約 2,308,097 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2194.html
『武装神姫~PRINCESS BRAVE~』 PSPでゲームが出ますね。なんとなくカスタムロボっぽい気がする。バトロンから何か引き継げたりは… しないんだろうな。 パジャマの胸に抱き締めた、お気に入りのぼろい絵本。 眠れない小さな『姫』は、今夜もその物語に思いをはせる。 それは遠くよその国の、遠く古い物語。 それは、真実の愛を探す旅に出た、小さな『姫』の物語。 天使のようにあどけなく、 剣士のように力強く、 瞳には燃えるような光を、胸には熱い勇気を秘めた、麗しき姫。 牙を鳴らし咆える竜の火も、百万の敵も恐れず、その揺るがぬ思いは絶望の魔女も討ち倒す。 彼女は、そんな『姫』に憧れていた。 彼女は、そんな『姫』になりたかった。 そして彼女は、今夜もそんな『姫』に思いをはせる。 そんな『姫』を夢に見る。 そして、『姫』は目覚める。 まだ受かるかどうかわかりませんが、某夏のイベ用に外伝執筆中。更新頻度が遅くなるかもです。全三部作、不定期更新。 第一部『BRAVE』 第一話『始動!武装神姫!』 第二話『激突!戦場へ!』 第三話「始まりの終わり」>『始まりの終わり』 第四話『夢のヒーロー』>『夢のヒーロー』 第五話『駆け抜ける旋風!嵐のタッグバトル!』 第六話『破れ!必殺のトルネード』 第七話『最強への道!蹴散らせ強敵達』 第八話『武装神姫の秘密!?』 著 ぞんだー 今日 - - 昨日 - - メニューへの追加、ならびに第一話へのリンクをしておきました。リンクのページタイトルが一致していないと、リンクが繋がりませんので注意してください。 -- 第七スレの6 (2009-12-10 23 27 42) 第1話が2種類あり、どちらが正しいか分かりにくいので不要な方は消すと良いかもしれません。 -- 名無しさん (2009-12-11 15 20 54) すみません、わざわざありがとうございます。不要な一話はID登録が済み次第削除しますので、もう少しだけお待ち下さい。 -- ぞんだー (2009-12-11 16 27 27) はじめまして、一介のわんこ好きであります。 一話掲載時から読ませていただいておりましたが・・・ すばらしい! 主人公と幼なじみの何とも言えない距離感、バトルの描写・・・ そして何より『凛』の「ハウリン」らしさ! テンポのよい話の進行も読んでいてワクワクします。 ショップを見ていても少々元気のない近頃の神姫界に吹き込む一筋の風、その今後に期待させていただきます。 頑張ってください! -- はんぺん (2010-02-06 02 08 53) はんぺん様。あわわ、ありがとうございますー。誉められ慣れていないモノでわたわたしてしまいました。 そう言っていただけるととても励みになります。まだ拙い文章ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。 -- ぞんだー (2010-02-06 23 54 51) いつも楽しく読まさせていただいております。 いいですね、主人公曰く天然記念物の典型的な絡み方(笑) ヒカリのアーンヴァルに見ない性格にギャップがあっていいですね。 とっても可愛いです。 ヒカリとイリアの勝負は一体どうなることやら…ですね。 更新楽しみにしてます。 頑張ってくださいねっ! -- デハ (2010-02-22 10 00 46) では様 -- ぞんだー (2010-02-24 16 46 36) デハ様 ありがとうございますー。王道な展開で進めたいと思っているので、またあんなヤツが出るかもです(笑 今後も楽しんでいただけるようがんばりますので、また感想下さると嬉しく思います。 -- ぞんだー (2010-02-24 16 59 57) 凛の一途さに心熱くし、ヒカリの無邪気さに心温くしながら、毎話楽しく読ませていただいております。 メインのバトルパートはもちろんのこと、所々に散りばめられている小ネタを見つけるのも楽しいですね。 主観の人物の言葉がどこまで口に出していて、どこまでが内心の呟きなのかがたまに気になりますが、私だけが思う些細なことである気もします。失礼。 文章から、此の作品が…「こういうもの」が好きなんだな、という印象を受けました。そういう気持ちを持ち続ける限り、さらに素敵な作品となっていくことでしょう。 語りが長くなってしまいすみません。 これからの更新も楽しみにさせていただきますね。 -- 通りすがりの仮面ライター (2010-03-26 10 19 25) 通りすがりの仮面ライター様 御感想ありがとうございます。まだまだ文章としての完成度が低いので、気になった点等ご指摘頂けるのはとても助かります。 今後も楽しんで頂ける作品をお見せできたらと思うので、よろしければまた書き込んで下さい。 -- ぞんだー (2010-04-01 12 42 53) 続きあるのん? -- なゆき (2014-10-11 19 00 20) だめもとでコメントしましたが続きがくるとは(^^) まだまだ続くのかな? 続くのならたのしみにしてます♪ -- なゆき (2014-10-12 11 46 24) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1363.html
「『メッセージ』、と仰ると?」 「はい。起動直後の私は、プログラムの規定を疑いもせず、まだ未完成ゆえに実行不可能と認識しました。 そして、ある程度経験をつんだ私は、それに疑問を抱きました」 なぜ、未完成の状態のものがプログラムされているのか。 なぜ、ほかのものと同じように完成された歌やダンスがプログラムされていないのか。 そもそも、このケースにおける『オリジナル』の定義はなんなのか。 すでにプログラムされた歌やダンスを、自ら編集すればいいのか。 あるいは自身のデータベースにないものを検索調査し、それを模倣すればいいのか。 あるいは、既存のあらゆるそれとは別の、完全な独創を開発せねばならないのか。 最後が該当するのであれば、武装神姫には困難を極めます。 我ら武装神姫は心を持つに至った機械。しかしあくまで機械としての属性が根強い以上、与えられたプログラムを実行する事には長けていても、自らがそれを生み出すことには不向きです。 そのあたりは素体やコアユニット、CSCの組み合わせからくる個性によって違いはありましょうが、どちらにせよそれが可能となるには、辛抱強く『心』の成長を待たねばなりません。 ましてやそれが見る者の主観に依存する、言い換えれば曖昧な評価基準しか持たない歌やダンスといった芸事であればなおさらです。 「そういったことを考えた末に、私はようやくのこと、一つの結論に達しました」 「お聞きしてよろしいですか?」 「はい。私の達した結論は、発想を転換することでたどり着きました。 即ち、『その芸を、どなたにお見せするのか』と考えたことで」 それは当然、人間の皆様と言うことになるでしょう。いえ、あえて断言するなら、自身のオーナーに他なりません。 自身の仕えるオーナーにお見せするのであれば、独りよがりな芸であってはなりません。 オーナーに気に入ってもらえる、喜んでもらえる、褒めてもらえる、そんな物でなくては意味がないのです。 そう考えると、このケースにおける『オリジナル』の定義もおぼろげながら見えてきます。 自身のデータベースになかったものならばよいのでなく、世界のどこにもない物ならばいいのでなく。 