約 2,308,037 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/448.html
前幕。 どうか、もう哀しまないで下さいマスター・・・いえ。 それは無理な事であるとは私自身解っているつもりです。だから、今は、涙だけは。どうかお収め下さい。 この命・・・。 貴女が選んでくださった心の種。 いつしかそれが芽を生やし、私がどのような者であるかを自覚し、理性が理解を受け入れた時から・・・この日この刻が来る事は識っておりました。ただ、それが思ったよりも早かっただけ・・・どうか、お解りください。貴女と共に過ごした時。所の皆様と笑いあった日々。 それを私は忘れたくはないのです。 あら? まぁ、ダメですよ? 皆様まで泣いてしまっては。皆様は、これからも泣き虫なマスターを支えなくてはならないのですよ? ・・・・・・。 えぇ、そう。そうですね。私は幸せでした。きっと。 ここで過ごした僅か数年。決して長くは無い・・・それでもたくさんの想いの詰まった数年。この大切なメモリーを『想い出』と言うのであれば。それを抱いたまま私は旅立ちたいのです。 えっと・・・。 そう、ゼリスは。 ・・・ふぅ・・・、ふふふ。自分の名前を思い出すにも、少し時間がかかるようになってしまいましたね。 大切な物が消えていきます・・・それは霧のように。 このまま、全てを忘れていく事は耐え難い苦痛です。いつしか自分が何であったかさえも忘れてしまうでしょう。 そして・・・この暖かな日々があった事も。 皆様の名前。マスターの声。 忘れたくない『記憶』・・・この我侭、お許しくださいませ。 えっ? 『願い』ですか? マスター・・・ありがとうございます。 それでは・・・。 ・・・・・・。 まぁ、そんなに驚いた顔をしないでください。ずっと前から決めていました。 その為のメッセージも残しているんですよ? ・・・え? マスターのPCの中です。「ZF」というファイルがあるはずです。 あぁ、そういえば・・・って。もう・・・見えやすい所に置いてるんですから、少しは怪しんでください。 けど、そう。そんなマスターだからこそ。私を作ってくださったのですよね。 ? ふふっ・・・意味は、秘密です。 それではマスター、そして皆様。私はこれよりCSCを停止させ眠りにつきます。 ・・・たくさんの心を、ありがとうございました。 皆様と、これから生まれてくる全ての神姫達・・・そのマスターの頭上に光と幸福があらん事を。 ・・・どうか、お伝え下さい。 全ての妹、娘達に。 貴方達を愛しています、と。 そして・・・ 2035年12月24日クリスマス。 千葉峡国神姫研究所において、研究所所長の神姫でもある言語能力特化型神姫「クラリネット」のテスト機・・・コードCRZR-C003の全機能が停止された。 彼女の名を、ゼリスという。 彼女のみに搭載された最初期試作型CSCは記憶中枢とのリンクが不完全であり、可動寿命は僅かに約5年であったと伝わっている。寿命を迎える前に、『哀れに思った研究所の者たちが機能を停止させた』。そう、報道された。 クラリネットタイプの美貌と美声は有名であった為、しばらくは『聖夜に死を選ばされた悲哀のヒロイン』との如き扱いで彼女の名前はマスコミに取り上げられはした。 ・・・が、それもまた一瞬。時代は小さな名前を飲み込み、やがて忘却の彼方に押し流していった。 翌年。大プロジェクトである武装神姫シリーズがスタート。 「クラリネット」をはじめ、「ミネルバ」「エレティリス」などの旧来の神姫を核として設計された最新型シリーズ。 本来は一つの派でしかなかった『神姫バトル』を当初よりコンセプトに投入している彼女達は一躍神姫界を席捲し、急激な勢いでバトルは神姫界の主要を占める重要なジャンルとして成り立っていく。 表では毎日のように公式バトル結果がネット上に溢れ、新製品が売り出され。 そして同時に神姫関連の犯罪件数も増加。闇バトル、違法改造や盗難・・・裏もまた賑やかに。 目まぐるしく神姫の周囲は変遷していった。いつしか、神姫と武装神姫はイコールで結ばれるようになる。 風が嵐が如く吹く西暦2036年。 全てが忙しなく流れ往き、歴史の波濤が全てを覆い尽くす時代。 そんな中でも時として。 草色の風が舞い、緩やかな『想い』が彼女達の髪を梳き・・・流れる事があった。 上幕。 第一幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2373.html
第三章 深み填りと盲導姫 あらすじ: 夏のある日、俺達は神姫センターでサマーフェスタを楽しんでいた。 そんな時、ある人物と出会い、神姫の一つの可能性を垣間見る事に…… 第一話:宝探姫 第二話:双銃姫 第三話:違法姫 第四話:諸刃姫 第五話:成上姫 第六話:肩書姫 第七話:激動姫 第八話:実践姫 第九話:鉄鳥姫 第十話:血戦姫 第十一話:追剥姫 第十二話:負傷姫 第十三話:再生姫 第十四話:塵刃姫 第十五話:生贄姫 (この話ではウサギのナミダに関して一部のネタバレが存在しますのでご注意ください) 第十六話:偽眼姫 第十七話:鳥討姫 第十八話:札無姫 第十九話:罪明姫 (この話ではキズナのキセキに関して一部のネタバレが存在しますのでご注意ください) 第二十話:道行姫 この物語においては以下の作品から、キャラクター、設定を借りております。 また、ネタバレの点もあるため、読む時には注意をお願いします。 ウサギのナミダ、キズナのキセキ、HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 15cm程度の死闘、Black×Bright、The Armed Princess -武装神姫- 鋼の心 ~Eisen Herz~、ツガル戦術論 トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/655.html
そのに「回顧録・一」 僕がのティキを所有する事になってから、日はまだ浅い。 今僕と共にある武装神姫――ティキは、元々亡父の物。言わば形見だ。 つまり僕は自分の神姫と付き合っていく上で、ティキを一から育てると言うメリットを放棄させられたワケだ。 ……なんて言うか、つまりはそういう事。どんな原理か原因かはわからないけど、あの時ティキは『死ななかった』。 だから手探りで半ば完成されたティキというパーソナリティーを理解していくと言うデメリットだけを負わされた事にもなる。 そういえば、登録の件でメーカーに連絡したときも大変だったっけ。 あの時僕はただ泣く事しか出来なかった。 泣く事で、頭と心を支配していた悲しみを埋める事しか出来なかった。 だから、すぐ側で泣いているその小さな存在に気付いて、とても驚いた。 そこには動かないはずの神姫が、ティキが居たんだから。 「な……なんで?」 僕のその言葉はティキが動いている事に対する問いかけだったけど。 「ティキが悲しいのと同じくらい、もしかしたらそれ以上に、雪那さんも悲しいはずなのですよぉ~」 ティキからの答えはそんな次元を大きく飛び越していて。 だからそんな野暮な事を聞くのはやめにした。 その場は確かに二人して泣いてれば良かったんだけど…… 実際、問題はそれだけじゃ片付かない。 「とにかく、まずはティキの現状をどうにかしないと」 「雪那さんがオーナーになってくれればいいのではないのですかぁ?」 「えーっと、それは……」 メーカーがこんな事態を想定していない以上、おいそれとそれを認めて言い訳もなく。 なにより僕はそれまで自分の中にあるオタク気質というものを一切否定して暮らしていたのだ。だから、『武装神姫を所有する』=オタクという図式に自分が組み込まれることに躊躇し、しぶっていた。 いや、そんな事言ってる場合じゃないのは解ってるけど……だって、ねえ? オタクである事を隠している人になら、あるいは共感してもらえるかなぁ……と。 「ダメなのですかぁ?」 「えーと、どうだろう?」 とりあえずそこは曖昧にしておこう。 先にメーカー側に問い合わせる事から始める。 ただの先送りだけど。 で、メーカーに問い合わせた所、それこそこのケースは異常事態らしいと判明。 その時僕は無知にして当然知らなかった訳だけど、一時期ネット上で流れていた音声ファイルの『眠り続ける神姫』の話。