約 454,625 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/343.html
流浪の者 作者ID 0YeEsh8l ギンガ・ナカジマは夢を見ていた。 それは母と妹の三人で出かけた日のこと。 楽しい休日になるはずだった。 だが、家族の憩いの一時は無粋な犯罪者たちによって妨げられた。 妹が人質に取られ、母が悔しさに震える中、自分はただその光景を呆然と眺めているだけ。 しまいには不用意に顔を出したせいで犯人を刺激して魔法を打ち込まれる始末。 姉としては何の役にも立たず、娘としては足を引っ張っている自分。 迫り来る魔法弾がやけにスローモーションに見える。 これに当たれば確実に死ぬ。 それがわかっていながらも手足はピクリとも動かない。 (……スバル、お父さん、お母さん!) 家族の顔を思い浮かべ、ぎゅっと目を瞑る。 しかし死への衝撃はやってこない。 一撃で自分は消し飛ばされてしまったのか。 それなら痛みがなかった分救いはあったのかもしれない。 そう思いながら恐る恐る目を開ける。 (え――) 最初に目に映ったのは魔法弾を受け止める緑の光。 そのすぐ後ろに自分を守るように立ちはだかる少年の姿が見えた時、ギンガは悟った。 自分はまだ生きている――この人が、自分を助けてくれたのだと。 「大丈夫かい?」 振り向いた少年の口から自分を案じる声が漏れる。 魔法弾とシールドの激突によって発せられている光が逆光となって少年の顔がよく見えない。 ギンガはなんとか少年の顔を見ようと目をこらし―― 画面が暗転、そして明転し、頬を風が撫でる。 目に映っているのは翡翠の瞳を持つ少年の顔。 少し頬に土がついていて、それでも優しげな表情は変わらなくて。 初めて出会った時と同じ言葉が脳に染み込んでいく。 「ゆー、の、さん?」 半分朦朧とした意識で反射的にギンガは少年の名を呟いていた。 と同時に状況の把握へと思考が活性化をはじめる。 そう、自分はユーノに組み手を頼み、腕をつかまれたかと思ったら何故か空中に浮いていて。 次の瞬間には意識が飛んでいて… 「あ…」 「ゴメンね。ちゃんと地面にぶつかる前に腕を引いたんだけど、ちょっと石が出っぱってて…」 申し訳なさそうに謝るユーノの言葉とズキズキ痛む後頭部。 そう、自分は投げ飛ばされた結果たまたま地面に転がっていた石に後頭部をぶつけて気絶してしまったのだ。 何が起きたかを把握したギンガの首から上に熱が集まっていく。 組み手を申し込んできながら気絶してしまうとはなんたる不覚。 しかも、今の今までマヌケに気を失っていた姿を目の前の少年にずっと見られ続けていたのは間違いない。 闘う者として、乙女として、二重の恥ずかしさがギンガの幼い心をへこませる。 「とりあえず血も出てないから大丈夫だとは思う。たんこぶはできてるけど…」 「あ、はい、大丈夫です。私、丈夫なのがとりえですし」 むん、と小さくガッツポーズをとるギンガにユーノは安心の一息をつく。 ちなみにこの時、彼が冷や汗を浮かべながらチラリと横を見やったことに―― そこに、奇麗に真っ二つに割れた石が鎮座していることに ギンガは気がつかなかった。 「ところで、何か頭と背中があったか……あつっ」 「大丈夫!?」 頭と背中から感じる熱に違和感を感じたギンガは身を起こそうとして頭痛を感じた。 ユーノの心配そうな声が耳朶を打つ。 と、そこで気づく。 ユーノの後ろに晴天の空が見える。 お尻よりも下は地面についたままだが、それより上は何か弾力のあるものに支えられている。 (ま、まさか…) おそるおそる、といった様子でギンガは自分の状態を確認する。 はたして、目に映ったのは膝枕をされながら頭を撫でられている自分の姿だった。 「えーっ!? ゆ、ユーノさん、私っ!?」 「あ、ダメだよ動いちゃ! まだ治癒の最中なんだから」 起き上がろうとしたギンガはユーノに押し留められるように再び寝かされた。 厳密にいえばその体勢は膝枕ではなく、膝よりももう少し上に抱え込まれているような格好だった。 だがそれは七歳の初心な女の子にとっては何のフォローにもならない。 むしろ普通に膝枕をされているよりも数段恥ずかしい。 しかしユーノに解放の気配はなく、混乱する少女はただなすがままになるしかなかった。 「わ…わ…」 「もうちょっとだから我慢してね」 あまりの事態にうまく言葉を紡げないギンガ。 だがユーノはそんな患者の都合などおかまいなしに頭を撫で続ける。 ぽう、と緑色の淡い魔力光が頭を包むと痛みが徐々にひいてくるのがわかる。 しかしギンガにとってはそんなことよりも今の状態のほうが重要だった。 (ひゃ、ひゃああ……) 密着した部分からユーノの体温が伝わり、その存在の近さを意識させられてしまう。 体が触れている部分が熱い。 華奢な見た目とは裏腹に、ユーノの体は意外に引き締まっていた。 男の子という存在を嫌でも意識させる密着度にギンガの心臓が跳ねる。 「ああああ、あの! ユーノさんは強いですよね!」 なんとか気をそらそうと話題を振ってみるギンガ。 朱に染まり頬と慌てた口調があからさまに動揺を示している。 しかしユーノはそんな少女の動揺を気にすることなく、苦笑した。 「僕は強くないよ」 「で、でも、私は全戦全敗ですよ」 ギンガはそれはないだろうとばかりに否定の言葉を発する。 幾度となく行われたユーノとギンガの組み手。 それはいつもギンガの攻撃がかすりもせずにユーノの勝利に終わるという結果ばかりだった。 それだけではない、 同様に母と行われる組み手ではユーノは勝ちこそはしないものの被弾はほとんどしていない。 ユーノ本人は『危なくなったら咄嗟に魔法を使ってるだけ』といっているが、 実際にシールドを使うのは決着の一撃の時だけだ。 「それに、お母さんとも互角に…」 「うーん、そもそも前提が違うからね。 ギンガやクイントさんが遣うシューティングアーツは専用のデバイス、 そして前衛型のベルカ式魔法を使うことが基本となっているわけで… それに大して僕の体術は魔法を前提としないからね。 組み手という形式である以上は僕の有利は否めない」 「でも…」 「スクライアで教えられるのはとにかく生き延びること。 だから重点的に教えられるのは受け、回避、捌き…とにかく防御関係なわけだし。 肝心の攻撃は相手の力を利用する投げや関節技ばかり。 打撃系は一切なし。これじゃあ強いとはいえないよ」 そういって苦笑するユーノだが、ギンガはその言葉を素直に信じることはできなかった。 確かに魔法行使が前提のミッドチルダでユーノ体術は異色だ。 だが、異色であることと強くないということはイコールにはならない。 「ユーノさんは…強いです」 それが絶対の真実だとばかりにギンガは呟いた。 ギンガにとって強いということは守ると決めた何かを守れる力を指す。 その意味では自分を守ってくれたユーノはまさしく強さの象徴であり、憧れなのだ。 「ギンガ…」 ユーノはギンガの言葉に何かを感じたのかそれ以上何も言わずにただ手を動かし続ける。 やがて、痛みが完全にひいてきた頃。 (あれ…?) ギンガは唐突に気がついた。 顔が、近い。 ぶっちゃけ吐息が感じられそうなほどの至近距離だ。 (わーっ!?) 膝枕で頭を引き寄せられている状態なのだから顔が近いのは当たり前だ。 体勢にばかり気をとられ、今更ながらにその事実に気がついたギンガは今度こそ跳ね起きた。 「あっ」 「だ、だだだ大丈夫です! もう痛みはありませんし気分もスカッとしていますから!」 「そ、そう?」 「はい!」 くる、と後ろを向いて元気さをアピールするようにギンガはシャドーを始める。 別に後ろを向く必要などなかったのだが、少女はそうせざるをえなかった。 (は、恥ずかしくてまともにユーノさんの顔が見られない…) 瞳の中の自分が確認できるほど近くに寄せられていた少年の顔が頭の中でよみがえる。 顔が熟れたリンゴのように赤くなっていくのを止められない。 とてもではないが、こんな顔をユーノに見せるわけにはいかなかった。 (あうう…) 男の子なのに女性にも劣らない整った顔。 汚れこそあるが、すべすべしていそうな肌。 吸い込まれるような翡翠の瞳。 それらをつい先程まで間近で直視していたのだ。 いけない、とぶんぶんと頭を振って記憶を消そうとするも焼きついた映像は頭から離れない。 ギンガとて一人の女の子である。 戦闘機人という特殊な生まれであっても クイントに引き取られてからは一般的な女の子として育てられてきたのだ。 そう、普通の女の子が、颯爽と現れた王子様に好意を持たないほうが珍しいのである。 強い、優しい、格好いい、頭も良い。 多少のフィルターがかかっているとはいえ、ここまで良条件をそろえた異性などそうはいない。 (私、どうしちゃったんだろう…) 幼さゆえにはっきりと恋と言える感情を認識できているわけではない。 そもそも、この感情が恋であるかすらわからない。 それでも、ギンガの心の一角にユーノははっきりと居ついてしまっていた。 しかし、彼女は知らなかった。 いつまでもユーノがナカジマ家にいるわけではないということを。 彼との別れが近づいているということを。 ――そして、今までのやり取りが全て母と妹に見られていたということを。 49スレ SS ギンガ・ナカジマ ユーノ×ギンガ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/230.html
