約 454,635 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3085.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ここはラ・ロシェールにある金の酒樽亭。 ガラの悪い傭兵やならず者の集まる居酒屋である。 そこに駆け込んだ男も、この酒場の利用客の例に漏れず一目で堅気ではないとわかる男であった。 その男は酒場の隅で杯を傾けるフードを深くかぶった女の元に足を進める。 女があごをしゃくると、男は女の隣に座り、声を潜めて話を始めた。 「姐さん。奴ら、到着しましたぜ。お高く女神の杵亭に泊まるみたいです」 「へえ。ま、貴族が泊まるのはそこしかないだろうからね」 フードの隙間から見える顔は紛れもなく盗賊、土くれのフーケのものだ。 もっとも、この酒場にそんなことを気にする者はいないのだが。 フーケは白い仮面の男の手引きで脱獄した後、このラ・ロシェールに連れてこられた。 その後、ここで傭兵を集め待機していたのである。 実際この酒場にいるのはフーケが雇っている傭兵である。 ただ…… ──姐さん、ねえ 何となく腹が立つような呼び方のような気がしないでもないが、そこは盗賊暮らしの長いフーケ。ぐっと胸の中に納めておく。 「今度は大丈夫なんだろうね?さっきは醜態さらして。あんたらホントに腕利きなんだろうね?」 「そんなこと言ったって、姐さん。次から次に後からメイジが増えるんですぜ。ありゃーあんまりだ」 フーケは本当のところ、あまり怒っているわけではない。 ラ・ロシェールに続く山道に入ったばかりのところでの襲撃は一種の威力偵察だ。 傭兵達には言ってないが、元々あそこで仕留める気はなかった。 「へぇ……メイジが増える前にもガキ相手にだいぶ苦戦していたようにも見えたがねえ」 「あ、ありゃ……」 男が声を詰まらす。 これも本当は、剣を使う少年という予想外の戦力が明らかになったので別に失敗ではないのだが、それを正直に傭兵に教えてやる義理はない。 フーケは自分のためにその情報を隠す。 「あの分の後金は少しさっ引かせてもらうよ。それから、次はしっかりやりな。さもないと、わかってるね」 「へ、へい」 さっ引いた分はどこに行くのか。 傭兵に出す金を出した白仮面に戻すのか。 そんなことはしない。フーケは自信の懐に入れて、とある場所に送る腹づもりだ。 フーケはこぼれそうになる笑いを抑えながら立ち上がり、酒場に満ちる喧噪に負けない声を張り上げる。 「さあ、お前達。飲んだくれるのもここまでだよ。仕事の始まりだ」 「へい!姐さん。任せてください」 酒場の傭兵達が一斉に立ち上がり声を上げる。 その中で傭兵達に敬われるフーケはどう見ても名うての女傭兵隊長だった。 ラ・ロシェールについてから、ユーノはきょろきょろしっぱなしだった。 岩壁に彫り込まれるように作られた通路や建物は一つでもすごい物だが、それが町一つ分もあれば圧巻の一言だ。 (どうやって作ったんだろう) (土のメイジが作ったに決まってるじゃない) (へー) ユーノは首を伸ばしてあっちを見たり、こっちを見たり。 人間の姿だったら田舎者に見られていることだろう。 (ユーノの居たところはこういう場所はないの?) (うん。似たようなところはあるけど、ここみたいに大きいのはなかったよ) (ふーん。ユーノのところの土のメイジはこういうの作らないんだ) (ミッドチルダ式の魔法は、こういうのにはあんまり使えないんだ) (そうなんだ) ミッドチルダ式の魔法にいつも驚かされているルイズはちょっとした優越感みたいな物を感じておく。 (ほら、あそこの廊下が不安定そうだけど全然そんなことないでしょ。固定化使ってるからなのよ) (へー) そんなに自慢げに教えることでもないことを言っても、ユーノがいちいち感動しているのが何か嬉しい。 そうやって、ちょっとした事をユーノに教えているとすぐに宿に着いた。 女神の杵亭である。 出発の日は明後日。それまではここに泊まることになる。 ここに来るまでにギーシュは疲れ果てていたし、キュルケも体が埃っぽいと言っている。 それぞれすぐに割り当てられた部屋に行ってしまった。 ギーシュは一人部屋。 キュルケとタバサは相部屋。 そして、ルイズとワルドも相部屋である。 ルイズは 「まだ結婚しているわけじゃない」 と顔を真っ赤にして言ったが、ワルドが 「大事な話がある」 と言うと、大人しくワルドの背中を追って部屋に入った。 ユーノが入ったのは、もちろんルイズとワルドの部屋である。 ルイズとワルドの大事な話とは何かと身構えていたが、二人が話し始めたのは昔の話だった。 池の小舟の話や、姉と比べられていた話はユーノもちょっと興味があったが、ルイズが顔を赤くして恥ずかしがっているのを見ると、念話でもあまり口を挟めなかった。 「僕はね、ルイズ。あの頃から君に誰にもないオーラを感じていたんだ」 「誰にもないオーラ?」 「君には、君だけが持つ特別な力が眠っているんじゃないかって事だ。いや、その力はすでに目覚めているんじゃないかな?」 ルイズは肩に力を入れて硬直し、ユーノも全身の毛を逆立てる。 心当たりがあることおびただしい。 「そ、そ、そ、そんなことありません。今でも普通の魔法は失敗ばかりで……」 「ははは。じゃあ、普通でない魔法は失敗しないのかな?」 また体が硬直する。心臓もびくっとする。 「そ、そう言う意味じゃなくて」 「はは。ごめんごめん。だけど王女殿下も同じようなことを言ってたよ」 「姫さまが……」 口ごもるルイズ。 ワルドはルイズのグラスにワインをつぐ。 ルイズがそれを口に入れたところで、ワルドは本題を切り出した。 「ルイズ、この任務が終わったら結婚しよう」 突然の申し出にルイズも驚いたが、ユーノはもっと驚いた。 生まれて初めて目撃するプロポーズ。 しかも、ミッドチルダで見るようなドラマや映画と言ったお話ではない。 リアルの、本物なのだ。 とりあえず、ルイズの足下は居心地が悪すぎる。 あわてて走り回って 「きゅうっ」 壁にぶつかってしまった。とても頭が痛い。 そんなユーノを知ってか知らずか、ワルドはルイズの答えを静かに待っている。 「でも……」 「でも?」 「私、ワルドが言うようなメイジじゃないし。それに、それに……」 「誰かすでに君の心にもうすんでいるのかな?」 ルイズは息をのむ。そして、息を吐こうとしてもう一度飲む。 そのときルイズの頭を一瞬よぎった顔があったからだ。 それがよりにもよって、人間のユーノだったから。 ──な、な、な、な、なんでよりにもよって!しかも、人間じゃなくて使い魔なのよ! 焦点が定まらなくなるルイズの耳元でワルドがささやいた。 「それでも良いさ。だけど、ルイズ。僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは、国を……このハルケギニアを動かすような男になりたいと思っている」 緊張と鼓動の高まるルイズからワルドは少し離れた。 「そのときは君に僕の側にいて欲しいと思っている。僕には君が必要だ。そのことは覚えていて欲しい」 「ワルド……」 ようやく出るようになった声をつぶやきながら、ルイズはワルドを見上げた。 「疲れてしまったようだね。もう、寝たほうがいい」 ワルドはそう言うと扉を開けた。 寝室への扉ではなく、この客室の扉だ。 「まだ早いようだから、僕は別の部屋を取ろう。おやすみ、ルイズ」 ワルドのいなくなった部屋でルイズはユーノを抱き上げ、こぶのできた頭に手を当てた。 机に体を預けたルイズは、ルイズは何度もため息をついている。 ユーノは机に乗せられてルイズと何度となく視線を合わせていたが、どうにもこうにも何を言ったらいいかわらかなかった。 「ねえ、ユーノ。私……結婚申し込まれちゃった」 わけのわからない気まずさの中、先に話し出したのはルイズだった。 「そ、そうだね」 「どう思う?」 「ど、どうって……どうって」 どう答えればいいかとっさにわからない。 わかるはずがない。わかりようがない。 だって、ユーノはまだ9歳だから。 だけどルイズが聞いているのだから、何か答えなければいけない。 「え、えーと。ワルドさんっていい人だよね」 「うん」 「ルイズにとっても優しいし」 「うん」 「ルイズのこともよく知ってるし……それから貴族で、軍人でルイズのことを守ってくれそうだし」 「うん、うん」 「ルイズのことが好きみたいだし」 「そう、だと思う」 「ルイズもワルドさんの事が好きなんでしょ?」 「そう、なのかな」 「だったら、結婚して良いんじゃないかな」 「ん……」 ルイズは伏せた体を起こし、机に手をついてユーノに顔をぐっと近づけた。 「ユーノはそれで良いの?」 「え?」 「他にないの?」 「え?」 「こー、寂しいとか…」 「うん。ルイズが結婚したら寂しくなるかも知れないね。でも、ルイズのためになるなら……」 そのとたん、ルイズの中で何かが切れた。 何かはわからないがとにかく切れたのだ。 「!!!ユーノっ」 「は、はいっ」 机をひっくり返るほど強く叩いた後は、足音を鳴らして部屋の外へ。 どかどかどか 「ルイズ、どこ行くの?」 「キュルケたちの部屋」 「ぼ、僕も」 「ユーノはここ!良いわね!」 「う、うん」 ルイズが思い切り強く扉を閉めたせいで部屋全体が揺れる。 宿で一番の高級な部屋にはフェレットのユーノだけになってしまった。 さて、ここはキュルケとタバサの相部屋である。 そろそろ布団に入ろうとしたところで、扉がノックされた。 ノックと言うより、叩きめすと言った方が良いかもしれない荒々しさだ。 鍵を開けると、ルイズが何も言わずに入ってくる。 しかも、これまた何も言わずにキュルケのベッドに一直線。 そのまま潜り込んでしまう。 「ちょっと、ルイズ。ここは私の部屋よ!」 「今日はここで寝る!」 「あなたの部屋はどうしたの?あの、ワルド子爵は?」 「良いの!今日はここで寝るの!」 「私はどうするのよ!」 「私の部屋で寝て!」 「あのね……」 その後、ルイズはもう何も言わない。揺すっても、叩いても動かない。 キュルケはしかたなく肩をすくめて部屋を出て、後のことはタバサに任せることにした。 結局キュルケは元はルイズとワルドの相部屋だった部屋で一人になっていた。 正確には一人ではない。 フェレットのユーノがいる。 キュルケは部屋にまだ余っていたワインの瓶を傾け、ユーノに聞いた。 「ねえ、何があったの?」 ユーノはただ首をかしげるだけだった。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/189.html