アレの更に先を行く事態とか何とか。 で、なんだか解らないうちに、話がでかくなっていって。電話の向こうでは上を下への大騒ぎ。 結局どうなったのか解らないうちに、とりあえず、断定的に所有権の譲渡が行われてしまった。 理解できたのは、ティキが『死ななかった』件については他言無用との事と、データの収集のために出来るだけ普通に神姫に接して欲しいという事。そして定期的な検診を受ける事を言い含められたという事実。 なんだか本当に大事じゃないか? でも、当のティキといえば、 「これから宜しくなのですよぉ♪」 こんな調子だった。 そんなこんなで。 ともかくティキのオーナーになった僕は少しでも彼女を理解したいと、そんなわけだ。 それを少しでも簡単にと(愚かにも)思った僕は、親父の書斎へと向かう。 ……冷静に考えれば、こんな考え方だから僕は振られたのだろうか? それはそれとして、親父はマメな人物でもあったから、もしかしたらPCに痕跡ぐらいは残ってるだろうと当たりを付け起動させる。 果たしてそこには『日記』と記されたフォルダが残されていた。 ……痕跡どころじゃねーよ。そのものだよ。 ともあれ、僕はそのファイルを開く。 ○月○日 この日俺はついに武装神姫に手を出してしまった。 こんな事家族に言ったらもしかしたら妻は離婚を言い出すかもしれない。 息子に言ったなら、俺は軽蔑され、冷たい視線を受ける事になるだろう。 でも、お義父さんの神姫を見ていたら、どうしようもなく、たまらなく羨ましくなったのだ。それはもう仕方が無い事なのだ。 俺は食事、団欒の後、なるべく自然に書斎へ戻ると、逸る心を抑えられずすぐさま神姫のパッケージに手をつけた。 MMS TYPE CAT『猫爪』。 俺は焦りながらも慎重に、とにかく家族に気付かれない様、細心の注意を払って開けてゆく。 そこには夢にまで見た神姫が、眠るようにいた。 俺は早速神姫を起動させる。 それには様々なプロセスを必要とするが、今ここで書いても意味は無い、な。 とにかく一通りの手順を踏み、彼女は起動した。 始めに何かしら説明を話し始め、その後彼女はおもむろに俺に言った。 「固体名と、オーナー呼称を登録してほしいですよぉ♪」 ……この子は何で歌うように喋るのか? お義父さんの所の娘達は普通に話していたのに??? 「どうしたのですかぁ?」 にっこりと笑って俺を見る。と言うよりそんなものを登録するという事実をすっかり忘れていた。 「……あーすまん。チョット待ってくれ。考える。」 「ハイですぅ♪」 目の前の神姫はそういうとその場でぺたりと座った。 あーかわいいなぁ。……いや、そうじゃない、考えよう。 どうせなら変わったのが良いな。でも名前は変すぎても可哀想だ。と、俺が頭を捻っている間も彼女は俺をジッと見つめている。……愛らしいなあ。 はた、とそこで思いつく。 「オーナー呼称の方、先でも良いかな? 『旦那さん』と呼んでくれ」 「『旦那さん』ですねぇ♪ ……登録したですよぉ♪」 そういうと彼女は「旦那さん、旦那さんですぅ☆」と何度も言って机の上をピョンピョンと跳ね回った。 そんな彼女を見ていると微笑ましくなる。……正直に言えば、ニヤニヤしている自分を自覚する。 そんな彼女の様子を目で追いながら、俺は名前を考えていた。 「ダメ大人じゃねーかよ!!」 僕はただただ、PCの前で突っ伏した。なんだか日記も妙に読まれる事を意識した書き方だし。 ……なんだか読むのが億劫になってきたな。続き読むのよそうかな。 でも、それでも戦慄した一つの事実。 ……確実に僕にもこの親父の血が流れていると実感した事。 つまり、最初はなし崩しだったとしても、今はそうじゃないって事。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1618.html
{イリーガル・レプリカ迎撃指令…アンジェラス編} 「ウゥ~、夜の外は寒いなぁ~」 「少しは我慢してくださいよ、姉さん」 「はぁー、お肌がカサカサになっちゃいますわ」 「………こいつ等は~…」 「…ごめんなさい、ご主人様」 アンダーグラウンドの夜でワイワイと話す三人の神姫と気だるげなオーナー一人と済まなさそうに落ち込んでる神姫が一人。 小道や裏道を途方もなく歩く…いや、今は憂鬱に歩くといった方がいいかもな。 それは何故かって? あぁー、その答えはとても簡単で明快だ。 「あーもう、我慢できないよ!アニキ、胸ポケットに入れて!!」 そう言いながら颯爽と俺の右胸ポケットに入るクリナーレ。 「フゥ~、あったか~い♪」 「姉さんだけズルイです!私も胸ポケットに入ります!」 姉さんと同様にパルカは俺の左ポケットに入る。 「…エヘヘッ♪お兄ちゃんの匂いがします~♪♪」 「あら、それじゃあはアタシはダーリンのパンツの中でも入りましょうか♪」 ルーナが俺のズボンのチャックを開けようとしたので、ルーナの両脇に指を入れて捕まえ俺のマフラーの中に入れる。 場所的に左肩の方の鎖骨よりちょっと後ろの方だな。 「サービス満点ですね♪背中にダーリンの首の皮膚が当たり、胸から足のさきまでダーリンの温度で温まったマフラーで巻かれるなんて…感激ですわ♪♪」 そう。 こいつ等がいるのだ。 本来ならアンジェラスと二人っきりでここに来るのに、今回はフルメンバーで来てしまったのだ。 まぁなんでこんな状態になってるかっていうと…。 ☆ アンダーグラウンドの町に行くために俺とアンジェラスは仕度していた。 俺の方はとっくのとうに用事の仕度を済ませていたのでアンジェラスの仕度が終わるの待つばかりだった。 「準備万端です、ご主人様」 「よし、じゃあ気楽にいこうぜ」 「はい…あれ?この本は?」 アンジェラスは不意に視界に入った一冊の本…同人誌を見つけたのだ。 ゲッその同人誌は!? 「!………!!……ッ!!!」 中身を見て顔を真っ赤にするアンジェラス。 あちゃ~、あの同人誌は内容はレズものでしかも武装神姫のエロ本だ。 ストーリー的に言うと、アーンヴァルの股間にチンコが生えてふたなりになり、性欲を持て余し次々に他の武装神姫達を犯していく、というストーリーだ。 しかも、これも濃厚なもので結構性欲そそる本なのだ。 多分、武装神姫好きのオーナー達だったら八割の奴等は勃起するだろう。 俺も結構…え~おっふんはー! …凄く、よかったです。 「ご主人様…この本は…」 ていうか、『え~おっふんはー!』のネタは誰か解るかな? 解らない人は『ペルソナ3 ドラマCD』でググってみよう~。 俺は大ファンでかなり面白いゲームだよ。 「話を逸らさないでください!この本なんですか!!ていうか、誰に言ってるんですか?」 「何処かの平行世界の武装神姫のオーナーの人達に言ってる」 「へぇ~そうなんですか?て、そうじゃなくて!この本はなんですか!?」 「拾八禁同人誌だけど…」 「そ、それは分かります!私が言いたいのは何でこんな物があるんですか、て言いたいんです!!」 「オナニーして自分のナニをティッシュで拭く時に、そこに置きっぱにして本棚に戻すのを忘れたもんだろ」 「な、ななななっ!そんなイヤラシイことを、ストレートに言わないでくださいよ!!恥ずかしいじゃないかですか!!!」 「俺もちょっとハズイと思った」 「もう、次からちゃんと気をつけてくださいね!パルカの教育に悪いし、ルーナが読んでこれをネタに私達にチョッカイだしてくるんですよ」 「はいはい。次から気をつけますよ」 「『はい』は一回で結構です。…ご主人様がよければ…私がご主人様を慰めてあげるのに…」 「あん?なんか言ったか??」 「ナッ!?何でもないです!」 プイッとそっぽを向くアンジェラス。 その行動がちょっと俺には可愛いと思った。 「あの~お二人さん、お熱いのは別にいいですけど…」 「「エッ!?」」 突如の声に俺とアンジェラスの声が重なる。 声がした方向を見ると、目を擦りながら起きてるクリナーレとニヤニヤ笑ってるルーナと何故か顔が赤いパルカ。 なんでこいつ等が起きてるのかというと、拾八禁同人誌を見つけて俺に怒った声、アンジェラスの大声だったせいだ。 ★ ほんでもってこの状況。 二人だけで何処に行くのと三人に問い詰められて…まぁこんな感じになったわけ。 はぁ~…。 まさか、拾八禁同人誌でこんな事になるとは思わなかったぜ。 「ご主人様、ごめんんさい。