スバルの初夢 作者:early 長編が進まないんで息抜きがてらに小ネタを投下。 628 630 631辺りの電波を形にしてみた。ちょっとオリ設定みたいなものが混じってるかな? うざかったら、申し訳ないがスルーしてくれ。 「えへへ、お汁粉はやっぱり美味しいですね、先生!」 「うん、甘いものは良いね。頭が冴えてくる気がするよ」 そう言うユーノにスバルは苦笑する。この年末年始もユーノは働きづめだった。 おかげで授業もすっかり滞っていたので、様子見と差し入れにナカジマ家特製の餅とお汁粉を持って、 スバルは無限書庫へとやってきたのである。 だがそこで彼女が見たものは、働きづめのために幽鬼と見紛う程にやつれたユーノであった。 スバルは驚き、すぐに休憩をとらせ、自分が持ってきた差し入れを振舞っている、という訳である。 「それにしても、何で先生一人なんですか? アルフさんや他の司書さん達はどうしたんですか?」 訝しげに問うスバルに、お汁粉の甘みに目を細めて舌鼓を打っていたユーノは一旦お椀を置くと、こう答えた。 「うん、みんなにはお正月休みを与えたんだ。 アルフもそうだけど、家族がいる人達が多いからね。 やっぱり、こういう時には家族みんなで過ごすべきだよ。だから、一人身の僕が頑張っている訳さ」 お茶を飲みながらそう言うユーノを見て、スバルは不機嫌そうな顔をした。 「……どうして……」 「うん? 何だい?」 「どうして先生はいつもそうなんですか! いつもいつも他人のことばかり優先して!! もっと自分の事を大切にして下さい!!」 急に声を荒げたスバルに少し驚きながらも、ユーノは落ち着いて言った。 「大丈夫だよスバル。僕もちゃんと後で休みをとるから……」 「そういう問題じゃありません!! そういう問題じゃ……!!」 しかしユーノの言葉を遮るようにスバルは叫んだ。彼はいつもこうだ。 他人のことばかり気にかけて、肝心の自分のことはいつも後回し。 そのことで、どれだけ周囲に心配をかけているのか分かっているのか。 どれだけ自分に……辛くて、悲しくて、切ない気持ちを抱かせているのか分かっているのか。 スバルは溢れ出る気持ちが大きすぎる所為で、自分のその想いを上手く言葉に出来ず、俯き、拳を震わせた。と、そんな彼女の頭にふわり、と暖かいものがのせられた。 驚いたスバルが顔を上げる。 それは、ユーノの手であった。彼は優しい笑顔を浮かべて彼女の頭をくしゃくしゃと撫でると言った。 「ありがとう、スバル。君のその気持ちは本当に嬉しいよ」 頭を撫でられる心地よい感触に、スバルはとろんとしかける。 実際、いつもならばそのままその感触に身を委ねてしまうのだが、 今日はそうはいかないとばかりに精一杯憮然とした顔をする。 「本当に分かってますか先生? 先生がそんな無茶をしたら、みんなとっても心配しちゃうんですよ?」 私も含めて、という言葉を胸の内で付け加える。 そんなスバルの内心を知ってか知らずか、ユーノは笑顔で言った。 「うん、もちろん分かっているよ。でもね、僕を大切に想ってくれている人達の事を考えると、 つい頑張りすぎちゃうんだよね。もっとみんなの役に立ちたい、みんなを楽にしてあげたいってね」 そこで言葉を切ったユーノは、スバルを真っ直ぐに見据えた。 見つめられたスバルの心臓が、とくんと跳ね上がる。 「もちろんその人達の中には君も入るよ、スバル。いつも心配かけてごめんよ。 でも……ありがとう。君との授業は、僕にとってもとても楽しくて、大切なものだから」 だから今年もよろしくね、そう言ってユーノは再び笑顔を浮かべた。 スバルは感動のあまり、胸が一杯になっていた。 ユーノが自分をそこまで大切に想ってくれていたとは思ってもいなかった。 そして、感動に震えるスバルに、ユーノから予期せぬ追撃が行なわれた。 「あれ? スバル、ほっぺにあんこがついてるよ?」 そう言うが早いかユーノは手を伸ばして、すっとそれを掬い取った。 そしてそのままごく自然に自分の口元に運び、ぺろりと舐めた。 「うん、やっぱり甘くて美味しいね」 「──────────────────ッッッッッ!!!!!?????」 ユーノは疲れのためか正常な判断力を失ってしまっているようでにこにこと笑っているだけだが、 スバルの方はそうはいかない。 顔をこれ以上ないくらいに真っ赤にし、先程とは別の意味で言葉を失ってしまっている。 先程の言葉の後にこの仕打ちである。もうスバルの中の想いは爆発寸前……いや、爆発してしまった。 顔を真っ赤にしたままスバルはすっくと立ち上がると、 そのままユーノの後ろに行き、彼を後ろからぎゅっと抱きしめた。 「ス、スバル!? どうしたの!?」 背中に当たる、柔らかくも弾けるような弾力をもつ二つの餅の感触に、流石のユーノも狼狽する。 そんなユーノにスバルは言った。 「先生が……先生が悪いんですからね? あんなこと言って、そんな事しちゃうから……わ、私、火がついちゃったじゃないですか……!」 そう言われたユーノは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにいつもの柔和な笑みを浮かべると、 スバルの手にそっと自らの手を重ねながら言った。 「そうだね、確かに僕の所為だね。 それじゃ責任をとるという事で、今年初めての授業は……『姫始め』についてやらせてもらうよ」 「……姫始め? それって……。」 「大丈夫。ちゃんと教えてあげる。その言葉の由来も、その意味も。もちろん……実技込みで、ね」 ユーノはするりと体をスバルに向けると、正面から彼女を静かに、だが力強く抱きしめた。 スバルはその感触にこれ以上ないくらいに幸せそうな笑みを浮かべ、そして……。 「……っていう初夢を見たんだよティア!! 初夢って実際に起こるっていうよね!? 私、とうとう先生と結ばれちゃうんだ……! あ、私可愛い下着をあんまり持ってないや! 買いに行くの付き合ってよティア!!」 「あーもううっさい!! そんなの自分で行きなさい自分で!!」 正月早々何でこんな馬鹿話につき合わされなきゃいけないのかと、ティアナはげんなりとしていた。 そこで、ふと思いついた事を浮かれまくっているパートナーに告げる。 「どうでもいけどアンタ、そのことは誰彼構わず言うんじゃないわよ。 『あの人』達に知られたら、アンタ、只じゃ済まないわよ」 そう言ったティアナは過去のトラウマが蘇ったのか、肩を抱いて震え始めた。 そんなティアナにスバルは明るく言った。 「大丈夫だよ! 別に卑怯な事をする訳じゃないんだから、ちゃんと分かってくれるよ! みんな優しいもん!」 そう言い切るスバルの笑顔を見ながら、ティアナはその予測は甘すぎるなんてモンじゃねーぞと思ったが、 これ以上言ってもスバルは聞き入れそうになかったので、パートナーの無事を震えながら祈った。 後日、この初夢を正夢にすべく行動しようとしたスバルであったが、 ことユーノに関しては超常的な勘を働かせる某教導官や執務官や部隊長、 更には部隊長の私設戦力達や自分の姉や某中将の秘書、聖王モードになった教導官の義理の娘、 調整作業から帰ってきたユーノのインテリジェントデバイスなどにも妨害され、 その時無限書庫は阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのだが、それはまた別のお話。 以上で投下終了。鍋もスバルには似合うね。 電波を送ってくれた方々には感謝。ユースバの布教に役立たせてもらいましたー。ではー。 19スレ SS スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター ユノスバ ユースバ ユーノ ユーノ×スバル ユーノ・スクライア 夢オチ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/299.html
3レス投下 NcVkMIHT 午前8時、ドアの向こうから響く怒号は無限書庫司書事務室のみならず外の廊下にまで僅かに到達し、 そこを行き交う局員たちの注目を集めていた。事務室の司書たちも言わずもがなだった。 「だから、それは出来ない相談だと何度も申し上げているでしょう!」 どん、と重厚な両袖机の天板を叩くと、端に積んであった書類が雪崩を起こして床に殺到した。 ――ああ、片付けるの面倒だなぁ。 書類の崩れる音に冷静になったユーノは、一つ溜息を吐いてから再び顔を上げる。 無限書庫司書長室、ユーノは目前に展開される空間モニターに向かって厳しい視線を送っていた。 「しかし、スクライア司書長のお力添えがあれば……」 しつこい。ユーノはそう思った。 「そのために彼女を危険に晒せと仰るのですか?」 声は低く、忌々しげな様子だった。 「ええ、その通りです。 ……情報の重要さは、無限書庫司書長である貴方が一番ご存じのはずでしょうに! それに、彼女はこちらにくださった方が有効に活用できます。 そうすれば、上層部からの評価もましになるでしょう」 埒が明かない。傲慢な笑みと不遜な言葉に、ついには自制も利かなくなりそうになった。 「……なんにせよ、申し訳ありませんが、どうしてもそれは飲めません。もう話は終わりですかね」 眉間の眉を更に深くし、ユーノは歯を食いしばってからそれだけ言った。 「スクライア司書長!」 「失礼します」 続きを無視して回線を切り、モニターはぷつんと一本の光となって空間に融けていった。 ユーノは机に腕を乗せて祈るように手を組んでから目を瞑った。肺を絞るように、俯いて盛大に溜息を吐いた。 胸に溜まったものを幾分吐いてから目を開けると、 お気に入りだった木目調の机の天板には大きな傷が付いていた。 机を叩いたときにスーツの袖ボタンが抉ったようだった。沈んだ気分がさらに沈んだ。 駄目押しに、肋骨が内圧に凹むまで溜息を吐ききり、革張りの肘掛け椅子に背を預け、天を仰いだ。 「まったく、朝から嫌な……」 コンコン。言い切らないうちに司書長室のドアがノックされた。 ――どうやら自分は休む事を許されないようだ。 最後に一つ、何度目かの溜息。 弛んだ背筋を伸ばし、緩んだ顔を引き締め、ユーノは司書長としての表情を作った。 「どうぞ」 ガチャリと扉が開かれた。 「司書長、そろそろお時間の方が」 入ってきたのはスーツを着込み、 毛先に軽くウェーブがかかった金髪をバレッタでアップに纏め上げた女性だった。 それは、ユーノの秘書になったドゥーエだった。 ドゥーエは戦闘機人、ナンバーズの次女である。 昔はスカリエッティの配下だった。ユーノの部下でもあった。そして、今はユーノの部下になった。 かつて、スカリエッティに時空管理局への潜入を命じられた彼女は、最初は事務員として管理局に就職したが、 その片手間に無限書庫の司書として勤め始めた。無限書庫ほど諜報に適した場所は他には無かったからだ。 空を凌いで聳え立つ本棚にはあらゆる情報が詰まっているばかりか、依頼状況からは管理局の動きが見渡せる。 更に、 無限書庫の開拓時から勤め上げたドゥーエの信頼は厚かった――ユーノに機密情報の閲覧を許されるほどに。 そうして彼女は管理局に関するあらゆる情報を収集せしめ、 JS事件発生直前に無限書庫司書を辞職し、事件に加担したのだ。 事件後にドゥーエがスパイだと知ったユーノはただ悲しむばかりだった。 古参の司書として、彼女は家族も同然だった。 長年部下と上司して連れ添った彼女も、ユーノに情が移っていた。僅かながらに申し訳ないと思っていた。 ゼストによって機能停止に追いやられた機体の修復後、スカリエッティやナンバーズと共に投獄された後、 ユーノの熱烈な働きかけによって、ついに現在更正プログラムの一環として無限書庫に配属され、 かくして、ユーノ率いる無限書庫は再びドゥーエを迎え入れ、今に至るのだった。 