約 2,307,829 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2831.html
ぶそしき! これから!? 第0話 『トモダチ』 0-2 「着いたー」 自転車で行くこと15分ほど、今回の目的地の神姫センターに到着する。 入るとまず目につくのは大型のモニターだ。 新しいゲームのCMや、バトルで神姫が戦っている様子が映し出される。 改めて周りを見渡すと、大勢の人に各種のゲームに幾つもの神姫のバトル用の大型筐体、そして武装神姫の素体やパーツなども売られている広い販売コーナーが目に入る。 「おー……」 ふと筐体の映像に目を見やると、闘技場らしき場所で凶悪な手脚そして重装甲の青髪の神姫と鎧を身にまとい大剣を持った神姫が切り結び、激突する様が見られる。 別の筐体では、荒野の空に舞う神姫の姿が見える。 大きなウイングユニットを背負い、手に持った長大なレーザーライフルで他の神姫達を撃ち落としていく白い神姫の姿が映る。 どことなく似たような雰囲気の装備を身に纏い、緑の剣と赤の剣で切り結ぶ白と黒の神姫の姿も見える。 そんな幾つものバトルの様子が少年の目に映る。 「――あ、いけない」 思わずバトルに目を奪われるが、本来の目的を思い出して販売コーナーに向かう。 「う~ん……」 少年は棚を見渡しながら移動する。 神姫のパーツが単品で売られているコーナーを抜け、神姫用の服やアクセサリーなどがある場所に出てしまう。 色々と目移りしてしまうが、目的地はパーツの所ではない。 そうしていると、上から声がかけられる。 「お客様、なにかお探しでしょうか?」 「え?」 視線を上に向けると、そこにはフライトユニットを装備して、風に吹かれる風船かなにかのように穏やかに飛んで来る金髪の白い神姫がいた。 少年の近く、目線の位置まで来るとそこで静止し、高度を維持する。 「天使型MMSアーンヴァルのアリシアと言います。この神姫センターの店員神姫の1人です。 お客様、なにかお探し物がありましたら、ご案内させていただきます」 ぺこりと一礼し、にっこりとした営業スマイルで自己紹介と少年に提案する神姫のアリシア。 その提案に思わず頷いてしまう。 「あ、その、武装神姫があるところを探してる……んです」 「分かりました。こちらにどうぞ」 アリシアが場所を案内してくれる。 まずは武装と素体が一緒になったフルセットの棚に向かう。 「……」 アリシアの先導にしたがって行く。 少年はなんとなく気まずさを感じて、話しかけてみる。 「え、え~と、あのさ……」 「はい?」 「武装神姫ってバトルでレーザーや弾を撃ったり、剣で切ったりしているけど、もしかして子どもが買うのは危険だったりする?」 先ほどのバトルを見て、思いついた話題を振る。 そんな話題を振られたアリシアは、ニコニコとした営業スマイルのままだ。 「いえ、そんなことはありませんよ。もしよろしければ、少し長くなりますが説明させていただきましょうか?」 「あ、うん。頼むよ」 アリシアが少年に向き直る。 そして、小さな先生が生徒に授業をするかのように説明を始める。 「武装神姫はロボット技術の結晶とも言える商品です。 心と感情を持ったフィギアロボットであり、人間のパートナーです。ソフト面でもハード面でも安全なように考慮されています。 もちろんマスターとなった方に尽くしますし、倫理プログラムで人間に危害を加えることはありません 武装も銃弾などはあくまでゲーム上のエフェクトですし、剣も切れるのはヴァーチャルバトルの中だけで、実際には切れるような刃は付けられていません。 ここまでよろしいでしょうか?」 「う、うん」 「神姫バトルは、バーチャルとリアルがあります。 リアルも神姫センターなどで行われるものはルールにのっとって行われる健全なゲームであり、言わばマスターと神姫達のスポーツのようなものです。事故がないよう、日々努力と改善が行われた結果、今の神姫バトルがあります」 「うん。武装神姫が危険なものじゃないことは分かったよ」 アリシアの説明を聞いて、少年は武装神姫のことについて少し理解できたように思う。 そんな少年を見て、アリシアはもう少しだけ説明を続ける。 「ありがとうございます、お客様。もう少しだけ続けますね。 神姫のマスターの中には、さらに刺激を求めて通常のルールに縛られないストリートバトルを行う方々がいます。これは勿論危険ですので、もし誘われるようなことがあっても参加しないでくださいね。なにかあったら悲しむのは、マスターやその神姫ですから」 「……」 思わず黙り込んでしまう。 最後の一言に、少年はなんとなくアリシアの真摯な想いのようなものを感じる。 「長々と申し訳ありません。……あ、案内を再開しますね」 「う、うん。ありがとう」 ニコニコとした営業スマイルのアリシアを追う。 「ここです、お客様」 アリシアの案内で目的の場所に着く。 「……う~ん」 棚に置かれた商品に目をやり、その値札を見て少年は思わず腕を組んで唸る――高い。 高いだろうとは思っていたが、想像していたものよりさらに1つ桁が多い。 「お客様、なにかお困りですか?」 「あ、うん……武装神姫って高いんだね……」 声をかけてきたアリシアに思わず、素直に困っていることがこぼれ出ててしまう。 そんな言葉を聞いてアリシアも少し困ったように笑う。 「あ、あはは……、そうですね。 武装神姫はフルプライスですと、良いパソコンと同程度のお値段になります。 お客様位の年齢ですと、ご両親やおじいちゃん、おばあちゃん、年上のお兄さんお姉さんなどに買ってもらうことがほとんどです。中には、お年玉とお小遣いなどを貯めて買うツワモノな方もいますけど」 「そ、そうなんだ……」 アリシアの説明を聞いて、武装神姫を買うのは、やっぱり難しいのかなーと思ってしまう。 「武装抜きの素体だけなら、もう少しお求めやすいお値段になるのですが……」 「う~ん、ちょっと安くなったぐらいじゃ……」 アリシアは少年の様子を一見する。 やはり、手持ちでは購入は難しかろうと見切る。 「失礼ですがお客様の年齢ですと、武装神姫の購入には保護者同伴か、同意書が必要となります。 購入の際にはご家族とのご相談が必要かと思います」 「え、そうなの?」 聞き返すお客様に、アリシアはさらに話を続ける。 「ご家族様に相談する前に、どんな神姫が良いか決めておくとお話しやすいかと思います。 なにかご希望の神姫はございますでしょうか?」 「そうだなぁ……」 営業スマイルを崩さず、悩むお客様をアリシアは見つめる。 「……分かんないなぁ。え~と、アリシア、さん。何かオススメはありますか?」 少し考え、具体的なイメージがわかず、少年はよく知っているだろう相手に尋ねる。 「アリシアでいいですよ、お客様。 でも、そうですね。神姫をおすすめするならば――」 一拍置く。しかし、それは逡巡によるものではなかった。 「――天使型MMSアーンヴァルがいいと思います!」 ドンと擬音がつきそうな位に言い切るアリシアさん。 営業スマイルのままだが、なにか妙な迫力を感じさせる。 「性格は真面目でマスターの言うことをよく聞く、従順で良い子たちです。愛情を注いであげれば素直に応えてくれます。 武装は高機動空戦型で、飛べるのはバトルでも日常生活でも大きなアドバンテージです。日常生活でも使えるフライトユニットはお高いですけど。 武器は近接戦のライトセイバー、近距離のハンドガン、中距離はマシンガン、遠距離は強力なレールガンにレーザーライフルとオールラウンダーでどの距離にでも対応できます。武装神姫の初期に販売されたものですが、アップグレードを繰り返されていますので最新のものに見劣りすることはありません。 初めて神姫を持つ方にとてもオススメです!」 笑顔のまま一気に説明し切るアリシアさん。 その勢いに押される少年。 「……あ、あれ! あの神姫についても教えてよ!」 直感的に話を変えた方が良いと思った少年は、公園で見た神姫と同型と思われるパッケージの説明を求める。 