十二神将の他に六課メンバーまで滞在している。ヴィヴィオの護衛には最低でも数名の十二神将が付き、確保に手間取れば、すぐに増援が駆けつけるだろう。 フォワード部隊が出撃すれば手薄になる六課の本部とは大違いだ。 ガジェットとナンバーズすべてをぶつけても突破できるかどうか。 「そちらは地道に隙を窺うしかないな。あるいは思いがけない抜け道が見つかるかもしれないがね」 スカリエッティは不敵に笑った。 自室で、昌浩は陰陽師の勉強をしていた。時刻は夜の十二時。なのはたちもとっくに帰宅している。 窓から星を見ながら、本を読み進める。陰陽師たるもの、占いができなければ話にならない。寝る前に占いの練習をするのが昌浩の日課だった。 「えーと……あれ?」 昌浩は本と占いの道具を見比べ困惑する。 「未来が……読めない?」 「おいおい、星読みは陰陽師の基本だぞ。しっかりしてくれよ、晴明の孫」 「孫言うな!」 からかうもっくんに怒鳴り返しながら、昌浩は首を傾げる。 「おかしいな。昨日までは占えたのに」 「わからないなら、晴明に聞いた方がいいんじゃないか?」 「……いい。もう少し自力で頑張ってみる」 昌浩は唸りながら、本を読みなおす。しかし、その日、占いが結果を示すことはなかった。 同じ頃、晴明も自室で占いの道具を前に唸っていた。 「どうしました、晴明様?」 銀色の長い髪をした優しい風貌の女性、十二神将天后(てんこう)が顕現する。 「未来が読めん。どうやら大きく運命が動いているらしい」 不吉な前兆でなければいいのだが。せめて手がかりでもつかめないかと、再び占いの道具に手を置く。 「すいません。少しいいですか?」 その時、扉の向こうから、ためらいがちな声がした。 「入りなさい」 天后が扉を開けると、思い詰めた表情をした、なのはが立っていた。勧められるまま、晴明の前に座る。 「そろそろ来るころだと思っていました。ヴィヴィオ殿の件ですな」 「お見通しなんですね」 「だてに年は取っておりませんよ」 晴明は好々爺然とした笑みを浮かべる。 「なら、話は早いです。ヴィヴィオを引き取っていただけませんか?」 なのはは単刀直入に言った。 ヴィヴィオを今回の任務に同行させたのは、安倍邸が理想的な受け入れ先だと思ったからだ。フェイトもそれには同意している。 晴明も昌浩もその両親も、ヴィヴィオに優しくしてくれるし、十二神将とも相性がいいようだ。ちょくちょく太陰と喧嘩しているが、それも友達だからこそだ。 安全面、経済面ではこれ以上望むべくもないし、もしヴィヴィオが魔法に興味を持っても、ここなら教えてもらえる。 ここしばらくの滞在で、これ以上の受け入れ先は望むべくもないと確信できた。 「私もフェイトちゃんもできる限りの協力はします。だから、よろしくお願いします」 なのはは深々と頭を下げた。 晴明は無言で扇を閉じたり開いたりしていた。 やがて、 「本当にそれでいいのですかな?」 「考えるまでもないです。私のような人間が預かるより、ずっと幸せになれます」 なのはは即答する。 なのはの仕事は常に危険と隣り合わせだ。いつ死んでもおかしくないし、仕事によっては、いつ帰れるかもわからない。安倍家ならば、優しい誰かが常に見守っていてくれる。 なのはが顔を上げると、晴明と視線が合う。まるで心の奥底まで見通すような深いまなざしだった。 「急いで結論を出す必要はありますまい。ゆっくり考えるといい。もし、ミッドチルダに帰る時までに考えが変わらないようでしたら、その時は、我が家で責任持って預かりましょう」 「ありがとうございます」 これで心のつかえがとれた。なのはは晴れ晴れとした顔で、晴明の部屋を後にした。 目次へ 次へ
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海に面した高台に、六課メンバーと昌浩、晴明、十二神将が勢ぞろいしていた。アギトもついでに一緒にいる。 「これだけ揃うと、さすがに壮観やな」 メンバーを確認し、はやては感嘆する。 「どうやら、吹っ切れたようですな」 若晴明がはやての隣に並ぶ。 「建前、虚勢、体面。それらは組織を生きてく上で、必要なものです。ですが、それらがいらない相手を見抜く目も、同じくらい必要ですぞ。その人たちを頼ることも」 「はい。勉強になりました」 「おい、お前ら、本当にルールーを助けられるんだろうな」 アギトが口を挟んだ。 戦力差はアギトもおぼろげに理解している。助けるなど無駄な手間を省いて、殺してしまうのではないかと危惧しているのだ。 「安心してええよ。時空管理局は……六課はそんな薄情な組織やあらへん」 時空管理局の薄情さを、重々承知しているはやては言い直した。騎士甲冑をまとい、リインとユニゾンし、戦闘準備は整っている。 ティアナの原案を元に、六課隊長たちと晴明が作戦を立てた。絶望的な状況には変わりないが、光明は見えてきた。 「昌浩君。エリオ。キャロ。任せたよ」 「はい。ルーちゃんは必ず助けます」 強力な召喚魔導師ルーテシアの無力化は作戦の第一段階だ。 その時、海を割って、無数のガジェットを従えた聖王の揺りかごが姿を現した。 「では、まずは私からですな」 晴明が結跏趺坐(けっかふざ)の姿勢を取る。 「この安倍晴明の最大の術をお見せしよう」 晴明を中心に魔力が迸る。 わずかな違和感と共に、虫や鳥の声が途絶える。聖王の揺りかごと敵勢力をまるごと異界に引きずり込んだのだ。 「これで気兼ねする必要はない。全力で戦ってきなさい」 「晴明とヴィヴィオはわしに任せよ。指一本触れさせん」 目を閉じ白い見事なひげを蓄えた老人が、晴明に寄りそう。十二神将、天空。十二神将の長にして、最強の結界能力を誇っている。 「……よろしくお願いします」 天空の威厳に、全員が気圧されていた。 「状況把握の準備も完了。後方の作戦指揮は任せて」 シャマルが無数の画面を空中に表示する。 「前線の指揮は私が取る。それでは機動六課、ええと、それから……」 はやては口ごもる。今回のメンバーを何と呼べばいいのか。 「八神部隊長。我々一同の入隊を許可していただきたいのですが」 昌浩が敬礼を取る。真面目な顔でふざけている。はやては最後の緊張が取れるのを感じながら、昌浩に返礼する。 「許可します。それでは機動六課全員出動!」 はやての号令の元、六課は先発隊のガジェットの集団へと飛び込んで行った。 キャロが召喚した巨大な白銀の龍、フリードリヒが戦場を飛翔する。その背には、キャロと昌浩、もっくんが乗っている。 「サンダーレイジ!」 近寄るガジェットを巨大な槍型デバイス、ストラーダを駆るエリオが撃墜していく。 他の戦場でも、空では六課隊長たちと飛行能力を持つ太陰と白虎が、地上では他の十二神将とスバルたちが戦っている。 ルーテシアの魔力は膨大だ。居場所はすぐに判明した。昌浩たちはまっすぐそちらに向かう。 「昌浩さん。大丈夫ですか?」 ルーテシアの洗脳を解く方法は、説明する時間がなかったので、昌浩に一任されている。 「うん。大丈夫」 言葉とは裏腹に、昌浩は視線を泳がせる。策はあるのだが、その術は得意でも好きでもないのだ。 「おい、ルールーに傷をつけたら、承知しないぞ」 どこに隠れていたのか、アギトが現れ昌浩の髪を引っ張る。 「ええい、騒ぐな。この将来多分きっとおそらく最高の陰陽師になる半人前を信じろ」 「信じられるかー!」 もっくんとアギトがつかみ合いの喧嘩を始める。 「二人とも、そんな場合じゃ」 キャロがおろおろしながら仲裁する。 「見えました!」 エリオの言葉に前方を見る。 ガジェットⅡ型に乗った、紫色の髪をした少女。後ろには巨大なカブトムシのような召喚獣、地雷王を従えている。 「ルールー、目を覚ませ!」 アギトの呼びかけにも、ルーテシアは反応しない。 その時、黒い影が上空からエリオを襲った。 忍者のような姿をした四つ目の黒い召喚獣、ガリューだ。 「エリオ君!」 「こっちは僕に任せて。キャロたちはそっちをお願い」 エリオとガリューが空中で交差する。両者の実力はほぼ互角。すぐにやられる心配はない。 「キャロちゃん。ルーテシアになるべく接近。お願い」 「わかりました」 キャロが手綱を振るうと、フリードが速度を上げる。ルーテシアに近づくにつれ、ガジェットの攻撃が激しさを増す。 「おい、お前も協力しろ!」 「しょうがねぇ!」 もっくんとアギトが同時に炎を放ち、ガジェットを迎撃する。しかし、いくつかの炎がガジェットを素通りする。 「幻覚か!」 もっくんが舌打ちする。 クアットロのISシルバーカーテンは虚像を映し出す。話には聞いていたが、本物と区別がつかない。幻覚も本物も等しく攻撃するしかないので、こちらの消耗を強いる厄介な能力だった。 フリードの前に、召喚虫インゼクトに操られたガジェットⅢ型がまるで壁のように立ち塞がる。 「ブラストレイ!」 「オンアビラウンキャンシャラクタン!」 フリードの炎が、昌浩の術が、正面のガジェットを粉砕する。 ルーテシアの姿がどんどん近づく。 「今だ!」 昌浩がフリードの背を蹴って跳ぶ。魔力を右手に集中させ、ルーテシアの胸に叩きつける。 「縛魂(ばくこん)!」 「きゃあああああああ!」 「ルールー!」 ガジェットの背中から落ちる昌浩とルーテシアを、フリードがどうにか空中で受け止める。 「昌浩さん。跳ぶなら跳ぶって一言言って下さい!」 「ごめん。そこまで気が回らなかった」 キャロの文句に、昌浩は謝る。 「おい、ルールー、しっかりしろ!」 アギトが揺さぶると、ルーテシアがうっすらと目を開ける。 「アギ……ト?」 「正気に戻ったんだな」 アギトはルーテシアの頭に抱きついた。 「よかった。上手く言った」 昌浩はほっと息をつく。 昌浩が使ったのは、縛魂の術。人の魂を縛り、意のままに操る忌むべき術だ。しかし、使い方次第で、他人の洗脳を相殺したり、心の傷を癒したりすることもできる。 昌浩はむしろ嫌いな術なのだが、どんな術でも覚えておくものだ。 「早く召喚獣を止めてください!」 フリードの下では、エリオとガリューが戦ったままだった。 ルーテシアを天空の元に送り届けてすぐナンバーズの反応が出現した。 「次は俺の番だな」 もっくんが準備体操をしながら言った。作戦の第二段階はもっくんの双肩にかかっている。 「頼むぜ。もっくん」 ヴィータがもっくんに声援を送る。 「そっちこそ、晴明の孫を頼んだぞ」 「ああ、晴明の孫は任せておけ」 「孫、言うな!」 もっくんとヴィータが昌浩をからかう。状況が切迫しているからこそ、冗談で気分を和らげるのだ。 「では、行ってくる」 もっくんが単身走り出した。 「おいおい、白いの一人に任せていいのか?」 アギトが首を傾げた。 「心配いらないよ。もっくんは強いから。でも、もしよかったら援護してあげてくれるかな。もっくん一人だと無茶するから」 「……あんたらには旦那とルールーを助けてもらった借りがある。それくらいならお安い御用だ」 アギトがもっくんを追いかける。 もっくんは戦場の端へ端へと移動していた。 やがて海岸沿いの砂浜で、もっくんはナンバーズに囲まれる。 ブーメラン状の武器を構えたセッテ。巨大な盾ライディングボードに乗って飛行するウェンディ。それにチンクとトーレだ。 「大歓迎だな」 もっくんが毛を逆立てる。 「最大の敵を確実に排除する。作戦の基本だ」 トーレが感情を交えぬ声で言った。トーレとて、出来れば一人で戦いたかった。そうでなければ、あの日の屈辱は晴らせない。しかし、命令は絶対だ。 「そうだな。だからこそ、読みやすい」 戦闘機人に恐怖を与える紅蓮を狙うことなど、最初からお見通しだ。だから、もっくんはあえて他の仲間から離れた。そうすれば、敵は陽動とわかっていても応じざるを得ない。 「おい、そこのチビ、怪我をしたくなければ離れていろ」 「チビって言うな。烈火の剣聖、アギト様だ!」 もっくんの全身から炎が噴き上がり、紅蓮に変化する。 紅蓮目がけて、スティンガーが投げ放たれた。 「IS発動、ランブルデトネイター!」 スティンガーは地面に刺さるなり爆発する。金属を爆発物に変える、チンクの能力だ。 「エリアルキャノン!」 「スローターアームズ!」 ウェンディの砲撃に続いて、セッテがブーメランの動きを操り、不規則な軌道を取らせる。 紅蓮は砲弾を避け、炎蛇でブーメランをからめ捕る。動きの鈍った紅蓮にトーレが追撃をかける。 ナンバーズたちの動きに遅滞はなく、恐怖を抱いてはいないようだった。 「まさか私らが対策を取っていないとでも思ったっスか?」 「我らは恐怖心を抑える薬をドクターより投与されている。もはや貴様など恐れるに足りん!」 ウェンディとトーレの波状攻撃を、紅蓮はぎりぎりで回避する。 「おいおい、偉そうなこと言って、苦戦してんじゃねぇか」 「離れていろ!」 加勢しようとするアギトを制止する。 「どうやら、本気でやれそうだ」 紅蓮が不敵な笑みを浮かべ、額の冠を外す。それまでとは桁違いの、天を衝く巨大な火柱が噴き上がった。 「あ、あれ? 変っスね」 ウェンディは足を止めた。膝が震えて、前に進めない。 「馬鹿な。我らは恐怖心を克服したはず」 チンクも震える腕を抑え込む。 「薬如きで、俺をどうにかできると思ったか? 甘く見られたものだ」 地獄の業火を身にまとい、紅蓮が進み出てくる。