ドゥーエの姿を見たユーノは強張った顔を和らげた。 「ああ、わかったよ。今日の予定はどうなってる?」 「午前10時からクラナガン中央市民ホールで行われる成人式に出席します。 この後モーターモービルで送迎いたします」 懐から手帳を取り出し、確認しながらドゥーエがは言った。 「成人式に出席?僕が?」 ユーノはきょとんとした顔で首を傾げた。 高度に発達した文明社会のため、 逆説的に就職年齢の低いミッドチルダでは成人年齢は低く、15歳ともなれば大人と認められる。 ユーノはもうとっくに19歳、大人の自分に関係のある話とは思えなかった。 「勿論講演の依頼ですよ。昨晩原稿をしたためていらっしゃったじゃないですか」 「ああ、すっかり忘れていたよ。続けて」 最近物忘れが激しいけど大丈夫かな、と自分の頭を案じながらユーノは促した。 「その後は11時40分から他の出席者の方とオーシャニックホテルで会食があります。 これは昼食を兼ねますので。 会食にはクラナガン市長もいらっしゃいます」 「それは丁度よかった。クラナガン中央図書館との連携計画について少し話したかったんだ」 「会合が終わり次第、本局に帰還して無限書庫の通常業務に戻ります。それ以降の予定はありません」 ドゥーエが手帳を閉じると、ユーノは顎に手をやった。 「現在の依頼状況は?」 「ロストロギアの調査関連が9件、裁判資料関連が3件、事務関連が24件です。 いずれも大した量ではありません」 読み上げるように返された。ドゥーエの優秀さにユーノは心底感心し、微笑を浮かべた。 「よし、それなら少し長居しても大丈夫そうだな。部下には申し訳ないけど」 ばらけた書類を片付けようと椅子から立ち上がると、ドゥーエがちらちらと物言いたげに顔を見てきていた。 「……あの、司書長」 「ん?なんだい?」 ユーノが器用に片方の眉を顰めると、決心したのか訊いてきた。 「その、先ほどの通信ですが……」 うわ、聞いていたのか! 情を露にする事を恥じるユーノは途端に狼狽しはじめた。 「た、立ち聞きとは、君も趣味が悪いな」 ユーノの落ち着かない糾弾に、ドゥーエは申し訳なさそうに抗弁した。 「いえ、あまりに声が大きかったので……その、嫌でも耳に入ってしまって」 「え、そんなに響いてた?」 「外にいた司書の方もみなさん驚いていましたよ」 「……今度防音工事しなきゃな」 ユーノはばつの悪い顔になった。 ドゥーエは続けて尋ねた。 「あの話、ですか?」 「そう。まただよ。諜報部は君を物か何かだと思っているらしい」 吐き捨てるようにユーノが言った。 そのさまは怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。 「……私は構いませんよ」 ドゥーエは優しい顔をしたが、微かな喜びか悲しみかが声に帯びていたようにユーノは感じた。 「いいや、僕が駄目なんだ。少なくとも、君を物扱いしている間は考えてもやらない」 きっぱり言い切った。言ってからちょっと恥ずかしくなった。 「ですが、諜報部に出向すれば私の観察保護期間も短縮されるはずです。 私も、これ以上貴方に手をかけさせる訳には……」 ユーノは気にした様子も無くかぶりを振った。 「君の監督責任者は僕だからね。悪いけど勝手に断らせてもらったよ」 「しかし……」 「……いくら君が諜報に長けてるからといって、潜入任務がとても危険なことは変わらないよ。 それに諜報は誰もが認める正義の行いではない。もちろん犯罪組織とかへの潜入もあるにはあるけど、 管理局が独善で敵対している組織への破壊工作や、その外国政府反勢力の煽動活動も多い。 わざわざ君が矢面に立つ必要はないし、僕は君にもう手を汚してほしくもない」 ユーノの目は真剣だった。それで引き下がるドゥーエでもなかった。 「それでも、事前の諜報活動があれば無為な犠牲は生まれません」 それは真摯な訴えだった。 しかし、その裏には他人に対する思いやりではなく自分に対する気遣いが勝っていたように感じられて、 ユーノは複雑な表情になった。 「君までそれを言うのか。ああ、確かにそれは尊いことだよ。 でも、僕には見ず知らずの他人を直接救う力も余裕もないからね。 本質を見誤ってはいけない。僕にとっては、人の命とは量より質なんだ」 これ以上は誤魔化せないか、と苦笑しながら真情を吐露した。 「……それは」 「あ、失望したかい?」 ドゥーエの苦々しい様子を、しかしユーノはけらけらと笑いとばした。 「言ってる事はかつての最高評議会と同じだからね。 でも、理想論だけで大切な人を失うわけにはいかないんだよ」 優しい顔でドゥーエを直視した。 「……上や諜報部から良い目で見られませんよ」 目を左下にそらしながら尚も食い下がるドゥーエを、ユーノはしつこいとは思えなかった。 そしてユーノは胸の内奥からこみ上げる心底からの笑みが抑えられなくなって、片方の口角が吊り上がった。 「ドゥーエさんのためなら、僕は悪役にもなるよ」 自然に出た言葉だった。クサいのは自分でも分かったが、それがどうしたとユーノは思った。 一方ドゥーエは面食らってたじろいでいた。何故かとても恥ずかしくなって胸の内部がどよめいた。 気を取り直すためにこほんと一つ咳をして、こうも自分を惑わすユーノに仕返しをすることにした。 「……それって、プロポーズですか?」 ユーノは笑みを浮かべていた顔から凍りつき、そこから全身へと硬直が波及していった。 ついにしてやった! ドゥーエはにやける頬を押さえられなかった。 「……とにかく、当分は無限書庫にいてもらうからね」 すかさず机の脇に設置されたポールハンガーからトレンチコートとカバンをとった。 ユーノは早足でドゥーエの横を通り過ぎ、扉へ進み、外の事務室へ逃げようとする。 予期せぬ返答を咀嚼するのに時間がかかったドゥーエは、一拍おいて動き出した。 「あ、ちょっと。もう、逃げないで答えてくださいよ」 「さぁ、今日もお仕事お仕事」 がちゃり。扉を開けたユーノは飄々と歩みを速め、むっすりとしたドゥーエは小走りに追った。 仲良く司書長室から出てくる二人を司書たちの笑い声が包み込む。 ようやく静寂を取り戻した司書長室。床にはぽつんと書類が散らばっていた。 21スレ SS ドゥーエ ユーノ×ドゥーエ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/75.html
タイトル「ユーノとすずかとホワイト・デー」 作者:78-264 本文 ユーノ・スクライアは悩んでいた。 来週末は3/14。海鳴ではホワイト・デーという日にあたる。 先月のバレンタイン・デーでは思いがけず月村すずかより本命チョコを貰い、 そのお返しをするのだが。 『ホワイト・デーは、30倍返しなんやで?』 という、はやての冗談を真に受けた彼は、悩みに悩んでいた。 その真剣に悩む姿を見たなのはもフェイトも、そして張本人のはやてまでも。 いまさら、実は冗談でした、とはとても言える雰囲気では無かった。 そんな友人達の思惑を知る由も無いユーノは、女性へのプレゼントという初めて挑む難問に、 ひたすら頭を捻っていた。 海鳴、月村邸。 なのはからビデオレターを受け取ったすずかは、制服を着替える時間も惜しんで機器にセット。 交換日記のようにユーノから届くそれは、すずかの宝物だった。 いつもはにかんだ笑顔で、働き始めた書庫の事とかミッドチルダの事とか、色々な話をしてくれる。 先日はバイオリンの発表会があると知ったら、綺麗な石を贈ってくれた。 見つめていると緊張がほぐれる、優しい光を放つんだよって教えてくれて。 嬉しくて泣きそうになってしまった。 愛しい彼が石と共に見守ってくれているように、発表会は一つのミスもなく、演奏ができたのだった。 今日はどんな話をしてくれるのだろう、とドキドキしながら見ていたすずかは、 突然屋敷中に響き渡るくらいの大声をあげてしまった。 彼女らしからぬ悲鳴のような声に屋敷中からわらわらとメイド達が集まる。 部屋の中、すずかは赤面して固まっていた。 だが、一見して特に異常は見受けられない。虫でも出たのだろうか? 代表してファリンが問うと、すずかはか細い声でこう答えたのだった。 「ファリン、どうしよう…ユーノくんに、デートに誘われちゃった」 書庫の休憩時間に、なのは達から入手した海鳴の数十冊の情報誌を同時検索。 すずかをエスコートするプランを、ユーノは練っていた。 海鳴の気候や一般的な風土風習、それに話題のスポット。 結局、30倍のお返しの妙案は浮かばなかった。 何をもって30倍なのか。 質か、量か。それ以外のものなのか。 悩みに悩んだ末、彼はすずかが一番喜ぶことをしようと決めたのだった。 ビデオレターでのすずかの笑顔。声。仕草。垣間見える穏やかで優しい性格。どんどん愛しくなってくる。 こんな素敵な女の子が、本当に僕なんかを好きなのかって。これは夢じゃないのかって、疑ってしまう程だ。 映像の最後はいつも、手を振って別れの言葉。決して言わないけれど、表情が、会いたいって訴えてる。 その度に、ユーノは申し訳ない気持ちになってしまうのだ。 だからユーノは、会いに行くでは無く、デートの誘いをしたのだ。 古今東西、次元が違っても、女の子の一番望むことはデートだろう。遠距離なら尚更だ。 誘うのもかなり勇気(当社比30倍)が必要だったが、むしろそれからが大変だった。 次元渡航の申請、海鳴の貨幣の入手等をリンディにお願いして。 今まで服に取り立てて気を使ったこともないユーノはデートに来ていく服など無く、 すずかをがっかりさせたくない一心で、エイミィに見繕ってもらった。 二人からは協力の見返りにデートの報告、という悪魔の契約書を条件提示されたが 背に腹は変えられぬユーノはそれを飲まざるを得なかった。 ともかく。外堀をなんとか埋めたユーノは、その類稀な検索能力を駆使してデートプランを練っていた。 デートの経験などあるはずもない。それ故、不測の事態が起きにくい、手堅いプランをと。 彼は三日思案して、何度も脳内シュミレートもして、何とか形にすることが出来た。 これなら、どんな不測の事態でもきっと大丈夫、という出来に仕上がった。 しかし。ホワイト・デー直前に。 彼の想定を大きく超える不測の事態が起きたのだった。 ファリンがすずかの額のタオルを冷たいものに変える。 「37度4分…まだ少し高いですね」 すずかは風邪を引いてしまっていた。 週末のデートに興奮しすぎてなかなか眠れなかったのが原因だろう。 昨日よりは熱も下がってきているが、体力は当然落ちている。 