約 2,308,409 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/326.html
おまかせ♪ホーリーベル あらすじ ある大会で一躍有名になったいずるとホーリー。彼らに憧れ、同じ道を目指す九重翔とリリィ、そして佐和田美由紀とシラユキ。それぞれの物語が始まる。 インフォメーション ●病気のせいで筆が進まないmunaです。番外編がうまく進まなくて申しわけありません。その代わり、先に完成しました本編を掲載します。つぎは・・・、病気が治り次第掲載になります。・・・何とか病気を治してもとのペースに戻りたいですね。 更新メニュー ●第2部の4話を掲載しました。 設定 この物語の登場人物 この物語の登場人物 第二部編 神姫装備関連集 神姫装備関連集 第二部編? 本編 第一部 素敵なハッピークリスマス ホーリーとの出会いがいずるの人生を変えた?! 聖夜に天使がやってきた?! 対決、黒のシュートレイ 其の一 対決、黒のシュートレイ 其の二 対決、黒のシュートレイ 其の三 妖精コンビあらわる ムラサメVSムラサメ ホーリー、バトルデビュー!! 前編 ホーリー、バトルデビュー!! 後編 水中バトルで大ピンチ! 前編 水中バトルで大ピンチ! 後編 アイドルは神姫を救う? 前編 アイドルは神姫を救う? 後編 光と影のクリスマス 前編 光と影のクリスマス 中編 光と影のクリスマス 後編 第二部 目指せ、伝説のサンタ あれから2年後・・・、いずるとホーリーにあこがれ、それを目指す新たな物語が始まる。 人気者にあこがれて ショーケースの中の君 幻の黒い鉄騎兵 翔の気持ち、リリィの気持ち 外伝 『ホーリーベル』の世界に登場する、神姫たちの物語。 その名はシュートレイ 前編 その名はシュートレイ 中編 その名はシュートレイ 後編 その名はシュートレイ エピローグ 黒き天使の伝説 前編 黒き天使の伝説 後編 愛と情熱のタッグバトル 前編 愛と情熱のタッグバトル 中編 愛と情熱のタッグバトル 後編 ヤイバと白い馬 前編 ヤイバと白い馬 後編 ソルティ、初出撃です! 前編 ソルティ、初出撃です! 後編 年末年始だ!丑寅対決 番外編 ギャグ系はこちら。 名乗ろう、決めゼリフ! 初詣で一大事! 年末は大騒ぎ 特別編 ネット世界の侵略者 プロローグ 侵略 出撃、討伐部隊 その1 出撃、討伐部隊 その2 逆襲の獅子虎コンビ その1 逆襲の獅子虎コンビ その2 逆襲の獅子虎コンビ その3 オワリとハジマリ その1 オワリとハジマリ その2 オワリとハジマリ その3 オワリとハジマリ その4 オワリとハジマリ その5 エピローグ 未来(あした) ご意見・ご感想はご意見部屋へ コラボレーション情報 ●第6話で戦うことを忘れた武装神姫の東杜田技研の名前をお借りしました。 ●第6話&7話で神姫ちゃんは何歳ですか?の國崎観奈嬢&ミチルをゲスト出演しました。 ●番外編1で魔女っ子神姫☆ドキドキハウリンの名前と名乗りをお借りしました。 ●番外編2で狛犬はうりん劇場の結さんと三河夫婦をゲスト出演しました。 ●第二部1話でツガル戦術論のシルヴィアとせつなの武装神姫のきらりの名前をお借りしました。 ○昨日アクセスしていただいた方 - ○今日アクセスしていただいた方 - ○今までアクセスしていただいた方 -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2663.html
堅物な武人気質のストラーフMk2型神姫が嫌う臆病と偶然の二つが、彼等を敗北から救ったと言っていい。今回の対戦相手である九頭龍に神姫バトルなので当然ながら直接的にではなく九頭龍が乗り移るアーク型神姫ルルに睨まれた瞬間、黒野白太は虎に飛び掛かられた様な恐怖に足が竦み反射的に両腕で身体を抱いた結果、槍の穂先から身を守る事が出来た。 無事からは程遠く左胸の前にあった左腕とその装甲を破壊されたがそれでも彼等は運命の女神に感謝すべきだろう。臆病と偶然に助けられたストラーフMk2型神姫イシュタルの喝に目を覚ました黒野白太は痛む腕を引き摺って一対のナイフを振るい槍の猛攻を耐え忍ぶ。普段通りでナイフで槍を挟みテコの原理で破壊しようとした黒野白太であったがナイフを突き出した途端、槍が縮む。否、実際に槍が縮むはずも無くそれは錯覚であったがそう思ってしまう程に素早く槍はナイフの鋏から抜け出して、九頭龍とその神姫が僅かに一歩下がったかと思えば今度は槍が伸びる、実際には踏み込んでからの猛烈な刺突を喰らわせた。特に武術を習っているわけでもない黒野白太がそれを防げてたのは神姫バトルによる経験則とイシュタルの補助があったからに他ならない。それでも勢いだけは殺し切れず黒野白太は突き飛ばされ今まで何十もの武器を破壊してナイフの刃に大きな罅が走った。 黒野白太とイシュタルの残る武器はもう一本のナイフとハンドガンとグレネードランチャー、拳とリアパーツの副腕とそこに収まる大剣の六つ。その中でランチャーでは発射前に隙があり、ハンドガンでは威力に心許なく、接近戦で対応出来る武器はナイフと拳と副腕と大剣。だがどちらで戦ってもジリ貧であるのは目に見えていた彼等はハンドガンによる牽制の後、グレネードランチャーを自分の足元へ向けた発射した。爆風に巻き込まれる事を恐れた九頭龍とルルが足を止めた隙に黒野白太とイシュタルは爆風を踏み台に大きく飛翔してその場から飛び去った。背を向けて逃げ出した彼等を目の当たりにしながらも追い掛けようと身を屈めたルルであったが、九頭龍が制止させた。 『何故です、スピードはストラーフMk2型(相手)よりもアーク型(私達)が上回っています。』 『問題は相手が空中に逃げた事だ。私の槍術は所詮、地に足を着けた人間の技。空中で槍を振るうのは本分ではない。』 勿論、彼等は空中で槍を振るった事が全く無いわけではない、空中で槍を振るい敵を打ち倒した事も何度かある。ただ地上と空中とでは槍捌きの精度に大きな差があり強敵を仕留めるのであれば全力を出せる道を選ぶ。物言わずともその意思を理解したルルは何も言わず普段通り戦闘はマスターに任せ自分は敵の動きの探知へと努め始めた。 …。 …。 …。 偶然とは二度三度と連続して続くものであるのだと黒野白太は自分の人生観を改めざる得ない状況に陥っていた。今回のバトルステージには半壊した廃墟が建て並んでおり身を隠して激しく動悸する脳細胞を落ち着かせる時間は十分に保持出来た。 息を整えつつ段々と頭が冷やしていると、罪悪感と言う余計なものが何処からともなく頭の中に入り込んで来る。先制の一撃、これもまた偶然によって防げたからよかったものの、もしその偶然が無ければ致命的な失敗となっていただろう。堅物で普段から口五月蠅いイシュタルからそれについての叱責が来ないのも余計に恐怖感が煽られている。敵にも味方にも追い詰められ内心が冷え始めた黒野白太の頭の中に直接イシュタルの声が届いた。 『思ったよりも左腕の損傷が少ない。装甲に守られたな。』 2040年、最新技術である神姫ライドシステムにより神姫の持ち主は疑似的に神姫と一体化出来るようになった。持ち主と一体化した状態の神姫は二重人格に近く神姫だけでなく持ち主の精神もまた武装神姫として神姫バトルに臨む事が出来る。だから今バトルフィールドには二体の武装神姫しかいないが実際には黒野白太とイシュタル、九頭龍とルルの四人が居るのである。今の声もそれが理由であり、彼女の声は独り言ではなく自分の中に居るもう一人の自分(持ち主)へ向けられたものだ。 状況を考えて今は叱る暇が無いのだろう、冷静に現状を伝えてくれたイシュタルに感謝しつつ黒野白太は勝つ為の案を練る。柔軟な思考が要る時では黒野白太が、単純な思考が要る時ではイシュタルが、それが彼等の役割分担であった。 『バズーカの弾は?』 『残り二発、予備を含めて五発。』 『よし、じゃあ今からバズーカで袋小路を造ってくれ。弾は一発だけ残して、バレないように、出来るだけ早く。』 『そこに奴等を追い込むのか?』 『いや、追い込まれるのは僕達だ。』 『? 了解した、マスター。』 疑問には思っても今までに何度も相手を破ってきたその事実からイシュタルは黒野白太の指示に従う。こういった作業用はデジタルな思考を持つ神姫に任せた方がいいと思っている黒野白太は対戦相手の動きの探知にのみ集中力を注ぐ。 徘徊して直ぐに廃墟と廃墟の隙間を発見したイシュタルはで廃墟の一部を破壊し一方の出口を瓦礫で埋めた。相手を撹乱させる為に直ぐにその場を離れさらにまた別の場所でグレネード弾を放ち廃墟を壊す。今度は一部を壊した廃墟の中に入って身を潜めているとそこにやってきた対戦相手の武装神姫の姿を目で確認する。向こうはライフルやレーザーによる狙撃を警戒しているのか壁に背を預けながらも注意力を散漫させている。