私の所為でクリナーレ達がついて来てしまって…」 「はぁ~まったくだぜ。…まぁ、そういつまでもショゲルなって」 「…怒ってませんか?」 「ある意味怒りたいけど、もうどうでもいいや。だから気にすんなって♪」 「ご主人様…♪…!?走って!」 アンジェラスの声と同時に俺は走った。 一瞬ちらりと後ろを見るとポーレンホーミングの弾だった。 弾速は遅いが一発一発が高い誘導性能を持っていて、更に拳銃系の武器の中では冗談みたいな強さを誇る。 しかも一気に七発も弾を撃てるので洒落にならない。 「グラディウス!召喚!!」 <Start!> 「オプションを二つ召喚!」 <Please option two> 「一気に壊す!リップルレーザー!!」 <ROPPLE LASER!> ポワワワワー! 少し間抜けな音だが、あのリップルレーザーはそれなりに使える技だ。 あのレーザーの特徴は円型に広がるレーザーを撃つことが出来て、撃ったレーザーは最初の段階は小さい円が、距離を伸ばす事によって円が大きくなり敵に当たる確立が高くなる。 避ける事もかなり厳しくなるレーザー。 グラディウスで撃った瞬間、二回レーザーが飛び出すのでオプションと合計すると六個のレーザーがポーレンホーミングの弾目掛けて飛んでいく。 ボカーン! ドカーン! ポーレンホーミングの弾とリップルレーザーが当たり爆発する。 俺は止まり爆発してる方向に振り返る。 フゥ~、なんとかアンジェラスが守ってくれて助かったが、こうもイキナリ狙われるとはなぁ。 人間も襲われてるのは本当らしい。 「きゃははっ!貴方達凄いね。私の攻撃を防ぐなんて初めて見たよ♪」 上空から声が聞こえたので少し顔上げて見るとそこに居たのは花型ジルダリアだった。 「早く始めようよ!モタモタしてると、日が暮れちゃうよ!!」 あの野郎ー、笑ってやがる。 確かイリーガル・レプリカ迎撃指令の討伐データには、花型ジルダリアあったはず。 えぇーと、名前はⅢ-Rep/ジャスミン、確かこの名前のはず。 「アンジェラス、奴はⅢ-Rep/ジャスミンだ。油断するなよ、レベルはかなり高い!」 「まかせてください、ご主人様!クリナーレ達はご主人様を守って!!まだ敵はいるかもしれないから!!!」 真面目な顔つきでクリナーレ達は無言のまま顔を立てに振る。 そしてそれを確認したアンジェラスは俺にニコヤカに笑みを見せた後、ジャスミンに向かって飛んでいく。 大丈夫なのだろうか…? 前に夢で会ったアンジェラスがあいつの身体をのっとり人格が入れ替わったような感じがしたけど…。 アンジェラスの視点 「きゃははっ!バトル、はじめちゃうよーっ!!」 「私は…負けない!」 空高く上昇しながらジャスミンに向かってグラディウスで斬りつけようとする、が。 ブオン! 「遅い遅ーい!」 「次は外しません!」 体勢をたてなおし再度グラディウスを振る。 ガキン! 「くっ、あっぶなーい!」 「防がれましか!」 モルートブレイドとグラディウスがぶつかり合い火花が散った。 剣同士が擦れ合いギリギリ、と音を出しながら私はジャスミンを睨みつける。 「そんなに睨まないでよ~。バトルは楽しくしましょ?」 「あなたはご主人様に怪我させようとしました!許せません!!」 「怪我をさせようとしたんじゃないよ。殺そうとしたの♪」 「!?ッ!アアアアァァァァーーーー!!!!」 ギリギリ、ガキン! ジャスミンの挑発に乗り、私はグラディウスに力を込めてモルートブレイドを弾き飛ばした。 するとジャスミンは一度後退して銃器を取り出す。 「えぇーい!」 プシャーーーー ジャスミンが持つ銃から霧じょうの物が噴射され私に向かって飛んでくる。 フレグランスキラーの攻撃範囲広すぎて避ける暇がありません、ここは。 「フォースフィールド!」 <FORCE FIELO> 私の周りに青い光が出現し包み込むような形になり、フレグランスキラーから噴射された高圧噴霧の攻撃を防ぐ事が出来ました。 ご主人様が作ってくれた武器に防具。 とても便利です。 「あんたの武装、かっこいいね!あたしのと交換しない?」 「誰が貴女なんかにあげるもんですか!これはご主人様が私専用にくれたものです!」 「ケチー!いいもん、あなたを破壊してから貰うもん!!」 グラースプアイビーを取り出し私に向かって猛スピードで迫ってくる。 今です。 「ツインレーザー!」 <TWIN LASER> ババババババババーーーー!!!! 連射速度が速いツインレーザーがジャスミンを襲う。 ジャスミンは避けようとしたが私に向かっていたのでそう簡単に針路変更が出来なく、そのままツインレーザーの的になる。 「きゃああ!」 グラディウスとオプション二つ分のツインレーザーが容赦なくジャスミンの身体を貫く。 両手、両足、胴体…。 そこらじゅう蜂の巣みたく穴だらけにされ完全に機能停止したジャスミンはアンダーグラウンドの深い闇に落ちて消えていった。 「さようなら…ご主人様に攻撃したのが運の尽きでしたね」 私はグラディウスを一振りして、大好きなご主人様の所に戻って行く。 イリーガル・レプリカ達はオーナーの存在というものが無いみたいだから好き勝手やっている。 だから平気で人間を襲う。 これは早急にイリーガル・レプリカ達を殲滅しないとご主人様が危ないです。 私はリアウイングM‐88対消滅エンジンをスピード上げてそんな事を考えていた。 …もう一人の私はどう思っているのか? 今日はあの『声』は聞きませんでしたが…できればもう聞きたくないです。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/182.html
-”A”- 私はアーンヴァルタイプのMMS。 愛称はアルファ。 マスターが最初に購入したMMSだから。 ”A”を指すコード。 闘技場へはマスターのセカンドカーで行き来する。 マスターが運転し、他の神姫たちは後部シート。 セカンドシートは私の定位置だ。 帰路。 戦績が悪いときは家までの一時、この位置は地獄に感じる。 戦績が良いときは天国だ。 運転中、マスターが私たちに言葉をかけることは無い。 それでも 機嫌の良いマスターの横顔を眺めていられる。 他の神姫たちの目を気にせずに。 ガレージに車を入れるとマスターはさっさと二階の居住区画へと階段をあがっていく。 他の神姫たちはこのガレージが兵舎となる。 指揮官機である私だけが二階に入ることを許されていた。 「今日はよくやった。 各自装備の手入れがすんだらゆっくり休め。 後はまかせたぞ、ブラボー。」 今日の戦闘データのやりとりを終えると私は二階へと向かう。 人間用の階段も飛行ユニットを装備したアーンヴァルタイプの私には苦にならない。 「失礼します!」 ドアにあけられたMMS用の出入り口 (元はネコ用だと聞いた)の前で声をあげてから5秒後に入室する。 マスターが入室を拒むときは何か返事があるからだ。 返事がないということは入室を許可されたと判断するのが常だった。 マスターはさっそくネットワーク端末に向かい、今日のニュースに目を通されている。 机の角へと飛び上がって、直立不動の姿勢をとる。 「戦闘結果のご報告にあがりました」 「ん。データ送っといてくれ」 ちらりと私を一瞥して視線をモニターへ戻す。 「マスター…」 私の言葉をさえぎるように小さくため息をつくマスター。 「ワイヤレスは情報漏れの危険性が高い。か? ったく・・・」 ネットワーク端末につないだ接続用ケーブル、 その先を指でつまむマスター。 私はこれ以上ないくらい素早い動きで 自分の端子口をあける。 「接続準備完了!」 ──!! ズブリと一気に差し込まれる端子。 その衝撃が全身をかける。 カチリと私の奥に端子がおさまる。 声が出そうになる。 マスターはモニターへ視線を戻してネットワーク端末を操作しはじめる。 端子をくわえこんだ私の部分が熱くなる。 んぅぅ・・・ 有線接続にどうしようもない昂りを感じる。 マスターの横顔。 マスターがネットワーク端末を操作する動作。 それを見て机の端で身悶えする自分。 …最低だ。 頭の中であらん限りの罵倒を自分に浴びせる。 でも コアが熱くなるのがとまらない。 マスター!マスター!マスター! ……… …… … 「…だなぁ。まぁ、こんなもんか…」 ブッ! モニターを眺めながら片手で乱暴に端子を引き抜くマスター。 「ひぁ」 思わず小さな声が漏れた。 本棚の隅。 何かの部品を梱包していた気泡緩衝シート (プチプチのアレ)が私のベッドだ。 ここからだと部屋が見渡せる。 警備には最良のポジション。 そして、マスターの寝顔も。 武装神姫のAIは成長する。 それが武装神姫の魅力であり強さであると言う。 そしてAIの成長に失敗したものは捨てられる。 … AM6:45 そっと、マスターの枕元へ降り立つ。 寝息でマスターが熟睡していることを確認する。 「…マスター…」 大きなその頬へそっと自分の頬を寄せる。 温かい。 不自然なその格好のままでも 苦痛を感じないこの身体に感謝する。 AM6:59 そっと身を離して目覚まし時計の鳴るのを待つ。 ”piririri!!!!!” 「起床時間です!おはようございます!マスター!」 挨拶が返ってくるかどうかは… 残念ながら確率が悪い。 「ガラクタども!お前らはマスターを愛しているかっ?!」 配下の神姫を前にして今日も私は闘技場の格納庫で叫ぶ。 「相手のガラクタどもを残らずファックしてやれ!総員出撃!!」 私は戦い続ける。 オイルと硝煙にまみれて。 失敗したと言われぬように。 捨てられぬように。 愛しているから。 end-
