約 454,631 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/100.html
司書長が自分探しの旅に出たようです 日々忙殺され、意識しないと自宅だと感じられない程、使っていない自宅。夕方、普段に比べ数段早く仕事をあがり、疲れた体を引きずって、何とか帰り着き、ほっと一息ついた。 燃料補給を訴える腹を黙らせるために、何か無いかと冷蔵庫を開けた。常に飲み物か固形栄養食品しか入れていない冷蔵庫は、見事に空っぽだった。 ――――何か音がする。どこかで聞いたことのあるような、懐かしい音した。 仕方ないと、財布を手に取り再び外へ出た。何も食べずに寝てしまおうかと思ったが、何か胃に入れなければ眠れそうになかった。 適当に買った携帯食料片手に、自宅に向かう。帰る、とは考えられなかった。感じられなかった。 そろそろ自宅に着くな、そんな風に思っていると、一陣の強い風が吹いた。 何とはなしに、顔を上げた。 綺麗な夕日が、空を紅く染め、ビルの合間の地平線に沈んでいった。 ――――何か、音が聞こえる。いつか、どこかで聞いた音だった。 食事を済ませ、寝床に入る。もう一刻も早く寝てしまいたかった、はずなのに、眠れない。 4日前、緊急で資料を請求してきたどこぞの馬の骨提督の資料を、三日三晩寝ずに仕上げ、送りつけた。体は確かに休息を求めているはずなのに、意識は沈むことはない。 ――――また、音がした。どこか寂しさを感じさせる音だった。 何なのだろう、このさっきから聞こえる音は。耳をふさいでも聞こえてくる、この音は。 どこかで聞いたことがあると、記憶が叫ぶ。ならばと記憶を遡っていくと、その正体に辿り着いた。 身体が跳ね起きた。聞こえてくる音が何なのか理解した瞬間、もう、寝るという意志は消え失せていた。 「ああ、そうか」 音が聞こえる。 「これって」 音が聞こえる。 ――――――――僕が空っぽだから聞こえる音なんだ。 「また、聞こえるようになっちゃったな…」 聞き覚えがあるはずだった。かつていくらでも耳にしていた音だったから。 スクライアのみんなといたときから聞こえていた。なのはたちと出会って、ともに過ごすうちに聞こえなくなった。なのはたちから離れ、独り別な道を進んでから、また耳にするようになった。最近、ヴィヴィオを通じてなのはたちと触れあうようになって、また聞こえなくなった。 「そっか。僕、今、空っぽなんだ」 どうして? 何故? 今僕は充実しているんじゃないのか? いくつもいくつも問いかける。そして理解した。 ――――答は今のユーノ・スクライアの中には無かった。 ********** アルフはユーノの自宅を訪れていた。 ユーノが始業時間になっても無限書庫に現れなかったためだ。 これまで、アルフが無限書庫に顔を出すようになる以前から、ユーノが無断欠勤したなどという話は聞いたことがない。 責任感が人一倍強く、他者に迷惑をかけることを人一倍忌避するような男だ。だからこそおかしかった。 まさか自宅で倒れているのでは――――古参の司書とアルフは同時に思い当たった。 すわ一大事と最古参にして主席司書に一時業務指揮を任せ、昨日ユーノが帰宅しているはずのユーノの自宅を訪れたのだった。 ――――その結果目にしたものは、人の体温が微塵も感じられない、殺風景な部屋だった。 昨日食べたと思われる栄養食品の空箱、食卓に起きっぱなしの使用済みのマグカップが、唯一生活の足跡を残していた。 そして。その部屋にユーノ・スクライアはいなかった。 ********** ――――ユーノ・スクライア無限書庫司書長、失踪す―――― この報は、瞬く間に管理局全体を駆け巡った。 すぐさまユーノに近しかった者は出頭を命じられ、簡単な事情聴取を受けた。これには、ユーノが誘拐されたのではないか、という懸念があったためである。 本局には秘密裏に捜索本部が設置され、管理局は上に下にの大騒動に陥った。 そして、取り調べを受けたユーノと親交が深かったものが、少しでも情報を共有しようと集まった。 「現状、ユーノが居なくても動くようにはなっているんだ、無限書庫も。ただ、ユーノが欠けちまうと無限書庫は良くて八割程度しか機能しない」 「ユーノ君…どこ行っちゃったのかな…」 「一応今はクロノ君やリンディさんが手ぇ回してくれはったお蔭でユーノ君は有給消化を兼ねた遺跡発掘に出かけたっちゅうことになっとる」 「ユーノ…やっぱりクロノの鬼のような資料請求に嫌気がさして…」 「一応捜索は続いているが…まだ誘拐の線では何も浮かばないな。ユーノに何かあったのでは、というのが捜索当局の見解だ」 「ユーノの財布は部屋になかった。多分財布の中にキャッシュカードとかも入ってるとは思うんだがねぇ」 「そっちはどうなの、クロノ君」 「引き落とされた形跡なし、だな」 「ユーノ君、まさかどっかで野垂れ死んだとかじゃ…」 「はやて!!」 そんな心配をよそに、ユーノは世界を渡り歩いていた。 「何、やってるんだろ、僕」 一通のメールが、事態をより加速させる。 『生きてます。旅に出ています。ユーノ・スクライア』 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 そのメールを見たときの各人の反応を以下に記す。 「…何が生きてますだあんのおとぼけフェレットオオオオオっ!!」 「そんなことよりちゃんと理由を説明しろオオオオオッ!!」 「よかった…ユーノ君、ぶじなんだ…本当に…良かった…」 「うん…ユーノ…無事みたいだ…」 「はは…なんや気い抜けてまうな、こないなメール見せられると…」 「「「でも、理由は?」」」 何となく理由を察した人たち。 「レティ…私、なんとなくだけどユーノ君がふらっといなくなった理由、分かった気がするわ…」 「リンディ。私も何となくだけど察したの。察しちゃったんだけど、その、ね…」 「ねぇ父さん。スクライア先生、どちらへ行かれてしまわれたんでしょうか…」 「ああん。なんでまた…あー。先生と仲が良かった八神やらは気落ちしちまってるんだったな」 「ええ。見てて気の毒なくらいで…」 「放っとけ放っとけ。その内ヒョロっと戻ってくらぁな」 「何でわかるんですか」 「あ?そんなの簡単だっつーの。まだ先生だって20かそこらだ。道に惑い、迷うこともあらぁな」 「???」 ヴィヴィオが純粋無垢な目で、最古参司書に問う。 「ししょさんししょさん、ユーノさんいつ帰ってくるの?」 「…んー…多分、自分を見つけたら帰ってくるんじゃないかな」 「じぶんー?」 「そう、自分…言ってて背中が痒くなってきた…」 自分探しの旅にてユーノが出会った老人が、彼を答へと導く。 「お若いの。あなたは何か探しておるようですのう」 「はは、未だ手がかりすら掴めませんよ」 「でしたら時には神秘に頼ってみるのもよろしかろうて、着いてきなされ」 「この洞窟は…」 「この洞窟は反省の道と呼ばれておる」 ********** 反省の道と呼ばれる明かり一つない暗闇の中を、ユーノは独り歩く。歩いていく内に、不思議と今まで自分が歩んできた人生が脳裏に浮かぶ。 ――――スクライアのみんなと過ごした。家族との一時。 ――――ジュエルシードから始まった出会いと事件の連続。友との一時。 ――――親しい人たちとさらに親しくなりながら、新たな縁を紡いでいく。仲間との一時。 ――――常に誰かと共にあった。例え遠く離れていても、絆でつながっていた。 ――――僕は(君は)独りなんかじゃないよ。 その声が聞こえた瞬間。うるさいほど聞こえていた空っぽな音は、消えていた。 帰ろう、大切な人達が待つ場所へ。 「ご老体、ありがとうございました」 「ほっほっほっ。良い顔になりましたのう。見つけましたか、あなたの探し物を」 「はい!」 「若かろうが、年を重ねようが、人は迷い、惑いましょう。大いに迷いなさい。幾らでも惑いなさい。その迷いも惑いも、あなたの人生を彩っていくでしょう…ほほっ、少々説教臭くなりましたな」 「いいえ。ご教授、ありがとうございます」 かくして青年は舞い戻る。まだまだこの先、迷うことも、惑うことも多々あるだろう。ただ、迷うことも惑うことも必要なのだと理解した青年の往く道には、きっと幸あることだろう。 「ほっほっほ。久々に良い青年とあえたのう…これだから人間は面白い。精一杯日々を生き、精一杯悩みたまえ、青年」 青年を見守った老人は、反省の道の闇の中へと消えていった。後に青年は、反省の道を再度見ようと訪れるが、そのようなものは見つからなかったと言う。 お・ま・け 「まったく…なんで僕がフェレットの巣の管理なんか…」 「仕方ないだろう?なのはやフェイト、はやてに任せようとしたらユーノが帰ってくるまで部屋にいるとか言いだしたんだから…クロノ、どうしたんだい」 「…アルフ、鍵が開いてる。空き巣かもしれん、準備を」 「…OK」 強く開け放たれる扉、デュランダルとS2Uを構えて突入したクロノとアルフが見たものは。 「はぁっ!?クロノ!?アルフまで!?何勝手に入って来てんのさ!?」 「……」 「……」 「今着替えちゃうからちょっと出てってよ!ってか扉閉めろよな!」 そこにいたのはシャワーを浴びたばかりの、半裸の家主だった。 「……アルフ」 「……OK」 「へ?いや、どしたのクロノ、アルフー?なんでそんな満面の笑みなの、なんで拳握ってるの、なんでデバイス機動状態のままなの、なんでにじり寄ってくるの!?ねぇ!?」 提督と使い魔は、満面の笑みを張り付けたまま息を吸い込み、叫んだ。 『帰ってきたんなら挨拶ぐらいしろーっ!!このど阿呆!!』 ――――後に、あのコンビネーションはそうそう見れるものではない、と、青年は語ったという。 