いえ、極論すれば、逆に既存のモーションをそのまま流用したものであっても構わないのでしょう。 それが、お見せする相手の好みに沿うものであるならば。 そう、このケースにおける『オリジナル』とは、『出荷時点ではまだ誰ともわからない、武装神姫を目覚めさせるオーナー自身の、今はまだ知り得ない好み』を示すのではないでしょうか。 そしてオーナーの下で目覚めたのであれば、その好みを学習し、体現せよ、と。 「つまり、この芸に秘められたメッセージとは、 『自身のオーナーを知れ』、 『自身のオーナーが何を求めるかを知れ』、 『その求めに応じられる存在たれ』。 残念ながら、今の私の成長は、それが可能と自己判断できうる域まで達しておりません。 ……ですが」 私は自身の決意を込めて、まっすぐにマスターさんを見詰めて言葉を続けます。 「ですがいつか、その域にまで達したいと考えております。 マスターさんの嗜好を理解し、その嗜好を体現しうる歌とダンスを身につけ、それをマスターさんにお見せし、喜んでいただきたいと願っております」 一息つき。 「……即ち、それこそが答えなのではないでしょうか? つまり、 『そのオーナーの、よりよい武装神姫であらんと弛まぬ努力をせよ』、 と――」 「……なるほど」 マスターさんがまた一口、お茶を飲まれました。そして、何かを思案するように、天井を見つめます。 会話が途切れますが、私自身としてはこういった沈黙も嫌いではなくて。 私は特に口を挟むこともなく、マスターさんのお言葉を待ちます。 「……僕の考えを、お話ししてよろしいでしょうか?」 ややあって、マスターさんが視線を戻しそう仰いました。 「拝聴させていただきます」 もちろん、私に異存があろうはずがありません。 マスターさんは一呼吸置くように再び湯飲みを口元に運び、途中で何かに気付いて、それを卓袱台の上に置かれました。 私はその湯飲みに、急須を抱えてお代わりを注ぎます。 「ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 「それで、今の犬子さんのお話を聞いて思った、あくまで僕個人の考えなのですが……」 新たにお茶の注がれた湯飲みを口に運ぶでなく、両手で包み込むように持ちながら、マスターさんは再び天井を見つめつつ一言一言を確かめる様にお話くださいました。 「僕はその芸に、『開発者の方の祈り』を感じました」 「祈り、ですか」 「はい」 そして、お茶を一口。 「犬子さんの考える『メッセージ』、その意味もまた、あるのだと思います。 ですが、単に向上心を持つように促すのなら、なぜハウリン芸の中に用意したのでしょうか? 武装神姫の一般的な使われ方であるバトルや、僕が主に活用している生活サポートの方にその旨があれば、それで十分ともいえるのではないでしょうか? ――武装神姫を、単に『良き道具』として見たのであれば」 「そうでは……ないと?」 マスターさんは、一つ頷かれました。 「そもそもが、ハウリン芸の存在です。『良き道具』としてあるだけならば、不要な機能とも言えます。 それをわざわざ残したのは、なぜでしょうか? 僕はそこに、『祈り』を感じました。 『この芸で、オーナーに楽しんでもらえるといいね』、 『そうして、オーナーにもっともっと気に入ってもらえるといいね』、 『オーナーに、もっと喜んでもらえることもできるようになるといいね』、 『そんな風に頑張れるくらいに、オーナーのことを好きになれるといいね』、 『そのオーナーのために、取って置きを用意できるといいね』」 そこで、一度言葉を切り。 「――『そんな風に大好きになれる、オーナーのところに行けるといいね』、と……。 さながら、愛娘を嫁がせる両親のような気持ちだったのではないのでしょうか?」 ――言葉がありません。 私の未熟な『心』は、今感情回路を駆け巡るパルスの表現の仕方を知らないのです。 それでも、今は沈黙を守るべきではありません。 未熟な私の『心』が、未熟なりに『何かを答えるべきだ』と判断しています。 マスターさんは、それきりお口を閉ざされています。 そんな沈黙の中、ゆっくり、ゆっくりとマスターさんのお言葉を咀嚼し……私はようやく、一つの言葉を紡ぎ出します。 「私は――」 胸に――私の『心』が宿るCSCを装填された胸部ユニットに手を当てながら、私はその言葉を口にしました。 「私は、愛されているのですね」 マスターさん何も言わず、ただはにかんだように優しい笑顔で頷かれています。 私も笑顔を浮かべ……いえ、訂正します、知らないうちに浮かんでいた笑顔を改めてマスターさんに向けなおします。 そして満ちる、心地よい沈黙。 ……正直なところ、いかにマスターさんのお言葉を鵜呑みしやすい私とて、今のマスターさんのお考えはいささか楽観が過ぎると考えます。『開発』『企業』『商業』といったキーワードが絡む世界は、もっとシビアであってしかるべきでしょう。マスターさんのお言葉を信じたい私もいますが、それを冷静に否定する私もまた存在するのです。 であるからして、マスターさんの今の推論から汲み取れる確たる事実は、僅かに二つのみ。 マスターさんが、そのようなお優しい考え方をするお方であるということと、 私は、そんなマスターさんにお仕えすることが出来てとても幸せだということです。 ややあってマスターさんが、照れくさそうに頬をかきつつ、口を開きました。 「さて、かく言う僕自身は、犬子さんにとってよいオーナーなのでしょうかね?」 おそらく、ご自身の台詞が恥ずかしくなったのでしょう。 あからさまな照れ隠しにそんなことを言い出すマスターさんに、私はいたずらっぽく笑ってちょっとイジワルをしてみることにします。 「マスターさん、そのような質問のことを、何と言うかご存知ですか?」 「はい? ええと、『他人に評価を求める』……それとも、『信頼関係の確認』といったあたりでしょうか?」 戸惑うマスターさんに、私は笑顔のままで首を横に振ります。 「残念さまでした。正解は……」 そして、「してやったり」の笑みを浮かべて。 「『野暮』、でございます」 一瞬、あっけに取られたような表情になったマスターさんでしたが、すぐに小さく吹き出します。 「これはこれは……犬子さんに一本取られてしまいましたね」 「はい、ご油断なさりませぬよう。隙をお見せされたなら、容赦なく攻め立てますので」 「あははは、怖いですねぇ。では、今の質問は取り消して、改めて聞きなおします。 ――いつか、犬子さん会心の『オリジナルダンス』を、見せてくださいね?」 「はい、ご期待ください!」 私たちの間に、暖かい空気が満ち溢れます。 ……マスターさんが、ごく軽く次のお言葉を口にされるまでは。 「そういえば犬子さん、公開できないもう一つの方の芸は、どのようなものなのですか?」 すかさず私は表情をロック。笑顔を保ったまま、その裏で戦慄します。 とうとう、聞かれてしまいましたか……武装神姫たるもの、人間に対して嘘はつけません。そして聞かれたことに対して、ごまかすのも容易ではありません。 いえ、これでも文脈に留意して、マスターさんの興味が『オリジナルダンス』の方へ向くよう誘導したつもりだったのでしたが……思いのほか話題が重くなりすぎて、その気分転換のためにそちらの話題を使われてしまったようです。 その話題は、マスターさん向けの話題でないことを明かして、お耳に入れないようにした方がよいかとも考えましたが、それもかえって負の想像力に働きかけてしまう可能性もあります。 「……犬子さん?」 いけません、表面上とはいえフリーズ状態で長くいすぎたようです。