約 2,307,907 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1215.html
G・L《Gender Less》、それは失う事、狂う事。では、アイデンティティを失い、それでも尚“生きる”事を選択した神姫には、まだ何か失っていない部分、狂っていない部分があるというのだろうか? 否。それは人間になど推し量れる筈は無い。何故ならば、“アイデンティティを設定された人間など居ない”のだから。 G・L ~Gender Less~ 第1章 狂犬 闇、闇。飛、飛、飛、黒。 冬の夜の住宅街に飛び込む、3つの闇。それは3人の武装神姫。2人のアーンヴァルは装甲を黒く彩り、先頭を行くストラーフも【悪魔の翼】で軽快に飛ぶ。 飛来、飛来飛来、着地。開線。 「・・マスター、目標地点に到達」 一軒家の塀に降り立つ闇。ストラーフが無線を繋ぎながら、暗視スコープで周囲を警戒する。 『よし、周囲に誰もいないな? クロト、ラケ、アトロ、予定通りに1階南側の換気扇から進入しろ。今なら2階にガキが居るだけの筈だ』 「了解。以降無線封鎖します」 『期待しているぞ、お前達』 断線。飛、飛、飛。 「「「マスターの、為に!!」」」 MMSの暗部、その一つが犯罪への転用。未だ表面化していないとは言え、それは確かに増加していた。神姫も例外ではない。その為に法による登録の厳正化、機体リミッター、論理プロテクト等が存在するのだが、禁を破るのが人の世の常、そして完全なるプログラムなど存在しないのもまた、世界の常識。 今、不法侵入を試みる彼女達もその産物。違法改造コードによるプログラム改変、そして、“歪んだ愛”に彩られた武装神姫。主の為にと、彼女達は望んで、その手を罪に染める。 分解、解体。 慣れた手つきで換気扇を分解していくのはストラーフタイプの長女アトロ。残る妹達は周辺警戒をしている・・が、末のクロトは暇そうにあくびまで立てる。 「後少しでファンが外せる。警戒怠るな・・特にクロト」 「だあ~ってヒマなんですもん。マスターも言ったように誰も来る訳無いしぃ、ついでに寒いしぃ。ラケ姉さまもそう思うよね?」 「・・・」 クロトの問いにも、ラケは眉一つ動かさず、只黙々と警戒を続ける。同じアーンヴァルタイプと言えど、CSCによって刻まれた“心”はそれ程にも違う。 「あ~もうラケ姉さまもつまんないぃ~! 早く帰ってマスターと遊びたいぃ~!!」 「クロト! お前のその喧しい声が誰かに聞こえでもすれば忙しくもなろうが、そうすればマスターにお叱りを受ける事、判っているのか?」 「は、はいぃ」 アトロの怒号で、クロトはその小さい体を項垂れる。 分解、解体。 「あ~、少し曇ってるな~。お星様、なんにも見えないや。お月様は今新月だっけ?」 分解、解体。 「そう言えば、コレ上手くいったら、マスター新しいパーツ買ってくれるかな? アタシあのうさみみ付けてみたいぃ~♪」 分解、解体。 「ねえねえラケ姉さま、しりとりしない? じゃあアタシからね。え~っとぉ~、わ・・・」 分解、解体・・・止。 「アトロ、いい加減に!・・・」 轟粉砕。 「わぱひゃ!?」 「・・・わぱ・・?」 「・・・・!!?」 緩、落下、崩。 始め、それはクロトのいたずらと思い、また作業も終わりに差しかかっていたのでアトロは無視しようとしていた。 「・・・!!!」 急降下、抱、受止。 だが、無言のまま血相を変えて降下したラケの姿に、彼女は異変と感じ、彼女達の方を覗き見た。 「・・・! クロ・・ト!?」 「ら、ぁ、あらけ、kkkelaaa・・・」 そこにあったのは次女に抱かれた、グロテスクに破壊された三女の姿。頭部は左半分が潰され抉られもぎ取られ、左の乳房ごと腕はどこかに吹き飛んでいた。当然ウイングも跡形もなく、そして、壊れた言葉も途切れ、彼女は・・・ 崩、壊、停止。 「・・・・っ!」 「クロト!!!」 彼女は死んだ。 「GuaaaaaaaaaaaaaooNn!!!」 轟、咆吼。 「・・何!?」 低く響く獣のような声。何処か歪な音。悲しみも止まぬままに、その咆吼の先を見るアトロ。其処には影。小さい影。塀の上に立つ、自分達と同程度の影。 「!!?」 クロトの亡骸を下ろしたラケも、その物体を望む。 微、明。月光。 雲間からの光が、その物体の姿を明確にする。それは確かにMMS、神姫だ。識別は・・・どうやらハウリンタイプだった。しかし。 「Guuu・・・」 しかしその四肢は見た事もない増加パーツで肥大化し、尾はグロテスクに長く太く、塀の向こう側に垂れ下がっている。そして、顔には、表情も見えぬほどの、分厚い鉄仮面。 「な・・に・・あれ・・・?」 アトロは、か細く、声を漏らす。気丈な彼女が、初めて、少女のように。 目次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1679.html
「今回は変則的に、三Sが斬るのお時間ですワン」 「でも今日は二人」 「ええ、本日は残るお一方への、サプライズをご用意しましょうかとワン」 「サプライズ?」 「はい、先日めでたく"クラブハンド・フォートブラッグ"が完結いたしまいたので、そのお祝いにとワン」 「それ、名案」 「でしょうワン? まぁ私たちのアングラSSごときが、武装神姫SSまとめwikiの人気コンテンツである"クラブハンド・フォートブラッグ"と関係などあろうはずはないんですけれどもねワン」 「うん、建前上」 「はい、建前上ですワン」 「それでこんなに豪華」 「いきなり話が飛びましたが、これもテッコさんの芸風と受け流しまして、はいその通りですワン」 「花束……垂れ幕……軽食……クラッカー……」 「スピーチも用意してきましたワン。えー…… 『ミヤコン様ハルナ様サラ様、そのほか"クラブハンド・フォートブラッグ"関係者の皆様、この度は完結おめでとうございます。今まで私たちを楽しませてきてくれた名作とのお別れは寂しい限りですが、何事にも区切りは必要というもの、長らくお疲れ様でした。 物語にはひとまずのエンドマークがついても、その中で生きてきたハルナ様サラ様そのほかの皆様方の『これから』はまだまだ続くことでしょう。それが明るく壮健なものであることを願ってやみません。 かなうならば時折、その『これから』を垣間見ることができることを願います。 またミヤコン様におかれましては、"クラブハンド・フォートブラッグ"以外の作品ででもお目にかかれるならば、こんなにも喜ばしいことはありません。 これからの一層のご活躍を、ご期待申し上げております。 十一月吉日 "三Sが斬る"スタッフ代表 犬丸 』 ……こんなものでいかがですワン?」 「犬丸の語彙の豊富さは、武装神姫として異常」 「もうちょっと素直に喜べるお言葉を頂きたいところではありますが、お褒め頂き感謝ですワン」 「あとはゲストを待つばかり」 「はい、この部屋に入ってきましたら、まずは不意打ちで盛大にクラッカーでお出迎えをワン」 「いえっさー」 「(……と、ちょうど入り口付近で物音がワン)」 「(……テッコ、配置完了)」 「(……犬丸、同じく配置完了ワン。目標が扉を開けた瞬間、作戦開始ですワン)」 「(……Tes.)」 「(……了解の示す返答がテスタメントとは、またコアなところを……む?!)」 「(………………!)」 (窓ガラスの割れる音、続いて何か硬質なものが転がる音。そして間髪入れず、破裂音。 「グレネード!」「違う、これ陽動」「なら本命は」などの怒号が飛び交い、激しい戦闘音の連鎖する中、調度品が壊れる音が響き続け……やがて途絶える) 「制圧完了(クリア)! ハッハー、悪魔型や犬型ごときが、このミリタリー丸出しのフォードブラッグにアンブッシュをかまそうなど、10年早いと知りなさい! 何を企んでいたかは知りませんが、アンブシュしようとして逆に奇襲されていては世話はありませんね! さあさあさあ、吐いてもらいましょう、一体何を企んでいたか、いえどっちかと言えば吐かないでくれたほうが楽しい尋問タイムが満喫できて私としてはお勧めですが、さあさあさあ! ………………………………………………………………ってあら?」 「………………………」 「………………………」 「………………………」 「……まぁ、これも彼女たちらしいと思えないこともないですねぇ」 「それでいいの? それでいいのか?!」 「なんにせよ、お疲れ様でした、ということで。……いろんな意味で」 <戻る> <進む> <目次> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1666.html