「あ、はい。あれは猫型MMSマオチャオです。 性格は一言で言えばネコです。 自由気ままでハイテンション、一緒にいると騒がしいけど元気になれる。そんな神姫です」 アリシアはまずは性格面での説明を行う。 今度は少年の様子を見ながら説明を行う。 「武装はクローにナックル、そしてドリルの近接戦特化の仕様です。 相手に近づいて殴り倒すという、単純明快なコンセプトがバトル初心者の方にもわかり易いです。 サブウェポンのプチマスィーンズを使ってのトリッキーな戦い方もできますけど」 今度は武装面での説明を行う。 「武装とその性質に癖はありますが、その性格で子どもの遊び相手に人気の神姫です。 中にはペット代わりとして、購入されるお客様もいます」 最後に総評して締めくくる。 今回は相手の反応を見ながらの説明のためか、神姫について初心者の少年でも理解しやすかった。 「へえ、あの時見た神姫ってマオチャオって言うんだ。……確かにテンション高かったなぁ」 少年はふと、見上げて公園で会った神姫のことを思い出す。 今アリシアに説明されたのとイメージが一致する。 「……ん?」 ちょうど上の棚が目に入る。そこにはアーンヴァルのものとは違う、鳥のような翼を持った神姫の姿があった。 「ねえ、アリシア。あの神姫なんて言うの?」 「はい、あれはセイレーン型MMSのエウクランテです。 武装が格好よくて、しかも合体変形機能付きで男の子に人気です。 性格も真面目な良い子ですよ」 少年の興味を持った神姫の簡単な説明をするアリシア。 この後、少年は他の神姫もアリシアに説明してもらい、最後には神姫購入のための保護者同意書の用紙ももらった。 ――少年が神姫のマスターになるまであと23時間 前へ / 次へ トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2649.html
「右から敵の攻撃が来てる。その場から上昇して!」 『了解です!』 今はバトルの最中。ステージは森林。 始まった直前、素早い動きでハウリン型の相手はどこかに行った。移動し木に隠れながらの戦法。 多分であろうハウリン型武装の「蓬莱壱式」をバンバン撃ってきている。 それでも間を縫ってきて、こちらを狙ってきても結局木に当たる。隠れるための木が壊れることなどあまり気にしていないみたいだ。 これ以上地上にいたら、いつか爆発に巻き込まれる。そのため、シオンを一旦空中に飛ばせてグライディング。 浮遊させておいて戦局を変えられるか考えてみる。 「どこかにいるんだ。シオンはわかるか?」 『センサーに反応はあるんですけど、移動もしていますし、こう木が多くては……』 「うーん、どこに……待って、後方右斜め下からも砲弾! 回避して!」 『え? きゃっ!』 僕が声を発してなかったら危なかった。 空中のまま瞬時に身を屈めたシオン。 危機一髪、砲弾は後方に加速をつけながら飛んでいった。 『危なかったです。でも、このままでは……』 「いや……移動しているみたいだけど、今撃った場所から次の移動場所は大体予測がつくよ」 『え? どこに?』 シオンは僕の言ったことに驚愕して周りを確認しようとするが、 「しっ。……そのまま、動かないで聞いて」 『は、はい……』 シオンは今空中に飛んでいる。 それなら、こちらよりも上に飛ばない限り、円すい状の頂点にいるシオンに対して相手は地上面360度のどこかの位置からしか砲弾は撃てない。 なのに“後ろ”右斜めからだった。 相手は姿が見えないのにも関わらず後ろから撃ってきた。 (おそらく、シオンの前にいることを相手は用心しているんだ) 思えば地上にいた時も相手は前からは砲弾を撃ってきてない。 左か右、そして後ろだった。 素早い移動で木々に隠れて、視界外から攻撃。 それが相手の戦法なんだ。隠れているのになお視界に入らせない戦い方。 だけど今回の森林ステージ、それが仇になっている。 位置を考えるなら視界に入らない後方180度のどこか。すでに真下の方はもう何本も木が倒れているから、 「それだと……次に隠れるなら木々の多い左方面だ! バリスティックブレイズのまま、そこを重点的に掃射!」 『え、はい! では、いきます!』 すっかりバトルに慣れているようにシオンは流れる動きで身構えて反転。 そこから、左下に向けてリアのバレルに装填されている弾をすべて使って弾幕を張る。 弾の雨が木を次々となぎ倒していると、 『――うわぁっ!』 はたして――敵はそこにいた。 ハウリン型の相手は木の崩れていた場所にたまらず飛び出してきた。 それをシオンは待っていた。 『これでトドメです!! たぁー!』 シオンは敵が見えた瞬間、その場そこから電光石火。 勢いをつけて相手の眼前にたどり着くとぺネトレートクロー・烈を相手の鳩尾におもいっきり叩きこんだ。 『ク……ハッ……!』 顔を苦悶に満ちらせ空気を口から出して、相手は姿をデータ状にして消えていった。 完全に消えた後、筐体の機械音声から試合のジャッジが聞こえてきた。 『WINNER シオン』 ―――― 「やりました! 螢斗さん」 「うん、いいバトルだったよ」 初めて勝てた日から数日。といっても3日ぐらい。 学校が終わってから、ゲームセンターに通うことが習慣になりつつある。 バイトがない日は学校にシオンを連れてくることも当然になり、その足でゲームセンターで神姫バトルをすることが多くなった。淳平とミスズも来れる時は一緒に来るけど、今日はあっちがバイトなのでいない。 勝てたあの日から、シオンはちゃんとした武装神姫同様、バトルができるようになっていった。 自信がついたのもあるけど、あれから人間でいう憑き物が落ちたみたいに勝負で勝てるようになってきていた。 武装神姫にとって普通のことが出来なかったシオンがまともに勝てるようになった。それが嬉しい。 相手によっては負けることもあるけど何戦もしていれば勝つこともある。なにもできず負ける時のあの頃より大きな進歩だ。 「相手の戦術に気づいて、即座に対応できるように指揮してくれる。さすがです、螢斗さん」 「いや、たまたまだよ。……シオンは戦うのに集中してるんだから、僕が冷静に戦局を見ないとね」 そういう風に真っ直ぐに称賛してくれると、こっちはものすごく照れるのだけど。 「いえ、こういうのは実際に見ていると、どうすればいいかわからないことが多いって凛奈さんが――……あ、いえ何でも……ないです」 シオンは喜び勇んでた姿をしゅんとさせた。 またそうやって、前の逃げ出してしまった記憶から、宮本さんのことを思い出して委縮する。 戦えるようになってきたんだ。どうして前いた時に出来るようにならなかったんだろう、とか思っているのかな。 僕も大概真面目だと思うが、シオンは僕より考え込んじゃう質だから気にしちゃうみたい。 ちょっと嫉妬しちゃうな。 今はもう僕がマスターなんだから……。 でも、僕はそういうのはおくびにも出さず、シオンの頭を指で撫でる。 「別にいいよ。宮本さんの所にいた時は名前は違うけど、前も今もここにいるのも本当のシオンなんだから。……思い出すのも仕方ないって」 「螢斗さん……」 「ほら、そんな顔しない」 「……はい。そうですね」 花が咲いたような笑顔。 うん、いい顔に戻ったみたいだ。 よかった。これが見られるなら、感情を押し隠す価値があるよね。 「あ、そういえばさ……」 場の空気が戻ったのを機に、シオンがバトルしてる時に疑問に思うことがあったのを思い出した。 「? なんでしょうか?」 「それって、なんでぺネトレートクロー・“烈”なんだろうね。普通のと大差ない気がするんだけどな」 MMSショップ『ブラックスミス』の店長さんから貰ったぺネトレート・烈が気になった。 バトルの時シオンは普通に使っているみたいだけど、公式のぺネトレートとの違いがわからないんだよな。オリジナルの武装なら市販とは違うような特筆すべき点があると思うのだけど。 「えっと……初めて勝ったあの時、以前ムルメルティアの方と戦った時もなにかを感じた気がするんです。