とても明日、デートで走り回れる状態ではない。 かえって彼に気を遣わせてしまうのは明白だった。 ━━だけど、無理をしてでも行きたい。 口には出さないが、すずかは悔しくて仕方が無かった。 せっかくのデートなのに。楽しみにしてたのに。それ以上に、誘ってくれた彼に申し訳なくて。 悔しさで涙を流すすずかを、ファリンはただ優しく撫でていた。 そして。すずかは決心してユーノに断りの電話を入れた。 病状を心配してくれて、ゆっくり休んでという彼の優しい声。それが今はとても嬉しくて、辛かった。 その夜、すずかが寝静まった頃。ファリンから状況を聞いたノエルは一本の電話を入れた。 カーテンの隙間から朝日が差し込み、すずかは目を覚ました。 熱はほとんど下がっているように思える。 本当なら今日は…と悔やみきれない思いを抱いていると、ノックをしてファリンが入ってきた。 「おはようございます、すずかお嬢様」 「おはよう、ファリン」 熱を測る。35度7分。下がっていた。咳も出ていないようだ。 それを見たファリンは不自然なくらい嬉しそうに、すずかの身だしなみを整え、デート用だった服を渡す。 「え、ファリン、これ…」 早く着替えて来てくださいね、とパタパタと出て行くファリン。 「きゃあっ!」 そして悲鳴と共にドアの外でドシン、と尻餅でもついたような音。 ファリンが転ぶのはいつもの事だが、だからといって放っておくわけにいくはずもなく。 すずかはドアを開けた。 「「あっ」」 ドアの外にはユーノがいた。執事服を着て。 傍らにはノエルと、痛そうに膝を抱えてうずくまるファリンが。 ━━え?どうしてここにユーノくんがいるの?! 驚きのあまり声が出ないすずか。 急に出てこられて言葉が咄嗟に出てこないユーノ。 そして、ドジな妹に演出をぶち壊され溜息をつくノエル、二重の意味で涙目のファリン。 そして一番早くに立ち直ったノエルはわざとらしく咳をして、言った。 「おはようございます、すずかお嬢様。こちらは一日執事のユーノ・スクライアです」 その日一日、ユーノは執事としてすずかにかしずいていた。 初めは戸惑っていたすずかも、おままごとをしているようで次第に楽しくなってきた。 病み上がりのすずかのためにスクライア族仕様の粥を作ったり、 疲れて横になったすずかの話し相手になったり、デザートを食べさせてあげたり。 まるで生まれたときから一緒だったように息の合う二人をみて、 メイド達は自然と笑みが浮かんでいた。 きっと二人はこのまま大きくなって、生涯共に寄り添うのだろう。そう思えるほどに幸せそうな二人。 しかし、楽しかった時間はあっという間に過ぎるもの。 夕飯を終え、ユーノの一日執事という魔法は解けてしまった。 執事服を着替えていつもの服になったユーノは、次はちゃんとデートしようね、と言って、 チョコのお返しにとクッキーを手渡した。 「もちろん、本命だよ。…好きです、すずか」 突然の告白。バレンタインの時もちゃんと返事をしていたというのに。 言ったユーノも顔を真っ赤にしているが、不意打ちを受けたすずかはその比じゃない。 嬉しさよりも恥ずかしさが上回る。 ━━わたしが不意打ちしようと思ってたのに、先になんてずるいよ、ユーノくん… すずかは頬を染めたまま大きく深呼吸し。ユーノの耳に口を近づけると何事か囁いた。 ユーノはその言葉にびっくりしてすずかを見るも、彼女は既に目を閉じている。 心臓が痛いほど高鳴って、たった数十センチの距離がやけに遠く感じる。 だが、やがて。二人の唇が触れ合った。 唇に遅れて体が触れ合い、服越しでも互いの鼓動を強く感じる。 ドキドキしてるのが自分だけじゃないと感じた二人は、 互いが同じ気持ちを抱いていることに愛しさがあふれてどちらとも無く腕を回して抱き合う。 夜の帳が下りた静かな庭で、別れを惜しむように、口付けは続いていた。 「ユーノくん、執事とは大胆やな」 「でもユーノはそういうの得意そう」 週明けの学校、放課後。すずかの嬉しそうな恥ずかしそうな話に、はやてとフェイトが相槌をうつ。 最後のキスの事だけは絶対に言えないが。今でも思い出せばユーノの感触が鮮やかに蘇るのだ。 いつか絶対、一日メイドになって…とすずかは心に固く誓っていた。 「道理で元気なわけよね、愛しのユーノに一日中お世話してもらってたんだから」 「アリサちゃん、それは言い過ぎなの」 アリサのちょっと辛らつなツッコミにフォローを入れるなのは。 いつもの穏やかな、親友達の語らいだった。 「ところではやてちゃん、ホワイトデーのお返しっていつから30倍になったの?」 空気が凍った。 すずかはにこにこと笑みを浮かべて、はやての答えを待っている。 だがいつものように控えめで穏やかなすずかの笑顔から、底知れぬ恐怖を感じるのは何故だ。 周囲の空気が黒く歪んで見えるのは目の錯覚ではないのだろう。 …とても、笑って済ませられる雰囲気ではなかった。 「ゴメン、すずかちゃん、悪気なかったんや。 ユーノくんにハッパかけようと、ほんの冗談のつもりで…」 青ざめたはやては平謝り。 しかしすずかの追求は止まらない。 「ユーノくん、こっちの文化知らないから、すっごい悩んだみたい。 どうして冗談だって言ってあげられなかったのかな」 いたって柔らかな物腰。 だが、はやては襲い来る不可視のプレッシャーにガタガタと震えていた。 ━━ゴメンな、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ…わたしはもぅあかんかもしれへん。 遠くでリィンフォースが手招きしとるんが見えるんや… そしてすずかは視線をはやてからなのは、フェイトに向ける。 笑顔のまま、ゆっくりと。 「なのはちゃんもフェイトちゃんも、その場にいたんだよね?」 声をかけられた二人はビクッと震え上がる。 ━━こんな怒ってるすずか、見たこと無い… なおも笑顔で責め立てる親友を横目に、アリサは一人、すずかだけは怒らすまいと心に刻み付けるのだった… おわり 以上、投下終了。 ユーノがリンディとエイミィの餌食になったかどうかはまた別の機会に… すずか ユノすず ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/101.html
『ねえ、ユーノ君。お花見にいかない? 家の方が今、桜が見ごろなんだ』 そうなのはが言ってきたのは、つい昨日のこと。 ちょうど急ぎの仕事もなかったユーノは、かつて過ごしたなのはの世界のことを思い出す。 春。穏やかでうららかでたまに嵐のある季節。その到来の先駆けのように咲く花がある。 それは桜という薄紅色の花。香りはないけれど、春と言う季節にぴったりの色彩と雰囲気漂う花だ。 一枝でも十分に綺麗だが、それらが集まった場所は空間さえも桜色に染まる。 その膝元で花を眺め、親しいひとたちと語らいながら飲んだり食べたり。 そうやってわいわい楽しくするのもいいが、誰もいない静かな場所で眺めるのも格別で。 『ユーノ君は賑やかよりも静かな場所の方がいいかな』 まるで心を読んだかのようななのはの言葉に、内心驚く。 顔にでも出てたのかな。 思わず頭をかくと、画面の向こうでなのはが笑った。 『ユーノ君ならそっちの方が好きかなって思っただけだよ』 ほら、やっぱり読まれてる。 なのはにはかなわないなあ。 でも、それでいい。それがいい。 それだけ、僕のことをわかってくれて、気遣ってくれてるってことだから。 その後少しだけ話をして通信を切る。 「……さてと。仕事をさっさと切り上げて明日に備えるとするか」 くいっと眼鏡を上げると、ユーノはそれまで以上の速度で仕事を片付け始めた。 「綺麗だね」 「本当に……夜の桜っていうのもいいね。ありがとうなのは。こんないい場所を見つけてくれて」 「たまたまだよ」 「ここ、たまたまで見つかるような場所だとは思えないんだけど」 翌日、二人がやってきたのは前人未到の山奥に人知れず咲き誇る桜の園だった。 ユーノとの通信の後すぐに海鳴市に戻ったなのはがその夜こっそりと空を駆け、探しに探して見つけた場所だった。 ここにいるのはたったふたりだけ。 周囲は一面薄紅の海。あえかな風にあおられて、はらはらひらひらと花弁が舞う。 昼間なら幻想的で美しいその場所も、夜の今では桜に攫われてしまうのではないかという不安を煽るような闇の美しさを纏う。 だが、なのはとユーノは恐ろしさなど欠片も感じてはいなかった。 「あ、ユーノ君。頭に桜の花びらがついてるよ」 「これだけ花が散ってるからね。ほら、なのはにもついてる。取ろうか?」 「いいよ。どうせまたついちゃうし。それにこういうのも風流だと思わない?」 「だね。じゃあこのままでいいか」 「うん」 二人でいる。 ただそれだけの、けれど絶対的な安心感と幸福感の前には桜の魔性も通用しないのだ。 「ね。ユーノ君。そろそろ何か食べる?」 「……もうちょっとだけこのままがいいなあ」 幸せそうに笑うと、ユーノはすりすりと柔らかな枕に頬ずりする。 温もりと香りと甘えさせてくれる彼女。 いつもならどちらかの部屋だけの彼女だけど、今はこんな風に外でしてくれる。 なのはお手製の和菓子と緑茶、及びお弁当の魅力さえ、この状態にはかなわない……とユーノは思う。 「お昼早かったでしょ? お腹すいてないの? ご飯はちゃんと食べないといけないんだよ」 「まだ空いてないからいいの」 「もう。しょうがないユーノ君だなあ」 くすぐったさに笑いながら、なのはは優しくユーノの髪や背を撫でた。 自分の膝を枕にしている幼馴染の瞳が気持ち良さそうに細められ、やがて瞼が閉じられる。 安心しきったその姿を見ていると胸の奥から温かくて優しい気持ちが自然と溢れてきて、なのはももうしばらくはこのままでいいかな、と思ったのだが――。 ……きゅううううう。 なんとなく昔のユーノの別なる姿の声にも似た音。 自分のものではないその音に瞳を瞠ったなのはを見上げると、ユーノは少しだけ恥ずかしそうに、かつ微妙に視線を逸らしながらぼそりと言った。 「えーと………………なのは。お腹が空いたから何か食べたいんだけど」 「はいはい。食欲に負けちゃったんだね。何がいいですか、司書長」 「その言い方、少し意地悪じゃないかな」 「ふーん。じゃあ、さっき私の提案を断ったのは誰だっけ」 「だって、あの時は」 反論しかけたユーノの唇を白い指先がそっと押さえる。 「もういいよ。困ってるユーノ君が可愛いから許してあげる。お菓子もお弁当、どっちからがいいかな」 「……お弁当が先で、デザートにお菓子がいい」 はぐらかされて釈然としないが、とりあえずユーノは食欲を満たすことを優先する。なにしろ、なのはの手料理はとても美味しいのだ。