額の冠は、紅蓮の強すぎる魔力を封じている。それが外され、真の力が解き放たれた。 「下らん掟には、俺も飽き飽きしていたんだ。これで思う存分楽しめる。さあ、貴様ら、どんな死に方が望みだ?」 まるで力とともに、隠されていた本性が露わになったように、地獄の鬼そのものの形相で紅蓮は笑う。 ウェンディもセッテも及び腰だ。守るようにトーレとチンクが立ちはだかる。 「逃げてもいいぞ。狩りも乙なものだ。一人ずつゆっくり引き裂き、焼き殺してやる」 「怯むな! 敵は一人だ。一斉にかかれば倒せる」 トーレが妹たちを鼓舞する。ここで逃げれば、妹たちは恐慌を起こす。そうなれば、各個撃破される。 「はい!」 セッテが己を奮い立たせる。 ナンバーズ四人が同時に紅蓮に襲いかかる。 「なんてな」 声はまったく別方向からだった。 完全な不意打ちに、なすすべなくチンク、セッテ、ウェンディが昏倒させられる。トーレだけはどうにか回避したが。 「見事な演技だったぞ。騰蛇」 「からかうな。勾」 突如、現れた勾陣に紅蓮は渋面になる。いくら戦闘機人とは言え、年端もいかない女の子たちを怖がらせたとあって、紅蓮はだいぶ傷ついていた。 紅蓮が全魔力を解放したのは、他に注意を向けさせないためだった。紅蓮がナンバーズを脅している間に、隠形した勾陣が接近していたのだ。 「……卑怯な」 「悪いが手段を選んでいる余裕がなくてな」 うめくチンクに、勾陣が悪びれずに答える。チンクはその言葉を最後に気を失う。 「貴様ら!」 トーレの刃、インパルスブレードを紅蓮はかわす。 「勾、後は任せろ」 「いいのか?」 「こいつの執念には付き合ってやらんとな」 紅蓮が半身に構える。 勾陣は倒したナンバーズを一人で担ぎ上げると、その場を去って行った。 「待て!」 「貴様の相手は俺だ!」 トーレの拳と紅蓮の拳が打ち合う。 まっすぐな一撃に、紅蓮は怪訝な顔になる。 「貴様、恐怖を感じていないのか?」 「怖いさ。だが、妹たちを助けるためだ。恐怖になど負けていられるか。ライドインパルス!」 トーレの動きが加速する。手足に発生させたインパルスブレードが、紅蓮の腕を、足を浅く切り裂いていく。 恐怖を克服する方法をトーレは会得した。無理やり抑えつけるのではなく、呑まれるのでもなく、ただ恐怖する自分を受け入れればいい。後は大切な妹たちを守ろうとする強い気持ちが、この身を奮い立たせてくれる。 紅蓮の身体能力は人間を凌駕している。力は向こうが上だが、速さはトーレが圧倒している。 「私の勝ちだ!」 しかし、時間が経つにつれ、トーレの攻撃が当たらなくなっていく。 紅蓮が速くなったわけではない。なのに、繰り出す攻撃が次々と空を切る。 「何故だ!?」 「どんなに速く動いても、紙一重で見切れば避けられる」 紅蓮は五感を極限まで研ぎ澄ませていた。トーレの一挙手一投足に目を凝らし、風を切る音に耳を澄ます。 迫る刃を必要最小限の動きでかわしていく。 「そして、どんなに速く動いても、予測できれば対応できる!」 紅蓮の拳が、トーレを捉える。咄嗟に防御したが、体が後方に流れる。 トーレはナンバーズの中で、誰よりも長く戦ってきた。どのナンバーズよりも多彩な攻撃パターンを持っている。しかし、紅蓮とでは経験値の差があり過ぎた。 紅蓮は、攻撃を右に避けるか左に避けるか、あるいは受け流すか。そんなわずかな運動で、相手の攻撃パターンを誘導しているのだ。 「騰蛇ぁぁああああ!」 トーレが全力を込めた体当たりを仕掛ける。体全部を使ったこの攻撃は絶対に避けられない。 「はああああああああ!」 紅蓮の体から魔力の衝撃波が迸り、トーレと激突する。 「貫け、ライドインパルス!」 インパルスブレードが高速で振動し、衝撃波を切り裂いていく。 「うおおおおおおおお!」 衝撃波に打たれ、トーレの全身が悲鳴を上げる。紅蓮の胸板に届く寸前、インパルスブレードが粉々に砕け散る。ライドインパルスが停止し、速度が鈍る。 紅蓮はトーレの腕をつかむと、勢いのまま投げ飛ばす。トーレは背中から地面に叩きつけられた。 「がっ!」 衝撃で肺の中の空気が全部吐き出され、四肢から力が抜けていく。 紅蓮は安心したように頬の血を拭う。皮を切られただけだが、紅蓮は血まみれになっていた。 トーレを連行しようとすると、その腕をトーレがつかんだ。 「……妹たちは殺させん」 「驚いたな。まだ意識があるのか」 人間に耐えられる勢いではなかったはずだが。トーレは執念だけで体を動かしていた。 「安心しろ。さっきのは演技だ。俺は誰も殺すつもりはない」 「…………誓うか?」 「我が主、安倍晴明と昌浩の名にかけて誓う。お前の妹たちに、これ以上危害は加えん」 紅蓮の誠実さが伝わったのだろうか。トーレの腕の力が緩んだ。 「……そうか。これで心残りはなくなった。殺せ」 「あのな。俺は誰も殺さないと言ったはずだ。もちろんお前もだ」 紅蓮は過去に何度か掟を破り、人を傷つけ、あまつさえ殺したことがある。あんな嫌な思いは二度とごめんだ。掟がなくとも、紅蓮は誰も殺したりしない。 「……情けをかけるつもりか?」 紅蓮は生真面目なトーレに付き合うのが、段々面倒臭くなってきた。この手の相手が満足しそうな回答を瞬時に組み立てる。 「文句があるなら、もう一度挑戦して来い。俺は逃げも隠れもしない。何度でも叩きのめしてやる」 「…………」 トーレはいつの間にか意識を失っていた。 紅蓮はトーレの体を担ぎ上げると、勾陣の後を追った。 目次へ 次へ
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安倍邸に滞在して数日が経過した。 なのはが朝食の片付けを手伝っていると、隣の部屋から言い争う声が聞こえてきた。 扉を開けると、両側から玄武の頬を引っ張っている太陰とヴィヴィオの姿があった。 「どうしたの?」 なのはが声をかけるが、興奮している太陰とヴィヴィオは気がつかない。どうやら、二人のつかみ合いの喧嘩を、玄武が押し留めているらしい。 「やーめーなーさーい!」 なのはが声を張り上げると、ようやく二人が制止する。五歳くらいの少女の姿をした太陰が玄武から手を離し、不機嫌に腕を組む。 「ママ~」 ヴィヴィオが涙目で駆け寄ってくる。その頭を撫でながら、なのはは玄武に顔を向ける。 「何があったの?」 「話せば長くなるのだが……」 十歳くらいの少年の姿をした玄武が、赤くなった頬をさすりながら言った。 事の発端は、朝食を食べ終わってすぐのことだった。ヴィヴィオが太陰に腕相撲の勝負を申し込んだ。 太陰とて十二神将、腕力は常人より上だ。手加減して、いい勝負を演じてやれば、ヴィヴィオが満足するだろうと考えた。 しかし、ヴィヴィオの力は太陰の予想を上回り、太陰はあっさり敗北した。その時、太陰の中で本気のスイッチが入った。 次の勝負では、太陰が圧勝。その後、一進一退の接戦を繰り返し、むきになった二人は、ついにつかみ合いの喧嘩に発展した。 玄武の説明を聞き終えたなのはは、ため息をついた。 「どうして、こんな負けず嫌いになっちゃんたんだろう」 「なのは、お前に似たのではないか?」 新聞を読みながら、聞くとはなしに会話を聞いていたシグナムが言った。なのはは聞こえない振りをした。 「いい、ヴィヴィオ。喧嘩は駄目だよ。ちゃんと太陰に謝りなさい」 「でも~」 「でもはなし。ほら」 なのはに押し出され、ヴィヴィオは渋々太陰の前に行く。 「ごめんね、太陰」 太陰は腕を組んだままそっぽを向いている。 「太陰よ。少々おとなげないのではないか?」 「ああ、もう、わかったわよ! 私も悪かったわよ!」 太陰がやけくそ気味に謝る。 「さあ、ヴィヴィオ。また一緒に遊ぼうか」 「うん」 玄武に促され、太陰とヴィヴィオが再び遊び始める。それをなのはは満足げに眺めていた。 ガジェットが大量に発生したと報告があったのは、ヴィヴィオたちの仲直りのすぐ後だった。 緊張した面持ちで、昌浩たちは大広間に集まった。 「かなりの数のガジェットがこちらに向かっているわ」 「レリックの反応は?」 「今のところ、ないわ。ただガジェット部隊は二つ。海と山に同時に出現した。進行方向を調べると、ちょうど安倍邸で交差するのよ」 「狙いは私らかもしれへんってことか」 「ガジェットって何?」 昌浩がヴィータに質問した。 「私らが追ってる犯罪者、スカリエッティが使う戦闘機械だ。結構厄介な相手だぞ」 同時に出現した部隊だが、数はだいぶ違う。山側の方が町に近く、二倍くらい数が多い。 「こちらの分断が狙いか。どっちか罠も知れへんな」 「考えてる時間はないよ。早く行こう」 なのはが立ちあがる。この町には、なのはの家族を初め、学生時代の友人など、たくさんの大事な人が住んでいる。絶対に傷つけさせるわけにはいかない。 「チーム分けはどないする?」 「海側は私が行く」 なのはが宣言した。 「ほな。スターズはそっちやね」 「ううん。行くのは私ともう一人だけでいい」 「ならば、俺が行こう」 背後から青龍が現れた。この前の引き分けを根に持っているのか、眉間の皺がいつもより深い。 「決着をつけてやる」 「そっか。機械相手なら、青龍さんも本気出せるもんね。じゃあ、どっちが多く倒すかで勝負しよう」 これまででお互いの戦い方は熟知している。連携もこなせるだろう。 「じゃあ、先に行くね。片づけ次第合流するから」 「頼むで、なのはちゃん」 なのはと青龍は海めがけて出発した。 目的地に辿り着くと、シャマルがすでに封鎖領域を張ってくれていた。 港の倉庫街を埋め尽くすように、ガジェットの群れが出現している。円筒形のⅠ型、飛行機のようなⅡ型、巨大な球形のⅢ型。山側よりは少ないとはいえ、かなりの数だ。 「青龍さん、ガジェットはAMF(アンチマギリングフィールド)を持って……ようするに、魔法が効きにくいから注意して」 「ふん。ならば直接切り裂けばいい」 「それじゃ、地上はお願い」 青龍が大鎌を構え走り出す。なのはも空に飛び立つ。 青龍はガジェットの放つビームやミサイルをよけながら、大鎌で次々とガジェットを切り裂いていく。 『Accel Shooter』 なのはの操る光球が飛行型のⅡ型を撃ち落としていく。 (あれ?) 戦いながら、なのはは違和感を覚えた。 今日はやけに視界が狭い。いつもならもっと広い視野で戦えるのに。 仲間たちと敵の動き。攻撃方法の選択。回避と防御。どんな機動をすれば最も効果的か。すべてを同時に考えながら戦える。 なのに、今は目の前の敵しか見えない。死角からの攻撃を慌ててバリアで防ぐ。 (おかしいな。集中できてないのかな) こんなことは初めてだった。原因がわからない。 普段のなのはの戦い方を知る者がいたら、目を疑っただろう。 ペース配分を考えず、撃ちだされる大技の数々。高出力のバリアで攻撃を防ぐだけで、ほとんど回避機動も取っていない。 まるで素人のような力押しの戦い方。エースオブエースの戦い方ではない。 スバルたちがいなくてよかったと、なのはは安堵する。とても見せられる姿ではない。 そこでなのははふと気がつく。背後にあるのは、大切な思い出が詰まった故郷であり、地上で戦う青龍は、まだ一度も勝ったことのない相手なのだと。 (違う。逆だ。集中し過ぎてるんだ) 絶対に守りたい町。絶対に勝ちたい相手。それらがなのはの余裕を奪い、視野を狭くしているのだ。 レイジングハートが凄まじい勢いで、カートリッジを吐き出していく。敵の数が四分の一まで減った時、ついにカートリッジが切れた。 なのはは不思議そうにレイジングハートに話しかける。 「そういえば、最初はカートリッジなんて、なかったんだよね」 『Yes, my master』 一番、最初の気持ちを思い出す。 ユーノを助けたいと思った。敵として現れた寂しい目をした少女を救いたいと思った。忘れたことなんてないのに、いつの間にか曇っていた。 この力は、大切な誰かを助けるために使うと決めたのだ。 「青龍さん、時間稼ぎお願い」 青龍は不機嫌顔で、なのはに近づくガジェットを撃ち落とす。 なのはの周囲に、まるで星のように無数の光球が現れる。やがて光がレイジングハートの先端に集中する。 これが誰かを助けるための、最初の全力全開だ。 「スターライトブレイカァー!!」 光が空を切り裂いた。 敵を壊滅させた後、なのはは倉庫の屋根の上で大の字になっていた。魔力のほとんどを使い切り、空っぽだった。ここまで消耗したのはいつ以来だろうか。 青龍がなのはの隣に立つ。傷はないが、さすがに疲れたらしく、肩で息をしている。 「貴様はいくつ倒した? 俺は……」 「……ごめんなさい。途中から数えてない」 青龍の不機嫌度が一気に上がる。 「うん。だから、私の負けでいいよ」 なのはは、妙に晴れ晴れとした顔で言った。 立ち去ろうとする青龍に、なのはは声をかけた。 「ありがとう」 青龍が怪訝な顔で振り返る。 「青龍さんのおかげで大事なことを思い出した」 成長するにつれ色々なことができるようになり、いつの間にか、部隊も新人たちもすべて背負ったつもりになっていた。 故郷が危険にさらされたくらいで余裕をなくす未熟者なのに、自惚れたものだ。自分にできるのは、ただ全力を尽くすことだけだというのに。 「間に合わなかったか」 風に乗って十二神将、白虎が飛んでくる。筋骨隆々とした壮年の男性だ。 