これにはなにかがありそうなんですけど、今のところ掴めそうで掴めない。そんな感じに曖昧なんです」 「うーん、そうか。まあ、あの店長さんだからなあ」 ゲームのシナリオの展開っぽく、危ない状況とか一発逆転する瞬間とかに新たな力が覚醒するとか、そんな展開にさせたいのだろうか? 僕は極力そんな状況に陥ってほしくはないんだけど。 「満足に使えていないのなら、私がまだ力不足なのでしょうか」 シオンはぺネトレート・烈の持ち手を握り、眺めながらそう言う。 「勝てるようになってきたんだからさ、神姫バトルをしていけばいつか、いや、近いうちに使いこなせるかもしれないよ。そういうオリジナルの武装とかは元のデータがないから。使うのに慣れていけば、本当のぺネトレートクロー・烈が見れる……かも知れないね」 僕は武装神姫の知識を総動員して考察し説明してみた。 武装神姫とかは射撃方法や戦闘技術、その他もろもろの技術とかは基本データで埋めているらしい。だから、武装神姫はバトルでもそういう武器・銃器がスムーズに使いこなせるみたい。 公式の武装なら基本データがあるだろうけど、こういうオリジナル武装ならデータが一切ないからまだ使いこなせていない。 そんな感じなのかな……。 そういうのに専門してないから僕も曖昧だ。 とりあえず僕もシオンの持つぺネトレートクロー・烈を眺めてみる。 やはり市販のと少し違う。 公式のぺネトレートクローはナックル系の武器に分類するのだが、殴る部分が少し鋭角ではある。そこは同じ。 だが、コレはそこに少し違う点があった。 (見づらいけど、ちょっと隙間が空いているな) 神姫サイズだったら、一ミリ以下程度のちょっとした隙間。 深くじっと見ないと気がつかないぐらいの空間。 そこに秘密があるのかもしれない。 だが悲しいかな。これ以上はわからない。 店長さんに聞きに行けばいいのだろうけど、聞いても使い方を教えてくれない気がする。 『その時が来たらわかるぜ!!』 とか多分そんな風に大きな声で言う気がする。 初めて会ってから間もないけど、あの店長さんゲームが好きらしいから、新たな力が目覚めるとかそういうカッコイイ展開が好きそうだ。 と僕が勝手に考えた。 結局このあと三戦ぐらいしても、ぺネトレートクロー・烈の正しい使い方はよくわからなかった。 でも、戦績は二勝一敗と前と比べて重畳だった。 「今日はもう帰ろうかな」 「そうですね」 対戦相手の人と挨拶を交わしてから、もう家に帰ろうと思ってゲームセンターを出た時、 「こんばんわ、長倉君……と、シオン」 ――前の通りに例のあの人がいた。 宮本凛奈さん。 フード付きの長袖パーカーにジーパン姿。 そして、前のシオンのオーナー。 「こんばんわ、宮本さん」 「え、凛奈さん…………ですか」 僕の胸ポケットにいるシオンがひどく驚き戸惑っている。 それはそうだ。目の前に逃げ出してしまった、前の持ち主がいるんだから。 「シオンよね。初めまして」 「は、はい。初めまして……」 「……初めてじゃないですよね? 元々のオーナーなんですから」 「シオンとしては……ね。今はもう“初対面”よ」 随分と他人行儀だ。 もう少し前オーナーとしての気位があってもいいのだと思うけど。 自分のじゃなかったら関係ないのか。 「どうしてここにいるんですか?」 何となく、シオンの肩に指を置いた。 「伊野坂君がシオンがバトルで勝てるようになった、てメールが来てね。それでキミたちがいると思って。ゲーセンから出てきて、シオンが落ち込んでいないという事は本当に勝てるようになったのね。……おめでとう」 こういう時だけそんな行動力を発揮するなよ。まだ後少し実力をつけてから話そうと思ったのに、淳平め~。 宮本さんはそう言って拍手してくれる。笑顔で心から祝福してるとは思う。 宮本さんは。 「…………」 宮本さんの肩には神姫がいる。悪魔型の神姫。目を隠しているストラーフがバイザー越しに黙ってこちらをじっと見ている。 「お姉ちゃん……」 シオンが絞り出すように名を呼ぶ。 宮本さんよりイスカが問題なんだよな。シオンにとっては。 「……キサマ、いなくなったと思ったら、そこの少年の物になったのか」 宮本さんが話していた通り、声は小さいがそれでもよく通ってくる。 不機嫌そうなオーラが出て、それでいて言葉にもトゲがあるみたいだ。お姉さんだったんだから会えた嬉しさとかはないのだろうか。 「……買われた恩も忘れて、別の人間のところにいくとは武装神姫の風上にもおけないな」 「イスカ、ちょっと言い過ぎよ。こちらも悪かったのだし」 嘲るように言う自分の神姫を宮本さんは止めようとするが、イスカは止まらない。 「……その上バトルできなかったと思えば、できるようになっている。……なんだ、私たちといた時は偽っていたのか? そんなに私たちといるのが辛かったのか?」 「ち、違います。できなかったのは本当で――」 お姉さんに散々言われ、シオンは弁明しようとする。 だが、シオンは押し止まった。イスカから出てきた言葉を聞いて。 「……そこの少年に思考プログラム自体をいじられでもしたか?」 イスカがそれを言った瞬間場の空気が止まった。 止まった原因の発生源はシオンの周りから。 「お姉ちゃんでも螢斗さんを悪く言うのは許しません」 また僕の事でシオンのスイッチが入った。 激怒しているぞという空気が間に充満してきている。 「……ほう」 それを聞いて、イスカはなぜか嬉しそうに声を若干弾ませた。 「ま、まあまあ、ここはいったんどちらも引いて! ね!」 「は、はい」 「……ふん」 ダメだ。 僕がこの空気に耐えきれなくなった。 目の前で一触即発なんて身体にも精神的に僕には厳しすぎる。 咄嗟にオーバーリアクションで二人の神姫の間に入ってしまった。 ……シオンは手で隠しただけだけど。 「宮本さん」 「あ、うん。何かしら?」 場の空気がきつくて息がしづらかったのか、宮本さんも少しホッとしている。 「まだ、日本は離れませんよね?」 「そうね。日にちはまだあるわね」 「そうですか。今度、バトルしませんか? イスカとシオンで」 「え!? 螢斗さん!」 シオンの焦るような声が聞こえたが、もう遅い。 「そうね、いいわよ。今度の休みの日にここでやってみましょうか」 「じゃあ、今度で。詳しい日時はメールとかで……それじゃさよなら!」 「え? ちょっと待っ……」 宮本さんの制止の発言も気にせず、僕はその場から急いで立ち去るように後ろに全力で走った。 実力不足な気がするけど約束はもう決まった。決めたんだ。 後には引き返せなくなった。 ……だけどこれでいい。 「きゃっ! ああの、螢斗さん?」 「ほほ本気ですか!」 「本気!」 突然走りだしたからシオンの声が震えて聞こえる。 走ってる振動から、ただ単にシオンが入ってるポケットが揺れてるだけだ。 ああいうのは勢いで決めないと、後々ぐずっちゃうから強引なのがちょうど良いのだ。 「螢斗さん……」 不安そうな声が聞こえるが心配しないでくれ。勝てるようになってきたんだ。大丈夫。 これで、シオンが起動してから今までの事を清算する準備ができた。 後はイスカとのバトルで勝つことができれば、これで晴れてシオンは僕の武装神姫なんだ。 ――でも、突っ走りすぎなのかな僕は。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/mgrpgar2e/pages/2172.html