お・ま・け そのに 「ユーノ君はほっとくと勝手に悩んじゃって勝手に苦しむの」 「あんな部屋じゃ、ユーノが独りだと思いこんじゃうのも当然だよ」 「せやから、うちらがユーノ君の部屋を、帰るべき暖かいもんを作ったる」 「え、いや…僕の帰る場所は、無限書庫だと…おも…う…のですょ?」 「「「何か言った?」」」 「あ、いえ、何でもないです、はい」 「やっぱり私とフェイトちゃんで…」 「うん。ヴィヴィオも喜ぶよ、きっと」 「ほんなら2人がちょっと都合着かんときはうちに招くっちゅーんでええよね」 「…世界はこんなはずじゃなかったことばっかりだよ…」 「わーい、ユーノさんといっしょー♪」 終われ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/847.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 光が顔に当たる感覚でフェレットは目がさめた。 まぶたを開けて首を動かし顔を上に上げると朝日が見えた。 今度は正面を見る。 するとジト目で睨みつけてくる巨大な人間の顔が見えた。 まあ、フェレットに比べればどの人間の顔も巨大なわけであるが。 「わああっ」 驚いて飛び起きるフェレットにルイズはやけに迫力のあるさわやかな挨拶をした。 「おはよう。よく寝てたわね」 フェレットが首をこくこくと何回も振る。 ルイズは動物の表情を見分けることなんでできないし、コントラクト・サーヴァントも使ってないからフェレットの仕草がなにを意味しているかは普通わからない。 でも、このときは何故かそのフェレットが人間であるように首を振る仕草が「はい」を意味しているのだとよくわかった。 「その……ルイズさん。ありがとう」 少し怯えながらフェレットはぺこりと頭を下げる。 きっとあれから、ずっと看病してくれてたんだろう。 よく観るとルイズの目の下にはくまができている。 体にも上手ではないものの丁寧に包帯が巻かれて薬も塗られていた。 「いいわよ。私の使い魔だもの。で……いろいろ話してもらうわよ」 妙に迫力があった。 「は、はい」 フェレットは緊張して背筋を伸ばした。 「じゃあ、まずは人間の姿になってみて」 「はい」 傷に障ったら大変だ。 ルイズは床に飛び降りようとするフェレットを止め、抱いて下ろしてやる。 床に立ったフェレットは体を発光させ、徐々に大きくなって 「やっぱりね……で、フェレットの時も人間の時もしゃべれるわけだ」 「は、はい」 人間に姿を変える。 それを見届けたルイズは少し離れて椅子に座った。 男の子を上から下、左から右にじっくり見つめる。 トリステインでは見ない刺繍や作りの服。 それに茶色いマントを着けている。 「あんた、1年生?」 生徒達の学年はマントで判別できる。 1年生は茶色だ。 「え?ちがいます」 「本当に?」 「本当です」 そうかも知れない。 フェレットに変身したり光の壁が作れるような一年生が居たら間違いなく評判になっているはずだが、そんな噂は聞いたことはない。 どうやら一年生を召喚したわけではないようでほっとする。 「次はあんたの名前を教えなさいよ」 「ユーノ・スクライアと言います。スクライアは部族名ですから、名前はユーノです」 ルイズはスクライアという部族を聞いたことがない。 もしかしたら辺境の方にはそういう部族があるかも知れないけど。 「部族名を名乗るって事は、ユーノは族長の息子かなにかなの?」 小さくても部族の長に連なるものならば貴族として扱うのが慣例である。 「いえ、そういうわけじゃないんです」 「じゃあ、ユーノは貴族とかそういうのじゃないのね」 「はい」 「平民か……喋るフェレットの部族の」 ルイズの最後のつぶやきはユーノには聞こえなかった。 「次。昨日のあれはなに?」 「あれは、ジュエルシードです。ジュエルシードは僕らの世界の古代遺産なんです。本来は手にした者の願いを叶える魔法の石なんですけど、力の発現が不安定で……夕べみたいに単体で暴走して、使用者を含めて周囲に危害を与える場合もあるし、たまたま見つけた人や動物が間違って使用してしまってそれを取り込んで暴走することもあります」 「そんなのがどうして学院の外の森なんかにあったのよ」 うつむいたユーノが言葉を続けた。 「僕のせいなんです。僕は故郷で遺跡発掘の仕事をして居るんです。それである日、古い遺跡であれを発見して調査団に依頼して保管してもらったんです」 「調査団……アカデミーみたいなものかしら」 ルイズはユーノの言葉を遮らない程度につぶやいた。 「運んでいた船が事故か……何らかの人為的災害に遭ってしまって21個のジュエルシードはこの世界に散らばってしまいました」 「ちょっと待って!」 ルイズが声を上げてユーノの言葉を止める。 「船の事故はユーノのせいじゃないんでしょ?} 「はい」 「だったらユーノは関係ないじゃない!」 「だけど、あれを見つけてしまったのは僕だから……全部見つけて、ちゃんとあるべき場所に返さないとダメだから」 泣いているような声が聞こえた。 「だから、ルイズさん。昨夜のこと、ありがとうございました。だから、いつか……お礼はします。必ずします」 当然よ。 ルイズは椅子の背もたれにふんぞり返る。 「でも、それはジュエルシードが集まるまで待ってください」 ルイズは2回相づちを打つ。 「僕はこれから探しに行きます。さようなら」 「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさい!!」 フライを使おうとしているのか窓に歩いていくユーノを引き留めた。 「ユーノは私が使い魔として呼び出したのよ!そんな勝手なこと許せるはずないじゃない!」 「使い魔?」 「そうよ。使い魔よ」 ユーノには心当たりがあった。 意識は霞んでいたが、突然ルイズが目の前にいたことは覚えている。 あれはルイズが突然現れたのではなく自分が召喚されたのかも知れない。 「ごめんなさい。使い魔はできません。僕はジュエルシードを集めないといけないから」 「それでもよ!」 「でも、ぼくが見つけてしまったから!」 「あぁあーーーーっ、もうっ」 ルイズが腕を振り回す。 「そのジュエルシード集め、これがいるん必要なんでしょ」 昨夜からずっと持っている赤い宝石──レイジングハートをユーノに突きつける。 宝石の名前は宝石自身が教えてくれた。 「返さないわよ!!!」 ユーノはレイジングハートとルイズを見比べる。 「それは……ルイズさんに差し上げます。昨日のお礼です」 「封印にはこれが必要なんでしょ?」 「それでも、やらないといけないから……何とかします」 「こ、こ、ここここ、この強情っぱり!!!いいわよ、ジェルシード集め。私がやってあげるわよ!!」 周りに響きそうなほどルイズが大声を上げる。 「え、でも、危険です」 「いいの!やるの!その代わり、ユーノ!!21個も集めるんだからお礼はレイジングハートだけじゃ足りないわ」 ルイズの細い眉がびっくりするほどつり上がっていく。 「は、はい」 「先払いしてもらうわ。あなたが私の使い魔になること!それがお礼よ!!!」 「は……はい」 気圧されるユーノにルイズが顔を近づける。 「使い魔って、わかってるんでしょうね」 「僕の世界にもあるから……だいたいは」 「だいたいじゃいけないわ。説明してあげる。まず、使い魔は目となり耳となるの。わかる?」 「うん、感覚を共有するって事ですね」 その的を射た返答にルイズは少し落ち着いた。 「次に、主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば、秘薬の材料とか」 「……やってみます」 「それから、主人を守るの。その力で、主人を敵から守るの」 「わかりました」 ルイズは満足する。物わかりのいい子だ。 「あの、ルイズさん」 「なに?」 「いつまで使い魔をすれば良いんですか?」 ルイズの目がまたつり上がる。 それを見てユーノはあわてる。 「ぼ、僕の世界の使い魔は、大抵使い魔になる期間を決めるんです。1ヶ月とか、1年とか……なにか目標を達成するまでとか」 「ユーノの知ってる使い魔がどうかは知らないけど私の使い魔は一生よ」 「一生?」 「そう、一生。私かユーノが死ぬまで!今更嫌だって言うのは無しよ!これはもう決まったことなの。私はジュエルシードを探す。ユーノは私の使い魔になる!わかったわね」 ユーノは少し考える。 「どうしたのよ」 「わかりました。ルイズさんがジュエルシードを探してくれるのなら」 「一生よ!」 「はい」 「死ぬまでよ」 「はい。僕はルイズさんをずっと守ります」 ユーノがルイズを正面から見て宣言した。 ルイズはユーノの言葉に満足したが、正面から言われるとなんとなく意味が違うような気もして顔が少し赤くなった。 「いいわ。じゃあ、コンストラクト・サーヴァントを使うわ。その前に……」 「はい」 「ユーノ、昨日はもっと違う話し方してたでしょ。貴族に対する話し方は今みたいな方がいいけど、ユーノには似合わない気がするから私には昨日みたいに話して。良いわね」 「わかりました……じゃなく、わかったよルイズ。これで良いかな?」 ルイズは満足げに笑う。 「始めるわよ。ユーノ、まずそこに立って」 「ここだね」 ルイズはユーノと向かい合う場所に立つ。 「じっとしててね」 ユーノの方が少し背が低い。 ルイズはやりにくいので、ユーノの顎に手を当てて少し上を向かせた。 今度こそとユーノを見ると彼の目が間近から見えてどきっとした。 「ユーノ、ちょっと目を閉じて」 「え?」 「良いから閉じる!」 「はい」 あわてて目を閉じるユーノ。 「いくわよ……」 ルイズは息を大きく吸い込んだ。