約 891,127 件
https://w.atwiki.jp/wktkwktk/pages/132.html
要人の護衛。敵対組織の無力化。危険因子の抹殺。 博士の命令の内容は多岐に渡った。 俺はそれを何の疑問も抱かず、ただ淡々とこなしていった。 上層部の懐刀として、同組織の人物から謂われのない嫉妬や恨みを買う事も少なくなかった。 俺は心のどこかで潤いを求めていたのかもしれない。 最後に別れた日から約一ヶ月後のある日、 カイリュー便が俺の元に手紙を届けにきたとき、俺は肩の荷が下りたような、妙に軽い気持ちになった。 リザードンはそれを察したかのように、速力を上げてグレンを目指した。 屋敷に着くと、メイドは複雑な微笑を浮かべて俺を出迎えてくれた。 その真意を測りかねつつ裏手に出ると、全てに納得がいった。 「……………」 バトルフィールドの脇、申し分け程度に設えられたベンチの上で、 膝にヘルガーを乗せたまま、サヤがこっくり、こっくりと船を漕いでいた。 肩口まで伸びた赤髪の一部を、唇の端で食べているのにも気付いていない。 「サヤ」 「ん……」 サヤは半目で俺を認め、何度か瞬きした後で、 寝顔を見られた羞恥も忘れてこう言い放った。 「遅い!」 「これでも急いだ方なんだ」 「ずっと待ってたのよ。この私が! あなたのために! これってひどい裏切りだわ。私が呼んだらすぐに来るって約束したのに」 「だから俺は手紙を受け取ってからすぐに、」 「まあそんなことはどうでもいいの」 例によって会話が成り立たない。 「私、あなたの言う通りに頑張ってみたわ。 これがその成果よ。ほらほらみてみて」 紙束を差し出してくる。何かと思えば、写真だった。 逆光上等、残像上等の被写体は、なんとかヘルガーだと判別できる。 とすると、この酷い出来の写真を撮ったのは……サヤか。 「それは食事風景。会心の一枚よ。 私、あなたに言われて、ヘルガーに餌をあげる係をやってみて初めて分かったんだけど、 この子が生肉を食べる時ってなんかこう、物凄いのよ。必死なの。私、見てて笑っちゃったもの」 「………」 「それは散歩の時の写真ね。 いつもは付き添いが何人かいるんだけど、この時はヘルガーとだけにしてもらったの。 グレン島は何もないけど、海沿いの道は綺麗で好き」 写真の中には、屋敷の人間に撮ってもらったのだろう、 サヤとヘルガーが一緒に写っているものもあった。サヤの笑顔は無垢そのものだった。 こんな顔もできるのか。そう思って現実のサヤを見ると、まさに写真の中のそれと同じ表情が浮かんでいた。 しかし俺と目が会うと、それはすぐに消えて、元の挑戦的な表情に戻ってしまった。 「サヤはこの一ヶ月の間で、何か新しく発見したことはあったか?」 模範的な反応は期待していなかった。 「発見したことっていうか、再確認できたことがあるわよ」 「再確認?」 「ヘルガーが私に、本当の意味で心を許してくれることは、ずっと有り得ないだろうってこと。 どんなに私が上辺だけの愛情を注いだところで、ヘルガーは最初からそんなものを必要としていないのよ。 私が定期的に撫でてあげなければ、ヘルガーを抑えている見えない鎖は簡単に解けてしまう」 「…………」 「でも、ヘルガーが本当の意味で私を主と認めてくれなくても、 私のヘルガーに対する気持ちは………、少し、変わったかも。 この子も生きてるんんだなあって、そんな当たり前のことに、最近、気付いたの。 今まで、あたしにとってポケモンは、ただの消耗品だった」 サヤはポケモントレーナーとして、不幸な子供時代を過ごした。 無条件でポケモンを隷従させる。 そんな能力を持って生まれてしまったために、ポケモンと対等に接しようという思考が生まれなかった。 次第にその扱いが、道具に指示を出すように変わり、 愛撫が機械的、義務的なものに変わるのに、そう時間はかからなかっただろう。 ポケモンに対する生殺与奪の意識が希薄になっていったのも、仕方のないことのように思える。 だが――。 「サヤの境遇は、ポケモンを道具扱いしていたことの免罪符にはならない」 「ん……」 「これまでサヤが心なく接してきたポケモンに、償えとは言わない。 ただ、これからは"一匹"のポケモンとして扱ってやるんだ。 そうすればヘルガーもいつかは、サヤを能力関係なしに、主と認めてくれるかもしれない。 保証はできないが、やってみないことには何も始まらない」 「…………」 膝元のヘルガーに視線を落とすサヤ。 きつく言い過ぎたか? 「さっきから黙って聞いてたら偉そうに! なによ。もっと私の心の成長を誉めてくれてもいいんじゃないの?」 見当違いだったか。 「返して!」 箱入り娘の例に漏れず腕力は微々たるものだったが、 反抗しても余計にややこしくなりそうだったので、素直にひったくられた。 「捨てるのか?」 「そんなわけないでしょ。バカ」 そう言いながらサヤは、写真を大切そうに仕舞う。 「……悪かった」 「…………」 「サヤはサヤなりに俺の言ったことをしっかり実行してくれたのに、 すぐにサヤにそれ以上の負担を強いるのは、確かにバカだった。謝る」 「殊勝で結構。許してあげるわ」 満面の笑みが浮かぶ。サヤの機嫌が戻るなら、これくらいの台詞、安いものだ。 「でも……」 サヤはその翠眉をかすかに傾けて、 「これで本当に強くなれるの? ヘルガーと本当の主従関係を築く努力をすることが、強さと結びつくようには思えないんだけど」 「なら、バトルしよう。 前の時からどれほどサヤが変わったか、見定める」 「……いいわよ」 意外にもサヤはあっさり首肯した。 前回のあれがトラウマになっていなければいいと思っていたのだが……。 「あ、今私があなたとのバトルを怖がってるとか思ったんじゃないでしょうね?」 「思ってない」 即答だった。 結果は、前の時とそう変わらなかった。 しかし、得たものは大きかった。 「理不尽よ。あなた、強すぎるわ」 サヤは立腹した様子でベンチに横になっている。 ミディアムドレスの裾からすらりと伸びた足に目が行きそうになり、 「お嬢様がそんなだらしなくていいのか」 と言うと、サヤは反抗的に足をパタパタと動かしはじめた。 俺は紳士的に目を閉じた。 「私、なんだか前よりも弱くなってる気がするわ」 「そんなことはないさ」 「じゃあ、強くなった?」 「そんなこともない」 「ねえ、あなた私のことからかってる? もしそうだったら酷いわよ」 「具体的に、どう酷いんだ?」 「お父様に、あなたに陵辱されたって言う」 社会的抹殺か。確かに酷い。 「サヤは成長してる。それは確かだ」 「なら、何がどう成長したのか言いなさい」 「秘密だ。今教えたら、多分、意味がなくなる。それはサヤの望むところじゃないはずだ」 「うー……」 聞きたい。でも聞いてしまえば強くなれない。 ジレンマに苦しむサヤは見ていて面白かった。 