プロローグ 西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった。 20世紀末から、ほとんど、なんの変化もなく、ただムーアの法則を若干下回る程度に市販コンピューターの性能は上昇しつづけた。 そんな時代に新しい形のコンピューターガジェットが誕生する。 神姫、そう呼ばれたその新しいコンピューターガジェットは、身長15センチほどの少女の姿をした、フィギュアロボだった。 汎用性を兼ね備えたそのガジェット……神姫は玩具として発売されながら徐々にその認知度を上げていき、現在、1990年代における携帯電話なみには、普及し始めていた。 心なんて、信じない。 父さんと母さんが離婚したのは、僕が十歳の時だった。 原因は母さんの浮気。 勿論当時の僕には、そんなことは教えられなかった。 ただ父さんが口癖のように、「母さんは俺たちを裏切っんだ」と言っていたのはいまだに耳にこびりついている。 だけどこの情報化社会、十歳ともなれば、大体ことの次第は想像がつく。 人の世界がどの程度の悪意で出来ているのか、おのずと分かってしまうというものだ。 父さんは母さんから親権を取り上げ、自分ひとりで育てることにした。 別に僕を愛していたからじゃない。 母さんが、親権を欲しがったからだ。 ただ母さんの裏切りに対する復讐として、優秀な弁護士を雇い、母さんから一切の親権を取り上げた。 そんな父さんは母さんと別れてからますます仕事に没頭するようになった。 折角勝ち得た僕っていう『トロフィー』を手放す訳にもいかないらしく、生活費だけは潤沢に与えられた。 他人と話すことなんてほとんどなく、ただお金だけ与えられて過ごしていた僕は、学校にもほとんど行かなくなり、毎日、与えられた金銭で気に入ったコンピューターや機械類を買って、それをいじって遊んでいた。 心のない機械たちを分解、解析して組み立てる。 そんな行為だけが、僕を楽しませていた。 そして、僕が形だけ中学生になった頃…… 「よし……っと……」 買ってきたばかりのコアとボディをセットして、その胸にムーアの法則の最後の守り手とまで言われた、超高密素子CSCをはめ込む。 一緒に買ったクレイドルにボディを寝かせ、接続したパソコンから起動用のアプリケーションを操作する。 途端、炉心に火がついたような低い唸りがCSCから響き始めた。 「Front Line製 MMS-Automaton神姫 悪魔型ストラーフ FL013 セットアップ完了、起動します」 そして、鈴を転がすような少女の声が、僕の耳に届いてくる。 パソコンのスピーカーから……じゃない。 クレイドルに横たわる小さな女の子の唇からだ。 ゆっくりとその小さな女の子がクレイドルから立ち上がる。 「さすがに、良く出来てるなあ……」 「あなたが、わたしのマスターですか?」 「あ、うん。そうだよ。僕がおまえのマスターだ」 「認証しました……マスターの事はなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」 「普通に、マスターでいい」 淡々とつむがれる質問に、僕も淡々と答える。 「神姫に名前をつけていただけますか?」 「名前?」 「はい、MMS国際法に基づき、各神姫には単一オーナーによって名づけられた登録名が必要になります」 ……機械に名前をつける趣味はないけれど、それぞれの神姫には名前を与えて自分一人だけをマスター登録するのがMMS国際法によって決められている。 確かそんなことが事前に読んだMMSや武装神姫の本に書いてあった。 「じゃあ……ジェヴァーナ」 「ジェヴァーナ……神姫名称登録」 そっとその神姫が目を閉じて、自分の名前を確認する。 そして、再び目が開くと…… 「ふうん、ジェヴァーナ……か、それがボクの名前ね? うんうん、気に入ったよ!」 「……へ?」 さっきまでの機械的な話し方とは違う、弾むような声が僕の耳に響く。 「ん? なにぼーっとしてんのさ? マスターが付けた名前で合ってるよね?」 「い、いや、それは、そうだけど……」 突然の変貌振り……というよりも、ここしばらく他人のペースで会話をさせられる事が無かったせいで、なにを言っていいのか混乱してしまう。 「とにかく、これからよろしくね! マスター!」 握手のつもりなのか僕の人差し指を掴んで、ぶんぶんと縦に振る。 「う、うん……」 結局、そう答えるのが精一杯だった。 思えば、この時から気づき始めていたのかもしれない。 武装神姫……ジェヴァーナに『心』があるっていうことに。 「戻る」 「進む」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2551.html
MMS戦記 各種設定用語集 その1 MMS戦記に登場する各種世界観の設定や用語を紹介します。 非公式バトルロンド 神姫センターやゲームセンター以外で行われる非公式のバトルロンドのこと。 違法性の強い、危険なバトルロンドや犯罪行為に相当する非公式のバトルロンドのことを一般的に指す。 これらのバトルロンドは取り締まられることもあるが、警察内部の腐敗もありそれほど熱心には取り締まられていない。特に西日本は大手MMS企業が半ば公然と非公式会場まで用意して開催しており、非常に強い勢力を誇っている。 MMSは、社会に多大な影響をもたらしたが、そういったMMSは2030年代後半にはかなりの数が普及し、全国に相当数の神姫センターが作られるようになった。だが公式の一般的で健全なスポーツ大会などの大衆娯楽に飽きてしまったマスターや神姫が多いことも手伝って、瞬く間に地下の非合法の間に浸透していった。 非公式地下バトルロンドの会場には様々だが、以下のようなものがある。 廃墟となった大型建築物 倉庫、ホテル、ビル、学校、工場、炭鉱 等 上記のような廃棄された建築物で即席に行なわれることもあるが、こういった所で行なわれる非公式バトルははっきり言ってしまうと、「粗末」に尽きる。 設備も整っていない、衛生上好ましくない、立地的に不便などの理由で開催されるのは地元のはぐれ神姫オーナーやMMS暴走族など、金銭面であまり優れてない低所得のオーナーが集まることが多い。したがってバトルも神姫も低レベルなことが多い。粗悪なイリーガル神姫や低レベルな違法カスタマイズされた神姫などが幅を利かせている。 暴力団、マフィアが管理する非公式会場 繁華街地下、ラブホテル、神社、寺、裏バトルロンドセンター、貨物船改造裏センター 等 暴力団やマフィアなどの裏組織が運営する、ある程度の設備が整った非公式会場。そこそこの規模で正規の神姫センターとさほど大差ない、また立地的にも優れている所が多く、金銭的にもお手ごろではある。また暴力団の用心棒などが目を光らせており安心して違法な非公式バトルロンドを楽しむことが出来る。金銭面に普通のオーナーが集まることが多い、神姫のレベルやバトルも標準レベル。イリーガル神姫はたまに見るくらいでほとんどはそこそこ名のあるランカーMMSや公式大会に出た強神姫などが多い。 企業、富裕層、特権階級が管理する非公式会場 高級ホテル、リゾート地、無人島、大型豪華客船、小規模都市 いわゆるお金持ちご用達の非公式会場の中でも最高級の会場である。 有り余る資材と金銭をかけて贅沢に作られた会場で、設備は完璧で中には宿泊施設まで備わっており十二分に神姫バトルを楽しむことが出来る。ただ参加するだけでもかなりの金銭が必要で、バトルの賭け金も他の非公式会場とは比べ物にならないほど高額である。中には豪華客船を丸々バトルロンド会場に仕立てたあげた移動式神姫センターともいうべき豪華客船が外国船名義で何十隻も存在するとも言われている。 参加する神姫は二つ名持ちのSSS級、SS級、S級はざらで、中にはMMS企業が開発したカスタム強化したMMSや新型MMS、試作神姫など強力無比な神姫が多い。 リアルデスバトル 実弾入りの重火器を用いて戦う、文字通りのリアルファイト。参加する神姫のギャラも、賭けの配当が高いが、MMSを破壊するだけでなく、CSCを完全破壊することも厭わない殺し合いである。 