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 「all right.」 レイジングハートの光をあびながらユーノにキス。 「ん……」 あわてて体を離そうとするユーノを押さえた。 今、離れられたら契約できない。 扉が開いた。そういえばルイズは帰ってきて鍵を閉めるのを忘れていた。 「おはよう。ルイズ」 扉の向こうから現れたのはキュルケ。 「どう?使い魔の様子は。コンストラクト・サーヴァントはもうすませ……」 キュルケの言葉と動きが止まる。 ルイズも視線だけを動かして、キュルケを見つめて動きを止める。 「ル、ル、ル、ルイズがおと……」 ルイズは扉の方にダッシュした。 すごい速度だ。 扉の端を掴み、渾身の力でキュルケにぶち当たれとばかりに扉を閉める。 「!!!!!」 何か変な声がした。 「ユーノ、フェレットに戻って。早く。早く」 「う……うん、でも、これ……」 ユーノの体は急に熱を持っていた。 苦しむ体を押さえながら、姿をフェレットに変えていく。 「大丈夫よ。ルーンを刻んでいるだけだから」 床に倒れたフェレットのユーノを抱き上げたとき、もう一度キュルケが扉を開けて入ってきた。 「なにするのよ!ルイズ」 「ご、ご、ごめんなさいキュルケ」 「ま、いいわ。それにしても驚いたわ。ルイズが部屋に男を連れ込むなんて。誰よ、紹介して」 「な、何の話かしら」 ルイズは明後日の方向を見てごまかそうとする。 「なに、照れてるの。確かここに……あれ?」 部屋を見回すがキュルケがいくら見ても誰もいない。 ついにはタンスを開いたり窓の外を見たりもしたがルイズは放っておいた。 「おっかしいわね……確かルイズが男の子とキスしてたんだけど……」 「あ、それね」 ルイズはユーノを見せる。 「今、コンストラクト・サーヴァントを終わらせたの。それを見間違えたんじゃない?」 「そう?」 「そうよ。そう、そうに決まってるわ」 まだ部屋の中を見回すキュルケを何とかするのにルイズは全力を尽くさなければならなかった。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/34.html
94 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 15 45 43 ID yGrGy1Hq なんか電波が 「ねぇ、ユーノ君」 「何?なのは」 「レイジングハート、借りっ放しで良いのかな?」 「ああ、その事か。良いんだよ、レイジングハートはもうなのはの物だよ」 「え?どうして?」 「スクライアには『三日の掟』ってのがあってね。簡単に言うと、僕がなのはにレイジングハートを貸してから三日経った時点で、レイジングハートはなのはの物になるんだ」 「へ~。おもしろいね」 いや、ザブングル見てたら思い付いたんだ。 ちなみに司書長がジュエルシード追いかけて来たのは、三日の掟を破って……それが原因で一族を追放されてしまった、と。 95 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 15 51 32 ID bDWMM7vU _ 94 なんだろう、なんか一部の人が合法的に司書長の物を 強奪しっててる姿がみえてしまったんだが・・・。 96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 15 54 34 ID l2MlCwLO _ 94 むしろ司書長はアーサーだろうよ…三人娘がラグ達のアレをするとかww 97 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 15 57 40 ID ENGv+LSD _ 94 「もう十年以上一緒だよね」 「そうだね、なのは」 「三日の掟に従えばユーノくんは・・・」 「「ちょっとまって!(まちい!)なのは!(なのはちゃん!)」」 三日程度ならば誰でも所有権を主張できますので結局は大運動会です>< 99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 16 08 43 ID wSK/MSi0 _ 94 プレシア「ジュエルシードは私のモノよ!」 ユーノ「えーっと……あ、三日経ったんでいいですよ。新しく奪うのはダメですが」 プレシア「あらありがとう」 ユーノ「いえ、掟ですから」 プレシア「ケーキ食べていく?」 ユーノ「いただきます」 なのは「あー、ウチのケーキだ!」 プレシア「あらそうなの? とっても美味しいわよ」 なのは「あ、ありがとうございます」 ユーノ「よかったね、なのは」 フェイト「……あれぇ……?」 滞在三日後。 プレシア「それじゃあ、三日経ったから二人は私のモノね」 ユーノ「その発想はありませんでした。僕たちの負けですね」 なのは「しかたないよね」 プレシア「それじゃ、ジュエルシードを頂戴」 なのは「はい、どうぞ」 プレシア「いい子ね。アリシア復活させたら、またお茶にしましょう」 ユーノ「アリシアか、復活するといいね」 なのは「そうだね、ユーノくん」 フェイト「……あれれぇ……?」 アリシア「大復活!!」 プレシア「アリシア!! それじゃ、みんなでお茶にしましょう!」 なのは「お母さんに頼んでホールケーキ作って貰いました!」 ユーノ「僕からは手作りの飾りを。スクライアに伝わってるお守りです」 アリシア「わーいありがとー!」 プレシア「使い終わったジュエルシードは返すわね」 ユーノ「はい。ありがとうございます」 フェイト「…………」 なのは「フェイトちゃんもおいでよ! ね、プレシアさん!」 ユーノ「そうだよ。一緒にお祝いしようよ! ね、プレシアさん」 プレシア「……そうね。三日経てば私のモノだものね。フェイトも来なさい」 フェイト「……母さん……ううっ」 アルフ「良かったね、フェイト」 ………………………………………………完結!! 100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 16 14 38 ID wSK/MSi0 あ、盗みはノーカンか。 何事もなかったていで再開しれくりゃれ。 101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 16 28 26 ID JAF4CWTt 一回ユーノきゅんの唇を奪えば三日後からは合法的にキスし続けられる なんて素晴らしい制度だ 61スレ なのは フェイト プレシア 小ネタ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/307.html
とりあえずは電波の命ずるままに書いてみたよ xyKvcdjk ―――今回の事件をすべて見てきた僕が言いたいことは、ただひとつ。 女性が奇麗でありたいという衝動は、弱い自分が嫌いな自分に勝つことや 守りたい者を守るために強くあろうとする事とは、あまりにかけ離れた真似だったということです。 ××/○○ ユーノ・スクライア司書の手記より。 「ふぅ~~気持ちいいぃ~~」 ――――高町家浴場。 特性桶風呂(なのは製作)を堪能する一匹のフェレットの喘ぎ声がした。 フェレットが喋るなんて怪現象(丁寧にちびタオルを頭に載せて、起用に前足で抑えている) 同伴する二人の住民にとっては些細な問題である。むしろ可愛らしい程に。 「にゃははは、ユーノ君まるでお父さんみたいなこといってるよ」 「駄目だよ 恭ちゃんみたいに若年寄になったら、なのはが悲しむって」 そんな様子が可笑しかったのか。 同じお風呂に入っていた高町なのはと高町美由希は体を洗う手を止めて思わずくすくすと笑う。 「そんな事いわれましてもね……気持ちいいのは事実なんですし、久しぶりなんですから~」 「はぁ、そういうくらいなら普段からもっと衛生管理に気を回そうよ。 ご飯食べたりお風呂は言ったりするのは大事なことだよ」 なのはに言われて、ふと数時間前の自分の状態を思い出すユーノ。 久々に管理局から帰る道のりがかち合った二人。 司書の活動ぶりや武装隊の訓練メニューや今は遠い教導隊の人達のすごさとか話していた二人。 高町家についた途端に「せっかくだから一緒にお風呂入ろうよ」という誘惑に乗ったのはいいけど、 行った先には美由希という先客。 気にせずに「あら?二人と一緒に入るのも悪くはないかな」と断言するも、 揺れる女の魅力にKOしたユーノがフェレット変身という自体である。 「はぁ、管理局のお仕事ってそんなに大変なんだ……あっ、背中痛くない?」 「うん、ぜんぜん平気だよ~」 髪を洗う小さななのはの背中をこする美由希……隠されてない魅惑の肢体に目が行きがちになるユーノ。 だけどフェレット状態では本能が勝るのか、むしろ隠しても見せ付けてくるので諦めて眺めている。 「武装隊と無限書庫ではかなり程度の差はありますけどね」 「うそだよ、それ。クロノ君とか外と内でも激務なのは変わりないっていってるよ」 だったら少しは労いの言葉なり人員補給をしてもらいたいものだ、と愚痴を零しそうになる。 「はいはい。家に帰ってまでお仕事の話はしないの。ユーノ来なさい。体を洗ってあげるわよ」 「いいんですか?」 「もちのろんよ。なんなら人間の方が洗いやすくてしてあげてもいいんだけど……」 「み、美由希さん!!!!」「あわわわわあ、お姉ちゃん!!」 突然の誘惑発言にあせるお子ちゃま二人。もちろん、美由希に笑われた。 「うそうそ、可愛い妹の彼氏の裸を妄りに見ようなんてしないって」 「お、お姉ちゃん……からかうなんてひどいよ」 「まあまあ、ほら来なさいよユーノ」 「それじゃあ、よろしくお願いします……」 来い来いとスポンジを持ったまま、指で催促されて、桶風呂があがるユーノ。 慣れた動作で美由希の膝の上に乗ると、されるがままに優しく全身を擦られ始める。 専用の薬用シャンプーですでにユーノの体は顔以外は真っ白に染め上がり、 またしても顔は快楽にとろける始末。 「はうぅぅ~~美由希さんの指使いうますぎ~~あうう~~」 「声までとろけちゃって可愛いすぎだよ、ユーノ。ほらサービスサービス~」 「み、美由希さん?いったいなに……んにゃああ!?!?!?!?!?」 声色からいやな予感を感じたが予感的中。 スポンジから豊満な胸スポンジによる全身揉み荒いが開始されてしまった。 「お姉ちゃん??」 ちなみになのはの視界はシャンプーによりゼロです。 「な、なのは!助けてく……」 「気にしない気にしない。なのははゆっくり髪を洗えばいいからね」 「へっ????」 小首を傾げながらも姉の言うことには素直に従う小学4年生。 以降は、むにゅむにゅ地獄を味わうユーノの悲鳴は泡を取り落として激怒するまで続きましたとさ。 ―――この後に、異常につるつるになった美由希のボディが切欠で一連の騒動が始まることが知らずに。 27スレ SS ユーノ ユーノ・スクライア 高町なのは 高町美由希