実際のところ、サヤは確実に成長していた。 その最たるものはヘルガーへの命令に、ヘルガー自身の被ダメージが考慮されていたことで、 例えば前回、俺がフシギバナに"葉っぱカッター"を指示したとき、 サヤは迷わず焼き払いながらの正面突破を指示したが、今回は完全に凌ぎきった後で、反撃に転じさせていた。 その躊躇をサヤは「弱さ」と考えているようだが、それは違う。 本当の強さは、自分のポケモンを大切にする戦い方の先にあるのだと、いつかサヤが気付いてくれればいいのだが。 「………ねえ」 身を起こしたサヤは、不機嫌な眼差しを俺に注ぎながら言った。 「あなたも適格者なのよね?」 どうせサヤが父親に尋ねても分かることだ。俺は正直に頷いた。 「あなたのはどんな能力なの?」 「自分のポケモンの感覚や思考を読み取ることができる能力だ」 限定的な嘘は見抜けない。特にサヤのような、純粋な思考の持ち主には。 「はあ? もっと分かりやすく説明して」 「つまり、離れたところにいるポケモンが見たものや、考えていることを知ることができるんだ」 「あまりぱっとしない能力ね。それ、実戦で役に立つの?」 「ああ、大いに立つ」 「ふうん………」 サヤは興味を無くしたようにわざとらしい溜息をつき、 数秒の間をおいてから、こう尋ねてきた。 「あなたは前のバトルや、さっきのバトルで、その能力を使ってたの?」 「使ってない」 「……………」 サヤのプライドが焼け付く音が聞こえた気がしたので、俺がそろそろ屋敷を去ろうとした時、 「待って。ねえ、あなたって……」 言いよどむサヤ。デジャヴが俺を襲う。 コードネーム・レッド。サヤにはそれしか知らされていないはずだが、しかし、サヤが俺の素性を想像できないとは考え難い。 恐らくサヤは気付いている。そして俺に、言質を取りたがっている。 だが、それはできない相談だった。 「近々長期の任務がある。だからサヤの予定に合わせることはできない。次は、俺の方から来る」 俺はそう言い残して、屋敷を去った。 グレン島からさらに南下したところに位置する、名も無き孤島。 誰もその精確な位置を知らない、地図から失われた島。 そこでかつて、地上最強のポケモンを創造する研究が行われていた。研究は成功した。 そのポケモンの名は、ベースとなったポケモンの名をとって、ミュウツーと名付けられた。 しかし研究に携わった研究者のほとんどは、自我に目覚めたミュウツーの餌食となって、吹き飛んだ。 一時、その孤島はミュウツーの支配下に置かれ、ミュウツーが去った今では、研究施設の残骸が散乱しているのみである。 俺を含む実働部隊の数人に、その孤島を再調査する研究者の護衛任務が与えられたのは、サヤを二度目に訪れた日の数日前のことだった。 ブリーフィングで聞かされたのは、極めて第三者的かつ当時の事件の上辺をなぞっただけの情報に過ぎなかった。 そして当然のように、当時の事件に直接関わりを持たない人間は、「地上最強のポケモン」とうい響きに勝手な想像を巡らせていた。 「最強のポケモンってえのは、俺様が飼ってるポケモンのことを言うんだ。 嘘だと思うならここにつれてこい。一撃でぶちのめしてやる」 「ナンセンスだね、君は。まったくもってナンセンスだ。 どうしてパワータイプのポケモン使いには無粋な思考の持ち主が多いのかな。 僕なら最強のポケモンを見つけたら、無傷で捕まえて服従させてみせる」 血気盛んな黒色の短髪と、気取った喋り方をする金色の長髪。 その二人の同業者の語りに、俺は辟易していた。 今回の任務は秘中の秘で、護衛には相当の実力者が宛がわれると博士は言っていたが……。 この聖域に足跡を残すには、二人とも余りに思慮が欠けている。 俺は黙々と機材を使って現地調査に勤しむ研究者たちを眺めた。 皆一様に作業着に身を包んで、顔には幅広のマスクを着用している。 そのせいで誰が誰なのか、よほど目を凝らさない限り見分けが付かなかった。 「それにしてもそのポケモンは恩知らずもいいところだな。 生みの親を殺してどっかに行っちまうとは」 「確かに。知性の感じられない行動だね。 僕たち人間がいなければ、ミュウツーは世界でただ一匹の孤独を味わうことになるというのにね。実に愚かだよ。 いやはや、こんなことで君のような荒くれ者と意見が合うとは」 「…………」 何気なく流し目を送ったつもりが、若干の軽蔑を含んでしまっていたようだ。 「おい、お前」 反応したのは黒髪の短髪だった。 「さっきから黙ったまんまチラチラこっち見やがって。 レッド、とかいったな。なんか文句あるのか?」 「いや。ただ、浅はかだと思っただけだ」 「聞き捨てならないな。こっちの醜男は構わないが、この僕が浅はかだって?」 長髪がそれに便乗する。俺は波濤が岸壁にぶつかって砕けるのを眺めながら言った。 「ミュウツーの孤独は、同類がいないことじゃなかった。 ただこの世に生まれてきたことそのものが、ミュウツーの孤独だったんだ」 「はあ? 意味わかんねえこと言ってんじゃねえよ」 「君は少し黙っていろ。 この世に生まれてきたことそのものが孤独、だって? ミュウツーは最強のポケモンとして生まれた。彼の誕生には多くの人間が喜んだはずだよ」 「あんたは根本的に勘違いしてる。 ミュウツーは生まれたその時から知性を持っていた。 ミュウツーは自分が創られた目的を知っていた。 だが、他人が自分に求める目的と、自分が生きる意味は別物だ。 そしてミュウツーは、自分が何故生きているのか、まずそれを確かめることから始めなければならなかったんだ」 潮風の吹く音が、静寂を満たした。 やや間を置いて、長髪が言った。 「レッドくん。君は何かミュウツーのことについて知っているような口ぶりだね。 実際のところ、君には謎が多い。部隊の人間の誰も君について詳しく知らないし、 組織要人の懐刀という噂もあれば、管理者と直接繋がりがあるという噂もある。 流石に後者は嘘だろうが、君が僕たちと違う種類の人間であることは確かだ。 君はいったい、」 何者なんだ?と続く前に、俺は言った。 「忘れたのか。組織では同業者に対して、その台詞はタブーだろう」 「……っと、そうだったね。失敬」 長髪が苛立ちを隠した微笑を顔に貼り付ける。 しかし短髪は収まりがつかないようで、 「いいじゃねえか。どうせ護衛つったって、何もねえ。退屈を持て余すだけだ。 ……お前、出来るんだろ?」 「出来るって?」 「これに決まってんだろうが」 短髪がベルトからボールを取り外す。 「俺が勝てば素性を明かせ」 「いいね、面白そうだ。僕は観戦しているよ。この醜男が負ければ僕が代わろう」 「待て。もしお前が負けたら、その時はどうするつもりなんだ?」 「そうだね。この任務中、僕たちは君に一切干渉しないと誓おう。どうだい?」 「………………」 いたずらに手の内を明かすような真似はしたくない。 