約 454,620 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/314.html
アーコス査察官の事件簿 vmWdwdt6 「ユーノ君の行きそうな所ですか? 六四区画の博物館とか、十一居住区のパスタ屋さん、一〇七区画の自然公園なんかよく一緒に行きますよ。 あ、本局外だと第三三管理世界のV・ワゲン遺跡がマイブームだってこの前言っていました。」 「ユーノを、あ、いえスクライア司書長を誘拐それも本局内で、ですか? 不可能とはいいませんがかなり困難だと考えます。 ユー・・・スクライア司書長自身も戦闘魔導師でないとは言え、 優れた魔導師である事には変わりありませんし、 少なくともオーバーAランクの戦闘魔導師が護衛として付きます。 彼等を出し抜いて、まして本局の警戒網にも掛からずに誘拐できるとしたら少なくともオーバーSランク、 確実にしようとしたらSSランクの未登録魔導師が必要になる筈です」 「ユーノ君と同等の魔導師を捕まえる方法? また、けったいな事聞くなぁ。前提条件は? うわ、そんなん無理やん。シャマルや次元航行艦のサポートあっても、 ユーノ君クラスの補助魔法の使い手が逃げに徹したら、八割方捕捉仕切れへんで。 広域指名手配して、地道に探すしかないと思うで」 「やぁロッサ、フェイト達にユーノの事を聞いて回っているらしいな。 ・・・何、居なくなっただと・・・あのフェレットもどきめ! 医務室、ユーノが居なくなったというのは本当か! ・・・うん、あぁ済まん。ちゃんと寝ているな。 ・・・・何、なんでユーノがここにいるのか? あの馬鹿、徹夜の自己新記録を更新中だなんて抜かしたからな。ふん縛って強制休暇中だ。 有休の代理申請を出しておいただろ。 出ていない? ・・・・済まん、今確認する」 ―――以降、アーコス査察官の事件簿(駄目人間編)――― 「ユーノ君のいきそうな所ですか? 耳たぶとかお臍、腋の下なんか良い声で鳴いてくれますよ あ、本局外だと、夜の公園を裸でお散歩させるのがマイブームなの!」 「ユーノを、あ、いえスクライア司書長を誘拐それも本局内で、ですか? 不可能とはいいませんがかなり困難だと考えます。 ユー・・・スクライア司書長自身も戦闘魔導師でないとは言え、 優れた魔導師である事に変わりありませんし、なのはも狙っています。 彼女を出し抜いて、まして本局の警戒網にも掛からずに誘拐するのは、 私でも成功率が一〇%前後を行ったり来たりしていると言えば、 それがどんなに困難か理解できると思います」 「ユーノ君と同等の魔導師を捕まえる方法? またけったいな事聞くなぁ。 まぁ、シャマルのサポートが前提やけど、 一番確実なんは、徹夜明けでフラフラな所に一服盛ってやね、司書長室でするンよ。 大切なんは、独り占めしよ、なんて欲をかかない事やね。 やっぱり家族の絆は大切やよ、うん」 「やぁロッサ、フェイト達にユーノの事を聞いて回ったらしいな。 ・・・何、いなくなっただと? 医務室、ユーノが居なくなったというのは本当か! ・・・うん、あぁ済まん。ちゃんと寝ているな。 ・・・・何、なんでユーノがここにいるのか? あの三人から話を聞いたなら解るだろ。 せめて安心して眠れる場所位提供してやりたいじゃないか」 36スレ SS クロノ・ハラオウン フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ユーノ ヴェロッサ・アコース 一部ギャグ 八神はやて 高町なのは
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/195.html
司書長のメイド騒動記 パート1 月村すずかは朝から絶好調だった。 というのも、昨日の夜にユーノから電話があったのだが… 『明日、すずかと話したいこと…っていうか、頼みたいことがあるんだけど、行っても大丈夫かな?』 一秒でYESの返事を返すと、緊急の予定が絶対に入らないように準備を整えておく。 そして今、念入りに服装もチェックしたすずかはそわそわしながら想い人であるユーノを待っていた。 「すずかお嬢様。ユーノさんがお見えになりましたよー。」 「うん、それじゃあいつものとこに通してくれる?」 「はい。」 分からないのはユーノの頼みごとであるが、自分に出来ることがあるなら全力で協力しよう。 すずかはそう考えながら、ユーノの元へと急いだ。 ◆ 「ファリンさんに、ミッドチルダに来て欲しいんだ」 後ろでカチャーンとファリンがコップを落とすのを別世界のことのように聞きながら、 月村すずかは呆然としていた。 「え…え?」 「あああああああの、ユーノ様っ!?何故ですか!?なんでいきなり私なんですか!?」 「え、り、理由は…その、ちょっと言いづらいんだけど…」 「言いづらい…ユーノ君、まさかメイド好きだったの!?」 「ええっ!?い、いや、そういうわけじゃ───」 「それなら言ってくれれば私だってメイド服ぐらい着るよ!ユーノ君のためなら!」 「私の仕事がメイド服を着ることだけかのように!?」 「誤解だから!?僕、そんなのじゃないから!」 「ユーノ君が望むならご飯の準備からお風呂に夜の世話だって!」 「私の仕事に夜のお世話なんて無いですよ!?」 「お願いだから話を聞いてええええええ!」 すずかが半泣きで暴走しかかって、それを止めるのに10分ほど経った。 ようやく落ち着いたユーノの説明を要約すると─── 「つまり、無限書庫の職員さんが労働環境の改善のために、書庫専用のお手伝いさんが欲しいって言ったの?」 「うん。それで、最初は清掃員とかの業者を頼むつもりだったんだけど…」 『どうせならメイドでしょう!』 『掃除だけじゃなく、疲れたときにはお茶の差し入れ!気遣ってくれる言葉!』 『僕らへの奉仕の精神!メイド喫茶なんかじゃない、本当の忠誠心が欲しいんですよ、司書長っ!』 「…とまあ、そんなことを言い出して…」 「か、変わった職場なんですね…」 「うん。ちょうど、みんな徹夜3日目に突入してたからね…」 「…ユーノ君は何日目だったの?」 「僕はまだ5日ほど───はっ!?」 「はぁ…無理しすぎちゃ駄目だよ、ユーノ君。なのはちゃん達には黙っておいてあげるけど。」 「あははははは…ありがとうございます…」 呆れたようなすずかに、ユーノは苦笑しながら頭を下げる。 これでも昔に比べればマシになった方なのだが、幼馴染達は不安がることが多いのでユーノも頭が上がらない。 「事情は分かりましたが、私はちょっと…」 「やっぱり駄目ですよねぇ。」 「はい。すずかお嬢様を一人残してこの家を出るわけにはいきませんから。」 「ファリン…」 「そうだよね。ううん、いいんだ。駄目でもともとだったし。気にしないでください、ファリンさん。 すずかも、変なこと言い出してごめんね?」 「ううん。ユーノ君の職場は色々と大変って聞いてるから…力になれなくてこちらこそ───」 と、そこまで言ってすずかはふと思った。つまり、自分がここにいるからファリンはミッドに行けない。 ならば───!? その考えはすずかの脳に落雷のように落ちてきた。 今の彼女の思考速度は、ニュートンやアインシュタインが裸足で逃げ出すほどである。 「…ねえ、ユーノ君。もしもファリンがミッドに行くとしたら…住居とか、どうなるの?」 「それは僕の方で準備させてもらうよ。そのぐらいの権限は持ってるから。」 「すずかお嬢様。いくら命令でも、私はすずかちゃんを一人にするつもりはありませんよ!」 「…一人じゃなきゃ、いいんだよね?」 「「…え?」」 ◆ 本局の一角、無限書庫。 そこでは、ユーノが現在働いている司書達を一同に集めていた。 そのユーノの隣にいるのは、薄紫色の髪をふよふよと漂わせている一人のメイドさん。 「と、いうわけで今日から一週間という期間限定、無限書庫で働いてくれるファリンさんです。」 「え、えっと、よろしくお願いいたしまああああきゃぁっ!?」 無限書庫という無重力空間で重いきり頭を下げたため、そのままくるんと回転してしまったファリンだった。 隣にいるユーノが支えてやり、今度は重力が発生させてある通路に立たせてやったことで改めて頭を下げる。 対する無限書庫司書達の反応はというと… 「下っ端の意見も聞いてくれる、そんな司書長が大好きですううううううううう!」 「お、おい、マジでメイドさんだぜ?マジもんだよ、あれ!?」 「馬鹿、落ち着けよ。たかがメイドさんぐらいでさ…」 「ああ、そうだな。 とりあえず、お前の検索魔法のリストにメイドさんとの恋愛ものがあるのは偶然かどうか聞こうじゃねーか」 「可愛い、可愛いメイドさんだっ…しかも優しそう!」 「おまけに、先ほどのミスから見るに…ドジっ娘か!?」 「俺…この職場に来て辛いことが多かったけど、今…すっげえ幸せなんだ…」 大騒ぎを始める司書達にファリンが微妙にびびっている中、 ユーノはパンパンと手を打って辺りを静かにさせる。 「分かってるだろうけど、彼女が嫌がることは絶対にしないこと。それじゃ、みんな仕事に戻ってー。」 「「「「了解!」」」」 ファリンは感心したような表情でユーノを見ていた。 自分の主の想い人である彼がこの世界で重要な役割に就いているのは知っていたものの、 いざ目にして見るとすごいものだ。 頭脳明晰なすずかでさえ今はまだ学生だというのに、彼はこの歳で既に一部門の長にまでなっているのだから。 一週間とはいえ、このような男性に仕えるのかと思うと、自然と身が引き締まる思いのするファリンであった。 「それじゃあ、ファリンさん。しばらくの間、お願いしますね。」 「無重力が大変ですけど…頑張ります!」 握りこぶしを作って気合を入れるファリンを笑顔で見つめる司書長…を、 無限書庫の扉の外からポカンと見ているリンディさんがいた。 ◆ 結論から言うと、無限書庫のメイドさんは非常に上手くいった。 しばらくはあたふたしていた無重力は、通路をうまく利用することで対応したし、 もしも無重力空間に出るときは、近くの司書に頼んで飛ばしてもらった。 書架に関しては自分が手を付けてはいけないので、掃除する場所もさほど多くない。 必然的に、ファリンはあっさりと自分のすべきことを把握できた。 (お屋敷よりは狭くてお掃除が楽チンです。 高いところにもすぐに行けますし、猫ちゃん達もいないからすぐには汚れません) 受付の台を拭き終わると、一旦それを片付ける。 周囲を簡単に見回して、近くにいた司書が何やら疲れ気味なのを確認するとあらかじめ用意してあったものを持っていく。 「こちらをどうぞ。」 「え…あ、これ、飲み物…?」 「集中力が切れ掛かったときは、 紅茶でも飲んで脳をリラックスさせるといいんだって、この前テレビで見たんです」 「へぇ…ありがとうございます。」 「あ、そちらの方もどうぞー。」 「俺、司書になって良かった…!」 普段からすずかにやっていることを、今回は多人数にこなしていく。 ノエルがドイツへと旅立つ前に、 自分を『メイドとらの穴』へと放り込んだ成果が出ていることにちょっと安心したファリンであった。 「ユーノ様。お飲み物、何になさいますか?」 「あ、コーヒーで」 「分かりました」 コーヒーを淹れながら、改めてユーノが仕事をしている様子を確認する。 魔法のことはよく分からないのだが、 それでもこの広大な空間と多くの司書達の中でユーノの才覚が飛びぬけているのはよく分かった。 ダンスを踊るかのように舞う本に、それを操る翡翠の光。 その中心にいるのは、金の髪をふわりと揺らしながら静かに佇む青年。 少し前までは自分よりもずっと小さかった彼が大きく、そして立派な青年へと成長したことに改めて気づく。 「はい、どうぞ。ユーノ様」 「ありがとうございます」 「…本当ならこんな水筒みたいのじゃなくて、カップに淹れたいんですけどねぇ」 「無重力で熱いコーヒー淹れたら大騒ぎだね…本や書類にも甚大な被害が出ちゃうし。」 「っと、ユーノ様。ちょっと失礼しますね?」 ふと、先ほどまでは何の変哲も無かったユーノの襟が跳ねているのに気づいたファリンは、 丁寧に崩れかけていたネクタイを解いて直していく。 「わ、っと…それぐらい自分で───」 「これもメイドのお仕事です。一応、今はユーノ様が雇い主なんですから。」 「あ、あの、ファリンさん!自分もちょっとネクタイが───」 「いけ!ファ○ネル(広○苑×8)!」 「守りたいものがあるんだー!(ミッド歴史辞典×10)」 「ごごごごげはっ!?」 「…何してるの、君達?」 呆れたようなユーノに何でもないですと手を振りながら、抜け駆けをしようとした司書は横へ蹴っ飛ばされた。 