約 454,635 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/84.html
タイトル「前スレ最後のスーパーアリサタイムから」 作者:25-43 本文 前スレ最後のスーパーアリサタイムからちょっと妄想した その日、ユーノ・スクライアは無限書庫司書長としてではなく、管理局所属の遺失物調査官としてエリオとキャロが辺境自然保護隊として生きる世界を訪れていた 調査員からその世界にある遺跡からロストロギアが発見されたのだというのだ 調査依頼を受けたユーノは輸送担当のヴァイス、護衛を直々に担当するクロノ率いるクラウディアとともにその世界を訪れ、エリオと合流し遺跡へと向かった 遺跡へと到着した4人は訝しむ。確かにロストロギアは発見した、だがそれは本当にただの古代遺失物でしかなく、態々自分達が調査に向かうほどのものでもない。 何かがおかしい、そう彼等が考えた時にはもう遅かった。 遺跡を囲む森の中より、突如地をも揺るがさんばかりの怒号が響いた。 押し寄せてくる人の並、反管理局主義者のゲリラ達だ。その数850人、そう、遺跡調査は彼等によって仕組まれた罠だったのだ。 4人は分断され、圧倒的な物量の集中砲火を受ける。 元武装隊局員、現提督、将来有望な少年に結界魔法のエキスパートたる彼等であっても、さしもの約210倍の戦力の前には勝ち目は薄い。 なんと15時間もの間孤立しつつも必死に奮闘したことは賞賛に値しよう。 だが敵の波状攻撃の前についに彼等にも限界が訪れる。 一人、また一人と攻撃の前に倒れていく仲間達。そしてユーノ自身にも高ランク魔導師と物理兵器による攻撃が襲い掛かった。 プラズマフィールド発生装置・サイクロプスの瞳 ユーノの展開する結界の周囲に設置された高出力電磁波発生装置は、瞬時に結界内部を電子レンジへと変えてしまう 四方からの攻撃と全身を内側から焼き尽くそうとする熱波に絶叫するユーノ 僕はこんなところで死んでしまうのか? 彼女達と二度と会えなくなってしまうのか? まだ自分にはしなければいけないことがあるはずなのに 自分には守りたい人がいるのに 意識が白く濁り弾けようとした…その瞬間! ユーノの周辺に展開されたサイクロプスの瞳が上空から飛来した真紅の魔力弾丸によって破壊され、おって吹き荒れた炎の旋風によって周囲の魔法使いも吹き飛ばされた かろうじて意識を取り戻し、壊れかけていた全身を結界の治癒作用が修復していく感覚を感じながら、ユーノは空を見上げ息を呑んだ 少女が、いた 紅の鎧に身を包み、その背中からは燃え盛る炎がさながら翼のように吹き溢れ、赤い粒子がその周囲を舞っている 忘れるはずがない、見間違えるはずが無い、だが…なぜ彼女がここに? 朧かかった思考のまま伸ばされたユーノの手を、少女…アリサ・バニングスは取って微笑んだ 「生きてる?」 アリサ ユノアリ ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/269.html
やまなしおちなしいみなし、な話 9bwY2VqX その日やってきた客人は、 ユーノにとっては見知った相手で在ったが無限書庫そのものとしてはとても珍しい客人だった。 ついでに言うと、彼女一人だけのも非常に珍しい。いつもは従者がついているのに。 「それで……今日はどうしたんだい? ルーテシア」 観察期間を終え、魔力を封印されたままながらもクラナガンへ帰還したアルピーノ親子。 ユーノは元機動六課メンバー経由の縁で二人と知り合い、 六課メンバーを交えてちょくちょく話をするようになっていた。 その中で、ヴィヴィオの家庭教師をやっていると知ったメガーヌに頼まれ ルーテシアの勉強も一緒にみている。 業務の安定により、安定した休日を得られるようになったユーノの ささやかな副業(報酬・美味しい夕食)であり、彼の恋人・高町なのはとの交流の一つでもあった。 はてさて、それは良いとしてそれでもやはりルーテシアが直接、無限書庫にやってくるなど珍しい。 よくよく見れば、なにやら深刻な表情。何か悩み事でもあるのだろうか? ホットミルクにも、クッキーにも手を付けていない生徒の事が心配になって来た頃、 ようやくルーテシアが口を開いた。 「ユーノ」 「うん、なんだい?」 「ユーノは、胸の大きな人が好きなの?」 「……What’s?」 突然、何の脈略もない質疑にユーノは思わずデバイスの様に問い返す。 それは勿論、ユーノ・スクライアとて雄である、おっぱいは大好きだ。 世の中には全く興味のない人も居るのは知識として知っているが、 ユーノはそう言った特殊性癖では無い若く滾る情動を持ち得た雄なので、おっぱいが嫌いという事は無い。 彼の恋人は、そこら辺を指して「淫獣」などと呼称するが実に失敬だ。男は皆、淫獣なのだ。 「どうして、またそんな?」 後から後からわき出る青年の主張をとりあえず表に出すことなく、ユーノは改めてルーテシアに問い返した。 すると、ルーテシアは自分の年相応にぺったんこな胸を叩いてしょんぼりする。 「男の人は、胸の大きな人が好きだって聞いたから」 「誰から」 「アギト」 人をからかうのが大好きなナイス根性な子狸さんというユーノの予想は見事に外れていた。 そう言えば、真犯人である八神家の新しい末妹のマイスターも「おっぱい魔人」と揶揄される人物だったか。 本人達に知られたら真っ向唐竹割+神々の没落を喰らいそうな事を考えるが、知られていないので無害だ。 「お母さんに聞いても、『ルーにはまだ早い』って」 「それで、僕の所に聞きに来たわけ?」 ルーテシアはこくりと頷く。 確かに、ルーテシアの周囲に彼女と親しい男性は自分を含めて二人しか居ない。 だからこそ、ユーノは何故ルーテシアがこんな事を聞きに来たのか理解できた。 「……エリオ君か」 「……」 ズバリ、正解だったのだろう。ルーテシアの顔がしゅんと暗くなる。 エリオ・モンデュアルの周囲は皆美人揃いであるが…… とりたてて彼に師事しているフェイト・T・ハラオウンと八神シグナムは特に目立つ。 二人とも、それはもう見事なプロポーションの持ち主だ。 以前なのはが、鏡を前に「フェイトちゃんはどうして……」と羨むぐらいだ、 並ぶと元部隊長さんが凄い哀れなぐらいだ。 ただ、ルーテシアは未だ第二次性徴前である。あの二人と比べること自体が間違っているのだが…… さて、それで納得する乙女心ではあるまい。 伊達に理不尽な魔王に振り回されてはいないのだ。その程度は解るようにもなる。 「まぁ、確かに小さいより大きい方が好きって傾向が一般的ではあるよね」 子供相手に何を話しているのかなぁ、と想わないでもないがさりとて誤魔化す手段も思いつかない。 ユーノ・スクライア、不器用ですから。 お茶を一啜りして、一息を入れる。 一方のルーテシアは、この事柄を真剣に悩んでいる。 とても出はないがクッキーにもホットミルクにも手が出せる気分ではない。 「でもね、ルーテシア。そんなのは只の趣向だから。人を好きになる云々とは違うよ」 ルーテシアはふっと顔を上げる。 そこには何時も通りに笑うユーノの姿。 「その理屈で言ったら、僕はなのはよりもフェイトを好きになってるよ」 それは……正直想像出来ない。 3人が一緒にいる事はよく見かけるけれど、ユーノと高町なのはの間にはやっぱり特別な何かがあって。 少しだけ、それにあこがれている。 だからこそ、ユーノの言葉には説得力があった。 「でも、エリオは」 「少なくとも、僕の識ってるエリオ君は胸の大きさ云々で好きな人を決める子じゃないけどね」 「それにね」とユーノは悪戯っぽく嗤うとこう続けた。 「フェイトだって、君と同じくらいの時は真っ平らだったんだよ?」 「本当?」 「勿論、だから君だって。彼女みたいな素敵な女性になれる可能性があるのさ」 ルーテシアは、フェイトのような美しい体の自分を想像する。 鍛え上げられ、一切ムダがなく、それでいて柔らかさを失わない。 わざわざ扇情的な服を着るまでもない、普通の普段着の上からでもはっきりと解るなめらかな曲線。 うっとりすると同時にある事にも気が付いた。 それは彼と一緒に居るもう一人の少女。 「なら、キャロも?」 「ああ、なるかもしれないね」 しれっと、当たり前のようにその懸念を口にする恩師。 ルーテシアの表情はまたも硬くなり、どうすれば良いのかと悩み始める。 「そう言えばなのはやフェイトも昔沢山、牛乳を飲んでたっけ」 「?」 「牛乳を毎日飲んでいると、スタイルが良くなるって」 言われて、目の前のホットミルクに視線が行く。 無言でそれを手に取ると、少しばかり冷めたミルクを一気に飲み干した。 「後は?」 「後? うーん、そうだなぁ……好き嫌いをせずに何でも食べて毎日運動する事かな?」 自分に、好き嫌いが多いのを自覚しているせいかルーテシアは返答に窮する。 「……ピーマン、も?」 「勿論」 一抹の希望を抱いて問い返すも、その希望はあっさりと切り捨てられてしまった。 あぁ、しかし貧乳に豊乳は……基、背に腹は代えられない。 「わか、った」 我慢して、沢山食べよう。 フェイトにも、シグナムにも、なによりもキャロには負けられない。 ルーテシア・アルピーノ。温和しめな外見に似合わず負けず嫌いである。 そして、悠然と茶を楽しんでいる教師はと言うと。 (エリオ君も、果報者なのかご愁傷様と言うべきなのか) 心の中で、少年の将来を憂いる。 だがまぁ、そんな事はメガーヌから相談された「ルーの好き嫌いをどうしたら良いか」 という事項に対する解決から比べればどうでも良いことである。 ……ヴィヴィオにもこの手段、使えないかなぁ。 などと本気で考えている辺り、腹の中は真っ黒な無限書庫司書長であった。 23スレ SS ユーノ・スクライア ルーテシア ルーテシア・アルピーノ
