約 2,307,644 件
https://w.atwiki.jp/lostring/pages/36.html
6/1 東京ラビリンス・トレーニングの詳細 こちらで協議中の情報をまとめています。 関連フォーラム:http //forums.findthelostring.com/thread/1748 Tokyo Labyrinth Training (June 1, 2008) Summary by GasKetz and its English translation by Rumiko 日時 2008年6月1日(日) 12 30までに集合 13 00より開始予定 ※このイベントは無事終了しました! 集合場所 原宿駅・明治神宮正門 集合した後、代々木公園に移動 ビデオ(Videos) (YouTube)3重のラビリンスを作っている風景 練習風景※ファイルサイズが大きいです メンバーの一部※ファイルサイズが大きいです (YouTube)21.9秒を記録した動画 カイさんから送られてきたストレングスシールとタトゥシール、 そしてトラックスティックです。 トラックスティックはDDincrementさんが保管しています。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s001.jpg) Nitrogen氏の残したメッセージ。 実際には集合場所に貼られていた。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s002.jpg) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s003.jpg) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s004.jpg) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s005.jpg) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s006.jpg) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (s007.jpg) ■このページに対する追記やコメント等あればこちらへ。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/798.html
「剣は紅い花の誇り」登場人間 佐鳴 武士 (さなる たけし) 華墨のオーナー。大学生くらいと推測される、バトルフリークの熱血バカ 金持ちの親の庇護の元、何不自由無い幼少期をのほほんと過ごして来たが、「親の職業」の内容を知ってから落ち込み、現在両親との会話は絶えて無い(だが、その両親の金によって養われているのもまた事実であり、本人はその事を厭いながらも何も言えないジレンマを抱えている) ネーミングセンスが独特で、「華墨」という名前はまぐれに近い。家に亀(ヴェートーベン君)とカメレオン(ボナパルト君)を飼って(?)いる グラマラスな体型の女性が好みらしい 神浦 琥珀 (こうのうら こはく) エルギールのオーナー。所謂ボクっ娘 製品版のストラーフを、そのまま人間サイズにしたような可憐な容姿だが、無表情で、口を開いても小難しい小言を言うかカオスな発言しか出来ない為、他人と会話するのはエルギールに任せている様だ(所謂無口キャラ風にキャラを作っているが、エルギールがいないとよく喋る) 年齢不詳で、その余りに完璧でゆらぎの無い造形から、噂の『人型神姫インターフェイス』ではないかと言われるw 爬虫類とミ●トバーンが好きで、深町昭を「毒にも薬にもならない面白くないひと」「気持ち悪い」と評して嫌っている 「魔女の剣」の製作者。所謂「魔剣匠」であり、『鬼奏』という神姫刀剣の専門店を経営(?)している 経緯は不明だが、槇野 晶とは知り合いである・・・その事実は後に、巨大な事件の伏線となる 武士同様、ネーミングセンスは独特で、彼女の魔剣は渡った先でオーナーによって変名を与えられる事も多い 西 梓 (にし あずさ) ニビルのオーナー。黒い長髪が美しい穏やかな感じの美女 川原とは相思相愛の中だが、今現在は忙し過ぎる川原の事を思い、結婚迄には至っていない模様 目を患っており、眼球の交換手術をするかどうか迷っている 川原の代わりに、「クイントス」に色々と便宜を図ってやっている様だ 20代後半くらいと思われる 妄想神姫の槇野 梓と名前が同じなのは筆者の不注意による偶然である(出番が少ない上に存在感が希薄なのでそれ程混乱する事は少ないと思うが、ヌルから「梓姉さま」と呼ばれる為、相当ややこしい・・・) 巨乳だが、腰と尻にエロスが足りないというのが、武士と琥珀の共通見解である 深町 昭 (ふかまち あきら) ウインダムのオーナー どちらかというと愛玩派に分類される平和主義者。毒にも薬にもならない優男だが、正義感が強い 皆川とは高校時代からの付き合いらしい 彼女が居て、その彼女の兄、板垣哲郎も槙縞ランキングのランカーである・・・どうも哲郎にそそのかされて武装神姫の魔道に嵌った様だw 皆川 彰人 (みなかわ あきと) キャロラインの現在のオーナーで、槙縞玩具店の店長代理。 深町の高校時代の先輩で、哲郎、深町、キャロと話す時だけタメ口 どう見ても悪役面だが、実際に悪役なのかもしれない。CV小西克幸 川原 正紀 (かわら まさき) クイントスのオーナー 元はフリーのルポライターだか何だかのロン毛のにーちゃんだが、現在は「神姫に人権を認めさせる運動」をしている団体のメンバーとして日本中を駆け回っている 剣は紅い花の誇り
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1189.html
前へ 先頭ページへ 次へ 第十六話 共鳴 着地する。 よく整備された滑走路のアスファルトが、その下の整地用に敷かれた土と一緒に飛び散る。小さなクレータがひとつ出来上がった。 長大な滑走路の向こうには、飛行船が発進した森があって、滑走路のところだけが開いている。終端部にはやはり、地下の格納庫へとつづくであろう大きなエレベータハッチが口を開けていた。 ――開いている? “前方ハッチより反応多数。ラプターです” エイダの警告。 直後、いくつもの光点がハッチから飛び出してくる。十、二十、三十、四十――、まだまだ増える。 「いまだあれほどの戦力を隠し持っていたとはな」 ビックバイパーアタッチメントを纏ったルシフェルが後方から追いついた。その後ろにはファントマⅡを装備したネイキッドの部隊。 「こっちの戦力は」 「私とお前を除いて三十だ。数だけなら圧倒的に足りないな」 話している間にも、ハッチからは次々とラプターが出てくる。 「エイダ、奴らの総数は」 “聞かないほうが賢明です” 人間くさい答えをするようになったな、とクエンティンは思う。 “単純物量差は十倍以上です” 「聞かなきゃよかったな」 「どっちにしろ、ぶっ倒さないと進めないんでしょ」 スラスターの出力を溜める。青白い余剰出力が羽の間からこぼれる。 「やるわよ」 「ふっ」 口の端に笑みを浮かべて、ルシフェルも構える。 「この場での戦力は正直に言って、私たち二体だけだ」 「一人頭だいたい一五〇体潰せば良いわけね」 クエンティンの背中の空間が展開し、細長い板状の物体がトランプを広げるように現れる。ホーミングミサイルである。エイダがあらかじめ解除しておいてくれていた。 左手を前方に掲げ、複数の標的をロック。 