先の戦いで既に相手のレーダーを破壊していたのも幸運だっただろう。 彼等に見つからないようにする為に音を立てないよう注意を払いながらも僅かに移動しグレネードランチャーのエネルギーを溜めて放つ。フルチャージされたグレネード弾は通常よりも遥かに飛距離を伸ばし今居る場所から離れた場所で爆発し轟音を立てる。当然ながらそれに気付いた九頭龍とルルは誘き寄せる為の罠かもしれないと、より一層に注意を深めながらもその場に向かう。 廃墟から出たイシュタルは最初に見つけた廃墟の隙間に戻り再びフルチャージさせたグレネード弾を放つ。今度は飛距離の為では無く威力増強の為に放ち穿たれた廃墟には大きな風穴が開いて落ちた瓦礫が隙間に降り積もる。さらに一発のグレネード弾でもう片方の廃墟を壊し一方の出口を塞ぐ瓦礫の山をより高いものとして不完全ながらも袋小路を完成させた。 『出来たぞ。それで、後は何をすればいい?』 『これで十分、後は… 黒野白太の作戦を聞かされた時イシュタルは明らかに目に見えて顔を顰めた。聞かされた作戦というのは作戦と呼ぶには余りにも幼稚で杜撰な一か八かの博打に満ちたものであったからだ。堅物な武人気質が多く自分自身に誇りを持っている者が多いストラーフMk2型にとって偶然に頼る事は非常に心苦しい物がある。だがその事をについて今責めても仕方が無い、バトルフィールドは神聖な場所、責めるのは現実世界でだ。 一心同体となっている所為か、それとも永年の付き合いの所為か、イシュタルの持ち主はケセラケセラと笑っている。これについても後で、と彼女の頭の中で説教リストに追加しただ一言彼が待っているだろう言葉を言い切る。 『了解した、マスター。』 賽は投げられた。 …。 …。 …。 『これは明らかに罠です、マスター。』 『分かっている。』 最後のグレネード弾の炸裂音の源へと来た九頭龍とルルが見たのは廃墟の隙間に一方の出口を瓦礫で塞いで造られた袋小路。そしてその瓦礫の背中を預けるように立ちグレネードランチャーの筒先を残った出口へ向けて油断無く構えている黒野白太とイシュタルの武装神姫。 袋小路の中であればグレネード弾を避ける動作は大きく制限される、その恩恵を得る為に自らの退路も断った決死の姿勢。もし九頭龍とルルが槍以外の武装、銃火器を武装していたらわざわざ袋小路入らずとも狙撃する事が出来ただろう。それが無い今、彼等が黒野白太とイシュタルを打ち倒すには相手の造った土俵に乗り込んで近付くしかない。 『既に向こうは一撃を喰らっています、このままタイムアップを待てば私達の勝ちです。』 『…。』 だがわざわざ罠に踏み込む必要も無い、神姫バトルのルールの一つに時間制限による勝敗の判定というものがある。判定は中立のジャッジマシンが行い互いの武装神姫の被害を計算し被害が少ない方が勝者というものだ。ルルの言う通り既に一撃を貰っている向こうが自分からは何もしてこないのであればこちら側は時間切れを待てばいい。それを九頭龍は充分に理解している、理解しているのだがゆっくりと自らの武装の唯一である相棒の槍に手を添える。 『分かっている。分かっているが私が目指すのは槍による勝利。根気での勝利では無い。』 『…。』 『相手が剣を振ろうとも、銃を撃とうとも、罠を張ろうとも、この槍一本で戦い勝利する。それが私の矜持だ。』 『…そうですか。』 『理解してくれとは言わん。矜持などと格好付けても所詮は私の我儘だからな。』 『いえ、ならばその我儘を支えるのが神姫の務め。何処までも御伴します、マスター。』 『最高速度まで加速しろ!!今ここで決着を付けるぞ!』 『了解!』 ルルがクラウチングスタートの姿勢を取り地面を蹴ると自動行動(レールアクション)を発動させ全身が青味の光を帯びる。アーク型神姫元来の機動性能と合わさって一個の弾丸となって迫り来る神姫を黒野白太は冷静に観察していた。接近戦が主体である今の装備で接近戦で勝てない相手を相手にしてしまった時に黒野白太が採った戦法は攻撃の反撃(クロスカウンター)。どんな達人でも攻撃の瞬間に防御は出来ない、その瞬間を捕らえる自信が黒野白太にはあった。 今回の対戦相手は神姫バトルのプレイヤーにしては珍しく攻撃時は武装神姫から神姫の持ち主である九頭竜の人格が表に出る。その瞬間、武装神姫から先制攻撃を喰らう要因となった『虎に飛び掛かられた様な恐怖』を感じ取る事が出来るのだ。これは恐らく武術の達人特有の相手を気で呑むという技術なのだろうがその辺りに黒野白太にとってはどうでもよく。兎に角、人間(アナログ)の感覚で気を感じ取った後、神姫(デジタル)に身体の支配権を全て委ねてからの攻撃の反撃(クロスカウンター)を狙う。自分自身が恐怖に敏感な臆病な人間である事を逆手に取る、それが黒野白太が建てた計画の概要であった。 『…来たっ!』 九頭龍が強く表に出る瞬間、心が凍りつくような感覚を感じ取り身体の支配権を全てイシュタルに移し替える。グレネード弾を放とうとした瞬間、弾丸の様な速度を維持したまま九頭龍は持っていた槍を投げた。空気抵抗を受け辛い形状をしている槍は棒状のライフル弾と見紛うような速度と正確性でイシュタルへと襲い掛かる。イシュタルは黒野白太から伝えられた通りにグレネード弾を真後ろに放った。彼等から背を向けて逃げた時と同様に爆風を踏み台にしながらも彼女もまたレールアクションを発動させ今度は前へと飛ぶ。爆風による追い風でアーク型神姫をも凌駕する程の最高速度を叩き出しつつもは背中の大剣に手を添えた。 それよりも先に投げられた槍がイシュタルを貫いたが加速の為に僅かに身体を屈めていた御蔭で心臓(コア)よりも僅かに上の位置へと突き刺さる。何よりも苦しめられた槍という武器の特性に助けられながらも彼女は九頭龍との交差の瞬間に抜刀する。驚いた九頭龍が予備の槍を取り出そうとするが、もう遅い。 安全装置が働き九頭龍の弾丸の勢いが急停止し一方で決着が付いた事を理解したイシュタルは足を止めて大剣をリアパーツへ納刀する。チンと金属音の囀りと共に左腕から左脇腹が心臓(コア)を巻き込んで切り飛ばされ崩れ落ちる九頭龍にジャッジマシンが判決(コール)を下す。 「勝者(ウィナー)・イシュタル」 急所を狙い損ねた槍が彼女から引き抜かれ、カランカランと持ち主の無念を代弁するかのような侘しい音を響かせた。 …。 …。 …。 「最後の刹那、勝負を急ぎ槍を投げたのが私の敗因だったか。」 「貴方程の腕前であれば加速したとは言え神姫の剣を捌くのは訳が無かったでしょうね。」 「ははは、槍一本で来た私が、私自身を信じられなかったという事か。まだまだ修練が足りんな。」 「何はともあれ今回の試合、僕達の勝利です。貰うものは貰っていきますよ。」 「あぁ、持っていけ。授業料と思えば安いものだ。」 「それでは失礼して。」 九頭龍が所持する神姫ポイントから規定されている最大分までを自分のIDへと移した後、黒野白太はその場を後にした。向かう先は彼が所持するストラーフMk2型神姫イシュタルが待つ場所、そこに居た彼女は目に見えて不機嫌だった。黒野白太にその理由が分からなかったわけではないが人の感情を逆撫でするのが大好きな彼は敢えて惚けた振りをして尋ねる。 「なーに不機嫌してるのさ。勝負には勝ったでしょ?」 「あぁ、勝ったとも。だが勝てばいいと言うものでもないだろう。」 「そりゃそうだけどさ。もしかして僕の作戦が駄目だった?」 「それもある、あんな一か八かの穴だらけな作戦、二度と御免だ。だがそれよりも私が言いたいのは――――。」 イシュタルは青い目で黒野白太を睨む、これ以上の事は察しろ、と目で訴えかけているのだろう。流石にこれ以上は惚けた振りをしてしまえばLove度が下がるかもしれないので彼女の不機嫌の理由を言い当てた。 「最初の戦闘の時、僕が相手にビビって動かなくなっちゃった事でしょ?」 「分かっているじゃないか! 運が良かったから不様を晒す事は無かったものの、もしそうでなければ私達はあの一瞬で負けていたんだぞ!」 「正直な感想だけど、神姫越しにあんな殺気出せる人がいるとは思わなかった。本気で殺されると思ったよ。」 「ええい、言い訳をするな、言い訳を! 兎に角だ、この事はマスターの胸に深く刻んで欲しい!」 ピンポンパンポンと気の抜けた音の後にゲームセンターが閉店時間を迎えた事を報せるアナウンスが響き渡る。 「おっと、もうこんな時間か。帰らなくちゃね」 「家に着いたら先ず今日の戦いの反省だ。特に最後の戦いのは繰り返さないようにきっちり対策を取るぞ。」 「はいはい。」 神姫バトルに対しどこまでも厳格で貪欲なイシュタルに対し黒野白太はやる気が有るのか無いのか判別し辛い応答を返す。こうして武装紳士とその武装神姫の隔離病棟(ゲームセンター)での一日は終わる。そしてまた明日彼等は神姫バトルに精を出すのだろう、只ひたすら神姫バトルの上達を目指して。