https://w.atwiki.jp/aren1202/pages/73.html
ユーノに付き従う魅力的な黒猫 名称:フレム(性別:?) 風紀委員長ユーノの使い魔で艶のある黒毛と紅い目が特徴的な猫 行く先々でフレムを触ろうと自然と長蛇の列が出来てしまう、そんな不思議な魅力を持ち、一説には「チャーム(魅了)」の魔法を習得しているのではないかという噂も 主であるユーノとは強い繋がりをもっているらしく、相互に感情や感覚の共有関係にあり、その繋がりの遮断は完全には出来ないらしい また機嫌が悪いと高熱を発することがある。 関連項目 ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/187.html
夏祭りの夜に 前編 作者:91-375 『ふふ、お祭りなんて久しぶりだね』 「本当だね、なのは」 夏の海鳴の夜風を感じながら、ユーノとなのははしみじみと言葉を交わしていた。 海鳴市の古くからある神社での夏祭り。 はやての発案で、今日は元機動六課を中心としたメンバーで遊びに来ている。 今回はなのはを通してユーノにも声が掛かったので、たまには良いかと休暇をとり、 こうしてついて来ていた。 『エリオとキャロもこっちでのお祭りは初めてだね』 『はい!』 『フェイトさんからお話は聞いてたから楽しみです!』 フェイトの言葉に、エリオとキャロが明るく答える。 二人とも今日は年相応の子どもとして目を輝かせていることだろう。 「そっか。二人とも、いい思い出になるといいね」 『は、はぁ……』 思わずそう話しかけると、少し戸惑った様子の声が返ってくる。 ユーノは内心、しまったと呟いた。 無理もない。こちらはなのは達から話に聞いてよく知っているとはいえ、 実際にエリオとキャロに会うのはアグスタでの一件以来だ。 馴れ馴れしく聞こえただろうか? 『あ、あの、ありがとうございます……スクライア司書長』 しかしユーノの心配を他所に、少し間を置いてエリオがぎこちなくそう続けた。 「はは……エリオくん、キャロちゃん、肩書きはいいよ。フェイトたちと同じように呼んでくれれば」 『は、はい!』 『えっと、ユーノ……さん』 エリオに続くように、キャロも遠慮がちにユーノの名を呼ぶ。 「前はあんまり時間が無かったし、今日はいろいろ話せるといいね」 『……はい!』 いい子達だ。 元気な返事に、そう再確認して微笑ましい気持ちになる。 『さて、和んどるんはええとしてや』 と、そこではやての声が割って入った。 『ええ加減この状態なんとかせんとあかんやろ?』 『えーっと』 『まぁ……ね』 「そうでした……」 トーンを抑えたはやての声に、なのは、フェイト、ユーノはため息をつく。 おそらく言葉に出さないだけで、他のメンバーも同じ気持ちだろう。 『何でもええから早よぉ合流せんと、お祭り終わってまうやん!!!?』 そうなのだ。 なのは、フェイト、はやて、そしてユーノ。少なくとも今この4人は同じ場所にはいない。 いや、海鳴の夏祭りの会場に来ているのは間違いないのだが。 『みんなで一緒に来んかったんは失敗やったなぁ……』 はやての言う通り、それぞれのスケジュールの都合もあり、 ミッドチルダを出た時間がまちまちになってしまった。 なのはとヴィヴィオは2日も前から海鳴に帰省していたし、ユーノが着いたのはほんの20分前だ。 しかも順次到着したメンバーから会場に入っていったせいで、 その後の大混雑に見事に巻き込まれ、数人ずつのグループごとにバラバラに分断されてしまった。 一応念話で意思疎通はできているものの、そのためにいまだに合流が果たせないでいた。 『まさか今年はこんなに混むとは思わなかったよ……とにかく、みんな今どこにいるか確認しようか?』 『無駄やてなのはちゃん。試しに今自分どこにおるか言うてみ?』 『え? 今はちょうどヨーヨー釣り……にゃにゃ!?』 『なのは!?』 『だ、大丈夫ちょっと人の波に流されただけ…… あ、今はフランクフルト屋さんの前に……わ~、ヴィヴィオ!?』 今度は傍にいたヴィヴィオが流されていったらしく、なのはの悲鳴が続く。 『な? この調子やと、どっかに留まっとくんも無理やで』 歴戦のエース・オブ・エースも管理外世界の人ごみには勝てない。 いくらなのは達ほどの強力な魔導師でも。 いや、強力な魔導師であるからこそ、非常時でもないのにこんな大勢の前で転移したり、 宙に浮かぶわけにはいかないのだ。 ましてピンクの砲撃で周囲の人間をなぎ払うなどもってのほかである。 いや、もちろんそんなことをする人物はいないが。念のため。 『それじゃあ、一旦どこか外で待ち合わせするのはどうでしょう?』 『うーん……』 ティアナが提案するが、今度はなのはが難色を示す。 『待ち合わせするからには皆で集合したいけど…… 全員が集まれるだけの場所となると、かなり時間かかっちゃいそうなの』 「ここの神社、裏山は暗くて危ないし、 石段の下はすぐ車道だから……だいぶ離れないと一息つける場所は無いね」 海鳴に住んでいたことのあるメンバーは、なまじ近隣の地理を知っているだけに頭を抱える。 『そやから、とりあえずは各自お祭り楽しみながら、出会い次第合流して行かへん? 外に出て待ち合わせし直しとったらお祭り終わってまうわ』 『そうしようか……自由に方向は選べないけど、出店の前は通過できるわけだし』 はやての提案に、フェイトも同調する。ユーノ達としても異存はなかった。 『花火の時間までには合流したいけどねー……』 今日の夏祭りでは、クライマックスに打ち上げ花火が上がることになっている。 あと1時間ほどで打ち上げられる予定だが、 つまりその頃まではまだまだ混雑は収まらないということでもある。 『ま、とりあえず今誰が誰と一緒かだけ聞いとこか』 リーダーらしいはやての言葉に、じゃあまずは私からと、人の流れの隙間をくぐりながらなのはが言う。 『私のところは、ヴィヴィオとシグナムさん、シャーリーにヴァイスさん、あとリインちゃんだね』 『あ、リインそっちやったか。ヴィヴィオもやけどつぶれてへんか~?』 『なんとか大丈夫です~……むぎゅ』 念話は周囲の音を拾ったりはしないので分からなかったが、 なのはの周りにはそれなりに固まっていたらしい。 普段の大きさならこの混雑でも平気なのだろうが、 人目を考えればフルサイズにならざるを得ないリインは苦労しているようである。 『じゃあ次は私だね。こっちはエリオとキャロと私だけだよ』 『ふむ、フェイトちゃんとこが3人か……』 日頃からセットで行動しているエリオとキャロは、今回もはぐれずに済んだようだ。 保護者のフェイトとも一緒で、人数は少ないとはいえベターな組み合わせかもしれない。 『こっちはあたしとヴィータ、シャマル、ザフィーラにティアナとアルトやね』 『むぅ、私が主とはぐれるとは……ザフィーラ、そちらは頼んだぞ』 『ははは、ちゃんと人の姿であたしのこと守ってくれとるよ』 『……うむ、抜かりない。そちらもヴィヴィオやリインが迷子にならぬようにな』 『あれ、ということは……』 頭の中で数を整理しながら、なのはが言う。 確かに大所帯で遊びに来たが、 どうしても都合がつかずに来られなかったメンバーを除けば、もういくらも残っていない。 『ユーノくんのいるグループって……』 「うん、僕と……」 なのは達に言葉を届けながら、ちらりと後ろを振り返る。 そこには、先ほど名前が挙がらなかった元機動六課の一人が、 所在なさげにユーノの浴衣の袖をつかんでいた。 「えー……ナカジマ一等陸士、だけだね」 ※ 正直なところ、スバルは戸惑っていた。 数日前に部隊長から連絡をもらった時は、心底喜んだものだったが。 (久しぶりにティアとかなのはさんとか、みんなと楽しく過ごせると思ったんだけどな~) 今日もこちらに来るまでは、八神家の面々と一緒だったのだ。 ティアナやシャーリー達と一緒に、はやてにこの世界のユカタという服を着せてもらっていた。 