ミサイルの発射が引き金になった。三十二体と三百体超の神姫が、同時に突撃を開始する。 ◆ ◆ ◆ 「おかしい」 命令や報告がひっきりなしに飛びかう潜水艦のCICで、全戦域の概況を一括表示する正面スクリーンを凝視しながら、鶴畑興紀はつぶやいた。彼は指令席に座り、デスクに両肘をついて顔の前で手を組んでいる。 「どうしたの」 その傍らに立っていた理音が訊く。 状況は素人目に見ても順調であるはずだった。いや、順調すぎて気持ち悪いくらいであり、何か突拍子もないことが起こるのではないかという予感が理音にはあった。 「上手く行き過ぎてるのが怖い?」 「そうじゃない」 興紀は首を振る。眼鏡を取り、眉間を抑えて深呼吸を一つすると、いつのまにかいなくなっていた執事がタイミング良く戻ってきて、湯気の立つブラックのコーヒーを置いた。 コーヒーを冷まさず一気にあおる。興紀が飲めるくらいの温度にしてあるのかもしれない。空になったコップを執事が持ってゆく。 「向こうの戦力の浪費が激しい」 それが自分の問いに対する答えであると理音が気づくのには少し時間がかかった。興紀の動作に見とれていた。 「それは……、良いことなんじゃなくて?」 「そうなんだが」 トントン、とデスクを指で叩く。 「引っかかるんだ。向こうが全力で抵抗していないように感じられる」 「切り札があるとか――」 「これは段取りの決められたアクション映画じゃない。切り札があるなら最初から使う。最初から全力でやる」 「突入部隊からは。人間のほうの」 「まだこれといった報告はない。多少の交戦はくぐっているが、おおむね順調だ。さしたる抵抗もせずに敵兵があっさり降伏したところもあった。調べた結果が先ほど来たが、敵兵士はそのほとんどがはした金で雇われた傭兵だったそうだ」 「じゃあ、虎の子の飛行船団が落ちたからかしら」 「たしかにあれは奴の作戦の要だが、それならば撃墜された時点で全面降伏するはずだ。いまもって抵抗を続ける意味の方が不明瞭になる」 つまり、抵抗を続けている理由が立つと抵抗の弱さが疑問になり、抵抗を止める理由が立つと今度は抵抗を続けている事実に首をかしげざるをえない、ということである。 「現に抵抗が続いているのだから、まだ諦めていないんじゃないの」 「アーマーンを動かすのか。だがジェフティがこちらの手にある以上、起動することはできないだろう。できたとして、先日捕獲した折にやっているはずだ。おそらくクエンティンと融合していることが起動を阻んでいる要因だ。だから私もクエンティンを戦力として送り込めたんだ。人為的に分離させることは不可能なようだからな」 顔の前で手を組み、ふたたび正面スクリーンを見つめる興紀。 「向こうの行動がそれぞれ、微妙に噛み合っていない。何かがおかしい」 息をつく。今度はため息だった。 「ただの時間稼ぎか? 私は何か思い違いをしているんじゃないのか……?」 デスクに置かれた書類を取る。 例のジェフティ、アヌビス、そしてアーマーンの関係を描いた簡略図であった。狼、アヌビス神のアイコンとヒヒ、トート神のアイコン、その真ん中にある、円形の、島らしきアイコン。アーマーン。中心には逆三角形の中抜きがあり、さらにその中にこちらを睨むような半円がある。半円の周囲には円周が一本引いてあって、その円周上には点が一つある。 興紀の背筋を悪寒が走った。 「これは、島ではないのか――?」 『D部隊がアーマーンの指令センタードア前へ到達!』 オペレータの一人が興奮した面持ちで声を張り上げ、反射的に興紀は疑問を脇にやった。 「突入しろ。ブービートラップに注意だ。ノウマン以下中心メンバーの身柄は全員確保。不可能なら――射殺しろ」 すばやく命令を出す。オペレータが一字一句そのまま部隊へ通達。スピーカから部隊長の復唱が聞こえた。 予定よりも非常に早いクライマックスを、理音たちは迎えていた。 ◆ ◆ ◆ ミサイルの直撃を喰らったラプターがエレベータハッチの奈落へ墜落してゆく。 “進行エリアの敵、全滅。味方残存、十二” 「戦力の三割以上の損害。戦略的にはこっちも全滅ね」 二百メートル以上はあろうかという格納庫の穴をクエンティンは見下ろす。 ナトリウムランプの煌々とした照明がくまなく照らすが、飛行船はともかく、待ち受ける敵の姿がない。 「突入部隊が指令センターに到達した。メンバーは全員拘束されたそうだ」 戦闘後の斥候を終えたルシフェルが降り立つ。 「あれ、じゃあ、もうおしまい?」 「あっけなさすぎるがな」 ものすごく歯切れが悪いが、案外こんなものなのかもしれない、とクエンティンは思った。現実はそうドラマチックにはいかないものだ。 今までが劇的すぎたのだ。夜食を買いに出た道端で新型のプロトタイプと運命的な出会いをして、武装神姫の今後を揺さぶる大事件に巻き込まれて。 全てが終わった今となっては、貴重な体験をさせてくれた皆々様に感謝、そんな気持ちだった。 特にエイダに対しては。 「ねえ、エイダ」 無言。 「エイダ、さっきから戦闘サポートばっかりで一言もおしゃべりしてないけど、どうしたの?」 エイダは答えない。 すると、まったく唐突に、全チャンネルで通信が繋がった。 『こちら司令室。全員警戒態勢。非常事態だ』 「マスター?」 ルシフェルが眉に疑問符を浮かべて応答する。 「どうしたんです。中心メンバーの身柄は確保したのでは?」 『ノウマンが自殺した』 首の後ろのあたりに寒さが走ったような感覚をクエンティンは覚えた。 「ちょっとちょっと!」 通信に割りこむ。 「じゃあ別にいいじゃない。肝心の首謀者が死んだんでしょ? 警戒態勢しく必要なんてどこにも――」 『アヌビスの行方が分からなくなっている』 今度こそクエンティンはぞっとした。 『アヌビス、つまりデルフィのオーナーはノウマンに設定されている。オーナーが死亡、またはその他の理由で神姫とのコミュニケーションが恒久的に不可能になった場合、安全のために神姫のAIは機能の一切を停止して強制スリープモードに移行する』 そんなことは知っている。オーナーが知らなくても、武装神姫なら誰でもデフォルトで組み込まれている機能であり、知識だ。 『だが、デルフィが機能停止した痕跡がない。現在アーマーンの全階層を総動員で捜索しているが、まだ発見されていない』 「それってまさか、デルフィが自律駆動しているってこと?」 オーナーの束縛なしに。 『その可能性は非常に高い』 そんなことがありえるのだろうか。 オーナーの存在は、人間が考える以上に神姫にとってかけがえのないものだ。たしかに人側から見れば、「オーナーが死ねば神姫は強制スリープモードに移行する」だけなのだろうが、神姫にとってオーナーを失うということは即座に自らの存在理由の否定に繋がる。原則として、オーナーのいない神姫はありえない。神姫は神姫である以前にロボットであり、ロボットは人間に命令されることで存在理由とアイデンティティを発生させる。 命令する人間のいないロボットは発狂するのだ。 AIのなかった時代ならば、そうした人間とロボットの関係はあいまいで確立しておらず、ゆえにロボットの発狂などという現象は起こることもなかった。 しかし、AIは自ら考え行動する、意思を持ったロボットである。AIの誕生とともに、命令する人間との関係の確立はなくてはならない事項であった。命令する人間がいるからこそ、AIは安心して行動できるのである。 特に武装神姫はそのシステム上、オーナーと神姫、という図式で、他のどんなAIよりも「命令する人間」と「命令されるロボット」との関係を密にする。だからこそ複雑でフレキシブルな命令をこなすことができ、自ら学んで成長する、まるで人間のようなAIが生まれたのである。 