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1311.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 神姫の構造と戦闘について ※この雑文は武装神姫に対するALCの勝手な解釈です。 一応本編ではこの解釈で考えてますよ、的なものです。 以上を考慮した上でお読み下さい。 オレ設定に興味は無いと言う方はどうかスルーして下さい。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 神姫の構造 武装神姫の構造は中枢部、末端部、装備の3つに分類できる。 中枢部 神姫の最低必要条件。 頭部、首部、胸部(胸アーマーの部分、及び腹部は含まない)のみの構成。 これにCSCを搭載すれば神姫と識別される。 (この状態では電源は無いため、有線接続が必要だと思う) 交換が効かず、破損=神姫の死であるため堅牢なシェルで守られていると思う。 バトルに使用する武器は、このシェルを傷付けられないのが前提。 非常用のバッテリーもここに内臓されていると思う。 頭部は思考、嗜好などを決定する部分のひとつ。 CSCから影響を受け、その方向性を決定するが、頭部自体の傾向も強くあると思う。 (アーンヴァルは真面目な子が多いとか…) 胸部はCSCの基部であると同時に、神姫の身体機能の最大値を決定する部分だと思われる。 トルクがここで決まると言う感じだろうか? (マオチャオは素早いとか、サイフォスは腕力があるとか…) もちろんCSCの影響を受け、性能は変化すると思う。 余談だが、神姫は全て裸素体だと考えている。 フィギュアの塗装はパイロットスーツみたいなもの? (ジルダリアならブラとパンツだけだ!!) 当然“デフォルトでは”胸の先端や股間部分は何も無いと思うが…。 交換用の18禁パーツが出回らない訳は無い!!(力説) 末端部 いわゆる手足、それに加えて中枢部に含まれない腹部も末端部のひとつ。 ここは神姫の体であると同時に交換可能な装備でもあるため、換装やカスタマイズも可能。 (作中ではレライナが脚部を改造していると言う設定になっている) 腹部には神姫のメインバッテリーである燃料電池が内蔵されている。 燃料電池の種類はさまざまだが、基本的には水素を補給し、酸素と反応させることで電力を得る仕組み。 しかし、この機能を使用したとしても、やはりクレイドルによる睡眠と充電は必須。 (補給用の水素は商品なので有料。バトロンの急速充電池がこれだといいな、とか・・・) もちろん、この機能を使用せずにクレイドルの充電のみでも活動可能。 また、別売りのバイオ型燃料電池と換装すれば、神姫は食事から糖分を摂取し電力に還元することが可能になる。 (食事できる神姫の科学的説明・・・になる?) そして、燃料電池だということは活動すると“水”が生成されてしまう訳なのだが…。 あ…、えっち機能のある(性器のある)お腹も売ってると思う。 装備 言わずと知れた武器防具。 取り外しは容易であり、簡単に換装が可能。 手で握るものの他、ぷちマスィーンズなどもこれに分類される。 武装の威力はおそらく最大でもガスガン程度。 これ以上になると人間に対する殺傷能力を持ってしまい玩具としては危険。 近接武器ならカッターナイフとか? どちらにせよ使い方しだいで人間に攻撃も可能。 (神姫の銃弾が目に入れば失明の危険はあるし、頚動脈を狙えば刃物で殺せる) これは現実のエアガンや包丁等でも同じ事なので許容できるはず。 当然、防具はその威力で破壊できる物に限られる。 (その場合、アーマー系は消耗品なので値段も安いはず) また、前述のとおり中枢部は堅牢なシェルで守られる為、バトルによる神姫の『死亡』は無いはず。 もちろん、中枢部を守るシェルのような強度の高いものは、防具としての使用は禁止だと思う。 つまり、これに当てはまる武器防具が公式レギュレーション(この作品内の公式です)に相当するはず。 自作武器や改造武器はこの審査を受けなければ公式戦での使用は認められない。 もちろん、違法改造の武器はこれに相当しない。 戦闘について 神姫が強くなると言うのは、力が上がるとか素早さが高くなるとかでは無いと思う。 きっと百戦錬磨のアーンヴァル(たぶん非力)が、生まれたてのサイフォス(腕力は凄そう)と腕相撲すれば必ずサイフォスが勝つと思う。 これが、剣を使った勝負となると話は別。 (剣道八段の小柄な老人と、剣道初段の大男の戦いを想定すれば分かりやすいだろうか?) つまり、神姫の強さは能力値ではなく技術(スキル)的な強さと、経験を反映した最適化による効率の向上だと言う事になる。 また、神姫は案外“頭が悪い”と思う。 計算の速さとかはコンピュータなので当然早いのだろうが、応用力に欠けるのではないだろうか? 狙撃が得意な神姫と言うのは、遠くの目標に弾を当てられるだけであり、狙撃の最適なポジションの選定とかはマスターの指示待ちになる筈。 でないとマスターが戦闘を指示する意味が無くなるし…。 もちろん、経験を積んだ神姫はかなりの精度でその手の判断が出来るようになるのだろうが、マスターの指示が完全に不要な神姫はいないと思う。 実力差がある場合ならともかく、互いの実力が伯仲している場合、マスターの指示の有無(あるいは良し悪し)は確実に勝敗に影響する。 こんなところですね。 くれぐれもALCの勝手な解釈だとお忘れなく。 そのうちコラムとか、対談形式で纏めて読み物にしておきたいけど・・・。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/215.html
前へ 先頭ページ 次へ 第五話 相対 眼下のサルーンと巡航速度を同調させ、クエンティンは飛んでいる。 雪が前方から真横に吹き付けるが、不思議なことに一粒も彼女へぶつかることはなかった。 風圧のせいではない。彼女の周囲にはエイダにより目に見えないエネルギー膜が張られてあって、それで雪のみならず空気中の埃を払いのけ、さらに空気抵抗を大幅に減衰させてあの驚異的な高機動性を叩き出しているのである。 彼女の顔に当たる風は突風などではなく、ほとんどそよ風程度と言ってよかった。 サルーンとの同調速度から若干落とし、クエンティンは車の斜め後方上空へつく。さらに後方の光点、エイダとおなじメタトロン・プロジェクトのプロトタイプ、彼女のいわば姉妹機にも気を配る。まだ姿は見えない。攻撃してくる気配も無かった。 同調速度へ戻し、相手が接近するのを待つ。先制攻撃は向こうへくれてやるつもりだった。一般に戦闘においては先制攻撃側が有利とされているが、エイダが『問題ありません』と言ったのでそうすることにした。 エイダは姉妹機の武装を知っているようだった。具体的にはやはり情報機密ロックに該当するようで教えられなかったが、エイダは機転を利かせて間接的にアドバイスしているのである。 すると少なくとも相手は、あのアヌビスというやつは攻撃と同時に着弾するようなたとえば直進するレーザーのような武器は持っていないことになる。他の武装は、まあ、後々身をもって分かるだろう。 クエンティンはつい先ほどの、理音と鶴畑興紀の会話を思い返していた。 思い出せば思い出すほど悔しさがこみ上げてくる。 が、神姫に人権はあるべき、無くてよいなどという当為的な議論はともかくとして、人権が無いのは事実であり、また安易に人権などもらってしまえば神姫を趣味のためのツールと考えている人間の自由を剥奪してしまうことになるのもまた事実だった。 それは認める。認めるしかない。 だが、もっと重大な懸念がある。人権が与えられたその瞬間、武装神姫はその存在意義そのものを失ってしまう可能性があるのだ。 たとえば、もしバトルがしたくて神姫を買ったオーナーの元にバトルをしたくない神姫がやってきた場合。神姫に人権が付与されていたなら、オーナーは神姫の「バトルはしたくない」という権利を絶対に守らねばならない。 絶対に、である。理解のあるオーナーならいいが、全員が全員そうだとは限らない。 他にも、「ああしろこうしろ」とむやみやたらに命令することも許されない。 それらを破ったら即刻、神姫に対する人権侵害となる。 所有者が所有物の権利を尊重するという、立場の逆転が起こってしまうのだ。 武装神姫はオーナーがお金を出して買った所有物であり、だから武装神姫はオーナーの願いや命令を聞くのであり、すなわちそれこそが武装神姫なのである。少なくとも武装神姫という商品はそう作られた。 「神姫はパートナーだ」「妹だ」「娘だ」あるいは「恋人です」「女王様でございますうぅう!」などの、オーナーそれぞれの気持ちや理解は関係なく。神姫をどう捉えるかはオーナーの自由だ。 