しかしいざ出発というところで急な用事が入ってしまい、 スバルだけ30分ほど出発が遅れることになったのだ。 そしてなんとか会場についてみるとこの大混雑。 スバルが落ち合えたのは、今目の前にある背中の持ち主、ユーノ・スクライア司書長だけだった。 「本当にこの混雑はひどいな……、ちゃんとそこにいるよね?」 「は、はい! スクライア司書長!」 左右を大柄な男にぎゅうぎゅうと挟まれて、振り返れないままユーノはスバルに話しかける。 「良かった。僕達二人しかいないから、 みんなのグループよりははぐれにくいとは思うけど……これ以上バラバラになるとまずいからね」 そう言うとユーノは、スバルの方を向かないまま数歩前に進んだ。 摘んだ浴衣の袖が先に進み、スバルもそれに続く。 はぐれないようにと、彼に浴衣の袖を摘んいるように言われてそうしているが、 これも居心地がよくない原因の一つだった。 相手は一応それなりに大きな部署の責任者であって、元々一局員としては近づき難いという事もあるが。 やはり単純に、仲間達と一緒にお祭りを楽しみたかった。 ティアナやキャロとなら、話したいこともたくさんあったのだが。 ほとんど面識のない、しかも立場にも差のある人物と二人っきりでは、いくらスバルでも羽目を外せない。 (せめてノーヴェ達が一緒に来られればよかったのにな~……) 最近増えた姉妹達に思いを馳せるが、仕方がない。 彼女達にはまだ、観光目的であっても時空を超える許可は出ないのだ。 だいたいこの人数が一度に海鳴に来られること自体、八神部隊長やハラオウン家の力があってこそなのだし、 これ以上贅沢は言えない。 「……あれ?」 憂鬱になっているうちに、ふと気付いた。 いつの間にか右手が自由になっている。摘んでいた浴衣の袖がない。 「え、はぐれちゃった!?」 辺りを見回すが、この町では目立つはずの長い金髪は見当たらない。 スバルが浴衣を手放した事に気付かないまま、どんどん進んでいってしまったのだろうか。 近くにいないのなら、探しにいくしかない。 幸か不幸か今のスバルは一人。この人ごみの中でも、ある程度は自由に動けるが…… (……同じ探すなら、ティア達を探してそっちに合流しちゃえば……) そんな考えが一瞬頭をよぎった。 しかしブンブンと頭を振って、思い直す。 最終的に落ち合うためグループで行動しようと決めたのは、なのは達だ。 自分が楽しくないからといって、その意向を無視するわけにはいかない。 それに、一人で迷っている人を放置するなど救助隊員のすることではない。 (なんだかほわっとして頼りなさそうな感じの人だし……あたしがちゃんと探してあげなきゃ!) 気を取り直し、辺りを見回すこともままならない状態ながらも、 キョロキョロと目を動かしてユーノを探してみる。 「スクライア司書長ー!」 「何?」 「わーー!?」 小さく名を呼ぶと、突然背後から答えが返ってきた。 「な、なんで後ろにいるんですかぁ!」 「ごめんごめん、これを買いに行ってたんだ」 「そんな! はぐれちゃ駄目って言ったのはスクライア司……」 身をよじって、なんとかユーノに向き合うスバルに差し出されたのは、真っ赤な球体。 「これ……」 「りんご飴って言うんだ。 ここのお祭りは初めてなんでしょ? せっかくなんだし、楽しまないとね」 「……は、はぁ」 スバルが退屈そうにしているのは、とっくに見抜かれていたようだった。 そんな様子を心配して、こうして買ってきてくれたのか。 割り箸に刺されたそれをスバルが一つ受け取ると、ユーノは自分の手に残った方を大きく齧る。 あまり分厚くない飴が噛み砕かれると、封じ込められていた果実の香りがほんのりと漂った。 「ん、中身がちょっと酸っぱいけど美味しいよ」 しばらくそんなユーノの様子を見ていたスバルだったが、 少し表面の飴を舐めてから、同じように齧り付いた。 甘い飴と果実の酸味が、同時に口の中に広がる。 「……ほんとに、美味しいです」 正直な気持ちが、自然と声になった。 そして、ユーノの顔を改めてよく見てみる。 女性とも間違えられそうな白い肌は辺りのさまざまな色の灯りに照らされているが、 その優しい笑顔ははっきりと分かった。 するとなんだか、一人でモヤモヤしていたのが馬鹿らしいように思えて。 自然とスバルの顔にも同じような笑みが浮かんでいた。 「ふぅ……ご馳走様です、スクライア司書長」 「そうそう、その呼び方なんだけどさ」 「え?」 「こんな場所だけどやっぱり聞かれると目立つだろうから……良かったら、司書長とかは無しにしない? ナカジマさん」 「あ、はい、スクライアさん」 しかしユーノは、なんだか煮え切らない表情をする。 「あの?」 「……エリオくん達と一緒がいいな~」 「あ……」 わざとおどけた様な口調で言うユーノに、スバルは一瞬呆気にとられるが、 言わんとすることを理解して元気に答えた。 「わかりました、ユーノさん!」 ※ 「あ、ユーノさん! あれ何ですか!? 白くてふわふわしたのが大きくなってます!」 「わたあめだね。食べてみる?」 「はい!」 顔を合わせてからしばらくの気まずさはどこへやら。 ユーノに慣れたスバルはすっかり普段の元気を取り戻し、日本の夏祭りを満喫していた。 「わ~、すごい、軽い!」 「気をつけて、それ結構ベタベタするから」 「っと、それじゃユカタにくっつかないように気を付けなきゃダメですね」 「そうだね。その浴衣はなのはに借りたの?」 「いえ、部隊長が着せてくれたんですよー」 「ああ、はやてかぁ……うん、よく似合ってるよ」 「そ、そうですかー?」 はやてが用意した白地に紺と紫の朝顔模様の浴衣を褒められて、スバルは頬を緩ませた。 たこ焼き、かき氷、焼きとうもろこし、そして今食べているわたあめ。 夏祭りならではの味も順調に堪能している。 「ユーノさん、あれは?」 「金魚すくいだよ。薄い紙を貼った輪であの赤い魚を水から掬い取るんだ」 「へー……やっぱりショウユとワサビで食べるんですか?」 「え!?」 初めて目にするものばかりとあって、スバルらしい勘違いもあったが。 ユーノは昔なのは達とここの夏祭りに来たことがあるらしく、丁寧に祭りの風物詩を教えてくれた。 「さて、そろそろ食べ物以外の店にも寄ってみたいけど…… こう混雑してるとなかなか思うようにいかないもんだね」 「ほんとに……あ、あそこ空いてますよ!」 「ん、あれは……よし、行ってみようか」 「はい! すみません、通りまーす!」 人ごみに押し流される前に並べそうな列を見つけて、二人はその最後尾に何とか入り込む。 「って、とりあえず並んじゃいましたけどこれ何でしょう?」 「ああ、これはスーパーボール……あ」 説明しかけて、ユーノが気付いた。ちょうど目の前に並んでいる3人組は…… 「フェイト!」 「ユーノ? 良かった、やっと合流できた!」 そう、フェイト、エリオ、キャロの3人だった。 フェイトは金髪の映える黒地の浴衣姿。 エリオとキャロは浴衣ではないもの、夏らしい涼しげな服装だった。 エリオは一年前と比べて、キャロとの身長差が少し増えているようだ。 「キャロ、エリオ! 会いたかったよ~!」 「スバルさん、お久しぶりです!」 「ちゃんと会えるか心配だったんですよー」 4人の同期のうち3人までが揃って、スバル達は途端に元気になる。 「これで一安心かな。こんばんは、エリオくん、キャロちゃん」 「スク……じゃなかった、ユーノさん!」 「さっきはどうも!」 念話越し以外では初対面以来のユーノとの顔合わせに、 エリオとキャロは少し緊張しながらも嬉しそうにしている。 ユーノは優しく笑いかけると、屋台の看板に目を向ける。 「スーパーボールすくいか……エリオくんがやりたかったの?」 「は、はい」 照れた様子で返事をするエリオの両肩に、背後からフェイトがポンと手を置いた。 「やっぱり男の子はこういうのが好きなのかな? さっきはキャロの希望でカラーひよこを見に行ったから、今度はエリオの番なんだ」 「生き物は連れて帰れないから買えなかったけど……いっぱい触っちゃいました♪」 興奮冷めやらぬ様子のキャロにも笑顔を向けながら、ユーノはエリオの手をとる。 「ほら、そろそろ順番みたいだ。一緒にやろっか」 「はい!」 そんな二人の様子を眺めながら、スバルはフェイトの傍へと移る。 「スバル、ユーノとはどうだった?」 「へ?」 フェイトから突然そう聞かれて、スバルは首をかしげた。 「よく知らない世界で、よく知らない人と二人だけで心細くないか、ちょっと心配だったんだ」 「ああ……確かに、最初はちょっとそうだったかもしれないです」 それも本当に最初のうち、まだろくに話しもしていない間だけだったが。 「フェイトさん」 「何?」 「ユーノさんって、いい人ですね」 「うん。そうだよ」 エリオにポイを破らず大物をすくう方法を伝授する後姿を眺めながら、フェイトは当然のように言う。 「私にとっては……なのはと同じくらい昔からの友達なんだ。 