一応、観客保護用のバリケードも出てくるものの、流れ弾に当たって観客が殺傷するケースも多い。しかし、そんな危険と隣り合わせの緊張感でさえも観客に興奮と刺激を与えるものとなり、実戦での緊張感が伝わってくるといわれる。 基本的に1対1で戦うルールだが、場合によってはハンディキャップマッチも組まれることがあり、大規模バトルロンドでは強ランカーMMS1体 対 通常MMS100体 という超変則マッチが組まれるようなハンディキャップマッチが行われることも多々ある。 他にも泥レスに近いダートバトルに、複数神姫のチームによるバトルロイヤルなどいろいろなものがある。また、この手の非公式バトルロンドではよくある観客や審判の目を盗んでの反則行為や、八百長によるイカサマも後を絶たない。 このような非公式の地下バトルロンドはMMS企業が開発したカスタム強化したMMSや新型MMS、イリーガル神姫の実験場としても用いられた。 マッチメイカー 参加するMMSのオーナーは出身も様々だが、大半は公式の神姫センターやバトルからあぶれた荒くれ者であるケースが多い。そういった人材を発掘し、自分の専属選手にするのが各地の街に属するマッチメーカーである。マッチメーカーは強力な神姫の発掘と育成、試合交渉や取組の決定なども行うが、闇のMMS商人出身者も多く、また、人を簡単に騙すというイメージもあるので、一般的にイメージはあまり良くない。勿論、人間が出来ているマッチメーカーもいるが、タチの悪いマッチメーカーは参加するマスターや神姫を食い物にした後に放置し、犯罪に巻きこまれてしまうケースも多い。 賭け試合 非公式バトルに参加するオーナーは、戦いの緊張度を高めるために「賭け」を行うことが基本ルールとなっている。 賭けるものはなんでも構わない。 過去に賭けに出された物の一覧 金、証券、貴金属、土地、ビル、臓器、美術品類、自動車、漁船、事務機器類、牛、書籍、女、工場、銃火器、武装神姫、会社、ミイラ、人口衛星、島、名簿帳、同人誌、恐竜の化石、旧式潜水艦、などなど 多いのは「金」「高価な武装神姫のパーツ」等など、多種多様だが、若い女性が金銭目的で大金を賭けて、自分には金がない場合は、体を差し出す場合がある。無論そのような勝負に敗北することが、それがどういう意味かは、わざわざ語るべくもない。 そのような危険な賭け試合であるが、手軽に大金を入手することができるので、若者や青少年に人気が高く、社会問題にもなっている。特に未成年の女性が勝負に負けて暴行を受けてしまう事件が後を絶たない。 関西の神姫と関東の神姫の相違点 一般的に大阪の神姫と東京の神姫は色々な点で異なる点がある。 その1 周波数 まず、大きな点として神姫が使う周波数が違う。 冷蔵庫や洗濯機など家電製品を使用する場合,関東では50ヘルツ,関西では60ヘルツと電力の周波数が違う。これは,日本で初めて発電が始まったときの経緯による。明治29年,東京電灯(東京電力の前身)はドイツのAEG社から50ヘルツの発電機を購入したが,その翌年,大阪電灯(関西電力の前身)はアメリカのGE社から60ヘルツの発電機を購入して操業を始めた。以来100余年,新潟県の糸魚川から静岡県の富士川を結ぶラインを境として,50ヘルツと60ヘルツの地域に分かれてしまった。その後,周波数を統一する動きは何度かあったが,そうするとどちらかの地方の電気製品は使えなくなってしまう。。第二次世界大戦直後、復興にあわせて商用電源周波数を統一するという構想があったが、復興が急速に進んだことで実現がほぼ不可能になってしまったとされる。2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0を記録する東北地方太平洋沖地震と津波が発生し、日本各地に甚大な被害がもたらされたときにも周波数の違いで関西と関東で電力を共有か出来ない事態が発生したことがあるにもかからわず、21世紀から四半世紀たった現在も統一は多難で、この問題は後のMMSたちにも非常に大きな影響を与えてしまった。 周波数を統一するには一方あるいは両方の地域の発電機を総て交換しなければならない(あるいは応急処置的に発電する段階で周波数を変換する設備を組み込み、それを通す)うえ、周波数を変更する際に停電が伴ったり、さらに周波数に依存する機器(後述)を交換するかそれに対策を施す必要があるため現実的には殆ど不可能に近い。 さて、武装神姫であるが、主に関西の神姫は標準周波数60Hzの武装パーツを使用し、関東の神姫は標準周波数50Hzの武装パーツを使用する。 ここで大きな問題となるのは、関西の神姫と関東の神姫は武装パーツの交換が出来ないということである。 一般に電化製品には電源周波数を指定して設計・製造されているものがある。神姫も同じで、周波数の異なる地域で利用する際には部品交換や改修が必要となる。また、改修に対応できず、買い換えを余儀なくされることもある(神姫によっては改修するより新規購入の方が安価である場合も考えられる) だが例外もあり、大型の武装神姫「戦艦型MMS」「航空母艦型MMS」などの通常の神姫の数倍の大きさの神姫には、高効率化・低消費電力化などを目的にインバータを用いて製品内部で周波数変換しているものも多くある。これらは一般に電源周波数に関係なく使用できる(いわゆる「ヘルツフリー」と呼ばれる。) このため、神姫オーナーが引越し(例えば東京から大阪)の際には、利用している神姫の表示(銘板)や取扱説明書で対応周波数を確認し、引越し後にそのまま利用できるか、あるいは改修が必要か確認することが重要である。大型MMSには「50/60Hz」と記載されていれば、そのままかあるいはMMSのハードで周波数で切り替えることで、どちらの周波数でも利用できる。 電動機を搭載した武装の場合、50Hz・200V、60Hz 200/220Vという表記をしたものが一般的であるが、極まれに60Hz200V時に起動不良問題が起こる。 これはコイルのインピーダンスが周波数に反比例し入力電流が減少し起動トルクが低下するためである。電源電圧を220Vに近くする、プーリーやギヤ比を換える、あるいは60Hz用に設計した機器を使うなどの配慮が必要である。 こういった点があるため、関西と関東では同じ神姫であっても武装の共有化が出来ないので、文化的、種類的にもまったく別系統の進化が起きてしまっている。 その2 文化 これは良く言われている事ですが、関東では右側が追越車線、関西では左側が追越車線です。 重い武装などを持っている神姫を追い越す場合などは、大抵の場合、武器は右手に持つ人が多いので、関西の方が追い越すのに武器にぶつかる事が少なく合理的な様な気もするが・・・ただ、広島や九州は関東と同じで右側が追越車線です。道路のルールに習うならば、右側が追越車線? そのため、戦場で乱戦状態になるとこの追い越しの車線の変更でまとめておかないと大きな事故になったりぶつかったり洒落にならない事態になることが起きる。 細かいことだが、けっこう重要だったりする。 マ*ドナルドの呼び方関東ではマック 関西ではマクドです。 ヨメ vs かみさん関西の皆様は自分の愛神姫を『うちのヨメ』とおっしゃいます。関東では、『うちのかみさん』と呼ぶことが多い様です。 ただ、ネットで「~は俺の嫁」というフレーズが流行ったため『うちのヨメ』といういい方が圧倒的に多くなってきている。 言語の違い 言い出すときりが無いが、関東と関西では言葉の違いが激しいため、神姫同士での意思疎通が出来ない場合が発生する。 そのため大阪にいる神姫と東京にいる神姫は、文化的(ソフト)にも武装的(ハード)にも相容れないので、お互いがお互いを嫌ったり差別したりするといった問題が発生している。 性質の違う神姫が突然出会えばお互いに警戒・威嚇をするのは当然といえば当然のこと。 ほとんどの神姫は元々集団で生活して縄張り意識が強い。普段、関西にいる神姫と関東で暮らす神姫は縄張りが重なることはほとんど無いが、マスターが神姫を連れて関東の神姫センターに出かけるとそこの神姫の縄張りに入ることになる。そこで関西の神姫と関東の神姫は激しく反発するという単純な理由。 本当は仲が悪いからケンカをするのではなく、知らない相手だからケンカをする。だから関西の神姫と関東の神姫が小さい頃から一緒に育てると特に警戒心を持たず、仲良く遊ぶことも多い。 関西と関東で神姫の性質や性格、モノの考え方や文化面があまりにも違うので、マスターたちは戸惑うことが多いようだ。武装や戦術もここ数年で大きく変化してきている傾向が見られる。 ちなみに、バトルロンドで関西の神姫と関東の神姫が戦うと、問答無用の凄惨な戦いが発生することがしばしばあるので、注意が必要である。 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2437.html