ファリンはというと、ユーノの服装を整えるとそのまま次の作業へと移り─── 「…すいません、ユーノ様ぁ…ちょっと足場の方に押してくださいぃ…」 「はいはい。」 無重力で自由に動けないことに、ちょっぴり涙目でユーノに助けを求めていた。 ◆ メイドの癒し効果があってか、それとも別の理由があったのか。 緊急の追加請求も無く、普段と比べれば随分と穏やかな時間の流れる中で、 ユーノは荷物を簡単にまとめていた。 「それじゃ、みんな。僕とファリンさんは今日、もう帰るから。」 「「「「「なっっっっっ!?」」」」」 無限書庫全体が震えるかのように、司書達全員が驚愕の呻きをあげた。 「し、司書長が定時ちょっと過ぎで帰るなんて!?」 「いつもなら私達の仕事を奪ってでも徹夜する司書長が!」 「管理局で最も自分の家の意味が無いと噂なのに!?」 「無限書庫=自宅という方程式が成立するはずのあなたに何があったんですか!?」 「ファリンさんですか!?ファリンさんと帰っていちゃつくんですか!?」 「家庭を持つと仕事との両立が大変ですね、司書長!」 「分かりました!どうぞお気をつけて!司書一同、あなたの代わりに頑張ってみせます!」 無限書庫を出て行くユーノ達の背中で、 司書達が手を振りながら気合を入れているのを見、思わずファリンは冷や汗を流した。 「…ユーノ様。普段、そんなに家に帰らないんですか…?」 「そんなことはないよ…?い、一応、週に一回は帰るようにしてるし…」 「それ、もはや家じゃないですよ!?」 「はい…」 「もう…まあ、これから一週間はそうはいかないんですけどね。」 「まあ、ね」 本局を出て、ちょっと歩いたところにあるそこそこ立派なマンション。 その一室が、ユーノの家となっている場所である。 そして、ユーノは鍵を取り出すことなくドアレバーをガチャリと捻った。 「ただいま」 「ただいま戻りましたー」 「おかえりなさい、2人とも」 誰もいないはずの部屋から出迎えてくれたのは、紫の髪を腰まで揺らした月村すずかその人だった。 「うんうん。やっぱりいいね、こういうのって」 「え?」 「普段だと私とファリンぐらいしかいないし、屋敷は広いから… けど、こうやって誰かが帰ってきてくれるのを待つのって、良いなって思うんだ」 「…そうかもしれないね」 ユーノも、家に戻っても誰もいないため無言で過ごすことが多い。 しかし、少なくともこれから一週間はすずかがこの家で待っていてくれる。 そう思うと、今まで大した執着のなかったこの部屋に戻ろうという気持ちが湧いてくるから不思議だった。 「ファリンは大丈夫だった?」 「うん。大きな失敗も無かったし、本当に助かったよ」 「ありがとうございます。私も、今まで見たことのないユーノ様を見れて良かったです」 「はははは、そう言われると恥ずかしいな…」 「むぅ…」 ちょっぴり頬を膨らませるすずかさんだった。 残念ながら、彼女はミッドに連れてきてもらうだけでかなり限界なのだ。 さすがに本局内には、そう簡単に入ることなど出来ない。 本来ならここに来ることすら難しいのだが、ユーノとしても珍しく職権を活用した形である。 「ファリン。後でユーノ君の仕事の様子、教えてね?」 「ばっちり、8ミリカメラで収めてますよ、すずかちゃん。」 ちゃっかりしたメイドさんだった。 何はともあれ、こうしてファリンの無限書庫でのおつとめ(期間限定)が始まることとなった。 ◆ その頃、海鳴。 (おかけになった電話番号は、現在電波の届かないところに───…) 「あら?すずかったら、どうしたのかしら…?」 「アリサお嬢様。」 「ん?どうしたの、鮫島?」 「その…お嬢様をお迎えに上がるときにハラオウン家の2人のご子息達に会ったのですが…」 「それで?」 「その、『紫のお姉ちゃんとメイドのお姉ちゃんと、フェレットのおじさんが一緒にミッドチルダに行った』と…」 「…鮫島…それを、今まで言わなかった理由は何故…?」 「知らなければ、今のように怒ることもありませんから…」 「そうね…知らなきゃ、ねぇ…っ、すずかあああああああああああ!!」 ピコーン。抜け駆けされた金髪お嬢様の怒りボルテージがMAX! ◆ 同じく、機動六課。 「あ、フェイトさん」 「どうしたのエリオ?」 「いえ、さっきキャロのところにリンディさんから連絡があって。」 「義母さんから?」 「はい。ユーノさんからお話を聞いてないかということだったんですけど…」 「話って…ユーノ、何かあったの?」 「キャロとリンディさんの会話からすると、ユーノさんがメイドさんを雇ったらしいです」 「…え?」 「無限書庫でメイドさんとユーノさんが話してるのを見たと───フェイトさん?」 「え、メイド?なんでメイド? ひょ、ひょっとしてユーノってメイド好き? だ、だったら私に言ってくれれば、メイド服ぐらい着るのにっ…」 「あの、よく聞こえないんですけど…フェイトさーん?」 「そうだよ。今からでも遅くない。ユーノの家に行ってメイドさんの服で、ご、ご奉仕…? …やっぱり、ご主人様とか…ユーノが、ご主人様…はっ!わ、私何を!?」 「フェイトさーん…」 ピコーン。金髪執務官と紫髪お嬢様の対決フラグが立った! ここでパート1終了でーす。ふっ…ツッコミどころがあるならどんと来い!頑張って修正してみせますから!…け、けど、お手柔らかに… まあ、実際は管理外世界の人がミッドに来るってこんな理由じゃ不可能なんでしょうけど。そこはスレ補正ということでどーか一つ。 えー、これのどこがファリンSSじゃ!?ということに関しましては…まだパート1ですから。導入と思ってください。 パート2からは出番増えます。司書長とメイドさんのほの甘交流が書ければいいなーって思いながら、すっかり恒例の次回予告ー。 「ユーノ…お前、メイド好きだったのか?」 「黙れシスコン!」 「ファリンさん…俺と、結婚してください!」 「ええっ!?」 「帰りましょう、ユーノさん…すずかお嬢様が待つ、あの家へ…」 「ファリン、さん…」 念のため言います。司書長騒動記は基本的にコメディです。深く考えずにお読みください。 89スレ SS アリサ ファリン フェイト ユーノ・スクライア 月村すずか
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/320.html
赤頭巾チンク原作風味 作者:◆SgPKSOv5H6 赤頭巾チンク前編 昔々、あるところに――― 赤頭巾のチンクというそれはもう可愛らしい女の子がいました。 すこし(?)背が小さいのと眼帯をしているのを除けばですが…… そんな赤頭巾にある日、お母さんのクワットロがお使いを頼みました。 「いい、赤頭巾?これを必ず町外れのお婆様の所に届けるのよ?」 「わかった」 チンクは勢いよく答え引き受けました。そして早速届けに行きます。 「気をつけるのよー」 「分かっている」 そう言って家を出て行く赤頭巾、そんあチンクを見てクワットロお母さんは (ウフフ、チンク可愛い子、この後どうなるかも知らず……) 名に企んでいるんでしょうねこの母親!てか娘を生贄かよ! そんな事も露知らずに赤頭巾はお婆ちゃんの家に向かっていくのでした。 場面は変わり、ここは森の中。 其処にはお腹をすかせた狼さんのユーノがいました。ナニ狼に似合わないって?まぁ気にしないでください。 まぁ、この狼近所では狼ではあるまじき事に優しいと評判ですが。 「あー、お腹減った」 そんな彼はここ最近調べごとに忙しくろくなものを食べてませんでした。 みなに言われて森の中を歩いている物のそれも限界でした。 そんな時狼の鼻にいい匂いが漂ってきました。 その匂いにつられていくとある家にたどり着きました。 此処こそが赤頭巾のお婆ちゃんの家なのです。 そんな事を露知らずユーノはドアをたたきます。 「こんにちは―、狼のユーノですけど―、入っても良いですかー」 「勿論だ、入ってきたまえ」 ユーノが家の中に入ると其処にはおばあちゃんのDr.スカリエッティがいました。え、お婆ちゃんじゃなかったのか?細かい事は気にしていけません。 「やあ、これはこれは狼さん、歓迎するよ」 「あなたの歓迎と聞くと何か嫌な響きがしますね」 「これはこれは嫌われた物だな、アレほど激論を交えた仲だというのに」 そう苦笑するDr.スカリエッティ、この二人は学問の事でよく話し合う仲でした。たまに乱闘になりますが…… ユーノもつられて苦笑しつつ家の中を見回します。するとテーブルの上には二人分の見事な食事が並んでいました。 「おや、これはお邪魔したかな?」 「いや、構わないさ、何せ私はこれから急用で出かけなければならない、と言うわけで狼さんよ、チンクが後でくるので その料理をチンクと一緒に食べておいてくれ。それではな」 そう言っていきなり家を出て行くDr.スカリエッティ。いいのかよ、それで。 急な展開に少々困惑しますが、おばあちゃんはいつものこんな感じなのでユーノは慣れた物です 嘆息のため息を吐きつつ椅子に座って赤頭巾を待ちます。するとすぐに赤頭巾が家に入ってきました。 「おばあ様、こんにちは、ってあれ狼さん今日は、おばあ様は?」 家に入るとお婆ちゃんが居なく、代わりに狼さんが居る事に軽く驚きます。 「こんにちは、赤頭巾。あの人は急用だってさ」 「ああ、なるほど」 いつも忙しそうなお婆ちゃんのことです、またかと思いつつユーノに質問を続けます。 ちなみにこの二人は顔見知りです。 「それでこちらの料理は?」 「ああ、君と二人で食べろとさ」 「そうか、それでは頂こうか」 お使いの品をどこか適当なところに置き席につくチンク。 彼女としても結構な距離を歩いたのでおなかがすいていました。 ユーノは言わずもがな、 「「いただきます」」 そう言って二人は勢いよく料理を食べ始めました。それが罠と知らず…… 二人は料理を食べ終わった後食器を洗い暖炉の前で待ったりとしていました。そんな時ユーノに異変が生じ始めました。 (どうしたんだろう、体が熱い、それにチンクを見ていると心臓がバクバク言い始める) ユーノは自分の体の中から、こう劣情が湧き上がってくるのが分かりました。 (どうしよう、今すぐチンクを食べたい!) 必死に我慢するユーノ、実はさっきの食事の中にDr.スカリエッティ特性のユーノ君のみに反応する遅行性の理性を吹っ飛ばす薬が入っていました。 それも相当強烈な奴。そうこれはチンクの幸せを考えたDr.スカリエッティとクワットロの罠だったのです。 (くそ、スカリエッティめ!最初からはめるつもりで) 気付いたところでもう手遅れです。体は我慢の限界まできていました。 ユーノの様子が変な事に気がついたのでしょう。チンクが心配そうな顔をして近づいてきます。 「顔が真っ赤だが大丈夫か?」 「ああ、大丈夫だよ」 何とか答えますがチンクは納得していません。なんとユーノの顔のまじかまで顔を接近させます。 「本当に大丈夫か?」 心配そうに見つめてくる。ユーノは理性の箍が外れかけます。そしてチンクを押し倒しました。 「ユ、ユーノ!」 驚いた声を上げるチンク、目の前には濡れた翠の目がありました。 「ユーノ?」 少し不安そうな表情をして話かけるチンク。これがユーノにとって後戻りできない一撃になりました。 「ねぇ、チンク」 「な、なんだ」 「君を食べたい」 ユーノは直球で逝きました。チンクは雰囲気とか台無しだなと思いつつ彼女の答えを示します。 チンクはいきなりユーノにキスをしました。そしてユーノの口の中に舌を入れ蹂躙していきます。 最初はなされるままのユーノでしたが彼もまけじと対抗しました しばらくずっとそうしていた二人、そしてどちらがともなく名残惜しそうに離れます。 「やさしくな?」 そう嬉しそうな笑顔で答えるチンク、その表情を見た瞬間ユーノの完全に理性が吹っ飛びます。 後はもう只ひたすらチンクを貪り続けるだけでした。 ちなみに体力をつける薬も入っていたらしく三日三晩続きました。 こうして狼に食べられた赤頭巾はこの後幸せに暮らしましたとさ 41スレ R-15 SS クアットロ ジェイル・スカリエッティ チンク パロディ ユーノ×チンク ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/325.html