だが、二人の関心が自然に俺から反れるとも考え難い。 研究員の一人が間に入ってきたのは、俺が安直な結論を出しかけたその時だった。 「若者は血の気が多くてあかんなあ。 何があったか知らんけど、ワイらの護衛の任務サボって仲間割れするんは誉められたことやない。 さっさと配置に戻った方がええで」 振り返る。固く抑えつけていた記憶の蓋が、僅かに開く。 幅広のマスクは顔を隠せても、独特の関西弁までは隠せない。 もう何年ぶりの再会になるのだろう。マサキ博士がそこにいた。 「さ、主任来る前に散った散った。 そんなに暇やねんやったら、ワイらの調査作業手伝ってもらおか?」 長髪は前髪を指で弄りながら、 「ふっ、僕としたことが熱くなってしまっていたようだ。 それでは配置に戻るとするよ。レッドくん、またいずれ」 あっさりと持ち場に消えていった。 「ふん」 短髪も鼻を鳴らして、その後に続いた。 残された俺とマサキ博士は、しばし視線を平行させた後、同時に話しかけた。 「マサキ博士」 「サトシくん」 「……………」 「……………」 沈黙は肯定と同義だった。 「やはりあなたでしたか」 「やっぱり君やったか」 マサキはマスクを外しながら、複雑な笑顔を浮かべた。 きっと俺の表情にも、同じものが浮かんでいるに違いない。 「どうしてここに?」――そう尋ねることは禁忌だと、お互いに分かっている。 だからお互いに、何の足しにもならない感想を言いあった。 「君は大人になったなあ」 「博士も老けましたね」 「ワイらは歳を取った。いい意味でも、悪い意味でも……な。 サトシくん……いや、レッドくんは、この調査についてどれだけ知ってるんや?」 「ミュウツーが創られた島で、当時の研究資材の収集、及び発掘作業をすると説明を受けました」 「その遺物を使って何をするかは知ってるんか?」 「知りません。しかし、大方、ミュウツーをベースに新しいポケモンを創る研究をするのでは?」 「正解や。まあ、ここまでは誰でも想像できる話やな」 マサキ博士はそこで不意に声を潜め、 「けど、作業に直接関わってるやつらの話やと、想定外の遺物が発見されたっちゅう話や。 ミュウツーの件に偶然とはいえ関わってた君なら、知ってるかもしれん。白い模様が入った真っ黒のボールに、見覚えないか?」 「…………」 目を瞑ると、フラッシュバックに襲われた。 ポケモンを強制的に格納する、自律型ボール。 孤島に呼ばれた他のトレーナーのポケモンが次々に捕まる中、 俺のピカチュウもそれに襲われて、俺は連れて行かれそうになるピカチュウを必死で追いかけて――。 「レッドくん?」 追憶をやめて、首を横に振った。 「そうか。まあ、何か思い出したらその時教えてくれたらええわ」 これ渡しとくから、とマサキは俺に個人用の名刺を握らせた。 「ワイは皆のとこ戻るわ。君も油売ってたらあかんで」 踵を返そうとする博士に、俺は言った。 「ミュウツーをもう一度創ることについて、博士はどう思っているんですか」 博士は振り返らずに、突き放すような口調で言った。 「レッド。そういう君はどう思てるんや?」 「俺は――」 答に詰まる。結局俺は、オーキド博士の言葉通りに動いているだけだ。 ミュウツーの再研究が、博士の目的、延いては俺の夢に繋がるというなら、 胸の内で警笛を鳴らしているちっぽけな倫理観など、無視してかまわない。 そんな文句を、俺は心の中で何度も唱えてきた。 「ワイはな、何も考えてへんねん。ワイは蓄えた知識と才能を買われて、組織に飼われてる。 研究対象が何であれ、研究しろ、言われたら研究するしかないんや。 先輩風ふかすようやけど、君がもしまだ迷ってるんやったら、 自分は組織を動かすひとつの歯車やと思い込むんが、一番賢い道やで」 孤島の調査が終わり、本州に戻ると、俺は約束通り自分からサヤに会いにいった。 「急いでくれ」 飛行中、ふとした拍子に口から零れた命令に、リザードンは非難するような唸り声で答えた。 俺はサヤと会うことで、心の奥で鳴り続ける警鐘から意識を逸らそうとしていたのかもしれない。 組織の繋がりで出会ったにも拘らず、サヤと会っている時は組織のことを考えずにすんだ。 遂行した任務の数々を、その中で殺めたポケモンたちを思い出さずにすんだ。 組織のヒエラルヒーをのし上がる達成感とは裏腹に、胸の内を蝕む虚無感から目を逸らすことができた。 屋敷に着くと、例によって例の如く召使いが現れた。 三度目の訪問となると流石に顔を覚えられる。 「レッド様。ようこそおいでくださいました」 「サヤは?」 「裏庭でポケモンバトルを嗜んでおいでです」 「ありがとう」 裏庭に抜けると、確かにサヤは若い女の使用人を相手にポケモンバトルをしていた。 しかしそれはポケモンバトルというよりは、予定調和の演劇に近かった。 「いい? ここでチコリータが、こう、しゅばーっと"葉っぱカッター"を飛ばすの! そしたら私のヘルガーがそれをしゅんって躱して、一気に近づくの。 チコリータは近づかれたら負けちゃうの分かってるから、"地震"と"ソーラービーム"でヘルガーを撃退しようとするの。 でもヘルガーは地震に怯まないで、ソーラービームを撃たれる前に、チコリータをぼかーんって吹き飛ばすのっ! 分かった?」 「サヤ様、わたくしめのチコリータはレベルが低く、進化もしていないため、"地震"や"ソーラービーム"を習得しておりません」 「あーもー。使えない子ね。じゃあ最後の二つは無しでいいわよ」 面白そうなので隠れて見ていようかと思ったが、 使用人が助けを求めるような視線を向けてきたせいで、サヤに気付かれてしまった。 「…………」 俺の姿を認めたサヤがフリーズする。 「あー……今のは、最初のポケモンバトルの焼き直しか?」 ただし脚本の結末だけは、ヘルガーの勝利に書き換えられていたような気がするが。 「……見てたの?」 「ああ」 「どこから?」 「シナリオを説明するあたりからだ。 サヤの向上心は認めるが、そういう練習方法はあまり効果的とは言えないな」 「で、ですよね」 ヘルガーの前に立たされてぶるぶる震えていたチコリータを抱き上げて、使用人は安堵の笑みを浮かべた。 俺も笑った。 サヤは激怒した。 「忘れて! 今すぐ忘れて! あーあーあーあー。 今のはアレよ。アレ。復習?そう、復習よ。 どうしてあのとき負けたのかなーって、ほら、あの時の状況を再現して敗因を確かめるみたいな? あーもーやだやだやだやだ。どうしてよりによってこんな時にあなたが来るのよ!」 今のサヤには支離滅裂という表現がぴったりだな。 「落ち着け」 「落ち着けるわけないじゃない! そもそもわたしがこんな醜態をさらした責任は全部あなたにあるのよ。 ハッキリ言って、私はあなたに負けたのが悔しいの。