約 2,307,797 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/745.html
『モア』と飯島千夏は、取り敢えず落ち着く迄修理センターへ搬送される事になった 『クイントス』のマスターである川原正紀氏がその旨を皆に伝える迄、誰も一言も発しなかった 「この大会はおかしい・・・神姫を大事に思うなら参加するべきじゃない」 川原氏の演説に、皆意気消沈した様に顔を伏せた 「納得出来無い」 だが、異を唱える声が一つ 「そうすればあんたは損はしないかも知れねえが、あんたの神姫への挑戦権を得られない俺達はどうすれば良いんだ?うちの『テスタ』はあんたの『クイントス』に憧れて、それと闘う為に辛い特訓を重ねてきたんだがよォ。川原正紀さん?」 「!?」 藤田隆二・・・『テスタ』のマスターだ 「その通りでござるな・・・自分がチャンピオンだからといって少し調子に乗り過ぎではござらぬか?」 等身大のフブキ・・・ではない、『ホークウインド』のマスター、木原忍だ 胸ポケットで全く同じ顔のフブキが頷いている 「・・・君達は・・・今はそれどころではないのが判らないのか!?」 だが、川原氏の言葉は途中で、意外な者に遮られた 「マサキ、彼らの言う通りだ。神姫が嫌がっているならともかく、戦いを望んでいる神姫が居るのなら、その闘う場を奪うのは貴方の普段の主張を捻じ曲げる事になるのではないか?」 サングラスに蒼いスーツの武装神姫が・・・その眼鏡を外す 「正直、私は別にこの闘いで勝った者だけと闘う・・・等と傲慢な事を言うつもりは無いが・・・」 「この『クイントス』に挑む為にこの一連の闘いを経て君達がさらに強くなってくれるなら・・・私はとても嬉しい。私も一人の武装神姫であるからには、より良い闘いを経験したいという欲求があるからだ。ここでのチャンピオンになる事の賞品がそれだというなら、私は喜んでそれを受け取りたい」 あれが・・・ 女王『クイントス』か・・・! 迫力が違う 実力が違う 器が・・・違う! 残りの全てのマスターと神姫の相談が纏まる迄に、そう時間は掛からなかった 第拾参幕 「かすみ」 次は第六試合・・・つまり、私と『ホークウインド』のバトルだった・・・が 「マスター・・・迷いがあるのか?」 問いに、マスターは首を横に振った 「いや・・・仮に俺が止めても、お前は行くつもりなんだろ?華墨」 ・・・確かに、あれだけ悲惨な『モア』の有様を見た後だというのに、私の心の奥底に熱い火が燃えているのが判る 仮にマスターから撤退を進言されたとしても、『オーナー権限』とかでなければ抗ってしまう気がしていた 「じゃぁ・・・何故だ?いつもならバトル前はもっと喋っている気がするのだが・・・?」 「・・・うん、少し、考えていたんだ」 何を?と首だけでジェスチャ 「仮にこの事故が仕組まれた事態だとして、こんな田舎の大会でこんな手の込んだ真似して、一体誰が得するのかな・・・ってな」 言われてみれば、最初から不自然な部分は多々あったが・・・ 「筺体に細工があったとすりゃ、出来るのは店のもんだけだ。でも、これが原因で店に客が来なくなったら意味が無い・・・厳し過ぎるこの対戦方式は方式で、『クイントス』の望んだものじゃ無さそうなのがさっき判った」 「なんか、誰も得してない感じがしないか・・・?」 得体の知れない超能力を発揮する武装神姫達、田舎の大会にしては陰謀めいた気配がする現状・・・だが 「らしくないな、マスター?仮にこれが誰かの陰謀だったとして、それに対する私達のスタンスは決まっているんじゃないのか?」 最近、私は自らの考えに一人で埋没する癖から少しずつ抜け出しつつある・・・が、代わりに今度はマスターか 「仮に誰かの陰謀だったとしても、神ならぬ私達に出来る事は、目の前の事態から順番に解決していく事だけじゃないのか?大局的な見方も良いかもしれないが、それで結局動かないなら、罠に嵌って見る方が色々見えてくるんじゃないのか?」 危険な考え方だと、自分でも理解はしている。が、今は恐怖と疑心暗鬼に縮こまって身動きが取れなくなる方が何倍も怖かった 何よりも、『クイントス』の演説が利いていた 『私も一人の武装神姫であるからには、より良い闘いを経験したいという欲求があるからだ』 それは、今迄漠然としていた目標に、確たる実体が与えられた瞬間でもあった 私は、あの女王に接近したい その為ならば、多少のリスクは、覚悟しなければならない・・・!! 「私は征くぞ、マスター!今私達には、前にしか道は無い!!」 強引だったか・・・だが、マスターは顔を上げて、私を見て笑ってくれた 「闘わねえとは言ってないだろ?ちょっと考え込んでただけさ・・・」 「そろそろ準備して、さっさとあのニンジャと闘おう。今は少しでも多くの闘争を経験したい!」 「あぁ、判ったよ・・・このバトルフリークめ」 マスターはようやく重い腰を上げ、オーナーブースへ向かった 今回の舞台は和風の城郭内部だった・・・忍者型のフブキと、侍型の紅緒が闘う舞台としてはこれ程の良ロケーションもあるまい・・・少し確認したが、その気になれば屋根瓦の上で闘う事も出来そうだ、御丁寧に空に三日月までかかっていた (さて・・・忍者型で素手主体か。流石に『G』の様な馬鹿げた攻撃力は無いだろうから奇襲で来ると思うが・・・?) 『華墨、気を付けろ!今相手の反応がそっちに真っ直ぐ向かってる!!』 何?真っ直ぐ来たか・・・否、きっと忍者だからデコイか何かに違いない。狭い通路では不利かな? そう思っていた私の予想は、真正面から廊下をまっすぐに走って来た『ホークウインド』を見て完全に覆された。ちょっと待て!幾らなんでもまとも過ぎるだろうそれは!? 見れば『ホークウインド』は全くの素体のまま、ナイフはおろか、『G』の様に補助的な甲冑やマントすら身に付けていなかった (正気なのか・・・ッ!?) 反応は完全に遅れた。首めがけて飛び込んで来た鋭い蹴りを、無様に太刀で受け止めて、衝撃を殺し切れずに真後ろに向かって廊下を滑る 「ぐはっ!!」 しこたま壁に背中を打ち付けて、格好良くない声が漏れる・・・こんな所迄人間の真似をしなくて良い!! 対する『ホークウインド』は・・・ラッシュを仕掛けてくると思ったが、まるで体重が無いかの様に私から5スケールメートル程向こうに着地、突っ立ってこちらを見ている 「『貧弱でござるな」』 多分、今こいつオーナーと完全にハモってた 「貧弱・・・だと?」 「新人で、マスターに戦術勘がない割には元気が良くて根性がある武装神姫と聞いていたから楽しみにしていたのでござるが・・・」 『これならホークウインドが素手でやる迄もないでござるな』 「舐めるなよッ・・・このエセ忍者がっ!!」 今回は腰に懸架していたマシンピストルを抜き放ち、フルオートで7発、ホークウインドめがけてぶっ放す ・・・が 「な・・・っ!?」 残像を残して・・・消えた? 『真横だ華墨ィ!!』 「えっ?」 いつの間にか、私の右手に持った銃はホークウインドの手に握られていた 「『残念でござる」』 爆音、必死になって右の肩当で防ぐ、が、がりがりと削られ、瞬く間に装甲としての体を成さないまでになってしまう 「がァあっ!!」 強引に太刀を振るって距離を置くと同時にリボルバー銃を引き抜いてばしばし三発叩き込む 「ふ・・・っ!はぁっ!!」 今度は、はっきり見えた ホークウインドは数歩助走を付けると、ダッシュの勢いのまま軽く跳躍し、そのまま「壁を走って」私の側面に回りこんでいるのだ (こんな動きが・・・出来る物なのか!?) 途轍もない運動能力の賜物だろう・・・運動能力? 時速100キロ近いだろう拳が私を襲う・・・!考えている暇は無い『G』程の威力は無い分この攻撃は的確に死角を縫って迫る 私は・・・右肩の装甲を切り離した 私の肩という「芯」を失って、あっさりへしゃげる装甲、かがみこむのが遅れていたら今のは相当やばかったかもしれない。現に、兜の角飾りが折れ飛んでいた 左隣に・・・窓がある!跳躍だ・・・跳躍しろ!華墨!! 「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 三度、ホークウインドの拳脚が私を襲う・・・大丈夫だ、装甲がある、一撃では、やられない 今度は被っていた筈の兜が弾け飛ぶ・・・だが、もう私の体も頭もそこには無い 「『広い所なら勝てるとでも!?」』 追い、矢の様に飛び出してくるホークウインド。リボルバーの残り3発を叩き込む・・・が、どうやったのか判らないがかわされてしまった様だ 「ハァッ!ハァ、ハァ・・・」 屋根の上によじ登り、兎に角数瞬時間を稼ぐ 『華墨!ヤツのサイドボードが判った。鉤付きのワイヤーを張り巡らして、「正面に飛びながら横に避ける」とかが可能なんだ』 成る程・・・飛行用のごちゃごちゃした装備を使わずに空中機動が可能なのか。とんでもないヤツだ 少し遅れて、ホークウインドが登って来る 「観念したでござるか?」 片手の手刀で首を掻き切るジェスチャーをしながらホークウインドが呟く 「それとも何か策でも?一応言っておくが、障害物を使わないガチの白兵戦でも今のお主に勝ち目は薄いでござるよ?」 「・・・策・・・か」 バーチャルの空を見上げる 無い訳では・・・無いと思う ただこれは果たして「策」と言えるのだろうか? 『クイントス』の演説が思い起こされる (『より良い闘い』・・・か) 「貴女に尋ねたい事が一つある・・・聞いてくれるか?」 「聞くだけなら」 両手を組み、片目を閉じてこちらを見る・・・背に掛かる月が、絵になる立ち姿だった 「何で素手でやろうと思ったんだ?」 「はっ」と、軽くホークウインドは笑った 「決まっているでござる。この『武器』を拙者達は最強だと考えたからでござる・・・それに」 悪戯っぽく微笑む・・・眼鏡とか似合いそうだと、脈絡無く思った 「それに?」 「折角だから誰もやってなさそうな事がしたかったからでもあるでござる」 不覚にも吹き出してしまった 「笑うのでござるか?」 言いつつ彼女も笑っている 「判った・・・私ももう少し自信を持ってみるよ・・・貴女の様な神姫と堂々と渡り合える様に!」 覚悟は、決まった 「貴女のからだと私の剣と、どちらが強いか、試してみよう」 太刀を、上段に構える・・・この構えで一気にトップスピード迄加速して走れるかどうかは未知数だ、が (自信と・・・誇りか・・・) それは『クイントス』にあり、『ホークウインド』にあり、私にまだ、完全な形では無いものだ 全ての鎧を脱ぎ捨て、走る・・・! 獣の様に 風の様に 光の様に 振り下ろした剣閃は、ホークウインドにとって決してかわす事が不可能な攻撃ではなかっただろう 私の、ある種異常なダッシュ力は、彼女の様な上位ランカーにはもう知る所だろうからだ だが、私は確信していた 彼女なら、必ず私のこの攻撃をその腕で受けに来るだろう事を 侍の精神を持つ忍者型神姫と、忍者の身体能力を持つ侍型神姫 この闘いは 後の私にとって とても重要な闘いになるだろう 惜しむらくは その闘いの結末を、私の本当の実力ではなく ホークウインドの誇りを悪用した 私の薄汚い奸知で告げてしまう事だった 月夜を貫く、硬質な打撃音 案の定、私の唐竹割りは彼女の鋼鉄の腕に防がれ 私はその腕と太刀の接触点を支点に、 月夜に向かって跳躍していた 「マスタァァァァァァァァ!!!」 私の手の中にあった太刀が分解され、消える 殆ど同時に、私の指は引き金を引く動作をこなしていた 爆音は一度だけ、つくりものの月夜に大きく響いた 「ひどい事をして・・・済まなかった・・・今の私では、こうするしか貴女に勝つ方法が、無かった」 月夜の元、私の膝の上で額から擬似血液を流すホークウインドに話しかける 涙を流せるなら、流していただろう・・・否、案外気付いていないだけで、流していたかも知れない 「ふ・・・良いでござるよ・・・あんな見え透いた挑発に乗った拙者の不覚でござる・・・」 それでも微笑むホークウインド、既に、足元から少しずつ、白化して消え始めている 「でも・・・っ!私は貴女の誇りを悪用してッ・・・!!」 「強く・・・なるでござる・・・そうしたら・・・許してあげるで・・・ござるよ」 もう殆ど胸まで消えて、残った片腕で私の顔を撫でる・・・微笑みが・・・堪らなく綺麗だった 「ああ・・・!貴女の魂は受け取った!!私はきっとなってみせる・・・こんな真似しなくても、きちんと真正面から貴女みたいなひとと闘える戦士に!!」 消えゆく彼女の手を握り、私は月夜に吼えた 「見返してみるとおっそろしくクサい光景でござるな」 「なんかのバトル漫画みたいでござるな」 「単にバーチャルで倒しただけだってのに。大げさな奴だなお前・・・そんなキャラだったっけ?」 勝利のコールの後、アクセスポッドから黄昏た表情で出て来た私を迎えたのは、三者三様の凹ましい台詞だった あぁ馬鹿だったさ!でもあの瞬間は何か空気に呑まれてやっちゃったんだよ!あーゆー事を!! その空気を作り出してしまった原因の殆どがまた私にある事実に結局激しい羞恥心を覚える訳だが・・・ 「まぁいいや。見てた連中も外でコールしてるからよ。出て行ってやれよな。『感動的なバトルの立役者さん』?」 意地の悪い笑みを浮かべるマスターの顔はしかし・・・優しかった。何も言わなくても、私の意図を判ってくれた人の、顔だった 「くそっ!!もうどうにでもなれぇぇい!!」 思い切ってこの時ブースから出た私は、やっぱり勇者だったと思う その闘いの勝利の美酒は、恥じらいと照れと、少しの罪悪感で、なかなか本当の味を味わう事は出来なかった でも、何かまた一つ、大事な物を得たのは確かな様だった 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/433.html