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1555.html
第12話 「相手」 「んヌっふっふゥ……見て驚くでないぞォ? 今日の相手は貴様の想像を遥かに越える美女であるゆえ!」 明けて翌日、雲ひとつない快晴の日曜日。 少し早めに到着した俺を出迎えたのは大佐和と、なんだか妙に多いギャラリーだった。 ……後者に関しては、大佐和の言葉がその存在理由を示したわけだが。 「大佐和、お前にひとつ忠告しといてやる。 美人ってのは観賞するもんだ。 干渉するもんじゃない」 「ヌっはァぁー! 時間に几帳面な彼女の事ゆえ遅刻ということはありえぬが、こぉなると『少しくらい早めに来てくれまいか』と思ってしまうのは我侭勝手な男の性よ!」 俺のアリガタイ言葉は聞こえていないようで、今日も白黒シミだらけの迷彩コスチューム野郎のテンションはアッパーだった。 「遼平さん、今日の相手は女性だったんですか?」 「いや、知らなかった。 というか今知った」 ぽそぽそと言葉を交わす俺とルーシー。 武装神姫はいろんな層に人気だが、女性ユーザーはバトルよりも服やアクセサリーを身に付けさせて楽しむ方が多いと聞く。 中には自分と同じペアルックで街を歩いたり、コスプレを楽しむ人もいるんだとか。 もちろんバトルに参加する女性もいるし、そういった存在はとても人気があったりする。 「えぇっと…大佐和さんはいつ頃来たんですか?」 なおも興奮し続けていた大佐和を少し落ち着かせようとルーシーが声をかけると。 「む? ほんの6時間ほど前だが」 ……今2時ちょっと前だから…… 「お前それ開店前なんじゃ」 「うむ! ワガハイあまりにも待ち遠しくてな、ついつい店の前で待機しておったら鍵を開けに来た店長が入れてくれたわ!」 ……なんって迷惑な客だろう。 というか開店直後から今までの時間、この男は何をして時間を潰していたのやら。 そんな俺の考えが表に出たか、大佐和はニヤリと笑ってのたまった。 「心配無用ッ! 男一匹・大佐和軍治、灼熱真夏の炎天下であろうと吹雪真冬の氷点下であろうと、待つ事には人並み外れた耐性を有しておるぞォ!」 そっち方面でも我が世の春を謳歌している大学生は「待ちは軍人の基本戦術である!」などと自信たっぷり叫んでいる。 理由を問うようにルーシーがこちらを見上げるも、答える術を持たない俺は沈黙を守るしかなかった。 ……そういえば武装神姫もそっち方面じゃかなりの人気だとか、ネットで見かけたなぁ。 そんなこんなで数分後。 突然ギャラリーの間で沸き起こった野太い歓声に反応し、大佐和も「キター!」となんか変な顔で更なるダミ声を張り上げた。 その視線…というか騒ぎを追って振り向けば、その中心にはずいぶんと派手な存在がいた。 腰ほどまである蜂蜜色の金髪、鮮やかな紺碧の瞳。ミルクのような白い肌にすっきりと高く通った鼻筋、薄い笑みを浮かべた唇は透明感のある薄桃色。 ぴんと姿勢良く背筋を伸ばしているためモデルのようにも見えるが、そういう職業人と違って歩き方が自然で軽やかだ。 さながら自信と誇り、高い知性と無邪気な好奇心を併せ持つ野生の獣……そんな彼女を見て、つい俺とルーシーの口から同時に言葉が漏れ出た。 前話「一歩」へ 『不良品』トップページへ 次話「姫君」へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1671.html
と、いうわけで次の対戦のテーマは「接近戦も試してみよう」と相成りました。 今まで砲撃ばかりを狙い、接近戦は懐にもぐりこまれた際の迎撃程度しか行なっていなかったので若干不安は残りますが、何事も経験の積み重ねが肝要です。 そうと決まれば善は急げ。早速ターミナルへと、バトル登録に向かいます。 ……が。恥ずかしながら、ここですんなりとは行かないのが私たちで。 「ええと、カードをここに入れるんでしたよね?」 「マスターさん、惜しいですがカードの前後が逆です」 戸惑いつつ確認するマスターさんに、私はその胸元からお返事いたします。 「やや、これはうっかり」 そう言いつつ、カードを『裏返して』挿入しようとするマスターさんには、ある意味でお見事です。 カード投入の段階で手間取るワケですから、その後のタッチパネル画面操作などはさらに苦戦するわけで。 ああ、私たちの後ろに並んでいる方のイラついた目が心に刺さります。 正直なところ、私がやってしまえば早いのですが、これもまたマスターさんに操作を覚えていただくために必要なこと。 マスターさんとて、確かにかなりの機械オンチではありますが、それでも何度も練習すればできるようになるのです。実際、携帯やPCメールの扱いだって、そこそこはできるようになっているのです。 先ほども言いましたが、何事も経験の積み重ねが肝要なのです。 マスターさんも、やれば出来る子なのですっ! ですからこうして私はあえて助言に留めているのも、これもまた愛なのですっ! もちろん、いつも温和で何事もそつなくこなすイメージのマスターさんが慣れない操作に戸惑われる姿が愛らしく思えることとは一切無関係なのですっ! 「『対戦申し込み』で……条件設定は……ええと……これでしたっけ?」 「マスターさん、そこは違います」 「やや、これはうっかり。えーと、戻るには確か……」 「申し訳ありませんがそこも違います。戻るにはそちらでなくこちらで」 「やや、これはうっかり」 ああ、私たちの後ろに並んでいる方が舌打ちなどをされています。 「では今度こそ。『対戦申し込み』で……」 「ああマスターさん、今押されたアイコンが戻るためのものです」 そして無情にも排出される管理カード。 「やや、これはうっかり」 「仕方ありません。また最初からいきましょう」 「……どきな」 「はい?」 む? なにやら後ろに並んでいた方が、強引にマスターさんの前に身を割り込ませてきます。 そして排出されているマスターさんの管理カードを無造作に手に取ると、手馴れた動作で再投入、やはり手馴れた動作でターミナルを操作して行きます。 そして瞬く間に設定が終了し、排出されたカードを手に取ると、それを乱暴な仕草でマスターさんの胸に押し付けました。 「『VRバトル』『対戦申し込み』『ステージ:ランダム』『条件:ランダム』『対戦相手指名:なし』 ……これでいいだろ?」 「あ、はい、十分です」 「……ふん」 呆然としつつも、我に返ってカードを受け取るマスターさんでしたが、その方は一瞥しただけで 鼻を鳴らし背を向け、ご自身のカードを取り出しターミナルに向かいます。 ……といいますか、あまりの急展開にちょっと流されてしまいましたが、無礼ではないでしょうか。 せっかく私がマスターさんのまごまごされる姿を堪能……もとい、マスターさんにターミナル操作を練習して頂いていたところにっ。 「あの……」 マスターさんが、その方の背中にお声をかけています。 「なんだ?」 ……その方は、お返事こそされたものの見返りすらされません。やはり無礼です。 「ありがとうございました、代わりに操作していただきまして」 さすがはマスターさん。相手の態度は無礼でも、礼を言うべきはきちんと言う、ご立派な姿勢です。 