「晴明に様子を見てくるように言われたのだが、無駄足だったな。昌浩たちもそろそろ決着がつくらしい」 「余計な真似を」 「まあまあ。ありがとう、白虎さん」 白虎は片目をすがめた。これまでなのはが青龍に放っていた殺気がなくなっている。青龍は相変わらず素っ気ないが。 「どうやら和解できたようだな。よかったじゃないか、青龍」 「白虎。余計なことを言うな」 「どういう意味ですか?」 なのはが起き上がる。 「こいつ、昔戦った時に脅かし過ぎたと言って、気にしていたんだ」 「白虎!」 「心配してくれてたんですね」 なのはが青龍の顔を覗き込む。てっきり、なのはのことなど眼中にないと思っていたので、意外だった。 青龍が隠形する。照れているのだろうか。 「優しいところもあるんだ」 昔、友達が力説していた。 普段冷たい男が、たまに見せる優しさにぐっとくると。なのはは少しだけその気持ちが理解できた気がした。 六課メンバーと、昌浩、もっくん、六合たちは、山側のガジェット群をあっさり壊滅させていた。少し戦力を偏らせすぎたようだ。 「いやー。やっぱりたまに体を動かすと気分ええなあ」 六枚の黒い翼の生えた騎士甲冑を装着した、はやてが肩を回しながら言った。 「はやてさん、めちゃくちゃ強かったよね?」 「うん」 スバルとティアナが耳打ちする。あれで能力制限がかかっているのだから、本気を出したらどれほどなのか。 かつて、はやては自分がガチンコで勝てるのはキャロぐらいではないかと言っていたが、絶対に嘘だと思う。 「何が目的だったのかな?」 「それがわかれば苦労しないわよ」 ガジェットの残骸を調べる昌浩に、ティアナがつっけんどんに言い放つ。 今日の戦いでわかったのだが、昌浩のポジションは、ティアナと同じセンターガードのようだった。 もっくんや六合に支えられている面はあるが、要所要所で指示を出し、戦況を有利に導いていた。正式な訓練を受けずにそれらをこなしているのだから、空恐ろしい印象を受ける。 もし昌浩が六課に入隊していたら、自分はお払い箱になっていたのではないかとティアナは危惧する。 「でも、とにかく片づいたし、帰ろ……」 「へえ、結構やるじゃないっスか」 突然響いた声に、全員が身構える。 青いボディスーツに身を包んだ三人の少女が立っていた。 「戦闘機人!」 戦闘機人とは、人工的に培養した素体に、機械を埋め込み強化した人間、一種のサイボーグのことだ。スカリエッティの忠実な配下で、スバルたちは以前一度だけ交戦したことがある。 少女たちとは初対面だが、着ている服が似ているので、仲間だと推察できる。 眼帯に銀色の長い髪、灰色のコートを着た小柄な少女、チンク。巨大な盾ライディングボードを持ち、赤い髪を後頭部でまとめたウェンディ。そして、髪の色こそ赤と違うものの、スバルによく似た容貌のノーヴェ。 「あいつ、スバルに似てるな。偶然か?」 もっくんが首を傾げる。 「似てて当然だ。そいつも私も、同じ遺伝子データから作られた戦闘機人なんだからな」 ノーヴェが嫌悪感もあらわに言う。 「えっ?」 「くらえ!」 全員にかすかに動揺が走った瞬間、ノーヴェの腕に装備されたガンナックルから、マシンガンのように弾丸が吐き出される。それを皮切りに、チンクが投げナイフ、スティンガーを放ち、ウェンディがライディングボードから光弾を撃ち出す。 防御態勢を取った時、昌浩の背後に青い人影が現れる。 「この子はもらって行くよ」 おどけたような声は、地面から発せられた。 青いスーツに身を包み、水色の髪をした少女。かつてスバルたちの前に現れた戦闘機人、セイン。IS(インヒューレントスキル)はディープダイバー。無機物を透過、潜行することができる。 「昌浩!」 全員が駆け寄るが、間に合ない。昌浩が地面に引きずり込まれ消えていく。 地中を移動しながら、昌浩は抵抗を続ける。 「離せ!」 「駄目だよ。君はドクターのところに案内するんだから」 セインが余裕の表情で告げる。ノーヴェたちは陽動だ。適当に戦って切り上げる手はずになっている。 「オン……」 「それも駄目」 呪文を唱えようとする昌浩の首を絞め、声が出ないようにする。 頭突きや蹴りを繰り出してはいるが、セインはやすやすとかわしてしまう。 昌浩は魔力はともかく、身体能力は人並みだ。後ろから羽交い絞めにされたら、どうしようもない。 「諦めて、大人しくしててよ。オミョージ君」 言いながら、セインは笑いを堪える。 地中を抜けて、地上に出る。それを繰り返すと、やがて、町の外に出た。 「ここまで来れば、もう大丈夫」 「止まれ」 セインを、彼女の姉であるトーレが待ち受けていた。女性にしては背が高く、短い髪に鋭い目をしている。その両手足には虫の羽根のような刃インパルスブレードがついていた。 「あ、迎えに来てくれたんだ」 「止まれと言ってるんだ、この馬鹿者!」 トーレの一喝に、セインは足を止める。 「敵を研究所に連れ込むつもりか」 トーレが戦闘態勢を取る。 「あーあ、もうちょっとだったのにな」 「うわっ!」 昌浩の襟首から、白い動物が滑り出てくる。セインは驚いて手を離しそうになる。 「もっくん!」 白い物の怪は悠然と大地に降り立つ。昌浩がさらわれる一瞬の間に、服の中に忍び込んでいたのだ。なるべく魔力を抑えていたのだが、隠しきれなかったらしい。 「一匹で何ができる。セイン、陰陽師を捕まえておけ」 「あいよ」 もっくんがトーレと向き合う。 「戦う前に質問だが、お前ら、この世界の出身か?」 「違うよ」 「セイン、答えなくていい」 「それはよかった。実は十二神将には掟があってな。人を傷つけちゃいけないんだ」 十二神将が人を傷つけてはならないのは、十二神将が人の想念から生まれたからだ。親である人を、子である十二神将は傷つけられない。 「しかし、この掟、結構ゆるくてな」 「あー。俺、朱雀に叩かれて、太陰に殴られて、勾陣に投げ飛ばされたことあるしね」 昌浩が過去を振りかる。どうやら、このくらいでは掟に抵触しないらしい。 「晴明が調べてわかったことだが……俺たちはこの世界の人間の理想と想念によって形作られている。つまり、この掟、他の世界の人間には通用しないんだ」 もっくんが歯を向いて笑う。 危険を感じたトーレが、飛び出して拳を振るう。 「紅蓮!」 昌浩が叫ぶ。 炎が噴きあげ、もっくんの姿が、赤いざんばら髪に褐色の肌の男に変わる。額には金の冠をはめている。十二神将、最強にして最凶の存在、騰蛇。またの名を紅蓮。 姿を現した紅蓮が、トーレの拳をやすやすと受け止めた。全身から莫大な魔力が放射される。 「甘く見るなよ、女」 「馬鹿な」 トーレは自分の拳が小刻みに震えているのを感じた。 紅蓮の魔力は凄絶にして、苛烈。生物に根源的な恐怖を植え付ける。それと無縁でいるには、昌浩のように紅蓮に近い魔力と、存在を許容する優しさ、懐の深さが必要になる。 そのどれも持っていなければ、いかに戦闘機人と言えど、人間を元にしている以上、恐怖からは逃れられない。 「ひい!」 トーレより意志の弱いセインが、恐怖に身をすくませる。その隙を逃さず、昌浩はセインの腕を振り払う。 「砕!」 放たれた昌浩の術を、セインは地中に潜行してかわす。 トーレの隣に現れたセインめがけて、紅蓮は炎の蛇を放つ。 「IS発動、ライドインパルス!」 二人の体が霞み、はるか後方に移動する。 「ほう」 紅蓮が感心したように呟く。 トーレの能力、高速移動だ。 「セイン、撤退するぞ。貴様、名は?」 トーレが苦渋に満ちた顔で問う。ナンバーズが恐怖を感じるなど、あってはならないことだ。 「十二神将、騰蛇」 「覚えておこう。私はナンバーズ、トーレ。いつかこの屈辱は晴らす」 二人の姿が地面に消える。 「敵ながら、あっぱれな奴だ」 紅蓮がもっくんに戻る。不利を悟るや、即座に撤退を決断した。簡単にできることではない。 あれだけ派手に魔力を解放したのだ。すぐに迎えが来るだろう。 そこに白い鳥が飛んできた。鳥は昌浩の上空で手紙に変化する。 「げっ」 手紙は晴明からのものだった。 『まったくさらわれてしまうとは情けない。気が緩んでいる証拠じゃ。これは一から修行し直しじゃのう。ばーい晴明』 手紙を読むにつれて、昌浩の肩がぴくぴくと痙攣する。読み終わると、昌浩は手紙を握りつぶし、絶叫した。 「あんのくそ爺ー!!」 絶叫が消える空に、迎えに来たはやてたちの姿が映っていた。 目次へ 次へ
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ミッドチルダ。深い森の中に、洞窟が口を開けていた。 「ここで間違いないな」 緑の髪をした青年、アコース査察官が魔力で出来た複数の猟犬を従えながら言った。 「では、突入します。ギンガ、エリオ、キャロ、準備はいい?」 軍服風のバリアジャケットを身にまとい、フェイトが突入部隊の面々を見渡す。ライトニング分隊の他にも、地上部隊の精鋭たちが揃っている。 これまでの地道な捜査が実を結び、ついに広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティのアジトを突き止めたのだ。 「作戦開始!」 フェイトたちはスカリエッティのアジトへと乗り込んで行った。 戦いはそれほど時間をかけずに決着した。敵はガジェット・ドローンのみ。どれだけ警戒を厳重にしても、経験を重ねたフェイトたちを撃退するのは不可能だった。 アジトに仕掛けられていた自爆装置には肝を冷やしたが、解除に成功。大量の証拠物件を押収し、人造魔導師素体の実験体たちも救出した。 アジト襲撃の翌日、フェイトとエリオとキャロは安倍邸を訪れていた。 「お久しぶりです。フェイトさん」 「昌浩君、こんにちは。こっちはエリオとキャロ、仲良くしてあげてね」 「よろしくお願いします。昌浩さん」 竜召喚師、キャロがぺこりと頭を下げる。その肩には小さな白銀の竜が乗っている。 「よろしく、キャロちゃん、エリオ君」 昌浩が右手を差し出す。その手をエリオが両手でがっしりとつかんだ。 「昌浩さん、六課に入っていただけるんですよね?」 「えっ?」 エリオの顔が感激に輝いている。 「よかった。これで男一人じゃなくなる」 「エ、エリオ君?」 昌浩が後ずさるが、エリオは手をつかんだまま離さない。 「仲良くしましょうね、昌浩さん」 エリオは感極まって、とうとう泣き出してしまった。 エリオも六課のみんなは大好きだ。しかし、女の子たちのノリに、時折ついていけなかったのだ。心の慰めは、キャロの連れている白銀の竜、フリードリヒのみ。そんな日々からようやく解放される。 エリオの肩に大きな手が置かれた。 筋肉質な体に、褐色の肌。精悍な顔立ちをしているが、狼の耳と尻尾を生やしている。人間形態になったザフィーラだった。 「すまない、エリオ。苦労をかけた」 「ザフィーラぁぁぁ!!」 同じ苦労を抱えた男たちが、一瞬で友情を芽生えさせていた。 「エリオ君。そんなに辛かったの?」 「ご、ごめんね。気づいてあげられなくて」 キャロとフェイトがおろおろとエリオを慰める。 「しもた。同性から攻めるという手があったか」 そして、はやてが聞こえないように舌打ちしていた。 「うわ―。疲れたー」 朝の訓練を終えた昌浩は、庭に大の字に寝そべる。 日頃から晴明や十二神将たちに鍛えられてはいるが、なのはのトレーニングはこなすのがやっとの厳しいものだった。 「エリオ君もみんなもすごいね。毎日こんなハードメニューをこなして」 「昌浩さんの方が凄いですよ。僕たちは毎日しごかれてやっとここまで来たのに、昌浩さんは始めたばかりで、このメニューについて来れるんですから」 「ほら、あんたたち、ちゃんとクールダウンしなさい。体、壊すわよ」 「はい、ティアナさん」 昌浩とエリオがランニングを始める。 ティアナも祭りの一件以来、随分昌浩に優しくなった。目つきや言動は相変わらずきついままだが。 「お疲れ様です。スバルさん」 「ありがとう。太裳さん」 十二神将、太裳が渡すタオルを、スバルが受け取る。ティアナと昌浩の模擬戦以来、スバルたちの世話は太裳に任されていた。太裳なりの罪滅ぼしらしい。 「どうされました?」 走る昌浩を眺めていたスバルに、太裳が話しかける。 「いや、陰陽師っていいなって」 スバルは両腕に装備されたリボルバーナックルを撫でる。左腕のは姉ギンガの物だ。現在、ギンガはミッドチルダで事後処理に追われている。自分が来られない代わりに、これをスバルに届けてくれたのだ。 「私たちの魔法って、ミッド式もベルカ式も、戦闘に特化したものばかりなんですよね」 攻撃魔法は言うに及ばず、回復魔法も兵隊を効率良く運用するための手段でしかない。 「でも、陰陽師の術は、未来を占ったり、病を治したり、祈願したり、一つ一つの効果は薄くても、人の幸せの為に使える術だと思うんです」 ティアナと兄の再会。あんなことはミッドチルダのどんな魔導師にも出来ないだろう。 「では、スバルさんも目指してみますか? 晴明様ならば、きっと喜んで弟子にしてくれますよ」 「……遠慮しておきます」 昌浩の読んでいた膨大な書物を思い出し、スバルの顔が引きつる。 「うらやむ必要はありません。どんな術も使う者の心次第で、人を不幸にも幸福にもするのですから」 陰陽師の術の中には、人を呪うものも多く存在する。