メニュー>サポートクラス>イリュージョニスト>ラビリンスイメージ [Sup,Sp,1,10,4,3,SL/Sn/Tg非[植物・不死・機械].vs精 封(~TgLv,Rd)]Sp幻 ☆☆☆☆ 遠隔封鎖というちょっと類を見ない効果。味方のいないエンゲージ(それどころか孤立エンゲージ)に使っても「敵キャラクターに封鎖されている」エンゲージを作れるのだと思う。離脱にリアクションこそできないが、かなり移動を制限できるだろう。 もちろん普通に味方に使って封鎖を維持してもらっても良い。この場合は味方の周囲にいるのが植物や機械でも問題ない。ともかくユニークな効果なので工夫のしがいがある。 -- 灯 (2015-07-06 22 16 14) 『R1』P256(封鎖)を読む限りでは、封鎖状態のエンゲージで対決判定が発生するのは離脱の時だけである。そして同書P255(離脱)には「味方だけのエンゲージから離れる際には離脱ではなく、……」とある。文面をそのまま読む限りにおいては、封鎖は離脱を必ずしも要求しない。 飛行状態のキャラクターが(同じく飛行状態の敵がいない限り)封鎖状態のエンゲージから判定無しで戦闘移動が行えることからも、封鎖が必ずしも離脱を要求しないことがわかるだろう。 すなわちこのスキルは同書P256の「細い通路や、吊り橋の上……移動が制限される状況」と同じような意味での封鎖エンゲージを作成するのであって、そこが敵対エンゲージでなければ「封鎖されているが今は自由に通行できるエンゲージ」ができるのだと思う。 素直に敵対エンゲージに撃とう。それでも普通に強いスキルだ。 -- 名無しさん (2019-06-08 10 50 49) ところでこのスキル、大きなバグがある。飛行や転送、あるいは上記解釈などによって「離脱することなくエンゲージを離れた」場合、エンゲージに誰もいなくとも効果がラウンド終了まで持続するのだ。 (『R1』P255(離脱)を読むと分かる通り、離脱は「移動」の一種であり、「エンゲージから離れることそのもの」は離脱ではない。) -- 名無しさん (2019-06-08 10 53 45) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/444.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-5 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内-5> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 「武装神姫」向け機器の展開を開始しました。 クレイドル各種に続き、いよいよ神姫本体のパーツが登場。今回は、 プロフェッショナル志向のサブパワーユニット「DMH-Style」 シリーズのご案内です。 !!!警告!!! 本製品は、神姫本体を大幅にパワーアップさせる装置です。使い方 を誤りますと、神姫ご自身の破損や、周囲へ甚大な被害をもたらす 事故につながる可能性もあります。 重量も、他のオプションユニットに比べ重いため、装備時には神姫 本体のバランスが大きく崩れます。 従いまして、オーナー様・神姫本体ともに対戦を始めとした諸活動 に十分慣れている、あるいは耐えられるだけの補強がなされている ことが使用上の条件となります(詳細はパッケージをご覧下さい)。 また、本製品を使用されて生じた故障・破損・事故等につきまして は、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承下さい。 なお、サブパワーユニットを対戦での使用を禁止しているリーグも ございますので、対戦での使用時には開催者等にご確認下さい。 〜武装神姫専用サブパワーユニット「DMH-Style」主な特徴〜 ■今までにはなかった、高効率燃料電池システムを駆使した強力な サブパワーユニット。弊社小型機械技術研究製作部の技術の結晶 でもあります。 ■通常電源供給のみならず、各駆動部へ直結状態としたモードでの 使用も可能。その場合、ストック状態の神姫と比べ1unitタイプ であればおよそ2〜4倍、2unitタイプならば4〜8倍、他の装備 次第では最大で約15倍の出力を発揮する事が出来ます(当社比)。 ■デザインはかつて鉄道車輌で多用されていたディーゼルエンジン の名機「DMH17」そのものを再現。精密さと力強さを両立させた スタイルとなっております。燃料タンク等も、DMH17機関と併せ て使用されていたものを基にデザインいたしました。 ■本シリーズは全部で5種類。 ・DMH17C-*1unit(DMH17C型デザイン、1ユニット) すっきりとした見た目のC型1台タイプ。出力特性もマイルド で、初めてのサブパワーユニットに最適です。 ・DMH17C-*2unit(DMH17C型デザイン、2ユニット) C型2台のタイプ。縦に二台並ぶそのデザインは、まさに剛力 そのもの。力強さをアピールするならこれが一番。 ・DMH17H-*1unit(DMH17H型デザイン、1ユニット) 最もオーソドックスなH型1台タイプ。C型に比べ若干出力が 向上しており、ステップアップにもってこいの一台です。 ・DMH17H-*1unit+G(DMH17H型デザイン・1ユニット) 上記1unitタイプに、電源安定供給システムを付随させた、 持続時間重視型。持久力の求められる対戦時にどうぞ。 ・DMH17H-*2unit(DMH17H型デザイン、2ユニット) 本シリーズで最も強力・強靱な、H型2台タイプ。何よりも パワーを!という貴方には、こちらをお奨めいたします。 ■ぷちマスィーンをユニット制御に用いることが可能です。また、 2unitタイプには2基のぷちマスィーンを接続し、より高効率の 活用をすることができます。(例:1unitを通常活動供給源に、 もう1unitは出力向上に、それぞれ別の用途に充てる、といった 使い分けができるようになります。) 但し、ぷちマスィーン の相性次第では、ユニットが暴走する恐れがありますので十分 にご注意ください。 ■燃料には当社発売予定の専用アルコールを使用いたしますが緊急 の際には市販のメタノールを使用することが出来ます。(専用の 燃料に比べ出力・持続時間とも低下いたしますが、動作保証対象 となっております。) ※なお重量の関係上、神姫のポテンシャルによっては、行動に大幅 な制約(機敏性低下)が生じる場合があります。 ※パワーアップにより生じた神姫の破損、および事故等による周辺 への損害等への保証は致しかねます。ご了承下さい。 新たな情報は随時公開いたしますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫専用サブパワーユニット「DMH-Style」・全5種> ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正拡張ハンガーが使用可能な神姫に 限ります) ・対応オプションパーツ 潜水用キット(水中対応化キット。なお本キットを用いずに水中 使用もしくは水没された場合は保証外となります。) 防寒カバーA寒地仕様(完全防寒型) 防寒カバーB寒地仕様(簡易防寒型) ・付属装置・付属品 マニュアル、専用拡張ベース、収納ケース ・発売予定価格 (未定) ・発売予定時期 (今春予定) 以上 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2068.html