マスターさんに不審に思われてしまったご様子。 ここは観念いたしましょう。 私は表情ロックを解除、表面上はにこやかに答えます。 「はい、そちらは『ア○レちゃんごっこ』と銘打たれております」 「『ア○レちゃん』、というと……鳥○明のですか?」 「鳥○明のです」 さすがは日本が世界に誇るコミックアーティスト、主に活躍したのは前世紀でも、その打ち立てた金字塔の知名度は衰えません。 「それで、この『ア○レちゃんごっこ』はですね」 ここで私は、両手を頭の脇に添えまして。 「こう、頭部パーツを引っこ抜きます」 言いながら、両手を上に差し上げます。 ……いえ手だけですよ? あくまでジェスチャーですよ? 頭部パーツは、変わらずに素体本体と接続されたままです。 あー、予想通りといいますか、マスターさん絶句されています。ですからあまり言いたくはなかったのですが。 「あの……そんなことをして、大丈夫なのですか?」 心配そうに尋ねられるマスターさんに、私は意図的に淡々と解説を続けます。 「再起動が可能か、後遺症が残らないか、と言う意味では大丈夫です。 その状態で自律行動が可能か、と言う意味では大丈夫ではありません」 それはもう、頭部ユニットは本体バッテリーから、素体本体は中枢指令ユニットから切り離されるわけですから、どちらも機能停止に陥る他ないわけです。 「それで……そのあとは、どうするのでしょうか?」 「はい、その後は制御を失った腕関節が、頭部ユニット及び自重でヘタって徐々に下がってきます。 それがうまく元の位置に戻れば、再接続が可能となります。 むしろ正確に申しますと、最初からそれを計算して頭部ユニットの接続を切り離し、見事計算どおりに復帰まで成し遂げると成功となって見ている皆様からやんややんやの拍手喝采をいただける、そんな芸でございます」 「……つかぬ事をお伺いしますが……もし、それに失敗した場合は……?」 「当然、自力での復帰は不可能ですので、どなたかに再接続をしていただく必要があります」 ですからハウリン芸でも難易度ナンバー2、危険度ならばアドリブダンスをも遥かに上回る芸と位置づけられているわけです。 「………………………………」 「………………………………」 あまり心地よくない沈黙が満ち溢れます。 おそらく、今マスターさんと私とが考えていることは同じかと推測されます。 『いくらマスターさんでも、外れた頭部ユニットを差し込むくらいなら……』という考えが、いかに希望的観測に基づいているか……いえ、あえて言うなればいかに現実に即していないかは、今までの生活経験の中でわりと保護優先度の高いメモリー領域に刻み込まれているのです。 「犬子さん……その『ア○レちゃんごっこ』も、封印指定と言うことでよろしくお願いします」 「承知しました。他にも、すでに封印指定されている『ゾンビ・ハンド』を除き、4つの接続切り離し系統の芸がございますが、それも同様に封印指定と言うことでよろしいでしょうか?」 「そのようにお願いします」 「はい、ではそのように」 「………………………………」 「………………………………」 再び、少々居心地がよろしくない沈黙が場を満たします。 「ところで犬子さん」 「何でしょうかマスターさん」 「ふと思ったのですが……ハウリン芸というのは、もしかして基本的に素面でない方にお見せするものだったりしませんか?」 「ご明察です。なにしろ『宴会芸』とカテゴライズされている代物ですから」 基本的に、アルコールを嗜まれて程よく理性のタガが緩んだ方々に、少々下品な言い方をすれば「指差してゲタゲタ笑って」いただくための芸です。 「………………………………」 「………………………………」 「なんとなく、なのですが……先ほどの僕たちの『メッセージ』とか『祈り』とかの話し合いが、わりと根底から根こそぎ台無しになったような気がするのですが、気のせいでしょうか?」 「お気になさらぬがよろしいかと」 「そうですか」 「そうです」 「………………………………」 「………………………………」 「あ、9時になりましたね」 「おっと、チャンネルを変えませんと。ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 こんな風にして、私とマスターさんのどうにもならない夜もまた、容赦なく更けていくのです。 <その11> <その13> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/132.html
【マルコ・ソロネス】 明日香の相棒である格闘戦特化天使型MMS。 性格は真面目。誇り高く正義感が強い。一人称はボクの男まさりな武装神姫である。 ウイングとプロペラントタンク、脚部ブースターアーマーをオミットし、軽量化を図ると共に四枚の白い翼を背負い高機動化を図っている。 武装は電磁サーベル。このサーベルは出力を最大にすることで、敵神姫のAIを一時的に負荷でシャットダウンさせる攻撃、シャイニングアイシクルを放つことが出来る。 ただしこの技はレギュレーション違反のため非公式バトル専用装備である。 格闘能力は一流であり、明日香の性格とあいまって知名度は別の意味で高く、公式リーグにも参加しているもののバトル自体が成立しないことが多くてランクは低い。 なお名前の由来は堕天して魔狼となった第七座天使、マルコシアスである。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2344.html
第一章 深み填りと這上姫 あらすじ: 大学のレポートに追われる毎日を送る俺がトイレに行って戻ってくると目の前に蒼髪の人形がいた。 それは武器と鎧を装い、人という神のために戦う姫という謳い文句の人形 武装神姫であり、乱暴なオーナーに捨てられたといって駆け込んできたらしい。 さて、どうしたものやら…… 第一話:潜入姫 第二話:金無姫 第三話:入城姫 第四話:盗賊姫 第五話:反省姫 第六話:逆襲姫 第七話:決別姫 総合トップに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2305.html
アスカ・シンカロン03 ~親過~ 「北斗ちゃん、起きるんだよ~」 「起きなさいよ、北斗!!」 弥涼姉妹は双子で、その外見は瓜二つ、否―――。 ―――完全に同一だった。 起きている時はともかく、眠っていると親でも区別がつかないほどに、彼女達は互いが分身だった。 「えへへ~、あたしはね~、北斗ちゃん好きなんだよ~」 「別に、あたしだって嫌って言ってないでしょ……」 ただし、その性格は大きく違う。 静と動。 陰と陽。 光と影。 二人はまるで一つの人格を分け合ったかのように相対し、融和していた。 「北斗ちゃん」 「北斗」 元々、二人は揃って一つの人格なのだと、いつだったか、理屈っぽい親友が言っていたような気がする。 「起きてってば」 「ああ、分かった。起きるから、起こすな」 とりあえず上半身を起こすと、うきゃぁ~、とか言う声を残して何かが転がり落ちていった。 「あぁん? なんだぁ?」 ベッドの下を覗き込めば、そこで目を回している身長15センチの人形。 「あ~、そういえば神姫買ったんだったけ?」 ひょい、とつまみ上げ、目の前に持ってくる。 「動いたって事は、起動したのか?」 「うにゅぅ~」 左手でぶら下げたまま、目を回している神姫、飛鳥の頬をツンツン突いてみる。 「おい、起きろよ」 「ん~、あ~。北斗?」 「え?」 その呼び方に覚えがあって、北斗はその身を強張らせた。 