言い切ってしまえば人間の所有物だから武装神姫なのだ。命令を聞かなければ武装神姫として存在している意味が、無い。 オーナーが「君のやりたいようにやるがいい」と言ったとして、言われた神姫が自由にしているように見えても、当の神姫は――意識的であるにしろ無意識的であるにしろ――自由にやりたいことをやっているのではなく、「自由にやれ」という命令を聞いているに過ぎない。 武装神姫は明確な意思を持っているが、しかし人権を欲することはしたくてもできないのだ。少なくとも人の所有物として生まれている今現在は。人権が欲しいなら所有物であることをやめる必要がある。武装神姫でなくなる必要が。 いま、神姫が人間らしい――という表現も、自分が神姫だということをさし引いて考えるならおかしいな、とクエンティンは思った――生活を送れるかどうかは、ひとえにオーナー一人一人の良識に全てが委ねられているのである。 それならアタシは幸せだ。クエンティンは理音に心から感謝した。 心から? うーん、やっぱり神姫に心は、意思はあるかも。少なくともアタシ自身はそう思う。クエンティンはひとまず納得した。 変わって、正義の話に関しては、いささか疑問を感じていた。 『鶴畑興紀の話には条件が必要です』 クエンティンの思考を読んだのか、エイダが答える。そのとおりだ。 彼の『個人の正義は誰にも侵害されず、また自分の正義で他人の正義を侵害してもいけない』という主張は、個人体個人の間でのみ有効な主張だ。 これがもし集団が主体となった場合、彼の主張は一気に崩壊する。 なぜならば、集団の正義は往々にして他集団や他個人の正義を侵害することで成り立っているからだ。 いや、侵害という言葉は適切ではないかもしれない。集団そのものの意識や目的はともかく、集団というものは集団であるということ自体が理由となって、どうあがいたところで他の正義(思想や権利と言い換えてもいいかもしれない)のうえにかぶさる様にできている。 簡単な例を挙げるなら、企業がある。とあるひとつのカテゴリに属する企業は、同じカテゴリにある他企業の正義を押さえつけなければ存在できない。押さえつけなければその企業は死んでしまうからだ。製造販売業ならば、他企業よりも良いものを作って売るという行動がそれにあたり、その行為は同時に他企業を押さえつける行為となる。他企業は押さえつけられたままでは滅びてしまうから、同じようにより良いものを作って、売る。 そのいたちごっこが続く。俗に競争と呼ばれるやつだ。だからこそ技術は発展し続け、消費者はより良い生活ができる。お姉さまは「このケーキおいしくなったわね」と言える。 鶴畑コンツェルンがやっていることはまさに正義の押し売りなのかもしれない。他企業を押さえつけ、自らがのさばる。それを意図的にやっている。 ふと、クエンティンは思った。他の正義を押さえつけることは、すなわち支配ということではないか、と。 「支配者って、自分の正義を他人に押し付ける人のことかしら?」 クエンティンは個人ではなく企業人としての鶴畑興紀をイメージしながら、言葉に出して言って見た。誰に訊いたわけでもない。が、たぶんエイダに訊いたのだろうとクエンティンは思った。 『無条件ならば、そのとおりです』 エイダは答えた。 ならば、私はバトルにおいては自分の正義を他人に押し付けているのだろうか? 『それは違います』とエイダは言った。 「どうして? 私はバトルで、支配者になろうとしているのよ」 クエンティンはエイダと出会う直前に考えていた、支配者になるのだという考えを伝えた。相手に支配していると気づかせない、雪のような支配者になるということを。 『バトルは認められた戦いです』 エイダは即座に返答した。はからずも理音が考えていたことと同じことだった。バトルは認められた戦いであるし、どんなに戦ったところで(神姫に人権が無いことを前提とすれば、たとえリアルバトルでも)死者は出ないから、対戦者同士の正義はぶつかり合わない。 もしぶつかるとしたら対戦者相互の個人的な感情事情のみで、その多くは「自分が勝ったら何々をして(~になり)、相手が勝ったら何々をする(~になる)」というものである。バトルの勝ち負けによりどっちの願望が実行されるかというものだ。 正義という言葉を使うなら「自分が勝ったら自分の正義で相手の正義を押さえつけても良いね」という対戦者お互いの承諾なのである。バトルという行為そのものにはまったく関係が無い。 「……そうかな?」 『そうです』 エイダはさらに続ける。 仮にバトルの中で支配者となったとしても、それは相手の正義の侵害ではなく、バトルの中で展開を有利に運べるようになったというだけなのだ。勝っても負けても誰も死なないから、取り返しのつかないことにはならない。つまりバトル後もそれぞれの正義は続いてゆくのである。 『ただし、戦死者が出る実戦であった場合、意味は大きく違ってきます』 相手を殺さなければ自分の正義の遂行が危ういのである。 実戦とか死ぬとかいう例は大げさだが、これを現実的な事象になおしてみるならば、たとえ個人対個人でも正義のぶつかり合いはある。 間に権利的か利益的、企業的な干渉があった場合(たとえば子持ちの夫婦が離婚したときの親権争い、恋敵同士による一人の女性の争奪戦、どちらか一方しかその企業との契約がとれない場合における営業担当同士の交渉戦、など)、負けた側は自分の正義、あるいは願望を貫けないのだから戦わざるを得ない。 この部分が鶴畑興紀の主張に足りない。と、エイダは言った。たとえ個人でも、正義がぶつかるときがあるのだ。 正義を物質みたいに扱っているな、とクエンティンは感想を言った。死んだらその先に物質は持っていけないというわけか。 でも、自分自身に即してみるならば、と、クエンティンは考える。神姫に人権が無いという事実は置いといて、リアルバトルで破壊される、死ぬ、のはやっぱり嫌である。もうお姉さまとお話もできないと考えると、途方も無く恐ろしかった。人工知能基本三原則の自己保存でもあるが。 そのリアルバトルを今からやるのだよな。 改めて考えると、クエンティンは突然言いようの無い恐怖におそわれた。 メインジェネレータ、人間で言う心臓のあたりの鼓動が早くなり、全身の駆動部分が陽電子頭脳からの微弱なパルスを感じてぶるぶると震え始める。クエンティンはつまり怖さで縮み上がっているのだ。 負ければ壊される。死ぬ。という恐怖。リアルバトルをやるのは初めてではない。ついさっきだってあの一つ目どもとさんざリアルバトルをやったばかりだ。 なのに、この恐怖は何だろう。やめたい、やりたくない。死にたくない。あのサルーンの中に今すぐ取って返してお姉さまの胸に飛び込みたい。 「うっ……」 引きつった声が漏れた。声だけでなく、股間部の排出口から廃熱を吸い取り切った古い冷却水も漏らしてしまいそうだった。 やばい。このまま戦ったら負ける。確実に。 『感情回路の異常を感知。沈静プログラムオープン』 エイダが報告。 すると、途端に恐怖が薄らいでゆく。全身をすっきりした感覚が走り、ジェネレータの鼓動は平常に戻り、震えも止まった。 「あ、ありがとう、エイダ」 『どういたしまして』 鎮静剤を打たれたのと同じようなものだな、と思いながら、クエンティンはお礼を言った。彼女がいなければこのままちびっていたかもしれない。 「あいつは? アヌビスは」 『変化はありません』 後ろを振り返る。光点はまだ動いていなかった。さっきから同じ速度で追いかけてきている。接近するそぶりは無い。 「まだ仕掛けてこないなんて……。おかしいな」 そう言った瞬間だった。 光点がふっ、と消えた。 「えっ!?」 『警告、脅威接近、オンザノーズ!』 エイダが叫ぶ。 ギュバッ! 聞いたことの無い奇妙な音とともに、目と鼻の先にそいつが現れた。 ピンと立った細長い耳のようなアンテナのついた、犬とも狼ともつかないフードのようなヘッドギアをかぶった神姫だった。ハウリンではない。ハウリンのはこんなに鋭角なヘッドギアではないし、なにより目が隠れない。その神姫の目は見えなかった。ヘッドギアの側面から後頭部にかけて覆うように薄いレースのようなものが首まで垂れている。 背中に八枚の羽のようなユニットを浮かばせ――背中にくっついていない――、腕を組み、右手に錫杖の形をした長い得物を携えていた。 ボディの色は今のクエンティンよりも黒に近く、胸部の球体から赤いエネルギーラインが全身に渡っている。 静かな威圧感が自分をわしづかんだように、クエンティンは感じた。 『離脱してください!』 「はっ!?」 我に返ってバックブースト。左手でエネルギーシールドを張りつつ、クエンティンは間合いを取る。 攻撃されていたら間違いなくやられていた。なぜ攻撃してこなかったんだろう。やはり捕獲するためなのだろうか。 『MMSタイプ・アヌビス、「デルフィ」です』 「あいつが……!?」 