ユノフェですが… 作者:◆/sQmLddGAM 危ない手つきで桃色の髪の少女がリンゴをむいている。 その様子を一言で示すなら、『必死』。 全神経を現在の行為に注ぎ込み、最終目的を目指している。 その隣で様子を見守る赤毛の少年は、声をかけることもできずに心配そうな眼差しを注ぐのみ。 同じように、ベッドで半身を起こしている彼らの母たる女性もはらはらしながら成り行きを見守っている。 ならば止めればいいはずなのだが、残念ながらその選択肢は存在しない。 『 わたしがむきます! それから、フェイトお……お母さんに食べさせたいんです! 』 少年――エリオと共にお見舞いに来てくれたキャロは、持参したナイフを高々と振り上げてそう言い放った。 頬を染めて恥ずかしそうに、けれど一途な瞳で見つめられてはかなわない。それでなくても、フェイトは彼らに甘いのだから。 そしてそれ以上に、キャロが自分の為にそうしたいと、母である自分の為にそうしたいと言ってくれたことが嬉しかった。 とはいえ、心配であることに変わりない。 エリオも同じだろう。 今はただ、キャロが怪我をしないようにと心の中で祈るしかできない。 やがて、キャロは最終目的手前に到達した――つまり、リンゴをむききったのだ。 満面の笑顔でむいた皮を片付けると、キャロはフェイトの傍らにある椅子に腰を下ろし、むいたリンゴを並べた皿をフォークを添えて差し出した。 「どっ、どうぞ!」 「ありがとう。いただくね」 皿に残るリンゴをちらりと見ると、どれもいびつな形をしている。大きさも均一ではない。 ずっと見守っていたフェイトは知っている。むいた皮にはかなりの量の身がついていたことを。このリンゴの大きさは、普通にむいたものの半分程度であることを。 今度、リンゴのむき方を教えた方がいいかな。 そんなことを思いながらも嬉しくて仕方がないフェイトは、フォークを手に取ってリンゴを口にもっていく。 慎ましく一口齧って味を楽しむ。お給料奮発しましたと言っていたリンゴは、形その他はどうあれとても美味しかった。 「ん。美味しい」 「よかった。エリオ君と選んだんです、これ」 「エリオと?」 視線を向けると、エリオははにかんでいた。頬も少し赤い。照れているようだ。 可愛いな。 思わずフェイトの唇から笑みがこぼれる。 「ありがとうね、エリオ。キャロ。 ……そうだ。ね、キャロ。たくさんむいてくれたことだし、エリオにも食べさせてあげれば?」 「あっ、そうですね。そうします!」 輝く笑顔でそう言うと、キャロは引き出しからフォークを取り出し、とっとっとと少し離れた椅子に座るエリオの元に走ってゆく。 なんのてらいもなく「はい、エリオ君。あーん」とキャロがやると、エリオは「えっ、ちょっとそれは……」と先ほどより一層顔を赤くして狼狽した。 けれどすぐに不思議そうに首を傾げるキャロに言っても無駄だと悟ると、エリオはおずおずと口を開ける。 にこにこしながらフォークにリンゴを突き刺し、キャロはそれをエリオの口にもっていく。 かりっといい音がして、しばしの間しゃりしゃりと噛み砕く音が続く。 「美味しい?」とキャロが尋ねると、エリオは「うん! すごく美味しい!」と満面の笑みを返す。 じゃあ私も……と、キャロはエリオが一口食べたリンゴをそのまま口に入れた。 ああ間接キスだなあと思っているフェイトの視線の先で、エリオの顔がさらに赤みを増す。 それでもなお、キャロは気づかずに美味しそうにもぐもぐとリンゴを食べていた。 それからしばらく三人で色々話をした。 例えば、今の職場でどういう仕事が楽しかったとか大変だったとか、たわいないことを。 それだけのことが、フェイトにはとても嬉しくて楽しい。 誰もがにこにこ笑っていて、温かい雰囲気がある。 三人がそれぞれを大切に思っていてこそのものだと、今のフェイトなら自信を持って理解できる。 幸せだな。 穏やかに思っていたフェイトだったが、それはすぐに急変した。 「――フェイト!」 唐突にドアが開かれ、一人の人物が部屋に飛び込んでくる。 よれたネクタイにジャケット。ずれた眼鏡にほつれ気味な髪。 慌ててこの場にきたと一目でわかるその姿に、フェイトは驚いた。 「ユーノ! どうしたの?」 「どうしたもこうしたも……!」 ユーノはフェイトの元までゆくと、先ほどまでキャロが座っていた椅子に腰をおろす。 そしておもむろに、フェイトのやわらかな頬に触れた。 「君が倒れたって聞いて、いてもたってもいられなくなって……ああでも元気になったみたいだね。よかった」 「え。どうしてユーノがそのこと知って……」 「メールで連絡がきたんだよ」 「え、誰から?」 「マリーさん」 「マリー……ああ、マリエルさんだね。そういえばリインのことで知り合いになってたっけ。でも私とはあまり親しくないし、仕事も違うのに……」 首を傾げながら、フェイトは添えられたままのユーノの手に自分の手を重ねる。 それはとても自然な動作だった。 少なくとも、状況に置いてきぼりで成り行きを見守るしかないエリオとキャロの二人が見る限りでは。 「マリーさんの友達はシャリオさんなんだよ。僕とフェイトのことを知ってるシャリオさんがとりあえず僕には急いで知らせないとと思って、僕に面識があるマリーさんに連絡してほしいって頼んだんだって」 「シャーリーが……まいったなあ」 「それだけフェイトのこと心配してくれて考えてくれてるってことだと僕は思うよ。いい補佐官さんだね」 「うん」 にっこりと微笑むフェイトにつられたように、ユーノも微笑む。 「それでどうして倒れたの?」 「ん……ちょっと疲れがたまってたっていうか、頑張りすぎたっていうか、そんな感じかな。最近少し忙しくて、徹夜した日も多かったし」 「君は黙って頑張りすぎるからなあ」 「お言葉ですが、それはユーノの方だと思うよ。無限書庫の司書さんたちがすぐ逃げ出すのは、その過密すぎる仕事量のせいだって聞いてるよ。それから、その最たる者は間違いなく司書長だってことも」 「僕はもう慣れるから平気だよ」 「ユーノは平気でも、私は平気じゃないよ。ちゃんと休んでご飯食べて、たっぷり寝てほしい。そう思ってるのは多分私だけじゃないからね。わかってるとは思うけど」 咎めるような言葉に、ユーノは少しだけ瞳を逸らす。 しかしそれも僅かな間。気がつくと、フェイトはユーノに抱きしめられていた。 「ユーノ?」 「……でも本当によかった。フェイトが元気になってて。聞いた時は目の前が真っ白になって……ねえ、フェイト。僕も心配かけないように気をつける。だから、君も気をつけて。あんな風に胸の潰れる思いはもうしたくないんだ」 強い力で抱きしめた腕が微かに震えていた。 肩口に押し当てられた顔の辺りが少しだけ湿っているのは、多分気のせいではないだろう。 こんなにも自分を想っていてくれることが嬉しくて、けれどこんなにも心配させたことが申し訳なくなってくる。 「ごめん。ごめんね、ユーノ。もうこんなことないようにする。本当だから……ね?」 「約束だよ。もうすぐ君は僕のお嫁さんになるんだから」 「……そうだね。まだちゃんとしてないよね。私もユーノの本当の家族になりたいから、約束する」 「……ありがとう」 そう言って顔をあげたユーノを見て、フェイトは胸をつかれた。 安心した笑顔なのに、目尻には涙の球が残っていたからだ。 フェイトはそっと顔を近づけると、ユーノの目尻に口づけて涙をすする。 薄い塩味は流した涙の辛さをたてているようで、さらに胸が痛くなる。 「フェイト?」 「泣かせちゃった……ごめんね、ユーノ」 「えっ、僕泣いてたの? やだなあ」 慌てて目尻を袖口で拭い、ユーノは恥ずかしそうに頭をかく。 「それだけ心配してくれてたんだよね。ありがとう」 「いや、それは当然だし、当たり前のことだから。フェイト、確認するけどもう本当に心配はないんだね?」 「うん。お医者さんがそう言ってた。少しだけ安静にして、明日には退院できるよ。本当はね、部屋で少し休めば大丈夫なくらいだっだんだ」 「それがどうして入院なんてことに……」 「それはね、おにいちゃんとおかあさんが倒れたことを聞いて大騒ぎしちゃったから。結果、大事をとって検査とかすることになって入院することになったんだよ」 「レンディさんはともかく、クロノもねえ……シスコンだとは思ってたけど、そうなんだ」 「もう、ユーノはすぐにそう言う。本当は一番の友達だって思ってるくせに。多分、お兄ちゃんもそう思ってるよ」 するとユーノは心底嫌そうな顔をした。 「……いくら大好きなフェイトの口からとはいえ、そういう言い方はやめてほしいな。なんだか背筋がぞわぞわするから」 「いい加減に普通に仲良ししてくれればいいのに。もうすぐユーノのお兄さんにもなるんだよ」 「そう。それが君と家族になる上で、唯一の僕の悩みなんだ。クロノをお兄さんって呼ばなきゃならないのがどうもなあ……」 「ユーノったら、しつこいよ」 思わず笑ってしまったフェイトを見つめる緑の瞳が優しく細められる。 「やっぱりフェイトは笑ってるのが一番いいね」 「そ、そうかな?」 「そうだよ。僕は大好きだ」 「ゆ、ユーノ、あんまりそういうことを……恥ずかしいってば」 「フェイトは恥ずかしがり屋さんだよね。そこが可愛いんだけど」 「だから……もうっ」 「あはは。これなら大丈夫そうだね。よかった」 そっぽを向いてしまったフェイトの機嫌をとるように頭を撫でながら、ユーノは続けた。 「さて、と。君にちゃんと休んでもらわないといけないし、そろそろ僕は帰るよ。勝手に抜け出してきたから、多分あっちが大変なことになってると思うし」 「怒られちゃう?」 「そうだねえ。それなりに怒られるだろうけど、うちの司書たちはなんだかんだで優しくていいひとばっかりだから、君が心配しているようなことはないと思うよ」 「そう……」 ほっとするフェイトに笑みかけながら、ユーノはその額にそっと口づける。 「それじゃあ、フェイト。ちゃんと休んでね」 「うん……あ」 「? ……あれ」 妙な声をあげたフェイトの視線を追って、ユーノもまた声をあげる。 二人に視線を向けられた先には、ちいさな二人がいた。 即座に照れの極地に至ったフェイトとは対照的に、ユーノはのほほんと挨拶をする。 「君たちは……確か、エリオ君とキャロちゃんだったよね。こんにちは」 「こっ、こんにちはっ」 「お久しぶりですっ」 一方、ちいさな二人も顔を真っ赤にしていた。 それはそうだろう。 いきなり目の前で自分たちを完全無視して二人の世界をつくり、唐突にはじまったメロドラマを無理やり見せられてしまったのだから。 「そっか。フェイトは君たちのお母さんだものね。心配してきてくれたんだ。いい子たちだね、フェイト」 話を振るが、フェイトは答えない。否、答えられない。 頭の中を「エリオとキャロたちにあんなところを見られてしまった」という事実に埋め尽くされ、穴があったら入りたいくらいに恥ずかしくなっているのだ。 固まってしまっているフェイトに苦笑していたユーノだったが、ふとあることに思い当たった。 「そうか。僕がフェイトと結婚したら、君たちもある意味僕の子供ってことになるんだね。いいなあ。家族がたくさん増えるなあ。それもこんなに可愛い子供たちなんて嬉しいなあ」 幸せそうにうんうんと頷きながら、ユーノはおもむろに両手を広げた。 「お父さんって呼んでくれたら嬉しいんだけど、まだ早いかなあ。『お父さんの胸に飛び込んでおいで』とか言ってみたりして」 「え」 「あ」 「ちょっ、ユーノ!」 「へ?」 照れを越えて驚いたフェイトに急に裾をひっぱられ、つんのめりかけたのを堪えて彼女を見たその直後、背後をふたつの足音が駆け抜けていく。 見るとそこにいたはずの二人がいなくなっていた。 「あれ、どうしたのかな?」 「もうだめだよ、ユーノ! 私、まだあの子たちに何も言ってないんだから! きっとびっくりして逃げちゃったんだよ! どうしよう……」 「そうなの? ごめん。でもなんで言ってないのさ」 「だって、ややこしいし普通じゃないでしょ、私とユーノの関係って。だからどう説明すれば、拒否反応とかなく納得してくれるかなって今一生懸命考えてる途中だったんだよ」 「……そうだね。デリケートな年頃だし、僕の言い方だと傷つけちゃったかもしれない。どうしよう……嬉しくて、つい言っちゃったよ」 肩を落とすユーノがなんだか可愛くて、フェイトはこんな時だというのに笑みがこみあげてきて困ってしまった。 「……ユーノは心配しなくていいよ。私が後でちゃんと説明してわかってもらうから。だから、ユーノはとりあえず無限書庫に戻ること」 「……任せちゃっていい?」 「お母さんだもん。その辺は上手くやるから。ほらほら、元気だして。今日は会うって約束してるんでしょ?」 「うん」 「それなのにそんなに暗い顔してたら、きっと心配するよ。ヴィヴィオだってそうだと思う。だから、情けないお父さんはここでおしまいにして、いつもの穏やかで優しくて素敵なユーノ・スクライアに戻って」 先ほどとは逆に頭を撫でられ、ユーノは少しだけ元気が出る。 「……いつもはおろおろして恥ずかしがってるばっかりのフェイトなのに、なんだかたくましいや」 「お母さんはそんな感じなんだそうだよ。