約 2,308,037 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2285.html
キズナのキセキ ACT0-2 ひどい顔 ◆ 「神姫センターに行きましょう!」 「前から訊いてるけど、何しに行くのよ」 「前から言ってますが、もちろん、バトルをしに、です!」 「前から言ってるけど、イヤ」 「これも前から言ってますが、なぜマスターは神姫センターに行くのを嫌がるんですかっ」 ミスティは菜々子に、まなじりをつり上げて見せた。 菜々子はため息をつく。 ここのところ、同じ会話ばかりだった。 ミスティはどうしても神姫センターに行って、バトルロンドで対戦がしたいようだ。 それは武装神姫のAIにプログラムされた、闘争本能みたいなもの、なのだろうか。 一方、菜々子はバトルに興味がなかった。 頼子さんは対戦仲間に引きずり込みたいと思っているのだろうが、あいにく菜々子にその気はない。 菜々子はミスティが気に入り始めていた。小さな姿は可愛らしいし、性格も素直でいい子だ。 でも、だからこそ、なぜそんなに相手と戦ったり傷つけあったりする野蛮なことをしたがるのか、分からない。 「この間調べたら、最寄りの神姫センターでも結構遠いじゃない」 県下の神姫センターまでは、最寄り駅から電車で二〇分ほど。 中学生の菜々子にしてみれば、少ないお小遣いを電車賃に変えてまで行くのはきつい。 これがいつもの断り文句、だったのだが。 「じゃあ、近所のゲームセンターに行きましょう」 「……ゲームセンター?」 神姫のバトルは神姫センターだけではなく、ゲームセンターやホビーショップでもできるらしい。 そう言えば、最寄りのF駅前のゲームセンターで、武装神姫のポスターを見た気がする。 もっとも、菜々子がゲームセンターに入るのは、友人とプリクラを撮る時くらいだろうか。 ゲームセンターに一人で行くのは、かなり気が引ける。 しかし結局、ミスティの熱意に押され、渋々ゲームセンターに足を運ぶことになった。 ◆ F駅前のゲームセンター『ポーラスター』の二階に、武装神姫コーナーはあった。 フロアの半分以上をバトルロンドの筐体が占拠している。プレイヤーたちは大きな筐体を挟んで、バトルに熱中している。 天井から吊された大型ディスプレイには、現在進行中の激しいバトルが映し出されていた。 他の客たちは、筐体を取り巻き、あるいはディスプレイを見上げて、熱心に観戦している。しのぎを削る好勝負に、歓声が上がった。 「わあ! 対戦、すっごく盛り上がってますよ、マスター!」 はしゃぐミスティとは逆に、菜々子は気後れしてしまっていた。 なんだか場違いな場所に来たような気がする。 武装神姫の対戦ゲームがこんなに盛り上がっているものとは知らなかった。 しかも、この場にいる人は皆、神姫のオーナーなのだ。こんなにたくさんのオーナーと神姫が集まっているのも驚きだった。 こんな場所で、まったく初心者の菜々子とミスティが、見ず知らずの相手とバトルする。 まず間違いなく、無様に負ける。 そんな恥ずかしいことできるわけないじゃない。 菜々子は早くも回れ右して帰りたくなっていた。 知り合いの神姫マスターでもいれば、練習と言って対戦することも出来ただろう。 あるいは、神姫センターならば、対戦者のレベルに合わせた対戦相手のマッチングなども行ってくれるサービスもあるのだろう。 しかし、ここはゲームセンターで、菜々子に知り合いのマスターもいなければ、マッチングサービスもしてくれない。 レベルや相性も自分で判断して、対戦を申し込まなくてはならない。 初心者の菜々子に、そこまでの度胸があるはずもなかった。 菜々子は大型ディスプレイを見上げる。 今行われているバトルの一つが、演出重視のカメラアングルで、実況されている。 高速で飛び交う銃弾に、一瞬の隙を突いたクロスレンジでの攻防。 今繰り広げられている激しいバトルが、自分とミスティにできるなどとは、どうしても思えなかった。 菜々子はため息をつく。 少しは気が晴れるかと思ってきてみたけれど、憂鬱になるばかりではないか。 胸ポケットにいるミスティを見ると、大型ディスプレイの対戦に目を輝かせていた。 めちゃくちゃ嬉しそう。 そんな顔をされてしまっては、帰るとも言い出せないではないか。 菜々子は壁の花になり、所在なげに対戦の光景を見つめていた。 ディスプレイの中で戦っているのは、白い天使型と、花をモチーフにしたという神姫だった。 二人とも空中を舞うように飛び、華麗な空中戦を繰り広げている。 蒼い空を背景に、二機の機動によって引かれる飛行機雲をきらめくレーザーや爆炎が彩り、まるで万華鏡を見ているようだ。 やがて、その一戦も終わりを告げる。 天使型の大型ビームキヤノンが必殺の一撃を放ったのだ。 絶妙のタイミングで放たれたビームは、見事花を散らした。 バトルが終わり、マスターが筐体の前から立ち上がった。 先ほど勝利した、天使型のマスターの姿に、菜々子は目を見張る。 高校生だろうか。 ブレザーを着た、肩までかかるウェーブ髪が印象的な、女性だった。 「あんな人が、武装神姫なんてやるんだ……」 菜々子には意外だった。 バトルなんて、男の人が好んでやるものだと思っていたからだ。 しかも、天使型のマスターは、思わず見とれてしまいそうなほどの美少女だった。 常連のプレイヤーや、彼女のファンらしい人たちに取り囲まれている。 彼ら一人一人に微笑みかける彼女を、菜々子は見るともなしに見ていた。 すると不意に。 その視線に気が付いたかのように、彼女がこちらを向いた。 視線が合う。 菜々子はあわてて顔を伏せた。 自分の視線は不躾すぎただろうか。 下を向く菜々子に、人の気配が近づいてくるのが感じられた。 目の前で、誰かが立ち止まった。 菜々子の視界に、その人物が履いているローファーが映る。 声がした。 「ひどい顔ね」 さすがにカチンと来て、顔を跳ね上げる。 初対面の相手に対する、第一声がそれか。 目の前に、思わず見とれてしまいそうな美貌がある。先ほど勝利した神姫のマスターだった。 思わずにらみつけてしまったその女性は、しかし、言葉とは裏腹に邪気のない顔で、 「そんな表情じゃ、かわいい顔が台無し。ほら、笑って」 そう言って、にっこりと笑った。 女の菜々子でさえ、ドキリとするほど素敵な笑顔。 怒りが霧散するのも一瞬。菜々子は呆けた顔をするのが精一杯という有様だ。 その女性は、軽く一つ吐息をつくと、顔に微笑みを絶やさずに言った。 「あなた、見かけない顔だけど、ここは初めて?」 「え……はい」 「気をつけなさい。あっちの男ども、あなたに声をかけようと、さっきから狙ってるんだから」 視線を男性たちのグループに投げた後、彼女はいたずらっぽくウィンクした。 その表情がまた、やたらと様になる。 菜々子は内心、びっくりしたり、どきどきしたりしながら、彼女を見つめるほかない。 「見たところ、初心者みたいね。バトルしたことはある?」 「……ありません」 「バトルしに来たの?」 「あ、ええと……」 一瞬口ごもった菜々子の隙をついて、 「はい、そうです!」 ミスティが元気よく返事をしてしまっていた。 「ちょ、ミスティ!」 「なんだ、神姫を連れてるんじゃない」 「その、これはちが……」 違っていない。 イヤイヤではあったが、ミスティのためにバトルしに来たはずだ。 言うべき言葉が見つからない菜々子の手が取られた。 目の前の彼女だった。 「じゃあ、わたしが教えてあげる」 「ええと……わあ!」 菜々子は強引に引っ張られた なんという女性だろう。 菜々子の頑なな心に、無理矢理割り込んでくる。でもそれが全然嫌じゃない。ただ、展開の早さに戸惑っているだけ。 「わたし、桐島あおい。あなたは?」 「……久住菜々子、です」 「いい名前ね」 彼女が笑うたび、彼女のペースにどんどん引き込まれていってしまう。 戸惑いながらも、つながれた手を菜々子は握り返していた。 ◆ バトルロンドの筐体のまわりは、喧噪に包まれている。 そんな中、先ほどあおいと対戦していた花モチーフのジルダリア型のマスターがこちらに気付いて、顔を上げた。 「おお? また、あおいお姉さまの新人講習の始まりか?」 「うるさいわね」 苦笑しながら、あおいは菜々子を一番端の筐体まで連れて行く。 後で聞いた話だが、この桐島あおいという人物はかなりの実力の持ち主なのだが、『ポーラスター』にやってくるバトルロンド初心者にいつも世話を焼いているのだそうだ。 「バトルのプレイヤーを増やすのも、ベテランの仕事でしょ」 というのが当人の弁。 あまりにも世話を焼くので、常連たちからは「あおいお姉さまの新人講習会」呼ばれ、からかわれていた。 しかし、当のあおいは気にすることもなく、むしろそう言われて喜んでいる節さえあった。 菜々子にしてみれば、これは渡りに船だった。 あおいの行動に少し驚いたが、右も左も分からない自分に、向こうから教えてくれるのなら、こんなに都合のいいことはなかった。 初心者相手のお試しプレイなら手加減もしてもらえるだろうし、ミスティもちょこっとバトルの真似事さえできれば、しばらくは満足してくれるだろう。 おっかなびっくり筐体に座り、ふむふむとバトルのやり方を教わって、いよいよ菜々子とミスティの初めてのバトルが始まった。 この時、菜々子は大事なことを失念していた。 自分がとても負けず嫌いな性格だということを。 ◆ 「しまった……」 今日も菜々子は、『ポーラスター』への道を歩きながら、自己嫌悪に陥っている。 武装神姫によるバーチャルバトルゲーム……バトルロンドに、菜々子はすっかりハマってしまっていた。 実際にプレイしてみると、今まで触れたどんなゲームよりも奥が深くて面白い。 対戦ではそう簡単に勝てないことも、菜々子の負けん気に火を付けた。 今は友人達とも距離を置いているから、放課後にさしたる用事もなく、自らの闘争心の赴くまま、毎日のようにゲームセンターに足を運んでしまうのだった。 もちろん、ミスティは毎日ご機嫌である。 『ポーラスター』に通うのには、もう一つ理由がある。 桐島あおいに会うためだった。 「あら、今日も来たわね、久住ちゃん」 「……はい」 ふふん、と勝ち誇るように笑うあおいに、菜々子は少々むかつきながらも、返す言葉がない。 初めてバトルした日、もう一回、もう一回と何度も対戦を申し込んだのは、むしろ菜々子の方だった。 生来の負けず嫌いがこんなところで顔を出してしまった。 あまりにもムキになった様子がおかしかったのか、 「あらー、ここまで坂道を転げ落ちるようにバトルにハマるのも、ちょっと珍しいわー」 といいながら、あおいは爆笑していた。 それもまた悔しい。 自分から誘っておいて、何という言いぐさか。 いつかこの人に吠え面かかせてやる、と菜々子は密かに誓っていた。 だけど、桐島あおいが嫌いなわけではなく、むしろとても惹かれていた。 端正な顔に、いつも様々な表情を宿し、生き生きとしている。 明るく、社交的で、仲間達からは好かれ、慕われている。 こんな女性になりたいなぁ、と漠然と思う菜々子だった。 そんな憧れの女性は、なぜか、菜々子の面倒をよく見てくれる。 あおいを「お姉さま」などと呼んで慕う女子中高生は一人や二人ではなかった。 しかし、なぜかあおいは、新参者の菜々子が店に来ると、真っ先に声をかけてくれて、菜々子の練習相手を買って出るのだった。 そんな彼女の行動を不思議に思う。 なぜ、自分なのか? まだ出会って間もなく、いまだ悲しみに心捕らわれて、微笑むことすら出来ていない無愛想な女なのに。 それでもあおいは、 「さ、今日もやろっか」 と鮮やかに微笑んで、菜々子の相手をしてくれるのだった。 ◆ それから数日後のある日、『ポーラスター』からの帰り道。 「……何か悩んでる?」 「……え?」 「だって、久住ちゃん。あなた、全然笑わないじゃない?」 「……」 「久住ちゃんの笑顔は、絶対かわいいと思うんだけどなあ」 いつもは門限を気にして、あおいよりも早く帰る菜々子だったが、今日は菜々子に合わせて、あおいが一緒にゲームセンターを出た。 二人並んで歩く帰り道。 ……そういえば、桐島さんってどこに住んでるんだろう? 自分と同じ方向なのかな、などと考えてるときに、あおいから声をかけられたのだった。 二人は近くの公園に足を向けた。 噴水を望むベンチに並んで腰掛ける。 もう夕陽はビルの合間に落ちていき、空はオレンジ色から夕闇へと変わりつつあった。 「なにかあった?」 「……」 「まあ、言いたくなかったら言わなくてもいいけど」 口調はさりげなかったが、瞳の色は限りなく優しかった。 この人は、どうしてわたしのことを、こんなに気にかけてくれるんだろう。 不可解に思いながらも、心の中では少し嬉しく思ってしまっている。 心惹かれる憧れの人が、自分を気にしてくれているのだ。 だが、彼女の前でも、いまだ笑うことが出来ないでいる。 自分の心の内を話せば、彼女は理解してくれるだろうか。 わたしが笑顔を取り戻すきっかけになってくれるだろうか。 期待と不安が心に渦巻く。が、しかし。 「……ええと、その……実は……」 いつの間にかしゃべり出したことに、菜々子自身が驚いた。 意識しないうちに、桐島あおいを信頼してしまっていたのだった。 あおいは、話し始めた菜々子に微笑みかけながらも、真剣な様子で耳を傾けていた。 菜々子の話を聞き終えたあおいは、空に浮かぶ星を見つめ、言った。 「ふーん、そう」 それだけか。 自分のつらい胸の内を吐露したにもかかわらず、気のない一言で片付けられるなんて。 話さなければよかった、と菜々子は一瞬後悔する。 が、次の瞬間、菜々子はあおいに肩を抱き寄せられた。 そして、耳元で聞こえた一言。 「よくがんばったね」 その一言は、菜々子のかたくなな心を、一瞬でほどいてしまった。 菜々子が欲しかったのは、これだった。 同情でも気遣いでもなく、ただ、ただ、わたしが悲しみや不安や辛さに耐えていることを分かって欲しかった。 分かっていると言って欲しかったのだ。 菜々子のほどけた心から、ため込んでいた想いがどっと溢れてきた。 まるで洪水のように、菜々子の心を押し流す。 両親がもういないという実感。もう最愛の家族に会えないという事実。 祖母の気遣い。それは彼女自身の哀しみの裏返し。 友人たちの同情。それは心を許した友への精一杯の優しさ。 本当はみんな分かっていた。 心から菜々子を心配して気遣ってくれているということは。 それに素直に応えられなかったのは……自分に降りかかった不幸をいいわけにした、ただの甘えだった。 「ごめんなさい……」 菜々子の唇から、自然に言葉が転げ落ちてくる。 それは、いままで言いたかった言葉。言わなくてはならなかった言葉。 「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」 菜々子の大きな瞳から、涙がこぼれ落ちていく。 優しくしてくれた人たちに謝りながら、泣いた。 やっと実感した胸を突き上げる悲しさと寂しさに、泣いた。 あおいの肩にすがりつき、菜々子は声を上げて泣きじゃくった。 やっと、心の底から泣くことを許された気がした。 桐島あおいは優しい表情で、号泣する菜々子の肩をそっと抱き続けていてくれた。 ◆ 「どうして……」 「うん?」 「どうして、わたしに声をかけてくれたんですか?」 あおいが声をかけてくれなければ、菜々子の心はまだ闇をさまよっていただろう。 あおいはちょっと上を向いて、うーん、と考えると、また菜々子の方を向き直って、言った。 「女の勘」 「え?」 「ゲーセンで、あなたと目が合った時、ビビッ!ときたのよねぇ……。 この子と仲良くなっておかなくちゃダメって思ったの。仲良くなっておけば、きっと素敵なことが起こるってね」 そう言って、いたずらっぽくウィンク。 相変わらず様になる。 限りない優しさと、太陽のような明るさと。 桐島あおいは、どこか祖母に似ている気がする。 「これからは、菜々子って呼ぶわ。いい?」 「はい、桐島さん」 「あおい」 「え?」 「あなたも下の名前で呼ばなくちゃ、不公平でしょ」 「……はい、あおいお姉さま」 あおいはあからさまに嫌そうな顔をした。 「あなたも、そう呼ぶわけ?」 「それが一番しっくりくるので」 それはささやかな反撃。 だけど、菜々子はこの呼び方がいいと思っていた。 お姉ちゃん、というほど馴れ馴れしくなく、憧れと尊敬を持った距離感のある呼び方。 