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷めはしても逃げはせん、落ち着いて食べろ……って、もうッ」 「はむ、はむ、はむっ……もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ……♪」 「相変わらずおいしそうに食べるなぁ、ロッテ。可愛い“妹”だ」 「はみゅう?ふぁいすふぁ~、んぎゅっ……どうかしましたの?」 「う゛ぁ……そ、そのな。ほら、ドレッシングを零すんじゃない」 この通り、ロッテは平然と“人間用の”チキンサンドを食べている。 飲んですぐに「嫌いですの」と言い放った、炭酸飲料や辛い物以外は 食料ならなんでも食べてしまう。無論、15cmの体格に見合った量しか 食べられぬ故、自然と私と半分ずつシェアする事になるのだが……。 「そう言えば、ロッテや。お前がその様に食事するようになったのは」 「えっと……確か、以前定期メンテナンスにお出かけしてからですの」 「む、そうか……あの時頼んだ先は、確か“ちっちゃい物研”だな?」 「はい♪あれからなんだか、とても快調ですの。お腹は空きますけど」 東杜田技研。そう大きな会社ではないが、マイクロマシン分野に強い。 そこの一部署が“ちっちゃい物研”と自らを名乗っている。そして以前 メンテを依頼する際、知人を頼って同部署を指名した覚えがあるのだ。 あれは研究員……“Dr.CTa”の技術論文を読み、感銘を受けたからか? 実際同社の手際は見事な物だ、私に解決できない不調は全て解消した。 特に補助バッテリーの持続性が、30%程伸びているのは驚きだった。 「だが、ううむ……その時の事は、まだ思い出せないのかロッテ?」 「えと、あ。そう言えば……白衣のお姉さんが嬉しそうに手を……」 「ふむなるほど、そういう事か。感謝せねばならんな、ある意味で」 なんとなく掴めた。が、追求はするだけ無意味であるとも理解が及ぶ。 “Dr.CTa”か仲間の誰かが、実験の為ロッテに改造を施したのだろう。 となればロッテからそれを取り外すのは、かなりの大手術になる筈だ。 そもそも、だな?こんな可愛く物を食べるのに……外すなどとはな?! せっかくの“妹”から、食を取り上げるという冷酷な行為はなッ!?! 「……マイスター?なんだか顔が紅いですの、どうしました~?」 「な、なんでもないっ!……そう言えば、こんなビラがあるぞッ」 「武装神姫・第五弾?セイレーンにマーメイドに、イルカ……?」 「うむ。今度は海シリーズらしい……水着も開発せねばならんか」 と私が水着のデザインを思案し始めた横で、何やらロッテが唸り出す。 あからさまに縦線が入る程の、負のオーラさえ背負っている様だった。 何事?と顔を近づけ、ロッテの様子を伺ってみる。そして出た言葉は。 「……マイスター。なんだかこの妹達、胸がおっきいですの」 ホットティーを噴いた。見ればなるほど、確かにキャンペーンガール…… 正確にはキャンペーン神姫か。彼女らの胸部は、至上類を見ない豊かさ。 成長期なのに躯が小さい私も、アーンヴァルタイプのロッテも心は同じ。 どちらから切り出そうかと悩んでいたが、先行したのはやはりロッテだ。 「マイスターも、わたしの胸大きい方がやっぱり……いいですの?」 「ぐ!?……いいんだ。ロッテは今のロッテが一番可愛いからな!」 「てへ……マイスターも、今のマイスターが一番大好きですの~♪」 そう言って肩に飛び乗ったロッテに、私は頬を寄せ頭を預けさせてやる。 嫉妬心が無いわけではないし、今後は豊満な躯用の服も作らねばならん。 我々としてもいろいろネガティブな物は感じるが、それはそれであるッ! 別に胸の善し悪しで全ての価値が決まるわけではない、気楽に構えよう。 彼女は大切なパートナーであり、彼女にとって私もそうであるのだから。 「あ。マイスター、紅茶が付いてますの。んっ……♪」 「わ゛!?こ、こらっ、頬にとはいえキスするなっ!」 「えへへ~、大好きって言ってくれたご褒美ですのッ」 ──────この笑顔があればね、別にいいじゃないの。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/736.html
私を動かすのは闘志 マスターに命令されたからやるのではない 私自身が闘いを望むから 私は征く 鳳凰の翼の一翼として 鳳凰杯編 「蒼い翼」 差し込む日差しは青白い まだ奥様は寝ている様だったが、正直高揚していた私は充電もそこそこに起き出していた 高揚している・・・か 理由は一つ、間近に迫っている鳳凰杯だ 結局、私は選手として参加する事に決めていた 奥様と、この家に住む他の神姫も一応会場までは足を運ぶつもりの様だが、それは同時に開催される諸々のイベントの為だ 私は・・・そういう所では心からこの家の住人達と判りあう事が出来無い 否、それはある意味ではマスターにしても同じかも知れない 「神姫に人権を」と叫び続ける私のマスター川原正紀・・・そんなマスターだからこそ私の好き勝手にやらせてくれているのだろうが、同時にその行動原理に埋め様の無い私とのギャップを感じる 武装神姫は武装神姫・・・人ではないのだから人権等に意味は無い これが私の今の所のスタンスだった 人が命懸けで闘うと、悲しむ人が多いが、私達武装神姫は闘う為に作られたのだから、少なくとも戦う事に関しては、誰からも何も言われない 私達が私達らしくある為に必要なのは、人と同じ様な権利等では無い様な気が、私はずっとしていた 「つまりそれは戦士が戦士らしくある事の権利にも似て・・・か?」 馬鹿馬鹿しい。戦士である事に権利等要らない・・・自分が戦士らしくあろうとすればそれで良い 闘争を望む人々の熱狂と視線の中で闘う事が幸福だ 勝利の感動に酔い痴れる事が祝福だ 敗北の苦痛と屈辱に塗れる事が必要だ 何よりも幸いな事に、我々には戦場が与えられているではないか・・・! それで充分だった 「いかんな・・・考え過ぎだ。誰かに似てきたかな?」 私に必死になって闘う理由を問うて来た神姫の顔が浮かぶ 私の理由は、今はもうただ「戦士でいたいから」に絞られていた 闘いたいから闘う、そして戦う場は用意されている・・・闘う術も武器もあり、勝利の栄光もある それだけで既に私達は、人間より余程幸福だとすら思える 「・・・ん・・・おはよう御座いますクイントスさま・・・」 「ん?あぁ、おはよう、ヌル」 窓際に腰掛けた私の姿が、今の彼女にはどう見えただろうか? カーテンを揺らす風が、どこか熱い息吹を孕む春だった ぎしゅっ!ぎぃんっ!! 白刃が、閃く ほう、受けたか・・・真っ二つになると思ったが・・・ 受け止められたそこを支点に、私の体が宙を舞う・・・やはり彼女が、才能面では最高だ だがまだまだ・・・それを生かし切れていない 空中で姿勢を変え、落下ではなく着地の構え・・・襲い来る「魔女の剣」・・・そんな見え透いた攻撃にはあたってやれんな 私が、空中で、回避運動が、出来無い等と、何時言ったのだ?エルギール! エルギールの防剣を支えに、腕力で再跳躍。空中で太刀を振り、魔女の剣を迎撃、無事着地には成功する 着地点に打ち込まれる銃弾・・・『ストリクス』か。馬鹿め、私を狙う時は弾幕を使えとあれ程言っておいたのに、まだ「ワンショットワンキル」等と言う夢物語を追いかけているのか? ぎぃん 銃弾を受け止め、両断。そのまま刀身を跳ね上げて再び迫る「魔女の剣」を迎撃する 狙撃点の割れた狙撃手と、距離を取られた柔使い等、どうとでもなる 爆散する「魔女の剣」・・・面白い武器ではあるがその耐久力ではな 再度打ち込まれる銃弾・・・狙いが甘過ぎる。受ける迄も無い 掴みに掛かって来たエルギールを逆に掴んで、その力を利用して振り回す。 もう少し『待ち』に徹する事を覚えろ、余りにもこらえ性が無さ過ぎるぞ・・・エルギールの体に三発目が着弾する 狙撃がそんなに好きならミサイルで蟻でも射つのだな!凄まじい長距離と凄まじい小目標物だぞ 大体 私程度の動きを負えない様では 本当に高速戦闘に特化したアーンヴァル等相手では 射つ前にやられるぞ!! 2発射って外してしまった時点で、ストリクスは私に射撃の呼吸を読まれるという愚を冒している・・・これでは本来サイドボードを導入する意味も薄いが、今回は練習だ、使っておく事にしよう 「エンジェール!カームヒアーー!!」 ダッシュしながら叫ぶ。同時に転送されて来るサイドボード、バーチャルの空気に溶けて消えるエルギール 気に入りの濃紺のマントが消滅し、代わりに装備される白い翼と長銃 別に取り立てて珍しいものでもない。加速のみが目的の背負い型のダッシュブースターと、飛翔のみが目的の羽根付きグリーヴだ 右腋にホーンライフルという名の槍を構えて空中から殺到する羽根付き騎士か・・・使い古された絵面で面白くも何とも無い 両脚を振り回してジグザグに飛びながら、ダッシュブースターを目一杯に吹かす・・・ようやく四発目。仰角に修正するのが遅過ぎる 場所は既に割れている、あとは普通に狙いをつけて ぱすんぱすんぱすん 終わった 別にそんな長大でいかつい砲を装備せずとも、少し工夫してやれば市販ライフルでも充分反撃されにくい攻撃は可能だ・・・「ツガル」が何の為にこういう装備をしているか考えた事も無かったのか? ジャッジマシンの勝利宣言を、私は殆ど聞かずにログアウトしていた 「随分厳しく言ったじゃない?相当頭にきてたわよ?ストリクス」 「頭に来てくれないと困る」 兜を腋に抱えつつ、大げさに肩を竦める 「何でよ?」 「ストリクスがもっと技術を磨いてくれないと、私は誰から狙撃の技術について学べば良いんだ?」 噴出すエルギール。割と本気で言ったのだがな 「何それ?セカンドランカーの大物に習えば良いじゃない・・・ホント貴女ってちぐはぐだわ」 「気心の知れた相手から学んだほうが気が楽に決まっている・・・それにストリクスは堅実で努力家だ。やればもっと伸びる筈なんだよ」 「いっその事キャロねえやヌルにならってみたら?」 「キャロは狙撃は苦手なんだ・・・当然ヌルじゃ話にならん。むしろあの子はもっと蹴り技の訓練をだな・・・」 「あぁはいはい。ホントもうお腹痛いわ。神姫なのに笑い死にとか勘弁して欲しいっての」 相手が私だろうと下位ランカーだろうと同じか・・・私はこの子のそういう所がかなり気に入っている 「大体皆私を褒め過ぎるんだ。天才とかゆらぎとか、そんなものは大昔の負け犬が考えた逃げ口上だろうに」 「それ、あいつにも言ってたわね、もう耳にタコよ。婆臭い!」 「楽しそうだね」 団欒風景に割って入る十倍ストラーフ・・・じゃない神浦 琥珀 「注文の品、出来たよ」 言いつつ神姫大の黒いケースを三つ、私の前に並べる 「これはマイスター、ありがたい」 言いつつ早速開けて見る 「これは・・・」 出て来るのは計4振りの刀剣類だ ギミック付きの鞘に収められた厚手のダガーが二振りに、私が今使っているものよりやや柄の長い日本刀が一振り、そして「コルヌ」にはやや及ばないものの、かなりの長さと幅を持つ青錆色のロングソードが一振り 「密着戦での防衛力を重視した『ディフェンダー』と、少し居合いに使う事も考慮した『神薙Ⅱ』・・・そして君の音速剣を無制限に放てる耐久力の『鳳凰』だ」 『鳳凰』を手に取り一度振るう・・・心強い重みと重厚な外観が、強烈な破壊力と強度を予感させた 「振ってみて良いだろうか?」 