瞬間移動してきた。リアルで。ありえない! 一体どんな原理が使われているんだろう。 『ゼロシフトです』 「え?」 『いまの瞬間移動のことです。エネルギーバリアの空気抵抗減衰能力と空間圧縮技術を応用し、現在位置と移動先の空間を圧縮することで短距離の超高速移動が出来ます』 「ちょっ、ちょっと待ってよ、あいつの武装データはロックが掛かってるんじゃないの?」 『デルフィの武装データはセンサーで確認した場合公開されたとみなし、その武装に関するロックが無効になります』 つまり奴からのあらゆる攻撃は一度見なければ情報ロックが解除されないというわけだ。 「それじゃあ分からないのと大差ないじゃない……」 避けられればなんとかなるが……、所見の攻撃の回避率が総じて低いことは経験で知っている。 しかしこれでもエイダはなんとか機転を利かせてがんばっているのだ。 「ノウマンって奴、恨んでやるわ」 クエンティンはロックをかけた顔も知らない責任者に、頭の中でパンチを食らわせた。 デルフィの表情は変わらない。唯一露出している唇は結ばれたまま、ピクリとも動かなかった。 表情や仕草から意図を読むことができない。クエンティンはバトルの際そうして戦ってきた。どんな行動にも予備動作というものが必ずあり、ほとんどの攻撃はそれで対応できたのだ。 こんなにも先の読めない敵は初めてだった。いや、正確に言えば初めてではない。エイダとの融合前の、一つ目との戦いもこんな感じだった。融合後は性能差で勝てたに等しい。 クエンティンはまだ、この融合後のボディに慣れきっていなかった。 奴の意図はなんだろう。自分を壊すのか、拉致するのか。 どちらであれ、いやだった。 『目的地まであと二分です』 エイダが報告する。 ギュバッ! 同時にデルフィは瞬間移動。クエンティンの目の前に出現する。 右手の錫杖がしゃらりと鳴り、横なぎに払われる。 「ぐっ!」 とっさシールドを張って重防御。にもかかわらず鈍器で殴られたような衝撃が全身を揺さぶった。シールドの衝撃吸収機能がほとんど役に立っていない。 『距離をとって戦ってください。近接戦闘は危険です』 言われきらないうちにクエンティン、バックブースト。 ガ、ガシォーン! ホーミングレーザーを放ちつつ距離をとる。サルーンと並行しながら動かなければならないから、制御が難しい。平行飛行の操作をエイダに委ねる。これでさほど気にならなくなるが、サルーン側へはすばやく移動することが出来ない。 ヅシャシャシャ! デルフィはシールドを張りつつ錫杖をぐるぐると回転させ、レーザーを防御。レーザーは一発も有効弾にならない。 グヴィーンッ デルフィの背中から何十本もの、血のように赤いレーザーが射出された。 『ロックオンレーザーです』 エイダが言った。 しかし、鋭角的にのたうちながら迫ってくるレーザーに、クエンティンはどう避けたらよいか見当が付かない。 『可能な限りひきつけ、前方へブーストしてください』 すかさずエイダのアドバイスが飛ぶ。 「可能な限り引き付けて、って……」 四方八方から迫るレーザーを見渡し、さらに間合いを取ろうとしながらクエンティンは怖気づいた。 「抜ける隙間がない!」 クエンティンはシールドを最大出力で展開、四肢を踏ん張って耐える態勢に。 着弾。 左手がばらばらに砕け散るかと思うほどの振動がやってきた。クエンティンは目をつぶってしまう。 レーザーの嵐は止まらない。ロックオンレーザーを時間差で撃ちつづけているのだ。それでも一撃一撃が重かった。 姉妹機のくせして、アタシはこんなに撃てない! 射撃がやむ。かろうじて左手は砕けなかった。 うっかり気を抜いてしまい、そのままシールドを解除する。 『攻撃警告!』 ギュバッ! キスでもしてしまいそうなほどの近くに、デルフィが出現した。 気を取り直す間は与えられなかった。 ドツッ! 錫杖が振り下ろされ、左肩口に痛打。 「ぎゃうっ!?」 異常なパワーをクエンティンは感じた。左肩装甲にひびが入る。 そのままデルフィは錫杖を振り回してうずくまるクエンティンを文字通り袋叩きにしてしまう。 右わき腹から左大腿、胸部、右腕部、左すね。回避するタイミングを逃したクエンティンは、手足をちぢこめて耐えるしかない。 一撃で倒すことはしなかった。デルフィはわざと急所をそらして殴りつけているのだ。それでクエンティンは、こいつは自分をさらっていこうとしているのだと分かった。 こんなところで黙ってさらわれるわけには行かない。 「うわあーっ!」 ブレードを跳ね上げる。 「!」 ギュバッ! デルフィはゼロシフトで離れる。口元がやや開いている。意外な反撃に初めて驚愕の表情を見せたのだった。 クエンティンは高速の思考でエイダに指令。 〝エイダ、一番簡単なサブウェポンを手動で出して!〟 〝しかし、多大な負荷がかかります〟 〝いいから早くやって!〟 エイダは手動プログラムを開始。途端にクエンティンの頭部から煙が上がり始める。この時代において容量、計算速度、冷却効率そのどれをとってもトップクラスのスペックを誇る陽電子頭脳に、その許容をはるかに上回る負荷がかかっていた。これでいて最も軽いサブウェポン一つを呼び出しているのだ。 頭痛ががんがんと暴れだしたがクエンティンは耐えた。 右手の平にいくつもの小さな螺旋が出現。それらは銀色の球体となって顕現する。 クエンティンは球体を握り締めると、腕をぶん回し、デルフィに向けて投げつけた。 サブウェポンを使われるとは考慮していなかったのか、デルフィは瞬間移動で回避することなく球体を当てられた。 球体はデルフィのボディにくっつくと、ボディと反対の方向に細長い光を放出した。 ゲイザー。 球体の強力な推進力により対象を拘束するサブウェポンである。 『鶴畑家対空ファランクス砲の射程範囲に到達しました。進行方向へシールドを展開してください』 クエンティンは言われたとおりにする。 直後、サルーンの向こう側からオレンジ色に光る筋が高速で飛来した。筋の正体は五発に一発装填されているファランクス砲の曳光弾である。 空気を切り裂く音が繋がって聞こえる。毎分六千発以上の高速射撃により、辺りは鉛の雨と化した。 二十ミリという大口径ライフル弾の衝撃を、クエンティンのエネルギーシールドは完全に吸収していた。もはやこれは武装神姫なんかじゃない、れっきとした兵器で通用する、とクエンティンは思った。それはたぶん当たっているかもしれない。人工知能基本三原則は付け忘れたのではなく、きっと最初から付いていなかったのだ。自分が死にたくないと思ったのは自分の感情であって、きっと三原則は影響していなかった。 エイダは答えなかった。回答不能なのかもしれない。 それに、三原則無しで死にたくないと思った私は一体なんなのだろう? ゲイザーによりシールドも展開できないデルフィは、無数の銃弾を浴びて火花を散らして墜落し、見えなくなった。 あんなものでは傷をつけることもできないとクエンティンは推測した。きっといまシールドを切ったとして、二十ミリ弾ぐらいではこのボディをぶっ壊せないだろう。あいつ、デルフィも同じだ。エイダとは姉妹機なのだから。 シールドを張りつつクエンティンはサルーンへ戻る。 サルーンはそのまま巨大な正門をくぐり、屋敷の敷地内へと消えていった。屋敷は煌々と明かりが点いていた。 その後二分間、デルフィが墜落したとされる範囲に射撃は継続された。二門のファランクス砲から発射された弾丸はのべ三万発以上にのぼった。 追撃は無かった。 雪が降り続いていた。 戦いの跡も、三万発の鉛の雨のえぐった地面も、すべからく雪の支配する世界に覆われた。 屋敷の明かりが一つ、新たに灯った。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/busousinki/
武装神姫 BATTLE COMMUNICATION @wikiへようこそ DeNAのポータルサイト・SNS「Mobage」内のソーシャルゲーム「武装神姫 BATTLE COMMUNICATTON」の攻略wikiです。 最新情報は、武装神姫 BATTLE COMMUNICATTONwikiをご参照! 携帯からのアクセスの場合、こちらをご利用ください。 身内用、自分のメモ用として作っています。過度な期待はしないでください。 誰でも編集可能にはしています。なので編集は自由です。 武装神姫とは? 武装神姫(ぶそうしんき)は、コナミデジタルエンタテインメントから発売されているアクションフィギュアシリーズのことです。 合計: - 今日: - 昨日: - バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/busoushinki/