「……なんで」 いや、それ以前に。 北斗は、その声に聞き覚えがあった。 「どうしたの?」 そもそも、オーナー登録もしていない武装神姫がオーナーを愛称で呼ぶ事などありえないと言う事ぐらい、北斗にも分かる。 「お腹痛いの? 食べすぎ? それとも拾い食い?」 つまり、それは…。 「どういう事だ?」 北斗の頭ではさっぱり分からなかった。 「おまえ、まさか」 ただ、一つ。 死んだ筈の明日香と、この神姫の声が同じ事だけは、はっきりと、分かった。 「…おまえ、まさか。…明日香、なのか?」 「ん~?」 一瞬、首を傾げる飛鳥。 「ん~、多分そうじゃないかな~って思うんだよ」 えへへ、と頭を掻く仕草は、もう何処にもいない明日香のそれ。 それが、今。 北斗の目の前に居た。 「どうなってるんだ、これ?」 とりあえず現状確認。 1.弥涼明日香が自殺して死んだ。 2.武装神姫、飛鳥を買った。 3.その飛鳥が明日香だった。 「訳分からんわっ!!」 「あ~、うん。そうだねぇ~」 うんうんと同意する明日香。 「つーか、確認な。お前は明日香なんだな?」 「うん、そうなんだよ」 にへら~、と。見ている方まで溶けそうな笑顔を浮かべる神姫。 「なんで、武装神姫になってるんだ?」 「え? う~ん、……わかんないんだよ」 首をかしげ、困った顔をする神姫の仕草は、演技や模倣などではありえない、明日香自身のそれだった。 「だいたい、お前。どうして……」 自殺なんか。 そう言いかけて、北斗は気付く。 「まて、その前に確認しなきゃ成らない事がある」 そもそも、この明日香は、『どこ』まで覚えているのか、を。 ◆ 「えぇ、あたし自殺したの?」 した事は覚えていなかったらしい。 尋問開始後3分(早っ)。 逆に口を滑らした北斗は明日香に、彼女が自殺した事を白状させられていた。 「したんだよ。……なんでそんな事しやがったんだ。俺や夜宵がどんな気持ちだったと……」 「……夜宵、ちゃん?」 「ああ、そうだよ。あいつ平気な振りしているけど、そんな訳ねぇんだ……」 半身。 その表現が、この双子に限っては比喩だけでは済まない事を北斗は知っている。 「産まれた時からずーっと一緒に生きてきた姉妹が、突然片方居なくなって平気な訳無いだろう」 「うん。そ~だねぇ」 よしよしと慰められる北斗。 「……って、何で自殺しやがった張本人に慰められなきゃならんのだ」 「あ~、ごめんね~。すっぱり何にも覚えてないんだよ」 「ったく」 そう言って北斗は、飛鳥の身体をした明日香を持ち上げる。 「……大体、なんでこんな事になってるんだ?」 う~ん、と考え込んでみるが、北斗の頭で結論が出るわけも無い。 元々、頭を使う事は苦手なのだ。 「……こういう時は、っと」 神姫に詳しい友人。件の理屈っぽい奴の顔を思い浮かべ、携帯を探す。 「…?」 そして、携帯を置いたテーブルの上に広げられた飛鳥の箱と、墨で書かれた手書きの説明書。 「……まてよ。これってアイツに聞くより、昨日の店の店員に聞いた方が良いんじゃないか?」 とにかく起きている現象が異常なのだ。 普通に神姫に詳しい友人より、どう考えても怪しい昨日の骨董屋に聞く方が良い。 「……出かけるぜ、明日香」 「いってらっしゃいなんだよ」 「お前も行くんだよ!!」 ふえっ? と惚ける明日香をつまみ上げ、北斗は昨日の骨董屋に向かった。 地の文とセリフの間に改行入れてみましたが如何でしょうね? 多少は読みやすいでしょうか? -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/203.html
黒くて長い、綺麗な髪を風に遊ばせながら。 「じゃあねー」 呆然としたままのボクの目の前、無邪気な言葉と共に、アルミサッシがぴしゃりと閉まる。 「…………」 その姿を見送って、ボクはため息をひとつ。 どっと疲れた体を引きずるように、下の階へ。 「父さんが帰ってくる前で良かったな……」 階段に差し掛かったところで、踊り場の鏡にボクの姿が映り込んだ。 「…………」 そこに映るのは一人の女の子だった。 膝頭まで伸びた長い髪に、フリルのたっぷりと付いた甘いドレス。どこか幼さを残した顔は、物憂げに沈んでいる。 「…………はぁ」 もう一度、ため息。 沈んだ気持ちのまま、階段を下りる。 「喉……乾いたな」 とりあえずジュースでも飲もう。確か、買い置きが冷蔵庫の中に残ってたはず……。 玄関に面する階段を下りきったところで。 「ただいまー」 「……あ」 ボクは、三度目のため息をつくハメになった。 魔女っ子神姫 マジカル☆アーンヴァル ~ドキドキハウリン外伝~ その1 ボク……鋼月十貴は女装姿のまま、居間のソファーに腰を下ろしていた。 荷物を片付ける事もなく。父さんはタバコをくわえ、僕の前に腰掛けて沈黙を守ったまま。 「……十貴」 二本目を吸いきったところで、ようやくボクの名前を呼んだ。 「はい」 「父さん、お前の趣味をどうこう言うつもりはないが……」 言いながら、三本目のタバコに火を点ける。 「い、いやだから誤解なんだって……」 いきなり押しかけてきた静姉が無理矢理……。 「その似合いようは何というか、別の意味で犯罪なんじゃないか?」 …………。 「その考え方が犯罪だよ……」 ああ、うちの親ってそういう考えする人だったよなぁ。蛍光灯の光を弾くカップボードをぼんやりと眺めながら、ボクは…… 「そうか……十貴にそんな趣味がなぁ……」 ってちょっと。 「父さん、人の話を聞かないってよく言われるでしょ」 しかも遠い目でそんな事言われても。 「まあ、丁度良かった」 「意味分かんないよ!」 ボクの言うことを完璧に無視して、父さんは傍らに置いてあった荷物をガサガサと漁り始める。 「そんなに女の子っぽいことが好きなら、これを十貴に貸してやろう。しっかり遊びなさい」 テーブルに置かれたのは、ちょっとした大きさの箱だった。秋葉原のオタク博物館で見た、黎明期のパソコンソフトのパッケージや、DVD-BOXくらいの大きさがある。 パッケージは真っ白で、何の表記もない。『武装神姫ストラーフ(仮)』ってマジックで書き殴られてるから、これが正式なパッケージってワケじゃないみたい……まさか。 「これ、記事にするから借りてきたとかそういうオチじゃないの?」 「さすが我が息子。察しが早い」 ボクの父さんは、玩具関連のライターをしている。発売前の評価記事を書くために、メーカーや出版社から発売前の商品を借りてくることも多い。 問題なのは、その細かい評価を自分自身じゃなくてボクにさせることなわけで。 「まあいいから、開けてみろ」 恐る恐るフタを開けてみれば……。 「ボク、さすがにこの歳で人形遊びする気はないよ?」 中にあったのは、十五センチほどの人形だった。ボクが開けたフタは中身を確認するためのものらしく、ここを開けても人形本体を取り出すことは出来ないようになっている。 随分と厳重な作りだな。 「うーん。その年で人形遊びする息子がいたら、いくらお父さんに理解があっても困っちゃう気がしないでもない」 あんまり違わないでしょ、父さんも。 「というわけで、たっぷり遊んで、しっかり感想を聞かせてくれたまえ」 「いやだから感想というか、それをするのが父さんの役割じゃないの……?」 「俺、超合金モノ専門だもん。1/12自律駆動スコープドッグのレビューなら嬉々としてやってたよ」 あー。 そういえば、ボクのアドレスに予約受付のメールが来てたっけ……一人一個制限って書いてあったハズだけど、だったら一体何個買ったんだ? この親は……。 「ならこんな仕事取ってこないでよ……」 「お世話になってる編集さんの紹介だったんだから仕方ないだろ。