つまらない意地を張って食べないというのは、あまりにも愚かすぎる。 よいしょと起き上がる少しの間に、なのははてきぱきとお弁当一式を広げ終わっていた。 多種多様、色とりどりの内容。手間がかかっていると一目でわかる。 「作るのに結構時間かかったでしょ」 「んーまあね。でも楽しかったし、お母さんにも手伝ってもらったから」 卵焼きをお箸で一口大に切ると、なのははにっこり笑う。 「はい、あーんして」 「え、ちょ、それは」 「あんなに甘えモードだったのに、今更どうして恥ずかしがるのかな。どうせなら最後まで貫こうよ」 「いやでもそれはやっぱり照れるし恥ずかしいってば」 「ここには二人しかいないよ。誰も見てないよ。さあ、観念して口を開ける!」 しばしの逡巡の後、司書長は食欲に従った。 「……あーん」 「よろしい」 頬を真っ赤に染めて口を開けたユーノに御機嫌よろしく頷くと、なのはは卵焼きを食べさせる。 「う」 卵焼きを噛み締めた次の瞬間、ユーノが眉を顰めて呻く。 「ユーノ君?」 「……なのは。とりあえずこれを食べてみて」 首を傾げるなのはに、今度はユーノがあーんで卵焼きを食べさせる。 すると先ほどのユーノと同じように、なのはも眉を顰めた。 「ちょ……なにこれ。凄くしょっぱいよお」 「作った本人が何言ってるのさ」 「でも、私ちゃんと作ったもん!」 「ちゃんと作ってこれって、いわゆるひとつの嫌がらせとか」 「そんなことしないもん! ユーノ君の意地悪! たまたま何か手違いでこうなっただけだよ! 他のは普通だよ! 食べてみて!でもその前に」 「?」 「……たまたまとはいえ、変なの食べさせて本当にごめんね」 ……これだもの。 さっきまでの勢いはどうしたのかっていうくらいしゅんとして、ちゃんと謝りつつ口直しのお茶を差し出すなんてツンデレですか。 本当に、ちょっと悪ノリしてからかっても、予想外の方向からそんなものふっとばすんだから。 さすが砲撃魔導師。なんちゃって。 謝るなのはに不覚にも胸ときめかせつつお茶をごきゅごきゅ飲み干し、ユーノは脳内で妙な方向へと思考を飛ばす。 とどのつまりは「なのは可愛いよなのは」とか「ああもう大好きさなのは」といった感情が静かに短距離暴走しているだけなのだが。 そんなユーノの眼前に、今度は違うおかずをはさんだ箸が突きつけられる。 「今度こそ大丈夫だよ! 先に私が味見したから! さあユーノ君、いざ!」 なぜ闘志めいたものを瞳に燃やすか高町なのは。 しかしその意気や良し。受けてたとう。 とりあえず間接キスだね。 普通のキスもそれ以上のキスもしてるっていうのに、なんだかこそばゆくて頬が桜色に染まっちゃいそうだよ。 そんなことを思いながら、ユーノは再びあーんと口を開けた。
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5314.html
(後一部屋……そこを潰せばこのホテル内の命は全部手に入る……) ディエンドはなのはとユーノがいる部屋の前まで来ていた。 そこにいる参加者を殺してハス太の支給品だった一斗缶(ガソリン入り)でホテルに放火する事で士への手向けを完了させるためだ。 そして、扉を開けたディエンドは翡翠の鎖に縛られた。 「なのははやらせないよ」 それを言ったのは、蜂蜜色の長い髪をリボンで括り眼鏡をかけた男――タイムふろしきで19歳となったユーノ・スクライアだった。 ショッキングな出来事が連続し過ぎて一周回って冷静になったユーノは、未来が簡単に変わってしまった事に疑問を抱き、とある仮説を立てた。 カオスロワという状況では未来は幾らでも変わる可能性があるというものだ。 それ故、自分を成長させた上で襲撃者との戦いに挑むことにした。 ユーノが、唯一使える射撃魔法であるシュートバレットを2発放つ。 「この程度で僕を止められるとでも!」 ディエンドはバインドを引き千切り、魔力弾をディエンドライバーの射撃で打ち落とす。 そのまま接近戦で方をつけようと殴りかかるディエンド。 しかし、その拳がユーノに届くことは無かった。 「ウェイブゲイザー!」 地面に仕掛けられていた魔法陣から鎖が幾つも伸び、ディエンドを攻撃する。 士の死亡によって冷静さを失っていたディエンドは、魔法陣に気付かず踏んでしまっていた。 「シールドバッシュ!」 突然の攻撃にひるんだディエンドに防御魔法を纏った拳が叩き付けられた。 これらの攻撃も、仮面ライダーであるディエンドには大したダメージではない。 しかし、格下相手にしてやられた事による苛立ちでディエンドの動きのキレが無くなってきていた。 『アタックライド』 ディエンドインビジブルで透明になるディエンド。 そのまま、ユーノの背後に回り込んで射撃を行うが、ユーノのスフィアプロテクションに防がれてしまった。 成長してより数の増えたマルチタスクを活用することによって、ユーノは相手の行動を予測しつつ、次々と術式を組み上げている。 それ故、ディエンドの攻撃はあっさりと防がれたのだ。 「うぜぇよ!これならどうだ!」 『アタックライド』 今度はディエンドブラストでユーノを攻撃する。 強化された光弾をディエンドライバーで連射するディエンド。 「プロテクションスマッシュ!」 対するユーノは防御魔法を纏ってディエンドに突撃した。 ユーノの強力な防御魔法は光弾を全て弾き、ディエンドをも跳ね飛ばした。 それでも有効打とはいえず、体勢を立て直すディエンド。 だが、それだけでユーノには十分だった。 「広がれ、戒めの鎖!捕らえて固めろ、封鎖の檻!アレスターチェーン!!」 無数の翡翠の鎖がディエンドの全身を締め付け、そのまま縛り上げる。 あらゆる方向からかかる強烈な不可に耐えられずディエンドは変身が解け、そのまま引き千切られた。 「悪いけど、なのはと守る為だから」 ディエンド――海東大樹の残骸を見下ろしてユーノはそう呟いた。 そんな光景をびくびくしながら見ていたハス太に彼が気付くのは数分後だった。 一方、ユーノの指示で浴室に隠れていたなのはは千年タウクで見える未来が変わった事に気づいた。 それは、世界を襲った大災害が数日以内に日本を襲うというものだった。 (どうしようユーノ君、世界、滅んじゃうよ……) 未来は変わった。 しかし、未だ最も大きな災厄の未来は変わる事が無い。 【一日目・11時20分/日本・千葉県 ホテル】 【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】 【状態】思考暴走、25歳の身体、ボンテージを着ている、激しいショック 【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王、タイムふろしき@ドラえもん、ボンテ―ジ 【道具】基本支給品一式 【思考】 1:どうしよう、世界滅んじゃうよう ※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています。 ※タイムふろしきを使ったので、25歳の肉体に成長しました。 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 【状態】魔力消耗(小)、19歳の身体 【装備】なし 【道具】基本支給品一式 【思考】 1:なのはを護る。 ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。 ※PSP版の技が使えます。 【ハス太@這いよれ!ニャル子さん】 【状態】健康、びびる 【装備】 【道具】支給品一式、ガソリンの入った一斗缶 【思考】 1:ニャル子ちゃんたちは大丈夫かな 2:このお兄ちゃんは……こわい人なのかな? ※古の謎のパワーでホテルの出入り口を封鎖しています。外に出れません。 【海東大樹@仮面ライダーディケイド 死亡確認】 死因:アレスターチェーン
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/264.html
* 作者:W13zo6nE 目に入ったのは、見知った天井だった。しかしそれはおかしなことだった。 「ここは――」 自室のベッド。言い切らないうちに起き上がろうとすると、酷い頭痛に襲われて断念した。 「なんで……」 片手で顔を両の目を覆う。直ぐに、ブラッディ・マリーの鮮烈な赤が脳裏の暗闇を支配した。 ――そうだ、僕ははやてと飲みに行っていた筈だ。 頭痛に負けじと翳した手に力を込め、脳漿を搾り出すように頭を掴んだ。思い出せ。過去を顧みろ。 しかし――カウンターに座り、はやてから部隊の指揮統制システムについて相談を受け、 古代ベルガの軍政に於ける戦略C4ISRについて論じ、 無限書庫が巻き起こした情報RMAの旋風を軽んずる本局監察査察室の頭の固さについて愚痴った後は―― 何一つ覚えていなかった。 それでも、薄ぼんやりとした何かが頭に引っ掛かった。 そして、途端に視界へ色が戻った。鳥の囀りが耳を洗った。違和感が腕を掴んだ。 喉がからからに渇き、その内からきりきりと首を絞めていた。 嫌な予感に動かされて、ユーノは恐る恐る顔を横に向けた。 案の定、胸の中、驚くほどすぐそばにはやての顔があった。 一気に目が覚めた。頭が真っ白になって、ユーノはしばらく何も考えられなかった。 はやては純白のシャツを羽織っていたが、それは気休め程度にそっと身を包んでいるだけだった。 肌蹴た衣からは鎖骨が見え、胸が飛び込み、臍が覗いたところで、ユーノは慌てて視線を戻した。 そしてそのまま、ただ虚ろにはやての寝顔を観察していると、 示し合わせたかのようにその両の目蓋がゆっくりと開いた。 静かに息を飲むユーノに、はやては微笑みで彩られた寝ぼけたような顔を向けてきた。 「はやて――」 噛み締めるように呟いた。それでもユーノは現実感を抱けずにいた。 はやては身を捩って顔を上げた。 首を伸ばし、ユーノの首のあたりにキスをし、そのまま唇をユーノの口まで滑らせた。 口の中に舌が潜り込む。意識せずユーノは目を瞑り、はやての頭に手を回し、髪をかき撫でまさぐった。 ずずっ、じゅる、にちゅ、ぴちゃ、くちゅり。 打ちっぱなしの壁に生々しい水音が響いていた。興奮が脊髄を走り、快楽信号が頭を散らす。 二人は唇を押しつけ、舌を絡ませ、受け入れ、押し返し、引き抜き、差し込み、歯を愛撫して、頬を嬲った。 ほんの目の前に迫る、だらしなく肉欲に浮かんだ煽情的な顔を薄目になって見ると、一層劣情が掻き立てられた。 情欲の赴くままに、更に舌を蹂躙し、歯茎を凌辱し、唇を甘噛みして、その粘膜をたっぷりと犯した。 喉を鳴らす。