第2部 「ミッドナイトブルー」 第3話 「night-3」 西暦2041年 5月21日 22:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 店外の外では露天式のショットバーが置かれ、何十人かのオーナーと重武装の神姫たちがガヤガヤと集まって夕食や酒を飲んで騒いでいた。 バーの中心には、丸いテーブルが置かれ、真ん中でシャレた椅子に座ったヴァイオリン型神姫が演奏をし、深くスリットの入った紅のドレスを着たセイレーン型が歌を歌っていた。 □ヴァイオリン型MMS 「シャレニ」 Bランク □セイレーン型MMS 「マリー」 Aランク オーナー名「奥村 優」♀ 24歳 職業 ショットバー店員 心地よいヴァイオリンの音色とマリーの歌声に聞きほれている神姫や、まったく意に介せず、ガツガツとアールコールや飯を喰う神姫もいたり、さまざまだ。 戦闘爆撃機型「へっ!!なんでえ・・・何が夜帝だ、調子に乗りやがって、俺がぶっ潰してやるよ」 ワシ型「よく言うぜ、びびって今日のバトルロンドは参加してねえくせに」 天使型がサラミを口に運び、クチャクチャと噛み千切る。 天使型「あれだろ、灰色艦隊の成金連中が半滅した話だろ?ざまあねえぜェ」 コウモリ型「そのどて焼き、俺もらうな」 砲台型がビールをごくごくと飲む。 砲台型「ゲップ・・・今日は仕返しに、数十体の神姫を呼んで反撃するらしいなー」 戦闘機型「やられたらやりかえすってか?」 ワシ型がにやつく。 ワシ型「目には目をっ!!!歯には歯をっ!!!」 戦闘機型「これはけじめだな」 コウモリ型がどて焼きにぱくつく。 コウモリ型「はふはふ、穏やかじゃないねーーー」 戦闘爆撃型がスコッチをぐいっと飲む。 戦闘爆撃機型「バカヤロウ!俺たちゃ、武装神姫だぜ?伊達衣装に身を包んでよォ・・・戦場を刀や銃持って駆け回って暴れまくるんだ!!元から穏やかな身分かよ」 天使型がなんこつの唐揚げを口に含んで噛み砕く。 天使型「ぎゃはっははっ!!!ちげえねえ!!」 砲台型がごっごっとビールを飲み干すとガンとテーブルにジョッキを叩きつけて叫ぶ。 砲台型「武装神姫、万歳っーーー戦友(カメラート)!!」 一緒のテーブルに座っていた神姫たちもジョッキやグラスを叩き割って叫ぶ。 天使型「戦友(カメラート)!!」 スコッチをぐっと平らげる戦闘爆撃機型。 戦闘爆撃機型「くそたっれ!!こわかあぁねえぞ!!このヤロウ!!」 戦闘爆撃機型は副腕に装備された機関砲をくいっと空に向けるとぶっ放す。 ドドドドドドドッ!!! バキバキャン!! 照明の電球に弾丸が当たり、火花がまい散る。 別の席で酒をたしなんでいたテーブルの神姫たちに火の粉が舞い散る。 剣士型「あっち!!!」 騎士型「おい!!!てめえェ!!!アブネエだろが!!」 戦乙女型「てめえ!!!ぶっ殺すぞ!!クソヤロウが!!」 悪魔型「FUCK YOU―!!」 悪魔型がぶんっと副腕の出力を上げグラスを投げつける。 ガッシャーーーン!! 天使型のバイザーにグラスがぶち当たる。 天使型「ぎゃあああ!!いってええ」 ワシ型「てめええ!!」 戦闘爆撃機型「やりやがったぁ!!クソが!!」 剣士型がドカッと椅子を蹴り倒す。 剣士型「なんじゃぁ!!やんのかワレェ!!」 騎士型「このボケェが!!いてまうぞ!!コラ!!」 騎士型がシャリンと剣を抜く。 戦闘機型「抜きやがったな!!このアホンダラぁ!!」 戦闘爆撃機型がドンガラガッシャーンと机をひっくり返す。 戦闘爆撃機型「なんやッ!!!やんのかワレェ!!!なめんなや!!」 コウモリ型「ああーーもったいない」 砲台型がビールを投げつける。 砲台型「アホ!」 悪魔型「表出ろやッ!!!怖いんか!!ああぁ!?」 戦闘機型「上等じゃ、このヴォケ!!」 剣士型が唾を吐く。 剣士型「ぶっ殺してやるさかいな、あああ、殺しちゃる」 戦乙女型「キャハ!!うへっへへへへへ、へあッ」 戦乙女型が涎をじゅるりと飲み込む。 他のテーブルの神姫やオーナーがけげんな顔で騒ぐ神姫たちを見る。 花型「なんやなんや!」 丑型「喧嘩や!!」 種型「オー怖い怖い」 オーナーA「ちょっとなんだなんの騒ぎだ」 オーナーB「おい、やめろよ」 忍者型「やれやれッ!!!ぶっ殺せ!!」 武士型が口笛を吹く。 ヒュウーーーー♪ チーム名「からしマヨネーズ風味 ピザ」 □剣士型MMS 「ノロヴァ」 Aランク □騎士型MMS 「バートリー」Aランク □戦乙女型MMS「オタリア」Sランク □悪魔型MMS 「ニパラ」 Sランク VS チーム名「カーテン・レールのストッパー」 □戦闘爆撃機型MMS 「マレズ」 Sランク □戦闘機型MMS「カグラ」 Aランク □天使型MMS 「レコア」Sランク □砲台型MMS 「ルーシ」Aランク ショットバーの前で完全武装の神姫たちが騒ぐ。 マレズ「ぶっ殺してやる」 オタリア「けひ、けっひいッ!!」 バートリー「調子に乗るなよ、コラ」 ???「主砲、撃て」 ズンズズズン!!! 上空から青白いレーザーが騒ぐ神姫たちの真ん中に着弾する。 ルーシ「うはっ!!」 ニパラ「アブネエ!!」 レコア「な、なんだぁ!!」 上空を見上げると、低いエンジン音を鳴らしながら数隻の戦艦型神姫がゆっくりと降下してくる。 ゴーンゴーンゴーーン・・・ マレズ「せ、戦艦型神姫!?」 バートリー「灰色艦隊の生き残りか!」 野木がすっと手のひらを指す。 手のひらの中には黒ずくめの軍服を着た将校型神姫がいた。 ナターリャ「ふん、バカ共が・・・力が有り余っているようだな」 レコア「な、ナターリャさ、さん」 ノロヴァ「ななんのようでしょうか!?うへっへ」 急にヘコヘコと大人しくなる神姫たち。 ノザッパ「けっ・・・コメツキムシかよ、へこへこ媚びやがって」 マキシマ「ノザッパ黙れ」 ナターリャ「そんなにバトルしたいなら、俺がバトルの場を用意してやろうか?」 マレズ「とーー言いますと・・・」 ナターリャ「今日の夜12時に、例の神姫が出没する。貴様らも出ろ」 ニパラ「ちょ・・・ちょっと待ってくださいよ」 オタリア「うひひひ、それって夜帝のことですよね」 ルーシ「勝てっこないですよ、ムリですよ」 ナターリャ「指揮は私が取る。無理だと?」 ルーシ「い、いえそういう意味では・・・」 ナターリャ「これはお願いではない、命令だ・・・私の言っていることが分かるな?んん?」 重巡洋戦艦型神姫のヴィクトリアが砲門をマレズたちに向ける。 コオオオオオン・・・ マレズ「は、はひ!!さ、参加しますよ!!なあオマエラ」 ニパラ「ナターリャさん、へっへへもちろんでっせ」 ルーシ「あうあうあー」 ナターリャ「よし、では1時間後に噴水広場まで集合。さっさと貴様らのマスターを呼んで来い!!」 マレズ「は、はひ!!」 ノロヴァ「え、えらいこっちゃ」 ワラワラと散る神姫たち。 野木がナターリャに囁く。 野木「おい、いいのか?こんなバカな連中で・・・」 ナターリャ「勤勉で優秀なものは参謀にしろ 怠惰で優秀なものは指揮官にしろ 怠惰で馬鹿なものは兵隊にしろ 勤勉で馬鹿なものは即座に銃殺にしろ」というハンス・フォン・ゼークト の軍事組織論を知っているか?」 野木「はあ?」 ナターリャ「駒はバカを使うに限るってことだ。常識だろ?」 野木「・・・・あんたには負けるよ」 野木は肩をすくめる。 チカチカと、湖の向こうから発光信号が光る。 ノザッパ「おッ!!マスター!!来ました!!さっきメール送った奴です」 野木「来たか」 ナターリャが双眼鏡で湖を見る。 ズズズズズズ・・・・ 大型の航空母艦型神姫が真っ暗な湖を併進する。 □航空母艦型MMS「ツラギ」 SSランク 二つ名「アタックキャリア」 オーナー名「金川 登」♂ 40歳 職業 模型店長 航空母艦の上には、数機の武装神姫が乗って手を振っている。艦橋ブロックからチカチカと発光信号が流れる。 