ほら、楽しく遊ばないと来月の小遣いやらねえぞ」 「うわきたなっ!」 遊ばないと小遣い抜きっていう親も日本でそう何人もいないと思うけど、この場合仕事が掛かってるからな。 「へへーん。汚くて上等だもんねー」 「……分かったよ、もぅ」 まあ、家計のためだ。 ボクが四度目のため息をついたのは、言うまでもない。 「武装神姫、ねぇ」 部屋に戻って件の白い箱を開けると、中に入っていたのは随分と厳重な構造のプラスチックケースだった。 「……ブリスターじゃないのか」 オープンスイッチらしいボタンを押すと自動でケースのふたが開く。 中にあるのは、武装神姫とかいうフィギュアと、ちょっとした厚さのある取扱説明書。 フィギュアを確かめるのは後にして、とりあえず取説を手にしてみる。 「へぇ。AIが載ってるんだ……」 概要を斜め読みすると、どうやら武装神姫ってのは、AIで自律駆動する画期的なフィギュアらしい。 「……その辺のPCより良いプロセッサ使ってるんだ。それがこの値段……ねぇ」 まあ、スペックだけで言えばゲーム機あたりも似たようなもんだしな。戦闘も出来るみたいだし、その辺りの付属品で利益を上げるシステムなんだろう。 「やっぱりカスタムありか……」 くいくい。 何となく袖が引っ張られた気がするけど、気のせいだよなって……。 「え?」 くいくい。 袖の方を見てみれば、ボクの袖を引っ張っているのはケースの中で横になっていたはずの神姫だった。 「あれ、起動してたんだ?」 箱を開けると自動起動するようになってるのか……? 取説をぱらぱらと繰っていくと、中頃に挟んであった紙にそれらしき事が書いてあった。 商品版はいくつかの性格設定チップを組み込んで初めて起動する方式になっているけど、今回は評価版という事でそのチップも組み込み済みなんだそうだ。 「……あのさぁ」 あ、喋った。 結構流暢に喋るんだな。さすがいいAIを積んでるだけはある。 「何?」 「せっかくあたしが起動したってのに、いきなりスルーはないだろ普通」 「……そんなもんなの?」 「当たり前だろっ!」 なんか怒られたよ? 「こう、なんていうかだね! 初めましてとか、うわぁすごい人形が動いたとか、もうちょっとドラマチックなイベントとかそれっぽいのがあるだろ普通っ!」 十五センチの女の子は、両サイドのおさげを逆立てて力説する。 「ふーむ」 まあ、取説読んでる途中だったしねぇ。 というか父さん、自動起動って話、知っててボクに言わなかったんだな、きっと。 「……じゃあ、やり直す?」 「一度初期設定が終わったらやり直しは流石に無理だわ。メモリリセットしなくちゃなんねぇし」 「んー。そっかー」 製品版だと、もうちょっとドラマチックな起動シーンになる……んだろうなぁ。彼女曰く。 「とりあえず、マスターがこんな可愛い女の子で良かったよ。ちったぁ、生まれてきた甲斐があったってもんだ」 「……ん?」 神姫の言葉に、ボクは神姫の瞳をじっと覗き込んだ。 「どうかしたのか?」 レンズの瞳に映るのは、長い髪を持つ女の子。 「ああ」 そうか、着たままだったんだっけ。 ようやくその事を思いだしたボクはウィッグを取り、黒い神姫に微笑みかけた。 「ボクは鋼月十貴。れっきとした、男の子だよ」 「なにぃぃっ!?」 その瞬間、ボクの頭に衝撃が走った。 「ふえっ!?」 神姫がテーブルを蹴り、こちらにパンチを叩き込んできたのが分かったのは、彼女がボクの髪の毛に掴まって態勢を整えようとしていたからだ。 「ちょ、ちょっと、ロボット三原則はっ!?」 「そんなの知るかっ! ガンダムファイト国際条約なら入ってるけど!」 それなら、頭部攻撃は禁止なんじゃ……。 「そんなことよりテメェっ! 男なら、もうちょっと男らしい格好しろってんだっ!」 ボクの胸元を器用に踏みしめ、胸ぐらを掴み上げて神姫は叫ぶ。 「い、いや、これには深いわけが……」 「問答無用っ! いいからそこに直れっ!」 「は、はひっ!」 反射的に正座。 し、神姫ってこういうモンなの……? 一時間ほどの説教の後。 「……で、神姫ってそういうモノなんだ」 男らしさから神姫が何たるモノかまでしっかり叩き込まれたボクは、本日何度目になるか分からないため息をついた。 とりあえず、後で部屋に『中立地帯』って張り紙しとこう……その張り紙があれば戦闘禁止らしいし……。 「テメェ知らねえで買ってきたのか! っていうか、よく考えたらまだあたしの発売日前じゃねえか! かわいー顔してくるクセに裏ルートでフラゲヒャッホイかこら! 良い根性してるじゃねえか!」 再び胸ぐらを掴み上げられる。 「ち、ちがっ!」 十五センチのオモチャとは思えない力に、さすがのボクも悲鳴を上げてしまう。 その時、ボクの部屋の扉がぎぃと開いた。 「ああ、早速起動したみたいだね」 父さん……なんてものを押し付けてくれたんだよ。 「お。アンタがコイツの親父さんか?」 「そうだよ。発売前だけど、発売前のレビュー書くんでメーカーから貸してもらったんだ」 父さんの言葉に、神姫の腕から力が緩む。 「…………あ、そうなんだ」 「だから言ってるじゃん……」 けほけほと咳き込むボクの胸元からひょいと飛び降り、フローリングの床に音もなく着地。 「そうとは知らず、大変失礼いたしました」 深々と、頭を下げる。 父さんに向かって。 「今頃そんな事言っても遅いよ……」 え? 謝るのはボクの方じゃないの……? 居間のカップボードの上で、黒い神姫は思わず叫び声を上げていた。 「おおーっ! こいつぁすげえ!」 ボードの上をとてとてと歩き、並べられているモノに一つ一つ大げさに反応していく。 「ほぅ。分かるかね」 父さんもまんざらじゃ無さそうだ。 そりゃそうだろう。 「あったり前じゃないですか! あたしのデータベースに、最初からプリセットされてますし!」 居間のカップボードに並べられているのは、皿や賞状なんかじゃなくて、フィギュアやロボットの群れだった。 父さんの玩具ライターは、趣味が昂じての仕事。趣味と実益を兼ねたコレクションが居間に並んでても、別段不思議じゃあないけれど……。 知らずに来たお客さんや家庭訪問に来た先生が軒並みドン引きするのだけは、勘弁して欲しい。 「あたし達のコンセプトは、この大先輩がたから生まれたんですから!」 モヒカン黒目の格闘家らしいフィギュア(ヒドラなんとかって台座に書いてあったけど、そのキャラをボクは知らない)から額宛てを引っぺがしながら、神姫は誇らしげに胸を張る。 どうでもいいけど、その暴挙は先輩に対する態度じゃないような気がするよ。 「その辺りは残念ながら、再販分だけどね」 「それでも二十年以上前のレアものでしょ? それに、これは本放送時には発売されなかったような……」 「おおーっ、分かるかね!」 父さんの影響でロボットやアニメは嫌いじゃないけど、この手の深い話にはついていけない。 「いいねぇ超合金。あたしもプラスチックの塊じゃなくて、どうせならこんなのに生まれたかったなぁ」 今度はドリルとショベルが両手に付いたロボットを見上げながら、惚れ惚れと呟いている。 傍らには専用武器らしい金ピカの剣が立て掛けてあるけど、両手がドリルとバケットでどう使うんだろう……。 「まあ、俺は仕事があるから、ゆっくり見ていって…………」 父さんは機嫌良くそこまで言いかけて…… 「どうしたんです?」 「そうだ十貴。この子の名前、何てぇの?」 「あ。忘れてた」 そういえば初期設定で名前決めろってあったっけ。ネット登録が絡んでたから、すっかり忘れてた。 「そんな大事なこと忘れんなこの野郎っ!」 ボクの頭に神姫の蹴りが飛んだのは、言うまでもなかった。 トップ/続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2609.html