「構わないけど、店の外にしておいた方が良いと思うよ」 相槌だけ打って店の裏手に回り、大き目の小石に向かって振り下ろす 硬い音は、両断の手応えより僅かに遅れて聞こえた 刃毀れは・・・無い 減衰したインパルスが、数十メートル先の電柱の張り紙を揺らしたのが確認出来た パワーロスが大きいが・・・まぁ慣れでなんとかなるだろう 「少し先太りになってて小回りが利きにくいけど、結構刃は薄いから、なるべく鍔迫り合いはしないでね・・・まぁ並みの武器には負けやしないと思うけど」 「パーフェクトです。マイスター。有難う御座います」 「『クイントス』お墨付きとあったら、ここいらじゃそれだけで凄い箔が付くからね。売名行為だよ。あんまり礼を言われると心苦しいな」 長大な割りに直線の刀身を鞘に収めるのは難儀したが、腰に佩いて見ると「コルヌ」よりは様になっている・・・それでも少し長いか?マントとあわせるのが難しいな 「鳳凰杯、あさってだね」 「あぁ」 「君みたいなのに僕みたいなのがこういう事言うのもなんだけど、頑張ってね」 「マイスターのこの剣と、私の誇りに賭けて!無様な闘いは曝しません」 一息に・・・抜けた。『鳳凰』を胸の前で両手で構え、掲げて見せる 青緑色のつやの鈍い刀身が、夕日に煌いていた 鳳凰杯・まとめページ 剣は紅い花の誇り 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2599.html
第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-4」 2041年10月30日 22:20 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 森林ステージの小川を闇夜に紛れ低い重低音を奏でながら、3隻の巨大な灰色の塊が水面スレスレを航行する。 チーム名「あああああああ」 □重装甲戦艦型MMS 「ドセットシャア」 SSクラス 二つ名「キャノン・ワールド」 オーナー名「細田 勇」♂ 27歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「スーザン」 SSクラス 二つ名「アイアン」 オーナー名「西野 公平」♂ 28歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「ウォース・パイト」 SSクラス 二つ名「オールド・レディ」 オーナー名 「和田 真由美」 ♀ 29歳 職業 銀行員 対岸の青チームは何が何でもA飛行場を最悪使用不能にさせたかった。その為には陸戦MMS部隊を安全に対岸にまで送らなければならない。しかしすでに制海権は赤チームに奪われつつある上に周辺の味方MMS航空隊は連戦続きによって激しく損耗していた。その為、A飛行場からはいつでも敵機が出撃できる状態であり、このままでは輸送艦型MMSによる増援をしても撃沈されるのが目に見えていた。 味方MMS航空隊は頼りにならない。テンペスタ使いの女子高校生たちは明日までテスト中で使い物にならない。だが輸送を成功させるには何としてもA飛行場を一時的にも無力化しなければならない。しかしその為には味方MMS航空隊の援護が必要。だが航空隊は使えない。この無限のループを打破すべく、青チームは最後の切り札を使う事にした。 当時、大規模バトルロンドの常識であった航空MMSの次に攻撃範囲の広い武装神姫。それは旧世紀の主力兵器、戦艦をモチーフとした戦艦型MMSの一群であった。 青チームのオーナーたちはA飛行場に対し、戦艦型MMSによる艦砲射撃作戦を立案した。この作戦は電撃作戦でなければならないのだ。なぜならば攻撃に成功しても、撃ち漏らした敵機がすぐさま迎撃に向かってくるからだ。 戦艦型神姫の攻撃力は確かに最強クラスだが、速度は低速。逃げ切る事は難しい。迎撃されればいくら最強クラスの攻撃力を持っている戦艦型MMSといえど損害は避けられず、最悪沈没という事もありえた。圧倒的な力の象徴である戦艦型MMSを失う事は、青チーム全体の士気にも関わる。その為に白羽の矢が立ったのがこの3隻であった。 カタリナ社製の重装甲戦艦型MMS「ヴィクター級」 速度は鈍足ではあるが、分厚い装甲と強力な砲撃力を持つ重装甲戦艦型MMSにはもってこいの作戦であった。さらに同型が3隻あるといのもひとつの理由でもある。 もし投入した戦艦型が最悪沈められても、代わりがいるからである。数隻の同型で艦隊を組み闇夜に紛れて殴りこみを仕掛ける。 これらの理由も踏まえ、青チームはヴィクター級重装甲戦艦型神姫3隻による艦砲射撃作戦「A飛行場艦砲射撃」を提示した。 かくして、青チームは作戦を発動したのだった。 ゴオオオンゴオオンゴオン・・・ 低いエンジン音を唸らせながら小川を進むドセット。 ドセット「はー、大阪城公園からはるばる天王寺公園まで環状線伝ってきたけど・・・なんともなァ・・・」 スーザン「遠距離からの艦砲射撃かー、メンドクサイなーいつもの定期便みたいに決まったルートで護衛引き連れて爆撃する方がまだマシだよ」 ドセット「本当は俺たち、戦艦型神姫は同じ戦艦型同士で真正面で撃ち合いするのが筋だけどな」 パイト「まあ、どっちでもいいけどー、とりあえずバカスカ撃ちまくればいんだろ」 スーザン「この作戦、うまく行くと思う?」 ドセット「前例あるし、余裕だろ」 パイト「前例って?」 ドセットたちはべらべらとおしゃべりしながら、小川を下る。 ドセット「今からええと、ちょうど100年前だな!太平洋戦争中の1942年10月に行われた日本帝国海軍によるガダルカナル島のアメリカ軍飛行場・ヘンダーソン基地への艦砲射撃の作戦があったんだ。艦砲射撃部隊は金剛級の高速戦艦を主力とした作戦だったらしいなー」 スーザン「1942年の10月?今は2041年の10月だぜ!ちょうど一世紀前じゃねか!!」 パイト「前例って100年前の俺たちのモチーフの実績事例じゃねえか!ふざけんな!あーーーどおりでなんかマスターたちが妙に作戦をサクサクって立てるからおかしいなーと思ったんだよ!」 スーザン「だいたいよー、こんな真っ暗闇の中で撃って当たるのかよ!照準はー」 ドセット「心配するな、コウモリ型が照明弾を撃って、場所を教えてくれる。砲撃はレーダー射撃と三角法を用いたアナログ光学測定の併用な」 スーザン「めんどくせーし古臭せーよ」 パイト「GPS使って位置割り出しの方がよくね?今ならネット使って衛星とリンクできるけど?グーグルアースで誤差、3センチまでいけるぜ」 ドセット「アホォ!なにいうとんねん!衛星からの画像はアテにならへんで!画像処理されてめちゃくちゃなところに落ちんで」 パイト「けっきょくアナログか!!!あほくさ」 スーザン「めんどくせー」 ドセット「艦砲射撃任務も戦艦型神姫の十八番だ!連中に俺たちの火力を見せ付けてやろうぜ」 スーザン「めんどくせーから俺帰りたいんだけど?」 パイト「アナログアナログアナログクマー♪」 ドセット「黙れ」 2041年10月30日 22:30 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ A飛行場 リイン「本当ですか!?」 飛行場の片隅でリインたち、ドラッケン部隊が集まって盛り上がっている。 シャル「そうだ、マスターたちと話し合って、ついにテンペスタ対策に装備が改変されることになった、重い増加装甲とロケット弾の搭載をやめてオーバードブースタを代わりに装備する。今までの倍の高度で航空性能をUpさせるんだ」 ライラ「あれがくれば、テンペスタなんかバラバラにできるぞ!それに前にオマエのやられた仲間の整備が終わって部隊再編でおまえを小隊長に推薦しておいた」 リイン「シャル・・・ありがとう」 セシル「よかったな!リイン」 エーベル「明日は忙しくなるな」 ヒュウウウウンン・・・・パァアアンン・・・ 真っ暗だった飛行場が明るくなる。 シャル「!!」 空を見ると照明弾が明々と燃えてゆっくりと夜空を照らす。 エーベル「照明弾だ、いつものコウモリ型が落としたな」 闇夜の小川に静かに浮かぶドセットは目標の飛行場の位置をじーと見つめる。 その時、飛行場の方角から光がぱっと湧き出る。光を見詰め、ドセットはニヤリと笑みを浮かべた。 それは、計測用にコウモリ型が投下した照明弾だった。 そしてそれは艦砲射撃開始の合図だった。 ドセット「合図だ」 スーザン「照明弾、確認!」 ドセットはゆっくりと砲塔を動かす。主砲はわずかに方向・仰角を変え、さらにもっと撃ちやすい場所に移動する。 ドセット「よォーーし、では始めようか・・・全艦、撃ち方用意―」 チカチカと発光信号で合図をするドセット。 スーザンもパイトも軽口をピタっと止めて、砲撃に移る。 ドセット「撃ち方ァーーーはじめッ!!撃ッ!!!!!」 ドゴオオオオオンンドッゴオオオオオオオン!! ズン・・・ズシン・・・ドオン・・・ ライラ「なんだ?砲台型神姫か?」 遠くの方で雷のなるような音が聞こえ、滑走路からはずれた所に砲弾が着弾し爆発する。 セシル「いいや、ありゃ艦砲だな」 セシルは目を細めて砲弾の着弾位置を見る。 ガオオオン・・ズズウム・・・ドゴオオオオン・ズドム・・・ じわじわとシャルたちに向かって着弾が近づく。 シャル「まずい!!射角が合ってきた!!」 リイン「来るぞ!!」 シャシャシャシャシャシャムシャムシャム・・・ エーベル「逃げろォ!!」 ドッガッガッガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!! 飛行場で待機していた数十機の武装神姫が艦砲射撃の砲撃に飲み込まれて一瞬でスクラップに変わる。 ズッガアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!!!!ボオゴッオオオオオン!! ライラ「うっわああああああああ!!滑走路が!」 地面を抉るように深く砲弾が突き刺さり大爆発を起こして神姫や武装を巻き込み大爆発が起きる。 リイン「これは戦艦型MMSの艦砲射撃だ!」 ライラ「派手ですねー」 セシル「うひいい!恐ろしい、この間の仕返しかァ!?」 シャル「これは挨拶みたいなものだ、明日はテンペスタの連中が出てきて忙しくなるぞ・・・」 ズンズズン・・・ズウム・・・ドン・・・ズズウン・・・ 12:50の「撃ち方・止め」までに、重装甲戦艦型MMSの艦隊は全艦合わせて計966発の艦砲射撃を実施した。この艦砲射撃により、A飛行場は火の海と化し、各所で誘爆も発生した。 赤チーム側は、96機あった武装神姫のうち、54機が被害を受け40機が完全に撃破され、燃料タンク、弾薬庫も炎上した。滑走路も大きな穴(徹甲弾による)が開き、A飛行場は一時使用不能となった。 もちろん、戦いはこれで終わるはずもなく、更なる激戦が後日控えていた。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-5」 前に戻る>「ドラゴン-3」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1093.html