夢に見るくらい悔しいの! それで屈辱にたえてあなたにポケモンバトルを教えてもらうことにしたのに、 あなたったらあやふやなことばっかりで、ちっとも具体的なこと教えてくれないじゃない。 しかも私が呼んだ時には遅刻するし、長期の任務とかでなかなか来てくれないし」 確かに、サヤの言うことにも一理ある。 俺はサヤが成長することを望んでいながら、 サヤに満足感や達成感を与えてやることを忘れていた。 「じゃあ、約束する。俺はこれから二週間おきに、ここに来る」 「だめ。一週間おきがいい」 「間をとって十日でどうだ」 「しかたないわね。妥協してあげる」 「約束成立ね」 はい、と小指を差し出すアヤ。 「……………」 「わたしにいつまでこうさせているつもり? まさかあなた、指切り知らないの?」 最後に誰かと指切りしたのはいつだろう。 そんな風に自分を誤魔化しても、あの時の記憶は鮮明に脳裡に刻み込まれている。 チャンピオンロードを目前に控えた、仲間との別れの日。 カスミは目に浮かぶ涙はそのままに、小指を差し出して言った。 ――『指切りして、サトシ』―― 記憶の中の優しい声は、それでいて俺を苛むようで……。 『絶対にポケモンマスターになって帰ってくるのよ。 負けたら承知しないんだからね』 『ああ、分かってる。行ってくるよ、カスミ』 『サトシ……待ってるから』 絡めた小指と、交わした口吻の感触を、俺は今でも忘れることができない。 「じれったいわね、もう」 サヤの手が、俺を追憶から現実に引き戻す。 ふと気付けば、俺の右手の小指は、サヤのそれに絡まっていて、 「やめろ!」 「きゃっ!?」 無意識で突き飛ばしていた。それも、かなり強い力で。 「大丈夫ですか、サヤ様!?」 使用人が駆け寄る。 しかしサヤは、俺に対する怯えよりも怒りが勝ったようだ。 「なんなのよ急に!」 「………悪かった」 「悪かったで済むことじゃないでしょ! どうして指切りくらいで突き飛ばされなくちゃならないのよ。説明して!」 「それは……できない」 「だから、どうして?」 「俺自身、うまく説明できないんだ」 「……そんなの、理由にならないわ」 「本当に謝る。許して貰えるなら、サヤのいうことを一つ、何でも聞いていい」 謝意は本物だった。 だが最後の一言は、余計だった。俺はサヤの願いが即物的なものであると思い込んでいた。 「じゃあ、今からする質問に、イエスかノーで答えて」 「いいだろう」 サヤは自分の身体を気遣う使用人を下がらせ、妙に真剣な面持ちでこう言った。 「あなたは、ポケモンリーグ永世チャンピオンのサトシなの?」 何でも聞くと大見得を切ったんだ。 黙り込んだり、ふざけたりで誤魔化せる状況じゃない。 「……ああ」 頷くと、使用人とサヤ、二人分の息を呑む音がした。 「お父様が言ってたこと、やっぱり本当だったんだ……。 あなたはお父様が知る中で、一番強いポケモントレーナーだって……ポケモンリーグの英雄だって……」 直接名前は明かさずとも、十分なヒントは与えられていたということか。 時間差はあるにせよ、正体がばれるのは時間の問題だったということだ。 「薄々あなたの正体には気付いてたつもりだったけど、でも、まさか本当の本当にあなたがあのサトシだったなんて……」 そこでサヤは思いっきり深く息を吸い込み、 「そんなの、最初からあたしが勝てるわけないじゃないのよーっ!!」 突然、ヘルガーもびっくりの声量で吠えた。 怯む俺に詰め寄って、「よくも騙してくれたわね」と訳の分からない言いがかりをつけてくる。 助け船は予想外の方向から現れた。 「わあ、わあわあわあっ……」 チコリータが宙を舞う。 愛する自分のポケモンを放り投げ、代わりにサイン色紙を胸に抱いた使用人が、サヤを押しのけて言った。 「僭越ながら、サインをお願いします。私、あなたの大ファンなんです。ほんとうです」 「出過ぎた真似はよしなさい!」憤るサヤ。 「ここは譲れません。ほら、サヤ様も遠慮をなさらずに」一歩も引かない使用人。 「私は何も遠慮してないわよ! いい加減にしなさい」 実力行使に出たサヤに、使用人は渋々といった様子で俺から離れ、屋敷に歩いていった。 俺はその後ろ姿に向かって言った。 「できれば屋敷の人間にも、俺の正体は秘密にしておいて欲しい」 振り返った使用人の表情は、清々しい晴れやかな笑顔だった。それを見て確信した。 今日中には屋敷の人間は誰一人余すことなく俺の正体を知ることになるだろう。 外部の人間に組織の情報を漏らせば、自ら死を望むほどの制裁が待っている。 流石に噂話も身内止まりだろうが……。 「ねえ、あなた今何歳なの?」 「19だ」 「やっぱり……あのサトシがあなたなら、それくらいよね」 「女性に年齢を尋ねるのは失礼なのを承知で聞くが、サヤは?」 「21よ」 「嘘だろう」 「それはこっちの台詞よ」 サヤの見た目や行動は、21という年齢にしては幼すぎた。 そして、 「あなた、私より2つも年下のくせに、大人びすぎてるのよ。 初めて会った時は、絶対に年上だと思っていたもの」 俺は年相応の風貌を失ってしまっていた。 そのせいで街を歩いても、俺の過去の姿に気付く人間は誰一人としtいなかった。 名声を得た人間は否応なしに記号化される。 キャップを被り、黒の肌着の上に半袖のシャツを着て、擦り切れたジーンズとよれよれのスニーカーを履いた少年。 それが大衆が想像する『サトシ』であり、喪服のような正装をした無表情の男には見向きもしない。 博士はことあるごとに言う。『お前は表情を無くしたのう』と。 感情を抑え込む訓練をしているうちに、 いつしか俺は腹の底から笑ったり、涙するほどに悲しむということができなくなっていた。 「あ……えと……」 サヤは不自然にもごもごと口を動かしては、視線を上げたり降ろしたりを繰り返した。 「どうしたんだ?」 「ね、どうしてあなたみたいな人が、組織にいるのか聞いてもいい?」 「………」 俺の正体が分かれば、次に組織に入った経緯を知りたがるのは必然だった。 「詳しいことは言えない」 「うん」 問い詰めたい気持ちもあるだろうに、サヤは素直に頷いた。 「俺には、夢がある」 「夢?」 「ああ。そしてその夢を叶えるには、組織に所属するのが、一番の近道なんだ。 それに、俺は組織の任務で、表に出てこないトレーナーと戦って、 ポケモンリーグの頂でさえ、井の中の蛙と変わらないことを思い知った。 俺は夢を叶えるために、誰よりも強くなるために、ここにいる」 「ふうん……その夢が何なのか、いつか、私に教えてくれる?」 俺は何も言わなかった。 サヤは期待を込めた上目遣いを脇に逸らし、不平をぶつけてくるかと思いきや、 「お話終わり。そろそろ私にポケモンバトルを教えなさい、サトシ」 まるで初めて会った時から使っていたかのような自然さで、俺の名――コードネームではない本名――を呼んだ。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/371.html