3ページ目『フィギュアじゃない』 「ごめんなさい。私はちゃんと玄関からお邪魔しなきゃ、って言ったんですが、この疫病猫が」 「仲間を売って自分だけ助かろうとするとはオマエ、それでもキャッツアイの一員かにゃ。やれやれ、3rd素体の神姫は、猫を敬うこともできないシケた連中ばっかりにゃ」 「貴様がキャツアイを脱退すればいいだけのことだ。難しいことはない」 「にゃんという暴言! 聞きましたかヤンデレお嬢さん。最近さーほむほむがワガハイに冷たいんにゃよー」 「ヤンデレって私のこと? ねえ私のことなの? って、そんなことより――」 時折、弧域と鉄子の話し声が聞こえてくる孤独な部屋は、三人の闖入者の登場により急に騒々しくなった。 引っ越してきて三年目になるこの部屋は未だ、弧域ですら侵入を許されたことのない姫乃の聖域である。人当たり良く素直で通っている彼女(例外あり)でも、部屋の至る所に隠してある有害図書や器具などの秘蔵物の発覚を恐れたりと、他人に踏み込ませない領域というものは人並みにあるのだ。 しかし姫乃は闖入者の姿を見て興奮するあまり、秘蔵物のことなどすっかり忘れ、闖入者達を抵抗なく迎え入れてしまった。自分は机に着いて、三人を机の上に上げてじっくり観察しようと、目を皿にした。 「あなた達って武装神姫、よね? どうして動いてるの? もしかして昔作ったフルラドスの魔法陣で召喚された使者じゃないの? あれは自分でも傑作だって思ってたくらいだもの、他に考えられないわ! そうなんでしょ!」 窓を閉め、弧域とおそろいの電気ストーブのスイッチを入れても、一度冷やされた部屋はそう簡単に暖まるものではない。しかし姫乃は、自分の手がかじかみ動かないことすら、もう眼中に無かった。 恐怖心が綺麗サッパリ霧散した後も、心臓はまだバクバクと鳴りっぱなしで、姫乃は無意識に胸を押さえていた。机の上に立ち、人間のように動き、言葉を自在に話す人形に心をときめかせずにはいられなかった。 主に中学生時代に夢見て、今目の前にいる【異界からの使者】。数年が経過した今であっても、それは姫乃の好奇心をこれ以上無いくらいくすぐった。 「ワガハイ達神姫は立派な科学の結晶にゃ。魔法陣にゃんて痛々しいモノにお呼ばれされた覚えはにゃい」 「うんうん! そうよね、簡単に秘密をしゃべるわけにはいかないものね。大丈夫よ、私はその辺りはちゃんと心得てるつもりだもん」 猫型の武装神姫、マオチャオにキッパリと否定されても、姫乃は肩を落とすどころか、むしろ謎が深まったことを喜びさえしてしまう。まったく未知の3体に触れようとする手を抑えるのにも、早くも限界が訪れそうだった。興奮しすぎてみっともなく鼻息を荒くしていることにさえ気付けないでいる。 ただし。語尾を「にゃ」に変えて話すマオチャオはカタログで見られるようなごく普通の武装神姫だが、姫乃は頭の隅で冷静に (実物は随分とバカっぽいのねえ) という第一印象を受けてもいた。 「レーダーを扱えるのが貴様だけ、というのが問題だな。おかげで俺は貴様に振り回されざるを得ない。しかし使い方を覚えるのも面倒だな……」 ほむほむと呼ばれた神姫も同じくマオチャオだが、言葉遣いだけでなく見た目も「にゃ」のマオチャオとは異なっていた。額に白く無骨なシールドを被り、大きな目の上半分までを隠すように覆うことで目付きが悪く見えてしまっている。胴体も、戦車の装甲のような装備で覆われ、さらに背面には巨大なハンマーがたすき掛けされており、このマオチャオの戦闘への意気込みが見て取れる。しかし脚部だけは何故か、スポーツカーを思わせる真紅の端麗な装備が使用されていて、無骨な上半身に流麗な下半身と、全体的なバランスは大きく損なわれている。 「あの空間に少人数で飛び込むのだけは避けたいですし、カグラの暴走はレーダーとデコイを得る代償と考えるしかなさそうです」 もう一体、部屋に入って最初に姫乃に侘びを入れた神姫はマオチャオではなかった。弧域が飾っているそれと同じ金髪蒼眼の戦乙女型、アルトレーネである。物々しくも洗練された全体的なシルエットを、白と青のコントラストがさらに凛々しく引き立てる豪奢な武装。バイザーを上げたヘルメットが何よりも戦乙女らしさを醸し出しているが、そのヘルメットの頭頂の隙間から何故か、ピョコンと三角形の耳が覗いていて、すべてを台無しにしてしまっている。 三者三様の人形。小さくて可愛らしい、と言うには着飾っているものが少々物々しいが、武器や防具といった日常とはかけ離れた物が、姫乃の妄想をいっそうかき立たせた。 (すごい、すごい、すごいっ!) 見覚えのあるマオチャオもアルトレーネも、実際にそれらが動いているとなれば、姫乃の目にはとにかく素晴らしいものに見えた。なにせ【召喚した妖精や悪魔の類が武装神姫の体を借りて動いている】らしいのだから、召喚の触媒になり得る武装神姫に、興味を持たない理由はない。黒歴史を葬るために切り刻み灰と帰したノートですら (私のバカ、なんで捨てちゃったのよ) と今更になって惜しむ始末である。 「ねえ、少しでいいから、触っていい?」 「ううん、やっぱりマスターと同じように、本当に神姫のことを忘れてしまってるみたいですね」 「目覚めた神姫に触れれば記憶が戻るかもな――よし、心ゆくまで触っていいぞ」 「待つにゃほむほむ。こういう時は普通、自分の体を差し出すものじゃにゃいか。何の躊躇も無くワガハイを差し出そうとするとはアレかにゃ、ワガハイの体は俺の物っていうジャイアニズムに目覚めたのかにゃ」 「あなた達、ジャイアンのこと知ってるの!? そ、それってもしかして、アカシックレコードから引用して、たり?」 「なんだか私、この方に上手く説明できる自身がないんですけど……」 アルトレーネの「説明」という言葉を聞いた姫乃は、椅子の上でサッと姿勢を正して身構えた。異界からの来訪者は、まず召喚者に事情を説明する暗黙のルールがあり、召喚者はそれを聞かなければならない――という【設定】を、忠実に守るためである。彼女の心はもう立派な召喚士のそれへと変貌していた。 「なんでも話して。私、あなた達がどんなに不思議なことを話しても絶対に否定しないから」 「既に変な方向に誤解されてるみたいですが……分かりました。私達も状況をすべて知ってるわけではないので、あまり鵜呑みにしないで下さいね」 コホン、とひとつ咳払いしたアルトレーネはスカート状のアーマーを折りたたんで、その場に姿勢良く座った。ハンマーを持ったマオチャオも、その隣に片膝を立てて腰を下ろした。もう一匹、「にゃ」のマオチャオは姫乃に指で喉を撫でられ、ゴロゴロと喉を鳴らして一人悦に浸っている。 「まずは自己紹介としましょう。私はアマティといいます。こっちのクールなマオチャオがほむほむで――」 「俺の名はホムラだ」 「その馬鹿っぽいのがカグラです」 「馬鹿とはにゃんにゃふにゃあああん♡ そ、そこはだめにゃああぁああ♡」 姫乃の十指による技巧にされるがままのカグラは、最後のプライドを振り絞って拒絶の言葉を吐き出すも、表情も体も既にとろけきっていた。 カグラを弄びつつも、姫乃は一言一句聞き漏らすまいと真面目に耳を傾ける。 「これはこれはご丁寧に。私は一ノ傘姫乃っていいます」 「初めまして一ノ傘さん、と言いたいところですが、実は私達――」 「やあねえ、姫乃って呼んでよ。