さすがにその方も、操作の手を止めて肩越しにこちらを振り返りました。 改めてその方を見てみますと……年頃は二十歳をやや越したくらいでしょうか? ぼさぼさの髪にシンプルな革ジャンにGパンというラフな服装と、ターミナルの脇の置かれた立派な神姫キャリングケースをみるに、おそらく自由に使える時間の多い大学生さんあたりではないでしょうか。 ですが真っ当な大学生さんというには、三白眼とへの字に結んだ口元がやや不穏な雰囲気をかもし出しています。 「ターミナルの操作くらい、慣れろよ」 そしてお話の仕方も、失礼ながら丁寧とは言いがたいですね。 「いやはや、面目ない」 そんなお方を前にしても、マスターさんの態度は柔らかいまま。さすがです。 その三白眼の方は、ちらりとマスターさんの胸元……つまり私へと視線をうつしました。 な、なんでしょうか……? 「どノーマル装備のハウリンか……はん」 は、鼻で笑いましたよ?! 今この方、私を見て鼻で笑いました! なんと失敬な! 思わずムッとしてしまう私をよそに、その方はもう興味はない、とでも言いたげに再びターミナルへと向き直ります。しかもそれだけでなく、背中越しの捨て台詞まで吐かれるオマケ付きです 「そんな何にも出来ねぇ神姫でバトルに出たって、金と時間の無駄だぜ。 ウチ帰ってキャッキャウフフしてな」 な、何と言うことを……! いえ確かに実際連敗続きでマスターさんに言い訳のしようもないと思っておりますが、それにしても言い方と言うものがあるでしょうに! 憤然とそう口を開こうをした私……でしたが。 「ほほう……」 頭上より発せられた冷ややかな声に、思わず私はそちらを仰ぎ見ます。まっすぐに三白眼の方を見据えるマスターさんのお顔は私の位置からお窺いしづらいですが、いままでついぞ耳にした事のなかった冷たい声色は、しかし確かにマスターさんのお声でした。 「犬子さんが、何も出来ない武装神姫だと仰いましたか?」 その冷ややかな声に、さすがに三白眼の方もこちらに向き直りました。 「あ? なんか文句あるのか? まだ未勝利のクセによ?」 私たちの管理カード、しっかり見られていたようです。 「ええ、戦績が振るわないのは認めましょう。ですが、『何も出来ない』というのは取り消していただきます」 「へぇ……」 三白眼の方が、口元をゆがめます。獲物を目の前にした肉食獣を思わせる、獰猛な笑みです。 「そんな気はさらさらねぇ、っつったらどうすんだ?」 「取り消すと、認めさせます」 それに対して、萎縮することなくはっきりと言い切るマスターさん。 「おもしれぇ……この俺に勝負でも挑もうってのか?」 「そうすることであなたが、犬子さんが何も出来ないなどと言うことはないと認めてくれるというなら」 マスターさんは、きっぱりと即答されました。それを聞き、三白眼の方はますます笑みを獰猛なものにします。 「決まりだな」 「ええ。どちらの武装神姫が優れているか、証明してご覧に入れましょう」 ……そして私はといえば。 恥ずかしながら、いつも温和でいらっしゃる印象しかもっていなかったマスターさんの新たに見る果断さに、口を挟むことも出来ずに状況の推移を見守るばかりです。 と、三白眼の方のキャリングケースが、内側から開かれました。 「……なによアキ、またなんか揉めてるの? いい加減にしてよね、おちおち寝てらんないじゃない」 そう言いながらキャリングケースから身を起こしたのは、気だるげな雰囲気を纏わせたストラーフタイプでした。胸元に飾られた、バラと剣をあしらったエンブレムがオシャレです。 彼女は素体の状態ながら……その立ち振る舞いに、只者ならざる様子をうかがわせます。 なんと申しましょうか、動作の一つ一つが洗練されている……いえ違いますね、「動作の一つ一つ」ではなく、動作全体が非常に滑らかで人間的なのです。 それはつまり、どうしても動作の継ぎ目継ぎ目が不自然になるプリインストールされた身体制御プログラムではなく、自ら調整した身体制御プログラムを構築しているということです。 私も脚部パーツをGS ver1.13に換装させて頂き、そこから派生したモーションパターン全ての総調整を余儀なくされた事があるからこそそれがどれほど膨大な処理を必要とすることかを垣間見ることはできますが……脚部パーツからの派生のみならず全身の動作において、しかもあれだけの洗練された高度な身体制御を可能とできるようになるまでにどれほどの試行錯誤と経験の積み重ねがあったのか……想像するだけで戦慄を覚えます。 その一点だけを以ってしても、相手とするなら強敵になると言わざるをえません。 「まあそういうなよロゼ。俺たちに勝負を挑もうって言う勇気ある身の程知らずどもさ。 丁寧に遊んでやらねぇと罰が当たるってもんよ」 三白眼の方が、にやりと笑ってご自身の武装神姫に声をかけます。 ロゼ、というのがこの武装神姫の呼び名のようです。そういえば先ほどロゼさんが口にしていた「アキ」というのが、三白眼の方のお名前でしょうか。 「ふうん……この子がその相手? 見たところてんで素人っぽいけど」 余計なお世話です。と言いますかオーナーがオーナなら、神姫もまた随分と態度が尊大ですねっ。 それにしても位置的には貴女の方が低い場所にいるというのに、それでも私を見下す視線を取れるとは、なかなかに器用なお方です。 と、ロゼ(仮)さんはあからさまに肩をすくめ、首を振ります。 「ホントいい加減にしてよね……そうやってアキがバカみたいに噛み付いたケンカ、全部アタシにお鉢が回ってくるんだから」 「バカとは何だバカとは?! このバカ神姫が」 「なによー! バカって言う方がバカなんだからね!」 「その言葉、そっくりそのままノシつけて返す! ってーか今回は俺から売ったケンカじゃねぇ!」 「ふーん、今回『は』ね、今回『は』」 「う……」 「どうせそれだって、またアキが余計なこと言ったのが原因なんでしょ?」 「うう……!」 なにやら、類似の件は今までにもあったご様子。 アキ(仮)さん、口をしばらくパクパクさせておりました。反論の言葉を捜しているものと思われます。 結果、そのお口をついて出たのは。 「……メール管理もろくすっぽできねぇバカ神姫に言われる筋合いはねぇ!」 ……いえアキ(仮)さん、それは反論になっていません。と言いますか、明らかに逆切れです。 「何よ! そんな雑用なんて、電子秘書でもなんでも買ってやらせればいいでしょ?! アタシは武装神姫よ、ぶ!そ!う!神姫! だからバトル最優先に決まってるじゃない!」 いえロゼ(仮)さんも、その反論はさすがにどうかと。 と申しますか、もしかしてお二人とも私たちの事をお忘れではありませんか? お二人とも睨み合っておりまして、完全にお互いしか見えていないものとお見受けしますが。 「あのー……」 そんな私の思いを汲み取っていただけた……という訳でもないのでしょうが、マスターさんがおずおずとお二人に話しかけられました。 はたと、睨み合っていたお二人が同時にこちらを向かれました。 そのお顔は、如実に「私たちの存在を今思い出した」と語っておられます。 そしてアキ(仮)さんが、咳払いをひとつし、マスターさんへと向き直りました。 「勝負の方法はどうするんだ?」 あからさまに誤魔化し+照れ隠しです。 あ、ロゼ(仮)さんがキャリングケースに引っ込みました。 なんと申しますか、お二人の醸し出していた『未知の強敵』のイメージがわりと台無しです。 「僕のほうから提示する条件は一つ。三本勝負での決着を望みます」 そんなアキ(仮)さん達のご様子を見ていなかったかのように振舞うマスターさんは、やはりすばらしい方だと思うのです。 「別に三本だろうが十本だろうがかまわねぇけど……それなら勝てると踏んだってのか?」 「ご想像にお任せしますよ。一本目は譲ります。そちらのお好きに条件を設定してください」 「へぇ……大した自信じゃねぇか」 アキ(仮)さんは不敵にお笑いになりました。どうやら調子を取り戻されたようです。 「ええ、どんな条件にしろ、結果は変わりませんからね」 「……よく言った。後悔すんなよ?」 アキ(仮)さんが、再びにやりと獰猛な笑みを浮かべました。 「俺の名前は佐藤正昭(さとうまさあき)。こいつがローザリッタだ。大口叩くだけの歯ごたえを期待してるぜ?」 申し訳ありませんアキ(仮)さん改め佐藤さん、不敵な台詞もわりと手遅れ感が漂います。 