オーナーの死亡等によるコミュニケーション不可能から行われる強制スリープモードは、発狂しないための安全策なのである。もしもこのプロセスが何らかの原因で実行されなかった場合、神姫は発狂する。 ではなぜ、オーナーのいない野良神姫がいるのか? これは、その神姫がオーナーのコミュニケーション不可能状態を観測していないからである。神姫の中では、オーナーが不在=オーナーの死亡とはならないのである。これが神姫のAIが画期的たるゆえんで、つまり解決しない問題(タスク)をほうっておくことができるのである。普通のコンピュータはタスクが解決しない場合、無限の思考ループに陥って大抵フリーズする。神姫にはそれがない。野良神姫はとどのつまり、命令待ちの状態で自ら判断して行動しているわけである。そしてオーナーとの密な関係のために他の人間の命令を聞かない(「命令を聞いた方が都合がよい」と判断した場合、命令に従うこともある)。まさに野良である。 発狂した神姫を、幸か不幸かクエンティンはまだ見たことがない。もしも自分のオーナーが、理音が死んだら――。そうふと思うだけで、たとえようのない不安と恐怖が押し寄せてくる。 では、エイダは? 彼女には―― オーナーがいない。 ではエイダは発狂しているのだろうか? どうもそうとは思えない。 「エイダ、アンタってさ――」 足元の奥深くから殺気を感じた。 「ひっ!?」 思わず短く悲鳴を上げてしまい、数センチほど浮いてしまう。 「どうした?」 傍らのルシフェルが手を伸ばす。 バシッ! 「っ!」 クエンティンの体に触れる寸前、ルシフェルの手は見えない何かに弾かれる。 ルシフェルは目を疑った。 クエンティンの全身のエネルギーラインが赤く明滅している。 「最下層、バラストタンク……」 独り言のようにぼそりとつぶやくのを、ルシフェルは聞いた。 「なに?」 「共鳴してる。エイダとデルフィが。すっかり忘れてた。二人は双子みたいなものだって」 寒さに震えるように、自らの身体をかき抱くクエンティン。 「アイツ、呼んでるわ。ちょっと行ってくる」 バースト。そのまま爆発的な急加速。衝撃波で吹き飛ばされるルシフェル。 「クエンティン!」 ルシフェルの静止も聞かず、格納庫の穴へ急降下。バラストルームへと続くルートがヘッドアップで表示。深い。地下七六〇メートル。島の底辺から太いシャフトでぶら下がっている、四つの丸い大きなタンクが立体映像で映る。 デルフィはそこにいる。クエンティンにはそれがわかる。 不可解なのは―― そこに、ノウマンの反応もあったことだ。 つづく 前へ 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/321.html
そのじゅうご・みっつめ「さあ反撃の狼煙を上げろ・3――ジジィと神姫――」 件の強化案にもあったのだが、どうも親父はこのジイ様――母さんの父親――に何らかのツテを求めていたらしい。 僕のジイ様は、趣味を仕事にしている人で、「息抜きと人生は同義語だ!」と言って憚らないダメ壮年だったりする。 はっきり言ってしまえば、親父のアップグレード版。……ダメさ加減が上位種って、マイナーダウンじゃなかろうか? そんなジイ様が趣味でやってる仕事ってのが、小説家だったりする。桜田柄今(さくらだ・つかいま)というペンネームで、『デヴォ探シリーズ』という連作ミステリを執筆している。かくいう僕はその一編すらも読んだ事はないけど、どうも好評らしい。 僕の主観だけで言わせて貰えば、こんないい加減なジイ様が作家だという事実に心苦しさを感じないでもない。はっきりと、端的に言ってしまえば、「他の作家先生たちに謝れ!」 という心境だったりする。 要するに、ダメ大人っぷりを目の当たりにする親類としては、そう言わざるを得ないくらいの特異なパーソナリティーの持ち主ということ。 まぁ、そんなジイ様は、そのシリーズモノのおかげかなんかで、玩具メーカーやその他色々なところにコネを持っていたりする。 親父はそこに目をつけていたらしかった。 今、僕とティキはチョット大きめな一軒家の真ん前にいる。 お屋敷とか館とか、そこまでの規模では決して無いけど、それでも一般的には『広い』と認識される一軒家。 まぁ立地条件が良かったと言うか悪かったと言うか、とにかく不便な所ではあるので、これくらいの広さがあっても、安く購入できたらしい。 決して大きくは無い門には『葉月』と彫られた表札が掛けられていた。 ここの家の家主は葉月総(はづき・そう)と言う名の60過ぎのジイ様で、オタク気質の持ち主。更に付け加えるなら、自分と趣味が合うからといって快く娘をその男のところに嫁に出したという逸話まで残す変人。そして、僕の亡父に武装神姫を進めた張本人。 つまり僕の、紛れも無く血のつながった祖父。母の父親。親父の言うところのお義父さん。 ……諸悪の根源。 いや、ジイ様のおかげでティキと出会えることが出来たわけだから、感謝すべきなのか? 兎に角、僕らは休日を利用し、わざわざ交通の便も少ないこんな僻地までやってきたわけだ。 田舎だけあって、庭も広い。いや、あくまで庶民感覚で。 それでもティキは感じ入ったらしく、しきりに感嘆の声を上げ、キョロキョロとあたりを見回した。 さすがにご近所さんで、これくらいの規模の個人宅なんて無いからなあ。一応新興住宅地だしね、僕の家の周りは。 十数歩も飛び石を歩き渡ったところで玄関にたどり着き、僕は呼び鈴を鳴らす。 待つこと数秒。 「よく来たな、ボウズ」 そのむやみやたらに勘違いした若作りファッションのジイ様は、ニカッと不自然に白い歯を見せて笑った。 居間に通された僕達は、なんだか居心地の悪さを感じていた。 何でこの家は神姫にお茶を運ばせてるんだろうね? 四体の神姫たちは手馴れた様子で僕らをもてなしてくれている。 で、当のジイ様は上座でどっしりと座っていたりする。 ……この家じゃこれが普通なのか? 「バアさんに三行半突きつけられてから、一人暮らしで何かと不便でなぁ。神姫たちが家に来てからすっかりと楽になったよ」 やっぱりこれが普通なんだ…… 「マスタ、ティキも手伝いした方がいいですかぁ?」 こっそりと僕に聞いてくる。それに対し、僕は小さく首を横に振った。 この状況が平素なものだとしたら、僕やティキが手を出すのは遠慮した方がいい。それこそ大きなお世話ってヤツだ。 「でボウズ。今日は何のようかね?」 ジイ様は緑茶を啜ると僕に笑いかける。 その笑顔は何処か邪悪めいていて、うがった見方なのを承知で言わせて貰えば、「ようやくお前もこっちの世界に来たか。それ見たことか、この隠れオタめ!」と言ってる様に感じられる。 「くっくっくっ。ようやくお前もこっちの世界に来たか。それ見たことか、この隠れオタめ!」 …………本当に言いやがった! 「しかし女に振られてからやっとこさ本性顕にしたつーのがなんとも情けないが」 止めまで刺す気か! 「大方ボウズの事だから、ティキちゃんの愛らしさを見てコロッと態度を代えたんだろ? 『萌ー』とか言って。……まったくムッツリだな」 言ってねーよ。更にいらんレッテルまで貼ってくれたよ、このジイ様! そこまで言うとジイ様はテーブルに用意されていた大福に手をつける。 「で、萌々エロボウズ。用件を早く言わんかい」 「誰が『萌々エロボウズ』か!」 「マスタは『萌々エロボウズ』なのですかぁ!?」 「ちっがーう!」 このジイ様は昔っから僕をこういう風にからかって遊ぶのが大好きだったんだよ。 普通孫にこんな仕打ちするか? 「相変わらずからかい甲斐があるボウズだな。……まぁ、ボウズがオレッチを訪ねて来た理由に心当たりもないわけではないが……どうせなら本人の口から聞かせてくれんか?」 