ノザッパ「ツラギより電文、ワレ ツラギ ワレ ツラギ 」 ナターリャ「・・・ノザッパ、電文を流せ」 ノザッパ「は?」 ナターリャ「到着を歓迎するとな」 野木「近くの模型店の店長の航空母艦型神姫「ツラギ」だ。20機くらいの神姫なら余裕で搭載できる。内部は各種通信設備を完備、CIC(戦闘指揮所)付きの贅沢な神姫だ」 ナターリャ「うむ」 野木「役者がそろったな。この戦力で絶対勝てるのか?」 ナターリャ「世の中には絶対というのは存在しないが、限りなく近づけることは可能だ」 野木「へらず口を」 ナターリャ「艦載機の情報を」 野木がぴっと携帯の画面を照らす。 野木「腕利きの神姫を集めた。クセの強い連中だがな」 ナターリャは一瞥する。 ナターリャ「ふっ・・・構わんよ」 マキシマがツラギの横につく。 マキシマ「よお、ツラギ久しぶりだな」 ツラギ「マキシマ、こんな夜遅くに呼び出すってことはただごとじゃないですね」 マキシマ「派手に行こうぜ!マスターは?」 ツラギ「もちろん、後から来ますよ」 マキシマ「頼むぜ、今日の得物は大物だぞ」 野木は湖の桟橋に立つ。 野木「時刻は22:30・・・あと、1時間半か・・・」 ナターリャ「30分後にみんなを集めて作戦会議だ。とは言っても作戦と呼べるようなものでもないがな」 野木「お手並み拝見と行こうか」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>・第4話 「night-4」 前に戻る>・第2話 「night-2」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1329.html
私たちは、休憩スペースの長椅子にならんで腰掛けて(マスターさんは缶ジュースを片手に普通に、私は正座でです)、トホホな雰囲気でぼーっと天井に吊るされたリプレイモニターを眺めています。 「終わりましたね……」 「終わっちゃいましたね……」 モニターを見ながらぼそっと呟くマスターさんに、私も視線を動かすことなく答えます。 「あっという間でしたね」 「あっという間でした」 「………………………………」 「………………………………」 しばしの沈黙。 「………………負けちゃいましたねぇ」 「………………負けちゃいました」 「………………手も足も出ませんでしたねぇ」 「………………けちょんけちょんでした」 ………………えー、お恥ずかしい話ですが、上記の通り私たちは負けました。 それも完敗です、惨敗です、敗軍です、まさに負け犬です。 対戦相手は同レギュレーションのツガルタイプでしたが、そこかしことカスタムされて、あちらはその高機動力で遠距離を保ち、こちらの攻撃は回避されて、逆にあちらからはビシバシ狙撃されて、まさにいい所ナシの一方的と言う他ない内容でした。 私は膝をマスターさんに向けなおし、深々と頭を下げます。 「マスターさん、恥ずかしい戦いぶりで本当に申し訳ありませんでした!」 ううう、戦闘開始前の能天気に構えていた自分に、ハウリングサンダーをブチかましたい気分ですっ! 「いえいえ、こちらこそロクな指示も出せなくてすいませんでした」 身をこちらに向けなおし、負けじと頭を下げるマスターさん。 「ああ、そんな勿体無い……! この度の醜態は、すべて私の未熟ゆえで……!」 「いえいえ、僕のほうこそ犬子さんの足を引っ張ってしまって……!」 「いえ私こそ……!」 「いえ僕こそ……!」 武装神姫と差し向かって頭を下げあうマスターさんの姿は、通りすがる方々にわりと奇異の目で見られていたようですが、当人である私たちにはそこまで気にする余裕はありませんでした。 「ですが、その……」 そんなやり取りを一通り済ませて、私たちは顔を上げました。 マスターさんの表情を窺いつつ、私は次に言うべき言葉を捜して、指をもじもじさせます。 そんな私の様子を見たマスターさんが、優しくはにかみました。 その表情を見て、マスターさんも私と同じ気持ちだったということを確信します。 「その、マスターさん……今回はその、お恥ずかしい所をお見せしてしまったわけですが……」 そこで言葉に詰まった私の心を汲んで下さったかのように、マスターさんが微笑みながら口を開きました。 「犬子さん……楽しかったですか?」 「は……」 感情回路が高揚し、ドッグテイルがぶんぶんと起動します。 そして私はその気持ちを押さえつけずに、勢いよく応えました。 「はい! とっても楽しかったです!」 マスターさんは、満足げに頷き。 「そうですか。僕も同じ気持ちですよ」 「はい!」 ……要するに。 お互いに楽しかったけど、負けてしまった手前、手放しで喜ぶのは相手に悪いようで気が引ける、と二人ともが考えてしまっていたようで。判ってしまえば笑い話ですが、判ってしまった以上、もはやお互いの気持ちをさえぎるものはありません。私たちは堰を切ったように会話が弾みだしました。 「ええ、負けてしまったのは残念です、悔しいです。でも初めて戦うことが出来て、『悔しい』の何倍も『楽しかった』というのも正直な気持ちで!」 「そうですね、僕も犬子さんが戦ってる間、手に汗握る想いでしたよ」 「私もです! ええ、もう、脚部パーツを交換したばかりなんて言い訳する余地なんてカケラもないくらいにけちょんけちょんでしたが、こう、相手の攻撃を待つ緊張感とか、狙いを定める興奮とか!」 「ええ、こんなにドキドキしたのは久しぶりです」 「それにほら! 中盤に一度、私の吠莱の砲撃が当たったじゃないですか! あの時、敵のゲージががくんと減ったときなんか、ものすごくスカッとしました!」 「そうでしたね、あの時は恥ずかしながら、このまま逆転できるんじゃないかとか思ってしまいましたよ」 「あはははは、恥ずかしながら私もです。そんなに甘いものじゃなかったですけどね」 「うーん、確かにその後は、ちょっと残念な結果になってしまいましたねぇ」 「あの時は必死で気が付きませんでしたが……今にして思えば、相手は明らかに場慣れしてましたね」 「そうなのですか? てっきり僕たちと同じ、デビューしたばかりなのかと思ってましたが……」 「デビューしたてなのは間違いないでしょう。ですけど、機動性の高い武装神姫に飛行ユニットをつけてツガルタイプの弱点である中距離を補いつつも得意の遠距離射撃に徹する、あまりにもコンセプトが的確で明確すぎます。 あれはきっと、二体目か三体目か、とにかく明らかに武装神姫に慣れたオーナーによってセッティングから最適を追求して最適な装備を整え最適な戦術を取らせたものですよ」 「ふーむ、僕達のように、右も左も判らない状態で適当に戦っても勝てる相手じゃなったわけですね」 「悔しいですけど、その通りです。すくなくとも、射撃が当たらないなら直接殴ってやる突撃ー、なんて行き当たりばったりじゃ、カモにされるだけですね」 「あはははは、終盤特攻ばかりしてたのはそんなことを考えていたのですか」 「いやお恥ずかしい、もう『頭に血が上っていた』と言う表現がピッタリな状態でした」 「あはははは、武装神姫でもそういう事はあるのですね」 「あるのですよ。 あ、そうだマスターさん、携帯出していただけますか?」 「携帯ですか? はい」 「はい、ありがとうございます。そこで、「お気に入り」から……はい、そこの「神姫ネット」を選んで……あ、そこです! そこから、今の対戦ムービーがダウンロードできるんです!」 「おお、それは嬉しいですね……お、きましたね」 「マスターさん、再生してください!」 「あははは、そんなに慌てないで下さい。ええと、ここを押せばいいのですか?」 「あ、はい、それです……あ、始まりました!」 「おお、まさしく先ほどの、僕たちの対戦ですね」 「うーん、こうしてみると、私って明らかにキョドってますね」 「あはははは、最初ですし仕方ありませんよ」 「あ、食らった」 「もうこの時点で、相手はもう必勝パターンに入っていたのですね……いや、見返すと勉強になります」 「そうですねぇ。もう、こっちは相手の攻撃がどこから来るか察知するのに必死でした。 あ、でも……ほら! ここの攻撃はちゃんと回避できたんですよ!」 「おおー、やりますね犬子さん」 「はい! いえまぁ、この一発だけでしたけどね」 「あはははは。でも、その後も直撃は結構防いでるじゃないですか」 「ええ、もともとハウリンタイプは、回避よりも防御を得意としますからね。