良く知ってると思うんだけど」 「そうだね」 微笑み返したその顔は、ほとんどいつものユーノだ。 そばにいるだけで安心してほっとして、心癒してくれる緑色の葉を繁らせた常緑樹のようなユーノだ。 ああ、やっぱりユーノしかいないなあ。誰よりも大好きなひとだなあ。 心から溢れる温かくて優しい想いを感じながら、フェイトは改めて思う。 そして、きっと彼女もそうなんだろうなとも。 「もう平気?」 「うん。フェイトのおかげでね。ありがとう」 「よかった。じゃあ、いってらっしゃい、ユーノ。お仕事頑張って。でもほどほどにね」 「了解」 今度は唇に軽くキスすると、ユーノは部屋を後にした。 扉が閉まるまで見送り、フェイトは身体を横たえる。 ユーノとの約束だ。安静にしていなければならない。 けれど、逃げていった子供たちのことも気になる。 「……でも、心配することないような気もしてるんだ。ユーノ。あの子たちは身体こそちいさいけど、心は随分成長してるんだ。それこそ、私が思いもつかないくらいにね。だか、ら……」 今ごろ薬が効いてきたらしい。 瞼が重くて仕方がない。 逆らう理由もなく、フェイトは眠りに落ちる。 その後見た夢は、とても幸せなものだった。 END おまけ 一方その頃、逃げていった子供たちはと言うと。 「なんだかびっくりしちゃったね。ユーノ先生とフェイトお母さんってお付き合いしてたんだ」 「でも、確かユーノさんって……」 「そうだよね。どういうことなんだろ?」 「けど、あの仲の良さを見てると本当に好き同士っだって感じだよね」 「うん。素敵だよね。私もエリオ君とあんな風になりたいな」 「え」 無論エリオがその言葉を聞き逃すことなどなく、まるでエリオたちに気づいたフェイトのように照れの極地に瞬時に辿りつき、固まってしまう。 不思議そうなキャロに何度揺すられても、その赤面石化はなかなか解けなかった。 37スレ SS エリオ キャロ・ル・ルシエ フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ユノフェ ユーノxフェイト ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/229.html
不思議な出会いⅡ ◆Qpd0JbP8YI デュエルアカデミアの裏手にある路地の奥まった所で、 淡い緑色をした光が突如として空間に描き出され、そして消えていった。 「転移魔法もダメか」 落胆ともいえる声を発した主は無限書庫司書長ユーノ・スクライアだった。 彼はこの場所に転送されて以来、念話を始めとした幾つかの魔法を試していたが、 そのいずれも芳しい結果を迎えていなかった。 その連綿とした事実にユーノの心に次第にやるせなさが募っていった。 だけど、彼にはそれで挫けることが出来るだけの時間と心の余裕もなかった。 彼の内にいる高町なのはは決して笑顔を見せることなく佇んでいたのだから。 その悲しい様は先の出来事を思い浮かべれば当然の事だった。 一刻も早くなのはに会いたい。 何にも増して、その思いは焦燥となって彼の胸を焼いた。 彼女は親友であるアリサを目の前で殺されたのだ。 それでどうして彼女が大丈夫などと言えよう。 確かに彼女は強い。何かを失うということでは決して歩みを止めることはないだろう。 恐らくは今も彼女はアリサの死を胸にしまいこみ、次の犠牲者を出すまいと奔放しているはずだ。 そうして自分に襲い掛かる悲しみや怒りを無視して、自分の身体を無理につき動かしている。 なまじ責任感が人一倍強く、そして誰よりも人の悲しみに敏感な人間なだけに、 彼女は自分の本当の気持ちを無視して、他人の為に無理をしてしまう。 誰よりも近くにいたユーノはその事を知っていた。 だけど、同時にそれが生み出す結果を彼は知っていた。 「違う、それじゃダメなんだよ、なのは」 ユーノの脳裏に思い浮かぶのは度重なる無理によって生じた撃墜事故だった。 彼女はそれによって、後の人生に支障をきたしかねない重大な怪我を負った。 結果的に大事に至らなかったが、だからといってまた無理をしていいという話ではない。 確かに人を救うという行為は高尚なものだ。そこには人として尊ぶべきものがある。 だけど、それによって当の本人が救われないようでは話にならない。本末転倒というものだ。 死んだアリサだってなのはが無理をして、取り返しのつかないことになったら悲しむし 何より生きているみんなだってそんな姿を見たくない。 彼女はいつもそういった大事なことを忘れていた。 「何でも一人で背負うものじゃないんだよ、なのは。一緒に背負っていこう。 どんなに辛いことだって、悲しい事だって、一人より二人の方が楽だ」 意識せずに自然と漏れた言葉だった。 だけど、そこには彼の思いに満ちたものがあった。 その思いがどんな言葉に所以されるかは彼自身正確なところを図りかねていたが 彼女の支えになってやりたいという彼の気持ちは誰に負けることなく存在していた。 それに大切な友人が死んだという事実は、ただ耐えてばかりいれいいというものではない。 鬱積した感情はやがては自分の精神を蝕み、身体に変調をきたしてしまう。 死は悲しいことであるし、それは泣いてもいいことなのだ。 《だから、僕がなのはが泣いていられる時間を作ってあげる。 僕がなのはの側にいて、なのはの周りの人を助けてあげる。 そうすれば僅かな時間にしろ、自分の気持ちと向き合えれるはすだ》 ユーノはその言葉と共に決意を固めた。 そして、ユーノは心の内に積もったやるせなさを払拭し、 自分の意志を貫くべく再び魔法を発動。 だけど、ユーノの決意とは裏腹に願いは聞き届けられることはなかった。 思わず壁を叩きつける。 御大層な決意を掲げながらも、結果は相変わらずだ。 プレシアに対してより、大切な人の為に何も出来ない無様な自分に怒りが湧いた。 だが、このままあがいていても現状を打開を出来ない。 無力感に打ちひしがれながらも、ユーノは何とか冷静になろうと努めた。 そしてユーノはゆっくりと息を落ち着けて、この状況について考えまとめ始めた。 魔法が発動しない、魔法を発動させない、ということを考えて 彼の頭に真っ先に思い浮かんだのはジャミングだった。 本来ならジャミングは通信や探知魔法を阻害するもので その他の魔法の発動を邪魔をするものではないが 現状を省みるにあらゆる魔法に対して妨害がなされていると考えてよい。 無論、全ての魔法自体が発動出来ないわけではないが どうしても魔力の働きに困難が生じてしまう。 やはり魔法に対して無差別にジャミングがかけられているのだろう。 では、どこからジャミングをかけているか。 それに対して思いついた答えが、この空間を構築しているであろう結界だった。 普通なら魔導師本人がジャミングをかけるものだが、 結界の外からそれをするのは結界に阻まれて無理というものだろう。 また結果内にひっそりと隠れて、プレシア本人がジャミングを発しているというのもいかにも馬鹿げたものだった。 殺し合いを強要する人間が参加者と同じフィールドに立っているなど狂っているとしかいいようがない。 参加者にに見つかったら、間違いないく彼女にとっていい結果にはならないのだから。 恐らくは結界の術式に魔法の発動を阻害するプログラムを組み込み、結界を構築したのだろう。 だけど、ここまで巨大な結界を更に複雑なものとして維持するのには莫大な魔力が必要だ。 ただでさえ時空管理局の捜査から免れるために探知防壁を使い、また他者の参入を防ぐための封時結界 参加者の逃亡を防ぐための強装結界を複合的に用いていると思われるだから、 消費する魔力などは考えただけで頭が痛くなるものだ。 それを幾らあのプレシア――本物かどうか疑わしいところもあるが――とはいえ、 一人によってまかなっていると思えなかった。 魔力炉を用いているという考えもあるが、そんな巨大なものを管理局から隠し通せるとは思えないし、 また隠すにしても、新たな魔力炉を用いた強固な結界が必要となってくるだろう。 ロストロギアによって魔力を補完している可能性もあるが、 それこそ魔力炉よりも、その反応を隠し通すことは難しいし、 ロストロギアは常に暴走という危険性を孕んでいる以上、 このようないつ終わるとも知れないゲームで長時間使用するのは余り考えられない。 よって、その線も薄いだろう。 だとしたら、結界以外による手段によってジャミングをしていることになる。 そうしてしばらく思案して、ユーノはゆっくりと自分の首に巻きつけられている首輪を摩った。 結界以外にプレシアが現段階で参加者に干渉しているものは首輪しかない。 恐らく首輪にジャミングに関する機械装置が取り付けられているのだろう。 その方が魔力消費の観点からいっても妥当なことだった。 そしてそれはユーノにとって喜ぶべきものだった。 何故なら彼は首輪を外せるかもしれない方法を一つ知っていたのだから。 それは変身魔法。 己が身を小さくし、小さな動物へと姿を変えれば、 人間である状態で巻かれた首輪は自然と外れることになるだろう。 無論、変身魔法を発動しないという可能性もあるが、ここで試してみない理由もない。 ユーノは逸る気持ちを抑えながら変身魔法を唱えた。 幾らか魔力の流れに滞りを感じたが、無事にそれは発動。 見る見るうちに彼の身体は小さくなり、愛らしいフェレットへと姿を変えていった。 だが変身した後も、その結果とは裏腹に彼の顔は喜びに染め上げられることはなかった。 何故ならフェレットとなったその姿にもしっかりと首輪は巻きついていたのだから。 しばし茫然としながらがも、彼はこの事実に対する考えをまとめた。 「そういえば服を着ていても、それが元のままってわけじゃなかったしね」 自分が過去に行った変身魔法を思い出し、 その時身に付けていた衣服がどうなったかを思い返してみて、ユーノは納得をした。 俄かに現れた首輪を外せる、なのはに会えるという明るい未来ばかりに目を向けていて 肝心なところで盲目でいた。 ユーノは自分の浅慮に消沈した。 だが、先も述べたようにユーノはここで挫けることなど出来なかった。 魔法の行使が失敗するのならば、次は自分の足で彼女を探すだけだ。 バッグの中から地図を取り出し、なのはが行きそうなところを考える。 だけど彼女が明確な目的場所を定め、そこへ向かうところがユーノには想像できなかった。 確かに地図上には、なのはが行きそうなところがたくさんあった。 アリサとの想い出がある学校、家族との安寧がある翠屋。 傷心しているなのはは自然とそういった場所を求めるかもしれない。 また管理局の建物と思われる地上本部に行って、仲間との合流を図ろうとする可能性もあったし、 将来設立を考えていると言っていた機動六課の建物に疑問を持ち、それを調べようとする可能性もあった。 そして怪我人がいるであろう病院へ向かい、その人たちを守るという選択肢も彼女にはあるだろう。 それ以外にも無限書庫司書長である自分と関連がありそうな図書館へ足を向けてくれるかもしれない。 だが、ユーノは一通りの答えを思い浮かべてから、溜息を漏らした。 そのどれもが正解である可能性を秘めながらも、答えとして明瞭なものは何一つなかったからだ。 どこへ向かっていようと、彼女の目の前の戦闘が起きれば、 彼女は何を投げ打ってもその戦いを止めにはいるだろう。 常に他人を第一に考える彼女の性格だから、それは当然だ。 そしてそんな彼女だから、自然と自分の目的地も疎かになってしまう。 それ故に彼女の視点に立って彼女の行き先を考えるというのは、この場合では余り得策なことではなかった。 だが彼女が争いを止めるべく頑張るとすれば、戦闘が頻発しそうな場所に赴けば、彼女と会える確率は増すだろう。 それは自分の身を危険に晒す行為であるが、なのはの為を思えば、そんな事は問題ではない。 とはいえ、疑問も残る。 このような状況で誰もが危険と思うようなところに足を向ける人はいるだろうかということだ。 戦える力があるにせよ、ないにせよ、後方支援もままならず、 ろくに休息ができないであろうこの場所で長く生き残るには、 出来るだけ消耗を抑えるのが得策だ。 恐らく戦いに慣れている人たちや性格に状況を判断を出来る人たちの活動は消極的になるだろう。 そういった中で戦闘が起きそうな場所を特定するのは難しい。 だが、全く戦いをしないというのでは ゲームに反旗を翻すものに結束するだけの時間的余裕を与えてしまう。 そうなってしまってはゲームに乗ったものにとって、余り良い結果にはならない。 故に全く戦闘が起きないという可能性もなかった。 しかし、だからといって戦闘がどこで起こるかというのも 今のユーノには分からなかった。 なのはの支えになってやりたい。 