したらば版武装神姫@wikiへようこそ このwikiはしたらば版武装神姫板用のwikiです 各スレで出てきた意見、アイディアを掲載していきます 誰でも編集できますので気軽にver,upさせて下さい wikiの使い方や編集方法などはコチラをご覧下さい @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください @wiki助け合いコミュニティの掲示板スレッド一覧 #atfb_bbs_list その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 @wikiプラグイン一覧 まとめサイト作成支援ツール バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2626.html
次の日、今は学校が終わり、夜9時までのコンビニアルバイトの最中。 学校でもずっとあの神姫について考えていた。なにかしてあげられないのかなと思っているが、良い案がなかなか出ない。 そんな上の空の状態だから、アルバイトの最中でも度々ミスをしてしまうし。 「……ハァ」 「どうした、青少年。溜息なんてついて、今日は覇気がないぞ。覇気が」 「あ、すみません。君島さん」 今日同じシフトの先輩、君島さんにおもわず頭を下げる。人が少ない頃を見て話しかけてくれたみたいだ。 「いや、なに。いつも生真面目に仕事しているキミがミス連発なんて珍しいのでね」 「……ちょっと、色々ありまして、悩んでいて集中できないんですよ」 「ほう。恋かね?」 「え!……いやいや違いますって」 何を言い出すんだ、この人は。アルバイトの先輩で本名は君島 縁さん。 長く伸びた髪をぞんざいに後ろでまとめていて厳かな口調が特徴。そしてなぜか僕をよくからかってくる。 「なんだつまらないな。キミくらいの年代ならそういうのが相場なんだがね」 「なんで恋愛関連に話がいくんですか。……あ、でも、一応悩んでいることは女の子なのかな。武装神姫のことなんですけど」 「あの戦わせたり、その他の用途に仕事のサポートもできるという噂の機械人形か。はたまた恋人にしたりできるとか。……ハッ! まさか、相手は神姫か!? お姉さんは許さんぞ」 「違いますって! ―――あ、いらっしゃいませ!」 お客さんが来たので、すぐさま商品をうつ。君島さんもいつの間にか商品の整理に戻っている。まったく、あの人は。 頃合いを見て、君島さんにまた話しかける。 「お客さんに見られたじゃないですか」 「クク、取り乱すキミが面白くてな。ちょっとからかってしまった、すまないな。 ……でだ、武装神姫について何を悩んでいるんだね。話してみ。ほらほら」 「……ハァ。わかりました」 二度目の溜息をついて、これまで起きたことを君島さんに話した。 「ほうほう。塞ぎ切った神姫を拾ってしまって、どう接したらいいかわからないと」 「そうです」 君島さんは真面目に取り合ってくれる人ではあるのだけど。なんかな、うまく表現できない。 「私は神姫を持っていないが、メディア情報は度々拾うな。例えば『神姫には心がある』という話が多くある」 「……心ですか」 喜怒哀楽の感情がある。そんな神姫たちであれば、そう思う人たちもいるのだろう。ミスズとか他の神姫を見てて僕もそう思う。 「所謂、AIなんだが。これには様々な議論がされている。今でも決着はついてはいない。ただの自立思考型の人形だろとかな、偉い奴とかがそういうことをのたまうのは世の常だ。 まぁ、そんなことが上では起きている訳だ。……少し反れたが、では、キミのように神姫を拾った場合はどうしたらいいか」 「……どうすれば?」 「人間の女と考えて行動しろ」 「はい?」 「人形とか、野良神姫とか、考えるな。そいつは人間の女の子だ。家出した女の子だ。そう考えて動け。で、仲良くなればいい」 「簡単に言いますけど、塞ぎ込んでいるって話しましたよね」 「一度でくじけるな。弱音を吐くな。何回でもトライだ。さすれば、道は開かれん」 勢いでそう君島さんは言い放った。 なんだか、そう思うとやれる気がしてきた。 僕は単純なんだろうか。それとも君島さんの話術なんだろうか。 「そして、いつのまにか長倉君とその神姫はめくるめく関係に。うわ、面白いし笑えるな」 ダメだ。こんな大人になったらダメだ。 ---- そして。 帰ってきて、僕の部屋に今も謎の神姫がいる。 あれからずっとクレイドルの中にいたみたいで、いまだに何があったのかは話してくれない。これじゃ君島さんの案、強引に会話で仲良くなろう作戦もままならない。 一応、僕も武装神姫をいつかは欲しいなと思ってはいたけどなあ、これを人間の女の子と考えるのか。無理でしょうに。 僕の家庭は母親は僕が幼い頃に病気でなくなり、父親は飛行機の機長をやっていていつも飛び回っているので、家を空けるばかり。世話をしてくれていた母方のおばあちゃんもいた。だけど、中学二年の時に亡くなってしまった。 以来僕はこの家に一人暮らしをしている。父親に心配をかけまいと家事などは一通り覚えて、立派にやっていることを伝えているし、高校生になってからはアルバイトもしていて、生活は充実している。でも、やっぱり一人が寂しい時があるので、淳平とミスズみたいな関係を作れる神姫が欲しかった。 この子を人間の女の子と考えると、見知らぬ所でずっと塞ぎ込んでいて寂しくはないのだろうかと思えてきた。 「一人ぼっちは寂しいと思うけどな」 考えていたことがふと口からでてしまった。 すると。 「………あの」 見ると神姫の子は顔を上げてくれていた。 「!……初めて話しかけてくれたね。どうしたの?」 「えと、その、お話を聞いてもらってもいいでしょうか」 「うん、いいよ」 どういう心境の変化なのかはわからないけど、心を開いてくれた。ただそれだけが嬉しかった。 僕は座布団を用意して腰かける。そして神姫は話し始めてくれた。 「私のマスターはバトルで勝つことが好きでした。自分で考えた武装、自分で考えた戦略、それで戦わせている神姫が勝つととても嬉しそうでした。私の前には、ストラーフのお姉ちゃんがいて、マスターとお姉ちゃんが私を買ってくれて、戦っている姿も見せてくれました。だけど私は……その……武装神姫としては欠陥品でした」 「どうして? 悪い所はないみたいだけど」 「心というか、CSCと言いますか。……私は戦うことを苦手と感じるんです」 「……」 それは戦えなくては“武装”神姫足りえないということを意味するのだろうか。 「訓練とかは普通にできるんですよ。でもバトルだと傷つけるのも、傷つけられるのも嫌に思えてしまって、フィールドに立たされてもまともに戦えなくて、結果マスターにもお姉ちゃんにも見限られて……いられなくて……それで……」 「わかった。もういいよ」 「ぐす……うぅ」 会話を止めると優しく声をかける。泣き出してきてしまったので、それを僕は指で拭う。 あの日にそんなことがあったのか。一人で外をたくさん歩いて、バッテリーが切れる寸前まで猫に追いかけられて、大変な苦労をしたんだな。 「戻れないんだね、居場所には」 「……はい」 「それじゃあさ、よかったらだけど、ここにいてよ。僕は神姫バトルとか興味ないし、話し相手……いや、いっそのこと僕のになってくれないかな」 「螢斗さんのにですか?」 「うん」 強引でしかも傍から見たらプロポーズに聞こえるが、そうではなくて、ただ単に一緒に生活するという事としてのお願いだ。 「そうですね。螢斗さんはお優しい方みたいですし、……喜んで」 「そうか。やった」 こうして、この僕の家に一つの神姫が住むことになった。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2624.html