夏祭りの夜に 後編 作者:91-375 「ごめんフェイト、やっぱりここからじゃ追いつけそうにない」 『仕方ないよ、ユーノ。 こっちも人の流れに捕まっちゃったし、またさっきまでと同じように屋台を回っていよう?』 「そうだね。先になのはやはやてのグループと会える可能性もあるし」 『でもどうせならまた先にユーノに会えるといいかな』 「うん。……うん?」 『それじゃ、また後でね』 フェイトと念話で話してみたが、やはり再度の合流は難しいようだった。 子供達は残念がったが、ここでまたユーノ、スバルとフェイト、エリオ、キャロは別れることになった。 「うう……ごめんなさい、ユーノさん」 「いや、気にしないで。まだ時間はあるんだからさ」 自分の不注意が原因とあって、落ち込むスバル。エリオとキャロもこんな調子なのだろうか。 ユーノはスバルを励ましながら、フェイトが言っていたのはこういうことかと一人納得していた。 「まぁ焦って合流しようとしてもどうしようもないんだし、屋台巡りに戻ろうか」 「はぁ……」 「あ、あれなんてどう?」 ユーノが指差した先には、一際人だかりの出来た屋台が一つ。 たまに何やら鐘の音と、人々の歓声が聞こえてくる。 近づいてみると、屋台の様子が人の頭越しにだが見えてきた。 屋台には大小様々な景品が並べられて、それら全てに紐がつながっている。 そしてその先端を全てまとめて、店の主が持って客に引かせている。 「ユーノさん、あれ何のお店ですか?」 「これは千本引きといって……まぁくじ引きだね。 あの紐の束から1本を引っ張って、つながってた商品をもらえるんだ」 「へ~……あ、今あそこの女の子、何か大きいの引きましたよ!」 「ほんとだ、結構豪華そう……だけど男の子向きの玩具だね、あれ」 紐を引かれてぶら下がっていたところを取り外されたのは、DXジエンドライバー。 デバイスとも似た多彩な音声ギミックが売りだが、 実は4種類がループするだけの悲しき仮面ファイヤージエンド変身グッズである。 変身時の『ジ・エーーーーンッ』くらいは言って欲しいものである、本当に。 大当たりを知らせる鐘の鳴る中、小さな女の子は微妙な表情で両親のもとへと歩いていった。 「あはは、くじ引きですからね~……ユーノさん、あたし達もやってみましょう!」 「うん」 曲がりくねった列の最後尾に、スバルはユーノの手を引いて何とか入り込む。 景品をよく見てみると、大きなぬいぐるみから大当たりらしいゲーム機まで、様々な物が並べられている。 「せっかくだからやっぱり良い物狙いたいよね。ナカジマさんはどんなのがいい?」 「うーん。さっきのボールは無くしちゃったから、何か後に残るものがいいですねー」 「お菓子の詰め合わせもあるみたいだよ?」 「そ、それはそれですっごく魅力的ですけど! 食べてばっかりじゃないです!」 そうこうしているうちに、順番が来たようだ。 まずはスバルが紐の束と向かい合う。 「う~~ん……これだぁ!」 一つを選び、気合の声と共に思い切り紐を引っ張った。 「すごく軽い感触でした……」 「まぁ、運の問題だからねぇ」 スバルの全力で引いた紐につられて宙を舞ったのは、コンビニで普通に売っているガムの3本セットだった。 「じゃあ次は僕だね」 「頑張ってくださいね~……ハズレっぽいの、まだ結構ありますけど」 「大丈夫! こう見えてもいろんな遺跡で罠や天災やロストロギアに当たってきたから!」 「おお~っ!! ……それって運が良いことになるのかな?」 今度はユーノが腕まくりしつつ、紐の束に手を伸ばす。 そしてしばらく迷ってから1本を選び出し、一気に引っ張った。 「これだ! って、軽い!?」 勢い良く引っ張った割にはこちらも肩透かしだったようで。 紐の先を目で追うと、小さな袋がぷらぷらと揺れていた。案の定というか鐘は鳴らなかった。 「うーん……まぁこんなもんかな」 「何だったんですか?」 店の前を離れてから、二人で袋を開けてみる。 「これは……髪飾りかな?」 「あ、可愛いです」 出てきたのは紅いガラス細工のヘアアクセサリーだった。 お世辞にも高価な物ではないだろうが、悪いデザインでもない。 「……ナカジマさん、着けてみる?」 「へ!?」 「男の僕が着けるものじゃなさそうだし……何か形に残る物も欲しいって言ってたじゃない?」 「でもあたし髪短いですし……ユーノさんが当てたものだし」 「そうかな? 髪の色綺麗だし、似合いそうだと思うけど」 「えぇっ!?」 「あ、ラムネ売ってる! ちょっと待ってて、飲み物買ってくるから」 問答の途中、結局髪飾りをスバルの手に残したまま、ユーノはすぐ近くの屋台にラムネを買いに行った。 ぽかんと口を開けてその後姿を見送りながら、スバルは先ほどのユーノの言葉を反芻する。 ユーノの性格なら、ああいった場合お世辞でも何でも似合うとは言うのだろうが、 特別何か意識した様子でもなかった。 だとすればそれは、偽りの無い本心かもしれないということで。 「……なんだろ、ちょっとドキドキしてる」 また早くなった鼓動は、ユーノの姿を見たままだと収まりそうになくて、手にした髪飾りに視線を落とす。 「着けられなくはない、かな」 なんとなく髪を引っ張ってみて……髪の先に視線を動かして、気付いた。 スバルの視線の先、少し離れたところにいる子供連れの女性。そのバッグに手を入れて、何かを抜き取ろうとしている黒いシャツの男がいた。 世界は違えど、こういう人間はどこにでもいる。 スバルの目が、慣れない感情に戸惑う少女から時空管理局の魔導師のそれへと切り替わった。 「待ちなさい!!」 近づく前に声に出したのは迂闊だったかもしれない。 男は慌てて財布を抜き取り、スバルの方に女性を突き飛ばすと、人ごみの中へと逃げていく。 「キャッ!」 「大丈夫ですか!?」 こういう場でのスリの常習犯なのか、人ごみの中での移動が妙に速い。 女性が倒れないように支えたスバルは、即座に男までの距離を測り、ちらりと店に並んでいるユーノを見る。 「……あたし、取り返してきます! あそこの金髪の人にそう伝えててください!」 ユーノに事情を話していては間に合わない。 そう判断したスバルは、女性にそれだけ言うとスリの後を追い始めた。 ※ 花火の打ち上げ時刻が近づいているためか、夏祭り会場の混雑はピークを迎えていた。 スリはどんどん神社の奥の方へと逃げていくが、スバルも負けじと追いすがる。 (この人ごみで、下手に泥棒がいるなんて叫んだらパニックになる……!) 人の波を掻きわけ追いかけ続けていると、やがてスリは屋台の隙間に何食わぬ顔で入っていった。 人目につかないところに逃げたつもりなのだろうが、これは逆にチャンスだ。 スバルの身体能力なら、人ごみでさえなければスリの一人くらい簡単に捕まえられる。 スリの通った隙間をくぐり、会場から離れていくと、うって変わって照明も無く、木の茂った静かな場所に出た。 どうやら、このまま神社の裏山へとつながっているらしい。 「足音が……こっち!」 少し引き離されたが、スバルの聴覚ならば玉砂利の音が木の枝を踏む音に変わり、 遠ざかっていくのを聞き分けることが出来た。 「マッハキャリバーは……」 手にしたポーチの中にいる相棒の起動を一瞬考えたが、思い直す。 一応観光目的で訪れた管理外世界でも、非常事態ならば魔法の使用は認められる。 が、これはそこまで大げさな話ではないかもしれない。 下手に騒ぎを起こして、責任者の八神部隊長に面倒をかけるのもどうかと思う。 「ううん、いいよ。大丈夫!」 セットアップするのかと問う相棒にそう答え、スバルは小さくなっていく足音に向かって全力で駆け出した。 相手は魔導師でもない一般人なのだ。マッハキャリバー無しでも、スピードで負けるスバルではない。 もう完全に裏山に入り込んだのだろう、古い木の葉の積もった道無き斜面を一気に駆け上り、追い詰めていく。 「はぁ、はぁ、クソッ!!」 「おとなしく止まって、盗った物を返しなさい!!」 「はぁ、がっ、何なんだこのガキ……!」 「捕まえた!!」 「うわぁぁっ!?」 いかにも悪人然としたその男は走り疲れて息を乱し、足を止めつつあった。 そしてついにスバルの手が男の襟首を掴む。すると、つい力が入りすぎたのか。 片手ですんなりと持ち上げられた男は、その勢いでくるりと一回転して背中から地面に叩きつけられた。 マッハキャリバーのスピードで同じことをしていたら、大怪我をさせていたかもしれない。 内心焦りながら、スバルは少し力を緩めた。 ともあれ、スリの現行犯に必要以上に手心を加える道理もない。 スバルは一息ついて、倒れた男の頭上に仁王立ちする。 「ゲホッ! ゴホッ……!」 「もう逃げられませんよ!」 「クソ、分かった分かった……」 男は観念したのか頭を抑えて起き上がると、先ほどの女性の物と、さらにいくつかの財布を取り出した。 これでとりあえずは一件落着だ。 (……っと、一応なのはさんか部隊長に連絡した方がいいかな?) この世界の治安維持組織に引き渡すにしても、ここでの身元がはっきりした人間に任せた方が確実だろう。 ひとまずはやてへの念話を試みながら、男が差し出す財布を受け取ろうとした、その時だった。 地面に響くような爆発音と共に、生い茂った木々の隙間から色とりどりの光が漏れる。 打ち上げ花火大会が始まったのだ。 (あれがハナビ……! 始まっちゃった!?) この時間までには皆と合流しているはずだったのに、すっかり時間をとられてしまった。 自分がいないことを心配するなのはやフェイト、そしてユーノの顔がスバルの頭をよぎる。 まだ拘束もしていない犯罪者の前で、それは完全な油断だった。 「舐めんじゃねえクソガキが!」 「!?」 「ケッ……! チンピラぐらい女一人でもどうにか出来ると思ったかぁ!?」 財布を投げつけられ、さらにスバルの右手はがっしりと掴まれていた。 そしてそのまま襟首を掴まれ、一本背負いに投げ飛ばされる。 普段ならばただ投げられるスバルではなかったが、今の服装が災いした。 足から着地して即反撃に転じるつもりが、着地と同時に下駄の鼻緒が外れたのだ。 浴衣に合わせてはやてが選んだ下駄の強度は、当然ながらマッハキャリバーとは程遠く、 ここまで走って来た事でかなり痛んでいたらしい。 斜面という地形も悪く、スバルは着いた足から態勢を崩してそのまま地面を転がる。 「く……!」 「はぁ、はぁ……残念だったなぁ? 警察にでも任せてりゃ良かったもんを、ガキがでしゃばるからこうなるんだよ」 形勢逆転したと見たのか、男は嘲るように吐き捨てながら、スバルを放置して散った財布を拾い集める。 すぐに立ち上がって追いかけようとするが、 頭を打った衝撃に花火の大きな音も手伝って、思うようにいかない。 「ま、待てっ!」 「花火が始まっちゃあ、こんなとこには誰も来れねぇし気付かねぇ! あばよ!」 完全に自分がペースを握っているつもりらしく、男はスバルに捨て台詞を残し、走り去る。 マッハキャリバーを使えば、そんな口はあと一秒だってきかせないのだが。 