そんな思いを叶えられない現実を惨めに思い、彼はまた一つ溜息を漏らした。 そうして自分の不甲斐なさに頭を抱え込んでいると、彼の耳にふと水の流れる音が聞こえてきた。 どうやら今まで考え事に夢中で気づかなかったらしい。 地図を改めて見て見ると、川が記載されてあることに気がついた。 なのはを見つけるための手段と目的地が判然としない今はせめて地図に書かれていることが 本当かどうか確かめてみることが目的のための有意な第一歩かもしれない。 そう思ったユーノは、川の流れる音がする方に足を向けることにした。 そうして歩き出そうとして、すぐに彼は人の気配があることに気づいた。 ユーノは足を止めて、慎重に辺りを窺った。 すると、まるで自分の存在を示すかのように物音が川の方から続いた。 間違いなく人がいる。ユーノは矢庭に緊張した。 向こうにはゲームに乗った人がいるかもしれないのだ。 戦闘補助を得意とする彼にとって、真正面から敵と対峙するのは危険だ。 ここは大人しく逃げた方がいいのかもしれない。 だけど、ユーノは首を振って、その考えを追い払った。 向こうにいるのが、なのはだという可能性もあるのだ。 もしそうであったらなら、みすみす彼女に会えるというチャンスを逃してしまい、 彼女のためにと掲げた決意と違えることになってしまう。 危険があるとはいえ、やはり確認しに行くべきなのだろう。 ユーノは荷物を置き、気づかれぬようにとフェレットの姿のまま、 急ぎながらも忍び足で向かっていった。 やがて川の流れがはっきりと聞こえるようになり、 彼の目にもその様が見れるのではないかというところで 突如として彼の思考は驚きの声と共に真っ白に染め上げられた。 「いっ!?」 この殺し合いという状況の中で、いきなり声を上げて自らの居場所を知らせるといのは愚かな行為だ。 挙句、何故か彼は自分の手で自ら目を塞ぐというの行動に出たのだからそれは尚更だった。 だけど、それはある意味しょうがないことだったのかもしれない。 何故なら彼の目に映ったのは、僅か10歳ばかりのあられもない少女の裸だったのだから。 余りに予想外の光景にユーノは思考を奪われ、呆然となった。 人の死を連想させるはずの陰鬱なこの場で、 それとは全く関係ない場面と遭遇してしまったのだから、それも当然といえるだろう。 だけど、彼も幾つもの戦闘を経験してきた魔導師であり、また幼いなのはを常から見守ってきた優しい人間だ。 すぐさま意識を取り戻し、彼女が自分に危険な行為に及ばないように、 そしてこの場で裸という無防備な女の子から目を離す危険性を考慮して、 しっかりと指の間に隙間を作り、その間から彼女が安全かどうかを彼は見守ることにした。 女の子はそんなユーノの思惑など知る由もなく、彼の存在に気がつくと 何の警戒もなしに裸のまま無言で彼の方に歩いてきた。 殺し合いという状況の中での他の参加者へ恐怖のせいだろうか、 それともユーノの心の内のどこかに後ろめたさがあったせいがろうか 彼はそんな彼女を見て、思わず逃げだしたい気持ちに駆られた。 しかしここで逃げたら、本当に覗きにきただけと誤解されるのではないだろうか。 自らの命の危険より、そんな事態を恐れて、彼は二の足を踏んでいた。 そしてその動揺が隙となり、何をする間もなく裸体の女の子にがっちりと ユーノはその身体を掴まれることになった。 異様な緊張がユーノの身体を覆った。 これから自分は糾弾されるのだろうか。 未来の無様な自分の姿が思い浮かべられたが、 一向に彼女はそれらしい行動を起こすことはなかった。 その様子を見てユーノは安心すると同時に彼女がゲーム消極的であると判断した。 そしてユーノは彼女が裸であることから、何かしらの戦闘に巻き込まれたのでは危惧し 彼女の身体に傷がないか丹念に観察をすることにした。 藤色の長く伸びた髪が目に付いた。 そしてそれは調和するかのように真っ白な肢体の上に添えられていた。 僅かに膨らみ始めた胸は、しとやかに女性であることを主張し 何故か水に濡れ、肌に一段と瑞々しさを加えていたその身体は 少女という年齢には不似合いは艶かしさを持っていた。 月の光が優しく彼女に降り注いでいた。 その光を受けて、彼女の白い肌は蒼く写し出され、身体に散りばめられた水滴は まるで宝石のように月の光を反射させ、輝いていた。 何とも綺麗な身体だった。 夜であるはずなのに、その肌は傷一つなく、しっとりとなめらかに存在していることを ユーノにはっきっりと知らせていた。 喉をゴクリと鳴らせながら、ユーノは検分を終えた。 彼女が傷を負うことなく、綺麗なことでいるのに彼は満足感を覚えた。 そして心優しい彼は念のために彼女の容態を窺おうと顔を上げて、 彼の目は少女の感情の灯さない瞳とぶつかった。 その瞬間、音のない時間が流れた。 そしてそこにトリルのように少女のユーノを冷たく見据える目が添えられた。 その冷酷な視線はユーノの心の内にあった女の子の裸を見てしまったという事実を 罪悪感として加速度的に膨れ上がらせ、苛烈な勢いをもって彼を咎め始めた。 そして尚も遠慮なくもたらされる彼女の侮蔑ともとれる視線に耐えかねたユーノは慌てて弁解を始めた。 「い、いや、違うんだ。僕は決してそんなつもりで見ていたわけじゃなくて、 ただこんなところで女の子が裸でいるだなんて、危ないなって思って、 だからそんなやましい思いで、君を見ていたわけじゃなくて、 ただ純粋に君の事を心配して……いや、そうじゃなく、物音がしたから 何だろうと思って来てみたら、君が裸でいて……本当だよ! 本当にそんなつもりじゃなかったんだ!」 その言葉を聞いても、彼女からは何も反応がなかった。 ただ黙ってユーノを見つめるだけ。 それはまるでお前は変態だと烙印を押しているような仮借ないものだった。 「あはは……は」 逼迫した状況に耐えかねたユーノは取り合えず笑ってみた。 笑顔は人に良い印象を与えるといういつか読んだ本の記憶を元にユーノはそれを忠実に実行。 それでもって彼は自分に与えられたであろう不当な印象を拭おうとした。 だけど、残念ながら彼女の様子には、それに呼応したような変化の兆しは見られなかった。 こういう場合では幾ら事故とはいえ、謝ったほうがいいのだろうか。 ユーノにそういった考えがちらついた頃、ようやく女の子は口を開いてくれた。 「あなたも参加者なの?」 ユーノの首に巻きつけられた首輪を見ながら女の子は訊ねた。 ユーノは思っていた展開と違うことに、安堵を覚えた。 それこそユーノは自分は変態だと罵られ、蛇蝎の如く弾劾されるものかと思っていた。 だけど、実際には彼は不当な裁判を免れ、告訴されることなく勝利を得たのだ。 それには当初こそ呆けてしまったものの、やがて目の当たりに事実に気がつくと 彼はに言いようのない喜び感じ取った。 「え、うん!そうだよ!……君もだよね?」 喜びのせいだろうかか、デスゲームの最中だというのに、彼の言葉は随分と弾んだものだった。 少女はそんな調子外れともいえるユーノの質問に対して僅かに頷くだけで答えた。 「名前は何ていうの?」 ユーノは軽快に質問を重ねる。 「ルーテシア・アルピーノ……あなたは?」 「僕はユーノ。ユーノ・スクライア」 名前を聞き終えると、ルーテシアは何故かユーノを地面に下ろし、荷物のところへと向かっていった。 彼女は何をしたかったのだろうか。 彼女のいきなりの行動に疑問を感じたが、彼女がそこで服を着始めたのでユーノは納得した。 折角、ゲームに乗っていないであろう参加者に会えたのに、名前だけの情報交換では幾らか寂しいものがある。 置き去りにされたユーノは慌てて彼女の後を追いかけていった。 そして彼女のところまで追いすがると、ユーノは一番に疑問に思ったことを訊ねた。 「ねえ、その、何で裸なの?」 「……川に落ちた」 「どうして?」 「川の上に転送された」 淡々とユーノの質問に答えながら、彼女はバッグの中から取り出した服を着ていった。 だけどその様子を見ていたユーノはまた次第に顔を赤く染めていった。 「な、何でそんな格好を?」 「バッグの中に入ってた。これしか他に服がない」 服を着終えた彼女はバニーガールの格好でユーノと向き合っていた。 ご丁寧にウサギの耳まで頭に取り付け、それを僅かに揺らせながら佇む彼女の姿は その小さな身体もあいまってか、思わず愛玩してしまいたくなるような可愛さがあった。 愛らしいその姿はユーノの心にも幾らかの動揺を与えたが、 彼は必死に大人としての矜持を揺り起こし、その衝動に耐え抜いた。 そして彼女を戒めるべく、一人の大人としての意見を彼女に与えることにした。 「ねぇ、ルーテシア。その、人前で女の子が着替えたり、裸でいたりしちゃダメだよ」 「どうして?」 「だって僕は……」 だって僕は男だよ。 ルーテシアの何の他意もない疑問に、そんな答えを心の中で思い浮かべ、 思わず口から出して、彼女に注意を与えてしまいたくなったのを彼は何とか我慢した。 こんな状況でどうしてそんなことが彼女に言えようか。 自分が人間であることを隠し、わざわざ動物の姿に変身して裸の女の子に忍び寄る。 それは自分が変態であると自ら彼女に告げるようなものだった。 それでは折角、無罪を勝ち取ったのに、再び裁判を受けることになってしまう。 もうユーノは被告人席に立ち、彼女の裁判官のような冷酷な目を受けるのは嫌だった。 とはいえ、このまま人であることを押し隠し、動物のままでいるのも 自分が変態であると自ら言外に認めているような気がして、愉快な気分ではいられなかった。 一体、僕はどうするべきなのだろうか。 自分が人間であると告げるべきか、告げざるべきか。 二つの答えを前に今までにないほどの激しい葛藤を心の中で続け、 今までにないほどの並列思考を重ねに重ね ユーノはようやく彼女に向けて自らの在り方を示した。 「だって僕は…………オスだよ」 ユーノは人の尊厳を捨て、全てを隠し通すことにした。 確かに動物という擬態を続けるのは、これからのルーテシアとのやり取りや 他の参加者との接触の際に情報の齟齬を招き、困難な状況を引き起こしてしまうかもしれない。 そして何よりも年端もいかない少女に対して欺瞞を続ける自分のことを情けなく感じた。 だけどそれでもユーノにとっては、少女から変態と罵られるよりも遥かにマシに思えた。 肝心のルーテシアはこの言葉をどう取ってくれるだろうか。 嘘がばれたのではないかという不安と 自分の言葉を信じてくれたのではないかという期待をない交ぜにした瞳で ユーノはルーテシアの双眸を見つめた。 だけど、ユーノの言葉、瞳には彼女は何の感慨も示さず 二人の間にはただ沈黙が流れるだけであった。 ひょっとしてばれているのだろう。 絶え間ない沈黙は、ユーノの心にのしかかり、最悪な結果をユーノに予想させた。 もしそうであったら、自分は変態の上に卑怯者の烙印を押されてしまう。 そんな沈黙が与えるプレッシャーにユーノは押し潰され、 もう一杯一杯になった彼は目の前の問題から逃げ去ることにした。 即ち、話題転換である。 「ほ……他にバッグの中には何が入っていたの?」 随分と強引な話の振り方だとユーノも自覚できたが、 それでもあの空気の中にいるよりも、居心地はマシになった。 ルーテシアはというと、ユーノの質問に口で答えることなく、 実際にバッグの中に手を入れることで答えを示していった。 地図に食料、ランタン、名簿を一つずつ取り出していき、 丁寧にユーノの前に並べたてた。 そして水色の水晶をかたどったようなデバイスが現れた。 「名簿に……デバイス?」 そういえば自分の荷物を地図以外に確認していなかったな、と 自分の迂闊を呪いながらも彼女の支給品である名簿とデバイスが、 どんなものであるかを訊ねようとしたところで、 彼の頭はまた別な感情に塗り替えられた。 「ジュエルシード!?」 ルーテシアが最後に取り出しのは蒼い宝石。それは間違いなくジュエルシードだった。 なのはと出会うきっかけとなったもの、なのはとの想い出を綴ってくれたもの。 それには温かい思いでも含まれていたが、 同時にPT事件という悲しく、忌まわしい出来事を起こしたものであった。 「ジュエルシード?」 ルーテシアは無垢な声で質問をした。 「うん、ジュエルシード。次元干渉型のエネルギー結晶体。 僕が発掘したロストロギアだよ」 彼はそう言いながら、近くでジュエルシードを観察した。 「間違いない。ジュエルシードだ。封印処理はされているみたいだけど……」 封印処理されているとはいえ、ユーノには懸念があった。 殺し合いというこの状況。 ジュエルシードをもって戦闘に陥れば、それをきっかけとして封印が解けてしまう可能性がある。 