人の心の光と闇を司るのが陰陽師だからだ。 「少なくともスバルさんは、人を助けるために魔法を学んでいるのでしょう?」 太裳がスバルの手の上に自分の手を重ねる。 「……はい」 「なら、それでいいではありませんか」 至近距離で太裳が二コリと笑う。 「わ、私、シャワー浴びてきます!」 スバルがダッシュで安倍邸の中に戻っていく。顔が赤く染まっている。 「おい、太裳」 もっくんが太裳の背後に立つ。 「騰蛇。私はスバルさんに何か失礼なことをしたでしょうか?」 「いや、もういい」 一言言ってやろうと思ったが、その気も失せた。もっくんは昌浩が練習を終えるのを待つことにした。 朝の訓練を終えた後、安倍邸の大広間では、隊長たちが集められ、フェイトからの報告を受けていた。 「大手柄やな、フェイトちゃん」 はやては満足顔で、晴明から借りた扇をあおぐ。 「はやてたちが、スカリエッティを引きつけてくれたおかげだよ」 「それは、昌浩君と十二神将のおかげやな」 「でも、喜んでばかりもいられない。時空管理局は大混乱だから」 押収したデータには厳重なプロテクトがかけられていたが、時間をかけて少しずつ解除されている。ところどころ抜けているデータはあるが、事件の全容をつかむのに不足はない。 そこでわかったのは、時空管理局地上本部の事実上のトップ、レジアス・ゲイズ中将が、スカリエッティの協力者と言うことだった。それだけでなく、最高評議会の三人こそが、スカリエッティ事件の黒幕らしいという真実だった。 彼らは正義の名の元、悪事に手を染めていた。例え何人犠牲にしても、より大勢の人が救われるならそれでいいという傲慢な理屈。 しかし、はやてたちには身につまされる話だった。自分たちもいつ同じ轍を踏むかわからない。 現在、彼らは更迭され、時空管理局は伝説の三提督の元、再編成を急いでいる。だが、しばらくは落ち着かないだろう。 「これで後は、スカリエッティを逮捕すれば、事件は解決。どうやら予言は阻止できたようやね」 スカリエッティがこの世界にいるのは間違いないのだ。押収したデータから、他の施設も次々と制圧できている。逃げ場はない。 「でも、気になることがある。聖王の器と聖王の揺りかご」 押収したデータに、幾度も出てくる名称だ。ただし、名称のみで、データはどこにも見当たらない。その警戒心の高さから、おそらくスカリエッティの最終目標だと思われた。 『そっちは僕が話すよ』 「ユーノ君」 通信画面が開き、眼鏡をかけた青年ユーノ・スクライアが顔を出す。無限書庫の司書長だ。背後には巨大な本棚が映っている。画面の隅では、狼の耳と尻尾を持った幼い少女、フェイトの使い魔アルフが手を振っている。 『あまり多くはなかったけど、情報の抽出に成功した。聖王は先史時代の古代ベルカに存在した偉大な王のことだね。そして、これが聖王の揺りかご』 画面に飛行戦艦の見取り図が映し出される。 『聖王を鍵に起動する超巨大質量兵器。もしこれが動き出していたら、時空管理局の全戦力を持っても、破壊できるかどうか。そんな化け物戦艦だ』 表示される詳細な性能に全員が戦慄する。 『それで聖王に関して、興味深い記述があったんだけど』 ユーノはなのはとフェイトを交互に見る。 『聖王は緑と赤の瞳を持っていたらしいんだ』 「まさか?」 二人の脳裏に、ヴィヴィオの姿が浮かんだ。 『確証はないけど、多分ヴィヴィオは聖王のクローンだ』 ヴィヴィオが古代ベルカ時代の人間のクローンだとは知らされていたが、まさかそんなに重要な存在とは思わなかった。 「こっちに来といてよかったー」 はやてが冷や汗を拭う。もしフォワード部隊が不在の時に、スカリエッティ一味に襲撃されていたら、守り切れたか自信がない。 「でもよ、聖王の揺りかごは、ヴィヴィオがいねぇと起動できねぇんだろ。なら、あたしらがヴィヴィオを守ればいい。それだけだ」 「ヴィータの言う通りや。聖王の揺りかごの発見と破壊は、ミッドチルダの地上部隊に任せるとして、今後はヴィヴィオの護衛を最優先に、スカリエッティ捜索を行う」 「はやてちゃん! 大変よ。魔力反応がこの町に」 シャマルが息せき切って部屋に駆け込んでくる。 「敵か? 数は?」 「反応は二つ。一つは以前戦闘したことがあるわ」 アギト。古代ベルカ式ユニゾンデバイスで、悪魔のような羽と尻尾を持ち、露出の高い恰好をしたリインと同じくらいの背丈の少女。スカリエッティの仲間だ。 「よし、シグナム、ヴィータ、リイン、様子を見てきてくれるか?」 「わかりました。主はやて」 シグナムたちはすぐに出発した。 人気のない裏路地に、敵は潜んでいた。 シグナムとヴィータは用心深く路地を窺う。かすかだが話声がする。かなり切羽詰まっているようだった。ここまで血の臭いが漂ってくる。 シグナムたちは路地に飛び込んだ。 「お前はバッテンチビ!」 「人を変なあだ名で呼ばないでください!」 叫ぶアギトにリインが抗議する。アギトの背後では、ロングコートを着た大柄な男が、壁にもたれかかっていた。男の名はゼスト。血まみれでひどい傷を負っている。 「この際、誰でもいい! 旦那を、旦那を助けてくれ!」 アギトが悲痛な声で叫んだ。 話は今朝にさかのぼる。アギトは仲間の騎士ゼストと召喚魔導師の少女ルーテシアと、スカリエッティの研究所に呼び出された。 出迎えたのは、スカリエッティと十一機のナンバーズだった。 「状況はおおよそ把握している。どうやら尻に火がついたようだな。スカリエッティ」 ゼストが皮肉交じりに言った。一応、協力関係にはあるが、ゼストもアギトもスカリエッティを毛嫌いしている。 「情けない話だが、全くその通りだ。劣勢を挽回したいが、戦力が少々足りなくてね。協力してもらえると助かる」 ゼストは眉を潜める。言葉とは裏腹に、スカリエッティからは余裕が感じられる。 「俺たちがここに来たのは、こちらも聞きたいことがあったからだ」 ゼストたちがスカリエッティに協力していた目的の一つは、ルーテシアの母親だった。 彼女の母親は人造魔導師素体で昏睡状態にあり、特定のレリックがないと目覚めないという話だった。 「どういうことだ? 時空管理局に保護された人造魔導師素体たちは治療を受ければ、レリックなしでも回復する見込みがあると言っているぞ」 現在の混乱した時空管理局から情報を調べるなど、ゼストにしてみれば朝飯前だ。 「ドクター。私たちを騙していたの?」 ルーテシアが悲しげにスカリエッティを見上げる。 「それは誤解だよ、ルーテシア。君の母親を目覚めさせるには、レリックを使うのが一番確実だったんだ」 「ふん。だが、ルーテシアの母親は、時空管理局に保護されてしまった。今の貴様がそれを奪回できるとは、とても思えん。悪いが協力はできんな」 「ガジェットの七割は、すでにこちらに移送済みだ。それでは不服かい?」 「あんなクズ鉄に何ができる。俺は、俺の目的を果たしに行く」 ゼストは一度死に、人造魔導師として蘇った。彼の目的は、かつての友レジアス・ゲイズに会い、自らの死の真相を知ること。時空管理局が混乱している今が、レジアスに会う絶好のチャンスだった。 「そうか。残念だよ。クアットロ」 スカリエッティの指示を受けて、大きな丸眼鏡をかけてケープを羽織ったナンバーズ、クアットロが手もとのコンソールを操作する。 「きゃあああああああ!」 「ルーテシア!?」 突如、悲鳴を上げたルーテシアに、ゼストが駆け寄る。 その前にトーレが滑り込んだ。トーレの一撃をゼストは槍で受け止める。 「ルーテシアに何をした!?」 「何、ちょっと協力的になってもらっただけさ」 ルーテシアはふらふらとした足取りで、スカリエッティの元に歩いていく。その目はうつろで正気ではない。 ルーテシアのデバイス、アスクレピオスはスカリエッティの作った物。洗脳できるよう仕掛けがしてあったのだ。 「アギト!」 ゼストの合図で、アギトがゼストとユニゾンする。ゼストの髪が金色に変わる。 「おや、たった一人で我々と戦うつもりかい?」 スカリエッティが嘲笑う。 「だが、君と戦って、貴重な戦力を消費するわけにはいかないんだ。ああ、お帰り、ドゥーエ」 ゼストの背中から鮮血が吹き出す。 振り返ると、長い金属製の爪ピアッシングネイルを右手にはめた蟲惑的な女が立っていた。女は爪についた血を舌で舐めとる。 それと同時に、正面のナンバーズたちの一斉射撃が、ゼストに襲いかかる。 ゼストは即座にフルドライブを発動。はるか後方に退避する。 「逃がしません」 ゼストの懐に、ドゥーエが飛び込んでくる。ピアッシングネイルがゼストの体を逆袈裟に切り上げる。 『旦那!』 「撤退するぞ、アギト!」 槍でドゥーエを弾き飛ばし、ゼストは研究所から命からがら逃げ出した。 「追跡しますか?」 「放っておけ。もはや何もできん。それにこの研究所の役目も終わった」 「ドゥーエお姉さま!」 「久しぶりね、クアットロ、みんな。それから初めまして新しい妹たち」 ドゥーエはクアットロを抱きしめ、ナンバーズたちを幸せそうに見渡す。ついにすべてのナンバーズが集結した。 「ドゥーエ。長い潜入任務ご苦労。すまなかったね。君の任務の大半を無駄にしてしまったのは、私の落ち度だ」 「いいえ。ドクターの夢が叶うなら、それで十分です」 「ありがとう。さあ、準備は整った。最終ステージを始めるとしよう!」 スカリエッティが両手を広げ、堂々と宣言した。 ゼストとアギトは安倍邸に保護された。 ゼストは重症だったが、シャマルの回復魔法によってどうにか一命を取り留めた。意識はまだ戻っていない。 はやては、大広場に集められた昌浩ともっくん、六課のフォワード部隊を見渡す。 「アギトからの情報で、ついにスカリエッティの所在が判明した。ヴィヴィオの護衛は晴明さんと他の十二神将に任せ、私らは全員でスカリエッティ逮捕に向かう。それでは……」 その時、緊急コールが鳴り響いた。 「もう、誰や、この忙しい時に。ちょっと待っとって」 興を削がれて、はやては不満顔で、隣の部屋に行った。 「うっ」 突然、昌浩が頭を押さえてうずくまる。 「どうしたの? 気分が悪いの?」 隣に座っていたスバルが心配そうに肩を揺する。 「……待って」 昌浩の脳裏に幾つもの光景が浮かぶ。この感覚は前に経験したことがある。直感が未来を指し示す時のものだ。 「なんやて!?」 悲鳴のような叫びが、隣の部屋から響く。 「「海鳴市が滅ぶ!?」」 昌浩とはやてが口にしたのは、まったく同じ言葉だった。 目次へ 次へ
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なのはは縁側で夕暮れを眺めていた。白に花の模様が描かれた華やかな浴衣を着ている。なのはに寄り掛かってヴィヴィオが眠っている。ヴィヴィオもなのはとおそろいの浴衣を着ている。 蚊取り線香の煙が風に揺られてたなびく。近くに森があるので、虫が多いのだ。夕方になって暑さもだいぶ薄れたが、まだ少し蒸し暑い。 なのはヴィヴィオを起こさないように小声で、ミッドチルダとの通信画面を開く。 「フェイトちゃん、そっちの様子はどう?」 『それが変なの。ガジェットの出現率がどんどん減ってる。それに新しいレリックもほとんど運ばれてきていないみたい』 「じゃあ、やっぱり」 『うん。スカリエッティは多分その世界にいる』 先日の戦闘報告書はすでに六課の本部に送ってある。ナンバーズまでいるとなれば、ほぼ間違いない。スカリエッティの現在の目的は、昌浩や十二神将の調査なのだろう。 スバルが、過去に保護された戦闘機人だったことには驚いたが、特に問題なくみんな受け入れている。ティアナは前から知っていたので、黙っていたことを平謝りしていたが。 フェイトが思案顔になる。 『私もそっちに行った方がいいかな?』 「ううん。敵がいつミッドチルダに戻るかわからない。フェイトちゃんはそっちをお願い。それにもしかしたら……」 「フェイトママ?」 ヴィヴィオが目をこすりながら起き上がる。小声だったのに、フェイトの声に反応したらしい。 仕事の話はここまでのようだ。 『久しぶりだね、ヴィヴィオ。元気だった?』 「うん。フェイトママは?」 『私も元気だよ』 会話ができて嬉しいのだろう。フェイトが優しい笑顔をヴィヴィオに向ける。しばらくそっとしておこうと、なのはは席を外した。 「ちょっといいか?」 真紅の浴衣を着たヴィータがやってくる。 「ティアナのこと、気づいてるか?」 「うん。ちょっとまずいね」 表情こそ変わらないが、なのはから苦悩が感じられた。 ティアナは最初から昌浩を敵視していた。ただライバル視しているのだろうと、問題に思わなかった。むしろ、いい刺激になるのではと歓迎していたくらいだ。 「まさか、こんなことになるなんてな」 「昌浩君が、あそこまで成長してるなんて想定外だからね」 なのはも、昌浩をティアナと同じセンターガードに分類しただろう。しかし、二人の適性はまるで正反対だ。 多彩な攻撃手段を有し、敵の情報を分析、作戦を立てることが得意なティアナは、チームの核として行動してこそ、最大の力を発揮する。 それに対し、昌浩の最大の武器は直感だ。 陰陽師は独自の修行法で、直感を鍛えることができる。任意で使える力ではないが、時として発揮される直感は、未来予知や千里眼のような、己の知覚をはるかに超越する結果を指し示す。