類は神姫を呼ぶ 著・輝彦 初めまして。 輝彦(てるひこ)といいます。バトマスmk2で武装神姫にハマってしまい、このSSを見つけて、自分も書いてみたいと思った次第です。 /概要 人に個性があるのなら、神姫にも個性はある。 そんな神姫と人たちが織り成すドラマのようなお話……になればいいな。 ○バトルの設定はMighty Magic様よりお借りします。 ○全三章予定。主人公は章ごとに変えていく方針です。別の章ではサブとかモブとか間接的とかで登場します。 ○武装・バトルなどは妄想、想像でのフィクションでお送りします。 ○随時、加筆修正していきます。ご了承ください。 ※話が思うように進まない。バトマスmk2のDLC神姫の育成しながら練り直してきます。 第一章 戦えない神姫 ・part1 ・part2 ・part3 ・part4 ・part5 ・part6 ・part7 ・part8 ・part9 ・part10 ・part11 ・part12 ・part13 ・part14 ・part15 ・part16 ・part17 ・partEnd ~姉妹~ 第二章 琥珀の神姫 ・partⅠ ・partⅡ 今日: - 昨日: - ご感想、ご意見、あればなんなりとお願いいたします。 テストです。 -- 輝彦 (2012-02-17 20 05 32) 投稿ペースが早いですね! 楽しみに読ませていただいております。 螢斗とシオンの行く末や、新たな女性マスターの登場に目が離せません。今後の展開を楽しみにしております。 -- トミすけ (2012-02-19 22 42 41) トミすけさん、ありがとうございます。感無量です。書き溜めてあるのがなくなるまではこんなペースですので。 -- 輝彦 (2012-02-20 00 07 57) 切り口が心理的で新鮮味溢れてますねぇ〜如何なる展開を魅せて頂けるか楽しませて頂きます -- ナナシ (2012-02-20 17 01 08) ナナシさん、感想ありがとうございます。神姫をバトルだけでなく物語として成り立つようなストーリーを考えてたらこうなっていました。 -- 輝彦 (2012-02-20 18 01 16) こんにちわ。作者の輝彦です。一章が終わり次は二章にいきます。予定では次の主人公は口の悪いオーナーと眼帯の軍曹神姫です。 -- 輝彦 (2012-03-01 08 59 12) テラ根性!一気に最後まで読ませていただきました。次も楽しみにさせて頂きますw マリーセレスにも出番があるとうれしいなぁ。。 -- 通りすがりの紳士 (2012-03-01 09 03 26) 通りすがりの紳士さん。ご感想ありがとうございます。マリーセレスは好きな神姫の一つなので出す予定ではいます。 -- 輝彦 (2012-03-01 09 08 31) 原因云々はさて置き感情の爆発による奇跡の復活魅させて頂きました、可愛さ余って憎さ百倍だったお姉ちゃんと家族に戻れて良かった良かった・・・第二部も楽しみにさせて頂きます -- ナナシ (2012-03-03 16 13 19) ナナシさん。またご感想ありがとうございます。無理矢理感は自分でもわかっています。アーティルは熱い展開があってなんぼかなと思いまして。 -- 輝彦 (2012-03-03 16 19 22) 一話ごとの区切りがうまく、いつも続きが気になります。WKtK -- IBIS (2012-08-07 12 06 05) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1379.html
トップへ 戻る 武装神姫。 人の持てる技術の粋を結集して作られた、機械仕掛けの御姫様。 そして、今私の目の前にいる小さな少女。 「主よ、一つ質問を許して貰えるか?」 セイレーン型武装神姫、エウクランテ。 「ええ、体重以外ならなんでも」 桃色の髪に赤い瞳を揺らす、小さな、とても小さな少女。 「感謝する。主はどういう目的で私を求めたのだ?」 まるで雛鳥のような純粋さを持つ少女。 「目的?」 まるで子供のような無垢な瞳を持つ少女。 「私は主の神姫だ。主の目的に沿った働きをするのが、私の役目なのだ」 まるで、ナイトのような忠義心を持つ少女。 私が貴女に求める事はただ一つ。 私が、貴女を必要とする理由はただ一つ。 「じゃあ、一つだけお願い出来る?」 「なんなりと、主」 「……私の家族になってくれる?」 貴女は笑った。 「ああ、喜んで」 花の様に、笑った。 武装神姫。 それは、私の新しい家族。 街の片隅に私の住むアパートはある。 近くには商店街があって、駅も近い。 言った事は無いけど、神姫の大学もあるらしい。 「主よ。主は本が好きなのか?」 私の住むアパートは少し古ぼけた印象の二階建てだ。 私の部屋は二階のの角部屋だ。 「どうしてそう思うの?」 部屋は狭すぎず、広すぎず。一人暮らしには丁度いい広さ。 お風呂もトイレもちゃんとあるし、ゴキブリも今のところ見ていない。 「部屋の中が本だらけだからだ」 シルフィの言うとおり、私の部屋は本で溢れている。 本が散らばっている、という訳では無くて、文字通り本で溢れている。 「ついつい、買っちゃうのよね」 壁は勿論の事、床の半分は本に覆われている。 布団の上も例外ではない。 「主はどのような本が好きなのだ?」 シルフィは積まれた本の上に座りながら、部屋を見回した。 壁にもたれながら、少し考える。 今まで店先で興味を持った本を片っ端から買っていたから、ジャンルを気にした事が無かった。 「……強いていえば、神話かしらね」 今まで読んでいた本を見ながら呟いた。 その本のタイトルは「銀の鍵の門を超えて」 「神話か。だが、私のデータの中にある神話とは少し違うようだ」 それもそうだろう。神話、と言っても創作神話の類だ。 比較的新しい、150年程前の作品だ。 最も、これ以外にも神話関係の本は多い。 ケルト神話、ゾロアスター教。ベガーナ神話。 どれもこれも、他の神話に比べて少しマイナーだろう。 「神話とか民族伝承って不思議なものなのよ。凄く離れた地域の神話なのに、似たような神様、似たようなエピソードがあるの」 「そうなのか」 シルフィは小首を傾げた。 その拍子に、短いツインテールにした桃色の髪が揺れた。 「ええ。例を上げればギリシャ神話と中国神話かしら」 読んでいた本を置き、近くの山から目当ての本を引っ張り出す。 「ギリシャ神話と中国神話の共通点は世界創造ね。ギリシャ神話では世界の始まりはカオス……混沌の神から生まれたと言われているわ」 少しやつれた革表紙の本をぱらぱらとめくり、刺し絵が描かれた頁を開き、シルフィに見えるように床に置いた。 「中国神話では、世界が生まれる前は全てが卵の中身の様にドロドロと渾沌としていたと言われてるの」 また、違う山から本を引っ張り出す。 今度は真新しいカバーの本を開き、同じようにシルフィに見せる。 「成程。挿絵がそっくりだ」 シルフィの言うように、そこには黒いタールのような絵と、似たような楕円形の絵が描かれていた。 「そして、両方とも混沌から大地神か、それに似た存在が生まれるの」 広げていた本を閉じ、傍らに積む。 その時、私はある伝承を思い出した。 「シルフィ。貴女は何型だったかしら」 「セイレーン型だが?」 突然の問いに、少し目を丸くしながらシルフィは答えてくれた。 「その語源は知っている?」 「歌声で船乗りを惑わす怪鳥、とデータにはあるが」 その答えに満足しながら、また本を引っ張り出す。 「セイレーンはギリシャ神話における上半身が人、下半身が鳥の怪物の事を指すわ」 「下半身が鳥……なんとも奇妙だな」 古ぼけた挿絵がのった頁を開き、地面に広げる。 「そうね。何より奇妙なのはセイレーンが海の怪物って事ね」 「そう言えば……まるで、人魚だ」 海の隙間から船乗りを誘惑するように泳ぐ挿絵を見ながらシルフィは言った。 「そうね。後世ではまさに人魚として扱われる事の方が多くなったわ」 「……そう言われると、少し複雑な気分だ」 「でも、貴女を作った人たちはそういう事を理解している人たちだと思うわ」 「そうなのか?」 シルフィを迎えた時に付いてきた武装パーツの名前を思い出しながら言った。 「ええ。貴女の武装の名前……ゼピュロス、エウロス、ボレアスは全部、風に関する神様の名前なのよ」 「風……か」 シルフィは密かに嬉しそうに呟いた。 「それに、装備の名前もそうね。イリスは虹の神様。他の名前は全部風に関する神様の名前なの。風は空を連想させるし、鳥は空を飛ぶものでしょう?」 「主よ、もしかして、私の名は……」 期待を込めた眼差しでシルフィは私を見上げてきた。 「そう。シルフィは風の精霊。貴女にぴったりの名前だと思わない?」 それを聞いた瞬間、シルフィは満面の笑みを浮かべた。 嬉しそう、を通り越して幸せそうなその表情を見ていると、こっちも嬉しくなってくる。 「主よ……今一度素晴らしい名を付けてくれた事を感謝する」 「どういたしまして……もう直ぐお昼ね。ご飯にしましょう、手伝ってくれるかしら?」 思いの外、会話に熱中していたようで、気付けば12時まで数分だった。 「勿論だ……と、言いたい所だが、私如きでは足手纏いにしか……」 「大丈夫よ、シルフィ」 こんな時の為に、一緒に買ってあったある物がある。 「……家事用外骨格、ヘンデル。主、これは?」 「國崎技研ってとこが出してる、名前の通りのモノよ」 神姫に対してかなり大きな箱を引っ張り出しながら店頭で見た謳い文句を思い出す。 「これで一緒にお料理出来るわね?」 「ああ、主よ。これなら十分な力になれよう」 学生にはちょっと痛い出費だったけど、シルフィと料理が出来るのならお釣りが来る。 武装神姫。 私の、私だけの新しい家族 トップへ 2話へ -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/298.html