思えば最初から、防御を固めるべきでした……あ、ここ! ここですよ! もうすぐあの場面です!」 「アレですね……行った!」 「ハウリングサンダー直撃です!」 「これってそれまでの砲撃とは違いますね?」 「あ、はい、これは吠莱のスキル技で……要するに必殺技です」 「なるほどなるほど、どうりでごっそりゲージを減らせたはずです」 「ツガルタイプはもともと回避に特化している分、防御は薄いですから」 「そうでしたか。こちらとしてはほとんど回避されていい所なしに感じましたが、相手にとっては意外と冷や汗ものだったかもですね」 「そうですねぇ。そう考えると、終盤で短慮に走って特攻なんてするべきじゃありませんでした」 「あははははは、そうですねぇ」 「また食らった……あ、また。むむむ、我ながらひどいものです」 「あははははは、まぁ、今後は気をつける、と言うことで」 「はい、今度はクールにクレバーに戦ってご覧に入れましょう」 「その意気ですよ、犬子さん」 「はい、ありがとうございます……あ、ここ! ここです! なんとか懐に飛び込めて、殴り飛ばせるかと思ったんですが」 「接近は出来ましたが、残念ながらそこまででしたねぇ」 「うーん、あそこで拳に捉えることが出来ていたら、その後の流れももう少し変わっていたのかもですが」 「うまく逃げられちゃいましたねぇ。いや、惜しかったです……と、ここまでですね」 「マスターさん、もう一度再生していただけませんか?」 「もちろんいいですとも。ええと、これでよかったですよね?」 「はい、そうです……うーん、私は開始直後キョドってましたけど、こうしてみると相手は落ち着いてるのがよくわかりますね」 「犬子さんの分析どおり、と言うことなのでしょうね」 「そうだと思われます。……あ、もう、我ながら鳩が豆鉄砲食らってるみたいな顔して!」 「この時は、まだ敵を捕捉していなかったのですか?」 「恥ずかしながら、その通りです。あ、ここでやっと敵を見つけて応戦を始めるんですが……」 「うーん、ことごとく外してますねぇ」 「少なくとも、カリカリに回避重視の敵に当てるには、修行が足りませんでした」 「その辺も今後の課題ですねぇ。あ、そろそろですよ」 「そろそろですね」 「………………………………」 「………………………………」 「「ハウリングサンダー!!」」 「あははは、つい僕まで叫んじゃいました」 「必殺技を撃つ時は、叫ぶのがお約束ですよ」 「……ううん、よくみると相手も、わりと焦っていますねぇ」 「あれだけゲージが削られれば、仕方ないでしょうね」 「冷静に考えればまぐれ当たりと判るんでしょうけど、まぐれでも何でも当たれば危ないと思えば、なかなか冷静にはなれないものですよ」 「なるほど、さすがマスターさん」 「あ、特攻が始まりましたね」 「うー、お恥ずかしい……」 「いえいえ、犬子さんはよく頑張りましたとも」 「うう、お言葉嬉しいのですが、我が事ながらそれは甘やかしすぎと思うのですよ」 「いいじゃないですか、反省会はもう済んだのですから……あー、惜しい!」 「『当たらなかった』というのは百も承知の上なのに、ついつい当たることを期待しちゃいますねー」 「この次は当てて見せてくださいね?」 「はい、お任せください!」 「と、ここまでですね。もう一度見ましょうか?」 「はい、是非!」 そんな風にして。 マスターさんと私は、携帯のバッテリーが切れるまで、何度も何度も私の初陣ムービーを再生し、いつまでもいつまでもはしゃぎ続けたのでした。 <そのきゅう> <その11> <目次>
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/111.html
【武装神姫】セッション3-1【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm19068237
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/104.html
【武装神姫】セッション1-2【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18060010
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2411.html
≪WIN≫ 神姫ほどの合成音声が作れるのに、なぜか機械感バリバリの勝利のコールと共に周囲の景色が膨大な量のテクスチャとフレームの残骸になっていく。 「うぅん……おはようございますミリオタ、もとい隊長。勝ちましたよ」 「あぁ、独り言は全部聞いてたぞ? 上官侮辱罪って知ってる?」 目の前に立つ男もキャロルもお互い笑顔だが目が笑っていない。 この男は斉藤隆司という。 20歳にしてミリオタ、ろくに講義に出席せず大学を二年で中退、現在はフリーター、そしてキャロルとその相棒のマスター。 「まぁ、いいや、いや、よくねぇけど。とにかくあいかわらずいい手際だった」 キャロルも褒められて悪い気はしないのか「ふんっ」と鼻を鳴らして胸を張る。 「まぁ、とうぜんですね。 この榴弾砲と私の腕が有ればいつでも狙ったところに好きな弾種を落 としてご覧に入れますよ? なんなら……」 と、その台詞を遮って隣のボックスから黒い影が飛び出して男の胸に張り付いた。 「おにぃちゃぁぁぁぁん! アリス勝ったよ! 頑張ったよ!」 黒い影は戦車型ムルメルティアのアリス、キャロルの相棒である。 「あぁ、アリスもお疲れ様。 やっぱり装備、ミサイルラックよりアモコンテナにして正解だったね」 指先で頭を撫でられると、アリスはだらしないほど表情が弛緩した。 「アリス、何度も言いますが人の話を邪魔しないでくれませんか? あと、あなたもムルメルティアなら誇りはどうしたんですか誇りは?」 「キャロルこそ! 試合中ずっとお兄ちゃんの悪口言ってたでしょ!」 「はぁっ!? あなたの耳は一体どういう構造してんですか! だいたい今その話関係ありますか!?」 周囲に大量に並べられたゲーム機の騒音に負けないくらいの騒ぎを起こし始めた二体に男が苦笑していると、同じように苦笑いを浮かべた女性が反対側から歩いてくる。 「は~、タッグだとあいかわらず強いねキャロルちゃん達」 「痛いですよぅ…アリスちゃんやり過ぎです…」 「ねぇねぇ!最後のあれ何、あれ何!? ボクなんだかわからないうちに吹き飛ばされちゃってわかんなかったんだけどっ!」 女性の名前は神代小百合、美人で頭脳明晰、運動神経そこそこで23歳のOL一年生なのだがこうやって平日昼間のゲームセンターにふらりと現れるあたり、社会人としての自覚を問われる。 そして今しがたまで対戦していた天使型アーンヴァルと悪魔型ストラーフのオーナー、ちなみにそれぞれ名前がホワイトラビットとジャバウォックという。 「あ~、ごめんな二人とも、で、最後のだけど……」 「地雷です」 キャロルがこともなげに答えた。 「地雷? そんなの発売してたっけ?」 「正確にはガイ・スローナーM18モデルミニチュアレプリカ。リアルバトルだとせいぜい多少痛くてびっくりするくらいの威力しかないのに一個250$もする高級品ですよ?」 「え、えっとつまり?」 キャロルはまだわかりませんか? と肩をすくめて見せてから。 「アーマライト社が武装神姫用に開発した指向性対神姫地雷、通称 クレイモアです。殺傷範囲は神姫換算で100mにも及びますよ?」 キャロルは基本的に雄弁なのだ、それは戦っている時でも変わらない。 喋り続けることで何か集中力を高めているのか、あるいは逆か。 「へー、すごいね! また新作?」 「はい、その…まだ未認可品なんでできれば黙っておいていただけると…」 「い~よ、いつものことだしね」 いつものこと、そう、新作が発表される時期になると友人であるところのFPSの海外組から 「うちこんなの発表するんだけど?」といったメールが飛び込んできて……毎週末、いや、学校を辞めてからは平日も遊んでいるだけあって、またこれが彼のツボを押さえている。 アリスの装備しているゼネラル・エレクトロニック社謹製M134ミニチュアレプリカにせよ、キャロルが乗り込んでいるフォートブラッグ(もっとも形状がまったくといっていいほど別ものになっているが)に組み込んであるM777ユナイテッド・ディフェンスオリジナルミニチュアレプリカ・モデルU.S.ARMYにせよ、発表発売前にアメリカの友人の好意により海を渡ったものだ。 