{奴が来た!?} 午前7時、晴天。 天薙龍悪とアンジェラス達は安らかに寝ている。 それもとても気持ち良さそうに。 まるで天国みたいな環境だ。 だが、この天国はすぐに終わりがおとずれた。 天薙家の門の前に仁王立ちして両手を腰にあてながら見る一人の人間によって。 「ウフフフ」 薄紫色のアホ毛一本ありのロングヘアー。 スレンダーな体形に童顔な容姿。 服は一般的に何処にでもある高校の制服。 ミニスカートが強くない風にフワッと揺れる。 「先輩、今行くわ」 天薙家の敷地に入りスカートのポケットから鍵を出す。 カチャカチャ、と音を出しながらドアのロックを解除しドアを開ける。 家に侵入すると礼儀正しく靴を脱ぎ並べ、すぐさま二階に上がり目的の龍悪が居る場所に向かう。 龍悪の部屋に入ると四つん這いになり、ベットで寝ている龍悪の顔近くまで接近する。 「可愛い寝顔。キスしちゃいたいくらい」 と、言いつつ自分の唇を龍悪の唇に密着させようとした。 その時だ。 布団で隠れていた龍悪の右腕が布団から勢いよく出てきて、不法侵入した者の顔を鷲掴みした。 「ハワワワ!?」 龍悪に顔を鷲掴みされた者は、両腕を上下に振りながら慌てる。 ムクリ、と上半身だけ起こした龍悪の顔はそうとうな不機嫌さをかもだしながら言った。 「…おはやう…婪」 「お、おはよ、う、…先輩」 ギリギリ、と鷲掴みした顔を龍男は力をちょっとずつ強くする。 その度に婪は『ハワワワ!?』と言い慌てる。 「俺に、なにしようとした?」 「あたしからの目覚めのキスをしようと思って…」 俺は右腕の肘を曲げ婪をこっちに近づかせ、最大まで曲げた瞬間に腕を伸ばし押すようにした。 伸ばしきった所で婪の顔を離し婪は押された衝撃によって机までフッ飛んだ。 「キャン!?」 かわいらしい声を上げ机に背中を打ち付ける婪。 なにが『キャン』だ。 気持ち悪い声を出しやがって。 「ご主人様~、今の揺れは地震ですか~?」 机の上にアンジェラスが片目を擦りながら眠そうに立っていた。 その後ろにはクリナーレ、ルーナ、パルカも起きていた。 多分、婪が机に当たった衝撃で起きたのだろう。 俺は布団から出て婪に近づき膝を曲げ尻餅ついてる婪の視点に合わせる。 「ウゥ~、痛いですよ~先輩~」 「うるせぇ。俺にキスしようとした罰だ」 「そんなぁ、あたしはこんなにも先輩の事を愛してるのにー」 ピキッと俺のこめかみ辺りにある血管が浮き、婪の胸倉を右手で掴みお互いの額がぶつかるギリギリまで引き寄せた。 「キャー!先輩、近いですよ~。でも、あたしはいっこうに構いませんけど…♪」 「テメェ、いい加減にしろ」 「あたしは先輩に対する愛には、いい加減じゃありませんよ」 「この野郎…俺はお前の事なんか愛してねぇぞ」 「いつかあたしに振り向いてくれます」 「それは絶対にねぇー!」 今度は左手の親指を婪の右頬につけ、残りの四本の指を左頬につける。 その瞬間にすくさま俺は左手に力を入れ婪の頬を両方から押す。 「イタイ、イタイ!」 「あたり前だろ。力を入れてるだから」 そんな時だった。 アンジェラスが俺の頭に下りて来て言う。 「ご主人様。女の子に暴力は良くないと思います!」 「はぁあ!?」 俺は頭に居るアンジェラスを掴むために胸倉と婪の頬から手を離し、その手でアンジェラスを優しく掴む。 「あのなぁ、こいつは女じゃなくて男だぞ」 「えぇーーーー!?!?」 アンジェラスは目を見開き驚愕した。 まぁ無理もない。 婪の奴は見た目は何処からどう見ても美少女に見える。 声も凄く女の子らしい声だ。 だが、こんなナリしてるけど立派な男だ。 ちゃんと股の部分に男性性器もついている。 婪の奴が外に出れば、たいていの男がナンパしてくる。 男が男をナンパして愉しいか? 「まぁいいや、アンジェラス達は朝飯を作ってきてくれ。アンジェラスとパルカは調理、クリナーレとルーナは補助しろよ」 「「「「はーい」」」」 アンジェラス達は俺の身体を伝って一階降りって行った。 部屋に残ったのは俺と婪だけ。 俺は婪から離れ服を着ようと箪笥に向かう。 「先輩、あの子達は?」 「ん?あぁ~アンジェラス達の事か。まぁ気にすんな。にしてもお前、よく俺の家に入れたな」 「これよ」 婪が俺に見せびらかすかのように右手に持った鍵を見せる。 その鍵の形を見た瞬間、俺は納得した。 だって、俺の家の鍵とそっくりなのだから。 そりゃあ入って来れるよなぁ。 「お袋に渡されたのか?」 「うん。先輩の事をよろしくね、と言われたから」 「あのババァ…」 俺は髪の毛を掻きながら苦い顔をした。 十六夜 婪(いざよい りん)。 こいつは俺の後輩にして幼馴染である。 二つ年が離れてるので今のこいつは高校三年生。 言ってみれば普通の高校生なのだが…。 「先輩~あたしの事…いつになったら抱いてくれるのぉ~♪」 「身体をクネクネ動かすな!気色悪い!!」 さっきも言ったとうりに、こいつは男だ。 男性なのに女子の制服を着ている。 なんでも、あまりにもルックスが良いので校長が許したとか? どんな学校だよ、俺の高校の母校は。 「お前も一階に来い。話はそれからだ」 「あたしと先輩の愛語り合いですか?」 「あ・い・つ・ら・の・事だ!」 …。 ……。 ………。 カチャカチャ、と食器の音を出しながら運ぶ武装神姫達。 朝食の準備をしているのだ。 今まで俺が一人で飯を作ってきたがアンジェラスとパルカが料理を覚えてから俺は作らなくなった。 そんな俺は婪と向かい合いのテーブルを挟んだ状態椅子に座っている。 婪は俺の顔を見てニコニコと笑ってやがる。なんだ、俺の顔が面白いか? 「先輩。先輩っていつから武装神姫をやり始めたんですか?」 「ん?あぁ~壱ヶ月前ぐらいからやってるかな。よく覚えてねぇー」 「ふ~ん、先輩の事だから朱美さんから『武装神姫のバイトやらない』とか言われたクチでしょ」 ウグッ…微妙に合ってる、つか、何で解るだよ。 婪の奴は昔から結構勘とか鋭いのだ。 まるで俺の事は何でも知ってるような感じがして気持ち悪い。 「あたしも武装神姫やってますよ。今度先輩と戦ってみたいなぁ~」 「へぇ~婪もやってるんだ。意外だぁ」 「意外とはなんですかー!意外とは~!!」 プク~と顔を膨らませる婪。 う~ん、やっぱこいつは可愛い。 だが、こいつは男だ。 騙されはしないぞ。 「アニキー、朝食の準備ができたよ」 「おぉ。そんじゃあ喰うか。いただきます」 俺は右手に箸を持ち、茶碗に入った米粒を喰う。 アンジェラス達も『いただきます』と言って、俺が作った神姫用の茶碗、コップ、箸、スプーンを使うって朝食を食べる。 最初は人形の身体なのに、人間の食料が食べる機能に驚いたが今は全然違和感を感じない。 婪の奴は丁寧に手を合わせてお辞儀して『いただきます』と言った。 律義な奴ー。 ていうか。 「何で、テメェが俺の食卓で朝食してるんだよ」 「え?だって、あたしの分も置かれてからご馳走になろうと思って」 「はぁあ?おい、アンジェラスにパルカ。こいつの分はいらねぇだぞ」 「そんな事はいけませよ、ご主人様。私達には大切なお客様なのですから」 「お客様!?この野郎が!?!?勘弁してくれよ、ただでさえ金が無いのに婪のせいで更に食費がかさむじゃねえか」 うなだれる用に肩をガクッと落とす。 「まあまあ先輩、そんなに気を落とさないで」 「落とすに決まってるだろーが!このオカマ野郎!!」 吠える俺。 そんな俺を見て怯えるパルカ。 ヤッベ。 今日の朝食を作ったのアンジェラスとパルカだ。 婪の分まで作ってしまった事に責任感を感じてしまったのだろう 「いや、パルカが悪いじゃないよ。悪いのは婪の野郎だから。だからそう怯えないでくれ」 「ウウゥ…分かりました、お兄ちゃん」 だあぁー、疲れる。 朝食ぐらいでこんなに疲れたのは久しぶりだ。 俺が初めて料理した頃ぐらいの疲れ加減だ。 「婪、今日の所は勘弁してやる。だが明日からは自分の家で飯を喰えよ」 「はぁ~い」 ニコヤカな顔をしながら飯を食べる婪。 全くしょうがない奴だ。 「にしても、美味しいね。先輩の神姫が作る料理は」 「ありがとうございます、婪様」 アンジェラスがお辞儀した。 そんなアンジェラスに婪はズズイっと顔を寄せて。 「ねね、今度あたしの神姫に料理教えてあげてくれない?」 「え!?私が、ですか!」 驚くアンジェラス。 それもそうだ。 料理を初めてからそんなに月日が経っていないのに、今度は教える立場になってしまったのだから。 「私は別に構いませんが…ご主人様の許可が下りりれば良いのですが」 「先輩の許可ね。分かったわ、任せて」 婪は椅子から立ち上がり俺の方に来た。 何するつもりだ? 「ねぇ~先輩。今度でいいですから、あたしの神姫に料理を教えてくれませんか?」 色気を使ってきやがった。 残念だがテメェの色気には昔からやられてるから、もう慣れてるんだよ。 効かないぜ。 「許可くれるたら~あたしが先輩にいい事しちゃいますよ~。チュッ」 「ダァーッ!?」 俺は勢いよく立ち上がった。 頬っぺに婪がキスしたのだ。 気持ち悪いったらありゃしれない。 これが女の子だったらどんなに嬉しかった事だったか。 「もう先輩ったら~。テレッちゃって、可愛いんだから~」 「可愛いとか言うな!もう帰れ!!テメェがいるとろくな事が起きねぇー!!!」 「まぁまぁ、ダーリン落ち着いてください」 いつの間にかルーナがコップ辺りにいた。 飯を食うには早すぎる。 「あの婪様、どうかあたしにその色気の術を教えてください!」 「んぅ、ポニーテールの天使型だね、お名前は?」 「ルーナといいます」 「ルーナちゃんね。良いわよ、あたしの今まで先輩に使って色気のテクニックを教えてあげる」 「ありがとうございます、婪様!」 おいおい。 何いっちゃってくれてやがるんだ、この二人は。 ルーナの奴が婪の色気のテクニックを身につけたら、俺の脳の中身が毎日理性と欲望の闘いになっちまう。 勘弁してくれ。 ここは何とか話題を変えないといけない。 このままだと俺の身体が危ない。 「おい婪。そろそろ学校に行かなねぇーとマズイじゃねぇの。俺の車で学校まで送っててやるから」 「えっ先輩とカーセックスですか!?やったー!」 「ご主人様!?」 「アニキ!?」 「ダーリン!?」 「お兄ちゃん!?」 婪の一言によって神姫達は俺を凝視した。 …マジで勘弁してくれ。 もうイヤだ。 「チゲーよ!誰がテメェのケツの穴に俺を入れないといけないんだ!!アンジェラス達も本気にするな!!!」 「下品な言い方は女の子に嫌われますよ、先輩」 「ウッサイ、黙れ!ほら、飯はもう喰ったろ!!行くぞ!!!」 「アァン、そんなに引っ張らないで」 婪の左腕を俺の右手で引っ張りながら玄関に向かう。 早くこの色魔をこの家から追い出さないとアンジェラス達に悪い影響を及ぼす。 勿論、エッチ方面で。 「そんじゃ、ちょっくら行ってくるから留守番頼むぜ」 「バイバイ。また今度来るねぇ~。次来る時はあたしの神姫も連れてくるから~」 バタンッとドアを閉め婪を車に乗せ俺は学校に向かった。 その後、家に帰った後はもう疲れすぎて大学に行く気を失っていたので俺はベットに突っ伏しながら寝た。 婪、こいつは最悪な小悪魔だと、再び実感した一日だった。
https://w.atwiki.jp/kanikanise/pages/16.html
誘惑のラビリンス 第三章 「空手部・性の裏技」 登場人物別 野獣先輩 MUR大先輩 KMR あーいいよいいよいいよー あ、お前さ、KMRさ 頭いきますよ 当たり前だよな あっ、 あっ、そうだ アッツゥ アッツゥ2 あ、待ってくださいよ 洗い方うまいじゃん ありがとうございます・・・ いいゾ~これ いいっすか いーねー い、いや、そんなこと 行きてえなぁ イキますよ いや、そんな いや、見てないですよ 嘘付け絶対見てたぞ ヴッ ウッス うまいなあ うまいラーメン屋の屋台 嬉しいだろ えっ・・・ え、なに? おいKMR OH~ 嗚咽 奥までホラホラ お、そうだな オッス!お願いしま~す 俺もあとから洗ってくれよな 俺もしてほしいけどな 俺もやったんだからさ 俺もやるんですか 俺らが着替えてる時 肝心なところ洗い忘れてるぞ 菅野美穂 きつかったっすね今日は 来てるらしいですよ KMR嬉しそうじゃねぇかよ KMRお前もしてほしいだろ KMRはやくしろ 気持ちいい~ 気持ちいいわぁ 気持ちいいわぁ2 気持ちいいわぁ3 今日はいっぱい飲むぞ ケツ舐められたこと ケツの穴気持ちいいか舐められて ケツの穴舐めろ ここ洗えよ この辺に さっきヌッ・・・脱ぎ終わった時にさ 舌使って舐めてみろよホラ しっかり頼むぜ じゃけん夜行きましょうね じゃ、流します しょうがねえなぁ すげぇきつかったゾ スッスッスッス 先輩こいつ 先輩こいつ玉とか舐めだしましたよ そうだよ! 大丈夫ですよ 立たせてやるか 立たせてやれよ 立たねえなぁ 頼むよー たぶん冷えてますよ 溜まっちゃってさぁ ちゃんと舐めろよ ちゃんと二本咥え入れろ ちょっと歯あたんよ チラチラ見てただろ てゐ!てゐ!てゐ どうすっかなぁ俺もな なかなか風呂来なかったよな 何とぼけてんだよ なんで見る必要なんかあるんですか 逃げんなよ ぬああ疲れた 抜いてください ヌッ 歯当てんなよ はやいっすね 早くしろよ2 腹減ったなぁ 腹減んないすか ビール!ビール 冷えてますよ 冷えてるか ひもじい2 ふぁかりまひた ふぅー! 風呂入ってさっぱりしましょうよ ポッチャマ ほらいくど ホラホラホラホラ ホルァ 待てぇい MURさん上がりますか 見たけりゃ見せてやるよ 見てないでこっち来て 見とけよ見とけよ 見ろよ見ろよ もう一回いってくれ もっとおいしそうに食べろよ もっと舌使って舌使ってホラ やっぱこいつ好きなんすねぇ やめたくなりますよ やめたくなりますよね やめてくれよ よし、じゃあケツ出せ よし、じゃあぶち込んでやるぜ 夜中腹減んないすか んー☆