「説明しなさい!何よその格好は!」 「このメイド服のことか?これはシエスタという少女が貸してくれたものだ」 「それを何で普通に着てるのよ!」 厨房から運ばれてくるケーキを次々と皿へ飛ばしつつ、ミュウツーはルイズの質問に淡々と答えていた。 話を聞いていると、ミュウツーはどうやら、 『メイドの仕事をするにはメイド服を着なければならない!』 と、シエスタに思い込まされたようであった。 「・・・何でアンタはメイドの真似事をしてるのよ」 「何か問題でも?」 「・・・もういいわ、終わったら帰ってきなさいよ」 「わかった」 流石に叫び疲れたらしく、ルイズは一人食堂を出ていった。 「カーゲーカゲカゲカゲッカゲー♪」 一方、先程までミュウツーと一緒にいたフレイムもケーキを運ぶのを手伝っていた。 無論、メイド服を着てだ。 ケーキの並んだトレイをフレイムが持ち、シエスタがひとつずつ配る。 そうしていると、フレイムは視界に自分の主人の姿を捉えた。 フレイムはシエスタと主人の元へ歩き出した。 「あらフレイム、ずいぶん可愛いくなっちゃったじゃない。どうしたのよ?」 「カゲー!」 キュルケにはフレイムの言葉がわからないため、シエスタが変わりに説明した。 「・・・というわけで、お二人の使い魔さんに手伝ってもらっているのです」 「へぇ、偉いわねフレイム」 キュルケはフレイムの頭を撫でてあげた。 フレイムは嬉しそうに目を瞑った。 「おーい、こっちにもケーキくれよ!」 「はいただいま!」 他の生徒に呼ばれたため、シエスタとフレイムは再びケーキを運び始めた。 「お姉さま!あのトカゲの男の子がくれたケーキとっても美味しいのね!きゅいきゅい!」 フレイムからたくさんもらったケーキを嬉しそうに頬張っていたシルフィードに、タバサは無言で杖を振り下ろした。 「いたいのね!」 「・・・喋ったら駄目って教えた」 「タバサ、アンタ何してるの?」 そんな二人のやりとりにキュルケは不思議そうに尋ねた。 「・・・何でもない、そうよね?」 「きゅ、きゅいきゅい!」 もう殴られたくないため、シルフィードは首を激しく上下させた。 「お待たせしました」 シエスタはモンモランシーの皿にケーキを乗せていた。 すると、モンモランシーは机の下を覗き込み、何かを呼び出した。 「ほらロビン、ケーキ食べてみない?」 机の下には、フレイムと同じような模様の付いた、背中に植物の球根が生えた緑色のカエルのような生物が目を閉じてうつ伏せになっていた。 そしてそのカエルのような使い魔は主人の声に気づき顔を上げた。 「・・・ダーネダー?」 それは、ミュウツーやフレイムと同じように、とある研究所で作られ消滅したはずの、『フシギダネツー』であった。 「カゲー!」 「・・・ダネ?ダネフッシ!」 「ロビン?」 思わぬ再会に二匹は抱き合って喜びあった。 そんな二匹にモンモランシーは目を見開きながら尋ねてみた。 「あなた、このトカゲと知り合いなの?」 「フッシー!ダネダーネ!」 ちょうどその頃、ミュウツーがケーキを飛ばしている場所から少し離れたところに、1人のヘタr・・・キザそうな貴族がいた。 周りには彼の友人らしき者たちが口々に冷やかしの言葉を投げ掛けていた。 「なあ、ギーシュ!お前、今は誰と付き合っているんだ?」 「誰が恋人なんだ?ギーシュ?」 ギーシュはすっと唇の前に指を立てた。 「付き合う?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人をt━━」 「ところでこのケーキの苺を見てくれ、こいつをどう思う?」 「凄く・・大きいです・・・」 「君たち、人の話は最後まで聞いて欲しいのだが」 ふと、ギーシュのポケットから、ガラスでできた小瓶が転がり落ちた。 中で紫色の液体が揺れているその小瓶は、ケーキを配り終え厨房に戻る途中のシエスタのほうに転がってきた。 シエスタが小瓶を拾い上げると、そのままギーシュの机の上に置いた。 「小瓶が落ちましたよ。ミスタ・グラモン」 しかし、ギーシュは小瓶を押しやり、彼女の言葉を否定した。 「これは僕のじゃない。君は何を言っているのだね?」 しかし、その小瓶の出所に気づいたギーシュの友人たちが、大声で騒ぎだした。 「おお?その香水はもしや、モンモランシーの物じゃないか?」 「そいつがギーシュのポケットから落ちてきたってことは、お前は今モンモランシーと付き合っているのか!」 「違う。いいかい?彼女の名誉の為に言っておくが・・・」 ギーシュが何か言いかけたとき、後ろのテーブルに座っていた薄い青紫色の髪の少女が立ち上がり、ギーシュの席へと歩いてきた。 「セバスチャン、今までいろいろとあじゅじゅしたー」 少女はギーシュが言い訳をする前に、正拳突きと旋風脚を華麗に放って立ち去り、 ギーシュはそのままモンモランシーの席の近くまで吹き飛ばされていった。 足元に飛んできたギーシュを見ると、モンモランシーは立ち上がった。 「モンモランシー。誤解だ。コナコナとはただ一緒に、ド・ウブツの森へレバ剣の試し斬りに行ったd━━」 ギーシュが言い終わらる前に、モンモランシーは使い魔に命令を下した。 「ロビン、構えなさい」 「ダネ!」 ロビンは主人の命令に従って、ギーシュに背中の球根を向けた。 球根は照り付ける日光を吸収して光輝いていた。 モンモランシーはここに飛ばされる前にロビンに光を集めさせていたのだ。 「ソーラービーム、発射!」 球根の先端からギーシュめがけ、強烈な太陽光線が放たれた。 ギーシュは自分の席まで吹っ飛ばされ、モンモランシーはそのまま立ち去って行った。 フレイムとロビンは飛んで行ったギーシュを追いかけて行った。 「あ、あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 身も心もボロボロになりながら、ギーシュは芝居がかった仕草で立ち上がった。 シエスタは一通りの出来事を見届けると、厨房へ戻ろうとした。 「待ちたまえ」 しかし、ギーシュに引き止められたため、視線をそちらへ向けた。 「君が軽率に、香水の瓶なんかを拾い上げてくれたお陰で、二人のレディの名誉に傷がついた。どうしてくれるんだね?」 どうやら全責任をシエスタに押しつけるつもりのようだ。 シエスタははっきりと言った。 「ミスタ・グラモン、二股をした貴方が悪いのでは?」 辺りにいた生徒達が、どっと笑った。 「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」 「そんなこともわからないのかよ!m9(^Д^)プギャーwwwww」 そんな周りの反応とシエスタの態度に、ギーシュの怒りのボルテージが上がり始めた。 「ふん!