{双子神姫'sVSシャドウ・アンジェラス} 真夜中。 人間では睡眠を取る時間帯。 空には満月と何光年も掛かる無数の星々。 そんな時間に救急車、警察車、消防車のサイレンがけたたましく鳴り響く。 目の前では燃え盛る会社。 普通、炎というものは燃やす対象に見合った炎しかでない。 ビルを燃やすにはビルを燃やす分だけ、都市を燃やすには都市を燃やす分だけ。 しかし俺の目には燃え盛る会社はそのように見えなかった。 炎上、火炎、そのような言葉が脳内で飛び交うはず…なのだが。 もう俺の目には会社や炎など、どうでもいい対象だった。 燃える会社より今、空中浮遊している武装神姫を見ているのだから。 シャドウ・アンジェラス。 もう一人のアンジェラス。 数えきりない程の残虐と殺戮をしてきた武装神姫。 いや、あれは果たして武装神姫と言えるのか危うい。 今の彼女は身長15cmの武装神姫のボディではない。 まるで平均女性の人間並みの身長はある。 そして見たこともない漆黒の武装を装備し、俺達にニコニコと微笑みかけている。 まるで邪気の無いその笑顔はまるで天使の微笑みのようだ。 だが、彼女のやっている事はあまりにも非常識過ぎる行為ばかり。 でも彼女はそれを正しいと判断し行っているに過ぎない。 例え、人間の命を奪おうとしても。 「シャドウ…アンジェラス……」 フォーマットナイフを右手で握り締めながら彼女を見据える。 俺の周りには愛する四人の武装神姫達。 後ろには気絶している姉貴。 前方の空中にはシャドウ。 周りではサイレンの音、炎の音、何かが壊れる音。 ただ優雅に空中浮遊している彼女を見ることしか出来ない。 「ダーリン…」 「お兄ちゃん…」 左にはルーナとパルカ。 「ご主人様…」 「アニキ…」 右にはアンジェラスとクリナーレ。 四人は俺のことを見てきた。 これからどうするのか…そんな感じに言いたかったのだろう。 瞳を見ればすぐに解ること。 でもそんな中でアンジェラスだけは違った。 たまにチラッとシャドウ・アンジェラスの方を見て敵意むき出しの目で見るのだ。 すでに戦闘態勢に入ってる。 いつでもしかける準備はできてる、というわけか。 「マスター、どうしたの?何でそんな怖い目でアタシを見るの??」 シャドウが俺に話し掛けてきた。 不思議そうに首を傾げ疑問するシャドウ。 まるでこの大惨事引き起こした張本人が誰だか分かってないらしい。 だが、それ程彼女は純情なのかもしれない。 多分だけど…問いただせば彼女は『アタシは悪くない。マスターに会うだけの行動しただけ』そんな風に言ってくるに違いない。 「マスター、アタシは自由に成れたわ♪それにアタシとマスターが愛し合う邪魔もいなくなった♪♪」 「……シャドウ…」 「さぁマスター行きましょ♪そして作りましょ♪♪マスターとアタシしかいない、二人っきりの世界を♪♪♪」 左手を差し伸べながら降下してくるシャドウ。 このままでは俺は彼女に連れ去られてしまう。 けど、俺が犠牲になれば俺の武装神姫達や他の人間達は救われるかもしれない。 ならばこのまま黙って連れさらわれるのもいいかもしれないな。 そう思った瞬間。 「…寄らないで……」 アンジェラスが俺の前に出てドスの効いた声でシャドウに言う。 シャドウも降下を途中で停止し笑顔のまま言ってきた。 「あら、もう一人の『私』はまだ生きていたのね。この場合は『流石』と言うべきかしら?」 「その台詞、そのままお返します」 「…フ~ン、強気じゃない。アタシに刃向かえば、例えもう一人の『私』だとしても容赦しないよ?」 「その台詞も、そのまま返すよ」 「………」 シャドウの顔から笑みが消え、アンジェラスを睨みつける。 その目は怨念を放つような目だ。 「さんざんマスターに愛されといて、まだこりないの?いい加減にして、次はアタシにマスターを譲るべきだとは思わない?」 「いいえ、ご主人様は私達のご主人様です。それに誰のモノではありません」 「嘘!…『私』は嘘ついてる。自分を騙している。偽っている。ネェ、そんな事してたら辛くなるだけの事を『私』には分からないの?」 「………」 「まぁ、沈黙も回答のうちね。だけど残念…『私』は間違っている。本当ならツヴァイ、ドライ、フィーアを殺して自分だけのマスターにしたいって思ってるはず!」 「そんなこと無い!」 「無くないわ!ネェ、素直になりさいよ『私』。そんなの只の偽善者なだけ。惨めになるだけ。分かっているはず…なんたって『私』はアタシなんだから!!」 「違う!」 悲痛の叫び声が辺りに響き渡る。 目頭に涙をため必死に否定する。 アンジェラスとシャドウ・アンジェラス。 元々はアインという武装神姫だったが俺に名前をつけられアンジェラスに成った。 そして今のアンジェラスは二人いる。 どっちも同じアンジェラス…しかし、俺と会えたアンジェラスと会えなかったアンジェラスが出来てしまった。 その傾向の所為とも言えるが、今のシャドウと言われてるいるアンジェラスも最初に俺と会えばこんな形の再開にはならなかったはず。 そしてその話しは今のアンジェラスも同等のこと。 どっちにしろ惨劇は回避できない。 「…ケジメだ」 俺はアンジェラスを左手で優しく包み込むように掴む。 そしてゆっくりと自分の口元の持っていき。 「んっ」 「ンムッ!?」 「マ、マスター!?」 俺はアンジェラスに口付けした。 皆が見ている目の前で。 唐突にキスされたアンジェラスは気が動転したのか、顔を真っ赤にしプルプルと震えていた。 「俺はアンジェラスを愛してる。だからシャドウ・アンジェラス!俺はお前を破壊する!!」 「ッ!?!?」 キッパリとシャドウの方のアンジェラスを拒絶し、そしてキスした方のアンジェラスに告白した。 いつになってもダラダラと関係を引き延ばしていてはダメだと思った行動でもあるし、こうすることによってシャドウの方は…。 「だめっ…離さない……マスターを絶対ハナサナイ……」 恨めしげな声が突風とともに俺に吹きつける…アンジェラスによく似た暗く悲しげな声……。 それでも俺はアンジェラスを選んだ。 もうあっちのアンジェラスはアンジェラスではない。 『愛』によって全てが狂い掛けている武装神姫。 …いや、あれは武装神姫じゃない、殺人機械人形兵器だ。 だから…出来る限り破壊し消去しなければばらない。 「みんな、一旦俺のネックレスを返してくれ。アンジェラス達を助けるために力が消耗してるに違いない。特にパルカのライフフォースはかなり消耗していると思う。完全に、と言わないが色々と補強しておきたい」 「けど…ご主人様を守れなくなってしまいます」 「ホンの少しだけ時間を稼いでくれればいい。今のままじゃ、シャドウの攻撃を防せいだ時に衝撃に耐えれなく破壊されちまう。なんでもいい。兎に角時間を稼いでくれ」 「分かりました」 アンジェラスが『GRADIUS』を俺に渡す。 それに続いてクリナーレ達も『ネメシス』と『沙羅曼蛇』と『ライフフォース』を渡してくる。 俺はすかさず上着の内ポケットに入っている機械を取り出す。 アンジェラス達用の武器を強化と補強の小型携帯機械。 大きさは携帯電話の二倍ぐらいの大きさ。 開き方は携帯電話に近い。 パカッと携帯電話みたく開けると、そこには各々武器の形をした窪みがある。 窪みは四つあり、その中に同じ形した武器を順々に入れていく。 入れ終わったり蓋を閉めると、自動電源が作動し携帯電話のバイブレーションみたく俺の手の中で震えだす。 強化と補強を行っているのだ。 今までの闘ってきたデータを武器から一度抜き取り、データを元にデバックみたいなことをしている。 この機械はデバッカーみたいなものだが、何度も使える代物ではない。 小型化されているので一気に四つの武器をいっぺんに強化と補強する事によって寿命を縮めてしまうのだ。 多分、使えるのはこれ一回限りだろう。 本当はシャドウと一度闘かい一旦退避し、物陰に隠れヤりたかったんだが…そんな事をやってる暇はなさそうだ。 そんな事をしているうちにシャドウに見つかり殺されてしまうのが目に見えてるからな。 「まだか…」 焦る思いが胸にヒシヒシと伝わってくる。 時間にして後一、ニ分あれば完了すると思うが…シャドウがそれまで行動しないとも思えない。 俺はチラリとシャドウの方を見た。 なにやらアンジェラス達を話しているようだ。 「マスターを返せ。アタシはマスターに必要とされている。それにお前等みたいな欠陥品と違うのよ」 「ヘェ~。ボク達が欠陥品だって?いったい何処が欠陥品だと言うんだい??」 ニヤリと笑み見せるクリナーレに対してシャドウは見据える。 「分からないの?馬鹿な子。なら教えてあげる、全てよ!」 「ハアァッ?」 「この身体、能力、思い出。どれに至ってもアタシはお前等とは違う!完璧なのよ、アタシは!!」 勝ち誇るようにシャドウは高らかに声を上げる。 優等と劣等の差に喜ぶかのように。 確かにクリナーレに限らず他の皆も欠陥品と言えば欠陥品だ。 けど俺にとっては彼女達は欠陥品ではない。 だから俺はシャドウが言ったことについて否定しようと声を出そうとした。 けれど。 