親愛の情を込めて、その名を呼ぶ。 「お姉さまと呼ばれるのは嫌ですか、あおいお姉さま?」 あおいはその美貌を、心底嫌そうに歪めている。 後で聞いたところ、常連さんが「お姉さまキャラだから」という単純な理由で、あおいをお姉さまと呼び始めたらしい。 それがいつの間にか定着してしまったのだ。本人は自分がお姉さまキャラだなどとは微塵も思っていないから、迷惑この上ない、とのことだった。 それでも、眉をひそめながらも、あおいは頷いた。 「いいわ、もう好きにして」 他の人がそう呼ぶの禁止にしようかな、なんて言って、あおいは笑った。 つられて、菜々子も笑った。 もう真っ暗になった夜空に、二人の笑い声が響く。 両親が亡くなって以来はじめて、菜々子は心からの笑うことができたのだった。 ◆ こうして、桐島あおいは、菜々子にとって、特別な人になった。 憧れの女性であり、武装神姫の師匠であり、目標であり、ライバルであり、もっとも心許せる友人であり、一番の理解者で……本当の姉のように思っている。 今も。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1134.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-13 <東杜田技研・新製品のご案内-13> 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内> このたび、弊社の小型ロボット向けコスメブランド「T3」では、 近年 人気が高まっております「武士神姫」向け商品を開発、シリーズ名 「T3-乙女志向」として展開することになりました。 まず第一弾として「ボディーソープ」・「シャンプー」・「リンス」を発売 いたします。 〜「T3-乙女志向 ・ 神姫ボディーソープ・ 神姫シャンプー・神姫リンス」の特徴〜 ■各種小型ロボット向けのメンテナンス用品開発で定評のある当社 T3チームが総力を挙げ、小型機械技術研究製作部とも連携して 開発された、神姫向けのボディーソープ。 ■またシャンプーとリンスは当社T3チームと某大手化粧品メーカー との共同開発。 神姫の人工毛髪と抜群の相性を誇ります。 ■中性かつ低浸潤性ながら、強力樹脂クリーナー以上の洗浄力。 もちろん、神姫本体のペイントを侵すことはありません。(註1) ■敏感なフェイス部分にも安心してお使いいただける、独自の配合。 もちろん、オーナー様ご自身にもお使いいただけるよう、各種の 規制に適合させております。 一緒のお風呂・シャワーの際には ぜひお試しください!! ■神姫が嫌がることの無いように、独特の芳香剤を配合。洗浄後に は、ほんのりといい香りも漂います。 ■シャンプーとリンスは、各3種類を用意。お手元の神姫との相性や 香りによって選ぶ事が出来ます。 ■専用ボトルには、オーナー様が使う通常のポンプのほか、神姫用 の小型ポンプも装着されており、神姫自身がひとりで洗浄される 際にも安心の設計。 ■シャンプーが苦手な神姫のために、同時にシャンプーハットも発売。 5色を用意、お好きなものをお選びいただけます。 (註1)純正塗色は問題ありませんが、リペイントに関しましては 保障対象外とさせていただきます。 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <T3-乙女志向 「神姫ボディーソープ」> ・天然由来の香料とボディの艶出し成分を配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプー」> ・ストレート、ダメージケア、トニックタイプの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫リンス」> ・ストレート、モイスト、ダメージケアの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプーハット」> ・ピンク・水色・黄緑・黄色・白の計5色。 ・徳用詰め合わせ10枚セットもあります。 ・発売予定時期 (全商品・今夏予定。初回生産分のシャンプーには、 シャンプーハットが付属する予定です。) 以上 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1671.html
と、いうわけで次の対戦のテーマは「接近戦も試してみよう」と相成りました。 今まで砲撃ばかりを狙い、接近戦は懐にもぐりこまれた際の迎撃程度しか行なっていなかったので若干不安は残りますが、何事も経験の積み重ねが肝要です。 そうと決まれば善は急げ。早速ターミナルへと、バトル登録に向かいます。 ……が。恥ずかしながら、ここですんなりとは行かないのが私たちで。 「ええと、カードをここに入れるんでしたよね?」 「マスターさん、惜しいですがカードの前後が逆です」 戸惑いつつ確認するマスターさんに、私はその胸元からお返事いたします。 「やや、これはうっかり」 そう言いつつ、カードを『裏返して』挿入しようとするマスターさんには、ある意味でお見事です。 カード投入の段階で手間取るワケですから、その後のタッチパネル画面操作などはさらに苦戦するわけで。 ああ、私たちの後ろに並んでいる方のイラついた目が心に刺さります。 正直なところ、私がやってしまえば早いのですが、これもまたマスターさんに操作を覚えていただくために必要なこと。 マスターさんとて、確かにかなりの機械オンチではありますが、それでも何度も練習すればできるようになるのです。実際、携帯やPCメールの扱いだって、そこそこはできるようになっているのです。 先ほども言いましたが、何事も経験の積み重ねが肝要なのです。 マスターさんも、やれば出来る子なのですっ! ですからこうして私はあえて助言に留めているのも、これもまた愛なのですっ! もちろん、いつも温和で何事もそつなくこなすイメージのマスターさんが慣れない操作に戸惑われる姿が愛らしく思えることとは一切無関係なのですっ! 「『対戦申し込み』で……条件設定は……ええと……これでしたっけ?」 「マスターさん、そこは違います」 「やや、これはうっかり。えーと、戻るには確か……」 「申し訳ありませんがそこも違います。戻るにはそちらでなくこちらで」 「やや、これはうっかり」 ああ、私たちの後ろに並んでいる方が舌打ちなどをされています。 「では今度こそ。『対戦申し込み』で……」 「ああマスターさん、今押されたアイコンが戻るためのものです」 そして無情にも排出される管理カード。 「やや、これはうっかり」 「仕方ありません。また最初からいきましょう」 「……どきな」 「はい?」 む? なにやら後ろに並んでいた方が、強引にマスターさんの前に身を割り込ませてきます。 そして排出されているマスターさんの管理カードを無造作に手に取ると、手馴れた動作で再投入、やはり手馴れた動作でターミナルを操作して行きます。 そして瞬く間に設定が終了し、排出されたカードを手に取ると、それを乱暴な仕草でマスターさんの胸に押し付けました。 「『VRバトル』『対戦申し込み』『ステージ:ランダム』『条件:ランダム』『対戦相手指名:なし』 ……これでいいだろ?」 「あ、はい、十分です」 「……ふん」 呆然としつつも、我に返ってカードを受け取るマスターさんでしたが、その方は一瞥しただけで 鼻を鳴らし背を向け、ご自身のカードを取り出しターミナルに向かいます。 ……といいますか、あまりの急展開にちょっと流されてしまいましたが、無礼ではないでしょうか。 せっかく私がマスターさんのまごまごされる姿を堪能……もとい、マスターさんにターミナル操作を練習して頂いていたところにっ。 「あの……」 マスターさんが、その方の背中にお声をかけています。 「なんだ?」 ……その方は、お返事こそされたものの見返りすらされません。やはり無礼です。 「ありがとうございました、代わりに操作していただきまして」 さすがはマスターさん。相手の態度は無礼でも、礼を言うべきはきちんと言う、ご立派な姿勢です。 さすがにその方も、操作の手を止めて肩越しにこちらを振り返りました。 改めてその方を見てみますと……年頃は二十歳をやや越したくらいでしょうか? ぼさぼさの髪にシンプルな革ジャンにGパンというラフな服装と、ターミナルの脇の置かれた立派な神姫キャリングケースをみるに、おそらく自由に使える時間の多い大学生さんあたりではないでしょうか。 ですが真っ当な大学生さんというには、三白眼とへの字に結んだ口元がやや不穏な雰囲気をかもし出しています。 「ターミナルの操作くらい、慣れろよ」 そしてお話の仕方も、失礼ながら丁寧とは言いがたいですね。 「いやはや、面目ない」 そんなお方を前にしても、マスターさんの態度は柔らかいまま。さすがです。 その三白眼の方は、ちらりとマスターさんの胸元……つまり私へと視線をうつしました。 な、なんでしょうか……? 「どノーマル装備のハウリンか……はん」 は、鼻で笑いましたよ?! 今この方、私を見て鼻で笑いました! なんと失敬な! 思わずムッとしてしまう私をよそに、その方はもう興味はない、とでも言いたげに再びターミナルへと向き直ります。しかもそれだけでなく、背中越しの捨て台詞まで吐かれるオマケ付きです 「そんな何にも出来ねぇ神姫でバトルに出たって、金と時間の無駄だぜ。 ウチ帰ってキャッキャウフフしてな」 な、何と言うことを……! いえ確かに実際連敗続きでマスターさんに言い訳のしようもないと思っておりますが、それにしても言い方と言うものがあるでしょうに! 憤然とそう口を開こうをした私……でしたが。 「ほほう……」 頭上より発せられた冷ややかな声に、思わず私はそちらを仰ぎ見ます。まっすぐに三白眼の方を見据えるマスターさんのお顔は私の位置からお窺いしづらいですが、いままでついぞ耳にした事のなかった冷たい声色は、しかし確かにマスターさんのお声でした。 「犬子さんが、何も出来ない武装神姫だと仰いましたか?」 その冷ややかな声に、さすがに三白眼の方もこちらに向き直りました。 「あ? なんか文句あるのか? まだ未勝利のクセによ?」 私たちの管理カード、しっかり見られていたようです。 「ええ、戦績が振るわないのは認めましょう。ですが、『何も出来ない』というのは取り消していただきます」 「へぇ……」 三白眼の方が、口元をゆがめます。獲物を目の前にした肉食獣を思わせる、獰猛な笑みです。 「そんな気はさらさらねぇ、っつったらどうすんだ?」 「取り消すと、認めさせます」 それに対して、萎縮することなくはっきりと言い切るマスターさん。 「おもしれぇ……この俺に勝負でも挑もうってのか?」 「そうすることであなたが、犬子さんが何も出来ないなどと言うことはないと認めてくれるというなら」 マスターさんは、きっぱりと即答されました。それを聞き、三白眼の方はますます笑みを獰猛なものにします。 「決まりだな」 「ええ。どちらの武装神姫が優れているか、証明してご覧に入れましょう」 ……そして私はといえば。 恥ずかしながら、いつも温和でいらっしゃる印象しかもっていなかったマスターさんの新たに見る果断さに、口を挟むことも出来ずに状況の推移を見守るばかりです。 と、三白眼の方のキャリングケースが、内側から開かれました。 「……なによアキ、またなんか揉めてるの? いい加減にしてよね、おちおち寝てらんないじゃない」 そう言いながらキャリングケースから身を起こしたのは、気だるげな雰囲気を纏わせたストラーフタイプでした。胸元に飾られた、バラと剣をあしらったエンブレムがオシャレです。 彼女は素体の状態ながら……その立ち振る舞いに、只者ならざる様子をうかがわせます。 なんと申しましょうか、動作の一つ一つが洗練されている……いえ違いますね、「動作の一つ一つ」ではなく、動作全体が非常に滑らかで人間的なのです。 それはつまり、どうしても動作の継ぎ目継ぎ目が不自然になるプリインストールされた身体制御プログラムではなく、自ら調整した身体制御プログラムを構築しているということです。 私も脚部パーツをGS ver1.13に換装させて頂き、そこから派生したモーションパターン全ての総調整を余儀なくされた事があるからこそそれがどれほど膨大な処理を必要とすることかを垣間見ることはできますが……脚部パーツからの派生のみならず全身の動作において、しかもあれだけの洗練された高度な身体制御を可能とできるようになるまでにどれほどの試行錯誤と経験の積み重ねがあったのか……想像するだけで戦慄を覚えます。 その一点だけを以ってしても、相手とするなら強敵になると言わざるをえません。 「まあそういうなよロゼ。俺たちに勝負を挑もうって言う勇気ある身の程知らずどもさ。 丁寧に遊んでやらねぇと罰が当たるってもんよ」 三白眼の方が、にやりと笑ってご自身の武装神姫に声をかけます。 ロゼ、というのがこの武装神姫の呼び名のようです。そういえば先ほどロゼさんが口にしていた「アキ」というのが、三白眼の方のお名前でしょうか。 「ふうん……この子がその相手? 見たところてんで素人っぽいけど」 余計なお世話です。と言いますかオーナーがオーナなら、神姫もまた随分と態度が尊大ですねっ。 それにしても位置的には貴女の方が低い場所にいるというのに、それでも私を見下す視線を取れるとは、なかなかに器用なお方です。 と、ロゼ(仮)さんはあからさまに肩をすくめ、首を振ります。 「ホントいい加減にしてよね……そうやってアキがバカみたいに噛み付いたケンカ、全部アタシにお鉢が回ってくるんだから」 「バカとは何だバカとは?! このバカ神姫が」 「なによー! バカって言う方がバカなんだからね!」 「その言葉、そっくりそのままノシつけて返す! ってーか今回は俺から売ったケンカじゃねぇ!」 「ふーん、今回『は』ね、今回『は』」 「う……」 「どうせそれだって、またアキが余計なこと言ったのが原因なんでしょ?」 「うう……!」 なにやら、類似の件は今までにもあったご様子。 アキ(仮)さん、口をしばらくパクパクさせておりました。反論の言葉を捜しているものと思われます。 結果、そのお口をついて出たのは。 「……メール管理もろくすっぽできねぇバカ神姫に言われる筋合いはねぇ!」 ……いえアキ(仮)さん、それは反論になっていません。と言いますか、明らかに逆切れです。 「何よ! そんな雑用なんて、電子秘書でもなんでも買ってやらせればいいでしょ?! アタシは武装神姫よ、ぶ!そ!う!神姫! だからバトル最優先に決まってるじゃない!」 いえロゼ(仮)さんも、その反論はさすがにどうかと。 と申しますか、もしかしてお二人とも私たちの事をお忘れではありませんか? お二人とも睨み合っておりまして、完全にお互いしか見えていないものとお見受けしますが。 「あのー……」 そんな私の思いを汲み取っていただけた……という訳でもないのでしょうが、マスターさんがおずおずとお二人に話しかけられました。 はたと、睨み合っていたお二人が同時にこちらを向かれました。 そのお顔は、如実に「私たちの存在を今思い出した」と語っておられます。 そしてアキ(仮)さんが、咳払いをひとつし、マスターさんへと向き直りました。 「勝負の方法はどうするんだ?」 あからさまに誤魔化し+照れ隠しです。 あ、ロゼ(仮)さんがキャリングケースに引っ込みました。 なんと申しますか、お二人の醸し出していた『未知の強敵』のイメージがわりと台無しです。 「僕のほうから提示する条件は一つ。三本勝負での決着を望みます」 そんなアキ(仮)さん達のご様子を見ていなかったかのように振舞うマスターさんは、やはりすばらしい方だと思うのです。 「別に三本だろうが十本だろうがかまわねぇけど……それなら勝てると踏んだってのか?」 「ご想像にお任せしますよ。一本目は譲ります。そちらのお好きに条件を設定してください」 「へぇ……大した自信じゃねぇか」 アキ(仮)さんは不敵にお笑いになりました。どうやら調子を取り戻されたようです。 「ええ、どんな条件にしろ、結果は変わりませんからね」 「……よく言った。後悔すんなよ?」 アキ(仮)さんが、再びにやりと獰猛な笑みを浮かべました。 「俺の名前は佐藤正昭(さとうまさあき)。こいつがローザリッタだ。大口叩くだけの歯ごたえを期待してるぜ?」 