人の悪そうな笑みを浮かべながら飄々と言ってのける。 実際敵いません。お手上げ。母さんがしっかり者なのも良くわかるよ。ホント。 反面教師がこうも間近に居るんじゃ、ああもなる。 「……武装神姫の、ティキの武装強化案。親父が頼んでいたパーツを受け取りに来たんだ」 僕はジイ様の目をしっかりと見据えて、はっきりと口に出していった。 ジイ様はニヤリと口を歪ませる。 「別に、ボウズにやってもいいけど、ありゃあボウズの手にゃ余るぞ?」 「それでも、譲って欲しい。親父がやりたかった事をやり遂げたい、から」 「旦那さんが最後に残した物を、無駄にするのはイヤなのですよぉ」 ジイ様は口元を歪ませたまま僕らをジッと見定める。 うーん、なんとも居心地が悪い。 おもむろにジイ様はお勝手に向かって声をあげた。 「おーい、ヒワよ。あのパーツを持ってきてくれ。アトリ、お前は例のメモを」 「畏まりました」 「了解です」 すぐさま返事が返ってきて、待つこと数十秒。 仲居さんの格好に、ウイングユニットを取り付けたアーンヴァルのヒワが、箱を抱えて飛んで来る。ホテルマンの制服を着て、アームユニット、レッグパーツを装備したストラーフのアトリがメモの束を抱えてやって来る。 先ほどから、ある意味珍妙な格好の神姫が四体、僕らを接客しているのだから、居心地だって悪いというものだ。 ……こんな趣向の持ち主だからバア様が出て行くんだよ。 心の中でそっと嘆息。 そんな僕に気が付いているのかいないのか、ジイ様は二体からそれぞれ持って来てもらった物を受け取り、それぞれに礼を言う。 その細やかさが何で生身の、それも肉親に向けられないのかな? 「さてと、これが修芳(あつよし)君から頼まれていた物だ」 そういって二体の神姫より受け取った物を、僕の前に差し出す。 ちなみに、修芳というのは親父の事。 「これと、先に届いていた演算ユニットで、修芳君の構想していたユニットは完成するはずだ」 ジイ様は滅多に見せることがない真面目な顔で言う。 「一応このメモには大まかな回路図が記されているが、間違いなくお前には理解できんだろう。それでも、これを持って行くか?」 「うん。それでも僕はこれを完成させる。させてみせる」 僕も、ジイ様に負けないくらいの気持ちを持ってジイ様に告げた。 「……わかった。持って行け。本当なら修芳君に代金を請求するつもりだったが、これは修芳君への弔い代りだ」 ジイ様は残ったお茶を煽るように飲み干した。 「……ところでジイ様」 「なんじゃい」 「演算ユニットって、どこ?」 「あ? アレなら修芳君がすでに持ち帰ったぞ」 親父が持って帰っているのか。うーん探して見るか。 だけど本当はこういうコネって、なんかズルしてるみたいで好きじゃないんだけど。 言い訳だよなぁ。 言い訳だけど。 言い訳に使いたくはないけど、親父の思いに答える為に、僕のくだらないプライドはこの際無視してしまおう。 その後、僕らはジイ様と食事をし、ジイ様の家を出るころにはすでに夕暮れ。暗くなるとこのあたりは本当に真っ暗になるというので、僕らはお暇することにした。 「ジイ様、ありがとう」 「ありがとうなのですよぉ♪」 僕らはジイ様にお礼を言うと、ジイ様は照れたような顔をして。 「イイんだよ。気にすんな」 とだけ言う。 「それじゃあな」 そう素っ気無く言うと、ジイ様はそのまま玄関の戸を閉めようとした。 が、その時、 「先生。私お見送りに行ってきます」 ヒワはジイ様にそう断わると、スーッと外へと飛び出す。 「そうかい? じゃあ頼むな」 そう答え、今度こそジイ様は玄関の戸を閉めた。 「別にまだ明るいから大丈夫なのに」 申し訳ない気持ちになって、僕はヒワに言った。 「いいのですよ。ここら辺は何も目印がないので迷いやすいのです」 「そうなのですかぁ?」 「はい。……それと、雪那様にお話もありまして」 僕とティキは顔を見合わせる。 「移動しながらお話しましょう」 ヒワはそう言うと進み始めた。 家の門を潜り、角を曲がったところでヒワが口を開く。 「雪那様。お願いが御座います」 金髪に和服、そしてウイングユニットを装着したその神姫は静かにそう言った。 「時折、本当に稀で構いませんので、たまにこうして先生を訪ねてきてはくれませんか?」 「え? いや、まぁそれは。別に構わないけれど……なぁ」 僕はヒワの言葉に答え、ティキに同意を求める。 「ティキはまたお爺さんと遊びたいのですよぉ♪」 ティキは元気良く答えた。 「有難う御座います」 ヒワは浮遊しながらも器用に頭を下げる。 ここで「なんで?」と聞くのは、鈍感が過ぎるか? 「……先生は奥様が出て行かれた後、大変に塞ぎ込んでいたと言います。私達が先生の所でお世話になってからも、時折寂しい思いをされているようです」 …………………… 「それでも今までは、時折修芳様がいらっしゃっていましたので、元気にやっていたのですが、その修芳様が亡くなったからは、さすがに気落ちしたご様子で……」 僕も、ティキも、項垂れてヒワの言葉を聞く。 「それでも私達の前では気丈に振舞って居られますが…… そんな先生を見ているのは悲しいのです」 バア様が今でもジイ様と連絡を取っているのか僕はわからないけど、少なくても母さんはあまりジイ様と連絡を取り合っていない。 別にジイ様と母さんが仲が悪いと言うわけじゃないけど、男親とその娘って、そんなもんなんだと思う。 加えて、なぜか親父はジイ様と仲が良かった。親父はジイ様を本当の親以上に思っていたと、聞いたことがある。 そういう事をちゃんと考えたら、やっぱりジイ様も寂しいのか、な……? 「大丈夫だよ。僕はちゃんとジイ様が好きだから。また来るよ」 「ティキもまた来るですよぉ☆ もっと、いっぱいお話したいですぅ♪」 僕達は勤めて明るくそう言った。 それを聞いて、ヒワは優しく微笑んだ。 そんなこんなで必要なものとそれに伴うある程度のヒントを手に入れたが、僕は案の定それを完成させる事が出来ずにいた。 当然だよなぁ。僕は専門家ではないし、その手の知識に明るいわけじゃない。 神姫のオーナーになってから多少はそういう知識に明るくなってはいたけど、それでも僕の手には余った。 ジイ様が指摘した通りの結果、というわけだ。 だけどやっぱり諦めるわけには行かない。 専門的な知識が僕にないのであれば―― ――専門家に聞けばいいじゃないか。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2652.html
休日。 昼の中頃。ゲームセンター前。 「ついにこの時か」 「そうですね、ここまでの日がものすごく長く感じられたような気がします」 目の前には入口、僕たちはいつものゲームセンターの扉前に立つ。 今日は宮本さんイスカたちとの戦いの日だ。 家出していたシオンを拾ってから今日まで色々なことがあったが、今日でどのような結果であろうとも決着がつく。 もちろん勝つつもりでいくつもりだ。 だが、イスカは淳平の神姫ミスズを簡単にあしらった神姫だ。 実力差が当然ある。 負ける可能性のほうが多い。 (あー! 駄目だ駄目だ! こんなネガティブになってちゃダメだ) パンッ! 「よっし、行くぞ!」 「きゃ、螢斗さん? どうしたんですか」 「な、なんでもない。行くよ」 両頬を思いっきり痛いほど叩いて気合いを入れた。 暗い思考を追いだすように。 頬を叩いた音にシオンがビックリしてしまったが、今は……存外自分でやった頬が痛かったので説明はなし。 見渡せばいつもの通り、学生ぐらいの人たちがちらほらといる店内。 今日は誰も仲間を呼んではいない。僕らは自分たちでケリをつけなくてはいけないからだ。 僕たちはただ単に今日バトルをするだけの客。それだけだ。 