暗がりに遠ざかっていく男の後姿を見て、しばらく逡巡すると、スバルはポーチに手を伸ばした。 しかし、その時。 「ま、あの混雑だ……人間の大きさじゃ確かに来られなかっただろうね」 スバルとスリの男以外、誰もいないはずの暗い林に声が響いた。 「あ……」 「な、何が言いてえんだこのガキ!?」 「いやその子じゃなくて、こっち」 スバルの声と勘違いして男は怒鳴るが、続いた声は男のすぐ耳元から聞こえてきた。 「な、何だ!?」 「だから、こっちだってば」 スバルに背を向けないまま、男はキョロキョロと辺りを見回しながら後ずさる。 魔法を使わないスバルなら投げ飛ばせる程度の腕っ節と、それに見合わぬこの小心が、 この男が捕まらずに社会に潜めている理由だろうか。 さすがに気味が悪くなってきたらしく、男の頬を冷や汗が伝う。 そして、ついに目が合った。 自分の肩に乗っていた、緑の目の獣と。 「ひっ……!?」 「そう怖がらなくても……僕はあなたを裁く権利なんて持っちゃいない」 緑の目の獣……その正体は、日の光の下で見ればそれはもう愛らしいフェレットなのだが。 暗い神社の裏山で淡々と人の言葉を発するそれは、男にとっては化け物以外の何物でもなかった。 「う、うわぁぁっ!!?」 「バインドで痕を残したら、 こっちの警察の人が不審がるだろうし……管理外世界の生物を傷付けるべきじゃないし」 男はなんとか化け物を引き剥がそうともがいたが、フェレットはすばしっこく男の手をかわす。 それでいて常に男の体に張り付き、恐怖を与え続けている。 「でもまぁ、この世界の犯罪者をこの世界の警察が裁く…… その手伝いくらいならしても悪いってことは無いだろうし」 「ひぃぃっ!?」 「何より、あなたがその子やいろんな人にした事……そしてこれからもするであろう事は…… 僕としても、見過ごせないかな」 半狂乱になって転げまわる男の体の上で、フェレットは器用に地面の下敷きにならないよう動き回る。 そして、その体は徐々に淡い緑に輝きだした。 「だから、こういうのはどうだろう?」 遠くの花火よりもさらに明るく発光した獣は、やがてそのまま人ほどの大きさに膨れ上がり、 一人の青年へと変化した。 金色の長い髪に、中性的な顔立ち。普段は穏やかであろうその眼は、 今だけは鋭く、そして冷ややかに男を見下ろしている。 青年が右手で印を切る様な動作をすると、仰向けに倒れた男の真上に突然光の壁が現れた。 両手をついても、ビクともしない。 慌てて地面に手を触れると、そこにも土とは違う感触。 混乱しながら、自分が訳の分からない力でサンドイッチのように挟まれたことだけを理解した。 男はその名を知る由もないが、2枚の光の円盾、ラウンドシールドは、やがてゆっくりと互いの距離を縮めていく。 ギリギリと。ギシギシと。そして…… 「ぎあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」 ※ 「っと、これだけ脅かせばまぁ……大丈夫かな?」 ユーノはそう軽く呟き、恐怖で完全に気絶してしまった男を解放した。 ほど良い力加減で男を拘束していただけのラウンドシールドも、翠の魔力光となって霧散する。 男に怪我をさせていないか確認していると、いつのまにか立ち上がったスバルがすぐ隣にいた。 「大丈夫だった? ナカジマさん」 「はい、怪我とかは全然……浴衣は汚れちゃいましたけど」 「あ、下駄も壊れちゃったみたいだね……」 「ハナビも、もう始まっちゃいました……」 こうしてみると、ひどい有様だった。 今頃皆で合流していたはずが、自分が先走ったことでユーノも巻き込んで、花火もよく見えない裏山にいる。 スバルが頭を垂れていると、ユーノはそっとその前に身をかがめた。 「……ユーノさん?」 「下駄……これくらいなら、直せるかも。ちょっとそこの木にもたれてて」 祭りの会場にいた時となんら変わらない優しい笑顔でそう言って、ユーノはスバルの下駄の破損部を見始めた。 本当は、ユーノも自分よりなのは達と一緒にいたかっただろうに。 スバル自身、ティアナや仲間達と離れてしまった時はあんなに気持ちが沈んだことを思うと、 途端に申し訳なく思えてきた。 「ごめんなさい、あたし……」 「僕はさ」 スバルの言葉を遮るように、ユーノが言う。 「僕は、ずっと君に会いたかった」 「え……」 トクン、と胸の奥で何かが弾んだ。 「え? あ、あの、あの、ユーノさん!?」 「エリオくんやキャロちゃんや、ランスターさんともね」 「は……ははは、そ、そうですか」 よく分からないが、ひどく肩透かしなことを言われた気分だった。 スバルの様子には気付いた風も無く、ユーノは続ける。 「なのはからさ。君たちの事をずっと聞かされてたから」 機動六課が出来てからの約一年、なのははユーノに会う度に、嬉しそうに近況を語った。 その中で印象深かったのは、やはり彼女らが育てていた4人の新人達のことだった。 「君たちの話をする時のなのはは、本当にイキイキしてたよ。 嬉しいことを話す時は笑いながら、辛い事の時は泣きそうになりながらさ」 「なのはさんが……」 「そうして聞いてるうちに、僕まですっかり感情移入しちゃって。 勝手な話かもしれないけど、なのはが育てた……いや、なのはと一緒に歩んできた君達のことが、 他人とは思えなくなっちゃって」 機会があればいつか会ってみたい。そう思いながら1年以上が過ぎた。 だから今回の海鳴行きは、ユーノにとっても願ってもないことだったのだ。 「エリオくんもキャロちゃんも、話してみると本当にいい子だったし。 ランスターさんとはまだ話せてないけど……最初に見たときよりずっといい顔になってた」 鼻緒の固定が終わって、ユーノはゆっくりと立ち上がる。 「それに、困ってる人を見てすぐに行動に移せる君は……技術や経歴なんて関係なく、 僕が知ってるなのはにすごく近いと思ったよ」 「あ……」 見上げる位置に来たユーノの顔から、スバルは目が離せなかった。 (さっきと同じ……ドキドキして、止まらない) この気持ちを整理する方法をスバルは知らない。 原因がユーノにあることは、ユーノの優しさが心を乱していることは、なんとなく分かっているのだが。 しかし、まだまだ続く花火の音で麻痺した頭で、なんとか思いついたことを一つ実行してみる。 「ユーノさん……あたし、姉がいるんです!」 突然のスバルの言葉に、ユーノは首をかしげる。 「それと、最近妹達がいっぱい増えたんです。姉か妹か微妙な子も何人かいるけど、多分妹です!」 「う、うん?」 「だからですね、あの……姓だと、ややこしいと思うので……」 「あ……」 「……名前を、呼んでください」 最後の方はようやく搾り出すようにして、何とか言い切った。 ユーノは一瞬虚を突かれたような顔をして、そして優しく微笑みを返す。 「分かったよ、スバル」 スバル。 その名がユーノの口から出た瞬間、スバルの身体を先程よりも強い衝撃が駆け巡った。 心を落ち着けるどころか、逆効果だ。ユーノの声で一瞬頭がいっぱいになってしまった。 「あ、ああああ、そ、そうだユーノさん、そろそろなのはさんたちと合流しないと! きっと心配してますよ!」 「え? うん」 そうなると今度は急に気恥ずかしくなってきて。 無理矢理普段の能天気な自分をトレースして、スバルはなんとかその場を誤魔化そうと試みる。 「ゲタ直してくれてありがとうございます! そ、それじゃ行きましょう!!」 と、スバルが歩き始めようとした時、スルッと衣擦れの音がした。 「へ?」 「あ、帯…………!?」 スバルの正面にいたユーノが、急に狼狽する。 スバルはその様子をじっと見て、辺りを見回し、何気なく下を見て、ようやく事態に気付いた。 「……!?」 解けて地面に落ちた帯。そして肌蹴た浴衣の隙間からのぞく白い素肌。 それまで締め付けられていた胸に押し上げられた浴衣はひどく頼りなく、 かろうじて先端が隠せているかどうか。 おそらく、これまでの捕り物ですでに着崩れていたのだろう。 それが寄りかかっていた木に引っかかって、こんなことになったらしい。 「あ……ぁ」 みるみる顔を真っ赤に染めていくスバル。無理もない、浴衣の下は…… さらに悪いことに、混乱しているスバルがもう一歩足を進めると。 浴衣の方も木の枝に引っかかっていたらしく、スバルの身体からするりと離れていった。 「き……」 「み、見てない! 見てないから!」 「キャアァァーーーーーーーーーーーーーー!!!」 「なぁにやってんだテメーはぁぁーーーーー!!?」 スバルの渾身の悲鳴と、どこからとも無く飛んできてユーノの頭に直撃したラケーテンハンマー。 そして花火大会の最後の1発の音は、全く同時だった。 ※ ユーノが目を覚ましたのは、翌日の朝だった。 朝から精一杯鳴く蝉の声に、ここが海鳴であることを悟る。 まだズキズキする頭を抑えて豪奢なベッドから上体を起こすと、 その脇には不自然に明るい笑顔の主従が座っていた。 「い、いやー、悪かったな。いきなり吹っ飛ばして」 「でもあの光景見たらヴィータやなくてもああするわな~。うん、しゃーないって」 「……」 ヴィータとはやての様子を見て、なんとなく状況を理解する。 「ここ……確かアリサの家だよね? 皆で泊めてもらうことになってたの?」 「なのはちゃん達やフェイトちゃん達は自分の家に帰ったけどな。 ただ昨日はいろいろゴタゴタしたから、ユーノくんもこっちに運んだんよ」 「ああ……ありがとう、悪かったね。 アリサにも挨拶しないと」 結局、スリの警察への引渡しも、持ち主が分かる財布の返却も、気絶したユーノの回収も。 いち早く駆けつけたはやて達のグループがやってくれたらしい。 スバルがスリを捕まえた直後。 一瞬だけスバルの念話を受けたはやては、即座にシャマルにスバルの居所を探索させた。 そして迷わず封時結界を張って、ヴィータと共にスバルのもとへ向かっていたのだった。 観光で訪れた管理外世界での過度な魔法の使用は、後々厳重注意される。 まだまだ管理局内で昇進し、 人脈を固めなければならないはやてとしては小さな傷も残すべきではないだろうに。 だがそれははやてにとって、可愛い部下の安全とは比べるべくもない事なのだ。 「まぁそういうわけで、行ってみたらユーノくんとスバルがまさかあんなことになっとるやなんてな~」 「マジにどういう経緯でアレだったんだよ。 答えによっちゃもう一発行くぞ?」 「じ、事故だよ! 大体……」 ヴィータに反論しながら、ユーノははやてをじろりと睨む。 「はやてでしょ? スバルの浴衣、あんな風に着せたの」 「あははは……いやー、ウソは言ってへんよ?」 『浴衣着るときは下着付けたらあかんねんでー』 確かに本来の着方ではあるのだが、今時そう言われてそのまま実行する女の子などいないだろう。 