その頃から、芯の部分は全然変わってない気がするよ」 「幼馴染の一人なんですよね」 「うん。昔から丁寧で気配りが出来るから、ユーノをちゃんと知ってて嫌う人なんて見たことないよ。 ほら、いつもあんな感じ」 見ると、エリオとキャロ相手に楽しそうに会話しながら、 ユーノはもう手元の容器をボールでいっぱいにしていた。 二人ともそんなユーノの様子に目を輝かせている。 「なんとなく、わかるなぁ……」 もうすっかり並んでいても違和感のない3人の姿を目にして、スバルはそう呟いた。 エリオ達はいい子だが、これだけすぐに心を許したのはやはり相手がユーノだからなのだろう。 つい先ほど、自分もあっさりユーノの人柄に馴染んでしまったから、それが実感できた。 「ふふ、もう少し二人っきりが良かったかな?」 「え?」 悪戯っぽく言ったフェイトの一言は、一瞬遅れてスバルの頭に入ってきた。 「!? いえそんな、は、はやくティアやなのはさんとも合流しなきゃ、って!」 「それはそうだけど、他の皆も今は今で満喫してるだろうし。 スバルがユーノと二人っきりで楽しいなら、それでも良かったと思うよ?」 「……!」 フェイトにしては珍しい冗談は、なぜか冗談に聞こえなくて。 スバルは、別にそんなことはないとあしらおうとしたが、意思に反して急に早まった鼓動に邪魔された。 「なんてね。エリオとキャロがユーノに会えて嬉しそうだし、 私もユーノと一緒のお祭りは久しぶりだし、合流できて良かったね」 「あ、そ、そうだ、あたしもすくってきます!ボール! ユーノさん!あたしにも教えてくださーい!!」 「あれ?」 結局、否定の言葉を口に出すのは諦めて、スバルはユーノ達のところへ駆け寄った。 勢い余ってユーノの背にぶつかり、彼がすくったボールは全部プールに落ちてしまったが。 ※ 「綺麗だね、エリオくん」 「うん! キャロにも一つあげるよ」 スーパーボールすくいが終わって、5人は屋台から離れた。 エリオはかなりの数をすくえたが、 スバルはコツを教えられてもどうしても全力で水ごとすくってしまい、成果はゼロ。 おまけで小さく透き通ったボールを一つだけ貰った。 「でもユーノさん。このボール、水に浮かべてすくう以外にはどうやって遊ぶんですか?」 「うーん、遊び方はいろいろあるけど……例えば、これは小さくてもすごくよく弾むんだ。 だから地面に叩きつけて、跳ねた距離を競ったりとかね」 「はぁ……」 感心しながらボールを一つ握った片手をおもむろに上げたエリオを、ユーノは慌てて止めた。 「っと、駄目だよエリオくん。 こんなとこだと変な方向に飛んで失くしちゃうし、周りの人にも迷惑だからね」 「あはは、そうですよね」 「わー!? ユ、ユーノさん! ボールが!ボールがーーー!?」 「…………」 「…………」 傍で聞いていたスバルが、自分のスーパーボールを地面に叩きつけたらしい。 かなり力を入れてしまったようで、なんとまだ上昇中である。 「ど、どーしましょう!?」 「待ってて、今受け取るから! エリオくんはフェイト達の方に行ってて…………あ、駄目だ! ナカジマさん、もうちょっと左!」 「わわ、あ、駄目です、落としましたー!」 「大丈夫、また跳ねたから……ああ、しまった斜めに跳んだ!?」 と、ユーノとスバルで大慌てで追ったものの、結局ボールは二人の手をすり抜け、どこかへ行ってしまった。 仕方なく立ち止まって、一息付いてあたりを見回す。 「はぁ……あれ?」 「フェイトさん達は……?」 「また……はぐれちゃったかな?」 「え……えぇ~~~っ!?」 呆然とする二人に構わず、祭囃子はますます盛り上がる。 あと30分ほどで、盛大に花火が上がるのだ。 <続く> 91スレ SS なのは エリオ キャロ スバル フェイト ユーノ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1831.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ トリステイン城下町の細い路地の奥で男は痛む右手を押さえて壁にもたれかかった。 男の生業は間諜である。 トリステイン王家の醜聞に関わる証拠。 その奪取が男の任務だった。 醜聞が広まればトリステインの内情はいくらか不安定になる。 そうなれば男の祖国に有利に働く。 そのために男は城に忍び込んだ。 だが、その後がいけなかった。 桃色がかったブロンドを持つ女に不審をとがめられ、己の正体を暴露されてしまった。 その上、その女の一撃を右腕を受けてしまったのだ。 後は騒ぎを聞きつけた魔法衛士隊に捕まる前に逃げ出し、ここまで逃れてきたわけだ。 だが、それもいつまでもはもたない。 右腕から落ちる血が道しるべとなり、追っ手を導くことになる。 案の定、路地を走る音と声がする。 すぐに目の前に衛士どもが現れた。 男は手近にあった鉢植えを握る。 これを投げつけて、その間に逃げればまだ時間を稼ぐことはできる。 時間を稼げば彼を助ける者が現れる。 男にはその当てがあった。 男の握った鉢植えの中には大きな力が眠っていた。 青い宝石の形をとるそれは男の強い思いに応じ、目を冷ます、青い光を放つ。 それは少しずつ強さを増していった。 フォークがさくりと心地よい音をたててパイ生地に突き刺さる。 少し下品だが大きめに切り取ったパイを口に運ぶ。 クックベリーの甘い香りがいっぱいに広がっていった。 ぱくり。 もしゃもしゃ。 「んーー、甘い。おいしい」 頭に閃光のイメージ一瞬浮かぶが甘さがそれを打ち消す。 ルイズは落ちそうになる頬を押さえる。 これ以上ないくらいに顔がとろけていった。 ここはトリステイン城下町にあるケーキ屋「翠」。 腕のいいパティシエのいるこの店の人気は高い。 特に、この特製クックベリーパイの予約は半年先まで詰まっている。 そして今日のこの日はルイズが待ちに待った予約を入れた日なのであった。 この最初に口に入れる瞬間のためにルイズは朝食を控えた上に、馬の背中に3時間も乗ってここまで来たのである。 その間、ユーノはずっとルイズの肩にしがみついていた。 馬に乗って揺れていたので何度か落ちそうになったがどうにか到着した。 そのユーノは今は人間の形に戻ってルイズと同じテーブルの向かいの椅子に座っている。 「ルイズ、おいしそうだね」 「うん。すっっっごく。ユーノも早く食べなさい」 「う、うん」 ユーノとルイズの前には1ホールずつ切り込みを入れたパイが置かれている。 正直、1人で食べるには少し多すぎる量だ。 「いつも私が食べてる分の半分をあげるのよ。ありがたく思いなさい」 「う……うん」 ということは、ルイズはいつも2ホール食べていたことになる。 と、言っている間にルイズの前のパイはすでに円から半円になっていた。 ユーノも一切れ小皿にとり、小さく切ってぱくり。 「あ、これ、ほんとにおいしい」 「でしょ?あー、待っててよかった」 ぱくぱくぱくぱく。 ルイズの目の前の円はさらに欠けていく。 ユーノはその間にまだ一切れしか食べていない。 「ねえ、ルイズ。これ、半分持って帰っていい?」 「どうして?」 「お土産にしたいんだ。シエスタさんに」 「シエスタ?」 ──何故ここであのメイドのの名前が出てくるの! ルイズの声が少し裏返る。 せっかく2人で来たのになんでメイドが! いや2人で来たからって何があるってわけでもないけど。 「いつも手伝ってもらっているから、お礼をしたいな、と思ったんだけど……」 ユーノはなにかわからないルイズからのオーラにたじろいでしまう。 それを見たルイズはオーラを静めて考える。 シエスタに頼んでいることは本来、学院のメイドの仕事ではない。 それなのにシエスタにやらせている。 シエスタは平民でメイドだからお礼はいらない。 しかし平民の仕事に報いるのは貴族の義務だ。 だからユーノの言うようになにかを与えるのはあたりまえだ。 だが……それをユーノにあげたパイから出すというのが気に入らない。 それでは、まるでユーノがあのメイドにプレゼントをしているみたいではないか。 それがなぜか気に入らない……。 「そのクックベリーパイは持って帰ったら味が落ちるの。後でなにか包んでもらうわ」 というわけで、このあたりで妥協することにした。 自分が買って帰るのだからユーノからのプレゼントにはならない。 それなら安心。 「うん」 ユーノの返事を聞いてからまたクックベリーパイを口に運ぶ。 少し大きめの切って口に入れる。 ぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱく。 お皿が空になってしまった。 少し物足りない。 いつもの半分しか食べてないのだからあたりまえだがもうちょっと欲しい。 ユーノの方を見ると、まだパイが四分の三も残っていた。 フォークの先にすごい視線を感じたユーノはもしやと思いその元を追ってみた。 