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1684.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ルイズの生活で変わったのは早朝の練習だけではない。 放課後も少し変わってしまった。 今までのように宿題に予習、復習をすませてしまった後はユーノが言うところのミッドチルダ式の魔法を使うために必要な勉強が待っている。 ユーノが先生になっての1対1の授業にルイズは1つの感想を持っていた。 「ユーノを甘く見てたわ」 ユーノは幼い見かけによらず先生としてはかなり厳しいのだ。 別に手をあげたり、怒鳴ったりするわけではないがとにかく手をゆるめない。 しかも 「学院でいつか勉強するんならいいんだけど、そうじゃないみたいだから」 と言って今まで聞いたこともないようなことまで勉強することになっていた。 「ユーノ、ここはこれでいいのね」 今日もユーノが口頭で伝えることを羊皮紙に書いていく。 ユーノがまだ読み書きを覚えていないので教えられたことをまとめているのだ。 今、書いていっているのは、なんでもモノが動くときの法則らしい。 ルイズがいきなり空を飛ぶようになったので、安全に飛ぶためにはこれを覚えないといけないそうだ。 「それでいいよ。それで次は……」 ユーノは新しい羊皮紙を出して、それに不思議な図形を書いていく。 だが、それよりもルイズにとってはこの少年に姿を変えるフェレットのほうがずっと不思議で、ペンを走らせる手元よりまだ幼い顔のほうを見上げていた。 扉のノブを回す音が聞こえた。 近頃この音には敏感になっている。そうでないと困るからだ。 ユーノとルイズは目をあわせた。 その途端、扉が勢いをつけて開けられる。 ユーノは素早く変身。 人間の姿からフェレットの姿に変わる。 「ルイズー、いる?」 いつも通りノックもせずに入ってきたのはキュルケだ。 「いるわよ。で、なんの用?」 キュルケはルイズの部屋をじっくり物色。 「別にないわよ。あなたの部屋から声がしたから男でも来てるのかと思ったのよ」 「来るわけないでしょ!」 「ホントに?」 「ホントよ!」 「隠さずに教えなさいよ」 「いないって言ってるでしょ!」 近頃キュルケはルイズの部屋に奇襲をかけてくる。 どうやら、ルイズが謎の少年を隠していると考えて、それを暴こうとしているらしい。 「それにしても……」 キュルケはゆっくり床を見回す。 「ルイズ、あなた、部屋を散らかしすぎよ」 ルイズの部屋は羊皮紙で溢れていた。 今まで学んだことの証なのだが、まだそれらは整理できていない。 「一体、近頃何を書いているのよ」 キュルケが床に落ちている羊皮紙を一枚取ろうとするのを見てルイズは大いに慌てた。 「止めて、キュルケ!動かさないで!」 「なに言ってるのよ。こんなに散らかっているのよ。一枚くらい動かしてもいいじゃない」 「私にはわかるように置いてあるの!!!」 必死である。 今動かされてはページのつながりが何が何だかわからなくなってしまう。 ルイズの血走りそうな目を見てキュルケは後ずさる。 「わ、わかったわよ。まあ、今夜はこれでいいわ。じゃあね」 来たときと同様キュルケは唐突に部屋を出て行った。 「ふー」「ふー」 ほっと一息つく二人。今夜もユーノのことはばれずにすんだ。 「でも……」 ルイズは部屋の床を見回す。 「やっぱり、そろそろ整理しないといけないわね」 「それで私が呼ばれたのですね」 「そーよ」 ルイズの部屋に呼ばれたシエスタは針と糸で丁寧に重ねられた羊皮紙を縫い綴じていく。 床にそのまま起きっぱなしでは読み返すのにも不便なので本にして綴じてしまうことにしたのだ。 「シエスタさん、上手ですね」 「あ、はい。糸と針を使うのには慣れていますから」 作業を効率的に進めるためにシエスタとユーノが並んでいるのがなにか気になった。 ああやって、仲が良さそうに話しているのもなにか気になる。 「それにしてもユーノさんって物知りですね。本の作り方まで知ってるなんて」 製本の方法を教えたのはユーノだ。 おまけに装丁まで綺麗にしている。 「古文書の修復をしたときに教えてもらったんだ」 ルイズはユーノの知識に度々驚かされていた。 自分よりずっと小さいはずのユーノが、ずっとたくさんの知識を覚えることのできるフェレットの世界について気になることもしばしばだ。 が、今はそれより気になることがあった。 メイドとユーノが近寄っている気がした。 もう少し私の方にも近寄りなさいよ! とは言えない。 なんか知らないが言えない。 なので別のことを言うことにした。 「そこっ、口じゃなくて手を動かしなさい!まだこーーんなにあるのよ」 「はいっ」 「はい」 二人が手に集中するようになってもルイズはまだイライラしていた。 キュルケはちょっと頼みたいことがあってタバサの部屋の前まで来た。 扉をノック。 返事はない。 いつも通りだ。 もう一回叩く。 今度はノックといえるようなコンコンという音が出るような叩き方ではない。 ドンドンという音である。 これもいつも通り。 それならばとキュルケもいつもと同じ手段に出る。 扉にアンロック。 鍵は開けられてしまう。 そして、今度は扉を開ける。 「ちょっと、タバサ!」 が、部屋の主はいない。 いつもならここにいるはずなのにいない。 「タバサ、どこに行ったのかしら」 少し考えると心当たりがあった。 近頃あそこに行っていることが多い。 心当たりの場所に行っていると同級生の声がちょっと聞こえてきた。 「よかったわね。あなたの使い魔、帰ってきたのね」 「ええ。でも、火傷みたいな怪我をしているんです。戻ってきたときには誰かが手当てしてくれてたみたいなんですけど」 「まあ、その親切な方にお礼を言わねばなりませんね」 先日、ある生徒の使い魔の猫が行方不明になっているという小さな事件があった。 使い魔をなくした生徒は一日中泣いて悲しんでいたのでキュルケも気まぐれで探してみたが、やっぱり見つけることはできなかった。 その猫が戻ってきたらしい。 それならもう気にする必要はないだろう。 キュルケはそのまま素通りした。 キュルケがタバサの居場所として当たりをつけたのはここ、図書室だ。 タバサは自分が読む本は買って部屋に置いておくタイプだが、ときどき図書室に足を運ぶこともある。 ちょっと探してみると案の定、本を読んでいるタバサを見つけた。 「見つけた、見つけた。タバサー」 トリステインでも図書室では静かにするものだが、そんなのお構いなし。 自分の用事の方が大切だ。 タバサのいる机まで走って横の椅子に手をかける。 「ちょっと、いい?」 「だめ」 「なんでよ」 タバサがキュルケの言うことをこうもあっさり切り捨てることは少ない。 「友達がいる」 「……タバサ、あなた新しい友達ができたの?」 タバサはこくりとうなずく。 そういえばタバサの隣の椅子の前には本が何冊か置かれている。 タバサが持ってきた本ではないとすると、タバサの友達が持ってきた本かも知れない。 そうなると、その隣の椅子にはタバサの友達が座っていたことになる。 今いないのは本を探しに行っているのだろうか。 「ねえ、誰よ。その友達って」 キュルケはこの変わりものの新しい友達というのが少し気になった。 「そこにいる」 タバサはキュルケが座ろうとした椅子を指さす。 誰もいない。 「どこにいるのよ」 「もう少し前」 視線を前の方に動かしてもやっぱり誰もいない。 前に動かしすぎて本棚が見えてきたので視線を元に戻す。 そこで気づいた。 机の上になにかが立てられていた。 いや、立っている。 風変わりな文鎮か筆立てかと思っていたが、それはよく見ると動物だった。 さらによく観てみると、どこかで見た気がする。 間違いない。ルイズの使い魔のフェレットだ。名前はユーノと言ったはず。 「ねえ……この子が……新しい友達?」 タバサがこくりとうなずく。 どうやら冗談ではないようだ。 タバサが冗談を言う方が驚異ではあるが。 本のページをめくる音がした。 「!!!」 目をみはる。フェレットのユーノが本のページをめくっているのだ。 しかも視線の動きを追っていると本を読んでいる。 フェレットが本を!! 本を読み進めていたユーノは視線を止めた。 首をちょこんとかしげる。 他人の使い魔が何を考えているのかなんてわからない。 動物の考えを理解するのと同じだからだ。 だがキュルケにはわかった。フェレットのユーノは悩んでいる。 タバサもそれを理解したらしい。 横に重ねられていた国語辞典を広げてユーノの前に持って行き、重要そうな記述の行を指でユーノに示す。 ユーノは2回うなずく。 タバサも2回うなずき自分の本を再び読み始める。 その間にユーノは自分と同じくらいの長さがあるペンを抱えて、横に置いてある羊皮紙になにやら書き始める。 「使い魔が……読書……」 キュルケは頭がくらくらしてきた。 そのメモを見てみるとトリステインで使われている文字で単語が書かれていた。 単語の横には見たことのないが、文字とわかるもので単語が書かれている。 ゲルマニア出身のキュルケはその形式に見覚えがあった。トリステインに留学が決まった時にこれと同じようなことをしたからだ。 「ねえ、ユーノ。これってもしかして、単語帳?」 振り向いたユーノが2回うなずく。 「そ、そう……がんばってね」 キュルケは振り向いて図書館の外へ歩く。 タバサに頼もうとしていた用事は忘れてしまっていた。 図書館から出るとフレイムが扉の側で待っていた。 キュルケを見上げている。 「ねえ、フレイム。あなたも本を読んでみる?」 フレイムはあくびをしながら炎を吐いた。 ぶはっ。ぶはっ。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6789.html