躊躇するティアナ達に、いかにもそれが普通とばかりに着せるはやての姿が、ユーノの脳裏に浮かんだ。 それを真に受けたスバルの姿も。 「よくまぁ懲りずに……僕とフェイトに初めて浴衣着せた時にもそんなこと言って、 大変なことになったじゃないか!?」 「そういやそういうことも……へへっ」 「悲劇は繰り返すんやね~」 「笑い事じゃないよ!? 絶対嫌われたってスバルに!」 「あー、それに関しちゃ心配いらねーと思うぞ?」 ヴィータがそう言って指差した先は、開きっぱなしのドア。 どういう意味か分からず、ユーノは目を凝らす。 そして気付いた。ドアの向こうからチラチラとはみ出している、短い青い髪の束。 それはつい昨日見た覚えのある髪飾りで括られていた。 「昨日まで“ナカジマ一等陸士”やったんが“スバル”やって。 なんか知らんうちに、えらい仲良くなったみたいやん?」 「……まぁ、ね」 楽しくて仕方ない様子でニヤリと笑うはやてに、ユーノも息をつきながら答える。 「ところでな? 昨日はあんなんやったから、リベンジっちゅうことで。 今日もお祭りやっとるから、今度こそ皆で行こか、って話が出とるんやけど?」 言われて、ユーノは思案する。元々休みは2日間とってあることだし…… 昨日はすぐに別れてしまったエリオやキャロ、それにまだ会っていないティアナと話す時間も作りたい。 そして、ドアの奥からそろりと顔を出してきたあの少女。 彼女と一緒にちゃんと花火を見てみたい……そう思った。 だからユーノはふらりと立ち上がると、ドアの方へと歩いていく。 スバルは一瞬ドアの向こうでギクリと飛び上がったようだが、そっと姿を現した。 「……スバル」 「ユーノさん……」 「えっと……昨日はなんかごめんね、いろいろ。それで……良かったらさ」 スバルは少し赤みの差した顔で、しかし目を逸らすことなくユーノの言葉をじっと待つ。 なんだか少し大人びて見えるのは、昨日とは違う浴衣と髪型のせいだけだろうか? 少女の変化に少し心が揺れるのを感じながら、ユーノは言った。 「また一緒に、お祭りに行こうか」 「……はい!!」 よく晴れた真夏の朝。天真爛漫な笑顔は、何かの始まりを予感させていた。 〈了〉 91スレ SS はやて スバル・ナカジマ ユースバ ユーノ・スクライア ラッキースケベ ヴィータ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/115.html
「ルーテシアの花冠」 作者:ID 44fJlxbC 本文 青々と茂る草原に響く少年と少女の声。 赤毛の少年と、桃色の髪の少女、そして紫の髪の少女が目指す場所を見つけて走って行く。 「エリオ! キャロ! 転ばないように気をつけてね!」 後ろからかけられた女性の声も半分聞き流すほどにはしゃぐ三人を見て、フェイト・T・ハラオウンは「仕方ないなぁ」と言った風に苦笑する。 吹き抜ける風になびく金髪に、栗色の髪が並んでいる。 その傍らには、二人の娘である小さな女の子。 「エリオおにいちゃんも、キャロおねえちゃんも嬉しそう」 「うん、本当に」 「そうだね、ずっと逢いたかっただろうし」 なのはとフェイトとヴィヴィオの前で久方ぶりの再会を存分に楽しむ3人の子供達。 エリオ・モンデュアル、キャロ・ル・ルシエ、そしてルーテシア・アルピーノ。 JS事件で出会い、そして今は心を通わせた少年少女。 無人の管理世界らしい、豊かな自然の中で彼等の姿は良く栄える。 「……こうして見てるだけなら、良い世界なんだけどね」 荷物を持って、二人の間にいた青年がポツリを呟いた。 なのはもフェイトも、青年のユーノ・スクライアの言葉に思うところがあるのだろう。少しばかり憂いを浮かべる。 「保護観察が終われば、他の管理世界にも住めるようになるんだけど……」 「はやく、何とかしてあげたいよね」 「うん」 母親と、従者がいるとは言え他に誰もいない世界に子供を閉じこめるというのは彼等としても納得できない。 だが、処罰は上が決めることであり彼等がそれを左右する事は出来ない。 せめて、こんな風に職権を乱用して視察という名目で、子供達を連れてくるぐらいだ。 いや……今は、煩わしい事を考えるのは止めよう。 あの子達のこの一時の為に自分たちは此所まで来たのだから。 木陰になのはとフェイトとユーノは腰を下ろす。 ヴィヴィオは、さの三人に混じって遊んでいた。 ここにはクラナガンには無い、瑞々しさに溢れている。それがヴィヴィオには珍しく、そして気心の知れた兄や姉と一緒である事が嬉しいのだろう。 少しだけ、ルーテシアは戸惑っていたようだが、今ではそれも忘れて年相応の子供らしい表情をしていた。 しばらく、そうして子供達を見守っていたフェイトだったが、ふと大きな欠伸を漏らす。 「フェイト、眠いの?」 「ん……最近、少し眠りが浅くて」 「なら、休んでなよ。子供達は僕らが見てるから」 ここで、いつものフェイトならば意地を張るだろうが、木々から漏れる暖かい日差しがそれを許さなかった。 耐え難い睡魔に、フェイトはあっさりと白旗を挙げる。 「うん、それじゃぁ。少し寝させてもらうね」 「うん、お休みフェイト」 ユーノがそう言うと、フェイトはユーノの肩に頭を預けて静かに寝息を立て始めた。 無防備なフェイトの寝顔に、ユーノは優しい笑みを浮かべて見守る。 そして、フェイトの反対側に居たなのはも、彼女の顔を覗き込んだ。 「フェイトちゃん、寝ちゃったの?」 「うん。よっぽど疲れてたみたい」 「……そっか」 すると、なのははフェイトがそうしているように、ユーノにそっと寄り添った。 「なのは?」 「私も、少し寝ようかな」 「……ん、判った」 なのははユーノの腕に、自分の腕を絡ませるとゆっくりと目を閉じる。 自分の全てを、ユーノに預けきって安心したように。 まるで、草原で戯れる子供達と変わらないような顔で、なのはは微睡みを迎え入れていった。 それから、どれほど時間が経っただろうか。 ユーノが見守る先で、何かをしていた子供達がこちらに走ってくる。 「パパ! ママ!」 走るたびに揺れる柔らかなブロンドに花の冠を載せているヴィヴィオ。 その後ろに居るエリオとキャロとルーテシア。 「ヴィヴィオ? ―――うわっと」 まっすぐに、自分に飛び込んできた愛娘。 だが、ユーノの両脇で眠る二人の母は余程疲れているのだろうか、それでも目を覚ます気配が無い。 「ママ、寝ちゃったの?」 「うん。ママは疲れているから、静かにしてあげてね? ヴィヴィオ」 「うん!」 そう言うと、ヴィヴィオは手に持っていた花の冠をユーノの頭に載せる。 「えへへ、パパあげるね!」 「お花の冠かい? 上手に出来たじゃないか」 「キャロおねえちゃんとエリオおにいちゃんとルーテシアおねえちゃんに手伝って貰ったの!」 「手伝っただなんて……殆ど、キャロとルーが創ったものですから」 挑戦しては見たが、結局花を散らすだけに終わってしまったのだろう、エリオが照れくさそうに言う。 「キャロもルーテシアも器用なんだね」 「前に、フェイトさんに教えて貰ったんです」 「わたしは、キャロの言うとおりにやっただけ」 子供達の服には幾つもの花びらが付いていた。 色とりどりの花で着飾った彼等を見て、ユーノは思わず顔を綻ばせる。 ヴィヴィオは、眠っているなのはとフェイトにも冠を載せた。 「ママ、喜んでくれるかな?」 「皆で造ったんだから、絶対に喜んでくれるよ」 ユーノはヴィヴィオの頭を撫でる。 気持ちよさそうに目を細めるヴィヴィオ。 その様子をみて、笑い逢うエリオ、キャロ、ルーテシア。 風が、穏やかな風がそんな彼等を包み込むように過ぎ去って行く。 その日、日が沈むまで、そして日が沈んでからも彼等の笑顔が絶えることはなかった。 風が、穏やかな風がそんな彼等を包み込むように過ぎ去って行く。 太陽から月に、空の象徴が変わる狭間に吹く風。 それが、彼女たちを揺り起こす。 「……ん」 「……ふぁ」 「あ、起きた?」 「ママ、おはよう!」 日が陰り初めて、ようやく目を覚ました二人。 隣にいた青年と、目の前の子供達の姿を認めて寝ぼけ眼ながらもにっこりと笑う。 「おはよう、みんな」 ふと、お互いに目を向けお互いに眠る前とは違うモノを見つけた。 「なのは、それ」 「フェイトちゃんも」 顔を見合わせてから、ニコニコと笑うヴィヴィオと照れているようなエリオ、キャロ、ルーテシアの方を見る。 「もしかして、皆が?」 「うん! そうだよ! パパにもあげたの!」 言われてユーノを見れば、確かに彼にも冠があった。 流れようなハニーブロンドに、その花が余りにも華やかすぎて二人は思わず吹き出してしまう。 すると、ユーノが不思議そうな顔をして訪ねる。 「どうしたの? 二人とも」 「だって、ユーノ君すっごく似合ってるんだもん」 「綺麗過ぎて、ちょっと妬けちゃうかな」 それが、まるで女性のように見えるのだと言われているようで。そして二人が正にそのつもりで言っているのだと判ってユーノは渋面する。 この年になって、声変わりもなく女性に見られることは密かなコンプレックスだったりするのだが。 なのはとフェイトは、少し意地悪そうに子供達の方を向く。 「ねぇ、皆もそう思うよね?」 「うん! パパ、綺麗だよ?」 なんのためらいも無く、無邪気に言うヴィヴィオ。 すると、子供三人もお互いに顔を見合わせ、躊躇いがちに口を開く。 「えっと……はい」 「ユーノさん、お花がすごい似合ってます」 「……女の人にしか見えない」 最後の、ルーテシアのあんまりと言えばあんまりな言葉にユーノはがっくりと項垂れてしまった。 「る、ルー……」 「ルーちゃん、それは……」 「パパ、どうしたの?」 エリオとキャロはルーテシアのストレートな物言いに何か言いたげにし、ヴィヴィオはその意味を理解せず。 なのはとフェイトは思わず苦笑する。 そんな時、彼等に近づく人影があった。 誰、と確認するまでもない。ルーテシアの「母」メガーヌである。 「みなさん、夕食ができたのだけれど。食べていきませんか?」 「え、良いんですか?」 「ええ、今日はルーテシアのお相手もしていただきましたし。大したおもてなしはできませんが」 皆が、どうするかと思案しているとルーテシアがエリオとキャロの服の袖を掴んだ。 言葉こそ発しないが、その姿が夕食を共にしたいという事を雄弁に語っている。 それを受けて、二人がなのはとフェイトの方を遠慮がちに見る。 「……それじゃぁ、お言葉に甘えちゃおうか」 「うん、そうだね」 二人の言葉に、エリオとキャロとルーテシアはパッと顔を輝かせる。 「それでは、家においでください」 「はーい」 子供達は、大人達に先んじて草原を歩いて行く。 なのはとフェイトも立ち上がり、未だにちょっとだけ拗ねているユーノに手をさしのべた。 「ふふっ、ごめんねユーノ君」 「……良いんだ、どうせこの年になっても声変わりしてないし、男なのに髪を伸ばしてるし」 「そんな事、気にしなくて良いのに」 「そうだよ、だって」 「うん、だって」 「私たちは、貴方がどれだけ素敵な男性-ヒト-なのか識ってるんだから」 全く同時に、ユニゾンで響いた二人の声。 ユーノはそれに驚いたような、照れくさいようなそんな表情と共に顔を紅くする。 そうして、二人の手を取って立ち上がった。 彼等の視線の先で、ルーテシアがおずおずとメガーヌに花冠を差し出す姿が見える。 どこにでもある、当たり前の姿。 花の冠を戴いた大人達。 花の服に包まれた子供達。 手を取り合って、家に帰る彼等を一番星がいつまでも見守っていた。 12スレ SS なのは エリオ キャロ フェイト メガーヌ ユーノ ルーテシア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/279.html