さらに昌浩は神の力を借りて、術の威力を底上げできる。 直感を頼りに高火力で戦う昌浩。フロントアタッカー寄りのセンターガードとでも言うべきポジションだ。 知恵のティアナと力の昌浩。真逆の適正なのに、ティアナは昌浩に自分の理想とする戦い方を重ねている。 「事故が起きてからじゃ遅いしね」 こういうことは口で言っても伝わらない。自分で悟るしかないのだが、このままではティアナがまた無茶をしそうだ。 将棋を指していて、席を離れている間に、相手が二手も三手も先に進めていたような心境だった。事態が悪くなっているのに、解決策が思いつかない。 なのはも昌浩を認めているが、単純な戦闘の才能ではティアナの方が上だと思っている。ティアナが己の長所をもっと磨けば、数段格上の相手に勝利することも容易だろうに。 これも直接言っても伝わらないどころか、ただ慰めているだけだと取るだろう。 ティアナの向上心は素晴らしいが、あの思い詰める癖は、なのはたちも手を焼いている。 「こういう時は二人を引き離した方がいいんだけど……」 この状況ではそれも無理だろう。 本音を言えば、なのはは昌浩の勧誘に、はやてほど熱心ではない。 確かに部隊設立当初に、昌浩たちがいてくれれば初動は楽だっただろう。しかし、その時期はとうに過ぎた。 新人たちはまだまだ危なっかしいが、それなりに実力をつけてきた。よほどの危機的状況にならない限り、現在のフォワード部隊で戦っていける自信が、なのはにはある。 今から昌浩が六課に参加したら、せっかく軌道に乗り出した訓練からチーム分けまで、一からやり直しだ。その手間を考えるだけで頭が痛い。 これは部隊全体のことを考えているはやてと、新人たちの成長をつぶさに観察しているなのはとの立場の違いだった。 人間、どうしたところで木を見れば森が見えず、森を見れば木が見えないものだ。 もっとも、なのはにしても、今回の任務は渡りに船だったのだが……。 「お待たせしました」 青い浴衣を着たスバルと黄色い浴衣を着たティアナがやってくる。なのはは思考を中断する。 「おい、あんまり動くと浴衣が乱れるぞ」 「あ、すいません」 ヴィータに注意され、スバルが歩調を緩める。 今日は近くの神社で盆踊り大会が開催される。はやての命令で、全員強制参加となったのだ。 これだけの浴衣をよく用意できたものだが、昌浩の母親が頑張ってくれたらしい。安倍邸に取ってあった浴衣をそれぞれの丈に合わせてくれたのだ。 「ところで、どういうお祭りなんですか?」 「お盆って言ってね。ご先祖様の霊が帰ってくる日って言われてるんだ」 「ご先祖様?」 「死んだ人って言った方がわかりやすいかな」 「馬鹿馬鹿しい。死んだ人は帰ってきたりなんかしないのに」 ティアナは誰にも聞こえないように小声で呟いた。 「準備はええな」 黒地に金魚をあしらった浴衣を着たはやて。その横には、薄紅色の浴衣を着たシグナムと若草色の浴衣を着たシャマルが控えている。 「おい、リイン。お前も行くのか?」 もっくんが、後ろに渋い緑色の浴衣を着た昌浩を連れてやってくる。 「はいです。私も行きますです」 リインは水色の浴衣を着ていた。普段と違い、子どもくらいのサイズになっている。 ティアナは視線を感じて、そちらを向いた。 「何よ?」 「いえ、別に」 ティアナをじっと見ていた昌浩が目をそらす。模擬戦以来、昌浩もティアナに苦手意識を持つようになってしまった。仲直りしたと思った矢先に首を絞められれば当たり前だが。 「さ、行くでー」 はやての号令のもと、一行は神社に向けて出発した。 提灯に照らされて、神社は幻想的な赤い光に包まれていた。祭囃子(まつりばやし)が気分を盛り上げる。 「こんなことしてていいのかな?」 「敵の狙いはどうせ私ら、と言うより昌浩君や。警護さえしっかりしてれば、少しぐらい息抜きしたって構へん」 昌浩の浴衣の下には大量の護符が隠されている。ディープダイバーは魔力防御のある相手には効果がないようなので、これで前回のようにさらわれる心配はない。 地道な捜査で、徐々に捜索範囲の絞り込みは行えている。順調と言ってもいいだろう。 「ヴィータ。迷子になるといけないから」 「子供扱いすんじゃねぇ!」 手を差し伸べる昌浩にヴィータが怒鳴り返す。しかし、手はしっかりとつないでいた。 「ええで。ええで。その調子でしっかり昌浩君のハートをつかむんや」 はやてが拳を握りしめる。 スバルとティアナはやや後方でそれを眺めていた。いつも明るいスバルがやけに沈んだ顔をしている。 「どうしたのよ?」 「いや、昌浩君とヴィータ副隊長、いい感じだなって」 「はっ?」 「シグナム副隊長も六合さんといつも一緒だし」 「いや、あんた、一片道場覗いてきなさいよ」 シグナムと六合はよく道場で稽古をしている。しかし、二人の気迫は実戦さながらで、ティアナはとても近づくことができなかった。色恋など甘酸っぱい要素の入る余地など微塵もない。 それに六合とだけいつも一緒にいるわけでもない。シグナムの稽古の相手は、六合、勾陣、朱雀の三人が交代で行っているようだった。 「あーあ。落ち込むなぁ。エリオとキャロもこの前デートしてたし、なのはさんもユーノさんといい雰囲気だったし。恋人いないのが、私だけみたい」 「フェイト隊長は?」 「なのはさんがいるじゃない」 「言ってること、おかしいからね?」 なのはの相手はユーノではなかったのか。 「それに、私はどうなるのよ」 ティアナが言うと、スバルはますますむくれた顔になる。 「私知ってるんだからね。最近、ヴァイス陸曹とよく話してるの」 「違う。違う。ヴァイス陸曹とはそんなんじゃないから」 「この前、ヴァイス陸曹の経歴調べてたくせに。いーよねー。バイク貸してもらったり、アドバイスしてくれたり、頼れる先輩って感じで」 慌てて否定するが、ティアナの顔が少し赤くなっている。まったく変なところだけ目ざとい。 「置いてっちゃうですよー」 皆、随分先に行っている。リインに促され、二人は慌てて後を追った。 一行は参道を進んだ。 スバルは、綿あめやたこ焼きなど両手いっぱいに食べ物を抱えて、笑顔全開で食べ続けている。さっきまで落ち込んでいたのに、すでに忘れてしまったようだ。 一番、はしゃいでいたのはヴィヴィオだった。出店を片っ端から覗いている。温かく見守るなのはは、本当に母親のようだった。 広場には櫓が組まれ、楽器の音色に合わせて大勢の人たちが踊っている。 「行くで、シグナム、シャマル」 「わ、私もですか?」 はやてたちが早速踊りの列に加わる。はやてとシャマルは楽しげだが、シグナムは少し恥ずかしそうにしていた。 「私も行こうっと」 スバルが遅れて参加する。見よう見真似だが、運動神経がいいスバルはすぐにコツを覚えたようだった。 「元気よね」 「お前はいかねぇのか? ティアナ」 「……すいません。そんな気分じゃないので」 「別にいいけど、たまには肩の力を抜かねえとばてちまうぞ」 「わかってはいるんですけど……ね」 ティアナは、ヴィータたちから少し離れた場所で広場を眺めることにした。日はすでに落ちているので、少し涼しくなってきた。 ぼんやりと観察しながら、ティアナは妙なことに気がついた。 昌浩が時折誰もいないのに、人を避けるように体をねじっているのだ。最初は浴衣が慣れないのかと思ったが、昌浩は毎年着ていると言っていたので、それはない。 「ティア、はい、これあげる」 踊りの輪から戻ってきたスバルが、ティアナに丸石のついた首飾りを渡した。スバルも同じ物をしている。 「これは?」 「お守りだって。えへへ、おそろいだね」 「そう、ありがとう」 ティアナは首飾りを受け取り、首から下げた。 「じゃあ、私、もう少し踊ってるから。ティアも楽しんでね」 「そうさせてもらうわ」 踊りの輪に戻るスバルを見送り、ティアナは参道に戻る。 喧騒の中を、ティアナはのんびりと歩いた。一人になるのもたまにはいいものだ。 (にしても、人が増えたわね) いつの間にか、人数が先ほどの倍くらいに膨らんでいる。ぶつからないように歩くだけで一苦労だ。 その時、ふと背後に気配を感じた。出店を眺めるふりをしながら、横目で窺う。 勘違いかと思ったが、一人の男がティアナを尾行していた。 年齢は二十歳くらいか。人込みのせいで顔は判別できない。 敵か、あるいはただの変質者か。まずは正体を見極めねばならない。 味方といつでも通信できるよう準備をしつつ、参道を外れて森へと入る。明りから遠ざかり、周囲の闇が密度を増す。 木々が影を落とす中、ティアナはクロスミラージュを起動させた。周囲に人がいなくなった頃を見計らい、振り向きざま銃口を男に突きつける。 「止まって。言っとくけど、これ当たるとかなり痛いわよ」 男の顔は暗闇でよく見えない。ティアナは油断せずに指示を出す。 「両手を上げて、ゆっくりと前に進んで」 「久しぶり」 ティアナは耳を疑った。それは聞き慣れた声だった。忘れたくても忘れられない大事な人の声。 「嘘」 手が震えて、狙いが定まらない。 月明かりに照らされて、男の顔がティアナの視界に入る。 「兄さん」 それは子どもの頃に死別したはずの兄、ティーダ・ランスターのものだった。 ティアナの兄、ティーダ・ランスターは優秀な時空管理局職員だった。しかし、ティアナが幼い頃に、違法魔導師を追跡中に戦闘になり、犯人に手傷を負わせるも殉職。その死は、心ない上司から無意味で役立たずだったと切って捨てられた。 それ以来、ティアナは兄の魔法の有効性を証明するため、遺志を継ぐため、兄と同じ執務官を希望している。 その兄と同じ姿をした男が目の前に現れた。 ティアナは混乱しながらも、頭を働かせる。 敵が心理的な揺さぶりをかけてきた可能性はほとんどない。ティアナの過去をスカリエッティがわざわざ調べるとは思えないし、やるとしても、なのはや、はやてを狙った方が効果的だろう。 ティアナの過去を知っているのはスバルや六課の仲間たちだが、彼女らがこんな悪質ないたずらを仕掛けるわけがない。 「こうやって、またお前と話せる日が来るなんて……」 「兄さんは死んだ! 会えるわけがない! あなたは一体誰なのよ!?」 話しかけられるたびに、ティアナの心が揺らぐ。子どもの頃のように、その胸に飛び込んで行きたくなる。 「まったく、昔から変わってないな。思い通りにならないことがあると、そうやって泣き喚いて」 兄の面影を持った男が、懐かしそうにした。 「それ以上、近寄らないで!」 ティアナは引き金に指をかける。しかし、指に力が入らない。大好きだった兄を撃てるわけがなかった。 男がティアナの胸元を指差す。そこにはスバルからもらった首飾りがあった。男はそれを外すように伝える。 警戒を解かないまま、ティアナは言われたとおりにする。 首飾りを外した途端、目の前の男が消失した。 「えっ?」 戸惑いながら、首飾りを再びつける。さっきと変わらぬ場所に男は立っていた。 ふと今日がどんな日か思い出す。死者の霊が帰ってくる日。 「その石をつけていると、幽霊が見えるようになるんだ」 「まさか……」 ティアナは参道を見ながら、首飾りを外した。参道を埋めていた人混みがいきなり半分になる。どうやら見えていた人の半分は幽霊だったらしい。 ティアナは首飾りをつけて、男と向き合う。 「じゃあ、本当に……本当に兄さんなの?」 「ああ」 ティーダが記憶と寸分違わぬ微笑みを浮かべる。 「兄さん!」 ティアナはティーダに駆け寄る。しかし、触れることなくティーダの体を突き抜ける。 「ごめん。さすがに触るのは無理なんだ」 「そんな……せっかく会えたのに」 「ずっとお前に伝えたい言葉があった。ティア、あの日、帰って来れなくてごめんな」 座り込むティアナを、ティーダは包み込むように抱きしめる。こんなに近くにいるのに、触れることもできなければ、温もりも伝わってこない。 「俺の力が足りなかったばかりに、お前に余計な物を背負わせた」 「そんなことはいい。触れなくていいから、幽霊でいいから、お願いだから、ずっとそばにいて」 ティアナが泣きながら、ティーダにすがる。 「それも無理なんだ。これは神様がくれた今日だけの奇跡だから」 「私は、兄さんさえいれば……他に何もいらない。だから……」 「ティア!」 兄の叱責に、ティアナはびくりと身をすくめる。 「お前には、もう大切な仲間がいるじゃないか」 ティアナの脳裏に、六課のメンバーの顔が次々と浮かんでは消えていく。最後に残ったのは、ずっと一緒に戦ってきた相棒だった。 可能性と才能に満ちあふれていながら、どこか危なっかしい。食べることが大好きで、普段は明るいくせに繊細な心の持ち主。 一緒に戦おうと言ってくれたスバル・ナカジマの姿を思い出す。 「……うん。そうだね」 「わかってくれたか」 「兄さん……体が……」 ティーダの体がうっすらと光を放ち始めた。 「ごめん。もう時間みたいだ」 自分のせいで苦しんでいる妹に一言謝りたい。その願いがティーダをここに留めている。その願いが叶った今、ティーダの体は無数の小さな光の球となって少しずつ天に昇っていく。 それはまるで蛍の光のようだった。命が尽きる最後の瞬間まで、何かを遺そうと輝き続ける蛍。 「待って、兄さん!」 「勝手な兄貴でごめんな。俺のことはいいから、幸せになってくれ」 ティアナの手が必死にティーダをつなぎ止めようとする。