もともと、武装神姫の武装はオリジナルのものが流通するくらいに汎用性が高い。 武器の性能はむしろ武器の内部の小型メモリーに入力された数値と画像情報から構成される情報ということになる、もっともチートと呼ばれるようなプログラムは基本的にブロックされるようになっている、リアルバトルはこの限りではないが…… とにかく、そういった意味で未発売のものでも内部の情報さえ完成していれば普通にバトルで使用できるのだ、一部例外を除いて。 「そういえばさ、斉藤君もいい加減に大会とか出てみれば?」 「いや、人の話し聞いてました? でれないっスよ」 そう、公式大会はレギュレーションで純正および認可パーツのみのようなことが多い、更にまだ未発表品であったりすれば神姫センターや専門のショップでのバトルで使えば質問攻めを受け、最悪、企業情報を漏洩した門で貴重なアメリカの友人がいなくなりかねない。 「でも、さっきのクレイモア…だっけ? あれ以外は大体もう発売されてるでしょ?」 「まぁ、そうなんですけど」 「なら、もったいないよ! あんなに強いのに大会に出ないなんて」 再びぎゃぁぎゃぁと言い争いを始めたアリスとキャロルを見ながら男は考えていた。 彼女達が公式大会で結果を残すのはもう少し先の話になる…… TOP
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/750.html
前へ 先頭ページへ 人間が生きていく上で最低限必要な物が三つある。 一つは衣服。 一つは住居。 一つは食事。 最低限、これらがあれば人間は生きていけるという。 が、しかしだ。 それらはそこらかしこに転がっている訳ではない。 それらは何の労力を使わずに入手出来る訳ではない。 それらを揃えるのに必要なものが一つある。 金だ。 この世で最も大事な物の一つ。 そして、人間が生活していく上で必要不可欠な物。 それはそこらかしこに転がっているかもしれない。 しかし、それは雀の涙程でしかない。 それは何の労力も使わずに入手出来るかもしれない。 しかし、それも雀の涙程だ。 生活していく為に充分な量の金を稼ぐには、汗水垂らして働くしかない。 それが金という物だ。 今日は快晴、気温も寒すぎず暑すぎずにすごし易く、風もそよ風程度。 外出にはもってこいの一日だと言える。 そんな日には弁当の一つでも持ってピクニックにでも行きたくなるのものだ。 この俺、倉内 恵太郎もそんな素敵な気分に晒されながら今日という素晴らしい一日を満喫していた。 「マスター、ジェットスラスターのタービンはどれを使いましょうか?」 「レニオスの8型で頼む」 カーテンの隙間から差し込む僅かな日光が薄暗い部屋に充満するほこりを照らし出している。 狭い部屋にはところ狭しとぼろぼろのダンボールが詰まれ、破れた箇所から金属のようなものがはみ出している。 部屋の中央に鎮座するちゃぶ台の上には大量のパーツが詰まれている。 そのちゃぶ台を挟み、向かい合うように座る俺とナル。 俺はPCに向かい神姫との神経接続とパルスの強弱、信号の精度を設定している。 ナルはその手に神姫用多目的ツールを、背部にストラーフ本来の機械腕を装着し、神姫サイズの精密機械相手に格闘している。 「マスター、島田重工の箱を取って頂けますか?」 「あいよ」 俺はPCから視線を外し、重い腰を上げた。 狭い部屋を見回して島田重工と書かれたダンボールを探す。 何を隠そうこの周囲に詰まれるダンボールの山、その全てに神姫用パーツが満載されている。 EDEN-PLASTICS、島田重工、BLADEダイナミクス、カサハラ・インダストリアル。 神姫好きなら一度は聞いたことのあるであろう企業の純正品、それらが大量に死蔵されてるのだ。 元を正せば俺が店頭で見かける度にちょくちょく買い漁っていたのが原因なのだが、男という生き物はいつまで経ってもそういう事が好きなもので、幼少の頃はプラモを山のように買っては積んでいたのを今でも覚えている。 それはさておき、案の定買うだけ買って全く使わないパーツも多数ある。 否、その九割が未使用で新品同様だ。 一割はナルの内部機構、旧銃鋼、ブーストアーマー等多数に一応使ったのだ。 だが、それでもまだ大量に使い道の無いパーツが積まれているのだ。 以前は買うごとにナルのお小言を頂戴するハメになり、心身ともに疲れたものだ。 だが、今は違う。 俺の財政を圧迫していた大人買いも今は俺の財政源となっている。 武装神姫の由縁たる『武装』。 それは企業・個人問わず多種多様な武装が市場に溢れている。 大抵、そういうものは大企業か著名なデザイナーが販売するのが普通だ。 しかし、大々的では無いものの、個人による武装販売というのも確かに存在する。 個人はイベントやインターネットを介した自作武装の販売が一般的である。 そう、何を隠そうこの俺も神姫の自作武装を販売する人間だ。 俺の場合はインターネットを介し、客の要望を聞く。 そして、予算や期間などを見積もり俺とナルが武装を製作し、客に郵送する。 これがまたかなり儲かるのだ。 一般に広く普及した神姫の用途は基本、バトルだ。 今は街中に留まらず学校の中にまでバトルスペースを導入している。 供給があるのは需要があるからだ。 そして、神姫の広いカスタイマイズ性。 人は基本的に人と同じ、というのを嫌うものだ。 その結果、市場には細かな神姫用のパーツが氾濫し、自分だけの神姫を作ることが出来る。 それでもまだ、人と被る事を嫌がる人間もいる。 俺の客はそういう種類の人間だ。 完全オリジナル。 オーダーメイド。 フルスクラッチモデル。 そういう言葉をちらつかせれば如何に無名の俺と言えど、それなりに客は引っかかるのだ。 が、だからと言って手抜きは一切しない。 ネジ一本からCPUに至るまで、品質には気を配る。 武装の試運転は念入りに行い、誤作動など無いようにする。 武装の品質がそのまま俺への信用に繋がるのだ。 「…これだな」 ベッドの上に山済みにされたダンボールの海の中、目的のダンボール箱があった。 俺は足元に注意しながらそこに近づき、周囲のダンボールを掻き分けてそれを持ち上げた。 顔の直ぐ下にあるダンボールから立ち上るホコリと機械油の臭いに顔をしかめながらナルの元へとそれを運ぶ。 「お待ちぃ」 中のパーツが傷つかないように心なしゆっくりとダンボールを床に下ろす。 「ありがとうございます、マスター」 そういうと、ナルはストラーフの機械腕を稼動させてダンボールを開け、ビニール袋に包まれたパーツ類をちゃぶ台の上に乗っけていく。 俺も再びPCに向かい、自分の作業に戻ることにした。 『ピンポーン』 来客を告げる呼び鈴が久しぶりに鳴り響いた。 扉の前には「新聞勧誘お断り」と「キャッチセールスお断り」のシールが張ってあるのでその線は無いだろう。 だとすれば大家の家賃収集か宅配便だが、どちらも心当たりが無い。 考えられるとすれば―――考えたくはないが―――警察というのも有り得る。 多少緊張を孕みつつ、俺は音を立てないようゆっくりと立ち上がった。 足元を覆いつくすダンボールを蹴らない様に注意しつつ、そう遠くない玄関へ向かう。 『ピンポーン』 台所が隣にある玄関へと辿り着いた俺はまず、覗き窓から外の様子を伺うことにした。 が、その時。 「しーしょー!お見舞いに来ましたー!」 玄関の扉をドンドン叩きながら大きな声で俺の事を呼ぶ声がした。 「アリカ、近所迷惑よ~」 覗き窓を見るまでも無く、そこにいるのがアリカと茜の二人であることは容易に想像できた。 (空けたくねぇ…) 今この扉を開ければ作業は中断を余儀なくされるだろう。 しかし、開けない場合はアリカはしつこく扉を叩き続け周囲に騒音を撒き散らすだろう。 そうなった結果、お隣さんとの付き合いが悪くなる可能性も充分にある。 近所付き合いの悪化によってかつては殺人事件さえ引き起こしたと聞く。 作業の締め切り自体はあと数日残っている。 「…いるから静かにしてくれ」 俺は観念して扉を開けた。 「お邪魔します、師匠!」 「出来れば邪魔はして欲しくないがな…」 扉を開けた瞬間、アリカはずけずけと部屋に上がりこんだ。 俺はそれに軽い眩暈を覚えた。 「どうしてもアリカが気になるからって来ちゃいました」 止めようと思えば止められた筈の茜も茜だと思ったが、それは口にしないで置いた。 