酒気は飛んでいたが、濃厚なトマトジュースの味が交じった淫美な味だった。 それを孕んだ熱く荒い吐息が、口内に篭り、更に互いを行き来していた。 二人の唇からは、そのどちらのものともつかない唾液が止めどなく溢れていた。 渇いていた喉は、とっくに潤っていた。 「ふ、あ……」 やがてはやてがゆっくりと顔を引いたことによって、永遠かと思えた逢瀬も幕を閉じる。 しかし、銀糸は別離を惜しむかのように、未だに二人を繋いでいた。ユーノは口に残る唾液を嚥下した。 熱の冷めやらぬうちに、上気した顔ではやてが訊いてきた。 「気分はいかが?」 「……わけがわからない」 初めて顔を見合わせる。ユーノは目を瞬いた。はやては蕩けた瞳で見上げていた。 「……覚えとる?」 「残念ながら、全く」 ユーノは感情を抑えた低い声で言った。それは虚偽であった。はやての顔が歪んだ気がした。 脳裏に断片的な映像が激流となって一気に戻った。そこから記憶が派生し、広がり、均していった。 柔らかい唇、肌蹴た服、なまめかしい肢体、滑らかな肌、甘い吐息、艶やかな髪、弾ける嬌声、そして――。 ――その胸の内奥には、二人で飲みに行くようになってからは、朧気な予想が確かにあった。 はやても確信があったかもしれない。 もう大人の男女なのだ。酒に呑まれて一夜の徒情、ということも十分ありえた。 そして、そんな未来を何処かで許容していた。 それは認識ある過失ではなく、未必の故意だった。自ら望んだことなのかもしれない。あるいは……。 ――しかし、それでも! ユーノは醜くくも、惨たらしく後悔していた。しかし、言葉が出なかった。 ただ、眼前のはやてに懺悔するように眉を歪ました。 「ユーノ君……」 どんな罵詈雑言が吐かれるだろうかと案じ、萎縮し目を瞑った。 ふと、胸に温かいものが広がった。しかし、内奥は未だ極寒。それは、はやてが覆いかぶさってきたからだった。 はやては頬を胸に摺り寄せた。口許に残っていた唾液が滑油となって胸を濡らす。 つつ、と舌が這う感触があった。胸を吸われる痛みがあった。 それがどうしようもなくおぞましく思えて、ユーノは言ってしまった。 「ごめん」 謝罪がユーノの急務だった。 はやては顔を上げてしばらくユーノの顔を見つめた後、そっと唇を寄せてきた。 それは小鳥が啄ばむような可愛いキスだった。 「ええんよ」 ユーノは息を飲み、はやての目を見返した。目尻が柔らかく緩んでいた。心臓の鼓動が速まった。 「でも」 しかし、ユーノの声に張りはなかった。 「責任、感じてるん?」 「それは……」 口ごもった。図星だった。 「……私じゃ、不満?」 更に詰問され、言葉に窮した。 「僕は……」 「ええんや」 はやては胸に身体を預けて俯き、それだけ言った。 軽く一蹴されて、ユーノは落胆した。しかし、再びの宥恕には、あっさりと引き下がる気にはなれなかった。 「責任は、ちゃんと取るよ」 考えあぐねた末という顔をユーノは作った。声は重く、悔恨を帯びていた。 しかし、胸の中で表情が厳しくなった気配がした。直ぐにはやてが下から睨めあげてきた。 「そんなの、必要ない」 はやては顔を近づけてきた。じっと目を見つめてくる。瞳の中には、黒み掛かりたじろぐユーノがいた。 像は収斂せず、ただ乱反射していた。ユーノはさかしまに写るり、歪む自身の横っ面を張りたくなった。 まもなく、はやてはユーノの手をそっと握った。吐息に酒気は無かった。 「私は、ええんや」 そう答えながらもはやての声は震えていた。握られた手が痛かった。いよいよ瞳が光に歪んだ。 一瞬にして心が奪われ、漸くユーノは微酔から抜け出した。 最初に感じたのは陶然だった。二度目は自責だった。三度目は……。 それを見て奥底がら湧き上がった確かな真情を、ユーノは隠さないことにした。 誤魔化すな、欺くな、そうだ、僕は――。 「僕は、君が欲しい」 意外な言葉を耳にしたというように、はやては目を丸くした。 はやての返事を待たずにユーノははやての頭をかき擁き、深い深い接吻をした。 張らした頬を舐めると、塩辛い味がした。 20スレ SS ユノはや ユーノ・スクライア 八神はやて 微エロ
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5756.html
「Lyrical」 意味=叙情詩調、叙情的な、感情豊かな、熱情的な、ひどく感激して、大喜びで、(歌声が)軽やかな ―――― 「お腹の中……ユーノくんでいっぱい……」 「なのは、僕の欲望でこんなに汚してしまって……」 ギムレーという防壁に囲われた浦安市。 そこにある病室の一つでなのはは呟いた。 彼女の全身はユーノの放った白濁液塗れで艶めかしさが更に足していた。 恋人を汚し尽くしたことは、男であるユーノにしてみたら非常に強い征服欲が満たされていた。 股間のマーラ様もディアラハンをかけられたかのごとく、ムクムクと再成長している。 「ここで時間が止まって、ず~っとユーノくんと気持ちいいことができたら良いのに……」 「ああ、そうだね」 結ばれた二人が望むは永遠……その願いは共通し、何度目かのキスを交わす。 「……だけど、もう時間切れみたいだ」 「ユーノ……くん!?」 だが愛し合う者への永遠への望みは届かない。 愛では混沌に勝つことはできない。 何かを悟ったようなユーノの表情と同時に彼の体は急速に獣化が始まる――テラカオス化だ。 しかもこれまでにないレベルで強烈なもの、テラカオスへの進化が始まろうとしていた。 その様を間近で見ていたなのはの表情が絶望で陰る。 ユーノがなのはと抱いたのもまた、最期の時を恋人と一緒に過ごしたかった意味があるのだろう。 「ッ……まずい! ブリーフ博士! 早く来てーー!!」 「え……? なんで萃香ちゃんがここに!?」 しかし、時間切れに絶望するにはまだ早かった。 予め霧化して浦安中で待機していた萃香が病室で具現化。 アナキンたちと薬を作っているブリーフ博士への最速と同時に、今にも暴れだしそうなユーノを抑え込んだ。 なのはは萃香が見張っていたことを知らないので、いきなり現れたことに困惑している。 さらに言ってしまえば萃香の鼻からはちょろっと鼻血が出ていた。 「お待たせしたぞいユーノくん」 「薬は今さっき完成したところですわ」 萃香によるナースコールを聞いたブリーフ博士とサラマンディーネが病室に急いで入ってきた。 博士の手の中には治療薬が入ったカプセルが握られていた。 なお、ユーノとなのはが夜の営みをしていた痕跡が随所に見受けられたが、今は緊急時なので無視した。 「ハ、ハカセッ……!」 「さあ、飲むんじゃ、ユーノくん。これでおまえさんは助かる!」 既に肉体の80%は獣化が進んだユーノ。 ブリーフ博士は怪物フェレットと化した彼の口にカプセルを放り込んだ…… 病室の外にはアナキン、はやて、ギムレー、ツバサの四人がいた。 「アナキンさん、ユーノくんは助かるんやろか」 「助かるさ、なにせ僕と博士、サラが作った特効薬だからね」 「…………」 不安そうなはやてをなだめるアナキン。 そして他の仲間たちには教えていないとはいえ、アナキンこそテラカオス化ナノマシンを現代に復活させ、騒動を巻き起こした張本人であることを知るギムレーはジト目で二人を見ていた。 この場でアナキンの正体をバラさないのは先ほど彼と交わした密約と、大災害の黒幕は別にいるからだ。 密約を反故にすれば、両方に多大な被害が出る上に最悪“大災害”や“黒幕”に敗ける結果につながってしまう可能性がある。 そもそも、はやては自分とブリーフ博士以外の仲間を間接的に皆殺しにされているため、未だに精神不安定である彼女に教えたら最後、暴走する危険を孕んでいる……彼女だけでなく、他の仲間もアナキンとの衝突も発生するだろう。 せっかく主催との貴重なカードを手に入れたのに、ここで捨てると致命傷になりかねない。 アナキンを捨てるのは主催なしでこの窮地を乗り切れると確証を得るか、または彼が裏切る素振りを見せてからでも遅くない。 「しかし、驚きました。瘴気の正体が菌やウィルスじゃなくてとても小さな機械だったなんて」 「正確にはナノマシンだね」 ブリーフ博士の研究でわかったことは日本中を覆っている目に見えない瘴気の正体は、極小の機械ナノマシン。 これが体内に入ることで適正のある存在がテラカオスという怪物になることがわかった。 もちろん、主催であるアナキンは最初から知っているのだが、この場は初めて知ったようにはやてやツバサに答える。 ギムレーもまた、いちおう合わせるように答えた。 「……なるほど、首輪を取ったハズの仲間の名前が呼ばれたわけだ。 首輪はあくまで制限装置と盗聴器とオマケの爆弾に過ぎない。正しい首輪は体内に宿っていたナノマシン。 これ自体が出す識別信号で主催はどこにいても参加者の状態を把握できるんだ」 「首輪を取る意味がないというわけやあらへんけど、真に殺し合いから解放されるにはナノマシンをどうにかするしかあらへんのやね」 瘴気の存在を知った参加者はその正体がウィルスか呪いか何かと思っていたが、実際には肉眼では捉えられない機械。 ブリーフ博士が見つけた事実である。 「博士の薬のカプセルは、ツバサの親元である風鳴翼の腕から採取した変異した細胞を元に戻す薬、そしてナノマシンの停止コードも入っている。 ユーノの怪物化……これからはテラカオス化と統一して言っておくか。 テラカオス化を解除することができる」 「すごいお薬やね……それを作ってまうブリーフ博士も」 「ああ、横で一緒に薬作りをしていたからわかるが、あの人は頭脳方面で怪物だ。 僕とサラは補助ぐらいしかできなかった。 あの人が祐一郎のような危険人物だったら、僕ら対主催はとっくの昔に終わっていてもおかしくはない」 改めてブリーフ博士の恐ろしさを実感するアナキン一同。 参加者から主催まで使っているホイポイカプセル一つとっても、あるべき質量保存の法則を無視しているのだから、その技術力は計り知れない。 「じゃあ、あのお薬を大量生産すれば、もっと多くのテラカオス化した人を助けることができるんやね!」 「いや、あの薬はユーノ限定用に調整されて作られたものだから他の参加者に投薬しても意味がない」 「そうなんですか……」 「薬はあくまでユーノが君の吸収能力でも治せない能力を持っていたから作っただけだ。 君自体の力を高めるためにも他の参加者はなるべく因子吸収で治してもらいたい」 「確かに薬で治すとテラカオス因子も消えてしまいそうですからね」 薬の力でテラカオス化に苦しむ人を救うことができると思ったツバサだが、アナキンの言葉により俯く。 