前ページ魔法少女リリカルルイズ ユーノはデルフリンガーを構えたまま、祭壇に向かう。 その目はルイズも見たこともないくらいに感情が濃く滲み出ていた。 その視線を受けてもなお平静を保つワルドもまた、抜いた杖を手に出口に向かう。 「なんで……」 ワルドはユーノとの距離を一歩ずつ詰めていく。 そのたびにルイズもまた、ユーノの側に行こうと後ずさった。 「なんでルイズを裏切ったんですか!ルイズを守るんじゃなかったんですか!」 「そんなことも言ったな。だが、嘘というわけでもない。僕の目的のためにルイズは必要だ。必ず守るよ」 「ルイズがそんなので納得すると思ってるんですか?」 たどり着くと、茶色いマントの小さな背中がルイズをかばった。 それを見たワルドは杖を構え、切っ先をユーノに向ける。 「納得できないかね?それでも私に任せた方がいい。君ではルイズを守ることはできない」 「ここまで来た彼には十分守れると思うが」 ワルドの肩口にブレイドかけた杖が置かれた。 「正直どういうことかよく分からなくてね。花嫁をめぐる諍い、とでも思ったのだがそういうわけでもなさそうだ。子爵、その少年に向ける杖を納めてもらおう」 その魔法の刃をワルドの首に向けるのは、アルビオン王国の皇太子ウェールズ。 「そして目的というのを教えてもらおう」 「いいだろう」 ちらりと後ろを伺うワルドは杖を下ろし、秘めていた目的を語り始めた。 「目的は三つ。一つはルイズ、君を手に入れることだ」 「私はあなたになんか着いていかないわ!」 ユーノの肩に手を当てるルイズは迷いなく答える。 「彼と共になら行くかね」 「えあっ!?」 その時顔に一瞬だけさした朱は、次のワルドの言葉ですぐに流された。 「二つめはアンリエッタの手紙だ」 ルイズはもう一方の手でポケットを中の手紙ごと握る。 「貴様、レコン・キスタか」 全てを察したウェールズが杖を強く握りしめた。 その杖はワルドの首筋に当てられ、わずかでも動けば彼の命を奪うだろう。 既に彼には何もできない。 にもかかわらず顔色一つ変えないその姿は、ルイズの胸の中の不安を大きく育てていた。 「三つめは……」 何がこらえきれなくなったのか、ワルドは突然苦笑を浮かべた。 「ユーノ君、やはり君はルイズを守りきれないよ」 「まだ話しは終わってはいないぞ!言え、三つめの目的は何だ」 それを無視して、ワルドの視線が前後に走る。 ウェールズの杖は首筋に、ユーノのデルフリンガーは胸元に。 一本の剣と杖は確かに自らに向けられている。それがワルドの見たいことだった。 「例えば、こういうことだ」 閃光が2本、礼拝堂の中で輝いた。 一つの閃光はユーノの背中に。 自分の背中に走ったそれを感じたユーノは片手でルイズを突き飛ばす。 「きゃっ」 シールドは間に合わない。今、それを使う手はルイズをのけるために使ったからだ。 ならばガンダールヴのルーンの輝く手で持ったデルフリンガーを閃光に向けて振る。 だが、ルーンの力で獣のような早さを持っているにもかかわらず、それを上回る技でデルフリンガーは跳ね上げられ、再び走った閃光がユーノの胸を切り裂いた。 「ユーノ!」 ルイズの声がルーンの輝きをさらに増す。 胸の傷をものともせず振るわれたデルフリンガーが閃光──背後に新たに現れたワルド──を切り裂く。 直後、ユーノは両膝を床に着いた。 そしてもう一つの閃光はウェールズの肩を深々と切り裂く。 少年と王子は同時に倒れ、それを2人のワルドが見下ろしていた。 風の系統に遍在、という魔法がある。 一つ一つが別個に意志と力を持つ分身を作り出すこの魔法は、風の系統が最強と言われるゆえんでもある。 ラ・ロシェールでワルドがユーノと戦うと同時にルイズの手を引いていたのも、今また3人のワルドがここに存在するのもこの魔法のためだ。 流れる血は速やかに広がり、冷たい石畳をその色に染め上げていった。 「あ、あ、あ」 なにを言っているか、自分でもわからないルイズが見ているのは倒れているユーノだけ。 体が血で汚れるのも構わず、その体を抱き上げた。 「ユーノ、ユーノ、ユーノ!」 それを石畳よりなお冷たい目でワルドが見下ろす。 「ラ・ロシェールには居る前に使った飛行魔法を見ていたのでね。もしやと思い準備させてもらっていた」 あらかじめ礼拝堂内に遍在を隠しておいたのだ。 「だが、奇襲を相打ちに持ち込まれるとはな」 話術を持ってユーノとウェールズ、双方の注意を自身に向け、遍在から逸らし、奇襲をかける。 それは成功していた。 ウェールズが遍在を倒せず、一撃をただ受けるだけで終わってしまったことが証左である。 そこまでしてユーノを討ち取ったものの相打ちとなり、遍在を一つ消されてしまったことにワルドは内心舌を巻いていた。 「君は確かに優れた戦士だ。未だ荒削りながらもその剣技と魔法を持ってすれば勝てない相手はまずいないだろう」 足下に転がるウェールズの杖を蹴り飛ばし、ワルドはユーノとそれを抱くルイズに向け遍在を残して歩き出す。 「だが、戦いには向いていない。君は既に私の遍在を知っていたはずだ。だが、ルイズを助けようとするあまりそれを忘れた。それでは私には勝てない。ルイズを守りきれない」 ルイズを目前にワルドは足を止める。 突然に灯った光に目を焼かれたからではない。 その光の元がユーノだからであり、そのユーノが光の中で姿をフェレットに変えたからだ。 「ふ、ふははは。はははははははは」 考えてみれば単純だった事実、それに気づけなかった自分、気づけるはずもない現実。 そこからこみ上げた笑いをワルドは口元に当てた片手で握りつぶした。 「そうか、そういうことだったか。これは意外だ。ユーノとユーノ。そういうことだったか。その少年がルイズ、君の使い魔だったとはね」 絶対の優位を得て、ルイズを見下ろすワルドは落ち着き払い、そして優しげに聞いた。 「ルイズ、もう一度だ。僕と来るんだ。世界を手に入れるには君が必要だ」 万策尽きた……わけではない。レイジングハートがある。 だが、いまのルイズの心を占めるのは怯えと不安、そして恐れ。 それはルイズの心をかき乱し、自らの持つ最大の力を忘れさせていた。 「わかったわ。行くわ。だから、助けて。死んでしまうわ。お願い」 ユーノはフェレットの姿になると傷が早く治ると言っていた。 なのに、血を止めようと傷口に当てた手にはぬるりとしたものが耐える新しいものとして指の間だから零れていく。 それほどまでに傷が深い。 「それでいい」 まだ言葉だけだ。何が変わったわけでもない。 それでも、今まで押しつぶされていたようだった体がすこしだけ軽くなったように思えた。 「行こう、ルイズ」 返事はしない。喉につまったように出てこなかった。 ルイズはそれを真に望んでいたわけではないのだから。 「その前に、ユーノ君には死んでもらおう」 「え?」 立ち上がろうとした膝から力が脱ける。 足が砕け、思うように動かない。不安がよりいっそうの強さでルイズをその場につなぎ止めた。 「待って、助けてくれるって」 「助けるのは君だけだ。ユーノ君は別だ」 「でも、私が行けば良いんでしょ?ユーノは私の使い魔なのよ」 「ルイズ!」 既に心の挫けたルイズにはその言葉に逆らえない。 そうなった時に彼女を支えるべき1人は倒れ、もう1人は敵となっていた。 「小鳥を飼う時はどうするか知っているかい?逃げないように羽を切ってしまうんだよ。ユーノ君がここに来た時わかったよ。彼は君の翼だ。彼が傷を癒せば君は僕の元から逃げようとする。だから……」 それをするのが最善。 そう諭すように、彼は言った。 「翼は切ってしまおう」 「い、いや!」 「さあ」 そして、昔、小舟で泣いていた自分を迎えに来てくれた時のような微笑みさえ浮かべていた。 だけどそれは、とても、とても恐ろしいものにしかルイズには思えなかった。 (助けてあげる) それは声ではなかった。 念話と呼ばれる系統魔法にはない心で交わす言葉の魔法。 それで話されるルイズの知らない誰かの声が聞こえてきた。 (誰!?) 答えずに誰かの声はただ伝えるべき事のみを伝える。 (助けてあげる。その代わり、あなたの持つジュエルシードを一つ。私にちょうだい) (でも) 考えるべき事、考えなければならないこと。心のかき乱されルイズにはどうしたらいいかわからない。 ジュエルシードは大切。でも、ユーノの命はもっと大切。でも、ユーノはジュエルシードを集めている。