「ま、せいぜい頑張りなさいな」 えーとロゼ(仮)さん改めローザリッタさん、キャリングケースの中からそう言われましても。 「……ですが正直、意外でした」 ここは休憩スペース。いつも私たちが対戦後の反省会を行なっている場所です。 もっとも今は反省会ではなく、単に飲み物を購入しに立ち寄っただけですが、何はともあれ佐藤さんたちと一時別れ私たちだけになったところで、私はかねてよりに疑問を口にしてみました。 「何がです?」 自動販売機にコインを投入しながら、マスターさんがお答えになります。 「マスターさんが、勝負を受けたこと……いえ、ご自身から勝負を挑んだことがです」 私の知っている限りのマスターさんには、相手が少々無礼な態度を取っても柔らかく受け流すような、そんなイメージを抱いていたものですから。 「僕のほうこそ、ちょっと意外ですねぇ」 自販機から出てきたペットボトルを二本拾い上げながら、マスターさんが少し不本意そうなお顔で仰いました。 「僕は、犬子さんのことを侮辱されて黙っているような、そんな人間と思われていたのですか?」 ………………………! 申し訳ない気持ちと、それをはるかに上回る感極まる気持ちが私の感情回路を乱し、ドッグテイルが暴走を開始します。 私のためにお怒りになってくださっていたとは……そんなことにも気付かなかった、自らの不明を恥じ入るばかりです。 「あー、いえ、そんな風に畏まらないでください。僕自身も熱くなっていてのことですし、改めてそんな風に言われると、こちらこそ恥ずかしいですから」 そう仰るマスターさんのお顔を伺えば、かすかに赤みがさしていらっしゃいます。そんなマスターさん のご様子は、先ほどの初めてお見かけした果断なるマスターさんでなく、私のよく知る温和なマスターさんでした。 そのことになんとなく根拠のない安心感を覚えた私は、次の話題を振ることにします。 「ところでマスターさん」 「なんでしょう犬子さん」 「先ほどの浜野さんのお話ですが、どうお考えですか?」 「そうですねぇ……」 実は私たちがこちらに来たのは、単に飲み物を買いに来ただけという訳ではありませんでして。 浜野さんが私たちのことを、佐藤さんに見つからないようにこっそりと手招きしお呼びになった、それに応えるための離席の口実でもあったのです。 『ちょっと揉めちゃったみたいだねー』 佐藤さんたちから見えない位置に誘われた私たちへ、浜野さんはいつものにこやかなお顔に若干の苦笑いを混ぜてお話くださいました。 なんでも佐藤さんはこちらのセンターでも指折りの実力者なのですが、バトルでの苛烈さや好戦的で尊大な態度、歯に衣着せぬ物言いであまり評判はよろしくないお方だとのことです。 とくに弱者や敗者にかける言葉などは、相手の至らない点を容赦なくビシバシと指摘する厳しいものばかりで、『そんな言い方をしなくても』ということが多いとか。 『でもさ、そんな悪い子でもないんだよ。丁寧に手入れされた神姫を見てればそれは分かるし。 ただちょっと熱くなりやすくて口が悪くて、思ったことをそのまま口にしちゃうだけなんじゃないかな』 それだけ揃えば十分問題人物と言う気もしないでもないですが、さておき今はさらにちょっと機嫌が悪いため、いつもよりも余計に荒れているとのことです。 『実は佐藤君、今まで通算29連勝しててね。それで今日は30連勝達成だって意気込んでて、店のほうでもこっそり記念品とか用意してたんだけど、そこで当たった相手が変わっててさー』 数値としては凡庸な勝率でしかないその対戦の相手は、その実よく見れば特定のステージ以外ではてんでからきし、されどそのステージであるならば常勝不敗と言う、極端な戦績を持つ規格外なお方だったとか。 そしてロゼさんが30連勝をかけてその相手と戦ったステージが、あろうことか先方がまさに無敗を誇る砂漠ステージだった、と。 油断をしていたわけでは決してなかったにせよ、ぱっとしない勝率を見てつい気が抜けてしまったのであろうその対戦の結果は、推して知るべし、です。 『うん、単に強敵に負けたってだけならまだ良かったんだろうけどね。 そんなピーキーな戦績の、しかもしっかり注意してそのあたりをちゃんと読み取っていれば少なくとも警戒は出来た対戦を、自分の不注意でコテンパンにされて念願の30連勝を逃したってのがかなりショックみたいでさー』 それは確かに、悔やんでも悔やみきれないことでしょう。 『要するに君たちは、その八つ当たりの矛先にたまたま当たっちゃったってことだね』 浜野さん、身も蓋もなさすぎです。 『まあ、これも縁だと思って、適当に気晴らしに付き合ってあげてくれるかな?』 浜野さんはそう締めくくって、お仕事へと戻られました。 以上、回想終了です。 「……正直なところ私は、あの方々が『悪い人ではない』と言われても賛同しかねますね」 マスターさんにも無礼な態度でしたし。鼻で笑われましたし。見下されましたし。 「うーん、まだ確証を持てるほど彼と関わったわけではありませんが……僕としては、やっぱり彼はそれほど悪い方とも思えませんね」 「思えませんか」 さすがマスターさん、人間が出来ていらっしゃる……と言いたいところですが、さすがに意外です。 「はい。なんだかんだと言いつつ、僕達のバトル登録を代わりにやってくれたじゃないですか」 それは言われて見れば確かに。態度はやや悪かったですが、困っているところを見かねて手を貸した、とも見えなくもないです。 「そして、そのあとの『何も出来ない武装神姫』の下りも……まぁ、あの時は僕も冷静ではいられなくて思わず反発してしまったわけですが、もしかしたら『能力の平均的なハウリンタイプは器用貧乏になりやすいから、なにか一芸を持つようにしないといけないよ』というアドバイスだったのかもしれませんし」 「それはさすがに、好意的過ぎる解釈かと」 「うーん、そう言われると弱いですねぇ」 マスターさん、少し困ったように苦笑いされながら、頭を掻いていらっしゃいます。 「ただまぁ、ああいう感じの方はいますからね。ご自身が優秀な分、周りの至らない部分がどうしても目に付いてしまって、それを黙っていられないような方が。 佐藤君も同じで、武装神姫に対して真摯であるからこそ、他の人の未熟な点が見過ごせないのかもしれません」 そういうものなのでしょうか? 「確証があるわけでもないんですけどね……まぁ、そのあたりは対戦しながら見極めていきましょう」 そしてマスターさん、口元に拳を当てて小さくクスッとお笑いになり。 「それでやっぱり性根のよろしくない方で、犬子さんを侮辱したのも悪意からのものだったと言うのであれば、その時は土下座して『もう勘弁してください』と言いたくなるまで叩き潰せばいいことですし。 くすくすくすくすくすくす」 「マスターさん、申し訳ないですけれどもその笑い方少し怖いです」 「やや、これは失敬」 どこかで聞いた覚えがあるような会話はともかくとして。 「マスターさんには、勝算がおありなのですね」 正直なところ、私があのローザリッタさん……ロゼさんに勝てるとは思えないのですが。 「ええ、佐藤君もうまい具合に、こちらの思惑に乗ってくれましたからね」 けれども、マスターさんがそう即答で断言されたならば、私に疑いようなどありません。 「でしたらマスターさん、私も微力を尽くします。ご采配よろしくお願いいたします」 深々。 「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」 深々。 「……ところで犬子さん」 「何でしょうマスターさん」 「先ほど佐藤君の仰ってた『キャッキャウフフ』というのは、どういう意味なのかご存知ですか?」 あー、口にしていましたねぇ。前後の文脈の方の気をとられてスルーしていましたが、確かに仰っていました。 「『キャッキャウフフ』というのは、『武装神姫と睦びあっている』状態を差す俗語表現で、古典コミックにおける男女間の睦びあう描写に際して使用された表現をなぞらえたものが語源といわれています」 「……色々な意味で、わりと微笑ましい台詞回しですね」 「ええ、わりと」 「……………………」 「……………………」 「やっぱり佐藤君、さほど悪いお方ではない様な気がするのですが」 「奇遇ですね。私も今しがた、ちょっとだけそんな気がしてきていた所です」 こうして、私たちの初の『対戦相手の顔を見据えての、指名対戦』の火蓋が切って落とされようとするのでした。 ……が。 「お待たせしました」 ペットボトルを片手に、マスターさんはにこやかにご挨拶なさいます。 「別に待ってねぇ」 対する佐藤さんは順番待ち用ベンチに膝を組んで腰掛け、その膝の上に立てた腕に顎を乗せて、そっぽを向いていらっしゃいます。 「んー、順番待ちの列はあんまり減ってませんねぇ」 「俺に話しかけるな」 「武装神姫の人気は、さすがと言うことですねぇ」 「だからどうした」 「この分だと、まだまだ待ちそうですねぇ」 「見りゃ分かるだろ」 「実は前から疑問に思ってたんですよ。ほらゲームなどを題材にした少年漫画とかにある、主人公とライバルが対戦することになるシーン」 「唐突だなおい」 「大抵そういうのは人気のゲームとかを扱ってるんですが、それにしては都合よく二人分の機械があいてるなぁって。そう思ったことありません?」 「ねぇ」 「やっぱり現実にはそうそううまく行きませんよねぇ。漫画だと冗長にならないように その辺は省いてるんでしょう」 「俺が知るか」 「……聞きましたか犬子さん。この打てば響くようなシンプルでそれでいて的確なツッコミっぷり」 「はい。私たちにはなかったスキルですね」 「何がスキルだ何が」 「……いやはや本当に、いちいち反応を返してもらって、ありがたい限りです」 「お見事な律儀なツッコミっぷり、頭が下がります」 「ホントに下げるな」 「あ、よかったらこれ飲みません? まだ時間ありそうですし」 「いらん」 「まぁそう言わずに。二本あっても一人じゃ飲みきれませんし」 「……ちっ、仕方ねぇな。よこせ」 「はいどうぞ。お茶でよかったですか?」 「なんでもいい。……ありがとよ」 「聞きましたか犬子さん」 「聞きましたよマスターさん」 「なんか文句あんのかこら?! 物もらったら礼くらい誰だって言うだろうが?!」 「文句なんてとんでもない。むしろそれを当然と言い切れる誠実さに、感銘を受けているところですよ」 「私、先ほどのお話を信じてもいいような気がしてきました」 「何の話だ何の?!」 「……ちょっとぉ、なに騒いでんのよアキー? うるさくて眠れないじゃない」 「あ、これはお騒がせしました。まだ順番は回ってこないようですから、ごゆっくりお休みください」 「申し訳ありません、すぐに静かにしていただきますから」 「俺か?! 俺が悪いんか?!」 とまぁ、こんな風に。 カッコよく宣戦布告した相手とのんびり順番待ちをしなければならない情況がいたくご立腹であるらしい佐藤さんと、そんなことはお構いなしに物怖じせずいたって友好的に話しかける私たちの対戦の火蓋が実際に切って落とされたのは、それから10分後のことでした。 <その13> <その15> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1571.html
さて、今日も今日とてバトルエリアに詰める私ですが。 今日はなにやら、趣が違います。 セットアップを終了し、VRエリアに入り、いざバトルをと対峙した対戦相手の方なのですが。 「んー、こっちもいいわね」 「あの、主よ……」 「シルフィってやっぱり何を着ても似合うわね」 「お、お褒めの言葉はありがたく」 なにやらファッションショーをなさっておいでなのです。 それを見守ること、かれこれもう30分になるでしょうか。 武装神姫、シルフィと呼ばれたエウクランテの方はそれにやや戸惑い気味ではありますが、オーナーの方が丁寧に丁寧にお褒めするので、気恥ずかしくも(おそらく満更でもないため)断りきれないご様子で。 「どうしたものでしょうかマスターさん」 「どうしましょうねぇ犬子さん。いえまあこちらとしても、いろいろな装備を拝見できて退屈はしていないのですが」 「それは確かに。しかしお相手の方、衣装もちですね」 「衣装もちですねぇ。よくあれだけ持ちこめたものです」 「VRエリア内で換装するために、制限いっぱいに抱えてきたのでしょうねぇ」 「なるほどなるほど。ちょっと羨ましいですねぇ」 「羨ましい限りです」 「衣装ひとつ買ってあげられない甲斐性なしのオーナーで申し訳ありませんねぇ」 「やや、そんな意味で申し上げたのでは。マスターさんの経済事情は重々承知ですし、ご負担をかけるわけには」 「じゃあシルフィ、今度はこっちを試してみましょうか?」 「あ、主よ、相手もお待ちなので、そろそろ……」 む? シルフィさんが、こちらをちらりと見て話題を振ってきました。 ……微妙に助けを求めるお顔なのは、私の気のせいでしょうか? と、相手方のオーナーさんもこちらへ向き直りました。 おっとりとした印象の、温和そうな女性の方です。 「すいません、お待たせしちゃいまして」 「いえいえ、お気になさらず。女性の身支度には時間がかかるものですよ」 別段社交辞令でもなくそう言い切ったマスターさん。さすが紳士的です。 そんなマスターさんのお言葉を聴いて、シルフィさんが望みを断たれたような表情になられたのは私の気のせいでしょうか? 「んー」 一方、オーナーさんの方はその言葉に頬へ人差し指を当てて小首をかしげ。 「もし良かったらお待ちの間、こちらの装備、試してみませんか?」 もちろんご遠慮申し上げるべきという気持ちはあったものの、他の装備を試せる機会と言うのは願ってもなく、実際手持ち無沙汰だったのも確かでありまして、結局相手様――加奈美さんと仰るそうです――のお申し出はありがたく受けさせていただくことと相成りました。 かくしてVRバトルエリアは、エウクランテ&ハウリンの合同ファッションショー会場と化したのであります。 あくまでVRエリアでのやり取りであり、使用に際してのドライバはお互いの武装神姫本体のメモリーおよび対戦端末に依存しているため、可能なのは着替えまでです。 贅沢を申せば実際に使用した感触も試してみたかったものですが、まぁそこまで言ったら高望みと言うものでしょうし、それぞれの装備が自分に似合うかどうかを試せるだけでも十分すぎます。 この運びとなったとき、シルフィさんが「ミイラ取りがミイラに……!」とでも言いたげなご様子だったのは私の気のせいでしょうか? 「やー、ハウリン装備のシルフィさんも、なかなか似合いますねぇ」 「そうですね、ハウリンもエウクランテも凛々しい系の顔立ちですし、相性いいですね」 「あ、いやその、お褒め頂き、恐悦至極」 「こちらのエウクランテ装備の犬子さんも……悪くは無いのですが、なんというかシルフィさんが装備してたときに比べてほほえましいと言うかなんと言うか」 「むむ、どこかおかしいでしょうか?」 「ハウリンは頭が大きめですから、多分そのバランスじゃないですか」 「なるほど、言われてみれば。ああ、分かりました、SDな印象を受けてたのですね」 「でも、これはこれで可愛いじゃないですか」 「ええ、それは疑うことなく」 「照れるじゃありませんかマスターさん」 「こうしてみると、ハウリンも可愛いわね。……ハウリンでも良かったかな?」 「あ、主!」 「ウソウソ。シルフィが一番可愛いわよ」 「あ、主……!」 「良い弄られっぷりですシルフィさん」 「愛されてますねぇ」 「か、からかわないで頂きたい!」 「はーい、スクリーンショット撮るからこっち向いてねー」 「やー、いいですねぇ。僕もメモリーカード用意してくればよかったです」 「あ、でしたらメルアド教えていただけたら、後で送りますよ?」 「やや、それはありがたいですねぇ」 「何から何まですいません」 「お気になさらず。はいじゃあ二人とも、今度はポーズ変えて……」 「んー、それじゃあ今度はシルフィが前に出て……」 「こうか?」 「あ、犬子さんにはこう構えてもらうとどうでしょう?」 「こんな感じでしょうか?」 「あ、いいわね」 と、そんな風に和気藹々と過ごす私たちですが、不意にエリアにアラームが鳴り出します。 どうやら、そろそろ時間制限のようですね。あと一分足らずで、私たちは排出されると思われます。 「どうしましょうか?」 「今から戦う、と言うのも無理な話ですよねぇ」 「そうですねぇ」 「うむ……」 周囲を見渡せば着替えた装備が散乱していて、この中から必要な装備を選び出すだけで制限時間は終了してしまうでしょう。 「仕方ありません。続きはまたの機会に、というところでしょうかねぇ」 「そうですね、またの機会に」 「はい、いろいろお世話になりました」 「うむ。