予想どおり視線の元はルイズだった。 すごい目つきだ。 いや、すごいなんて物じゃない。 視線に物理的圧力があったらパイが穴だらけになるんじゃないかと言うくらいの目つきだ。 「あの……ルイズ。僕、全部食べきれないから残りで良かったら食べる?」 その途端ルイズの目つきが変わる。 「ほんと?ほんとにいいの?」 眼がキラキラ星が散ったように光り出す。 顔は満面の笑みを通り越して、笑顔があふれ出ている。 背景が光っているようにも見えるから不思議だ。 「いいよ……どうぞ」 ユーノはパイを乗せたお皿をルイズの方に押す。 手が短いので机の真ん中あたりにしか届かない。 ルイズも手をお皿に伸ばす。 「しょ、しょうがいないわ。余り物なんて貴族が食べる物じゃないけど、ユーノがせっかくくれたんだからもらってあげるわ」」 使い魔にお礼は簡単に言う物ではないのでこう言っておく。 「あー、もー、ほんとにありがとう」 なにか余計な言葉がこぼれたみたいだがルイズは気づかない。 お皿の端に手をかけて引っ張ろうとした途端……店の窓を突き破って太い鞭のような物が入ってきた。 それはルイズの前に落ちてきて、四分の三残っていたパイを机ごと木っ端微塵にした。 「ル……ルイズ?」 ルイズは何も言わない。 落ちて動かなくなった鞭のような物に目を移すとそれがなにかよくわった。 植物の蔓だ。 長い蔓だ。 根本は外にあるようで店の中からは見えない。 その蔓は勢いよくはじけて、店の壁と天井を壊しながら外に出て行った。 ルイズは静かに立ち上がる。 呆然としている店員や客を避けながら店の入り口へ。 入り口横の机にバン、と音を立てて金貨を数枚置く。 「次の予約、半年後でいいわね」 入り口にいた店員が首を痙攣させるように縦に振る。 異様な雰囲気を纏わせながらルイズは外へ出た。 「待ってよ、ルイズ」 ユーノもあわてて店の外に出た。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/18.html
作者:にっぷし 還暦か…… 立て続けに起こる震動。 考古学発表会は阿鼻叫喚の坩堝と化す。 混乱の中、魔導師でもある若き考古学者、 ユーノ・スクライアも身動きが取れずにいた。 崩落する天井、シールドが間に合わない―― 「大丈夫かい?」 頭上からの声に目を開き、顔を上げる。 そこには一人の魔導師がいた。 三つ網の髪をたなびかせる女性魔導師。 身に纏う魔力は凄まじく、 杖を握る手は力強かった。 華奢な――年下の少女といった風体だというのに、 背中に守られて安心感を抱いてしまう。 圧倒的な存在感を纏った少女だった。 彼女は崩落した天井を瞬く間に片付けると、 呆然としているユーノを振り返った。 全てを見透かすような透きとおった瞳に、 思わず吸いこまれそうになる―― 「らしくないねぇ。ぼうっとして」 クスクスと笑う少女は、床に着地する。 ユーノは、相手が自分より小さいことに驚いた。 スタスタと歩く少女は無防備にユーノの目の前に立ち、 薄い胸が触れそうなほど近くで、じっと瞳を見つめてくる。 突然のことに驚くユーノを眉を顰めて怪訝そうに見上げると、 少女は何かに気がついたように笑い出した。 「えっと、どうかしたんですか」 「いや、そうか、坊やは知らなかったんだな、と思ってねぇ」 年齢にそぐわない口調と仕草が不思議な色香となった少女は、 三つ網の髪を揺らし、満ち溢れた魔力で自らを輝かせ、 自信に満ち溢れた瞳で名乗りの口上をあげた。 「――私だよ、ユーノ坊や。ミゼットだ」 ニッと笑ってウィンクをする堂々とした少女に、 ユーノは頬を染め―― 「えええええっ!?」 とてつもなくビックリした。 それを見て若い姿のミゼットがクスクスと笑う。 「それじゃ、救助と元凶の懲らしめにいくとしましょうか。 手伝いなさい、ユーノ坊や。……まだ引退には早いでしょ?」 そう言って飛び出すミゼットに、慌ててユーノがついていく。 ミッド史に残るおかしなコンビは、こうして生まれたらしいです。 おわり。幻海師範方式で若くなるミゼットっていう。 還暦記念小ネタ。色んな場所で被ってそうですな。では。ノシ 60スレ にっぷし ミゼット 小ネタ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/222.html
Non-derelict 作者:Ri9hYt2A 無限書庫に勤める者にとって本局の定めた勤務時間を二回りもした頃に業務が終了するのは日常茶飯事、 でもなく、数年前から健全化された体制下の運営においても幾分か早いとさえ感じられる程の事である。 無限書庫はそれほどまでに多忙なのだ。 本日は司書長のユーノが尋常ではない働きを見せたお陰で、平時組の司書たちは早々に解放される目を見た。 次いで、各世界を旅する次元航空艦隊からミッドチルダ標準時など省ずに請求される資料を捌く徹夜組がやってくる。 引き継ぎに集った両組の司書が仕事の少なさを賑やかに喜び、 それを導いたユーノに感謝の雨を降らしている中、しかし、当の本人のユーノは一人浮かない顔をしていた。 「あ、あの、チンクさん?」 「……ふん」 引き継ぎを終えた頃を見計らってユーノが声をかけると、チンクは憮然としてそっぽを向いてしまった。 ユーノはがっくりと肩を落とした。 「これはだいぶ嫌われとるな」 その肩を叩いたのは、定時を一回りしたころにはもうやってきていたはやてである。 なんでも、散々自分を巻き込んだ事件の決着を見届けたいとのことだった。 「本当はあまり使いたくない手段だったんだけど。仕方がないか」 呟きは遠く、チンクはそのまま無限書庫から出ようとしたところで足を止めた。 「久しぶりね、チンク」 目の前に立ちはだかるのはギンガだった。 「む、ギンガ。久しいな。どうしてこんなところに」 「ちょっと司書長さんに用があって」 「あの変態なら中にいるぞ」 「へ、へんた……仮にも上司の方にそんなこと言ったらだめじゃないの」 熾烈な言動を窘めるが、チンクは「かまうものか」とだけ言い残して無造作に脇を通り過ぎた。 余りにも露骨な対応に奥で悄然と佇むユーノへ、ギンガは慰めるように苦笑を送った。 直後、チンクは足を止めた。そうするしかなかった。身体が前に進まなくなっていた。 「なにをする」 不機嫌を隠そうとはせずに眉を顰め、チンクは徐に顔を持ち上げ、ギンガの顔を逆さまに仰視した。 背後でギンガがチンクの小さな体躯を包み込むように抱き止めていたのだ。 「ごめんなさい、本当はユーノさんに仲介を頼まれてて」 結局強談になってしまう自分のがさつさを内心で恥じ入った。 最初は話し合うつもりだったけど、それにしてもここまでとは計算違いだった。 「なに!?」 驚愕の顔をみせると、上から覗き込んでくるギンガの顔は申し訳なさそうな色を帯びた。 「その、謝りたいけど顔を合わせてくれないって相談されちゃって」 言うが早いか、腕に力を込めてチンクを持ち上げた。 「あっ、こら!」 「ごめんね」 身を捩るがびくともしない。 両の腕を拘束された状態で二周りも大きいギンガを振り払えと言うのは酷な話だった。 言葉とは裏腹に、ギンガは半身を翻してチンク共々ユーノと対面した。 「おい!これは卑怯だぞっ!」 ユーノが正面に立つと、ギンガの両の手で抱えられたチンクはそのまま横暴に大口を開けて吼えたくった。 「ああ、まずはそれから謝るよ。卑怯な真似してごめん」 「こ、こいつ……いけしゃあしゃあと!」 しれっと返されて、余りの怒りにどうしていいか分からないといった様子だった。 はやてはチンクに淡い共感を寄せた。 「先ずはお話しないと何も解決しないでしょ?」 唸り始めるチンクを見咎めたギンガが諌めるが、全く聞こうとしない。 「しかしこいつは、くっ、いいから下ろせ!」 再び身を捩る捩る。顔をふりふり、足をばたばた。 童女然としたチンクを前に、口に出すと酷く怒られるので、 やっぱり可愛いなと内心のみで思いながらギンガは優しい表情をする。 「もう、そんなに怒る事ないじゃないの」 笑いかけるギンガに一瞬動きを止めたチンクは、すぐ顔を上げて泣きついてきた。 「わ、私の背を、ち、ちっちゃいと言うだけならまだしもだ!こいつは私の」 「すまなかった!」 胸を、と言い切らないうちにユーノは深く平伏して額を床に擦りつけた。 傍で見ていたはやては既に草臥れていた。 「君を貶めるような事を言ってしまって、僕は君に謝りたい」 今度ばかりは本当に真摯な気配なのが、はやての胃にとって唯一の慰めとなった。 「老成した精神とは釣り合わない幼い身体にコンプレックスを抱いているのは知っていた。 それなのに、ついからかうような事を言ってしまって……本当に申し訳ない」 チンクも複雑な表情で土下座するユーノを見下ろしていた。 口頭の発言に著作権ってないのかな、とはやては上の空だった。 「君も女の子だ。自分の身体的特徴を気にするのは当たり前なんだ。 