それを本当に誰かに渡して良いのか。 その答えをすぐに出すことは、今のルイズにはただ普通に魔法を使う事よりも困難に思えた。 「put out.」 「え……?」 ルイズは何もしていない。 しかし、レイジングハートは独自の判断でスタンバイモードのまま限定された機能を使う。 その結果は、ルイズの目の前に青い宝石──レイジングハートに封印されていたはずのジュエルシード──という形で現れた。 突如現れた青い宝石を見ていたのはルイズだけではない。 それが突然であったが故にワルドもまた青い宝石に目を奪われた。 だからこそ、歴戦のメイジである彼もそれに対応しきることはできなかった。 「Photon lancer」 不意に天井が爆発を起こした。 稲光を纏い落下する天井の梁が狙いすまいしたようにワルドめがけて落ちてくる。 ワルドはそれに後ろに控えさせていた遍在をぶつけた。 「ちっ」 ブレイドで二分したものの、巨大な質量は止まらない。 ワルドの本体はそれを避けるためにも床に自らの体を投げ出し、ルイズから離れざるを得なかった。 梁に潰される遍在を見ながら三転、世界が回る。 立ち上がったワルドは、舞い散る埃の中に、ルイズの前に立つ新たな一つの人影を見つけた。 土煙のベールは退く。その向こうの人影は、長い金髪を二つに結び、黒い杖を持つ、黒い衣装のメイジだった。 「何者だ」 黒いメイジの少女は奇妙な装飾を施した杖を振った。 ルイズの目の前に浮かんでいた青い宝石は、瞬きの内に装飾の一部を成す金の宝玉の中に消える。 それからやっと、少女は答えた。 「フェイト」 「なら、そのフェイトは何をしにここに来たのかな」 フェイトはワルドの視線からルイズを守るように立ちはだかり、杖を真横に構える。 「彼女を、ルイズを助けに来た」 「できると思っているのかね」 「……」 フェイトを見据えるのは計3人分のワルドの視線。 無論、そのうち2人は魔法で作られた遍在だ。 落ちる梁を避けるために、未だ隠れていた2人も姿を現さざるを得なかったのだ。 「4人の私と戦って、たった1人で勝つつもりなのか?それとも、包囲を突破して逃げるつもりなのか?」 既にフェイトの退路は2人の遍在が断っている。 そして、この少女の実力がどうであれ4対1で閃光の名を持つスクウェアメイジにたった1人で、しかもルイズを守りながら戦って勝てる道理があるはずがない。 「切り札を出したのだ。どちらにせよ邪魔はさせない」 4人のワルドがそれぞれ違う形に杖を構える。 だが、共通するものがあった。それは必殺の殺気。 「あなたの切り札はあなただけの切り札じゃない」 なのに少女はいささかの怯えを見せることなく、杖をかちゃりと鳴らした。 「バルディッシュ。ユピキタス・デル・ウィンデ」 「yes, sir.ubiquity of wind.get set.」 前ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/234.html
続々・クビになった司書長 * ■なのはの場合■ 「え!? ユーノくんが!??」 高町なのは一等空尉が無限書庫司書長ユーノ・スクライアの辞任を知ったのはクロノから遅れる事二日、 特殊戦技教導隊による一週間の教導官教導訓練を終えて本局に帰還した時だった。 得になのはは先のゆりかご攻防戦における対AMF戦闘に駄目だしされ、 特戦隊から対AMF戦闘を一からみっちり扱かれたのだ。 昔ほどではないにしろ魔力を用いない運動が不得手な彼女は、 地球の父や兄姉と同等かそれ以上の純戦闘力をもつ特戦隊のメンバーとの訓練は苦手としており、 特に隊長のコウ・ヒ・ギニュー一等空佐との組み手はいつも半泣きであった。 閑話休題。 ようやく本局に戻ったなのはに待っていたのはユーノ辞任の知らせ、泣きっ面に蜂とはまさにこのことである。 「な、なんで? どうして?」 軽くパニくるなのはに、リンディはクロノに言ったようにデバイス『百科事典(これはベーシック。司書以外の局員の持つのはコレ)』を交えながら無限書庫の成り行きを聞かせる。 リンディの話を聞いていくうちに、なのはの中で沸々と管理局上層部、 特に裏切られたという意味合いの強い三提督への怒りが湧き上がるが、 それ以上にユーノから何の相談も無かったという事実に大きなショックを受けていた。 かなりの動揺が見受けられるなのはには気の毒だが、彼女に聞かなければならない事がある。 「ところで、なのはさん? あなた今年ユーノくんとどのくらい会っていたのかしら?」 このリンディの質問に、なのはは一瞬呆けたような表情を浮かべたがリンディの真剣な表情に、 思い出すように指で数えていく。 ところが指が折れるのが遅い事遅い事、なのはの表情はそれに反比例するように加速的に色を失っていく。 結果で言えば、五本目の指は折れることが無かった。 「う、そ……私、そんなにユーノくんと会ってなかった? あ、でも、メールは……」 真っ青になりながらなのはは携帯を取り出し手馴れた様子で操作をするが、その手も止まってしまう。 黙りこんでしまったなのはに、リンディは悪いと思いながらも携帯を覗き込むと、 ユーノくんのフォルダには10の表示があった。 (確かなのはさんは年明け前に携帯を変えていたから、その数が実質今年の分ね。 ……大体月に一回、多いとは言えないわよねぇ) リンディは思わず天を仰いだ。 なのはでこの調子では義娘やはやてといえど期待できなさそうだった。 「それじゃあ、なのはさん。あまり気を落とさないでね」 自失状態のなのはをなんとか休憩所まで引っ張ってきたリンディは、薄情なようだが一人仕事に戻っていく。 総務総括官はそれなりに忙しい役職で、なのは一人にいつまでも構っているほど暇ではない。 第一彼女はもう子供ではない。 一縷の望みをかけて義娘とはやてにも当たってみるが、最悪の場合はあの二人を頼らねばならないだろう。 と、テンション下がり目のリンディに、なのはが俯いたままで尋ねる。 「え? ユーノくんの居場所?」 「はい。なんでユーノくんが管理局を辞めたのか、直接ユーノくんから聞きたいんです。 それがどんな答えであっても!」 さっきまでの自失状態が嘘のように顔色が戻ってきている。 流石教導官ね、精神コントロールも一流だわ。 リンディもこういったなのはのポジティブさは頼もしく感じている。 「そうね、多分スクライアの集落に戻ったんでしょうけど……今彼らがどこにいるかまでは分からないわね。 知っていそうな人達は分かるけど」 「誰ですか?」 興奮状態にあるのか、なのはがずずいとリンディに詰め寄る。 「ええと、新しく司書長になった元司書長補佐のカイくん、査監部長のフランに情報部長のウェザーかしら?」 リンディは今最もユーノと親しいであろう三人の名前を挙げる。 司書長補佐であったカイはともかく、 管理局の魔女に千眼魔人が自分達よりユーノと親しいとレティから聞かされたときは、 リンディもショックは大きかった。 が、良く考えればあの二人はグレアム元提督の、リーゼたちの愛弟子達だ。 ユーノが管理局に入るまでは無限書庫の管理は顧問のグレアムがしていたのだ。 あの二人がユーノと交友を持っても何の不思議は無い。 ただ、あの温厚なユーノと冷血人間二人の会話が想像も付かないだけだが。 「ありがとうございます! リンディ提督。早速ユーノくんの居場所を聞いてきます!」 ビシッと敬礼を決めると、なのはは元気良く無限書庫へと走っていった。 「まずはカイくんからか……それが、正解よねぇ」 あの二人は……悪い人間ではない。が、疲れるのだ、話すと。精神的に。 ――― 「はぁ~~~~」 高町なのはは周囲を憚ることなく盛大な溜息をついた。 ここは第97管理外世界・地球。海鳴市、ようするになのはの故郷だ。 あの後無限書庫に突撃した彼女であったが、アポをとっていないという事で15分ほど待たされ、 ようやく会えた新司書長はユーノの行き先は知らないと答えた。 正確にはユーノはスクライアの部族の元に戻ったそうだが、その場所は良く分からないとのこと。 礼をいい、査監部へと突撃しようとした彼女に、 新司書長はおそらくその二人も知りませんよ、と釘をさした。 足の止まったなのはに、ユーノからの便りが着次第お知らせしますよ、 と終始事務的な笑顔で彼は会話を終えた。 「ユーノくん……」 背中が温かいと感じていたのは自分だけだったのだろうか? いや、そんな事は無いと思う。少なくとも自分とユーノの絆は確かに存在していた。 ただ、自分がその絆に一方的に甘えていたのだ。 彼なら、ユーノならずっとそこにいてくれる、待っていてくれると勘違いしていたのだ。 多分、あの事故が契機だったのだ。 父は事故を契機に家業を廃し、家庭に入った。自分はそこでそのままの道を歩み続けた。 もちろん歩んできた人生も時間も違う、ただ、あの事故のときのユーノの焦燥とした顔は今でも思い出せる。 たしかそれからだったと思う、ユーノと会う回数が極端に減っていったのは。 「なーに暗い顔してんのよ!」 唐突に良く知った声が聞こえたと思ったら、両頬を思いっきり引っ張られた。 「ふぁひふぁひゃん!?」 驚いて顔を上げると、幼馴染のアリサとすすかの顔がある。 どうやら待ち合わせより早く着いた30分間、 ユーノのことを考えているうちにあっという間に過ぎてしまったようだ。 もうっ、とアリサの手を剥がして頬をさすりながらじと目で睨むが、 すぐにユーノのことか頭に浮かび力なくベンチに腰を落とす。 そんななのはの様子に二人はかをを見合わせ、 「どうしたっていうのよ? なのはの座右の銘はいつでも全力全開じゃなかったの?」 「でも、なのはちゃんらしくないよ? 私たちで相談に乗れることなら話してほしいかな?」 それぞれ異なるが、共になのはの様子に元気付けようとしていた。 なのはは二人の友情に感謝しながら、管理局での出来事を話す。 所々でユーノへの想いが形になって涙ぐんでしまったが。 ところが、なのはの話を聞き終わった二人はなんとも珍妙な顔でなのはを見ていた。 「えーと、二人ともどうしたのかな?」 二人はしばしアイコンタクトの後、おもむろに口を開いた。 「あー、ユーノなら一昨日葵屋でお疲れ様パーティーやったわよ? なのは」 「それに先月ぐらいから、管理局を辞める辞めないの相談に乗ったよ? なのはちゃん」 予想外の二人の言葉にぽかんと呆けるなのは。 ひょっとしてユーノくの居場所知ってる? と震える声で尋ねるなのはに二人はこくんと頷く。 「なんで知ってるのぉ!?」 「「なんで知らないの(よ)!!」」 19スレ SS アリサ・バニングス オリジナルキャラ リンディ・ハラオウン 月村すずか 追放系 高町なのは