そして、奥を見れば、異彩な雰囲気を放っているオーナーと悪魔型神姫がいる。 凛とした態度の宮本さんと、赤い大剣を持ったバイザー姿のイスカだ。 「こんばんわ、長倉君とシオン」 「こんばんわ」 僕と宮本さんはいつもの挨拶を済まし、視線を合わせる。 あちらはどう思っているのだろうか。 元々持っていた自分の神姫と戦う事。様々な思惑が渦巻くこの戦い。 本当に僕はあの日から奇妙なことに首を突っ込んでしまったなと思った。 でも後悔はしてない。 「ステージは廃墟街でもいいかしら?」 「はい、大丈夫です」 好都合だ。この前にアリエと戦った場所なら有利に働くかもしれない。 でも、指定してくるという事はあちらとしてもメリットがあるのかもな。 「…………」 そう思ってからイスカの方を見ると、イスカはもう宮本さんの元を離れ筐体のオーナーブース前に一人で行ってしまった。 本当に何も言わないんだな。 前口上とかシオンに対しての挨拶とかはないのか。 宮本さんはイスカを横目で見るとシオンに話しかける。 「ごめんね、シオン。イスカは認めたくないのよ。あなたが私たちから離れてバトルできるようになった事実がね」 宮本さんは悲しそうな顔でそう言う。 「でも……」 シオンは言葉に詰まりながらも、なにかを言おうとするが。 宮本さんはそれを制して首を横に振る。 「私ももう少し真剣にあなたを大事にしていれば、長倉君みたいにバトル恐怖症を治せたのかもしれなかったわ」 「もう取り返しがつかないのにね」と最後にフフっと自傷的につぶやく。 それは悲しすぎます、宮本さん。 あなたは存分に大事にしていた。ただ、みんなの中で行き違いがあっただけでイスカだってシオンの事をわかってくれれば……。 僕はありのまま考えたことを言おうとした。 でも、先にシオンが宮本さんを見上げて話していた。 「私は逃げてしまいした。それは確かに変わらない事実です。……でも、私はマスター宮本 凛奈さんの武装神姫であったことを後悔していません。もちろん拾ってくれた螢斗さんのことを誇りに思っていますが、私は今も凛奈さんを大事に思っています。お姉ちゃんにも私から全部話します……だから、そんな悲しそうな声を出さないでください」 穏やかに優しく、恨みなどまったくないことを示すシオン。 「……ありがとう、シオン。いいバトルをしましょう」 清らかなシオンの瞳から底が見えたのか、顔をそむけてから礼を言う宮本さん。そして宮本さんも台について行った。 僕が言う前にシオンが全てを言った。 シオンの方がよっぽど宮本さんがわかっている。 いや、それは当り前なんだよな。元々あちらの神姫なんだ。 僕が説教臭いことを言っても、シオンの言葉の方が何倍も説得力があることだろう。 と、僕が深く考え込んでしまったのをシオンは見ると、何を勘違いしたのか慌てて言い訳をしだした。 「いや、大事に思っていただけですよ! けど、今の私には螢斗さんが一番というか、私自身にも言い聞かせる為にあんなこと言っただけでして、他意はないんですよ!?凛奈さんにも悲しい顔をしてほしくなかっただけでして……あうー、なんて説明すれば良いんでしょうか……」 「ふふふ」 そんな必死に言い繕うシオンを見てたら、なんだかおかしくなり笑ってしまった。 「あ、なんで笑うんですかー。私は本気で螢斗さんのことを――」 「わかったって、ありがとうな。シオン」 「もう、……うふふ」 シオンを可愛く思い頭を撫でる。 シオンのこんな姿を見てたら嫉妬とか馬鹿らしくなった。 今は思いっきりイスカとバトルすることを考えよう。 “壁”を乗り越えるための戦いをするために。 「じゃあ、いくよ。シオンの為の最後の戦いに」 「あ、はい。螢斗さん、頑張ります」 ―――― 廃墟街のビルの上。 シオンは廃ビルの間を飛び飛びでブースターを使い疾走していく。 索敵中だ。センサーで大まかな場所すらわからない。イスカはジャマーの装置でも積まれているのか、いまいち居所がつかめないらしい。 だからこちらは高い場所から探しているのだけど、なかなか見つからない。 あの大剣を持っているか、持っていないか、で速度が違うのだろうか。 「イスカはこういう時どんな行動するかわかるか?」 「お姉ちゃんのバトルでは……こういう時奇襲をして一発で決めていることが多かった気が……」 「うそ!? それを先に言ってよ。止まって、シオン!」 「は、はい。すいません」 ビルからビルへ移動していたシオンは身体を急停止させる。 現実であれば、地上10階ぐらいのビルの屋上。縦幅横幅共に人間サイズでいう30メートルぐらいのそこにシオンは立ち止まった。 奇襲なら、広いこの場所だったら、どこから来ても大丈夫だ。 「使い物にならないけどセンサー、共に感覚を研ぎ澄ませて探ってみて」 「はい……………」 どちらから来るだろうか。横からか上からか。 はたまたそのまま、登ってくるのか。 階段使って登ってくるなんてシュールな。普通神姫は飛べるパーツを付けてるんだからそんなことをする必要はない。 前に見たバトルでイスカはすごい跳躍力を見せていたけど、あれで高速で跳んで来たって視界は開けているんだから油断することはないと思うけど。 登ってくるか……。 登る――。 『シオン、そこから右に跳び退け!』 「え」 『いいから』 そこから、シオンは瞬時に判断、リアも気にせずぐるんと勢いよく横に転がった。 ドォンッ! と先ほどまでいた地面の床、コンクリートが盛り上がり中からイスカの姿が出てくる。腕にはミスズを仕留めたあのパイルバンカーだ。あれを使って下から仕留めるつもりだったらしい。 いきなりあんなもの持ち出してきて、本気で一発で仕決める気だったのか。 間一髪だ。 「……く、気付かれていた上にまさか避けられるとは。確かにここまで戦えるようになっているということか」 このステージを指定したのは一撃必殺のこの為だったのか。 姿を現したイスカは憎々しげに言いながらパイルバンカーをパージした。 もう使う気はないみたいだ。最大威力の一撃をもう確実に当てられないと思ったからだろう。第一あれは重そうだしな。 「螢斗さんの指揮がなかったら危なかったですけどね……」 「……キサマと違って、できた良いオーナーみたいだな」 「ふふ、確かにですね。私には勿体ないマスターです……ですけど、私はそのマスターの為に」 スッとフェリスガンを構え相手に向ける。 「お姉ちゃん、あなたを倒します」 「……面白い、行くぞ」 今のところ、あの大剣は持っていない。 転送され代わりに出してきたのは二丁の黒いサブマシンガン。それをシオンに構え返すイスカ。 痛いほどの静寂が場を包む。 先に動いたのは――シオンだ。 シオンは真横にブースターをかけながら、ビルの外に身体を投げ出す。 それを追いかけ、イスカもサブマシンガンを連射させ弾線を作りながら同時に屋上のエリア外に駆ける。 空中に投げ出されてシオンはその場に足場があるがごとく、空をうまく駆けていく。 イスカは速度を付けてビルを駆け下り、重力がないかのように衝撃を殺した後、先に下から地面についてもなおシオンに銃弾の嵐を浴びせてくる。 対するシオンは弾を空中で加速をつけながら避けつつ、フェリスファングをプレシジョンライフルに変換させ、量より質でいく気だ。 もちろんイスカも黙って見ているわけではないので、常に動き続けながら下から休みなく弾を撃ってくる。 それによってシオンも避けながらでは狙いが付けられない。 どちらも動いているからだ。 だが、その内シオンのブースターはオーバーヒートによって動けなくなる。ずっと空中を飛んではいられないから地面に降り立つ必要がある。 『シオン、そこから移動して、ビルの間へ!』 答えを返すほどの余力がないのか、僕の声を聞いて瞬間横の路地に飛ぼうとする。 