僕は男として、一人の少女に愚かな無礼を謝りたい。改めて、本当にすまなかった」 ギンガ及び周りの司書達はユーノから発せられる真剣な空気にすっかり飲まれているようだった。 もしかして自分は浮いているのではないかとはやては少し不安になった。 「相談を受けたときね、ユーノさん、凄い反省なさってたのよ。 それだけじゃなくて、チンク、あなたの事も心配してた。 最近はろくに話せていない、無限書庫は激務だから体調が心配だ、って」 期せずして抱きしめる手に少しだけ力がこもった。 「……ギンガ、放してくれ」 抱きかかえられていたチンクはすっかりと脱力してなすがままになっていた。 「まったく、怒る気にもなれん」 ギンガは無言でチンクを床に下ろした。 「ああもう、情けない。顔を上げろ」と言うと、ユーノはおずおずと捨て犬のように見上げてきた。 チンクは仕方がないといった顔を作った。 「そんなに真剣に謝られたらな……聞き届けたよ」 「ゆ、許してくれるのかい?」 「ああ。だが次はないぞ」 ユーノはしおらしく頷いた。 「次は私の番だな」 「え?」 チンクは出し抜けに言った。ユーノは目を丸くした。 「いきなり眼鏡を壊してしまった非礼を詫びる。すまなかった」と言って、チンクは深く頭を下げた。 「いや、それだけの事をしたんだし、そもそも僕の責任だから」 「それでも、いきなり眼鏡を爆破するなんて思慮に欠ける行いだった。 高価なものかも、あるいは掛け替えない大切なものだったかもしれないのに。 あそこまで木っ端微塵にしまったらもう戻らないだろう。すまないことをした」 俛伏するチンクに、ユーノは膝立ちのまま慌てて手を振った。 「いや、ただの安物だよ。それに、僕も君を傷つけて信頼関係を壊してしまったんだから」 噛み締めるように言ったユーノを見るに、どうやら本当に反省しているようだとはやては一つ頷いた。 「しかしそれは修復可能な程度だったし、現実にもう直っているだろう?」 ようやく顔を上げるがチンクは声を強くして憚らない。ユーノは困ったように顎に手をやった。 「それじゃあ、今度の休日にはやてと眼鏡を買いに行くんだけど、一緒に選んでくれないかな」 「監督責任者が同伴して偶には外出させよう、というわけか」 チンクは意地悪くにやりと笑った。返す言葉に詰まる。図星だった。 自分に非があるのだからチンクに何をさせるわけにもいかないし、調度よい機会だと、 未だに無限書庫と施設を往復するのが専らのチンクを思いやっての算段だったが、 こうもあっさりと見抜かれてしまってはいっそう負けが惜しまれる。 「……君もなかなかどうして難儀な性格だね」 「お前に言われたくはないな。上司のくせに、今更気付いたのか」 チンクは不敵に鼻で笑い、堂々と胸を張った。矮小な背丈も、胸を張ると妙な威圧感をもった。 「再確認しただけだよ」 一拍置いて、それから二人は笑い合った。和解の雰囲気が漂った。 固唾を呑んで展開を見守っていた司書とギンガも二人に釣られて笑い出した。胸を張るチンクと、 あたかもそれを崇め仰ぐユーノらの織り成す一種の儀式めいた滑稽なさまを見ると、 尚の事笑いが収まらなかった。 賑やかな笑い声の中、しかしはやては一人呆れ果てていた。義務の念のごとき気持ちがその内にあった。 頃合を見てユーノは訊いた。 「はやて、いいかな?」 「お昼を奢ってくれるんなら、別に」とは言うものの、はやては少しだけ不服そうだった。 「そういうことでよろしくね、チンク」 「頭を撫でるな!」 おあいこだね、と頭に置かれたユーノの手をチンクはすぐさま振り払った。 司書達は笑いながら二人を見守っていた。 「ユーノ君、仕事中だといつもあんな感じなんですか?」 楽しげなユーノの横顔を見ながら、はやてはなんともなしに近くにいた司書達に尋ねた。 「いえ、最近になってお人が変わったように子供っぽくなられて……」 「あんなにはしゃぐ司書長は私たちも」 「はぁ」 反省や心配をしてらしたのは確かなのですが、 と言う司書達は戸惑いながらもどこか嬉しさに浸っているようだった。 何かから放免されたような儚さを感じて、はやては続けて話しかけることを躊躇った。 「私たち、あんまり必要なかったみたいね」 いつの間にか隣に立っていたギンガが苦笑した。はやては視線を泳がした。 「……いろんな意味で、ギンガがいてくれたおかげで土下座できたんやろうけどな」 「え?」 「いや、なんでもない」 事態の改善は喜ぶべきことだとはやては自分を納得させるが、 外面ばかりを取り繕うユーノには眉間の皺が増えるばかりだった。 ふと、どうして自分はユーノの肩を持ち続けているのだろうと考えたが、すぐに答えは出なかった。 そんな周囲を傍らに、ユーノは笑いながら怯むことなくチンクの頭を撫で続けていた。 「はっはっは、やっぱりちっちゃいなぁ」 「謝った先から子供扱いをするなっ!」 それは父娘ではなく兄妹のような戯れあいだった。しかし、チンクは奇妙な充実感を感じていた。 ユーノにもまた不思議な質感があったが、彼はそれに身を任せるのを善しとせず、そっと頭から手を離した。 手に残る温もりが失われてゆくのを、ユーノはどこか冷めた頭で惜しんでいた。 21スレ SS ギンガ・ナカジマ チンク ユーノ・スクライア 八神はやて
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/235.html
ヴィヴィオ17歳 作者:bdqz7PNt 「んっ……んぅ、ふぅぁ……ん、あったかい」 無限書庫、司書長室。 その一角にどこか陶酔したような声が響く。 そこにいる人間は二人。一人はその部屋の主、ユーノ・スクライア。 もう一方は見事な金髪のサイドポニー、赤と緑のオッドアイを持つ少女、ヴィヴィオだった。 いや、もう少女と呼ぶにはその少女は大人びすぎていた。 腰の辺りまで伸びた美しい髪。細身ながらも必要な箇所にはしっかりと脂肪が行き届いた体躯。 今年で17才になった彼女は引く手数多の美少女に成長していた。 しかし輝くような光を放っていた両目は今だけ見ることができない。 「ほんとに君は昔っから甘えん坊なんだね、ヴィヴィオ」 「だってそれは、ん……ユーノさんがぁ……」 「僕が……なに? 教えて?」 「あぅぅ」 その両方とも蕩けるような表情の中に埋没してしまってぴったりと閉じていた。 ベッドに腰掛けるユーノの太股の辺りに頬を擦り付けて甘える姿は猫そのものだった。 そんな姿の少女、いや、女性を見てユーノはまだこれは夢なのではないかと思っていた。 これはつい最近まで日常的に行われていた親子のスキンシップとはまったくかけ離れた行為。 『ずっと好きだったんです』 恐らくは世界中の全ての人間が言えてしまえそうなほど使い古された言葉。 だけれども、彼女に言われることは、彼女以外のAさんに言われるのとでは大きく意味合いが違っていた。 つい最近、そう記憶に残るほど身近な時間からそ少女からは『パパ』と呼ばれていたのだから。 かれの幼馴染が養子にとって、”たまたま”なつかれた実の娘のような女の子から誓いを迫られた。 気持ちの整理もできなくて、 言葉の意味も分からなくて、 それなのに……それなのに、 彼は首を縦に振っていた。 「嬉しかったから……絶対に受け入れてもらえないと思ったから……だから、だから」 たどたどしくこぼれていく声は歓喜に震えてうまく聞き取れない。 「どうして、そう思ったの?」 撫でられるように添えられた手の中で彼女は口を開こうか開くまいか思案しているようだった。 間もなく、意を決したのだろうか? 彼女は緩慢な動きで火照る唇をすりあわせた。 「ユーノさん、私が子供の頃にした、告白って……覚えてる?」 「え?」 少し意表をかかれたように驚くユーノにヴィヴィオは可笑しそうに微笑んだ。 初めてこの人を困らせてやったとでも言いたげに。 「あれ私、本気だったんだよ?」 それはまだ少女に『パパ』と呼ばれていた頃。いつものように無限書庫に遊びに来ていた少女は言ったのだ。 『わたし、しょうらいはゆーのぱぱのお嫁さんになるんだぁ!』 まるで、夕食の献立をみて喜ぶ子供のように、無邪気で、あまりにも見通しがない子供心の軽い、”出来心” だからこそ、一般家庭の父親のように笑顔で流してそれっきり。 二人の血の繋がりがないことくらい分かりきっていたことなのに。 「ずっと、切なかった。 12歳になっても、15歳になっても、管理局に入っても、 ユーノさんにとってはいつまでたっても私は『娘』で、 撫でられる手が心地よくても、その意味を考えると切なくなって……」 「ヴィヴィオ……」 顔を真っ赤にさせて嗚咽させた顔を見られたくないのか、ユーノの胸にしな垂れかかるように顔をうずめる。 (ごめんなさいなのはママ。ママの気持ちも知ってるのにこんな……) 何かを呟いた、のだろうか? 少女の静かな慟哭は収まる様子はなかった。 