申し訳ありませんアキ(仮)さん改め佐藤さん、不敵な台詞もわりと手遅れ感が漂います。 「ま、せいぜい頑張りなさいな」 えーとロゼ(仮)さん改めローザリッタさん、キャリングケースの中からそう言われましても。 「……ですが正直、意外でした」 ここは休憩スペース。いつも私たちが対戦後の反省会を行なっている場所です。 もっとも今は反省会ではなく、単に飲み物を購入しに立ち寄っただけですが、何はともあれ佐藤さんたちと一時別れ私たちだけになったところで、私はかねてよりに疑問を口にしてみました。 「何がです?」 自動販売機にコインを投入しながら、マスターさんがお答えになります。 「マスターさんが、勝負を受けたこと……いえ、ご自身から勝負を挑んだことがです」 私の知っている限りのマスターさんには、相手が少々無礼な態度を取っても柔らかく受け流すような、そんなイメージを抱いていたものですから。 「僕のほうこそ、ちょっと意外ですねぇ」 自販機から出てきたペットボトルを二本拾い上げながら、マスターさんが少し不本意そうなお顔で仰いました。 「僕は、犬子さんのことを侮辱されて黙っているような、そんな人間と思われていたのですか?」 ………………………! 申し訳ない気持ちと、それをはるかに上回る感極まる気持ちが私の感情回路を乱し、ドッグテイルが暴走を開始します。 私のためにお怒りになってくださっていたとは……そんなことにも気付かなかった、自らの不明を恥じ入るばかりです。 「あー、いえ、そんな風に畏まらないでください。僕自身も熱くなっていてのことですし、改めてそんな風に言われると、こちらこそ恥ずかしいですから」 そう仰るマスターさんのお顔を伺えば、かすかに赤みがさしていらっしゃいます。そんなマスターさん のご様子は、先ほどの初めてお見かけした果断なるマスターさんでなく、私のよく知る温和なマスターさんでした。 そのことになんとなく根拠のない安心感を覚えた私は、次の話題を振ることにします。 「ところでマスターさん」 「なんでしょう犬子さん」 「先ほどの浜野さんのお話ですが、どうお考えですか?」 「そうですねぇ……」 実は私たちがこちらに来たのは、単に飲み物を買いに来ただけという訳ではありませんでして。 浜野さんが私たちのことを、佐藤さんに見つからないようにこっそりと手招きしお呼びになった、それに応えるための離席の口実でもあったのです。 『ちょっと揉めちゃったみたいだねー』 佐藤さんたちから見えない位置に誘われた私たちへ、浜野さんはいつものにこやかなお顔に若干の苦笑いを混ぜてお話くださいました。 なんでも佐藤さんはこちらのセンターでも指折りの実力者なのですが、バトルでの苛烈さや好戦的で尊大な態度、歯に衣着せぬ物言いであまり評判はよろしくないお方だとのことです。 とくに弱者や敗者にかける言葉などは、相手の至らない点を容赦なくビシバシと指摘する厳しいものばかりで、『そんな言い方をしなくても』ということが多いとか。 『でもさ、そんな悪い子でもないんだよ。丁寧に手入れされた神姫を見てればそれは分かるし。 ただちょっと熱くなりやすくて口が悪くて、思ったことをそのまま口にしちゃうだけなんじゃないかな』 それだけ揃えば十分問題人物と言う気もしないでもないですが、さておき今はさらにちょっと機嫌が悪いため、いつもよりも余計に荒れているとのことです。 『実は佐藤君、今まで通算29連勝しててね。それで今日は30連勝達成だって意気込んでて、店のほうでもこっそり記念品とか用意してたんだけど、そこで当たった相手が変わっててさー』 数値としては凡庸な勝率でしかないその対戦の相手は、その実よく見れば特定のステージ以外ではてんでからきし、されどそのステージであるならば常勝不敗と言う、極端な戦績を持つ規格外なお方だったとか。 そしてロゼさんが30連勝をかけてその相手と戦ったステージが、あろうことか先方がまさに無敗を誇る砂漠ステージだった、と。 油断をしていたわけでは決してなかったにせよ、ぱっとしない勝率を見てつい気が抜けてしまったのであろうその対戦の結果は、推して知るべし、です。 『うん、単に強敵に負けたってだけならまだ良かったんだろうけどね。 そんなピーキーな戦績の、しかもしっかり注意してそのあたりをちゃんと読み取っていれば少なくとも警戒は出来た対戦を、自分の不注意でコテンパンにされて念願の30連勝を逃したってのがかなりショックみたいでさー』 それは確かに、悔やんでも悔やみきれないことでしょう。 『要するに君たちは、その八つ当たりの矛先にたまたま当たっちゃったってことだね』 浜野さん、身も蓋もなさすぎです。 『まあ、これも縁だと思って、適当に気晴らしに付き合ってあげてくれるかな?』 浜野さんはそう締めくくって、お仕事へと戻られました。 以上、回想終了です。 「……正直なところ私は、あの方々が『悪い人ではない』と言われても賛同しかねますね」 マスターさんにも無礼な態度でしたし。鼻で笑われましたし。見下されましたし。 「うーん、まだ確証を持てるほど彼と関わったわけではありませんが……僕としては、やっぱり彼はそれほど悪い方とも思えませんね」 「思えませんか」 さすがマスターさん、人間が出来ていらっしゃる……と言いたいところですが、さすがに意外です。 「はい。なんだかんだと言いつつ、僕達のバトル登録を代わりにやってくれたじゃないですか」 それは言われて見れば確かに。態度はやや悪かったですが、困っているところを見かねて手を貸した、とも見えなくもないです。 「そして、そのあとの『何も出来ない武装神姫』の下りも……まぁ、あの時は僕も冷静ではいられなくて思わず反発してしまったわけですが、もしかしたら『能力の平均的なハウリンタイプは器用貧乏になりやすいから、なにか一芸を持つようにしないといけないよ』というアドバイスだったのかもしれませんし」 「それはさすがに、好意的過ぎる解釈かと」 「うーん、そう言われると弱いですねぇ」 マスターさん、少し困ったように苦笑いされながら、頭を掻いていらっしゃいます。 「ただまぁ、ああいう感じの方はいますからね。ご自身が優秀な分、周りの至らない部分がどうしても目に付いてしまって、それを黙っていられないような方が。 佐藤君も同じで、武装神姫に対して真摯であるからこそ、他の人の未熟な点が見過ごせないのかもしれません」 そういうものなのでしょうか? 「確証があるわけでもないんですけどね……まぁ、そのあたりは対戦しながら見極めていきましょう」 そしてマスターさん、口元に拳を当てて小さくクスッとお笑いになり。 「それでやっぱり性根のよろしくない方で、犬子さんを侮辱したのも悪意からのものだったと言うのであれば、その時は土下座して『もう勘弁してください』と言いたくなるまで叩き潰せばいいことですし。 くすくすくすくすくすくす」 「マスターさん、申し訳ないですけれどもその笑い方少し怖いです」 「やや、これは失敬」 どこかで聞いた覚えがあるような会話はともかくとして。 「マスターさんには、勝算がおありなのですね」 正直なところ、私があのローザリッタさん……ロゼさんに勝てるとは思えないのですが。 「ええ、佐藤君もうまい具合に、こちらの思惑に乗ってくれましたからね」 けれども、マスターさんがそう即答で断言されたならば、私に疑いようなどありません。 「でしたらマスターさん、私も微力を尽くします。ご采配よろしくお願いいたします」 深々。 「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」 深々。 「……ところで犬子さん」 「何でしょうマスターさん」 「先ほど佐藤君の仰ってた『キャッキャウフフ』というのは、どういう意味なのかご存知ですか?」 あー、口にしていましたねぇ。前後の文脈の方の気をとられてスルーしていましたが、確かに仰っていました。 「『キャッキャウフフ』というのは、『武装神姫と睦びあっている』状態を差す俗語表現で、古典コミックにおける男女間の睦びあう描写に際して使用された表現をなぞらえたものが語源といわれています」 「……色々な意味で、わりと微笑ましい台詞回しですね」 「ええ、わりと」 「……………………」 「……………………」 「やっぱり佐藤君、さほど悪いお方ではない様な気がするのですが」 「奇遇ですね。私も今しがた、ちょっとだけそんな気がしてきていた所です」 こうして、私たちの初の『対戦相手の顔を見据えての、指名対戦』の火蓋が切って落とされようとするのでした。 ……が。 「お待たせしました」 ペットボトルを片手に、マスターさんはにこやかにご挨拶なさいます。 「別に待ってねぇ」 対する佐藤さんは順番待ち用ベンチに膝を組んで腰掛け、その膝の上に立てた腕に顎を乗せて、そっぽを向いていらっしゃいます。 「んー、順番待ちの列はあんまり減ってませんねぇ」 「俺に話しかけるな」 「武装神姫の人気は、さすがと言うことですねぇ」 「だからどうした」 「この分だと、まだまだ待ちそうですねぇ」 「見りゃ分かるだろ」 「実は前から疑問に思ってたんですよ。ほらゲームなどを題材にした少年漫画とかにある、主人公とライバルが対戦することになるシーン」 「唐突だなおい」 「大抵そういうのは人気のゲームとかを扱ってるんですが、それにしては都合よく二人分の機械があいてるなぁって。そう思ったことありません?」 「ねぇ」 「やっぱり現実にはそうそううまく行きませんよねぇ。漫画だと冗長にならないように その辺は省いてるんでしょう」 「俺が知るか」 「……聞きましたか犬子さん。この打てば響くようなシンプルでそれでいて的確なツッコミっぷり」 「はい。私たちにはなかったスキルですね」 「何がスキルだ何が」 「……いやはや本当に、いちいち反応を返してもらって、ありがたい限りです」 「お見事な律儀なツッコミっぷり、頭が下がります」 「ホントに下げるな」 「あ、よかったらこれ飲みません? まだ時間ありそうですし」 「いらん」 「まぁそう言わずに。二本あっても一人じゃ飲みきれませんし」 「……ちっ、仕方ねぇな。よこせ」 「はいどうぞ。お茶でよかったですか?」 「なんでもいい。……ありがとよ」 「聞きましたか犬子さん」 「聞きましたよマスターさん」 「なんか文句あんのかこら?! 物もらったら礼くらい誰だって言うだろうが?!」 「文句なんてとんでもない。むしろそれを当然と言い切れる誠実さに、感銘を受けているところですよ」 「私、先ほどのお話を信じてもいいような気がしてきました」 「何の話だ何の?!」 「……ちょっとぉ、なに騒いでんのよアキー? うるさくて眠れないじゃない」 「あ、これはお騒がせしました。まだ順番は回ってこないようですから、ごゆっくりお休みください」 「申し訳ありません、すぐに静かにしていただきますから」 「俺か?! 俺が悪いんか?!」 とまぁ、こんな風に。 カッコよく宣戦布告した相手とのんびり順番待ちをしなければならない情況がいたくご立腹であるらしい佐藤さんと、そんなことはお構いなしに物怖じせずいたって友好的に話しかける私たちの対戦の火蓋が実際に切って落とされたのは、それから10分後のことでした。 <その13> <その15> <目次>
https://w.atwiki.jp/kattenisrc/pages/891.html
352 :名無しさん(ザコ):2013/02/21(木) 23 49 30 ID qHg4CfMM0 洋風・ゴスロリ装備神姫(武装神姫) ゴスロリ服に巨大武装を施した趣味的なコーディネートの神姫。 性能は多少ENが低いのが気になる程度で可もなく不可もない回避寄りグレー系だが、 攻撃面は射程1中心なものの燃費の良さと速攻火力に優れ、さらに無消費1300や 射程4弾数武装も揃うので優秀。 さらに目を引くのが威力3000のドラゴンクラッシャー。その圧倒的破壊力は見ものだが、 気力150にEN消費100/140でほとんどの武装がEN消費型と制限が厳しい。 なので、無理に狙うより良燃費のニョルニルハンマーかバトルアックスで戦う方が、 活躍はさせやすいだろう。 ……と、思いがちだが、実のところ凄まじい使い方が隠されている。 それは、このユニットは『装備を統一した素体』なので固有のパイロットが存在せず、 神姫パイロットを自由に乗せることができるという点だ。 つまり、威力3000の武装を持つユニットに、魂のサイフォス、痛撃奇襲のフブキ、 熱血闘志の紅緒を乗せることができる、ということになる。 サイフォスを乗せた場合、ヴァッシュのAAより下程度の威力になり、イベント想定や 夢コンボを除いた最大ダメージでは単独首位の破壊力になるのだ。 ただし、サイフォスは気合もあり一発を狙うのは容易だが、防御型なので他の面が多少辛く、 一発は残して他でも活躍させたいならフブキか紅緒を乗せてもいいだろう。 と書いたが、実はこの組み合わせもイベント想定に近い代物になっている。 原作からいえばイベント用とは言い難く、普通に乗せ換え可能な程度なのだが、 データ的にはパイロットと素体は一致しているのが基本形となっている。 仮に乗り換えも考慮するならコーディネート神姫は大幅に火力を落とすか、 ネームドから三倍SPを削除するのは必須だろう。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2240.html
アルトアイネス奮闘姫 第一話「いりーがる?」 すでに人工知能が開発されて久しいが、軍事への利用を可能なAIは大国同士が核拡散失敗の反省を受けて非常に厳しく制限していた。しかし、優れた自己判断能力が規定外の使い方をされることは半ば予想され、実際に行われてた。 そんな中で民生品のAIを持つ日本の玩具、自立制御の高性能なAIを備えつつ、機能の拡張が容易な武装神姫はその一つに数えられていた。 武装神姫、それはわずか一五センチのMMSという技術を使用した女性型自律型ロボットである。本来玩具として発展したものであり、玩具の例にもれず、用途から外れた使い方は固く禁じられている。 もちろん、神姫のAIはそうした用途に使われないようになっているが、改造されればそうとは言えない。また型の古いモデルにはセキュリティの甘さゆえに違法改造がなされやすい。 改造された神姫は表向き、神姫同士の戦いにしか使用されてはいなかった。 「お兄ちゃん、どうしてそんな旧式のを買ってきたの!」 机の上で小人が怒鳴る。いや小人よりは妖精と言ったほうがいいだろう。 妖精の大きさは手のひらサイズ、淡い紫の髪に赤い瞳というのは一見、妖艶な組み合わせだが、髪は二つ小さなお下げに分けて、いくぶん子供っぽい髪型だった。顔つきもぷっくりとしたほっぺがなおさら幼さを引き立てている。着ている服は薄手の生地のハイネックに短いスカート、見る人が見れば、鑑賞ドール用の薄手の生地だとわかる。 彼女はMMS神姫、戦乙女型アルトアイネス、名前はメロン。名前の由来は、起動したときにそこにメロンがあったから、というあまりにも安直な由来である。 そのメロンに怒鳴られた相手、メロンの持ち主――オーナーであり、神姫はこの夏に始めたばかりの新人オーナー、勝見だった。 「旧式っていうけど、安かったんだからいいだろう」 「私に安い武装を使えって言うこと?」 理不尽な理由だが、睨み付ける視線には殺気がある。 勝見がなぜそんなアルトアイネスを選んだのかというと、アルトアイネスは最新鋭機だったからだ。武装神姫は新鋭機といえど、性能が極端に高いわけではない。神姫はレギュレーションにより、新旧の武装でも極端な性能差はありない。しかし、最近傾向や戦闘データがフィードバックされており、全体のバランスが高く、結果的に強力な武装神姫となるのだ。 しかし、そうであっても、経験の差はいかんともしがたい。武装神姫は今日昨日始まったホビーではない、古参ともなれば四年以上戦闘経験を持ち、その実力は高い。 そのための対策は大きく二つある。一つは神姫の実戦経験やトレーニングで能力を上げること、もう一つは有利な武装を揃えることだ。金銭的な余裕の少ない勝見は武装をそろえるのを半ばあきらめていたが、たまたま寄ったリサイクルショップで格安の武装を手に入れた。 それがこのメロンの不機嫌の元となっているのだ。 「しかも、このタイプって白いのじゃないの? 黒いのってどういうこと?」 「いや古いってのは知ってるけど。