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/281.html
風呂場に獣、動揺す 作者:aZI+SINK では投下します。 前回から間が開いたので荒すぎる粗筋から。 今日も今日とて、シグナムによって最低限度の自由意志しか示せないまま、 模擬戦の相手をさせられたユーノ・スクライア、年齢一桁。 双方、汗を掻きに掻いたので、風呂にでも入ろうとなった。 が、奇しくも男湯が清掃中であったために、 ユーノは矢張りシグナムによって無理矢理に女湯へと連れ込まれた。 そこに居たのは、リンディ・ハラオウンとレティ・ロウラン。更にはシャマルまで合流する。 挙句にリンディとシャマルによって、ユーノは体を洗われる羽目となった。 不測の事態に失態を演じる理由とは実に単純なもので、大概は対処の方法に備えがなかったとか、 その場の状況を把握しきれていなかったからとか――混乱していたからとかであろう。 「……ふぅ」 嗚呼、今日は何度溜息をついたろうか、何遍パニックに陥ったろう。 ユーノ・スクライアの胸中に宿るのは、もはや悟りを開く一歩手前ほどの境地に至った諦念である。 そもそも冷静に――まぁ、それができなかったのだが――考えれば、リンディ・ハラオウンとシャマルが この大浴場で勝負するなど有り得ないではないか。 時空管理局内では、攻撃に類する魔法を使用すれば直ちに警報がかかるのだ。 有事の際や訓練であればともかく、平穏無事の際に攻撃魔法を行って良いはずがない。 ただ、仮に使用しても、事後に正当な理由が立証されれば、当然問題はない。 今回の、『ユーノの体をどちらが洗うか』等という頓痴気すぎる理由など却下どころか、 二人の進退問題にも関わるだろう。 どっちも大概な戦力だし。 つまり、二人が闘争で持って白黒付けようなどあろうはずもないのだ。 だが、恐らく――否。間違いなく、リンディとシャマルはユーノがそこまで頭が回らないと踏んだのだろう。 異性を意識するような少年が女湯に居る、などという状況が状況だ。 かてて加えて、いずれ劣らぬ美女に囲まれているのだから、 冷静な判断力など、未だ回復していない――。 なら騙くらかす位わけもないのであり、結局、ユーノは狐と狸に化かされたのであった。 で、演技とは言え、先ほどは闘争の気を、湯気よりも充満させていた狐と狸は――。 「ああ、お風呂がこんなに楽しくなるなんて……今日は良い日ねぇ、シャマル?」 「はい♪ 今日という日を忘れません……流しっ子記念日です!」 「もうバカねぇ。今日だけで終わらせる気? まだまだ甘いわねぇ」 「はっ! ゴメンなさい、リンディ提督。修行がたりなかったです……」 すっごい仲良くしてた。 いっそ転送魔法で逃げようかと思ったが―― その思いつきで、ユーノはどれほど自分の頭が鈍っているかを自覚した。 風呂場で転送魔法など言語道断だ。なぜなら、覗き対策として厳重に禁止されているからである。 転送魔法の使用記録も攻撃魔法同様に、ばっちり残る。これも正当な理由があれば問題ない。 しかし今回はどうだ? 連れ込まれたとは言え、リンディ、シャマル、シグナム、レティ・ロウランという、 管理局でもトップクラスの美女達と入浴しているのだ。 確実に陥れられる。主に嫉妬による怨恨で。 そして、高町なのはの耳にも入るだろう。というか速達で迅速に。 待ち受けるのは、砲撃だろうか、侮蔑の目だろうか――何とも思われないのが一番痛いが。 とまれ、選択肢がないことに変わりはない。なので、取りあえず。不本意なれど、取りあえず。 「…………………お願いします」 その声を聞くまで談笑していたリンディとシャマルだったが、転瞬。 「ええ、任せなさい! キレイにヤってあげるから!」 「隅々までヤってあげるわ!!」 「…………………あう」 若干、問題のあるアクセントで返した。 一方。 「…………………………………ヘタレが」 体にかけた湯の水音にさえぎられ、シグナムの呟きは、排水溝に吸い込まれるが如く、消えた。 ちょこなん、と座ってユーノは、 背から腰から肩口からをリンディとシャマルにされるが儘に洗われていた。 始めは嬉しそうに、痒いところはないですか?などという事を二人して尋ねてきた。 ドギマギしながら受け答えていたユーノだったが、 何時しか、まぁ、これ位ですむなら、気分がいいだけで済むなぁ、と考えるようになっていた。 泡と一緒に疲労も流れ落ちるようだ。 しかして――事態の転変は、悩ましい声と共に始まった。 「うーん……」 念願叶ったはずのリンディの呻きに、ユーノはおっかなびっくり尋ねた。 「な、何か問題があるでしょうか」 「ああ、そうじゃないのよ。その、ね。……ハァ」 ユーノの肩辺りを洗っていたリンディの手が、ふと止まり、遂には離された。 コレは。 ――気づいてくれたか。己の所業の馬鹿らしさに。 イヤがる少年をムリヤリに洗うなどという行為のダメさにっ。 ユーノの想いは、しかし、二秒で覆される。 ふるふると、リンディが何かに打ち震えながら、言った。 「お肌が……」 「は?」 「つるっつるじゃないのぉ~!!」 そう言って、リンディはユーノに擦り寄ってきた。 きゃー、という声が空しく響く。 嗚呼、しかし、何とも柔らかい感触がユーノを支配する。 「ええ、本当ですか? ……いや~ん、つるつる~!!」 言葉を継いで、シャマルはユーノににじり寄った。 いやー、という声が悲しく通る。 嗚呼、しかし、何とも柔らかい感触がユーノを支配する。 ――理性が。 「は、はな、はなれ、はなれててててて!!」 「オホホホホホ、恨むならつるつるスベスベな自分のお肌を恨みなさい!」 リンディが、一応はしていた自重を金繰り捨てた。手が動く。いや、蠢いている。 そして、表情は何とも活き活きとしている。輝いている。夜空に瞬く星よりも美しく。 対してユーノの表情は、赤よりもなお紅い。当たり前だ。 彼の名誉の為に言うならば、 豊満な肉体を持った二人の美女に裸体で擦り寄られて、何とも思わないなど――。 「うふふふふふ、そっれじゃあ!次は前を――」 ばっしゃん。 洗いましょう――と響くはずだったシャマルの声が、冷水によってかき消された。 「げ、ゲホ!ご、は、は、ハックシュン!」 一瞬、三人とも何が何だかわからなかった。 が。 「スマンな、シャマル。思いっきり手が滑った」 その言葉で、シャマルの顔に冷水をぶち撒けたのが、シグナムであると知れた。 ただ、言葉の内容よりも遥かに状況を雄弁に語ったのは、 まるで次元震でも起きたかの如き、彼女の仏頂面であった。 ――黒いバリアジャケットでも似合いそうだ。 「な、何がスマンよ!これからが」 本番だったのよ――と続くはずだったシャマルの声が、苦笑いによってかき消された。 「オホホホホ、ちょっと悪ふざけしすぎちゃったわね」 それじゃあ、ごゆっくり~、と言葉を残して、 リンディはまだ文句を言いたげなシャマルを無理くりかまして引き連れて、湯船の方へ逃げていった。 こうして、一連の騒ぎが済んでやっとユーノは理解した。 助かった、と。 そして、助けてくれたのは、誰あろう、自分を拉致したシグナムだったこと。 意外だ。二人と一緒に、自分を弄ぶなら兎も角、窮地を助けてくれるなど。 とはいえ、恩人には感謝を言わなくては。 「あ、ありがとうございます、シグシグさん」 ユーノの声を聞いて、シグナムの仏頂面が幾分か和らいだ。 「全く、さっさと断らないからこうなんだ」 「うう……だって、それは」 ククっ、と意地悪そうに笑ってシグナムは答えた。 「やはり子供だ。世話が焼けるなぁ、ユノユノ?」 その言葉を聴いて、やっとユーノは、ほっとできた。 ただ、ほっとしたのは、シャマルとリンディが退散したから――ではなく。 ようやく、シグナムからユノユノと呼んでもらったから、という事には気づいていない。 シグナムが彼のために、わざわざタオルを彼女の体に巻いている事にも。 「う~」 シャマルは湯船に首まで浸かって、恨みがましく、ユーノとシグナムを見ていた。 「ずるくありません!? シグナムだけユーノくんと二人きりだなんて!」 話を振られたリンディは、穏やかな苦笑いとともに答えた。 「まぁまぁ、流石にヤりすぎたわけだし。今回はアレが良い潮時だったわよ」 「でも~」 「そんなことよりも……ふふ、なのはさん、手強いライバル出現かしらね?」 「ん~、でもまだシグナムはお姉さんぶってるだけ、というか。 まぁ、本人が自覚してないだけ、というか……」 「そうねぇ……ねぇ、レティ。貴女はどう思う?」 既に湯船で杯を傾けていた友人に尋ねて――失敗したとリンディは思った。 「……あぁん?ユーノとぉ、シグナムゥ?」 「……………………………………レティ?」 シャマルとリンディがユーノを弄んでいた時から、レティは湯船でアルコールを摂取していたのだ。 