そうすればそれを手に持つ者を取り込んで、いつぞやのように暴走してしまうし、 下手をすれば次元断層を引き起こし、その場にいる者を虚数空間に放り込んでしまう。 ジュエルシードの回収に従事していた彼は誰よりもその危険性を知っていた。 ジュエルシードが支給品として配られたのなら、ルーテシアの他にも配られたものがいるかもしれない。 もしそうなら発掘者として回収する義務があるだろう。 そして暴走を防ぐためにも、それによる被害者を出さないためにも 回収を急がなければならない。 だけど、ルーテシアのこともある。 ジュエルシードは危険なものだ。 当然、回収する立場にあるものにもそれが及ぶ。 なのはの時は、自分が怪我をしてしまい、止む無く彼女に助けを求めてしまったが 今回はそのような状態にはない。 当然、一人で行うべきなのだろう。 しかし、彼女をこの場で一人放っておくというのも躊躇ってしまうことであった。 実際に先ほどの会場でアリサが殺されたのだ。 死という存在はこの場所では、いつもよりも近くにある。 そんな所に女の子一人を捨て置いていくことなど出来はしない。 確かにジュエルシードの回収は危険を伴うが それでも自分が近くにいれば、幾らかは彼女を守ってやることが出来るし その方が殺し合いという場で一人でいるよりも安全ではないかと思えた。 勿論、なのはのことは依然として心配であった。 ここに来てから、真っ先に思い浮かんだのが彼女のことだ。 彼女の支えになってやるという決意は、今も確かな形で彼の中にある。 だけど、それでもルーテシアを放っておくことなど出来なかった。 ここで彼女を蔑ろにし、ジュエルシードを無視して、なのはのためにと銘を打って行動をしても それは結局余計に彼女に心配と悲しみの重りを加えるだけになってしまう。 高町なのはは誰かの犠牲に上に自分が助かることは望んでいない。 だからこそ、今は自分に出来ることをしなければならないのだ。 《ごめんね、なのは。必ず君のところに行く。だから、ほんの少しだけ待っていて》 ユーノは心の中でなのに断りを入れると、ルーテシアに目を向けた。 思い出すのはなのはと出会った時のこと。 あの時もジュエルシードによって、彼女との絆が生まれた。 これもなのはの時のように自分にとって大切な出会いの一つなのだろうか。 心のどこからか湧き上がる思いを胸にユーノは彼女に訊ねた。 「ジュエルシードの回収、手伝ってくれませんか?」 また流れる沈黙。 彼女はほんの少し考え、その質問に答えてくれた。 「うん、別にいいよ。ユーノのこと、嫌いじゃないし」 相変わらず感情の見えない顔で、彼女はあの時のなのはのように明るい笑顔は見せてくれなかった。 その事にユーノは少し寂しさを覚えた。 だけど、彼女の言葉の内には人の為に何かをするという優しさが垣間見ることが出来た。 それに気がついたユーノはルーテシアに対して微笑を零さずにはいられなかった。 「ユーノの支給品は何?」 ユーノの感慨を無視して唐突に疑問の声がかけられた。 それに対してユーノは少し前のことを思い出しながら答える。 「ん、僕の?僕のバッグは向こうの方に置いてあるんだ」 ルーテシアはその言葉を聞くと、ユーノの指差す方に黙って歩き出した。 慌てて自分を追いかけるユーノを尻目に 彼女はロストロギアという言葉を聞いて、一つの可能性を考えていた。 ひょっとしてこのゲームの参加者に支給品という形でレリックが渡されているのではないか。 生体ポッドで眠る母を蘇らせ、自分に感情を与えてくれるナンバーⅩⅠのレリックがここにあるのではないか。 彼女はそのことを考えて、ほんの僅かに頬を緩ませた。 【1日目 深夜】 【現在地 H-7 川原 】 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【状態】健康、フェレットに変身中 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本 なのはの支えになる 1.名簿と支給品の確認 2.ルーテシアの保護 3.ジュエルシードの回収 4.首輪の解除 【備考】 ※JS事件に関連したことは何も知りません ※名簿はまだ確認してません ※ユーノの支給品はG―7のデュエルアカデミアの裏手にある路地に放置されています ※プレシアの存在に少し疑問を持っています 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康 【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖― 【道具】支給品一式、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは 【思考】 基本 ナンバーⅩⅠのレリックの捜索 1.ユーノの支給品の確認 2.ジュエルシードの回収を手伝う 【備考】 ※参戦時期はゆりかご決戦前です ※名簿はまだ確認してません ※ユーノが人間であることを知りません Back ギブアンドテイクの契約 時系列順で読む Next 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? Back ギブアンドテイクの契約 投下順で読む Next 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? GAME START ユーノ・スクライア Next 遠い声、遠い出会い GAME START ルーテシア・アルピーノ Next 遠い声、遠い出会い
https://w.atwiki.jp/mousouvs/pages/1472.html
【ユーノワVIII】(出展作品:機神大戦ギガンティック・フォーミュラ) 基本情報 全高 29m 重量 - 耐久力:680 コスト:560 形式番号:GF-EER-VIII 所属:東欧ロシア 盾:○ 変形:× 換装 × 抜刀:○ 特殊能力 [[共鳴感応システム]] DP:セルゲイ・クラコフスキー(CV 國立 幸) トランスレーター:タチアナ・グリゴリエフ(CV 佐久間 レイ) (wikipediaより引用) ■機体特性 機動性面はBD速度が少し遅いこと以外はかなり高性能。とくにブースト量が多めなので立ち回り面で相手に優位を取ることが出来る。しかし耐久力は低めで1落ちが致命的な高コストとしては問題のレベル。 デザインは河森正治。 射撃 ■メイン射撃【エネルギーライフル】 弾数:6 リロード:常時リロード(1発/5秒) ダメージ:90 ごく一般的なBRだが性能的には他の高コスト帯に比べてやや劣る。優れたCSや特殊射撃等の豊富な攻撃手段があるので、他の機体に比べて適当な扱い方をしても問題ない。リロード速度は早くなく弾数も多くないのだがCSがあるためそれほど弾切れにはならない。 ■メインCS【ドゥエーリ・ルゥジョー】 弾数:- チャージ時間 2秒 ダメージ:140 どこからとも無く大型のライフルを取り出し一発放つ。BRよりもビームが太く弾速があり威力も高め。BRに比べると発生は遅くなっているが致命的なレベルではなくむしろCSでは早い方に類する。若干誘導性が低い。使用後にライフルをしまう動作があるため硬直は大きい。格闘の締めにCSCで当てると吹き飛ばし+強制ダウンと、かなりおいしい。 ■サブ射撃【アールミヤ・アフタマート】 弾数:70発 撃ち切りリロード(70発/5.8秒) ダメージ:4×14 胸部のバルカンからから1~7(計14)発連射する。22発ヒットでよろけを誘発できる。他のバルカン系に比べ連射速度があり攻撃時間は短い。しかし連ザシリーズのインパルス同様に胸についているため正面にいる相手にしか当てることが出来ない。 ■特殊射撃【ストー・グラース・クルイロー】 弾数:1発 撃ち切りリロード(1発/24秒) ダメージ:0 背部に装着されたアルゴスの百目ユニットを展開し正面広範囲にわたって精神波攻撃を繰り出す。本機の特徴とも言える武器で、劇中では何度も勝利を飾ってきた武装。最終的にこの武装で作品上のボスであるオニクスを撃破したといっても過言ではない。攻撃範囲は非常に広くヒットした場合は相手を強制的にスタン状態にさせる。照射時間は少し長いがそれでも無防備な相手に自由に攻撃できる非常強力な攻撃。その広い攻撃範囲から相手を2機とも巻き込むこともある。ただしアルゴスの百目ユニットの展開があるため攻撃発生までが若干遅くリロードに関しては絶望的に長いのでなんとしても当てて行きたい。アルゴスの百目ユニットを展開すると当たり判定が大きくなるので注意。 格闘 ※一部捏造格闘です。本編とリンクした格闘があれば差し替えていただけると幸いです。 ■通常格闘【メエーチ・シート】 ダメージ:160 左手に装備した剣盾(盾の先端に剣がついている)左から右へ横薙ぎ→袈裟斬りの2段技。発生はそれなりに早く攻撃範囲は広めでなかなか強い。威力は低いが特殊格闘に派生できるので総ダメージは優秀。ただし2段目に動きが無く特殊格闘に派生した場合はさらに動かなくなってしまうのでカット耐性に少々不安が残る。 ■前格闘【メエーチ・シート】 ダメージ:100 左腕に装備した剣盾を一旦引いてから思い切り突きを放つ。外した際の隙は甚大なので確実に狙って出して行きたい。高い誘導性を誇り突進距離も長く判定も強い。発生も早く単発だと威力が低いもののこちらも特殊格闘に派生できる。 ■横格闘【メエーチ・シート】 ダメージ:150 横移動しつつ剣盾を縦一閃に振り下ろし→スタイリッシュに下段回し蹴りの2段技。縦一閃の部分は左右の攻撃判定は狭いが上下への誘導と攻撃範囲に優れ、多少の高低差をものともせず当てることが可能。2段目ヒット時に相手をダウンさせることが出来る。発生は若干遅いが隙は少なく優秀なのでメインで使いたくなるが特殊格闘への派生は出来ない。 ■特殊格闘【メエーチ・シート射出】 弾数:1 リロード:特殊リロード(1発/-) ダメージ:130 その場で相手に向かって剣盾を射出する。相手や障害物にヒット後は一瞬の間があってから剣盾が爆発。爆風にヒットさせれば相手をよろけさせることが出来る。誘導は一切しないものの、攻撃までが早く方向補正が優秀で剣盾の速度は速い。剣盾はシールド判定なので相手の攻撃を防ぐことが出来る。射出後は何かに刺さって爆発するか画面外まで飛んで行くまで格闘とシールドが使えなくなる。 ■BD格闘【メエーチ・シート】 ダメージ:180 左回転しながら3回切りつける。かなり長い距離を移動しながらきりつけるため敵を巻き込みやすいが、初段のみリーチが短いためかなり接近してから出ないとフルヒットは難しい。その初段に高いダメージが設定されているため2段目以降のみヒットした場合はダメージ100とかなり低下してしまう。 ■特殊行動能力【共鳴感応システム】 他の機体の能力を、使えるようにする。 -全体的に- 射撃ではメインやCS、格闘では通常格闘(+派生)や横格闘など優れた攻撃を多数そろえているため攻めにおいてもも守りにおいても高レベルな戦闘が可能。ブースト量が多いためかなり優位に立ち回ることが出来る。また特殊かつ強力なアルゴスの百目(ストー・グラース・クルイロー)の存在もあり他の機体とは一線を画す。しかし高いコストと低い耐久力がネックであり、隙の多いアルゴスの百目や格闘が使えなくなる特殊格闘をしっかりと当てていなければたちまちピンチに陥り、力を発揮することなくあっさりと敗北してしまうことを肝に銘じておくべき。 タッグと組むなら- メタス コスト合計:560+420=980○ 2丁のビームガン、変形、2本のサーベルが使えるようになる。 CPUとボス戦攻略- 更新情報 2024・3・20 画像をアップ。 2011・9・5 おっといかん。【【共鳴感応システム】】のことが忘れていた。 2009・9・15 新規作成。
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/74.html