ティーダの手もティアナに重なるように動く。しかし、互いの手が触れることはない。 ティーダの瞳から涙が流れる。優しくて強かった兄が見せた初めての涙だった。 「お願い、神様! もうちょっと、もうちょっとだけでいいから!!」 ティアナの絶叫が響く。 「ティア、俺はいつも、いつまでもお前のことを……」 「兄さん!」 二人の祈りも虚しく、ティーダは光の粒子となって空に還っていった。 ティアナは兄が消えた虚空を泣き腫らした目で見上げていた。 参道からは、変わらず楽しげな喧騒と祭囃子が聞こえてくる。 「いるんでしょ?」 ティアナが声をかけると、二か所から同時に音が聞こえた。一人は足元の枯れ枝を踏み、一人は慌てて逃げようとして木にぶつかったらしい。 「出てきなさい」 やがてばつが悪そうに、昌浩とスバルが出てくる。二人とも赤い目をしている。 ティアナはのろのろとしたしぐさで涙を拭う。 「あんたたちは……」 「ごめんなさい! 俺の発案なんです」 昌浩がスバルの前に出て頭を下げる。 「わかってるわよ。それくらい」 ティアナは首飾りの石を握りしめる。こんな不思議な力を持った石が、露店に売っているわけはないし、スバルが手に入れられるわけがない。 レアスキル、見鬼(けんき)の才を昌浩は持っている。読んで字のごとく鬼を見る力なのだが、幽霊や妖怪なども含まれる。 なのはたちのように魔力を持っていれば、妖怪や怨霊など一定以上の力を持ったものは見えるのだが、魔力が微弱な普通の霊などは、見鬼の才を持つ者にしか見えない。 昌浩には、今日の夕方ごろから、ティアナに寄り添うようにしているティーダの霊が見えていた。昌浩はティーダから事情を聞き、願いを叶えるべく宝物庫から、人に見鬼の才を与える出雲石を探してきた。 しかし、直接渡すことができないので、スバルに頼んで渡してもらったのだ。 「…………」 ティアナが無言で昌浩を見つめる。 「ティ、ティア、盗み聞きしたのは謝る。でも、昌浩君はティアの為を思って……」 「それもわかってる」 心配で見に来てくれたことくらい察しが付く。それにほんのかすかだが、昌浩の呪文の詠唱も聞こえていた。少しでもティーダが長くこの世に留まれるよう、力を貸してくれていたのだろう。 「ところで昌浩君、この首飾り、もらっていい? お金なら何年かかっても必ず払うから」 「いいですよ。元々差し上げるつもりでしたし。じい様も許してくれます」 「そう。じゃあ、遠慮なく」 ティアナは昌浩の脇を通り過ぎながら、その肩にそっと手を置いた。 「……ありがとう」 消え入りそうな声でティアナが呟く。 「えっ?」 昌浩が振り向くが、ティアナはすでに参道に戻った後だった。 人込みの中を歩くティアナの後ろから、スバルが追いかけてきた。出雲石の首飾りはつけていない。昌浩に返したようだ。 「ティア」 「今日はもう帰るわ。こんな顔じゃ、さすがに出歩けないしね」 「じゃあ、私も」 「あんたはお祭りを楽しんだらいいでしょ」 「いい。今日はティアの側にいる」 「まったく。お節介なんだから」 ティアナは出雲石を握りしめながら、夜空を見上げる。満天の星がきらめいていた。 この石を持っていれば、いつかまた兄に会えるだろうか。 ティアナは首を振って甘い幻想を打ち消す。ティーダは今日だけの奇跡だと言っていた。おそらく二度目はない。 (兄さん。私はもう大丈夫) ずっと孤独だと思っていた。でも今は違う。スバルがいる。六課の仲間たちがいる。そして、兄がいつも見守ってくれているから。 ティアナは勢い良く右手を上げた。 「よーし、明日からまた頑張るわよー!」 「おー!」 スバルも元気に追従する。 二人は笑顔で安倍邸までの道を走り続けた。 目次へ 次へ
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リリカルブラッド クロス式・意外と壮絶な機動6課の慰安旅行 長編へ
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SS 1-257 『青髪ピアス=誘波説』 SS 1-258 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(2)』 SS 1-262 from本スレ SS 1-264 11巻嘘予告 SS 1-265 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(3)』 SS 1-276 『トリックスターズC』 SS 1-277 11巻嘘予告 SS 1-285 『とある幼女の打ち止め』 SS 1-289 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(4)』 SS 1-294 169 『ひとかたさんとあそぼう。~バッティングセンター編~』 SS 1-302 『ここだけ学園都市のスレ とリンク』 SS 1-307 不器用な男たち SS 1-308 とあるレプリカの嘆き SS 1-311 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(5)』 SS 1-326 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(6)』 SS 1-335 169 「とある魔術の禁書目録 Missing Page 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』」 『第二章 備える者たち Happy_Happy_Greeting(1)』 SS 1-344 『火野神作のとある訪問』(1) SS 1-348 とある錬金術師の願望 SS 1-349 344 『火野神作のとある訪問』(2) SS 1-352 悪魔大戦 SS 1-359 セイバーVSステイル SS 1-365 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第二章(2) SS 1-375(未編集) 異世界からの招待状 A_Gate_of_the_Strange_World(1) SS 1-380(未編集) 375 異世界からの招待状 A_Gate_of_the_Strange_World(2) SS 1-386(未編集) とある初秋の夜の物語 SS 1-391(未編集) 375 異世界からの招待状 A_Gate_of_the_Strange_World(3) SS 1-395(未編集) 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(7)』 SS 1-405(未編集) カエル医者のとある日常 SS 1-410(未編集) 375 竜王の結界 Imazine_Breaker(1) SS 1-421(未編集) 375 竜王の結界 Imazine_Breaker(2) SS 1-430(未編集) 375 竜王の結界 Imazine_Breaker(3) SS 1-434(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第二章(3) SS 1-447(未編集) 絶賛断筆中 SS 1-461(未編集) 375 第一回戦 Aureolus_Izard(1) SS 1-471(未編集) とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day(1) SS 1-477(未編集) ネクロノミコン プロローグ SS 1-480(未編集) 477 ネクロノミコン 1 SS 1-487(未編集) 169 しちゃいましょう heaven SS 1-488(未編集) 477 ネクロノミコン 2 SS 1-489(未編集) 471 とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day(2) SS 1-491(未編集) シスターズが鳴くころに SS 1-497(未編集) 169 「とある魔術の禁書目録 Missing Page 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』」 『第三章 演じる者たち Role_Praying_Game(1)』 SS 1-508(未編集) 471 とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day(3) SS 1-512(未編集) 上条当麻の憂鬱~御坂妹ルート~ SS 1-516(未編集) 愛のお弁当提供イベント(1) SS 1-522(未編集) 516 愛のお弁当提供イベント(2) SS 1-531(未編集) 無題(1) SS 1-539(未編集) 最終巻・嘘予告 SS 1-540(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第三章(2) SS 1-549(未編集) 375 大富豪大貧民 Strongest_and_More(1) SS 1-554(未編集) 375 大富豪大貧民 Strongest_and_More(2) SS 1-562(未編集) 375 大富豪大貧民 Strongest_and_More(3) SS 1-559(未編集) とある粋な方々 SS 1-565(未編集) 471 とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day(4) SS 1-573(未編集) 375 大富豪大貧民 Strongest_and_More(4) SS 1-579(未編集) 11巻嘘予告「幻想殺しと幸せの女神 (Imagine breaker (L)on(e)ly happy girl)」 SS 1-583(未編集) とある二人の一日 SS 1-587(未編集) 531 無題(2) SS 1-589(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第三章(3) SS 1-594(未編集) 169 嘘予告? SS 1-599(未編集) 375 第一回戦 Aureolus_Izard(2)? SS 1-604(未編集) とある幻想殺しのヒーロー気取り SS 1-607(未編集) 604 そげぶな戦い SS 1-630(未編集) 169 「とある魔術の禁書目録 Missing Page 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』」 『第四章 羽ばたく者たち Cinderella_March(1)』 SS 1-653(未編集) 641 とあるお嬢様寮の休日 SS 1-658(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第四章(2) SS 1-672(未編集) とある打ち止めと座標移動・次回予告風 SS 1-679(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(1) SS 1-686(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(2) SS 1-694(未編集) 黒子のとある日常 SS 1-699(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(3) SS 1-709(未編集) 『とある魔術のMissing』(1) SS 1-715(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(4) SS 1-725(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(5) SS 1-729(未編集) 709 『とある魔術のMissing』(2) SS 1-736(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第四章(3) SS 1-747(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(6) SS 1-758(未編集) 月姫クロスオーバー『DEEP BLOOD』(1) SS 1-771(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(7) SS 1-789(未編集) 375 不幸の中の一つ An_Accident_from_DAIHASEISAI(1) SS 1-798(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(8) SS 1-807(未編集) 641 とある授業の社会見学 序 SS 1-812(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(8)改稿 SS 1-826(未編集) 