ティアナの憂鬱 ◆kd.2f.1cKc 女の子にとって、甘い物は別腹などという言葉がある。 それは真っ赤な嘘である。 後で結果はきちんと返ってくる。そして大抵、その時になって慌てる。 だが、往々にして不公平な事に、食べても太らない体質の人間と言うのは存在する。 痩せの大食いと言う言葉も存在する。 そしてさらに不公平な事に、後天的にそうなった人間がいる。 その一例が、コンビの相方曰く“人間ポリバケツ”こと、スバル・ナカジマであった。 6課解散直前の、ある非番の日。 スバルは、行きつけにしているアイスクリームチェーンの店に足を運んだ。 新作が発売されるという情報を聞きつけての来店だった。 なんでも、第97管理外世界を原産とする植物の実を使った物らしく、 一見は抹茶と似たような緑色をしていた。 もっとも実際に買うのは、例によって例の如く、聳え立つ10段重ねの巨塔。 新作のフレーバーはその1ブロックしかない。 これを嬉しそうに舐めながら、スバルは歩道を歩いていた。 「にしても、ティアも来れば良かったのに」 と、スバルは呟く。 既に管理局内にその名の轟く凸凹コンビだったが、 意外にも、朝は真面目なティアナのほうが弱く、天然のスバルの方が早い。 休日ともなれば、なおさらだった。 もちろんお構いなし天災少女、同室のティアナを叩き起こし街へ遊びに行こうと騒いだが、 ティアナはベッドの中でうずくまって出てこない。 そして、スバルが「新作アイスが食べたい」と、本心を打ち明けたとき、 「うっさい殺すぞこっちは石炭食っても燃焼するような身体じゃねぇんだ一般人巻き込むな1人で行って来い」 …………正直、この時のティアナの気迫なら、それだけでなのはに勝てるような気がした。 「お腹でも痛かったのかな……でも、それならそうって言ってくれれば良いのに」 自分に心配をかけまいとしたのだろうか。スバルはそう思った。 「相変わらず、ティアってば素直じゃないなー」 そんな事を考え、浮かれながら歩いていたのが悪かった。 ドンッ 「ふぁっ!?」 「うわっ!?」 突然、スバルの行く手を、何かが遮った。当然、スバルはそれにぶつかる。 想定外の衝撃に、さしものスバルも姿勢を崩し、後ろに尻餅をついてしまった。 「いたーい!」 思わず、子供のような声を上げてしまう。 「っ、す、すみません! 少し考え事をしていて……」 ぶつかった相手のものか、だいぶキーは高いが、恐らく男性の声が、スバルにかけられる。 「あ、こ、こっちこそ、よそ見していました! す、すみません!」 スバルは、相手の男性が手を差し出しているのにも気付かず、 飛び上がるように立ち上がり、頭を深々と下げる。 「って、あれ?」 頭を上げると、そこにいたのは、男性にしてはあまり身長の高くない、 しかし端正な顔立ちと、後ろに縛ったハニーブロンドの長髪を持つ、青年の姿だった。 どこかで見覚えがある。 はて……スバルは左手で右腕の肘を押さえつつ、右手の人差し指を自分のおでこに当て、 クロック周波数8MHzとティアナに揶揄される頭をフル稼働させる。 「あっ、スクライア! ユーノ・スクライア司書長ですね!? 無限書庫の」 その情報に行き当たり、スバルは声を上げた。 「そうだけど……君は?」 ユーノは、自分の名前を言い当てられて、キョトンと目を円くしながら、スバルに聞き返してくる。 「あっ……と、あたしは、機動6課、スターズ分隊所属、スバル・ナカジマです」 スバルは少し顔を赤らめて、気恥ずかしそうに言う。 「ああ……なのはから聞いてるよ。元気な教え子がいる、ってね」 ユーノは穏やかに微笑みながら、そう言った。 「あははは……」 照れ隠しに苦笑するスバルだが、そこでふと気付く。 「って、あ。服が……」 ユーノは、パーカーにコットンパンツという地味かつラフな出で立ちだったが、 そのパーカーの胸元に、べっとりと染みが出来上がっている。 「いや、それは君も」 ユーノは、スバルの胸元を指差す。 お子様な頭脳に反比例して立派に育っている部分を覆う場所は、 とてもカラフルな染みがデカデカと出来ていた。 元は何だったのかは考えるまでもない。コーンだけが、むなしく歩道を転がっている。 「あ、あの、すみません、ごめんなさいっ」 「い、いや、僕は良いよ……下までは染みてないし」 ユーノは、むしろ自分の方が申し訳なさそうに言う。 それから、パーカーを脱ぎ、カッターシャツ姿になった。 「でも、スバルは脱げば良いってわけにも行かないな……」 言うと、ユーノは辺りを見回す。 「スバル、これから予定とかあるの?」 ユーノは視線をスバルに戻すと、そう訊ねた。 「いえ、別に。今日は1日暇な予定でしたから」 スバルは、キョトン、としつつ、ユーノに言う。 「それじゃあ、悪いけど、ちょっと付き合ってくれるかな?」 「?」 ――――――――――――――――――――――――― 「えっ、えっと、あ、あたしの方が悪かったのに、これは悪いですよ」 スバルが連れて来られたのは、まぁそれとしては特に変哲もないブティック。 「いや、前を見ていなかったのは僕も同じだし。 それにスバルのその格好じゃ、風邪引くよ?」 ユーノの言う通り、この寒空だというのにスバルはへそ出しルック。 色気というより活動性優先ではあったが、 あまり重ね着していたわけでもなく、ジャケットも前を空けていた。 「あ、あたしはこれぐらいじゃ風邪ひかない身体なんです」 「そう言わないの。それに、寮に帰るまでそのままって言うわけには行かないでしょ?」 スバルはそう言うが、ユーノは苦笑混じりに言い返す。 「まぁ、それは……」 「1着ぐらい、奢らせてよ。 最近は給料の使い道も、なくってさ」 苦笑しながら言うユーノに、スバルはしぶしぶ、付き従った。 付き従った、ものの…… 「このあたりなんかどうかな……」 ユーノがスバルを引っ張ってきたのは、ロングスカートのワンピースの並ぶ棚。 そして、彼が手に取ったのは、カーディガンがセットになった、白のワンピース。 「スバル、サイズは?」 「大丈夫です!」 思わず、反射的にそう返事してから、 「でも、こんなの、あ、あたしの柄じゃありませんって」 と、困惑気に言う。 「そんなことないと思うけどな」 ────う、可愛い。 困り顔のユーノを見て、不謹慎にも、スバルはそう思ってしまった。 年上に向かって失礼だとは思ったが、こう、小動物チックなイメージが、愛らしく見える。 「スバルが嫌ならしょうがないか……」 「あっ、あの……」 スバルは、ユーノに申し訳ないというか、 いたたまれなくなったような気がして、思わず、声を上げていた。 「な、なに!?」 突然のスバルの声に、ユーノはドキリとして、スバルを見て目を円くする。 「い、いえその……」 ユーノを制したものの、続けて何を言うべきか何も考えていなかった8MHzは、 思わず視線を逸らしてしまってから、少しどもった後、 「や、やっぱり着てきます」 と、ユーノがハンガーに戻しかけていた、ワンピースを手に取った。 「そ、そう?」 ユーノはいくらか怪訝そうに思いつつ、試着室に向かうスバルを見送った。 ────な、なんだろう、この感じ…… 試着室に収まったスバルは、初めて覚えるその感覚に、戸惑いを覚えていた。 ────胸の奥がキューってする……も、もしかして、これって…… 恋、という言葉が頭をよぎる。 途端、スバルの顔が、真っ赤に染まり、比喩ではなく、耳から湯気を噴出した。 ────落ち着け、落ち着け、相手は本局の、無限司書の司書長。 それに、確か……そ、そう、スクライア司書長って、なのはさんの彼氏とか言うはず。 なのはの相手に横恋慕なんてとんでもない! スバルは、胸に手をあてて、 ドキドキとはしないが確実に噴流圧力の上がっている心臓を抑えるようにしつつ、大きく溜息をついた。 ────でも、それって所詮酢飯情報だし。 それに、今日はなのはさんだって非番、お互いのたまの休日に、一緒じゃないってのも……うん…… 酢飯情報、とは、ティアナが名付けた“根も葉もない噂”の隠語である。 シャーリーがそう言うゴシップ好きな性格をしているため、シャーリー→シャリ→酢飯と捻られたのだ。 ちなみに、エロ関係は『キ-84情報』とも言う。 この隠語は、意外にもスバルがつけたものだ。由来は、某部隊長こと管理局史上最大のセクハラ女王である。 ────少しだけ、そう少しだけなら、期待しても良いよね? ふと、手元に視線を移す。ユーノが見繕ってくれた白いワンピース。 カーディガンは暖色系だが、色は白で、青のアクセントラインが入っている。このカラーリングは…… 「あ」 ────そっか…………うん、だから、ほんの少しだけだよ なんとなく、ツンデレの心境が少しだけ解った、スバルだった。 軽く溜息をついてから、来ている汚れたシャツに、手をかけた。 一方、試着室の外のユーノは、ユニセックス向きのパーカーを見繕っていた。 ユーノの体格であれば、女性用のサイズでも、LL以上ならなんとか入らないでもない。 そう思うと、少しむなしくもなったが、暇つぶしだと思って、諦めた。 「それにしても、遅いな……」 10分ぐらいは優に経っただろうか。女性の着替えは時間がかかることはわかっているが、 スバルがここまで着ていた衣装からして、そんなにかかるものだろうか? と、首を捻る。 「お待たせしましたー」 ちょうど、その時に、ユーノの背後から、スバルが声をかけてきた。 「おっ」 ユーノは振り返る。 スバルは見事に、ワンピースとカーディガンを着こなしていた。バンダナも外している。 髪が短いのが若干ミスマッチ気味だが、悪くはない。 「どうでしょうか?」 スバルは、フレアのスカートを舞い上がらせるように、くるりと1回転した。 ────こ、これは…… ユーノは、一瞬、顔を紅くして、見とれかけた。 「やっぱ、似合ってないですかね」 あはは、と、スバルは顔を紅くし、苦笑する。 「そんなことないよ。よく似合ってる。