その様子を見たはやてが彼女の暗い表情をどうにかするつもりで別の良い話題を振ることにした。 「そういえばさっきホルスから聞いたんやけどギムレーさんは都庁の皆とコンタクトが取れたんやってな? どうやら向こうは」 「うん、ああ。 二度手間をしたくないから、ユーノが治療されたら、全員に改めて詳細を教えようと思っていた。 向こうにいるオオナズチのおかげで沖縄の異常気象の正体、聖帝軍が立川を焼いた本当の理由、ベルナドットが示したカオスロワちゃんねるの管理人の危険性もわかった。 特に向こうが予言の鍵となるテラカオスと野球選手以外は手に入れていたのは大きい。 僕らは都庁の逆で野球選手とテラカオス兼勇者であるツバサが揃っている。 早急な合流は確定だね」 「すごい! 短時間でそこまで行けるなんて」 予言の完遂までの道筋が見えてきたことに、暗くなっていたツバサの表情がパアッと明るくなった。 「しかしギムレー、ツバサ暗殺のために襲いかかってきた死者の件も含めて余談は許せないな。 なんとしてもツバサを護衛し、都庁と合流しよう」 「言われずともさ……まずはユーノの治療次第だ」 「今はテラカオス化で余裕あらへんけど、彼の頭脳は有用や。 友達としても未来のためにもブリーフ博士には助けてもらいたいで!」 イチリュウチームが浦安から都庁へ移動するにはユーノの治療が不可欠であった。 多くの者が仲間として彼のテラカオス化の浄化を望んでいた。 ブリーフ博士が作り上げた薬だけが彼の治療への希望であった―― 「……あれ?」 「ん?」 「どうしたんやツバサちゃん? アナキンさん?」 「フォースの流れが……」 「ユーノさんのテラカオス因子は確かに消えていっているのに……これは一体」 「うわああああ!」 「ふぐッ!」 ツバサが疑問を口にした直後、何者かに投げつけられるように病室の扉をぶち破って出てきた萃香とサラを皮切りに、安息は打ち砕かれた。 「な、なんだと!?」 病室の前にいたアナキンたちに戦慄が走る。 気絶したサラ、目を回している萃香を尻目に大慌てで病室に入るとそこには衝撃の光景が広がっていた。 病室にユーノやなのはの姿はなく。 代わりに巨大なフェレット似の怪物がブリーフ博士の頭を大きな腕で鷲掴みにし、今にも握りつぶさんとしていた。 『グルルルルル』 「やめろ……やめるんじゃ、……くん」 「まずい、ブリーフ博――ッ!」 一番前に出ていたアナキンがフォースの念動力で博士を救おうとするが、巨大フェレットはフォースの魔力を吸収して反射し、口から光弾として即打ち返した。 幸い、フォースの力は控えめにし、返ってきた光弾も威力が低かったのでソウルキャリバーで防ぐのは簡単であった。 「なぎゃッ」 が、アナキンが防いだ数瞬の内にブリーフ博士の頭は大きな腕によって無残に握りつぶされた。 栗の花の匂いが広がっていた病室が瞬く間に生臭い鉄のような香りに支配され、その病室の中心に赤い泉と頭を無理やり圧縮されて潰れたザクロのようになったブリーフ博士の死体が転がった。 【ブリーフ博士@ドラゴンボール 死亡確認】 「いやああああああああああああああああ、ブリーフ博士ぇーーーー!」 信頼していた科学者の死にはやては絶叫をあげる。 無論、博士の突然の死に戦慄したのはアナキンやギムレー、ツバサとて同じだった。 「ユーノの治療が失敗した!?」 「薬が効かなかった、そんな……まさか!」 思わず、アナキンの正体を唯一知るギムレーは彼に疑いの目線と殺意を向けかける。 博士と一緒に薬作りをしていたアナキンなら細工して治療させないことも可能だったから。 「待ってください! この人はユーノさんじゃありません!」 「なに!?」 「どういうことなんだ!?」 ツバサの言葉にギムレーは驚いた。 それどころか彼が疑っていたアナキンでさえ、本意から驚いていた。 「もうやめるんだ!」 『正気に戻ってください!』 「ユーノ! レイジングハート!」 先程は部屋が暗くてわかりづらかったが、フェレットの怪物の長い尻尾にはユーノとレイジングハートが捕まっていた。 さらに言えばユーノは全裸であることを除けば元の真人間の姿をしていた。 となるとユーノ以外の、この部屋にいるべき人間がテラカオス化したことになる。 ということは……なまじ頭がいいだけにギムレーの中に嫌な想像が思い浮かぶ。 「ユーノ、その怪物はまさか!」 「……なのは、だ」 ユーノの漏らした言葉に、四人は戦慄し困惑する。 「なんでや?! ユーノくんはともかくなのはちゃんがテラカオス化する兆候なんてなかったで!?」 (なのはのテラカオス化は極陰性だ、テラカオスになれるはずがない……九州ロボにいた時に確かに確認したハズだ!) 「ユーノ自体のテラカオス化は確かに治ってる。薬のせいじゃないとしたら、一体どうやって……?」 「さっきまでなのはさんにはひとかけらのテラカオス因子もなかった……どうして? なんでユーノさんの進行状態をなのはさんが引き継いでいるの!」 ―――― この状況に至る経緯を解説しよう。 はやてが言ったとおり、高町なのはにはテラカオス化の兆候など一切なかった。 アナキンが覚えているとおり、なのはのテラカオス化は陰性なのだ。 どれだけ殺し合いのストレスを与えてもテラカオス化などしない。 では、どうして? ブリーフ博士たちが薬を持ってくるまでになのはとテラカオス候補者たるユーノは性交をしていた。 それは肛門すら使う、ディープなプレイだった。 しかし、その愛のための行為が行けなかった。 ユーノから放たれる精液の中身にもテラカオス化を誘発させる細胞及び因子が入っている。 なのはは子宮に、肛門に、口に全身の肌に彼の精を浴びてしまった。 ほぼ全身を汚染されたと同じである。 されど、それだけならなのははテラカオス化しない。 先にも言ったとおりなのはのテラカオス化は陰性、重度に進行していたユーノの射精とはいえ精子を浴びただけではテラカオスにはなれない。 もし浴びただけでなれるなら、序盤のホテルの時点でテラカオス化が始まるだろうし、そもそもテラカオスであるツバサが合流した時点で異変に気づく。 ユーノと浦安の病院で交わるまでは確かに彼女は人間だったのだ。 ――しかし、世の中には例外たるものが存在する。 読者は四条化細胞たるものを覚えているだろうか? 四条貴音から生まれたテラカオス化しない陰性の者ですら強引にテラカオス候補者にしてしまう魔の細胞。 ツバサの前身たる善玉だった風鳴翼も、灰を浴びたら最後、問答無用で修羅に変えさせた。 クリスなど、幾人もまた四条下細胞により怪物と化している。「 ところが、ユーノは翼のように四条化細胞の塊である灰を浴びたり、肉を喰ったりはしていない。 では、どこで四条化細胞を得たのか? 読者には数話だけ振り返ってみて欲しい。 浦安にてユーノとツバサが合流した際、ツバサは彼を治療するために因子を吸収しようとして逆に吸収し返される失敗をした。 途中で止めたので吸われたテラカオス因子自体は多くはなかったが、確かに吸収されてしまったのだ。 ツバサの中に眠る因子……風鳴翼が持っていた「四条化細胞の因子」を。 こうしてユーノの細胞にも四条化細胞が宿ったのだ。 幸い、時間はあまり経ってなかったの本能にも似たような感情でなのはは絶対襲わないようにしていたため、ユーノ自身が四条化細胞に侵されることはなく、それも薬によって浄化された。 ところが、四条化細胞に汚染された精を受けたなのはは違った。 テラカオス化が活発であったユーノの体内でツバサの体内では休眠状態だった四条化が活性化。 精子を通じて四条化細胞によってなのはは、テラカオス化への反応が陰性から陽性に作り替えられるように肉体を、本人も気づかない内に作り変えられた。 しかも、ユーノが今まで進行していたテラカオス化因子もそのまま引き継ぐ形で、なのははテラカオス候補者になってしまったのである。 ユーノでさえ恋人以外には抑えつけているとはいえないテラカオス化を、彼よりも精神的に弱いなのはがいきなり受けて耐えられる道理はない。 そして彼女は野獣と化し、ユーノを捕まえ、サラと萃香に不意打ちを与え、ブリーフ博士を殺した。 全ては「愛の感情」がもたらした、惨劇。 ―――― 『オナカスイタナノ……ユーノクンイガイ、タベル』 「な、なのは……!」 怪物なのはは、亡骸となったブリーフ博士をさっそく大きな口で丸かじりした。 信じられないような瞳をしたユーノの表情が、口から飛び散ったブリーフ博士の血で赤く染まる。 「クソッ、状況の検分は後回しだ! 今はとにかく、なのはを止めてユーノを助けなければ!」 何がどうなってなのはがユーノがかつてなっていた怪物フェレットになっていたかは、今の切迫した状況では確かめることはできない。 被害を抑えるためになのはを止める方が先決だ、とアナキンは判断した。 「でも、どうやって!? なのはちゃんもユーノ同じくエネルギーを跳ね返す技が使えるみたいやで!?」 「それは……」 どうやら、先ほどフォースを跳ね返したように。 今のなのはにはユーノと同じ魔力・エネルギーを吸収増幅反射する技が使えるらしい。 これでは天魔王すら倒したアナキンのフォースも、世界の破壊者すら一撃粉砕したギムレーの魔法さえ危険である。 当然、ツバサによるテラカオス因子吸収治療も受け付けぬだろう。 「簡単だ、私に任せろ」 「萃香!」 「さっきは油断と不意打ちで遅れを取ったけど、今度はそうはいかないよ!」 不意打ちを受けて倒れていた萃香が起き上がり、なのはに飛びかかる。 怪物なのはは長く鋭い爪で萃香を仕留めようとしたが、萃香は瞬間的に霧になって回避。 そしてなのはの後ろに回り込んで実体化、さらに鬼の超怪力で尻尾に絡められていたユーノ及びデバイスであるレイジングハートを救助した。 若干、痛かったのか怪物は悲鳴をあげる。 『ナノオオオ!?』 「ここは私に任せて行け! 大丈夫だ、おまえの女房を殺しはしない!」 「すまない、ありがとう……」 萃香に助けらたユーノは急いでアナキンたちのところに滑り込み、合流する。 怪物なのはは逃げるユーノには追撃は加えなかった。 ただし、その分逃がした萃香への怒りは大きいようだが。 『カエセ、ユーノクンヲ!』 さっそく尻尾や爪の攻撃、バインドによる拘束魔法をも、密と疎を操る程度の能力で霧化して躱していく萃香。 そして今度は背後に実体化し、目の前の怪物を凌ぐ怪力を持って背中から抑え付け、強引に床にダウンさせた。 『ナノオオオオオ』 「暴れんなよ、暴れんなよ……」 優勢たる萃香の様子を見て、ギムレーは考察を呟く。 「なるほど……魔力やエネルギーに関係ない物理攻撃は普通に効く。 そして回避や防御以外で一切の魔力を使わなければ、増幅反射技も使えない。 