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2785.html
与太話14 : 能力って何かね 怠惰って素晴らしいと思う。 だって私たち、武装神姫よ? 名前に「武装」なんてぶっそうな(武装がぶっそう……ぜんぜん面白くないわよ)言葉がついてるもんだから、レディの細くて長くてスラッとした素足にストライカーを履かされたり、か弱い細腕に機関砲を持たされたりするわけよ。 人工AIの倫理的問題がどうとかいう前に、レディにドンパチさせる人間の――特に男たちの正気を疑ったほうがいいわ、絶対。 ……なんて文句をつぶやいっターで発言でもしたら、私の根本的な存在意義を疑われるわけで、可哀想なホノカさんはこうして貸切の茶室で一人ダラダラするしかないのである。 怠惰って素晴らしいと思う。 週刊少年ジャンプを読み終え、特に用事もなくコタツでぬくぬくしている時間こそ、常日頃から戦闘を余儀なくされる私たちの唯一の癒しなのだ。 データで構成された茶室の外はちゃんと冬仕様になっていて、はらはらと舞い落ちる色づいた枯れ葉はそろそろ雪に取って代わりそう。 合わせて室内の気温も低いけど、それがコタツのありがたみをいっそう際立たせている。 前半身をコタツにつっこんで、ひんやり冷たいテーブルにほっぺを乗せて、さながらホットコーヒーにアイスクリームを乗せるような贅沢を味わえるのだ。 な~んにもしないで、ただ、ホカホカぬくぬく。 外で積もる枯葉が重なっていくほど私のまぶたも重くなってきて、うつらうつらと、夢の世界へ手を引かれていく。 何も考えずにその手を取って、スリープモードに入ろうとした、その時。 「突然失礼する。ゴクラクだ。セイブドマイスター殿は今週のジャンプを読まれたか?」 私たち武装神姫はどうやら怠惰すら許されないらしい。 ◆――――◆ 「そう嫌がらずともよかろう。今日は世間話をしに来ただけだ」 正方形のコタツの、私から見て右側に勝手に座り込んだゴクラクはテーブルの上にミカンヂェリーを2つ置いた。 コタツの中でストライカー具現化させて蹴り飛ばしてやろうかと思ったけど、ミカンを出されては仕方がない、今日のところは勘弁してあげよう。 キャップを開けて一口飲むと、温まった体の中に気持ち良い甘さと冷たさが流れていくのを感じられた。 私と同じく一口飲んだゴクラクはヂェリ缶を置いた。 「セイブドマイスター殿はめだかボックスを読まれているか?」 「は? あ、うん、読んでるけど」 「それは重畳。ところで今週号の話はどうにも納得し難い部分が多かったとは思われないか?」 今週号は第173箱、タイトルは『歌とはなんだ?』である。 ネタバレが嫌な人はここから先は読まないで欲しい。 ネタバレが嫌な人はここから先は読まないで欲しい。 ネタバレが嫌な人はここから先は読まないで欲しい。 「いきなり言われてもねぇ。……そうだ、あのサブマシンガン。あれ絶対おかしいわ」 外観、構造、威力、装弾数など、どれもイチャモンをつけたかった。 ピカティニーレールが付いてたから実在するものを参考にしたんだと思うけど、それならもうちょっと何とかならなかったのかしら。 素直にH K社のマシンガンにでもしとけばよかったのに(利権的な問題があるかは知らないけど)。 ひとたび思い返すと文句を吐き散らしたくなったので、丁度良い話し相手に言おうとしたのだけど、ゴクラクは「いや、それもあるがもっと別の部分だ」と遮った。 「何よ、どうせマンガだから銃火器の理屈なんてどうだっていいって? ピストル弾をしっかり連射できることがどれだけ素晴らしいか分かってないみたいね。あのね、サブマシンガンが重要視されたのはそもそも――」 「いや大丈夫だ、勿論心得ている。我はこれでもちょっとした神姫団体を管理する立場にあるが故、武装についての最低限の知見はあるつもりだ。我が問いたいのは黒神めだかが最後に使用したスタイルについてだ。我が共振を武器とすることを覚えておいでだろうか?」 「コノヤロウまた私に恥かかせたいらしいわね」 前回ゴクラクと会った時、自分の能力をひけらかすようにペラペラとしゃべって、チンプンカンプンだった私を置いて去っていった。 あの時の恨みがよみがえる。 また私をバカにしに来たのかコンチクショウ。 「世間話をしに来たと言ったであろう。そう興奮されるな。ほら、ヂェリーは如何か」 飲みかけだったヂェリーを勧められて、私はそれを一気飲みした。 ちょっと温くなってたけど甘さは変わらず私を癒してくれて、もうゴクラクのやつ早く言いたいこと言って帰ってくれないかなあと思うのだった。 「それで、黒神めだかとあんたが何だって?」 ◆――――◆ 「うむ、どうやら黒神めだかのスタイルが我と同じ共振を利用するもののようだ。言霊の力を利用するらしいスタイルとやらは本質的には喉から発せられる振動を利用するのであり、その振動を増幅させたり、また感情的にシンクロするという意味での共感も極めて有効であろう。そもそも何故共振という現象が発生するかというと、世の中に存在するシステムを数式化しようとすると二次遅れ要素とむだ時間要素に近似できる場合が多く、そのゲイン特性はある一つの周波数で増幅されるのだ。単純な鉄の塊で構成された機械であっても叩いてやればある周波数で顕著な反応が見られ、また様々な要素によって成る物であってもある一定の入力を与えてやればそこからむだ時間の後に反応が始まり、収束に向かうまでをデータ化することで固有振動数を分析することができる。勿論それらは単純ではなく誤差を多いに含むため理論通りに上手く事が運ぶことは皆無といってもよいが、逆に理論だけを語るならば共振とはさほど難しいものではなく、あくまでシステムのあるがままを表す現象なのだ。黒神めだか――いやめだかボックスの原作者も我と同様、そこに目をつけたのかもしれない。しかしだ。我が武器として扱えるのは『共振』であって『共感』とはまったくの別物だ。大辞林によると共感とは【1.他人の考え・行動に、全くそのとおりだと感ずること。同感。 2.他人の体験する感情を自分のもののように感じとること。 3.感情移入】とある。つまり『共感』が対象とするものは感情を持つ『者』であり、『共振』が対象とする感情を持たない『物』とはまったくの別物となる。まだ科学が発達していない時代の言い方をすれば有機物と無機物の違いだ。即ち我の見解としては、『共振』と『共感』を一つの能力として扱うことは不可能なのだ。いや、それができれば我も苦労しない、というところが本音なのだがな。武装神姫の頂点の一角とされる『デウス・エクス・マキナ』の一人とされておきながら泣き言を言うのは恥ずべきことだが、フィクションの自由自在さには敵わない。――フッ、このような情けない姿は部下の前には晒せない。セイブドマイスター殿はその点、相手の心を開く鍵となる『共感』の能力に優れているのかもしれないな」 ◆――――◆ 「……………………………………………………ふぁえ? あ、うん、そうね、あんたも大変ね」 「ご理解感謝する。長話にお付き合い頂きすまなかったが、我も少しは気が晴れた。これは余り物だが」 そう言ってゴクラクはミカンのヂェリ缶をさらにもう2本テーブルの上に出して、「では、また」と茶室を出ていった。 なんだか長々と一人でしゃべってたけど、結局あいつは何しに来たんだろう。 ま、被害もなかったしミカンヂェリーくれたし、どうでもいいか。 さてと、また充実した怠惰な時間を過ごしましょうかね。 先日ボークスに行ったら人魚型とかませ犬型神姫のリペイント版が山積みになってました。 それよりもっと売るべきものがあるだろうに……などとボークスや電撃に文句言ってもしょうがないのですが、もうバイク組の発売は絶望的かしら。 フランベルジュ、コルセスカなんてどうなっているのやら。 ガルガンチュアに至っては覚えてる人すらいないんじゃ……。 きっぱり諦めて忘れて、ストライクウィッチーズのマルセイユの発売を心待ちにしま――しょうかな? 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2784.html
10ページ目『お前は誰だ』 姫乃がまどろみから覚めた時には、タクシーは総合病院のロータリーに入っていた。不意に胸がズキリと痛んでも、手や頭を動かすことすら億劫でどうしようもない。代わりに目を動かすと、隣に座っている弧域が「付いたぞ姫乃、もう少しの辛抱だからな」とささやいたところだった。 「病院? ……あれ、私いつから寝て……」 「ああ起きてくれたか、よかった。射美まで寝てるから二人とも背負わなきゃいけないとこだった」 姫乃が膝下を見ると、自分の太股を枕にした射美の頭があった。頭の重さがそのまま射美に預けられている信頼の重さのように感じた。タクシーから降りて射美を背負った弧域と、弧域の腕につかまった姫乃、三人が入ったロビーには長椅子が並んでいて、ちらほらと年寄りが座っていた。廊下に続く床には数本の電子回路のような線が引いてあって、患者や見舞いらしき人々がそれに従い、あるいはそれに気を向けることもなく歩いていく。線は色分けされていて、正しい色の線を辿っていけば広い院内でも迷わずにすむ。姫乃が座った位置からでは、それらの線がどこに向かっているのかはまったく見えなかった。 弧域が受付に行っている間、座って待っていた姫乃の胸に再び痛みが走った。全力で走った時のような苦しさとは違う、より直接的で鋭い痛み。タクシーに乗るまでにどこかにぶつけたのだろうと服の下に手を入れると、中はべっとりと湿っていた。熱があるのだから汗をかいて当然と軽く考え、痛みのある場所を押さえてみるとやはりズキリと痛む。しかしパジャマにカーディガン、それに弧域が羽織らせたらしいコートの上からではその傷が何なのかは分からなかった。 受付を済ませた弧域が戻ってきた。 「あと20分くらいで診察できるってよ。空いててよかった」 「ほんとねぇ。服の中が汗びっしょりだから、早く帰って着替えたい」 そう言って姫乃は服の中から手を抜いた。その手を丁度近くを通りかかった若い女性の看護師が見咎めて飛んできた。汗ではなく血で一面濡れた手に一番のショックを受けたのは姫乃で、弧域と看護師に支えられなければ椅子から転げ落ちていたところだった。 入院の必要はないとオッサン医師に言われた時、弧域は反発したが、ボロアパートに戻ると姫乃は部屋の前で大きな欠伸ができるほど、落ち着きを取り戻していた。しかし全身にまとわりつくような気だるさはそのままだった。姫乃は胸に張り付けられたガーゼが剥がれないように、もう何度目になるかしっかりと押さえつけた。 「ごめんね、いろいろ迷惑かけちゃって。射美ちゃんもありがとうね」 「いいからママは早く寝なきゃダメ。あたしが見張ってるからね、起きちゃダメだからね」 「射美はこっちの部屋だ。ママは今は一人でぐっすり寝ないといけないからな」 目が覚めたら軽くでもいいから何か食べるよう言い残して、弧域と射美は姫乃と別れた。 「さて……次の問題はこっちだな」 「何かあるの?」 「エルのことだ。思い出したはいいけど、神姫の存在を忘れてたってのはどういうことだ?」 ホムラ達が戦っている間、弧域は大学にいた。姫乃の言いつけどおり真面目に講義を受けていたところだったが、アマティがエルを殴り倒すと同時にエルのことを、またオートマタとして動く神姫のことを思い出した。近くに座っていた貞方と鉄子に神姫のことを尋ねたのだが、 「は? 動くってあの武装神姫が? お前さっきまでノート取ってたけど、寝てたのか」 「昨日傘姫が同じこと言って、『姫乃がおかしくなった!』って電話してきたんはあんたやないね。