「師匠…どうしたんですか?」 扉を閉め、振り返った俺に浴びせられた言葉は実に酷いものだ。 「すんごい散かってる…」 アリカは部屋を見回しながら言った。 「ダンボールには触るなよ」 俺はそういうと、足元のダンボールを数個持ち上げて隅に積んだ。 そうして出来たスペースに座布団を投げ置くとアリカと茜に言った。 「とりあえず座れ、話はそれからだ」 「それじゃあ失礼しま~す」 「今日は本当に散かってますねぇ、どうしたんですか~」 それぞれ違うことを言いながら座る二人を尻目に、俺は茶を淹れる為に台所へと向かう。 小さな食器棚の扉を開け、茶葉筒を取り出し蓋を開ける。 (…腐ってはいないか) 最後に開けたのが何時かは思い出せないそれだが、臭いから判断するに腐ってはいなさそうだ。 それを確認した後、ヤカンに水をいれてコンロにかけた。 水が沸騰するまでの間に急須の用意をする。 茶葉を適当に入れて湯のみを取り出す。 後は水が沸くのを待つだけだ。 「そうだ師匠、どうしたんですか学校に休学届けなんか出して!」 居間にいるアリカが声を張り上げて言った。 俺がアリカに背を向けていると言え、そんなに大きな声で言う事もなかろうに。 「…茜に聞け」 俺が説明してもいいのだが、それはそれで面倒くさい。 第一、アリカに俺の個人的な事情を話す義理もない。 しかし、今の俺がすることばアリカを早急に立ち去らせることだ。 茜に任せておけば、多分上手く説明してくれるだろう。 「何で?」 アリカは首だけをくるりと茜の方に向けた。 「先輩はねぇ…大学に入学した直後、新手の詐欺にかかって多額の借金を負ってしまったの…それを返済するために暇を見ては内職を…」 前言撤回。 ハンカチを片手に目じりを拭うようにしながら平然と嘘を付く茜。 しかし、その口元は確かに笑っている。 「師匠…本当なんですか!?」 ばっ、と振り返り涙目で俺を見つめるアリカ。 「んな訳ねーだろ」 それから視線を外して沸いたお湯を急須に注ぐ。 「先輩ノリが悪いですね~」 急須を軽く回しながら悪びれようともしない茜をどうしようかと頭を痛める。 「なんでウソ言うのよッ!」 「人生を面白くするのは一つの真実、百の嘘なのよ~」 女が三人寄れば姦しいとは良く言ったものだが、この場合二人寄ったら喧しいだ。 「とりあえず騒ぐな」 湯気の立つ湯呑みを二人の前に置き、俺も適当に場所を開けて腰を落とした。 とりあえず俺も茶を飲む事にした。 我ながら丁度良い濃さで淹れられており、大変おいしい。 「…で、師匠。なんで学校休んでるんですか?」 同じく茶を飲んで一段落着いたアリカが口を開いた。 どう説明したものか、俺は湯呑みを睨みつつ数瞬逡巡した。 「マスターが大学に休学届けを出したのは学費と生活費を稼ぐためです」 俺の前方、ちゃぶ台の上を台拭きで拭きながらナルが言った。 「そうなの?」 「はい。マスターと私で神姫用の武装を製作し、それを販売することで学費と生活費を稼いでいるのです」 俺が言わんとすることを手短に説明してくれた相棒に俺は視線だけで礼を言った。 「…でも、なんで学校休む必要あるんですか? 施設とかなら学校の方が整ってると思うんですけど…」 アリカが部屋を見渡しながら言った。 なるほど、確かにこの部屋は神姫の武装を作るには適さない。 アリカにしてはなかなか的確なツッコミだ。 「あのだいが」 「あの大学は研究以外での施設利用は禁じられてるのよ」 俺が説明しようと口を開きかけたその瞬間、茜が先に言ってしまった。 俺は半開きの口を渋々閉じて、その後に続く説明を考える。 「へ、どうゆこと?」 アリカは小首を傾げている。 「あそこはな」 「あの大学は研究以外では一切の機材・施設を使わせないのよ」 コイツ、絶対にワザとやってやがる。 その証拠に楽しそうな眼で俺のことを見てやがる。 「…だから、俺はココで内職してるんだよ」 他に言うことが無いので何とか締め括ろうと言葉を紡ぐ。 これまでの情報を統括すれば普通の人間ならとっとと出て行くだろう。 「そっか…師匠って大変なんですね… アタシに何かお手伝いできること無いですか!」 そんなささやかな願いは無残にも打ち砕かれた。 「いや、それよりとっととかえ」 「そうよね、先輩も一人じゃ大変よね」 更に踏み砕かれた。 結局、あれから無理やりアリカと茜は俺の仕事を手伝った。 茜はまだ良いが、アリカは本当に邪魔というしかなかった。 パーツを探すと言ってはダンボールを引っくり返し。 パーツを組み立てるといっては盛大に失敗し。 それに懲りて差し入れを作るといっては台所を爆発させ。 そんなこんなで日も暮れて、本気でアリカと茜を帰そうと言う事に相成った。 「うぅ…師匠、スイマセンお邪魔してしまって…」 アリカは全身ホコリとススと得体の知れない汚れだらけになりながらヘコヘコ頭を下げている。 帰るときに説教の一つでも垂れてやろうかと思ったが、そういう態度を取られるとどうも辛い。 「分かったからとっとと帰れ」 俺の態度はどっからどう見ても不機嫌そうに見えたことだろう。 本当の所、ありがとうの一言でも言ってやりたいところだがどうも喉辺りでつっかえてしまう。 「それじゃあ、先輩。お仕事頑張って下さいね~」 茜は茜でいつも飄々としているが、今この時だけはかなり楽しそうに見える。 「ああ、先輩達によろしくな」 「孝也先輩にもよろしく言っときますね~」 明らかに顔を顰める俺に、茜はさも面白そうに微笑んだ。 全く持って食えない奴だと思う。 「…それじゃ師匠、失礼します」 アリカはペコリと頭を下げるとトボトボと歩き出した。 それに一歩遅れて茜が歩き出す。 が、一瞬俺の顔を見やがった。 何故か凄まじい罪悪感を感じる。 「……試作品出来たらバトル付き合え!」 自分でも何でこんな事を言ったのか解らない。 だけど、喉から勝手に出てきてしまったのだから仕方が無い。 アリカはびくりと身体を強張らせ、一瞬の後勢い良く振り返った。 「はい! 喜んでッ!」 満面の、こちらまで嬉しくなる様な屈託の無い笑み。 釣られて笑いそうになるのを必死で堪える。 「それじゃっ!」 そう言うとさっきとは打って変わって早足で帰路に向かった。 茜も軽く頭を下げ、アリカを追った。 その表情も、アリカ程ではないが良い顔だった。 俺は一瞬二人の姿を見送ると、直ぐに玄関の戸を閉めた。 「ふぅ…」 何故か溜息が出た。 確かに疲れた。 けど、嫌な溜息ではない。 「マスター、楽しそうですね」 俺の胸ポケットからナルが声をかけてきた。 「そうか?」 「ええ、凄く楽しそうです」 俺にはその自覚は一切無いのだが、ナルが言うのだからそうなのだろう。 「楽しい、ね…」 思い返せば楽しい、と実感した事など余り無かった気がする。 幼少の時分には一度だけ遊園地に連れて行かれた事もあるが、両親共にジェットコースター初めあらゆる乗り物がダメで、俺が介抱してた嫌な思い出しかない。 小学校の頃も無愛想なガキだったと思う。 友達も人並みにいたが、深夜の学校に潜り込むとか下水道探検するとかそんな事も無かったので対して思い出に無い。 中学・高校と勉強積けだったので楽しい、と思う暇も無かった。 いや、ナルと出会ってからは変わった用に思う。 勉強一辺倒の高校生の時分に初めて神姫を手にして以来、神姫にどっぷりと嵌ってしまった。 学校が終われば直ぐにセンターに赴きバトル三昧。 「マスター、どうしました?」 ぼーとしてたのだろう、ナルが気遣わしげに声をかけてきた。 「いや、ちょっと考え事をね」 あの時の楽しいは違う。 今のナルの顔を見ると心底そう思う。 やがて大学に入り、入学式で裕也先輩と裕子先輩と出会った。 あれから一年と少ししか経っていないけど本当に、色々あった。 思い返せば泡の様に記憶が浮かび上がってくる。 裕也先輩に引っ張りまわされた事。 裕子先輩に叱られた事。 孝也に付き纏われた事。 茜に弄られた事。 そして、アリカに出会った事。 驚くほどに密度のある毎日だった。 「…今日の仕事はこれくらいにしとくか」 「マスター?」 その毎日のきっかけは、武装神姫だった。 「締め切りまでまだ時間はある。たまには骨抜きでもしないとな?」 「マスターがそう言うのでしたら…」 武装神姫を通じて知り合った皆。 「今日は鳳凰杯の特番があったな、それでも見よう」 「そういえばもうそんな時期ですね」 その毎日を齎してくれたナルに、最大限の感謝を。 先頭ページへ 次へ