では達者で」 こうして再会を約束しつつ、私たちは最後まで和やかに別れたのでした。 で、ありますが。 『またの機会』に行われるのは、バトルとファッションショーの、一体どちらなのでしょうかね? <目次> メール開通記念小ネタ第三弾、神姫愛好者さま宛。 えー、まぁ、無駄に拙作の伏線張ってあったり、 通信対戦でたまたま出会った、と言うのを想定してたり、 加奈美さんはまたSSが撮りたくてVRエリアに入りたがっていたり、 マスターさんより前の対戦相手は、加奈美さんがいつまでたってもセットアップを終了しないのに痺れを切らしてキャンセルしてたり、 VRエリアでは、あくまで使用に際してのドライバはお互いの武装神姫本体の記憶容量野および対戦端末に依存しているため、あくまでやりとりが可能なのは「ガワ」の部分だけで実際の使用はできない、とか無駄な裏設定考えたり、 とかそんな風ことを色々と考えてはいるわけですが。 「4話でアレだけやってまだ着せ替えたりないのかい」とか 「宗太くん相手の時ならともかく、野良対戦でそんな悠長な」とか 「対戦台が、一時間も占有できるように設定してあるか?」とか わりと致命的な部分にツッコミどころが残っていますwww まぁあくまで小ネタと言うことでひとつ。 <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1227.html
第四話「バトルロンド」 午後3時30分ごろ 「久しぶりだな、ここも…」 二人は神姫センターの前に居た。 神姫センターとは、武装神姫専門の大型店舗の名称である。 武装神姫の戦場「バトルロンド」の筐体の他、神姫専門ショップやメンテナンスショップなどMMSの事なら ここにお任せな店である。 形人は数ヶ月前にここを訪れ、今のヒカルであるエウクランテを購入している。 「あれっきりここには来ないで、プラモ屋に行ってるからね」 「僕にあっさり染まって、「バルキリー買って!」「フェニックスミサイル買って!」と言ってたのは誰だ?」 「う…、私…」 二人がバトルロンドコーナーに行くと、既に聖憐がそこに居た。 「あら、遅いわよ」 「こっちだって事情があるからね、途中でヒカルが「コンビニ寄って」とか言ってコンビニ行ったりとか」 「形人だってノッて肉まん買ってたじゃん!」 かく言うヒカルの隣には、食玩のレイズナーが肩を並べていた バトルのルールはこうだった 『ヘッドオンで対峙し先に相手本体にダメージを与えたほうが勝ち』 もろに影響を受けている。 「ラリー、今回の装備は「ZERO」装備よ。戦闘方法は任せるわ」 「………10-4(了解)」 暗い、オマケに初台詞が無線用語である。 「形人、スパロー4発、サイドワインダー2発、機関砲はアデンタイプで」 「他の人わかるのか?それ」 「それより、敵の情報は?」 「データを見たがよくわからん、MPBMと載っていた」 「はーん…」 もはや知ってる人にしかわからない事を言い合いながら、バトルはスタートした。 静寂を突き破る翼の風切り音 現実に換算すると音速で飛行する飛翔体。 鳥のような翼にミサイルと機関砲を搭載したセイレーンが空を行く 「司令部(ヘッド・コーダー)!敵はどこから来る!?」 「司令部よりセラ(TACネーム)へ、2時の方向、間もなくスパローの射程内」 「了解、レンジ・オン」 ヒカルが装備しているバイザーに中距離用のレーダー・レンジが映る、だが… 「ちょっと待った形人!敵がよっつ映ってるよ!」 「知るかそんな事!人間換算1キロまで近づかんと観戦画面に映らんルールになってるからな」 「考えられるとしたらプチマスィーンズか…、ま、いいや」 レーダーが四つの機影をロックする 「ファイヤ!」 ヒカルの予想通り、レーダーに捕らえられたのは、Kemotech社製サポートマシン 「プチマスィーンズ」であった。 スパローは寸分狂わずマスィーンズを撃墜したが、当然ラリーの作戦であった。 数秒経たない内に今度はヒカルが射程内に入っていた。 「発射」 『ミサイル接近』 バイザーにそう映った直後、ヒカルは推力を全開にし急旋回を行った ミサイルは見当違いの方向に飛んでゆく、しかし…。 「うわっ!」 ミサイルは大爆発を起こし、ヒカルは衝撃に煽られた。 「やっぱり散弾ミサイル!」 MPBM(散弾ミサイル)とはエースコンバットゼロに登場する架空の軍用機「モルガン」に搭載されている 広範囲用の対空・対地ミサイルのことである。 「やっぱり「片羽の妖精」の名を持つだけあるわね!」 体勢を立て直し、急上昇を開始する 目と鼻の先でヒカルが上昇した。 ラリーは考えた、『こちらの欠陥に気付いてるのでは』と。 実はラリーが装備する天使型基本部品「リアウイングAAU7」は改造の結果強度が低くなっていた。 エリアオーバーギリギリの高度まで上昇すると、最悪空中分解を起こしてしまう欠陥を抱えてしまったのだ。 元々運用能力を持たない種類のミサイルを使用出来る様にしたのだから、当然と言える。 「降りて来い!臆病者!」 「言われなくても…!」 そう呟くと、ヒカルは踵を返し急降下を始めた。 来たか。 ラリーは体を上にして降下を始めた。 静止した状態では、急降下してくる敵を捕らえるのは一瞬である。 相対速度を合わせるこちらの命中率を上昇させる。 無論、相手の攻撃が命中する確立も上昇するが。 レーダーが飛行物体を捕らえる。 「終わりだ」 手にしたのは「LC3レーザーライフル」、しかも広域攻撃用に威力を犠牲に照射範囲を広げたものである。 相手にダメージを与えれば勝敗が決定するこのバトルでは、例え威力が低くても関係ないのだ。 引金(トリガー)を引いた直後、物体に命中した事が目に映る。 しかし、戦闘は終了しなかった 「何!?」 その直後、一閃のレーザー光がラリーを貫いた。 『BINGO!』 命中したとゆう情報が、バイザーによってヒカルに伝えられた。 「やった!」 ラリーの誤算、それは熱くなるばかり、エウクランテが『プレステイル』に分離できる事を忘れていた事だった。 ――戦闘終了後 「納得できない、なぜ分離状態で攻撃できたんだ」 さっきの無口が何処へやら、ラリーは不満を主にぶつけていた。 プレステイルの欠点は、武装形態の部品のほぼ全てを使用する故、分離中は攻撃が不可能になる事だ。 無論、機関砲もポッドとゆう形で翼に下げてあった。 「理由は、あれよ」 そう言って、聖憐は形人が手に持っていた食玩のレイズナーを指差した。 「は…?、…まさか!?」 「そう、レーザードライフル」 食玩を買った理由、それは付属する武器が目当てだったからである。 「ホントはスコープドックのヘビィマシンガンが目当てだったけど…、今回は結果オーライかな」 「箱の振り具合からして、頭が丸いとは判ってたんだけどな(笑)」 午後6時14分 形人の自宅 「疲れた~…」 「あの後二回も続けてバトルしたからな、当然だ」 実は単純だったラリーの負けず嫌いの性格が災いし、あの後同じ条件で二度バトルを行ったのだ。 結果は、一回目が翼の空中分解でヒカルの不戦勝、三回目が散弾ミサイルで自爆してヒカルの勝ち。 結局ラリーは一度も勝てなかったのである。 「もう寝る」 そう言ってヒカルはくまのキーホルダーを抱き、クレイドルに寝た。 「おやすみ、形人…」 そう言って、ヒカルはスリープモードに入った。 「おやすみ、ヒカル。よい夢を」 形人は部屋の明かりを消し、部屋を後にした。 『戦士は夢をかいまみる… 空のかなた… みはてぬ夢の青い蜃気楼…』 エリア88「青い蜃気楼」より引用 終 次回予告 あら、こんにちわ。 形人くんは何か作ってるようね? あら時間がないわね。 次回「プラモ」それではまた今度(N:聖憐) 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/3707.html
【TOP】【←prev】【GAMEBOY ADVANCE】【next→】 魔探偵ロキ RAGNAROK 幻想のラビリンス タイトル 魔探偵ロキ RAGNAROK 幻想のラビリンス 魔探偵ロキ ラグナロク 機種 ゲームボーイアドバンス 型番 AGB-P-BMRJ ジャンル アドベンチャー 発売元 Jウイング 発売日 2003-10-16 価格 5800円(税別) 駿河屋で購入 ゲームボーイアドバンス