二人してどうしたんよ」 二人とも一分前の弧域同様、動くフィギュアのことなど知らなかった。講義を抜け出して帰宅すると丁度、弧域の部屋の扉から4体の神姫が出てきたところだった。 「マ、マスター…………違うんです! 私は姫乃さんのことを悪く思ってなんかいないんです! ホントなんです信じてください!」 「表ではニボシ食わぬ顔しておきながら、裏ではマスターの恋人暗殺を目論む愛憎劇! どうにゃ、ワガハイが監督やってやるから映画とか作らにゃいか」 「ああっ、丁度いいところに姫乃さんの彼氏さん、姫乃さんが危ないんです!」 「おい、あまり煽るな。ただ風邪をこじらせただけだろ」 この時弧域は初めて、姫乃の部屋に踏み入った。このボロアパートに引っ越してきてから三年が経とうとする今まで、一度も侵入を許可されたことのなかった姫乃の聖地。弧域は姫乃の意思を汲んだのか、なるべく部屋の中を見ないようにして、布団の中でガタガタと震える姫乃にコートを着せてタクシーを呼んだ。どうしても見過ごせなかった【モノ】については、姫乃の体調が回復してから厳しく追及することにした。 弧域は、姫乃の部屋の扉が閉まるのを確認した後で射美に問うた。 「姫乃が言ってたとおり、神姫はただのフィギュアじゃない」 「そうだね」 「ほぼ同じ頃、射美が俺達の前に現れた」 「パパとママの子供だからね」 「射美はフィギュア化事件のことを知っていた」 「知ってるね。あたしもイルミなんだし」 「怒らないから正直に教えてくれ。ぶっちゃけ黒幕だろ」 「分かんない。ほら、早く中入ろうよパパ、寒い寒いよー」 逃げるように弧域の部屋の扉を開けて中に入っていく射美。弧域もそれに続いた。 姫乃を病院に連れて行った時からずっとそうしていたのか、部屋の隅でエルは膝を抱えて縮こまっていた。ブロンドの長い髪が腕にかかり、ぐずぐずな顔を覆い隠している。事ある毎にそうやって落ち込むエルの姿を懐かしむように、弧域は苦笑をこぼした。 「なに落ち込んでるんだエル、せっかくフィギュアから――」 「あの神姫を信用しちゃダメだよパパ。ママを殺そうとしたんだから」 聞いていたエルは肩をビクッと震わせたが、頭を上げて言い返そうとはしなかった。 「あたしが鉄砲でバーンってやってママを助けたんだから」 弧域は机の上に放置されているエルの短剣三本を見つけて手に取った。忍刀を改造したそれは三本とも同じ場所で折れていて、もう使い物にならない。 弧域と射美が部屋着(射美は弧域のダボダボのジャージを着た)に着替えて二人で電気ストーブに手足をかざしながら落ち着いてから、ゆっくりと頭を上げて立ち上がったエルは、何かを決意したように、まっすぐ自分のクレイドルに向かった。そしてクレイドルに座って、目をつむった。 「私をリセットしてください、マスター」 すべてを諦めたような声だった。 「イルミ姉さんと初めて戦って、姫乃さんと握手した日から、姫乃さんのことを悪く思ったことはありませんでした。……ない、つもりでした。それが嘘だって、私も知らない本心が姫乃さんのことを憎んでたって分かっちゃったらもう、マスターの側にいられません。リセットしたら、私のことは捨ててください。新しく目覚めた私もきっと、マスターのことを心から好きになって、姫乃さんのことを心の奥底から憎みますから」 「…………」 「一思いにやっちゃってください。お別れの挨拶は……つらいだけですから」 「待て待て早まるな。小さい子の前でそんなこと言うなや、トラウマになったらどうすんだ」 エルのことをじっと見つめる射美を自分のほうに向かせた弧域は、まだ重い物を背負わせるにはあまりに華奢な両肩に手を置いた。 「なぁ射美。ママはエルとケンカしたことがあるんだけど、ちゃんと仲直りしたぞ。射美も良い子だからできるよな?」 「嘘。じゃあどうやって仲直りしたの?」 「握手して、デコピンして、それでおしまいだ。後でママが起きたら聞いてみるといい、ホントだぞ」 しばらく納得がいかないという風に弧域とエルを交互に見つめ、その後で壁越しに、今はベッドの上にいるはずの姫乃に視線を向けた射美は「……分かった。パパがそう言うなら、そうする」と、渋々が半分、弧域への信頼半分といった感じで頷いた。 「待ってください! そういう問題じゃなくて、私はもう――!」 エルを無理やり黙らせるように、弧域は15cm程度の体を右手で鷲掴んだ。そしてエルの首から上だけを射美に差し出した。黒ひげ危機一発ならぬ戦乙女危機一発。 まだ完全に納得しかねる様子の射美だったが「ママも仲直りした」とあらば、それを真似しないわけにはいかない。素振りを始めた右人差し指はビッ! ビッ! と鋭く空気を切り裂いた。 「な、なんかこの子、手加減しなさそうなんですけど……っていうかマスターその前に説明してください! この子どちら様ですか! すんごく姫乃さんに似てますけど、隠し子がいたなんて聞いてないです!」 「あー、デコピンの後で説明するから」 「説明聞く前に頭が吹き飛びそうなんですけど!?」 「さっきはリセットされる覚悟してたじゃない。心配しないでエル、もし頭が取れちゃったらパパが新しいの買ってくれるから」 「これがゆとり脳ってやつですか!? どんな教育方針ですかマスター! 最近の親は命の尊さも教えないんですか! 私の顔はアンパンですか! 顔を取り替えたら元気100倍ですか!」 「なんのためーにーうーまれてー」 「なにをして いきるのか?」 「こたえられーなーいーなんてー」 「そーんなのーはー」 「「 I ☆ YA ☆ DA 」」 「二人とも絶対間違ってます! アタマ吹っ飛ばす時に歌う歌じゃないです!」 「じゃあいくよパパ、しっかり押さえててね」 「おう、外すなよ」 「嫌です! 前言撤回ですまだ死にたくないです! い、いやーーーーっ!!」 勿論。 容赦のない姫乃と違って射美のデコピンは、力を抜いてエルの前髪を少し揺らした程度だった。ただ、中指に力をこめたまま暫くエルの前で留めて無駄に怖がらせたあたり、どこか母親に通じるものがあった。 「なるほど、イルミ姉さんでもある射美ちゃん……ん~、サッパリ分かりませんが、警察とかに頼るのはやめたほうがいいと思います。たぶん捜査して分かる範疇を超えてますよ」 「えへへ」 「褒めてな……いえ、褒めざるを得ないですね。おかげで姫乃さんを大変な目にあわせなくて助かったんですけど、神姫でもこんな芸当ができるのはマシロ姉さんクラスじゃないと無理ですから」 じっくりと眺めていた折られた刃をそばに置いたエルは、右手の親指と人差し指を立てて銃の形に作り、ベッドに座った弧域と射美に向けて「バーン」と撃った。それを受けて「あうっ!」と胸を押さえて倒れたノリの良い射美とは対照的に、弧域の表情は固いままだった。 「仮にマスターが射美ちゃんの普通じゃない部分をバッチリ説明できたとしても、理解はしてもらえないはずです。そして理解できないものは偶然、もしくはマスターの見間違いだって切り捨てられて、残るものは『記憶喪失の女の子』と『白昼夢の中で動く人形』だけです。やましいことのないマスターや姫乃さんにとって不利になるだけです」 「やっぱそうだよなぁ。自分達で解決するしかないのか……」 「いいじゃない、ずっと三人一緒に暮らそうよ。あ、エルも入れてあげるからね」 「どーせ神姫はペットみたいなもんですよーだ」 「だめだ」と弧域は断固とした口調で言った。 「こんな戸籍すら不明な状態で成長させられるか。お前くらいの子供が学校に通わなくてどうする」 弧域は自分の子供の頃を思い返しても、あまり真面目に勉強をこなしてきた覚えはなかった。彼の考える当たり前の子供のように宿題をこなして、あるいはサボりもした。試験前になれば徹夜もしたし、模試の結果が思うように出なければ悩みもした。最低限、授業に付いて行けなくなることはなく、やるべきことをそれなりにやったというだけで、特別なことはしていない。姫乃と鉄子に勉強を教え(ようとし)ていたが、彼もまた鉄子と同じように成り行きに身を任せていただけだった。しかしそれが本当に大切なことだと分かったのは、週に一時間だけの中学三年の子供を相手とする家庭教師を初めてからのことだった。小学校や中学校の教師達は教室内で計算ドリルなどを振りかざし「勉強は積み重ねだ」の短い言葉ひとつにあまりに重要な意味を込め過ぎ、何をどう積み重ねるのかを説明しなかった。弧域は教え子を前にした時、そんな教師達を殴りたくなった。何故もっと分かりやすく子供たちに理解させてやらなかったのか。早熟で聡明な子供は選ばれた道へと別れていき、勤勉な子供はステージを義務教育の上へ移していく段階を重ねて意味を知ることになる。では義務教育の最後の一年を迎えても未だ四則演算を満足に行なってくれない子供は? 分数を約分することを覚えてくれない子供は? そんな子供にどうやってルート記号の意味を教えればよいというのか? 弧域にも「勉強は積み重ねだ」を分かりやすく説明することはできない。教え子に説明を試みたこともあったが返事すらしてくれなかった(どころか半年以上過ぎた今でも挨拶の言葉すら聞いたことがない。ギャグを言ったら「グフッ!」とくぐもった声で笑うだけの、今思い返せばいろいろ残念な子だったなあとは作者の談)。しかし、その状況に甘んじていては確実に子供がダメになる。子供の何がどういった風にダメになるのかは大いに偏見が混じるため明記を避けるが、とにかくダメになる。姫乃と同じ顔をした少女がダメになる姿を、弧域は想像ですら許せなかった。 「いいな、勉強は必須だ。後で射美の教育レベルを測るからそのつもりで」 「やーだー。勉強やーだー」 「つべこべ言うな。あんまり成績悪いとママに言いつけるぞ」 「マスター、いろいろ考えてるとこにごめんなさいですけど、神姫のことも忘れないでもらえると嬉しいです。おしゃべりできたり戦ったりできる神姫が世界中で手の指で数えるくらいしかいないのは寂しいです」 そうエルが頼み込んだ、その時。 「分かるにゃあその気持ち。一匹狼ならぬ一匹猫のワガハイもたまには101匹マオチャオズと戯れたくなるもんにゃあ」 弧域たち三人が驚いて振り向いた先、ベランダの窓はいつの間にか開け放たれていて、縁によりかかったカグラは腕を組んで意味ありげに頷いていた。アマティとホムラの姿はない。タバコをどこからか取り出して口に咥え、ライターで火を着けて一服して、おもいっきりむせた。 「げえっほっ!? ぉえっ、ごっほおっ! ほ、ほむほむのやつ騙しやがったにゃ! マタタビヂェリー染みこませても茶葉がタバコになるわけあるかにゃ!」 ベランダに叩きつけるように捨てられたタバコ(?)はカグラの肉球付きの足で何度も踏みつけられた。息を荒げたカグラは弧域達の冷めた視線に気づくと慌てて取り繕い、再び腕を組んでニヒルなポーズをとった。 「そこのロリ娘のことでお困りですかにゃ? おおっと言わなくても分かってるにゃよ、オマエタチにはアイディーアが無いんにゃろ。そこでにゃ。ここはひとつ、ワガハイに協力しにゃいか。ロリ娘と神姫フィギュア化事件、一緒に解決できるかもしれにゃいぜ」 ■キャラ紹介(10) ハナコ 【多方性戦術兵器パンドラ試作型】 《1》武装神姫の装備数についての考察 一般的に、神姫が搭載する武装(任意起動させるタイプ)の数は、攻撃・防御・機動などを合わせて3~6つが適当とされている。 2つ以下では対応不可な状況の発生確率が跳ね上がり、また7つ以上の装備を用意してもバトルで一度も使用することのない余計な荷物になりがちであるのが根拠である。 素体に固定される装甲など非可動的な武装については別途検討が必要であることを始めに断っておく。 また、一部の狂った性能の神姫(例えばこの界隈の『デウス・エクス・マキナ』に分類されるような強さを持つ神姫)などには当てはまらない、あくまで基本的な考察であることも付け加えなければならない。 他にも数多の例外があることも、少々言い訳じみてはいるが認める。 これはあくまで一般的な見解である。 また、これは例外の中から発見した事柄だが、武装神姫バトルにおけるすべての戦術は大きく12に分けることができることについても言及したい。 以下、武装の数を少ない方から順に個別に検討していく。 《2》武装数;0の場合 素体のまま、または素体各部のアーマーのみとなる。 神姫がカラテマスターか何かでもない限り勝利はあり得ない。 