可愛いよ」 ユーノは、慌てて笑顔を取り繕い、そう言った。 ただ、嘘は言っていないつもりだ。 「ほっ、ホントですか!?」 スバルは、一瞬、目を輝かせて、満面の笑顔になり、そう言った。 「うん、お世辞じゃないよ。似合ってる」 「あ、ありがとうございます」 えへへ、と、今度は照れ隠しの苦笑になり、頬を紅く染めて、そう言った。 「それじゃあ、すみません」 ユーノは、店員に声をかける。 「これ、そのまま貰えますか? それと汚れ物は、袋詰めで」 そう言って、電子キャッシュのカードを差し出す。 「畏まりました」 店員は、そう言って、POS端末のところへと、2人を先導する。 「でも、ホントに良いんですか?」 今更、という感じで、スバルはユーノの顔を覗き込み、そう言った。 「いいから、気にしないで」 ユーノは苦笑しつつ、そう言った。 「ありがとうございます」 スバルは、はにかむように微笑みながら、そう言った。 店員から、紙袋に入った、ここまで着ていた服を受け取る。 「それじゃあ、今度は、男物の店に行かないと、ですね」 「え?」 ブティックを出たところで、スバルは、ユーノに向かって言う。 ユーノは、キョトンとして、聞き返した。 「お返しです、お返し」 「いや、そんなのは良いよ、僕は、これでも平気だし」 悪戯っぽく言うスバルに、ユーノは戸惑い、困惑気に苦笑して手を振る。 「いいからいいから、あたしも、あんまし給料の使い道ないんです。 だから、1着ぐらい、奢らせてください」 ユーノと同じ言い回しで、立てた人差し指を添えて、スバルは悪戯っぽくウィンクした。 「え、いや、その」 「ほらほら、レッツゴーです」 戸惑うユーノを、スバルは手をとって引っ張り、強引に歩き出した。 しかし──── このブティックは、機動6課メンバー女性陣の大半の行きつけであった。 もちろん、シャーリーや、はやても含めてである。 機動6課の女性で、この店と縁がないのは、スバルと、シグナムぐらいだった。 ティアナも、ここに来る時は、スバルが飽きて駄々を捏ねないよう、1人で来るか、 アイスクリームを買いに行かせてその間に選ぶかしていた。 だから、スバルは、その事実を、うろ覚えにしか記憶していなかった。 ――――――――――――――――――――――――― 「それで、この大惨事っちゅうわけやな」 腕を組んで、騎士甲冑姿のはやては、やれやれと溜息をついた。 廃棄区画の9パート程が、 まるで核爆弾の直撃にでもあったかのように完全に更地になっている。 否、その場に居合わせた者からすれば、核爆発の方がまだしも生易しかっただろう。 事実、キャロと、それからトラウマの再燃したフェイトが、 寄り添ってうずくまり、まだガタガタ震えている。 つまり、俗に言う“魔王様の「ちょっと頭冷やそうか」”である。 ただ、これまでの同種の事件とは、若干経緯が違った。 最終的に頭冷やされて、爆心地と思しき点でアスファルトにメリ込んでいるのは、魔王様の方だったのだ。 そしてそれを、スバルが必死に「ごめんなさい、ごめんなさい」と言いながら、手で掘り返している。 「スターライトブレイカー……スバルが、見よう見まねでスターライトブレイカー……」 ティアナと、ヴィータは、呆然として、そう呟きを繰り返している。 「超えられよったなぁ、なのはちゃん」 はっ、と溜息をついて、はやては肩をすくめた。 「管理局の白い悪魔、2代目襲名っちゅうことか」 次の非番。────なのは入院中。 本当に、神様は不公平だ。ティアナはそう、実感していた。 いや、スバルがSLBを撃った事は、この際どうでも良い。 戦闘機人だけに、それに耐える身体と、魔力の供給力があっただけの事だ。 しかし……いや、これも、スバルが戦闘機人であるが故のモノではあるのだが…… これを認めることは、女性としての沽券に関わる。 ついでにスカートやらズボンのホックにも関わる。 「ねーねー、ティアー、遊びに行こうよー。 アイスの新作が出たんだよー、食べに行こうよー」 「うっさい殺すぞこっちはC重油飲んでも燃焼するような身体じゃねぇんだ一般人巻き込むな1人で行って来い」 26スレ SS スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター ユースバ ユーノxスバル ユーノ・スクライア 一部ギャグ 八神はやて
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/265.html
Non-derelict LgkSJuGP 国賓や諸外国からの来賓、高級官僚も宿泊する高級ホテル、インターオーシャニックホテルクラナガン。 そこに一つの影が飛び込んでいった。それはスーツ姿のギンガ・ナカジマだった。 群青の髪はアップに纏め上げられ、スレンダーな体躯と相俟って、 彼女は17歳とは思えぬ大人らしさを振りまいていた。 ようやくギンガは荘厳な扉を潜り抜けて、薄暗い、しかし暖色の照明に彩られたラウンジに踏み込んだ。 切れ切れの荒い息を抑え、腕時計を確認してから、 早く行こうと顔を上げると、そのまま口を空けて茫然と凍りついた。 ギンガは屹然と空を凌ぐ吹き抜けの天井と広濶な空間に一瞬にして圧倒されていたのだった。 冷静になってから気付いたホテルの巨大さはギンガを驚愕させ、重い心をさらに重くさせた。 磨き抜かれた黒大理石の床が天井の煌びやかな照明を写す閑雅なロビーには、 しかし数多くの老若男女が屯し、談笑していた。 そしてその全てが典麗な様子だった。その中には著名人の顔もちらほら見えた気がした。 ――やっぱり私、場違い? ただっ広い未知の空間に一人佇むギンガにすれば、それは宇宙に投げ出されたような孤独と不安だった。 しかし、ギンガがあわあわと一人で立ち尽くしていると、 黒いスーツをぴっしりと着込んだ壮年の男性に声を掛けられた。 「ギンガ・ナカジマ様ですね?」 人の良さそうな顔で問いかけてきたのは、熟練を思わせるホテルマンだった。 「え、は、はい。そうですけど……」 おどおどして答えると、 「ユーノ・スクライア様からお連れするようにと承っております」 と言われ、ギンガはただ従順した。 最初はホテルマンの後ろを付いて歩いていただけで一杯一杯だったが、 メインバー『ウォモウニヴェルサーレ』に近づくにつれて、 段々と柔らかさを増すライトジャズのピアノがギンガの耳を誘い、心に余裕を孕ませた。 茶色の絨毯が優しく反発して踏み出す足を前に押しやった。間接照明に仰視された柱が静かに伺侯していた。 通路の脇々にはイタリアルネッサンス調の調度品や上品で重厚な木目調の円卓に、 肘掛け付きのシックな椅子が数脚。 それが何百組も整然と配置されている様子は、ホテルロビーの豪壮さとはまた違った趣があって圧巻だった。 しかし店内を支配する重厚感は、押し潰すようではなく、 落ち着いた雰囲気をもって包み込むようにギンガを迎えていた。 未だ嘗て体験したことが無い光景に、ギンガはきょろきょろと目線を泳がせてしまった。 目に入ったのは仕立てのよいスーツや高級そうなドレスに身を包んだ紳士淑女だけだった。 居た堪れなさがぐっと増した。失敗だった。見なければよかったと後悔した。 俯いて悔恨に耽っていると、急にホテルマンが立ち止まってぶつかりそうになった。 浮遊する思いから醒めて、驚き慌てて顔を上げる。 「あちらでございます」 捜していた茶色と金髪の頭が見えた。二人は円卓を囲んで談笑していた。 そして、椅子が一つ空いていた。 ホテルマンは「ではごゆっくり。失礼します」とだけ残して悠然と立ち去っていった。 チップとかは払わなくてよかったのかしら、と暫く立ち止まって考えたが、 はっと我に返ってすぐ二人のもとへ駆け寄ろうとした。 が、走り出すのはしたないと思い止どまって、淑やかに早足になるだけにした。 自分のがさつさが情けなくなって縮こまった。 しかし、悄然とした顔では失礼だと思い、気を取り直した。 最後に冷静になって、今までずっと慌てていた自分の度胸のなさを恥ずかしく思った。 「遅れてごめんなさい」 ようやく見慣れたはやての顔を見つけて、自然と安堵の溜息が漏れ出した。 はやてはグラスを円卓に置いて顔を上げた。 少ししか減っていない様子のカルーア・ミルクが刻限に遅れたギンガの心を慰めた。 到着したギンガに、はやての隣りに座る金髪の青年が組んだ足を戻して立ち上がろうとすると、 「ギンガ、よう来たな。ほら、ここに座り」 はやてがそれを左手で押し止どめて、右手で空席を引いた。 「え、でも」 「ええからええから」 ギンガがちらりと金髪の青年を見ると、中腰で止められていた彼は苦笑して席についた。 ギンガもそれに従った。 「ほい。こちらが、件のユーノ君」 「どうも、はじめまして」 はやては指を揃えて青年を指し示した。ユーノはにこりと笑って会釈した。 「で、ユーノ君。こちらが、ナンバーズ更生プログラムに参加してたギンガ」 「はじめまして」 できるだけにこやかに微笑み返した。 「えー、今日はユーノ君からギンガに頼みがあるそうで……」 はやてがユーノを横目で見上げると、次いでユーノは、自分の胸に掌を当てて自己紹介をし始めた。 「改めまして、ユーノ・スクライアです。 本日はお忙しい中、わざわざ御足労いただきまして、誠にありがとうございます」 ――彼が、無限書庫司書長のユーノ・スクライアさん。 公式には民間人扱いとはいえ実際は高官同然であるユーノを前に、ギンガは少し気持ちを引き締めた。 「これはご丁寧にどうも。ギンガ・ナカジマです。最近妹のスバルがお世話になってるそうで……」 「いえ、そんなことは。僕の好きでやってることですから」 最近スバルがユーノに師事しだしたと聞いたときは驚いたものだった。 忙しい業務を片手間にスバルの望みに応じてくれるユーノへ、感謝の念を込めながらギンガは言った。 「スクライア司書長のお噂は、はやてやスバルからかねがね伺っております。 常々お会いしたいと思っていました。なんでも、優しくて頼れる、素敵な方だと」 「ギンガ、ちょ、ちょっと、恥かしいやん!」 ね、とギンガが目配せすると、珍しくはやては狼狽して素っ頓狂な声をあげた。 「へぇ、それは嬉しいですね。僕もスバルさんから、格好よくて自慢のお姉さんだと」 意地の悪い嗤いが浮かんだ目ではやてを見遣ってから、ユーノが熱心な調子で言い始める。 「格好、いい……ですか」 ギンガはくすぐったそうに、しかし少し恥ずかし気にはにかんだ。 「ああ、すみません。格好いい、は失礼でしたかね。 しかし、とても凛々しくしっかりしてそうなご様子で、スバルさんに本当によく似ていらっしゃる。 実際にギンガさんにお会いして、スバルさんが自慢されるのもなるほどと納得するばかりです」 そんなことはないです、と笑うギンガに、ユーノも紳士然と処世して笑顔を崩さない。 