それは、つまり。 漸く訪れたユーノの平穏は、凄い短かった。 ひた。ひた。ウィー。ひっく。 そんな擬音に振り返って、ユーノとシグナムが見たのは。 「アハハハハハハハハハハハハハ!」 「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 一糸纏わぬ姿で、仁王立ちしたレティ・ロウランその人であった。 レティがシグナムを睨み付けた。 「シィィグナァァァム?」 「い、いえすまむ!」 凄いビビっている。あのシグナムが。 「チェンジ!」 「あ、あいまむ!」 凄い逃げた。あのシグナムが。 えへら、とユーノに視線を移したレティが――笑った。 「ゆーのー!!!」 「は、はいぃぃぃ!!!」 「たぁーのしそーなこーとしーてたわねー? わらひだけぇー、のぉけものぉ? なまいきよー!」 ――笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が獲物に対し、牙を剥くのがその根本であるとか。 以上で投下終了します。アリガトウ御座いました。 次回、やっとこレティさんタイム。 五郎「ショタを喰べるキャラはね、受けじゃなく総攻め系で、 なんというか年上じゃなきゃあダメなんだ お姉さまでママンで人妻で・・・」 26スレ SS シグナム シャマル ユーノ・スクライア リンディ・ハラオウン レティ・ロウラン 複数キャラ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/292.html
305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/28(木) 16 21 47 ID ySRjKkLV ユーノ君に抱き着く戦闘機人達と言うのを構想してたら、こんなのになってしまったww 状況が曖昧だからSSまで昇華出来なかった 力不足なタワシを許して欲しい 第一次戦闘機人突撃合戦 ○スバルの場合 「あれ?ユーノさんじゃない」 「あ、本当だ!せんせぇ~~」 「ちょっとスバル!」 「あっ、スバル」 「一撃必倒ぉぉぉ」 「何故に~~~~」 恋するスバルは切なくて 走り出すとDBを撃たなきゃ止まれない ○ノーヴェの場合 「んだよ、何でユーノに抱き着かなくちゃいけないんだよ」 「ノーヴェちゃん、嫌なら不参加でいいのよ」 「んな事言ってねぇだろ」 「では行って来い、ノーヴェ」 「よしユーノ、覚悟ぉぉぉ」 「だから何故に~~」 ツンデレノーヴェは切なくて 愛情表現が苦手なの ○ウェンディの場合 「行くっスよライディングボード、ISエリアルレイヴ」 「ユーノ司書長……避けて」 「えっ」 ガツン 「ライディングボード……頭に直撃したね」 「二人とも、冷静に言わないでよ」 ガクッ 「ははは、目測を誤ったっス」 ノリで参加したウェンディは切なくて ただ突き進む 306 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/28(木) 16 22 56 ID GYrV6u2A ○トーレの場合 「行くぞ、ユーノ。IS発動ライドインパルス」 「いや、あんな超速度に対応出来る訳……ぐはっ」 「トーレは相変わらずなのね」 「流石です、トーレ姉さん」 恋するトーレは切なくて 手加減を忘れちゃう ○セインの場合 「天井からセインさん登場」 「いや、受け止めるとか無理だからね」 「力を抜く、それだけでいいよ」 ニヤリ 「ISディープダイバー、ユーノこのままデート行こう」 「へっ」 「セイン、あの娘意外と策士だったのね」 「何故だろう、私が受けた砲撃以上のものを受けるセインの姿が想像出来る」 ノリで参加したセインは切なくて 遠慮なくユーノを掻っ攫ってく あれ?何か一人得してないか?? というかやけに外が眩しくないk(SLB 307 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/02/28(木) 16 31 50 ID jXUtkaLs 背後から抱きしめようとしたらいつものクセでツインブレイズ決めてしまうディードさんが抜けてるな。
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/298.html
貴方の帰りを待っています early JS事件から数年後、スバル・ナカジマは湾岸特別救助隊の中でも特にその名を知られる存在となっていた。 その能力の高さ、またどんな状況でも決して諦めない意志の強さ。 更に、この数年でより美しく成長した事も相まって、広くその存在を知られるようになっていたのである。 当然そんな彼女とお付き合いしたいと迫る男性は多かったが、スバルはその誘いを全て断っていた。 既に意中の男性がいるようであったが、しかしそれが誰なのかは、誰にも分からなかった。 そして今、彼女はデスクワークをしていた。昔に比べて大分要領が良くなっている。 それはかつてのパートナーと、そして……彼女の「先生」のお陰でもあった。 スバルはペンを走らせていた手を止めると、ふぅと溜息をついた。 「先生……今どうしているのかなぁ……。」 彼女が先生と呼んだのは、無限書庫司書長、ユーノ・スクライアであった。 もっとも、彼は今無限書庫にはいない。というより、ミッドチルダにいないのである。 それどころか現在どこにいるかも分からない。 JS事件が解決してから一年程が経った後、ユーノは突然遺跡発掘の旅に出てしまったのである。 有給も凄まじい量が溜まっていたし、 何より彼自身がこの長期休暇を認めなければ管理局を辞すとまで言ってきたため、 やむなく許可を出したのである。 出発の直前、スバルはユーノに会いに行った。 暫く逢えなくなる事に悲しみ、涙ぐむスバルの髪を優しく撫でながらユーノは言った。 「泣かないでよスバル。別に今生の別れって訳じゃないんだから。」 だがスバルの涙は止まらない。 自分でも泣き顔ばかり見せていてはユーノに心配をかけてしまうと分かっているのだが、 それでも涙を止める事は出来なかった。 やがてユーノは苦笑すると、するり、と自分の髪を縛っていたリボンを外した。 その様子に首を傾げるスバルの手をとりそのリボンを握らせながらユーノは言った。 「これ、僕のお気に入りのリボンなんだ。 遺跡の探検で無くしたりしちゃうのはちょっと嫌だからさ、これをスバル、君に預けていくよ。 必ず取りに行くから、無くさずにもっていてね。約束だよ?」 ユーノはそう言うと、優しく微笑んだ。 スバルはその笑顔を暫く見ていたが、やがてごしごしと涙を拭くと、精一杯の笑顔を浮かべて言った。 「分かりました先生! このリボン、ちゃんと預かっておきますから……必ず、必ず取りに帰ってきて下さいね。 私……待ってますから。ずっと……待ってますから」 ユーノは笑顔で頷くと、そのまま旅立っていった。 スバルはユーノのリボンを胸に抱いたまま、彼を見送っていた。 「そろそろ帰ってきてもいい頃なんだけど……」 彼の休暇も後数日で終わる。何事も無ければそろそろ帰ってくるはずなのだが……。 と、そんな事を考えていたスバルに非常召集がかかった。 急いで救助隊の本部に向かったスバルに知らされたのは、 かつて自身が経験した空港火災と同等、もしくはそれ以上の規模の空港火災であった。 あまりの規模に二次災害を懸念され、出動出来ない救助隊。 スバルは悔しさを噛み締めながら飛行機の乗員リストを見ていたが、 とある名前を見た瞬間、制止を振り切り現場へと向かった。 現場の状況は想像以上に酷かった。だが、彼女には確信があった。 確かに酷い状況ではあるが、「彼」がいるなら……彼ならば、きっと皆を護ってくれているはずだと。 リボルバーナックルを振るい、障害物を次々と排除し奥へと進むスバル。 やがて一際大きい瓦礫を破壊した時、その奥から光が溢れ出した。 とても暖かく、とても優しく、そして……とても心を震わせる、翡翠色の光が。 「やあ久しぶりだね。君ならきっと来てくれると信じていたよ、スバル」 広範囲に結界を展開し、多くの人々をその背に護りながら、 その青年……ユーノ・スクライアはこのような状況であるにも関わらず、優しく微笑んだ。 「私も……信じてました。先生なら……きっとみんなを助けてくれてるって。護ってくれてるって……!」 スバルは熱くなる胸の鼓動を感じながらも、救援を要請した。 数時間後、次々と保護されていく人々をユーノとスバルは並んで見つめていた。 「……あ、そうだ。これ……」 そう言いながら、スバルは制服のポケットから一本のリボンを取り出した。 「え、それは……」 ユーノがそのリボンを見て驚く。それは、彼が出発の日にスバルに託したリボンであったのだから。 「えへへ、持ってきたんですよ、先生に逢えると信じてたから」 はにかみながらそう言うと、スバルはユーノの髪をそのリボンで結び始めた。 やがてリボンを結び終えると、スバルはユーノをぎゅっと抱きしめた。 「ス、スバル?」 「……おかえりなさい、先生。ずっと……ずっと待っていたんですから……。 うっ……さ……寂しかったんですからぁ……!!」 自分の胸にすがり付いて泣き始めたスバルを、ユーノもそっと抱きしめ返した。 「ごめんねスバル、さびしい思いをさせて……。でも、僕はちゃんと帰ってきたよ。ただいま、スバル」 「うっ……おがえりなざい、先生……ッ!! うぅ……わあああああああああああああああああああああん!!」 抱きしめあう二人は、まるで恋人同士であった。この後様々な事が起こるのだが、それはまた別のお話。 31スレ SS スバル スバル・ナカジマ ユノスバ ユースバ ユーノ・スクライア