なんで黒いかはわからない、でもお前に似合うかなぁって思ってさ」 不満げな顔がわずかに赤くなる。 「似合うって……そんなのは次の次よ」 と言いつつ、勝見と視線を合わせていられない。メロンは照れ隠しが下手だった。 彼が手に入れたのは発売当初、黎明期の神姫の一人、天使型アーンヴァルの初期型、しかもリペインバージョンだった。本来であればプレミアがついてしかるべき製品なのだが、新古品として放出された上に店主が価値をよく知らずに売り、かつ勝見がよく知らなかった。ちなみに売り飛ばせば新品の神姫二体分くらいにはなる。 「それに安く、これだけの装備が手に入ったんだし、いいだろう?」 「確かにそーだけど」」 不満げな表情をしながらも、メロンの視線の先には黒く巨大なレザーライフルや黒いアーマーやウイングなどの武装をしっかりと捉えている。そのせいで口元が緩み、結構面白い表情になっている、しかし、メロン本人は気がつかない。 アーンヴァルはいまだに高い人気を誇る。特に初期型のアーンヴァルの装備はダウンチューンが行われたほど高性能なものがあり、公式大会ではハンデをつけられ、野良試合ではいまだに一級品の装備だった。 武装には問題がない。問題なのは別のほうだった。 「これでセット完了っと」 クレイドルで横になっているのは黒いアーンヴァル。長い金髪に黒い肢体、赤い塗装がアクセントが黒を一層引き立てる。本来の天使型という白いやさしいイメージとは真逆の印象を与える黒い天使。 「相談もなく新しい子を買うなんて、あたしを何だと思ってるのよ!」 そう、問題とは新しい神姫を迎える、そのことにメロンが怒っているのだ。いわゆる嫉妬である。 神姫というのはおもちゃであり、一人のオーナーが複数の神姫を所持することは珍しくはないが、神姫にとってオーナーは一人だ。 神姫心のわからないオーナーは複数の神姫を所持することはいろんな意味で危険だった。 その禁忌を犯そうというのか勝見よ、となるのかというとその心配はない、と勝見は思っていたのだ。今はカンカンに怒っていても。 「おお動いた」 セットアップを完了すると、アーンヴァルは目を開いた。 「この子、あたしと同じで目が赤いんだ」 なんだかんだ言いつつ、メロンは起動したてのアーンヴァルにくっついている。 アーンヴァルはぎこちない動作で立ち上がると勝見の方を見た。 「はじめまして、貴方がオーナーの真田勝見ですね」 姿こそ普通のアーンヴァルとは違っていたが、声はバトルで聞きれたアーンヴァルのものだ。 神姫の声はコアによって決まるので、ある程度は似てしまう。しかし、神姫はおのおのにその個性を持つのでオーナーは平気で聞き分けられる。勝見だって、一〇人くらいのアルトアイネスと混じってもメロンを見分ける自信はあった。 「よろしく、ほらメロンも」 「よ、よろしく」 さっきまでの勢いはどこに行ったのか、メロンはしどろもどろに言う。 「早速ですが、私の名前を決めてください」 「そだな、よし、メロン名前を決めてくれ」 「え……えええ!」 とにかく驚いた表情、でもその中に嫌そうな感情は含まれていなかった。 「姉になるんだから、それくらいはまかせる」 「あたしが姉……お姉さん」 頬がこれでもかというほど、ゆるむ。すぐにその場で腕を組んみあぐらをかいて考えるポーズ。勝見からは思いっきりショーツが見えてるが、指摘するとうるさいので黙っておく。 「……スイカ」 「よし、スイカな。、君の名前はスイカだ」 「って、いいの!?」 「わかりました、私の名前はスイカですね」 言い出したメロンが困惑するのを尻目に、メロンとスイカ、こうして新しい姉妹が生まれたのであった。 「そう、それでいい!」 腰に手を当てたメロンが言う。 メロンの目の前には着たばかりの洋服、Tシャツ(ケモティック社製)をひっぱってるスイカがいる。 起動したての神姫のほとんどのメモリは真っ白だ。基礎的な人格や常識は備えているものの、記憶の点では幼児よりも少ない。ところが、スイカの様子はいささか違っていた。 「これは一体何か?」 「なにって、洋服よ。それも知らないの?」 「わからない」 メロンは小さくため息をつく。スイカにはなぜか常識さえ十分に持っていなかった。 確かに起動したてだし、型の古い初期型だ。それでも神姫にはあらかじめ常識はあり、洋服を着るぐらいは普通にこなせるはずだ。 「これは動きを阻害する」 「しないって……あーもう、そんなふうに脱いだら服が破けるって!」 あわてて抑えるメロン、スイカは素直に従った。 「もう、そんなんじゃ私にも勝てないよ」 「勝つ? 戦う相手は敵。タイプアルトアイネスは敵なのか?」 真顔で言うスイカにメロンはがっくり肩を落とす。 「敵じゃないよ」 そうして、まじめな顔をしてスイカの肩に手を置いた。 「あたしは味方、絶対にね」 「うまくいってるか?」 そう言いながらドアを開けたのは勝見だった。 「あ、お兄ちゃん、ノックぐらしてよ」 「いや、ここ俺の部屋だし」 そういいながら、勝見は頭をかく。スイカが聞きてから、メロンの話し方は少し変わったように思えた。 「聞いてちょうだい、やっぱりスイカは常識がぜんぜんだよ」 そんなことを勝見が考えてるなど露にも思わず、メロンは続ける。 「常識なんてプログラムされてるはずだし、それに」 「ワルキューレタイプアルトアイネス、私に問題があるのか?」 「だから、そういう呼び方はやめなって言ってるでしょう!」 変わったのは別にいい意味だけではない。もともと高い声が、スイカが来てから頻度も加えて一層拍車が掛かっている。 「スイカ、オーナーとして命令だ、ワルキューレタイプアルトアイネスって呼び方はやめなさい」 「オーナーの命令を確認」 しばらく沈黙が流れた。天使型は優等生タイプと言われまじめな言動が多いが、いささかロボットじみている。 「なあメロン、生馬に聞いてみようと思う」 先に口を開いたのは勝見だった。メロンもなんといっていいかわからないような様子で同意する。 「うん、そだね」 「よう」 「いらっしゃい、まってたわ」 玄関で出迎えたのは熱海生馬。勝見の同級生であり、勝見に武装神姫を教えた人であり、メロンを薦めた張本人であったりする。容姿としての素質はいいほうだが、趣味に没頭するあまりオシャレっけはあまりない、いわゆるオタク女なので自分のことを気にかけていなかった。 生馬の肩に乗った天使型アーンヴァルのルーシェがメロンに手を振る。こちらは白のワンピースに黒いアクセントを加えた手作りの服を着ていた。派手さはないが、おとなしげなアーンヴァルの印象をうまく引き立てている。生馬に服のセンスがないわけではないのだ。 早速部屋へ案内される。メロンを起動させて以来、何度か訪れているので特に感慨はないものの、勝見は来るたびに感心はする。 その部屋は神姫一色に染まり、神姫サイズの家や洋服などが部屋の一角を専有している。 エプロンと耐熱手袋をつけたルーシェがお茶を部屋の中央のちゃぶ台に出すと、勝見はスイカを買った経緯とメロンの話を聞いた。 「話はわかったわ」 相槌をうちながら聞き終えた生馬は、整理された机の上のPCとクレイドルをつないだ。 「ちょっとクレイドルに乗ってね」 そういうとスイカをクレイドルにセットする。と言っても座らせるだけだ。 PCでデータを読み取り、MMSサポートセンサーに問い合わせる。すぐに応答があり、検査結果が表示される。 「……あれ?」 検査結果を見て、生馬は首をかしげた。 検査のデータは、スイカを初期型の白子、ノーマルバージョンと示していた。 「この子って中古なの?」 「いや新品だったぞ、なあ?」 「うん、新品だったよ」 勝見はメロンと顔を見合わせる。封を開けたとき、確かに未開封だった。 「じゃあ、何でリペイントされてるのよ?」 スクロールして他の結果も見る。すると検査結果には何箇所か不明の文字が浮かんでいる。 「もしかしてこれって……違法改造?」 一応櫛くらいは通してあるらしい短い髪が傾く。 「ごめんなさい、これ以上はわからない。神姫センターに行ったほうがいいわ」 そういって、ルーシェの淹れてくれたお茶に口をつける。 「違法改造といえば、この話は知ってる?」 生馬はスイカをちゃぶ台に返す。スイカにメロンが近寄った。 「三年前になるけど、大量のイリーガルが回収された事件があったのよ」 「話ぐらいは知ってるけどな」 勝見は言った。横目でルーシェを見ると小さく頷いている。たぶん、ルーシェもかかわったのだろう。 「そのときにほとんどのイリーガルは回収されたんだけど、アリスって天使型だけが相当数、逃げ延びたって話なのよ。そのときの生き残りかも……でもアリスは白いアーンヴァルだし」 生馬は倒したアリスを思い出した。彼女は見た目こそルーシェと同じ格好をしていたが、目つきも言葉遣いもまるで違った。愛らしさというものがまるでなく、ただ戦うことを生きがいにする人形。 スイカもアーンヴァルにしては変わっているが、しかし、アリスのような悪意は感じられない。 「……とにかく用意をして行きましょう」 「わかった、スイカ……って、いない!?」 「どこに行く?」 「いいからついて来て!」 隙を見て部屋を抜け出した二人は、生馬の家の台所に逃げ込んだ。ここには隠れる場所が多い。 「スイカはわからないの? 下手に連れてかれたらたぶんリセットされる、いや、悪いと廃棄されちゃうよ!!」 当時の事件を直接は知らないメロンは、神姫センターがどういった対処を行ったかを詳しくは知らない。しかし、どうされようと、スイカがいなくなっていまうだろうという予想はできた。 「とりにかく、お兄ちゃんと生馬さんを説得するまで隠れてて」 「それは命令か?」 メロンは小さく首を振る。 「ううん、お願いよ」 メロンはスイカの表情を見る。いつもどおりの無表情。そんなスイカだったが、メロンはやさしくいった。 「大丈夫お兄ちゃんたちは必ず説得する、私はお姉ちゃんなんだから」 言うが早いか、メロンは駆け出した。 「……わかった、隠れている」 そのとき初めてスイカに浮んだ表情をメロンは見逃してしまった。 探すと、すぐにメロンの方は見つかった。というよりもメロンのほうから出てきた。 「メロンちゃん、どこ行ってた? あのイリーガルはどこ?」 「お兄ちゃん、生馬さん、スイカをどうする気?」 「どうって……」 「私はお姉ちゃんだから、スイカを守る」 スイカを妹として、姉になるメロン、買った時に勝見はそのシナリオを考えていた。しかし実際にメロンがそれをはっきりというと勝見の心は暖かくなる感じがした。 しかし、今は余韻に浸っている時間はない。 「ちょっと待て、スイカ。それは勘違いだ」 「そう、従来型のイリーガルならセンターに問い合わせた段階でわかるわ」 そう続けたのは生馬だった。 「イリー……スイカがどう違うのか、実は私にもよくわからないの」 困惑した表情の生馬だったが、まだメロンの視線は貫くほどきつい。 生馬はメロンに説明する。今のところわかるのはスイカが何らかのエラーを抱えているということ、そのエラーの正体さえわかれば、スイカが今のような性格なのかがわかる、ということをメロンに伝えた。 「それが人為的なものである可能性は高いけど、どれくらい深刻なものなのかは私にもわからないのよ」 人為的な神姫の改変、それは一般的にイリーガルと呼ばれている。 イリーガルは公平なバトロンを阻害し、対戦相手の神姫への危険も大きい。 しかし、神姫への改造は当初から行われている。当初は髪型や目の色、体系など見た目だけだったが、それがコアの改変まで行われるのにそう長い時間はかからなかった。 イリーガルと一般改造の間はあいまいになりつつあり、改めで明確な基準が定められた。それに基づけば、過度な改造が行われているスイカも問題はないはずだった。 「お兄ちゃん約束して、スイカは私達のところから連れて行かないって」 「当たり前じゃないか」 「約束して」 「約束する」 納得したメロンはスイカを呼び、一緒に神姫センターへ向かった。 神姫センターで検査の結果は真っ黒だった。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/126.html
「ありがとうございます。EDEN-PLASTICSカスタマーサポートセンターです」 マニュアルどおりの応対が、どこかのブースから聞こえてくる。 ここはEDEN-PLASTICSのサポートセンター。武装神姫の素体やコアユニットを 販売管理する、武装神姫の総本山……の対お客様最前線だ。 「マオとハウの不具合って……まだ凶暴なコのロットって残ってたんですか?」 その戦場の最前線であるスタッフブースの外れの外れ。 主任の札が出された大きなデスクの前に、あたしは一人呼び出されていた。 「みたい。対応頼んでいいかな? マオチャオの対処方法見つけたの、あかねちゃん だったしさ」 何のヘマを怒られるのかと思ってビクビクしていたから……その依頼は、むしろ 拍子抜けするほどだった。 「はぁ。じゃ、私のブースに持ってきといてください」 「ありがとね。後で差し入れ、持っていくからさ」 魔女っ子神姫ドキドキハウリン 番外編 その1 ブースに戻れば、荷物は既に届けられていた。 「あー。こりゃ、気合入ってるねぇ」 中のコのマスターはよっぽどヒドイ目にあったんだろう。箱に幾重にも巻かれた ガムテープが、その時の惨状を物語っている。 「ますたぁ。ボクの妹がまた悪いコトしたんですかぁ?」 大変だったんだなぁ……とマスターさんの事を考えていると、ブースで留守番をして くれていたマオチャオが心配そうな顔を向けてきた。 フリルの付いた白いエプロンが可愛らしいそのコは、あたしの自前の神姫。いくら 神姫のサポセンといえど、本当は私物の神姫を持ち込んじゃいけないんだけど…… ありがたいことに、みんな見て見ぬふりをしてくれている。 それに、にゃー子はマオチャオの不具合を解決した最大の功労者だしね。 「んー。別に、にゃー子が悪いことしたわけじゃないから、いいんだけどねぇ」 さて。その不具合を何とかしてでもこのコと一緒にいようっていうご主人様のためだ。 この戸田あかね、ウチのにゃー子と一緒にひと肌脱ごうじゃありませんか。 「にゃー子。そのエプロン、外しといた方が良いよ。静香が作ってくれたヤツでしょ?」 「あ、はーい」 妹(こいつがまた、手先が器用なんだ)お手製のエプロンを引き出しに仕舞い、 にゃー子が代わりに取り出したのは、秘密兵器。 「ますたぁ。おっけーだよ!」 あたしもそのうちの一本を受け取り、カッターで梱包に切れ目を入れた。 既ににゃー子は秘密兵器を構え、梱包の動きを窺っている。 「じゃ、開けるよ」 「あい!」 さっと箱を開けば、中から飛び出してきたのは猫の凶暴性をそのまま映したかのような マオチャオだ。 「それ、かかれーっ!」 「巧いもんだねぇ……」 あたしの指先にゴロゴロと頬をすり寄せるマオチャオを見て、差し入れのおやつを 持ってきてくれた主任は感心したように呟いた。 仔猫のようにあどけない顔でこちらを見上げるマオチャオは、もちろんウチのにゃー子 じゃない。ほんの五分ほど前まではそこらの野良猫よりも凶暴だった、あのマオチャオだ。 「このくらい、誰でも出来ますよー」 不具合なんていうけど、何のことはない。輸送中にうっかり電源が入ってしまい、 暗闇のストレスでシステムがオーバーフローしてしまっただけのこと。 どちらかといえば大人しい性格の一期モデルは、同じ現象が起こっても怖がったり 怯えたりするだけだった。 余談だけど、箱を開けた瞬間にマスターに抱き付いてきたり、甘えっ子な性格の神姫には この不具合が出てる可能性が非常に多かったりする。 ただ、 「ウチのストラーフがオレにべったりくっついたまま離れないんです! そのうえ 甘えん坊で、夜も一緒に寝たがって……」 なーんて苦情が来たことは、わがEDEN-PLASTICSのサポートセンターにも一度として ないわけで。こちらもその症状を、大きな不具合とは思わなかったんだけど……。 動物的な性格パターンを入れて発売した二期モデルは、同じ症状が甘えっ子じゃあ なくて凶暴化っていう形で現われたワケだ。 もちろん今は電源装置の改善がされていて、どの子もこんな不具合は起きなくなってる けど……。暗闇の中にずっと閉じこめられてれば、そりゃあ暴れたくもなると、あたしは 思う。 「ほらほらー」 反対の手には相変わらずの秘密兵器。 マオチャオの目の前にひょいと突き出してやれば。指先にしがみついていたマオチャオの 大きな瞳は、ゆらゆらと動くそれに吸い寄せられたまま離れない。 やがて顔が視線に追従し、続いて体が秘密兵器の方へと流れていく。 「はーい」 ひょい、と右手を突き出せば、秘密兵器はその手を受け流し、右手が触れることを 許さない。 その動きが面白かったのか、今度は左手を突き出すマオチャオ。 もちろん、秘密兵器は左手が触れることも許さない。 「にゃーっ!」 右、左、右、左。ゆらゆらと揺らしてやれば、さらにマオチャオはエキサイト。 有効打を与えようと必死にそれに追いすがってくる。 「ほーら、こっちにもあるよーっ!」 今度はにゃー子の秘密兵器を追いかけ始めた。 ふふ、可愛いなぁ。 「それにしても、猫じゃらしとはね……」 要は、たまったストレスを解消してやればいいだけの話。 凶暴化の症状を解消するため、猫じゃらし片手にマオチャオと戦いまくった不具合発覚 直後は……あたしにとってはいい思い出だけど、主任達にとっては悪夢のひとかけららしい。 「もう三十分も遊べば、疲れて寝ちゃうと思いますよ?」 秘密兵器その2。 神姫と同じほどの大きさがあるゴムボールを取り出し、マオチャオの方に転がしてやる。 って、アンタまで遊ぶんじゃないの、にゃー子! 「そっか。じゃ、終わったら修理セクションに回しといて。電源の交換と、太腿の修理 依頼を出してあるから」 「はーい」 そして、主任は去り際に。 「あと、いくら神姫のサポセンっていったって、私物の神姫を仕事場に持って来ちゃ ダメだよ。後でもう一回、僕んところに来なさいね?」 「えーっ!?」 ちょっと、お褒めの言葉じゃなくてお小言決定!? 「ひどいよ、主任……」 涙目のあたしなんか気にも留めず、二人のマオチャオがゴムボールで一心に遊んでいる のが……なんだか無性に恨めしかった。 トップ