641 とある授業の社会見学 序-2 SS 1-830(未編集) 375 不幸の中の一つ An_Accident_from_DAIHASEISAI(2) SS 1-833(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第四章(4) SS 1-841(未編集) 198 『彼女にとってはすぺしゃるな週末(8)』 SS 1-845(未編集) 本日不幸な旗男 SS 1-850(未編集) 641 『とある授業の社会見学』第一章 Time Schdule Part-A(1) SS 1-860(未編集) 672 とある打ち止めと座標移動(9) SS 1-868(未編集) お食事券と激突する女達(1) SS 1-877(未編集) 868 お食事券と激突する女達(2) SS 1-881(未編集) 13巻嘘展開 SS 1-890(未編集) 868 お食事券と激突する女達(3) SS 1-899(未編集) 最終局面~意外なキャラで攻めれば許されると思った~ SS 1-905(未編集) 868 お食事券と激突する女達(4) SS 1-912(未編集) とある魔術の禁書目録外伝~僕たちの聖杯戦争~ プロローグ1 SS 1-921(未編集) 912 とある魔術の禁書目録外伝~僕たちの聖杯戦争~ プロローグ2 SS 1-927(未編集) 912 とある魔術の禁書目録外伝~僕たちの聖杯戦争~ プロローグ3 SS 1-935(未編集) 169 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』 第四章(5) SS 1-938(未編集) 868 お食事券と激突する女達 (5) SS 1-943(未編集) とあるやりすぎのヲークライ(1) SS 1-952(未編集) 943 とあるやりすぎのヲークライ(2) SS 1-954(未編集) 943 とあるやりすぎのヲークライ(3) SS 1-958(未編集) 868 お食事券と激突する女達(6) SS 1-960(未編集) 943 とあるやりすぎのヲークライ(4) SS 1-965(未編集) 943 とあるやりすぎのヲークライ(5) SS 1-972(未編集) 943 とあるやりすぎのヲークライ(6) SS 1-974(未編集) 943 Festival of large star IF(7) (=とあるやりすぎのヲークライ) SS 1-984(未編集) 641 『とある授業の社会見学』第一章 Time Schdule Part-A(2) SS 1-993(未編集) 943 Festival of large star IF (8) SS 1-999(未編集) 943 Festival of large star IF 嘘予告
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魔法少女リリカルなのはStrikerS 第3話 【集結】 はやて「目指した夢は、少し長い時を経て…今、やっと手のひらの中」 フェイト「思いと願いは違っても、一つの場所に集まって…一つのことを、今始める」 なのは「出会いと再会も、始まりはここから」 はやて「それぞれに進んでいく道の、ここは小さな通過点」 フェイト「集まり結ぶ、新しい絆」 なのは「魔法少女リリカルなのはStrikerS……始まります」 はやて「リィンのディスクも、ちょうどええのが見つかってよかったなぁ」 なのは「本日ただいまより高町なのは一等空尉」 フェイト「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官」 なのは「両名とも、機動六課へ出向となります」 フェイト「どうぞ、よろしくお願いします」 はやて「はい、よろしくお願いしますぅ」 はやて「機動六課課長。そして、この本部隊社の本部隊長、八神はやてです。 平和と法の守護者、時空管理局の部隊として事件に立ち向かい、人々を守っていくことが、 私たちの使命であり成すべきことです。実績と実力に溢れた指揮官陣。若く可能性に溢れたフォワード陣。 それぞれ優れた専門技術の持ち主の、メカニックやバックヤードスタッフ。 全員が一丸となって、事件に立ち向かっていけると信じています。まぁ、長い挨拶は嫌われるんで、 以上ここまで。機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした!」 フェイト「シグナム。ほんと、久しぶりです」 シグナム「ああ…テスタロッサ。直接会うのは半年振りか」 ファイト「はい。同じ部隊になるのは初めてですね。どうぞよろしくお願いします」 シグナム「こちらのセリフだ。だいたいおまえは私の直属の上司だぞ」 フェイト「それがまた…なんとも落ち着かないんですが…」 シグナム「上司と部下だからな。テスタロッサにおまえ呼ばわりもよくないか。敬語でしゃべったほうがいいか?」 フェイト「あぅ…そういういじわるはやめてください。いいですよ、テスタロッサで…おまえで」 シグナム「ふっ…。そうさせてもらおう」 なのは「今返したデバイスには、データ記録用のチップが入ってるから。ちょっとだけ、大切に扱ってね」 シャーリー「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦用空間シミレーター」 シグナム「ヴィータ。……ここにいたか」 ヴィータ「…シグナム」 シグナム「新人たちはさっそくやっているようだな」 ヴィータ「ああ」 シグナム「おまえは参加しないのか?」 ヴィータ「四人ともまだよちよち歩きのヒヨッコだ。私が教導を手伝うのはもうちょっと先だな」 シグナム「そうか」 ヴィータ「それに自分の訓練もしたいしさ。同じ分隊だからな。私は空でなのはを守ってやらなきゃいけねぇ」 シグナム「…頼むぞ」 ヴィータ「ああ。そういえばシャマルは?」 シグナム「自分の城だ」 なのは「私たちの仕事は捜索指定ロストロギアの保守管理。その目的のために私たちが戦うことになる相手は…これ!」 シャーリー「自律行動型の魔法機械。これは、近づくと攻撃してくるタイプね。攻撃は結構鋭いよ」 なのは「では、第一回模擬戦訓練。ミッション目的。逃走するターゲット八体を破壊。または捕獲。15分以内」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 シャーリー「それでは」 なのは「ミッション」 なのは・シャーリー「スタート!!」 リインフォースⅡ「ヴァイス陸曹,ヴァイス陸曹は皆の命を乗せる乗り物のパイロットなんですから、 ちゃーんとしてないと駄目ですよ!」 はやて「捜索指定遺失物。ロストロギアについては、皆さんよくご存知のことと思います」 「様々な世界で生じたオーバーテクノロジーのうち、 消滅した世界や古代文明を歴史に持つ世界において発見される、危険度の高い古代遺産。 特に大規模な災害や事件を巻き起こす可能性のあるロストロギアは正しい管理を行わなければなりませんが、 盗掘や密輸による、流通ルートが存在するのも確かです。 さて、我々機動六課が設立されたのには一つの理由があります。 第一種捜索指定ロストロギア、通称『レリック』」 フェイト「このレリック。外観はただの宝石ですが、古代文明時代に何らかの目的で作成された 超高エネルギー結晶体であることが判明しています。レリックは、過去に4度発見され、 そのうち三度は周辺を巻き込む大規模な災害を起こしています」 管理局幹部「おぉ……」 フェイト「そして、後者二件ではこのような拠点が発見されています」 「極めて高度な、魔力エネルギー研究施設です。発見されたのはいずれも未開の世界。 こういった施設の建造は許可されていない地区で、災害発生直後にまるで足跡を消すように破棄されています。 悪意ある…少なくとも法や人々の平穏を守る気のない何者かがレリックを収拾し、運用しようとしている、 広域時限犯罪の可能性が高いのです。そして、その何者かが使用していると思われる魔道機械がこちら。 通称『ガジェット・ドローン』」 「レリックを始め、特定のロストロギアの反応を捜索しそれを回収しようとする自律行動型の自動機械です」 ティアナ「バリア!?」 キャロ「違います。フィールド系?」 スバル「魔力が消された!?」 なのは「そう。ガジェット・ドローンにはちょっとやっかな性質があるの。 攻撃魔力をかき消すアンチマギリングフィールドAMF。普通の射撃は通じないし…… ティアナ「スバル、バカ危ない!」 なのは「それに、AMFを全開にされると…飛翔や足場作り。移動系魔法の発動も困難になる。スバル。大丈夫?」 スバル「っつ~。…な、なんとか…」 シャーリー「まぁ、訓練場では皆のデバイスにちょっと細工をして擬似的に再現してるだけなんだけどね。 でも、現物からデータをとってるし、かなり本物に近いよ~」 なのは「対抗する方法はいくつかあるよ。どうすればいいか、すばやく考えてすばやく動いて!」 シャーリー「へぇ~。皆よく走りますね~」 なのは「危なかっしくてドキドキだけどね」「デバイスのデータ、取れそう?」 シャーリー「いいのがとれてます。四機ともいい子に育てますよ~」 キャロ「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。「言の葉に応えよ、鋼鉄の縛鎖、錬鉄召喚、アルケミックチェーン」 シャーリー「ほへぇ~!召喚ってあんなこともできるんですね~」 なのは「無機物操作と組み合わせてるね。なかなか器用だ」 シャーリー「魔力弾?AMFがあるのに?」 レイハー「Yes, there is an available passing method.(いいえ、通用する方法があります)」 なのは「うん」 ティアナ「攻撃用の弾体を無効化フィールドで消される膜状バリアでくるむ。 フィールドを突き抜けるまでは入るだけ外郭が持てば、本命の弾は…ターゲットに、届く!」 なのは「フィールド系防御を突き抜ける多重弾核射撃。AAランク魔道師のスキルなんだけどね」 シャーリー「AA!?」 ティア「固まれ…固まれ…。固まれ…固まれ!!」 シグナム「中央のほうはどうでしたか?」 はやて「まぁ、新設部隊とはいえ後ろ盾はそうとうしっかりしてるからな。そんなに問題はないよ」 シャマル「後継人だけでもリンディ提督にレティ提督にクロノ君。んじゃない、クロノ・ハラオウン提督」 シグナム「そして最大の後ろ盾、聖王教会と教会騎士団の騎士カリム。ま、文句の出ようはありませんね」 はやて「現場のほうはどないや?」 ヴィータ「ん?…なのはとフォワード隊は挨拶後朝から夜までずっとハードトレーニング」 ヴィータ「新人たちは今頃グロッキーだな」 ヴィータ「ま、全員やる気と負けん気はあるみたいだし、なんとかついてくと思うよ」 はやて「うん」 シャマル「バックヤード陣は問題ないですよ。和気あいあいです」 シグナム「グリフィスも相変わらずしっかりやってくれてます。問題ありませんね」 はやて「…そうか。私たちが局入りして、かれこれ10年。やるせない、 もどかしい思いを繰り返して、やっとたどり着いた私たちの夢の舞台や。 レリック事件をしっかり解決して、カリムの依頼もきっちりこなして、皆で一緒に頑張ろうな」 ヴィータ「うん!頑張る!」 シャマル「もちろんです」 シグナム「我ら守護騎士。あなたと共に」 フェイト「新人たち…手ごたえはどう?」 なのは「うん。皆元気でいい感じ」 フェイト「そう。……立派に育っていってくれるといいんだけどね」 なのは「育てるよ。……あの子達がちゃんと、自分の道を戦っていけるように…ね」 次回予告 フェイト「出動に備えて、訓練の日々を続けるフォワードメンバー」 なのは「出会うのは、共に戦うパートナー。それぞれのための専用デバイス」 フェイト「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS第四話」 なのは「ファースト・アラート」 なのは・フェイト「Take off!」