メイド如きに、話を合わせるぐらいの機転を期待したのが間違いのようだな!」 ギーシュは自分の杖を取り出し構えた。 「そこになおれ!叩っ斬ってやる!」 そのまま杖を振り下ろ・・・せなかった。 「きゅいきゅい!」 「ダーネフシ!」 なぜなら、シルフィードに腕を噛みつかれ、ロビンに杖をつるのむちで縛られていたからだ。 「おい、あれはタバサの使い魔とモンモランシーの使い魔じゃないか!」 「何やってんだあいつら?」 これに遠くから見ていた彼らの主人達も驚いていた。 「き、君達、邪魔をs━━」 「カゲー!」 最後まで言う前に、フレイムのかえんほうしゃがキザな顔に直撃した。 ギーシュは頭をチリチリヘアーにさせながらその場に倒れ、三匹はその前に立ち塞がった。 「・・・どうやら、君達は貴族に対する礼儀を知らないようだっな」 ゆっくりと起き上がりつつギーシュは呟いている。 ますます怒りのボルテージが高まりつつあるようだ。 そんな四匹の間に、騒ぎに気付いたミュウツーが割って入った。 「何があったのかは知らないが、私の友人達が迷惑をかけたようだ。変わりに謝ろう」 ミュウツーは服のポケットに入っていたメモ用紙を取り出した。 服を借りた時に渡されたそれには、謝罪する時の応対文が書かれている。 「あ、ああそうだ、謝罪の言葉さえあれば僕も怒りはしないさ」 ミュウツーは書いている文に目を通し、書いているそのまま読み上げた。 「やかましいでございます。黙ってろでございます。ヘタレはお家に帰ってママのミルクでも吸ってろでございます」 読み上げた言葉に、辺りを沈黙が支配した。 「・・・シエスタ、これは謝罪の言葉なのか?随分失礼な文章のようだが」 ミュウツーはギーシュに謝罪するつもりであったが、紙には無茶苦茶なことが書いてあった。 ギーシュは顔が真っ赤になり、怒りのボルテージが限界を突破した。 「・・・君達の誠意は、よぉくわかった」 そして、シエスタの前にいる四匹に杖を向け、高らかに宣言した。 「ギーシュ・ド・グラモンは!使い魔の諸君に!決闘を申し込む!」 使い魔の逆襲 6
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/707.html
────────────────────────── フシギバナの事はよく分からないが冗談が出るという事はまだ余裕なのだろう。 俺たちはまず一戦、勝利した。 「余裕すぎてつまらないわぁ~」 あまりにあっけなく終わってしまったからかフシギバナは不満を漏らす。 「そう言うなって。しかし・・・」 妙に気になってくる。相手萌えもんの消えた訳。 あれはなんなのだろうか・・・フシギバナも負けたら・・・ 「どしたの~?」 「いや、何でも・・・」 不安を与えないために、言わないのがいい。 そう思い口をつぐんだ。 2回戦が始まる前。 トレーナー達の前にミュウツーが現れた。 負けたトレーナーは一斉に理由を求める。 「なぜ、消えたのだ」「萌えもんはどうなった」と。 ミュウツーはただ一言。 「傷ついた萌えもんの体力を回復させている」とだけ言い放つ。 あまりの威圧感。圧力。重圧。 トレーナー達はただ黙る事しか選択肢を与えられなかった。 「なんか隠してるね。あの萌えもん」 ケイさんが疑いの表情を見せながら話しかけてくる。 「でしょうね。誘拐ですよ、これは。」 明らかな事実を言葉にする。 その時、あの威圧的な視線を強く感じた。 ミュウツーを見ると、笑っていた。 よく分かったなとばかりに。 ぞっと寒気がした。 そして2回戦は始まった。 ただ一つ1回戦と違った事。 負けたら萌えもんを失う。その事実が明確となった事による必死さ。 それだけが加わった萌えもんバトルが始まる・・・。 俺はフシギバナを失う事なく決勝戦まで勝ちあがった。 誰もが抱く疑問。「勝ってどうなるのだろうか・・・」。 だが気にしている場合ではない。 勝たなければ失う。己のパートナーを。 そして来る。 避けられない時間が。 「レッド君・・・やらなくてはいけないのか・・・」 「なんとしても避けたいんですがね・・・」 こんな時どんな顔をすればいいんだ・・・。 相手を蹴落としてでも勝ちたい。 それを素直に伝えるのはどうにも出来ない。 負ける事は出来ず、相手を思い負けたいと願えば明らかな嘘になる。 言葉を交わす事自体愚かな行為かもしれない。 「バナちゃん・・・」 リザードンは今にも泣きそうな目でフシギバナにその意思を問う。 「リザ・・・ごめんね・・・やらなくちゃいけない・・・」 フシギバナも、意思を答える目は潤んでいた。 トレーナーも萌えもんも、誰も望まない決勝戦が今、始まった。 「フシギバナ。お前に任せる」 初めての指示。任せる。 「・・・れっど・・・」 どうすればいいの?攻撃していいの? そう訴えるような目で俺を見る。 「リザードン、好きなように戦っていいぞ」 ケイも同じような指示を出す。 「ますたぁ・・・」 リザードンも目に涙を浮かべて普段通りの、期待していた指示を求めていた。 レッドとケイが思った、友達だから戦いにくい。 ただのバトルならまだしも負けたら萌えもんを失うのだ・・・。 それは萌えもんにも言える事だった。 つい数時間前一緒に風呂に入った仲なのに。 この勝負で決着がついたら一方は消えてしまうのだ。 「ごめん・・・」 「え・・・?」 フシギバナは一瞬呟き、辺りを黄色く染める。 「バナちゃん・・・」 リザードンはこれを空中に避け、フシギバナの決意を理解する。 限界まで息を吸い、吐く。 その吐息は赤く、何もかもを燃やし尽くすような熱を持つ。 視界のせいか一瞬判断が遅れたフシギバナは植物の葉で防御を試みた。 一つ一つの技。これらを使うのがこれほど辛い。 お互い泣きながらの勝負。 その時。リザードンの足を鞭が巻きつく。 「あっ」 地上に引っ張られ、その先にはフシギバナ。 「リザ・・・あたしが助けるから・・・待っててね。」 フシギバナは辺りに自身の花びらを舞わせ・・・ リザードンの腹部に一撃を食らわせた。 黄色い煙幕が晴れた時、勝負は終わっていた。 リザードンの姿は無く、フシギバナはただただ泣いていた。 「ケイさん・・・」 かける言葉がなかなか見つからない。 「・・・」 黙るケイに一言、やるべき事を告げる。 「俺、フシギバナと一緒にリザードンを・・・他の萌えもん、助けますから!」 ケイは静かに背を向け、ありがとうと小さく残し去っていった。 「おめでとう。」 ミュウツーはにっこりと祝福した。 冷たい笑顔。腹の底から怒りが沸いてくる。 「礼なんていらない。萌えもん達を返してくれ。」 笑顔は崩れず、俺だけに聞こえるくらいの声で言った。 「いいですよ。もう役に立ちませんから。」 スタジアム右の扉が開き、いなくなっていた萌えもん達が走ってきた。 リザードンもその中にいた。 