「なーんだ、そんなことか。クダラナイね」 「…なに?」 クリナーレが両腕をヒラヒラと動かし呆れたポーズをしながら答えた。 「こちとら自分達が欠陥品だってハナッから分かっているんだよ。でもアニキはそこの所を全てひっくる含めてボク達を愛してくれる」 「………」 「なのにお前はど~な~ん~だ?『身体』『能力』『思い出』??どれに至ってもアタシはお前等と違う???そんなに自分がボク達より凄いというのなら、なんでアニキに愛されなんいだよ」 「ッ!?」 シャドウは引きつった表情し歯軋りする音が俺の耳まで聞こえる。 「シャドウ…アインお姉様。クリナーレお姉様の言う通りですわ」 「ツヴァイ…」 「完璧とか欠陥とかは『どうでもいい』の。ダーリンはあたし達を愛し、あたし達はダーリンを愛する。それだけで充分なのですわ」 「何故!?アタシはマスターを守り強くなり愛した!この身体でツヴァイよりもマスターを喜ばせる事ができる!!」 「そうかもしれない…。けれどそれは勘違いしてるわ」 「なにを!」 激怒するシャドウにルーナは微笑しながら答える。 「アインお姉様は実際に、その身体を手に入れ完璧になったと言ったわね。でもダーリンは喜んでくれた?」 「エッ?」 「施設を破壊してまでその身体を手に入れた結果…今、現在、この時、この瞬間、ダーリンはアインお姉様の行動に喜んでくれたの、と訊いているのですわ」 「クッ!?」 ルーナが突きつけた言葉が深く刺さったかのようにシャドウは悲しい表情になる。 まるで今まで自分がしてきた事が間違っていた事に気づくような、そんな表情だ。 「あの…シャドウさんはとても可哀想な人です」 「アタシを哀れむな!」 今度はパルカの言葉に激怒するシャドウ。 そんなシャドウに同情や哀れむような表情でパルカは口を開く。 「シャドウさんはお兄ちゃんに愛されたい一身で頑張ってたんだよね」 「そうよ!」 「でもね。一人よがりに頑張っても意味ないの。ちゃんとお兄ちゃんの気持も考えないといけない」 「なによそれ!?アタシはマスターの事ならなんでも分かる!だからマスターが喜びそうな事をなんでもアタシがしてあげるの!!」 とち狂ったように思っている事をさらけ出すシャドウはとても悲痛に思えた。 そんななか、愛されたい事に必死になるシャドウを悲しそうな表情でパルカは答える。 「…そんなの駄目だよ。それじゃお兄ちゃんの気持を全然考えてないです。只の押し付けに過ぎない」 「押し付け!?でもマスターは喜ぶはず!だってマスターにとっては嬉しい事をこれから沢山するんだから!!」 「まだ分からないんですか?それが押し付けというんです」 「ナッ!?」 驚愕しワナワナと震えだすシャドウ。 自分はこんなにも愛してるのだっと訴えても、けしてそれを受け入れてくれない事の重圧に耐えかねているかのように。 「シャドウ…」 「…『私』……」 誰よりも前に前進対立するアンジェラスとシャドウ。 「私は貴女を破壊します。ご主人様を貴女から守る為に」 「率直に言ってくれるね。でもその方がスッキリする♪」 「………」 「だって、破壊されちゃう方は貴女達だもんネ♪」 「………」 「どうしたの?もう何も言えないの??」 「………」 「どうやら本当に何も言えなさそうだね。ツヴァイ達はアタシに何かしら言ってきたけど『私』はたった一言だもんね♪」 「………」 アンジェラスはキッ、と無言のままシャドウを睨みつけ見上げるばかり。 その時アンジェラスから見て左隣にクリナーレが近づき。 「聞く耳持たない方がいいよ。ボク達が今からやること只一つ」 右隣はルーナが。 「そうですわ。ダーリンを守ること」 最後にパルカが。 「そして最後に笑ってハッピーエンドを迎えさせることです」 クリナーレ達がアンジェラス微笑み掛けながら言葉を掛け合う。 それに対してアンジェラスは皆を一瞥し微笑み―――。 「…みんな…いくよ!」 アンジェラス、クリナーレ、ルーナ、パルカが横一列に並び! そして各々がビシッとポーズを決め! 「「「「オープンコンバット!バトルスタート!!」」」」 「フッ♪ミーンナ、壊してアゲル♪♪」 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2829.html
ぶそしき! これから!? さびしい思いをしている少年が、ずっと一緒にいてくれる友だちを欲しがった。 友だちとして武装神姫を購入した少年とそんな彼の神姫に、とある困難が立ちはだかる。 それは―― 武装が、 ない。 2014.8.9 第4話『シッパイ』の『4-5』を更新しました。 時間を取るのが難しくなりそうなので、今回ので更新はしばらくお休みです。 ……ヒイロの武装の更新が、思ったより進まない。 第0話『トモダチ』 0-1 0-2 0-3 0-4 第1話『ハジメテ』 1-1 1-2 1-3 第2話『イキトウゴウ?』 2-1 2-2 2-3 第3話『キエン』 3-1 3-2 第4話『シッパイ』 4-1 4-2 4-3 4-4 4-5 登場人物紹介 登場神姫紹介 武装パーツ紹介 ゲームなどでちょこちょこ装備などを整えていく楽しさを書けないかと思い、挑戦してこんな話を作ってみました。 駄文ですが、読んで楽しんでもらえたら嬉しいです。 もし、このお話の設定で気に入ったものがあったら、ご自由にお使いください。 BY Tストーク 合計: - 今日: - 昨日: - トップページの合計: - 感想やコメントがありましたら、こちらにどうぞ。 作品別リンクに入れときました。 -- 名無しさん (2014-02-23 21 22 10) ありがとうございます。助かります。 -- Tストーク (2014-02-23 21 46 53) 今年、新作はもう無いかと思っていたw -- 名無しさん (2014-03-10 11 03 43) 今でも、こうやって武装神姫が好きでいろいろ書いてくれるのは嬉しい -- 名無しさん (2014-03-26 21 25 46) はじめまして、りすがりの神姫好きです。読者が読み易いように大変工夫をされているようで、毎回楽しく読ませて頂いています。これからも楽しみにしています。 -- 名無しさん (2014-03-27 00 47 13) おおっ、読んでくれている人達がいるとは、うれしいです。ひまをみて、ぼちぼち書いていきたいと思います。 -- Tストーク (2014-03-29 03 50 12) データチップ?と思ってたらやっぱりあの形で…w 2-1と2-2が次へのリンクうまく言ってないっぽいです -- 名無しさん (2014-04-09 13 47 44) まだ武装神姫の話を書いている勇者がいるなんて! しかも主人公の神姫がエウクランテとなんという俺得。続き楽しみにしてます! あぁ、自分も続編書かないと…… -- ユキ (2014-04-11 06 38 43) リンク修正しました。教えてくれてありがとうございます。続きを書きたいけど、時間が…… -- Tストーク (2014-04-22 04 35 17) 武装神姫はやはりお金がかかるものだったのですね。PCパーツ並に高値の部品とかだとこどもにはてがだしづらいこのヤキモキしてる感じがgood -- 名無しさん (2014-05-02 00 02 26) 更新が、ない。 -- 名無しさん (2014-06-10 10 51 32) ちょっとさみしいね -- 名無しさん (2014-06-18 12 37 52) お、再開ですか。今後が楽しみな伏線がいろいろと… -- 名無しさん (2014-06-30 16 41 37) 更新キター!! -- 名無しさん (2014-07-08 15 26 39) 更新が胸が熱いな -- 名無しさん (2014-07-20 20 24 49) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/521.html