私達の仲じゃない」 「仲? ……いえ、確かに『実は私達、お会いしたことがあるんです』って言おうとしましたけど、せいぜい顔を合わせたことがあるってくらいで、そこまで親しいわけじゃないです」 「【猫戦乙女の憂鬱】の最終話で会ってるにゃ」 「貴様は黙ってろ」 「そうなの……残念」 「兎に角、まずこれだけは認識して下さい」 力を込めたからか、アマティのヘルメットからのぞく三角の耳がピンと尖るように立った。その耳に手を伸ばしたいけれど話の邪魔をするわけにはいかないと、一人葛藤する姫乃だった。 「私達神姫は、姫乃さんと同じように心を持ってます。妖精だか何だかが取り付いたフィギュアなんかじゃなくて、CSCとこの頭、コアによって見たり聞いたり感じたり考えたりできるMMSなんです」 ■キャラ紹介(3) カグラ 【 2/2 】 彼が幽鬼のような表情で帰ってきた理由を、留守番をしていた次女達はすぐに知ることとなった。彼が鞄から机の上に出したモノ、それは変わり果てた長女だった。 彼が帰ってくるまで騒々しくケンカをしていた次女達が絶句する中、彼はパソコンを起動し、メンテナンス用アプリケーションを立ち上げた。そして淡々と、収集した画像を整理するような無感動さで、次女達のオーナー登録を次々と抹消していった。混乱の極地にある次女達にはもう、彼のやっていることが理解できなかった。 呆然と立ち竦む次女を荒々しく掴んだ彼は、無造作に胸のカバーを開き、CSCを抜き取った。心を失った次女は、内部に精密機器が詰まっているだけの人形となった。だから、自身がゴミ箱へ放り投げられたとしても、反応することはない。 「ひ……」 机の上に散らばっていた【長女だったモノ】も片付けた彼の手が、三女に伸びた。 「ひゃあああああああああっ!?」 三女が駆け出すより速く、彼の手が伸びた。乱暴に掴まれた三女はありったけの力で暴れ、彼の手に噛み付いた。小さいとはいえ戦闘できるよう作られた神姫の力は強く、肉を噛み千切り、力尽くで手の中から逃れることができた。三女の身体が床へ自由落下する。しかし、その床へ到達するまでの時間は、三女にとってあまりに長すぎた。着地の瞬間、床と彼の足裏の間で押し潰された三女からはもう、CSCを抜き取る必要もなくなっていた。 足裏に鋭い痛みが走ることで、僅かに我を取り戻した彼は、荒い息を吐きながら部屋の中を見回した。 四女と五女は姿を消していた。 次ページ『アマティ、キレる』 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2846.html
西暦20XX年、幾らかの災害こそあれど、3度目の世界大戦も起きることなく今日に至る日本。 今、日本、いや世界中でブームとなっているホビーがあった。ガ○プラだの遊○王だのヴァ○ガー○もメジャーだが。 俗に、「武装神姫」と呼ばれる全高15cmの自律稼動する少女達。 知性と感情を備えた彼女達は、ときに生活のパートナー、ときに友人、ときに小さな家族、ときに戦場での相棒として広く普及している。 なかには小さな嫁だったり主従関係が逆転してたりある意味特殊な事例もあるが… そしてなかには、単なるバトルの道具扱いされるものもいる… これは、ひょんなことから神姫に関わることになった青年と、事情持ちの神姫の話… …の予定だ!内容?続く範囲ってことで。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1331.html
ESTABLISHMENT DATA -設定資料集 near to you ■■■摩耶野市と神姫センター■■■ □摩耶野市(まやのし) 摩耶野市は関東圏に位置する都市であり、かつてはなだらかな平野を利用した田園都市として発展していた土地である。 近年では新都市構想によるテストベットとして多数の研究機関や企業が集う学術研究都市としての発展が著しい。 都市計画によって理路整然とされた街並みは合理的・機能的かつ優麗で、都市緑化を全面に押し出した景観は「都市=ビルの並ぶ無機質な空間」という概念を旧時代のものとすることに成功している。 その摩耶野市の中央地区、マヤノエクスプレス摩耶野駅近縁に存在するのが我らが「神姫センター・摩耶野市店」である。 ○センター地区 主要幹線であるマヤノエクスプレス線駅を中心とした中央地区。 公的機関、公共施設、大型商業施設、娯楽施設が集まる。 神姫センターはここに存在する。 ○研究地区 多くの研究機関や教育機関が集まる地域。 民間企業や民間研究機関が集まる研究開発区と、大学や公共研究機関が集まる研究教育区に分かれる。 ○住宅地区 都市計画したがった公団住宅、公営住宅や分譲住宅地、一般の民家が集まる。 ○郊外地区 元の平野の田園風景の面影を残した、公園や緑地も多い緑豊かな地区。 貯水用の人工湖などが存在する。 また、その特性から都心部には設置しがたい施設(戦略自衛隊技術研究所、丘陵を利用した宇宙太陽光発電の研究施設)などはこの地区に設けられている。 □神姫センター・摩耶野市店 神姫センター・摩耶野市店は、近年になってからのオープンという新しさもあって、それ以前の神姫センターにない試みが随所に取り入れられている。 そのひとつが「施設自体のアミューズメント化」である。 これはアミューズとして定着した武装神姫バトル人気を鑑みて、施設全体を「神姫センター=神姫を購入する場所」から「神姫センター=神姫と人々が集い、コミュニケーション・レジャーを楽しむ場所」へとシフトさせようという試みである。 いわば同神姫センターは、それ自体が神姫をメインにしたテーマパークのようなものであり、神姫購買層だけでなく神姫所持層、非神姫ユーザーの取り込みを狙った意欲的なものである。 同センターでは、神姫購入の他に様々なアフターケア、学習設備、ネットコミュニケーションによる全国各地の神姫センター間の交流などのサービスを受けることができる。 また目玉となる神姫バトルは最新鋭の設備を完備し、学術研究都市という土地柄を最大限に利用して日々改良、新たなる試みが取り入れられ全国の他の神姫センターとは違う、このセンターだけのサービスを多数設けると共に、そうした新技術の実働試験も兼ねている。 フィフスフロア 業務エリア 機械設備や事務室・中央監視室など(一般客立入禁止) フォースフロア アミューズエリア レストラン街、アミューズメントコーナー(武装神姫バトル筐体ほか) サードフロア 上級者エリア 主に神姫のカスタマイズパーツを扱った店舗が並ぶ セカンドフロア 中級者エリア 主に神姫の各武装パーツやクレイドルバリエーションモデルなどを扱った店舗が並ぶ ファーストフロア 初心者エリア 神姫の基本セットであるコアユニット・CSC・素体を主に取り扱った店舗が並ぶ グランドフロア エントランスエリア エントランスホール、セントラルコート。インフォメーションや、軽食店やグッズショップなどがある。 アクセス: マヤノエクスプレス線摩耶野駅下車、徒歩10分 この神姫センター・摩耶野市店のサービスでも取立てユニークなのが「神姫カフェ」である。 センター1階に存在する神姫カフェは、接客を始めとした店内の業務員のすべてを神姫のみで構成するという斬新なスタイルを取っている。 また同神姫センターのオリジナル神姫アイドルユニット「ブルーメンヴァイス」をはじめとした多くの神姫がスタッフとして人間スタッフに交じり、サービスに当たっており、これらが人気を博している。 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/892.html