だが、 路地に飛ぶ前に――目に捉えない程の速さでイスカの姿がシオンの真上に。 視界に捉えた瞬間。 「……遅い!」 「つうぅっ!」 イスカはサブマシンガンを空中で捨ててからビルの壁を三角蹴りの要領で蹴り、シオンの頭上から前転宙返りの回転かかと落とし。 シオンはそれに気付き、両手でプレシジョンバレル越しに重ね合わせ、それを受け止めた。 「……それでいて、甘い!!」 イスカは腰につけた補助ブースターを起動させ、かかと落としを放った状態から空中で器用に身体を返してから足刀の横蹴りを行った。 「ぐぁっっ!!」 その力が加わったことにより、シオンは新幹線ぐらいまで加速してメインストリートのビル壁にまで吹っ飛ばされ叩きつけられた。 ヒュンッと風を切る音だけを残して、ビル壁の中心を崩して中に突っ込まれるシオン。 ビルからはもうもうと煙を上げていて、イスカは地面に降り立ってシオンの突っ込まれたビルの前に行く。 転送されてきたのはあの緋色の大剣。 それを両手で持ち、叫ぶ 「……まだ終わりじゃないだろ!」 そう。まだ終わりじゃない。 ――まだシオンは生きている。 「……!?」 穿たれた壁、灰色の煙を上げてある場所の煙の風向きが突然丸まった。 そして、そこから飛び出てくるのは傷だらけのシオン。 両手で真下にいるイスカに構えたる武装は今のシオン最強武装「プレシジョンエクストリーマ・シューター」 「くらえぇーーーー!!」 下にいるイスカに向けて、全力で声を上げエネルギー砲を放つシオン。 「……あぁーーーー!!」 イスカは雄たけびを上げ、大剣の柄を左手で掴み、その刃を右手で自分が傷を負うのも関わらず握り、横にしてそれを真っ向から受け止める。 刃の先から真っ二つに裂かれる橙色の光砲線。 その威力からかイスカの立つ地面は次第にひび割れ、沈み込んでゆく。 それでも、受け止めているイスカが歯を食い縛りながらも動きを見せる。 「……ぐぅ!……ッ消し飛べぇ!!」 右手を柄に戻し、勢いよく縦半円にフルスイング。 光砲線はイスカから反射したように直角に曲がり右方向に真っ直ぐ飛んでいき、通りにあった欠けた電柱が折ってから後に奥のビルに爆発が生まれた。 「はぁはぁ……そんな」 シオンは必殺の武装が効かなかったことで微かに狼狽してしまっている。 ダメだ、まだイスカは――。 「……どうし……った!!」 イスカは膝を沈み込ませてから、力を上に向け、ジャンプ。 浮かんでいるシオンの下まで来ると、身体ごとさせて回転力を大剣に乗せた縦回転斬りをシオンに仕掛けた。 「……つ……は」 シオンは大剣の衝撃をもろに受けた。 それにより頼みだった『プレシジョンエクストリーマ・シューター』はフェリスガンごとバラバラに砕かれてから、光砲線と同じ方向にシオンも声にならない声を出し吹っ飛ばされていった。 数メートル先、メインストリートの端まで、飛ばされて地面に数回転がってから 横向きに倒れてやっと止まった。 『シオン!! 大丈夫か!!』 僕は声を張り裂けて叫ぶ。周りの観客も僕の悲鳴に近い声にどうしたかと筐体に集まってきた。 だが、ぼくはそんなの気にしてられない。 シオンはバトルで、これほどのダメージを負ったことはまだ一度だってない。 それゆえにシオンが死んでしまうのではないかと、不安でたまらない。 バーチャルでもダメージの酷さは変わらないんだ。 CSCの精神的に死ぬなんてことも……それは嫌だ! 「かはっ! ……うぅ、ふぅ、まだいけます。フェリスガンを盾にして、なんとかこれで済みました」 シオンは口から血のような、オイルのような黒い液体を吐きだした後、腕を支えにして、四つん這い状態から腹を押さえてなんとか立ちあがった。 これで済んだ、ってすでに満身創痍じゃないか。立ってられるのも不思議なくらいのダメージを負っているのが目に見えてわかる。 これ以上は見ていられない。 もう降参して終わらせないと。 「……螢斗さん、はぁ……サレンダーしようとしてますね?……ダメですよ……はぁ」 『なんで!? もうこれ以上やったって勝ち目がない。フェリスガンも壊れて、もうぺネトレート・烈とかの近接武装しかないじゃないか!』 「ふふ……そうですね」 「笑っている場合じゃないよ! イスカは大剣使いのストラーフ。アリエみたいに小細工が通用する神姫じゃない」 話のイスカはもう勝ったと見ているのか、シオンのいる方に歩いてくるだけだ。 「確かに……ですけど……このぺネトレートクローに“力”があったらどうします?」 「え、」 一瞬シオンの言った意味が分からなかった。 でも、それはまだ分からないままだったんじゃないか。 「ようやく、わかったんです。これの正しい使い方を……」 シオンは横腹を押さえていた手を両手が空いた状態に戻し、ぺネトレートクロー・烈を腰から取り出した。 思えばよく無事だったよな。飛ばされまくって傷がないなんてどんだけ頑丈に作られているんだ。 シオンはそれを両手ずつに持ち、自然体でリラックスさせている。 いまだにイスカはそれをただの悪足掻きだと見ているのか歩みはゆっくりだ。 「はは、……私って馬鹿ですよね? 今までなんでこんな事に気付かなかったんだろう。私はアーティル型なんだから、きっかけはいくらでもあったのに。……でも、ようやく分かったんです。もう、私は逃げないから。私は山猫型MMS神姫アーティルのシオン。マスター長倉 螢斗の武装神姫です…………すぅ、はぁ……」 自分の事を再確認するかの如く呪文のように自分の名を言う。 目を瞑り、深呼吸。精神集中をしたのち、ぺネトレートクロー・烈を構え。 そして、次の瞬間、高らかに叫んだ――。 「 テラ根性!!! 」 ――声を上げた時、ぺネトレートクロー・烈の先から眩いほどの光刃が出現し出した。 交差させた二つともから、神姫サイズの片手剣程の刃が。 西洋の剣『ジャマダハル』の形状に似た剣が生まれ出た。 あれの出現条件はあの発声なのかどうかはシオンにしか分からないけれど、これで勝負がまだ終わってないことを僕は知った。 まだシオンは戦える。 戦えるんだ。 「まだ終わりませんよ。姉さん!」 シオンはニッと不敵に笑い、前にいるイスカを見据えてそう宣言をした。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/563.html
武装神姫のリン 番外編その3「小さな幸せ」 リン…それは私の名前。 武装神姫第1弾、MMS TYPE-DEVIL「STRARF」のシリアルナンバー3600054468である私の名前。 マスターは私にこの名前を貰いました。 でも私、マスター、茉莉との問題を乗り越えてから2ヶ月ほど経ったある日、私はどうして「リン」という名前に決めたのか、ふとその理由が気になってしまいました。 そうして一週間が過ぎようとした頃、私は我慢できずにマスターにその理由を聞きました。 今回はそのときのお話しです。 それは用事で茉莉が実家に帰っていて、ティアもそれについていてしまい久々に2人きりになれた日のことでした。 「マスター…あの。」 マスターはいつものように顔を横に向けてくれました。 「どうした? なんか欲しいモノでも見つけたのか?」 「いえ…そうじゃなくて、聞きたいことがあるんですがいいですか?」 「ああ、いいよ。」 「じゃあ、なぜ私の名前はリンなんですか?」 「ああ、それか…」 マスターの顔がいつもと違って少し不安そうな、なんとなく力が抜けたような表情に変化しました。 「あの…マスター? お気に触ったんだったらすみません、でも…」 「じゃあ今からその名前に関連する、ある所に行くけど何も言うなよ。」 私はその言葉の意味を理解できず、ただただ 「はい。」 