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/91.html
デザイナー 声優 神姫解説 性格セリフ一覧 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報親密度Lv1 親密度Lv100 マスクステータス 覚えるパッシブスキル一覧早熟型のパターンで覚えるパッシブスキル 通常型のパターンで覚えるパッシブスキル 晩成型のパターンで覚えるパッシブスキル 神姫固有武器補正得意武器 苦手武器 神姫考察攻撃力 防御力 機動力 総評・運用 神姫攻略法 お迎え方 アップデート履歴 コメント デザイナー 島田フミカネ(ストライクウィッチーズ、メカ娘等) 声優 阿澄佳奈(ひだまりスケッチ:ゆの、WORKING!:種島ぽぷら、這いよれ!ニャル子さん:ニャル子、ささみさん@がんばらない:月読鎖々美、他) 神姫解説 「武装神姫」のアイコンとも言えるベストセラー機。天使をモチーフとした純白のベースカラーを基調とする空戦型神姫で、他の追随を許さぬ機動性能と高速戦闘能力を有する。主な武装は大型レーザーライフルで、その射程距離の長さと機動力を活かした長距離射撃戦を得意とする。AI設定は非常に素直なものとなっており、初心者オーナーでも扱いやすい神姫と言える。 名称:天使型アーンヴァル メーカー 素体:FRONT LINE 武装:FRONT LINE 型番:FL012 フィギュア発売:2006年8月19日(キャラホビ2006で素体のみ限定先行販売)、2006年9月7日(一般販売。本来は8月が予定されていた) 2022年11月25日(プラモデル版) 主な武装:M4ライトセイバー、アルヴォLP4ハンドガン、アルヴォPDW9、GEモデルLC3レーザーライフル GEモデルRG8レールガン(トランシェ2で追加) 愛称「あんばる」「(旧/初代)白子」。ストラーフと並ぶ武装神姫の始祖のひとりにしてベストセラー。 今回は「武装神姫15周年」を記念しての実装。そのため、同時に武装神姫15周年記念カラー武装が登場している。 ケレン味のある巨大な武装に対して扱いやすく、ファン層の拡大にもおおいに寄与した。在庫様?聞こえんなぁ 初期は関節にクラックが入る問題があったが、再販以降は素体が改良されたため解決している。 ベストセラーだけにバリエーションも多く、リペイントのBk(ブラックバージョン/電撃ホビーマガジン誌上通販限定品)、武装を追加し表情パーツに対応したトランシェ2、その色変えのトランシェ2Bk(電撃ホビーマガジン誌上通販限定品)が存在。初期製品かつ大量に生産された事から、その殆どが現在の中古市場でも割と良心的な価格で流通している。 本作バトコンでは描き下ろしイラストから、初代モデルそのものと明確になっている。後からトランシェ2の武装が追加されるフラグだろうか? アーンヴァルMk.2が登場するまでは武装神姫の顔役といっても良かっただけに、公式媒体での出番も「バトルロンド」を筆頭にコミック版「2036」のエイル、「ヒブソウシンキ」のあんこ、「武装神姫ZERO」のウォルフウイング、小説版「always together」の由月と皆勤賞だった。 ケモテック組が主役だった「2036」を除けば、主人公またはバトル上位ランカーの駆る神姫という扱いの良さが特筆ポイント。 多くの場合はトランシェ2登場後、装備追加という形でそちらに統合されるような措置がなされていたのだが、いずれにしてもアニメ/バトマス期以後はMk.2に置き換えられる形で、ほとんど扱われなくなった(唯一「オトメディウスX」への「試作型人工天使アーンヴァル」名義での参戦が明確な例外となっている。なお、あんこについてはバトマスMk.2で「背の低いアーンヴァルMk.2」という姿で登場していた。容量節約のためだろうか?)。 一方リペイントバージョンは、「バトルロンド」に実装されていた以外ではコミック版「2036」での悪役・九頭乃 紳志の神姫としてトランシェ2 Bkが登場している(名称は設定されておらず、最後まで不明だった)他、「ヒブソウシンキ」でのコスプレとしての登場に留まっている。 コナミ内製のフィギュアは既に絶版されて久しいが、コトブキヤからメガミデバイス互換仕様として「模型版アーンヴァル」の開発が告知されており、幾多もの延期を重ねて2022年6月8日に予約開始、同年11月25日ようやく発売となった。 プラモデルとなった事で細かなディテールが向上(風貌や体型はまったくの別物となったが、前者については旧MMS時代の表情を再現した瞳デカールが付属する)し、MMS当時にはなかった胸部CSCなどのギミックも追加(しかもバトロン・バトマス時代のパーツがそれぞれ存在する)された一方で、ジョイントはガンプラ等プラモデル界隈標準の3mmとなり(一応「加工前提のボーナスパーツ」として3.3mmジョイントも付属する)、なによりMMS時代の3倍近い超高額商品と化してしまったが、2024年4月現在では最も入手しやすい「新作の武装神姫」となっている。 …とはいえあまりにも作り過ぎたのかそれともぶっちゃけ初代アーンヴァルには興味のないユーザーが多かったのか店舗によっては初版の物が残り続けていたり一時期は投げ売り同然のセールで値段が当時品定価相当まで落ちる事もあった。令和になっても在庫様 これも時代の流れなのだろうが、いずれにせよメガミデバイス版の彼女はMMS時代の彼女とは根本的に異なるため、より扱いに気をつけなければならない、という事にだけは留意すべきだろう(同じメガミ神姫として、エーデルワイスの項も参照されたい)。 なお、リペイントバージョンも2023年9月に発売され、トランシェ2も2024年8月となった。 性格 天使型あーんばるがいいと思うの! その性格の多くの要素が、後継機にも引き継がれている。 カラフルコンダクトの歌詞も3つ存在する。後継機よりも多彩なのは始祖ならでは? (その後しっかり後継機にも歌詞が追加された) セリフ一覧 + 私の全力をこの一撃にかけます! ログイン時 通常(朝) おはようございます!朝早くからお顔が見れて嬉しいです。今日も1日、よろしくお願いしますね。 おはようございます!今日もいい1日になるように、わたしも精一杯頑張りますね。 通常(昼) こんにちは!コンディションはいかがですか?私もベストコンディションで頑張りますからね。 こんにちは!早速ですが、何をしましょうか。遠慮なく、何でも命令してくださいね。 通常(夕) こんにちは!今回も自分の力を出し切って、楽しいバトルが出来るよう頑張りますね。 おかえりなさい!お腹は空いていませんか?万全の態勢を整えて頑張りましょうね。 通常(夜) こんばんは!日も暮れてバトルが賑わう時間になってきましたね。それじゃあ、一緒に楽しみましょう! こんばんは!今回も最高のバトルが出来るよう、私も張り切っちゃいますからね! 通常(深夜) こんばんは!夜遅くまで頑張ってるんですね。その頑張りに報いるよう、私も気を引き締めて行きますよ! こんばんは!夜も遅い時間ですけど、無理だけはしないで下さいね。私に出来る事があったら、何でもどうぞ! 年始 あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!ところで(プレイヤー名)!初詣には行きましたか?まだだったら…ご一緒してもいいですか? (ボイス) あけましておめでとうございます!年の始めから一緒にいられるなんて、私、幸せです! バレンタイン あ、あの、チョコを用意したんですが、受け取っていただけますか?大切な人にあげるために、頑張って作りましたので! ホワイトデー え、これを私に?わぁ…、先日のバレンタインのお返しなんですね!ありがとうございます!とっても嬉しいです! エイプリルフール ゴールデンウィーク 夏季 暑い季節になって来ましたね。汗をかいたら言ってくださいね。タオルと着替えを持ってきますから! 水着キャンペ ただいま期間限定イベント開催中です。特別に水着を着てバトルするみたいで、ちょっと恥ずかしいですが、楽しんでくださいね! 七夕 ハロウィン ハロウィンって、仮装するとお菓子が貰えるみたいですよ。私もお菓子をいっぱい貰えるよう、頑張りますね! 冬季 寒い季節になってきましたね。トレーニングで身体をあっためるんでしたら、私も一緒にお付き合いしますよ! クリスマス メリークリスマス!私もサンタさんに新しい武装をもらえるでしょうか?(プレイヤー名)のためにいい子にしてましたよね、私? (ボイス) メリークリスマース!今日は大切な人と過ごす大事な日みたいです。も、もし良かったら、私と一緒に過ごしてくれると嬉しいなあ。 神姫の発売日 オーナーの誕生日 お誕生日おめでとうございます!いい1年になるように、私も応援してますからね! 神姫ハウス レベルアップ後 3連勝後 親密度Lv5後 親密度Lv10後 親密度Lv20後 親密度Lv30後 親密度Lv40後 親密度Lv50後 親密度Lv60後 親密度Lv70後 親密度Lv80後 親密度Lv90後 親密度Lv100後 頭タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 胸タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 尻タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 通常会話 武装カスタム 戦闘力Up時 戦闘力Down時 武器LvUP時 素体カスタム 親密度LvUp時 出撃時 入れ替え バトル開始時 → バトル中 撃破時 コンテナ入手時 被弾時 オーバーヒート時 スキル発動時 (能力強化系) (HP回復系) (デバフ系) (攻撃スキル) チャーミークリアボイス 行きますよー!自分の 力を 出しきって 精一杯 がんばります! 被撃破時 次出撃時 サイドモニター 応援時 交代時 被撃破時 バトル終了時 1位 → 2位 → 3位 → 4位 → コンテナ獲得時 1位 2位以下 LvUP時 神姫親密度 マスターレベル 神姫ショップお迎え時 はじめまして!会えて嬉しいです!これからよろしくお願いします! はじめまして!私、一生懸命頑張りますので、いっぱい応援して下さいね! ゲームオーバー時 その他 カラフルコンダクト 遠慮なく なんでも命令をどうぞ いい勝負 しましょう負けませんよ いつだって あなたのそばにいます + リセット開始 神姫の想い、大切に。 + 選択した神姫をリセットします。よろしいですか? リセット開始 え?リセットってどういう事ですか?どうしたんですか急に? はい を押す わたしが…もぅ役に立たないからですか?もし、そうならもう一度チャンスを下さい!このまま消されるなんて悲しすぎます! はい を押す(二回目) そう…ですか。もう引き返せないんですね。ここでお別れするのは悲しいですが…新しい私とは仲良くしてもらえると嬉しいなぁ…って、それでは…さよなら… リセット完了 はじめまして!私、一生懸命頑張りますので、いっぱい応援して下さいね! リセット取消 …良かったぁ!考え直してくれて…今のって本気と冗談、どっちだったんですか?どちらにしても酷いです! 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 マスター・旦那様・お兄ちゃん 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 親密度Lv1 ATK DEF SPD LP BST N 40 40 120 300 130 R 45 45 130 350 150 SR 50 50 140 400 170 UR 55 55 150 450 190 親密度Lv100 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - マスクステータス 1/s ジェム回収展開速度 ブースト回復量 ダッシュ速度 ダッシュ時ブースト消費量 ジャンプ時ブースト消費量 対空時ブースト消費量 防御時ブースト消費量 N 1575 155 1050 90 50 20 70 R 1140 110 70 40 90 SR 1230 130 90 60 110 UR 1320 150 110 80 130 覚えるパッシブスキル一覧 クイックドロー【アーンヴァル専用】瀕死時にリロードタイムが大幅に短縮 早熟型のパターンで覚えるパッシブスキル スピードアップ[小]移動する際のスピードを上げる よろけ軽減[小]よろけの行動不能時間が短くなる ため時間減少[小]ため時間を減少する 防御力アップ[小]防御力を上げる ブースト最大値アップ[小]ブーストゲージの最大値を上げる ブーストアップ[小] *要限界突破(L110)ブースト時の移動スピードアップ 攻撃力アップ[中] *要限界突破(L120)攻撃力を上げる 通常型のパターンで覚えるパッシブスキル 攻撃スピードアップ[小]攻撃時のスピードが上がる 体力最大値アップ[小]体力の最大値を上げる 攻撃力アップ[小]攻撃力を上げる ダッシュブースト消費量減少[小]ダッシュする際のブースト消費を減少する ブーストアップ[小]ブースト時の移動スピードアップ 晩成型のパターンで覚えるパッシブスキル 攻撃力アップ[小]攻撃力を上げる 攻撃スピードアップ[小]攻撃時のスピードが上がる ため威力増加[小]ため攻撃の威力を上げる クリティカル発生アップ[小]クリティカルが出る確率が上がる 全能力アップ[小]全ステータスがアップする ブーストアップ[小] *要限界突破(L110)ブースト時の移動スピードアップ 射撃弾数+2 *要限界突破(L120)射撃時の残り弾数を増やす 神姫固有武器補正 ※レアリティが上がる毎に防具用武器は-10%、それ以外の得意武器は-5%、苦手武器は+5%される。数字はレア度Nのもの。 得意武器 +70% 防具用武器・回復補助 +30% 双斬撃武器・肩持ちヘビーガン +20% 片手ライトガン・両手ライトガン・下持ちヘビーガン 苦手武器 -30% 格闘打撃武器 神姫考察 攻撃力 神姫自体のATK値は低めで、パッシブスキルによる補助で平均クラスといったところ。 得意武器も双斬撃武器は当てにくいし専用スキルの対象外。 専用スキルの対象になる遠距離武器はどれも補正が一回り低めなのが難点。 