自然に伸びた腕が頭のてっぺんから腰の上辺りを通り過ぎていた。 いままでの頭の一部だけを往復させていたその掌の突然の動きに敏感に反応してしまう。 ユーノ自身はただ泣き止ませたい一身だったのだが…… 「ふ、ふぇぇ!? んんん、あぁ……」 そんな彼女の様子にユーノはかなり焦っていた。やっぱり手の動きがアレだったのだろうか? すると、……訴えられる? いやいやいや! 曲がりなりにも今、彼女とは恋人関係なのだ! 新聞には載らない! せめて砲撃魔法で折檻? いやいやいや! いまや母親を超えて『すこし、頭冷そ(ry』の代名詞になっている彼女の砲撃魔法は致死量を吹っ飛ばす。 自分の人生、これまで? そこまで煮詰まって恐る恐るヴィヴィオの方向に顔を向ける。 案の定、彼女の顔はご機嫌ではなかった。どこか、不満があるような…… 「あの、ヴィヴィオさん? どうしてんでせうか?」 思わず卑屈になってしまう。元・娘に敬語は正直かなりなさけない。 砲撃カウント開始? などと思っていたユーノに、しかし来たのは予想外の言葉で。 「今ユーノさん。『パパ』の声だった」 「へ?」 ぷーと頬っぺたを膨らませる彼女はどうやら、先程自分を慰めてくれたユーノの態度が気に入らないらしい。 優しく声を掛けて撫でる仕草は、長い年月の間に繰り返した父と娘のもので。 やっとこさ漕ぎ着けた関係にそんな態度はよく考えなくても御法度で。 そんなことも朴念仁を削って作られた彼には、分かる道理はなかった。 「あ、ゴッゴメン! あんまりこういうの、慣れてなくて……」 「う~~~もう」 低く唸ったその顔も頬を緩ませる麻薬にしかなりえなかった。 勝手に溶けて行く表情筋を必死に留まらせながらもいい訳をするも、さして効果はないらしい。 すると何を思ったのか、子猫のように威嚇していた彼女は、ぽふんとベッドに倒れこんだ。 「じゃ、じゃあ、”そういう”関係じゃないことをすれば、恋人として見て、くれるよね?」 顔は依然上気したまま。両腕は両側に投げられ目は節目。 これでもかという無防備な格好に呆然としてしまう。 それも数秒。 必殺の一撃はすぐに襲い掛かってきた。 「『娘』には、絶対に出来ないこと、して?」 意識が飛んだ。 覚えているのは暖かな肌の感触。視界を埋め尽くした赤と緑の瞳。 それだけだった。 19スレ SS ユーノ×ヴィヴィオ ユーノ・スクライア ヴィヴィオ 微エロ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/290.html
遊乃堂奇譚八話?「冬の遊園地 その前」 hbx5FDrO ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』―― いつも静かな古書店はやはり今朝も穏やかでゆったりと時が流れていた。 開店前の遊乃堂の扉の前に佇む一人の少女。 彼女、ギンガ・ナカジマは、 その目の前にある古本屋の古い木の扉がまるで鋼鉄で出来た開かずの門のように感じられ、 しばしの間、呆然とその場に立ちつくしていた。 ……あるとき管理局でスバルに紹介された物静かで優しい“先生”。 その人が彼、ユーノ司書長“ユーノさん”だった。 以前からスバルに“先生”についてはいろいろと聞かされていたからどんな人かはだいたい知っていた。 ことあるごとにスバルがとっても楽しそうに、そして目を輝かせて話していた人のことだから。 だから初めてあったときも前から知っていたような、とても親しい人のような気がしていた。 そしていつの間にか私もユーノさんのことをいつも考えるようになっていた。 でも、私にはスバルのように純粋に彼を慕う一途な気持ちもなくて―― スバルは私が母さんからボロボロになるまでしてようやく覚えたシューティングアーツを私から、 しかも私よりも短い期間で身につけてしまった、一見不器用そうに見えるけど天才的な才能の持ち主。 なのはさんのような彼との間に感じられるような時によって培われた見えない絆もなくて―― なのはさんはかつてユーノさんといっしょに大事件を解決した時空管理局の有名な“エースオブエース”。 フェイトさんのような美しさも彼に対する絶対的な信頼感もなくて―― そしてフェイトさんもなのはさんと同じ、ユーノさんと幼なじみで超がつくエリート級の執務官。 そんな普通でない彼女らに支えられて、彼女らを支えている、そんな彼らの姿が素敵でうらやましかった。 だから何もない、普通の私は遠くから彼と彼女達を見ていられればそれでよかった。 “スバルという名の元気のいい少女の姉”として彼とはほどほどの距離にいられればそれでよかった。 ……それでよかったはずなのに。 けれどユーノさんが時空管理局からいなくなったときにぽっかりと胸に大きな穴が開いてしまったような そんな悲しくてとても落ち着かない気持ちにおそわれてしまった。 何か複雑な事情があって今まで親しかったはずの彼女らは誰もユーノさんには会いに行けないようだった。 なのはさんですら会いに行かない。 あれだけ親しげにしていたのに。それとも遠くにいても大丈夫だということなのだろうか? フェイトさんもしばらくは躊躇していて 今でも何かに遠慮して隠れるようにごくたまに会いに行ってるらしい。 スバルはちょっと事情が違うようで仕事が忙しいから『すぐにはいけないよ』と電話口で泣いていた。 『お姉ちゃん、だからお願い……』 スバルの“お願い”に後押しされて、私はユーノさんの元へ訪ねることに決めた。 私はなのはさん達と違って、何かに監視されてはいないらしい。 私がなのはさん達の代わりになれるとは思えないけど、支えられるかどうかなんてわからないけど。 こうして、私は時折この店に顔を出すようになった。 ここでアインスに出会って、アリサさんやすずかさんに出会って、そしてみんなと友達になれた。 ユーノさんとも以前より近しい存在になれたような気がした。 でも、ここではアインス達とアルフがユーノさんを支えていた。 『今度は私が彼を支える』そんな私の考えは傲慢だったのかも知れない。 そうだ、そうに違いない。 何もない普通の私に何かが出来るなんてそんなことあるわけはない。 でも、私に出来ることなんてそんなにあるわけじゃない。だって何もない私なんだから。 だからこそ自分に出来ることをするだけだ。 たとえ彼にとって“スバルという名の元気のいい少女の姉”という存在でしかなかったとしても。 アインスやアリサ達の友達でちょっと明るい少女でしかなかったとしても。 私、ギンガ・ナカジマはユーノ・スクライアのことがとても好きなのだから。 それでいいじゃない。私は今、私にできることをするだけだ。 それに今、私は前よりもユーノさんの近くにいられてとても幸せなのだから。 ギンガは一つ大きく深呼吸をしてからそのとてつもなく重く思えた扉を勢いよく開けて叫んだ。 「ユーノさん、アインス、遊びに行くわよ!」 そうして素早く二人の姿を探し出したギンガは二人の腕をガッシリとつかんだ。 何かがギンガの元から逃げ出してしまうのを恐れているかのように。 30スレ SS アルフ ギンガ・ナカジマ ユーノ・スクライア リインフォース・アインス
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3085.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ここはラ・ロシェールにある金の酒樽亭。 ガラの悪い傭兵やならず者の集まる居酒屋である。 そこに駆け込んだ男も、この酒場の利用客の例に漏れず一目で堅気ではないとわかる男であった。 その男は酒場の隅で杯を傾けるフードを深くかぶった女の元に足を進める。 女があごをしゃくると、男は女の隣に座り、声を潜めて話を始めた。 「姐さん。奴ら、到着しましたぜ。お高く女神の杵亭に泊まるみたいです」 「へえ。ま、貴族が泊まるのはそこしかないだろうからね」 フードの隙間から見える顔は紛れもなく盗賊、土くれのフーケのものだ。 もっとも、この酒場にそんなことを気にする者はいないのだが。 フーケは白い仮面の男の手引きで脱獄した後、このラ・ロシェールに連れてこられた。 その後、ここで傭兵を集め待機していたのである。 実際この酒場にいるのはフーケが雇っている傭兵である。 ただ…… ──姐さん、ねえ 何となく腹が立つような呼び方のような気がしないでもないが、そこは盗賊暮らしの長いフーケ。ぐっと胸の中に納めておく。 「今度は大丈夫なんだろうね?さっきは醜態さらして。あんたらホントに腕利きなんだろうね?」 「そんなこと言ったって、姐さん。次から次に後からメイジが増えるんですぜ。ありゃーあんまりだ」 フーケは本当のところ、あまり怒っているわけではない。 ラ・ロシェールに続く山道に入ったばかりのところでの襲撃は一種の威力偵察だ。 傭兵達には言ってないが、元々あそこで仕留める気はなかった。 