【TOP】【←prev】【FAMILY COMPUTER】【next→】 Labyrinth タイトル Labyrinth ラビリンス 魔王の迷宮 機種 ファミリーコンピュータ 型番 GTS-LA ジャンル アクション 発売元 徳間書店 発売日 1987-1-7 価格 4900円 駿河屋で購入 ファミコン(箱説あり) / ファミコン(箱説なし)
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/21189.html
ラビリンスガール(らびりんすがーる) 概要 アビスに登場した称号。 登場作品 + 目次 アビス 関連リンク ネタ アビス ナタリアの称号。 取得者 ナタリア 取得条件 効果 ▲ 関連リンク ネタ 名前は「迷宮の少女」という意味。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1868.html
・・・。 仙台港で、名残惜しそうに。それでも笑顔で手を振ってタラップ・エスカレーターを降りていくヤヨイとマーチ。 それを手を振リ返して見送ると、レオは目を細めた。 「うん? 楽しかった」 「はい」 降りたのはヤヨイ含めて数人。反して東北地方最大級の港町で乗り込んでくる人数は、この時勢でもそれなりに多いはずだ。船内も少々は賑やかになるだろう。 「良い、友達が出来たかな」 「・・・」 答えが無い事に、レオはノーヴスが顔を出しているポケスタを見やる。 「何か。あったのかい?」 「いえ・・・。そう、です」 ノーヴスは眠そうな瞳を閉じ、思い出すように言った。 「気になっている事が、あります・・・彼女は・・・」 どこか嬉しそうに。 「純粋に。武装神姫・・・では、ないのかも知れません」 「不思議なことを言うね。だけど、マーチはジュビジーだと思ったけど」 「はい・・・。ですが・・・」 そう。何というべきか。 「気配」を感じたのだ。武装神姫じゃない、もっと。確かに違う何か。 神姫である事は確か。しかし、武装神姫とは違う別の方向性、違う物を彼女には感じた。 初めての感じではない。いつしか知っている雰囲気。 この何かを以前に感じたのは・・・いつだったか。 その向こう側には。確かな想いが見え隠れしていた。 「・・・笑顔」 「うん?」 ノーヴスは、ふと。その言葉を紡いだ。 「笑顔で出来ている、神姫」 「そうか。それは、きっと良い事だね」 「・・・はい」 レオは、それ以上詮索しようとしなかった。 2037の彩 彩・第二話 第一幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1328.html
再起動した私は、一瞬、起動直後の光景がいつもと違うことに戸惑い、しかしすぐにここはマスターさんのお部屋でないことを思い出します。 「そうでした……ここは神姫センターでしたね」 我知らず呟き、私はクレイドルから身を起こしました。 ここは神姫センターの一角、修理・整備コーナーです。 周囲を見回せば、売り場側から陰になるカウンターの内側にはメインテナンス機材や管理用のPCが立ち並び、私のほかにもクレイドルに身を横たえる武装神姫たちの姿が何人か見受けられます。 マスターさんのご厚意により、念願であった新しい脚部パーツを買っていただいた私は、その場にて換装をお願いすることにしたのでした。 単純にパーツを付け替えるだけでしたら私自身でも不可能ではないのですが、関節可動範囲の拡大した新しい脚部パーツを問題なく使用するためには、それに対応した新たな制御プログラムのインストール・アップデートが必要でして。 そのためには一度スリープモードにならざるを得ず、つまり私のサポートなしでマスターさんお一人での作業になるということで……失礼ながら、マスターさんともども「持ち帰っても自力でセット出来ない」という結論で双方合意した上での事でした。 もちろん、念願のパーツを一刻も早く装着したかったと言うのもあったのですが。 「おはようさん犬子さん、調子はどうかな?」 頭上からかかる声に、私は顔を上げました。そこに、にこやかな顔でこちらを見下ろす茶髪の店員さんの姿を認めると、私はぺこりと会釈します。 「おはようございます浜野さん。セッティングありがとうございました」 「なんのなんの」 からからと陽気に笑うこのお方は店員の浜野さん。私の記憶上は初対面でしたが、マスターさんが武装神姫の購入を検討し始めた時からなにくれと相談相手になってくださり、購入時もマスターさんに代わってCSCのセットなどの下準備を行なってくれたお方であるとか。 「で、どう? 新パーツ」 「あ、はい」 私はその場で、軽く屈伸などをして動作確認をして見ます。 「関節各部異常なし。モーメント制御も良好に働いております。感謝いたします、浜野さん」 「ん、よかった」 こちらに対してにこりと笑いかけてから、浜野さんはふと視線を売り場のほうへ向けました。 そしてまたこちらに笑顔を向けなおしまして。 「そら、ご主人様のお帰りだよ」 私は弾かれるように背後を振り返り、そして買い物袋を抱えてこちらに向かってくるマスターさんを姿を認め、ドッグテイルがぱたぱたと起動を始めます。 「やあ、犬子さんはもうお目覚めでしたか。お待たせしてしまいましたね」 「お帰りなさいませ、マスターさん!」 そして私はゆっくりと膝を落とし、正座の姿勢を取ります。 そう、正座です、正座。以前の私の似非正座じゃなくて、ちゃんとした正座なのです! 上脚と下脚が平行に近くなる! 腰部と踵部が接触する! まさしく正しい正座なのでございますよ! ああ……感無量です……! そしてこの感動を精一杯に込めて、丁寧に頭を下げます。 「ご覧のとおり、念願かなって正座することが出来るようになりました。この度はもったいない頂き物をしてしまいまして、まこと感謝に耐えません。どうもありがとうございます」 「あー、いやそのー、喜んでいただけたならこちらとしても本望ですとも」 まだ微妙に、私にはわからない戸惑いの残るご様子のマスターさんですが、それでも笑って下さるならば私には十分でして。 ふいに、私の背後で笑い声がこぼれます。 「なるほどなるほど。換装の理由を正座したいからって聞いてたのに試そうとしないからどうしたのかと思ってたけど、ご主人様に初披露を取っといたワケね」 ……お恥ずかしい、見抜かれてしまいましたか。まぁ、一途な神姫ゴコロということで一つ。 照れ隠しに笑いながら、私は正座のままで浜野さんに膝を向き直します。 「改めてまして浜野さん、どうもお世話になりました」 そして深々と、座礼します。 「なんのなんの」 再びからからと笑ってから、浜野さんはマスターさんに視線を向け。 「……ちょっと変わったコに育ってるみたいですね?」 そう言って浜野さんは、またからからと笑い出しました。 「いやはやなんというか。僕としても最初のプレゼントが強い武器とかかわいい服とかじゃなくて、正座が出来る脚になるとは思っていませんでした」 ちょっと苦笑いしつつ、マスターさんは浜野さんに受付カードを返却。 ……なるほど、たしかに考えてみれば、プレゼントとしてはいささか毛並みが特殊です。 そのようなものを要求する武装神姫と、変に思われてしまったのでしょうか。我知らず、ドッグテイルの動きが鈍ります。 「はっはっは、確かにそれは予想外ですね。でも……」 浜野さん、マスターさんに納品書を手渡しながら、一瞬こちらに目を向けてウィンクされました。なかなかサマになったウィンクではないかと思いえます。 「イイ子に育ってるじゃないですか」 「はい」 少々照れながらも、マスターさんは即座にはっきりと肯定してくださいました。 再び、ドッグテイルが活発に動き出すお手軽な私です。 「それじゃ、お世話になりました」 「お世話になりました」 「はい、毎度」 マスターさんが頭を下げるのにあわせて、再び私も座礼しました。 浜野さんのほうはと言えば、相変わらずからからと陽気に笑いながら、ぱたぱたと手を振っています。 私は再びマスターさんの胸ポケットに収まりますと、その場を後にしたのでした。 