一向に前に進まない二人の応酬に、ついにはやては呆れた顔で口を挟んだ。 「こらこら、チミたち。お見合いやないんやから。二人とも私にはタメ口なのに。 いや、ギンガには私が頼んだんやけどな。 ユーノ君もいちいち言葉が堅い。 ギンガも、まぁ、今はオフなんやから、こんなのにわざわざ敬語使わんでもええんやで」 「こんなの、って酷いな、はやて。でも確かに、あまり堅いのは僕も苦手ですしね。無理にとは言いませんが」 「でも、スクライア司書長とは階級も歳も離れてますし……」 促すユーノに、ギンガはいじらしくたじろいだ。 「なにゆーとるんや。ユーノ君はこのはやてちゃんのパートナーやで。そんなん気にするたまやない」 「初対面の方を前に誤解を招く表現は慎んでくれるかな。 しかし、君と同類みたいに括られると何故か大変不愉快だ」 「どつくで?」 くすくすという忍び笑いが小さく耳に響き、はやてとユーノは口を噤んで視線を戻した。 「あ、すみません。あは、はやてと仲がいいんですね。 ふふ、いきなり呼ばれたときは驚きましたけど、いい人そうで安心しました」 楽しげに戯れ合う二人の様子を愛おしむような温かい笑みが、徐々にギンガの表情を満たしていった。 言うに事欠いて、ユーノは渋面を作って見せ、はやてと複雑な顔を見合わせた。 ギンガはそれを見て再び笑った。 「年上ですし、まだお会いして日が浅いので、敬語はこれから努力するということでお願いします。 だからもう、私に敬語は結構ですよ。その、ユーノさんに敬語を使われちゃうと恐縮しちゃいますから」 快活に笑うギンガに、ようやくユーノは強張った表情筋を崩した。 「我が儘を聞いてくれてありがとう。よろしくおねがいするよ、ギンガさん。 ああ、いや。しかし、すっかり肩が凝ったよ」 それまでの顔が不器用な笑みに見えるほど柔らかい笑みを湛えて、 ユーノはギンガと顔を見合わせて笑いあった。 しかし、二人の間でははやてが眉を顰めて膨れた面をしていた。たまりにたまったという気配だった。 「肩が凝った?ふん、肩肘張って格好付けようとするからやで。これだから男って奴は、ああ、汚い汚い。 それになんや、この対応の違いは。 いつも飲む時は私の行きつけのこじんまりした店でしめやかに飲んでたのに。 ギンガも来るし今日はユーノ君の行きつけにしようかー、ってなんやこれは、高級官僚の接待か。 ええ加減にせえよ? 私はこんな豪勢なホテルバーなんか連れて行ってもらった覚えはないで。 しかも司書長の権力まで濫用しよって」 「え、そうなの?」 顔を顰めて投げやりに愚痴るはやてに、先のホテルマンの対応を思い出しながらギンガがきょとんと聞き返す。 「ちょ、ここは仕事用だし、 司書長としての要談だからこの位の対応は当然だ、とか執拗に言い張ったのははやてじゃないか! 僕は気後れさせちゃうかもしれないからって反対したのに、 そもそも、折角だからここで飲んでみたいって君が強引に……」 ユーノはさらに抗弁しようとしたが、いっそう大きくなったくすくすという笑い声に気付いてしまったら、押し黙るほかはなかった。 20スレ SS ギンガ・ナカジマ ユーノ・スクライア 八神はやて
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/300.html
甘い生活? 1レスもの oEM244di 「……おとーたま、まだ帰ってこない?」 リインフォース・アインス・スクライアがキッチンで洗い物をしていた時、 入り口に小さな熊のぬいぐるみを抱えた愛娘が眠そうな眼をして顔を覗かせた。 「お父様はもうすぐ帰ってきますよ、ベクトラ。だからあなたはいい子にしてベッドにお入りなさい」 「すぐ、帰って来ゆ?」 アインスは手を拭いて、そのユーノに似た面立ちの少女へ歩み寄りそっと抱きしめる。 「ええ。でもそんな格好でお部屋の外にいて夜更かしをしているとお風邪を引いてしまいますよ。 そうしたらお父様も悲しみます。だから、ね」 「おとーたまが悲しいと“べくとや”も悲しいから寝ゆ」 ベクトラは小さなあくびをするとアインスの肩にもたれて目を閉じた。 「あらあら」 アインスはとても寝付きの良い娘に苦笑するとそのままベクトラを抱え上げてベクトラの部屋へと運んでいった。 アインスはまだ、少女には大きすぎるベッドに彼女を寝かせると、熊の模様が描かれたかけ布団を肩までかけて、ベクトラの銀髪のかかったおでこをかきあげて軽くキスをした。 『良い夢をご覧なさい、ベクトラ』とつぶやいて灯りを消し、アインスはベクトラの部屋を後にした。 ――私は今、幸せです、ユーノ。 彼女は子供部屋の前でしみじみと幸せをかみしめていた。 ――ただの管制人格のはずだった私が人として貴方と一緒になれ、そして貴方との間に子供まで授かり……。 ふと、彼女は我が家へ近づいてくるある気配に気がついて玄関へと走る。 がちゃりと音を立てて開く玄関。その先に立っていたのは軽く息を弾ませたユーノだった。 「お帰りなさいませ、ユーノ」 「ただいま、アインス。また、気配わかっちゃった?」 「はい、あなたですから当然です」 そういってユーノの肩に手をかけて軽くキスをするアインス。 こつんと額同士を当てて微笑むユーノとアインス。 「ところでベクトラは? ちゃんと寝てる?」 「はい、先程までお父様を待っていましたが、夜更かししていたらお父様が悲しみますよといったらすぐに」 「そうか……、ところで、晩ご飯は? それともお風呂が先でいいのかな?」 「どちらも準備出来ておりますのでお好きな方で構いません」 「あ、それなら、アインス、君がいいんだけど? ダメ?」 「あなた? バカ……」 アインスはそういってから瞳を閉じた。 次に目を開いたアインスの目の前に広がっていたのは常夜灯の淡い光に照らされたいつもの遊乃堂2階の彼女の 部屋の天井だった。 ……夢? そうですね。あのような光景、夢でしかあり得ません。 私のような存在が主ユーノの伴侶として家庭を築くなどとは。 ましてや我が主と子までなすなどという到底あり得ません。 せめて眠りの中でだけでも幸せな夢を……? いいえ、この生活が今の私にとっての一番の幸せ。主ユーノのおそばにいられる毎日、それこそが。 ではどうしてこのような夢を見てしまったのでしょうか? ……わかりません。 とにかく、明日も朝早くからたくさんのお仕事が待っています、主ユーノのおそばで。 だからもう、今晩は寝てしまいましょう。 そしたらまた、あのような私には分不相応な夢を見ることが出来るのでしょうか? 私のような存在でも……。 そうして再び眠りへと落ちていった彼女がまた、幸せな夢を見られたかどうかは彼女しか知らない。 そして…… ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』―― いつも静かな古書店はやはり今朝も穏やかでゆったりと時が流れていた。 そして今朝もリインフォース・アインスはいつもの黒を基調としたメイド服を着て遊乃堂に出て、本の整理や、 掃除……そんな仕事を黙々とこなしていく。今ここに、ユーノのそばにいられる幸せをかみしめて…… 遊乃堂奇譚番外編「甘い生活?」了 39スレ SS ユーノ×アインス ユーノ・スクライア リインフォース・アインス
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/279.html
【フェイト・テスタロッサ】 [名前]フェイト・テスタロッサ(Fate Testarossa) [出典]魔法少女リリカルなのは [異名] [声優]水樹奈々(花咲つぼみと同じ) [性別/年齢]女性/9歳(無印時点での外見年齢) [一人称]私 [二人称]君 [三人称]あの子、あの人 「始めよう……最初で最後の本気の勝負」 第1世界ミッドチルダ南部森林地帯アルトセイム山岳近隣出身の少女魔導師。 母・プレシア・テスタロッサの願いを叶えるためにジュエルシードの探索に訪れ、なのはと対立した少女。 生まれつき高い魔力量を持っているほか、プレシアの使い魔であるリニスの教育を受け続けたため、魔法の能力は非常に高い。 母の願いを叶えるために戦い、自分の感情を押し殺して日々を生きるが、その中でなのはと出会い、彼女は変わっていく。 実は彼女は「使い魔を超える人造生命の作成と死者蘇生の研究『プロジェクトF.A.T.E』」の産物で、アリシアのクローンである。 彼女が母だと思っているプレシアは、実は事故で失った娘・アリシアが生き返るまでの気休めとしてフェイトを作ったに過ぎず、プレシア・テスタロッサは実際には彼女の本来の母ではない。少なくともプレシアの方はフェイトを失敗作と考えており、娘と同じ外見でありながら娘を再現できないフェイトには強い憎しみを持って接していた。 それを知ったフェイトは強いショックを受けて心を閉ざすも、なのはとの戦いを越えて、彼女に協力するために立ち上がり、共に事件を解決する。 その後はリンディ・ハラオウンに引き取られ、フェイト・T・ハラオウンの名前で、なのはと友達になる事に。 そこから先も物語は続くが、今ロワでは一期の参戦なので、そこから先は彼女自身詳しく知る事はない。 [外見] メガミマガジン編集部による推定身長が132cm。これはなのはとだいたい同じである。 長い金髪をリボンでツインテールに結わえており、瞳は赤い。私服もバリアジャケット同様黒を基調としたものが多い。 [性格] 母のために頑張る優しい女の子だが、その母が母なので、命令通り非情に行動している。 ジュエルシードを集めるために感情を押し殺して戦い、作中ではほぼ無口。 [他キャラとの関係] 高町なのはは同じくジュエルシードを探す者として対立していたが、最終的に友達となる。 ユーノ・スクライアもなのはの同行者として認識しており、その後は親しくなった模様。 スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、高町ヴィヴィオ、アインハルト・ストラトスなどとは無印の時点で面識はない。 [能力] 魔力量クラス≪AAA≫という高い魔力を持ち、バルディッシュを使って魔導師に変身できる。ただしランクはA'sになるまで非保有。空戦/高速機動型。虐待を受けまくっても平気な頑丈さの持ち主。 9歳の少女でありながら、格闘能力や精神力はぶっちゃけ異常なレベルとしか思えない。 記憶はアリシアのものを引き継いでいる。 以下、変身ロワにおけるネタバレを含む + 開示する フェイト・テスタロッサの本ロワにおける動向 基本情報 初登場 009 四重奏―カルテット― 最終登場 059 答えが、まったくわからない(後編) 参戦時期 一期第十話終了後 スタンス マーダー 変身回数 魔導師(2) 所持品 バルディッシュ 支給品 拡声器、双眼鏡、スタンガン 参加者関係(最終認識) キャラ名 状態 関係 呼び方 本名 初遭遇話 生死認識 白い魔導師 敵対 元の世界の敵 下の名前は知ってる? 