そう応えるしかありませんでした。 私の答えを聞いたマスターはすぐに進行方向を変え、駅へ。 そうしてJRと私鉄をいくつか乗り継いで郊外の町に着きました。 「ここにくるのは、久しぶりだな。」 やはりマスターの表情はいつものような元気がありません。 「あの…」 「何も言わない約束だろ。」 マスターの声がいつも以上に優しく感じられたので私は 「はい…」 口をつむぐまえにそう呟くことしかできませんでした。 そのままマスターは駅からの一本道をひたすらに進みます。 その日はまだ初夏だというのに日差しは強く、空が晴れていたことを覚えています。 焼き付けるような日差しの中を、マスターは途中で買ったミネラルウォーターを手に持ったまま歩いていきました。 そして着いたのは、お寺。の裏手にある墓地でした。 藤堂家の方々が代々眠る場所。そこにマスターは私を連れてきたのです。 私はその時点で大体の事情は把握できていましたが、マスターが口を開くまで待ちました。 マスターはミネラルウォーターを墓石にかけて、残った分はお供えを置くと思われる場所に置かれた湯のみに注ぎました。 そして私を手に乗せて、そこに眠るマスターの"家族"の名前が刻まれた石版の目の前に手をもって行きます。 それを見たとき、私は確信しました。 「リンていうのは。俺の妹になるはずだった子の名前なんだ。」 それと同時にマスターは私の問いへの"答え"を口にしていました。 それからマスターは全て話してくれました。 リンという名前はマスターと4つ違いの、今頃は茉莉とほぼ同じ年齢になっているはずだった妹に与えられるはずの名前だったのです。 それは今から17年前。マスターがまだ7歳のころ。 お母様(いまはそう呼ばせていただいています)は至って健康で、2回目ということもあり出産には何の問題も無いだろう、そう主治医の先生もおっしゃっていたそうです。 しかし予定日の2週間前、事件は起こったのです。 それはマスターとお父様(お父様はなかなか私がこう呼ぶことを許してくれませんでしたが今は大丈夫です。)が面会を終えて帰宅した直後でした。 突然お母様が出血したのです、原因は不明。 しかしそのタイミングは夜勤の引継ぎ時間帯であり、ナースセンターに人があまりいない状態。 しかも就寝の確認で夜勤の看護士の内の大半が各々担当の部屋を回っているとき。しかもお母様の部屋は巡回の最後の部屋。 お母様は必死にナースコールのボタンを探しましたが、不幸にもボタンがベッドの裏側まで落ちていて拾うことが出来ません、痛みをこらえることはできてもそこまで手を伸ばすことがお母様には出来ませんでした。 お母さんは必死に助けを求め、叫びました。 そうして巡回の看護士1人がそれを聞きつけるまでに20分の時を要しました。 お母様は緊急処置室にうつされ、処置が行われました。 マスターとお父様が知らせを聞きつけ病院にたどり着いたのがそれから30分後。 お母様は命に別状はありませんでしたが…おなかの子はすでに亡くなっていました。死産だったのです。 事前に女の子と判っていたので、お父様やマスターは意気揚々とその子の名前を考えていた矢先の出来事でした。 「今思うと茉莉が入院しているときに何度も何度も会いに行ったのは、そのときに亡くした"妹"を再び失うのはイヤだという気持ちが実はあったのかも知れない。」 そうマスターは最後に付け加えました。 「リンって言うのは俺が考えた名前だ。母さんが結構キリっとした目だったから妹なら似てほしいとおもった。それで辞書に載ってた『凛々しい』ていう言葉から凛ってな。 オヤジに話したら好評でそれにしようなんて車の中で話していたときに電話が掛かってきたからな。今でも覚えてるよ。」 「すみません!!」 わたしは謝っていました。 「あの、私。マスターが名前をくれたのが起動してすぐだったので何か理由があるのかな?と思っただけなんです。それがこんなにも深い事情があったなんて。本当にすみません。」 それを聞いたマスターはポカンとした顔で。 「はは、ちょっと懐かしくなっただけだよ。もちろんあの時は悲しくてしょうがなかったし、神様がいるんなら出てこい!! ってぐらい怒ったりもした。 でも過ぎたことは仕方ないし。過去は変えられない。 俺は今は幸せだぞ~リンがいて、茉莉がいて、ティアまでいる。そして皆元気でいてくれてる。それがおれの幸せだ。」 「マスター……私、どんなことがあっても絶対マスターの元を離れません。たとえ離れても、必ず帰ります。」 「ああ、約束だぞ。」 「はい、約束です。」 そして"凛さんに挨拶をして"帰りました。 その夏は茉莉とティアを連れて久しぶりの墓参りにやってきて墓石を綺麗に掃除しました。 そしてマスターは私たちのことを報告したのです。 実際に手に触れることも、顔を見てあげることさえ出来なかった。でも確かに存在した…凛さんに。 その頃からです、マスターと絶対に離れたくないと思ったのは。 理由はもちろんマスターを悲しませたくないというのもありますが、私だけじゃなくてみんなが元気でいること。 それこそががマスターの、茉莉の、ティアの、そして私の小さいながらもかけがえの無い幸せだと気がついたからです。 だから私はこれからもマスターの側を離れないでしょう。それこそ一生。私の"命"が続く限り。 TOPへ
https://w.atwiki.jp/nico-game/pages/118.html
■悪魔城ドラキュラ ギャラリー オブ ラビリンス 悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス 適当プレイ 【作品の傾向】ふつうにプレイ 【状況】未完(08/02/06~) 【全動画数】 【マイリスト】なし 【備考】ボス直前で止まってます。更新中止? このゲーム情報を編集 このページの一番上へ タグ:ACT DS あ このページを編集
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/467.html
雑談部屋 雑談・情報提供・編集要望・編集報告どんな内容でもOKです。 まおちゃお「おはなしなのだー!」 過去ログ:過去ログ1 / 過去ログ2 トップページのフブッホかわいい -- 名無しさん (2017-12-15 23 30 28) 武装神姫復活と聞いてお祝いしに着ました。 -- 名無しさん (2017-12-30 02 11 38) 更新がなく上部に広告が出てきた時はここに適当なコメントをすれば更新扱いとなって広告が消えます -- 名無しさん (2018-05-30 00 37 11) 広告を消すための更新用コメント -- 名無しさん (2018-08-19 22 09 34) 武装神姫復活の上好きなデザイナーさんも参加してくれてて嬉しい -- 名無しさん (2018-10-01 23 02 20) 荒らされてたんで元に戻しておきました -- 名無しさん (2024-05-29 22 47 22) gj -- 名無しさん (2024-06-22 09 32 57) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/824.html