火力とスキルを両立できる防具用武器は扱いにくく、回復補助はとても対人戦で使える性能ではない。 防御力 神姫自体のDFE値は低く、パッシブスキルによる補助も防御力アップか体力アップしかない。防御面は総じて低め。 機動力 神姫自体のダッシュスピードがやや高めだが、この神姫より速い神姫も多い。総じて平均クラス。 総評・運用 設計思想通り遠距離からの攻撃→高機動力で離脱→遠距離からの攻撃のルーチンを組みたかったのだろうが、現状他の神姫でもより上位レベルでできてしまうのが難点。 肝心の専用パッシブスキルも発動すれば効果は絶大だが、遠距離武器限定かつ瀕死時というのが脚を引っ張る。 しかも片手ライトガン両手ライトガンはリロードが元から速いので効果の恩恵は少なく、下持ちヘビーガンは装備時ダッシュスピード低下のデメリットが痛い。防具用武器(遠距離)はジーラヴズルイフ以外は癖が強く、下持ちヘビーガンと同様射程が短いので、瀕死時に近寄らないといけないリスクは大きすぎる。 総合すると瀕死時に下持ちヘビーガンか防具用武器(近接武器とジーラヴズルイフ以外)でひたすら一撃離脱を行う。これしかない。近接武器を装備するならラプティアスやアークを使おう。 イベント武装だが片手ライトガンと両手ライトガンの15th武装が優秀な武装で、気持ち長いリロードとブースト消費増加のデメリットも一撃離脱戦法と専用スキルとの相性は良い。持っているなら下持ちヘビーガンと防具用武器を装備するよりオススメ。実装が同時+全武装色違い版有なのもあって、正直この武装を装備すること前提にも思える。 URですら瀕死を活かせず撃破される火力過多環境の中、たいした防御力も無ければ圧倒的な機動力もないこの神姫でこの戦法はとんでもない技量を要求されるので、とりあえず編成には保険のハーモニーグレイスを必ず入れよう。 それでも通常時の火力や防御力が気になるなら、機動力は少し落ちるがフォートブラッグを使おう。 一方スキルチャージが全神姫で一番高いことを活かして、防御・LPやCHAを高め、回復を連打する運用も出来る。 この運用の場合は基本的に固有スキルは度外視される。 この場合のライバルは、同じくスキルチャージが優秀で固有も回復運用に適しているジュビジー・ウェルクストラや、固有で他神姫を支援できるイーアネイラか。 こちらはURでも防具用武器に40%の補正を持たせられるため[RW]と相性がいい点、足回りが少し優秀な点などで差別化しよう。 + ちなみに… 固有スキル発動中に、装弾数1のままのポーレンホーミングでコンボすると高速リロードした弾で無理矢理繋げれるといったテクい芸当が出来たりする。勿論瀕死時限定なので実用性は度外視であるが。 神姫攻略法 気持ち脚が速いが防具用武器(遠距離)以外はたいした火力は出ないし、攻撃してくる時に近寄って来るので攻撃を当てやすいし撃破しやすい。 防具用武器(遠距離)の強烈な一撃を受けないようガードか回避で対処しよう。レーダーで常に位置を確認すること。 15th武器を装備していると危険度が一気に上がる。欠点もろもろが全て解消されるので、常に動向を警戒すること。 ただブースト消費増加のデメリットを背負っているので、逃げる展開には弱め。そこを突こう。 お迎え方 2021/09/07~から神姫ショップに登場 アップデート履歴 日時:2021.09.08 内容:専用スキルの下方調整(99%→90%?) コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1369.html
神姫ちゃんは何歳ですか?第二十七話 スーパー神姫TIME 書いた人 優柔不断な人(仮) 「っと…そろそろ時間だな」 俺はTVのリモコンを取り、スイッチを押した 「あれ?センパイ、この時間何か見てましたっけ?」 「今までは見てなかったが、今期の番組改編で新番組が始まるじゃないか」 「あ、今日でしたっけ?『スーパー神姫TIME』」 そう、とうとう神姫もゴールデンタイムに番組が放送されるまでになったのだ 『スーパー神姫TIME』は54分の番組で、キャッキャウフフからハードなバトルまで様々な神姫ライフ情報を提供するというコンセプトで作られるという 番組内にはマスターと神姫を迎えてインタビューを行う『神姫マスターズ』というコーナーがあり、その第一回のゲストとして、観奈ちゃんが呼ばれたのだった 『すぅ~ぷぁ~~~すぃんきとぅぁ~~~~いんむ!』 「あっ、お兄ちゃん、始まったよ」 …なにこの30年前のタイトルコールは… TVには男性と女性の姿が映し出された 「皆さんこんばんわ。今日から始まりました『スーパー神姫TIME』。司会は私、富華 三根雄です」 「皆さんこんばんわ~。アシスタントの浅木マキで~す。よろしくおねがいしま~す」 「それでは早速、最初の…」 と司会の富華が言いかけたところに 「ちょっとまったー!二人共、大事な事を何忘れてない?」 と、なにやら小さな女の子の声が割り込んだ 「おおっと、これは失礼。もう一人のアシスタントを忘れてました」 「全く!この超絶ぷりちーな私を忘れるなんて有り得ないんじゃなくて?」 「ほらほら志緒理ちゃん、怒ってないで皆さんに自己紹介して」 カメラがずいっと下へと向けられる テーブルの上には一体の神姫と、さらに小さなヌイグルミのような物体がいた 「あっ…えっと、この番組のアシスタント神姫、シュメッターリングの志緒理です、宜しくお願いします」 ぺこり 「志緒理、今更カワイ子ぶってもおそいんじゃねーの?」 志緒理の隣のヌイグルミ?が喋る 「んもうー!なによー!私は可愛いから許されるのよ!それより、アンタも自己紹介しなくていいの?」 「っと、そうだな。オイラはしおりのお目付役のガンノスケってんだ、ヨロシクな!」 手を振り、挨拶をするガンノスケ 「んもう~、誰がお目付役よ。私が居ないと何も出来ないのはガンノスケの方でしょ!」 「オイラは志緒理が暴走しないように…」 「まぁまぁ二人とも、そのくらいにして。番組が進まないじゃない」 「志緒理ちゃん達には後のコーナーで存分に喋って貰うとして、まずは最初のコーナー、『バトルアリーナ』からどうぞ!」 「このコーナーは武装神姫バトルの中でも、特に名勝負と呼ばれている物を解説を交えてお送りしていきます」 「ふえー、スゴかったねぇ」 感嘆の声を上げる志緒理 「アーンヴァルとストラーフは初期のモデルですが、それだけに数々の名勝負を繰り広げてきました。この第一回大会の二人も、決勝戦に恥じない試合を見せてくれました」 遠い目をしながら説明する富華に、浅木も頷きながら 「最後のデモニッシュクローが出たときにはゲルダの勝ちかと思いましたが、ギリギリで静名がレーザーライフルで防ぎましたね。ライフルがベッコリとへこんじゃいましたけど」 志緒理もそれを聞きながら 「その後、その反動を利用してその場で一回転して壊れたライフルで殴るなんて、よく出来たよねー」 とウンウンと頷きながら言った 「あの後のインダビューでは本人も『咄嗟のことで、何をしたか分からなかった』と言ってましたよ」 「こーいうのは日頃の訓練が大事なんだよ。志緒理もサボってないで、普段からトレーニングしとけよ」 「うーっ、わかったわよぅ」 ガンノスケの言葉に頬を膨らませながらも応える志緒理 「それでは、CMの後は『神姫マスターズ』、第一回ゲストはファーストランカーの國崎観奈ちゃんとミチルちゃんでーす」 CM後、セットが対談用へと変わっていた テーブルが一つ、テーブルから向かって左側には長椅子があり、富華と浅井が座っている。右側にはゲスト用の椅子があり、観奈が座っていた テーブルの上には神姫用の椅子が置いてあり、志緒理とミチルがそれぞれ座っている アシスタントの浅木の声でコーナーは始まった 「それでは、『神姫マスターズ』のコ-ナー、ゲストは國崎観奈ちゃんとその神姫、ミチルちゃんでーす」 「うむ、よろしくなのじゃ」 「よろしくなのだ」 ペコリ、とお辞儀をする観奈とミチル 「早速なのですが、お二人は神姫バトル歴が長いと聞きましたが」 「うむ、そうじゃな。テスト期間から始めていたから…かれこれ5年になるかな?」 「5年って…7歳の頃からやっていたのですか?」 「まぁそういうことじゃな」 「どうでしょう、最初の頃と今とでは、バトルも様変わりしましたが?」 「最初の頃はヴァーチャルシステムも無かったし、社外武装も使用禁止じゃったから、皆限られた範囲での試行錯誤の繰り返しじゃった。それも2弾が出たときのバランス変更でパァにされたりと、なかなか面白かったぞ」 「ああ、通称『犬猫パッチ』ですか」 「そうじゃ。その後の社外武装解禁、ヴァーチャル戦の導入等、神姫バトルも様変わりしていったのじゃ」 観奈の話を聞きながら、富華がぽんと手を叩き 「そうそう、その頃のミチルちゃんの映像が残っていたのですよ」 と言い出した 「なに?まことか?」 「…なにかイヤな予感がするのだ…」 富華の言葉に喜ぶ観奈と、不安そうなミチル 「それでは、映像どうぞ!」 富華の言葉を受け、セットにあるモニターにスイッチが入る そこに写ったミチルと思しき影に、浅木が疑問の声を上げる 「あー、ミチルちゃん…ですか?なんか今と違いますね?」 「この頃はまだ、今のような白い翼は付けていないからじゃな」 観奈の言葉通り、画面の中のミチルには象徴ともいえる6枚の白い翼は無かった ヴァッフェバニーの装備にアンクルブレードを持ち、棘輪を腰に下げていた 「この頃は、ヴァッフェバニーの装備を主体にしておったからな」 「でも、リアブースターに6枚のスラスターを付けてるのね」 「なかなか目敏いな、志緒理殿。最低限の防具に機動ブースターが付いたヴァッフェバニーの装備はミチルに最適じゃったのじゃ。しかし、それでもヤツには追いつけなかったので、スラスターを追加して挑んだのじゃ」 「ヤツって…この人?」 志緒理が指した先には、一体のハウリン型が映っていた 「この人、足の狗駆しかつけてませんよ?」 「当時を知らない志緒理殿が訝しがるのも無理はないな。彼女の名は『ストレイト』クウガ。当時誰も追いつけなかった、最速の神姫じゃ。いや、今でも追いつける者はおらんじゃろうな」 「ふえー、そんなスゴイ人なのですか?会ってみたいなぁ」 「残念じゃが、それは無理じゃ。彼女はもう…」 観奈の言葉にスタジオ内が、暗い雰囲気になる 「いくら安全に配慮されているとはいえ、事故と言うものは起きるのだ。でもあたしたち武装神姫は、そのくらいの覚悟を持ってバトルに参加してるのだ」 「そういうことじゃ、しかと見ておくのじゃ。クウガ殿の勇姿を」 「う、うん」 観奈とミチルの言葉に頷き、画面をしっかりと見据える志緒理 「あっ、ジャガーだ!…この頃はまだ普通のぷちますぃーんボディを使ってるのね」 試合開始 開始と同時にジャガーが牽制の射撃を行った 『…遅い』 画面の中のクウガが呟くと同時にその姿が消える ガキィッ! 否、瞬時にミチルの傍へと移動したのだ 「うそっ?なんて速さなの?」 「大抵の相手はこれで終わるのだ。この時あたしが防げたのも、運が良かったといってもよいくらいなのだ」 『ほう…剣でギリギリ防いだか…』 『くうっ…とりゃっ!』 アンクルブレードを盾に、クウガを押し返し距離を取るミチル。そしてすぐさま棘輪を投郭する ダンッ!ギュン! しかしそれをアッサリと避けるクウガ そしてすぐさまミチルへと2撃目のキックを放つ バシュッ 間一髪スラスターを吹かし、これを避けるミチル 『なかなかやるな…しかし』 ギュン! 有り得ない程鋭角に、ミチルへと向かい跳ぶクウガ 『まだまだ速さが足りない!』 ミチルへと三度キックを放つ しかし ザシュッ! 『やっと、捉えたのだ』 これまでのクウガの行動を分析し、攻撃パターンを掴んでいたミチルは、次に攻撃が来るであろうポイントにブレードを振っていたのだった クウガの足が切断され、ブースターを吹かしながらクルクルと飛んでいく 『ぐっ!』 苦痛に顔を歪めながらも、なんとかその場に留まるクウガ ゲシッ! そんなクウガに容赦ない追撃をかけるミチル 蹴り飛ばされ、地に伏せるクウガ ミチルはクウガを踏みつけ、アンクルブレードを構える 『これで、あたしの勝ち…』 スコーーン! ミチルの言葉は、飛んできた何かによって中断させられた 「…ねぇ、今の何?」 モニターを真剣に見ていた志緒理が怪訝そうな声を上げる 「…狗駆…というか、クウガの脚?」 同じく、呆気にとられていた浅木が答えた ブースターを吹かしながら飛んでいた脚が、何の因果か戻ってきて、ミチルの後頭部へと直撃したのだった 『きゅぅ…』 完全にフリーズして、倒れるミチル 『ミチルのノックアウトを確認。勝者、クウガ!』 クウガの勝利が告げられる中、ミチルはその先にいたクウガへと倒れ込んだ ガツン! 『!!』 クウガの上に覆い被さるように倒れたミチル ミチルの顔が、クウガの顔にぶち当たる というか… 「うわっ!ミチルちゃんとクウガさんが、ちゅーしてる!」 浅木の言葉に、スタジオ大爆笑 「あ、あれはノーカウントなのだ!意識してないし、というか意識無いし!」 顔を真っ赤にしながらパタパタと手を振り全力で否定するミチル 「あはは…ファースト上位のミチルちゃんも、こんな事があったんですね」 「うーっ、この油断が無ければ…」 「そうじゃな、あの後もずっとクウガ殿には勝てなかったのじゃからな」 「えっ?もう攻撃は見切ったんじゃ?」 観奈の言葉に疑問の声を上げる志緒理 「次の対戦で同じ事をやったのじゃが、ミチルが剣を構えるよりも先に蹴り飛ばされてKOされたのじゃ」 「うっそ…」 「自分が成長してるのと同じように、対戦相手もまた成長してるのだ」 「観奈ちゃんもミチルちゃんもそうやって成長してきたんですよね」 「そう言われると、照れるのじゃ」 「ところで観奈ちゃん、今現在、気になる神姫というを教えて欲しいのですが」 「そうじゃな…ファーストの神姫はほぼ気に掛けておるが、ここは注目のセカンド神姫を挙げておくのじゃ」 「観奈ちゃんが気になるセカンドの神姫ですか」 「まずはセロ殿じゃな。地元では『クイントス』と呼ばれており、ファンも多いそうじゃ」 「鳳凰杯の決勝トーナメントの第一回戦で戦った神姫ですね」 モニターが切り替わり、ミチルとセロとのバトルが映し出される 「剣の腕前はもとより、優れた洞察力もある素晴らしい神姫じゃ。スグにでもファーストでも通じるだろうに、何故セカンド中位にいるのじゃろうか」 モニターではムラサメが破壊されたシーンが映し出されていた 「次に挙げるのは…『雷光の舞い手(ライトニング・シルフィー)』ねここ。高機動と重装備を両立させている、数少ない神姫じゃ」 画面が切り替わり、アーンヴァルの武装を中心に組み上げた武装『シューティングスター』を振り回し、フィールド中を駆け回るねここの姿が映し出される 「ほぼ公式装備で組みながら、要所にはオリジナルパーツを組み込まれておる。マスターのセンスも光る神姫じゃ。」 必殺の『ねここフィンガー』を決め、相手のストラーフ型を沈黙させるねここ 「ちなみに、地元での人気は絶大で、最近ファーストに来た『マジカル☆ハウリン』ココと人気を二分しており、ファンクラブまであるそうじゃ」 モニターにはフリフリの衣装を着たココが口上を述べている所が映し出された 「あと、セカンドでは無いが、鳳凰杯の時に不慮の事故で記憶を失ってしまったミカエルも注目じゃな」 「オーナーの鶴畑大紀さんもファーストの称号を返上してしまいましたね」 画面には圧倒的火力でフィールドこと相手を焼き払うミカエルの姿が映し出される 「サードからの再スタートということで勝手が違うじゃろうが、あの二人ならまた勝ち上がってくるじゃろう」 「その三人が、観奈ちゃん一押しの神姫ですか…っと、そろそろ時間になってしまいましたね」 ADの合図を見た富華が申し訳なさそうに言った 「それでは観奈ちゃん、最後に視聴者の皆さんに、何かメッセージをお願いします」 「武装神姫で大切なのは、神姫を信じる心じゃ。信頼無くしての戦いはありえんのじゃ。たとえ負けても、ちゃんと得る物はあるのじゃ」 「有り難う御座いました。本日のゲスト、國崎観奈ちゃんとミチルちゃんでしたー!」 パチパチと拍手に見送られ、退席する二人 「神姫を信じる心、か…」 俺は次のコーナーの新作情報で映し出されている新型機の『アーク』と『イーダ』を見ながらボーっと考えていた 「…センパイ。以前のことを考えているのですか?」 