Show No Mercy - なさけ むよう - 前編 (… 何が、どうなっているんだ?) 俺は、今、目の前で起こっている状況が理解できていなかった。 「どうしたの? 早く武器を捨てないと、あの天使子ちゃんの頭に風穴あいちゃうわよ?」 俺の武装神姫・アルトの前に、そんなことを言いながら凄んでいるストラーフタイプがいる。 そしてその少し後ろに、天使子…アーンヴァルタイプの首をつかんで引き寄せ、頭に銃を突きつけているストラーフタイプ。 2人のストラーフは公式のイメージからはあまり想像できないような笑みを浮かべ、対するアーンヴァルは訴えかけるような怯えた表情でこちらを見ている。 「マスター…」 アルトが戸惑ったような様子で俺に話しかける。 いや、俺の判断を求められたって俺だってワケわかんねぇよこんな状況。 (いや待てよ、待て待て…もう一度最初から思い返してみよう…) * * * …そうだ、事の起こりはバトルセンターの辻対戦だ。 例の賞金1億のバトルロイヤル。その練習というか前哨戦というか、巷では大小さまざまな規模のバトルロイヤルが行われていた。 ファーストランカーである俺のアルトには大会そのものへの参加資格はないが、辻対戦のバトルロイヤルとなれば話は別だ。 むしろ、ボスクラスの仮想敵として歓迎される事すらある。 今参加しているバトルロイヤルも、そんな感じで誘われたんだっけな… 「いや、俺のアルトはファーストだよ? それに、やるからには俺たち容赦しないよ?」 それでもかまわない、全国相手にするんだから本気でやってくれた方が練習になる、とかなんとか… ほほぅ~、俺のアルトで練習かい? 言っちゃってくれちゃったな? よーし、お望みどおりたーっぷりと経験値稼がせてやろうじゃねぇの。 そんな感じで、俺とアルトは今のバトルロイヤルに参戦したんだよなぁ…。 < < < 切りかかって来たマオチャオタイプを紙一重で避け、そのまま距離を取ってビームライフルを二射、三射。 バランスの崩れた所にビームを撃ち込まれたマオチャオは、しかし強引に体を捻ってアーマーで受け、致命傷を回避する。 (意外とやるわね…) 空中から見下ろす私を、体勢を立て直したマオチャオは鋭く、そして驚いたような目で見つめている。 私…武装神姫のアルトは、ハウリンタイプの武装神姫だ。 だが、ハウリンタイプなのは基本の素体だけで、いわゆる公式の武装は一つも装備していない。 腕部にはシールドが接続されたアーマーユニット。マニピュレーターも大型の物が装着されている。 レッグユニットはスラスターやその他諸々を内蔵したこれまた大型の物で、私のシルエットを他の神姫にはあまり見られない末広がり状のものにしている。 そして一番目を引くのが、背中にある四基のブースターポッドだ。 普通の神姫よりも一回り大型化している私が、接近戦での素早さを売りにしているマオチャオタイプを驚かせる程の機動力を発揮出来るのは、このブースターポッドに負う所が大きい。 マスターによると、なんでも昔のアニメに登場したカオスなんとかというロボットから発想を得たとの事らしい。 そういう原典のある物は研究され易く、対処されるのも早いのでは? と聞いた時のマスターの複雑そうな表情は今でも記憶に残っているのだが… とにかく、私はこの武装でここまで戦って来たし、ファーストリーグでも戦い抜いている。 こんな所で出汁に使われるつもりは毛頭ない。 …眼下のマオチャオが頭を振り、意を決したように跳躍して来る。 私は、その決意を受けて立つべく突進する。 爪をかわしてビームを射つ。ビームをかわして爪を振るう。 (…! 意外と…) 確か、このバトルに参加している神姫はほとんどがセカンドリーグ中位クラスのはずだ。 実際、生存者が三割を切った現状でも私はほとんど消耗していない。半分の力も出してはいないのに、だ。 そんな私に、ここまで食いついて来る神姫がいるとは思っていなかった。 最近のセカンドリーグには、躍進著しい神姫が増えている。もしかしたらこの子も、まだ見ぬ強者の卵なのかもしれない。 …だからと言って、ここで私が負けてあげる理由は何一つないのだが。 動きに少々“ひねり”を加える。 途端にマオチャオの動きが乱れる。 うん、まあ、こんな所でしょうね。この子一人にばかり時間をかけてもいられないし。 すれ違いざまに軽く足を当てると、マオチャオがこちらに倒れ込むようにバランスを崩す。 このまま抜刀して薙払って終わ [!警報!:右後方中距離に銃器形状:電磁場変化無し:温度変化無し:被ロックオン反応無し] ブースターポッドを接続しているバックユニットに内蔵されたサポートAI“壱松”が私を狙う誰かの存在を告げる。 ガイドレーザーの反応も温度変化も無い所からすると、光学照準の火薬式ライフルの類だろう。脅威度はそれほど高くない。 ビームサーベルを抜こうとした左手を裏拳の要領でマオチャオの鳩尾に入れ、そのまま体を回してビームライフルを私を狙う銃口の持ち主に向けて一射、二射。 はたしてそちらには、廃ビルの上でスナイパーライフルを構えたハウリンタイプ。 それを確認した私の頬をライフル弾が掠め、彼女のヘッドギアを私の撃ったビームが掠める。だが、それを気にした様子も無く、彼女が次弾を装填するのが見えた。 (なるほど…ここまで生き延びるだけの事はある、か) 私はそこでビームライフルを手放しもう一回転、空いた右手で意識を失って落下しようとしているマオチャオを掴んで引き寄せ、 その体を盾のように構えると同時にブースターを全力噴射、スナイパーの彼女に向かって突進する。 マオチャオの体越しに、彼女が明らかに動揺したのが見て取れる。 (…さすがに、揺れたわね) このチャンスを逃す手は無い。 今度こそ左手で抜刀、マオチャオの背中にサーベルの柄を突き立てて零距離でビームを発生させる。 上がった悲鳴はマオチャオのものか、ハウリンのものか。 私はそのまま速度を緩めずに彼女にぶち当たり、さらに廃ビルの屋上に残った構造物にぶち当たる。 サーベルを持つ手に三度目の手応え。私がそれを感じたのに少し遅れて、構造物が崩れ落ちた。 私が見下ろす前で、二人の神姫がポリゴンの塵になって消えようとしている。 「こ…な、ひ…ど…」 絞り出すようなハウリンの声。 「…そうね」 私はそう答えた。 彼女たちが消え去るのを見届けてから、私は落としたビームライフルを拾いに廃ビルの屋上から飛び降りた。 * * * 「マスター、戦況を」 「オーケーアルト、残りはお前含めて一ケタだ。もう少し行ったトコに4人ほど反応がある。他はどれも遠いし…もうほとんどタイマンだな」 「なら、結局皆そこに集まる事になりそうですね」 「あぁ…お、解像度変わった。あ? なんじゃこりゃ」 「どうしました?」 「いや、なんかここもタイマン×2みたいなんだが…えらく間合いが近いのがいるな。データ回すぞ」 「はい…来ました。確かに、格闘距離にしても近過ぎますね。組み技でしょうか?」 「神姫がか? そりゃ面白ぇな。マジでそうなら決着がつく前に見ておきたいな」 「同感です。加速します」 「燃料の残りには気をつけろよー」 * * * 広大なフィールドのそこここにあるゴーストタウンエリアのひとつ。 4人の神姫が戦っているのは、その中央付近に設けられた広場のようだった。 アルトはガレキの間を抜けてすべるように飛びながら戦場に近づいていく。 このままウマいこと漁夫の利が取れりゃ楽なんだが…なーんてコトを俺が思ってると 「ぅあああぁーーーーッッッ!!!」 悲鳴。ひとつ決着ついたか。 「マスター」 「組み技の方じゃねぇな。うし、勝った方に奇襲だ。カブトの緒を締めなおすヒマなんざ与えんな!」 「了解」 奇襲とは言うものの、今参加しているシステムだと索敵範囲を少し広げりゃお互いの位置は丸見えだ。 だから、少々トンチが必要になる。 アルトは相手との間に比較的大きなガレキを置く位置にまわり…ブーストポッドからミサイルを発射した! 轟音とともに吹き飛ぶガレキ。相手に襲い掛かるその破片に隠れてアルトがビームサーベルを構えて突進する。 だが、破片に気を取られたハズの相手は即座にアルトに注意を移し、大きくバックステップして初撃をかわす! (にゃろう、意外と冷静だな) でなけりゃなんか優秀なバックアップがついてるか、だな。俺は適当な理由をつけて納得しておく。 初撃をハズしたんなら奇襲は失敗…そんならとっとと切り替えて仕切り直し、だ。 だが、ソコで相手の神姫…ストラーフタイプだ…がわけのわからないことを言い出した。 「おーっとそこまで! 動いちゃダメよ! 武装解除しておとなしくなさい!」 「でないと…あの天使子ちゃんがタダじゃあすまないわよ?!」 そのストラーフが指差した先には、同じストラーフタイプに首根っこを引っつかまれて 頭に銃を突きつけられた天使子ちゃん…アーンヴァルタイプの武装神姫がいた…。 もどる/後編へ