未遭遇 生存 佐倉杏子 協力 交戦する→行動を共にする 杏子 認識済 009 四重奏―カルテット― 井坂深紅郎 敵対 交戦する ゴ・ガドル・バ 交戦する→殺害される 知らない? 謎の襲撃者 未認識 突然襲撃される(ほぼ未認識) 知らない 032 自業自得 左翔太郎 利用 利用する 認識済 039 彼らは知らない ユーノ・スクライア ユーノ 死亡 名前のみの情報 キャラ名 状態 情報 情報伝達者 園咲冴子 不明 井坂の知り合い 井坂深紅郎 照井竜 高町なのは ユーノの知り合い(元の世界で会ってはいる) ユーノ・スクライア 説明 第一回放送まで プロジェクトF・A・T・Eの技術によって生まれたアリシア・テスタロッサのクローンであり、電気の魔法を得意とするバルディッシュを扱う少女。今回はまさかの一期序盤からの参戦で読み手を大きく驚かせた。 遭遇した佐倉杏子と交戦した後に協定を持ちかけられる中、井坂深紅郎に利用されそうになる。だが杏子の助言で立ち直り、井坂が変身するウェザー・ドーパントに立ち向かおうとした瞬間、ゴ・ガドル・バの襲撃に遭う。逃げたウェザー・ドーパントを無視してガドルに立ち向かって、苦戦を強いられるが何とか勝利を収めたものの、その直後にパンスト太郎に襲われてしまい、気絶した。 杏子によって連れてこられた図書館で目覚めたフェイトは、杏子と共に左翔太郎と未来の親友であるユーノ・スクライアを利用することに。(この時点のフェイトはまだユーノのことを知らない) 途中、ユーノに疑われそうになる中、再び現れたゴ・ガドル・バと戦闘。今度は四人で力を合わせて立ち向かうも、ガドルは以前よりパワーアップをしていて徐々に追い詰められる。 そこでユーノの提案によってガドルの動きを止めた後、杏子や気絶した翔太郎と共に逃げようとする。だが、フェイトは杏子と翔太郎を先に向かわせて、単身ユーノを助ける為にガドルの元へ戻った。 既に死にかけとなっているユーノに、どうして自分達を助けてくれたのかと訪ねる。ユーノが殺し合いに乗ったフェイトを信じた理由……それは、フェイトがユーノを何度も助けてくれた、ただそれだけ。 そう言い残して息を引き取ったユーノの願いを叶える為に、フェイトはガドルに立ち向かうが現実はあまりにも無常で、ガドルの反撃を受けてしまう。 最後に彼女は心の中で謝罪をし、ユーノの後を追うようにその命を終えた。 上でも述べたように、まさかのマーダーでの登場に多くの読み手を驚かせたが、実際は対主催の力となっていたかもしれない。そしてフェイトとユーノの死は、同じマーダーである杏子にも多大な影響を与えている。 更に言うなら死者スレから最後の行動を見ていたなのはとも、フェイトは友達になることができた。願いは叶わなかったが、きっと彼女は報われたかもしれない。 称号【非情と優しさの狭間で】
https://w.atwiki.jp/kitaken/pages/35.html
FOD@武道館公演後に購入したという。 「ユーちゃん」という名前をつけていた。 ファンクラブイベントで「花子とユーちゃん、どちらをより愛していますか?」 と聞かれ「愚かな質問と言えるでしょう」と返答した。 因みに、北島はマニュアル車がお好みらしい。
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/283.html
一瞬……だけど閃光のように……! 作者:にっぷし 時空管理局は本局内にあるでっかい図書館、無限書庫。 次元世界の星々よりも多い書物が収まった小さな宇宙は今日も今日とて大忙しだ。 けれども、誰より仕事をこなす青年が、いついかなる時も仕事に励んでいるとは限らない。 都合四徹をこなした我等が司書長ユーノ=スクライアは、司書長室で仮眠を取っていた。 ソファーで眠るその身体に、紅葉のような小さな魔の手が迫っているとも知らずに―― 司書長室の扉が僅かに開き、小さな影がスルリと入り込む。 音もなく扉が閉ざされると、小さな影は口に手を当ててきししと笑った。 暗い部屋に揺れるのは頭の左右で束ねられた小さな髪の房たち。 輝いているのは翠緑と真紅のオッドアイ。 「ふふふ、ママたちにはわるいけど、ユーノさんはヴィヴィオがもらっちゃうよ」 ミッドチルダを震撼させた『ゆりかご事件』から幾らかの時が過ぎていて。 聖王のクローンでありエースオブエースの養子となった高町ヴィヴィオは、実に頼もしく成長していた。 今日もいつもの送り迎えな一日――それも十分素敵なんだけど――で終わるはずの彼女の放課後は、 手元に偶然転がり込んできた幸運によってやたらとワクワクしたものに変化していた。 目標は唯一つ。『大好きなユーノさんに大胆なアプローチをして恋人になる!』以外にない。 もちろん子供の頭なので想像には限界があり、 1.ユーノさんに近づく →2.?? なんかする。 →3.ラブラブ♪ という重要な部分に穴が開いたプランなのだが、そこには切り札がある。 『聖王モード』を使用すれば、頭は子供のままだけど、身体だけなら大人になれるはずなのだ! そして、姿が大人になりさえすれば、後はヴィヴィオが知っている必要はない。 優しくてとっても賢い大人のユーノさんが、いろいろなんかしてくれるに違いないのだから!! 「すごいよ……ヴィヴィオすごいよ……! このさくせん、ママもビックリだよ……!!」 ヴィヴィオはこのプランを閃いた瞬間、自分の才能が恐ろしくなった。 なんという策士。別領域からの刃。足りない知識を相手を利用して補うという着想に背筋が震えた。 いや、落ち着け。クールになれ。高町ヴィヴィオ。いや、ヴィヴィオ・T・スクライア……!! この作戦が達成された暁には、あの暖かい手も、優しい微笑みも、自分だけのものになる。 もっとたくさん膝の上に座らせてくれたり、抱き上げてくれたり、肩車してくれるに違いない。 それからそれから、お花畑で追いかけっこをしたりあれやこれやでとにかくキャッキャウフフなのだ! 「というわけで……」 そろりそろりとソファーに近づくと、そこから聞こえるのは規則的な寝息。 その安らいだ旋律に邪魔しちゃ悪いかなとちらりと思ったが、もう止められない。 「かくごしてね、ユーノさん。ヴィヴィオのオトナのみりょくでめろめろにしちゃうんだから!」 クスクスとほくそ笑んでから――ヴィヴィオは精神を集中して『聖王モード』を発動させた!! キュバアッ! と激しい光が広がり、お見せできないのが残念なシーンを経て、一気に収縮する。 「ん……誰……?」 眩しい光に瞼の奥を刺激された我等が司書長ユーノ=スクライアがのっそりと状態を起こすとそこには!! サイドテールにして戦闘機人風のデザインのバリアジャケットを纏った小さいまんまのヴィヴィオがいた。 「あれー!? なんでー!?」 小さなまんまの自分の姿に、くるくる身体を捻って自分を観察して困惑するヴィヴィオ。 変身シーンを見ていないユーノにとっては、初めから奇抜な姿をしたヴィヴィオがおろおろしているだけだ。 (良くわかんないけど、可愛いなぁ) ソファーに座ったユーノは、ヴィヴィオをひょいと持ち上げて膝の上に乗せる。 「ふえーーん!! うれしいけどちがうの~~~~~!!」 大好きなユーノさんのぬくもりに包まれながら、ヴィヴィオはじたばたと脚を振っていましたとさ。 26スレ SS にっぷし ユーノ×ヴィヴィオ ユーノ・スクライア ヴィヴィオ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/330.html
チンクの無限書庫動乱記2話 作者:SgPKSOv5H6 チンクの無限書庫動乱記2話 ユーノの前回のダメ人間発言により、お先真っ暗な感じに陥ったチンク。 しかし彼女は諦めるわけにはいかなかった、てかここで諦めたらいろんな大事な物が無くなる気がする。 そしてそれは恐らく真実だろう、何せ相手はユーノ・スクライア、すこし、いやかなり壊れた人間だ。 そして回りの司書達も壊れている、現在も・・・ 「意義あり、彼女は司書たちみなの物であり司書長一人の物ではありません!」 「どうしてだい?僕がいなければ彼女を引っ張ってこれなかったんだよ?」 「しかし彼女は無限書庫に配属されたのであって決して司書長のものとして配属されたわけではありません」 「同じような事だよ、僕がいなければ彼女はここにいなかった、それにここでの仕事は僕が決めるからね」 なおも議論が捻じ曲がった方向に議論が白熱していく!もはや無限書庫にまっとうな人間がいないのだろうか? 彼女はただただ議論を聞いているだけしかできなかった、 ユーノのバインドははっきり言って解除不能なレベルのもので身動きできない、 かといってあの会話に入る気はさらさらない、手か入ると何気にやばそう。 そんなしょうも無い事を考えていたとき・・・ 「でしたら彼女に決めてもらいましょう」 「ああ、いいさ」 といってチンクの方を向くユーノと司書A、途中の話をまったく聞いていなかったのついていけない… 「すまないですが、何の事です?」 やはり丁寧な口調で疑問をぶつけるチンク。 その事に不満なユーノと司書A、しかし説明しないと先に勧めないと判断。 「いや、チンクはどっちがいいのかなぁと」 「何がどちらなのです」 「僕の物か、それとも司書達全員のものか」 結構人間として間違っているような事をほざく司書長、もうあの純粋な頃に戻れないのであろうか? 聞いてきた事が頭に染みわたってきたチンク、意味を理解するにつれだんだん怒りが込み上げてくる。 顔が怒りでだんだん赤くなり肩がプルプル震えてきている、その様子を見て二人は思った。 (やべ、かわいい、もっといじりたい) と思った矢先、噴火した。 「ふざけるなー!ヒトを物扱いするな!大体私はここに司書として配属されたのであって玩具じゃない!」 そういって叫ぶチンク、まぁ、まっとうな人間の反応である、 このままではそろそろ業務に影響が出ると判断した惜しいなと思いながら 司書長は司書A普通の業務に戻るよう目配せする。 司書長の意向にに気付き、軽く礼をして退出する司書A、心惜しいのも彼も同じである。 なおこの間ユーノは仕事の作業をとめてない、とんだ化け物である。 「わかったよチンク、そろそろ真面目な話をしよう」 そう言って真顔に戻るユーノ、チンクは安堵した、ようやくこのイカレタ状況から開放されるのだ。 「それじゃあ、もう一度業務内容の確認から使用か」 そう言って真面目に話すユーノ、 この後説明を受けて少し仕事をして何とかやっていけると思ったチンク。 しかし彼女はこの後更なる受難を受ける羽目になるのは別のお話 ・・・ 38スレ SS チンク ユーノ・スクライア 電波