ケイは抱きしめ、フシギバナはわんわん泣いていた。 他のトレーナー達もパートナーの帰還を喜んでいた。 そこに大きな音が響いた。 スタジアム左の扉が開き・・・萌えもん達が走ってきた。 体に妙な模様が出来、殺気をまといながら。 「みんな、聞いてくれ。あれは私が作り出した諸君のパートナーのコピーだ。存分に楽しんでくれ。」 「やめなさい。」 薄く小さく、しかししっかり聞こえてくる声があった。 姿を現した萌えもんが一人。 色は薄ピンクに長い尻尾。 ミュウ。 「現れたか。私のオリジナル・・・!」 「萌えもんのコピーなんて許しません。」 「黙れ!私だって作られた!人間に!望んでなかった!」 「だからと言って・・・コピーを作ってどうするつもりなのです!」 「人間たちに・・・復讐する。」 ミュウとミュウツーは自在に宙を舞っている。 ミュウは暖かな赤、ミュウツーは冷たい青の光に包まれて。 2人の中身を表したかのような光が交わった時、 オリジナル(original)とコピー(copy)の戦いが始まった。 6話・・・ですかね。 伝えたい空気ってのがありましたがうまく伝わったでしょうか? 映画がメインなので伝わりやすいかなぁとは思ったりしてますが。 それではまた。ご愛読ありがとうございます。
https://w.atwiki.jp/ncbr/pages/19.html
第五話『ワタシハマケルワケニハイカナイ』 ――ワタシ ハ ダレダ…… ――ワタシ ハ ナゼ ココニ イルノダ…… 「ここは……」 最強のポケモン、ミュウツーは気がつくと見知らぬ土地にいた。 ロケット団のアジトを抜け出し、海の弧島に城をかまえ、世界中のポケモントレーナーを 招待しようとしていたはずだったのだが、今は一人何もない海の見える浜辺に佇んでいるだけであった。 “「これからお前らに殺し合いゲームをしてもらうよ!」” 主催者であるポーキーと名乗った少年の声。 「あの妙な部屋の中であの人間はそう言っていたな。サカキ、フジ以上に愚かな人間だ。」 ミュウツーはあの妙な部屋で起こった事を思い返した。 ――混乱する人々 ――首が爆発したオレンジ色のドレスを着た女性 叫ぶ緑の男 「人間といえば、あの部屋で幾人か奴とは他の人間の姿があったな。おそらくあの部屋にいた全ての人間が このゲームで殺し合いをすると見て間違いない。人間どもは自分の利益を優先する愚かな生き物だ」 かつて自分を無責任に創ったフジ博士、そして、ポケモンを道具の用に使うロケット団首領 サカキ。 彼が出会った「人間」は人の影の部分を彼に対して表すのに十分すぎるほどであった。 「……いいだろう。私はここに存在する全ての人間どもを抹殺する。そしてポーキーとやら、貴様もだ。 私を呼び寄せて何を企んでいるのか知らないが、貴様のような人間は全て滅びなくてはならない」 草原にたたずむ最強のポケモンの目は大きく見開いていた……その目に映るのは破壊と憎悪。 「愚かなる人間どもに……」 「 逆 襲 だ 」 【名前:ミュウツー(ポケモンシリーズ) 健康状態:良好 武装:なし 所持品:支給品一式(中身は未確認)、不明支給品1~3個(中身は確認してません) 現在位置:E-11 エリア9にある浜辺 時刻:一日目 早朝 第一行動方針:人間を全て殺す 最終行動方針:主催者を殺す 備考:無し】
https://w.atwiki.jp/mmmpokemon/pages/172.html
エスパーのみ アグノム / アンノーン / エーフィ / エムリット / オーベム / クレセリア / ゴチルゼル / スリーパー / ソーナンス / チリーン / デオキシス(ノーマル,アタック,ディフェンス,スピード) / ニャオニクス / フーディン / ブーピッグ / ミュウ / ミュウツー / ムシャーナ / ユクシー / ランクルス メガミュウツーY / メガフーディン ノーマル キリンリキ / メロエッタ(ボイス) ほのお ビクティニ / ヒヒダルマ(ダルマ) / マフォクシー みず スターミー / ヤドキング / ヤドラン くさ セレビィ / ナッシー こおり ルージュラ かくとう エルレイド / チャーレム メガチャ―レム / メガミュウツーX じめん ネンドール ひこう ココロモリ / シンボラー / ネイティオ / ルギア いわ ソルロック / ルナトーン ドラゴン ラティアス / ラティオス あく カラマネロ はがね ジラーチ / ドータクン / メタグロス フェアリー サーナイト / バリヤード メガサーナイト
https://w.atwiki.jp/purasu50/pages/51.html
CESS「享可」 ウッディ「なぜ!?漢字、ってか出落ちだろ」 SMカード「あっプリム達がいるぜ」 プリム「ぐほぉ」 SMカード「メモリービーム」 プリム「うお」 CESS「デカス」 プリム「うわ~」 ウッディ「カウボーイの力」 プリム「ぐはっ」 CESS「享可」 ???「うるせぇな、お前らは」 4人「だれやねん?」 レイ「プラスマ主役のレイ!ってなんで関西弁!?」 4人「すまちぇん~」 レイ「今度はマザコンかよ」 ゲラクッパ「うははははは、お前らをフィギュアにしようゲラ~ゲラ~」 CESS「だが、お前はもうネタキャラだ」 ゲラクッパ「なんだとゲラゲラ~」 ゲラクッパ「うりゃーだゲラゲラ~」 ゲラクッパ「ぎゃああだゲラ~ゲラ~」 ゲラクッパ 他界 レイ「あ、ちきしょ~(小梅太夫状態)」 ウッディ「主役なのになぜちきしょ~(小梅太夫状態)」 2人「わかっているから」 SMカード「ほぅ、そうか」 プリム「プリプリ~」 ぽよよよ~んネズミ「ぽよよよ~んネズミ」 レイ「雑魚かよ」 CESS「ってかオリスマの敵までいるね」 ウッディ「まさしく、運が悪いアシストキャラだな」 し~ん ウッディ「あれ?」 レイ「タックルいくぜ」 プリム10体「ありゃ~プリプリ~」 CESS「地震ドシン」 ぽよよよ~んネズミ「ぽよよよ~ん」 レイ「これで倒した」 それを見た宿敵は ドラッグ「雑魚敵と口癖野郎はSABCDEのクラスでは雑魚はEで、口癖はDクラスだな」 ???「くそっなんでボスは早くやられるんだ」 ミュウツー「バートなど早くやられやがれ!嵐にしやがれ!」 ???「お前、ミュウツー、なんでそのネタだ、寒いギャグだぞ、お前はCクラスに落ちるんだぞ、絶対にA・Bクラスだぞ!」 ミュウツー「とりあえず俺は後で、敵を増やしてくるよ!」 ???「わかった、よろしく頼むぜ」 今のところキャラチーム イロスマ同人誌チーム バート、レッドザウルス パワスマチーム ファビィ、ブレード、ナスオ、ゴルスラ、ベッカム オリパワチーム CESS、ウッディ、SMカード、レイ パワスト2-3
https://w.atwiki.jp/gunsin131/pages/139.html