僕は、多くの戦士達を見てきた 彼ら彼女らに翼を与え、更なる空へと羽ばたかせて来た だけど、結局後には空しさが残った 皆最後には堕ちてしまう 僕はでも、決まった場所を行ったり来たりしか出来ないから 結局また戦士を見つけて翼を与える 戦士から戦士へ 人から人へ 僕はかもめだった 僕に見込まれたものには、必ず栄光と死をもたらすけれど "Я чайка" 今日も琥珀は剣を打つ 鳳凰杯に出展した時に、調子に乗って三本も四本も仕事を請けるたものだから、オーバーワークも甚だしい 此処の所工房(リフォームしたて)に篭り詰めで、私としては退屈極まりない 「あいつの所にまたお見舞いにでも行ってやろうかなぁ・・・」 はっ!!違う違う!か・・・っ勘違いしないでよ!別にあいつの事なんか何とも思って無いんだからね!単に暇で暇で仕方が無いからちょっと・・・あいつも大変だから行ってやろうかなーとか思っただけで、別に心配とかしてないんだから!本当なんだから!! 「何か随分盛り上がっているね・・・どうしたの?」 「ゔぁ!?こ・・・っ琥珀?何よぅ・・・出て来たんなら声掛けなさいよ、もう!!」 「何度も掛けたんだけど何か一人悶えてたからさ」 「・・・っ!!ええい!五月蝿いわね。あによ?今日はもうあがるの?」 「いや、流石にちょっと僕一人じゃ仕事が追いつかなくなったからさ・・・手伝って欲しいんだけど・・・駄目かな?」 「え・・・?良いの?アンタいっつも仕事中は見るなって言うじゃない」 「勿論見せられない部分の所は見せないよ・・・でも・・・こんな事頼めるのはエルギールだけだし」 顔から火が出そうになったのが、判った 実は私こと「花型MMSジルダリア」の『エルギール』は、私の今のオーナーたる神浦琥珀にでれでれなのだった(注1) 強大な火のマナと、金属の匂いが大気に満ちているのが判った 薄暗い部屋は、想像していたようなおどろおどろしい黒ミサ的な空間ではなく、ごく普通の、レトロな鍛冶部屋だった そう、ごく普通・・・普通? 否、私が間違っていた・・・室内を派手な色の大蛇がのたくり、襟巻きの付いた蜥蜴が後ろ足で走り回り、巨大な陸亀がのそのそと這いずり回っていた 挙句体長50センチを越えるカメレオンと、武装神姫が上に乗るのに丁度よさげなサイズの水亀がその群れの中に加わっていた(注2) 「・・・てかコイツらここで飼ってたの!?しかも増えてるし!!」 「いいじゃない、爬虫類好きだよ」 「聞いてないわよ!!」 「突っ込みご苦労様」 「まさかと思うけど『手伝い』ってこの突っ込み役とかじゃ無いでしょうね?」 「?それもしてくれるならそれはそれでありがたいな」 「づぁ!?もしかして今の墓穴・・・?」 「そういう事だね・・・さ、こっち来て」 通された先には、既に形の打ち上がった武器が、ひぃふぅみぃ・・・六振りもあった 「注文された瞬間より明らかに増えてんじゃないの!こんなんで体壊したら洒落にならないじゃないの!!」 「心配してくれてありがとう・・・エルギールは優しいね・・・言われた通り、この作業が終わったら今日はもう寝る事にするよ」 微笑む琥珀・・・良く見るとその目の下には濃い隈が出来上がっている 普段無表情なだけに、こういう状況でこういう顔をされると言葉も出ない・・・(注3) 「・・・わっ私は何をすれば良いのよ?」 「晶の注文してきたやつだからそれなりに美観も整えておかないと笑われるだろう?だから今回はエングレービングとか飾りをいつもより細かくしようと思ってね・・・」 「・・・もしかして・・・その仕上げ私がやるの?」 「うん、エルギールは手先が器用だろ?だからいっそもうデザインから何から全部任せちゃおうかなぁって」 「あ・・・っあとの三本はどうするのよ・・・」 「こっち三つは・・・そうだね、この長剣だけは任せちゃおう」 「・・・・・・」 「じゃ、任せたから」 言いつつ、神姫サイズの工具と金箔、銀箔他様々な素材を私に渡して、本人は残り二振りの仕上げに取り掛かる・・・普段見せない集中した表情・・・不覚にもときめいた(注4) (・・・っと、いけないいけない、私も集中、集中) 工房は見せてくれないが、琥珀の剣製に関わるのはこれが初めてではなかった そも、完成したばかりの武器(流石にオーダーメイドは殆ど触らないが)をいつもテストしているのは私だったし、琥珀のデザインした透かし彫りとかで、細かい部分は私が彫っていた それというのも、ここに来る前に、私はとあるプロジェクトに参加していた経歴があり、琥珀が私を入手した経緯もそのプロジェクトにあるからだ 武装神姫の中には、あるものは踊りであったり、歌であったりといった、芸術的なセンスを磨く事に喜びを見出す者も存在する だが、武装神姫の性質上、そういった能力を「ダウンロードして終わり」という風には出来ない 結局、先天的にそういった能力を持たない者は、磨くしかない 武装神姫にそういう技術を教える事が可能かどうか、研究している所は多数存在しており、私はそういった機関のひとつ・・・たしか高屋機関だか何だか言う所が主催していたと思う・・・で「ジルダリアの適性」を図る目的で絵画や彫刻の勉強をしていた事があった 彫金に興味があった私と、神姫用の武装を作っていた琥珀 当時の私の担当教官にコネのあった琥珀が、私を譲り受けたのはそういう経緯からだった 「最初は合わなかったわねぇ」 よく作品のデザインと名称で揉めた 自慢出来る事ではないが、どうも琥珀のデザインする武器は地味に過ぎ、私の求めるものは実用性が無かった さらに、ネーミングセンスが私には無い・・・というか、作品にタイトルを付けるのが面倒なので、ついテキトーな名前になってしまう・・・「無題」というのが一体いくつあるだろうか? 対する琥珀のネーミングセンスは独特に過ぎ、余り一般受けしそうもない代物だ・・・本人は「普通の人は買わないから良いんだよ」と言っているが いずれも、私が少しずつバトルを知り、琥珀と打ち解けて行く事で少しずつ刷り合わせはされてきてはいるが 琥珀が私を見ている事を知覚した 「良いデザインが浮かぶ?」 「・・・そうね、まぁ見てなさいな」 私は工具と、白い染料を手に取った 蒼い鍔に白い唐草文様のコントラストが自信作の巨大なジャマダハル 紅色の柄に、黒曜石をあしらった銀色の王冠型ポンメルが眩しいショートソード 金冠が両端に嵌った黒い鈷杵には、ぱっと見には判らないが柄に蔦をイメージした模様を彫りこんでみた 刀身にルーン文字が刻まれたフォールスエッジの長剣には、蝙蝠の翼をイメージしたやや大袈裟な鍔を添えてみた(喋る魔剣だったらしく、あやしいボケに突っ込みを入れつつ彫り込んだ) それぞれに、『閃牙(センガ)』『舞剣(マイヅル)』『魔奏(マソウ)』『空牙(クウガ)』という名を与えられた武器達 この四振りの仕上げは私の・・・ある意味に於いて最初の本格的な作品なのかも知れない 少し・・・否かなり誇らしかった 「・・・ねぇ琥珀・・・」 「琥珀・・・?」 座ったまま、真っ白になっている琥珀 「・・・・・・もう!人が折角気分出して一大決心を話そうとしたのに!空気読めないんだから!!」 うんしょ・・・とひざ掛けを肩から掛けてやり、小さく唇にキスをする うん、眠っている間は可愛いものじゃない 「・・・う・・・」 「!!!!ちょっ!何でこのタイミングで起きてくんのよ!信じらんない!」 「もう一度・・・」 「え?」 「もう一度、してもらえるかな・・・キス」 かもめは、もう飛び去って久しかった 剣は紅い花の誇り 注1 本人はバレていないと思っているのでそっとしておいてあげて下さい 注2 ボナパルト君とヴェートーベン君本人である 注3 大体いつもこの手口でいやらしい事を要求される 注4 今更何を