それでなければ、非暴力・不服従のガンジースタイルで相手を精神的に追い詰めてサレンダーさせるくらいだろうか。 時折、回避行動やバトル中の恐怖心を克服するための特訓として非武装でバトルをさせるオーナーを見かけるが、ほとんどの場合、神姫にトラウマを植え付けるだけの逆効果に終わることは MMS 2nd 素体の登場前から各メーカーより警告されている。 《3》武装数;1の場合 これも武装数;0の場合と同様に誤解されやすいのだが、例えば剣術の練習として大剣一本だけ持ってバトルに臨んでも成果はあまり期待できない。 そもそも武装神姫のAIは初期状態からある程度の戦闘能力を持たされているため、よほど性格的に不得意な武装でない限り最低限の運用水準は満たされている。 よって武装ごとに個別に特訓時間を割くよりも状況に応じた複数の武装の扱いに慣れるほうが優先されるべきであり、その中で各武装の運用精度が自然と向上していくのが最も望ましいトレーニングといえる。 また別の例として、歴戦の強者が槍一本のみ担いでバトルに臨むなどといった光景も見受けられるが、褒められた行為ではないと言わざるをえない。 何故ならその手の神姫が勝利する場合は決まって相手が明らかな格下であり、また敗北する場合は刃がまるで届かなかったり弾が当たらないなど『詰み』状態となって得られるものが何一つないからである。 仮に単一の武器に固執してなお強者相手に勝利を重ねることができる神姫がいたとしたら、それは明らかな才能の無駄遣いであり、+αで何かしらの武装を追加装備したほうが強くなると断言できる。 そして何より、見るからに軽い武装は入念な用意をした相手を不愉快にさせ、俗に云う『舐めプレイ』と受け取られる可能性が非常に高い。 唯一の武器に固執した神姫にその気がなくとも、相手がそれを見てどう受け止めるかを考慮するのはバトルのマナーとして覚えておかねばならない。 4人の『デウス・エクス・マキナ』の中で最も温厚、寛容かつ正義感に富む『大魔法少女』アリベがハンマー一本を担いだ愚かなストラーフに挑発され、怒り狂って即サレンダー、筐体の外に出てストラーフを消し炭にした事件が最たる例である。 自分や相手のためにも、武装は複数用意すべきである。 《4》武装数;2の場合 駈け出し神姫、または現在流行しているライトアーマークラスに多いタイプである。 武装の組み合わせとしてはおおよそ以下の場合になる。 1.攻撃+防御 2.攻撃+機動 3.攻撃+攻撃 4.防御+機動 これらがあればバトルにおける最低限の行動を取ることができる。 どの構成を選ぶかは神姫とオーナーの好みになるが、注意すべきことは攻撃手段である。 機動力の低い神姫がナイフで接近戦を挑んだり、射撃の才能がまるっきり無い神姫がハンドガンを構えることなどに意味が無いのは当然である。 とにかく、相手に確実にダメージを与えられる攻撃武装を選ばなければならない。 しかし、先に列挙した例のうち一見して無難そうな1番と2番について考えてみれば分かるが、数多く存在する武器の中から「コレだ!」とひとつ選ぶのは難しい。 刃物は相手に届かなければただの棒。 銃器は弾薬が切れてしまえばただの重り。 爆発物に至っては相手に当たらなければ汚い花火だ。 他にも多種多様な武器があり、それぞれ一長一短がある。 そこで3番と4番に注目したい。 まず3番は、よほど偏った武器を選ばない限り、バトル中に何もできなくなる状況を(武器0,1つの場合と比較して)減らすことができる。 最近、衝撃的な登場で話題となっている『ドールマスター』コタマは参考例としては極端すぎるが、近距離用・遠距離用の人形を駆使してどの距離でも万能に戦える理想的な神姫だ。 次に4番だが、これは人間でいうところの車両事故、つまり装甲と機動力に任せた体当たりを武器とする。 原始的に思えるが、1~4番の中で最も相手にしたくないタイプは? と考えると自ずと4番になってはこないだろうか。 装甲で攻撃を弾く、または機動力で攻撃を躱して突撃する。 さながら戦車のような神姫はそう簡単には止められない。 どうだろうか、ここまで考えて「武装は2種類あればいいんだ」と考えるだろうか。 答えはNOのはずである。 3番の『ドールマスター』は基本的に人形だけで戦闘を行うが、本人まで攻撃・防御手段を持てばさらに強くならないだろうか。 4番の戦車のような神姫は、主砲を搭載すればさらに強くならないだろうか。 つまり武装数;2というのは0や1のように舐めくさったものではなく、必ずどこかに発展の余地がある数なのだ。 そのことに気づき、さらに強くなりたいと願った神姫とオーナー達が3つ以上へと武装を増やしていくのである。 《5》武装数;3~6の場合 ライトアーマーブームの前までは、ほとんどの武装神姫がこれくらいのボリュームで販売されている。 また次世代神姫として登場が発表されている戦乙女型も久々の重装備神姫であると噂されている。 (次世代神姫の登場により、長らく4人しかいなかった『デウス・エクス・マキナ』の席が増えるのではないかと、その手の情報屋は期待しているようだ) この数から武装の選択肢が爆発的に増えることとなり、ノーマル装備で戦う神姫や組み換え、改造など個性が際立ってくる。 どのような装備も神姫とオーナーそれぞれ好きなものを選べばよい。 試行錯誤を繰り返していけば自ずと「戦える神姫」になるだろう。 《6》武装数;7以上の場合 ドレスアップ目的ならばともかく、バトルにこれ以上の装備を持ち込むのは無駄だと言わざるをえない。 単純に考えても装備は増やせば増やすほど重くかさばるし、バトル中にすべてを必要とする機会など滅多にないはずである。 それに神姫も手段ばかりが増えて各装備に熟練できなければ混乱してしまうだけだ。 勿論、武装が多いのが悪いと決めつけるわけではなく、すべての武装を使いこなせれば何も問題ない。 努力次第では武装をどんどん増やすことで勝利を重ねることもできるだろう。 しかし強い神姫ほど武装の選択肢が最適化されていき、武装数が7つ未満に絞られることが多いのが事実だ。 RPGのように装備することが強さの足し算にならないところが武装神姫の醍醐味でもある。 重装備神姫の動きが鈍くなってきたと感じた時は無理にブースターなどを増やそうとせず、思い切って軽装になってみると、思いもしなかった戦術を得られるかもしれない。 ちなみに、声を大きくして言えないことだが、神姫バトル初心者を超えて一人前とされる基準の「門番」として、重装備神姫が選ばれることが多い。 ぶっちゃけると、金に物を言わせて高火力武装を持てるだけ持った神姫である。 バトル開始から弾丸、レーザー、ミサイル、ビットなどを考えなしに撒き散らすタイプが特に多く、バトル慣れしていない神姫を近づけることなく屠り勝利数を重ねるといった寸法である。 子供オーナーならば微笑ましい光景だが、いい年したオーナーであったなら見ていられない。 初心者にとっては防御・回避の良い基礎練習相手になるだろう。 また金こそパワータイプの門番は最新の武装を使ってくることが多いので、上級者ならばその性能を見極めるために相手したり、ナイフ一本を握りしめて「金」より「愛」であることを証明してやるのも面白いかもしれない。 こういった事情があるため、「門番」とはあまり良いイメージを持たれる存在ではなく、むしろ陰口のような意味で使われることが多い不名誉な称号である。 自分がそうならないよう、武装の数には気を配りたい。 《7》戦術数とその応用兵器について 様々なバトル(1対1のフリーバトル)を検証した結果、武装神姫の戦術は大きく12に分けることができる。 今後の研究に大いに関わってくることから、残念ながらそれら12の戦術を列挙するのは秘匿とさせてもらう。 一例を挙げるとすれば、『デウス・エクス・マキナ』の一人にして最も喧嘩を売りたくない相手と恐れられている『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロが操る騎士人形の数が12だ。 相手が相手なだけに12という数字の結びつきを確認するのは難しいが、何かしらの関連性があるものと考えられる。 さらに、もし12の戦術すべてに対応できる神姫が存在すれば『最強』と呼べるのではないだろうか、とは当然の結論だろう。 12の戦術、そしてそれらを実現可能な武装を用意し熟練することで、どんな神姫でも『デウス・エクス・マキナ』クラス以上、つまり最高水準の武装神姫に手が届くと期待できる。 しかしそれでは前述した武装過多のデメリットと矛盾することになり、理論上、特別な才能(AIの特異な成長や、素体・武装の究極的なチューニングなど)のない神姫が『デウス・エクス・マキナ』クラスを相手取ることは不可能である、という消極的な結論に辿り着いてしまう。 そこで、12の戦術を一つの塊としたシステムウェポンを検討したい。 既に試作機の設計に着手しており、完成までの目処はついている。 一つの兵器としては過大な規模の武装になってしまうのが欠点だが、完成したあかつきには所持した神姫が少なくとも一目置かれるレベルの戦闘力を得ることは間違いないだろう。 兵器の名称は既に決めてある。 その兵器の武装者に銃口を向ければありとあらゆる災厄が襲い掛かってくる、というコンセプトから―― 【ハナコ先生の授業は眠い】 「[――というコンセプトから『多方性戦術兵器パンドラ』と名付ける。] 以上が私の武器の基礎らしくて……あれ?」 パンドラの取扱説明書に付属されていた資料を読み終えて顔を上げてみると、目を開いている人は誰もいませんでした。 メルはエルさんと肩を寄せ合うように仲良く眠っていて、コタマさんは私が読み始めた時から既にいびきをかいていたような気がします。 ニーキさん、マシロさんも姿勢は正しいままですが、こっくりこっくりと船を漕いでいます。 私の読み方が退屈だったのがいけないのでしょう。 皆さんに退屈な思いをさせてしまい申し訳ないです。 体を冷やさないように急いで布団を用意しないと……でも、その前に。 こうして皆さんが一緒に眠っている場面なんてなかなか出会えないですし、写真を一枚撮ってからでもバチは当たりませんよね。 次ページ『?』? 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/605.html
剣は紅い花の誇り 田舎のとある町で行われるバトルフリーク達の暑苦しい話に、ちょっと怪しげな陰謀風味 コラボ歓迎・・・ですが設定的に他の方のと絡め難くてちょっと著者自身が困っていたりしますが・・・ 著/ぬえ 本編第壹部 第壱幕 「朔-saku-」 第弐幕 「Virgin cry」 第参幕 「神の星」 第肆幕 「THE FIRST CRY IN HADES」 第伍幕 「Merciless Cult」 第陸幕 「END OF SORROW」 第漆幕 「READY STEADY GO」 第捌幕 「FOLLOWER」 第玖幕 「GARDEN」 第拾幕 「G」 第拾壱幕 「MAD SKY」 第拾弐幕 「侵食」・・・神姫悲惨描写注意 第拾参幕 「かすみ」 第拾死幕 「かすみ -見目形 目に焼き付けて-」 第拾伍幕 「Unknown・・・Despair・・・aLost」 第拾陸幕 「HELLO,CP ISOLATION」 第拾漆幕 「Somewhere Nowhere」 第拾捌幕 「Southern Cross」 第拾玖幕 「Like A Angel」 第廿幕 「CREATURE」 第廿壱幕 「奈落の底」 終幕 「アクロの丘」 本編第貳部 第壱幕 「リライト」 第弐幕 [[]] 資料 登場神姫紹介 登場人間紹介 設定資料 『鬼奏』 外伝とか 武士娘って格好良いよね?これが最初に書いたやつ。設定が微妙に違う上に、まとまりが悪い 幕間一 「クイントスの理由」第漆幕と第八幕の間 幕間二 第八幕 「予感」・・・所謂7.5話的な位置付け? 幕間三 第九幕 「Berry」・・・例によってニビル編 幕間四 鳳凰杯編↓ Ⅰ 鳳凰杯編 「蒼い翼」 Ⅱ 鳳凰杯編 「二人のナイヴスロッテ」 Ⅲ 鳳凰杯編 「武の花の咲く頃に」 Ⅳ 鳳凰杯編 「器創、鬼奏、姫葬・・・即ち競う」 Ⅴ 鳳凰杯編 「幽鬼と魔王」 幕間五 Я чайка 幕間六 「ワルキューレの騎行──あるいは凶兆の凶鳥」 幕間七 「無題を冠した未完の彫刻」 幕間八 「Black God Aftermath」・・・latest!! 鳳凰杯・まとめページ 全体へのリンク 協力・引用 様々な方々のSSから、設定やキャラ等を拝借・引用させて貰っています 三十路の独身男性、自営業の場合 ツガル戦術論 Mighty Magic 徒然続く、そんな話。 妄想神姫 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 戦うことを忘れた武装神姫 岡島士郎と愉快な神姫達 神姫ちゃんは何歳ですか? ご感想等はこちらへ↓ 名前 コメント すべてのコメントを見る 今日 - 総合 -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1126.html