パルデア帝国によって復活した人物 800年前の人物だがパルデア帝国によって現代に蘇る。世界を相手に喧嘩を売る事を面白そうなこと言うなど血気盛んな人物。再び暴れられる事に感謝しておりパルデア帝国に忠誠を誓っている。 パルデア帝国編にて登場。パルデア帝国が捕えた一般人を陵辱しながら暴れられることを大いに喜ぶ。一方でフランチェスカが結果を出したら相手をしても良いといった際は普通に引いていた。その後はラピュタ内部の防衛にまわり単独で突っ込んできたキャロルに奇襲を仕掛ける。奇襲の結果、キャロルのミュウツーに大ダメージを与えることに成功するが直後にキャロルがミュウツーのメガシンカをしたことで状況が逆転し敗北する。敗北後は捕縛されていたがメロン・パンがラピュタを落下させたためやる夫達に連れられラピュタから脱出した。
https://w.atwiki.jp/sh0425/pages/41.html
ストグラ内でスマブラした件 まとめ (再) ↓とりあえずスマブラの著作権テロの件、何やったか貼っとくね 89167.@嫌い派 2024-08-07 16 45 11 ストグラ内のTVにスマブラを映し、ストグラの画面をワイプで映しながら全画面でスマブラプレイ(20分ほど) ろぎあ「スト6(そもそも会社違う)とかやってましたし今日だけのお遊びなら怒られないでしょう、大会みたいに頻繁にしなければ怒られないと思いますよ」 ヘル「ストと違って、あの~ちゃんと気をつけなあかんから、このゲームは尚更」 ろぎあ「配慮はちゃんとしてこの街に居る意味がなくなっちゃわない様にガッツリはしすぎずに軽くね」 ヘル「友達がポテチを後ろから食いながら見るのが理想、特定の人がちょっとだけやるくらいの、が理想やね」 ろぎあ「でもこの街の人たちはテレビには映さずにお互いの脳内で観測者さんにだけ見せてやってたんですかね~」 ヘルアン→今日だけじゃなく白井に今度やろうと誘う&有料会員のみが視聴できる形での配信禁止だろうところサブ限 ↑これダメだと認識してるのにやってね?w 配信元 2024/08/06 【305日目】今日もすべてにALLIN【ヘルアン視点|#ストグラ】※鳩・指示・他下げBAN 4 18 20辺りから https //www.twitch.tv/videos/2217153531 ヘルアン ツイッチ スタンプ (ミュウツー?) https //imgur.com/a/zJe4OQC ストグラ中スマブラ https //imgur.com/a/4BansEW 任天堂 不正商品情報ご提供窓口 https //contact-form.nintendo.co.jp/220827370965967 ストグラご意見フォーム https //docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc7gsFRs7SVSEKFw5DkdWUv0IzVWDR0Jq24aveDR_P9GLL6-Q/viewform 文例 89912.@嫌い派 2024-08-08 02 12 25 89894 長いので省略するか適当に変えて下さいm(_ _)m 明らかにミュウツーの不正利用が疑われるため詳細のご連絡失礼致します。 【該当者名】 紫闇ヘル/Kento(旧名) 【該当者アカウント】 @m2_kento (Twitter/X) m2_kento_heluan (Twitch) @Shian_Helu (YouTube) 【内容】 今回ご報告させて頂きたい内容は、該当者のTwitchで使用されているスタンプに関してのご報告となります。 視聴者が課金をする事でサブスクユーザーとなり使用が可能になるスタンプですが、こちらにミュウツーと思われる顔/目元/尻尾のスタンプがあります。 スタンプ一覧は下記URLにて掲載失礼致します。 https //imgur.com/a/vNVoBvq 該当者は以前より「スマブラでミュウツー全一だった」とよく発言しており、YouTubeなどでも攻略動画をあげています。 スマブラと活動名を検索すれば大会に出た際の顔写真や配信サイトがヒットするほどミュウツーのみを使用していた模様です。 視聴者がお金を払う事で使用可能になる物の中に誰もが知っているキャラクターが使用されているのはどうなのでしょうか。 現在該当者は、グランドセフトオートVというRPゲームにて配信者のみが参加できるサーバーをメインに配信しています。 そのゲーム内にて、家に置かれたテレビにスマブラを映し出し配信画面ではスマブラが画面の大半をしめる形で20分ほど実際にプレイをしていました。 グラセフゲーム内でスマブラを配信に移している事が著作権規定の違反になるかは判断し難かった為ご報告させて頂きます。 また、該当の時間帯を確認してご報告させて頂こうとしたところ、サブスクリプションユーザー限定の公開となっておりました。 こちらも金銭が発生した上で見る事が出来るコンテンツとなっております為、合わせて報告を失礼致します。 ストグラ運営 X https //twitter.com/stgr_roleplay ストグラサーバー管理者 しょぼすけ X https //x.com/ShoboLinco ストグラ lit.link https //lit.link/stgr
https://w.atwiki.jp/vipuhaokhaakuwww/pages/62.html
ミズゴロウ ミュウ ミュウ の そらをとぶ! ミュウツー ミニリュウ ミルタンク ミロカロス
https://w.atwiki.jp/hoshinokaabyi/pages/283.html
ルカリオ 説明 「ポケットモンスターシリーズ」のルカリオを吸い込む事でこの能力へ変身する。 DXのミュウツーと入れ替わりのような形で登場する。 "ルカリオデザインの帽子"を被っており、必殺技の すいこみ が変化し、 はどうだん を使うことが出来るようになる。 はどうだん はミュウツーの シャドーボール 同様溜め技で、 溜めた分をシールドで保持しておくことも可能。 はどうだん も シャドーボール とこれまた同じく、溜め中にダメージ判定があり連続ヒットする。 溜めが少なく、弾が小さいときはゆらゆら揺れながら進行するが、 十分に溜めて、弾が大きくなると揺れることはなく直進するのが シャドーボール との違い。 ダメージを負うほどにパワーアップする"波導の力"まではコピーできない。 能力を持つ敵 なし 出演 大乱闘スマッシュブラザーズX 大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS 大乱闘スマッシュブラザーズ for WiiU ←もどる