タイトル「すずか、乙女の戦場に挑む」 作者:75-436 本文 月村すずかは恋をした。 栗毛と笑顔が眩しい、同い年くらいの少年に。 しかしその少年━━ユーノ・スクライアは、別の世界に生きる少年だった。 親友のなのはのペットだと思っていたフェレットが実は男の子だった。 そんなお話の中の世界があるなんて。 だから、初めは未知の世界への単なる憧れだった。 だけど。 ある時、たまたま人間の姿で彼と会って、彼の話を聞いて。 本の中で夢見る空想の世界がそこにはあった。 未知の次元。古代の遺跡。海鳴とは違う文化。 楽しそうに話すユーノに、すずかはいつしか恋していた。 恋心に気付いても、彼とは文字通り違う世界を生きる身。 なのはやフェイト、はやてのように彼と同じ世界に身を投じることは考えられない。 だからすずかは、悩んでいた。 「すずかちゃん、元気ないで」 「うん…」 「何かあったん?」 「そっか…ユーノくんかぁ」 「うん…」 「これは困ったなぁ」 一緒に悩んでくれるはやて。すずかはそれだけで嬉しかった。 叶わない恋ってわかってる。でも気持ちが抑えられない。 …と、はやてが顔を上げた。 「せや、すずかちゃん、チョコ作ろ」 「え? チョコ?」 「そこで、思いっきりぶつけたらええねん」 「そんな、できないよ」 「できないやない。やるんや!」 はやてがカレンダーを指差した。 「来週は2/14!乙女の戦場や!」 ファリンに教わって簡単なお菓子なら作ったことはあるが、 そんなおいしいチョコなど作れない。 しかしはやては、だからこそ挑戦するんだと言って聞かない。 「頑張って作れば想いは必ずこもるし、伝わるもんや」 はやてちゃんの家で、一緒にチョコ作り。 途中でヴィータちゃんが何度も味見に来ては、シグナムさんに引きずっていかれる。 「主の邪魔をしてはいかんぞ」 「だってよ、こんなギガウマな匂いするからさー」 なんだかおかしかった。 はやてがやっと笑ったねと言う。 「笑顔は一番のトッピングなんや!」 そうして数時間。 すずかの初めての手作りチョコが完成した。 親友のはやてに心配されて。 誰にも言わないって約束して、打ち明けた。 2/12。バレンタインの二日前だが、はやてはユーノの休暇に合わせ、 海鳴の八神家に招待していた。 なのはやフェイトには内緒で、と念押しして。 すずかは八神家で何度も溜息をついていた。 何て言って渡せばいいんだろう。 心臓が痛いくらいに高鳴って、緊張して落ち着かず。 何十回目かの溜息を発したとき、シグナムがそっと肩に手を掛けた。 「怖じることはない。高町のように、まっすぐぶつかればいい」 「なのはちゃんみたいに…?」 「全力全開、だったか。どんな結果になろうとも、一番後悔が無い」 「あいつの場合、全力全"壊"だと思うけどなー」 子供らしくない、ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべるヴィータ。 「だいじょーぶだって。スクライアはひどいことできるヤツじゃないから」 「うん…ありがとう、シグナムさん、ヴィータちゃん」 でも、ううん、そんな優しいユーノくんだから。 困らせちゃうんじゃないかって、すずかは思ってしまう。 「ただいまー」「お邪魔します」 来た。はやてと共に、想い人、ユーノ・スクライアが。 リビングでくつろぐすずかとユーノ。 気を利かせてか、やがみけの面々は皆別の場所にいるのか姿が見えない。 たまたま付けたTVではバレンタイン特集が組まれている。 「へー、こんな風習があるんだ」 「う、うん」 「本命と義理があるってのが、面白い文化だね」 「ユーノくんの世界でも、こういうの、あるの?」 「うん、例えばね…」 ユーノの薀蓄が始まる。 すずかはこの時間が何より好きだった。 子供の頃、両親やメイドらに本を読んでもらった時のような、幸せな時間。 未知の世界の物語のように、彼の話は楽しい話なのだ。 それはユーノも同じで、すずかが目を輝かせて熱心に聴いてくれるのが嬉しかった。 つい話し過ぎてしまうくらい。 話が一区切り付いたとき、すずかがぎゅっと右手に力を入れて、言った。 「ユーノくんに、渡したいものがあるの」 声も手も震えながら、ポーチに入れておいた包みを取り出した。 ━━まっすぐぶつかればいい。シグナムの声が、折れそうな心を支えてくれる。 ━━想いは伝わるもんや。はやての笑顔が、声に力をくれる。 「本命だよ!」 思いっきり力はいって、声も裏返ってしまったけど。言えた。 綺麗にラッピングされた包みを差し出されたユーノは、ぽかんとした後、徐々に顔が赤くなる。 本命。その単語の意味を理解するうち、恥ずかしさで顔が火照っていくのが止められない。 フェレットになって逃げ出したいくらいだ。 だけど、彼女の…すずかの瞳は、真剣そのもので。 魅入られそうなくらい、綺麗だった。 すずかのことをそういう対象で見たことは一度もなかった。 だけど。 こんな本気で直球を受けたのに、逃げるなんて出来ない。 覚悟を決めろ、ユーノ・スクライア! 必死に心を鼓舞して、彼は応えた。 「ありがとう、すずか━━」 *** 「はい、ユーノくん。すずかちゃんからだよ」 「いつもありがとう、なのは」 海鳴から届くビデオレター。 週一で往復するそれは、二人を繋ぐ絆だった。 例え次元は離れていても。想いは伝わるのだ。 「ええなユーノくん。らぶらぶで」 はやてにここぞとばかりにからかわれる。 フェイトも何も言わないが、笑顔を向けてくる。 「そいや、ユーノくん、知っとる? 海鳴ではホワイト・デーは、30倍返しなんやで?」 「…へ?」 「当ったり前やん。あんだけすずかちゃんが勇気振り絞ったのに、 みみっちぃお返しなんてありえへんやろ」 …30倍。その言葉がユーノに重くのしかかる。 第97管理外世界には何ていう恐ろしい文化があるんだ。 だけど、期待しているだろうすずかには、応えねばならない。 深く決意を固めるユーノ。 だから、後ろでなのはやフェイトの口を必死に塞ぐはやてに気付くことはなかった。 ユーノがどんなお返しをしたのか。 それはまた、ホワイトデーの頃にでもお話することにしましょう。 すずか ユノすず ユーノ
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/109.html
リリカルなのは学園編 352 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/19(月) 06 39 38 ID dEm+YfjY 朝一で電波受信。リリカルなのは学園編 月曜日の朝というのはかくも憂鬱なものなのか。 今朝方まで本日提出のレポートを片付けていたユーノ・スクライアは朝食をとるために コンビニへと徒歩で向かっていた。早朝の切付けるような冷たい空気が 眠気を切り払い、意識を覚醒させてくれるのがありがたい。 「ユーノ先生!」「あ、せんせー!」 と、そこに声をかけてくる2人の少女がいた。 それは、ユーノが家庭教師をしている、ロードワーク中の中島姉妹だった。 「先生、こんな朝早くからどうしたんですか?」 「あー、朝ごはんを買いにちょっとコンビニまでね・・・・・・」 と、レポートを片付けていたことや今朝食を買いにコンビニまで行こうとしていたことを話す。 「ねぇ、せんせー!もしよかったら、うちにきて一緒にごはん食べませんか?」 と、中島家の次女、スバルがユーノを誘う。 「こら、スバル。ユーノ先生に失礼でしょう?」 「でも、ギン姉もせんせーと一緒にごはん食べられたら嬉しいでしょ?」 と、たしなめるギンガだが、スバルの言葉は魅力的だったようでちょっと惜しそうだ。 「えーと、僕としては嬉しいんだけど・・・・・・迷惑じゃないのかな?」 「「そんなこと絶対ありません!!!」」 遠慮気味につぶやいたユーノの言葉は姉妹のユニゾンアタックであっさり否定された。 そして、ユーノは中島家で朝食をとることになったとか。 356 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/19(月) 08 32 46 ID m6zR3xoY 352 むむっ、電波受信したぞ。 二人のお誘いを受けてナカジマ家の朝食をいただく事になるユーノ。 朝からの圧倒的なボリュームの朝食に冷や汗をかきつつ、娘達の魂胆を呼んでからかうゲンヤと、海鳴名物『綺麗なお母様同盟』の一人、クイントさんの姉御肌気質による軽い誘惑に完全に飲まれるユーノ。 『お父さんがいるでしょうがーー!』で当てが外れて、食卓で吼えるスバルとギンガの姿が。 ――――でも、この時に一番貧乏くじ引いたのは、レポートの情報を仕入れてユーノの部屋に押しかけ朝食を作りに来たが蛻の殻の部屋に愕然とする、なのは&ヴィヴィオであった。 357 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/19(月) 08 53 31 ID 0E1/MbHh 10年間家庭の食卓なんてなかったから微妙に涙ぐむユーノ(お弁当イベントはあったけど) 358 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/19(月) 09 37 10 ID dEm+YfjY 呆然とするなのはさん ヴィヴィオが容易に想像できた。 ナカジマ姉妹の通う高校はユーノの通う大学の付属で、同じキャンパス内にあるから 一緒に登校することになって大喜びのナカジマ姉妹だ。 そして校門前でなのはさんと遭遇するというお決まりのオチ 361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/19(月) 10 11 34 ID dEm+YfjY さて、クイントさんに 「今晩お鍋するんだけど、もしよければ一緒にいかが?」 と誘われて、ナカジマ姉妹からも一緒にごはん食べようオーラをうけて ついついOKしちゃうユーノ先生の電波を受信したところで俺も大学いってくる。 12スレ SS
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/95.html
タイトル「風に舞う黄金」 作者:102-742 ユーノ=スクライアが、無限書庫司書長の職を辞した。 気鋭の若手考古学士としても高名で、管理世界の情報という情報を司る部署の長、 おまけに端正な顔立ちでメディア露出も多かった彼の突然の辞職は、大衆の、また管理局員の耳目を引くには十分だった。 彼の幼馴染や無限書庫司書など、彼をよく知るものは、寂寥と後悔を以って退官を祝福した。 彼が、身を粉にと言うも生温い程に、自らの全てを捧げて仕事に励んでいたことを、自分達がどれほど彼に支えられ、守られてきたかを知っていたから。 既に無限書庫の整理が完了した今、時空管理局は、ユーノを縛り付ける枷にしかなり得ないことが分かっていたから。 だが、ユーノが放った一言は、彼ら、特に幼馴染達に激震を齎すことになる。 あれから、もうすぐ一年が経つ。 海鳴市にある丘、海を一望できるそこに、洋風建築の一軒家がある。 緑にあふれ、様々な花がその花弁を艷やかに色付け、初夏の陽にさらす庭で、 ユーノは濃いめにいれたダージリン片手に、読書に興じていた。 管理局を辞めたユーノは、ミッドチルダに持っていた資産を全て処分し、ここ海鳴に移り住んだ。 放浪の民であり、定住地を持たないスクライア族出身の彼にとって、唯一故郷と呼べるこの地を、彼はいたく気に入っていた。 ちなみに今日は平日である。ユーノは現在無職だ。 とはいえ、司書時代に管理局から支払われていた給料はほとんど手付かずで残っていたから、生活には十分だった。 それに現在でも、考古学士として論文を発表することも時折あるから、そちらの収入もある。 ――総資産、日本円に換算して、ざっと7~8億である。NEET?いいえ、高等遊民です。 そういうわけで、ミッドチルダの考古学士会やスクライアの発掘作業の手伝いなどを除けば、彼には時間がたくさんあった。 読書魔法を使わずにじっくりと本を読むなど、無限書庫にいた頃にはほとんどしなかったが、今はそれが思う存分できる。ユーノは幸せだった。 爽やかな初夏の風が吹き抜けた。漂う若葉の匂いに誘われて、空を見上げる。 澄みわたった碧い空を風に乗って往く真っ白な雲が、友の姿に重なった。 ――今も彼女は、彼女らは、次元の海の何処かで、空を翔けているだろう―― ダージリンに手を伸ばす。氷が、カラン、と涼しげな音をたてた。 グラスを透かした陽の光が、ユーノのシャツを深い赤に染めて揺れている。 空に浮かぶ太陽は、誰かに似て今日もまぶしくユーノを照らしている。 ――ならさしずめ、あの空をゆく飛行機はどこぞの真っ黒提督様だろうか―― 陽の強さに高度を下げているところなんか、実にヤツらしい…今度また、飲もうか。 ちなみに今はすずかに借りた小説を読んでいる。ピンクの髪の魔法使いと、異世界から来た黒髪の騎士のお話だ。 日本の小説は面白い。特にこのタイトルは、ヒロインが誰かにそっくりだ。 意地っ張りで、危なっかしくて、でもその実、とても寂しがり屋で。 そう、そっくりだ…誰に?それは… ぴと。 「ひゃんっ」 思わず横を見ると、汗をかいたダージリンの入ったグラス。 「ずいぶんと可愛らしい悲鳴あげるわね。」 