「皐月にはお見通しか…」 皐月の指摘通り、昔の事を考えていた 神姫を道具としてしか見ず、ユキに過酷な試験ばかりをさせていた日々を 「でも、今は信じてるんでしょ?」 「ああ…」 「なら、それでいいじゃないですか」 「…そうだな」 俺はエンディングを歌う志緒理ちゃんを眺めながら、今のみんなの幸せを壊すまいと誓うのだった 『きょうのまおちゃお~』 『マオチャオは今日も日向ぼっこ。大好きなマスターの帰りを待ちながら、窓際でうつらうつら』 「うにゃぁ…ごしじんさま、だいすき…むにゃむにゃ…」 『あらあら、どんな夢を見ているのでしょうね』 ピクッ 『おや?マオチャオの耳が動きましたよ?』 ガチャガチャ…カチャッ 「ただいまー」 「おかえりなさい、ごしじんさま!」 『満面の笑顔でマスターを出迎えるマオチャオ。よかったね』 -END- あとがき なんとか生きてます、優柔不断な人(仮)です 今回はss掲示板の方で上がっていた「百質」をみてたら思いついたので、それで一本書いてみました 未だに妄想の人さんに言ったコラボssも書けてないのにスイマセン ちょっち補足 観奈とミチルがクイントスの事を本名のセロと呼んでおります これは鳳凰カップではクイントスは通り名で、あくまでもセロとして参加し、アナウンスもそうであったと考えられるので、観奈達が紹介する時にもそっちを使ったと考えるからです ミカエルに関しては、大紀が改心し、技術の蓄積も有ることからこれから強敵になるであろうと予測した為です ちなみに最後の『きょうのマオチャオ』は独立した五分番組です。提供は勿論、BLADEダイナミクス(もしくはKemotech)です さらに、今回の番組出演者の設定 富華 三根雄(ふか みねお) フリーのアナウンサー。45歳 神姫バトルの中継では実況も務める。その実績を買われ今回のメイン司会者に抜擢された 浅木 マキ(あさき まき) TV局のアナウンサー。24歳 若手女子アナウンサー。自身も神姫を所有しているが、上前はサード中位。どちらかというと、神姫と遊んでいる方が好き 志緒理(しおり シュメッターリング型) デモを兼ねてスポンサーから番組へと贈られた神姫 歌って戦う神姫を目指してる 彼女が歌う番組エンディングテーマも番組開始と同時に発売 「みんな買ってね(はぁと」 ちなみに所有者は番組のプロデュサーという事になっているが、ADの一人を気に入っていて、マスターそっちのけでつきまとってるらしい ガンノスケ 志緒理付属のヌイグルミ型支援マシーン『ラビボン』 主にツッコミ担当 志緒理とガンノスケは『スーパーしおりん』へと合体出来る …らしい
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/583.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-1 スポットライトに照らされた眩い舞台。 その縦横に光のラインが走る電脳空間を模したバトルフィールドに、エントリースポットから彼女が舞い降りたとたん、周囲から歓声が上がった。 「見てください。皆さん私の華麗なる姿を待ち望んでいたようですね」 「あのな、お前もう少しは緊張感持てよ」 沸き起こる歓声とは対照的なその少年の声に、彼女は蒼いポニーテールを振りながら答える。 「問題ありません、緊張する必要など皆無です。安心して私の戦いを見ているだけで結構、いわゆる〝大船に乗った気分〟ってヤツですね」 そう言って彼女は得意げに胸を張る。 その拍子に、身に着けている天使型武装のヘッドギアがずり落ちた。 「ドロ船の間違いじゃないだろうな……」 彼は軽く目頭を押さえると、成り行きとはいえこんな形で神姫バトルを行うハメになったことを、ひそかに後悔した。 * 先週まで咲き誇っていた桜も散り、街角ではそこかしこで新緑が芽生え始めている。 そんな暖かな陽気、まさに快楽日和……にもかかわらず駅前の広場に人がまばらなのは今日が平日ということからすれば仕方がない。 広場の時計台が刻む時間も当に十時を回っている。駅をゆく学生服や背広姿の群れも一段落し、桂樹駅は静かだった。 その駅のロータリーにある騎馬像(どこぞの芸術家が寄贈したとかいう話だ)の前に、ひとりの少年があくびを堪えながら突っ立っていた。 「全く、自分から呼んどいて遅刻かよ……伊吹のヤツめ」 独りでブツブツ言いながら、少年は所在無げにつま先で地面を蹴る。 そんな彼の仕草にベンチから声が掛けられる。 「しかしこの誘いを承諾したのはシュン自身です。ここで帰宅を選ぶということは、その約束を一方的に反故するも同然です」 その自身の内心を見透かした声に、シュンと呼ばれた少年は面倒そうに答える。 「こっちはもう三十分も待ってんだよ。……ったく、せっかくの休みなのに」 「待ち合わせの十時からは、まだ五分も経過していません。三十分近くも待つことになっているのは、わくわくして約束より大幅に早く到着したシュンの責任でしょう」 「誰がわくわくしてたよ? こんなに早く着いちゃったのは、お前が朝早くから急かすからだろうが」 苦い表情を浮かべながらシュンは傍らのベンチを見下ろす。そこでは先ほどからシュンに辛らつな意見を述べる声の主がチョコンと腰掛けている。 その〝彼女〟はジッと睨むシュンの視線に、抱えていたものを脇に置いて振り向いた。 「失敬な。それではまるで私が『遠足が楽しみでたまらないお子様』のようではないですか。言い掛かりです、激しく名誉毀損です。弁護士を呼んでください」 「あのなぁ、ゼリス。どこの世界に神姫専門の弁護士がいるんだよ」 キッと意味もなく凛々しい顔で彼のことを睨みつける少女――の姿をした彼のオートマトン(自動人形)――の姿に、シュンはいろいろな意味で間違っていると思った。 何がどう間違っているのかは、それはもう世界に聞いてくれ。 そんなくだらない訴えを脳の片隅に転がしつつ、シュンは隣に座る彼女を見やる。 蒼い豊かな髪をリボンで結ったポニーテール。 褐色の肌、理知的な翡翠の瞳。 神姫の中でも一際小柄で華奢そうだが、それを補ってあまりある存在感をまとった小さなフロイライン(お嬢さん)。 ――ゼリス。 彼女は彼、有馬駿(アリマ シュン)の武装神姫だ。 なぜ平凡な中学生だったシュンがこのいろいろな意味で普通じゃない神姫であるゼリスのオーナーになったのか? ふたりに尋ねればきっとこんな返事が戻ってくることだろう 「いろいろあって……(byシュン)」 「いろいろな事がありました……(byゼリス)」 どうやら彼らの関係には一般的な神姫とそのオーナーとは違った複雑な経緯があるらしい。 が、一週間も立てばそうした状況にも次第に慣れてくるもの。初めはゼリスに戸惑ってばかりだったシュンも、ようやく今後のことを考えるゆとりも出来てきた。 そんな訳でまずは神姫関連の様々なパーツを揃えようと、ふたりは最寄の神姫センターを案内してもらうため友人と待ち合わせの最中だった。 そもそも今日シュンたちを誘ったのはその友人、彼の幼馴染でもある伊吹からだった。 生粋の武装神姫バトルマニアである伊吹の誘いを、シュンは今日が創立記念日で中学校が休みであることと、先週の事件の反省から快く受けることにした。 しかし、ゼリスに尻を蹴られつつ(こんな言い方をしたらまた怒られるからシュンは口にしないが)待ち合わせに来てみれば、当の伊吹本人がまだ来ない。 シュンとしても今日の神姫センター行きはそれなりに乗り気だった分、何だか肩透かしを受けた気分だった。 「ところで……お前はさっきから何してるんだよ」 「シュン、見て分かりませんか? しばしの小閑に読書です」 そう答えゼリスは再び本を両手に持ち直し、ひとり読書のポーズ。電子書籍が一般化している中、彼女は昔ながらの紙の本を好んでいる。自分が電子化社会の代表選手のクセに。 身長14センチくらいの神姫が身の丈ほどもある文庫本を読んでいる光景は、見ようによってはなかなかシュールだった。 「それは見りゃ分かる。そうじゃなくて、お前はマスターである僕が待ちぼうけてるのに、それを無視してひとりで本読んでるんですか?」 「別に私が余暇を利用して何をしようと、シュンには関係ないでしょう? 過度のプライベートへの干渉は好ましく思えませんね」 「お前なぁ……。少しは自分のマスターの相手をしようとかは思わないわけ?」 シュンの言葉にゼリスは「ふむ」とその細い顎に手を当てながら逆に聞き返す。 「シュンは、私に相手をして欲しいのですか?」 不思議そうな様子で彼を上目使いに覗き込む、そのエメラルドの瞳に一瞬吸い込まれそうになり……はしたものの、すぐにシュンはシラケたようにかぶりを返した。 「いんや、そんなことはねーっすよ」 「ならば何の問題もありませんね。私は読書に没頭しますので、シュンも待ち人が来るまで現状維持に努めてください」 彼の投げ遣りな返事も意に関さず、ゼリスはそう述べると現状確認を済ませことに満足したのか、また読書の体勢に戻った。 そんな黙々と本読みにふけるゼリスを横目で見ながら、シュンは人知れず小さなため息をつくのだった。 神姫。それは自らの心を持ち、自らの意思で行動する全高15センチ程度のフィギュアロボの総称である。 様々な分野で活躍するロボットが存在する西暦2036年において、多様な機能、機構、機器を持ちオーナーである人間をサポートする、最も我々に身近な存在。 神姫とはオーナーとなる人間にとって、親友であり、家族であり、また愛しき娘でも恋人でもあった。いつしか人々はそんな彼女たち神姫の中で誰が最も美しく、優れ、そして強いかを競い合うようになった。 武装神姫。 様々な武器を駆り、装甲に身を包み戦う彼女らを人々はそう呼んだ。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2857.html
中学を卒業し、春休み兼高校への準備期間といったところの3月。 卒業後の3月というのは夏休み並に長い休みとなり、宿題もないため基本的に卒業生は皆遊び呆ける期間ということになる。 「ユーリ、今日は負けないから……ねっ!」 「フン、甘いな!」 『行けマスター! そこだぁ!』 もうあらかた準備を終えている彼は、同じく準備を終えている「ユーリ」と呼ばれる友人の家に遊びに来ていた。 もっとももう3月の26日であり、入学式も近づいてくる頃。 のびのび遊ぶ余裕もなくなってくる頃であるのだが。 「……あっ」 (また負けた……) 『やったなマスター! またマスターの勝ちだぜ!』 「まあ俺のゲームだからな、俺が勝たずしてどうする」 (今日は自信があったんだけどな) 「しかしまあ飽きてきたな、そろそろやめるか」 「え、うん……そうだね」 (悔しいけど仕方ないか) 『今日もマスターの一人勝ちだな!』 「う……」 小さな褐色肌の銀髪の小さな、本当に小さな少女が言う。 『ま、お前もまあまあ強いけど、マスターが桁違いに強すぎて話にならないんだよな~』 「ふ、あまり褒めるな」 「あはは……」 2ヶ月前、1月中旬 「やったね、二人で合格!」 「あぁ、やったな」 ユーリは小さく左手を挙げた。 それに対して彼も大して右手を出し、ハイタッチ。 「……これで残りは遊べるね」 「フ、そう言うことにもなるな」 (僕達二人は同じ高校に合格。 4月には同じ学校に二人で通うことになった。 そして、合格が決まって数日後、月は変わって2月の頭にユーリの家に御呼ばれした時の話) 「……ぶそうしんき?」 「あぁ」 (……聞いたことあるような、ないような) 「合格祝いに買ってもらったんだ」 「へえ……どんなの?」 「俺の言うことには従順だし、いい話相手にもなってくれる。 ……いかにもお前が喜びそうだが」 (僕が喜びそうなもの? アニメか何かなのかな?) 『お? お前がマスターの友達ってヤツか?』 (……ん、この声って) 「あぁ、その通りだ。 紹介しよう、私の友人で……」 ユーリはフィギュアに向けて、彼の友人の説明を始めた。 ここだけ見れば、ちょっとおかしな人に見えなくもないが、そうではない。 (今……喋ったよね?) 『気の弱そうなやつだな。 まあ、マスターの友達ってんならよろしくしてやるか』 (やっぱり聞き間違いじゃない…… フィギュアが……しゃべった?) 「なにこれ、エンジェリックレイヤー?」 「ずいぶん古いなおい」 「……冗談はともかく……すごいね、どうなってるのこれ?」 冗談は、と言っているが彼にとっては割と本気であった。 「あぁ、これはだな……」 (その後10分程度、ユーリによる説明が入る。 つまりは着せ替えて戦うロボットアクションフィギュアだそうだ。 女の子ばっかりのメダロット……もしくはダンボール戦機。 いや、パーツじゃなくて武装を変えるだけなんだからカスタムロボだね。 つまり、この口の悪い一人称がオレ様の子も女の子、と) 「アニメに興味があるなら、こういうものもどうかと思ったのだが」 「確かに僕はオタクだけど、何でもかんでも好きになるわけじゃないよ」 (フィギュアはあんまり買わないし。 でもまぁ、これは可愛いとは思えるな) 「……とりあえず、この娘の声が小林ゆうさんだってことは分かる」 「悪いが俺は声優に関しては詳しくはない」 詳しくない人に声優の名前を言ってわかるわけがない。 『いやまぁ、正解だけどな』 「そうか、俺はそういうのは疎いが、劫火が正解と言っているのだから正解なんだろう」 「いや、かなり分かり易い声だと思うけど」 分かりやすい声であろうと、気にしなければ結構わからないものである。 「ちなみにこの子、名前はあるの?」 「あぁ、あるぞ。 『劫火(ごうか)』と名づけた」 「……はぁ、劫火」 (かっこいい、のかな、その名前は) 劫火とは世界を焼き尽くす大火のことである。 粗暴な態度であるとは言え少女にそんな名前をつけるということにこの少年は疑問を持った。 「劫火はヘルハウンド型のガブリーヌといって、地獄の番犬という設定なんだ」 と、ユーリに耳打ちされた。 (なるほど、ユーリが好きそうな設定だ) 『んでマスター、なんでこいつ呼んだんだ? オレ様を自慢するためか?』 「まぁな」 冗談交じりに笑いながらユーリは言う。 「こいつは俺と同じ学校に通う事になる。 それで、長い付き合いになるわけだ、お前にも紹介しておこうと思ってな」 『ふーん、同じ学校?』 「あぁ、お前も劫火とは長い付き合いになるだろうし、紹介は早いほうがいいかと思ったんだ」 (じゃあこれから一緒に遊ぶときは劫火も一緒になるわけなのかな) 「ところでお前は、神姫は買ったりしないのか? そもそも俺はお前が知らなかったことに驚きだ、こういうものに関してはお前の方が造詣が深いと思っていた」 (ぶそうしんき、ね……) 「……僕はフィギュアはあまり……買わないかな」 (可愛いのはわかるけどさ) 「まあ確かに、特にこれは高いからな。 ちょっといいパソコンが買える程度の値段はする」 (仮にもロボットなわけか、安いわけがないよね) 『ま、貧乏人には手の届かないもんってこったな』 「いや買おうと思えば買えるけどさ…… もう3月に発売のゲームの限定版を予約してるんだよね」 これが何故かゲームの値段の域をはるかに超えているとんでもなく高い品であり、お年玉を叩いてネットで予約したのである。 そのため現在彼は他の物を買う余裕がないのだ。 『ふ~ん? ま、なにに金を使うかはそれぞれだよな』 「うん、そういうことだよ」 (別にあまり興味はないし、まあいいかな。 買ったら買ったですぐ飽きるかもしれないし……でも) 彼にはひとつ、気になることがあった。 「ねえ、ユーリ。 『ぶそうしんき』って、どう書くの?」 「ん? あぁ、武器を装備するの意味の『武装』に、 『神』の『姫』と書くが……それがどうかしたか?」 (つまり、漢字で書けば『武装神姫』 ……やっぱり、最近どこかで……?) 彼はよくよく思い返してみると、最近『武装神姫』という単語をどこかで目にしたことがある気がしていた。 しかし、どうしてもそれを思い出すことができないのである。 「どうかしたのか?」 「いや、なんでもないよ。 ありがとう」 「む……そうか」 「あはははは……」 (僕はこの時、こんなものに興味は持っていなかった。 かわいいとは思うけど、数ある萌えキャラ系コンテンツの一つだと思っていた。 でも、この後あらゆる意味で意外な形で、意外な広い交友関係を持ち、意外な事件に巻き込まれていくことになるなんて…… 今の僕には、知る由もなかった) 回想終わり、再び3月26日。 