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目次 PSO2【BLACK ALL THE WAY】国という概念 組織保安局 シュツルムリヒター シンジケート ウッズファミリー 黒王教団 登場人物 SS#1 Handyman #2 Hunt #3 Demons Out PSO2NGS【RADIANTS】 PHANTASY STAR ONLINE2 【BLACK ALL THE WAY】 二次創作小説オリジナルの設定多数、注意! これはPixivで投稿中の二次創作小説の世界観を紹介しているページです。 本来のゲーム内では登場していない部分の世界観を都合のいいように解釈・改変・考察しオリジナルの設定を考えた上で成り立っている世界なので、そもそもpso2である必要性は無といってもいいのですが、フレンドのキャラの設定を活かし活躍させる場としてPSO2の世界は非常に都合がいいので独自の世界観を展開しつつもPSO2というゲームを基に創作を続けています。以上を注意した上で、本作品を読んでいただきたいです。 PSO2【BLACK ALL THE WAY】 国という概念 〇〇番艦=ひとつの国家 ゲーム内でも無数のアークスシップの存在が示唆されているが、国という概念については明記されていない。NPCのアリスがオラキオ王国 (仮称)という国の話をしている以外で国というものが公式から明言されたことは恐らくないと思われる。そこでこの作品ではアークスシップ一隻を「一国」という風に認識することにしている。出身している国の差で、文化の違い、言語の違い、訛りなど、キャラクターの特徴付けがしやすいと思ったのでそうすることにしました。その上でアークスシップ数隻が結束・同盟を結び艦隊を作り上げることでその同盟を大国として認識するような形態も考えています。 市街地にも国の特徴が大いに現れているというような設定もあり、建築法や育つ農作物や果樹に違いがあったりする。 オラクル連邦政府 オラクル船団全域を統治している組織。アークスの六芒均衡をはじめとした、各艦各国の大統領たちが会している。 エウレカ同盟 六隻のアークスシップから成る艦隊をまとめ上げる組織。各国は同盟を結びダーカーだけでなく各国間における戦争においても協力し平和を維持する協定を結んでいる。六隻の船にはそれぞれ最高権力者がおり、それらが行政の管理をしている。エウレカ同盟に名を連ねている船は11番艦・27番艦・42番艦・51番艦・66番艦・94番艦の七隻。物語は27番艦。エウレカはそれぞれの艦の名前の頭文字を取って命名されている。 組織 保安局 人事・教育・法務・財務部門 国際テロ対策部門 国家安全保障部門 対策・国内テロ対策部門 情報及び技術部門 アークスシップ市街地においての犯罪の取り締まりを行う組織。緊急警報発令時には一般市民の避難誘導を中心として先陣で戦うアークスたちが戦いやすいように手を回すのが仕事とされている。 シュツルムリヒター 情報局参謀本部の秘密諜報部隊。三英雄の一人にして情報参謀本部主席のカスラによって率いられた隠密戦闘のスペシャリストたち。反政府勢力に所属するアークスを罰する為に編成されており、対ダーカー用の戦闘成績より対人戦闘に秀でた構成員が集められている。 シンジケート エウレカ同盟船団の華やかな表社会の陰に潜んだ巨悪。 マフィアやギャング・暴力団とよりどりみどりの犯罪組織と虚空機関が結託して生まれた連合組織。大手製薬企業「アルバス・バイオニクス」を隠れ蓑としており、新薬の開発の裏で、違法薬物の密造からその販売や輸出、薬害患者の治療と称した拉致監禁などを平気で行っており、表社会にも強い影響力を持っている為、それらの事実をすべてもみ消してしまっている。 元虚空機関研究員にして六芒均衡のカスラが放棄した研究、「造龍計画」を密かに引き継ぎ、カスラが思い描いていたものとは違った方向性にシフトして研究を続行した。研究によって生まれた「骸龍-クロームドラゴン-」から採取された血液や細胞の一部を人間に移植しクロームドラゴンのようにダーカーの持つ「ネガフォトン」をエネルギーへと変換する能力を有した新たな人類の創造を目論見、非人道的な実験を数々繰り返していた。 ウッズファミリー シンジケートに属する犯罪組織の一つ、マフィア。 まだルツが十代の頃に組織の用心棒として雇われていたことがあった。組織を抜けるときに実行不可能と言われた暗殺を成し遂げ、ルツとの関りは一切絶つ約束であったが、ルツがアークスと共謀して縄張りのナイトクラブを襲撃したのをキッカケに再度接触してきた。 組織のトップ「グレゴリオ・ウッズ」はかつて「絶滅大砲」の異名で恐れられたアークスだった過去がある。 黒王教団 ドルグワント石盤には黒王からの啓司が独自の言語「黒王文字」で記されている。石盤の数は六つ。元は大きな石碑であり、啓司は全部で8つあったとされている。 1. 死血に酔いし贄を成せ、漆黒より黒く穢れた血、生まるるは瞳を持ちし、永久の赤子 2. 終えし魂は血と共に、赤子に受け継がれる 3. 人ならぬ生り損ないの獣たち、血は赤子に骸は母の糧となり 4. 血の渇きだけが赤子を満たし、また赤子を鎮める 5. 漆黒を、闇を、深淵を拝礼せしは炎を恐れよ 6. 瞳を持ちし六つの器、揃いし時、飢えし母は赤子を食らう 7. 母は再び子を孕み永久の時を生き続ける 8. 血族喰らいは母を内から喰い破る凶星の兆し 母胎 エウレカ同盟内に六箇所存在する人工ダークファルスの研究所。表向きは身寄りのない子供たちを預かり独り立ち出来るように支援する孤児院を経営しているが、その実世界各国から戦争孤児などを集め儀式の贄として利用するなど非人道的に扱っている。 信徒構成図 総帥 教典をもとに計画を進める教団の最高指導者。基本的に表に出ることはなく、母のもとで母の世話をする 司祭 総帥の側近。総帥の言葉を以下の信徒に伝える役割を持ち、実質的な指導者に近い存在。各母胎に一人いる。 記人 アークスで言うところの情報部にあたる役割。情報や技術を総括し、また母胎の管理を担っている。 唱人 信徒と共に儀式を執り行う。降臨の唄を率先して唱和する重要な役割。 矛人 司祭を護衛する役割。司祭からの任命によりこの座に就くことを許される。 精鋭信徒 高い功徳と鍛錬を積んだ信徒。より複雑な使命が与えられる。 信徒 正式な教団員。信徒面を着用し、読経の訓練を受ける。 被験体 人体実験の為にダフマフォグ経由で連行された犯罪者や、各国から連れて来た戦争孤児 遂行員 司祭の命令により秘密裏に教団の計画を進めるアークス。任務は人物の監視、捜索、プロパガンダの流布、暗殺など多岐に渡る。 登場人物 + Lutz イメージCV:津田健次郎 名前:ルツ 表記:Lutz 性別:男性 種族:ヒューマン 年齢:26 職業:清掃代行業者(便利屋)・非正規アークス 趣味:映画鑑賞 好きなもの:辛い料理/野菜/コーヒー 嫌いなもの:野菜は好きだけどニンジンだけは嫌い イメージカラー:ワインレッド イメージソング:Rock and Load (DMC4 OST) 容姿 身長183cm、体重75kg。 身体の至る所にタトゥーがある。気に入ったデザインを見つけるとすぐに彫りに行くので、会うたびに増えていることもザラ。首から胸にかけて「Nec possum tecum vivere, nec sine te.」という文字が彫られている。 能力測定 戦闘経験:22年 (本格的な戦闘訓練を受け始めたのが6歳の時で、その後の人生は戦うことで自身の価値を示して来た 物理強度:A級 戦場機動:S級 クラス適正:ガンナー/ブレイバー → ファントム フォトン保有量:SS級 感応特性:聴覚 テクニック適性:メギド その他 かつて母親が強力な大型ダーカーに襲われて惨殺された時に、彼は母を守れなかった自らの無力さを強く悔いた。それゆえ絶対的な力を求めた。性格は冷酷非情。むやみに人殺しはしないが殺すとなれば躊躇せず、それは血を分けたダンテすら例外ではない。負けず嫌いの一面もあり、大成する弟を羨み嫉妬している部分もあった。 金に執着の無い性格と依頼を選り好みしている為借金まみれ(立て替えを恋人などにしてもらってるのか、金銭関係では頭が上がらない模様)というかなり堕落気味の生活をしているが、『ダーカー』が絡むと一転してやる気になる。 ー普通の依頼は札束を積まれても受けないが、ダーカーが絡んだ事件には1000メセタほどの報酬でも飛びつくという。ダーカーを狩ることが自身の義務・使命と考えている節があり、ダーカー狩りは無給で行うことすらある。 「粒子放射光過敏症候群」という珍しい病気を持っており、フォトンの光に過敏に反応してしまう。フォトン保有量の少ない非戦闘員とすれ違う分には問題ないが、上層などフォトン保有量が大きいアークスの多い場所では、体内から溢れ出るフォトンの光に中てられて発作を起こしてしまうため、市街地の外では特殊加工が施されたサングラスやゴーグルやマスクの着用が必須となっている。病気の影響もあって視力、眼はあまりいいとは言えず、戦闘などにおいては音と匂いそして気配で相手の位置を察知することに優れている。視覚の代わりに嗅覚が発達しており、固有の匂いを嗅ぎ分けて対象を覚えることが出来る。 現在は市街地の裏通りにある雑居ビルの二階を事務所として使っている。一階には弟分の「大熊猫」という少年が営むジャンクパーツショップがあり、彼も二階事務所を家として使っている。ルツは街のあちこちにいる友人や愛人の元で夜を明かすことが多く、自宅(事務所)にはあまり帰ってこない様子。 清掃代行の仕事や隣人の雑用を熟して近所との人間関係はかなり良好。事情を知っている隣人たちの間では出入りする人間に物騒な人が多いことから夜はなるべく近付かないようにするという暗黙のルールも存在する。 真面目とは言い難い人生を送ってきているため学はないが、経験による知識量は豊富で地頭はいい。 相手に対する印象 ニコラス → 双子の弟。絶対に負けたくない。 明日香 → 大事なクライアント。ビジネスパートナーにして友人でもある。 エマ → 娘みたいな存在。過去に救えなかった少女に重ねてしまう。 大熊猫 → ウッズファミリーに居た頃からの弟分。 アンジェ → 信頼できる整備士。大熊猫と幸せにな。 クロウ → 愛おしい。久しく会ってないけど元気にしてるか。 + Nicolas イメージCV:杉山紀章 名前:ニコラス 表記:Nico 性別:男性 種族:ヒューマン 年齢:26 職業:アークス 趣味:ゲーム 好きなもの:ゲーム 嫌いなもの:アボカド イメージカラー:コバルトブルー イメージソング: 容姿 能力測定 戦闘経験:10年(本格的な戦闘訓練を受け始めたのが16歳) 物理強度:S級 戦場機動:B級 クラス適正:ファイター/ブレイバー フォトン保有量:S級 感応特性:視覚 テクニック適性:グランツ 相手に対する印象 ルツ → ウィリアムズ → バーバラ → ネイサン → マトイ → + 大熊猫 イメージCV:村瀬歩 名前:リー・シェン 登録名:大熊猫(読み方はパンダ 性別:男 種族:ヒューマン 年齢:22 職業:リサイクルショップ店長 趣味:機械弄り/ラジコン操作 好きなもの:ガジェット 嫌いなもの:ピーマン イメージカラー: イメージソング: 【容姿】 金髪のマッシュ系の髪型。 目はいつも気だるげで 【能力測定】 戦闘経験:6年 物理強度:E級 戦場機動:E級 クラス適正:レンジャー フォトン保有量:D級 感応特性:視覚 テクニック適性:ザン系統 【戦闘スタイル】 基本前線には出ず後方からの情報支援などのサポートを専門としている。 過去の経歴からまったく戦闘が出来ないわけでもないが、拳銃が扱える程度で一般人に毛が生えたレベルで仲間たちの足元に も及ばない。 戦闘スタイルは基本銃器による遠距離支援。 【性格】 いつも気だるげで店先でもやる気のなさそうな無気力さが目立つ今時の青年。 【その他詳細事項】 ージャンク品を扱うショップの店長をやっているが、それはあくまで表向きの姿で実際には自身が製作したドローンを街中に配備し、人々を監視しクライアントが求める情報を収集する情報屋として活動している。 ー元は腕利きの少年ハッカーであり、ローゼンフロウ財閥傘下のファッション企業のセキュリティに忍び込み、そのデータを操作して株価の大暴落を引き起こす。しかしローゼンフロウの脅威の捜査力までは算段に入っておらず、あっさり確保されてしまう。その時、采配を振るっていたジョセフに、ローゼンフロウ財閥の最高セキュリティを突破した実力を認められ財団引き入れられる。 SS #1 Handyman あらすじ 友人が第11階層を仕切るヤクザ「ブラックウッズ」の下っ端から乱暴を受け、その報復に向かう明日香。 ウッズはシマで派手に暴れた彼女を抹殺するために始末屋を雇い、彼女を襲った。それがルツと明日香の出会いだった。 #2 Hunt あらすじ ルツは明日香の友人が乱暴された事実を知り、彼女を始末するのではなく逃がす道を選んだ。だがその結果、彼も彼女も組織に追われることになってしまった。相手を潰さなければいつまでも追われる生活が続くことを悟ったルツは明日香に組織の根城を強襲することを提案。提案に乗った彼女と共に、ウッズの拠点に殴りこむ。 #3 Demons Out あらすじ ウッズを壊滅させた一件のおよそ一か月後。 声を失った一人の少女との出会いから物語は混沌へと向かっていく。 移送中のトラックから逃げ出し無我夢中に走っていた彼女を救ったのは明日香だった。明日香は少女が誰かに追われていると知った、少女を匿うために第6階層の便利屋の事務所を頼った。 PHANTASY STAR ONLINE2 NEW GENESIS Ver.2 【RADIANTS】 これはPixivで投稿中の二次創作小説の世界観を紹介している項目です。 独自の設定や世界観で執筆していますが話の大筋はゲーム本編と同じように進行し辻褄を合わせるようにしています。 唯一完結した作品「That's my own life」の1000年後の世界という体で話を進めており、前作を読むと楽しめる要素をいつか組み込むつもりです。 PSO2NGS【RADIANTS】