「へぇ……メイジが増える前にもガキ相手にだいぶ苦戦していたようにも見えたがねえ」 「あ、ありゃ……」 男が声を詰まらす。 これも本当は、剣を使う少年という予想外の戦力が明らかになったので別に失敗ではないのだが、それを正直に傭兵に教えてやる義理はない。 フーケは自分のためにその情報を隠す。 「あの分の後金は少しさっ引かせてもらうよ。それから、次はしっかりやりな。さもないと、わかってるね」 「へ、へい」 さっ引いた分はどこに行くのか。 傭兵に出す金を出した白仮面に戻すのか。 そんなことはしない。フーケは自信の懐に入れて、とある場所に送る腹づもりだ。 フーケはこぼれそうになる笑いを抑えながら立ち上がり、酒場に満ちる喧噪に負けない声を張り上げる。 「さあ、お前達。飲んだくれるのもここまでだよ。仕事の始まりだ」 「へい!姐さん。任せてください」 酒場の傭兵達が一斉に立ち上がり声を上げる。 その中で傭兵達に敬われるフーケはどう見ても名うての女傭兵隊長だった。 ラ・ロシェールについてから、ユーノはきょろきょろしっぱなしだった。 岩壁に彫り込まれるように作られた通路や建物は一つでもすごい物だが、それが町一つ分もあれば圧巻の一言だ。 (どうやって作ったんだろう) (土のメイジが作ったに決まってるじゃない) (へー) ユーノは首を伸ばしてあっちを見たり、こっちを見たり。 人間の姿だったら田舎者に見られていることだろう。 (ユーノの居たところはこういう場所はないの?) (うん。似たようなところはあるけど、ここみたいに大きいのはなかったよ) (ふーん。ユーノのところの土のメイジはこういうの作らないんだ) (ミッドチルダ式の魔法は、こういうのにはあんまり使えないんだ) (そうなんだ) ミッドチルダ式の魔法にいつも驚かされているルイズはちょっとした優越感みたいな物を感じておく。 (ほら、あそこの廊下が不安定そうだけど全然そんなことないでしょ。固定化使ってるからなのよ) (へー) そんなに自慢げに教えることでもないことを言っても、ユーノがいちいち感動しているのが何か嬉しい。 そうやって、ちょっとした事をユーノに教えているとすぐに宿に着いた。 女神の杵亭である。 出発の日は明後日。それまではここに泊まることになる。 ここに来るまでにギーシュは疲れ果てていたし、キュルケも体が埃っぽいと言っている。 それぞれすぐに割り当てられた部屋に行ってしまった。 ギーシュは一人部屋。 キュルケとタバサは相部屋。 そして、ルイズとワルドも相部屋である。 ルイズは 「まだ結婚しているわけじゃない」 と顔を真っ赤にして言ったが、ワルドが 「大事な話がある」 と言うと、大人しくワルドの背中を追って部屋に入った。 ユーノが入ったのは、もちろんルイズとワルドの部屋である。 ルイズとワルドの大事な話とは何かと身構えていたが、二人が話し始めたのは昔の話だった。 池の小舟の話や、姉と比べられていた話はユーノもちょっと興味があったが、ルイズが顔を赤くして恥ずかしがっているのを見ると、念話でもあまり口を挟めなかった。 「僕はね、ルイズ。あの頃から君に誰にもないオーラを感じていたんだ」 「誰にもないオーラ?」 「君には、君だけが持つ特別な力が眠っているんじゃないかって事だ。いや、その力はすでに目覚めているんじゃないかな?」 ルイズは肩に力を入れて硬直し、ユーノも全身の毛を逆立てる。 心当たりがあることおびただしい。 「そ、そ、そ、そんなことありません。今でも普通の魔法は失敗ばかりで……」 「ははは。じゃあ、普通でない魔法は失敗しないのかな?」 また体が硬直する。心臓もびくっとする。 「そ、そう言う意味じゃなくて」 「はは。ごめんごめん。だけど王女殿下も同じようなことを言ってたよ」 「姫さまが……」 口ごもるルイズ。 ワルドはルイズのグラスにワインをつぐ。 ルイズがそれを口に入れたところで、ワルドは本題を切り出した。 「ルイズ、この任務が終わったら結婚しよう」 突然の申し出にルイズも驚いたが、ユーノはもっと驚いた。 生まれて初めて目撃するプロポーズ。 しかも、ミッドチルダで見るようなドラマや映画と言ったお話ではない。 リアルの、本物なのだ。 とりあえず、ルイズの足下は居心地が悪すぎる。 あわてて走り回って 「きゅうっ」 壁にぶつかってしまった。とても頭が痛い。 そんなユーノを知ってか知らずか、ワルドはルイズの答えを静かに待っている。 「でも……」 「でも?」 「私、ワルドが言うようなメイジじゃないし。それに、それに……」 「誰かすでに君の心にもうすんでいるのかな?」 ルイズは息をのむ。そして、息を吐こうとしてもう一度飲む。 そのときルイズの頭を一瞬よぎった顔があったからだ。 それがよりにもよって、人間のユーノだったから。 ──な、な、な、な、なんでよりにもよって!しかも、人間じゃなくて使い魔なのよ! 焦点が定まらなくなるルイズの耳元でワルドがささやいた。 「それでも良いさ。だけど、ルイズ。僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは、国を……このハルケギニアを動かすような男になりたいと思っている」 緊張と鼓動の高まるルイズからワルドは少し離れた。 「そのときは君に僕の側にいて欲しいと思っている。僕には君が必要だ。そのことは覚えていて欲しい」 「ワルド……」 ようやく出るようになった声をつぶやきながら、ルイズはワルドを見上げた。 「疲れてしまったようだね。もう、寝たほうがいい」 ワルドはそう言うと扉を開けた。 寝室への扉ではなく、この客室の扉だ。 「まだ早いようだから、僕は別の部屋を取ろう。おやすみ、ルイズ」 ワルドのいなくなった部屋でルイズはユーノを抱き上げ、こぶのできた頭に手を当てた。 机に体を預けたルイズは、ルイズは何度もため息をついている。 ユーノは机に乗せられてルイズと何度となく視線を合わせていたが、どうにもこうにも何を言ったらいいかわらかなかった。 「ねえ、ユーノ。私……結婚申し込まれちゃった」 わけのわからない気まずさの中、先に話し出したのはルイズだった。 「そ、そうだね」 「どう思う?」 「ど、どうって……どうって」 どう答えればいいかとっさにわからない。 わかるはずがない。わかりようがない。 だって、ユーノはまだ9歳だから。 だけどルイズが聞いているのだから、何か答えなければいけない。 「え、えーと。ワルドさんっていい人だよね」 「うん」 「ルイズにとっても優しいし」 「うん」 「ルイズのこともよく知ってるし……それから貴族で、軍人でルイズのことを守ってくれそうだし」 「うん、うん」 「ルイズのことが好きみたいだし」 「そう、だと思う」 「ルイズもワルドさんの事が好きなんでしょ?」 「そう、なのかな」 「だったら、結婚して良いんじゃないかな」 「ん……」 ルイズは伏せた体を起こし、机に手をついてユーノに顔をぐっと近づけた。 「ユーノはそれで良いの?」 「え?」 「他にないの?」 「え?」 「こー、寂しいとか…」 「うん。ルイズが結婚したら寂しくなるかも知れないね。でも、ルイズのためになるなら……」 そのとたん、ルイズの中で何かが切れた。 何かはわからないがとにかく切れたのだ。 「!!!ユーノっ」 「は、はいっ」 机をひっくり返るほど強く叩いた後は、足音を鳴らして部屋の外へ。 どかどかどか 「ルイズ、どこ行くの?」 「キュルケたちの部屋」 「ぼ、僕も」 「ユーノはここ!良いわね!」 「う、うん」 ルイズが思い切り強く扉を閉めたせいで部屋全体が揺れる。 宿で一番の高級な部屋にはフェレットのユーノだけになってしまった。 さて、ここはキュルケとタバサの相部屋である。 そろそろ布団に入ろうとしたところで、扉がノックされた。 ノックと言うより、叩きめすと言った方が良いかもしれない荒々しさだ。 鍵を開けると、ルイズが何も言わずに入ってくる。 しかも、これまた何も言わずにキュルケのベッドに一直線。 そのまま潜り込んでしまう。 「ちょっと、ルイズ。ここは私の部屋よ!」 「今日はここで寝る!」 「あなたの部屋はどうしたの?あの、ワルド子爵は?」 「良いの!今日はここで寝るの!」 「私はどうするのよ!」 「私の部屋で寝て!」 「あのね……」 その後、ルイズはもう何も言わない。揺すっても、叩いても動かない。 キュルケはしかたなく肩をすくめて部屋を出て、後のことはタバサに任せることにした。 結局キュルケは元はルイズとワルドの相部屋だった部屋で一人になっていた。 正確には一人ではない。 フェレットのユーノがいる。 キュルケは部屋にまだ余っていたワインの瓶を傾け、ユーノに聞いた。 「ねえ、何があったの?」 ユーノはただ首をかしげるだけだった。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