「……もう3時か」 彼はなんとなく時計を見て言った。 「もう3時って、まだ3時じゃないか?」 『そうだぜ、まだオヤツの時間だ』 (まあ、普通ならそうなんだけど) 彼にとって、今日は普通ではなかったのだ。 「今日はちょっとね、この後用があるから」 「なんだ、そうなのか。 なら仕方ないな」 「ごめんね、もう帰るよ」 『じゃあ、また来いよな!』 ユーリと劫火の見送りを受けながら、彼は荷物をまとめて早々と退散した。 「ごめんユーリ、しょうもない理由で帰って」 ユーリの家の前でそう呟き、少年は自分の家へと早足で帰った。 そして彼が家に戻ると、見慣れない箱が届いている。 しかし、彼にはすぐその中身がわかった。 今日3月26日は予約していたゲームの発売日、コ○ミスタイルでの予約なので、今日はお届けの日、ずっと待ちわびていた日である。 「やっとこの日が来た! やっとこのゲームが来た! 『ハヤテのごとく!! ナイトメアパラダイス豪華版』! 本当に何故かかなり高かったけど、まあ関係ないや!」 そう、この少年はハヤテのごとく!の大ファンである。 ハヤテのごとく!の主人公、『綾崎ハヤテ』の姿に憧れたのがきっかけでその作品を愛するようになったのである。 もっとも、この少年をオタクの世界へ橋渡ししてしまった作品でもあるのだが。 「それじゃ、さっそく!」 少年はその箱を抱え、いつものように階段をものすごい勢いで駆け上がる。 二階の自分の部屋の扉を勢いよく開けると、机の上のPSPを持ち出してベッドの上に座り込んだ。 「PSPよし! 充電器もよし! 箱の状態もよし! オールグリーン!!!」 普段は控えめでローテンションな彼だが、ハヤテのごとく!のことになると性格が変わる。 流石にこれには友人であるユーリも苦言を呈している。 「それにしてもゲームソフトにしては大きな箱だな。 それだけ特典が豪華なのかな」 特別版ということは、予約特典、早期購入特典が多数付いているということである。 彼は特に特典の内容は気にせず、コナミスタイル販売限定の一番高い物をとりあえず予約したのだ。 『ハヤテのごとく!』の大ファンという理由だけで。 「いくぞっ! オープンっ!!」 満を持してその箱を開け。 「うぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 中身を確認し、必要以上のリアクションをとる。 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…… ……え?」 箱の中身を見た彼は必要以上のリアクション以上に驚きを隠せない様子を見せた。 何かが足り無かったわけでもなく、内容がそれほどでもなく拍子抜けしたわけでもない。 その中に、予想外の物が入っていたからだ。 「これって……まさか?」 箱の右側に収まっているゲームソフトへの興味はどこへやら。 左側に収まっている箱を手に取り、上下左右裏表、箱の外装をすみずみまで見回し、彼は静かに口を開く。 「武装……神姫?」 それはまぎれもなく、武装神姫だったのである。 「このパッケージ絵って……」 金髪ツインテール、ツリ目のライトグリーンの瞳。 そして、白皇学院の制服を模したカラーリングの素体。 少年にはそれに描かれている少女が誰か、一目で分かった。 「ナギ……?」 ナギ、ハヤテのごとく!のメインヒロインの名前である。 その武装神姫のパッケージに描かれていたのは、ハヤテのごとく!のヒロイン、三千院ナギその人だった。 「武装神姫……ナギ……!?」 驚きのあまり、再び声が出なくなった。 そして、ようやく理解した。 ナギのフィギュア付属が付属するというコナミスタイル販売限定豪華版だけが、異常に高かった理由が。 ユーリの言う「ちょっといいパソコンが買える値段」である、武装神姫が付属するのならば、それは当然高くなるわけである。 そしてこの時、やっと思い出したのだ。 約2ヶ月『武装神姫』という単語をどこで見たのか。 その場所は、彼がこの度予約したゲーム、『ハヤテのごとく!!ナイトメアパラダイス』の公式サイト及びコナミスタイルに書いてあった、 『コナミスタイル「武装神姫ナギ」付き豪華セット』という文字だったのである。 「……」 彼はゲームは基本初見プレイ派なので、公式サイトには通わなかったために、ゲームの予約以来目にすることがなかったのだ。 「……これでいいのかな? よくわからないんだけど……」 待ちわびていたはずのゲームソフトには手をつけず、ナギの箱を開封し、起動に手間取っている彼の姿がそこにあった。 やっとのことで設定は終わり、あとは起動させるだけである。 『お嬢様型ナギ。 セットアップ完了、起動します』 「え……もう? 起動するの? 本当に?」 驚いているうちに、その少女は金髪のツインテールをなびかせ、ライトグリーンの瞳を開きながらゆっくりと起き上がる。 『ん……』 その少女は目を閉じて背伸びをした。 「わぁ……!」 『……おぉ……お?』 その金髪ツインテールの小さな少女は眠たげな目こすりながら、『マスター』の方を向く。 「う……動いた……!!」 『……当然だ、動くぞ、神姫なのだから』 「……そ、そう、だよね」 聞きなれているツンデレ系ヒロインの鉄板である釘宮理恵ボイスが部屋に響く。 今さっき起動した金髪ツインテールの少女がツンデレボイスで、マスターだけに話しかけている。 アニメのように『綾崎ハヤテ』やその他キャラクターや、全国の視聴者に向けてではなく。 (ナギが僕だけに話しかけてくれている) 感動で胸が打ち震えた。 事前情報がなかった分、特に。 『……問おう。 お前が、私のマスターか?』 「え?」 ハヤテのごとく!特有のジト目を少年に向けながら、別のアニメの名台詞を言う。 二人称は変わっているが。 「……はい、かな?」 『……おい、もうちょっと乗れよ』 「い、いや、あのアニメは見てなくて……」 『途中で切るなよ、アニメの評価は自ら全て見て判断するのだ』 「……ごもっともです」 別に視聴を切ったわけではないが。 『む……』 少女渾身の目覚めのあいさつを躱されたせいか、少女の顔が明らかに不機嫌になったのが分かった。 『なんだか、あまり歓迎されていないように感じるのだが。 なんだ? もしや転バイヤーか? 起動して問題がなかったらリセットして売り飛ばすつもりか? ならば残念ながら未開封のほうが高かったと思うぞ』 「い、いや、生まれてこの方僕は転売なんてしたことないけど」 この少年はダブったトレーディングカードを売ったことすらないのである。 「その……驚いたから」 『驚いた?』 「うん……神姫を手に入れるつもりなんてなかったから…… まさか、ゲームの特別版の特典で付いてくるなんて」 『……なんだ、公式サイトを見ていないのか? ちゃんと神姫ナギが付属すると書いてあったと思うのだが』 「はい、確かに書いてあったんですけれども」 公式サイト及びコナミスタイルで予約時に二目見て以来今まで忘れていた、とは言えないわけである。 「その、僕予約の内容とか気にせずに予約するから」 『……』 その少女は顔を背ける。 『それでは私が傷つくではないか……』 「え、え?」 『だってお前は、私を心からは必要としていないんだろう?』 神姫というものは基本的には買った人に必要とされているからこそその人の下へ行くのであるが、 この少年の場合は『武装神姫ナギ』が付属することを知らなかったわけである。 捉えようによっては、必要とされていない、とも感じてしまうかもしれない。 「そ、そんなことないよ! えっと……お、お嬢様?」 『ん、お嬢様?』 「だって君はナギなんでしょ? だからお嬢様」 この神姫である少女の元となった人物、ハヤテのごとく!のヒロイン、三千院ナギは圧倒的材力を持つお嬢様、という設定である。 『あぁ、そういえば設定がまだだったな』 「え、せ、設定?」 『……神姫を手に入れる予定がなかったのなら知るわけがないな。 仕方ない、教えてやろう、まず私のマスター……つまりお前のことを私がどう呼ぶかを決めるのだ』 「ま、マスター……」 『あぁ、マスターになる気はないのだったか? 別になりたくないのならいいぞ、誰かハヤテ好きの知り合いにでも引き取ってもらえ。 それかやっぱりヤ○オクにでも出したらどうだ、私としても私を落札してくれるなら大事にしてくれるだろうからな』 「い、いや、なります! えっと、僕、ハヤテのごとく!が大好きですから!」 『……そうか。 その言葉に、嘘はないな?』 「ありません!! 絶対に!」 『……ほう』 「……」 少年は15年間生きてきて中で一番今までになく真剣な目を少女に向けて言った。 『ならばお前は。 私とハヤテの出会った時の、ハヤテの告白のシーンを一字一句言えるのか?』 「……」 沈黙が走る。 目を閉じて、息を整えた。 『まあ、流石にそれは冗談……』 少女が言い切る前に少年はゆっくりと目を開け、口を開く。 「僕と…付き合ってくれないか?」 『へ?』 彼女に確認をとる間もなく、それを演じ始める。 「僕は君が欲しいんだ」 『なっ……』 ナギに真剣さが伝わる。 先ほどとはまるで違う気迫に、思わず後ずさりをしてしまうほど。 「わかってるさ!! だがこっちだって本気だ!!」 『……』 その真剣な眼差しに思わず彼女は…… 『で…でも!』 そのシーンのナギの役を、無言で引き受けた。 「こんな事、冗談じゃ言わない…」 吐息のかかる距離。 完全に役にのめり込む二人。 「命懸けさ…… 一目見た瞬間から… 君を…」 犯罪者の目。 ……をするハヤテを完璧に演じる。 「君をさらうと決めていた。」 『………………』 「………………」 二人はしばらく見つめあう。 そして、『ナギ』は口を開いた。 『本気の想い…… 伝わったぞ』 「…… シャキーン」 『擬音まで言わんでいい』 「……ごめん」 『……フ』 彼女は笑顔で『ハヤテ』に言う。 『合格だ。 お前の想いは本物だな』 「君に合格をもらえるなんて……光栄だな」 『私も、お前がマスターならば安心できそうだ。 さっきの言葉は撤回しよう』 (ハヤテのごとく!を好きでよかった) 少女の言葉を聞き、少年は心からそう思った。 『では、続けよう。 なんと呼んでほしい?ご褒美にできるだけ希望に応えてやるぞ』 「呼び方……か」 なんて呼んで欲しい? 少年はそう言われたのは初めてだ。 「……ピンと来ないよ」 おそらく、それが普通である。 「例えば、どんなの?」 『そうだな、普通ならば「マスター」やら、お前の名前やら。 それとも「私の執事」、とでも呼ぼうか。 そうだ「バカ犬」でもいいぞ。 望むなら「兄さん」とも呼んでやらないこともないが』 バカ犬、兄さん。 どちらもハヤテとは関係のない作品である。 声を当てている声優は同じであるが。 その縁でハヤテのごとく!でネタにされたこともある。 『……推奨は全くしないが、「下僕」やら、「豚」やら、「そこのお前」、「そこの人」でも』 「……普通に僕の名前で」 ナギの姿の少女にバカ犬およびほかの呼び方で呼ばれても違和感しかない、とハヤテは考えた。 きっとそれはハヤテのごとく!よりとらドラ!やゼロの使い魔がのほうが好きな人でも同じことであろう。 『まあそれが無難だな。 では……あ』 少女は何かを思い出したように、話を中断し口が空いたままにした。 『そういえば、名前を聞いていなかったな。 お前、名前は?』 「名前……僕の?」 『そうだ、どうした、早く言うがいい』 「うん……僕の名前は」 吐息のかからない距離。 机の上の少女の眼を真っ直ぐと見て、少年はその名を言う。 「ハヤテ」 『え?』 「鷹峰 颯(たかみね ハヤテ)。 僕が憧れた君の執事と……同じ名前だ」 ハヤテのごとく!の主人公、綾崎ハヤテはヒロインである三千院ナギの執事という設定である。 その、自身と同名の『綾崎ハヤテ』の、何があっても、どんな不幸があっても挫けずに立ち向かっていく『ハヤテ』の姿に。 『ハヤテ』にハヤテは憧れた。 『ハヤテ』の勇姿を見た瞬間……彼はハヤテのごとく!のファンになったのだ。 『ハヤテ……か……お前……』 「ん?」 『……まさか名前を詐称などしていないだろうな?』 「してない! ええい!! だったらこれを見よ!」 ハヤテは生徒手帳を取り出し、個人情報の乗っているページを見せた。 まだ高校に入学していないため中学時代の生徒手帳であるが。 『おぉ……!! こ……これは……!!』 「ふふん」 『随分と無愛想な顔の写真だな』 「君に言われたくないし見るべきところはそこじゃない! それにその時は眠かっただけ!」 『おぉー、本当に名前はハヤテではないか!!』 「だから最初っからそう言ってるじゃない! ……流石に苗字は綾崎じゃないけどね」 ちなみに『綾崎』及び『三千院』という苗字は実在しないそうです。 『まあ、ならばいいのだ。 なんというか、呼びやすくて良い』 「それは……よかった」 『では、次は私の名前だ。 いい名前をつけるのだぞ、一生物なのだからな』 「え?」 名前。 (この少女に付ける名前なんて一つしかない) ハヤテはそう思うのだが、一応聞き返す。 「ナギじゃ……だめなの?」 『いいや、ダメではない。 だが、ゲームでもデフォルトネームと言うものがよくあるだろう? 私で言えば「ナギ」はデフォルトネームなのだ、別に変えてもかまわないぞ。 別に魔法少女モノが好きならフェイトと呼んでくれてもいいし、全く関係ない名前をつけても構わないのだ』 そう言うことなのか、とハヤテは納得する。 しかし、ハヤテにとってはこの少女を『ナギ』以外の名前で見ることはできなかった。 「でもやっぱりナギはナギじゃないと……しっくり来ないな」 『そうだな、キャラクターの名前をデフォルトネーム以外に変えてプレイすると人によっては違和感を覚えるかもしれん。 面白味のない遊び方ではあるが、それはそれで懸命な判断だな』 「そ、それはどうも……」 『ということは、私の名前は「ナギ」でいいんだな?』 「うん、もちろん」 『わかった、それじゃあ私の名はナギだ。 よろしく頼むよ、ハヤテ』 ナギはハヤテに向かって微笑んだ。 「う……!」 その笑顔にハヤテは思わずキュンとしてしまった。 この瞬間、ハヤテの中でナギの株が鰻登りになったことは言うまでもない。 『ところで、早速だが私は疲れた。 クレイドルを出してくれ』 「……」 『……おい、ハヤテ?』 「えっ? あ、あぁ、はい、何?」 『……クレイドルを出せと言っているのだ』 「く、クレイドル?」 『私の入っていた箱に一緒に入っていなかったか?』 その言葉を聞いて、ハヤテは箱の中を探す。 すると、比較的大きめな白い物体を見つけた。 「えっと、これ?」 それを取り出してナギに見せつける。 『おぉ、それだそれだ!』 ナギは早く早く、と言わんばかりにクレイドルに向かって両手を伸ばしている。 「えっと、どう設定すればいいの?」 『適当に組み上げてUSBのケーブルをパソコンに差し込めばいい』 (大雑把すぎるって……) そう思いつつもハヤテはナギのために設定をする。 パソコンにUSBケーブルをつなげるという組み上げると言っていいのかわからないほど短い手順であったが。 「……組み上げた(?)けど」 パッと見ハヤテには、この物体の正体が何かわからなかった。 「これ、何?」 『簡単に言ってしまえば、充電器だ』 (これで充電器なんだ) 「でもこれ……どうやって充電するの? ナギにこれのどこかにある何かを差し込めばいいの?」 『いいや』 ナギはクレイドルの上に乗り、それに横たわりながら言う。 『この上で寝ていれば、勝手に充電されるのだ』 「……へぇ」 (最近の充電器って、進歩してるなぁ) そう思いながらハヤテはつぶやく。 「……科学の力ってすげー」 『まぁというわけで私は寝るぞ、起動したばかりでエネルギーが少ないのだ。 夜には充電が終わるはずだ、話なら後にしてくれ』 「え、あ、あの……」 『Zzz……』 ハヤテが止める間もなく、ナギはクレイドルで眠りについてしまった。 「…… 武装神姫、か」 ひょんなことから、神姫のマスターになってしまった少年、鷹峰ハヤテ。 これは、ナギや友人とともに駆け抜けた、ハヤテの激動の高校生活を綴る物語である。 プロローグ 「悪夢の楽園より」 完 次回『ナギのごとく!』 『なんだ、お前ニートじゃなかったのか』 ハヤテ「あくまで、執事ですから……」