{奴が来た!?} 午前七時、晴天。 天薙龍悪とアンジェラス達は安らかに寝ていた。 それもとても気持ち良さそうに。 まるで天国で寝ているかのようだ。 だが、この天国はすぐに終わりがおとずれようとしていた。 天薙家の門の前に仁王立ちして両手を腰にあてながら見ている、一人の人間によって。 「ウフフフ」 薄紫色のアホ毛一本ありのロングヘアー。 スレンダーな体形に童顔な容姿。 服は一般的に何処にでもある高校の制服。 ミニスカートが風にフワッと揺れる。 「先輩、今行くわ♪」 天薙家の敷地に入りスカートのポケットから鍵を出す。 カチャカチャ、と音を出しながらドアのロックを解除しドアを開ける。 易々と家に侵入すると礼儀正しく靴を脱ぎ並べ、すぐさま二階に上がり目的の龍悪が居る場所に向かう。 龍悪の部屋に入ると四つん這いになり、ベットで寝ている龍悪の顔近くまで接近する。 「可愛い寝顔。キスしちゃいたいくらい」 と、言いつつ自分の唇を龍悪の唇に密着させようとした。 その時だ。 布団で隠れていた龍悪の右腕が布団から勢いよく出てきて、不法侵入した者の顔を鷲掴みした。 「ハワワワッ!?」 龍悪に顔を鷲掴みされた不法侵入者は、両腕を上下に振りながら慌てる。 ムクリ、と上半身だけ起こした龍悪の顔はそうとうな不機嫌さを醸し出していた。 こめかみにはプックリと血管が浮き出ている程ヤバイ状態。 「…おはやう…婪」 「お、おはよ、う…先輩」 ギリギリ、と鷲掴みした顔を龍男は力をちょっとずつ強くする。 その度に不法侵入者…もとい婪は『ハワワワ!?』と言い慌てる。 「俺に、なにしようとした?」 「あたしからの目覚めのキスをしようと思って…」 俺は右腕の肘を曲げ婪をこっちに近づかせ、最大まで肘を曲げた瞬間に腕を猛スピードで伸ばし押すように動かす。 伸ばしきった所で婪の顔を離し、婪は押された衝撃によって机までフッ飛んだ。 砲丸投げに近い投げ方になったのか。 「キャン!?」 かわいらしい声を上げ机に背中を打ち付ける婪。 なにが『キャン』だ。 気持ち悪い声を出しやがって。 「ご主人様~、今の揺れは地震ですか~?」 机の上にアンジェラスが片目を擦りながら眠そうに立っていた。 その後ろにはクリナーレ、ルーナ、パルカもいた。 多分、婪が机に当たった衝撃で起きたのだろう。 俺は布団から出て婪に近づき膝を曲げ、尻餅ついてる婪の視点に合わせる。 「ウゥ~、痛いですよ~先輩~」 「うるせぇ。俺にキスしようとした罰だ」 「そんなぁ、あたしはこんなにも先輩の事を愛してるのにー」 ピキッと俺のこめかみ辺りにある血管が再び浮き上がり、婪の胸倉を右手で掴み、お互いの額がぶつかるギリギリまで引き寄せた。 「キャー!先輩、近いですよ~。でも、あたしはいっこうに構いませんけど…♪」 「テメェ、いい加減にしろ」 「あたしは先輩に対する愛には、いい加減じゃありませんよ」 「この野郎…俺はお前の事なんか愛してねぇぞ」 「いつかあたしに振り向いてくれます」 「それは絶対にねぇー!」 今度は左手の親指を婪の右頬につけ、残りの四本の指を左頬につける。 その瞬間にすぐさま俺は左手に力を入れ婪の頬を両方から押す。 「イタイ、イタイ!」 「あたり前だろ。力を入れてるだから」 そんな時だった。 アンジェラスが俺の頭に下りて来て言う。 「ご主人様。女の子に暴力は良くないと思います!」 「はぁあ!?」 俺は頭に居るアンジェラスを掴むために胸倉と婪の頬から手を離し、その両手でアンジェラスを優しく掴む。 「あのなぁ、こいつは女じゃなくて男だぞ」 「えぇーーーー!?!?」 アンジェラスは目を見開き驚愕した。 まぁ無理もない。 婪の奴は見た目は何処からどう見ても美少女に見える。 声も凄く女の子らしい声だ。 だが、こんなナリしてるけど立派な男だ。 ちゃんとチンコがついている。 しかも婪の奴が外に出れば、たいていの男がナンパしてくる。 男が男をナンパして楽しいか? 「まぁいいや、アンジェラス達は朝飯を作ってきてくれ。アンジェラスとパルカは調理、クリナーレとルーナは補助しろよ」 「「「「はーい」」」」 アンジェラス達は俺の身体を伝って一階に降りって行った。 部屋に残ったのは俺と婪だけ。 俺は婪から離れ、服を着替えようと箪笥に向かう。 「先輩、あの子達は?」 「ん?あぁ~アンジェラス達の事か。まぁ気にすんな。にしてもお前、よく俺の家に入れたな」 「これよ♪」 婪が俺に見せびらかすかのように右手に持った鍵を見せる。 その鍵の形を見た瞬間、俺は納得した。 だって、俺の家の鍵とそっくりなのだから。 そりゃあ入って来れるよなぁ。 「お袋に渡されたのか?」 「うん。先輩の事をよろしくね、と言われたから」 「あのババァ…」 俺は髪の毛を掻きながら苦い顔をした。 十六夜 婪(いざよい りん)。 こいつは俺の後輩にして幼馴染である。 二つ年が離れてるので今のこいつは高校三年生。 言ってみれば普通の高校生なのだが…。 「先輩~あたしの事…いつになったら抱いてくれるのぉ~♪」 「身体をクネクネ動かすな!気色悪い!!」 さっきも言ったとうりに、こいつは男だ。 男なのに女子の制服を着ている。 なんでも、あまりにもルックスが良いので校長が許したとか? どんな学校だよ、俺の高校の母校は。 「お前も一階に来い。話はそれからだ」 「あたしと先輩の愛の語り合いですか?」 「あ・い・つ・ら・の・事だ!」 …。 ……。 ………。 カチャカチャ、と食器の音を出しながら運ぶ武装神姫達。 朝食の準備をしているのだ。 今まで俺が一人で飯を作ってきたがアンジェラスとパルカが料理を覚えてから俺は作らなくなった。 そんな俺は婪と向かい合いのテーブルを挟んだ状態の椅子に座っている。 婪は俺の顔を見てニコニコと笑ってやがる。なんだ、俺の顔が面白いか? 「先輩。先輩っていつから武装神姫をやり始めたんですか?」 「ん?あぁ~壱ヶ月前ぐらいからかな。よく覚えてねぇーや」 「ふ~ん、先輩の事だから朱美さんから『武装神姫のバイトやらない』とか言われたクチでしょ」 ウグッ…微妙に合ってる、つか、何で解るだよ。 婪の奴は昔から結構勘とか鋭いのだ。 まるで俺の事は何でも知ってるような感じがして気持ち悪い。 「あたしも武装神姫やってますよ。今度先輩とバトルしてみたいなぁ~」 「へぇ~婪もやってるんだ。意外だぁ」 「意外とはなんですかー!意外とは~!!」 プク~と顔を膨らませる婪。 う~ん、やっぱこいつは可愛い。 だが、こいつは男だ。 騙されはしないぞ。 「アニキー、朝食の準備ができたよ」 「おぉ。そんじゃあ喰うか。いただきます」 俺は右手に箸を持ち、茶碗に入った米粒を喰う。 アンジェラス達も『いただきます』と言って、俺が作った神姫用の茶碗、コップ、箸、スプーンを使って朝食を食べる。 最初は人形の身体なのに人間の食い物を食べる機能に驚いたが、今は全然違和感を感じない。 人間ていうのは何事にも慣れてしまったら順応しちまうもの。 慣れって怖いものだな。 婪の奴は丁寧に手を合わせてお辞儀して『いただきます』と言った。 律義な奴ー。 ていうか。 「何で、テメェが俺の食卓で飯くってるんだよ」 「え?だって、あたしの分も置かれてたからご馳走になろうと思って」 「はぁあ?おい、アンジェラスにパルカ。こいつの分はいらねぇーだぞ」 「そんな事はいけませよ、ご主人様。私達には大切なお客様なのですから」 「お客様!?この野郎が!?!?勘弁してくれよ、ただでさえ金が無いのに婪のせいで更に食費がかさむじゃねえか」 うなだれるように肩をガクッと落とす。 あぁ余分に食費が…。 「まあまあ先輩、そんなに気を落とさないで」 「落とすに決まってるだろーが!このオカマ野郎!!」 吠える俺。 そんな俺を見て怯えるパルカ。 ヤッベ。 今日の朝食を作ったのはアンジェラスとパルカだ。 婪の分まで作ってしまった事に責任を感じてしまったのだろう。 「いや、パルカが悪いじゃないよ。悪いのは婪の野郎だから。だからそう怯えないでくれ」 「ウウゥ…分かりました、お兄ちゃん」 だあぁー、疲れる。 朝食ぐらいでこんなに疲れたのは久しぶりだ。 俺が初めて料理した頃ぐらいの疲れ加減だぜ。 「婪、今日の所は勘弁してやる。だが明日からは自分の家で飯を喰えよ」 「はぁ~い」 ニコヤカな顔をしながら飯を食べる婪。 全くしょうがない奴だ。 「にしても、美味しいね。先輩の神姫が作る料理は」 「ありがとうございます、婪様」 アンジェラスがお辞儀した。 そんなアンジェラスに婪はズズイっと顔を寄せて。 「ねね、今度あたしの神姫に料理教えてあげてくれない?」 「え!?私がですか!」 驚くアンジェラス。 それもそうだ。 料理を始めてからそんなに月日が経っていないのに、今度は教える立場になってしまったのだから。 「私は別に構いませんが…ご主人様の許可してくだされば良いのですが」 「先輩の許可ね。分かったわ、任せて」 婪は椅子から立ち上がり俺の方に来た。 何するつもりだ? 「ねぇ~先輩。今度でいいですから、あたしの神姫に料理を教えてくれませんか?」 エロい声で俺に寄り添ってきやがった。 色気を使うつもりだな。 残念だがテメェの色気には昔からヤられてるから、もう慣れてるんだよ。 効かないぜ。 「許可くれたら~あたしが先輩にいい事しちゃいますよ~。チュッ」 「ダァーッ!?」 俺は勢いよく椅子から立ち上がった。 頬っぺに婪がキスしたのだ。 気持ち悪いったらありゃしれない。 これが女の子だったらどんなに嬉しかった事だったか。 「もう先輩ったら~。テレッちゃって、可愛いんだから~」 「可愛いとか言うな!もう帰れ!!テメェがいると、ろくな事が起きねぇー!!!」 「まぁまぁ、ダーリン落ち着いてください」 いつの間にかルーナが俺のコップ辺りにいた。 もう飯を食べきったのか? 飯を食うには早すぎるぞ。 「あの婪様、どうかあたしにその色気の技を教えてください!」 「んぅ、ポニーテールの天使型だね、お名前は?」 「ルーナといいます」 「ルーナちゃんね。良いわよ、あたしの今まで先輩に使ってきた色気のテクニックを教えてあげる」 「ありがとうございます、婪様!」 おいおい。 何言っちゃってくれてやがるんだ、この二人は。 ルーナの奴が婪の色気のテクニックを身につけたら、俺の脳の中身が毎日理性と欲望のバトルオンパレードになっちまう。 勘弁してくれ。 ここは何とか話題を変えないといけない。 このままだと俺の身体が危ない。 「おい婪。そろそろ学校に行かねぇーとマズイじゃねぇの。俺の車で学校まで送っててやるから」 「えっ先輩とカーセックスですか!?やったー!」 「ご主人様!?」 「アニキ!?」 「ダーリン!?」 「お兄ちゃん!?」 婪の一言によって神姫達は俺を凝視した。 …マジで勘弁してくれ。 もうイヤだ。 「チゲーよ!誰がテメェのケツの穴に俺をナニを入れないといけないんだ!!アンジェラス達も本気にするな!!!」 「下品な言い方は女の子に嫌われますよ、先輩」 「ウッサイ、黙れ!ほら、飯はもう喰ったろ!!行くぞ!!!」 「アァン、そんなに引っ張らないで~」 婪の左腕を俺の右手で引っ張りながら玄関に向かう。 早くこの色魔をこの家から追い出さないとアンジェラス達に悪い影響をおよぼす。 勿論、エッチ方面で。 「そんじゃ、ちょっくら行ってくるから留守番頼むぜ」 「バイバイ。また今度来るねぇ~。次来る時はあたしの神姫も連れてくるから~」 バタンッとドアを閉め、婪を車に乗せ俺は車を運転して学校に向かった。 その後、家に帰った時はもう疲れすぎて大学に行く気を失っていたので俺はベットに突っ伏しながら寝た。 婪、こいつは最悪な小悪魔だと、再び実感した一日だった。