初バトル、七月七日、七夕。 一ヶ月の間、私は数十店の神姫ショップを歩き回った。地元の茶畑が広がるような田舎では流石にショップはないので、電車で一時間、お隣の県の大都市まで足を伸ばしたり、バスで三十分揺られ最寄りの商店街をブラブラしたりした。 というのも、お兄ちゃんが買ってきた神姫、マリーは素体のままで武装やアクセサリは全く無かったからだ。私は特別バトルがしたいというわけでもなかったので、彼女が身に付けるものは彼女に選ばせようとして、彼女が気に入るものが見つかるまでいろんな店を回っていたのだった。 まずマリーはあまり実戦的ではなく、どちらかというと観賞用のウォードレスを選んだ。一応ワンピースのそれは防御力はあまり期待できないものの、フリルの可愛いディティールは全部自動迎撃用のレーザーガンで、また申し訳程度の飛行機能も付いていた。 「すごいすごい!マリーが浮いてる」 ふわふわとドレスの裾を揺らしながら彼女は私の周りを何週か回って見せた。 「便利ですわ」 彼女は私の左肩に着地した。それから私を見上げて微笑む。 彼女の笑顔は完璧、百点満点だと思った。 別の日、彼女はようやく武器を手にした。彼女は先に買ったウォードレスに合わせてその武器――ロンブレル・ロング(L'ombrelle longue)を選んだようだ。 それはどうみても、日傘。日傘(L'ombrelle)って名前付いてるし。武器の性能としては、ライトセーバーとライフルの能力を併せ持つハイブリッドウェポン。ライフルは威力も装弾数も実戦で使えるギリギリのレベル。まあ、早い話がこれもまた観賞用のアクセサリなのだ。 「可愛いよ、マリー」 「ありがとうございます。わたくしもこれで、いつでもバトルが出来るようになりましたわ」 マリーは傘を開いて傾きかけた日差しを遮る。淵の白いフリルが揺れた。 「え?マリーはバトルしたいの?」 左肩に座っていた彼女は私がそう問いかけると、浮き上がって私の胸前にやってきた。私が歩くのと同じ速度で移動し続ける。 「だってわたくしは武装神姫ですのよ?」 「いや、うん、そうだけど。だったらもう少し強そうな装備選んでもいいんじゃない?」 「ダメですわ。時裕様がわたくしは人形型だとおっしゃっていました。ですからわたくしは人形らしく振舞わなければいけませんの」 ああ、そういえば細かい設定は全部お兄ちゃんに任せていたな、と私はぼんやりと思い出した。神姫の性格がCSCの埋め込み方によって変わるといっても、もっと繊細なところはこちらで設定してあげなければいけないらしい。かなりめんどくさそうだったからお兄ちゃんに頼んだのだけれど、正直かなり失敗だったと思う。 「へえ、人形型なんだ」 「はい。人形型MMSノートルダムですわ」 勝手に決められたということを怒るよりも、私はやけに細かい設定に関心していた。 ノートルダムか、と考えると少しにやけてきてしまう。お兄ちゃんらしい名前の付け方だなと思ったからだ。 「でもバトルってどうやるんだろうね」 「とりあえず...ショップ設置の筐体で草バトルと呼ばれる非公式戦ですわ。」 私はふーんと鼻を鳴らしながら早速視線は最寄りの神姫ショップを探していた。 学校帰りの商店街には二店舗、神姫を扱う玩具屋があり、この近くにはそこしかバトル筐体を置いているところはなかった。 「あそこだね」 カトー模型店、商店街の長屋にあるお店としては大きいほうの店構えで、数ヶ月前に改装されたショップだ。もともと地味だった模型店がここまで立派になれるのも神姫ブームのおかげだろう。 午後五時半、私と同じように学校が終わった学生の神姫マスターたちが集まってなかなか賑やかだ。 「やあ、のどかちゃん、いらっしゃい」 「こんばんは、カトーさん」 マリーの装備を選ぶとき、最初に訪れたショップがここだった。お兄ちゃんもここの常連で、店長のカトーさんと顔見知りだということもあって、いろいろ相談に乗ってくれたのが強く記憶に残っている。カトーさんはここにないようなパーツを他の店にはあるからといって紹介してくれたりもしてくれた、いろんな意味でいい人だ。 「マリーちゃんもいらっしゃい」 「ごきげんよう、カトー様」 「ドレスモデルのウォードレスか。なかなか可愛い物を見つけたね」 マリーはスカートの裾を摘み、膝を折って行儀よくお礼をした。 「今日はお兄ちゃん、もう来ました?」 「時裕君?いや、そういえばまだ見てないなあ」 そうですか、と言って私は、私と同じ学校の学生服を着た男の子たちによってバトルが繰り広げられている筐体のほうへ視線を向けた。 お兄ちゃんは一度この店に足を踏み入れると三時間は出てこないので、もしお兄ちゃんが店にいれば、今日は止めておこうと思ったけれど、カトーさんの言葉を聞いていよいよ心臓がドキドキし始める。 「バトルかい、のどかちゃん」 カトーさんは丸い黒縁眼鏡を掛け直しながら言った。 「はい。初めてなんですけど...」 「そりゃよかった。やっぱり武装神姫はバトルが一番楽しいからねえ。次、席空けてもらうからちょっと待っててね」 そう言ってカトーさんはカウンターから出て、つかつかと盛り上がる一方の筐体のほうへ歩いていく。そして学生服の男の子たちと話始めた。 そのうち何人かが私のほうをちらっとみる。その中に同じクラスの藤井君の姿が見えたので少し手を振った。ただ私に気づいているかどうかはわからなかった。 「緊張するね、マリー」 「大丈夫ですわ。きっと」 少し経って、カトーさんは手招きで私たちを呼ぶ。私は背筋を伸ばして恐る恐る筐体へ向かい、マリーはその後を飛びながらついて来る。途中、やっと藤井君も私たちに気づいたようだった。 カトーさんの横にはこの店では珍しく、女の子が立っている。彼女もまた男の子たちと同じように私と同じ学校の制服、というか私と同じ制服を着ていた。 「丁度いい対戦相手が見つかったよ」 と言ってカトーさんは傍らの女の子の肩をぽんと叩く。 「彼女は先月神姫バトルを始めたばかりなんだ。ね、香子ちゃん」 「よ、よろしくお願いします」 その女の子は右肩に神姫を乗せたまま深々と頭を下げる。当然、彼女の右肩に座っていたジルダリアタイプの神姫は声を上げながらずり落ちた。しかしその神姫は落ちていく途中、一回転してから急に落下を止めて腕を組みながら少しずつ浮き上がっていった。 そしてそれに気づいた女の子が顔を上げて、その神姫のほうを見るまで口を尖らせ続ける。 「あ...!ごめんなさい」 「もう少しまわりに注意してくださいね、マスター」 「ごめんなさい、本当にごめんなさい」 女の子はすっかり私を忘れて彼女の神姫に謝り続ける。その様子をまわりの男の子やカトーさんがくすくすを笑った。 「も、もういいですっ。それよりみなさんが...その...見てますから...」 それが恥ずかしかったのか、女の子の神姫は少し頬を赤らめてどんどん声量を落としていった。 俯きながらちらりと私たちを見て、話を変えて、と訴える。 神姫でもそんな表情をするのか、と感心した私は急いで自己紹介をした。 「えっと、七組の月夜のどかです。こっちはマリー」 「ごきげんよう、マリー・ド・ラ・リュヌですわ」 女の子は思い出したように私たちのほうを見る。 「あ、はい、五組の斎藤香子です」 「ジルダリアのラーレです。よろしくおねがいします」 私の通う高校の一年生は、九クラス三百六十人。私は五組には一人も友達がいない――もちろん偶然だ――ので、彼女とは初対面だったことも納得がいく。 「じゃ、挨拶が済んだところで、早速バトルにしようか」 私も香子ちゃんも、そしてマリーもラーレも、そう言ったカトーさんのほうを向いてはい、と返事をした。 作品トップ | 後半
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/467.html
大河海王ポセイダム・ラビリンス VR 水文明 (8) クリーチャー:サイバー・コマンド/ポセイディア・ドラゴン 8000 M・ソウル ■連鎖 ■連鎖 ■連鎖 ■W・ブレイカー 作者:赤烏 バトルゾーンに出した時、連鎖が3回使えるクリーチャー。 収録 MG-01 「FIRST」 評価 名前 コメント