それを持つ手は白くしなやかで、 その向こうには、太陽のように鮮やかな金の髪が、シャンプーと汗の入り交じった甘い香りを漂わせながら揺れている。 「ぁ、アリサ、おかえり。」 その魅惑的な香りに、ユーノは酔ってしまいそうになる。驚かされたこともあって、どうにも間の抜けた声になってしまった。 アリサは、再び伸ばした豊かな髪をかきあげながらユーノに応える。 「ただいま。それにしても、ホント本の虫、もとい本のフェレットさんよね、ユーノは。 …それ、こないだすずかに借りたやつ?」 どうやら、間抜けた声音の理由を本に熱中していたからだと思ったらしい…まぁ、それも間違いではない。 「うん、そうだよ。すずかのオススメ。 …というか、からかわないでよ。本が好きなのは、性分だし。」 おもむろに、アリサは後ろからユーノの首に腕を絡めた。 「どうしたの?」 「ん…」 返事にもなっていないような,曖昧な声。仔猫がおそるおそる近寄ってくるような、その様子がとても可愛らしくて、ユーノはからかってみたくなる。 「妬いた?」 「うるさいうるさいうるさい。」 そんなんじゃないよ、とユーノはアリサの頭をなでる。顔は見えないが、安心したような、とろけた吐息が耳をくすぐった。 ――君のことを、想っていたんだ。 やわらかな風が舞い、髪がなびいた。 ユーノの鼻孔に、アリサの香りがまた届く。 「~♪」 「どうしたの?アリサ。」 首につかまったままの仔猫に、ユーノはたずねてみる。 「え?…貴方の髪、いい匂いだなって。なんだかね、安心するの。」 「それは光栄だ。…君の髪も、いい香りだよ。心があたたかくなる、そんな香りだ。」 「ほんと?…ありがと。」 ねぇ。 なぁに? 「だぁいすき」 「前から僕は気になっていたんだが…どうして海鳴へ?」 「あ、それ私も気になるかも。」 「言われてみればせやんな。向こうにアテがあるとかでもないんやろ?」 「私も不思議だったの。どうして?ユーノ君。」 あ、うん。それはね、 「結婚するんだ、アリサと」 現在彼のフルネームは、「ユーノ=S=バニングス」という。 アリサ ユノアリ ユーノ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3774.html
ユーノ・スクライア 山中/ワゴン車内 初日/3時51分24秒 完全な闇の中、遠くから微かな風の音が近付いてきた。 その音が大きくなるにつれ、ユーノ・スクライアの意識も徐々に現実へと引き上げられていく。 「うぅ……っ」 強打したのか、酷く痛む頭を動かして、ユーノは意識を取り戻した。 重いまぶたを開けると、辺りは真っ暗闇に包まれており、何も見えない。 「ここは……?」 そこで自分が、レンタルしたワゴン車の運転席に座っていたことを思い出した。 それすらも一瞬忘れてしまうぐらいに、頭を強く打ったのだろうか。少し不安になりながら、気絶する前の記憶を手繰り寄せる。 (えっと……山道で車を止めていたら、確か地震があって、サイレンが鳴って………) そこで気絶したのだろう、そこから先の記憶は無い。 車の中にいたにも関わらず凄まじい音圧を感じさせたサイレン。あの音響が今も耳の中に残っているかのようだ。 (あのサイレンは、一体) 地震を見計らったかのように鳴り響いたサイレンは、機械音というよりまるで獣の咆哮だった。 なにか自分の想像を超えた事が知らぬうちに起きているような気がする。嫌な予感がした。 (とにかく、暗くて何も見えないな……明かりを点けないと) そう思い、その場しのぎに魔力光で辺りを照らそうと魔力を手のひらに集中する。 しかし、いつもはすぐに輝くはずのエメラルドグリーンの光は、一向に光らない。 「あ、あれ?」 それどころか魔力が集中する感覚すら無い。体内の魔力回路が機能していないかのような感覚だ。 焦りながら、他の様々な魔法も試しに行使してみた。 治癒魔法、シールド、思念通話……どれもこれも無駄に終わった。 「嘘だろ……?」 ユーノは愕然とした。どうしてこんなにも突然に、魔法が使えなくなったのだろうか。 AMF?いや、AMFならもっと違う、魔力を妨害されている気分の悪さが全身で感じられるはずだ。 これは魔法というもの自体を取り上げられたかのようだ。 魔法が使えないと分かった途端、ユーノは自分がただの人間にされたような気分になり、心細さと不安が胸中へと一挙に押し寄せてきた。 しかし魔法が使えない以上、どうにもならないことに変わりは無い。 (……なにかライトがあれば) こういう時こそ文明の利器が活躍しなければならないが、エンジンは掛かってないから車内の電灯は点いていない。 キーを回してエンジンを掛けようとも思ったが、この暗闇の中で仮に車からガソリンが漏れていたとしたら、キーを回したところで車が爆発する可能性がある。 下手を打ってここで爆死など笑える話ではない。 (車内ライトは駄目か……そういえば懐中電灯があったな) そう思い当たり、身体をシートから持ち上げようとして、何かに引っ掛かった。 シートベルトだ。 勢い余った身体に食い込み、空気が無理やりに肺から押し出された。 ユーノは何回か咳き込むと、溜め息を吐きながら暗闇の中、身体に食い込むシートベルトを手探りで辿り、シート脇にあるベルトの接続部を外す。 シートベルトから解放され、ユーノは手探りのまま運転席をまさぐった。 (えーと、どこだっけ) ハンドル、ラジオ、レバーと探り、ダッシュボードに行き着いた。 取り敢えず開けて中に手を入れると、金属質で円筒形の物体に触れた。 (あったあった) 引っ張り出して、側面に付いているスイッチを入れる。明かりが点き、ユーノの身辺の状況が明らかになった。 「うわっ」 まずユーノは、フロントガラスから外の風景を遮っている前方に倒れた巨大な倒木に驚いた。 背後を照らすと、上から何か力が掛かったようで車内も僅かにひしゃげている。ユーノのいる運転席側の窓は土砂で埋まっていた。 外が見える助手席に身体をずらし、窓ガラス越しに懐中電灯を外へ照らした。 「これは……ひどいな」 周りには大量の倒木と土砂。車体はどうやら山肌にあるらしく、よく見れば車は若干傾いている。 「土砂崩れかな?」 思い出せば気絶する前は吹き付けるような雨が降り続けていた。土砂崩れはその雨によって地盤が緩んだ上に地震があったから起きたのかもしれない。 なんにせよ気絶しただけで車にも閉じ込められずに済んだのだから幸運だと思う。土砂に呑み込まれでもしていたら確実に死んでいただろう。 (……六課の子達はどうしたのかな) レリックを巡り、ガジェットと戦闘機人相手に戦いを繰り広げていた機動六課の隊員達に思いを馳せた。 雨が止んでいる今、こんなにも静かだということは戦闘は既に終わっているか、あるいは途中で強制的に終わらせられたのだろう。 魔法が封じられている今、彼女達もまだこの村の中に残されている可能性は十分にあり得る。 (無事ならいいんだけど……。僕も早くここから出ないと) 魔法が使えないことに伴って通信も使えないので助けも呼べない。とりあえずは無傷だし、移動等には全く問題が無いので、外に出よう。 そう思い立ち、助手席側のドアに手を掛けた。しかし歪んでいるのか、なかなかドアは開こうとしない。 「仕方ないなぁ……」 そう言うと、ユーノは一息入れて、思い切りドアを蹴り上げた。鍵が壊れたような大きな音をたてて歪んだドアは開いた。 ライトを片手に、後部座席から手荷物のリュックサックを持ち出し、外に出る。 車から出た途端に若干の湿気を含んだ、夜に冷やされた空気がユーノを包み込んだ。 気絶する前に降っていた雨によって、辺りの土や樹木、木の葉は湿っている。 辺りはイヤに静かだ。木々が微かに揺らぐ程度に穏やかな風が吹いている。そして夏場の山奥であるにも関わらず、動物や昆虫の鳴き声が一切しなかった。 こういった場所は夜は夜で昆虫達がうるさいぐらい鳴き続けているものなのだが、まるでユーノ以外の生命が死滅したかのように、森の中は不気味に静まり返っている。 不思議に思いながら、ユーノは辺りを見渡すと、ふと、静寂の中で何かが聞こえてきた。 どこか遠くから微かに聞こえる。 (……ん?なんの音だ?) 目を閉じ、耳を澄ました。 よく聞くとそれは、さーっ、という波のような音だった。不規則な間隔で絶え間なく聞こえてくる。 (波音?まさかね……) ユーノは笑いたくなった。こんな山々が入り組んだ内陸部で波の音などする筈がない。だが木々による枝葉の擦れる音とも違うようだ。 音がするからにはその発信源があるだろう。ユーノはそれを確かめたくなった。 音はどうやら、山の上の方から出ているようだ。 (ここの山はそう高くないし……ちょっと行ってみようかな) その上山頂も近いので、とりあえず上を目指して登り始めた。 折り重なっている大量の倒木をまたいではくぐり、その合間をぬって、割となだらかな山肌を登る。 元々ワゴンを止めていた道らしきものも見当たらない。土砂に飲み込まれて消えてしまったようだ。 倒木達を頼りに、暗く先の見えない山肌をライトで照らしながら登っていく。登るに連れ、波音のような音が大きくなっていく。 十分程経ち、不意にぱったりと木が生えていない空間が、山肌を埋める木々の向こうに見えた。その向こうから波音が聞こえてくる。 (……?) おかしい、ここは林業が盛んな村でも無く、周りの山々も木が切り倒されているようなことはない。 にも関わらず、木々の向こうには妙に開けている空間が広がっているようだ。 不審に思いながらも、そこを目指して再び登り始める。そして開けた空間にまで達して、ユーノは足を止めた。 と言うより、止めざるを得なかった。 「な、なんだよこれ………」 ユーノは、自分の目の前に広がる光景を信じられなかった。 日本の内陸部は山々が連なっており、羽生蛇村は都会から離れ、その中にひっそりと存在する村だ。故に周りには山しか無いはずだ。 しかし今目の前に、日本独特のなだらかな山脈は見る影もなかった。ただただ広大な夜闇が広がっている。 そして眼下に広がっているのは、真紅の海。 暗黒の中、血のような海が不規則に波を立てている様子が辛うじて見えた。そこから波音が、とめどなく聞こえてくる。 更にユーノが立っている場所は、切り立つ崖だ。 昼に通った時はちゃんとした山だったのに、今はまるで、山自体が中途半端なところでごっそりと削り取られたかのようになっている。 (ち、地殻変動?いやこれぐらいのレベルの地殻変動があったとして、あの程度の土砂崩れで済むはずがない。 そもそもこの赤い海は一体………?) 目の前の赤い海は、ユーノがいた『地球』の『日本』とは明らかに別の世界であることを物語っている。 (レリック?いやまさか……あれには破壊する事はあっても物体をどこかに飛ばすような事例は無かったし、 そもそも、山一つレベルの物質量を次元を飛び越えて転移させるだなんて、聞いたことも無い。 となると、やっぱりこの村にあった伝承が関わっているとしか……) ユーノは日頃、時空管理局本局の無限書庫の秘書長を勤めている。次から次へと来る仕事で多忙な毎日を過ごし、ユーノは長らく休みを取っていなかった。 そのユーノがなぜ羽生蛇村にいるのかと言うと、日々労働に労働を重ねるユーノを心配した同僚や仲間達が半ば強引にユーノに休みを取らせたからだ。 突然与えられた休日に、ユーノはかつて世話になった管理外世界の地球に来ていた。 前から何度か文献で目に入れていた、怪奇現象や都市伝説などの噂が絶えないという羽生蛇村の存在に、スクライア一族としての血が騒いだのか、ユーノは強い興味を持っていた。 そして地球に来て、かつて世話になった高町家に挨拶に行った後、ワゴン車をレンタルして羽生蛇村に向かった。 交通の便もあり、羽生蛇村に入ったのは深夜。暫くして同僚から、レリックの反応を三隅郡近辺で探知したという通信が入った。 念のためと思い、ワゴン車の中で待機していたところ、深夜十二時になると共にサイレンと地震に襲われたのだ。 因みに機動六課の面々はユーノがここにいることは知らない。 しかし少なくともライトニングの面々も現世から消失しているとしたら、ユーノが巻き込まれたことも六課に間もなく知らされるのだろう。 (まさかこんな事がなのはの故郷の世界で本当に起きるなんて……。 それに羽生蛇村に伝わる海帰り、海送りの慣習。もしその海がこの赤い海を差すなら、あのサイレンは……) 「……とにかく山を降りて、村に行ってみるしかないか」 ここで考えていても仕方がない。 ユーノは不自然に削られたような崖を懐中電灯で照らして回り、そして踵を返して再び山を降り始めた。 多くの謎が隠されているであろう、まだ見ぬ羽生蛇村に向かって。