後は怪力に優れた者を宛てがえば捕獲も可能か」 ギムレーの言葉通り、拳などの物理攻撃は魔力を帯びてないので吸収できない。 さらに防御や回避のためのエネルギーは、流石に吸えないのようだ。 結論から言えば、怪物なのは(及び怪物ユーノ)が無敵なのは「エネルギー」を主体とした「攻撃」だけである。 捕縛するなら怪力で抑え付けるのが最良に思えた。 「ならば、物理攻撃にも優れた僕やアナキン、ツバサ、イチローやナッパでも彼女を捕まえようはある! はやて! 気絶したサラを連れて急いでイチローたちを呼んできてくれ!」 この中では最も非力なはやてにギムレーは指示を飛ばした。 一方、はやては…… 「ああ……ああ……」 「はやて、しっかりするんだ!」 「は、はいアナキンさん!」 はやては博士の死に未だにショック状態で動けなかったが、アナキンに激を飛ばされて持ち直し、意識がないサラを担いでなんとか部屋の外へと走っていった。 そして、ギムレー、アナキン、ツバサは武器を構える。 それを見て慌てるユーノ。 「ちょっと待ってくれ、彼女を傷つける気か?!」 「安心しろ、峰打ちに留める……ただ新しい薬を作り出すまで気絶はしてもらうけどね。 それよりもユーノは彼女に声をかけてやれ、『まだ』正気を取り戻せるかもしれない」 アナキンが言ったとおり、三人と萃香になのはを殺す気はない。 ただ、重度のテラカオス化が進行しているため、手を抜けるほどの相手ではないと知っていた。 角度は違うが、それぞれテラカオスの危険性を知っているからこその行動である。 少なくとも無傷での捕縛は無理であると察していた。 とにかく、今は力に優れた者たちが必要であった。 大切な仲間たちのために―― ――だが、『混沌』は常に人々の予測の上を行く。 シスの暗黒卿、邪竜、テラカオスの申し子、そしてかつてテラカオスの因子をその身に宿していた青年を嘲笑うかのように。 「よし、後はナッパたちが来ればコイツを捕まえることが――」 ズブッ 「え?」 怪物なのはを床に抑え付けた萃香の腕が、突然の違和感に襲われた。 まるでローションの塊の中に手を突っ込むような異様な感覚。 萃香が自信の両腕及び怪物なのはの体を見ると……… なのはの体が水色のスライム状に変化し、萃香の腕はその中に捕らわれていた!
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/216.html
ACネタ 121 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 19 07 36 ID EEoifOqW AC4のThinkerって曲聴いてたらまさになのはと空に焦がれるユーノな歌詞で感動した。 それと同時に、自信の脳と直接リンクして恐ろしい速度での魔法発動が可能だが、 凄まじい精神負担を必要とされるネクストデバイスというのを使って、愛するモノ のために戦うユーノの電波を受信した。 133 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 19 44 49 ID EYoOxKVw 121 それってユーノ最後に死んでしまうじゃないかwww 思想家は確かにユーなのっぽいな 148 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 21 16 27 ID YjfvOGzS 133 AC4の主人公は(一応)死んでないよー コジマ汚染とかAMS適性が低いから精神汚染くらってるから廃人寸前らしいが そういや最強のリンクスの双璧と名高いアマジーグ先生の中の人がヴェロッサだったなぁ 149 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 21 22 51 ID EYoOxKVw 148 そうだったのか… トンクス 150 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 21 37 53 ID Nn+vZEQ2 ACなユーノとな? 「力を持ち過ギたもノ、秩序を破壊スるモの――無限書庫にハ不要だ」 「 排除 排除 排除 排除 排除 」 155 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 21 56 49 ID H/vMnIAy ACなユーノか 今回の騒動で如何に管理局が腐っているかを間近で見て絶望したユーノが クーデター軍に参加、新型兵器「アインヘリアルⅡ」の制御キーを持って クーデターを止めに来たなのは達と対峙。 ユーノ <<管理局は僕達に何をくれた?>> ユーノ <<奮い立つかい? ならば僕を落してみせろ>> とか言いながらなのはと空戦一騎打ちするのを幻視したじゃないか しかし下手になのはさんに向かって<<撃てよ臆病者!>> なんて言った日にはどうみても全力SLBフラグですほんとうに 158 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/19(水) 22 17 49 ID EYoOxKVw ユーノ「なのは、君は強くなりすぎた…」 ユーノ「消えろ!イレギュラー!」 188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/20(木) 00 00 03 ID YjfvOGzS 177 ('A`)「管理局へようこそ・・・ これが無限書庫だ!」 ('A`)「僕はついにココと一体になった」 こんな感じか 16スレ フロム脳 小ネタ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/340.html
遊乃堂奇譚十一話? 珍客来訪 1レス投下 ID +4UTz/lr ここは海鳴町の片隅にある古びた佇まいの古書店『遊乃堂』―― いつも静かな古書店の中にはやはり今日も穏やかにゆっくりと時が流れていた。 「ユーノさん、こんにちは!」 そういって笑顔を振りまきながら店に入ってきたのはシックなスーツ姿のギンガ・ナカジマ。 彼女は何が嬉しいのか、満面に笑みを浮かべてその閑古鳥が盛大? に鳴く古本屋に入ってきた。 「いらっしゃいませ、ギンガ」 そういってギンガにぺこりと頭を下げるアインス。 「やあ、ギンガ、久しぶり」 カウンター席で商品の古本に読みふけっていたユーノはギンガに挨拶を返すのが少し遅れてしまった。 「アインス、元気してた?」 そういいながらギンガはぐしぐしとアインスの頭をなでる。 『はい』とうなずき、くすぐったそうな笑顔を浮かべるアインス、そんな彼女をギンガは突然抱きしめた。 「幸せそうで安心したわ、アインス」 「はい、私は幸せです」 抱きしめられたまま、控えめではあるが曇りのない笑顔を見せるアインス。 そんな彼女を抱きしめながらギンガは妹を見守る姉のような暖かな微笑みを浮かべていた。 そんな感動の再会が一段落したギンガをユーノは胡散臭そうなものを見る目で彼女をみつめる。 「で、今日の用事は? また、僕とアインスを連れ出して遊びに行く、とかじゃないよね?」 以前、彼女が休暇の時に朝一で急に押しかけてユーノとアインスを連れ出して一日遊び回ったことがあった。 また、そのときのように無理矢理引きずり回されるのかと警戒するユーノ。 だがそれ以来、以前よりもアインスが彼やギンガにうち解けてくれたように見えるのも事実なのだが。 「今日はユーノさんに見せたいものがあって……、あれ?」 振り向いたギンガの後ろには閉じられた古くて重い木の扉しか見あたらなかった。 「もう、しょうがないわね」 そう一言文句を言って外へ出て行ったギンガに手を引かれて店に入ってきたのは社会復帰後に管理局預かりになり、無限書庫で司書を務めているはずのチンクだった。 その彼女のが白いワンピースに淡いブルーの春物のコートを羽織った頗るつきの美少女然とした姿で以前ユーノに見せていた挑戦的な態度とは違い、少し頬を染め、俯き加減で少しだけおどおどした表情で立っていた。 「チンク? すごく可愛いよ」 そのユーノの言葉にチンクは蚊の鳴くような声で『ありがとう』というとうつむいてしまった。 「今日はチンクがどうしてもユーノさんに逢いたいっていうから連れてきたの」 『そうはいってない』とチンクはもごもごと口の中でつぶやくが、ギンガは気がつかずに言葉を続けた。 「それから、はい、これ」 と彼女は鞄の中から分厚く大きい封筒、それもご丁寧に“○に封の字”の封がしたものを取り出して彼に渡した。 「お父さんから、もしできたら調べてくれないかって」 「あのね、もう僕は時空管理局の無限書庫司書長じゃないんだけど……」 「クロノ提督の推薦。ユーノさんならこういう微妙なことも秘密裏にかつ確実に調べてくれるって」 『あのむっつりすけべのむっつりクロスケめ、余計なことを』と耳がよければ聞こえる程度の小声で毒づくユーノ。 おそらくここにいる3人には確実に聞こえていることだろう。 「お父さん、それ相当の謝礼は払うっていってたから」 「いいや、だからそんなものもらえないよ。そうじゃなくってさ……」 「そう? でもクロノ提督があなたもよく知っている人達みんなにいってまわっていたらしいわよ。 『あのフェレット野郎の古本屋は閑古鳥鳴いて困ってるだろうから少しは協力してやってくれないか』って」 『やれやれ』と呟いて苦笑するユーノとそれをにこにこと見つめているギンガ。 「そういえば、ユーノさん血色良さそうね。よかった。ちゃんとご飯食べているみたいね、感心感心」 ギンガはユーノの頭をポンポンと軽く叩いた。 「管理局にいた頃は“10秒フルチャージ”とか“1箱で1日分の栄養素”なんてもの箱買いしてたのに」 「何時の話だよ。……まあ、あそこにいたときはそんなこともあったけどね。 こっちに来てからはアルフが料理してくれるしね。 それにさ、最近はアインスも料理するんだ。それがすごくおいしくて。暇だったら君達も食べてくといいよ」 「結構強敵に成長したみたいね、アインスは」 「強敵って?」 そんな会話をしている横でアインスをチンクは片眼で上目遣いにぎろりとにらんでいた。 一方、アインスも少し戸惑った様子ではあるがしっかりと正面からチンクを見つめる。 「まあ、あの二人にはちゃんとわかったみたいだけど」 ――私にもだけどね。とギンガは心の中で付け加えていた。 39スレ SS アインス ギンガ・ナカジマ チンク ユーノ・スクライア リインフォース・アインス