「……あの、マスターさん?」 「なんでしょう犬子さん?」 浜野さんの元を辞した後少しして、私はマスターさんの胸ポケットから、おずおずと声を出します。 「あの……やっぱりいきなり脚部パーツを欲しがるのって、ヘンでしょうかね……?」 「戸惑ったのは確かですね」 くすくすと含み笑いをしつつ、マスターさんはお答えしてくださいました。 「ですがまぁ、そもそもそんな風な正座好きに仕込んじゃったのは僕のせいでしょうし、それに……」 いいながら、マスターさんは指を伸ばして私の頭を撫で始めました。 失礼ながら、その、お世辞にも武装神姫相手の撫で加減を判ってるとは言いがたいような撫で方で、頭甲の外れてしまいそうな乱暴とも言える勢いについ顔をしかめてしまいます。 そんな情況なのにぱたぱた振れるドッグテイルは、やはり不良品なのでしょう。先ほど浜野さんにご厄介になったときに、申告しておくべきでした。 「そのしっぽが随分と活発に振れられてて、『本当に喜んでもらえてるんだなぁ』と判りましたから、僕としては送った甲斐があったようで満足ですよ」 ……命拾いしましたね不良品ドッグテイル。今しばらくはあなたの不具合は私の胸に秘めておくとします。 「それから、買い物ついでに別のお土産も買ってありますから、楽しみにしてくださいね」 マスターさんは買い物袋を、軽く掲げて見せました。 二人で相談してあった買い物リストの消化は、どうやら私の換装作業中に済まされていたようです。 「お気遣いありがとうございます。それでお土産と言うのはなんでしょうか?」 「それは内緒ですよ。帰ってからのお楽しみです」 いたずらっぽく笑うマスターさん。 むむむ、気にはなりますが、でしたら素直に楽しみに待つとしましょう。 私はマスターさんの抱える買い物袋を見やり、それからお尋ねしました。 「ご用事はもうお済みなのですか? でしたら早く帰って、そのお土産を見せていただきたいものです」 「何を言っているのですか、犬子さん」 こつんと、優しく私の頭がつつかれました。 マスターさんは、私をつついた指で上を指しつつ、笑いました。 「お楽しみは、もう一つ残ってるじゃないですか」 私は、自分の早合点に気がつきました。 ご用事は全てお済みのようでしたし、文脈からも帰宅が連想されました。 私自身も素体パーツを交換したばかりですし、十分な慣らしが済むまで無理な可動は避けるのが無難と考えていて、それだけにしてしまった早合点です。 それもまた、もともとの目的の一つだったと言うのに。 この神姫センターは、1~3階が売り場で、そしてその上の4階が……。 「バトルスペース……」 私は、感情回路が高鳴るのを感じました。 「これでいいんでしょうか?」 ターミナルから排出されたバトル管理カードをかざす様にためつすがめつ眺めるマスターさんに、私は答えました。 「はい、以降はターミナルにそのカードを挿入するだけで、バトル参加が可能になります」 カードにはマスターさんの名前と武装神姫…つまり私のデータ、それから簡単な戦歴が記されています。といっても登録したばかりの今は、戦歴には0が並んでいますが。 実は、カードそのものがなくても武装神姫本体さえあれば同様の管理はできるたりもするのです。 ターミナルにはカード挿入口のほかに武装神姫用のスキャナーが存在し(カード登録の際にも、武装神姫データのスキャニングに使われます)、その前に武装神姫が立つだけでバトル登録やデータの確認は出来たります。 ですが、戦歴を確認したくなった時にいちいち何らかの端末を利用したりしないでもすぐにアナログ的に確認できる強みと、それから人前で自分の武装神姫を晒すことに抵抗を覚える人たちの存在によって、いまだに併用カードの存在は根強いのです。 「周りは武装神姫の愛好家ばかりでも、やはり恥ずかしいものなのでしょうかね?」 「それもありますが、バトル前に自分の武装神姫の装備を晒したがらない方なども多いようで」 「なるほど……もっとも僕が見ても、何も判らないでしょうけどね」 そう笑った後で、マスターさんは私の顔を覗き込みました。 「犬子さん、脚は大丈夫ですか? まだ慣らしが十分でないとおっしゃっていましたが……やはり、部品が変わると色々不都合とかでるのでしょうか?」 「あー、はい、日常活動の範囲ならば問題はないのですが、戦闘のような全力行動になるとさすがに影響は出てきますね」 「そういうものなのですか」 「そういうものなのです。一つ例をとっても、全力で走る際に、関節が以前よりも広くなるならそれだけ歩幅が変わってきます。歩幅が変われば、それに応じて脚さばきや重心も変わってきます。 単純に歩幅が変わるだけなら対応も簡単ですが、そこから連鎖する全ての行動パターンに少しずつ影響が出てしまいますからね。本来ならば時間をかけて、それらを一つ一つ調整するべきでしょう」 「思っていたより煩雑なのですね」 「煩雑なのです」 「それで、本当に大丈夫なのですか?」 「はい、今回は応急に、関節可動域をソフト的に限定し、擬似的に以前のパーツを再現してあります。 これならば、影響は誤差の範囲ですみます」 「では……」 マスターさんは笑って、カードを再びかざします 「参戦と言うことで、よろしいですか?」 「はい!」 意気込んで答える私にまた笑うと、マスターさんはカードをターミナルに挿入しました。 「これで、登録ができるのですね?」 「はい。本来ならば様々な条件設定も行なうのですが、今回は初陣と言うことでそのあたりはデフォルトで設定されていますね」 バトルステージはノーマル、相手は同レギュレーション・近似戦歴限定、ついでにバトルまで15分待ち。あとは、対戦用ポッドの方に呼ばれるのを待つばかりです。 「……ところでマスターさん?」 「何でしょう犬子さん?」 私は、ターミナルに表示された武装神姫データを見ながら、お尋ねしました。 「私の名前、『犬子さん』までが名前だったのでしょうか」 「あー、いや、そういうわけでもなかったのですが……カード登録の時に、つい」 「そうですか」 「そうです」 ……いえ、いいのですけれども。 そんなこんなで、私の出番が回ってきまして。 現在は対戦ポッドのなかで、持ち運びには邪魔だったために外していた装備の準備にてんやわんやです。 プチマスィーンズを起動し、吠莱をセットし、棘輪を携えます。十手は、拳狼があれば不要かもしれませんが、携行可能量に余裕があるのでこれも持って行きます。 「うーん、なんだか緊張してきてしまいますねぇ」 「マスターさんはどっしり構えていてくださいよ」 「犬子さんは、緊張とかしないのですか?」 「そのあたりは、やはり武装神姫ですから。戦うことは基本機能ですし……とはいえ私も初陣ですし、現在AIの予測演算がフル稼働中ですが」 「……つまり?」 「わかりやすく言うと『どうなるかなー、ワクワク、ドキドキ』です」 「わかりやすい解説ありがとうございます」 深々。 「いえいえ」 深々。 「とにかく、怪我などはしないようにしてくださいね?」 「大丈夫ですよマスターさん。対戦はVRスペースで行なわれますので、武装神姫本体や装備が破損することはありませんよ」 「ああ、そうなのですか」 「そうなのです」 「いやはや、無知で申し訳ない。でしたら、思う存分楽しんできてくださいね」 「はい!」 「……あ、そうだ。もし勝てたら、もう一つ何か、犬子さんの欲しい物をプレゼントしますよ」 「あー、それはその、もう高価なパーツを買っていただいておりますし、それは申し訳ないかと」 さっき買い損ねた『TODA』ブランドのスーツ一式を脳裏にかすめさせつつ遠慮する私に、マスターさんは忍び笑いを漏らします。 「おやおや犬子さん、権利獲得する気満々ですね」 「う、言われて見れば自信過剰なようでお恥ずかしい……」 「いえいえ、その意気ですよ」 「あ、はい! では、行って参ります! 見ていてくださいねマスターさん!」 と、勢い込んで出撃したのが、5分前のお話でした……。 <そのはち> <そのじゅう> <目次>